説明

紫外線を放射するための供給源を有するデバイス

デバイス1は、紫外線を放射するための供給源20と、当該デバイス1に流体を入れるための入口30と、当該デバイス1から流体を出すための出口40と、当該デバイス1を通る流体フローに対して矯正動作を実行するための手段51,52とを有する。前記フロー矯正手段は、一方側に流体を入れるための入口開口部をもち、他方側に流体を出すための出口開口部をもつ少なくとも1つのフロー矯正要素51,52を有し、各入口開口部は、複数の出口開口部と連通しており、前記要素51,52は、ランダムに設けられ相互接続された穴の迷路を有する。斯様な構造において、前記要素51,52の一方側から他方側に移動する水要素は、種々の経路のうち1つをとり、その結果として、入口条件の変化が抑制され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を放射するための供給源と、当該デバイスに流体を入れるための入口と、当該デバイスから流体を出すための出口と、当該デバイスを通る流体フローに対して矯正動作を実行するための手段とを有するデバイスであって、前記フロー矯正手段が前記入口から前記出口への流体経路内に設けられる、デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
前段で規定されたようなデバイスの良く知られた例は、水を殺菌するためのデバイスであり、このデバイスにおいて、ハウジングの内側に設けられた要素は、特にUV−Cと通常呼ばれるタイプの、紫外線を放射するためのランプのような供給源である。紫外線にさらされ影響を受けた水は、UV−C光が殺菌可能であるという事実に基づいて水に対する浄化作用をもつ。家庭用器具に関して、紫外線供給源は、通常、放射線非透過性の保持構造体内に囲まれ、供給源に対する水の所望の暴露を可能にする。
【0003】
十分な殺菌動作のために、紫外線殺菌デバイスは、J/cmで表される特定の紫外線線量を生成しなければならない。この線量は、デバイス中のバクテリアの滞留時間で乗算された照度(W/cm)により与えられる。述べられた滞留時間は、水の流路により決定され、照射レベルは、適用される紫外線供給源のタイプにより決定される。
【0004】
水殺菌デバイスにおけるフロー矯正手段の使用は、例えば欧州特許第1837309号明細書から知られている。既知のフロー矯正手段は、穴が開けられた多数のシートを備えた円柱形状要素を有し、シートのそれぞれは、ラメラ(lamellae)のグリッド及び星形状の開口部を有する。穴が開けられたシートは、ベーシックなシートを打ち抜きプロセスにさらし、得られた穴が開けられたシートを延伸プロセスにさらすことにより形成される。ラメラ及び開口部は、規則的なパターン内に設けられ、シートは、スタックを形成するように、特定の手法において、即ち隣接するシートのラメラ及び開口部のパターンは規定されたずらされた構成をもつように、並行して設けられる。
【0005】
水殺菌デバイスを設計するときには、紫外線供給源の照度が、線形的に、又は、吸収が供給源までの半径方向距離で線形的及び指数関数的に生じる程度に依存して、低下することに留意しなければならない。この事実に関して、デバイスの所望の有効性を実現するために、これは、水要素の半径方向の混合が生じることを保証する手段が取られる場合に有利である。半径方向の混合を与えることにより、全ての水要素が幾つかのポイントで非常に短い距離で紫外線供給源を通ることが意図される。供給源に近い照射レベルは、供給源の近傍のバクテリアの短い暴露がこれらを除去するのに十分なほど大きい。
【0006】
半径方向の混合が、制限された暴露時間又はコンパクトなデザインにおいて必要とされる線量を実現する手法であることが前述のことから言える。しかしながら、半径方向の混合が適用されたときには、幾つかの態様が考慮される必要がある。最初の段階において、混合要素は、少なくとも特定の範囲に対して紫外線供給源をカバーし、これにより、照度レベルの現象をもたらす。それ故、混合要素の適用は、改良されたフロープロファイルの結果として線量レベルの利得がより低い照度レベルの結果としての減少を克服したときにのみ役立つ。透明な混合要素が使用されてもよいが、斯様な手段は、紫外線に対して耐性を示さなければならず、非常に割れやすいもの(ガラス)であってはならない。照度レベルに対する減少効果をもたない上流静的混合要素を使用することが可能であるが、この場合において、混合レベルは、デバイスの長さに沿って減少する。従って、この場合において、最も高い半径方向の混合は、デバイスの入口エリアにおいて生じるのに対し、混合、詳細には半径方向の混合は、下流エリアにおいて、最小になり得るか、又は、無くなり得る。第2の段階において、水殺菌デバイスが、タップ圧力が低いエリアにおいてほとんど用いられることが事実である。混合要素の追加は、不所望な高い圧力損失をもたらし得る。
