説明

紙葉類取扱装置、現金自動取扱装置、および、紙葉類取扱方法

【課題】紙葉類取扱装置において、搬送異常を検出する検出部での誤検出により生じる処理効率の低下の抑制を図る。
【解決手段】紙葉類取扱装置300は、紙葉類を搬送するための第1の搬送路361と、第1の搬送路361と接続されている第2の搬送路362と、第2の搬送路362における紙葉類の搬送異常を検出する検出部と、第1の搬送路361および第2の搬送路362による紙葉類の搬送を制御する搬送制御部と、を備え、搬送制御部は、検出部により搬送異常が検出されると、第1の搬送路上の紙葉類を異常確認用の紙葉類として第2の搬送路362に搬送し、異常確認用の紙葉類を第2の搬送路362により搬送したときに、搬送異常が検出された場合には、第1の搬送路361および第2の搬送路362による紙葉類の搬送を停止し、搬送異常が検出されなかった場合には、第1の搬送路361および第2の搬送路362による紙葉類の搬送を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、紙葉類取扱装置、現金自動取扱装置、および、紙葉類取扱装置を用いた紙葉類取扱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ATM(Automatic Teller Machine)などの現金自動取引装置に搭載される紙葉類取扱装置において、ジャムなどの紙葉類の搬送異常を検出するための検出部を備え、搬送異常を検出するとユーザとの取引処理を中止する処理や、異常が検出された紙葉類を除去するための処理をおこなう技術が知られている。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−65563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、搬送異常を検出するための検出部は、例えば、搬送路上において紙葉類の通過を検出する複数のセンサにより構成され、各センサが紙葉類の通過を検出するタイミングなどによって搬送異常を検出するため、搬送される紙葉類が搬送路上で滑るなどして検出のタイミングが一時的に遅れると、搬送路上にはジャムなどの不具合が生じていないにもかかわらず、搬送異常が誤検出されることがあった。この場合、取引処理を中止する処理や、異常を解消するための処理等を実行することにより、取引処理の処理効率が低下する虞があった。
【0005】
本発明は、上記した課題の少なくとも一部を解決するためになされた発明であり、搬送異常を検出する検出部を備える紙葉類取扱装置において、検出部による誤検出により生じる処理効率の低下の抑制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために本願発明は以下の態様を採る。
【0007】
第1の態様は、紙葉類取扱装置を提供する。第1の態様に係る紙葉類取扱装置は、紙葉類を搬送するための第1の搬送路と、前記第1の搬送路と接続されている第2の搬送路と、前記第2の搬送路における紙葉類の搬送異常を検出する検出部と、前記第1の搬送路および前記第2の搬送路による紙葉類の搬送を制御する搬送制御部と、を備え、前記搬送制御部は、前記検出部により搬送異常が検出されると、前記第1の搬送路上の紙葉類を異常確認用の紙葉類として前記第2の搬送路に搬送し、前記異常確認用の紙葉類を前記第2の搬送路により搬送したときに、前記検出部により、搬送異常が検出された場合には、前記第1の搬送路および前記第2の搬送路による紙葉類の搬送を停止し、搬送異常が検出されなかった場合には、前記第1の搬送路および前記第2の搬送路による紙葉類の搬送を継続する。
【0008】
第1の態様に係る紙葉類取扱装置によれば、検出部により搬送異常が検出された場合であっても、異常確認用の紙葉類を第2の搬送路に搬送し、異常確認用の紙葉類を第2の搬送路により搬送したときに搬送異常が検出されなかった場合には、第1の搬送路および第2の搬送路による紙葉類の搬送を継続するため、検出部による誤検出により生じる処理効率の低下の抑制を図ることができる。
【0009】
第1の態様に係る紙葉類取扱装置はさらに、前記第1の搬送路に接続され、前記第1の搬送路に紙葉類を繰り出す繰り出し部と、前記第1の搬送路上に配置され、前記第1の搬送路により搬送される紙葉類を識別するための識別部と、前記第2の搬送路に接続され、前記第2の搬送路上の紙葉類を集積するための集積部と、前記集積部と前記第1の搬送路との間における前記第2の搬送路と接続されている第3の搬送路と、前記第3の搬送路に接続され、前記第3の搬送路上の紙葉類を保管するための保管部と、を備え、前記搬送制御部は、前記第3の搬送路による紙葉類の搬送を制御し、前記識別部による紙葉類の識別結果に基づいて、判別された紙葉類を前記集積部もしくは保管部に搬送してもよい。この場合、識別部から集積部に紙葉類を搬送するための搬送路において検出部により誤検出が生じた場合であっても、誤検出により生じる処理効率の低下の抑制を図ることができる。
【0010】
第1の態様に係る紙葉類取扱装置において、前記検出部は、前記第2の搬送路上の紙葉類の通過を検出する2以上のセンサを含み、第1のセンサが紙葉類の通過を検出した後に、所定の時間内に第2のセンサが紙葉類の通過を検出しない場合に搬送異常を検出してもよい。この場合、第1のセンサが紙葉類の通過を検出した後に、所定の時間内に第2のセンサが紙葉類の通過を検出しないことにより誤検出が生じた場合であっても、誤検出により生じる処理効率の低下の抑制を図ることができる。
【0011】
第1の態様に係る紙葉類取扱装置において、前記検出部は、前記第2の搬送路上の紙葉類の通過を検出する2以上のセンサを含み、搬送方向上流側の第1のセンサが紙葉類の通過を検出してないときに、下流側の第2のセンサが紙葉類の通過を検出した場合に搬送異常を検出してもよい。この場合、搬送方向上流側の第1のセンサが紙葉類の通過を検出してないときに、下流側の第2のセンサが紙葉類の通過を検出したことにより誤検出が生じた場合であっても、誤検出により生じる処理効率の低下の抑制を図ることができる。
【0012】
