説明

粘膜組織の炎症を治療および予防するための方法ならびに物質

【課題】非侵入性真菌誘導粘膜炎を治療および予防するための方法ならびに物質を提供する。
【解決手段】抗真菌薬が非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を予防し、軽減しまたは消失させるのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり粘液に接触するように、抗真菌薬を投与する。更に非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を診断して、哺乳動物の粘液サンプル由来の非侵入性真菌を培養するための方法および物質、ならびに非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を治療および予防するための特定の抗真菌製剤および医療デバイスを提供する。さらに、本発明は、その他の非侵入性真菌誘導粘膜炎の症状、例えば慢性中耳炎、慢性大腸炎、クローン病などを治療および予防する方法と物質を提供する。さらには、本発明は、慢性喘息の症状を治療および予防する方法と物質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔背景〕
本発明は、粘膜組織の非侵入性真菌誘導炎症ならびに喘息症状の治療および予
防に関与する方法および物質に関する。
【背景技術】
【0002】
粘膜組織の炎症である粘膜炎は、世界中で何百万人もが冒されている深刻な医
療問題である。例えば、控えめに見積もっても2000万〜4000万人のアメリカ人が
鼻腔および/または副鼻腔の炎症である慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis)
に罹患している。
【0003】
ほとんどの場合、慢性副鼻腔炎の原因は不明である。しかし、一部の患者にお
いては、粘液中に生存している非侵入性真菌生物が関与していると思われる。こ
の症状がある患者は、現在ではアレルギー性真菌性副鼻腔炎(allergic fungal
sinusitis:AFS)として知られており、1980年代の初頭に初めて記載された[非
特許文献1および非特許文献2]。特に、ポリープの形成によって起こる鼻の閉
塞のために手術を必要とする慢性副鼻腔炎の症例の約3〜8パーセントがAFSとし
て分類されている。つまり、AFSは、鼻−鼻傍腔における濃化粘液の存在によって
診断される。典型的には、この粘液は、壊死性好酸球、シャルコー‐ライデン結
晶および非侵入性真菌の菌糸の塊または薄板状物を含む。さらに、AFSの患者は、
典型的には鼻−鼻傍ポリープ症の病歴があり、何回も手術を受けていた可能性が
ある。炎症は、鼻−鼻傍腔全部を冒し得るが、非対称で一方の側だけに関与する
場合もある。AFSの患者のコンピュータ連動断層撮(CT)スキャンには特徴的な様
相があり、隣接構造体において骨の侵食を示すことが多い。実際、副鼻腔および
鼻部領域に隣接する骨が19パーセントから80パーセントの範囲で破壊されること
が報告されている。
【0004】
真菌生物がAFSの原因物質であると思われるが、有望な治療は依然としてない
。現在、AFS患者ならびに大部分の慢性副鼻腔炎患者は、ステロイド療法と併用
して、または併用せずに外科的治療を受ける。手術は、ポリープにより閉塞され
ている場合に鼻−鼻傍腔を開通させるのに役立ち、ステロイド療法は、組織およ
び骨の破壊を引き起こすと思われる炎症応答を調節するのに役立つ。残念なこと
に、手術によってのみ治療される患者は、ほぼ必ず、再発性の副鼻腔炎の症状お
よびさらにその上にポリープの増殖を経験する。さらに、ステロイドを長期にわ
たって使い続けるとかなりの副作用が伴い、ステロイド療法をやめても副鼻腔炎
の再発性のエピソードが生じる。これらの理由から、慢性副鼻腔炎の症状を罹っ
ている人々は、典型的には、強い炎症、手術およびステロイド療法のサイクルを
繰り返し受けた後、再発性の強い炎症が起こる。したがって、手術もステロイド
療法も、慢性副鼻腔炎症状の長期間の治療として特に有効でもないし望ましくも
ない。
【非特許文献1】Miller JWら, Prod. Scot. Thor. Soc. 36:710 (1981)
【非特許文献2】Katzenstein ALAら, J. Allergy Clin. Immunol. 72:89-93 (1983)
【発明の開示】
【0005】
〔概要〕
本発明は概して、非侵入性真菌誘導粘膜炎を治療および予防するための方法お
よび物質に関する。本明細書中で用いられる「粘膜炎」なる用語は、(感染に対
して)粘膜の炎症を意味する。本発明は、鼻−鼻傍粘液中の真菌生物の存在によ
り引き起こされる炎症を軽減するのに有効な量で、頻度で、および期間にわたっ
て抗真菌薬を用いることにより、AFSとして知られる症状がうまく治療され得る
、という知見に基づく。さらに、本発明は、鼻−鼻傍粘液中の真菌生物を低レベ
ルに維持するのに有効な量で、頻度で、および期間にわたって抗真菌薬を用いる
ことによりAFS症状が予防できる、という知見に基づく。詳細に言えば、本発明
は、抗真菌薬を哺乳動物に投与して、該抗真菌薬が該哺乳動物の粘液に接触し、
粘液中の真菌生物の存在を低下させるようにすることを含む。抗真菌薬の使用は
、AFSをうまく治療および予防するための唯一の既存の方法であることに加えて
、外科的処置およびステロイド療法のような他の現在利用可能なAFSに対する医
療アプローチと比較した場合、患者にとって得に有利である。そのような医療ア
プローチには、副作用があり、費用が高く、しかも患者に対して苦痛を伴うこと
がある。
【0006】
本発明はまた、全部ではないにしても大部分の慢性副鼻腔炎の症状が真菌病因
論を有すること、ならびに、全部ではないにしても大部分の慢性副鼻腔炎の症例
が、鼻−鼻傍粘液中の真菌生物の存在を低下させるのに有効な量で、頻度で、お
よび期間にわたって抗真菌薬を用いることによって治療され得る、という知見に
基づく。さらに、鼻−鼻傍粘液中の真菌生物を低レベルに維持するのに有効な量
で、頻度で、および期間にわたって抗真菌薬を用いることによって、慢性副鼻腔
炎の症状を予防し得る。
【0007】
この知見は、現在の慢性副鼻腔炎の認識とは逆であり、医学において広範囲に
及ぶ意味を持つ。例えば、多数の医学研究論文には、手術を必要とする慢性副鼻
腔炎の症例の約3〜8パーセントがAFSであり、副鼻腔炎の症状が非侵入性真菌
病因論を有することが報告されている。事実、過去15年間にわたって150にも満
たないAFSの症例しか文献に報告されていない。罹患している個体は細菌性感染
症(すなわち、侵入性細菌)を有していることが見られる場合が多いので、慢性
副鼻腔炎症状の非侵入性真菌病因論についての認識が欠けていた可能性があった
ことに注目すべきである。おそらく、非侵入性真菌誘導炎症によって引き起こさ
れる組織の損傷が、結果として、そうした損傷領域において細菌感染症をより高
度に発生させる。つまり、冒された個体において細菌感染症がその上に重なるこ
とによって、根底にある原因、すなわち粘液中の真菌生物が隠蔽されていた可能
性がある。
【0008】
本発明の目的のために、「非侵入性真菌誘導副鼻腔炎」なる用語は、AFS、な
らびに非侵入性真菌病因論を有するあらゆる他の鼻−鼻傍粘膜炎の症状を包含す
る。
【0009】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎(AFSと診断されたものであっても、または非侵入
性真菌病因論を有するあらゆる他の副鼻腔炎と診断されたものであっても)を抗
真菌薬を用いることによって治療および予防することにより、患者に相当の痛み
や苦しみをもたらす外科的治療およびステロイド療法を用いなくても済むように
なる。さらに、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎の治療および予防に抗真菌薬を使用す
ることは、実際には病因物質(すなわち真菌)に対しての処置を目的としており
、これは外科的治療、ステロイド療法および抗細菌治療とは異なる。
【0010】
本明細書中で用いられる「慢性(の)」なる用語は、少なくとも3ヶ月間にわ
たって存在する苦痛をいう。本明細書中で記載されるように治療され無症候性と
なる苦痛は慢性として分類される、と理解すべきである。したがって、慢性の苦
痛とは症候性であってもよいし無症候性であってもよい。
【0011】
本発明はまた、慢性喘息症状が、気道粘液中の真菌生物の存在を低下させるの
に有効な量で、頻度で、および期間にわたって抗真菌薬を用いることによってう
まく治療および予防され得る、という別の、同じ位重要な知見に基づく。また、
抗真菌薬が慢性喘息の治療のために肺気道に直接投与できる、ということもこれ
らの知見から明らかである。ここでもまた、これらの知見は、現在の慢性喘息の
認識とは逆であり、広範囲に及ぶ臨床上の意味を持つ。総合すると、これらの非
常に画期的な知見は、大勢の人々をより幸福に、より健康に、そしてより豊かな
日常生活を送れるようにできる可能性を持ち得る。
【0012】
詳細にいえば、本発明は、多種多様な粘膜炎症性疾患(mucoinflammatory dis
eases)を抗真菌薬を用いることにより治療および予防するための方法および物
質を提供する。抗真菌薬の使用は、非侵入性真菌誘導粘膜炎を軽減、予防または
排除するのに有効な量で、頻度で、および期間にわたって抗真菌薬を粘膜投与す
ることを含んでなる、安全かつ非常に有効な治療方法である。本明細書中で用い
られる「粘膜投与(mucoadministration)」なる用語は、投与した薬剤を粘液と
接触させておく、あらゆる種類の投与をいう。本発明はまた、粘液を含む哺乳動
物の種々の部位に適用可能な特定の抗真菌製剤を提供する。さらに、本発明は、
抗真菌製剤を適用するのに用い得る医療デバイスを提供する。これらのデバイス
は、個体自身によって特定の抗真菌製剤の有効用量を身体の適切な領域に投与す
るのに用いられ得るので、特に有利である。さらに、本発明は、粘液サンプルか
ら真菌生物を収集および培養するための改善された方法および物質を提供する。
これらの培養技術は、特定の抗真菌治療レジメの間に粘液中の真菌種の数をモニ
ターするのに用い得る。さらに、これらの真菌の収集および培養の方法ならびに
物質は、非侵入性真菌誘導粘膜炎を引き起こす特定の真菌生物の遺伝子型および
表現型を同定するのに有用である。特定の個体の粘液中で見出される非侵入性真
菌生物の同定および特性決定は、適切な治療方法および予防方法を決定する上で
臨床家の助けとなり得る。例えば、この情報は、特定の抗真菌薬、量、投与形態
および用いる適用回数、ならびに他の薬物および手法(例えば、ステロイド、抗
細菌薬、および手術)を含み得る可能なコンビナトリアル療法を決定するのに役
立ち得る。
【0013】
概して、本発明は、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎に罹患している哺乳動物(例え
ばヒト)を治療するための方法であることを特徴とする。この方法は、該哺乳動
物の鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を軽減または
排除するのに有効な量で、頻度で、および期間にわたって製剤を直接粘膜投与す
ること含む。この製剤は、1種の抗真菌薬または複数種の抗真菌薬を含有し、固
体、液体またはエアロゾルの形態[例えば、粉末、結晶性物質、ゲル、ペースト
、軟膏(ointment, salve)、クリーム、溶液、懸濁液、半液体、スプレー、噴
射剤、ミスト、細霧化蒸気、エアロゾルおよびチンキ剤]とし得る。さらに、こ
の製剤は、ヒトによる自己粘膜投与に適する形態とし得る。
【0014】
さらに、この製剤は、製剤上許容しうる水系ビヒクル(例えば、食塩水および
水)を含有し得る。例えば、この製剤の液状形態は、水系ヒビクルの体積当たり
の抗真菌薬の重量として求めた場合に約0.00001パーセントから約20パーセント
の抗真菌薬を含有し得る。さらに、この製剤は、本発明の幾つかの実施形態では
リットル当たり約0.01ngから約1000mgの抗真菌薬(例えばアンホテリシンB)を
、本発明の他の実施形態ではリットル当たり約1ngから約500mgの抗真菌薬を、
または本発明のさらに他の実施形態ではリットル当たり約100mgの抗真菌薬を含
有し得る。さらに、これらの水系製剤の有効量は、本発明の幾つかの実施形態で
は、外鼻孔当たり約0.01mLから約1Lの製剤、本発明の他の実施形態では外鼻孔
当たり約5mLから約100mLの製剤、または本発明のさらに他の実施形態では外鼻
孔当たり約40mLの製剤とし得る。あるいはまた、製剤の有効量は、本発明の幾つ
かの実施形態では哺乳動物の体重kg当たり約0.01ngから約1000mgの抗真菌薬、ま
たは本発明の他の実施形態では哺乳動物の体重kg当たり約1ngから約500mgの抗
真菌薬とし得る。製剤の有効量は、有効な期間の間に変化させてもよいし、一定
のままにしてもよい。直接粘膜投与の有効頻度は、本発明の幾つかの実施形態で
は1日当たり約4回から1週間おきに約1回まで、本発明の他の実施形態では1
日当たり約2回から1週間当たり約1回まで、または本発明のさらに別の実施形
態では1日当たり約2回であり得る。さらに、直接粘膜投与の有効な頻度は、1
日当たり1回以上、または1週間当たり1回以上であり得る。有効な期間は、約
7、14、30、60または90日間以上であり得る。
【0015】
哺乳動物は、アトピー性であっても非アトピー性であってもよく、免疫応答性
であっても免疫無防備状態であってもよい。さらに、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎
は、ポリープの形成またはポリープ状の変化によって特徴づけできる。非侵入性
真菌誘導副鼻腔炎はまた、慢性の症状であってもよい。粘膜投与は、該製剤の液
状形態による鼻−鼻傍構造の少なくとも一部の灌注であり得る。あるいはまた、
粘膜投与は、該製剤のエアロゾル形態を鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に適用す
ることを含み得る。抗真菌薬は、固体、液体またはエアロゾルの形態であり得る
。さらに、抗真菌薬は、ポリエンマクロライド、テトラエンマクロライド、ペン
タエンマクロライド、フッ化ピリミジン、イミダゾール、アゾール、トリアゾー
ル、ハロゲン化フェノール系エーテル、チオカルバメート、アリルアミン、ステ
ロール系抑制薬、および真菌の細胞壁成分に間入する薬剤であり得る。そのよう
な抗真菌薬としては、アンホテリシンB、フルシトシン、ケトコナゾール、ミコ
ナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、グリセオフルビン、クロトリマ
ゾール、エコナゾール、テラコナゾール(terconazole)、ブトコナゾール、オキ
シコナゾール、スルコナゾール、サパーコナゾール(saperconazole)、ボリコナ
ゾール(voriconazole)、シクロピロックスオラミン、ハロプロジン、トルナフテ
ート、ナフチフィン、タービナフィン(terbinafine)ハイドロクロライド、モル
ホリン類、ナイスタチン、ナタマイシン、ブテナフィン(butenafine)、ウンデシ
レン酸、ホワイトフィールド(Whitefield)軟膏、プロピオン酸およびカプリル酸
が挙げられる。該製剤は、抗真菌薬を含有することに加えて、(限定するもので
はないが)製剤上許容しうる水系ビヒクル、製剤上許容しうる固形ビヒクル、ス
テロイド、粘液溶解薬、抗細菌薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、拡張薬、血管収縮薬
、うっ血除去薬、ロイコトリエン抑制薬、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、治
療用化合物、およびこれらの組合せを含有し得る。
【0016】
この方法はまた、(限定するものではないが)抗真菌薬、抗細菌薬、ステロイ
ド、粘液溶解薬、抗炎症薬、免疫抑制薬、拡張薬、血管収縮薬、うっ血除去薬、
ロイコトリエン抑制薬、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン薬、治療用化合物、また
はそれらの組合せを含有する第2の製剤を投与することも含み得る。同様に、こ
の方法は、直接的粘膜投与の後で追加の工程を含み得る。この追加の工程とは、
哺乳動物への、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を予防するのに有効な量での、頻度で
の、および期間にわたる予防用製剤の予防粘膜投与であり得る。この予防用製剤
もまた抗真菌薬を含み得るものであり、固体、液体またはエアロゾルの形態[例
えば、粉末、結晶性物質、ゲル、ペースト、軟膏(ointment, salve)、クリーム
、溶液、懸濁液、半液体、スプレー、噴射剤、ミスト、細霧化蒸気、エアロゾル
、チンキ剤、丸剤、カプセル剤、錠剤およびゲルカップ]とし得る。さらに、こ
の予防粘膜投与は、直接的粘膜投与であっても間接的粘膜投与であってもよい。
例えば、予防粘膜投与は、鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に予防用製剤の液状形
態を灌注すること、鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に予防用製剤のエアロゾル形
態を適用すること、または哺乳動物へ予防用製剤を固体または液体の形態で経口
投与することであり得る。
【0017】
上記の本発明のさらなる特徴の各々が以下のさらなる本発明の実施形態および
態様に適用可能であることが理解されよう。例えば、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎
を発症する危険性がある哺乳動物を予防目的で治療する方法、および喘息を治療
する方法は、抗真菌薬が製剤の重量または体積当たり約0.00001パーセントから
約20パーセント等である製剤を用い得る。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を発症する危険
性がある哺乳動物を予防目的で治療する方法であることを特徴とする。この方法
は、該哺乳動物に、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を予防するのに有効な量で、頻度
で、および期間にわたって製剤を粘膜投与することを含む。この製剤は抗真菌薬
を含有する。
【0019】
本発明の別の実施形態は、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎に罹患している哺乳動物
を治療するための方法であることを特徴とする。この方法は、該哺乳動物を同定
(例えば診断)し、そして該哺乳動物の鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に、非侵
入性真菌誘導副鼻腔炎を軽減または排除するのに有効な量で、頻度で、および期
間にわたって製剤を直接粘膜投与する工程を含む。この製剤は抗真菌薬を含有す
る。
【0020】
本発明の別の実施形態は、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を発症する危険性のある
哺乳動物を予防目的で治療するための方法であることを特徴とする。この方法は
、該哺乳動物を同定(例えば診断)し、そして該哺乳動物の鼻−鼻傍構造の少な
くとも一部に、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を予防するのに有効な量で、頻度で、
および期間にわたって製剤を粘膜投与する工程を含む。この製剤は抗真菌薬を含
有する。
【0021】
別の態様において、本発明は、喘息に罹患している哺乳動物を治療するための
方法であることを特徴とする。この方法は、該哺乳動物の気道(例えば鼻−鼻傍
気道および肺気道)の少なくとも一部に、喘息症状を軽減または排除するのに有
効な量で、頻度で、および期間にわたって製剤を直接粘膜投与することを含む。
この製剤は抗真菌薬を含有する。この直接粘膜投与は、該哺乳動物の鼻−鼻傍構
造に製剤の液状形態を灌注することであり得る。あるいはまた、この直接粘膜投
与は、該哺乳動物の口または鼻からの製剤の吸入であってもよい。さらに、この
方法は、この直接粘膜投与の後で追加の工程を含み得る。この追加の工程とは、
該哺乳動物への、喘息症状を予防するのに有効な量での、頻度での、および期間
にわたる予防用製剤の、予防を目的とする粘膜投与であり得る。この予防用製剤
もまた抗真菌薬を含有する。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、喘息を発症する危険性のある哺乳動物を予
防目的で治療するための方法であることを特徴とする。この方法は、該哺乳動物
の気道(例えば鼻−鼻傍気道および肺気道)の少なくとも一部に、喘息症状を予
防するのに有効な量で、頻度で、および期間にわたって製剤を粘膜投与すること
を含む。この製剤は抗真菌薬を含有する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、喘息に罹患している哺乳動物を治療するための方法
であることを特徴とする。この方法は、該哺乳動物を同定(例えば診断)し、そ
して該哺乳動物の気道(例えば鼻−鼻傍気道および肺気道)の少なくとも一部に
、喘息症状を軽減または排除するのに有効な量で、頻度で、および期間にわたっ
て製剤を直接粘膜投与する工程を含む。この製剤は抗真菌薬を含有する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、喘息を発症する恐れのある哺乳動物の予防的治療方
法を特徴とする。この方法は、哺乳動物を識別し(たとえば、診断し)、哺乳動
物の気道の少なくとも一部(たとえば、鼻-鼻傍気道および肺気道)に、喘息の
症状を予防するのに有効な、量で、頻度で、期間にわたり、製剤を粘膜投与する
段階を含む。この製剤は抗真菌薬を含有する。
