説明

粘着面および粘着性調整面を有する柔軟性エラストマー成形体

【課題】 高い衝撃吸収性、耐熱性、低い汚染性および低い表面硬度を維持した、粘着面と粘着性調整面を有する柔軟性エラストマー成形体、特にシートまたはフィルムを提供する。
【解決手段】 一体として形成された柔軟性エラストマー成形体であって、成形体が、粘着面と、JIS Z 0237で測定した粘着性を粘着面の0.1〜90%に調整した(1)、(2)および/または(3)の粘着性調整面とを有するエラストマー成形体;ただし(1)凹凸のある表面、(2)非粘着性ないし低粘着性の薄層を形成した表面、(3)平均粒子径が3〜1,000μmの粒子を多く含む表面。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着面と粘着性調整面とを有する柔軟性エラストマー成形体、特にシートまたはフィルムに成形した成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エラストマーによる緩衝材は、地震対策部品や靴底、クッション材として利用されている(特許文献1、2参照)。これらはいずれも両面とも粘着するか、または両面とも粘着しないものである。特に、粘着性のあるエラストマーは、一般に柔軟性であるほど、すなわち硬さが低いほど粘着力が高いといったことが知られている。
【0003】
また、ベタツキ防止のため、エラストマーの表面にフィルム状樹脂やマスキング材を被覆した商品もある。たとえば、特許文献1には、シリコーンゲルからなる緩衝層を、ビニル系樹脂やポリプロピレンのような熱溶着性フィルム、または発泡体シートで被覆した多層構造が開示されている。しかし、このような多層構造では、被覆層の物性に支配されて表面の柔らかさがなくなり、剛性が出て、エラストマーの特徴が失われてしまう。そのため、低い硬さを維持したまま、片側のみ粘着力を調整したものは、世の中にはない。なお、特許文献1ではゲル表面をブロックに分割しているが、それは横滑りを防止するためである。特許文献2には、蓄光顔料を含有する液状ゴム原料から得られるエラストマーによって形成される凹凸シートが開示されている。特許文献2のシートには、表面に凹凸パターンを設けているが、それは蓄光顔料を含有する液状ゴム原料を注入するためである。これらの構造は、いずれも粘着性の軽減を目的としたものではない。しかしながら、これら特許文献1、2には、本発明の課題である、緩衝材における特定の面の粘着性を調整することは、記載されていないし、示唆されてもいない。
【特許文献1】特開昭62−161524号公報
【特許文献2】特開平8−238702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高い衝撃吸収性、耐熱性、低い汚染性および低い表面硬度を維持した、粘着面と粘着性調整面とを有する柔軟性エラストマー成形体、特にシートまたはフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために研究を重ねた結果、柔軟性エラストマー成形体の一方の表面に、細かい凹凸を設け、薄層を設け、および/または重い微粒子が多く存在する面を設ける方法によって、その面の粘着性を調整することにより、上記の目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明の柔軟性エラストマー成形体は、一体として形成された柔軟性エラストマー成形体であって、成形体が粘着面と、JIS Z 0237で測定した粘着性を粘着面の90%以下に調整された、下記(1)、(2)および/または(3)の粘着性調整面とを有する
(1)粘着性調整面が、表面に細かい凹凸が設けられ、平滑面との接触表面積が粘着面より小さい面である;
(2)粘着性調整面が、表面の少なくとも一部分に、厚さ0.001〜150μmで、粘着面の90%以下の粘着強さを有する非粘着性ないし低粘着性の薄層が存在する面である(ただし、該薄層が非粘着性の場合、該薄層は、表面の一部分に存在する);
(3)成形体が、見掛け比重が1.8以上で、平均粒子径が3〜1,000μmの粒子が、粘着面より粘着性調整面に多く存在するような傾斜組成を有するか、上記粒子が粘着性調整面のみに存在することにより、粘着性調整面が、上記粒子を粘着面より多く含む面である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高い衝撃吸収性、耐熱性、低い汚染性および低い表面硬度を維持した、粘着面と粘着性調整面とを有する柔軟性エラストマー成形体、特にシートまたはフィルムを、環境に配慮した素原料を用いて、簡便に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の柔軟性エラストマー成形体は、エラストマーを構成するポリマーが、代表的にはポリウレタン、ポリアクリル系もしくはポリシロキサンであるか、またはポリスチレンブロックを有する熱可塑性エラストマーなどであり、これらに限定されるものではない。
【0009】
このような柔軟性エラストマーの粘着性調整面の表面硬度は、防振材、緩衝材などの用途に適した、優れた衝撃吸収性を示し、かつエラストマーとしての機能を生かすために、ASTM D1403に規定された1/4コーンを用いて測定した針入度が200以下であり、かつJIS K 7312のタイプCデュロメータで測定した表面硬さが60以下であることが好ましく、上記針入度が100以下で、上記タイプCデュロメータによる表面硬さが40以下であることが、さらに好ましい。針入度は、平らな試料に円錐状の針を落としてその進入する深さを測定したもので、針入度の数値が大きいほど表面が柔らかく、上記針入度200は、表面硬さの下限を示す。このような表面硬さが低い柔軟性エラストマーは、ポリマーが、化学的架橋、水素結合やイオン結合のような二次架橋、または硬質相による物理架橋により、架橋密度の低い架橋体を形成することによって得られる弾性体で、弾性ゲルを包含する。
【0010】
ポリウレタンエラストマーは、通常、ポリオールとイソシアネート化合物またはその誘導体から、ウレタン化反応によって製造することができる。
【0011】
上記ポリオールは、数平均分子量が300〜20,000、好ましくは300〜10,000の、直鎖状または分岐状の分子骨格を有するもので、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール(脂肪酸エステルを有するポリオールも含む)、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトン、ポリブタジエンジオール、および2個のリシノール酸のような天然由来の水酸基含有脂肪酸をジオールで結合させて得られるビス(ヒドロキシ脂肪酸)エステルなどが例示され、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびそれらの混合物が好ましい。上記ポリオールは、イソシアネート化合物との反応性を高めるために、末端を1級アルコールとするか、またはエチレンオキシド(EO)付加タイプとすることが好ましい。
また、比較的低粘度のポリオールを用いながら、架橋密度を抑制して、架橋密度の低い架橋体を形成するために、一部にモノオールを併用してもよい。
【0012】
前記イソシアネート化合物は、分子中に少なくとも2個のイソシアナト基を含み、ポリオールやモノオールと反応してウレタン結合を形成するもので、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のような芳香族イソシアネート化合物;シクロヘキシレンジイソシアネート(例えば、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,5−および2,6−ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)[例えば、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート]のような脂環式イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)[例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート]、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(例えば、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)、およびリシンジイソシアネートのような脂肪族イソシアネート化合物のいずれでもよく、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。また、このようなイソシアネート化合物のビウレット体、アロファネート体、イソシアヌレート体のようなオリゴマー;カルボジイミド変性体;およびポリオールの末端にイソシアナト基含有基が結合したプレポリマーなどを用いることができる。さらに、1個のイソシアナト基を含む混合物も用いることができる。
特に、対象物に貼りつけた際目立ちにくいという点から、透明なイソシアネート、例えば、HDI、IPDI、H12MDIなどが好ましい。さらに変色し難い点から、脂肪族または脂環式イソシアネートが、非黄変タイプであることから、好ましい。
イソシアネート化合物は、良好なエラストマーが得られ、その経時変化がなく、未反応物やオリゴマーの滲み出しがないことから、ポリオールの水酸基、またはモノオールを併用するときはポリオールとモノオールの水酸基合計量に対するイソシアナト基の比、すなわちイソシアネートインデックス(NCO Index)は、0.85〜1.12の範囲が好ましく、0.95〜1.10がさらに好ましい。また、NCO Indexは、未反応ポリオールの量を減らすためには、90以上、特に95以上が好ましく、粘着力を高めためには、120以下、特に110以下、とりわけ106以下が好ましい。
