説明

紙葉類の厚さ検出装置及び紙幣取扱装置

【課題】
紙幣自動取扱装置に搭載可能なテープなどを貼った変造紙幣などを高精度に検出できる紙葉類の厚さ検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
検知ローラと前記基準ローラとを回転支持する筐体と、前記検知ローラと対向する前記筐体の上面に配置されて前記検知ローラの変位を検出する複数の変位検出センサとを備え、前記基準ローラと前記検知ローラとの接触部を搬送する紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、前記基準ローラの回転軸と前記検知ローラの回転軸の両端に玉軸受の内輪を固定し、前記基準ローラと前記検知ローラの回転軸の一方の端部に固定された玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に固定するとともに、前記回転軸の他方の端部に取り付けられた玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に挿入したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類の厚さ検出装置及び紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動取引装置は一般的に紙幣取扱装置や自動販売機等に搭載されている。この紙幣取扱装置や自動販売機等で重要なことは、取り扱う紙幣がテープや紙等で変造されていないかを鑑別することであることから、紙幣判別装置が備えられている。
【0003】
このような、テープや紙等で変造された紙幣等を鑑別する従来の紙幣判別装置としては、実開平6−49442号公報(特許文献1)に記載のものがある。
この特許文献1に記載された紙葉類の厚さ検出装置は、回転駆動される基準ローラと、この基準ローラに外輪が押圧されて外輪と回転軸との間を弾性部材で接続して従動回転する検知ローラを備えたものである。この検知ローラは外輪の変位を検出する変位検出センサを備え、基準ローラと検知ローラとの間に紙葉類を搬送させて、外輪の変位量からテープ等の存在を検出するものである。
【0004】
また、特開平2002−316746号公報(特許文献2)に記載された紙葉類の厚さ検出装置は、金属より熱膨張が大きい樹脂で固定ローラ取付治具を形成することで固定ローラ用軸受の外輪と固定ローラ取付治具との隙間を一定に保って安定した変位出力を得るものである。
【0005】
また、特開平11−91991号公報(特許文献3)に記載された紙葉類厚さ検出装置の補正方法は、出荷前にローラ間に基準媒体を通過させてオフセット補正、ゲイン補正、偏心補正を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−49442号公報
【特許文献2】特開平2002−316746号公報
【特許文献3】特開平11−91991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の装置は、基準ローラと検知ローラと変位検出センサを取付ける筺体の熱変形による検出感度の変動をなくす考慮がなされていない。
【0008】
また、特許文献2に記載の装置は、温度変化による固定ローラの軸受けと筺体との隙間の低減には効果がある機構であるが、筺体の軸方向の熱変形に対しては配慮されていない。
【0009】
また、特許文献3に記載の装置は、オフセット補正、ゲイン補正、偏心補正をする方法であるが、温度変化による検出感度の変動をなくす考慮がなされていない。
【0010】
本発明の目的は、基準ローラと検知ローラおよび変位検出センサを取付ける筺体(フレーム)の熱変形をなくし、紙葉類やテープ等の厚みを正確に検出できる紙葉類の厚さ検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的について本発明によれば、駆動機構によって回転する回転軸に複数個取付けられた基準ローラと、この基準ローラと並列に接触して従動回転する回転軸に複数個取付てられた検知ローラと、この検知ローラと前記基準ローラとを回転支持する筐体と、前記検知ローラと対向する前記筐体の上面に配置されて前記検知ローラの変位を検出する複数の変位検出センサとを備え、前記基準ローラと前記検知ローラとの接触部を搬送する紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、前記基準ローラの回転軸と前記検知ローラの回転軸の両端に玉軸受の内輪を固定し、前記基準ローラと前記検知ローラの回転軸の一方の端部に固定された玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に固定するとともに、前記回転軸の他方の端部に取り付けられた玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に挿入されていることにより達成される。
