説明

紙製造における改善された歩留まりおよび濾水

製紙法における歩留まりおよび濾水を改善する方法を開示する。本方法は、製紙用スラリーに、会合性ポリマー、水混和性ポリマー、および、任意にケイ酸含有材料を添加することを提供する。加えて、会合性ポリマーおよび水混和性ポリマーを含む組成物、さらに、任意にセルロース繊維をさらに含む組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年12月29日付けで出願された米国仮出願第60/640,157号の利益を主張し、その全ての内容は参照により本明細書の開示に含まれる。
発明の分野
本発明は、凝集系を用いてセルロース原料から紙および板紙を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
歩留まりおよび濾水は、製紙において重要な観点である。ある種の材料が、紙および板紙の製造において改善された歩留まりおよび/または濾水特性を提供することができることがわかっている。
【0003】
セルロース系繊維のシート、具体的には紙や板紙の製造は、以下を含む:1)セルロース系繊維の水性スラリーを製造すること(このスラリーには、無機鉱物性の増量剤または顔料が含まれていてもよい);2)このスラリーを、移動する製紙用のワイヤーまたはファブリック上に堆積させること;さらに、3)水を濾水することによってスラリーの固形分からシートを形成すること。
【0004】
前述のようにした後、シートをプレスし、乾燥させて、さらに水分を除去する。このようなスラリーに、シートを形成する工程の前に有機および無機化学物質が添加されることが多く、そうすることによって、製紙方法にかかるコストを少なくし、より迅速にし、および/または、最終的な紙製品に特定の特性を付与する。
【0005】
製紙産業は、紙の質を改善し、生産性を高め、製造コストを低減させる努力を続けている。濾水/脱水と固形分の歩留まりを改善するために、繊維スラリーが製紙用のワイヤーまたはファブリックに到達する前に、繊維スラリーに化学物質が添加されることが多く、これらの化学物質は、歩留まりおよび/または濾水性向上剤と称される。
【0006】
製紙用のワイヤーまたはファブリック上での繊維スラリーの濾水または脱水が、より速い抄紙機のスピードを達成することにおいて律速段階であることが多い。また、改善された脱水法では、プレス中でより乾燥したシートが得られる可能性があり、より乾燥したセクションでは、エネルギー消費を減少させることができる。加えて、これは、製紙方法におけるシートの最終的な特性の多くを決定する段階であるため、歩留まりおよび/または濾水性向上剤は、最終的な紙のシートの性能属性に強い影響を与えることができる。
【0007】
固形分に関して、製紙用の歩留まり向上剤は、濾水してペーパーウェブを形成するための乱流法(turbulent method)中に、ウェブ中の微細な完成紙料の固形分の歩留まりを高めるのに用いられる。微細な固形分の歩留まりが不足すると、固形分がミルの排水に流出するか、または、白水が循環するループ中に高レベルで蓄積し、場合によっては堆積の沈着を引き起こすかのいずれかである。加えて、歩留まりが不十分だと、繊維上に吸収させることを目的とする添加剤が損失することによって製紙コストが高くなる。添加剤は、紙に不透明性、強度、サイジングまたはその他の望ましい特性を提供することができる。
【0008】
従来、カチオン性電荷またはイオン電荷のいずれかを有する高分子量(MW)水溶性ポリマーは、歩留まり向上剤および濾水性向上剤として用いられてきた。近年の無機微粒子の開発によれば、高分子量水溶性ポリマーと組み合わせて歩留まり向上剤および濾水性向上剤として用いられる場合、従来の高分子量水溶性ポリマーと比較して優れた歩留まりおよび濾水の有効性を有する。米国特許第4,294,885号、および、4,388,150号は、スターチポリマーとコロイドシリカとの併用を教示している。米国特許第4,643,801号、および、4,750,974号は、カチオン性スターチ、コロイドシリカおよびアニオン性ポリマーのコアセルベートの結合剤の使用を教示している。米国特許第4,753,710号は、高分子量カチオン性凝集剤を用いてパルプ完成紙料を凝集させ、凝集した完成紙料に剪断を誘導し、その完成紙料にベントナイト粘土を導入することを教示している。
【0009】
用いられるポリマーまたはコポリマーの有効性は、それらを構成する単量体のタイプ、ポリマーマトリックス中の単量体の配列、合成された分子の分子量、および、製造方法に応じて様々であると予想される。
【0010】
近年、水溶性コポリマーを所定の条件下で製造すると、水溶性コポリマーは特有の物理特性を示すことが見出された。これらのポリマーは、化学的な架橋剤がなくても製造される。加えて、上記コポリマーは、歩留まり向上剤および濾水性向上剤のような製紙用途などのある種の用途において予想外の活性を示す。このような独特な特徴を示すアニオン性コポリマーは、WO03/050152A1で開示されており、その全ての内容は、参照により本明細書の開示に含まれる。このような独特な特徴を示すカチオン性および両性コポリマーは、米国特許出願第10/728,145号で開示されており、その全ての内容は、参照により本明細書の開示に含まれる。
【0011】
無機粒子とアクリルアミドの直鎖状コポリマーとの併用は当業界既知である。近年の特許では、これらの無機粒子と水溶性アニオン性ポリマーとの併用(US6,454,902)、または、特定の架橋材料(US6,454,902、US6,524,439、および、US6,616,806)を教示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、それでもなお濾水および歩留まり性能を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要約
製紙法における歩留まりおよび濾水を改善する方法を開示する。本方法 は、製紙用スラリーに、会合性ポリマーと水混和性ポリマーとを添加することを提供する。
【0014】
加えて、会合性ポリマー、および、水混和性ポリマーを含む組成物を開示し、該組成物は、セルロース繊維をさらに含んでもよい。
加えて、会合性ポリマー、水混和性ポリマー、ケイ酸含有材料を含む組成物を開示し、該組成物は、セルロース繊維をさらに含んでもよい。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、所定の条件下で製造された水溶性コポリマー(以降、「会合性ポリマー」と称する)、および、水混和性ポリマーを含む相乗的な組み合わせを提供する。驚くべきことに、この相乗的な組み合わせにより、個々の成分の歩留まりおよび濾水性能より優れた歩留まりおよび濾水性能が得られることが見出された。相乗効果は、組み合わせた成分が一緒に用いられる場合に起こる。
【0016】
意外なことに、水混和性ポリマーと会合性ポリマー(例えば、WO03/050152A1、または、US2004/0143039A1で開示されたポリマー)との併用により、歩留まりおよび濾水が強化されることが見出された。
