説明

細胞増殖障害の処置

本発明はポリアルキレングリコール化合物、および細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼが介在する障害、の処置におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物および細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼが介在する障害、におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインチロシンキナーゼ(PTK)は、チロシン残基のリン酸化を触媒する酵素である。PTKには、受容体型PTKと、細胞型即ち非受容体型PTK、の2つの主要なクラスがある。これらの酵素は、細胞内シグナル伝達経路に関与しており、増殖、分化および抗アポトーシス性シグナル伝達および神経突起伸長等の重要な細胞機能を調節する。点変異または過剰増殖等のメカニズムによるこれら酵素の無秩序な活性化は、様々な形態の癌ならびに良性の増殖状態に繋がる。
【0003】
知られているオンコジーンおよびプロトオンコジーンの70%以上が、PTKに対する癌コード(cancer code)に関与していた。炎症性疾患や糖尿病においてみられるPTKシグナル伝達の異常の存在によって、健康および疾患におけるPTKの重要性はますます強まっている。
【0004】
受容体型PTKは、細胞外のリガンド結合領域、膜貫通領域および細胞内の触媒領域を有している。膜貫通領域は受容体を原形質膜に固定し、細胞外領域は成長因子と結合する。特徴として、細胞外領域は、システインに富む領域、フィブロネクチンIII様領域、免疫グロブリン様領域、EGF様領域、カドへリン様領域、クリングル様領域、第VIII因子様領域、グリシンに富む領域、ロイシンに富む領域、酸性領域およびジスコイジン様領域を含む1又はそれ以上の特定可能な構造モチーフからなる。
【0005】
受容体型PTKの細胞内キナーゼ領域は、キナーゼ領域を分離しているアミノ酸ストレッチを含む領域とキナーゼ領域が連続している領域の2つのクラスに分けることができる。キナーゼの活性化は、受容体の二量体化を誘導する細胞外領域へのリガンド結合により達成される。このようにして活性化された受容体は、触媒領域外のチロシン残基を自己リン酸化することができる。このようにして活性化された受容体は、交差リン酸化(cross-phosphorylation)による触媒領域外部のチロシン残基を自己リン酸化することができる。この自己リン酸化の結果として、活性な受容体コンホメーションが安定化され、細胞内でシグナルを伝達するタンパク質に対するホスホチロシンドッキングサイトができる。受容体型チロシンキナーゼの細胞内領域にホスホチロシン依存的に結合するシグナル伝達タンパク質としては、RasGAP、P13−キナーゼ、ホスホリパーゼCγ、ホスホチロシンホスファターゼSHPおよびアダプタータンパク質(Shc、Grb2およびCrkなど)が挙げられる。
【0006】
受容体型PTKとは対照的に、細胞型PTKは、細胞質内、核内に局在している、または原形質膜の内部小葉に固定されている。それらは、SRC、JAK、ABL、FAK、FPS、CSK、SYKおよびBTKの8つのファミリーに分けられる。ホモローガスなキナーゼ領域(Srcホモロジー1またはSH1領域)、およびいくつかのタンパク−タンパク相互作用領域(SH2およびSH3領域)を除いて、それらは構造的にほとんど共通していない。SRCのように、その機能が知られているそれら細胞型PTKの多くが細胞増殖に関与している。対照的に、FPS、PTKは分化に、ABL、PTKは増殖阻害、およびFAK活性は細胞接着に関連している。サイトカインレセプター経路のいくつかのメンバーは、転写因子STATをリン酸化するJAKと相互作用する。さらに他のPTKも経路を活性化するが、その構成要素および機能については解明途上にある。
【0007】
Sykは、B細胞受容体およびIgE受容体からのシグナル伝達に関与するZAP−70に関連する非受容体型チロシンキナーゼである。Sykは、これら受容体内のITAMモチーフに結合し、Ras、PI3−キナーゼおよびPLCシグナル伝達を経由するシグナル伝達を開始する。Sykはまた、造血細胞に広く発現している。それは、活性化された免疫受容体の、増殖、分化および食作用を含む様々な細胞の応答を媒介する下流のシグナル伝達イベントへのカップリングに関与している。Sykの発現は、上皮由来の細胞系において報告されているが、これら細胞におけるその機能は知られていない。Sykは、一般に正常なヒトの乳房組織、良性の乳房巣および低発癌性の乳癌細胞系において発現する。Sykは、上皮細胞増殖の強力な調節物質であり、ヒトの乳癌における有力な腫瘍抑制物質と考えられている。
【0008】
ZAP−70は、Sykファミリーの非受容体型チロシンキナーゼである。ZAP−70は、抗原提示細胞によりT細胞が活性化されると、T細胞受容体複合体へのリクルートメントを介してT細胞受容体シグナル伝達に関与する。活性化されると。ZAP−70はリン酸化して、SLP−76およびLATを含むいくつかの下流ターゲットを活性化する。ZAP−70は、慢性リンパ球性白血病(CLL)予後診断の最も新しいバイオマーカーとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当分野において、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置、予防および制御するのに有効な有力な化合物を開発することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の一態様は、式(I)
【化1】

[式中、
点線は、単結合または二重結合を表し;
5およびR5’は独立に、H、OHまたはOR6であり、ここにR6は直鎖又は分岐鎖のC1−C4アルキルであり;
Xは、O、−CH2O、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
Zは、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
mは、0または1であり;
nは、0〜50の整数である]
の構造式で示される化合物のS−エナンチオマーを用いて、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置する方法を提供する。
【0011】
本発明の更なる態様によれば、細胞増殖障害を処置する方法において使用するための、上記式(I)の構造式で示される化合物のS−エナンチオマーを提供する。当該細胞増殖障害は、Sykチロシンキナーゼ介在性の障害であり得る。
【0012】
本発明の更なる態様によれば、細胞増殖障害、特にSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置するための医薬の製造における使用のための上記式(I)の構造式で示される化合物のS−エナンチオマーの使用を提供する。
【0013】
いくつかの態様では、nは1〜25の整数であってよい。例えば、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25であってよい。好ましくは、nは7または17である。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、式(I)の化合物の塩または水和物の使用を包含する。一態様では、Xは−CH2Oであってよい。一態様では、mは0である。更なる態様ではmは1である。
【0015】
さらに、本発明は、式(II)
【化2】

[式中、
点線は、単結合または二重結合を表し;
5およびR5’は独立に、H、OHまたはOR6であり、ここにR6は直鎖又は分岐鎖のC1−C4アルキルであり;
Zは、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
nは、1〜25の整数である]
の構造式で示される化合物のS−エナンチオマーを用いて、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置する方法を提供する。例えば、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25であってよい。好ましくは、nは7または17である。さらに別の態様では、本発明は、式(II)の構造式によって示される化合物の塩又は水和物を提供する。一態様では、Zは−CH(CH3)CH2Oである。
【0016】
さらに、本発明は、式(III)
【化3】

