説明

細胞レセプタードメインを含むコイルドコイル融合タンパク質

外部ドメイン(ectodomain)およびキナーゼドメインの双方から調製される融合タンパク質および、コイルドコイル誘導性二量体が開示される。レセプタードメインは、コイルドコイルタグによってホモ二量体またはヘテロ二量体の形態で存在する場合、増強されたリガンド結合活性、または増強されたキナーゼ活性を有する。結合の反応速度論および外部ドメイン二量体のアンタゴニスト能力、ならびにシグナル伝達を変化または阻害するためのそれらの使用が記載される。リガンドの結合およびキナーゼ活性の阻害を可能とする化合物を選択するためのアッセイにおける、外部ドメインおよびキナーゼドメインのそれぞれの適用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は一般に、細胞表面レセプターのドメインおよびαヘリックス性コイルドコイルのペプチドサブユニットを含む融合タンパク質の組成物および使用方法に関連する。より具体的には本発明は、レセプターの細胞質内ドメインおよびαへリックス性コイルドコイルのペプチドサブユニットを含む融合タンパク質、ならびにこのような融合タンパク質のホモ二量体およびヘテロ二量体に関連する。本発明はまた具体的には、トランスフォーミング増殖因子β膜結合レセプターの外部ドメインのタンパク質およびαへリックス性コイルドコイルのペプチドサブユニットを含む融合タンパク質、ならびにこのような融合タンパク質のホモ二量体およびヘテロ二量体にも関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
タンパク質の生物学的活性はたいてい高次構造に依存し、ここで特定の三次構造または四次構造が活性に必要である。医薬品としての使用のために、またはスクリーニング方法および診断方法において、生物学的に活性な高次構造の組換えタンパク質の発現は、重大な技術的挑戦である。
【0003】
膜貫通タンパク質の細胞外ドメインの可溶性の形態を調製する一つのアプローチは、タンパク質の可溶性の形態の分泌を可能とする適切なシグナルペプチドを保持または加える一方で、膜貫通ドメインおよび細胞質内ドメインを消去することである(非特許文献1;非特許文献2)。別のアプローチは、タンパク質の細胞外ドメインを、免疫グロブリン重鎖定常領域に接続することによる融合タンパク質として可溶性のタンパク質を発現することである(非特許文献3)。しかし、これらのアプローチはたいてい、最大の生物学的活性に必要な適切な三次構造または四次構造を達成しない、またはその実現を許容しない。たとえ上記のタンパク質が活性であった場合でも、不十分にしか発現しないか、または不安定である。したがって、生物学的に活性でかつ安定な組換えタンパク質を調製することが、当該分野において必要であり続けている。
【0004】
特定の目的のタンパク質の1セットは、成熟したトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)および対応するレセプターであり、これらは、細胞増殖の制御、分化、および免疫反応を含む通常の生理学的プロセスに関与する。TGF−βは、I型TGF−βレセプター(TβRI)、II型TGF−βレセプター(TβRII)およびIII型TGF−βレセプター(TβRIII)として公知の3種類の細胞表面レセプターと結合し、そして複合体を形成することで、シグナル伝達を媒介する(非特許文献4)。リガンドがない場合、I型レセプターおよびII型レセプターの双方はホモ二量体を形成し得る(非特許文献5)。しかし、これらのリガンド独立性レセプター二量体は、それらの細胞外ドメインによってはたらく負の制御効果によって、活性ではない(非特許文献6)。少なくとも3つのTGF−βアイソフォーム(TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3)が哺乳動物細胞に存在する。TGF−β1リガンドアイソフォームおよびTGF−β3リガンドアイソフォームは、II型レセプターの細胞外ドメインに高い親和性を有するが、2つのII型レセプターの細胞外ドメインに同時に結合することで、シグナル伝達に適格な複合体の形成を促進する(非特許文献7;非特許文献8)。この結合現象は、細胞表面のII型レセプターを再指向させると考えられ(非特許文献9)、シグナル伝達に適格な様式で2つのI型レセプターのレクルートメントを許容する(非特許文献10)。そしてII型レセプターキナーゼは、上記複合体内でI型レセプターの細胞質内ドメインをトランスリン酸化し得る。そしてシグナルは、スマッドファミリー(Smad family)の主要なメンバーに関与する現象のカスケードによって核に転位される(非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。
【0005】
TβRIIIは一般に「アクセサリーの」レセプターであると考えられ、その機能はシグナル伝達レセプターにリガンドを与えることである(非特許文献14)。この種の「アクセサリーの」レセプターの必要性があるとする考えは、TGF−β2アイソフォームのTβRIIへの親和性が、他の哺乳動物のアイソフォームに比べて低いという事実によって支持される(非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17)。しかし最近の研究からは、ニワトリ胚の心臓の発達の間のTGF−β1またはTGF−β2の双方が促進する間葉形質転換にTβRIIIが必要であるため、TβRIIIの役割はより複雑であることが示唆される(非特許文献18)。また、TβRIIIの細胞質内ドメインがTβRIIによってリン酸化され得、および相互作用され得ること、ならびに、この相互作用がシグナル伝達の促進に必要であることが示された(非特許文献19)。反対に他の細胞種では、TβRI−TβRII複合体形成を阻害することで、TβRIIIがTGF−βシグナル伝達を阻害する(非特許文献20)。TβRIIIは細胞表面において、硫酸グリコサミノグリカン鎖を含む形態で見出され、この硫酸グリコサミノグリカン鎖はTβRIIIを電気泳動的に異質にする(非特許文献21)。変異解析により、TβRIIIの外部ドメイン内に2つの独立したTGF−β結合ドメインが確認された(非特許文献22;非特許文献23)。このことに一致して、TβRIIIの可溶性外部ドメインは2つのTGF−β分子に同時に結合し得ることが示された(非特許文献24)。
【0006】
TGF−βの過剰発現からは、細胞外マトリックスの異常蓄積により特徴付けられる線維性疾患を含む、いくつかのヒトの障害において重要な役割を果たすことが示された(非特許文献25)。これは腫瘍においても役割を果たし、ここで、スマッドシグナル伝達タンパク質およびTβRIIの遺伝子中の変異または欠失がヒトの腫瘍において観察されるので、TGF−βは腫瘍サプレッサーとして有意な役割を果たすようである(非特許文献26)。反対に、腫瘍の進行の後期においてTGF−βが転位を促進する強力な証拠がある(非特許文献27)。
【非特許文献1】Smithら、Science、1987年、238、p.1704
【非特許文献2】Treigerら、J.Immunol.、1986年、136、p.4099
【非特許文献3】Fanslowら、J.Immunol.、1992年、149、p.65
【非特許文献4】Massague,J.、Annu.Rev.Biochem.、1998年、67、p.753−791
【非特許文献5】Gilboa,L.ら、J.Cell Biol.、1998年、140、p.767−777
【非特許文献6】Zhu,H.J.およびSizeland,A.M.、J.Biol.Chem.、1999年、274、p.29220−29227
【非特許文献7】Letourneur,O.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、1996年、224、p.709−716
【非特許文献8】Hart,P.J.ら、Nat.Struct.Biol.、2002年、9、p.203−208
【非特許文献9】Zhu,H.J.およびSizeland,A.M.、J.Biol.Chem.、1999年、274、p.11773−11781
【非特許文献10】Yamashita,H.ら、J.Biol.Chem.、1994年、269、p.20172−20178
【非特許文献11】Attisano,LおよびWrana,J.L.、Cytokine Growth Factor、1996年、Rev.7、p.327−339
【非特許文献12】Attisano,L.およびWrana,J.L.、Curr.Opin.Cell Biol.、1998年、10、p.188−194
【非特許文献13】Massague,J.、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.、2000年、1、p.169−178
【非特許文献14】Lopez−Casillas,F.ら、Cell、1993年、73、p.1435−1444
【非特許文献15】Cheifetz,S.ら、Cell、1987年、48、p.409−415
【非特許文献16】Cheifetz,S.ら、J.Biol.Chem.、1990年、265、p.20533−20538
【非特許文献17】Segarini,P.R.ら、Mol.Endocrinol.、1989年、3、p.261−272
【非特許文献18】Brown,C.B.ら、Science、1999年、283、p.2080−2082
【非特許文献19】Blobe,G.C.ら、J.Biol.Chem.、2001年、276、p.24627−24637
【非特許文献20】Eickelberg,O.ら、J.Biol.Chem.、2002年、277、p.823−829
【非特許文献21】Lopez−Casillas,Fら、Cell、1991年、67、p.785−795
【非特許文献22】Fukushima,D.ら、J.Biol.Chem.、1993年、268、p.22710−22715
【非特許文献23】Pepin,M.C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1994年、91、p.6997−7001
【非特許文献24】De Crescenzo,G.ら、J.Biol.Chem.、2001年、276、p.29632−29634
【非特許文献25】Border,W.A.およびNoble,N.A.、Am.J.Kidney Dis.1993年、22、p.105−113
【非特許文献26】Massague,Jら、Cell、2000年、103、p.295−309
【非特許文献27】Wakefield,L.M.およびRoberts,A.B.、Curr.Opin.Genet.Dev.、2002年、12、p.22−29
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、TGF−βレセプター群またはこれらのレセプター群のドメイン群を、治療薬としての使用に、またはスクリーニングおよび診断アッセイにおける使用に適切な、生物学的に活性な形態にて提供することが望ましい。より一般的には、任意の選択されたタンパク質のレセプタードメインを、可溶性の形態で、かつ治療薬としての使用のための、そして種々のスクリーニングおよび診断アッセイにおける使用のための、ならびに好ましくは無細胞アッセイにおける使用のための、生物学的に活性な高次構造において提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
一つの局面において、本発明は融合タンパク質を提供し、それはトランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターの細胞外ドメインの全てまたは一部分、およびαヘリックス性コイルドコイルのペプチドサブユニットを含む。
【0009】
一つの実施形態において、上記融合タンパク質は、3〜10個の7つ揃いの反復ユニットを有するKコイルペプチドサブユニットまたはEコイルペプチドサブユニットを含む。上記7つ揃いの反復は、別の実施形態において、配列番号11〜17として識別される配列の群から選択される配列を有する。好ましい実施形態において上記ペプチドサブユニットは、本明細書中で配列番号8(K5)または配列番号5(E5)として識別される配列を有する。
【0010】
別の実施形態において、上記細胞外ドメインは、II型トランスフォーミング増殖因子−βおよびIII型トランスフォーミング増殖因子−βに対するレセプターからなる群より選択される細胞表面レセプターに由来する。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記融合タンパク質は、コイルドコイル二量体を形成するために第二の融合タンパク質と結合し、ここで上記第二の融合タンパク質は、トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞外ドメイン、およびαへリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む。
【0012】
別の局面において、本発明は、上に記述した融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。
【0013】
なお別の局面において、本発明は、上記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを予期する。
【0014】
また別の局面において、本発明はコイルドコイル二量体タンパク質を含み、これは、(1)トランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターの全てまたは一部分の第一の細胞外ドメイン、およびαへリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニット、ならびに(2)(i)第一の細胞外ドメインおよびαへリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニット、または(ii)トランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターの全てまたは一部分の第二の細胞外ドメイン、およびαへリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットのいずれか、を含む。
【0015】
一つの実施形態において上記コイルドコイルタンパク質は、第一のペプチドサブユニットおよび第二のペプチドサブユニットに結合した第一の細胞外ドメインを含むことに基づいて、ホモ二量体である。別の実施形態において上記コイルドコイルタンパク質は、それぞれ第一のペプチドサブユニットおよび第二のペプチドサブユニットに結びついた、第一の細胞外ドメインおよび第二の細胞外ドメインを含むことに基づいて、ヘテロ二量体であり、上記第一の細胞外ドメインおよび第二の細胞外ドメインは異なる。
【0016】
別の実施形態において、上記細胞外ドメインは、II型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターおよびIII型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターからなる群より選択される細胞表面レセプターである。
【0017】
別の実施形態において、上記αへリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニットは、本明細書中にて配列番号8(K5)として識別される配列を有する。上記αへリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットは、本明細書中にて配列番号5(E5)として識別される配列を有し得る。
【0018】
別の局面において、本発明は、上に記述された融合タンパク質の、TGF−βレセプターに結合するTGF−βによって特徴付けられる状態の処置のための生物薬学的薬剤としての使用を含む。
【0019】
別の局面において、本発明はまた、結合活性を阻害し得る化合物の選択の方法も含む。上記方法は、(i)TGF−βレセプターの細胞外ドメインの全てまたは一部分、およびαへリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニット、ならびに(ii)(a)同じTGF−βレセプターの細胞外ドメインまたは(b)異なるTGF−βレセプターの細胞外ドメイン、およびαへリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含むコイルドコイルタンパク質の調製工程;第一のレセプター細胞外ドメインまたは第二のレセプター細胞外ドメインに対するリガンドの存在下で、上記コイルドコイルタンパク質を試験化合物とともにインキュベートする工程;そして、上記試験化合物の、上記リガンドと上記コイルドコイルタンパク質との相互作用を阻害する能力を測定する工程を包含する。
【0020】
一つの実施形態において、上記方法は、II型トランスフォーミング増殖因子−βおよびIII型トランスフォーミング増殖因子−βからなる群より選択されるトランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞外ドメインを含むコイルドコイルタンパク質を調製する工程を包含する。
【0021】
別の実施形態において、上記方法は、コイルドコイルホモ二量体を形成するために、αヘリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニットおよび第二のペプチドサブユニットに結合した、II型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞外ドメインを含むコイルドコイルタンパク質を調製する工程を包含する。
【0022】
また別の実施形態において、上記方法は、コイルドコイルへテロ二量体を形成するために、II型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞外ドメインおよびIII型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞外ドメインを含むコイルドコイルタンパク質を調製する工程を包含する。
【0023】
上記方法において、上記測定する工程は、競合的結合アッセイまたは表面プラスモン共鳴によって測定する工程を包含する。
【0024】
本発明のなお別の局面において、TGF−βの過剰発現によって特徴付けられる状態の処置のための方法が提供される。上記方法は、TGF−βのシグナル伝達を阻害し得るコイルドコイルタンパク質を投与する工程を包含し、ここで上記コイルドコイルタンパク質は、(i)TGF−βレセプターの細胞外ドメインおよびαへリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニット;ならびに(ii)(a)同じTGF−βレセプターまたは(b)異なるTGF−βレセプターの細胞外ドメイン、およびαへリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニット、を含む。
【0025】
上記方法によって処置される状態としては、組織線維増殖性障害(tissue fibroproliferative disorder)、腎臓の進行性腎糸球体疾患、急性呼吸窮迫症候群、肝硬変、糖尿病性腎障害、ヒトメサンギウム増殖性糸球体腎炎、または腫瘍転移が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
別の局面において、本発明はまた、トランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターに由来する細胞質内ドメイン、およびαへリックス性コイルドコイルのペプチドサブユニットを含む融合タンパク質を含む。
【0027】
上記融合タンパク質の上記ペプチドサブユニットは、K5およびE5から選択される。例えば上記ペプチドサブユニットは、本明細書中にて配列番号8(K5)として識別される配列、または配列番号5(E5)として識別される配列を有し得る。
【0028】
上記融合タンパク質において上記レセプターは、I型トランスフォーミング増殖因子−βおよびII型トランスフォーミング増殖因子−βからなる群より選択される。一つの実施形態において上記融合タンパク質は、コイルドコイル二量体を形成するために第二の融合タンパク質と結合し、上記第二の融合タンパク質は、トランスフォーミング増殖因子−β膜結合レセプターの細胞質内ドメインおよびαへリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む。
【0029】
別の局面において、本発明は、上記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、および上記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む。
【0030】
また予期されるのはコイルドコイル二量体タンパク質であり、これは、トランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターの第一の細胞質内ドメインの全てまたは一部分、およびαへリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニット、ならびに(i)上記第一の細胞質内ドメインおよびαへリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニット、あるいは(ii)トランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターに由来する第二の細胞質内ドメイン、およびαヘリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む。
【0031】
一つの実施形態において、上記コイルドコイルタンパク質は、第一のペプチドサブユニットおよび第二のペプチドサブユニットに結合した第一の細胞質内ドメインを含むことに基づいたホモ二量体である。別の実施形態において、上記コイルドコイルタンパク質は、第一のペプチドサブユニットおよび第二ペプチドサブユニットにそれぞれ結合する、第一の細胞質内ドメインおよび第二の細胞質内ドメイン(これらは異なる)を含むことに基づいたヘテロ二量体である。
【0032】
種々の実施形態において、上記コイルドコイルタンパク質の上記レセプターは、I型トランスフォーミング増殖因子−βおよびII型トランスフォーミング増殖因子−βからなる群より選択される。一つの実施形態において、αへリックス性コイルドコイルの上記第一のペプチドサブユニットは、本明細書中にて配列番号8(K5)として識別される配列を有する。一つの実施形態において、αへリックス性コイルドコイルの上記第二のペプチドサブユニットは、本明細書中にて配列番号5(E5)として識別される配列を有する。
【0033】
なお別の局面において、本発明は、キナーゼ活性を阻害し得る化合物を選択するための方法を提供する。上記方法は、(i)TGF−βの細胞質内ドメインおよびαへリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニット;ならびに(ii)(a)同じTGF−βレセプターまたは(b)異なるTGF−βレセプターの細胞質内ドメイン、およびαへリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニット、を含むコイルドコイルタンパク質を調製する工程を包含する。上記コイルドコイルタンパク質は試験化合物と共にインキュベートされ;そして上記試験化合物のレセプタークロスリン酸化の能力を、リン酸化のレベルを検出するための適切な技術(例えば33P−ATPまたは質量分析)によって測定することで決定される。
【0034】
一つの実施形態において、上記方法は、I型トランスフォーミング増殖因子−βおよびII型トランスフォーミング増殖因子−βからなる群より選択されるトランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞質内ドメインを含むコイルドコイルタンパク質を調製する工程を包含する。
【0035】
別の実施形態において、上記方法は、コイルドコイルホモ二量体を形成するために、αへリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニットおよび第二のペプチドサブユニットに結合した、I型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞質内ドメインを含むコイルドコイルタンパク質を調製する工程を包含する。
【0036】
別の実施形態において、上記方法は、コイルドコイルホモ二量体を形成するために、αへリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニットおよび第二のペプチドサブユニットに結合した、II型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞質内ドメインを含むコイルドコイルタンパク質を調製する工程を包含する。
【0037】
コイルドコイルへテロ二量体を形成するために、上記コイルドコイルタンパク質が、I型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞質内ドメインおよびII型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞質内ドメインを含む実施形態もまた企図される。
【0038】
本発明のこれらの目的および特徴、ならびに他の目的および特徴は、以下の本発明の詳細な説明を添付の図面と共に読んだ場合に、より完全に理解される。
【0039】
(配列の簡単な説明)
配列番号1は、図1Aに示される融合タンパク質のアミノ酸配列であり、これは、Eコイルサブユニット(配列番号5)にリンカー(配列番号4)によって結合され、mycでタグを付けられたTGF−βレセプターIIの細胞外ドメイン(TβRIIED、配列番号2)、および2つのグリシンを付加されたC末端Hisタグ(配列番号6)を含む。