第1の態様に係る紙葉類取扱装置において、搬送異常とは、紙葉類のジャムを含んでいてもよい。この場合、ジャムが生じていないときに検出部により搬送異常が検出された場合であっても処理効率の低下の抑制を図ることができる。
【0013】
第1の態様に係る紙葉類取扱装置において、搬送制御部は、前記検出部により搬送異常が検出されると、前記第1の搬送路上に紙葉類がある場合は、前記紙葉類を異常確認用の紙葉類として前記第2の搬送路に搬送し、前記第1の搬送路上に紙葉類がない場合には、前記繰り出し部から紙葉類を繰り出し、繰り出した前記紙葉類を異常確認用の紙葉類として前記第2の搬送路に搬送してもよい。この場合、検出部により搬送異常が検出されても、繰り出し部から繰り出した異常確認用の紙葉類を第2の搬送路に搬送し、異常確認用の紙葉類を第2の搬送路により搬送したときに搬送異常が検出されなかった場合には、第1の搬送路および第2の搬送路による紙葉類の搬送を継続するため、検出部による誤検出により生じる処理効率の低下の抑制を図ることができる。
【0014】
第1の態様に係る紙葉類取扱装置において、前記繰り出し部および集積部は、紙葉類を前記紙葉類取扱装置から出し入れするための入出金部の少なくとも一部を構成していてもよい。この場合、集積部の紙葉類は紙葉類取扱装置から出し入れ可能なため、検出部による誤検出により生じる処理効率の低下の抑制を図ることができる。
【0015】
なお、本発明は、上記以外の種々の形態で実現することが可能であり、例えば、紙葉類取扱装置を備える現金自動取扱装置、第1の搬送路と接続されている第2の搬送路を備える装置における紙葉類取扱方法、紙葉類取扱方法または紙葉類取扱装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記憶媒体等の形態で実現することができる。また、本発明に係る紙葉類取扱装置は、適宜、他の部材と組み合わせて適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例としての紙葉類取扱装置を搭載した現金自動取引装置の外観の構成を示す説明図である。
【図2】ATM10の内部構成の概略を示すブロック図である。
【図3】紙幣取扱機構300の概略構成を示す説明図である。
【図4】紙幣取扱機構300の内部構成の概略を示すブロック図である。
【図5】入金処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第1実施例における搬送路確認処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】リジェクト搬送路監視処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】出金処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】第2実施例における搬送路確認処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】変形例に係る紙幣取扱機構300の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0018】
A.第1実施例
A1.全体構成:
図1は、本発明の一実施例としての紙葉類取扱装置を搭載した現金自動取引装置の外観の構成を示す説明図である。現金自動取引装置10(以降、「ATM」とも呼ぶ。)は、前面に、カードスロット101と、タッチパネル201と、入出金口321とを備えている。カードスロット101は、種々のカード(例えば、クレジットカードやキャッシュカード)の挿入を受け付けるための挿入排出口である。タッチパネル201は、利用者に対して操作案内画面を表示する表示機能と、入力操作を受け付ける入力機能を有している。入出金口321は、利用者から紙葉類(以下、「紙幣」とも呼ぶ。)を受け付け、また、利用者に対して紙幣の排出を行うための紙幣受渡・受取口である。また、ATM10は、外周を覆う装置筐体20の内部に、金庫筺体30と、紙幣取扱機構300とを備えている。金庫筺体30は、装置筐体20よりも頑強に形成されており、不正なアクセス(壁の破壊等)に対してより耐性の高い構造(例えば、厚さ数十mm程度の鉄板)を有している。紙幣取扱機構300についての詳細は後述する。
【0019】
図2は、ATM10の内部構成の概略を示すブロック図である。ATM10は、カード明細票処理機構100と、顧客操作部200と、紙幣取扱機構300と、インタフェース部400と、係員操作部500と、本体制御部600と、外部記憶装置700と、電源部800とを備えている。
【0020】
カード明細票処理機構100は、カードスロット101を含み、挿入されたカード類の処理や、取引明細票の印字処理を行う機能を有する。顧客操作部200は、タッチパネル201を含み、利用者からの操作を受け付け、本体制御部600へと伝達する機能を有する。紙幣取扱機構300は、入出金口321を含み、入出金紙幣の計算や、紙幣の入出金等を行う機能を有する。インタフェース部400は、図示しないホストコンピュータと通信する機能を有する。係員操作部500は、係員(例えば、銀行職員等)からの操作を受け付け、本体制御部600へと伝達する機能を有する。外部記憶装置700は、例えば、ハードディスクや、フラッシュメモリ、光ディスク等のデータ記録装置で構成される。本体制御部600は、前述の各部(100〜700)とバスにより接続され、前述の各部を制御する機能を有する。電源部800は、ATM10の各部に電源を供給する。
【0021】
図3は、紙幣取扱機構300の概略構成を示す説明図である。紙幣取扱機構300は、入出金機構部320と、紙幣判別部330と、一時保管庫340と、リジェクト庫345と、収納庫350と、搬送路360と、を備えている。収納庫350は、第1収納庫351と、第2収納庫352と、第3収納庫353の3つの収納庫により構成されている。搬送路360は、第1搬送路361と、第2搬送路362と、第3搬送路363の3つの搬送路により構成されている。本実施例では、リジェクト庫345および収納庫350は、金庫筺体30に収納されている。
【0022】
