細胞集団および混合細胞集団における変化の検出
本発明は、細胞集団および混合細胞集団における変化を、標識なしで検出する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、それらのすべてが参照によりそれらの全体において組み込まれる以下の仮出願:2009年5月15日に出願された米国仮出願第61/178,787号、2009年11月2日に出願された米国仮出願第61/257,345号、2010年1月19日に出願された米国仮出願第61/296,099号、2010年3月18日に出願された米国仮出願第61/315,144号、および2010年4月12日に出願された米国仮出願第61/323,070号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
細胞の解析、特に、幹細胞の解析、初代細胞の解析、および混合細胞集団の解析は、特に細胞数が希少な場合、接着、細胞の遊走および走化性、基底膜内または組織内への浸潤、分化、細胞接着を介する分化、三次元的環境(3−Dの細胞培養物)を介する分化、ならびに異なる細胞型との共培養を介する分化など、リアルタイムの生物学的過程を正確に測定するのに利用可能なツールがないため、現在のところ当該分野において制限されている。
【0003】
本明細書では、幹細胞、初代細胞、および細胞混合集団を含めた生細胞を用い、標識を使用しないリアルタイムの検出を用いて、これらの問題の各々を解決する方法が開示される。
【0004】
加えて、解析のために生物学的試料を調製することは、時間がかかり、複雑でありうる。癌細胞を単離および検出すること、細胞を希釈懸濁液から濃縮すること、特定の特性により細胞を分離すること、ならびに解析のために個々の細胞を単離および配置することを含め、生細胞を分離および操作することは、多くの生物学的解析および医学的解析を行うための最初のステップである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フローサイトメトリーおよび蛍光活性化細胞分取装置(FACS)は、細胞を分取し、かつ、細胞を解析するのに広く用いられている。しかし、これらの方法は、高価であり、検出可能な標識を必要とし、細胞を損傷してこれらをさらなる解析に用いられなくする場合があり、比較的大量の試料容量を必要とする。さらに、これらのデバイスは、滅菌が困難であり、機械的に複雑であり、訓練を受けた人員によらなければ操作および維持できない。したがって、生命科学的研究および医学的診断には、生細胞混合集団および細胞数の少ないアッセイを含め、生細胞を迅速かつ効率的に分取し、数え上げ、検出し、かつ解析しうる廉価なデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、1つの容器内における2つ以上の細胞型が刺激または試験試薬に対して示す示差的応答を検出する方法であって、該2つ以上の細胞型が検出可能な標識を含まない方法を提供する。該方法は、該2つ以上の細胞型を、該1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させており、かつ、該1または複数の特異的結合物質が、該2つ以上の細胞型のうちの1または複数に結合しうる。該2つ以上の細胞型を、該1または複数の特異的結合物質に結合させる。該2つ以上の細胞型の該示差的応答を検出する。該示差的応答は、該2つ以上の細胞型による、該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる時点での結合の場合もあり;該1もしくは複数の特異的結合物質に対して該2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態の場合もあり;かつ/または該2つ以上の細胞型による、該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる強度の結合の場合もある。
【0007】
該方法は、該2つ以上の細胞型を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するステップ、および該2つ以上の細胞型が該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す該示差的応答を検出するステップをさらに含みうる。該示差的応答は、該2つ以上の細胞型による、該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる強度の応答の場合もあり;1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に応答して該2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞形態の場合もあり;該2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる細胞応答の場合もあり;かつ/または該2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態の場合もある。
【0008】
該方法は、該2つ以上の細胞型を、第1の試験試薬または第1の刺激へと曝露するステップ;該2つ以上の細胞型が、該第1の試験試薬または第1の刺激に対して示す応答を検出するステップ;該2つ以上の細胞型を、第2の試験試薬または第2の刺激へと曝露するステップであって、該2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つが該第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答が知られているステップ;該2つ以上の細胞型が該第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答を検出するステップ;該第2の試験試薬または第2の刺激に対する応答が知られている、該2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つを、該バイオセンサー上において同定するステップ;該2つ以上の細胞型が示す該示差的応答を検出するステップをさらに含みうる。該バイオセンサー表面上に存在する、該2つ以上の細胞型の1または複数の細胞により、該1または複数の試験試薬または刺激が発現されうる。
【0009】
本発明の別の実施形態は、細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、該細胞混合集団内の細胞が検出可能な標識を含まない方法を含む。該方法は、該細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させている。該細胞混合集団を、該1または複数の特異的結合物質に結合させるが、この場合、該第1の細胞型が、該1または複数の特異的結合物質への結合に対して、該細胞混合集団の他の細胞と示差的な応答を示す。該細胞混合集団の示差的応答を検出するが、この場合、該第1の細胞型が存在することが、それらの示差的応答により検出される。該示差的応答は、該第1の細胞型による、該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる時点での結合の場合もあり;該1もしくは複数の特異的結合物質に対して該第1の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態の場合もあり;該第1の細胞型による、該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる強度の結合の場合もあり;かつ/または該第1の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答の場合もある。該細胞混合集団内における該第1の細胞型の百分率を決定することができる。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態は、細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、該細胞混合集団内における細胞のいずれもが検出可能な標識を含まない方法を提供する。該方法は、該細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させている。該細胞混合集団を、該1または複数の特異的結合物質に結合させる。該細胞混合集団を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するが、この場合、該第1の細胞型が、該細胞混合集団内における他の細胞と比較して、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示差的応答を示す。該第1の細胞型が該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す示差的応答を検出するが、この場合、該示差的応答が検出される場合に、該第1の細胞型が該細胞混合集団内に存在する。該示差的応答は、該第1の細胞型による、該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激への異なる強度の応答であり;該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に応答して該第1の細胞型によって提示される異なる細胞形態であり;該第1の細胞型による、ある時間にわたる該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる細胞応答であり;かつ/または該第1の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態である。該細胞混合集団内における該第1の細胞型の百分率を決定することができる。該バイオセンサー表面上に存在する、該細胞混合集団のうちの1または複数の細胞により、該1または複数の試験試薬または刺激が発現されうる。
