説明

紙葉類集積繰出方法とその装置、及び回転部材

【課題】集積時には変形札にも十分に作用し、繰出時には塑性変形に関わらずに繰り出しを妨げない紙葉類集積繰出方法とその装置、及び回転部材を提案し、回転部材の交換頻度及びメンテナンスの削減と紙葉類集積装置の連続運転時間の延長を図り、生産コスト及び運用コスト等の総合的なコストダウンを実現する。
【解決手段】搬送部で搬送の紙葉類を落下させて集積部に集積する集積処理と、前記集積部に集積された紙葉類を前記搬送部へ繰り出す繰出処理とを実行する紙葉類集積繰出方法又は装置に対し、先端部と回転軸との半径距離が変化し得る変化可能辺を備えた回転部材を、前記搬送部と前記集積部との連結部近傍に備え、前記集積処理時には、当該回転部材が集積方向に回転して前記半径距離が広がっている前記変化可能辺で前記紙葉類を叩き落とす叩き動作をし、前記繰出処理時には、当該回転部材が繰出方向に回転して前記紙葉類の繰り出しを許容する繰出許容動作をするべく前記回転部材を形成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば入金処理等の集積処理で紙幣を搬送路から集積部に集積し、出金処理等の繰出処理で紙幣を集積部から前記搬送路へ繰り出すような、紙葉類に対して集積処理及び繰出処理を行う紙葉類集積繰出方法とその装置、及び回転部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばATMで必要な紙幣を集積、繰り出しする紙幣集積繰出装置として、紙幣を搬送して集積部に放出する集積口近傍にゴム材で形成した羽根車91を備え、該羽根車が集積処理時に作用して繰出処理時に退避する紙幣集積繰出装置1’が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この紙幣集積繰出装置1’の構造と動作について、図10,図11に示す右側面断面図と共に簡単に説明する。
【0004】
紙幣集積繰出装置1’が紙幣2を集積する集積動作時は、図10に示すように、フィードローラ31を集積方向(図面上反時計回り)に回転させ、その回転力で紙幣2を搬送路51で搬送する。このとき、羽根車91は集積方向(図面上時計回り)に回転しており、該回転の遠心力によって羽91aが広がった状態となっている。このため、前記搬送路51を搬送した紙幣2を集積空間3に放出すると、該紙幣2を前記羽91aが叩き落とし、紙幣2をスムーズに昇降板11の上に平積みしていく。
【0005】
紙幣集積繰出装置1’が紙幣2を繰り出す繰出動作時は、図11に示すようにピックアップ回転体61を下方に枢動した状態に制御し、繰出方向(図面上反時計回り)に回転させて紙幣2を搬送路51に繰り出す。このとき、羽根車91は回転せずに停止しており、羽91aを閉じた収納状態(等価に退避状態)となっている。このため、繰出方向(図面上時計回り)にフィードローラ31を回転させ、その回転力で紙幣2を搬送路51で搬送するに際して、紙幣2の繰り出し及び搬送を羽91aが妨げないようになっている。
【0006】
このようにして紙幣集積繰出装置1’は、旧来のプラスチックフィルムで羽根車を形成したタイプで必要であった羽根車自体を上下動制御する機構を省略し、コストダウンを図っている。
【0007】
【特許文献1】
特願2001−368334号明細書。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、集積動作と繰出動作を頻繁に行うATM等の紙幣集積繰出装置1’では、羽根車91を酷使することとなり、使用を継続するとゴム材が塑性変形し、使用日数がかさむと停止状態でも羽91aが開いてしまうこととなる。このため、搬送路51から繰り出す紙幣2に羽91aが当ってしまうようになり、紙詰まりの原因となっていた。
【0009】
また羽91aは、集積時に先端部と回転軸側の基部との中間部が先行するように湾曲しているため、紙幣2を叩き落とす際の羽91aと紙幣2との接触角度がゆるくなり、折れ等の変形がある紙幣2(以下変形札と略す)に対しては十分に作用することができなかった。
【0010】
