説明

紙送り装置、画像形成装置、紙送りのモータ制御方法及び紙送り方法

【課題】 装置側で用紙の違いを安定的に正しく認識し、紙送り動作を最適化する。
【解決手段】 透過光量検出方式の紙種情報検知手段80によって検知された記録用紙の紙種(紙厚を属性として持つ)に応じた制御電流値を基準電圧Vとしてモータ制御装置74に設定する。モータ制御装置74は、設定に従って変調したPWM制御信号を駆動回路72に入力し、ステッピングモータ70に流す駆動電流を変化させ、転写ローラ51を駆動するステッピングモータ70の出力トルクを制御する。この出力トルクの制御により、ステッピングモータ70により駆動される転写ローラ51によって送りが掛けられる記録用紙の送り動作を最適化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータで駆動されるローラによる紙送り装置に関し、より詳しくは、光学的検知手段を用いて検知し得る紙種に応じて上記モータの駆動を制御することにより、最適な紙送り動作を可能とした紙送り装置、紙送りのモータ制御方法、紙送り方法及び前記紙送り装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、広く普及している複写機、プリンタ等の画像形成装置では、画像を形成する紙媒体(用紙)が、給紙トレイからプロッタを経てトレイに排出されるまで、画像形成に必要な一連の工程で求められる所定の条件に従って、搬送される。また、複写機では、シート状の複写原稿を読取る際に、ADF(Automatic Document Feeder)により原稿が1枚づつ読取位置を通過して搬送される。
こうした用紙等の送りは、普通、用紙を表裏面から接する一対の対向ローラ、即ち、駆動側のローラと、このローラに圧接する従動側のローラにより行われる。駆動側のローラは、ステッピングモータを駆動源とし、所定の送りをかけるために、このモータの駆動が制御される。
画像形成装置では、種々の厚さの用紙が用いられているが、従前、用紙を送る上記ローラを駆動するモータの制御は、紙厚が異なるにもかかわらず、設定条件を固定としていたので、厚紙に対して動作が不安定になったり、薄紙に対して必要以上に電力を消費し、発熱するといった不具合を発生させていた。
このような不具合を解消するために、モータを制御する設定条件を紙厚に応じて変更する方法が提案された。下記特許文献1,2は、こうした従来技術を例示するものである。
【0003】
特許文献1(特開平7−101594号公報)の用紙送り装置は、送りローラに対し用紙搬送経路の上流に、紙厚検知手段を設け、モータ起動時に、この検知手段により検知された紙厚が厚いほど、モータの駆動電流を大きくする制御を行うことで、薄い場合に消費電力を低減し、厚い場合にスローアップ起動を早くし、送りを安定して行えるようにするものである。なお、ここで用いられている紙厚検知手段は、厚みの変化を用紙面に接する接触子の移動により検知する手段である。
また、特許文献2(特開2001−322734号公報)の画像形成装置は、記録紙搬送系の搬送ローラの駆動に用いるステッピングモータの駆動電流を、厚紙と普通紙とで、それぞれの搬送に十分なトルクが出力できるような設定に変更し、制御を行うものである
なお、ここでは、厚紙と普通紙とに対応する設定の変更は、操作部への入力操作により、厚紙/通常のモード選択に従って行われる。
【特許文献1】特開平7−101594号公報
【特許文献2】特開2001−322734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に示される紙厚検知手段は、用紙に接触する方式が採用されており、安定した検知動作が得難いし、検知部の損耗が起き易い。また、接触方式の検知出力が同じでも、安定した送り動作を得るために搬送ローラに加えるトルクが異なる、紙種のレベル(例えば普通紙,第2原図,OHP等の間)で生じる問題がある。このような場合に、より細かい調整で最適化を可能とするためには、紙種レベルの検知が必要であるが、接触検知方式は、このような検知能力を持たない。
また、上記特許文献2に示される紙厚への対応は、操作部への入力操作により、厚紙/通常のモード選択に従い行われているので、この方式についても、オペレータ(ユーザ)の意思に任されているので、常に適正な動作条件が設定される保証は無く、しかも紙種レベルでより細かい調整を行い、最適化を可能とするための手立ても無い。
本発明は、紙送りにおける上記した従来技術の問題に鑑みてなされたもので、その解決すべき課題は、ユーザのモード選択により用紙を指定する従来方式によらずに、ステッピングモータによって駆動される送りローラに加えるトルクを変更することが必要な紙種のレベルの違いとして、装置側で用紙の違いを安定的に正しく認識し、送り動作を最適化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、駆動ローラと従動ローラよりなり、紙を該ローラ間に挟んだ状態で送ることが可能な送りローラと、前記駆動ローラを駆動するステッピングモータと、
前記ステッピングモータの駆動回路と、前記駆動回路を介してステッピングモータを制御する制御手段と、を有する紙送り装置において、発光源と、該発光源から出射し搬送される紙に作用した光を受光する受光部と、該受光部の検出光量に基づいて、光量と一定の対応関係があり、紙厚を属性として持つ紙種を判定する判定部よりなる紙種検知手段を備え、前記制御手段は、前記紙種検知手段により検知された紙種に応じて前記駆動回路が前記ステッピングモータに流す電流を制御することによって、上記課題を解決するものである。
請求項2の発明は、請求項1に記載された紙送り装置において、前記紙種検知手段の受光部に紙を透過してきた光を検出するセンサを用いることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された紙送り装置において、前記制御手段は、紙種が属性として持つ紙厚が大きくなるにつれて、前記ステッピングモータに流す電流を増加させる制御を行うことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【0006】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載された紙送り装置において、前記制御手段は、紙厚を属性として持つ紙種と紙種に応じてステッピングモータに流す制御電流値とを関係付けたデータベースを予め備え、前記紙種検知手段で判定した紙種に応じた制御電流値を前記データベースから取得し、当該紙の搬送制御に用いることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載された紙送り装置において、前記制御手段は、前記紙種検知手段で判定した紙種に応じた制御電流値を、紙種と紙厚に基づいてステッピングモータに流す制御電流値を算出する演算式を用いて取得し、当該紙の搬送制御に用いることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【0007】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載された紙送り装置において、前記制御手段は、当該紙の紙種が検知された後、前記送りローラによる送り動作を受ける状態に当該紙が達したことを条件に、紙種に応じた制御電流値でステッピングモータを駆動する制御を行うことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項7の発明は、前記送りローラにおける駆動ローラと従動ローラの間隔を可変するローラ間隔可変手段を有した請求項1乃至6に記載された紙送り装置において、前記紙種検知手段によって検知された紙種に応じて前記送りローラの加圧力を調整するために、前記ローラ間隔可変手段を動作させる加圧力調整手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【0008】
請求項8の発明は、駆動ローラと従動ローラよりなり、紙を該ローラ間に挟んだ状態で送ることが可能な送りローラと、前記駆動ローラを駆動するステッピングモータと、
前記ステッピングモータの駆動回路と、前記駆動回路を介してステッピングモータを制御する制御手段と、を有する紙送り装置において、発光源と、該発光源から出射し搬送される紙に作用した光を受光する受光部と、該光検出部の検出光量に基づいて、光量と一定の対応関係があり、紙厚を属性として持つ紙種を判定する判定部よりなる紙種検知手段と、前記送りローラにおける駆動ローラと従動ローラの間隔を可変するローラ間隔可変手段と、前記紙種検知手段によって検知された紙種に応じて前記送りローラの加圧力を調整するために、前記ローラ間隔可変手段を動作させる加圧力調整手段を備えたことによって、上記課題を解決するものである。
