説明

粘着剤

【課題】 アクリル系ブロック共重合体を粘着剤とし、ポリオレフィン系重合体または変性ポリオレフィン系重合体を基材にする場合、アクリル系ブロック共重合体の基材への密着性が低いことから、粘着剤として被着体から再剥離するときに、基材とアクリル系ブロック共重合体の界面で剥離し、アクリル系ブロック共重合体が被着体へ残ってしまう(糊残り)問題があった。
【解決手段】 メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)1〜99重量%、および変性オレフィン系重合体(B)99〜1重量%を含むことを特徴とする粘着剤により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系ブロック共重合体と、変性オレフィン系重合体とからなる粘着剤に関する。さらには、該粘着剤を用いた粘着シート、再剥離型粘着シート、および表面保護剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着剤としてはアクリル系やゴム系などが一般的に用いられてきたが、近年、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体などを主成分とする粘着剤が開発されてきている。このようなブロック共重合体を主成分とする粘着剤は、エマルジョン系や溶剤系の粘着剤に比べて、乾燥効率や安全性の点で優れており、特に注目を集めている。しかしながら、スチレン−共役ジエン系ブロック共重合体は耐候性および耐光性の低いことが問題となることがあった。
【0003】
これに対して、近年、リビング重合によって合成される、メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックからなるアクリル系ブロック共重合体が提案されている(特許文献1)。このようなアクリル系ブロック共重合体は、リビング重合に由来する優れた構造の制御と狭い分子量分布をもちながら、アクリル系重合体が本来有する高い耐候性、耐光性、透明性を保持する特徴を有する。また、各重合体ブロックを構成する単量体を適宜選択することで様々な特性を発揮でき、粘着剤として様々な用途への展開が期待される(特許文献2、3)。
【0004】
一方、粘着テープやフィルムの基材としては、従来からポリエステルやポリオレフィンが一般的に用いられているが、より安価なポリオレフィンを基材とすることが求められており、アクリル系ブロック共重合体を用いた粘着テープやフィルムにおいても同様のことが求められていた。
【特許文献1】特許第3040172号
【特許文献2】特開2003−105300
【特許文献3】特開2001−348553
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクリル系ブロック共重合体を粘着剤とし、ポリオレフィン系重合体または変性ポリオレフィン系重合体を基材にする場合、アクリル系ブロック共重合体の基材への密着性が低いことから、粘着剤として被着体から再剥離するときに、基材とアクリル系ブロック共重合体の界面で剥離し、アクリル系ブロック共重合体が被着体へ残ってしまう(糊残り)問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者は、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)1〜99重量%、および変性オレフィン系重合体(B)99〜1重量%を含むことを特徴とする粘着剤に関する。
【0008】
好ましい実施態様としては、変性オレフィン系重合体(B)が、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、シリル基、及びグリシジル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を有することを特徴とする粘着剤に関する。
【0009】
好ましい実施態様としては、変性オレフィン系重合体(B)が、酸無水物および/またはカルボキシル基を有することを特徴とする粘着剤に関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)の少なくとも一方の重合体ブロック中にカルボキシル基および/または酸無水物基を有することを特徴とする粘着剤に関する。
【0011】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)における、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が、10〜50重量%であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、ジブロック共重合体またはトリブロック共重合体、またはそれらの混合物であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0013】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量(Mn)が30,000〜300,000であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法により製造されたことを特徴とする粘着剤に関する。
【0016】
さらに本発明は、上記のいずれかに記載の粘着剤を、オレフィン系重合体または変性オレフィン系重合体からなる基材上に積層されてなる粘着シートに関する。
【0017】
好ましい実施態様は、上記記載の粘着シートの上部に、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)を、さらに積層したことを特徴とする粘着シートに関する。
【0018】
さらに本発明は、上記記載の粘着シートを用いてなる再剥離型粘着シートに関する。
【0019】
さらに本発明は、上記記載の粘着シートを用いてなる表面保護材に関する。
【0020】
さらに本発明は、多層共押出により製造されたものであることを特徴とする粘着シートに関する。
【0021】
さらに本発明は、多層共押出により製造されたものであることを特徴とする再剥離型粘着シートに関する。
【0022】
さらに本発明は、多層共押出により製造されたものであることを特徴とする表面保護材に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る粘着剤は、オレフィン系重合体または変性オレフィン系重合体からなる基材に対して、接着性または密着性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0025】
本発明に関わる粘着剤は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)1〜99重量%、および変性オレフィン系重合体(B)99〜1重量%を含むことを特徴とする粘着剤である。
【0026】
