紫外線照射システム、それに用いられる硬化反応検知装置およびそれを用いた紫外線硬化樹脂の硬化方法
【課題】汎用的な紫外線硬化樹脂に対してその硬化反応状態をリアルタイムで判断できる紫外線照射システム、それに用いられる硬化反応検知装置およびそれを用いた紫外線硬化樹脂の硬化方法を提供する。
【解決手段】測定された蛍光量と予め設定されるしきい値α1とを比較し、測定された蛍光量がしきい値α1を超過すると「硬化反応完了」を発する。なお、この「硬化反応完了」が発せられると、硬化反応検知装置から光源部へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線の照射も停止される。
【解決手段】測定された蛍光量と予め設定されるしきい値α1とを比較し、測定された蛍光量がしきい値α1を超過すると「硬化反応完了」を発する。なお、この「硬化反応完了」が発せられると、硬化反応検知装置から光源部へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線の照射も停止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射システム、それに用いられる硬化反応検知装置およびそれを用いた紫外線硬化樹脂の硬化方法に関し、特に紫外線硬化樹脂の硬化反応状態をリアルタイムで判断する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの産業分野において、接着剤やコーティング剤の硬化方法として紫外線硬化法(Ultra Violet Curing)が利用されている。紫外線硬化法は、熱エネルギーを利用する熱硬化方法に比較して、有害物質を大気中に放散しない、硬化時間が短い、熱に弱い製品にも適応できるなどの多くの利点を有している。
【0003】
紫外線硬化法では、紫外線照射前においては主に液体である一方、紫外線照射後においては固体に変化する紫外線硬化樹脂が用いられる。このような紫外線硬化樹脂は、主剤としてモノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を含み、さらに光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、照射される紫外線を受けてラジカルやカチオンを発生し、発生したラジカルやカチオンがモノマーやオリゴマーと重合反応を生じる。この重合反応に伴いモノマーやオリゴマーはポリマーに変化し、分子量が極めて大きくなるとともに、融点が低下する。この結果、紫外線硬化樹脂は液体状態を維持できなくなって固体に変化する。
【0004】
一方、目視による紫外線硬化樹脂の硬化度や品質異常有無の判断は困難であり、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を容易に判断する方法が要望されている。そこで、たとえば特許第2651036号公報(特許文献1)には、硬化可能コーティング材料の硬化程度を監視する方法が開示されている。この方法によれば、紫外線硬化可能材料と、硬化可能材料の硬化度の関数として変化するような発光を行なう蛍光成分を含むプローブとからなる材料系に対して、紫外線硬化可能材料の硬化度を測定するためにプローブの発光を測定するステップを含む。
【特許文献1】特許第2651036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許第2651036号公報(特許文献1)に開示されるように、硬化可能材料の硬化度の関数として変化するように発光するプローブを紫外線硬化樹脂に添加する方法は、汎用的な紫外線硬化法に適用することが困難である場合が多い。すなわち、上述のプローブのように特別な材料を添加することはコスト的に不利であり、また、品質上の観点からそのようなプローブを添加することが許容されない場合も多い。
【0006】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、汎用的な紫外線硬化樹脂に対してその硬化反応状態をリアルタイムで判断できる紫外線照射システム、それに用いられる硬化反応検知装置およびそれを用いた紫外線硬化樹脂の硬化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、紫外線硬化樹脂に対する紫外線照射に応じて、紫外線硬化樹脂に含まれる光重合開始剤自体が紫外線硬化樹脂の状態(たとえば、硬化度)と相関のある観測可能な蛍光を放射する事実を見出し、この事実を利用した紫外線硬化樹脂の状態推定方法を特願2006−071580号として出願した。本願発明は、この紫外線硬化樹脂の状態と相関のある観測可能な蛍光を利用して、上述の課題を解決するものである。
【0008】
この発明のある局面に従えば、モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射システムである。この紫外線照射システムは、紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するための第1の紫外線を照射する光源装置と、硬化反応検知装置とを備える。そして、硬化反応検知装置は、紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射する照射手段と、照射手段によって照射される第2の紫外線を受けて光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する測定手段と、測定手段によって測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断する判断手段とを含む。
【0009】
この局面に従う紫外線照射システムによれば、第1の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するとともに、第2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。この蛍光量は、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態と相関性を有するので、この蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応状態をリアルタイムに判断できる。
【0010】
好ましくは、硬化反応検知装置は、光源装置からの第1の紫外線の照射が開始されると、第2の紫外線の照射および蛍光量の測定を開始するように構成され、かつ、光源装置からの第1の紫外線の照射が終了すると、第2の紫外線の照射および蛍光量の測定を終了するように構成される。
【0011】
好ましくは、判断手段は、測定された蛍光量が所定のしきい値を超過すると、光源装置に対して第1の紫外線の照射の終了を指示する。
【0012】
好ましくは、判断手段は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定のしきい値を下回ると、光源装置に対して第1の紫外線の照射の終了を指示する。
【0013】
好ましくは、光源装置は、時間的に略一定の強度をもつ第1の紫外線を照射し、照射手段は、周期的に強度が変化する第2の紫外線を照射し、測定手段は、測定された蛍光量のうち、照射手段によって放射される第2の紫外線の強度変化周期に対応する周期成分に基づいて、光重合開始剤から放射される蛍光量として抽出する。
【0014】
この発明の別の局面に従えば、モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂が第1の紫外線を受けて生じる硬化反応を検知する硬化反応検知装置である。この硬化反応検知装置は、紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射する照射手段と、照射手段によって照射される第2の紫外線を受けて光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する測定手段と、測定手段によって測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断する判断手段とを含む。
【0015】
この局面に従う硬化反応検知装置によれば、紫外線硬化樹脂が第1の紫外線を受けて硬化反応を生じる際に、第2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。この蛍光量は、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態と相関性を有するので、この蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応状態をリアルタイムに判断できる。
【0016】
好ましくは、判断手段は、測定された蛍光量が所定のしきい値を超過すると、当該硬化反応が完了したと判断する。
【0017】
また好ましくは、判断手段は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定のしきい値を下回ると、当該硬化反応が完了したと判断する。
【0018】
さらに好ましくは、判断手段は、硬化反応が完了したと判断すると、第1の紫外線の照射の終了を指示する。
【0019】
また好ましくは、判断手段は、第1の紫外線の照射開始から所定時間経過後において、測定された蛍光量が所定のしきい値を下回っていれば、当該硬化反応が異常であると判断する。
【0020】
また好ましくは、判断手段は、第1の紫外線の照射開始から所定時間経過後において、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定の範囲外にあれば、当該硬化反応が異常であると判断する。
【0021】
また好ましくは、判断手段は、予め定められた基準の時間的挙動を参照して、測定された蛍光量から硬化反応の正常性を判断する。
【0022】
さらに好ましくは、判断手段は、基準の時間的挙動に対する測定された蛍光量の偏差が所定範囲外になると、当該硬化反応が異常であると判断する。
【0023】
好ましくは、基準の時間的挙動と測定された蛍光量の時間的挙動とを同一座標上に表示するための第1表示手段をさらに備える。
【0024】
さらに好ましくは、第1表示手段は、基準の時間的挙動に対する測定された蛍光量の偏差の時間的挙動をさらに表示するように構成される。
【0025】
好ましくは、第1の紫外線を受けて生じる紫外線硬化樹脂の硬化反応の進行度合を表示するための第2表示手段をさらに備える。
【0026】
さらに好ましくは、第2表示手段は、硬化反応が完了したとみなされる蛍光量である反応完了蛍光量に対する測定された蛍光量の比率に基づいて、硬化反応の進行度合を算出する。
【0027】
さらに好ましくは、第2表示手段は、予め測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、反応完了蛍光量を算出する。
【0028】
またさらに好ましくは、第2表示手段は、外部からの入力値に応じて反応完了蛍光量を変更可能に構成される。
【0029】
好ましくは、第2表示手段は、硬化反応の進行度合を数値表示するように構成される。
また好ましくは、第2表示手段は、硬化反応の進行度合をインジケータ表示するように構成される。
【0030】
好ましくは、第2表示手段は、第1および第2の紫外線の波長帯域から長波長側に所定の長さ以上離れた波長帯域を有する色を用いて硬化反応の進行度合を表示するように構成される。
【0031】
好ましくは、測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える。
【0032】
また好ましくは、測定された蛍光量の時間的挙動において所定の特徴的態様が生じた時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える。
【0033】
さらに好ましくは、しきい値設定手段は、蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定の範囲内になった時点の蛍光量に基づいて所定のしきい値を設定する。
【0034】
好ましくは、測定された蛍光量の時間的挙動において第1の紫外線の照射開始から所定時間経過時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える。
【0035】
好ましくは、照射手段によって第2の紫外線が照射される期間中に、第2の紫外線の照射を視覚的に通知するための視覚的通知手段をさらに備える。
【0036】
好ましくは、第1の紫外線を発生するための光源部をさらに備える。
この発明のさらに別の局面に従えば、紫外線照射システムを用いたモノマーまたはオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂の硬化方法である。紫外線照射システムは、光源装置と硬化反応検知装置とを備える。この紫外線硬化樹脂の硬化方法は、光源装置から紫外線硬化樹脂を硬化させるための第1の紫外線を照射するステップと、硬化反応検知装置から紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射するステップと、第2の紫外線を受けて光重合開始剤から放射される蛍光量を測定するステップと、測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断するステップと、判断された硬化反応状態に基づいて、第1の紫外線の照射を制御するステップとを含む。
【0037】
この局面に従う紫外線硬化樹脂の硬化方法によれば、第1の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するとともに、第2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。この蛍光量は、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態と相関性を有するので、この蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応状態をリアルタイムに判断できる。
【発明の効果】
【0038】
この発明によれば、汎用的な紫外線硬化樹脂に対してその硬化反応状態をリアルタイムで判断できる紫外線照射システム、それに用いられる硬化反応検知装置およびそれを用いた紫外線硬化樹脂の硬化方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0040】
[実施の形態1]
(紫外線照射システムの概略構成)
図1は、この発明の実施の形態1に従う紫外線照射システム1の概略構成図である。
【0041】
図1を参照して、この発明の実施の形態1に従う紫外線照射システム1は、紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するための硬化用紫外線54を放射する光源装置200と、紫外線硬化樹脂が硬化用紫外線を受けて生じる硬化反応を検知する硬化反応検知装置100とからなる。そして、紫外線照射システム1は、一例として、基材6の上に被着体8を配置し、紫外線硬化樹脂12を用いて両者を接着するような製造ラインに配置される。なお、基材6、被着体8および紫外線硬化樹脂12を一体として「ワーク」とも称す。紫外線硬化樹脂12は、モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と、光重合開始剤とを含み、紫外線を受けて硬化反応を生じる。
【0042】
光源装置200は、硬化用紫外線54を発生する照射ヘッド部204と、照射ヘッド部204を駆動するための光源部202とからなる。照射ヘッド部204は、硬化用紫外線54の発生機構であり、一例として、紫外線LED(Light Emitting Diode)や紫外線ランプなどからなる。照射ヘッド部204から放射された硬化用紫外線54が紫外線硬化樹脂12に入射するように、照射ヘッド部204は、たとえばワークの垂直上部に配置される。光源部202は、照射ヘッド部204と電気的に接続され、照射ヘッド部204から硬化用紫外線54を生成するための駆動電力を供給する。本実施の形態では、硬化用紫外線54は、時間的に略一定の強度で照射される。すなわち、硬化用紫外線54の照射強度は、主として直流(DC)成分からなる。
【0043】
また、光源部202は、硬化反応検知装置100と電気的に接続され、硬化用紫外線54の照射状態信号、たとえば、照射開始信号や照射終了信号を硬化反応検知装置100へ送出する。さらに、光源部202は、ユーザや外部装置からの照射開始指令(図示しない)に応じて、硬化用紫外線54の照射を開始するように構成されるとともに、硬化反応検知装置100からの照射終了指示に応答して、硬化用紫外線54の照射を停止するように構成される。
【0044】
硬化反応検知装置100は、蛍光測定ヘッド部104と、制御部102とからなる。蛍光測定ヘッド部104は、制御部102から受けた照射指令に応答して、紫外線硬化樹脂12を活性化させるための励起紫外線50を発生し、紫外線硬化樹脂12に向けて照射するとともに、紫外線硬化樹脂12から放射される蛍光52を受光して、検出された蛍光量を示す信号を制御部102へ出力する。また、蛍光測定ヘッド部104の上部には、励起紫外線50の照射期間中に励起紫外線50の照射を視覚的に通知するための表示灯106が設けられる。表示灯106は、励起紫外線50の照射期間中に点滅するなどして、周囲にいるユーザに紫外線が照射されることを知らせ、防護処置をとるように促すものである。
【0045】
制御部102は、光源装置200の照射状態に応じて蛍光測定ヘッド部104へ照射指令を与えるとともに、蛍光測定ヘッド部104から出力される蛍光量を示す信号に基づいて、紫外線硬化樹脂12に含まれる光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。より詳細には、制御部102は、光源部202から照射開始信号を受けると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令を与えて励起紫外線50の照射を開始するとともに、光重合開始剤から放射される蛍光量の測定を開始する。さらに、制御部102は、光源部202から照射終了信号を受けると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令を与えて励起紫外線50の照射を終了するとともに、光重合開始剤から放射される蛍光量の測定を終了する。
【0046】
さらに、制御部102は、測定された蛍光量の時間的挙動(たとえば、時間的プロフィール)に基づいて、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態を判断する。後述するように、この判断された硬化反応状態に応じて、制御部102は硬化用紫外線54の照射を制御したり、紫外線硬化樹脂12の硬化反応における異常発生の有無(正常性)を判断したりする。
【0047】
(紫外線硬化樹脂)
この発明の実施の形態1に従う紫外線照射システム1において使用される紫外線硬化樹脂12は、紫外線照射前においては主に液体である一方、紫外線照射後においては固体に変化(硬化)する。なお、本明細書において、「紫外線硬化樹脂」とは、その状態(紫外線照射前の液体状態、もしくは紫外線照射後における固体状態)にかかわらず総称的な意味で使用する。
【0048】
紫外線照射前(硬化前)における紫外線硬化樹脂は、モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方、光重合開始剤、ならびに各種添加剤を含む。モノマーおよびオリゴマーは主剤であり、紫外線を受けて光重合開始剤が発生するラジカルやカチオンにより重合反応(主鎖反応や架橋反応など)を生じる。そして、この重合反応に伴いモノマーおよびオリゴマーは、ポリマーに変化して分子量が極めて大きくなるとともに融点が低下する。この結果、紫外線硬化樹脂は液体から固体へ変化する。
【0049】
モノマーおよびオリゴマーは、一例として、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコンアクリレート、およびエポキシアクリレートなどからなる。モノマーは、単量体とも呼ばれ、重合反応によって重合体を合成する場合の原料となる状態である。一方、オリゴマーは、低重合体とも呼ばれ、重合度が2〜20程度の比較的重合度の低い状態である。
【0050】
光重合開始剤は、紫外線を受けてラジカルを発生するラジカル重合開始剤、および紫外線を受けてカチオンを発生するカチオン重合開始剤に大別される。なお、ラジカル重合開始剤は、アクリル系のモノマーおよびオリゴマーに対して使用され、カチオン重合開始剤は、エポキシ系やビニールエーテル系のモノマーおよびオリゴマーに対して使用される。さらに、ラジカル重合開始剤およびカチオン重合開始剤の混合物からなる光重合開始剤を用いてもよい。
【0051】
ラジカル重合開始剤は、ラジカルの発生過程に応じて、水素引抜型および分子内開裂型に大別される。水素引抜型は、一例として、ベンゾフェノンおよびオルソベンゾイル安息香酸メチルなどからなる。一方、分子内開裂型は、一例として、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、オキソベンゾイル安息香酸メチル(OBM)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド(BMS)、イソプロピルチオキサントン(IPTX)、ジエチルチオキサントン(DETX)、エチル4−(ジエチルアミノ)ベンゾエート(DAB)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−オン、ベンジルジメチルケタール(BDK)、および1,2αヒドロキシアルキルフェノンなどからなる。
【0052】
また、カチオン重合開始剤は、一例として、ジフェニルヨードニウム塩などからなる。
なお、本明細書において、「光重合開始剤」とは、光重合反応を開始させる能力が残存しているものに限らず、当初の光重合開始剤が光重合反応に寄与することによって変化したり光重合反応の対象となるモノマーやオリゴマーが周囲に存在しなかったりすることにより、もはや光重合反応の開始に寄与しない物質となったものをも含む意味で使用する。ここで、光重合開始反応に寄与した後の光重合開始剤は、多くの場合、ほぼ当初の分子の大きさを保持したまま、あるいは2つまたはそれ以上の数の分子に分裂した状態で、ポリマーの末端に結合している。
【0053】
上述したように、本願発明者らは、この紫外線硬化樹脂12に含まれる光重合開始剤自体が紫外線照射に応じて、紫外線硬化樹脂12の状態(たとえば、硬化度)と相関のある観測可能な蛍光を放射することを見出した。
【0054】
より詳細には、本願発明者らは、代表的な紫外線硬化樹脂(合計22種類)の各々に対して、波長365nmをもつ励起紫外線50を照射した場合に放射される光の波長について、スペクトルアナライザーを用いて調査した。この結果、いずれの紫外線硬化樹脂からも、励起紫外線50の波長より長い波長をもつ光(蛍光)が放射されていることを確認した。
【0055】
ここで、紫外線硬化樹脂に含まれる光重合開始剤は、以下のような性質を有する。
(1)重合反応を開始させるための活性種(ラジカルや酸など)を生成する能力(量子収率、モル吸光係数)が高い。
【0056】
(2)反応性の高い活性種を生成する。
(3)活性種の生成能力を発揮するための励起エネルギーのスペクトル域が紫外線領域である。
【0057】
すなわち、光重合開始剤は、紫外線を吸収しやすい分子構造のものが採用され、紫外線吸収したことによるエネルギー(電子)を他の分子に与えやすいものとなっている。
【0058】
一方、紫外線硬化樹脂の主剤であるモノマーおよびオリゴマーは、キャリア(電子)が分子内をスムーズに動きにくい構造をとるため、蛍光をほとんど発しないと考えられる。
【0059】
したがって、本願発明者らは、本質的に光重合開始材が紫外線を受けて蛍光を放射する性質を有する物質であると結論付けた。
【0060】
(硬化反応検知装置の概略構成)
図2は、硬化反応検知装置100のより詳細な概略構成図である。
【0061】
図2を参照して、制御部102は、CPU(Central Processing Unit)40と、表示部42と、操作部44と、記憶部46と、インターフェイス部(I/F)48とからなる。
【0062】
CPU40は、硬化反応検知装置100の全体処理を司る制御装置であって、記憶部46に格納されるプログラムを読込んで実行することで、以下に示す処理を実現する。具体的には、CPU40は、インターフェイス部48を介して光源部202(図1)から与えられる照射状態信号(照射開始信号や照射終了信号)に応答して、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令を与える。そして、蛍光測定ヘッド部104から与えられる蛍光量を示す信号に基づいて、光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。このように測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、CPU40は、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態を判断する。そして、当該硬化反応が完了したと判断されると、CPU40は、光源部202(図1)に照射終了指示を与えて硬化用紫外線54の照射を停止する。さらに、CPU40は、測定された蛍光量の時間的挙動を記憶部46に格納するとともに、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態を表示部42上に表示したり、インターフェイス部48を介して外部出力したりする。
【0063】
表示部42は、ユーザに対して硬化反応に係る情報を表示するための表示装置であり、一例として、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode-Ray Tube)などのディスプレイを含んで構成される。
【0064】
操作部44は、ユーザからの操作指令を受付ける指令入力装置であり、一例として、スイッチ、タッチパネルもしくはマウスなどから構成され、ユーザ操作に応じた操作指令をCPU40へ出力する。
【0065】
記憶部46は、CPU40で実行されるプログラムや過去の時間的挙動を不揮発的に格納可能な装置であり、一例として、ハードディスクやフラッシュメモリなどで構成される。
【0066】
インターフェイス部48は、外部装置とCPU40との間の通信を仲介するための装置であり、一例として、デジタルアナログ変換部(DAC)、USB(Universal Serial Bus)もしくはイーサネット(登録商標)などで構成される。
【0067】
また、蛍光測定ヘッド部104は、投光駆動回路20と、投光素子22と、ハーフミラー24と、光フィルタ26と、受光素子28と、HPF(High Pass Filter:高域通過フィルタ)30と、増幅回路32と、サンプルホールド回路(S/H:Sample and Hold)34と、アナログデジタル変換部(ADC)36とからなる。
【0068】
投光駆動回路20は、CPU40からの照射指令に応じて、投光素子22で励起紫外線50を発生させるための電力を供給する装置である。励起紫外線50は、光重合開始剤から放射される蛍光量をより正確に測定できるように、その強度が周期的に変化するように生成される。特に、本実施の形態では、励起紫外線50の強度がパルス状に変化する構成について説明する。そのため、投光駆動回路20は、CPU40からの照射指令が与えられる期間において、所定周期で変化するパルス状の駆動電力を投光素子22へ供給する。
【0069】
図3は、蛍光測定ヘッド部104とワークとの間の光学的な配置図である。
図2および図3を参照して、蛍光測定ヘッド部104は、集束レンズ38をさらに備え、投光素子22、ハーフミラー24、集束レンズ38および対象となる紫外線硬化樹脂12が共通の光軸Ax上に配置される。また、光軸Axに対して直角方向に向かう同一直線上に、ハーフミラー24、光フィルタ26および受光素子28が配置される。
【0070】
そして、投光駆動回路20から駆動電力を供給され、投光素子22で生成された励起紫外線50は、ハーフミラー24および集束レンズ38を通過して紫外線硬化樹脂12に集束するように照射される。そして、紫外線硬化樹脂12は、励起紫外線50の照射に応じて蛍光52を生成する。生成された蛍光52は、励起紫外線50と略同一の経路を逆方向に伝播してハーフミラー24に入射する。そして、励起紫外線50は、ハーフミラー24によって伝播方向に対して直角方向にその伝播経路を変化させ、光フィルタ26を介して受光素子28へ入射する。
