紫外線照射装置および温度測定方法
【課題】被処理流体の変化に基づく異常を効果的に検知する。
【解決手段】温度センサは、被処理水の減少に伴い紫外線照射槽10の上部に空気層ができた場合、紫外線ランプ2の発光体による空気層の温度変化を、検出可能な設置エリアに、設置される。この設置エリアは、発光体の最上端に水平な露出水位線より上および下のエリアであって、紫外線照射槽10の外壁に沿ったエリアA1、内壁に沿ったエリアA2、紫外線照射槽の内壁の内部のエリアA3などである。
【解決手段】温度センサは、被処理水の減少に伴い紫外線照射槽10の上部に空気層ができた場合、紫外線ランプ2の発光体による空気層の温度変化を、検出可能な設置エリアに、設置される。この設置エリアは、発光体の最上端に水平な露出水位線より上および下のエリアであって、紫外線照射槽10の外壁に沿ったエリアA1、内壁に沿ったエリアA2、紫外線照射槽の内壁の内部のエリアA3などである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置およびこの紫外線照射装置内の温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水処理や下水処理・食品排水処理・薬品排水処理・遠洋船舶バラスト水処理等において藻類・微生物・病原性原虫等を不活化もしくは無害化するために、被処理水に紫外線を照射する紫外線照射装置が知られている。紫外線照射装置による紫外線消毒は、上下水処理、プールなどの殺菌消毒処理、食品工業における水処理などの、水処理全般における病原性の微生物、細菌、ウィルスの殺菌、消毒を目的に応用が進んでいる。
【0003】
紫外線消毒は、従来の消毒技術である塩素消毒で不活化できない耐塩素性病原菌クリプトスポリジウム、ジアルジアの対策として非常に効果的な消毒方法である。従って、特に浄水処理において紫外線消毒は、期待されている消毒技術である。国内では2007年3月に厚生労働省より「水道水におけるクリプトスポリジウム等対策指針」が通知され、地表水以外の水源を原水とする施設において紫外線処理設備の導入が認められた。これに伴い、紫外線処理設備の導入数が増加しつつある。また、上述の「水道水におけるクリプトスポリジウム等対策指針」では、クリプトスポリジウム、ジアルジアの2log以上の不活化には紫外線を10mJ/cm2以下の照射であることが開示されている。
【0004】
紫外線による消毒性能は、紫外光の強さと照射されている時間の積(紫外線量)に依存する。つまり、紫外線消毒槽の内部での被処理水の流れが、消毒性能に大きく影響する。従って、効果的な紫外線量を維持するために、様々な形態の紫外線照射装置が開発されている。
【0005】
一般的な紫外線照射装置では、紫外線の照射対象は、水を代表とする液体である。このような一般的な紫外線照射装置において、紫外線の光源は、紫外線ランプである。紫外線ランプを水中に直接入れると、電極部がショートしてしまうため、ランプスリーブという保護用ガラス管が用いられている。一般的な紫外線照射装置は、ランプスリーブの内部に紫外線ランプを挿入し、ランプスリーブごと紫外線ランプを照射対象となる被処理水の中に浸漬する構造である。ランプスリーブの材質には、紫外線透過率が高い石英ガラスが用いられている。
【0006】
紫外線ランプにおいて、ランプへの入力電力のうち一部が紫外光発光に使われ、残りは熱として放熱される。紫外線ランプからの放熱により、(1)紫外線消毒装置内の水位が下がりランプが空気にさらされるか、(2)反応槽内の水の流れが停止すると、装置は高温となり、紫外線ランプの破損するおそれがあるので、水温監視の必要があることが開示されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0007】
一方、紫外線水処理システムが停止に至る異常、故障を未然に防止するために、処理水の温度を計測するための温度センサを設けることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の方法においては、特に図2に示すように、処理水の出口近傍に温度センサが設けられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−82774号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ULTRAVIOLET DISINFECTION GUIDANCE MA-NUAL FOR THE FINAL LONG TERM 2 EN-HANCED SURFACE WATER TREATMENT RULE, EPA 815-R-06-007, November 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、紫外線ランプからの放熱により、紫外線照射装置の異常や故障を未然に防止するために、水温監視について最適な方法が開示されていない。
【0011】
特許文献1に記載の方法では、処理水の温度変化を検知できる。しかし、処理水の温度を測定したとしても、紫外線照射装置内の水位の低下や水の流れが停止した場合には、その温度変化の検知が遅れる場合が考えられ、最適な方法ではない。
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、被処理流体の変化に基づく異常を効果的に検知することのできる紫外線照射装置およびこの紫外線照射装置内の温度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置に関する。本発明の第1の特徴に係る紫外線照射装置は、被処理流体の減少に伴い容器の上部に空気層ができた場合、発光体による空気層の温度変化を、検出可能な設置エリアに、設置される温度センサを備える。温度センサは、被処理流体が流動していない場合、発光体による被処理流体の温度変化を、さらに検出可能な設置エリアに設置されることが好ましい。
【0014】
ここで、設置エリアは、発光体の最上端に水平な露出水位線より上および下のエリアであることが好ましい。例えば、温度センサは、容器の外壁に接して設置される。また、温度センサは、容器の内壁に接して設置される。さらに、温度センサは、容器の内壁の内部に設置される。
【0015】
本発明の第2の特徴は、容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置における温度測定方法に関する。本発明の第2の特徴に係る紫外線照射装置は、被処理流体の減少に伴い容器の上部に空気層ができた場合に、発光体が空気層に露出したことによる空気層の温度変化を検出可能な設置エリアに、設置された温度センサを用いて、被処理流体の温度を測定するステップを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被処理流体の変化に基づく異常を効果的に検知することのできる紫外線照射装置およびこの紫外線照射装置内の温度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置において、温度センサを設置する位置を説明する図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置を説明する図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置における露出水位線を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置において、水位および空気層の有無と、温度検出との関係をまとめた表である。
【図5】図5は、紫外線照射装置において、満水の場合を説明する図である。
【図6】図6は、紫外線照射装置において、紫外線ランプが露出しない程度に処理水が減少している場合を説明する図である。
【図7】図7は、紫外線照射装置において、処理水が減少し紫外線ランプが露出している場合を説明する図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態において、紫外線照射槽10の外壁に温度センサを設置する例を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態において、紫外線照射槽10の内壁に温度センサを設置する例を説明する図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態において、紫外線照射槽10の内部に温度センサを設置する例を説明する図である。
【図11】図11は、本発明の第1の変形例に係る紫外線照射装置を説明する図である。
【図12】図12は、本発明の第1の変形例に係る紫外線照射装置における露出水位線を説明する図である。
【図13】図13は、本発明の第2の変形例に係る紫外線照射装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0019】
図1および図2を参照して、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1を説明する。紫外線照射装置1は、容器(紫外線照射槽)内に被処理流体(被処理水)を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体(処理水)を流出する。本発明の実施の形態においては特に、上下水道プラントにおいて、水を紫外線消毒するための紫外線照射装置1について説明する。本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1は、水以外の流体を紫外線消毒するための装置に適用することができる。
