説明

細胞増殖阻害VPgタンパク質、その断片又はその類似体、及びそれらの適用

細胞増殖を阻害するための真核生物の開始因子eIF4Eとの結合能を有する、VPgタンパク質、その断片又はその類似体の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖阻害タンパク質の分野に関する。より具体的には、本発明は、真核細胞に対して細胞傷害性であり、及び/又は細胞増殖を阻害する、VPgタンパク質、その断片若しくはその類似体を含むか又はこれらから成るタンパク質に関する。本発明は、かかるタンパク質、その断片又はその類似体の医学的使用にも関する。
【0002】
真核生物の開始因子eIF4Eは、mRNAに付着すると共にeIF4F開始複合体のeIF4G成分と結合する、mRNA5’キャップ結合タンパク質である。かなりの割合のeIF4E(最大70%近く)が核に局在している(Lejbkowicz et al., 1992)。核eIF4Eが或る特定のメッセンジャーRNAの核細胞質間輸送に関与していることが分かっている(Lejbkowicz et al., 1992、Rosenwald et al., 1995、Rousseau et al., 1996、Lai and Borden, 2000)。eIF4Eの過剰発現が抑制できないと、細胞増殖及び悪性転換が起こるおそれがあるが、その一方でeIF4Eレベルの低減によって形質転換された表現型を反転させることができることが実証されている(Sonenberg and Gingras, 1998で概説)。さらにヒトでは、腫瘍の種類によって、高レベルのeIF4Eを示すものもある(Ruggero and Pandolfi, 2003)。高いeIF4Eレベルでは、適当なmRNAの細胞質へのeIF4E依存性輸送が増大するために、悪性転換に関与するタンパク質の細胞質レベルが増大すると考えられている(Shantz and Pegg, 1994、Rousseau et al., 1996、Lai and Borden, 2000)。
【0003】
国際出願公開第00/78803号パンフレットは、eIF4F複合体の形成を破壊することによると思われる治療、特にプログラム細胞死の誘導に有用なeIF4E結合ペプチドを記載している。これらのペプチドは全て、ヒトeIF4E(2007年4月15日版のGENBANKデータベースにおけるアクセッション番号NP_001959)との結合に必要なアミノ酸配列(モチーフ)
【0004】
【化1】

【0005】
(モチーフ中、xは任意のアミノ酸であり、
【0006】
【化2】

【0007】
はLeu、Met又はPheである)を含む。
【0008】
このため、抗癌治療に使用するのに適切なeIF4E結合剤の開発に関心が寄せられている。また例えば、薬剤耐性を克服するために、上記のものとは異なる作用機構を備えるeIF4E結合剤を発見することも必要とされている。
【0009】
ジャガイモYウイルス(PVY)は、植物ウイルスの最も大きく、且つ経済的に最も重要な群であるポチウイルス科(Potyviridae family)に属するポチウイルス属の種類の成員である。ポチウイルスは、その線状核酸ゲノムの5’末端と共有結合するいわゆるゲノム連結VPgタンパク質(以下、VPgタンパク質又はVPgと称される)を有している(Riechmann et al., 1989及びMurphy et al., 1991)。ポチウイルスのVPgタンパク質は、ウイルスタンパク質合成、植物組織における長距離移動、及びウイルス複製に関与する(Lellis et al., 2002、Schaad et al., 2002、Fellers et al., 1998)。ポチウイルス感染の直後に、ゲノムRNAは宿主細胞機構と相互作用し、タンパク質合成を開始させる。ゲノムRNA由来のプロテイナーゼKによるVPgタンパク質の除去によってRNA感染性が失われ、さらにin vitroでの翻訳効率が低減するために、VPgタンパク質はこの初期事象において重要な役割を果たすと考えられる(Leonard et al., 2000、Herbert et al., 1997)。ジャガイモYウイルスゲノム連結VPgタンパク質のアミノ酸配列は、GENBANKデータベース(2006年11月14日版)におけるアクセッション番号CAA82642で特定されるアミノ酸配列の336番目〜523番目のアミノ酸残基に対応する。これは、本明細書中で配列番号2として再現される。
【0010】
近年の研究では、或る特定のポチウイルス(カブモザイクウイルス、レタスモザイクウイルス、タバコ葉脈斑紋(mottling)ウイルス、ジャガイモYウイルス)のVPgタンパク質と、植物の翻訳開始因子eIF4Eとの間の相互作用が報告されている(Wittmann et al., 1997、Duprat et al., 2002、Kang et al., 2005、Grzela et al., 2006)。カルシウイルス(Caliciviridae)科の或る特定の脊椎動物ウイルス(例えばネコカルシウイルス(FCV)、ロードスダール(lordsdale)ウイルス(LDV))又は近年発見されたマウスノロウイルス(MNV−1))によってコードされるVPgタンパク質がキャップ結合タンパク質eIF4Eと相互作用することも分かっている(Goodfellow et al., 2005、Chaudhry et al., 2006)。
【0011】
Grzela et al.(2006)は、PVYのVPgタンパク質とeIF4Eとの間の相互作用が、酵母及び昆虫(ヨウトガ(S. frigiperda:スポドプテラ・フルギペルダ))のeIF4Eでも観察されたので、種特異性がかなり低いと考えられることを見出している。Grzela et al.は、VPg/eIF4E相互作用が、昆虫細胞において無細胞タンパク質合成の幾らかの阻害をもたらすが、昆虫細胞死を引き起こさないことも説明している。しかしながら、PVYのVPg一次アミノ酸配列は、上記のeIF4E結合モチーフ
【0012】
【化3】

【0013】
を示さない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
ここで、本発明者らは、ヒト細胞において、ジャガイモYウイルスのVPgタンパク質の存在下では、核プールのeIF4Eが劇的に失われたことを観察した。このため驚くべきことに、本発明者らは、細胞質においてVPgタンパク質がヒト開始因子eIF4Eを固定し、これによりこれまでに昆虫細胞で観察されたものとは異なり、細胞増殖が阻害され、細胞死が引き起こされることを示した。
【0015】
したがって、第1の態様では、本発明は、単離精製タンパク質であって、薬物として、好ましくは抗癌剤として、又は癌細胞が被験体において開始因子eIF4Eを発現、好ましくは過剰発現する癌、好ましくは神経膠腫、黒色腫又は結腸癌若しくは肺癌を治療するのに使用するための
(i)真核生物の開始因子eIF4E、好ましくは哺乳動物の開始因子eIF4E、より好ましくはヒトの開始因子eIF4Eとの結合能を有し、
(ii)アミノ酸モチーフ
【0016】
【化4】

【0017】
(モチーフ中、xは任意のアミノ酸であり、Yはチロシン(Tyr)、Lはロイシン(Leu)であり、
【0018】
【化5】

【0019】
はロイシン(Leu)、メチオニン(Met)又はフェニルアラニン(Phe)である)を含まない、
VPgタンパク質若しくは少なくとも8つのアミノ酸を有するその断片若しくはその類似体を含むか又はこれらから成る、単離精製タンパク質に関する。
【0020】
「被験体」は哺乳動物、好ましくはヒトを表す。
【0021】