入出金機構部320は、入出金口321と、入出金口321を覆うためのシャッター322と、入出金口321から投入された紙幣を受け取るための紙幣投入ホッパー333と、返却紙幣を集積するためのリジェクトスタッカー334とを備えている。
【0023】
紙幣判別部330は、第1搬送路361上に配置され、第1搬送路361上の紙幣の金種およびリジェクト紙幣か否かについての判別を行う。リジェクト紙幣とは、例えば、過度の損傷や汚染のある真券や、偽券(真正でない紙幣)、複数枚重なった状態の紙幣、スキューやシフト状態の紙幣等であり、不良の紙幣として取引に用いられずに利用者に返却されたり、リジェクト庫345に格納されたりする紙幣をいう。
【0024】
一時保管庫340は、第3搬送路363と接続され、入出金口321に投入された紙幣を取引成立までの間、一時的に保管する。リジェクト庫345は、第1搬送路361と接続され、リジェクト紙幣や、利用者が入出金時に取り忘れた紙幣を収納する。
【0025】
収納庫350は、第1搬送路361と接続され、出金に用いられる紙幣を金種別に収納する。なお、本実施例においては、収納庫350は3つの収納庫(第1収納庫351、第2収納庫352、第3収納庫353)により構成されているが、収納庫350を構成する収納庫の数は任意である。
【0026】
搬送路360は、図示しない駆動モータを駆動し、搬送路上の経路を切り替えるためのゲート365の切り替えにより、入出金機構部320と、一時保管庫340と、リジェクト庫345と、収納庫350との間における紙幣の搬送を行う。搬送路360には、搬送される紙幣の通過を検出する複数のセンサ366が各所に配置されている。
【0027】
第1搬送路361は、第2搬送路362、入出金機構部320、リジェクト庫345、および、収納庫350とそれぞれ接続されている。紙幣判別部330は、第1搬送路361において、入出金機構部320、リジェクト庫345、および、収納庫350のいずれかと、第2搬送路362との間を搬送される紙幣に対して判別をおこなう。第1搬送路361において、紙幣判別部330により判別が行われる位置の両側にはそれぞれセンサ366が配置されている。本実施例では、紙幣判別部330により判別が行われる位置の両側に設置されているセンサ366のうち、入出金機構部320側のセンサをセンサ366aとも呼び、第2搬送路362側のセンサをセンサ366bとも呼ぶ。センサ366bは、第1搬送路361と第2搬送路362との接続部に近接した位置に配置されている。
【0028】
第2搬送路362は、第1搬送路361、第3搬送路363、および、入出金機構部320とそれぞれ接続されている。第2搬送路362の入出金機構部320と近接する位置には、センサ366が配置されている。本実施例では、入出金機構部320と近接する位置に配置されているセンサをセンサ366cとも呼ぶ。センサ366bおよびセンサ366cは、それぞれ第2搬送路362の両端部に近接して設けられているため、後述するように、センサ366bおよびセンサ366cによる紙幣の検出タイミングを用いて、第2搬送路362における紙幣の搬送異常を検出することができる。
【0029】
第3搬送路363は、第2搬送路362、および、一時保管庫340とそれぞれ接続されている。第2搬送路362の一時保管庫340と近接する位置には、センサ366が配置されている。本実施例では、一時保管庫340と近接する位置に配置されているセンサをセンサ366dとも呼ぶ。
【0030】
図4は、紙幣取扱機構300の内部構成の概略を示すブロック図である。紙幣取扱機構300は、入出金機構部320、紙幣判別部330、一時保管庫340、リジェクト庫345、収納庫350、および、搬送路360に加えて、さらに、紙幣取扱制御部310を備えている。紙幣取扱制御部310は、入出金機構部320、紙幣判別部330、一時保管庫340、リジェクト庫345、収納庫350、搬送路360、センサ366などの紙幣取扱機構300の各機能部と接続され、紙幣取扱機構300の全体の動作を制御する。紙幣取扱制御部310は、ROMやRAMからなる図示しないメモリと、図示しないCPUとを含み、CPUがメモリに記憶されているプログラムを実行することにより、回線制御部311と、入出金機構制御部312と、紙幣判別制御部313と、格納庫制御部314と、搬送路制御部315と、センサ制御部316と、搬送監視部317と、搬送路確認制御部318と、の各機能を実現する。
【0031】
回線制御部311は、バスなどの信号線を介して本体制御部600と情報のやりとりを行う。入出金機構制御部312は、入出金機構部320を構成する各部の動作を制御する。紙幣判別制御部313は、紙幣判別部330による紙幣の判別動作を制御する。格納庫制御部314は、一時保管庫340、リジェクト庫345、第1収納庫351、第2収納庫352、および、第3収納庫353における紙幣の繰り出し動作や紙幣の格納動作を制御する。搬送路制御部315は、第1搬送路361、第2搬送路362、および、第3搬送路363における紙幣の搬送動作を制御する。センサ制御部316は、センサ366を制御する。
【0032】
搬送監視部317は、センサ366による紙幣の検出結果や、紙幣判別部330による紙幣の判別結果などを用いて、搬送路上の紙幣が搬送先に正常に搬送されるかを監視する。搬送監視部317は、センサ366による検出結果や紙幣判別部330による判別結果が所定の条件を満たした場合には、搬送路において紙幣の搬送に異常が生じていることを示す搬送異常を検出する。搬送異常とは、例えば、搬送路上において紙幣のジャムが生じている状態などをいう。本実施例における搬送異常の検出方法は、紙幣判別部330による判別結果に基づいて決定される搬送経路上において、1つのセンサが紙幣の通過を検出してから所定の時間内に搬送方向下流側の他のセンサが紙幣の通過を検出しなかった場合は、搬送路上で紙幣が滞留している疑いがあるため搬送異常が検出される。また、1つのセンサが紙幣の通過を検出してから所定の時間を経ずに搬送方向下流側の他のセンサが紙幣の通過を検出した場合にも搬送異常が検出される。他にも、搬送方向上流側のセンサが紙幣の通過を検出していない場合において、搬送方向下流側の他のセンサが紙幣の通過を検出した場合に搬送異常が検出される。搬送異常の検出方法は上記に限定されず他にも任意に設定することができる。
【0033】