【0011】
本発明のなおも別の実施形態は、第1の細胞集団が、1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する方法を提供する。該方法は、1または複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと固定化するステップであって、該第1の細胞集団が、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および該第1の細胞集団を、該バイオセンサーへと添加するステップを含む。代替的に、該第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合することもできるが、この場合、該第1の細胞集団が、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有し;かつ、これを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加する。ゲルもしくはゲル様物質、または第2の細胞集団を、該バイオセンサー表面へと添加する。該1または複数の試験試薬または刺激を、該ゲルもしくはゲル様物質、または該第2の細胞集団へと添加する。該第1の細胞集団が、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する。該1または複数の試験試薬または刺激は、走化作用物質の場合もあり、試験試薬または刺激をもたらす第3の細胞集団の場合もある。該第2の細胞集団は、上皮細胞集団の場合もあり、内皮細胞集団の場合もある。該第1の細胞集団は、幹細胞集団でありうる。検出標識を用いることはない。該方法は、該第2の細胞集団の応答を検出するステップをさらに含みうる。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、該第1の細胞集団または該第2の細胞集団が該1または複数の刺激に対して示す応答を検出することができる。該第1の細胞集団または該第2の細胞集団の応答を、リアルタイムで検出することができる。
【0012】
本発明のまた別の実施形態は、第1の細胞集団が、1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する方法を提供する。該方法は、1または複数の試験試薬または刺激を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;基底膜マトリックス、アルギン酸ゲル、コラーゲンゲル、アガロースゲル、合成ハイドロゲル、または第2の細胞集団を、該バイオセンサー表面へと添加するステップ;該第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するステップであって、該第1の細胞集団が、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および該第1の細胞集団を、該バイオセンサー表面へと添加するステップ;該第1の細胞集団が、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出するステップを含む。該1または複数の試験試薬または刺激は、走化作用物質の場合もあり、試験試薬または刺激をもたらす第3の細胞集団の場合もある。該第2の細胞集団は、上皮細胞集団の場合もあり、内皮細胞集団の場合もある。該第1の細胞集団は、幹細胞集団でありうる。検出標識を用いることはない。該方法は、該第2の細胞集団の応答を検出するステップをさらに含みうる。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、該第1の細胞集団または該第2の細胞集団が、該1または複数の刺激に対して示す応答を検出することができる。該第1の細胞集団または該第2の細胞集団の応答を、リアルタイムで検出することができる。
【0013】
本発明の別の実施形態は、第1の細胞集団の分化を検出する方法を提供する。該方法は、該第1の細胞集団を、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップであって、該バイオセンサーが、2つ以上の表面セクターを有し、各表面セクターが、他の表面セクターとは共鳴値が異なる回折格子を有するステップ;該2つ以上の表面セクターの各々に由来する、2つ以上のピーク波長値を検出するステップ;および該バイオセンサー表面上において、該第1の細胞集団の分化を検出するステップを含む。該分化は、リアルタイムで検出することができる。該2つ以上の表面セクターの各々に由来する、2つ以上のピーク波長値を検出する前に、該1または複数の試験試薬または刺激を、該バイオセンサーへと適用することができる。該1または複数の試験試薬または刺激を、該バイオセンサーへと適用する前に、1または複数のピーク波長値を検出することもできる。該1または複数の試験試薬または刺激は、走化作用物質の場合もあり、試験試薬または刺激をもたらす第3の細胞集団の場合もある。該第1の細胞集団は、幹細胞集団でありうる。検出標識を用いることはない。
【0014】
本発明のまた別の実施形態は、特定の幹細胞集団に特異的な生物学的応答の特徴を同定する生物学的発現プロファイリング方法を提供する。該方法は、1または複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの2つ以上の表面へと固定化するステップであって、該幹細胞集団が、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および該幹細胞集団を、該バイオセンサーの2つ以上の地点へと添加するステップを含む。代替的に、該幹細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合することもできるが、この場合、該幹細胞は、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有し;かつ、これを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの2つ以上の表面へと添加する。該バイオセンサーの2つ以上の表面を、2つ以上の試験試薬または刺激へと曝露する。該バイオセンサーの2つ以上の表面の各々において、該幹細胞が、該試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する。特定の幹細胞集団が、2つ以上の試験試薬または刺激に対して特異的に示す生物学的応答の特徴を同定する。該幹細胞の応答を検出するステップは、リアルタイムで行うことができる。
【0015】
本発明のなおも別の実施形態は、候補化合物を、細胞分化を調節するその能力についてスクリーニングする方法を提供する。該方法は、1または複数の細胞型を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;該1または複数の細胞型を誘導して分化させるステップ;該候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値または有効屈折率変化を比較することにより、該候補化合物の存在下または不存在下における細胞分化の変化を検出するステップを含む。該候補化合物の不存在下における細胞分化活性と比べた、該候補化合物の存在下における細胞分化活性の変化によって、細胞分化を調節する該候補化合物の能力が示される。該細胞分化活性の変化は、細胞分化活性の上昇の場合もあり、細胞分化活性の低下の場合もあり、細胞分化活性の阻害の場合もあり、幹細胞の自己複製の増大または減少の場合もあり、および/または分化した細胞の細胞型の変化の場合もある。該細胞分化活性の変化は、コラーゲン生成の増大の場合もあり、コラーゲン生成の減少の場合もある。該細胞分化活性の変化は、石灰化結節形成の増大の場合もあり、石灰化結節形成の減少の場合もある。該1または複数の細胞型は、幹細胞でありうる。該1または複数の細胞型は、間葉幹細胞でありうる。細胞サイズ、細胞形状、細胞膜電位、細胞代謝活性、またはシグナルに対する細胞応答性の変化を検出することにより、該細胞分化活性の変化を検出することができる。該候補化合物は、阻害性核酸分子でありうる。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、候補化合物を、細胞分化を調節するその能力についてスクリーニングする方法を提供する。該方法は、1または複数の細胞型を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;該1または複数の細胞型を誘導して分化させるステップ;該候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値または有効屈折率変化を比較することにより、該候補化合物の存在下または不存在下における1または複数の細胞分化生成物の生成を検出するステップを含む。該候補化合物の不存在下における1または複数の細胞分化生成物と比べた、該候補化合物の存在下における1または複数の細胞分化生成物の変化によって、細胞分化を調節する該候補化合物の能力が示される。該細胞分化生成物は、コラーゲンの場合もあり、石灰化結節の場合もある。該1または複数の細胞型は、幹細胞でありうる。該1または複数の細胞型は、間葉幹細胞でありうる。該候補化合物は、阻害性核酸分子でありうる。