本発明によるタンパク質、その断片又はその類似体と真核生物(例えば昆虫)、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトのeIF4Eとの結合(又は相互作用)の特徴付けを、Grzela et al.(2006)に記載のようにELISAベースの結合アッセイによって実施することができる。有利な点は、上記タンパク質、その断片又はその類似体と、上記eIF4Eとの間の解離定数が約5nM〜約450nMであることである。解離定数(又は親和性)の測定は、Grzela et al.(2006)に記載の方法を用いることを含む、当業者に既知の方法を用いて行うことができる。必要に応じて、この特徴付けは、真核生物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトの細胞において、本発明のタンパク質、その断片又はその類似体の存在下で、eIF4Eの細胞局在(細胞質でのeIF4Eの固定)の変化のin vitroでの決定と組み合せることができる。例えば、本発明のタンパク質、その断片又はその類似体の存在下でのeIF4Eの細胞局在の変化のin vitroでの決定は昆虫細胞(例えば、ハイファイブ(イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni))細胞)で実施することができ、これはこれらの細胞がヒト細胞での該決定に対する良好な予測モデルであるためである。この決定は、以下の実施例3又は実施例4のように実施することができる。
【0022】
「タンパク質」及び「ペプチド」という用語は、本明細書中で区別なく使用することができる。これらは、当該技術分野で既知であり、あらゆる長さの多量体形態のアミノ酸を表す。この用語は、化学的又は生化学的に修飾されたアミノ酸を含むタンパク質又はペプチド、及び修飾ペプチド骨格を有するタンパク質又はペプチド、例えばα−アミノ酸骨格又はL−アミノ酸側鎖(例えばD−アミノ酸)に対する1つ又は複数の修飾を含有するタンパク質又はペプチドも表す。
【0023】
本発明によれば、VPgタンパク質は通常、上記ウイルスの線状核酸ゲノムの5’末端に共有結合したウイルスコード化タンパク質を表し(Riechmann et al., 1989及びMurphy et al., 1991)、また本発明によれば、
単離された植物ウイルスコード化VPgタンパク質、
植物ウイルスの組換えVPgタンパク質、又は
植物ウイルスの合成VPgタンパク質を含む。
【0024】
好ましくは、上記VPgタンパク質は、約188個〜193個のアミノ酸残基から成り、アミノ酸モチーフKGK及びNMYG(配列番号26)を含む。
【0025】
好ましい実施の形態において、VPgタンパク質は、配列番号2のジャガイモYウイルスコード化VPgタンパク質である。
【0026】
「植物ウイルス」という用語は、植物で拡散する、特に少なくとも1種類の植物細胞に感染することが可能なウイルスを表す。
【0027】
本発明の別の実施の形態において、VPgタンパク質類似体は、配列番号2のPVYのVPgタンパク質の全長と、少なくとも20%、順に好ましくなるが、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性、又は少なくとも45%、順に好ましくなるが、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列相同性を示す、配列番号2のPVYのVPgタンパク質の類似体であるが、但し該VPgタンパク質類似体は依然として、上記のように、真核生物(例えば昆虫)の開始因子eIF4E、好ましくは哺乳動物の開始因子eIF4E、より好ましくはヒトの開始因子eIF4Eとの結合能を有する。
【0028】
VPgタンパク質類似体の例は:
PVY以外の、好ましくはポチウイルス科に、より好ましくはポチウイルス属に属する他の植物ウイルス、例えばタバコエッチウイルス(TEV)(配列番号4)、クローバー葉脈黄化ウイルス(ClYVV)(GENBANKデータベース(2006年3月30日版)におけるアクセッション番号NP_734169.1、配列番号6として本明細書中で再現)、タバコ葉脈斑紋ウイルス(TVMV)(GENBANKデータベース(2006年3月30日版)におけるアクセッション番号NP_734333.1、配列番号8として本明細書中で再現)、カブモザイクウイルス(TuMV)(配列番号10)、レタスモザイクウイルス(LMV)(GENBANKデータベース(2006年3月30日版)におけるアクセッション番号NP_734159.1、配列番号12として本明細書中で再現)、又は
カルシウイルス科に、好ましくはノロウイルス属に属するウイルス、例えばネコカルシウイルス(FCV)(UniProtKB/Swiss−Protデータベースにおけるアクセッション番号Q66914、配列番号27として本明細書中で再現)、ヒトノロウイルス(HuNoV、UniProtKB/Swiss−Protデータベースにおけるアクセッション番号P54634、及びGENBANKデータベースにおけるアクセッション番号NP_056820、それぞれ配列番号28及び配列番号29として本明細書中で再現)及びネズミノロウイルス(MNV)(GENBANKデータベースにおけるアクセッション番号YP_720001、配列番号30として本明細書中で再現)
でコードされるVPgタンパク質である。
【0029】
本発明の別の実施の形態によれば、上記で規定のタンパク質の断片は、本明細書中の上記で規定のVPgタンパク質の断片又はVPgタンパク質のタンパク質類似体の断片であって、該VPgタンパク質又はその類似体の少なくとも8個、順に好ましくなるが、少なくとも10個、15個、20個、25個、26個又は42個の連続した(contiguous)アミノ酸残基を含むか又はこれらから成るが、上記のように、真核生物(例えば昆虫)の開始因子eIF4E、好ましくは哺乳動物の開始因子eIF4E、より好ましくはヒトの開始因子eIF4Eとの結合能を維持する、本明細書中の上記で規定のVPgタンパク質の断片又はVPgタンパク質のタンパク質類似体の断片である。
【0030】
例えば、上記で規定の断片は、好ましくは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12の本明細書中の上記で規定のVPgタンパク質のいずれかのアミノ酸配列の少なくとも8個、順に好ましくなるが、少なくとも10個、15個、20個、25個、26個又は42個の連続したアミノ酸残基を含むか又はこれらから成る。
【0031】
本発明の別の好ましい実施の形態によれば、PVYのVPg(配列番号2)の断片は:
配列番号2の41位のアルギニン(Arg)と、94位のアルギニン(Arg)との間に局在するアミノ酸配列(VPg2とも呼ばれる、配列番号14)、又は
配列番号2の41位のアルギニン(Arg)と、82位のグリシン(Gly)との間に局在するアミノ酸配列(VPg4とも呼ばれる、配列番号16)、
配列番号2の41位のアルギニン(Arg)と、66位のフェニルアラニン(Phe)との間に局在するアミノ酸配列(VPg5とも呼ばれる、配列番号18)、
配列番号2の41位のアルギニン(Arg)と、59位のアルギニン(Arg)との間に局在するアミノ酸配列(VPg1とも呼ばれる、配列番号20)、又は
配列番号2の60位のフェニルアラニン(Phe)と、94位のアルギニン(Arg)との間に局在するアミノ酸配列(VPg3とも呼ばれる、配列番号22)
を含むか又はこれらから成る。
【0032】
別の実施の形態において、断片は、配列番号16のアミノ酸配列の少なくとも8個、順に好ましくなるが、少なくとも10個、15個、20個、25個又は26個の連続したアミノ酸残基を含むか又はこれらから成る。
【0033】
別の実施の形態において、VPgタンパク質の断片は、配列番号16のアミノ酸配列の全長と、少なくとも60%、順に好ましくなるが、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性、又は少なくとも80%、順に好ましくなるが、少なくとも85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列相同性を示す配列番号16の類似体から成る。
【0034】