【0025】
別の態様において、本発明は非侵入性真菌誘導腸粘膜炎(たとえば、慢性大腸
炎およびクローン病)を有する哺乳動物の治療方法を特徴とする。この方法は、
非侵入性真菌誘導腸粘膜炎の症状を軽減または排除するのに有効な、量で、頻度
で、期間にわたり、哺乳動物に製剤を粘膜投与することを含む。この製剤は抗真
菌薬を含有し、制御放出カプセル(たとえば、pHまたは時間による制御放出カプ
セル)の形態であってよい。粘膜投与は、哺乳動物の消化管内への製剤の経口に
よる適用であってよい。あるいは、粘膜投与は、注腸による哺乳動物の消化管内
への製剤の適用であってもよい。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎(たとえば、慢
性大腸炎およびクローン病)を発症する恐れのある哺乳動物の予防的治療方法を
特徴とする。この方法は、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎の症状を予防するのに有効
な、量で、頻度で、期間にわたり、哺乳動物に製剤を粘膜投与することを含む。
この製剤は抗真菌薬を含有する。
【0027】
別の態様において、本発明は非侵入性真菌誘導中耳炎を有する哺乳動物の治療
方法を特徴とする。この方法は、非侵入性真菌誘導中耳炎を軽減または排除する
のに有効な、量で、頻度で、期間にわたり、哺乳動物に製剤を粘膜投与すること
を含む。この製剤は抗真菌薬を含有する。粘膜投与は哺乳動物の中耳内への製剤
の適用であってよい。たとえば、鼓膜が隆起している、または傷ついている場合
には、液状形態の製剤を用いて中耳に潅注してもよい。あるいは、製剤を中耳に
注入するか、鼓膜を貫通させるために鼓膜切開を用いてもよい。これに加えて、
鼓膜切開管を用いて鼓膜にバイパスを作ってもよい。さらに、鼻およびエウスタ
ーキオ管を通じて中耳に製剤を粘膜投与してもよい。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、非侵入性真菌誘導中耳炎を発症する恐れの
ある哺乳動物の予防的治療方法を特徴とする。この方法は、非侵入性真菌誘導中
耳炎を予防するのに有効な、量で、頻度で、期間にわたり、哺乳動物に製剤を粘
膜投与することを含む。この製剤は抗真菌薬を含有する。
【0029】
別の態様において、本発明は包装材料(たとえば、箱、包装材料、バイアルビ
ン、および他の容器)および該包装材料の中に入った製剤からなる製品を特徴と
する。この製剤は抗真菌薬を含有する。該包装材料には、非侵入性真菌誘導副鼻
腔炎を有する哺乳動物の鼻-鼻傍構造の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導副
鼻腔炎を軽減または排除するのに有効な、量で、頻度で、期間にわたり、該製剤
を直接粘膜投与することができることを指示するラベルまたは包装内の説明書が
含まれる。
【0030】
別の実施形態において、本発明は包装材料および該包装材料の中に入った製剤
からなる製品を特徴とする。この製剤は抗真菌薬を含有し、該包装材料には、非
侵入性真菌誘導副鼻腔炎を発症する恐れのある哺乳動物の鼻-鼻傍構造の少なく
とも一部に、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を予防するのに有効な、量で、頻度で、
期間にわたり、該製剤を粘膜投与することができることを指示するラベルまたは
包装内の説明書が含まれる。
【0031】
本発明の別の実施形態は、包装材料および該包装材料の中に入った製剤からな
る製品を特徴とする。この製剤は抗真菌薬を含有する。該包装材料には、喘息を
有する哺乳動物の気道の少なくとも一部に、喘息の症状を軽減または排除するの
に有効な、量で、頻度で、期間にわたり、該製剤を直接粘膜投与することができ
ることを指示するラベルまたは包装内の説明書が含まれる。
【0032】
本発明の別の実施形態は、包装材料および該包装材料の中に入った製剤からな
る製品を特徴とする。この製剤は抗真菌薬を含有し、該包装材料には、喘息を発
症する恐れのある哺乳動物の気道の少なくとも一部に、喘息の症状を予防するの
に有効な、量で、頻度で、期間にわたり、該製剤を粘膜投与することができるこ
とを指示するラベルまたは包装内の説明書が含まれる。
【0033】
本発明の別の実施形態は、包装材料および該包装材料の中に入った製剤からな
る製品を特徴とする。この製剤は抗真菌薬を含有する。該包装材料には、非侵入
性真菌誘導腸粘膜炎を有する哺乳動物に、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎の症状を軽
減または排除するのに有効な、量で、頻度で、期間にわたり、該製剤を粘膜投与
することができることを指示するラベルまたは包装内の説明書が含まれる。
【0034】
本発明の別の実施形態は、包装材料および該包装材料の中に入った製剤からな
る製品を特徴とする。この製剤は抗真菌薬を含有し、該包装材料には、非侵入性
真菌誘導腸粘膜炎を発症する恐れのある哺乳動物に、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎
の症状を予防するのに有効な、量で、頻度で、期間にわたり、該製剤を粘膜投与
することができることを指示するラベルまたは包装内の説明書が含まれる。
【0035】
本発明の別の実施形態は、包装材料および該包装材料の中に入った製剤からな
る製品を特徴とする。この製剤は抗真菌薬を含有する。該包装材料には、非侵入
性真菌誘導中耳炎を有する哺乳動物に、非侵入性真菌誘導中耳炎の症状を軽減ま
たは排除するのに有効な、量で、頻度で、期間にわたり、該製剤を粘膜投与する
ことができることを指示するラベルまたは包装内の説明書が含まれる。
【0036】
本発明の別の実施形態は、包装材料および該包装材料の中に入った製剤からな
る製品を特徴とする。この製剤は抗真菌薬を含有し、該包装材料には、非侵入性
真菌誘導中耳炎を発症する恐れのある哺乳動物に、非侵入性真菌誘導中耳炎の症
状を予防するのに有効な、量で、頻度で、期間にわたり、該製剤を粘膜投与する
ことができることを指示するラベルまたは包装内の説明書が含まれる。
【0037】
別の態様において、本発明は、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎の治療または予防用
薬剤の製造に抗真菌薬を使用することを特徴とする。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、喘息の治療または予防用薬剤の製造に抗真
菌薬を使用することを特徴とする。
【0039】
本発明の別の実施形態は、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎の治療または予防用薬剤
の製造に抗真菌薬を使用することを特徴とする。
【0040】
本発明の別の実施形態は、非侵入性真菌誘導中耳炎の治療または予防用薬剤の
製造に抗真菌薬を使用することを特徴とする。
【0041】
別の態様において、本発明は、抗真菌薬、香料および水を含有する抗真菌製剤
を特徴とする。水は製剤の約50%以上を構成する。たとえば、水は製剤の約55、6
0、65、70、75、80、85、90、95、または99%以上を構成してもよい。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、イトラコナゾールおよび水を含有する抗真
菌製剤を特徴とする。イトラコナゾールを、製剤に約25μg/mLより高い濃度で溶
解する。たとえば、イトラコナゾールを、製剤に約30、40、50、60、70、80、90
、100、110、120、130、140、150、160、170、または180μg/mLより高い濃度で
溶解してもよい。また、水は製剤の約50%以上を構成する。たとえば、水は製剤
の約55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99%以上を構成してもよい。
製剤はまたポリエチレングリコール(たとえば、PEG-200、PEG-400、PEG-800等
)を含有してもよい。製剤はまた香料(たとえば、ペパーミント油、チェリー香
料、シロップ等)を含有してもよい。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、イトラコナゾールおよび水を含有する抗真
菌製剤を特徴とする。イトラコナゾールを、製剤に約25μg/mLより高い濃度で懸
濁する。たとえば、イトラコナゾールを、製剤に約30、40、50、60、70、80、90
、100、110、120、130、140、150、160、170、または180μg/mLより高い濃度で
懸濁してもよい。また、水は製剤の約50%以上を構成する。たとえば、水は製剤
の約55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99%以上を構成してもよい。
製剤はまたポリエチレングリコール(たとえば、PEG-200、PEG-400、PEG-800等
)を含有してもよい。製剤はまた香料(たとえば、ペパーミント油、チェリー香
料、シロップ等)を含有してもよい。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、抗真菌薬、香料および水を含有する抗真菌
製剤を特徴とする。水は製剤の約50%以上を構成する。たとえば、水は製剤の約5
5、60、65、70、75、80、85、90、95、または99%以上を構成してもよい。また、
抗真菌薬はアムホテリシンB、ケトコナゾール、サパーコナゾール(saperconazol
e)、ボリコナゾール(voriconazole)、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾ
ール、グリセオフルビン、クロトリマゾール、エコナゾール、ターコナゾール(t
erconazole)、ブトコナゾール(butoconazole)、オキシコナゾール、スルコナゾ
ール、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフタート、ナフチフィン
(naftifine)、塩酸タービナフィン、モルホリン類、ニスタチン、ナタマイシン(
natamycin)、ブテナフィン、ウンデシレン酸、Whitefield's軟膏、プロピオン酸
およびカプリル酸であってよい。
【0045】
別の態様において、本発明は、抗真菌製剤の製造方法を特徴とする。製剤は、
イトラコナゾールおよび水を含有する。イトラコナゾールを、製剤に約25μg/mL
より高い濃度で溶解する。たとえば、イトラコナゾールを、製剤に約30、40、50
、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、または180μg/m
Lより高い濃度で溶解する。水は製剤の約50%以上を構成する。たとえば、水は製
剤の約55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99%以上を構成してもよい
。本発明の方法には、イトラコナゾールを含有する保存溶液に水を加えることが
含む。
【0046】
別の態様において、本発明は哺乳動物の粘液から真菌を培養する方法を特徴と
する。この方法は、(1)粘液を粘液溶解薬と接触させて粘液の粘度を減少させ、(
2)粘度の減少した粘液から真菌を分離し、(3)分離した真菌を真菌成長培地に接
触させて真菌培地を形成し、(4)真菌培地をインキュベートして分離した真菌を
成長させることからなる。
【0047】
別の態様において、本発明は真菌の抗原を得る方法を特徴とする。この方法は
、(1)哺乳動物の粘液を粘液溶解薬と接触させて粘液の粘度を減少させ、(2)粘度
の減少した粘液から真菌を分離し、(3)分離した真菌を真菌成長培地に接触させ
て真菌培地を形成し、(4)真菌培地をインキュベートして分離した真菌を成長さ
せ、(5)培養した真菌から抗原を単離することからなる。
【0048】
別の態様において、本発明は真菌に特異的な抗体を製造する方法を特徴とする
。この方法は、(1)哺乳動物の粘液を粘液溶解薬と接触させて粘液の粘度を減少
させ、(2)粘度の減少した粘液から真菌を分離し、(3)分離した真菌を真菌成長培
地に接触させて真菌培地を形成し、(4)真菌培地をインキュベートして分離した
真菌を成長させ、(5)培養した真菌から真菌の抗原を単離し、(6)動物を真菌の抗
原で免疫化して抗体を製造することからなる。
【0049】
別の態様において、本発明は鼻の粘液を採集する器具を特徴とする。この器具
は、採集保持器、採集管、および接続部からなる。採集保持器は粘液を保持する
のに適している。採集管は採集保持器から伸びて、遠心端および管腔を有してお
り、粘液が採集管の円心端から採集保持器まで管腔中を移動することができるよ
うになっている。一般的に採集管は、少なくとも管の長さの一部が柔軟になって
いて、実施者が採集作業中に採集管を選択的に操作して所望の形状にできるよう
になっている。さらに、一般的に採集管は、実施者が採集管を別の形状になるよ
う操作するまで一般的に所望の形状を保つように、可鍛性を有する。接続部は採
集保持器から伸びて採集保持器の内部と連絡する第二の管腔を有する。接続部は
減圧装置と接続するようになっている。これらに加えて、器具はさらに第二の管
腔の開口を調節する弁を有していてもよい。採集保持器は採集管および接続部か
ら取り外すことができる。
【0050】
別の態様において、本発明は抗真菌薬を含有する医薬組成物を特徴とする。
【0051】
別の実施形態において、本発明は抗真菌薬および粘液溶解薬を含有する医薬組
成物を特徴とする。
【0052】
別の実施形態は、抗真菌薬およびステロイドを含有する医薬組成物を特徴とす
る。
【0053】
別の実施形態は、抗真菌薬およびうっ血除去薬を含有する医薬組成物を特徴と
する。
【0054】
別の実施形態は、抗真菌薬および抗生物質を含有する医薬組成物を特徴とする

【0055】
別の実施形態は、抗真菌薬および抗炎症薬を含有する医薬組成物を特徴とする

【0056】
別の実施形態は、抗真菌薬および抗ヒスタミン薬を含有する医薬組成物を特徴
とする。
【0057】
別の実施形態は、抗真菌薬および抗コリン作動薬を含有する医薬組成物を特徴
とする。
【0058】
別の実施形態は、抗真菌薬およびロイコトリエン阻害剤を含有する医薬組成物
を特徴とする。
【0059】
別の態様において、本発明は、哺乳動物の粘液に直接粘膜投与するために設計
され、真菌を除去する、または真菌が感染した領域への好酸球遊走の活性化をお
こなわなくなる閾値レベル以下に真菌を減少させる抗真菌手段を有する薬物を特
徴とする、哺乳動物における真菌に対する免疫反応を治療するための組成物を特
徴とする。
【0060】
別の態様において、本発明は、哺乳動物である患者の鼻腔構造、肺構造、耳構
造、または腸構造における真菌に関連した症状を治療するための医薬組成物を特
徴とし、上記組成物は、本明細書に記載した有効量の抗真菌薬を含有する。
【0061】
別の態様において、本発明は、哺乳動物である患者の鼻腔構造、肺構造、耳構
造、または腸構造における真菌に関連した症状を治療するための医薬組成物を特
徴とし、上記組成物は有効量の抗真菌薬および本明細書に記載した1つ以上の他
の薬品または阻害剤を含有する。
【0062】
別の態様において、本発明は、哺乳動物である患者の鼻腔構造、肺構造、耳構
造、または腸構造における真菌に関連した症状を治療するための医薬組成物を特
徴とし、上記組成物は、鼻腔構造内での長期間にわたる使用に適した有効量の抗
真菌薬を含有する。
【0063】
別の態様において、本発明は、粘液溶解薬、および本明細書に記載される抗真
菌化合物からなる、患者の副鼻腔炎、喘息、中耳炎、または大腸炎を治療するた
めの投薬法を特徴とする。
【0064】
別の態様において、本発明は、患者の炎症を起こした鼻の領域、肺の領域、耳
の領域、または腸の領域を治療するための潅注投薬法で、上記鼻の領域、肺の領
域、耳の領域、または腸の領域の炎症は真菌の存在によって引き起こされたもの
であり、投薬は本明細書に記載した有効量の抗真菌化合物およびステロイドから
なることを特徴とする。
【0065】
別の態様において、本発明は、患者の炎症を起こした鼻の領域、肺の領域、耳
の領域、または腸の領域を治療するための潅注投薬法で、上記鼻の領域、肺の領
域、耳の領域、または腸の領域の炎症は真菌の存在によって引き起こされたもの
であり、投薬は有効量の抗真菌化合物および粘液溶解薬からなることを特徴とす
る。
【0066】
別の態様において、本発明は、患者の炎症を起こした鼻の領域、肺の領域、耳
の領域、または腸の領域を治療するための潅注投薬法で、上記鼻の領域、肺の領
域、耳の領域、または腸の領域の炎症は真菌の存在によって引き起こされたもの
であり、投薬は本明細書に記載した有効量のステロイドおよび粘液溶解薬からな
ることを特徴とする。
【0067】
別の態様において、本発明は、患者の炎症を起こした鼻の領域、肺の領域、耳
の領域、または腸の領域を治療するための潅注投薬法で、上記鼻の領域、肺の領
域、耳の領域、または腸の領域の炎症は真菌の存在によって引き起こされたもの
であり、投薬は本明細書に記載した有効量の抗真菌化合物、ステロイドおよび粘
液溶解薬からなることを特徴とする。
【0068】
別の態様において、本発明は、患者の炎症を起こした鼻の領域、肺の領域、耳
の領域、または腸の領域を治療するための潅注投薬法で、上記鼻の領域、肺の領
域、耳の領域、または腸の領域の炎症は真菌の存在によって引き起こされたもの
であり、投薬は本明細書に記載した、抗真菌化合物、ステロイド、粘液溶解薬お
よびこれらの組み合わせからなる群から選択された1つ以上の有効量の薬物から
なることを特徴とする。
【0069】
他に特に定義しない限り、本明細書で用いられるすべての技術および科学用語
は、本発明が属する技術分野における当業者が普通に理解するものと同じ意味を
有する。本発明の実施または試験に本明細書に記載したものと類似したまたは同
等の方法および物質を用いることができるが、適した方法および物質を以下に記
載した。本明細書に記載したすべての刊行物、特許出願、特許および他の参照文
献を、全て参照により本明細書に組み入れる。抵触の場合、定義を含めて本明細
書に基づいて判断する。さらに、物質、方法および実施例は説明のためのみに記
載するものであって、限定を意図するものではない。
【0070】
本発明の他の特徴および利点は以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明
らかになろう。
【0071】
〔詳細な説明〕
本発明は、非侵入性の真菌誘導粘膜炎を治療および予防する方法および物質に
関する。具体的には、本発明は、慢性の非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を予防、軽減
、または解消するのに有効な量、頻度および期間にわたって抗真菌剤を粘膜投与
することに関する。本発明はまた、慢性の非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を診断し、
哺乳動物の粘液サンプル由来の非侵入性真菌を培養するための方法および物質、
並びに非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を治療および予防するための特定の抗真菌製剤
および医療デバイスを提供する。さらに、本発明は、その他の非侵入性真菌誘導
粘膜炎の症状(例えば、慢性中耳炎、慢性大腸(結腸)炎、およびクローン病)を治
療および予防する方法および物質を提供する。さらに、本発明は、慢性喘息の徴
候を治療および予防する方法および物質に関する。
【0072】
特定のいかなる作用機序にも限定されるものではないが、抗真菌剤の使用によ
り粘膜組織の非侵入性真菌誘導炎症を治療および予防することに関する本発明は
、本明細書中で報告する発見に基づいて提案される以下のような疾患進行のメカ
ニズムに基づくものである。一般に、全てではないがほとんどの個体は、その粘
液中に生息する真菌生物を保有する。通常、ほとんどの個体は、これらの非侵入
性生物に対して寛容であり、疾患のない健康な生活を送っている。理由は分かっ
ていないが、これらの真菌生物に対して寛容ではなく、免疫応答を開始する個体
もある。免疫応答が進行するにつれ、好酸球が局所組織内に集積する。この好酸
球の集積は、閉塞性の組織塊(例えば、ポリープおよびポリープ構造)が形成され
る一因となり得、また、活性化された好酸球が組織(体内)から粘液(体外)へ遊出
する一因となり得る。これらの閉塞性組織塊は、正常な腔クリアランスを妨げる
と考えられ、その結果、真菌の増殖をさらに促進してしまう。好酸球は粘液に達
すると、おそらく表面Fc受容体の活性化に応じてその顆粒の内容物を放出するこ
とができる。好酸球の顆粒には、好酸球陽イオンタンパク質(ECP)、好酸球ペル
オキシダーゼ(EPO)、および主要塩基性タンパク質(MBP)等の毒性分子が多数含ま
れている。一旦放出されると、これらの毒性分子は標的の外来微生物(例えば、
真菌)と自己の組織の双方に損傷を与えてしまう。好酸球の集積と脱顆粒によっ
て生じる損傷の程度は、わずかな炎症性疼痛や不快感から、組織や骨の破壊、ポ
リープ、ポリープ構造およびその他の腫瘍の形成といった重大な構造異常まで大
きく変動する。自己の組織が損傷を受けると、個体の細菌感染に対する感受性も
増加してしまう。従って、損傷をもたらし、かつ全てではないがほとんどの慢性
副鼻腔炎患者に見られる細菌感染をもたらす特有の炎症応答は、実際には、非侵
入性真菌生物によって引き起こされるのである。
【0073】
体内と体外を隔てるバリア(即ち、上皮組織)が破壊もしくは損傷されただけで
も、組織や骨の破壊による極端な粘膜炎症状を示す組織内に真菌生物が認められ
る可能性があることは注意すべきである。このような状況下では、組織損傷の限
られた領域内に少数の真菌生物が認められるだけでは、苦痛の原因(affliction)
が非侵入性真菌誘導粘膜炎であって感染ではないという事実は変わらない。
【0074】
全てではないがほとんどの慢性副鼻腔炎の症例が非侵入性真菌生物によって引