【0017】
本発明の別の実施形態は、バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質;および該1または複数の特異的結合物質を覆う、ゲルまたはゲル様物質の層を含む、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を提供する。該バイオセンサー回折格子表面は、液体含有容器の内部表面を形成しうる。該液体含有容器は、マイクロタイタープレートまたはマイクロ流体チャネル(microfluidicchannel)でありうる。
【0018】
本発明のまた別の実施形態は、1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面、およびゲルまたはゲル様物質の1または複数の容器を含むキットを提供する。該キットは、1または複数の特異的結合物質の容器をさらに含みうる。1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面は、該バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質を含みうる。
【0019】
本発明のなおも別の実施形態は、比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面上、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面上、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面上において、特異的結合物質と結合パートナーとの反応を検出する改良法を提供する。該方法は、1または複数の特異的結合物質が、該バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合するように、該1または複数の特異的結合物質を、該バイオセンサー回折格子表面へと適用するステップ、およびゲルまたはゲル様物質を、該バイオセンサー表面へと適用するステップを含む。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、細胞混合集団から2つ以上の細胞型を分取し、かつ、該分取された細胞が、刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出する方法であって、該分取および該検出を、1つのバイオセンサー表面上で行う方法を提供する。該方法は、細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、該1つのバイオセンサー表面が、その表面に2種類以上の特異的結合物質を固定化させており、かつ、該2つ以上の特異的結合物質が、該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に潜在的に結合しうるステップ;該バイオセンサーの該1つの表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、1または複数の細胞型が、該バイオセンサーの該表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;該1または複数の結合した細胞型を、刺激、インキュベーション、または試験試薬へと曝露するステップ;該1または複数の結合した細胞型が該刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出するステップを含む。該2つ以上の特異的結合物質は、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質と、1または複数の他の特異的結合物質との組合せを含みうる。該1つのバイオセンサー表面は、マイクロタイターウェルの底面でありうる。該2つ以上の細胞型および試験試薬は、検出可能な標識を含まない。
【0021】
本発明の別の実施形態は、1つのバイオセンサー表面上において、細胞混合集団から1または複数の細胞型を分取し、かつ、該1または複数の細胞型から細胞内分析物を検出する方法を提供する。該方法は、細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、該1つのバイオセンサー表面が、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させており、該2つ以上の特異的結合物質が、(i)該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)該1または複数の細胞型に由来する1または複数の細胞内分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含むステップ;該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサーの該表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;該1または複数の結合した細胞型を、溶解させるかまたは透過処理するステップ;該バイオセンサーの該表面から、結合しなかったいかなる分析物も洗い流すステップ;および該バイオセンサーの該表面に固定化された該細胞内分析物を検出するステップを含む。該第1の特異的結合物質は、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質を含みうる。該1または複数の結合した細胞型を溶解させるかまたは透過処理する前に、細胞をある時間間隔にわたりインキュベートするか、または刺激に曝露するか、または試験試薬に曝露することができる。該1つのバイオセンサー表面は、マイクロタイターウェルの底面でありうる。該細胞混合集団および該2つ以上の特異的結合物質は、検出可能な標識を含まない。
【0022】
本発明のまた別の実施形態は、1つのバイオセンサー表面上において、細胞混合集団から1または複数の細胞型を分取し、かつ、該1または複数の細胞型から分析物を検出する方法を提供する。該方法は、細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、該1つのバイオセンサー表面が、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させており、該2つ以上の特異的結合物質が、(i)該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)該1または複数の細胞型に由来する1または複数の分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含むステップ;該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサー表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;試験試薬を該細胞に適用するか、もしくは該細胞をインキュベートするか、もしくは該細胞を刺激にかけるか、またはこれらの組合せを行うステップ;および該バイオセンサーの該表面に固定化された分析物を検出するステップを含む。該第1の特異的結合物質は、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質でありうる。該1つのバイオセンサー表面は、マイクロタイターウェルの底面でありうる。該細胞混合集団および該2つ以上の特異的結合物質は、検出可能な標識を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレート上における、ムスカリンリガンド、P2Yリガンド、およびベータ−アレスチンリガンドに対するSH−SY5Y細胞の特徴的応答を示す図である。
【図2】細胞が、PBS/オボアルブミン、フィブロネクチン、コラーゲン、またはラミニンを含む比色共鳴反射光バイオセンサー上にある場合の、3つのリガンド:アセチルコリン、カルバコール、およびピロカルピンに対するmP−M5細胞およびmP−M4細胞の反応を示す図である。
【図3】図3Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーに結合しているM5細胞が発生させるシグナルを示す図である。図3Bは、細胞がバイオセンサーに結合した30分後において完了した走査を示す図である。
【図4】図4Aが、細胞の位相差画像を、細胞の上側(細胞が、比色共鳴反射光バイオセンサーに結合する側と反対側)から示す図であるのに対し、図4Bは、同じ細胞の結合シグナルを、細胞の下側(細胞がバイオセンサーに結合する側)から示す図である。
【図5】図5Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーに対するM5細胞の結合応答を示す図である。図5Bは、カルバコールの添加に対するM5細胞の応答を示す図である。
【図6】比色共鳴反射光バイオセンサーへと添加されたM4細胞およびRBL親細胞混合集団を示す図である。M4細胞は、カルバコールに対して、RBL細胞より多くの受容体を有する。次いで、10μMのカルバコールを細胞に添加した。中央のパネルは、細胞にカルバコールを添加した30分後において、RBL細胞に対するM4細胞の比が3:1である場合を示す。右側のパネルは、細胞にカルバコールを添加した30分後において、RBL細胞に対するM4細胞の比が1:3である場合を示す。M4細胞がRBL細胞より多く存在し、各M4細胞がカルバコールに対してより多くの受容体を有するため、図6の中央のパネルは、右側のパネルより多くのシグナルを示す。