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル酸エステルを主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)である。アクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体、分岐状(星状)ブロック共重合体のいずれか、またはこれらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるアクリル系ブロック共重合体(A)の物性に応じて適宜選択されるが、コスト面や重合容易性の点で、線状ブロック共重合体が好ましい。
【0027】
線状ブロック共重合体は、いずれの構造のものであってもよいが、線状ブロック共重合体の物性および組成物の物性の点から、メタアクリル系重合体ブロック(a)をa、アクリル系重合体ブロック(b)をbと表現したとき、(a−b)n型、b−(a−b)n型および(a−b)n−a型(nは1以上の整数、たとえば1〜3の整数)からなる群より選択される少なくとも1種のアクリル系ブロック共重合体からなることが好ましい。これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や組成物の物性の点から、a−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
【0028】
本発明を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、アクリル系ブロック共重合体(A)に必要とされる特性に応じて適宜設定することができるが、30,000〜300,000が好ましい。数平均分子量が30,000より小さいと凝集力に劣るため機械強度や、粘着特性が低下する傾向があり、数平均分子量が300,000より大きいと加工性や流動性が低下する傾向がある。なお、前記数平均分子量は、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレンゲルカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算によって測定された値を示す。
【0029】
アクリル系ブロック共重合体(A)をGPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は特に限定されないが、1.8以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましく、1.4以下であることがもっとも好ましい。Mw/Mnが1.8を超えると粘着特性が悪化することがある。
【0030】
アクリル系ブロック共重合体(A)における、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合は、10〜50重量%である。メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が10重量%より少ないと、凝集力に乏しく、糊残りが発生する傾向があるほか、形状が保持されにくくハンドリング性に劣る傾向がある。メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が50重量%より多いと、柔軟性や、粘着剤に要求される粘弾特性に劣り、粘着力が低下する傾向がある。
【0031】
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックである。ここで、主成分とは、メタアクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体のうちの50重量%以上がメタアクリル酸および/またはメタアクリル酸エステルであることを意味する。
【0032】
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられる。これらの中でも、メタアクリル酸メチルが好ましい。これらは単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
メタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とするが、これと共重合可能なメタアクリル酸エステル以外のビニル系単量体50〜0重量%を含んでいてもよい。前記共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0034】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステルなどをあげることができる。
【0035】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0036】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0037】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0038】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0039】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0040】
上記共重合可能なメタアクリル酸エステル以外のビニル系単量体として、重合が容易である点や入手性、粘着特性の点で、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチルが好ましい。これらは単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
<アクリル系重合体ブロック(b)>
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックである。主成分とは、アクリル系重合体ブロック(b)を構成する単量体のうちの50重量%以上がアクリル酸エステルであることを意味する。
【0042】
アクリル酸エステルとしては、前記メタアクリル系重合体ブロック(a)に用いられるアクリル酸エステルと同様のものを用いることができる。これらの中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルが好ましい。これらは単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
アクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステルを主成分とするが、これと共重合可能なアクリル酸エステル以外のビニル系単量体50〜0重量%を含んでいてもよい。共重合可能な異種のビニル系単量体としては、上述の、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0044】