【0012】
また上記目的について本発明によれば、前記玉軸受けは前記筐体の取り付け穴に対して滑る外輪を備えることが好ましい。
【0013】
また上記目的について本発明によれば、駆動機構によって回転する回転軸に複数個取付けられた基準ローラと、この基準ローラと並列に接触して従動回転する回転軸に複数個取付けてられた検知ローラと、この検知ローラと前記基準ローラとを回転支持する筐体と、前記検知ローラと対向する前記筐体の上面に配置されて前記検知ローラの変位を検出する複数の変位検出センサとを備え、前記基準ローラと前記検知ローラとの接触部を搬送する紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、前記筐体を樹脂で成形するとともに、前記基準ローラの回転軸と前記検知ローラの回転軸の両端に玉軸受の内輪を固定し、前記基準ローラと前記検知ローラの回転軸の一方の端部に固定された玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に固定し、前記回転軸の他方の端部に取り付けられた玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に挿入したことにより達成される。
【0014】
また上記目的について本発明によれば、前記玉軸受けは前記筐体の取り付け穴に対して滑る外輪を備えていることが好ましい。
【0015】
また上記目的について本発明によれば、前記取り付け穴を金属部材で形成し、この金属部材は樹脂による前記筐体の成形で一体に埋め込まれることが好ましい。
【0016】
また上記目的について本発明によれば、前記基準ローラと前記検知ローラ間に前記紙葉類が通過しない時の変位1と、インクのある印刷部とインクがない非印刷部を有する前記紙葉類が通過した時の変位2から変位3=変位2−変位1を求め、前記変位3のあらかじめ厚さTの分かっている前記非印刷部の変位4からG=T/変位4により基準ゲインGを求め、前記変位検出センサを通過した紙葉類の厚さをG×変位3で求めることが好ましい。
【0017】
また上記目的について本発明によれば、n番目の変位検出センサの前記非印刷部の変位4が前回の検出値より一定値以上変化していた場合、隣接する両側の前記変位検出センサで得られた前記非印刷部の変位4を加算しその1/2をn番目の前記非印刷部の変位4として演算により求め、前記演算により求めた変位4からG=T/変位4により基準ゲインGを求め、前記n番目の変位検出センサを通過した紙葉類の厚さをG×変位3で求めることが好ましい。
【0018】
また上記目的について本発明によれば、あらかじめ複数の変位検出センサの出力補正比率を記憶しておき、n番目の変位検出センサの前記非印刷部の変位4が前回の検出値より一定値以上変化していた場合、前記n番目の変位検出センサの出力補正比率R1と、k番目の変位検出センサの出力補正比率R2と、前記k番目の変位検出センサで得られた前記非印刷部の変位4から前記n番目の前記非印刷部の変位4を変位5=k番目の前記非印刷部の変位4×R1/R2として演算により求め、前記変位5からG=T/変位5により基準ゲインGを求め、前記n番目の変位検出センサを通過した紙葉類の厚さをG×変位3で求めることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基準ローラと検知ローラおよび変位検出センサを取付ける筺体の熱変形をなくし、紙葉類やテープ等の厚みを正確に検出できる紙葉類の厚さ検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の断面図である。
【図5】本発明の他の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の断面図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の上面図である。
【図7】本発明の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の変位検出波形を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の厚さ検出フロー図である。
【図9】本発明の実施例に係る紙幣自動取扱装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