【図7】オボアルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、またはコラーゲンを含む比色共鳴反射光バイオセンサーに対するラットMSC細胞の結合を示す図である。
【図8】細胞を比色共鳴反射光バイオセンサーへと添加した直後におけるラットMSC細胞(図8A)、ならびに16時間後の該バイオセンサー上における該細胞(図8B)を示す図である。
【図9】比色共鳴反射光バイオセンサー上、30時間にわたるラットMSC細胞の移動を示す図である。左側の矢印(暗色のスポットを指し示す)が、細胞がバイオセンサー表面に結合した直後に細胞が存在した地点を示すのに対し、右側の矢印(明色のスポットを指し示す)は、バイオセンサー表面に対する結合の30時間後において細胞が存在した地点を示す。
【図10】比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレートおよびBIND(登録商標)READERを用いる、異なる濃度のSDF−1αに対するTHP−1細胞(図10A)およびCEM細胞(図10B)の応答を示す図である。
【図11】図11Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレート上における、SDF−1αに対するMSC細胞の応答を示す図である。図11Bは、SDF−1αおよび阻害剤(CXCR4遮断抗体)に対するMSC細胞(384ウェルのマイクロプレート内に7,000個の細胞)の応答を示す図である。
【図12】フィブロネクチンでコーティングしたバイオセンサー上におけるラットMSC細胞を示す図である。3時間後および16時間後の比色共鳴反射光バイオセンサー上において、細胞の結合を検出した(左側のパネル)。結合シグナルをゼロとし、細胞を、SDF−1αで刺激するか、またはSDF−1αで刺激せずに置いた(右側パネル)。図12の右側パネルでは、細胞の移動を見ることができる。暗色のスポットは、検出する前に細胞が存在した地点であり、明色のスポットは、反応を検出したときに細胞が存在した地点である。細胞に刺激を添加しなかった場合も、細胞の移動をある程度は見ることができるが、細胞にSDF−1αを添加した場合は、バイオセンサー上において細胞が増殖するのに伴い細胞が移動することが見られる。
【図13】図12の右側パネルの拡大図である。移動および/または細胞接着が生じる細胞縁辺部では、シグナルの増強を見ることができる。微速度撮影により裏付けられる通り、シグナルの増強は、細胞がバイオセンサー中を移動するときの該細胞の前縁部と相関する。
【図14】BIND(登録商標)READERによるリーディング(図14A)、ならびにBIND(登録商標)SCANNERによるリーディング(図14B)を示す図である。シグナル対ノイズ比が約7〜10倍増大したことが観察される。
【図15】リフトオフアッセイの概略図である。
【図16】対照ウェルと比較して、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックスの存在下では、MSC細胞が、バイオセンサーから離脱することを示す図である。MSC結合シグナルは、MATRIGEL(商標)コーティングにより、容易に同定することができる。MSCは、対照ウェルと比較して、センサーから離脱する傾向を提示する。これは、図16において黒色として表示される負のPWVシフトにより裏付けられる。
【図17】コラーゲンによりコーティングされたバイオセンサー上において、骨芽細胞へと分化するように誘導されたMSCを示す図である。14日目までに、細胞が石灰化し、骨を生成させた。
【図18】コラーゲンによりコーティングされたバイオセンサー上において、骨芽細胞へと分化するように誘導されたMSCを示す図である。14日目までに、細胞が石灰化し、骨を生成させた。アリザリンレッド色素を用いて、該細胞が、実際に骨を生成させることを確認した。画像は、前日の状態をベースラインとしたものである。
【図19】図19Aは、図18の17日目のパネルの拡大図である。白色の領域が、骨芽細胞の石灰化である。図19Bは、同じ細胞部分についての位相差顕微鏡写真を示す図である。位相差顕微鏡写真は、細胞の分化を示さない。
【図20】384ウェル比色共鳴反射光バイオセンサーに、細胞100個/ウェルで播種し、骨芽細胞分化培地で処理したラットMSC(Invitrogen製)を示す図である。BIND(登録商標)SCANNER上で毎日の画像を収集し、0日目における細胞結合シグナルをベースラインとした。アリザリンレッドでパラレルウェルを染色することにより示される通り、骨様のミネラルがセンサー表面上に沈着するのに応じて、段階的かつ強いPWVシフト(約25nM)が検出された(図20A)。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3β)阻害剤は、MSC−骨芽細胞分化を促進する。図20Bは、GSK3β阻害剤により引き起こされた分化の促進が検出されたことを示す。図20Cは、BIND(登録商標)SCANNERが、石灰化を検出するのにアリザリンレッド染色より高感度であることを示す。
【図21】BIND(商標)バイオセンサー上におけるMSCの分化を示す図である。コラーゲンの形成が石灰化に先行することが示されるが、これは、正常な骨形成と符合する。
【図22】1〜19日間にわたり、GSK3β阻害剤を含むかまたは含まない骨芽細胞分化培地中において培養したラットMSCを示す図である。BIND(商標)画像を毎日収集し、前日の測定値をベースラインとし、これにより、石灰化の速度についての情報をもたらした(図22A)。図22Bは、BIND(登録商標)SCANNER上で測定されたPWVシフトの定量化を示す図である(±標準偏差;n=12ウェル)。
【図23】抗体によるMSC遊走の遮断を示すが、また、PDGF−BB抗体が、バイオセンサー上にスポットされたPDGF−BBと相互作用することを表わす、ウェルの中央における正のPWVシフトによる極めて明色の矩形も示す図である。図23において、「ケモカインX」とはPDGF−BBであり;「ケモカインX nAb」とは、PDGF−BBに特異的な中和抗体である。
【図24】384ウェル比色共鳴反射光バイオセンサープレート上に播種したヒトMSCを示す図である。骨芽細胞分化カクテルにより、細胞を処理した。PWVを毎日測定した。非処理細胞(Ctrl)および骨芽細胞分化(OS−Diff)細胞による代表的なウェルを示す。
【図25】GSK3βおよびADKに特異的なsiRNA分子を、分化の直前にヒトMSCにトランスフェクトしたところ、BIND(登録商標)SCANNER上における標識を用いないアッセイでは、骨芽細胞への分化が加速されることが検出されたことを示す図である。12日目における試料ウェルを、複数の処理条件ごとに示す。
【図26】図25で示した結果を定量化している図である。
【図27】1:1の比で混合し、比色共鳴反射光バイオセンサーウェルに播種したRBL細胞とM5/RBL細胞を示す図である。細胞をバイオセンサーに結合させ、BIND(登録商標)SCANNER上で結合反応を検出した。結果を、図27Aおよび図27Bに示す。アセチルコリンに対する細胞の反応を、図27Cおよび図27Dに示す。
【図28】BIND(商標)Reader上で検出された終点応答を示す。図28Aは、単独で播種されたETaR細胞を示す。図28Bは、単独で播種されたM4R細胞を示す。
【図29】BIND(商標)Reader上で検出された終点応答を示す。図29Aは、単独で播種されたETaR細胞を示す。図29Bは、単独で播種されたM4R細胞を示す。
【図30】図30は、図30A〜Bに表示される通り、アトロピン、BMS、カルバコール、およびET−1を様々な形で添加した同じウェル内において培養したETaR細胞およびM4R細胞の両方を示す。図は、2つの細胞型を同じウェル内に播種することができ、各細胞型に対する個々の活性化を個別に検出しうることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
文脈により別段に明示されない限り、本明細書で用いられる単数形の「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」は、複数の指示対象を包含する。
【0025】
バイオセンサー
本発明のバイオセンサーは、比色共鳴反射光バイオセンサーでありうる。例えば、Cunninghamら、「Colorimetric resonant reflection as a direct biochemical assay technique」、Sensors and Actuators B、81巻、316〜328ページ、2002年1月5日;米国特許公開第2004/0091397号;米国特許第7,094,595号;米国特許第7,264,973号を参照されたい。比色共鳴バイオセンサーは、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサーではない。SPRバイオセンサーは、銀、金、銅、アルミニウム、ナトリウム、およびインジウムなどの金属薄層を有する。これらの金属は、適切な波長の光と共鳴することが可能な導電バンドの電子を有さなければならない。光に曝露されるSPRバイオセンサー表面は、純粋な金属でなければならない。酸化物、硫化物、および他の膜は、SPRに干渉する。比色共鳴バイオセンサーは、金属層を有さず、硫化亜鉛、二酸化チタン、酸化タンタル、および窒化ケイ素など、高屈折率材料による誘電コーティングを有する。
