細胞からの効率的なタンパク質抽出方法
ウイルスタンパク質を含む細胞または細胞試料等の細胞から、タンパク質抽出物を生成するための方法が提供される。全般的に、本方法は、細胞のpHを少なくともpH約10.0のpHに増加させて、中間組成物を生成する工程、および続いてポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤の存在下で、前記中間組成物のpHを中和させて、タンパク質抽出物を生成する工程を包含し得る。このような方法は、ウイルスタンパク質等の、試料中の一つまたは複数の標的タンパク質を検出するための方法と共に使用され得る。本願の方法を実践するためのシステム、キットおよび組成物も提供される。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
多様な診断法において、細胞を被験体から採取し、固定液を含む液体培養液中に配置する。診断を提供するために、細胞を該培養液中で固定して、細胞学的に調べる。例えば、子宮頸部組織内の前癌性細胞または癌性細胞の検出は、日常的には剥離された子宮頸部細胞の顕微鏡評価によって実施される。この方法は、 George N. Papanicolaouによって開発され、「Pap」試験として知られており、サンプリング装置を使用して女性の子宮頸部から細胞を剥離させる工程、固定液を含む輸送液に剥離細胞を配置する工程、および次にスライドに細胞を配置する工程を含む。細胞を次に染色し、訓練を受けた医療関係者によって細胞の異常が光学顕微鏡で調べられる。毎年、米国内だけで5,500万例以上のPap試験が実施されている。
【0002】
このような細胞学的試験の成功にもかかわらず、この試験は間違いを起こしやすい。例えば、従来のPap試験の最高40%が、粘膜、血液細胞、および混濁した炎症細胞などの混入物の存在によって精度が落ちると推定されている。これらの混入物は、偽陰性結果、偽陽性結果、および相当量の追跡作業を招く。例えば、Koss, L. G. (1989), The Papanicolaou Test for Cervical Cancer Detection: A Triumph and a Tragedy, JAMA 261:737-743(非特許文献1)を参照されたい; DeMay, "Problems in Pap Smear Interpretation," Arch.Pathol.Lab.Med.121:229-23 (1997)(非特許文献2)も参照されたい。
【0003】
上記の観点から、固定液を含む液体培養液中に存在する細胞の分析のために、補足的な分子診断法が必要になる。しかし、このような方法は簡単ではなく、それは固定細胞においてこのような方法を常に実施できるというわけではないためである。例えば、特定の固定剤(例えば、THINPREP(商標)またはSUREPATH(商標)検査システムに用いられる輸送液)は、特定の細胞タンパク質を沈澱または凝集させる可能性があり、それによってこれらのタンパク質を不溶性にして、そして、従来の手段を使用して、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)または別の免疫検査を使用して、確実に検出することを困難または不可能にする。
【0004】
したがって、分子的、例えば、免疫学的な検出アッセイでの使用に適するように、固定細胞および未固定細胞からタンパク質を抽出するための方法および組成物が大いに必要になる。本明細書に記載の発明はこの必要および他の必要を満たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Koss, L. G. (1989), The Papanicolaou Test for Cervical Cancer Detection: A Triumph and a Tragedy, JAMA 261:737-743
【非特許文献2】DeMay, "Problems in Pap Smear Interpretation," Arch.Pathol.Lab.Med.121:229-23 (1997)
【発明の概要】
【0006】
細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法が提供される。全般的に、本方法は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij(商標)35)を含む高いpH(少なくともpH約10)の抽出試薬に細胞試料を接触させて、中間組成物を生成する工程、および続いて、中和試薬の存在下で、前記中間組成物のpHを、例えば約6〜9のpH値、任意で7〜8.5のpH値へと中和させて、タンパク質抽出物を生成する工程を含む。特定の態様において、抽出試薬および中和試薬の一方または両方は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む。細胞は、固定または未固定の剥離された子宮頸部細胞であってもよい。特定の態様において、本方法は、HPV E6タンパク質等の標的ウイルスタンパク質を、細胞試料から抽出する工程を含む。本発明はまた、上に記載の方法に従い、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成する工程、および該タンパク質抽出物中のタンパク質の存在に関して検査する工程を含む、標的ウイルスタンパク質等のタンパク質の存在を検出するための方法を提供する。さらに、本発明は、(a)固定細胞または未固定細胞を含む細胞試料、(b)少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬、および(c)中和試薬を含む、タンパク質抽出物を生成するためのシステムであって、抽出試薬および中和試薬の一方または両方がポリオキシエチレンアルキルエーテルを含み、かつ結合アッセイにおいての使用に適するタンパク質抽出物を生成するために、抽出試薬および中和剤が上に記載される方法で利用され得る、システムを提供する。さらに、本発明は、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するためのキットを提供する。本キットは、タンパク質抽出物中の標的タンパク質を検出するための要素、および/または試薬をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1Aは、特定の添加剤と組み合わせられた高いpHを有する抽出試薬を使用した、抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出における相乗効果を示す。以前に精製された組換えHPV16 E6タンパク質(MBP−E6)を抽出試薬中で懸濁し、続いて本明細書に記載されるプロトコールに従い中和試薬により中和した。本明細書に記載されるラテラルフロー(LF)アッセイを使用してE6タンパク質を捕捉し、UMMリーダーを用いて検出した。図1Bは、抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出に対して、中和工程での添加剤の導入が抽出工程での導入ほど強い効果を有しなかったことを裏付ける。
【図2】抽出試薬中に様々な添加剤を使用して、HPV16を発現するSiHa細胞から抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出を示す。
【図3】抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出に対して、細胞濃度を滴定する工程が有する効果を示す。2つのHPV陽性細胞株、および1つのHPV陰性細胞株を使用した。
【図4】HPV16を発現するSiHa細胞をスパイクされた未固定の陰性臨床試料からの、HPV16 E6タンパク質の抽出を示す。
【図5】抽出試薬中のBrij(商標)35の濃度を増加させ、かつBrij(商標)35を、Triton(商標)X−100またはTween(商標)−20等の他の非イオン性界面活性剤と併用する場合に、抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出に対する効果を示す。
【図6】抽出および/または中和に関して様々な時間を使用する場合に、抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出に対する効果を示す。
【図7】HPV株18および45由来のE6タンパク質の抽出のための、4%Brij(商標)35/高いpHの緩衝剤2の使用を示す。
【図8】HPV株16および18由来のE6タンパク質の検出に対する、用量反応効果を示す。
【図9】抽出試薬中のBrij(商標)35(他の非イオン性添加剤を含むか、または含まない)の濃度のさらなる最適化を示す。
【図10】抽出試薬中のBrij(商標)35(他の非イオン性添加剤を含むか、または含まない)の濃度のさらなる最適化、およびHPVを発現する細胞をスパイクされた未固定の陰性臨床試料からのHPV16 E6タンパク質の抽出に対する効果を示す。
【図11】HPVを発現するSiHa細胞から抽出されたHPV16 E6タンパク質を検出するための、サイトメトリービーズアレイ(CBA)様式を示す。
【図12】固定細胞または未固定細胞のいずれかからのHPV16 E6タンパク質の抽出における、4%Brij(商標)35/高いpHの緩衝剤2の使用を示す。
【図13】5.0 mmミリポアPVDFシリンジフィルターによる試料濾過によって、試料シグナルが有意に減少しないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、参照の明確さおよび容易さのために、特定の要素を以下に定義する。
【0009】
本明細書で使用する「細胞試料」という用語は、対象となる1つまたは複数の細胞を含む液体組成物に関する。細胞試料は、限定はされないが、例えば、血奬、血清、脊髄液、精液、リンパ液、皮膚、呼吸管、腸管、および尿生殖路の外部切片、涙液、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、または器官由来の細胞など、個人から除去した(例えば、切除された、もしくは剥離された)細胞を含む臨床試料でよい。他の態様では、細胞試料にはインビトロで増殖させた細胞が含まれる(限定はされないが、細胞培養液中の細胞、ウイルス感染細胞、組換え細胞など)。特定の態様では、細胞試料には、HPV感染するリスクの最も高い細胞が含まれうる。これらの態様では、細胞は、子宮頸部、外陰部、膣、肛門、陰茎、口腔、または喉部から得ることができる。特定の態様では、細胞は粘膜由来であり、上皮由来であってもよい。細胞試料は、剥離された、もしくは切除された細胞以外の混入物を含んでもよく、または含まなくてもよい。例えば、粘液細胞、または細菌細胞、酵母細胞または血液細胞が、細胞試料中に存在してもよい。
【0010】
「HPV」は、限定はされないが、HPV株4、6、11、20、24、28、36、48、50、16、18、31、35、30、39、45、51、52、56、59、58、33、66、68、69、26、53、73、および82を含む、ヒト乳頭腫ウイルスである。
【0011】
「発癌性HPV株」は、国立癌研究所(NCI、2001)により明らかにされているように、子宮頸癌の原因となることが知られているHPV株である。
【0012】
「発癌性E6タンパク質」は、発癌性HPV株によってコードされるE6タンパク質である。例示的な発癌性株は、HPV26、HPV53、HPV66、HPV73、HPV82、HPV16、HPV18、HPV31、HPV35、HPV30、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV59、HPV58、HPV33、HPV66、HPV68、HPV69、およびHPV82である。発癌性E6タンパク質のアミノ酸配列は、NCBI GenBankデータベースに寄託されている。理論に制約されることを望まないが、HPV株4、11、20、24、28、36、48、および50には発癌性はないと一般的に考えられている。
【0013】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換的に使用される。「ポリペプチド」という用語には、従来の骨格を非天然または合成の骨格で置き換えたポリペプチド、および従来のアミノ酸の1つまたは複数を、1つまたは複数の非天然または合成のアミノ酸で置き換えたペプチドが含まれる。
【0014】
「融合タンパク質」という用語または文法上のその同等物は、複数のポリペプチド成分から成るタンパク質を指し、これらは、天然状態では付着していないが、ペプチド結合を介してそれらのそれぞれのアミノ末端およびカルボキシ末端により連結されて、単一の連続ポリペプチドを形成する。融合タンパク質は、2、3、または、さらに4またはそれ以上の異なるタンパク質の組み合わせでありうる。ポリペプチドという用語には、限定はされないが、異種アミノ酸配列との融合タンパク質、N末端メチオニン残基の有無を問わず異種および同種リーダー配列との融合物、免疫タグ付きタンパク質、検出可能な融合パートナーを伴う融合タンパク質、例えば、融合パートナーとして蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどを含む融合タンパク質などの融合タンパク質が含まれる。
【0015】
一般的に、ポリペプチドの長さは任意でよく、例えば、2アミノ酸より大きい、4アミノ酸より大きい、約10アミノ酸より大きい、約20アミノ酸より大きい、約50アミノ酸より大きい、約100アミノ酸より大きい、約300アミノ酸より大きい、通常、約500アミノ酸または約1,000アミノ酸まで、またはそれより大きいアミノ酸である。「ペプチド」は、一般的に、2アミノ酸より大きい、4アミノ酸より大きい、約10アミノ酸より大きい、約20アミノ酸より大きい、通常、約50アミノ酸までである。一部の態様では、ペプチドの長さは5から30アミノ酸である。ポリペプチドは、それらが生物またはウイルスのゲノムによってコードされるという点で天然であり、もしくはそれらが自然発生しないという点で非天然である。
【0016】
「捕捉剤」という用語は、薬剤が結合して、異なるタンパク質の均一混合物からタンパク質を濃縮することを可能にするのに十分な相互作用を介してタンパク質を結びつける薬剤を指す。したがって、「捕捉剤」という用語は、分析物を特異的に結びつける、例えば、他の標的に結合することなく、捕捉剤に分析物を特異的に結びつけて、解離定数(KD)が10-6 M未満である分子または多分子複合体を指す。結合相互作用は、捕捉剤の親和性領域によって媒介される。代表的な捕捉剤としては、抗体(その断片および模倣物を含む)およびPDZドメインを含むタンパク質などが挙げられる。
【0017】
「特異的結合」という用語は、異なるタンパク質の均一混合物中に存在する特定のタンパク質に優先的に結合するための捕捉剤の能力を指す。特定の態様では、特異的な結合相互作用によって、一部の態様では、約10から100倍以上の(例えば、約1,000または10,000倍を上回る)試料中の特定のタンパク質と他のタンパク質が区別される。
【0018】
「捕捉剤/タンパク質複合体」という用語は、捕捉剤とタンパク質との特異的な結合に起因する複合体、すなわち「結合パートナー対」である。捕捉剤および捕捉剤に対するタンパク質が、「特異的結合に適した条件」下で互いに特異的に結合するが、そこでこのような条件は、溶液中での捕捉剤と結合タンパク質との間で起こる結合を可能にする(塩濃度、pH、界面活性剤、タンパク質濃度、温度などに関する)その条件である。これらの条件、特に、抗体およびその抗原については、当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane (Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y. (1989)を参照されたい)。特定の態様では、捕捉剤/タンパク質複合体において特異的に結合する捕捉剤とタンパク質との親和性は、10-6 M未満、10-7 M未満、10-8 M未満、10-9 M未満、または約10-10 M未満のKD(解離定数)によって特徴付けられる。
【0019】
「結合パートナー」および同等物は、捕捉剤/分析物複合体において見いだすことができる、すなわち、互いに特異的結合を示す分子対を指す。
【0020】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書において互換的に使用され、少なくとも抗体のエピトープ結合ドメインを有する捕捉剤を指す。これらの用語は当業者によって十分に理解され、そして抗原に特異的に結合する1つまたは複数のポリペプチドを含むタンパク質を指す。1つの型の抗体が、抗体の基本的な構造単位を構成する。この型は四量体であって、そして同じ2対の抗体鎖から成り、各対が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。各対において、軽鎖および重鎖の可変領域は共に抗原への結合に関与しており、そして定常領域は抗体エフェクター機能に関与している。
【0021】
認められている免疫グロブリンポリペプチドとしては、κおよびλ軽鎖およびα、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、ε、およびμ重鎖または他の種の同等物が挙げられる。(約25 kDaまたは約214アミノ酸の)全長の免疫グロブリン「軽鎖」は、NH2末端に約110アミノ酸の可変領域を含み、かつCOOH末端にκまたはλ定常領域を含む。(約50 kDaまたは約446アミノ酸の)全長の免疫グロブリン「重鎖」は、同様に、(約116アミノ酸の)可変領域および前述の重鎖定常領域の1つ、例えば、(約330アミノ酸の)γを含む。
【0022】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語には、限定はされないが、Fab、Fv、scFv、およびFd断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、および抗体の抗原結合部分および非抗体タンパク質を含む融合タンパク質などの、任意のイソタイプの抗体または免疫グロブリン、抗原への特異的結合を保持する抗体の断片が含まれる。抗体は、例えば、放射性同位元素、検出可能な産物を生成する酵素、蛍光タンパク質などによって検出可能に標識できる。抗体は、例えば、ビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対の一部)などの特異的結合対の一部といった、他の部分にさらに共役させることができる。抗体は、限定はされないが、ポリスチレンプレートまたはビーズ、金コロイド粒子などの固体支持体に結合させることもできる。Fab'、Fv、F(ab')2、および/または抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片もこの用語に含まれる。抗体はまた、増幅可能な検出粒子と共にしようすることもできる。
【0023】
抗体は、例えば、Fv、Fab、および(Fab')2、ならびに二機能性(すなわち、二重特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al., Eur.J.Immunol.17, 105 (1987))、および単鎖(例えば、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85、5879-5883 (1988) and Bird et al., Science, 242, 423-426 (1988)であり、これは参照により本明細書に組み込まれる)を含む他の様々な型で存在することができる。(一般的に、Hood et al., "Immunology," Benjamin, N.Y., 2nd ed. (1984), and Hunkapiller and Hood, Nature, 323, 15-16 (1986)を参照されたい)。モノクローナル抗体および「ファージディスプレイ」抗体は、当技術分野において周知であり、「抗体」という用語に含まれる。
【0024】
「評価する」という用語は、任意の型の測定を含み、要素が存在するか否かを決定することを含む。「決定する」、「測定する」、「査定する」、「評価する」、および「分析する」という用語は、互換的に使用され、量的および/または質的な判定を含みうる。評価することは、相対的または絶対的でありうる。「の存在を評価する」には、存在する何かの量を決定すること、および/またはそれが存在するのか、もしくは存在しないのかを決定することを含む。
【0025】
「離れた場所」とは、細胞を得て、固定液を含む液体中に置かれる場所以外の場所を意味する。例えば、離れた場所は、細胞が得られた同じ建物内の異なる部屋(例えば別の研究室)、細胞が得られた同じ複合施設内の異なる建物、または同じ都市、州、もしくは国などの異なる場所でありうる。細胞試料が、離れた場所から「受け取った」と示される場合、細胞試料は離れた場所から入手されるか、または離れた場所から、例えば手渡しされるか、郵送または配達されうる。
【0026】
情報を「伝達する」とは、印刷物、もしくは情報を含むコンピューター可読媒体を(例えば、郵便で)物理的に輸送することによるか、または情報を伝達することによるかのいずれかにかかわらず、ある場所から次の場所にその情報を運ぶ任意の手段を指す。情報が伝達される場合、情報を表わすデジタルまたはアナログ信号(例えば、光信号または電気信号などの電磁気信号)が適当なコミュニケーションチャネル(例えば、私的な、公共な、もしくは無線のネットワーク)を通して伝達される。データを伝達するために、任意の便利な手段、例えば、ファクシミリ、モデム、インターネット、電子メールなどを用いることができる。
【0027】
本明細書で使用される通り、「輸送液」という用語は、液体ベースの細胞学的研究に適する方法で、細胞の採取ならびにそれらの細胞の保存に適した液体を記載するために使用される。輸送液は、一般に、Pap試験に用いられる。輸送液中に置いた細胞は、その培養液中で、ある場所から別の場所まで輸送されることがあり、または輸送されないことがある。輸送液には固定液が含まれる。輸送液中に細胞を配置することによって、細胞が固定されて、固定細胞が生成される。代表的な輸送液としては、SUREPATH(商標)またはPRESERVCYT(商標)輸送液が挙げられる。
【0028】
「固定細胞」は、化学固定液によって処理し、細胞学的に保存された細胞である。固定細胞は、通常、染色およびそれに続く光学顕微鏡による形態学的および/または細胞学的分析に適している。
【0029】
参照による組み入れ
本明細書で言及しているすべての出版物および特許出願は、各個別の出版物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み入れられるように示されたかのように、参照により本明細書に組み入れられる。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明の好適な態様が本明細書に示され、記載されているが、このような態様が例としてのみ提供されることは当業者には明白である。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多くのバリエーション、変更、および代用を思いつくであろう。本明細書に記載された本発明の態様の様々な代替物を、本発明を実施する際に用いてもよいことが理解されるはずである。添付の特許請求の範囲によって本発明の範囲が定められ、それによってこれらの特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内の方法および構成物が包含されることが意図される。
【0031】
固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法が、提供される。全般的に、本方法は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij(商標)35)を含む高いpH(少なくともpH約10)の抽出試薬に細胞試料を接触させて、中間組成物を生成する工程、および続いて、中和試薬の存在下で前記中間組成物のpHを中和させて、タンパク質抽出物を生成する工程を含む。抽出試薬および中和試薬の一方または両方は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む。特定の態様において、細胞は、固定または未固定の剥離された子宮頸部細胞であってもよい。本願の方法を実践するための、キットおよび組成物も提供される。本願の方法は、結果として得られるタンパク質抽出物中の特定のタンパク質を検出する診断検査を含む、様々な異なる用途における使用が見出される。
【0032】
本願の発明についてさらに記載する前に、特定の態様のバリエーションを作ることができ、さらに添付の特許請求の範囲に該当するように、本発明が以下に記載する本発明の特定の態様に限定されないことを理解すべきである。用いた用語は特定の態様を記載することを目的としており、そして限定することを意図しないことも理解すべきである。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確定される。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈により明確に他に規定されない限り、単数形「1つの(a、an)」、および「その(the)」には複数形の参照が含まれる。
【0034】
値の範囲が提供される場合、文脈が特に明示しない場合には下限の単位の十分の一まで、その範囲の上限と下限との間の各媒介値、および任意の他の表示値またはその表示された範囲内の媒介値が本発明に含まれることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、より小さな範囲に独立して含まれてもよく、同様に本発明に含まれ、表示された範囲内の具体的に除外された任意の限度の対象となる。表示された範囲に限度の一方または両方が含まれる場合、これらの限度に含まれるものの一方または両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0035】
他に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法、装置、および物質を本発明の実施または試験に使用できるが、ここでは好ましい方法、装置、および物質を記載している。
【0036】
本明細書で言及するすべての出版物は、参照により本明細書に組み入れられ、その目的は、ここに記載する発明に関連して使用されうる、出版物に記載されている要素について記載し、開示することである。
【0037】
上記でまとめた通り、本願の発明は、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法および組成物を提供する。本発明をより詳細に記載する際、まず方法について記載しており、本願の方法を実施する際に使用するキットおよびシステムに関する記載がそれに続く。
【0038】
タンパク質抽出方法
上に記述されるように、本発明は、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法を提供する。概して、本方法は、(a)pH約10.0より高いpHを有する抽出試薬に固定細胞または未固定細胞を接触させて、中間組成物を生成する工程、および(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させる工程、の2つの工程を包含する。抽出試薬および/または中和試薬は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む。結果として得られるタンパク質抽出物は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含み、かつ中性pH(すなわち、pH約7.0〜pH約8.0)を有する。本方法は、概して、それらのタンパク質に対する捕捉剤を使用し容易に検出され得るタンパク質を含む、タンパク質抽出物を生成する。そのため、本方法によって生成されるタンパク質抽出物は、概して、それらのタンパク質を検出するための、例えば免疫学的アッセイ等の結合アッセイにおける使用に適する。
【0039】
特定の態様において、本方法は、(a)ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび高いpHを含む抽出試薬に細胞を接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程、および(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、タンパク質抽出物を生成する工程を含む。上述のように、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、抽出試薬もしくは中和試薬のいずれか(または抽出試薬および中和試薬の両方)に存在し得るため、本発明の特定の態様は、(a)および(b)ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む中和試薬に中間組成物を接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、タンパク質抽出物を生成する工程を含む。
【0040】
特定の態様において、本方法によって生成されるタンパク質抽出物は、例えば、高いpHの抽出工程(すなわち、pHを、pH約10.0またはpH約11.0より上に上昇させる工程)、中和工程(すなわち、pH約6.0〜pH約9.0にpHを調整する工程)、およびポリオキシエチレンアルキルエーテル、を使用しない方法等の、他の方法を使用して作製されたタンパク質抽出物よりも、捕捉剤に接触可能なより多くのタンパク質を含み得る。高いpHのみ、またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのみのいずれによっても、このようなタンパク質抽出物は生成されない。特定の態様において、高いpHの抽出試薬は、固定細胞または未固定細胞中のタンパク質を可溶化し、一方ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、中間組成物のpHが中和される際に、中間組成物中の可溶化タンパク質が再凝集または沈殿するのを防止する。
【0041】
本方法に用いられる試薬、および本方法によって生成されるタンパク質抽出物について以下でより詳細に記載しており、これは、試薬をどのように使用してタンパク質抽出物を生成させうるのかに関する記載と同様である。以下で考察する通り、本方法において使用する試薬の最適濃度およびpHは、どの試薬を使用するかに応じて変化しうる。しかし、試薬の最適濃度およびpHは、実験的または経験的に容易に決定される。
【0042】
本発明の方法を使用してタンパク質が抽出される細胞
本発明による方法論を使用して、細胞試料から標的タンパク質または対象となるタンパク質を抽出することができる。細胞試料は、均一な細胞集団、もしくは異なる種類の細胞の不均一な混合物でありうる。細胞試料には、粘膜、血液細胞、および炎症細胞などの「混入物」も含まれる可能性があり、これらは標的タンパク質の抽出目的では対象にはならず、もしくは標的タンパク質は含まれない。
【0043】
一部の態様では、標的タンパク質は、ウイルス、好ましくは病原性ウイルスに感染した細胞に存在するウイルスタンパク質であり、細胞は、好ましくは、哺乳動物、例えば、ヒトから単離された細胞である。
【0044】
病原性ウイルスは、ヒトまたは他の動物において病原性作用または疾患の原因となる任意の病原性ウイルスでありうる。病原性ウイルスは、HIV-1およびHIV-2などのヒト免疫不全症ウイルス(HIV)の様々の株でありうる。ウイルスタンパク質は、HIV GP120およびGP41などのHIV糖タンパク質(または表面抗原)、もしくはHIV P24タンパク質などのカプシドタンパク質(または構造タンパク質)でありうる。
【0045】
病原性ウイルスは、エボラウイルスまたはマールブルグウイルスでありうる。ウイルスタンパク質は、エボラ糖タンパク質もしくはエボラGP1またはGP2タンパク質などの表面抗原でありうる。
【0046】
病原性ウイルスは、A型、B型、C型、D型、またはE型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルスでありうる。例えば、ウイルスタンパク質は、小型B型肝炎表面抗原(SHBsAg)(別名、オーストラリア抗原)、中型B型肝炎表面抗原(MHBsAg)および大型B型肝炎表面抗原(LHBsAg)のようなB型肝炎ウイルスの表面抗原またはコアタンパク質でありうる。ウイルス抗原は、NS3抗原、NS4抗原、およびNS5抗原などのC型肝炎ウイルスの表面抗原またはコアタンパク質でありうる。
【0047】
病原性ウイルスは呼吸器合胞体ウイルス(RSV)でありうる。例えば、RSVウイルスタンパク質は、糖タンパク質(Gタンパク質)またはRSVの融合タンパク質(Fタンパク質)でありうる。
【0048】
病原性ウイルスは、HSV1およびHSV-2などの単純ヘルペスウイルス(HSV)でありうる。例えば、HSVウイルス抗原は、HSV-2由来の糖タンパク質Dでありうる。
【0049】
標的タンパク質は、乳癌細胞のHer2およびリンパ腫細胞上のCD20、ヒト乳頭腫ウイルスのE6およびE7などのウイルス性癌遺伝子、または変異型rasなどの細胞由来癌遺伝子といった腫瘍抗原でありうる。
【0050】
一部の態様では、細胞試料には標的タンパク質が存在する固定細胞が含まれる。本方法において用いられる固定細胞は、一般的に、(例えば、切除、剥離、または洗浄により被験体から細胞を除去することによって得られた)細胞試料を液体液中に配置することによって得られる。細胞試料は、化学固定剤を既に含んでいる液体培養液中に配置することができる、もしくは細胞を培養液中に静置した後に化学固定剤を液体培養液に加えることができる。固定剤および固定細胞を含む液体培養液は、未固定細胞とともに、本明細書では「細胞試料」という用語の意味に含まれる。
【0051】
本方法に用いることのできる代表的な化学固定剤としては、アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒド)およびケトン(例えば、アセトン)、ならびに四酸化オスミウム、酢酸、ピクリン酸、および重金属イオン塩が挙げられる。本方法に用いることのできる固定剤のさらなる例としては、(酢酸も含みうる)亜硫酸水素塩ベースの固定剤、(プロピレングリコールおよびメタノールも含みうる)PVPベースの固定剤、ならびに米国特許第3,546,334号、第4,578,282号、第4,857,300号、第5,104,640号、第5,256,571号、第5,432,056号、および第5,196,182号に記載されている固定剤が挙げられる。作業濃度のそれらの固定剤を含め、本方法に用いることのできる固定剤の例としては、Baker(Principles of Biological Microtechnique: A Study of Fixation and Dyeing, 1959)およびWilliams("Tissue preparation for immunocytochemistry." J Clin.Pathol.1997 50:422)において見ることができる。
【0052】
本方法において特に対象となるのは、「輸送液」と呼ばれ、婦人科検診の一部として頸膣部細胞(例えば、剥離された子宮頸部細胞)の採取、保存(すなわち、固定)、および輸送において日常的に使用される液体培養液である。FDA承認の輸送液が、特に対象となる。
【0053】
用いることのできる市販の輸送液の例としては、例えば、メタノールベースのPRESERVCYT(商標)輸送液(これは、THINPREP(商標)婦人科サンプリングキット(Cytyc, Inc., Marlborough, Mass)の一部として販売されている)、以前はCYTORICH(商標)として知られていたエタノールベースのSUREPATH(商標)輸送液(TriPath, Inc. Burlington, N.C.)、およびメタノールベースのCYTOLYT(商標)輸送液(Cytyc, Inc., Marlborough, Mass.)が挙げられる。
【0054】
細胞は、限定はされないが、剥離(例えば、擦過)、切除、および洗浄を含む、任意の便利な方法によって得ることができる。特に対象となるのは子宮頸管由来の上皮細胞であり、これらの細胞は、典型的に、適合ブラシ、スワブ、スパーテル、またはスクレーパーを使用した剥離方法によって得られ、固定剤を含むまたは含まない液体培養液中に置かれる。
【0055】
抽出試薬
本方法において用いられる抽出試薬には、細胞への抽出試薬の添加時に、少なくともpH10.0であるpHを有するタンパク質抽出物を生成する十分な濃度の量で存在する成分が含まれる。したがって、抽出試薬は一般的に少なくともpH約10.0のpHを有する。
【0056】
抽出試薬を細胞と接触させて、中間組成物を生成する。抽出試薬および結果として得られる中間組成物のpHは、一般的に、少なくともpH約10.0、例えば、pH約10.0からpH約13.0またはpH約12.0からpH約13.0の範囲内である。特定の態様では、抽出試薬はpH約10.0からpH約10.5、pH10.5からpH約11.0、pH11.0からpH約11.5、pH11.5からpH約12.0、pH12.0からpH約12.5、またはpH12.5からpH約13.0のpHを有しうる。特定の好ましい態様において、抽出試薬は、pH約12.5からpH約12.9を有する。抽出試薬は、適当な水酸化イオン源、例えば、ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは炭酸カルシウムを使用して作成できる。
【0057】
特定の態様において、抽出試薬は、試薬を所望のpHに維持する緩衝剤を包含し得る。対象となる抽出試薬中に緩衝剤が存在する場合、緩衝剤は、25℃で約9.0〜約12.5の範囲のpKaを有し得る。対象となるタンパク質抽出試薬において利用され得る例示的な緩衝剤は、例えば、CABS、ピペリジン、ホスフェート、CAPS、グリシン、またはエタノールアミンを包含する。本方法において利用される抽出試薬は、固定細胞または未固定細胞に抽出試薬を添加した際に、少なくともpH10.0のpHを有するタンパク質抽出物を生成する濃度に十分な量で存在する成分を包含する。したがって、抽出試薬は、概して少なくともpH約10.0のpHを有する。
【0058】
好ましい態様において、抽出試薬は、クエン酸3ナトリウムおよびNaOHを含む。例えば、抽出試薬は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0または2.0 NのNaOHを含み得る。例示的な抽出試薬は、約0.1 N NaOH、約50 mMクエン酸3ナトリウム、および12.5〜12.9のpHを含む。
【0059】