き起こされるという発見は、慢性中耳炎、慢性大腸(結腸)炎、およびクローン病
等の他の慢性炎症症状が粘液中に生息する非侵入性真菌生物によって引き起こさ
れる可能性が高いことを示唆している。さらに、抗真菌剤を有効な量かつ有効な
頻度で有効な期間粘膜投与すれば、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎をみごとに治療か
つ予防できるという発見は、これらの他の非侵入性真菌誘導粘膜炎症状も、本明
細書に記載されているように、抗真菌剤を適切に用いれば治療および予防できる
ことを示唆するものである。さらに、抗真菌剤を鼻-鼻傍灌注によって気道へ直
接粘膜投与すれば、慢性喘息の徴候を治療および予防できるという発見は、抗真
菌剤を吸入によって鼻または口から気道へ直接粘膜投与すれば効果的であること
を示唆するものである。従って、本明細書に記載する方法および物質は、慢性副
鼻腔炎、慢性中耳炎、慢性大腸(結腸)炎、クローン病、および他の任意の非侵入
性真菌誘導粘膜炎症状並びに慢性喘息に罹患した何百万人もの人々を治療する可
能性を秘めている。
【0075】
上述したように、非侵入性真菌誘導粘膜炎は炎症であって感染ではない。一般
に、炎症は本質的にも臨床的にも感染とは異なるものである。感染は、生物の組
織内での増殖と定義される。さらに、感染は、感染性の生物が宿主の組織へ侵入
して宿主の免疫応答を引き起こすか、および/または損傷を与える侵入性疾患と
見なされている。従って、感染性生物の役割は、典型的には侵入性病原体として
のものである。さらに、感染した個体は免疫適格であるか、または免疫無防備状
態である。感染個体が免疫無防備状態である場合には、感染は「日和見」感染と
呼ばれることが多い。さらに、感染は、感染個体の免疫系の適格性、侵入性病原
体の性質、および内科療法の有効性等の複数の要因に応じて急性または慢性とな
る。
【0076】
対照的に、炎症は、有害な因子または傷害(insult)を破壊、希釈、および/ま
たは分離する局所的な防御応答と見なされている。さらに、炎症応答は典型的に
は、発赤、腫脹、熱および痛みをもたらす。非侵入性真菌誘導粘膜炎の場合には
、局所的な防御応答は、組織の外部(例えば、粘液中)に生息する非侵入性真菌生
物に対抗するものである。典型的には、非侵入性真菌誘導粘膜炎に罹患した個体
の中には、アトピー性および/または免疫適格性のものもある。さらに、有害な
因子(即ち、真菌)の役割は、非侵入性アレルゲンとしてのものである。従って、
非侵入性真菌誘導粘膜炎は、個体の組織の外部に生息する真菌生物に対して個体
の免疫系によって開始されるアレルギー反応である。
【0077】
本明細書に記載するように、本発明は、粘液中に生息する真菌生物の存在を、
粘膜炎に付随する特有の炎症応答とそれによる損傷を停止、治療または予防する
レベルおよび期間まで低下させる方法および物質を提供するものである。分かり
やすく言うと、粘液中の真菌生物の存在を低下させて粘膜炎を治療または予防す
ることは、アレルゲン(例えば、花粉)をアレルギー反応(例えば、枯草熱)を示す
個体から除去することと同じである。また、花粉等に対するアレルギー反応は、
感染ではなくて炎症である。さらに、本発明は簡潔であるため、これらの発見に
基づく臨床上の意味合い(implication)が広い範囲に及ぶことが強調される。例
えば、全てではないがほとんどの慢性副鼻腔炎が非侵入性真菌生物によって引き
起こされることと、本明細書に記載の方法および物質を使用して鼻-鼻傍粘液中
の非侵入性真菌生物のレベルを下げることでこの炎症性疾患が治療および予防で
きることが臨床医に明らかになれば、何百万もの人々がより健康的で幸福かつ生
産的な生活を営むことができるであろう。
【0078】
非侵入性真菌誘導粘膜炎の同定
非侵入性真菌誘導粘膜炎は、非侵入性真菌生物によって誘導された任意の粘膜
組織の炎症と定義される。粘膜組織の例としては、限定するものではないが、口
、消化管、鼻道、副鼻腔、肺の気道、気管、中耳、エウスターキオ管、膣、およ
び尿道の粘膜が挙げられる。一般に、粘膜組織の炎症は、当業者に周知のいずれ
の方法を使用しても判定できる。例えば、炎症を起こしている様々な粘膜の解剖
では観察可能な異常な特徴が認められる傾向があるため、組織生検の検査並びに
目視検査、内視鏡分析、および画像解析技術(例えば、X線、CTスキャン、およ
び核磁気共鳴画像(MRI)スキャン)によって、個体が粘膜組織の炎症を有するもの
と同定できる。
【0079】
複数の診断方法を使用して、特定の粘膜炎が非侵入性真菌誘導粘膜炎であるか
否かを判定できる。一般に、このような診断方法としては、限定するものではな
いが、罹患個体の既往症歴および治療歴の再調査、罹患個体の問診および評価、
並びに罹患個体由来の生物学的サンプルの採取および分析が挙げられる。
【0080】
罹患個体の病歴の再調査は、特定の粘膜炎が非侵入性真菌誘導粘膜炎であるか
否かの判定に有用である。これは、このような炎症が典型的には再発性かつ慢性
であるためである。従って、以前に罹患した非侵入性真菌誘導粘膜炎の再発の徴
候が見られれば、現在の粘膜炎が同様に非侵入性真菌誘導粘膜炎であることが示
唆されるであろう。個体の病歴に含まれる他の有用な情報としては、限定するも
のではないが、アレルギー、外科手術、および嚢胞性線維症や線毛の運動障害(c
iliary dismotility syndrome)等のその他の疾患を挙げることができる。
【0081】
罹患個体の問診および評価も、非侵入性真菌誘導粘膜炎を同定するのに有用で
ある。例えば、気道閉塞、嗅覚の低下、聴力の低下、喘鳴、呼吸困難、咳、頭痛
、および顔面圧迫等の慢性粘膜炎の徴候を示す個体は、非侵入性真菌誘導粘膜炎
を有する可能性がある。さらに、熱、真菌の播種、真菌血症、多形核白血球の増
加、および急性発症等の感染の徴候を示す個体では非侵入性真菌誘導粘膜炎は除
外できる。慢性炎症によって上皮組織が破壊され、その結果細菌感染に対する個
体の感受性が増加することもあるため、再発性の細菌感染によってその下に潜在
する非侵入性真菌誘導粘膜炎症状を指摘し得ることには注意すべきである。さら
に、複数の診断検査を行って、非侵入性真菌誘導粘膜炎の同定に役立てることも
できる。例えば、真菌性因子および非真菌性因子のパネルを使用する通常のアレ
ルギースクリーニングを使用して、個体がアトピー性であるか否かの判定を行う
ことができる。これは、非侵入性真菌誘導粘膜炎がアトピー体質の個体に影響を
及ぼす場合があるためである。さらに、抗真菌抗原抗体の有無を検査する免疫検
査、メタコリンを用いるまたは用いない異常な肺機能の検査、オージオグラム、
およびティンパノグラム(tympanogram)を使用して、非侵入性真菌誘導粘膜炎を
同定することもできる。
【0082】
罹患個体由来の生物学的サンプルの採取および分析は、非侵入性真菌誘導粘膜
炎を同定するのに有用である。一般には、粘液、便、尿、痰、および血液等の生
物学的サンプルを採取して、非侵入性真菌生物との関連を示す徴候について分析
を行うことができる。このような徴候としては、限定するものではないが、非侵
入性真菌誘導粘膜炎に対する任意の抗原マーカーの存在;粘液、便、尿もしくは
痰のサンプル中における好酸球、好酸球産物(例えば、MBPおよびECP)、抗体、真
菌抗原、または真菌生物の存在;並びに、血液サンプル中における真菌生物の不
在を挙げることができる。例えば、アレルギー性の粘液(即ち、好酸球の存在を
示す証拠を含む粘液)が同定されれば、非侵入性真菌誘導粘膜炎を指摘できる。
好酸球の存在を示すこのような証拠としては、限定するものではないが、無傷の
好酸球、壊死性の好酸球、および好酸球産物の存在が挙げられる。生物学的サン
プル中におけるこれらの各種徴候およびマーカーの存在を検出する多くの方法が
当該技術分野で周知であり、使用できる。例えば、アレルギー性の粘液中におけ
る好酸球の存在は、ヘマトキシリンエオジン染色行い、次いで鏡検を行うことで
判定できる。
【0083】
さらに、組織生検を採取し、侵入性真菌が含まれないことを分析することも可
能である。上述したように、体内と体外を隔てるバリア(即ち、上皮組織)が破壊
もしくは損傷されただけでも、組織生検を検査すれば、組織や骨の破壊による極
端な粘膜炎症状を示す組織内に真菌生物が認められる可能性がある。このような
状況下では、組織損傷の限られた領域内に少数の真菌生物が認められることだけ
では、苦痛の原因が非侵入性真菌誘導粘膜炎ではないことを必ずしも意味すると
は限らない。
【0084】
さらに、免疫学的アッセイを使用して、生物学的サンプル中の非侵入性真菌誘
導粘膜炎の様々な徴候の存在を検出することができる。多くの免疫学的アッセイ
が当該技術分野で周知であり、限定するものではないが、酵素結合イムノソルベ
ントアッセイ(ELISA)および放射性アレルゲン吸着試験(RAST)が挙げられる。RAS
Tの使用方法は、例えば、McRury Jら(Clin Exp Immunol 65:631-638(1986))、Ma
bry RLおよびManning S(Otolaryngol Head Neck Surg. 113:721-723 (1995))、
並びにLynch NRら(Int Arch Allergy Immunol 114:59-67 (1997))に記載されて
いる。免疫学的アッセイには、非侵入性真菌誘導粘膜炎の診断マーカーとして使
用し得る抗原に対して特異性を有するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体
、またはこれらの断片が使用できる。例えば、非侵入性真菌誘導粘膜炎を引き起
こすことが知られている真菌生物に対して特異性を有するモノクローナル抗体を
産生し、これを使用して生物学的サンプルをスクリーニングできる。このような
抗体は、他に記載された方法(Zeidanら, Experimental Approaches in Biochemi
stry and Molecular Biology, William C. Brown Publisher (1996)およびSeave
r, Commercial Production of Monoclonal Antibodies: A Guide for Scale-Up,
Marcel Dekker Inc., New York, NY (1987))を使用して産生できる。簡単に言
うと、マウスを真菌生物単離物のサンプルで免疫することができる。数週間後、
免疫したマウスの脾臓由来のリンパ球を回収し、ミエローマ細胞と融合させてハ
イブリドーマ細胞を作製することができる。次いで、免疫真菌単離物に対して特
異性を示すハイブリドーマを単離し、モノクローナル抗体調製物を産生すること
ができる。
【0085】
非侵入性真菌誘導粘膜炎の同定に使用される特定の方法および物質は、粘膜炎
の特定の位置に応じて変えることができるため、複数の典型的な粘膜組織に対し
て、以下、より詳細な説明を行う。
【0086】
1.鼻腔-副鼻腔
鼻の外形骨格は2つの長楕円形の鼻骨からなる。正中線の両側に鼻骨が1つず
つ配置され、2つの鼻骨はアーチ形の断面を形成している。鼻腔は鼻中隔によっ
て二分されている。鼻の側壁には、鼻腔または前庭の粘膜の表面積を増加させる
3つの鼻甲介がある。鼻前庭は鼻中隔と側壁に囲まれている。このように鼻甲介
と鼻中隔の表面積が大きいため、吸気との充分な接触が促進され、その結果、給
湿、粒子の除去、および吸気の温度調節が容易になる。
【0087】
副鼻腔は、開口または孔を介して鼻腔と一体化した含気空間である。これらは
対になっているものの、副鼻腔は通常、形状および位置が非対称であり、上顎洞
、前頭洞、篩骨洞および蝶形骨洞を含む。副鼻腔の提唱されている機能としては
、頭蓋骨の軽量化、鼻腔への粘液の供給、および発音のための共鳴室としての作
用が挙げられる。上顎洞は副鼻腔のうち最大のものである。各上顎洞は上顎に位
置しており、中鼻道へ通じている。前頭洞は前頭骨に位置しており、眼窩の上方
かつ内側にある。前頭洞も中鼻道へ通じている。篩骨洞は数が多く、中鼻道およ
び上鼻道へ通じる不規則な形状の気腔である。蝶形骨洞は蝶形骨にあり、眼およ
び鼻腔上部の双方に対して後方にある。蝶形骨洞は上鼻道へ通じている。
【0088】
粘膜組織(粘膜)は、鼻腔および副鼻腔の双方の内側を覆っており、通常、上皮
層、結合組織、および粘液腺を含んでなる。粘膜は通常粘液の層に覆われている
。粘膜から分泌される粘液は、粒子を捕らえ、空気に曝される鼻および鼻傍組織
の乾燥を防ぐ作用をする。粘液は通常、線毛によって鼻咽頭へ輸送されて燕下さ
れる。
【0089】
副鼻腔炎に罹患した個体は、当該技術分野で周知の方法を使用して同定するこ
とができる。副鼻腔炎の徴候としては、限定するものではないが、鼻道閉塞、嗅
覚の低下、顔面痛、頭痛、後鼻漏、および鼻漏が挙げられる。検査時に、濃稠な
粘液が認められるか、または粘液もしくはポリープを伴う鼻もしくは鼻傍の閉塞
が目視で確認されれば、副鼻腔炎の症状を示していることが多い。鼻ポリープは
鼻-鼻傍粘膜から成長し、典型的には、無毛、ゼラチン様、半透明、球または梨
状、および茸状(pale)である。一般に、鼻ポリープは鼻の側壁に見られ、通常は
中鼻道に見られるか、または中鼻甲介および上鼻甲介に沿って見られる。ほとん
どの鼻ポリープは篩骨洞より発生するが、上顎洞および蝶形骨洞から生じるもの
ある。鼻ポリープの塊は、主に水腫性の液体から構成され、散在する線維細胞と
2、3の粘液腺を伴う。鼻および鼻傍ポリープの表面上皮は、通常扁平上皮化生
を示す。好酸球は通常、ポリープに中程度から多数存在し、現在、鼻ポリープ液
には、IgA、IgE、IgGおよびIgM抗体が通常の濃度よりも高濃度で含まれると同時
にIL-5(好酸球の活性化と生存に寄与するサイトカイン)が異常に高い濃度で含ま
れていることが知られている。本明細書中で実証するように、鼻ポリープの存在
は副鼻腔炎の危険因子ではなく、むしろ慢性炎症の末期である。
【0090】
以下の方法および物質を使用して、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎に罹患した個体
を同定することができる。上述したように、AFSとして知られている症状は、非
侵入性真菌誘導副鼻腔炎の症状である。従って、AFSの同定に使用される当該技
術分野で公知の任意の方法を使用して、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を同定するこ
とができる(Cody DTら, Laryngoscope 104:1074-1079 (1994)およびKupferberg
SBら, Otolaryngol, Head Neck Surg 117:35-41 (1997))。例えば、壊死性好酸
球の集塊またはシート、シャルコー-ライデン結晶、および非侵入性真菌菌糸を
含む濃化した粘液の存在によって非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を同定できる。さら
に、MRIやCTスキャン等の画像解析を使用して非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を同定
することもでき、これは、このような症状が特有の外観を典型的に示し、かつ隣
接する構造中に骨の侵食を引き起こすことが多いためである(Quraishiら, Otola
ryngol. Head Neck Surg. 117:29-34 (1997); Manningら, Laryngoscope 107:17
0-176 (1997); Kinsellaら, Head & Neck 18:211-217 (1996); Allberyら, Radi
oGraphics 15:1311-1327 (1995); Roth MR, Ear, Nose & Throat J. 73:928-930
(1994);およびBartynskiら, Otolaryngol. Head Neck Surg. 103:32-39 (1990)
)。さらに、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を有する個体は、鼻-鼻傍ポリープ症の病
歴を持っている可能性があり、外科手術を複数回受けている可能性もある。
【0091】
現在利用し得る診断方法論を使用して得られた結果からは、外科手術を必要と
する慢性副鼻腔炎の症例の約3〜8%がAFSの症例であることが示されている。
一般に、これらの現行のAFS診断法は、CTスキャンにおける特有の外観の存在、
アレルギー性の粘液の存在、および、組織学または培養時の真菌の増殖のいずれ
かによって確認される粘液サンプル中の真菌生物の存在等の基準を必要とするも
のである。本発明は、本明細書に記載する慢性副鼻腔炎に対する十分な理解、改
良された診断手法、および抗真菌治療アプローチの顕著な成功率に基づいて、慢
性副鼻腔炎の全症例の約90%以上が真菌を病因とすることを実証するものである
。さらに、本発明は、全てではないがほとんどのヒトの鼻-鼻傍粘液中には真菌
生物が存在するため、粘液サンプル由来の真菌生物の増殖能が、非侵入性真菌誘
導副鼻腔炎症状(例えば、AFS)の診断の有用な基準にはならないことも実証す
る(実施例1を参照)。しかしながら、鼻-鼻傍粘液サンプル由来の真菌生物の採
取、分析、および/または培養から有用な診断情報が得られることには注意すべ
きである。このような情報には、限定するものではないが、真菌生物のレベルや
特定の粘液サンプル中に含まれる異なる真菌種の数に関する情報が含まれている
可能性がある。
【0092】
慢性副鼻腔炎症状の非侵入性真菌病因論に対する正当な評価がなされなかった
ことは、複数の理由によると考えられる。第1に、適切ではない粘液採取や真菌
培養技術に依存していたため、真菌増殖の陰性結果の判定が誤ってなされたもの
と考えられる。本明細書に示すように、全てではないがほとんどのヒトから回収
された鼻-鼻傍粘液サンプルから真菌生物が増殖し得るため、これらの陰性結果
は偽陰性結果とされることが多かった。従って、鼻-鼻傍粘液サンプル由来の真
菌生物の増殖能は、AFSを含む非侵入性真菌誘導副鼻腔炎症状の診断基準として
は本質的に無意味である。第2に、臨床医は、外科手術時に、アレルギー性粘液
の存在についてポリープを摘出および検査する前に鼻-副鼻腔から粘液を洗い流
したり処分したりするのが常である。従って、アレルギー性粘液を検出できなか
ったことは、検査を行う適切な培地を採取しなかったことに原因があると考えら
れる。ひいては、このことは、ポリープ症が鼻-鼻傍解剖において特定の炎症症
状の原因であるとする、広く認められかつ医療上容認された理論となった可能性
がある。上述したように、ポリープ症は、慢性炎症の末期の結果と考えることが
できる。第3に、慢性炎症の症状は、本明細書に記載するように、潜在する非侵
入性真菌誘導副鼻腔炎の症状を隠していたと考えられる再発性の細菌感染を引き
起こす可能性がある。さらに、抗細菌治療の後に認められる一時的な症状の軽減
はいずれも、非侵入性真菌を病因とする症状の診断を複雑にしていた可能性があ
る。
【0093】
いずれにせよ、本発明は、分析用の粘液を保存するためには特別の注意を払う
べきであり、アレルギー性粘液の存在を利用して非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を同
定できることを教示するものである。さらに、鼻-鼻傍解剖で見られる再発性の
細菌感染によって、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を指摘することができる。
【0094】
以前に副鼻腔炎を発症した個体はいずれも、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を発症
する危険性がある。さらに、老年の個体、並びに嚢胞性線維症、喘息、および鼻
に関する問題やアレルギーの家族歴を有する個体も、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎
を発症する危険性がある。さらに、有意なレベルのアレルゲン(例えば、真菌胞
子、花粉、および化学物質)に曝される個体も、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を発
症する危険性がある。
【0095】
2.中耳(middle ear)
耳は3つの部分:外耳、中耳、および内耳に分けることができる。中耳は、エ
ウスターキオ管により鼻咽頭に接続された空洞である。さらに、中耳は、外耳の
開口部から鼓膜により分離され、かつ、鼓膜を内耳に接続する3つの小骨を含有
する。粘膜組織が中耳部のほとんどを被っている。
【0096】
中耳の粘膜組織の炎症(otitis media、中耳炎)を患う個体は、中耳疾患の治
療歴、目視検査、組織生検、ならびに聴覚障害、耳漏、および中耳滲出液のよう
な症状に基づいて確認することができる。
【0097】
一般的に、非侵入性真菌誘導中耳炎症状は、(1)中耳からの液または粘液を採
集し、真菌生物または好酸球の存在を分析すること、(2)非侵入性真菌生物につ
いての組織生検分析、(3)伝音聴覚障害と一致したオーディオグラム、および(
4)平滑なティンパノグラム(flat tympanogram)によって確認することができ
る。中耳は正常には全く無菌であるので、鼻-鼻傍粘液と異なり、中耳から採集
したサンプル中に真菌生物の存在を確認することは、非侵入性真菌誘導炎症の症
状を示すことでありうる。
【0098】
中耳炎の前歴を有する個体は、非侵入性真菌誘導中耳炎を発症するリスクがあ
る。さらに、若年の個体(例えば乳児(infants)および赤ん坊(toddlers))
ならびに耳疾患またはアレルギーの家族歴を有する個体は、非侵入性真菌誘導中
耳炎を発症するリスクがありうる。
【0099】
3.腸(intestines)
粘膜組織は小腸および大腸の両方を被う。腸の炎症(例えば、潰瘍性大腸炎お
よびクローン病)を患う個体は、当業界で公知である方法および物質を使って確
認することができる。例えば、組織生検分析ならびに内視鏡分析を使って、腸ポ
リープ症のような腸粘膜炎症状を確認することができる。さらに、下痢、腹痙攣