【0007】
水殺菌デバイスの分野において直面される他の問題は、いわゆるショートカットが存在し得ることである。ショートカットは、入口から出口に直接もたらす流路である。これらのショートカットを辿るバクテリアは、非常に短い滞留時間をもつ。特に、紫外線供給源が設けられる部分の外半径にショートカットが広がるときには、照射レベルが最も低くなる場所で、非常に低い線量レベルが生ずる。ショートカットは、一般に、特定の流入条件及び/又は不適切な混合によりもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述した問題の解決策を提供することにある。詳細には、本発明の目的は、紫外線供給源と、ショートカットがあまり存在しないか又はショートカットが全く存在しないように、当該デバイスを通る流体フローを制御するための手段とを有し、斯様な手段が製造するのを容易にするとともに高価ではないデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、紫外線を放射するための供給源と、当該デバイスに流体を入れるための入口と、当該デバイスから流体を出すための出口と、当該デバイスを通る流体フローに対して矯正動作を実行するための手段とを有するデバイスであって、前記フロー矯正手段が前記入口から前記出口への流体経路内に設けられ、前記流体フロー矯正手段は、一方側に流体を入れるための入口開口部をもち、他方側に流体を出すための出口開口部をもつ少なくとも1つの要素を有し、各入口開口部は、複数の出口開口部と連通しており、前記要素は、前記要素を通る複数のランダムな流路を実現するための、ランダムに設けられ相互接続された穴の迷路を有し、前記要素は、当該デバイスの入口エリアと出口エリアのうち一方でフロー矯正動作を実行するために設けられる、デバイスが提供される。
【0010】
それ故、本発明のデバイスにおいては、少なくとも1つのフロー矯正要素が用いられ、このフロー矯正要素は、一方側に流体を入れるための入口開口部をもち、他方側に流体を出すための出口開口部をもち、各入口開口部は、複数の出口開口部と連通する。これは、各入口開口部が出口開口部の全てと連通するようになり得る。一見したところでは、斯様な矯正要素を実際に実現するのは難しいように思われかもしれない。実際の実施形態が提案されることが本発明の更なる成果である。詳細には、フロー矯正要素の実際の例は、泡状材料を有するフロー矯正要素の一実施形態、及び、フロー矯正要素が編物メッシュ状、例えばステンレス鋼の編物メッシュ状に形成される実施形態を含む。概して、フロー矯正要素は、前記要素を通る複数のランダムな流路を実現するための、ランダムに設けられ相互接続された穴の迷路を有する。更に、概して、フロー矯正要素は、網(clew)状の外観をもってもよい。
【0011】
フロー矯正要素の材料に関する限りは、これは、紫外線反射特性をもつ材料を含む、任意の適切なタイプの材料であってもよく、これは、金属材料、セラミック材料及びガラス状材料のうち少なくとも1つであってもよい。また、金属の使用は、フロー矯正要素がランプのような紫外線供給源に給電するための電気回路の部分になることを可能にする。これが有利であろう状況の一例は、欧州特許第0697374号明細書で述べられたようなエキシマーランプが用いられた場合である。
【0012】
フロー矯正要素の材料に関する更に他のオプションはカーボンである。例えば、フロー矯正要素は、粒状カーボンのコンパートメント、又はカーボンブロックを有し得る。カーボンは、流体に対して浄化作用を実行している間、流体フローにおいて拡散効果を実現可能である。更に、カーボンは、紫外線供給源に対して負の影響を与え得る不純物を流体から除去可能である。また、カーボンは、紫外線供給源を適用する状況において非常に良く関連し得る、オゾンを除去するためのフィルタとして用いられてもよい。
【0013】
フロー矯正要素は、銅亜鉛合金を有してもよく、これは、特に、塩素から水を浄化するために用いられるのに適している。また、フロー矯正要素は、イオン交換体又は膜として実現されてもよい。
【0014】
本発明によれば、各入口開口部が複数の出口開口部、場合により全ての出口開口部と流体連通している、入口開口部及び出口開口部をもつ要素は、流体フローに対して矯正動作を実行するために用いられ、従って、紫外線供給源を有するデバイスを通る制御された流体フロー、即ち照射部分から流出までの制御された流入をもつことを可能にする。任意の場合において、本発明によれば、フロー矯正要素は、或るパターンのチャンネル、又は、(平行な)バッフル(baffle)のアセンブリをもつプレートを有しない。斯様な場合においては、各入口開口部がたった1つの出口開口部と連通しているだろう。これに関して、特定のパターンの穴をもつバッフル壁が水のフローを層流化するために用いられる従来の状況の一例は、米国特許出願公開第2006/0192136号明細書において見られる。本発明のフロー矯正要素がランダムに設けられ相互接続された穴の迷路をもつので、どんなものであれ要素において規定されたチャンネルが存在せず、流体は、入口開口部から出口開口部までの真っ直ぐな経路を通常は辿らないだろう。