【0040】
配列番号2は、TGF−βレセプターIIの細胞外ドメインのアミノ酸配列であり、mycタグ配列(下線、配列番号3)を含む。
【0041】
配列番号3は、配列番号1、7、および9に含まれる、mycタグのアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号4は、TGF−βレセプターIIの細胞外ドメインとコイルドコイルサブユニットとの間のリンカーのアミノ酸配列である。
【0043】
配列番号5は、コイルドコイルヘテロ二量体のEコイルサブユニットのアミノ酸配列であり、5個の7つ揃いの反復ユニットから形成される。
【0044】
配列番号6は、2つのグリシンを付加されたヒスチジンタグのアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号7は、図1Bに示される融合タンパク質のアミノ酸配列であり、Kコイルサブユニット(配列番号8)にリンカー(配列番号4)によって結合され、mycでタグを付けられたTGF−βレセプターIIの細胞外ドメイン(TβRIIED、配列番号2)、および2つのグリシンを付加されたC末端Hisタグ(配列番号6)を含む。
【0046】
配列番号8は、コイルドコイルヘテロ二量体のKコイルサブユニットのアミノ酸配列であり、5個の7つ揃いの反復ユニットから形成される。
【0047】
配列番号9は、図1Cに示される融合タンパク質のアミノ酸配列であり、Kコイルサブユニット(配列番号8)にリンカー(配列番号4)によって結合され、mycでタグを付けられたTGF−βレセプターIIIの細胞外ドメインの膜近位ドメイン(配列番号10)、および2つのグリシンを付加されたC末端Hisタグ(配列番号6)を含む。
【0048】
配列番号10は、TGF−βレセプターIIIの細胞外ドメインの膜近位ドメイン(MP−TβRIIIED)のアミノ酸配列であり、mycタグ(下線)を含む。
【0049】
配列番号11は、配列番号5のEコイルサブユニットにおいて用いられた7つ揃いの反復のアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号12は、コイルドコイル二量体のEコイルサブユニットにおける使用のための、7つ揃いの反復のアミノ酸配列である。
【0051】
配列番号13は、コイルドコイル二量体のEコイルサブユニットにおける使用のための、7つ揃いの反復のアミノ酸配列である。
【0052】
配列番号14は、コイルドコイル二量体のEコイルサブユニットにおける使用のための、7つ揃いの反復のアミノ酸配列である。
【0053】
配列番号15は、配列番号8のKコイルサブユニットにおいて用いられる、7つ揃いの反復のアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号16は、コイルドコイル二量体のKコイルサブユニットにおける使用のための、7つ揃いの反復のアミノ酸配列である。
【0055】
配列番号17は、コイルドコイル二量体のEコイルサブユニットにおける使用のための、7つ揃いの反復のアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号18は、5個の7つ揃いのユニットを有する、Eコイルサブユニットペプチドである。
【0057】
配列番号19は、5個の7つ揃いのユニットを有する、Kコイルサブユニットペプチドである。
【0058】
配列番号20は、N末端にさらなるCys残基およびGly残基を有するコイルドコイルヘテロ二量体の、Kコイルサブユニットのアミノ酸配列である。
【0059】
配列番号21は、Eコイルサブユニット(配列番号5)にグリシンリンカーによって結合した、TGF−βレセプターIIの細胞質ドメインを含む融合タンパク質のアミノ酸配列である。
【0060】
配列番号22は、Kコイルサブユニット(配列番号8)にグリシンリンカーによって結合した、ラットTGF−βレセプターIの細胞質ドメインを含む融合タンパク質のアミノ酸配列である。
【0061】
配列番号23は、K5コイル(配列番号8)についてコードしたcDNAの増幅のための、核酸プライマーである。
【0062】
配列番号24は、K5コイル(配列番号8)についてコードしたcDNAの増幅のための、核酸プライマーである。
【0063】
配列番号25は、MP−TβRIIIEDについてコードしたcDNAの増幅のための、核酸プライマーである。
【0064】
配列番号26は、MP−TβRIIIEDについてコードしたcDNAの増幅のための、核酸プライマーである。
【0065】
配列番号27は、II型TGFβレセプターキナーゼドメインについてコードしたcDNAの増幅のための、核酸プライマーである。
【0066】
配列番号28は、II型TGFβレセプターキナーゼドメインについてコードしたcDNAの増幅のための、核酸プライマーである。
【0067】
配列番号29は、I型TGFβレセプターキナーゼドメインについてコードしたcDNAの増幅のための、核酸プライマーである。
【0068】
配列番号30は、I型TGFβレセプターキナーゼドメインについてコードしたcDNAの増幅のための、核酸プライマーである。
【0069】
配列番号31は、図10Aに示したerbB1CD−K5融合タンパク質のアミノ酸配列であり、そして6アミノ酸リンカー(配列番号32);K5コイル(配列番号8);7アミノ酸リンカー(配列番号33)、およびヒトerbB1配列(受託番号P00533)の残基669〜1210、続いて6つのヒスチジン残基を含む。
【0070】
配列番号32は、erbB1の細胞質ドメインのN末端におけるリンカーのアミノ酸配列である。
【0071】
配列番号33は、コイルドコイルサブユニットとerbB1の細胞質ドメインの間のリンカーのアミノ酸配列である。
【0072】
配列番号34は、図10Bに示したerbB1CD−E5融合タンパク質のアミノ酸配列であり、そして6アミノ酸リンカー(配列番号32);E5コイル(配列番号5);7アミノ酸リンカー(配列番号33)、およびヒトerbB1配列(受託番号P00533)の残基669〜1210、続いて6つのヒスチジン残基を含む。
【0073】
配列番号35は、erbB1細胞質ドメインをコードしたcDNAを増幅するための核酸プライマーである。
【0074】
配列番号36は、結びついたC末端の6×Hisタグ配列を有する、erbB1細胞質ドメインをコードしたcDNAを増幅するために使用される核酸プライマーである。
【0075】
配列番号37は、erbB1細胞質ドメインをコードするcDNAを増幅するために使用される核酸プライマーである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
(発明の詳細な説明)
(I.定義および略語)
他に示されない限り、本明細書中の全ての用語は、本発明の当該分野における当業者にとって有するのと同じ意味を有する。当該分野の定義および用語について、実行者は特に、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel,F.M.ら、John Wiley and Sons,Inc.、Media Pa.)を指向する。
【0077】
アミノ酸残基についての略語は、20種の通常のL−アミノ酸の1つを呼ぶ、当該分野で用いられる標準の3文字コード、および/または1文字コードである。
【0078】
「ペプチド」および「ポリペプチド」は本明細書中で交換可能に用いられ、そして、ペプチド結合によって結びつけられたアミノ酸残基の鎖から作り上げられる化合物を呼ぶ。他に示さない限り、ペプチドの配列は、アミノ末端からカルボキシル末端への順番で与えられる。
【0079】
用語「細胞外ドメイン」および「外部ドメイン」は交換可能に用いられ、そして「ED」と略される。
【0080】
用語「細胞質ドメイン」および「キナーゼドメイン」は交換可能に用いられる。
【0081】
「TβRIIED」は、細胞表面II型TGF−βレセプターの細胞外ドメインを呼ぶ。
【0082】
「MP−TβRIIIED」は、III型TGF−βレセプター外部ドメインの膜近位ドメイン(すなわち、C末端)を呼ぶ。
【0083】
EGFRは上皮細胞増殖因子のためのレセプターを呼び、erbB1、erbB2、erbB3、erbB4を含む。
【0084】
SPRは表面プラスモン共鳴を呼ぶ。
【0085】
RUは共鳴ユニットを呼ぶ。
【0086】
(II.外部ドメイン融合タンパク質の調製および特徴づけ)
第一の局面において、本発明は、αヘリックス性コイルドコイルのペプチドサブユニットに結びつけられた、膜結合レセプターの外部ドメインを含む融合タンパク質に関連する。この節において、TGF−βレセプターに由来する2つの外部ドメインをモデルとして用いる、例示的な融合タンパク質の調製および特徴づけが記載される。具体的には、第1のモデルは、II型TGF−βレセプター由来の外部ドメイン(TβRIIED)、およびE5/K5コイルドコイルのK5コイルまたはE5コイルを含む融合タンパク質である。第2のモデルは、K5コイルに融合した、III型TGF−βレセプター外部ドメインの膜近位ドメイン(すなわち、C末端)(MP−TβRIIIED)を含む融合タンパク質である。これらの融合タンパク質は、表面プラスモン共鳴(SPR)に基づいたバイオセンサーを用いた、TGF−β1への結合の動力学の面において、特徴づけをされた。E5コイルでタグを付けられた融合タンパク質の、K5コイルでタグを付けられた融合タンパク質と二量体化する能力が調査され、そして以下に記載される。コイルドコイル誘導性のホモ二量体レセプター外部ドメインおよびヘテロ二量体レセプター外部ドメインのTGF−β1への結合、およびそれらのインビトロにおけるTGF−β1シグナル伝達の阻害能力が調べられ、そして以下に記載される。
【0087】
(A.融合タンパク質の調製および発現)
図1A〜1Cは、本明細書中に記載された本発明のために設計され、そして発現された例示的な融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。図1Aは、TβRIIED−E5として呼ばれる融合タンパク質を示し、そして本明細書中で配列番号1として識別される。この融合タンパク質は、以下に記載されるように、コイルドコイル二量体の、5個の7つ揃いの反復ユニットを形成するEコイル(配列番号5;図1A中の配列のアミノ酸残基182〜216)にリンカー(配列番号4)を介して結合した、mycでタグを付けられたII型TGF−βレセプターの細胞外ドメイン(配列番号2)を含む。
【0088】
図1Bは第二の例示的な融合タンパク質を示し、本明細書中でTβRIIED−K5と呼ばれ、そして配列番号7として識別される。この融合タンパク質は、コイルドコイル二量体の、5個の7つ揃いの反復ユニットを形成するKコイル(配列番号8)にリンカー(配列番号4)を介して結合した、mycでタグを付けられたII型TGF−βレセプターの細胞外ドメイン(配列番号2)を含む。
【0089】
図1Cは、本明細書中でMP−TβRIIIED−K5と呼ばれ、そして配列番号9として識別される、第三の例示的な融合タンパク質を示す。MP−TβRIIIEDは、コイルドコイル二量体のKコイル(配列番号8)にリンカー(配列番号4)を介して結合した、mycでタグを付けられたIII型TGF−βレセプターの細胞外ドメインの膜近位ドメイン(配列番号10)を含む。
【0090】
図1A〜1Cに示される、上記の3つの例示的な融合タンパク質は、検出のためにN末端にmyc(配列番号3)でタグを付けられ、そして精製のためにC末端にHis(配列番号6)でタグを付けられた。
【0091】
本明細書中に記載される融合タンパク質およびペプチド二量体の構築に用いられるコイルドコイルペプチドは、第一のコイル形成ペプチド(本明細書中で第一のペプチドサブユニットとも呼ばれる)、および第二のコイル形成ペプチド(本明細書中で第二のペプチドサブユニットとも呼ばれる)を含む。上記の2つのコイルは、平行な配置または逆平行な配置のいずれかで、ヘテロ二量体コイルドコイル(コイルドコイルヘテロ二量体)に集合する。平行な配置においては、上記の2つのヘテロ二量体サブユニットペプチドヘリックスは、それらが同じ配向(アミノ末端からカルボキシル末端へ)を有するように整列される。逆平行な配置においては、上記の2つのヘテロ二量体サブユニットペプチドヘリックスが、一方のヘリックスのアミノ末端が他方のヘリックスのカルボキシル末端に整列され、そして逆もまた同じように、整列される。例示的なヘテロダイマーサブユニットは、「Heterodimer Polypeptide Immunogen Carrier Composition and Mothod」と題される国際公開95/31480号パンフレット(国際公開日1995年11月23日)に記載され、本明細書中にその全体が参考として援用される。国際公開95/31480号パンフレットにある手引きに従って設計されたヘテロ二量体サブユニットペプチドは、典型的に逆平行な配向に対して平行な配向に集合する方に優先度を示す。
【0092】
コイルドコイルへテロ二量体の第一のペプチドサブユニットおよび第二のペプチドサブユニットはまた、本明細書中で「Kコイル」(「K」)(正に荷電したサブユニットであって、その荷電がリジン残基によって主に提供されるサブユニットを呼ぶ)、およびEコイル(「E」)(負に荷電したサブユニットであって、その荷電がグルタミン酸残基によって主に提供されるサブユニットを呼ぶ)と呼ばれる。上記KコイルおよびEコイルは、典型的には7アミノ酸残基(7つ揃いのユニットと呼ばれる)を含み、これは選択された回数だけ反復される。上記コイルドコイルペプチドのペプチドサブユニットは一般に類似した大きさであり、典型的には同じ大きさであり、それぞれは長さが約21残基〜約70残基(3〜10個の7つ揃い)の範囲である。例示的な配列番号5は、5個の7つ揃いの反復を含み、それゆえ、本明細書中では「E5」と呼ばれる。しかし、より少ない反復またはより多い反復が用いられ得ることが認められる。同様に、配列番号8(Kコイルサブユニット)は、5個の7つ揃いの反復を含み、そして本明細書中で「K5」と呼ばれるが、3〜10個の7つ揃いのユニットが、コイルの形成のために適すると考えられる。
【0093】
上記Kコイルおよび上記Eコイルの形成のための7つ揃いのユニットを形成する7残基は変化し得る。配列番号5として識別される、上記E5コイルの形成のための7つ揃いのユニットは、以下のアミノ酸を含む:EVSALEK(配列番号11)。上記Eコイルのための他の7つ揃いのユニットとしては、EVSALEC(配列番号12)、EVSALEK(配列番号13)、EVEALQK(配列番号14)が挙げられる。上記Kコイルに関しては、例示的な7つ揃いのユニットとしては、KVSALKE(配列番号15)、KVSALKC(配列番号16)、およびKVEALKK(配列番号17)が挙げられる。EコイルサブユニットまたはKコイルサブユニットを構成する上で、単一の7つ揃いのユニットは、所望の長さのサブユニットを形成するために反復され得る。例えば、配列番号5として識別される上記E5コイルサブユニットは、5回反復される、7つ揃いのユニットEVSALEK(配列番号11)に基づく。EコイルまたはKコイルはまた、所望の長さのコイルを得るために、2種以上の異なる7つ揃いのユニットから構成され得る。例えば、配列番号11、12、および14として識別される7つ揃いのユニット群を含むE5コイルサブユニットは、本明細書中にて配列番号18として識別される。配列番号18中において、2つの末端の7つ揃いのユニットは配列番号14として表される配列を有し、そして3つの中間の7つ揃いのユニットは、配列番号11および配列番号12によって表される配列を有する。他の例として、配列番号19がK5コイルサブユニットに対応し、ここで上記5個の7つ揃いのサブユニットは、2つの末端の7つ揃いのユニットが配列番号17として表され、中間のユニットが配列番号15および配列番号16によって表される配列を有するように整列される。配列番号16によって表される配列は、システイン連結残基を含む。
【0094】
ここで、図1A〜1Cに示される融合タンパク質に戻り、TβRIIED−E5(配列番号1)、TβRIIED−K5(配列番号7)、およびMP−TβRIIIED−K5(配列番号9)をコードするpTT2発現ベクターの構成を、実施例1に記載する。上記タンパク質を、ポリエチレンイミン(PEI)をトランスフェクトビヒクルとして用いた、一過的にトランスフェクトされたHEK 293SF細胞によって発現した。また、実施例1に記載するように、上記融合タンパク質を、アフィニティーカラムクロマトグラフィーによって細胞培養培地から精製した。
【0095】
上記融合タンパク質についてのSDS−PAGEの、銀染色またはクーマシーブルー染色、およびウエスタンブロットを、図2A〜2Bおよび図3A〜3Gに示す。図2A〜2Bは、標準のNi−NTAアフィニティークロマトグラフィーによるTβRIIED−E5タンパク質の精製を示す。図2Aは、TβRIIED−E5の精製の間に収集された種々の画分の、4〜12%の勾配ゲル(還元条件)にてタンパク質を分離した後の、クーマシーブルー染色を示す。レーンW1およびレーンW2は2つの洗浄工程に対応し;レーンFTはフロースルーに対応し、レーン1はイミダゾールによる溶出に対応する。
【0096】
図2Bは、精製の間に収集された種々の画分の、11%SDS−PAGE(非還元条件)にてタンパク質を分離した後の、ウエスタンブロッティングを示し、一次抗体として抗myc抗体を、および二次抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼに結合体化したヤギ抗マウス抗体を使用している。レーン1は、図2Aのレーン1に示したイミダゾール溶出に対応する。レーン2およびレーン3は、同様の精製に由来する2つの他のイミダゾール溶出に対応する。
【0097】
図3A〜3Gは、TβRIIED−K5およびMP−TβRIIIED−K5の精製を示す。TβRIIED−K5の精製の場合、Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーカラムより溶出したタンパク質を、非還元条件下(図3A)および還元条件下(図3Bおよび図3C)にて11%SDS−PAGE上にて電気泳動し、続いてウエスタンブロッティング(図3Aおよび図3B;一次抗体および二次抗体は図2の通り)または銀染色(図3C)を行った。ジスルフィド架橋された凝集体を除くためのCentriprep 30デバイスによる分離の後、単量体TβRIIED−K5の10μLアリコートを、非還元条件下にて11%SDS−PAGE上で電気泳動し、そしてウエスタンブロットした(図3D)。レーンAに示されるサンプルの1/15希釈の10μLアリコートをまた、比較のために電気泳動した(図3E)。MP−TβRIIIED−K5の精製の場合、Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出したタンパク質を、非還元条件下にて11%SDS−PAGE上で電気泳動し、続いてウエスタンブロッティング(一次抗体:抗myc、図3F)および銀染色(図3G)を行った。
【0098】
(B.ホモ二量体およびヘテロ二量体の形成)
別の調査において、上記コイルのタグがTGF−βレセプター細胞外ドメインの二量体化を媒介する能力を、表面プラスモン共鳴(SPR)に基づくバイオセンサー(BIACORETM)を用いて示した。このバイオセンサーは、表面に固定化したタンパク質(リガンド)と、その結合相手(分析物)との間の相互作用のリアルタイムの監視を可能とし、上記結合相手は上記表面上に注入される。注入が進むにつれて(塗布(wash−on)段階)、分析物がリガンドに結合するに従い、分析物の質量の蓄積が任意の共鳴ユニット(RU)として記録される。次いで分析物溶液を緩衝液で置換し、そして表面複合体の解離を記録する(洗浄段階)。必要に応じて上記表面は再生され、すなわち、バイオセンサー表面に残る分析物が溶出される。この一連の工程は、センサーグラムを構成する。
【0099】
実施例2は、上に議論したTβRIIED−K5(配列番号7)融合タンパク質およびMP−TβRIIIED−K5(配列番号9)融合タンパク質を用いて行った調査を記載する。上記融合タンパク質は、K5コイルタグおよびE5コイルタグのコイルドコイル相互作用を通して、TβRIIED−E5融合タンパク質(配列番号1)と二量体化して、TβRIIED−K5/TβRIIED−E5二量体およびMP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5二量体を形成した。TβRIIの細胞外ドメインに結合する抗体である抗TGF−βRIIを、上記バイオセンサーの表面に連結した。図4Aに示す、TβRIIED−E5およびMP−TβRIIIED−K5のヘテロ二量体化を示すために設計された第一の調査において、以下の一連の注入を行った。まず、抗TβRII抗体へのMP−TβRIIIED−K5の任意の非特異的結合があるかどうか評価するために、抗体表面にMP−TβRIIIED−K5を注入した(図4A、「1」)。この注入に続いて、TβRIIED−E5を注入し(図4A、「2」)、次いでMP−TβRIIIED−K5を注入した(図4A、「3」)。図4Aに見られるように、予想した通り、MP−TβRIIIED−K5は、上記抗体と顕著に相互作用することは無かった。しかし、抗体/TβRIIED相互作用を通して、バイオセンサー表面に200RUのTβRIIED−E5が捕らえられた場合、MP−TβRIIIED−K5の注入は、結果としてSPR信号の強い増加(140RU)を招き、このことは、MP−TβRIIIED−K5が、捕らえられたTβRIIED−E5に結合したことを示した。
【0100】
MP−TβRIIIED−K5のTβRIIED−E5への結合が、コイルドコイル相互作用を通して媒介されたことを明白に立証するために第二の調査を行い、ここで、タグを付けないTβRIIEDの注入(図4B、「1」)に続いて、MP−TβRIIIED−K5の注入を行った(図4B、「2」)。この調査はまた、実施例2に記載される。図4Bは、E5タグの非存在下では、TβRIIEDはMP−TβRIIIED−K5と顕著に結合し得なかったことを示す。それゆえ、TβRIIED−E5融合タンパク質およびMP−TβRIIIED−K5融合タンパク質のE5ドメインおよびK5ドメインは、上記の2つの融合タンパク質の二量体化の原因となっている。
【0101】
実施例2に記載される第三の調査において、TβRIIED−E5/TβRIIED−K5ホモ二量体化を媒介するコイルドコイル相互作用の可能性を評価した。濃度の増加するTβRIIED−E5融合タンパク質(31nM、62nM、125nM、250nM、500nM)を、抗体を充填したバイオセンサー表面上、およびコントロールのバイオセンサー表面上に連続的に注入した。結果を図4Cに示し、そしてこの結果は、この一連の注入の後、抗体表面はほとんど飽和されることを示す。しかし、一連のTβRIIED−E5の注入に続いてTβRIIED−K5(50nM)を注入した場合、SPRシグナルの強い増加が観察された。この増加は、抗体に捕らえられたTβRIIED−E5のE5ドメイン、および注入されたTβRIIED−K5のK5ドメインに関連するコイルドコイル相互作用に起因する。この調査は、MP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5の相互作用の場合と同様に、E5コイルおよびK5コイルがTβRIIED−K5/TβRIIED−E5ホモ二量体化を誘導することを示す。
【0102】
(C.動力学的解析)
単量体の形態の融合タンパク質TβRIIED−K5および融合タンパク質MP−TβRIIIED−K5の、TGF−β1への結合の動力学を、BIACORETMバイオセンサーを用いて調査した。同じ方法論を用いて、コイルドコイル誘導性TβRIIED−K5/TβRIIED−E5二量体およびMP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5二量体の結合の動力学もまた調査した。
【0103】
(1.TβRIIED−K5のTGF−β1への結合)
単量体のTβRIIED−K5融合タンパク質(配列番号7)のTGF−βへの結合の特性を、BIACORETMバイオセンサーを用いて調査した。実施例3に記載するように、TGF−β1を、標準のアミノ連結手順によってバイオセンサー表面に連結した(約250RU)。次いで、TβRIIED−K5溶液(9.8nM、14.8nM、22.2nM、33.3nM、および50nM)を、TGF−β1表面上、およびコントロール表面(TGF−β1無し)上に、ランダムに二連で注入した。「二重参照(double referencing)」法によるデータの調製の後、TGF−β1分子上に2つの独立したTβRIIED結合サイトが存在することを示す動力学モデル(2対1の化学量論モデル)を用いて、センサーグラムのセットを全体的にあてはめた。このモデルは、タグの無いTβRIIEDまたはE5でタグを付けたTβRIIEDとTGF−β1との間の相互作用を示すことが出来るので、選択した(De Crescenzo,G.ら、J.Mol.Biol.、328(5):1173−83(2003);De Crescenzo,G.ら、J.Biol.Chem.276:29632−29643(2001))。
【0104】
図5Aは、センサーグラムのセット、および上記の2対1の化学量論モデルを用いた場合に得られる適合を示す。比較のために、単純な動力学モデルをまた、データの解析に用いた。残差(実験的な点と計算上の点との間の差、図5Bおよび5C)の分布から判断されるように、2対1の化学量論モデルによって、より良いあてはめが得られた。加えて、表1に示すように、2対1の化学量論モデルに由来する動力学定数および熱力学定数は、タグを付けないTβRIIEDについて予め決定された動力学定数および熱力学定数によく一致し、このことは、TGF−β1に結合するTβRIIEDにK5タグが影響しないことを示す。
【0105】
(表1:TβRIIED−K5、またはタグを付けないTβRIIEDと相互作用するTGF−β1(結合した)に対する、動力学定数および熱力学定数)
【0106】
【表1】

