説明

精密部品の二溶媒型洗浄の方法、装置及びシステム

図1に図示されるような、VOC溶媒を使用せずに精密部品を洗浄するための二溶媒洗浄システム100である。洗浄システムは洗浄部104、リンス部106及び溶媒回収部108を有する。二溶媒洗浄システムは、第一の溶媒112及び第二の溶媒126を用いて精密部品を洗浄及びリンスする二つの運転モードを提供し、第一及び第二の溶媒は分離可能であり、回収可能である。第一及び第二の溶媒は、従来式のVOC溶媒型システムと同程度に効果的なVOC除去溶媒であり、後に第一及び第二の溶媒を分離、回収及び再利用できるであろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、「精密部品を非VOCによって洗浄する方法、装置及びシステム(METHOD, APPARATUS, AND SYSTEM FOR NON-VOC BASED CLEANING OF ORECISION COMPONENTS)」という名称の2004年10月29日に出願された米国仮出願第60/623,847号に基づく優先権を主張する。それは、本開示と矛盾しない範囲でここに文献援用されている。
【0002】
開示の分野
本発明は概して、部品の精密な洗浄のための溶媒型洗浄システムに関する。詳しくは、発明は、溶媒の廃棄を全体的に減少させるために溶媒再生処理を用いた精密部品の二溶媒洗浄システムに関する。
【0003】
開示の背景
一般に精密洗浄及び乾燥システムは、様々な溶媒、界面活性剤又は他の水性混合物を含む多種多様な洗浄剤を利用する。これらのシステムは稼動することによって、医療装置、光学機器、ウエハ、PCボード、ハイブリッド回路、ディスクドライブ機材又は精密な機械若しくは電気機械部品などを例とする様々な装置若しくは部品を洗浄及び乾燥することができる。
【0004】
多くの先行技術のシステムは、VOC'sすなわち揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)として分類される溶媒を使用する。VOC'sは高蒸気圧を有する有機化合物であるため、VOC'sは常温及び外気圧で容易に蒸気を形成できる。VOC'sは精密洗浄システムにおいて有用である一方、VOC'sの使用及び廃棄は、VOC'sの汚染及び/又は廃棄の結果生じる有害な環境及び健康の影響に関する問題のために厳しく規制されている。
【特許文献1】米国仮出願第60/623,847号明細書
【発明の開示】
【0005】
開示の概要
本発明の目的は、精密部品を洗浄するための適切な洗浄システム及び適切な洗浄方法を創造することであり、溶媒再生処理を利用することで溶媒の廃棄を減少させ、且つ再利用及び/又は廃棄用の溶媒を回収することを同時に行う。本発明は、汚れ及び他の混入物を除去するために二つの溶媒を用いた精密部品の洗浄用二溶媒デザインを含む。ある代表的な実施形態においては、二つの溶媒は第一のVOC除去(VOC-exempt)溶媒及び第二のVOC除去溶媒を含み、VOC除去溶媒は一般にVOC溶媒と同様に効果的であろう。運転モードは、第一のVOC除去溶媒中で精密部品を洗浄することによって精密部品からあらゆる汚れ、微粒子、グリース又は他の混入物を除去する段階と、その後に第二のVOC除去溶媒を含む第二のタンク内で精密部品をリンスすることで第一のVOC除去溶媒によって精密部品に残ったあらゆる膜を除去する段階とを有する。運転モードにおいて、洗浄及びリンス段階は、更に洗浄及びリンスの助けとするために、精密部品を対応する溶媒中で振動及び超音波誘導キャビテーションに供する段階をそれぞれ有する。溶媒回収モードは、リンス段階の一部として第二のVOC除去溶媒から除去された第一のVOC除去溶媒を分離する段階を有する。ある代表的な実施形態においては、第二のVOC除去溶媒が第一のVOC除去溶媒より高価であるため、第二のVOC除去溶媒が再利用のために回収及び再生され、一方で第一のVOC除去溶媒が第一のVOC除去溶媒中のあらゆる混入物と同様に適切に廃棄されるであろう。
【0006】
ある代表的な実施形態においては、開示は溶媒再生システムを備える二溶媒洗浄システムによる精密部品の洗浄法を記載する。
【0007】
ある代表的な実施形態においては、開示は、精密部品を洗浄する一方で、二つの溶媒の回収及び/又は廃棄を提供する二溶媒洗浄システムを記載する。
【0008】