この発明は、上述の問題に鑑みて、集積時には変形札にも十分に作用し、繰出時には塑性変形に関わらずに繰り出しを妨げない紙葉類集積繰出方法とその装置、及び回転部材を提案し、回転部材の交換頻度及びメンテナンスの削減と紙葉類集積装置の連続運転時間の延長を図り、生産コスト及び運用コスト等の総合的なコストダウンを実現することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、搬送部で搬送の紙葉類を落下させて集積部に集積する集積処理と、前記集積部に集積された紙葉類を前記搬送部へ繰り出す繰出処理とを実行する紙葉類集積繰出方法又はその装置であって、先端部と回転軸との半径距離が変化し得る変化可能辺を備えた回転部材を、前記搬送部と前記集積部との連結部近傍に備え、前記集積処理時には、当該回転部材が集積方向に回転して前記半径距離が広がっている前記変化可能辺で前記紙葉類を叩き落とす叩き動作をし、前記繰出処理時には、当該回転部材が繰出方向に回転して前記紙葉類の繰り出しを許容する繰出許容動作をするべく前記回転部材を形成した紙葉類集積繰出方法又はその装置であることを特徴とする。
【0012】
前記紙葉類は、紙幣、カード、紙、印刷された紙で構成することを含む。
前記変化可能辺は、変形可能なゴム材等の樹脂部材、変形可能な弾性鉄板等の変形可能金属部材、回転軸側の基部又は/及び該基部と先端部との中間部で枢動して回転方向に折れ可能又は曲がり可能な変形可能構造体、又は、回転軸の半径方向に伸縮可能な伸縮部材で形成することを含む。
【0013】
また該変化可能辺は、所定の幅、厚さ及び長さに形成した幕状体、又は、所定の太さに形成した紐状体で形成することを含む。さらに、幕状体であれば、幅、厚さ及び長さが一定の定型状、先端側に向かって厚みが増すテーパ状、先端側に向かって幅が広がるテーパ状、先端側におもりをつけた先端重心状に形成することを含む。またさらに、紐状体であれば、一定の太さの定型状、先端に向かって太さが増すテーパ状、先端側におもりをつけた先端重心状に形成することを含む。
【0014】
前記先端部は、前記変化可能辺の外側の先端部分を指す。
【0015】
前記回転部材は、前記変化可能辺を1以上備えた有辺ローラ(又は有羽ローラ)、又は、前記変化可能辺を1以上備えた有辺回転軸(又は有羽回転軸)で形成することを含む。
【0016】
前記回転軸は、前記回転部材を挿着又は接着等により取り付ける回転軸、又は、前記回転部材の一部で構成することを含む。
【0017】
前記叩き動作は、前記変化可能辺の先端部又は/及び中間部で前記紙葉類を叩き落とす動作に設定することを含む。
【0018】
前記繰出許容動作は、前記回転部材を繰出方向に繰出速度と等速で回転させ、前記変化可能辺が紙葉類に接触して繰り出しを妨げない、あるいは接触して繰り出しを補助する動作に設定することを含む。
【0019】
なお、前述の集積方向に回転、繰出方向に回転とは、例えば右側面から見て右側に集積部、その左上方に搬送部、該搬送部と前記集積部の接続部左下方に回転部材が位置している場合、集積時には時計回り(集積方向)、繰出時には半時計回り(繰出方向)に回転することをいう。
【0020】
好ましい実施の形態として、前記変化可能辺を、その先端部と回転軸側の基部との中間部が前記叩き動作時に回転方向後退側(回転方向に対して後退側)に湾曲する湾曲形状に形成することができる。
【0021】
前記湾曲形状は、きれいな円弧状、先端部や中間部や基部等の所定の位置で曲がり具合が異なる歪円弧状、又は、1以上の位置で折れ曲がることで全体として湾曲と言いえる折れ形状に形成することを含む。
【0022】
またこの発明は、先端部と回転軸との半径距離が変化し得る変化可能辺を備ええ、前記紙葉類集積繰出方法又は前記紙葉類集積繰出装置で使用する回転部材とすることができる。
【0023】
【発明の効果】
この発明により、集積処理と繰出処理での詰まりを防止してスムーズに集積及び繰り出しを実行する高性能な紙葉類集積繰出装置を提供することができる。また、回転部材の使用可能期間を延長してメンテナンスコストを削減し、総合的なコストダウンを図ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
まず、図1に示す紙幣集積繰出装置1の斜視図と共に、紙幣集積繰出装置1の外観と構成について説明する。
【0025】
紙幣集積繰出装置1は外形をボックス状に形成し、内部には紙幣2を水平にして積み重ねる集積空間3を有し、該集積空間3の底部に紙幣大(紙幣程度の大きさ)の昇降板11を備えている。
【0026】
