説明

粘着型機能性フィルム及び表示装置

【課題】耐擦傷性及び/又は反射防止性の機能を発揮させるための機能層と、被着体に貼り付けて固定するための粘着剤層とを有し、干渉縞を生じにくく、耐腐食性にも優れた透明な粘着型機能性フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材の一方の表面側にハードコート層及び反射防止層からなる群より選ばれた少なくとも一の機能層を有し、他方の表面側に粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムであって、イオンクロマトグラフ法で測定される、前記粘着型機能性フィルムより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量が、前記粘着剤層の単位面積あたり20ng/cm2以下であり、分光透過率測定機[(株)村上色彩技術研究所製、商品名「DOT−3UV−VIS型」]で測定した測定波長400〜780nmにおける透過率曲線を用いて算出される近似積分値が50以下であることを特徴とする粘着型機能性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着型機能性フィルム及び表示装置に関する。より詳しくは、光学製品や光学部材の製造等の光学用途に好ましく使用される粘着型機能性フィルム、及び該粘着型機能性フィルムを有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、このような表示装置と組み合わせて用いられるタッチパネルなどの入力装置が広く用いられるようになってきた。これらの表示装置や入力装置等においては、各種の透明な機能性フィルムが使用されている。このような機能性フィルムとしては、例えば、耐擦傷性の向上を目的としたハードコートフィルムや、反射防止性の向上を目的とした反射防止フィルムなどが挙げられる。
【0003】
一般に、上記機能性フィルムは接着剤等を用いて被着体に固定されるが、製品の製造工程において、このような固定の作業が煩雑であるという問題がある。このような問題に対し、機能性フィルムの少なくとも一方の表面側に粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムが、被着体に対する固定が容易であり生産コスト低減の観点から、広く利用されるようになってきている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−234135号公報
【特許文献2】特開2002−47463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年のディスプレイの表示品質向上に伴い、上記粘着型機能性フィルムの中には、光学製品(例えば、液晶ディスプレイとタッチパネルとが組み合わされた装置など)において干渉縞(虹色の縞模様)を生じさせ、例えば、光学製品の表示部(ディスプレイ)の視認性や表示品質を低下させたり、光学製品の外観に悪影響を及ぼす等の問題を生じるものがあった。
【0006】
また、上記粘着型機能性フィルムには、被着体に貼り付けられる部分の材質が金属や金属酸化物(例えば、ITOフィルムなどの透明導電性フィルムの透明導電膜等)である場合には、該被着体に腐食を生じさせない特性が求められるようになってきている。このため、干渉縞を生じにくく、さらには耐腐食性にも優れた粘着型機能性フィルムが求められているのが現状である。
【0007】
従って、本発明の目的は、耐擦傷性及び/又は反射防止性の機能を発揮するための機能層と、被着体に貼り付けて固定するための粘着剤層とを有する透明な粘着型機能性フィルムであって、耐腐食性に優れ、さらには干渉縞を生じにくい粘着型機能性フィルムを提供することにある。なお、本明細書において「耐腐食性」とは、被着体の腐食を生じさせない特性をいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、透明基材の一方の表面側にハードコート層及び反射防止層からなる群より選ばれた少なくとも一の機能層を有し、他方の表面側に粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムの、煮沸により抽出されるアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量、及び、透過率曲線の特定部分を用いて算出される近似積分値を、ともに特定範囲に制御することにより、耐腐食性に優れ、干渉縞を生じにくい粘着型機能性フィルムが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、透明基材の一方の表面側にハードコート層及び反射防止層からなる群より選ばれた少なくとも一の機能層を有し、他方の表面側に粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムであって、イオンクロマトグラフ法で測定される、前記粘着型機能性フィルムより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量が、前記粘着剤層の単位面積あたり20ng/cm2以下であり、分光透過率測定機[(株)村上色彩技術研究所製、商品名「DOT−3UV−VIS型」]で測定した測定波長400〜780nmにおける透過率曲線を用いて算出される近似積分値が50以下であることを特徴とする粘着型機能性フィルムを提供する。
【0010】
さらに、前記の粘着型機能性フィルムにおいては、前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、並びに極性基含有モノマーを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含有することが好ましい。
【0011】
さらに、前記の粘着型機能性フィルムにおいては、前記極性基含有モノマーが水酸基含有モノマーであることが好ましい。
【0012】
さらに、前記の粘着型機能性フィルムは、前記透明基材の一方の表面側にハードコート層を有し、全光線透過率が87%以上、ヘイズが1.5%以下であり、前記ハードコート層表面の鉛筆硬度がHB以上である機能性フィルムの、前記ハードコート層に対する反対側の表面に前記粘着剤層を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記の粘着型機能性フィルムを有する表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘着型機能性フィルムは上記構成を有しているため、干渉縞を生じにくく、製品の表示部において、表示画像の視認性や表示品質を低下させず、製品の外観に対し悪影響を及ぼしにくい。また、本発明の粘着型機能性フィルムは耐腐食性にも優れるため、製品の導電特性等の性能を低下させにくい。このため、本発明の粘着型機能性フィルムは、特に、光学製品や光学部材の製造等の光学用途に好ましく使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の粘着型機能性フィルムを示す概略図(断面図)である。
【図2】図2は、実施例1で得られた粘着型機能性フィルムについて測定された、波長400〜780nmの範囲における透過率曲線である。
【図3】図3は、実施例における耐腐食性の評価に用いた評価用サンプルを示す概略図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の粘着型機能性フィルムは、透明基材の一方の表面側にハードコート層及び反射防止層からなる群より選ばれた少なくとも一の機能層を有し、他方の表面側に粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムである。
【0017】
図1は、本発明の粘着型機能性フィルムを示す概略図(断面図)である。図1の1は本発明の粘着型機能性フィルムを表し、11は機能層、12は透明基材、13は粘着剤層、14は剥離ライナー(セパレータ)を表す。なお、本明細書においては、透明基材の一方の表面に機能層を有する積層体(即ち、粘着型機能性フィルムから粘着剤層を除去した構成にあたる)を、特に「機能性フィルム」と称する場合がある。図1において、機能性フィルムは15で表される積層体(「機能層/透明基材」の構成を有する)である。
【0018】
[透明基材]
本発明の粘着型機能性フィルムの透明基材は、透明である基材をいう。上記透明基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、商品名「アートン(環状オレフィン系ポリマー;JSR製)」、商品名「ゼオノア(環状オレフィン系ポリマー;日本ゼオン製)」等の環状オレフィン系ポリマーなどのプラスチック材料から構成されたフィルム等が挙げられる。上記プラスチック材料は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、機械強度や寸法安定性に優れる点では、PETが好ましい。また、フィルム面内の位相差が非常に小さい点では、TACが好ましい。即ち、上記透明基材としては、PETフィルム(特に、二軸延伸されたPETフィルム)、TACフィルムが好ましい。
【0019】
