説明

糞尿処理システム

【課題】排泄された糞尿を分解・浄化し、液状部分と固形分に分離し、液状部分は脱臭・脱色して水洗水として活用し、固形分は完全分解して堆肥として活用できる糞尿処理システムを提供する。
【解決手段】圧送式水洗便器11と、糞尿貯槽13と、吸着材22を内設した曝気槽群14と、沈殿槽23と、脱臭・脱色槽24とからなり、上記沈殿槽23の沈殿物を分解する微生物分解槽29を付設した糞尿処理システム10において、糞尿を便器11が使用される毎に曝気槽14aに送り出し、前段の曝気槽14a,14bの底面をV字状にし散気ノズル20a,20bを設置して汚水を循環させてスカムを微細化し、曝気槽14a,14bの内部にセパレータ15を設ける。なお、吸着材はポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ビニロンの一種以上の細糸をマット状、またはループ状に絡みつけたものを採用して曝気槽内で好気性菌、嫌気性菌の活性を促し分解・浄化能力を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排泄された糞尿を分解・浄化し、その後に固形分と液状部分とに分離し、固形分はさらに微生物分解菌により分解し堆肥化し、液状部分は脱臭・脱色して水洗便所の水洗水として循環利用できるようにした糞尿処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
糞尿処理システムとして、曝気槽に吸着材を配置し、この吸着材に微細スカムを吸着させて好気性分解菌や嫌気性分解菌を増殖させて分解する方式と、大鋸屑や椰子ガラ繊維などの微生物増殖床に土中に生息している微生物を着床・増殖しながら分解する方式がある。前者は、一般的に大容量の糞尿処理に採用されており、この処理システムにおいて、曝気槽の表面に現れるスカムは掻き集めて別途手段で処理するか、後段の曝気槽で現れたスカムを前段の曝気槽に戻して再度処理する必要があった。
【0003】
従って、曝気方式では浄化した後の液状部分は、下水道に放流し、再利用するという考え方は存在しなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように浄化後の液状部分を放流することは、緩慢な環境汚染に繋がり好ましくなく、また、水資源の節約の観点から好ましくない。
【0005】
上記状況に鑑みこの発明は、排泄された糞尿を先ず曝気槽で分解・浄化し、これを液状部分と固形部に分離し、液状部分は脱臭・脱色して水洗水として循環利用し、固形分はさらに微生物分解槽で完全分解して堆肥として活用することができる糞尿処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためにこの発明は、排泄された糞尿を圧送する便器と、圧送された糞尿を一時受け入れる糞尿貯槽と、内部に吸着材を配設した曝気槽群と、沈殿槽と、この沈殿槽の上澄みを移入して脱臭・脱色する脱臭・脱色槽と、処理水を貯水する貯水槽とを連設してなる糞尿処理システムにおいて、上記糞尿貯槽に一時受け入れられた糞尿は、便器が使用される毎に曝気槽に送り出されるものであり、上記曝気槽内に、汚水の上下が連通するように隔壁を設け、該隔壁によって区画された片方の区画域の下方に散気ノズルを配設して汚水を循環させ、上記沈殿槽に、沈殿槽中の沈殿物を移入して分解する微生物分解装置を付設したもので、上記曝気槽群の少なくとも一つの底面をV形にし、そのV底ライン上方に上記隔壁を設け、上記V底の片方に散気ノズルを配設するか、上記曝気槽群の少なくとも一つの内部に筒形の上記隔壁を設け、この筒形隔壁内底部に散気ノズルを配設するようにしたものである。
【0007】
なお、上記吸着材を、芯紐を中心に、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ビニロンの一種以上の細糸をループ状に絡みつけたものを採用することにより曝気槽内での好気性菌、嫌気性菌の活性を促し糞尿の分解・浄化能力を向上するものである。
【発明の効果】
【0008】
上記の如く構成するこの発明によれば、曝気槽内での糞尿の分解・浄化を促進し、液状部分と固形部に分離して液状部分は、脱臭・脱色して水洗水として循環利用し、固形分は微生物分解槽で完全分解して堆肥として活用することができる。また、曝気槽群内で糞尿が充分に分解・浄化されるので、最終段階の曝気槽にスカムやスラッジが堆積しないのでバキューム車を雇って別途処理することや初段階の曝気槽に堆積したスカムやスラッジを送り返す装置を設ける必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次にこの発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1の糞尿処理システムの系統図で、圧送式水洗便器11に配管12を介し糞尿貯槽13を接続し、糞尿貯槽13に設けたポンプPにより圧送式水洗便器11が使用される毎に蓄留された糞尿は曝気槽14aに送り込まれる。