d1およびKd2について与えられた値は、n回の独立した実験の平均値±標準偏差に対応する。
**De Crescenzo,G.ら、J.Biol.Chem.、276:29632−29643(2001)より。
【0107】
(2.コイルドコイル誘導性TβRIIED−K5/TβRIIED−E5二量体のTGF−β1への結合)
実施例3でまた記述される、別の調査において、TβRIIEDのコイルドコイル誘導性二量体化の効果を調べるために、同じTGF−β1バイオセンサー表面を用いた。等モル濃度(0〜50nM)でインキュベートしたTβRIIED−K5/TβRIIED−E5溶液を、TGF−β1バイオセンサー表面上およびコントロール表面上に、二連で、50μL/分の流速でランダムに注入した。図5Dは、データの調製の後に結果として得られたセンサーグラムを示す。このセンサーグラムのセットは、塗布段階および洗浄段階の双方におけるTβRIIED−K5注入に対応するセンサーグラムのセットと、著しく異なる(図5Aおよび図5Dを比較せよ)。コイルドコイル誘導性TβRIIED−K5/TβRIIED−E5二量体と比較して、TβRIIED−K5の動力学挙動におけるこの相違は、融合タンパク質のコイルドコイルドメインの二量体化が起きたこと、および、結果として生じたTβRIIED人工二量体が、単量体のTβRIIEDよりもより遅い見かけ上の解離速度(off−rate)を有することを示す。
【0108】
次いで、異なる動力学モデルを用いて、TGF−β1/TβRIIED−K5−TβRIIED−E5センサーグラムを全体的にあてはめた。単純な1対1のモデルによる、センサーグラムのセットの解析は、ほとんどあてはまらなかった(残差の標準偏差は6.1に等しい、表2を参照のこと)。単純な結合モデルからのこのような逸脱は、最適化されていない実験条件(例えば、集団輸送の限界、またはクラウディング効果(crowding effect))の結果として生じる人為的影響の存在に起因し得る(O’Shannessy,D.J.およびWinzor,D.J.、Anal.Biochem.236:275−283(1996))。あるいは、それはより複雑な結合機構に起因し得る。次いで、集団輸送の人為的影響の無いことを検証するために、最低濃度のTβRIIED−K5/TβRIIED−E5を100μL/分で注入した。結果として生じたセンサーグラムは、50μL/分で行ったセンサーグラムと重ね合わせることができ(データは示さず)、このことは集団輸送の限界が無いことを示す。比較的少量の結合TGF−β1が用いられたこと、および、同様のTGF−β1表面密度の場合に、クラウディングの人為的影響が無かった(De Crescenzo,G.ら、J.Biol.Chem.、276:29632−29643(2001))ことが過去に示されたことから、クラウディングの人為的効果の存在もまた無いようである。
【0109】
人為的効果の可能性が減少したことから、次いで、より複雑な生物学的モデルをデータの適合に用いた。TGF−β1は共有結合性の二量体であり、そしてTβRIIEDはコイルドコイル相互作用を通して人工的に二量体化されたことから、2つの結合のシナリオを評価した。第一に、TβRIIED−K5/TβRIIED−E5二量体が、同時に2つのTGF−β1分子に結合し得(親和力モデル)、または第二に、TβRIIED−K5/TβRIIED−E5二量体内のそれぞれのTβRIIEDドメインが、1つのTGF−β1単量体に結合する(二量体TGF−βが、2つのTβRIIEDドメインを架橋するように)。このことは結果として、コイルドコイル誘導性二量体内の1つのTβRIIEDドメインが、1つの単量体のTGF−β1に結合し、もう一方のTβRIIEDドメインの、同じTGF−β1二量体のもう一つの単量体への相互作用に続く、連続的結合モデルになる。このことは、最初の結合の後の再構成工程を含む、全体的な1対1の(二量体対二量体の)化学量論モデルに対応する(再構成モデル)。残差の標準偏差ならびにZ1統計学的値およびZ2統計学的値に加えて、これらのモデルを用いた全体的な適合に由来する動力学定数および熱力学定数を、表2に収載する。
【0110】
双方の複雑な動力学モデルは、単純な1対1のモデルよりも良い適合を与えた。図5E〜5Fに示すように、再構成モデル(図5E)は、親和力モデル(図5F)よりも良く、相互作用を示した。このことは、このモデルが残差のより少ない傾向を示したからである。この結論は、残差の標準偏差の値、ならびに、再構成モデルの場合に最低であったZ1統計学的値およびZ2統計学的値によって、補強された(表2)。
【0111】
(表2:コイルドコイル相互作用を通して二量体化したTβRIIEDと相互作用するTGF−β1(結合した)についての動力学定数および熱力学定数)
【0112】
【表2】

−1−1にて
**Mにて
コイルドコイル誘導性TβRIIED−K5/TβRIIED−E5二量体とTGF−β1との相互作用は、再構成工程を含む1対1の化学量論モデルによって最もよく説明され(図5E、表2)、このことは、前もって形成された二量体のTβRIIEDがTGF−β1に結合し、そして再構成を起こすことを示唆した。このことを確かめるために、TβRIIED−E5と合成K5コイルの相互作用についての見かけ上のK(De Crescenzo,G.ら、J.Mol.Biol.、328(5):1173−83(2003)によって、0.5nMと報告された)を、等モル量のTβRIIED−E5およびTβRIIED−K5をプレインキュベートした場合に二量体化する全てのTβRIIEDのパーセントを計算するために用いた。この計算は、TβRIIED−K5およびTβRIIED−E5との間にコイルドコイル相互作用が起きる場合、このコイルドコイル相互作用が、TβRIIED−E5の合成K5コイルとの相互作用と同じ親和性(K)を有することを仮定する。この計算に基づくと、二量体のパーセントは、図5Dにて用いられた濃度の範囲に対して80〜91%まで変化し、このことは、TβRIIEDは二量体としてTGF−β1に結合、すなわち、コイルドコイル誘導性二量体内の1つのTβRIIEDドメインがTGF−β1の1つの単量体に結合し、続いて、他のTβRIIEDドメインが、同じTGF−β1二量体のもう一つの単量体に結合することを示唆した。
【0113】
加えて、単量体TβRIIED−K5の注入、およびコイルドコイル誘導性TβRIIED−K5−TβRIIED−E5二量体の注入の双方について、同じTGF−β1表面を用いたことから、TGF−β1と、結合するタンパク質との相互作用を示す、双方の動力学モデルが適切である場合、表面上の活性なTGF−β1の計算量(これは、データのあてはめの間に決定される全体的なパラメーターである)は同じであるべきである。単量体のTβRIIED−K5の相互作用を、2対1の化学両論モデルによってあてはめた場合、活性TGF−β1の量は、62.5±2RUであると決定された。TβRIIED−K5/TβRIIED−E5データの場合においてTGF−β1の量は、再構成モデルによって61.7±1RUであり、単純モデルによって40±3RUであり、そして親和性モデルによって145±4RUであった。この知見は、TGF−β1の、単量体のTβRIIED−K5との相互作用に対する2対1の化学量論モデル、およびTGF−β1の、コイルドコイル誘導性TβRIIED−K5/TβRIIED−E5二量体との相互作用に対する再構成モデルの妥当性を、さらに支持する。
【0114】
(3.MP−TβRIIIED融合タンパク質、およびMP−TβRIIED−K5/TβRIIED−E5コイルドコイル誘導性二量体の、TGF−β1への結合)
TGF−β1のMP−TβRIIIED−K5融合タンパク質(配列番号9)への結合の動力学を、実施例3に記載するように評価した。また、TGF−β1との結合相互作用に与える、MP−TβRIIIED−K5とTβRIIED−E5の二量体化の効果も調査した。TGF−β1をバイオセンサー表面に結合させ(75RU未満)、そして単量体MP−TβRIIIED−K5、または、コイルドコイル相互作用を通してTβRIIED−E5と二量体化したMP−TβRIIIED−K5のいずれかを、上記のバイオセンサー表面上に注入した。
【0115】
図6A〜6Dは、この調査の結果を示す。双方のセンサーグラムのセットの全体的な適合は、TGF−β1の、単量体MP−TβRIIIED−K5との相互作用、およびMP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5二量体との相互作用が、単純な結合機構から逸脱していたことを示した。図6Aにおいて、62.5nM〜500nMの範囲の異なる濃度のMP−TβRIIIED−K5単量体融合タンパク質を、75RUの結合したTGF−β1上に、およびコントロールの表面上に注入した。点は、実施例2に記載したようなデータの調製の後に得られた共鳴ユニットであり、そして実線は、再構成モデルを用いて全ての曲線を同時にまとめた場合の適合を表す。図6B〜6Cは、再構成モデルを用いた相互作用データの適合からの残差(図6B)、および単純な1対1のモデルを用いた相互作用データの適合からの残差(図6C)を示す。単純なモデルを用いた、TGF−β1/MP−TβRIIIED−K5相互作用の全体的な解析は、以下の動力学定数を与えた:見かけ上の会合速度(on−rate)は(5.0±0.2)×10−1−1と見積もられ、そして見かけ上の解離速度は(2.5±0.1)×10−3−1と見積もられ、49nMの見かけ上のKという結果となった(残差の標準偏差は0.527)。再構成モデルを用いて決定した見かけ上のKは、86nMと見積もられた(残差の標準偏差は0.359)。
【0116】
図6Dは、MP−TβRIIIED−K5単独で用いられたのと同じTGF−β1表面上に注入された、18.8nM〜50nMの範囲の異なる濃度のMP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5コイルドコイル二量体についての相互作用センサーグラムを示す。点は、データの調製の後に得られた共鳴ユニットである。
【0117】
TGF−β1と結合する、非二量体化MP−TβRIIIED−K5(図6A)、およびMP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5二量体の比較(図6D)は、125nMのMP−TβRIIIED−K5(図5A)対150nMのMP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5(図6D)の注入の終わりに、それぞれ6RU対60RUに達したことから証明されるように、コイルドコイル誘導性二量体化が、見かけ上の親和性の増大という結果になることを示した。この著しいRUの相違は、単量体に対する二量体の分子量の増大にのみ起因するものではないようであり、上記のヘテロ二量体に対する結合の複数の接触様式に、より起因するもののようである。それゆえ、上記のコイルドコイル誘導性ヘテロ二量体は、1つのTGF−β1二量体内のTβRII部位およびTβRIII部位の双方に結合するようであり、その結果、コイルドコイル二量体化TβRIIEDについて観察されたのと同じような機構によって、親和性に影響する。
(表3.K5でタグを付けられたTβRIIIED、またはタグを付けられないC末端TβRIIIEDと相互作用するTGF−β1(結合した)についての、動力学定数および熱力学定数。(3連で行った。))
【0118】
【表3】