上記透明基材は、単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、上記透明基材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの公知乃至慣用の表面処理が適宜施されていてもよい。
【0020】
上記透明基材の厚さは、特に限定されないが、25〜500μmが好ましく、より好ましくは40〜200μmである。厚さを25μm以上とすることにより、粘着型機能性フィルムの取り扱いが容易となる傾向がある。一方、厚さを500μm以下とすることにより、製品の小型化や薄膜化に有利となる傾向がある。
【0021】
上記透明基材の可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361−1に準じる)は、特に限定されないが、85%以上であることが好ましく、より好ましくは87%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率を85%以上とすることにより、透明性に優れるため、光学製品の表示部の視認性や表示品質、及び光学製品の外観に悪影響を及ぼしにくくなる。
【0022】
また、上記透明基材のヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、1.5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。ヘイズを1.5%以下とすることにより、透明性に優れるため、光学製品の表示部の視認性や表示品質、及び光学製品の外観に悪影響を及ぼしにくくなる。なお、上記透明基材の全光線透過率及びヘイズは、例えば、ヘイズメータ(商品名「HM−150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定できる。
【0023】
[機能層]
本発明の粘着型機能性フィルムの機能層は、ハードコート層、反射防止層からなる群より選ばれた機能層である。本発明の粘着型機能性フィルムにおいては、少なくとも一の上記機能層が透明基材の一方の表面側に形成される。上記機能層は、耐擦傷性、反射防止性等の機能を有する樹脂層である。
【0024】
(ハードコート層)
本発明の粘着型機能性フィルムにおけるハードコート層は、粘着型機能性フィルムの表面(ハードコート層側の表面)の耐擦傷性(耐傷つき性)を向上させる機能を有する。
【0025】
上記ハードコート層の表面(ハードコート層表面)の鉛筆硬度は、特に限定されないが、HB以上が好ましく、より好ましくはH以上である。なお、上記鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に記載の引っかき硬度試験(鉛筆法)に準じて測定することができる。
【0026】
上記ハードコート層としては、公知乃至慣用のハードコート層を適用でき、特に限定されないが、上記ハードコート層を形成する樹脂成分としては、例えば、シロキサン系樹脂などの熱硬化型樹脂、エステル系、アクリル系、ウレタン系、アミド系、シリコーン系、エポキシ系などのモノマーやオリゴマーを光重合開始剤により硬化処理するタイプの電離放射線硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化型樹脂)、アクリル・ウレタン系やアクリル・エポキシ系などの上記モノマーやオリゴマー複合型の電離放射線硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化型樹脂)などが挙げられる。上記の中でも、耐擦傷性向上の観点で、電離放射線硬化型樹脂が好ましく、より好ましくは紫外線硬化型樹脂である。即ち、上記ハードコート層は、電離放射線硬化性樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂)に電離放射線(特に、紫外線)を照射することによって硬化させた硬化皮膜であることが好ましい。なお、上記ハードコート層は単層構成であってもよいし、複層(多層)構成であってもよい。
【0027】
上記ハードコート層の厚さは、特に限定されないが、1〜50μmが好ましく、より好ましくは2〜30μm、さらに好ましくは2〜10μmである。厚さが1μm未満の場合には、表面硬度が不十分で傷がつきやすく、また、50μmを超える場合には、硬化膜が脆くなりやすく、フィルムを折り曲げた時に割れが入りやすくなる傾向にある。なお、上記「ハードコート層の厚さ」とは、ハードコート層が複層構成である場合には、各層の厚さの合計をいう。
【0028】
なお、上記ハードコート層は、高い反射防止性を有する層であってもよい。このようなハードコート層を有する場合、本発明の粘着型機能性フィルムは、優れた耐擦傷性と反射防止性の両特性を発揮する。
【0029】
上記ハードコート層は、公知乃至慣用の方法により形成できる。具体的には、例えば、ハードコート層を形成する樹脂成分等を含有する塗工液を、透明基材の一方の表面側に塗工し、必要に応じて、乾燥及び/又は硬化処理を施すことによって、ハードコート層を形成することができる。
【0030】
中でも、粘着型機能性フィルムの干渉縞を低減する目的で、上記塗工液において、ハードコート層を形成する樹脂成分の希釈溶媒として25℃での蒸気圧が10mmHg(13.3hPa)以下の溶媒を用い、かつレベリング剤を樹脂成分に対して特定量添加した塗工液を使用することが好ましい。
【0031】
上記溶媒(希釈溶媒)として用いる25℃での蒸気圧が10mmHg(13.3hPa)以下の溶媒としては、イソホロン、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルセロソルブなどが挙げられる。中でも、エチルセロソルブ及び/又はシクロヘキサノンが、沸点及び産業上の利便性等の点から好ましい。上述の蒸気圧が特定範囲の希釈溶媒を用いると、塗工後、乾燥工程における該希釈溶媒の急激な揮発が抑えられ、ハードコート層の厚さむらが低減され、干渉縞の発生が抑制されるという効果を奏する。
【0032】
上記レベリング剤としては、例えば、フッ素系又はシリコーン系のレベリング剤を使用することができ、中でも、シリコーン系のレベリング剤が特に好ましく用いられる。シリコーン系のレベリング剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサンなどが挙げられる。
【0033】
上記レベリング剤の使用量(割合)は、特に限定されないが、ハードコート層を形成する樹脂成分100重量部に対して、0.01〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.02〜0.12重量部である。レベリング剤を上記範囲で使用すると、透明基材に塗工した塗工液(塗膜)の表面に該レベリング剤がブリードして、表面張力を均一化し、形成されるハードコート層の厚さむら及び干渉縞が低減されるため、好ましい。レベリング剤の使用量が上記範囲を外れると、上記効果は得られにくい。
【0034】
また、上記ハードコート層を構成する樹脂成分が電離放射線硬化型樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂)の場合、これにフッ素系やシリコーン系のレベリング剤を添加すると、乾燥(後述の予備乾燥や本乾燥)時にこれらのレベリング剤が空気界面にブリードし、電離放射線(特に、紫外線)を照射して硬化させる際に、酸素による硬化阻害が防がれ、ハードコート層の最表面においても十分な硬度を発揮できる。また、シリコーン系のレベリング剤のブリードによって滑り性が付与され、耐擦傷性が向上する。
【0035】
上記塗工液の固形分濃度は塗工方式により異なり、特に限定されないが、塗工液の粘度、希釈のために用いる蒸気圧が10mmHg(13.3hPa)以下の溶媒の使用量を考慮すると、20〜50重量%が好ましく、より好ましくは25〜40重量%である。塗工液の固形分濃度を20〜50重量%とすることにより、塗膜の厚さむらが低減し、さらに適度な表面性が得られるため、干渉縞が低減する。
【0036】
上記ハードコート層の形成に際しては、上記塗工液を透明基材の一方の表面側に塗工した後、乾燥させる。このような乾燥工程は、80℃未満の温度で乾燥(予備乾燥)を行った後、さらに、80℃以上の温度で乾燥(本乾燥)を行うのが望ましい。塗工後すぐに80℃以上の温度による本乾燥を行った場合には、塗工液中の希釈溶媒の急激な揮発により、塗布層内部にて対流が発生し、結果的にハードコート層に微妙な厚さのばらつきを生じさせ、干渉縞が現れやすくなる。本乾燥の前に80℃未満の温度による予備乾燥を行うことにより、このような干渉縞が低減する。
【0037】
予備乾燥の条件としては、特に限定されないが、例えば、80℃未満の温度で30秒以上とすることが好ましく、より具体的には、例えば、室温で5分、あるいは40℃で1分などの条件とすることができる。特に、生産性の観点からは、35〜45℃で1分以内予備乾燥させることが好ましい。その後の本乾燥は、80℃以上の温度で適宜の時間を選択することができる。
【0038】
(反射防止層)
本発明の粘着型機能性フィルムにおける反射防止層は、例えば、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることによって、反射防止性(反射防止機能)を発現する層をいい、粘着型機能性フィルムの反射防止層側から入射する光の反射を抑制し、光学製品の表示部の表示品質を向上させる機能を有する。
【0039】