搬送路確認制御部318は、搬送路確認処理をおこなう。搬送路確認処理とは、搬送監視部317により搬送異常が検出された場合において、搬送異常が検出された搬送路により継続して紙幣の搬送が可能か否かを確認するための処理である。搬送路確認処理の具体的な内容については後述する。なお、本実施例において紙幣取扱制御部310は、CPUがプログラムを処理することにより実現されるソフトウェア的な構成で示されているが、紙幣取扱制御部310の全体、もしくは、回線制御部311、入出金機構制御部312、紙幣判別制御部313、格納庫制御部314、搬送路制御部315、センサ制御部316、搬送監視部317、および、搬送路確認制御部318の少なくとも一部は、集積回路等により実現されるハードウェア的な構成であってもよい。
【0034】
A2.入金処理:
ATM10による入金処理について説明する。ATM10による入金処理の一部には搬送路確認処理が含まれている。図5は、入金処理の流れを示すフローチャートである。利用者により入出金機構部320に紙幣が投入されると、紙幣取扱制御部310は、回線制御部311により上位装置であるATM10の本体制御部600から入金指示を受ける。紙幣取扱制御部310は、入金指示を受け付けると紙幣取扱機構300の各部を起動させる(ステップS501)。具体的には、紙幣取扱制御部310は、第1搬送路361、第2搬送路362、および、第3搬送路363の図示しない駆動モータを制御して、搬送路上の紙幣を一時保管庫340へ搬送する方向に駆動させる。また、紙幣取扱制御部310は、ゲート365を制御して、紙幣を入出金機構部320から紙幣判別部330へ搬送する方向に切り替える。また、紙幣取扱制御部310は、センサ366による紙幣の通過の監視を開始する。また、紙幣取扱制御部310は、一時保管庫340を紙幣の集積が可能な状態に制御する。
【0035】
紙幣取扱制御部310は、入出金機構部320を制御して、紙幣の繰り出しをおこなう(ステップS502)。具体的には、紙幣取扱制御部310は、紙幣投入ホッパー333に投入された紙幣を一枚ずつ第1搬送路361に繰り出す。紙幣取扱制御部310は、入出金機構部320から繰り出した紙幣を紙幣判別部330に搬送する。紙幣取扱制御部310は紙幣判別部330を制御して、搬送した紙幣がリジェクト紙幣か否かを判別する。紙幣取扱制御部310は、搬送した紙幣がリジェクト紙幣ではない紙幣、すなわち、正常紙幣である場合には、紙幣判別部330から第2搬送路362および第3搬送路363を経由させて正常紙幣を一時保管庫340に搬送する。以後、紙幣判別部330から一時保管庫340までの正常紙幣を搬送する経路を「正常搬送経路」と呼ぶ。一方、搬送した紙幣がリジェクト紙幣である場合には、紙幣判別部330から第2搬送路362を経由させてリジェクト紙幣を入出金機構部320のリジェクトスタッカー334により仕切られた空間であるリジェクト紙幣集積部に集積する。リジェクト紙幣集積部を介してリジェクト紙幣は利用者に返却される。以後、紙幣判別部330から入出金機構部320までのリジェクト紙幣を搬送する経路を「リジェクト搬送経路」と呼ぶ。
【0036】
紙幣取扱制御部310は、正常搬送経路もしくはリジェクト搬送経路における搬送異常の検出をおこなう(ステップS503)。具体的には、紙幣判別部330によりリジェクト紙幣か否かの判別がなされた紙幣について、搬送した紙幣が正常紙幣である場合には、正常搬送経路上のセンサ366bおよびセンサ366dからの検出結果を用いて、紙幣が正常搬送経路上を正常に搬送されているかを監視する。また、搬送した紙幣がリジェクト紙幣である場合には、リジェクト搬送経路上のセンサ366bおよびセンサ366cからの検出結果を用いて、紙幣がリジェクト搬送経路を正常に搬送されているかを監視する。
【0037】
紙幣取扱制御部310は、搬送異常を検出しなかった場合には(ステップS503:NO)、入出金機構部320にセットされたすべての紙幣を正常紙幣とリジェクト紙幣とに分けて一時保管庫340もしくは入出金機構部320に集積するまで処理を継続し(ステップS504:NO)、すべての紙幣について正常紙幣とリジェクト紙幣との分離および集積が完了したら(ステップS504:YES)、上位装置であるATM10の本体制御部600に入金処理が正常に終了したことを報告し(ステップS505)、入金処理を終了する。
【0038】
一方、紙幣取扱制御部310は、搬送異常を検出した場合には(ステップS503:YES)、搬送路確認処理をおこなう(ステップS510)。図6は、第1実施例における搬送路確認処理の流れを示すフローチャートである。紙幣取扱制御部310は、搬送異常がリジェクト搬送経路上で生じたか否かを判定する(ステップS601)。具体的には、紙幣取扱制御部310は、センサ366bおよびセンサ366cにより搬送異常を検出した場合には、リジェクト搬送経路上における搬送異常であると判定することができる。紙幣取扱制御部310は、搬送異常がリジェクト搬送路上ではない場合には(ステップS601:NO)、入金処理を異常終了させる(ステップS602)。これにより、搬送路確認処理および入金処理が終了する。
【0039】
紙幣取扱制御部310は、搬送異常がリジェクト搬送経路上で生じている場合には(ステップS601:YES)、今回の入金処理において、既にリジェクト搬送経路上で搬送異常が検出されたか否かの判別をおこなう(ステップS603)。具体的には、紙幣取扱制御部310は、今回の入金処理において、既にリジェクト搬送経路上で搬送異常が検出されたか否かを示す図示しないフラグを備え、フラグの状態により既にリジェクト搬送経路上において搬送異常が検出されたか否を判別する。フラグは、後述するステップS332において紙幣取扱制御部310によりセットされる。
【0040】