【0071】
このように、ハーフミラー24が紫外線硬化樹脂12から受けた蛍光52の伝播方向を変化させることで、同一直線上を伝播する励起紫外線50と蛍光52とを分離することができ、微弱な強度を有する蛍光52を受光素子28によって確実に検出できる。
【0072】
投光素子22は、励起紫外線50を発生する紫外線発生装置であって、一例として紫外線LEDからなる。なお、投光素子22で発生する励起紫外線50の主発光ピークは365nmが好ましい。ハーフミラー24は、紫外線の入射方向によって、反射率を異ならしめる反射部材であり、一例として、その反射面は金属蒸着により形成される。光フィルタ26は、投光素子22から放射される励起紫外線50が直接的に受光素子28へ入射することを抑制するために配置されたものであり、紫外領域の光を減衰させる一方で可視領域の光を透過するように構成される。一例として、光フィルタ26は、波長が410nm以上の光を透過する誘電体多層膜のフィルタからなる。受光素子28は、一例としてフォトダイオードからなり、光フィルタ26を透過して入射する蛍光の強度に応じた電流を発生する。
【0073】
以下、紫外線硬化樹脂12に含まれる光重合開始剤から放射される蛍光量の測定方法とともに、HPF30、増幅回路32、サンプルホールド回路34、およびアナログデジタル変換部36について説明する。
【0074】
図1に示すように、本実施の形態に従う紫外線照射システム1では、紫外線硬化樹脂12に対して光源装置200から硬化用紫外線54が放射される。そのため、紫外線硬化樹脂12に含まれる光重合開始剤からは、励起紫外線50に加えて、硬化用紫外線54の照射に応じて蛍光が発生することも考えられる。そこで、本実施例では、それぞれの紫外線を周波数領域上で分離する。すなわち、主として直流(DC)成分の強度を有する硬化用紫外線54と、その強度に交流成分(一例として、パルス状変化)を含む励起紫外線50とを照射し、この照射によって測定される蛍光量を示す信号のうち、励起紫外線50の強度変化周期に対応する周期成分に基づいて、励起紫外線50によって生じた蛍光量を測定する。
【0075】
図4は、蛍光測定に係る各部の時間波形を示すタイムチャートである。
図4(a)は、硬化用紫外線54の照射強度の時間的変化を示す。図4(b)は、励起紫外線50の照射強度の時間的変化を示す。図4(c)は、受光素子28で測定される蛍光量の時間的変化を示す。図4(d)は、HPF30から出力される信号強度の時間的変化を示す。図4(e)は、サンプルホールド回路34から出力される蛍光量の時間的変化を示す。
【0076】
図4(a)に示すように、光源部202(図1)に照射開始指令が与えられると、照射ヘッド部204(図1)からは略一定の照射強度Pfをもつ硬化用紫外線54の照射が開始される。一例として、硬化用紫外線54の照射強度Pfは20mW程度に設定される。
【0077】
この硬化用紫外線54の照射開始に同期して、図4(b)に示すように、投光素子22(図2,3)からはその強度がゼロと照射強度Pdとを周期Tで交互に変化させる励起紫外線50の照射が開始される。また、各周期においてその強度が照射強度Pdとなる期間は時間Tp(Tp<T)である。一例として、照射強度Pdは12mWに設定され、周期Tは0.35msに設定され、時間Tpは18μsに設定される。
【0078】
光重合開始剤が放射する蛍光量は、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態と相関があるので、硬化用紫外線54の照射によって硬化反応が進行すると、図4(c)に示すように受光素子28で測定される蛍光量も変化する。すなわち、受光素子28で測定される蛍光量の時間的挙動は、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態に応じた全体的な増加に加えて、周期的に強度が変化する励起紫外線50に応じた局所的な時間的変化を含む。
【0079】
図2に示すHPF30は、このような受光素子28で測定される蛍光量の局所的な時間的変化を抽出するためのフィルタであり、励起紫外線50の強度変化周期に対応する周期成分(1/T)より高周波の成分を通過させるように設計される。このHPF30から出力される信号強度は、図4(d)に示すように主として硬化用紫外線54に由来する直流成分が除去され、励起紫外線50に由来する交流成分(パルス成分)が抽出される。ここで、HPF30からの出力信号における各パルスの最大振幅値(ピーク値)が励起紫外線50の照射によって紫外線硬化樹脂12(より正確には、光重合開始剤)から放射される蛍光量を示すことになる。
【0080】
そこで、図2に示す増幅回路32は、HPF30からの出力信号を所定の増幅率(電流電圧変換率)で増幅してサンプルホールド回路34へ出力する。そして、サンプルホールド回路34は、投光素子22が照射強度Pdの励起紫外線50を照射するタイミングに同期してHPF30からの出力信号をサンプリングし、サンプリングした信号値を次回のサンプリング時まで保持する。これにより、図4(e)に示すように、各パルスの最大振幅値に応じた値がサンプルホールド回路34から出力される。このサンプルホールド回路34から出力される信号(アナログの電圧信号)はアナログデジタル変換部36(図2)によってデジタル値に変換されて、蛍光量の測定値としてCPU40へ出力される。なお、測定誤差による影響を抑制するために、アナログデジタル変換部36から出力される蛍光量を平均化処理(一例として、移動平均処理)して、各時点における光重合開始剤の蛍光量としてもよい。たとえば、256個のデータに対して移動平均処理を実行する場合には、蛍光量の測定周期は89.6ms(=0.35ms×256個)となる。
【0081】
以上のように、硬化反応検知装置100は、硬化用紫外線54に対して周波数領域で分離可能な励起紫外線50を用いることで、硬化用紫外線54による蛍光の影響を排除して非常に微弱な蛍光量を検出できる。なお、図4では、説明の便宜上、紫外線硬化樹脂12の硬化時間が励起紫外線50の周期Tに比較して非常に短い場合について模式的に示したが、実際の紫外線硬化樹脂12の硬化時間は、励起紫外線50の周期T(一例として、0.35ms)に比較して非常に長い(数s〜数10s程度)。そのため、紫外線硬化樹脂12の硬化反応の完了時間に対して、十分に多くの励起紫外線50を紫外線硬化樹脂12へ照射することができるので、高い蛍光の測定精度を実現できる。
【0082】
また、硬化用紫外線54は時間的に略一定の強度で照射されることが多いが、硬化用紫外線54が周期的な強度変化を有する場合には、励起紫外線50の強度変化周期を硬化用紫外線54の強度変化周期とは異なる周期にしておく(例えば、硬化用紫外線54の強度変化周期よりも短い周期にしておく)ことで対処できる。
【0083】
さらに、紫外線照射システム1の周囲環境において、紫外線硬化樹脂12から放射される蛍光と同じ波長帯域を含む照明光が存在する場合には、この照明光が蛍光量測定に対して外乱光となる。この外乱光に対しても、上述と同様の方法で対処することが可能である。たとえば、周囲環境に存在する照明光の強度が商用電源の周波数に起因して周期的に変動するのであれば、励起紫外線50の強度変化周期をそのような商用電源の周波数に相当する周期に比較して短く設定すればよい。
【0084】
(硬化反応の完了判断に係る処理その1)
測定された蛍光量の時間的挙動に基づく硬化反応状態の判断処理の一例として、紫外線硬化樹脂12の硬化反応の完了判断を行なう処理について説明する。
【0085】
多くの紫外線硬化樹脂では、硬化反応の進行に伴って生じる蛍光量は増加する。これは、次のようなメカニズムによるものと考えられる。すなわち、硬化反応(すなわち、重合反応)の進行に伴って光重合開始剤が消費され、未反応の光重合開始剤が減少するので、光重合開始剤で吸収される紫外線照射による光エネルギーのうち、重合反応を生じるための活性種(ラジカルや酸など)の生成に使用される化学的エネルギーとしての使用量が減少することになる。一方で、光重合開始剤は、重合反応に使用された後であっても、紫外線を吸収しやすい性質を残しているため、光重合開始剤が励起紫外線50を吸収することで生じる光エネルギー量は維持されて、蛍光や熱といった化学的エネルギーとは異なる形のエネルギーに変換される。この結果、紫外線硬化樹脂の硬化反応の進行に従って蛍光量が増加する傾向が現れる。さらに、このような傾向は、紫外線硬化樹脂の基本的な組成に由来するものであるから、多くの紫外線硬化樹脂に共通してみられるものとなる。
【0086】
したがって、紫外線硬化樹脂12から放射される蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断することができる。以下では、測定された蛍光量と所定のしきい値との比較によって、硬化反応の完了を判断する構成について例示する。
【0087】
図5は、測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了を判断するための処理ブロック図である。この処理ブロック図は、制御部102のCPU40(図2)で実行されるプログラムによって実現される。
【0088】
図5を参照して、判断部120は、測定された蛍光量と予め設定されるしきい値α1とを比較し、測定された蛍光量がしきい値α1を超過すると「硬化反応完了」を発する。なお、この「硬化反応完了」が発せられると、硬化反応検知装置100(CPU40)から光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線50の照射も停止される。
【0089】
しきい値α1は、対象とされる紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別にしきい値α1を予め実験的に求めて、記憶部46(図2)などに格納しておき、使用する際に、ユーザが対象となる紫外線硬化樹脂に応じたしきい値α1を選択するようにしてもよい。
【0090】
図6は、測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了判断に係るタイムチャートである。図6(a)は、測定される蛍光量の時間的変化を示し、図6(b)は、硬化反応完了の発生タイミングを示す。なお、図6の時間軸は、硬化用紫外線54の照射開始タイミングを基準としている。
【0091】
図6(a)を参照して、一例として、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は単調増加する。この単調増加する蛍光量が所定のしきい値α1を超過すると、図6(b)に示すように、硬化反応が完了したと判断され、「硬化反応完了」が発せられる。
【0092】
図7は、測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了判断に係るフローチャートである。この図7に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0093】
図7を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS100)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS100においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0094】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS100においてYES)、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS102)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS104)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。
【0095】
そして、取得された蛍光量がしきい値α1を超過しているか否かが判断される(ステップS106)。取得された蛍光量がしきい値α1を超過していなければ(ステップS106においてNO)、硬化反応の未完了と判断され(ステップS108)、ステップS104以下の処理が繰返される。
【0096】
取得された蛍光量がしきい値α1を超過していれば(ステップS106においてYES)、硬化反応の完了と判断される(ステップS110)。そして、光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される(ステップS112)。そして、処理は終了する。
【0097】
このように、測定された蛍光量に基づいて硬化反応の完了判断を行なうことで、硬化用紫外線54の照射強度の大きさにかかわらず、紫外線硬化樹脂12の硬化反応を確実に完了させることができる。同時に、硬化用紫外線54の照射時間を最適化できるので、紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54を過剰に照射することを抑制できる。これにより、特に、寿命が比較的短く、硬化用紫外線54の照射に要するコストが比較的高価となる紫外線ランプを用いる場合において、各ワークあたりのコストを抑制することができるとともに、紫外線ランプの交換に伴うラインの停止時間を抑制できる。
【0098】
なお、上述の説明では、測定された蛍光量がしきい値α1を超過すると「硬化反応完了」を即座に発する構成について説明したが、測定された蛍光量がしきい値α1を超過してから所定期間が経過した時点で「硬化反応完了」を発するように構成してもよい。
【0099】
(硬化反応の完了判断に係る処理その2)
上述したような測定された蛍光量に基づいて硬化反応の完了を判断する構成に代えて、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量(差分値もしくは微分値)に基づいて硬化反応の完了を判断する構成を採用してもよい。
【0100】
すなわち、硬化反応に伴う蛍光量の増大速度は、紫外線の照射による光重合開始剤の消費速度に依存するので、硬化反応が十分に行なわれた、すなわち十分に重合反応が進行した後には蛍光量の増大速度は低下する。そこで、蛍光量の単位時間当たりの変化量と所定のしきい値との比較によって、硬化反応の完了を判断することができる。
【0101】
図8は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了を判断するための処理ブロック図である。この処理ブロック図は、制御部102のCPU40(図2)で実行されるプログラムによって実現される。
【0102】
図8を参照して、時間変化量算出部122は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量を算出し、判断部124へ出力する。一例として、時間変化量算出部122は、差分演算器からなり、所定の単位時間毎に蛍光量をサンプリングするとともに、今回の蛍光量と前回の蛍光量との差分値を単位時間当たりの変化量として出力する。なお、以下の説明においても、「測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量」の一例として「蛍光量の差分値」を用いる。
【0103】
判断部124は、時間変化量算出部122で算出された蛍光量の単位時間当たりの変化量(蛍光量の差分値)と予め設定されるしきい値α2とを比較し、蛍光量の差分値がしきい値α2を超過すると「硬化反応完了」を発する。なお、この「硬化反応完了」が発せられると、硬化反応検知装置100(CPU40)から光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線50の照射も停止される。
【0104】
しきい値α2は、対象とされる紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別にしきい値α2を予め実験的に求めて、記憶部46(図2)などに格納しておき、使用する際に、ユーザが対象となる紫外線硬化樹脂に応じたしきい値α2を選択するようにしてもよい。
【0105】
図9は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了判断に係るタイムチャートである。図9(a)は、測定される蛍光量およびその単位時間当たりの変化量の時間的変化を示し、図9(b)は、硬化反応完了の発生タイミングを示す。なお、図9の時間軸は、硬化用紫外線54の照射開始タイミングを基準としており、図9(a)に示す各波形の基準点(ゼロ点)は共通ではない。
【0106】
図9(a)を参照して、一例として、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は単調増加する。一方で、その蛍光量の単位時間当たりの変化量(蛍光量差分値)は単調減少する。そして、この蛍光量差分値が所定のしきい値α2を下回ると、図9(b)に示すように、硬化反応が完了したと判断され、「硬化反応完了」が発せられる。
【0107】
図10は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了判断に係るフローチャートである。この図10に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0108】
図10を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS200)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS200においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0109】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS200においてYES)、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS202)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS204)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。さらに、前回取得された蛍光量と今回取得された蛍光量とに基づいて、蛍光量の差分値が算出される(ステップS206)。
【0110】
そして、算出された蛍光量の差分値がしきい値α2を下回っているか否かが判断される(ステップS208)。取得された蛍光量がしきい値α2を下回っていなければ(ステップS208においてNO)、硬化反応の未完了と判断され(ステップS210)、ステップS204以下の処理が繰返される。
【0111】
算出された蛍光量の差分値がしきい値α2を下回っていれば(ステップS208においてYES)、硬化反応の完了と判断される(ステップS212)。そして、光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される(ステップS214)。そして、処理は終了する。
【0112】
このように、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づいて硬化反応の完了判断を行なうことで、測定された蛍光量の絶対値が変動しても硬化反応の完了を高い精度で判断できる。そのため、同一の紫外線硬化樹脂であれば、その塗布量にかかわらず共通のしきい値を用いることができるので、対象のワークに塗布される紫外線硬化樹脂の量にバラツキがあっても、高い判断精度を維持できる。
【0113】
さらに、硬化用紫外線54の照射時間を最適化できるので、紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54を過剰に照射することを抑制できる。これにより、特に、寿命が比較的短く、硬化用紫外線54の照射に要するコストが比較的高価となる紫外線ランプを用いる場合において、各ワークに要するコストを抑制することができるとともに、紫外線ランプの交換に伴うラインの停止時間を抑制できる。
【0114】
なお、上述の説明では、蛍光量の単位時間当たりの変化量(蛍光量の差分値)がしきい値α2を下回ると「硬化反応完了」を即座に発する構成について説明したが、蛍光量の差分値がしきい値α2を下回ってから所定期間が経過した時点で「硬化反応完了」を発するように構成してもよい。
【0115】
(硬化反応の異常判断に係る処理その1)
さらに、測定された蛍光量の時間的挙動に基づく硬化反応状態の判断処理の一例として、紫外線硬化樹脂12の硬化反応の異常判断を行なう処理について説明する。
【0116】
実際の製造ラインでは、さまざまな要因によって紫外線硬化樹脂の硬化反応が正常に行なわれない場合がある。その要因の一つとしては、紫外線硬化樹脂の劣化などが想定される。紫外線硬化樹脂は、嫌気性接着剤であり、大気中に長時間放置されると大気中の酸素と光重合開始剤とが結合して、紫外線を受けても十分な量のラジカルやカチオンを発生することができなくなる。このような場合には、紫外線硬化樹脂で十分な硬化反応が生じない。
【0117】
また、別の要因としては、塗布される紫外線硬化樹脂の量の大きなバラツキや、硬化用紫外線54の照射スポットずれなども想定される。さらに別の要因としては、製造ライン上を流れるワークが変更されたにもかかわらず、塗布する紫外線硬化樹脂の量や種類の変更し忘れなども想定される。
【0118】
このように、さまざまな要因によって生じ得る紫外線硬化樹脂における硬化反応の異常を見つけ出して、不良ワークの混入を防止することが実際の製造ラインでは重要となる。そこで、硬化用紫外線54の照射開始から所定時間経過後において、十分な蛍光量が測定されているか否かに基づいて、硬化反応が異常であるか否かを判断する。以下では、硬化用紫外線54の照射開始から所定時間経過後に測定された蛍光量と所定のしきい値との比較によって、硬化反応が異常であるか否かを判断する構成について例示する。
【0119】
蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係る処理ブロックは図5に示した処理ブロックと同様である。図5を参照して、判断部120Aは、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taが経過時において、測定される蛍光量と予め設定されるしきい値α3とを比較し、測定された蛍光量がしきい値α3を下回っていれば「硬化反応異常」を発する。なお、この「硬化反応異常」が発せられると、硬化反応検知装置100(CPU40)から光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線50の照射も停止される。さらに、硬化反応が異常であったことがユーザや図示しない外部の制御装置などへも通知される。
【0120】
しきい値α3は、対象とされる紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別にしきい値α3を予め実験的に求めて、記憶部46(図2)などに格納しておき、使用する際に、ユーザが対象となる紫外線硬化樹脂に応じたしきい値α3を選択するようにしてもよい。
【0121】
図11は、蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。図11(a)は、正常時および異常時の別に硬化反応の進行に伴って測定される蛍光量の時間的変化を示す。図11(b)および図11(c)は、それぞれ正常時および異常時における「硬化反応異常」の出力変化を示す。なお、図11の時間軸は、硬化用紫外線54の照射開始タイミングを基準としている。
【0122】
図11(a)を参照して、一例として、硬化用紫外線54の照射が開始されると、硬化反応の正常時および異常時のいずれの場合にも、測定される蛍光量は単調増加する。硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taの経過時点において、正常時の蛍光量はしきい値α3を超過しているが、異常時の蛍光量はしきい値α3を下回っている。そのため、図11(b)に示すように、正常時には「硬化反応異常」が出力されることはなく、硬化反応の正常が間接的に通知される。一方、図11(c)に示すように、異常時には判定時間Taの経過時点において「硬化反応異常」が出力され、硬化反応での異常発生が通知される。
【0123】
図12は、蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。この図12に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0124】
図12を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS300)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS300においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0125】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS300においてYES)、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS302)。同時に、硬化用紫外線54の照射開始からの経過時間の計測が開始される(ステップS304)。そして、計測された経過時間が判定時間Taを経過したか否かが判断される(ステップS306)。経過時間が判定時間Taを経過していなければ(ステップS306においてNO)、判定時間Taを経過するまで処理は繰返される。
【0126】
経過時間が判定時間Taを経過していれば(ステップS306においてYES)、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS308)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。
【0127】
そして、取得された蛍光量がしきい値α3を下回っているか否かが判断される(ステップS310)。取得された蛍光量がしきい値α3を下回っていなければ(ステップS310においてNO)、硬化反応が正常であると判断される(ステップS312)。この場合には、「硬化反応異常」が出力されることはない。そして、処理は終了する。
【0128】
一方、取得された蛍光量がしきい値α3を下回っていれば(ステップS310においてYES)、硬化反応が異常であると判断され(ステップS314)、「硬化反応異常」が出力される(ステップS316)。そして、処理は終了する。
【0129】
このように、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Ta経過時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の異常発生を判断することで、硬化反応が不十分なワークが混入することを防止できる。
【0130】
(硬化反応の異常判断に係る処理その2)
上述したような硬化用紫外線54の照射開始から所定の判定時間が経過した時点の蛍光量に基づいて硬化反応の異常発生を判断する構成に代えて、所定の判定時間が経過した時点における蛍光量の単位時間当たりの変化量(差分値もしくは微分値)に基づいて硬化反応の異常発生を判断する構成を採用してもよい。
【0131】
紫外線硬化樹脂の硬化反応が正常に実行されない要因のうち、特に、照射ヘッド部204(図1)から紫外線硬化樹脂12までの距離のズレや、照射スポットのズレなどは、紫外線硬化樹脂12における硬化反応の進行速度に基づいて判断することができる。すなわち、照射ヘッド部204が紫外線硬化樹脂12に対して基準値より接近して配置された場合には、紫外線硬化樹脂12に照射される硬化用紫外線54の照射強度は規定値より大きくなり、過剰な硬化反応が生じることになる。逆に、照射ヘッド部204が紫外線硬化樹脂12に対して基準値より離れて配置された場合には、紫外線硬化樹脂12に照射される硬化用紫外線54の照射強度は規定値より小さくなり、硬化反応は反応不足となる。反応過剰になれば、紫外線硬化樹脂12は黒く変色し、「焦げた」ような状態になる。また、反応不足になれば、紫外線硬化樹脂12は十分に硬化しない。
【0132】