前記昇降板11は、水平状態で側壁に沿って上下動が可能なようにガイドされている。該昇降板11には昇降ベルト13の一部を固着部12で固定しており、適宜の制御手段による正逆転モータ(パルスモータ)14の正逆転制御で該昇降ベルト13を正逆に回転し、該昇降板11の上下動を制御する。
【0027】
紙幣集積繰出装置1の上部には、フィード軸32を横方向に架設して軸受し、該フィード軸32に略円柱形の2個のフィードローラ31,31を所定間隔に隔てて挿着する。該フィードローラ31により、紙幣2を集積時に奥側へ、繰出時に上方へ搬送する。
【0028】
前記フィード軸32の一端(図面上右端)には、歯車34を挿着しており、歯車43及び正逆転モータ41に固着した歯車42を介して、正逆転モータ41の回転力を駆動力として得る。なお、前記正逆転モータ41は、適宜の制御手段で正逆転制御する。
【0029】
前記フィード軸32の他端(図面上左端)には、歯車33を挿着しており、前記フィード軸32の手前下に架設して軸受したシャフト22に歯車24を介して駆動力を伝達する。
【0030】
前記シャフト22には、2個のゲートローラ25,25を前記フィードローラ31,31と対向して備え、周面にはフィードローラ31,31に形成された溝にわずかに入り込むことができるように凸状を形成し、フィードローラ31とゲートローラ25とを互いにオーバラップさせている。ここで前記ゲートローラ25は、集積時には集積方向に回転し、繰出時には回転せずに停止する構造となっている。
【0031】
上述のゲートローラ25,25の外側には集積時に紙幣を叩き落とすための遠心力羽根車21,21を備える。なお、これにより前記シャフト22は遠心力羽根車21の軸である羽根車軸として機能する。
【0032】
該遠心力羽根車21は、後述するように非回転の静止状態では羽21aが収納状態であり、回転(回転動作)による遠心力で羽21aが広がるように、適宜のゴム材で形成している。
【0033】
また該遠心力羽根車21は、集積時には集積方向に、繰出時には繰り出し方向に回転する構造となっているが、これらの構造の詳細については後述する。
なお、前記遠心力羽根車21、シャフト22、及びゲートローラ25で集積繰出補助装置20(後述)を構成している。
【0034】
前記シャフト22の一端(図面上右端)は、集積空間3の外側で位置決め板44に軸受されており、同様に該位置決め板44に軸受されているフィード軸32と共に、該端部(図面上右端)が位置決めされている。
【0035】
以上の構成により、フィードローラ31とゲートローラ25による搬送力で、紙幣2を搬送し、集積時には集積空間3に紙幣2を積上げていくことができ、また繰出時には紙幣2を搬送路から繰り出すことができる。この集積/繰出動作の際に、遠心力羽根車21も動作補助として作用する。
【0036】
次に、図2に示す集積繰出補助装置20の分解斜視図と共に、該集積繰出補助装置20の構造について説明する。
【0037】
集積繰出補助装置20は、中央のカップリング部23、その両側部のゲートローラ25,25、左側の該ゲートローラ25の外側のギヤ26が一体となって回転するように、金属部材で形成したシャフト22にそれぞれ挿入する。これらカップリング部23、ゲートローラ25、及びギヤ26で構成するゲート部20aの両側部を挟むようにして、ワッシャ状の留め具であるEリング27をシャフト22の留め溝22aに嵌め込み、ゲート部20aを位置決めする。
【0038】
シャフト22の前記ゲート部20aのさらに外側部分には、遠心力羽根車21,21を挿着固定する。
【0039】
このようにして組み立てた集積繰出補助装置20は、図3の正面図及び図4の断面図に示すような構造となり、ゲート部20aが一体となって動作する。
【0040】
すなわち、ゲートローラ25の側面には図4に示すように係合用穴(凹部)を備えており、カップリング部23、及びギヤ26の側面にそれぞれ備えた係合用突起部23a,26aを前記係合用穴に嵌合して、それぞれを連結している。これにより、連結した部品はいずれも単独で回転することはできず、ゲート部20aとして一体で回転/非回転することとなる。
【0041】
前記カップリング部23の内部には、ワンウェイクラッチ23bを備えており、集積方向ではシャフト22に対して非回転状態、すなわちはシャフト22と一体化して回転し、繰出方向ではシャフト22に対してフリー(自由)になる。
