説明

紙容器及び紙容器の製造方法

【課題】バリア性が高く、紙容器の製造工程においてクラック等が入りにくいバリア層を有する紙容器を提供する。
【解決手段】少なくとも、熱可塑性樹脂からなる最外層11、紙基材からなる基材層12、バリア層14、熱可塑性樹脂からなる最内層15、を順次積層した積層体10からなる紙容器であって、バリア層14は、プラスチックフィルム14bの表面に二種類以上の無機酸化物からなる薄膜14aが形成されたものである紙容器により、上記課題を解決する。無機酸化物からなる薄膜14aは、少なくとも酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む薄膜であることが好ましく、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを混合した状態で蒸着したものであることがさらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙容器及び紙容器の製造方法に関し、特に、バリア性の高い紙容器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体用紙容器は、内容物の保存性や容器としての強度等を確保するために各種の積層体を用いて形成されている。この液体用紙容器に用いられる積層体としては、外面シーラント層/紙層/バリア層/内面シーラント層の構成からなる積層体が知られており、具体的には、ポリエチレン(PE)/紙/PE、PE/紙/PE/Al/PE、PE/紙/PE/Al/ポリエステル(PET)/PE、PE/紙/PE/Si/ポリエステル(PET)/PE等の構成からなる積層体が現在、広く使用されている。具体的に、特許文献1には、酸化ケイ素や酸化アルミニウムがフィルムに蒸着されたバリア層が開示されている。特許文献2には、アルミナ蒸着プラスチックフィルムと原紙との積層体を成形してなる紙容器が開示されている。
【特許文献1】特開2002−127329号公報
【特許文献2】特開平8−183139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献2に記載のように、アルミナ蒸着プラスチックフィルムを用いた積層体は、摩擦・屈曲・延伸によりクラックが入り、バリア性の劣化を生じるため、使用できる基材の原紙密度を0.95g/cm以下にする必要があった。これは、積層体に折り目となる罫線を入れる工程や、積層体を折り曲げて組み立てる工程で、クラックが入りやすく、バリア性が低下しやすいことによるものであった。
【0004】
そこで、本発明は、基材の原紙密度を規定することなく、バリア性が高く、紙容器の製造工程においてクラック等が入りにくいバリア層を有する紙容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の紙容器は、少なくとも、熱可塑性樹脂からなる最外層、紙基材からなる基材層、バリア層、熱可塑性樹脂からなる最内層、を順次積層した積層体からなる紙容器であって、前記バリア層は、プラスチックフィルムの表面に二種類以上の無機酸化物からなる薄膜が形成されたものであることを特徴とする。
【0006】
これによれば、複数種類の無機酸化物をバリア層に用いることにより、各無機酸化物の特色を合わせ、バリア性が高く、紙容器の製造工程においてクラック等が入りにくいバリア層を有する紙容器を提供することができる。基材原紙の密度を所定範囲としなくても、このような紙容器を提供することができる。
【0007】
上記本発明の紙容器において、前記無機酸化物からなる薄膜は、少なくとも酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む薄膜であることを特徴とする。
【0008】
これによれば、酸化ケイ素を含むことにより、バリア性が高く積層体を屈曲や延伸等により変形した際にクラック等が入りにくくバリア性の低下が防止される薄膜を形成することができる。また、酸化アルミニウムを含むことにより、全体としての材料費が安価となる。さらに、酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを組み合わせて用いることにより、耐酸性も向上した紙容器を提供することができる。
【0009】
上記本発明の紙容器において、前記無機酸化物からなる薄膜は、前記酸化ケイ素及び前記酸化アルミニウムを混合した状態で蒸着したものであることを特徴とする。
【0010】
これによれば、特に酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを混合した状態で蒸着してバリア層を形成することにより、緻密な構造を取るため、特にバリア性が高く、紙容器の製造工程においてクラック等が入りにくいバリア層を有する紙容器となる。
【0011】