【0013】
ポリオールとイソシアネート化合物またはその誘導体との反応を促進するために、必要に応じて触媒を用いることが有効である。触媒としては、N−メチルモルホリン、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン類;オクタン酸スズ、ナフテン酸スズのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジオクトアート、ジブチルスズジラウラートのような有機金属化合物;アセチルアセトナト鉄のような金属キレート化合物が例示され、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明のポリウレタンエラストマーとしては、
(A)数平均分子量5,000〜20,000のポリオールと、数平均分子量200以上のモノオール(以下「高分子モノオール」ともいう)とを含むポリオール混合物と、(B)イソシアネート化合物とを反応させて得られる、ポリウレタンエラストマー(以下「ポリウレタンエラストマーA」ともいう)が、高強度、高伸度、高耐久性であって、温度依存性の少ない粘着性を有する点から、好ましい。
【0015】
上記ポリウレタンエラストマーAで使用されるポリオールは、数平均分子量が5,000〜20,000であるものであれば特に制限されず、前記で例示したようなポリオールを使用することができる。
また、上記ポリオールの数平均分子量は、ポリウレタンエラストマーAに良好な粘着および柔軟性を付与する点から、5,000以上、好ましくは6,000以上であり、ポリウレタンエラストマーAの良好な復元率を得られる点から、20,000以下、好ましくは15,000以下、より好ましくは12,000以下である。
【0016】
本発明で使用される高分子モノオールとは、イソシアネート化合物のイソシアナト基(NCO基)と反応できる唯一の基として水酸基を1個のみ有するポリマーのことである。該水酸基のポリマー中の結合位置は、イソシアネート化合物のNCO基と反応できるのであれば、特に限定されず、任意の個所に結合していてもよく、例えば、ポリマー主鎖のどちらか一方の末端に存在していてもよく、あるいは側鎖に存在していてもよく、あるいは側鎖そのものとしてポリマー主鎖に直接結合していてもよい。合成のし易さ、イソシアナト基との反応性の高さから、ポリマー主鎖の末端に存在するのが好ましい。
【0017】
本発明の高分子モノオールとして、少なくともアルキル鎖に水酸基が1個存在有するものであって、ポリエステルモノオール、ポリエーテルモノオール、ポリエーテルエステルモノオール、(メタ)アクリルモノオール、高級アルコール(例えば、炭素数12)およびこれら2種以上の混合物が例示される。
【0018】
上記ポリエステルモノオールとしては、例えば、低分子ジオールおよび低分子モノオールとジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体との縮合重合によるもの;低分子ジオールとジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体および炭素数2〜6のモノカルボン酸[脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等]との縮合重合によるもの;低分子モノオールを開始剤としてラクトンモノマーを開環重合したもの;低分子モノオールを開始剤としてジカルボン酸無水物とアルキレンオキシドとを反応させたもの;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0019】
上記低分子ジオールの具体例としては炭素数2〜8の脂肪族ジオール類[直鎖ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど)、分岐鎖を有するジオール(プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−もしくは2,3−ブタンジオールなど)など];環状基を有するジオール類[炭素数6〜15の脂環基含有ジオール〔1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、水添ビスフェノールAなど〕、炭素数8〜20の芳香環含有ジオール(m−もしくはp−キシリレングリコールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなど)のオキシアルキレンエーテル、多核フェノール類(ジヒドロキシナフタレンなど)のオキシアルキレンエーテル、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど];これらのアルキレンオキシド付加物(分子量500未満)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0020】
上記および下記において、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、1,2−、1,3−、1,4−もしくは2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、炭素数5〜10またはそれ以上のα−オレフィンオキシド、エピクロルヒドリンおよびこれらの2種以上の併用系(ブロックまたはランダム付加)が挙げられる。
【0021】
低分子ジオールのうち好ましいものは、脂肪族ジオールおよび脂環基含有ジオールである。
【0022】
上記低分子モノオールの具体例としては、炭素数1〜8の脂肪族モノオール類[直鎖モノオール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールなど)、分岐鎖を有するモノオール(イソプロピルアルコール、ネオペンチルアルコール、3−メチル−ペンタノール)など];炭素数6〜10の環状基を有するモノオール類[脂環基含有モノオール(シクロヘキサノールなど)、芳香環含有モノオール(ベンジルアルコールなど)など]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものは、得られるポリウレタンエラストマーAの黄変および柔軟性を考慮して脂肪族モノオールである。
【0023】
上記ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の具体例としては、炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸[コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸など]、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸[テレフタル酸、イソフタル酸など]、これらのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル、ジエチルエステルなど)、酸ハライド(酸クロライド等)など]及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0024】
上記モノカルボン酸としては、炭素数2〜8の脂肪族モノカルボン酸類[酢酸、プロピオン酸、酪酸など]、炭素数7〜10の芳香族モノカルボン酸類[安息香酸など]及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0025】
上記ラクトンモノマーとしては炭素数4〜12のラクトン、例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0026】
前記ポリエーテルモノオールとしては、片末端に水酸基、アミノ基、メルカプト基、またはカルボキシル基などの活性水素原子を有する基、好ましくはヒロドキシル基が存在し、他端がメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチルのようなアルキル基で閉塞されているポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体などが例示される。このような1官能性ポリエーテルは、例えば、開始剤として、上記のアルキル基を有する一価アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノールまたはオクタノールを用い、エチレンオキシド、プロピレンオキシドのような環状オキシド化合物を開環重合させて合成することができる。
【0027】
前記ポリエーテルエステルモノオールとしては、前記ポリエステルモノオールにアルキレンオキシドを付加して得られるもの;ポリエーテルジオールとモノカルボン酸とを縮合反応することで得られるものなど挙げられる。
【0028】
前記(メタ)アクリルモノオールとして、ポリ(メタ)アクリル酸エステルモノオールが例示される。これは、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル[例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルなど]などの分子内に1個の水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと、アルキル(メタ)アクリル酸エステル[例えば、メチル(メタ)アクリル酸エステルなど]などのその他の不飽和二重結合性モノマーとの共重合により得られる。
