説明

紙幣入出金装置

【課題】
保守・運用における係員の作業効率を向上させることができる紙幣入出金装置を提供することにある。
【解決手段】
受け入れた紙幣又は放出する紙幣を収納するスタッカと、前記スタッカから紙幣を搬送し又は前記スタッカに紙幣を搬送する第一の紙幣搬送路を有するスタッカ搬送路部と、前記スタッカを収納するトレイと、前記スタッカ及び前記トレイが収納される金庫と、前記スタッカ搬送路部を保持する、第一の保持機構及び第二の保持機構とを備えた着脱手段と、を有する下部ユニットと、前記第一の紙幣搬送路と接続する第二の搬送路を有する上部ユニットと、前記第一の保持機構又は前記第二の保持機構の一方による前記スタッカ搬送路部の保持が解除されたことを検知した場合、他方による前記スタッカ搬送路部の保持の解除を制限する制御部と、を備えたことを特徴とする紙幣入出金装置により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣の入出金を行なう紙幣入出金装置において、スタッカ着脱時の操作性と金庫内に収納されているスタッカやスタッカ搬送路部でジャム等の異常が発生した時の保守性向上のために有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金融機関やコンビニエンスストア等の店舗に設置されるATMやCD等の現金自動取引装置に実装される紙幣入出金装置は、紙幣を収納するスタッカを、紙幣入出金装置の下部に配置されたスタッカ収納部(トレイ)に並べて収納し、複数のスタッカを収納したトレイ及び複数のスタッカから紙幣を搬送するスタッカ搬送路部を下部ユニットとして金庫内に収納、格納する構造を採用している。一方、紙幣入出金口、紙幣判別部等の機構部は、紙幣入出金装置の上部に集めて上部ユニットとして配置するのが一般的となっている。
【0003】
このような形態をとる紙幣入出金装置の保守・運用においては、係員は、下部ユニットをスライドし、引き出し、あるいは押し出し、下部ユニットのトレイ上方に配置されたスタッカ搬送路部を開閉させることでスタッカ着脱やジャム紙幣の除去等を行なうことが一般的となっていた。
【0004】
このような従来の装置としては、例えば特開2006-111446(特許文献1)に示される紙幣入出金装置提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-111446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された紙幣入出金装置において、係員が、スタッカの着脱を行なうためには、下部ユニットを金庫内から引き出した後、トレイ上方に配置されたスタッカ搬送路部を開放する必要がある。スタッカ搬送路部は、全スタッカの共通搬送路として構成されており、その重量が重くなる傾向がある。これらのため、スタッカ着脱の操作性は非常に悪く、係員の作業効率が低下することとなる。
【0007】
また、スタッカ着脱時の操作性を確保するために、スタッカ搬送路部を上部ユニットと一体で構成し、金庫内には、トレイのみをスライド可能とすることがある。この場合、セキュリティを確保する上で、金庫の開口面積を大きくできない制約があるため、金庫内のスタッカと金庫外に配置されたスタッカ上部搬送路とを接続する接続搬送路を、スタッカ毎に配置する必要が生じる。また、接続搬送路でジャム等の異常が発生した場合には、上部ユニットを引き出し、上部ユニットの下面からジャム紙幣の除去等の操作が必要となる。また、トレイを紙幣入出金装置から引き出すと金庫内部へジャム等で残留した紙幣が落下するなどが生ずることがある。これらのため、保守性が悪く、係員の作業効率が低下することとなる。
【0008】