【0017】
本発明はまた、会合性ポリマー、および、水混和性ポリマー含む新規の組成物を提供する。
本発明はまた、会合性ポリマー、水混和性ポリマー、および、ケイ酸含有材料を含む組成物を提供する。
【0018】
本発明はまた、会合性ポリマーおよび水混和性ポリマー、および、セルロース繊維を含む組成物を提供する。
本発明はまた、会合性ポリマー、水混和性ポリマー、ケイ酸含有材料、および、セルロース繊維を含む組成物を提供する。
【0019】
紙および板紙の製造に多成分系を用いることによって、プロセスおよび/または製品に様々な作用を有する材料を利用することにより性能を高める機会が得られる。その上、それらを組み合わせることによって、個々の成分では得がたい特性が得られる可能性がある。本発明の多成分系において、相乗効果が起こる。
【0020】
また、歩留まり向上剤および濾水性向上剤としての会合性ポリマーの使用は、製紙系においてその他の添加剤の性能に強い影響を有することも観察される。改善された歩留まりおよび/または濾水は、直接的および間接的両方の影響を与えることができる。直接的な影響とは、歩留まり向上剤および濾水性向上剤が、添加剤を保持するように作用することを意味する。間接的な影響とは、歩留まり向上剤および濾水性向上剤が、添加剤を物理的または化学的な手段のいずれかによってその上に付着させる充填剤や微繊維を保持する効果を意味する。従って、シート内に保持された充填剤または微繊維の量が多くなると、それに付随して保持される添加剤の量も増加する。充填剤という用語は、セルロースパルプスラリーに添加される微粒子状の材料(典型的には無機性のもの)を意味し、充填剤は、所定の属性を付与したり、または、セルロース繊維の一部を置換するより低コストの物質となったりすることが可能である。充填剤のおよそ0.2〜10ミクロンの比較的小さいサイズ、低いアスペクト比、および、化学的性質のため、それらは大きい繊維には吸収されず、一方で、繊維のネットワーク(すなわち紙のシート)に封じ込めるには小さすぎる。用語「微繊維」は、細かいセルロース繊維またはフィブリルを意味し、典型的には長さが0.2mm未満であり、および、/または、200メッシュスクリーンを通過することができるものである。
【0021】
歩留まり向上剤および濾水性向上剤の使用レベルが増加すると、シート内に保持される添加剤の量も増加する。これにより、特性を強化し、性能属性を向上させたシートを提供すること、または、製紙業者が系に添加する添加剤の量を減少し、製品コストを低くすることのいずれかを実現することができる。その上、製紙系で用いられる再循環水または白水中のこれらの材料の量も減少する。このようなある種の条件下では不要な汚染物質とみなされる可能性がある材料レベルを減少させることにより、より効率的な製紙プロセスを提供することができ、または、望ましくない材料のレベルを制御するためのスカベンジャーまたはその他の材料の添加の必要性を低減させることができる。
【0022】
本明細書で用いられる添加剤という用語は、紙に特定の属性を提供したり、および/または、製紙プロセスの効率を改善したりするために製紙用スラリーに添加される材料を意味する。このような材料としては、これらに限定されないが、サイズ剤、湿潤紙力増強樹脂、乾燥紙力増強樹脂、スターチおよびスターチ誘導体、色素、汚染物質を制御する物質、消泡剤および殺生剤が挙げられる。
【0023】
本発明において有用な会合性ポリマーは、以下のように説明することができる:
式:
【0024】
【化1】

【0025】
[式中、Bは、1種またはそれ以上のエチレン性不飽和非イオン性単量体の重合により形成された非イオン性ポリマーセグメントである;Fは、1種またはそれ以上のエチレン性不飽和アニオン性および/またはカチオン性単量体の重合から形成された、アニオン性ポリマーセグメント、カチオン性ポリマーセグメント、または、アニオン性およびカチオン性ポリマーセグメントの組み合わせであり;B:Fのモル%比は、95:5〜5:95である;さらに、該水溶性コポリマーは、少なくとも1種のジブロックまたはトリブロック高分子界面活性剤からなる少なくとも1種の乳化用の界面活性剤を用いる油中水型乳化重合技術によって製造され、ここで、少なくとも1種のジブロックまたはトリブロック界面活性剤の単量体に対する比率は、少なくとも約3:100である]
を含む水溶性コポリマー組成物であり、
ここで、該油中水型乳化重合技術は、以下の工程を含む:
(a)単量体の水溶液を製造する工程、(b)該水溶液と、界面活性剤、または界面活性剤の混合物を含む炭化水素液とを接触させて、逆エマルジョンを形成する工程、(c)該エマルジョン中の単量体を、フリーラジカル重合によって約2以上7未満のpH範囲で重合させる工程。
【0026】
会合性ポリマーは、アニオン性コポリマーであってもよい。この場合のアニオン性コポリマーは、0.0025重量%〜0.025重量%のコポリマーを含む0.01MのNaCl溶液で測定されたハギンズ定数(k’)が0.75より大きく、1.5重量%活性コポリマー溶液の貯蔵弾性率(G’)が、4.6Hzで、175Paより大きいことを特徴とする。
【0027】
会合性ポリマーは、カチオン性コポリマーであってもよい。この場合のカチオン性コポリマーは、0.0025重量%〜0.025重量%のコポリマーを含む0.01MのNaCl溶液で測定されたハギンズ定数(k’)が0.5より大きく;さらに、該コポリマーは、1.5重量%活性コポリマー溶液において、6.3Hzで、50Paより大きい貯蔵弾性率(G’)を有することを特徴とする。
【0028】
会合性ポリマーは、両性コポリマーであってもよい。この場合の両性コポリマーは、0.0025重量%〜0.025重量%のコポリマーを含む0.01MのNaCl溶液で測定されたハギンズ定数(k’)が0.5より大きく;さらに、該コポリマーは、1.5重量%活性コポリマー溶液において、6.3Hzで、50Paより大きい貯蔵弾性率(G’)を有することを特徴とする。
【0029】
逆エマルジョンの重合は、高分子量水溶性ポリマーまたはコポリマーを製造するための標準的な化学的方法である。一般的に、逆エマルジョンの重合法は、1)単量体の水溶液を製造すること、2)その水溶液と、適切な乳化用の界面活性剤または界面活性剤の混合物を含む炭化水素液とを接触させ、逆相の単量体エマルジョンを形成すること、3)その単量体のエマルジョンをフリーラジカル重合で処理することによって行われ、さらに、4)水に添加する際のエマルジョンの逆転を促進するためにブレーカーとしての界面活性剤を添加してもよい。
【0030】
逆エマルジョンポリマーは、典型的には、イオン性または非イオン性単量体をベースとする水溶性ポリマーである。また、2種またはそれ以上の単量体を含むポリマーはコポリマーともいい、これも同じ方法で製造することができる。これらの共重合用単量体は、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、非イオン性が可能であり、または、それらの組み合わせでもよい。
【0031】
