説明

糖尿病の予防又は治療剤

【課題】本発明は糖尿病の予防又は治療剤、インスリン抵抗性改善剤又は糖代謝改善剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明はエボジアミン類を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療剤、インスリン抵抗性改善剤、或いは糖代謝改善剤に関する。本発明はまたエボジアミン類を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療、インスリン抵抗性改善、或いは糖代謝改善のための飲食品又は飼料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖尿病の予防又は治療剤、インスリン抵抗性改善剤、又は糖代謝改善剤に関する。本発明はまた糖尿病の予防又は治療、インスリン抵抗性改善、又は糖代謝改善に有用な飲食品又は飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの作用不足から引き起こされる疾病であり、2つのタイプが存在する。1型糖尿病と呼ばれるものは膵臓のβ細胞が破壊されて発病し、治療にはインスリンを必要とする。一方で2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)は遺伝的な要素に過食や運動不足、ストレスなど、身体に負担となる生活習慣が加わり発病する。2型糖尿病患者ではインスリンによる糖代謝促進が起こりにくいインスリン抵抗性が生じている。そこで2型糖尿病の治療には単純に血糖を降下させるだけでなく、インスリン抵抗性改善により糖代謝を促進することが有効であるとされる。
【0003】
一方、エボジアミンは、生薬の一種であるミカン科のゴシュユ(呉茱萸)から得られる化合物である(非特許文献1)。
【0004】
エボジアミンの薬理作用としては、脂質代謝改善又は抗肥満作用(特許文献1)等が知られているがインスリン抵抗性改善及び糖代謝改善作用は知られていない。
【0005】
ルタエカルピン、デヒドロエボジアミン、ヒドロキシエボジアミンは、すべてエボジアミンと同様にゴシュユから得られる構造類似化合物であるが、インスリン抵抗性改善及び糖代謝改善作用は知られていない。
【0006】
【特許文献1】国際公開WO97/47209号パンフレット
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス(Journal of Pharmaceutical Sciences),75,612−613(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は糖尿病の予防又は治療剤、インスリン抵抗性改善剤又は糖代謝改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)式(I):
【化1】

[式中、
【化2】


【化3】

(式中Rは水素又はヒドロキシを表し、R2は水素又は低級アルキルを表すか、或いは、RとR2とが一緒になって結合を表す)、又は
【化4】

(式中Rは低級アルキルを表す)
を表し、
nは
【化5】


【化6】

のとき0を表し、
【化7】


【化8】

のとき1を表し、
は陰イオンを表す]
で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療剤。
【0009】
(2)上記式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有するインスリン抵抗性改善剤。
(3)上記式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有する糖代謝改善剤。
(4)上記式(I)で表される化合物又は飲食品として許容されるその塩を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療のための飲食品。
(5)上記式(I)で表される化合物又は飲食品として許容されるその塩を有効成分として含有するインスリン抵抗性改善のための飲食品。
(6)上記式(I)で表される化合物又は飲食品として許容されるその塩を有効成分として含有する糖代謝改善のための飲食品。
(7)上記式(I)で表される化合物又は飼料として許容されるその塩を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療のための飼料。
(8)上記式(I)で表される化合物又は飼料として許容されるその塩を有効成分として含有するインスリン抵抗性改善のための飼料。
(9)上記式(I)で表される化合物又は飼料として許容されるその塩を有効成分として含有する糖代謝改善のための飼料。
【0010】
本明細書において上記式(I)で表される化合物及びその塩を「エボジアミン類」と総称する場合がある。
【発明の効果】
【0011】
エボジアミン類はインスリン抵抗性改善作用及び糖代謝改善作用を示す。従ってエボジアミン類は糖尿病の予防又は治療剤、インスリン抵抗性改善剤又は糖代謝改善剤として有用である。また、エボジアミン類を含有する飲食品又は飼料は糖尿病の予防又は治療、インスリン抵抗性改善、糖代謝改善のための飲食品又は飼料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施例に示す通りエボジアミン類はインスリン抵抗性改善作用及び糖代謝改善作用を有する。従ってエボジアミン類は糖尿病、糖尿病に合併する糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、骨粗鬆症、インスリン抵抗性に基づく高血圧、高脂血症、動脈硬化、脳卒中などの脳および心血管障害の予防又は治療のために有用である。
【0013】
本発明の糖尿病の予防又は治療剤、インスリン抵抗性改善剤又は糖代謝改善剤は、ほ乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類等の動物に対して有効であり、なかでもヒト、イヌ、ネコ、ネズミ、ブタ、ウシ、ラット等のほ乳類、ニワトリ、七面鳥等の鳥類、タイ、ハマチ等の魚類に対して有効であり、特にヒトに対して有効である。
【0014】
次に「エボジアミン類」について具体的に説明する。上記式(I)の各基の定義において、R又はRの「低級アルキル」としては、それぞれ独立に、直鎖または分枝状の炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等が挙げられ、なかでもメチルが好ましい。
【0015】
で表される陰イオンとしては、ハロゲンイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等)、無機酸由来の陰イオン(硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭酸イオン等)、有機酸由来の陰イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、クエン酸イオン、リン酸イオン、グルタミン酸等のカルボン酸由来の陰イオン等)等が挙げられる。
【0016】
式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩又は飲食品として許容される塩としては、酸付加塩が挙げられ、例えば塩酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0017】
式(I)で表される具体的なエボジアミン類としては、エボジアミン、ルタエカルピン、デヒドロエボジアミン、ヒドロキシエボジアミン等が挙げられる。
【0018】
エボジアミンは、式(II)
【化9】