いくつかの好ましい態様において、例えば、試料を、pH10より高いpH等の目標とするpHへと導くのに必要な抽出試薬の量またはpHを、抽出試薬の添加に先立ち、経験的に事前決定する。このような態様において、経験的に決定された抽出試薬を細胞試料に添加する。他の態様において、抽出試薬の添加に続き、中間組成物のpHを測定する。このような測定する工程の後、標的のpHを達成するために必要に応じてpHを調整する。
【0060】
抽出試薬はまた、HEPES、Triton(商標)X−100、NaCl、グリセロールおよびEGTAの、一つもしくは複数、またはそれらの混合物も含み得る。例示的な抽出試薬は、約50 mM HEPES、pH約7.5のpH、約1.1%Triton(商標)X−100、約150 mM NaCl、約10%グリセロール、および約1 mM EGTAを含み得る。
【0061】
特定の態様において、抽出試薬はまた、少なくとも10.0のpHを有することに加えて、式CH3(CH2)n1CH2(OCH2CH2)n2OHのポリオキシエチレンアルキルエーテルも含み得る。ポリオキシエチレンアルコールとしても公知のこのようなポリオキシエチレンアルキルエーテルは、産業的用途、美容的用途ならびに薬学的用途において、一般に乳化剤、湿潤剤、溶解剤、消泡剤、界面活性剤および/または潤滑剤として使用される(例えば、The Merck Index. 13th Edition, 7659を参照のこと)。特定の態様において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、本明細書に記載されるBrij(商標)35、または他のBrij(商標)ファミリーの成員等のBrij(商標)表面活性剤である。
【0062】
Brij(商標)35 CAS [9002−92−0]は、膜複合体の単離のための高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用途において一般に使用される、非イオン性表面活性剤である。これは、クロマトグラフィー担体への非特異的結合を防止するために、往々にして利用される。これは16.9の親水性親油性バランス数(HLB)を有し、膜タンパク質の非変性可溶化剤等の溶解剤、または乳化剤として使用され得る親水性化合物であることを示している(例えば、Umbreit, J. N., and Strominger, J. L. 1973. Relation of detergent HLB number to solubilization and stabilization of D-alanine carboxypeptidase from Bacillus subtillis membreanes. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70, 2997を参照のこと)。
【0063】
Brij(商標)35は、ラウリル基(CH3(CH2)10CH2)および23個のエチレンオキシ(OCH2CH2)単位を含み、かつ化学式CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)23OHを有する。他の化学同義語は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル;LAURETH−23;ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルC12E23;ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル;ラウリルアルコールエチレンオキシド、エトキシル化ラウリルアルコール、ラウリルアルコール、エトキシル化物;ラウリルポリエチレングリコールエーテル;α−ドデシル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン;ポリエチレングリコール、モノドデシルエーテル;ドデカノールエトキシレート;ドデカノール、ポリエトキシル化物;ドデシルポリ(オキシエチレン)エーテル;ラウロマクロゴール;ラウリルポリ(オキシエチレン)エーテル;オキシエチレン化ドデシルアルコール;ポリ(エチレンオキシド)ドデシルエーテル;α−ドデシル−ω―ヒドロキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル);ポリ(オキシエチレン)モノラウリルエーテル;ポリエトキシル化ドデカノール;ポリエチレングリコールドデシルエーテル;ポリエチレングリコールラウリルエーテル;ポリオキシエチレンドデカノール;ポリオキシエチレンラウリンアルコール;およびポリオキシエチレンラウリルアルコール;3,6,9,12,15,18,21,24,27−ノナオキサノナトリアコンタン−1−オール;ドデシルアルコール、エトキシル化物;;ラウレス(Laureth)4 [USAN];ラウレス9 [USAN];ラウレス−11;ラウロマクロゴール(Lauromacrogol)400 [INN];PEG−11ラウリルエーテル;ポリドカノール、40L(ポリエーテル);アクチノール(Actinol)L 7;アクチノールL3;アデカカルポール(Adeka Carpol)M2;アデカカルポールMBF 100;アデカトール(Adekatol)LA 1275;エトキシスクレロール(Aethoxysklerol);アキポロックス(Akyporox)RLM 160;アキポロックスRLM 22;アキポロックスRLM 230;アキポロックスRLM 40;アルドスパース(Aldosperse)L9;アルカスルフ(Alkasurf)LAN 1; アルカスルフLAN 3;アラポール(Arapol)0712;アトラス(Atlas)G 2133;アトラスG 3705;アトラスG 3707;アトラスG 4829;アトラスG−2133;アトラスG−3705;B 205;BASE LP 12;BL 9;BL 9(ポリグリコール);Base LP 12;Brij(商標)22;Brij(商標)23;Brij(商標)30;Brij(商標)30ICI;Brij(商標)30SP;Brij(商標)35;Brij(商標)35L;Brij(商標)36T;CCRIS 3397;カルジーン(Calgene)40L;カルソノール(Carsonol)L2;カルソノールL3;ケマール(Chemal)LA 23;キミパール(Chimipal)AE 3;シマゲル(Cimagel);コニオン(Conion)275−100;コニオン275−20;コニオン275−30;コニオン275−80;コニオン2P80;ドデシルアルコールポリオキシエチレンエーテル;デュポン(Du Pont)WK;エソスパース(Ethosperse)LA 12;エソスパースLA 23;;G 3707;グリコール、ポリエチレン、モノドデシルエーテル;HSDB 4351;ヒドロキシポリエトキシドデカン;LA(アルコール);LA 7;ラウレス;ラウレス9;リパール(Lipal)4LA;ルブロール(Lubrol)12A9;ルブロールPX;マーリパル(Marlipal)1217;メルギタール(Mergital)LM 11;NCI−C54875;ニューコール(Newcol)1203;ニッコール(Nikkol)BL;ノイゲン(Noigen)ET 160;ノイゲンET 170;ノイゲンYX 500;ノニオライト(Noniolite)AL 20;ペグノール(Pegnol)L 12;;ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、α−ドデシル−ω−ヒドロキシ−;ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル;ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、名称には、ポリエチレングリコール部分のおよその平均分子量に対応する数値(400)が伴う;ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル;ロカノール(Rokanol)L;ロモパール(Romopal)LN;サイマルゾル(Simulsol)P 23;サイマルゾルP 4;サイポニック(Siponic)L;スロバゾール(Slovasol)S;スタンダムル(Standamul)LA 2;ステマー(Stmer)135;界面活性剤WK;テキソフォー(Texofor)B 9;テサット(Thesat);テシット(Thesit);α−ドデシル−ω−ヒドロキシポリ(オキシ−1,2−エタンジイル);またはα−ドデシル−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)を包含する。
【0064】
他のBrij(商標)ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、Brij(商標)30ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜4);Brij(商標)52、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)56ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)58、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)72ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)76、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)78ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)92、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)93、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)97、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)98、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)700、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)21OH、n〜100);およびBrij(商標)721、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜21)を包含する。
【0065】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、存在する場合、後のアッセイの感度を有意に減少させない濃度で存在し得る。特定の態様において、例えば中和緩衝剤を使用してポリオキシエチレンアルキルエーテルを希釈することによってか、または使用前にタンパク質抽出物へ緩衝剤もしくは水等の希釈剤を添加することによって、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの濃度を試料処理の間に減少させることが可能である。
【0066】
使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの強度、および抽出緩衝剤のpHに依存して、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、抽出緩衝剤中に約0.05%〜約0.1%、約0.1%〜約0.5%、約0.5%〜約1%、約1%〜約5%、約5%〜約10%または約10%〜約20%の濃度(v/v)で存在し得る。
【0067】
好ましい態様において、例えば、Brij(商標)35等のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、約2%〜約10%の濃度(v/v)で抽出試薬中に存在し得る。他の態様において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、中和試薬中に存在する。また他の態様において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、抽出試薬および中和試薬の両方に存在する。
【0068】
他の好ましい態様において、抽出試薬および/または中和試薬は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルに加えて他の非イオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤は、抽出試薬もしくは中和試薬中に存在し得るか、または抽出試薬および中和試薬の両方に存在し得る。特定の態様において、利用される非イオン性界面活性剤は、ノニデットP−40、n−オクチルグルコシド、TRITON(商標)X-100等のTRITON(商標)界面活性剤、オクチルβ−チオグルコピラノシド、TWEEN−20等のTWEEN(商標)界面活性剤またはNP−40であり得る。使用される界面活性剤の強度に依存して、界面活性剤は、抽出緩衝剤または中和緩衝剤中に、約0.01 M〜約0.05 M、約0.05 M〜約0.1 M、約0.1 M〜約0.2 M、約0.2 M〜約0.5 M、約0.5 M〜約1.0 M、約1.0 M〜約2.0 M、約2.0 M〜約4.0 Mまたは約4.0 M〜約8.0 Mの濃度で存在し得る。界面活性剤は、約0.1%〜20%、好ましくは0.5%〜10%、1%〜6%または2%〜5%の濃度で、抽出緩衝剤中に存在し得る。本方法において利用され得るさらなる界面活性剤は、その特許の全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,488,671号の列7および8中に列挙される。
【0069】
対象となる中和試薬および/または抽出試薬中の例示的な界面活性剤、ならびにそれらの濃度は、重量/容量で、Triton X−100:約0.1%〜約10%(例えば約1%)、NP40:約0.1%〜約10%(例えば約1%)、Tween−20:約0.1%〜約10%(例えば約1%)を包含する。
【0070】
好ましい態様において、抽出試薬および/または中和試薬は、他の非イオン性界面活性剤との組み合わせにおけるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、Brij(商標)表面活性剤であってよく、かつTween(商標)界面活性剤またはTriton(商標)界面活性剤の一つまたは両方と組み合わせられてもよい。特定の好ましい態様において、Brij(商標)表面活性剤は、約0.1%〜約10%(例えば約2%)のTween(商標)−20;または約0.1%〜約10%(例えば約2%)のTriton(商標)X−100である非イオン性界面活性剤の、一つまたは複数と組み合わせられるBrij(商標)35である。
【0071】
特定の態様では、抽出試薬には相当量の変性剤は含まれない。しかし、他の態様では、少なくとも10.0のpHを有し、かつBrij(商標)35などのポリオキシエチレンアルキルエーテルを有することに加えて、抽出試薬には、変性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)もしくはサルコシルなどのイオン性界面活性剤、または尿素などのカオトロピック剤も含まれうる。これらの態様では、変性剤が、仮に存在する場合、後のアッセイの感度を有意に低下させない濃度で存在することができる。変性剤の濃度は、特定の態様において、試料処理中、例えば、中和緩衝剤を使用して変性剤を希釈させることによって、または使用前にタンパク質抽出物に希釈剤、例えば、緩衝剤もしくは水を添加することによって低下しうる。また、変性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなしで単独で存在してもよい。
【0072】
使用する変性剤の強度および抽出緩衝剤のpHに応じて、変性剤は抽出緩衝剤中において約0.01 Mから約0.05 M、約0.05 Mから約0.1 M、0.1 Mから約0.2 M、約0.2 Mから約0.5 M、約0.5 Mから約1.0 M、約1.0 Mから約2.0 M、約2.0 Mから約4.0 M、または約4.0 Mから約8.0 Mの濃度で存在しうる。変性剤は、抽出試薬中に存在する場合、典型的に変性タンパク質に用いられる変性剤の濃度よりも十分に低い濃度で存在しうる。換言すれば、抽出試薬は、本願の方法に従ってタンパク質抽出物を生成した後、そのタンパク質に対する捕捉剤を使用してタンパク質の検出を可能にする濃度で変性剤が含まれうる。用いられる変性剤の濃度は、一般的に、捕捉剤を用いた結合アッセイ、例えば、抗体検出アッセイにおいて容易に検出可能なタンパク質を含むタンパク質抽出物を生成するために十分である。
【0073】
例示的な変性剤および対象となる抽出試薬中でのそれらの濃度は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS):約0.01%から約2%、例えば、0.05%、サルコシル:約0.01%から約5%、例えば、0.5%、グアニジン:約0.1 Mから約6 M、例えば、約0.5 M、および尿素:約0.1 Mから約8 M、例えば、約0.5M(重量/vol)である。
【0074】
SDSは、典型的に、0.1%から0.5%の濃度でタンパク質を変性するために用いられ、サルコシルは、典型的に、2%(w/v)の濃度でタンパク質を変性するために用いられ、尿素は、典型的に、2 Mから8 Mの濃度でタンパク質を変性するために用いられ、塩酸グアニジンは、典型的に、3 Mから8 Mの濃度でタンパク質を変性するために用いられ、N-セチル塩化メタコリンは、典型的に、5%(w/v)の濃度でタンパク質を変性するために用いられ、N-オクチルグルコシドは、典型的に、2%(w/v)の濃度でタンパク質を変性するために用いられる(Protein purification Handbook, Amersham Pharmacia Biotech, p.71 (1999)参照)。
【0075】
対象となるタンパク質抽出物試薬には、上記の成分に加えて、例えば、塩イオンキレート剤、プロテアーゼ阻害薬などの他の成分が含まれうる。
【0076】
タンパク質抽出試薬は、液体または固体の組成物であってもよく、特定の態様では、異なる変性剤の組み合せを含んでもよい。
【0077】
本抽出緩衝剤に用いることのできる変性剤は、一般的に、強力な変性剤であり、限定はされないが、カオトロピック剤(例えば、尿素、塩酸グアニジン、もしくはチオシアン酸ナトリウムまたはグアニジニウムチオシアナートなどのチオシアン酸塩、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウムなど;K. Hamaguchi et al., Proc Natl. Acad. Sci. 62: 1129-1136, 1962を参照されたい)および陽イオン性、陰イオン性、および両性イオン性界面活性剤(CHAPSまたはCHAPSOなど)を含むイオン性界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、サルコシル、またはN-セチル塩化メタコリン)が挙げられる。本方法に用いることのできるさらなる変性剤が米国特許第6,488,671号の列7および8中に記載されており、この特許はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0078】
特定の態様では、LiCl、LiClO4、LiBr、CaCl2、またはNaClなどの弱い変性剤は抽出緩衝剤中の変性剤としては用いられないが、このような化合物が先のパラグラフ内に記載した変性剤に加えて、抽出緩衝剤またはタンパク質抽出物中に存在しうる。
【0079】
上記の通り、試薬を固定細胞または未固定細胞と接触させる(例えば、混ぜ合わせる、もしくは混合させる)。特定の態様では、細胞を含む細胞試料(例えば、固定細胞を含む輸送液)を抽出試薬に直接添加できる。他の態様では、細胞を、それらのタンパク質抽出試薬への添加前に、(例えば、遠心沈降、遠心分離、濾過、または親和性方法によって)細胞試料から分離できる。細胞を、それらのタンパク質抽出試薬への添加前に、洗う、もしくは他の試薬に接触させることができる。
【0080】
利用可能な固定細胞もしくは未固定細胞のすべてまたは一部を抽出試薬と組み合わせることが可能である。例えば、特定の態様において、細胞の一部を細胞学的検査に用いることが可能であり、かつ細胞の一部を抽出試薬と接触させて、中間組成物を生成することが可能である。細胞および抽出試薬を混ぜ合わせて、適切な温度(例えば、氷上、室温前後、または約37℃)で適切な時間(例えば、10秒〜24時間)にわたり維持して、中間組成物を生成することが可能である。例えば、細胞および抽出試薬は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、30分間または1、2、3、4、5、10、15時間にわたり組み合わせられ得る。別の例として、細胞および抽出試薬は、5分〜10時間、または10分〜1時間、または10〜30分間にわたり組み合わせられ得る。特定の態様において、中和試薬を、細胞を抽出試薬と接触させた直後に中間組成物と接触させる。細胞および中和試薬は、中間組成物を生成するために、適切な温度で(例えば、氷上、室温前後、または約37℃)、かつ適切な時間(例えば、10秒〜24時間)にわたり組み合わせられ、かつインキュベートされるかまたは維持され得る。例えば、細胞および中和試薬は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、30分間または1、2、3、4、5、10、15時間にわたり組み合わせられ得る。別の例として、細胞および中和試薬は、5分〜10時間、または10分〜1時間または10〜30分間にわたり組み合わせられ得る。
【0081】
中和試薬
本方法において用いる中和試薬は、中間組成物との接触時に、上で考察した中間組成物のpHを中和するために十分なpHを有する。換言すれば、中和試薬は、中和試薬を中間組成物と混合させた際、上で考察した中間組成物のpHを中和するために十分なpHを有する。以下でより詳細に考察している通り、中和試薬には、特定の態様では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたは他の非イオン性界面活性剤または界面活性剤の混合物が含まれる。
【0082】
中和試薬のpHは、固定細胞または未固定細胞を対象となる抽出試薬と接触させることにより作成した中間組成物を中和するために十分である。抽出試薬のpHおよび緩衝剤を用いるか否かに応じて、中和試薬のpHはpH4.0からpH8.0の間にありうる。特定の態様では、中和試薬はpH約4.0からpH約4.5、pH 4.5からpH約5.0、pH 5.0からpH約5.5、pH 5.5からpH約6.0、pH 6.0からpH約6.5、pH 6.5からpH約7.0、またはpH 7.0からpH約7.5のpHを有しうる。中和試薬は、任意の適当な水素イオン源、例えば、塩酸または酢酸を使用して作成することができる。特定の態様では、中和試薬はpH4.0未満のpHを有しうる。
【0083】
中和試薬は緩衝化されてもよく、または緩衝化されなくてもよい。中和試薬が緩衝化される場合、中和試薬は、例えば、トリス、ヘペス、またはトリシンなどの約6から約8のpKaを有する任意の緩衝剤を使用して緩衝化される。特定の好ましい態様において、中和試薬は、pH約6.0のpHを有する2M Tris-HClを含む。他の好ましい態様において、中和試薬は、pH約7.8のpHを有する20.9M Tris-HClを含む。
【0084】
いくつかの好ましい態様において、試料を、例えば、pH約6.0〜9.0、もしくはpH7.0〜8.5、もしくはpH7.5〜8.5、もしくはpH約8.0〜8.5等の目標pHへと導くのに必要な中和試薬の量またはpHを、中和試薬の添加に先立ち経験的に事前決定する。このような態様において、経験的に決定された中和試薬を細胞試料に添加する。他の態様において、中和試薬の添加後に中和試料のpHを測定する。このような測定する工程の後、目標とする中性pHを達成するために必要に応じてpHを調整する。
【0085】
他の態様において、中和試薬は、HEPES、Triton(商標)X−100、NaCl、グリセロールおよびEGTAの一つもしくは複数、またはそれらの混合物を含む。例示的な中和試薬は、約50 mM HEPES、pH約7.5のpH、約1.1% Triton(商標)X−100、約150 mM NaCl、約10%グリセロール、および約1 mM EGTAを含む。他の例示的な中和緩衝剤は、約20 mM Tris、pH8、約2% BSA、約1% Triton(商標)X−100、約2% Tween(商標)−20、約0.2%サルコシン、約250 mM NaCl、および約50 mM EDTA(またはEGTA)を含む。
【0086】
上に記述されるように、抽出試薬および/または中和試薬のいずれかは、式CH3(CH2)n1CH2(OCH2CH2)n2OHのポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むがこれに限定されない非イオン性界面活性剤または表面活性剤を含み得る。例示的なポリオキシエチレンアルキルエーテルは、Brij(商標)35、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜23);Brij(商標)30ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜4);Brij(商標)52、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)56ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)58、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)72、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)76、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)78、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)92、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)93、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)97、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)98、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)700、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、C18H37(OCH2CH2)21OH、n〜100;もしくはBrij(商標)721、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜21)の一つまたは複数を含むBrij(商標)表面活性剤である。
【0087】
使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの強度および抽出緩衝剤のpHに依存して、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、約0.05%〜約0.1%、約0.1%〜約0.5%、約0.5%〜約1%、約1%〜約5%、約5%〜約10%または約10%〜約20%の濃度(v/v)で、抽出緩衝剤中に存在し得る。
【0088】
特定の態様では、用いられる非イオン性界面活性剤は、nonidet p-40、n-オクチルグルコシド、TRITON(商標)X-100などのTRITON(商標)界面活性剤、オクチルβ-チオグルコピラノシド、TWEEN-20などのTWEEN(商標)界面活性剤、またはNP-40でありうる。使用する界面活性剤の強度に応じて、界面活性剤は、約0.01 Mから約0.05 M、約0.05Mから約0.1 M、0.1 Mから約0.2 M、約0.2 Mから約0.5 M、約0.5 Mから約1.0 M、約1.0 Mから約2.0 M、約2.0 Mから約4.0 M、または約4.0 Mから約8.0 Mの濃度で抽出緩衝剤または中和緩衝剤中に存在しうる。本方法に用いることのできるさらなる界面活性剤が米国特許第6,488,671号の列7および8に記載されており、この特許はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。特定の態様では、界面活性剤は、抽出緩衝剤と中和緩衝剤のいずれにも存在しうる。
【0089】
例示的な界面活性剤、ならびに対象となる中和試薬および/または抽出試薬におけるその濃度としては、Triton X-100:約0.1%から約10%、例えば、約1%、NP40:約0.1%から約10%、例えば、約1%、およびTween-20:約0.1%から約10%、例えば、約1%(重量/vol)が挙げられる。
【0090】
上述のように、ポリオキシエチレンアルキルエーテルもしくは他の非イオン性界面活性剤は、中和試薬中に、単独で存在し得るか、組み合わせにおいて存在し得るか、または存在しない可能性がある。ポリオキシエチレンアルキルエーテルはBrij(商標)表面活性剤であってよく、かつTween(商標)界面活性剤またはTriton(商標)界面活性剤の一方または両方と組み合わせられてもよい。特定の好ましい態様において、Brij(商標)表面活性剤は、約0.1%〜約10%(例えば、約2%)のTween(商標)−20;もしくは約0.1%〜約10%(約2%)のTriton(商標)X−100である非イオン性界面活性剤の、一つまたは複数と組み合わせられるBrij(商標)35である。
【0091】
上記の通り、中和試薬を中間組成物と接触させて(例えば、混ぜ合わせて、もしくは混合させて)、中性pH(すなわち、pH約6.5からpH約8.0の範囲内、例えば、pH約7.0からpH約7.8の範囲内のpH)を有するタンパク質抽出物を生成する。タンパク質抽出物には、固定細胞または未固定細胞由来のタンパク質、上記濃度のポリオキシエチレンアルキルエーテルがさらに含まれ、特定の態様では、タンパク質抽出物を特定のpHの範囲内に維持するための緩衝剤および/または追加の非イオン性界面活性剤がさらに含まれる。変性剤を固定細胞または未固定細胞に添加する場合、タンパク質抽出物にはその変性剤がさらに含まれうる。pH、界面活性剤の選択、および用いられる界面活性剤の濃度(ならびに、変性剤が用いられている場合、変性剤の同一性および濃度)は、結合アッセイにおいて直接用いられるタンパク質抽出物が、タンパク質抽出物中に存在するタンパク質を検出可能にするために十分である。
【0092】
細胞抽出液の中和は、中和試薬をしみ込ませたフィルターまたはフィルターチップを通して抽出液を通過させることによって実施できる。抽出液が濾過剤を通過する際、中和試薬は可溶化されて、抽出液のpHは中性に近づく。
【0093】
細胞抽出液を中和させるための代替方法は、中性pHの溶液で事前に平衡化させたBioSpinカラム(BioRad)を通して抽出液を通過させることである。抽出液を、中和剤を含むゲル(または濾過剤)が含まれるシリンジまたは類似の器具内に入れて、陽圧によってシリンジから送達することができる。
【0094】
特定の態様では、対象となるタンパク質抽出物には、それが接近可能であり、そしてタンパク質抽出物のさらなる処理なしに(例えば、変性剤のさらなる添加、pH変化、または加熱なしに)捕捉剤によって容易に検出可能な可溶化HPV E6タンパク質(特にHPVの発癌性株由来のE6タンパク質)が含まれる。タンパク質抽出物には、可溶化させた、もしくは不溶性の膜、HPV E6タンパク質以外のタンパク質、およびDNA、RNA、糖質などの他の細胞含有物なども含まれうる。最初の細胞試料への粘膜混入に由来する混入物などの他の混入物も存在しうる。タンパク質抽出物の成分には、一般的に、全(すなわち、細胞学的に無傷の)細胞は含まれない。
【0095】
タンパク質抽出物は、すぐに使用するか、もしくは使用前まで、例えば、凍結状態で保存できる。
【0096】
特定の態様では、上記の方法により生成させたタンパク質抽出物をタンパク質検出方法に用いることができ、これらの方法は以下でより詳細に記載されている。
【0097】
上記から明白であるように、様々な異なる変性剤、界面活性剤、緩衝剤、pH、および成分の濃度を上記の試薬に用いることができる。任意の試薬中の最適な変性剤、界面活性剤、緩衝剤またはpH、または成分濃度は、日常の方法を使用して容易に決定される。
【0098】
細胞抽出液の中和後、E6に対する結合剤を含む粒子とともに抽出液をインキュベートすることによって、細胞抽出液からE6タンパク質を濃縮できる。結合剤には、PDZ、E6結合タンパク質(E6AP)もしくはその断片、またはE6結合タンパク質(E6BP)もしくはその断片が含まれる。E6が粒子によって捕捉された後、粒子は洗われ、次にE6は、10より大きいpHの緩衝剤でのインキュベーションによって粒子から放出される。粒子は溶離液から分離されて、次に残留液が先述の手順で中和される。あるいは、E6タンパク質は、捕捉粒子からの放出なしに検出されうる。
【0099】
本方法において利用され得るさらなる界面活性剤は、その特許の全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,488,671号の列7および8中に列挙される。特定の態様において、界面活性剤は、抽出緩衝剤中および中和緩衝剤中の両方に存在し得る。
【0100】
さらに他の態様において、試料は中和する工程に続いて希釈され得る。例示的な希釈剤は、約50 mM HEPES、pH約7.5のpH、約1.1% Triton(商標)X−100、約150 mM NaCl、約10%グリセロール、および約1 mM EGTAを包含し得る。別の例示的な希釈剤は、約50 mM Tris、pH8.2、約2% BSA、約2% Triton(商標)X−100、約0.1%サルコシン、約150 mM NaCl、および約50 mM EDTA(またはEGTA)を包含し得る。
【0101】
タンパク質検出方法
上で考察した方法によって作成されたタンパク質抽出物は、タンパク質抽出物中の1つまたは複数のタンパク質の存在を評価する方法において、直接的または間接的に(すなわち、さらなる試薬の添加後)用いることができる。タンパク質検出方法には、一般的に、タンパク質に特異的に結合する捕捉剤が含まれる。検出されるタンパク質の同一性は、方法を実施する時点で公知の(すなわち、既定の)または未知の同一性でありうる。
【0102】
本願のタンパク質検出方法を使用して検出されうるタンパク質には、疾患または症状、例えば、癌、炎症性疾患、または例えばウイルス、細菌、もしくは真菌による感染症の診断マーカーであるタンパク質が含まれる。特定の態様では、本願のタンパク質抽出方法を用いない限り、本願の方法を使用して検出されるタンパク質は日常的には検出できない。
【0103】
本方法を使用して検出できる例示的なタンパク質としては、ヒトパピローマウイルス(HPV)といった病原菌によってコードされるタンパク質が挙げられる。特定の態様では、本方法を用いてHPVのE6タンパク質を検出することができ、これは、他の方法によって、固定細胞から作成されたタンパク質抽出物中で検出することが困難または不可能であることが証明されたタンパク質である。
【0104】
全般的に、タンパク質検出方法は、当技術分野において極めて周知されており、かつ結合アッセイ、すなわちタンパク質と該タンパク質に対する捕捉剤との結合が検出されるアッセイを包含する。このようなアッセイとしては、免疫測定法、すなわち、あるタンパク質と特異的に結合する抗体を用いた結合アッセイが含まれ、限定はされないが、数例を挙げれば、ウェスタンブロット、放射性免疫測定法、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」免疫測定法、酵素免疫測定法、サイトメトリービーズアレイ(CBA)、マルチプレックスビーズアッセイ、ウェスタンブロット、免疫組織化学アッセイ、免疫細胞化学アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散法アッセイ、凝集アッセイ、補体結合反応アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光免疫測定法、およびプロテインA免疫測定法などの技術を使用した競合および非競合アッセイシステムを含む。このようなアッセイは日常的に行われており、そして当技術分野において周知である(例えば、全体が参照により本明細書に組み入れられる、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。例示的な免疫測定法について下記に簡単に記載している。E6 BPペプチドまたはAPペプチド、特異的抗体、またはPDZドメインタンパク質を使用する捕捉および放出が、抽出後、アッセイ法の前に、HPV E6を濃縮するための方法として使用され得る。あるいは、デュアルモノクローナル抗体様式が利用され得る。
【0105】
免疫沈降プロトコルには、一般的に、タンパク質抽出物を生成する工程、タンパク質抽出物に捕捉剤、例えば、抗体を添加する工程、ならびに適当な時間および温度でタンパク質抽出物および捕捉薬剤をインキュベートする工程が含まれる。次に捕捉剤を固体支持体、例えば、プロテインAおよび/またはGタンパク質に連結させたビーズなどの親和性基質に結合させて、混合物をインキュベートし、洗う。固体支持体を試料緩衝剤中に再懸濁させて、例えばウェスタンブロット法によって対象となるタンパク質を検出することができる。
【0106】
ELISAには、タンパク質抽出物を調製する工程、タンパク質抽出物を固体支持体(例えば、マルチウェルマイクロタイタープレートのウェル)に連結する工程、支持体に結合させたタンパク質抽出物を捕捉剤、例えば、抗体と接触させる工程、および捕捉剤とタンパク質との結合を検出する工程が含まれうる。特定のELISA法では、捕捉剤を支持体に結合させたタンパク質抽出物に接触させる前に、捕捉剤を酵素基質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリ性ホスファターゼ)などの検出可能な成分で検出可能に標識できる。しかし、他の態様では、捕捉剤のタンパク質抽出物への結合は、タンパク質抽出物に接触させた捕捉剤に結合する、検出可能な第2の捕捉剤(例えば、第二抗体)によって検出できる。
【0107】
他のELISAアッセイでは、捕捉剤は固体支持体に連結させることができ、タンパク質抽出物を固体支持体に結合した捕捉剤に接触させる。タンパク質抽出物中のタンパク質の固体支持体抗体への結合は、タンパク質の第二の捕捉剤を使用して検出できる。このような「サンドイッチアッセイ」は当技術分野において周知である。