あるいは、ポリ(メタ)アクリル酸エステルモノオールとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、またはメタクリル酸メチルエステルのホモ重合体またはそれらの共重合体であって、分子の片方の末端部、例えば末端から5個以内の炭素原子、好ましくは少なくとも1個は末端の炭素原子に、水酸基が1個結合したものが挙げられる。あるいは、このような末端部に、1−ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチルなどの1個のヒロドキシル基を有する基が結合したものも例示される。
このようなポリ(メタ)アクリル酸エステルモノオールは、例えば、上記の(メタ)アクリル酸エステルを、ルテニウムのような金属のメタロセン化合物と、水酸基含有チオール類との存在下に重合させることにより、分子末端に−S−結合を介して水酸基を含む末端部を導入して得ることができる。水酸基の位置と数は、用いる水酸基含有チオール類の水酸基の位置と数によって決まる。あるいは、ポリ(メタ)アクリル酸エステルモノオールのような、片末端に官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルは、リビングアニオン重合を経る方法で合成することができる。すなわち、(メタ)アクリル酸エステルを、n−ブチルリチウムのような開始剤と、必要に応じて有機溶媒の存在下に、減圧下で重合して、分子鎖の片末端にリチウムイオンが存在するリビングポリ(メタ)アクリル酸エステルを合成する。ついで、これに例えばエチレンオキシドを反応させることにより、片末端に2−ヒドロキシエチル基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。
【0029】
これら高分子モノオールのうちで好ましいものは、ポリエステルモノオール、ポリエーテルモノオール、(メタ)アクリルモノオールであり、さらに好ましいものはポリエステルモノオールである。
【0030】
上記の高分子モノオールの数平均分子量は、得られるポリウレタンエラストマーAからの揮発性有機化合物(VOC)及びFOG(ガラスの曇り度を見る試験で、揮発した物質がガラスに付着して、白く曇ってしまう現象)の発生を抑える点から、通常200以上、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上である。上限値については特に制限されないが、良好な反応性を得る点から、5,000以下、好ましくは4,000以下である。
【0031】
本発明では、高分子モノオールを使用することで、以下の利点がある。
(1) モノアルコールと比べて分子量が大きいため、得られるポリウレタンエラストマーAからのVOCまたはFOGの発生が低減される。
(2) 架橋阻害が起こりにくくなるので、耐熱性のあるポリウレタンエラストマーAが得られる。
(3) メインポリオールを高分子量領域とすることが可能となり、それにより高伸度のポリウレタンエラストマーAが得られる。このようなポリウレタンエラストマーAはまた低温領域でも硬くなりにくい。
(4) 添加量が多少振れても、得られるポリウレタンエラストマーAの物性への影響が小さく、安定した生産が可能となる。
(5) 得られるポリウレタンエラストマーAは、安定した粘着特性を発現しやすい。
本発明では、メインポリオールとしての数平均分子量5,000〜20,000のポリオールと、高分子モノオールとを使用することにより、高強度、高伸度、高耐久性であって、温度依存性の少ない粘着性をもつ上記ポリウレタンエラストマーAを作製することができる。通常のモノアルコールを使用すると反応性の制御が難しく、また得られるポリウレタンエラストマーAの硬化が弱くなったりする。
【0032】
ポリアクリル系エラストマーは、分子末端または側鎖に官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルを、架橋剤で架橋させて得られるエラストマーの総称である。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルのようなアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メトキシエチルエステル、アクリル酸エトキシエチルエステルのようなアクリル酸アルコキシアルキルエステル;およびこれらに対応するメタクリル酸エステルが例示される。ポリ(メタ)アクリル酸エラストマーは、これらのモノマーを任意に重合させて合成される。本発明においてベースポリマーとして用いるには、モノマーの一部として、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキブチルのような側鎖に水酸基を有するアクリル酸エステル;それらに対応するメタクリル酸エステル;および/またはアクリル酸、メタクリル酸のような(メタ)アクリル酸を用いて、官能基を導入する。官能基としては、水酸基およびカルボキシル基が例示される。分子末端に選択的に官能基を導入するには、官能基をもたないモノマーをホモ重合または共重合させた後、最終段階において、上記の官能基を含有するモノマーを理論量導入するか;官能基をもたないモノマーと、トリメチルシロキシ基のような保護基を含有するモノマーとをグループトランスファー重合した後、末端に存在する保護基を脱保護するなどの方法を用いる。架橋剤としては、エポキシ基を有する化合物、触媒としては、ポリウレタンエラストマーと同様のアミン類、カルボン酸金属塩、有機金属化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。さらに、架橋剤の一部または全部としてポリイソシアネート化合物、そのオリゴマーまたはプレポリマーを用いることができる。ポリマーの官能基として水酸基を有し、架橋剤中のイソシアネート系架橋剤の比率が高い一群のものを、ポリアクリルウレタンエラストマーという。本発明においては、ポリアクリルウレタンエラストマーも、ポリアクリル系エラストマーに包含される。
【0033】
ポリアクリルウレタンエラストマーは、上記のようなポリアクリル系エラストマーの一種であり、かつ前記ポリウレタンエラストマーの一部のポリオールおよび/またはモノオールとして、両末端および/または片末端に水酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、分子中に(メタ)アクリル単位を導入したものとしても位置づけられる。このような反応性ポリ(メタ)アクリル酸エステルとしては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸イソプロピル、ポリアクリル酸ブチル;および対応するポリメタクリル酸エステル、2種以上の(メタ)アクリル単位からなる共重合体などが例示される。残余のポリオールおよび/またはイソシアナト基を含むイソシアネートプレポリマーのポリオール成分として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどを用いることができる。
【0034】
ポリシロキサンエラストマーは、ビニル基含有ポリシロキサンをベースポリマーとし、Si−H結合含有ポリシロキサンを架橋剤として、塩化白金酸や白金錯体のような白金系化合物の触媒作用でヒドロシリル化反応によって得ることができる。この際、ビニル基含有ポリシロキサンとして、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリシロキサン単独か、これに必要に応じて片末端にビニル基を有する直鎖状ポリシロキサンとを適宜配合して、1分子あたりのビニル基の数を平均0.4〜2.0個、好ましくは1.0〜2.0個に制御することにより、比較的低粘度のビニル基含有ポリシロキサンを用いながら、架橋密度を抑制して、架橋密度の低い架橋体を形成することができる。ケイ素原子に結合する有機基は、上記ビニル基以外は、1価の非置換または置換炭化水素基であり、通常は、合成が容易で、未硬化状態では粘度が比較的低く、硬化して得られるエラストマーが良好な性質を示すことから、メチル基が一般的であり、エラストマーに透明性や耐寒性を付与するために一部にフェニル基を用いるなどの改良がなされている。
【0035】
ポリスチレンブロックを有する熱可塑性エラストマーは、両末端に硬質相としてポリスチレンブロックを有し、それをポリブタジエンブロック、ポリイソプレンブロック、ポリ(エチレン・ブタジエン)ブロック、ポリ(エチレン・プロピレン)ブロックのような軟質相でつないだ構造を有し、代表的にはポリスチレン―ポリ(エチレン・ブタジエン)―ポリスチレンブロック共重合体である。
【0036】
本発明のエラストマーには、必要に応じて、充填剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、消泡剤、脱水剤などを配合してもよい。たとえば上記熱可塑性エラストマーは、表面硬さを下げるために、それと相溶性の炭化水素系可塑剤を、系全体の30〜70重量%配合してもよい。なお、後述の調整された粘着性を有する面を形成する第3の方法によるときは、上記の充填剤および/または顔料と重複してもよい、見掛け比重の高い粒子を配合する。また、本発明の方法によって粘着性を調整しうる範囲で、粘着面の粘着性を向上させるために、必要に応じて粘着性を向上させる成分を共重合させるか、または粘着性付与剤を配合してもよい。
【0037】
熱可塑性エラストマー以外の上記の各エラストマーは、それぞれ必要な成分を混合し、反応によって硬化させて、エラストマーを得ることができる。たとえばポリウレタンエラストマーは、イソシアネート化合物以外の成分を混合してプレミックスとし、それとイソシアネート化合物を、撹拌機、ミキサー、ミキシングヘッドのような混合手段によって混合し、ただちに成形・硬化に供する。
【0038】
