説明

精製水の製造方法、及び精製水の製造装置

【課題】精製水を簡易かつ低コストで製造する。
【解決手段】非加熱の原水を、貯留槽から不活性処理手段及び逆浸透処理装置の少なくとも一方に供給した後、加熱手段に供給して熱水を生成する。次いで、前記熱水を前記貯留槽の排出側に供給するとともに、少なくとも前記逆浸透処理装置を含む系内に循環させることによって、前記系の殺菌を行う。次いで、前記非加熱の原水を、前記貯留槽から前記少なくとも逆浸透処理装置に供給して精製水を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製水の製造方法および装置に関し、とくに、精製水の製造前に系内を効率よく殺菌できるようにした精製水の製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の精製水製造装置は、水道水や井戸水を原水として、逆浸透処理装置(以下、逆浸透をROと略称することもある)と、必要に応じてイオン交換処理装置を組み合わせて精製水を製造する。通常の製造時には、原水を一旦原水タンクに貯留し、不活性処理装置、逆浸透処理装置に通水させて精製処理される。この逆浸透処理により、たとえばTOC(全有機体炭素量)が、要求値以下(たとえば、500ppb以下)に低減される。逆浸透処理後の水は、必要に応じて電気再生式イオン交換処理装置等のイオン交換処理装置に送られ、この結果得られたイオン交換処理水等が、精製水として取り出される。
【0003】
通常原水には殺菌の目的で次亜塩素酸(NaClO)が添加されているが、次亜塩素酸は逆浸透膜を劣化させる性質がある。不活性処理装置は、この次亜塩素酸を不活化させて逆浸透処理装置に対する影響を解消するためのものであり、活性炭処理装置や次亜塩素酸を還元して不活化させる還元剤注入装置が用いられる。
【0004】
上述のような精製水製造装置では、逆浸透膜が生菌を透過させないため無菌の精製水を得ることができる。
【0005】
一方、上述のような製造装置も、運転を続けていると活性炭処理装置の出口近傍や逆浸透処理装置の濃縮側に生菌が繁殖するようになる。また、精製水の菌数も次第に増加するため、定期的に装置内を殺菌する必要がある。殺菌は、65℃以上(好ましくは、80℃以上)の熱水を装置内に循環することにより行われている。
【0006】
特許文献1には、原水タンクに貯留されている原水を、ポンプによって原水加熱器(非加熱状態)、逆浸透処理装置に供給し、RO濃縮水を系外にブローした後、RO透過水を電気再生式イオン交換処理装置に供給し、得られたイオン交換処理水を原水タンクに供給して貯留し、次いで、原水タンクから、イオン交換処理水を含んだ高純度の水が、同一の系内に供給され、上記製造装置内の殺菌処理がなされる。
【0007】
具体的には、原水加熱器によって、高純度水が例えば65℃以上、好ましくは80℃以上に加熱されて熱水となり、逆浸透処理装置、電気再生式イオン交換処理装置、及び原水タンクと循環され、熱水により逆浸透処理装置及び電気再生式イオン交換処理装置が殺菌される。
【0008】
しかしながら、このような殺菌方法では、原水タンク内を含むシステム全体に熱水を循環させるため、加熱する水の量が大量となり、循環する系の昇温にも時間がかかるため、加熱のためのエネルギーコストが高くなる上に、殺菌処理自体が大規模なものとなるとともに、必要とされる精製水製造装置自体も大規模かつ複雑なものとなって、精製水の製造コストが増大してしまうという問題がある。また、工程が複雑であって、原水タンク内に原水を貯留すべく、原水タンク周りの配管が複雑となるという問題があった。
【0009】
製造された精製水は、一般的に医薬品製造等で製造されるが、近年ジェネリック医薬品が徐々に普及してきており、ジェネリック医薬品のメーカーにおいては、製造コストを安価にするため、殺菌処理のコスト低減が大きな課題となってきた。通常、熱殺菌は1週間に1回もしくは、1ヶ月に数回行なわれる場合が多く、殺菌におけるコストは純水に関する経費の中で大きなウエイトを占めており、熱殺菌におけるコスト削減が必要となってきた。また、それに影響され、従来のメーカーにおいても同様のニーズが広まってきた。
【0010】
この課題を解決する方法としては、熱殺菌時の循環する水量を減らすことが考えられる。しかしながら、特許文献1のようにタンクを介している場合には、タンクの水量を減らしすぎると、サクション側からエアーを吸い込んでしまう可能性があるので、タンクの水量はある程度までしか減らせない。
【0011】