【0015】
複数の流体経路の存在に基づいて、本発明のデバイスのフロー矯正要素は、多孔質構造をもち、従って、前記要素を介して流れる流体の圧力損失は低くなる。フロー矯正要素のアプリケーションの他の利点は、入口条件の変化の影響が最小限にされ得ることである。流体フローに広がる局所的な高速度が緩和され得る。フロー矯正要素は、紫外線供給源の上流及び/又は下流に導入されてもよく、従って、供給源の照度レベルが影響を受けなくなる。全体的に見て、非常にコンパクトで、費用効率が高いフロー矯正要素が実現され得る。
【0016】
フロー矯正機能に加えて、フロー矯正要素は、保護機能をもってもよい。詳細には、フロー矯正要素は、デバイスの動作の間に紫外線供給源により放射された紫外線からデバイスの少なくとも1つのエリアを保護するための位置に設けられ得る。フロー矯正要素が保護機能を実行するために適用されたときには、要素の多孔質の性質により、一方の保護機能と一方のフローが通過可能な機能との間に矛盾はない。従って、要素を通る流体フローは、要素の存在の影響をほとんど経験しない一方で、要素の保護機能を損ない得る、要素の一方側から他方側まで流れる真っ直ぐなチャンネルを必要としない。
【0017】
実際の実施形態において、本発明のデバイスは、水を殺菌するためのデバイスであり、これは、当該デバイスの水入口エリアから当該デバイスの水出口エリアまで延在する長尺紫外線ランプを有し、フロー矯正手段は、2つのフロー矯正要素を有し、これらのフロー矯正要素のうち一方が当該デバイスの水入口側に設けられ、これらのフロー矯正要素のうち他方が当該デバイスの水出口側に設けられる。紫外線ランプは、チューブ状に形成されてもよく、及び、例えばUV−Cとして知られたタイプの、紫外線を放射するための任意の適切なランプであってもよい。フロー矯正要素がフロー矯正機能に加えて保護機能をもち得るという事実に基づいて、フロー矯正要素のポジショニングは、当該デバイスにおける照射部分のポジショニング及びこの部分の長さを決定する。フロー矯正要素の他の追加の機能は、当該デバイスにおいてランプの端部を受けてこのランプを支持する機能であってもよい。更に、ランプは、フロー矯正要素を介して延在するように設けられてもよい。この状況において、紫外線が照射部分の外側の当該デバイスの部分に達し得ないことを保証するために、ランプの最端部をカバーするための追加の手段をもつことが好ましい。
【0018】
また、ランプがフロー矯正要素を介して延在しない場合において、照射部分と向かい合う側部とは異なる、フロー矯正要素の他の側部の中央部分をカバーするための手段をもつことが有利である。斯様な手段をもつ理由は、中央エリアにおいて比較的大きな反射角度でフロー矯正要素に入る光ビームに起因して、フロー矯正要素の中央エリアにおいて紫外線の透過率が最も高いことにある。中央部分をカバーするための手段の使用は、フロー矯正要素により紫外線から保護されるエリアに対する非常に大きな紫外線の透過を回避する。更に、水入口側では、当該デバイスが中央水入口をもつと仮定すると、この手段は、中央入口から来るジェットのインパクトを削減し、照射部分の入口表面全体に渡る水のフローの分配を強化することについて追加の機能をもち得る。述べられた手段は、例えば、金属プレートを有し、これは、閉鎖された中央部分と、中央部分から延在する多数のスポークをもつ。完全を期すために、照射部分と向かい合うフロー矯正要素の側部の中央部分をカバーするための手段をもつことも可能であることに留意されたい。
【0019】
ランプの両端への保護要素としてのフロー矯正要素の適用により、照射部分とは異なる部分が動作の間にランプにより放射された紫外線によって到達され得ないことが実現される。フロー矯正要素が紫外線をブロックし、それ故、紫外線に対してあまり耐性を示さずそれ故に比較的安価であり得る任意の所望のタイプのシール、ベアリング及び構成材料を用いることが可能となる。更に、フロー矯正手段は、水が通過することを可能とし、水のフローに対する矯正効果が存在する一方で、フローパターンの乱れが生じない。圧力損失が低くなる一方で、最適な線量出力が実現され得る。全体的に見て、フロー矯正要素は、最適な保護を与えることが可能であり、同時に様々な利点が水のフローに対して影響を及ぼす。フロー矯正要素が水入口側に用いられたときには、入口の速度変化が非常に効果的に抑制される。更に最適化された水のフローをもつために、本発明のデバイスは、流体フローを分散させるための手段を備えてもよく、この手段は、水入口と水入口側に設けられたフロー矯正要素との間の位置に設けられ、及び/又は、本発明のデバイスは、流体フローを収束させるための手段を備えてもよく、この手段は、水出口と水出口側に設けられたフロー矯正要素との間の位置に設けられる。