で示される化合物である。
【0019】
エボジアミンは、市販品(キシダ化学株式会社製)を用いてもよいし、例えば特開昭52-77098号公報、特公昭58-434号公報[(R,S)- エボジアミン]、又はジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサエティ・ケミカル・コミュニケーションズ(J. Chem.Soc. Chem. Commun.),10,1092-1093(1982)[(S)-エボジアミン]に記載の化学合成法により合成して用いてもよい。或いは、ミカン科のゴシュユ属[ゴシュユ(Evodia rutaecarpa)、ホンゴシュユ(E. officinalis)、チョウセンゴシュユ(E. danielli)、ジュヨウシ(E. meliaefolia)等]、イヌザンショウ属[ハザレア(Fagara rhetza)等]、サンショウ属[ザントキシラム レツァ(Zantoxylum rhetsa)、ザントキシラム バドランガ(Z. budrunga)、ザントキシラム フラバム(Z. flavum)等]、アラリオプシス属[アラリオプシス タボウエンシス(Araliopsis tabouensis)、アラリオプシス ソヤウキー(A. soyauxii)等]等のエボジアミンを含有する植物の植物体から、例えば上記非特許文献1に記載の方法により調製し、これを用いてもよい。
【0020】
エボジアミンには光学異性体が存在し、化学合成法によればS体、R体の両方の異性体が、植物からはS体が得られる。本発明においては、S体、R体及びこれらの混合物のいずれの異性体を用いてもよいが、好ましくはS体のものが用いられる。
【0021】
ルタエカルピンは式(III)
【化10】

で示される化合物である。
【0022】
ルタエカルピンは、市販品(キシダ化学株式会社製)を用いてもよいし、例えば特開昭53-77100号公報、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J. Org. Chem.),50,1246-1255(1985)に記載の化学合成法により合成して用いてもよい。或いは、ミカン科のゴシュユ属(ゴシュユ、ジュヨウシ等)、イヌザンショウ属(ハザレア等)、サンショウ属[ザントキシラム レツァ、ザントキシラム リモネラ(Z. limonella)、ザントキシラム インテグリフォリオラム(Z. integrifoliolum)等]等のルタエカルピンを含有する植物の植物体から、例えばケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリティン(Chem.Pharm.Bull.),37,1820-1822(1989)]に記載の方法により調製し、これを用いてもよい。
【0023】
デヒドロエボジアミンは式(IV)
【化11】