一方、特許文献2においては、前処理部及びRO装置を有する精製水の製造装置において、RO装置に熱水を循環させ、このRO装置を熱殺菌することが開示されている。しかしながら、熱水の循環は前処理部の後段側とRO装置の後段側とで行われるため、前処理部の熱殺菌、例えば活性炭処理装置等の熱殺菌を行うことができない。結果として、精製水製造装置全体の熱殺菌を有効に行うことができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−74109号
【特許文献2】特開2004−49977号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記目的に鑑み、精製水を簡易かつ低コストで製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成すべく、本発明は、
非加熱の原水を不活性処理手段及び逆浸透手段に供給して精製水を製造する方法であって、
少なくとも前記不活性処理手段及び前記逆浸透手段を含み、貯留槽を有しない循環系を組み、前記原水を前記系内に設置された加熱手段に供給して熱水を生成する第1のステップと、
前記熱水を、前記循環系内に循環させることによって、前記系の殺菌を行う第2のステップと、
前記系の温度を低下させる第3のステップと、
前記非加熱の原水を、前記不活性処理手段及び前記逆浸透手段に供給して精製水を製造する第4のステップと、
を具えることを特徴とする、精製水の製造方法(第1の製造方法)に関する。
【0015】
また、本発明は、
非加熱の原水を不活性処理手段及び逆浸透手段に供給して精製水を製造する装置であって、
非加熱の原水を精製するための少なくとも前記不活性処理手段及び前記逆浸透処理装置を含む第1のラインと、
前記非加熱の原水を、少なくとも前記不活性処理手段、前記逆浸透手段及び加熱手段を含み、貯留槽を介さずに循環させる第2のラインと、
を具えることを特徴とする、精製水の製造装置(第1の製造装置)に関する。
【0016】
さらに、本発明は、
非加熱の原水を不活性処理手段、逆浸透手段、及びイオン交換手段に供給して精製水を製造する方法であって、
少なくとも前記不活性処理手段、前記逆浸透手段及びイオン交換手段を含み、貯留槽を有しない循環系を組み、前記原水を、前記方法の任意の位置に設置された加熱手段に供給して熱水を生成する第1のステップと、
前記熱水を、前記循環系内に循環させることによって、前記系の殺菌を行う第2のステップと、
前記系の温度を低下させる第3のステップと、
前記非加熱の原水を、前記不活性処理手段、前記逆浸透手段及び前記イオン交換手段に供給して精製水を製造する第4のステップと、
を具えることを特徴とする、精製水の製造方法(第2の製造方法)に関する。
【0017】
また、本発明は、
非加熱の原水を不活性処理手段及び逆浸透手段に供給して精製水を製造する装置であって、
非加熱の原水を精製するための少なくとも前記不活性処理手段、前記逆浸透手段、及びイオン交換手段を含む第1のラインと、
前記非加熱の原水を、少なくとも前記不活性処理手段、前記逆浸透手段、イオン交換手段及び加熱手段を含み、貯留槽を介さずに循環する第2のラインと、
を具えることを特徴とする、精製水の製造装置(第2の製造装置)に関する。
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するため、誠意検討を進めた結果、次の知見を得るに至った。すなわち、一般的に原水は、原水タンクに貯留した上、精製水製造に使われるが、この原水タンクは、通常、市水が直接、もしくは井水に次亜塩素酸を添加したものが供給されているので、タンク内の菌数はあまり増加しない。一方、最も菌数が増加するのは、不活性処理手段と逆浸透膜手段との間である。すなわち、不活性処理手段が活性炭の場合には、活性炭と逆浸透処理装置、また、不活性処理手段が亜硫酸ナトリウム等添加手段なら、亜硫酸ナトリウム等添加手段の後段の配管と逆浸透手段の間にて、最も菌数が増加する。
【0019】
また、この部分の菌数が増加は、RO膜の詰まりの要因となりうる。RO膜の菌によるつまりが起きた場合、熱殺菌でも対応できないため、RO膜の交換をする必要が生じる恐れもある。
【0020】
本発明は、上述した知見に基づいてなされたものである。本発明によれば、精製水を製造する際の殺菌処理において、加熱手段において生成した熱水を原水タンク等の貯留槽ではなく、貯留槽の排出側に供給し、製造装置の少なくとも不活性処理手段及び逆浸透処理装置さらには電気再生式イオン交換処理装置を含む系内を循環させるようにしている。したがって、従来のように、熱水を貯留槽に還元させる必要がなく、最も菌数が増大する不活性処理手段と逆浸透処理装置の間、及び、逆浸透処理装置の透過水側を殺菌すれば足りるので、殺菌処理に要する工程が簡易化されるようになる。
【0021】