典型的な非イオン性単量体としては、これらに限定されないが、アクリルアミド;メタクリルアミド;N−アルキルアクリルアミド、例えばN−メチルアクリルアミド;N,N−ジアルキルアクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアクリルアミド;アクリル酸メチル;メタクリル酸メチル;アクリロニトリル;N−ビニルメチルアセトアミド;N−ビニルホルムアミド;N−ビニルメチルホルムアミド;酢酸ビニル;N−ビニルピロリドン;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸塩、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、または、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート;前述のもののいずれかの混合物などが挙げられる。((メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する)
また、より疎水性の性質を有する非イオン性単量体も、会合性ポリマーの製造で用いることができる。用語「より疎水性の」とは、本明細書において、これらの単量体の水溶液への溶解性が減少していることを示すものとして用いられる;この減少は実質的にゼロでもよく、その場合、単量体が水不溶性であることを意味する。注意すべきことは、対象の単量体は、重合可能な界面活性剤またはサーフマー(surfmer)とも称されることである。これらの単量体としては、これらに限定されないが、アルキルアクリルアミド;ペンダント型芳香族およびアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体、および、式CH=CR’CHOAR(式中、R’は、水素またはメチルであり;Aは、1個またはそれ以上の環状エーテル、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドからなるポリマーであり;さらに、Rは、疎水性基であり;ビニルアルコキシレート;アリルアルコキシレート;さらに、アリルフェニルポリオールエーテル硫酸塩である)で示されるエーテルが挙げられる。典型的な材料としては、これらに限定されないが、メチルメタクリラート、スチレン、t−オクチルアクリルアミド、および、クラリアント(Clariant)がエマルソジェンAPG2019(Emulsogen(R)APG2019)として販売しているアリルフェニルポリオールエーテル硫酸塩が挙げられる。
【0032】
典型的なアニオン性単量体としては、これらに限定されないが、アクリル酸;メタクリル酸;マレイン酸;イタコン酸;アクリルアミドグリコール酸;2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸;3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸;スチレンスルホン酸;ビニルスルホン酸;ビニルホスホン酸;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸の遊離酸および塩;前述のもののいずれかの混合物などが挙げられる。
【0033】
典型的なカチオン性単量体としては、これらに限定されないが、カチオン性のエチレン性不飽和単量体、例えば、ジアリルジアルキルアンモニウムハロゲン化物の遊離塩基または塩、例えばジアリルジメチルアンモニウム塩化物;ジアルキルアミノアルキル化合物の(メタ)アクリル酸塩、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリラート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、アミノエチル(メタ)アクリラート、および、それらの塩および第四級化合物;N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、および、それらの塩および第四級化合物、さらに前述の物質の混合物などが挙げられる。
【0034】
上記共重合用単量体は、どのような比率で存在していてもよい。得られた会合性ポリマーは、非イオン性、カチオン性、アニオン性または両性(カチオン性電荷とイオン電荷の両方を含む)であり得る。
【0035】
非イオン性単量体のアニオン性単量体に対するモル比(式IのB:F)は、95:5〜5:95の範囲内が可能であり、好ましくは約75:25〜約25:75の範囲であり、さらにより好ましくは約65:35〜約35:65の範囲であり、最も好ましくは約60:40〜約40:60の範囲である。これに関して、BとFのモルパーセンテージは、合計100%になっていなければならない。当然ながら、2種以上の非イオン性単量体が、式Iに存在していてもよい。また当然ながら、2種以上のアニオン性単量体が、式Iに存在していてもよい。
【0036】
好ましい本発明の一実施形態において、会合性ポリマーがアニオン性コポリマーである場合、会合性ポリマーは、式Iで定義され、式中、B(非イオン性ポリマーセグメント)、は、アクリルアミドの重合の後に形成された繰り返し単位であり;さらに、F(アニオン性ポリマーセグメント)は、アクリル酸の塩または遊離酸の重合の後に形成された繰り返し単位であり、B:Fのモルパーセントの比率は、約75:25〜約25:75である。
【0037】
会合性ポリマーの物理特性は、それがアニオン性コポリマーである場合、それらの0.01MのNaCl中で決定されたハギンズ定数(k’)が0.75より大きく、1.5重量%活性ポリマー溶液の貯蔵弾性率(G’)が、4.6Hzで、175Paより大きく、好ましくは190より大きく、さらにより好ましくは205より大きいという特徴を有する。ハギンズ定数は、0.75より大きく、好ましくは0.9より大きく、さらにより好ましくは1.0より大きい。
【0038】
非イオン性単量体のカチオン性単量体に対するモル比(式IのB:F)は、99:1〜50:50、または、95:5〜50:50、または、95:5〜75:25、または、90:10〜60:45の範囲内が可能であり、好ましくは約85:15〜約60:40の範囲であり、さらにより好ましくは約80:20〜約50:50の範囲である。これに関して、BとFのモルパーセンテージは、合計100%になっていなければならない。当然ながら、2種以上の非イオン性単量体が、式Iに存在していてもよい。また当然ながら、2種以上のカチオン性単量体が、式Iに存在していてもよい。
【0039】
式Iで示される両性コポリマーのモルパーセンテージに関して、アニオン性、カチオン性および非イオン性単量体それぞれのの最小量は、コポリマーを形成するのに用いられる単量体総量の1%である。非イオン性、アニオン性またはカチオン性単量体の最大量は、コポリマーを形成するのに用いられる単量体総量の98%である。好ましくはアニオン性、カチオン性および非イオン性単量体いずれかの最小量は、コポリマーを形成するのに用いられる単量体総量の5%であり、より好ましくはアニオン性、カチオン性および非イオン性単量体いずれかの最小量は7%であり、さらにより好ましくはアニオン性、カチオン性および非イオン性単量体いずれかの最小量は10%である。これに関連して、アニオン性、カチオン性および非イオン性単量体のモルパーセンテージは、合計100%になっていなければならない。当然ながら、2種以上の非イオン性単量体が、式Iに存在していてもよく、2種以上のカチオン性単量体が、式Iに存在していてもよく、2種以上のアニオン性単量体が、式Iに存在していてもよい。