ある代表的な実施形態においては、開示は、タンク及び関係する配管を有することで、溶媒回収システムを備える二溶媒洗浄システムによる精密部品の洗浄を容易にする洗浄装置を記載する。
【0009】
ある代表的な実施形態においては、開示は、二溶媒洗浄システムにおいて第一のVOC除去溶媒を廃棄及び第二のVOC除去溶媒を回収する方法を記載する。
【0010】
本開示中で用いられる場合、「VOC除去溶媒」の用語は、合衆国環境保護局によって光化学反応性をほとんど有さないよう決められており、合衆国連邦規制基準の40 C.F.R.51.100(s)において指定されている有機化合物を含むものとして定義される。連邦規制基準は文献援用されている。
【0011】
発明の様々な実施形態の上記の概要は、説明された実施形態それぞれ又は発明の全ての実施例を説明することを意図していない。以下の詳細に記載されている図が、より詳細にこれらの実施形態を例示するであろう。
【0012】
発明は、添付図面に関する発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することで、より完璧に理解されるであろう。
【0013】
発明は様々な改良及び代替の形態を受け入れ易い一方で、それらの詳細が図面中に例として示されており、詳細に説明されるであろう。しかしながら、その意図が、発明を記載された特定の実施形態に限定することではないことが理解されなければならない。逆にその意図は、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、発明の精神及び範囲に入る全ての改良、同等物、及び代替物を網羅することである。
【0014】
開示の詳細な説明
開示の二溶媒洗浄システム100は、図1及び2に図示されている。二溶媒洗浄システム100は精密部品の洗浄用に設計及び適合されている。精密部品は、例えば医療装置、光学機器、ウエハ、PCボード、ハイブリッド回路、ディスクドライブ部材又は精密な機械若しくは電子機械の部品などである。好適な本実施形態のいくつかにおいては、二溶媒洗浄システム100は非分離型の単一の統合システムを有し、二溶媒洗浄システムの構成機材間に大量の相互接続を必要としない。例えば、二溶媒洗浄システムは単一の滑材(skid)又はフレームに設置され、及び/又は単一のハウジング、コンテナ又は区画に収容されるであろう。
【0015】
図1及び2に図示されるように、二溶媒洗浄システム100は、システムハウジング102、洗浄部104、リンス部106及び溶媒回収部108を有するであろう。洗浄部104、リンス部106及び溶媒回収部108を含む様々な構成部は、システムハウジング102内で動作可能に相互接続されており、単一の統合された構造が試験、出荷及び設置されることができるようになっている。
【0016】
洗浄部104は、一般に洗浄タンク110、第一の溶媒112及び第一の再循環ループ114を有する。洗浄タンク110は、ステンレス鋼、タンタル、チタン、石英、又はPEEKなどのポリマーを例とする適切な材料及び他の適切な材料によって構成されているオープンタンクを有する。洗浄タンク110は更に、洗浄処理を促進するための超音波トランスデューサ116を少なくとも一つ有するであろう。超音波エネルギは、第一の溶媒112内の低圧相及び高圧相のパターンを変化させる。低圧相においては、泡又は真空の空洞が形成される。高圧相においては、泡が激しく崩壊する。泡を発生及び崩壊するこの処理は、一般にキャビテーションと呼ばれる。キャビテーションは精密部品の表面に沿った激しい摩擦処理をもたらし、あらゆる粒子を部品から除去する。キャビテーション中に生じた泡は、非常に細かく、そして微小な隙間を通ることができるため、単に浸す又は攪拌する洗浄処理と比べてより効果的な洗浄を提供することができる。代表的な実施形態においては、超音波トランスデューサ116は、28KHzから2.5MHzの間の適当な周波数で超音波エネルギを発することができるクレスト・ウルトラソニック・コーポレーション(Crest Ultrasonic Corp.)のセラミック強化型トランスデューサである。超音波トランスデューサ116は、エポキシ樹脂などの接着剤によって洗浄タンク110の外部に直接連結されるであろう。
【0017】