、ガス、および吐気などの症状は、腸の炎症を示しうる。
【0100】
一般的に、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎症状は、糞便サンプル内の真菌生物、好
酸球、または好酸球産物の存在により確認することができる。さらに、非侵入性
真菌生物の存在を現す組織生検は、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎症状を示しうる。
【0101】
腸の炎症の前歴を有する個体は、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を発症するリスク
がある。さらに、高齢の個体ならびに消化器疾患、腸ポリープ症、またはアレル
ギーの家族歴を有する個体は、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を発症するリスクがあ
りうる。
【0102】
真菌生物
耐性の無い個体の粘液中に生物が単に存在することが炎症を引き起こすので、
哺乳動物の粘液中に生息する任意の真菌生物は、粘膜炎を誘導する能力のある非
侵入性真菌生物でありうる。例えば、AFS患者の粘液サンプル中に先に同定され
た全ての真菌生物は、非侵入性真菌誘導粘膜炎を誘導する能力のある非侵入性真
菌生物であることができ、限定されるものでないが、Absidia、Aspergillus fla
vus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus glaucus、Aspergillus nidulans、A
spergillus versicolor、Alternaria、Basidiobolus、Bipolaris、Candida albi
cans、Candida lypolytica、Candida parapsilosis、Cladosporium、Conidiobol
us、Cunninahamella、Curvularia、Dreschlera、Exserohilum、Fusarium、Malbr
anchia、Paecilomvces、Penicillium、Pseudallescheria、Rhizopus、Schizophy
lum、およびSporothrixを含む。さらに、AFS陽性と診断された患者の粘液サンプ
ル中に今まで同定されなかった真菌生物が非侵入性真菌誘導粘膜炎を起こす能力
のある非侵入性真菌生物であることができ、限定されるものでないが、Acremoni
um、Arachniotus citrinus、Aurobasidioum、Beauveria、Chaetomium、Chryospo
rium、Epicoccum、Exophilia jeanselmei、Geotrichum、Oidiodendron、Phoma、
Pithomyces、Rhinocladiella、Rhodoturula、Sagrahamala、Scolebasidium、Sco
pulariopsis、Ustilago、Trichoderma、およびZygomyceteを含む。非侵入性真菌
誘導粘膜炎を誘導する能力のある非侵入性真菌生物であることができる別の真菌
生物のリストは、ほとんどの分類学的菌類学の教科書中に見ることができる。
【0103】
粘液サンプルの採集
一般的に、粘液は、採集溶液を用いて粘液を含有する空洞を洗浄することによ
って、任意の粘膜組織の表面から採集することができる。適正な粘液採集技術で
は、適切な解剖構造空洞に十分貫入させ、個体による採集溶液吸収を最小にする
ことによって、粘液を含有する採集液の回収を最大にすべきである。血管収縮薬
を使って粘液採集を最大にすることができ、また、粘液分解薬(mucolytic agen
t)を使って採集溶液貫入を促進するように閉塞性粘液を溶解することができる

【0104】
従って、粘液サンプルを採集する前に、十分な血管収縮および/または粘液分
解作用が適切な領域で誘導されるように、個体を血管収縮薬および/または粘液
分解薬で処理することができる。適切な血管収縮薬は、限定されるものでないが
、フェニレフリン塩酸塩(NEO-SYNEPHRINE(登録商標);Sanofi Pharmaceutica
ls)、コカイン、およびエピネフリンを含むことができる。粘液分解薬は、患者
から粘液を回収できるように粘液を液化する任意の作用薬である。適切な粘液分
解薬は、限定されるものでないが、N-アセチル-L-システイン(MUCOSIL(商標名
);Dey Laboratories)および組換えヒトDNase(PULMOZYME(登録商標);Gene
ntech, Inc.)を含むことができる。任意の投与された血管収縮薬または粘液分
解薬は、投与後の十分な時間(約2〜5分間)を待って、効果を発揮するようにす
べきである。
【0105】
次の方法および物質を使って、鼻-鼻傍粘液サンプルを採集することができる
。第1に、個体に吸入させ顎を低くするか、または他の方法で口から出て食道へ
降下する液の通路を制限させるよう指導することにより、個体が少なくとも1つ
の鼻孔または鼻-鼻傍空洞に採集溶液を受け入れる準備をさせる。垂直に座るか
または立った個体において、これらの手法は採集溶液の損失または摂取を最小に
するであろう。この目標が達成されるのであれば、他の手法も可能である。第2
に、注入および採集システムを配置する。一般的に、該配置は、採集溶液を個体
の鼻孔に投与し、その後、効率的に容器内に回収できるものである。注入システ
ムは、限定されるものでないが、曲がった鈍い針をもつシリンジまたはチューブ
アセンブリーであることができる。容器は、液体を収容する任意の形式の容器で
あることができる。さらに、容器は、限定されるものでないが、採集サンプルを
取扱いまたは出荷することができる輸送容器または密閉装置としての使用に適し
た貯蔵容器であることができる。これらの容器はまた、粘液サンプルの所望の用
途に依って、保存剤または抗細菌薬のような作用薬を含有することができる。第
3に、採集溶液は、個体の鼻孔に投与され、採集される。投与前に、個体を、鼻
-鼻傍解剖構造に液を感じたときに採集溶液を排出するよう指導しておくことが
できる。あるいは、個体を、投与と同時に、採集溶液を排出するよう指導してお
くことができる。投与中、採集溶液は、少なくとも1つの鼻孔または鼻-鼻傍解
剖構造の側に強制的に注入することができる。採集溶液の容積は、個体および粘
膜炎の状態に依って変わることがありうる。例えば、液容積は、限定されるもの
でないが、約0.1mLから約100mLまたはそれ以上、そして特に約0.1mLと約25mLの
間であることができる。採集溶液は、限定されるものでないが、生理的塩類溶液
、水、および粘膜組織に接触するのに適当な任意の他の適切な溶液であることが
できる。さらに、採集溶液は、粘液分解薬のような粘液採集に有用な他の作用薬
を含有することができる。
【0106】
採集溶液の目標の1つは、粘液を含有する空洞内の粘液を追い出し除去するこ
とである。自然洗浄剤として作用する採集溶液に加えて、採集溶液内の粘液分解
薬の貫入効果は、厚い閉塞性粘液を液化することを助けることができる。さらに
、投与の強制と個体によるほとんど同時の加圧排出の組合わせにより、粘液を追
出しかつ採集することを助けることができる。典型的には、採集溶液は、片側約
5秒より短い期間、投与することができる。さらに、採集溶液は、約3秒より短い
期間、投与することができる。あるいは、採集溶液投与時間は、炎症の程度、閉
塞の存在、および個体のサイズのような特定因子によって、5秒を超えて延ばす
ことができる。さらに、採集溶液の非常に小さい容積または流れが所望であれば
、5秒を超える投与を使うことができる。
【0107】
特に、個体が液採集方法に従うか対応することができなければ、粘液サンプル
を採集する他の採集方法を使うこともできる。このような別の方法は、当業界で
周知であり、限定されるものでないが、粘液の外科的除去、拭き取りまたは機械
的粘液取り出し方法、および粘液を取り出す加圧または減圧システムを含む。さ
らに、これらの他の採集方法ならびに本明細書に記載した方法および物質は、中
耳および腸のような身体の他の領域からの体液を得るために改変するか適合させ
ることができる。
【0108】
粘液サンプルを採集した後、該サンプルを、非侵入性真菌誘導粘膜炎の罹患を
示すマーカーの存在について分析することができる。例えば、粘液サンプルをア
レルギー性粘液の存在を確認するために試験することができる。さらに、本明細
書に記載の技術ならびに当業界で公知の技術を使って、粘液サンプルから真菌生
物を培養し、分析することができる。
【0109】
図3および図4は、粘液および他の液を吸引して採集するためのデバイス例10
を示す。デバイス10は、上側部材12、採集保持器14、および採集チューブ16を含
む。上側部材12は、順に、広く、中央部22、ねじ部24、接続部26、およびチュー
ブ受容部材28を含む。中央部22は、一般的に、その内に開口部29を規定するであ
ろう。弁30は開口部29内で機能しうるように配置される。ねじ部24は、中央部22
から下方にのびる。接続部26は中央部22から放射状にのび、この実施形態では一
般的に断面は円であり、孔32を規定する。孔32は、デバイス10の外部を内部と接
続する。チューブ受け部材28は、一般的に、中央部22から放射状に伸びる。チュ
ーブ受け部材28は孔34を規定する。孔32のように、孔34はデバイス10の外部を内
部に接続する。
【0110】
この実施形態では、保持器14はねじによってねじ部24に受け入れられる。しか
し、保持器14は、他の公知の手段により中央部22に固定してもよい。円錐形状の
底部形状が示されているが、保持器14は、種々の形状であってよく、それらは本
発明の範囲にある。採集チューブ16は孔34から伸び、かつその中に収められてい
る。チューブ16の長さの一部は保持器14の内部に収められ、採集した物質の移動
を可能にする。採集チューブ16は、採集液が通って移動するルーメン36を規定す
る。1つの実施形態では、チューブ16は、様々な患者の解剖構造との適合を容易
にするフレキシブルメモリー手段を含む。すなわち、チューブ16は、所望のフレ
キシブルな配置、例えば、図3に破線で示したような配置のまま留まる。採集チ
ューブおよびデバイス10を通じての粘液移動を容易にするさらなる手段は、粘液
接着を最小にするよう設計された材料特性を有するチューブまたはデバイスライ
ナーを含む。
【0111】
1つの実施形態では、デバイス10は単一用途用に設計される。デバイス10は、
複数の材料で作ってよいが、ポリエチレンのような合成樹脂を使うことができる
。接続部26はデバイス10を減圧ホース38に接続する。こうして、接続部26は、減
圧ホース38に気密適合する外部構造を有する。弁30は、ルーメン36を通して接続
される減圧量を調節する。弁30を調節することにより、それに対して、徐々に増
加または減少する減圧量を適用することができる。この例では、弁30は、一般的
に、スライド部材として配置された細長いスリットを含む。使用者は、該スライ
ド部材を、細長いスリットの全て、ゼロ、または一部分が露出するように調節し
て、ルーメン36に接続される減圧を調節することができる。しかし、減圧を調節
するための種々の他の調節手段も本発明の範囲内にある。他の例は、吸引または
採集チューブを調節しうるように絞るローラー弁を利用する「IV」型の弁を含む

【0112】
他のデバイスとは対照的に、チューブ受容部材28および採集チューブ16は、一
般的に、保持器14の縦軸から垂直に伸びる。これにより、使用者は、粘液および
他の液を回収するときに、採集チューブ16をより良い位置にすることができる。
本発明の範囲内で、患者の顔の解剖構造に快く適合し、かつ患者またはヘルスケ
ア提供者が容易に位置を保持できる他の採集容器が可能であることは認識されて
いる。このような実施形態は、患者に注入された液に容易なアクセスを与えかつ
同時に患者からの液および粘液の排出と除去を可能にするのであれば、減圧、重
力、または他の採集機構に依ることができる。
【0113】
この実施形態で、ルーメン36は、直径が約1mmと10mmの間で、かつ全長が約5cm
と50cmの間である。例示した保持器14は、一般的に、直径が約1"から3"、かつ高
さが3"から6"の間にあるが、様々な他の寸法を使うことができる。
【0114】
デバイス10は、患者の鼻、鼻傍、または肺の解剖構造から、粘液または液サン
プルを得るために有利に利用することができる。粘液または液サンプルを得るに
は、デバイス10を減圧源に接続し、弁30を所望にしたがって調節する。チューブ
16を所望の位置に配置する。その後、チューブ16を、粘液または液を得る患者の
解剖構造の部分中に挿入する。弁30を、サンプルを取得し、しかし患者の安全を
確保する必要に応じてさらに調節する。得た粘液または液を保持器14に採集する
。採集が完了すると、得た粘液または液サンプルの貯蔵または出荷のために、保
持器14を上側部材12からとり外す。
【0115】
粘液サンプルからの真菌生物の培養
真菌生物培養のための粘液サンプルは、該サンプルをN-アセチル-L-システイ
ンまたはジチオトレイトール(DTT)のような粘液分解薬で処理して粘液のさら
なる液化を促進するかまたは容易にすることにより、調製することができる。粘
液分解薬を加えた後、粘液サンプルを混合し、室温でインキュベートすることが
できる。この液化により、粘液中に存在する真菌生物を遊離させることが可能に
なる。一旦液化すれば、粘液は典型的には他の溶液(すなわち、採集溶液)から
分離した単層を形成するので、粘液を遠心分離または他の手段により単離するこ
とができる。一旦単離されれば、該粘液を混合し、アリコートを、増殖培地寒天
プレートのような適当な真菌増殖培地と接触させることができる。真菌増殖培地
は、限定されるものでないが、RPMI-1649、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbe
cco's modified eagles medium:DMEM)、カビ抑制寒天(inhibitory mold agar
:IMA)およびベイ寒天(Bay agar)を含む真菌生物の増殖を支持できる任意の培
地である。真菌増殖培地は、細菌の増殖を予防するために抗細菌薬(例えば、ク
ロラムフェニコールおよびシプロフロキサシン)を含有することができる。
【0116】
液化した粘液を適切な真菌増殖培地と接触させると、該培養物を最適温度、例
えば約20℃と37℃の間、場合によっては約25℃と35℃の間でインキュベートする
ことができる。最適温度は、2つずつの培養物を様々な温度に置き、増殖速度を
比較することによって評価することができる。典型的には、培養物を約2日から3
5日の間、約30℃でインキュベートする。真菌の増殖が観察されたら、真菌種を
当業界で周知の方法を使って同定し、それぞれの真菌単離体の表現型および遺伝
型の特徴を決定することができる。例えば、真菌単離体を試験して、任意の薬剤
耐性または薬剤感受性を決定することができる。
【0117】
非侵入性真菌誘導粘膜炎の治療および予防
抗真菌薬を、哺乳動物に、非侵入性真菌誘導粘膜炎を治療しまたは予防するの
に有効な、量で、頻度で、期間にわたり、粘膜投与することができる。「抗真菌
薬」は、真菌生物に対して活性のある任意の作用薬である。例えば、抗真菌薬は
、抗真菌性ポリエンマクロライド、テトラエンマクロライド、ペンタエンマクロ
ライド、フッ素化ピリミジン、イミダゾール、トリアゾール、アゾール、ハロゲ
ン化フェノリックエーテル、チオカルバメート、およびアリルアミンのような、
真菌生物の増殖を予防しまたは死滅させる任意の作用薬である。さらに、抗真菌
薬は、真菌細胞壁構成成分に内挿しまたはステロールインヒビターとして作用す
る作用薬であることができる。本発明の範囲内の特定の抗真菌薬は、限定される
ものでないが、アンホテリシンB、フルシトシン、ケトコナゾール、ミコナゾー
ル、イトラコナゾール、フルコナゾール、グリセオフルビン、クロトリマゾール
、エコナゾール、ターコナゾール、ブトコナゾール、オキシコナゾール、スルコ
ナゾール、サパーコナゾール、ボリコナゾール、シクロピロックス・オラミン、
ハロプロジン、トルナフテート、ナフチフィン、ニスタチン、ナタマイシン、タ
ービナフィン塩酸塩、モルホリン類、ブテナフィンウンデシレン酸、ホワイトフ
ィールド(Whitefield's)軟膏、プロピオン酸、およびカプリル酸、ならびに当
業界で周知の方法を用いて抗真菌薬として同定することができる作用薬を含む。
特筆すべきは、特定の患者は、特定の抗真菌薬に耐性のある病因学的作用薬とし
て作用する真菌生物を保有しうることである。そのような場合、本発明の重要な
態様は、有効な抗真菌薬(例えば、病因学的作用薬として作用する真菌生物の増
殖を予防、または死滅させる抗真菌薬)を用いて該患者を治療することを含む。
病因学的作用薬として作用する真菌生物は、本明細書に記載した採集および培養
法を使って同定することができる。
【0118】
本明細書に使われる用語「粘膜投与」は、投与した作用薬を粘液と接触させる
任意の投与形態を意味する。したがって、血流を出ることのない静脈投与作用薬
は、該作用薬は粘膜と接触しないから、粘膜投与した作用薬とは考えられない。
さらに、用語「粘膜投与」は、「直接」および「間接」粘膜投与に細分すること
ができる。本明細書に使われる用語「直接粘膜投与」は、投与した作用薬を、上
皮を横切る前に標的粘液と直接接触させる任意の投与形態を意味する。本発明の
目的のために、粘液を含有する空洞中への作用薬の注入は、たとえ上皮を横切る
ために注入手段(例えば、針、チューブ、またはカテーテル)が使われても、作
用薬が粘液と接触すれば、直接粘膜投与と考えられると理解されるべきである。
したがって、針を使って鼓膜をバイパスし、作用薬を中耳に注入することは、中
耳粘液を標的とする直接粘膜投与と考えられる。
【0119】
したがって、静脈内に投与され、その後、血流から出て上皮を浸透し、そして
粘液に接触する任意の作用薬は、該作用薬は粘液に接触する前に上皮を横切るの
で、直接粘膜投与された作用薬と考えられない。しかし、この場合、用語「間接
粘膜投与」は上皮を横切った後に標的粘液と接触させる任意の投与形態を意味す
るので、静脈内に投与された作用薬は、間接的に粘膜投与された作用薬と考えら
れる。繰り返すが、上皮を通過し、そして粘液と直接接触させて作用薬を送達す
る針、チューブ、またはカテーテルのような注入手段の使用は、該投与が間接粘
膜投与であることを必ずしも意味しない。
【0120】
したがって、経口投与は、標的とした粘液によって直接または間接粘膜投与で
あることができる。例えば、作用薬を嚥下し、その後、食道、胃、および小腸を
通過して、上皮を横切ることなく、大腸の粘膜と直接接触すること(すなわち、
直接粘膜投与)ができる。同時に、経口投与した作用薬は、腸により吸収され、
全身に蓄積し、そして鼻上皮に浸透して鼻粘液と接触すること(すなわち間接粘
膜投与)ができる。このように、粘膜投与の直接性および間接性は、特定の投与
経路ならびに標的とした粘液の特定の位置に依存する。哺乳動物の様々な粘液位
置に対する直接および間接粘膜投与の典型的な経路を以下に記載する。
【0121】
抗真菌薬を含有する抗真菌薬または製剤の有効量は、哺乳動物の粘膜投与によ
り、哺乳動物に対する有意な毒性を生じることなく、非侵入性真菌誘導粘膜炎を
軽減し、予防し、または排除する任意の量であることができる。典型的には、有
効量は、特定の個体の粘液内に存在する真菌生物または単離体に対する最小発育
阻止濃度(MIC)以上であり、そして粘膜投与時に個体に有意な毒性を誘導する
ことのない量であることができる。ある抗真菌薬は有効である濃度範囲が相対的
に広いが、他の抗真菌薬は相対的に狭い有効濃度範囲を有しうる。さらに、ある
特定の生物および単離体は多かれ少なかれ特定の抗真菌薬に対し感受性があるの
で、有効量は特定の真菌生物または単離体によって変化しうる。このような有効
量は、抗真菌薬有効濃度、動物毒性濃度、および組織浸透速度を含む一般に利用
可能または容易に確かめうる情報を使って、個々の抗真菌薬に対して決定するこ
とができる。例えば、無毒の抗真菌薬は、典型的には、粘液内で抗真菌活性を示
す任意の量を、直接または間接に粘膜投与することができる。さらに、粘膜上皮
を浸透しない抗真菌薬は、典型的には、粘液内で抗真菌活性を示す任意の量を直
接に粘膜投与することができる。本明細書に提供される情報を使い、このような
有効量はまた、日常のin vitroまたはin vivo実験により決定することができる
。例えば、非侵入性真菌誘導粘膜炎症状を有する患者は、in vitro分析から計算
したMICに近い量の抗真菌薬の直接粘膜投与を受けることができる。患者が応答
しない場合は、その後、その量を、例えば10倍に、増加することができる。この
より高い濃度を与えた後、該患者を治療および毒性症状の両方の応答についてモ
ニターし、それによって調節を行うことができる。
【0122】
アンホテリシンBについては、直接に粘膜投与されるとき、有効量は、1投与
当たり哺乳動物の体重kg当たり、約0.01ngから約1000mgまでであることができる
。鼻灌注溶液として使うときは、有効量は、鼻孔当たり1投与当たり、1リット
ル当たりアンホテリシンBの約0.01mgから1リットル当たりアンホテリシンBの約
1000mgまでを含有する溶液の約0.01mLから約1Lまでの容積であることができる。
あるいは、有効量は、鼻孔当たり1投与当たり(例えば、毎日2〜4回)、塩類
溶液または水の1リットル当たりアンホテリシンBの約100mgを含有する灌注溶液
の20mLであることができる。典型的には、塩類溶液または水は無菌である。有効
量は、一定のままにするかまたはスライドしたスケールまたは個体の治療に対す
る応答に依存する可変用量として調節することができる。他の抗真菌薬の有効量
は、当業者であれば、日常の実験を用いて本明細書に記載した複数の教示にした
がって決定することができる。
【0123】
典型的には、直接粘膜投与される任意の抗真菌薬(例えば、イトラコナゾール
、ケトコナゾール、およびボリコナゾール)の有効量は、1投与当たり哺乳動物
の体重kg当たり、約0.01ng〜約1000mgであることができる。ボリコナゾールに対