【0020】
本発明の前述した及び他の態様は、本発明の水殺菌デバイスの多数の実施形態の以下の詳細な説明から明らかになり、これを参照して説明されるだろう。
【0021】
本発明は、図面を参照してより詳細に説明されるだろう。図面において、同一又は類似の部分は同一の参照符号により示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の水殺菌デバイスの第1の実施形態を図式的に示す。
【図2】図1に示されたデバイスの部分であるフロー矯正要素の詳細を示す。
【図3】連続的な壁を伴うチャンネルをもつ従来のフロー矯正構造のフローパターンと本発明の構造のフローパターンとの間の差を示す。
【図4】フロー矯正要素がデバイスにおいてランプを支持するためにどのように用いられ得るかを示す。
【図5】フロー矯正要素がデバイスにおいてランプを支持するためにどのように用いられ得るかを示す。
【図6】本発明の水殺菌デバイスの第2の実施形態を図式的に示す。
【図7】本発明の水殺菌デバイスの第3の実施形態を図式的に示す。
【図8】図7に示されたデバイスで使用され得るフロープレートを図式的に示す。
【図9】図7に示されたデバイスにおいて2つのフロープレートのポジショニングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の水殺菌デバイスの第1の実施形態1を示している。水殺菌デバイス1は、以下のコンポーネント、即ち、ハウジング10と、この例においては紫外線ランプ20であり、ハウジングの内部空間11内に設けられる、紫外線を放射するための供給源20と、ハウジング10の内部空間11に対する紫外線照射により処理されるべき水を入れるための入口30と、ハウジング10から水を出すための出口40と、2つのフロー矯正要素51,52とを有し、入口フロー矯正要素51と後に呼ばれる一方のフロー矯正要素51は、水殺菌デバイス1の入口側、即ち、入口30の近くの位置に設けられ、出口フロー矯正要素52と後に呼ばれる他方のフロー矯正要素52は、デバイス1の出口側、即ち、出口40の近くの位置に設けられる。
【0024】
紫外線ランプ20は、フロー矯正要素51,52により区切られ、照射エリア12と後に呼ばれる、水殺菌デバイス1のエリア内に設けられる。入口フロー矯正要素51は、デバイス1の入口エリア13、即ち入口30が動作の間に紫外線ランプ20により放射された紫外線の影響から決められるエリアを保護する機能をもち、出口フロー矯正要素52は、デバイス1の出口エリア14、即ち出口40が紫外線の影響から決められるエリアを保護する機能をもつ。デバイス1の適切な動作が入口30から出口40へのフローを含むという事実を考慮して、フロー矯正要素51,52が水に対して透過性があるものである。更に、フロー矯正要素51,52は、後に説明されるように、水のフローに対してフロー矯正動作を実行するように適合される。水殺菌デバイス1が動作する手法は以下で説明されるだろう。水を殺菌するために紫外線での処理にさらされるべき水は、入口30を介してデバイス1に供給される。水は、入口フロー矯正要素51を介して入口エリア13から照射エリア12に流れる。照射エリア12において、水は、水の微生物学的殺菌が実現される結果として、紫外線ランプ20により放射される紫外線にさらされる。殺菌された水は、出口フロー矯正要素52を介して出口エリア14へと通過することによりデバイス1を出て、出口40に向かって流れ、最終的には出口40を介して流れる。
【0025】
本発明は、フロー矯正要素51,52に関する。これらの要素51,52は、相反すると思われる2つの機能を実行する。要素51,52の主要な機能は、要素51,52の一方側から他方側に水を通し、そのプロセスにおいて水のフローに対して矯正動作を実行することである。次に、紫外線から入口エリア13及び出口エリア14を保護する機能がある。水殺菌デバイス1における保護機能をもつ理由は、材料が紫外線に対して耐性を示す必要がないという事実を考慮して、入口エリア13及び出口エリア14に安価な材料を用いる可能性が作り出されるという事実である。入口エリア13及び出口エリア14において、(図1の図式的な表示において示される)シール及びベアリングのような部品が存在し、これは、これらの部品がポリマ材料から作られた部品であり得る場合に有利である。
【0026】