【0108】
他のアッセイでは、捕捉剤とタンパク質との結合は、捕捉剤の表面固定化前に溶液中で生じうる。
【0109】
特に、本方法を用いて、HPVの発癌性株由来のE6タンパク質を検出することができる。これらの態様では、検出方法に用いる捕捉剤は、例えば、E6タンパク質に含まれるPDZリガンドに結合するPDZドメイン(すなわち、PDZドメインの結合部位)を含む抗体またはポリペプチドでありうる。例えば、本E6検出結合方法では、MAGI-1の第二PDZ、またはDLGもしくはTIP1などのPDZドメインを含むPDZドメイン含有タンパク質を用いることができ、それは米国特許出願第20040018487号(2004年1月29日公表)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。例示的なPDZドメイン含有タンパク質およびPDZドメイン配列が米国特許出願第20040018487号の表2および実施例4に示されている。「PDZドメイン」という用語には、配列(例えば、多型変異体、保存的置換を伴う変異体など)の変異体(例えば、天然変異体)および代替種(例えば、マウス、ラット)由来のドメインも含まれる。典型的に、PDZドメインは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/724,553号に示されているドメインと実質的に同一であり、例えば、最大一致率に関して比較し、整列させた場合、アミノ酸残基の同一性は少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%である。PDZドメインを突然変異させて、結合を強める、もしくは弱めることのできるアミノ酸変化を与えて、特異性を変えるが、それらが依然としてPDZドメインであることを可能にすることは、当技術分野において理解される(Schneider et al., 1998, Nat. Biotech. 17:170-5)。他に断らない限り、特定のPDZドメイン(例えば、MAGI-1ドメイン2)の参照は、特定のPDZドメインおよびそのHPV E6-結合変異体を含むことが意図される。換言すれば、特定のPDZドメインを参照する場合、以下に記載する通り、HPVの発癌性E6タンパク質に結合するそのPDZドメインの変異体も参照する。この点に関して、タンパク質内のPDZドメインの番号が変化しうることが指摘される。例えば、MAGI-1ドメイン2(アミノ酸配列
)は、本明細書で参照される通り、他の文献のMAGI-1ドメイン1として参照できる。このように、本出願においてタンパク質の特定のPDZドメインを参照する場合、この参照は、本明細書に記載の通り、特に米国特許第20040018487号の配列表、表2内のそのドメインの配列の観点から理解されるべきであり、ここでは、該当する場合、配列表の配列と様々のドメインの名前およびGenbankアクセッション番号との関係が示されている。本明細書で使用している通り、「PDZタンパク質」という用語は、PDZドメインを含む天然タンパク質を指す。例示的なPDZタンパク質としては、
が挙げられる。本明細書で使用している通り、「PDZ-ドメインポリペプチド」という用語は、PDZドメイン配列、天然PDZタンパク質、または単離PDZドメインペプチドを含む融合タンパク質などのPDZドメインを含むポリペプチドを指す。PDZドメインポリペプチドは、従って、長さが約60アミノ酸またはそれより大きい、長さが約70アミノ酸またはそれより大きい、長さが約80アミノ酸またはそれより大きい、長さが約90アミノ酸またはそれより大きい、長さが約100アミノ酸またはそれより大きい、長さが約200アミノ酸またはそれより大きい、長さが約300アミノ酸またはそれより大きい、長さが約500アミノ酸またはそれより大きい、長さが約800アミノ酸またはそれより大きい、長さが約1,000アミノ酸またはそれより大きい、長さが約2,000アミノ酸またはそれより大きい、長さが約50〜2,000アミノ酸、長さが約50〜1,500アミノ酸、長さが約50〜1,000アミノ酸、長さが約60〜1,000アミノ酸、長さが約70〜1,000アミノ酸である。通常、PDZドメインペプチドは、約200アミノ酸以下(例えば、50〜200アミノ酸、60〜180アミノ酸、80〜120アミノ酸、または90〜110アミノ酸)であり、PDZドメインをコードする。
【0110】
HPVのE6タンパク質を検出するために適した抗体は、例えば、第20050142541号(2005年6月30日公表)に記載されている。HPVの発癌性株からE6タンパク質を同定するための詳細な方法が、米国特許第20040018487号において見られ、その方法はその全体が本明細書に組み入れられる。公表されたこれらの方法は、本方法において用いるために容易に適応される。
【0111】
特定の態様において、抗E6抗体を固体支持体に結合させてもよく、かつ本願の方法によって生成されるタンパク質抽出物を、固体支持体に結合した抗体に接触させる。このような固体支持体は当技術分野において周知であり、限定はされないが、コロイド性金粒子、化学発光粒子、染色ラテックス粒子、またはレポーター色素を有するシリカ被覆された金核もしくは銀核等のSERSラマン粒子を包含し得る。特定の態様において、抗E6抗体は、蛍光標識に結合され得る。
【0112】
タンパク質抽出物中での発癌性E6タンパク質の結合は、PDZドメイン含有タンパク質を使用して検出され得る。他の態様において、PDZドメイン含有タンパク質を固体支持体に結合させることができ、本願の方法によって生成されるタンパク質抽出物を、固体支持体に結合したPDZドメイン含有タンパク質に接触させる。タンパク質抽出物中での発癌性E6タンパク質の結合は、抗E6抗体を使用して検出することが可能である。代替方法では、抗体またはPDZドメイン含有タンパク質との結合が、溶液中(すなわち、固体支持体への抗体またはPDZドメイン含有タンパク質の結合がいずれも存在しない状態)で起こり得て、結合後、抗体またはPDZドメイン含有タンパク質が固体支持体(例えば、上に記載されるようなビーズ等)に結合され得る。これらの態様において、PDZドメイン含有タンパク質は、固体支持体に結合する親和性ドメインを有する融合タンパク質であり得る。E6タンパク質の存在は、E6タンパク質を認識する第二の捕捉剤を使用して検出することが可能である。
【0113】
好ましい態様において、抽出された捕捉性E6タンパク質を検出するために、ラテラルフロー(LF)アッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、ディップスティック検査またはフロースルー免疫測定法を利用する。好ましい態様において、PDZドメイン含有タンパク質の「捕捉ゾーン」を含むラテラルフロー(LF)条片は、金粒子に結合された抗HPV E6モノクローナル抗体(mAb)等の第二の捕捉剤が添加されている、抽出試料を含むバイアル中、またはウェル中に配置される。続いて、キャピラリー作用によって、金粒子および試料を条片の上方に移動させる。条片の上方への液体の流動を促進するため、遠方末端に吸収性パッドを取り付けてもよい。試料が条片を上方に移動している間に、捕捉ゾーン中のPDZドメインタンパク質は、E6タンパク質に結合し得る。金が結合したmAbの結合が溶液中で生じる場合、抗E6金コンジュゲートは、PDZドメインタンパク質に結合し得る。あるいは、E6タンパク質は、PDZドメインタンパク質に結合して、続いてE6金コンジュゲートを捕捉することも可能である。いずれのシナリオにおいても、成功裡の捕捉によって、可視的でかつ検出可能な線がLF条片上に形成され得る。
【0114】
好ましい態様において、捕捉されたE6タンパク質の検出を助けるために、サイトメトリービーズアレイ(CBA)を利用する。マルチプレックスビーズアッセイとしても公知のCBAは、可溶性分析物を捕捉しかつ定量するために使用され得る一連の分光的に離散した粒子である。続いて分析物は、蛍光ベースの発光の検出、およびフローサイトメトリー解析によって測定される。Becton Dickinson(BD)(商標)CBAは、ELISAベースのアッセイに匹敵するデータを生成するが、「多項目」様式または同時様式において生成する。任意のサンドイッチ様式のアッセイに関して、未知の分析物の濃度の算出は、概して、公知の基準を使用し、かつ基準曲線に対して未知物をプロットすることによって実施される。
【0115】
捕捉されたE6タンパク質を検出するために有用な機器は、当技術分野において周知である。例えば、LF条片上に結果として得られる線を検出するために、反射率計機器またはUMMリーダーを使用し得る。あるいは、E6タンパク質を捕捉するために蛍光標識された抗E6 mAbを使用する場合、蛍光定量リーダーを利用し得る。検出粒子が装置自身の固有部分として組み入れられる装置も使用され得る。あるいは、本発明の抽出工程は、E6部分単独からなる、または特定の抗体、ペプチドもしくはタンパク質(粒子に付着性かもしくは非付着性)との複合体からなる入力試料を生成し得る。このような入力試料は、特異的な捕捉体、または非特異的な膜ベースの流動検出装置に導入され得て、続いて酵素学的なシステムもしくは粒子ベースのシステム、または増幅された検出システムによって検出され得る。
【0116】
シグナル検出を増強するために、いくつかのアプローチが利用され得る。そのようなアプローチの一つは、沈降基質と共に金粒子が結合する酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリ性ホスファターゼ(AP))に結合されたモノクローナル抗体(mAb)を利用すると考えられる。複数のビオチンを含む抗体、続いて、ストレプトアビジン金粒子も、増幅シグナルをもたらし得る。検査線の周囲により多くのビオチンを沈着させるために、ビオチンチラミドを使用し、続いて、増幅および検出のためにストレプトアビジンに結合した金を使用し得る。あるいは、ビオチンと特異的mAbが共に結合された金粒子(または蛍光標識された粒子)とからなる一次粒子、続いてストレプトアビジンが結合した二次粒子を包含する二段階工程の使用によって、シグナル増強がもたらされ得る。一次粒子は、特異的な、反復的にE6タグ付けされた粒子であり得、抗タグ二次粒子がそれに続く。一次粒子はまた、一部の、多数の、もしくは全てのHPVの発癌性株由来のE6タンパク質と、および/またはE6タンパク質の一つもしくは複数のエピトープと反応することが可能な抗体のカクテルでもあり得る。このような抗体のカクテルは、ビオチン化され得るか、固体支持体(例えば、金粒子)に結合し得るか、または蛍光標識され得て、かつ本明細書に記載される本方法の多くは、E6タンパク質を検出するためにこのようなカクテルと共に使用され得る。
【0117】
特定の態様において、抽出緩衝剤中の活性成分は、臨床検体の可溶化を増強するために増加され得る。このような可溶化の増強によって、試料を清浄化する必要性を取り除き、アッセイにおいて一つの工程が除去され得る。また、試料を濃縮するために、抗E6−mAb−金複合体を沈殿させ、小容量で再構成し、それによりE6タンパク質を濃縮し、かつアッセイの感度を増強することも可能である。
【0118】
試料の流動および検出に干渉し得る望ましくない物質を除去するため、検出に先立ち試料を濾過し得る。濾過は試料の粘性を低下させ得て、試料の流速の増加がもたらされる。これは、試料を試料膜へと濃縮する際の効率、またはラテラルフロー装置上の流速を増加させ得る。さらに、より大きい粒子サイズの物質を試料から減少させることによって、試料の粘性が低下され得て、試料の流速の増加がもたらされる。これは、試料を試料膜へと濃縮する際の効率、またはラテラルフロー装置上の流速を増加させ得る。
【0119】
天然および合成の両方の、様々な広範な有機ポリマーおよび無機ポリマーが、試料を濾過するために使用され得る。例示的なポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニル酪酸)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維濾紙、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルおよび塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、オーロン、ポリエステル、ポリスチレン等を包含するか、または混合物も使用され得る。好ましい態様において、フィルターの孔径は、他の物質(例えば、細胞組織片)が通過するのを防止しながら、試料タンパク質の通過を許容する。フィルター孔径は、例えば、0.1μm〜50.0μmの範囲であり得る。好ましくは、孔径は、0.5〜25μm、1.0〜20μm、2.0〜15μm、3.0〜10μmまたは4.0〜6.0μmの範囲である。例えば、本発明の抽出試薬、続いて中和試薬に細胞を接触させることによるタンパク質を抽出する工程に続いて、試料を、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0または8.0μmの孔径を有するフィルターに通過させてもよい。当業者は、濾過される試料に基づいて、異なる粒子径が必要とされることを認識すると考えられる。試料を、フィルターに強制通過させてもよい(例えば、膜フィルター孔を含むシリンジによってか、またはフィルターを介しての真空吸引を使用)。当業者に周知の、試料を濾過するいくつかの方法が存在する。
【0120】
試料の濾過は、試料の流速の増加をもたらし得る。一部の例では、濾過されていない試料と比較して、試料の流速は5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%増加され得る。適切なフィルターサイズによって、シグナルの検出においていかなる測定可能な損失をも伴わず、流速の増加をもたらし得る。
【0121】
上記のアッセイ法から得られた結果は、適当な対照、例えば、(捕捉剤が結合するタンパク質を含むことが知られているタンパク質抽出物を用いることができる)陽性対照または(例えば、細胞試料に接触していないタンパク質抽出試薬を用いることができる)陰性対照から得られた結果と比較できる。
【0122】
上記のアッセイ法から得られた結果は、存在、非存在、もしくは、特定の態様では、タンパク質抽出物中のタンパク質の量を示しうる。
【0123】
特定の態様では、上記のアッセイ法から得られた結果は、例えば、電話、ファクス、電子メール、郵便、または他の任意の手段によって、離れた場所に返信できる。結果は、例えば、被験体または被験体の医師に伝達されうる。
【0124】
上記のタンパク質検出方法は、細胞学的検査、例えば、癌性または前癌性の子宮頸部細胞を同定するためのPap試験または他の分子検査などの異なる検査と組み合わせて実施できる。これらの態様では、使用前に細胞試料を部分に分けることができる。第一の部分を細胞学的アッセイに使用でき、そして第二の部分を上記の方法において使用できる。
【0125】
上記に従って、本発明の特定の態様では、タンパク質抽出物を生成するためのシステムも提供する。システムには、一般的に、(a)固定細胞または未固定細胞を含む細胞試料、(b)少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬、および(c)中和試薬が含まれ、ここでは上記の方法において固定細胞または未固定細胞、抽出試薬、および中和剤を用いて、結合アッセイでの使用に適したタンパク質抽出物が生成される。抽出試薬および/または中和剤にはポリオキシエチレンアルキルエーテルが含まれる。
【0126】
キット
さらに別の局面では、本発明は、本願の方法を実施するため、例えば、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するため、特定の態様では、タンパク質抽出物中のタンパク質の存在を検査するためのキットを提供する。本願のキットには、少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬および中和試薬が少なくとも含まれる。抽出試薬および/または中和試薬にはポリオキシエチレンアルキルエーテルが含まれる。さらに、キットには、タンパク質を検出するための補足剤、ならびに、特定の態様では、捕捉剤を使用してタンパク質を検出するための試薬(例えば、緩衝剤および検出試薬)が含まれうる。上記の要素は別々の容器内に存在しうる、または1つまたは複数の要素を1つの容器内、例えば、ガラスまたはプラスチックのバイアル内に混ぜ合わせることができる。
【0127】
上記の要素に加えて、本願のキットには、本願の方法を実施するための使用説明書がさらに含まれうる。これらの使用説明書は、様々な形で本願のキット内に存在しうるが、その1つまたは複数がキット内に存在しうる。これらの使用説明書が存在しうる1つの形は、キットの包装、添付文書などの適当な媒体または被印刷物、例えば、情報が印刷された紙片上の印刷情報である。さらに別の手段は、情報が記録されたコンピューター可読媒体、例えば、ディスケット、CDなどでありうる。提示できるさらに別の手段はウェブアドレスであり、これはインターネットを介して使用でき、離れた場所で情報にアクセスできる。便利な任意の手段がキット内に存在することができる。
【0128】
有用性
上記の方法およびシステムは、特定の疾患または症状、またはウイルスまたは細菌などの病原菌による感染症を診断する方法を含む、様々な研究方法および診断方法に容易に用いることができる。一態様では、HPV感染細胞を検出するための診断の一部として方法が用いられる。HPVの発癌性株の存在が癌性細胞および前癌性細胞に関連するため、本方法を用いて癌性または前癌性の子宮頸部細胞を検出できる。
【0129】
HPVは以下の疾患の原因物質であることが知られている:皮膚(例えば、扁平上皮細胞)癌の高リスクを招く一生にわたる皮膚疾患である疣贅様表皮発育異常症(EV)、子宮頸管上皮内新生物(CIN)および浸潤性子宮頸癌(ICC)などの子宮頸管新生物;腟上皮内新生物(VAIN)および腟癌(VC)などの腟新生物;外陰部上皮内新生物(VIN)および外陰部癌などの外陰部新生物、陰茎癌(ボーエン様丘疹症を含む)、肛門(AC)および肛門周囲癌(PC)、口咽頭癌(OS)、食道癌(EC)、非黒色腫皮膚癌(例えば、基底細胞癌BCCおよび扁平上皮癌細胞SCC)および黒色腫。このように、一態様では、本方法はこれらの疾患のいずれかの診断として用いることができる。
【0130】
一態様では、細胞が被験体から得られ(例えば、剥離させる、もしくは切除する)、固定剤を含む液体培養液中に置かれ、特定の態様では、細胞学的検査用の輸送液でよい。細胞は、通常、医院または診療所において得られ、細胞試料は検査施設に転送されて受け取られ、ここでは、上記のタンパク質検出方法および任意で細胞学的アッセイが実施される。検査からの結果が、一部の態様では、医師およびその共同研究者よって被験体に伝達される。
【0131】
細胞が用いられた被験体は、哺乳動物、例えば、イヌもしくはネコ、齧歯動物(例えば、マウス、モルモット、またはラット)、または霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、またはサル)であってもよい。多くの態様では、被験体はヒト、特に男性または女性である。特定の態様では、被験体はHPV感染の症状を示しうる(例えば、1つまたは複数の身体の部分に疣贅を有しうる)、HPVに感染していることが疑われる(例えば、このような感染症と細胞学的に一致する細胞を含みうる)、もしくは既に検査でHPVに陽性であった可能性がある。特定の態様では、被験体はHPV感染の徴候を有さない可能性があり、上記の方法は日常の検査の一部として用いることができる。
【0132】
一態様では、本方法を用いて、株からのE6タンパク質を検出することによって、任意の発癌性HPV株、例えば、HPV26、HPV53、HPV66、HPV73、HPV82、HPV16、HPV18、HPV31、HPV35、HPV30、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV59、HPV58、HPV33、HPV66、HPV68、またはHPV69(特に、最も有病率の高いHPV株のいずれか、例えば、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、およびHPV45)を検出できる。一態様では、本方法を開始した時点では、固定細胞または未固定細胞が発癌性E6タンパク質を含むか否か、もしくは発癌性E6タンパク質がいずれの株由来であるのかは分からない。検出アッセイが細胞中の発癌性E6タンパク質の存在を示す場合、次にそれらの細胞に感染したHPV株の同一性を、他の分子アッセイ、例えば、ウイルスによりコードされる特定のE6タンパク質もしくは他のタンパク質に特異的な抗体を用いたアッセイ、またはウイルスDNAの配列決定によって決定できる。
【0133】
限定はされないが、具体例として以下の実施例を提示する。
【実施例】
【0134】
実施例1:スパイクされた臨床試料の抽出
HPV16 E6遺伝子(C33A+)をトランスフェクトした細胞をTHINPREP(商標)培養液で固定して、以下に記載したTHINPREP(商標)固定臨床試料の一部に添加(すなわち、「スパイク」)した。細胞を5つの臨床試料それぞれの半分にスパイクした(2,000万個のC33A+細胞を有する各臨床試料の半分)。
【0135】
抽出スキーム
C33A(+) ThinPrep細胞/1 ml当たり2,000万個細胞
1- 1/2の臨床陰性#229 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
2- 1/2の臨床陰性#230 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
3- 1/2の臨床陰性#231 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
4- 1/2の臨床陰性#232 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
5- 1/2の臨床陰性#233 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
6- 20M C33A(+) ThinPrep細胞(1.0 ml抽出物)
【0136】
抽出試薬
Triton X-100/ロット092K0171 - (1% = 250μl)
5M NaCl/ロット5701-53 - (0.15M = 750μl)
0.5M トリスベース/ロット5708-20 - (0.1M = 5 ml)
0.5M グリシン/ロット5708-9 - (0.1M = 5 ml)
10% SDS/ロット5708-8 - (0.05% = 125μl)
8M 尿素/ロット5678-83 - (0.25M = 781μl)
20 mlまでRO/DIを添加 - (8.1 ml)
5N NaOH/ロットA09522 - (525μl)
25 mlまでRO/DIを添加 - (4.475 ml)
最終pH - 11.48
最終調合物:0.1 M トリス/0.1 Mグリシン/0.15 M NaCl/1% Triton(商標)X-100/0.05% SDS/0.25M 尿素 pH11.48
【0137】
タンパク質抽出手順
1.50 ml遠心管に細胞懸濁液を添加する。
2.10〜15分間、3,000 rpmで回転させる。
3.静かに上清を除去する。
4.内容物を1.5 ml nunc管に移す。
5.10〜15分間、3,000 rpmで回転させる。
6.静かに上清を除去する。
7.ペレットに必要量の抽出試薬を添加する。
8.再懸濁させて細胞ペレットを分散させる。
a.添加剤(DTT 1:100)
9.pHを調べて、11.5に調整する。
10.30分間、室温(または抽出に適当な温度)で混合する。
11.10〜15分間、14,000 rpmで回転させる。
12.清澄な上清を除去する。
13.DTTを1:100で添加する。
14.5N HClでpH8.0に中和して、ELISAで検査する。
(31.0 μlの5N HCl/mlでpH8.0に中和させる。)
100 mM DTT/NR 5701-90/DOM2/7/05
【0138】
ELISA法
1 - プレート(Nunc 439454 Maxisorp F96/ロット542043)をPBS (ロット021405)中5μg/ml GST-Magi-PDZ (ロット88.18/0.65μg/μl)でコーティングする - 100μl/ウェル。
11 ml x 5μg/ml = 55μg x 1μl/0.65μg = 84.6μl GST-Magi-PDZ
2 - 4℃で一晩インキュベートする。
3 - プレート洗浄機で3回(TBS - Tween)洗う。
4 - 250μlのブロッキング緩衝剤(ロット033005)でプレートをブロッキングする。
5 - 25℃で2時間インキュベートする。
6 - プレート洗浄機で3回(TBS - Tween)洗う。
7 - 適当なウェルに100μl MBP-E6/溶解物試料を添加する。
8 - 25℃で1時間インキュベートする。
9 - プレート洗浄機で3回(TBS - Tween)洗う。
10 - 適当なウェル中の2% BSA HNTG緩衝剤(ロット031805B)に100μlの抗E6抗体(4C6 - 2.85 mg/ml -ロット02) 5μg/mlを添加する。N-末端ペプチド(HPV16E6 ロット番号PN3952-2)を適当な試料に10μg/ml添加して、シグナルの特異性を検証する(添加前の45分間、ペプチドを事前に抗E6抗体とインキュベートする)。
11 - 25℃で2時間インキュベートする。
12 - プレート洗浄機で3回(TBS - Tween)洗う。
13 - 2% BSA/0.05% Tween 20緩衝剤(ロット040505)中でヤギ抗マウスIgG-HRP (Jackson GxM IgG-HRP /カタログ番号115-035-062 /ロット60988)の1:5,000希釈液を調製する。
10.0 ml x 1/5000 = 0.002 ml x 1,000μl/ml = 2.0μlヤギ抗マウスIgG-HRP
14 - 適当なウェルに100μlの1:5,000ヤギ抗マウスIgG-HRP希釈液を添加する。
(TMB基質を除去して、室温に置く)
15 - 25℃で1時間インキュベートさせる。
16 - プレート洗浄機で5回(TBS - Tween)洗う。
17 - 100μlのNeogen K-Blue TMB基質(ロット041018)を添加する。
18 - 25℃で30分間インキュベートする。
19 - 100μlの停止液(ロット030705)を加え、A450を読み取る。
【0139】
調合物
2% BSA/0.05% Tween 緩衝剤 - (ロット040505)
2% BSAブロッカー ロット033005 (49.975 ml)
Tween 20 ロットA016759301 (0.025 ml)
【0140】
結果
【0141】
上の表で示される結果に見られるように、全てのスパイクされた臨床試料に関して、E6結合を検出した。
【0142】
実施例2:MBP−E6検出に対する、高いpHの緩衝剤および添加剤の効果
図1に記載される例は、組換えマルトース結合タンパク質(MBP)−E6タンパク質の検出に対する、異なる組成の緩衝剤の効果を示す。通常、細胞からタンパク質を抽出するために、本明細書に記載される抽出緩衝剤を使用すると考えられる。しかしながら、ここでは、条件を最適化するために、以前に精製された組換えタンパク質を使用した。概略すると、図1A中に記載される実験は、添加剤成分およびpHが異なる新規に調製された抽出緩衝剤中に、MBP−E6タンパク質を懸濁する工程を包含した。この「抽出」工程に、試料のpHを中性pHに調整する中和工程が続いた。続いて、ラテラルフローアッセイを使用して、MBP−E6タンパク質を検出した。
【0143】
緩衝剤の組成
本明細書に記載される実験において使用される緩衝剤は、2つの緩衝剤のうちの1つ、すなわち低いpHの緩衝剤「緩衝剤1」、または高いpHの緩衝剤「緩衝剤2」のいずれかに由来した。緩衝剤1(pH約11.5)は、約100 mM Tris/グリシン、約50 mM Hepes、約150 mM NaCl、約1 mM EGTA、約1.1% Triton(商標)X−100、および約0.125〜0.14 N NaOHからなる。緩衝剤2(pH約12〜13)は、0.1 N NaOHおよび約50 mMクエン酸3ナトリウムからなる。続いて、図1Aに示される「低」または「高」の添加剤を、各緩衝剤に添加したか、または添加しなかった。低添加剤緩衝剤中の添加剤は、およそ以下の濃度を有した:0.25 M尿素;0.05% SDS;2% Tween(商標)−20;2% Brij(商標)35(Sigma);2%サポニン;2% Tergitol NP 40;または10 mM EDTA、pH 8。高添加剤緩衝剤中の添加剤は、およそ以下の濃度を有した:約2 M尿素;0.5% SDS;4% Tween(商標)−20;4% Brij(商標)35;4%サポニン;4% Tergitol NP 40;または50 mM EDTA、pH 8。上に示されるように、緩衝剤1は、低および高の試料の両方に使用された1.1% Triton(商標)X−100のストックレベルを有した。緩衝剤2に関して、Triton(商標)X−100は、2%(低)または4%(高)の濃度であった。
【0144】
本明細書において記載される大多数の例において、試料への添加の直前に、個々の添加剤を含む緩衝剤を調製した。しかしながら、一部の場合において、一つまたは複数の添加剤が試料に導入される前に、最初に緩衝剤で試料を処理した。
【0145】
MBP−E6タンパク質の検出
図1Aに示される実験において、示された添加剤を用いて新規に調製された1.03〜1.13 mlの示された抽出緩衝剤中に、520 pgのMBP−E6を懸濁した。続いて、室温で約30分間、懸濁液を穏やかに混合した(上下逆さにして)。中和する工程に関して、約2 M Trisを使用してより低いpH(およそ7.8〜8)に懸濁液を調整し、再び室温で30分間回転させた。MBP−E6組み換えタンパク質を検出するために、本明細書に記載されるラテラルフロー(LF)アッセイによって、およそ150〜200μlの試料を解析した。
【0146】
ラテラルフロー(LF)アッセイの説明
本明細書に記載されるラテラルフロー(LF)アッセイは、免疫クロマトグラフィーアッセイまたはディップスティックアッセイとしても公知である。概略すると、本明細書におけるLFアッセイは、金粒子に結合したウイルスタンパク質をLF条片に存在する「捕捉ゾーン」上で捕捉することを包含する。成功裡の捕捉は、LF条片上に可視的でかつ検出可能な線の出現をもたらす。
材料:0.22μm濾過された20%(w/v)BSA(Sigma A7906);コロイド状金8G11(BBI);ラテラルフロー条片、PDZ捕捉。
方法:
(1)約150〜200μlの試料を、96ウェルプレート中の2つ組のウェル中に配置する。
(2)各ウェルに約20μlの20% BSAを添加し、ピペットチップで混合する。
(3)各ウェルに8G11が結合したコロイド状金 約10μlを添加し、ピペットチップで混合する。8G11は、HPV16 E6タンパク質を認識するモノクローナル抗体(mAb)である。
(4)キャピラリー作用によって試料を条片の上方に移動させるため、各ウェル中にLF条片をおよそ120分間配置する。条片の上方への液体の流動を促進するために、遠方末端に吸収性パッドを取り付けてもよい。試料の移動の間に、HPV16 E6タンパク質は、コロイド状金粒子に付着したmAbに結合し得る。E6タンパク質も、E6タンパク質を認識することが可能な複数のPDZドメインを含むタンパク質を有するLF条片上のゾーンによって捕捉される。そのような捕捉は、LF条片上に、可視的でかつ検出可能な赤色線の出現をもたらす。
(5)続いて、可視的シグナル出力を定量することが可能な反射率リーダーが装備されているUMM装置によって、LF条片を解析した。得られた値は、相対的な反射率値である。
【0147】
図1に示される例は、特定の添加剤を高いpHの抽出緩衝剤(緩衝剤2、pH 12.9)と併用することによって、MBP−E6タンパク質の検出における相乗作用が引き起こされることを示す。例えば、添加剤の非存在下において緩衝剤1を緩衝剤2と比較した場合、pHの増強は、組み換えMBP−E6タンパク質の検出に対していかなる効果も有しなかったことが明らかになった(図1A、最後の4列)。特定の添加剤、とりわけSDS、TWEEN(商標)−20、Brij(商標)35およびTergitol NP40は、比較的低いpHの緩衝剤である緩衝剤1、pH 11.5を使用した場合でさえも、MBP−E6タンパク質の検出を増加させた(図1A)。しかしながら、添加剤をより高いpHの緩衝剤(緩衝剤2)と組み合わせた場合、組み換えタンパク質の検出は、SDS、TWEEN(商標)−20、Triton(商標)X−100、Brij(商標)35試料において顕著に増加した。例えば、Triton(商標)X−100で処理された試料中のタンパク質の検出は、pHを増加させた場合、0からおよそ2.4超のUMM測定値に上昇した。したがって、「抽出」工程の間の高いpHと特定の添加剤との組み合わせが、E6タンパク質の検出に対して相乗効果を及ぼしたと結論付けることができる。
【0148】
図1Bは、1Aで実施されたものと類似の実験を記載する。しかしながら、図1Bでは、より初期の「抽出」工程の代わりに、中和工程の間に添加剤を試料に導入した。このアプローチによって、抽出工程の間に添加剤を導入した場合よりも、極めてより低いシグナル強度が得られた。したがって、中和工程での添加剤の導入は、最適なアプローチではない。
【0149】
実施例3:細胞からのE6タンパク質の抽出に対する添加剤の効果
図2に示される例では、細胞からのE6タンパク質の抽出に対して、異なるパーセンテージの緩衝剤添加剤の効果を評価した。この例において、HPV16 E6遺伝子を発現するSiHa細胞から、またはHPV感染されていない子宮頸癌株であるC33A細胞からタンパク質を抽出した。
【0150】
抽出工程
抽出工程に関して、最初に、約1,000万個の細胞を含む細胞沈殿物を−80℃のフリーザーから取り出し、室温で約10分間解凍した。続いて、実施例2に記載される約750μlの緩衝剤2を大多数の試料に添加した。Brij(商標)35、Tween(商標)−20またはTriton(商標)X−100等の添加剤も、示された試料に導入した。これらの添加剤は、2%または4%(v/v)のいずれかの最終濃度で存在した。対照として、20 mM Tris、pH 8、2% BSA、1% Triton(商標)X−100、2% Tween(商標)−20、0.2%サルコシン、250 mM NaCl、および50 mM EDTAを含む中性pHの緩衝剤である緩衝剤673により、一部の試料を抽出した。試料を短時間ボルテックスし、続いて室温で30分間回転させた。
【0151】
中和工程
中和工程に関して、各試料のpHをpH約7.8〜8に減少させるため、およそ140〜180μlの2M Tris、pH6.0を添加した。試料のpHを中和させるのに必要なTris、pH6.0の容量を、経験的に事前に決定した。Trisの添加および短時間のボルテックスに続いて、室温で30分間試料を回転させた。続いて、14K rpmで10分間の遠心分離によって試料を清浄化した。続いて、実施例2に記載されるLFアッセイで解析する前に、清浄溶解物(最終容量およそ1.09)を清潔なチューブに移した。
【0152】
結果
4% Brij(商標)35を含む緩衝剤2を抽出する工程において使用した場合、HPV16 E6タンパク質が最もよく検出された(図2)。さらに、SiHa細胞由来のシグナルと、HPV E6−陰性C33A細胞からのシグナルとの比較によって、この条件によっても、アッセイのシグナルノイズ比が大幅に増加したことが示された(図2)。
【0153】
実施例4:4% Brij(商標)35/緩衝剤2で抽出後の、HPV−16 E6タンパク質の用量反応検出
この例において、実施例2および3において記載される4% Brij(商標)35/緩衝剤2を用いて、漸増性数のHPV−16 E6を発現するSiHa細胞およびCaski細胞を抽出した。抽出方法は、実施例3に記載されるものと類似しており、かつ細胞約920万個/mlの開始濃度を使用した。しかしながら、LF条片当たり連続的に増加する細胞数を使用したという点において、LFアッセイは異なった。図3に示されるように、LFアッセイにおいて使用された条片当たりの細胞数は、約31,000個;約62,000個;約125,000個;約250,000個;約500,000個;約1,000,000個;または約1,700,000個であった。陰性対照は、中性pHの緩衝剤673(実施例3に記載)でのこれらの細胞の抽出、および4% Brij(商標)35/緩衝剤2または緩衝剤673のいずれかでのHPV陰性C33A細胞の抽出を包含した。
【0154】
図3に示されるように、C33A細胞を使用した場合、いかなる用量反応も存在せず、かつ中性pHの緩衝剤673を使用した場合、限定的な用量反応のみが存在した。しかしながら、漸増性数の細胞を使用した結果として、両方のHPV−16 E6発現細胞株(SiHaおよびCaski)において、漸増性量のE6タンパク質を検出した。これらの結果は、本アッセイによって、HPV−16 E6タンパク質が用量反応様式で検出されたことを示した。
【0155】
実施例5:スパイクされた臨床試料からのHPV−16 E6タンパク質の抽出における、4% Brij(商標)35/緩衝剤2の使用
図4に示される例は、HPV16 E6を発現するSiHa細胞と組み合わせられたか、または「スパイクされた」PAP正常臨床試料からの抽出におけるHPV16 E6タンパク質の検出を示す。この例で使用される臨床試料は、従来のPapスメアにより陰性と判定された未固定の剥離された子宮頸部試料であった。最初に、試料を−80℃のフリーザーから取り出し、室温で約10分間解凍した。続いて各剥離物を切り取るために小型ワイヤーカッターを使用し、続いて約1,000万個のSiHa細胞の凍結細胞沈殿物を含むマイクロ遠心チューブに配置した。実施例3および4に記載されるものと類似の様式で、試料の抽出、中和およびLFアッセイを遂行した。この実験に関して、抽出する工程の間、4% Brij(商標)35/緩衝剤2、または中性緩衝剤673(両方とも以前の例中で記載される)のいずれかを使用した。両方の緩衝剤の抽出容量は、およそ1 mlであった。
【0156】
4% Brij(商標)35/緩衝剤2を使用して抽出された5つのSiHa細胞をスパイクされた臨床試料において、有意なHPV16 E6タンパク質を検出した(図4)。対照的に、SiHaをスパイクされていない5つの試料の抽出は、比較的低いシグナルをもたらした。同様に、いずれかの細胞種を抽出するための緩衝剤673の使用もまた、比較的低いシグナルをもたらした。これらの結果は、臨床試料中のHPV16 E6タンパク質を検出するため、後に、Brij(商標)35/緩衝剤2が首尾よく使用され得ることを示唆した。
【0157】
実施例6:タンパク質抽出における使用のための、Brij(商標)35/緩衝剤2のさらなる最適化