別の実施の形態において、VPgタンパク質の断片は、配列番号18のアミノ酸配列の全長と、少なくとも60%、順に好ましくなるが、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性、又は少なくとも80%、順に好ましくなるが、少なくとも85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列相同性を示す配列番号18の類似体から成る。
【0035】
「類似体(analog)」という用語は、本明細書中の上記で規定のように、アミノ酸配列内の1つ又は複数のアミノ酸が、代替的なアミノ酸、若しくは炭水化物、脂質若しくはケミカル(chemical)等の別の残基に置き換わっており、及び/又は1つ又は複数のアミノ酸が欠失しているか、又は1つ又は複数の付加的なアミノ酸、若しくは炭水化物、脂質若しくはケミカル等の別の残基が、PVYのVPgタンパク質若しくはその断片のペプチド鎖若しくはアミノ酸配列に付加されている、任意の形態のPVYのVPgタンパク質(配列番号2)又はその断片(例えば配列番号16又は配列番号18)を包含するように意図されているが、但し上記類似体には依然として、上記のように、真核生物(例えば昆虫)の開始因子eIF4E、好ましくは哺乳動物の開始因子eIF4E、より好ましくはヒトの開始因子eIF4Eとの結合能を有する。
【0036】
スコアリングマトリクスBLOSUM62を選択するBLASTプログラム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)のような2つのアミノ酸配列間の「同一性」を算出するのに好適なコンピュータプログラムの多くが当該技術分野で一般的に知られている。
【0037】
「相同性(similarity)」という用語は、保存的なアミノ酸残基の置換が認められる2つのペプチドのアミノ酸残基の比較を表す。即ち同じ電荷と同じ極性とを共有するアミノ酸残基を相同(similar)であると見なす。保存的な変化は、得られるペプチドの結合特徴を有意には変えない。以下は、アミノ酸の様々な分類(groupings)の一例である:
非極性R基を有するアミノ酸
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン。
非荷電極性R基を有するアミノ酸
グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン。
荷電極性R基を有するアミノ酸(pH6.0で負に荷電)
アスパラギン酸、グルタミン酸
塩基性アミノ酸(pH6.0で正に荷電)
リシン、アルギニン、ヒスチジン(pH6.0で)
OH基を有するアミノ酸
セリン、スレオニン、チロシン
芳香族基を有するアミノ酸
フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン
別の分類は分子量(即ちR基の大きさ)に基づき行うことができる:
グリシン 75
アラニン 89
セリン 105
プロリン 115
バリン 117
スレオニン 119
システイン 121
ロイシン 131
イソロイシン 131
アスパラギン 132
アスパラギン酸 133
グルタミン 146
リシン 146
グルタミン酸 147
メチオニン 149
ヒスチジン(pH6.0で) 155
フェニルアラニン 165
アルギニン 174
チロシン 181
トリプトファン 204
特に好ましい保存的な置換は:
正の電荷を維持し得るような、アルギニンのリシンへの置換、及びその逆の置換、
負の電荷を維持し得るような、アスパラギン酸のグルタミン酸への置換、及びその逆の置換、
遊離−OHを維持し得るような、スレオニンのセリンへの置換、
残基の芳香族の特徴を維持し得るような、フェニルアラニンのチロシンへの置換、及び
遊離−NHを維持し得るような、アスパラギンのグルタミンへの置換
である。
【0038】
本明細書中で与えられる配列相同性の値は、配列同一性の算出を参照して上記のように決定する。
【0039】
必要に応じて、本明細書中の上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体は、細胞取り込みを容易にするアミノ酸配列を含んでもよい。細胞透過性ペプチドとして知られるかかるアミノ酸配列は当該技術分野で既知である(CELL PENETRATING PEPTIDES: PROCESSES AND APPLICATIONS、Ulo Langel編(2002)又はAdvanced Drug Delivery Reviews, 2005, 57:489-660を参照されたい)。これらとしては、ヒト免疫不全(Immunodeficency)ウイルス1型(HIV−1)タンパク質Tat又はその断片(Ruben et al., 1989)、ヘルペスウイルステグメントタンパク質VP22(Elliott and O'Hare, 1997)、ペネトラチン(penetratin)(Derossi et al., 1996)、プロテグリン1抗菌ペプチドSynB(Kokryakov et al., 1993)及び塩基性線維芽細胞成長因子(Jans, 1994)が挙げられる。
【0040】
本発明の第2の態様は、開始因子eIF4Eが被験体で発現又は過剰発現される癌、好ましくは神経膠腫、黒色腫又は肺癌若しくは結腸癌を治療する薬物の製造のための、本明細書中の上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体の使用に関する。
【0041】
第3の態様において、本発明は、上記で規定のように、タンパク質、その断片又はその類似体をコードする単離核酸配列を提供する。本発明の核酸配列を標準的な技法を用いて合成することができる。核酸操作法は当該技術分野で既知である(例えば、Sambrook J. et al. (2000) Molecular Cloning: A Laboratory Manualを参照されたい)。例えば、核酸配列は、配列番号1(PVYのVPgタンパク質をコードする、GENBANKデータベース(2006年11月14日版)におけるアクセッション番号Z29526下で特定されるヌクレオチド配列の1007番目〜1570番目の残基)、又は配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19又は配列番号21の核酸配列を含むか又はこれらから成る。
【0042】
本発明は、上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体の発現のための組換えベクターも提供する。組換えベクターは、少なくとも1つの調節配列と操作可能に連結した、上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体をコードする少なくとも1つの核配配列を含む。
【0043】
「ベクター」という用語は、別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を意味するように意図される。例えば、本発明で使用することができるベクターとしては、ウイルスベクター(例えばレトロウイルス、アデノウイルス、バキュロウイルス)、プラスミド、RNAベクター、又は染色体、非染色体、半合成若しくは合成核酸から成り得る線状若しくは環状のDNA若しくはRNA分子が挙げられるが、これらに限定されない。多くの好適なベクターが当業者に知られており、市販されている。好ましいベクターは、自己複製可能なもの(エピソームベクター)及び/又は操作可能に連結した核酸を発現可能なもの(発現ベクター)である。
【0044】
「操作可能に連結した(operably linked)」という用語は、ヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列を発現させるように調節配列と連結することを意味すると意図される。
【0045】
「調節配列」という用語は、プロモータ、エンハンサ及び転写制御因子又は翻訳制御因子を含む。またかかる調節配列は当該技術分野で知られている。
【0046】