本発明のデバイス1のフロー矯正要素51,52は、従来において知られた比較可能な要素とは異なる。詳細には、フロー矯正要素51,52は、水が通過するのを可能にするための1又はそれ以上の穴をもつプレートとして実現されるものではない。代わりに、フロー矯正要素51,52の各入口開口部は、複数の出口開口部と流体連通しており、従って、複数の流路が各入口開口部から延在する構造が実現される。例えば、フロー矯正要素51,52は、網状の外観をもち、泡状の材料を有してもよく、又は、メッシュ状の構造を有してもよい。図2において、フロー矯正要素51,52の構造の一例が示され、フロー矯正要素51,52は編物メッシュを有する。フロー矯正要素51,52の材料は、例えばステンレス鋼であってもよい。いずれにせよ、フロー矯正要素51,52は、高価な要素である必要はなく、その一方で、依然として優れたフロー矯正結果を実現することが可能である。
【0027】
図3は、連続壁を伴うチャンネルをもつ従来のフロー矯正構造のフローパターンと、本発明の構造のフローパターンとの間の差を示している。図面の左側には、従来の状況が、2つの例に基づいて示されている。第1の例において、連続した閉鎖壁をもつ複数の矯正チャンネル55が適用されている。チャンネル55のうち1つを通る水のフローが矢印により示されている。構造の一方側(A)から構造の他方側(B)への水の経路は、連続した閉鎖壁により規定されることが明らかである。それ故、従来の状況において、流路は、一の入口開口部56から一の出口開口部57までである。この事実は、他の例においても見出され、連続した閉鎖壁をもつ複数の湾曲したチャンネル55が適用される。この場合において、チャンネル55は湾曲しているが、水要素が構造体に入る入口開口部56が一旦知られると、水要素が構造体のどの出口開口部57から出るかを正確に予測することも可能である。
【0028】
図3の右側には、本発明の状況が示されている。本発明の構造体において、一の入口開口部56から一の出口開口部57への、構造体の長さ全体に沿って延在する連続壁をもつチャンネルを識別することはできない。代わりに、構造体は、一種の迷路であり、全ての入口開口部56が全ての出口開口部57に連通している。斯様な構造において、構造体の一方側(A)から他方側(B)に移動する水要素は、水要素が入口開口部56に入る状況(速度、方向)に依存して、種々の経路のうち1つをとり得る。図3は、本発明の構造体を通る2つの異なる流路を示しており、流路は矢印で示されている。本発明の構造体の主要な利点は、入口条件の変化が抑制され得ることである。それ故、本発明の構造体は、一方では多孔質であり、従って、構造体に渡る圧力降下が最小限にされ、一方では優れたフロー矯正性能をもつ。
【0029】
フローの方向の長さ及びフロー矯正要素51,52の多孔率は、フロー矯正機能及び保護機能が最大になるように選択され、その一方で、水のフローの圧力損失は最小にされる。更に、紫外線ランプ20の支持体としてフロー矯正要素51,52を適用することが可能であり、追加の指示要素の必要がないか、又は、少なくとも追加の指示要素があまり必要とされない。この可能性は、図4及び5により示され、これらの図面において、フロー矯正要素51,52が中央キャビティ53をどのように備えるのか、及び、紫外線ランプ20の端部がこのキャビティ53内にどのように挿入され得るのかが示されている。
【0030】
図6は、本発明の水殺菌デバイスの第2の実施形態2を示している。本発明の第2の実施形態の水殺菌デバイス2は、大体において第1の実施形態の水殺菌デバイス1と共通している。更に、差異が存在し、これは、第2の実施形態の水殺菌デバイス2は入口エリア13にフロー拡散体15を有するのに対し、第1の実施形態の水殺菌デバイス1はこれを有さないという事実である。オプション的なフロー拡散体15は、入口フロー矯正要素51の上流に配置され、入口フロー矯正要素51に対する制御された態様で水のフローを広げる機能をもつ。水殺菌デバイス1,2の出口40に向かって制御された態様でフローを縮小させるための手段(図示省略)が設けられ、出口エリア14、即ち、出口フロー矯正要素52の下流に設けられることも可能である。フロー拡散体15及び/又は斯様な手段の使用は、水殺菌デバイス1,2を通る水のフローの滑らかさに寄与し、これは、紫外線処理の有効性に寄与する。
【0031】
図7は、本発明の水殺菌デバイスの第3の実施形態3を示している。この実施形態において、紫外線ランプ20の両端は、フロー矯正要素51,52を通る全ての道に延在している。換言すると、フロー矯正要素51,52は、紫外線ランプ20の両端を囲んでいる。この構成の利点は、紫外線ランプ20のためのフロー矯正要素51,52の支持機能が最適になり、他の支持要素を用いる必要がなくなることである。
【0032】