この例は、異なるパーセンテージのBrij(商標)35、および/または異なる組み合わせの添加剤を使用する、Brij(商標)35抽出のさらなる最適化を示す。ここで、HPV16 E6に対する遺伝子を形質移入された細胞株である、SiHa細胞からのHPV16 E6の抽出を助けるために、様々なレベルのBrij(商標)35を含む緩衝剤2(実施例2に記載される)を使用した(図5)。さらに、EDTA、Tween(商標)−20、またはTriton(商標)X−100等の他の添加剤との組み合わせにおいてBrij(商標)35を含む緩衝剤2も検査した。この実験に関して、抽出緩衝剤中で使用される添加剤のレベルが変動したことを除き、抽出工程、中和工程およびLFアッセイ工程は、実施例2および3に記載されるものと類似していた。抽出緩衝剤中で使用される添加剤の量は、4% Brij(商標)35、5% Brij(商標)35、6% Brij(商標)35、4% Brij(商標)35+10 mM EDTA、2% Brij(商標)35+2% Tween−20、2% Brij(商標)35+2% Triton(商標)X−100、2% Brij(商標)35+2% Tween(商標)−20+2% Triton(商標)X−100、または2% Brij(商標)35+2% Tween(商標)−20+10 mM EDTAのいずれかであった。対照として、中性pHの緩衝剤673を用いて一部の試料を抽出した。LF条片当たりのおよその細胞数は、約1,300,000個であった。
【0158】
図5に示されるように、Brij(商標)35のパーセンテージを4%から6%に増加させることによって、HPV16 E6タンパク質の検出の増加がもたらされた。このアッセイはまた、Brij(商標)35緩衝剤にTriton(商標)X−100、および/またはTween(商標)−20を添加することによっても改善された。
【0159】
実施例7:HPV16 E6タンパク質の検出に対する、抽出する工程および/または中和する工程のタイミングの効果
この例は、抽出する工程および/または中和する工程のタイミングが、HPV16 E6タンパク質の最終的な検出に対して有した効果を示す。この例において、再び実施例3に概略される手法に概して従い、SiHa細胞からE6タンパク質を抽出した。しかしながら、この例において、抽出する工程および/または中和する工程のためのインキュベート時間を改変した(図6)。図6に示されるように、細胞約10,000,000個/mlで、30分間または10分間のいずれかにわたりSiHa細胞を抽出し、30分間または10分間のいずれかにわたり中和した。清浄化する工程の遠心沈降の時間によって、中和する工程の停止時間を既定した。さらに、LFアッセイに関して、条片当たり1,700,000個または500,000個のSiHa細胞のいずれかを使用した。
【0160】
異なる抽出インキュベート時間または中和インキュベート時間を使用した場合、HPV−16 E6タンパク質においていかなる有意な差異も検出しなかった(図6)。したがって、この例は、抽出インキュベート工程および/または中和インキュベート工程のタイミングを30分間から10分間に改変した場合、このアッセイが不利に影響されないことを示した。
【0161】
実施例8:E6タンパク質のHPV 18およびHPV 45 変種を抽出するための、4% Brij(商標)35/緩衝剤2の使用
この例は、異なるHPV株のE6タンパク質を抽出するために、実施例2および実施例3に記載される4% Brij(商標)35/緩衝剤2抽出システムの適用を示す(図7)。HPV 18を発現するHeLa細胞、またはHPV 45を発現するMS751細胞からE6タンパク質を抽出した。陰性対照として、HPV陰性C33A細胞株を使用した。抽出および中和手法は、実施例2および実施例3に記載されるものと類似していた。LFアッセイに関して、LF条片当たり、各種の約1,700,000個の細胞と同等量を使用した。また、LFアッセイで使用されるコロイド状金を、HPV株18および45のE6タンパク質を認識するF82−5A2モノクローナル抗体に結合した。
【0162】
図7に実証されるように、HPV18 E6タンパク質およびHPV45 E6タンパク質を抽出するために、4% Brij(商標)35/緩衝剤2抽出システムを首尾よく使用し得る。
【0163】
実施例9:E6タンパク質のHPV 16およびHPV 18変種を抽出するための、4% Brij(商標)35/緩衝剤2の使用
この例は、4% Brij(商標)35/緩衝剤2によるHPV16 E6タンパク質の抽出と、HPV18 E6タンパク質の抽出とを比較する。図8に記載される実験の抽出する工程および中和する工程を、実施例8のものと類似の様式で実施した。しかしながら、この例では、HPV 16を発現するSiHa細胞、およびHPV 18を発現するHeLa細胞を使用した。前のものと同様に、C33A細胞を陰性対照として使用した。LFアッセイに関して、LF条片当たり、漸増性数の細胞(実施例4と同一範囲)を使用した。さらに、SiHa細胞抽出物のLFアッセイにおいて、抗HPV16金を使用し、一方HeLa細胞抽出物のLFアッセイにおいて、抗HPV18金を使用した。
【0164】
HeLa細胞およびSiHa細胞からの抽出物において、E6タンパク質を検出した(図9)。HPV16 E6タンパク質およびHPV18 E6タンパク質の両方の検出は、用量反応様式で生じた(図9)。
【0165】
実施例10:Brij(商標)35/緩衝剤2システムのさらなる最適化
この例は、緩衝剤2中における、Brij(商標)35の約4%〜約10%までのレベル変動の効果を示す(実施例2中に記載)。図9に記載される実験に関して、抽出する工程および中和する工程は実施例3のものと類似していた。その例と同様に、開始細胞はHPV16に感染したSiHa細胞、またはHPV陰性C33A細胞のいずれかであった。しかしながら、本実験では、抽出時に存在するBrij(商標)35のパーセンテージが変動した。より具体的に、使用されたBrij(商標)35のパーセンテージは、約4%、約6%、約8%または約10%であった。さらに、2% Brij(商標)35/2% Tween(商標)20および2% Brij(商標)35/2% Tween(商標)−20/10 mM EDTAも検査した。本明細書に記載されるように、LFアッセイを遂行した。LF条片当たり、約170万個の細胞を使用した。
【0166】
図9に示されるように、SiHa細胞からの抽出物由来の陽性シグナルは、Brij(商標)35の濃度の上昇に伴い増加した。しかしながら、シグナルは、HPV陰性C33A細胞から調製された抽出物中でも増加し、より高いBrij(商標)パーセンテージでシグナルノイズ比の減少をもたらした。しかしながら、4%または6%Brij(商標)を使用した場合、アッセイのシグナルノイズ比が改善されるように見受けられた。さらに、Brij(商標)をTween(商標)−20と組み合わせることによっても、シグナルノイズ比が改善されるように見受けられた。
【0167】
実施例11:SiHaをスパイクされた陰性臨床試料からの抽出の最適化
この例は、SiHaをスパイクされた陰性臨床試料からのE6タンパク質の抽出に対する、抽出条件の変動の効果を示す。本実験で使用された試料調製、ならびに抽出する工程および中和する工程は、実施例5で使用されたものと類似している。しかしながら、この例において、陰性臨床試料(NCS)は、ブラシではなく綿棒に存在した。さらに、緩衝剤2が、4%Brij(商標)35、2%Brij(商標)35/2%Tween(商標)−20、または2%Brij(商標)35/2%Tween(商標)−20/10 mM EDTAのいずれかと共に含まれるように、この実験における抽出条件を変動させた(図10)。示されるように、LFアッセイに関して約170万個のSiHa細胞/条片を使用した。
【0168】
図10の結果によって示されるように、SiHaをスパイクされた試料からは、比較的一貫した陽性シグナルが得られ、一方、陰性試料は、比較的低いシグナルをもたらしたため(図10)、4%Brij(商標)35/緩衝剤2の条件は、臨床試料中のHPV16 E6タンパク質を検出するために優れた条件であり得る。
【0169】
実施例12:HPV陰性細胞の存在下におけるSiHa細胞からのHPV16 E6タンパク質の抽出
この例は、HPV陰性C33A細胞の存在下における、SiHa細胞からのHPV16 E6タンパク質の抽出を示す。この例に関して、漸増性量のSiHa抽出物を、固定量(約100万個/ml)のC33A細胞を含む緩衝剤中で滴定した(図11)。この実験に関して、4%Brij(商標)35/緩衝剤2またはアーバービータ溶解緩衝剤(AVLB)のいずれかを使用して、各細胞株を別個に抽出した。AVLBは、約50 mM HEPES、pH約7.5のpH、約1.1% Triton(商標)X−100、約150 mM NaCl、約10%グリセロールおよび約1 mM EGTAからなる。抽出する工程および中和する工程を、実施例3のものと類似の様式で実施した。しかしながら、この実験においては、AVLBまたは中和された4%Brij(商標)35/緩衝剤2のいずれかからなる希釈剤を調製した。続いて、細胞約100万個/mlのレベルで、各緩衝剤中にC33A抽出物をスパイクした。続いて、示されたC33A含有緩衝剤中にSiHa細胞抽出物を系列希釈した。サイトメトリービーズアレイ(CBA)によって試料を解析し、蛍光計によって測定した。
【0170】
この実験の結果によって、E6タンパク質の検出のための最適条件は、AVLB緩衝剤中での希釈を伴う4%Brij(商標)35/緩衝剤2抽出、および中和であることが明らかになった(図11)。さらに、E6タンパク質の検出のレベルは、細胞約5000個/mlまたは500個/ウェルであると見受けられた(図11)。
【0171】
実施例13:ThinPrep(商標)またはSurePath(商標)固定剤中で固定されたSiHa細胞からのHPV16 E6タンパク質の抽出
この例は、固定細胞からタンパク質を抽出するために、緩衝剤2/4%Brij(商標)35抽出システムを使用し得ることを示す。図12に記載される実験において、1,000万個のHPV16陽性SiHa細胞もしくはHPV陰性C33A細胞を、1 mlの示された固定剤またはDMEM培地に室温で1時間添加した。続いて、細胞を1000 RPMで15分間スピンし、沈殿させ、実施例3に記載された1 mlの4%Brij(商標)35/緩衝剤2中に再懸濁した。続いて、実施例3に記載された抽出する工程、中和する工程およびLFアッセイの工程に試料を供した。
【0172】
図12に示されるように、抽出する工程で4%Brij(商標)35/緩衝剤2を使用した場合、ThinPrep(商標)で固定したSiHa細胞またはSurePath(商標)で固定したSiHa細胞の両方に存在するE6タンパク質を、首尾よく検出した。
【0173】
上の結果および考察から、本願の方法は、固定細胞または未固定細胞の分子解析に関していくつかの別個の利点を提供することが明らかである。とりわけ、本方法は、固定細胞または未固定細胞からのタンパク質抽出物の産生のための日常的な方法であって、タンパク質抽出物中のタンパク質が結合アッセイにおいて検出可能な方法を提供する。固定細胞または未固定細胞中で特定のタンパク質を検出することは一般に困難であるため、本願の発明は当技術分野に対して有意な貢献を提示する。
【0174】
実施例14:膜フィルターによるタンパク質抽出物の濾過の、試料流速に対する効果
この例において、HPV16 E6タンパク質を発現するSiHa細胞、またはHPV感染していない子宮頸癌細胞株であるC33A細胞のいずれかからタンパク質を抽出し、結果として得られる試料の流速を評価する前に、フィルター膜を通した。
【0175】
抽出工程
抽出工程に関して、約1,000万個の細胞を含む細胞沈殿物を、最初に−80℃のフリーザーから取り出し、室温で約10分間解凍した。続いて、実施例2に記載される約750μlの緩衝剤2を大多数の試料に添加した。Brij(商標)35、Tween(商標)−20またはTriton(商標)X−100等の添加剤も、示された試料に導入した。これらの添加剤は、2%または4%(v/v)のいずれかの最終濃度で存在した。試料を短時間ボルテックスし、続いて室温で30分間回転させた。
【0176】
中和工程
中和工程に関して、各試料のpHをpH約8.5に減少させるため、およそ140〜180μlの0.9M Tris、pH7.8を添加した。試料のpHを中和させるのに必要なTris、pH7.8の容量を、経験的に事前に決定した。Trisの添加および短時間のボルテックスに続いて、室温で30分間試料を回転させた。続いて、14K rpmでの10分間の遠心分離によって、試料を清浄化した。
【0177】
濾過工程
清浄化した溶解物(最終容量およそ1.09)を5.0μmミリポアPVDFシリンジフィルターによって濾過した。続いて、試料流動装置に試料を通し、全試料が通過するのに必要な時間を測定した。免疫アッセイシグナルの強度に関しても試料を評価し、視覚的にか、またはCAMAG濃度計を用いて測定した。HPV E6の存在を、0〜4のスケールで視覚的に評価した。
【0178】
結果
試料が5.0μm PVDFシリンジフィルターを通過する流動時間は、一部の場合において、ほぼ50%低減した。以下の表1にデータを示す。さらに、視覚判読による試料の評価においては、5.0μmシリンジフィルターによる濾過後に、SiHaシグナルのいかなる有意な損失も示されなかった(図13)。
【0179】
(表1)濾過後の試料の流動評価
【0180】
本明細書において引用しているすべての出版物および特許出願書は、個々の出版物または特許出願書のそれぞれが参照により組み入れられるために具体的かつ個別に示されたかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。任意の出版物の引用は、出願日以前の開示に対するものであり、本発明が、先行する発明を理由に、このような出版物に先行する資格がないことの承認として解釈すべきではない。
【0181】
明確に理解することを目的として、前述の発明を具体例および実施例によって詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の教示に照らして、これに特定の変更および改変を施すことができることは、当業者には容易に理解できる。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
多様な診断法において、細胞を被験体から採取し、固定液を含む液体培養液中に配置する。診断を提供するために、細胞を該培養液中で固定して、細胞学的に調べる。例えば、子宮頸部組織内の前癌性細胞または癌性細胞の検出は、日常的には剥離された子宮頸部細胞の顕微鏡評価によって実施される。この方法は、 George N. Papanicolaouによって開発され、「Pap」試験として知られており、サンプリング装置を使用して女性の子宮頸部から細胞を剥離させる工程、固定液を含む輸送液に剥離細胞を配置する工程、および次にスライドに細胞を配置する工程を含む。細胞を次に染色し、訓練を受けた医療関係者によって細胞の異常が光学顕微鏡で調べられる。毎年、米国内だけで5,500万例以上のPap試験が実施されている。
【0002】
このような細胞学的試験の成功にもかかわらず、この試験は間違いを起こしやすい。例えば、従来のPap試験の最高40%が、粘膜、血液細胞、および混濁した炎症細胞などの混入物の存在によって精度が落ちると推定されている。これらの混入物は、偽陰性結果、偽陽性結果、および相当量の追跡作業を招く。例えば、Koss, L. G. (1989), The Papanicolaou Test for Cervical Cancer Detection: A Triumph and a Tragedy, JAMA 261:737-743(非特許文献1)を参照されたい; DeMay, "Problems in Pap Smear Interpretation," Arch.Pathol.Lab.Med.121:229-23 (1997)(非特許文献2)も参照されたい。
【0003】
上記の観点から、固定液を含む液体培養液中に存在する細胞の分析のために、補足的な分子診断法が必要になる。しかし、このような方法は簡単ではなく、それは固定細胞においてこのような方法を常に実施できるというわけではないためである。例えば、特定の固定剤(例えば、THINPREP(商標)またはSUREPATH(商標)検査システムに用いられる輸送液)は、特定の細胞タンパク質を沈澱または凝集させる可能性があり、それによってこれらのタンパク質を不溶性にして、そして、従来の手段を使用して、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)または別の免疫検査を使用して、確実に検出することを困難または不可能にする。
【0004】
したがって、分子的、例えば、免疫学的な検出アッセイでの使用に適するように、固定細胞および未固定細胞からタンパク質を抽出するための方法および組成物が大いに必要になる。本明細書に記載の発明はこの必要および他の必要を満たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Koss, L. G. (1989), The Papanicolaou Test for Cervical Cancer Detection: A Triumph and a Tragedy, JAMA 261:737-743
【非特許文献2】DeMay, "Problems in Pap Smear Interpretation," Arch.Pathol.Lab.Med.121:229-23 (1997)
【発明の概要】
【0006】
細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法が提供される。全般的に、本方法は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij(商標)35)を含む高いpH(少なくともpH約10)の抽出試薬に細胞試料を接触させて、中間組成物を生成する工程、および続いて、中和試薬の存在下で、前記中間組成物のpHを、例えば約6〜9のpH値、任意で7〜8.5のpH値へと中和させて、タンパク質抽出物を生成する工程を含む。特定の態様において、抽出試薬および中和試薬の一方または両方は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む。細胞は、固定または未固定の剥離された子宮頸部細胞であってもよい。特定の態様において、本方法は、HPV E6タンパク質等の標的ウイルスタンパク質を、細胞試料から抽出する工程を含む。本発明はまた、上に記載の方法に従い、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成する工程、および該タンパク質抽出物中のタンパク質の存在に関して検査する工程を含む、標的ウイルスタンパク質等のタンパク質の存在を検出するための方法を提供する。さらに、本発明は、(a)固定細胞または未固定細胞を含む細胞試料、(b)少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬、および(c)中和試薬を含む、タンパク質抽出物を生成するためのシステムであって、抽出試薬および中和試薬の一方または両方がポリオキシエチレンアルキルエーテルを含み、かつ結合アッセイにおいての使用に適するタンパク質抽出物を生成するために、抽出試薬および中和剤が上に記載される方法で利用され得る、システムを提供する。さらに、本発明は、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するためのキットを提供する。本キットは、タンパク質抽出物中の標的タンパク質を検出するための要素、および/または試薬をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1Aは、特定の添加剤と組み合わせられた高いpHを有する抽出試薬を使用した、抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出における相乗効果を示す。以前に精製された組換えHPV16 E6タンパク質(MBP−E6)を抽出試薬中で懸濁し、続いて本明細書に記載されるプロトコールに従い中和試薬により中和した。本明細書に記載されるラテラルフロー(LF)アッセイを使用してE6タンパク質を捕捉し、UMMリーダーを用いて検出した。図1Bは、抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出に対して、中和工程での添加剤の導入が抽出工程での導入ほど強い効果を有しなかったことを裏付ける。
【図2】抽出試薬中に様々な添加剤を使用して、HPV16を発現するSiHa細胞から抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出を示す。
【図3】抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出に対して、細胞濃度を滴定する工程が有する効果を示す。2つのHPV陽性細胞株、および1つのHPV陰性細胞株を使用した。
【図4】HPV16を発現するSiHa細胞をスパイクされた未固定の陰性臨床試料からの、HPV16 E6タンパク質の抽出を示す。
【図5】抽出試薬中のBrij(商標)35の濃度を増加させ、かつBrij(商標)35を、Triton(商標)X−100またはTween(商標)−20等の他の非イオン性界面活性剤と併用する場合に、抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出に対する効果を示す。
【図6】抽出および/または中和に関して様々な時間を使用する場合に、抽出されたHPV16 E6タンパク質の検出に対する効果を示す。
【図7】HPV株18および45由来のE6タンパク質の抽出のための、4%Brij(商標)35/高いpHの緩衝剤2の使用を示す。
【図8】HPV株16および18由来のE6タンパク質の検出に対する、用量反応効果を示す。
【図9】抽出試薬中のBrij(商標)35(他の非イオン性添加剤を含むか、または含まない)の濃度のさらなる最適化を示す。
【図10】抽出試薬中のBrij(商標)35(他の非イオン性添加剤を含むか、または含まない)の濃度のさらなる最適化、およびHPVを発現する細胞をスパイクされた未固定の陰性臨床試料からのHPV16 E6タンパク質の抽出に対する効果を示す。
【図11】HPVを発現するSiHa細胞から抽出されたHPV16 E6タンパク質を検出するための、サイトメトリービーズアレイ(CBA)様式を示す。
【図12】固定細胞または未固定細胞のいずれかからのHPV16 E6タンパク質の抽出における、4%Brij(商標)35/高いpHの緩衝剤2の使用を示す。
【図13】5.0 mmミリポアPVDFシリンジフィルターによる試料濾過によって、試料シグナルが有意に減少しないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、参照の明確さおよび容易さのために、特定の要素を以下に定義する。
【0009】
本明細書で使用する「細胞試料」という用語は、対象となる1つまたは複数の細胞を含む液体組成物に関する。細胞試料は、限定はされないが、例えば、血奬、血清、脊髄液、精液、リンパ液、皮膚、呼吸管、腸管、および尿生殖路の外部切片、涙液、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、または器官由来の細胞など、個人から除去した(例えば、切除された、もしくは剥離された)細胞を含む臨床試料でよい。他の態様では、細胞試料にはインビトロで増殖させた細胞が含まれる(限定はされないが、細胞培養液中の細胞、ウイルス感染細胞、組換え細胞など)。特定の態様では、細胞試料には、HPV感染するリスクの最も高い細胞が含まれうる。これらの態様では、細胞は、子宮頸部、外陰部、膣、肛門、陰茎、口腔、または喉部から得ることができる。特定の態様では、細胞は粘膜由来であり、上皮由来であってもよい。細胞試料は、剥離された、もしくは切除された細胞以外の混入物を含んでもよく、または含まなくてもよい。例えば、粘液細胞、または細菌細胞、酵母細胞または血液細胞が、細胞試料中に存在してもよい。
【0010】
「HPV」は、限定はされないが、HPV株4、6、11、20、24、28、36、48、50、16、18、31、35、30、39、45、51、52、56、59、58、33、66、68、69、26、53、73、および82を含む、ヒト乳頭腫ウイルスである。
【0011】
「発癌性HPV株」は、国立癌研究所(NCI、2001)により明らかにされているように、子宮頸癌の原因となることが知られているHPV株である。
【0012】
「発癌性E6タンパク質」は、発癌性HPV株によってコードされるE6タンパク質である。例示的な発癌性株は、HPV26、HPV53、HPV66、HPV73、HPV82、HPV16、HPV18、HPV31、HPV35、HPV30、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV59、HPV58、HPV33、HPV66、HPV68、HPV69、およびHPV82である。発癌性E6タンパク質のアミノ酸配列は、NCBI GenBankデータベースに寄託されている。理論に制約されることを望まないが、HPV株4、11、20、24、28、36、48、および50には発癌性はないと一般的に考えられている。
【0013】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換的に使用される。「ポリペプチド」という用語には、従来の骨格を非天然または合成の骨格で置き換えたポリペプチド、および従来のアミノ酸の1つまたは複数を、1つまたは複数の非天然または合成のアミノ酸で置き換えたペプチドが含まれる。
【0014】
「融合タンパク質」という用語または文法上のその同等物は、複数のポリペプチド成分から成るタンパク質を指し、これらは、天然状態では付着していないが、ペプチド結合を介してそれらのそれぞれのアミノ末端およびカルボキシ末端により連結されて、単一の連続ポリペプチドを形成する。融合タンパク質は、2、3、または、さらに4またはそれ以上の異なるタンパク質の組み合わせでありうる。ポリペプチドという用語には、限定はされないが、異種アミノ酸配列との融合タンパク質、N末端メチオニン残基の有無を問わず異種および同種リーダー配列との融合物、免疫タグ付きタンパク質、検出可能な融合パートナーを伴う融合タンパク質、例えば、融合パートナーとして蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどを含む融合タンパク質などの融合タンパク質が含まれる。
【0015】
一般的に、ポリペプチドの長さは任意でよく、例えば、2アミノ酸より大きい、4アミノ酸より大きい、約10アミノ酸より大きい、約20アミノ酸より大きい、約50アミノ酸より大きい、約100アミノ酸より大きい、約300アミノ酸より大きい、通常、約500アミノ酸または約1,000アミノ酸まで、またはそれより大きいアミノ酸である。「ペプチド」は、一般的に、2アミノ酸より大きい、4アミノ酸より大きい、約10アミノ酸より大きい、約20アミノ酸より大きい、通常、約50アミノ酸までである。一部の態様では、ペプチドの長さは5から30アミノ酸である。ポリペプチドは、それらが生物またはウイルスのゲノムによってコードされるという点で天然であり、もしくはそれらが自然発生しないという点で非天然である。
【0016】
「捕捉剤」という用語は、薬剤が結合して、異なるタンパク質の均一混合物からタンパク質を濃縮することを可能にするのに十分な相互作用を介してタンパク質を結びつける薬剤を指す。したがって、「捕捉剤」という用語は、分析物を特異的に結びつける、例えば、他の標的に結合することなく、捕捉剤に分析物を特異的に結びつけて、解離定数(KD)が10-6 M未満である分子または多分子複合体を指す。結合相互作用は、捕捉剤の親和性領域によって媒介される。代表的な捕捉剤としては、抗体(その断片および模倣物を含む)およびPDZドメインを含むタンパク質などが挙げられる。
【0017】
「特異的結合」という用語は、異なるタンパク質の均一混合物中に存在する特定のタンパク質に優先的に結合するための捕捉剤の能力を指す。特定の態様では、特異的な結合相互作用によって、一部の態様では、約10から100倍以上の(例えば、約1,000または10,000倍を上回る)試料中の特定のタンパク質と他のタンパク質が区別される。
【0018】
「捕捉剤/タンパク質複合体」という用語は、捕捉剤とタンパク質との特異的な結合に起因する複合体、すなわち「結合パートナー対」である。捕捉剤および捕捉剤に対するタンパク質が、「特異的結合に適した条件」下で互いに特異的に結合するが、そこでこのような条件は、溶液中での捕捉剤と結合タンパク質との間で起こる結合を可能にする(塩濃度、pH、界面活性剤、タンパク質濃度、温度などに関する)その条件である。これらの条件、特に、抗体およびその抗原については、当技術分野において周知である(例えば、Harlow and Lane (Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N. Y. (1989)を参照されたい)。特定の態様では、捕捉剤/タンパク質複合体において特異的に結合する捕捉剤とタンパク質との親和性は、10-6 M未満、10-7 M未満、10-8 M未満、10-9 M未満、または約10-10 M未満のKD(解離定数)によって特徴付けられる。
【0019】
「結合パートナー」および同等物は、捕捉剤/分析物複合体において見いだすことができる、すなわち、互いに特異的結合を示す分子対を指す。
【0020】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書において互換的に使用され、少なくとも抗体のエピトープ結合ドメインを有する捕捉剤を指す。これらの用語は当業者によって十分に理解され、そして抗原に特異的に結合する1つまたは複数のポリペプチドを含むタンパク質を指す。1つの型の抗体が、抗体の基本的な構造単位を構成する。この型は四量体であって、そして同じ2対の抗体鎖から成り、各対が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。各対において、軽鎖および重鎖の可変領域は共に抗原への結合に関与しており、そして定常領域は抗体エフェクター機能に関与している。
【0021】
認められている免疫グロブリンポリペプチドとしては、κおよびλ軽鎖およびα、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、ε、およびμ重鎖または他の種の同等物が挙げられる。(約25 kDaまたは約214アミノ酸の)全長の免疫グロブリン「軽鎖」は、NH2末端に約110アミノ酸の可変領域を含み、かつCOOH末端にκまたはλ定常領域を含む。(約50 kDaまたは約446アミノ酸の)全長の免疫グロブリン「重鎖」は、同様に、(約116アミノ酸の)可変領域および前述の重鎖定常領域の1つ、例えば、(約330アミノ酸の)γを含む。
【0022】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語には、限定はされないが、Fab、Fv、scFv、およびFd断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、および抗体の抗原結合部分および非抗体タンパク質を含む融合タンパク質などの、任意のイソタイプの抗体または免疫グロブリン、抗原への特異的結合を保持する抗体の断片が含まれる。抗体は、例えば、放射性同位元素、検出可能な産物を生成する酵素、蛍光タンパク質などによって検出可能に標識できる。抗体は、例えば、ビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対の一部)などの特異的結合対の一部といった、他の部分にさらに共役させることができる。抗体は、限定はされないが、ポリスチレンプレートまたはビーズ、金コロイド粒子などの固体支持体に結合させることもできる。Fab'、Fv、F(ab')2、および/または抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片もこの用語に含まれる。抗体はまた、増幅可能な検出粒子と共にしようすることもできる。
【0023】
抗体は、例えば、Fv、Fab、および(Fab')2、ならびに二機能性(すなわち、二重特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al., Eur.J.Immunol.17, 105 (1987))、および単鎖(例えば、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85、5879-5883 (1988) and Bird et al., Science, 242, 423-426 (1988)であり、これは参照により本明細書に組み込まれる)を含む他の様々な型で存在することができる。(一般的に、Hood et al., "Immunology," Benjamin, N.Y., 2nd ed. (1984), and Hunkapiller and Hood, Nature, 323, 15-16 (1986)を参照されたい)。モノクローナル抗体および「ファージディスプレイ」抗体は、当技術分野において周知であり、「抗体」という用語に含まれる。
【0024】
「評価する」という用語は、任意の型の測定を含み、要素が存在するか否かを決定することを含む。「決定する」、「測定する」、「査定する」、「評価する」、および「分析する」という用語は、互換的に使用され、量的および/または質的な判定を含みうる。評価することは、相対的または絶対的でありうる。「の存在を評価する」には、存在する何かの量を決定すること、および/またはそれが存在するのか、もしくは存在しないのかを決定することを含む。
【0025】
「離れた場所」とは、細胞を得て、固定液を含む液体中に置かれる場所以外の場所を意味する。例えば、離れた場所は、細胞が得られた同じ建物内の異なる部屋(例えば別の研究室)、細胞が得られた同じ複合施設内の異なる建物、または同じ都市、州、もしくは国などの異なる場所でありうる。細胞試料が、離れた場所から「受け取った」と示される場合、細胞試料は離れた場所から入手されるか、または離れた場所から、例えば手渡しされるか、郵送または配達されうる。
【0026】
情報を「伝達する」とは、印刷物、もしくは情報を含むコンピューター可読媒体を(例えば、郵便で)物理的に輸送することによるか、または情報を伝達することによるかのいずれかにかかわらず、ある場所から次の場所にその情報を運ぶ任意の手段を指す。情報が伝達される場合、情報を表わすデジタルまたはアナログ信号(例えば、光信号または電気信号などの電磁気信号)が適当なコミュニケーションチャネル(例えば、私的な、公共な、もしくは無線のネットワーク)を通して伝達される。データを伝達するために、任意の便利な手段、例えば、ファクシミリ、モデム、インターネット、電子メールなどを用いることができる。
【0027】
本明細書で使用される通り、「輸送液」という用語は、液体ベースの細胞学的研究に適する方法で、細胞の採取ならびにそれらの細胞の保存に適した液体を記載するために使用される。輸送液は、一般に、Pap試験に用いられる。輸送液中に置いた細胞は、その培養液中で、ある場所から別の場所まで輸送されることがあり、または輸送されないことがある。輸送液には固定液が含まれる。輸送液中に細胞を配置することによって、細胞が固定されて、固定細胞が生成される。代表的な輸送液としては、SUREPATH(商標)またはPRESERVCYT(商標)輸送液が挙げられる。
【0028】
「固定細胞」は、化学固定液によって処理し、細胞学的に保存された細胞である。固定細胞は、通常、染色およびそれに続く光学顕微鏡による形態学的および/または細胞学的分析に適している。
【0029】
参照による組み入れ
本明細書で言及しているすべての出版物および特許出願は、各個別の出版物または特許出願が具体的かつ個別に参照により組み入れられるように示されたかのように、参照により本明細書に組み入れられる。
【0030】
発明の詳細な説明
本発明の好適な態様が本明細書に示され、記載されているが、このような態様が例としてのみ提供されることは当業者には明白である。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多くのバリエーション、変更、および代用を思いつくであろう。本明細書に記載された本発明の態様の様々な代替物を、本発明を実施する際に用いてもよいことが理解されるはずである。添付の特許請求の範囲によって本発明の範囲が定められ、それによってこれらの特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内の方法および構成物が包含されることが意図される。
【0031】
固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法が、提供される。全般的に、本方法は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij(商標)35)を含む高いpH(少なくともpH約10)の抽出試薬に細胞試料を接触させて、中間組成物を生成する工程、および続いて、中和試薬の存在下で前記中間組成物のpHを中和させて、タンパク質抽出物を生成する工程を含む。抽出試薬および中和試薬の一方または両方は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む。特定の態様において、細胞は、固定または未固定の剥離された子宮頸部細胞であってもよい。本願の方法を実践するための、キットおよび組成物も提供される。本願の方法は、結果として得られるタンパク質抽出物中の特定のタンパク質を検出する診断検査を含む、様々な異なる用途における使用が見出される。
【0032】
本願の発明についてさらに記載する前に、特定の態様のバリエーションを作ることができ、さらに添付の特許請求の範囲に該当するように、本発明が以下に記載する本発明の特定の態様に限定されないことを理解すべきである。用いた用語は特定の態様を記載することを目的としており、そして限定することを意図しないことも理解すべきである。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確定される。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈により明確に他に規定されない限り、単数形「1つの(a、an)」、および「その(the)」には複数形の参照が含まれる。
【0034】