上記本発明の紙容器において、前記プラスチックフィルムは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート又はナイロンであることを特徴とする。これによれば、紙容器の耐熱ピンホール適性が良好となる。
【0012】
上記本発明の紙容器において、前記最内層は、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体からなることを特徴とする。これによれば、シール温度を下げることができるため、熱ピンホールが空きにくくなる。
【0013】
上記本発明の紙容器において、前記基材層と前記バリア層との間に接着層を有することを特徴とする。
【0014】
これによれば、基材層とバリア層との接着性が増し、積層体を変形して紙容器を形成する際等に形状の崩れにくい積層体を製造することができる。また、紙基材が加熱されると、紙基材中に含まれている水分が加熱され、これが蒸気となって積層材の内外面側に抜けようとし、これにより紙基材の内外面に積層されている樹脂フィルムを押し上げて膨らむという発泡化現象が起こるが、接着層はこのような発泡化現象を和らげる層でもある。
【0015】
上記課題を解決する本発明の紙容器の製造方法は、少なくとも、熱可塑性樹脂からなる最外層、紙基材からなる基材層、バリア層、熱可塑性樹脂からなる最内層、を順次積層した積層体からなる紙容器の製造方法であって、プラスチックフィルムの表面に二種類以上の無機酸化物を混合した状態で蒸着して前記バリア層を形成することを特徴とする。
【0016】
これによれば、複数種類の無機酸化物を混合した状態でプラスチックフィルムに蒸着してバリア層に用いることにより、各無機酸化物の特色を合わせ、バリア性が高く、紙容器の製造工程においてクラック等が入りにくいバリア層を有する紙容器を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の紙容器によれば、複数種類の無機酸化物をバリア層に用いることにより、各無機酸化物の特色を合わせ、バリア性が高く、紙容器の製造工程においてクラック等が入りにくいバリア層を有する紙容器を提供することができる。また、上記本発明の紙容器の製造方法によっても、同様の紙容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面を参照して説明する。図1は本発明の容器を形成する積層体の層構成の一例を示す説明図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の紙容器を形成する積層体10は、少なくとも、熱可塑性樹脂からなる最外層11、紙基材からなる基材層12、バリア層14、熱可塑性樹脂からなる最内層15、が順次積層されている。また、図1に示すように、この積層体10には、基材層12とバリア層14との間に接着層13を有することが好ましい。以下に、積層体10を構成する各層について説明する。
【0020】
最外層11は、熱硬化性樹脂からなり、基材層12の外部を保護すると共に、積層体10の端の部分においては、加熱されて後述する最内層15と貼り合わせられる。熱硬化性樹脂としては、主にポリエチレンが用いられ、低密度ポリエチレン(LDPE)、具体的には高圧法エチレン単独重合体、あるいはエチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1等のエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンが好適に用いられる。この熱可塑性樹脂の密度は、特に限定されないが、通常、0.88〜0.930g/cm程度であり、そのメルトインデックスM.I.も、特に限定されないが、通常、0.1〜20程度である。
【0021】
最外層11の形成方法は、特に限定されないが、例えば、基材層12の一方の面に押出コートすることにより形成される。最外層11は、紙容器の表面となる層であるが、さらに表面に印刷層を設けることができ、印刷層に用いられる印刷インキの密着性の向上を図るために表面に例えばコロナ処理等の表面処理を施すことが好ましい。最外層11の厚さは、特に限定されないが、通常、10〜50μm程度である。
【0022】
基材層12は紙基材からなり、この紙基材は、紙容器を構成する基本素材となることから賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができる。紙基材としては、例えば、主強度材であり、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは、純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、ミルク原紙等の各種の紙基材を使用することができる。基材層12は、これらの紙基材を複数層重ねたものであってもよい。また、紙基材は、秤量80〜600g/m程度、好ましくは秤量100〜450g/m程度であり、厚さ80〜800μm程度、好ましくは100〜600μm程度のものを使用することができる。なお、紙基材には、例えば、文字、図形、記号、その他の所望の絵柄を通常の印刷方式にて任意に形成することができる。
