説明

純水製造装置及び純水製造方法

【課題】ホウ素濃度の低い純水を効率よく製造することができる純水製造装置を提供する。
【解決手段】超純水製造装置は、活性炭装置1と、ヒータ2と、膜式濾過装置3と、原水タンク4と、前処理装置5と、電気脱イオン装置6と、一次純水のサブタンク7とから構成されている。そして、前処理装置5は、第1の逆浸透膜(RO)装置8と、第2の逆浸透膜(RO)装置9と、脱炭酸膜装置10とにより構成されている。この前処理装置5は、原水W0の水質に応じて、塩化物イオン濃度100ppb以下の処理水W1を電気脱イオン装置6の脱塩室に導入し得るように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造システム等に組み込むのに好適な純水製造装置に関し、特にホウ素濃度の低い純水を製造するための純水製造装置に関する。また、本発明は、超純水製造システム等に好適な純水製造方法に関し、特にホウ素濃度の低い純水を製造するための純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超純水製造システムは、通常、前処理システム、一次純水システム、及びサブシステムより構成される。前処理システムは、凝集濾過、MF膜(精密濾過膜)、UF膜(限外濾過膜)等による除濁処理装置、活性炭等による脱塩素処理装置により構成される。
【0003】
一次純水システムは、RO(逆浸透膜)装置、脱気膜装置、電気脱イオン装置等により構成され、ほとんどのイオン成分やTOC成分が除去される。また、サブシステムは、UV装置(紫外線酸化装置)、非再生型イオン交換装置、UF装置(限外濾過装置)等により構成され、微量イオンの除去、特に低分子の微量有機物の除去、微粒子の除去が行われる。このサブシステムで作られた超純水は、ユースポイントに送水され、余剰の超純水はサブシステムの前段のタンクに返送されるのが一般的である。
【0004】
ところで、超純水の要求水質は年々厳しくなり、現在、最先端の電子産業分野ではホウ素濃度10ppt以下の超純水が要求されるようになってきている。このホウ素は、超純水中ではほとんどホウ酸イオンとして存在することになるが、このホウ酸イオンは弱イオンであるので除去するのが難しい。そこで、ホウ素濃度の低い純水を製造するために、RO装置の給水をpH10以上にしてRO装置でのホウ素除去率を向上させることが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、前処理後の処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂と接触させること(特許文献2参照)、原水をRO装置等の脱塩装置で脱塩した後、ホウ素吸着樹脂塔に通水することが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
さらに、原水を前処理装置、2段RO装置、電気再生式脱塩装置等を通水した処理水を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に接触させる超純水製造装置が提案されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特許第3321179号公報
【特許文献2】特許第3200301号公報
【特許文献3】特開平8−89956号公報
【特許文献4】特開平9−192661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された純水製造方法では、RO装置の給水をpH10以上に調整するためにアルカリを使用するか、アニオン交換樹脂塔を設ける必要があり、薬品コスト又は装置的負荷がかかる上に、連続運転ができないという問題点がある。
【0008】
また、特許文献2〜4に記載された純水製造方法は、処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂やホウ素吸着樹脂に流通することにより、ホウ素を除去するものであるが、被処理水のホウ素濃度が高いと、これらホウ素吸着樹脂等が短期間で破過してしまう一方、被処理水のホウ素濃度が、例えば10ppb以下程度の低濃度であると除去率が低下してしまうという問題点がある。さらに、ホウ素吸着樹脂からのTOCの溶出のおそれもあるので、ホウ素吸着樹脂の洗浄、コンディショニングが必要であるという問題点もある。
【0009】
