糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物
本発明は糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を開示し、該組成物は大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の中で選択されるいずれか一つを粉砕し乾燥して、アルコール又はアルコール水溶液で抽出した後、その抽出液をろ過し減圧濃縮して得られるエキスを含んでなる。また本発明の組成物は大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草のエキスをそれぞれ5〜85重量%含んでなる。更に本発明の組成物は、厚朴を80%エタノール水溶液で常温にて24時間抽出し、前記エキスをノルマルヘキサン、酢酸エチル、ノルマルブタノールの順に系統分離した後、ノルマルヘキサン層を選択して標準的なシリカゲルクロマトグラフィによって前分画を分離し、前記前分画をTLC上の標準マグノロールと比較してマグノロールに富む分画であることを確認した後、標準的なシリカゲルクロマトグラフィによって分離して得られたマグノロールを含んでなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物に関し、より詳しくは大戟エキス、姜厚朴エキス、炒葛根エキス、甘草エキス若しくはこれらの混合物、及び厚朴から分離したマグノロールを用いて糖化最終産物の生成を抑制することにより糖尿病性合併症の予防及び治療に効果的な薬学的組成物及び機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は世界中で重要な成人病の一つであって、最近、韓国でも急速な経済成長につれ糖尿病の有病率が7〜8%に達し、60乃至70代の場合重要な死亡原因となっている。糖尿病による死亡原因のうち一つである糖尿合併症は、糖尿病にかかった後、10〜20年が経ると体内のほぼ全ての器官が損傷を受けて糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などに現れる。特に、慢性糖尿病性腎症は、血液透析治療及び末期腎不全の最も重要な原因であって、血液透析治療や臓器移植しか治療法がない実状である。かかる糖尿病性合併症は、糖尿病を治療して正常的な血糖濃度を回復した場合でも進行することがあるが、これは高血糖状態の持続に因るタンパク質の非酵素的糖化反応の結果として不可逆的に生成された糖化最終産物(advanced glycation end products、AGE)がその主な原因の一つとして知られている。
【0003】
このような糖尿病性合併症を誘発する機序としては、概してタンパク質の非酵素的糖化反応、ポリオール経路、及び酸化的ストレスなどとして説明されている。
前記タンパク質の非酵素的糖化反応は、グルコースを用いたタンパク質のアミノ酸群(例えば、リジン残基)の非酵素的縮合によるもので、その結果糖化最終産物が生成される。該タンパク質の非酵素的糖化反応は、(1)タンパク質のアミノ酸群(例えば、リジン残基)とグルコースのアルデヒド又はケトンが酵素作用無しに求核付加反応を行って初期段階産物であるシッフ塩基を形成し、前記シッフ塩基と隣接したケトアミン付加化合物とが互いに縮合して可逆的なアマドリ型の糖化早期産物が生成される段階、(2)高血糖状態が持続されて可逆的なアマドリ型の糖化早期産物が分解されず、再構成され、タンパク質と架橋結合して糖化最終産物が生成される段階に分けられる。
【0004】
可逆的なアマドリ型の糖化早期産物とは異なり、糖化最終産物は非可逆的な反応産物であるので、一旦生成されると血糖が正常に回復しても分解されず、タンパク質存在期間の間組織に蓄積されて組織の構造及び機能に異常な変化をもたらす(非特許文献1および2)。
【0005】
例えば、グルコースと種々のタンパク質とが反応して生成された糖化最終産物のうちの一つである糖化アルブミンは、慢性糖尿病性腎症を引き起こす重要な要因として働く。糖化アルブミンは正常な非糖化アルブミンに比してより容易に腎糸球体細胞内に流入し、高濃度のグルコースは糸球体メサンギウム細胞を刺激して細胞外マトリクス合成を増加させる。過度の糖化アルブミンの流入及び細胞外マトリクスの増加によって糸球体の繊維化が引き起こされる。このような機序により、糸球体が継続的に損傷を受けて、血液透析又は臓器移植などの極端な治療法を用いなければならない段階に至るようになる。また、慢性糖尿病に因って動脈壁にはコラーゲンが、糸球体では基底膜タンパク質が糖化最終産物と結合されて組織に蓄積されることが報告されている(非特許文献3)。
【0006】
このように非酵素的タンパク質糖化反応によって基底膜、血清アルブミン、水晶体タンパク質、フィブリン、コラーゲンなどのタンパク質で糖化が起こり、生成された糖化最終産物が組織の構造及び機能に異常な変化を引き起こして糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障
、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などの慢性糖尿病性合併症を誘発させる。
【0007】
また、非酵素的タンパク質糖化反応によって生成された糖化最終産物は老化にも重要な役割を果たすことが知られている(非特許文献4〜6)。
前述のように非酵素的タンパク質糖化反応で生成された糖化最終産物は糖尿病性合併症及び老化の進行において主な原因になっており、糖尿病性合併症及び老化の進行を防ぐためには糖化最終産物の生成を抑制することが必要である。
【0008】
現在、タンパク質糖化抑制剤として唯一の合成薬であるアミノグアニジンは、親核性ヒドラジンであって、アマドリ産物と結合してタンパク質との架橋結合を防止することにより、糖化最終産物の生成を抑制して糖尿病性合併症への進展を遅延或いは防止する(非特許文献3および7)。アミノグアニジンは糖尿病性合併症の予防及び治療に最も有望な合成薬であり、第3相臨床試験まで開発されたが、長期間投与時毒性が誘発されるという問題点があり、より安全な薬剤の開発が求められている。
【0009】
従って、最近は既存の合成化合物による疾患治療剤開発の限界及び治療に際しての副作用や毒性に関する問題点のため、生薬製剤を中心とした疾患治療剤の開発が盛んに進行されている。
【0010】
これに対し、本発明者らは糖尿病性合併症、老化の予防及び治療のための生薬材を研究していたところ、大戟、姜厚朴、炒葛根、甘草が糖化最終産物の生成を抑制する効能があり、特にこれらがそれぞれ5〜85重量%からなる生薬エキス混合物及び厚朴から分離されるマグノロールが糖化最終産物の生成抑制効能に優れているので、糖尿病性合併症の予防及び治療のみならず老化の防止及び遅延にも有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【非特許文献1】Vinson, J. A. et al., 1996, J. Nutritinal Biochemistry vol.7: p.559−663
【非特許文献2】Smith, P. R. et al., 1992, Eur. J. Biochem., vol.210: p.729−739
【非特許文献3】Brownlee、M., et al., 1986, Sciences, vol.232, p.1629−1632
【非特許文献4】Monnier et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.81: p.583, 1984
【非特許文献5】Lee et a1., Biochem. Biophys. Res. Comm., vol.123: p.888, l984
【非特許文献6】Lee et a1., Diabetologia, vol.38: p.357−394
【非特許文献7】Edelstein, D., et al., l992, Diabetes, vol.4l, p.26−29
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の中で選択されるいずれか一つから得られる生薬エキスを有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の夫々のエキスの混合物を有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
本発明のまた他の目的は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の混合物を抽出して得られ
るエキスを有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、厚朴から分離されるマグノロール又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
本発明のまた別の目的は、前記各生薬エキス、前記生薬エキス混合物或いは前記分離されたマグノロールを有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
【0014】
更に、本発明の他の目的は、前記各生薬エキス、前記生薬エキス混合物或いは前記分離されたマグノロールを有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用機能性食品を提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の目的は、前記各生薬エキス、前記生薬エキス混合物或いは前記分離されたマグノロールを有効成分として含む老化の防止及び遅延用薬学的組成物を提供することにある。
【0016】
また、本発明の別の目的は、前記各生薬エキス、前記生薬エキス混合物或いは前記マグノロールを有効成分として含む老化の防止及び遅延用機能性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の中で選択されるいずれか一つを粉砕し乾燥して、アルコール又はアルコール水溶液で抽出した後、その抽出液をろ過し減圧濃縮して得られることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草を粉砕し乾燥して、それぞれ5〜85重量%として混合し、アルコール又はアルコール水溶液で抽出した後、その抽出液をろ過し減圧濃縮して得られることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草のエキスをそれぞれ5〜85重量%含んでなることを特徴とする。
更に、本発明は、厚朴を80%エタノール水溶液で常温にて24時間抽出し、前記抽出物をノルマルヘキサン、酢酸エチル、ノルマルブタノールの順に系統分離した後、ノルマルヘキサン層を選択して標準的なシリカゲルクロマトグラフィによって前分画を分離し、前記前分画をTLC上の標準マグノロールと比較して多くのマグノロールが存在する分画を確認した後、シリカゲルクロマトグラフィによってマグノロールを分離して得られるマグノロールであることを特徴とする。
【0020】
次に、本発明で使用される生薬材について説明する。
まず、大戟(Euphorbiae radix)は、トウダイグサ科に属する多年生草本であるタカトウダイ(Elphorbia pekinensis)の根であって、没食子酸、没食子酸メチル、3−0−ガロイルシキミ酸などを含み(Kim, J. G., et al., Yakhak Hoeji, 1996, vol.40, p.l70−176)、その薬性は苦、辛、寒であり、脾、肺、胃に入って瀉水遂飲、消腫散結などの効能を示す(Min−Kyo, Shin, Clinical Botany with Original Colors, Youngryumsa, p.487, 1996)。
【0021】
厚朴は、モクレン科に属するホオノキ(Magnolia obovata, M. officinalis または M. officinalis var. bilo
ba)の樹皮を乾燥したもので、漢方的に燥濕消痰、下気除満の効能を有し、濕滞傷中、緩脾吐瀉、食積気滞、腹脹便秘、痰飲喘咳を治療し(国家薬典委員会、中華民国共和国薬典、I部、204、化学工業出版社、北京)、α、β、γ−ユーデスモールなどの精油、マグノロール、ホノキオール、アルカロイド、サポニンなどが含有されている。薬理作用としては、抗アレルギー作用(Shin, T. Y., et al., 200l,
Arch. Pharm., Res., vol.24: p.249−255)、アポトーシス効果(Park, H. J., et a1., 2001, Arch. Pharm., Res., vol.24: p.342−348)、NO合成抑制効果、TNF−α発現抑制効果(SOn, H. J., et al., 2000, Planata med., vol.66:p.467−47l )、抗真菌効果(Bang, K. H., et al., 2000, Arch. Pharm,
Res., vol.23: p.46−49)、精神安定効果(Kuribara,
H., et a1, l999, J. Pharm. Pharmacol., vol.51: p.97−103)、及び皮膚癌抑制効果(Komoshima, T. et al., 1991, J. Nat. Prod., vol.54: p.816−822)などの多様な効能があることが報告されている。
【0022】
