説明

糸巻取機、及び紡績糸の製造方法

【課題】駆動部及びエア供給部の設定変更の作業性を向上させた糸巻取機を提供する。
【解決手段】精紡機は、機台本体と、複数の紡績ユニットと、ドラフト駆動部31と、エア供給部34と、ドライブエンドボックス3と、を備えている。紡績ユニットは、駆動されるボトムローラを有するとともに、機台本体の長手方向に沿って並設される。ドラフト駆動部31は、複数の紡績ユニットがそれぞれ備える前記ボトムローラのうち、フロントボトムローラとミドルボトムローラを共通で駆動する。エア供給部34は、複数の紡績ユニットにエアを供給する。ドライブエンドボックス3は、紡績ユニットの並設方向の一端において、ドラフト駆動部31とエア供給部34とを格納する。ドライブエンドボックス3は、上部にドラフト駆動部31を格納し、下部にエア供給部34を格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として糸巻取機に関する。詳細には、糸巻取機における駆動部とエア供給部のレイアウトに関する。
【背景技術】
【0002】
糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取機が知られている。この種の糸巻取機としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載された紡績機がある。特許文献1及び特許文献2が開示しているように、この種の紡績機は、糸を巻き取るための多数の紡績ユニットを機台本体に並べて備えている。
【0003】
上記紡績ユニットは、糸を巻き取るために駆動される様々な被駆動部材(例えばドラフトローラなど)を備えている。紡績ユニットが備える被駆動部材のうち、少なくとも一部は、全ての紡績ユニットで共通の駆動部によって駆動される。全紡績ユニットの被駆動部材を共通の駆動部によって駆動することにより、全ての紡績ユニットで一斉に糸の巻取りを行うことができる。この共通の駆動部は、機台本体の側方に設けられた原動ボックスに収容されている。
【0004】
また、紡績機においては、各部に空気流を発生させ、当該空気流を糸に作用させることで様々な機能を実現するように構成されている。例えば、圧縮空気を噴出することにより旋回気流を発生させ、当該旋回気流によって糸に撚りを加えることができる。また、圧縮空気を噴出することにより、糸屑を吹き飛ばすことができる。また例えば、負圧により吸引流を発生させ、糸を吸引捕捉したり、糸屑を吸引除去したりすることができる。紡績機は、各部に圧縮空気(エア)を供給するエア供給部と、各部に負圧を供給する負圧源と、を備えている。これらエア供給部と負圧源は、機台側方に設けられたブロアボックスにまとめて収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−77576号公報
【特許文献2】特開平8−246275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の被駆動部材(ドラフトローラなど)の駆動速度や、各部に供給する圧縮空気の空気圧などは、糸の巻取条件によって最適値が異なる。従って、糸の巻取条件を変更する場合、これに応じて、駆動部とエア供給部の設定を変更する必要がある。この点、特許文献1に記載の紡績機では、駆動部を収容した原動ボックス(原動機ボックス)と、エア供給部を収容したブロアボックスは、機台本体の両端に配置されている。従って、この紡績機のオペレータは、上記設定変更の作業を行うために、原動ボックスとブロアボックスの間を往復しなければならず、オペレータにとって負担が大きい。
【0007】
一方、特許文献2は、原動ボックスとブロアボックスを機台本体の一端に集中的に配置した構成の紡績機を開示している。この場合は、設定変更の作業の際に、オペレータが機台本体の両端を往復する必要が無い。しかし、特許文献2の構成は、原動ボックスとブロアボックスを機台本体の一端側に集中的に配置したというだけであって、設定変更の作業性を考慮したものではない。また、特許文献2には、駆動部とエア供給部の具体的な配置については何ら記載されていない。
【0008】
以上のように、従来の糸巻取機においては、駆動部及びエア供給部の配置が整理されていなかった。このため、駆動部及びエア供給部の設定変更の作業を行いにくかった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、駆動部及びエア供給部の設定変更の作業性を向上させた糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、機台本体と、複数の糸巻取ユニットと、駆動部と、エア供給部と、格納部と、を備える。前記糸巻取ユニットは、駆動される被駆動部材を有するとともに、前記機台本体の長手方向に沿って並設される。前記駆動部は、前記複数の糸巻取ユニットがそれぞれ備える前記被駆動部材の少なくとも一部を共通で駆動する。前記エア供給部は、前記複数の糸巻取ユニットにエアを供給する。前記格納部は、前記糸巻取ユニットの並設方向の一端において、前記駆動部と前記エア供給部とを格納する。前記格納部は、前記駆動部と前記エア供給部を、上下方向で異なる領域に格納する。
【0012】
このように、駆動部とエア供給部を1つの格納部に収容することで、駆動部とエア供給部に同時にアクセスすることが可能となり、設定変更の作業をスムーズに行うことができる。しかも、駆動部とエア供給部を格納部の上下に分けて配置することにより、駆動部及びエア供給部が混在することなく、駆動部及びエア供給部に対して前後方向又は左右方向からアクセスし易い整理された配置となる。従って、駆動部及びエア供給部の設定変更の作業性が向上する。
【0013】
上記の糸巻取機において、前記格納部は、上部に前記駆動部を格納し、下部に前記エア供給部を格納することが好ましい。
【0014】
これにより、格納部において、駆動部とエア供給部を整理して配置することができる。
【0015】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記糸巻取ユニットの並設方向に沿った方向を左右方向、前記左右方向及び上下方向に直交する方向を前後方向とし、前記前後方向において前記機台本体から見て前記糸巻取ユニットが巻き取る糸が走行している側を正面側、反対側を背面側としたときに、前記格納部は、前記駆動部に対して、前記左右方向の端面側及び背面側の少なくとも何れか一方と、正面側と、からアクセス可能なフレームとして構成されている。
【0016】
これにより、駆動部へ簡単にアクセスすることができるので、駆動部の設定変更、メンテナンスなどを簡単に行うことができる。
【0017】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記格納部の前記正面側には、前記複数の糸巻取ユニットを共通して操作可能な操作部が配置される。前記操作部は、前記格納部に対して開閉可能に取り付けられている。
【0018】
このように、操作部を正面側に配置しているので、当該操作部の操作を行い易くなっている。しかも、操作部を開くことで、格納部の内部に正面側からアクセスできる。従って、格納部内に格納されている駆動部等の、設定変更作業やメンテナンス作業も行い易い。
【0019】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記複数の糸巻取ユニットのそれぞれは、繊維束をドラフトするためのドラフト装置を備える。前記被駆動部材は、前記ドラフト装置が有するドラフトローラである。前記駆動部は、複数の前記糸巻取ユニットの前記ドラフトローラを共通して駆動する駆動軸と、前記ドラフトローラの駆動源であるモータと、前記モータと前記駆動軸との間で駆動を伝達するプーリと、を備える。前記格納部は、前記駆動を伝達するプーリを、少なくとも高速用プーリと低速用プーリで変更可能なスペースを有する。
【0020】
即ち、プーリを交換することで、ドラフトローラの回転速度を変更することができる。また、上記のように格納部にスペースを形成することにより、プーリの交換作業を簡単に行うことができる。
【0021】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記ドラフト装置は、前記繊維束の走行方向で下流側から順に、フロントローラ対と、ミドルローラ対と、バックローラ対と、を少なくとも有する。前記フロントローラ対は、駆動されるフロントボトムローラと、これに接触して従動回転するフロントトップローラからなる。前記ミドルローラ対は、駆動されるミドルボトムローラと、これに接触して従動回転するミドルトップローラからなる。前記駆動部は、複数の前記糸巻取ユニットの前記フロントボトムローラを共通して駆動する第1駆動軸と、複数の前記糸巻取ユニットの前記ミドルボトムローラを共通して駆動する第2駆動軸と、前記フロントボトムローラの駆動源である第1モータと、前記ミドルボトムローラの駆動源である第2モータと、前記第1モータと前記第1駆動軸との間で駆動を伝達する複数のプーリと、前記第2モータと前記第2駆動軸との間で駆動を伝達する複数のプーリと、備える。
【0022】
これにより、フロントローラ対とミドルローラ対を複数の糸巻取ユニットで共通して駆動することができる。そして、上記プーリを変更することにより、フロントローラ対とミドルローラ対の回転速度を変更することができる。
【0023】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記駆動部は、複数の前記糸巻取ユニットの前記ドラフトローラを共通して駆動する駆動軸と、前記ドラフトローラの駆動源であるモータと、前記モータと前記駆動軸との間で駆動を伝達する複数のプーリと、前記複数のプーリの間で駆動力を伝達する伝動ベルトと、を備える。前記複数のプーリのうち少なくとも1つは、高速用プーリと低速用プーリとを並設した多段プーリである。前記格納部は、前記多段プーリに掛けられた前記伝動ベルトを交換可能なスペースを有する。
【0024】
この構成によれば、プーリを取り外すことなく、伝動ベルトの交換のみでドラフトローラの回転速度を変更することができる。
【0025】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記複数の糸巻取ユニットのそれぞれは、前記ドラフト装置でドラフトされた前記繊維束を空気流によって紡績する空気紡績装置を有する紡績部を備える。前記紡績部は、異なる種類の前記空気紡績装置を保持可能である。