本発明の目的は、紙幣入出金装置のスタッカ搬送路部を着脱可能とすることにより、保守・運用における係員の作業効率向上を可能とする紙幣入出金装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、受け入れた紙幣又は放出する紙幣を収納するスタッカと、前記スタッカから紙幣を搬送し又は前記スタッカに紙幣を搬送する第一の紙幣搬送路を有するスタッカ搬送路部と、前記スタッカを収納するトレイと、前記スタッカ及び前記トレイが収納される金庫と、前記スタッカ搬送路部を保持する、第一の保持機構及び第二の保持機構とを備えた着脱手段と、を有する下部ユニットと、前記第一の紙幣搬送路と接続する第二の搬送路を有する上部ユニットと、前記第一の保持機構又は前記第二の保持機構の一方による前記スタッカ搬送路部の保持が解除されたことを検知した場合、他方による前記スタッカ搬送路部の保持の解除を制限する制御部と、を備えたことを特徴とする紙幣入出金装置により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、スタッカ着脱の操作性を向上すると共に、ジャム除去等における保守性を向上することで、係員の作業効率を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】現金自動取扱装置101の外観を示す斜視図である。
【図2】現金自動取扱装置101の制御関係を示す制御ブロック図である。
【図3】紙幣入出金装置1の側面図である。
【図4】紙幣入出金装置1の制御関係を示すブロック図である。
【図5】本実施形態を示す図である。
【図6】本実施形態の着脱動作を示す図である。
【図7】本実施形態の着脱動作を示す図である。
【図8】実施形態の引き出し制限機構13a、13bの制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、現金自動取引装置101の外観を示す。また、図2は、現金自動取引装置101の制御関係を示す制御ブロック図である。図1、図2を用いて、カード、紙幣、明細票を媒体とし、預け入れ、支払い、振り込みなどの処理を行なう現金自動取引装置101について説明する。
【0014】
現金自動取引装置101は、利用者の取引カードや取引明細票を処理するカード/明細票処理部102、通帳を処理する通帳処理部103、装置を覆う筐体101c、顧客に必要な情報を表示しあるいは必要な情報を入力させる顧客操作部105、紙幣を入出金する紙幣入出金装置1、外部とのデータ送受信を行う外部インターフェース部106、保守時に係員が使用する係員操作部108、各装置の基本情報やプログラム等を記憶する記憶部109、これらを制御する本体制御部107、及び上記各部に電力を供給する電源部110から構成される。なお、図1では、インターフェース部106、係員操作部108、記憶部109、本体制御部107、電源部110は省略している。
【0015】
図3は、図1の現金自動取引装置101に実装される紙幣入出金装置1の構成を示す側面図である。図3の右側が、取引時に利用者の立つ装置前方側に相当する。
【0016】
紙幣入出金装置1は、大別して、上部ユニット1aと下部ユニット1bとに分割されて構成されている。上部ユニット1aは、主に利用者との紙幣の授受に必要な機構が集められている。下部ユニット1bは、入金取引において入金された紙幣あるいは出金取引において出金する紙幣を収納するスタッカが、金庫10内に複数個設けられている。以下、上部ユニット1aと下部ユニット1bとについて、詳細を説明する。
【0017】
上部ユニット1aは、紙幣の受け入れ・放出を行なう入出金口20と、紙幣の判別を行なう紙幣判別部30と、入金した紙幣を取引成立まで、一時的に収納する一時保管庫40と、出金に供しない紙幣を収納するリジェクト庫60と、各部を制御する制御部19とから構成される。なお、図3では制御部19は省略している。また、入出金口20は、処理に応じて可動する仕切り板20aを有し、仕切り板20aの前方が紙幣繰出し部、後方が紙幣集積部となっている。
【0018】