請求項9の発明は、請求項8に記載された紙送り装置において、前記加圧力調整手段は、紙種が属性として持つ紙厚が大きくなるにつれて、ローラ間隔を大きくする調整を行うことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項10の発明は、請求項8又は9に記載された紙送り装置において、前記ローラ間隔可変手段は、駆動ローラと従動ローラの少なくとも一方の位置を可変する手段であることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【0009】
請求項11の発明は、記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、給紙トレイから前記画像形成手段を経て排紙トレイに前記記録用紙を送る記録用紙送り手段を有する画像形成装置において、前記記録用紙送り手段に請求項1乃至10のいずれかに記載された紙送り装置を用いたことによって上記課題を解決するものである。
請求項12の発明は、原稿を読取る原稿読取手段と、前記原稿読取手段へ原稿を送る原稿送り手段と、原稿読取信号をもとに記録用紙に画像を形成する画像形成手段を有した画像形成装置において、前記原稿送り手段に請求項1乃至10のいずれかに記載された紙送り装置を用いたことによって上記課題を解決するものである。
請求項13の発明は、原稿を読取る原稿読取手段と、前記原稿読取手段へ原稿を送る原稿送り手段と、原稿読取信号をもとに記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、給紙トレイから前記画像形成手段を経て排紙トレイに前記記録用紙を送る記録用紙送り手段を有する画像形成装置において、前記原稿送り手段及び前記記録用紙送り手段に請求項1乃至10のいずれかに記載された紙送り装置を用いたことによって上記課題を解決するものである。
【0010】
請求項14の発明は、駆動電流が制御可能なステッピングモータにより駆動される駆動ローラとこれに圧接する従動ローラのローラ間に紙を挟んだ状態で行う紙送りのモータ制御方法において、発光源から出射し搬送される紙に作用した光を受光する受光工程と、前記受光工程で検出した光量に基づいて、光量と一定の対応関係があり、紙厚を属性として持つ紙種を判定する紙種判定工程と、前記紙種判定工程により判定された紙種に応じて前記駆動ローラを駆動するステッピングモータに流す電流を制御するモータ制御工程を行うことによって上記課題を解決するものである。
請求項15の発明は、請求項14に記載された紙送りのモータ制御方法において、前記受光工程は、発光源から出射し搬送される紙を透過してくる光を受光する工程であることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項16の発明は、請求項14又は15に記載された紙送りのモータ制御方法において、前記モータ制御工程は、紙種が属性として持つ紙厚が大きくなるにつれて、ステッピングモータに流す電流を増加させる制御を行う工程であることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項17の発明は、請求項14乃至16のいずれかに記載された紙送りのモータ制御方法において、前記モータ制御工程は、前記紙種判定工程で当該紙の紙種が検知された後、前記駆動ローラによる送り動作を受ける状態に当該紙が達したことを条件に、紙種に応じた制御電流でステッピングモータを駆動する制御を行う工程であることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【0011】
請求項18の発明は、発生するトルクの制御が可能なステッピングモータにより駆動される駆動ローラとこれに間隔を可変にして圧接する従動ローラのローラ間に紙を挟んだ状態で行う紙送り方法において、発光源から出射し搬送される紙に作用した光を受光する受光工程と、前記受光工程で検出した光量に基づいて、光量と一定の対応関係があり、紙厚を属性として持つ紙種を判定する紙種判定工程と、前記紙種判定工程により判定された紙種に応じて、前記送りローラの加圧力を調整するために、前記ローラ間隔を可変させる加圧力調整工程を行うことによって上記課題を解決するものである。
請求項19の発明は、請求項18に記載された紙送り方法において、前記加圧力調整工程は、紙種が属性として持つ紙厚が大きくなるにつれて、ローラ間隔を大きくする調整を行う工程であることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学的な検出手段によって搬送対象の紙から検出される光量値をもとに、紙厚を属性として持つ紙種を検知することで、ステッピングモータによって駆動される送りローラに加えるトルクの変更が必要な用紙の違いを装置側で安定的に正しく認識し、紙厚を属性として持つ紙種に応じ、トルクの制御をかけることによって、必要以上のトルクを発生させることを防ぎ、ステッピングモータで無駄な電力を消費したり、発熱させたりすることなく、送り動作を最適化することが可能になる(請求項1〜3,7〜10,14〜16,18,19)。
また、搬送対象の紙の検出してから送りローラに達するまでの僅かな時間においても不要な電力の供給を抑えることで、さらに無駄なエネルギーの消費を無くすことが可能になる(請求項6,17)。
また、紙厚に応じた制御データを予め作成されたテーブルから取得するようにしたことで、制御に必要な処理を簡略化でき、処理速度を上げることが可能になり(請求項4)、他方、演算式を用いて紙厚に応じた制御データを算出するようにしたことで、より精度の高い制御が可能になる(請求項5)。
また、上記の効果を持つ紙送り装置を画像形成装置の記録用紙や原稿の送りに用いるようにしたので、画像形成装置における高パフォーマンス化を図ることができる(請求項11〜13)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の紙送り装置、紙送り方法、紙送りのモータ制御方法及び及び画像形成装置に係わる実施形態を説明する。
以下に示す実施形態は、本願の上記各発明を画像形成装置に集約した実施形態で示す。本実施形態の画像形成装置は、デジタルカラー複写機をベースにFAX(ファクシミリ)機能・プリンタ機能・スキャナ機能等を複合したMFP(複合機)とする。ただ、画像形成装置は、単能機であっても良いし、モノクロ機であっても、本例と同様に実施可能である。
図1は、本発明の実施形態に係わるデジタルカラー複写機をベースにしたMFPの概略構成を示す。
図1に示すMFP100において、装置の略中央に画像形成部1が配置され、画像形成部1の下方に記録用紙の給紙部2が配置されている。給紙部2は、各段に給紙トレイ21を備えており、必要に応じて別の給紙装置22を増設することができる。画像形成部1の上方には、原稿を読取る読取部3が配設されている。画像形成部1の左側には排紙収納部4が形成され、画像形成された記録用紙が排紙収納される。
【0014】
画像形成部1は、所謂タンデムタイプを構成し、ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト5の上に、各色成分(通常、イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:BK)の作像部6が並列配置され、各々、感光体ドラム61と、その周囲に、帯電装置62、レーザ光による走査露光装置7、トナーによる現像装置63及びトナーのクリーニング装置64とを備える。
画像形成プロセスとしては、先ず、感光体ドラム61にトナー画像を形成する。このプロセスは、プリント出力用データに基づいて、走査露光装置7内のLD:レーザダイオード(不図示)の発光を制御することにより、感光体ドラム61に光書込みを行い、感光体表面に静電潜像を形成した後、静電潜像にトナーを付着させることにより、各色成分のトナー像の現像を行う。なお、光書込みは、主・副2次元走査方式で行われ、LDからの光ビームは、回転ポリゴンミラーやレンズを介して主走査方向に振られ、副走査方向に回転する感光体ドラム61の感光体表面を露光する。
また、感光体ドラム61に形成された各色成分のトナー画像を同期回転する中間転写ベルト5に転写する過程で、カラー画像を合成する。この後、中間転写ベルト5上に転写されたカラー画像を記録用紙に転写する転写装置51と、転写された記録用紙上のトナーを定着処理する定着装置8が排紙収納部4への処理経路に配置され、転写、定着の各処理が行われる。ここで、感光体ドラム61からの中間転写と、中間転写ベルト5から記録用紙へのトナー像の転写は、各々の像担持体による搬送中に一連の動作として行われ、給紙部2から給紙される記録用紙は、中間転写ベルト5上のトナー画像の搬送に合わせて転写ローラ51のローラ間に、ベルトと一緒に挟まれた状態で挿入され、転写ローラ51の駆動により送られる。
給紙部2においては、給紙トレイ21に未使用の記録紙が収容されており、回動可能に支持された底板24が最上位の記録紙をピックアップローラ25に当接可能な位置まで上昇させる。給紙ローラ26,27の回転により、最上紙は給紙トレイ21から送り出され、レジストローラ23へと搬送される。