【0026】
本発明の糸巻取機は、駆動部及びエア供給部の設定変更の作業性が良好であるという特徴があるので、空気紡績装置の種類を変更した場合に、当該空気紡績装置の種類に応じた適切な設定に変更することが容易である。
【0027】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記紡績部が保持可能な空気紡績装置は、第1空気紡績装置と、第2空気紡績装置と、の少なくとも2種類である。前記第1空気紡績装置は、前記繊維束を受け取り紡績室に案内する繊維案内部と、前記紡績室に旋回空気流を発生させるノズルが形成されたノズルブロックと、前記紡績室で空気流に撚られた前記繊維束が通過する中空ガイド軸体と、を備える。第2空気紡績装置は、前記繊維束に第1方向の旋回空気流を作用させる第1ノズルが形成された第1ノズルブロックと、前記繊維束に前記第1方向とは反対の第2方向の旋回空気流を作用させる第2ノズルが形成された第2ノズルブロックと、を備える。前記紡績部が前記第1空気紡績装置によって紡績を行う場合、前記駆動部は前記高速用プーリによって前記ドラフトローラを駆動する。前記紡績部が前記第2空気紡績装置によって紡績を行う場合、前記駆動部は前記低速用プーリによって前記ドラフトローラを駆動する。
【0028】
即ち、本発明の糸巻取機の駆動部は、低速用プーリと高速用プーリを容易に変更することができるので、空気紡績装置の種類に応じた適切なプーリへの変更を簡単に行うことができる。
【0029】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記駆動部の少なくとも一部が取り付けられる、鋳物の一体型ベース体を更に備える。前記ベース体は、前記格納部の構造体として機能するように設けられている。
【0030】
このようにベース体が格納部の構造体を兼ねることにより、当該格納部の剛性を高めることができる。
【0031】
上記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記複数の糸巻取ユニットの並設方向に沿って走行可能に設けられ、前記複数の巻取ユニットに対して作業を行う作業台車を更に備える。前記機台本体には、前記背面側から前記作業台車を着脱可能とする開放部が設けられている。
【0032】
このように、作業台車を機台本体から着脱可能とすることにより、当該作業台車のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0033】
本発明の別の観点によれば、上記の糸巻取機による紡績糸の製造方法が以下のとおり提供される。即ち、この紡績糸の製造方法において、前記紡績部の空気紡績装置を前記第1空気紡績装置に変更した場合には、前記ドラフトローラを駆動する前記プーリを前記高速用プーリに変更する。前記紡績部の空気紡績装置を前記第2空気紡績装置に変更した場合には、前記ドラフトローラを駆動する前記プーリを前記低速用プーリに変更する。
【0034】
即ち、空気紡績装置の種類に応じた適切なプーリへの変更を行うことができるので、異なる空気紡績装置により紡績糸を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示す正面図。
【図2】精紡機の平面図。
【図3】精紡機の側面断面図。
【図4】ドライブエンドボックスの外観斜視図。
【図5】ドライブエンドボックスの内部の様子を示す斜視図。
【図6】第1空気紡績装置の断面図。
【図7】第2空気紡績装置の断面図。
【図8】フレームの上部を拡大した斜視図。
【図9】ドラフト駆動部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の一実施形態に係る糸巻取機としての精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、精紡機1は、機台本体2と、ドライブエンドボックス(格納部)3と、ボビンストッカ4と、ブロアボックス5と、を備えている。
【0037】
機台本体2には、その長手方向に沿って、複数の紡績ユニット(糸巻取ユニット)6が並設して設けられている。図3に示すように、各紡績ユニット6は、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置10と、紡績部11と、糸貯留装置12と、巻取部13と、を主要な構成として備えている。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での繊維束14及び紡績糸15の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。各紡績ユニット6は、ドラフト装置10から送られてくる繊維束14を紡績部11で紡績して紡績糸15を生成し、この紡績糸15を巻取部13で巻取ボビン16に巻き取る。なお、このように紡績糸15が巻き取られた巻取ボビン16を、パッケージ17と称する。
【0038】
なお、以下の説明で、紡績ユニット6が並設されている方向(図1及び図2に「右」と「左」の矢印で示す方向)を、単に「左右方向」と呼ぶことがある。また、左右方向及び上下方向(鉛直方向)に直交する方向(図1及び図3に「前」と「後」の矢印で示す方向)を、単に「前後方向」と呼ぶことがある。図3に示すように、左右方向で見たときに、紡績ユニット6で生成される紡績糸15は、機台本体2の前後方向の一側を走行する。そこで、前後方向で、機台本体2から見たときに紡績糸15が走行する側(図3の右側)を正面側、反対側を背面側と呼ぶことがある。
【0039】
ドライブエンドボックス3は、機台本体2の左右方向の一側の端部に配置されている。ドライブエンドボックス3内には、図5に示すように、複数の紡績ユニット6の共通の駆動源であるドラフト駆動部(駆動部)31及びトラバース駆動部32が配置されている。
【0040】
ドライブエンドボックス3には、図略の圧空源から圧縮空気供給パイプ33を介して圧縮空気が供給されている。ドライブエンドボックス3内には、図5に示すように、前記圧縮空気(エア)を適切に調整して精紡機1の各部へと供給するエア供給部34が配置されている。このエア供給部34は、圧縮空気の圧力を調整するためのレギュレータ35等を有している。エア供給部34によって適切な空気圧に調整された圧縮空気は、図略のダクト又はチューブなどを介して、精紡機1の各部に供給される。
【0041】
図1及び図4に示すように、ドライブエンドボックス3の正面側には、操作部18が設けられている。この操作部18は、各紡績ユニット6に関する情報を表示可能な表示画面、各種設定を行う設定操作具(操作ボタン、操作ダイヤルなど)などを備えている。操作部18は、各紡績ユニット6と通信可能に構成されており、精紡機1が備える複数の紡績ユニット6に関する情報を集中的に管理している。また、操作部18は、精紡機1が備える複数の紡績ユニット6に対して一括して、或いは個別に制御信号を送信することができる。従って、精紡機1のオペレータは、複数の紡績ユニット6を、操作部18によって集中的に操作することができる。
【0042】
機台本体2の左右方向で、ドライブエンドボックス3とは反対側の端部には、ボビンストッカ4が配置されている。このボビンストッカ4は、空の巻取ボビン16を複数保持可能に構成されている。
【0043】
図2に示すように、ボビンストッカ4の背面側には、ブロアボックス5が配置されている。ブロアボックス5内には、図略の負圧源が配置されている。図3に示すように、機台本体2には、左右方向に沿って負圧ダクト19,20,21が配設されている。この負圧ダクト19,20,21は前記負圧源に接続されており、当該負圧ダクト19,20,21の内部は、前記負圧源によって負圧に保たれている。この負圧ダクト19,20,21を介して、精紡機1の各部に負圧を供給することができる。
【0044】
各紡績ユニット6のドラフト装置10は、機台本体2の上端近傍に設けられている。ドラフト装置10は、図略のスライバケースからスライバガイドを介して供給されるスライバ(繊維束の原料)22を、所定の幅になるまでドラフト(繊維を引き伸ばすこと)する。
【0045】
ドラフト装置10は、複数のドラフトローラを備えている。各ドラフトローラは、2つ1組でドラフトローラ対を構成している。ドラフト装置10は、上流側から順に、バックローラ対23,27、サードローラ対24,28、ミドルローラ対25,29、及びフロントローラ対26,30の4つのドラフトローラ対を有する4線式のドラフト装置として構成されている。各ドラフトローラ対において、前後方向で正面側に位置するドラフトローラをトップローラ、背面側に位置するドラフトローラをボトムローラと称する。トップローラは、図3に示すように上流側から順に、バックトップローラ23、サードトップローラ24、ゴム製のエプロンベルトを装架したミドルトップローラ25、及びフロントトップローラ26となっている。一方、ボトムローラは、上流側から順に、バックボトムローラ27、サードボトムローラ28、ゴム製のエプロンベルトを装架したミドルボトムローラ29、及びフロントボトムローラ30となっている。
【0046】
各ボトムローラ27,28,29,30は、適宜の駆動源によって駆動される被駆動部材である。各紡績ユニット6は、バックボトムローラ27及びサードボトムローラ28を回転駆動するための図略の電動モータを備えている。これにより、バックボトムローラ27及びサードボトムローラ28を紡績ユニット6ごとに回転駆動することができる。
【0047】
また、ミドルボトムローラ29及びフロントボトムローラ30は、前述のドライブエンドボックス3内に配置されたドラフト駆動部31によって駆動される。このドラフト駆動部31は、精紡機1が備える複数の紡績ユニット6のミドルボトムローラ29とフロントボトムローラ30を共通して駆動するように構成されている。具体的には、精紡機1は、図1及び図2に示すように、左右方向に沿って配設された第1ラインシャフト36及び第2ラインシャフト37を備えている。第1ラインシャフト36には、各紡績ユニット6のフロントボトムローラ30が同軸で固定されている。第2ラインシャフト37には、各紡績ユニット6のミドルボトムローラ29が同軸で固定されている。この第1ラインシャフト36及び第2ラインシャフト37の端部は、ドライブエンドボックス3内のドラフト駆動部31に接続されている。ドラフト駆動部31は、第1ラインシャフト36及び第2ラインシャフト37を所定の回転速度で回転駆動するように構成されている。以上の構成で、全紡績ユニット6でフロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29が一斉に駆動される。