葛根は、マメ科に属する多年生植物である葛(Pueraria thunbergiana(P. lobata))の根を乾燥したもので、その薬性は甘、辛、平であり、脾、胃に入って解表、水津、生津、止瀉の効能を示す。薬理作用としては、解熱作用、血圧降下作用、記憶力増強、脳血流量増加、冠状動脈拡張作用、心機能改善、抗不整脈作用などが報告されている(Ho−Chul, Kim, Chinese medicinal pharmacology, JiipMoonDang, p.92−94, 200l)。
【0023】
甘草は、マメ科に属する多年生草本であるヨーロッパカンゾウ(Glycyrrhiza glabra)とウラルカンゾウ(G. uralensis)及びその他同属植物の根及び根茎を乾燥したもので、その薬性は甘、平で、脾、胃、心、肺に入って補中益気、清熱解毒、潤肺止咳、緩急止痛、調和諸藥などの効能を示す。主成分としてはトリテルペン系サポニンであるグリチルリチンを始めとして、リキリチンなどのフラボノイド系化合物などを含有している。薬理作用としては副腎皮質ホルモン類似作用、抗胃潰瘍効能、平滑筋弛緩作用、肝機能保護作用、消炎、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用がある(Ho−Chul, Kim, Chinese medicinal pharmacology, JiipMoonDang, p.92−94, 200l)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
本発明による糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の中で選択されるいずれか一つを粉砕して乾燥した後、1個乃至4個の炭素原子を有するアルコールを用いて抽出する段階(第1段階)と、前記第1段階で得られたエキスをろ過し減圧濃縮してエキスを製造する段階(第2段階)により得られる。
【0025】
前記第1段階において、アルコールは10〜90%の1個乃至4個の炭素原子を有するアルコールを用いることができるが、80%エタノールを生薬材の5〜10倍(w/v)の量だけ加えることが望ましい。
【0026】
前記第1段階における前記姜厚朴は、厚朴を修治したもので、その製造方法は次の通りである。すなわち、予め50〜100℃に予熱した容器に厚朴100重量部に対し乾姜3重量部を加え、前記生薬材の5〜10倍(w/v)の水を入れて厚朴を水に完全に浸した後、70〜100℃の温度を保つように加熱する。水がほとんど蒸発すると、厚朴を取り
出す。このように修治された姜厚朴は厚朴よりも糖化最終産物の生成抑制効能が増大される。
【0027】
前記第1段階における前記炒葛根は、葛根を修治したもので、葛根100gを120〜130℃で45分間煎って表面が黄色になり、褐色斑点が現れると取り出して冷やす。このように修治された炒葛根は葛根よりも糖化最終産物の生成抑制効能が増大される。
【0028】
そして、本発明による生薬エキス混合物は前記第1段階及び第2段階で得られる4種のエキスをそれぞれ5〜85重量%で混合して得られる。
また、本発明による生薬エキス混合物は大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草を粉砕し乾燥して、それぞれ5〜85重量%で混合した後、前記第1段階及び第2段階と同様な方法で抽出して得られる。
【0029】
本発明による生薬エキス及び生薬エキス混合物は、in vitro実験において、糖尿病性合併症を誘発する因子のうち一つである糖化最終産物の生成を効率よく抑制した。動物実験では血糖降下効果に優れており、糖尿病誘発群に比して体重の増加、腎臓肥大現象の低下、BUN、トリグリセリド、クレアチニンレベルの有意な低下を示し、悪化した腎臓機能を回復させることが示唆された。さらに、水晶体混濁が糖尿病誘発群に比べて著しく低く、白内障発病の遅延又は予防に有用であることが示唆された。
【0030】
また、本発明によるマグノロールは、厚朴から分離して得られるもので、下記の化学式1のように表示される。
マグノロールは、厚朴の指標物質であって、ヒスタミン遊離抑制効果があることは報告されているが、糖化最終産物の生成抑制効能については本発明で最初に確認された。
【0031】
【化1】
厚朴からマグノロールを分離する方法は次の通りである。
【0032】
1)厚朴を80%エタノール水溶液で常温にて24時間抽出する段階、2)前記抽出物をノルマルヘキサン、酢酸エチル、ノルマルブタノールの順に系統分離する段階、3)ノルマルヘキサン層を選択して標準的なシリカゲル(340g)クロマトグラフィによって前ヘキサン層を分離する段階(この際、移動相はノルマルヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いる)、4)前記前分画をTLC上の標準マグノロールと比較して多くのマグノロールが存在する分画を確認する段階、及び5)標準的なシリカゲルクロマトグラフィによって多くのマグノロールが存在する分画からマグノロールを分離する段階からなり、このように分離されたマグノロールを核磁気共鳴、質量分析、IRなどの機器分析を通して同定した。
【0033】
前記マグノロールは当該技術分野における通常の方法により薬学的に許容される塩を形成することができる。薬学的に許容可能な遊離酸には、無機酸及び有機酸を用いることが
できる。無機酸には、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、硫酸又はリン酸などが含まれ、有機酸にはクエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、グリコール酸、コハク酸、4−トルエンスルホン酸、グルタミン酸、又はアスパラギン酸などが含まれる。
【0034】
前述のように分離されたマグノロールはin vitro実験において、ウシ血清アルブミン(BSA)の糖化を抑制することが確認され、糖化最終産物の生成を抑制する効果があることが確認された。
【0035】
従って、本発明による各生薬エキス、生薬エキス混合物及びマグノロールは、糖化最終産物の生成に起因する糖尿病性合併症、つまり糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などのような糖尿病性合併症の予防及び治療に有用に用いられる。
【0036】
また、本発明による各生薬エキス、生薬エキス混合物及びマグノロールは、糖化最終産物の生成を抑制する場合、フリーラジカルの生成及び酸化的ストレスの誘発率を低下させるので、酸化的ストレスによる老化の防止及び遅延に有用に用いられることができる。
【0037】
各生薬エキス、生薬エキス混合物又はマグノロールを含有する本発明の組成物は、前記各生薬エキス、生薬エキス混合物又はマグノロールに同一若しくは類似機能を有する有効成分を1種以上更に含むことができる。
【0038】
前記本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物を含有する組成物は、臨床投与時に経口又は非経口で投与でき、一般的な医薬品製剤の形態で使用することができる。
本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物を含有する組成物は色々な投与経路を介して有効な量で投与できる。このような組成物は薬学的に許容される担体を一緒に含む。滅菌溶液、錠剤、コーティングされた錠剤及びカプセルなどの公知の剤形に用いられる標準の薬学的担体であればいずれも薬学的に許容される担体として使用可能である。
【0039】
通常、担体はデンプン、ミルク、糖、特定のクレー、ゼラチン、ステアリン酸、タルク、植物油、ゴム、グリコール類などの賦形剤又はその他公知の賦形剤を含むことができ、更に甘味料、色素添加剤及び他の成分を含めることができる。本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物を有効成分として含む組成物を投与するための製剤は、経口、静脈内、筋肉内、経皮投与の方法によって投与できるが、これらの方法に限定されるわけではない。実際の臨床投与時に、経口若しくは非経口の種々の剤形で投与できるが、製剤化する場合は通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤或いは賦形剤を用いて調剤される。
【0040】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、及びカプセル剤などが含まれ、これら固形製剤は少なくとも1つ以上の賦形剤、例えばデンプン、炭酸カルシウム、ショ糖、或いは乳糖、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。更に、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も用いることができる。
【0041】
経口投与のための液相製剤には、懸濁剤、内服液剤、乳剤、シロップ剤などが含まれるが、この場合、単純希釈剤である水、流動パラフィンその他種々の賦形剤、例えば湿潤剤、甘味料、芳香剤、及び保存剤を含めることができる。
【0042】
また、本発明の薬学的組成物は非経口経路を介して、例えば皮下注射、静脈注射、或いは筋肉内注射によって投与することができる。非経口投与用剤形として製剤化するためには、前記生薬エキス又は生薬エキス混合物を安定剤又は緩衝剤と共に水にて混合して溶液
又は懸濁液に製造し、これを投与量単位のアンプルやバイアルとして製剤化する。
【0043】
本発明による生薬エキス又は生薬エキス混合物の投与量は、体内での活性成分の吸収度、不活性化率、排泄速度、患者の年齢、性別及び状態、治療すべき疾病の重症度に応じて適宜に選択されるが、一般的に一日で1回乃至3回に分けて投与できる。本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物を有効成分として含む場合、その有効用量は1日あたり500〜2,000mg/kgであり、望ましくは1日あたり500〜1,000mg/kgである。
【0044】
前記製剤の正確な投与量、投与経路及び投与回数は製剤の特性、投与対象の体重及び状態、そして使用しようとする特定の誘導体の特性によって容易に決められる。
本発明において、前記各生薬エキス又は生薬エキス混合物は実験用ラットを対象とした急性毒性検査の結果、経口投与時最小致死量(LD50)は少なくとも6g/kg以上で、全然毒性効果が認められないので、生体における安全性が極めて高いことが分かり、従って本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物は生体に対して安全に投与することができる。
【0045】
本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物は、糖尿病性合併症の予防及び治療、老化の防止及び遅延のために単独で使用してもよいし、或いは手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法、及び/又は生物学的反応調節剤を用いる方法と併用することもできる。
【0046】
本発明による生薬エキス又は生薬エキス混合物は、糖尿病性合併症及び老化に起因する疾患の改善を目的として健康食品に添加されることができる。本発明による前記各生薬エキス又は生薬エキス混合物を食品添加物として用いる場合、生薬エキス又は生薬エキス混合物をそのまま食品に添加してもよいし、或いは他の食品や食品添加物と一緒に使用でき、通常の方法により適宜に使用されることができる。
【0047】
有効成分(生薬エキス)の混合量は使用目的(予防、健康増進、又は治療処置)によって好適に決められる。一般に、食品又は飲料の製造時、本発明による生薬エキス混合物は原料に対して15重量%以下、望ましくは10重量%以下の量で添加される。しかし、健康及び衛生を目的とするか、或いは健康管理を目的とする長期間の摂取の場合はその添加量は前記範囲以下であることができる。しかし、安全性の面ではなんら問題がないので、有効成分は前記範囲以上の量でも使用可能である。
【0048】
前記食品の種類には特に制限はない。前記物質を添加することができる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及び複合ビタミン剤などが挙げられ、しかも通常の意味での機能性食品をも全部含む。
【0049】
本発明による機能性食品は通常の飲料と同様に種々の甘味料または天然の糖質などを追加成分として含むことができる。前記天然の糖質はブドウ糖、果糖のような単糖類、麦芽糖、ショ糖のような二糖類、及びデキストリン、シクロデキストリンのような多糖類、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールのような糖アルコールを含む。甘味料としてはタウマチン、ステビアエキスのような天然甘味料や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味料などを使用することができる。一般に、前記天然糖質の割合は、本発明による組成物100ml当たり約0.01〜0.04g、望ましくは約0.02〜0.03gである。
【0050】