例えば、発現ベクターは、複製起点又は自己複製配列(ARS)及び発現制御配列、プロモータ、エンハンサ及び必要なプロセシング情報部位(例えばリボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位、転写終結配列及び翻訳終結配列、並びにmRNA安定化配列)を含み得る。かかるベクターは、当該技術分野で周知であり、例えばSambrook et al., 2000で検討された標準的な組換え法によって調製することができる。
【0047】
本発明は、癌を予防又は治療する薬物の製造のための、上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体をコードする核酸を発現する少なくとも1つの組換えベクターの使用にも関する。
【0048】
また本発明による発現ベクターは、細胞をトランスフェクト又は(例えば電気穿刺によって)形質導入又は感染させることにより、上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体を導入又は産生するのに使用することができる。
【0049】
本発明は、トランスフェクトされて、上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体を発現する宿主細胞にさらに関する。宿主細胞は、本発明の核酸又はベクターでトランスフェクトすることができる。宿主細胞は任意の原核細胞又は真核細胞であり得る。例えば、上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体は、大腸菌等の細菌細胞、昆虫細胞、酵母、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)等の哺乳動物細胞、又はB16、LGL26、HeLa若しくは293等の動物若しくはヒトの細胞、又は任意の形質転換細胞株で発現し得る。
【0050】
別の態様において、本発明は、本明細書中の上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体又は組換えベクターと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。本発明による組成物は、開始因子eIF4Eが被験体で発現又は過剰発現される癌、好ましくは神経膠腫、黒色腫又は結腸癌若しくは肺癌を治療するのに有用である。
【0051】
本明細書中で使用されるように、「薬学的に許容される担体」には、製剤投与に適合する、任意の及び全ての溶媒、分散媒、リポソーム、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれるように意図される。好適な担体は、この分野の標準的な参考資料である最新版のRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。かかる担体又は希釈剤の好ましい例は、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。陽イオン性脂質、固定油等の非水性ビヒクル及び市販の形質導入株(transductants)も使用することができる。薬学的に活性のある物質へのかかる媒体及び作用物質の使用は当該技術分野で周知である。いかなる従来の媒体又は作用物質も上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体と不適合でない限りは、本発明の組成物でのそれらの使用が考慮される。
【0052】
例えば、医薬組成物がタンパク質、その断片又はその類似体を含む場合、薬学的に許容される担体は、陽イオン性脂質、又は非陽イオン性脂質と陽イオン性脂質との混合物であるのが好ましい。
【0053】
さらに別の態様において、本発明は、癌細胞増殖を阻害する方法であって、本明細書中の上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体を含む組成物で、それを必要とする被験体を治療する工程を含むことを特徴とする、方法を含む。
【0054】
「阻害すること」という用語は、細胞増殖を緩徐、低減、遅延、阻止又は破壊することを表す。
【0055】
「細胞増殖」という用語は、細胞群が分裂する速度を表す。細胞増殖数は、当業者が容易に定量することができる。
【0056】
「癌」という用語は、制御することができない異常な細胞増殖と、局所的に又は血流及びリンパ系を介して身体の他の部位に罹患細胞が広がる能力(即ち転移)と、任意の多くの特徴的な構造特性及び/又は分子特性とを特徴とする多くの疾患のいずれかを表す。癌の例は、乳癌、結腸直腸癌、肝臓癌、肺癌(例えば小細胞、非小細胞)、気管支癌、前立腺癌、卵巣癌、脳腫瘍、膵臓癌、結腸癌、頭頸部癌、胃癌及び膀胱癌、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、白血病、神経芽細胞腫、神経膠腫、又は膠芽細胞腫である。
【0057】
「癌細胞」は、分化能を欠き、且つ浸潤及び転移の可能性がある特定の構造特性を有する細胞と理解される。好ましくは、癌細胞は開始因子eIF4Eを発現又は過剰発現する。eIF4Eを発現する癌細胞は、当該技術分野で既知の方法、例えばDNAシークエンシング、又はノーザンブロット法、又は抗eIF4E抗体を使用する免疫化学法によって同定することができる。
【0058】
「過剰発現」という用語は、eIF4Eタンパク質をコードする遺伝子が、正常な休止状態の真核生物、哺乳動物又はヒトの細胞(即ち非癌細胞)のレベルに比べてより高いレベルで発現することを意味し、これによりこの正常細胞で通常産生されるレベルを超えるeIF4Eレベルが癌細胞で生じる。発現又は産生の正常範囲は、eIF4Eタンパク質、そのmRNA、又はその遺伝子の解析等の常法によって決定することができる。
【0059】
「治療すること」という用語は、疾患若しくは障害(例えば癌又は転移性癌)、疾患若しくは障害の症状、又は疾患若しくは障害の素因を有する患者に、これらの疾患若しくは障害、疾患若しくは障害の症状、又は疾患若しくは障害の素因を、回復、治癒、軽減、緩和、変化、修復(remedy)、改善、好転させるため若しくはこれらに影響を与えるために、又は寿命を延ばすために、本明細書中の上記で規定のタンパク質、その断片又はその類似体、又は本発明の組成物を投与することを含む。
【0060】
別の態様において、本発明は、eIF4Eとの結合特異性がVPgタンパク質、好ましくは配列番号2のVPgタンパク質と類似している(mimic)化合物(例えば薬物)をスクリーニングするための、好ましくはヒト由来の単離精製開始因子eIF4Eの使用に関する。
【0061】
別の態様において、本発明は、開始因子eIF4E(好ましくはヒトeIF4E)との結合特異性が好ましくは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10又は配列番号12、より好ましくは配列番号2のVPgタンパク質と類似している化合物(例えば薬剤)をスクリーニングする方法であって、i)単離精製eIF4Eを候補化合物及び本発明によるタンパク質、その断片又はその類似体(例えば配列番号2)と接触させる工程と、ii)この候補化合物がeIF4Eと、該タンパク質、その断片又はその類似体との間の結合(又は相互作用)を阻害するか否かを検出する工程とを含む、方法に関する。競合結合アッセイを実施するには、当該技術分野において標準的な方法が利用可能である。さらに、ペプチド化合物とeIF4Eとの結合(又は相互作用)の検出は、Grzela et al.(2006)に記載のように実施することができる。
【0062】
候補化合物としては、可溶性ペプチド等のペプチド、脂質、炭水化物、リポペプチド、糖ペプチド、及び有機小分子及び無機小分子が挙げられる。
【0063】
以下の表1は、本明細書で使用される核酸及びペプチド配列の要約である。
【0064】
【表1】

【0065】