[式中、
点線は、単結合または二重結合を表し;
5およびR5’は独立に、H、OHまたはOR6であり、ここにR6は直鎖又は分岐鎖のC1−C4アルキルであり;
Zは、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
nは、1〜25の整数である]
の構造式で示される化合物のS−エナンチオマーを用いて、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置する方法を提供する。例えば、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25である。好ましくは、nは7または17である。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、式(III)の構造によって示される化合物の塩または水和物を提供する。一態様では、R5はHである。更なる態様では、R5はOHである。一態様では、R5’はHである。更なる態様では、R5’はOHである。
【0018】
さらに、本発明は、式(IV)
【化4】

[式中、
Rは、n単位を有するポリアルキレングリコールポリマーであり、nは1〜50の整数である]
で示される化合物のS−エナンチオマーを用いて、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置する方法を提供する。一態様では、ポリアルキレングリコールポリマーはポリイソプロピレングリコールである。更なる態様では、nは1〜25の整数である。例えば、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25である。好ましくは、nは7または17である。
【0019】
さらに、本発明は、式(V)
【化5】

[式中、
Rは、n単位を有するポリアルキレングリコールポリマーであり、nは1〜50の整数である]
で示される化合物のS−エナンチオマーを用いて、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置する方法を提供する。一態様では、ポリアルキレングリコールポリマーはポリイソプロピレングリコールである。例えば、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25であってよい。好ましくは、nは7または17である。
【0020】
さらに、本発明は、式(VI)
【化6】

[式中、
Rは、n単位を有するポリアルキレングリコールポリマーであり、nは1〜50の整数である]
で示される化合物のS−エナンチオマーを用いて、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置する方法を提供する。一態様では、ポリアルキレングリコールポリマーはポリイソプロピレングリコールである。例えば、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25である。好ましくは、nは7または17である。
【0021】
さらに、本発明は、式(VII)
【化7】