尚、本発明による組成物は、種々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド剤、pH調節剤、安定剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含むことができる。更に、本発明による組成物は、天然果汁ジュース、フルーツジュース飲料、及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は単独で、若しくは組み合わせて使用することができる。一般に、かかる添加剤の割合は重要ではないが、本発明による組成物100重量部当たり0.01〜0.1重量部の範囲で選択される。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例及び実験例によって詳述する。但し、下記のような実施例は本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
実施例1:生薬エキスの製造
大戟を粉砕した後、100gを取って常温(20〜30℃)で80%のエタノール水溶液(エタノール:蒸留水=80:20)1リットルを加えて24時間抽出した。エタノール抽出液をろ紙にてろ過した後、同様な方法で5回繰り返して抽出した。全ての抽出液を集めて減圧下に濃縮した。
【0052】
一方、姜厚朴、炒葛根、及び甘草をそれぞれ100gずつ80%のエタノール水溶液1リットルを用いて抽出した後、ろ過して真空濃縮することで各々のエキスを得た。その結果、大戟エキス20g、姜厚朴エキス10g、炒葛根エキス20g、甘草エキス20gが得られた。
【0053】
実施例2:生薬エキス混合物の製造
前記実施例1で得られたエキスをそれぞれ10gずつ混合して生薬エキス混合物40gを得た。
【0054】
実施例3:生薬エキス混合物の他の製造
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草を粉砕した後、それぞれ100gずつを取って混合した後、常温(20〜30℃)にて80%のエタノール水溶液(エタノール:蒸留水=80:20)1リットルを加えて24時間抽出した。エタノール抽出液をろ紙にてろ過した後、同様な方法で5回繰り返して抽出した。全ての抽出液を集めて減圧下に濃縮した。
【0055】
実施例4:マグノロールの分離
厚朴2kgを80%エチルアルコール水溶液で常温にて24時間抽出した後、ろ過した。かかる過程を3回繰り返して得た全てのエキスを減圧下に濃縮、乾燥して暗褐色のエキス250g(歩留まり:12.5%)を得た。このエキスをノルマルヘキサン、酢酸エチル、ノルマルブタノールの順に系統分離した。
【0056】
前述のように分離された層の中で、マグノロールが分布しているノルマルヘキサン層を選択して標準的シリカゲル(340g)クロマトグラフィに供して前分画を得た。このときの移動相はノルマルヘキサン:酢酸エチル=1:0→6:であり、勾配溶離して前分画1から前分画6を生じた。前記前分画を標準マグノロールと比較して、前分画4が多くのマグノロールが存在する分画であることを確認した。この前分画4を再びノルマルシリカゲルクロマトグラフィに供してマグノロールを分離した(15mg)。これをNMR、質量分析、IRなどの機器分析の結果を総合分析することでマグノロールであることを確認した。
【0057】
実験例1:本発明による生薬エキス、生薬エキス混合物及びマグノロールの糖化最終産物の生成抑制効能の分析
本発明による生薬エキス、生薬エキス混合物及びマグノロールの糖化最終産物の生成抑
制効能を調べるために、下記のような実験を行った。
【0058】
(1)本発明による生薬エキス混合物の糖化最終産物の生成抑制効能
タンパク質源として、ウシ血清アルブミン(以下、BSAと称する;米国シグマ社製)を使用した。BSAを10mg/mlの濃度になるように50mMリン酸緩衝液(pH7.4)に加えて調製した。
【0059】
糖質源としては、0.1M果糖と0.1Mグルコースとの混合液を使用した。
前記のように調製されたBSA溶液に果糖とグルコースの混合液を加えて実験に使用した。
【0060】
前記実施例2で製造した生薬エキス混合物を15%トゥイーン80に溶解した後、これを前記BSAと糖の混合液に添加し、37℃で30日間インキュベートした。このとき、0.02%アジ化ナトリウムを抗菌剤として添加した。
【0061】
対照群はBSAと糖との混合液をインキュベートしたもので、試験群と対照群の空試験はそれぞれ調製した後インキュベーションを行わなかったものを用いた。
全ての試料は4つずつ準備して最大限誤差を減らし、インキュベーション直前に窒素ガス(純度:99.999%)を充填して汚染を防止した。30日後インキュベーション液から生成された糖化最終産物の含量を分析した。糖化最終産物は蛍光色、褐色を帯びており、架橋結合できる物理化学的特性を有するだけでなく、細胞膜レセプターが認知可能なリガンドを有している。かかる特性を有する糖化最終産物の量を分光光度計(励起:350nm、放出:450nm)にて測定してその生成抑制程度を分析した。
【0062】
前記糖化最終産物の生成抑制率は下記の式により計算した。
生成抑制率(%)=100−[(試験群の蛍光強度−試験群の空試験の蛍光強度)/(対照群の蛍光強度−対象群の空試験の蛍光強度)]×100
(2)大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の各生薬エキスの糖化最終産物の生成抑制効能
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の各生薬エキスを一定した濃度で15%トゥイーン80に溶解したものを用いて、90日間インキュベートすることを除いては、前記(1)と同様に実験を行った。
【0063】
(3)マグノロールの糖化最終産物の生成抑制効能
マグノロールを蒸留水に溶かして3.33μg/ml、6.66μg/ml、13.32μg/ml、26.6μg/mlの濃度に調製した後、前記(1)と同様に37℃で30日間インキュベートした。
【0064】
陽性対照群としては、アミノグアニジンを一定した濃度で蒸留水に溶解したものを用いて30日間及び90日間インキュベートすることを除いては、前記(1)と同様に実験を行った。その結果は図1乃至図8及び表1に示した。
【0065】
【表1】
前記表1に示したように、本発明による生薬エキス混合物は30日間インキュベートした場合、IC50が18.12μg/mlで極めて低く、これによって糖化最終産物の生成抑制効能が優れていることが分かる。
【0066】
これに対し、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の各生薬エキスを90日間インキュベートしたとき、低いIC50を示し、糖化最終産物の生成抑制効能が優れていることが分かる。但し、30日間のインキュベーションでは、各生薬材を個別的に抽出した場合はその効能があまり優れておらず、長期間投与時にその効能が現われることが分かる。
【0067】
また、本発明による生薬エキス混合物は、陽性対照群であるアミノグアニジンよりもずっと低いIC50を示すことから、糖化最終産物の生成抑制効能が極めて優れていることが分かる。
【0068】
従って、本発明による各生薬エキスは糖化最終産物の生成抑制効能を有することが分かり、本発明による生薬エキス混合物は各生薬エキスより糖化最終産物の生成抑制効能が増強されたことが分かる。
【0069】
実験例2:本発明による生薬エキス混合物の糖尿病性合併症の治療効果
本発明による生薬エキス混合物の糖尿病性合併症の治療効果を調べるために、下記のような実験を行った。
【0070】
1.実験動物
SD系4週齢の120〜140gの雄ラットをケージに一匹ずつ収容し、通常の固形飼料及び水を自由に供給しながら1週間本研究院の動物室に適応させた。
【0071】
動物室の環境条件は、温度23±3℃、相対湿度50±10%、照明時間12時間(午前8時から午後8時)、換気回数10〜20回/時、照度150〜300ルクスに設定された。実験期間の間、動物室の温度及び湿度は恒温恒湿室によって自動的に調節し、照度などの環境条件を定期的に測定し、試験に影響を及ぼす変動はなかった。
【0072】
実験動物は1)正常群にカルボキシメチルセルロースを投与した群(NC+CMC)、2)糖尿病誘発群にカルボキシメチルセルロースを投与した群(DC+CMC)、3)糖尿病誘発群に生薬エキス混合物を投与した群(DC+HMP)、4)糖尿病誘発群に陽性対照(エパルレスタット(Epalrestat))を投与した群(DC+S11)の4つの群に分け、糖尿病誘発群には9〜10匹、正常群には5〜6匹ずつ分配し、体重がほぼ等しくなるように均等に分散した。
【0073】
2.ストレプトゾトシンによる糖尿病性合併症の誘発
ストレプトゾトシン(Streptozotocin;STZ(N−[methylnitrosocarbamyl]−D−glucosamine))はβ細胞を選択的に破壊してインスリン欠乏に因る高血糖を誘発させる化学物質であり、これを用いて糖尿病を誘発した。特に、高用量の単回投与方法(single high−dose streptozotocin;SHDS)はβ細胞の大量壊死により非可逆的な高血糖状態を誘発するので、糖尿病性合併症モデルに適していると認められる。
【0074】
実験動物を1週間本動物室に適応させた後、一日間絶食させ、投与直前に0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶かしたストレプトゾトシン溶液を、体重1kg当たり60mgとして腹腔内注射した。ストレプトゾトシン溶液を投与して2日後に尾静脈から採血して血糖を調査した。血糖が300mg/ml以上のラットを糖尿病誘発ラットとした。
【0075】
陽性対照群は、糖尿病性合併症治療剤として用いられているエパルレスタット(ONO−2235;S11と表記する)を使用した。
3.一般的観察(体重、飼料及び水摂取量の変化)
慢性糖尿病性合併症の治療効果を調べるために、ラットに30日間糖尿病の状態を引き続き進行させた後、31日目から約8週間薬物を投与した。
【0076】
本実験に用いられた生薬エキス混合物(HMP)及びエパルレスタット(S11)は、非水溶性であるので、1%カルボキシメチルセルロースに溶かして使用し、正常群にはカルボキシメチルセルロースを投与してカルボキシメチルセルロースによる影響を排除した。
【0077】
正常群を除いた2つの糖尿誘発群には前記実施例3で作製した生薬エキス混合物(HMP)1g/kgと陽性対照群であるエパルレスタット(S11)25mg/kgをそれぞれ1%CMCに溶かしてゾンデを用いて毎日ラットに8週間経口投与した。
【0078】
投薬期間のあいだ試料を投与した後、剖検の一日前に実験動物を15時間以上絶食させ
た後体重を測定した。
体重は毎日測定し、飼料量は1週ごとに1回、水の摂取量は毎日測定した。
【0079】
その測定結果は下記の表2に示した。
【0080】
【表2】
表2に示したように、正常群の体重は252.83g程度増加し、糖尿病誘発群は66.17gしか増加しなかった。また、糖尿病誘発群に生薬エキス混合物(HMP)を投与した群は98.21g増加し、糖尿病誘発群に陽性対照であるエパルレスタット(S11)を投与した群は129.21g増加した。このように、本発明による生薬エキス混合物を投与した群は、エパルレスタット(S11)投与群よりも体重増加量が少なかったが、カルボキシメチルセルロースを投与された糖尿病誘発群よりは増加したことが分かる。
【0081】
尚、カルボキシメチルセルロースを投与された糖尿病誘発群は低体重にもかかわらず、正常群に比して約2倍の飼料を摂取し、陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群はそれよりもずっと多く摂取した。しかし、本発明による生薬エキス混合物投与群は、糖尿病誘発群に比べてやや少ない量を摂取し、糖尿病誘発群は正常群に比して約7倍程度の水を摂取した。
【0082】
また、本発明による生薬エキス混合物投与群は、糖尿病誘発群に比して約5分の1程度の水を摂取し、陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群は糖尿病誘発群よりも一層多くの水を摂取した。
【0083】
4.臓器重量の測定
剖検の一日前に実験動物を15時間以上絶食させた後体重を測定し、エチルエーテルで麻酔を行い、腹大動脈を介して採血した。血液の中の一部はヘパリンで処理し、一部の全血を3,000rpm、4℃で15分間遠心分離した。そして、各血液サンプルからそれぞれ血漿を分離して−80℃にて保管して各々のデータ分析に用いた。
【0084】
腎臓は還流洗浄を行った後、取り出して重量を測定し、皮質と髄質を分離して急冷させた後−80℃で保管した。そのほかに肝臓、肺、膵臓、脾臓、心臓を分離して重量を測定した。
【0085】
その測定結果は下記の表3に示した。
【0086】
【表3】
表3に示したように、相対的な臓器重量の場合、糖尿病誘発群は正常群に比べて膵臓を除いた全ての臓器が肥大しており、その中でも腎臓及び肝臓は2倍以上増加した。本発明による生薬エキス混合物投与群は、糖尿病誘発群に比して各臓器の肥大現象が減少する傾向を示したが、有意性がなく、陽性対照群であるエパルレスタット(S11)効能のような傾向を示した。
【0087】
5.血清における生化学的因子分析
(1)血糖降下効果
剖検する前まで2週間隔で眼窩静脈から血液を取ってグルコースキットを用いて血糖を測定した。血漿グルコースの含量はグルコースオキシダーゼ法を用いてUV 500nmで測定した。
【0088】
(2)腎臓機能改善効果
(a)BUN(Blood Urea Nitrogen)
BUNはウレアーゼ・インドフェノール法を用いて580nmで吸光度を測定することで測定した。
【0089】
(b)トリグリセリド
トリグリセリドの含量は酵素法(POD)を用いて550nmで吸光度を測定することで定量された。