【0026】
本発明のバイオセンサーはまた、誘電積層膜バイオセンサー(例えば、米国特許第6,320,991号を参照されたい)、回折格子バイオセンサー(例えば、米国特許第5,955,378号;同第6,100,991号を参照されたい)、および回折異常バイオセンサー(例えば、米国特許第5,925,878号;同第RE37,473号を参照されたい)でもありうる。誘電積層膜バイオセンサーは、表面に溝が掘ってあるか、または回折格子表面を有する基板上に形成された誘電層の積層を含む(例えば、米国特許第6,320,991号を参照されたい)。このバイオセンサーは、光を受容し、少なくとも1つの入射角については、光の一部が、誘電層内へと伝搬される。光学異常のシフト、すなわち、共鳴ピークまたは共鳴ノッチのシフトを検出することにより、試料媒質のパラメータを決定する。光学異常のシフトは、共鳴角のシフトとして検出される場合もあり、共鳴波長のシフトとして検出される場合もある。
【0027】
本発明の方法と共に用いうる他のバイオセンサーには、例えば、米国特許第5,738,825号において説明されている、回折格子ベース導波路バイオセンサーも含まれる。回折格子ベース導波路バイオセンサーは、導波膜と、入射光場を該導波膜内へとインカップルして回折光場を生成させる回折格子とを含む。導波膜の有効屈折率変化を検出する。回折格子ベース導波路バイオセンサーなど、その内部においてかなりの距離にわたり波が搬送されなければならないデバイスは、比色共鳴反射光バイオセンサーの空間解像度を欠く。
【0028】
比色共鳴反射光バイオセンサーは、蛍光タグ、比色標識、または他の任意の種類の検出タグもしくは検出標識を用いることなく、その表面上において生化学的相互作用を測定することを可能とする。誘電積層膜バイオセンサーも、比色共鳴反射光バイオセンサーと極めて類似した形で作動する。バイオセンサー表面は、コリメート光および/または白色光により照射されると、狭いバンドの波長だけを反射または透過させる(「共鳴回折格子効果」)ようにデザインされた光学構造を含有する。反射の場合、この狭い波長バンドを、波長の「ピーク」という。透過の場合、この狭い波長バンドを、波長の「ディップ」という。生体物質などの物質が、バイオセンサー表面に沈着するか、またはここから除去されると、「ピーク波長値」(PWV)が変化する。波長のディップもまた、検出することができる。リードアウト装置を用いて、バイオセンサー表面上の異なる地点を、コリメート光および/または白色光で照射し、反射光を捕集する。捕集された光を、波長分光光度計へと集め、PWVを決定する。
【0029】
ボトムレスのマイクロタイタープレートカートリッジの底部にその構造(バイオセンサー側を上向きにする)を接合することにより、マイクロタイタープレートなど、ディスポーザブルの標準的な試験用器具にバイオセンサーを組み込むことができる。ミキサー、インキュベーター、および液体分注装置など、既存のマイクロタイタープレート処理装置と適合させるため、バイオセンサーを、一般的な試験用フォーマットのカートリッジへと組み込むことが望ましい。バイオセンサーはまた、例えば、マイクロ流体デバイス、マクロ流体デバイス、またはマイクロアレイデバイス(例えば、米国特許第7,033,819号、米国特許第7,033,821号を参照されたい)にも組み込むことができる。バイオセンサーを、当技術分野でよく知られた方法(例えば、「Methods of Molecular Biology」、Jun−Lin Guan編、294巻、Humana Press、Totowa、New Jerseyを参照されたい)と共に用いて、1または複数の細胞外試薬へと曝露したときの細胞挙動の変化またはこれらの変化の欠如をモニタリングすることができる。
【0030】
比色共鳴反射光バイオセンサーは、波長未満微細構造表面(SWS)、ならびに薄膜コーティング効果を模倣しうる、従来とは異なる種類の回折光学(PengおよびMorris、「Resonant scattering from two−dimensional gratings」、J.Opt.Soc.Am.A、13巻、5号、993ページ、1996年5月;MagnussonおよびWang、「New principle for optical filters」、Appl.Phys.Lett.、61巻、9号、1022ページ、1992年8月;PengおよびMorris、「Experimental demonstration of resonant anomalies in diffraction from two−dimensional gratings」、Optics Letters、21巻、8号、549ページ、1996年4月)を含む。SWS構造は、反射および透過するゼロ次光以外の回折次数光が伝搬することを許容しないように、回折格子の周期が入射光の波長と比較して短い、一次回折格子、二次回折格子、または三次回折格子を含有する。側面方向では、誘導モードの伝搬が支持されない。その代わりに、任意の光子がバイオセンサー構造に侵入する地点から約3ミクロンの極めて局在化された領域では、誘導モードによる共鳴効果が生じる。
【0031】
リガンドもしくは特異的結合物質などの分子、細胞もしくは結合パートナー、またはこれらの両方をバイオセンサーの上部表面へと添加することにより、比色共鳴反射光バイオセンサーの反射光または透過光を変化させることができる。添加された分子は、その構造を介して、入射放射線(incident radiation)の光路長を延長し、これにより、最大の反射または透過が生じる波長を変化させる。
【0032】
一実施形態では、白色光および/またはコリメート光で照射されると、単一の波長または狭いバンド(例えば、約1〜10nm)の波長を反射させる(「共鳴回折格子効果」)ように、比色共鳴反射光バイオセンサーをデザインする。集塊がバイオセンサー表面上に沈着すると、該バイオセンサー上に照射される光の光路が変化するために、反射波長がシフトする。
【0033】
例えば、検出システムは、例えば、光ファイバープローブを介して、バイオセンサーの微小なスポットを垂直入射で照射する光源と、例えば、第2の光ファイバープローブを介して、これもまた垂直入射で反射光を捕集する分光光度計とからなる。励起/検出システムと、バイオセンサー表面との間では物理的な接触が生じないため、特別な結合プリズムは必要でなく、例えば、マイクロタイタープレートを含めた、一般的に用いられる任意のアッセイプラットフォームに、バイオセンサーを容易に適合させることができる。分光光度計による1回のリーディングは、数ミリ秒間で実施することができ、したがって、バイオセンサー表面上で並行して生じる多数の分子間相互作用を迅速に測定し、かつ、反応速度をリアルタイムでモニタリングすることができる。
【0034】
比色共鳴反射光バイオセンサーは、例えば、高屈折率材料と、回折格子を支持する基板層と、場合によって、該基板層の反対側の回折格子表面上に固定化された、1または複数の特異的結合物質またはリンカーとを含む光回折格子を含む。高屈折率材料は、基板層より屈折率が高い。例えば、米国特許第7,094,595号;米国特許第7,070,987号を参照されたい。場合によっては、被覆層が、回折格子表面を覆う。例えば、硫化亜鉛、二酸化チタン、酸化タンタル、窒化ケイ素、および二酸化ケイ素が含まれる材料を含みうる、高屈折率誘電膜で光回折格子をコーティングする。光学特徴を有する回折格子の断面プロファイルは、任意の周期反復関数、例えば、「方形波」関数を含みうる。光回折格子はまた、直線(一次)、四角形、円形、楕円形、三角形、台形、正弦波、卵型、矩形、および六角形からなる群から選択される反復形状パターンも含みうる。本発明の比色共鳴反射光バイオセンサーはまた、高屈折率材料でコーティングされた、例えば、プラスチックまたはエポキシを含む光回折格子も含みうる。
【0035】
線形回折格子(すなわち、一次回折格子)は、照射光の偏光が、回折格子周期に対して垂直に方向づけられた共鳴特徴を有する。比色共鳴反射光バイオセンサーはまた、例えば、二次回折格子、例えば、ホールまたは四角形による六方アレイも含みうる。他の形状も同様に用いることができる。線形回折格子は、六方アレイによる回折格子と同じピッチ(すなわち、高屈折率領域と低屈折率領域との間の距離)、周期、層の厚さ、ならびに材料の特性を有する。しかし、光学的構造へと共鳴結合するには、光を、回折格子線に対して垂直に偏光させなければならない。したがって、その偏光軸が、線形回折格子に対して垂直に方向づけられた偏光フィルターを、照射源と、バイオセンサー表面との間に挿入しなければならない。適正な形で偏光しているのは、照射光源のうちのごく小部分であるため、六角形回折格子と比較して同等量の共鳴反射光を捕集するには、より長い積分時間が必要とされる。
【0036】
光回折格子はまた、例えば、厚さが一定の高屈折率領域が、低屈折率の被覆層内に埋め込まれている、「階段状」プロファイルも含みうる。高屈折率領域と低屈折率領域とが交互に現れることで、バイオセンサー上面に平行な光導波路がもたらされる。
【0037】
本発明の比色共鳴反射光バイオセンサーは、基板層の反対側の光回折格子表面上において、被覆層をさらに含みうる。被覆層が存在する場合、1または複数の特異的結合物質を、回折格子の反対側の被覆層表面上に固定化させる。被覆層は、回折格子を含む材料より屈折率の低い材料を含むことが好ましい。被覆層は、例えば、ガラス(スピンオンガラス(SOG))、エポキシ、またはプラスチックを含みうる。
【0038】