すなわち、加熱する水の量を低減させることができ、循環する系の昇温に対する時間も節減できるため、殺菌処理自体を簡易化することができ、必要とされる精製水製造装置自体も簡易化かつ小型化することができるようになる。また、加熱のためのエネルギーコストを低減でき、上記殺菌処理の簡易化と併せて、精製水の製造コストが増大してしまうという問題を生じることがない。
【0022】
また、原水タンクを耐熱性のものにする必要がなくなり、高価な耐熱性部品を必要最低限とすることが可能なので、製造のコスト低減につながるだけでなく、加熱する部分の部品点数が減らせるため、接合部分の膨張・収縮の繰り返しによる緩みに起因した水漏れ等の危険性を減らすことが可能になる。
【0023】
また、原水タンク内に次亜塩素酸を添加した場合においても、不活性処理手段において次亜塩素酸を含んだ水が逆浸透処理装置に供給されることがないので、次亜塩素酸が逆浸透処理装置を劣化させてしまうようなことがない。
【0024】
なお、第1の製造方法及び第1の製造装置と、第2の製造方法及び第2の製造装置との相違は、前者がイオン交換手段を含まないのに対し、後者がイオン交換手段を含む点で相違する。いずれの場合でも十分使用に足る精製水を得ることができるが、第2の製造方法及び第2の製造装置においては、イオン交換手段の処理水を精製水として使用することができるので、より不純物の少ない精製水を得ることができる。
【0025】
また、以下に詳述するように、本発明においては、不活性処理手段、逆浸透膜手段及びイオン交換手段に加えて、脱炭酸装置などの前処理手段を設け、これらの装置を用いた前処理を行うこともできる。さらに、UV殺菌装置などの後処理手段を設け、UV処理による殺菌効果をも加えて、生菌数のより少ない精製水を得るようにすることもできる。
【0026】
なお、本発明でいう“非加熱”とは加熱手段等によって積極的に加熱しないことを意味し、環境温度によって自ずと温度が上昇するような場合をも含むものである。また、“少なくとも前記不活性処理手段及び前記逆浸透手段を含む系内に循環させる”とは、原水タンクがある場合には原水タンクと不活性処理手段との間に、熱水を戻して循環させることを意味し、前処理手段が設けられている場合は、前処理手段と逆浸透手段の間に熱水を戻して循環させることを意味し、前処理手段が設けられていない場合は、原水タンクと不活性処理手段との間に供給することを意味するものである。
【0027】
また、本発明において、配管内に残っている原水のみ、もしくは、配管内に残っている原水及び一部補充した原水を、循環水として用いる。したがって、従来のように、原水タンク等の充填槽の貯留水を加熱する場合と比較し、加熱される水の量が少なくすることが可能となり、熱殺菌時のエネルギー削減によるコスト低減の効果が得られる。
【0028】
本発明において、加熱手段は、不活性処理手段の供給水側、逆浸透手段の供給水側、逆浸透手段の透過水側、イオン交換手段の透過水側に設置することが可能であるが、逆浸透処理装置の濃縮水側に設置し、逆浸透手段の濃縮水を不活性処理手段の上流側に戻して循環することも可能である。また、イオン交換手段が電気再生式イオン交換手段の場合には、その濃縮水側に同様にして加熱手段を設置することも可能である。
【0029】
なお、本発明の一例において、第1のステップと第2のステップとを同時に行い、熱水は、系内を循環させる間に加熱手段によって生成することもできる。すなわち、原水等を、加熱手段を1回通過させることによって直接熱水として生成するのではなく、加熱手段を含めた系内を循環させ、加熱手段を通過する度ごとに徐々に昇温して、上記熱水とすることもできる。そして、十分昇温された後は加熱を終了し循環を継続する。この場合、加熱手段に多大な負荷をかける必要がないので、エネルギーコストの節減につながる。
【0030】
本発明において、イオン交換手段しては、電気再生式イオン交換処理装置、イオン交換樹脂充填装置等が用いられ、特に制限はないが、電気再生式イオン交換処理装置を用いることがより好ましい。なお、イオン交換樹脂充填装置を用いた場合、濃縮水は生成されないので、電気再生式イオン交換処理装置のように、濃縮水側に加熱手段を設けて濃縮水を加熱し、熱水を生成することはできない。
【発明の効果】
【0031】
以上、本発明によれば、精製水を簡易かつ低コストで製造することが可能な製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態の精製水の製造装置の概略構成図である。
【図2】第1の実施形態の変形例における精製水の製造装置の概略構成図である。
【図3】第2の実施形態の精製水の製造装置の概略構成図である。
【図4】比較例における精製水の製造装置の概略構成図である。