【0042】
前記ギヤ26には、下方位置にワンウェイギヤ28を接続する。該ワンウェイギヤ28は、その外周面に形成したギヤ28aが前述のギヤ26と噛合して回転が伝達され、内側に収納したワンウェイクラッチ28bにより、繰り出し方向の回転を停止し、集積方向では回転を許容するようにクラッチの方向性を設定して、固着部29の固定軸29aに軸支する。なお、固着部29は搬送路のガイド板52(後述)に固着する。
【0043】
この構造によりワンウェイギヤ28は、ゲートローラ25,25の回転を集積方向では許容し、繰出方向では非回転として停止させる。
【0044】
その結果、集積繰出補助装置20は、集積時には全部品がシャフト22によって回転し、繰出時には、遠心力羽根車21とシャフト22とは回転するものの、ゲート部20aは非回転状態(すなわち停止状態)となる。
【0045】
以上の構造により、集積動作時にはゲート部20aと遠心力羽根車21が回転して集積補助を行う。繰出時にはゲート部20aは停止し、集積空間3に積み重ねた紙幣2の上から2枚目以降を繰り出さないように摩擦力を与える。この繰出時に遠心力羽根車21は、繰出方向に回転して繰出補助を行う。
【0046】
次に、図5に示す遠心力羽根車21の説明図と共に、遠心力羽根車21の形状と機能について説明する。
図中の(A)は静止状態の遠心力羽根車21の斜視図を示し、(B)は回転状態の遠心力羽根車21の斜視図を示している。
【0047】
遠心力羽根車21は、(A)に示すように筒状体21bの側面に4箇所均等位置に羽21aを備えた形状に、ゴム材で一体成形している。
【0048】
羽21aは、円弧状の中間部21dの一端に半径の小さい円弧状の基部21cを接続した形状で、筒状体21b側の基部21cから先端部21eにかけて徐々に厚みが増す逆テーパ状に形成している。
【0049】
このように形成した遠心力羽根車21を正方向(集積方向)に回転させると、(B)に示すように羽21aが遠心力で広がり、先端部と回転軸との半径距離21fが長くなる。この回転時には、羽21aを前述したように逆テーパ状に形成しているため、先端部21e側が重くなっており、羽21aが広がりやすくなっている。
【0050】
また、遠心力羽根車21を逆方向(繰出方向)に回転させた場合も、正方向に回転させた場合と同様に羽21aが広がりやすくなっている。
【0051】
以上の形状により遠心力羽根車21は、仮想線の矢印方向に示すように集積方向に回転している場合は、紙幣2を中間部21dの内側面又は先端部21eで叩くこととなる。この時の叩く力は、ゴム材が元の形状に戻ろうとする付勢力も叩く方向に働いて強い力となる。
【0052】
一方、逆回転である繰出方向に回転している場合は、紙幣2を中間部21dの外側面又は先端部21eで叩く(あるいはなでる、押し出す)こととなる。この時の叩く力は、ゴム材が元の形状に戻ろうとする付勢力が反対方向に働いて弱い力となる。
【0053】
次に、図6に示す集積時の紙幣集積繰出装置1の右側面断面図、及び図7に示す繰出時の紙幣集積繰出装置1の右側面断面図と共に、集積動作と繰出動作での各装置の作用について説明する。
【0054】
まず、図6及び図7において、紙幣集積繰出装置1には上方正面側に図1と共に前述したフィードローラ31を備えており、該フィードローラ31の後方には、プーリ63,64にベルト62を張架したピックアップ回転体61を備えている。
【0055】
該ピックアップ回転体61は、集積動作時と繰出動作時で、奥側のプーリ64を中心に上下遥動し、繰出時には集積された紙幣2と接触してこれを繰出方向に送出するように、適宜の駆動手段で駆動するように構成している。
【0056】
紙幣を搬送する搬送路51は、フィードローラ31の外周よりわずかに内側の位置で上、手前、下をガイドしてそのまま後方へ水平に伸びるガイド板53と、紙幣集積繰出装置1の上端手前の紙幣繰出口54から真下に伸びて一部フィードローラ31の外周に沿って湾曲した後再度真下に伸びるガイド板52によって形成している。
【0057】
なお、該ガイド板52には、図4と共に説明した固着部材29(図示省略)をネジ止めしている。
また、該搬送路51と前記集積空間3との連結部3aの近傍に、前述の集積繰出補助装置20(すなわちゲート部20a及び遠心力羽根車21)を配設している。
【0058】