【0040】
会合性ポリマーの物理特性は、それらがカチオン性または両性コポリマーである場合、それらの0.01MのNaCl中で決定されたハギンズ定数(k’)は、0.5より大きく、1.5重量%活性ポリマー溶液の貯蔵弾性率(G’)が、6.3Hzで、50Paより大きく、好ましくは10より大きく、さらにより好ましくは25より大きく、または、50より大きく、または、100より大きく、または、175より大きく、または、200より大きいという特徴を有する。ハギンズ定数は、0.5より大きく、好ましくは0.6より大きく、または、0.75より大きく、または、0.9より大きく、または、1.0より大きい。
【0041】
逆エマルジョンの重合系で用いられる乳化用の界面活性剤または界面活性剤の混合物は、製造工程と得られた生成物の両方に重要な作用を有する。乳化重合系で用いられる界面活性剤は当業者既知である。これらの界面活性剤は、典型的には、全体の組成に応じて様々な各種のHLB(親水親油バランス)値を有する。1種またはそれ以上の乳化用の界面活性剤を用いることができる。会合性ポリマーを製造するのに用いられる、重合生成物の乳化用の界面活性剤としては、少なくとも1種のジブロックまたはトリブロック高分子界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、高い有効性のエマルジョン安定剤であることがわかっている。乳化用の界面活性剤の選択および量は、重合のための逆相の単量体エマルジョンが得られるように選択される。好ましくは、1またはそれ以上の界面活性剤は、特定のHLB値が得られるように選択される。
【0042】
ジブロックおよびトリブロックの高分子の乳化用の界面活性剤を用いて、特殊な材料を提供することができる。WO03/050152A1、および、US2004/0143039A1で説明されているように(これらの全内容は、参照により本明細書の開示に含まれる)、ジブロックおよびトリブロックの高分子の乳化用の界面活性剤を必要量で用いると、特殊な特徴を示す特殊なポリマーが得られる。典型的なジブロックおよびトリブロック高分子界面活性剤としては、これらに限定されないが、脂肪酸、および、ポリ(エチレンオキシド)のポリエステル誘導体をベースとするジブロックおよびトリブロックコポリマー(例えば、ハイパーマーB246SF(Hypermer(R)B246SF)、ユニケマ(Uniqema,ニューカッスル,デラウェア州))、ポリイソブチレンコハク酸無水物、および、ポリ(エチレンオキシド)をベースとするジブロックおよびトリブロックコポリマー、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドと、エチレンジアミンとの反応生成物、前述のもののいずれかの混合物などが挙げられる。好ましくは、上記ジブロックおよびトリブロックコポリマーは、脂肪酸、および、ポリ(エチレンオキシド)のポリエステル誘導体をベースとする。トリブロック界面活性剤が用いられる場合、好ましくは、トリブロックは、2個の疎水性領域と1個の親水性領域を含み、すなわち疎水性物質−親水性物質−疎水性物質である。
【0043】
ジブロックまたはトリブロック界面活性剤の量(重量パーセントに基づく)は、会合性ポリマーを形成するのに用いられる単量体の量に依存する。ジブロックまたはトリブロック界面活性剤の単量体に対する比率は、少なくとも約3〜100である。ジブロックまたはトリブロック界面活性剤の単量体に対する量は、3〜100より大きい比率であってもよく、好ましくは少なくとも約4〜100であり、より好ましくは5〜100であり、さらにより好ましくは約6〜100である。ジブロックまたはトリブロック界面活性剤は、乳化系の一次的な界面活性剤である。
【0044】
第二の乳化用の界面活性剤を添加して、取り扱いや加工を容易にしたり、エマルジョン安定性を改善したり、および/または、エマルジョン粘度を変更することができる。第二の乳化用の界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、ソルビタン脂肪酸エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン(例えば、アトラスG−946(Atlas G−946)、ユニケマ(ニューカッスル,デラウェア州))、エトキシ化されたソルビタン脂肪酸エステル、ポリエトキシ化されたソルビタン脂肪酸エステル、アルキルフェノールのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、長鎖アルコールのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、または、脂肪酸、混合されたエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、アルカノールアミド、スルホコハク酸塩、ならびにそれらの混合物などが挙げられる。
【0045】
逆エマルジョンの重合は、当業者既知のあらゆる方法で行うことができる。例えば、AllcockおよびLampe,Contemporary Polymer Chemistry(イングルウッドクリフス,ニュージャージー州,PRENTICE−HALL,1981),3〜5章などの多くの参考文献で例を見出すことができる。
【0046】
代表的な逆エマルジョンの重合は、以下のように製造される。オーバーヘッド型の機械式撹拌器、温度計、窒素散布管、および、コンデンサーを備えた適切な反応フラスコに、パラフィン油の油相(135.0g,エクソールD80(Exxsol(R)D80)オイル、エクソン(Exxon,ヒューストン,テキサス州))、および、界面活性剤(4.5gのアトラス(R)G−946、および、9.0gのハイパーマー(R)B246SF)を入れる。続いて、油相の温度を37℃に調節する。
【0047】
53重量%のアクリルアミド水溶液(126.5g)、アクリル酸(68.7g)、脱イオン水(70.0g)、および、バーサネックス80(Versenex(R)80,ダウ・ケミカル(Dow Chemical))キレート化剤溶液(0.7g)を含む水相を別々に製造する。次に、水酸化アンモニウム水溶液(33.1g,NHとして29.4重量%)を添加することによって、水相をpH5.4に調節する。中和後の水相の温度は39℃である。
【0048】
次に、この水相を、ホモジナイザーで混合しながら油相に入れ、安定な油中水型エマルジョンを得る。次に、このエマルジョンを、4個のブレードを有するガラス製撹拌器を用いて、窒素を散布しながら60分間混合する。窒素を散布する間、エマルジョンの温度を50±1℃に調節する。その後、散布を中止し、窒素ブランケットを取り付ける。
【0049】