【0090】
(c)総コレステロール量
総コレステロール含量は酵素法を用いて500nmで吸光度を測定することで測定した
。
【0091】
(d)クレアチニン
クレアチニンはJaffe変法を用いて515nmで吸光度を測定することで測定した。
【0092】
(e)タンパク質
血清中のタンパク質はBCAアッセイを用いて測定された。血清をビシンコニン酸、Na2CO3、NaHCO3、C4H4O6Na2・2H2Oを0.1N NaOHと混ぜて作製したビシンコニン酸溶液、および4%CuSO4・5H2O溶液と一緒に反応させた後、562nmで吸光度を測定した。
【0093】
その測定結果は下記の表4に示した。
【0094】
【表4】
表4に示したように、血糖は糖尿病誘発群が408.79±63.10mg/dlであり、本発明による生薬エキス混合物投与群は、271.22±72.28mg/dlであって、糖尿病誘発群に比べて血糖降下効果に優れている(p<0.01)。陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群は197.94±7.666mg/dlであった。
【0095】
また、腎臓機能指標であるBUN値は糖尿病誘発群の場合正常群に比して約2.4倍程度高く現われ、本発明による生薬エキス混合物投与群は糖尿病誘発群に比べて有意にその数値が低下した(p<0.05)。
【0096】
また、トリグリセリドは糖尿病誘発群の場合顕著に増加し(33.38±6.62mg/dl→70.20±13.14mg/dl;p<0.001)、本発明による生薬エキス混合物投与群の場合、糖尿病誘発群に比べて有意に減少した(50.35±16.63mg/dl;p<0.05)。
【0097】
また、クレアチニンレベルは糖尿病誘発群の場合、1.54±0.08mg/dlから1.69±0.24mg/dlに有意に増加し、本発明による生薬エキス混合物投与群の場合1.51±0.26mg/dlに低下した。クレアチニンもやはり腎機能の指標として用いられるが、BUNと同様に鋭敏な数値ではない。従って、糸球体ろ過率が50%以上減少されてもその数値は正常範囲にとどまる。かかる特性を考慮するとき、1.51±0.26mg/dlという数値は、腎機能が極めて良好になったことを意味する。前記表3に示すように、本発明による生薬エキス混合物の投与によって腎臓の肥大症状が糖尿病誘発群に比べて減少されたので、よって腎機能が改善されたことを確認することができる。
【0098】
従って、本発明による生薬エキス混合物投与群では腎臓肥大現象の低減のみならずBUN、トリグリセリド、クレアチニンレベルが糖尿病誘発群に比べて著しく低減されたので、腎機能が非常に好転したことがわかる。
【0099】
6.抗白内障効果
顕微鏡の下で、摘出した眼球から水晶体を分離して生理食塩水2mlずつ収めた24ウェルプレートに移した後、顕微鏡上に取り付けたデジタルカメラで写真を撮影した。水晶体の混濁程度は取った写真を画像分析システムプログラムを用いて分析した。
【0100】
水晶体をカメラで撮影して重さを測定した後、リン酸緩衝溶液(pH6.9)を加え、4℃で均質化した後、酵素活性測定のために均質液の一部を3,000rpmで20分間遠心分離して上澄み液を取って−80℃で保管した。ソルビトール含量の測定用には、残りの均質液にZnSO4およびNaOHを添加してタンパク質を除去し、3,000rpmで20分間遠心分離し、上澄み液を回収して−80℃で保管した。
【0101】
眼球を肉眼で観察した状態は図9に示し、水晶体をカメラで撮影した状態は図10に示し、水晶体の混濁程度は表5に示した。
【0102】
【表5】
図9及び図10に示したように、糖尿病を誘発した後6週目から糖尿病誘発群で白内障が生じ始めた。剖検当日、全ての群の眼球状態は、糖尿病誘発群の場合7匹のうち3匹の眼球が白く覆われ、1匹が極めて弱い症状を示した。陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群は7匹のうち4匹の眼球が両側とも白く覆われており、1匹は右側眼球に弱い症状を示した。陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群において、5匹も白内障効果が現われたことは、ストレプトゾトシン誘導を2回実施したラットが2匹もい
るからであると考えられる。一般に、ストレプトゾトシン誘導を2回実施する場合、体重増加程度が少なく、水晶体混濁度も重度となることが知られている。また、本発明による生薬エキス混合物投与群では7匹のうち3匹の両側眼球が白内障症状を示した。
【0103】
また、前記表5に示したように、平均の水晶体混濁率は正常群の場合8.31±5.21%であり、糖尿病誘発群の場合66.84±14.89で糖尿病誘発群の水晶体混濁率が重度であることが分かる。また、糖尿病誘発群に陽性対照であるエパルレスタット(S11)及び本発明による生薬エキス混合物をそれぞれ投与したときは、それぞれ37.38±13.56%(p<0.001)、37.20±20.25%(p<0.01)であり、有意に白内障現象が低減された。
【0104】
また、図11(ここで、数字1、2、3、・・・はラットの番号、L又はRはラットの左側、右側水晶体を意味する)に示したように、正常群の水晶体混濁率は20%以下であり、外観上も極めて清かった。20%程度の混濁率は正常状態とみなすことができる。糖尿病誘発群の水晶体混濁率はいずれも40%以上で、大部分が60%以上の水晶体混濁率を示した。80%以上の混濁率を示したラットも3匹存在した。しかし、本発明による生薬エキス混合物を投与した群の水晶体混濁率は大部分が40%内外であり、その中で正常値水準を示したものもあり、60%を超えたラットは2匹であった。
【0105】
従って、本発明による生薬エキス混合物は慢性糖尿病による白内障症状の予防及び治療に効果的に使用することができる。
実験例3:ラットに対する経口投与急性毒性実験
本発明による生薬エキス混合物の急性毒性を調べるために下記のような実験を遂行した。
【0106】
実験動物として6週齢の特定病原体未感染(SPF)SD系ラットを用いて急性毒性実験を行った。群当たり2匹ずつの動物に前記実施例において作製した生薬エキス混合物を水に懸濁して6g/kg/15mlの用量で単回経口投与した。試験物質投与後、動物の斃死の有無、臨床症状及び体重変化などを観察し、血液学的検査及び血液生化学的検査を実施し、剖検して肉眼で腹腔臓器及び胸腔臓器の異常如何を観察した。
【0107】
試験の結果、試験物質を投与した全ての動物で特記すべき臨床症状や死亡例はなく、また体重測定、血液検査、血液生化学検査、剖検所見などでも毒性変化は観察されなかった。
【0108】
以上、本発明による生薬エキス混合物はラットにおいて6g/kgまで毒性変化を示すことなく、経口投与最小致死量(LD50)は少なくとも6g/kg以上である安全な物質と実証された。
【0109】
製剤例1:錠剤の製造
前記実施例1乃至実施例3によって製造された生薬エキス100.0mg、トウモロコシデンプン90.0mg、乳糖175.0mg、L−ヒドロキシプロピルセルロース15.0mg、ポリビニルピロリドン905.0mg及びエタノール適量の原料を均質に混合して湿式造粒法で顆粒化し、ステアリン酸マグネシウム1.8mgを加えて混合した後1錠が400mgになるように打錠した。
【0110】
製剤例2:カプセル剤の製造
前記実施例1乃至実施例3によって製造された生薬エキス100.0mg、トウモロコシデンプン80.0mg、乳糖175.0mg、及びステアリン酸マグネシウム1.8mgを均一に混合して1カプセルに360mgずつ充填した。
【0111】
製剤例3:機能性飲料の製造
蜜 522mg
チオクト酸アミド 5mg
ニコチン酸アミド 10mg
塩酸リボフラビンナトリウム 3mg
塩酸ピリドキシン 2mg
イノシトール 30mg
オロチン酸 50mg
本発明の生薬エキス 500mg
水 200mg
前記組成及び含量にして通常の方法を用いて飲料を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0112】
前述のように、本発明による各生薬エキス、生薬エキス混合物、又はマグノロールは陽性対照群であるアミノグアニジンに比べて遥かに低い低濃度で糖尿病性合併症の誘発要因の一つである糖化最終産物の生成を抑制する。特に生薬エキス混合物は血糖降下効果に優れており、体重低下防止、腎臓肥大現象低下、及びBUN、トリグリセリド、クレアチニンなどの数値を有意に低減して腎臓機能の悪化を抑制し、水晶体混濁率を顕著に減少させる。従って、糖化最終産物の生成に起因する糖尿合併症、つまり糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などの予防及び治療のための薬学的組成物及び機能性食品に応用できる。
【0113】
更に、糖化最終産物の生成を抑制する結果として、酸化的ストレスの誘発比率が減少するので、本発明による生薬エキスを酸化的ストレスによる老化の防止及び遅延用薬学的組成物及び機能性食品に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明による生薬エキス混合物における糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図2】本発明による大戟エキスにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図3】本発明による姜厚朴エキスにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図4】本発明による炒葛根エキスにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図5】本発明による甘草エキスにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図6】本発明によるマグノロールにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図7】アミノグアニジン(30日間インキュベーション)の糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図8】アミノグアニジン(90日間インキュベーション)の糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図9】本発明の実験例による実験用ラットの眼球を示す写真。
【図10】本発明の実験例による実験用ラットの水晶体を示す写真。
【図11】本発明の実験例による実験用ラットの水晶体の混濁度を示す写真。
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物に関し、より詳しくは大戟エキス、姜厚朴エキス、炒葛根エキス、甘草エキス若しくはこれらの混合物、及び厚朴から分離したマグノロールを用いて糖化最終産物の生成を抑制することにより糖尿病性合併症の予防及び治療に効果的な薬学的組成物及び機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は世界中で重要な成人病の一つであって、最近、韓国でも急速な経済成長につれ糖尿病の有病率が7〜8%に達し、60乃至70代の場合重要な死亡原因となっている。糖尿病による死亡原因のうち一つである糖尿合併症は、糖尿病にかかった後、10〜20年が経ると体内のほぼ全ての器官が損傷を受けて糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などに現れる。特に、慢性糖尿病性腎症は、血液透析治療及び末期腎不全の最も重要な原因であって、血液透析治療や臓器移植しか治療法がない実状である。かかる糖尿病性合併症は、糖尿病を治療して正常的な血糖濃度を回復した場合でも進行することがあるが、これは高血糖状態の持続に因るタンパク質の非酵素的糖化反応の結果として不可逆的に生成された糖化最終産物(advanced glycation end products、AGE)がその主な原因の一つとして知られている。
【0003】
このような糖尿病性合併症を誘発する機序としては、概してタンパク質の非酵素的糖化反応、ポリオール経路、及び酸化的ストレスなどとして説明されている。
前記タンパク質の非酵素的糖化反応は、グルコースを用いたタンパク質のアミノ酸群(例えば、リジン残基)の非酵素的縮合によるもので、その結果糖化最終産物が生成される。該タンパク質の非酵素的糖化反応は、(1)タンパク質のアミノ酸群(例えば、リジン残基)とグルコースのアルデヒド又はケトンが酵素作用無しに求核付加反応を行って初期段階産物であるシッフ塩基を形成し、前記シッフ塩基と隣接したケトアミン付加化合物とが互いに縮合して可逆的なアマドリ型の糖化早期産物が生成される段階、(2)高血糖状態が持続されて可逆的なアマドリ型の糖化早期産物が分解されず、再構成され、タンパク質と架橋結合して糖化最終産物が生成される段階に分けられる。
【0004】
可逆的なアマドリ型の糖化早期産物とは異なり、糖化最終産物は非可逆的な反応産物であるので、一旦生成されると血糖が正常に回復しても分解されず、タンパク質存在期間の間組織に蓄積されて組織の構造及び機能に異常な変化をもたらす(非特許文献1および2)。
【0005】