【0011】
曝気槽群14は、第1、第2、第3の曝気槽14a,14b,14cからなり、第1と第2の曝気槽14a,14bの底は断面V字状をなし、V字状底面の片方に散気ノズル20a,20bを配設し、V字底の谷線の上方にセパレータ15を垂直に配設し、その上部と下部では汚水が連通し、第1と第2曝気槽14a,14b間の隔壁16aの上寄り(スカム層の下)に連通口17aを開口させ、第1曝気槽14aのスカムを除いた糞尿の混濁液が第2曝気槽14bに流入するようになっている。
【0012】
第2曝気槽14bと第3曝気槽14c間の隔壁16bには第2曝気槽14bの上澄みを第3曝気槽14cに流入させる連通口17bが開口し、この連通口17bに誘導管18を接続し、この誘導管18の終端を第3曝気槽14cの底面近くで開口させている。
【0013】
上記第1乃至第3曝気槽14a,14b,14cには、それぞれ調整ダンパーを付設した空気吹き込み管19a,19b,19cを配管し、その先に散気ノズル20a,20b,20cを取付け、各空気吹き込み管19a,19b,19cは主管19に纏めてブロワー21に接続し、ブロワー21から供給される空気が散気ノズル20a,20b,20cから噴出して糞尿の混濁液を曝気し、かつ、第1、第2曝気槽14a,14bで混濁液が循環する。
【0014】
第3曝気槽14c内には、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ビニロンの一種以上の細糸を絡ませたマット状吸着材22がジグザグ状に配設され、吸着材の表面には好気性菌が内部には嫌気性菌が生息して糞尿を分解・浄化する。なお、第1、第2曝気槽にも吸着材22を配設することができ、ここで採用される吸着材として、芯紐にポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ビニロンの一種以上の細糸をループ状に絡みつけたもの(例えば、ティービーアール(株)製、商品名:バイオコード)を挙げることができる。
【0015】
第3曝気槽14cからオーバフローした処理液は、沈殿槽23に移り固形分は沈殿し、上澄みは活性炭素を投入した脱臭・脱色槽24に流入し、その底から貯水槽25に繋がり浄化された水が貯水され、循環パイプ26により水洗便器11に循環される。
【0016】
沈殿槽23で沈降した固形分は、ポンプ27によりパイプライン28を経て微生物分解槽29に送り出されて分解され堆肥化される。
【0017】
微生物分解槽は、大鋸屑や椰子ガラ繊維を増殖床とする分解槽で土中に生息する分解菌を増殖したものが市販されており、これを着床し、上記増殖床を適度に攪拌して上記固形分を分解するものである。また、上記固形分が少ないときは、上記増殖床内で分解菌を自家増殖させて分解することもできる。
【0018】
なお、上記実施例では曝気槽を三基設けたが、糞尿の処理量により当然、増減させることとなる。また、曝気槽における散気ノズルからの散気量は、汚水が曝気槽内で踊らず、吸着材に吸着されたスカムが剥離せず、静かに循環する程度にする必要があり、その量は実験的に決定される。
【実施例2】
【0019】
図2は実施例2の糞尿処理システムの系統図で、圧送式水洗便器11に配管12を介し糞尿貯槽13を接続し、糞尿貯槽13に設けたポンプPにより圧送式水洗便器11が使用される毎に蓄留された糞尿は第1曝気槽14aに送り込まれる。
【0020】
第1、第2曝気槽14a,14b内には円筒形の筒状セパレータ15a,15bが垂設されて、その上は汚水内に没し、下端は空間を持って汚水が流通できるようになり、上記円筒形の筒状セパレータ15a,15bの下部には散気ノズル20a,20bを配設し、筒状セパレータ15a,15bの外周りの区画域には、芯紐にポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ビニロンの一種以上の細糸をループ状に絡みつけた吸着材22(例えば、ティービーアール(株)製、商品名:バイオコード)が垂設されている。
【0021】