第一の再循環ループ114はフローシステムを有しており、第一の溶媒112は第一のフィルタシステム118を通って再循環されることによって、精密部品が洗浄される時に混入した粒子を除去することができる。フィルタシステム118は、これらの粒子を除去するための適切なフィルタ装置を一つ以上有するであろう。フィルタシステム118型は、0.03マイクロに至るまでの大きさの粒子を除去することができるフィルタ媒体、例えば、ポリエーテルスルホン、テフロン(登録商標)(Teflon)、PVDF、ポリエステル又はポリプロピレンを含む事前梱包されたフィルタを有する。第一の再循環ループ114は、バルブ119及び第一の再循環ポンプ120を更に有する。バルブ119は、例えばソレノイドバルブなどの自動バルブ又は、手で作動させる手動バルブを含むであろう。第一の再循環ポンプ120は、第一の溶媒112を第一のフィルタシステム118を通して継続的に再循環させるために機能する。第一の再循環ループ114は、第一の溶媒が洗浄タンク110に再導入される時に、第一の溶媒112を継続的に加熱するための第一の熱交換器122を更に有するであろう。第一の熱交換機122の使用によって、洗浄タンク110は、伝導、対流及び放射によって喪失した熱エネルギが元に戻されることで、持続的な温度(continuous temperature)で維持されるであろう。
【0018】
好適な本実施形態のいくつかにおいては、第一の溶媒112は適切なVOC除去溶媒を含む。この溶媒は、汚れ、粒子、オイル、及びグリースなどの混入物の除去を促進する溶媒特性を有するであろう。例えば、第一の溶媒112は約60のカリブタノール価(Kari-butanol value)を有するであろう。ある代表的な実施形態においては、第一の溶媒112は、333℃の沸点を有する大豆由来のVOC除去溶媒を含む。この溶媒の例は、ネブラスカ州オマハのエージー・エンバイアロンメンタル・プロダクツ(Ag Environmental Products)から購入できるソイクリア1500(Soyclear 1500)である。好ましくは、第一の溶媒112は生分解性及び/又は無害である。大豆由来の溶媒の利点の一つは、この種の溶媒が大豆の容易に利用できる性質により一般に安価なことである。更に、大豆由来の溶媒の廃棄には、特殊及び/又は高価な廃棄装置及び/又は方法は一般に必要とされない。それは例えば、洗浄タンク110内のオイル及び/又はグリースの高さが十分に高いレベルに達した時に、第一の溶媒112を捨てて、新しい溶媒に置換する場合である。大豆由来の溶媒は、従来式の方法、例えば焼却炉での燃焼を用いて捨てることができ、又はボイラー内の加熱オイルと組み合わされた燃料ストリーム源として用いることもできる。
【0019】
リンス部106は、一般にリンスタンク124、第二の溶媒126及び回収ループ128を有する。第二の溶媒126に加えて、リンスタンク124は精密部品上の膜としてリンスタンク124に混入した第一の溶媒112の残余を含むであろう。リンスタンク124はオープンタンクを有する。オープンタンクは、第一の洗浄タンク100と同一又は同様の材料、例えば、ステンレス鋼、タンタル、チタン、石英、又はPEEKなどのポリマーを例とする好適な材料及び他の好適な材料で形成されている。リンスタンク124は更に、リンスタンク124内にキャビテーションを誘導することで更に洗浄処理を補助する超音波トランスデューサ116を少なくとも一つ有するであろう。
【0020】
回収ループ128はフローシステムを有し、残存する第一の溶媒112と同様に第二の溶媒126が第二のフィルタシステム130を通って再循環されることで、リンスタンク124から粒子を除去する。第二のフィルタシステム130は、これらの粒子を除去するための一つ以上の適したフィルタ装置を有するであろう。回収ループ128は、複数のバルブ131a、131b、131c、131d及び第二の再循環ポンプ132を更に有する。バルブ131a、131b、131c及び131dは、例えばソレノイドバルブなどの自動バルブ又は、手で作動する手動バルブを含むであろう。第二の再循環ポンプ132は、運転モード及びバルブ131a、131b、131c及び131dの動作状態に基づいて回収ループ128を通って適切な液体を選択的に送り出すよう機能する。回収ループ128は更に、第二の溶媒126及び残存する第一の溶媒112を冷却するための第二の熱交換器134を有するであろう。
【0021】