このように、紫外線硬化樹脂12に照射される硬化用紫外線54の照射強度が規定値と大きく相違するような場合には、紫外線硬化樹脂12で生じる硬化反応の進行速度も規定値から大きく相違する。そこで、硬化反応の進行速度、すなわち測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定範囲内にあるか否かに基づいて、紫外線硬化樹脂12での硬化反応に異常が発生しているか否かを判断できる。
【0133】
蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係る処理ブロックは図8に示した処理ブロックと同様である。図8を参照して、判断部124Aは、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Tbの経過時に、時間変化量算出部122から測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量を取得し、予め設定されるしきい値α4およびα5と比較する。なお、判定時間Tbは、上述の図5および図11に示す判定時間Taに比較して小さくなるように設定される。すなわち、硬化用紫外線54の照射強度のバラツキによる影響度は、硬化反応の初期段階において相対的に大きくなるからである。
【0134】
そして、蛍光量の単位時間当たりの変化量がしきい値α4からしきい値α5までの範囲外にあれば「硬化反応異常」を発する。なお、この「硬化反応異常」が発せられると、硬化反応検知装置100(CPU40)から光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線50の照射も停止される。さらに、硬化反応が異常であったことがユーザや図示しない外部の制御装置などへも通知される。
【0135】
しきい値α4,α5は、対象とされる紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別にしきい値α4,α5を予め実験的に求めて、記憶部46(図2)などに格納しておき、使用する際に、ユーザが対象となる紫外線硬化樹脂に応じたしきい値α4,α5を選択するようにしてもよい。
【0136】
図13は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。図13(a)は、正常時における硬化反応の進行に伴って測定される蛍光量の時間的変化およびその単位時間当たりの変化量、ならびに異常時(反応過剰および反応不足)における測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量についての時間的変化を示す。図13(b)および図13(c)は、それぞれ正常時および異常時における「硬化反応異常」の出力変化を示す。なお、図11の時間軸は、硬化用紫外線54の照射開始タイミングを基準としている。
【0137】
図13(a)を参照して、一例として、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は単調増加する。硬化反応が正常であれば、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Tbの経過時点における蛍光量の単位時間当たりの変化量は、しきい値α4からしきい値α5までの範囲内に存在する。
【0138】
一方、硬化用紫外線54の照射強度が強く、反応過剰となっている場合(反応異常時)には、硬化反応の進行速度が相対的に速いため、判定時間Tbの経過時点における蛍光量の単位時間当たりの変化量はしきい値α5を超過している。また、硬化用紫外線54の照射強度が弱く、反応不足となっている場合(反応異常時)には、硬化反応の進行速度が相対的に遅いため、判定時間Tbの経過時点における蛍光量の単位時間当たりの変化量はしきい値α4を下回っている。
【0139】
そのため、図13(b)に示すように、正常時には「硬化反応異常」が出力されることはなく、硬化反応の正常が間接的に通知される。一方、図13(c)に示すように、異常時には判定時間Tbの経過時点において「硬化反応異常」が出力され、硬化反応での異常発生が通知される。
【0140】
図14は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。この図14に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0141】
図14を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS400)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS400においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0142】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS400においてYES)、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS402)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS404)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。さらに、前回取得された蛍光量と今回取得された蛍光量とに基づいて、蛍光量の差分値が算出される(ステップS406)。
【0143】
同時に、硬化用紫外線54の照射開始からの経過時間の計測が開始される(ステップS408)。そして、計測された経過時間が判定時間Tbを経過したか否かが判断される(ステップS410)。経過時間が判定時間Tbを経過していなければ(ステップS410においてNO)、判定時間Tbを経過するまでステップS406以下の処理が繰返される。
【0144】
経過時間が判定時間Tbを経過していれば(ステップS410においてYES)、当該時点における蛍光量の差分値がしきい値α4からしきい値α5までの範囲外であるか否かが判断される(ステップS412)。蛍光量の差分値がしきい値α4からしきい値α5までの範囲外でなければ(ステップS412においてNO)、すなわち蛍光量の差分値がしきい値α4からしきい値α5までの範囲内にあれば、硬化反応が正常であると判断される(ステップS414)。この場合には、「硬化反応異常」が出力されることはない。そして、処理は終了する。
【0145】
一方、蛍光量の差分値がしきい値α4からしきい値α5までの範囲外であれば(ステップS412においてYES)、硬化反応が異常であると判断され(ステップS416)、「硬化反応異常」が出力される(ステップS418)。そして、処理は終了する。
【0146】
このように、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Tb経過時点の蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づいて、硬化反応の異常発生を判断することで、反応過剰もしくは反応不足のワークが混入することを防止できる。
【0147】
(硬化反応の異常判断に係る処理その3)
上述の硬化反応の異常判断に係る処理その1およびその2で説明したように、測定された蛍光量の時間的挙動のある時点において硬化反応の異常発生を判断する構成に加えて、測定された蛍光量の時間的挙動(時間的プロフィール)の全体を参照して、硬化反応の正常性を判断してもよい。
【0148】
図15は、測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。図15(a)は、基準の時間的プロフィールおよび測定される蛍光量の時間的プロフィールの一例を示す。図15(b)は、基準の時間的プロフィールに対する測定される蛍光量の偏差の時間的変化の一例を示す。
【0149】
図15(a)を参照して、過去に測定された蛍光量の時間的プロフィールに基づいて、予め基準となる蛍光量の時間的プロフィール(以下、「基準プロフィール」とも記す)が記憶部46(図2)に格納される。なお、このような基準プロフィールは、同一の条件で測定される複数の蛍光量の時間的プロフィールを平均化処理などして予め設定される。さらに、この基準プロフィールは、紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別に設定されることが望ましい。
【0150】
この基準プロフィールと同一座標上に、各処理時に測定される蛍光量の時間的プロフィールが描画される。そして、各時点において、基準プロフィールの対応する蛍光量と測定される蛍光量との間の偏差が算出される。すると、この算出される偏差の時間的挙動は、図15(b)のようになる。ここで、紫外線硬化樹脂12の硬化反応期間中において、算出される蛍光量の偏差が所定の範囲内(±しきい値α6)に維持されていれば、紫外線硬化樹脂12の硬化反応は正常であると判断される。一方、蛍光量の偏差が所定の範囲外になれば、当該硬化反応は異常であると判断される。
【0151】
なお、制御部102の表示部42(図2)には、図15(a)および図15(b)に示すような画面が表示される。具体的には、制御部102のCPU40(図2)が記憶部46から基準プロフィールのデータを読出して、所定の座標を表示するための表示指令を表示部42へ与える。さらに、CPU40は、順次測定される蛍光量の値を当該座標上にプロットするように表示指令を表示部42へ与える。同時に、CPU40は、基準プロフィールの対応する蛍光量と測定される蛍光量との間の偏差を算出し、当該算出したデータが順次プロットされるように表示指令を表示部42へ与える。
【0152】
図16は、測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。この図16に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0153】
図16を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS500)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS500においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0154】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS500においてYES)、記憶部46から基準プロフィールのデータが読み出され(ステップS502)、表示部42上に当該基準プロファイルが表示される(ステップS504)。続いて、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS506)。
【0155】
続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS508)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。さらに、基準プロフィールの対応する蛍光量と測定される蛍光量との間の偏差が算出される(ステップS510)。そして、表示部42上に測定された蛍光量および算出された偏差が表示される(ステップS512)。
【0156】
さらに、ステップS510において算出された蛍光量の偏差が所定の範囲内であるか否かが判断される(ステップS514)。蛍光量の偏差が所定の範囲内であれば(ステップS514においてYES)、硬化反応が正常であると判断される(ステップS516)。この場合には、「硬化反応異常」が出力されることはない。
【0157】
一方、蛍光量の偏差が所定の範囲内でなければ(ステップS514においてNO)、すなわち蛍光量の偏差が所定の範囲外にあれば、硬化反応が異常であると判断され(ステップS518)、「硬化反応異常」が出力される(ステップS520)。
【0158】
続いて、光源部202から照射終了信号が与えられたか否かが判断される(ステップS522)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が終了したか否かが判断される。そして、光源部202から照射終了信号が与えられていなければ(ステップS522においてNO)、ステップS508以下の処理が繰返される。
【0159】
一方、光源部202から照射終了信号が与えられていれば(ステップS522においてYES)、処理は終了する。
【0160】
なお、上述の説明では、基準プロフィールの対応する蛍光量と測定される蛍光量との間の偏差が所定範囲外になると「硬化反応異常」を即座に発する構成について説明したが、測定された蛍光量が所定範囲外となる状態が所定期間維持される場合に「硬化反応完了」を発するように構成してもよい。
【0161】
このように、測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づいて、硬化反応の異常発生を判断することで、反応過剰もしくは反応不足のワークが混入することを防止できる。
【0162】
なお、3種類の硬化反応の異常判断に係る処理について上述したが、必ずしも硬化反応検知装置100が全ての処理を備えておく必要はなく、ニーズに応じた処理を適宜組み込めばよい。
【0163】
(ユーザインタフェース)
紫外線硬化樹脂12の硬化反応の進行状態や、上述のような硬化反応の完了判断処理や異常判断処理の結果などをユーザに通知するために、制御部102の表示部42(図2)には、各種のデータが表示される。なお、表示部42の表示状態は、CPU40からの表示指令によって制御される。
【0164】
図17は、表示部42における表示内容の一例を示す図である。
図17(a)に示すように、たとえば、紫外線硬化樹脂12の硬化反応に伴って測定される蛍光量およびその単位時間当たりの変化量が数値(デジット)表示される。5桁の7セグメント表示部からなる数値表示領域422には、測定された蛍光量(図17(a)には「380.62」が表示される例を示す)が逐次的に表示される。また、数値表示領域422の下段には、数値表示領域422を構成する7セグメント表示部より小さい5桁の7セグメント表示部からなる数値表示領域424が設けられる。この数値表示領域424には、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量(図17(b)には「000.85」が表示される例を示す)が逐次的に表示される。
【0165】
さらに、数値表示領域422および424の左側には、LEDなどからなる結果表示領域426が設けられる。結果表示領域426は、硬化反応の完了判断処理や異常判断処理の結果に応じて、その視覚的表示を変化させる。一例として、何らかの判断結果が出力されると、無灯状態から点灯状態もしくは点滅状態に以降したり、発光色を「緑」から「赤」に変化させたりする。
【0166】
より具体的な例としては、硬化用紫外線54の照射開始前には、結果表示領域426は無灯状態に維持される一方で、硬化用紫外線54の照射が開始されると、結果表示領域426は「赤」表示される。そして、紫外線硬化樹脂における硬化反応が完了したと判断されると、結果表示領域426は「緑」表示される。また、紫外線硬化樹脂における硬化反応が異常であると判断されると、結果表示領域426は「赤」の点滅状態に移行する。
【0167】
さらに、図17(b)に示すように、ユーザによる操作部44の操作に応答して、数値表示領域422および424に表示される数値を交互に入れ替えるようにしてもよい。すなわち、図17(b)には、数値表示領域422に測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が表示され、数値表示領域424に測定された蛍光量が表示される場合を例示する。
【0168】
(硬化反応の進行度合表示)
上述の図17(a)および図17(b)に示すようなユーザインタフェースに加えて、本実施の形態に従う硬化反応検知装置100では、紫外線硬化樹脂12で生じる硬化反応の進行度合を表示する。
【0169】
図18は、表示部42における硬化反応の進行度合表示の一例を示す図である。
図18を参照して、表示部42には、図17(a),図17(b)における数値表示領域424に代えて、数値表示領域428に硬化反応の進行度合が逐次的に数値(デジット)表示される(図18には「75%」が表示される例を示す)。
【0170】
さらに、このような数値表示に代えて、インジケータ表示するようにしてもよい。
図19は、表示部42における硬化反応の進行度合表示の別の一例を示す図である。
【0171】
図19を参照して、表示部42には、図18における数値表示領域428に代えて、インジケータ表示領域430に硬化反応の進行度合が表示される。たとえば、インジケータ表示領域430は、10段階のインジケータからなり、紫外線硬化樹脂12の硬化反応の進行度合に応じた数のインジケータが点灯する。
【0172】
このような硬化反応の進行度合は、硬化反応が完了したとみなされる蛍光量である反応完了蛍光量に対する測定される蛍光量の比率に基づいて算出される。具体的には、測定された蛍光量の時間的挙動(時間的プロフィール)が記憶部46(図2)に随時格納され、当該格納された時間的プロフィールの履歴に基づいて、基準となる時間的プロフィールが予め決定される。なお、この時間的プロフィールは、紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別に決定されることが望ましい。
【0173】
図20は、硬化反応の進行度合を算出する過程を説明するための図である。図20には、基準となる時間的プロフィールと、実際に測定される蛍光量の時間的推移を同じ座標に示す。
【0174】
図20を参照して、基準となる時間的プロフィールに基づいて、硬化反応が完了したとみなされる反応完了蛍光量Faが予め取得される。そして、各時点で測定される蛍光量F(t)をこの反応完了蛍光量Faで割ることによって、硬化反応の進行度合が算出される。すなわち、硬化反応の進行度合=蛍光量F(t)/反応完了蛍光量Faとなる。したがって、CPU40では、反応完了蛍光量Faが予め設定されるとともに、蛍光量が測定されるタイミングで、上述のような硬化反応の進行度合が算出され、表示部42における表示値が更新される。
【0175】
代替的に、硬化反応が完了したとみなされる反応完了時間Taに基づいて、硬化反応の進行度合を算出してもよい。すなわち、硬化用紫外線54の照射開始から硬化反応が完了したとみなされるまでの反応完了時間Taに対する各硬化反応における経過時間tの比率から硬化反応の進行度合を算出することができる。すなわち、硬化反応の進行度合=経過時間t/反応完了時間Taとなる。この場合には、CPU40では、反応完了時間Taが予め設定されるとともに、硬化用紫外線54の照射開始からの積算時間を計測するタイミングで、上述のような硬化反応の進行度合が算出され、表示部42における表示値が更新される。
【0176】
このような反応完了蛍光量Fa、もしくは反応完了時間Taは、複数の時間的プロフィールを平均化して自動的に算出することもできるが、ユーザが任意に設定するようにしてもよい。
【0177】
図21は、ユーザが反応完了時間Taを設定する場合の表示部42での表示例を示す。
図21を参照して、表示部42では、過去に測定された蛍光量の時間的プロフィールをユーザが任意に選択するための選択操作領域440が表示され、この選択操作領域440の所定のボタン表示をユーザがタッチペンなどを用いて選択操作することで、選択された時間的プロフィールがプロフィール表示領域446に順次表示される。このとき、CPU40は、選択操作領域440の選択操作に応じて、記憶部46に格納されている蛍光量の時間的プロフィールのうち1つのデータを読み出して、表示部42上に表示させる。
【0178】
さらに、ユーザは、選択操作領域440に表示される蛍光量の時間的プロフィールを参照しながら、数値操作領域444を同様に操作することで、数値表示領域442に表示される反応完了蛍光量Faを変更できる。このようにユーザによって反応完了蛍光量Faが変更されると、CPU40は、この変更後の反応完了蛍光量を用いて硬化反応の進行度合を算出する。すなわち、CPU40は、外部からの入力値に応じて反応完了蛍光量を変更可能である。
【0179】
ところで、紫外線照射システム1を使用するユーザは、紫外線から目を保護するために、保護メガネを装着する。このような保護メガネは、紫外線に相当する波長帯域の光を遮断する、一種の光フィルタである。
【0180】
図22は、保護メガネを装着した状態での視認可能特性の一例を示す図である。
図22を参照して、多くの保護メガネの波長遮断特性は比較的緩やかである。そのため、より安全側を維持するために、紫外線領域に加えて、可視領域の一部を含む波長帯域の光を遮断するように設計される。そのため、このような保護メガネを装着したユーザは、可視領域の紫外線領域側、すなわち紫色や青色を視認し難いことが考えられる。
【0181】
そこで、本実施の形態では、図17〜図19に示すような表示には、硬化用紫外線54および励起紫外線50の波長帯域から長波長側に所定の長さ以上離れた波長帯域を有する色が用いられる。具体的には、図22に示すような約500nm〜700nmに含まれる色、たとえば「緑色」、「黄色」、「赤色」などが用いられる。
【0182】
(しきい値設定その1)
上述した硬化反応の完了判断に係る処理などにおいて使用されるしきい値は、予め測定した複数の蛍光量の時間的挙動を参照して設定することになるが、このようなしきい値を自動的に設定できるモードがあれば、よりユーザフレンドリの観点から好ましい。以下、このようなモードを「しきい値設定モード」と称し、このモードの詳細について説明する。このしきい値設定モードでは、測定された蛍光量の時間的プロフィールにおける特徴的態様をとらえ、その特徴的態様が生じた時点の蛍光量に基づいて、しきい値を設定する。
【0183】
以下では、一例として、硬化反応の完了を判断するために測定される蛍光量と比較されるしきい値α1(図6)を設定する構成について説明するが、その他のしきい値についても同様の方法で設定可能である。なお、後述する他のしきい値設定モードとの区別を明確化するために、この構成についてのしきい値設定モードを特に「第1しきい値設定モード」と称す。
【0184】
しきい値設定モードが使用される態様としては、紫外線硬化樹脂またはワークのいずれか一方が新規な場合において、最適なしきい値を見出す場合などが想定される。このような場合には、数個のサンプルに対して試験的に硬化用紫外線54を照射し、そのときに測定される蛍光量から最適なしきい値が設定される。なお、このような作業をトレーニングとも称す。
【0185】
そこで、第1しきい値設定モードでは、サンプルとなる複数の紫外線硬化樹脂12(およびそれが塗布されたワーク)が製造ライン上を逐次的に搬送され、各紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54が照射されるとともに、各紫外線硬化樹脂12から生じる蛍光量が測定される。続いて、これらの測定結果に基づいて最適なしきい値が設定される。
【0186】
より具体的には、測定される蛍光量の時間的プロフィールの各々において蛍光量の最大値を特徴的態様として算出するとともに、算出された複数の最大値のうち、最も小さいものに所定の係数β1を乗じたものがしきい値α1に設定される。なお、係数β1は、「1」より小さな値、たとえば「0.9」が用いられる。
【0187】
図23は、第1しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。図23には、一例として、4個のサンプルの各々に対して硬化用紫外線54を十分に長い時間照射した場合に測定された蛍光量の時間的プロフィールPf(1)〜Pf(4)が同一座標上に示される。なお、各サンプルに対する照射条件や測定条件は同一とする。そして、各時間的プロフィールPf(1)〜Pf(4)に対して、最大蛍光量Pmax1〜Pmax4がそれぞれ算出される。このように抽出された最大蛍光量Pmax1〜Pmax4のうち、その値が最も小さいもの(図23の場合には、最大蛍光量Pmax4)が抽出され、この抽出された最大蛍光量Pmax4に所定の係数β1が乗じられて、しきい値α1が決定される。
【0188】
図24は、第1しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。この処理は、ユーザが操作部44(図2)を操作して第1しきい値設定モードを選択することで処理が開始される。
【0189】
図24を参照して、まず、しきい値を設定するためのサンプル数の入力が受付けられる(ステップS600)。ユーザは、操作部44(図2)を操作してしきい値を設定するために使用するサンプルの数を入力する。そして、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されるまで待つ(ステップS602)。なお、硬化用紫外線54の照射開始は、硬化用紫外線54の照射スポットにサンプルが配置されたことを検知するセンサ(図示しない)からの信号によって指示されてもよく、もしくはユーザが手動で照射開始を指示するようにしてもよい。
【0190】
光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS604)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS606)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。
【0191】
そして、測定される蛍光量の中の最大値が算出される(ステップS608)。具体的には、各測定時において、測定された蛍光量と当該時点より前に算出されている最大値とが比較され、測定された蛍光量が当該最大値より大きければ、最大値はその測定された蛍光量に更新される。このように測定された蛍光量に基づいて最大値は随時更新される。
【0192】
そして、硬化用紫外線54の照射開始から所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS610)。なお、所定時間は、紫外線硬化樹脂12が硬化反応を完了するのに十分な時間であり、紫外線硬化樹脂の塗布量などに応じて予め設定される。
【0193】
硬化用紫外線54の照射開始から所定時間が経過していなければ(ステップS610においてNO)、ステップS608の処理が繰返される。
【0194】
一方、硬化用紫外線54の照射開始から所定時間が経過していれば(ステップS610においてYES)、算出された蛍光量の最大値が記憶部46に一旦格納される(ステップS612)。続いて、ステップS600において入力されたサンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されているか否かが判断される(ステップS614)。サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていなければ(ステップS614においてNO)、ステップS602以下の処理が繰返される。
【0195】
サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていれば(ステップS614においてYES)、格納されている蛍光量の最大値のうち、その値が最も小さいものが抽出され(ステップS616)、抽出された蛍光量の最大値に対して所定の係数β1が乗じられて、しきい値α1が算出される(ステップS618)。さらに、算出されたしきい値α1が記憶部46に格納され(ステップS620)、第1しきい値設定モードに係る処理は終了する。
【0196】
このような「しきい値設定モード」を使用することで、紫外線硬化樹脂とワークとの組み合わせが多数存在する場合であっても、比較的容易かつ迅速に最適なしきい値を設定することができるので、しきい値設定に係る時間を低減し、生産効率を低下させることを抑制できる。
【0197】
(しきい値設定その2)
しきい値設定モードの別の態様として、「第2しきい値設定モード」について説明する。この第2しきい値設定モードでは、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量から特徴的態様をとらえ、硬化反応の完了を判断するために測定される蛍光量と比較されるしきい値α1(図6)を設定する。
【0198】