本発明の別の実施形態において、コイルドコイル誘導性のTβRIIEDの二量体化を達成するための、代替のアプローチが提供される。この実施形態において、2つのタンパク質を架橋するためのアダプターとして作用するように、二量体コイルが用いられる。例えば、本明細書中の調査において、2つのTβRIIED−E5タンパク質の架橋を可能にするK5共有結合性二量体を形成するために、N末端にCysを有するK5サブユニット(配列番号20)を酸化することによって、K5oxと呼ばれる二量体コイルを得た。実施例3に記載した、この実施形態を支持する上で行った調査において、種々の濃度のK5ox(配列番号20)と共にTβRIIED−E5融合タンパク質(配列番号1)をプレインキュベートし、そして固定化したTGF−β1バイオセンサー表面上、およびコントロールのバイオセンサー表面上に、上記溶液を注入した。結果を図7に示し、そしてこの結果は、50nM(センサーグラム2)および150nM(センサーグラム3)のK5oxと共にTβRIIED−E5(300nM)をインキュベートした場合(それぞれ、6:1および2:1のTβRIIED−E5:K5oxモル濃度比)、そのセンサーグラムは、TβRIIED−E5単独での注入に対応するセンサーグラム(センサーグラム1)と非常に異なったことを示す。センサーグラム2およびセンサーグラム3の形は、E5/K5相互作用の結果であるTβRIIED−E5/TβRIIED−K5二量体について得られたセンサーグラムに類似していた(図5Dおよび図7(センサーグラム2およびセンサーグラム3)を比較せよ)。対照的に、過剰のK5ox(900nM)をTβRIIED−E5に加えた場合(3:1の比)、その結合は、TβRIIED−E5単独の結合に類似していた(図7のセンサーグラム(1)およびセンサーグラム(4)を比較せよ)。これらの結果は、TβRIIED−E5の濃度を下回る濃度の場合、K5oxはTβRIIED−E5に1対2の化学量論によって結合し、その結果、TβRIIED−E5/TβRIIED−K5二量体のTGF−β1結合性質(遅い見かけ上の解離速度)に類似したTGF−β1結合性質を有する三量体になったことを示唆する。過剰なK5oxが用いられた場合、結合の化学量論は、1つのTβRIIED−E5に対して1つのK5oxに転じ、その結果、単量体のTβRIIED−E5と同じTGF−β1結合特性(速い見かけ上の解離速度)を有する複合体になった。
【0119】
(D.アンタゴニストの効力)
行った他の調査において、上記融合タンパク質および上記コイルドコイル誘導性二量体の、TGF−β1シグナル伝達に拮抗する能力を試験した。実施例4に記載したこれらの調査において、ルシフェラーゼをトランスフェクトしたミンク肺上皮細胞(MLEC)を96ウェルプレートに接着させた。融合タンパク質またはコイルドコイル誘導性二量体(ヘテロ二量体またはホモ二量体)の存在下において、TGF−β1を上記細胞に加え、そして一晩インキュベートした。次いで細胞を溶解し、そして発光の測定によってルシフェラーゼ活性についてアッセイした。拮抗する融合タンパク質、ホモ二量体、またはヘテロ二量体の非存在下におけるTGF−β1の活性のパーセントとして、活性を表した。結果を図8A〜8Eに示す。
【0120】
図8Aは、融合タンパク質アンタゴニストTβRIIED−K5(白ひし形)およびTβRIIED−E5(白三角)についての、ならびにアンタゴニストであるコイルドコイル誘導性二量体TβRIIED−K5/TβRIIED−E5(等モル濃度の混合物、黒四角)についての、アンタゴニスト濃度(nM)の関数として、パーセント相対的ルシフェラーゼ活性を示す。図8Aに見られるように、TβRIIED−K5(白ひし形)およびTβRIIED−E5(白三角)は、試験した濃度の範囲の全体で(0.1〜30nM)、TGF−β1誘導性レセプターシグナル伝達を阻害できなかった。等モル濃度のE5コイルでタグを付けたTβRIIEDおよびK5コイルでタグを付けたTβRIIEDをプレインキュベートすることで形成した、コイルドコイル誘導性二量体形態のTβRIIEDは、7.5nMの濃度において、シグナル伝達を50%阻害することが出来た。
【0121】
K5ox誘導性のTβRIIEDの二量体化が同じ効果を有するかどうかを評価するために、150nMのTβRIIED−E5を、量の増加するK5oxと共にプレインキュベートした。150nMの濃度のTβRIIED−E5単独(データは示さず)、および100nMまでの濃度のK5ox単独(図8B中の白四角)は、TGF−β1シグナル伝達に拮抗することは出来なかった。しかし、34nMのK5oxの存在下において、150nMのTβRIIED−E5(図8B中の黒四角)は、シグナル伝達の50%を阻害した。逆の実験(すなわち、濃度の増加するTβRIIED−E5と共に、150nMのK5oxをプレインキュベートする)は、図8Cに示すように同様の結果を与え、150nMのK5oxの存在下で、53nMのTβRIIED−E5であるIC50が観察された。
【0122】
二量体化していないMP−TβRIIIED−K5、およびコイルドコイル誘導性TβRIIED−E5/MP−TβRIIIED−K5二量体もまた、拮抗効力について試験した。図8Dは、MP−TβRIIIED−K5(白四角)についての、およびMP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5等モル濃度混合物(黒四角)についての、アンタゴニスト濃度の関数として、相対的ルシフェラーゼ活性の割合を示す。MP−TβRIIIED−K5単独は、TGF−β1シグナル伝達を亢進した。この亢進効果は、K5の疎水性残基を遮蔽するために、MP−TβRIIIED−K5を等モル量のE5コイルとプレインキュベートした場合にも存在し、このことは、この効果がコイルに媒介されるものではないことを示唆した(データは示さず)。対照的に、MP−TβRIIIED−K5を等モル量のTβRIIED−E5とプレインキュベートした場合(図8D、黒四角)、結果として生じたコイルドコイル誘導性二量体は、40nMのそれぞれの外部ドメイン濃度において、シグナル伝達を50%阻害し得た。
【0123】
増加する濃度のTβRIIED−E5を、150nMのMP−TβRIIIED−K5と共にプレインキュベートする、さらなる調査を行った。結果を図8Eに示し、そしてこの結果は、7nMのTβRIIED−E5を150nMのMP−TβRIIIED−K5と共にプレインキュベートした場合に、上記二量体がTGF−β1シグナル伝達を50%阻害したことを示す。
【0124】
要約すると、上記外部ドメインの拮抗効力は、コイルドコイル誘導性二量体化によって亢進された。TβRIIED−E5を、TβRIIED−K5またはK5oxのいずれかとプレインキュベーションすることによる、コイルドコイル相互作用を通して二量体化したTβRIIEDは、TGF−β1シグナル伝達を阻害し得た。シグナル伝達の阻害のIC50は、コイルドコイル二量体およびK5ox二量体について、それぞれ約7.5nMおよび約30nMであった。K5ox誘導性二量体化についてよりIC50が高いことは、E5コイルでタグを付けたTβRIIEDおよびK5コイルでタグを付けたTβRIIEDの単純な混合に比べて、K5oxがより非効果的に二量体化を誘導する事実に起因するようである。
【0125】
150nMを超える濃度における、二量体化していないMP−TβRIIIED−K5は、TGF−β1シグナル伝達を著しく亢進した(図8D)。MP−TβRIIIED−K5を合成E5コイルと共にインキュベーションした結果、同じ結果が与えられたこと(データは示さず)から、この活性の亢進は、対合していないコイルタグの存在に起因するものではなかった。
【0126】
MP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5ヘテロ二量体について、拮抗効果が観察された(図8D)。TβRIIEDコイルドコイル誘導性ホモ二量体におけるように、MP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5混合物の拮抗効力は、コイルドコイル相互作用の親和性によって限定されているようである。実際に、双方のコイルでタグを付けた外部ドメインを等モル濃度プレインキュベートした場合、MP−TβRIIIED−K5の濃度が40nMであった場合に、TGF−β1シグナル伝達は50%阻害された(図8D)。しかし、より高い濃度のTβRIIED−E5(150nM)と、MP−TβRIIIED−K5をプレインキュベートした場合、シグナル伝達の50%阻害は、7nMのMP−TβRIIIED−K5において観察された(図8E)。このことは、同じ濃度のMP−TβRIIIED−K5濃度における、ヘテロ二量体の数が増加の結果であるようである。
【0127】
このように、コイルドコイル誘導性二量体化は、細胞表面レセプターシグナル伝達を阻害するための、TGF−βレセプター外部ドメインの効力を亢進するための戦略として用いることができる。このコイルドコイル誘導性二量体化戦略は、迅速に生成され得、そして評価され得る、レセプター外部ドメインの単量体形態、ホモ二量体形態、およびヘテロ二量体形態を提供する。
【0128】
前述から、いかに種々の、発明のこの局面の対象および特徴が触れられるかが分かり得る。E5コイルおよびK5コイルを含む融合タンパク質(すなわち、TβRIIED−K5、TβRIIED−E5、およびMP−TβRIIIED−K5)は、単量体の形態および二量体の形態にて調製され、そして特徴付けられた。上記融合タンパク質のホモ二量体およびヘテロ二量体は、コイルタグの相互作用によって容易に形成する。上記ホモ二量体およびヘテロ二量体はTGF−β1に結合し得、そしてインビトロでTGF−β1シグナル伝達を阻害し得る。上記ホモ二量体およびヘテロ二量体によるTGF−β1の阻害は、それらの生物薬学的因子としての使用、およびTGF−β1結合を阻害し得る化合物のスクリーニングアッセイにおける使用を許容する。
【0129】
上に記載された調査は、ヒトII型TGF−β細胞表面レセプターの外部ドメイン、およびラットIII型TGF−β細胞表面レセプターの外部ドメインを用いて、完了された。他の種に由来するTGF−βレセプター外部ドメインもまた企図され、そして使用に適切であることが認められる。マウス、ラット、ブタ、ニワトリのTGF−β外部ドメイン配列が、文献に報告される(Guimond,A.ら、FEBS、515:13−19(2002))。これらの配列は、本明細書中に参考として引用される。上記レセプター外部ドメインの全て、または選択された部分を用いて、融合タンパク質が構成され得ることもまた認められる。例えば、生物学的活性を有するレセプターの部分が、融合タンパク質における使用のために選択され得る。より一般的には、本明細書中に記載された外部ドメインと、少なくとも約80%の配列同一性を、より好ましくは85%の配列同一性を、なおより好ましくは90%の配列同一性を、および最も好ましくは95%の配列同一性を有するレセプター外部ドメインが、使用について企図される。
【0130】
(E.使用の方法)
別の局面において、本発明は、TGF−β1の、1つ以上のそのレセプターへの結合活性を阻害し得る化合物を選択するためのスクリーニングアッセイを提供する。上記アッセイを実行するために、上に記載したように、コイルドコイルホモ二量体タンパク質またはヘテロ二量体タンパク質が調製される。上記タンパク質は、(i)第一の膜貫通レセプターの細胞外ドメイン、およびαヘリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニット;ならびに(ii)(a)第一の膜貫通レセプター、または(b)第二の膜貫通レセプターの細胞外ドメイン、およびαヘリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む。特にTGF−βレセプターに関して、上記コイルドコイル二量体は、第一の融合タンパク質および第二の融合タンパク質を含む。上記第一の融合タンパク質は、K5コイルドコイルサブユニットペプチドまたはE5コイルドコイルサブユニットペプチドのいずれかでタグを付けられた、TβRIIレセプターまたはTβRIIIレセプターに由来する外部ドメイン、または外部ドメインの部分を含む。上記第二の融合タンパク質は、上記第一の融合タンパク質に存在する、同じレセプター外部ドメイン(レセプターホモ二量体を完成するため)、あるいは、TβRIIレセプターまたはTβRIIIレセプターに由来する、第一の融合タンパク質に用いられたものとは異なる外部ドメイン、または外部ドメインの部分(レセプターへテロ二量体を完成するため)を含む。上記第二の融合タンパク質中の外部ドメインは、上記第一の融合タンパク質中で用いられたコイルドコイルサブユニットペプチドと反対のコイルドコイルサブユニットペプチドでタグを付けられる。
【0131】
上記コイルドコイルホモ二量体またはコイルドコイルへテロ二量体を、このコイルドコイル二量体内のレセプター外部ドメインに対するリガンドの存在下で、試験化合物とインキュベートする。例えば、TGF−βレセプター由来の外部ドメインを有する、調製された二量体に対しては、適切なリガンドは、このコイルドコイル二量体内の外部ドメインへの結合親和性を有するTGF−βのアイソフォームである。試験化合物の、上記レセプターリガンドと上記コイルドコイル二量体との相互作用を阻害する能力は、当業者に公知の適切な方法(例えば、競合結合アッセイ、バイオセンサーを用いたSPRなど)によって測定される。例えば、競合結合アッセイにおいては、上記コイルドコイル二量体が96ウェルプレートに接着され得、次いで試験化合物と共にインキュベートされ得る。次いで放射標識されたTGF−βリガンドを上記プレートに加え、そしてインキュベートさせておく。未結合のリガンドを除くために洗浄した後、結合したTGF−βの量をアッセイする。試験化合物の存在下および非存在下における、結合したTGF−βの量の比較から、TGF−βの上記レセプターへの結合を阻害する、試験化合物の能力の決定が可能となり、ここで、TGF−βの量の減少が、試験化合物が阻害活性を有することを示す。
【0132】
試験化合物の、TGF−β結合の阻害能力はまた、バイオセンサーを用いても測定され得、ここで、上記TGF−βリガンドは、バイオセンサーの表面に接着される。試験化合物の、上記コイルドコイル誘導性レセプター二量体と、固定化されたリガンドとの間の相互作用を阻害する能力がアッセイされる。
【0133】
本発明のさらに別の局面において、TGF−βの過剰発現によって特徴付けられる状態の処置の方法が企図される。TGF−βの過剰発現は、例えば、組織線維増殖性障害に特徴的である。組織線維症は、細胞外マトリックスの有害な蓄積によって特徴付けられる病理学的状態である。例えば、進行性の腎臓の糸球体の疾患において、細胞外マトリックスはメサンギウム内または糸球体基底膜に沿って蓄積し、最終的に末期の疾患および尿毒症を引き起こす。同様に、成人の、または急性呼吸窮迫症候群は、肺におけるマトリックス物質の有害な蓄積に関与し、一方、肝硬変は、肝臓の瘢痕によって証拠付けられる、有害なマトリックスの蓄積によって特徴付けられる。TGF−βの過剰発現、従って、細胞外マトリックスの有害な蓄積によって特徴付けられる別の状態は糖尿病性腎障害であり、これは現在、進行性の腎不全の最も一般的な原因である。同様に、ヒトメサンギウム増殖性糸球体腎炎および照射後線維症(postradiation fibrosis)は、過剰なTGF−βおよび結合組織の過剰生成によって特徴付けられる。腫瘍転移もまた、過剰はTGF−βの発現によって特徴付けられる。
【0134】
このように、TGF−βの制御されない合成は、組織線維症の発達の根底にある、細胞外マトリックスの有害な蓄積を引き起こす、一つの要因である。進行性の腎臓、肝臓、肺、心臓、骨髄、および皮膚の線維症は、苦しみおよび死の主用な原因、ならびに健康管理の費用の重要な一因の双方である。TGF−βはまた細胞を、よりタンパク質(コラーゲン、ビグリカン、デコリン、およびフィブロネクチンが挙げられる)を生産するように、および、これらのタンパク質を分解する酵素を阻害するように刺激する。
【0135】
従って、2つの外部ドメインまたは外部ドメインの部分を含む、コイルドコイル誘導性レセプター二量体(ホモ二量体またはヘテロ二量体)の投与による、TGF−βの生成および/または過剰発現によって特徴付けられる、これらの状態および他の状態を処置する方法を、本発明は企図するものである。上記外部ドメインまたは外部ドメインの部分は、同じであっても(ホモ二量体に対して)異なっても(ヘテロ二量体に対して)よく、それぞれの外部ドメインはαヘリックス性コイルドコイルのサブユニットでタグを付けられる。上記コイルドコイルホモ二量体またはヘテロ二量体は、細胞表面レセプターへのTGF−βの結合の阻害に効果的であり、それによって、TGF−βレセプター結合によって開始される事象の下流のカスケードを阻止する。
【0136】
所与の患者のための、コイルドコイルホモ二量体またはヘテロ二量体の適切な投与レジメンの決定は、受け持ちの医師の技術の範囲に十分入る。適切な投与量は、年齢および健康の全身状態に基づいて、人から人へ変化するので、患者を「用量滴定する(dose−titrate)」ことが、医師の一般的な業務である;すなわち、所望の反応を生じるのに必要なレベルを下回るレベルの投与レジメンを患者に始めさせ、そして、所望の効果が達成されるまで、徐々に用量を増加させる。
【0137】
本発明はまた、TGF−βレセプター結合を阻害および/または競合し得る化合物を識別する上での使用のための、TGF−β外部ドメインに基づいたコイルドコイル二量体を含むキットを企図する。上記キットは、コイルドコイル二量体化レセプター外部ドメインホモ二量体またはヘテロ二量体を保有する第一の容器を含み、上記二量体は2つの外部ドメイン、または外部ドメインの部分を含み、それは同じであっても(ホモ二量体に対して)異なっても(ヘテロ二量体に対して)よく、それぞれの外部ドメインはαヘリックス性コイルドコイルのサブユニットでタグを付けられる。コイルドコイル二量体化レセプター外部ドメインを供給するよりも、上記キットは、第一の融合タンパク質を有する容器、第二の融合タンパク質を有する容器を提供し得;上記2つの融合タンパク質は、使用に先立って使用者によって併せられ、コイルドコイル二量体化レセプター外部ドメインを形成することが理解される。上記キットはまた、上記コイルドコイル二量体化レセプターに対するリガンド(用語リガンドは、一般的に結合相手を呼ぶ)を保有する容器を備え、例えばこのリガンドは、タンパク質であってもペプチドであってもよい。TGF−β外部ドメインを用いて形成されるコイルドコイル二量体に対するリガンドの特定な例は、TGF−βである。上記リガンドは、通常の技術を用いて、検出のために標識を付けられ;この標識は、放射性標識、蛍光標識、光標識などであり得る。上記キットはまた、上記キットの構成成分の使用を記載した、記述された使用説明書を備え、ここで使用者は、1つ以上の試験化合物の存在下および/または非存在下において、上記コイルドコイル二量体の全てまたは一部分を、上記の標識されたリガンドと混合する。試験化合物の、標識されたリガンドへのコイルドコイル二量体の結合の阻害能力が検出される。上記使用説明書はまた、必要に応じて、洗浄工程および/または分離工程のための指導を提供し得る。