好適な本実施形態のいくつかにおいては、第二の溶媒126は適切なVOC除去溶媒を有する。この溶媒は、第一の溶媒112によって精密部品上に残ったあらゆる膜の除去を促進する溶媒特性を備えるであろう。例えば、第二の溶媒126は約10から約150のカリブタノール価を有するであろう。ある代表的な実施形態においては、第二の溶媒126は加工溶媒を含む。加工溶媒は、例えば、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company)から購入可能なノベック(商標)加工液(NovecTM Engineered Fluid)HFE-7200である。HFE-7200は61℃の沸点及び−135℃から61℃の広い液体範囲を有し、それは蒸気によるグリース除去の用途に非常に良い溶媒となる。加えて、HFE-7200はオゾンを減少させる物質ではなく、地球温暖化の可能性が非常に低く、温室効果ガスの放出の減少を提供し、VOCではなく、そして合衆国環境保護局の重要な新規代替物プログラム(United States Environmental Protection Agencies Significant New Alternatives Program)下で制限されること無く承認されている。
【0022】
溶媒回収部108は、回収タンク136、回収ヒータ138、濃縮コイル(condensing coil)139、及び廃棄タンク140を有するであろう。回収タンク136はオープンタンクを有する。オープンタンクは、第一の洗浄タンク100及びリンスタンク124と同一又は類似の材料、例えば、ステンレス鋼、タンタル、チタン、石英、又はPEEKなどのポリマーを例とする適切な材料又は他の適切な材料で構成されている。回収タンク136はリンスタンクに物理的に取付けられており、オーバーフロー堰(overflow weir)142で分離されている。それら回収タンク136及びリンスタンク124は、共通の蒸気ブランケット144を共有している。
【0023】
十分に組立てられて統合された場合、二溶媒洗浄システム100は自動、半自動又は手動運転用に形成されるであろう。上述及び記載された部材に加えて、二溶媒洗浄システムは精密部品操作システムを更に有する。これは、キャリア又はバスケット143内に精密部品を配置することによって、部品を洗浄タンク110とリンスタンク124との間で動かすためのものである。この精密部品操作システムは、オペレータが的確なタンクに精密部品を単純に配置する手動のシステムを有するか、それは、バスケット143を洗浄タンク110からリンスタンク124に運ぶための自動部品操作システムを有するであろう。更に、二溶媒洗浄システム100は、二溶媒洗浄システム100の手動操作用の適当なライト、ボタン及びスイッチを有するであろう。また、二溶媒洗浄システム100は自動操作が可能であろう。自動操作は、例えば、マイクロプロセッサ、パソコン及びプログラム可能な論理制御装置(Programmable Logic Controller (PLC))などによって制御及び始動される操作である。
【0024】
好適な実施形態において、二溶媒洗浄システム100は、システムハウジング102内、例えば、感じが良く審美的な外観を呈するキャビネットハウジング内に完全に収容される。そのようなキャビネットシステムにおいては、使用者は、第一の溶媒112、第二の溶媒126、洗浄される精密部品、及び電力源の供給のみを必要とする。
【0025】
運転中において二溶媒洗浄システム100は、二つのモードの内の一つで稼動することができる。第一のモードは通常運転であり、精密部品は図1に図示されるように洗浄及びリンスされる。第二のモードは、図2に図示されるように、第一の溶媒112及び第二の溶媒126の分離、その後における第一の溶媒112の除去及び予定される処分、及び二溶媒洗浄システム100内での再利用のための第二の溶媒126の再生のための多段階処理を有する。第一のモード及び第二のモード中の第二のリンス部106及び回収部108の動作に関しては、図3−10が特に参照される。これについては、更に以下で説明される。
【0026】
通常運転
