説明

素材管理システム及び素材管理方法

【課題】 データベースに障害が発生した場合でも簡単にデータベースが再構築可能な素材管理システムを提供する。
【解決手段】 カート装置1の収納棚1aには、素材を記憶する第1の記憶領域と、素材以外の情報を記憶する第2の記憶領域とを有する光ディスクが複数収納され、記録再生装置1bは光ディスクへの素材または素材以外の情報の記憶または可搬型記憶媒体に記憶された素材の再生を行う。データベース2aは、素材の管理情報を記憶する。カート制御装置2は、カート装置1を制御して、光ディスクへの素材の記憶の際、光ディスクごとの素材の管理情報を第2の記憶領域に記憶させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は素材管理システム及び素材管理方法に関し、特に複数の光ディスクなどに記憶した大量の映像または音声素材を、データベースを用いて管理する素材管理システム及び素材管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量のAV(Audio Visual)素材を扱う放送局では、番組制作の際に、保存した大量の素材の中から編集に必要なものを短時間に検索する必要がある。そのため、従来では光ディスクなどに記憶した素材についての管理情報(番組データやコード番号など)をデータベース化して、検索の際にそのデータベースの情報を例えばユーザのコンピュータの画面上で参照することで、必要な素材を検索していた。また、素材の記憶時にはその素材の一部の静止画像や動画像を別に記憶して、検索の際には、これらの画像データも参照して、目的の素材か否かを判定できる検索システムも知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、近年のAV素材は、MPEG(Moving Picture Coding Experts Group)化が進み、中でもMPEG2による圧縮符号化は、デジタル放送やDVD(Digital Versatile Disc)−Videoなどに使用され、放送番組の製作現場においても利用されてきている。さらに、近年では、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)ネットワーク上での異なる機種やメーカの放送機器同士でのファイル交換のためのフォーマットとして、MXF(Material eXchange Format)が、SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)で標準化された。
【0004】
MXFは、MPEGフォーマットやDV(Digital Video)フォーマットのデータ、さらにはメタデータ(圧縮符号化方式、映像の内容、種類、撮影場所などの情報)などを一体化して送受信可能なフォーマットであり、ストリーミング機能にも対応している。MXFを利用することにより、例えば放送局内LAN(Local Area Network)を利用して、GUI(Graphical User Interface)環境にてドラッグ&ドロップなどの画面上での簡単な操作で、LAN上の機器間による素材ファイルの転送や、再生、記録が可能になってきている。なお、ネットワーク上でのファイルの転送は、CIFS(Common Internet File System)やFTP(File Transfer Protocol)など、通常非同期転送で使用されるプロトコルによって制御される。
【特許文献1】特許第2952908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、素材の管理情報を記憶するデータベースに障害が発生した場合、そのデータベースを再構築するには、大量に蓄積された素材を確認しなければならず、多大な労力と時間、そしてコストがかかる。そのため、データベースの障害の対策として、データベースの二重化や、定期的にバックアップを取る必要があり面倒であった。