紙幣取扱制御部310は、既にリジェクト搬送経路上において搬送異常が検出されている場合には(ステップS603:YES)、入金処理を異常終了させ(ステップS602)、搬送路確認処理および入金処理を終了する。一方、紙幣取扱制御部310は、リジェクト搬送経路上において、まだ搬送異常が検出されていない場合には(ステップS603:NO)、搬送異常が検出された紙幣よりも搬送方向下流側の紙幣である後続紙幣に紙幣判別部330によりリジェクト紙幣と判別された紙幣があるか否かを判定する(ステップS604)。具体的には、紙幣取扱制御部310は、リジェクト搬送経路において搬送異常を検出したときに、既に後続紙幣について紙幣判別部330によりリジェクト紙幣の判別がおこなわれているか否かを判定する。搬送異常を検出したときに、紙幣判別部330によりリジェクト紙幣の判別がおこなわれたか否かは、リジェクト搬送経路上のセンサ366bおよびセンサ366cからの検出結果の出力と、紙幣判別部330からの判別結果の出力とのタイミングによって判別することができる。
【0041】
後続紙幣にリジェクト紙幣がある場合には(ステップS604:YES)、紙幣取扱制御部310は、リジェクト搬送路上において搬送異常が検出されたことを示すようにフラグをセットする(ステップS605)。その後、紙幣取扱制御部310は、入金処理のステップ503から処理を再開する。すなわち、紙幣取扱制御部310は、リジェクト搬送経路上において搬送異常が検出された場合であっても、1回目の搬送異常であり、後続紙幣にリジェクト紙幣がある場合にはそのリジェクト紙幣を異常確認用の紙幣としてリジェクト搬送経路を通過させ、搬送異常が生じない場合には入金処理を継続する。
【0042】
言い換えると、紙幣取扱制御部310は、第2搬送路362により構成されるリジェクト搬送経路で搬送異常が検出された場合であっても(ステップS601:YES)、第1搬送路361上の後続リジェクト紙幣を異常確認用の紙幣として第2搬送路362に搬送し(ステップS604:YES)、後続リジェクト紙幣を第2搬送路362により搬送したときに搬送異常が検出されなかった場合には(ステップS503:NO)、第1搬送路361および第2搬送路362による紙幣の搬送を継続し(ステップS504:NO)、搬送異常が検出された場合には(ステップS503:YES)、第1搬送路361および第2搬送路362による紙幣の搬送を停止する(ステップS603:YES、ステップS602)。
【0043】
後続紙幣にリジェクト紙幣がない場合には(ステップS604:NO)、紙幣取扱制御部310は、入出金機構部320からの紙幣の繰り出しを停止する(ステップS606)。その後、紙幣取扱制御部310は、紙幣取扱制御部310は、入出金機構部320から一枚の紙幣を異常確認用の紙幣として第1搬送路361に繰り出す(ステップS607)。紙幣取扱制御部310は、入出金機構部320から一枚の紙幣の繰り出しが成功したか否かの判定をおこない(ステップS608)、繰り出しが失敗した場合には(ステップS608:NO)、入金処理を異常終了させ(ステップS602)、搬送路確認処理および入金処理を終了する。繰り出しが成功した場合には(ステップS608:YES)、リジェクト搬送路監視処理をおこなう(ステップS610)。リジェクト搬送路監視処理とは、繰り出した異常確認用の紙幣がリジェクト搬送路に搬送したときに、搬送異常が検出されるか否かを監視するための処理である。なお、異常確認用の紙幣は、一枚に限られず複数枚であってもよい。
【0044】
本実施例では、後続紙幣にリジェクト紙幣がない場合には(ステップS604:NO)、入出金機構部320からの繰り出しを停止し(ステップS606)、入出金機構部320から一枚の異常確認用の紙幣を繰り出す構成としているが(ステップS607)、後続紙幣にリジェクト紙幣がない場合であっても必ずしも入出金機構部320から異常確認用の紙幣を繰り出す必要はない。例えば、紙幣取扱制御部310は、第1搬送路361上に後続紙幣がある場合には、入出金機構部320から一枚の紙幣の繰り出しをおこなわず、この後続紙幣を異常確認用の紙幣としてリジェクト搬送路監視処理をおこない(ステップS610)、第1搬送路361上に後続紙幣がない場合に限って、入出金機構部320により異常確認用の紙幣の繰り出しをおこなう構成としてもよい。すなわち、本発明は、リジェクト搬送経路を構成する第2搬送路362において搬送異常が検出されたときに、隣接する第1搬送路361を介して異常確認用の紙幣を第2搬送路362に搬送する構成であればよい。
【0045】
図7は、リジェクト搬送路監視処理の流れを示すフローチャートである。紙幣取扱制御部310は、センサ366bで異常確認用の紙幣を検出するまで(ステップS701:NO)、第1搬送路361を駆動させる(ステップS702:NO)。紙幣取扱制御部310は、第1搬送路361による搬送量が所定量となってもセンサ366bで紙幣を検出しない場合には(ステップS702:YES)、リジェクト搬送路監視処理を異常終了する(ステップS703)。なお、上記の搬送量とは、搬送路により正常に搬送される紙幣の移動距離を表し、駆動モータの回転量から検出することができる。
【0046】
紙幣取扱制御部310は、センサ366bで異常確認用の紙幣を検出すると(ステップS701:YES)、紙幣を検出した時刻を図示しない記憶部に登録する(ステップS704)。なお、本実施例では、紙幣の通過を検出した時点における時刻を図示しない記憶部に登録する構成としているが、センサ366bにより紙幣を検出した後にセンサ366cが紙幣を検出するまでに要する時間を計時することができれば、時刻を登録する構成以外の構成であってもよい。例えば、センサ366bで紙幣を検出すると計時を開始し、センサ366cで紙幣を検出すると計時を停止して要する時間を測定する構成であってもよい。
【0047】
紙幣取扱制御部310は、紙幣検出許容範囲の算出をおこなう(ステップS705)。紙幣検出許容範囲とは、異常確認用の紙幣がセンサ366bを通過した後、リジェクト搬送経路上を正常に搬送されたときに、センサ366cにより検出される時刻の許容誤差を含む範囲をいう。紙幣検出許容範囲は、例えば、第1搬送路361および第2搬送路362における紙幣の搬送速度、および、センサ366bからセンサ366cまでの搬送距離から算出することができる。
【0048】
紙幣取扱制御部310は、センサ366cで紙幣を検出するまで(ステップS706:NO)、第1搬送路361および第2搬送路362を駆動させる(ステップS707:NO)。紙幣取扱制御部310は、第1搬送路361および第2搬送路362による搬送量が所定量となってもセンサ366cで紙幣を検出しない場合には(ステップS707:YES)、リジェクト搬送路監視処理を異常終了する(ステップS708)。