[式中、
Rは、n単位を有するポリアルキレングリコールポリマーであり、nは1〜50の整数である]
で示される化合物のS−エナンチオマーを用いて、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置する方法を提供する。一態様では、ポリアルキレングリコールポリマーはポリイソプロピレングリコールである。例えば、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25である。好ましくは、nは7または17である。
【0022】
さらに、一態様では、本発明は、1またはそれ以上の、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)で示される化合物を含有する、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、を処置するための組成物を提供する。更なる態様では、本発明は、製薬的に許容し得る賦形剤または助剤とともに、活性成分として1またはそれ以上の、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)で示される化合物を含有する、Sykチロシンキナーゼ介在性の障害を処置するための医薬組成物を提供する。
【0023】
さらに、一態様では、本発明は、1またはそれ以上の、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)で示される化合物を投与することを含んでなる細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、の処置、予防および制御のための方法および/または1又はそれ以上の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)で示される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0024】
特に定義しない場合、本明細書において用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野における通常の技能を有する者が共通して理解している意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験において用いることができるが、適当な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及したすべての刊行物、特許出願、特許および他の文献は、その全体が本明細書の一部を構成する。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が規制する。さらに、材料、方法、および実施例は、単なる説明であって限定を意図したものではない。
【0025】
すべての分量および百分率は、特に記載しない限り重量を基準にする。
【0026】
定義
便宜上、明細書、実施例および特許請求の範囲において用いる特定の用語をここに収集する。
【0027】
「Sykチロシンキナーゼ介在性の」状態は、Sykチロシンキナーゼが関与しており、その作用の調節(例えば阻害)により、障害、それを取り巻いている状態等が処置されることが示されているまたはそう信じられているものを包含する。そのような状態としては、乳癌、卵巣癌、大腸癌、非小細胞肺癌、喘息、および内皮細胞増殖、ならびにCML、AMLおよびB細胞リンパ腫等の悪性血液疾患、リンパ腫および白血病が挙げられる。
【0028】
「処置」は、その状態、疾患、障害等の改善をもたらす任意の効果(例えば、減少、低減、調節または除去)を包含する。
【0029】
本発明は、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼ介在性の障害、の処置に有用な化合物および医薬組成物を提供する。本発明はさらに、上記式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の構造式によって示される1又はそれ以上の化合物を患者に投与することを含んでなる、細胞増殖障害、より具体的にはSykチロシンキナーゼが介在性の障害、の処置、予防および制御のための方法を提供する。
【0030】
化合物を入手および精製するための合成の方法論は以下に詳細に開示する。但し、本発明の化合物が任意の適した合成法により調製することができ、本明細書において記載した合成に何ら限定されるものではないということは当業者には明かである。これら化合物を調製および精製するための様々な合成法が当業者に知られるであろう。本発明の化合物は、科学のルールによって許容されるようにさらに修飾してもよい。そのような修飾には、様々な置換基の付加(例えば、ヒドロキシル化、カルボキシル化、メチル化等)、エナンチオマーの生成、酸付加塩又は塩基付加塩の作出等が包含される。他の修飾には、ポリアルキレングリコールポリマーの付加が包含される。
【0031】
本発明の化合物は、ポリアルキレングリコール(PAG)コンジュゲートとして合成することができる。コンジュゲーションに用いられる典型的なポリマーとしては、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、またはポリ(エチレンオキシド)(PEO)およびポリプロピレングリコール(ポリイソプロピレングリコールを含む)が挙げられる。これらのコンジュゲートは、溶解度および安定性を増大するためおよび分子の血液循環半減期を長くするためによく用いられる。
【0032】
最も一般的な形態において、PEG等のポリアルキレングリコール(PAG)は、両端にヒドロキシル基を有する直鎖状ポリマーである:
HO−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2−OH。
【0033】
上記ポリマー、α、ω−ジヒドロキシルポリ(エチレングリコール)は、HO−PEG−OHとしても表することができ、ここで−PEG−なる記号は以下の構造単位:
−CH2CH2O−(CH2CH2O)n−CH2CH2
[式中、nは典型的には約4〜10000の範囲である]
を示すと理解されている。PEGは、一般には、一端が比較的不活性なメトキシ基であり他端が科学修飾されるようになっているヒドロキシル基である、メトキシ−PEG−OH、即ちmPEG、として用いられる。さらに、化学的にPEGと密接に関連している種々のアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド)のランダムまたはブロックコポリマーを、数多くのPEGの応用において、PEGと代替することができる。
【0034】
PAGは、水および多くの有機溶媒における溶解性を有し、毒性および免疫原性を有しない特性を典型的に有するポリマーである。PAGの一つの用途は、そのポリマーを不溶性分子と共有結合させて、得られたPAG−分子の「コンジュゲート」を可溶性にするというものである。例えば、水に不溶性の薬物であるパクリタキセルは、PEGとカップリングさせると水溶性になることが示されている。Greenwald, et al., J. Org. Chem., 60: 331-336 (1995)。
【0035】
本発明のポリアルキル化された化合物は典型的には、1〜500のモノマー単位を含む。他の本発明のPAG化合物は1〜200のモノマー単位を含む。さらに他の本発明のPAG化合物は、1〜100のモノマー単位を含む。例えば、ポリマーは、1、10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100のモノマー単位を含みうる。本発明のいくつかの化合物は、5〜75または1〜50のモノマー単位を含むポリマーを含む。例えば、ポリマーは2、3、5、6、7、8、10、11、12、13、15、16、17、18、20、25、30、33、34、35、40、45、50、60、65、68、69、70または75のモノマー単離を含みうる。好ましくは、nは7、12、17、34または69である。ポリマーは直鎖状でも分岐していてもよい。
【0036】
PAG部分の付加により修飾された化合物は、様々な数のモノマー単位を有するポリマーの混合物を含み得ると理解される。典型的には、PAG−修飾された化合物(例えばPAG−コンジュゲート)の合成は、コンジュゲートにおけるポリマーあたりのモノマー数のポアソン分布を有する分子の集団を生じる。n=7のモノマー単位のポリマーを有すると記載した化合物は、n=7のモノマー単位を有すると記載されたその集団における実際のポリマーを意味するだけでなく、分布のピークが7である分子の集団もまた意味する。与えられた集団におけるモノマー単位の分布は、決定することができる。与えられた集団におけるモノマー単位の分布は、例えば核磁気共鳴(NMR)または質量分析(MR)により決定することができる。
【0037】
本願にわたって、以下に、および当業者に知られた適当な教科書(例えば、Primciples in Biochemistry, Lehninger(編)、99〜100頁、Worth Publishers, Inc. (1982) New Your NY; Organic Chemistry, Morrison and Boyd, 第3版、第4章、Allyn and Bacon, Inc., Boston, MA (1978)参照)に記載されるように、異性体の表示に慣用の技術を用いる。
【0038】
本発明の化合物の構造に不斉炭素原子を含むことは認識される。したがって、特に記載しない限り、そのような不斉により生じる異性体(例えばすべてのエナンチオマーおよびジアステレオマー)が本発明の範囲に包含されることは理解される。そのような異性体は、古典的な分離技術によりおよび立体化学的に制御された合成により、実質的に純粋な形態で得ることができる。さらに、本願において議論される構造ならびに他の化合物および部分もまた、そのすべての互変異性体を包含する。アルキレンは、必要に応じてE−またはZ−配置のいずれかを含むことができる。
【0039】
4つの異なる置換基を有する炭素原子はキラル中心と呼ばれる。キラル中心は、2つの異なる異性体に存在し得る。これらの形態は、平面偏光の回転を生じる向きを除いて、すべての化学的および物理的特性において同一である。これらの化合物は「光学活性」であると呼ばれる、即ち、この化合物は平面偏光をある方向にまたは逆方向に回転し得る。
【0040】
炭素に結合する4つの異なる置換基は、2つの異なる空間配置を占有しうる。これらの配置は、互いに重ね合わせることのできる鏡像ではなく、光学異性体、エナンチオマーまたは立体異性体と称される。ある特定の化合物の1つの立体異性体の溶液は、平面偏光を左に回転し、左旋性の異性体と呼ばれる[(−)で示される];この化合物の他方の立体異性体は、平面偏光を同じだけ右に回転し、右旋性の異性体と呼ばれる[(+)で示される]。
【0041】
RS体系は、化合物が2またはそれ以上のキラル中心を含む場合のあいまいさを避けるために考案された。一般に、この体系は、最も小さいまたは低いランクの基を観察者からみて向こう側に置いたときに、不斉炭素原子の周りの4つの異なる置換基の原子を、原子番号が小さくなる順または価数が小さくなる順に順番付けするようにする。順番が小さくなる並び方が時計回りであれば、キラル中心の周りの配置はRとする;順番が小さくなる並び方が反時計回りであれば、配置はSと表示する。各キラル中心はこの体系を用いて命名される。
【0042】
本発明の化合物は不斉合成により、またはキラル補助剤による誘導体化によって得られるジアステレオマー混合物を分離し、純粋な所望のS−エナンチオマーが生じるように補助剤の基を開裂することにより、調製することができる。あるいは、分子が、アミノ等の塩基性の官能基またはカルボキシル等の酸性の官能基を含む場合には、適当な光学活性な酸又は塩基と共にジアステレオマー塩を形成し、次いで形成したジアステレオマーを当分野においてよく知られている分別結晶化またはクロマトグラフィー法により分割した後、純粋なエナンチオマーを回収する。
【0043】
本発明の組成物および医薬組成物は、1またはそれ以上の、純粋な形態または部分的に純粋な形態の、本発明の化合物を含有し得る。同様に、本発明の方法は、純粋な形態、部分的に純粋な形態にある1又はそれ以上の化合物の使用を包含する。好ましくは本発明の医薬組成物は、少なくとも95重量パーセント(例えば、96、97、98または99重量パーセント以上)の当該本発明の1又はそれ以上の化合物を含有する。
【0044】
いくつかの態様では、本発明の医薬組成物は、本発明の1又はそれ以上の化合物以外に、例えばポリエチレングリコール(PEG)、またはポリプロピレングリコール(PPG)等の、ある割合のフリーのポリアルキレングリコールを含有し得る。該ポリアルキレングリコールはそれ自身生物学的に活性であってよい。ポリアルキレングリコールの鎖長は、1〜50の範囲、特に1〜25、の範囲であってよい。いくつかの態様では、該ポリアルキレングリコールは、3、7、12および/または17モノマー単位の鎖長であってよい。典型的には、前記医薬組成物は、種々の鎖長を有するある量のフリーのポリアルキレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコールを含有し得る。いくつかの態様では、前記医薬組成物は、約5〜60重量パーセントの本発明の1またはそれ以上の化合物および約95〜40重量パーセントのフリーのポリアルキレングリコールを含有し得る。典型的には、前記医薬組成物は、約45〜55重量パーゼントの前記1又はそれ以上の本発明化合物および約55〜45重量パーセントの前記1又はそれ以上のポリアルキレングリコールを含有し得る。あるいは、前記医薬組成物は、約80〜95重量パーセントの本発明の前記1又はそれ以上の化合物および約20〜5重量パーセントの前記1又はそれ以上のポリアルキレングリコールを含有し得る。