さらに、電気脱イオン装置により、陰イオンであるホウ酸イオンを同時に除去してやることが考えられるが、ホウ酸イオンは弱イオンであるので、電気脱イオン装置の電流密度を上げて運転しても除去率を90%以上にすることは困難である。また、RO装置を組み合わせてもホウ素除去率を98%以上にすることはできない。
【0010】
すなわち、近年、超純水の要求水質は年々厳しくなり、ホウ素濃度100ppt以下、最先端の電子産業分野ではホウ素濃度10ppt以下、場合によっては1ppt以下の水質が要求されるにもかかわらず、簡単な構造でこれを達成できる純水製造装置はなかった。これを電気脱イオン装置において達成するためには少なくとも電気脱イオン装置におけるホウ素除去率を99%以上、特に99.5%以上にすることが必要である。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ホウ素濃度の低い純水を効率よく製造することができる純水製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、ホウ素濃度の低い純水を効率よく製造することができる純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、前処理装置と、前記前処理装置の処理水を脱塩室に受け入れて脱イオン処理を行う電気脱イオン装置とを有する純水製造装置であって、前記前処理装置が、前記電気脱イオン装置の脱塩室に導入する処理水の塩化物イオン濃度を100ppb以下にすることを特徴とする純水製造装置を提供する(請求項1)。
【0013】
上記発明(請求項1)によれば、塩化物イオンはホウ素よりもその除去が容易であり、電気脱イオン装置に導入する処理水の塩化物イオン濃度を100ppb以下にするだけで、電気脱イオン装置におけるホウ素の除去率を99%以上と大幅に向上することができる。
【0014】
上記発明(請求項1)においては、前記前処理装置が、1又は2以上のRO膜装置を備え、前記電気脱イオン装置の脱塩室に導入する処理水の炭酸濃度を1ppm以下にするのが好ましく(請求項2)、かかる発明(請求項2)においては、前記前処理装置が、1又は2以上のイオン交換樹脂塔をさらに備えるのが好ましく、かかる発明(請求項3)においては、前記前処理装置が、脱炭酸膜装置、脱炭酸塔又は真空脱気塔をさらに備えるのが好ましい(請求項4)。
【0015】
上記発明(請求項2〜4)によれば、電気脱イオン装置の脱塩室に導入される処理水の塩化物イオン濃度及び炭酸イオン濃度をさらに低減することができ、電気脱イオン装置におけるホウ素の除去率をさらに向上させることができる。
【0016】
上記発明(請求項1〜4)においては、前記電気脱イオン装置の脱塩水の一部を、前記電気脱イオン装置の濃縮室に前記脱塩室への処理水の導入方向と反対方向から導入するのが好ましい(請求項5)。
【0017】
上記発明(請求項5)によれば、水質の良好な脱塩室の排出水(脱塩水)を脱塩室の出口側から入口側の方向に向けて濃縮室に流通することにより、脱塩室と濃度室との間のホウ素の濃度勾配が緩和されるので、電気脱イオン装置でのホウ素の除去率をさらに向上させることができる。
【0018】
上記発明(請求項1〜5)においては、前記電気脱イオン装置が、複数段直列に設けられているのが好ましい(請求項6)。かかる発明(請求項6)によれば、ホウ素の除去率を99.99%にまで高めることができるので、ホウ素イオン濃度1ppt以下の超純水の供給も可能となる。
【0019】
第二に本発明は、原水を前処理装置で処理し、この処理水を電気脱イオン装置の脱塩室に導入して脱イオン処理を行う純水の製造方法であって、前記前処理装置にて塩化物イオン濃度を100ppb以下にした処理水を、前記電気脱イオン装置の脱塩室に導入することを特徴とする純水製造方法を提供する(請求項7)。
【0020】
上記発明(請求項7)によれば、塩化物イオンはホウ素よりもその除去が容易であり、電気脱イオンに導入する処理水の塩化物イオン濃度を100ppb以下にするだけで、電気脱イオン装置におけるホウ素の除去率を99%以上と大幅に向上することができる。
【0021】
上記発明(請求項7)においては、前記電気脱イオン装置の脱塩水の一部を、前記電気脱イオン装置の濃縮室に前記脱塩室への処理水の導入方向と反対方向から導入するのが好ましい(請求項8)。
【0022】