上述の特徴に加えて、本発明は、以下の記載から明らかになる他の特徴をさらに含み、この記載は、本発明を示す実施例と添付の図面とを参照する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】ヒトeIF4EとPVYのVPgタンパク質又はその断片(VPg1〜VPg4)との間の相互作用アッセイを示す図である。
【図2】昆虫細胞における天然eIF4Eの局在化に対するVPgタンパク質(配列番号2)発現の効果を示す図である。VPgは昆虫細胞で発現され、天然eIF4E(左側の欄)及び組換えVPg(VPg欄)の分布を、感染後の指定時点での共焦点顕微鏡によって解析した。幾つかの細胞の爆発的増殖は右の欄に示す。
【図3】VPgタンパク質(配列番号2)に特異的である天然eIF4Eの細胞質保持を表す図である。昆虫細胞に、バクミド(bacmid)(ヌルバキュロウイルス、左側の欄)、HCVヘリカーゼのドメインII(中央の欄)及びVPg(右側の欄)を感染させた。昆虫細胞を感染後の指定時点での共焦点顕微鏡によって解析した。
【図4】分画昆虫細胞におけるeIF4E発現を表す図である。適切なバキュロウイルスをMOI 10で感染させた昆虫細胞を感染後の指定時点で回収し、核を細胞質から分離し、細胞内抽出物をSDS/PAGEとウェスタンブロット法とで解析した。組換えタンパク質の発現は、離れた右下のパネルに示している。
【図5】ヒトeIF4Eの局在化に対するPVYのVPgタンパク質の効果を示す図である。Pro−Ject(商標)(Pierceから購入)の存在下で、HeLa細胞にVPgを形質導入し、VPg及びeIF4Eの存在に関して共焦点顕微鏡によって解析した(図1B)。図1Aでは、HeLa細胞を形質導入しなかった。
【図6】ヒト細胞の増殖に対するPVYのVPgタンパク質の効果を示す図である。タンパク質転移試薬としてTransPass P(Ozyme)を使用して、細胞にVPgを形質導入し、指定期間インキュベートした。LDH細胞傷害性検出アッセイ(Clontech)を使用して、細胞の損傷を推測した。結果は3つのウェルから得られた平均の結果を示す。
【図7】GL26(マウス神経膠腫)腫瘍を保有するマウスにおけるPVYのVPgタンパク質の抗腫瘍効果を示す図である。0=実験開始時に測定した腫瘍体積、処置なし。1=3日後に測定した腫瘍体積。対照=非処置のマウス。バッファ=0.9% NaClで電気穿孔したマウス。VPg=25μgのVPgが入った0.9% NaClで電気穿孔したマウス。0日目と3日後とで同じ符号は、同じマウスにおける腫瘍体積を示している。また図は、時点0と時点1との間での腫瘍の大きさの倍数増加も示している(1倍は腫瘍の大きさが増大していないことを意味する)。
【図8】B16−ova(マウス黒色腫)腫瘍を保有するマウスにおけるPVYのVPgタンパク質の抗腫瘍効力を示す図である。B16−ova黒色腫細胞をC57BL/6マウスの大腿部に注射した(2群8匹の動物)。2週間後、触知可能な腫瘍が形成された。対照群では、Transpass Pと混合したバッファを腫瘍に注射した。第2の群では、6日間毎日、Transpass Pを形質導入したVPg 50μgを注射した。6日の処置の間、毎日、腫瘍の直径を測定した。
【実施例】
【0067】
実施例1:材料及び方法
細胞
懸濁液中で増殖させたハイファイブ昆虫(イラクサギンウワバ)細胞を、ゲンタマイシン(50mg/ml)及びアンホテリシンB(0.25mg/ml)の入ったExpress Five SFM培地(Invitrogen)中で培養した。
【0068】
HeLa(ヒト頸癌)、B16−ova(マウス黒色腫)、GL26(マウス神経膠腫)、IMR90(ヒト一次二倍体線維芽細胞)を、10% FCSを補ったDMEM+GlutaMAX(商標)−I(Gibco)培地中で増殖させた。
抗体
抗hisマウスモノクローナル抗体(MMS−156P)をBabCO(Berkeley, CA, USA)から購入した。抗eIF4Eマウスモノクローナル抗体(P−2、sc−9976)をSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz, CA, USA)から購入した。この抗体は、マウス、ラット、ヒト及びブタのeIF4Eを認識する。ヒトeIF4Eに対する抗eIF4Eウサギポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratoriesから購入)は、Nahum Sonenbergの寄贈であった(McGill University, Montreal Canada)。
【0069】
抗原としてバキュロウイルスで発現したPVYのhisVPgを使用して、抗VPgウサギポリクローナル抗体をElevage Scientifique des Dombes(Chatillon, France)で調製し(以下に記載)、以下のようにVPgに対してアフィニティ精製した。初めに、非感染昆虫細胞1gから得られたアセトン粉末を用い、血清から交差反応抗体を取り除いた。最終濃度が1%になるまで、細胞粉末を抗VPgウサギ血清に添加し、ゆっくり回転させながら一晩氷上で保存した。10000g、4℃で10分間の遠心分離の後、製造業者の取扱説明書に従って固定されたVPgタンパク質を含有するCNBr活性化セファロース4B(Amersham Bioscienceから購入)に上清画分を適用した。100mMのグリシン(pH2.4)によって、3Mのトリス(pH8.8)30μlと5MのNaCl 20μlとが入った試験管に直接、結合抗体を溶出させた。
【0070】
組換えタンパク質の発現及び精製
ジャガイモYウイルス(O株、GENBANKデータベースにおけるアクセッション番号Z29526)のVPg遺伝子を、フォワードプライマー5’GGGGGGGATCCATGGGGAAAATAAA−3’(配列番号 23)及びリバースプライマー5’CCCCCAGATCTCTATTATTCATGCTCC−3’(配列番号24)と共に、鋳型としてプラスミドpPVY15(GENBANKデータベース(2006年11月14日版)におけるアクセッション番号Z29526で利用可能)を使用するPCRによって合成し、GENBANKデータベースにおけるアクセッション番号CAA82642を有するタンパク質を発現させた。AcMNPVのポリヘドリンプロモータ(配列番号25)の制御下で、VPgのcDNAをpFastBac HTb(Invitrogen(Carlsbad, CA, USA)から購入)に挿入し(O'Reilly et al., 1992)、バクミド技術(Gibco BRLから購入)を使用して、hisタグ付けVPgを発現する組換えバキュロウイルスを構築した。懸濁液中のハイファイブ(イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni))細胞に、5pfu/細胞のMOIで組換えバキュロウイルスを感染させた。組換えバキュロウイルスを感染させたHF細胞の一部(100ml)を感染後72時間で回収し、300mMのNaClと、6mMのβ−メルカプトエタノールと、5%グリセロールと、0.5% Tween20と、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Complete、Rocheから購入)とを含有する50mMのリン酸バッファ(pH7.0)10ml中で懸濁して、5サイクルの液体窒素での凍結及び37℃での解凍で溶解した。溶解(clearing)後、抽出物を重力で1mlのNi−NTAアガロース樹脂(Qiagenから購入)に通し、5mlの溶解バッファで平衡にした。300mMのNaClを含有する、250mMのイミダゾールの入った50mMのリン酸バッファ(pH7.0)500μlで5回、結合タンパク質を溶出した。10℃で48時間のインキュベーションの間、TEVプロテアーゼを用いて、融合タグをVPgから取り除いた。得られた産物を5mlのHi−Trap Heparinカラム(Amersham Pharmaciaから購入)上で精製した。タンパク質を100mMのNaClの入った50mMのリン酸バッファ(pH7.0)中のカラムに適用し、OD280が安定なレベルに達するまで同じバッファで洗浄した後、50mMのリン酸バッファ(pH7.0)中のNaClのグラジエント(100mM〜1M)で溶出した。全長hisVPgを含有する画分を回収し、希釈して、Hi−Trap Heparinカラムで用いた条件下で5mlの15S−Sourceカラム(Amersham Pharmaciaから購入)上で分画化した。MOI 5で適当なバキュロウイルスを感染させた後、HCVヘリカーゼのHisタグ付けドメインIIをHF細胞で発現させ、記載のように精製した(Boguszewska-Chachulska et al., 2004)。分子量標準として、Precision Plus Protein Dual Colour(Bio-Radから購入)とBenchMark Prestained Protein Ladder(Invitrogenから購入)を用いて、CBBによる染色によって、12% SDS−PAGE上で全ての工程を解析した。