【0045】
一態様では、本発明の組成物は少なくとも1つの本発明化合物、即ち、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の構造で示される1又はそれ以上の化合物を含有する。別の態様では、本発明の組成物は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の構造で示される少なくとも2つの化合物の混合物を含有する。別の態様では、本発明の組成物は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の構造で示される少なくとも5つの化合物の混合物を含有する。別の態様では、本発明の組成物は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の構造で示される少なくとも10個の化合物の混合物を含有する。
【発明の効果】
【0046】
今回、意外にも、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の構造で示される1又はそれ以上の化合物が、Sykチロシンキナーゼが介在する障害に対して効果的であることが見出された。したがって、一態様において、本発明は、ヒトならびに動物への適用におけるSykチロシンキナーゼが介在する障害の処置、予防および制御のための方法を提供する。一態様では、本方法は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の構造で示される1又はそれ以上の化合物を患者に投与することを含んでなる。別の態様では、本方法は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)または(VII)の構造で示される1又はそれ以上の化合物を含有する医薬組成物を患者に投与することを含んでなる。
【0047】
投与の方法は当業者によく知られている。投与の方法には、非経口、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、鼻内、皮下、腹腔内、脳室内または直腸が挙げられるがこれらに限定されない。投与の方法および手段は当業者に知られている(例えば、その全体が本願明細書の一部を構成する米国特許第5693622号;同第5589466号;同第5580859号;同第5566064号)。
【0048】
さらに、本発明は、活性成分として1又はそれ以上の本発明化合物を、1又はそれ以上の製薬的に許容し得る賦形剤と共に含有する医薬組成物を提供する。本明細書において用いられる「医薬組成物」は、免疫アレルギー疾患、自己免疫疾患および臓器又は組織移植拒絶反応の処置に有用な、適当な賦形剤および/または担体と一緒になった治療上有効な量の本発明の1又はそれ以上の化合物を意味しうる。本明細書において用いられる「治療上有効な量」は、ある状態および投与レジメに関して治療効果をもたらす量を意味する。そのような組成物を、上記に記載した方法のいずれか1つによって投与することができる。
【0049】
本発明の更なる態様は、本発明の化合物を本発明の他の化合物と組み合わせて含有する。また、本発明の化合物を、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗ウイルス剤などと組み合わせて投与してもよい。さらに、本発明の化合物を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤または細胞傷害抗生物質等の上記の化学療法剤と組み合わせて投与してもよい。一般に、そのような組合せにおいて使用するための既知の治療剤の現在可能な投与形態が適当であろう。
【0050】
「組合せ治療(combination therapy)」(または「共同治療(co-therapy)」)は、本発明の化合物と少なくとももう一つの物質とを、これら治療物質の共同作用による有益な効果をもたらすために、企図する具体的な治療レジメの一部として投与することを含む。この組合せの有益な効果としては、治療物質の組合せからもたらされる薬物動態のまたは薬力学的な共同作用が含まれるがこれに限定されない。これら治療物質の組合せでの投与は典型的には規定した期間にわたり行われる(通常、選択した組合せに依存して、分、時間、日または週)。「組合せ治療」は、一般的にはそうではないが、本発明の組合せを偶然におよび恣意的にもたらす別個の単独治療レジメの一部として、これら治療物質の2またはそれ以上の投与を包含することを企図してもよい。
【0051】
「組合せ治療」は、これら治療物質の逐次的な投与(即ち、各治療物質を異なる時間に投与する)、ならびにこれら治療物質、即ち少なくとも2つの治療物質、の実質的に同時の投与を包含するものと意図される。実質的に同時の投与は、例えば、各治療物質が決められた割合で入った単一のカプセル、または各治療物質毎に入れられた複数のカプセルを患者に投与することによって行うことができる。
【0052】
各治療物質の逐次的または実質的に同時の投与は、経口、静脈内、筋肉内および粘膜組織を介する直接吸収を含むがこれに限定されない任意の適当な経路で行うことができる。
治療物質は、同じ経路または異なる経路で投与することができる。例えば、選択した組合せのある治療物質を静脈内注射によって投与し、この組合せの他の治療物質を経口投与してもよい。あるいは、例えば、すべての治療物質を経口投与する、またはすべての治療物質を静脈内注射することもできる。治療物質を投与する順番はそれほど重要ではない。
【0053】
「組合せ治療」はまた、上記の治療物質をさらに他の生物学的に活性な薬剤および非薬剤治療(例えば、外科手術または放射線治療)と組み合わせて投与することを包含し得る。この組合せ治療がさらに非薬剤治療を包含する場合は、治療物質とその非薬剤治療の組合せの共同作用により有益な効果が達成される限り、その非薬剤治療は任意の適当なときに行うことができる。例えば、適当な場合では、非薬剤治療が、治療物質の投与から時間的に離れていても(数日、場合によっては数週間)なお有益な効果が達成される。
【0054】
本発明の化合物および他の薬理学的に活性な物質を、同時に、逐次的に、または組み合わせて患者に投与することができる。本発明の組み合わせを用いる場合、本発明の化合物と他の薬理学的に活性な物質は、同じ製薬的に許容し得る担体中に存在してよく、したがって同時に投与してよいことは認識されよう。それらは、同時に服用される、経口投与形態のような別個の慣用の製薬的担体に存在していてもよい。「組合せ」なる語はさらに、化合物が別個の投与形態にて提供され、逐次的に投与される場合も意味する。
【0055】
本発明の化合物は、場合により、例えば癌治療のための、トラスツズマブ(HERCEPTIN)、ゲフィチニブ(IRESSA)、エルロチニブ(TARCEVA)およびラパチニブを含む、他のチロシンキナーゼ阻害剤との組合せ治療において投与することができる。チロシンキナーゼ阻害剤は、Sykに対して活性でも活性でなくてもよい。
【0056】
本発明の組成物および組合せ治療は、安定化剤、担体および/または本明細書に記載したカプセル化製剤を含む様々な製薬的な賦形剤と組み合わせて投与することができる。
【0057】
一態様では、本発明の組成物は、経口または非経口の投与形態、例えばコーティングされていない錠剤、コーティングされた錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、分散剤または懸濁剤、として製剤化される。別の態様では、本発明の組成物は静脈内投与用に製剤化される。別の態様では、本発明の化合物を、経皮投与のための、軟膏、クリーム、ジェルの形態に製剤化する。別の態様では、本発明の化合物を経鼻投与のためのエアロゾルまたはスプレーとして製剤化する。別の態様では、本発明の化合物を液体の投与形態に製剤化する。適当な液体の投与形態の例としては、水、製薬的に許容し得る脂質および油、アルコールまたは他の有機溶媒(エステル、エマルジョン、シロップ、エリキシル、溶液および/または懸濁液を含む)中の液体または懸濁液が挙げられる。
【0058】
適当な賦形剤および担体は、固体でも液体でもよく、一般に、その種類は用いる投与の種類に基づいて選択される。リポソームもまた組成物を送達するために使用することができる。適当な固体の担体の例としては、ラクトース、スクロース、ゼラチンおよび寒天が挙げられる。経口投与形態は、適当な結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色料、香料、流動誘導剤(flow-inducing agent)、および融解剤を含有する。液体の剤型は、例えば、適当な溶媒、保存剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、増粘剤および融解剤を含有してよい。非経口および静脈内の剤型はまた、ミネラル類や選択した注射またはデリバリーシステムのタイプに適合させるための他の物質を含有する。
【0059】
以下、添付の本発明の態様の図面を参照し、単なる例示を目的として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、DMSO担体中の種々の濃度の本発明化合物AV61SによるPHA活性化PBMCを処置する阻害効果を示す。
【図2】図2は、PBS担体中の種々の濃度の本発明化合物AV61SによるPHA活性化PBMCを処置する阻害効果を示す。
【図3】図3は、7日間の期間後のE6.1Jurkat細胞の生存に対してAV61Sの効果はないことを示す。
【図4】図4は、7日間の期間後のJurkat細胞の生存に対するAV61SおよびAV74Sの効果を示す。
【図5】図5は、種々の濃度の本発明化合物AV61SによるPHA活性化PBMCを処置する効果を示す。
【図6】図6は、種々の濃度のAV61SによるPHA活性化PBMCを処置する効果を示す。
【図7】図7は、種々の濃度の本発明化合物AV74SによるPHA活性化PBMCを処置する効果を示す。
【図8】図8は、種々の濃度のAV74SによるPHA活性化PBMCを処置する効果を示す。
【図9】図9は、活性化されたPBMCに対する化合物AV61Sについての用量応答曲線を示す。
【図10】図10は、活性化されたPBMCに対する化合物AV74Sについての用量応答曲線を示す。
【図11】図11は、T細胞およびB細胞に対するAV61SおよびAV74S処置の効果の、そのR型との比較を示す。
【図12】図12は、単球に対するAV74S処置の効果を示す。
【図13】図13は、2日後のJurkat細胞に対してPPGの阻害効果がないことを示す(ある量のPPGが化合物合成の後に存在する可能性がある)。
【図14】図14は、4日後のJurkat細胞に対してPPGの阻害効果がないことを示す。
【図15】図15は、シクロスポリンで処置したPBMCと比較した、24時間後のAV61SまたはAV74Sの種々の濃度で処置したPBMCの生存率を示す。
【図16】図16は、シクロスポリンで処置したPBMCと比較した、48時間後の、種々の濃度のAV61SまたはAV74Sで処置したPBMCの生存率を示す。
【図17】図17は、シクロスポリンで処置したPBMCと比較した、72時間後の、種々の濃度のAV61SまたはAV74Sで処置したPBMCの生存率、および種々の濃度のAV61SとAV74Sを組み合わせて投与した場合の生存率を示す。
【図18】図18は、シクロスポリンで処置したJurkat細胞と比較した、24時間後の、種々の濃度のAV61SまたはAV74Sで処置したE6.1Jurkat細胞の生存率を示す。
【図19】図19は、シクロスポリンで処置したJurkat細胞と比較した、48時間後の、種々の濃度のAV61SまたはAV74Sで処置したE6.1Jurkat細胞の生存率を示す。
【図20】図20A〜Iは、異なる9つの細胞系に対して試験したときの、AV74Sについての用量応答曲線を示す。
【図21】図21は、図20A〜Iのすべての細胞系に対するAV74Sの用量応答曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
記載1:ポリアルキレングリコール化合物の合成
一般に、ポリアルキレングリコール化合物は、適当なアルコール化合物(例えば、実施例1に記載の化合物の1つ、またはそのヒドロキシル化誘導体)の調製後、このアルコールを所望の長さのポリアルキレン(PAG)ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレン(PPG)グリコール)とのコンジュゲーションによって合成した。
【0062】
化合物1、フェニルアルコール
1.2g、32mMのLiAH4を、乾燥エーテル中の2.3g、10mMのフェニルアラニンエチルエステルHClに加えた。室温で2時間攪拌した後、水およびKOHを加え、反応生成物を酢酸エチルで抽出した。留去後、0.8gの化合物1(明黄色の油状物)を得た。
【化8】