【図5】比較例における精製水の製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、第1の実施形態における精製水の製造装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態における精製水の製造装置10は、貯留槽としてのタンク11と、このタンク11の下流側において、バルブ21を介して不活性処理手段としての活性炭処理装置12及び逆浸透処理装置13(以下、逆浸透をROと略称する場合がある)が順次に設けられている。さらに、RO装置13の下流側にはバルブ24を介して、処理水タンク15、UV照射装置17及びメンブレンフィルタ18が設けられ、第1のラインを構成している。
【0035】
使用するROモジュールとしては、耐熱性のあるROモジュールが使用可能である。たとえば、ダウケミカル社製HSRO、GE社製 Desal HWS、日東電工社製NTR-759HG 等が使用可能である。
【0036】
また、タンク11及び活性炭処理装置12間、並びに逆浸透処理装置13の後方には、それぞれバルブ25及び26を介して加熱手段としての熱交換器16を含む第2のラインが形成されている。なお、貯留槽11と活性炭処理装置12との間には第1のポンプ22が設けられるとともに、活性炭処理装置12と逆浸透処理装置13との間には第2のポンプ23が設けられ、タンク11内の原水(本実施形態では、水道水又は井戸水)を第1のライン及び第2のラインに供給できるようになっている。
【0037】
タンク11内に供給される原水には次亜塩素酸が添加されており、タンク11内の原水自体は滅菌されている。
【0038】
次に、図1に示す精製水の製造装置10による精製水の製造方法について説明する。
【0039】
(第1のステップ)
最初に、バルブ25、バルブ26及び27−2を開、バルブ21、バルブ24及び27−1を閉とし、第1のポンプ22を駆動させることによって、配管内の原水を活性炭処理装置12、次いで、RO装置13に供給する。
【0040】
次いで、RO装置13を通過した透過水は、バルブ25を介して加熱手段としての熱交換器16に供給されるとともに加熱される。この熱水は、第2のラインを構成する配管中を通ってタンク11と活性炭処理装置12との間に供給されるようになる。
【0041】
このように循環を繰り返すことによって、熱水は、最終的に65℃以上、好ましくは80℃以上まで加熱される。
【0042】
以上は、通常5分〜5時間、好ましくは10分〜2時間、より好ましくは20分〜1時間とする。
【0043】
なお、加熱開始初期において、RO装置13で得られたRO濃縮水の全量、もしくはその一部は、図1に示すバルブ27−1を介して系外に排出させることもできる。この場合は、バルブ21を開として、タンク21から適宜原水を補充する。このようにする場合には、循環水の水質は原水より良くなる効果がある。
【0044】
RO装置13の運転圧力は昇温開始時から低圧にする方法もあるが、次のような方法をとることも可能である。すなわち、昇温開始時に、RO装置13の運転圧力を通常の運転圧力にし、ある時点で、ポンプ23をとめる等の手段により、RO装置13の運転圧力を下げると、循環初期に通常の運転圧力で循環するため、循環系内の水質が向上され、高温時にRO装置13の運転圧力を低下させたときに、RO装置13の除去率の低下による系内の汚染を防ぐことができる。この場合、ポンプ23をとめる前は、バルブ27−1を開き、RO濃縮水の全量、もしくはその一部を排出し、排出した水と同量の原水を補充するためV21を開く。またポンプ23をとめた後は、濃縮水も全量循環し、V21は閉じる。このようにする場合には、循環水の水質は原水より良くなる効果がある。
【0045】
(第2のステップ)
次いで、第1のラインにおける活性炭処理装置12及びRO装置13、並びに熱交換器16を含む第2のラインを循環させ、図1に示す製造装置10の殺菌処理、具体的には活性炭処理装置12及びRO装置13の殺菌処理を行う。
【0046】
殺菌処理は、10分〜3時間、好ましくは20分〜2時間、より好ましくは30分〜1時間行う。
【0047】
昇温後のRO装置13の運転圧力は、RO装置13をその耐圧の範囲内で運転せねばならない。
【0048】
(第3のステップ)
降温工程は、上記熱水を循環させたラインを自然放冷させるか、あるいはタンク11内の原水を流すことによる強制冷却によって、製造装置10のラインを精製水の製造に適した温度、例えば室温まで冷却する。冷却時間は、通常5分〜5時間、好ましくは10分〜2時間、より好ましくは20分〜1時間である。なお、後者の場合には、ROの透過水、もしくは、RO濃縮水を一部排水することになる。