【0023】
接着層13は、本発明の紙容器を形成する積層体10に任意に設けられる層であり、無機酸化物の蒸着層14aと基材層12とを強固に接着するために用いられる。接着層13の材料としては、酸コポリマー(又はターポリマー)を代表とするEMAA、EAAや密度0.915g/cm以下のLLDPE、完全無添加のLLDPE、LDPE、アイオノマー樹脂、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、無水マレイン酸等が用いられる。また、上述の酸コポリマー系接着樹脂としては、例えば、エチレン・メタアクリル酸コポリマー、エチレン・メタアクリル酸エステルコポリマー、エチレン・メタアクリル酸・メタアクリル酸エステルターポリマー、上述のコポリマーにエチレン・メタアクリル酸コポリマーを混合した樹脂等が用いられる。接着層13の材料としては、EMAAに代表される酸コポリマー若しくはターポリマーが好ましく用いられる。
【0024】
接着層13の形成方法は、特に限定されないが、例えば、基材層12の最外層11を有しない面に押出コートすることにより形成される。接着層13の押出し温度は、バリア性の劣化を防止する為、樹脂温度を300℃以下にする事が望ましい。接着層13の厚さは、特に限定されないが、通常、15〜100μm程度である。
【0025】
また、接着層13は、基材層12とバリア層14とを接着させる役割以外に、紙基材12が加熱されると、紙基材中に含まれている水分が加熱され、これが蒸気となって積層材の内外面側に抜けようとし、これにより紙基材12の内外面に積層されている樹脂フィルムを押し上げて膨らむという発泡化現象(バブリング)を和らげる作用もある。このバブリングを抑えるには、接着層13の厚みを20μm以上にすることが望ましい。300℃以下に押出しを行っても、厚みが厚い場合にはバリア劣化を起こす場合が有るので、予め、基材層12に厚く樹脂を押出し、その後、基材層12のPE面と蒸着フィルムを低膜厚でサンドラミしても良い。その際、予め、バリア層14にポリエチレンイミン等をコーティングしておくと、低密度ポリエチレン等の樹脂でも容易に接着する。
【0026】
なお、紙層12と後述するバリア層14とを接着層13を用いて積層する際には、紙層12の表面には、コロナ処理、火炎処理、アンカーコート処理等の表面処理を行うことが好ましく、バリア層14の表面にはインラインでコロナ処理、接着層13のバリア層14側にはオゾン処理等を行うことが好ましい。
【0027】
バリア層14は、気体(酸素や二酸化炭素)や液体の透過を防止し、内容物の風味等を保持するために設けられる。バリア層14としては、プラスチックフィルム14bの表面に二種類以上の無機酸化物からなる薄膜14aが形成されたものが用いられる。なお、薄膜14aが基材層12と接する側となる。
【0028】
薄膜14aの無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。このうち、二種類以上の無機酸化物を選択してプラスチックフィルム14b上に薄膜14aが形成される。酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの二種類の無機酸化物からなる薄膜14a(二元系無機酸化物による薄膜)が好ましく用いられる。なお、これらの無機酸化物の薄膜14aが形成できるよう、薄膜14aの原料として、酸化ケイ素には、SiOやSiO等の各種ケイ素酸化物やその混合物等が用いられ、酸化アルミニウムには、AlOやAl等の各種アルミニウム酸化物やその混合物等が用いられ、酸化マグネシウムには、MgO等が用いられる。
【0029】
酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを併用する場合には、薄膜14a中に占める酸化アルミニウムの含有量が10〜60質量%であるのが好ましい。酸化アルミニウムの含有量が10質量%未満であるとガスバリア性が劣り、60質量%を超えると蒸着膜の柔軟性が低下し、作製した積層体10の曲げや寸法変化に弱くなるため、バリア劣化を起こしやすい。なお、この酸化アルミニウムの含有量は従来公知の手法により測定できる。
【0030】
酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを併用する場合には、硬くクラックが入りやすい酸化アルミニウムに対し、酸化ケイ素を添加することにより、柔らかく、緻密な薄膜14aが形成され、バリア性がよく対屈曲性が良好なバリア層14を形成することができる。さらに、このような薄膜14aを用いた場合には、薄膜14aが無色透明である、作製した積層体10の屈曲・延伸によるバリア劣化が小さい、原料にセラミック(金属酸化物)を使用しているため、金属アルミを酸化させて形成した酸化アルミ膜と比較して優れた耐酸性を有する、材料が安価である等の利点を有する。
【0031】