【0138】
(III.細胞質ドメイン融合タンパク質の調製および特徴付け)
別の局面において、本発明は、膜貫通結合レセプターの細胞質ドメイン、およびコイルドコイル二量体のペプチドサブユニットを含む融合タンパク質を含む。上記融合タンパク質は、好ましくは、細胞レセプターの可溶性の細胞内ドメインを用いて構成され;すなわち、細胞レセプターの膜貫通架橋セグメントが除かれる。TGF−βおよび上皮細胞増殖因子に対する細胞表面レセプターに由来する細胞質ドメインを含み、αヘリックス性コイルドコイルのペプチドサブユニットに結合した融合タンパク質を、ここで記述されるように、調製した。
【0139】
実施例5に詳述するように、本明細書中で配列番号21として識別される配列を有する、II型TGF−βレセプター由来のキナーゼドメイン、および、コイルドコイル二量体のNH末端Eコイル(配列番号5)を含む融合タンパク質を調製した。本明細書中で配列番号22として識別される配列を有する、I型TGF−βレセプター由来のキナーゼドメイン、および、コイルドコイル二量体のNH末端Kコイル(配列番号8)を含む第二の融合タンパク質を、実施例5に記載するように調製した。手短に言うと、レセプタードメインについてコードする配列を、コイルドコイル尾部を導入するようにPCR増幅した。増幅した配列をpBlueBacベクターに結合し、そして昆虫細胞内でタンパク質を発現するために用いた。組換え融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、そして電気泳動で特徴付けた。
【0140】
図9は、コイルドコイルポリペプチドのペプチドサブユニット(K5またはE5)でタグを付けたTGF−βレセプターIまたはTGF−βレセプターIIのキナーゼドメインを含む融合タンパク質、およびこの2つの融合タンパク質のヘテロ二量体の自己リン酸化を示すSDS−PAGEゲル電気泳動である。それぞれの融合タンパク質または二量体を、P33−γATPと共にインキュベートし、ついで電気泳動した。図中のレーン1は、K5ペプチドサブユニットに結合した、TGF−βレセプターI細胞質ドメインに対応し;レーン2は、E5ペプチドサブユニットでタグを付けられたTGF−βレセプターII細胞質ドメインに対応し;レーン3は、TGF−βレセプターI−K5およびTGF−βレセプターII−E5の混合物であり;そしてレーン4は、TGF−βレセプターI−K5およびTGF−βレセプターII−E5を共発現したサンプルである。見られるように、ヘテロ二量体に対応するレーン4は最も強い自己リン酸化を示し、このことは、コイルドコイルへテロ二量体として存在する場合、キナーゼドメインが生物学的に活性である、すなわち、クロスリン酸化(シグナル伝達を開始する事象)を促進するような配向にあることを示す。
【0141】
上皮細胞増殖因子レセプター(EGFR)erbB1細胞質ドメイン(CD)を含む融合タンパク質を、実施例6に記載するように調整した。erbB1をコードするDNA構造物を、E5またはK5のためのDNA構造物に結合させ、そして、EGFR erbB1−K5(配列番号31)タンパク質、およびEGFR erbB1−E5(配列番号34)融合タンパク質を産生するための発現ベクターにサブクローン化した。erbB1−K5細胞質ドメイン融合タンパク質のアミノ酸配列を図10Aに示し(erbB1CD−K5)、そして、erbB1−E5細胞質ドメイン(erbB1CD−E5)融合タンパク質のアミノ酸配列を図10Bに示す。図10Aは、erbB1CD−K5融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号31)を示す。erbB1CD−K5残基1〜6(下線)は、6アミノ酸リンカー(配列番号32)に対応し;erbB1CD−K5残基7〜41は、K5コイル(配列番号8)に対応し;erbB1CD−K5残基42〜48(下線)は、7アミノ酸リンカー(配列番号33)に対応し;erbB1CD−K5残基49〜590は、Swiss Proteinデータベース(受託番号P00533)にて用いられる番号付けに従い、ヒトerbB1配列の細胞質ドメインを含む残基669〜1210に対応し;erbB1CD−K5残基591〜596(下線)は、6アミノ酸Hisタグペプチド配列に対応する。
【0142】
図10Bは、erbB1細胞質ドメイン−E5(erbB1CD−E5)融合タンパク質(配列番号34)のアミノ酸配列を示す。erbB1CD−E5残基1〜6(下線)は、6アミノ酸リンカー(配列番号32)に対応し;erbB1CD−E5残基7〜41は、E5コイル(配列番号5)に対応し;erbB1CD−E5残基42〜48(下線)は、7アミノ酸リンカー(配列番号33)に対応し;erbB1CD−E5残基49〜590は、Swiss Proteinデータベース(受託番号P00533)にて用いられる番号付けに従い、ヒトerbB1配列の細胞質ドメインを含む残基669〜1210に対応し;erbB1CD−E5残基591〜596(下線)は、6アミノ酸Hisタグペプチド配列に対応する。
【0143】
実施例6Bに記載するように、erbB1の細胞質ドメインを、上記融合タンパク質(erbB1CD−K5およびerbB1CD−E5)を、およびerbB1全長をコードするプラスミドを、ヒト胚性腎臓293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクト後、erbB1キナーゼインヒビターAG1478を加えた。細胞溶解物のウエスタンブロット解析を行い、そしてその結果を図10C〜10Dに示す。図10Cは、AG1478インヒビターのEGFR自己リン酸化への効果を決定するための、ホスホチロシンの検出のためのウエスタンブロットである。図10Dは、抗erbB1ウエスタンブロットであり、それぞれのサンプル中のトランスフェクトされたEGFRの量を示す。図10C〜10Dのレーン1〜2は、コイルを有しないerbB1キナーゼドメインをトランスフェクトした細胞溶解物に対応し、ここでレーン1は、AG1478インヒビターで処置していないコントロールであり、そしてレーン2は、AG1478インヒビターで処置した。このインヒビターは、コイルドコイル二量体化していないerbB1細胞質ドメインのリン酸化には、ほとんど、または全く効果を有しなかった。レーン3および4は、erbB1−K5およびerbB1−E5をトランスフェクトした細胞に対応し、そして、AG1478インヒビターで処置していない(レーン3)、またはインヒビターで処置した(レーン4)細胞に対応する。レーン5および6は、全長のerbB1をトランスフェクトした細胞に対応し、そして、インヒビターで処置していない(コントロール、レーン5)、またはインヒビターで処置し(レーン6)、続いてEGFで刺激した細胞に対応する。このインヒビターによる自己リン酸化の阻害は、全長のerbB1(レーン6)、およびコイルドコイル二量体化したerbB1細胞質ドメイン(レーン4)において観察されたが、コイルを有しないerbB1細胞質ドメイン(レーン2)においては観察されなかった。このことは、erbB1のコイルドコイル二量体化が、erbB1の、erbB1キナーゼインヒビターに対する感受性をより高めることを示す。すなわち、キナーゼドメインが二量体化した場合、この阻害の性質は、リガンドによって活性化された野生型のレセプターの性質により類似する。
【0144】
(A.使用の方法)
タンパク質−タンパク質相互作用は、環境の刺激に対する細胞の反応のほとんどに関与する。例えば、シグナル伝達において、タンパク質−タンパク質相互作用は、原形質膜から細胞質を通って核へと届くシグナル伝達の促進または制御に用いられる。シグナル伝達経路の特定の段階のインヒビターをスクリーニングするための方法およびアッセイであるような、これらの相互作用を調節する手段、および分子レベルでの生物学的反応を調査するための手段が所望される。このようなインヒビターは、治療因子の候補である。上に記載したように、TGF−β過剰について、レセプターシグナル伝達が、線維性障害、免疫抑制、および転移における疾患の進行に、原因として関連する。セリン−トレオニンキナーゼレセプターのTGF−βレセプタースーパーファミリーにおいて、シグナル伝達が起きるためには、2つの膜貫通レセプター(I型およびII型)が必要である。具体的には、II型レセプターへのTGF−βの結合が、複合体へのI型レセプターの補充および配向を誘導し、このことが、構成的に活性なII型レセプターキナーゼが、I型レセプターをリン酸化することを許容する。順番に、I型レセプターキナーゼが、シグナル伝達経路の下流の基質をリン酸化する。このように、TGF−βレセプターからのシグナル伝達を選択的に阻害するための方法および因子は、臨床的に価値がある。
【0145】
従って、別の局面において、本発明は、キナーゼ活性を阻害し得る化合物の選択のための方法を提供する。この方法において、細胞表面レセプターの細胞質ドメインに対応する配列を有するレセプターペプチド、およびαヘリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニットを含む第一の融合タンパク質;ならびに、細胞表面レセプターの細胞質ドメインに対応する配列を有するレセプターペプチド、およびαヘリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む第二の融合タンパク質を含むコイルドコイルタンパク質が調製される。上記レセプターペプチドは、第一の融合タンパク質および第二の融合タンパク質において同じであっても異なってもよく、結果としてそれぞれホモ二量体またはヘテロ二量体を生じる。より特定の実施形態において、上記コイルドコイルタンパク質は、(i)TGF−βレセプターまたはEGFレセプターの細胞質ドメイン、およびαヘリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニット;ならびに(ii)(a)同じTGF−βレセプターまたはEGFレセプター、あるいは(b)異なるTGF−βレセプターまたはEGFレセプターの細胞質ドメイン、およびαヘリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む。上記コイルドコイルタンパク質を、試験化合物と共にインキュベートする。適切な時間だけインキュベートした後、試験化合物の、レセプタークロスリン酸化を阻害する能力を、適切な技術(例えば、P33γATPを用い、続いてSDSゲル電気泳動を行うか、または、非放射性ATPを用い、続いてリン酸化の質量分析解析を行う)によって測定する。
【0146】
この方法において、上記コイルドコイルタンパク質はホモ二量体またはヘテロ二量体のいずれであってもよい。換言すれば、ホモ二量体のためには、上記コイルドコイルタンパク質は2つの融合タンパク質を含み得、双方の融合タンパク質は、例えばTGF−βレセプターI、TGF−βレセプターII、またはEGFレセプターに由来する同じキナーゼドメインを有し、一方の融合タンパク質はKコイルサブユニットを有し、他方はEコイルサブユニットを有する。こうして、上記融合タンパク質はホモ二量体に二量体化する。ヘテロ二量体のためには、上記の2つの融合タンパク質は、TGF−βレセプターまたはEGFレセプターの異なる細胞質ドメインを有する。ヘテロ二量体についての例示的な融合タンパク質は、一方の融合タンパク質がTGF−βレセプターIについてのキナーゼドメインを有し、そして他方がTGF−βレセプターIIについてのキナーゼドメインを有する。上記2つの融合タンパク質は、二量体化してヘテロ二量体を形成する。
【0147】
本発明はまた、レセプターキナーゼ活性を阻害または減少し得る化合物の同定、および、上記コイルドコイル二量体化レセプターの、相互作用リガンド(ペプチドまたはタンパク質が挙げられるが、これらに限られない)との結合を崩壊させ得る化合物の同定における使用のためのキットが企図される。上記キットは、レセプター細胞質ドメインおよびαヘリックス性コイルドコイルの第一のサブユニットの第一の融合タンパク質、ならびに、レセプター細胞質ドメインおよびαヘリックス性コイルドコイルの第二のサブユニットの第二の融合タンパク質から形成されるコイルドコイル二量体を含み;上記2つの融合タンパク質はコイルドコイル二量体を形成する。上記第一の融合タンパク質および第二の融合タンパク質が、使用に先立って、コイルドコイルを形成するために使用者によって合わせられる、別々の容器において提供され得ることが理解される。上記コイルドコイル二量体における使用のために選択されるキナーゼドメインは、ホモ二量体を提供してもヘテロ二量体を提供してもよく、そして上記融合タンパク質の細胞質ドメインは、レセプター細胞質ドメインの全てからなっても、部分からなってもよい。上記キットはまた、キットの構成成分の使用のための、記述された使用説明書を備え、ここで使用者は、上記コイルドコイル二量体の全てまたは一部を、1つ以上の試験化合物の存在下または非存在下において、キナーゼ反応を可能とする、キットの供給する化合物または使用者の供給する化合物(例えば、標識されたATP)と混合する。試験化合物の、キナーゼ反応(すなわち自己リン酸化)を阻害または亢進する能力は、通常の技術を用いて検出される。上記キットはまた、必要に応じて、目的のレセプターによってリン酸化され得る、またはこれに結合し得る別のタンパク質またはペプチドを提供し得る。
【0148】
(IV.融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、およびベクター)
本発明の別の局面において、上に記載した融合タンパク質、すなわち、膜貫通レセプターの外部ドメインまたは細胞質ドメイン、およびコイルドコイル二量体サブユニットを含む融合タンパク質についてコードするポリヌクレオチドが提供される。上記融合タンパク質についてのアミノ酸配列が、対応する核酸配列、典型的にはDNA配列を生成するために用いられる。生成されたDNA配列のコドン使用頻度は、当該分野で公知であるように、特定の宿主系における発現に最適化され得る。DNA配列の合成は、当該分野で周知の技術によって、合成的になされる。
【0149】
また本発明に含まれるのは、上記融合タンパク質をコードする配列を含む発現ベクターである。上記発現ベクターはまた典型的には、適切な宿主におけるコード領域の発現を達成するために、発現制御エレメントを含む。上記制御エレメントは一般的に、プロモーター、翻訳開始コドン、ならびに翻訳終止配列および転写終止配列、そして上記ベクターへの挿入を導入するための挿入部位を含む。
【0150】
上記融合タンパク質をコードするDNAは、適切な宿主系におけるタンパク質の発現をもたらすために、任意の数のベクターにクローン化され得る。さらなる特徴が、上記発現ベクターに操作され得る(例えば、発現した配列の培養培地への分泌を促進するリーダー配列)。組換え的に生成されたタンパク質は、溶解された細胞または培養培地から単離され得る。精製は当該分野で公知の方法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなど)によってなされる。
【実施例】
【0151】
(V.実施例)
以下の実施例は、本明細書中に記載された本発明をさらに例示するものであり、そして、決して、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0152】
(実施例1 TβRIIED−E5融合タンパク質、TβRIIED−K5融合タンパク質、およびMP−TβRIIIED−K5融合タンパク質の生産についての発現ベクターの構築)
(A.材料)
E5コイルおよびK5コイルをコードするcDNAを含むpcDNA3ベクター(pcDNA3−K5coilおよびpcDNA3−E5coil)、ならびに、N末端性mycタグ付きII型TGF−βレセプターについてコードするcDNAを含むpcDNA3ベクター(pcDNA3−TβRII)を、The Biotechnology Research Institute(Montreal、Canada)から入手した。mycタグ付きの、III型TGF−βレセプター細胞外ドメインの膜近位ドメインを含むpcDNA3ベクター(pcDNA3−MP−TβRIIIED)を、以前に記載された(Pepin,M.C.ら、FEBS Lett.377:368−372、(1995))ように調製した。全ての酵素は、New England Biolabs Inc.から入手し、そして製造業者の推奨に従って用いた。全てのプライマーは、Hukabel Scientific Ltd.(Montreal、Quebec、Canada)から購入した。組換えヒトTGF−β1および抗hTGF−βRII抗体は、R&D Systems(Minneapolis、MN)から購入した。E.coli中で発現し、精製し、そしてリフォールディングした組換えヒトTβRIIED(Hart,P.J.ら,2002)は、Dr.Hinck(San Antonioのテキサス大学健康科学センター(Health Sciences Centre))からの親切な贈り物であった。発現ベクターpTT2は、De Crescenzo,Gら、J.Mol.Biol.、328(5):1173−83(2003)にて、他で記載されたように調製した。
【0153】
BIACORE 3000、CM5センサーチップ、N−ヒドロキシスクシニミド(NHS)、N−エチル−N’−(3−ジエチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド(EDC)、および1Mエタノールアミン(pH8.5)は、BIACORE Inc.(Piscataway、NJ、USA)から購入した。
【0154】
(B.TβRIIED−E5、TβRIIED−K5、およびMP−TβRIIIED−K5の発現ベクターの構築)
pTT2 TβRIIED−E5ベクターの構築は、De Crescenzo,G.ら、J.Mol.Biol.、328(5):1173−83(2003)に記載される。
【0155】
pTT2 K5coilの構築のために、K5コイルについてコードするcDNAを、テンプレートとしてpcDNA3−K5coil、および以下のプライマー:
for
【0156】
【表4】