例えば、グルコースと種々のタンパク質とが反応して生成された糖化最終産物のうちの一つである糖化アルブミンは、慢性糖尿病性腎症を引き起こす重要な要因として働く。糖化アルブミンは正常な非糖化アルブミンに比してより容易に腎糸球体細胞内に流入し、高濃度のグルコースは糸球体メサンギウム細胞を刺激して細胞外マトリクス合成を増加させる。過度の糖化アルブミンの流入及び細胞外マトリクスの増加によって糸球体の繊維化が引き起こされる。このような機序により、糸球体が継続的に損傷を受けて、血液透析又は臓器移植などの極端な治療法を用いなければならない段階に至るようになる。また、慢性糖尿病に因って動脈壁にはコラーゲンが、糸球体では基底膜タンパク質が糖化最終産物と結合されて組織に蓄積されることが報告されている(非特許文献3)。
【0006】
このように非酵素的タンパク質糖化反応によって基底膜、血清アルブミン、水晶体タンパク質、フィブリン、コラーゲンなどのタンパク質で糖化が起こり、生成された糖化最終産物が組織の構造及び機能に異常な変化を引き起こして糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障
、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などの慢性糖尿病性合併症を誘発させる。
【0007】
また、非酵素的タンパク質糖化反応によって生成された糖化最終産物は老化にも重要な役割を果たすことが知られている(非特許文献4〜6)。
前述のように非酵素的タンパク質糖化反応で生成された糖化最終産物は糖尿病性合併症及び老化の進行において主な原因になっており、糖尿病性合併症及び老化の進行を防ぐためには糖化最終産物の生成を抑制することが必要である。
【0008】
現在、タンパク質糖化抑制剤として唯一の合成薬であるアミノグアニジンは、親核性ヒドラジンであって、アマドリ産物と結合してタンパク質との架橋結合を防止することにより、糖化最終産物の生成を抑制して糖尿病性合併症への進展を遅延或いは防止する(非特許文献3および7)。アミノグアニジンは糖尿病性合併症の予防及び治療に最も有望な合成薬であり、第3相臨床試験まで開発されたが、長期間投与時毒性が誘発されるという問題点があり、より安全な薬剤の開発が求められている。
【0009】
従って、最近は既存の合成化合物による疾患治療剤開発の限界及び治療に際しての副作用や毒性に関する問題点のため、生薬製剤を中心とした疾患治療剤の開発が盛んに進行されている。
【0010】
これに対し、本発明者らは糖尿病性合併症、老化の予防及び治療のための生薬材を研究していたところ、大戟、姜厚朴、炒葛根、甘草が糖化最終産物の生成を抑制する効能があり、特にこれらがそれぞれ5〜85重量%からなる生薬エキス混合物及び厚朴から分離されるマグノロールが糖化最終産物の生成抑制効能に優れているので、糖尿病性合併症の予防及び治療のみならず老化の防止及び遅延にも有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【非特許文献1】Vinson, J. A. et al., 1996, J. Nutritinal Biochemistry vol.7: p.559−663
【非特許文献2】Smith, P. R. et al., 1992, Eur. J. Biochem., vol.210: p.729−739
【非特許文献3】Brownlee、M., et al., 1986, Sciences, vol.232, p.1629−1632
【非特許文献4】Monnier et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.81: p.583, 1984
【非特許文献5】Lee et a1., Biochem. Biophys. Res. Comm., vol.123: p.888, l984
【非特許文献6】Lee et a1., Diabetologia, vol.38: p.357−394
【非特許文献7】Edelstein, D., et al., l992, Diabetes, vol.4l, p.26−29
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の中で選択されるいずれか一つから得られる生薬エキスを有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の夫々のエキスの混合物を有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
本発明のまた他の目的は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の混合物を抽出して得られ
るエキスを有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、厚朴から分離されるマグノロール又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
本発明のまた別の目的は、前記各生薬エキス、前記生薬エキス混合物或いは前記分離されたマグノロールを有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物を提供することにある。
【0014】
更に、本発明の他の目的は、前記各生薬エキス、前記生薬エキス混合物或いは前記分離されたマグノロールを有効成分として含む糖尿病性合併症の予防及び治療用機能性食品を提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の目的は、前記各生薬エキス、前記生薬エキス混合物或いは前記分離されたマグノロールを有効成分として含む老化の防止及び遅延用薬学的組成物を提供することにある。
【0016】
また、本発明の別の目的は、前記各生薬エキス、前記生薬エキス混合物或いは前記マグノロールを有効成分として含む老化の防止及び遅延用機能性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の中で選択されるいずれか一つを粉砕し乾燥して、アルコール又はアルコール水溶液で抽出した後、その抽出液をろ過し減圧濃縮して得られることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草を粉砕し乾燥して、それぞれ5〜85重量%として混合し、アルコール又はアルコール水溶液で抽出した後、その抽出液をろ過し減圧濃縮して得られることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草のエキスをそれぞれ5〜85重量%含んでなることを特徴とする。
更に、本発明は、厚朴を80%エタノール水溶液で常温にて24時間抽出し、前記抽出物をノルマルヘキサン、酢酸エチル、ノルマルブタノールの順に系統分離した後、ノルマルヘキサン層を選択して標準的なシリカゲルクロマトグラフィによって前分画を分離し、前記前分画をTLC上の標準マグノロールと比較して多くのマグノロールが存在する分画を確認した後、シリカゲルクロマトグラフィによってマグノロールを分離して得られるマグノロールであることを特徴とする。
【0020】
次に、本発明で使用される生薬材について説明する。
まず、大戟(Euphorbiae radix)は、トウダイグサ科に属する多年生草本であるタカトウダイ(Elphorbia pekinensis)の根であって、没食子酸、没食子酸メチル、3−0−ガロイルシキミ酸などを含み(Kim, J. G., et al., Yakhak Hoeji, 1996, vol.40, p.l70−176)、その薬性は苦、辛、寒であり、脾、肺、胃に入って瀉水遂飲、消腫散結などの効能を示す(Min−Kyo, Shin, Clinical Botany with Original Colors, Youngryumsa, p.487, 1996)。
【0021】
厚朴は、モクレン科に属するホオノキ(Magnolia obovata, M. officinalis または M. officinalis var. bilo
ba)の樹皮を乾燥したもので、漢方的に燥濕消痰、下気除満の効能を有し、濕滞傷中、緩脾吐瀉、食積気滞、腹脹便秘、痰飲喘咳を治療し(国家薬典委員会、中華民国共和国薬典、I部、204、化学工業出版社、北京)、α、β、γ−ユーデスモールなどの精油、マグノロール、ホノキオール、アルカロイド、サポニンなどが含有されている。薬理作用としては、抗アレルギー作用(Shin, T. Y., et al., 200l,
Arch. Pharm., Res., vol.24: p.249−255)、アポトーシス効果(Park, H. J., et a1., 2001, Arch. Pharm., Res., vol.24: p.342−348)、NO合成抑制効果、TNF−α発現抑制効果(SOn, H. J., et al., 2000, Planata med., vol.66:p.467−47l )、抗真菌効果(Bang, K. H., et al., 2000, Arch. Pharm,
Res., vol.23: p.46−49)、精神安定効果(Kuribara,
H., et a1, l999, J. Pharm. Pharmacol., vol.51: p.97−103)、及び皮膚癌抑制効果(Komoshima, T. et al., 1991, J. Nat. Prod., vol.54: p.816−822)などの多様な効能があることが報告されている。
【0022】
葛根は、マメ科に属する多年生植物である葛(Pueraria thunbergiana(P. lobata))の根を乾燥したもので、その薬性は甘、辛、平であり、脾、胃に入って解表、水津、生津、止瀉の効能を示す。薬理作用としては、解熱作用、血圧降下作用、記憶力増強、脳血流量増加、冠状動脈拡張作用、心機能改善、抗不整脈作用などが報告されている(Ho−Chul, Kim, Chinese medicinal pharmacology, JiipMoonDang, p.92−94, 200l)。
【0023】
甘草は、マメ科に属する多年生草本であるヨーロッパカンゾウ(Glycyrrhiza glabra)とウラルカンゾウ(G. uralensis)及びその他同属植物の根及び根茎を乾燥したもので、その薬性は甘、平で、脾、胃、心、肺に入って補中益気、清熱解毒、潤肺止咳、緩急止痛、調和諸藥などの効能を示す。主成分としてはトリテルペン系サポニンであるグリチルリチンを始めとして、リキリチンなどのフラボノイド系化合物などを含有している。薬理作用としては副腎皮質ホルモン類似作用、抗胃潰瘍効能、平滑筋弛緩作用、肝機能保護作用、消炎、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用がある(Ho−Chul, Kim, Chinese medicinal pharmacology, JiipMoonDang, p.92−94, 200l)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
本発明による糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物は、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の中で選択されるいずれか一つを粉砕して乾燥した後、1個乃至4個の炭素原子を有するアルコールを用いて抽出する段階(第1段階)と、前記第1段階で得られたエキスをろ過し減圧濃縮してエキスを製造する段階(第2段階)により得られる。
【0025】
前記第1段階において、アルコールは10〜90%の1個乃至4個の炭素原子を有するアルコールを用いることができるが、80%エタノールを生薬材の5〜10倍(w/v)の量だけ加えることが望ましい。
【0026】
前記第1段階における前記姜厚朴は、厚朴を修治したもので、その製造方法は次の通りである。すなわち、予め50〜100℃に予熱した容器に厚朴100重量部に対し乾姜3重量部を加え、前記生薬材の5〜10倍(w/v)の水を入れて厚朴を水に完全に浸した後、70〜100℃の温度を保つように加熱する。水がほとんど蒸発すると、厚朴を取り
出す。このように修治された姜厚朴は厚朴よりも糖化最終産物の生成抑制効能が増大される。
【0027】
前記第1段階における前記炒葛根は、葛根を修治したもので、葛根100gを120〜130℃で45分間煎って表面が黄色になり、褐色斑点が現れると取り出して冷やす。このように修治された炒葛根は葛根よりも糖化最終産物の生成抑制効能が増大される。
【0028】
そして、本発明による生薬エキス混合物は前記第1段階及び第2段階で得られる4種のエキスをそれぞれ5〜85重量%で混合して得られる。
また、本発明による生薬エキス混合物は大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草を粉砕し乾燥して、それぞれ5〜85重量%で混合した後、前記第1段階及び第2段階と同様な方法で抽出して得られる。
【0029】
本発明による生薬エキス及び生薬エキス混合物は、in vitro実験において、糖尿病性合併症を誘発する因子のうち一つである糖化最終産物の生成を効率よく抑制した。動物実験では血糖降下効果に優れており、糖尿病誘発群に比して体重の増加、腎臓肥大現象の低下、BUN、トリグリセリド、クレアチニンレベルの有意な低下を示し、悪化した腎臓機能を回復させることが示唆された。さらに、水晶体混濁が糖尿病誘発群に比べて著しく低く、白内障発病の遅延又は予防に有用であることが示唆された。
【0030】
また、本発明によるマグノロールは、厚朴から分離して得られるもので、下記の化学式1のように表示される。