なお、酸化ケイ素のみを蒸着した薄膜においては、バリア性は高いが、蒸着層が黄色味を呈していたり、酸化ケイ素が高価であったり、均一なバリア層を得るためには膜厚を厚くする必要があるため製膜に時間がかかり、生産性が低い場合がある。また、酸化アルミニウムのみを蒸着した薄膜においては、バリア性のある蒸着層を形成することができ、透明性が高く、材料が安価であるものの、膜質が堅く、もろいために積層体10に罫線を入れる工程や積層体10を折り曲げて紙容器を組み立てる工程で摩擦・屈曲・延伸によりクラックが入り易く、バリア低下を招き易い。
【0032】
薄膜14aの形成方法は、複数種類の薄膜材料となる無機酸化物を同時に用いて薄膜を形成する手法であれば特に限定されないが、蒸着法、具体的に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、あるいはCVD法(化学蒸着法)等が用いられる。酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを混合した状態で蒸着して薄膜14aを形成することが好ましく、例えば、真空蒸着法を用いて薄膜14aを形成する場合には、蒸着原料としてSiOとAlの混合物、あるいはSiOとAlの混合物等を用いることが好ましい。多元蒸着を用いることにより、コストを低減でき、バリア性を高めることができる。
【0033】
無機酸化物からなる薄膜14aの膜厚は、100〜5000A(オングストローム)とする。膜厚が100A未満ではガスバリア性が劣り、5000Aを超えても相対的にバリア性が向上しないとともに、作製した積層体10の曲げや寸法変化に弱くなり、クラックが入りやすくなる。
【0034】
プラスチックフィルム14bは、プラスチックからなるフィルムであれば特に限定されないが、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等からなるフィルムが用いられる。このうち、プラスチックフィルム14bとして、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、ナイロンを用いることが好ましく、このプラスチックフィルムを用いることにより、耐熱ピンホール適性が良好となる。また、無機酸化物を多元蒸着したプラスチックフィルム14bを紙容器の積層体10のバリア層14として用いることにより、安価で成形時に罫線等によるクラックが入りにくい。なお、これに対し、アルミナ蒸着を用いた場合には罫線を入れたり、成形時にクラックが入る為、蒸着層以外にバリア性コート層を積層させる事により、バリア劣化を補う必要が有った。また、シリカ蒸着フィルムの場合、そのようなバリア劣化は、少なくなるものの、コストが高くなっていた。
【0035】
なお、バリア層14における蒸着層は、紙側に向けることが好ましい。なお、蒸着層を内容物側にした場合には、バリア層14に香気成分等が溜まり易くなり、デラミネーション等を生じる場合がある。
【0036】
最内層15は、熱硬化性樹脂からなり、バリア層14上に積層され、紙容器の内容物と接すると共に、積層体10の端の部分においては、加熱されて上述の最外層11と貼り合わせられる。最内層15は、積層体10を紙容器に組み立てて、内容物を充填後に、漏れ等がなく密封性が高い熱シールが可能であること、そして同時に、内容物に接する層として内容物の香料等を吸着しにくいこと等が要求される。最内層15は複数の層からなっていてもよい。
【0037】
熱硬化性樹脂としては、主にポリエチレンが用いられ、低密度ポリエチレン(LDPE)、具体的には高圧法エチレン単独重合体、あるいはエチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1等のエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンが好適に用いられる。熱可塑性樹脂としては、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることが好ましく、この樹脂を用いることにより、シール温度を下げることができるため、熱ピンホールが空きにくくなる。この熱可塑性樹脂の密度は、特に限定されないが、通常、0.88〜0.920g/cm程度であり、そのメルトインデックスM.I.も、特に限定されないが、通常、0.2〜20程度である。
【0038】
最内層15が二層以上からなる場合の内容物と接しない層は、通常、低密度ポリエチレン(LDPE)あるいは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなり、例えば、高圧法エチレン単独重合体、あるいはエチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1等のエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンが好適に用いられる。
【0039】