【0048】
一方、各トップローラ23,24,25,26は、図略の軸受等を介して、その軸線を中心に回転自在に支持されている。また、各トップローラ23,24,25,26は、図略の付勢部材によって、これに対向するボトムローラ27,28,29,30に向けてそれぞれ付勢されている。
【0049】
以上の構成で、ドラフト装置10は、回転するトップローラ23,24,25,26とボトムローラ27,28,29,30の間でスライバ22を挟み込み、当該スライバ22を下流側に向けて搬送することができる。ドラフト装置10は、下流側のドラフトローラ対ほど回転速度が速くなるように構成されている。従って、繊維束14(又はスライバ22)は、ドラフトローラ対とドラフトローラ対との間で搬送される間に引き伸ばされ(ドラフトされ)ていく。各ボトムローラ27,28,29,30の回転速度を適宜設定することにより、繊維束14がドラフトされる程度を変更できるので、ドラフト装置10は、所望の繊維幅となるように繊維束14をドラフトすることができる。なお、各ローラの回転速度は、繊維の種類や、紡績する紡績糸15の太さなどの紡績条件(巻取条件)応じて適宜変更される。
【0050】
フロントローラ対26,30のすぐ下流側には、紡績部11が配置されている。ドラフト装置10でドラフトされた繊維束14は、紡績部11に供給される。この紡績部11は、旋回気流を利用して繊維束14に撚りを与える空気式の紡績装置を備えている。空気紡績装置は、ドラフト装置10から供給された繊維束14に撚りを加えて、紡績糸15を生成する。
【0051】
なお、本実施形態の紡績部11において、空気紡績装置は取り外し可能に構成されており、異なる種類の空気紡績装置に交換することができるようになっている。これにより、生成する紡績糸15の種類に応じて適切なタイプの空気紡績装置に変更することができるので、所望の品質の紡績糸15を生成することができる。なお、本実施形態の紡績部11は、以下に説明する第1空気紡績装置41と第2空気紡績装置42の2種類の空気紡績装置を選択的に装着可能に構成されている。
【0052】
第1空気紡績装置41は、図6に示すように、ノズルブロック43と、中空ガイド軸体44と、繊維案内部45と、を主に備えている。
【0053】
ノズルブロック43と中空ガイド軸体44の間には、紡績室46が形成されている。ノズルブロック43には、紡績室46内に空気を噴出する空気噴出ノズル47が形成されている。繊維案内部45には、紡績室46内に繊維束14を導入する導入口48が形成されている。空気噴出ノズル47は、紡績室46内に空気を噴出して旋回気流を発生させることができるように構成されている。この構成で、ドラフト装置10から供給された繊維束14は、導入口48を有する繊維案内部45によって紡績室46内に案内される。紡績室46内において、繊維束14は、旋回気流によって中空ガイド軸体44の周囲を振り回されることにより、撚りが加えられて紡績糸15となる。撚りが加えられた紡績糸15は、中空ガイド軸体44の軸中心に形成された糸通路49を通って、下流側の糸出口(図略)から第1空気紡績装置41の外部に送出される。
【0054】
なお、前記導入口48には、その先端を紡績室46内向けて配置された針状のガイドニードル50が配置されている。導入口48から導入される繊維束14は、このガイドニードル50に巻きかかるようにして紡績室46内に案内される。これにより、紡績室46内に導入される繊維束14の状態を安定させることができる。また、このようにガイドニードル50に巻きかかるように繊維束14が案内されるので、紡績室46内で繊維に撚りが加えられても、繊維案内部45よりも上流側に撚りが伝播することが防止される。これにより、紡績部11による加撚がドラフト装置10に影響を与えることを防止できる。ただし、ガイドニードル50を省略して、繊維案内部45の下流側端部により、ガイドニードル50の機能を果たしても良い。
【0055】
第2空気紡績装置42は、図7に示すように、第1ノズルブロック51と、第2ノズルブロック52と、を主に備えている。第2ノズルブロック52は、第1ノズルブロック51よりも下流側に配置されている。
【0056】
第1ノズルブロック51には繊維束14を通過させる第1繊維通過室53が、第2ノズルブロック52には繊維束14を通過させる第2繊維通過室54が、それぞれ形成されている。第1繊維通過室53と第2繊維通過室54は連通しており、ドラフト装置10から送られてくる繊維束14が、第2空気紡績装置42の中を通過することができるようになっている。第1ノズルブロック51には、第1繊維通過室53内に空気を噴出して旋回気流を発生させる第1空気噴出ノズル55が形成されている。一方、第2ノズルブロック52には、第2繊維通過室54内に空気を噴出し旋回気流を発生させる第2空気噴出ノズル56が形成されている。ただし、第2空気噴出ノズル56は、第1空気噴出ノズル55とは反対方向に旋回する旋回気流を発生させるように形成されている。
【0057】
この構成で、第2空気紡績装置42内を通過する繊維束14に対して、第1空気噴出ノズル55及び第2空気噴出ノズル56が発生させる旋回気流によって撚りを加え、紡績糸15を生成することができる。そして、第1空気噴出ノズル55と第2空気噴出ノズル56が逆向きの旋回気流を発生させることにより、2つのノズルの間の繊維束14は、両端を逆方向に捻られるようにして強力に撚られる。これにより、糸強力の高い紡績糸15を形成することができる。
【0058】
なお、上記の第1空気紡績装置41又は第2空気紡績装置42で旋回気流を発生させるための圧縮空気(エア)は、ドライブエンドボックス3内に配置された前述のエア供給部34から供給されている。前述のように、エア供給部34は、圧縮空気の空気圧を調整するレギュレータ35を備えている。レギュレータ35を予め適切に調整しておくことにより、空気紡績装置(第1空気紡績装置41又は第2空気紡績装置42)に対して適切に圧縮空気を供給することができるので、当該空気紡績装置において前記旋回気流を適切に発生させることができる。これにより、紡績部11による紡績を適切に行うことができる。
【0059】
紡績部11の下流側であって機台本体2の下部には、巻取部13が配置されている。巻取部13は、クレードルアーム58と、巻取ドラム59と、を備えている。クレードルアーム58は、支軸57まわりに揺動可能に構成されている。このクレードルアーム58は、紡績糸15を巻回するための巻取ボビン16を回転可能に支持することができる。巻取ドラム59は、前記巻取ボビン16やそれに紡績糸15を巻回して形成されるパッケージ17の外周面に接触して駆動できるように構成されている。巻取ドラム59を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム59に接触する巻取ボビン16(又はパッケージ17)を回転させ、紡績糸15を巻取ボビン16に巻き取ることができる。
【0060】
図1に示すように、精紡機1は、各紡績ユニット6の巻取部13によって巻き取られる紡績糸15の綾振り(トラバース)を行うためのトラバース機構60を、機台本体2の下部に備えている。このトラバース機構60は、複数のトラバースガイド61と、トラバースロッド62と、を有している。
【0061】
各トラバースガイド61は、各紡績ユニット6の巻取部13の近傍にそれぞれ配置されるとともに、当該巻取部13で巻き取られる紡績糸15に係合するように構成されている。前記トラバースロッド62は、長手方向が左右方向に沿うように配設され、精紡機1が備える全紡績ユニット6にわたって配置されている。各トラバースガイド61は、トラバースロッド62に固定されている。トラバースロッド62の一側の端部は、ドライブエンドボックス3内の前記トラバース駆動部32に接続されている。トラバース駆動部32は、トラバースロッド62を左右に往復駆動するように構成されている。これにより、全紡績ユニット6で一斉にトラバースガイド61を往復駆動させることができる。紡績糸15を係合させた状態のトラバースガイド61を往復動させつつ、巻取部13によって巻取ボビン16を回転させることで、紡績糸15を綾振りしつつ巻き取り、適切な形状のパッケージ17を形成することができる。
【0062】
紡績部11と巻取部13との間には、糸貯留装置12が設けられている。糸貯留装置12は、図3に示すように、糸貯留ローラ63と、当該糸貯留ローラ63を回転駆動する電動モータ64と、を備えている。
【0063】
糸貯留ローラ63は、その外周面に一定量の紡績糸15を巻き付けて一時的に貯留することができるように構成されている。糸貯留ローラ63の外周面に紡績糸15を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ63を所定の回転速度で回転させることにより、紡績部11の空気紡績装置から紡績糸15を所定の速度で引き出して下流側に搬送することができる。また、糸貯留ローラ63の外周に紡績糸15を一時的に貯留するように構成されているので、糸貯留装置12を一種のバッファとして機能させることができる。これにより、紡績部11における紡績速度と、巻取部13における巻取速度と、が何らかの理由により一致しない場合の不具合(例えば紡績糸15の弛みなど)を解消することができる。
【0064】
紡績部11と糸貯留装置12との間の位置には、糸品質測定器65が設けられている。紡績部11で紡出された紡績糸15は、糸貯留装置12で巻き取られる前に前記糸品質測定器65を通過する。糸品質測定器65は、走行する紡績糸15の太さを、図略の静電容量式センサによって監視するように構成されている。糸品質測定器65は、紡績糸15の糸欠点(紡績糸15の太さなどに異常がある箇所)を検出した場合に、糸欠点検出信号を図示しないユニットコントローラへ送信するように構成されている。なお、糸品質測定器65は静電容量式のセンサに限らず、例えば光透過式のセンサで紡績糸15の太さを監視する構成であっても良い。また、糸品質測定器65は、紡績糸15に含まれる異物を糸欠点として検出するように構成されていても良い。
【0065】