値の範囲が提供される場合、文脈が特に明示しない場合には下限の単位の十分の一まで、その範囲の上限と下限との間の各媒介値、および任意の他の表示値またはその表示された範囲内の媒介値が本発明に含まれることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、より小さな範囲に独立して含まれてもよく、同様に本発明に含まれ、表示された範囲内の具体的に除外された任意の限度の対象となる。表示された範囲に限度の一方または両方が含まれる場合、これらの限度に含まれるものの一方または両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0035】
他に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法、装置、および物質を本発明の実施または試験に使用できるが、ここでは好ましい方法、装置、および物質を記載している。
【0036】
本明細書で言及するすべての出版物は、参照により本明細書に組み入れられ、その目的は、ここに記載する発明に関連して使用されうる、出版物に記載されている要素について記載し、開示することである。
【0037】
上記でまとめた通り、本願の発明は、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法および組成物を提供する。本発明をより詳細に記載する際、まず方法について記載しており、本願の方法を実施する際に使用するキットおよびシステムに関する記載がそれに続く。
【0038】
タンパク質抽出方法
上に記述されるように、本発明は、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法を提供する。概して、本方法は、(a)pH約10.0より高いpHを有する抽出試薬に固定細胞または未固定細胞を接触させて、中間組成物を生成する工程、および(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させる工程、の2つの工程を包含する。抽出試薬および/または中和試薬は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む。結果として得られるタンパク質抽出物は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含み、かつ中性pH(すなわち、pH約7.0〜pH約8.0)を有する。本方法は、概して、それらのタンパク質に対する捕捉剤を使用し容易に検出され得るタンパク質を含む、タンパク質抽出物を生成する。そのため、本方法によって生成されるタンパク質抽出物は、概して、それらのタンパク質を検出するための、例えば免疫学的アッセイ等の結合アッセイにおける使用に適する。
【0039】
特定の態様において、本方法は、(a)ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび高いpHを含む抽出試薬に細胞を接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程、および(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、タンパク質抽出物を生成する工程を含む。上述のように、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、抽出試薬もしくは中和試薬のいずれか(または抽出試薬および中和試薬の両方)に存在し得るため、本発明の特定の態様は、(a)および(b)ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む中和試薬に中間組成物を接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、タンパク質抽出物を生成する工程を含む。
【0040】
特定の態様において、本方法によって生成されるタンパク質抽出物は、例えば、高いpHの抽出工程(すなわち、pHを、pH約10.0またはpH約11.0より上に上昇させる工程)、中和工程(すなわち、pH約6.0〜pH約9.0にpHを調整する工程)、およびポリオキシエチレンアルキルエーテル、を使用しない方法等の、他の方法を使用して作製されたタンパク質抽出物よりも、捕捉剤に接触可能なより多くのタンパク質を含み得る。高いpHのみ、またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのみのいずれによっても、このようなタンパク質抽出物は生成されない。特定の態様において、高いpHの抽出試薬は、固定細胞または未固定細胞中のタンパク質を可溶化し、一方ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、中間組成物のpHが中和される際に、中間組成物中の可溶化タンパク質が再凝集または沈殿するのを防止する。
【0041】
本方法に用いられる試薬、および本方法によって生成されるタンパク質抽出物について以下でより詳細に記載しており、これは、試薬をどのように使用してタンパク質抽出物を生成させうるのかに関する記載と同様である。以下で考察する通り、本方法において使用する試薬の最適濃度およびpHは、どの試薬を使用するかに応じて変化しうる。しかし、試薬の最適濃度およびpHは、実験的または経験的に容易に決定される。
【0042】
本発明の方法を使用してタンパク質が抽出される細胞
本発明による方法論を使用して、細胞試料から標的タンパク質または対象となるタンパク質を抽出することができる。細胞試料は、均一な細胞集団、もしくは異なる種類の細胞の不均一な混合物でありうる。細胞試料には、粘膜、血液細胞、および炎症細胞などの「混入物」も含まれる可能性があり、これらは標的タンパク質の抽出目的では対象にはならず、もしくは標的タンパク質は含まれない。
【0043】
一部の態様では、標的タンパク質は、ウイルス、好ましくは病原性ウイルスに感染した細胞に存在するウイルスタンパク質であり、細胞は、好ましくは、哺乳動物、例えば、ヒトから単離された細胞である。
【0044】
病原性ウイルスは、ヒトまたは他の動物において病原性作用または疾患の原因となる任意の病原性ウイルスでありうる。病原性ウイルスは、HIV-1およびHIV-2などのヒト免疫不全症ウイルス(HIV)の様々の株でありうる。ウイルスタンパク質は、HIV GP120およびGP41などのHIV糖タンパク質(または表面抗原)、もしくはHIV P24タンパク質などのカプシドタンパク質(または構造タンパク質)でありうる。
【0045】
病原性ウイルスは、エボラウイルスまたはマールブルグウイルスでありうる。ウイルスタンパク質は、エボラ糖タンパク質もしくはエボラGP1またはGP2タンパク質などの表面抗原でありうる。
【0046】
病原性ウイルスは、A型、B型、C型、D型、またはE型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルスでありうる。例えば、ウイルスタンパク質は、小型B型肝炎表面抗原(SHBsAg)(別名、オーストラリア抗原)、中型B型肝炎表面抗原(MHBsAg)および大型B型肝炎表面抗原(LHBsAg)のようなB型肝炎ウイルスの表面抗原またはコアタンパク質でありうる。ウイルス抗原は、NS3抗原、NS4抗原、およびNS5抗原などのC型肝炎ウイルスの表面抗原またはコアタンパク質でありうる。
【0047】
病原性ウイルスは呼吸器合胞体ウイルス(RSV)でありうる。例えば、RSVウイルスタンパク質は、糖タンパク質(Gタンパク質)またはRSVの融合タンパク質(Fタンパク質)でありうる。
【0048】
病原性ウイルスは、HSV1およびHSV-2などの単純ヘルペスウイルス(HSV)でありうる。例えば、HSVウイルス抗原は、HSV-2由来の糖タンパク質Dでありうる。
【0049】
標的タンパク質は、乳癌細胞のHer2およびリンパ腫細胞上のCD20、ヒト乳頭腫ウイルスのE6およびE7などのウイルス性癌遺伝子、または変異型rasなどの細胞由来癌遺伝子といった腫瘍抗原でありうる。
【0050】
一部の態様では、細胞試料には標的タンパク質が存在する固定細胞が含まれる。本方法において用いられる固定細胞は、一般的に、(例えば、切除、剥離、または洗浄により被験体から細胞を除去することによって得られた)細胞試料を液体液中に配置することによって得られる。細胞試料は、化学固定剤を既に含んでいる液体培養液中に配置することができる、もしくは細胞を培養液中に静置した後に化学固定剤を液体培養液に加えることができる。固定剤および固定細胞を含む液体培養液は、未固定細胞とともに、本明細書では「細胞試料」という用語の意味に含まれる。
【0051】
本方法に用いることのできる代表的な化学固定剤としては、アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒド)およびケトン(例えば、アセトン)、ならびに四酸化オスミウム、酢酸、ピクリン酸、および重金属イオン塩が挙げられる。本方法に用いることのできる固定剤のさらなる例としては、(酢酸も含みうる)亜硫酸水素塩ベースの固定剤、(プロピレングリコールおよびメタノールも含みうる)PVPベースの固定剤、ならびに米国特許第3,546,334号、第4,578,282号、第4,857,300号、第5,104,640号、第5,256,571号、第5,432,056号、および第5,196,182号に記載されている固定剤が挙げられる。作業濃度のそれらの固定剤を含め、本方法に用いることのできる固定剤の例としては、Baker(Principles of Biological Microtechnique: A Study of Fixation and Dyeing, 1959)およびWilliams("Tissue preparation for immunocytochemistry." J Clin.Pathol.1997 50:422)において見ることができる。
【0052】
本方法において特に対象となるのは、「輸送液」と呼ばれ、婦人科検診の一部として頸膣部細胞(例えば、剥離された子宮頸部細胞)の採取、保存(すなわち、固定)、および輸送において日常的に使用される液体培養液である。FDA承認の輸送液が、特に対象となる。
【0053】
用いることのできる市販の輸送液の例としては、例えば、メタノールベースのPRESERVCYT(商標)輸送液(これは、THINPREP(商標)婦人科サンプリングキット(Cytyc, Inc., Marlborough, Mass)の一部として販売されている)、以前はCYTORICH(商標)として知られていたエタノールベースのSUREPATH(商標)輸送液(TriPath, Inc. Burlington, N.C.)、およびメタノールベースのCYTOLYT(商標)輸送液(Cytyc, Inc., Marlborough, Mass.)が挙げられる。
【0054】
細胞は、限定はされないが、剥離(例えば、擦過)、切除、および洗浄を含む、任意の便利な方法によって得ることができる。特に対象となるのは子宮頸管由来の上皮細胞であり、これらの細胞は、典型的に、適合ブラシ、スワブ、スパーテル、またはスクレーパーを使用した剥離方法によって得られ、固定剤を含むまたは含まない液体培養液中に置かれる。
【0055】
抽出試薬
本方法において用いられる抽出試薬には、細胞への抽出試薬の添加時に、少なくともpH10.0であるpHを有するタンパク質抽出物を生成する十分な濃度の量で存在する成分が含まれる。したがって、抽出試薬は一般的に少なくともpH約10.0のpHを有する。
【0056】
抽出試薬を細胞と接触させて、中間組成物を生成する。抽出試薬および結果として得られる中間組成物のpHは、一般的に、少なくともpH約10.0、例えば、pH約10.0からpH約13.0またはpH約12.0からpH約13.0の範囲内である。特定の態様では、抽出試薬はpH約10.0からpH約10.5、pH10.5からpH約11.0、pH11.0からpH約11.5、pH11.5からpH約12.0、pH12.0からpH約12.5、またはpH12.5からpH約13.0のpHを有しうる。特定の好ましい態様において、抽出試薬は、pH約12.5からpH約12.9を有する。抽出試薬は、適当な水酸化イオン源、例えば、ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは炭酸カルシウムを使用して作成できる。
【0057】
特定の態様において、抽出試薬は、試薬を所望のpHに維持する緩衝剤を包含し得る。対象となる抽出試薬中に緩衝剤が存在する場合、緩衝剤は、25℃で約9.0〜約12.5の範囲のpKaを有し得る。対象となるタンパク質抽出試薬において利用され得る例示的な緩衝剤は、例えば、CABS、ピペリジン、ホスフェート、CAPS、グリシン、またはエタノールアミンを包含する。本方法において利用される抽出試薬は、固定細胞または未固定細胞に抽出試薬を添加した際に、少なくともpH10.0のpHを有するタンパク質抽出物を生成する濃度に十分な量で存在する成分を包含する。したがって、抽出試薬は、概して少なくともpH約10.0のpHを有する。
【0058】
好ましい態様において、抽出試薬は、クエン酸3ナトリウムおよびNaOHを含む。例えば、抽出試薬は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0または2.0 NのNaOHを含み得る。例示的な抽出試薬は、約0.1 N NaOH、約50 mMクエン酸3ナトリウム、および12.5〜12.9のpHを含む。
【0059】
いくつかの好ましい態様において、例えば、試料を、pH10より高いpH等の目標とするpHへと導くのに必要な抽出試薬の量またはpHを、抽出試薬の添加に先立ち、経験的に事前決定する。このような態様において、経験的に決定された抽出試薬を細胞試料に添加する。他の態様において、抽出試薬の添加に続き、中間組成物のpHを測定する。このような測定する工程の後、標的のpHを達成するために必要に応じてpHを調整する。
【0060】
抽出試薬はまた、HEPES、Triton(商標)X−100、NaCl、グリセロールおよびEGTAの、一つもしくは複数、またはそれらの混合物も含み得る。例示的な抽出試薬は、約50 mM HEPES、pH約7.5のpH、約1.1%Triton(商標)X−100、約150 mM NaCl、約10%グリセロール、および約1 mM EGTAを含み得る。
【0061】
特定の態様において、抽出試薬はまた、少なくとも10.0のpHを有することに加えて、式CH3(CH2)n1CH2(OCH2CH2)n2OHのポリオキシエチレンアルキルエーテルも含み得る。ポリオキシエチレンアルコールとしても公知のこのようなポリオキシエチレンアルキルエーテルは、産業的用途、美容的用途ならびに薬学的用途において、一般に乳化剤、湿潤剤、溶解剤、消泡剤、界面活性剤および/または潤滑剤として使用される(例えば、The Merck Index. 13th Edition, 7659を参照のこと)。特定の態様において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、本明細書に記載されるBrij(商標)35、または他のBrij(商標)ファミリーの成員等のBrij(商標)表面活性剤である。
【0062】
Brij(商標)35 CAS [9002−92−0]は、膜複合体の単離のための高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用途において一般に使用される、非イオン性表面活性剤である。これは、クロマトグラフィー担体への非特異的結合を防止するために、往々にして利用される。これは16.9の親水性親油性バランス数(HLB)を有し、膜タンパク質の非変性可溶化剤等の溶解剤、または乳化剤として使用され得る親水性化合物であることを示している(例えば、Umbreit, J. N., and Strominger, J. L. 1973. Relation of detergent HLB number to solubilization and stabilization of D-alanine carboxypeptidase from Bacillus subtillis membreanes. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70, 2997を参照のこと)。
【0063】
Brij(商標)35は、ラウリル基(CH3(CH2)10CH2)および23個のエチレンオキシ(OCH2CH2)単位を含み、かつ化学式CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)23OHを有する。他の化学同義語は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル;LAURETH−23;ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルC12E23;ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル;ラウリルアルコールエチレンオキシド、エトキシル化ラウリルアルコール、ラウリルアルコール、エトキシル化物;ラウリルポリエチレングリコールエーテル;α−ドデシル−ω−ヒドロキシ−ポリオキシエチレン;ポリエチレングリコール、モノドデシルエーテル;ドデカノールエトキシレート;ドデカノール、ポリエトキシル化物;ドデシルポリ(オキシエチレン)エーテル;ラウロマクロゴール;ラウリルポリ(オキシエチレン)エーテル;オキシエチレン化ドデシルアルコール;ポリ(エチレンオキシド)ドデシルエーテル;α−ドデシル−ω―ヒドロキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル);ポリ(オキシエチレン)モノラウリルエーテル;ポリエトキシル化ドデカノール;ポリエチレングリコールドデシルエーテル;ポリエチレングリコールラウリルエーテル;ポリオキシエチレンドデカノール;ポリオキシエチレンラウリンアルコール;およびポリオキシエチレンラウリルアルコール;3,6,9,12,15,18,21,24,27−ノナオキサノナトリアコンタン−1−オール;ドデシルアルコール、エトキシル化物;;ラウレス(Laureth)4 [USAN];ラウレス9 [USAN];ラウレス−11;ラウロマクロゴール(Lauromacrogol)400 [INN];PEG−11ラウリルエーテル;ポリドカノール、40L(ポリエーテル);アクチノール(Actinol)L 7;アクチノールL3;アデカカルポール(Adeka Carpol)M2;アデカカルポールMBF 100;アデカトール(Adekatol)LA 1275;エトキシスクレロール(Aethoxysklerol);アキポロックス(Akyporox)RLM 160;アキポロックスRLM 22;アキポロックスRLM 230;アキポロックスRLM 40;アルドスパース(Aldosperse)L9;アルカスルフ(Alkasurf)LAN 1; アルカスルフLAN 3;アラポール(Arapol)0712;アトラス(Atlas)G 2133;アトラスG 3705;アトラスG 3707;アトラスG 4829;アトラスG−2133;アトラスG−3705;B 205;BASE LP 12;BL 9;BL 9(ポリグリコール);Base LP 12;Brij(商標)22;Brij(商標)23;Brij(商標)30;Brij(商標)30ICI;Brij(商標)30SP;Brij(商標)35;Brij(商標)35L;Brij(商標)36T;CCRIS 3397;カルジーン(Calgene)40L;カルソノール(Carsonol)L2;カルソノールL3;ケマール(Chemal)LA 23;キミパール(Chimipal)AE 3;シマゲル(Cimagel);コニオン(Conion)275−100;コニオン275−20;コニオン275−30;コニオン275−80;コニオン2P80;ドデシルアルコールポリオキシエチレンエーテル;デュポン(Du Pont)WK;エソスパース(Ethosperse)LA 12;エソスパースLA 23;;G 3707;グリコール、ポリエチレン、モノドデシルエーテル;HSDB 4351;ヒドロキシポリエトキシドデカン;LA(アルコール);LA 7;ラウレス;ラウレス9;リパール(Lipal)4LA;ルブロール(Lubrol)12A9;ルブロールPX;マーリパル(Marlipal)1217;メルギタール(Mergital)LM 11;NCI−C54875;ニューコール(Newcol)1203;ニッコール(Nikkol)BL;ノイゲン(Noigen)ET 160;ノイゲンET 170;ノイゲンYX 500;ノニオライト(Noniolite)AL 20;ペグノール(Pegnol)L 12;;ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、α−ドデシル−ω−ヒドロキシ−;ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル;ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、名称には、ポリエチレングリコール部分のおよその平均分子量に対応する数値(400)が伴う;ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル;ロカノール(Rokanol)L;ロモパール(Romopal)LN;サイマルゾル(Simulsol)P 23;サイマルゾルP 4;サイポニック(Siponic)L;スロバゾール(Slovasol)S;スタンダムル(Standamul)LA 2;ステマー(Stmer)135;界面活性剤WK;テキソフォー(Texofor)B 9;テサット(Thesat);テシット(Thesit);α−ドデシル−ω−ヒドロキシポリ(オキシ−1,2−エタンジイル);またはα−ドデシル−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)を包含する。
【0064】
他のBrij(商標)ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、Brij(商標)30ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜4);Brij(商標)52、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)56ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)58、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)72ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)76、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)78ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)92、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)93、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)97、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)98、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)700、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)21OH、n〜100);およびBrij(商標)721、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜21)を包含する。
【0065】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、存在する場合、後のアッセイの感度を有意に減少させない濃度で存在し得る。特定の態様において、例えば中和緩衝剤を使用してポリオキシエチレンアルキルエーテルを希釈することによってか、または使用前にタンパク質抽出物へ緩衝剤もしくは水等の希釈剤を添加することによって、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの濃度を試料処理の間に減少させることが可能である。
【0066】
使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの強度、および抽出緩衝剤のpHに依存して、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、抽出緩衝剤中に約0.05%〜約0.1%、約0.1%〜約0.5%、約0.5%〜約1%、約1%〜約5%、約5%〜約10%または約10%〜約20%の濃度(v/v)で存在し得る。
【0067】
好ましい態様において、例えば、Brij(商標)35等のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、約2%〜約10%の濃度(v/v)で抽出試薬中に存在し得る。他の態様において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、中和試薬中に存在する。また他の態様において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、抽出試薬および中和試薬の両方に存在する。
【0068】
他の好ましい態様において、抽出試薬および/または中和試薬は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルに加えて他の非イオン性界面活性剤を含む。非イオン性界面活性剤は、抽出試薬もしくは中和試薬中に存在し得るか、または抽出試薬および中和試薬の両方に存在し得る。特定の態様において、利用される非イオン性界面活性剤は、ノニデットP−40、n−オクチルグルコシド、TRITON(商標)X-100等のTRITON(商標)界面活性剤、オクチルβ−チオグルコピラノシド、TWEEN−20等のTWEEN(商標)界面活性剤またはNP−40であり得る。使用される界面活性剤の強度に依存して、界面活性剤は、抽出緩衝剤または中和緩衝剤中に、約0.01 M〜約0.05 M、約0.05 M〜約0.1 M、約0.1 M〜約0.2 M、約0.2 M〜約0.5 M、約0.5 M〜約1.0 M、約1.0 M〜約2.0 M、約2.0 M〜約4.0 Mまたは約4.0 M〜約8.0 Mの濃度で存在し得る。界面活性剤は、約0.1%〜20%、好ましくは0.5%〜10%、1%〜6%または2%〜5%の濃度で、抽出緩衝剤中に存在し得る。本方法において利用され得るさらなる界面活性剤は、その特許の全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,488,671号の列7および8中に列挙される。
【0069】
対象となる中和試薬および/または抽出試薬中の例示的な界面活性剤、ならびにそれらの濃度は、重量/容量で、Triton X−100:約0.1%〜約10%(例えば約1%)、NP40:約0.1%〜約10%(例えば約1%)、Tween−20:約0.1%〜約10%(例えば約1%)を包含する。
【0070】
好ましい態様において、抽出試薬および/または中和試薬は、他の非イオン性界面活性剤との組み合わせにおけるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、Brij(商標)表面活性剤であってよく、かつTween(商標)界面活性剤またはTriton(商標)界面活性剤の一つまたは両方と組み合わせられてもよい。特定の好ましい態様において、Brij(商標)表面活性剤は、約0.1%〜約10%(例えば約2%)のTween(商標)−20;または約0.1%〜約10%(例えば約2%)のTriton(商標)X−100である非イオン性界面活性剤の、一つまたは複数と組み合わせられるBrij(商標)35である。
【0071】
特定の態様では、抽出試薬には相当量の変性剤は含まれない。しかし、他の態様では、少なくとも10.0のpHを有し、かつBrij(商標)35などのポリオキシエチレンアルキルエーテルを有することに加えて、抽出試薬には、変性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)もしくはサルコシルなどのイオン性界面活性剤、または尿素などのカオトロピック剤も含まれうる。これらの態様では、変性剤が、仮に存在する場合、後のアッセイの感度を有意に低下させない濃度で存在することができる。変性剤の濃度は、特定の態様において、試料処理中、例えば、中和緩衝剤を使用して変性剤を希釈させることによって、または使用前にタンパク質抽出物に希釈剤、例えば、緩衝剤もしくは水を添加することによって低下しうる。また、変性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなしで単独で存在してもよい。
【0072】
使用する変性剤の強度および抽出緩衝剤のpHに応じて、変性剤は抽出緩衝剤中において約0.01 Mから約0.05 M、約0.05 Mから約0.1 M、0.1 Mから約0.2 M、約0.2 Mから約0.5 M、約0.5 Mから約1.0 M、約1.0 Mから約2.0 M、約2.0 Mから約4.0 M、または約4.0 Mから約8.0 Mの濃度で存在しうる。変性剤は、抽出試薬中に存在する場合、典型的に変性タンパク質に用いられる変性剤の濃度よりも十分に低い濃度で存在しうる。換言すれば、抽出試薬は、本願の方法に従ってタンパク質抽出物を生成した後、そのタンパク質に対する捕捉剤を使用してタンパク質の検出を可能にする濃度で変性剤が含まれうる。用いられる変性剤の濃度は、一般的に、捕捉剤を用いた結合アッセイ、例えば、抗体検出アッセイにおいて容易に検出可能なタンパク質を含むタンパク質抽出物を生成するために十分である。
【0073】
例示的な変性剤および対象となる抽出試薬中でのそれらの濃度は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS):約0.01%から約2%、例えば、0.05%、サルコシル:約0.01%から約5%、例えば、0.5%、グアニジン:約0.1 Mから約6 M、例えば、約0.5 M、および尿素:約0.1 Mから約8 M、例えば、約0.5M(重量/vol)である。
【0074】
SDSは、典型的に、0.1%から0.5%の濃度でタンパク質を変性するために用いられ、サルコシルは、典型的に、2%(w/v)の濃度でタンパク質を変性するために用いられ、尿素は、典型的に、2 Mから8 Mの濃度でタンパク質を変性するために用いられ、塩酸グアニジンは、典型的に、3 Mから8 Mの濃度でタンパク質を変性するために用いられ、N-セチル塩化メタコリンは、典型的に、5%(w/v)の濃度でタンパク質を変性するために用いられ、N-オクチルグルコシドは、典型的に、2%(w/v)の濃度でタンパク質を変性するために用いられる(Protein purification Handbook, Amersham Pharmacia Biotech, p.71 (1999)参照)。
【0075】
対象となるタンパク質抽出物試薬には、上記の成分に加えて、例えば、塩イオンキレート剤、プロテアーゼ阻害薬などの他の成分が含まれうる。
【0076】
タンパク質抽出試薬は、液体または固体の組成物であってもよく、特定の態様では、異なる変性剤の組み合せを含んでもよい。
【0077】
本抽出緩衝剤に用いることのできる変性剤は、一般的に、強力な変性剤であり、限定はされないが、カオトロピック剤(例えば、尿素、塩酸グアニジン、もしくはチオシアン酸ナトリウムまたはグアニジニウムチオシアナートなどのチオシアン酸塩、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウムなど;K. Hamaguchi et al., Proc Natl. Acad. Sci. 62: 1129-1136, 1962を参照されたい)および陽イオン性、陰イオン性、および両性イオン性界面活性剤(CHAPSまたはCHAPSOなど)を含むイオン性界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、サルコシル、またはN-セチル塩化メタコリン)が挙げられる。本方法に用いることのできるさらなる変性剤が米国特許第6,488,671号の列7および8中に記載されており、この特許はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0078】
特定の態様では、LiCl、LiClO4、LiBr、CaCl2、またはNaClなどの弱い変性剤は抽出緩衝剤中の変性剤としては用いられないが、このような化合物が先のパラグラフ内に記載した変性剤に加えて、抽出緩衝剤またはタンパク質抽出物中に存在しうる。
【0079】
上記の通り、試薬を固定細胞または未固定細胞と接触させる(例えば、混ぜ合わせる、もしくは混合させる)。特定の態様では、細胞を含む細胞試料(例えば、固定細胞を含む輸送液)を抽出試薬に直接添加できる。他の態様では、細胞を、それらのタンパク質抽出試薬への添加前に、(例えば、遠心沈降、遠心分離、濾過、または親和性方法によって)細胞試料から分離できる。細胞を、それらのタンパク質抽出試薬への添加前に、洗う、もしくは他の試薬に接触させることができる。
【0080】
利用可能な固定細胞もしくは未固定細胞のすべてまたは一部を抽出試薬と組み合わせることが可能である。例えば、特定の態様において、細胞の一部を細胞学的検査に用いることが可能であり、かつ細胞の一部を抽出試薬と接触させて、中間組成物を生成することが可能である。細胞および抽出試薬を混ぜ合わせて、適切な温度(例えば、氷上、室温前後、または約37℃)で適切な時間(例えば、10秒〜24時間)にわたり維持して、中間組成物を生成することが可能である。例えば、細胞および抽出試薬は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、30分間または1、2、3、4、5、10、15時間にわたり組み合わせられ得る。別の例として、細胞および抽出試薬は、5分〜10時間、または10分〜1時間、または10〜30分間にわたり組み合わせられ得る。特定の態様において、中和試薬を、細胞を抽出試薬と接触させた直後に中間組成物と接触させる。細胞および中和試薬は、中間組成物を生成するために、適切な温度で(例えば、氷上、室温前後、または約37℃)、かつ適切な時間(例えば、10秒〜24時間)にわたり組み合わせられ、かつインキュベートされるかまたは維持され得る。例えば、細胞および中和試薬は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、30分間または1、2、3、4、5、10、15時間にわたり組み合わせられ得る。別の例として、細胞および中和試薬は、5分〜10時間、または10分〜1時間または10〜30分間にわたり組み合わせられ得る。
【0081】
中和試薬
本方法において用いる中和試薬は、中間組成物との接触時に、上で考察した中間組成物のpHを中和するために十分なpHを有する。換言すれば、中和試薬は、中和試薬を中間組成物と混合させた際、上で考察した中間組成物のpHを中和するために十分なpHを有する。以下でより詳細に考察している通り、中和試薬には、特定の態様では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルまたは他の非イオン性界面活性剤または界面活性剤の混合物が含まれる。
【0082】
中和試薬のpHは、固定細胞または未固定細胞を対象となる抽出試薬と接触させることにより作成した中間組成物を中和するために十分である。抽出試薬のpHおよび緩衝剤を用いるか否かに応じて、中和試薬のpHはpH4.0からpH8.0の間にありうる。特定の態様では、中和試薬はpH約4.0からpH約4.5、pH 4.5からpH約5.0、pH 5.0からpH約5.5、pH 5.5からpH約6.0、pH 6.0からpH約6.5、pH 6.5からpH約7.0、またはpH 7.0からpH約7.5のpHを有しうる。中和試薬は、任意の適当な水素イオン源、例えば、塩酸または酢酸を使用して作成することができる。特定の態様では、中和試薬はpH4.0未満のpHを有しうる。
【0083】
中和試薬は緩衝化されてもよく、または緩衝化されなくてもよい。中和試薬が緩衝化される場合、中和試薬は、例えば、トリス、ヘペス、またはトリシンなどの約6から約8のpKaを有する任意の緩衝剤を使用して緩衝化される。特定の好ましい態様において、中和試薬は、pH約6.0のpHを有する2M Tris-HClを含む。他の好ましい態様において、中和試薬は、pH約7.8のpHを有する20.9M Tris-HClを含む。
【0084】
いくつかの好ましい態様において、試料を、例えば、pH約6.0〜9.0、もしくはpH7.0〜8.5、もしくはpH7.5〜8.5、もしくはpH約8.0〜8.5等の目標pHへと導くのに必要な中和試薬の量またはpHを、中和試薬の添加に先立ち経験的に事前決定する。このような態様において、経験的に決定された中和試薬を細胞試料に添加する。他の態様において、中和試薬の添加後に中和試料のpHを測定する。このような測定する工程の後、目標とする中性pHを達成するために必要に応じてpHを調整する。
【0085】
他の態様において、中和試薬は、HEPES、Triton(商標)X−100、NaCl、グリセロールおよびEGTAの一つもしくは複数、またはそれらの混合物を含む。例示的な中和試薬は、約50 mM HEPES、pH約7.5のpH、約1.1% Triton(商標)X−100、約150 mM NaCl、約10%グリセロール、および約1 mM EGTAを含む。他の例示的な中和緩衝剤は、約20 mM Tris、pH8、約2% BSA、約1% Triton(商標)X−100、約2% Tween(商標)−20、約0.2%サルコシン、約250 mM NaCl、および約50 mM EDTA(またはEGTA)を含む。
【0086】