【0020】
本発明の実施の形態においては、図1および図2に示すような紫外線照射装置1内の温度測定方法を説明するが、後述するように、どのような形態の紫外線照射装置でも適用可能である。
【0021】
図1は、図2に示す紫外線照射装置1の断面を示した図である。図1においては、紫外線ランプ2は、図面に垂直な方向に設置されている。紫外線照射槽10の中を被処理水が流れている。この被処理水の水量が減少すると、紫外線照射槽10の上部に空洞ができてしまう。被処理水が減少し、被処理水の水面が、露出水位線Lより下回ると、紫外線ランプの発光体が空気中に露出し、紫外線照射装置1の異常や故障の原因となるおそれがある。本発明の実施の形態において、露出水位線Lは、紫外線ランプ2の発光体の上端部を通る水平線である。紫外線ランプが複数ある場合、露出水位線Lは、各紫外線ランプの発光体の上端部を通る水平線のうち、最も上の水平線である。
【0022】
図1に示す例では、紫外線照射装置1は、紫外線照射槽10内に、4つのランプスリーブ3a、3b、3cおよび3dと、各ランプスリーブの内部に紫外線ランプ2a、2b、2cおよび2dと、を備える。紫外線ランプ2aおよび2b、紫外線ランプ2cおよび2dは、それぞれ水平に設置されている。従って、図1に示す例では露出水位線Lは、より上方に位置する紫外線ランプ2aおよび2bの発光体の上端部を通る水平線である。
【0023】
図1において、温度センサは、温度センサ設置エリアA1、A2およびA3のうち、いずれかのエリアに設置される。この温度センサ設置エリアA1、A2およびA3は、被処理水の減少に伴い紫外線照射槽10の上部に空気層ができた場合、紫外線ランプ2aおよび2bの発光体による、空気層の温度変化を検出可能なエリアである。この温度センサ設置エリアA1、A2およびA3は、さらに、被処理水が流動していない場合、発光体による被処理水の温度変化を、さらに検出可能なエリアである。
【0024】
温度センサ設置エリアA1は、露出水位線Lの近傍のエリアである。温度センサ設置エリアA1にプローブが設置された温度センサは、発光体が露出することによる空気層の温度変化をいち早く検出することができる。温度センサ設置エリアA1は、この水位まで被処理水が満たされており、かつ被処理水が流動していない場合、さらに、発光体による被処理水の温度変化を検出することができる。温度センサ設置エリアA1は、露出水位線Lの上部および下部を含むエリアであっても良い。
【0025】
温度センサ設置エリアA2は、露出水位線Lより上であって、紫外線照射槽10の外壁に接するエリアである。温度センサ設置エリアA2にプローブが設置された温度センサは、水位が下がり空気層の温度が上昇することに伴って、紫外線照射槽10の外壁の温度上昇を検出することができる。温度センサ設置エリアA2は、この水位まで被処理水が満たされており、かつ被処理水が流動していない場合、さらに、発光体による被処理水の温度変化を検出することができる。温度センサ設置エリアA1は、露出水位線Lの下部の紫外線照射槽10の外壁に接するエリアを含んでも良い。
【0026】
温度センサ設置エリアA3は、露出水位線Lより上の、紫外線照射槽10の内部のエリアである。温度センサは、温度センサ設置エリアA3のうち、紫外線照射槽10の内壁に接して設置されても良いし、紫外線照射槽10の内部に設置されても良い。温度センサ設置エリアA3にプローブが設置された温度センサは、水位が下がることによる空気層の温度の上昇を検出することができる。温度センサ設置エリアA3は、この水位まで被処理水が満たされており、かつ被処理水が流動していない場合、さらに、発光体による被処理水の温度変化を検出することができる。
【0027】
図2を参照して、図1を参照して説明した紫外線照射装置1を説明する。紫外線照射装置1は、紫外線ランプ2、ランプスリーブ3および紫外線照射槽10を備える。紫外線照射装置1に被処理水4が流入すると、紫外線ランプ2から紫外線が発光され、消毒済の処理水5が得られる。
【0028】
紫外線照射槽10は、被処理水4、紫外線ランプ2およびランプスリーブ3を収容する容器である。紫外線照射槽10は、通常、SUSなどの金属である。紫外線照射槽10は、外壁に、被処理水入口管41および処理水出口管51とを設けている。被処理水入口管41は、紫外線照射槽10内に、被処理水4を流入させるための管である。処理水出口管51は、紫外線照射槽10内で紫外線照射された後の処理水5を流出するための管である。
【0029】
紫外線ランプ2は、紫外線照射槽10内に水平に設置される。図1および図2に示す例では、紫外線ランプ2aないし2dが、等間隔に平行に設置される。紫外線ランプ2は、両側に電極を取り付けた石英管をU字型にして棒状にしたものを用いる。石英管の内部は、ほぼ真空状態であり、水銀蒸気のみが存在する。このような状態の石英管の両電極間を高電圧放電させると、電子が水銀蒸気を励起させて紫外線を発するようになる。発生した紫外線に被処理水4を暴露することにより、被処理水中の消毒対象物質を無害化する。また、紫外線ランプの直径は2〜10cm程度のものを用いる。
【0030】
本発明の実施の形態に係る紫外線ランプ2は、本実施形態では、200nm〜300nmの波長の紫外線を発生する紫外線ランプを用いることができる。また、紫外線ランプは、従前の水銀ランプでも、高出力タイプの低圧水銀ランプでも中圧水銀ランプでも構わない。本発明の実施の形態においては、ランプ表面温度が高温となる中圧水銀ランプを例に説明する。中圧紫外線ランプは、その照射中の表面温度は600〜900度に達すると言われている。紫外線ランプ2は、被処理水4を消毒するとともに、被処理水4が紫外線照射槽10内を流通することにより、紫外線ランプ2の表面が冷却され、適切な点灯状態を保っている。
【0031】
ランプスリーブ3は、被処理水4が各紫外線ランプ2に直接接触しないようにするために、紫外線ランプ2を保護するためのものである。そのため、ランプスリーブ3は、各紫外線ランプ2を包むように設置される。なお、ランプスリーブ3は、石英ガラスにより形成される。図1および図2に示す例では、紫外線ランプ2aないし2dを備えるので、紫外線ランプ2aないし2dのそれぞれを保護するために、紫外線照射装置1は、対応するランプスリーブ3aないし3dを備える。
【0032】
紫外線ランプ2を収納しているランプスリーブ3の外側は、被処理水4により汚れる場合がある。そこで図2には示さないが、この汚れを除去するための自動洗浄機構を備えても良い。自動洗浄機構は、紫外線ランプ2の中心で紫外線照射槽10の中心に設置してあるネジを駆動軸とし、ランプスリーブ3を洗浄するブラシ類を固定した板(洗浄板と呼ぶ)にナットを付けている。紫外線照射槽10の外部のモータにて駆動軸であるネジを回すことで、洗浄板をランプスリーブの長手方向に沿って動作させることにより、ランプスリーブ3の外側の汚れを除去することができる。
【0033】
自動洗浄機構のブラシとしては、紫外線で劣化しないフッ素系樹脂等の樹脂製ブラシや、SUS等の金属製ブラシを用いることができる。このブラシは、リング状のものでも良い。具体的には、樹脂やフッ素樹脂系のOリングを用いることができる。
【0034】
図3を参照して、紫外線照射装置1の紫外線ランプ2を説明する。図3に示された紫外線ランプ2aは、図2に示した紫外線ランプ2aないし2dのうち、最も上方に位置する紫外線ランプである。紫外線ランプ2aは、ランプスリーブ3aによって保護されている。紫外線ランプ2aは、紫外線を照射する発光体22aと、電極21aを備える。図2および図3に示す例では、紫外線ランプ2aの発光体22aの直径に対し、電極21aの直径は大きい。この場合、紫外線照射装置1内の被処理水4の水量が減少し、被処理水4の水位が、発光体22aの上端面まで下がると、発光体22aが、紫外線照射槽10の上部に形成される空気層に露出してしまう。従って、図3に示す例では、露出水位線Lは、紫外線ランプ2aの上端を通り、紫外線ランプ2aの長手方向と平行な線である。
【0035】
図4を参照して、紫外線照射槽10内の被処理水4の水量と、温度との関係を説明する。図4に示す例において、パターンA、パターンBおよびパターンCは、それぞれ、図5、図6および図7に対応する。図5、図6および図7において、それぞれ(a)は、紫外線照射装置1の断面を、それぞれBは、紫外線照射装置1を横から観察した様子を模式的に示している。
【0036】
図5は、紫外線照射槽10内の全てが水で満たされており、満水の状態で、空気層がなく、全ての紫外線ランプが水中にある場合を示す。図4のパターンAを参照して、図5に示す場合の空気層および水中の各温度の上昇を説明する。
【0037】
紫外線照射装置1内を水が流れている場合、空気層は形成されないので、空気層の温度は計測されない。紫外線照射装置1内に水が流れている場合、紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされる。また被処理水が流動しているので、特定の被処理水に放熱されることなく、水中温度は低い。この場合、本発明の実施の形態において、通常の好ましい運用状況なので、特に温度計測を必要としない。
【0038】
一方、紫外線照射装置1内に水が流れていない場合、水が流れている場合と同様に、空気層は形成されないので、空気層の温度は計測されない。紫外線照射装置1内に水が流れていない場合、紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされるが、被処理水が流動していないので、紫外線処理槽10内に滞留した被処理水に放熱され、水中温度が高くなるおそれがある。この場合、本発明の実施の形態において、温度センサは、水中温度を計測する必要があるため、紫外線照射槽10の内部に設置することが好ましい。水温は上部から上昇することを考慮すると、紫外線照射槽10の底部よりも上部に温度センサを設置するのが好ましい。これにより、紫外線照射装置1内に水が流れていないことによる水温の温度上昇を速やかに検出することができる。