レジストローラ23は記録紙の搬送を一時止め、感光体61表面のトナー像と記録紙の先端との位置関係が所定の位置になるよう、タイミングをとって回転を開始するよう、制御される。
【0015】
読取部3では、ブック読取りとシートスルー読取りの両方の読取り動作を可能とする。ブック読取りは、原稿台(コンタクトガラス)上に載置される原稿(不図示)を読み取り光学系で走査し、結像面に置かれたCCD(ラインイメージセンサ)で原稿画像を光電変換する。シートスルー読取りは、読取部3の上部に搭載されたADF(Automatic Document Feeder:自動原稿搬送装置)36によってシート原稿を搬送しながら、読取り位置にクランプされたCCD(ブック読取りと共用)で原稿画像を光電変換する。なお、ADFは、原稿トレイに束ねてセットされたシート状の原稿を1枚づつ自動搬送するもので、後記で詳述する本案の紙送りの適用対象となる。
CCDにより光電変換された読取り原稿の画像信号は、デジタル化され、プリント出力用データを得るため、補正・変換等の画像処理が施される。
複写が指示されている場合には、この画像処理によって得られたプリント出力用データに基づいて、感光体ドラム61への光書込みから始まる上記した画像形成プロセスに従って、記録用紙への印刷処理が行われ、目的とするコピーが得られる。
また、本例の画像形成装置は、MFPとして上述した複写機能の他に、FAX機能及びプリンタ機能を持つ。FAX機能は、FAX送信において、読取部3で原稿を読取った後、FAX信号に変換し、通信回線への送信を行い、又FAX受信において、通信回線から送られて来るFAX信号を受取った後、プリント出力用データへの処理を経て、画像形成部1で画像形成を行う。また、プリンタ機能は、PC等のホスト機からプリント出力を要求して送られて来る印刷データを受け取った後、プリント出力用データへの処理を経て、画像形成部1で画像形成を行う。なお、これらの機能自体は、既存の技術であるから、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0016】
MFP100において、上記のプリント出力動作に示したように、記録用紙は、給紙部2から画像形成部1を経て排紙収納部4に排出されるまで、画像形成工程で求められる条件に応じて、搬送される。また、シート状の複写原稿を読取る際に、読取り原稿は、ADF36により1枚づつ読取位置を通過して、原稿排出トレイまで搬送される。
このような記録用紙や原稿のようなシート状の紙(以下、単に「紙」と記す場合、「シート状の紙」を指す)を送る紙送り装置として、普通、紙を表裏面から圧接する一対のローラ、即ち、ステッピングモータを駆動源とする駆動側のローラと、このローラに対向する従動側のローラよりなる送りローラを用いる。紙は、ステッピングモータから与えられ、駆動ローラを介して伝達されるトルクによって、従動ローラとの間に挟まれた状態で搬送される。
ステッピングモータは、回転速度とトルクが制御可能であり、例えば、図2の概念図に示す構成のモータ回路が採用される。図2のモータ回路において、ステッピングモータ70の制御回路74は、電流検出抵抗Rで取出されたステッピングモータ70に流れる電流に対応する電圧をフィードバック信号として受取る。制御回路74は、このフィードバック電圧を基準電圧Vとコンパレータ76で比較し、比較結果をPWM制御回路75に入力することで、PWM信号を変調して、このPWM信号でモータのドライバ回路を制御する。ドライバ回路では、このPWM制御信号で電源Vccからステッピングモータ70に供給される駆動電流を基準電圧Vで設定した電流値に制御し、設定した電流が流れるようにできる。
【0017】
ところで、従来では、この基準電圧Vは、負荷が大きくなる厚い記録紙を安定して送ることができる比較的大きな出力トルクが生じる駆動電流に対応する基準電圧を、種々の厚さの用紙が用いられているにもかかわらず、一律に設定することが、通常の方法であった。このため、負荷が小さく、小さな出力トルクで済む薄い転写紙を送る場合には、ステッピングモータの出力トルクが必要以上の大きな値となり、無駄な電流の消費や発熱等があった。
この問題に対し、紙厚の違いをユーザの設定により対応したり、紙面にメカニカルな接触が起きる紙厚検知方式で対応することで、出力トルクを変更する方法により解決する提案がされているが、上記[発明が解決しようとする課題]の項に示したように、前者は、ユーザの設定に任されている点や紙種レベルでより細かい調整ができない点に問題があり、又後者は、動作の安定性に問題がある。
そこで、本案では、ステッピングモータによって駆動される送りローラに加えるトルクを変更することが必要な紙種のレベルの違いとして、装置側で用紙の違いを安定的に正しく認識し、紙種に応じて基準電圧Vの設定を変更することにより、駆動電流を変え、送り動作を最適化する。
【0018】
本案では、上記のように紙種に応じて出力トルクを制御し、送り動作をを最適化するために必要となる紙種の検知を光学的な検知方式で行う。
この光学的な検知方式は、1組の発光手段、受光手段ペアにより紙を透過してくる光量を検出し、検出値から紙種を判定する方式であり、非接触で紙に作用する検出手段を用いるので、紙の多様な状態にかかわらず、安定した検知が可能である。また、紙を透過してくる光量を受光し、得られる検出光量値と、紙厚を属性として持つ紙種との間には一定の対応関係があり、検出光量値から、例えば、普通紙とOHP紙の違いに加え、それぞれの紙厚を特定することが可能となる(図5、参照)。
図3は、給紙部の搬送経路に備えた紙種検知用の光学的検出手段の実施形態を示す。同図において、(A)は図1のMFP(画像形成装置)100における、給紙トレイ21、搬送手段等よりなる給紙部と、中間転写ベルト5、転写装置51等よりなる転写部との関連構成の概要を示し、(B)は給紙トレイ21の要部を示す。
1組の発光手段、受光手段ペアで構成する紙種検知用の光学的検出手段は、図3(A)に示す実施例では、転写装置51の上流の例えばレジスト位置で、搬送路を挟んで発光手段250より発した光が、記録紙20を透過した後、受光手段251に達するように設けられている。図3(A)に示すように、給紙部の搬送経路に複数の記録用紙20−1〜20−3が連続して給紙される場合に、転写装置51における転写ローラによる紙送りに紙種検知による制御をかけるには、同図に示す位置に検出手段を設けると、リアルタイムで制御が可能であるから都合が良い。
また、図3(B)に示す実施例では、給紙トレイ21を出た直後の記録用紙20を検出することを可能にする配置で、上記と同様の発光手段250、受光手段251のペアよりなる紙種検知用の光学的検出手段が設けられている。この場合には、検出値を記録用紙20の動きに連れて、継承することで、当該記録用紙の以降に行う各種の送り制御に用いることが可能になる。
【0019】
発光手段250としては、LED素子、半導体レーザなどが考えられるが、白熱燈や蛍光灯等の他の発光手段でもかまわない。発光する光の波長は、可視光でも良いが、このほかに、赤外光や紫外光等が考えられ、雑音の影響を受け難い波長を選択することが望ましい。
また、受光手段251としては、フォトトランジスタ、フォトダイオード等が考えられるが、受光した光量と受光信号との間に一定の量的関係が得られる手段であれば、どのような受光手段であってもかまわない。
検出光量値と、紙厚を属性として持つ紙種との間の関係は、紙種として、例えば、普通紙、第二原図、OHP紙を考えると、光の透過率は、それぞれかなりの違いがあるので、発光手段250より発した光が、紙を透過した後、受光手段251で検出する検出光量値の範囲もそれぞれ異なり、検出値により紙種を分析できる。
図4は、透過光量の検出値(横軸)と紙厚(縦軸)との関係により表した各紙種の特性線を示す。
同図は、各特性線を概念的に示すもので、特性線L1は普通紙、特性線L2は第二原図、特性線L3はOHP紙を示す。各特性線は、普通紙L1の検出値≦H1、H1<第二原図L2の検出値≦H2、H2<OHP紙L3の検出値≦H1となって、検出光量値の範囲がそれぞれ異なっているので、検出光量値により紙種の分析が可能である。また、厚さが薄くなるほど検出光量値は大きくなるので、厚さも検知できる。
なお、本例では、紙種の検知方式を透過光量の検出によるものとしたが、光学的な検出方法で検出光量値から紙種と紙厚が検知できる手段であれば、他の方式によっても可能であり、例えば、紙に作用した透過光と反射光の検出による特開2005−70508号に示される検知方式を採用することにより、実施しても良い。
【0020】
図4に示す特性線の傾向は、それぞれの紙種で多少材料が異なっても、通常使用する紙厚の範囲では変わらないので、検出光量値に基づいて、紙種と属性としての紙厚を検知することが可能になる。