静置して化合物1を結晶化させた。Mp-70. NMR CDCl3 7.30(5H,m), 3.64(1H,dd,J=10.5,3.8 Hz) 3.40(1H,dd,J=10.5,7.2 Hz) 3.12(1H,m), 2.81(1H,dd,J=13.2, 5.2 Hz), 2.52(1H, dd, J=13.2, 8.6 Hz) NMR アセトンd6 7.30(5H, m), 3.76(1H, dt) 3.60(1H, m) 3.30 (1H, t),2.85(2H, m). Helv. Chim. Acta, 31, 1617(1948). Biels. -E3,Vol. 13,p 1757.
【0063】
化合物2、チロシノール
【化9】

乾燥エーテル50mL中のL−チロシンエチルエステルHCl(3g、12mM)に、LiAlH4(1.2g、32mM)を加えた。室温で3時間攪拌した後、水およびKOHを加え、反応物を酢酸エチルで抽出した。留去して明黄色の油状物1.1g(収率54%)を得、これを静置して結晶化した。mp-85.
NMR CDCl3 7.20(4H,AB q,J=8.6 Hz), 3.50(2H,m) 3.20(1H,m), 2.81(2H,m). NMR チロシンエチルエステル遊離塩基 CDCl3 7.0, 6.56(4H, AB q, J=8.8 Hz), 4.20(2H, q, J=7, 0 Hz), 3.70, 3.0, 2.80(3H, 12 line ABXm), 1.28. (3H, t, J=7.0 Hz). JACS 71, 305(1949). Biels. -E3, Vol. 13, p 2263.
【0064】
化合物3、トリプトファノール
【化10】

乾燥エーテル50mL中のL−トリプトファンメチルエステルHCl(3g、12.9mM)に、LiAlH4(1.2g、32mM)を加えた。室温で6時間攪拌した後、水およびKOHを加え、反応物を酢酸エチルで抽出した。留去して、明黄色の油状物1.23g(収率50%)を得た。静置して結晶化させた。Mp-65.
NMR CDCl3 7.30(5H, m), 3.64(1H, dd, J=10.5, 3.8 Hz), 3.40(1H, dd, J=10.5, 7.2 Hz), 3.12 (1H, m), 2.81(1H, dd, J=13.2, 5.2 Hz), 2.52(1H, dd, J=13.2, 8.6 Hz) J. Het. Chem, 13, 777 (1976). Biels. -E5, 22, Vol. 12, p 90.
【0065】
化合物4、AV22
シクロヘキサン30mL中の4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸0.66gおよび塩化チオニル4mLを2時間還流した。留去後、白色の固体を得、これにジクロロメタン30mLおよびトリエチルアミン0.4mL中の化合物1の油状物0.65g(4.3mM)を加えた。室温で2時間攪拌した後、pHを中和するため水およびKOHを加えた。反応生成物をジクロロメタンで抽出した。留去して0.8gの化合物4(明黄色の粘稠な油状物)を得た。この生成物の一部をトリチュレートし、エタノールで再結晶化して白色の固体を得た。Mp-149.
NMR CDCl3 7.30-6.9(9H, m), 3.50(2H, m) 3.30(2H, t, J=7.2 Hz) 2.90 (3H, m), 2.60(2H, t, J=7.2 Hz).
【化11】

【0066】
化合物5、AV57
【化12】

シクロヘキサン30mL中のヒドロ桂皮酸(0.75g、5mM)および塩化チオニル4mLを2時間還流した。留去して白色の固体を得、これにジクロロメタン30mLおよびトリエチルアミン0.5mL中のフェニルアラニノール(0.83g、5.5mM)を加えた。室温で3時間攪拌した後、pHを中和するために水およびKOHを加え、反応物をジクロロメタンで抽出した。留去して黄色の粘稠な油状物0.57g(収率40%)を得た。
NMR CDCl3 7.40-7.10(10H, m), 3.60(2H, m), 3.35(2H, t, J=7.2 Hz), 2.95 (3H, m), 2.50(2H, t, J=7.2 Hz).
【0067】
化合物6、AV58
【化13】

シクロヘキサン30mL中の4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸(0.66g、4mM)および塩化チオニル4mLを3時間還流した。留去して明黄色の固体を得、これにジクロロメタン30mLおよびトリエチルアミン0.5mL中のチロシノール(0.72g、4.3mM)を加えた。室温で3時間攪拌した後、pHを中和するために水およびKOHを加え、反応物をジクロロメタンで抽出した。留去して明黄色の粘稠な油状物0.53g(収率42%)を得た。
NMR CDCl3 7.30, 7.20 (8H, 2 ABq, J=8.6 Hz), 3.40(2H, m), 3.30(2H, t, J=7.2 Hz), 2.90 (3H, m), 2.60(2H, t, J=7.2 Hz).
【0068】
化合物8、AV72
【化14】