図1、3及び4に図示されるように、二溶媒洗浄システム100の運転は、再循環を開始すること及び、二溶媒洗浄システムの一部を加熱することによって所望される運転パラメーラを獲得することによって開始される。洗浄部104内において、第一の溶媒112は第一の再循環ループ114を通って押し出されることによって、第一の熱交換器122が第一の溶媒112に熱エネルギーを加え、結果的に洗浄タンク110を加熱することができる。運転中、洗浄タンク110は、ほぼ一定の温度、例えばソイクリア1500に対しては約70℃に維持される。当業者によって理解されるであろうが、洗浄タンク110及び第一の再循環ループ114は適したセンサ、計器及び警報機を含み、適切な温度、流速、圧力及び他のプロセス変量(process variable)が洗浄の間観測され維持されるようになっている。
【0027】
二溶媒洗浄システム100の運転の最初の始動時に、リンスタンク124及び回収タンク136それぞれは、図3に図示されるように第二の溶媒126を含む。回収ヒータ138が起動されることで、回収タンク136を第二の溶媒126の沸点、すなわちHFE-7200の場合は61℃まで加熱する。同時に、濃縮コイル139は約5℃で作動されることで、第二の溶媒126の蒸気を含む蒸気ブランケット144が、リンスタンク124及び回収タンク136の上に直接形成される。濃縮コイル139が第二の溶媒126の蒸気を濃縮することで、第二の溶媒126の純粋な蒸留物が継続的に壁を流れ落ち、リンスタンク124に流れ込む。第二の溶媒126の純粋な蒸留物がリンスタンク124に流れ込むことで、リンスタンク124内の第二の溶媒126の水面は、それがオーバーフロー堰142の高さに達するまで上昇し、第二の溶媒126は回収タンク136へと流れ落ちる。通常運転中には、バルブ131a及び131cが開かれ、一方でバルブ131b及び131dが閉じられ、第二の再循環ポンプ132がリンスタンク124の中身を第二のフィルタシステム130を通じて押し出すことで、リンスタンク124内のあらゆる粒子をフィルタ濾過して除去することができる。蒸留された第二の溶媒126の継続的な添加及び、再循環ポンプ132からのポンプエネルギー(pump energy)の添加によって、リンスタンク124の温度は約51℃で維持される。
【0028】
図1に図示されるような通常の洗浄及びリンスモードにおいては、精密部品は、例えば精密部品をバスケット143に配置することによって洗浄タンク110に配置される。バスケット143が第一の溶媒112に沈められることで、あらゆる微粒子、汚れ、オイル、グリース及び他の混入物が精密部品から除去され、第一の溶媒112中に浮遊するであろう。バスケット143と、結果的には精密部品とが第一の溶媒112に沈められる時に、超音波トランスデューサ116が第一の溶媒112内にキャビテーションを引き起こすことによって、精密部品からの混入物の除去を更に促進する。バスケット143が自動操作システムの一部として用いられる時、バスケット143が上下及び/又は左右に継続的に振動されることによって、精密部品から混入物を除去することを更に補助する。第一の溶媒112は第一の再循環ループ114を介して継続的に再循環され、精密部品によって持ち込まれたあらゆる浮遊粒子は、第一のフィルタシステム118を用いて第一の溶媒112から除去することができる。
【0029】
精密部品は洗浄タンク110で粒子の洗浄をされた後に、精密部品はバスケット143を用いてリンスタンク124に移される。リンスタンク124に入れられた時、少量の第一の溶媒112が精密部品上に残っているであろう。第二の溶媒126はあらゆる残存粒子を洗い流し、精密部品から第一の溶媒112を溶解する。このリンスは、リンスタンク124内における超音波トランスデューサ116の使用によりキャビテーションをもたらすことによって、リンスタンク124内で更に促進されるであろう。更に、バスケット143が上下及び/又は左右に振動されることによって、精密部品からの混入物の除去が更に促進されるであろう。洗浄後に、バスケット143はリンスタンク124から取り出され、蒸気ブランケット144が、それが膜又は残留物を含まないように精密部品を乾燥させる。その後に、精密部品は更なる処理又は使用に備えられる。
【0030】