糸品質測定器65の近傍には、紡績糸15の糸欠点が検出された際に直ちに紡績糸15を切断するためのカッタ(図略)が配置されている。なお、紡績ユニット6は、このカッタの代わりに、紡績部11への空気の供給を停止して、紡績糸15の生成を中断することにより当該紡績糸15を切断しても良い。
【0066】
また図1等に示すように、精紡機1は、糸継台車66と玉揚台車(作業台車)67を備えている。
【0067】
機台本体2には、左右方向に沿って糸継台車走行レール68が敷設されている。この糸継台車走行レール68は、紡績糸15の糸道よりも背面側に位置している。前記糸継台車66は、糸継台車走行レール68に沿って走行することができるように構成されている。
【0068】
糸継台車66は、図1及び図3に示すように、糸継装置69と、サクションパイプ70と、サクションマウス71と、を備えている。ある紡績ユニット6において糸切れや糸切断などにより紡績部11と巻取部13の間の紡績糸15が分断状態になると、糸継台車66は、前記糸継台車走行レール68上を前記紡績ユニット6まで走行し、停止する。前記サクションパイプ70は、軸を中心に上下方向に回動しながら、紡績部11から送出される糸端を吸い込みつつ捕捉して糸継装置69へ案内する。サクションマウス71は、軸を中心に上下方向に回動しながら、前記巻取部13に支持されたパッケージ17から糸端を吸引しつつ捕捉して糸継装置69へ案内する。なお、サクションパイプ70及びサクションマウス71が吸引流を発生させるための負圧は、ブロアボックス5内の前記負圧源によって供給される。糸継装置69は、案内された糸端同士を、圧縮空気によって発生させた旋回気流によって撚り合わせることにより糸継ぎを行う。これにより、紡績部11と巻取部13との間の紡績糸15を連続状態とし、パッケージ17への紡績糸15の巻き取りを再開することができる。なお、この糸継装置69が旋回気流を発生させるための圧縮空気は、前記エア供給部34から供給されている。
【0069】
前述のように、糸継台車走行レール68は糸道よりも背面側に敷設されているので、糸継台車66は糸道よりも背面側を走行し、当該背面側の位置から糸継作業を行う。このように、糸継台車66は、糸道よりも背面側(即ち、機台本体2の奥まった位置)にあるので、メンテナンスを行いにくい。そこで本実施形態の精紡機1においては、糸継台車66を、機台本体2の背面から抜き出すことができるように構成されている。より具体的には、図3に示すように、負圧を供給するための負圧ダクト19,20,21を、糸継台車66よりも高い位置、又は低い位置に配設することにより、糸継台車66の背面側に負圧ダクトが配置されてない構成としている。そして、機台本体2の背面側の一部には、糸継台車66が糸継作業を行う空間と連通する開放部110が形成されている。これにより、糸継台車66を、開放部110を介して機台本体2に着脱することができる。従って、糸継台車66を機台本体2の背面側から抜き出してメンテナンスを行うことができる。
【0070】
なお、糸継台車66にメンテナンスを行う場合、当該糸継台車66の背面側にアクセスすることができれば、十分なメンテナンスを行うことができる場合がある。このような場合は、糸継台車66を機台本体2に取り付けたままで、開放部110を介してメンテナンス作業を行うことができる。従って、開放部110の開口面積は、糸継台車66を抜き出すことができる程度に大きく形成されていなくても良く、作業者がメンテナンスを行うのに十分な程度の開口面積が確保されていれば良い。
【0071】
また機台本体2の正面側には、左右方向に沿って玉揚台車走行レール39が敷設されている。前記玉揚台車67は、玉揚台車走行レール39に沿って走行することができるように構成されている。
【0072】
玉揚台車67は、満巻になったパッケージ17の玉揚作業と、空の巻取ボビン16を各紡績ユニット6へ供給するボビンセット作業の少なくとも何れかを行う。図1及び図3に示すように、玉揚台車67は、空ボビン収容部38と、クレードル操作アーム72と、糸引き出しアーム73と、空ボビン供給アーム74と、を備えている。空ボビン収容部38は、複数の空の巻取ボビン16を収容することができるように構成されている。糸引き出しアーム73は、図略のエアシリンダ機構により伸縮可能に構成されている。当該糸引き出しアーム73の先端には、吸引空気流によって糸を吸引捕捉する図略の捕捉部が設けられている。
【0073】
まず、玉揚作業について説明する。ある紡績ユニット6で巻き取っているパッケージ17が満巻(規定量の紡績糸15を巻き取った状態)になると、玉揚台車67は、玉揚台車走行レール39上を前記紡績ユニット6まで走行して停止する。次に、クレードル操作アーム72は、紡績ユニット6のクレードルアーム58を操作することにより、前記満巻のパッケージ17をクレードルアーム58から取り外す。取り外された満巻パッケージ17は、紡績ユニット6と、玉揚台車走行レール39と、の間に敷設されパッケージコンベア75の上に落下して受け止められる。なお、玉揚台車67に搬送機構を設け、当該搬送機構によって満巻パッケージ17を巻取部13からパッケージコンベア75へと搬送ように構成しても良い。図2に示すように、パッケージコンベア75は左右方向に沿って配設されている。このパッケージコンベア75は、満巻のパッケージ17を前記左右方向に沿って搬送するように構成されている。パッケージコンベア75による満巻パッケージ17の搬送方向の端部には、図略のパッケージ回収部が配置されている。以上の玉揚作業により、満巻のパッケージ17を自動的に回収することができる。
【0074】
次に、ボビンセット作業について説明する。玉揚台車67は、空ボビン収容部38にストックされている空の巻取ボビン16を空ボビン供給アーム74によって把持するとともに、当該空ボビン供給アーム74を回動させて、前記巻取ボビン16を紡績ユニット6のクレードルアーム58に装着する。これと前後して、玉揚台車67の糸引き出しアーム73は、紡績部11で紡出された紡績糸15を吸引捕捉するとともに、当該捕捉した紡績糸15を、クレードルアーム58に装着された前記空の巻取ボビン16の近傍まで案内する。この状態で、公知のバンチ巻きなどの方法により、紡績部11から引き出された紡績糸15を巻取ボビン16に固定する。以上で説明した玉揚台車67のボビンセット作業が終了すると、紡績ユニット6の巻取部13は、巻取ボビン16の回転を開始する。これにより、新しい巻取ボビン16に対する紡績糸15の巻き取りを開始することができる。
【0075】
なお、玉揚台車67の空ボビン収容部38にストックできる空の巻取ボビン16の数は限られているので、適宜のタイミングで巻取ボビン16を補充する必要がある。そこで玉揚台車67は、適宜のタイミングで、前記ボビンストッカ4から巻取ボビン16の供給を受けるように構成されている。即ち、図2に示すように、前記玉揚台車走行レール39は、ボビン供給位置77(図1及び図2に二点鎖線で示す位置)まで伸びて敷設されている。図1及び図2に示すように、ボビン供給位置77は、機台本体2の正面側に位置しており、ボビンストッカ4に隣接して配置されている。玉揚台車67は、必要に応じて、ボビン供給位置77まで走行して停止する。ボビン供給位置77に停止した玉揚台車67に対して、ボビンストッカ4から巻取ボビン16が供給される。
【0076】
続いて、ドライブエンドボックス3の構成についてより詳しく説明する。
【0077】
図4に示すように、ドライブエンドボックス3は、正面側、側面側、(及び図示は省略しているが背面側も)がパネル78で覆われた構成となっている。このパネル78は、ドライブエンドボックス3のフレーム79(図5参照)に対して着脱可能に取り付けられている。
【0078】
図5に示すように、ドライブエンドボックス3の前記フレーム79は、細長いフレーム材料を組み合わせて構成されている。フレーム材料は特に限定されないが、例えば溝型鋼などの形鋼や鋼管などを利用することができる他、必要な強度を有するものであれば板金などであっても良い。前記ドラフト駆動部31、前記トラバース駆動部32、前記エア供給部34は、このフレーム79の内側に配置されている。また、フレーム79は、上下方向の中間部分に、略水平に配置された補強フレーム部材80,81,82を備えている。
【0079】
トラバース駆動部32は、補強フレーム部材80,81,82よりも下方に配置されている。トラバース駆動部32は、前記トラバースロッド62を左右方向で往復動させるためのカム機構が内蔵されたカムボックス(図略)と、当該カムボックスの駆動源であるトラバース駆動モータ(図略)とを備えている。この構成で、トラバース駆動モータを所定の回転速度で回転させることにより、トラバースロッド62を所定の速度で左右往復駆動させることができる。
【0080】
エア供給部34は、補強フレーム部材80,81,82よりも下方に配置されている。エア供給部34は、精紡機1の各部に圧縮空気を適切に供給するためのエアー機器を備えている。具体的には、エア供給部34は、圧縮空気供給パイプ33を介して供給される圧縮空気の水分を除去するためのフィルタ83を備えている。また前述のように、エア供給部34は、圧縮空気の空気圧を適切に調整するためのレギュレータ35を備えている。
【0081】
なお、精紡機1において、圧縮空気は、空気紡績装置における旋回気流、糸継台車66の糸継装置69における旋回気流、糸屑を吹き飛ばすためのクリーニング用エアなどに利用されるが、それぞれで適切な空気圧は異なる。そこでエア供給部34は、圧縮空気の供給先ごとにレギュレータ35を有している。これにより、圧縮空気の空気圧を、当該圧縮空気の供給先ごとに適切に調整することができる。この複数のレギュレータ35は、図5に示すように、ドライブエンドボックス3の正面側にまとめて配置されている。従って、精紡機1のオペレータは、ドライブエンドボックス3の正面側のパネル78を取り外すことにより、レギュレータ35を正面側に向けて露出させることができる。これにより、オペレータは、レギュレータ35を簡単に調整することができる。
【0082】
ドラフト駆動部31は、補強フレーム部材80,81,82よりも上方に配置されている。図5に示すように、ドラフト駆動部31は、前記第1ラインシャフト36を駆動するための第1モータ84と、前記第2ラインシャフト37を駆動するための第2モータ85と、を備えている。また図8に示すように、ドラフト駆動部31は、第1駆動軸86と、第2駆動軸87を備えている。第1駆動軸86は、前記第1ラインシャフト36に連結されている。第2駆動軸87は、前記第2ラインシャフト37に連結されている。なお、図8では、第1ラインシャフト36が第1駆動軸86に連結された状態、及び第2ラインシャフト37が第2駆動軸87に連結されている状態の図示は省略している。