マグノロールは、厚朴の指標物質であって、ヒスタミン遊離抑制効果があることは報告されているが、糖化最終産物の生成抑制効能については本発明で最初に確認された。
【0031】
【化1】
厚朴からマグノロールを分離する方法は次の通りである。
【0032】
1)厚朴を80%エタノール水溶液で常温にて24時間抽出する段階、2)前記抽出物をノルマルヘキサン、酢酸エチル、ノルマルブタノールの順に系統分離する段階、3)ノルマルヘキサン層を選択して標準的なシリカゲル(340g)クロマトグラフィによって前ヘキサン層を分離する段階(この際、移動相はノルマルヘキサンと酢酸エチルの混合物を用いる)、4)前記前分画をTLC上の標準マグノロールと比較して多くのマグノロールが存在する分画を確認する段階、及び5)標準的なシリカゲルクロマトグラフィによって多くのマグノロールが存在する分画からマグノロールを分離する段階からなり、このように分離されたマグノロールを核磁気共鳴、質量分析、IRなどの機器分析を通して同定した。
【0033】
前記マグノロールは当該技術分野における通常の方法により薬学的に許容される塩を形成することができる。薬学的に許容可能な遊離酸には、無機酸及び有機酸を用いることが
できる。無機酸には、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、硫酸又はリン酸などが含まれ、有機酸にはクエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、グリコール酸、コハク酸、4−トルエンスルホン酸、グルタミン酸、又はアスパラギン酸などが含まれる。
【0034】
前述のように分離されたマグノロールはin vitro実験において、ウシ血清アルブミン(BSA)の糖化を抑制することが確認され、糖化最終産物の生成を抑制する効果があることが確認された。
【0035】
従って、本発明による各生薬エキス、生薬エキス混合物及びマグノロールは、糖化最終産物の生成に起因する糖尿病性合併症、つまり糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などのような糖尿病性合併症の予防及び治療に有用に用いられる。
【0036】
また、本発明による各生薬エキス、生薬エキス混合物及びマグノロールは、糖化最終産物の生成を抑制する場合、フリーラジカルの生成及び酸化的ストレスの誘発率を低下させるので、酸化的ストレスによる老化の防止及び遅延に有用に用いられることができる。
【0037】
各生薬エキス、生薬エキス混合物又はマグノロールを含有する本発明の組成物は、前記各生薬エキス、生薬エキス混合物又はマグノロールに同一若しくは類似機能を有する有効成分を1種以上更に含むことができる。
【0038】
前記本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物を含有する組成物は、臨床投与時に経口又は非経口で投与でき、一般的な医薬品製剤の形態で使用することができる。
本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物を含有する組成物は色々な投与経路を介して有効な量で投与できる。このような組成物は薬学的に許容される担体を一緒に含む。滅菌溶液、錠剤、コーティングされた錠剤及びカプセルなどの公知の剤形に用いられる標準の薬学的担体であればいずれも薬学的に許容される担体として使用可能である。
【0039】
通常、担体はデンプン、ミルク、糖、特定のクレー、ゼラチン、ステアリン酸、タルク、植物油、ゴム、グリコール類などの賦形剤又はその他公知の賦形剤を含むことができ、更に甘味料、色素添加剤及び他の成分を含めることができる。本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物を有効成分として含む組成物を投与するための製剤は、経口、静脈内、筋肉内、経皮投与の方法によって投与できるが、これらの方法に限定されるわけではない。実際の臨床投与時に、経口若しくは非経口の種々の剤形で投与できるが、製剤化する場合は通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤或いは賦形剤を用いて調剤される。
【0040】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、及びカプセル剤などが含まれ、これら固形製剤は少なくとも1つ以上の賦形剤、例えばデンプン、炭酸カルシウム、ショ糖、或いは乳糖、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。更に、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も用いることができる。
【0041】
経口投与のための液相製剤には、懸濁剤、内服液剤、乳剤、シロップ剤などが含まれるが、この場合、単純希釈剤である水、流動パラフィンその他種々の賦形剤、例えば湿潤剤、甘味料、芳香剤、及び保存剤を含めることができる。
【0042】
また、本発明の薬学的組成物は非経口経路を介して、例えば皮下注射、静脈注射、或いは筋肉内注射によって投与することができる。非経口投与用剤形として製剤化するためには、前記生薬エキス又は生薬エキス混合物を安定剤又は緩衝剤と共に水にて混合して溶液
又は懸濁液に製造し、これを投与量単位のアンプルやバイアルとして製剤化する。
【0043】
本発明による生薬エキス又は生薬エキス混合物の投与量は、体内での活性成分の吸収度、不活性化率、排泄速度、患者の年齢、性別及び状態、治療すべき疾病の重症度に応じて適宜に選択されるが、一般的に一日で1回乃至3回に分けて投与できる。本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物を有効成分として含む場合、その有効用量は1日あたり500〜2,000mg/kgであり、望ましくは1日あたり500〜1,000mg/kgである。
【0044】
前記製剤の正確な投与量、投与経路及び投与回数は製剤の特性、投与対象の体重及び状態、そして使用しようとする特定の誘導体の特性によって容易に決められる。
本発明において、前記各生薬エキス又は生薬エキス混合物は実験用ラットを対象とした急性毒性検査の結果、経口投与時最小致死量(LD50)は少なくとも6g/kg以上で、全然毒性効果が認められないので、生体における安全性が極めて高いことが分かり、従って本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物は生体に対して安全に投与することができる。
【0045】
本発明による各生薬エキス又は生薬エキス混合物は、糖尿病性合併症の予防及び治療、老化の防止及び遅延のために単独で使用してもよいし、或いは手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法、及び/又は生物学的反応調節剤を用いる方法と併用することもできる。
【0046】
本発明による生薬エキス又は生薬エキス混合物は、糖尿病性合併症及び老化に起因する疾患の改善を目的として健康食品に添加されることができる。本発明による前記各生薬エキス又は生薬エキス混合物を食品添加物として用いる場合、生薬エキス又は生薬エキス混合物をそのまま食品に添加してもよいし、或いは他の食品や食品添加物と一緒に使用でき、通常の方法により適宜に使用されることができる。
【0047】
有効成分(生薬エキス)の混合量は使用目的(予防、健康増進、又は治療処置)によって好適に決められる。一般に、食品又は飲料の製造時、本発明による生薬エキス混合物は原料に対して15重量%以下、望ましくは10重量%以下の量で添加される。しかし、健康及び衛生を目的とするか、或いは健康管理を目的とする長期間の摂取の場合はその添加量は前記範囲以下であることができる。しかし、安全性の面ではなんら問題がないので、有効成分は前記範囲以上の量でも使用可能である。
【0048】
前記食品の種類には特に制限はない。前記物質を添加することができる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及び複合ビタミン剤などが挙げられ、しかも通常の意味での機能性食品をも全部含む。
【0049】
本発明による機能性食品は通常の飲料と同様に種々の甘味料または天然の糖質などを追加成分として含むことができる。前記天然の糖質はブドウ糖、果糖のような単糖類、麦芽糖、ショ糖のような二糖類、及びデキストリン、シクロデキストリンのような多糖類、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールのような糖アルコールを含む。甘味料としてはタウマチン、ステビアエキスのような天然甘味料や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味料などを使用することができる。一般に、前記天然糖質の割合は、本発明による組成物100ml当たり約0.01〜0.04g、望ましくは約0.02〜0.03gである。
【0050】
尚、本発明による組成物は、種々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド剤、pH調節剤、安定剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含むことができる。更に、本発明による組成物は、天然果汁ジュース、フルーツジュース飲料、及び野菜飲料の製造のための果肉を含むことができる。このような成分は単独で、若しくは組み合わせて使用することができる。一般に、かかる添加剤の割合は重要ではないが、本発明による組成物100重量部当たり0.01〜0.1重量部の範囲で選択される。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例及び実験例によって詳述する。但し、下記のような実施例は本発明の内容を例示するものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
実施例1:生薬エキスの製造
大戟を粉砕した後、100gを取って常温(20〜30℃)で80%のエタノール水溶液(エタノール:蒸留水=80:20)1リットルを加えて24時間抽出した。エタノール抽出液をろ紙にてろ過した後、同様な方法で5回繰り返して抽出した。全ての抽出液を集めて減圧下に濃縮した。
【0052】
一方、姜厚朴、炒葛根、及び甘草をそれぞれ100gずつ80%のエタノール水溶液1リットルを用いて抽出した後、ろ過して真空濃縮することで各々のエキスを得た。その結果、大戟エキス20g、姜厚朴エキス10g、炒葛根エキス20g、甘草エキス20gが得られた。
【0053】
実施例2:生薬エキス混合物の製造
前記実施例1で得られたエキスをそれぞれ10gずつ混合して生薬エキス混合物40gを得た。
【0054】
実施例3:生薬エキス混合物の他の製造
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草を粉砕した後、それぞれ100gずつを取って混合した後、常温(20〜30℃)にて80%のエタノール水溶液(エタノール:蒸留水=80:20)1リットルを加えて24時間抽出した。エタノール抽出液をろ紙にてろ過した後、同様な方法で5回繰り返して抽出した。全ての抽出液を集めて減圧下に濃縮した。
【0055】
実施例4:マグノロールの分離
厚朴2kgを80%エチルアルコール水溶液で常温にて24時間抽出した後、ろ過した。かかる過程を3回繰り返して得た全てのエキスを減圧下に濃縮、乾燥して暗褐色のエキス250g(歩留まり:12.5%)を得た。このエキスをノルマルヘキサン、酢酸エチル、ノルマルブタノールの順に系統分離した。
【0056】
前述のように分離された層の中で、マグノロールが分布しているノルマルヘキサン層を選択して標準的シリカゲル(340g)クロマトグラフィに供して前分画を得た。このときの移動相はノルマルヘキサン:酢酸エチル=1:0→6:であり、勾配溶離して前分画1から前分画6を生じた。前記前分画を標準マグノロールと比較して、前分画4が多くのマグノロールが存在する分画であることを確認した。この前分画4を再びノルマルシリカゲルクロマトグラフィに供してマグノロールを分離した(15mg)。これをNMR、質量分析、IRなどの機器分析の結果を総合分析することでマグノロールであることを確認した。
【0057】
実験例1:本発明による生薬エキス、生薬エキス混合物及びマグノロールの糖化最終産物の生成抑制効能の分析
本発明による生薬エキス、生薬エキス混合物及びマグノロールの糖化最終産物の生成抑
制効能を調べるために、下記のような実験を行った。
【0058】
(1)本発明による生薬エキス混合物の糖化最終産物の生成抑制効能
タンパク質源として、ウシ血清アルブミン(以下、BSAと称する;米国シグマ社製)を使用した。BSAを10mg/mlの濃度になるように50mMリン酸緩衝液(pH7.4)に加えて調製した。
【0059】
糖質源としては、0.1M果糖と0.1Mグルコースとの混合液を使用した。
前記のように調製されたBSA溶液に果糖とグルコースの混合液を加えて実験に使用した。
【0060】
前記実施例2で製造した生薬エキス混合物を15%トゥイーン80に溶解した後、これを前記BSAと糖の混合液に添加し、37℃で30日間インキュベートした。このとき、0.02%アジ化ナトリウムを抗菌剤として添加した。
【0061】
対照群はBSAと糖との混合液をインキュベートしたもので、試験群と対照群の空試験はそれぞれ調製した後インキュベーションを行わなかったものを用いた。