なお本発明においては、アクリル酸エステル50重量%、メタアクリル酸エステル50重量%からなるブロックは、アクリル系重合体ブロック(b)に分類される。
【0045】
<カルボキシル基および/または酸無水物基>
本発明を構成するアクリル系ブロック共重合体(A)は、必要に応じて、少なくとも一方の重合体ブロック中にカルボキシル基および/または酸無水物基(以下、単に官能基と呼ぶことがある)を導入することができる。官能基を導入することで、特に変性オレフィン系重合体(B)との相溶性を高めることができ、機械強度を高めたり、粘着剤として用いる場合には、糊残りを防ぐことができる。
【0046】
また、粘着シートとして用いる場合の、被着体との粘着性や高温での粘着性を高めることができる。さらにオレフィン系重合体または変性オレフィン系重合体からなる基材との接着性または密着性を高めることができる。
【0047】
これらの官能基を導入する場合は、特にアクリル系重合体ブロック(b)中に含まれることが好ましい。これは、アクリル系重合体ブロック(b)の凝集力を高めることにより、高温での粘着力を維持することができることによる。
【0048】
また、アクリル系重合体ブロック(b)の極性を高めることにより、粘着シートとして用いる場合の、極性被着体に対する粘着力を高めることができる。ここで言う極性被着体とは、たとえば、各種の金属板、塗装板、ガラス板、ポリエステルやポリカーボネート、アクリル、ナイロン、メラミンなどの極性樹脂板などが挙げられる。
【0049】
また、アクリル系ブロック共重合体(A)のマトリクス成分であるアクリル系重合体ブロック(b)に導入することにより、特に変性オレフィン系重合体との相溶性をより高めることができる。
【0050】
これらの官能基の含有量は、該官能基が含まれる重合体ブロック中の0.1〜30重量%が好ましい。含有量が0.1重量%未満であると、変性オレフィン系重合体との相溶性や粘着力の向上効果が乏しく、30重量%以上であると、重合体ブロックのガラス転移温度(Tg)が高くなりすぎ、柔軟性や、粘着特性が低下する傾向がある。
【0051】
これらの官能基のアクリル系ブロック共重合体(A)への導入方法としては特に限定されず、該官能基を有する単量体を共重合させる方法、該官能基の前駆体となる官能基を有する単量体を共重合させた後、公知の化学反応にて該官能基を生成させる方法、などがある。
【0052】
カルボキシル基を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸化合物、マレイン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸化合物およびそのモノエステル化合物などが挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタアクリルを意味するものとする。
【0053】
また、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどが挙げられる。これらの単量体を重合させた後、加水分解や酸分解、熱分解などによりカルボキシル基を生成させることができる。
【0054】
酸無水物基を有する単量体としては、たとえば、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0055】
また、酸無水物基の前駆体となる官能基を有する単量体としては、たとえば、上記カルボキシル基を有する単量体や、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体などが挙げられる。これらの単量体を重合させた後、脱水反応や脱アルコール反応などにより酸無水物基を生成させることができる。
【0056】
<アクリル系ブロック共重合体(A)の製法>
アクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、特に限定されないが、制御重合法を用いることが好ましい。制御重合法としては、リビングアニオン重合法(特開平11−335432)、有機希土類遷移金属錯体を重合開始剤として用いる重合法(特開平6−93060)、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法(特開平2−45511)、リビングラジカル重合法などが挙げられる。
【0057】
リビングラジカル重合法としては、たとえば、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いる重合法、コバルトポルフィルン錯体を用いる重合法、ニトロキシドを用いる重合法(WO2004/014926)、有機テルル化合物などの高周期ヘテロ元素化合物を用いる重合法(特許第3839829号)、可逆的付加脱離連鎖移動重合法(RAFT)(特許第3639859号)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(特許第3040172号)などが挙げられる。本発明において、これらのうちいずれの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0058】
原子移動ラジカル重合法を用いてアクリル系ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、たとえば、WO2004/013192に挙げられた方法などを用いることができる。
【0059】
特に、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0060】
<変性オレフィン系重合体(B)>
本発明の(B)成分に用いられる変性オレフィン系重合体の具体例としては、プロピレン系、エチレン・α−オレフィン系共重合体などのポリオレフィン系重合体に、マレイン酸無水物、琥珀酸無水物、フマル酸無水物などの酸無水物を共重合したもの、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニルなどのカルボン酸及びそのNa、Zn、K、Ca、Mgなどの塩、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、グリシジルメタクリレートなどのカルボン酸エステルが共重合されたオレフィン系重合体、無水マレイン酸、マレイン酸、グリシジルメタクリレート、ビニルシラン等のシリル基含有化合物等を用い、ラジカル開始剤などの存在下で溶融変性したオレフィン系重合体などが挙げられる。
【0061】