するMIC値は、試験する特定の真菌生物または単離体に依存して約0.003μg/mLか
ら約4μg/mLまでの範囲である。フルコナゾールに対しては、MIC値は約0.25μg/
mLから約64μg/mLより大きい範囲である。
【0124】
各種の抗真菌薬の有効量を決定するのを助けるために、一般的な抗真菌薬の有
効量に基づいて同等の有効量を参照することは有用でありうる。例えば、1投与
(例えば、毎日2回)当たり鼻孔当たり、アンホテリシンBの約100mg/Lを含有す
るアンホテリシンB灌注溶液の約20mLの直接粘膜投与が、本明細書に実証された
有効量である。この有効量により生じる効果を、様々な濃度で使われた他の抗真
菌薬に対して観察される効果と比較する対照点として使うことができる。同等の
効果が観察されれば、そこで、その特定の抗真菌薬に対する特定の有効量(spec
ific effective amount)を決定することができる。この場合、その特定の量は
アンホテリシンB有効等量(effective amount equivalent)と呼ばれるであろう

【0125】
様々な因子が、特定の用途に対して使う実有効量に影響を与えうる。例えば、
粘膜投与の頻度、治療期間、他の抗真菌薬の組合わせ、投与部位、炎症の程度、
および治療領域の解剖構造形状は、粘膜投与される実有効量の増加または減少を
必要とする可能性がある。
【0126】
粘膜投与の頻度は、哺乳動物に有意な毒性を生じることなく、哺乳動物の非侵
入性真菌誘導粘膜炎を軽減し、予防し、または排除する任意の頻度であることが
できる。例えば、粘膜投与の頻度は、1日に約4回から1か月に約1回、または
さらに特定すると、1日に約2回から1週に約1回であることができる。さらに
、粘膜投与の頻度は、一定のままであるかまたは治療期間中に可変であることが
できる。有効量の場合と同様に、種々の因子が、特定の用途に対して使う粘膜投
与の実頻度に影響を与えることができる。例えば、有効量、治療期間、他の抗真
菌薬の組合わせ、投与部位、炎症の程度、および治療領域の解剖構造形状は、粘
膜投与頻度の増加または減少を必要とする可能性がある。
【0127】
抗真菌薬粘膜投与の有効期間は、哺乳動物に対する有意な毒性を生じることな
く、哺乳動物の非侵入性真菌誘導粘膜炎を軽減し、予防し、または排除する任意
の期間であることができる。したがって、有効期間は数日から数週間、数か月、
または数年まで変化することができる。一般的に、非侵入性真菌誘導粘膜炎の治
療のための有効期間は、数日から数か月の期間の範囲でありうる。しかし、一旦
、抗真菌薬の投与を停止すれば、抗真菌薬粘膜炎が復活するかもしれない。した
がって、非侵入性真菌誘導粘膜炎の予防のための有効期間は、場合によっては、
個体が生存する限り、続くことができる。
【0128】
真菌生物再増殖因子に感受性の低い解剖構造(例えば、無傷の鼓膜をもつヒト
中耳)については、有効期間は、約10日から約30日の範囲であることができる。
しかし、鼻-鼻傍解剖構造のようなより劣る無菌環境については、有効期間は、
約30日から約80日より大きい範囲であることができる。気管または消化管におい
ては、有効期間は、約10日から約30日より大きいか、または約90日よりも大きい
ことがありうる。繰り返すが、予防治療は、典型的には期間がより長く、かつ個
体の寿命を通して持続することができる。
【0129】
複数の因子が、特定の治療または予防体制(regimen)に使われる実有効期間
に影響を与えることができる。例えば、有効期間は、抗真菌薬投与の頻度、有効
抗真菌薬の量、複数の抗真菌薬の組合わせ、投与部位、炎症の程度、および治療
領域の解剖構造形状によって変化することができる。さらに、使用する特定の抗
真菌薬が、実有効期間に影響を与えることができる。例えば、非侵入性真菌誘導
副鼻腔炎を治療するための有効期間は、アンホテリシンBについてほぼ30日、そ
してイトラコナゾールについてほぼ7日であることができる。
【0130】
診断アルゴリズム方法を工夫して、好適な有効用量、期間、および頻度を決定
または検討することができる。
【0131】
少なくとも1つの抗真菌薬を含有する製剤
抗真菌薬を含有する製剤は、該製剤を哺乳動物に、非侵入性真菌誘導粘膜炎を
予防し、軽減し、または排除するのに有効な、量で、頻度で、期間にわたり、粘
膜投与できるのであれば、任意の形態であることができる。例えば、本発明の範
囲内の製剤は、限定されるものでないが、粉末、結晶性物質、ゲル、ペースト、
軟膏、クリーム、溶液、懸濁液、半液体、スプレー、噴霧剤、ミスト、細霧化蒸
気、チンキ剤、ピル、カプセル、錠剤、およびゲルカップ(gelcaps)を含む、
固体、液体、および/またはエアロゾルの形態であることができる。さらに、該
製剤は、抗真菌薬のカクテルを含有することができる。例えば、本発明の範囲内
の製剤は、限定されるものでないが、1、2、3、4、5、またはそれ以上の異
なる抗真菌薬を含有することができる。さらに、本発明の範囲の製剤は、限定さ
れるものでないが、製薬上許容される水性ビヒクル、製薬上許容される固体ビヒ
クル、ステロイド、粘液溶解薬、坑細菌薬、坑炎症薬、免疫抑制薬、拡張薬、血
管収縮薬、うっ血除去薬、ロイコトリエンインヒビター、坑コリン作動薬、坑ヒ
スタミン薬、治療化合物、およびそれらの組合わせを含む追加の成分を含有する
ことができる。さらに、製剤は、哺乳動物の咽頭反射を抑制するのに有効である
ことが知られている1つ以上の化合物を含有することができる。
【0132】
製薬上許容される水性ビヒクルは、例えば、抗真菌薬を溶解する能力がありか
つ該製剤を受け入れる特定の固体に無毒である任意の溶液であることができる。
製薬上許容される水性ビヒクルの例は、限定されるものでないが、塩類溶液、水
、および酢酸を含む。典型的には、製薬上許容される水性ビヒクルは無菌である
。製薬上許容される固体ビヒクルは、抗真菌薬を経口投与に適するように製剤化
することができる。例えば、カプセルまたは錠剤は、抗真菌薬を腸溶形態で含有
することができる。有効量は1つまたは複数のカプセルまたは錠剤の投与により
達成することができるので、各カプセルまたは錠剤により供給される用量は変え
ることができる。ゼラチンおよびセルロース誘導体のような任意の周知の製薬上
許容される物質を、製薬上許容される固体ビヒクルとして使うことができる。さ
らに、製薬上許容される固体ビヒクルは、限定されるものでないが、デンプン、
糖、またはベントナイトを含む固体担体であることができる。さらに、抗真菌薬
の錠剤またはピル製剤は、固体担体、潤滑剤、その他を用いる通常の方法に従う
ことができる。
【0133】
ステロイドは、ヒドロシクロペンタノフェナントレン環構造を含有する任意の
化合物であることができる。ステロイドの例は、限定されるものでないが、プレ
ドニゾン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾンを含む。粘液溶解薬は、粘
液を液化する任意の化合物であることができる。適切な粘液溶解薬は、限定され
るものでないが、N-アセチル-L-システイン(MUCOSIL(商標名);Dey Laborato
ries)および組換えヒトDNase(PULMOZYME(登録商標);Genentech, Inc.)を
含む。坑細菌薬は、ペニシリン、エリスロマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイ
シン、およびクリンダマイシンのような細菌に対して活性のある任意の化合物で
あることができる。坑炎症薬は、イブプロフェンおよびサリチル酸のような、炎
症を中和する任意の化合物であることができる。免疫抑制薬は、シクロスポリン
のような、通常の免疫機能を抑制または妨げる任意の化合物であることができる
。拡張薬は、アルブテロールのような、開口部の膨張を起こす任意の化合物であ
ることができる。血管収縮薬は、フェニレフリン塩酸塩(NEO-SYNEPHRINE(登録
商標);Sanofi Pharmaceuticals)、コカイン、およびエピネフリンのような、
血管を収縮したり、狭くする任意の化合物であることができる。うっ血除去薬は
、プソイドエフェドリン塩酸塩、フェニルプロパノールアミン、およびオキシメ
タゾリンのような、鼻-鼻傍うっ血または腫張を軽減する作用をする任意の化合
物であることができる。ロイコトリエンインヒビターは、Azelastine(登録商標
)のような、ロイコトリエンの機能または合成を抑制する任意の化合物であるこ
とができる。坑コリン作動薬は、イプラトロピウムブロマイドのような、副交感
神経インパルスをブロックする任意の化合物であることができる。坑ヒスタミン
薬は、テルフェナジンおよびアステミゾールのような、ヒスタミンの作用または
細胞(例えばマスト細胞)からのその放出を抑える任意の化合物であることがで
きる。
【0134】
治療化合物は、投与により治療効果を有する任意の化合物であることができる
。例えば、治療化合物は、例えば、Fc受容体またはS型レクチン因子受容体(例
えば、ガレクチン-3)相互作用をターゲッティングすることにより、好酸球の真
菌抗原に結合した免疫グロブリンとの相互作用をブロックするかまたは妨げる任
意の化合物であることができる。これらの化合物は、限定されるものでないが、
IgE、IgA、IgG、IgM、およびIgDのような抗体ならびにFab、F(ab')2、FcγRI、F
cγRII、FcαR、FcεRII、およびFcεRIのような抗体フラグメントを含む。
【0135】
鼻-鼻傍構造を標的とする粘膜投与
鼻-鼻傍構造への作用薬の粘膜投与は、該作用薬を鼻-鼻傍粘液と接触させる任
意の投与形態であることができる。鼻-鼻傍構造への直接粘膜投与は、該投与作
用薬が上皮を通過する前に鼻-鼻傍粘液に接触するのであれば、限定されるもの
でないが、鼻灌注、鼻スプレー、鼻吸入、および例えば、飽和ガーゼを用いる鼻
パックを含むことができる。さらに、例えば、針またはカテーテルチューブを使
う鼻-鼻傍空洞中への注入は、該投与作用薬が針またはカテーテルチューブから
離れた後で上皮を通過する前に鼻-鼻傍粘液と接触するのであれば、直接粘膜投
与であると考えられる。限定されるものでないが、シリンジ、バルブ(bulb)、
吸入器、カニスター、スプレー缶、噴霧器、およびマスクを含む任意のデバイス
を使って、作用薬を鼻-鼻傍構造に直接粘膜投与することができる。例えば、20
mLバルブを使って、鼻-鼻傍構造を抗真菌薬を含有する液状形態の製剤を用いて
灌注することができる。このような液状形態の製剤は、-20℃、0℃、または室温
で貯蔵することができる。もし室温以下で貯蔵されれば、該製剤は、典型的には
、鼻-鼻傍空洞へ投与する前に加温される。
【0136】
鼻-鼻傍構造への間接粘膜投与は、該投与作用薬が鼻-鼻傍粘液に接触するので
あれば、限定されるものでないが、経口、静脈内、皮内、および腹腔内投与を含
むことができる。さらに、作用薬を鼻-鼻傍構造に間接的に粘膜投与するために
、限定されるものでないが、シリンジおよび調節放出カプセルを含む任意のデバ
イスを使うことができる。
【0137】
特定の投与経路は、抗真菌薬を用いる治療の有効量および期間ならびに粘膜投
与の頻度に影響を与えうることが挙げられる。例えば、経口粘膜投与される抗真
菌薬は、鼻-鼻傍粘液へ有効量を送達するために、鼻灌注による直接粘膜投与よ
り高い濃度を必要とするであろう。
【0138】
肺気道を標的とする粘膜投与
気道は、呼吸中に空気が通過する哺乳類解剖構造の任意の部分であり、口、鼻
経路、気管、気管支、および細気管支(bronchial tube)を含む。肺気道は、粘
液により被われた肺の任意の空気経路であり、気管支および細気管支を含む。作
用薬の肺気道への粘膜投与は、作用薬を肺気道粘液と接触させる任意の投与形態
であることができる。肺気道への直接粘膜投与は、投与した作用薬が上皮を通過
する前に肺気道粘液と接触するのであれば、限定されるものでないが、吸入、鼻
スプレー、および鼻灌注を含むことができる。さらに、例えば、針またはカテー
テルチューブを使う肺気道中への注入は、投与された作用薬が針またはカテーテ
ルチューブを離れて上皮を通過する前に肺気道粘液と接触するのであれば、直接
粘膜投与と考えられる。作用薬を肺気道に直接粘膜投与するために、限定される
ものでないが、シリンジ、バルブ、吸入器、噴霧器、エアロゾルカニスター、ス
プレー缶、およびマスクを含む任意のデバイスを使うことができる。
【0139】
肺気道への間接粘膜投与は、該投与作用薬が上皮を通過した後に肺気道粘液に
接触するのであれば、限定されるものでないが、経口、静脈内、皮内、および腹
腔内投与を含むことができる。さらに、作用薬を肺気道に間接的に粘膜投与する
ために、限定されるものでないが、シリンジおよび調節放出カプセルを含む任意
のデバイスを使うことができる。
【0140】
特定の投与経路は、抗真菌薬を用いる治療の有効量および期間ならびに粘膜投
与の頻度に影響を与えうることが挙げられる。例えば、抗真菌薬の腸溶粘膜投与
は、肺気道粘液へ有効量を送達するために、口または鼻を通しての吸入による直
接粘膜投与より高い濃度を必要とするであろう。
【0141】
気管、鼻経路、および口を含む気道への直接および間接粘膜投与は、肺気道に
対する本明細書に記載の方法と物質を使って達成できることは理解されるべきで
ある。
【0142】
中耳を標的とする粘膜投与
作用薬の中耳への粘膜投与は、該作用薬を中耳粘液と接触させる任意の投与形
態であることができる。中耳への直接粘膜投与は、投与作用薬が上皮を通過する
前に中耳粘液と接触するのであれば、限定されるものでないが、点耳薬、耳洗浄
を含むことができる。例えば、もし鼓膜が破損していれば、またはさもなくば破
裂していれば、耳洗浄は、投与作用薬が中耳粘液と接触するのであれば、直接粘
膜投与と考えられるであろう。さらに、例えば、針または鼓膜切開チューブを使
う中耳への注入は、投与作用薬が針またはチューブを離れた後、上皮を通過する
前に中耳粘液と接触するのであれば、直接粘膜投与と考えられる。作用薬を中耳
へ直接粘膜投与するために、限定されるものでないが、シリンジおよびバルブを
含む任意のデバイスを使うことができる。
【0143】
中耳への間接粘膜投与は、該投与作用薬が上皮を通過した後に中耳粘液に接触
するのであれば、限定されるものでないが、経口、静脈内、皮内、および腹腔内
投与を含むことができる。さらに、作用薬を中耳に間接的に粘膜投与するために
、限定されるものでないが、シリンジおよび調節放出カプセルを含む任意のデバ
イスを使うことができる。
【0144】
特定の投与経路は、抗真菌薬を用いる治療の有効量および期間ならびに粘膜投
与の頻度に影響を与えうることが挙げられる。例えば、経口粘膜投与した抗真菌
薬は、中耳粘液へ有効量を送達するために、中耳注入による直接粘膜投与より高
い濃度を必要とするであろう。
【0145】
腸を標的とする粘膜投与
腸への作用薬の粘膜投与は、該作用薬を腸粘液と接触させる任意の投与形態で
あることができる。腸への直接粘膜投与は、投与作用薬が上皮を通過する前に腸
粘液と接触するのであれば、限定されるものでないが、経口および浣腸投与を含
むことができる。さらに、例えば、針またはカテーテルチューブを使う消化管中
への注入は、投与作用薬が針またはカテーテルチューブを離れた後、上皮を通過
する前に腸粘液と接触するのであれば、直接粘膜投与と考えられる。作用薬を腸
に直接粘膜投与するために、限定されるものでないが、シリンジおよび調節放出
カプセルを含む任意のデバイスを使うことができる。例えば、抗真菌薬は、該抗
真菌薬が例えば胃を通過後に放出されるように、調節放出カプセル中に製剤化す
ることができる(例えば、pH調節放出カプセルおよび時間調節放出カプセル)。
【0146】
腸への間接粘膜投与は、該投与作用薬が腸粘液に接触するのであれば、限定さ
れるものでないが、静脈内、皮内、および腹腔内投与を含むことができる。さら
に、作用薬を腸に間接的に粘膜投与するために、限定されるものでないが、シリ
ンジを含む任意のデバイスを使うことができる。
【0147】
特定の投与経路は、抗真菌薬を用いる治療の有効量および期間ならびに粘膜投
与の頻度に影響を与えうることが挙げられる。例えば、静脈内に粘膜投与した抗
真菌薬は、腸粘液へ有効量を送達するために、浣腸による直接粘膜投与より高い
濃度を必要とするであろう。
【0148】
追加の治療
他の治療を、抗真菌薬を含有する製剤と組み合わせて使い、非侵入性真菌誘導
粘膜炎症状の治療または予防の促進を助けることができる。このような追加の治
療は、限定されるものでないが、外科手術および第2製剤の投与を含むことがで
きる。外科手術は、限定されるものでないが、ポリープ状増殖または他の腫瘍の
除去、空洞の物理的開放、およびカテーテルチューブの挿入などを含むことがで
きる。第2製剤は、限定されるものでないが、抗真菌薬、粘液溶解薬、坑細菌薬
、坑炎症薬、免疫抑制薬、拡張薬、血管収縮薬、うっ血除去薬、ステロイド、坑
コリン作動薬、ロイコトリエンインヒビター、坑ヒスタミン薬、治療化合物、お
よびそれらの組合わせを含むことができる。さらに、この第2製剤は、任意の経
路で哺乳動物に投与することができる。例えば、経口、腹腔内、皮内、静脈内、
皮下、筋肉内、局所、鼻腔内、および気管支内投与を使って、哺乳動物に第2製
剤を送達することができる。
【0149】
喘息の治療および予防
喘息は、呼吸が困難になる気管支(肺通路)の奇異狭窄により特徴付けられる
。喘息を患う個体は、喘鳴、困難な呼吸(特に呼息)、呼吸困難、および胸の締
付けのような症状を示しうる。喘息を悪化させ得る因子は、温度または湿度の急
速な変化、アレルギー、上気道感染、運動、ストレス、および喫煙を含む。喘息
を患う個体は、当業界で公知の任意の方法を使って確認することができる。一般
的に、喘息は、限定されるものでないが、気道を吸入誘発(provoking)(例え
ばメタコリンチャレンジ試験)を伴うまたは伴わない肺機能試験(気道抵抗の増
加)、胸部X線、および胸の聴診を用いて、客観的に診断することができる。
【0150】
喘息を発症するリスクのある個体は、限定されるものでないが、喘息の前歴を
有している個体を含む。さらに、高齢の個体;嚢胞性線維症、粗大鼻-鼻傍ポリ
ープのあるまたはない慢性副鼻腔炎、アスピリン感受性、または呼吸問題もしく
はアレルギーの家族歴を有する個体;および顕著なアレルゲンレベル(例えば、
真菌胞子、花粉、および化学品)または刺激物に曝された個体は、喘息発症のリ
スクがありうる。
【0151】
慢性喘息の個体は、抗真菌薬を少なくとも気道の一部に、喘息症状を軽減また
は排除するのに有効な、量で、頻度で、および期間にわたり、直接粘膜投与する
ことにより治療することができる。このような直接粘膜投与は、鼻-鼻傍空洞が
気道であるので、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎の治療および予防のために本明細書
に記載の方法および物質と同様であることができる。例えば、鼻スプレーおよび
鼻灌注を使って、抗真菌薬を気道粘液へ直接粘膜投与することができる。さらに
、慢性喘息の個体を、抗真菌薬を少なくとも肺気道の一部に、喘息症状を軽減ま
たは排除するのに有効な、量で、頻度で、および期間にわたり、直接粘膜投与す
ることにより治療することができる。例えば、抗真菌薬のエアロゾルまたは粉末
形態を、口または鼻を通して吸入させることにより、肺気道粘液への直接粘膜投
与に使うことができる。
【0152】
さらに、慢性喘息を発症するリスクのある個体を、抗真菌薬を少なくとも気道
の一部に、喘息症状を予防するのに有効な、量で、頻度で、および期間にわたり
、粘膜投与することにより予防的に処置することができる。繰り返すが、このよ
うな予防的処置は、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎の予防的処置に対する本明細書に
記載の方法および物質と同様であることができる。
【0153】
本発明をさらに次の実施例中に記載するが、これは請求の範囲に記載した本発
明の範囲を限定するものではない。
【0154】
〔実施例〕
(実施例1)粘液サンプルの採集および分析
次の方法および物質を使って202人の患者から粘液を採集し分析した。粘液の
採集の前に、各患者に吸入し、その後、顎を胸に向けて下げ、鼻-鼻傍通路から
喉の奥の通常排出を経由する採集溶液の流れを最小にするかまたは防止するよう
指導した。採集溶液は、無菌塩類溶液または無菌水であった。さらに、各患者を
、鼻通路からの採集液の流れが最小になるかまたは防止される姿勢にさせた。数
人の患者は、フェニレフリン塩酸塩(鼻孔当たり1-2スプレー)またはコカイン
(局所液または粉末;体重kg当たり4mg未満)のような血管収縮薬の投与を受け
た。数人の患者は、N-アセチル-L-システインの20%溶液のほぼ3mLのスプレーを
受けた。両方を受けた患者は、最初に血管収縮薬が与えられ、その約2分後にN-
アセチル-L-システインが与えられた。
【0155】
患者の準備が終わると、採集容器を、粘液サンプルを採集する鼻孔(一方また
は双方)の下に置いた。その後、チューブアセンブリまたは曲がった鈍い針を有
するシリンジ様デバイスのような注入デバイスを、部分的に患者の鼻孔または鼻
傍構造の一方に入れ、採集溶液が患者の鼻-鼻傍構造を通して強制的に流出する
ようにした。複数の事例では、その後、約5mLから約30mLの採集溶液を、約0.5お
よび5秒間で鼻孔中に注入した。ほとんどの事例では、約10mLから約20mLの採集
溶液を、約0.5から3秒間で、鼻孔内に注入した。
【0156】
一般的に、各患者は、採集溶液を注入すると同時に、または鼻孔への流入を感
じると、採集溶液を吐き出すか力強く排出した。この注入採集溶液の力強い排出
は、患者の鼻-鼻傍ルーメン内の粘液を排出するのに顕著に役立った。繰り返す
が、採集溶液容積のロスを軽減し予防するために、特別な注意をした。排出され
ると、患者の鼻孔からの粘液を含有する採集溶液を、鼻孔の下に置いた採集容器
中に採集した。鼻-鼻傍粘液を採集した後、該粘液を次の2つの方法の1つを使
って培養した。最初の方法では、N-アセチル-L-システインの20%溶液の1mLを、
粘液を含有する回収した採集溶液の約10mLに加えた。その後、この混合液を30秒