第1しきい値設定モードと同様に、第2しきい値設定モードでも、サンプルとなる複数の紫外線硬化樹脂12(およびそれが塗布されたワーク)が製造ライン上に逐次的に搬送され、各紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54が照射されるとともに、各紫外線硬化樹脂12から生じる蛍光量が測定される。続いて、紫外線硬化樹脂12の各々について、測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定範囲内になった時に対応する蛍光量が算出される。ここで、所定範囲内とは、測定される蛍光量の増加が飽和する状態、すなわち測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定値以下となるような状態を含むように決定される。さらに、算出された複数の蛍光量のうち、最も小さいものに所定の係数β2を乗じたものがしきい値α1に設定される。なお、係数β2は、「1」より小さな値、たとえば「0.9」が用いられる。
【0199】
図25は、第2しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。図25(a)には、複数のサンプルのうち1つのサンプルについて測定される蛍光量の時間的変化を示し、図25(b)にはその単位時間当たりの変化量の時間的変化(蛍光量差分値)を示す。また、図25には、特徴的態様の条件として、測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量が「0」以下であること、すなわち正値から負値に転じることを採用した場合を示す。
【0200】
図25(a)を参照して、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は所定量まで単調増加した後、飽和して減少に転じる。このような蛍光量の時間的挙動によって、図25(b)に示すように、蛍光量差分値は硬化用紫外線54の照射開始から時間t1経過後に、正値から負値に転じる。この蛍光量差分値が正値から負値に転じる時刻において測定される蛍光量Paが算出される。同様に各時間的プロフィールにおいて蛍光量Paが算出され、算出された蛍光量Paの中でその値が最も小さいものに所定の係数β2が乗じられて、しきい値α1が決定される。
【0201】
図26は、第2しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。この処理は、ユーザが操作部44(図2)を操作して第2しきい値設定モードを選択することで処理が開始される。
【0202】
図26を参照して、まず、しきい値を設定するためのサンプル数の入力が受付けられる(ステップS700)。ユーザは、操作部44(図2)を操作してしきい値を設定するために使用するサンプルの数を入力する。そして、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されるまで待つ(ステップS702)。なお、硬化用紫外線54の照射を開始は、硬化用紫外線54の照射スポットにサンプルが配置されたことを検知するセンサ(図示しない)からの信号によって指示されてもよく、もしくはユーザが手動で照射開始を指示するようにしてもよい。
【0203】
光源部202から照射開始信号が開始されると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS704)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS706)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。さらに、前回取得された蛍光量と今回取得された蛍光量とに基づいて、蛍光量の差分値が算出される(ステップS708)。
【0204】
続いて、蛍光量の差分値が所定範囲内になったか否かが判断される(ステップS710)。一例として、蛍光量の差分値が正値から負値に転じたか否かが判断される。
【0205】
蛍光量の差分値が所定範囲内になっていなければ(ステップS710においてNO)、ステップS706以下の処理が繰返される。
【0206】
一方、蛍光量の差分値が所定範囲内になっていれば(ステップS710においてYES)、当該時点の測定された蛍光量が記憶部46に一旦格納される(ステップS712)。続いて、ステップS700において入力されたサンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されているか否かが判断される(ステップS714)。サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていなければ(ステップS714においてNO)、ステップS702以下の処理が繰返される。
【0207】
サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていれば(ステップS714においてYES)、格納されている蛍光量のうち、その値が最も小さいものが抽出され(ステップS716)、抽出された蛍光量の最大値に対して所定の係数β2が乗じられて、しきい値α1が算出される(ステップS718)。さらに、算出されたしきい値α1が記憶部46に格納され(ステップS720)、第2しきい値設定モードに係る処理は終了する。
【0208】
また、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量から特徴的態様をとらえるための条件として、蛍光量の差分値の変極点を用いてもよい。
【0209】
図27は、第2しきい値設定モードにおける処理の別の態様を説明するための図である。図27(a)には、複数のサンプルのうち1つのサンプルについて測定される蛍光量の時間的変化を示し、図27(b)にはその単位時間当たりの変化量の時間的変化(蛍光量差分値)を示す。
【0210】
図27(b)を参照して、たとえば、蛍光量差分値が減少から増加に転じる時点(硬化用紫外線54の照射開始から時間t2経過後)を特徴点としてとらえ、このときに測定される蛍光量Pb(図27(a))に基づいて、しきい値α1を設定してもよい。すなわち、蛍光量差分値の変極点に着目して、しきい値α1を設定するための蛍光量Pbを算出していることになる。
【0211】
なお、蛍光量Pbを算出した後の処理は、係数β2に代えて係数β3を乗じる点を除いて、上述した図26に示すフローチャートと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0212】
このような「しきい値設定モード」を使用することで、紫外線硬化樹脂とワークとの組み合わせが多数存在する場合であっても、比較的容易かつ迅速にしきい値を設定することができるので、しきい値設定に係る時間を低減し、生産効率を低下させることを抑制できる。
【0213】
(しきい値設定その3)
上述の第1および第2しきい値設定モードでは、硬化反応の完了を判断するために測定される蛍光量と比較されるしきい値α1(図6)を設定する構成について説明したが、以下では、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taが経過時に測定される蛍光量と比較されるしきい値α3(図11)を設定するための第3しきい値設定モードについて説明する。
【0214】
第1しきい値設定モードと同様に、第3しきい値設定モードでも、サンプルとなる複数の紫外線硬化樹脂12(およびそれが塗布されたワーク)が製造ライン上に逐次的に搬送され、各紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54が照射されるとともに、各紫外線硬化樹脂12から生じる蛍光量が測定される。そして、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taが経過した時点の蛍光量が算出される。さらに、算出された複数の蛍光量のうち、最も小さいものに所定の係数β4を乗じたものがしきい値α3に設定される。なお、係数β4は、「1」より小さな値、たとえば「0.9」が用いられる。
【0215】
図28は、第3しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。図28には、複数のサンプルのうち1つのサンプルについて測定される蛍光量の時間的変化を示す。
【0216】
図28を参照して、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は単調増加していく。そして、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taが経過した時点の蛍光量Pcが算出される。同様に各時間的プロフィールにおいて蛍光量Pcが算出され、算出された蛍光量Pcの中でその値が最も小さいものに所定の係数β4が乗じられて、しきい値α3が決定される。
【0217】
図29は、第3しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。この処理は、ユーザが操作部44(図2)を操作して第3しきい値設定モードを選択することで処理が開始される。
【0218】
図29を参照して、まず、しきい値を設定するためのサンプル数の入力が受付けられる(ステップS800)。ユーザは、操作部44(図2)を操作してしきい値を設定するために使用するサンプルの数を入力する。そして、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されるまで待つ(ステップS802)。なお、硬化用紫外線54の照射を開始は、硬化用紫外線54の照射スポットにサンプルが配置されたことを検知するセンサ(図示しない)からの信号によって指示されてもよく、もしくはユーザが手動で照射開始を指示するようにしてもよい。
【0219】
光源部202から照射開始信号が開始されると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS804)。同時に、硬化用紫外線54の照射開始からの経過時間の計測が開始される(ステップS806)。そして、計測された経過時間が判定時間Taを経過したか否かが判断される(ステップS808)。経過時間が判定時間Taを経過していなければ(ステップS808においてNO)、判定時間Taを経過するまで処理は繰返される。
【0220】
経過時間が判定時間Taを経過していれば(ステップS808においてYES)、当該時点の測定された蛍光量が記憶部46に一旦格納される(ステップS810)。続いて、ステップS800において入力されたサンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されているか否かが判断される(ステップS812)。サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていなければ(ステップS812においてNO)、ステップS802以下の処理が繰返される。
【0221】
サンプル数と同数の蛍光量が格納されていれば(ステップS812においてYES)、格納されている蛍光量のうち、その値が最も小さいものが抽出され(ステップS814)、抽出された蛍光量の最大値に対して所定の係数β4が乗じられて、しきい値α3が算出される(ステップS816)。さらに、算出されたしきい値α3が記憶部46に格納され(ステップS818)、第3しきい値設定モードに係る処理は終了する。
【0222】
このような「しきい値設定モード」を使用することで、紫外線硬化樹脂とワークとの組み合わせが多数存在する場合であっても、比較的容易かつ迅速にしきい値を設定することができるので、しきい値設定に係る時間を低減し、生産効率を低下させることを抑制できる。
【0223】
なお、3種類のしきい値設定モードに係る処理について説明したが、必ずしも硬化反応検知装置100が全てのしきい値設定モードを備えておく必要はなく、ニーズに応じた処理を適宜組み込めばよい。
【0224】
本実施の形態において、硬化用紫外線54が「第1の紫外線」に相当し、励起紫外線50が「第2の紫外線」に相当する。そして、蛍光測定ヘッド部104が「照射手段」を実現し、蛍光測定ヘッド部104およびCPU40が「測定手段」を実現し、CPU40が「判断手段」を実現し、CPU40および表示部42が「第1表示手段」および「第2表示手段」を実現し、CPU40および記憶部46が「しきい値設定手段」を実現する。
【0225】
本実施の形態によれば、紫外線硬化樹脂が硬化用紫外線を受けて硬化反応を生じる際に、励起紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。この蛍光量は、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態と相関性を有するので、この蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応状態をリアルタイムに判断できる。
【0226】
このリアルタイムに判断できる硬化反応状態に基づいて、硬化反応の完了タイミングを的確に把握できるので、硬化用紫外線の照射時間を最適化でき、硬化反応の過剰や不足によって生じる不良品の発生を抑制できる。
【0227】
また、紫外線硬化樹脂の硬化反応の正常性をチェックできるので、さまざまな要因によって生じる硬化反応の異常を検出し、不良品の混入を防止できる。
【0228】
[実施の形態2]
上述の本実施の形態1においては、硬化反応検知装置100および光源装置200が互いに分離して配置される紫外線照射システム1について説明したが、硬化反応検知装置100および光源装置200の機能を一体的に形成してもよい。
【0229】
図30は、この発明の実施の形態2に従う硬化反応検知装置300の概略構成図である。
【0230】
図30を参照して、この発明の実施の形態2に従う硬化反応検知装置300は、この発明の実施の形態1に従う硬化反応検知装置100に光源装置200の機能を取込んだものに相当する。すなわち、硬化反応検知装置300は、ヘッド部304と、制御部302とからなり、ヘッド部304は、硬化用紫外線54および励起紫外線50を発生するとともに、紫外線硬化樹脂12から放射される蛍光52を受光して、検出される蛍光量を示す信号を制御部302へ出力する。また、制御部302は、上述のこの発明の実施の形態1に従う制御部102に光源部202に相当する機能を取込んだものに相当する。
【0231】
なお、ヘッド部304をより簡素化するために、共通の紫外線発生機構(たとえば、紫外線LED)を用いて、硬化用紫外線54および励起紫外線50を発生するようにしてもよい。共通の紫外線発生機構を用いる場合には、硬化用紫外線54として作用する直流(DC)成分と、励起紫外線50として作用するパルス成分とを合成したような、照射強度をもつ紫外線を発生させればよい。
【0232】
図31は、共通の紫外線発生機構を用いた場合の照射強度の時間的変化を示す図である。
【0233】
図31を参照して、ヘッド部304を共通の紫外線発生機構を用いて構成する場合には、図4(a)および図4(b)に示すそれぞれの照射強度を合成して得られる時間的変化を有するように照射強度が制御される。
【0234】
その他の構成については、上述のこの発明の実施の形態1で説明した内容と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0235】
本実施の形態によれば、硬化用紫外線と励起紫外線とを共通のヘッド部で発生することができるので、システム全体としての構成が簡素化でき、価格面や必要とされる空間などの面でより有利となる。
【0236】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】この発明の実施の形態1に従う紫外線照射システムの概略構成図である。
【図2】硬化反応検知装置のより詳細な概略構成図である。
【図3】蛍光測定ヘッド部とワークとの間の光学的な配置図である。
【図4】蛍光測定に係る各部の時間波形を示すタイムチャートである。
【図5】測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了を判断するための処理ブロック図である。
【図6】測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了判断に係るタイムチャートである。
【図7】測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了判断に係るフローチャートである。
【図8】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了を判断するための処理ブロック図である。
【図9】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了判断に係るタイムチャートである。
【図10】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了判断に係るフローチャートである。
【図11】蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。
【図12】蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。
【図13】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。
【図14】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。
【図15】測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。
【図16】測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。
【図17】表示部における表示内容の一例を示す図である。
【図18】表示部における硬化反応の進行度合表示の一例を示す図である。
【図19】表示部における硬化反応の進行度合表示の別の一例を示す図である。
【図20】硬化反応の進行度合を算出する過程を説明するための図である。
【図21】ユーザが反応完了時間を設定する場合の表示部での表示例を示す。
【図22】保護メガネを装着した状態での視認可能特性の一例を示す図である。
【図23】第1しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。
【図24】第1しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。
【図25】第2しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。
【図26】第2しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。
【図27】第2しきい値設定モードにおける処理の別の態様を説明するための図である。
【図28】第3しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。
【図29】第3しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。
【図30】この発明の実施の形態2に従う硬化反応検知装置の概略構成図である。
【図31】共通の紫外線発生機構を用いた場合の照射強度の時間的変化を示す図である。
【符号の説明】
【0238】
1 紫外線照射システム、6 基材、8 被着体、12 紫外線硬化樹脂、20 投光駆動回路、22 投光素子、24 ハーフミラー、26 光フィルタ、28 受光素子、30 HPF、32 増幅回路、34 サンプルホールド回路(S/H)、36 アナログデジタル変換部(ADC)、38 集束レンズ、42 表示部、44 操作部、46 記憶部、48 インターフェイス部(I/F)、50 励起紫外線、52 蛍光、54 硬化用紫外線、100,300 硬化反応検知装置、102,302 制御部、104 蛍光測定ヘッド部、106 表示灯、120,120A 判断部、122 時間変化量算出部、124,124A 判断部、200 光源装置、202 光源部、204 照射ヘッド部、304 ヘッド部、422,424,428,442 数値表示領域、426 結果表示領域、430 インジケータ表示領域、440 選択操作領域、444 数値操作領域、446 プロフィール表示領域。
【技術分野】
【0001】
この発明は紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射システム、それに用いられる硬化反応検知装置およびそれを用いた紫外線硬化樹脂の硬化方法に関し、特に紫外線硬化樹脂の硬化反応状態をリアルタイムで判断する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの産業分野において、接着剤やコーティング剤の硬化方法として紫外線硬化法(Ultra Violet Curing)が利用されている。紫外線硬化法は、熱エネルギーを利用する熱硬化方法に比較して、有害物質を大気中に放散しない、硬化時間が短い、熱に弱い製品にも適応できるなどの多くの利点を有している。
【0003】
紫外線硬化法では、紫外線照射前においては主に液体である一方、紫外線照射後においては固体に変化する紫外線硬化樹脂が用いられる。このような紫外線硬化樹脂は、主剤としてモノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を含み、さらに光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、照射される紫外線を受けてラジカルやカチオンを発生し、発生したラジカルやカチオンがモノマーやオリゴマーと重合反応を生じる。この重合反応に伴いモノマーやオリゴマーはポリマーに変化し、分子量が極めて大きくなるとともに、融点が低下する。この結果、紫外線硬化樹脂は液体状態を維持できなくなって固体に変化する。
【0004】
一方、目視による紫外線硬化樹脂の硬化度や品質異常有無の判断は困難であり、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を容易に判断する方法が要望されている。そこで、たとえば特許第2651036号公報(特許文献1)には、硬化可能コーティング材料の硬化程度を監視する方法が開示されている。この方法によれば、紫外線硬化可能材料と、硬化可能材料の硬化度の関数として変化するような発光を行なう蛍光成分を含むプローブとからなる材料系に対して、紫外線硬化可能材料の硬化度を測定するためにプローブの発光を測定するステップを含む。
【特許文献1】特許第2651036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許第2651036号公報(特許文献1)に開示されるように、硬化可能材料の硬化度の関数として変化するように発光するプローブを紫外線硬化樹脂に添加する方法は、汎用的な紫外線硬化法に適用することが困難である場合が多い。すなわち、上述のプローブのように特別な材料を添加することはコスト的に不利であり、また、品質上の観点からそのようなプローブを添加することが許容されない場合も多い。
【0006】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、汎用的な紫外線硬化樹脂に対してその硬化反応状態をリアルタイムで判断できる紫外線照射システム、それに用いられる硬化反応検知装置およびそれを用いた紫外線硬化樹脂の硬化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、紫外線硬化樹脂に対する紫外線照射に応じて、紫外線硬化樹脂に含まれる光重合開始剤自体が紫外線硬化樹脂の状態(たとえば、硬化度)と相関のある観測可能な蛍光を放射する事実を見出し、この事実を利用した紫外線硬化樹脂の状態推定方法を特願2006−071580号として出願した。本願発明は、この紫外線硬化樹脂の状態と相関のある観測可能な蛍光を利用して、上述の課題を解決するものである。
【0008】
この発明のある局面に従えば、モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射システムである。この紫外線照射システムは、紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するための第1の紫外線を照射する光源装置と、硬化反応検知装置とを備える。そして、硬化反応検知装置は、紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射する照射手段と、照射手段によって照射される第2の紫外線を受けて光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する測定手段と、測定手段によって測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断する判断手段とを含む。
【0009】
この局面に従う紫外線照射システムによれば、第1の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するとともに、第2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。この蛍光量は、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態と相関性を有するので、この蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応状態をリアルタイムに判断できる。
【0010】
好ましくは、硬化反応検知装置は、光源装置からの第1の紫外線の照射が開始されると、第2の紫外線の照射および蛍光量の測定を開始するように構成され、かつ、光源装置からの第1の紫外線の照射が終了すると、第2の紫外線の照射および蛍光量の測定を終了するように構成される。
【0011】
好ましくは、判断手段は、測定された蛍光量が所定のしきい値を超過すると、光源装置に対して第1の紫外線の照射の終了を指示する。
【0012】
好ましくは、判断手段は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定のしきい値を下回ると、光源装置に対して第1の紫外線の照射の終了を指示する。
【0013】
好ましくは、光源装置は、時間的に略一定の強度をもつ第1の紫外線を照射し、照射手段は、周期的に強度が変化する第2の紫外線を照射し、測定手段は、測定された蛍光量のうち、照射手段によって放射される第2の紫外線の強度変化周期に対応する周期成分に基づいて、光重合開始剤から放射される蛍光量として抽出する。
【0014】
この発明の別の局面に従えば、モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂が第1の紫外線を受けて生じる硬化反応を検知する硬化反応検知装置である。この硬化反応検知装置は、紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射する照射手段と、照射手段によって照射される第2の紫外線を受けて光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する測定手段と、測定手段によって測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断する判断手段とを含む。
【0015】
この局面に従う硬化反応検知装置によれば、紫外線硬化樹脂が第1の紫外線を受けて硬化反応を生じる際に、第2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。この蛍光量は、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態と相関性を有するので、この蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応状態をリアルタイムに判断できる。
【0016】
好ましくは、判断手段は、測定された蛍光量が所定のしきい値を超過すると、当該硬化反応が完了したと判断する。
【0017】
また好ましくは、判断手段は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定のしきい値を下回ると、当該硬化反応が完了したと判断する。
【0018】
さらに好ましくは、判断手段は、硬化反応が完了したと判断すると、第1の紫外線の照射の終了を指示する。
【0019】
また好ましくは、判断手段は、第1の紫外線の照射開始から所定時間経過後において、測定された蛍光量が所定のしきい値を下回っていれば、当該硬化反応が異常であると判断する。