【0039】
図6は、紫外線照射槽10は満水ではなく、紫外線照射槽10の上部に空気層が形成されている場合を示す。図6において、全ての紫外線ランプが水中にある。図4のパターンBを参照して、図6に示す場合の空気層および水中の各温度の上昇を説明する。
【0040】
紫外線照射装置1内を水が流れている場合、紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされる。また被処理水が流動しているので、特定の被処理水に放熱されることなく、水中温度は低い。また、水中温度が低い状態のまま被処理水が流動しているので、空気層の温度が上昇することもない。この場合、本発明の実施の形態において、通常の好ましい運用状況なので、特に温度計測を必要としない。
【0041】
一方、紫外線照射装置1内に水が流れていない場合、図5のパターンAと同様に、紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされるが、被処理水が流動していないので、紫外線処理槽10内に滞留した被処理水に放熱され、水中温度が高くなるおそれがある。この場合、本発明の実施の形態において、温度センサは、水中温度を計測する必要があるため、紫外線照射槽10の内部に設置することが好ましい。また、図6のパターンBの場合、被処理水が減少し空気層ができているので、水温の上昇に伴って、空気層の温度も徐々に上昇する。この場合、紫外線照射装置1の被処理水4の温度上昇を検出するため、水が満たされる紫外線照射槽10内の底部に温度センサを設けるのが好ましい。また、被処理水の温度上昇に伴って空気層の温度も徐々に上昇することを考慮すると、紫外線照射槽10の上部の空気層となる位置に、温度センサが設けられても良い。
【0042】
図7は、紫外線照射槽10は満水でなく、紫外線照射槽10の上部に空気層が形成されている場合を示す。図7において、少なくとも一つの紫外線ランプが空気層にあり、残りの紫外線ランプが水中にある。図4のパターンCを参照して、図7に示す場合の空気層および水中の各温度の上昇を説明する。
【0043】
紫外線照射装置1内を水が流れている場合、水中に位置する紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされる。また被処理水4が流動しているので、特定の被処理水に放熱されることなく、水中温度は低い。しかし、空気層に位置する紫外線の照射による放熱で、空気層の温度が上昇する。この場合、紫外線照射装置1の空気層の温度上昇を検出するため、紫外線照射槽10内の空気層の温度を計測可能な位置に温度センサを設けるのが良い。
【0044】
一方、紫外線照射装置1内に水が流れていない場合、紫外線照射装置1内を水が流れている場合と同様に、空気層に位置する紫外線の照射による放熱で、空気層の温度が上昇する。また、被処理水4が流動していないので、被処理水4によって空気層が冷やされることなく、紫外線照射装置1の空気層の温度上昇を検出する。水中の紫外線の照射による放熱は、図5で示したパターンAおよび図6で示したパターンBと同様に、被処理水4により冷やされるが、被処理水が流動していないので、紫外線処理槽10内に滞留した被処理水に放熱され、水中温度が高くなるおそれがある。この場合、本発明の実施の形態において、より温度の変化の激しい空気層の温度を計測する必要があるため、温度センサは、紫外線照射槽10の上部に設置することが好ましい。
【0045】
上記の説明により、パターンAで紫外線照射装置1内が水を流れていない場合、紫外線照射装置1の底部または上部で測定するのが良く、上部での測定が好ましい。パターンBで紫外線照射装置1内を水が流れていない場合、紫外線照射装置1の底部での測定が好ましいが、上部でも測定することができる。パターンCの場合、紫外線照射装置1内に水が流れているいないを問わず、紫外線照射槽10の上部での測定が好ましい。これらを総合的に考慮すると、温度センサ一つを設置する場合、紫外線照射槽10の上部に温度センサを設置することが好ましい。これにより、温度センサ一つで、効率的に紫外線照射槽10内の異常を発見することができる。
【0046】
さらには、紫外線照射槽10内の、紫外線ランプの高さに近い位置に、温度センサを設置することがより好ましい。例えば、紫外線照射槽10の空気層となる位置に温度センサを設置すると、空気層の温度を計測することになる。しかし、パターンBの場合で、紫外線照射装置1内を水が流れていない場合、水中の温度変化の後、空気層の温度が上昇することになる。この場合、空気層でのみ温度計測している場合、水温計測の場合に比べ、検知が遅れる場合が考えられる。そこで、紫外線照射槽10内の、紫外線ランプの高さに近い位置に、温度センサを設置することにより、パターンBの場合に水温計測することになる。従って、空気層での測定に比べて、より早く検知することができる。また、さらに水位が下がって紫外線ランプが空気層に露出すると空気層の温度が急激に上昇する。この場合、紫外線照射槽10内の、紫外線ランプの高さに近い位置に温度センサを設置することにより、空気層の温度を測定することになるので、この状況を早急に検出することができる。
【0047】
従って、図1で説明した設置エリアのうち、温度センサ設置エリアA1に温度センサを設置することが好ましい。また、温度センサ設置エリアA2およびA3に設置しても良いが、できれば、紫外線ランプの高さに近い位置、具体的には、露出水位線Lに近い位置で測定することが好ましい。
【0048】
次に図8ないし図9を参照して、温度センサを設置例を説明する。
【0049】
図8は、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の外壁に接して設置されている場合を説明している。図8(a)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線Lの上部に設置されている。図8(b)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線L上に設置されている。図8(c)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線Lの下部に設置されている。図8(d)に示す例では、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の最上部に設置されている。
【0050】
図8に示す例では、紫外線照射槽10の外壁に接して設置されているので、紫外線照射槽10内の被処理水4または空気層の温度上昇が、紫外線照射槽10に伝わり、その温度を測定することになる。また、紫外線照射槽10の素材は、一般的にはSUSなどの金属であるため、温度センサ6のプローブが紫外線照射槽10に接するように設置することにより、比較的早く、被処理水4または空気層の温度上昇が検知される。特に図8(a)ないし(c)に示す例では、露出水位線Lの近傍に設置されるので、紫外線ランプが露出することによる温度上昇や、被処理水4が流れないことによる被処理水4の上昇を、早急に検出することができる。また、図8(d)に示す例では、紫外線照射槽10の最上部に設置されるので、温度センサ6のプローブを、安定して設置することができる。
【0051】
図9は、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の内壁に接して設置されている場合を説明している。図9(a)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線Lの上部に設置されている。図9(b)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線L上に設置されている。図9(c)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線Lの下部に設置されている。図9(d)に示す例では、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の最上部に設置されている。
【0052】
図9に示す例では、紫外線照射槽10の内壁に接して設置されているので、紫外線照射槽10内の被処理水4または空気層の温度を測定する。また、紫外線照射槽10の素材は、一般的にはSUSなどの金属であるため、温度センサ6のプローブが紫外線照射槽10に接するように設置することにより、被処理水4または空気層の温度上昇が紫外線照射槽10に伝わり、その温度上昇も検知される。特に図9(a)ないし(c)に示す例では、露出水位線Lの近傍に設置されるので、紫外線ランプが露出することによる温度上昇や、被処理水4が流れないことによる被処理水4の上昇を、早急に検出することができる。また、図9に示す例では、図8に示す例に比べて、設定温度以上になったことをより早く検出することができる。
【0053】
図10は、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の内部に設置されている場合を説明している。図10では、温度センサ6は、紫外線照射槽10に設けられた支持棒7によって、固定されている。紫外線照射槽10内の被処理水4は流動するので、この流動によって動かないように、プローブは固定される。図10(a)に示す例では、温度センサのプローブが、露出水位線Lの近傍に設置されている。図10(b)に示す例では、温度センナ6のプローブが、露出水位線Lより上部に設置されている。