図5は、紙種検知装置の構成概念を示す図である。同図に示すように、紙種検知装置は、発光手段250、受光手段251のペアと紙種検知手段80よりなる。紙種検知手段80は、発光手段250を所定の条件で駆動し、又受光手段251で検出した透過光量値をもとに紙種・紙厚に対応する検知信号を生成する。この検知信号は、後述するステッピングモータ70の駆動制御に用いられるので、紙種検知装置80でモータ制御に利用可能な信号へ変換して出力しても良い。
このようにして紙厚を属性として持つ紙種が検知されると、この検知結果は、送りローラを駆動するステッピングモータ70の駆動を制御するために用いられる。
即ち、紙種に応じて図2に示した基準電圧Vの設定を変更することにより、モータ駆動電流を変え、ステッピングモータ70の駆動によって送りローラに加えられるトルクを送り動作が最適化される大きさになるようにする。
図6は、紙厚を属性として持つ紙種とモータ駆動電流の関係を示す表である。この表は、紙種に対応してステッピングモータに流す制御電流値が示されており、紙種には属性としての厚さを関係付けている。
【0021】
図6の表に示すように、紙種に対し、最適な制御電流値の関係を示す「紙種−制御電流値」データをデータベースに保存しておく。紙送りの動作時には、紙種検知装置80で検知された当該紙の紙種の検知結果によりデータベースに保存した「紙種−制御電流値」データを検索し、最適な制御電流値を得、基準電圧Vに設定する。
なお、図6の表では、説明の便宜上、紙種を「普通紙I,II,III」、厚さを「厚い,普通,薄い」、電流を「大,中,小」として定性的な表現をとっているが、実際に制御に用いるテーブルは、紙種は紙種検知データ(検出光量値或いは紙種・厚み)、電流値も基準電圧Vで表す。
上記「紙種−制御電流値」データは、予め実験により紙厚を属性として持つ紙種と当該紙種に対する最適な送り動作が得られるステッピングモータに流す制御電流値を使用される各紙種について求めておき、それをテーブルデータとしてデータベースに保存する方法をとることができる。
このようなテーブルデータ方式によれば、制御に必要な処理を簡略化でき、処理速度を上げることが可能になる。
【0022】
また、上記と同様に予め実験により紙厚を属性として持つ各種の紙と当該紙種に対する最適な送り動作が得られるステッピングモータに流す制御電流値を求め、これらの関係を関数式で定義することにより、変数として紙厚が与えられた時に、この関数式から、制御電流値を算出する方式で制御電流値を得ることが可能である。
図7は、このような関数式を例示するものである。同図に示す紙厚(横軸)に対する制御電流(縦軸)の関係を表す関数式は、厚みが大きくなるに連れて電流を大きくするような、ほぼリニアな関係を定義している。
こうした紙厚に対する制御電流値の関係を表す関数式は、例えば、普通紙、第二原図、OHP紙といった紙種ごとに、予め用意しておき、紙送りの動作時に紙種検知装置80で検知された当該紙の紙種の検知結果として得られる紙厚を属性として持つ紙種に基づいて、該当する紙種の関数式を用いた関数計算により最適な制御電流値を算出し、基準電圧Vに設定する。
このような関数演算方式によれば、紙厚に応じたより適正な制御電流値を得ることができ、精度の高い制御が可能になる。
【0023】
次に、紙種に応じてステッピングモータの出力トルクを制御する上記した紙送り制御の制御系及び動作の異なる例を以下の「実施形態1」、「実施形態2」に示す。なお、ここでは、この紙送り制御が記録用紙20を搬送する転写ローラ51に適用された例を示す。
「実施形態1」は、基本となる紙送り制御系及び制御動作に係わる実施形態を示す。また、「実施形態2」は、「実施形態1」をベースに、給紙部のトレイから給紙される記録用紙が転写ローラに達したことを検知して、本案による出力トルクの制御を開始する例である。
「実施形態1」、「実施形態2」は、それぞれ図示する制御フローにもとづく動作を行うことにより、記録用紙20の紙種に応じてステッピングモータ70の出力トルクを最適化する所期の制御機能を実現する。この機能を実現するための手段は、制御フローを実行するための制御プログラムをMFP(画像形成装置)のメイン制御部に搭載し、制御部の有するCPUによりプログラムを動作させることにより、制御フローに示す手順を管理することによって、実施し得る。
【0024】
「実施形態1」
この実施形態は、紙種に応じてステッピングモータの出力トルクを制御する紙送り制御系及び制御動作の基本形態を例示する。
図8は、本例の紙送り制御系の構成概念を示すブロック図である。
同図に示すように、紙送り制御系は、転写ローラ51を駆動するステッピングモータ70の出力トルクを制御する系であり、上記した紙厚を属性として持つ紙種を検知する紙種検知手段80(図3〜5、参照)と、紙種の検知結果が入力されるモータ制御装置74と、モータ制御装置74から制御信号が入力される、ステッピングモータ70の駆動回路72を要素とする。
紙種情報検知手段80によって検知された記録用紙20の紙種に応じた制御電流値を基準電圧Vとしてモータ制御装置74に設定すると、モータ制御装置74は、駆動回路72を介して、ステッピングモータ70に流す駆動電流を変化させ、転写ローラ51を駆動するステッピングモータ70の出力トルクが制御される。この出力トルクの制御により、ステッピングモータ70により駆動される転写ローラ51によって送りが掛けられる記録用紙の最適な送り動作を実現する。
【0025】
この紙送り制御系の動作を図9に示す制御フローにもとづいて、より詳細に説明する。
この制御フローは、転写ローラ51に向けて記録用紙20の給紙動作が行われるときに起動される。
制御フローが起動されると、先ず、種情報検知手段80は、指示に従い紙種検知を行い、検知結果として得た、紙厚を属性として持つ紙種に基づいて、モータ制御装置74に設定する制御電流値を求める(ステップS101)。制御電流値を求める処理は、予めデータベースとして用意されている「紙種−制御電流値」テーブルのデータを検索する方式(図6に関する上記の説明、参照)或いは関数演算方式(図7に関する上記の説明、参照)により、当該紙種に応じた制御電流値を得る。得た制御電流値をモータ制御装置74に渡す。
次いで、制御電流値を紙種情報検知手段80から受取るモータ制御装置74は、これまでの設定に変え、受取った制御電流値を基準信号Vとして設定し、ステッピングモータ70の駆動回路72を制御するPWM信号を生成し、生成したPWM信号を駆動回路72に制御信号として出力する(ステップS102)。
次いで、PWM信号が制御信号として入力される駆動回路72は、PWM信号に従う駆動電流をステッピングモータ70に供給する(ステップS103)。このとき、中間転写ベルト5は回転しているので、駆動回路72は、記録用紙20を送っていない状態でも、ステッピングモータ70を駆動し、転写ローラ51に駆動力を与えているが、駆動電流は記録用紙20が無いので小さくて良い。このため、記録用紙20を送るこのフローにおける制御状態では、以前に供給していた駆動電流よりも電流を大きくし、出力トルクを増加させる。
このように、記録用紙20が転写ローラ51によって送られている間、当該紙種に応じて設定された駆動電流でステッピングモータ70を駆動し、送り動作を最適化する(ステップS104)。
記録用紙20の通過後、モータ制御装置74は、基準信号Vとして記録用紙20を送っていない状態の設定に戻し、この設定によるPWM信号を駆動回路72に制御信号として出力する(ステップS105)。
PWM信号が制御信号として入力される駆動回路72は、このPWM信号に従い駆動電流を記録用紙搬送時から記録用紙20を送っていない状態に低下させ(ステップS106)、この制御フローを終える。
上記のような制御動作により、所期の安定した送り動作が可能になって、無駄な電流の消費や発熱等をおさえることができる。
【0026】
「実施形態2」
この実施形態は、上記実施形態1をベースに、給紙部のトレイから給紙される記録用紙20が転写ローラ51に達したことを検知して、ステッピングモータ70の出力トルクの制御を開始する動作を行わせる形態の例を示す。本実施形態は、例えば、紙種の検知位置と転写ローラの位置関係、動作状態等により、記録用紙20の紙種を検知してから転写ローラ51に達するまでに時間を要する場合があっても、このような時間における不要な電力の供給を抑えることで、さらに無駄なエネルギーの消費を無くすことを可能にすることを意図するものである。
図10は、本例の紙送り制御系の構成概念を示すブロック図である。
同図に示すように、紙送り制御系は、転写ローラ51を駆動するステッピングモータ70の出力トルクを制御する系であり、上記した紙厚を属性として持つ紙種を検知する紙種検知手段80(図3〜5、参照)と、紙種の検知結果が入力されるモータ制御装置74と、モータ制御装置74から制御信号が入力される、ステッピングモータ70の駆動回路72と、記録用紙20が転写ローラ51に達したことをチェックする転写紙到達確認手段55を要素とする。
基本的な動作は、上記実施形態1と変わりがないが、転写紙到達確認手段55による到達の確認を待って、ステッピングモータ70の出力トルクの制御動作を実行する点を異にする。
【0027】