例えば、バイオセンサーの屈折率要件を満たす各種のポリマーを、被覆層に用いることができる。その屈折率が好ましいこと、取扱いが容易であること、豊富なガラス表面活性化法を用いて特異的結合物質により容易に活性化されることのために、SOGを用いることができる。バイオセンサー表面が平坦であることが、具体的なシステム環境にとって問題ではない場合は、SiN/ガラスの回折格子構造を、センシング表面として直接用いることができ、その活性化は、ガラス表面上の場合と同じ手段を用いて行うことができる。
【0039】
また、平坦化被覆層で光回折格子を覆わなくとも、共鳴反射を得ることができる。例えば、バイオセンサーは、高屈折率材料が構造化された薄膜層でコーティングした基板だけを含有しうる。平坦化被覆層を用いなくとも、周囲の媒質(空気または水など)が、回折格子を充填する。したがって、特異的結合物質がバイオセンサーに固定化されるときは、その上部表面上だけではなく、特異的結合物質に対して曝露された光回折格子のすべての表面上において固定化がなされる。
【0040】
一般に、比色共鳴反射光バイオセンサーは、すべての偏光角にわたる光を含有する白色光および/またはコリメート光で照射することができる。バイオセンサー回折格子内の反復特徴に対する偏光角の方向により、共鳴波長が決定される。例えば、一連の反復直線および反復間隔からなる「線形回折格子」(すなわち、一次回折格子)バイオセンサーは、個別の共鳴反射を発生させうる、2つの光学偏光を有する。直線に対して垂直に偏光する光を「s偏光」と称するのに対し、直線に対して平行に偏光する光を「p偏光」と称する。入射光のs成分およびp成分はいずれも、フィルターをかけていない照射ビーム中に同時に存在し、各々が個別の共鳴シグナルを発生させる。バイオセンサーは一般に、1つの偏光(s偏光)の特性だけを最適化するようにデザインすることができ、最適化されない偏光は、偏光フィルターにより容易に除去することができる。
【0041】
すべての偏光角が、同じ共鳴反射スペクトルを発生させるよう、偏光依存性を除去するためには、コンセントリックリングのセットからなる、代替的なバイオセンサー構造を用いることができる。この構造では、各コンセントリックリングの内径と外径との差が、回折格子周期の約半分と等しい。一連の各リングの内径は、その前のリングの内径より回折格子周期で約1周期大きい。コンセントリックリングパターンは、アレイスポットまたはマイクロタイタープレートウェルなど、単一のセンサー地点を覆うように拡張する。各個別のマイクロアレイスポットまたはマイクロタイタープレートウェルは、その内部に中心を置く個別のコンセントリックリングパターンを有する。このような構造のすべての偏光方向は、同じ断面プロファイルを有する。偏光非依存性を保持するように、コンセントリックリング構造は、正確に中心を照射しなければならない。コンセントリックリング構造の回折格子周期は、共鳴反射光の波長より短い。回折格子周期は、約0.01ミクロン〜約1ミクロンである。回折格子の厚さは、約0.01〜約1ミクロンである。
【0042】
別の実施形態では、照射ビームを格子の任意の特定の地点に絞り込む必要なしに、上記で説明したコンセントリックリング構造を緊密に近似するように、ホールまたはポストのアレイを配置する。3つの方向から等角で表面に入射する3つのレーザービームが光干渉することにより、このようなアレイパターンを自動的に発生させる。このパターンでは、最密六方アレイの角部分にホール(またはポスト)の中心を置く。ホールまたはポストはまた、各六角形の中心にも配置される。このようなホールまたはポストの六方格子は、同じ断面プロファイルを「見込む」3つの偏光方向を有する。したがって、六方格子構造は、いずれの偏光角を有する光を用いても、同等の共鳴反射スペクトルをもたらす。したがって、望ましくない反射シグナル成分を除去するための偏光フィルターは必要とされない。ホールまたはポストの周期は、約0.01ミクロン〜約1ミクロンであることが可能であり、深さまたは高さも、約0.01ミクロン〜約1ミクロンでありうる。
【0043】
検出システムは、比色共鳴反射光バイオセンサーと、該比色共鳴反射光バイオセンサーへと光を誘導する光源と、該バイオセンサーから反射された光を検出する検出器とを含みうる。一実施形態では、定められた閾値を超える正の結果だけが検出を誘発するようにフィルターを適用することにより、リードアウト装置を簡略化することができる。
【0044】
本発明の比色共鳴反射光バイオセンサーの異なる各地点において、共鳴波長のシフトを測定することにより、異なるどの地点が、例えば、その上に生体物質を沈着させているかを決定することが可能となる。シフトの程度を用いて、例えば、試験試料中における結合パートナーの量、ならびに1または複数の特異的結合物質と、試験試料の結合パートナーとの化学的アフィニティーを決定することができる。
【0045】
比色共鳴反射光バイオセンサーは、2回にわたり照射することができる。1回目の測定により、例えば、細胞をバイオセンサーに添加する前における、バイオセンサーの1または複巣の異なる地点の反射スペクトルを決定する。2回目の測定により、例えば、1または複数の細胞をバイオセンサーに適用した後における該反射スペクトルを決定する。これら2回の測定の間におけるピーク波長の差違が、バイオセンサー上における細胞の存在、量、または状態の測定値となる。この照射法は、ピーク共鳴波長にわずかなばらつきを伴う領域を結果としてもたらしうる、バイオセンサー表面における微細な欠陥についての対照を可能とする。この方法はまた、バイオセンサー上における細胞物質の濃度または密度の変化についての対照も可能とする。比色共鳴反射光バイオセンサーはまた、2回を超えて照射することもでき、PWVを決定および記録することができる。例えば、バイオセンサーは、1秒間当たり1、2、4、5、もしくは10回にわたり、1分間当たり1、2、3、4、5、10、20、もしくは30回にわたり、または1、5、10、20、もしくは60分間ごとに、または1日間当たり1、2、3、4、5、10回以上にわたり照射することができる。
【0046】
検出システム
検出システムは、バイオセンサーと、該バイオセンサーへと光を誘導する光源と、該バイオセンサーから反射された光を検出する検出器とを含みうる。一実施形態では、定められた閾値を超える正の結果だけが検出を誘発するようにフィルターを適用することにより、リードアウト装置を簡略化することができる。
【0047】
光源は、比色共鳴反射光バイオセンサーを、その上面、すなわち、1または複数の特異的結合物質を固定化させた表面から照射することもでき、その底面から照射することもできる。本発明のバイオセンサーの異なる各地点において、共鳴波長のシフトを測定することにより、どの異なる地点が、結合パートナーをそれらに結合させているかを決定することが可能となる。シフトの程度を用いて、試験試料中における結合パートナーの量、ならびに1または複数の特異的結合物質と、試験試料の結合パートナーとの化学的アフィニティーを決定することができる。
【0048】
バイオセンサー表面を照射し、反射光を捕集する検出システムの1つの種類は、例えば、光源に接続された6つの照射光ファイバーと、分光光度計に接続された単一の捕集光ファイバーとを含有するプローブである。ファイバーの数はさほど重要ではなく、任意の数の照射ファイバーまたは捕集ファイバーが可能である。捕集ファイバーがバンドルの中央にあり、6つの照射ファイバーにより取り囲まれるように、ファイバーをバンドル状に配置する。ファイバーバンドルの先端は、バイオセンサー表面へと照射を絞り込む視準(collimating)レンズへと接続する。
【0049】
このプローブ配置では、照射ファイバーと捕集ファイバーとが隣り合う。したがって、視準レンズを適正に調整して、バイオセンサー表面へと光を絞り込むと、6つの明確に規定された環状の照射領域と、中央の暗部領域とが観察される。バイオセンサーは光を散乱させず、視準ビームを反射させるので、捕集ファイバーに光が入射することはなく、共鳴シグナルが観察されることもない。6つの照射領域が、中央領域へと重複するまで視準レンズの焦点をぼかすだけで、任意の光を捕集ファイバー内へと反射させる。焦点のぼけた、若干の非コリメート光だけがシグナルを発生させうるため、バイオセンサーは、単一の入射角で照射されるのでなく、ある範囲にわたる入射角で照射される。この、ある範囲にわたる入射角は、結果として、共鳴波長の混合をもたらす。したがって、そうでない場合に可能でありうるより広い共鳴ピークが測定される。
【0050】
したがって、照射ファイバープローブと、捕集ファイバープローブとが、同じ光路を空間的に共有することが望ましい。複数の方法を用いて、照射光路と捕集光路とを共配置することができる。例えば、その第1の端部において、バイオセンサーに光を誘導する光源へと接続される単一の照射ファイバー、ならびにその第1の端部において、該バイオセンサーから反射された光を検出する検出器へと接続される単一の捕集ファイバーの各々を、それらの第2の端部において、照射器および捕集器の両方として作用しうる第3のファイバープローブへと接続することができる。第3のファイバープローブを、バイオセンサーに対して垂直の入射角に方向づけ、反対方向に伝搬する照射光シグナルと反射光シグナルとを支持する。
【0051】
別の検出方法は、光源に接続される単一の照射ファイバーを、検出器に接続される捕集ファイバーに対して90度の角度で方向づけることを可能とするビームスプリッターの使用を伴う。照射ファイバープローブを介して、光をビームスプリッター内へと誘導し、これにより、光をバイオセンサーへと誘導する。反射光を、再度ビームスプリッター内へと導き、これにより、光を捕集ファイバープローブ内へと導く。ビームスプリッターは、照射光および反射光が、ビームスプリッターとバイオセンサーとの間で共通の光路を共有することを可能とし、このようにして、焦点をぼかすことなしに、完全なコリメート光を用いることができる。