シクロヘキサン30mL中のヒドロ桂皮酸(0.45g、3mM)および塩化チオニル3mLを2時間還流した。留去して明黄色の固体を得、これにジクロロメタン30mLおよびトリエチルアミン0.4mL中のチロシノール(0.58g、3.5mM)を加えた。室温で2.5時間攪拌した後、水およびKOHを加えて中性pHにし、反応物をジクロロメタンで抽出した。留去して明黄色の粘稠な油状物0.57g(収率63%)を得た。
NMR CDCl3 7.40-7.10 (9H, m), 3.60(2H, m), 3.35 (2H, t, J=7.2 Hz), 2.95 (3H, m), 2.50 (2H, t, J=7.2 Hz).
【0069】
化合物10
化合物4(AV22)0.3g、トリフェニルホスフィン0.8gおよびエチルジアゾカルボキシレート0.55gを、ジクロロメタン60mL中、1gのポリ(プロピレングリコール)(平均分子量約1000)に加えた。室温で2時間攪拌し、留去およびクロマトグラフィーにより、化合物10(0.65g)を粘稠な油状物として得た。
【化15】

【0070】
フェニルアラニノールから合成された化合物
これらの化合物には、式(VIII)の構造:
【化16】

で示される化合物が包含される。
この化合物はまた、式A:
【化17】

[式中、Rはポリプロピレングリコールポリマーであり、nは該ポリマーにおけるポリプロピレンモノマーの総数である]
として表される。
【0071】
AV61S:
R=PPG(ポリプロピレングリコール)n=7、MW−706
AV22(0.3g、1mM)、トリフェニルホスフィン(0.8g、3mM)およびエチルジアゾカルボキシレート(0.55g、3.2mM)を、60mLのジクロロメタン中、1gのポリ(プロピレングリコール)(平均分子量424、N=7)に加えた。室温で4時間攪拌した後、留去およびクロマトグラフィーにより、粘稠な油状物0.55g(収率73%)を得た。NMR CDCl3 7.30〜6.9(9H,m)、4.1〜3.0(m),2.60(2H,t,J=7.2Hz),1.2−1.1(m)。この生成物(0.1g,0.33mmol)、炭酸カリウム(0.069g,0.5mmol,細かく粉砕)、およびTHF(3mL、KOHペレット上で乾燥)を、マグネティックスターラーおよびCaCl2乾燥チューブを取り付けた丸底フラスコに入れた。混合物を氷塩浴(−10℃)にて冷却し、予め冷却した2mLTHF(乾燥)中のジ−tert−ブチルジカーボネート(0.066g、0.30mmol)の溶液を滴加した。混合物を氷温にて1時間、次いで室温にて2日間攪拌した。次いで、反応混合物を留去し、水(5mL)を加え、生成物を10mLの酢酸エチルで2回抽出した。集めた抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ紙で濾過し、溶媒を留去した。油状の残留物を少量のn−ヘキサンでトリチュレートし、形成した固体を減圧濾過により回収した(収量0.12g、収率90%)。あるいは、この油状の残留物を酢酸エチルとヘキサンの1.1の混合物に溶解し、生成物を再結晶した。
【0072】
AV62
R=PPG n=12 MW−996
0.2gのAV22から上記と同様に製造し、0.3g(収率46%)を得た。
【0073】
AV60S
R=PPG n=17 MW−1286
PPG7の代わりにPPG17を用い、上記のAV61Sと同じ手順を用いて製造した。
【0074】
化合物5、AV57から合成した化合物
【化18】

AV86
R=PPG n=7 MW−690
0.22gのAV57から上記と同様に製造し、0.25g(収率47%)を得た。
【0075】
AV87
R=PPG n=17 MW−1270
0.2gのAV57から上記と同様に製造し、0.33g(収率33%)を得た。
【0076】
チロシノールから合成した化合物
化合物6、AV58から合成した化合物
【化19】

【0077】
AV64
R=PPG n=7 MW−722
0.2gのAV58から上記と同様に製造し、0.21g(収率46%)を得た。
【0078】
AV65
R=PPG n=17 MW−1302
0.23gのAV58から上記と同様に製造し、0.28g(収率29%)を得た。
【0079】
化合物8、AV72から合成した化合物
【化20】