より具体的には、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン−アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸t−ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−プロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン−メタクリル酸n−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸t−ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびそのNa、Zn、K、Ca、Mgなどの金属塩、エチレン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−ブテン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−プロピレン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−ヘキセン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−オクテン−マレイン酸無水物共重合体、プロピレン−マレイン酸無水物共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−グリシジルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0062】
これらのカルボン酸、酸無水物、グリシジルメタクリレート含量は1〜20重量%、酢酸ビニル含量は1〜50重量%のものが好ましい。エチレン−無水マレイン酸共重合体においては酸無水物含量が1〜10重量%のものが好ましい。エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸共重合体においては酸含量が3〜20重量%のものが好ましい。エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体においてはグリシジルメタクリレート含量が5〜20重量%のものが好ましい。エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体の具体例としてはボンドファースト2C、E(いずれも住友化学工業(株)製、以下同じ)、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体の具体例としてはボンドファースト2B、7B、エチレン−アクリル酸メチル−グリシジルメタクリレート共重合体の具体例としてはボンドファースト7L、7Mをあげることができる。
【0063】
グラフト変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリオレフィン−ビニル系ポリマーのグラフト共重合体、エチレンプロピレンゴムにグリシジルメタクリレートをグラフト共重合させた共重合体、無水マレイン酸変性のSBS、無水マレイン酸変性のSIS、無水マレイン酸変性のSEBS、無水マレイン酸変性のSEPS、無水マレイン酸変性のエチレン−アクリル酸エチル共重合体、ビニルシラン変性のポリプロピレンを挙げることができる。酸変性ポリプロピレンとしては、アドマーQE840(三井化学(株)製)、ユーメックス1001(三洋化成(株)製)、リコセンPPMA1332(クラリアントジャパン(株)製)などが挙げられ、シラン変性ポリプロピレンとしては、リコセンPPSI3262TP(クラリアントジャパン(株)製)などが挙げられる。また、ポリオレフィン−ビニル系ポリマーのグラフト共重合体としては、モディパーA4100(EGMA−g−PS)、A8100(E/EA/MAH−g−PS)、A4200(EGMA−g−PMMA)、A8200(E/EA/MAH−g−PMMA)、A4400(EGMA−g−AS)、A8400(E/EA/MAH−g−AS)(いずれも日本油脂(株)製)などが挙げられる。これらの(B)成分は、1種又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
【0064】
これらのうちで(B)成分としては、アクリル系ブロック共重合体(A)との相溶性の観点から、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、シリル基、及びグリシジル基から選択される少なくとも一種の官能基を有するポリプロピレン系重合体及びポリエチレン系重合体が好ましく、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、及びグリシジル基から選択される少なくとも一種の極性官能基を有するポリプロピレン系重合体及びポリエチレン系重合体が更に好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)がカルボキシル基および/または酸無水物基を有する場合には、カルボキシル基と水素結合したり、水酸基、及びグリシジル基と反応することによってより相溶性を高め、糊残りを抑えることができる。この場合、特に、酸無水物基、カルボキシル基が好ましい。カルボキシル基の場合、(A)と(B)の官能基同士の化学反応によって成型性を悪化させることなく、カルボキシル基同士の水素結合により凝集力を高めることができ、粘着剤として用いる場合には被着体への糊残りを防ぐことができる傾向にある。
【0065】
本発明を構成する樹脂組成物は、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)1〜99重量%、変性オレフィン系重合体(B)99〜1重量%を含むが、適宜必要とされる特性において組成を設定することができる。例えば、中間層として用い、変性オレフィン系重合体(B)に柔軟性を付与したり、耐衝撃性を付与する場合には、アクリル系ブロック共重合体(A)1〜49重量%、および変性オレフィン系重合体(B)99〜51重量%からなる組成物とすればよく、得られる粘着テープにより柔軟性やタック感が必要とされる場合は、アクリル系ブロック共重合体(A)99〜51重量%、および変性オレフィン系重合体(B)1〜49重量%から組成物とすればよい。
【0066】
変性オレフィン系重合体(B)の替わりにオレフィン系重合体も使用することができる。特に中間層として使用する場合は、有効である。オレフィン系重合体の具体例としては、基材として使用できるオレフィン系重合体を適宜使用することができる。
【0067】
<粘着剤>
本発明の粘着剤には、通常用いられる老化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、可塑剤(オイル)、粘着付与樹脂、接着昂進防止剤等の各種材料を本発明の目的に反しない範囲で使用してもよい。
【0068】
本発明の粘着剤においては、周波数10Hzにおける剪断貯蔵弾性率は、23℃で5×104〜5×106Paの範囲であることが好ましい。剪断貯蔵弾性率がこの範囲外の場合には、粘着力不足により表面保護フィルムが被着体から剥離したり、剥離工程における作業性が悪くなるおそれがある。
【0069】
<粘着シート>
本発明の粘着剤を用いた粘着シートとは、粘着シートの他、粘着テープ、粘着フィルムなど、基材の片面に粘着剤層が形成されたものを意味する。
【0070】
基材には、オレフィン系重合体または変性オレフィン系重合体が使用できる。必要に応じて、オレフィン系重合体と変性オレフィン系重合体を溶融ブレンドしたものを使用することもできる。