さて、紙幣取扱装置や自動販売機等は外気に直接晒される環境に設置される場合があり、その場合上述したように、外気の温度変化によって厚さ検出装置の筐体(フレーム)が熱変形する可能性がある。
【0022】
例えば、図1(詳細は後述する)に示した基準ローラと検知ローラの回転軸は剛性が強いSUSで形成されているのに対し、筐体(以下、フレームという)はアルミニウムで形成されている。このアルミニウムの熱膨張率はSUSの2倍もあることから、高い温度環境ではフレームの方が変形してしまう。そのため、フレームの上面に設置されている変位検出センサの位置がずれてしまい、正確な紙葉類の厚み検出ができない可能性があった。
【0023】
そこで本発明の発明者らは、両端がフレームに拘束された回転軸の一端をフリーにすることを考えて種々検討した結果、以下のごとき実施例を得た。
【0024】
以下、本発明の実施例を図にしたがって説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例に係る紙葉類の厚さ検出装置を図1、図2、図3を用いて説明する。
図1は紙葉類の厚さ検出装置の略全体構成を示す鳥瞰図である。
図2は図1の厚さ検出装置の断面図である。
図3は図2を拡大した図である。
【0026】
図1、図2において、紙葉類の厚さ検出装置1は、回転駆動機構(図示せず)により回転力が伝達されて回転する基準ローラ5a〜5jが設けられている。この基準ローラ5a〜5jは回転軸3に設けられている。検知ローラ11a〜11jは回転軸10に設けられ基準ローラ5a〜5jの回転に従動して回転するようになっている。この検知ローラ11aから11jと基準ローラ5a〜5jとの接触部を紙葉類が通過した時の紙葉類の厚みに応じて検知ローラ11a〜11jが上方向に移動することによって紙葉類の厚みを検出するようになっている。検知ローラ11a〜11jの上部に設けられた回路基板26には渦電流変位センサなどの変位検出センサ27a〜27j及び28a〜28jが取り付けられている。基準ローラ5a〜5jと検知ローラ11a〜11jは、紙葉類の全領域を検出できるように紙葉類搬送方向と直角方向に多数配置されている。
【0027】
回転軸3、10の両端部は、玉軸受け(ボールベアリングともいう)6、8、14、16を介してフレーム2に取付けられている。この玉軸受け6、8、14、16の内輪は止めねじ7、15、17(図2に示す)で固定されている。基準ローラ5a〜5jと検知ローラ11a〜11j間の押付力は、回転軸3と10の軸間距離で設定される。変位検出センサ27a〜27jと28a〜28jが取り付けられる回路基板26はフレーム2に固定されている。
【0028】
前記検知ローラ11a〜11jは、金属などの円筒状部材からなる外輪12と、この外輪12と回転軸10との間にはゴムなどの柔らかい弾性部材13が充填されている。また、図2に示すように、前記弾性部材13は、外輪12の両端部に分割して設けることもできる。また、前記弾性部材13と外輪12は、接着または非接着とすることができる。これにより、基準ローラ5a〜5jと検知ローラ11a〜11jとの間に紙葉類が通過すると弾性部材13が紙葉類の厚み分だけ変形して外輪12が上方向に移動する。この移動量を変位検出センサ27a〜27jと28a〜28jで検出して紙葉類の厚みに応じた変位検出信号Vを出力する。
【0029】
このように、フレーム2に基準ローラと検知ローラと変位検出センサを設けた回路基板26を一体で取付けることにより外部から伝達される振動に対しては同位相で振動するため振動の影響を受けず、検出精度を向上できる効果がある。
【0030】
詳細は図9を使って後述するが、変位検出信号Vは図9に示した紙幣判定装置97の判定処理部(図示せず)に送られる。判定処理部は、変位検出信号Vと紙幣が検知ローラを通過した時のスキュー(搬送方向の傾き)、シフト(回転軸方向の位置)の姿勢信号から紙幣が二枚以上重なった重送か、テープ等が貼られた変造券かを判定し、その判定信号を出力する。なお、姿勢信号は、紙幣のスキューがない状態に変位検出信号Vを修正するためと、紙幣が検知ローラを通過した位置を求めるために使用する。
【0031】
図2では、厚さ検出装置1の中央部の記載を省略いている。なお、図2では図1と同じ符号は同一物であるため、その説明は省略する。
図2において、基準ローラ5a〜5jの回転軸3の一端は止めねじ7で玉軸受け6の内輪32に固定され、他端は締り嵌め等で玉軸受け8の内輪22に固定されている。また、玉軸受け6と8はフレーム2に設けた取付け穴30、36に外輪23、33が接触し嵌めこまれている。取付け穴30、36はフレーム2を貫通する穴である。また、玉軸受け6の外輪33は取付け穴30に設けた段差部31に止め板34により押し当てられ、止めねじ35でフレーム2に固定されている。
【0032】