AV74S
R=PPG n=7 MW−706
a.PPGのメシル化
PPG425(106mg、0.25mmol)を、90モルパーセントの塩化メシル(25mg、2滴)および0.4mmolのピリジン(31.6mg、2滴)と反応させてモノメシル化PPG(A)を得た。PPG、塩化メシルおよびピリジンを混合した後、メシル化反応を0℃にて攪拌しながら30分間行ない、次いで反応を室温にてさらに60分間行った。混合中、反応混合物は無色から乳白色に変化した。次いで、混合物を5mLの塩化メチレンに溶解し、有機相を1MのHCl溶液で2回、次いで1MのNaOH溶液で2回、そして水で1回洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、溶媒を留去した。
b.ナトリウム活性化
上記の生成物0.1g(0.25mmol)を無水エタノール5mLに溶解した後、無水エタノール中の等モル量のナトリウムエトキシド(ナトリウム原子0.25mgと過剰量の無水エタノールとの反応により予め調製した)と反応させた。混合した溶液中のエタノールを留去してナトリウム塩を得た(B)。
c.AとBの反応
Aを水酸化カリウム乾燥したアセトニトリル5mLに溶解し、この溶液を、マグネティックスターラーを入れた丸底フラスコに入れた。Bの乾燥アセトニトリル溶液5mLをこのフラスコに入れた後、触媒量(結晶数個)のヨウ化カリウムを加えた。還流冷却器とその先端部に取り付けた気泡発生器を、反応容器に連結して反応混合物を攪拌しながら24時間窒素雰囲気下で還流した。次いで、反応混合物を濾紙で濾過し、溶媒を留去した。残留物を2mLの酢酸エチルに溶解した後、シリカゲルカラムを通し、酢酸エチルを用いて溶出した。R=0.55のTLC(酢酸エチルで溶出)UV吸収スポットから、所望の生成物3(異なるPPGサブユニット長を含む分子の混合物)を含有するが未反応のPPGもいくらか含有していることが判明した。他のフラクションは、未反応のメシル化PPGおよび二重にメシル化されたPPGを含有していた。
【0080】
AV78S
R=PPG n=17 MW−1000
PPG7の代わりにPPG17を用い、上記AV74Sと同様の手順を用いて製造した。
【0081】
実施例1
以下の実験は、Sykチロシンキナーゼ関連障害の処置における、本発明の化合物の有用性を実証するために行った。
【0082】
プロテインチロシンキナーゼは、細胞のシグナル伝達経路におけるセントラル・スイッチ・メカニズム(central switch mechanism)をもたらし、増殖、代謝、生存およびアポトーシス等の多くの細胞のプロセスに関与している。いくつかのPTKは、癌細胞において活性化され、腫瘍の成長と疾患の進行を推し進めることが知られている。したがって、チロシンキナーゼ活性をブロックすることは、癌治療への合理的なアプローチである。
【0083】
脾臓のチロシンキナーゼは、当初、骨髄細胞、マクロファージ、赤血球、血小板およびB細胞のような造血細胞でしか発現がみとめられていなかったが、現在では造血細胞でない細胞で発現し、様々なサイトカインのシグナル伝達を媒介していることが分かっている。したがって、Sykは免疫系の発達と機能において、および血管の統合性(vascular integrity)のために不可欠なものである。近年、Sykが、乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌等の様々な腫瘍、ならびにCML、AML、およびB細胞リンパ腫等の血液悪性疾患、の腫瘍形成において重要な役割を担っていることが示された。
【0084】
図4は、Sykを含有するJurkat細胞が、10μg/mLの低い濃度でAV74Sにより、50μg/mLで61Sにより死滅(ほぼ100%)し;74Rは100μg/mLの濃度で死滅効果(約85%)を有するが50μg/mLではその効果は減少し;AV61Rは100μg/mLおよび50μg/mLの濃度の両方で約70%の死滅効果を有することを示している。jurkatE6.1細胞系は、Syk欠失細胞系であり、実際、AV61Sは7日後のこの細胞系に対して効果がなかった(即ち、アポトーシスも阻害もみられない、図3参照)。さらに、図18および19にみられるように、これらの細胞は生存能力があり、両化合物(AV61SおよびAV74S)によって死滅しない。24時間および48時間のインキュベーション後に生存試験を行い、1時間、3時間および6時間以内の3点で評価した。図18は、24時間のインキュベーション後6時間以内の結果を示す。図19は、48時間のインキュベーション後1時間以内の結果を示す。これらの実験は、Sykが形質転換細胞(例えば、T細胞白血病Jurkat細胞)内に存在する場合、AV化合物によって細胞が死滅することを示している。AV化合物は正常細胞(異なるドナーから常時採取されるPBMCのように)に対して死滅効果を有しない。異なるリンパ球増殖バイオアッセイを異なるドナーで少なくとも4回行ったが、むしろ細胞周期は停止する(恐らくS期の前、細胞周期におけるチミジン取込はS期で起こるので)。形質転換細胞においてSykが欠失している場合、AV化合物は全く効果がなく、阻害効果も有しない。
【0085】
別の2つの実験によりこの観察結果が確認された。第一に、HL60細胞(ヒト骨髄球細胞白血病細胞株)はSykを含み、CCRF細胞は、T細胞白血病細胞株−チロシンキナーゼタンパク質を含まない−を本発明のAV60SおよびAV78Sで4日間にわたり処理した。データを表1に示す。AV60SおよびAV78SはHL60細胞を阻害することがみとめられるが、CCRF細胞系に対する効果はないようである。
【0086】
第二に、本発明の化合物の効果は、Sykのニュートラルな阻害剤であるピセアタンノールと比較することができる。表2にデータを示すように、ピセアタンノールは、100μg/mLの濃度で存在するとき、AV74Sの阻害効果を少なくとも部分的にブロックするが、74Sは、50μg/mLおよび30μM/mLのピセアタンノールのアポトーシス効果をブロックする。
【0087】
以下に限定されることを意図しないが、本発明の化合物は、細胞を死滅させる(アポトーシス)ことによるのではなく、細胞増殖をブロック(即ち、細胞周期を停止)することにより作用(Sykチロシンキナーゼが介在する障害を阻害)すると考えられる。図15〜19は、これに関してシクロスポリン(CsA)を比較対照として用いた実験を示す。対照的に、図18および19に示されるように、この効果は、Jurkat細胞において有意にはみとめられない。
【0088】
本発明の化合物の効力は、特に図5〜8を参照して示される。図5は、種々の濃度の本発明化合物AV61SによるPHA活性化PBMCを処置する効果を示し;図6は種々の濃度のAV61RによるPHA活性化PBMCを処置する効果を示す。図7は、種々の濃度の本発明化合物AV74SによるPHA活性化PBMCを処置する効果を示し、図8は、種々の濃度のAV74RによるPHA活性化PBMCを処置する効果を示す。上記図面から分かるように、各化合物のS型(即ち本発明化合物)は、その対応するR型と比較して、PBMCの遙かに優れた阻害剤である。
【0089】
図1および2は、本発明の化合物に対する希釈の効果を示す。図1は、種々の濃度の本発明化合物(DMSO担体中のAV61S)によるPHA活性化PBMCの処置の阻害効果を示し、図2はPBS担体中の同化合物のより低い阻害効果を示す。
【0090】
図11および12は、本発明化合物(AV61SおよびAV74S)の効果を、ヒトPBMCT細胞およびB細胞(図11)対ヒトPBMC単球(図12)で比較したものである。これらの図は、本発明化合物の効果が、T細胞およびB細胞と比較して(Sykを含んでいる)単球に対してより著しいことを示している。T細胞は、SykではなくZAP−70を含んでいるが、Bリンパ球はSykを含んでいる。PPG7およびPPG17(即ち、本発明のAV化合物ではない)は、阻害的ではないと考えられる。したがって、B細胞およびT細胞に対してみられた効果は、T細胞ではなく、B細胞に対する活性に起因するものと考えられる。
【0091】
阻害効果を得るための投与のための適当な濃度の範囲は、約20μg/mL〜100μg/mLである。
【0092】
したがって、本発明の化合物は、チロシンキナーゼ(Syk)依存性腫瘍、およびSykが関与する他の疾患の治療に用いることができる。
【表1】

1.3×10の濃度のHL−60細胞を、AV分子の存在下と非存在下で4日間試験した。
2.この系におけるDMSOの濃度は0.1%であった。
3.インキュベーション期間終了時に、XTT法により細胞の生存率を測定し、ELISAリーダーで読み取った。
【表2】

Pic:ピセアタンノール
ND:検出されず
【0093】
実施例2
NCIインビトロ抗癌剤ディスカバリースクリーンにしたがい、化合物AV74Sを9種類の細胞系パネルに対して試験した(B. Teicher編,Humana Press, Totowa, New Jersey, 2004のPart I "Anticancer Drug Development Guide: Preclinical Screening, Clinical Trials and Approval (2nd edition)"のChapter 3, "The NCI Human Tumor Cell Line (60-Cell) Screen: Concept, Implementation and Applications"(by Michael R. Boyd)を参照)。この9種類のパネルは、それぞれ以下の細胞系から構成される:

白血病 非小細胞肺癌 大腸癌
CCRF−CEM EKVX COLO205
HL−60(TB) HOP−62 HTC−2998
MOLT−4 HOP−92 HCT−16
RPMI−8226 NCI−H226 HCT−15
SR NCI−H23 HT29
NCI−H322M KM12
NCI−H460 SW−620
NCI−H522


CNS癌 メラノーマ 卵巣癌
SF−268 LOXIMVI IGROV1
SS−295 MALME−3M OVCAR−3
SS−539 M14 OVCAR−4
SNB−19 SK−MEL−2 OVCAR−5
SNB−75 SK−MEL−28 OVCAR−8
U251 SK−MEL−5 SK−OV−3
UACC−257
UACC−62