【0083】
図9に示すように、第1モータ84と第1駆動軸86との間は、複数のプーリ及び伝動ベルトによって接続されている。これにより、第1モータ84の駆動力によって第1ラインシャフト36が駆動され、全紡績ユニット6のフロントボトムローラ30が一斉に駆動されるように構成されている。また、第2モータ85と第2駆動軸87との間も、複数のプーリ及び伝動ベルトによって接続されている。これにより、第2モータ85の駆動力によって第2ラインシャフト37が駆動され、全紡績ユニット6のミドルボトムローラ29が一斉に駆動されるように構成されている。
【0084】
ドラフト駆動部31は、前記プーリの回転軸を支持するためのベース体88を備えている。このベース体88は、鋳物の一体構造として形成されている。図9に示すように、ベース体88は、各プーリの軸を回転可能に支持する第1支持部89及び第2支持部90を有している。第1支持部89と第2支持部90は、それぞれ前後方向に沿って形成されており、左右方向で対面するように配置されている。また図8及び図9に示すように、ベース体88は、フレーム79の正面側の補強フレーム部材80と、背面側の補強フレーム部材81とに掛け渡されるように配置されるとともに、当該補強フレーム部材81,82に対してネジ止めによって固定されている。これにより、ベース体88自体がフレーム79の構造体として機能するので、フレーム79の剛性を高めることができる。
【0085】
続いて、第1モータ84から第1駆動軸86までの駆動伝達経路をより具体的に説明する。
【0086】
図9に示すように、第1モータ84の出力軸84aの端部には、第1駆動出力プーリ91が固定されている。一方、第1駆動軸86の端部には、第1駆動入力プーリ92が相対回転不能に取り付けされている。第1モータの出力軸84aは、ベース体88の第1支持部89によって片持ち支持されている。また、第1駆動軸86は、ベース体88の第2支持部90によって片持ち支持されている。そして、前記第1駆動出力プーリ91と第1駆動入力プーリ92は、第1支持部89と第2支持部90の間に配置されている。第1駆動出力プーリ91と第1駆動入力プーリ92の間には、第1伝動ベルト93が掛け渡されている。以上の構成で、第1モータ84の回転出力を、第1駆動軸86から出力することができる。
【0087】
ここで、第1駆動出力プーリ91と第1駆動入力プーリ92の径の比を適切に設定することにより、第1モータ84の出力を適切に減速したうえで第1駆動軸86から出力することができる。本実施形態では、第1駆動出力プーリ91は二段プーリとなっている。即ち、第1駆動出力プーリ91は、高速用プーリ91a(径の大きいプーリ)と、低速用プーリ91b(径の小さいプーリ)とを、第1モータ84の出力軸84aに軸線方向で並べて設けた構成である。そして、第1伝動ベルト93は、高速用プーリ91a及び低速用プーリ91bの何れか一方と、第1駆動入力プーリ92とに掛け渡される。第1伝動ベルト93を、高速用プーリ91aと低速用プーリ91bの何れに掛け渡すかによって、第1モータ84の出力の減速比を変更できる。即ち、第1伝動ベルト93の掛け替えにより、フロントボトムローラ30の回転速度を簡単に変更することができる。
【0088】
なお、第1駆動入力プーリ92と第1駆動軸86は、滑りキー及びキー溝によって連結されている。この構成で、両者が相対回転不能となっており、かつ第1駆動入力プーリ92が第1駆動軸86の軸方向に移動できる。これにより、第1駆動入力プーリ92を、高速用プーリ91aに対応した位置(図9に実線で示す位置)と、低速用プーリ91bに対応した位置(図9に二点鎖線で示す位置)との間で移動させることができる。これにより、高速用プーリ91aと低速用プーリ91bの何れで駆動力を伝達する場合であっても、第1駆動出力プーリ91と第1駆動入力プーリ92の間で第1伝動ベルト93を適切に掛け渡すことができる。もっとも、第1駆動入力プーリ92と第1駆動軸86を連結する構成はキー溝に限らず、例えばスプライン嵌合等であっても良い。
【0089】
なお、高速用プーリ91aと低速用プーリ91bとでは径が異なるので、高速用プーリ91aを利用する場合と低速用プーリ91bを利用する場合とでは必要な第1伝動ベルト93の長さが異なる。従って、高速用プーリ91aを利用する場合と低速用プーリ91bを利用する場合とでは、第1伝動ベルト93を取り換える必要がある。そこで本実施形態では、第1伝動ベルト93を容易に交換することができるように構成されている。
【0090】
即ち、第1駆動出力プーリ91が固定されている出力軸84aは、ベース体88の第1支持部89によって片持ち支持されているので、当該出力軸84aの端部から第1伝動ベルト93を外すことができる。また、第1駆動入力プーリ92が取り付けられている第1駆動軸86の端部は、ベース体88の第2支持部90によって片持ち支持されているので、当該第1駆動軸86から第1伝動ベルト93を外すことができる。以上の構成で、第1伝動ベルト93を交換することができる。
【0091】
また、本実施形態の精紡機1では、上記の伝動ベルト93の交換をより容易に行えるようにするため、当該伝動ベルト93を交換するためのスペースをドライブエンドボックス3内に形成している。より具体的には、第1モータ84の出力軸84aの先端と、ベース体88の第2支持部90との間には、スペース95が形成されている。また、第1駆動軸86の先端と、ベース体88の第1支持部89との間には、スペース96が形成されている。なお、上記スペース96を形成するために、第1支持部89には、第1駆動軸86の先端に対面する位置において凹部97が形成されている。
【0092】
以上のように、スペース95,96を形成したことにより、第1伝動ベルト93を交換し易くなっている結果、フロントボトムローラ30の回転速度の設定を変更する作業を容易に行うことができる。
【0093】
続いて、第2モータ85から第2駆動軸87までの駆動伝達経路について具体的に説明する。
【0094】
第2モータ85の出力軸85aの端部には、第2駆動出力プーリ98が固定されている。また、第2駆動軸87の端部には、第2駆動入力プーリ99が相対回転不能に取り付けられている。更に、ドラフト駆動部31は中間軸100を有しており、中間軸100の一端には第1中間プーリ101、他端には第2中間プーリ102が、それぞれ相対回転不能に取り付けられている。また、第2モータ85の出力軸85a、第2駆動軸87、及び中間軸100は、ベース体88の第1支持部89及び第2支持部90の間に掛け渡されるようにして支持されている。
【0095】
上記の第2駆動出力プーリ98及び第1中間プーリ101は、第2支持部90を挟んで第1支持部89の反対側に配置されている。また、第2中間プーリ102及び第2駆動入力プーリ99は、第1支持部89を挟んで第2支持部90の反対側に配置されている。即ち、プーリ98、99、101、102は、第1支持部89及び第2支持部90の外側に配置されている。また、第2駆動出力プーリ98と第1中間プーリ101には第2伝動ベルト103が掛け渡され、第2中間プーリ102と第2駆動入力プーリ99には第3伝動ベルト104が掛け渡されている。以上の構成で、第2モータ85の回転出力を、第2駆動軸87から出力することができる。
【0096】
ここで、プーリ98、99、101、102の径の比を適切に設定することで、第2モータ85の出力を適切に減速したうえで第2駆動軸87から出力することができる。本実施形態では、第1中間プーリ101及び第2駆動入力プーリ99を交換可能に構成している。具体的には、第1中間プーリ101は、中間軸100の端部から取り外すことができるように構成されている。これにより、第1中間プーリ101を、径の異なるプーリに変更することができる。また、第2駆動入力プーリ99は、当該第2駆動軸87の端部から取り外すことができるように構成されている。これにより、第2駆動入力プーリ99を、径の異なるプーリに変更することができる。第1中間プーリ101及び第2駆動入力プーリ99の径を変更することにより、第2モータ85の出力の減速比を変更できる。即ち、第1中間プーリ101及び第2駆動入力プーリ99の交換により、ミドルボトムローラ29の回転速度を簡単に変更することができる。
【0097】
また本実施形態では、上記の第1中間プーリ101及び第2駆動入力プーリ99の交換を容易に行えるようにするため、当該プーリを交換するためのスペースをドライブエンドボックス3内に形成している。即ち、第1中間プーリ101は、第2支持部90を挟んで第1支持部89の反対側に配置されているので、中間軸100の第1中間プーリ101側の先端の先には、第1支持部89が無い。従って、中間軸100の第1中間プーリ101側の先端の先には、第1中間プーリ101を交換するためのスペース105が形成されている。また、第2駆動入力プーリ99は、第1支持部89を挟んで第2支持部90の反対側に配置されているので、第2駆動軸87の先端の先には、第2支持部90が無い。従って、第2駆動軸87の先端の先には、第2駆動入力プーリ99を交換するためのスペース106が形成されていると言える。
【0098】
以上のように、スペース105とスペース106を形成したことにより第1中間プーリ101及び第2駆動入力プーリ99を交換し易くなっている結果、ミドルボトムローラ29の回転速度の設定を変更する作業を容易に行うことができる。
【0099】
前述のように、本実施形態において、ドライブエンドボックス3の前記フレーム79は、細長いフレーム材料(溝型鋼などの形鋼、ないし鋼管)を組み合わせて構成されている。従って、フレーム部材の間から手を差し入れることにより、フレーム79内に配置されたドラフト駆動部31に容易にアクセスすることができる。これにより、伝動ベルトやプーリの交換作業を容易に行うことができる。
【0100】
また前述のように、フレーム79の正面側、側面側(精紡機1の左右方向の端面側)、及び背面側を覆っているパネル78は、着脱可能に取り付けられている。従って、本実施形態の精紡機1においては、パネル78を取り外すことにより、フレーム79内のドラフト駆動部31に対して、正面側、側方端部、及び背面側の三方からアクセスすることができる。これにより、伝動ベルトやプーリの交換作業を更に容易に行うことができる。従って、本実施形態の精紡機1では、フロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29の回転速度の設定を変更する作業を、容易に行うことができる。