上記反射防止層としては、公知乃至慣用の湿式又は乾式コーティングによる反射防止層を適用することができ、特に限定されない。また、反射防止層の形成(成膜)方法についても、公知乃至慣用の方法を適用することができ、特に限定されない。上記反射防止層は、基本的には、透明基材の屈折率(アンカーコート層やハードコート層を有する場合には、これらの層を含めた透明基材の屈折率)よりも小さい屈折率を有する透明な化合物(好ましくは、金属酸化物)の層と、透明基材の屈折率よりも大きな屈折率を有する化合物(好ましくは、金属酸化物)の層を、全体の反射率を極小に近い値にするように設計された光学的膜厚み(屈折率nと絶対厚みdの積)で構成することからなる。上記反射防止層の構成は、使用目的、コスト、成膜方法等により異なり、特に限定されず、単層構成であってもよいし、複層(多層)構成であってもよい。中でも、複数層からなる反射防止層(複層構成の反射防止層)は反射率がきわめて低く、反射防止性(反射防止性能)が高いため、特に好ましい。また、上記反射防止膜は、エレクトロンビーム加熱方式による蒸着方式により形成されることが好ましい。より具体的には、上記反射防止層として、例えば、特開平9−314038号公報(湿式コーティングによる反射防止層)や特開2010−92003号公報(乾式コーティングによる反射防止層)に開示された反射防止層などを好ましく使用することができる。
【0040】
本発明の粘着型機能性フィルムの機能層である、上記ハードコート層、反射防止層は、上述の耐擦傷性、反射防止性に加え、アンチグレア性(防眩性)、防汚性、防指紋性、耐薬品性等の機能が付与されたものであってもよい。上記機能を付与する手段としては、公知乃至慣用の方法を利用することができる。例えば、上記機能層に微粒子を含有させることによって、機能層表面に入射する光を散乱させ、アンチグレア性を発揮させることができる。
【0041】
また、本発明の粘着型機能性フィルムの機能層は、アンチグレア性、防汚性、防指紋性、耐薬品性等の機能を発揮させるための層が積層されたものであってもよい。例えば、上記ハードコート層を、耐擦傷性に優れる層とアンチグレア性に優れる層(例えば、微粒子を含有する層など)の積層構成とすることにより、耐擦傷性とアンチグレア性の両特性に優れたハードコート層とすることができる。
【0042】
[機能性フィルム]
上記透明基材と上記機能層の積層体である機能性フィルムの全光線透過率(JIS K7361−1に準じる)は、特に限定されないが、85%以上が好ましく、87%以上がより好ましく、さらに好ましくは90%以上である。また、上記機能性フィルムのヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、1.5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。上記全光線透過率及びヘイズは、例えば、ヘイズメータ(商品名「HM−150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定できる。
【0043】
上記機能性フィルムの特に好ましい具体的構成としては、上記透明基材の一方の表面側にハードコート層を有し、全光線透過率が87%以上、ヘイズが1.5%以下であり、上記ハードコート層表面の鉛筆硬度がHB以上である機能性フィルムが挙げられる。即ち、本発明の粘着型機能性フィルムの特に好ましい具体的構成としては、上記具体的構成の機能性フィルムの上記ハードコート層に対する反対側の表面に、後述の粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムを挙げることができる。但し、本発明の粘着型機能性フィルムは、これに限定されるものではない。
【0044】
[粘着剤層]
本発明の粘着型機能性フィルムにおける粘着剤層は、上記透明基材の他方(上記機能層に対する反対側)の表面側(即ち、機能性フィルムの機能層に対する反対側の表面)に形成される。本発明の粘着型機能性フィルムは、上記粘着剤層を有することにより、被着体に対する固定が容易であり、取り扱いやすい。
【0045】
上記粘着剤層を形成するための粘着剤の種類は、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などの公知の粘着剤が挙げられる。これらの粘着剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、上記粘着剤はいずれの形態を有する粘着剤であってもよく、例えば、上記粘着剤として、活性エネルギー線硬化型粘着剤、溶剤型(溶液型)粘着剤、エマルジョン型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)などが使用できる。
【0046】
中でも、透明性、耐熱性の観点で、上記粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましい。即ち、上記粘着剤層としては、アクリル系ポリマーを必須の構成成分として含むアクリル系粘着剤層が好ましい。上記粘着剤層(アクリル系粘着剤層)におけるアクリル系ポリマーの含有量は、特に限定されないが、粘着剤層(100重量%)に対して65重量%以上(例えば、65〜100重量%)が好ましく、より好ましくは70〜99.9重量%である。
【0047】
上記粘着剤層(アクリル系粘着剤層)は、粘着剤層の形成方法によっても異なり、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを必須成分とするアクリル系粘着剤組成物、又は、アクリル系ポリマーを構成する単量体(モノマー)の混合物(「モノマー混合物」と称する場合がある)若しくはその部分重合物を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物から形成される。特に限定されないが、前者としては、例えば、いわゆる溶剤型の粘着剤組成物などが挙げられ、後者としては、例えば、いわゆる活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物などが挙げられる。
【0048】
なお、上記「粘着剤組成物」には「粘着剤層を形成するための組成物」という意味も含むものとする。また、上記「モノマー混合物」とは、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のみからなる混合物を意味する。また、上記「部分重合物」とは、上記モノマー混合物の構成成分のうち1又は2以上の成分が部分的に重合している組成物を意味する。
【0049】
上記アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを必須のモノマー成分(単量体成分)として構成(形成)された重合体である。上記アクリル系ポリマーは、特に限定されないが、例えば、直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、並びに極性基含有モノマーをモノマー成分として構成された重合体であることが好ましい。なお、上記「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)を表し、他も同様である。
【0050】
上記直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(以下、単に「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する場合がある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどのアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)が好ましい。
【0051】
上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル[アルコキシアルキル(メタ)アクリレート]としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸4−エトキシブチルなどが挙げられる。なお、上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、アクリル酸2−メトキシエチル(2MEA)が好ましい。
【0052】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの含有量は、特に限定されないが、低温接着性の観点から、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、30重量%以上(例えば、30〜100重量%)が好ましく、より好ましくは50〜99重量%である。なお、上記アクリル系ポリマーのモノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの両方が用いられている場合は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量と(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの含有量の合計量(合計含有量)が上記範囲を満たせばよい。
【0053】