この紙送り制御系の動作を図11に示す制御フローにもとづいて、より詳細に説明する。
この制御フローは、転写ローラ51に向けて記録用紙20の給紙動作が行われるときに起動される。
制御フローが起動されると、先ず、種情報検知手段80は、指示に従い紙種検知を行い、検知結果として得た、紙厚を属性として持つ紙種に基づいて、モータ制御装置74に設定する制御電流値を求める(ステップS201)。制御電流値を求める処理は、予めデータベースとして用意されている「紙種−制御電流値」テーブルのデータを検索する方式(図6に関する上記の説明、参照)或いは関数演算方式(図7に関する上記の説明、参照)により、当該紙種に応じた制御電流値を得る。得た制御電流値をモータ制御装置74に渡す。
制御電流値を紙種情報検知手段80から受取るモータ制御装置74は、これまでの設定に変え、受取った制御電流値を基準信号Vとして設定する。ただ、本実施形態では、直ちにこの設定変更を行わないで、記録用紙20が転写ローラ51に達したことを検知し、送りを開始する状態になったことを確認する機能を持つ転写紙到達確認手段55によりチェックし、この確認ができるまで設定処理を留保する(ステップS202)。
従って、記録用紙20が転写ローラ51に達したことが確認できたところで、モータ制御装置74は、紙種情報検知手段80から受取った制御電流値を、これまでの設定に変え、基準信号Vとして設定し、ステッピングモータ70の駆動回路72を制御するPWM信号を生成し、生成したPWM信号を駆動回路72に制御信号として出力する(ステップS203)。
次いで、PWM信号が制御信号として入力される駆動回路72は、PWM信号に従う駆動電流をステッピングモータ70に供給する(ステップS204)。このとき、中間転写ベルト5は回転しているので、駆動回路72は、記録用紙20を送っていない状態でも、ステッピングモータ70を駆動し、転写ローラ51に駆動力を与えているが、駆動電流は記録用紙20が無いので小さくて良い。このため、記録用紙20を送るこのフローにおける制御状態では、以前に供給していた駆動電流よりも電流を大きくし、出力トルクを増加させる。
このように、記録用紙20が転写ローラ51によって送られている間、当該紙種に応じて設定された駆動電流でステッピングモータ70を駆動し、送り動作を最適化する(ステップS205)。
記録用紙20の通過後、モータ制御装置74は、基準信号Vとして記録用紙20を送っていない状態の設定に戻し、この設定によるPWM信号を駆動回路72に制御信号として出力する(ステップS206)。
PWM信号が制御信号として入力される駆動回路72は、このPWM信号に従い駆動電流を記録用紙搬送時から記録用紙20を送っていない状態に低下させ(ステップS207)、この制御フローを終える。
上記のような制御動作により、安定した送り動作が可能になって、所期の無駄な電流の消費や発熱等を極力おさえることができる。
【0028】
上記では、転写ローラ51を介して記録用紙20に伝達されるトルクを紙種・紙厚に応じて変更するために、転写ローラ51を駆動するステッピングモータ70の出力トルクを制御する方式(以下、“モータ制御方式”と記す)を示した。ところで、転写ローラ51を介して記録用紙20に伝達されるトルクは、上記したモータ制御方式以外に、送りローラにおける駆動ローラと従動ローラの間隔を可変することによっても制御することが可能である。
そこで、次の実施形態は、安定した送り動作に必要なトルクの付与を転写ローラ間の間隔を可変する手段を採用して実現する方式(以下、“ローラ間隔可変方式”と記す)について示す。
このローラ間隔可変方式は、モータ制御方式におけるモータ出力トルクに対し、転写ローラの記録用紙への伝達トルクを変化させるローラ間隔としているので、制御量が異なるが、記録用紙の紙種・紙厚の違いに対応する制御動作であるから、紙種検知装置は同一の手段(上記図3〜5に関する説明、参照)を同一の動作状態で用いることができる。
本例では、紙種検知装置は、受光手段251で検出した記録用紙20の透過光量をもとに生成される紙種・紙厚に対応する検知信号をローラ間隔可変手段で間隔を変化させるための駆動制御に利用可能な信号として出力する。
また、紙種・紙厚の検知信号を受けるローラ間隔可変手段は、ステッピングモータ70によって駆動される転写ローラ51を介して記録用紙20へ伝達されるトルクを送り動作が最適化される大きさになるように、検知信号に応じてローラ間隔を制御する。
記録用紙20として用いられる、普通紙、第二原図、OHP紙は、いずれも厚みが大きくなるに連れてローラ間隔を大きくし、加圧力を下げることで、転写ローラ51aと転写対向ローラ51bの間に記録用紙20が突入する際の転写紙及びローラへのダメージを軽減させることができ、安定した送り動作を確保することができる。
【0029】
図14は、紙厚を属性として持つ紙種とローラ間隔の関係を示す表である。この表は、紙種に対応して転写ローラ間隔が示されており、紙種には属性としての厚さを関係付けている。
図14の表に示すように、紙種に対し、適正化に必要な転写ローラ間隔の関係を示す「紙種−ローラ間隔」データをデータベースに保存しておく。紙送りの動作時には、紙種検知装置80で検知された当該紙の紙種の検知結果によりデータベースに保存した「紙種−ローラ間隔」データを検索し、適正な送り動作に必要な転写ローラ間隔を得、ローラ間隔可変手段に制御量として設定する。
なお、図14の表では、説明の便宜上、紙種を「普通紙I,II,III」、厚さを「厚い,普通,薄い」、ローラ間隔を「大,中,小」として定性的な表現をとっているが、実際に制御に用いるテーブルは、紙種は紙種検知データ(検出光量値或いは紙種・厚み)、ローラ間隔も数値で表す。
上記「紙種−ローラ間隔」データは、予め実験により紙厚を属性として持つ紙種と当該紙種に対する最適な送り動作が得られるローラ間隔を使用される各紙種について求めておき、それをテーブルデータとしてデータベースに保存する方法をとることができる。
このようなテーブルデータ方式によれば、制御に必要な処理を簡略化でき、処理速度を上げることが可能になる。
また、ローラ間隔の制御値を求める処理は、上記モータ制御方式において、制御する駆動電流値を関数演算により求めた(図7に関する上記の説明、参照)と同様に、関数演算で求めても良い。
【0030】
次に、ローラ間隔可変方式の紙送り制御の制御系及び動作例を以下の「実施形態3」に示す。なお、ここでも、この紙送り制御が記録用紙20を搬送する転写ローラ51に適用された例を示す。
「実施形態3」は、図示する制御フローにもとづく動作を行うことにより、記録用紙20の紙種に応じて転写ローラ51aと転写対向ローラ51bの間隔を変化させ、記録用紙20へ伝達されるトルクを最適化する所期の制御機能を実現する。この機能を実現するための手段は、制御フローを実行するための制御プログラムをMFP(画像形成装置)のメイン制御部に搭載し、制御部の有するCPUによりプログラムを動作させることにより、制御フローに示す手順を管理することによって、実施し得る。
「実施形態3」
この実施形態は、ローラ間隔可変方式による紙送り制御系及び制御動作の基本形態を例示する。
図12は、本例の紙送り制御系の構成概念を示すブロック図である。
同図に示すように、この紙送り制御系は、転写ローラ51を駆動するステッピングモータ70を制御する系と、転写ローラ51の間隔を制御する系よりなる。
ステッピングモータ70の制御系は、モータ制御装置74と、モータ制御装置74から制御信号が入力される、ステッピングモータ70の駆動回路72を要素とする。また、転写ローラ51の間隔を制御する系は、紙厚を属性として持つ紙種を検知する紙種検知手段80(図3〜5、参照)と、紙種の検知結果が入力される転写ローラ間隔可変手段51gを要素とする。
この紙送り制御系では、紙種情報検知手段80によって検知された記録用紙20の紙種・紙厚に応じた制御値を転写ローラ間隔可変手段51gに設定することで、紙種・紙厚が違っても、記録用紙20へ伝達されるトルクを送り動作が最適化される大きさにする。なお、本実施形態では、モータ制御装置74への設定は、記録用紙20の紙種・紙厚の検知結果によって変えないので、例えば、最も多く使用される記録用紙に合わせた基準電圧Vの設定で、駆動回路72を介して、ステッピングモータ70に駆動電流を流す。
【0031】
この紙送り制御系の動作を図13に示す制御フローにもとづいて、より詳細に説明する。
この制御フローは、転写ローラ51に向けて記録用紙20の給紙動作が行われるときに起動される。
制御フローが起動されると、先ず、種情報検知手段80は、指示に従い紙種検知を行い、検知結果として得た、紙厚を属性として持つ紙種に基づいて、転写ローラ間隔可変手段51gに設定する制御値を求める(ステップS301)。ローラ間隔の制御値を求める処理は、予めデータベースとして用意されている「紙種−ローラ間隔」テーブルのデータを検索する方式(図14に関する上記の説明、参照)或いは関数演算方式により、当該紙種に応じた転写ローラ間隔の制御値を得る。得た制御値を転写ローラ間隔可変手段51gに渡す。