ここで、玉軸受と回転軸との接続状態の詳細を図3を使って説明する。
図3において、玉軸受6、8、14、16は外輪21、23、33、43と内輪20、22、32、42との間に複数のボールが介在され、内輪20、22、32、42或いは外輪21、23、33、43が回転するようになっている。
【0033】
回転軸3、10が拘束される側の玉軸受6、14の内輪32、42と回転軸3、10とは止めねじ7、15を介して強固に固定されている。外輪33、43とフレーム2とは、止め板34、44を介して止めねじ35、45でフレーム2に設けられた段差部31、41に外輪33、43を押し付ける状態で強固に固定されている。玉軸受6、14が取り付けられる取り付け穴30、40はフレーム2と一体に形成されたものであり、アルミニウム材である。
【0034】
一方、回転軸3の他方端部でフレーム2にフリーで支持されている側(拘束されない側)について説明すると、玉軸受16の内輪20と回転軸10とは止めねじ17を介して強固に固定されているが、駆動源と連結される歯車取り付け部4に対する玉軸受8は締り嵌め(圧入)で固定されている。玉軸受8、16の外輪21、23はフレーム2の取り付け穴36、46に対して摺動可能に支持されている。
【0035】
このように、本実施例では回転軸3、10の一方の端部は玉軸受6、14を介してフレーム2に強固に固定(拘束)されているのに対し、他方の端部はフレーム2に対しては玉軸受8、16を介して摺動自在に支持されているので、仮にフレーム2が熱変形したとしても回転軸3、10によってフレーム2が変形することはない。つまり、フレーム2が変形すると、回転軸3,10に取り付けられた玉軸受8、16の外輪21、23が取り付け穴36、46を滑ることになるので、フレーム2が変形することはない。
【0036】
したがって、フレーム2を金属部材にして玉軸受け6、8、14、16と同じ材質、又は、熱膨張係数が同じか近い材質にすれば、回転軸3フレーム2が熱変動により伸縮した場合には、玉軸受け8とフレーム2とは軸方向に滑りが発生するのでフレーム2の軸方向の変形を低減できる効果がある。なお、フレーム2の金属部材はアルミニウム、ステンレス、鉄、銅、鋳物などが使用できる。同様に、検知ローラ11a〜11jの回転軸10の両端は止めねじ15、17で玉軸受け14、16の内輪42、20に固定されている。そして、玉軸受け14、16はフレーム2に設けた取付け穴40、46に外輪21、43が接触し嵌めこまれている。取付け穴40、46はフレーム2を貫通する穴である。また、玉軸受け14の外輪43は取付け穴40に設けた段差部41に止め板44により押し当てられ止めねじ45でフレーム2に固定されている。
【0037】
したがって、回転軸10とフレーム2が熱変動により伸縮した場合には、玉軸受け16とフレーム2とは軸方向に滑りが発生するのでフレーム2の軸方向の変形を低減できる効果がある。なお、符号4は回転駆動機構に結合する歯車の取付け部を示す。
【実施例2】
【0038】
本発明に係る実施例2を図4を使って説明する。なお、図2と同じ符号は同一物であるため、その説明は省略する。
図4において、本実施例ではアルミニウム製であったフレーム2を低コスト化の関係から樹脂にして、樹脂フレーム2に金属部材50、51をインサート成型したものである。これにより、樹脂フレーム2と金属部材50、51は結合され一体化されている。
【0039】
つまり、金属部材50、51には図2と同様な金属部材50、51を貫通する玉軸受けの取付け穴30、40、36、46と、取付け穴30、40に段差31、41および止めねじ35、45のねじ穴が設けられている。金属部材50、51は玉軸受け6、8、14、16と同じ材質、又は、熱膨張係数が同じか近い材質が好適である。具体的にはアルミ、ステンレス、鉄、銅、鋳物などが使用できる。
【0040】
本実施例では、フレーム2を樹脂で成形することは低コスト化に効果がある。しかしながら、低温時には金属の玉軸受け8、16に比べて樹脂の熱膨張係数が大きいため樹脂の収縮が大きく外輪21、23をロックし玉軸受け8、16とフレーム2との軸方向の滑りが発生しない。これにより、フレーム2は軸方向に円弧状に変形するためフレーム2に取付けてある回路基板26も円弧状に変形する。
【0041】
そのため、変位検出センサ27a〜27j、28a〜28jと検知ローラ11a〜11jの外輪12との距離が変動し正確に紙葉類の厚さを検出できない問題がある。また、高温時には樹脂が膨張し玉軸受け6、8、14、16の外輪33、43、21、23とフレーム2の取付け穴30、36、40、46との間の隙間が広くなりガタが発生する。これにより、変位検出センサ27a〜27j、28a〜28jと検知ローラ11a〜11jの外輪12との距離が変動し正確に紙葉類の厚さを検出できない問題がある。