トルエン(0.213g)中の2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の3重量%溶液を供給することによって重合を開始させる。これは、最初のAIBN分量に相当し、すなわち単量体の総量に基づき250ppmのAIBNである。供給の経過中に、バッチ温度が発熱により62℃に上昇した(〜50分間)、その後、バッチを62±1℃に維持した。供給後に、このバッチを62±1℃で1時間保持した。その後、3重量%AIBNのトルエン溶液(0.085g)を続いて1分間で入れた。これは、単量体の総量に基づき100ppmの第二のAIBN分量に相当する。次に、このバッチを62±1℃で2時間保持する。次に、このバッチを室温に冷却し、ブレーカーとしての界面活性剤を添加する。
【0050】
会合性ポリマーのエマルジョンは、典型的には、適用部位で逆転させ、それにより0.1〜1%の活性なコポリマーの水溶液が得られる。続いて、この会合性ポリマーの希釈溶液が紙加工の工程に導入されることによって、歩留まりおよび濾水に作用する。会合性ポリマーは、高粘度の原料に添加してもよいし、または、低粘度の原料に添加してもよいが、好ましくは低粘度の原料に添加される。会合性ポリマーは、1ヶ所の供給ポイントで添加してもよいし、または、会合性ポリマーが2ヶ所またはそれ以上の別々の供給ポイントで同時に供給されるように分割して供給されてもよい。典型的な原料添加ポイントとしては、ファンポンプの前、ファンポンプの後、および、圧力スクリーンの前、または、圧力スクリーンの後の供給ポイントが挙げられる。
【0051】
会合性ポリマーは、凝集を達成できるようなあらゆる有効量で添加することができる。コポリマーの量は、0.5Kg/メートルトン(セルロースパルプ,乾燥基準)より大きくてもよい。好ましくは、会合性ポリマーは、パルプの乾燥重量に基づき、少なくとも約0.03ポンド〜約0.5Kg(活性なコポリマー)/メートルトン(セルロースパルプ)の量で用いられる。コポリマーの濃度は、好ましくは、約0.05〜約0.5Kg(活性なコポリマー)/メートルトン(乾燥セルロースパルプ)である。より好ましくは、本コポリマーは、セルロースパルプの乾燥重量に基づき、約0.05〜0.4Kg/メートルトン(セルロースパルプ)、最も好ましくは、約0.1〜約0.3Kg/メートルトンの量で添加される。
【0052】
歩留まりおよび濾水系の第二の成分としては、その他の水混和性ポリマーが可能である。水混和性とは、ポリマーが、水溶性、または、水膨潤性、または、水分散性になり得ることを意味することとする。
【0053】
水溶性という用語は、目に見える固形材料が溶媒中に残存することなくポリマーが溶媒に溶解すると予想されることを示すものとして用いられる。溶媒中のポリマーの溶解性は、混合の自由エネルギーが負の場合に起こる。水溶性材料は、滲出した材料またはゴム材料、抽出材料、天然、改変された天然または合成材料が可能である。それぞれの群の例としては、トラガカントゴム、ペクチン、グアール、セルロース誘導体、例えばメチルセルロースおよびポリ(アクリル酸)が挙げられる。合成ポリマーは、最終的なポリマーに特定の特性が付与されるように選択された1種またはそれ以上の単量体で構成されるものが可能である。
【0054】
水膨潤性ポリマーとは、水性溶媒を吸収し、膨潤することができるポリマーであるが、ただし、その程度は架橋などの多数の因子の影響を受ける。従って、ポリマーと溶媒との相互作用は限定されるので、見た目が均一な溶液が得られるが均一な分子分散液が得られない場合もある。例としては、架橋ポリマーが挙げられる。これらは、水混和性、かつ水分散性である可能性がある。一方で、分岐していても溶解性に負の影響を与えることはない。
【0055】
水分散性の材料とは、水溶性ではないが相分離しない材料である。典型的には、これらの材料は、水に懸濁されても分離した微粒子状の物質のままに保つか、または、その他の材料の添加によって分散できるように改変された表面を有する。例としては、ラテックス粒子、水中油型エマルジョン、および、分散性の粘土または顔料が挙げられる。
【0056】
製紙産業では、ラテックス粒子は、特殊な機能的な特性を付与するために用いられる。ラテックスは、水性媒体中の高分子物質の安定なコロイド分散系と定義される。このようなポリマー粒子は、通常、ほぼ球状であり、典型的なコロイドの大きさを有する;粒径は、数ミクロン以下であり得る。分散液中のポリマーの体積分率は、70パーセントもの高さであり得る。分散媒は、通常、電解質、表面活性化合物、親水性ポリマーおよび開始剤の残基のような物質を含む低濃度の水溶液である。ラテックス(latex)の好ましい複数形はlaticesだが、その代わりのlatexesも当業界で広く用いられている。ポリマーラテックスは、通常、白色の流動性の液体であり、その粘度は、等しい濃度の典型的なポリマー溶液の濃度よりも低い。また、ポリマーラテックスは、高分子コロイド、または、ポリマーのエマルジョンとしても知られている。
【0057】
高分子ラテックスは、製造法など様々な方法で分類されており、例えば、単量体の乳化重合によって製造された合成ラテックス;さらに、分散媒にポリマーを分散させて製造された人工ラテックスが挙げられる。また、ラテックスは、ポリマーの物理的な性質によっても分類される:例えばゴムラテックスである。
【0058】
また、ラテックスは、ポリマーの化学的性質によって分類される場合もある。典型的な材料としては、これらに限定されないが、スチレン−ブタジエンコポリマーラテックス(当業界ではSBRとして知られている)、ポリスチレンラテックス、ポリクロロプレンラテックス、および、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーラテックスが挙げられる。
【0059】
コポリマーラテックスを分類することができる第四の基準は、粒子がその表面上に有する電荷である。この場合、粒子が負の電荷を有する場合、アニオン性ラテックス;粒子が正の電荷を有する場合、カチオン性ラテックス;さらに、粒子が実質的に非荷電性である場合、非イオン性ラテックスと分類される。アニオン性単量体とカチオン性単量体の両方を含むコポリマーラテックスは、非イオン性となると予想される(正電荷と負電荷が釣り合って、非荷電性ポリマーを形成する)と考えられる。あるいは、コポリマーラテックスは、単量体のモル比に応じて正味の正電荷または正味の負電荷を有する可能性がある。
【0060】
電荷を有する表面は、イオン性単量体の使用、または、ラテックス粒子の製造で用いられるイオン性界面活性剤の使用の結果である可能性がある。あるいは、ラテックス粒子表面の性質は、重合後に、界面活性剤または水混和性ポリマーの使用によって改変することができる。
【0061】
合成ラテックスは、乳化重合によって単量体から製造される。そのようなものとして認識されるあらゆるタイプの反応を包含する乳化重合反応の簡潔で納得のいく定義は難しい。合理的な定義としては、安定な疎液コロイド、すなわち高分子コロイドまたはラテックスを形成する重合反応と言えるが、この定義は明らかにある程度の堂々巡りを伴う。