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、データベースに障害が発生した場合でも簡単にデータベースが再構築可能な素材管理システムを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明の他の目的は、データベースに障害が発生した場合でも簡単にデータベースが再構築可能な素材管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では上記問題を解決するために、映像または音声素材を管理する素材管理システムにおいて、素材を記憶する第1の記憶領域と、前記素材以外の情報を記憶する第2の記憶領域とを有する可搬型記憶媒体を複数収納する収納棚と、前記可搬型記憶媒体への前記素材または前記素材以外の情報の記憶または前記可搬型記憶媒体に記憶された前記素材を再生する記録再生装置とを備えたカート装置と、前記素材の管理情報を記憶するデータベースと、前記カート装置を制御して、前記可搬型記憶媒体への前記素材の記憶の際、前記可搬型記憶媒体ごとの前記素材の前記管理情報を前記第2の記憶領域に記憶させるカート制御装置と、を有することを特徴とする素材管理システムが提供される。
【0009】
上記の構成によれば、カート装置の収納棚には、素材を記憶する第1の記憶領域と、素材以外の情報を記憶する第2の記憶領域とを有する可搬型記憶媒体が複数収納され、記録再生装置は可搬型記憶媒体への素材または素材以外の情報の記憶または可搬型記憶媒体に記憶された素材の再生を行う。データベースは、素材の管理情報を記憶する。カート制御装置は、カート装置を制御して、可搬型記憶媒体への素材の記憶の際、可搬型記憶媒体ごとの素材の管理情報を第2の記憶領域に記憶させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、素材を記憶する第1の記憶領域と、素材以外の情報を記憶する第2の記憶領域とを有する可搬型記憶媒体への素材の記憶の際、可搬型記憶媒体ごとの素材の管理情報をその可搬型記憶媒体の第2の記憶領域に記憶するので、データベースに障害が発生したときに、各可搬型記憶媒体から管理情報を読み出すことにより、簡単にデータベースを再構築することができる。
【0011】
また、一部の可搬型記憶媒体が壊れても、データベースの一部の管理情報が紛失するだけで、被害を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の素材管理システムの構成を示す図である。
本実施の形態の素材管理システムは、例えば、放送局の番組製作現場において適用されるシステムであり、カート装置1、カート制御装置2、AVサーバ3、制御用コンピュータ4を有している。また、これらはLAN5に接続している。
【0013】
カート装置1は、複数の可搬型記憶媒体を収納する収納棚1aと、複数の記録再生装置1bを備えている。
図2は、可搬型記憶媒体の一例の構成を示す図である。
【0014】
可搬型記憶媒体は、例えば、青紫色レーザ光による高密度記憶を採用した光ディスク6であり、例えば、23.3GBの容量を有する。また、この光ディスク6は、AV素材を記憶する記憶領域6a(以下AVエリアと呼ぶ。)と、それ以外の情報などを記憶する記憶領域6b(以下ジェネラルエリアと呼ぶ。)を有している。ジェネラルエリア6bの記憶容量は、例えば、500MBである。
【0015】
収納棚1aには、例えば、600巻程度の光ディスク6が収納される。
記録再生装置1bは、カート装置1内に複数搭載されている。各記録再生装置1bは、LAN5に接続可能なインターフェースの他に、IEEE(the Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394規格のインターフェースなども備えている。そして、カート制御装置2の制御のもと、図示しないロボティックス機能により収納棚1aから取り出した光ディスク6への素材の記憶や、光ディスク6に記憶された素材の再生を行う。
【0016】
カート制御装置2は、カート装置1の図示しないロボティックス機能や、カート装置1内の記録再生装置1bを、例えば、RS−422A端子からの制御信号により制御するコンピュータである。そして、LAN5に接続可能なインターフェースを備え、AVサーバ3や制御用コンピュータ4などとの間で、LAN5を介して素材を送受信する。なお、LAN5を介して受信した素材は、例えば、IEEE1394規格のインターフェースにより、記録再生装置1bに供給される。
【0017】
また、カート制御装置2は、カート装置1内の収納棚1aに収納された光ディスク6の素材の管理情報を記憶するデータベース2aを有している。
図3は、素材の管理情報を記憶するデータベースの例である。
【0018】
図のように、データベース2aには、素材ファイルごとに、素材ファイルを格納した光ディスク6のID(DiscID)や、素材ファイルのID(FileID)、記憶した日時(Date)、タイトル、更新日時(last)などの管理情報が記憶される。なお、光ディスク6のIDは、例えば、光ディスク6に添付されたバーコードに記述され、カート装置1内の図示しないバーコードリーダによって読み取られる。