上に記述されるように、抽出試薬および/または中和試薬のいずれかは、式CH3(CH2)n1CH2(OCH2CH2)n2OHのポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むがこれに限定されない非イオン性界面活性剤または表面活性剤を含み得る。例示的なポリオキシエチレンアルキルエーテルは、Brij(商標)35、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜23);Brij(商標)30ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜4);Brij(商標)52、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)56ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)58、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)72、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)76、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)78、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)92、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)93、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)97、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)98、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)700、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、C18H37(OCH2CH2)21OH、n〜100;もしくはBrij(商標)721、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜21)の一つまたは複数を含むBrij(商標)表面活性剤である。
【0087】
使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの強度および抽出緩衝剤のpHに依存して、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、約0.05%〜約0.1%、約0.1%〜約0.5%、約0.5%〜約1%、約1%〜約5%、約5%〜約10%または約10%〜約20%の濃度(v/v)で、抽出緩衝剤中に存在し得る。
【0088】
特定の態様では、用いられる非イオン性界面活性剤は、nonidet p-40、n-オクチルグルコシド、TRITON(商標)X-100などのTRITON(商標)界面活性剤、オクチルβ-チオグルコピラノシド、TWEEN-20などのTWEEN(商標)界面活性剤、またはNP-40でありうる。使用する界面活性剤の強度に応じて、界面活性剤は、約0.01 Mから約0.05 M、約0.05Mから約0.1 M、0.1 Mから約0.2 M、約0.2 Mから約0.5 M、約0.5 Mから約1.0 M、約1.0 Mから約2.0 M、約2.0 Mから約4.0 M、または約4.0 Mから約8.0 Mの濃度で抽出緩衝剤または中和緩衝剤中に存在しうる。本方法に用いることのできるさらなる界面活性剤が米国特許第6,488,671号の列7および8に記載されており、この特許はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。特定の態様では、界面活性剤は、抽出緩衝剤と中和緩衝剤のいずれにも存在しうる。
【0089】
例示的な界面活性剤、ならびに対象となる中和試薬および/または抽出試薬におけるその濃度としては、Triton X-100:約0.1%から約10%、例えば、約1%、NP40:約0.1%から約10%、例えば、約1%、およびTween-20:約0.1%から約10%、例えば、約1%(重量/vol)が挙げられる。
【0090】
上述のように、ポリオキシエチレンアルキルエーテルもしくは他の非イオン性界面活性剤は、中和試薬中に、単独で存在し得るか、組み合わせにおいて存在し得るか、または存在しない可能性がある。ポリオキシエチレンアルキルエーテルはBrij(商標)表面活性剤であってよく、かつTween(商標)界面活性剤またはTriton(商標)界面活性剤の一方または両方と組み合わせられてもよい。特定の好ましい態様において、Brij(商標)表面活性剤は、約0.1%〜約10%(例えば、約2%)のTween(商標)−20;もしくは約0.1%〜約10%(約2%)のTriton(商標)X−100である非イオン性界面活性剤の、一つまたは複数と組み合わせられるBrij(商標)35である。
【0091】
上記の通り、中和試薬を中間組成物と接触させて(例えば、混ぜ合わせて、もしくは混合させて)、中性pH(すなわち、pH約6.5からpH約8.0の範囲内、例えば、pH約7.0からpH約7.8の範囲内のpH)を有するタンパク質抽出物を生成する。タンパク質抽出物には、固定細胞または未固定細胞由来のタンパク質、上記濃度のポリオキシエチレンアルキルエーテルがさらに含まれ、特定の態様では、タンパク質抽出物を特定のpHの範囲内に維持するための緩衝剤および/または追加の非イオン性界面活性剤がさらに含まれる。変性剤を固定細胞または未固定細胞に添加する場合、タンパク質抽出物にはその変性剤がさらに含まれうる。pH、界面活性剤の選択、および用いられる界面活性剤の濃度(ならびに、変性剤が用いられている場合、変性剤の同一性および濃度)は、結合アッセイにおいて直接用いられるタンパク質抽出物が、タンパク質抽出物中に存在するタンパク質を検出可能にするために十分である。
【0092】
細胞抽出液の中和は、中和試薬をしみ込ませたフィルターまたはフィルターチップを通して抽出液を通過させることによって実施できる。抽出液が濾過剤を通過する際、中和試薬は可溶化されて、抽出液のpHは中性に近づく。
【0093】
細胞抽出液を中和させるための代替方法は、中性pHの溶液で事前に平衡化させたBioSpinカラム(BioRad)を通して抽出液を通過させることである。抽出液を、中和剤を含むゲル(または濾過剤)が含まれるシリンジまたは類似の器具内に入れて、陽圧によってシリンジから送達することができる。
【0094】
特定の態様では、対象となるタンパク質抽出物には、それが接近可能であり、そしてタンパク質抽出物のさらなる処理なしに(例えば、変性剤のさらなる添加、pH変化、または加熱なしに)捕捉剤によって容易に検出可能な可溶化HPV E6タンパク質(特にHPVの発癌性株由来のE6タンパク質)が含まれる。タンパク質抽出物には、可溶化させた、もしくは不溶性の膜、HPV E6タンパク質以外のタンパク質、およびDNA、RNA、糖質などの他の細胞含有物なども含まれうる。最初の細胞試料への粘膜混入に由来する混入物などの他の混入物も存在しうる。タンパク質抽出物の成分には、一般的に、全(すなわち、細胞学的に無傷の)細胞は含まれない。
【0095】
タンパク質抽出物は、すぐに使用するか、もしくは使用前まで、例えば、凍結状態で保存できる。
【0096】
特定の態様では、上記の方法により生成させたタンパク質抽出物をタンパク質検出方法に用いることができ、これらの方法は以下でより詳細に記載されている。
【0097】
上記から明白であるように、様々な異なる変性剤、界面活性剤、緩衝剤、pH、および成分の濃度を上記の試薬に用いることができる。任意の試薬中の最適な変性剤、界面活性剤、緩衝剤またはpH、または成分濃度は、日常の方法を使用して容易に決定される。
【0098】
細胞抽出液の中和後、E6に対する結合剤を含む粒子とともに抽出液をインキュベートすることによって、細胞抽出液からE6タンパク質を濃縮できる。結合剤には、PDZ、E6結合タンパク質(E6AP)もしくはその断片、またはE6結合タンパク質(E6BP)もしくはその断片が含まれる。E6が粒子によって捕捉された後、粒子は洗われ、次にE6は、10より大きいpHの緩衝剤でのインキュベーションによって粒子から放出される。粒子は溶離液から分離されて、次に残留液が先述の手順で中和される。あるいは、E6タンパク質は、捕捉粒子からの放出なしに検出されうる。
【0099】
本方法において利用され得るさらなる界面活性剤は、その特許の全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,488,671号の列7および8中に列挙される。特定の態様において、界面活性剤は、抽出緩衝剤中および中和緩衝剤中の両方に存在し得る。
【0100】
さらに他の態様において、試料は中和する工程に続いて希釈され得る。例示的な希釈剤は、約50 mM HEPES、pH約7.5のpH、約1.1% Triton(商標)X−100、約150 mM NaCl、約10%グリセロール、および約1 mM EGTAを包含し得る。別の例示的な希釈剤は、約50 mM Tris、pH8.2、約2% BSA、約2% Triton(商標)X−100、約0.1%サルコシン、約150 mM NaCl、および約50 mM EDTA(またはEGTA)を包含し得る。
【0101】
タンパク質検出方法
上で考察した方法によって作成されたタンパク質抽出物は、タンパク質抽出物中の1つまたは複数のタンパク質の存在を評価する方法において、直接的または間接的に(すなわち、さらなる試薬の添加後)用いることができる。タンパク質検出方法には、一般的に、タンパク質に特異的に結合する捕捉剤が含まれる。検出されるタンパク質の同一性は、方法を実施する時点で公知の(すなわち、既定の)または未知の同一性でありうる。
【0102】
本願のタンパク質検出方法を使用して検出されうるタンパク質には、疾患または症状、例えば、癌、炎症性疾患、または例えばウイルス、細菌、もしくは真菌による感染症の診断マーカーであるタンパク質が含まれる。特定の態様では、本願のタンパク質抽出方法を用いない限り、本願の方法を使用して検出されるタンパク質は日常的には検出できない。
【0103】
本方法を使用して検出できる例示的なタンパク質としては、ヒトパピローマウイルス(HPV)といった病原菌によってコードされるタンパク質が挙げられる。特定の態様では、本方法を用いてHPVのE6タンパク質を検出することができ、これは、他の方法によって、固定細胞から作成されたタンパク質抽出物中で検出することが困難または不可能であることが証明されたタンパク質である。
【0104】
全般的に、タンパク質検出方法は、当技術分野において極めて周知されており、かつ結合アッセイ、すなわちタンパク質と該タンパク質に対する捕捉剤との結合が検出されるアッセイを包含する。このようなアッセイとしては、免疫測定法、すなわち、あるタンパク質と特異的に結合する抗体を用いた結合アッセイが含まれ、限定はされないが、数例を挙げれば、ウェスタンブロット、放射性免疫測定法、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、「サンドイッチ」免疫測定法、酵素免疫測定法、サイトメトリービーズアレイ(CBA)、マルチプレックスビーズアッセイ、ウェスタンブロット、免疫組織化学アッセイ、免疫細胞化学アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散法アッセイ、凝集アッセイ、補体結合反応アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光免疫測定法、およびプロテインA免疫測定法などの技術を使用した競合および非競合アッセイシステムを含む。このようなアッセイは日常的に行われており、そして当技術分野において周知である(例えば、全体が参照により本明細書に組み入れられる、Ausubel et al., eds, 1994, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。例示的な免疫測定法について下記に簡単に記載している。E6 BPペプチドまたはAPペプチド、特異的抗体、またはPDZドメインタンパク質を使用する捕捉および放出が、抽出後、アッセイ法の前に、HPV E6を濃縮するための方法として使用され得る。あるいは、デュアルモノクローナル抗体様式が利用され得る。
【0105】
免疫沈降プロトコルには、一般的に、タンパク質抽出物を生成する工程、タンパク質抽出物に捕捉剤、例えば、抗体を添加する工程、ならびに適当な時間および温度でタンパク質抽出物および捕捉薬剤をインキュベートする工程が含まれる。次に捕捉剤を固体支持体、例えば、プロテインAおよび/またはGタンパク質に連結させたビーズなどの親和性基質に結合させて、混合物をインキュベートし、洗う。固体支持体を試料緩衝剤中に再懸濁させて、例えばウェスタンブロット法によって対象となるタンパク質を検出することができる。
【0106】
ELISAには、タンパク質抽出物を調製する工程、タンパク質抽出物を固体支持体(例えば、マルチウェルマイクロタイタープレートのウェル)に連結する工程、支持体に結合させたタンパク質抽出物を捕捉剤、例えば、抗体と接触させる工程、および捕捉剤とタンパク質との結合を検出する工程が含まれうる。特定のELISA法では、捕捉剤を支持体に結合させたタンパク質抽出物に接触させる前に、捕捉剤を酵素基質(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリ性ホスファターゼ)などの検出可能な成分で検出可能に標識できる。しかし、他の態様では、捕捉剤のタンパク質抽出物への結合は、タンパク質抽出物に接触させた捕捉剤に結合する、検出可能な第2の捕捉剤(例えば、第二抗体)によって検出できる。
【0107】
他のELISAアッセイでは、捕捉剤は固体支持体に連結させることができ、タンパク質抽出物を固体支持体に結合した捕捉剤に接触させる。タンパク質抽出物中のタンパク質の固体支持体抗体への結合は、タンパク質の第二の捕捉剤を使用して検出できる。このような「サンドイッチアッセイ」は当技術分野において周知である。
【0108】
他のアッセイでは、捕捉剤とタンパク質との結合は、捕捉剤の表面固定化前に溶液中で生じうる。
【0109】
特に、本方法を用いて、HPVの発癌性株由来のE6タンパク質を検出することができる。これらの態様では、検出方法に用いる捕捉剤は、例えば、E6タンパク質に含まれるPDZリガンドに結合するPDZドメイン(すなわち、PDZドメインの結合部位)を含む抗体またはポリペプチドでありうる。例えば、本E6検出結合方法では、MAGI-1の第二PDZ、またはDLGもしくはTIP1などのPDZドメインを含むPDZドメイン含有タンパク質を用いることができ、それは米国特許出願第20040018487号(2004年1月29日公表)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。例示的なPDZドメイン含有タンパク質およびPDZドメイン配列が米国特許出願第20040018487号の表2および実施例4に示されている。「PDZドメイン」という用語には、配列(例えば、多型変異体、保存的置換を伴う変異体など)の変異体(例えば、天然変異体)および代替種(例えば、マウス、ラット)由来のドメインも含まれる。典型的に、PDZドメインは、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/724,553号に示されているドメインと実質的に同一であり、例えば、最大一致率に関して比較し、整列させた場合、アミノ酸残基の同一性は少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%である。PDZドメインを突然変異させて、結合を強める、もしくは弱めることのできるアミノ酸変化を与えて、特異性を変えるが、それらが依然としてPDZドメインであることを可能にすることは、当技術分野において理解される(Schneider et al., 1998, Nat. Biotech. 17:170-5)。他に断らない限り、特定のPDZドメイン(例えば、MAGI-1ドメイン2)の参照は、特定のPDZドメインおよびそのHPV E6-結合変異体を含むことが意図される。換言すれば、特定のPDZドメインを参照する場合、以下に記載する通り、HPVの発癌性E6タンパク質に結合するそのPDZドメインの変異体も参照する。この点に関して、タンパク質内のPDZドメインの番号が変化しうることが指摘される。例えば、MAGI-1ドメイン2(アミノ酸配列
)は、本明細書で参照される通り、他の文献のMAGI-1ドメイン1として参照できる。このように、本出願においてタンパク質の特定のPDZドメインを参照する場合、この参照は、本明細書に記載の通り、特に米国特許第20040018487号の配列表、表2内のそのドメインの配列の観点から理解されるべきであり、ここでは、該当する場合、配列表の配列と様々のドメインの名前およびGenbankアクセッション番号との関係が示されている。本明細書で使用している通り、「PDZタンパク質」という用語は、PDZドメインを含む天然タンパク質を指す。例示的なPDZタンパク質としては、
が挙げられる。本明細書で使用している通り、「PDZ-ドメインポリペプチド」という用語は、PDZドメイン配列、天然PDZタンパク質、または単離PDZドメインペプチドを含む融合タンパク質などのPDZドメインを含むポリペプチドを指す。PDZドメインポリペプチドは、従って、長さが約60アミノ酸またはそれより大きい、長さが約70アミノ酸またはそれより大きい、長さが約80アミノ酸またはそれより大きい、長さが約90アミノ酸またはそれより大きい、長さが約100アミノ酸またはそれより大きい、長さが約200アミノ酸またはそれより大きい、長さが約300アミノ酸またはそれより大きい、長さが約500アミノ酸またはそれより大きい、長さが約800アミノ酸またはそれより大きい、長さが約1,000アミノ酸またはそれより大きい、長さが約2,000アミノ酸またはそれより大きい、長さが約50〜2,000アミノ酸、長さが約50〜1,500アミノ酸、長さが約50〜1,000アミノ酸、長さが約60〜1,000アミノ酸、長さが約70〜1,000アミノ酸である。通常、PDZドメインペプチドは、約200アミノ酸以下(例えば、50〜200アミノ酸、60〜180アミノ酸、80〜120アミノ酸、または90〜110アミノ酸)であり、PDZドメインをコードする。
【0110】
HPVのE6タンパク質を検出するために適した抗体は、例えば、第20050142541号(2005年6月30日公表)に記載されている。HPVの発癌性株からE6タンパク質を同定するための詳細な方法が、米国特許第20040018487号において見られ、その方法はその全体が本明細書に組み入れられる。公表されたこれらの方法は、本方法において用いるために容易に適応される。
【0111】
特定の態様において、抗E6抗体を固体支持体に結合させてもよく、かつ本願の方法によって生成されるタンパク質抽出物を、固体支持体に結合した抗体に接触させる。このような固体支持体は当技術分野において周知であり、限定はされないが、コロイド性金粒子、化学発光粒子、染色ラテックス粒子、またはレポーター色素を有するシリカ被覆された金核もしくは銀核等のSERSラマン粒子を包含し得る。特定の態様において、抗E6抗体は、蛍光標識に結合され得る。
【0112】
タンパク質抽出物中での発癌性E6タンパク質の結合は、PDZドメイン含有タンパク質を使用して検出され得る。他の態様において、PDZドメイン含有タンパク質を固体支持体に結合させることができ、本願の方法によって生成されるタンパク質抽出物を、固体支持体に結合したPDZドメイン含有タンパク質に接触させる。タンパク質抽出物中での発癌性E6タンパク質の結合は、抗E6抗体を使用して検出することが可能である。代替方法では、抗体またはPDZドメイン含有タンパク質との結合が、溶液中(すなわち、固体支持体への抗体またはPDZドメイン含有タンパク質の結合がいずれも存在しない状態)で起こり得て、結合後、抗体またはPDZドメイン含有タンパク質が固体支持体(例えば、上に記載されるようなビーズ等)に結合され得る。これらの態様において、PDZドメイン含有タンパク質は、固体支持体に結合する親和性ドメインを有する融合タンパク質であり得る。E6タンパク質の存在は、E6タンパク質を認識する第二の捕捉剤を使用して検出することが可能である。
【0113】
好ましい態様において、抽出された捕捉性E6タンパク質を検出するために、ラテラルフロー(LF)アッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、ディップスティック検査またはフロースルー免疫測定法を利用する。好ましい態様において、PDZドメイン含有タンパク質の「捕捉ゾーン」を含むラテラルフロー(LF)条片は、金粒子に結合された抗HPV E6モノクローナル抗体(mAb)等の第二の捕捉剤が添加されている、抽出試料を含むバイアル中、またはウェル中に配置される。続いて、キャピラリー作用によって、金粒子および試料を条片の上方に移動させる。条片の上方への液体の流動を促進するため、遠方末端に吸収性パッドを取り付けてもよい。試料が条片を上方に移動している間に、捕捉ゾーン中のPDZドメインタンパク質は、E6タンパク質に結合し得る。金が結合したmAbの結合が溶液中で生じる場合、抗E6金コンジュゲートは、PDZドメインタンパク質に結合し得る。あるいは、E6タンパク質は、PDZドメインタンパク質に結合して、続いてE6金コンジュゲートを捕捉することも可能である。いずれのシナリオにおいても、成功裡の捕捉によって、可視的でかつ検出可能な線がLF条片上に形成され得る。
【0114】
好ましい態様において、捕捉されたE6タンパク質の検出を助けるために、サイトメトリービーズアレイ(CBA)を利用する。マルチプレックスビーズアッセイとしても公知のCBAは、可溶性分析物を捕捉しかつ定量するために使用され得る一連の分光的に離散した粒子である。続いて分析物は、蛍光ベースの発光の検出、およびフローサイトメトリー解析によって測定される。Becton Dickinson(BD)(商標)CBAは、ELISAベースのアッセイに匹敵するデータを生成するが、「多項目」様式または同時様式において生成する。任意のサンドイッチ様式のアッセイに関して、未知の分析物の濃度の算出は、概して、公知の基準を使用し、かつ基準曲線に対して未知物をプロットすることによって実施される。
【0115】
捕捉されたE6タンパク質を検出するために有用な機器は、当技術分野において周知である。例えば、LF条片上に結果として得られる線を検出するために、反射率計機器またはUMMリーダーを使用し得る。あるいは、E6タンパク質を捕捉するために蛍光標識された抗E6 mAbを使用する場合、蛍光定量リーダーを利用し得る。検出粒子が装置自身の固有部分として組み入れられる装置も使用され得る。あるいは、本発明の抽出工程は、E6部分単独からなる、または特定の抗体、ペプチドもしくはタンパク質(粒子に付着性かもしくは非付着性)との複合体からなる入力試料を生成し得る。このような入力試料は、特異的な捕捉体、または非特異的な膜ベースの流動検出装置に導入され得て、続いて酵素学的なシステムもしくは粒子ベースのシステム、または増幅された検出システムによって検出され得る。
【0116】
シグナル検出を増強するために、いくつかのアプローチが利用され得る。そのようなアプローチの一つは、沈降基質と共に金粒子が結合する酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリ性ホスファターゼ(AP))に結合されたモノクローナル抗体(mAb)を利用すると考えられる。複数のビオチンを含む抗体、続いて、ストレプトアビジン金粒子も、増幅シグナルをもたらし得る。検査線の周囲により多くのビオチンを沈着させるために、ビオチンチラミドを使用し、続いて、増幅および検出のためにストレプトアビジンに結合した金を使用し得る。あるいは、ビオチンと特異的mAbが共に結合された金粒子(または蛍光標識された粒子)とからなる一次粒子、続いてストレプトアビジンが結合した二次粒子を包含する二段階工程の使用によって、シグナル増強がもたらされ得る。一次粒子は、特異的な、反復的にE6タグ付けされた粒子であり得、抗タグ二次粒子がそれに続く。一次粒子はまた、一部の、多数の、もしくは全てのHPVの発癌性株由来のE6タンパク質と、および/またはE6タンパク質の一つもしくは複数のエピトープと反応することが可能な抗体のカクテルでもあり得る。このような抗体のカクテルは、ビオチン化され得るか、固体支持体(例えば、金粒子)に結合し得るか、または蛍光標識され得て、かつ本明細書に記載される本方法の多くは、E6タンパク質を検出するためにこのようなカクテルと共に使用され得る。
【0117】
特定の態様において、抽出緩衝剤中の活性成分は、臨床検体の可溶化を増強するために増加され得る。このような可溶化の増強によって、試料を清浄化する必要性を取り除き、アッセイにおいて一つの工程が除去され得る。また、試料を濃縮するために、抗E6−mAb−金複合体を沈殿させ、小容量で再構成し、それによりE6タンパク質を濃縮し、かつアッセイの感度を増強することも可能である。
【0118】
試料の流動および検出に干渉し得る望ましくない物質を除去するため、検出に先立ち試料を濾過し得る。濾過は試料の粘性を低下させ得て、試料の流速の増加がもたらされる。これは、試料を試料膜へと濃縮する際の効率、またはラテラルフロー装置上の流速を増加させ得る。さらに、より大きい粒子サイズの物質を試料から減少させることによって、試料の粘性が低下され得て、試料の流速の増加がもたらされる。これは、試料を試料膜へと濃縮する際の効率、またはラテラルフロー装置上の流速を増加させ得る。
【0119】
天然および合成の両方の、様々な広範な有機ポリマーおよび無機ポリマーが、試料を濾過するために使用され得る。例示的なポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニル酪酸)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維濾紙、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルおよび塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、オーロン、ポリエステル、ポリスチレン等を包含するか、または混合物も使用され得る。好ましい態様において、フィルターの孔径は、他の物質(例えば、細胞組織片)が通過するのを防止しながら、試料タンパク質の通過を許容する。フィルター孔径は、例えば、0.1μm〜50.0μmの範囲であり得る。好ましくは、孔径は、0.5〜25μm、1.0〜20μm、2.0〜15μm、3.0〜10μmまたは4.0〜6.0μmの範囲である。例えば、本発明の抽出試薬、続いて中和試薬に細胞を接触させることによるタンパク質を抽出する工程に続いて、試料を、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0または8.0μmの孔径を有するフィルターに通過させてもよい。当業者は、濾過される試料に基づいて、異なる粒子径が必要とされることを認識すると考えられる。試料を、フィルターに強制通過させてもよい(例えば、膜フィルター孔を含むシリンジによってか、またはフィルターを介しての真空吸引を使用)。当業者に周知の、試料を濾過するいくつかの方法が存在する。
【0120】
試料の濾過は、試料の流速の増加をもたらし得る。一部の例では、濾過されていない試料と比較して、試料の流速は5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%増加され得る。適切なフィルターサイズによって、シグナルの検出においていかなる測定可能な損失をも伴わず、流速の増加をもたらし得る。
【0121】
上記のアッセイ法から得られた結果は、適当な対照、例えば、(捕捉剤が結合するタンパク質を含むことが知られているタンパク質抽出物を用いることができる)陽性対照または(例えば、細胞試料に接触していないタンパク質抽出試薬を用いることができる)陰性対照から得られた結果と比較できる。
【0122】
上記のアッセイ法から得られた結果は、存在、非存在、もしくは、特定の態様では、タンパク質抽出物中のタンパク質の量を示しうる。
【0123】
特定の態様では、上記のアッセイ法から得られた結果は、例えば、電話、ファクス、電子メール、郵便、または他の任意の手段によって、離れた場所に返信できる。結果は、例えば、被験体または被験体の医師に伝達されうる。
【0124】
上記のタンパク質検出方法は、細胞学的検査、例えば、癌性または前癌性の子宮頸部細胞を同定するためのPap試験または他の分子検査などの異なる検査と組み合わせて実施できる。これらの態様では、使用前に細胞試料を部分に分けることができる。第一の部分を細胞学的アッセイに使用でき、そして第二の部分を上記の方法において使用できる。
【0125】
上記に従って、本発明の特定の態様では、タンパク質抽出物を生成するためのシステムも提供する。システムには、一般的に、(a)固定細胞または未固定細胞を含む細胞試料、(b)少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬、および(c)中和試薬が含まれ、ここでは上記の方法において固定細胞または未固定細胞、抽出試薬、および中和剤を用いて、結合アッセイでの使用に適したタンパク質抽出物が生成される。抽出試薬および/または中和剤にはポリオキシエチレンアルキルエーテルが含まれる。
【0126】
キット
さらに別の局面では、本発明は、本願の方法を実施するため、例えば、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するため、特定の態様では、タンパク質抽出物中のタンパク質の存在を検査するためのキットを提供する。本願のキットには、少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬および中和試薬が少なくとも含まれる。抽出試薬および/または中和試薬にはポリオキシエチレンアルキルエーテルが含まれる。さらに、キットには、タンパク質を検出するための補足剤、ならびに、特定の態様では、捕捉剤を使用してタンパク質を検出するための試薬(例えば、緩衝剤および検出試薬)が含まれうる。上記の要素は別々の容器内に存在しうる、または1つまたは複数の要素を1つの容器内、例えば、ガラスまたはプラスチックのバイアル内に混ぜ合わせることができる。
【0127】
上記の要素に加えて、本願のキットには、本願の方法を実施するための使用説明書がさらに含まれうる。これらの使用説明書は、様々な形で本願のキット内に存在しうるが、その1つまたは複数がキット内に存在しうる。これらの使用説明書が存在しうる1つの形は、キットの包装、添付文書などの適当な媒体または被印刷物、例えば、情報が印刷された紙片上の印刷情報である。さらに別の手段は、情報が記録されたコンピューター可読媒体、例えば、ディスケット、CDなどでありうる。提示できるさらに別の手段はウェブアドレスであり、これはインターネットを介して使用でき、離れた場所で情報にアクセスできる。便利な任意の手段がキット内に存在することができる。
【0128】
有用性
上記の方法およびシステムは、特定の疾患または症状、またはウイルスまたは細菌などの病原菌による感染症を診断する方法を含む、様々な研究方法および診断方法に容易に用いることができる。一態様では、HPV感染細胞を検出するための診断の一部として方法が用いられる。HPVの発癌性株の存在が癌性細胞および前癌性細胞に関連するため、本方法を用いて癌性または前癌性の子宮頸部細胞を検出できる。
【0129】
HPVは以下の疾患の原因物質であることが知られている:皮膚(例えば、扁平上皮細胞)癌の高リスクを招く一生にわたる皮膚疾患である疣贅様表皮発育異常症(EV)、子宮頸管上皮内新生物(CIN)および浸潤性子宮頸癌(ICC)などの子宮頸管新生物;腟上皮内新生物(VAIN)および腟癌(VC)などの腟新生物;外陰部上皮内新生物(VIN)および外陰部癌などの外陰部新生物、陰茎癌(ボーエン様丘疹症を含む)、肛門(AC)および肛門周囲癌(PC)、口咽頭癌(OS)、食道癌(EC)、非黒色腫皮膚癌(例えば、基底細胞癌BCCおよび扁平上皮癌細胞SCC)および黒色腫。このように、一態様では、本方法はこれらの疾患のいずれかの診断として用いることができる。
【0130】
一態様では、細胞が被験体から得られ(例えば、剥離させる、もしくは切除する)、固定剤を含む液体培養液中に置かれ、特定の態様では、細胞学的検査用の輸送液でよい。細胞は、通常、医院または診療所において得られ、細胞試料は検査施設に転送されて受け取られ、ここでは、上記のタンパク質検出方法および任意で細胞学的アッセイが実施される。検査からの結果が、一部の態様では、医師およびその共同研究者よって被験体に伝達される。
【0131】
細胞が用いられた被験体は、哺乳動物、例えば、イヌもしくはネコ、齧歯動物(例えば、マウス、モルモット、またはラット)、または霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、またはサル)であってもよい。多くの態様では、被験体はヒト、特に男性または女性である。特定の態様では、被験体はHPV感染の症状を示しうる(例えば、1つまたは複数の身体の部分に疣贅を有しうる)、HPVに感染していることが疑われる(例えば、このような感染症と細胞学的に一致する細胞を含みうる)、もしくは既に検査でHPVに陽性であった可能性がある。特定の態様では、被験体はHPV感染の徴候を有さない可能性があり、上記の方法は日常の検査の一部として用いることができる。
【0132】
一態様では、本方法を用いて、株からのE6タンパク質を検出することによって、任意の発癌性HPV株、例えば、HPV26、HPV53、HPV66、HPV73、HPV82、HPV16、HPV18、HPV31、HPV35、HPV30、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV59、HPV58、HPV33、HPV66、HPV68、またはHPV69(特に、最も有病率の高いHPV株のいずれか、例えば、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、およびHPV45)を検出できる。一態様では、本方法を開始した時点では、固定細胞または未固定細胞が発癌性E6タンパク質を含むか否か、もしくは発癌性E6タンパク質がいずれの株由来であるのかは分からない。検出アッセイが細胞中の発癌性E6タンパク質の存在を示す場合、次にそれらの細胞に感染したHPV株の同一性を、他の分子アッセイ、例えば、ウイルスによりコードされる特定のE6タンパク質もしくは他のタンパク質に特異的な抗体を用いたアッセイ、またはウイルスDNAの配列決定によって決定できる。
【0133】
限定はされないが、具体例として以下の実施例を提示する。
【実施例】
【0134】
実施例1:スパイクされた臨床試料の抽出
HPV16 E6遺伝子(C33A+)をトランスフェクトした細胞をTHINPREP(商標)培養液で固定して、以下に記載したTHINPREP(商標)固定臨床試料の一部に添加(すなわち、「スパイク」)した。細胞を5つの臨床試料それぞれの半分にスパイクした(2,000万個のC33A+細胞を有する各臨床試料の半分)。
【0135】
抽出スキーム
C33A(+) ThinPrep細胞/1 ml当たり2,000万個細胞
1- 1/2の臨床陰性#229 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
2- 1/2の臨床陰性#230 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
3- 1/2の臨床陰性#231 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
4- 1/2の臨床陰性#232 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
5- 1/2の臨床陰性#233 (1.0 ml抽出物)に20M C33A(+) ThinPrep細胞
6- 20M C33A(+) ThinPrep細胞(1.0 ml抽出物)
【0136】
抽出試薬
Triton X-100/ロット092K0171 - (1% = 250μl)
5M NaCl/ロット5701-53 - (0.15M = 750μl)
0.5M トリスベース/ロット5708-20 - (0.1M = 5 ml)
0.5M グリシン/ロット5708-9 - (0.1M = 5 ml)
10% SDS/ロット5708-8 - (0.05% = 125μl)
8M 尿素/ロット5678-83 - (0.25M = 781μl)
20 mlまでRO/DIを添加 - (8.1 ml)
5N NaOH/ロットA09522 - (525μl)
25 mlまでRO/DIを添加 - (4.475 ml)
最終pH - 11.48
最終調合物:0.1 M トリス/0.1 Mグリシン/0.15 M NaCl/1% Triton(商標)X-100/0.05% SDS/0.25M 尿素 pH11.48
【0137】
タンパク質抽出手順
1.50 ml遠心管に細胞懸濁液を添加する。
2.10〜15分間、3,000 rpmで回転させる。
3.静かに上清を除去する。
4.内容物を1.5 ml nunc管に移す。
5.10〜15分間、3,000 rpmで回転させる。
6.静かに上清を除去する。
7.ペレットに必要量の抽出試薬を添加する。
8.再懸濁させて細胞ペレットを分散させる。
a.添加剤(DTT 1:100)
9.pHを調べて、11.5に調整する。
10.30分間、室温(または抽出に適当な温度)で混合する。
11.10〜15分間、14,000 rpmで回転させる。
12.清澄な上清を除去する。
13.DTTを1:100で添加する。
14.5N HClでpH8.0に中和して、ELISAで検査する。
(31.0 μlの5N HCl/mlでpH8.0に中和させる。)
100 mM DTT/NR 5701-90/DOM2/7/05
【0138】
ELISA法
1 - プレート(Nunc 439454 Maxisorp F96/ロット542043)をPBS (ロット021405)中5μg/ml GST-Magi-PDZ (ロット88.18/0.65μg/μl)でコーティングする - 100μl/ウェル。
11 ml x 5μg/ml = 55μg x 1μl/0.65μg = 84.6μl GST-Magi-PDZ
2 - 4℃で一晩インキュベートする。
3 - プレート洗浄機で3回(TBS - Tween)洗う。
4 - 250μlのブロッキング緩衝剤(ロット033005)でプレートをブロッキングする。
5 - 25℃で2時間インキュベートする。
6 - プレート洗浄機で3回(TBS - Tween)洗う。
7 - 適当なウェルに100μl MBP-E6/溶解物試料を添加する。
8 - 25℃で1時間インキュベートする。
9 - プレート洗浄機で3回(TBS - Tween)洗う。
10 - 適当なウェル中の2% BSA HNTG緩衝剤(ロット031805B)に100μlの抗E6抗体(4C6 - 2.85 mg/ml -ロット02) 5μg/mlを添加する。N-末端ペプチド(HPV16E6 ロット番号PN3952-2)を適当な試料に10μg/ml添加して、シグナルの特異性を検証する(添加前の45分間、ペプチドを事前に抗E6抗体とインキュベートする)。
11 - 25℃で2時間インキュベートする。
12 - プレート洗浄機で3回(TBS - Tween)洗う。
13 - 2% BSA/0.05% Tween 20緩衝剤(ロット040505)中でヤギ抗マウスIgG-HRP (Jackson GxM IgG-HRP /カタログ番号115-035-062 /ロット60988)の1:5,000希釈液を調製する。
10.0 ml x 1/5000 = 0.002 ml x 1,000μl/ml = 2.0μlヤギ抗マウスIgG-HRP