【0042】
そこで、本実施例では図4に示すように、樹脂フレーム2に金属部材50、51をインサート成型し、金属部材50、51の材質を玉軸受け6、8、14、16と同じ材質、又は、熱膨張係数が同じか近い材質を使用したものである。これにより、低温時に回転軸3、10とフレーム2の金属部材50、51が収縮した場合には、玉軸受け6、8、14、16の外輪33、43、21、23と金属部材50、51との間に軸方向に滑りが発生するのでフレーム2の軸方向の変形を低減できる効果がある。
【0043】
また、高温時には玉軸受け6、8、14、16の外輪33、43、21、23と金属部材50、51との間の隙間の広がりがないのでガタが発生しない。したがって、変位検出センサ27a〜27j、28a〜28jと検知ローラ11a〜11jの外輪12との距離が変動しないので正確に紙葉類の厚さを検出できる効果がある。
【実施例3】
【0044】
本発明の他の実施例について図5を使って説明する。なお、図2と同じ符号は同一物であるため、その説明は省略する。
図5は図4に示した金属部材50、51を他の金属部材52、53にして止めねじ54、55、56、57で樹脂フレーム2に固定する構成としたものである。また、金属部材52、53には図2と同様な金属部材52、53を貫通する玉軸受けの取付け穴30、40、36、46と、取付け穴30、40に段差31、41および止めねじ35、45のねじ穴と、止めねじ54、55、56、57を挿入する貫通穴が設けられている。なお、金属部材52、53は玉軸受け6、8、14、16と同じ材質、又は、熱膨張係数が同じか近い材質が好適である。具体的にはアルミ、ステンレス、鉄、銅、鋳物などが使用できる。これにより、実施例2と同様な効果を得ることができる。
【実施例4】
【0045】
図6、図7、図8に本発明の紙葉類の厚さ検出装置の他の一実施例を示す。
図6は本発明の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の上面図である。
図7は本発明の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の変位検出波形を示す図である。
図8は本発明の実施例に係る紙葉類厚さ検出装置の厚さ検出フロー図である。
図6において、紙幣判定装置97は紙幣60の画像の検出と紙幣60のスキュー量65とシフト量66を検出する画像センサ70と、図1でも説明した紙幣の厚さを検出する厚さ検出装置1と、紙幣を搬送する搬送ローラ68、69から構成されている。紙幣60には印刷部61と印刷がない非印刷部62がある。また、画像センサ70には画像検出素子71が多数配列されている。また、厚さ検出装置1には図1でも説明したように多数の変位検出センサ27a〜27j、28a〜28jが配列されている。矢印は紙幣60の搬送方向を示す。5は基準ローラ群である。
【0046】
これにより、画像センサ70で検出した紙幣60の画像とスキュー量65およびシフト量66により、非印刷部の位置および変位検出センサを通過した紙幣の位置を求めることができる。画像センサ70で検出した紙幣60の画像から金種を検出して非印刷部を特定することもできる。なお、日本国紙幣の非印刷部は紙幣端部より5mm程度内側の範囲である。
【0047】
図7において、変位検出信号波形74は図6の変位検出センサ27dを紙幣が通過していない時の波形を示す。このように、紙幣が通過していない状態でもローラの偏心による波形が検出することができる。
【0048】
変位検出信号波形75は図6の変位検出センサ27dを紙幣が通過した時の波形を示す。紙幣60の非印刷部62に対応する波形76、78と印刷部61に対応する波形77が検出される。また、この変位検出信号波形75にはローラの偏心による波形が重畳されている。
【0049】
変位検出信号波形79は紙幣通過時の変位検出信号波形75から紙幣非通過時の変位検出信号波形74を減算した波形を示す。すなわち、ローラの偏心量を取去った真の変位検出信号波形を示す。また、エンコーダ信号波形73は厚さ検出装置1の基準ローラが1回転するごとのパルス波形を示す。このように、紙幣通過時の変位検出信号波形75から紙幣非通過時の変位検出信号波形74を減算する時に、この信号を基準にして両波形の位相を合わせることにより正確にローラの偏心量を除去できる。
【0050】
次に、図6の変位検出センサ27dで検出した図7に示す変位検出信号から紙幣の厚さを求める方法を図8のフローチャートで説明する。
【0051】
図8において、ステップ80で紙幣が画像センサに到達したか判定する。到達しない場合はステップ80に戻る。到達したならばステップ81を実行する。
ステップ81で画像センサから紙幣の画像、スキュー量θ、シフト量Sを検出し記憶する。