【0062】
ラテックスに関する情報と反応例は、例えば、D.C.Blackley in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,第2版,ワイリー−インターサイエンス(Wiley−Interscience),1987,第8巻,647〜677頁、および、D.C.Blackley,Polymer Latices:Science and Technology,第2版,1〜3巻,Chapman&Hall,ロンドン,1997などの多数の参考文献に見出すことができる。
【0063】
本発明において有用な水混和性ポリマーの例としては、これらに限定されないが、天然材料、例えばグアール、および、ペクチン、改変された天然産物、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルグアール、ヒドロキシプロピルグアール、および、ポリ(アクリル酸)が挙げられる。本発明において有用な合成水混和性ポリマーとしては、これらに限定されないが、アクリル酸;メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の遊離酸および塩;ジアリルジアルキルアンモニウムハロゲン化物、例えばジアリルジメチルアンモニウム塩化物の遊離塩基または塩のポリマー;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、アクリルアミド、および、ビニルアルコールのような単量体を含むポリマー;さらに、ラテックス材料のような材料が挙げられる。1またはそれ以上の水混和性ポリマーを本発明で用いることができる。
【0064】
歩留まりおよび濾水系の第二の成分は、パルプの乾燥重量に基づき、20Kg(活性物質)/メートルトン(セルロースパルプ)以下の量で添加することができ、会合性ポリマーの第二の成分に対する比率は、1:100〜100:1である。製紙系において2種以上の第二の成分が使用可能であると考えられる。
【0065】
会合性ポリマーと水混和性ポリマーの併用は、水混和性ポリマーによって付与されるその他の性能属性の強化を提供することができると考えられる。この予想外の結果は、歩留まりが改善された結果と予想されるが、一方で相乗的な相互作用の結果の可能性もある。
【0066】
ケイ酸含有材料は、紙および板紙の製造で用いられる歩留まり向上剤および濾水性向上剤の追加の成分として用いてもよい。このようなケイ酸含有材料は、シリカをベースとした粒子、シリカミクロゲル、無定形シリカ、コロイドシリカ、アニオン性コロイドシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリシリケート、ポリケイ酸等からなる群より選択される材料のいずれかであり得る。これらの材料は、高い表面領域、高い電荷密度、および、1ミクロン未満の粒度を特徴とする。
【0067】
このようなものとして、球状の無定形のシリカ粒子の安定なコロイド分散系(当業界ではシリカゾルと呼ばれる)が挙げられる。ゾルという用語は、球状の無定形粒子の安定なコロイド分散系を意味する。シリカゲルは、3次元的にシリカが集合した鎖であり、それぞれ歩留まり向上剤および濾水性向上剤系で用いることができる数種の無定形シリカゾル粒子を含み、このような鎖は、直鎖状でもよいし、または分岐状でもよい。シリカゾルおよびゲルは、モノマーのケイ酸を環状構造に重合して、ポリケイ酸の離散的な無定形シリカゾルを生成させることによって製造される。これらのシリカゾルを反応させ、さらなる3次元ゲルネットワークを形成させることもできる。様々なシリカ粒子(ゾル、ゲルなど)は、5〜50nmの外径寸法を有する場合がある。アニオン性コロイドシリカもまたを用いることができる。
【0068】
セルロース含有懸濁液にケイ酸含有材料を添加することができ、添加量は、セルロース含有懸濁液の乾燥重量に基づき少なくとも0.005Kg/メートルトンの量が可能である。ケイ酸含有材料の量は、50Kg/メートルトンのように高くてもよい。好ましくは、ケイ酸含有材料の量は、約0.05〜約25Kg/メートルトンである。さらにより好ましくは、ケイ酸含有材料の量は、セルロース含有懸濁液の乾燥重量に基づき約0.25〜約5Kg/メートルトンである。
【0069】
任意に、歩留まり向上剤および濾水性向上剤系の追加の成分は、従来の凝集剤でもよい。従来の凝集剤は、一般的に、直鎖状のアクリルアミドのカチオン性またはアニオン性コポリマーである。歩留まりおよび濾水系の追加の成分は、アルミニウム化合物および会合性ポリマーと共に添加され、歩留まりおよび濾水を改善する多成分系を提供することができる。
【0070】
従来の凝集剤は、アニオン性、カチオン性または非イオン性ポリマーが可能である。イオン性単量体は、ほとんどの場合、アクリルアミドのような非イオン性単量体と共にコポリマーを製造するのに用いられる。これらのポリマーは、これらに限定されないが、懸濁、分散および逆エマルジョンの重合などの合多種多様な合成法によって得るすることができる。最終工程として、マイクロエマルジョンを用いてもよい。
【0071】
従来の凝集剤の共重合用単量体は、どのような比率で存在していてもよい。得られたコポリマーは、非イオン性、カチオン性、アニオン性または両性(カチオン性電荷とイオン電荷の両方を含む)であり得る。
【0072】
本発明の系の一部となり得るさらにその他の追加の成分はアルミニウム源であり、例えばアラム(硫酸アルミニウム)、ポリ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、および、クロルヒドロキシアルミニウムである。
【0073】
歩留まりおよび濾水系の成分は、実質的に同時にセルロース含有懸濁液に添加してもよい。歩留まりおよび濾水系という用語は、本明細書において、改善された歩留まりおよび濾水を提供するために製紙用スラリーに添加された2種またはそれ以上の別個の材料を包含するものとして用いられる。例えば、このような成分は、同じ段階もしくは供給点、または、異なる段階もしくは供給点のいずれかでそれぞれセルロース含有懸濁液に添加してもよい。本発明の系の成分が同時に添加される場合、上記材料のいずれか2種またはそれ以上を、混合物として添加してもよい。このような混合物は、供給点で、または、供給点への供給ライン中で上記材料を混合することによってその場で形成してもよい。あるいは、本発明の系は、予備形成された上記材料の混合物を含む。本発明の代替形態において、本発明の系の成分は連続的に添加される。各成分の添加ポイントの間に、剪断ポイントがあってもよいし、または、なくてもよい。上記成分は、どのような順番で添加してもよい。
【0074】
本発明の系は、典型的には、紙加工の工程に導入されることによって、歩留まりおよび濾水に作用する。本発明の系は、高粘度の原料に添加してもよいし、または、低粘度の原料に添加してもよいが、好ましくは低粘度の原料に添加される。本システムは、1ヶ所の供給ポイントで添加してもよいし、または、本発明の系が2ヶ所またはそれ以上の別々の供給ポイントで同時に供給されるように分割して供給されてもよい。典型的な原料添加ポイントとしては、ファンポンプの前、ファンポンプの後、および、圧力スクリーンの前、または、圧力スクリーンの後の供給ポイントが挙げられる。