【0020】
また好ましくは、判断手段は、第1の紫外線の照射開始から所定時間経過後において、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定の範囲外にあれば、当該硬化反応が異常であると判断する。
【0021】
また好ましくは、判断手段は、予め定められた基準の時間的挙動を参照して、測定された蛍光量から硬化反応の正常性を判断する。
【0022】
さらに好ましくは、判断手段は、基準の時間的挙動に対する測定された蛍光量の偏差が所定範囲外になると、当該硬化反応が異常であると判断する。
【0023】
好ましくは、基準の時間的挙動と測定された蛍光量の時間的挙動とを同一座標上に表示するための第1表示手段をさらに備える。
【0024】
さらに好ましくは、第1表示手段は、基準の時間的挙動に対する測定された蛍光量の偏差の時間的挙動をさらに表示するように構成される。
【0025】
好ましくは、第1の紫外線を受けて生じる紫外線硬化樹脂の硬化反応の進行度合を表示するための第2表示手段をさらに備える。
【0026】
さらに好ましくは、第2表示手段は、硬化反応が完了したとみなされる蛍光量である反応完了蛍光量に対する測定された蛍光量の比率に基づいて、硬化反応の進行度合を算出する。
【0027】
さらに好ましくは、第2表示手段は、予め測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、反応完了蛍光量を算出する。
【0028】
またさらに好ましくは、第2表示手段は、外部からの入力値に応じて反応完了蛍光量を変更可能に構成される。
【0029】
好ましくは、第2表示手段は、硬化反応の進行度合を数値表示するように構成される。
また好ましくは、第2表示手段は、硬化反応の進行度合をインジケータ表示するように構成される。
【0030】
好ましくは、第2表示手段は、第1および第2の紫外線の波長帯域から長波長側に所定の長さ以上離れた波長帯域を有する色を用いて硬化反応の進行度合を表示するように構成される。
【0031】
好ましくは、測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える。
【0032】
また好ましくは、測定された蛍光量の時間的挙動において所定の特徴的態様が生じた時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える。
【0033】
さらに好ましくは、しきい値設定手段は、蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定の範囲内になった時点の蛍光量に基づいて所定のしきい値を設定する。
【0034】
好ましくは、測定された蛍光量の時間的挙動において第1の紫外線の照射開始から所定時間経過時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える。
【0035】
好ましくは、照射手段によって第2の紫外線が照射される期間中に、第2の紫外線の照射を視覚的に通知するための視覚的通知手段をさらに備える。
【0036】
好ましくは、第1の紫外線を発生するための光源部をさらに備える。
この発明のさらに別の局面に従えば、紫外線照射システムを用いたモノマーまたはオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂の硬化方法である。紫外線照射システムは、光源装置と硬化反応検知装置とを備える。この紫外線硬化樹脂の硬化方法は、光源装置から紫外線硬化樹脂を硬化させるための第1の紫外線を照射するステップと、硬化反応検知装置から紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射するステップと、第2の紫外線を受けて光重合開始剤から放射される蛍光量を測定するステップと、測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断するステップと、判断された硬化反応状態に基づいて、第1の紫外線の照射を制御するステップとを含む。
【0037】
この局面に従う紫外線硬化樹脂の硬化方法によれば、第1の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するとともに、第2の紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。この蛍光量は、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態と相関性を有するので、この蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応状態をリアルタイムに判断できる。
【発明の効果】
【0038】
この発明によれば、汎用的な紫外線硬化樹脂に対してその硬化反応状態をリアルタイムで判断できる紫外線照射システム、それに用いられる硬化反応検知装置およびそれを用いた紫外線硬化樹脂の硬化方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0040】
[実施の形態1]
(紫外線照射システムの概略構成)
図1は、この発明の実施の形態1に従う紫外線照射システム1の概略構成図である。
【0041】
図1を参照して、この発明の実施の形態1に従う紫外線照射システム1は、紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するための硬化用紫外線54を放射する光源装置200と、紫外線硬化樹脂が硬化用紫外線を受けて生じる硬化反応を検知する硬化反応検知装置100とからなる。そして、紫外線照射システム1は、一例として、基材6の上に被着体8を配置し、紫外線硬化樹脂12を用いて両者を接着するような製造ラインに配置される。なお、基材6、被着体8および紫外線硬化樹脂12を一体として「ワーク」とも称す。紫外線硬化樹脂12は、モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と、光重合開始剤とを含み、紫外線を受けて硬化反応を生じる。
【0042】
光源装置200は、硬化用紫外線54を発生する照射ヘッド部204と、照射ヘッド部204を駆動するための光源部202とからなる。照射ヘッド部204は、硬化用紫外線54の発生機構であり、一例として、紫外線LED(Light Emitting Diode)や紫外線ランプなどからなる。照射ヘッド部204から放射された硬化用紫外線54が紫外線硬化樹脂12に入射するように、照射ヘッド部204は、たとえばワークの垂直上部に配置される。光源部202は、照射ヘッド部204と電気的に接続され、照射ヘッド部204から硬化用紫外線54を生成するための駆動電力を供給する。本実施の形態では、硬化用紫外線54は、時間的に略一定の強度で照射される。すなわち、硬化用紫外線54の照射強度は、主として直流(DC)成分からなる。
【0043】
また、光源部202は、硬化反応検知装置100と電気的に接続され、硬化用紫外線54の照射状態信号、たとえば、照射開始信号や照射終了信号を硬化反応検知装置100へ送出する。さらに、光源部202は、ユーザや外部装置からの照射開始指令(図示しない)に応じて、硬化用紫外線54の照射を開始するように構成されるとともに、硬化反応検知装置100からの照射終了指示に応答して、硬化用紫外線54の照射を停止するように構成される。
【0044】
硬化反応検知装置100は、蛍光測定ヘッド部104と、制御部102とからなる。蛍光測定ヘッド部104は、制御部102から受けた照射指令に応答して、紫外線硬化樹脂12を活性化させるための励起紫外線50を発生し、紫外線硬化樹脂12に向けて照射するとともに、紫外線硬化樹脂12から放射される蛍光52を受光して、検出された蛍光量を示す信号を制御部102へ出力する。また、蛍光測定ヘッド部104の上部には、励起紫外線50の照射期間中に励起紫外線50の照射を視覚的に通知するための表示灯106が設けられる。表示灯106は、励起紫外線50の照射期間中に点滅するなどして、周囲にいるユーザに紫外線が照射されることを知らせ、防護処置をとるように促すものである。
【0045】
制御部102は、光源装置200の照射状態に応じて蛍光測定ヘッド部104へ照射指令を与えるとともに、蛍光測定ヘッド部104から出力される蛍光量を示す信号に基づいて、紫外線硬化樹脂12に含まれる光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。より詳細には、制御部102は、光源部202から照射開始信号を受けると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令を与えて励起紫外線50の照射を開始するとともに、光重合開始剤から放射される蛍光量の測定を開始する。さらに、制御部102は、光源部202から照射終了信号を受けると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令を与えて励起紫外線50の照射を終了するとともに、光重合開始剤から放射される蛍光量の測定を終了する。
【0046】
さらに、制御部102は、測定された蛍光量の時間的挙動(たとえば、時間的プロフィール)に基づいて、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態を判断する。後述するように、この判断された硬化反応状態に応じて、制御部102は硬化用紫外線54の照射を制御したり、紫外線硬化樹脂12の硬化反応における異常発生の有無(正常性)を判断したりする。
【0047】
(紫外線硬化樹脂)
この発明の実施の形態1に従う紫外線照射システム1において使用される紫外線硬化樹脂12は、紫外線照射前においては主に液体である一方、紫外線照射後においては固体に変化(硬化)する。なお、本明細書において、「紫外線硬化樹脂」とは、その状態(紫外線照射前の液体状態、もしくは紫外線照射後における固体状態)にかかわらず総称的な意味で使用する。
【0048】
紫外線照射前(硬化前)における紫外線硬化樹脂は、モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方、光重合開始剤、ならびに各種添加剤を含む。モノマーおよびオリゴマーは主剤であり、紫外線を受けて光重合開始剤が発生するラジカルやカチオンにより重合反応(主鎖反応や架橋反応など)を生じる。そして、この重合反応に伴いモノマーおよびオリゴマーは、ポリマーに変化して分子量が極めて大きくなるとともに融点が低下する。この結果、紫外線硬化樹脂は液体から固体へ変化する。
【0049】
モノマーおよびオリゴマーは、一例として、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコンアクリレート、およびエポキシアクリレートなどからなる。モノマーは、単量体とも呼ばれ、重合反応によって重合体を合成する場合の原料となる状態である。一方、オリゴマーは、低重合体とも呼ばれ、重合度が2〜20程度の比較的重合度の低い状態である。
【0050】
光重合開始剤は、紫外線を受けてラジカルを発生するラジカル重合開始剤、および紫外線を受けてカチオンを発生するカチオン重合開始剤に大別される。なお、ラジカル重合開始剤は、アクリル系のモノマーおよびオリゴマーに対して使用され、カチオン重合開始剤は、エポキシ系やビニールエーテル系のモノマーおよびオリゴマーに対して使用される。さらに、ラジカル重合開始剤およびカチオン重合開始剤の混合物からなる光重合開始剤を用いてもよい。
【0051】
ラジカル重合開始剤は、ラジカルの発生過程に応じて、水素引抜型および分子内開裂型に大別される。水素引抜型は、一例として、ベンゾフェノンおよびオルソベンゾイル安息香酸メチルなどからなる。一方、分子内開裂型は、一例として、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、オキソベンゾイル安息香酸メチル(OBM)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド(BMS)、イソプロピルチオキサントン(IPTX)、ジエチルチオキサントン(DETX)、エチル4−(ジエチルアミノ)ベンゾエート(DAB)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−オン、ベンジルジメチルケタール(BDK)、および1,2αヒドロキシアルキルフェノンなどからなる。
【0052】
また、カチオン重合開始剤は、一例として、ジフェニルヨードニウム塩などからなる。
なお、本明細書において、「光重合開始剤」とは、光重合反応を開始させる能力が残存しているものに限らず、当初の光重合開始剤が光重合反応に寄与することによって変化したり光重合反応の対象となるモノマーやオリゴマーが周囲に存在しなかったりすることにより、もはや光重合反応の開始に寄与しない物質となったものをも含む意味で使用する。ここで、光重合開始反応に寄与した後の光重合開始剤は、多くの場合、ほぼ当初の分子の大きさを保持したまま、あるいは2つまたはそれ以上の数の分子に分裂した状態で、ポリマーの末端に結合している。
【0053】
上述したように、本願発明者らは、この紫外線硬化樹脂12に含まれる光重合開始剤自体が紫外線照射に応じて、紫外線硬化樹脂12の状態(たとえば、硬化度)と相関のある観測可能な蛍光を放射することを見出した。
【0054】
より詳細には、本願発明者らは、代表的な紫外線硬化樹脂(合計22種類)の各々に対して、波長365nmをもつ励起紫外線50を照射した場合に放射される光の波長について、スペクトルアナライザーを用いて調査した。この結果、いずれの紫外線硬化樹脂からも、励起紫外線50の波長より長い波長をもつ光(蛍光)が放射されていることを確認した。
【0055】
ここで、紫外線硬化樹脂に含まれる光重合開始剤は、以下のような性質を有する。
(1)重合反応を開始させるための活性種(ラジカルや酸など)を生成する能力(量子収率、モル吸光係数)が高い。
【0056】
(2)反応性の高い活性種を生成する。
(3)活性種の生成能力を発揮するための励起エネルギーのスペクトル域が紫外線領域である。
【0057】
すなわち、光重合開始剤は、紫外線を吸収しやすい分子構造のものが採用され、紫外線吸収したことによるエネルギー(電子)を他の分子に与えやすいものとなっている。
【0058】
一方、紫外線硬化樹脂の主剤であるモノマーおよびオリゴマーは、キャリア(電子)が分子内をスムーズに動きにくい構造をとるため、蛍光をほとんど発しないと考えられる。
【0059】
したがって、本願発明者らは、本質的に光重合開始材が紫外線を受けて蛍光を放射する性質を有する物質であると結論付けた。
【0060】
(硬化反応検知装置の概略構成)
図2は、硬化反応検知装置100のより詳細な概略構成図である。
【0061】
図2を参照して、制御部102は、CPU(Central Processing Unit)40と、表示部42と、操作部44と、記憶部46と、インターフェイス部(I/F)48とからなる。
【0062】
CPU40は、硬化反応検知装置100の全体処理を司る制御装置であって、記憶部46に格納されるプログラムを読込んで実行することで、以下に示す処理を実現する。具体的には、CPU40は、インターフェイス部48を介して光源部202(図1)から与えられる照射状態信号(照射開始信号や照射終了信号)に応答して、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令を与える。そして、蛍光測定ヘッド部104から与えられる蛍光量を示す信号に基づいて、光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。このように測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、CPU40は、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態を判断する。そして、当該硬化反応が完了したと判断されると、CPU40は、光源部202(図1)に照射終了指示を与えて硬化用紫外線54の照射を停止する。さらに、CPU40は、測定された蛍光量の時間的挙動を記憶部46に格納するとともに、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態を表示部42上に表示したり、インターフェイス部48を介して外部出力したりする。
【0063】
表示部42は、ユーザに対して硬化反応に係る情報を表示するための表示装置であり、一例として、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode-Ray Tube)などのディスプレイを含んで構成される。
【0064】
操作部44は、ユーザからの操作指令を受付ける指令入力装置であり、一例として、スイッチ、タッチパネルもしくはマウスなどから構成され、ユーザ操作に応じた操作指令をCPU40へ出力する。
【0065】
記憶部46は、CPU40で実行されるプログラムや過去の時間的挙動を不揮発的に格納可能な装置であり、一例として、ハードディスクやフラッシュメモリなどで構成される。
【0066】
インターフェイス部48は、外部装置とCPU40との間の通信を仲介するための装置であり、一例として、デジタルアナログ変換部(DAC)、USB(Universal Serial Bus)もしくはイーサネット(登録商標)などで構成される。
【0067】
また、蛍光測定ヘッド部104は、投光駆動回路20と、投光素子22と、ハーフミラー24と、光フィルタ26と、受光素子28と、HPF(High Pass Filter:高域通過フィルタ)30と、増幅回路32と、サンプルホールド回路(S/H:Sample and Hold)34と、アナログデジタル変換部(ADC)36とからなる。
【0068】
投光駆動回路20は、CPU40からの照射指令に応じて、投光素子22で励起紫外線50を発生させるための電力を供給する装置である。励起紫外線50は、光重合開始剤から放射される蛍光量をより正確に測定できるように、その強度が周期的に変化するように生成される。特に、本実施の形態では、励起紫外線50の強度がパルス状に変化する構成について説明する。そのため、投光駆動回路20は、CPU40からの照射指令が与えられる期間において、所定周期で変化するパルス状の駆動電力を投光素子22へ供給する。
【0069】
図3は、蛍光測定ヘッド部104とワークとの間の光学的な配置図である。
図2および図3を参照して、蛍光測定ヘッド部104は、集束レンズ38をさらに備え、投光素子22、ハーフミラー24、集束レンズ38および対象となる紫外線硬化樹脂12が共通の光軸Ax上に配置される。また、光軸Axに対して直角方向に向かう同一直線上に、ハーフミラー24、光フィルタ26および受光素子28が配置される。
【0070】
そして、投光駆動回路20から駆動電力を供給され、投光素子22で生成された励起紫外線50は、ハーフミラー24および集束レンズ38を通過して紫外線硬化樹脂12に集束するように照射される。そして、紫外線硬化樹脂12は、励起紫外線50の照射に応じて蛍光52を生成する。生成された蛍光52は、励起紫外線50と略同一の経路を逆方向に伝播してハーフミラー24に入射する。そして、励起紫外線50は、ハーフミラー24によって伝播方向に対して直角方向にその伝播経路を変化させ、光フィルタ26を介して受光素子28へ入射する。
【0071】
このように、ハーフミラー24が紫外線硬化樹脂12から受けた蛍光52の伝播方向を変化させることで、同一直線上を伝播する励起紫外線50と蛍光52とを分離することができ、微弱な強度を有する蛍光52を受光素子28によって確実に検出できる。
【0072】
投光素子22は、励起紫外線50を発生する紫外線発生装置であって、一例として紫外線LEDからなる。なお、投光素子22で発生する励起紫外線50の主発光ピークは365nmが好ましい。ハーフミラー24は、紫外線の入射方向によって、反射率を異ならしめる反射部材であり、一例として、その反射面は金属蒸着により形成される。光フィルタ26は、投光素子22から放射される励起紫外線50が直接的に受光素子28へ入射することを抑制するために配置されたものであり、紫外領域の光を減衰させる一方で可視領域の光を透過するように構成される。一例として、光フィルタ26は、波長が410nm以上の光を透過する誘電体多層膜のフィルタからなる。受光素子28は、一例としてフォトダイオードからなり、光フィルタ26を透過して入射する蛍光の強度に応じた電流を発生する。
【0073】
以下、紫外線硬化樹脂12に含まれる光重合開始剤から放射される蛍光量の測定方法とともに、HPF30、増幅回路32、サンプルホールド回路34、およびアナログデジタル変換部36について説明する。
【0074】
図1に示すように、本実施の形態に従う紫外線照射システム1では、紫外線硬化樹脂12に対して光源装置200から硬化用紫外線54が放射される。そのため、紫外線硬化樹脂12に含まれる光重合開始剤からは、励起紫外線50に加えて、硬化用紫外線54の照射に応じて蛍光が発生することも考えられる。そこで、本実施例では、それぞれの紫外線を周波数領域上で分離する。すなわち、主として直流(DC)成分の強度を有する硬化用紫外線54と、その強度に交流成分(一例として、パルス状変化)を含む励起紫外線50とを照射し、この照射によって測定される蛍光量を示す信号のうち、励起紫外線50の強度変化周期に対応する周期成分に基づいて、励起紫外線50によって生じた蛍光量を測定する。
【0075】
図4は、蛍光測定に係る各部の時間波形を示すタイムチャートである。
図4(a)は、硬化用紫外線54の照射強度の時間的変化を示す。図4(b)は、励起紫外線50の照射強度の時間的変化を示す。図4(c)は、受光素子28で測定される蛍光量の時間的変化を示す。図4(d)は、HPF30から出力される信号強度の時間的変化を示す。図4(e)は、サンプルホールド回路34から出力される蛍光量の時間的変化を示す。
【0076】
図4(a)に示すように、光源部202(図1)に照射開始指令が与えられると、照射ヘッド部204(図1)からは略一定の照射強度Pfをもつ硬化用紫外線54の照射が開始される。一例として、硬化用紫外線54の照射強度Pfは20mW程度に設定される。
【0077】
この硬化用紫外線54の照射開始に同期して、図4(b)に示すように、投光素子22(図2,3)からはその強度がゼロと照射強度Pdとを周期Tで交互に変化させる励起紫外線50の照射が開始される。また、各周期においてその強度が照射強度Pdとなる期間は時間Tp(Tp<T)である。一例として、照射強度Pdは12mWに設定され、周期Tは0.35msに設定され、時間Tpは18μsに設定される。
【0078】
光重合開始剤が放射する蛍光量は、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態と相関があるので、硬化用紫外線54の照射によって硬化反応が進行すると、図4(c)に示すように受光素子28で測定される蛍光量も変化する。すなわち、受光素子28で測定される蛍光量の時間的挙動は、紫外線硬化樹脂12の硬化反応状態に応じた全体的な増加に加えて、周期的に強度が変化する励起紫外線50に応じた局所的な時間的変化を含む。
【0079】
図2に示すHPF30は、このような受光素子28で測定される蛍光量の局所的な時間的変化を抽出するためのフィルタであり、励起紫外線50の強度変化周期に対応する周期成分(1/T)より高周波の成分を通過させるように設計される。このHPF30から出力される信号強度は、図4(d)に示すように主として硬化用紫外線54に由来する直流成分が除去され、励起紫外線50に由来する交流成分(パルス成分)が抽出される。ここで、HPF30からの出力信号における各パルスの最大振幅値(ピーク値)が励起紫外線50の照射によって紫外線硬化樹脂12(より正確には、光重合開始剤)から放射される蛍光量を示すことになる。
【0080】
そこで、図2に示す増幅回路32は、HPF30からの出力信号を所定の増幅率(電流電圧変換率)で増幅してサンプルホールド回路34へ出力する。そして、サンプルホールド回路34は、投光素子22が照射強度Pdの励起紫外線50を照射するタイミングに同期してHPF30からの出力信号をサンプリングし、サンプリングした信号値を次回のサンプリング時まで保持する。これにより、図4(e)に示すように、各パルスの最大振幅値に応じた値がサンプルホールド回路34から出力される。このサンプルホールド回路34から出力される信号(アナログの電圧信号)はアナログデジタル変換部36(図2)によってデジタル値に変換されて、蛍光量の測定値としてCPU40へ出力される。なお、測定誤差による影響を抑制するために、アナログデジタル変換部36から出力される蛍光量を平均化処理(一例として、移動平均処理)して、各時点における光重合開始剤の蛍光量としてもよい。たとえば、256個のデータに対して移動平均処理を実行する場合には、蛍光量の測定周期は89.6ms(=0.35ms×256個)となる。
【0081】
以上のように、硬化反応検知装置100は、硬化用紫外線54に対して周波数領域で分離可能な励起紫外線50を用いることで、硬化用紫外線54による蛍光の影響を排除して非常に微弱な蛍光量を検出できる。なお、図4では、説明の便宜上、紫外線硬化樹脂12の硬化時間が励起紫外線50の周期Tに比較して非常に短い場合について模式的に示したが、実際の紫外線硬化樹脂12の硬化時間は、励起紫外線50の周期T(一例として、0.35ms)に比較して非常に長い(数s〜数10s程度)。そのため、紫外線硬化樹脂12の硬化反応の完了時間に対して、十分に多くの励起紫外線50を紫外線硬化樹脂12へ照射することができるので、高い蛍光の測定精度を実現できる。
【0082】
また、硬化用紫外線54は時間的に略一定の強度で照射されることが多いが、硬化用紫外線54が周期的な強度変化を有する場合には、励起紫外線50の強度変化周期を硬化用紫外線54の強度変化周期とは異なる周期にしておく(例えば、硬化用紫外線54の強度変化周期よりも短い周期にしておく)ことで対処できる。
【0083】
さらに、紫外線照射システム1の周囲環境において、紫外線硬化樹脂12から放射される蛍光と同じ波長帯域を含む照明光が存在する場合には、この照明光が蛍光量測定に対して外乱光となる。この外乱光に対しても、上述と同様の方法で対処することが可能である。たとえば、周囲環境に存在する照明光の強度が商用電源の周波数に起因して周期的に変動するのであれば、励起紫外線50の強度変化周期をそのような商用電源の周波数に相当する周期に比較して短く設定すればよい。
【0084】
(硬化反応の完了判断に係る処理その1)
測定された蛍光量の時間的挙動に基づく硬化反応状態の判断処理の一例として、紫外線硬化樹脂12の硬化反応の完了判断を行なう処理について説明する。
【0085】
多くの紫外線硬化樹脂では、硬化反応の進行に伴って生じる蛍光量は増加する。これは、次のようなメカニズムによるものと考えられる。すなわち、硬化反応(すなわち、重合反応)の進行に伴って光重合開始剤が消費され、未反応の光重合開始剤が減少するので、光重合開始剤で吸収される紫外線照射による光エネルギーのうち、重合反応を生じるための活性種(ラジカルや酸など)の生成に使用される化学的エネルギーとしての使用量が減少することになる。一方で、光重合開始剤は、重合反応に使用された後であっても、紫外線を吸収しやすい性質を残しているため、光重合開始剤が励起紫外線50を吸収することで生じる光エネルギー量は維持されて、蛍光や熱といった化学的エネルギーとは異なる形のエネルギーに変換される。この結果、紫外線硬化樹脂の硬化反応の進行に従って蛍光量が増加する傾向が現れる。さらに、このような傾向は、紫外線硬化樹脂の基本的な組成に由来するものであるから、多くの紫外線硬化樹脂に共通してみられるものとなる。
【0086】
したがって、紫外線硬化樹脂12から放射される蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断することができる。以下では、測定された蛍光量と所定のしきい値との比較によって、硬化反応の完了を判断する構成について例示する。
【0087】
図5は、測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了を判断するための処理ブロック図である。この処理ブロック図は、制御部102のCPU40(図2)で実行されるプログラムによって実現される。
【0088】