【0049】
紙幣取扱制御部310は、センサ366cで紙幣を検出すると(ステップS706:YES)、紙幣を検出した時刻が紙幣検出許容範囲に含まれているか否かを判定する(ステップS709)。紙幣を検出した時刻が紙幣検出許容範囲に含まれている場合には(ステップS709:YES)、異常確認用の紙幣が正常に搬送された可能性が高いため、リジェクト搬送路監視処理を正常終了する(ステップS710)。
【0050】
一方、紙幣を検出した時刻が紙幣検出許容範囲に含まれていない場合には(ステップS709:NO)、異常確認用の紙幣以外のものを検出した可能性があるため、紙幣取扱制御部310は、第1搬送路361および第2搬送路362による紙幣の搬送量が所定量であるか否かを判定する(ステップS707)。第1搬送路361および第2搬送路362による紙幣の搬送量が所定量であれば(ステップS707:YES)、異常確認用の紙幣に搬送異常が生じている可能性が高いため、紙幣取扱制御部310は、リジェクト搬送路監視処理を異常終了する(ステップS708)。
【0051】
第1搬送路361および第2搬送路362による紙幣の搬送量が所定量に達していない場合には(ステップS707:NO)、異常確認用の紙幣はまだセンサ366bにより検出されていない可能性があるため、紙幣取扱制御部310は、第1搬送路361および第2搬送路362による搬送量が所定量となるまでセンサ366bによる監視を継続する(ステップS706:NO、ステップS707:NO)。
【0052】
その後、紙幣取扱制御部310は、センサ366bにより紙幣を検出したときに(ステップS706:YES)、紙幣を検出した時刻が紙幣検出許容範囲に含まれている場合には(ステップS709:YES)、リジェクト搬送路監視処理を正常終了する(ステップS710)。一方、紙幣取扱制御部310は、紙幣を検出した時刻が紙幣検出許容範囲に含まれず、第1搬送路361および第2搬送路362による紙幣の搬送量が所定量に達した場合には(ステップS709:NO、ステップS707:YES)、異常確認用の紙幣に搬送異常が生じている可能性が高いため、リジェクト搬送路監視処理を異常終了する(ステップS708)。
【0053】
図6に戻り、紙幣取扱制御部310は、リジェクト搬送路監視処理において、リジェクト搬送路監視処理を異常終了した場合には(ステップS611:NO)、入金処理についても異常終了させる(ステップS602)。これにより、搬送路確認処理および入金処理が終了する。一方、紙幣取扱制御部310は、リジェクト搬送路監視処理において、リジェクト搬送路監視処理を正常終了した場合には(ステップS611:YES)、入出金機構部320からの紙幣の繰り出しを再開する(ステップS612)。その後、紙幣取扱制御部310は、入金処理のステップ503から処理を再開する。すなわち、紙幣取扱制御部310は、リジェクト搬送経路上において搬送異常が検出された場合であっても、ステップS607において入出金機構部320から繰り出した異常確認用の紙幣が正常に搬送・集積された場合には入金処理を継続する。
【0054】
以上説明した、第1の実施例に係るATM10によれば、第2の搬送路362における搬送異常を検出するセンサ366により搬送異常が検出された場合であっても、第1搬送路361上の異常確認用の紙幣を第2搬送路362に搬送し、異常確認用の紙葉類を第2の搬送路により搬送したときに搬送異常が検出されなかった場合には、第1の搬送路および第2の搬送路による紙葉類の搬送を継続するため、搬送異常を誤検出した場合に生じる処理効率の低下の抑制を図ることができる。具体的には、紙幣取扱制御部310は、第2搬送路362により構成されるリジェクト搬送経路で搬送異常が検出された場合であっても(ステップS601:YES)、第1搬送路361上の後続リジェクト紙幣を異常確認用の紙幣として第2搬送路362に搬送し(ステップS604:YES)、異常確認用の紙幣を第2搬送路362により搬送したときに搬送異常が検出されなかった場合には(ステップS503:NO)、第1搬送路361および第2搬送路362による紙幣の搬送を継続する(ステップS504:NO)。
【0055】
これにより、搬送路による紙幣の搬送が可能な状態にもかかわらず、搬送異常を誤検出したことにより紙幣の搬送を停止させる不具合の抑制を図ることができる。例えば、搬送路上で紙幣が滑ることにより、上流側の一方のセンサ366により検出された紙幣が所定の時間内に下流側の他方のセンサ366により検出されないことにより搬送異常が検出されることがある。この場合であっても、搬送異常が検出された経路において異常確認用の後続紙幣が正常に搬送されれば、入金処理などの取引処理を停止することなく継続しておこなうことができる。また、上流側の一方のセンサ366が紙幣の通過を検出してから所定の時間を経ずに搬送方向下流側の他のセンサ366が紙幣の通過を検出したことにより搬送異常が検出された場合や、搬送方向上流側のセンサ366が紙幣の通過を検出していないにもかかわらず、搬送方向下流側の他のセンサ366が紙幣の通過を検出したことにより搬送異常が検出された場合などにおいても、搬送異常が検出された経路において異常確認用の後続紙幣が正常に搬送されれば、入金処理などの取引処理を停止することなく継続しておこなうことができる。
【0056】
また、搬送経路上において搬送異常が実際に生じていても、搬送異常が生じている搬送路に異常確認用の後続紙幣を搬送することにより、搬送異常が解消する場合があるため、搬送異常による処理効率の低下の抑制を図ることができる。例えば、搬送経路上に紙幣が滞留して搬送異常が生じても、搬送異常が生じている搬送経路に後続紙幣を搬送することで後続紙幣が滞留している紙幣を押し動かして搬送異常の解消を図ることができる。
【0057】
B.第2実施例
第1実施例では、入金処理における搬送路確認処理について説明したが、第2実施例では、出金処理における搬送路確認処理について説明する。ATM10の全体構成は第1実施例と同様であるため説明を省略する。第2実施例において第1実施例と同様の符号を付した機能部は、第1実施例と同様の機能を備えている。
【0058】