ステップ82で紙幣通過前の変位検出信号Vo(n)を検出し記憶する。
ステップ83で紙幣通過時の変位検出信号V(n)を検出し記憶する。
ステップ84で偏心量を取除いた変位検出信号Vc(n)=V(n)−Vo(n)を求める。
ステップ85で紙幣の画像、スキュー量θ、シフト量Sから紙幣通過位置P(n)と非印刷部の位置W(n)を求め記憶する。
ステップ86で変位検出信号Vc(n)から紙幣の厚さTが分かっている非印刷部の位置W(n)に対応する変位検出信号Vw(n)を切り出し基準となるゲインG(n)=T/Vw(n)を求める。
ステップ87で変位検出信号Vc(n)の印刷部の厚さT(n)=Vc(n)×G(n)を求める。
【0052】
なお、ステップ86において、変位検出信号Vc(n)(図7の変位検出信号波形79に対応する)の立ち上がり側の非印刷部は、オーバーシュートを含み易いのでオーバーシュートのない立下り側の非印刷部の変位検出信号Vw(n)を用いるのが好適である。なお、nは図6の変位検出センサ27a〜27j、28a〜28jに対応した番号を示す。また、非印刷部の位置は紙幣端部位置より一定長さ内側に入った範囲としても良い。
【0053】
このようにすれば、紙幣自動取扱装置90に用いられた紙幣の厚さ検出装置が熱変動によってその検出感度(出力/変位)が変動した場合であっても稼働中に紙幣のあらかじめ厚さの分かっている非印刷部の厚さTと変位検出信号Vw(n)から基準となるゲインG(n)=T/Vw(n)が求められるので印刷部の厚さおよび紙幣の全領域の厚さをT(n)=Vc(n)×G(n)により検出できる効果を有する。
【実施例5】
【0054】
紙幣の非印刷部の一部に折れ、破れやテープなどがあり非印刷部の厚さが分からない場合に複数の変位検出信号Vから紙幣の厚さを求める処理手順を図8のフローチャートを用いて説明する。
図8のフローチャートでは一つの変位検出信号Vについて処理していたのに対して複数の変位検出信号Vを処理する。
(第一の構成)
図8のステップ86において、n番目の変位検出信号Vc(n)の非印刷部の変位検出信号Vw(n)が前回の値との変化量が規定値を超えていた場合、破れやテープなどがあり非印刷部の厚さが正確でないと判断する。正確でないと判断した変位検出信号Vw(n)は両隣りの非印刷部の変位検出信号をVw(n+1)とVw(n-1)とした場合、Vw(n)=(Vw(n+1)+Vw(n-1) )/2の演算で求める。
【0055】
以下、図8と同様な処理を行い紙幣の全領域の厚さを検出する。また、(n-1)、(n)、(n+1)番目の変位検出センサの検出感度(出力/変位)をS(n-1)、S(n)、 S(n+1)とした場合、(n+1)番目の前記非印刷部の変位検出信号をVw×S(n)/ S(n+1)、(n-1)番目を前記非印刷部の変位検出信号をVw(n-1) ×S(n)/ S(n-1)として計算しても良い。
(第二の構成)
図8のステップ86において、n番目の変位検出信号Vc(n)の非印刷部の変位検出信号Vw(n)が前回の値との変化量が規定値を超えていた場合、破れやテープなどがあり非印刷部の厚さが正確でないと判断する。正確でないと判断した変位検出信号Vw(n)は他のk番目の変位検出センサの非印刷部の変位検出信号Vw(k)とあらかじめ記憶しておいた変位検出センサごとの変形比率Rから演算によって求める。
【0056】
n番目の変位検出センサの変形比率R(n)、k番目の変位検出センサの変形比率R(k)とした場合、Vw(n)=Vw(k) ×R(n) /R(k)で求める。変形比率Rは図6に示す両端の変位検出センサの変形比率を1として中央の変位検出センサの変形比率に向かって直線、又は、曲線的に変化させる。例えば、両端の変形比率を1、中央の変形比率を1.3として前記2点間を直線的に増加させる。又は、前記3点を通る曲率半径で表わす円弧状に配分する。
【0057】
以下、図8と同様な処理を行い紙幣の全領域の厚さを検出する。また、前記変形比率Rに各変位検出センサごとの検出感度(出力/変位)比率=(各変位検出センサの検出感度)/(全変位検出センサの検出感度の平均値)を乗算した値としても良い。また、両端の変位検出センサの変位検出信号と中央部の変位検出信号の大きさを比較し、中央部の変位検出信号の方か大きい場合は中央部の比率が凸状になる変形比率を使用し、小さい場合は中央部の比率が凹状になる変形比率を使用する。また、非印刷部の位置は紙幣端部位置より一定長さ内側に入った範囲としても良い。
【0058】
このようにすれば、実施例3の効果と、紙幣の非印刷部の一部に破れやテープなどがあり非印刷部の厚さが分からない場合でも他の非印刷部の厚さTと変位検出信号Vw(n)から基準となるゲインG(n)=T/Vw(n)が求められるので印刷部の厚さおよび紙幣の全領域の厚さをT(n)=Vc(n)×G(n)により検出できる効果を有する。