続いて、上部ユニット1aの各部へ紙幣を搬送する紙幣搬送路(第二の紙幣搬送路ともいう。)について説明する。紙幣搬送路は、複数の搬送路と、搬送される紙幣を行き先に応じて振り分ける振り分けゲートから構成される。上部ユニット1aの紙幣搬送路は、入出金口20の紙幣繰り出し部と紙幣判別部30とを繋ぐ搬送路51a、51b、振り分けゲート50aと紙幣判別部30とを繋ぐ搬送路51c、振り分けゲート50aと振り分けゲート50bとを繋ぐ搬送路51d、振り分けゲート50bと一時保管庫40とを繋ぐ搬送路51e、振り分けゲート50bと入出金口の紙幣集積部とを繋ぐ搬送路51f、振り分けゲート50aとリジェクト庫60とを繋ぐ搬送路51gから構成されている。以下、この上部ユニット1aの紙幣搬送路を紙幣搬送路51と総称する。入出金口20と紙幣判別部30とを繋ぐ搬送路51a、51bの途中に、下部ユニット1bへ紙幣を振り分けるための振り分けゲート50cが設けられている。振り分けゲート50cの下側には、下部ユニット1bと紙幣の受け渡しを行なう接続搬送路57が、金庫10に設けられている。
【0019】
次に、下部ユニット1bについて説明する。金庫10に収納される下部ユニット1bは、金種別に紙幣を収納するスタッカ71a〜71d、及びリサイクルに供しない紙幣を収納する収納専用庫61を実装したスタッカ収納部9(トレイとも言う。)と、前記各スタッカ71a〜71d、前記収納専用庫61の上側に配置されるスタッカ搬送路部8とから構成される。このスタッカ搬送路部8は、搬送路51h(第一の紙幣搬送路ともいう)と、スタッカ71a〜71d及び収納専用庫61の紙幣の出入口の上側に、スタッカ71a〜71d及び収納専用庫61のそれぞれに収納すべき紙幣を振り分けるための振り分けゲート50d〜50hとから構成される。本実施形態のスタッカ搬送路部8は、スタッカ71a〜71dから接続搬送路57に紙幣を搬送すると共に、接続搬送路57からスタッカ71a〜71d及び収納専用庫61に紙幣を搬送する双方向搬送路である。なお、少なくとも搬送路51b、搬送路51c、搬送路51d、搬送路51e、及び接続搬送路57も、紙幣を前後どちらの方向にも搬送可能な双方向搬送路で構成されているが、搬送路の搬送方向は、紙幣入出金装置の構成、用途により異なるため、本実施形態において記載されている搬送方向に限るものではない。また、搬送路には紙幣の搬送を監視するセンサが設けられており、ジャム等の発生を検知することが可能になっている。
【0020】
これらの上部ユニット1a及び下部ユニット1bは、図示しないロック機構により、それぞれ現金自動取引装置101に締結されている。ロック機構を解除することにより、ジャム紙幣除去やスタッカ71a〜71d及び収納専用庫61の着脱のために、上部ユニット1aあるいは下部ユニット1bを装置外にそれぞれ引き出すことが可能となる。特に、下部ユニット1b又はトレイ9は、金庫内に保管されているため、係員は、金庫扉10aを開き、15aの方向に引き出し、スタッカ搬送路部8のジャム紙幣の除去やスタッカ71a〜71d及び収納専用庫61の紙幣の補充/回収を行なう。また、作業終了後、係員は、下部ユニット1b又はトレイ9を15bの方向に戻し、金庫扉10aを閉めて、作業を終了とする。
【0021】
図4は、図3を用いて説明した紙幣入出金装置1の制御関係を示す制御ブロック図である。
【0022】
紙幣入出金装置1の制御部19は、回線を介して現金自動取引装置101の本体制御部107と接続され、本体制御部107からの指令に応じて制御を行なう。また、制御部19は、紙幣入出金装置1の状態を本体制御部107に送信するとともに、紙幣入出金装置1の取引、処理に応じて各部の制御を行なう。なお、紙幣入出金装置1の入出金口20、紙幣判別部30、一時保管庫40(一時保留部ともいう)、紙幣搬送路51、リジェクト庫60、収納専用庫61、スタッカ71a〜71d等のユニットは、図示しない駆動モータ、電磁ソレノイドなどが、制御部19により駆動制御されることにより動作するようになっている。
【0023】
次に、紙幣入出金装置1の主な処理である入金取引処理と出金取引処理について説明する。
【0024】