最内層15の厚さは、上述の機能を有する範囲であれば特に限定されないが、通常、全体で30〜100μm程度とする。最内層15を二層で形成する場合には、内面側の層の厚さを5〜20μm程度とし、外面側の層の厚さを25〜95μm程度とする。なお、内面側の層に関しては、メタロセン系線状低密度ポリエチレンを用いると、滑りが悪くなる為、スリップ剤(有機系、無機系)を添加することが好ましい。スリップ剤としては、特に、無機系のシリカ系スリップ剤が好ましく用いられる。このシリカ系スリップ剤を用いた場合には、シリカを表面に析出させる為に内面側の層の厚さを5〜10μmとすることが好ましい。
【0040】
最内層15は、220〜350℃に溶融して押出しコーティングされるが、二層以上からなる場合には、所定の順の層となるように共押出しで積層したフィルムとすることもできる。共押出フィルムは、たとえばTダイ又はインフレーション法により共押出しして形成される。
【0041】
この共押出しフィルムの最内層15とバリア層14との積層は、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂によるサンドラミネート、あるいは、エステル系アンカーコート剤等の接着剤を使用したドライラミネートにより行われる。このとき、バリア層14及び最内層15の表面にはコロナ処理、火炎処理、オゾン処理、アンカーコート処理等の表面処理を行うことが好ましい。最内層15とバリア層14との間に接着剤等による層が形成される場合には、接着剤等の塗布量は、0.1〜10g/m程度とする。
【0042】
これらの層構成からなる積層体10の厚さも、特に限定されないが、通常、250〜800μm程度である。
【0043】
本発明の紙容器の製造方法は、少なくとも、熱可塑性樹脂からなる最外層11、紙基材からなる基材層12、バリア層14、熱可塑性樹脂からなる最内層15、を順次積層した積層体10からなる紙容器を、プラスチックフィルム14bの表面に二種類以上の無機酸化物を混合した状態で蒸着して薄膜14aを形成したバリア層14を形成する工程を含めて製造する。積層体10を用いた紙容器の製造は、通常、次のようにして行われる。すなわち、前述の層構成からなる積層体10のシートの外面に印刷を行った後、打ち抜き、端面をスカイブ・ヘミングして内容物が端面に接触しないようにし、充填装置内で底部及びトップ部を熱風加熱、火炎加熱等によりヒートシールして紙容器とする。
【0044】
この紙容器の形状については、用途・目的等に応じて適宜決定すればよく、例えばゲーベルトップタイプ、ブリックタイプ、フラットタイプ等が挙げられ、また、角形容器、丸形等の円筒状の紙缶等が挙げられる。この紙容器の注出口には、たとえばポリエチレン製のキャップ、プルタブ型の開封機構等を適宜に設けてもよい。
【0045】
紙容器の内容物も、特に限定されず、各種の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品等の雑貨品、その他等の種々の物品を内容物とすることができる。また、紙容器は、特に、例えば、酒、果汁飲料等のジュース、ミネラルウォーター、醤油、ソース、スープ等の液体調味料、あるいは、カレー、シチュー、スープ、その他等の種々の液体飲食物を充填包装する包装用容器として有用なものである。
【実施例】
【0046】
(実施例)
秤量400g/mのミルク原紙の一方の面に、低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I;3.7)を押出コートして厚さ20μmの最外層を形成した。
【0047】
次いで、バリア層として、厚さ12μmの酸化ケイ素(SiO)及び酸化アルミニウム(Al)の二元系で蒸着したポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(なお、シリカアルミ蒸着層300Å(オングストローム)、PETフィルム約12μm、蒸着層における酸化アルミニウムの割合20質量%)を準備し、シリカアルミ蒸着層にインラインでコロナ処理を施し、また、上記ミルク原紙の他方の面にフレーム処理を施し、アルミ蒸着層とミルク原紙とを対向させた。そして、アルミ蒸着層とミルク原紙の層間にEMAA樹脂(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、N0908C)を厚さ20μmで押出コートし、接着層として、ミルク原紙とバリア層とをサンドイッチラミネートにより貼り合わせた。
【0048】
さらに、上記のミルク原紙と貼り合わせたバリア層側に、低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I;3.7)を押出コートして厚さ20μmの中間ポリエチレン層を形成し、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を外側、メタロセン型直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を最内層とした共押し出しフィルム(厚さ40μm、外:内=30μm:10μm、株式会社DNPテクノフィルム製、型番:DYS−01N)をサンドイッチラミネートにより貼り合わせた。