前記紙幣繰出口54の少し後方には紙幣投入口55を備えており、該紙幣投入口55及び紙幣繰出口54は内部で統合されて前記搬送路51につながっている。
【0059】
以上の構成及び構造により、集積時と繰出時で以下のように動作する。
集積時には、紙幣投入口55から搬入された紙幣2を、フィードローラ31の搬送力によって搬送路51内を搬送し、集積空間3に放出して昇降板11の上に集積する。
【0060】
この集積時に、図6に示すようにフィードローラ31と同期して回転している遠心力羽根車21の羽21aで紙幣2を叩き落とし、次々搬送してくる紙幣2が集積空間3内でぶつかり合って詰まることを防止している。
【0061】
このとき、ゲートローラ25は前述したワンウェイクラッチ23bの作用でシャフト22と一体になって遠心力羽根車21と共に回転し、ワンウェイギヤ28はフリーの状態となって前記回転を許容している。
【0062】
なお、このときピックアップ回転体61は上げた状態になっており、紙幣2の集積を妨げないようにしている。
【0063】
繰出時には、ピックアップ回転体61を図7に示すように下げた状態にしており、平積みされている紙幣2をピックアップして搬送路51に送り出す。
このとき、フィードローラ31及び遠心力羽根車21は同期して集積時と逆回転しており、ゲートローラ25は前述したワンウェイクラッチ23bの作用でシャフト22からフリーになり、ワンウェイギヤ28の作用で停止している。
【0064】
これにより、遠心力羽根車21は搬送路51に繰り出す紙幣2をなでるように送り出し、紙幣2の繰り出しを補助することとなる。またゲートローラ25は停止しており、2枚目以降の紙幣2が連れ出されるのを摩擦力で防止する。
【0065】
このようにして、遠心力羽根車21による単純な構造で、紙幣2の集積/繰出をスムーズに実行することができ、詰まりを防止して性能を向上することができる。
【0066】
また、図8の正面図に示すように、遠心力羽根車21はフィードローラ31及びゲートローラ25の外側に位置し、集積時及び繰出時共に紙幣2を上方へ付勢するため、紙幣2を外側(両横)に引っ張って折れや曲がりを伸ばす作用も得られる。これにより、フィードローラ31,31間で古紙幣がたるむことでの詰まりを、効果的に防止することができる。
【0067】
さらに、図9の説明図に示すように、変形札の集積/繰出をもスムーズに行う効果が得られる。すなわち、(C)に示すように折れのある紙幣2を集積するとき、羽21aが先端部21eより中間部21dが後退側に湾曲している形状により、真直ぐ若しくは逆向きに湾曲させた場合よりも狭い角度でしっかりと叩き落すことができる。
【0068】
このときの叩き力は、遠心力に羽21aの弾性力を加えた力となり、変形札に十分対応できる強い叩き力が得られる。
これらにより、図示するように最後で上方へ折れている紙幣2を集積するときに、折れの部分に次の紙幣2が当って詰まることを防止することができる。
【0069】
繰出時には、(D)に示すように繰出側が変形している変形札(紙幣2)もスムーズに繰り出すことができる。すなわち、図示するように繰出側が変形していると、従来であればフィードローラ31とゲートローラ25で挟んで完全に折れ状態となり、紙幣2枚分の厚さとなってオーバラップ部を通らず詰まっていたが、羽21aが下方からなでるように紙幣2を繰り出し方向に運ぶことで、曲がっている変形部が伸びて真直ぐ繰り出すことができる。
このとき、遠心力羽根車21は紙幣2の繰り出し速度と等速に回転しているため、たとえ搬送力が得られなくとも繰り出しを妨げることはない。
【0070】
このように、平常の紙幣2のみならず変形や折れのある紙幣2にも幅広く対応することができ、詰まりを防止してメンテナンス要員を減らすことができる。また、遠心力羽根車21が塑性変形によって製造時よりも羽21aが開いた状態となっても、紙幣2の集積及び繰り出しを妨げることがなく、集積及び繰り出しの性能を長期間に渡って維持することができる。
【0071】
なお、遠心力羽根車21はシャフト22の左右に一つずつ備えたが左右3つずつ備える等複数ずつ備えても良い。
また、遠心力羽根車21の羽21aは、4枚に限らず複数枚若しくは1枚で形成しても良い。
【0072】
また、羽21aの形状は、湾曲させずに真直ぐ形成してもよい。この場合、非回転時でも広がった状態で重力によってわずかに垂れる程度となるが、集積時も繰出時も回転して作用するため問題なく利用することができる。