リンスタンク124内においては、第二の溶媒126の高さが定常状態の高さにあることによって、オーバーフロー堰142を超えて回収タンク136へ入る一定のオーバーフローが存在する。精密部品がリンスタンク124でリンスされることで、第二の溶媒126には、精密部品上に存在するあらゆる他の混入物と同様に、溶解した第一の溶媒112が継続的に混入する。このようにして、回収タンク136へのオーバーフローは、図4に図示されるように第一の溶媒112、第二の溶媒126及び、回収タンクへのあらゆる他の混入物の溶媒混合物146をもたらす。第一の溶媒112が第二の溶媒126より高い、好ましくは非常に高い沸点を有するように選択されている場合、第二の溶媒126は溶媒混合物146から継続的に沸騰され、それにより、長時間かけて第一の溶媒112を回収タンク136内に集積させ増加させる。最終的に回収タンク136内の第一の溶媒112の濃度は、溶媒混合物146の沸点が上昇する点まで増加し、結果的に溶媒混合物146の分離が可能になる点に達する。
【0031】
分離及び廃棄操作
二溶媒洗浄システム100のための溶媒の廃棄及び回収モードが図2及び5−10に図示されている。図4に図示されるように、二溶媒洗浄システム100の継続的な運転は、回収タンク136内の第一の溶媒112の濃度が許容できないレベルに達することを最終的にもたらす。このことは、溶媒混合物146の沸点の上昇、例えば10℃以上の上昇によって実証される。(あらゆる溶解した混入物を含む)溶媒混合物146の分離は、回収タンク136内の溶媒混合物146の温度を50℃まで冷却し、二つの異なる液層が形成されるようにすることによってなされる。二つの液層とは、(あらゆる汚れの混入物を含む)第一の溶媒112を含む第一の溶媒部148と、第二の溶媒126を含む第二の溶媒部150とである。第一の溶媒部148及び第二の溶媒部150は、通常肉眼で視覚的に識別することができる。
【0032】
回収タンク136内の冷却は、回収ヒータ138を切ること、濃縮コイル139を切って蒸気ブランケット144を崩壊させること、及び回収ループ128を介して回収タンク136内の液体を再循環させることによって行われる。再循環は、バルブ131b及び131dを開放する一方でバルブ131a及び131cを閉鎖し、それにより液体が第二の熱交換器134によって冷却されるようにすることによってなされる。図4、5及び6に図示されるように、溶媒混合物146が冷却されることによって、第二の溶媒126はもはや溶媒混合物から沸騰しないため、第二の溶媒126の純粋な蒸留物は濃縮コイル139における濃縮を停止し、また、リンスタンク124を満たさなくなるために、リンスタンク124内の第二の溶媒126の高さはオーバーフロー堰142の高さに下がり、回収タンク136へと流れ落ちなくなる。当業者によって理解されるであろうが、リンスタンク124、回収タンク136及び回収ループ128が適当なセンサ、計器及び警報機を含むことによって、適切な温度、流量、圧力及び他のプロセス変量が洗浄の間観測及び維持できる。回収タンクが50℃に冷却されることで、溶媒混合物146は、図7に図示されるように、第一の溶媒部148及び第二の溶媒部150に分離される。
【0033】
第一の溶媒部148及び第二の溶媒部150が形成されれば、バルブ131b及び131cが開かれ、一方でバルブ131a及び131dが閉じられることによって、リンスタンク124内の第二の溶媒126が回収タンク136へと送り出され、第二の溶媒部150の量が増加するであろう。第二の溶媒部150が増加することで、第一の溶媒部148は回収オーバーフロー堰152に達するまで上昇し、第一の溶媒112及びあらゆる汚れの混入物を含む第一の溶媒部148は図8に図示されるように廃棄タンク140へとオーバーフローする。好ましくは、回収タンク136が回収オーバーフロー堰152に対して配置されたのぞき窓154を有することで、オペレータは、第一の溶媒部148が回収オーバーフロー堰152を超えて流れる時に、第一の溶媒部148を見ることができる。回収タンク136内の第二の溶媒126の高さが上昇することで、図9に図示されるように、第二の溶媒部150が回収オーバーフロー堰152の高さに最終的に達する。この点において、第一の溶媒部148の大部分が廃棄タンク140に向けられることによって、バルブ131a、131b、131c及び131dは通常運転の位置に配置され、残存成分は、図10に図示されるように通常運転の状態を保証するであろう。また、第一の溶媒部148のオーバーフローは、例えば第一の溶媒部148と第二の溶媒部150とを視覚的に区別するための適当な光学センサ、たとえば、写真用の眼(photo eye)又はカメラの設置によって自動化されるであろう。
【0034】