[式中、X-は陰イオンを表し、陰イオンは上記と同義である]
で示される化合物である。
【0024】
デヒドロエボジアミンは、例えばジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.),50,1246-1255(1985)に記載の化学合成法により合成して用いることができる。或いは、ミカン科のゴシュユ属(ゴシュユ、ジュヨウシ等)等のデヒドロエボジアミンを含有する植物の植物体から、例えばアメリカン・ジャーナル・オブ・チャイニーズ・メディシン(American Journal of Chinese Medicine),10,75-85(1982)に記載の方法により調製し、これを用いてもよい。
【0025】
ヒドロキシエボジアミンは式(V)
【化12】

で示される化合物である。
【0026】
ヒドロキシエボジアミンは、例えばミカン科のゴシュユ属(ゴシュユ等)、サンショウ属(ザントキシラム レツァ等)、アラリオプシス属(アラリオプシス タボウエンシス等)等のヒドロキシエボジアミンを含有する植物の植物体から、例えば薬学雑誌,82,619-626(1962)に記載の方法により調製し、これを用いてもよい。
【0027】
本発明において、エボジアミン類は精製品又は純品を用いてもよいが、医薬品又は飲食品として不適当な不純物を含有しない限り、未精製又は粗精製のエボジアミン類を用いてもよい。
【0028】
未精製又は粗精製のエボジアミン類としては、例えばエボジアミン類を含有する植物、好ましくはミカン科に属する植物、さらに好ましくはゴシュユ属(Evodia)、イヌザンショウ属(Fagara)、サンショウ属(Zanthoxylum)又はアラリオプシス属(Araliopis)に属する植物の、葉、幹、樹皮、根、果実等の植物体、又は該植物体から得られるエボジアミン類を含有する粉砕物、抽出物、粗製物又は精製物が挙げられる。
【0029】
エボジアミンを含有する植物の植物体としては、ゴシュユ、ハザレア、ザントキシラム レツァ、アラリオプシス タボウエンシス又はジュヨウシ等の果実、樹皮又は根皮が好適に用いられる。
【0030】
エボジアミン類を含有する粉砕物は、エボジアミン類を含有する植物の植物体を乾燥後、粉砕することにより得ることができる。
【0031】
エボジアミン類を含有する抽出物は、上記粉砕物を水、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、アセトン等の親水性溶媒、又はジエチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ベンゼン等の有機溶媒等を単独又は組み合わせて用い、抽出することにより得ることができる。
【0032】
エボジアミン類の粗精製物又は精製物は、上記粉砕物又は上記抽出物をダイヤイオンHP−20(登録商標;三菱化学株式会社)等のポーラスポリマー、セファデックスLH−20(登録商標;ファルマシア株式会社)等のセファデックス、順相系シリカゲル、逆相系シリカゲル、ポリアミド、活性炭又はセルロース等を担体としたカラムクロマトグラフィー又は分取高速液体クロマトグラフィーに付し、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒の例:95%メタノール、発色剤:5%硫酸エタノール)で、目的成分を確認しながら分画精製することによりエボジアミン類を精製することにより得ることができる。エボジアミン類の精製物又は純品を得るためには、上記操作を適宜、組み合わせ、反復し、必要に応じて再結晶操作等を行うことが望ましい。
【0033】
上記のエボジアミン類はそれ自体単独で、又は公知の薬学的に許容される担体、賦形剤等と組み合わせて製剤化して糖尿病の予防又は治療剤、インスリン抵抗性改善剤、糖代謝改善剤等として投与することができる。
【0034】
投与形態としては、特に制限はなく、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経粘膜吸収剤、経鼻剤、経腸剤、皮膚外用剤(例えば経皮吸収剤、貼付剤、軟膏剤)等の非経口剤として、症状に応じて単独で、又は組み合わせて使用される。
【0035】
製剤中のエボジアミン類の量はインスリン抵抗性改善作用、糖代謝改善作用等の所望の作用を奏することができる有効量であれば特に限定されない。製剤の投与量は、予防又は治療を必要とする患者の年令、体重、疾患の程度、投与経路により異なるが、通常はエボジアミン類の投与量として1日0.1mg〜1000mgとなる量投与される。
【0036】
上記製剤は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用して常法により調製することができる。
賦形剤の具体例としては、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等が挙げられる。
【0037】
結合剤の具体例としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが挙げられる。
【0038】
崩壊剤の具体例としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントが挙げられる。
【0039】