また、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの両方が用いられている場合、これらの合計含有量(100重量%)に対する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの含有量は、特に限定されないが、1〜75重量%が好ましく、より好ましくは1〜50重量%である。
【0054】
上記極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどの水酸基(ヒドロキシル基)含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルオキサゾールなどの複素環含有ビニル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。上記極性基含有モノマーは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、水酸基含有モノマー、複素環含有ビニル系モノマーが好ましく、より好ましくはアクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)である。
【0055】
上記極性基含有モノマーの含有量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、1〜25重量%が好ましく、より好ましくは1〜20重量%である。
【0056】
さらに、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分としては、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、及び極性基含有モノマー以外のモノマー(「その他の共重合性モノマー」と称する場合がある)が含まれていてもよい。
【0057】
上記その他の共重合性モノマーとしては、例えば、多官能性モノマーを用いることができる。上記多官能性モノマーとは、一分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーをいう。上記エチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)などのラジカル重合性官能基が挙げられる。なお、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、極性基含有モノマーは、一分子中にエチレン性不飽和基を1つのみ有するモノマー(単官能性モノマー)である。
【0058】
上記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。なお、上記多官能性モノマーは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
上記多官能性モノマーの含有量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)が好ましく、より好ましくは0〜0.1重量%である。なお、架橋剤を用いる場合には多官能性モノマーを用いなくてもよいが、架橋剤を用いない場合、上記多官能性モノマーの含有量は、0.001〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.002〜0.1重量%である。
【0060】
上記その他の共重合性モノマーとしては、上記多官能性モノマーの他にも、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルやフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、極性基含有モノマー、及び多官能性モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン類又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどを用いることもできる。
【0061】
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分においては、耐腐食性向上の観点で、カルボキシル基を含有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)の含有量を少なくすることが好ましい。具体的には、上記カルボキシル基含有モノマーの含有量としては、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、5重量%未満が好ましく、より好ましくは2重量%以下(例えば、0〜2重量%)、さらに好ましくは0.5重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)である。含有量を5重量%未満とすることによって、耐腐食性が向上する。上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが挙げられる。また、これらのカルボキシル基含有モノマーの酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー)も、上記カルボキシル基含有モノマーに含まれるものとする。
【0062】
上記アクリル系ポリマーは、上記モノマー成分を公知慣用の重合方法により重合して調製することができる。上記アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましい。
【0063】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
上記の活性エネルギー線重合(光重合)に際して照射される活性エネルギー線としては、特に限定されないが、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられる。中でも、紫外線が好ましい。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に限定されず、光重合開始剤を活性化させてモノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0065】
上記アクリル系ポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、熱重合開始剤や光重合開始剤(光開始剤)などの重合開始剤を用いることができる。重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
上記熱重合開始剤は、特に、上記アクリル系ポリマーを溶液重合により調製する際に用いられる。上記熱重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。中でも、特開2002−69411号公報に開示されたアゾ系開始剤が特に好ましい。かかるアゾ系開始剤は開始剤の分解物が加熱発生ガス(アウトガス)の発生原因となる部分としてアクリル系ポリマー中に残留しにくいため好ましい。上記アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称する場合がある)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(以下、AMBNと称する場合がある)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸などが挙げられる。上記アゾ系開始剤の使用量は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、0.05〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。
【0067】
上記光重合開始剤は、特に、上記アクリル系ポリマーを活性エネルギー線重合により調製する際に用いられる。上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、0.01〜0.2重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.15重量部である。
【0068】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0069】
上記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物には、必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、シランカップリング剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。また、上記粘着剤層を形成する際には、各種の一般的な溶剤を用いることもできる。このような溶剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、上述の溶液重合に際して用いられる溶剤として例示したものなどを用いることができる。
【0070】
上記架橋剤を用いることにより、上記粘着剤層中のアクリル系ポリマーを架橋し、粘着剤層のゲル分率を制御することができる。上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なお、架橋剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、耐久性の観点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、より好ましくはイソシアネート系架橋剤である。