二溶媒洗浄システム100の運転が上手くいくためには、全ての第一の溶媒112が回収タンク136から除去される必要は無いが、溶媒混合物146の沸点が低下することで、第二の溶媒126の沸点に近づくことのみが必要である。廃棄タンク140内の(あらゆる溶解した粒子及び混入物を含む)第一の溶媒112は、その後適切に再利用、回収又は廃棄されるであろう。好ましくは、第一の溶媒112がVOC除去溶媒であることによって、それが焼却処分又は燃料ストリーム源として用いられるであろう。説明したように、二溶媒洗浄システム100は特に経済的な利点を有しており、それは第二の溶媒126の単価が第一の溶媒112の単価より高いことに起因する。
【0035】
本発明は、本開示中で説明した例としての実施形態及び実施例によって不当に限定されることを意図しておらず、また、前記実施例及び実施形態は例のみとして示されていることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】洗浄及びリンスモードである本開示の代表例の洗浄システムの模式図である。
【図2】溶媒回収及び廃棄物処理モードである図1の洗浄システムの代表例の模式図である。
【図3】始動モードである図1の洗浄システムのリンスタンク及び回収タンクの模式図である。
【図4】連続洗浄モードである図1の洗浄システムのリンスタンク及び回収タンクの模式図である。
【図5】溶媒回収モードの第一段階である図1の洗浄システムのリンスタンク及び回収タンクの模式図である。
【図6】溶媒回収モードの第二段階である図1の洗浄システムのリンスタンク及び回収タンクの模式図である。
【図7】溶媒回収モードの第三段階である図1の洗浄システムのリンスタンク及び回収タンクの模式図である。
【図8】溶媒回収モードの第四段階である図1の洗浄システムのリンスタンク及び回収タンクの模式図である。
【図9】溶媒回収モードの第五段階である図1の洗浄システムのリンスタンク及び回収タンクの模式図である。
【図10】運転復帰モードである図1の洗浄システムのリンスタンク及び回収タンクの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密部品を洗浄する方法であって、
精密部品から混入物を除去するための第一の溶媒で満たされた洗浄タンク内に精密部品を配置することによって精密部品を洗浄する段階と、
第二の溶媒によって満たされたリンスタンク内で精密部品をリンスする段階と
を有し、リンスする段階においては、精密部品上に残存した第一の溶媒は第二の溶媒によって除去されて溶媒混合物を形成し、さらに、
回収タンクにおいて溶媒混合物を冷却することによって、溶媒混合物を第一の溶媒部及び第二の溶媒部へと分離して、第一の溶媒部が第二の溶媒部の上に存在するようにする段階を有し、分離する段階においては、前記第一の溶媒部及び第二の溶媒部が肉眼によって視覚的に識別可能であり、第一の溶媒部が回収タンクから除去可能である方法。
【請求項2】
回収タンクからの第一の溶媒部の除去が、リンスタンクから回収タンクへと溶媒混合物をポンプによって移送し、第一の溶媒部が回収堰に達して廃棄タンクへとオーバーフローするようにする段階を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リンスタンクから溶媒混合物をポンプによって移送する段階が、第二の溶媒部が回収堰に達した時に完了する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
廃棄タンク中の第一の溶媒部を廃棄する段階を更に有する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
回収タンク中の溶媒混合物の沸点が、第二の溶媒の沸点を少なくとも10℃上回った時に、溶媒混合物を分離する段階が必要になる請求項1の方法。
【請求項6】
精密部品を洗浄する段階が、第一の溶媒中でキャビテーションを引き起こす段階を有する請求項1の方法。
【請求項7】
精密部品を洗浄する段階が、第一の溶媒中で精密部品を振動させる段階を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
精密部品をリンスする段階が、溶媒混合物中でキャビテーションを引き起こす段階を有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