上記発明(請求項8)によれば、水質の良好な脱塩室の排出水(脱塩水)を脱塩室の出口側から入口側の方向に向けて濃縮室に流通することにより、脱塩室と濃度室との間のホウ素の濃度勾配が緩和されるので、電気脱イオン装置でのホウ素の除去率をさらに向上させることができる。
【0023】
上記発明(請求項7,8)においては、前記電気脱イオン装置が、複数段直列に設けられているのが好ましい(請求項9)。かかる発明(請求項9)によれば、ホウ素の除去率を99.99%にまで高めることができるので、ホウ素イオン濃度1ppt以下の超純水の供給も可能となる。
【0024】
上記発明(請求項9)においては、前記複数段の電気脱イオン装置のうち最後段の電気脱イオン装置の濃縮水を、前記処理水とともに1段目の電気脱イオン装置の脱塩室に導入するのが好ましい(請求項10)。
【0025】
上記発明(請求項10)によれば、最後の電気脱イオン装置の濃縮水は、前処理装置で処理した後の処理水よりもホウ素濃度が低いだけでなく、塩化物イオン濃度が大幅に低いので、これを1段目の電気脱イオン装置の脱塩室に導入することにより、装置の基本構成はそのままで1段目の電気脱イオン装置の脱塩室からの処理水のホウ素濃度をさらに改善することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の純水製造装置によれば、塩化物イオンはホウ素よりもその除去が容易であり、電気脱イオン装置に導入する処理水の塩化物イオン濃度100ppb以下にするだけで、電気脱イオン装置におけるホウ素の除去率を99%以上と大幅に向上することができる。本発明によれば、電気脱イオン装置によりホウ素の大幅な除去が可能となるので、連続運転が可能となるばかりか、アルカリなどの薬品を使わないので環境負荷が少なく、給水(原水)のホウ素濃度の広い領域に対応可能である。また、ホウ素吸着樹脂等に比べて破過が生じないので、数年間に渡り安定的にホウ素濃度の低い純水の供給が可能となる。しかも、電気脱イオン装置を複数段直列に設けることにより、ホウ素イオン濃度を1ppt以下の超純水も供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
〔第一の実施形態〕
以下、本発明の純水製造装置の第一の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る純水製造装置を示すフロー図であり、図2は、本実施形態における電気脱イオン装置を示す概略構成図である。
【0028】
図1に示すように、超純水製造装置は、活性炭装置1と、ヒータ2と、膜式濾過装置3と、原水タンク4と、前処理装置5と、電気脱イオン装置6と、一次純水のサブタンク7とから構成されている。そして、本実施形態においては、前処理装置5は、第1の逆浸透膜(RO)装置8と、第2の逆浸透膜(RO)装置9と、脱炭酸膜装置10とにより構成されている。この前処理装置5は、原水W0の水質に応じて、塩化物イオン濃度100ppb以下の処理水W1が電気脱イオン装置6の脱塩室に導入されるように設計されている。
【0029】
上述したような超純水製造装置において、電気脱イオン装置6は、図2に示すように脱塩室11と濃縮室12とを備え、脱塩室11には、前処理装置5の処理水W1の流路R1が接続される一方、脱塩室11の出口側は脱塩水W2の流路R2となっている。この流路R2からは分岐流路R3が分岐していて、脱塩室11の脱塩水W2の一部を、脱塩室11の出口側から入口側の方向に向けて濃縮室12に導入し、すなわち脱塩室11における処理水W1の流通方向と反対方向から濃縮室12に導入して濃縮水W3を吐出する構成となっている。
【0030】
このような構成を有する超純水製造装置について、その作用を説明する。
まず、原水W0を活性炭装置1において有機物を除去した後、ヒータ2において所定の温度にまで加温した後、膜式濾過装置3で固体微粒子を除去して原水タンク4に一旦貯留する。続いて、この原水W0について前処理装置5で処理を行う。
【0031】
この前処理装置5では、第1の逆浸透膜(RO)装置8と、第2の逆浸透膜(RO)装置9とにより強イオン性の不純物が除去され、さらに、脱炭酸膜装置10により炭酸イオン(CO)が除去される。
【0032】
この前処理装置5は、処理水W1中の塩化物イオン濃度が100ppb以下、好ましくは50ppb以下、特に好ましくは30ppb以下となるように設計する。処理水W1中の塩化物イオン濃度が100ppbを超えていると、後続の電気脱イオン装置6でのホウ素の除去率を99%以上にすることができなくなる。
【0033】