【0054】
図10に示す例では、紫外線照射層10の内部に設置されるので、紫外線照槽層10の温度の影響を受けることなく、紫外線照射槽10内の被処理水4または空気層の温度を測定することができる。例えば、寒冷地や温暖地など、紫外線照射装置1が設置された場所の温度が極端に高かったり低かったりする場合でも、外気温の影響を受けることなく、被処理水4または空気層の温度を測定することができる。図10に示す例では、図8および図9に示す例に比べて、設定温度以上になったことをより早く検出することができる。ただし、自動洗浄機構などの、内部構造物の影響を受けないように、温度センサ6を設置する必要がある。また、紫外線照射槽10内の被処理水4の流れや、被処理水4への紫外線ランプ4の照射の妨げにならないように、温度センサ6を設置する必要がある。
【0055】
本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1およびこの紫外線照射装置1で用いられる温度測定方法によれば、紫外線ランプ2の発光体22aの最上端より上方のリアクタ内空間の温度を測定する。これにより、紫外線照射槽10内の水位が下がり紫外線ランプ2が空気にさらされることで、紫外線ランプ2の温度が上昇するとともに、紫外線ランプ2からの放熱により紫外線照射槽10の内部の空気溜まりの温度が上昇するが、その温度上昇を、迅速かつ確実に検知することができる。
【0056】
同様に、発光体22aの最上端より上方のリアクタ外壁或いは内壁の温度測定を行うことで、紫外線照射槽10の内部の空気溜まりの温度上昇に伴ってリアクタ外壁或いは内壁の温度が上昇するため、紫外線ランプおよび紫外線照射槽内部の温度上昇を迅速かつ確実に検知することができる。
【0057】
また、紫外線照射槽10内の、水の流れの停止に伴う温度上昇も、同様の原理により、迅速かつ確実に検知することができる。温度上昇を検知した場合、紫外線ランプ2の消灯などの制御を行うことで、被処理水4への紫外線の過照射を防止し、臭化物イオン存在時の臭素酸イオン生成を抑制できる。
【0058】
また、本発明の実施の形態に係る温度測定方法によれば、洗浄機構などの内部構造物の影響を受けることがなく、紫外線消毒に影響のある紫外線照射槽10内の流れを阻害することもない。
【0059】
さらに、本発明の実施の形態においては、紫外線照射装置1に複数の温度センサを設置することなく、被処理水4の減少に伴う温度上昇と、被処理水4の滞留による温度上昇とを、効果的に測定することができる。
【0060】
このように本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1およびこの紫外線照射装置1で用いられる温度測定方法によれば、紫外線照射槽10の内部の水位低下、或いは被処理水4の紫外線照射槽10内での滞留による照射槽内部の温度上昇を、効果的かつ確実に検知できる。
【0061】
(第1の変形例)
本発明の実施の形態に係る温度測定方法は、紫外線照射装置1とは異なる種類の紫外線照射装置にも対応することができる。以下、第1の変形例および第2の変形例を参照して、他の種別の紫外線照射装置に、本発明の実施の形態に係る温度測定方法を適用した場合を説明する。
【0062】
図11を参照して説明する第1の変形例に係る紫外線照射装置1aは、図2を参照して説明した紫外線照射装置1を縦に設置したものである。紫外線照射装置1aにおいて、紫外線照射槽10aの下から被処理水が流入し、上から紫外線が照射された処理水が流出する。本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1と同様に、第1の変形例に係る紫外線照射装置1aは、紫外線ランプ2aないし2dと、各紫外線ランプ2aないし2dを収容するランプスリーブ3aないし3dを備える。
【0063】
図12を参照して、紫外線照射装置1aの紫外線ランプ2aおよびランプスリーブ3aを説明する。図12に示すように、第1の変形例に係る紫外線照射装置1aの露出水位線Laは、紫外線ランプ2aのうち、発光体22aの上端部を通る水平線となる。
【0064】
図11および図12に示す紫外線照射装置1aにおいても、温度センサは、処理水の減少に伴い紫外線照射槽10aの上部に空気層ができた場合、紫外線ランプの発光体による、空気層の温度変化を検出可能なエリアに設置され、被処理水4の温度を測定する。
【0065】
図1を参照して説明した場合と同様に、温度センサは、露出水位線Laの近傍のエリアA1、露出水位線Laより上であって紫外線照射槽10aの外壁に接するエリアA2、および露出水位線Laより上の、紫外線照射槽10aの内部のエリアの各エリアのいずれかに設置される。
【0066】
このように、図11に示した第1の変形例に係る紫外線照射装置1aにおいても、本発明の実施の形態に係る温度測定方法によって、紫外線照射槽10aの内部の水位低下、或いは被処理水4の紫外線照射槽10a内での滞留による照射槽内部の温度上昇を、効果的かつ確実に検知できる。
【0067】
(第2の変形例)
第2の変形例を参照して、さらにの種別の紫外線照射装置に、本発明の実施の形態に係る温度測定方法を適用した場合を説明する。
【0068】
図13を参照して説明する第2の変形例に係る紫外線照射装置1bは、被処理水4が流れるシリンダー8とが十字に接合されている。シリンダー8を流れる被処理水4は、図13の向かって左から流入し、紫外線照射槽10で紫外線照射を受けた処理水5が、右から流出する。図13に示すランプスリーブ3aおよび3bの内部に、紫外線ランプ2aおよび2bが収容されている。なお、図13に示す例では、紫外線ランプは2本であるが、1本でも良いし、3本以上でも良い。
【0069】
図2に示す紫外線照射装置1では、紫外線照射槽10は被処理水4が流れるシリンダーを兼ねており、被処理水4の流れと同じ方向に紫外線ランプ2が設置されている。これに対し図13に示す紫外線照射装置1bは、紫外線照射槽10とシリンダー8は直交しており、被処理水4の流れと直交する方向に紫外線ランプ2が設置されている。
【0070】
このような紫外線照射装置1においても、本発明の実施の形態に係る温度測定方法を適用することができる。第2の変形例に係る紫外線照射装置1bの水が流れる方向で切断した場合の断面図は、図1で説明した断面図と同様になる。
【0071】
図13に示す紫外線照射装置1bにおいても、温度センサは、被処理水4の減少に伴い紫外線照射槽10bの上部に空気層ができた場合、紫外線ランプの発光体による、空気層の温度変化を検出可能なエリアに設置され、被処理水4の温度を測定する。
【0072】
図1を参照して説明した場合と同様に、温度センサは、露出水位線Lの近傍のエリアA1、露出水位線Lより上であって紫外線照射槽10bの外壁に接するエリアA2、および露出水位線Lより上の、紫外線照射槽10bの内部のエリアの各エリアのいずれかに設置される。
【0073】
このように、図13に示した第2の変形例に係る紫外線照射装置1bにおいても、本発明の実施の形態に係る温度測定方法によって、紫外線照射槽10bの内部の水位低下、或いは被処理水4の紫外線照射槽10b内での滞留による照射槽内部の温度上昇を、効果的かつ確実に検知できる。
【0074】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態、第1の変形例および第2の変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。特に第1の変形例および第2の変形例で示した様に、あらゆる形態の紫外線照射装置に適用することができる。
【0075】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 紫外線照射装置
2 紫外線ランプ
3 ランプスリーブ
4 被処理水
5 処理水
6 温度センサ
7 指示棒
8 シリンダー
10 紫外線照射槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置およびこの紫外線照射装置内の温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水処理や下水処理・食品排水処理・薬品排水処理・遠洋船舶バラスト水処理等において藻類・微生物・病原性原虫等を不活化もしくは無害化するために、被処理水に紫外線を照射する紫外線照射装置が知られている。紫外線照射装置による紫外線消毒は、上下水処理、プールなどの殺菌消毒処理、食品工業における水処理などの、水処理全般における病原性の微生物、細菌、ウィルスの殺菌、消毒を目的に応用が進んでいる。
【0003】
紫外線消毒は、従来の消毒技術である塩素消毒で不活化できない耐塩素性病原菌クリプトスポリジウム、ジアルジアの対策として非常に効果的な消毒方法である。従って、特に浄水処理において紫外線消毒は、期待されている消毒技術である。国内では2007年3月に厚生労働省より「水道水におけるクリプトスポリジウム等対策指針」が通知され、地表水以外の水源を原水とする施設において紫外線処理設備の導入が認められた。これに伴い、紫外線処理設備の導入数が増加しつつある。また、上述の「水道水におけるクリプトスポリジウム等対策指針」では、クリプトスポリジウム、ジアルジアの2log以上の不活化には紫外線を10mJ/cm2以下の照射であることが開示されている。
【0004】