(配列番号23;NotI制限酵素部位に下線を施される)、および
rev
【0157】
【表5】

(配列番号24;BamHI制限酵素部位に下線を施される)を用いてPCR増幅した。
【0158】
結果として生じる断片をNotI/BamHIで消化し、そして同じ酵素で消化したpTT2に結合した。
【0159】
pTT2 TβRIIED−K5の構築のために、mycタグ付きTβRIIEDについてコードするcDNAを、他に記載するように(De Crescenzo,G.ら、J.Mol.Biol.、328(5):1173−83(2003))PCR増幅し、HindIII/NotIで消化し、そして同じ酵素で消化したpTT2 K5coilに結合した。
【0160】
pTT2 MP−TβRIIIED−K5の構築のために、mycタグ付きのMP−TβRIIIEDについてコードするcDNAを、テンプレートとしてpcDNA3−MP−βRIII、および以下のプライマー:IIIfor
【0161】
【表6】

(配列番号25;NheI制限酵素部位に下線を施される)
およびIIIrev
【0162】
【表7】

(配列番号26;NotI制限酵素部位に下線を施される)を用いてPCR増幅した。
【0163】
結果として生じる断片をNheI/NotIで消化し、同じ酵素で消化したpTT2 K5coilに結合した。
【0164】
次いで、pTT2 TβRIIED−E5連結、pTT2 TβRIIED−K5連結、およびpTT2 MP−TβRIIIED−K5連結をEscherichia coli(DH5α)に形質転換し、そしてMAXI prepカラム(QIAgen、Mississauga、Ontario、Canada)を用いて、プラスミドを精製した。それぞれの構造物を配列決定によって検証した。定量のために、プラスミドをpH7.4で50mMのTris−HClに希釈し、そして260nmおよび280nmにおける吸収を測定した。A260/A280の比が1.8〜2.0であるプラスミド調製物のみを、一過性トランスフェクトに用いた。
【0165】
(C.一過性トランスフェクト)
上記ベクターを、De Crescenzo,G.ら(J.Mol.Biol.、328(5):1173−83(2003))に記載されるように、トランスフェクトビヒクルとしてポリエチレンイミン(PEI)を用いて、HEK 293SF細胞に一過性にトランスフェクトした。組換えタンパク質を、一過性にトランスフェクトされた細胞によって発現させ、そして培養液中に分泌させた。培養物をトランスフェクト後5日で収集し、そして3500×gで10分間の遠心分離により、培養液から不純物を除去した。
【0166】
(D.TβRIIED−E5融合タンパク質、TβRIIED−K5融合タンパク質、およびMP−TβRIIIED−K5融合タンパク質の精製)
TβRIIED−E5を、De Crescenzo,G.ら(J.Mol.Biol.、328(5):1173−83(2003))に記載され、そして図2に示されるように精製した。TβRIIED−K5融合タンパク質およびMP−TβRIIIED−K5融合タンパク質を、Ni−NTAアガロースアフィニティーカラム(総容積2mL、QIAgen)を用い、培養物培養液を重力フローにより充填することで精製した。次いで、上記カラムを25mLの緩衝液A(50mMリン酸ナトリウム、300mM NaCl、pH7.4)で2回洗浄した。緩衝液B(緩衝液A+pH7.4で100mMのイミダゾール、8mLの画分を収集)で溶離を達成した。フロースルー画分を2回再充填し、そして上と同じ条件を用いて溶離した。次いで、溶離画分(それぞれ8mL)を、Centriprep 10デバイス(Amicon)を、製造業者の推奨に従って用いて、個々に濃縮した(TβRIIED−K5については、この工程は、PBSへの緩衝液交換を含んだ)。精製された融合タンパク質の濃度を、ウシ血清アルブミンを標準物質として用いて、Coomassie Plus Protein Assay Reagent Kit(Pierce)によって決定した。500mLの調製済みの培養液から得たTβRIIED−E5、TβRIIED−K5、およびMP−TβRIIIED−K5の収量は、それぞれ約766μg、約570μg、および約600μgであった。
【0167】
(E.電気泳動、ウエスタンブロッティング、銀染色、クーマシーブルー染色)
上記融合タンパク質の純度を、還元条件下にて11%SDS−ポリアクリルアミドゲルまたは4〜12%勾配SDS−ポリアクリルアミドゲル上でタンパク質を分離した後に、Silver Stain Plus Kit(Bio−Rad)を用いた銀染色、またはクーマシーブルー染色のいずれかによって評価した。精製したタンパク質をまた、還元条件下および非還元条件下におけるSDS−ポリアクリルアミドゲルでのタンパク質分離に続くウエスタンブロット(抗myc9E10、SantaCruz)によって検出した。結果を図2および図3に示す。ここで、ウエスタンブロット検出は、一次抗体として抗mycを、および二次抗体として西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ヤギ抗マウスを用いて行った。図面において、レーンFTはアフィニティーカラムのサンプル培養液通過の後のフロースルーに対応し;レーンW1およびレーンW2は、緩衝液Aによる2回のカラム洗浄に対応し;図2のレーン1、レーン2、およびレーン3は、緩衝液BによるTβRIIIED−E5の3つの溶離液に対応する。図3は、TβRIIED−K5およびMP−TβRIIIED−K5の精製を示す。TβRIIED−K5の精製の場合において、Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶離したタンパク質を、非還元条件下(A)および還元条件下(BおよびC)において11%SDS−PAGE上で電気泳動し、続いてウエスタンブロッティング(AおよびB;一次抗体および二次抗体は図2の通り)、または銀染色(C)を行った。ジスルフィド架橋された凝集体を除くための、Centriprep 30デバイスによる分離の後、単量体のTβRIIED−K5の10μLアリコートを、非還元条件下において11%SDS−PAGE上で電気泳動し、そしてウエスタンブロットした(D)。レーンAに示されるサンプルの1/15希釈の10μLもまた、比較のために電気泳動した(E)。MP−TβRIIIED−K5の精製の場合において、Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶離したタンパク質を、非還元条件下において11%SDS−PAGE上で電気泳動し、続いてウエスタンブロッティング(一次抗体:抗myc、F)および銀染色(G)を行った。
【0168】
(F.より高次の凝集体からのTβRIIED−K5単量体の分離)
TβRIIED−E5の場合のように、TβRIIED−K5に対する非還元条件下におけるウエスタンブロットから、より高次の凝集体が観察された。単量体のTβRIIED−K5を以下のように調製した。TβRIIED−K5(320μg)をPBS中に、10mLの最終用量まで希釈し、そしてCentriprep 30(Amicon)中で回転した。次いで、Centriprep 10を用いて濾液を濃縮し、TβRIIED−K5の濃度が555nMである500μLの画分に導いた。単量体からのオリゴマーの分離の効力を、ウエスタンブロッティング(非還元条件)によって評価し、そして上の5に記載されるようにタンパク質濃度を決定した。
【0169】
(実施例2 TβRIIED−E5の、TβRIIED−K5およびMP−TβRIIIED−K5との二量体化)
全ての試験分析物の希釈のために、HBS(20mMのHepes(pH7.4)、150mMのNaCl、3.4mMのEDTA、および0.05%のTween20)を含む流動緩衝液を用いる、BIACORETMバイオセンサー(例えば、米国特許第6,165,335号明細書および関連する特許を参照のこと)を用いて、表面プラスモン共鳴調査を行った。
【0170】
抗hTGF−βRII抗体を、標準のアミン結合手順を用いてCM5バイオセンサーチップ表面に結合し、そして流速を5μL/分に設定した。0.05MのNHS/0.2MのEDC混合物(25μL)を含む連続的な注入に続いて、所望の結合量に達する(3500RUを超える)まで、10mM酢酸(pH4.0)中の抗hTGF−βRII抗体の注入(20μg/mL)を行った。次いで、残留する活性カルボキシル基をブロックするために、0.1Mのエタノールアミン−HCl(pH8.5、35μL)の溶液を用いた。コントロールのデキストラン表面をまた、抗hTGF−βRII抗体溶液を流動緩衝液に代えることで生成した。
【0171】
次いで、流速5μL/分にて3つの調査を行った:
1−抗TGF−βRII抗体表面およびコントロール表面上に、MP−TβRIIIED−K5(200nM、25μL)を注入し(図4A中の「1」)、続いてTβRIIED−E5を注入し(200nM、25μL;図4A中の「2」)、そしてもう一回MP−TβRIIIED−K5を注入した(200nM、25μL;図4A中の「3」)。
2−抗TGF−βRII抗体表面およびコントロール表面上に、タグを付けないhTβRII ED(1μM、25μL)を注入し(図4B中の「1」)、続いてMP−TβRIIIED−K5を注入した(200nM、25μL;図4B中の「2」)。
3−抗TGF−βRII抗体表面およびコントロール表面上に、5種の異なるTβRIIED−E5濃度(31nM、62nM、125nM、250nM、500nM、それぞれ15μL;図4C中の「1〜5」)の溶液を連続的に注入し、続いてTβRIIED−K5を注入した(50nM、15μL;図4C中の「6」)。
【0172】
異なる実験の間の再生を、20mMのHCl(100μL/分にて25μL)の2回のパルス、続いてBIACOREの説明書に従って行ったEXTRACLEAN手順およびRINSE手順によって行った。結果を図4A〜4Cに示す。
【0173】
(実施例3 TβRIIED−K5融合タンパク質およびMP−TβRIIIED−K5融合タンパク質の結合動力学)
(A.TGF−β1のCM5バイオセンサーチップ上への固定化)
別に記載したように(De Crescenzo,Gら、J.Biol.Chem.276、29632−29643(2001))、標準のアミン結合手順を用いて、CM5センサーチップ上のTGF−β1表面およびコントロールのデキストラン表面を調製した。
【0174】
(B.動力学アッセイ)
(1.TGF−β1上への、TβRIIED−K5、またはTβRIIED−K5およびTβRIIED−E5の等モル混合物の注入)
全ての動力学実験を、TβRIIED−K5注入の場合には流速5μL/分で、およびTβRIIED−K5−TβRIIED−E5混合物注入の場合には50μL/分で、25℃において行った。異なる濃度のTβRIIED−K5(9.8nM、14.8nM、22.2nM、33.3nM、50nM)、または等モル濃度のTβRIIED−E5と混合したTβRIIED−K5(0〜50nM)を、TGF−β1表面およびコントロール表面上に2連でランダムに注入し(240秒の注入)、続いて360秒間、分析物溶液を緩衝液で置換した。連続的な注入のためのセンサーチップの再生は、2パルスのHCl(20mM、120秒)、続いてBIACORE説明書に従って行ったEXTRACLEAN手順によって達成した。結果を図5A〜5Fに示す。
【0175】
(2.TGF−β1上への、MP−TβRIIIED−K5、またはMP−TβRIIIED−K5およびTβRIIED−E5の等モル混合物の注入)
動力学実験を、流速100μL/分にて25℃において行った。異なる濃度のMP−TβRIIIED−K5(0〜500nM)、または等モル濃度のTβRIIED−E5 K5と混合したMP−TβRIIIED−(0〜150nM)を、TGF−β1表面およびコントロール表面上に2連でランダムに注入し(150μLの注入)、続いて分析物溶液を、少なくとも210秒間緩衝液で置換した。連続的な注入のためのセンサーチップの再生は、2パルスのHCl(20mM、120秒)、続いてBIACORE説明書に従って行ったEXTRACLEAN手順によって達成した。結果を図6A〜6Dに示す。
【0176】
(C.データ調製および解析)
センサーグラムを調製し、そして非線形最小二乗解析、およびSPRevolution(著作権)ソフトウェアパッケージを用いた微分速度方程式(differential rate equation)の数的な積分を用いて、全体的に適合させた。データの調製を、「二重参照」法(Khaleghpourら、Mol.Cell.Biol.21:5200−5213、(2001))を用いて行った。手短に言うと、コントロール表面を用いて生成されたそれぞれのセンサーグラムを、対応する実験的なセンサーグラムから減算し、結果として生じる曲線を濃度単位に変換した。最終的に、緩衝液の注入に対応するカーブを、コントロール表面の補正した曲線から減算した。次いで、同一の表面上への異なる濃度の分析物の注入に由来するセンサーグラムからなる、それぞれのデータセットを、SPRevolution(著作権)ソフトウェアで利用可能な、数個の動力学モデルを用いて解析した。
【0177】
必要に応じて、異なる動力学モデルの使用から得られた適合の良いところを、他で記された以下の3つの統計学的値(Bradley,J.V.、Distribution−Free Statistical Tests、New−Jersey、(1968))を用いて比較し、そして、それが同じデータセットを適合するために異なる動力学モデルを用いる場合の適合の質の分析に適切であることを示した(De Crescenzo,G.ら、J.Biol.Chem.276、29632−29643(2001)):
1)残差の標準偏差:S.D.。
2)「+または−符号」統計量(Z1)。
3)「上昇および下降(Run up and down)」統計量(Z2)。
【0178】
(D.TGF−β1上への、K5oxとプレインキュベートしたTβRIIED−E5の注入)
(1.K5oxを与えるための、CGGK5コイル(配列番号20)の酸化)
システインリンカーを有するK5コイル(20mg、配列番号20)を、室温にてpH8.0で100mMの炭酸水素アンモニウム2mLに溶解した。反応混合液のアリコートを、酸化の進行をモニターするために、分析用のC18HPLCシステムに、規則的な間隔をもって適用した。ペプチドの酸化を、90%完了するまでか、または12時間まで、進行させたままにした。酸化の終点において、溶液をpH6に酸性化させるために、酢酸を混合液に加えた。次いで、このペプチドを凍結乾燥し、そして使用に先立ってPBS緩衝液に再懸濁した。
【0179】
(2.K5oxとプレインキュベートしたTβRIIED−E5の結合)
300nMのTβRIIED−E5を、種々の濃度のK5ox(0nM、50nM、150nM、900nM)とプレインキュベートし、そして結果として生じた溶液を、TGF−β1を有するBIAcoreバイオセンサー表面上およびコントロール表面上に2連でランダムに注入し(15μLの注入)、続いて、分析物溶液を緩衝液で360秒間置換した。センサーチップの再生は、上に記載したように行った。結果を図7に示す。
【0180】
(実施例4 融合タンパク質、ホモ二量体、およびヘテロ二量体の拮抗性効力)
ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合したPAI−1プロモーターを安定にトランスフェクトされたミンク肺上皮細胞(MLEC)(Abe,M.ら、Anal.Biochem.216:276−284、(1994))を、5%のウシ胎仔血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM/5% FBS)中の96ウェル組織培養プレート(2×10細胞/ウェル)にプレートした。上記MLECを、5%CO大気中で37℃にて少なくとも5時間、付着させたままにした。次いで細胞をPBSで洗浄した。次いで、以下の添加と共に1時間プレインキュベートした、DMEM/1% FBS/0.1% BSA中のTGF−β1(10pM)を、細胞に加えた:
A)種々の濃度のTβRIIED−K5、TβRIIED−E5、またはTβRIIED−K5/TβRIIED−E5等モル混合物(図8A);
B)種々の濃度のK5oxを有する、150nMのTβRIIED−E5、TβRIIED−E5の非存在下においてまた、同じ一連の実験を行った(図8B)。
C)種々の濃度のTβRIIED−E5を有する、150nMのK5ox(図8C)。
D)種々の濃度のMP−TβRIIIED−K5、またはMP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5等モル混合物(図8D)。
E)種々の濃度のTβRIIED−E5を有する、150nMのMP−TβRIIIED−K5(図8E)。
【0181】
一晩のインキュベートの後、培養液を除き、そして細胞をPBS(200μL/ウェル)で2回洗浄した。次いで細胞を溶解し、そしてPromega(Madison、WI、USA)Luciferase Assay Kitを製造業者の使用説明書に従って用いて、ルシフェラーゼ活性をアッセイした。発光を、Lumat LB9501 照度計(Berthold、USA)によって測定した。この活性を、アンタゴニストの非存在下におけるTGF−β1の活性の割合として表した。結果を図8A〜8Eに示す。
【0182】
拮抗の挙動が観察される場合、見かけ上のIC50を、以下の式を用いて実験データの点に適合させることで決定した:反応=底辺+(頂点−底辺)/(1+[インヒビター]/IC50)、ここで、反応は、上に定義したシグナル伝達の算出された割合に対応し、そして[インヒビター]はアンタゴニストの濃度である。頂点、底辺、およびIC50はパラメーターとしてセットであり、そして、それぞれ最大シグナル値および最低シグナル値、ならびに見かけ上のIC50値に対応する。ExcelTMソルバー(solver)ツールを用いて、(Exp−反応)/Expの合計を最小化することで、非線形回帰によって上記データを適合させ、ここでExpは、所与のアンタゴニスト濃度に対する実験データの点の値に対応する。結果は表3にある。
【0183】
(実施例5 DNA構成物、ならびにTGF−βキナーゼドメイン融合タンパク質および二量体の生成のための、バキュロウイルス発現ベクターの構築)
II型TGF−βレセプターキナーゼドメインに融合したN末端性Eコイル、およびI型TGF−βレセプターキナーゼドメインに融合したN末端性Kコイルからなる融合タンパク質を、それぞれ配列番号21(pAEcoilRII−KD(ΔTM)#5)または配列番号22(pAKcoilRI−KD(ΔTM)#2)をコードする哺乳動物発現ベクターをテンプレートとして用いたPCRによって作製した。
【0184】
C末端Hisタグを有するEコイル−II型TGFβレセプターキナーゼドメインを、以下のプライマーを用いてPCR増幅した。NheI制限酵素部位およびHindIII制限酵素部位を、それぞれプライマー配列5’EIIHisおよび3’EIIHisにおいて下線を引いた:
5’EIIHis
【0185】
【表8】