【0049】
(第4のステップ)
次いで、バルブ25及び26を閉、バルブ21及びバルブ24を開とし、第1のポンプ22を駆動させてタンク11より原水を活性炭処理装置12に供給し、上述のように原水中の次亜塩素酸等を吸着させて除去した後、さらに第2のポンプ23を駆動させてRO装置13に供給する。RO装置13の処理水は、処理水タンク15に一端貯留された後、UV照射装置17に供給され、ここで例えば波長254nmの紫外線が照射されることによって処理水をさらに殺菌し、メンブレンフィルタ18でろ過した後、ユースポイント19において目的とする精製水を得ることができる。
【0050】
本実施形態においては、精製水を製造する際の殺菌処理において、加熱手段である熱交換器16で生成した熱水をタンク11ではなく、タンク11と活性炭処理装置12との間に供給し、製造装置10の最も菌数が増大する少なくとも活性炭処理装置12及びRO装置13(の透過水側)を含む系内を循環させるようにしている。
【0051】
したがって、従来のように、熱水をタンク11に還元させる必要がないので、加熱する水の量を低減させることができ、循環する系の昇温に対する時間も節減できるため、殺菌処理に要する工程が簡易化されるようになる。このため、殺菌処理自体を簡易化することができ、精製水製造装置10も簡易化かつ小型化することができるようになる。また、加熱のためのエネルギーコストを低減でき、上記殺菌処理の簡易化と併せて、精製水の製造コストが増大してしまうという問題を生じることがない。
【0052】
また、活性炭処理装置12を設けているので、次亜塩素酸を含んだ水が逆浸透処理装置13に供給されることがないので、次亜塩素酸によって逆浸透処理装置13が劣化してしまうようなことがない。
【0053】
なお、本実施形態では、不活性化手段として活性炭処理装置を用いているが、活性炭処理装置に代えて、あるいは加えて脱炭酸装置などの前処理装置を設けることもできる。
【0054】
ここで、熱水殺菌時は、RO装置13をその耐圧の範囲内で運転せねばならないが、高温での耐圧は常温での耐圧より低い。したがって、熱水殺菌時は、RO装置13の透過水量が少なくなるので、透過水水質が悪化する。したがって、熱水殺菌終了後、通常運転再開の直前に、RO透過水もしくは、イオン交換処理水を排水し、水質が回復した後、通常運転に移ることも可能である。なお、この場合の排水時間は、5分から30分程度がよい。
【0055】
図2は、図1に示す精製水の製造装置10の変形例である。本変形例では、熱交換器16を活性炭処理装置12とRO装置13との間に設け、図1に示す製造装置10で熱交換器16を配置していたライン(配管)は、熱交換器16を排除した後、循環ライン(配管)28−1としている。
【0056】
本実施形態における精製水の製造は以下のようにして行う。
最初に、バルブ25及び26を開、バルブ21を閉とし、第1のポンプ22を駆動させることによって、配管内の原水を活性炭処理装置12に供給し、次いで、RO装置13で処理された原水を熱交換器16に供給して加熱する。次いで、この熱水をRO装置13に供給した後、循環ライン28−1を通じてタンク11と活性炭処理装置12との間に供給する。このようにして、循環を行なうことにより熱水を生成する。
【0057】
一方、RO濃縮水はライン28で循環させる。なお、加熱開始初期において、RO濃縮水の全量、もしくはその一部は排水することも可能である。その場合には、バルブ21を開として、適宜原水を補充する。
【0058】
次いで、上述のようにして供給された熱水は、活性炭処理装置12、熱交換器16及びRO装置13、並びに循環ライン28−1を循環させ、図2に示す製造装置10−1の殺菌処理、具体的には活性炭処理装置12及びRO装置13の殺菌処理を行う。
【0059】
なお、殺菌処理時間、RO装置13の運転条件、及び医薬品精製水の製造等については第1の実施形態と同様であり、その他の特徴及び利点も同様であるので説明を省略する。
【0060】
また、図2において、ライン(配管)28に熱交換器16−1を設け、RO装置13で得た濃縮水を熱交換器16−1で加熱して熱水を得、この熱水を活性炭処理装置12及びRO装置13、並びに循環ライン(配管)28−1を循環させて、製造装置10−1の殺菌処理、具体的には活性炭処理装置12及びRO装置13の殺菌処理を行うこともできる。なお、この場合に、ライン(配管)28は、上述した第2のラインの一部を構成する。また、熱交換器16は設置しないことも可能である。
【0061】