間ボルテックス攪拌にかけ、室温で15分間インキュベートした。インキュベーシ
ョンの後、該混合液を50mLチューブ中で5分間、4800rpmで遠心分離した。分離後
、上清を棄て、残留粘液を30秒間ボルテックス攪拌にかけた。その後、単離した
粘液のアリコートの0.5mLを、培養プレート、すなわちクロラムフェニコールを
含有する1枚のIMAプレートおよびシプロフロキサシンを含有する1枚のIMAプレ
ートにそれぞれ加えた。その後、該プレートを30℃でインキュベートし、日常の
真菌培養のように調べた。個々の単離体の増殖を約2日から約35日まで観察した

【0157】
第2の方法では、DTTの10mLを無菌蒸留水の90mLで希釈した。この新しく希釈
したDTT溶液の等容積を、粘液を含有する回収採集溶液に加え、該混合液を30秒
間ボルテックス攪拌にかけた。その後、この混合液を15分間、室温でインキュベ
ートした。インキュベーション後、混合液を50mLチューブ中で10分間、3000 x g
で遠心分離した。分離後、上清を棄て、残った粘液を30秒間ボルテックス攪拌に
かけた。その後、単離した粘液のアリコートの0.5mLを各培養プレート、すなわ
ちクロラムフェニコールを含有するIMAプレートおよびシプロフロキサシンを含
有するベイ寒天プレートにそれぞれ加えた。その後、該プレートを30℃でインキ
ュベートし、日常の真菌培養のように調べた。個々の単離体の増殖を約2日から
約35日まで観察した。
【0158】
真菌増殖が観察されると、目視、組織学、および免疫学技術を含む標準の菌類
学技術を使って該生物を同定した。同定した真菌属および種は、先にAFS患者か
ら単離したAbsidia、Aspergillus flavus、Aspergillus fumigatus、Aspergillu
s glaucus、Aspergillus nidulans、Aspergillus versicolor、Alternaria、Bas
idiobolus、Bipolaris、Candida albicans、Candida lypolytica、Candida para
psilosis、Cladosporium、Conidiobolus、Cunninahamella、Curvularia、Dresch
lera、Exserohilum、Fusarium、Malbranchia、Paecilomvces、Penicillium、Pse
udallescheria、Rhizopus、Schizophylum、およびSporothrixのような多くの真
菌生物を含んでいた。さらに、AFSに対して陽性と診断された患者の粘液サンプ
ル中に今まで同定されなかったAcremonium、Arachniotus citrinus、Aurobasidi
oum、Beauveria、Chaetomium、Chryosporium、Epicoccum、Exophilia jeanselme
i、Geotrichum、Oidiodendron、Phoma、Pithomyces、Rhinocladiella、Rhodotur
ula、Sagrahamala、Scolebasidium、Scopulariopsis、Ustilago、Trichoderma、
およびZygomyceteのような真菌生物が同定された。
【0159】
非侵入性真菌誘導粘膜炎を起こす真菌生物を培養する最適温度を決定するため
に、2人の患者から採集した液化粘液サンプルを、クロラムフェニコールまたは
シプロフロキサシンを含有するIMAプレート上で培養した。その後、各サンプル
に対し2枚のディッシュ(1枚はクロラムフェニコールを含有しかつ1枚はシプ
ロフロキサシンを含有する)を、25℃、28℃、30℃、32℃、33℃、35℃、および
37℃でインキュベートした。各プレートを、培養時点から約2日から約35日の期
間にわたり、隔日に、目視で真菌増殖および成長をスコアした。各温度に対する
スコアを平均し、それによって胞子発芽およびその後の真菌生物の増殖と成長に
対する最適温度の評価を与えた。その結果は、真菌増殖の最適温度が特定の真菌
種または単離体に依って変化することを示した。全般的に、最大数の真菌種と単
離体の増殖を支持するのは30℃であることが見出された。
【0160】
次の手法を使って、患者から単離した真菌生物の増殖を抑制しまたは死滅させ
ることができる、有効な抗真菌薬ならびに抗真菌薬の有効濃度を決定した。
【0161】
8人の副鼻腔炎患者から17の真菌単離体を採集し、アンホテリシンB、ケトコナ
ゾール、およびイトラコナゾールに対する感受性を試験した。各抗真菌薬を、こ
れらの単離体について、臨床研究室標準国家委員会(National Committee on Cl
inical Laboratory Standards:NCCLS)プロトコルによるマクロブロス希釈(ma
cro broth dilution)技術を使って試験した。48時間のMICの読みを記録し、そ
して、NCCLSガイドラインを使って解釈し、各培養を、試験濃度における抗真菌
薬に対して感受性、中間、または耐性として格付け(rate)した。この方法で得
た結果は、抗真菌薬の特定の真菌単離体に対するin vitroでの効力の評価を与え
た。全般的に、各単離体に対するこれらの抗真菌薬のMIC値は、0.03から100μg/
mLの間の広い範囲にあることがわかった(表1)。
【0162】
【表1】


【0163】
次の研究を実施して、非侵入性真菌病因を有する副鼻腔炎症状の頻度を決定し
た。この研究では、次の判定基準を使って、患者が非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を
有するかどうかを決定した:(1)鼻-鼻傍構造内に観察しうる疾患の存在、(2)ア
レルギー性粘液の存在、および(3)鼻-鼻傍粘液内の真菌生物の存在。鼻-鼻傍構
造内の観察しうる疾患の存在を決定するために、各患者は標準的方法を使ってCT
走査を受けた。アレルギー性粘液の存在を決定するために外科標本を各患者から
採集し、組織学的に評価した。粘液サンプルが洗い流されないように特別な注意
を払い各外科サンプルを採集することに留意した。鼻-鼻傍粘液内の真菌生物の
存在を決定するために、本明細書に記載の患者の粘液から真菌生物を採集および
培養する方法および物質を使った。
【0164】
73人の副鼻腔炎患者が研究に加わった。これらの患者の年齢は、13から73歳で
、平均50.1歳であった。73人の患者中39人は女性で34人は男性であった。各患者
の副鼻腔炎に関係する過去の手術数は、0から25で、患者1人当たり平均3.41手術
であった。73人の患者中70人は過去にポリープ症および副鼻腔炎再発の経験があ
った。
【0165】
7人の患者は、その後、受容可能な粘液標本を欠くので研究から外した。残り
の66人のうち、66人(100%)はCT走査陽性と診断され、62人(94%)はアレルギ
ー性粘液陽性と診断され、そして64人(97%)は真菌培養が陽性であった。これ
らを合わせると、副鼻腔炎66事例中の60(91%)は、3つの判定基準を全て満た
した。言いかえれば、副鼻腔炎患者66人の91%は、以上の判定基準に基づいて非
侵入性真菌誘導副鼻腔炎と評価された。この91%の比率は非侵入性真菌生物に関
わる副鼻腔炎事例数の著しい増加を表す。例えば、多数の医学研究論文は、手術
を必要とする慢性副鼻腔炎事例のほぼ3から8%がAFS事例、すなわち非侵入性真菌
病因を有する副鼻腔炎症状であると報じている。したがって、本明細書に報じた
結果は、非侵入性真菌生物の副鼻腔炎症状への関わりは、過去に認められていた
より遥かに一般的であることを示す。
【0166】
全部で25の異なる真菌種を、これらの非侵入性真菌誘導副鼻腔炎患者由来の粘
液標本から同定した。AFSと同時に存在すると過去に記載されてなかった16種の
生物を、真菌増殖を示す64件の粘液サンプルから検出した。その範囲は患者1人
当たりほぼ1種から7種の真菌生物、患者当たり平均してほぼ2.9種の真菌種であ
った。培養の63%はAlternariaを含み、47%はPenicilliumを含み、33%はCladospo
riumを含み、33%はAspergillusを含み、28%はFusariumを含み、20%はCandidaを
含んでいた。
【0167】
別の研究では、12人の対照個体(すなわち、慢性副鼻腔炎を有しない個体)か
ら、本明細書に記載したとおり粘液サンプルを採集し、分析した。12人(100%)
全てが真菌培養陽性であった。特定的に、全部で7種の異なる真菌生物が培養さ
れ、個体1人あたり平均ほぼ2.25種、1種から4種の範囲であった。培養の50%はCl
adosporiumを含み、42%はAlternariaを含み、33%はGeotrichumを含み、33%はAsp
ergillusを含み、25%はPenicilliumを含み、8%はAcremoniumを含み、8%はCandid
aを含んでいた。これらの結果は、真菌生物が、全てでないとしてもほとんどの
ヒトの鼻-鼻傍粘液に生息することを示す。
【0168】
(実施例2)非侵入性真菌誘導副鼻腔炎の治療および予防
132人の継続性副鼻腔炎患者が、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を治療する抗真菌
薬の使用を評価する研究に加わった。診断分析の後、132人の患者中125人(95%
)は次の判定を受けた:(1)CT走査により検証される鼻-鼻傍構造内に観察しうる
疾患の存在、(2)外科標本の組織評価により検証されるアレルギー性粘液の存在
、および(3)粘液サンプルから真菌生物を培養する能力により検証される鼻-鼻傍
粘液内の真菌生物の存在。125人の非侵入性真菌誘導副鼻腔炎患者について、鼻
孔当たりアンホテリシンB溶液の約20mL、毎日2から4回、少なくとも3ヶ月の抗真
菌治療を開始した。アンホテリシンB溶液の濃度は、塩類溶液または水1リットル
当たり約100mgであった。患者は20mLバルブを使って患者の鼻-鼻傍構造中にアン
ホテリシンB溶液を粘膜投与した。3ヶ月追跡分析のために戻ってきた患者53人の
データを編集した。
【0169】
患者の面接、CT走査分析、目視検査、および真菌培養分析に加えて、2形式の
評価:すなわち内視鏡評価および患者症状評価を使って、治療の成功をスコアし
た。評価スコアは次の通りであった:
内視鏡評価
段階 0:疾患の確証なし
段階 1:内視鏡のみにより見られるポリープ状変化/ポリープ
段階 2:中導管(middle meatus)でのポリープ
段階 3:鼻空洞を満たすポリープ
【0170】
患者症状評価
段階-2:非常に悪い/ひどい悪化
段階-1:悪い/悪化
段階 0:基線/変化なし
段階 1:良い/改善された
段階 2:非常に良い/症候が無くなる
【0171】
内視鏡評価は、3ヶ月後に患者53人中の33人が段階2または3から段階0に移行し
たことを示した。33例のうち疾患の確証なしを示す6例は、CT走査により確めた
。例えば、最近手術を受けておらず、かつステロイドを投与していない1人の患
者は、CT走査が両側の罹患を示した(図1)ので、両側副鼻腔炎と診断された。
その後、該患者は、鼻孔当たりアンホテリシンB溶液(100mg/L)の20mLの治療を
毎日2回受けた。連続抗真菌治療の4ヶ月後にCT走査をとったが、副鼻腔炎に特
徴的な不透過性(opacity)および症候は完全に消滅した(図2)。
【0172】
3ヵ月後、内視鏡評価で、患者53名の内11名がステージ2または3からステー
ジ1になった。その他の患者9名はこの治療に応答しなかった。応答しなかった
患者9名の内5名には試験に利用可能なあらかじめ採取した粘液サンプルがあっ
た。これらの5種の利用可能なサンプルの分析から、5名の患者すべての粘液内
に、この治療に使用した抗真菌薬、アンホテリシンBに対して耐性な真菌生物が
あることがわかった。
【0173】
患者の症候の評価から、治療後、患者53名の内44名がステージ2、53名の内3
名がステージ1、そして53名の内6名がステージ0を自己評価したことがわかっ
た。ステージ1または0を示した患者9名は内視鏡評価で判定して何ら応答しな
かった9名の患者と同様で、その中の5名はアンホテリシンBに耐性な真菌生物
を含むことが示された。別の患者コホートにおけるその後の検討で、何人かの非
応答患者がアンホテリシン耐性菌を含有しないことがわかった。
【0174】
その上、何人かの患者について抗真菌薬治療前および後の粘液サンプルを採取
して分析した。抗真菌薬治療前および後の粘液サンプルの評価を比較した結果、
真菌培養技法によって判定して、抗真菌薬治療後に、これらの患者中の種々の真
菌種の数が顕著に減少したことがわかった。このように、副鼻腔炎患者は抗真菌
薬での治療後、無症候となり、また粘液中に含有される真菌が減少した。
【0175】
別の独特な研究において、ある患者について、CTスキャンが左副鼻腔中に副鼻
腔炎に関係する乳濁の特徴がある炎症疾患を示したため、左副鼻腔の副鼻腔炎と
診断した。Alternariaに対するRASTアッセイは1リッターについて6.23キロ単位
(KU/L)を示し、両側の真菌培養で各外鼻孔中でのAlternariaの増殖が確認され
た。しかし、左側の鼻-副鼻のみを手術し、術中および術後に1日に2-4回、アン
ホテリシンB溶液(100 mg/L)約20 mLで処置した。術後の診察毎に患者の左副
鼻腔 に病態はなかった。しかし、患者の左副鼻腔の副鼻腔炎の症候が消失した
後8-10週目に読みとり値をとったRASTは7.16 KU/Lだった。これは最初のRASTの読
みとり値からの上昇を意味している。術後6ヶ月目、この患者はCTスキャンおよ
びAlternariaに対するRASTの読みとり値 10.0 KU/Lに基づいて、右副鼻腔炎と診
断された。患者の右副鼻腔の手術および両側の外鼻孔からの1日に2-4回、アン
ホテリシンB溶液(100 mg/L)約20 mLでの約7週間の治療後、患者は症候がな
いままで、RASTの読みとり値は4.47 KU/Lだった。この最後の手術後6ヵ月目、C
Tスキャンで確認して、患者は症候もなく病態もなかった。
【0176】
総合すると、これらの結果は一方の側への正しく投与される抗真菌薬による適
当な灌注の結果、その側の炎症症候を予防することを示した。その上、当初未処
置の側(右側)にあらかじめ検出された真菌の負荷(load)は、この当初未処置の
側に結果的に視診または触診し得る副鼻腔炎症候の提示を引き起こすのに十分だ
った。さらに、当初未処置の側(右側)に存在した真菌生物はRASTアッセイから
のIgEの読みとり値 によって示されるように、高IgE力価を誘導し、これは左側
に適用された抗真菌薬治療による同時期の真菌生物の減少とは無関係であった。
この場合、RASTアッセイからのIgEの読みとり値の減少は抗真菌薬による両側の
灌注の後にのみ観察された。このように、IgEの減少と病的症候の予防は抗真菌
薬による両側の処置と合致した。
【0177】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を治療するための抗真菌薬の使用をさらに評価する
ため、1週間毎に診療所に再来する各患者について、患者の情報を収集した。抗
真菌性アンホテリシンBの鼻灌注の使用を指示された再診患者のみをこの研究に
入れた。
【0178】
1週間毎に20名の患者が診療所に再来した(表2)。再来患者の平均年令は47
才だった(16-74才の範囲)。これらの患者はアンホテリシンB灌注を平均して
約6ヵ月の期間(1-16ヵ月の範囲)使用していた。患者の何人かはこの1ヵ月ほ
どの間に鼻の手術をし、それ以外はそうした手術をしたことはない。その上、患
者の何人かは局所または全身ステロイド療法を使用していた。さらに、患者の何
人かは抗真菌薬灌注の外に抗生物質鼻灌注を使用していた。抗細菌薬溶液は生理
食塩水1L当たりゲンタマイシン80 mg を含有していた(ウィルソン溶液)。患者
の何人かは抗細菌薬溶液を抗真菌薬溶液と混合して、その後鼻灌注を実施し、そ
の他の患者は各溶液を順次別々に使用した。患者の何人かは喘息(患者20名の内
15名)および大腸炎(患者20名の内2名)を含むその他の疾病も患っていた。
【0179】
内視鏡評価において、大部分の患者は非侵入性真菌誘導副鼻腔炎の症状の観察
し得る改善があった。これらの観察し得る改善を各患者が出した症候改善スコア
に対比させた。ある患者は2ヵ月後に鼻アンホテリシンB灌注を中止した。8ヵ
月後、その患者は非侵入性真菌誘導副鼻腔炎症状の再発症候を提示した。2名の
別の患者はアンホテリシンB溶液(期間:3ヵ月;頻度:1日に2回)からイト
ラコナゾール溶液(期間:1ヵ月;頻度:1日に2回)に変更した。1名はイト
ラコナゾールのわずか7日の使用後に、軽快したと報告した。総合して、これら
の結果は、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を治療するために抗真菌薬を有効に使用す
ることができることを示している。
【0180】
【表2】

B、抗真菌薬治療前;A、抗真菌薬治療後
1 ウィルソン溶液(ゲンタマイシン 80 mg/生理食塩水 L)も1日に2回灌注

2 ウィルソン溶液も間欠的に灌注。
3 鼻灌注を8ヵ月前に停止し、疾病が再発。
4 ウィルソン溶液(ゲンタマイシン 80 mg/生理食塩水 L)も1日に1回灌注

5 アンホテリシンB(期間:3ヵ月;頻度:1日に2回)からイトラコナゾー
ル(期間:1ヵ月;頻度:1日に2回)鼻灌注に変更後、7日目に軽快。
6 アンホテリシンBで3ヵ月後、イトラコナゾール(期間:1ヵ月;頻度:1
日に2回)灌注に変更。
7 ウィルソン溶液も灌注(期間:1年)。
8 1ヵ月前にKenalog 40 IM Medval Dose Pack適用。
9 6ヵ月前にKenalog Shot適用。
10 プレドニソンを1週間適用。
11 全身ステロイド治療を3年間適用。
12 抗真菌薬灌注開始後、テオフィリンおよびチレイドの適用を停止。
【0181】
(実施例3)以前に鼻手術をしていない患者の非侵入性真菌誘導副鼻腔炎の治
療および予防
以下の3名の非侵入性真菌誘導副鼻腔炎患者は以前に鼻手術を受けていない。
【0182】
61才男性は非侵入性真菌誘導副鼻腔炎と診断され、アンホテリシンB灌注を1
日に2回実施するように指示された。治療開始前、内視鏡評価では鼻腔を塞ぐポ
リープ(内視鏡スコア3)が見られ、患者自身は症候スコアを−1とした。アン
ホテリシンB灌注を14ヵ月使用した後、内視鏡評価は疾病の確証を認めず(内視
鏡スコア0)、患者自身は症候スコアを+2とした。
【0183】
64才女性は非侵入性真菌誘導副鼻腔炎と診断され、アンホテリシンB灌注を1
日に2回実施するように指示され、その後1日に4回に増加した。治療開始前、
内視鏡評価ではポリープ状病変(内視鏡スコア1)の確証が見られ、患者自身は
症候スコアを−1とした。アンホテリシンB灌注を16ヵ月使用した後、内視鏡評
価は疾病の確証を認めず(内視鏡スコア0)、患者自身は症候スコアを+2とし
た。
【0184】
54才男性は非侵入性真菌誘導副鼻腔炎と診断され、アンホテリシンB灌注を1
日に2回実施するように指示された。この患者は筋肉内ステロイド注射を3-8 ヵ
月毎に受けており、最後の注射はアンホテリシンB灌注開始の約7ヵ月前に行わ
れた。抗真菌薬治療開始前、内視鏡評価では疾病の確証はなかった(内視鏡スコ
ア0)が、患者自身は症候スコアを−1とした。アンホテリシンB灌注を4ヵ月
使用した後、内視鏡評価はやはり疾病の確証を認めなかった(内視鏡スコア0)
が、患者自身は症候スコアを+1とした。
【0185】
(実施例4)抗真菌薬治療を使用する、好酸球増加症の縮小
67才女性は非侵入性真菌誘導副鼻腔炎と診断され、アンホテリシンB灌注を1
日に2回実施するように指示された。アンホテリシンB灌注の9ヵ月後、さらに
改善するため、患者に洞部手術を実施した。手術中、粘膜生検体を採取し、好酸
球のカウントを、抗真菌薬治療前の手術中にその患者から採取した生検から得ら
れたものと比較した。
【0186】
前部を除くすべての洞部からの粘膜生検体の全部の好酸球カウントが抗真菌薬
治療後に減少(<5%)した。前頭洞生検体中の好酸球カウントは10%だった。
その上、前頭洞中にはアレルギー性粘液が存在することがわかり、おそらく前頭
洞閉塞のため、アンホテリシンB灌注が前頭洞に到達しなかったためと推測され
る。このように、以前に観察された高好酸球症が、治療したすべての洞部分で正
常まで縮小した。
【0187】
(実施例5)慢性喘息症の治療および予防
実施例2に記載した研究の患者53名の内、37名が以前に慢性喘息と診断されて
いた。3ヵ月の抗真菌薬治療後、研究対象の37名の喘息患者の内28名が喘息症候
の改善または完全な消失を表明した。これらの28名の内4名について、抗真菌薬
治療後、肺機能試験を使用して分析した。彼らが抗真菌薬治療前に同様の試験を
受けていたからである。抗真菌薬治療の前および後の結果を比較して、これらの
4名の喘息患者全員の肺機能が改善されたことが確認された。その上、もはや喘
息症候を提示しない患者28名の内、26名が喘息薬を服用するのを停止した。これ
ら26名の患者の内、23名は抗真菌薬治療前に喘息のために全身性ステロイドの投
与を受けていたが、抗真菌薬治療開始後はだれもステロイドの投与を受けなかっ
た。
【0188】
別の研究において、喘息患者7名の肺から痰サンプルを採取した。これらのサ
ンプルの培養分析から、各サンプル中の真菌生物の存在がわかった。特定すると
、Candida albicans、Penicillium、Fusarium、Scopulariopsis、Cryptococcus
、Cladosporium、Aspergillus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus nidulans
、および酵母が培養された。各痰サンプルから培養された種々の真菌種の数は1
〜5の範囲だった。
【0189】
(実施例6)イトラコナゾール製剤
イトラコナゾールをポリエチレングリコール(PEG)中に溶解してイトラコナ
ゾール原液を製剤することによって、イトラコナゾール剤を製造した。イトラコ
ナゾールは100 mg イトラコナゾールカプセル(Janssen Pharmaceutica,Inc.)