全ての試料は4つずつ準備して最大限誤差を減らし、インキュベーション直前に窒素ガス(純度:99.999%)を充填して汚染を防止した。30日後インキュベーション液から生成された糖化最終産物の含量を分析した。糖化最終産物は蛍光色、褐色を帯びており、架橋結合できる物理化学的特性を有するだけでなく、細胞膜レセプターが認知可能なリガンドを有している。かかる特性を有する糖化最終産物の量を分光光度計(励起:350nm、放出:450nm)にて測定してその生成抑制程度を分析した。
【0062】
前記糖化最終産物の生成抑制率は下記の式により計算した。
生成抑制率(%)=100−[(試験群の蛍光強度−試験群の空試験の蛍光強度)/(対照群の蛍光強度−対象群の空試験の蛍光強度)]×100
(2)大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の各生薬エキスの糖化最終産物の生成抑制効能
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の各生薬エキスを一定した濃度で15%トゥイーン80に溶解したものを用いて、90日間インキュベートすることを除いては、前記(1)と同様に実験を行った。
【0063】
(3)マグノロールの糖化最終産物の生成抑制効能
マグノロールを蒸留水に溶かして3.33μg/ml、6.66μg/ml、13.32μg/ml、26.6μg/mlの濃度に調製した後、前記(1)と同様に37℃で30日間インキュベートした。
【0064】
陽性対照群としては、アミノグアニジンを一定した濃度で蒸留水に溶解したものを用いて30日間及び90日間インキュベートすることを除いては、前記(1)と同様に実験を行った。その結果は図1乃至図8及び表1に示した。
【0065】
【表1】
前記表1に示したように、本発明による生薬エキス混合物は30日間インキュベートした場合、IC50が18.12μg/mlで極めて低く、これによって糖化最終産物の生成抑制効能が優れていることが分かる。
【0066】
これに対し、大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の各生薬エキスを90日間インキュベートしたとき、低いIC50を示し、糖化最終産物の生成抑制効能が優れていることが分かる。但し、30日間のインキュベーションでは、各生薬材を個別的に抽出した場合はその効能があまり優れておらず、長期間投与時にその効能が現われることが分かる。
【0067】
また、本発明による生薬エキス混合物は、陽性対照群であるアミノグアニジンよりもずっと低いIC50を示すことから、糖化最終産物の生成抑制効能が極めて優れていることが分かる。
【0068】
従って、本発明による各生薬エキスは糖化最終産物の生成抑制効能を有することが分かり、本発明による生薬エキス混合物は各生薬エキスより糖化最終産物の生成抑制効能が増強されたことが分かる。
【0069】
実験例2:本発明による生薬エキス混合物の糖尿病性合併症の治療効果
本発明による生薬エキス混合物の糖尿病性合併症の治療効果を調べるために、下記のような実験を行った。
【0070】
1.実験動物
SD系4週齢の120〜140gの雄ラットをケージに一匹ずつ収容し、通常の固形飼料及び水を自由に供給しながら1週間本研究院の動物室に適応させた。
【0071】
動物室の環境条件は、温度23±3℃、相対湿度50±10%、照明時間12時間(午前8時から午後8時)、換気回数10〜20回/時、照度150〜300ルクスに設定された。実験期間の間、動物室の温度及び湿度は恒温恒湿室によって自動的に調節し、照度などの環境条件を定期的に測定し、試験に影響を及ぼす変動はなかった。
【0072】
実験動物は1)正常群にカルボキシメチルセルロースを投与した群(NC+CMC)、2)糖尿病誘発群にカルボキシメチルセルロースを投与した群(DC+CMC)、3)糖尿病誘発群に生薬エキス混合物を投与した群(DC+HMP)、4)糖尿病誘発群に陽性対照(エパルレスタット(Epalrestat))を投与した群(DC+S11)の4つの群に分け、糖尿病誘発群には9〜10匹、正常群には5〜6匹ずつ分配し、体重がほぼ等しくなるように均等に分散した。
【0073】
2.ストレプトゾトシンによる糖尿病性合併症の誘発
ストレプトゾトシン(Streptozotocin;STZ(N−[methylnitrosocarbamyl]−D−glucosamine))はβ細胞を選択的に破壊してインスリン欠乏に因る高血糖を誘発させる化学物質であり、これを用いて糖尿病を誘発した。特に、高用量の単回投与方法(single high−dose streptozotocin;SHDS)はβ細胞の大量壊死により非可逆的な高血糖状態を誘発するので、糖尿病性合併症モデルに適していると認められる。
【0074】
実験動物を1週間本動物室に適応させた後、一日間絶食させ、投与直前に0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.5)に溶かしたストレプトゾトシン溶液を、体重1kg当たり60mgとして腹腔内注射した。ストレプトゾトシン溶液を投与して2日後に尾静脈から採血して血糖を調査した。血糖が300mg/ml以上のラットを糖尿病誘発ラットとした。
【0075】
陽性対照群は、糖尿病性合併症治療剤として用いられているエパルレスタット(ONO−2235;S11と表記する)を使用した。
3.一般的観察(体重、飼料及び水摂取量の変化)
慢性糖尿病性合併症の治療効果を調べるために、ラットに30日間糖尿病の状態を引き続き進行させた後、31日目から約8週間薬物を投与した。
【0076】
本実験に用いられた生薬エキス混合物(HMP)及びエパルレスタット(S11)は、非水溶性であるので、1%カルボキシメチルセルロースに溶かして使用し、正常群にはカルボキシメチルセルロースを投与してカルボキシメチルセルロースによる影響を排除した。
【0077】
正常群を除いた2つの糖尿誘発群には前記実施例3で作製した生薬エキス混合物(HMP)1g/kgと陽性対照群であるエパルレスタット(S11)25mg/kgをそれぞれ1%CMCに溶かしてゾンデを用いて毎日ラットに8週間経口投与した。
【0078】
投薬期間のあいだ試料を投与した後、剖検の一日前に実験動物を15時間以上絶食させ
た後体重を測定した。
体重は毎日測定し、飼料量は1週ごとに1回、水の摂取量は毎日測定した。
【0079】
その測定結果は下記の表2に示した。
【0080】
【表2】
表2に示したように、正常群の体重は252.83g程度増加し、糖尿病誘発群は66.17gしか増加しなかった。また、糖尿病誘発群に生薬エキス混合物(HMP)を投与した群は98.21g増加し、糖尿病誘発群に陽性対照であるエパルレスタット(S11)を投与した群は129.21g増加した。このように、本発明による生薬エキス混合物を投与した群は、エパルレスタット(S11)投与群よりも体重増加量が少なかったが、カルボキシメチルセルロースを投与された糖尿病誘発群よりは増加したことが分かる。
【0081】
尚、カルボキシメチルセルロースを投与された糖尿病誘発群は低体重にもかかわらず、正常群に比して約2倍の飼料を摂取し、陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群はそれよりもずっと多く摂取した。しかし、本発明による生薬エキス混合物投与群は、糖尿病誘発群に比べてやや少ない量を摂取し、糖尿病誘発群は正常群に比して約7倍程度の水を摂取した。
【0082】
また、本発明による生薬エキス混合物投与群は、糖尿病誘発群に比して約5分の1程度の水を摂取し、陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群は糖尿病誘発群よりも一層多くの水を摂取した。
【0083】
4.臓器重量の測定
剖検の一日前に実験動物を15時間以上絶食させた後体重を測定し、エチルエーテルで麻酔を行い、腹大動脈を介して採血した。血液の中の一部はヘパリンで処理し、一部の全血を3,000rpm、4℃で15分間遠心分離した。そして、各血液サンプルからそれぞれ血漿を分離して−80℃にて保管して各々のデータ分析に用いた。
【0084】
腎臓は還流洗浄を行った後、取り出して重量を測定し、皮質と髄質を分離して急冷させた後−80℃で保管した。そのほかに肝臓、肺、膵臓、脾臓、心臓を分離して重量を測定した。
【0085】
その測定結果は下記の表3に示した。
【0086】
【表3】
表3に示したように、相対的な臓器重量の場合、糖尿病誘発群は正常群に比べて膵臓を除いた全ての臓器が肥大しており、その中でも腎臓及び肝臓は2倍以上増加した。本発明による生薬エキス混合物投与群は、糖尿病誘発群に比して各臓器の肥大現象が減少する傾向を示したが、有意性がなく、陽性対照群であるエパルレスタット(S11)効能のような傾向を示した。
【0087】
5.血清における生化学的因子分析
(1)血糖降下効果
剖検する前まで2週間隔で眼窩静脈から血液を取ってグルコースキットを用いて血糖を測定した。血漿グルコースの含量はグルコースオキシダーゼ法を用いてUV 500nmで測定した。
【0088】
(2)腎臓機能改善効果
(a)BUN(Blood Urea Nitrogen)
BUNはウレアーゼ・インドフェノール法を用いて580nmで吸光度を測定することで測定した。
【0089】
(b)トリグリセリド
トリグリセリドの含量は酵素法(POD)を用いて550nmで吸光度を測定することで定量された。
【0090】
(c)総コレステロール量
総コレステロール含量は酵素法を用いて500nmで吸光度を測定することで測定した
。
【0091】
(d)クレアチニン
クレアチニンはJaffe変法を用いて515nmで吸光度を測定することで測定した。
【0092】
(e)タンパク質
血清中のタンパク質はBCAアッセイを用いて測定された。血清をビシンコニン酸、Na2CO3、NaHCO3、C4H4O6Na2・2H2Oを0.1N NaOHと混ぜて作製したビシンコニン酸溶液、および4%CuSO4・5H2O溶液と一緒に反応させた後、562nmで吸光度を測定した。
【0093】
その測定結果は下記の表4に示した。
【0094】
【表4】
表4に示したように、血糖は糖尿病誘発群が408.79±63.10mg/dlであり、本発明による生薬エキス混合物投与群は、271.22±72.28mg/dlであって、糖尿病誘発群に比べて血糖降下効果に優れている(p<0.01)。陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群は197.94±7.666mg/dlであった。
【0095】
また、腎臓機能指標であるBUN値は糖尿病誘発群の場合正常群に比して約2.4倍程度高く現われ、本発明による生薬エキス混合物投与群は糖尿病誘発群に比べて有意にその数値が低下した(p<0.05)。
【0096】
また、トリグリセリドは糖尿病誘発群の場合顕著に増加し(33.38±6.62mg/dl→70.20±13.14mg/dl;p<0.001)、本発明による生薬エキス混合物投与群の場合、糖尿病誘発群に比べて有意に減少した(50.35±16.63mg/dl;p<0.05)。
【0097】
また、クレアチニンレベルは糖尿病誘発群の場合、1.54±0.08mg/dlから1.69±0.24mg/dlに有意に増加し、本発明による生薬エキス混合物投与群の場合1.51±0.26mg/dlに低下した。クレアチニンもやはり腎機能の指標として用いられるが、BUNと同様に鋭敏な数値ではない。従って、糸球体ろ過率が50%以上減少されてもその数値は正常範囲にとどまる。かかる特性を考慮するとき、1.51±0.26mg/dlという数値は、腎機能が極めて良好になったことを意味する。前記表3に示すように、本発明による生薬エキス混合物の投与によって腎臓の肥大症状が糖尿病誘発群に比べて減少されたので、よって腎機能が改善されたことを確認することができる。
【0098】
従って、本発明による生薬エキス混合物投与群では腎臓肥大現象の低減のみならずBUN、トリグリセリド、クレアチニンレベルが糖尿病誘発群に比べて著しく低減されたので、腎機能が非常に好転したことがわかる。
【0099】
6.抗白内障効果
顕微鏡の下で、摘出した眼球から水晶体を分離して生理食塩水2mlずつ収めた24ウェルプレートに移した後、顕微鏡上に取り付けたデジタルカメラで写真を撮影した。水晶体の混濁程度は取った写真を画像分析システムプログラムを用いて分析した。
【0100】
水晶体をカメラで撮影して重さを測定した後、リン酸緩衝溶液(pH6.9)を加え、4℃で均質化した後、酵素活性測定のために均質液の一部を3,000rpmで20分間遠心分離して上澄み液を取って−80℃で保管した。ソルビトール含量の測定用には、残りの均質液にZnSO4およびNaOHを添加してタンパク質を除去し、3,000rpmで20分間遠心分離し、上澄み液を回収して−80℃で保管した。
【0101】
眼球を肉眼で観察した状態は図9に示し、水晶体をカメラで撮影した状態は図10に示し、水晶体の混濁程度は表5に示した。
【0102】
【表5】
図9及び図10に示したように、糖尿病を誘発した後6週目から糖尿病誘発群で白内障が生じ始めた。剖検当日、全ての群の眼球状態は、糖尿病誘発群の場合7匹のうち3匹の眼球が白く覆われ、1匹が極めて弱い症状を示した。陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群は7匹のうち4匹の眼球が両側とも白く覆われており、1匹は右側眼球に弱い症状を示した。陽性対照であるエパルレスタット(S11)投与群において、5匹も白内障効果が現われたことは、ストレプトゾトシン誘導を2回実施したラットが2匹もい