図3は、第2の実施形態における精製水の製造装置の概略構成を示す図である。本実施形態における精製水の製造装置30は、RO装置33の下流側に、イオン交換処理装置として電気再生式イオン交換処理装置(以下、「EDI」と略称する場合がある)が設けられている点で第1の実施形態と相違し、その他の構成については第1の実施形態と同様である。したがって、以下においては、上述した相違点に基づく精製水の製造方法について説明する。
【0062】
(第1のステップ)
最初に、バルブ41を閉、バルブ45及び46を開とし、配管内の原水を活性炭処理装置32、次いで、RO装置33に供給する。RO装置33で得られた濃縮水は、図3に示すようにブローラインを介して系外に排出させるか、第1の実施形態と同様に、効率的に殺菌処理を行うとの観点から系外に排出せずに、殺菌処理に供するようにすることもできる。なお、前者の場合は、バルブ41は開として、タンク31から適宜原水を補充する。
【0063】
次いで、RO装置33を通過した透過水は、電気再生式イオン交換処理装置34に供給される。電気再生式イオン交換処理装置34で得た濃縮水はブローラインを介して系外に排出させるが、効率的に殺菌処理を行うとの観点から系外に排出せずに、殺菌処理に供するようにすることもできる。濃縮水を系外に排出する場合は、バルブ41を開として、タンク31から適宜原水を補充する。
【0064】
次いで、電気再生式イオン交換処理装置34の処理水は、バルブ45を介して加熱手段としての熱交換器36に供給されるとともに加熱される。そして、この水は、第2のラインを構成する配管中を通ってタンク31と活性炭処理装置32との間に供給されるようになる。
【0065】
このように循環を繰り返すことによって、熱水は、最終的に65℃以上、好ましくは80℃以上の熱水とする。
【0066】
この場合の昇温時間は通常5分〜5時間、好ましくは10分〜2時間、より好ましくは20分〜1時間とする。なお、殺菌処理時間及び降温時間は上述した通りである。
【0067】
RO装置33の運転圧力は昇温開始時から低圧にする方法もあるが、第1の実施形態と同様に、昇温開始時に、RO装置33の運転圧力を通常の運転圧力にし、ある時点で、ポンプ43を停止する等の手段により、RO装置33の運転圧力を下げると、循環初期に通常の運転圧力で循環するため、循環系内の水質が向上され、高温時にRO装置33の運転圧力を低下させたときに、RO装置33の除去率の低下による系内の汚染を防ぐことができる。この場合、ポンプ43の停止前は、RO濃縮水は全量、もしくはその一部を排出し、排出した水を補充するためV41を開く。またポンプ23の停止後は、濃縮水も循環し、V41は閉じる。
【0068】
(第2のステップ)
次いで、上述のようにして供給された熱水は、第1のラインにおける活性炭処理装置32、RO装置33及びイオン交換装置34、並びに熱交換器36を含む第2のラインを循環させ、図3に示す製造装置30の殺菌処理、具体的には活性炭処理装置32、RO装置33及びイオン交換装置34の殺菌処理を行う。
【0069】
殺菌処理は、10分〜3時間、好ましくは20分〜2時間、より好ましくは30分〜1時間行う。
【0070】
昇温後のRO装置33の運転圧力は、RO装置33をその耐圧の範囲内で運転せねばならない。
【0071】
(第3のステップ)
なお、上記のように殺菌処理を実施した後の製造ラインの冷却は、第1の実施形態と同様にして実施する。
【0072】
(第4のステップ)
以上のようにして製造装置30の殺菌処理が終了した後、実際の精製水の製造を行う。精製水の製造は、基本的には第1の実施形態と同様である。すなわち、EDI34の処理水を、処理水タンク35に一端貯留された後、UV照射装置37に供給され、ここで例えば波長254nmの紫外線が照射されることによって処理水をさらに殺菌し、メンブレンフィルタ38でろ過した後、ユースポイント39において目的とする精製水を得ることができる。
【0073】
本実施形態においても、精製水を製造する際の殺菌処理において、加熱手段である熱交換器36で生成した熱水をタンク31ではなく、タンク11と活性炭処理装置32との間に供給し、製造装置30の最も菌数が増大する少なくとも活性炭処理装置32、RO装置33及び電気再生式イオン交換処理装置34を含む系内を循環させるようにしている。
【0074】
したがって、従来のように、熱水をタンク31に還元させる必要がないので、加熱する水の量を低減させることができ、循環する系の昇温に対する時間も節減できるため、殺菌処理に要する工程が簡易化されるようになる。このため、殺菌処理自体を簡易化することができ、精製水製造装置10も簡易化かつ小型化することができるようになる。また、加熱のためのエネルギーコストを低減でき、上記殺菌処理の簡易化と併せて、精製水の製造コストが増大してしまうという問題を生じることがない。
【0075】