最初に、入金取引処理について説明する。入出金口20から繰り出された紙幣は、搬送路51a、51bを通して紙幣判別部30に搬送される。搬送された紙幣は、紙幣判別部30に実装されるセンサ等により、その真偽や正損状態が判別される。また、制御部19は、紙幣の判別結果に基づき、紙幣の種類ごとの枚数を計数するとともに、当該紙幣の受け入れ可否、搬送先を判断し、図示しない記憶部に、紙幣情報として紙幣の真偽や正損状態、紙幣の受け入れ可否、搬送先を記憶させる。判別された紙幣は、搬送路51cによって、振り分けゲートの50aを経由し、振り分けゲート50bに搬送される。
【0025】
振り分けゲート50bに搬送された紙幣は、前述の記憶部に記憶された紙幣情報に基づき振り分けられる。すなわち、紙幣情報において受け入れ可能である紙幣は、搬送路51e経由して、一時保管庫40に搬送され、一旦収納される。一方、受け入れ不可の紙幣は、入出金口20の後部に構成された紙幣集積部に搬送され、入金処理におけるリジェクト紙幣として集積される。
【0026】
紙幣入出金装置1は、計数した紙幣の金額が、利用者により確定される(入金取引OKと判断される)と、一時保管庫40に一旦収納されていた紙幣を、収納した時の順番とは逆の順番で双方向搬送路51eに繰り出す。搬送路51eに繰り出された紙幣は、収納した時とは逆方向に搬送され、振り分けゲート50a、紙幣判別部30、搬送路51bと経由し、接続搬送路57方向に切替えられた振り分けゲート50cに従い、下部ユニットに搬送される。下部ユニットに搬送された紙幣を、紙幣入出金装置1は、図示しない記憶部に記憶された搬送先に搬送するように、振り分けゲート50d〜50hを切替え、リジェクト庫60、スタッカ71a〜71dのいずれかに搬送、収納し、入金取引処理を終了する。
【0027】
次に、出金取引処理について説明する。出金取引処理においては、紙幣入出金装置1は、顧客操作部105から利用者に入力された出金情報に基づき、金種別に紙幣が収納されているスタッカ71a〜71dから所定の枚数ずつ紙幣を繰り出す。繰り出された紙幣は、搬送路51h、搬送路57、搬送路51b、紙幣判別部30の順に搬送され、紙幣判別部30にて1枚ずつ判別される。また、制御部19は、紙幣の判別結果に基づき、紙幣の種類ごとの枚数を計数するとともに、当該紙幣の出金可否、搬送先を判断する。出金不可と判断された紙幣は、リジェクト庫60方向に切替えられた振り分けゲート50aに従い、リジェクト庫60に搬送され、集積される。一方、出金可能と判断された紙幣は、振り分けゲート50a,50bを経由して、入出金口20の紙幣集積部に搬送され、集積される。紙幣入出金装置1は、入出金口20の上面のシャッタを開くことにより、入出金口20の紙幣集積部に集積された紙幣を利用者に放出し、出金取引処理を終了する。
【0028】
続いて、紙幣入出金装置1のスタッカ搬送路部8の着脱手段について説明する。以下では、着脱手段の一例として、保持機構と、その受け部からなる構成について説明する。
【0029】
図5は、紙幣入出金装置1の下部ユニット1bの詳細を示した側面図である。下部ユニット1bのトレイ9は、スタッカ搬送路部8を着脱するための部位11a〜11g(以下、保持機構11と総称する。)を、金庫10は、スタッカ搬送路部8を着脱するための部位12a〜12g(以下、保持機構12と総称する。)をそれぞれ備える。またスタッカ搬送路部8は、保持機構11および保持機構12によって保持されるための受け8a〜8dを備える。なお、保持機構11及びその受け部8a、8bは第一の着脱手段、保持機構12及びその受け部8d、8cは第二の着脱手段ともいう。
【0030】
保持機構11は、保持部材11b、11c、回転支点11d、11e、ピン11f、11g、及び保持部材11b、11cとピン11f、11gを介してそれぞれ接続される操作部11aにより構成される。保持部材11b、11cは、トレイ9に取り付けられた回転支点11d、11eを中心に回転し、スタッカ搬送路部8に備えられた前記受け部8a、8bを保持する。
【0031】
保持機構12は、保持部材12b、12c、回転支点11d、11e、ピン12f、12g、及び保持部材12b、12c、ピン12f、12gを介してそれぞれ接続される操作部12aにより構成される。保持部材12b、12cは、金庫10に取り付けられた回転支点12d、12eを中心に回転し、スタッカ搬送路部8に備えられた前記受け部8c、8dを保持する。