紫外線による消毒性能は、紫外光の強さと照射されている時間の積(紫外線量)に依存する。つまり、紫外線消毒槽の内部での被処理水の流れが、消毒性能に大きく影響する。従って、効果的な紫外線量を維持するために、様々な形態の紫外線照射装置が開発されている。
【0005】
一般的な紫外線照射装置では、紫外線の照射対象は、水を代表とする液体である。このような一般的な紫外線照射装置において、紫外線の光源は、紫外線ランプである。紫外線ランプを水中に直接入れると、電極部がショートしてしまうため、ランプスリーブという保護用ガラス管が用いられている。一般的な紫外線照射装置は、ランプスリーブの内部に紫外線ランプを挿入し、ランプスリーブごと紫外線ランプを照射対象となる被処理水の中に浸漬する構造である。ランプスリーブの材質には、紫外線透過率が高い石英ガラスが用いられている。
【0006】
紫外線ランプにおいて、ランプへの入力電力のうち一部が紫外光発光に使われ、残りは熱として放熱される。紫外線ランプからの放熱により、(1)紫外線消毒装置内の水位が下がりランプが空気にさらされるか、(2)反応槽内の水の流れが停止すると、装置は高温となり、紫外線ランプの破損するおそれがあるので、水温監視の必要があることが開示されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0007】
一方、紫外線水処理システムが停止に至る異常、故障を未然に防止するために、処理水の温度を計測するための温度センサを設けることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の方法においては、特に図2に示すように、処理水の出口近傍に温度センサが設けられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−82774号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ULTRAVIOLET DISINFECTION GUIDANCE MA-NUAL FOR THE FINAL LONG TERM 2 EN-HANCED SURFACE WATER TREATMENT RULE, EPA 815-R-06-007, November 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、紫外線ランプからの放熱により、紫外線照射装置の異常や故障を未然に防止するために、水温監視について最適な方法が開示されていない。
【0011】
特許文献1に記載の方法では、処理水の温度変化を検知できる。しかし、処理水の温度を測定したとしても、紫外線照射装置内の水位の低下や水の流れが停止した場合には、その温度変化の検知が遅れる場合が考えられ、最適な方法ではない。
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、被処理流体の変化に基づく異常を効果的に検知することのできる紫外線照射装置およびこの紫外線照射装置内の温度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置に関する。本発明の第1の特徴に係る紫外線照射装置は、被処理流体の減少に伴い容器の上部に空気層ができた場合、発光体による空気層の温度変化を、検出可能な設置エリアに、設置される温度センサを備える。温度センサは、被処理流体が流動していない場合、発光体による被処理流体の温度変化を、さらに検出可能な設置エリアに設置されることが好ましい。
【0014】
ここで、設置エリアは、発光体の最上端に水平な露出水位線より上および下のエリアであることが好ましい。例えば、温度センサは、容器の外壁に接して設置される。また、温度センサは、容器の内壁に接して設置される。さらに、温度センサは、容器の内壁の内部に設置される。
【0015】
本発明の第2の特徴は、容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置における温度測定方法に関する。本発明の第2の特徴に係る紫外線照射装置は、被処理流体の減少に伴い容器の上部に空気層ができた場合に、発光体が空気層に露出したことによる空気層の温度変化を検出可能な設置エリアに、設置された温度センサを用いて、被処理流体の温度を測定するステップを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被処理流体の変化に基づく異常を効果的に検知することのできる紫外線照射装置およびこの紫外線照射装置内の温度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置において、温度センサを設置する位置を説明する図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置を説明する図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置における露出水位線を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置において、水位および空気層の有無と、温度検出との関係をまとめた表である。
【図5】図5は、紫外線照射装置において、満水の場合を説明する図である。
【図6】図6は、紫外線照射装置において、紫外線ランプが露出しない程度に処理水が減少している場合を説明する図である。
【図7】図7は、紫外線照射装置において、処理水が減少し紫外線ランプが露出している場合を説明する図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態において、紫外線照射槽10の外壁に温度センサを設置する例を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態において、紫外線照射槽10の内壁に温度センサを設置する例を説明する図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態において、紫外線照射槽10の内部に温度センサを設置する例を説明する図である。
【図11】図11は、本発明の第1の変形例に係る紫外線照射装置を説明する図である。
【図12】図12は、本発明の第1の変形例に係る紫外線照射装置における露出水位線を説明する図である。
【図13】図13は、本発明の第2の変形例に係る紫外線照射装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0019】
図1および図2を参照して、本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1を説明する。紫外線照射装置1は、容器(紫外線照射槽)内に被処理流体(被処理水)を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体(処理水)を流出する。本発明の実施の形態においては特に、上下水道プラントにおいて、水を紫外線消毒するための紫外線照射装置1について説明する。本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1は、水以外の流体を紫外線消毒するための装置に適用することができる。
【0020】
本発明の実施の形態においては、図1および図2に示すような紫外線照射装置1内の温度測定方法を説明するが、後述するように、どのような形態の紫外線照射装置でも適用可能である。
【0021】
図1は、図2に示す紫外線照射装置1の断面を示した図である。図1においては、紫外線ランプ2は、図面に垂直な方向に設置されている。紫外線照射槽10の中を被処理水が流れている。この被処理水の水量が減少すると、紫外線照射槽10の上部に空洞ができてしまう。被処理水が減少し、被処理水の水面が、露出水位線Lより下回ると、紫外線ランプの発光体が空気中に露出し、紫外線照射装置1の異常や故障の原因となるおそれがある。本発明の実施の形態において、露出水位線Lは、紫外線ランプ2の発光体の上端部を通る水平線である。紫外線ランプが複数ある場合、露出水位線Lは、各紫外線ランプの発光体の上端部を通る水平線のうち、最も上の水平線である。
【0022】
図1に示す例では、紫外線照射装置1は、紫外線照射槽10内に、4つのランプスリーブ3a、3b、3cおよび3dと、各ランプスリーブの内部に紫外線ランプ2a、2b、2cおよび2dと、を備える。紫外線ランプ2aおよび2b、紫外線ランプ2cおよび2dは、それぞれ水平に設置されている。従って、図1に示す例では露出水位線Lは、より上方に位置する紫外線ランプ2aおよび2bの発光体の上端部を通る水平線である。
【0023】
図1において、温度センサは、温度センサ設置エリアA1、A2およびA3のうち、いずれかのエリアに設置される。この温度センサ設置エリアA1、A2およびA3は、被処理水の減少に伴い紫外線照射槽10の上部に空気層ができた場合、紫外線ランプ2aおよび2bの発光体による、空気層の温度変化を検出可能なエリアである。この温度センサ設置エリアA1、A2およびA3は、さらに、被処理水が流動していない場合、発光体による被処理水の温度変化を、さらに検出可能なエリアである。
【0024】
温度センサ設置エリアA1は、露出水位線Lの近傍のエリアである。温度センサ設置エリアA1にプローブが設置された温度センサは、発光体が露出することによる空気層の温度変化をいち早く検出することができる。温度センサ設置エリアA1は、この水位まで被処理水が満たされており、かつ被処理水が流動していない場合、さらに、発光体による被処理水の温度変化を検出することができる。温度センサ設置エリアA1は、露出水位線Lの上部および下部を含むエリアであっても良い。