さらに、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に熱交換器36を活性炭処理装置32及びRO装置33間に設けることもできるし、ライン48又は49に、熱交換器36−2及び36−3として設けることもできる。この場合の殺菌操作は、第1の実施形態で説明したようにして実施する。なお、ライン48及び49は、上述した第2のラインの一部を構成する。
【実施例】
【0076】
(実施例1及び比較例1,2)
以下に示すような条件において、精製水の製造装置の熱殺菌に使用するエネルギー量、及び熱殺菌の度合について調べた。なお、熱殺菌に使用するエネルギー量は、熱殺菌において発生する蒸気量をもって間接的に評価し、熱殺菌の度合は、培養法を用いて、医薬品精製水中の熱殺菌後の生菌数を調べることにより実施した。結果はそれぞれ表1〜表3に示した。
【0077】
実施例1:
図1に示す製造装置の熱殺菌を実施した。なお、製造装置の各構成は、以下のようにした。
原水タンク(タンク11):1000L
活性炭処理装置12:ACボンベ NCC−200AC 野村マイクロ・サイエンス株式会社製 2本 充填剤:活性炭クラレコールKW
逆浸透処理装置13:モジュール東レ株式会社製SU−710T、8本、運転圧力12kgf/cm2、供給流量2m3/h、水回収率60%
UV照射装置17:日本フォトサイエンス株式会社製、NPX、1台
【0078】
実施例2:
図3に示す製造装置の熱殺菌を実施した。なお、製造装置の各構成は、以下のようにした。
原水タンク(タンク11):1000L
活性炭処理装置32:ACボンベ NCC−200AC 野村マイクロ・サイエンス株式会社製 2本 充填剤:活性炭クラレコールKW
逆浸透処理装置33:モジュール東レ株式会社製SU−710T、8本、運転圧力12kgf/cm2、供給流量2m3/h、水回収率60%
電気再生式イオン交換処理装置34:GE社製 MK−2 miniHT 1台
UV照射装置37:日本フォトサイエンス株式会社製、NPX、1台
MF38:省略
【0079】
比較例1:
比較例1として、図1に示す製造装置の加熱水の還元先を原水タンク11に変更した。なお、製造装置の各構成は、実施例1と同様にした。本比較例における製造装置の概略構成を図4に示す。
【0080】
図4から明らかなように、本比較例の製造装置は、加熱手段としての熱交換器16を含む第2のラインがバルブ26を介してタンク11に接続されている点で、図1に示す製造装置と相違する。また、本比較例では、原水タンクの上部も熱殺菌すべく、原水を500Lとした。
【0081】
比較例2:
比較例2として、図3に示す製造装置の加熱水の還元先を原水タンク31に変更した。なお、製造装置の各構成は、実施例2と同様にした。本比較例における製造装置の概略構成を図5に示す。また、本比較例では、原水タンクの上部も熱殺菌すべく、原水を500Lとした。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
以上、表1〜表3から明らかなように、実施例1及び2と比較例1及び2とを比較すると、実施例1及び2では、比較例1及び2に比してエネルギー使用量が少ないが、生菌量は同程度となっていることが分かる。したがって、より少ない熱水で効果的に殺菌処理が実施されていることが確認された。
【0086】
また、実施例1の加熱水を活性炭処理装置12の後段に還元した場合、および実施例1の場合の、活性炭処理装置12の透過水の生菌量を確認した。第4のステップ(精製水を製造するステップ)の開始当初の生菌量は、両者とも1cfu/mil以下でほぼ同等であったが、1週間後には、前者の場合は10倍程度まで生菌数の増加が見られた。これは、前者の場合は通水を継続すると、活性炭処理装置及びその後段の配管において生菌の増加によるトラブルがおきやすいことを示している。すなわち、本発明のように、活性炭処理装置を含めた系で熱殺菌をすることで、菌由来のトラブルが抑制可能なことを示している。
【0087】
なお特に示さないが、電気再生式イオン交換処理装置34の代わりに、イオン交換樹脂充填装置を用いた場合においても、同様の結果を得ることができた。
【0088】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10,30 精製水製造装置
11,31 タンク
12,32 活性炭処理装置
13,33 逆浸透処理装置
15,35 処理水タンク
34 電気再生式イオン交換処理装置
16,36,36−2,36−3 熱交換器
17,37 UV照射装置
18,38 メンブレンフィルタ