腎臓癌 前立腺癌 乳癌
786−0 PC−3 MCF7
A498 DU−145 NCI/ADR−RES
ACHN MDA−MB−231/ATCC
CAKI−1 HS578T
RXF393 MDA−MB−435
SN12C BT−549
TK−10 T−47D
UO−31

細胞系パネルを標準的な96ウェルマイクロタイタープレート上(0日目,約20000細胞/ウェル)でインキュベーションした後、化合物の非存在下で24時間プレインキュベーションした。次いで、AV74Sを、−4.0のlog10濃度(70.6μg/mLまたは100μmol/mLに対応)から5つの10倍希釈系列で加え、さらに48時間インキュベーションした。このあと、細胞をin situで固定し、洗浄し、乾燥した。スルホローダミンB(SRB)を加えた後、染色した付着細胞塊をさらに洗浄および乾燥した。結合した染料を可溶化し吸光計で測定した。結果を以下の表3に示し、添付の図面の図20A〜Iにグラフを示す。
【表3】


AV74Sは、試験した細胞系のうちの11個について−4.00よりも低いlog10GI50を示した。
【0094】
均等
当業者は、本明細書に記載した具体的な手順と等価な数多くのものを、認識あるいは常套的な実験を用いるだけで確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲に含まれるとされる。本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明に対する様々な置換、変更および修飾を行うことができる。他の態様、利点および修飾は本発明の範囲に含まれる。本願を介して引用された、すべての参考文献、発行された特許および公開された特許出願の内容は、本明細書の一部を構成する。これらの特許、出願および他の文書の適当な構成要素、製造方法および方法を、本発明およびその態様のために選択することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
点線は、単結合または二重結合を表し;
5およびR5’は独立に、H、OHまたはOR6であり、ここにR6は直鎖又は分岐鎖のC1−C4アルキルであり;
Xは、O、−CH2O、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
Zは、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
mは、0または1であり;
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50である]
で示される化合物のS−エナンチオマーまたはその製薬的に有効な塩を含有する組成物を患者に投与することを含んでなる、患者における細胞増殖障害を処置する方法。
【請求項2】
Zが−CH2CH2Oである請求項1記載の方法。
【請求項3】
5およびR5’の一方が−OHであり、R5およびR5’の他方が−Hである請求項1記載の方法。
【請求項4】
5およびR5’がいずれも−OHである請求項1記載の方法。
【請求項5】
Xが−CH2Oである請求項1記載の方法。
【請求項6】
Zが−CH(CH3)CH2Oである請求項1記載の方法。
【請求項7】
mが0である請求項1記載の方法。
【請求項8】
mが1である請求項1記載の方法。
【請求項9】
nが7である請求項1記載の方法。
【請求項10】
nが17である請求項1記載の方法。
【請求項11】
細胞増殖障害が、患者における乳癌、卵巣癌、喘息、リンパ腫、内皮細胞増殖および白血病から選択される請求項1記載の方法。
【請求項12】
式(I)で示される化合物またはその製薬的に有効な塩が製薬的な賦形剤を含有する医薬組成物として投与される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
患者がヒトでない、請求項1記載の方法。
【請求項14】
患者が、コンパニオンアニマル、家畜、実験動物および野生動物からなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
患者がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
式(I)で示される化合物がSykチロシンキナーゼをin vitroで調節する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
細胞を、式(I)
【化2】

[式中、
点線は、単結合または二重結合を表し;
5およびR5’は独立に、H、OHまたはOR6であり、ここにR6は直鎖又は分岐鎖のC1−C4アルキルであり;
Xは、O、−CH2O、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
Zは、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
mは、0または1であり;
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50である]
で示される化合物のS−エナンチオマーまたはその製薬的に有効な塩を含有する組成物に暴露することを含んでなる、該細胞のSykチロシンキナーゼ成長を調節する方法。
【請求項18】
式(I)の化合物がin vitroで細胞増殖を阻害する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
式(I)の化合物が患者における細胞増殖を阻害する、請求項17記載の方法。
【請求項20】
患者における細胞増殖障害を処置するための、式(I):
【化3】

[式中、
点線は、単結合または二重結合を表し;
5およびR5’は独立に、H、OHまたはOR6であり、ここにR6は直鎖又は分岐鎖のC1−C4アルキルであり;
Xは、O、−CH2O、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
Zは、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
mは、0または1であり;
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50である]
のS−エナンチオマーまたはその製薬的に有効な塩である化合物。
【請求項21】
Zが−CH2CH2Oである、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
5およびR5’の一方が−OHであり、R5およびR5’の他方が−Hである請求項20記載の化合物。
【請求項23】
5およびR5’がいずれも−OHである、請求項20記載の化合物。
【請求項24】
Xが−CH2Oである、請求項20記載の化合物。
【請求項25】
Zが−CH(CH3)CH2Oである、請求項20記載の化合物。
【請求項26】
mが0である、請求項20記載の化合物。
【請求項27】
mが1である、請求項20記載の化合物。
【請求項28】
nが7である、請求項20記載の化合物。
【請求項29】
nが17である、請求項20記載の化合物。
【請求項30】
細胞増殖障害が、患者における乳癌、卵巣癌、喘息、リンパ腫、内皮細胞増殖および白血病から選択される、請求項20記載の化合物。
【請求項31】
請求項20〜30のいずれかに記載の化合物および1またはそれ以上の製薬的に許容し得る賦形剤を含有する、細胞増殖障害の処置において使用するための医薬組成物。
【請求項32】
細胞増殖障害の処置又は予防において使用するための医薬の製造における、式(I)
【化4】

[式中、
点線は、単結合または二重結合を表し;
5およびR5’は独立に、H、OHまたはOR6であり、ここにR6は直鎖又は分岐鎖のC1−C4アルキルであり;
Xは、O、−CH2O、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
Zは、−CH2CH2O、−CH(CH3)CH2Oまたは−CH2CH(CH3)Oであり;
mは、0または1であり;
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50である]
で示される化合物のS−エナンチオマーまたはその製薬的に有効な塩の使用。
【請求項33】
Zが−CH2CH2Oである、請求項32記載の使用。
【請求項34】
5およびR5’の一方が−OHであり、R5およびR5’の他方が−Hである、請求項32記載の使用。
【請求項35】
5およびR5’がいずれも−OHである、請求項32記載の使用。
【請求項36】
Xが−CH2Oである、請求項32記載の使用。
【請求項37】
Zが−CH(CH3)CH2Oである、請求項32記載の使用。
【請求項38】
mが0である、請求項32記載の使用。
【請求項39】
mが1である、請求項32記載の使用。
【請求項40】
nが7である、請求項32記載の使用。
【請求項41】
nが17である、請求項32記載の使用。
【請求項42】
細胞増殖障害が、患者における乳癌、卵巣癌、喘息、リンパ腫、内皮細胞増殖および白血病から選択される、請求項32記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2009−536191(P2009−536191A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508544(P2009−508544)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002471
【国際公開番号】WO2007/129226
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(505123907)ニュー エラ バイオテック リミテッド (3)
【Fターム(参考)】