次いで、転写ローラ間隔の制御値を紙種情報検知手段80から受取る転写ローラ間隔可変手段51gは、これまでの設定に変え、受取った制御値を設定し、転写ローラ51aと転写対向ローラ51bのローラ間隔を変化させる(ステップS302)。なお、転写ローラ51の間隔を可変する際、転写ローラ51aと転写対向ローラ51bの一方を変化させる方法を採用しても良いし、両方を変化させる方法を採用しても良い。
このように、記録用紙20が転写ローラ51によって送られている間、当該紙種に応じて設定されたローラ間隔で記録用紙20に与える加圧力を調整し、紙送り動作を行う(ステップS303)。
記録用紙20の通過後、転写ローラ間隔可変手段51gは、記録用紙20を送っていない状態の通常のデフォルト設定に転写ローラ間隔の制御値を戻し、この設定に従いローラ間隔を変化させ(ステップS304)、この制御フローを終える。
上記のような制御動作により、紙種に応じて転写ローラ51aと転写対向ローラ51bの間隔を変化させ、加圧力を変化させることにより、転写ローラ間に記録用紙20が突入する際の用紙及びローラへのダメージを軽減させることができる。また、負荷変動を軽減することができるので、中間転写ベルト5を安定して走行させることができ、高画質化が保証される。
【0032】
上記実施形態1,2にモータ制御方式の例を、又上記実施形態3にローラ間隔可変方式の例を示したが、次に示す実施形態は、上記両方式を併用して、紙種・紙厚に応じて記録用紙20の搬送するためのトルクの最適制御を行う、紙送り制御の制御系及び動作の異なる例を示すもので、「実施形態4」、「実施形態5」の2形態を示す。なお、ここでも、この紙送り制御が記録用紙20を搬送する転写ローラ51に適用された例を示す。
「実施形態4」は、本実施形態の紙送り制御系及び制御動作に係わる形態をより基本的な形態で示し、また、「実施形態5」は、「実施形態4」をベースに、給紙部のトレイから給紙される記録用紙が転写ローラに達したことを検知して、本案の制御を開始する例である。
「実施形態4」、「実施形態5」は、それぞれ図示する制御フローにもとづく動作を行うことにより、記録用紙20の紙種に応じて記録用紙20の搬送するためのトルクを最適化する所期の制御機能を実現する。この機能を実現するための手段は、制御フローを実行するための制御プログラムをMFP(画像形成装置)のメイン制御部に搭載し、制御部の有するCPUによりプログラムを動作させることにより、制御フローに示す手順を管理することによって、実施し得る。
【0033】
「実施形態4」
この実施形態は、紙種に応じて、ステッピングモータの出力トルク及び記録用紙へ伝達されるトルクを制御する紙送り制御系及び制御動作の基本形態を例示する。
図15は、本例の紙送り制御系の構成概念を示すブロック図である。
同図に示すように、紙送り制御系は、転写ローラ51を駆動するステッピングモータ70の出力トルクを制御する系と、転写ローラ51の間隔を制御する系よりなる。
ステッピングモータ70の制御系は、紙厚を属性として持つ紙種を検知する紙種検知手段80(図3〜5、参照)と、紙種の検知結果が入力されるモータ制御装置74と、モータ制御装置74から制御信号が入力される、ステッピングモータ70の駆動回路72を要素とする。また、転写ローラ51の間隔を制御する系は、上記紙種検知手段80の検知結果が入力される転写ローラ間隔可変手段51gを要素とする。
2つの紙送り制御系により送り動作を適正化するので、2段階でそれぞれの制御値を設定する操作が必要になる。従って、制御手順によりどちらを優先させるかを定め(後述の図16,17の制御フロー、参照)、後段で制御値を求めるときに、前段で設定した制御値を前提条件として適正な送り動作に必要な制御値を設定する。このため、上記実施形態に示した「紙種−制御電流値」テーブル(図6、参照)及び「紙種−ローラ間隔」テーブル(図6、参照)は、後段で使用するためのテーブルデータとしては、上記前提条件に対応するデータを補足する必要がある。つまり、後段で使用するデータには、前提として設定された制御量である電流値もしくはローラ間隔を変数として加え「紙種−制御電流値−ローラ間隔」デーブルもしくは「紙種−ローラ間隔−制御電流値」テーブルを用意することになる。
なお、2つの紙送り制御系の動作は、上記したモータ制御方式、ローラ間隔可変方式の実施形態でそれぞれ示した動作(前者は、図8の説明、後者は、図12の説明、参照)と基本的に変わりがない。
【0034】
この紙送り制御系の動作を図16に示す制御フローにもとづいて、より詳細に説明する。図16に示す制御フローは、ローラ間隔可変方式を優先させる動作を行わせるフローに当たる。
この制御フローは、転写ローラ51に向けて記録用紙20の給紙動作が行われるときに起動される。
制御フローが起動されると、先ず、種情報検知手段80は、指示に従い紙種検知を行い、検知結果として得た、紙厚を属性として持つ紙種に基づいて、転写ローラ間隔可変手段51gに設定する制御値を求め、また、モータ制御装置74に設定する制御電流値を求める(ステップS401)。ローラ間隔の制御値を求める処理は、予めデータベースとして用意されている「紙種−ローラ間隔」テーブルのデータを検索する方式等により、当該紙種に応じた転写ローラ間隔の制御値を得る。得た制御値を転写ローラ間隔可変手段51gに渡す。他方、制御電流値を求める処理は、予めデータベースとして用意されている「紙種−ローラ間隔−制御電流値」テーブルのデータを検索する方式等により、当該紙種と先に求めた転写ローラ間隔の制御値とに応じた制御電流値を得、得た制御電流値をモータ制御装置74に渡す。
次いで、転写ローラ間隔の制御値を紙種情報検知手段80から受取る転写ローラ間隔可変手段51gは、これまでの設定に変え、受取った制御値を設定し、転写ローラ51aと転写対向ローラ51bのローラ間隔を変化させる(ステップS402)。
また、制御電流値を紙種情報検知手段80から受取るモータ制御装置74は、これまでの設定に変え、受取った制御電流値を基準信号Vとして設定し、ステッピングモータ70の駆動回路72を制御するPWM信号を生成し、生成したPWM信号を駆動回路72に制御信号として出力する。PWM信号が制御信号として入力される駆動回路72は、PWM信号に従う駆動電流をステッピングモータ70に供給する(ステップS403)。このとき、中間転写ベルト5は回転しているので、駆動回路72は、記録用紙20を送っていない状態でも、ステッピングモータ70を駆動し、転写ローラ51に駆動力を与えているが、駆動電流は記録用紙20が無いので小さくて良い。このため、記録用紙20を送るこのフローにおける制御状態では、以前に供給していた駆動電流よりも電流を大きくし、出力トルクを増加させる。
【0035】
記録用紙20が転写ローラ51によって送られている間、当該紙種に応じて設定されたローラ間隔を保持し、当該紙種及びローラ間隔に応じて設定された駆動電流でステッピングモータ70を駆動し、送り動作を最適化する(ステップS404)。
記録用紙20の通過後、モータ制御装置74は、基準信号Vとして記録用紙20を送っていない状態の設定に戻し、この設定によるPWM信号を駆動回路72に制御信号として出力する(ステップS405)。
PWM信号が制御信号として入力される駆動回路72は、このPWM信号に従い駆動電流を記録用紙搬送時から記録用紙20を送っていない状態に低下させる(ステップS406)。
他方、記録用紙20の通過後、転写ローラ間隔可変手段51gは、記録用紙20を送っていない状態の通常のデフォルト設定に転写ローラ間隔の制御値を戻し、この設定に従いローラ間隔を変化させ(ステップS407)、この制御フローを終える。
上記のような制御動作により、より安定した送り動作が可能になって、無駄な電流の消費や発熱等をさらに抑えることができる。
【0036】
モータ制御方式を優先させる動作を行わせる制御フローは、図17の手順で行う。
モータ制御方式を優先させる図17の制御フローは、上記したローラ間隔可変方式を優先させる動作を行わせる制御フロー(図16)と優先関係が異なるので、当然、処理手順が入れ替わっているが、各々の制御方式による動作は基本的に変わらない。
ただ、ステップS501で種情報検知手段80の検知結果に従い、先に制御電流値を設定するので、後に設定するローラ間隔の制御値を求める処理は、予めデータベースとして用意されている「紙種−制御電流値−ローラ間隔」テーブルのデータを検索する方式等により、当該紙種と先に求めた制御電流値とに応じたローラ間隔の制御値を得る、という処理に変わる。
上記の制御値を設定するための処理に違いや優先関係を変えたことによる手順の違いがあるものの、各ステップで行う動作そのものは変わりがないので、上記したローラ間隔可変方式を優先させる動作を行わせる制御フロー(図16)における対応するステップの動作説明を参照することとし、ここでは、記載を省く。
図17の制御フローに従った制御動作を実行することにより、より安定した送り動作が可能になって、無駄な電流の消費や発熱等をさらに抑えることができる。
【0037】
「実施形態5」