【0071】
粘着剤層としては、本発明のアクリル系ブロック共重合体(A)1〜99重量%および、変性オレフィン系重合体(B)99〜1重量%からなる樹脂組成物を含む粘着剤を用いる。さらには、アクリル系ブロック共重合体(A)と変性オレフィン系重合体(B)を含む粘着剤層の上部にアクリル系ブロック共重合体(A)をさらに積層して粘着剤層とすることもできる。この場合には、アクリル系ブロック共重合体(A)と変性オレフィン系重合体(B)を含む粘着剤層は、基材と粘着剤層との中間層となる。中間層として使用することにより、基材との密着性を調整することができる。
【0072】
粘着シートの基材としてオレフィン系重合体または変性オレフィン系重合体を用いる場合には、粘着剤として用いる粘着剤の基材への接着性が重要となる。基材への接着性が不十分な場合には、粘着シートとして被着体から再剥離する場合に、基材から粘着剤層が剥離して、被着体上に粘着剤層が残る(糊残りする)場合があるが、本発明の粘着剤を粘着剤層または中間層として用いることで、基材との接着性を向上させることができる。粘着剤層または中間層のどちらとして用いるかは必要とされる粘着シートの特性や加工性等に応じて適宜選択すればよい。例えば、粘着剤層によりタック感が必要とされる場合には中間層として用いればよく、加工プロセス簡略化の観点からは、粘着層として用いればよい。
【0073】
粘着剤層および中間層と基材との接着性を向上させるためには、基材として、変性オレフィン系重合体、あるいはオレフィン系重合体と変性オレフィン系重合体の溶融ブレンド物を用いることが好ましい。特に、粘着剤層および中間層中の変性オレフィン系重合体(B)の官能基と、基材の変性オレフィン系重合体の官能基が反応性を有することが好ましい。さらには、アクリル系ブロック共重合体(A)がカルボキシル基および酸無水物基を有する場合には、成形時にゲル化することを防止する観点から、粘着剤層および中間層中の変性オレフィン系重合体の官能基がカルボキシル基および酸無水物基と反応しない官能基であることが好ましい。
【0074】
上記観点から、例えば、アクリル系ブロック共重合体(A)が官能基を有しない場合には、粘着剤層および中間層中には、エポキシ基を含有する変性オレフィン系重合体を用い、基材として、酸無水物基またはカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を用いることが好ましい。アクリル系ブロック共重合体(A)が官能基を有する場合には、粘着剤層および中間層中には、酸無水物基またはカルボキシル基を含有するオレフィン系重合体を用い、基材として、エポキシ基を含有する変性オレフィン系重合体を用いることが好ましい。
【0075】
粘着剤層および中間層と基材との接着性を向上させるためには、粘着剤層および中間層中の変性オレフィン系重合体の官能基と、基材の変性オレフィン系重合体の官能基が反応性を有することが好ましく、必要に応じて、反応性を促進するために、いずれかの層または全ての層に種々の添加剤や触媒を添加することが好ましい。
【0076】
例えば、エポキシ基と酸無水物基およびカルボキシル基の反応の場合酸性化合物、塩基性化合物、酸性化合物と塩基性化合物の塩、酸二無水物などの酸無水物系、アミン系、イミダゾール系等のエポキシ樹脂に一般に用いられる硬化剤、金属酸化物等の加硫ゴムの架橋に一般に用いられる硬化剤等を用いることが可能であり、水酸基とカルボキシル基の反応の場合、2価のスズ化合物類、チタン酸エステル類などの公知のエステル化触媒やエステル交換触媒を用いることが可能である。
【0077】
基材として使用できる変性オレフィン系重合体の具体例としては、上記変性オレフィン系重合体(B)で記載した具体例が適宜使用できる。
【0078】
また基材として使用できるオレフィン系重合体の具体例としては、α−オレフィンの単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物、またはα−オレフィンと他の不飽和単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体及びこれら重合体のハロゲン化又はスルホン化したもの等を1種又は2種以上組み合わせて使用できる。具体的には、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンの(共)重合体等が例示できる。これらの中でコストと物性バランスの点からポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの混合物が好ましく使用できる。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが例示でき、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンなどが例示できる。これらの中でも、耐熱性の点から、ポリプロピレンが最も好ましい。
【0079】
使用する変性オレフィン系重合体またはオレフィン系重合体のメルトフローレート(MFR)としては、特に制限がないものの、成形流動性の点から、0.1〜100(g/10min)であることが好ましく、1〜100(g/10min)であることがより好ましい。1〜10(g/10min)であることが特に好ましい。ここでメルトフローレート(MFR)は230℃、10kg荷重で測定したものを値とする。
【0080】
基材として、必要に応じて、前記オレフィン系重合体と前記変性オレフィン系重合体を溶融ブレンドしたものを使用することもできるが、この場合は、分散性の観点から、近似するメルトフローレート(MFR)のものを選択することが良い。
【0081】
なお、上記オレフィン系重合体、または変性オレフィン系重合体からなる基材は、必要に応じてコロナ処理、下塗処理を施してもよく、また背面処理等を施してもよい。また、基材には、必要に応じて、スリップ剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0082】
基材の厚みは、特に限定されないが、10〜200μmの範囲が望ましい。10μm未満であると、十分な保護機能が発現しないことがあり、200μmを超えると、被着体の曲面箇所等平滑でない部分に対する追従性に劣ることがある。
【0083】
基材に積層される粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、3〜50μmの範囲が望ましい。厚みが3μm未満であると、粘着力不足となることがあり、50μmを超えると、コストが高くなるおそれがある。
【0084】
本発明の粘着剤は、通常容易に溶融して流動性を示すため、ホットメルト法で基材上に上記の粘着剤層を形成させることができる。粘着剤層の作成方法としては、例えば粘着剤と基材材料とを多層共押出する方法、基材上に当該粘着剤を積層する方法等が挙げられる。多層共押出には、例えばTダイ成形法または空冷式インフレーション、水冷式インフレーションが採用される。また、粘着剤を積層する方法には、例えばカレンダー方式が採用される。