【0049】
このようにして、PE20μm/ 紙400g/m /EMAA20μm/(アルミシリカ蒸着層300Å/PET約12μm 合計12μm)/PE20μm/(LLDPE30μm/メタロセン系LLDPE10μm 合計40μm)の順に積層された積層体を製造した。
【0050】
この積層体から85角1.8Lゲーベルトップ型の液体紙容器の形状に合わせて、縦あるいは横または斜め等に折り罫を刻設すると共に打ち抜き加工して、糊代部を有するブランク板を製造した。次いで、上記で製造したブランク板の端面に、内容物の浸透、液漏れ等を防止するために、スカイブ・ヘミング処理を施して端面処理を行った。次に、 糊代部にホットエアー処理を行い、該糊代部の低密度ポリエチレンフィルムを溶融し、その溶融面に、上記のブランク板の他方の端部を重ね合わせてその両者を貼り合わせて胴貼りシール部を形成して筒状のスリーブを形成し、紙容器を作製した。これを実施例1の紙容器とする。
【0051】
(実施例2)
シリカアルミ蒸着層における酸化アルミニウムの割合を40質量%とした他は、実施例1と同様にして、実施例2の紙容器を作製した。
【0052】
(比較例1)
シリカアルミ蒸着層における酸化アルミニウムの割合を100質量%とし、すなわち、酸化アルミニウムのみの蒸着層とした他は、実施例1と同様にして、比較例1の紙容器を作製した。
【0053】
(評価方法)
各実施例、比較例の紙容器についてバリア性を評価した。バリア性は、積層体に罫線を入れて紙容器を成形した後に、温度23℃、湿度90%RHの条件下で、米国モコン(MOCON)社製の測定機を用いて酸素透過度(容器あたりの酸素バリア性)を測定した。上述の85角1.8Lの容器のバリア性を測定した。このときの酸素透過度を表1に示す。表1に示すように、比較例1の紙容器では、罫線等によりバリア層が割れて酸素バリア性が劣る結果となった。
【0054】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の紙容器を形成する積層体の層構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 積層体
11 最外層
12 基材層
13 接着層
14 バリア層
14a 蒸着層
14b フィルム
15 最内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、熱可塑性樹脂からなる最外層、紙基材からなる基材層、バリア層、熱可塑性樹脂からなる最内層、を順次積層した積層体からなる紙容器であって、
前記バリア層は、プラスチックフィルムの表面に二種類以上の無機酸化物からなる薄膜が形成されたものであることを特徴とする紙容器。
【請求項2】
前記無機酸化物からなる薄膜は、少なくとも酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含む薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
前記無機酸化物からなる薄膜は、前記酸化ケイ素及び前記酸化アルミニウムを混合した状態で蒸着したものであることを特徴とする請求項2に記載の紙容器。
【請求項4】
前記プラスチックフィルムは、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート又はナイロンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の紙容器。
【請求項5】
前記最内層は、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン・α−オレフィン共重合体からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の紙容器。
【請求項6】
前記基材層と前記バリア層との間に接着層を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の紙容器。
【請求項7】
少なくとも、熱可塑性樹脂からなる最外層、紙基材からなる基材層、バリア層、熱可塑性樹脂からなる最内層、を順次積層した積層体からなる紙容器の製造方法であって、
プラスチックフィルムの表面に二種類以上の無機酸化物を混合した状態で蒸着して前記バリア層を形成することを特徴とする紙容器の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−176539(P2007−176539A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376454(P2005−376454)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】