図8は、出金処理の流れを示すフローチャートである。以下の出金処理の説明において、第1実施例の入金処理と同様の処理内容については説明を省略する。ATM10がタッチパネル201等を介して利用者の出金要求を受け付けると、紙幣取扱制御部310は、回線制御部311を介してATM10の本体制御部600から出金指示を受ける。紙幣取扱制御部310は、出金指示を受け付けると紙幣取扱機構300の各部を起動させる(ステップS801)。その後、紙幣取扱制御部310は、収納庫350を制御して、紙幣の繰り出しをおこなう(ステップS802)。具体的には、紙幣取扱制御部310は、収納庫350に収容されている紙幣を一枚ずつ第1搬送路361に繰り出す。紙幣を繰り出す収納庫350は、第1収納庫351、第2収納庫352および第3収納庫353のいずれであってもよい。紙幣取扱制御部310は、収納庫350から繰り出した紙幣を紙幣判別部330に搬送する。
【0059】
紙幣取扱制御部310は紙幣判別部330を制御して、搬送した紙幣がリジェクト紙幣か否かを判別する。紙幣取扱制御部310は、搬送した紙幣が正常紙幣である場合には、紙幣判別部330から第2搬送路362を経由させて正常紙幣を入出金機構部320に集積する。一方、搬送した紙幣がリジェクト紙幣である場合には、紙幣判別部330から第2搬送路362および第3搬送路363を経由させてリジェクト紙幣を一時保管庫340に搬送する。すなわち、正常搬送経路およびリジェクト経路が第1実施例と反対になる。
【0060】
紙幣取扱制御部310は、正常搬送経路もしくはリジェクト搬送経路における搬送異常の検出をおこなう(ステップS803)。搬送した紙幣がリジェクト紙幣である場合には、リジェクト搬送経路上のセンサ366bおよびセンサ366dからの検出結果を用いて、紙幣がリジェクト搬送経路を正常に搬送されているかを監視する。また、搬送した紙幣が正常紙幣である場合には、正常搬送経路上のセンサ366bおよびセンサ366cからの検出結果を用いて、紙幣が正常搬送経路を正常に搬送されているかを監視する。
【0061】
紙幣取扱制御部310は、搬送異常を検出しなかった場合には(ステップS803:NO)、第1実施例と同様であり、すべての紙幣について正常紙幣とリジェクト紙幣との分離および集積が完了したら(ステップS804:YES)、上位装置であるATM10の本体制御部600に出金処理が正常に終了したことを報告し(ステップS805)、出金処理を終了する。
【0062】
一方、紙幣取扱制御部310は、搬送異常を検出した場合には(ステップS803:YES)、搬送路確認処理をおこなう(ステップS810)。図9は、第2実施例における搬送路確認処理の流れを示すフローチャートである。第1実施例における搬送路確認処理(図6)と比較すると、ステップS906、ステップS912において、入出金機構部320の代わりに収納庫350からの繰り出しの停止、再開をおこなう点が異なるほかは、第1実施例における搬送路確認処理と同様である。ステップS910におけるリジェクト搬送路監視処理についても第1実施例と同様である。ただし、第1実施例では、リジェクト搬送路監視処理は、センサ366bおよびセンサ366cを用いておこなわれていたが、本実施例におけるリジェクト搬送路監視処理は、センサ366bとセンサ366dを用いておこなわれる。
【0063】
なお、本実施例では、リジェクト搬送経路を構成する搬送路、すなわち、第2搬送路362の一部と第3搬送路とが特許請求の範囲における「第2の搬送路」に該当する。
【0064】
以上説明した、第2の実施例に係るATM10によれば、搬送路確認処理は入金処理に限られず出金処理においても用いることができる。また、両替処理などの入金処理や出金処理以外の処理においても用いることができる。
【0065】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
C1.変形例1:
図10は、変形例に係る紙幣取扱機構300の概略構成を示す説明図である。本実施例では、第1搬送路361は、リジェクト庫345、および、収納庫350とそれぞれ接続され、第1搬送路361上に紙幣判別部330、センサ366a、および、センサ366bが配置されている構成として説明したが、図10に示すように、第2搬送路362がリジェクト庫345、および、収納庫350まで延伸して、リジェクト庫345、および、収納庫350と接続され、第2搬送路362上に紙幣判別部330、センサ366a、および、センサ366bが配置され、第1搬送路361は、入出金機構部320と、第2搬送路362と、を接続する構成であってもよい。この場合であっても、上述した入金処理もしくは出金処理において搬送路確認処理を用いることができる。また、この場合、リジェクト搬送路監視処理をセンサ366bのかわりにセンサ366aを用いておこなうことができる。すなわち、リジェクト搬送路監視処理は、紙幣判別部330を跨ぐ2つのセンサ(センサ366aと、センサ366cもしくはセンサ366d)を用いてもおこなうことができる。
【0067】
C2.変形例2:
本実施例では、紙幣の搬送状態を確認するための搬送路確認処理を説明したが、搬送する紙葉類は紙幣に限定されず、証券やチケットなど他の紙葉類であってもよい。
【0068】
C3.変形例3:
本実施例では、リジェクト紙幣搬送経路上において搬送異常が検出されたときにリジェクト搬送路監視処理をおこなう構成として説明しているが、搬送路の監視処理は、リジェクト紙幣搬送経路に限定されず、正常紙幣搬送経路においてもリジェクト搬送路監視処理と同様の処理である正常搬送路監視処理をおこなう構成であってもよい。この場合であっても、搬送異常を誤検出した場合に生じる処理効率の低下の抑制を図ることができる。なお、本発明の搬送路の監視処理は、異常確認用の紙幣を搬送異常が生じている搬送路に搬送するため、搬送後集積された紙幣の計数が問題とならない経路において用いることが望ましい。すなわち、正常紙幣搬送経路よりもリジェクト紙幣搬送経路において用いることがより望ましい。
【0069】