また、保持機構11および保持機構12は、図示しないアクチュエータを動作させることにより保持機構11及び保持機構12の保持状態の解除を制限又は許可する引き出し制限機構13a、13bをそれぞれ備える。
【0032】
このほかに紙幣入出金装置1は、係員が容易にトレイ9を外部に引き出すためのスライドレール24、トレイ9の外部への引き出しにおいて、ケーブルがスライドの妨げにならないようにするケーブルガイド23を備えている。
【0033】
図6は、スタッカ71a〜71d及び収納専用庫61の着脱動作を示した図である。
【0034】
以下、図6を用いて、本実施形態の各機構の動きについて説明する。なお、以下では、係員が、スタッカ71a〜71d及び収納専用庫61に収納されている紙幣を取り出し、あるいはスタッカ71a〜71dに紙幣を補充するために、スタッカ71a〜71d又は収納専用庫61を着脱する場合を例に説明する。
【0035】
スタッカ71a〜71d及び収納専用庫61の着脱する場合、係員が、金庫扉10aを開き、操作部11aを矢印14a方向に動作させることにより、保持部材11b、11cが回転支点11d、11eを中心に矢印15a、15b方向に回転し、スタッカ搬送路部8に構成された受け部8a、8bの保持部材11b、11cによる保持が解除される。これにより、係員は、下部ユニット1bのスタッカ搬送路部8とトレイ9を分離して引き出すことが可能となる。続いて、係員は、下部ユニット1bを現金自動取引装置101に締結する図示しないロック機構を解除して、トレイ9を矢印16a方向(金庫10の外側)に、引き出す。
【0036】
係員は、金庫10の外側に引き出されたトレイ9から、スタッカ71a〜71d及び収納専用庫61を、矢印17a方向に引き抜いて収納済みの紙幣を取り出し、あるいはスタッカ71a〜71dに紙幣を補充し、スタッカ71a〜71dあるいは収納専用庫61を矢印17b方向にトレイ9に収納する。
【0037】
係員は、スタッカ71a〜71dあるいは収納専用庫61を収納したトレイ9を、矢印16b方向に金庫10に格納し、図示しないロック機構により、現金自動取引装置101にロックした後に、操作部11aを矢印14aとは逆方向に動作させる。これにより、保持部材11b、11cが回転支点11d、11eを中心に矢印15a、15bとそれぞれ逆方向に回転し、スタッカ搬送路部8の受け部8a、8bを保持する。係員は、金庫扉10aを閉じることにより、スタッカ71a〜71d及び収納専用庫61に収納されている紙幣の取り出し、あるいはスタッカ71a〜71dへの紙幣の補充を終了する。
【0038】
図7は、スタッカ搬送路部8及びトレイ9が一体となった場合、すなわち下部ユニット1bの状態における着脱動作を示した図である。なお、図7の(a)は、図6と同様、紙幣入出金装置1を側面から見た図であり、図7の(b)は、紙幣入出金装置1の下部ユニットを図7の(a)の右側(紙幣入出金装置1の正面側)から見た図である。
【0039】
以下、図7を用いて、本実施形態の各機構の動きについて説明する。以下では、スタッカ搬送路部8において、ジャム等の異常が発生した場合の復旧処理を例に説明する。
【0040】
スタッカ搬送路部8において発生したジャム等の異常を復旧する場合、係員は、金庫扉10aを開き、操作部12aを矢印14b方向に動作させることにより、保持部材12b、12cが回転支点12d、12eを中心に矢印15c、15d方向に回転し、スタッカ搬送路部8に構成された受け部8c、8dの保持部材12b、12cによる保持が解除される。これにより、スタッカ搬送路部8とトレイ9が一体、すなわち下部ユニット1bの状態で引き出すことが可能となる。
【0041】
さらに、係員は、下部ユニット1bを現金自動取引装置101に締結する図示しないロック機構を解除して、下部ユニット1bを矢印16a方向(金庫10の外側)に、引き出す。係員は、下部ユニット1bを構成するスタッカ搬送路部8を矢印18の方向に開いて、スタッカ搬送路部8に構成された搬送路51hおよび振り分けゲート50d〜50hのジャム紙幣の除去等を行なう。これにより、ジャム発生などにおける異常復旧処理を容易に実施することが可能となる。