【実施例】
【0075】
本発明の性能を評価するために、一連の濾水試験を合成のアルカリ性完成紙料を用いて行った。この完成紙料は、市販の硬材および軟材の乾燥ラップパルプ、さらに水と追加の材料から製造される。まず、市販の硬材および軟材の乾燥ラップパルプを別々に精砕する。次に、これらのパルプを、水性媒体中、約30重量パーセントの軟材に対して約70重量パーセントの硬材の比率で混合する。完成紙料の製造に利用された水性媒体は、代表的な硬度にした現地の硬水と脱イオン水との混合物を含む。この媒体が、総アルカリ度(CaCOとして)が75ppmであり、硬度(CaCOとして)が100ppmになるようにな量で、無機塩を添加する。このパルプ完成紙料に沈降炭酸カルシウム(PCC)を代表的な重量パーセントで導入し、80%の繊維、および、20%のPCC充填剤を含む最終的な完成紙料を得る。濾水試験は、この完成紙料を機械式ミキサーで既定のミキサー速度で混合し、様々な化学成分を完成紙料に導入して、次の成分を添加する前に一つ一つの成分を既定時間混合することによって行われた。具体的な化学成分と適用量レベルは表のデータに記載した。本発明の濾水活性を、カナダ標準濾水度(CSF)を利用して決定した。CSF試験は、相対的な濾水速度、または、脱水速度を決定するのに利用することができる市販の装置であり(Lorentzen&Wettre,ストックホルム,スウェーデン)、当業界でもよく知られている;標準試験法(TAPPI試験手法T−227)が一般的である。CSF装置は、濾水チャンバーと速度を測定する漏斗からなり、これらは両方、適切な支持体にマウントされている。濾水チャンバーは円柱形であり、底部に穴の開いたスクリーンプレートとヒンジで連結されたプレートを備え、さらに、上部に真空気密性のヒンジで連結された蓋を備えている。速度を測定する漏斗は、底部の開口部と、側面のオーバーフロー用の開口部を備えている。
【0076】
CSF濾水試験は、1リットルの完成紙料を用いて行われる。完成紙料は、CSF装置の外部で、説明されている処理に応じて、乱流混合を施すための正方形のビーカー中で製造される。添加剤の添加と、連続的な混合が完了したら、処理された完成紙料を濾水チャンバーに注入し、上蓋を閉じ、続いて即座に底部のプレートを開く。速度を測定する漏斗に水分を存分に排出する;底部の開口部によって溢れたとみなされた水流は、側面の開口部を通じてオーバーフローすると予想され、それらはメスシリンダーに回収される。得られた値は、ろ液のミリリットル(ml)で記載される;定量値が高いということは、濾水または脱水がより高レベルであることを示す。
【0077】
表(下記)は、本発明の有用性を説明する。試験サンプルを以下のように製造した:上述のように製造された完成紙料に、まず、5Kg/メートルトン(完成紙料,乾燥基準)のカチオン性スターチ(スタローク400(Stalok(R)400)、AE.,ステイリー(AE.,Staley,ディケーター,イリノイ州))、続いて、2.5Kg/メートルトン(完成紙料,乾燥基準)のアラム(硫酸アルミニウム十八水和物,デルタ・ケミカル社(Delta Chemical Corporation,ボルチモア,メリーランド州)から、50%溶液として得た)を添加し、続いて、0.25Kg/メートルトン(完成紙料,乾燥基準)のパーフォーム(Perform(R)PC8138)カチオン性ポリマー(ハーキュリーズ社(Hercules Incorporated,ウィルミントン,デラウェア州))を添加した。次に、表に示す実施例において、表に記載した通りの対象の添加剤を添加した。SP9232とは、パーフォーム(R)SP9232であり、これは、所定の条件下で製造された歩留まり向上剤および濾水性向上剤である(PCT WO03/050152Aを参照)、ハーキュリーズ社(ウィルミントン,デラウェア州)の製品であり;シリカとは、NP780コロイドシリカ(エカ・ケミカル(Eka Chemical,マリエッタ,ジョージア州))であり;MCは、微結晶性セルロース(アルドリッチ(Aldrich,ミルウォーキー,ウィスコンシン州))であり;ALは、エアー・プロダクツ・ポリマー,L.P.(Air Products Polymers,L.P.,アレンタウン,ペンシルベニア州)の製品の、アニオン性ラテックス(Airflex(R)4530であり;リグニンは、ボーレガード・リグノテックUSA(Borregaard Lignotech USA,ロスチャイルド,ウィスコンシン州))の、ノーリグ42C(Norlig(R)42C)リグノスルホン酸ナトリウムであり;ペクチンは、スレンディッド100(Slendid(R)100)ペクチンであり、CPケルコ(CP Kelco,ウィルミントン,デラウェア州)の製品;PDは、ゼニックスDC7888(Zenix(R)DC7888)タンパク質付着防止剤(ハーキュリーズ社(ウィルミントン,デラウェア州))であり;HASEは、アキュソール842(Acusol(R)842)エマルジョン(ローム・アンド・ハース(Rohm&Haas,フィラデルフィア,ペンシルベニア州)によって製造されたアクリル酸ベースの疎水結合した可溶化エマルジョン)であり;PEOは、PB8714ポリ(エチレンオキシド)(ハーキュリーズ社(ウィルミントン,デラウェア州))であり;さらに、シリカは、BMA780であり、これは、ナルコ社(nalco company,ネーパービル,イリノイ州)のコロイドシリカ製品である。
【0078】
表1に、微結晶性セルロースに関するデータを示す。
【0079】
【表1】

【0080】
これらのデータによれば、微結晶性セルロースは、パーフォーム(R)SP9232を共に使用すると有意な改善を示すことが示される。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に記載のデータから、アニオン性ラテックスの使用は、パーフォーム(R)SP9232の濾水性能を改善することが示される。このデータから、その他のポリマーはいずれも、SP9232またはシリカのいずれかで達成される濾水を超える濾水の増加を示していることが示される。さらに、3種全てを組み合わせると、個々の歩留まり向上剤よりも首尾一貫して優れている。最後に、同時の添加と連続的な添加はいずれも有効である。
【0083】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙法における歩留まりおよび濾水を改善する方法であって、ここで、該改善は、製紙用スラリーに、会合性ポリマーと、少なくとも1種の水混和性ポリマーとを添加することを含み、ここで、該会合性ポリマーは、式:
【化1】

[式中、Bは、1個またはそれ以上のエチレン性不飽和非イオン性単量体を含む非イオン性ポリマーセグメントであり;Fは、少なくとも1個のエチレン性不飽和アニオン性またはカチオン性単量体を含むポリマーセグメントであり;さらに、B:Fのモルパーセントの比率は、99:1〜1:99である]、