【0052】
バイオセンサー表面
リガンドまたは特異的結合物質とは、別の分子に結合する分子である。リガンドと特異的結合物質とは、類似の用語である。リガンドまたは特異的結合物質は、例えば、核酸、ペプチド、細胞外マトリックスリガンド(表1を参照されたい)、タンパク質溶液、ペプチド溶液、一本鎖DNA溶液もしくは二本鎖DNA溶液、RNA溶液、RNA−DNAハイブリッド体溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーに由来する化合物を含有する溶液、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)断片、F(ab’)2断片、Fv断片、有機低分子、細胞、ウイルス、細菌、ポリマー、または生物学的試料でありうる。生物学的試料は、例えば、血液、血漿、血清、消化管分泌液、組織もしくは腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙液、または前立腺液でありうる。ポリマーは、ハイドロゲル、デキストラン、ポリアミノ酸、ならびにポリリシン(ポリ−l−リシンおよびポリ−d−リシンを含む)、ポリ−phe−リシン、ポリ−glu−リシンを含めたこれらの誘導体からなる、1分子当たり複数の活性部位を伴う長鎖分子の群から選択される。本発明の一実施形態では、リガンドが、細胞外マトリックスタンパク質リガンドである。
【0053】
例えば、結合パートナーが、特異的結合物質、リガンド、もしくは決定する細胞に結合するか、またはこれらの特異的結合物質、リガンド、もしくは細胞を何らかの形で変化させる(例えば、細胞を分化または脱分化させる)場合、結合パートナーを、これらの特異的結合物質、リガンド、または細胞に、例えば、添加する。結合パートナーは、例えば、核酸、ペプチド、細胞外マトリックスリガンド(表1を参照されたい)、タンパク質溶液、ペプチド溶液、一本鎖DNA溶液もしくは二本鎖DNA溶液、RNA溶液、RNA−DNAハイブリッド体溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーに由来する化合物を含有する溶液、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)断片、F(ab’)2断片、Fv断片、有機低分子、細胞、ウイルス、細菌、ポリマー、または生物学的試料でありうる。生物学的試料は、例えば、血液、血漿、血清、消化管分泌液、組織もしくは腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙液、または前立腺液でありうる。ポリマーは、ハイドロゲル、デキストラン、ポリアミノ酸、ならびにポリリシン(ポリ−l−リシンおよびポリ−d−リシンを含む)、ポリ−phe−リシン、ポリ−glu−リシンを含めたこれらの誘導体からなる、1分子当たり複数の活性部位を伴う長鎖分子の群から選択される。
【0054】
1または複数のリガンドをバイオセンサーに固定化するときは、すすぎの手順によりリガンドが洗い流されないように、かつ、試験試料中の結合パートナーに対するリガンドの結合が、バイオセンサー表面により妨げられないようにこれを実施する。1または複数のリガンドをバイオセンサー表面に結合させるときは、物理的吸着(すなわち、化学リンカーを用いることがない)による場合もあり、化学結合(すなわち、化学リンカーを用いる)による場合もあるほか、電気化学的結合、静電的結合、疎水性結合、および親水性結合による場合もある。化学結合は、バイオセンサー表面上における、より強力なリガンドの結合を生成させ、この表面結合分子に明確な配向性および立体配座をもたらしうる。本発明の一実施形態では、バイオセンサー表面に固定化はされないが、重力またはそれを覆うように添加されるゲルもしくはゲル様物質によりそれがバイオセンサー表面との会合を維持するように、リガンドまたは特異的結合物質を、バイオセンサー表面と会合させることができる。
【0055】
リガンドまたは特異的結合物質はまた、核酸、ペプチド、タンパク質溶液、ペプチド溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーに由来する化合物を含有する溶液、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)断片、F(ab’)2断片、Fv断片、有機低分子、ウイルス、ポリマー、または生物学的試料などの特異的結合物質を介して、バイオセンサー表面に特異的に結合させることもでき、この場合、該特異的結合物質は、該バイオセンサー表面に固定化される。
【0056】
さらに、リガンドまたは特異的結合物質を、バイオセンサー表面上の1または複数の異なる地点のアレイに配置することもでき、この場合、該表面は、マルチウェルプレートの1または複数のウェル内に属することが可能であり、マルチウェルプレートまたはマイクロアレイの1または複数の表面を含みうる。各々が異なるリガンドを伴う、1または複数の異なる地点を表面が含有するように、リガンドのアレイは、マイクロウェルプレート内のバイオセンサー表面上に1または複数のリガンドを含む。例えば、アレイは、1、10、100、1,000、10,000、または100,000カ所以上の異なる地点を含みうる。したがって、マルチウェルプレートまたはマイクロアレイの各ウェルは、その内部に、該マルチウェルプレートの他のウェルとは別個の、1または複数の異なる地点のアレイを有することが可能であり、これにより、1つのマルチウェルプレート上において、複数の異なる試料を処理することが可能となる。任意の1つのウェル内における1または複数のアレイは、同じマイクロタイタープレートの他の任意のマイクロタイターウェル内で見出される1または複数のアレイと同じである場合もあり、これらとは異なる場合もある。加えて、本発明のアレイは、1または複数の特異的結合物質を、規則的または不規則的な任意の種類のパターンで含みうる。例えば、異なる地点は、1または複数の結合物質のスポットのアレイを規定しうる。アレイスポットは、直径が約10、20、30、40、50、100、200、300、400、または500ミクロンでありうる。
【0057】
特異的結合物質は、本発明のバイオセンサー表面に添加される結合パートナー(すなわち、細胞または該細胞上の分子)に、該細胞が該バイオセンサーに固定化されるように、特異的に結合する。特異的結合物質は、その結合パートナーには特異的に結合するが、バイオセンサー表面に添加される他の結合パートナーには実質的に結合しない。例えば、特異的結合物質が抗体である場合、その結合パートナーは具体的な抗原であり、該抗体は、その具体的な抗原には特異的に結合するが、他の抗原には実質的に結合しない。結合パートナーは、例えば、細胞の場合もあり、核酸、組換え核酸、タンパク質、組換えタンパク質、細胞外マトリックスタンパク質受容体、脂質、または炭水化物など、細胞上または細胞内に存在する任意の分子の場合もある。本発明の一実施形態では、結合パートナーが、バイオセンサー上に固定化された特異的結合物質に結合しうる受容体であり、この場合、該受容体は、細胞の表面上にある。
【0058】
マイクロタイタープレートが、生化学的アッセイに用いられる最も一般的なフォーマットであるが、マイクロアレイも、一度に測定しうる生化学的相互作用の数を最大化しながら、貴重な試薬の容量を最小化するための手段として目されることが多くなりつつある。マイクロアレイスポッターを用いて、特異的結合物質を、本発明の1つのバイオセンサー表面に適用することにより、特異的結合物質10,000個/インチ2の特異的結合物質密度を得ることができる。照射ビームを絞り込んで単一のマイクロアレイ地点を探査することにより、標識を用いないマイクロアレイリードアウトシステムとしてバイオセンサーを用いることができる。
【0059】
リガンドをバイオセンサー表面に固定化するときはまた、例えば、以下の官能基リンカー:ニッケル基、アミン基、アルデヒド基、酸性基、アルカン基、アルケン基、アルキン基、芳香族基、アルコール基、エーテル基、ケトン基、エステル基、アミド基、アミノ酸基、ニトロ基、ニトリル基、炭水化物基、チオール基、有機リン酸基、脂質基、リン脂質基、またはステロイド基への結合を介してこれをもたらすことも可能である。さらに、リガンドをバイオセンサー表面に固定化するときは、物理的吸着、化学結合、電気化学的結合、静電的結合、疎水性結合、または親水性結合、および免疫捕捉法を介することも可能である。
【0060】
本発明の一実施形態では、バイオセンサーを、例えば、ニッケル基、アミン基、アルデヒド基、酸性基、アルカン基、アルケン基、アルキン基、芳香族基、アルコール基、エーテル基、ケトン基、エステル基、アミド基、アミノ酸基、ニトロ基、ニトリル基、炭水化物基、チオール基、有機リン酸基、脂質基、リン脂質基、またはステロイド基などのリンカーによりコーティングすることができる。例えば、アミン表面を用いて、複数種類のリンカー分子を結合させうる一方、アルデヒド表面は、さらなるリンカーなしに、タンパク質に直接結合させるのに用いることができる。ニッケル表面は、ヒスチジン(「his」)タグを組み込んだ分子に結合させるのに用いることができる。ニッケル活性化表面を用いて「hisタグ」分子を検出することは、当技術分野でよく知られている(Whitesides、Anal.Chem.68、490(1996))。