【0071】
上記イソシアネート系架橋剤(多官能イソシアネート化合物)としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物[三井化学(株)製、商品名「タケネート110N」]などの市販品を用いることもできる。
【0072】
上記エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」などの市販品を用いることもできる。
【0073】
上記粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量(100重量部)に対して、0.001〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜5重量部である。含有量を0.001重量部以上とすることにより、耐久性が向上する。一方、含有量を10重量部以下とすることにより、段差吸収性が向上する。
【0074】
上記粘着剤層の形成方法としては、公知乃至慣用の粘着剤層の形成方法を利用することができ、特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(3)などの方法が挙げられる。(1)モノマー混合物又はその部分重合物及び必要に応じて光重合開始剤や架橋剤などの添加剤を含む粘着剤組成物を、上記透明基材又は剥離ライナー上に塗布(塗工)し、活性エネルギー線(特に、紫外線が好ましい)を照射して、粘着剤層を形成する。(2)アクリル系ポリマー、溶剤、必要に応じて架橋剤などの添加剤を含む粘着剤組成物(溶液)を、上記透明基材又は剥離ライナー上に塗布(塗工)し、乾燥及び/又は硬化させて粘着剤層を形成する。(3)上記(1)で形成した粘着剤層をさらに乾燥させる。
【0075】
なお、上記粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を利用することができ、例えば、慣用のコーター(グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなど)を用いて塗布することができる。
【0076】
上記粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、10〜500μmが好ましく、より好ましくは10〜250μmである。厚さを10μm以上とすることにより、貼付時に発生する応力が分散されやすいため剥がれが生じにくく、耐久性が向上する。また、段差吸収性が向上する。一方、厚さを500μm以下とすることにより、塗工後の巻き取り時にシワが生じにくくなる。
【0077】
[粘着型機能性フィルム]
本発明の粘着型機能性フィルムは、上述の透明基材、機能層、粘着剤層以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層(アンカーコート層)など)を有していてもよい。
【0078】
また、本発明の粘着型機能性フィルムは、使用するまで粘着剤層の表面に剥離ライナー(セパレータ)を有していてもよい。剥離ライナーは粘着剤層の保護材として用いられ、本発明の粘着型機能性フィルムを被着体に貼付する際に剥がされる。なお、剥離ライナーは必ずしも設けられる必要はない。上記剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する剥離ライナー、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。上記剥離処理層を有する剥離ライナーとしては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。また、上記フッ素ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、剥離ライナーは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、剥離ライナーの厚さ等も特に限定されない。
【0079】
本発明の粘着型機能性フィルムは、分光透過率測定機[(株)村上色彩技術研究所製、商品名「DOT−3UV−VIS型」]で測定した測定波長400〜780nmにおける透過率曲線を用いて算出される「近似積分値」が50以下である。本発明の粘着型機能性フィルムの上記「近似積分値」は、50以下であればよく、特に限定されないが、40以下が好ましく、より好ましくは30以下である。上記「近似積分値」を50以下に制御することにより、粘着型機能性フィルムの干渉縞の発生が抑制される。上記「近似積分値」の下限は特に限定されず、当該「近似積分値」は0であることが最も好ましいが、1以上(例えば、1〜50)であってもよい。なお、上記「近似積分値」は、以下の手順により測定することができる。
【0080】
まず、粘着型機能性フィルムの透過率を、分光透過率測定器[(株)村上色彩研究所製、商品名「DOT−3UV−VIS型」]を用いて、下記の条件により測定する。
<測定条件>
測定波長:400〜780nm
測定波長間隔:5nm
【0081】
次に、上記で測定した波長400〜780nmの範囲で5nm間隔で測定した透過率の値から、以下の〔1〕〜〔5〕の手順により上記「近似積分値」を算出する。
なお、本明細書においては、波長(横軸:x軸)に対する透過率(縦軸:y軸)の関係を表す曲線[(波長,透過率)の各点を結んだ曲線]を「透過率曲線」と称する(例えば、図2参照)。また、以下では、「点(各点)」という場合には、測定波長をxの値とし、透過率の測定値をyの値とする点(測定波長,透過率測定値)を意味する。
【0082】
<上記「近似積分値」の算出方法>
〔1〕まず、透過率曲線におけるトップピークとボトムピークを決定する。
透過率曲線のx軸方向における1つ前の点(即ち、測定波長(xの値)が5nm小さな点)よりも透過率測定値(yの値)が大きく、かつ、透過率曲線のx軸方向における1つ後の点(即ち、測定波長(xの値)が5nm大きな点)よりも透過率測定値(yの値)が大きな点をトップピークとする。トップピークは、透過率曲線の近似的な極大点である。
透過率曲線のx軸方向における1つ前の点(即ち、測定波長(xの値)が5nm小さな点)よりも透過率測定値(yの値)が小さく、かつ、透過率曲線のx軸方向における1つ後の点(即ち、測定波長(xの値)が5nm大きな点)よりも透過率測定値(yの値)が小さな点をボトムピークとする。ボトムピークは、透過率曲線の近似的な極小点である。
通常、トップピークおよびボトムピークは複数個存在する。
なお、必要に応じて、波長450〜750nmの範囲外に存在するピーク(450nmよりも小さい波長や750nmよりも大きい波長におけるトップピーク又はボトムピーク)も特定する。
〔2〕x軸方向において隣り合うトップピークとボトムピークの間で平均値(隣り合うトップピークとボトムピークの透過率の平均値)を算出する。
〔3〕各測定波長(xの値)における透過率測定値(yの値)と、上記〔2〕で算出した平均値との差を算出する。即ち、透過率曲線の各点のyの値から上記〔2〕で求めた平均値を引いた差を求める。
なお、上記の差の計算において、一のピーク(トップピークまたはボトムピーク)から、x軸方向における1つ後のピーク(ボトムピーク又はトップピーク)までの点(但し、「x軸方向における1つ後のピーク」は含まない)の計算には、上記「一のピーク」と上記「x軸方向における1つ後のピーク」の平均値を用いる。
即ち、各点に対応する差の値が求まる。
〔4〕上記〔3〕で求めた差の値の二乗を算出する。
〔5〕測定波長(xの値)が450nmから750nmまでの点についての、上記〔4〕で求めた値(二乗した値)の総和を算出する。さらに上記の総和に5(nm)を掛けて「近似積分値」の値とする。
即ち、上記「近似積分値」は、下記式により算出される。
「近似積分値」 = Σ[〔4〕で求めた値×5]
【0083】
なお、波長400〜450nmの範囲にピークが存在しない場合には、450nmから、測定波長が450nmよりも大きく450nmに最も近いピーク(「450nm隣接ピーク」と称する)までの点(但し、「450nm隣接ピーク」は含まない)における「隣り合うトップピークとボトムピークの透過率の平均値」として、「450nm隣接ピーク」と「450nm隣接ピークのx軸方向における1つ後のピーク」の透過率の平均値を採用する。同様に、波長750〜780nmの範囲にピークが存在しない場合には、測定波長が750nmよりも小さく750nmに最も近いピーク(「750nm隣接ピーク」と称する)から、750nmまでの点における「隣り合うトップピークとボトムピークの透過率の平均値」として、上記「750nm隣接ピーク」と「750nm隣接ピークのx軸方向における1つ前のピーク」の透過率の平均値を採用する。
【0084】
<具体例>
実施例1で得られた粘着型機能性フィルムの透過率測定結果に基づき、上記「近似積分値」の算出方法をさらに具体的に説明する。表1には、実施例1で得られた粘着型機能性フィルムについて測定された透過率のデータの一部(波長400〜780nmの範囲における透過率測定値)を示す。なお、表1に示すように、波長400nmから780nmまでの点を、波長の小さい側から順番にそれぞれ点1、点2、点3、・・・・、点77と称した。また、図2には、実施例1で得られた粘着型機能性フィルムについて測定された透過率曲線(x軸が波長、y軸が透過率である)を示す。以下、表1に示すデータに基いて説明を行う。