(配列番号27)
および
3’EIIHis:
【0186】
【表9】

(配列番号28)
C末端Hisタグを有するKコイル−I型TGFβレセプターキナーゼドメインを、以下のプライマーを用いてPCR増幅した。NheI制限酵素部位およびHindIII制限酵素部位を、それぞれプライマー配列5’KIHisおよび3’EIHisにおいて下線を引いた:
5’KIHis
【0187】
【表10】

(配列番号29)
および
3’KIHis
【0188】
【表11】

(配列番号30)
結果として生じた断片をNheI/HindIIIで消化し、そして同じ酵素で消化したpBlueBac 4.5ベクター(Invitrogen)に結合した。次いで、pBlueBac−TGFβRIKD−KおよびpBlueBac−TGFβRIIKD−Eを形成するために、Escherichia coli(DH5α)に結合を形質転換した。Maxiprepカラム(QIAGEN)を用いてプラスミドを精製し、そして配列決定によって検証した。
【0189】
Sf9昆虫細胞を用いたトランスフェクトおよびバキュロウイルス発現を、Invitrogenから入手されるMaxBac 2.0 Transfection and Expression説明書に従って行った。組換えタンパク質の精製を、Ni−NTAアガロースアフィニティーカラムを用いて行った。
【0190】
TGF−βレセプターI−Kコイル融合タンパク質、TGF−βレセプターII−Eコイル融合タンパク質、上記二つの融合タンパク質の混合、および/または共発現したTGF−βレセプターI−Kコイル/TGF−βレセプターII−Eコイル融合タンパク質のそれぞれの等量を、P33−γATPの存在下で、30℃において30分間、別々にインキュベートした。次いで、それぞれの反応サンプルのアリコートを、還元条件下において、8%アクリルアミドゲル中で電気泳動した。ゲルを乾燥し、そしてリン酸化されたキナーゼを蛍光物質画像化(phosphorimaging)によって検出した。結果を図9に示し、ここで、I型レセプターおよびII型レセプターの位置を右側に示す。
【0191】
(実施例6 哺乳動物細胞中におけるインヒビター感受性の解析のための、EGFR細胞質ドメイン融合タンパク質および二量体の発現のためのDNA構造物の構築)
(A.DNA構築物および融合タンパク質の調製)
コイル化erbB1細胞質ドメイン発現構築物の生成のために用いられるサブクローン化戦略を、以下に示す:
工程1.erbB1細胞質ドメインを、ヒトEGFR(Genbank受託番号:NM 005228)由来の全長cDNAをコードするpcDNA3−erbB1哺乳動物発現ベクターから、以下のXhoI(5’)プライマー、およびHisでタグを付けたNheI(3’)プライマー(制限酵素部位に下線を引いた)によってPCR増幅した。
5’XhoIEGFR
【0192】
【表12】

(配列番号35)
3’NheI EGFR−HIS6C
【0193】
【表13】

(配列番号36)
工程2.K5−TGFβRIキナーゼ(配列番号22)またはEG−TGFβRIIキナーゼ(配列番号22)をコードするcDNAを含むpGemTベクター(Promega)(pGemT/K5−RIKDおよびpGemT/E5−RIIKD−E5−TGF、Biotechnology Research Institute、National Research Conuncil of Canadaの所有権)を、XhoI−HindIII(平滑末端)で制限し、RIキナーゼドメインおよびRIIキナーゼドメインを除いた。Xho1−Nhe1(平滑末端)で制限したerbB1細胞質ドメインPCR生産物(工程1)を、この部位に挿入した。
【0194】
工程3.結果として生じたpGemt/E5−またはK5−コイル化erbB1CDプラスミドのNheI−Not1断片を、pTT2哺乳動物発現ベクター(Biotechnology Research Institute、National Research Council of Canadaの所有権)のNheI−Not1部位にサブクローン化し、erbB1CD−K5融合タンパク質(配列番号31)をコードするpTT2/K5−erbB1CD構築物、およびカルボキシル末端性Hisタグペプチド配列に付着した、E5−erbB1CD融合タンパク質(配列番号34)をコードするpTT2/E5−erbB1CD構築物を生成した。結合後、プラスミドをE.coli(DH5α)に形質転換し、CONCERTプラスミドDNA精製カラム(Gibco−BRL)を用いて精製し、そして配列決定により確かめた。
【0195】
天然の(非コイル化)erbB1細胞質ドメイン発現構築物の生成のために用いられるサブクローン化戦略を、以下に示す:
工程1.erbB1細胞質ドメインを、ヒトEGFR(Genbank受託番号:NM 005228)の全長cDNAをコードするpcDNA3−erbB1哺乳動物発現ベクターから、以下のXbaI(5’)プライマーおよびHisでタグを付けたNheI(3’)プライマー(制限部位に下線を引いた)を用いてPCR増幅した。
5’XbaIEGFR
【0196】
【表14】