19,39 ユースポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非加熱の原水を不活性処理手段及び逆浸透手段に供給して精製水を製造する方法であって、
少なくとも前記不活性処理手段及び前記逆浸透手段を含み、貯留槽を有しない循環系を組み、前記原水を前記系内に設置された加熱手段に供給して熱水を生成する第1のステップと、
前記熱水を、前記循環系内に循環させることによって、前記系の殺菌を行う第2のステップと、
前記系の温度を低下させる第3のステップと、
前記非加熱の原水を、前記不活性処理手段及び前記逆浸透手段に供給して精製水を製造する第4のステップと、
を具えることを特徴とする、精製水の製造方法。
【請求項2】
非加熱の原水を不活性処理手段、逆浸透手段、及びイオン交換手段に供給して精製水を製造する方法であって、
少なくとも前記不活性処理手段、前記逆浸透手段及びイオン交換手段を含み、貯留槽を有しない循環系を組み、前記原水を、前記方法の任意の位置に設置された加熱手段に供給して熱水を生成する第1のステップと、
前記熱水を、前記循環系内に循環させることによって、前記系の殺菌を行う第2のステップと、
前記系の温度を低下させる第3のステップと、
前記非加熱の原水を、前記不活性処理手段、前記逆浸透手段及び前記イオン交換手段に供給して精製水を製造する第4のステップと、
を具えることを特徴とする、精製水の製造方法。
【請求項3】
前記第1のステップと前記第2のステップとを同時に行い、前記熱水は、前記系内を循環させる間に前記加熱手段によって生成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の精製水の製造方法。
【請求項4】
前記逆浸透手段の透過水を前記加熱手段で加熱して前記熱水を生成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の精製水の製造方法。
【請求項5】
前記不活性処理手段を通過した前記原水を前記加熱手段で加熱して前記熱水を生成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の精製水の製造方法。
【請求項6】
前記逆浸透手段の濃縮水を前記加熱手段で加熱して前記熱水を生成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の精製水の製造方法。
【請求項7】
前記イオン交換手段の濃縮水を前記加熱手段で加熱して前記熱水を生成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の精製水の製造方法。
【請求項8】
非加熱の原水を不活性処理手段及び逆浸透手段に供給して精製水を製造する装置であって、
非加熱の原水を精製するための少なくとも前記不活性処理手段及び前記逆浸透処理装置を含む第1のラインと、
前記非加熱の原水を、少なくとも前記不活性処理手段、前記逆浸透手段及び加熱手段を含み、貯留槽を介さずに循環させる第2のラインを具えることを特徴とする、精製水の製造装置。
【請求項9】
非加熱の原水を不活性処理手段及び逆浸透手段に供給して精製水を製造する装置であって、
非加熱の原水を精製するための少なくとも前記不活性処理手段、前記逆浸透手段、及びイオン交換手段を含む第1のラインと、
前記非加熱の原水を、少なくとも前記不活性処理手段、前記逆浸透手段、イオン交換手段及び加熱手段を含み、貯留槽を介さずに循環する第2のライン、
を具えることを特徴とする、精製水の製造装置。
【請求項10】
前記第2のラインは前記第1のラインと分岐し、前記逆浸透手段の供給水側、又はそれよりも上流側に連結されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の精製水の製造装置。
【請求項11】
前記第2のラインは前記第1のラインと分岐し、前記貯留槽の排出側及び前記逆浸透処理装置の濃縮水側に連結されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載の精製水の製造装置。
【請求項12】
前記加熱手段は、前記不活性処理手段及び前記逆浸透処理装置間に設けられ、前記第2のラインは前記第1のラインに含まれることを特徴とする、請求項8又は9に記載の精製水の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−147911(P2011−147911A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13049(P2010−13049)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】