図5を参照して、判断部120は、測定された蛍光量と予め設定されるしきい値α1とを比較し、測定された蛍光量がしきい値α1を超過すると「硬化反応完了」を発する。なお、この「硬化反応完了」が発せられると、硬化反応検知装置100(CPU40)から光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線50の照射も停止される。
【0089】
しきい値α1は、対象とされる紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別にしきい値α1を予め実験的に求めて、記憶部46(図2)などに格納しておき、使用する際に、ユーザが対象となる紫外線硬化樹脂に応じたしきい値α1を選択するようにしてもよい。
【0090】
図6は、測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了判断に係るタイムチャートである。図6(a)は、測定される蛍光量の時間的変化を示し、図6(b)は、硬化反応完了の発生タイミングを示す。なお、図6の時間軸は、硬化用紫外線54の照射開始タイミングを基準としている。
【0091】
図6(a)を参照して、一例として、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は単調増加する。この単調増加する蛍光量が所定のしきい値α1を超過すると、図6(b)に示すように、硬化反応が完了したと判断され、「硬化反応完了」が発せられる。
【0092】
図7は、測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了判断に係るフローチャートである。この図7に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0093】
図7を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS100)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS100においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0094】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS100においてYES)、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS102)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS104)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。
【0095】
そして、取得された蛍光量がしきい値α1を超過しているか否かが判断される(ステップS106)。取得された蛍光量がしきい値α1を超過していなければ(ステップS106においてNO)、硬化反応の未完了と判断され(ステップS108)、ステップS104以下の処理が繰返される。
【0096】
取得された蛍光量がしきい値α1を超過していれば(ステップS106においてYES)、硬化反応の完了と判断される(ステップS110)。そして、光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される(ステップS112)。そして、処理は終了する。
【0097】
このように、測定された蛍光量に基づいて硬化反応の完了判断を行なうことで、硬化用紫外線54の照射強度の大きさにかかわらず、紫外線硬化樹脂12の硬化反応を確実に完了させることができる。同時に、硬化用紫外線54の照射時間を最適化できるので、紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54を過剰に照射することを抑制できる。これにより、特に、寿命が比較的短く、硬化用紫外線54の照射に要するコストが比較的高価となる紫外線ランプを用いる場合において、各ワークあたりのコストを抑制することができるとともに、紫外線ランプの交換に伴うラインの停止時間を抑制できる。
【0098】
なお、上述の説明では、測定された蛍光量がしきい値α1を超過すると「硬化反応完了」を即座に発する構成について説明したが、測定された蛍光量がしきい値α1を超過してから所定期間が経過した時点で「硬化反応完了」を発するように構成してもよい。
【0099】
(硬化反応の完了判断に係る処理その2)
上述したような測定された蛍光量に基づいて硬化反応の完了を判断する構成に代えて、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量(差分値もしくは微分値)に基づいて硬化反応の完了を判断する構成を採用してもよい。
【0100】
すなわち、硬化反応に伴う蛍光量の増大速度は、紫外線の照射による光重合開始剤の消費速度に依存するので、硬化反応が十分に行なわれた、すなわち十分に重合反応が進行した後には蛍光量の増大速度は低下する。そこで、蛍光量の単位時間当たりの変化量と所定のしきい値との比較によって、硬化反応の完了を判断することができる。
【0101】
図8は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了を判断するための処理ブロック図である。この処理ブロック図は、制御部102のCPU40(図2)で実行されるプログラムによって実現される。
【0102】
図8を参照して、時間変化量算出部122は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量を算出し、判断部124へ出力する。一例として、時間変化量算出部122は、差分演算器からなり、所定の単位時間毎に蛍光量をサンプリングするとともに、今回の蛍光量と前回の蛍光量との差分値を単位時間当たりの変化量として出力する。なお、以下の説明においても、「測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量」の一例として「蛍光量の差分値」を用いる。
【0103】
判断部124は、時間変化量算出部122で算出された蛍光量の単位時間当たりの変化量(蛍光量の差分値)と予め設定されるしきい値α2とを比較し、蛍光量の差分値がしきい値α2を超過すると「硬化反応完了」を発する。なお、この「硬化反応完了」が発せられると、硬化反応検知装置100(CPU40)から光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線50の照射も停止される。
【0104】
しきい値α2は、対象とされる紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別にしきい値α2を予め実験的に求めて、記憶部46(図2)などに格納しておき、使用する際に、ユーザが対象となる紫外線硬化樹脂に応じたしきい値α2を選択するようにしてもよい。
【0105】
図9は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了判断に係るタイムチャートである。図9(a)は、測定される蛍光量およびその単位時間当たりの変化量の時間的変化を示し、図9(b)は、硬化反応完了の発生タイミングを示す。なお、図9の時間軸は、硬化用紫外線54の照射開始タイミングを基準としており、図9(a)に示す各波形の基準点(ゼロ点)は共通ではない。
【0106】
図9(a)を参照して、一例として、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は単調増加する。一方で、その蛍光量の単位時間当たりの変化量(蛍光量差分値)は単調減少する。そして、この蛍光量差分値が所定のしきい値α2を下回ると、図9(b)に示すように、硬化反応が完了したと判断され、「硬化反応完了」が発せられる。
【0107】
図10は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了判断に係るフローチャートである。この図10に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0108】
図10を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS200)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS200においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0109】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS200においてYES)、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS202)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS204)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。さらに、前回取得された蛍光量と今回取得された蛍光量とに基づいて、蛍光量の差分値が算出される(ステップS206)。
【0110】
そして、算出された蛍光量の差分値がしきい値α2を下回っているか否かが判断される(ステップS208)。取得された蛍光量がしきい値α2を下回っていなければ(ステップS208においてNO)、硬化反応の未完了と判断され(ステップS210)、ステップS204以下の処理が繰返される。
【0111】
算出された蛍光量の差分値がしきい値α2を下回っていれば(ステップS208においてYES)、硬化反応の完了と判断される(ステップS212)。そして、光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される(ステップS214)。そして、処理は終了する。
【0112】
このように、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づいて硬化反応の完了判断を行なうことで、測定された蛍光量の絶対値が変動しても硬化反応の完了を高い精度で判断できる。そのため、同一の紫外線硬化樹脂であれば、その塗布量にかかわらず共通のしきい値を用いることができるので、対象のワークに塗布される紫外線硬化樹脂の量にバラツキがあっても、高い判断精度を維持できる。
【0113】
さらに、硬化用紫外線54の照射時間を最適化できるので、紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54を過剰に照射することを抑制できる。これにより、特に、寿命が比較的短く、硬化用紫外線54の照射に要するコストが比較的高価となる紫外線ランプを用いる場合において、各ワークに要するコストを抑制することができるとともに、紫外線ランプの交換に伴うラインの停止時間を抑制できる。
【0114】
なお、上述の説明では、蛍光量の単位時間当たりの変化量(蛍光量の差分値)がしきい値α2を下回ると「硬化反応完了」を即座に発する構成について説明したが、蛍光量の差分値がしきい値α2を下回ってから所定期間が経過した時点で「硬化反応完了」を発するように構成してもよい。
【0115】
(硬化反応の異常判断に係る処理その1)
さらに、測定された蛍光量の時間的挙動に基づく硬化反応状態の判断処理の一例として、紫外線硬化樹脂12の硬化反応の異常判断を行なう処理について説明する。
【0116】
実際の製造ラインでは、さまざまな要因によって紫外線硬化樹脂の硬化反応が正常に行なわれない場合がある。その要因の一つとしては、紫外線硬化樹脂の劣化などが想定される。紫外線硬化樹脂は、嫌気性接着剤であり、大気中に長時間放置されると大気中の酸素と光重合開始剤とが結合して、紫外線を受けても十分な量のラジカルやカチオンを発生することができなくなる。このような場合には、紫外線硬化樹脂で十分な硬化反応が生じない。
【0117】
また、別の要因としては、塗布される紫外線硬化樹脂の量の大きなバラツキや、硬化用紫外線54の照射スポットずれなども想定される。さらに別の要因としては、製造ライン上を流れるワークが変更されたにもかかわらず、塗布する紫外線硬化樹脂の量や種類の変更し忘れなども想定される。
【0118】
このように、さまざまな要因によって生じ得る紫外線硬化樹脂における硬化反応の異常を見つけ出して、不良ワークの混入を防止することが実際の製造ラインでは重要となる。そこで、硬化用紫外線54の照射開始から所定時間経過後において、十分な蛍光量が測定されているか否かに基づいて、硬化反応が異常であるか否かを判断する。以下では、硬化用紫外線54の照射開始から所定時間経過後に測定された蛍光量と所定のしきい値との比較によって、硬化反応が異常であるか否かを判断する構成について例示する。
【0119】
蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係る処理ブロックは図5に示した処理ブロックと同様である。図5を参照して、判断部120Aは、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taが経過時において、測定される蛍光量と予め設定されるしきい値α3とを比較し、測定された蛍光量がしきい値α3を下回っていれば「硬化反応異常」を発する。なお、この「硬化反応異常」が発せられると、硬化反応検知装置100(CPU40)から光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線50の照射も停止される。さらに、硬化反応が異常であったことがユーザや図示しない外部の制御装置などへも通知される。
【0120】
しきい値α3は、対象とされる紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別にしきい値α3を予め実験的に求めて、記憶部46(図2)などに格納しておき、使用する際に、ユーザが対象となる紫外線硬化樹脂に応じたしきい値α3を選択するようにしてもよい。
【0121】
図11は、蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。図11(a)は、正常時および異常時の別に硬化反応の進行に伴って測定される蛍光量の時間的変化を示す。図11(b)および図11(c)は、それぞれ正常時および異常時における「硬化反応異常」の出力変化を示す。なお、図11の時間軸は、硬化用紫外線54の照射開始タイミングを基準としている。
【0122】
図11(a)を参照して、一例として、硬化用紫外線54の照射が開始されると、硬化反応の正常時および異常時のいずれの場合にも、測定される蛍光量は単調増加する。硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taの経過時点において、正常時の蛍光量はしきい値α3を超過しているが、異常時の蛍光量はしきい値α3を下回っている。そのため、図11(b)に示すように、正常時には「硬化反応異常」が出力されることはなく、硬化反応の正常が間接的に通知される。一方、図11(c)に示すように、異常時には判定時間Taの経過時点において「硬化反応異常」が出力され、硬化反応での異常発生が通知される。
【0123】
図12は、蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。この図12に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0124】
図12を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS300)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS300においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0125】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS300においてYES)、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS302)。同時に、硬化用紫外線54の照射開始からの経過時間の計測が開始される(ステップS304)。そして、計測された経過時間が判定時間Taを経過したか否かが判断される(ステップS306)。経過時間が判定時間Taを経過していなければ(ステップS306においてNO)、判定時間Taを経過するまで処理は繰返される。
【0126】
経過時間が判定時間Taを経過していれば(ステップS306においてYES)、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS308)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。
【0127】
そして、取得された蛍光量がしきい値α3を下回っているか否かが判断される(ステップS310)。取得された蛍光量がしきい値α3を下回っていなければ(ステップS310においてNO)、硬化反応が正常であると判断される(ステップS312)。この場合には、「硬化反応異常」が出力されることはない。そして、処理は終了する。
【0128】
一方、取得された蛍光量がしきい値α3を下回っていれば(ステップS310においてYES)、硬化反応が異常であると判断され(ステップS314)、「硬化反応異常」が出力される(ステップS316)。そして、処理は終了する。
【0129】
このように、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Ta経過時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の異常発生を判断することで、硬化反応が不十分なワークが混入することを防止できる。
【0130】
(硬化反応の異常判断に係る処理その2)
上述したような硬化用紫外線54の照射開始から所定の判定時間が経過した時点の蛍光量に基づいて硬化反応の異常発生を判断する構成に代えて、所定の判定時間が経過した時点における蛍光量の単位時間当たりの変化量(差分値もしくは微分値)に基づいて硬化反応の異常発生を判断する構成を採用してもよい。
【0131】
紫外線硬化樹脂の硬化反応が正常に実行されない要因のうち、特に、照射ヘッド部204(図1)から紫外線硬化樹脂12までの距離のズレや、照射スポットのズレなどは、紫外線硬化樹脂12における硬化反応の進行速度に基づいて判断することができる。すなわち、照射ヘッド部204が紫外線硬化樹脂12に対して基準値より接近して配置された場合には、紫外線硬化樹脂12に照射される硬化用紫外線54の照射強度は規定値より大きくなり、過剰な硬化反応が生じることになる。逆に、照射ヘッド部204が紫外線硬化樹脂12に対して基準値より離れて配置された場合には、紫外線硬化樹脂12に照射される硬化用紫外線54の照射強度は規定値より小さくなり、硬化反応は反応不足となる。反応過剰になれば、紫外線硬化樹脂12は黒く変色し、「焦げた」ような状態になる。また、反応不足になれば、紫外線硬化樹脂12は十分に硬化しない。
【0132】
このように、紫外線硬化樹脂12に照射される硬化用紫外線54の照射強度が規定値と大きく相違するような場合には、紫外線硬化樹脂12で生じる硬化反応の進行速度も規定値から大きく相違する。そこで、硬化反応の進行速度、すなわち測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定範囲内にあるか否かに基づいて、紫外線硬化樹脂12での硬化反応に異常が発生しているか否かを判断できる。
【0133】
蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係る処理ブロックは図8に示した処理ブロックと同様である。図8を参照して、判断部124Aは、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Tbの経過時に、時間変化量算出部122から測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量を取得し、予め設定されるしきい値α4およびα5と比較する。なお、判定時間Tbは、上述の図5および図11に示す判定時間Taに比較して小さくなるように設定される。すなわち、硬化用紫外線54の照射強度のバラツキによる影響度は、硬化反応の初期段階において相対的に大きくなるからである。
【0134】
そして、蛍光量の単位時間当たりの変化量がしきい値α4からしきい値α5までの範囲外にあれば「硬化反応異常」を発する。なお、この「硬化反応異常」が発せられると、硬化反応検知装置100(CPU40)から光源部202へ照射終了指示が与えられ、硬化用紫外線54の照射が停止される。これに伴って、励起紫外線50の照射も停止される。さらに、硬化反応が異常であったことがユーザや図示しない外部の制御装置などへも通知される。
【0135】
しきい値α4,α5は、対象とされる紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別にしきい値α4,α5を予め実験的に求めて、記憶部46(図2)などに格納しておき、使用する際に、ユーザが対象となる紫外線硬化樹脂に応じたしきい値α4,α5を選択するようにしてもよい。
【0136】
図13は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。図13(a)は、正常時における硬化反応の進行に伴って測定される蛍光量の時間的変化およびその単位時間当たりの変化量、ならびに異常時(反応過剰および反応不足)における測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量についての時間的変化を示す。図13(b)および図13(c)は、それぞれ正常時および異常時における「硬化反応異常」の出力変化を示す。なお、図11の時間軸は、硬化用紫外線54の照射開始タイミングを基準としている。
【0137】
図13(a)を参照して、一例として、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は単調増加する。硬化反応が正常であれば、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Tbの経過時点における蛍光量の単位時間当たりの変化量は、しきい値α4からしきい値α5までの範囲内に存在する。
【0138】
一方、硬化用紫外線54の照射強度が強く、反応過剰となっている場合(反応異常時)には、硬化反応の進行速度が相対的に速いため、判定時間Tbの経過時点における蛍光量の単位時間当たりの変化量はしきい値α5を超過している。また、硬化用紫外線54の照射強度が弱く、反応不足となっている場合(反応異常時)には、硬化反応の進行速度が相対的に遅いため、判定時間Tbの経過時点における蛍光量の単位時間当たりの変化量はしきい値α4を下回っている。
【0139】
そのため、図13(b)に示すように、正常時には「硬化反応異常」が出力されることはなく、硬化反応の正常が間接的に通知される。一方、図13(c)に示すように、異常時には判定時間Tbの経過時点において「硬化反応異常」が出力され、硬化反応での異常発生が通知される。
【0140】
図14は、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。この図14に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0141】
図14を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS400)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS400においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0142】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS400においてYES)、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS402)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS404)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。さらに、前回取得された蛍光量と今回取得された蛍光量とに基づいて、蛍光量の差分値が算出される(ステップS406)。
【0143】
同時に、硬化用紫外線54の照射開始からの経過時間の計測が開始される(ステップS408)。そして、計測された経過時間が判定時間Tbを経過したか否かが判断される(ステップS410)。経過時間が判定時間Tbを経過していなければ(ステップS410においてNO)、判定時間Tbを経過するまでステップS406以下の処理が繰返される。
【0144】
経過時間が判定時間Tbを経過していれば(ステップS410においてYES)、当該時点における蛍光量の差分値がしきい値α4からしきい値α5までの範囲外であるか否かが判断される(ステップS412)。蛍光量の差分値がしきい値α4からしきい値α5までの範囲外でなければ(ステップS412においてNO)、すなわち蛍光量の差分値がしきい値α4からしきい値α5までの範囲内にあれば、硬化反応が正常であると判断される(ステップS414)。この場合には、「硬化反応異常」が出力されることはない。そして、処理は終了する。
【0145】
一方、蛍光量の差分値がしきい値α4からしきい値α5までの範囲外であれば(ステップS412においてYES)、硬化反応が異常であると判断され(ステップS416)、「硬化反応異常」が出力される(ステップS418)。そして、処理は終了する。
【0146】
このように、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Tb経過時点の蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づいて、硬化反応の異常発生を判断することで、反応過剰もしくは反応不足のワークが混入することを防止できる。
【0147】
(硬化反応の異常判断に係る処理その3)
上述の硬化反応の異常判断に係る処理その1およびその2で説明したように、測定された蛍光量の時間的挙動のある時点において硬化反応の異常発生を判断する構成に加えて、測定された蛍光量の時間的挙動(時間的プロフィール)の全体を参照して、硬化反応の正常性を判断してもよい。
【0148】
図15は、測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。図15(a)は、基準の時間的プロフィールおよび測定される蛍光量の時間的プロフィールの一例を示す。図15(b)は、基準の時間的プロフィールに対する測定される蛍光量の偏差の時間的変化の一例を示す。
【0149】
図15(a)を参照して、過去に測定された蛍光量の時間的プロフィールに基づいて、予め基準となる蛍光量の時間的プロフィール(以下、「基準プロフィール」とも記す)が記憶部46(図2)に格納される。なお、このような基準プロフィールは、同一の条件で測定される複数の蛍光量の時間的プロフィールを平均化処理などして予め設定される。さらに、この基準プロフィールは、紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別に設定されることが望ましい。
【0150】
この基準プロフィールと同一座標上に、各処理時に測定される蛍光量の時間的プロフィールが描画される。そして、各時点において、基準プロフィールの対応する蛍光量と測定される蛍光量との間の偏差が算出される。すると、この算出される偏差の時間的挙動は、図15(b)のようになる。ここで、紫外線硬化樹脂12の硬化反応期間中において、算出される蛍光量の偏差が所定の範囲内(±しきい値α6)に維持されていれば、紫外線硬化樹脂12の硬化反応は正常であると判断される。一方、蛍光量の偏差が所定の範囲外になれば、当該硬化反応は異常であると判断される。
【0151】
なお、制御部102の表示部42(図2)には、図15(a)および図15(b)に示すような画面が表示される。具体的には、制御部102のCPU40(図2)が記憶部46から基準プロフィールのデータを読出して、所定の座標を表示するための表示指令を表示部42へ与える。さらに、CPU40は、順次測定される蛍光量の値を当該座標上にプロットするように表示指令を表示部42へ与える。同時に、CPU40は、基準プロフィールの対応する蛍光量と測定される蛍光量との間の偏差を算出し、当該算出したデータが順次プロットされるように表示指令を表示部42へ与える。