【0019】
このような、データベース2aを構成する素材ファイルごとの管理情報は、カート制御装置2にてファイル化される。以下これをインフォメーションファイルと呼ぶ。インフォメーションファイルは、例えばテキストファイルであり、素材のフォーマットやオーディオチャンネルなどの情報も記述される。
【0020】
なお、素材のフォーマットは、例えば、MPEG IMX(50/40/30Mbps)(MPEG IMXはソニー株式会社の登録商標である。)フォーマットや、DVCAM(DVCAMはソニー株式会社の商標である。)フォーマットなどがある。
【0021】
MPEG IMXフォーマットは、量子化8ビットデジタルコンポーネント記録であり、サンプリングレートは4:2:2、圧縮方式にMPEG−2 4:2:2@MLに準拠したイントラフレーム方式を採用している。
【0022】
AVサーバ3は、ファイルサーバとして機能し、例えば放送番組の制作用のAV素材を格納している。素材は、例えばMXFファイル化されCIFSまたはFTPによりLAN5を介してカート制御装置2とAVサーバ3との間で送受信される。
【0023】
制御用コンピュータ4は、素材の転送などを制御するコンピュータであり、ユーザは、この制御用コンピュータ4を用いて、データベース2aから所望の素材を検索したり、素材の再生または記録要求を行う。
【0024】
なお、図1ではデータベース2aをカート制御装置2内に示したが、LAN5上に接続されていて、制御用コンピュータ4により参照可能であればよい。
以下、本実施の形態の素材管理システムの動作を説明する。
【0025】
まず、素材を光ディスク6に記憶する際の動作を説明する。
例えば、AVサーバ3の素材ファイルを記録再生装置1bに記憶する際には、CIFSまたはFTPによる非同期系の制御で転送が行われる。すなわち制御用コンピュータ4は、自身の表示装置に、カート制御装置2内のディレクトリを表示する。ユーザは、そのディレクトリ内に、AVサーバ3の素材ファイル(例えば、MXFファイル)を例えばマウスなどでドラッグ&ドロップする。これにより、カート制御装置2の図示しない記憶装置(例えばハードディスクドライブ)に、LAN5を介して素材ファイルがダウンロードされる。また、それと同時にその素材ファイルの管理情報がインフォメーションファイルとしてカート制御装置2内のディレクトリに置かれる。
【0026】
図4は、カート制御装置のディレクトリの構成を示す図である。
AVサーバ3より送られてきた素材ファイル“a0010000.MXF”と、インフォメーションファイル“a0010000.INF”は、図のように、まず“ROOT”の下層の“ENTRY”ディレクトリに記憶される。
【0027】
カート制御装置2の制御のもと、カート装置1は、収納棚1aから記憶可能な光ディスク6を取り出し、記憶可能な記録再生装置1bを選択する。そして、収納棚1aから取り出した光ディスク6を、選択した記録再生装置1bに挿入する。記録準備が整うと、カート制御装置2の“ENTRY”ディレクトリには、記録準備が整ったことを示すファイル“a0010000.FIN”が置かれる。また、記録する光ディスク6が決定すると、図3で示したようなデータベース2aが更新される。
【0028】
“ENTRY”ディレクトリに、記録準備が整ったことを示すファイル“a0010000.FIN”が置かれると、カート制御装置2の制御のもと、素材ファイル“a0010000.MXF”は、例えば、IEEE1394規格のインターフェースなどで記録再生装置1bに送信され、光ディスク6のAVエリア6aに記憶される。インフォメーションファイル“a0010000.INF”は光ディスク6のジェネラルエリア6bに記憶される。そして、図4のように、カート装置1の光ディスク6のディレクトリを示す“DISCS”内の、選択された光ディスク6に対応するディレクトリ、例えば、“0010000”ディレクトリに、素材ファイル“a0010000.MXF”と、インフォメーションファイル“a0010000.INF”が置かれる。なお、1つの光ディスク6に複数の素材ファイルを記憶する場合には、それに対応してインフォメーションファイルもジェネラルエリア6bに複数記憶される。
【0029】
次に、光ディスク6に記憶された素材をAVサーバ3に転送する場合の素材管理システムの動作を説明する。