界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールが挙げられる。
【0040】
滑沢剤の具体例としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0041】
流動性促進剤の具体例としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0042】
また、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤として投与する場合には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【0043】
エボジアミン類はまた、常法に従って、固形、半固形、液体等の形態の飲食品に添加することができる。また、上述の、エボジアミン類を含む植物の葉、幹、樹皮、根、果実等の植物体、又は該植物体から得られるエボジアミン類を含有する粉砕物、抽出物、粗製物又は精製物をそれ自体飲食品として使用することもできる。かかる飲食品は糖尿病の予防又は治療のための飲食品として、インスリン抵抗性改善のための飲食品として、或いは糖代謝改善のための飲食品として利用され得る。
【0044】
限定されるわけではないが、固形食品としては、ビスケット等のブロック菓子類、粉末スープ等の粉末状食品、冷菓等を挙げることができる。半固形食品としては、カプセル、ゼリー等を挙げることができる。飲料としては、例えば清涼飲料、茶類、アルコール飲料等を挙げることができる。また、摂取時に水等の液体担体を用いて希釈する粉末飲料の形態としてもよい。さらに、これらの食品はいわゆる特定保健用食品とすることもできるであろう。
【0045】
また、このような飲食品には、必要に応じて常法に従って、安定化剤、pH調整剤、糖類、甘味料、各種ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、賦形剤、可溶化剤、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、湿潤剤、皮膜形成物質、矯味剤、矯臭剤、着色剤、香料、保存料等を添加することができる。
【0046】
上記飲食品はその本体、包装、説明書、宣伝物または宣伝用電子的情報にその効能の表示、例えば糖尿病の予防又は治療のために用いられる旨の表示、インスリン抵抗性改善のために用いられる旨の表示、或いは糖代謝改善のために用いられる旨の表示したものであることが好ましい。
【0047】
上記飲食品中のエボジアミン類の添加量は典型的には0.00001重量%以上、より典型的には0.0001〜0.1重量%であるが、この範囲には限定されない。
【0048】
エボジアミン類はまた、常法に従って、ほ乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類等の動物に対する飼料(例えばイヌ、ネコ、ネズミ等のペット用の飼料、ウシ、ブタ等の家畜用の飼料、ニワトリ、七面鳥等の家禽用飼料、タイ、ハマチ等の養殖魚用の飼料等)に添加することができる。また、上述の、エボジアミン類を含む植物の葉、幹、樹皮、根、果実等の植物体、又は該植物体から得られるエボジアミン類を含有する粉砕物、抽出物、粗製物又は精製物それ自体を上記動物用飼料として使用することもできる。かかる飼料は糖尿病の予防又は治療のための飼料として、インスリン抵抗性改善のための飼料として、或いは糖代謝改善のための飼料として利用され得る。
【0049】
上記飼料は常法により固形状、半固形状、液状等の各種形状に加工することができる。
【0050】
上記飲食品中のエボジアミン類の添加量は典型的には0.00001重量%以上、より典型的には0.0001〜0.1重量%であるが、この範囲には限定されない。
【実施例】
【0051】
以下本発明を実施例に基づいて詳述するが本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0052】
(試験例1)
12ヵ月齢の雄性C57BL/6J系マウスを標準食(CE−2飼料、日本クレア社)、又は標準食にエボジアミン(キシダ化学株式会社)を0.0001%(w/w)あるいは0.001%(w/w)添加した飼料で18ヵ月齢まで飼育した後血液を採取し、血糖値と血清インスリン値を測定した。血糖値はノボアシストペーパーを用いて測定し、血清インスリン値は市販のインスリン測定ELISAキットを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
血糖値は各群間に差はみられなかったが、インスリン値はコントロール群に比べてエボジアミン添加群では有意に低く、加齢によるインスリン抵抗性の改善が認められた。
【0055】
(試験例2)
4ヵ月齢の雄性C57BL/6J系マウスを高脂肪食(20%粉末牛脂添加CE−2飼料、日本クレア社)、又は高脂肪食に0.03%(w/w)エボジアミンを添加した飼料で6ヵ月齢まで飼育した後血液を採取し、上記と同様にして血糖値と血清インスリン値を測定した。結果を表2に示す。血糖値は両群間で差はみられなかったが、インスリン値はコントロール群に比べてエボジアミン添加群で有意に低く、高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性の改善が認められた。
【0056】
【表2】