フロー矯正要素51,52の外周付近の位置でフロー矯正要素51,52の流路に入る紫外線は、紫外線ランプ20が示された例のようにフロー矯正要素51,52に対して中央のポジショニングをもつときに、水を介して比較的長い距離を通る。飲料水が1mm当たり約0.99の紫外線透過係数をもつ。即ち、紫外線出力の1%が1mmの後に吸収される。それ故、例えば紫外線ランプ20からフロー矯正要素51,52の外側流路まで50mm通った光は、約40%の照度を損失する。フロー矯正要素51,52における内部反射により、照度レベルが更に削減される。これに関して、金属表面は、最大約60%までの入射紫外線を反射し得ることに留意されたい。フロー矯正要素51,52のより近くで照射された光は、水による吸収によりあまり照度を損失しない。しかしながら、斯様な光ビームの反射角度はより小さいので、いずれにせよ、反射に起因して照度の大幅な損失が生じる。これは、一部の光ビームが比較的高い紫外線出力でフロー矯正要素51,52の外側流路に入るにも関わらず、反射が、この出力が短い距離で削減されることを保証することを意味する。
【0033】
紫外線の透過率は、フロー矯正要素51,52の外周の流路からフロー矯正要素51,52の中心軸に近い流路まで増大する。透過率は、フロー矯正要素51,52の中央エリアの流路に入る光に対して最も高くなる。フロー矯正要素51,52の中央エリアを通る透過光の一部は、大きな反射角度で達する光ビームに起因する。斯様な光ビームの吸収及び反射レベルの双方が低いので、紫外線出力はあまり損失しない。中央エリアの照度レベルは、入口フロー矯正要素51及び出口フロー矯正要素52のそれぞれの上流及び下流に、中央エリアにおいて閉鎖されるプレート、例えば金属プレートを配置することにより削減され得る。斯様なプレート60の一例は、図8に示されている。閉鎖された中央部分61に加えて、プレート60は、中央部分61から延在するスポーク62を有し、従って、プレート60は、これが設けられた、フロー矯正要素51,52の中央エリアの外側の水のフローをあまり邪魔しない。示された例において、プレート60は、外側リング63を更に有する。本発明の水浄化デバイス3におけるプレート60のポジショニングは、図9に示されている。入口側では、プレート60の適用は、プレート60が入口30から来るジェットの衝撃を削減する機能をもち、照射エリアの入口表面全体に渡る水のフローの分配を強化するので、追加の利点を提供する。
【0034】
完全を期すために、示されたようなプレート60は、フロー矯正要素51,52のあまり効果的ではないエリアにおける紫外線照射をブロックするのに適しており、水のフローパターンを妨げないように設計される手段の多くの可能性の単なる一例であることに留意されたい。
【0035】
前述されたようなフロー矯正要素51,52に関して、フロー矯正要素51,52に渡る水のフローの圧力損失及びフロー矯正要素51,52を通る紫外線の通過率の双方が最小にされ得ることに留意されたい。この状況におけるフロー矯正要素51,52の2つの関連する特性は、フロー矯正要素51,52の長さ及びフロー矯正要素51,52の材料の口径である。述べられたような口径に関して、以下の設計基準が適用され得る。
【数1】

ここで、tは、フロー矯正要素51,52の厚さであり、dは、フロー矯正要素51,52の材料の口径であり、Reは、径のレイノルズ数であり、これは、以下の関係により与えられる。
【数2】

ここで、vは、流速であり、Dは、フロー矯正要素51,52の外径又は照射部分12の直径であり、Dは、フロー矯正要素51,52の内径又は紫外線ランプ20の直径であり、
【数3】

は、動粘性率であり、Qは、流体流速である。
【0036】
紫外線の通過率を最小にするために、t/dは、好ましくは、できるだけ大きくするのに対し、圧力損失の最小化のために、t/dは、できるだけ小さくすべきである。これを考慮して、以下のものが実際の状況に適用可能である。
【数4】

好ましくは、
【数5】

好ましくは、
【数6】

【0037】
口径の代わりに、フロー矯正要素51,52の材料の多孔率pが設計パラメータとして選択されてもよい。例えば、0.9の多孔率pは、構造体の90%が開口していることを意味する。以下の範囲が考慮され得る。
【数7】

ここで、tは、mmの大きさをもつ。
【0038】
フロー矯正要素51,52の材料の紫外線ブロッキング特性に関する他の重要な設計パラメータは、ランプ20の長さ対フロー矯正要素51,52の外径の割合L/Dであり、ここで、Lは、ランプ20の長さであり、Dは、フロー矯正要素51,52の外径である。この割合の以下の範囲が適用可能である。
【数8】

【0039】