なお、本発明は、上記以外の種々の形態で実現することが可能であり、例えば、紙葉類取扱装置を備える現金自動取扱装置、第1の搬送路と接続されている第2の搬送路を備える装置における紙葉類取扱方法、紙葉類取扱方法または紙葉類取扱装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記憶媒体等の形態で実現することができる。また、本発明に係る紙葉類取扱装置は、適宜、他の部材と組み合わせて適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10…現金自動取引装置
20…装置筐体
30…金庫筺体
100…カード明細票処理機構
101…カードスロット
200…顧客操作部
201…タッチパネル
300…紙幣取扱機構
310…紙幣取扱制御部
311…回線制御部
312…入出金機構制御部
313…紙幣判別制御部
314…格納庫制御部
315…搬送路制御部
316…センサ制御部
317…搬送監視部
318…搬送路確認制御部
320…入出金機構部
321…入出金口
322…シャッター
330…紙幣判別部
333…紙幣投入ホッパー
334…リジェクトスタッカー
340…一時保管庫
345…リジェクト庫
350…収納庫
351…第1収納庫
352…第2収納庫
353…第3収納庫
360…搬送路
361…第1搬送路
362…第2搬送路
363…第3搬送路
365…ゲート
366…センサ
400…インタフェース部
500…係員操作部
600…本体制御部
700…外部記憶装置
800…電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類取扱装置であって、
紙葉類を搬送するための第1の搬送路と、
前記第1の搬送路と接続されている第2の搬送路と、
前記第2の搬送路における紙葉類の搬送異常を検出する検出部と、
前記第1の搬送路および前記第2の搬送路による紙葉類の搬送を制御する搬送制御部と、を備え、
前記搬送制御部は、前記検出部により搬送異常が検出されると、前記第1の搬送路上の紙葉類を異常確認用の紙葉類として前記第2の搬送路に搬送し、前記異常確認用の紙葉類を前記第2の搬送路により搬送したときに、前記検出部により、搬送異常が検出された場合には、前記第1の搬送路および前記第2の搬送路による紙葉類の搬送を停止し、搬送異常が検出されなかった場合には、前記第1の搬送路および前記第2の搬送路による紙葉類の搬送を継続する紙葉類取扱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙葉類取扱装置はさらに、
前記第1の搬送路に接続され、前記第1の搬送路に紙葉類を繰り出す繰り出し部と、
前記第1の搬送路上に配置され、前記第1の搬送路により搬送される紙葉類を識別するための識別部と、
前記第2の搬送路に接続され、前記第2の搬送路上の紙葉類を集積するための集積部と、
前記集積部と前記第1の搬送路との間における前記第2の搬送路と接続されている第3の搬送路と、
前記第3の搬送路に接続され、前記第3の搬送路上の紙葉類を保管するための保管部と、を備え、
前記搬送制御部は、前記第3の搬送路による紙葉類の搬送を制御し、前記識別部による紙葉類の識別結果に基づいて、判別された紙葉類を前記集積部もしくは保管部に搬送する紙葉類取扱装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の紙葉類取扱装置において、
前記検出部は、前記第2の搬送路上の紙葉類の通過を検出する2以上のセンサを含み、第1のセンサが紙葉類の通過を検出した後に、所定の時間内に第2のセンサが紙葉類の通過を検出しない場合に搬送異常を検出する紙葉類取扱装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の紙葉類取扱装置において、
前記検出部は、前記第2の搬送路上の紙葉類の通過を検出する2以上のセンサを含み、搬送方向上流側の第1のセンサが紙葉類の通過を検出してないときに、下流側の第2のセンサが紙葉類の通過を検出した場合に搬送異常を検出する紙葉類取扱装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の紙葉類取扱装置において、
搬送異常とは、紙葉類のジャムを含む紙葉類取扱装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の紙葉類取扱装置において、
搬送制御部は、前記検出部により搬送異常が検出されると、前記第1の搬送路上に紙葉類がある場合は、前記紙葉類を異常確認用の紙葉類として前記第2の搬送路に搬送し、前記第1の搬送路上に紙葉類がない場合には、前記繰り出し部から紙葉類を繰り出し、繰り出した前記紙葉類を異常確認用の紙葉類として前記第2の搬送路に搬送する紙葉類取扱装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の紙葉類取扱装置において、
前記繰り出し部および集積部は、紙葉類を前記紙葉類取扱装置から出し入れするための入出金部の少なくとも一部を構成する紙葉類取扱装置。
【請求項8】
現金自動取扱装置であって、
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の紙葉類取扱装置を備える現金自動取扱装置。
【請求項9】
第1の搬送路と接続されている第2の搬送路を備える装置における紙葉類取扱方法であって、
第2の搬送路における紙葉類の搬送異常を検出する工程と、
搬送異常が検出されると、第1の搬送路上の紙葉類を異常確認用の紙葉類として第2の搬送路に搬送する工程と、
異常確認用の紙葉類を第2の搬送路で搬送したときに、搬送異常が検出された場合には、第1の搬送路および第2の搬送路による紙葉類の搬送を停止し、搬送異常が検出されなかった場合には、第1の搬送路および第2の搬送路による紙葉類の搬送を継続する工程と、を備える紙葉類取扱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−225310(P2011−225310A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94936(P2010−94936)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】