【0059】
次に、本発明の紙葉類の厚さ検出装置を用いた現金自動取扱装置の一実施例を図9に示す。
図9において、現金自動取扱装置に搭載される紙幣取扱装置90は、現金預け入れ時に供給された紙幣96aを収納するための紙幣の分離と現金払い出し時に利用者が指定した金額を払い出すための紙幣供給受取機構91と、紙幣搬送路92a、92bと、紙幣の絵柄を検出する画像センサと、紙幣の磁気パターンを検出する磁気センサと、紙幣の蛍光画像を検出する蛍光センサからなる紙幣の金種又は真偽を判定する真偽判定装置と、紙幣が二枚以上重なっている重送およびテープ、紙等で変造された紙幣を検出する本発明の紙葉類の厚さ検出装置を用いて紙幣の真偽を判定する紙幣判定装置97と、紙幣の収納時と払い出し時に一時的に紙幣を蓄積しておく一時スタッカ93と、機械処理ができない紙幣を収納するための紙幣回収箱94と、金種別に紙幣96bを収納し払い出すための金種収納箱95a、95b、95cと、で構成される。
【0060】
次に、本発明の実施例に係る紙幣自動取扱装置の動作を説明する。
図9において、現金預け入れ時は紙幣供給受取機構91に供給された紙幣96aは一枚ずつ分離され搬送路92aに供給される。紙幣鑑別部97において紙幣96が真券であるか偽券であるかを鑑別し、また、紙幣が一枚か二枚以上かを判別する。紙幣が真券であり一枚及び折れ券の場合は一時スタッカ93に蓄積され取引金額を表示する。
【0061】
一方、供給した紙幣96に問題がある場合は供給した全ての紙幣96は紙幣供給受取機構91に戻される。取引が成立した場合は再び紙幣判定装置97を通り紙幣が一枚か二枚以上かをチェックしてそれぞれの金種収納箱95a〜95cに収納される。
【0062】
現金払い出し時には金種収納箱95の紙幣96bを一枚ずつ分離し搬送路92bに供給する。紙幣判定装置97において紙幣が一枚か二枚以上かを判別する。紙幣が一枚の場合は紙幣供給受取機構91に払い出される。二枚以上及び折れ券の場合は一時スタッカに蓄積され、その後、紙幣回収箱94に収納される。なお、紙幣判定装置97は往復どちらの方向から紙幣が搬送されても鑑別可能なように構成されている。
【0063】
これまでの説明では、変位検出器に渦電流式変位センサを用いているが、静電容量式変位センサ、光学式変位センサ、接触式変位センサなどが使用できる。また、本発明の紙葉類の厚さ検出装置を現金自動取扱装置、自動販売機の紙幣の厚さ検出装置に適用できる。
【0064】
以上のごとく本発明によれば、SUSの回転軸より熱膨張率が高いアルミニウムのフレームが変形しても回転軸の一端はフレームに対して滑るので、フレームが変形することはない。
【0065】
さらに、樹脂製フレームに金属板がインサート成形され、しかも冷気によって軸方向に収縮の変形が生じても金属板は回転軸の熱膨張係数と同じ若しくは近い材質であるため回転軸と同じ収縮となり回転軸3に余計な加重かけることがない。したがって、回転軸に軸方向の変形を生じさせることがないので、例え外気温度の変化が生じても正確な紙葉類の厚み検出を行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1…紙葉類の厚さ検出装置、2…フレーム、3…回転軸、4…紙葉類、5a〜5j…基準ローラ、6、8、14、16…玉軸受け、7、15…止めねじ、10…回転軸、11a〜11j…検知ローラ、12…外輪、13…弾性部材、26…回路基板、27a〜27j…変位検出センサ、28a〜28j…変位検出センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機構によって回転する回転軸に複数個取付けられた基準ローラと、この基準ローラと並列に接触して従動回転する回転軸に複数個取付てられた検知ローラと、この検知ローラと前記基準ローラとを回転支持する筐体と、前記検知ローラと対向する前記筐体の上面に配置されて前記検知ローラの変位を検出する複数の変位検出センサとを備え、前記基準ローラと前記検知ローラとの接触部を搬送する紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、
前記基準ローラの回転軸と前記検知ローラの回転軸の両端に玉軸受の内輪を固定し、前記基準ローラと前記検知ローラの回転軸の一方の端部に固定された玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に固定するとともに、