【0152】
図16は、測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。この図16に示すフローチャートは制御部102のCPU40(図2)で実行される。
【0153】
図16を参照して、まず、光源部202から照射開始信号が与えられたか否かが判断される(ステップS500)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されたか否かが判断される。そして、光源部202から照射開始信号が与えられていなければ(ステップS500においてNO)、照射開始信号が与えられるまで処理は繰返される。
【0154】
光源部202から照射開始信号が与えられれば(ステップS500においてYES)、記憶部46から基準プロフィールのデータが読み出され(ステップS502)、表示部42上に当該基準プロファイルが表示される(ステップS504)。続いて、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS506)。
【0155】
続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS508)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。さらに、基準プロフィールの対応する蛍光量と測定される蛍光量との間の偏差が算出される(ステップS510)。そして、表示部42上に測定された蛍光量および算出された偏差が表示される(ステップS512)。
【0156】
さらに、ステップS510において算出された蛍光量の偏差が所定の範囲内であるか否かが判断される(ステップS514)。蛍光量の偏差が所定の範囲内であれば(ステップS514においてYES)、硬化反応が正常であると判断される(ステップS516)。この場合には、「硬化反応異常」が出力されることはない。
【0157】
一方、蛍光量の偏差が所定の範囲内でなければ(ステップS514においてNO)、すなわち蛍光量の偏差が所定の範囲外にあれば、硬化反応が異常であると判断され(ステップS518)、「硬化反応異常」が出力される(ステップS520)。
【0158】
続いて、光源部202から照射終了信号が与えられたか否かが判断される(ステップS522)。すなわち、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が終了したか否かが判断される。そして、光源部202から照射終了信号が与えられていなければ(ステップS522においてNO)、ステップS508以下の処理が繰返される。
【0159】
一方、光源部202から照射終了信号が与えられていれば(ステップS522においてYES)、処理は終了する。
【0160】
なお、上述の説明では、基準プロフィールの対応する蛍光量と測定される蛍光量との間の偏差が所定範囲外になると「硬化反応異常」を即座に発する構成について説明したが、測定された蛍光量が所定範囲外となる状態が所定期間維持される場合に「硬化反応完了」を発するように構成してもよい。
【0161】
このように、測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づいて、硬化反応の異常発生を判断することで、反応過剰もしくは反応不足のワークが混入することを防止できる。
【0162】
なお、3種類の硬化反応の異常判断に係る処理について上述したが、必ずしも硬化反応検知装置100が全ての処理を備えておく必要はなく、ニーズに応じた処理を適宜組み込めばよい。
【0163】
(ユーザインタフェース)
紫外線硬化樹脂12の硬化反応の進行状態や、上述のような硬化反応の完了判断処理や異常判断処理の結果などをユーザに通知するために、制御部102の表示部42(図2)には、各種のデータが表示される。なお、表示部42の表示状態は、CPU40からの表示指令によって制御される。
【0164】
図17は、表示部42における表示内容の一例を示す図である。
図17(a)に示すように、たとえば、紫外線硬化樹脂12の硬化反応に伴って測定される蛍光量およびその単位時間当たりの変化量が数値(デジット)表示される。5桁の7セグメント表示部からなる数値表示領域422には、測定された蛍光量(図17(a)には「380.62」が表示される例を示す)が逐次的に表示される。また、数値表示領域422の下段には、数値表示領域422を構成する7セグメント表示部より小さい5桁の7セグメント表示部からなる数値表示領域424が設けられる。この数値表示領域424には、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量(図17(b)には「000.85」が表示される例を示す)が逐次的に表示される。
【0165】
さらに、数値表示領域422および424の左側には、LEDなどからなる結果表示領域426が設けられる。結果表示領域426は、硬化反応の完了判断処理や異常判断処理の結果に応じて、その視覚的表示を変化させる。一例として、何らかの判断結果が出力されると、無灯状態から点灯状態もしくは点滅状態に以降したり、発光色を「緑」から「赤」に変化させたりする。
【0166】
より具体的な例としては、硬化用紫外線54の照射開始前には、結果表示領域426は無灯状態に維持される一方で、硬化用紫外線54の照射が開始されると、結果表示領域426は「赤」表示される。そして、紫外線硬化樹脂における硬化反応が完了したと判断されると、結果表示領域426は「緑」表示される。また、紫外線硬化樹脂における硬化反応が異常であると判断されると、結果表示領域426は「赤」の点滅状態に移行する。
【0167】
さらに、図17(b)に示すように、ユーザによる操作部44の操作に応答して、数値表示領域422および424に表示される数値を交互に入れ替えるようにしてもよい。すなわち、図17(b)には、数値表示領域422に測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が表示され、数値表示領域424に測定された蛍光量が表示される場合を例示する。
【0168】
(硬化反応の進行度合表示)
上述の図17(a)および図17(b)に示すようなユーザインタフェースに加えて、本実施の形態に従う硬化反応検知装置100では、紫外線硬化樹脂12で生じる硬化反応の進行度合を表示する。
【0169】
図18は、表示部42における硬化反応の進行度合表示の一例を示す図である。
図18を参照して、表示部42には、図17(a),図17(b)における数値表示領域424に代えて、数値表示領域428に硬化反応の進行度合が逐次的に数値(デジット)表示される(図18には「75%」が表示される例を示す)。
【0170】
さらに、このような数値表示に代えて、インジケータ表示するようにしてもよい。
図19は、表示部42における硬化反応の進行度合表示の別の一例を示す図である。
【0171】
図19を参照して、表示部42には、図18における数値表示領域428に代えて、インジケータ表示領域430に硬化反応の進行度合が表示される。たとえば、インジケータ表示領域430は、10段階のインジケータからなり、紫外線硬化樹脂12の硬化反応の進行度合に応じた数のインジケータが点灯する。
【0172】
このような硬化反応の進行度合は、硬化反応が完了したとみなされる蛍光量である反応完了蛍光量に対する測定される蛍光量の比率に基づいて算出される。具体的には、測定された蛍光量の時間的挙動(時間的プロフィール)が記憶部46(図2)に随時格納され、当該格納された時間的プロフィールの履歴に基づいて、基準となる時間的プロフィールが予め決定される。なお、この時間的プロフィールは、紫外線硬化樹脂の種類などによって変化するので、紫外線硬化樹脂の種類別に決定されることが望ましい。
【0173】
図20は、硬化反応の進行度合を算出する過程を説明するための図である。図20には、基準となる時間的プロフィールと、実際に測定される蛍光量の時間的推移を同じ座標に示す。
【0174】
図20を参照して、基準となる時間的プロフィールに基づいて、硬化反応が完了したとみなされる反応完了蛍光量Faが予め取得される。そして、各時点で測定される蛍光量F(t)をこの反応完了蛍光量Faで割ることによって、硬化反応の進行度合が算出される。すなわち、硬化反応の進行度合=蛍光量F(t)/反応完了蛍光量Faとなる。したがって、CPU40では、反応完了蛍光量Faが予め設定されるとともに、蛍光量が測定されるタイミングで、上述のような硬化反応の進行度合が算出され、表示部42における表示値が更新される。
【0175】
代替的に、硬化反応が完了したとみなされる反応完了時間Taに基づいて、硬化反応の進行度合を算出してもよい。すなわち、硬化用紫外線54の照射開始から硬化反応が完了したとみなされるまでの反応完了時間Taに対する各硬化反応における経過時間tの比率から硬化反応の進行度合を算出することができる。すなわち、硬化反応の進行度合=経過時間t/反応完了時間Taとなる。この場合には、CPU40では、反応完了時間Taが予め設定されるとともに、硬化用紫外線54の照射開始からの積算時間を計測するタイミングで、上述のような硬化反応の進行度合が算出され、表示部42における表示値が更新される。
【0176】
このような反応完了蛍光量Fa、もしくは反応完了時間Taは、複数の時間的プロフィールを平均化して自動的に算出することもできるが、ユーザが任意に設定するようにしてもよい。
【0177】
図21は、ユーザが反応完了時間Taを設定する場合の表示部42での表示例を示す。
図21を参照して、表示部42では、過去に測定された蛍光量の時間的プロフィールをユーザが任意に選択するための選択操作領域440が表示され、この選択操作領域440の所定のボタン表示をユーザがタッチペンなどを用いて選択操作することで、選択された時間的プロフィールがプロフィール表示領域446に順次表示される。このとき、CPU40は、選択操作領域440の選択操作に応じて、記憶部46に格納されている蛍光量の時間的プロフィールのうち1つのデータを読み出して、表示部42上に表示させる。
【0178】
さらに、ユーザは、選択操作領域440に表示される蛍光量の時間的プロフィールを参照しながら、数値操作領域444を同様に操作することで、数値表示領域442に表示される反応完了蛍光量Faを変更できる。このようにユーザによって反応完了蛍光量Faが変更されると、CPU40は、この変更後の反応完了蛍光量を用いて硬化反応の進行度合を算出する。すなわち、CPU40は、外部からの入力値に応じて反応完了蛍光量を変更可能である。
【0179】
ところで、紫外線照射システム1を使用するユーザは、紫外線から目を保護するために、保護メガネを装着する。このような保護メガネは、紫外線に相当する波長帯域の光を遮断する、一種の光フィルタである。
【0180】
図22は、保護メガネを装着した状態での視認可能特性の一例を示す図である。
図22を参照して、多くの保護メガネの波長遮断特性は比較的緩やかである。そのため、より安全側を維持するために、紫外線領域に加えて、可視領域の一部を含む波長帯域の光を遮断するように設計される。そのため、このような保護メガネを装着したユーザは、可視領域の紫外線領域側、すなわち紫色や青色を視認し難いことが考えられる。
【0181】
そこで、本実施の形態では、図17〜図19に示すような表示には、硬化用紫外線54および励起紫外線50の波長帯域から長波長側に所定の長さ以上離れた波長帯域を有する色が用いられる。具体的には、図22に示すような約500nm〜700nmに含まれる色、たとえば「緑色」、「黄色」、「赤色」などが用いられる。
【0182】
(しきい値設定その1)
上述した硬化反応の完了判断に係る処理などにおいて使用されるしきい値は、予め測定した複数の蛍光量の時間的挙動を参照して設定することになるが、このようなしきい値を自動的に設定できるモードがあれば、よりユーザフレンドリの観点から好ましい。以下、このようなモードを「しきい値設定モード」と称し、このモードの詳細について説明する。このしきい値設定モードでは、測定された蛍光量の時間的プロフィールにおける特徴的態様をとらえ、その特徴的態様が生じた時点の蛍光量に基づいて、しきい値を設定する。
【0183】
以下では、一例として、硬化反応の完了を判断するために測定される蛍光量と比較されるしきい値α1(図6)を設定する構成について説明するが、その他のしきい値についても同様の方法で設定可能である。なお、後述する他のしきい値設定モードとの区別を明確化するために、この構成についてのしきい値設定モードを特に「第1しきい値設定モード」と称す。
【0184】
しきい値設定モードが使用される態様としては、紫外線硬化樹脂またはワークのいずれか一方が新規な場合において、最適なしきい値を見出す場合などが想定される。このような場合には、数個のサンプルに対して試験的に硬化用紫外線54を照射し、そのときに測定される蛍光量から最適なしきい値が設定される。なお、このような作業をトレーニングとも称す。
【0185】
そこで、第1しきい値設定モードでは、サンプルとなる複数の紫外線硬化樹脂12(およびそれが塗布されたワーク)が製造ライン上を逐次的に搬送され、各紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54が照射されるとともに、各紫外線硬化樹脂12から生じる蛍光量が測定される。続いて、これらの測定結果に基づいて最適なしきい値が設定される。
【0186】
より具体的には、測定される蛍光量の時間的プロフィールの各々において蛍光量の最大値を特徴的態様として算出するとともに、算出された複数の最大値のうち、最も小さいものに所定の係数β1を乗じたものがしきい値α1に設定される。なお、係数β1は、「1」より小さな値、たとえば「0.9」が用いられる。
【0187】
図23は、第1しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。図23には、一例として、4個のサンプルの各々に対して硬化用紫外線54を十分に長い時間照射した場合に測定された蛍光量の時間的プロフィールPf(1)〜Pf(4)が同一座標上に示される。なお、各サンプルに対する照射条件や測定条件は同一とする。そして、各時間的プロフィールPf(1)〜Pf(4)に対して、最大蛍光量Pmax1〜Pmax4がそれぞれ算出される。このように抽出された最大蛍光量Pmax1〜Pmax4のうち、その値が最も小さいもの(図23の場合には、最大蛍光量Pmax4)が抽出され、この抽出された最大蛍光量Pmax4に所定の係数β1が乗じられて、しきい値α1が決定される。
【0188】
図24は、第1しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。この処理は、ユーザが操作部44(図2)を操作して第1しきい値設定モードを選択することで処理が開始される。
【0189】
図24を参照して、まず、しきい値を設定するためのサンプル数の入力が受付けられる(ステップS600)。ユーザは、操作部44(図2)を操作してしきい値を設定するために使用するサンプルの数を入力する。そして、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されるまで待つ(ステップS602)。なお、硬化用紫外線54の照射開始は、硬化用紫外線54の照射スポットにサンプルが配置されたことを検知するセンサ(図示しない)からの信号によって指示されてもよく、もしくはユーザが手動で照射開始を指示するようにしてもよい。
【0190】
光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS604)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS606)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。
【0191】
そして、測定される蛍光量の中の最大値が算出される(ステップS608)。具体的には、各測定時において、測定された蛍光量と当該時点より前に算出されている最大値とが比較され、測定された蛍光量が当該最大値より大きければ、最大値はその測定された蛍光量に更新される。このように測定された蛍光量に基づいて最大値は随時更新される。
【0192】
そして、硬化用紫外線54の照射開始から所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS610)。なお、所定時間は、紫外線硬化樹脂12が硬化反応を完了するのに十分な時間であり、紫外線硬化樹脂の塗布量などに応じて予め設定される。
【0193】
硬化用紫外線54の照射開始から所定時間が経過していなければ(ステップS610においてNO)、ステップS608の処理が繰返される。
【0194】
一方、硬化用紫外線54の照射開始から所定時間が経過していれば(ステップS610においてYES)、算出された蛍光量の最大値が記憶部46に一旦格納される(ステップS612)。続いて、ステップS600において入力されたサンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されているか否かが判断される(ステップS614)。サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていなければ(ステップS614においてNO)、ステップS602以下の処理が繰返される。
【0195】
サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていれば(ステップS614においてYES)、格納されている蛍光量の最大値のうち、その値が最も小さいものが抽出され(ステップS616)、抽出された蛍光量の最大値に対して所定の係数β1が乗じられて、しきい値α1が算出される(ステップS618)。さらに、算出されたしきい値α1が記憶部46に格納され(ステップS620)、第1しきい値設定モードに係る処理は終了する。
【0196】
このような「しきい値設定モード」を使用することで、紫外線硬化樹脂とワークとの組み合わせが多数存在する場合であっても、比較的容易かつ迅速に最適なしきい値を設定することができるので、しきい値設定に係る時間を低減し、生産効率を低下させることを抑制できる。
【0197】
(しきい値設定その2)
しきい値設定モードの別の態様として、「第2しきい値設定モード」について説明する。この第2しきい値設定モードでは、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量から特徴的態様をとらえ、硬化反応の完了を判断するために測定される蛍光量と比較されるしきい値α1(図6)を設定する。
【0198】
第1しきい値設定モードと同様に、第2しきい値設定モードでも、サンプルとなる複数の紫外線硬化樹脂12(およびそれが塗布されたワーク)が製造ライン上に逐次的に搬送され、各紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54が照射されるとともに、各紫外線硬化樹脂12から生じる蛍光量が測定される。続いて、紫外線硬化樹脂12の各々について、測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定範囲内になった時に対応する蛍光量が算出される。ここで、所定範囲内とは、測定される蛍光量の増加が飽和する状態、すなわち測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定値以下となるような状態を含むように決定される。さらに、算出された複数の蛍光量のうち、最も小さいものに所定の係数β2を乗じたものがしきい値α1に設定される。なお、係数β2は、「1」より小さな値、たとえば「0.9」が用いられる。
【0199】
図25は、第2しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。図25(a)には、複数のサンプルのうち1つのサンプルについて測定される蛍光量の時間的変化を示し、図25(b)にはその単位時間当たりの変化量の時間的変化(蛍光量差分値)を示す。また、図25には、特徴的態様の条件として、測定される蛍光量の単位時間当たりの変化量が「0」以下であること、すなわち正値から負値に転じることを採用した場合を示す。
【0200】
図25(a)を参照して、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は所定量まで単調増加した後、飽和して減少に転じる。このような蛍光量の時間的挙動によって、図25(b)に示すように、蛍光量差分値は硬化用紫外線54の照射開始から時間t1経過後に、正値から負値に転じる。この蛍光量差分値が正値から負値に転じる時刻において測定される蛍光量Paが算出される。同様に各時間的プロフィールにおいて蛍光量Paが算出され、算出された蛍光量Paの中でその値が最も小さいものに所定の係数β2が乗じられて、しきい値α1が決定される。
【0201】
図26は、第2しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。この処理は、ユーザが操作部44(図2)を操作して第2しきい値設定モードを選択することで処理が開始される。
【0202】
図26を参照して、まず、しきい値を設定するためのサンプル数の入力が受付けられる(ステップS700)。ユーザは、操作部44(図2)を操作してしきい値を設定するために使用するサンプルの数を入力する。そして、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されるまで待つ(ステップS702)。なお、硬化用紫外線54の照射を開始は、硬化用紫外線54の照射スポットにサンプルが配置されたことを検知するセンサ(図示しない)からの信号によって指示されてもよく、もしくはユーザが手動で照射開始を指示するようにしてもよい。
【0203】
光源部202から照射開始信号が開始されると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS704)。続いて、蛍光測定ヘッド部104で測定された紫外線硬化樹脂12からの蛍光量が取得される(ステップS706)。なお、この蛍光量の取得処理に際して、時系列的に取得される蛍光量に対して移動平均処理が実行される。さらに、前回取得された蛍光量と今回取得された蛍光量とに基づいて、蛍光量の差分値が算出される(ステップS708)。
【0204】
続いて、蛍光量の差分値が所定範囲内になったか否かが判断される(ステップS710)。一例として、蛍光量の差分値が正値から負値に転じたか否かが判断される。
【0205】
蛍光量の差分値が所定範囲内になっていなければ(ステップS710においてNO)、ステップS706以下の処理が繰返される。
【0206】
一方、蛍光量の差分値が所定範囲内になっていれば(ステップS710においてYES)、当該時点の測定された蛍光量が記憶部46に一旦格納される(ステップS712)。続いて、ステップS700において入力されたサンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されているか否かが判断される(ステップS714)。サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていなければ(ステップS714においてNO)、ステップS702以下の処理が繰返される。
【0207】
サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていれば(ステップS714においてYES)、格納されている蛍光量のうち、その値が最も小さいものが抽出され(ステップS716)、抽出された蛍光量の最大値に対して所定の係数β2が乗じられて、しきい値α1が算出される(ステップS718)。さらに、算出されたしきい値α1が記憶部46に格納され(ステップS720)、第2しきい値設定モードに係る処理は終了する。
【0208】
また、測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量から特徴的態様をとらえるための条件として、蛍光量の差分値の変極点を用いてもよい。
【0209】
図27は、第2しきい値設定モードにおける処理の別の態様を説明するための図である。図27(a)には、複数のサンプルのうち1つのサンプルについて測定される蛍光量の時間的変化を示し、図27(b)にはその単位時間当たりの変化量の時間的変化(蛍光量差分値)を示す。
【0210】
図27(b)を参照して、たとえば、蛍光量差分値が減少から増加に転じる時点(硬化用紫外線54の照射開始から時間t2経過後)を特徴点としてとらえ、このときに測定される蛍光量Pb(図27(a))に基づいて、しきい値α1を設定してもよい。すなわち、蛍光量差分値の変極点に着目して、しきい値α1を設定するための蛍光量Pbを算出していることになる。
【0211】
なお、蛍光量Pbを算出した後の処理は、係数β2に代えて係数β3を乗じる点を除いて、上述した図26に示すフローチャートと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0212】
このような「しきい値設定モード」を使用することで、紫外線硬化樹脂とワークとの組み合わせが多数存在する場合であっても、比較的容易かつ迅速にしきい値を設定することができるので、しきい値設定に係る時間を低減し、生産効率を低下させることを抑制できる。
【0213】
(しきい値設定その3)
上述の第1および第2しきい値設定モードでは、硬化反応の完了を判断するために測定される蛍光量と比較されるしきい値α1(図6)を設定する構成について説明したが、以下では、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taが経過時に測定される蛍光量と比較されるしきい値α3(図11)を設定するための第3しきい値設定モードについて説明する。
【0214】
第1しきい値設定モードと同様に、第3しきい値設定モードでも、サンプルとなる複数の紫外線硬化樹脂12(およびそれが塗布されたワーク)が製造ライン上に逐次的に搬送され、各紫外線硬化樹脂12に対して硬化用紫外線54が照射されるとともに、各紫外線硬化樹脂12から生じる蛍光量が測定される。そして、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taが経過した時点の蛍光量が算出される。さらに、算出された複数の蛍光量のうち、最も小さいものに所定の係数β4を乗じたものがしきい値α3に設定される。なお、係数β4は、「1」より小さな値、たとえば「0.9」が用いられる。
【0215】
図28は、第3しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。図28には、複数のサンプルのうち1つのサンプルについて測定される蛍光量の時間的変化を示す。
【0216】
図28を参照して、硬化用紫外線54の照射が開始されると、測定される蛍光量は単調増加していく。そして、硬化用紫外線54の照射開始から判定時間Taが経過した時点の蛍光量Pcが算出される。同様に各時間的プロフィールにおいて蛍光量Pcが算出され、算出された蛍光量Pcの中でその値が最も小さいものに所定の係数β4が乗じられて、しきい値α3が決定される。
【0217】
図29は、第3しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。この処理は、ユーザが操作部44(図2)を操作して第3しきい値設定モードを選択することで処理が開始される。
【0218】
図29を参照して、まず、しきい値を設定するためのサンプル数の入力が受付けられる(ステップS800)。ユーザは、操作部44(図2)を操作してしきい値を設定するために使用するサンプルの数を入力する。そして、光源装置200による硬化用紫外線54の照射が開始されるまで待つ(ステップS802)。なお、硬化用紫外線54の照射を開始は、硬化用紫外線54の照射スポットにサンプルが配置されたことを検知するセンサ(図示しない)からの信号によって指示されてもよく、もしくはユーザが手動で照射開始を指示するようにしてもよい。
【0219】
光源部202から照射開始信号が開始されると、蛍光測定ヘッド部104へ照射指令が与えられて励起紫外線50の照射が開始される(ステップS804)。同時に、硬化用紫外線54の照射開始からの経過時間の計測が開始される(ステップS806)。そして、計測された経過時間が判定時間Taを経過したか否かが判断される(ステップS808)。経過時間が判定時間Taを経過していなければ(ステップS808においてNO)、判定時間Taを経過するまで処理は繰返される。