【0042】
係員は、ジャム紙幣等の除去をした後、スタッカ搬送路部8を矢印18と逆の方向に閉じ、下部ユニット1bを矢印16b方向に金庫10に格納し、図示しないロック機構により現金自動取引装置101にロックした後に、操作部12aを矢印14bとは逆方向に動作させる。これより、保持部材12b、12cが回転支点12d、12eを中心に矢印15c、15dとそれぞれ逆方向に回転し、スタッカ搬送路部8に構成された受け部8c、8dを保持する。係員は、金庫扉10aを閉じることにより、ジャム等による異常復旧処理を終了する。
【0043】
図8は、紙幣入出金装置1が、保持機構11と保持機構12との保持の解除を制限及び許可する引き出し制限機構13a、13b(図5)を備える場合の制御フローである。
【0044】
係員により、保持機構11の保持を解除された場合に、制御部19は、図示しない検知部により保持機構11の保持解除を検知し(S201:YES)、引き出し制限機構13aにより保持機構12の保持解除を制限する(S202)。これにより、スタッカ搬送路部8は金庫10に保持され、係員は、トレイ9のみを引き出すことが可能となり、スタッカ71a〜71d及び収納専用庫61を着脱する場合に、スタッカ搬送路部8の開閉動作が不要となり操作性が向上する。係員は、紙幣の取り出し、補充をした後に、トレイ9を図6の矢印16b方向に金庫10に格納し、図示しないロック機構により現金自動取引装置に101にロックした後に、保持機構11によりスタッカ搬送路部8を保持させる。
【0045】
制御部19は、保持機構11によるスタッカ搬送路部8の保持を図示しない検知部により検知し(S203:YES)、保持機構12の保持解除を許可する(S204)。係員は、金庫扉10aを閉じて作業を終了する。
【0046】
また、係員により保持機構12の保持を解除された場合に、制御部19は、図示しない検知部により保持機構12の保持解除を検知し(S205:YES)、引き出し制限機構13aにより保持機構11の保持解除を制限する(S206)。引き出し制限機構13bが保持機構11の保持解除を制限することにより、スタッカ搬送路部8と、トレイ9とを確実に一体として、下部ユニット1bとして引き出すことが可能となる。これにより、係員は、スタッカ搬送路部8のジャム紙幣などの除去が容易に可能となり、保守性が向上する。係員は、ジャム紙幣の除去等をした後に、下部ユニット1bを図7の矢印16b方向に金庫10に格納し、図示しないロック機構により現金自動取引装置に101にロックした後に、保持機構12によりスタッカ搬送路部8を保持させる。
【0047】
制御部19は、保持機構12によるスタッカ搬送路部8の保持を図示しない検知部により検知し(S207:YES)、保持機構12の保持解除を許可する(S208)。係員は、金庫扉10aを閉じて作業を終了する。
【0048】
なお、上記引き出し制限機構13a、13bによる保持解除の制限は、係員の保持機構11、保持機構12のいずれかの保持の解除を検知することにより、もう一方の保持解除を制限する排他制御をすることとした。すなわち、第一の着脱手段による着脱と第二の着脱手段による着脱との制限又は許可を排他制御する制御手段を有することとしたが、制限又は許可をする条件はこれに限るものではない。
【0049】
例えば、紙幣搬送路51にてジャムを検知した場合は、保持機構12の保持解除を制限してもよい。また、係員が、係員操作画面より、収納専用庫61、スタッカ71a〜71dからの紙幣の取り出しあるいはスタッカ71a〜71dへの紙幣の補充を指示した場合は、保持機構11の保持解除を制限してもよい。
【0050】