【0101】
なお前述のように、ドライブエンドボックス3の正面側には、操作部18が配置されている。この操作部は、図5に示すように、ドラフト駆動部31の正面側に位置している。従って、このままでは操作部18が邪魔になってドラフト駆動部31に対して容易にアクセスすることができない。しかし一方で、操作部18には、当該操作部18に電力を供給するための電源ケーブルや、各紡績ユニット6と通信するための通信ケーブル等が接続されている。このため、操作部18をフレーム79から完全に取り外すには前記ケーブル類を取り外すなどの作業が必要となり、手間がかかる。そこで本実施形態の精紡機1において、操作部18は、図略のヒンジ部を介してフレーム79に取り付けられており、前記ケーブル類はヒンジ部の近傍を通過させるように配索している。この構成によれば、図8に示すように、ヒンジ部を中心として操作部18を回動させることができる。これにより、操作部18の部分を開き、ドラフト駆動部31の正面側を開放することができる。以上の構成により、ドラフト駆動部31に対して、正面側から容易にアクセスできる。
【0102】
次に、本実施形態の精紡機1におけるレイアウトの特徴について説明する。
【0103】
精紡機などの糸巻取機においては、糸の巻取条件が変更されると、各部の設定変更が必要となる。例えば本実施形態のように精紡機1の場合は、繊維の種類や、生成する紡績糸15の番手(太さ)などの紡績条件が変更された場合に、ドラフトローラの回速度や、空気紡績装置に供給する圧縮空気の空気圧などを変更する必要がある。そこで、精紡機1のオペレータは、紡績条件が変更されると、ドラフト駆動部31が備えるプーリ及び伝動ベルトの交換、エア供給部34が備えるレギュレータ35の調整などを行う。
【0104】
従来の紡績機では、ドラフト駆動部は原動ボックスに、エア供給部はブロアボックスにそれぞれ配置されていたので、オペレータは紡績条件が変更されるたびに、原動ボックスとブロアボックスの間を往復する必要があった。このため、上記設定変更の作業をスムーズに行うことができず、オペレータにとっても負担となっていた。
【0105】
この点、本実施形態の精紡機1は前述のように、ドライブエンドボックス3内に、ドラフト駆動部31とエア供給部34を設けた構成である。このように、ドラフト駆動部31とエア供給部34をまとめて配置することで、設定変更の作業をドライブエンドボックス3の一箇所で行うことができる。その結果、当該設定変更の作業をスムーズに行うことができるとともに、オペレータの負担も低減することができる。
【0106】
しかも前述のように、本実施形態では、補強フレーム部材80,81,82よりも下方にエア供給部34を、上方にドラフト駆動部31をそれぞれ配置している。即ち、エア供給部34とドラフト駆動部31を、ドライブエンドボックス3内の上下方向で異なる領域に分けて配置している。このように、ドラフト駆動部31とエア供給部34を上下に分けて配置したことにより、ドライブエンドボックス3内の配置が整理されている。この結果、例えばドラフト駆動部31とエア供給部34が混在して配置される場合よりも、両者に対してアクセスし易くなっている。しかも、エア供給部34とドラフト駆動部31を、ドライブエンドボックス3内の上下方向で異なる領域に配置したことにより、エア供給部34とドラフト駆動部31が前後方向又は左右方向で隣接することがない。これにより、エア供給部34とドラフト駆動部31に対して、前後方向及び左右方向から容易にアクセスすることができる。
【0107】
また、フレーム79内においてエア供給部34を上部に配置しなかったことにより、フレーム79の上部のスペース内に、余裕を持ってドラフト駆動部31を配置することができる。これにより、プーリや伝動ベルトを交換するためのスペース95,96,105,106を十分に形成することが容易になった。これにより、ドラフト駆動部31の設定変更の作業がより一層行い易くなっている。
【0108】
なお、例えば特許文献2に記載されているように、従来の精紡機では、糸継台車(作業台車)のメンテナンスを行うために、当該作業台車を機台本体の側方から抜き出すように構成されていた。従って、本実施形態のように機台本体2の側方端部にドライブエンドボックス3を設ける構成を特許文献2の精紡機に適用した場合、当該ドライブエンドボックス3は、機台本体2の側方から抜き出される作業台車の通路を避けて配置されなければならない。このため、ドライブエンドボックス3内のスペースが狭くなり、プーリや伝動ベルトの交換のためのスペースを確保することが難しくなる。また、ドライブエンドボックス3内のスペースが狭くなるため、当該ドライブエンドボックス3内にエア供給部34を配置することが難しくなる。このように、特許文献2のような従来の紡績機では、ドライブエンドボックス3内にドラフト駆動部31とエア供給部34を整理して配置することが難しかったのである。
【0109】
この点、本実施形態の精紡機1では前述のように、糸継台車66は、機台本体2の背面側から抜き出してメンテナンスを行えるように構成している。従って、本実施形態の構成によれば、糸継台車66を機台本体2の側方から抜き出す必要がない。即ち、本実施形態の精紡機1は、糸継台車66の通路を避けてドライブエンドボックス3を配置しなければならないという制限が無い。このため、本実施形態の構成によれば、ドライブエンドボックス3内のスペースに余裕ができ、プーリや伝動ベルトの交換のためのスペースを十分に確保することができる。更に、このようにドライブエンドボックス3内にスペースを確保できたので、従来の精紡機ではブロアボックスに配置されていたエア供給部を、ドライブエンドボックス3内に移すことができた。これにより、上記のように、ドラフト駆動部31とエア供給部34をドライブエンドボックス3内に整理して配置することが可能である。
【0110】
また、特許文献2の精紡機では、原動ボックスが機台本体とブロアボックスに挟まれるように配置されていたので、原動ボックス内のドラフト駆動部に対して側方からアクセスすることができなかった。この点、本実施形態の精紡機1において、ドライブエンドボックス3は精紡機1の左右方向の端部に配置されているので、当該ドライブエンドボックス3の左右方向一側には他の構成が配置されていない。これにより、ドライブエンドボックス3内のドラフト駆動部31に対して、左右側方の一側から容易にアクセスできる。なお、ドライブエンドボックス3の背面側には、他の構成は配置されていないので、ドラフト駆動部31に対して背面側からも自由にアクセスすることができる。
【0111】
続いて、本実施形態の精紡機1による紡績糸15の製造方法について説明する。
【0112】
前述のように、本実施形態の精紡機1においては、紡績条件が変更されたときに、ドラフト駆動部31の設定を変更し、フロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29の回転速度を変更する。ところで、フロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29の回転速度をわずかに変更する程度であれば、第1モータ84及び第2モータ85の出力軸の回転速度を変更するように制御するだけで対応できる場合がある。しかし、フロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29の回転速度を大きく変更する必要がある場合、第1モータ84及び第2モータ85の出力軸の回転速度を変更する制御だけでは適切に対応することができない。そこでこのような場合は、上述したように、ドラフト駆動部31のプーリ及び伝動ベルトを交換する作業が必要になる。
【0113】
ここで、フロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29の回転速度を大きく変更する必要がある場合とは、例えば、紡績部11の空気精紡装置の種類を変更した場合などである。即ち、空気精紡装置の種類を変更した場合は、当該紡績部11の紡出速度に応じて、フロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29の回転速度の設定を変更しなければならない。第1空気紡績装置41と第2空気紡績装置42とでは、紡績糸15を生成する方式が異なるため、紡績糸15の紡出速度が大きく異なる。従って、空気紡績装置の種類が変更された場合には、フロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29の回転速度を大きく変更する必要がある。
【0114】
より具体的には以下の通りである。即ち、第1空気紡績装置41を利用して紡績糸15を生成する場合は、フロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29を高速で回転駆動する。第1空気紡績装置41は、高速紡績が可能であるためである。一方、第2空気紡績装置42を利用して紡績糸15を生成する場合は、フロントボトムローラ30及びミドルボトムローラ29を、第1空気紡績装置41を利用する場合に比べて低速で回転駆動する。
【0115】
そこで、本実施形態の精紡機1よる紡績糸15の製造は、以下のようにして行うものである。
【0116】
即ち、紡績部11において、第1空気紡績装置41で紡績を行う場合、ドラフト駆動部31において高速用のプーリによってドラフトローラを駆動させるように、当該ドラフト駆動部31の設定を変更する。より具体的には、2段プーリとして構成された第1駆動出力プーリ91において、高速用プーリ91a側に第1伝動ベルト93を掛け渡しておく。これにより、フロントボトムローラ30を高速で回転駆動できる。また、第1中間プーリ101と、第2駆動入力プーリ99を、高速用のプーリ(比較的径の小さいプーリ)に交換しておく。これにより、ミドルボトムローラ29を高速で回転駆動できる。
【0117】