光ディスク6に記憶する動作の場合と同様に、素材ファイル及びインフォメーションファイルの転送は、CIFSまたはFTPにより行われる。すなわち制御用コンピュータ4は、自身の表示装置に、カート制御装置2内のディレクトリを表示する。ユーザは、転送したい素材ファイル(例えばMXFファイル)を、例えばマウスなどで、AVサーバ3の所望のディレクトリにドラッグ&ドロップする。これにより、選択された素材ファイルを記憶した光ディスク6が、カート制御装置2の制御のもと、記録再生装置1bに挿入され、再生される。そして、再生された素材は、記録再生装置1bから、LAN5を介してAVサーバ3に転送され記憶される。
【0030】
以上説明したような本実施の形態の素材管理システムによれば、データベース2aを構成する光ディスク6ごとの素材ファイルの管理情報を、インフォメーションファイルとしてその光ディスク6のジェネラルエリア6bに記憶するので、データベース2aに障害が発生したときに、各光ディスク6のインフォメーションファイルを、例えば、制御用コンピュータ4などが読み出すことにより、各素材の内容を確認することなく、簡単にデータベース2aを再構築することができる。
【0031】
また、一部の光ディスク6が壊れても、データベース2aの一部のデータが紛失するだけで、被害を最小限に抑えることができる。
なお、上記は本発明の一実施の形態にすぎず、特に上記に限定されるものではない。例えば、LAN5経由ではなく、SDI(シリアルデジタルインターフェース)を用いて、素材をベースバンド信号で送受信する場合についても同様に本発明を適用することも可能である。その場合、記録再生装置1bは、ベースバンド信号で受信した素材を例えば、MXFファイルにエンコードして、選択された光ディスク6のAVエリア6aに記憶し、その素材の管理情報はインフォメーションファイルとしてジェネラルエリア6bに記憶する。
【0032】
また、カート装置1及びカート制御装置2は複数あってもよい。
また、LAN5の代わりにWAN(Wide Area Network)を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態の素材管理システムの構成を示す図である。
【図2】可搬型記憶媒体の一例の構成を示す図である。
【図3】素材の管理情報を記憶するデータベースの例である。
【図4】カート制御装置のディレクトリの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1……カート装置、1a……収納棚、1b……記録再生装置、2……カート制御装置、2a……データベース、3……AVサーバ、4……制御用コンピュータ、5……LAN

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像または音声素材を管理する素材管理システムにおいて、
素材を記憶する第1の記憶領域と、前記素材以外の情報を記憶する第2の記憶領域とを有する可搬型記憶媒体を複数収納する収納棚と、前記可搬型記憶媒体への前記素材または前記素材以外の情報の記憶または前記可搬型記憶媒体に記憶された前記素材を再生する記録再生装置とを備えたカート装置と、
前記素材の管理情報を記憶するデータベースと、
前記カート装置を制御して、前記可搬型記憶媒体への前記素材の記憶の際、前記可搬型記憶媒体ごとの前記素材の前記管理情報を前記第2の記憶領域に記憶させるカート制御装置と、
を有することを特徴とする素材管理システム。
【請求項2】
前記カート制御装置は、前記データベースを構成する前記素材ごとの前記管理情報をファイルとして管理し、前記素材の記憶の際には、前記ファイルを前記第2の記憶領域に記憶させることを特徴とする請求項1記載の素材管理システム。
【請求項3】
映像または音声素材の管理情報をデータベースに記憶して素材を管理する素材管理方法において、
前記素材を記憶する第1の記憶領域と、前記素材以外の情報を記憶する第2の記憶領域とを有する可搬型記憶媒体への前記素材の記憶の際、前記可搬型記憶媒体ごとに記憶する前記素材の管理情報を前記第2の記憶領域に記憶することを特徴とする素材管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−73111(P2007−73111A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257577(P2005−257577)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】