から取得した。典型的には、イトラコナゾールを溶解するのに PEG-400を使用し
た。溶解した後、原液をろ過して何らかの不溶性物質を除去した。次に、無菌水
で希釈することによって、使用のための原液を調製した。
【0190】
具体的には、100 mgイトラコナゾールカプセル 20個を開けて、イトラコナゾ
ールを含む球体を目盛り付きシリンダーに入れた。加熱(70℃)したPEG-400 1
リッターをこのイトラコナゾールが入っている目盛り付きシリンダーに添加した
。次に、回転するホットプレート上にこの混合物を置き、70℃に30分間維持した
。30分後、熱懸濁液を尿石(urine stone)フィルターでろ過してガラス容器に入
れ 、室温まで冷却した。冷却後、ろ過した溶液100 mLを空のプラスチックビン
に入れた。次に、無菌水 900 mLを添加し、溶液を混合した。混合後、香味料を
1滴 添加した(ペパーミントオイル)。この操作で典型的には、1mL中イトラコ
ナゾール約98.8μg〜約111μgを含有する溶液が生成した。
【0191】
それぞれ指示した溶液について、HPLCによって以下のようにイトラコナゾール
濃度を測定した(表3)。
【0192】
【表3】

【0193】
ステロイドを含有するイトラコナゾール製剤も製造した。具体的には、イトラ
コナゾール PEG-400原液に2つのPULMICORT 200μg吸入器の内容物(合計でブデ
ソニド約91μg)を70℃で約15分間で添加した。イトラコナゾール粉末をPEG-400
に溶解してから約5分後にブデソニドを添加した。室温まで冷却した後、沈殿が
いくらか生じた。溶液を減圧下で細かい目の濾紙でろ過することによって、この
不溶性物質を除去した。濾紙を乾燥して、捕捉した沈殿を測定した(36-40μg)
。したがって、溶液/微粒子懸濁液中にステロイドが約54-50 μg残留した。
【0194】
(実施例7)イトラコナゾールを使用した非侵入性真菌誘導副鼻腔炎の治療およ
び予防
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎患者3名(33才男性、70才男性、および57才女性)
にイトラコナゾール溶液による鼻への灌注を指示した。このイトラコナゾール溶
液は溶液(無菌水中10% PEG-400)1 Lについてイトラコナゾール約100 mgを含
有し、本明細書の記載にしたがって調製した。患者2名はアンホテリシンB灌注
に応答しなかったため、イトラコナゾール灌注を実施することを指示された。各
患者はイトラコナゾール灌注の開始後2週間以内に顕著な症候の改善を報告した
(症候スコア:-1から+2へ、および-1から+1へ)。イトラコナゾール灌注の開始
後16日目、これら2名の患者の内の1人は内視鏡分析によって明らかな改善を提
示した(内視鏡スコア:右側について1から0、左側について1から1)。その上、
この患者は喘息症候が劇的に改善したことを示し、喘息の投薬(FloventおよびS
ervent)を1日に2回から1日に1回に減らした。
【0195】
第3の患者はアンホテリシンBに対して局所的副作用(灼熱感)があるため、
イトラコナゾール灌注の実施を指示された。イトラコナゾールによる治療後、こ
の患者は症候の改善(症候スコア:-1から0へ)を報告した。その上、この患者
はイトラコナゾール灌注において何ら局所的副作用または問題が生じなかった。
【0196】
(実施例8)イトラコナゾールを使用した慢性喘息症の治療および予防
慢性副鼻腔炎の病歴または症候がない32才の白人男性患者は全身および局所ス
テロイドでの医学的治療ならびに頻繁な気管支拡張薬の使用にもかかわらず、顕
著な喘息症候を提示した。痰および鼻-副鼻腔粘液サンプルを採取して分析した
。培養分析で、痰中にCandida albicans、ならびに鼻-副鼻腔粘液中にPenicilli
um、Geotrichum、AlternariaおよびCladosporium種の存在がわかった。
【0197】
この患者に、毎日2回、外鼻孔経由でイトラコナゾール溶液約 20 mLの抗真菌
薬治療を開始した。イトラコナゾール溶液の濃度は約100 mg/Lであった。2、3
週間後、患者は全身ステロイドの最終回の投与を受けた。全身ステロイドの中止
後約2ヵ月目に、患者は局所ステロイドおよび気管支拡張薬の使用も中止した。
全ステロイド治療の中止以来、患者の症候は劇的に改善した。具体的には、患者
は全ステロイド治療の中止以来4-5ヵ月間、息切れの症状も息がぜいぜいするこ
ともないと報告した。
【0198】
客観的分析でも劇的改善が明らかになった。抗真菌薬治療の前に実施した研究
において、この患者は異常な肺機能を提示した。7ヵ月間の記載したような継続
した抗真菌薬灌注と、最後の4-5ヵ月間の全ステロイド治療の中止後、この患者
は改善した肺機能を提示した。具体的には、肺の強制肺活量(FVC)は治療前 の
3.99 Lから治療後の4.80 Lに改善され、20.30%増加し;1秒間の強制呼気容量
(FEV1)、すなわち低度気道抵抗のマーカーは治療前の3.34 Lから治療後の4.27
Lに改善され、27.84%増加し;最大強制呼気流量(FEFmax)は治療前の9.1 L/
秒から治療後の12.6 L/秒に改善されて、38.46%増加し;そして最大換気量(M
VV)は治療前の119 L/分から治療後の156 L/分に改善されて、31.90%改善さ
れた。
【0199】
要約すると、それまでの4-5ヵ月間抗真菌薬の鼻灌注以外は医学的治療をしな
かったにもかかわらず、客観的マーカーから肺機能の20.3%から38.46%の間の
改善がわかった。これらの結果は気道への抗真菌薬の粘膜投与によって、慢性喘
息症候を治療および予防することができることを示している。
【0200】
この患者の喘息症候が改善された後のある時期に、患者がイトラコナゾール灌
注を中止した。イトラコナゾール灌注を使用しなくなった4-6週間後、患者の喘
息が再発した。この時、患者は喘息症候をコントロールするために、ステロイド
のみを吸入した。約4-6週間後、この患者はステロイド吸入器の使用からイトラ
コナゾール粉末吸入器の使用に変更した。具体的には、患者は粉末化吸入器を使
用して、1日に純イトラコナゾールを約400μg吸入するように指示された。その
イトラコナゾール粉末は基準物質“AS”(Janssen Pharmaceutica,Inc.)である
。吸入器はASTRA pharmaceuticalsが製造したPulmicort 200μg TURBOHALER(登
録商標)である。この吸入器はブデソニド吸入用粉末の一定用量のために設計さ
れたが、イトラコナゾールを投与するために応用した。この患者は4週間無症候
性で、イトラコナゾール粉末治療の使用を継続している。患者には当初鼻ポリー
プも少なくとも1個あった。このポリープは治療の2週目までに認知し得るほど
生育力が低下した。
【0201】
別の喘息患者も、適応するPulmicort 200μg TURBOHALER(登録商標)を使用し
て、1日に純イトラコナゾールを約200μg吸入するように指示された。約2週間
後、この患者の病状は著しく改善された。この患者は治療を続けている。
【0202】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎がある喘息患者の1人をネブライザーを使用してイ
トラコナゾールで治療した。具体的には、1日に、イトラコナゾール溶液(PEG-
400 1 mL当たりイトラコナゾール約10 mg)約 2 mLをネブライザーで投与した。
このネブライザーはDeVillbisによって製造された、PULMO-MATEブランドの空気
圧式である。約2週間後、患者は症候スコアの全体的改善によって確証されたよ
うに、喘息および非侵入性真菌誘導副鼻腔炎病態の症状が改善されたことを表明
した。1週間単位でも改善が認知された。
【0203】
(実施例9)非侵入性真菌誘導中耳炎の同定
慢性中耳炎と診断された患者3名から、吸引捕捉器を使用して、中耳から粘液
サンプルを採取した。サンプルの培養分析の結果、真菌生物の存在がわかった。
具体的には、第1の患者からの粘液サンプルはCandidaおよびTrichophyton rubr
um種に陽性、第2の患者からの粘液サンプルはPenicillium種に陽性、そして第
3の患者からの粘液サンプルはAspergillus種に陽性だった。その上、顕微鏡試
験で各粘液サンプル中に、多数の変性している好酸球が見られた。このように、
これらの結果は、慢性中耳炎はおそらく非侵入性真菌生物が原因するらしいこと
を示している。さらに、慢性中耳炎は、本明細書に記載した抗真菌薬治療および
予防法を使用して治療および予防することができる、非侵入性真菌誘導粘膜炎で
あるものと見られる。
【0204】
(実施例10)非侵入性真菌誘導腸粘膜炎の治療
慢性副鼻腔炎の一連の5名の患者の内3名が大腸炎の病歴があることを報告し
た。患者2名に1日にイトラコナゾール(Janssen Pharmaceutica,Inc.より提供
)1カプセルの抗真菌薬治療を開始した。このカプセルはイトラコナゾール 100
mgを含有していた。各患者は就寝前、コーラ類を飲まないで最後の食事の最低
2 時間後にカプセルを服用するように指示された。食物およびコーラ飲料は薬
剤の吸収を増大させる。記載したように服用した時、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎
症候の治療のため、イトラコナゾールの約50%が腸内腔に残留するはずである。
【0205】
その他の実施形態
本発明をその詳細な説明とともに記載したが、前記の記載は特許請求の範囲に
よって定義される本発明の範囲を説明することを意図し、これを限定する意図は
ない。その他の態様、利点および変形は特許請求の範囲の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】両側の慢性副鼻腔炎の患者のCTスキャンを示す写真である。
【図2】図1の患者の、抗真菌薬の潅注による治療の4か月後のCTスキャンを示す写真である。
【図3】粘液採集デバイスを描いた略図である。
【図4】粘液採集デバイスを描いた略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を有する哺乳動物の治療方法であって、該哺乳動物の
鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に、該非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を軽減または消
失させるのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有
する製剤を粘膜投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物が非アトピー性である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物が免疫応答性である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記非侵入性真菌誘導副鼻腔炎がポリープの形成またはポリープ状の変化によ
り特徴づけられる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記非侵入性真菌誘導副鼻腔炎が慢性的である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記製剤が固体、液体またはエアロゾルの形態をしている、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記製剤が粉末、結晶性物質、ゲル、ペースト、軟膏、クリーム、溶液、懸濁
液、部分液体、スプレー、噴霧剤、ミスト、細霧化蒸気、エアロゾルおよびチン
キ剤からなる群より選択される形態をしている、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記粘膜投与が直接粘膜投与である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記直接粘膜投与が鼻−鼻傍構造に液状形態の前記製剤を灌注することを含む、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記直接粘膜投与が鼻−鼻傍構造にエアロゾル形態の前記製剤を適用すること
を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記直接粘膜投与が鼻−鼻傍構造に粉末形態の前記製剤を適用することを含む、
請求項9記載の方法。
【請求項13】
抗真菌薬がマクロライドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
抗真菌薬がアゾール(azole)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
抗真菌薬が真菌の細胞壁成分をこわす、請求項1記載の方法。
【請求項16】
抗真菌薬がステロール阻害剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
抗真菌薬がアンホテリシンB、ケトコナゾール、イトラコナゾール、サパーコ
ナゾール、ボリコナゾール、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール、グ
リセオフルビン、クロトリマゾール、エコナゾール、ターコナゾール、ブトコナ
ゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、シクロピロックス・オラミン、ハ
ロプロジン、トルナフテート、ナフチフィン、タービナフィン塩酸塩、モルホリ
ン類、ニスタチン、ナタマイシン、ブテナフィン、ウンデシレン酸、ホワイトフ
ィールド軟膏、プロピオン酸、およびカプリル酸からなる群より選択される抗真
菌薬を含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
抗真菌薬がアンホテリシンB、ケトコナゾール、イトラコナゾール、サパーコ
ナゾール、およびボリコナゾールからなる群より選択される抗真菌薬を含む、請
求項17記載の方法。
【請求項19】
抗真菌薬がアンホテリシンBを含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
抗真菌薬がイトラコナゾールを含む、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記製剤が製薬上許容される水性ビヒクルを含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記製剤が1リットルあたり約0.01ng〜約1000mgの抗真菌薬を含む、請求項2
1記載の方法。
【請求項23】
前記有効な量が哺乳動物の外鼻孔あたり約0.01mL〜約1Lの前記製剤からなる、
請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記有効な量が哺乳動物の外鼻孔あたり約5mL〜約100mLの前記製剤からなる、
請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記有効な量が哺乳動物の外鼻孔あたり約20mLの前記製剤からなる、請求項2
2記載の方法。
【請求項26】
前記製剤が1リットルあたり約1ng〜約500mgの抗真菌薬を含む、請求項21
記載の方法。
【請求項27】
前記製剤が1リットルあたり100mgの抗真菌薬を含む、請求項21記載の方法。
【請求項28】
前記製剤が複数の抗真菌薬を含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記製剤の有効量が哺乳動物の体重1kgあたり約0.01ng〜約1000mgの抗真菌薬
からなる、請求項1記載の方法。
【請求項30】
前記製剤の有効量が哺乳動物の体重1kgあたり約1ng〜約500mgの抗真菌薬から
なる、請求項1記載の方法。
【請求項31】
前記製剤の有効量が前記有効期間にわたって一定している、請求項1記載の方法。
【請求項32】
前記粘膜投与の有効頻度が1日に約4回から隔週に約1回までである、請求項
1記載の方法。
【請求項33】
前記粘膜投与の有効頻度が1日に約2回から1週に約1回までである、請求項
1記載の方法。
【請求項34】
前記粘膜投与の有効頻度が1日1回より多い、請求項1記載の方法。
【請求項35】
前記粘膜投与の有効頻度が1週1回より多い、請求項1記載の方法。
【請求項36】
前記有効期間が約7日より長い、請求項1記載の方法。
【請求項37】
前記有効期間が約14日より長い、請求項1記載の方法。
【請求項38】
前記有効期間が約30日より長い、請求項1記載の方法。
【請求項39】
前記有効期間が約60日より長い、請求項1記載の方法。
【請求項40】
前記有効期間が約90日より長い、請求項1記載の方法。
【請求項41】
前記製剤が製薬上許容される水性ビヒクル、製薬上許容される固体ビヒクル、
粘液溶解薬、抗細菌薬、抗炎症剤、免疫抑制剤、拡張薬、血管収縮薬、ステロイ
ド、および治療用化合物からなる群より選択される化合物を含む、請求項1記載
の方法。
【請求項42】
前記方法が哺乳動物に第2の製剤を投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項43】
前記第2の製剤が抗真菌薬、製薬上許容される水性ビヒクル、製薬上許容され
る固体ビヒクル、粘液溶解薬、抗細菌薬、抗炎症剤、免疫抑制剤、拡張薬、血管
収縮薬、ステロイド、および治療用化合物からなる群より選択される化合物を含
む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、前記粘膜投与後に、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を予防するのに有
効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する予防用製剤
を前記哺乳動物に予防的に粘膜投与することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項45】
前記予防的粘膜投与が直接粘膜投与である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を発生する疑いのある哺乳動物を予防的に処置する方
法であって、該哺乳動物に、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を予防するのに有効な量で、
有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製剤を粘膜投与すること
を含む、上記方法。
【請求項47】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を有する哺乳動物の治療方法であって、
a)該哺乳動物を確認し、そして
b)該哺乳動物の鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導副鼻腔
炎を軽減または消失させるのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり
、抗真菌薬を含有する製剤を直接的に粘膜投与する、
ことを含む、上記方法。
【請求項48】
前記確認が診断を含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を発生する疑いのある哺乳動物を予防的に処置する
方法であって、
a)該哺乳動物を確認し、そして
b)該哺乳動物の鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導副鼻腔
炎を予防するのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を
含有する製剤を粘膜投与する、
ことを含む、上記方法。
【請求項50】
喘息を有する哺乳動物の治療方法であって、該哺乳動物の気道の少なくとも一
部に、喘息の症状を軽減または消失させるのに有効な量で、有効な頻度で、有効
な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製剤を粘膜投与することを含む、上記方法。
【請求項51】
前記粘膜投与が直接粘膜投与である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記直接粘膜投与が哺乳動物の鼻−鼻傍構造に液状形態の前記製剤を灌注する
ことを含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記直接粘膜投与が哺乳動物の口または鼻から前記製剤を吸入することを含む、
請求項51記載の方法。
【請求項54】
前記一部が鼻の気道を含む、請求項50記載の方法。
【請求項55】
前記一部が肺の気道を含む、請求項50記載の方法。
【請求項56】
前記方法が、前記粘膜投与後に、喘息の症状を予防するのに有効な量で、有効
な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する予防用製剤を前記哺乳動物
に予防的に粘膜投与することを含む、請求項50記載の方法。
【請求項57】
喘息を発生する疑いのある哺乳動物を予防的に処置する方法であって、該哺乳
動物の気道の少なくとも一部に、喘息の症状を予防するのに有効な量で、有効な
頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製剤を粘膜投与することを含
む、上記方法。
【請求項58】
喘息を有する哺乳動物の治療方法であって、
a)該哺乳動物を確認し、そして
b)該哺乳動物の気道の少なくとも一部に、喘息の症状を軽減または消失させ
るのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製
剤を直接的に粘膜投与する、
ことを含む、上記方法。
【請求項59】
喘息を発生する疑いのある哺乳動物を予防的に処置する方法であって、
a)該哺乳動物を確認し、そして
b)該哺乳動物の気道の少なくとも一部に、喘息の症状を予防するのに有効な
量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製剤を粘膜投与
する、
ことを含む、上記方法。
【請求項60】
非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を有する哺乳動物の治療方法であって、該哺乳動物
に、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を軽減または消失させるのに有効な量で、有効な
頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製剤を粘膜投与することを含
む、上記方法。
【請求項61】
非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を発生する疑いのある哺乳動物を予防的に処置する
方法であって、該哺乳動物に、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を予防するのに有効な
量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製剤を粘膜投与
することを含む、上記方法。
【請求項62】
非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を有する哺乳動物の治療方法であって、
a)該哺乳動物を確認し、そして
b)該哺乳動物の消化管の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を軽
減または消失させるのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真
菌薬を含有する製剤を粘膜投与する、
ことを含む、上記方法。
【請求項63】
前記確認が診断を含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を発生する疑いのある哺乳動物を予防的に処置する
方法であって、
a)該哺乳動物を確認し、そして
b)該哺乳動物の消化管の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を予
防するのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有す
る製剤を粘膜投与する、
ことを含む、上記方法。
【請求項65】
非侵入性真菌誘導中耳炎を有する哺乳動物の治療方法であって、該哺乳動物に、
非侵入性真菌誘導中耳炎を軽減または消失させるのに有効な量で、有効な頻度で、
有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製剤を粘膜投与することを含む、上記
方法。
【請求項66】
非侵入性真菌誘導中耳炎を発生する疑いのある哺乳動物を予防的に処置する方
法であって、該哺乳動物に、非侵入性真菌誘導中耳炎を予防するのに有効な量で、
有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製剤を粘膜投与するこ
とを含む、上記方法。
【請求項67】
非侵入性真菌誘導中耳炎を有する哺乳動物の治療方法であって、
a)該哺乳動物を確認し、そして
b)該哺乳動物の中耳の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導中耳炎を軽減ま
たは消失させるのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬
を含有する製剤を粘膜投与する、
ことを含む、上記方法。
【請求項68】
前記確認が診断を含む、請求項67記載の方法。
【請求項69】
非侵入性真菌誘導中耳炎を発生する疑いのある哺乳動物を予防的に処置する方
法であって、
a)該哺乳動物を確認し、そして
b)該哺乳動物の中耳の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導中耳炎を予防す
るのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり、抗真菌薬を含有する製
剤を粘膜投与する、
ことを含む、上記方法。
【請求項70】
包装材料と該包装材料の中に収納された抗真菌薬を含有する製剤とからなる製
品であって、該包装材料は、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を有する哺乳動物の鼻−
鼻傍構造の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を軽減または消失させ
るのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり該製剤を直接粘膜投与す
ることを示すラベルまたは挿入説明書を含むものである、上記製品。
【請求項71】
包装材料と該包装材料の中に収納された抗真菌薬を含有する製剤とからなる製
品であって、該包装材料は、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を発生する疑いのある哺
乳動物の鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に、非侵入性真菌誘導副鼻腔炎を予防す
るのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり該製剤を粘膜投与するこ
とを示すラベルまたは挿入説明書を含むものである、上記製品。
【請求項72】
包装材料と該包装材料の中に収納された抗真菌薬を含有する製剤とからなる製
品であって、該包装材料は、喘息を有する哺乳動物の気道の少なくとも一部に、
喘息の症状を軽減または消失させるのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間
にわたり該製剤を直接粘膜投与することを示すラベルまたは挿入説明書を含むも
のである、上記製品。
【請求項73】
包装材料と該包装材料の中に収納された抗真菌薬を含有する製剤とからなる製
品であって、該包装材料は、喘息を発生する疑いのある哺乳動物の気道の少なく
とも一部に、喘息の症状を予防するのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間
にわたり該製剤を粘膜投与することを示すラベルまたは挿入説明書を含むもので
ある、上記製品。
【請求項74】
包装材料と該包装材料の中に収納された抗真菌薬を含有する製剤とからなる製
品であって、該包装材料は、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を有する哺乳動物に非侵
入性真菌誘導腸粘膜炎を軽減または消失させるのに有効な量で、有効な頻度で、
有効な期間にわたり該製剤を粘膜投与することを示すラベルまたは挿入説明書を
含むものである、上記製品。
【請求項75】
包装材料と該包装材料の中に収納された抗真菌薬を含有する製剤とからなる製
品であって、該包装材料は、非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を発生する疑いのある哺
乳動物に非侵入性真菌誘導腸粘膜炎を予防するのに有効な量で、有効な頻度で、
有効な期間にわたり該製剤を粘膜投与することを示すラベルまたは挿入説明書を
含むものである、上記製品。
【請求項76】
包装材料と該包装材料の中に収納された抗真菌薬を含有する製剤とからなる製
品であって、該包装材料は、非侵入性真菌誘導中耳炎を有する哺乳動物に非侵入
性真菌誘導中耳炎を軽減または消失させるのに有効な量で、有効な頻度で、有効
な期間にわたり該製剤を粘膜投与することを示すラベルまたは挿入説明書を含む
ものである、上記製品。
【請求項77】
包装材料と該包装材料の中に収納された抗真菌薬を含有する製剤とからなる製
品であって、該包装材料は、非侵入性真菌誘導中耳炎を発生する疑いのある哺乳
動物に非侵入性真菌誘導中耳炎を予防するのに有効な量で、有効な頻度で、有効
な期間にわたり該製剤を粘膜投与することを示すラベルまたは挿入説明書を含む
ものである、上記製品。
【請求項78】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎の治療用または予防用の医薬を製造するための抗真
菌薬の使用。
【請求項79】
前記医薬が哺乳動物の鼻−鼻傍構造の少なくとも一部に非侵入性真菌誘導副鼻
腔炎を軽減、消失または予防するのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間に
わたり粘膜投与される、請求項78記載の使用。
【請求項80】
前記粘膜投与が直接粘膜投与である、請求項79記載の使用。
【請求項81】
前記直接粘膜投与が鼻−鼻傍構造に液状形態の前記医薬を灌注することを含む、
請求項80記載の使用。
【請求項82】
前記直接粘膜投与が鼻−鼻傍構造にエアロゾル形態の前記医薬を適用すること
を含む、請求項80記載の使用。
【請求項83】
前記直接粘膜投与が鼻−鼻傍構造に粉末形態の前記医薬を適用することを含む、
請求項80記載の使用。
【請求項84】
前記有効量が哺乳動物の外鼻孔あたり約0.01mL〜約1Lの前記医薬からなる、請
求項79記載の使用。
【請求項85】
前記医薬の有効量が前記有効期間にわたって一定している、請求項79記載の使
用。
【請求項86】
前記粘膜投与の有効頻度が1日に約4回から隔週に約1回までである、請求項7
9記載の使用。
【請求項87】
前記有効期間が約7日より長い、請求項79記載の使用。
【請求項88】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎がポリープの形成またはポリープ状の変化により特
徴づけられる、請求項78記載の使用。
【請求項89】
非侵入性真菌誘導副鼻腔炎が慢性的である、請求項78記載の使用。
【請求項90】
前記医薬が固体、液体またはエアロゾルの形態をしている、請求項78記載の
使用。
【請求項91】
前記医薬が粉末、結晶性物質、ゲル、ペースト、軟膏、クリーム、溶液、懸濁
液、部分液体、スプレー、噴霧剤、ミスト、細霧化蒸気、エアロゾルおよびチン
キ剤からなる群より選択される形態をしている、請求項78記載の使用。
【請求項92】
抗真菌薬がマクロライドを含む、請求項78記載の使用。
【請求項93】
抗真菌薬がアゾール(azole)を含む、請求項78記載の使用。
【請求項94】
抗真菌薬がアンホテリシンB、ケトコナゾール、イトラコナゾール、サパーコ
ナゾール、ボリコナゾール、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール、グ
リセオフルビン、クロトリマゾール、エコナゾール、ターコナゾール、ブトコナ
ゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、シクロピロックス・オラミン、ハ
ロプロジン、トルナフテート、ナフチフィン、タービナフィン塩酸塩、モルホリ
ン類、ニスタチン、ナタマイシン、ブテナフィン、ウンデシレン酸、ホワイトフ
ィールド軟膏、プロピオン酸、およびカプリル酸からなる群より選択される抗真
菌薬を含む、請求項78記載の使用。
【請求項95】
前記医薬が製薬上許容される水性ビヒクルを含む、請求項78記載の使用。
【請求項96】
前記医薬が1リットルあたり約1ng〜約500mgの抗真菌薬を含む、請求項95記
載の使用。
【請求項97】
前記医薬が1リットルあたり約100mgの抗真菌薬を含む、請求項95記載の使用。
【請求項98】
前記医薬が1リットルあたり約0.01ng〜約1000mgの抗真菌薬を含む、請求項7
8記載の使用。
【請求項99】
前記医薬が複数の抗真菌薬を含む、請求項78記載の使用。
【請求項100】
前記医薬が製薬上許容される水性ビヒクル、製薬上許容される固体ビヒクル、
粘液溶解薬、抗細菌薬、抗炎症剤、免疫抑制剤、拡張薬、血管収縮薬、ステロイ
ド、および治療用化合物からなる群より選択される化合物を含む、請求項78記
載の使用。
【請求項101】
喘息治療用または予防用の医薬を製造するための抗真菌薬の使用。
【請求項102】
前記医薬が哺乳動物の気道の少なくとも一部に喘息の症状を軽減、消失または予
防するのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり粘膜投与される、請求
項101記載の使用。
【請求項103】
非侵入性真菌誘導腸粘膜炎の治療用または予防用の医薬を製造するための抗真菌
薬の使用。
【請求項104】
前記医薬が哺乳動物に非侵入性真菌誘導腸粘膜炎の症状を軽減、消失または予防
するのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり粘膜投与される、請求項
103記載の使用。
【請求項105】
非侵入性真菌誘導中耳炎の治療用または予防用の医薬を製造するための抗真菌薬
の使用。
【請求項106】
前記医薬が哺乳動物に非侵入性真菌誘導中耳炎の症状を軽減、消失または予防す
るのに有効な量で、有効な頻度で、有効な期間にわたり粘膜投与される、請求項1
05記載の使用。
【請求項107】
抗真菌薬、香味剤および水を含有する抗真菌性製剤であって、水が該製剤の少な
くとも約50%を占めている、上記抗真菌性製剤。
【請求項108】
前記水が前記製剤の少なくとも約75%を占めている、請求項107記載の抗真菌
性製剤。
【請求項109】
前記水が前記製剤の少なくとも約85%を占めている、請求項107記載の抗真菌
性製剤。
【請求項110】
抗真菌薬、香味剤および水を含有する抗真菌性製剤であって、水が該製剤の少な
くとも約50%を占めており、抗真菌薬がアンホテリシンB、ケトコナゾール、サパ
ーコナゾール、ボリコナゾール、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール、
グリセオフルビン、クロトリマゾール、エコナゾール、ターコナゾール、ブトコナ
ゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、シクロピロックス・オラミン、ハロ
プロジン、トルナフテート、ナフチフィン、タービナフィン塩酸塩、モルホリン類、
ニスタチン、ナタマイシン、ブテナフィン、ウンデシレン酸、ホワイトフィールド
軟膏、プロピオン酸、およびカプリル酸からなる群より選択される抗真菌薬を含む、
上記抗真菌性製剤。
【請求項111】
イトラコナゾールと水を含有する抗真菌性製剤であって、イトラコナゾールが約
25μg/mL以上の濃度で該製剤中に溶解しており、水が該製剤の少なくとも約50%を
占めている、上記抗真菌性製剤。
【請求項112】
前記製剤がポリエチレングリコールを含む、請求項111記載の抗真菌性製剤。
【請求項113】
前記製剤が香味剤を含む、請求項111記載の抗真菌性製剤。
【請求項114】
イトラコナゾールと水を含有する抗真菌性製剤であって、イトラコナゾールが約
25μg/mL以上の濃度で該製剤中に懸濁しており、水が該製剤の少なくとも約50%を
占めている、上記抗真菌性製剤。
【請求項115】
イトラコナゾールが約25μg/mL以上の濃度で下記製剤中に溶解しており、水が下
記製剤の少なくとも約50%を占めている、イトラコナゾールと水を含有する抗真菌
性製剤の製造方法であって、イトラコナゾールを含むストック溶液に水を添加する
ことを含む、上記方法。
【請求項116】
哺乳動物の粘液からの真菌を培養する方法であって、
a)粘液に粘液溶解薬を接触させて、粘液の粘度を低下させ、
b)粘度の低下した粘液から真菌を分離し、
c)分離した真菌を真菌増殖培地に接触させて真菌培養物を形成し、そして
d)分離した真菌が増殖するように該真菌培養物をインキュベートする、
ことを含む、上記方法。
【請求項117】
真菌抗原を取得する方法であって、
a)哺乳動物の粘液に粘液溶解薬を接触させて、粘液の粘度を低下させ、
b)粘度の低下した粘液から真菌を分離し、
c)分離した真菌を真菌増殖培地に接触させて真菌培養物を形成し、
d)分離した真菌が増殖するように該真菌培養物をインキュベートし、そして
e)該培養真菌から該抗原を単離する、
ことを含む、上記方法。
【請求項118】
真菌特異的抗体を生産する方法であって、
a)哺乳動物の粘液に粘液溶解薬を接触させて、粘液の粘度を低下させ、
b)粘度の低下した粘液から真菌を分離し、
c)分離した真菌を真菌増殖培地に接触させて真菌培養物を形成し、
d)分離した真菌が増殖するように該真菌培養物をインキュベートし、
e)該培養真菌から真菌抗原を単離し、そして
f)動物を真菌抗原により免疫して該抗体を得る、
ことを含む、上記方法。
【請求項119】
鼻粘液採取装置であって、
a)粘液を保持するのに適した採取保持容器、
b)該採取保持容器から延びている採取チューブであって、該採取チューブは
遠位端と、粘液が該採取チューブの遠位端から該採取保持容器までの内腔を通過
できるような内腔とを規定しており、該採取チューブはその長さの少なくとも一
部分にわたって概して柔軟性があり、医師が、採取している間、該採取チューブ
を所望の形状へと選択的に操作できるようになっており、さらに該採取チューブ
は概して可鍛性があって、医師が該採取チューブを操作して異なる形状とするま
で該所望の形状を概ね保持するものである、該採取チューブ、および
c)該採取保持容器から延びている連結部分であって、該採取保持容器の内部
と連絡している第2内腔を規定しており、減圧源を受け取るようになっている該
連結部分、
を含む、上記装置。
【請求項120】
前記装置が第2内腔の開口部を調整するバルブを含む、請求項119記載の装
置。
【請求項121】
前記採取保持容器が前記採取チューブと前記連結部分から着脱可能である、請
求項119記載の装置。
【請求項122】
抗真菌薬を含有する医薬組成物。
【請求項123】
抗真菌薬と粘液溶解薬を含有する医薬組成物。
【請求項124】
抗真菌薬とステロイドを含有する医薬組成物。
【請求項125】
抗真菌薬とうっ血除去薬を含有する医薬組成物。
【請求項126】
抗真菌薬と抗生物質を含有する医薬組成物。
【請求項127】
抗真菌薬と抗炎症剤を含有する医薬組成物。
【請求項128】
哺乳動物において真菌に対する免疫反応を処置するための組成物であって、真
菌が患部への好酸球移動を活性化しなくなる閾値レベル以下に真菌を消失または
減少させるための抗真菌手段を有する、哺乳動物の粘液に直接粘膜投与するよう
に形成された薬剤により特徴づけられる、上記組成物。
【請求項129】
哺乳動物患者の鼻−洞構造、肺構造、耳構造または腸構造における真菌関連症
状を治療するための医薬組成物であって、本明細書中に記載される抗真菌薬を有
効な量で含有する、上記医薬組成物。
【請求項130】
哺乳動物患者の鼻−洞構造、肺構造、耳構造または腸構造における真菌関連症
状を治療するための医薬組成物であって、本明細書中に記載される抗真菌薬と少
なくとも1種の他の薬剤または阻害剤を有効な量で含有する、上記医薬組成物。
【請求項131】
哺乳動物患者の鼻−洞構造、肺構造、耳構造または腸構造における真菌関連症
状を治療するための医薬組成物であって、鼻−洞構造の内部での長期使用に適す
る抗真菌薬を有効な量で含有する、上記医薬組成物。
【請求項132】
粘液溶解薬と本明細書中に記載される抗真菌性化合物を含有する、患者の副鼻
腔炎、喘息、中耳炎または大腸炎を治療するための医薬。
【請求項133】
真菌の存在により引き起こされた患者の鼻、肺、耳または腸の炎症部位を治療
するための灌注用医薬であって、本明細書中に記載される抗真菌性化合物とステ
ロイドを有効な量で含有する、上記医薬。
【請求項134】
真菌の存在により引き起こされた患者の鼻、肺、耳または腸の炎症部位を治療
するための灌注用医薬であって、抗真菌性化合物と粘液溶解薬を有効な量で含有
する、上記医薬。
【請求項135】
真菌の存在により引き起こされた患者の鼻、肺、耳または腸の炎症部位を治療
するための灌注用医薬であって、本明細書中に記載されるステロイドと粘液溶解
薬を有効な量で含有する、上記医薬。
【請求項136】
真菌の存在により引き起こされた患者の鼻、肺、耳または腸の炎症部位を治療
するための灌注用医薬であって、本明細書中に記載される抗真菌性化合物とステ
ロイドと粘液溶解薬を有効な量で含有する、上記医薬。
【請求項137】
真菌の存在により引き起こされた患者の鼻、肺、耳または腸の炎症部位を治療
するための灌注用医薬であって、本明細書中に記載される抗真菌性化合物、ステ
ロイド、粘液溶解薬、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択される薬
剤少なくとも1種を有効な量で含有する、上記医薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−8951(P2007−8951A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202740(P2006−202740)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【分割の表示】特願2000−516659(P2000−516659)の分割
【原出願日】平成10年10月22日(1998.10.22)
【出願人】(501083115)メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ (27)
【Fターム(参考)】