この実施形態は、上記実施形態4をベースに、給紙部のトレイから給紙される記録用紙20が転写ローラ51に達したことを検知して、記録用紙20の送り動作を適正化するトルクの制御を開始する動作を行わせる形態の例を示す。本実施形態は、例えば、紙種の検知位置と転写ローラの位置関係、動作状態等により、記録用紙20の紙種を検知してから転写ローラ51に達するまでに時間を要する場合があっても、このような時間における不要な電力の供給を抑えることで、さらに無駄なエネルギーの消費を無くすことを可能にすることを意図するものである。
図18は、本例の紙送り制御系の構成概念を示すブロック図である。
同図に示すように、紙送り制御系は、転写ローラ51を駆動するステッピングモータ70の出力トルクを制御する系と、転写ローラ51の間隔を制御する系よりなる。
ステッピングモータ70の制御系は、紙厚を属性として持つ紙種を検知する紙種検知手段80(図3〜5、参照)と、記録用紙20が転写ローラ51に達したことをチェックする転写紙到達確認手段55と、紙種の検知結果及び転写紙到達の確認結果が入力されるモータ制御装置74と、モータ制御装置74から制御信号が入力される、ステッピングモータ70の駆動回路72を要素とする。また、転写ローラ51の間隔を制御する系は、上記紙種検知手段80の検知結果が入力される転写ローラ間隔可変手段51gを要素とする。
2つの紙送り制御系による動作は、基本的に上記実施形態4と変わりがないが、転写紙到達確認手段55による到達の確認を待って、各制御動作を実行する点を異にする。
【0038】
この紙送り制御系の動作を図19に示す制御フローにもとづいて、より詳細に説明する。
図19に示す制御フローは、ローラ間隔可変方式を優先させる動作において、転写紙到達確認を適用した制御例である。
この制御フローは、転写ローラ51に向けて記録用紙20の給紙動作が行われるときに起動される。
制御フローが起動されると、先ず、種情報検知手段80は、指示に従い紙種検知を行い、検知結果として得た、紙厚を属性として持つ紙種に基づいて、転写ローラ間隔可変手段51gに設定する制御値を求め、また、モータ制御装置74に設定する制御電流値を求める(ステップS601)。ローラ間隔の制御値を求める処理は、予めデータベースとして用意されている「紙種−ローラ間隔」テーブルのデータを検索する方式等により、当該紙種に応じた転写ローラ間隔の制御値を得る。得た制御値を転写ローラ間隔可変手段51gに渡す。他方、制御電流値を求める処理は、予めデータベースとして用意されている「紙種−ローラ間隔−制御電流値」テーブルのデータを検索する方式等により、当該紙種と先に求めた転写ローラ間隔の制御値とに応じた制御電流値を得、得た制御電流値をモータ制御装置74に渡す。
次いで、転写ローラ間隔の制御値を紙種情報検知手段80から受取る転写ローラ間隔可変手段51gは、これまでの設定に変え、受取った制御値を設定し、転写ローラ51aと転写対向ローラ51bのローラ間隔を変化させる(ステップS602)。
また、制御電流値を紙種情報検知手段80から受取るモータ制御装置74は、これまでの設定に変え、受取った制御電流値を基準信号Vとして設定する。ただ、本実施形態では、直ちにこの設定変更を行わないで、記録用紙20が転写ローラ51に達したことを検知し、送りを開始する状態になったことを確認する機能を持つ転写紙到達確認手段55によりチェックし、この確認ができるまで設定処理を留保する(ステップS603)。
従って、記録用紙20が転写ローラ51に達したことが確認できたところで、モータ制御装置74は、紙種情報検知手段80から受取った制御電流値を、これまでの設定に変え、基準信号Vとして設定し、ステッピングモータ70の駆動回路72を制御するPWM信号を生成し、生成したPWM信号を駆動回路72に制御信号として出力する。PWM信号が制御信号として入力される駆動回路72は、PWM信号に従う駆動電流をステッピングモータ70に供給する(ステップS604)。このとき、中間転写ベルト5は回転しているので、駆動回路72は、記録用紙20を送っていない状態でも、ステッピングモータ70を駆動し、転写ローラ51に駆動力を与えているが、駆動電流は記録用紙20が無いので小さくて良い。このため、記録用紙20を送るこのフローにおける制御状態では、以前に供給していた駆動電流よりも電流を大きくし、出力トルクを増加させる。
【0039】
記録用紙20が転写ローラ51によって送られている間、当該紙種に応じて設定されたローラ間隔を保持し、当該紙種及びローラ間隔に応じて設定された駆動電流でステッピングモータ70を駆動し、送り動作を最適化する(ステップS605)。
記録用紙20の通過後、モータ制御装置74は、基準信号Vとして記録用紙20を送っていない状態の設定に戻し、この設定によるPWM信号を駆動回路72に制御信号として出力する(ステップS606)。
PWM信号が制御信号として入力される駆動回路72は、このPWM信号に従い駆動電流を記録用紙搬送時から記録用紙20を送っていない状態に低下させる(ステップS607)。
他方、記録用紙20の通過後、転写ローラ間隔可変手段51gは、記録用紙20を送っていない状態の通常のデフォルト設定に転写ローラ間隔の制御値を戻し、この設定に従いローラ間隔を変化させ(ステップS608)、この制御フローを終える。
上記のような制御動作により、より安定した送り動作が可能になって、無駄な電流の消費や発熱等を極力おさえることができる。
【0040】
モータ制御方式を優先させる動作において、転写紙到達確認を適用した制御例として、図20の制御フローを示すことができる。
モータ制御方式を優先させる図20の制御フローは、上記したローラ間隔可変方式を優先させる動作を行わせる制御フロー(図19)と優先関係が異なるので、当然、転写紙到達確認(ステップS702)→モータ駆動電流制御(ステップS703)→ローラ間隔制御(ステップS704)と、手順が入れ替わっているが、各々の制御方式による動作は、基本的に変わらない。
ただ、ステップS701で種情報検知手段80の検知結果に従い、先に制御電流値を設定するので、後に設定するローラ間隔の制御値を求める処理は、予めデータベースとして用意されている「紙種−制御電流値−ローラ間隔」テーブルのデータを検索する方式等により、当該紙種と先に求めた制御電流値とに応じたローラ間隔の制御値を得る、という処理に変わる。
上記の制御値を設定するための処理に違いや優先関係を変えたことによる手順の違いがあるものの、各ステップで行う動作そのものは変わりがないので、上記したローラ間隔可変方式を優先させる動作を行わせる制御フロー(図19)における対応するステップの動作説明を参照することとし、ここでは、記載を省く。
図20の制御フローに従った制御動作を実行することにより、より安定した送り動作が可能になって、無駄な電流の消費や発熱等を極力おさえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係わるデジタルカラー複写機をベースにしたMFPの概略構成を示す。
【図2】出力トルクが制御可能なステッピングモータの駆動制御回路を示す。
【図3】給紙部の搬送経路に備えた紙種検知用の光学的検出手段の実施形態を示す。
【図4】透過光量の検出値(横軸)と紙厚(縦軸)との関係により表した各紙種の特性線を示すグラフである。
【図5】本発明に係わる紙種検知装置の構成概念を示す。
【図6】紙厚を属性として持つ紙種とモータ駆動電流とを関係付けたテーブルの1例を示す。
【図7】紙厚(横軸)に対する制御電流(縦軸)の関係を表す関数式を説明するグラフである。
【図8】紙送り制御系(実施形態1)の構成概念を示すブロック図である。
【図9】紙送り制御系における動作手順(実施形態1)を示す制御フロー図である。
【図10】紙送り制御系(実施形態2)の構成概念を示すブロック図である。
【図11】紙送り制御系における動作手順(実施形態2)を示す制御フロー図である。
【図12】紙送り制御系(実施形態3)の構成概念を示すブロック図である。
【図13】紙送り制御系における動作手順(実施形態3)を示す制御フロー図である。
【図14】紙厚を属性として持つ紙種とローラ間隔とを関係付けたテーブルの1例を示す。
【図15】紙送り制御系(実施形態4)の構成概念を示すブロック図である。
【図16】紙送り制御系における動作手順(実施形態4)を示す制御フロー図である。
【図17】紙送り制御系における動作手順(実施形態4)を示す制御フロー図である。
【図18】紙送り制御系(実施形態5)の構成概念を示すブロック図である。
【図19】紙送り制御系における動作手順(実施形態5)を示す制御フロー図である。