上記実施形態では、保持を解除する場合、保持機構11の操作部11aの操作方向(14a)と保持機構12の操作部12aの操作方向(14a)とを逆方向とすることにより、係員の操作ミスを減らすことが可能となる。なお、上記実施形態に限らず、保持機構11、12が受け部8a〜dを保持する場合又は保持を解除する場合、保持機構11の操作部11aの操作方向と保持機構12の操作部12aの操作方向をいずれの方向になるようにしても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、保持部材11b、11cを操作部11aにより機械的に連結した構造とし、保持部材12b、12cを操作部12aにより機械的に連結した構造とすることにより、低コストで着脱手段を実現することが可能となる。しかし、複数の保持部材及び操作部を機械的に連結させて構成する場合に限らず、係員操作部108等からの指令を受けて、制御部19が着脱手段を制御することにより、スタッカ搬送路部の着脱を実施する形態としてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、保持機構11、12の構造が機械的に連結した構造となっているため、保持機構11、保持機構12を設置スペースの広いトレイ9、金庫10に設け、また、受け部8a〜8dを設置スペースの狭いスタッカ搬送路部8に設ける構成としたが、スタッカ搬送路部8に保持機構11、12を、トレイ9や金庫10に受け部を設けても良い。また、受け部8a〜8dを、保持機構11及び保持機構12に共通で利用する保持機構としてもよい。さらには、受け部8a〜8dを備えず、上部搬送路8を保持機構が直接保持する保持機構としてもよい。
【0053】
また、本実施形態は、紙幣入出金装置1からのスタッカ搬送路部8のみを着脱可能な構造としているため、スタッカ搬送路部8に故障が発生した場合に、スタッカ搬送路部8のみの交換、保守も可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、トレイ9にスタッカ搬送路部8を着脱する着脱手段について説明したが、スタッカ71a〜71dがトレイ9に収納されていない場合には、着脱手段は、スタッカ搬送路部8とスタッカ71a〜71dとを着脱する構成としてもよい。また、金庫10にスタッカ搬送路部8を着脱する着脱手段について説明したが、金庫10に下部ユニット1bが格納されてない場合には、上部ユニット1aにスタッカ搬送路部8を着脱する構成としてもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態は、保持機構などからなる着脱手段により、紙幣入出金装置1から、スタッカ搬送路部8を着脱あるいは分離するものであればよい。特に、上部ユニット1aあるいは下部ユニット1bのいずれかと一体として扱われていたスタッカ搬送路部8を、上部ユニット1a及び下部ユニット1bのいずれからも独立した構造とし、いずれとも着脱することができるようにする着脱機構を備えることにより、係員の作業に応じて、スタッカ搬送路部の配置を変更することが可能となり、係員の作業効率の改善が可能となる。
【0056】
また、本実施形態は、着脱手段を備えることにより、スタッカ搬送路部8をトレイ9に対して着脱あるいは分離するもの、又はスタッカ搬送路部8を金庫10に対して着脱あるいは分離するものであればよい。特に、スタッカ搬送路部8を金庫10の内部において着脱可能とする着脱手段を備えることにより、接続搬送路57を金庫10に複数設けることなく、下部ユニット1bとして引き出した際のジャム紙幣の除去作業を容易にすることが可能となる。
【0057】
さらに詳細には、スタッカ71a〜71dおよび収納専用庫61の着脱時は、スタッカ搬送路部8を紙幣入出金装置1の金庫10内に残し、トレイ9のみを引き出し、また、ジャム等の異常処理時は、トレイ9とスタッカ上部搬送路8とを一体にして引き出すものであればよい。