【0071】
細胞分画化
1ml当たり2×10個の細胞濃度のハイファイブ(T.ni)細胞に、MOI 5で、VPgタンパク質若しくはhisVPgを発現するバキュロウイルス、又はHCVヘリカーゼのドメインII又は空バクミドを感染させた。2000rpmで10分間の遠心分離によって、感染細胞を感染後指定時間で回収した。ペレットをPBS中で2回洗浄し、4倍の血中血球容積(packed cell volume)の低張バッファ(10mMのトリス(pH7.9)、10mMのKCl、3mMのDTT、0.1mMのEDTA、0.1mMのEGTA、0.75mMのスペルミジン、15mMのスペルミン)中で再懸濁した。細胞を氷上で30分間膨張させ、完全に破壊されたのを位相差顕微鏡で確認した。それから、1/10容量の回復(restoration)バッファ(50mMのトリス(pH7.9)、0.75mMのスペルミジン、0.15mMのスペルミン、10mMのKCl、0.2mMのEDTA、3mMのDTT、67.7%スクロース)を添加し、ホモジネートを1mlのスクロースクッション(30%スクロースの入った低張バッファ)上に積層し、3000rpmで20分間、冷蔵して遠心分離した。ペレット化した核を4倍の血中血球容積の核抽出バッファ(50mMのトリス(pH7.5)、0.42mMのKCl、6mMのDTT、0.1mMのEDTA、10%スクロース、5mMのMgCl、20%グリセロール、0.5mMのPMSF、1ml当たり3mgのロイペプチン)中で再懸濁した。それから、4℃で30分間ゆっくりと振動させることで核を溶解させた。細胞質画分と核画分とを15% SDS−PAGE上で泳動させた後、X線フィルムを備えたECLシステムを用いて、抗eIF4E抗体でウェスタンブロット法を行った。Quantity Oneソフトウェアを備えたGelDoc2000(BioRadから購入)を用いて、eIF4Eバンドの濃度測定を実施した。
【0072】
VPgタンパク質による細胞形質導入
製造業者の取扱説明書に従って、Transpass P(Ozyme)を、150mMのNaClを含有する20mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)又はPBS中で精製VPg(0.1μg/ウェル〜2μg/ウェル)と合わせた。最終容量が250μlになるまで血清無含有培地をVPg/Transpass P混合物に添加した。血清無含有培地で予め洗浄したHeLa細胞(24ウェル皿の1つのウェル当たり10個)をかかる部分の送達混合物で処理した。37℃での指定期間のインキュベーション後、細胞をタンパク質局在化(共焦点顕微鏡)及び増殖(Clontech製のLDHキット)による試験に使用した。
【0073】
共焦点顕微鏡による昆虫細胞におけるeIE4E及びVPgの局在化
懸濁液中のハイファイブ(T. ni)細胞(1ml当たり2×10個の細胞)に、10 MOIでhisVPg、又はHCVヘリカーゼのhisタグ付けドメインII、又は空バクミドのいずれかを発現するバキュロウイルスを感染させた。3000rpm、4℃で、5分間の遠心分離によって、感染後48時間で細胞を回収した後、500μlのPBSで2回洗浄した。細胞を2%冷PFAで固定し、室温で10分間置き、500μlのPBSで2回洗浄して、300μlのPBSで再懸濁した。100μlの固定細胞の一部を清潔な丸型カバーガラス上に塗布し、層流フード中で乾燥しながら付着させた。翌日、スライドガラスを24ウェルプレートのウェルに乗せ、PBS 500μlによって室温で再水和した。PBSを取り除いた後、0.1%冷Triton X−100の入ったPBSで10分間、細胞を透過させ、PBSで2回洗い流し、室温で30分間、5%血清の入ったPBSで遮断した。PBSでの2回の洗浄後、室温で1時間、PBS中で100倍希釈した一次抗体(抗his又は抗ヒトeIF4E)と細胞をインキュベートした後、洗浄し、PBS中で100倍希釈した二次抗体(抗ウサギFITC又は抗マウスTexas Red)(Jackson ImmunoResearch Laboratories)と1時間インキュベートした。PBS中で希釈したヨウ化プロピジウム(0.2μg/ml〜1μg/ml)で核を染色した。3回、PBSで洗い流した後、スライドガラスは50%グリセロールを備えていた。BioRadのMRC−600/株式会社ニコンのOptiphotレーザー走査型共焦点顕微鏡によって、画像を収集した。
【0074】
共焦点顕微鏡によるヒト細胞でのeIF4E、VPgタンパク質及びPMLの局在化
約60%の密集度(confluency)でスライドガラス上に播種されたHeLa細胞をPBSで3回洗浄し、2%冷PFA中で固定した。10 MOIで、細胞に、hisVPg、又はHCVヘリカーゼのhisタグ付けドメインII、又は空バクミドのいずれかを発現する、バキュロウイルスを感染させた。3000rpm、4℃で、5分間の遠心分離によって、感染後48時間で細胞を回収した後、500μlのPBSで2回洗浄した。細胞を2%冷PFAで固定し、室温で10分間置き、500μlのPBSで2回洗浄して、300μlのPBSで再懸濁した。100μlの固定細胞の一部を清潔な丸型カバーガラス上に塗布し、層流フード中で乾燥しながら付着させた。翌日、スライドガラスを24ウェルプレートのウェルに乗せ、PBS 500μlによって室温で再水和した。PBSを取り除いた後、0.1%冷Triton X−100の入ったPBSで10分間、細胞を透過させ、PBSで2回洗い流し、室温で30分間、5%血清の入ったPBSで遮断した。PBSでの2回の洗浄後、室温で1時間、PBS中で100倍希釈した一次抗体(精製ポリクローナル抗VPg抗体、抗eIF4E(MAb)抗体及び抗PML(MAb)抗体)と細胞をインキュベートした後、洗浄し、PBS中で100倍希釈した二次抗体(抗ウサギFITC又は抗マウスTexas Red)(Jackson ImmunoResearch Laboratoriesから購入)と1時間インキュベートした。PBS中で希釈したヨウ化プロピジウム(0.2μg/ml〜1μg/ml)で核を染色した。3回、PBSで洗い流した後、スライドガラスは50%グリセロールを備えていた。BioRadのMRC−600/株式会社ニコンのOptiphotレーザー走査型共焦点顕微鏡によって、画像を収集した。
【0075】
細胞増殖に対するVPgタンパク質の効果
HeLa細胞、B16細胞、GL26細胞及びIMR90細胞を、1つのウェル当たり1×10個の細胞で96ウェルプレートにおいて播種し、一晩培養した。VPgの一部(0.5μg/ウェル〜2μg/ウェル)を血清無含有培地に希釈し、総容量10μlを得て、室温で20分間、0.2μlのTransPass Pタンパク質トランスフェクション試薬(New England BioLabs)とインキュベートした。細胞を血清無含有培地で洗い流し、100μl/ウェルの血清無含有培地と形質導入ミックスとを含有する混合物で覆った。37℃での様々なインキュベーション時間後、1000rpmで10分間、プレートを遠心分離し、上清を新しいプレートに移した。490nmで多重標識カウンターVictor1412(Wallac)を用いて、LDH細胞傷害性検出キット(Clontech)によって、リンゴ酸デヒドロゲナーゼの放出を測定した。LDHキットのマニュアルに従って、細胞傷害性のレベルを算出した。