【0025】
温度センサ設置エリアA2は、露出水位線Lより上であって、紫外線照射槽10の外壁に接するエリアである。温度センサ設置エリアA2にプローブが設置された温度センサは、水位が下がり空気層の温度が上昇することに伴って、紫外線照射槽10の外壁の温度上昇を検出することができる。温度センサ設置エリアA2は、この水位まで被処理水が満たされており、かつ被処理水が流動していない場合、さらに、発光体による被処理水の温度変化を検出することができる。温度センサ設置エリアA1は、露出水位線Lの下部の紫外線照射槽10の外壁に接するエリアを含んでも良い。
【0026】
温度センサ設置エリアA3は、露出水位線Lより上の、紫外線照射槽10の内部のエリアである。温度センサは、温度センサ設置エリアA3のうち、紫外線照射槽10の内壁に接して設置されても良いし、紫外線照射槽10の内部に設置されても良い。温度センサ設置エリアA3にプローブが設置された温度センサは、水位が下がることによる空気層の温度の上昇を検出することができる。温度センサ設置エリアA3は、この水位まで被処理水が満たされており、かつ被処理水が流動していない場合、さらに、発光体による被処理水の温度変化を検出することができる。
【0027】
図2を参照して、図1を参照して説明した紫外線照射装置1を説明する。紫外線照射装置1は、紫外線ランプ2、ランプスリーブ3および紫外線照射槽10を備える。紫外線照射装置1に被処理水4が流入すると、紫外線ランプ2から紫外線が発光され、消毒済の処理水5が得られる。
【0028】
紫外線照射槽10は、被処理水4、紫外線ランプ2およびランプスリーブ3を収容する容器である。紫外線照射槽10は、通常、SUSなどの金属である。紫外線照射槽10は、外壁に、被処理水入口管41および処理水出口管51とを設けている。被処理水入口管41は、紫外線照射槽10内に、被処理水4を流入させるための管である。処理水出口管51は、紫外線照射槽10内で紫外線照射された後の処理水5を流出するための管である。
【0029】
紫外線ランプ2は、紫外線照射槽10内に水平に設置される。図1および図2に示す例では、紫外線ランプ2aないし2dが、等間隔に平行に設置される。紫外線ランプ2は、両側に電極を取り付けた石英管をU字型にして棒状にしたものを用いる。石英管の内部は、ほぼ真空状態であり、水銀蒸気のみが存在する。このような状態の石英管の両電極間を高電圧放電させると、電子が水銀蒸気を励起させて紫外線を発するようになる。発生した紫外線に被処理水4を暴露することにより、被処理水中の消毒対象物質を無害化する。また、紫外線ランプの直径は2〜10cm程度のものを用いる。
【0030】
本発明の実施の形態に係る紫外線ランプ2は、本実施形態では、200nm〜300nmの波長の紫外線を発生する紫外線ランプを用いることができる。また、紫外線ランプは、従前の水銀ランプでも、高出力タイプの低圧水銀ランプでも中圧水銀ランプでも構わない。本発明の実施の形態においては、ランプ表面温度が高温となる中圧水銀ランプを例に説明する。中圧紫外線ランプは、その照射中の表面温度は600〜900度に達すると言われている。紫外線ランプ2は、被処理水4を消毒するとともに、被処理水4が紫外線照射槽10内を流通することにより、紫外線ランプ2の表面が冷却され、適切な点灯状態を保っている。
【0031】
ランプスリーブ3は、被処理水4が各紫外線ランプ2に直接接触しないようにするために、紫外線ランプ2を保護するためのものである。そのため、ランプスリーブ3は、各紫外線ランプ2を包むように設置される。なお、ランプスリーブ3は、石英ガラスにより形成される。図1および図2に示す例では、紫外線ランプ2aないし2dを備えるので、紫外線ランプ2aないし2dのそれぞれを保護するために、紫外線照射装置1は、対応するランプスリーブ3aないし3dを備える。
【0032】
紫外線ランプ2を収納しているランプスリーブ3の外側は、被処理水4により汚れる場合がある。そこで図2には示さないが、この汚れを除去するための自動洗浄機構を備えても良い。自動洗浄機構は、紫外線ランプ2の中心で紫外線照射槽10の中心に設置してあるネジを駆動軸とし、ランプスリーブ3を洗浄するブラシ類を固定した板(洗浄板と呼ぶ)にナットを付けている。紫外線照射槽10の外部のモータにて駆動軸であるネジを回すことで、洗浄板をランプスリーブの長手方向に沿って動作させることにより、ランプスリーブ3の外側の汚れを除去することができる。
【0033】
自動洗浄機構のブラシとしては、紫外線で劣化しないフッ素系樹脂等の樹脂製ブラシや、SUS等の金属製ブラシを用いることができる。このブラシは、リング状のものでも良い。具体的には、樹脂やフッ素樹脂系のOリングを用いることができる。
【0034】
図3を参照して、紫外線照射装置1の紫外線ランプ2を説明する。図3に示された紫外線ランプ2aは、図2に示した紫外線ランプ2aないし2dのうち、最も上方に位置する紫外線ランプである。紫外線ランプ2aは、ランプスリーブ3aによって保護されている。紫外線ランプ2aは、紫外線を照射する発光体22aと、電極21aを備える。図2および図3に示す例では、紫外線ランプ2aの発光体22aの直径に対し、電極21aの直径は大きい。この場合、紫外線照射装置1内の被処理水4の水量が減少し、被処理水4の水位が、発光体22aの上端面まで下がると、発光体22aが、紫外線照射槽10の上部に形成される空気層に露出してしまう。従って、図3に示す例では、露出水位線Lは、紫外線ランプ2aの上端を通り、紫外線ランプ2aの長手方向と平行な線である。
【0035】
図4を参照して、紫外線照射槽10内の被処理水4の水量と、温度との関係を説明する。図4に示す例において、パターンA、パターンBおよびパターンCは、それぞれ、図5、図6および図7に対応する。図5、図6および図7において、それぞれ(a)は、紫外線照射装置1の断面を、それぞれBは、紫外線照射装置1を横から観察した様子を模式的に示している。
【0036】
図5は、紫外線照射槽10内の全てが水で満たされており、満水の状態で、空気層がなく、全ての紫外線ランプが水中にある場合を示す。図4のパターンAを参照して、図5に示す場合の空気層および水中の各温度の上昇を説明する。
【0037】
紫外線照射装置1内を水が流れている場合、空気層は形成されないので、空気層の温度は計測されない。紫外線照射装置1内に水が流れている場合、紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされる。また被処理水が流動しているので、特定の被処理水に放熱されることなく、水中温度は低い。この場合、本発明の実施の形態において、通常の好ましい運用状況なので、特に温度計測を必要としない。
【0038】
一方、紫外線照射装置1内に水が流れていない場合、水が流れている場合と同様に、空気層は形成されないので、空気層の温度は計測されない。紫外線照射装置1内に水が流れていない場合、紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされるが、被処理水が流動していないので、紫外線処理槽10内に滞留した被処理水に放熱され、水中温度が高くなるおそれがある。この場合、本発明の実施の形態において、温度センサは、水中温度を計測する必要があるため、紫外線照射槽10の内部に設置することが好ましい。水温は上部から上昇することを考慮すると、紫外線照射槽10の底部よりも上部に温度センサを設置するのが好ましい。これにより、紫外線照射装置1内に水が流れていないことによる水温の温度上昇を速やかに検出することができる。
【0039】
図6は、紫外線照射槽10は満水ではなく、紫外線照射槽10の上部に空気層が形成されている場合を示す。図6において、全ての紫外線ランプが水中にある。図4のパターンBを参照して、図6に示す場合の空気層および水中の各温度の上昇を説明する。
【0040】
紫外線照射装置1内を水が流れている場合、紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされる。また被処理水が流動しているので、特定の被処理水に放熱されることなく、水中温度は低い。また、水中温度が低い状態のまま被処理水が流動しているので、空気層の温度が上昇することもない。この場合、本発明の実施の形態において、通常の好ましい運用状況なので、特に温度計測を必要としない。
【0041】
一方、紫外線照射装置1内に水が流れていない場合、図5のパターンAと同様に、紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされるが、被処理水が流動していないので、紫外線処理槽10内に滞留した被処理水に放熱され、水中温度が高くなるおそれがある。この場合、本発明の実施の形態において、温度センサは、水中温度を計測する必要があるため、紫外線照射槽10の内部に設置することが好ましい。また、図6のパターンBの場合、被処理水が減少し空気層ができているので、水温の上昇に伴って、空気層の温度も徐々に上昇する。この場合、紫外線照射装置1の被処理水4の温度上昇を検出するため、水が満たされる紫外線照射槽10内の底部に温度センサを設けるのが好ましい。また、被処理水の温度上昇に伴って空気層の温度も徐々に上昇することを考慮すると、紫外線照射槽10の上部の空気層となる位置に、温度センサが設けられても良い。
【0042】
図7は、紫外線照射槽10は満水でなく、紫外線照射槽10の上部に空気層が形成されている場合を示す。図7において、少なくとも一つの紫外線ランプが空気層にあり、残りの紫外線ランプが水中にある。図4のパターンCを参照して、図7に示す場合の空気層および水中の各温度の上昇を説明する。