【0220】
経過時間が判定時間Taを経過していれば(ステップS808においてYES)、当該時点の測定された蛍光量が記憶部46に一旦格納される(ステップS810)。続いて、ステップS800において入力されたサンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されているか否かが判断される(ステップS812)。サンプル数と同数の蛍光量の最大値が格納されていなければ(ステップS812においてNO)、ステップS802以下の処理が繰返される。
【0221】
サンプル数と同数の蛍光量が格納されていれば(ステップS812においてYES)、格納されている蛍光量のうち、その値が最も小さいものが抽出され(ステップS814)、抽出された蛍光量の最大値に対して所定の係数β4が乗じられて、しきい値α3が算出される(ステップS816)。さらに、算出されたしきい値α3が記憶部46に格納され(ステップS818)、第3しきい値設定モードに係る処理は終了する。
【0222】
このような「しきい値設定モード」を使用することで、紫外線硬化樹脂とワークとの組み合わせが多数存在する場合であっても、比較的容易かつ迅速にしきい値を設定することができるので、しきい値設定に係る時間を低減し、生産効率を低下させることを抑制できる。
【0223】
なお、3種類のしきい値設定モードに係る処理について説明したが、必ずしも硬化反応検知装置100が全てのしきい値設定モードを備えておく必要はなく、ニーズに応じた処理を適宜組み込めばよい。
【0224】
本実施の形態において、硬化用紫外線54が「第1の紫外線」に相当し、励起紫外線50が「第2の紫外線」に相当する。そして、蛍光測定ヘッド部104が「照射手段」を実現し、蛍光測定ヘッド部104およびCPU40が「測定手段」を実現し、CPU40が「判断手段」を実現し、CPU40および表示部42が「第1表示手段」および「第2表示手段」を実現し、CPU40および記憶部46が「しきい値設定手段」を実現する。
【0225】
本実施の形態によれば、紫外線硬化樹脂が硬化用紫外線を受けて硬化反応を生じる際に、励起紫外線を照射して紫外線硬化樹脂の光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する。この蛍光量は、紫外線硬化樹脂の硬化反応状態と相関性を有するので、この蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応状態をリアルタイムに判断できる。
【0226】
このリアルタイムに判断できる硬化反応状態に基づいて、硬化反応の完了タイミングを的確に把握できるので、硬化用紫外線の照射時間を最適化でき、硬化反応の過剰や不足によって生じる不良品の発生を抑制できる。
【0227】
また、紫外線硬化樹脂の硬化反応の正常性をチェックできるので、さまざまな要因によって生じる硬化反応の異常を検出し、不良品の混入を防止できる。
【0228】
[実施の形態2]
上述の本実施の形態1においては、硬化反応検知装置100および光源装置200が互いに分離して配置される紫外線照射システム1について説明したが、硬化反応検知装置100および光源装置200の機能を一体的に形成してもよい。
【0229】
図30は、この発明の実施の形態2に従う硬化反応検知装置300の概略構成図である。
【0230】
図30を参照して、この発明の実施の形態2に従う硬化反応検知装置300は、この発明の実施の形態1に従う硬化反応検知装置100に光源装置200の機能を取込んだものに相当する。すなわち、硬化反応検知装置300は、ヘッド部304と、制御部302とからなり、ヘッド部304は、硬化用紫外線54および励起紫外線50を発生するとともに、紫外線硬化樹脂12から放射される蛍光52を受光して、検出される蛍光量を示す信号を制御部302へ出力する。また、制御部302は、上述のこの発明の実施の形態1に従う制御部102に光源部202に相当する機能を取込んだものに相当する。
【0231】
なお、ヘッド部304をより簡素化するために、共通の紫外線発生機構(たとえば、紫外線LED)を用いて、硬化用紫外線54および励起紫外線50を発生するようにしてもよい。共通の紫外線発生機構を用いる場合には、硬化用紫外線54として作用する直流(DC)成分と、励起紫外線50として作用するパルス成分とを合成したような、照射強度をもつ紫外線を発生させればよい。
【0232】
図31は、共通の紫外線発生機構を用いた場合の照射強度の時間的変化を示す図である。
【0233】
図31を参照して、ヘッド部304を共通の紫外線発生機構を用いて構成する場合には、図4(a)および図4(b)に示すそれぞれの照射強度を合成して得られる時間的変化を有するように照射強度が制御される。
【0234】
その他の構成については、上述のこの発明の実施の形態1で説明した内容と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0235】
本実施の形態によれば、硬化用紫外線と励起紫外線とを共通のヘッド部で発生することができるので、システム全体としての構成が簡素化でき、価格面や必要とされる空間などの面でより有利となる。
【0236】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】この発明の実施の形態1に従う紫外線照射システムの概略構成図である。
【図2】硬化反応検知装置のより詳細な概略構成図である。
【図3】蛍光測定ヘッド部とワークとの間の光学的な配置図である。
【図4】蛍光測定に係る各部の時間波形を示すタイムチャートである。
【図5】測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了を判断するための処理ブロック図である。
【図6】測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了判断に係るタイムチャートである。
【図7】測定された蛍光量に基づく硬化反応の完了判断に係るフローチャートである。
【図8】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了を判断するための処理ブロック図である。
【図9】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了判断に係るタイムチャートである。
【図10】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の完了判断に係るフローチャートである。
【図11】蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。
【図12】蛍光量に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。
【図13】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。
【図14】測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。
【図15】測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づく硬化反応の異常判断に係るタイムチャートである。
【図16】測定された蛍光量の時間的挙動の全体に基づく硬化反応の異常判断に係るフローチャートである。
【図17】表示部における表示内容の一例を示す図である。
【図18】表示部における硬化反応の進行度合表示の一例を示す図である。
【図19】表示部における硬化反応の進行度合表示の別の一例を示す図である。
【図20】硬化反応の進行度合を算出する過程を説明するための図である。
【図21】ユーザが反応完了時間を設定する場合の表示部での表示例を示す。
【図22】保護メガネを装着した状態での視認可能特性の一例を示す図である。
【図23】第1しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。
【図24】第1しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。
【図25】第2しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。
【図26】第2しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。
【図27】第2しきい値設定モードにおける処理の別の態様を説明するための図である。
【図28】第3しきい値設定モードにおける処理を説明するための図である。
【図29】第3しきい値設定モードに係る処理を示すフローチャートである。
【図30】この発明の実施の形態2に従う硬化反応検知装置の概略構成図である。
【図31】共通の紫外線発生機構を用いた場合の照射強度の時間的変化を示す図である。
【符号の説明】
【0238】
1 紫外線照射システム、6 基材、8 被着体、12 紫外線硬化樹脂、20 投光駆動回路、22 投光素子、24 ハーフミラー、26 光フィルタ、28 受光素子、30 HPF、32 増幅回路、34 サンプルホールド回路(S/H)、36 アナログデジタル変換部(ADC)、38 集束レンズ、42 表示部、44 操作部、46 記憶部、48 インターフェイス部(I/F)、50 励起紫外線、52 蛍光、54 硬化用紫外線、100,300 硬化反応検知装置、102,302 制御部、104 蛍光測定ヘッド部、106 表示灯、120,120A 判断部、122 時間変化量算出部、124,124A 判断部、200 光源装置、202 光源部、204 照射ヘッド部、304 ヘッド部、422,424,428,442 数値表示領域、426 結果表示領域、430 インジケータ表示領域、440 選択操作領域、444 数値操作領域、446 プロフィール表示領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射システムであって、
前記紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するための第1の紫外線を照射する光源装置と、
硬化反応検知装置とを備え、
前記硬化反応検知装置は、
前記紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射する照射手段と、
前記照射手段によって照射される前記第2の紫外線を受けて前記光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断する判断手段とを含む、紫外線照射システム。
【請求項2】
前記硬化反応検知装置は、前記光源装置からの前記第1の紫外線の照射が開始されると、前記第2の紫外線の照射および蛍光量の測定を開始するように構成され、かつ、前記光源装置からの前記第1の紫外線の照射が終了すると、前記第2の紫外線の照射および蛍光量の測定を終了するように構成される、請求項1に記載の紫外線照射システム。
【請求項3】
前記判断手段は、前記測定された蛍光量が所定のしきい値を超過すると、前記光源装置に対して前記第1の紫外線の照射の終了を指示する、請求項1または2に記載の紫外線照射システム。
【請求項4】
前記判断手段は、前記測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定のしきい値を下回ると、前記光源装置に対して前記第1の紫外線の照射の終了を指示する、請求項1または2に記載の紫外線照射システム。
【請求項5】
前記光源装置は、時間的に略一定の強度をもつ前記第1の紫外線を照射し、
前記照射手段は、周期的に強度が変化する前記第2の紫外線を照射し、
前記測定手段は、測定された蛍光量のうち、前記照射手段によって放射される前記第2の紫外線の強度変化周期に対応する周期成分に基づいて、前記光重合開始剤から放射される蛍光量として抽出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線照射システム。
【請求項6】
モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂が第1の紫外線を受けて生じる硬化反応を検知する硬化反応検知装置であって、
前記紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射する照射手段と、
前記照射手段によって照射される前記第2の紫外線を受けて前記光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断する判断手段とを含む、硬化反応検知装置。
【請求項7】
前記判断手段は、前記測定された蛍光量が所定のしきい値を超過すると、当該硬化反応が完了したと判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項8】
前記判断手段は、前記測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定のしきい値を下回ると、当該硬化反応が完了したと判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項9】
前記判断手段は、硬化反応が完了したと判断すると、前記第1の紫外線の照射の終了を指示する、請求項7または8に記載の硬化反応検知装置。
【請求項10】
前記判断手段は、前記第1の紫外線の照射開始から所定時間経過後において、前記測定された蛍光量が所定のしきい値を下回っていれば、当該硬化反応が異常であると判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項11】
前記判断手段は、前記第1の紫外線の照射開始から所定時間経過後において、前記測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定の範囲外にあれば、当該硬化反応が異常であると判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項12】
前記判断手段は、予め定められた基準の時間的挙動を参照して、前記測定された蛍光量から硬化反応の正常性を判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項13】
前記判断手段は、前記基準の時間的挙動に対する前記測定された蛍光量の偏差が所定範囲外になると、当該硬化反応が異常であると判断する、請求項12に記載の硬化反応検知装置。
【請求項14】
前記基準の時間的挙動と前記測定された蛍光量の時間的挙動とを同一座標上に表示するための第1表示手段をさらに備える、請求項12または13に記載の硬化反応検知装置。
【請求項15】
前記第1表示手段は、前記基準の時間的挙動に対する前記測定された蛍光量の偏差の時間的挙動をさらに表示するように構成される、請求項14に記載の硬化反応検知装置。
【請求項16】
前記第1の紫外線を受けて生じる前記紫外線硬化樹脂の硬化反応の進行度合を表示するための第2表示手段をさらに備える、請求項6〜15のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項17】
前記第2表示手段は、硬化反応が完了したとみなされる蛍光量である反応完了蛍光量に対する前記測定された蛍光量の比率に基づいて、前記硬化反応の進行度合を算出する、請求項16に記載の硬化反応検知装置。
【請求項18】
前記第2表示手段は、予め測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、前記反応完了蛍光量を算出する、請求項17に記載の硬化反応検知装置。
【請求項19】
前記第2表示手段は、外部からの入力値に応じて前記反応完了蛍光量を変更可能に構成される、請求項17に記載の硬化反応検知装置。
【請求項20】
前記第2表示手段は、前記硬化反応の進行度合を数値表示するように構成される、請求項16〜19のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項21】
前記第2表示手段は、前記硬化反応の進行度合をインジケータ表示するように構成される、請求項16〜19のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項22】
前記第2表示手段は、前記第1および第2の紫外線の波長帯域から長波長側に所定の長さ以上離れた波長帯域を有する色を用いて前記硬化反応の進行度合を表示するように構成される、請求項16〜21のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項23】
測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える、請求項7に記載の硬化反応検知装置。
【請求項24】
前記測定された蛍光量の時間的挙動において所定の特徴的態様が生じた時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える、請求項7に記載の硬化反応検知装置。
【請求項25】
前記しきい値設定手段は、蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定の範囲内になった時点の蛍光量に基づいて前記所定のしきい値を設定する、請求項24に記載の硬化反応検知装置。
【請求項26】
測定された蛍光量の時間的挙動において前記第1の紫外線の照射開始から所定時間経過時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える、請求項10に記載の硬化反応検知装置。
【請求項27】
前記照射手段によって前記第2の紫外線が照射される期間中に、前記第2の紫外線の照射を視覚的に通知するための視覚的通知手段をさらに備える、請求項6〜26のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項28】
前記第1の紫外線を発生するための光源部をさらに備える、請求項6〜27のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項29】
紫外線照射システムを用いたモノマーまたはオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂の硬化方法であって、
前記紫外線照射システムは、光源装置と硬化反応検知装置とを備え、
前記方法は、
前記光源装置から前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための第1の紫外線を照射するステップと、
前記硬化反応検知装置から前記紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射するステップと、
前記第2の紫外線を受けて前記光重合開始剤から放射される蛍光量を測定するステップと、
測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断するステップと、
前記判断された硬化反応状態に基づいて、前記第1の紫外線の照射を制御するステップとを含む、紫外線硬化樹脂の硬化方法。
【請求項1】
モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射システムであって、
前記紫外線硬化樹脂の硬化反応を促進するための第1の紫外線を照射する光源装置と、
硬化反応検知装置とを備え、
前記硬化反応検知装置は、
前記紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射する照射手段と、
前記照射手段によって照射される前記第2の紫外線を受けて前記光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断する判断手段とを含む、紫外線照射システム。
【請求項2】
前記硬化反応検知装置は、前記光源装置からの前記第1の紫外線の照射が開始されると、前記第2の紫外線の照射および蛍光量の測定を開始するように構成され、かつ、前記光源装置からの前記第1の紫外線の照射が終了すると、前記第2の紫外線の照射および蛍光量の測定を終了するように構成される、請求項1に記載の紫外線照射システム。
【請求項3】
前記判断手段は、前記測定された蛍光量が所定のしきい値を超過すると、前記光源装置に対して前記第1の紫外線の照射の終了を指示する、請求項1または2に記載の紫外線照射システム。
【請求項4】
前記判断手段は、前記測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定のしきい値を下回ると、前記光源装置に対して前記第1の紫外線の照射の終了を指示する、請求項1または2に記載の紫外線照射システム。
【請求項5】
前記光源装置は、時間的に略一定の強度をもつ前記第1の紫外線を照射し、
前記照射手段は、周期的に強度が変化する前記第2の紫外線を照射し、
前記測定手段は、測定された蛍光量のうち、前記照射手段によって放射される前記第2の紫外線の強度変化周期に対応する周期成分に基づいて、前記光重合開始剤から放射される蛍光量として抽出する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線照射システム。
【請求項6】
モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂が第1の紫外線を受けて生じる硬化反応を検知する硬化反応検知装置であって、
前記紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射する照射手段と、
前記照射手段によって照射される前記第2の紫外線を受けて前記光重合開始剤から放射される蛍光量を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断する判断手段とを含む、硬化反応検知装置。
【請求項7】
前記判断手段は、前記測定された蛍光量が所定のしきい値を超過すると、当該硬化反応が完了したと判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項8】
前記判断手段は、前記測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定のしきい値を下回ると、当該硬化反応が完了したと判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項9】
前記判断手段は、硬化反応が完了したと判断すると、前記第1の紫外線の照射の終了を指示する、請求項7または8に記載の硬化反応検知装置。
【請求項10】
前記判断手段は、前記第1の紫外線の照射開始から所定時間経過後において、前記測定された蛍光量が所定のしきい値を下回っていれば、当該硬化反応が異常であると判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項11】
前記判断手段は、前記第1の紫外線の照射開始から所定時間経過後において、前記測定された蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定の範囲外にあれば、当該硬化反応が異常であると判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項12】
前記判断手段は、予め定められた基準の時間的挙動を参照して、前記測定された蛍光量から硬化反応の正常性を判断する、請求項6に記載の硬化反応検知装置。
【請求項13】
前記判断手段は、前記基準の時間的挙動に対する前記測定された蛍光量の偏差が所定範囲外になると、当該硬化反応が異常であると判断する、請求項12に記載の硬化反応検知装置。
【請求項14】
前記基準の時間的挙動と前記測定された蛍光量の時間的挙動とを同一座標上に表示するための第1表示手段をさらに備える、請求項12または13に記載の硬化反応検知装置。
【請求項15】
前記第1表示手段は、前記基準の時間的挙動に対する前記測定された蛍光量の偏差の時間的挙動をさらに表示するように構成される、請求項14に記載の硬化反応検知装置。
【請求項16】
前記第1の紫外線を受けて生じる前記紫外線硬化樹脂の硬化反応の進行度合を表示するための第2表示手段をさらに備える、請求項6〜15のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項17】
前記第2表示手段は、硬化反応が完了したとみなされる蛍光量である反応完了蛍光量に対する前記測定された蛍光量の比率に基づいて、前記硬化反応の進行度合を算出する、請求項16に記載の硬化反応検知装置。
【請求項18】
前記第2表示手段は、予め測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、前記反応完了蛍光量を算出する、請求項17に記載の硬化反応検知装置。
【請求項19】
前記第2表示手段は、外部からの入力値に応じて前記反応完了蛍光量を変更可能に構成される、請求項17に記載の硬化反応検知装置。
【請求項20】
前記第2表示手段は、前記硬化反応の進行度合を数値表示するように構成される、請求項16〜19のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項21】
前記第2表示手段は、前記硬化反応の進行度合をインジケータ表示するように構成される、請求項16〜19のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項22】
前記第2表示手段は、前記第1および第2の紫外線の波長帯域から長波長側に所定の長さ以上離れた波長帯域を有する色を用いて前記硬化反応の進行度合を表示するように構成される、請求項16〜21のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項23】
測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える、請求項7に記載の硬化反応検知装置。
【請求項24】
前記測定された蛍光量の時間的挙動において所定の特徴的態様が生じた時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える、請求項7に記載の硬化反応検知装置。
【請求項25】
前記しきい値設定手段は、蛍光量の単位時間当たりの変化量が所定の範囲内になった時点の蛍光量に基づいて前記所定のしきい値を設定する、請求項24に記載の硬化反応検知装置。
【請求項26】
測定された蛍光量の時間的挙動において前記第1の紫外線の照射開始から所定時間経過時点の蛍光量に基づいて、硬化反応の完了を判断するために用いられる所定のしきい値を設定するしきい値設定手段をさらに備える、請求項10に記載の硬化反応検知装置。
【請求項27】
前記照射手段によって前記第2の紫外線が照射される期間中に、前記第2の紫外線の照射を視覚的に通知するための視覚的通知手段をさらに備える、請求項6〜26のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項28】
前記第1の紫外線を発生するための光源部をさらに備える、請求項6〜27のいずれか1項に記載の硬化反応検知装置。
【請求項29】
紫外線照射システムを用いたモノマーまたはオリゴマーの少なくとも一方からなる主剤と光重合開始剤とを含む紫外線硬化樹脂の硬化方法であって、
前記紫外線照射システムは、光源装置と硬化反応検知装置とを備え、
前記方法は、
前記光源装置から前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための第1の紫外線を照射するステップと、
前記硬化反応検知装置から前記紫外線硬化樹脂を活性化させるための第2の紫外線を照射するステップと、
前記第2の紫外線を受けて前記光重合開始剤から放射される蛍光量を測定するステップと、
測定された蛍光量の時間的挙動に基づいて、前記紫外線硬化樹脂の硬化反応状態を判断するステップと、
前記判断された硬化反応状態に基づいて、前記第1の紫外線の照射を制御するステップとを含む、紫外線硬化樹脂の硬化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2008−221147(P2008−221147A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64021(P2007−64021)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]