前記回転軸の他方の端部に取り付けられた玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に挿入されていることを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記玉軸受けは前記筐体の取り付け穴に対して滑る外輪を備えていることを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項3】
駆動機構によって回転する回転軸に複数個取付けられた基準ローラと、この基準ローラと並列に接触して従動回転する回転軸に複数個取付けてられた検知ローラと、この検知ローラと前記基準ローラとを回転支持する筐体と、前記検知ローラと対向する前記筐体の上面に配置されて前記検知ローラの変位を検出する複数の変位検出センサとを備え、前記基準ローラと前記検知ローラとの接触部を搬送する紙葉類の厚さを検出する紙葉類の厚さ検出装置において、
前記筐体を樹脂で成形するとともに、
前記基準ローラの回転軸と前記検知ローラの回転軸の両端に玉軸受の内輪を固定し、前記基準ローラと前記検知ローラの回転軸の一方の端部に固定された玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に固定し、前記回転軸の他方の端部に取り付けられた玉軸受けの外輪は前記筐体の取り付け穴に挿入したことを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記玉軸受けは前記筐体の取り付け穴に対して滑る外輪を備えていることを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項5】
請求項3記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記取り付け穴を金属部材で形成し、この金属部材は樹脂による前記筐体の成形で一体に埋め込まれていることを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項6】
請求項1又は3のいずれかに記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
前記基準ローラと前記検知ローラ間に前記紙葉類が通過しない時の変位1と、インクのある印刷部とインクがない非印刷部を有する前記紙葉類が通過した時の変位2から変位3=変位2−変位1を求め、前記変位3のあらかじめ厚さTの分かっている前記非印刷部の変位4からG=T/変位4により基準ゲインGを求め、前記変位検出センサを通過した紙葉類の厚さをG×変位3で求めることを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項7】
請求項1又は3のいずれかに記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
n番目の変位検出センサの前記非印刷部の変位4が前回の検出値より一定値以上変化していた場合、隣接する両側の前記変位検出センサで得られた前記非印刷部の変位4を加算しその1/2をn番目の前記非印刷部の変位4として演算により求め、前記演算により求めた変位4からG=T/変位4により基準ゲインGを求め、前記n番目の変位検出センサを通過した紙葉類の厚さをG×変位3で求めることを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項8】
請求項1又は3のいずれかに記載の紙葉類の厚さ検出装置において、
あらかじめ複数の変位検出センサの出力補正比率を記憶しておき、n番目の変位検出センサの前記非印刷部の変位4が前回の検出値より一定値以上変化していた場合、前記n番目の変位検出センサの出力補正比率R1と、k番目の変位検出センサの出力補正比率R2と、前記k番目の変位検出センサで得られた前記非印刷部の変位4から前記n番目の前記非印刷部の変位4を変位5=k番目の前記非印刷部の変位4×R1/R2として演算により求め、前記変位5からG=T/変位5により基準ゲインGを求め、前記n番目の変位検出センサを通過した紙葉類の厚さをG×変位3で求めることを特徴とする紙葉類の厚さ検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至2のいずれかに記載の紙葉類の厚さ検出装置を備えたことを特徴とする紙幣取扱装置。
【請求項10】
請求項3乃至8のいずれかに記載の紙葉類の厚さ検出装置を備えたことを特徴とする紙幣取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−54446(P2013−54446A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190888(P2011−190888)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】