ポリシロキサンエラストマーは、通常、ベースポリマーと架橋剤を含むプレミックスと、ベースポリマーと触媒を含むプレミックスを用意して、両者を同様の混合手段によって混合し、成形した後、70〜120℃で0.5〜2時間加熱することによってエラストマーを形成させる。あるいは、3−メチル−1−ブチン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどのアセチレンアルコール類のような反応抑制剤を配合して安定化させた、全成分を含む組成物を密閉容器に低温で保存し、それを容器から押出して成形し、加熱して反応抑制剤を揮散させ、100〜180℃で1〜6時間の加熱によって硬化させてもよい。
【0039】
熱可塑性エラストマーは、必要に応じて配合される可塑剤、粘着性付与剤などの成分と混練し、150℃以上の温度で、プレス成形、押出成形などの方法によって成形する。たとえば、予備混合の後、二軸押出機により、200℃で押出成形を行う。
【0040】
本発明のエラストマー成形体の形状は特に限定されず、シートまたはフィルムのような、厚さを無視すれば平面状のものも、直方体、立方体、円筒、異形成形体のような立体構造を示すものも包含される。容易に成形され、一方の面が粘着性物質として実用的な粘着性を有する粘着面で、他方の面が調整された粘着性を有し、各種の用途に広く用いられることから、シートまたはフィルムが好ましい。立体構造を示すものは、その少なくとも1個の面が粘着面で、他の少なくとも1個の面、たとえば粘着面と平行な面が、調整された粘着性を有する。粘着面は、実施例で記載したようなJIS Z 0237に準じた180°引き剥がし粘着力で測定した粘着性が、目的に応じて好ましくは1〜20N/20mm、さらに好ましくは1〜17N/20mmである。
【0041】
ここで、調整された粘着性を有するとは、その目的に応じて、その面の上記JIS Z 0237で測定した粘着強さが、粘着面の粘着強さの90%以下、好ましくは80%以下で、かつ0.1%以上、好ましくは1%以上に制御された粘着性を有することである。この比が90%を越えると、粘着性を調整した効果が充分でない。
【0042】
本発明のエラストマー成形体は、たとえば前述のように、(1)粘着性調整面の表面が、細かい凹凸の存在により、対象平滑面との接触表面積が粘着面より小さくなり、たとえば単位表面積の98%以下、好ましくは95%以下になるように形成されているか;(2)粘着性調整面に、厚さ0.001〜150μm、好ましくは0.5〜100μmの非粘着性ないし低粘着性の薄層を有するか;および/あるいは(3)粘着性調整面に、見掛け比重が1.8以上で、平均粒子径が3〜1,000μmの粒子が粘着面より多く存在し、したがってその表面における粘着性ポリマーの量が減少するような傾斜組成を有し、またはその表面にのみ上記粒子が存在するかによって、上記の粘着面と粘着性調整面とが形成される。
【0043】
粘着性調整面は、同一の面が、上記の形態(1)〜(3)の複数を兼ねる形であってもよい。すなわち、(1)と(2)、(1)と(3)、(2)と(3)、または(1)、(2)、(3)を兼ねる形態の粘着性調整面であってもよい。このような複数の形態を兼ね備えることにより、たとえば(1)と(2)を兼ねる形態により、粘着性を大きく低下させた粘着性調整面を得ることができる。
【0044】
このようなエラストマー成形体は、注型、流延、射出成形、トランスファー成形、押出成形、ブロー成形など、任意の方法によって成形することができる。たとえば、未架橋の状態で流動性のエラストマー組成物で、架橋によってエラストマー成形体を形成スルタイプのエラストマー組成物を、上面のない金型に、任意の厚さに注型することにより、上面が平滑な粘着面となるエラストマー成形体を作製することができる。
【0045】
前述の調整された粘着性を有する面は、次のような方法によって製造することができる。このような方法により、プラスチックフィルムを貼り付ける方法に比べて、表面硬度を上昇させることなく、調整された粘着性を有する面を形成することができる。
【0046】
第1の方法は、少なくとも1個の面に細かい凹凸を設けることにより、平滑面との接触表面積を粘着面より小さくして、エラストマーの表面硬度を上げることなく、調整された粘着性を有する面を形成させることである。凹凸は、規則的に、または不規則的に配列されていてよく、代表的には、深さが平均0.1〜1mm、幅が平均0.02〜0.2mmの不規則な線状の凹部が、3〜30本/cm入った皮革様の外観を呈するものである。
【0047】
このような凹凸は、直接的または間接的に、シボ加工、エンボス加工などによって形成させることができる。具体的には、たとえば、成形に用いる型の、特定の面に当たる部位に細かい凹凸を設けて成形を行うことにより、成形された柔軟なエラストマーの該特定の面に細かい凹凸を設け、調整された粘着性を有する面を形成させることができる。また、熱可塑性エラストマーの場合には、可塑化温度以上に加熱した押し印によって、細かい凹凸を設けることができる。
【0048】
また、別の方法として、細かい凹凸を設けた剥離紙もしくは剥離フィルムを用意し、たとえば金型の1個の面に敷いて、それに未架橋のエラストマーを注型もしくは流延することにより、柔軟なエラストマーの、その剥離紙もしくは剥離フィルムに接した面に細かい凹凸を設け、調整された粘着性を有する面を形成させることができる。
【0049】
第2の方法は、成形品の一体性を保ちながら、少なくとも1個の面に厚さ0.001〜150μm、好ましくは0.05〜100μmの、非粘着性ないし低粘着性薄層を設けることにより、エラストマーの表面硬度を上げることなく、調整された粘着性を有する面を形成させることである。薄層の厚さが0.001μm未満では、粘着性を制御よく調整することが困難であり、150μmを越えてもそれだけの効果の増大がなく、むしろ、粘着性以外の物性、たとえば表面硬さなどに、薄層の影響が出る。ここで、非粘着性ないし低粘着性の薄層とは、粘着面の90%以下、好ましくは80%以下の粘着強さを有する薄層をいう。
【0050】
このような薄層は、粘着性調整面の少なくとも一部に存在する。すなわち、薄層は、粘着性調整面を完全に被覆してもよく、目的に応じてその面の粘着性を下げる程度に、一部分を被覆していてもよい。ただし、薄層が非粘着性の場合、粘着性調整面の粘着性が前述の範囲に入るように、粘着性調整面の一部分を被覆する薄層を形成させるように、制御して被覆する。
【0051】
具体的には、たとえば、成形されたエラストマーの粘着性調整面に、真空蒸着により、金、銀、スズのような金属;酸化スズのような金属酸化物;またはカーボンの薄膜を形成させる。
【0052】
または、スプレー、含浸、ロールコート、刷毛塗りなどの方法によって、剥離性を有する物質を、必要に応じて溶媒で希釈して塗布する。このような剥離性を有する物質としては、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ペルフルオロアルキルエーテル、ペルフルオロアルキルエーテルのオリゴマーおよびポリマー、コハク酸ビス(ペルフルオロアルキルエチル)エステル、トリス(ペルフルオロアルキル)エチルリン酸エステルのようなフッ素化合物;ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルデシルシロキサン、ポリメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサンのような、たとえば27℃における粘度が10,000〜3,000,000mm2/sの、非反応性の高粘度シリコーンオイルまたはシリコーン生ゴム;ポリエチレンワックス、パラフィンロウ、セレシンロウのような炭化水素系ワックス;カルナウバロウ、モンタンロウのような高級脂肪酸エステルワックスなどが例示される。
【0053】
希釈溶媒としては、フッ素化合物の場合は、メタノール、イソプロパノールのようなアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン系溶媒;トルエン、キシレン、石油ベンジンのような炭化水素系溶媒を用いることができ、シリコーンおよびワックス類の場合は、トルエン、キシレン、石油ベンジンのような炭化水素系溶媒を用いることができる。また、エラストマーが溶媒に触れると侵されやすい場合など、上記離型性物質を、転写しやすいように、金型や剥離紙などに塗布し、溶媒の揮散温度を超える温度で処理して離型性物質の薄層を形成させ、そこからエラストマーの特定の面に転写して、エラストマーに薄層を形成させることにより、粘着性調整面を形成させることができる。
【0054】
上記第2の方法においては、粘着性調整面の表面の少なくとも一部分に、ウレタン塗料、アクリル塗料、エポキシ塗料、およびシリコーン塗料からなる群から選ばれる塗料を塗布して、非粘着性ないし低粘着性の薄層(以下「薄層A」ともいう)を形成させてもよい。
このような塗料を塗布して薄層Aを形成させると、得られるエラストマー成形体が振動や衝撃を吸収する際には、このエラストマー成形体の動きに薄層Aが容易に追随することができたり、エラストマー成形体を接触させる個所が彎曲している場合(例えば、靴ズレ防止用に靴内部に置く場合など)などはエラストマー成形体が変形されて置かれることになるが、そのような個所の形状に薄層Aが追随することができたりするという利点が得られる。
【0055】
上記の薄層Aとして、例えば、ポリウレタンエラストマーへの好適な追随性を有する点から、100%応力2〜8MPa、引張強さ50〜100MPa、伸び200〜2000%のものが好適に使用できる。
なお、100%応力は、伸び100%まで伸ばした時の引張強さのことで、JIS K 6251に従い測定され、引張強さはダンベル状3号形を使用してJIS K 6251に従い測定され、伸びはJIS K 6251に従い測定される。
【0056】
上記のウレタン塗料として、一般的な有機イソシアネート(A)と活性水素を持つポリオール化合物(B)から構成されたもので、一般的に市販されている1液塗料、1液反応性塗料、2液反応性塗料、熱により反応基が再生し硬化する反応型塗料などを選択することができ、これらのウレタン塗料は有機溶剤系もしくは分散体である。