14 - 適当なウェルに100μlの1:5,000ヤギ抗マウスIgG-HRP希釈液を添加する。
(TMB基質を除去して、室温に置く)
15 - 25℃で1時間インキュベートさせる。
16 - プレート洗浄機で5回(TBS - Tween)洗う。
17 - 100μlのNeogen K-Blue TMB基質(ロット041018)を添加する。
18 - 25℃で30分間インキュベートする。
19 - 100μlの停止液(ロット030705)を加え、A450を読み取る。
【0139】
調合物
2% BSA/0.05% Tween 緩衝剤 - (ロット040505)
2% BSAブロッカー ロット033005 (49.975 ml)
Tween 20 ロットA016759301 (0.025 ml)
【0140】
結果
【0141】
上の表で示される結果に見られるように、全てのスパイクされた臨床試料に関して、E6結合を検出した。
【0142】
実施例2:MBP−E6検出に対する、高いpHの緩衝剤および添加剤の効果
図1に記載される例は、組換えマルトース結合タンパク質(MBP)−E6タンパク質の検出に対する、異なる組成の緩衝剤の効果を示す。通常、細胞からタンパク質を抽出するために、本明細書に記載される抽出緩衝剤を使用すると考えられる。しかしながら、ここでは、条件を最適化するために、以前に精製された組換えタンパク質を使用した。概略すると、図1A中に記載される実験は、添加剤成分およびpHが異なる新規に調製された抽出緩衝剤中に、MBP−E6タンパク質を懸濁する工程を包含した。この「抽出」工程に、試料のpHを中性pHに調整する中和工程が続いた。続いて、ラテラルフローアッセイを使用して、MBP−E6タンパク質を検出した。
【0143】
緩衝剤の組成
本明細書に記載される実験において使用される緩衝剤は、2つの緩衝剤のうちの1つ、すなわち低いpHの緩衝剤「緩衝剤1」、または高いpHの緩衝剤「緩衝剤2」のいずれかに由来した。緩衝剤1(pH約11.5)は、約100 mM Tris/グリシン、約50 mM Hepes、約150 mM NaCl、約1 mM EGTA、約1.1% Triton(商標)X−100、および約0.125〜0.14 N NaOHからなる。緩衝剤2(pH約12〜13)は、0.1 N NaOHおよび約50 mMクエン酸3ナトリウムからなる。続いて、図1Aに示される「低」または「高」の添加剤を、各緩衝剤に添加したか、または添加しなかった。低添加剤緩衝剤中の添加剤は、およそ以下の濃度を有した:0.25 M尿素;0.05% SDS;2% Tween(商標)−20;2% Brij(商標)35(Sigma);2%サポニン;2% Tergitol NP 40;または10 mM EDTA、pH 8。高添加剤緩衝剤中の添加剤は、およそ以下の濃度を有した:約2 M尿素;0.5% SDS;4% Tween(商標)−20;4% Brij(商標)35;4%サポニン;4% Tergitol NP 40;または50 mM EDTA、pH 8。上に示されるように、緩衝剤1は、低および高の試料の両方に使用された1.1% Triton(商標)X−100のストックレベルを有した。緩衝剤2に関して、Triton(商標)X−100は、2%(低)または4%(高)の濃度であった。
【0144】
本明細書において記載される大多数の例において、試料への添加の直前に、個々の添加剤を含む緩衝剤を調製した。しかしながら、一部の場合において、一つまたは複数の添加剤が試料に導入される前に、最初に緩衝剤で試料を処理した。
【0145】
MBP−E6タンパク質の検出
図1Aに示される実験において、示された添加剤を用いて新規に調製された1.03〜1.13 mlの示された抽出緩衝剤中に、520 pgのMBP−E6を懸濁した。続いて、室温で約30分間、懸濁液を穏やかに混合した(上下逆さにして)。中和する工程に関して、約2 M Trisを使用してより低いpH(およそ7.8〜8)に懸濁液を調整し、再び室温で30分間回転させた。MBP−E6組み換えタンパク質を検出するために、本明細書に記載されるラテラルフロー(LF)アッセイによって、およそ150〜200μlの試料を解析した。
【0146】
ラテラルフロー(LF)アッセイの説明
本明細書に記載されるラテラルフロー(LF)アッセイは、免疫クロマトグラフィーアッセイまたはディップスティックアッセイとしても公知である。概略すると、本明細書におけるLFアッセイは、金粒子に結合したウイルスタンパク質をLF条片に存在する「捕捉ゾーン」上で捕捉することを包含する。成功裡の捕捉は、LF条片上に可視的でかつ検出可能な線の出現をもたらす。
材料:0.22μm濾過された20%(w/v)BSA(Sigma A7906);コロイド状金8G11(BBI);ラテラルフロー条片、PDZ捕捉。
方法:
(1)約150〜200μlの試料を、96ウェルプレート中の2つ組のウェル中に配置する。
(2)各ウェルに約20μlの20% BSAを添加し、ピペットチップで混合する。
(3)各ウェルに8G11が結合したコロイド状金 約10μlを添加し、ピペットチップで混合する。8G11は、HPV16 E6タンパク質を認識するモノクローナル抗体(mAb)である。
(4)キャピラリー作用によって試料を条片の上方に移動させるため、各ウェル中にLF条片をおよそ120分間配置する。条片の上方への液体の流動を促進するために、遠方末端に吸収性パッドを取り付けてもよい。試料の移動の間に、HPV16 E6タンパク質は、コロイド状金粒子に付着したmAbに結合し得る。E6タンパク質も、E6タンパク質を認識することが可能な複数のPDZドメインを含むタンパク質を有するLF条片上のゾーンによって捕捉される。そのような捕捉は、LF条片上に、可視的でかつ検出可能な赤色線の出現をもたらす。
(5)続いて、可視的シグナル出力を定量することが可能な反射率リーダーが装備されているUMM装置によって、LF条片を解析した。得られた値は、相対的な反射率値である。
【0147】
図1に示される例は、特定の添加剤を高いpHの抽出緩衝剤(緩衝剤2、pH 12.9)と併用することによって、MBP−E6タンパク質の検出における相乗作用が引き起こされることを示す。例えば、添加剤の非存在下において緩衝剤1を緩衝剤2と比較した場合、pHの増強は、組み換えMBP−E6タンパク質の検出に対していかなる効果も有しなかったことが明らかになった(図1A、最後の4列)。特定の添加剤、とりわけSDS、TWEEN(商標)−20、Brij(商標)35およびTergitol NP40は、比較的低いpHの緩衝剤である緩衝剤1、pH 11.5を使用した場合でさえも、MBP−E6タンパク質の検出を増加させた(図1A)。しかしながら、添加剤をより高いpHの緩衝剤(緩衝剤2)と組み合わせた場合、組み換えタンパク質の検出は、SDS、TWEEN(商標)−20、Triton(商標)X−100、Brij(商標)35試料において顕著に増加した。例えば、Triton(商標)X−100で処理された試料中のタンパク質の検出は、pHを増加させた場合、0からおよそ2.4超のUMM測定値に上昇した。したがって、「抽出」工程の間の高いpHと特定の添加剤との組み合わせが、E6タンパク質の検出に対して相乗効果を及ぼしたと結論付けることができる。
【0148】
図1Bは、1Aで実施されたものと類似の実験を記載する。しかしながら、図1Bでは、より初期の「抽出」工程の代わりに、中和工程の間に添加剤を試料に導入した。このアプローチによって、抽出工程の間に添加剤を導入した場合よりも、極めてより低いシグナル強度が得られた。したがって、中和工程での添加剤の導入は、最適なアプローチではない。
【0149】
実施例3:細胞からのE6タンパク質の抽出に対する添加剤の効果
図2に示される例では、細胞からのE6タンパク質の抽出に対して、異なるパーセンテージの緩衝剤添加剤の効果を評価した。この例において、HPV16 E6遺伝子を発現するSiHa細胞から、またはHPV感染されていない子宮頸癌株であるC33A細胞からタンパク質を抽出した。
【0150】
抽出工程
抽出工程に関して、最初に、約1,000万個の細胞を含む細胞沈殿物を−80℃のフリーザーから取り出し、室温で約10分間解凍した。続いて、実施例2に記載される約750μlの緩衝剤2を大多数の試料に添加した。Brij(商標)35、Tween(商標)−20またはTriton(商標)X−100等の添加剤も、示された試料に導入した。これらの添加剤は、2%または4%(v/v)のいずれかの最終濃度で存在した。対照として、20 mM Tris、pH 8、2% BSA、1% Triton(商標)X−100、2% Tween(商標)−20、0.2%サルコシン、250 mM NaCl、および50 mM EDTAを含む中性pHの緩衝剤である緩衝剤673により、一部の試料を抽出した。試料を短時間ボルテックスし、続いて室温で30分間回転させた。
【0151】
中和工程
中和工程に関して、各試料のpHをpH約7.8〜8に減少させるため、およそ140〜180μlの2M Tris、pH6.0を添加した。試料のpHを中和させるのに必要なTris、pH6.0の容量を、経験的に事前に決定した。Trisの添加および短時間のボルテックスに続いて、室温で30分間試料を回転させた。続いて、14K rpmで10分間の遠心分離によって試料を清浄化した。続いて、実施例2に記載されるLFアッセイで解析する前に、清浄溶解物(最終容量およそ1.09)を清潔なチューブに移した。
【0152】
結果
4% Brij(商標)35を含む緩衝剤2を抽出する工程において使用した場合、HPV16 E6タンパク質が最もよく検出された(図2)。さらに、SiHa細胞由来のシグナルと、HPV E6−陰性C33A細胞からのシグナルとの比較によって、この条件によっても、アッセイのシグナルノイズ比が大幅に増加したことが示された(図2)。
【0153】
実施例4:4% Brij(商標)35/緩衝剤2で抽出後の、HPV−16 E6タンパク質の用量反応検出
この例において、実施例2および3において記載される4% Brij(商標)35/緩衝剤2を用いて、漸増性数のHPV−16 E6を発現するSiHa細胞およびCaski細胞を抽出した。抽出方法は、実施例3に記載されるものと類似しており、かつ細胞約920万個/mlの開始濃度を使用した。しかしながら、LF条片当たり連続的に増加する細胞数を使用したという点において、LFアッセイは異なった。図3に示されるように、LFアッセイにおいて使用された条片当たりの細胞数は、約31,000個;約62,000個;約125,000個;約250,000個;約500,000個;約1,000,000個;または約1,700,000個であった。陰性対照は、中性pHの緩衝剤673(実施例3に記載)でのこれらの細胞の抽出、および4% Brij(商標)35/緩衝剤2または緩衝剤673のいずれかでのHPV陰性C33A細胞の抽出を包含した。
【0154】
図3に示されるように、C33A細胞を使用した場合、いかなる用量反応も存在せず、かつ中性pHの緩衝剤673を使用した場合、限定的な用量反応のみが存在した。しかしながら、漸増性数の細胞を使用した結果として、両方のHPV−16 E6発現細胞株(SiHaおよびCaski)において、漸増性量のE6タンパク質を検出した。これらの結果は、本アッセイによって、HPV−16 E6タンパク質が用量反応様式で検出されたことを示した。
【0155】
実施例5:スパイクされた臨床試料からのHPV−16 E6タンパク質の抽出における、4% Brij(商標)35/緩衝剤2の使用
図4に示される例は、HPV16 E6を発現するSiHa細胞と組み合わせられたか、または「スパイクされた」PAP正常臨床試料からの抽出におけるHPV16 E6タンパク質の検出を示す。この例で使用される臨床試料は、従来のPapスメアにより陰性と判定された未固定の剥離された子宮頸部試料であった。最初に、試料を−80℃のフリーザーから取り出し、室温で約10分間解凍した。続いて各剥離物を切り取るために小型ワイヤーカッターを使用し、続いて約1,000万個のSiHa細胞の凍結細胞沈殿物を含むマイクロ遠心チューブに配置した。実施例3および4に記載されるものと類似の様式で、試料の抽出、中和およびLFアッセイを遂行した。この実験に関して、抽出する工程の間、4% Brij(商標)35/緩衝剤2、または中性緩衝剤673(両方とも以前の例中で記載される)のいずれかを使用した。両方の緩衝剤の抽出容量は、およそ1 mlであった。
【0156】
4% Brij(商標)35/緩衝剤2を使用して抽出された5つのSiHa細胞をスパイクされた臨床試料において、有意なHPV16 E6タンパク質を検出した(図4)。対照的に、SiHaをスパイクされていない5つの試料の抽出は、比較的低いシグナルをもたらした。同様に、いずれかの細胞種を抽出するための緩衝剤673の使用もまた、比較的低いシグナルをもたらした。これらの結果は、臨床試料中のHPV16 E6タンパク質を検出するため、後に、Brij(商標)35/緩衝剤2が首尾よく使用され得ることを示唆した。
【0157】
実施例6:タンパク質抽出における使用のための、Brij(商標)35/緩衝剤2のさらなる最適化
この例は、異なるパーセンテージのBrij(商標)35、および/または異なる組み合わせの添加剤を使用する、Brij(商標)35抽出のさらなる最適化を示す。ここで、HPV16 E6に対する遺伝子を形質移入された細胞株である、SiHa細胞からのHPV16 E6の抽出を助けるために、様々なレベルのBrij(商標)35を含む緩衝剤2(実施例2に記載される)を使用した(図5)。さらに、EDTA、Tween(商標)−20、またはTriton(商標)X−100等の他の添加剤との組み合わせにおいてBrij(商標)35を含む緩衝剤2も検査した。この実験に関して、抽出緩衝剤中で使用される添加剤のレベルが変動したことを除き、抽出工程、中和工程およびLFアッセイ工程は、実施例2および3に記載されるものと類似していた。抽出緩衝剤中で使用される添加剤の量は、4% Brij(商標)35、5% Brij(商標)35、6% Brij(商標)35、4% Brij(商標)35+10 mM EDTA、2% Brij(商標)35+2% Tween−20、2% Brij(商標)35+2% Triton(商標)X−100、2% Brij(商標)35+2% Tween(商標)−20+2% Triton(商標)X−100、または2% Brij(商標)35+2% Tween(商標)−20+10 mM EDTAのいずれかであった。対照として、中性pHの緩衝剤673を用いて一部の試料を抽出した。LF条片当たりのおよその細胞数は、約1,300,000個であった。
【0158】
図5に示されるように、Brij(商標)35のパーセンテージを4%から6%に増加させることによって、HPV16 E6タンパク質の検出の増加がもたらされた。このアッセイはまた、Brij(商標)35緩衝剤にTriton(商標)X−100、および/またはTween(商標)−20を添加することによっても改善された。
【0159】
実施例7:HPV16 E6タンパク質の検出に対する、抽出する工程および/または中和する工程のタイミングの効果
この例は、抽出する工程および/または中和する工程のタイミングが、HPV16 E6タンパク質の最終的な検出に対して有した効果を示す。この例において、再び実施例3に概略される手法に概して従い、SiHa細胞からE6タンパク質を抽出した。しかしながら、この例において、抽出する工程および/または中和する工程のためのインキュベート時間を改変した(図6)。図6に示されるように、細胞約10,000,000個/mlで、30分間または10分間のいずれかにわたりSiHa細胞を抽出し、30分間または10分間のいずれかにわたり中和した。清浄化する工程の遠心沈降の時間によって、中和する工程の停止時間を既定した。さらに、LFアッセイに関して、条片当たり1,700,000個または500,000個のSiHa細胞のいずれかを使用した。
【0160】
異なる抽出インキュベート時間または中和インキュベート時間を使用した場合、HPV−16 E6タンパク質においていかなる有意な差異も検出しなかった(図6)。したがって、この例は、抽出インキュベート工程および/または中和インキュベート工程のタイミングを30分間から10分間に改変した場合、このアッセイが不利に影響されないことを示した。
【0161】
実施例8:E6タンパク質のHPV 18およびHPV 45 変種を抽出するための、4% Brij(商標)35/緩衝剤2の使用
この例は、異なるHPV株のE6タンパク質を抽出するために、実施例2および実施例3に記載される4% Brij(商標)35/緩衝剤2抽出システムの適用を示す(図7)。HPV 18を発現するHeLa細胞、またはHPV 45を発現するMS751細胞からE6タンパク質を抽出した。陰性対照として、HPV陰性C33A細胞株を使用した。抽出および中和手法は、実施例2および実施例3に記載されるものと類似していた。LFアッセイに関して、LF条片当たり、各種の約1,700,000個の細胞と同等量を使用した。また、LFアッセイで使用されるコロイド状金を、HPV株18および45のE6タンパク質を認識するF82−5A2モノクローナル抗体に結合した。
【0162】
図7に実証されるように、HPV18 E6タンパク質およびHPV45 E6タンパク質を抽出するために、4% Brij(商標)35/緩衝剤2抽出システムを首尾よく使用し得る。
【0163】
実施例9:E6タンパク質のHPV 16およびHPV 18変種を抽出するための、4% Brij(商標)35/緩衝剤2の使用
この例は、4% Brij(商標)35/緩衝剤2によるHPV16 E6タンパク質の抽出と、HPV18 E6タンパク質の抽出とを比較する。図8に記載される実験の抽出する工程および中和する工程を、実施例8のものと類似の様式で実施した。しかしながら、この例では、HPV 16を発現するSiHa細胞、およびHPV 18を発現するHeLa細胞を使用した。前のものと同様に、C33A細胞を陰性対照として使用した。LFアッセイに関して、LF条片当たり、漸増性数の細胞(実施例4と同一範囲)を使用した。さらに、SiHa細胞抽出物のLFアッセイにおいて、抗HPV16金を使用し、一方HeLa細胞抽出物のLFアッセイにおいて、抗HPV18金を使用した。
【0164】
HeLa細胞およびSiHa細胞からの抽出物において、E6タンパク質を検出した(図9)。HPV16 E6タンパク質およびHPV18 E6タンパク質の両方の検出は、用量反応様式で生じた(図9)。
【0165】
実施例10:Brij(商標)35/緩衝剤2システムのさらなる最適化
この例は、緩衝剤2中における、Brij(商標)35の約4%〜約10%までのレベル変動の効果を示す(実施例2中に記載)。図9に記載される実験に関して、抽出する工程および中和する工程は実施例3のものと類似していた。その例と同様に、開始細胞はHPV16に感染したSiHa細胞、またはHPV陰性C33A細胞のいずれかであった。しかしながら、本実験では、抽出時に存在するBrij(商標)35のパーセンテージが変動した。より具体的に、使用されたBrij(商標)35のパーセンテージは、約4%、約6%、約8%または約10%であった。さらに、2% Brij(商標)35/2% Tween(商標)20および2% Brij(商標)35/2% Tween(商標)−20/10 mM EDTAも検査した。本明細書に記載されるように、LFアッセイを遂行した。LF条片当たり、約170万個の細胞を使用した。
【0166】
図9に示されるように、SiHa細胞からの抽出物由来の陽性シグナルは、Brij(商標)35の濃度の上昇に伴い増加した。しかしながら、シグナルは、HPV陰性C33A細胞から調製された抽出物中でも増加し、より高いBrij(商標)パーセンテージでシグナルノイズ比の減少をもたらした。しかしながら、4%または6%Brij(商標)を使用した場合、アッセイのシグナルノイズ比が改善されるように見受けられた。さらに、Brij(商標)をTween(商標)−20と組み合わせることによっても、シグナルノイズ比が改善されるように見受けられた。
【0167】
実施例11:SiHaをスパイクされた陰性臨床試料からの抽出の最適化
この例は、SiHaをスパイクされた陰性臨床試料からのE6タンパク質の抽出に対する、抽出条件の変動の効果を示す。本実験で使用された試料調製、ならびに抽出する工程および中和する工程は、実施例5で使用されたものと類似している。しかしながら、この例において、陰性臨床試料(NCS)は、ブラシではなく綿棒に存在した。さらに、緩衝剤2が、4%Brij(商標)35、2%Brij(商標)35/2%Tween(商標)−20、または2%Brij(商標)35/2%Tween(商標)−20/10 mM EDTAのいずれかと共に含まれるように、この実験における抽出条件を変動させた(図10)。示されるように、LFアッセイに関して約170万個のSiHa細胞/条片を使用した。
【0168】
図10の結果によって示されるように、SiHaをスパイクされた試料からは、比較的一貫した陽性シグナルが得られ、一方、陰性試料は、比較的低いシグナルをもたらしたため(図10)、4%Brij(商標)35/緩衝剤2の条件は、臨床試料中のHPV16 E6タンパク質を検出するために優れた条件であり得る。
【0169】
実施例12:HPV陰性細胞の存在下におけるSiHa細胞からのHPV16 E6タンパク質の抽出
この例は、HPV陰性C33A細胞の存在下における、SiHa細胞からのHPV16 E6タンパク質の抽出を示す。この例に関して、漸増性量のSiHa抽出物を、固定量(約100万個/ml)のC33A細胞を含む緩衝剤中で滴定した(図11)。この実験に関して、4%Brij(商標)35/緩衝剤2またはアーバービータ溶解緩衝剤(AVLB)のいずれかを使用して、各細胞株を別個に抽出した。AVLBは、約50 mM HEPES、pH約7.5のpH、約1.1% Triton(商標)X−100、約150 mM NaCl、約10%グリセロールおよび約1 mM EGTAからなる。抽出する工程および中和する工程を、実施例3のものと類似の様式で実施した。しかしながら、この実験においては、AVLBまたは中和された4%Brij(商標)35/緩衝剤2のいずれかからなる希釈剤を調製した。続いて、細胞約100万個/mlのレベルで、各緩衝剤中にC33A抽出物をスパイクした。続いて、示されたC33A含有緩衝剤中にSiHa細胞抽出物を系列希釈した。サイトメトリービーズアレイ(CBA)によって試料を解析し、蛍光計によって測定した。
【0170】
この実験の結果によって、E6タンパク質の検出のための最適条件は、AVLB緩衝剤中での希釈を伴う4%Brij(商標)35/緩衝剤2抽出、および中和であることが明らかになった(図11)。さらに、E6タンパク質の検出のレベルは、細胞約5000個/mlまたは500個/ウェルであると見受けられた(図11)。
【0171】
実施例13:ThinPrep(商標)またはSurePath(商標)固定剤中で固定されたSiHa細胞からのHPV16 E6タンパク質の抽出
この例は、固定細胞からタンパク質を抽出するために、緩衝剤2/4%Brij(商標)35抽出システムを使用し得ることを示す。図12に記載される実験において、1,000万個のHPV16陽性SiHa細胞もしくはHPV陰性C33A細胞を、1 mlの示された固定剤またはDMEM培地に室温で1時間添加した。続いて、細胞を1000 RPMで15分間スピンし、沈殿させ、実施例3に記載された1 mlの4%Brij(商標)35/緩衝剤2中に再懸濁した。続いて、実施例3に記載された抽出する工程、中和する工程およびLFアッセイの工程に試料を供した。
【0172】
図12に示されるように、抽出する工程で4%Brij(商標)35/緩衝剤2を使用した場合、ThinPrep(商標)で固定したSiHa細胞またはSurePath(商標)で固定したSiHa細胞の両方に存在するE6タンパク質を、首尾よく検出した。
【0173】
上の結果および考察から、本願の方法は、固定細胞または未固定細胞の分子解析に関していくつかの別個の利点を提供することが明らかである。とりわけ、本方法は、固定細胞または未固定細胞からのタンパク質抽出物の産生のための日常的な方法であって、タンパク質抽出物中のタンパク質が結合アッセイにおいて検出可能な方法を提供する。固定細胞または未固定細胞中で特定のタンパク質を検出することは一般に困難であるため、本願の発明は当技術分野に対して有意な貢献を提示する。
【0174】
実施例14:膜フィルターによるタンパク質抽出物の濾過の、試料流速に対する効果
この例において、HPV16 E6タンパク質を発現するSiHa細胞、またはHPV感染していない子宮頸癌細胞株であるC33A細胞のいずれかからタンパク質を抽出し、結果として得られる試料の流速を評価する前に、フィルター膜を通した。
【0175】
抽出工程
抽出工程に関して、約1,000万個の細胞を含む細胞沈殿物を、最初に−80℃のフリーザーから取り出し、室温で約10分間解凍した。続いて、実施例2に記載される約750μlの緩衝剤2を大多数の試料に添加した。Brij(商標)35、Tween(商標)−20またはTriton(商標)X−100等の添加剤も、示された試料に導入した。これらの添加剤は、2%または4%(v/v)のいずれかの最終濃度で存在した。試料を短時間ボルテックスし、続いて室温で30分間回転させた。
【0176】
中和工程
中和工程に関して、各試料のpHをpH約8.5に減少させるため、およそ140〜180μlの0.9M Tris、pH7.8を添加した。試料のpHを中和させるのに必要なTris、pH7.8の容量を、経験的に事前に決定した。Trisの添加および短時間のボルテックスに続いて、室温で30分間試料を回転させた。続いて、14K rpmでの10分間の遠心分離によって、試料を清浄化した。
【0177】
濾過工程
清浄化した溶解物(最終容量およそ1.09)を5.0μmミリポアPVDFシリンジフィルターによって濾過した。続いて、試料流動装置に試料を通し、全試料が通過するのに必要な時間を測定した。免疫アッセイシグナルの強度に関しても試料を評価し、視覚的にか、またはCAMAG濃度計を用いて測定した。HPV E6の存在を、0〜4のスケールで視覚的に評価した。
【0178】
結果
試料が5.0μm PVDFシリンジフィルターを通過する流動時間は、一部の場合において、ほぼ50%低減した。以下の表1にデータを示す。さらに、視覚判読による試料の評価においては、5.0μmシリンジフィルターによる濾過後に、SiHaシグナルのいかなる有意な損失も示されなかった(図13)。
【0179】
(表1)濾過後の試料の流動評価
【0180】
本明細書において引用しているすべての出版物および特許出願書は、個々の出版物または特許出願書のそれぞれが参照により組み入れられるために具体的かつ個別に示されたかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。任意の出版物の引用は、出願日以前の開示に対するものであり、本発明が、先行する発明を理由に、このような出版物に先行する資格がないことの承認として解釈すべきではない。
【0181】
明確に理解することを目的として、前述の発明を具体例および実施例によって詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の教示に照らして、これに特定の変更および改変を施すことができることは、当業者には容易に理解できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)固定細胞または未固定細胞を抽出試薬に接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程;および
(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、タンパク質抽出物を生成する工程
を含む、前記固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法であって、前記抽出試薬および前記中和試薬の一方または両方が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、方法。
【請求項2】
(a)前記細胞を抽出試薬に接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程であって、抽出試薬がポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、工程;および
(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、約6〜9のpHのタンパク質抽出物を生成する工程、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(a)前記細胞を抽出試薬に接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程;および
(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、約6〜9のpHのタンパク質抽出物を生成する工程であって、該中和試薬がポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、Brij(商標)表面活性剤である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
Brij(商標)表面活性剤が、Brij(商標)35である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
抽出試薬中のBrij(商標)35の濃度が、約2〜6%(v/v)の範囲内である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
抽出試薬が、約0.1 N NaOH、50 mM クエン酸3ナトリウムをさらに含み、かつ約12.5〜12.9のpHを有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抽出試薬が、Triton(商標)界面活性剤もしくはTween(商標)界面活性剤、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
抽出試薬が、Triton(商標)X−100界面活性剤もしくはTween(商標)−20界面活性剤、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
Triton(商標)X−100界面活性剤の濃度もしくはTWEEN−20(商標)界面活性剤の濃度、または両方の濃度が、約1〜6%(v/v)の範囲内である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
中和試薬が、Trisベースの緩衝剤である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
抽出試薬の添加後、試料が少なくとも10分間インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
抽出試薬の添加後、試料が10分間〜30分間インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
中和試薬の添加後、試料が少なくとも10分間インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
中和試薬の添加後、試料が10分間〜30分間インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項16】
Brij(商標)表面活性剤が、Brij(商標)35ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜23);Brij(商標)30ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜4);Brij(商標)52、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)56ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)58、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)72ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)76、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)78ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)92、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)93、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)97、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)98、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)700、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)21OH、n〜100);もしくはBrij(商標)721、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜21)の一つまたは複数である、請求項4記載の方法。
【請求項17】
工程(a)に先立ち固定細胞または未固定細胞を含む細胞試料を得る工程であって、該細胞試料が、標的タンパク質を含むか、または含むと考えられる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
細胞が、固定した子宮頸部細胞であり、かつ標的タンパク質がヒトパピローマウイルス(HPV)E6タンパク質である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
固定細胞がSUREPATH(商標)、CYTOLYT(商標)、THINPREP(商標)またはPRESERVCYT(商標)輸送液中に存在する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
細胞が、未固定の子宮頸部細胞であり、かつ標的タンパク質がヒトパピローマウイルス(HPV)E6タンパク質である、請求項17記載の方法。
【請求項21】
細胞試料が個人から得られる、請求項17記載の方法。
【請求項22】
pHが、pH約11.0〜pH約13.0の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
抽出試薬が、変性剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
変性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素、またはサルコシルである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
フィルターによってタンパク質抽出物を濾過する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
フィルターが、0.1μm〜50.0μmの孔径を有する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
フィルターが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニル酪酸)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維濾紙、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルおよび塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、オーロン、ポリエステル、ポリスチレンまたはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
以下の工程を含む、すでに公知であるか、またはそうでなければすでに特徴づけられている標的タンパク質を検出するための方法:
(a)請求項1記載の方法に従って、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成する工程;および
(b)前記タンパク質抽出物中の前記タンパク質の存在について検査する工程。
【請求項29】
検査する工程に、標的タンパク質に対する捕捉剤を利用する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
検査する工程が、免疫アッセイを包含する、請求項28記載の方法。
【請求項31】
アッセイが、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
アッセイが、免疫クロマトグラフィーアッセイまたはラテラルフロー(LF)アッセイである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
アッセイに、モノクローナル抗体が結合した金粒子を利用する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
アッセイに、蛍光標識されたモノクローナル抗体を利用する、請求項30記載の方法。
【請求項35】
アッセイに、化学発光粒子、有色/染色ラテックス粒子、SERSラマン粒子、様々なレポーター色素を有するシリカ被覆された金核、またはレポーター色素を有するシリカ被覆された銀核を利用する、請求項30記載の方法。
【請求項36】
アッセイに、一つまたは複数のモノクローナル抗体の連続的な使用を利用する、請求項30記載の方法。
【請求項37】
検査する工程に、サイトメトリービーズアレイ(CBA)またはマルチプレックスビーズアッセイを利用する、請求項28記載の方法。
【請求項38】
標的タンパク質に、ヒトパピローマウイルス(HPV)タンパク質であり、かつ検査する工程に、HPV E6タンパク質に結合するPDZドメインポリペプチドを利用する、請求項28記載の方法。
【請求項39】
未固定細胞が、剥離された子宮頸部細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項40】
固定細胞が、剥離された子宮頸部細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項41】
前記接触させる工程(a)に先立ち、固定細胞または未固定細胞を遠隔地から受け入れる、請求項28記載の方法。
【請求項42】
(d)検査の結果を遠隔地に伝達する工程、
をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項43】
(a)固定細胞または未固定細胞を含む細胞試料、
(b)少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬、および