【0085】
当該の粘着シートは、溶液法でも作製可能で、本発明の粘着剤をトルエンやその他の溶剤に溶かして溶液状にし、基材に塗布して粘着剤層を形成させることもできる。
【0086】
<粘着シートの用途>
本発明の粘着剤は、再剥離型粘着シート、表面保護材、マスキング材に使用できる。
【0087】
本発明にかかる粘着シートは、表面保護用、マスキング用、包装用、事務用、家庭用、ラベル用、接合用、シーリング用、防食・防水用、電気絶縁用、電子機器保持固定用、半導体製造用、電子機器マスキング用のテープやフィルム等、光学表示フィルム、電磁波シールド用、医療・衛生用、装飾・表示用、ガラス飛散防止用のテープやフィルム等として使用可能である。
【0088】
表面保護用としては、車等の金属、塗料面の表面保護、ディスプレー、半導体等の光学部品の表面保護、金属の塑性加工、金属深絞り加工用等が挙げられる。
【0089】
マスキング用としては、具体的には、車両・建築物の塗装、捺染、自動車、土木・工事用、見切り用などが挙げられる。
【0090】
包装用としては、重量物梱包、輸出梱包、段ボール箱の封緘、缶シール、パイプ・鋼材の結束、ダクト用、食品用ポリ袋の結束、野菜、花卉結束用などが挙げられる。
【0091】
事務用としては、事務汎用、家庭用、封緘、書籍の補修、製図用、メモ用などが挙げられる。
【0092】
ラベル用としては、価格、商品表示、荷札、POP、ステッカー、ストライプ、ネームプレート、装飾、広告用などが挙げられる。
【0093】
接合用としては、各種接着分野、自動車、電車、電気機器、印刷版固定、建築、銘板固定、一般家庭用、粗面、凹凸面、曲面への接着用などが挙げられる。
【0094】
シーリング用としては、断熱、防振、防水、防湿、防音、防塵用などが挙げられる。
【0095】
防食・防水用としては、ガス、水道管の防食、大口径管の防食、異形部の防食、土木・建築物の防食用などが挙げられる。
【0096】
電気絶縁用としては、コイルの保護被覆、モータ・トランスなどの層間絶縁、コイルの絶縁、結束用などが挙げられる。
【0097】
電子機器保持固定用としては、キャリアテープ、パッケージング、ブラウン管の固定、スプライシング、FD、リブ補強用などが挙げられる。
【0098】
半導体製造用としては、シリコーンウエハーの保護用等が挙げられる。
【0099】
電子機器マスキング用としては、メッキマスキング、ハンダマスキング用等が挙げられる。
【0100】
医療・衛生用としては、絆創膏、救急絆創膏、サージカルドレッシング、手術用縫合テープ、サリチル酸絆創膏、パップ剤、消炎鎮痛プラスター、経皮吸収薬、固定テーピング、脱毛、防塵、害虫捕獲用などが挙げられる。
【0101】
装飾・表示用としては、危険表示シール用や、ラインテープ、配線マーキング、蓄光テープ、反射シート用等が挙げられる。
【実施例】
【0102】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例におけるBA、MMA、TBAはそれぞれ、アクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸t−ブチル、を表わす。
【0103】
<分子量測定法>
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
【0104】
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示す分析装置、条件で測定した。
使用機器:(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−14B
分離カラム:J&W SCIENTIFIC INC製、キャピラリーカラムDB−17、0.35mmφ×30m
分離条件:初期温度50℃、3.5分間保持
昇温速度40℃/min
最終温度140℃、1.5分間保持
インジェクション温度250℃
ディテクター温度250℃
試料調整:サンプルを酢酸エチルにより約10倍に希釈し、アセトニトリルを内部標準物質とした。
【0105】
(製造例1)カルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体1の製造
窒素置換した500L反応器に、アクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、BA80.9kgおよびTBA2.1kgを仕込み、続いて臭化第一銅580gを仕込んで攪拌を開始した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル583gをアセトニトリル7.3kgに溶解させた溶液を仕込み、ジャケットを加温して内温75℃で30分間保持した。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン70gを加えて、アクリル系重合体ブロックの重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約100gを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBAの転化率を決定した。ペンタメチルジエチレントリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。
【0106】
BAの転化率が97%に到達したところで、トルエン82.5kg、塩化第一銅400g、ペンタメチルジエチレントリアミン70g、およびメタアクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、MMA35.6kgを加えて、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。MMAの転化率が90%に到達したところで、トルエン120kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応器を冷却して重合を停止させた。
【0107】
得られたアクリル系ブロック共重合体の溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸一水和物を1.6kg加え、反応器内を窒素置換し、150℃で4時間撹拌し、TBAのt−ブチル基をカルボキシル基に変換した。その後、濾過助剤として昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.3kg添加し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過し、固体分を分離した。
【0108】