有機ポリイソシアネート(A)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等の有機ジイソシアネート、及び前記有機ジイソシアネートのビウレット変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、これらの混合変性体が挙げられる。これらのうち、耐候性に優れている点から、脂肪族ジイソシアネートが好ましい。これらは単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
ポリオール(B)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、水素添加ビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物等の低分子ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等、また、前記低分子ポリオールを開始剤としてエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを付加したポリエーテルポリオール、前記低分子ポリオールとコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸等の多塩基酸あるいは炭酸との縮合物であるポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリル酸ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、シリコーンポリオールが挙げられる。これらは単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
【0057】
前記アクリル塗料として、アクリル系単量体、およびアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体とをラジカル共重合により得られるものが使用でき、有機溶剤溶液もしくは分散体である。
アクリル系単量体は、特に限定されないが、以下の単量体を例示することができる。メチル(メタ)アクリレート(メチルアクリレート又はメチルメタアクリレートのいずれかであることを示す。以下において同じ。)、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体、(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリル系単量体、アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリル系単量体グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル系単量体等である。
これらのアクリル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有ビニル単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレンなどの塩素含有単量体、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテルなどの水酸基含有アルキルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテルジエチレングリコールモノアリルエーテルなどのアルキレングリコールモノアリルエーテル類、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのα−40 オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテルなどのアリルエーテル等を例示できる。
【0058】
前記エポキシ塗料としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシド化合物の溶液もしくは分散体である。かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のフェノールまたはアルキルフェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルであるノボラック型エポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのポリグリシジルエーテルであるアルキレングリコール型エポキシ樹脂;オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0059】
前記シリコーン塗料として、有機ケイ素化合物であり、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3.4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらは無溶媒下又はアルコール等の有機溶剤中で、酸の存在下で加水分解して使用する方が好ましい。さらに加水分解後に前記微粒子のコロイド状分散体と混合しても、あるいは前記微粒子のコロイド状分散体と混合後に加水分解をしてもいずれでも良い。
【0060】
本発明では、エラストマー、特にポリウレタンエラストマーとの接着性が良好である点から、ウレタン塗料、特に熱可塑性ポリウレタン塗料が好ましい。
【0061】
上記熱可塑性ポリウレタンは、慣用の方法で、ポリオールとイソシアネートとを反応させて製造される。ここでのイソシアネートは上記のウレタン塗料のところで述べたものが使用できる。また、ポリオールの例としても、上記のウレタン塗料のところで述べたポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒマシ油ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンなどの一般的なポリオールが挙げられる。ポリカーボネートポリオールから得られる熱可塑性ポリウレタンとして、例えば、特開2001-123112号公報に記載されているポリウレタンコーティング剤が使用できる。
【0062】
上記ポリカーボネートポリオールとして、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上と、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートとの脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものである。本発明において、好ましいポリカーボネートポリオールは、炭素数2〜10の低分子ジオールから得られるポリカーボネートポリオールであり、1,6−ヘキサンジオールから誘導されたポリカーボネートポリオールが、最も入手しやすいので特に好ましい。
【0063】
得られるエラストマー成形体の耐摩耗性、耐熱性、耐候性が改善される点から、ポリカーボネートポリオール、特にポリカーボネートジオールが好ましい。
【0064】
前記ポリウレタンエラストマーの表面の少なくとも一部に薄層Aを施すのは慣用の方法で行うことができる。例えば、スプレーコート、ロールコート、刷け塗りおよびディッピングなどする方法がある。あるいは、型に予め前記塗料を被覆させておき、そこに前記のポリウレタンエラストマーの原料混合物を流し込み架橋反応させてから、型から取り出して薄層Aが表面に形成されたエラストマー成形体を得る方法がある。この方法によれば、表面に粘着面と粘着性調整面の両方を有するエラストマー成形体を一工程で作製でき、またフィルムを使用する従来技術と比べて、得られる成形体の形状などが制限されにくいという利点が得られる。
【0065】
本発明では、前記ポリウレタンエラストマーAに前記塗料を塗布して薄層Aを形成させることが、薄層Aが剥がれないか剥がれにくくなるので、好ましい。
【0066】
第3の方法は、見掛け比重が1.8以上で、平均粒子径が3〜1,000μmの粒子を配合し、エラストマーの成形・硬化の過程で上記粒子が沈降して、粒子が少なくとも1個の面に他の面より多く存在するような傾斜組成を有することにより、その面に存在する粘着性エラストマー高分子の量を制御して、粘着性調整面を形成させることである。あるいは、粒子の沈降速度が大きいときは、硬化してエラストマーを形成する前に、粘着性調整面にすべての粒子が沈降することもある。本発明においては、そのような状態でも差支えない。
【0067】
具体的には、たとえば、組成物に見掛け比重が1.8以上、好ましくは3.5〜10で、平均粒子径が3〜1,000μm、好ましくは10〜500μmの粒子を配合し、成形工程の、エラストマーが完全に硬化するまでの、相内に比重差による粒子の沈降が可能な段階で、成形体の一方の面に粒子の少なくとも一部を沈降させることにより、上記の傾斜組成を形成させることができる。見掛け比重が1.8未満では、粒子に適当な沈降速度を与えて、未硬化ないし半硬化の段階の組成物に粘着性調整面を形成することができない。平均粒子径が3μm未満のものは、同様に良好な沈降速度が得られず、1,000μmを越えると、成形体の表面が粗くなる。このような粒子としては、カーボン、タルクのような充填剤;酸化鉄、フェライト、鉄、ニッケル、コバルトのような磁性粉;銅粉のような導電性金属粉;微量のドーピング元素を含む硫化亜鉛、アルミン酸カルシウム、アルミン酸ストロンチウムのような蓄光顔料などを挙げることができる。
【0068】