精密部品をリンスする段階が、溶媒混合物中で精密部品を振動させる段階を有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
精密部品から混入物を除去するための二溶媒洗浄システムであって、
第一の溶媒を保持するための洗浄タンクを有する洗浄部と、
第二の溶媒を保持するためのリンスタンクを有するリンス部と、
第一の溶媒及び第二の溶媒の溶媒混合物を保持するための回収タンクを有する溶媒回収部と、
を有し、第二の溶媒は第一の溶媒より少なくとも約10℃低い第二の溶媒沸点を有し、第二の溶媒は、洗浄タンクから精密部品に残存する第一の溶媒を溶解し、リンスタンクは第二の溶媒の上方に濃縮コイルを有し、回収タンクはオーバーフロー堰によってリンスタンクから分離されており、回収タンクは熱源及び冷却源をさらに有し、
熱源がリンスタンク及び回収タンク上に第二溶媒の共有の蒸気ブランケットを作り出すことで、第二溶媒の純粋な蒸留物が濃縮コイル上で濃縮し、リンスタンクへと流れ込み、それによって、第二の溶媒の液面がオーバーフロー堰を越えて回収タンクへ流れ込むまで上昇し、
回収タンク中の第一の溶媒の濃度が長時間かけて上昇することで、溶媒混合物の沸点が第二の溶媒の沸点を少なくとも約10℃上回り、それによって溶媒混合物は分離を必要とし、
冷却源が回収タンク中の溶媒混合物を冷却することで、第一の溶媒部と第二の溶媒部とを形成し、それらは互いに肉眼で視覚的に識別可能であることによって、第一の溶媒部が回収タンクから除去できる二溶媒洗浄システム。
【請求項11】
溶媒回収部が回収オーバーフロー堰によって回収タンクから分離された廃棄タンクを有し、第一の溶媒部が回収オーバーフロー堰を越えて廃棄タンクへと流れ込む請求項10に記載の二溶媒洗浄システム。
【請求項12】
第一の溶媒及び第二の溶媒の少なくとも一つがVOC除去溶媒を有する請求項10に記載の二溶媒洗浄システム。
【請求項13】
第一の溶媒が大豆由来の溶媒を有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
精密部品を洗浄タンクからリンスタンクへと移すためのバスケットを更に有する請求項10に記載の二溶媒洗浄システム。
【請求項15】
洗浄タンクが、第一の溶媒中にキャビテーションを引き起こすための少なくとも一つの超音波トランスデューサを有する請求項10に記載の二溶媒洗浄システム。
【請求項16】
リンスタンクが、溶媒混合物中にキャビテーションを引き起こすための少なくとも一つの超音波トランスデューサを有する請求項10に記載の二溶媒洗浄システム。
【請求項17】
洗浄部が、洗浄ポンプ、洗浄フィルタ及び洗浄ヒータを有する洗浄再循環ループを有し、洗浄ポンプが洗浄フィルタを通して第一の溶媒を再循環させることによって、微粒子を除去し、洗浄ポンプが洗浄ヒータを介して第一の溶媒を再循環させることによって、第一の溶媒を加熱する請求項10に記載の二溶媒洗浄システム。
【請求項18】
リンス部が、リンスポンプ及びリンスフィルタを有するリンス再循環ループを有し、リンスポンプがリンスフィルタを通して溶媒混合物を再循環させることによって、微粒子を除去する請求項10に記載の二溶媒洗浄システム。
【請求項19】
リンス再循環ループが回収タンクに流体接続されており、リンスポンプが冷却源を介して溶媒混合物を送り出すことによって、溶媒混合物を第一の溶媒部と第二の溶媒部とに分離する請求項18に記載の二溶媒洗浄システム。
【請求項20】
回収タンクがのぞき窓を有し、第一の溶媒部が回収タンクから除去される時に、第一の溶媒部を肉眼で視認可能にしている請求項10に記載の二溶媒洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−519107(P2008−519107A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539284(P2007−539284)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/039405
【国際公開番号】WO2006/050332
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(505294447)フォワード テクノロジー ア クレスト グループ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】