また、処理水W1中のCO濃度は1ppm以下とするのが好ましい。処理水W1中のCO濃度が1ppmを超えると、ホウ素の除去率が99%未満、場合によっては90%未満にまで低下してしまうおそれがある。
【0034】
そして、このような処理水W1を電気脱イオン装置6で処理する。この電気脱イオン装置6では、電流密度300mA/dm以上で運転するのが好ましい。このような電流密度で運転を行うことにより、電気脱イオン装置の性能にもよるが、従来の電気脱イオン装置では達成できなかった99%以上、特に99.5%以上のホウ素除去率とすることができる。
【0035】
このように本実施形態に係る純水製造装置によれば、処理水W1のホウ素濃度が10ppb以下であれば確実にホウ素濃度100ppt以下の脱塩水W2を得ることができる。また、本実施形態に係る純水製造装置のホウ素除去率が99.5%であれば、処理水W1のホウ素濃度が20ppbで、さらに、ホウ素除去率99.8%以上であれば処理水W1のホウ素濃度が50ppbでホウ素濃度100ppt以下の脱塩水W2を得ることができる。しかも、電気脱イオン装置6によりホウ素の十分な除去が可能となるので、連続運転が可能となるばかりか、アルカリ等の薬品を使用しないので環境負荷が少ない。しかも、給水(原水)のホウ素濃度の広い領域に対応可能であり、また、ホウ素吸着樹脂等に比べて破過が生じないので、数年間に渡り安定的にホウ素濃度の低い純水の供給が可能となる。
【0036】
〔第二の実施形態〕
次に本発明の純水製造装置の第二の実施形態について、図3に基づいて説明する。
図3は、第二の実施形態に係る純水製造装置を示すフロー図である。
【0037】
第二の実施形態に係る純水製造装置は、前述した第一の実施形態において、電気脱イオン装置を第1の電気脱イオン装置6A、及び第2の電気脱イオン装置6Bと2段直列に配置し、第2の電気脱イオン装置6Bの濃縮水W3を第1の電気脱イオン装置6Aの前段に設けられた処理水タンクTに返送する以外同様の構成を有する。
【0038】
このような構成を有する超純水製造装置について、その作用を説明する。
まず、原水W0について、活性炭装置1にて有機物の除去処理をした後、ヒータ2にて所定の温度にまで加温した後、膜式濾過装置3にて固体微粒子を除去して原水タンク4に一旦貯留する。そして、この原水W0について前処理装置5で処理を行う。
【0039】
この前処理装置5では、第1の逆浸透膜(RO)装置8と、第2の逆浸透膜(RO)装置9とにより強イオン性の不純物が除去され、さらに、脱炭酸膜装置10により炭酸イオン(CO)が除去される。
【0040】
この前処理装置5は、処理水W1中の塩化物イオン濃度は100ppb以下、好ましくは50ppb以下、特に好ましくは30ppb以下となるように設計する。処理水W1中の塩化物イオン濃度が100ppbを超えていると、後続の電気脱イオン装置6Aでのホウ素の除去率を99%以上にすることができなくなる。
【0041】
そして、このような処理水W1を第1の電気脱イオン装置6A及び第2の電気脱イオン装置6Bで連続的に処理するとともに、濃縮水W3を第1の電気脱イオン装置6Aの前段に設けられた処理水タンクTに返送する。
【0042】
この電気脱イオン装置6A,6Bを、電流密度300mA/dm以上で運転するのが好ましい。電流密度300mA/dm未満では、ホウ素除去率が99%未満となるので好ましくない。具体的には、第1の電気脱イオン装置6Aでは、99%以上のホウ素が、第2の電気脱イオン装置6Bではさらに99%以上のホウ素が除去されることになる。
【0043】
特に、本実施形態においては、第2の電気脱イオン装置6Bの濃縮水W3を第1の電気脱イオン装置6Aの前段に設けられた処理水タンクTに返送しており、この濃縮水W3は処理水W1よりもホウ素濃度が低いので、経時的には処理水タンクTでは、処理水W1よりもさらに塩化物イオン濃度及びホウ素濃度が低下するため、ホウ素濃度1ppt以下の超純水を得ることも可能となる。
【0044】
以上、本実施形態に係る純水製造システムについて図面に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、種々の変更実施が可能である。
【0045】
例えば、前処理装置5は、電気脱イオン装置6に100ppb以下の塩化物イオン濃度の処理水W1を供給でき、かつ所望とするホウ素濃度の純水が得られるように、原水W0の水質に応じて種々設定することができる。
【0046】
具体的には、前処理装置5を
(1)RO装置+脱炭酸膜装置