テストは、ステンレス鋼の編物メッシュの形式で与えられたフロー矯正要素51,52により紫外線が全体的にブロックされる状況を実現することが可能であることを証明したことに留意されたい。テストの間において、ステンレス鋼の編物メッシュは、KnitMesh Ltd, Greenfield, Great Britainから用いられた。編物メッシュは、42mmの直径及び20mmの厚さをもった。85%又はそれ未満の開口性をもつ編物メッシュによれば、これは、紫外線が全体的にブロックされることを保証することが見出された。
【0040】
本発明の範囲は、前述した例に限定されるものではなく、その幾つかの補正及び変更が、特許請求の範囲において規定された本発明の範囲から逸脱することなく可能であることが当業者にとって明らかであるだろう。本発明が図面及び前記の説明において詳細に示され述べられた一方で、斯様な図示及び説明は、例示又は単なる例であり、限定するものではないものと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。
【0041】
開示された実施形態に対するバリエーションは、図面、前記の説明及び特許請求の範囲の研究から、当業者により理解され、もたらされ得る。請求項において、"有する"という用語は、他のステップ又は要素を除外するものではなく、単数表記は、複数を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に用いられ得ないことを示すものではない。請求項中の如何なる参照符号も、本発明の範囲を限定するものとして考慮されるべきではない。
【0042】
一般に、本発明は、紫外線を生成/放射するための供給源が設けられ、当該デバイスの動作の間に流体フローが存在するデバイスに適用可能であり、フローを矯正するための手段により流体フローを制御することが重要である。完全を期すために、水が流体の例として述べられるという事実は、本発明がこのタイプの流体に限定されることを意味するように理解されるべきではないことに留意されたい。更に、この説明において、"紫外線"及び"紫外線照射線"という用語は、全く同一の現象、即ち紫外線領域の波長をもつ波を示すために用いられることに留意されたい。
【0043】
本発明のデバイス1,2,3のフロー矯正手段は、2つの要素51,52を有することを必ずしも必要としない。1つだけのフロー矯正要素51,52がデバイス1,2,3に用いられてもよく、又は、特定の場合の要件に依存して2つよりも多くてもよい。これは、少なくとも1つのフロー矯正要素51,52が、流体の入口がある、デバイス1,2,3の一方側に設けられる場合に好ましい。
【0044】
フロー矯正要素51,52が、紫外線の影響に対して或るエリア13,14を保護する目的で単独で用いられること、即ち、保護機能だけをもち、保護要素として機能することも可能である。保護要素51,52が設けられたデバイスは、流体フローを収容することを意図したデバイス1,2,3である必要はない。いずれにせよ、デバイスは、以下のようなデバイスとして規定され得る。即ち、本デバイスは、紫外線を放射するための供給源20と、当該デバイスの動作の間に前記供給源20により放射された紫外線から当該デバイスの少なくとも1つのエリアを保護するための手段51,52とを有し、前記保護手段は、異なる側部(A,B)で開口部56,57をもつ少なくとも1つの要素51,52を有し、一方側(A)の各開口部56は、他方側(B)の複数の開口部57と連通している。
【0045】
本発明は、以下のように要約され得る。デバイス1,2,3は、紫外線を放射するための供給源20と、当該デバイス1,2,3に流体を入れるための入口30と、当該デバイス1,2,3から流体を出すための出口40と、当該デバイス1,2,3を通る流体フローに対して矯正動作を実行するための手段51,52とを有する。適した実際の実施形態において、デバイス1,2,3は、紫外線に対して流体をさらすことにより流体を処理するためのデバイス、例えば、水を殺菌するためのデバイス1,2,3である。
【0046】
前記フロー矯正手段は、一方側(A)に流体を入れるための入口開口部56をもち、他方側(B)に流体を出すための出口開口部57をもつ少なくとも1つのフロー矯正要素51,52を有し、各入口開口部56は、複数の出口開口部57と連通しており、前記要素51,52は、前記要素51,52を通る複数のランダムな流路を実現するための、ランダムに設けられ相互接続された穴の迷路を有する。斯様な構造において、フロー矯正要素51,52の一方側(A)から他方側(B)に移動する水要素は、種々の経路のうち1つをとり、その結果として、入口条件の変化が抑制され得る。更に、フロー矯正要素51,52は、当該デバイス1,2,3の入口エリア13と出口エリア14のうち一方でフロー矯正動作を実行するために設けられ、紫外線をブロックする追加の機能をもち得る。
【0047】