粘着性調整面を得るために、上記の方法を、2種以上併用することもできる。たとえば、細かい凹凸のあるエラストマー表面を作製して、その表面に離型性を有する物質の薄層を形成させてもよい。その変形として、細かい凹凸のある離型性物質の薄層を、直接または転写によって、上記エラストマー表面に形成させてもよい。傾斜組成を形成させ、その表面に離型性を有する物質の薄膜を形成させてもよい。傾斜組成を有し、かつその粒子を他の面より多く含む面に細かい凹凸を形成させてもよい。あるいは、傾斜組成を有し、かつその粒子を他の面より多く含む面に細かい凹凸を形成させ、さらにその面に離型性を有する物質の薄膜を形成させてもよい。このように複数の方法を併用することにより、特に細かい凹凸のある表面を作製して、その表面に離型性を有する薄膜を形成することによって、その表面の粘着性を低下させる効果が大きい。
【0069】
本発明では数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレンなどの分子量標準サンプルから得た検量線を基に算出される値である。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を、実施例によってより詳細に説明する。実施例および比較例において、部は重量部を示し、配合比などの%は、特に断らない限り重量%を示す。本発明は、実施例によって限定されるものではない。
【0071】
1.評価方法
実施例および比較例で得られたエラストマー成形体について、下記の試験法により、評価を行った。
(1)表面硬さ
厚さ10mmの試料を作製し、JIS K7312に準じて、タイプCデュロメータにより表面硬さを測定した。
(2)針入度
厚さ50mmの試料を作製し、ASTM D1403に規定された1/4コーンを用いて、針入度を測定した。
(3)粘着性
厚さ2mmの試料を作製し、JIS Z0237に準じて180°引き剥がし粘着力の測定を行った。ただし、実施例の各試料については、粘着性調整面と、粘着性を調整しない面について試験を行った。
(4)引張強さ
厚さ2mmの試料を作製し、JIS K6251に従い、ダンベル状7号形を用いて測定した。
(5)耐磨耗性
厚さ2mmの試料を40℃で7日間エージングした後、JIS K7204(1995)に従って以下の条件および評価基準で評価した。
磨耗試験条件
磨耗輪:H18
荷重:9.8N
回転速度:62.5回/分
回数:1000回
評価基準
○:コーティング膜が80%〜100%残存した。
△:コーティング膜が50%〜80%残存した。
×:コーティング膜が50%残存した。
(6)外観
厚さ2mmの試料を平面の板に貼り合せて、1回剥がす。その際、試料のコーティング膜の表面に折りジワが生じるかどうかを観察し、以下の基準で評価した。
○:外観状況問題なし。
×:折りジワが生じた。
(7)耐熱性
厚さ2mmの試料の硬さを、80℃にて2000時間放置の前後で、上記の表面硬さ測定方法に従って測定した。そして、放置前の硬さに対する放置後の硬さの比率から、以下の基準で、耐熱性を評価した。
○:70%以上
×:70%未満
【0072】
2.ポリウレタンエラストマー成形体(1)
(1) プレミックスの調製
調製例1
下記の原料を用いて、ポリウレタンエラストマー組成物のプレミックスを調製した。
A−1:n−ブタノール−ポリオキシプロピレンモノオール(1官能性、水酸基価:16.8、数平均分子量3,333);
A−2:グリセリン−ポリオキシプロピレントリオール(3官能性、水酸基価:18.0);
B−1:ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体(NCO:29.0%);
C−1:オクタン酸スズ。
なお、後述のように、一部の実施例において、下記を配合した。
D−1:ニッケル粉(見掛け密度8.8、平均粒径15μm)。
【0073】
撹拌機を備えた混合槽に、A−1 30部とA−2 70部をとり、撹拌機により撹拌して、ポリマー混合液を得た。これに、C−1 0.1部を添加して、均一になるまで室温で撹拌を続け、プレミックス1を調製した。
【0074】
(2) ポリウレタンエラストマー成形体の作製
比較例1
上面を開放したステンレス製の平箱状の金型を用いた。金型の底面に、移行性のない架橋型シリコーン剥離剤の層を、平滑な剥離面として有する剥離紙を、剥離面を上にして敷いた。混合槽のプレミックス1に、撹拌しながら20℃でB−1 4.76部を注ぎ込んで均一になるまで混合し、ついで真空ポンプにより脱泡して、ポリウレタン組成物を調製した。これを上記金型に、上記の評価に必要な厚さに注型した。これを120℃の温風加熱炉に移し、ウレタン化反応による架橋を10分間行い、ついで70℃でさらに12時間加熱して、両面が平滑で均質な組成の、完全に硬化したポリウレタンエラストマーシートを得た。
【0075】
実施例1
剥離面に移行性のない架橋型シリコーン剥離剤の層を有し、かつ剥離面に、深さ0.3〜1mm、幅0.03〜0.1mmに分布する細かい凸部が不規則に平均4本/cm分散した皮革様の凹凸面(シボ)を有する剥離紙を、金型の底面に敷いた以外は、比較例1と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が剥離面の凸部から転写された細かい凹部を有する、均質で完全に硬化したポリウレタンエラストマーシートを得た。
【0076】
実施例2
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を、メチルエチルケトンで5%溶液に希釈して、比較例1と同様のステンレス製金型の底面にスプレー塗布し、風乾後、メチルエチルケトンが揮散するまで100℃に加熱して、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有するステンレス製金型を作製した。この金型に、比較例1と同様に調製したプレミックス1とB−1の混合物を注型し、以下、比較例1と同様の加熱条件で加熱することにより、剥離面から移行して、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に部分的に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
【0077】
実施例3
プレミックスを調製する段階で、さらにD−1 10部を配合した以外は比較例1と同様にして、D−1を含有するプレミックス2を調製した。プレミックス1の代わりにプレミックス2を用いた以外は比較例1と同様にして、一方の面(粘着性調整面)にニッケルが多量に存在するポリウレタンエラストマーシートを得た。
【0078】
実施例4
実施例1に用いた剥離紙と同様の細かい凹凸を底面に有し、上面を開放したステンレス製の平箱状の金型の底面に、実施例2と同様にして、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を形成させた。この金型を用い、実施例2と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
【0079】
実施例5
プレミックス1の代わりにプレミックス2を用いた以外は実施例4と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつその面にニッケルが多量に存在し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
【0080】
(3) 評価
実施例1〜5および比較例1のポリウレタンエラストマーシートの、表面硬さおよび粘着性を測定した。その結果を表1に示す。ただし、実施例1〜5については、表1には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例1〜5のポリウレタンエラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例1のポリウレタンエラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
【0081】
【表1】

【0082】
3.ポリウレタンエラストマー成形体(2)
(1) コーティング剤の調製
調整例X1
不活性ガス雰囲気下で、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキシレングリコールを炭酸ジメチルと縮合して得られたポリカーボネートジオール(Mn=2,000)266.7部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート33.3部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、80℃で5時間加熱還流を行い、ウレタン化反応を行った。JIS K1603に準ずる方法でNCO量を測定し、NCO量が0.5%以下なったことを確認して反応終了とし、コーティング剤を調製した。これをただちに実施例Y1およびZ1に供した。
調製例X2
不活性ガス雰囲気下で、ポリエステルポリオール(Mn=3,000)276.9部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート23.1部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、調整例X1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに実施例Y2およびZ2に供した。
調製例X3
不活性ガス雰囲気下で、ポリエーテルポリオール(Mn=1,000)240.0部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート60.0部、およびメチルエチルケトン700部を、還流装置の付いた容器に入れ、調製例X1と同様の方法でコーティング剤を調製した。これをただちに実施例Y3およびZ3に供した。
【0083】
(2) ポリウレタンエラストマー成形体の作製
実施例Y1