【0043】
紫外線照射装置1内を水が流れている場合、水中に位置する紫外線の照射による放熱は、被処理水4により冷やされる。また被処理水4が流動しているので、特定の被処理水に放熱されることなく、水中温度は低い。しかし、空気層に位置する紫外線の照射による放熱で、空気層の温度が上昇する。この場合、紫外線照射装置1の空気層の温度上昇を検出するため、紫外線照射槽10内の空気層の温度を計測可能な位置に温度センサを設けるのが良い。
【0044】
一方、紫外線照射装置1内に水が流れていない場合、紫外線照射装置1内を水が流れている場合と同様に、空気層に位置する紫外線の照射による放熱で、空気層の温度が上昇する。また、被処理水4が流動していないので、被処理水4によって空気層が冷やされることなく、紫外線照射装置1の空気層の温度上昇を検出する。水中の紫外線の照射による放熱は、図5で示したパターンAおよび図6で示したパターンBと同様に、被処理水4により冷やされるが、被処理水が流動していないので、紫外線処理槽10内に滞留した被処理水に放熱され、水中温度が高くなるおそれがある。この場合、本発明の実施の形態において、より温度の変化の激しい空気層の温度を計測する必要があるため、温度センサは、紫外線照射槽10の上部に設置することが好ましい。
【0045】
上記の説明により、パターンAで紫外線照射装置1内が水を流れていない場合、紫外線照射装置1の底部または上部で測定するのが良く、上部での測定が好ましい。パターンBで紫外線照射装置1内を水が流れていない場合、紫外線照射装置1の底部での測定が好ましいが、上部でも測定することができる。パターンCの場合、紫外線照射装置1内に水が流れているいないを問わず、紫外線照射槽10の上部での測定が好ましい。これらを総合的に考慮すると、温度センサ一つを設置する場合、紫外線照射槽10の上部に温度センサを設置することが好ましい。これにより、温度センサ一つで、効率的に紫外線照射槽10内の異常を発見することができる。
【0046】
さらには、紫外線照射槽10内の、紫外線ランプの高さに近い位置に、温度センサを設置することがより好ましい。例えば、紫外線照射槽10の空気層となる位置に温度センサを設置すると、空気層の温度を計測することになる。しかし、パターンBの場合で、紫外線照射装置1内を水が流れていない場合、水中の温度変化の後、空気層の温度が上昇することになる。この場合、空気層でのみ温度計測している場合、水温計測の場合に比べ、検知が遅れる場合が考えられる。そこで、紫外線照射槽10内の、紫外線ランプの高さに近い位置に、温度センサを設置することにより、パターンBの場合に水温計測することになる。従って、空気層での測定に比べて、より早く検知することができる。また、さらに水位が下がって紫外線ランプが空気層に露出すると空気層の温度が急激に上昇する。この場合、紫外線照射槽10内の、紫外線ランプの高さに近い位置に温度センサを設置することにより、空気層の温度を測定することになるので、この状況を早急に検出することができる。
【0047】
従って、図1で説明した設置エリアのうち、温度センサ設置エリアA1に温度センサを設置することが好ましい。また、温度センサ設置エリアA2およびA3に設置しても良いが、できれば、紫外線ランプの高さに近い位置、具体的には、露出水位線Lに近い位置で測定することが好ましい。
【0048】
次に図8ないし図9を参照して、温度センサを設置例を説明する。
【0049】
図8は、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の外壁に接して設置されている場合を説明している。図8(a)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線Lの上部に設置されている。図8(b)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線L上に設置されている。図8(c)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線Lの下部に設置されている。図8(d)に示す例では、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の最上部に設置されている。
【0050】
図8に示す例では、紫外線照射槽10の外壁に接して設置されているので、紫外線照射槽10内の被処理水4または空気層の温度上昇が、紫外線照射槽10に伝わり、その温度を測定することになる。また、紫外線照射槽10の素材は、一般的にはSUSなどの金属であるため、温度センサ6のプローブが紫外線照射槽10に接するように設置することにより、比較的早く、被処理水4または空気層の温度上昇が検知される。特に図8(a)ないし(c)に示す例では、露出水位線Lの近傍に設置されるので、紫外線ランプが露出することによる温度上昇や、被処理水4が流れないことによる被処理水4の上昇を、早急に検出することができる。また、図8(d)に示す例では、紫外線照射槽10の最上部に設置されるので、温度センサ6のプローブを、安定して設置することができる。
【0051】
図9は、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の内壁に接して設置されている場合を説明している。図9(a)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線Lの上部に設置されている。図9(b)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線L上に設置されている。図9(c)に示す例では、温度センサ6のプローブが、露出水位線Lの下部に設置されている。図9(d)に示す例では、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の最上部に設置されている。
【0052】
図9に示す例では、紫外線照射槽10の内壁に接して設置されているので、紫外線照射槽10内の被処理水4または空気層の温度を測定する。また、紫外線照射槽10の素材は、一般的にはSUSなどの金属であるため、温度センサ6のプローブが紫外線照射槽10に接するように設置することにより、被処理水4または空気層の温度上昇が紫外線照射槽10に伝わり、その温度上昇も検知される。特に図9(a)ないし(c)に示す例では、露出水位線Lの近傍に設置されるので、紫外線ランプが露出することによる温度上昇や、被処理水4が流れないことによる被処理水4の上昇を、早急に検出することができる。また、図9に示す例では、図8に示す例に比べて、設定温度以上になったことをより早く検出することができる。
【0053】
図10は、温度センサ6のプローブが、紫外線照射槽10の内部に設置されている場合を説明している。図10では、温度センサ6は、紫外線照射槽10に設けられた支持棒7によって、固定されている。紫外線照射槽10内の被処理水4は流動するので、この流動によって動かないように、プローブは固定される。図10(a)に示す例では、温度センサのプローブが、露出水位線Lの近傍に設置されている。図10(b)に示す例では、温度センナ6のプローブが、露出水位線Lより上部に設置されている。
【0054】
図10に示す例では、紫外線照射層10の内部に設置されるので、紫外線照槽層10の温度の影響を受けることなく、紫外線照射槽10内の被処理水4または空気層の温度を測定することができる。例えば、寒冷地や温暖地など、紫外線照射装置1が設置された場所の温度が極端に高かったり低かったりする場合でも、外気温の影響を受けることなく、被処理水4または空気層の温度を測定することができる。図10に示す例では、図8および図9に示す例に比べて、設定温度以上になったことをより早く検出することができる。ただし、自動洗浄機構などの、内部構造物の影響を受けないように、温度センサ6を設置する必要がある。また、紫外線照射槽10内の被処理水4の流れや、被処理水4への紫外線ランプ4の照射の妨げにならないように、温度センサ6を設置する必要がある。
【0055】
本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1およびこの紫外線照射装置1で用いられる温度測定方法によれば、紫外線ランプ2の発光体22aの最上端より上方のリアクタ内空間の温度を測定する。これにより、紫外線照射槽10内の水位が下がり紫外線ランプ2が空気にさらされることで、紫外線ランプ2の温度が上昇するとともに、紫外線ランプ2からの放熱により紫外線照射槽10の内部の空気溜まりの温度が上昇するが、その温度上昇を、迅速かつ確実に検知することができる。
【0056】
同様に、発光体22aの最上端より上方のリアクタ外壁或いは内壁の温度測定を行うことで、紫外線照射槽10の内部の空気溜まりの温度上昇に伴ってリアクタ外壁或いは内壁の温度が上昇するため、紫外線ランプおよび紫外線照射槽内部の温度上昇を迅速かつ確実に検知することができる。
【0057】
また、紫外線照射槽10内の、水の流れの停止に伴う温度上昇も、同様の原理により、迅速かつ確実に検知することができる。温度上昇を検知した場合、紫外線ランプ2の消灯などの制御を行うことで、被処理水4への紫外線の過照射を防止し、臭化物イオン存在時の臭素酸イオン生成を抑制できる。
【0058】
また、本発明の実施の形態に係る温度測定方法によれば、洗浄機構などの内部構造物の影響を受けることがなく、紫外線消毒に影響のある紫外線照射槽10内の流れを阻害することもない。
【0059】
さらに、本発明の実施の形態においては、紫外線照射装置1に複数の温度センサを設置することなく、被処理水4の減少に伴う温度上昇と、被処理水4の滞留による温度上昇とを、効果的に測定することができる。