得られた酸性の溶液を再び500L反応器に投入し、固体塩基として協和化学製キョーワード500SHを3.4kg加え、30℃で1時間撹拌した。その後、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過して固体分を分離し、目的とするカルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体1の溶液を得た。得られた重合体溶液に、イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を重合体の重量に対して0.6重量部加えた後、SCP100((株)栗本鐵工所製、伝熱面積1m2)を用いて溶媒成分を蒸発した。重合体はφ4mmのダイスを通してストランドとし、水槽で冷却後ペレタイザーにより重合体ペレットを得た。
【0109】
得られたカルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体1のGPC分析を行ったところ、数平均分子量(Mn)が109,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.34であった。
【0110】
(製造例2)アクリル系ブロック共重合体2の製造
アクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、BA83.0kgを用い、メタアクリル系重合体ブロックを構成する単量体として、MMA35.6kgを用いた以外は製造例1と同様の操作により重合をおこなった。
【0111】
得られたアクリル系ブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を25重量%とした。この溶液にp−トルエンスルホン酸一水和物を1.6kg加え、反応器内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.3kg添加した。その後、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機を用いて0.1〜0.4MPaGにて加圧濾過し、固体分を分離した。
【0112】
この重合体溶液を製造例1と同様の操作により乾燥して、目的とするアクリル系ブロック共重合体2のペレットを得た。得られたアクリル系ブロック共重合体2のGPC分析を行ったところ、数平均分子量(Mn)が109,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.31であった。
【0113】
<変性オレフィン系重合体(B)>
ボンドファースト7B(エチレン/メタクリル酸グリシジル/酢酸ビニル共重合体、住友化学(株)製)、およびアドマーQB550(無水マレイン酸変性PP、三井化学(株)製)を用いた。
【0114】
<基材>
オレフィン系重合体:F227D、ランダムポリプロピレン、(株)プライムポリマー製)
変性オレフィン系重合体:アドマーQE840、無水マレイン酸変性PP、三井化学(株)製
変性オレフィン系重合体:アドマーQB550、無水マレイン酸変性PP、三井化学(株)製
変性オレフィン系重合体:ボンドファースト7B、エチレン/メタクリル酸グリシジル/酢酸ビニル共重合体、住友化学(株)製
【0115】
(実施例1〜5)
粘着剤層として、製造例2で得られたアクリル系ブロック共重合体2およびボンドファースト7Bを表1に示す割合(合計45g)で200℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60(株)東洋精機製作所)を用いて100rpmで5分間、溶融混練し、塊状サンプルを得た。さらに、得られたサンプルを、2mmの金属スペーサーを用いて、設定温度200℃で3分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、厚さ2mmの成形体を得た。
【0116】
基材層として、F227D、アドマーQE840、ボンドファースト7Bを表1に示す割合(合計45g)で200℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60(株)東洋精機製作所)を用いて100rpmで5分間、溶融混練し、塊状サンプルを得た。さらに、得られたサンプルを、2mmの金属スペーサーを用いて、設定温度200℃で3分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、厚さ2mmの成形体を得た。
【0117】
厚み50μmのPETフィルム上に、上記で得られた粘着剤層および、基材層のシートの順で重ね合わせ、2mmの金属スペーサーを用いて、設定温度200℃で3分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、厚さ2mmの多層成形体を得た。得られた厚さ2mmの多層成形体を幅25mm×長さ200mmに切り取り、接着性評価用の多層成形体を得た。この多層シートの基材層から、PETフィルムを支持体とする粘着剤層を、23℃において剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で引き剥がし、接着性を評価した。結果を表1に示す。
【0118】
(実施例6〜8)
粘着剤層として、製造例1および2で得られたアクリル系ブロック共重合体1および2を表2に示す割合(合計45g)で200℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60(株)東洋精機製作所)を用いて100rpmで5分間、溶融混練し、塊状サンプルを得た。さらに、得られたサンプルを、2mmの金属スペーサーを用いて、設定温度200℃で3分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、厚さ2mmの成形体を得た。
【0119】
中間層として、製造例2で得られたアクリル系ブロック共重合体2およびボンドファースト7Bを表2に示す割合(合計45g)で200℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60(株)東洋精機製作所)を用いて100rpmで5分間、溶融混練し、塊状サンプルを得た。さらに、得られたサンプルを、2mmの金属スペーサーを用いて、設定温度200℃で3分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、厚さ2mmの成形体を得た。
【0120】
厚み50μmのPETフィルム上に、上記で得られた粘着剤層および中間層のシートの順で重ね合わせ、2mmの金属スペーサーを用いて、設定温度200℃で3分間熱プレス((株)神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、厚さ2mmの多層成形体を得た。得られた厚さ2mmの多層成形体を幅25mm×長さ200mmに切り取り、接着性評価用の多層成形体を得た。この多層シートの中間層から、PETフィルムを支持体とする粘着剤層を、23℃において剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で引き剥がし、接着性を評価した。結果を表2に示す。
【0121】
(比較例1〜3)