【0076】
実施例2:ヒトeIF4Eと、PVYのVPgタンパク質及びその断片とのin vitro相互作用アッセイ
GST融合タンパク質として、配列番号2(VPg)、配列番号14(VPg2)、配列番号16(VPg4)、配列番号20(VPg1)、配列番号22(VPg3)及び配列番号18(VPg5)のペプチドを大腸菌での発現によって得た。ベクターpGEX−4T−1(Amersham Biosciencesから購入)でクローン化したcDNA配列(VPg、VPg1、VPg2、VPg3、VPg4又はVPg5をコードする)から標準的な方法でGST融合タンパク質を産生した。
【0077】
96ウェル皿のウェルで固定化したeIF4Eとのペプチド相互作用を測定するのにELISA法を用いた。相互作用を抗GST抗体でモニタリングした。
【0078】
100ngのヒトeIF4Eの入ったコーティングバッファ(0.1Mの炭酸バッファ(pH9.6))を4℃で一晩、96ウェルマイクロタイタープレートに適用した。余分なeIF4Eを取り除き、37℃で1時間、ウェルを5%ミルクの入ったPBSTバッファで遮断した。プレートをPBSTで3回洗い流し、室温で1時間、漸増量の様々なGST融合ペプチドの入ったPBSTとインキュベートした。2回のPBST洗浄後、抗GST HRP結合抗体(5000倍希釈)(Amersham Biosciencesから購入)とのインキュベーションを37℃で30分実施した。3回のPBST洗浄後、ペルオキシド基質によって、反応を起こし、490nmでの吸光度を測定した。GSTタンパク質及び抗GST抗体と、GST融合ペプチドとの非特異的な相互作用を差し引いた。
【0079】
結果を図1に示す。調べたペプチドの中で、配列番号22(VPg3)が弱い相互作用因子であると考えられる。配列番号20(VPg1)及び配列番号14(VPg2)はおおよそ同程度のレベルの相互作用を示し、これはVPg自体ともそれほど変わらない。最良のeIF4E相互作用ペプチドは、配列番号16(VPg4)及び配列番号18(VPg5)であると考えられ、これはより高い濃度で、PVYのVPgタンパク質自体(配列番号2)よりも良好に機能する。
【0080】
実施例3:昆虫細胞におけるeIF4E及びPVYのVPgタンパク質(配列番号2)のin vitro細胞局在化
昆虫細胞に、PVYのVPg遺伝子(配列番号1)を含有するバキュロウイルスを感染させた。共焦点顕微鏡解析によって、核と細胞質との両方のコンパートメントでの感染開始時に局在していた(図2、12hpi)開始因子eIF4Eが60hpi時点では細胞周辺で観察されたことが示された(図2、左側の欄)。VPgは、感染を通して細胞質でしか観察されなかった(図2、VPg欄)。融合(Merged)画像は、感染開始時には核でかなりの割合のeIF4Eを示していたが、感染の経過中に消失していき、24hpiでは、eIF4Eは細胞質とちょうど核周辺部とに見ることができ、60hpiでは細胞質でしか観察されず、このことはVPgとのかなりの重複を示していた。
【0081】
eIF4E局在化において観察される変動が特にVPgの存在によるものであるか否かを解明するために、ウイルス由来のバキュロウイルスヌル(バクミド)による昆虫細胞感染時、外来遺伝子の挿入前、また非関連タンパク質、HCVヘリカーゼのドメインII又はVPgを発現するバキュロウイルスの感染時のeIF4Eの局在化を調べた(図3)。非感染昆虫細胞では、eIF4Eが両方の細胞コンパートメントで観察された(最上部のパネル)。12hpiでは、3種類全てのウイルスを感染させた細胞が同様の挙動を示す一方で、60hpiでは、VPgを発現する細胞だけが細胞質中でのeIF4E保持を示した(図3、最下部のパネル)。より定量的なデータを得るために、細胞核を細胞質と分けて、両方のコンパートメントにおけるeIF4E量をウェスタンブロット法(図4)、その後の濃度測定(以下の表2)で評価した。
【0082】
【表2】

【0083】
hisタグ付形態のVPgを発現するバキュロウイルスを感染させた細胞が、本実験に含まれていた。非感染細胞、及び12時間感染させた細胞の両方において、同程度のレベルのeIF4Eが細胞質及び核に存在していた。核プールの開始因子は、バクミド及びヘリカーゼ発現ウイルスの感染経過中に幾らか低減した。しかしながら、両方のVPg形態が発現されると、核プールのeIF4Eが大幅に失われ、36hpiでは、核プールのeIF4Eは、総細胞因子の13%しか占めていなかった(51%〜53%から下がって)。
【0084】
これらの実験によって、(1)バキュロウイルス系単独で発現したVPgが細胞質に残り、(2)VPgの存在下で、eIF4Eが細胞質中に保持され、これにより核プールの開始因子が失われるが、昆虫細胞が幾らかのeIF4Eアイソフォームを含有していると思われるので、細胞増殖又は細胞死は阻害されないことが実証された。
実施例4:HeLa細胞におけるeIF4E及びPVYのVPgタンパク質のin vitro細胞局在化
植物ウイルスのVPgタンパク質がヒトeIF4Eと相互作用し、核プールの開始因子を失わせることができるか否かを確認するために、様々な条件下で、幾つかのトランスフェクション実験を実施した。しかしながら、VPgを発現する細胞を回収することができず、このことはヒト細胞に対するVPgの毒性効果を示唆していた。したがって、PVYのVPg(配列番号2)は、タンパク質を細胞内送達させる陽イオン性脂質混合物であるPro−Ject(商標)(Pierceから購入)で、HeLa細胞に直接転座させた(図5Bを参照されたい)。VPgは細胞質に局在し、天然eIF4Eの局在化に強い影響を与えた。対照HeLa細胞では、開始因子は細胞質と核とで観察された。VPgの存在下では、eIF4Eのレベルは核で大幅に低減し、細胞質に局在したVPgにかなり重複していた。
【0085】
実施例5:in vitroでの細胞増殖に対するPVYのVPgタンパク質の効果
形質転換細胞、HeLa細胞及びB16細胞、並びに一次非形質転換ヒト細胞IMR90細胞へのVPg送達後に、細胞損傷の評価を可能にするLDHアッセイを適用した。VPg細胞内送達の1時間後には既に、HeLa細胞及びB16細胞の両方が有意な細胞損傷を示した。重要なことに、一次IMR90(ヒト胎児肺線維芽細胞)に導入されたVPgはこれらの増殖に影響を与えなかった(図6、IMR90)。
【0086】
VPgと、真核生物の開始因子eIF4Eとの相互作用によって、細胞質において開始因子の固定化が起こり、これにより細胞増殖が阻害された後、細胞死が起こる。VPgとの相互作用によって引き起こされる核プールのeIF4Eの低減は、増殖誘発(pro-proliferative)タンパク質のメッセンジャーRNAの細胞質輸送の阻害によって達成されると考えられ、これによりその後に細胞死を伴う細胞増殖の阻害が起こる。
【0087】
実施例6:in vivoでの細胞増殖に対するPVYのVPgタンパク質の効力
PVYのVPgタンパク質(配列番号2)の抗癌効果を調べるために、in vivo実験を実施した。C57BL/6マウスを、マウス神経膠腫腫瘍を誘導するGL26細胞又はB16−ova黒色腫細胞で接種した。
【0088】
GL26腫瘍は、成体のC57BL/6雌マウスの右大腿四頭筋に、0.5×10個のGL26細胞の入った100μlのウシ胎児血清の一部を注射することで樹立した。約2週間後、神経膠腫腫瘍増殖の対数増殖期中に、VPg(0.9% NaCl中、25μg)又は0.9% NaCl(50μl)(バッファ)を2群5匹のマウスに電気穿孔で投与し、対照群のマウスは未処理のままにした。VPg及びバッファで処理したマウスは、400μlのImalgen1000と、2%Rompun(両方ともCentravet(Lapalisse, France)製)と、0.9%NaClとを含有する溶液250μlを腹腔内注射することで麻酔した。電気穿孔条件は以下の通りであった:1Hzの周波数で細胞融合遺伝子導入装置(electro square porator)T820(BTX, San Diego, CA, U.S.A)から800ボルトの5×100μ秒パルス。パルス間の遅延は1秒であった。動物は、麻酔から回復するまで保温した(37℃)。腫瘍の容量は、2日又は3日ごとにノギス(slide calliper)で測定し(mm)、未処理の対照群マウスの正常に増殖した神経膠腫腫瘍と比較した。