(2)第1のRO装置+第2のRO装置+脱炭酸膜装置
(3)イオン交換樹脂装置(2B3T)+RO装置+脱炭酸膜装置
(4)イオン交換樹脂装置(4B5T)+RO装置+脱炭酸膜装置
等とすることができる。
【0047】
また、電気脱イオン装置6は、1段であってもよいし、2段あるいは3段以上を直列に設けてもよく、3段以上設けた場合には、最終段の電気脱イオン装置6の濃縮水W3を1段目の電気脱イオン装置の処理水W1に合流させればよい。
【0048】
さらに電気脱イオン装置6としては特に制限はないが、垂直側面は水を透過しないが斜面は水を透過する六角形の部材を脱塩室11に設けたものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、本実施例及び比較例においては、下記の試験装置を用いた。
・電気脱イオン装置(栗田工業社製,製品名:KCDI−UPz−150H,処理水量:150m/hr)
・逆浸透膜装置(日東電工社製,製品名:ES−20)
・脱炭酸膜装置(リキセル社製,製品名:X−50)
【0050】
〔実施例1〕
図1及び図2に示すように、前処理装置5を第1の逆浸透膜(RO)装置8と、第2の逆浸透膜(RO)装置9と、脱炭酸膜装置10とにより構成し、電気脱イオン装置6を1段に配置して純水製造装置を製造した。
【0051】
この純水製造装置により、ホウ素濃度が25ppb、塩化物イオン濃度が11000ppb、CO濃度が8ppmの原水W0を処理したところ、前処理装置5の処理水W1のホウ素濃度は25ppb、塩化物イオン濃度は10ppb、CO濃度は1ppm以下であった。
【0052】
そして、この処理水W1を電気脱イオン装置6で処理した結果、ホウ素濃度が50ppt、塩化物イオン濃度が0.5ppb以下、CO濃度が0.01ppm以下の脱塩水W2が得られた。この際、電気脱イオン装置6でのホウ素除去率は99.8%であった。
【0053】
〔比較例1〕
図4に示すように実施例1において、逆浸透膜(RO)装置を1段構成とした以外は同様の装置構成で純水製造装置を製造した。
【0054】
この純水製造装置により、実施例1と同じ原水W0を処理したところ、前処理装置5の処理水W1のホウ素濃度は25ppb、塩化物イオン濃度は150ppb、CO濃度は1ppm以下であった。
【0055】
そして、この処理水W1を電気脱イオン装置6で処理した結果、ホウ素濃度が500ppt、塩化物イオン濃度が0.5ppb以下、CO濃度が0.01ppm以下の脱塩水W2が得られた。この際、電気脱イオン装置6でのホウ素除去率は98%であった。
【0056】
〔比較例2〕
実施例1において、処理水W1に塩化ナトリウムを添加して前処理装置5の処理水W1の塩化物イオン濃度を150ppbとした以外は同様にして処理を行ったところ、ホウ素濃度が400ppt、塩化物イオン濃度が0.5ppb以下、CO濃度が0.01ppm以下の脱塩水W2が得られた。電気脱イオン装置6でのホウ素除去率は98.4%であった。
【0057】
〔実施例2〕
図3に示すように、前処理装置5を第1の逆浸透膜(RO)装置8と、第2の逆浸透膜(RO)装置9と、脱炭酸膜装置10とにより構成し、電気脱イオン装置を6A,6Bの2段に直列に配置して、第2の電気脱イオン装置6Bの濃縮水W3を第1の電気脱イオン装置6Aの前段に設けられた処理水タンクTに返送する構成として純水製造装置を製造した。
【0058】
この純水製造装置により、ホウ素濃度が25ppb、塩化物イオン濃度が11000ppb、CO濃度が8ppmの原水W0を処理したところ、前処理装置5の処理水W1のホウ素濃度は25ppb、塩化物イオン濃度は30ppb、CO濃度は1ppm以下であった。
【0059】
そして、この処理水W1を電気脱イオン装置6A,6Bで連続的に処理した結果、15時間経過後では、処理水タンクTの処理水のホウ素濃度は20ppb、塩化物イオン濃度は24ppb、CO濃度は0.6ppmであり、1段目の電気脱イオン装置6Aの脱塩水のホウ素濃度は40ppt、塩化物イオン濃度は0.5ppb以下、CO濃度は0.01ppm以下であり、電気脱イオン装置6Aでのホウ素除去率は99.8%であった。さらに2段目の電気脱イオン装置6Bの脱塩水のホウ素濃度は0.4ppt、塩化物イオン濃度は0.5ppb以下、CO濃度は0.01ppm以下であり、電気脱イオン装置6Bでのホウ素除去率は99%であった。
【0060】
〔比較例3〕