るからであると考えられる。一般に、ストレプトゾトシン誘導を2回実施する場合、体重増加程度が少なく、水晶体混濁度も重度となることが知られている。また、本発明による生薬エキス混合物投与群では7匹のうち3匹の両側眼球が白内障症状を示した。
【0103】
また、前記表5に示したように、平均の水晶体混濁率は正常群の場合8.31±5.21%であり、糖尿病誘発群の場合66.84±14.89で糖尿病誘発群の水晶体混濁率が重度であることが分かる。また、糖尿病誘発群に陽性対照であるエパルレスタット(S11)及び本発明による生薬エキス混合物をそれぞれ投与したときは、それぞれ37.38±13.56%(p<0.001)、37.20±20.25%(p<0.01)であり、有意に白内障現象が低減された。
【0104】
また、図11(ここで、数字1、2、3、・・・はラットの番号、L又はRはラットの左側、右側水晶体を意味する)に示したように、正常群の水晶体混濁率は20%以下であり、外観上も極めて清かった。20%程度の混濁率は正常状態とみなすことができる。糖尿病誘発群の水晶体混濁率はいずれも40%以上で、大部分が60%以上の水晶体混濁率を示した。80%以上の混濁率を示したラットも3匹存在した。しかし、本発明による生薬エキス混合物を投与した群の水晶体混濁率は大部分が40%内外であり、その中で正常値水準を示したものもあり、60%を超えたラットは2匹であった。
【0105】
従って、本発明による生薬エキス混合物は慢性糖尿病による白内障症状の予防及び治療に効果的に使用することができる。
実験例3:ラットに対する経口投与急性毒性実験
本発明による生薬エキス混合物の急性毒性を調べるために下記のような実験を遂行した。
【0106】
実験動物として6週齢の特定病原体未感染(SPF)SD系ラットを用いて急性毒性実験を行った。群当たり2匹ずつの動物に前記実施例において作製した生薬エキス混合物を水に懸濁して6g/kg/15mlの用量で単回経口投与した。試験物質投与後、動物の斃死の有無、臨床症状及び体重変化などを観察し、血液学的検査及び血液生化学的検査を実施し、剖検して肉眼で腹腔臓器及び胸腔臓器の異常如何を観察した。
【0107】
試験の結果、試験物質を投与した全ての動物で特記すべき臨床症状や死亡例はなく、また体重測定、血液検査、血液生化学検査、剖検所見などでも毒性変化は観察されなかった。
【0108】
以上、本発明による生薬エキス混合物はラットにおいて6g/kgまで毒性変化を示すことなく、経口投与最小致死量(LD50)は少なくとも6g/kg以上である安全な物質と実証された。
【0109】
製剤例1:錠剤の製造
前記実施例1乃至実施例3によって製造された生薬エキス100.0mg、トウモロコシデンプン90.0mg、乳糖175.0mg、L−ヒドロキシプロピルセルロース15.0mg、ポリビニルピロリドン905.0mg及びエタノール適量の原料を均質に混合して湿式造粒法で顆粒化し、ステアリン酸マグネシウム1.8mgを加えて混合した後1錠が400mgになるように打錠した。
【0110】
製剤例2:カプセル剤の製造
前記実施例1乃至実施例3によって製造された生薬エキス100.0mg、トウモロコシデンプン80.0mg、乳糖175.0mg、及びステアリン酸マグネシウム1.8mgを均一に混合して1カプセルに360mgずつ充填した。
【0111】
製剤例3:機能性飲料の製造
蜜 522mg
チオクト酸アミド 5mg
ニコチン酸アミド 10mg
塩酸リボフラビンナトリウム 3mg
塩酸ピリドキシン 2mg
イノシトール 30mg
オロチン酸 50mg
本発明の生薬エキス 500mg
水 200mg
前記組成及び含量にして通常の方法を用いて飲料を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0112】
前述のように、本発明による各生薬エキス、生薬エキス混合物、又はマグノロールは陽性対照群であるアミノグアニジンに比べて遥かに低い低濃度で糖尿病性合併症の誘発要因の一つである糖化最終産物の生成を抑制する。特に生薬エキス混合物は血糖降下効果に優れており、体重低下防止、腎臓肥大現象低下、及びBUN、トリグリセリド、クレアチニンなどの数値を有意に低減して腎臓機能の悪化を抑制し、水晶体混濁率を顕著に減少させる。従って、糖化最終産物の生成に起因する糖尿合併症、つまり糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害などの予防及び治療のための薬学的組成物及び機能性食品に応用できる。
【0113】
更に、糖化最終産物の生成を抑制する結果として、酸化的ストレスの誘発比率が減少するので、本発明による生薬エキスを酸化的ストレスによる老化の防止及び遅延用薬学的組成物及び機能性食品に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明による生薬エキス混合物における糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図2】本発明による大戟エキスにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図3】本発明による姜厚朴エキスにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図4】本発明による炒葛根エキスにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図5】本発明による甘草エキスにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図6】本発明によるマグノロールにおける糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図7】アミノグアニジン(30日間インキュベーション)の糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図8】アミノグアニジン(90日間インキュベーション)の糖化最終産物の生成抑制効能を示すグラフ。
【図9】本発明の実験例による実験用ラットの眼球を示す写真。
【図10】本発明の実験例による実験用ラットの水晶体を示す写真。
【図11】本発明の実験例による実験用ラットの水晶体の混濁度を示す写真。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の中で選択されるいずれか一つを粉砕し乾燥して、アルコール又はアルコール水溶液で抽出した後、その抽出液をろ過し減圧濃縮して得られるエキスを含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物。
【請求項2】
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草のエキスをそれぞれ5〜85重量%含んでなる混合物を含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物。
【請求項3】
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草を粉砕し乾燥して、それぞれ5〜85重量%で混合し、アルコール又はアルコール水溶液で抽出した後、その抽出液をろ過し減圧濃縮して得られる生薬エキス混合物を含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用機能性食品。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする老化の防止及び遅延用薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする老化の防止及び遅延用機能性食品。
【請求項8】
厚朴から分離されるマグノロール又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用組成物。
【請求項9】
前記マグノロールは、厚朴を80%エタノール水溶液で常温にて24時間抽出し、前記抽出物をノルマルヘキサン、酢酸エチル、ノルマルブタノールの順に系統分離した後、ノルマルヘキサン層を選択して標準的なシリカゲルクロマトグラフィによって前分画に分離し、前記前分画をTLC上の標準マグノロールと比較して多くのマグノロールが存在する分画を確認した後、標準的なシリカゲルクロマトグラフィによってマグノロールを分離して得られることを特徴とする請求項8に記載の糖尿病性合併症の予防又は治療用組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項11】
請求項8に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用機能性食品。
【請求項12】
請求項8に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする老化の防止及び遅延用薬学的組成物。
【請求項13】
請求項8に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする老化の防止及び遅延用機能性食品。
【請求項1】
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草の中で選択されるいずれか一つを粉砕し乾燥して、アルコール又はアルコール水溶液で抽出した後、その抽出液をろ過し減圧濃縮して得られるエキスを含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物。
【請求項2】
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草のエキスをそれぞれ5〜85重量%含んでなる混合物を含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物。
【請求項3】
大戟、姜厚朴、炒葛根、及び甘草を粉砕し乾燥して、それぞれ5〜85重量%で混合し、アルコール又はアルコール水溶液で抽出した後、その抽出液をろ過し減圧濃縮して得られる生薬エキス混合物を含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防及び治療用組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用機能性食品。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする老化の防止及び遅延用薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする老化の防止及び遅延用機能性食品。
【請求項8】
厚朴から分離されるマグノロール又はその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用組成物。
【請求項9】
前記マグノロールは、厚朴を80%エタノール水溶液で常温にて24時間抽出し、前記抽出物をノルマルヘキサン、酢酸エチル、ノルマルブタノールの順に系統分離した後、ノルマルヘキサン層を選択して標準的なシリカゲルクロマトグラフィによって前分画に分離し、前記前分画をTLC上の標準マグノロールと比較して多くのマグノロールが存在する分画を確認した後、標準的なシリカゲルクロマトグラフィによってマグノロールを分離して得られることを特徴とする請求項8に記載の糖尿病性合併症の予防又は治療用組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項11】
請求項8に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする糖尿病性合併症の予防又は治療用機能性食品。
【請求項12】
請求項8に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする老化の防止及び遅延用薬学的組成物。
【請求項13】
請求項8に記載の組成物を有効成分として含むことを特徴とする老化の防止及び遅延用機能性食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2007−520548(P2007−520548A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552038(P2006−552038)
【出願日】平成16年12月31日(2004.12.31)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003554
【国際公開番号】WO2005/074963
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(505243386)コレア インスティテュート オブ オリエンタル メディスン (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月31日(2004.12.31)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003554
【国際公開番号】WO2005/074963
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(505243386)コレア インスティテュート オブ オリエンタル メディスン (2)
【Fターム(参考)】
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