【0085】
【表1】

【0086】
〔1〕まず、透過率の測定結果(透過率曲線:図2)より、トップピーク(T1、T2、・・・、T11)及びボトムピーク(B1、B2、・・・、B10)を決定する。図2には、決定したトップピーク及びボトムピークを示した。また、表1において、トップピーク又はボトムピークに該当する点については、「備考」の欄に対応する符号(T1、T2、・・・、T11;B1、B2、・・・、B10)を示した。
具体的には、例えば、点11は前後の点10及び点12よりも透過率測定値が大きいため、トップピーク(T1)に該当する。また、点13は前後の点12及び点14よりも透過率測定値が小さいため、ボトムピーク(B1)に該当する。
【0087】
〔2〕上記〔1〕で決定したトップピーク(T1、T2、・・・、T11)及びボトムピーク(B1、B2、・・・、B10)のうち、x軸方向において隣り合うトップピークとボトムピークの平均値(透過率測定値の平均値)を算出する。なお、上記で算出した平均値を、表1の「トップピークとボトムピークの平均値」の欄に記載した。
具体的には、例えば、T8(点47)の透過率測定値(90.21)とB8(点51)の透過率測定値(89.53)の平均値(89.87)を、点47(T8)から点50(B8の1つ前の点)の「トップピークとボトムピークの平均値」とした。
【0088】
〔3〕測定波長(xの値)が450nmから750nmまでの各点(点11〜点71)について、透過率測定値から上記〔2〕で求めた「トップピークとボトムピークの平均値」を差し引き、差を求める。なお、上記で算出した値(差)を、表1の「測定値−平均値」の欄に記載した。
具体的には、例えば、点47(T8)、点48、点49、及び点50(B8の1つ前の点)の差の計算においては、「トップピークとボトムピークの平均値」として、T8の透過率測定値とB8の透過率測定値の平均値(89.87)を用いた。
なお、点68、点69、点70、点71の差の計算においては、「トップピークとボトムピークの平均値」として、B10である点68(波長735nm)の透過率測定値(89.14)と、T11である点74(波長765nm)の透過率測定値(90.28)の平均値(89.71)を用いた。
【0089】
〔4〕測定波長(xの値)が450nmから750nmまでの各点(点11〜点71)について、上記〔3〕で求めた差の値の二乗を算出する。なお、上記で算出した値(差の二乗)を、表1の「(測定値−平均値)^2」の欄に記載した。
【0090】
〔5〕測定波長(xの値)が450nmから750nmまでの各点(点11〜点71)について、上記〔4〕で求めた差の二乗の値を5倍した値を求める。なお、上記で算出した値(差の二乗の値を5倍した値)を、表1の「∫(測定値−平均値)^2」の欄に記載した。
さらに、波長(xの値)が450nmから750nmまでの各点(点11〜点71)についての、上記で算出した値(差の二乗を5倍した値)の総和を算出した。上記の総和22.0が、実施例1の粘着型機能性フィルムの「近似積分値」の値である。
【0091】
上記手順により算出される「近似積分値」の大きさは、粘着型機能性フィルムの干渉縞の発生のしやすさの指標となる。より詳しくは、上記「近似積分値」が大きい場合には、特に、波長450〜750nmにおける透過率のばらつきが大きく、干渉縞が発生しやすい。一方、上記「近似積分値」が小さい場合には、特に、波長450〜750nmにおける透過率のばらつきが小さく、干渉縞の発生が抑制される。
【0092】
イオンクロマトグラフ法で測定される、本発明の粘着型機能性フィルムより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量[抽出(メタ)アクリル酸イオン量]は、特に限定されないが、本発明の粘着型機能性フィルムの粘着剤層の単位面積あたり、20ng/cm2以下(例えば、0〜20ng/cm2)であり、好ましくは0〜17ng/cm2、より好ましくは0〜15ng/cm2である。上記抽出(メタ)アクリル酸イオン量は、本発明の粘着型機能性フィルムを加湿環境下などに置いた場合の粘着剤層からのアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの水分での遊離しやすさの度合いを表す。上記抽出(メタ)アクリル酸イオン量を20ng/cm2以下とすることにより、金属や金属酸化物の薄膜等に貼付した状態で加湿環境下などの水分の存在下で保存した場合であっても、上記薄膜等に対して腐食を生じにくく、優れた耐腐食性を発揮する。
【0093】
上記「イオンクロマトグラフ法で測定される、本発明の粘着型機能性フィルムより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量」は、以下の方法で測定することができる。
まず、粘着型機能性フィルムを適切な大きさに切り出し、剥離ライナーが設けられている場合には該剥離ライナーを剥離して、粘着剤層の表面(「粘着面」と称する場合がある)を露出させ試験片を作製する。試験片の大きさ(粘着面の露出面積)は100cm2が好ましい。
次いで、上記試験片を、温度100℃の純水中に入れ、45分間煮沸し、アクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの煮沸抽出を行う。
次いで、イオンクロマトグラフ法(イオンクロマトグラフィー)により、上記で得られた抽出液中のアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng)を測定し、試験片の粘着面(露出した粘着面)の単位面積あたりのアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng/cm2)を算出する。イオンクロマトグラフ法(イオンクロマトグラフィー)の測定条件は、特に限定されないが、例えば、下記条件で測定することができる。
[イオンクロマトグラフ法の測定条件]
分析装置 : DIONEX社製、DX−320
分離カラム : Ion Pac AS15(4mm×250mm)
ガードカラム : Ion Pac AG15(4mm×50mm)
除去システム : ASRS−ULTRA(エクスターナルモード、100mA)
検出器 : 電気伝導度検出器
溶離液 : 7mM KOH(0〜20分)
45mM KOH(20〜30分)
(溶離液ジェネレーターEG40を使用)
溶離液流量 : 1.0ml/分
試料注入量 : 250μl
【0094】
粘着型機能性フィルムから水分によって遊離してくる(メタ)アクリル酸イオンは、一般的に、粘着剤層中に存在する(メタ)アクリル酸に起因する。上記(メタ)アクリル酸イオンは、高温高湿環境下で水分により金属薄膜に浸入して導通を妨げるためと推定されるが、金属薄膜の抵抗値上昇(金属薄膜の腐食)を引き起こす。一般的に、粘着型機能性フィルムの接着性を向上させることを目的として、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として(メタ)アクリル酸(特に、アクリル酸)を多量(例えば、10重量%以上)に使用した場合には、粘着剤層中に未反応の(メタ)アクリル酸が残留しやすくなり、粘着型機能性フィルムから水分によって遊離してくる(メタ)アクリル酸イオンも増加する傾向にある。これに対して、本発明においては、粘着剤層形成時の乾燥を十分に行うか、アクリル系ポリマーの重合時間を長くするか、モノマー成分として用いる(メタ)アクリル酸の量を低減することによって、粘着型機能性フィルムから水分によって遊離してくる(メタ)アクリル酸イオンを少なくし、これに起因する、被着体の腐食や抵抗値の上昇を抑制している。
【0095】
本発明の粘着型機能性フィルムの可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361−1に準じる)は、特に限定されないが、87%以上が好ましく、より好ましくは89%以上である。全光線透過率を87%以上とすることにより、光学製品の表示部の視認性や表示品質、及び光学製品の外観に悪影響を及ぼしにくくなる。なお、上記全光線透過率は、例えば、ヘイズメータ(商品名「HM−150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定できる。
【0096】
本発明の粘着型機能性フィルムのヘイズ(JIS K7136に準じる)は、特に限定されないが、1.5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。ヘイズを1.5%以下とすることにより、光学製品の表示部の視認性や表示品質、及び光学製品の外観に悪影響を及ぼしにくくなる。なお、上記ヘイズは、例えば、ヘイズメータ(商品名「HM−150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて測定できる。
【0097】
本発明の粘着型機能性フィルム(本発明の粘着型機能性フィルムの粘着面)の、ガラスに対する23℃における180°引き剥がし粘着力は、特に限定されないが、1〜30N/20mmが好ましく、より好ましくは5〜20N/20mmである。180°引き剥がし粘着力を1N/20mm以上(特に、5N/20mm以上)とすることにより、被着体(例えば、導電性フィルムの透明導電膜表面や、ガラスレンズなど)に対し強固に固定することができるため、製品の品質や耐久性が向上する。なお、上記180°引き剥がし粘着力は、23℃における、ガラスを被着体とする180°剥離試験(JIS Z0237(2000)に準拠、引張速度:300mm/分)により測定できる。