【0057】
また、採取した脂肪組織からRNA分画を調製し、ノーザンブロット法によりレジスチン遺伝子の発現量を測定した。P32ラベル化DNAのレジスチンmRNAへの結合量をシグナル強度(Arbitrary unit: AU)としてレジスチン遺伝子の発現量に対するエボジアミンの効果を図1に示す。エボジアミン添加群のレジスチン遺伝子発現量はコントロール群の約70%(**P<0.01)に低下し、インスリン抵抗性の改善が支持された。
【0058】
(試験例3)
2ヵ月齢の遺伝性肥満マウス(Ob/Ob、雄)を標準食、又は標準食に0.001%(w/w)エボジアミンを添加した飼料で飼育し、2ヵ月後に耐糖能試験を行った。耐糖能試験はマウスを一晩絶食後、体重1gあたり1.5mgのグルコースを腹腔に投与し、0、30、60、120分後に血液を採取して血糖値を測定しその変化率を求めた(図2、数値は%±標準誤差、各n=5)。絶食時の体重はコントロール群54.2±1.5g、エボジアミン添加群52.0±2.0gで有意な差はみられなかったが、グルコースのクリアランスには両群間で有意な差があり(***P<0.001 vsコントロール群)、遺伝性肥満マウスにおいてもエボジアミン添加群で糖代謝の改善が認められた。
【0059】
(試験例4)
37℃、5%COを含む空気存在下においてマウス脂肪細胞(3T3−L1、大日本製薬株式会社)を1μMデキサメサゾン、500μMイソブチルメチルキサンチンと1.67μMインスリン及び/又は10μMエボジアミンを添加したDMEM培地で刺激した後、細胞を溶解しウエスタンブロット法及び免疫沈降法によりIRS−1活性に対するエボジアミンの効果を調べた(図3)。エボジアミン添加によりインスリン感受性に関連するIRS−1チロシン残基Tyrのリン酸化(活性)に影響はみられなかったが、インスリン刺激により上昇しインスリン抵抗性に関連するIRS−1セリン残基Ser−638/639のリン酸化はエボジアミン添加によりおよそ50%低下した。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】マウスの脂肪組織におけるレジスチン遺伝子の発現量に対するエボジアミン添加の影響を示す図である。
【図2】遺伝性肥満マウスにおける糖代謝に対するエボジアミン添加の影響を示す図である。
【図3】マウス脂肪細胞におけるIRS−1活性に対するエボジアミン添加の影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
【化2】


【化3】

(式中Rは水素又はヒドロキシを表し、R2は水素又は低級アルキルを表すか、或いは、RとR2とが一緒になって結合を表す)、又は
【化4】

(式中Rは低級アルキルを表す)
を表し、
nは
【化5】


【化6】

のとき0を表し、
【化7】


【化8】

のとき1を表し、
は陰イオンを表す]
で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療剤。
【請求項2】
請求項1記載の式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有するインスリン抵抗性改善剤。
【請求項3】
請求項1記載の式(I)で表される化合物又は薬学的に許容されるその塩を有効成分として含有する糖代謝改善剤。
【請求項4】
請求項1記載の式(I)で表される化合物又は飲食品として許容されるその塩を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療のための飲食品。
【請求項5】
請求項1記載の式(I)で表される化合物又は飲食品として許容されるその塩を有効成分として含有するインスリン抵抗性改善のための飲食品。
【請求項6】
請求項1記載の式(I)で表される化合物又は飲食品として許容されるその塩を有効成分として含有する糖代謝改善のための飲食品。
【請求項7】
請求項1記載の式(I)で表される化合物又は飼料として許容されるその塩を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療のための飼料。
【請求項8】
請求項1記載の式(I)で表される化合物又は飼料として許容されるその塩を有効成分として含有するインスリン抵抗性改善のための飼料。
【請求項9】
請求項1記載の式(I)で表される化合物又は飼料として許容されるその塩を有効成分として含有する糖代謝改善のための飼料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−347965(P2006−347965A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176830(P2005−176830)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】