実施例2において、処理水タンクTに塩化ナトリウムを添加して電気脱イオン装置6の処理水W1の塩化物イオン濃度を150ppbとした以外は同様にして処理を行ったところ、第1の電気脱イオン装置6Aの脱塩水のホウ素濃度は400ppt、塩化物イオン濃度は0.5ppb以下、CO濃度は0.01ppm以下であり、第1の電気脱イオン装置6Aでのホウ素除去率は98%であった。また、第2の電気脱イオン装置6Bの脱塩水のホウ素濃度は2ppt、塩化物イオン濃度は0.5ppb以下、CO濃度は0.01ppm以下であり、第2の電気脱イオン装置6Bでのホウ素除去率は99.5%であった。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る純水製造装置を示すフロー図である。
【図2】前記実施形態の電気脱イオン装置の脱塩室及び濃縮室を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に係る純水製造装置を示すフロー図である。
【図4】比較例1の純水製造装置を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0062】
5…前処理装置
6…電気脱イオン装置
6A…第1の電気脱イオン装置
6B…第2の電気脱イオン装置
8…第1の逆浸透膜(RO)装置(前処理装置)
9…第2の逆浸透膜(RO)装置(前処理装置)
10…脱炭酸膜装置(前処理装置)
11…脱塩室
12…濃縮室
W3…濃縮水
T…処理水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理装置と、前記前処理装置の処理水を脱塩室に受け入れて脱イオン処理を行う電気脱イオン装置とを有する純水製造装置であって、
前記前処理装置が、前記電気脱イオン装置の脱塩室に導入する処理水の塩化物イオン濃度を100ppb以下にすることを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
前記前処理装置が、1又は2以上のRO膜装置を備え、前記電気脱イオン装置の脱塩室に導入する処理水の炭酸濃度を1ppm以下にすることを特徴とする請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記前処理装置が、1又は2以上のイオン交換樹脂塔をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の純水製造装置。
【請求項4】
前記前処理装置が、脱炭酸膜装置、脱炭酸塔又は真空脱気塔をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の純水製造装置。
【請求項5】
前記電気脱イオン装置の脱塩水の一部を、前記電気脱イオン装置の濃縮室に前記脱塩室への処理水の導入方向と反対方向から導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の純水製造装置。
【請求項6】
前記電気脱イオン装置が、複数段直列に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の純水製造装置。
【請求項7】
原水を前処理装置で処理し、この処理水を電気脱イオン装置の脱塩室に導入して脱イオン処理を行う純水の製造方法であって、
前記前処理装置にて塩化物イオン濃度を100ppb以下にした処理水を、前記電気脱イオン装置の脱塩室に導入することを特徴とする純水製造方法。
【請求項8】
前記電気脱イオン装置の脱塩水の一部を、前記電気脱イオン装置の濃縮室に前記脱塩室への処理水の導入方向と反対方向から導入することを特徴とする請求項7に記載の純水の製造方法。
【請求項9】
前記電気脱イオン装置が、複数段直列に設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の純水の製造方法。
【請求項10】
前記複数段の電気脱イオン装置のうち最後段の電気脱イオン装置の濃縮水を、前記処理水とともに1段目の電気脱イオン装置の脱塩室に導入することを特徴とする請求項9に記載の純水の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−28695(P2009−28695A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198084(P2007−198084)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】