【0098】
本発明の粘着型機能性フィルムは、公知乃至慣用の方法により製造することができる。より具体的には、透明基材の一方の表面側に上述の方法により機能層(例えば、ハードコート層)を形成し、かつ、透明基材の他方の表面側に上述の方法により粘着剤層を形成することにより、本発明の粘着型機能性フィルムを製造できる。なお、粘着剤層の形成は、透明基材の表面に粘着剤層を直接形成する方法(直写法)により実施してもよいし、剥離ライナー上に粘着剤層を形成した後、透明基材に転写する(貼り合わせる)ことにより、透明基材の表面に粘着剤層を形成する方法(転写法)により実施してもよい。また、透明基材への機能層の形成と粘着剤層の形成の先後は、特に限定されない。
【0099】
また、本発明の粘着型機能性フィルムは、市販品である機能性フィルムの片面側(機能層とは反対側)に粘着剤層を形成することにより製造することができる。同様に、市販品である片面粘着シート(「透明基材/粘着剤層」の構成を有する)の片面側(粘着剤層とは反対側)に機能層を形成することによっても製造することができる。
【0100】
本発明の粘着型機能性フィルムは、特に限定されず、広範な用途に使用できるが、特に、光学製品や光学部材の製造等の光学用途に好ましく使用される。
【0101】
上記光学製品とは、当該製品において光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)が利用された製品をいう。上記光学製品としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの表示装置や、タッチパネルなどの入力装置、又はこれら表示装置と入力装置とを適宜組み合わせた装置などが挙げられる。
【0102】
上記光学部材とは、上記光学的特性を有する部材をいう。上記光学部材としては、例えば、上記表示装置(画像表示装置)、上記入力装置等の機器(光学機器)を構成する部材又はこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「光学フィルム」と称する場合がある)などが挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」を含むものとする。なお、本発明における「光学部材」には、上記の通り、表示装置や入力装置における表示部の視認性や優れた外観を保ちながら、加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
【0103】
上記光学部材を構成する材質としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、金属(金属酸化物も含む)などが挙げられる。
【0104】
本発明の粘着型機能性フィルムを有する光学部材又は本発明の粘着型機能性フィルムを用いて、上記表示装置を製造することにより、本発明の粘着型機能性フィルムを有する表示装置を得ることができる。
【0105】
特に、本発明の粘着型機能性フィルムの機能層がハードコート層である場合、即ち、本発明の粘着型機能性フィルムが「粘着型ハードコートフィルム」である場合には、静電容量方式のタッチパネル(タッチパネルモジュール)の製造における透明電極の保護用途、又は、静電容量方式のタッチパネル(タッチパネルモジュール)におけるガラス飛散用途等に好ましく使用できる。但し、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0107】
実施例1
[ハードコートフィルム(機能性フィルム)の作製]
透明基材(透明基材フィルム)として、厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「A4300」、東洋紡績(株)製)を使用した。また、ハードコート層(透明ハードコート層)の塗工液は下記のように調製した。
紫外線硬化型樹脂(商品名「KRX571−76NL」、(株)ADEKA製)100重量部に、シリコーン系レべリング剤0.5重量部を混合し、この混合物を25℃での蒸気圧が5.3mmHg(7.0hPa)であるエチルセロソルブにて希釈し、固形分濃度を40重量%に調整して、ハードコート層の塗工液を得た。
次に、透明基材フィルムの片面に、#16のワイヤーバーにて乾燥後の膜厚が7μmとなるように塗工液を塗工した後、予備乾燥として25℃にて5分間乾燥し、次いで、本乾燥として80℃で3分乾燥させた。その後、高圧水銀灯にて積算光量が300mJ/cm2以上となるように紫外線を照射し硬化処理を行ってハードコート層を形成し、ハードコートフィルム(透明ハードコートフィルム)を作製した。
なお、上記ハードコートフィルム(機能性フィルム)の全光線透過率は91.3%、ヘイズは0.8%であった。
【0108】
[粘着剤層(粘着シート)の作製]
モノマー成分として、アクリル酸2−メトキシエチル:70重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル:29重量部、及びアクリル酸4−ヒドロキシブチル:1重量部、並びに重合溶媒として酢酸エチル:150重量部をセパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部を投入し、10時間反応させて、メチルエチルケトン(MEK)を加え、固形分濃度25重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。該アクリル系ポリマー溶液におけるアクリル系ポリマーの重量平均分子量は100万であった。
上記アクリル系ポリマー溶液に、アクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤として脂肪族イソシアネート化合物(商品名「デュラネート MFA−75X」、旭化成ケミカルズ(株)製)0.3重量部、架橋助剤としてエチレンジアミンにプロピレンオキシドを付加したポリオール(商品名「EDP−300」、(株)ADEKA製)0.1重量部を加え、粘着剤組成物(溶液)を調製した。
上記で得られた粘着剤組成物を、表面を離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(剥離ライナー)(厚さ:38μm)の離型処理面上に、乾燥後の厚さが約25μmとなるように流延塗布し、130℃で3分間加熱乾燥し、さらに23℃で7日間エージングを行い、基材レスの粘着シート(透明粘着シート)を作製した。
【0109】
[粘着型ハードコートフィルムの作製]
上記にて得たハードコートフィルム(機能性フィルム)と基材レスの粘着シートとを、ハードコートフィルムのハードコート層に対する反対側の表面と粘着シートの粘着剤層が接する形態で、ラミネーターにより貼り合わせ、粘着型ハードコートフィルム(粘着型機能性フィルム)を作製した。
【0110】
実施例2
ハードコートフィルム(機能性フィルム)の作製において、レベリング剤の添加量を0.04重量部に変更し、かつエチルセロソルブによる希釈で塗工液の固形分濃度が30重量%となるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着型ハードコートフィルムを作製した。
なお、実施例2にて作製したハードコートフィルム(機能性フィルム)の全光線透過率は91.3%、ヘイズは0.7%であった。
【0111】
実施例3
ハードコートフィルム(機能性フィルム)の作製において、レベリング剤の添加量を0.06重量部に変更し、かつエチルセロソルブによる希釈で塗工液の固形分濃度が30重量%となるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着型ハードコートフィルムを作製した。
なお、実施例3にて作製したハードコートフィルム(機能性フィルム)の全光線透過率は91.4%、ヘイズは0.8%であった。
【0112】
実施例4
ハードコートフィルム(機能性フィルム)の作製において、レベリング剤の添加量を0.25重量部に変更し、かつエチルセロソルブによる希釈で塗工液の固形分濃度が30重量%となるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着型ハードコートフィルムを作製した。
なお、実施例4にて作製したハードコートフィルム(機能性フィルム)の全光線透過率は91.3%、ヘイズは0.8%であった。
【0113】
実施例5
ハードコートフィルム(機能性フィルム)の作製において、塗工液の調製方法を下記のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着型ハードコートフィルムを作製した。
紫外線硬化型樹脂(商品名「KRX571−76NL」、(株)ADEKA製)100重量部に、シリコーン系レベリング剤0.5重量部を混合し、この混合物を20℃での蒸気圧が3.95mmHg(5.3hPa)、26.4℃での蒸気圧が5mmHg(6.7hPa)のシクロヘキサノンにて希釈し、固形分濃度が40重量%となるように調整した。これを高速攪拌機で3分間攪拌して、塗工液を調製した。
なお、実施例5にて作製したハードコートフィルム(機能性フィルム)の全光線透過率は91.4%、ヘイズは0.8%であった。