これらにより、スタッカ着脱の操作性を向上すると共に、ジャム除去等における保守性を向上することで、係員の作業効率を改善することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1:紙幣入金装置、 1a:上部ユニット、 1b:下部ユニット、 8:スタッカ搬送路部、 8a〜8d:受け部、 9:トレイ、 10:金庫、 10a:金庫扉、 11:保持機構、 11a:操作部、 11b、11c:保持部材、 11d、11e:回転支点、 11f、11g:ピン、 12:保持機構、 12a:操作部、 12b、12c:保持部材、 12d、12e:回転支点、 12f、12g:ピン、 13a、13b:引き出し制限機構、 19:制御部、 20:入出金口、 20a:仕切り板、 23:ケーブルガイド、 24:スライドレール、 30:紙幣判別部、 40:一時保管庫、 60:リジェクト庫、51:紙幣搬送路、 51a〜51h:搬送路、 57:接続搬送路、 50a〜50h:振り分けゲート、 61:収納専用庫、 71a〜71d:スタッカ、 101:現金自動取引装置、 101c:筐体、 102:カード/明細票処理部、 103:通帳処理部、 105:顧客操作部、 106:外部インターフェース部、 107:本体制御部、 108:係員操作部、 109:記憶部、 110:電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け入れた紙幣又は放出する紙幣を収納するスタッカと、前記スタッカから紙幣を搬送し又は前記スタッカに紙幣を搬送する第一の紙幣搬送路を有するスタッカ搬送路部と、前記スタッカを収納するトレイと、前記スタッカ及び前記トレイが収納される金庫と、前記スタッカ搬送路部を保持する、第一の保持機構及び第二の保持機構とを備えた着脱手段と、を有する下部ユニットと、
前記第一の紙幣搬送路と接続する第二の搬送路を有する上部ユニットと、
前記第一の保持機構又は前記第二の保持機構の一方による前記スタッカ搬送路部の保持が解除されたことを検知した場合、他方による前記スタッカ搬送路部の保持の解除を制限する制御部と、を備えたことを特徴とする紙幣入出金装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙幣入出金装置において、
前記上部ユニットは、
投入される紙幣を受け入れ又は紙幣を放出する入出金口と、
紙幣を判別する紙幣判別部と、
前記入出金口が受け入れた紙幣を一時的に収納する一時保管庫と、を有し、
前記第二の紙幣搬送路は、前記入出金口、前記紙幣判別部、前記一時保管庫、前記第一の紙幣搬送路に紙幣を搬送することを特徴とする紙幣入出金装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の紙幣入出金装置において、
前記第一の保持機構を前記トレイに有することを特徴とする紙幣入出金装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の紙幣入出金装置において、
前記第二の保持機構を前記金庫に有することを特徴とする紙幣入出金装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の紙幣入出金装置において、
前記第一の保持機構は、係員に操作される第一の操作部を有し、
前記第二の保持機構は、係員に操作される第二の操作部を有し、
前記第一の保持機構の保持を解除するために前記第一の操作部が操作される方向と、前記第二の保持機構の保持を解除するために前記第二の操作部が操作される方向とを逆方向とすることを特徴とする紙幣入出金装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の紙幣入出金装置を備えた現金自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−54772(P2013−54772A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−257040(P2012−257040)
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【分割の表示】特願2010−253388(P2010−253388)の分割
【原出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】