一方、紡績部11において、第2空気紡績装置42で紡績を行う場合、ドラフト駆動部31において低速用のプーリによってドラフトローラを駆動するように、当該ドラフト駆動部31の設定を変更する。より具体的には、2段プーリとして構成された第1駆動出力プーリ91において、低速用プーリ91b側に第1伝動ベルト93を掛け渡しておく。これにより、フロントボトムローラ30を低速で回転駆動できる。また、第1中間プーリ101と、第2駆動入力プーリ99を、低速用のプーリ(比較的径の大きいプーリ)に交換しておく。これにより、ミドルボトムローラ29を低速で回転駆動できる。
【0118】
以上のように、空気紡績装置の種類に応じて、低速用のプーリ又は高速用のプーリに変更することにより、空気紡績装置の特性に応じた適切な速度でドラフトローラを回転駆動することができる。
【0119】
以上で説明したように、本実施形態の精紡機1は、機台本体2と、複数の紡績ユニット6と、ドラフト駆動部31と、エア供給部34と、ドライブエンドボックス3と、を備えている。紡績ユニット6は、駆動されるボトムローラを有するとともに、機台本体2の長手方向に沿って並設される。ドラフト駆動部31は、複数の紡績ユニット6がそれぞれ備える前記ボトムローラのうち、フロントボトムローラ30とミドルボトムローラ29を共通で駆動する。エア供給部34は、複数の紡績ユニット6にエアを供給する。ドライブエンドボックス3は、紡績ユニット6の並設方向の一端において、ドラフト駆動部31とエア供給部34とを格納する。ドライブエンドボックス3は、上部にドラフト駆動部31を格納し、下部にエア供給部34を格納する。
【0120】
このように、ドラフト駆動部31とエア供給部34を1つのドライブエンドボックス3に収容することで、ドラフト駆動部31とエア供給部34に同時にアクセスすることが可能となり、設定変更の作業をスムーズに行うことができる。しかも、ドラフト駆動部31とエア供給部34をドライブエンドボックス3の上下に分けて配置することにより、ドラフト駆動部31及びエア供給部34が混在することなく、ドラフト駆動部31とエア供給部34に対して前後方向又は左右方向からアクセスし易い整理された配置となる。従って、ドラフト駆動部31及びエア供給部34の設定変更の作業性が向上する。
【0121】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、紡績ユニット6の並設方向に沿った方向を左右方向、前記左右方向及び上下方向に直交する方向を前後方向とし、前記前後方向において機台本体2から見て紡績ユニット6が巻き取る紡績糸15が走行している側を正面側、反対側を背面側としたときに、ドライブエンドボックス3は、ドラフト駆動部31に対して、左右方向の端面側、背面側、及び正面側からアクセス可能なフレーム79を有している。
【0122】
これにより、ドラフト駆動部31へ簡単にアクセスすることができるので、ドラフト駆動部31の設定変更、メンテナンスなどを簡単に行うことができる。
【0123】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、ドライブエンドボックス3の正面側には、複数の紡績ユニット6を共通して操作可能な操作部18が配置される。操作部18は、ドライブエンドボックス3に対して開閉可能に取り付けられている。
【0124】
このように、操作部18を正面側に配置しているので、当該操作部18の操作を行い易くなっている。しかも、操作部18を開くことで、ドライブエンドボックス3の内部に正面側からアクセスできる。従って、ドライブエンドボックス3内に格納されているドラフト駆動部31の設定変更作業やメンテナンス作業も行い易い。
【0125】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、ドラフト駆動部31は、複数の紡績ユニット6のボトムローラ29,30を共通して駆動する駆動軸86,87と、ボトムローラ29,30の駆動源であるモータ84,85と、前記モータと前記駆動軸との間で駆動を伝達する複数のプーリと、を備える。ドライブエンドボックス3は、駆動を伝達するプーリを、少なくとも高速用プーリと低速用プーリで変更可能なスペース95,96,105,106を有する。
【0126】
即ち、プーリを交換することで、ドラフトローラの回転速度を変更することができる。また、上記のようにドライブエンドボックス3にスペースを形成することにより、プーリの交換作業を簡単に行うことができる。
【0127】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、ドラフト装置10は、繊維束14の走行方向で下流側から順に、フロントローラ対と、ミドルローラ対と、バックローラ対と、を少なくとも有する。フロントローラ対は、駆動されるフロントボトムローラ30と、これに接触して従動回転するフロントトップローラ26からなる。ミドルローラ対は、駆動されるミドルボトムローラ29と、これに接触して従動回転するミドルトップローラ25からなる。ドラフト駆動部31は、複数の紡績ユニット6のフロントボトムローラ30を共通して駆動する第1駆動軸86と、複数の紡績ユニット6のミドルボトムローラ29を共通して駆動する第2駆動軸87と、フロントボトムローラ30の駆動源である第1モータ84と、ミドルボトムローラ29の駆動源である第2モータ85と、第1モータ84と第1駆動軸86との間で駆動を伝達する複数のプーリと、第2モータ85と第2駆動軸87との間で駆動を伝達する複数のプーリと、備える。
【0128】
これにより、フロントローラ対とミドルローラ対を複数の紡績ユニット6で共通して駆動することができる。そして、上記プーリを変更することにより、フロントローラ対とミドルローラ対の回転速度を変更することができる。
【0129】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、ドラフト駆動部31は、複数の紡績ユニット6のフロントボトムローラ30を共通して駆動する第1駆動軸86と、フロントボトムローラ30の駆動源である第1モータ84と、第1モータ84と第1駆動軸86との間で駆動を伝達する第1駆動出力プーリ91及び第1駆動入力プーリ92と、プーリ91,92の間で駆動力を伝達する第1伝動ベルト93と、を備える。第1駆動出力プーリ91は、高速用プーリ91aと低速用プーリ91bとを並設した2段プーリである。ドライブエンドボックス3は、2段プーリに掛けられた第1伝動ベルト93を交換可能なスペース95,96を有する。
【0130】
この構成によれば、プーリを取り外すことなく、第1伝動ベルト93の交換のみでフロントボトムローラ30の回転速度を変更することができる。
【0131】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、複数の紡績ユニット6のそれぞれは、ドラフト装置10でドラフトされた繊維束14を空気流によって紡績する空気紡績装置を有する紡績部11を備える。紡績部11は、異なる種類の空気紡績装置を保持可能である。
【0132】
本実施形態の精紡機1は、ドラフト駆動部31及びエア供給部34の設定変更の作業性が良好であるという特徴があるので、空気紡績装置の種類を変更した場合に、当該空気紡績装置の種類に応じた適切な設定に変更することが容易である。
【0133】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、紡績部11が保持可能な空気紡績装置は、第1空気紡績装置41と、第2空気紡績装置42と、の少なくとも2種類である。第1空気紡績装置41は、繊維束14を受け取り紡績室46に案内する繊維案内部45と、紡績室46に旋回空気流を発生させる空気噴出ノズル47が形成されたノズルブロック43と、紡績室46で空気流に撚られた繊維束14が通過する中空ガイド軸体44と、を備える。第2空気紡績装置42は、繊維束14に第1方向の旋回空気流を作用させる第1空気噴出ノズル55が形成された第1ノズルブロック51と、繊維束14に前記第1方向とは反対の第2方向の旋回空気流を作用させる第2空気噴出ノズル56が形成された第2ノズルブロック52と、を備える。前記紡績部11が第1空気紡績装置41によって紡績を行う場合、ドラフト駆動部31は前記高速用プーリによってドラフトローラを駆動する。紡績部11が第2空気紡績装置42によって紡績を行う場合、ドラフト駆動部31は低速用プーリによってドラフトローラを駆動する。
【0134】
即ち、本発明の精紡機1のドラフト駆動部31は、低速用プーリと高速用プーリを容易に変更することができるので、空気紡績装置の種類に応じた適切なプーリへの変更を簡単に行うことができる。
【0135】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、精紡機1は、ドラフト駆動部31の少なくとも一部が取り付けられる、鋳物の一体型ベース体88を更に備える。ベース体88は、ドライブエンドボックス3の構造体として機能するように設けられている。
【0136】
このようにベース体88がドライブエンドボックス3の構造体を兼ねることにより、当該ドライブエンドボックス3の剛性を高めることができる。
【0137】
本実施形態の精紡機1は、以下のように構成されている。即ち、この精紡機1は、複数の紡績ユニット6の並設方向に沿って走行可能に設けられ、前記紡績ユニット6に対して作業を行う糸継台車66を更に備える。機台本体2には、背面側から糸継台車66を着脱可能な開放部110が設けられている。
【0138】
このように、糸継台車66を機台本体2から着脱可能とすることにより、当該糸継台車66のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0139】
本実施形態の精紡機1による紡績糸15の製造方法は以下のとおりである。即ち、この紡績糸15の製造方法において、紡績部11の空気紡績装置を前記第1空気紡績装置41に変更した場合には、ドラフトローラを駆動するプーリを高速用プーリに変更する。紡績部11の空気紡績装置を第2空気紡績装置42に変更した場合には、ドラフトローラを駆動するプーリを低速用プーリに変更する。
【0140】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0141】
上記実施形態の精紡機では、ドラフト装置10は機台本体2の上部に配置されているので、ドラフトローラの駆動源であるドラフト駆動部31は、ドライブエンドボックス3の上部に配置されている。この構成に代えて、ドラフト装置10が機台本体2の下部に配置された構成の紡績機としても良い。この場合、ドラフト駆動部31はドライブエンドボックス3の下部に、エア供給部34は上部に配置する構成とすれば好適である。