流体フローに対するフロー矯正要素51,52のフロー矯正効果は、流体の処理の有効性に寄与する。実際の実施形態において、フロー矯正要素51,52は、ステンレス鋼の編物メッシュを有し、これは、製造を容易にするとともに比較的安価である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を放射するための供給源と、
当該デバイスに流体を入れるための入口と、
当該デバイスから流体を出すための出口と、
当該デバイスを通る流体フローに対して矯正動作を実行するための手段とを有するデバイスであって、
フロー矯正手段が前記入口から前記出口への流体経路内に設けられ、前記流体フロー矯正手段は、一方側に流体を入れるための入口開口部をもち、他方側に流体を出すための出口開口部をもつ少なくとも1つの要素を有し、
各入口開口部は、複数の出口開口部と連通しており、
前記要素は、前記要素を通る複数のランダムな流路を実現するための、ランダムに設けられ相互接続された穴の迷路を有し、
前記要素は、当該デバイスの入口エリアと出口エリアのうち一方でフロー矯正動作を実行するために設けられる、デバイス。
【請求項2】
前記フロー矯正要素の各入口開口部は、前記出口開口部の全てと連通している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記フロー矯正要素は、泡状の材料を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記フロー矯正要素は、編物メッシュとして形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記フロー矯正要素は、当該デバイスの動作の間に前記紫外線供給源により放射された紫外線から当該デバイスの少なくとも1つのエリアを保護するための位置に設けられる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記紫外線供給源が設けられた、当該デバイスのエリアと向かい合う側部とは異なる、前記フロー矯正要素の他の側部の中央部分をカバーするための手段が設けられる、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記フロー矯正要素は、紫外線反射特性をもつ材料を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記フロー矯正要素は、金属材料、セラミック材料及びガラス状材料のうち少なくとも1つを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記フロー矯正要素は、カーボンを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記紫外線供給源は、長尺紫外線ランプを有し、前記フロー矯正要素は、前記ランプを受け、当該デバイスにおいて前記ランプを支持するように適合される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ランプは、前記フロー矯正要素を介して延在し、前記ランプの最端部をカバーするための手段が設けられる、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
当該デバイスの前記入口エリアに設けられた、流体フローを分岐させるための手段、及び、当該デバイスの前記出口エリアに設けられた、流体フローを収束させるための手段のうち少なくとも一方を更に有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記フロー矯正要素の厚さと前記フロー矯正要素の材料の口径との割合が1〜500の範囲内にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記フロー矯正要素の厚さと前記フロー矯正要素の材料の多孔率との割合が5mm〜500mmの範囲内にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記紫外線供給源の長さと前記フロー矯正要素の外径との割合が0.5〜10の範囲内にある、請求項1に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−501613(P2013−501613A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524328(P2012−524328)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053650
【国際公開番号】WO2011/018767
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】