【図20】紙送り制御系における動作手順(実施形態5)を示す制御フロー図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・画像形成部、2・・給紙部、3・・読取部、4・・排紙収納部、5・・中間転写ベルト、6・・作像部、7・・走査露光装置、8・・定着装置、20・・記録用紙、21・・給紙トレイ、23・・レジストローラ、26・・給紙ローラ、36・・ADF(自動原稿搬送装置)、51・・転写装置(転写ローラ)、51a・・転写ローラ、51b・・転写対向ローラ、51g・・転写ローラ間隔可変手段、55・・転写紙到達確認手段、61・・感光体ドラム、62・・帯電装置、63・・現像装置、72・・モータ駆動回路、74・・モータ制御装置、70・・ステッピングモータ、80・・紙種検知手段、100・・画像形成装置(MFP)、250・・発光手段、251・・受光手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ローラと従動ローラよりなり、紙を該ローラ間に挟んだ状態で送ることが可能な送りローラと、
前記駆動ローラを駆動するステッピングモータと、
前記ステッピングモータの駆動回路と、
前記駆動回路を介してステッピングモータを制御する制御手段と、
を有する紙送り装置であって、
発光源と、該発光源から出射し搬送される紙に作用した光を受光する受光部と、該受光部の検出光量に基づいて、光量と一定の対応関係があり、紙厚を属性として持つ紙種を判定する判定部よりなる紙種検知手段を備え、
前記制御手段は、前記紙種検知手段により検知された紙種に応じて前記駆動回路が前記ステッピングモータに流す電流を制御することを特徴とする紙送り装置。
【請求項2】
請求項1に記載された紙送り装置において、前記紙種検知手段の受光部に紙を透過してきた光を検出するセンサを用いることを特徴とする紙送り装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された紙送り装置において、前記制御手段は、紙種が属性として持つ紙厚が大きくなるにつれて、前記ステッピングモータに流す電流を増加させる制御を行うことを特徴とする紙送り装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された紙送り装置において、前記制御手段は、紙厚を属性として持つ紙種と紙種に応じてステッピングモータに流す制御電流値とを関係付けたデータベースを予め備え、前記紙種検知手段で判定した紙種に応じた制御電流値を前記データベースから取得し、当該紙の搬送制御に用いることを特徴とする紙送り装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載された紙送り装置において、前記制御手段は、前記紙種検知手段で判定した紙種に応じた制御電流値を、紙種と紙厚に基づいてステッピングモータに流す制御電流値を算出する演算式を用いて取得し、当該紙の搬送制御に用いることを特徴とする紙送り装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された紙送り装置において、前記制御手段は、当該紙の紙種が検知された後、前記送りローラによる送り動作を受ける状態に当該紙が達したことを条件に、紙種に応じた制御電流値でステッピングモータを駆動する制御を行うことを特徴とする紙送り装置。
【請求項7】
前記送りローラにおける駆動ローラと従動ローラの間隔を可変するローラ間隔可変手段を有した請求項1乃至6に記載された紙送り装置において、前記紙種検知手段によって検知された紙種に応じて前記送りローラの加圧力を調整するために、前記ローラ間隔可変手段を動作させる加圧力調整手段を備えたことを特徴とする紙送り装置。
【請求項8】
駆動ローラと従動ローラよりなり、紙を該ローラ間に挟んだ状態で送ることが可能な送りローラと、
前記駆動ローラを駆動するステッピングモータと、
前記ステッピングモータの駆動回路と、
前記駆動回路を介してステッピングモータを制御する制御手段と、
を有する紙送り装置であって、
発光源と、該発光源から出射し搬送される紙に作用した光を受光する受光部と、該光検出部の検出光量に基づいて、光量と一定の対応関係があり、紙厚を属性として持つ紙種を判定する判定部よりなる紙種検知手段と、
前記送りローラにおける駆動ローラと従動ローラの間隔を可変するローラ間隔可変手段と、
前記紙種検知手段によって検知された紙種に応じて前記送りローラの加圧力を調整するために、前記ローラ間隔可変手段を動作させる加圧力調整手段を備えたことを特徴とする紙送り装置。
【請求項9】
請求項8に記載された紙送り装置において、前記加圧力調整手段は、紙種が属性として持つ紙厚が大きくなるにつれて、ローラ間隔を大きくする調整を行うことを特徴とする紙送り装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載された紙送り装置において、前記ローラ間隔可変手段は、駆動ローラと従動ローラの少なくとも一方の位置を可変する手段であることを特徴とする紙送り装置。
【請求項11】
記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、
給紙トレイから前記画像形成手段を経て排紙トレイに前記記録用紙を送る記録用紙送り手段を有する画像形成装置であって、
前記記録用紙送り手段に請求項1乃至10のいずれかに記載された紙送り装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
原稿を読取る原稿読取手段と、
前記原稿読取手段へ原稿を送る原稿送り手段と、
原稿読取信号をもとに記録用紙に画像を形成する画像形成手段を有した画像形成装置であって、
前記原稿送り手段に請求項1乃至10のいずれかに記載された紙送り装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
原稿を読取る原稿読取手段と、
前記原稿読取手段へ原稿を送る原稿送り手段と、
原稿読取信号をもとに記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、
給紙トレイから前記画像形成手段を経て排紙トレイに前記記録用紙を送る記録用紙送り手段を有する画像形成装置であって、
前記原稿送り手段及び前記記録用紙送り手段に請求項1乃至10のいずれかに記載された紙送り装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
駆動電流が制御可能なステッピングモータにより駆動される駆動ローラとこれに圧接する従動ローラのローラ間に紙を挟んだ状態で行う紙送りのモータ制御方法であって、
発光源から出射し搬送される紙に作用した光を受光する受光工程と、
前記受光工程で検出した光量に基づいて、光量と一定の対応関係があり、紙厚を属性として持つ紙種を判定する紙種判定工程と、
前記紙種判定工程により判定された紙種に応じて前記駆動ローラを駆動するステッピングモータに流す電流を制御するモータ制御工程を行うことを特徴とする紙送りのモータ制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載された紙送りのモータ制御方法において、
前記受光工程は、発光源から出射し搬送される紙を透過してくる光を受光する工程であることを特徴とする紙送りのモータ制御方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載された紙送りのモータ制御方法において、
前記モータ制御工程は、紙種が属性として持つ紙厚が大きくなるにつれて、ステッピングモータに流す電流を増加させる制御を行う工程であることを特徴とする紙送りのモータ制御方法。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれかに記載された紙送りのモータ制御方法において、
前記モータ制御工程は、前記紙種判定工程で当該紙の紙種が検知された後、前記駆動ローラによる送り動作を受ける状態に当該紙が達したことを条件に、紙種に応じた制御電流でステッピングモータを駆動する制御を行う工程であることを特徴とする紙送りのモータ制御方法。
【請求項18】
発生するトルクの制御が可能なステッピングモータにより駆動される駆動ローラとこれに間隔を可変にして圧接する従動ローラのローラ間に紙を挟んだ状態で行う紙送り方法であって、
発光源から出射し搬送される紙に作用した光を受光する受光工程と、
前記受光工程で検出した光量に基づいて、光量と一定の対応関係があり、紙厚を属性として持つ紙種を判定する紙種判定工程と、
前記紙種判定工程により判定された紙種に応じて、前記送りローラの加圧力を調整するために、前記ローラ間隔を可変させる加圧力調整工程を行うことを特徴とする紙送り方法。
【請求項19】
請求項18に記載された紙送り方法において、
前記加圧力調整工程は、紙種が属性として持つ紙厚が大きくなるにつれて、ローラ間隔を大きくする調整を行う工程であることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−320744(P2007−320744A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155371(P2006−155371)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】