(c)中和試薬
を含む、請求項1記載の方法に従ってタンパク質抽出物を生成するためのシステムであって、前記抽出試薬および前記中和試薬の一方または両方が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、システム。
【請求項44】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、Brij(商標)界面活性剤である、請求項43記載のシステム。
【請求項45】
Brij(商標)界面活性剤が、Brij(商標)35である、請求項44記載のシステム。
【請求項46】
タンパク質抽出物中の標的タンパク質を検出するための試薬をさらに含む、請求項43記載のシステム。
【請求項47】
フィルターをさらに含む、請求項43記載のシステム。
【請求項48】
フィルターが、0.1μm〜50.0μmの孔径を有する、請求項47記載のシステム。
【請求項49】
フィルターが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニル酪酸)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維濾紙、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルおよび塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、オーロン、ポリエステル、ポリスチレンまたはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項47記載のシステム。
【請求項50】
(a)少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬、
(b)中和試薬、ならびに
(c)前記抽出試薬および前記中和試薬を使用して請求項1記載の方法を実施するための使用説明書
を含む、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するためのキットであって、前記抽出試薬および前記中和試薬の一方または両方が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、キット。
【請求項51】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、Brij(商標)界面活性剤である、請求項50記載のキット。
【請求項52】
Brij(商標)界面活性剤が、Brij(商標)35である、請求項51記載のキット。
【請求項53】
タンパク質抽出物中の標的タンパク質を検出するための試薬をさらに含む、請求項50記載のキット。
【請求項54】
試薬が、標的タンパク質に対する捕捉剤を包含する、請求項53記載のキット。
【請求項55】
標的タンパク質が、HPV E6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、HPV E6タンパク質に対するモノクローナル抗体、またはHPV E6タンパク質に結合するPDZドメインポリペプチドである、請求項54記載のキット。
【請求項56】
(a)標的ウイルスタンパク質が存在するか、または存在すると考えられる細胞を含む細胞試料を抽出試薬に接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程;および
(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、標的ウイルスタンパク質の抽出物を生成する工程
を含む、細胞試料から標的ウイルスタンパク質を抽出するための方法であって、前記抽出試薬および前記中和試薬の一方または両方が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、方法。
【請求項57】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、Brij(商標)表面活性剤である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
Brij(商標)表面活性剤が、約2〜6%(v/v)の濃度で抽出試薬に含まれるBrij(商標)35である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
抽出試薬が、約0.1 N NaOH、50 mMクエン酸3ナトリウム、および12.5〜12.9のpHをさらに含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
抽出試薬が、Triton(商標)界面活性剤もしくはTween(商標)界面活性剤、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
抽出試薬が、Triton(商標)X−100界面活性剤もしくはTween(商標)−20界面活性剤、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
Triton(商標)X−100界面活性剤の濃度もしくはTWEEN−20(商標)界面活性剤の濃度、または両方の濃度が、約2〜6%(v/v)の範囲内である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
中和試薬が、Trisベースの緩衝剤である、請求項56記載の方法。
【請求項64】
抽出試薬の添加後、試料が10分間〜30分間インキュベートされる、請求項56記載の方法。
【請求項65】
中和試薬の添加後、試料が10分間〜30分間インキュベートされる、請求項56記載の方法。
【請求項66】
Brij(商標)表面活性剤が、Brij(商標)35ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜23);Brij(商標)30ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜4);Brij(商標)52、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)56ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)58、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)72、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)76、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)78、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)92、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)93、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)97、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)98、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)700、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)21OH、n〜100);もしくはBrij(商標)721、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜21)の一つまたは複数である、請求項57記載の方法。
【請求項67】
細胞試料中の細胞が、化学固定剤で固定される、請求項56記載の方法。
【請求項68】
化学固定剤が、アルコール、アルデヒド、ケトン、四酸化オスミウム、酢酸、ピクリン酸、重金属イオン塩、およびプロピレングリコールからなる群より選択される、請求項67記載の方法。
【請求項69】
アルコールが、メタノールまたはエタノールであり;アルデヒドがグルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドであり;かつケトンがアセトンである、請求項68記載の方法。
【請求項70】
固定された細胞が、SUREPATH(商標)、CYTOLYT(商標)、THINPREP(商標)またはPRESERVCYT(商標)輸送液中に存在する、請求項67記載の方法。
【請求項71】
工程(a)に先立ち、細胞試料を受け入れる工程をさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項72】
標的ウイルスタンパク質が、病原性ウイルスによってコードされる、請求項56記載の方法。
【請求項73】
病原性ウイルスが、HIV、エボラウイルス、マールブルグウイルス、肝炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、およびヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群より選択される、請求項72記載の方法。
【請求項74】
標的ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質またはE7タンパク質である、請求項56記載の方法。
【請求項75】
HPVが、HPV株4、6、11、20、24、28、36、48、50、16、18、31、35、30、39、45、51、52、56、59、58、33、66、68、69、26、53、73または82である、請求項74記載の方法。
【請求項76】
HPVが、HPV 26、HPV 53、HPV 66、HPV 73、HPV 82、HPV 16、HPV 18、HPV 31、HPV 35、HPV 30、HPV 39、HPV 45、HPV 51、HPV 52、HPV 56、HPV 59、HPV 58、HPV 33、HPV 68、HPV 69およびHPV 82からなる群より選択される発癌性HPV株である、請求項74記載の方法。
【請求項77】
抽出物中の標的ウイルスタンパク質の存在を検出する工程をさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項78】
検出する工程に、標的ウイルスタンパク質に対する捕捉剤を利用する、請求項77記載の方法。
【請求項79】
ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、E6タンパク質に対する抗体である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、PDZドメインを含むポリペプチドを含む、請求項78記載の方法。
【請求項81】
ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、E6タンパク質に対する抗体とPDZドメインを含むポリペプチドとの両方を含む、請求項78記載の方法。
【請求項82】
ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、BPペプチドまたはAPペプチドを含む、請求項78記載の方法。
【請求項83】
PDZドメインが、MAGI−1の第二ドメインであるか、またはDLGもしくはTIP1のPDZドメインである、請求項78記載の方法。
【請求項84】
細胞試料が、粘液、血液または痰をさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項85】
細胞試料が、剥離された子宮頸部細胞を含む、請求項56記載の方法。
【請求項86】
検出する工程が、免疫アッセイを含む、請求項77記載の方法。
【請求項87】
アッセイが、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である、請求項86記載の方法。
【請求項88】
アッセイが、免疫クロマトグラフィーアッセイまたはラテラルフロー(LF)アッセイである、請求項86記載の方法。
【請求項89】
アッセイに、モノクローナル抗体が結合した金粒子を利用する、請求項86記載の方法。
【請求項90】
アッセイに、蛍光標識されたモノクローナル抗体を利用する、請求項86記載の方法。
【請求項91】
アッセイに、化学発光粒子、有色/染色ラテックス粒子、SERSラマン粒子、またはレポーター色素を有するシリカ被覆された金核もしくは銀核を利用する、請求項86記載の方法。
【請求項92】
アッセイに、一つまたは複数のモノクローナル抗体の連続的な使用を利用する、請求項86記載の方法。
【請求項93】
検出する工程に、サイトメトリービーズアレイ(CBA)またはマルチプレックスビーズアッセイを利用する、請求項77記載の方法。
【請求項1】
(a)固定細胞または未固定細胞を抽出試薬に接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程;および
(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、タンパク質抽出物を生成する工程
を含む、前記固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するための方法であって、前記抽出試薬および前記中和試薬の一方または両方が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、方法。
【請求項2】
(a)前記細胞を抽出試薬に接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程であって、抽出試薬がポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、工程;および
(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、約6〜9のpHのタンパク質抽出物を生成する工程、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(a)前記細胞を抽出試薬に接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程;および
(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、約6〜9のpHのタンパク質抽出物を生成する工程であって、該中和試薬がポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、Brij(商標)表面活性剤である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
Brij(商標)表面活性剤が、Brij(商標)35である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
抽出試薬中のBrij(商標)35の濃度が、約2〜6%(v/v)の範囲内である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
抽出試薬が、約0.1 N NaOH、50 mM クエン酸3ナトリウムをさらに含み、かつ約12.5〜12.9のpHを有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抽出試薬が、Triton(商標)界面活性剤もしくはTween(商標)界面活性剤、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
抽出試薬が、Triton(商標)X−100界面活性剤もしくはTween(商標)−20界面活性剤、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
Triton(商標)X−100界面活性剤の濃度もしくはTWEEN−20(商標)界面活性剤の濃度、または両方の濃度が、約1〜6%(v/v)の範囲内である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
中和試薬が、Trisベースの緩衝剤である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
抽出試薬の添加後、試料が少なくとも10分間インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
抽出試薬の添加後、試料が10分間〜30分間インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
中和試薬の添加後、試料が少なくとも10分間インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
中和試薬の添加後、試料が10分間〜30分間インキュベートされる、請求項1記載の方法。
【請求項16】
Brij(商標)表面活性剤が、Brij(商標)35ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜23);Brij(商標)30ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜4);Brij(商標)52、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)56ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)58、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)72ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)76、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)78ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)92、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)93、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)97、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)98、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)700、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)21OH、n〜100);もしくはBrij(商標)721、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル、(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜21)の一つまたは複数である、請求項4記載の方法。
【請求項17】
工程(a)に先立ち固定細胞または未固定細胞を含む細胞試料を得る工程であって、該細胞試料が、標的タンパク質を含むか、または含むと考えられる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
細胞が、固定した子宮頸部細胞であり、かつ標的タンパク質がヒトパピローマウイルス(HPV)E6タンパク質である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
固定細胞がSUREPATH(商標)、CYTOLYT(商標)、THINPREP(商標)またはPRESERVCYT(商標)輸送液中に存在する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
細胞が、未固定の子宮頸部細胞であり、かつ標的タンパク質がヒトパピローマウイルス(HPV)E6タンパク質である、請求項17記載の方法。
【請求項21】
細胞試料が個人から得られる、請求項17記載の方法。
【請求項22】
pHが、pH約11.0〜pH約13.0の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
抽出試薬が、変性剤をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
変性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、尿素、またはサルコシルである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
フィルターによってタンパク質抽出物を濾過する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
フィルターが、0.1μm〜50.0μmの孔径を有する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
フィルターが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニル酪酸)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維濾紙、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルおよび塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、オーロン、ポリエステル、ポリスチレンまたはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
以下の工程を含む、すでに公知であるか、またはそうでなければすでに特徴づけられている標的タンパク質を検出するための方法:
(a)請求項1記載の方法に従って、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成する工程;および
(b)前記タンパク質抽出物中の前記タンパク質の存在について検査する工程。
【請求項29】
検査する工程に、標的タンパク質に対する捕捉剤を利用する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
検査する工程が、免疫アッセイを包含する、請求項28記載の方法。
【請求項31】
アッセイが、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
アッセイが、免疫クロマトグラフィーアッセイまたはラテラルフロー(LF)アッセイである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
アッセイに、モノクローナル抗体が結合した金粒子を利用する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
アッセイに、蛍光標識されたモノクローナル抗体を利用する、請求項30記載の方法。
【請求項35】
アッセイに、化学発光粒子、有色/染色ラテックス粒子、SERSラマン粒子、様々なレポーター色素を有するシリカ被覆された金核、またはレポーター色素を有するシリカ被覆された銀核を利用する、請求項30記載の方法。
【請求項36】
アッセイに、一つまたは複数のモノクローナル抗体の連続的な使用を利用する、請求項30記載の方法。
【請求項37】
検査する工程に、サイトメトリービーズアレイ(CBA)またはマルチプレックスビーズアッセイを利用する、請求項28記載の方法。
【請求項38】
標的タンパク質に、ヒトパピローマウイルス(HPV)タンパク質であり、かつ検査する工程に、HPV E6タンパク質に結合するPDZドメインポリペプチドを利用する、請求項28記載の方法。
【請求項39】
未固定細胞が、剥離された子宮頸部細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項40】
固定細胞が、剥離された子宮頸部細胞である、請求項28記載の方法。
【請求項41】
前記接触させる工程(a)に先立ち、固定細胞または未固定細胞を遠隔地から受け入れる、請求項28記載の方法。
【請求項42】
(d)検査の結果を遠隔地に伝達する工程、
をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項43】
(a)固定細胞または未固定細胞を含む細胞試料、
(b)少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬、および
(c)中和試薬
を含む、請求項1記載の方法に従ってタンパク質抽出物を生成するためのシステムであって、前記抽出試薬および前記中和試薬の一方または両方が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、システム。
【請求項44】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、Brij(商標)界面活性剤である、請求項43記載のシステム。
【請求項45】
Brij(商標)界面活性剤が、Brij(商標)35である、請求項44記載のシステム。
【請求項46】
タンパク質抽出物中の標的タンパク質を検出するための試薬をさらに含む、請求項43記載のシステム。
【請求項47】
フィルターをさらに含む、請求項43記載のシステム。
【請求項48】
フィルターが、0.1μm〜50.0μmの孔径を有する、請求項47記載のシステム。
【請求項49】
フィルターが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニル酪酸)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコン、ポリホルムアルデヒド、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ガラス繊維濾紙、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルおよび塩化ビニルのコポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、オーロン、ポリエステル、ポリスチレンまたはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項47記載のシステム。
【請求項50】
(a)少なくともpH約10.0のpHを有する抽出試薬、
(b)中和試薬、ならびに
(c)前記抽出試薬および前記中和試薬を使用して請求項1記載の方法を実施するための使用説明書
を含む、固定細胞または未固定細胞からタンパク質抽出物を生成するためのキットであって、前記抽出試薬および前記中和試薬の一方または両方が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、キット。
【請求項51】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、Brij(商標)界面活性剤である、請求項50記載のキット。
【請求項52】
Brij(商標)界面活性剤が、Brij(商標)35である、請求項51記載のキット。
【請求項53】
タンパク質抽出物中の標的タンパク質を検出するための試薬をさらに含む、請求項50記載のキット。
【請求項54】
試薬が、標的タンパク質に対する捕捉剤を包含する、請求項53記載のキット。
【請求項55】
標的タンパク質が、HPV E6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、HPV E6タンパク質に対するモノクローナル抗体、またはHPV E6タンパク質に結合するPDZドメインポリペプチドである、請求項54記載のキット。
【請求項56】
(a)標的ウイルスタンパク質が存在するか、または存在すると考えられる細胞を含む細胞試料を抽出試薬に接触させて、少なくともpH約10.0のpHを有する中間組成物を生成する工程;および
(b)前記中間組成物を中和試薬に接触させて、前記中間組成物のpHを中和し、標的ウイルスタンパク質の抽出物を生成する工程
を含む、細胞試料から標的ウイルスタンパク質を抽出するための方法であって、前記抽出試薬および前記中和試薬の一方または両方が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、方法。
【請求項57】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、Brij(商標)表面活性剤である、請求項56記載の方法。
【請求項58】
Brij(商標)表面活性剤が、約2〜6%(v/v)の濃度で抽出試薬に含まれるBrij(商標)35である、請求項57記載の方法。
【請求項59】
抽出試薬が、約0.1 N NaOH、50 mMクエン酸3ナトリウム、および12.5〜12.9のpHをさらに含む、請求項58記載の方法。
【請求項60】
抽出試薬が、Triton(商標)界面活性剤もしくはTween(商標)界面活性剤、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項61】
抽出試薬が、Triton(商標)X−100界面活性剤もしくはTween(商標)−20界面活性剤、またはそれらの混合物をさらに含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
Triton(商標)X−100界面活性剤の濃度もしくはTWEEN−20(商標)界面活性剤の濃度、または両方の濃度が、約2〜6%(v/v)の範囲内である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
中和試薬が、Trisベースの緩衝剤である、請求項56記載の方法。
【請求項64】
抽出試薬の添加後、試料が10分間〜30分間インキュベートされる、請求項56記載の方法。
【請求項65】
中和試薬の添加後、試料が10分間〜30分間インキュベートされる、請求項56記載の方法。
【請求項66】
Brij(商標)表面活性剤が、Brij(商標)35ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜23);Brij(商標)30ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(CH3(CH2)10CH2(OCH2CH2)nOH、n〜4);Brij(商標)52、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)56ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)58、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(C16H33(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)72、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)76、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)78、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)92、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)93、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜2);Brij(商標)97、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜10);Brij(商標)98、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(C18H35(OCH2CH2)nOH、n〜20);Brij(商標)700、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)21OH、n〜100);もしくはBrij(商標)721、ポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル(C18H37(OCH2CH2)nOH、n〜21)の一つまたは複数である、請求項57記載の方法。
【請求項67】
細胞試料中の細胞が、化学固定剤で固定される、請求項56記載の方法。
【請求項68】
化学固定剤が、アルコール、アルデヒド、ケトン、四酸化オスミウム、酢酸、ピクリン酸、重金属イオン塩、およびプロピレングリコールからなる群より選択される、請求項67記載の方法。
【請求項69】
アルコールが、メタノールまたはエタノールであり;アルデヒドがグルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドであり;かつケトンがアセトンである、請求項68記載の方法。
【請求項70】
固定された細胞が、SUREPATH(商標)、CYTOLYT(商標)、THINPREP(商標)またはPRESERVCYT(商標)輸送液中に存在する、請求項67記載の方法。
【請求項71】
工程(a)に先立ち、細胞試料を受け入れる工程をさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項72】
標的ウイルスタンパク質が、病原性ウイルスによってコードされる、請求項56記載の方法。
【請求項73】
病原性ウイルスが、HIV、エボラウイルス、マールブルグウイルス、肝炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、およびヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群より選択される、請求項72記載の方法。
【請求項74】
標的ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質またはE7タンパク質である、請求項56記載の方法。
【請求項75】
HPVが、HPV株4、6、11、20、24、28、36、48、50、16、18、31、35、30、39、45、51、52、56、59、58、33、66、68、69、26、53、73または82である、請求項74記載の方法。
【請求項76】
HPVが、HPV 26、HPV 53、HPV 66、HPV 73、HPV 82、HPV 16、HPV 18、HPV 31、HPV 35、HPV 30、HPV 39、HPV 45、HPV 51、HPV 52、HPV 56、HPV 59、HPV 58、HPV 33、HPV 68、HPV 69およびHPV 82からなる群より選択される発癌性HPV株である、請求項74記載の方法。
【請求項77】
抽出物中の標的ウイルスタンパク質の存在を検出する工程をさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項78】
検出する工程に、標的ウイルスタンパク質に対する捕捉剤を利用する、請求項77記載の方法。
【請求項79】
ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、E6タンパク質に対する抗体である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、PDZドメインを含むポリペプチドを含む、請求項78記載の方法。
【請求項81】
ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、E6タンパク質に対する抗体とPDZドメインを含むポリペプチドとの両方を含む、請求項78記載の方法。
【請求項82】
ウイルスタンパク質が、HPVのE6タンパク質であり、かつ捕捉剤が、BPペプチドまたはAPペプチドを含む、請求項78記載の方法。
【請求項83】
PDZドメインが、MAGI−1の第二ドメインであるか、またはDLGもしくはTIP1のPDZドメインである、請求項78記載の方法。
【請求項84】
細胞試料が、粘液、血液または痰をさらに含む、請求項56記載の方法。
【請求項85】
細胞試料が、剥離された子宮頸部細胞を含む、請求項56記載の方法。
【請求項86】
検出する工程が、免疫アッセイを含む、請求項77記載の方法。
【請求項87】
アッセイが、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である、請求項86記載の方法。
【請求項88】
アッセイが、免疫クロマトグラフィーアッセイまたはラテラルフロー(LF)アッセイである、請求項86記載の方法。
【請求項89】
アッセイに、モノクローナル抗体が結合した金粒子を利用する、請求項86記載の方法。
【請求項90】
アッセイに、蛍光標識されたモノクローナル抗体を利用する、請求項86記載の方法。
【請求項91】
アッセイに、化学発光粒子、有色/染色ラテックス粒子、SERSラマン粒子、またはレポーター色素を有するシリカ被覆された金核もしくは銀核を利用する、請求項86記載の方法。
【請求項92】
アッセイに、一つまたは複数のモノクローナル抗体の連続的な使用を利用する、請求項86記載の方法。
【請求項93】
検出する工程に、サイトメトリービーズアレイ(CBA)またはマルチプレックスビーズアッセイを利用する、請求項77記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−503208(P2011−503208A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534253(P2010−534253)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083707
【国際公開番号】WO2009/065091
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(505088020)アルボー ビータ コーポレーション (12)
【住所又は居所原語表記】6611 Dumbarton Circle Fremont, California United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/083707
【国際公開番号】WO2009/065091
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【出願人】(505088020)アルボー ビータ コーポレーション (12)
【住所又は居所原語表記】6611 Dumbarton Circle Fremont, California United States of America
【Fターム(参考)】
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