上記第1、2曝気槽14a,14bには、それぞれ図示しない調整ダンパーを付設した空気吹き込み管19a,19bを配管し、その先に散気ノズル20a,20bを取付け、各空気吹き込み管19a,19bは主管19に纏めてブロワー21に接続し、ブロワー21から供給される空気が散気ノズル20a,20bから噴出して円筒形の筒状セパレータ15a,15bの内側から外側の区画域に向けて循環し、この間にスカムは微細化され、吸着材に吸着され、その表面部分には好気性分解菌が着床・生息し、内部には嫌気性分解菌が着床・生息して汚水が分解される。
【0022】
第2曝気槽14bからオーバフローした処理液は、沈殿槽23に移り固形分は沈殿し、上澄みは活性炭素を投入した脱臭・脱色槽24に流入し、その底から貯水槽25に繋がり浄化された水が貯水され、循環パイプ26により水洗便器11に循環される。
【0023】
沈殿槽23で沈降した固形分は、ポンプ27によりパイプライン28を経て微生物分解槽29に送り出されて分解され堆肥化される。
【0024】
微生物分解槽は、大鋸屑や椰子ガラ繊維を増殖床とする分解槽で土中に生息する分解菌を増殖したものが市販されており、これを着床し、上記増殖床を適度に攪拌して上記固形分を分解するものである。また、上記固形分が少ないときは、上記増殖床内で分解菌を自家増殖させて分解することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明したようにこの発明によれば、排泄された糞尿を曝気槽内で循環しながら微細化したスカムは吸着材に吸着され、吸着材に吸着されたスカムの表面部分では好気性分解菌によって、吸着されたスカムの内部では嫌気性分解菌によって分解・浄化されて沈殿槽に移り、液状部分は、脱臭・脱色して水洗水として循環利用し、沈殿した固形分は微生物分解槽で完全分解して堆肥として活用することができる。また、後段の曝気槽で汚泥が堆積しないので、バキューム車を雇って別途処理することや初段階の曝気槽に堆積した汚泥を送り返す装置を設ける必要もなく、小型となって経済性と環境保全効果を発揮し、産業上の利用価値が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1の糞尿処理システムの系統図
【図2】実施例2の糞尿処理システムの系統図
【符号の説明】
【0027】
10 糞尿処理システム
11 水洗便器
12 配管
13 糞尿貯槽
14 曝気槽群
14a 第1曝気槽
14b 第2曝気槽
14c 第3曝気槽
15 セパレータ
15a,15b 筒状セパレータ
16a,16b 隔壁
17a,17b 連通口
18 誘導管
19 主管
19a,19b,19c 空気吹き込み管
20a,20b,20c 散気ノズル
21 ブロワー
22 吸着材
23 沈殿槽
24 脱臭・脱色槽
25 貯水槽
26 循環パイプ
27,P ポンプ
28 パイプライン
29 微生物分解槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄された糞尿を圧送する便器と、圧送された糞尿を一時受け入れる糞尿貯槽と、内部に吸着材を配設した曝気槽群と、沈殿槽と、この沈殿槽の上澄みを移入して脱臭・脱色する脱臭・脱色槽と、処理水を貯水する貯水槽とを連設してなる糞尿処理システムにおいて、上記糞尿貯槽に一時受け入れられた糞尿は、便器が使用される毎に曝気槽に送り出されるものであり、上記曝気槽内に、汚水の上下が連通するように隔壁を設け、該隔壁によって区画された片方の区画域の下方に散気ノズルを配設して汚水を循環させ、上記沈殿槽に、沈殿槽中の沈殿物を移入して分解する微生物分解装置を付設したことを特徴とする糞尿処理システム。
【請求項2】
上記曝気槽群の少なくとも一つの底面をV形にし、そのV底ライン上方に上記隔壁を設け、上記V底の片方に散気ノズルを配設したことを特徴とする請求項1に記載の糞尿処理システム。
【請求項3】
上記曝気槽群の少なくとも一つの内部に筒形の上記隔壁を設け、この筒形隔壁内底部に散気ノズルを配設したことを特徴とする請求項1に記載の糞尿処理システム。
【請求項4】
上記吸着材は、芯紐を中心に、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ビニロンの一種以上の細糸をループ状に絡みつけたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の糞尿処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−205042(P2006−205042A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19813(P2005−19813)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(500095148)水光金属株式会社 (1)
【Fターム(参考)】