を含み、ここで、該会合性ポリマーは、有効量のジブロックまたはトリブロック高分子界面活性剤から選択される少なくとも乳化用の界面活性剤によって付与される会合特性を有し、ここで、該少なくとも1種のジブロックまたはトリブロック界面活性剤の単量体に対する量は、少なくとも約3:10である、上記方法。
【請求項2】
前記水混和性ポリマーは、少なくとも1種のグアール、ペクチン、改変された天然産物、または、合成ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水混和性ポリマーは、少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルグアール、および、ヒドロキシプロピルグアール、または、ポリ(アクリル酸)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の水混和性ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、および、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の遊離酸または塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体から形成されたポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の水混和性ポリマーは、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリラート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、アミノエチル(メタ)アクリラート、および、それらの第四級化合物の遊離塩基または塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体から形成されたポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水混和性ポリマーは、エチレンオキシド、アクリルアミド、プロピレンオキシド、および、ビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の単量体から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水混和性ポリマーは、ラテックスである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ケイ酸含有材料を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ酸含有材料は、シリカをベースとした粒子、シリカミクロゲル、無定形シリカ、コロイドシリカ、アニオン性コロイドシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリシリケート、ポリケイ酸、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水混和性ポリマーおよび会合性ポリマーは、混合物として、同時に、または、連続的に製紙用スラリーに添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記会合性ポリマーは、アニオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記非イオン性単量体は、アクリルアミドを含み、前記アニオン性単量体は、アクリル酸の遊離酸または塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記会合性ポリマーは、カチオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
会合性ポリマー、および、少なくとも1種の水混和性ポリマーを含む組成物であって、ここで、該会合性ポリマーは、式:
【化2】

[式中、Bは、1個またはそれ以上のエチレン性不飽和非イオン性単量体を含む非イオン性ポリマーセグメントであり;Fは、少なくとも1個のエチレン性不飽和アニオン性またはカチオン性単量体を含むポリマーセグメントであり;さらに、B:Fのモルパーセントの比率は、99:1〜1:99である]、
を含み、ここで、該会合性ポリマーは、有効量のジブロックまたはトリブロック高分子界面活性剤から選択される少なくとも乳化用の界面活性剤によって付与される会合特性を有し、ここで、該少なくとも1種のジブロックまたはトリブロック界面活性剤の単量体に対する量は、少なくとも約3:10である、上記組成物。
【請求項15】
セルロース系繊維をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項16】
前記水混和性ポリマーは、少なくとも1種のグアール、ペクチン、改変された天然産物、または、合成ポリマーを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記水混和性ポリマーは、少なくとも1種のカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルグアール、および、ヒドロキシプロピルグアール、または、ポリ(アクリル酸)を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の水混和性ポリマーは、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリラート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシジメチルアミノプロピル(メタ)アクリラート、アミノエチル(メタ)アクリラート、および、それらの第四級化合物の遊離塩基または塩からなる群より選択される少なくとも1種の単量体から形成されたポリマーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記水混和性ポリマーは、エチレンオキシド、アクリルアミド、プロピレンオキシド、および、ビニルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種の単量体から形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記水混和性ポリマーは、ラテックスである、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2008−525666(P2008−525666A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549529(P2007−549529)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046934
【国際公開番号】WO2006/071818
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】