【0089】
B16−ova黒色腫腫瘍は、C57BL/6マウス(2群8匹)の左大腿部にPBSで懸濁した5×10個の細胞を注射することで樹立した。12日後、触知可能な腫瘍が形成されたら、対照群の腫瘍に、バッファと混合したTranspass Pを注射した。第2の群には、6日間毎日、Transpass Pを形質導入したVPg 50μgを注射した。腫瘍の直径を毎日測定することで、腫瘍増殖速度を求めた。
【0090】
結果を図7及び図8に示す。VPgの投与が、対照群に比べて、腫瘍の増殖の速度をゆっくりにするか、又は阻害した。このことは、実際にVPgが腫瘍増殖に対する阻害効果を有することを示している。
【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
【表5】

【配列表フリーテキスト】
【0094】
配列番号23:VPg遺伝子PCRプライマー
配列番号24:VPg遺伝子PCRプライマー
配列番号26:VPgモチーフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物としての単離精製タンパク質であって、
(i)真核生物の開始因子eIF4E、好ましくは哺乳動物の開始因子eIF4E、より好ましくはヒトの開始因子eIF4Eとの結合能を有し、
(ii)アミノ酸モチーフ
【化1】

(該モチーフ中、xは任意のアミノ酸であり、Yはチロシン(Tyr)、Lはロイシン(Leu)であり、
【化2】

はロイシン(Leu)、メチオニン(Met)又はフェニルアラニン(Phe)である)を含まない、
VPgタンパク質若しくは少なくとも8つのアミノ酸を有するその断片若しくはその類似体を含むか又はこれらから成る、単離精製タンパク質。
【請求項2】
配列番号2のVPgタンパク質から成ることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
配列番号2の全長と少なくとも20%の配列同一性又は少なくとも45%の配列相同性を示すVPgタンパク質類似体から成ることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記タンパク質類似体が、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号27、配列番号28、配列番号29又は配列番号30から成る群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載のタンパク質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質の断片であって、前記VPgタンパク質の少なくとも8つの連続したアミノ酸を含むか又はこれらから成ることを特徴とする、タンパク質の断片。
【請求項6】
配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20又は配列番号22から成る群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載のタンパク質の断片。
【請求項7】
配列番号16の全長と少なくとも60%の配列同一性又は少なくとも80%の配列相同性を示す、配列番号16で規定される断片の類似体から成ることを特徴とする、請求項6に記載のタンパク質の断片。
【請求項8】
配列番号18の全長と少なくとも60%の配列同一性又は少なくとも80%の配列相同性を示す、配列番号18で規定される断片の類似体から成ることを特徴とする、請求項6に記載のタンパク質の断片。
【請求項9】
配列番号16の少なくとも8個、10個、15個、20個、25個又は26個の連続したアミノ酸を含むか又はこれらから成ることを特徴とする、請求項5に記載のタンパク質の断片。
【請求項10】
抗癌剤としての請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質、その断片又はその類似体。
【請求項11】
その癌細胞が前記開始因子eIF4Eを発現する癌、好ましくは神経膠腫、黒色腫又は結腸癌若しくは肺癌を治療するのに使用する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質、その断片又はその類似体。
【請求項12】
前記開始因子eIF4Eが発現される癌を治療する薬物の製造のための請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質、その断片又はその類似体の使用。
【請求項13】
被験体の単離精製開始因子eIF4Eとの結合特異性が、前記VPgタンパク質、好ましくは配列番号2のVPgタンパク質と類似している化合物をスクリーニングする方法であって、i)該eIF4Eを候補化合物及び請求項1〜9に記載のタンパク質、その断片又はその類似体と接触させる工程と、ii)該候補化合物がeIF4Eと、該タンパク質、その断片又はその類似体との間の相互作用を阻害するか否かを検出する工程とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
癌を予防又は治療する薬物の調製のための請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質、その断片又はその類似体をコードする核酸を発現する組換えベクターの使用。
【請求項15】
前記核酸が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19又は配列番号21から成る群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質、その断片若しくはその類似体、又は請求項14若しくは15に記載の組換えベクターと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項17】
前記薬学的に許容される担体が陽イオン性脂質であることを特徴とする、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記開始因子eIF4Eが発現される癌を治療するのに使用する、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
トランスフェクトして、請求項1〜9のいずれか一項に記載のタンパク質、その断片又はその類似体を発現する宿主細胞。
【請求項20】
eIF4Eとの結合特異性が配列番号2のVPgタンパク質と類似している化合物をスクリーニングするための単離精製開始因子eIF4Eの使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−530743(P2010−530743A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511744(P2010−511744)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002594
【国際公開番号】WO2008/152527
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(509340045)インスティテュート オブ バイオケミストリー アンド バイオフィジクス−ポリッシュ アカデミー オブ サイエンシィズ (1)
【出願人】(509340517)ユニヴェルシテ ジョセフ フーリエ (3)
【Fターム(参考)】