調製例X1で得られたコーティング剤を、メチルエチルケトンで5%溶液に希釈して、比較例1と同様のステンレス製金型の底面にスプレー塗布し、風乾後、メチルエチルケトンが揮散するまで100℃に加熱して、表層に塗膜(厚さ10μm)を有するステンレス製金型を作製した。この金型に、比較例1と同様に調製したプレミックス1とB−1の混合物を注型し、以下、比較例1と同様の加熱条件で加熱することにより、剥離面から移行して、厚さ10μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に形成されたポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例Y2
調整例X1の代わりに調製例X2で得られたコーティング剤を使用して、実施例Y1と同様にして、ポリウレタンエラストマーシートを得た。
実施例Y3
調整例X1の代わりに調製例X3で得られたコーティング剤を使用して、実施例Y1と同様にして、ポリウレタンエラストマーシートを得た。
【0084】
(3) 評価
実施例Y1〜Y3および比較例1のポリウレタンエラストマーシートの、表面硬さおよび粘着性を測定した。その結果を表2に示す。ただし、実施例Y1〜Y3については、表2には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例Y1〜Y3のポリウレタンエラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例1のポリウレタンエラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
【0085】
【表2】

【0086】
4.ポリアクリル系エラストマー成形体(1)
(1) プレミックスの調製
調製例2
A−1の代わりに下記のA−3を用い、B−1の代わりに下記のB−2を用いて、ポリアクリル系エラストマー組成物の一種であるポリアクリルウレタンエラストマー組成物のプレミックスを調製した。
A−3:片末端に水酸基を有するポリアクリル酸ブチル(1官能性、水酸基価:42);
B−2:ヘキサメチレンジイソシアネートをポリプロピレンジオールと反応させて得られた、両末端にイソシアナト基を有するプレポリマー(NCO:16.0%)。
すなわち、混合槽にA−2 90部とA−3 10部をとり、撹拌機により撹拌して、ポリマー混合液を得た。これに、C−1 0.1部を添加して、均一になるまで室温で撹拌を続け、プレミックス3を調製した。
【0087】
(2) ポリアクリル系エラストマー成形体の作製
比較例2
プレミックス3にB−2 6.96部を注ぎ込んだ以外は比較例1と同様にして、ポリアクリルウレタンエラストマー組成物を調製した。これを、比較例1と同様の剥離紙を敷いた金型に、比較例1と同様に注型および加熱して、両面が平滑で均質な組成の、ポリアクリル系エラストマーシートを得た。
【0088】
実施例6
実施例1と同様の剥離紙を用いた以外は比較例2と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有する、均質で完全に硬化したポリアクリル系エラストマーシートを得た。
【0089】
実施例7
実施例2と同様の、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型を用いた以外は、比較例2と同様にして、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に部分的に形成されたポリアクリル系エラストマーシートを得た。
【0090】
実施例8
プレミックスを調製する段階で、さらにD−1 10部を配合した以外は比較例2と同様にして、D−1を含有するプレミックス4を調製した。プレミックス3の代わりにプレミックス4を用いた以外は比較例2と同様にして、一方の面(粘着性調整面)にニッケルが多量に存在するポリアクリル系エラストマーシートを得た。
【0091】
実施例9
実施例4と同様の金型を用いた以外は実施例7と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリアクリル系エラストマーシートを得た。
【0092】
実施例10
プレミックス3の代わりにプレミックス4を用いた以外は実施例9と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつその面にニッケルが多量に存在し、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が形成されたポリアクリル系エラストマーシートを得た。
【0093】
(3) 評価
実施例6〜10および比較例2のポリアクリル系エラストマーシートの、表面硬さおよび粘着性を測定した。その結果を表3に示す。ただし、実施例6〜10については、表3には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例6〜10のポリアクリル系エラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例2のポリアクリル系エラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
【0094】
【表3】

【0095】
5.ポリアクリル系エラストマー成形体(2)
(1) ポリアクリル系エラストマー成形体の作製
実施例Z1
前記調製例X1で得られたコーティング剤を、メチルエチルケトンで5%溶液に希釈して、前記比較例1と同様のステンレス製金型の底面にスプレー塗布し、風乾後、メチルエチルケトンが揮散するまで100℃に加熱して、表層に塗膜(厚さ10μm)を有するステンレス製金型を作製した。この金型に、比較例2と同様に調製したプレミックス3とB−2の混合物を注型し、以下、比較例1と同様の加熱条件で加熱することにより、剥離面から移行して、厚さ10μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に形成されたポリアクリル系エラストマーシートを得た。
実施例Z2
調整例X1の代わりに調製例X2で得られたコーティング剤を使用して、実施例Z1と同様にして、ポリアクリル系エラストマーシートを得た。
実施例Z3
調整例X1の代わりに調製例X3で得られたコーティング剤を使用して、実施例Z1と同様にして、ポリアクリル系エラストマーシートを得た。
【0096】
(2) 評価
実施例Z1〜Z3および比較例2のポリアクリル系エラストマーシートの、表面硬さおよび粘着性を測定した。その結果を表4に示す。ただし、実施例Z1〜Z3については、表4には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例Z1〜Z3のポリアクリル系エラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例2のポリアクリル系エラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
【0097】
【表4】

【0098】
6.ポリシロキサンエラストマー成形体
(1) プレミックスの調製
調製例3
下記の原料を用いて、ポリシロキサンエラストマー組成物のプレミックスを調製した。
A−4:両末端がジメチルビニルシロキシ単位で封鎖されたポリジメチルシロキサン(平均重合度200);
A−5:両末端がジメチルビニルシロキシ単位で封鎖されたポリジメチルシロキサン(平均重合度500);
B−3:両末端がジメチル水素シロキシ単位で封鎖されたポリジメチルシロキサン(平均重合度22);
B−4:両末端がトリメチルシロキシ単位で封鎖され、ジメチルシロキサン単位40モル%とメチル水素シロキサン単位60モルからなるポリメチル水素シロキサン(平均重合度42);
C−2:白金−テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体(白金原子2.0%)。
【0099】
A−4 32部およびA−5 17.5部をニーダーに仕込み、これにB−3 9.8部およびB−4 0.2部を配合して、均一になるまで混和して、プレミックス5aを調製した。これを容器に取り出してニーダーをキシレンで充分に洗浄し、乾燥した後、A−4 32部およびA−5 18.5部をニーダーに仕込み、これにC−2 0.02部を配合し、均一になるまで混和して、プレミックス5bを調製した。これをプレミックス5aとは別の容器に取り出した。
【0100】
(2) ポリシロキサンエラストマー成形体の作製
比較例3
プレミックス5aとプレミックス5bを等量とり、撹拌機で均一になるまで混合し、ついで真空ポンプにより脱泡して、ポリシロキサンエラストマー組成物を調製した。これを、比較例1と同様の金型に注型し、注型後の硬化条件を70℃、1時間とした以外は比較例1と同様にして、両面が平滑で均質な組成の、ポリシロキサンエラストマーシートを得た。
【0101】
実施例11
実施例1と同様の剥離紙を用い、等量のプレミックス5aとプレミックス5bから、比較例3と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有する、均質で完全に硬化したポリシロキサンエラストマーシートを得た。
【0102】
実施例12
プレミックス5aとプレミックス5bから比較例3と同様に調製した組成物を、実施例2と同様の、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体層を剥離層として有する金型に注型した以外は、比較例3と同様にして、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が、一方の面(粘着性調整面)に部分的に形成されたポリシロキサンエラストマーシートを得た。
【0103】
実施例13
プレミックスを調製する段階で、プレミックス5a、5bにそれぞれD−1 5部を追加配合した以外は比較例3と同様にして、それぞれD−1を含有するプレミックス6aおよびプレミックス6bを調製した。プレミックス5a、5bの代わりにプレミックス6a、6bを用いた以外は比較例3と同様にして、一方の面(粘着性調整面)にニッケルが多量に存在するポリシロキサンエラストマーシートを得た。