【0142】
上記実施形態では、糸貯留装置12の糸貯留ローラ63を回転させることにより、紡績部11から紡績糸15を引き出す構成とした。これに代えて、例えば特開2005−220484号公報に記載されているように、デリベリローラとニップローラとによって紡績糸を挟み込んで回転することにより、紡績装置から紡績糸を引き出す糸送り装置を設けても良い。
【0143】
上記実施形態において、ドライブエンドボックス3内のドラフト駆動部31には、前面側、側方側、及び背面側の3方からアクセス可能であるとしたが、少なくとも前面側からアクセス可能であればよく、これに加えて側方側又は背面側の何れか一方からアクセス可能であれば好適である。
【0144】
上記実施形態では、ドライブエンドボックス3内の駆動部によって駆動される被駆動部材はドラフトローラであるとして説明したが、これに限定されるわけではなく、ドラフトローラ以外の被駆動部材を駆動する駆動部の配置にも、本発明の構成を適用することができる。
【0145】
上記実施形態では、紡績部11は2種類の空気紡績装置の何れかを装着可能であるとしたが、これ以外の種類の空気紡績装置が装着可能であっても良い。また、上記実施形態ではモータの出力を減速するためのプーリを高速用プーリと低速用プーリで変更可能であるとしたが、変更可能なプーリの種類は2種類に限らず、3種類以上であっても良い。
【0146】
図1では、巻取部13がコーン形状(テーパ形状)のパッケージ17を形成するように図示しているが、チーズ形状(円筒形状)のパッケージを形成するようにしても良い。
【0147】
紡績装置は、空気紡績式の紡績装置に限らず、他の形式の紡績装置を備えた紡績機にも本願発明の構成を適用することができる。また、本発明の構成は、紡績機に限らず、自動ワインダなどの他の種類の糸巻取機にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1 精紡機(糸巻取機)
2 機台本体
3 ドライブエンドボックス(格納部)
6 紡績ユニット(糸巻取ユニット)
29,30 ボトムローラ(被駆動部材)
31 ドラフト駆動部(駆動部)
34 エア供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台本体と、
駆動される被駆動部材を有するとともに、前記機台本体の長手方向に沿って並設された複数の糸巻取ユニットと、
前記複数の糸巻取ユニットがそれぞれ備える前記被駆動部材の少なくとも一部を共通で駆動する駆動部と、
前記複数の糸巻取ユニットにエアを供給するエア供給部と、
前記糸巻取ユニットの並設方向の一端において、前記駆動部と前記エア供給部とを格納する格納部と、
を備え、
前記格納部は、前記駆動部と前記エア供給部を、上下方向で異なる領域に格納することを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記格納部は、上部に前記駆動部を格納し、下部に前記エア供給部を格納することを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記糸巻取ユニットの並設方向に沿った方向を左右方向、前記左右方向及び上下方向に直交する方向を前後方向とし、前記前後方向において前記機台本体から見て前記糸巻取ユニットが巻き取る糸が走行している側を正面側、反対側を背面側としたときに、
前記格納部は、前記駆動部に対して、前記左右方向の端面側及び背面側の少なくとも何れか一方と、前記正面側と、からアクセス可能なフレームとして構成されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取機であって、
前記格納部の前記正面側には、前記複数の糸巻取ユニットを共通して操作可能な操作部が配置されており、
前記操作部は、前記格納部に対して開閉可能に取り付けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記複数の糸巻取ユニットのそれぞれは、繊維束をドラフトするためのドラフト装置を備え、
前記被駆動部材は、前記ドラフト装置が有するドラフトローラであり、
前記駆動部は、
複数の前記糸巻取ユニットの前記ドラフトローラを共通して駆動する駆動軸と、
前記ドラフトローラの駆動源であるモータと、
前記モータと前記駆動軸との間で駆動を伝達するプーリと、
を備え、
前記格納部は、前記駆動を伝達するプーリを、少なくとも高速用プーリと低速用プーリで変更可能なスペースを有することを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項5に記載の糸巻取機であって、
前記ドラフト装置は、前記繊維束の走行方向で下流側から順に、フロントローラ対と、ミドルローラ対と、バックローラ対と、を少なくとも有し、
前記フロントローラ対は、駆動されるフロントボトムローラと、これに接触して従動回転するフロントトップローラからなり、
前記ミドルローラ対は、駆動されるミドルボトムローラと、これに接触して従動回転するミドルトップローラからなり、
前記駆動部は、
複数の前記糸巻取ユニットの前記フロントボトムローラを共通して駆動する第1駆動軸と、
複数の前記糸巻取ユニットの前記ミドルボトムローラを共通して駆動する第2駆動軸と、
前記フロントボトムローラの駆動源である第1モータと、
前記ミドルボトムローラの駆動源である第2モータと、
前記第1モータと前記第1駆動軸との間で駆動を伝達する複数のプーリと、
前記第2モータと前記第2駆動軸との間で駆動を伝達する複数のプーリと、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記複数の糸巻取ユニットのそれぞれは、繊維束をドラフトするためのドラフト装置を備え、
前記被駆動部材は、前記ドラフト装置が有するドラフトローラであり、
前記駆動部は、
複数の前記糸巻取ユニットの前記ドラフトローラを共通して駆動する駆動軸と、
前記ドラフトローラの駆動源であるモータと、
前記モータと前記駆動軸との間で駆動を伝達する複数のプーリと、
前記複数のプーリの間で駆動力を伝達する伝動ベルトと、
を備え、
前記複数のプーリのうち少なくとも1つは、高速用プーリと低速用プーリとを並設した多段プーリであり、
前記格納部は、前記多段プーリに掛けられた前記伝動ベルトを交換可能なスペースを有することを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項5から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記複数の糸巻取ユニットのそれぞれは、前記ドラフト装置でドラフトされた前記繊維束を空気流によって紡績する空気紡績装置を有する紡績部を備え、
前記紡績部は、異なる種類の前記空気紡績装置を保持可能であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項8に記載の糸巻取機であって、
前記紡績部が保持可能な空気紡績装置は、
前記繊維束を受け取り紡績室に案内する繊維案内部と、
前記紡績室に旋回空気流を発生させるノズルが形成されたノズルブロックと、
前記紡績室で空気流に撚られた前記繊維束が通過する中空ガイド軸体と、
を備える第1空気紡績装置と、
前記繊維束に第1方向の旋回空気流を作用させる第1ノズルが形成された第1ノズルブロックと、
前記繊維束に前記第1方向とは反対の第2方向の旋回空気流を作用させる第2ノズルが形成された第2ノズルブロックと、
を備える第2空気紡績装置と、
の少なくとも2種類であり、
前記紡績部が前記第1空気紡績装置によって紡績を行う場合、前記駆動部は前記高速用プーリによって前記ドラフトローラを駆動し、
前記紡績部が前記第2空気紡績装置によって紡績を行う場合、前記駆動部は前記低速用プーリによって前記ドラフトローラを駆動することを特徴とする糸巻取機。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記駆動部の少なくとも一部が取り付けられる、鋳物の一体型ベース体を更に備え、
前記ベース体は、前記格納部の構造体として機能するように設けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記複数の糸巻取ユニットの並設方向に沿って走行可能に設けられ、前記複数の巻取ユニットに対して作業を行う作業台車を更に備え、
前記糸巻取ユニットの並設方向に沿った方向を左右方向、前記左右方向及び上下方向に直交する方向を前後方向とし、前記前後方向において前記機台本体から見て前記糸巻取ユニットが巻き取る糸が走行している側を正面側、反対側を背面側としたときに、
前記機台本体には、前記背面側から前記作業台車を着脱可能とする開放部が設けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項12】
請求項8に記載の糸巻取機による紡績糸の製造方法であって、
前記紡績部が保持可能な空気紡績装置は、
前記繊維束を受け取り紡績室に案内する繊維案内部と、
前記紡績室に空気流を発生させるノズルが形成されたノズルブロックと、
前記紡績室で空気流に撚られた前記繊維束が通過する中空ガイド軸体と、
を備える第1空気紡績装置と、
前記繊維束に第1方向の空気流を作用させる第1ノズルが形成された第1ノズルブロックと、
前記繊維束に前記第1方向とは反対の第2方向の空気流を作用させる第2ノズルが形成された第2ノズルブロックと、
を備える第2空気紡績装置と、
の少なくとも2種類であり、
前記紡績部の空気紡績装置を前記第1空気紡績装置に変更した場合には、前記ドラフトローラを駆動する前記プーリを前記高速用プーリに変更し、
前記紡績部の空気紡績装置を前記第2空気紡績装置に変更した場合には、前記ドラフトローラを駆動する前記プーリを前記低速用プーリに変更することを特徴とする紡績糸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−67882(P2013−67882A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206222(P2011−206222)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】