【0073】
また、遠心力羽根車21を形成するゴム材は、硬質ゴム材でも軟質ゴム材でも良いが、摩耗を考慮して硬質ゴム材で形成することが望ましい。
また、羽21aは、硬質ゴム材で内部に空洞若しくは軟質部を備えるように構成しても良い。これにより、対磨耗性と柔軟性を備えた構造にすることができる。
【0074】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の紙葉類集積繰出装置は、実施形態の紙幣集積繰出装置1に対応し、
以下同様に、
紙葉類は、紙幣2に対応し、
集積部は、集積空間3に対応し、
回転部材は、遠心力羽根車21に対応し、
変化可能辺は、羽21aに対応し、
回転軸は、シャフト22に対応し、
搬送部は、搬送路51に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】紙幣集積繰出装置の外観を示す斜視図。
【図2】集積繰出補助装置の構造を示す分解斜視図。
【図3】集積繰出補助装置の正面図。
【図4】集積繰出補助装置の正面一部断面図。
【図5】遠心力羽根車の形状と機能を説明する説明図。
【図6】集積時の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図7】繰出時の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図8】集積繰出補助装置の正面図。
【図9】変形札に対する羽の作用を説明する説明図。
【図10】従来の紙幣集積繰出装置の集積時を示す右側面断面図。
【図11】従来の紙幣集積繰出装置の繰出時を示す右側面断面図。
【符号の説明】
1…紙幣集積繰出装置
2…紙幣
3…集積空間
3a…連結部
21…遠心力羽根車
21a…羽
21c…基部
21d…中間部
21e…先端部
21f…半径距離
22…シャフト
51…搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部で搬送の紙葉類を落下させて集積部に集積する集積処理と、
前記集積部に集積された紙葉類を前記搬送部へ繰り出す繰出処理とを行う紙葉類集積繰出方法であって、
前記搬送部と前記集積部との連結部近傍に位置して実行し、
先端部と回転軸との半径距離が変化し得る変化可能辺を備えた回転部材により、前記集積処理時には、前記回転部材が集積方向に回転して前記半径距離が広がっている前記変化可能辺で前記紙葉類を叩き落とし、
前記繰出処理時には、前記回転部材が繰出方向に回転して前記紙葉類の繰り出しを許容する
紙葉類集積繰出方法。
【請求項2】
搬送部で搬送の紙葉類を落下させて集積部に集積する集積処理と、
前記集積部に集積された紙葉類を前記搬送部へ繰り出す繰出処理とを実行する紙葉類集積繰出装置であって、
先端部と回転軸との半径距離が変化し得る変化可能辺を備えた回転部材を、前記搬送部と前記集積部との連結部近傍に備え、
前記集積処理時には、当該回転部材が集積方向に回転して前記半径距離が広がっている前記変化可能辺で前記紙葉類を叩き落とす叩き動作をし、前記繰出処理時には、当該回転部材が繰出方向に回転して前記紙葉類の繰り出しを許容する繰出許容動作をするべく前記回転部材を形成した
紙葉類集積繰出装置。
【請求項3】
前記変化可能辺を、その先端部と回転軸側の基部との中間部が前記叩き動作時に回転方向後退側に湾曲する湾曲形状に形成した
請求項2記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項4】
先端部と回転軸との半径距離が変化し得る変化可能辺を備え、
請求項1、2又は3記載の紙葉類集積繰出方法又は紙葉類集積繰出装置で使用する
回転部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2004−137015(P2004−137015A)
【公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−302009(P2002−302009)
【出願日】平成14年10月16日(2002.10.16)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】