【0060】
このように本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1およびこの紫外線照射装置1で用いられる温度測定方法によれば、紫外線照射槽10の内部の水位低下、或いは被処理水4の紫外線照射槽10内での滞留による照射槽内部の温度上昇を、効果的かつ確実に検知できる。
【0061】
(第1の変形例)
本発明の実施の形態に係る温度測定方法は、紫外線照射装置1とは異なる種類の紫外線照射装置にも対応することができる。以下、第1の変形例および第2の変形例を参照して、他の種別の紫外線照射装置に、本発明の実施の形態に係る温度測定方法を適用した場合を説明する。
【0062】
図11を参照して説明する第1の変形例に係る紫外線照射装置1aは、図2を参照して説明した紫外線照射装置1を縦に設置したものである。紫外線照射装置1aにおいて、紫外線照射槽10aの下から被処理水が流入し、上から紫外線が照射された処理水が流出する。本発明の実施の形態に係る紫外線照射装置1と同様に、第1の変形例に係る紫外線照射装置1aは、紫外線ランプ2aないし2dと、各紫外線ランプ2aないし2dを収容するランプスリーブ3aないし3dを備える。
【0063】
図12を参照して、紫外線照射装置1aの紫外線ランプ2aおよびランプスリーブ3aを説明する。図12に示すように、第1の変形例に係る紫外線照射装置1aの露出水位線Laは、紫外線ランプ2aのうち、発光体22aの上端部を通る水平線となる。
【0064】
図11および図12に示す紫外線照射装置1aにおいても、温度センサは、処理水の減少に伴い紫外線照射槽10aの上部に空気層ができた場合、紫外線ランプの発光体による、空気層の温度変化を検出可能なエリアに設置され、被処理水4の温度を測定する。
【0065】
図1を参照して説明した場合と同様に、温度センサは、露出水位線Laの近傍のエリアA1、露出水位線Laより上であって紫外線照射槽10aの外壁に接するエリアA2、および露出水位線Laより上の、紫外線照射槽10aの内部のエリアの各エリアのいずれかに設置される。
【0066】
このように、図11に示した第1の変形例に係る紫外線照射装置1aにおいても、本発明の実施の形態に係る温度測定方法によって、紫外線照射槽10aの内部の水位低下、或いは被処理水4の紫外線照射槽10a内での滞留による照射槽内部の温度上昇を、効果的かつ確実に検知できる。
【0067】
(第2の変形例)
第2の変形例を参照して、さらにの種別の紫外線照射装置に、本発明の実施の形態に係る温度測定方法を適用した場合を説明する。
【0068】
図13を参照して説明する第2の変形例に係る紫外線照射装置1bは、被処理水4が流れるシリンダー8とが十字に接合されている。シリンダー8を流れる被処理水4は、図13の向かって左から流入し、紫外線照射槽10で紫外線照射を受けた処理水5が、右から流出する。図13に示すランプスリーブ3aおよび3bの内部に、紫外線ランプ2aおよび2bが収容されている。なお、図13に示す例では、紫外線ランプは2本であるが、1本でも良いし、3本以上でも良い。
【0069】
図2に示す紫外線照射装置1では、紫外線照射槽10は被処理水4が流れるシリンダーを兼ねており、被処理水4の流れと同じ方向に紫外線ランプ2が設置されている。これに対し図13に示す紫外線照射装置1bは、紫外線照射槽10とシリンダー8は直交しており、被処理水4の流れと直交する方向に紫外線ランプ2が設置されている。
【0070】
このような紫外線照射装置1においても、本発明の実施の形態に係る温度測定方法を適用することができる。第2の変形例に係る紫外線照射装置1bの水が流れる方向で切断した場合の断面図は、図1で説明した断面図と同様になる。
【0071】
図13に示す紫外線照射装置1bにおいても、温度センサは、被処理水4の減少に伴い紫外線照射槽10bの上部に空気層ができた場合、紫外線ランプの発光体による、空気層の温度変化を検出可能なエリアに設置され、被処理水4の温度を測定する。
【0072】
図1を参照して説明した場合と同様に、温度センサは、露出水位線Lの近傍のエリアA1、露出水位線Lより上であって紫外線照射槽10bの外壁に接するエリアA2、および露出水位線Lより上の、紫外線照射槽10bの内部のエリアの各エリアのいずれかに設置される。
【0073】
このように、図13に示した第2の変形例に係る紫外線照射装置1bにおいても、本発明の実施の形態に係る温度測定方法によって、紫外線照射槽10bの内部の水位低下、或いは被処理水4の紫外線照射槽10b内での滞留による照射槽内部の温度上昇を、効果的かつ確実に検知できる。
【0074】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態、第1の変形例および第2の変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。特に第1の変形例および第2の変形例で示した様に、あらゆる形態の紫外線照射装置に適用することができる。
【0075】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 紫外線照射装置
2 紫外線ランプ
3 ランプスリーブ
4 被処理水
5 処理水
6 温度センサ
7 指示棒
8 シリンダー
10 紫外線照射槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置であって、
前記被処理流体の減少に伴い前記容器の上部に空気層ができた場合、前記発光体による前記空気層の温度変化を、検出可能な設置エリアに、設置される温度センサ
を備えることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記温度センサは、前記被処理流体が流動していない場合、前記発光体による前記被処理流体の温度変化を、さらに検出可能な設置エリアに設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記設置エリアは、前記発光体の最上端に水平な露出水位線より上および下のエリアである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記温度センサは、前記容器の外壁に接して設置される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記温度センサは、前記容器の内壁に接して設置される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記温度センサは、前記容器の内壁の内部に設置される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置における温度測定方法であって、
前記被処理流体の減少に伴い前記容器の上部に空気層ができた場合に、前記発光体が前記空気層に露出したことによる前記空気層の温度変化を検出可能な設置エリアに、設置された温度センサを用いて、前記被処理流体の温度を測定するステップ
を備えることを特徴とする温度測定方法。
【請求項1】
容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置であって、
前記被処理流体の減少に伴い前記容器の上部に空気層ができた場合、前記発光体による前記空気層の温度変化を、検出可能な設置エリアに、設置される温度センサ
を備えることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記温度センサは、前記被処理流体が流動していない場合、前記発光体による前記被処理流体の温度変化を、さらに検出可能な設置エリアに設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記設置エリアは、前記発光体の最上端に水平な露出水位線より上および下のエリアである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記温度センサは、前記容器の外壁に接して設置される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記温度センサは、前記容器の内壁に接して設置される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記温度センサは、前記容器の内壁の内部に設置される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
容器内に被処理流体を流入させて、紫外線ランプの発光体から紫外線を照射した処理流体を流出する紫外線照射装置における温度測定方法であって、
前記被処理流体の減少に伴い前記容器の上部に空気層ができた場合に、前記発光体が前記空気層に露出したことによる前記空気層の温度変化を検出可能な設置エリアに、設置された温度センサを用いて、前記被処理流体の温度を測定するステップ
を備えることを特徴とする温度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−189282(P2011−189282A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57918(P2010−57918)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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