【0104】
実施例14
実施例4と同様の金型を用いた以外は比較例3と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリシロキサンエラストマーシートを得た。
【0105】
実施例15
プレミックス5a、5bの代わりにプレミックス6a、6bを用いた以外は実施例14と同様にして、一方の面が平滑で、他方の面(粘着性調整面)が細かい凹凸を有し、かつニッケルが多量に存在し、その面にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層が部分的に形成されたポリシロキサンエラストマーシートを得た。
【0106】
(3) 評価
実施例11〜15および比較例3のポリシロキサンエラストマーシートの、針入度および粘着性を測定した。その結果を表5に示す。ただし、実施例11〜15については、表5には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例11〜15のポリシロキサンエラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例3のポリシロキサンエラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
【0107】
【表5】

【0108】
7.スチレン系熱可塑性エラストマー
(1) 組成物の調製
調製例4
下記の原料を用いて、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む組成物を調製した。
A−6:ポリスチレン−ポリ(エチレン・ブタジエン)−ポリスチレンブロック共重合体;
E−1:パラフィン系プロセスオイル(40℃における粘度20mm2/s);
E−2:水素添加テルペン系樹脂(軟化点150±5℃)。
すなわち、A−6 32.5部、E−1 62.5部およびE−2 5部を均一になるまで混合して、組成物を調製した。
【0109】
(2) スチレン系熱可塑性エラストマー成形体の作製
比較例4
組成物を、二軸押出成形機により、200℃で連続的にシート状に押出して、表面が平滑なスチレン系熱可塑性エラストマーシートを得た。
【0110】
実施例16、17
比較例4と同様にして得られた熱可塑性エラストマーシートの一方の面に、200℃に加熱したアルミニウム製押し型を押し当てて、実施例1と同様の凹凸面(粘着性調整面)を設けたスチレン系熱可塑性エラストマーシートを得た(実施例16)。また、同様にして設けたこの凹凸面に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を、メチルエチルケトンで5%溶液に希釈してスプレー塗布し、風乾後、メチルエチルケトンが揮散するまで100℃に加熱して、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の厚さ1μmの層を形成させて、スチレン系熱可塑性エラストマーシートを得た(実施例17)。
【0111】
(3) 評価
実施例16、17および比較例4のスチレン系熱可塑性エラストマーシートの、表面硬さおよび粘着性を測定した。その結果を表6に示す。ただし、実施例16、17については、表6には、粘着性調整面の粘着性を示す。実施例16、17のスチレン系熱可塑性エラストマーシートの粘着面の粘着性は、比較例4のスチレン系熱可塑性エラストマーシートとほぼ同等の粘着性を示した。
【0112】
【表6】

【0113】
以上1〜7を総合して、本発明によって、一方の面に(1)細かい凹凸を設け、(2)剥離性の薄層を設け、または(3)粒子を多く存在させることによって、その面を粘着性調整面としたエラストマーシートは、いずれも、そのような処理を行わない比較例のエラストマーシートに比べて、表面硬さ(または針入度)の大きな変化は見られず、粘着性調整面の粘着性が低下していた。特に上記(1)と(2)、または(1)、(2)、(3)を併用した粘着性調整面は、粘着性を低下させる著しい効果を示していた。
【0114】
8.ポリウレタンエラストマー成形体(3)
(1) 原料
原料として、以下のものを使用した。
a−1:ポリプロピレングリコール(数平均分子量10,000、F=3)
a−2:ポリプロピレングリコール(数平均分子量6,000、F=3)
a−3:ポリプロピルエーテルモノオール(数平均分子量3,300、F=1、片末端の水酸基がメチル基で閉塞されている)
a−4:ポリ(アクリル酸ブチル)モノオール(数平均分子量1,300、F=1)
消泡剤:鉱物油とアクリル系コポリマーの混合物
SO:オクタン酸スズ
b−1:ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー(数平均分子量500、F=2)
b−2:ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー(数平均分子量970、F=2.8)
コーティング剤A:前記調製例X1に準じて調製した(100%応力5.0MPa、引張強さ75MPa、伸び400%、軟化点100℃)。
【0115】
(2) ポリウレタンエラストマー成形体の作製
上記コーティング剤Aを溶剤(メチルエチルケトン)に溶解させ、型の内表面に厚さ12.5μmになるようにコーティングした後、80℃で10分間加熱して溶剤を除去した。
一の攪拌槽でb−1およびb−2以外の成分を均一になるまで混合してポリオール混合物を調製し、次いで、これら調製したポリオール混合物とb−1またはb−2とを、別の攪拌槽で混合して、さらに、真空脱泡をしてポリウレタンエラストマー原料混合物を得、これを上記のコーティングされた型に流し込み、80℃にて120分間加熱して硬化させた。その後、脱型して適当な大きさに切断し、実施例W1〜W12のポリウレタンエラストマーシートを得た。配合成分量は表7〜8に基づく。
【0116】
【表7】

【0117】
【表8】

【0118】
(3) 評価
実施例W1〜W12のポリウレタンエラストマーシートの、表面硬さ、引張強さ、粘着性、耐摩耗性、外観、および耐熱性を評価した。なお、粘着性は、両面テープのJIS Z0237に従いボールタック試験及び180°引き剥がし粘着力にて粘着面の粘着性を測定した。結果を表9に示す。
なお、180°引き剥がし粘着力で粘着性を測定した場合、実施例W1〜W12のポリウレタンエラストマーシートのいずれにおいても、粘着調整面は0.05以下を示した。
【0119】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のエラストマー成形体、特に片面が粘着面で、他の面が粘着性調整面であるシートまたはフィルムは、一方の面のみに粘着性を有することから作業性に優れており、その低い表面硬度、高い衝撃吸収性、耐熱性および低い汚染性を生かして、防振材、緩衝材、標識などに有用である。特に、粒子として蓄光顔料を使用すれば、防災分野その他の標識として簡便に用いることができ、磁性粉を用いれば電磁波吸収体の分野に使用できるなど、各方面への適用が可能である。
また、靴内部の、空隙矯正用部材、クッション材、または衝撃吸収材、例えば、靴擦れ防止パッドおよび靴のインソールなどにも使用できる。また、電子部品部材などにおいても、本発明のエラストマー成形体は、粘着面以外に粘着性調整面も併せ持つので、従来では全表面が粘着性を有するものであったため使用できなかった部分でも使用することができる。例えば、電子・電気製品用の各種ダンパーおよび防振部品などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体として形成された柔軟性エラストマー成形体であって、成形体が、粘着面と、JIS Z 0237で測定した粘着強さを粘着面の0.1〜90%に調整された、下記(1)、(2)および/または(3)の粘着性調整面とを有するエラストマー成形体
(1)粘着性調整面が、表面に細かい凹凸が設けられ、平滑面との接触表面積が粘着面より小さい面である;
(2)粘着性調整面が、表面の少なくとも一部分に、厚さ0.001〜150μmで、粘着面の90%以下の粘着強さを有する非粘着性ないし低粘着性の薄層が存在する面である(ただし、該薄層が非粘着性の場合、該薄層は、表面の一部分に存在する);
(3)成形体が、見掛け比重が1.8以上で、平均粒子径が3〜1,000μmの粒子が、粘着面より粘着性調整面に多く存在するような傾斜組成を有するか、上記粒子が粘着性調整面のみに存在することにより、粘着性調整面が、上記粒子を粘着面より多く含む面である。
【請求項2】
粘着性調整面にてASTM D1403に規定された1/4コーンを用いて測定した針入度が200以下であり、粘着性調整面にてJIS K 7312のタイプCデュロメータで測定した表面硬さが60以下である、請求項1記載のエラストマー成形体。
【請求項3】
エラストマーの主成分であるポリマーが、ポリウレタン、ポリアクリル系もしくはポリシロキサンであるか、またはポリスチレンブロックを有する熱可塑性エラストマーである、請求項1または2記載のエラストマー成形体。
【請求項4】
(2)において、粘着性調整面の表面の少なくとも一部分に、ウレタン塗料、アクリル塗料、エポキシ塗料、およびシリコーン塗料からなる群から選ばれる塗料を塗布して非粘着性ないし低粘着性の薄層を形成させた、請求項1から3のいずれか1項記載のエラストマー成形体。
【請求項5】
塗料がウレタン塗料である、請求項4記載のエラストマー成形体。

【公開番号】特開2008−13760(P2008−13760A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151600(P2007−151600)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【Fターム(参考)】