(配列番号37)
3’NheIEGFR−HIS6C
【0197】
【表15】

(配列番号36)
工程2.XbaIおよびNheIで制限したPCR産物をpTT2哺乳動物発現ベクター(Biotechnology Research Institute、National Resource Council of Canadaの所有権)にサブクローン化し、カルボキシル末端Hisタグペプチド配列に付着したerbB1の細胞質ドメインをコードするpTT2/erbB1CD#2構築物を生成した。結合の後、プラスミドをE.coli(DH5α)に形質転換し、CONCERTプラスミドDNA精製カラム(Gibco−BRL)を用いて精製し、そして配列決定により確かめた。
【0198】
(B.インヒビター試験のための、EGFR融合タンパク質および二量体の発現および解析)
ヒト胚性腎臓293細胞を、前日に24ウェル組織培養皿中に5×10(5)細胞/ウェルでプレートし、そしてそれぞれの示したプラスミド500ngをトランスフェクトした:(1)pTT2/erbB1CD#2、(2)pTT2/K5−erbB1CD#2およびpTT2/E5−erbB1CD#3、ならびに(3)pcDNA3−erbB1。100ngのCMV−EGFPプラスミドに加えて、pcDNA3ベクターを、全てで1.5μgのDNA量に必要なだけ加えた。トランスフェクトを、ポリエチレンイミンを過去に記載した(Durocher,Y.ら、Nucleic Acids Res.30(2):E9(2002))ように用いて行った。トランスフェクトの24時間後、DMEM/10% FBS中のerbB1キナーゼインヒビターAG1478(Calbiochem)を500nM加え、そして一晩インキュベートした。ビヒクルのコントロールとして、細胞をまた0.1%DMSOと共にインキュベートした。一晩のインキュベート(約20時間)に続いて、熱した2%SDSで細胞を溶解した。pcDNA3中の全長erbB1 cDNAをトランスフェクトした場合には、収集の前に、細胞を100ng/mlのEGF(Upstate Biotechnology Inc.)の存在下で処理した。
【0199】
種々のトランスフェクトからの細胞溶解物を、還元条件下における8%SDS−ポリアクリルアミドゲル上でのタンパク質の分離に続くウエスタンブロットによって解析した。結果を図10C〜10Dに示し、ここで、EGFR自己リン酸化へのインヒビターの効果の測定にホスホチロシン検出(抗ホスホチロシン4G10、Upstate Biotechnology Inc.)を用い、そしてそれぞれのサンプル中のトランスフェクトされたEGFRのレベルの測定に、抗EGFレセプター細胞質ドメイン抗体(sc−03、Santa Cruz)によるEGFR検出を用いた。
【0200】
本発明は、特定の実施形態に関して記載したが、種々の変化および改変が、本発明から離れることなく成され得ることが、当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】図1Aは、II型トランスフォーミング増殖因子βレセプターの外部ドメイン(TβRIIED)およびE5コイルを含む融合タンパク質のアミノ酸配列(TβRIIED−E5;配列番号1)を示し、ここで残基1〜26は、Swiss−Proteinデータベース(受託番号:P37173)において用いられる番号付けに従って、TβRII配列(配列番号2)の残基1〜26に対応し;TβRIIED−E5の残基27〜36(下線)はmycタグ(配列番号3)に対応し;TβRIIED−E5の残基37〜170はSwiss−ProteinデータベースにおけるTβRII配列の残基27〜160に対応し;残基171〜181(下線)は11アミノ酸のリンカー(配列番号4)に対応し;残基182〜216はE5コイル(配列番号5)に対応し;そして残基217〜224は、E5コイル配列から2残基のグリシンで分けられたHisタグ(下線)(配列番号5)に対応する。図1Bは、II型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの外部ドメイン(TβRIIED)およびK5コイルを含む融合タンパク質のアミノ酸配列(TβRIIED−K5;配列番号7)を示す。残基1〜26は、Swiss−Proteinデータベース(受託番号:P37173)において用いられる番号付けに従って、TβRII配列(配列番号2)の残基1〜26に対応し;TβRIIED−K5の残基27〜36(下線)はmycタグ(配列番号3)に対応し;TβRIIED−K5の残基37〜170はSwiss−ProteinデータベースにおけるTβRII配列の残基27〜160に対応し;残基171〜181(下線)は11アミノ酸のリンカー(配列番号4)に対応し;残基182〜216はK5コイル(配列番号3)に対応し、そして残基217〜224は、K5コイル配列から2残基のグリシンで分けられたHisタグ(下線)(配列番号6)に対応する。図1Cは、II型トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの外部ドメインの膜近位領域(MP−TβRIIED)およびK5コイルを含む融合タンパク質のアミノ酸配列(MP−TβRIIED−K5;配列番号9)を示す。残基1〜25は、Swiss−Proteinデータベース(受託番号:P26342)において用いられる番号付けに従って、ラットTβRIII配列(配列番号10)の残基1〜25に対応し;MP−TβRIIIED−K5の残基26〜35(下線)はmycタグ(配列番号3)に対応し;MP−TβRIIIED−K5の残基36〜242はSwiss−ProteinデータベースにおけるラットTβRIII配列の残基576〜782に対応し;残基243〜253(下線)は11アミノ酸のリンカー(配列番号4)に対応し;残基254〜288はK5コイル(配列番号3)に対応し;そして残基291〜296は、K5コイル配列から2残基のグリシンで分けられたHisタグ(下線)(配列番号6)に対応する。
【図2】図2A〜2Bは、標準のNi−NTAアフィニティークロマトグラフィーを用いた、TβRIIED−E5融合タンパク質(配列番号1)の精製を示す。図2Aは、タンパク質を4〜12%の勾配ゲル(還元状態)上で分離した後での、TβRIIED−E5の精製の間に収集された種々の画分のクーマシーブルー染色を示す。レーンW1およびレーンW2は、2つの最初の緩衝液A洗浄工程に対応し;レーンFTは、最後のカラム充填の後のフロースルーに対応し;レーン1は第一の溶出に対応する。図2Bは、タンパク質を11%SDS−PAGE(非還元状態)上で分離した後での、精製の間に収集された種々の画分のウエスタンブロッティングの結果を示し、ここで一次抗体には抗myc抗体を、二次抗体には西洋わさびペルオキシダーゼと結合体化したヤギ抗マウス抗体を用いた。レーン1は第一の溶出(図2Aのレーン1におけるものと同じサンプル)に対応し、そしてレーン2およびレーン3はそれぞれ、第二の溶出および第三の溶出に対応する。
【図3】図3A〜3Gは、TβRIIED−K5(配列番号7)およびMP−TβRIIIED−K5(配列番号9)の精製を示す。TβRIIED−K5タンパク質をNi−NTAアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出し、そして11%SDS−PAGE上を非還元条件下(図3A)および還元条件下(図3Bおよび図3C)で電気泳動し、続いてウエスタンブロッティング(図3Aおよび図3B;一次抗体および二次抗体は図2の通り)または銀染色(図3C)を行った。Centriprep30デバイスで分離した後、単量体のTβRIIED−K5の10μLアリコートを、非還元条件下にて11%SDS−PAGE上で電気泳動し(図3D)、レーンAに示すサンプルの1/15希釈の10μLもまた比較のために電気泳動した(図3E)。Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーカラムから溶出されたMP−TβRIIIED−K5タンパク質を、非還元条件下で11%SDS−PAGE上にて電気泳動し、続いてウエスタンブロッティング(一次抗体:抗myc;二次抗体:西洋わさびペルオキシダーゼと結合体化されたヤギ抗マウス;図3F)および銀染色(図3G)を行った。
【図4】図4A〜4Cは、二量体化を任意の共鳴ユニット(RU)において時間の関数として示す、表面プラスモン共鳴(SPR)バイオセンサー調査から生成されたセンサーグラムである。図4Aでは、MP−TβRIIIED−K5(配列番号9)を、抗TGF−βRII抗体充填バイオセンサー表面(「1」)およびコントロール表面上に注入し、続いてTβRIIED−E5(配列番号1)を注入(「2」)し、そして他のMP−TβRIIIED−K5を注入(「3」)した。図4Bでは、タグをつけていないhTβRII EDを、抗TGF−βRII抗体充填バイオセンサー表面およびコントロール表面上に注入し(「1」)、続いてMP−TβRIIIED−K5(「2」)を注入した。図4Cでは、5種類の濃度のTβRII ED−E5コイル溶液を連続的に、抗TGF−βRII充填バイオセンサー表面およびコントロール表面上に注入し(「1〜5」)、続いてTβRII ED−K5を注入した(「6」)。
【図5−1】図5A〜5Fは、TβRIIED−K5のTGF−β1との結合相互作用(図5A〜5C)、およびTβRIIED−K5/TβRII−E5のTGF−β1との結合相互作用(図5D〜5F)の動力学的解析の結果を示す。プロットは、センサー表面に結合したTGF−β1の表面プラスモン共鳴バイオセンサーから生成されたセンサーグラムである。相互作用の程度は、時間の関数として、任意の共鳴ユニット(RU)に示される。図5Aは、TβRIIED−K5/TGF−β1相互作用センサーグラムの全体的なあてはめであり、ここで、9.9〜50nMの範囲の異なる濃度のTβRIIED−K5が、250RUの結合したTGF−β1上、およびコントロールの表面上に、(緩衝液の注入に加えて)注入された。点は、データ調製の後の共鳴ユニットに対応し、そして実線は、データセットを2対1の化学量論モデルに全体的にあてはめさせる場合のあてはめを表す。図5Bは、TβRIIED−K5/TGF−β1相互作用の、2対1の化学量論モデルへの全体的なあてはめからの残差を示す。図5Cは、TβRIIED−K5/TGF−β1相互作用の、単純な1対1モデルへの全体的なあてはめからの残差を示す。図5Dは、TβRIIED−K5/TβRIIED−E5のTGF−β1との相互作用のセンサーグラムの全体的なあてはめであり、ここで、等量のTβRIIED−E5とプレインキュベートした、9.9〜50nMの範囲の異なる濃度のTβRIIED−K5が、同じTGF−β1表面上、およびコントロールの表面上に注入された。点は、データ調製の後に得られた共鳴ユニットであり、そして実線は、データセットを再構成モデルに全体的にあてはめさせる場合の適合を表す。図5Eは、TβRIIED−K5/TβRIIED−E5のTGF−β1との相互作用のセンサーグラムの、再構成モデルとの全体的なあてはめからの残差を示す。図5Fは、TβRIIED−K5/TβRIIED−E5のTGF−β1との相互作用の、親和力モデルとの全体的なあてはめからの残差を示す。
【図5−2】図5A〜5Fは、TβRIIED−K5のTGF−β1との結合相互作用(図5A〜5C)、およびTβRIIED−K5/TβRII−E5のTGF−β1との結合相互作用(図5D〜5F)の動力学的解析の結果を示す。プロットは、センサー表面に結合したTGF−β1の表面プラスモン共鳴バイオセンサーから生成されたセンサーグラムである。相互作用の程度は、時間の関数として、任意の共鳴ユニット(RU)に示される。図5Aは、TβRIIED−K5/TGF−β1相互作用センサーグラムの全体的なあてはめであり、ここで、9.9〜50nMの範囲の異なる濃度のTβRIIED−K5が、250RUの結合したTGF−β1上、およびコントロールの表面上に、(緩衝液の注入に加えて)注入された。点は、データ調製の後の共鳴ユニットに対応し、そして実線は、データセットを2対1の化学量論モデルに全体的にあてはめさせる場合のあてはめを表す。図5Bは、TβRIIED−K5/TGF−β1相互作用の、2対1の化学量論モデルへの全体的なあてはめからの残差を示す。図5Cは、TβRIIED−K5/TGF−β1相互作用の、単純な1対1モデルへの全体的なあてはめからの残差を示す。図5Dは、TβRIIED−K5/TβRIIED−E5のTGF−β1との相互作用のセンサーグラムの全体的なあてはめであり、ここで、等量のTβRIIED−E5とプレインキュベートした、9.9〜50nMの範囲の異なる濃度のTβRIIED−K5が、同じTGF−β1表面上、およびコントロールの表面上に注入された。点は、データ調製の後に得られた共鳴ユニットであり、そして実線は、データセットを再構成モデルに全体的にあてはめさせる場合の適合を表す。図5Eは、TβRIIED−K5/TβRIIED−E5のTGF−β1との相互作用のセンサーグラムの、再構成モデルとの全体的なあてはめからの残差を示す。図5Fは、TβRIIED−K5/TβRIIED−E5のTGF−β1との相互作用の、親和力モデルとの全体的なあてはめからの残差を示す。
【図6】図6A〜6Dは、TGF−β1とMP−TβRIIIED−K5との結合相互作用、またはTGF−β1と、等モル濃度のTβRIIED−E5とプレインキュベートしたMP−TβRIIIED−K5との結合相互作用を示す、バイオセンサーセンサーグラムである。図6Aは、異なる濃度のMP−TβRIIIED−K5(配列番号9)に対する時間の関数としての、任意の共鳴ユニット(RU)を示す。図6B〜6Cは、MP−TβRIIED−K5コイル/TGF−β1相互作用の、再構成モデルとの全体的な適合からの残差を(図6B)、および単純な1対1モデルとの全体的な適合からの残差(図6C)を示す。図6Dは、同量のTβRIIED−E5とプレインキュベートした、異なる濃度のMP−TβRIIIED−K5に対する時間の関数としてのRUを示す。
【図7】図7は、(1)TGF−β1に結合したTβRIIED−E5の;および、(2)50nMのK5oxとTβRIIED−E5のプレインキュベーション後にTGF−β1に結合したTβRIIED−E5の;(3)150nMのK5oxとTβRIIED−E5のプレインキュベーション後にTGF−β1に結合したTβRIIED−E5の;または(4)900nMのK5oxとTβRIIED−E5のプレインキュベーション後にTGF−β1に結合したTβRIIED−E5の、時間の関数としての任意の共鳴ユニット(RU)としての、結合相互作用を示したバイオセンサーセンサーグラムである。
【図8】図8Aは、融合タンパク質アンタゴニストTβRIIED−K5(白菱形)、および融合タンパク質アンタゴニストTβRIIED−E5(白三角)についての、ならびに、アンタゴニストホモ二量体TβRIIED−K5/TβRIIED−E5(等モル混合物、黒四角)についての、アンタゴニスト濃度(nM)の関数としての、%で表した、相対的ルシフェラーゼ活性を示す。図8Bは、K5ox単独(白四角)についての、およびK5oxを含む150nMのTβRIIED−E5(黒四角)についての、nMで表した、K5ox濃度の関数としての、%相対的ルシフェラーゼ活性を示す。図8Cは、種々の濃度のTβRIIED−E5を含む、150nMのK5oxについての、%相対的ルシフェラーゼ活性を示す。図8Dは、MP−TβRIIIED−K5(白四角)についての、および、種々の濃度の、MP−TβRIIIED−K5/TβRIIED−E5等モル混合物(黒四角)についての、%相対的ルシフェラーゼ活性を示す。図8Eは、種々の濃度のTβRIIED−E5を含む、150nMのMP−TβRIIIED−K5についての、%相対的ルシフェラーゼ活性を示す。
【図9】図9は、コイルドコイルポリペプチドのペプチドサブユニット(K5またはE5)でタグを付けたTGF−βレセプターIまたはTGF−βレセプターIIのキナーゼドメインのSDS−PAGEゲル電気泳動であり、ここで、レーン1はK5ペプチドサブユニットと結合したTGF−βレセプターIであり;レーン2はE5ペプチドサブユニットでタグを付けたTGF−βレセプターIIであり;レーン3はTGF−βレセプターI−K5およびTGF−βレセプターII−E5の混合物であり;そして、レーン4は、共発現したTGF−βレセプターI−K5およびTGF−βレセプターII−E5のサンプルである。
【図10A】図10Aは、erbB1CD−K5融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号31)を示す。erbB1CD−K5残基1〜6(下線)は6アミノ酸リンカー(配列番号32)に対応し;erbB1CD−K5残基7〜41はK5コイル(配列番号8)に対応し;erbB1CD−K5残基42〜48(下線)は7アミノ酸リンカー(配列番号33)に対応し;erbB1CD−K5残基49〜590は、Swiss Proteinデータベース(受託番号P00533)にて用いられる番号付けに従い、ヒトerbB1配列の細胞質ドメインを含む残基669〜1210に対応し;erbB1CD−K5残基591〜596(下線)は、6アミノ酸Hisタグペプチド配列に対応する。
【図10B】図10Bは、erbB1細胞質ドメイン−E5(erbB1Cd−E5)融合タンパク質のアミノ酸配列(配列番号34)を示す。erbB1CD−E5残基1〜6(下線)は6アミノ酸リンカー(配列番号32)に対応し;erbB1CD−E5残基7〜41はE5コイル(配列番号5)に対応し;erbB1CD−E5残基42〜48(下線)は7アミノ酸リンカー(配列番号33)に対応し;erbB1CD−E5残基49〜590は、Swiss Proteinデータベース(受託番号P00533)にて用いられる番号付けに従い、ヒトerbB1配列の細胞質ドメインを含む残基669〜1210に対応し;erbB1CD−E5残基591〜596(下線)は、6アミノ酸Hisタグペプチド配列に対応する。
【図10C】図10Cは、異なるerbB1(EGFR)構造物をトランスフェクトしたヒト胚性腎臓293細胞における、AG1478インヒビターアッセイの結果を示すSDS−PAGEゲルのウエスタンブロットである:レーン1〜2:インヒビターAG1478を含まないerbB1キナーゼドメイン(レーン1、コントロール)、およびインヒビターAG1478を含むerbB1キナーゼドメイン(レーン2);レーン3〜4:インヒビターを含まないerbB1−K5/erbB1−E5コイルドコイル二量体(レーン3、コントロール)、およびインヒビターを含むerbB1−K5/erbB1−E5コイルドコイル二量体(レーン4);レーン5〜6:インヒビターを含まない全長erbB1(ポジティブコントロール)(レーン5)、およびインヒビターを含む全長erbB1(レーン6)。
【図10D】図10Dは、異なるerbB1(EGFR)構造物をトランスフェクトしたヒト胚性腎臓293細胞における、AG1478インヒビターアッセイの結果を示すSDS−PAGEゲルのウエスタンブロットである:レーン1〜2:インヒビターAG1478を含まないerbB1キナーゼドメイン(レーン1、コントロール)、およびインヒビターAG1478を含むerbB1キナーゼドメイン(レーン2);レーン3〜4:インヒビターを含まないerbB1−K5/erbB1−E5コイルドコイル二量体(レーン3、コントロール)、およびインヒビターを含むerbB1−K5/erbB1−E5コイルドコイル二量体(レーン4);レーン5〜6:インヒビターを含まない全長erbB1(ポジティブコントロール)(レーン5)、およびインヒビターを含む全長erbB1(レーン6)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質であって、トランスフォーミング増殖因子−βの細胞表面レセプターの細胞外ドメイン、およびαヘリックス性コイルドコイルのペプチドサブユニットを含む、融合タンパク質。
【請求項2】
前記ペプチドサブユニットが、3〜10個の7つ揃いの反復ユニットを有する、KコイルまたはEコイルである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記7つ揃いの反復が、配列番号11〜17として識別される配列の群から選択される配列を有する、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記ペプチドサブユニットが、配列番号8として本明細書中で識別される配列を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記ペプチドサブユニットが、配列番号5として本明細書中で識別される配列を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記レセプターが、II型トランスフォーミング増殖因子−βおよびIII型トランスフォーミング増殖因子−βからなる群より選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
第二の融合タンパク質と結合し、コイルドコイル二量体を形成する請求項1に記載の融合タンパク質であって、該第二の融合タンパク質が、トランスフォーミング増殖因子−βレセプターの細胞外ドメインおよび前記αヘリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む、融合タンパク質。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項10】
コイルドコイル二量体タンパク質であって、
第一の融合タンパク質であって、トランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターの細胞外ドメイン、およびαヘリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニットを含む、第一の融合タンパク質;および
第二の融合タンパク質であって、トランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターの細胞外ドメイン、およびαヘリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む、第二の融合タンパク質
を含む、コイルドコイル二量体タンパク質。
【請求項11】
前記第一の融合タンパク質および第二の融合タンパク質が、トランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターの細胞外ドメインと同じ細胞外ドメインを含む、請求項10に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項12】
前記第一の融合タンパク質および第二の融合タンパク質が、トランスフォーミング増殖因子−βに対する細胞表面レセプターの細胞外ドメインと異なる細胞外ドメインを含む、請求項10に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項13】
前記細胞表面レセプターの細胞外ドメインが、II型トランスフォーミング増殖因子−βおよびIII型トランスフォーミング増殖因子−βからなる群より選択される、請求項10〜12のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項14】
前記αヘリックス性コイルドコイルの前記第一のペプチドサブユニットが、配列番号8として本明細書中で識別される配列を有する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項15】
前記αヘリックス性コイルドコイルの前記第二のペプチドサブユニットが、配列番号5として本明細書中で識別される配列を有する、請求項10〜12のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項16】
TGF−βレセプターに結合するTGF−βにより特徴付けられる状態の処置のための生物薬学薬剤としての、請求項10〜15のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質の使用。
【請求項17】
リガンドがトランスフォーミング増殖因子−βの細胞外ドメインへ結合するのを阻害する能力のある化合物を選択する方法であって、
請求項10〜15のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質を調製する工程;
該細胞外ドメインに対するリガンドの存在下において、該コイルドコイルタンパク質を試験化合物とともにインキュベートする工程;および
該試験化合物の、該リガンドと該コイルドコイルタンパク質との相互作用を阻害する能力を測定する工程
を包含する、方法。
【請求項18】
前記測定する工程が、競合的結合アッセイまたは表面プラスモン共鳴により測定する工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
TGF−βの過剰発現により特徴付けられる状態の処置における、請求項10〜15のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質の使用。
【請求項20】
前記状態が組織線維増殖性障害(tissue fibroproliferative disorder)である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記状態が、腎臓の進行性腎糸球体疾患、急性呼吸窮迫症候群、肝硬変、糖尿病性腎障害、ヒトメサンギウム増殖性糸球体腎炎、または腫瘍転移である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
キットであって、
(i)請求項10〜15のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質;
(ii)前記細胞外ドメインへの結合活性を有し、そして検出し得るリガンド;および
(iii)使用のための指示書
を備えるキット。
【請求項23】
細胞表面レセプターの細胞質内ドメインおよび、αヘリックス性コイルドコイルのペプチドサブユニットを含む融合タンパク質。
【請求項24】
前記ペプチドサブユニットが、3〜10個の7つ揃いの反復ユニットを有するKコイルまたはEコイルである、請求項23に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
前記ペプチドサブユニットが、配列番号8として本明細書中で識別される配列を有する、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
前記ペプチドサブユニットが、配列番号5として本明細書中で識別される配列を有する、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
前記細胞質内ドメインが、トランスフォーミング増殖因子−βまたは上皮細胞増殖因子に対する細胞表面レセプターに由来する、請求項23に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
第二の融合タンパク質と結合し、コイルドコイル二量体を形成する請求項23に記載の融合タンパク質であって、該第二の融合タンパク質が、細胞表面レセプターの細胞質内ドメインおよびαヘリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む、融合タンパク質。
【請求項29】
請求項23〜27のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項30】
請求項29に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項31】
コイルドコイル二量体タンパク質であって、該コイルドコイル二量体タンパク質は、
第一の融合タンパク質であって、細胞表面レセプターの細胞質内ドメインに対応する配列を有するレセプターペプチド、およびαヘリックス性コイルドコイルの第一のペプチドサブユニットを含む、第一の融合タンパク質;および
第二の融合タンパク質であって、細胞表面レセプターの細胞質内ドメインに対応する配列を有するレセプターペプチド、およびαヘリックス性コイルドコイルの第二のペプチドサブユニットを含む、第二の融合タンパク質
を含む、コイルドコイル二量体タンパク質。
【請求項32】
前記第一の融合タンパク質および第二の融合タンパク質の前記レセプターペプチド配列が同じ配列を有する、請求項31に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項33】
前記第一の融合タンパク質および第二の融合タンパク質の前記レセプターペプチド配列が異なる配列を有する、請求項31に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項34】
前記細胞表面レセプターが、トランスフォーミング増殖因子−βまたは上皮細胞増殖因子に対するレセプターである、請求項31〜33のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項35】
前記αヘリックス性コイルドコイルの前記第一のペプチドサブユニットが、配列番号8として本明細書中で識別される配列を有する、請求項31〜33のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項36】
前記αヘリックス性コイルドコイルの前記第二のペプチドサブユニットが、配列番号5として本明細書中で識別される配列を有する、請求項31〜33のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質。
【請求項37】
キナーゼ活性の阻害能力またはリガンドへの結合能力のある化合物を選択する方法であって、該方法は、
請求項31〜36のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質を提供する工程;
該コイルドコイルタンパク質を試験化合物とともにインキュベートする工程;および
該試験化合物の以下の能力を測定する工程であって、以下:
(i)リン酸化のレベルを検出するための適切な技術によって測定する、レセプタークロスリン酸化の阻害能力を測定する工程、または
(ii)該コイルドコイルタンパク質の、相互作用リガンドへの結合の阻害能力を測定する工程
を含有する、方法。
【請求項38】
前記測定する工程が、33P−ATPまたは質量分析法を用いて測定する工程を含有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
レセプターの活性における試験化合物の効果を決定する際に使用するためのキットであって、
(i)請求項31〜36のいずれか1項に記載のコイルドコイルタンパク質;および
(ii)使用のための指示書
を備える、キット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【公表番号】特表2007−503820(P2007−503820A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525014(P2006−525014)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001616
【国際公開番号】WO2005/024035
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(302046528)ナショナル・リサーチ・カウンシル・オブ・カナダ (15)
【Fターム(参考)】