アクリル系ブロック共重合体のみからなる粘着剤層を使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層および基材層のシートを作製した後、重ね合わせてプレス成形し、PETフィルムを支持体とする粘着剤層を、23℃において剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で引き剥がし、接着性を評価した。結果を表3に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
実施例1〜5および比較例1〜3より、本発明の粘着剤を粘着剤層または中間層として用いることにより、基材との接着性が向上することがわかる。また基材層として、変性ポリオレフィンを用いた場合により良好な接着性を示すことがわかる。
【0126】
実施例6〜8および比較例1〜3より、本発明の粘着剤を中間層として用いた場合、粘着剤層との接着性も向上することがわかる。またこの場合も、基材層として、変性ポリオレフィンを用いた場合により良好な接着性を示すことがわかる。
【0127】
(実施例9、比較例4)
スクリュー径:20mm、L/D=20の三層フィルム製造装置((株)東洋精機製作所)を用い、多層フィルムを成形した。本三層フィルム製造装置には3台の押出し基がフィードブロックにてフラットダイに連結している。ダイスのリップクリアランスは300μmに設定した。
【0128】
3台のうち1台から基材層として、オレフィンおよび/または変性オレフィン樹脂をスクリュー回転数20rpmにて押出し(最外層)、1台から粘着剤層をスクリュー回転数20rpmにて押出しし(他方の最外層)、多層(2層)成形した。3台のうちの1台の押出し機から樹脂を押出さなかった。
【0129】
押出し機とフィードブロック、ダイスの設定温度はすべて同一の210℃に設定した。フィルムの巻き取り速度を調整することで、厚さ約50μmの多層フィルムを得た。得られた多層フィルムの粘着面同士を重ね合わせてからはがした時に、粘着剤層が基材から剥離するかどうかを目視にて観察し、基材からはがれなかった場合を○、基材からはがれた場合を×として、基材との接着性を評価した。
【0130】
基材および粘着剤層用いた樹脂および結果を表4に示す。
【0131】
基材層にはF227DおよびアドマーQB550を用いた。表中において、例えば、アクリル系ブロック共重合体1/アドマーQB550=50/50は、アクリル系ブロック共重合体1およびアドマーQB550のペレットを50:50の割合でドライブレンドしたものを押出し機に投入したことを表す。
【0132】
【表4】

【0133】
表4に示したように、本発明の粘着剤を粘着剤層として用いることにより、多層共押出により製造された粘着フィルムにおいて、基材への接着性を向上できることがわかる。また、得られた粘着フィルムはいずれも透明であった。このことから、再剥離用や表面保護フィルム用粘着フィルム等として好適に用いることができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)1〜99重量%、および変性オレフィン系重合体(B)99〜1重量%を含むことを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
変性オレフィン系重合体(B)が、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、シリル基、及びグリシジル基からなる群より選択される少なくとも一種の官能基を有することを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
変性オレフィン系重合体(B)が、酸無水物および/またはカルボキシル基を有することを特徴とする請求項2記載の粘着剤。
【請求項4】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)の少なくとも一方の重合体ブロック中にカルボキシル基および/または酸無水物基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項5】
アクリル系ブロック共重合体(A)における、メタアクリル系重合体ブロック(a)の割合が、10〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項6】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、ジブロック共重合体またはトリブロック共重合体、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項7】
アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量(Mn)が30,000〜300,000であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項8】
アクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項9】
アクリル系ブロック共重合体(A)が、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、Fe、Ru、Ni、Cuから選ばれる少なくとも1種類を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法により製造されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粘着剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の粘着剤を、オレフィン系重合体または変性オレフィン系重合体からなる基材上に積層されてなる粘着シート。
【請求項11】
請求項10記載の粘着シートの上部に、メタアクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A)を、さらに積層したことを特徴とする粘着シート。
【請求項12】
請求項10または11に記載の粘着シートを用いてなる再剥離型粘着シート。
【請求項13】
請求項10または11に記載の粘着シートを用いてなる表面保護材。
【請求項14】
多層共押出により製造されたものであることを特徴とする請求項10または11に記載の粘着シート。
【請求項15】
多層共押出により製造されたものであることを特徴とする請求項12に記載の再剥離型粘着シート。
【請求項16】
多層共押出により製造されたものであることを特徴とする請求項13に記載の表面保護材。

【公開番号】特開2010−84068(P2010−84068A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256453(P2008−256453)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】