【0114】
比較例1
ハードコートフィルムの作製において、塗工液の希釈用溶媒を酢酸エチルに変更し、塗工後の予備乾燥条件を、25℃で12秒乾燥し、さらに40℃で1分乾燥させるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着型ハードコートフィルムを作製した。
なお、比較例1にて作製したハードコートフィルム(機能性フィルム)の全光線透過率は91.4%、ヘイズは1.1%であった。
【0115】
比較例2
ハードコートフィルムの作製において、レベリング剤を全く添加せず、かつエチルセロソルブによる希釈で、塗工液の固形分濃度が30重量%となるように変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着型ハードコートフィルムを作製した。
なお、比較例2にて作製したハードコートフィルム(機能性フィルム)の全光線透過率は90.5%、ヘイズは1.4%であった。
【0116】
(評価)
実施例及び比較例で得られた粘着型ハードコートフィルムについて、以下の測定及び評価を行った。なお、粘着型ハードコートフィルムの測定波長400〜780nmにおける透過率曲線を用いて算出される近似積分値は、上述の手順により算出し、結果を表2に示した。
【0117】
(1)抽出(メタ)アクリル酸イオン量
実施例及び比較例で得られた粘着型ハードコートフィルムを、幅10cm×長さ10cmのサイズに切り出した。その後、剥離ライナーを剥離して粘着面を露出させ、評価用サンプルを作製した(粘着面の露出面積:100cm2)。
次いで、上記評価用サンプルを、温度100℃の純水(50ml)中に入れ、45分間煮沸し、煮沸抽出を行い、抽出液を得た。
次いで、イオンクロマトグラフ法(イオンクロマトグラフィー)により、上記で得られた抽出液中のアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量(単位:ng)を測定し、評価用サンプルの粘着面(露出した粘着面)の単位面積あたりのアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量(抽出(メタ)アクリル酸イオン量、単位:ng/cm2)を算出した。なお、抽出(メタ)アクリル酸イオン量が検出限界未満(検出限界:2.5ng)であった場合には、表2において「ND」と記載した。
[イオンクロマトグラフ法の測定条件]
分析装置 : DIONEX社製、DX−320
分離カラム : Ion Pac AS15(4mm×250mm)
ガードカラム : Ion Pac AG15(4mm×50mm)
除去システム : ASRS−ULTRA(エクスターナルモード、100mA)
検出器 : 電気伝導度検出器
溶離液 : 7mM KOH(0〜20分)
45mM KOH(20〜30分)
(溶離液ジェネレーターEG40を使用)
溶離液流量 : 1.0ml/分
試料注入量 : 250μl
【0118】
(2)全光線透過率
実施例及び比較例で得られた粘着型ハードコートフィルムから剥離ライナーを剥離し、気泡が入らないようにスライドガラス(全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のスライドガラス)に貼り合わせ、JIS K7361−1に準じて、ヘイズメータ(商品名「HM−150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて、可視光波長領域における全光線透過率を測定した。
【0119】
(3)ヘイズ
実施例及び比較例で得られた粘着型ハードコートフィルムから剥離ライナーを剥離し、気泡が入らないようにスライドガラス(全光線透過率91.8%、ヘイズ0.4%のスライドガラス)に貼り合わせ、JIS K7136[ヘイズ(曇価)]に準じて、ヘイズメータ(商品名「HM−150」、(株)村上色彩技術研究所製)を用いて、ヘイズを測定した。
【0120】
(4)干渉縞の評価
実施例及び比較例で得られた粘着型ハードコートフィルムから剥離ライナーを剥離し、粘着剤層表面に黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製、厚さ:2.0mm)を貼り合わせて評価用サンプルを作製した。上記評価用サンプルのハードコート層側を、三波長の蛍光灯を用いて目視で観察し、以下の基準で評価を行った。
1:数mmの間隔で干渉縞が確認できる
2:数cmの間隔で干渉縞が確認できる
3:やや干渉縞あり(2と4の中間レベル)
4:干渉色の変化が薄く確認できる
5:干渉縞はほとんど目立たない
【0121】
(5)耐腐食性
実施例及び比較例で得られた粘着型ハードコートフィルムを、幅20mm×長さ50mmのサイズに切り出し、フィルム片を得た。
図3に示すように、導電性PETフィルム(日東電工(株)製、商品名「エレクリスタ P400−TNMP」)(サイズ:長さ70mm×幅25mm)の両端部に15mm幅で銀ペーストを塗布し、その導電面(ITO膜形成面22側)に、剥離ライナーを剥離したフィルム片21の粘着面を貼り合わせ、評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを、23℃の環境下で24時間放置した後、60℃、95%RHと、80℃のそれぞれの環境下で250時間放置し、「貼付直後の抵抗値」に対する「60℃、95%RH、250時間放置後の抵抗値」の割合(%)[=(60℃、95%RH、250時間放置後の抵抗値)/(貼付直後の抵抗値)×100(%)]、及び、「貼付直後の抵抗値」に対する「80℃、250時間放置後の抵抗値」の割合(%)[=(80℃、250時間放置後の抵抗値)/(貼付直後の抵抗値)×100(%)]を、それぞれ測定した。なお、抵抗値は、日置電気(株)製「3540 ミリオームハイテスタ」を用いて、評価用サンプルの両端の銀ペースト部分23に電極を付けて測定した。
「貼付直後の抵抗値」に対する「60℃、95%RH、250時間放置後の抵抗値」の割合、及び、「貼付直後の抵抗値」に対する「80℃、250時間放置後の抵抗値」の割合が共に120%未満であれば耐腐食性「良好」、いずれか一方でも120%以上であれば耐腐食性「不良」と判断した。
なお、ブランクとして、両端に銀ペーストを塗布した導電性PETフィルムに粘着型ハードコートフィルムを貼付せずに同様の試験を行った結果、「250時間放置前の抵抗値」に対する「250時間放置後の抵抗値」の割合は、放置した条件が80℃では110%、60℃、95%RHでは120%であった。
【0122】
【表2】

【0123】
表2の結果から明らかなように、本発明の粘着型ハードコートフィルム(実施例)は、干渉縞が発生しにくく、なおかつ耐腐食性にも優れていた。一方、測定波長400〜780nmにおける透過率曲線を用いて算出される近似積分値が大き過ぎる場合(比較例)には、干渉縞が発生しやすかった。
【符号の説明】
【0124】
1 粘着型機能性フィルム
11 機能層
12 透明基材
13 粘着剤層
14 剥離ライナー
15 機能性フィルム
2 評価用サンプル
21 フィルム片(粘着型機能性フィルム)
22 ITO膜形成面
23 銀ペースト部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の表面側にハードコート層及び反射防止層からなる群より選ばれた少なくとも一の機能層を有し、他方の表面側に粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムであって、
イオンクロマトグラフ法で測定される、前記粘着型機能性フィルムより純水で100℃、45分の条件で抽出されたアクリル酸イオン及びメタクリル酸イオンの合計量が、前記粘着剤層の単位面積あたり20ng/cm2以下であり、
分光透過率測定機[(株)村上色彩技術研究所製、商品名「DOT−3UV−VIS型」]で測定した測定波長400〜780nmにおける透過率曲線を用いて算出される近似積分値が50以下であることを特徴とする粘着型機能性フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、並びに極性基含有モノマーを必須のモノマー成分として構成されたアクリル系ポリマーを含有する請求項1に記載の粘着型機能性フィルム。
【請求項3】
前記極性基含有モノマーが水酸基含有モノマーである請求項2に記載の粘着型機能性フィルム。
【請求項4】
前記透明基材の一方の表面側にハードコート層を有し、全光線透過率が87%以上、ヘイズが1.5%以下であり、前記ハードコート層表面の鉛筆硬度がHB以上である機能性フィルムの、前記ハードコート層に対する反対側の表面に前記粘着剤層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着型機能性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着型機能性フィルムを有する表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−233170(P2012−233170A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88784(P2012−88784)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】