【0061】
リンカー、リガンド、および特異的結合物質をバイオセンサー表面上に固定化するときは、各ウェルが、同じリンカー、リガンド、および/または特異的結合物質をその中に固定化させるようにこれを行うことができる。代替的に、各ウェルには、リンカー、リガンド、および/または特異的結合物質の異なる組合せを含有させることもできる。
【0062】
リガンドまたは特異的結合物質は、バイオセンサー表面上に固定化させたリンカーに特異的に結合する場合もあり、これに非特異的に結合する場合もある。代替的に、バイオセンサー表面がリンカーを有さない場合もあり、リガンドまたは特異的結合物質は、バイオセンサー表面に非特異的に結合しうる。
【0063】
1または複数の特異的結合物質またはリガンドをバイオセンサーに固定化するときは、すすぎの手順により特異的結合物質またはリガンドが洗い流されないように、かつ、試験試料中の結合パートナーに対するリガンドの結合が、バイオセンサー表面により妨げられないようにこれを実施する。例えば、各種のマイクロアレイおよびバイオセンサーで用いられるガラスに特異的結合物質を共有結合させるために、複数の異なる種類の界面化学戦略が実装されている。これらの同じ方法を、本発明のバイオセンサーにも容易に適応させることができる。それが、1または複数の特異的結合物質に結合するのに適正な官能基を含有するように、バイオセンサー表面を調製することは、バイオセンサー製造過程に不可欠な部分である。
【0064】
1または複数の特異的リガンドまたは特異的結合物質をバイオセンサー表面に結合させるときは、物理的吸着(すなわち、化学リンカーを用いることがない)による場合もあり、化学結合(すなわち、化学リンカーを用いる)による場合もあるほか、電気化学的結合、静電的結合、疎水性結合、および親水性結合による場合もある。化学結合は、バイオセンサー表面上における、より強力なリガンドの結合を生成させ、この表面結合分子に明確な配向性および立体配座をもたらしうる。
【0065】
リガンドを、プラスチック、エポキシ、または高屈折率材料へと固定化するときは、本質的に、ガラスへの固定化について説明されている通りに実施することができる。しかし、酸による洗浄ステップを行うなら、特異的結合物質を固定化させる材料を損傷するような場合には、このような処理を取りやめることができる。
【0066】
1または複数のリガンドにより、初代細胞または幹細胞などの細胞を、バイオセンサーに固定化することができる。本発明の一実施形態では、細胞外マトリックスリガンドとの反応を介して、細胞をバイオセンサーに固定化する。インテグリンは、細胞外マトリックス(ECM)と相互作用する細胞表面受容体であり、細胞内シグナルを媒介する。インテグリンは、細胞骨格の構成、細胞の移動性、細胞周期の制御、細胞アフィニティーの制御、ウイルスに対する細胞の付着、他の細胞またはECMに対する細胞の結合の一因となる。インテグリンはまた、細胞が、1つの種類のシグナルまたは刺激を、細胞内および細胞間において、別のシグナルまたは刺激へと転換する過程の一因ともなる。インテグリンは、ECMから細胞へと情報を変換する場合もあり、細胞から他の細胞へ(例えば、他の細胞上におけるインテグリンを介して)またはECMへと情報を変換する場合もある。インテグリンおよびそれらのECMリガンドのリストは、表1に示す通り、Takadaら、Genome Biology 8:215(2007)において見出すことができる。
【0067】
【表1】
【表2】
【0068】
ECMと相互作用する他の細胞表面受容体には、接着斑タンパク質が含まれる。接着斑タンパク質は、細胞の細胞骨格をECMへと連結する大型の複合体を形成する。接着斑タンパク質には、例えば、タリン、α−アクチニン、フィラミン、ビンクリン、接着斑キナーゼ、パキシリン、パービン、アクトパキシン、ネキシリン、フィムブリン、G−アクチン、ビメンチン、シンテニン、ならびに他の多くの接着斑タンパク質が含まれる。
【0069】
ECMと相互作用しうるさらに他の細胞表面受容体には、CD(表面抗原分類)分子が含まれうるがこれらに限定されない。CD分子は、各種の方式で作用し、細胞に対する受容体またはリガンドとして作用することが多い。ECMと相互作用する他の細胞表面受容体には、カドヘリン、アドへリン、およびセレクチンが含まれる。
【0070】
ECMは、細胞に支持体および足場を与えること、組織を互いに分別すること、ならびに細胞内連絡を制御することを含め、多くの機能を有する。ECMは、線維性タンパク質およびグリコサミノグリカンからなる。グリコサミノグリカンは、通常ECMタンパク質に結合して、プロテオグリカン(例えば、硫酸ヘパリンプロテオグリカン、硫酸コンドロイチンプロテオグリカン、硫酸カラチンプロテオグリカンを含めた)を形成する炭水化物ポリマーである。プロテオグリカンとして見出されないグリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸である。ECMタンパク質には、例えば、コラーゲン(線維状コラーゲン、FACITコラーゲン、短鎖コラーゲン、基底膜、ならびに他のコラーゲン形態を含めた)、フィブロネクチン、エラスチン、およびラミニン(ECMタンパク質のさらなる例については、表1を参照されたい)が含まれる。本発明で有用なECMリガンドには、ECMタンパク質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、およびヒアルロン酸が含まれる。
【0071】
「特異的に結合する(specifically binds)」、「特異的に結合する(specifically bind)」、または「〜に特異的な」とは、細胞表面受容体、例えば、インテグリンまたは接着斑タンパク質などが、他の非特異的分子に対する場合より大きなアフィニティーで、同族の細胞外マトリックスリガンドに結合することを意味する。非特異的分子は、該細胞受容体には実質的に結合しない。例えば、インテグリンα4/β1は、ECMリガンドであるフィブロネクチンには特異的に結合するが、非特異的なECMリガンドであるコラーゲンまたはラミニンには特異的に結合しない。本発明の一実施形態では、細胞表面受容体を細胞外マトリックスリガンドに特異的に結合させると、細胞外マトリックスリガンドは、表面、例えば、バイオセンサー表面に固定化されるので、細胞を該細胞外マトリックスリガンドに固定化することになり、したがって、通常の細胞アッセイにおける洗浄手順によりそれが該表面から洗い流されないように、細胞を該表面に固定化することになる。
【0072】
インテグリンなどの細胞表面受容体を、バイオセンサーに固定化されたECMリガンド、抗体、同族の結合タンパク質、またはペプチド模倣体に結合させることを介して、細胞を、バイオセンサー表面に特異的に固定化することにより、バイオセンサー表面に非特異的に固定化された(すなわち、特異的な結合反応、例えば、それに特異的に結合する抗体に細胞表面受容体を結合させることを介してある細胞を固定化するのではなく、すべての細胞一般を固定化すること)細胞と比較して、バイオセンサー表面に対する細胞の結合、ならびに刺激に対する細胞の応答が劇的に変化する。すなわち、ECMリガンドの結合を介して細胞をバイオセンサーに固定化すると、刺激に対する細胞の応答が、大幅に増強されるかまたは増大して検出される。本発明の一実施形態では、細胞をバイオセンサー表面へと添加するとき、それらを無血清培地内に入れることができる。無血清培地は、約10、5、4、3、2、1、0.5%以下の血清を含有する。無血清培地は約0%の血清を含む場合もあり、約0%〜約1%の血清を含む場合もある。本発明の一実施形態では、1種または複数種のECMリガンドがバイオセンサー表面に固定化されている場合に、細胞を該バイオセンサー表面へと添加する。本発明の別の実施形態では、細胞を、1種または複数種のECMリガンドと組み合わせ、次いで、バイオセンサー表面へと添加する。
【0073】
本発明の一実施形態では、ECMリガンドを精製する。精製ECMリガンドとは、細胞物質、他の種類のECMリガンド、該ECMリガンドを調製するのに用いられる化学的前駆体、化学物質、またはこれらの組合せを実質的に含まないECMリガンド調製物である。他の種類のECMリガンド、細胞物質、培地、該ECMリガンドを調製するのに用いられる化学的前駆体、化学物質などを実質的に含まないECMリガンド調製物が有する他のECMリガンド、培地、調製物で用いられる化学的前駆体、および/または他の化学物質は、約30%、20%、10%、5%、1%未満である。したがって、精製ECMリガンドは、約70%、80%、90%、95%、99%以上純粋である。精製ECMリガンドは、純度70%未満であるECMリガンドの非精製または半精製の調製物または混合物、例えば、ウシ胎仔血清を包含しない。本発明の一実施形態では、ECMリガンドが精製されておらず、ECMタンパク質と、非ECMタンパク質との混合物を含む。非精製ECMリガンド調製物の例には、ウシ胎仔血清、ウシ血清アルブミン、およびオボアルブミンが含まれる。
【0074】
例えば、フィブロネクチンリガンドには結合するが、コラーゲンリガンドまたはラミニンリガンドには結合しないことが知られている、α4/β1インテグリン受容体を発現する細胞は、フィブロネクチンでコーティングしたウェル上において、コラーゲン表面またはラミニン表面上において観察されるPWVシフトの約8〜10倍のPWVシフトを生成させる。それらにコラーゲンまたはラミニンを固定化させたバイオセンサー表面上における、α4/β1インテグリン受容体を発現する細胞についてのPWVシフトは、BSAでコーティングした対照ウェル上において観察される、バックグラウンドの細胞結合シグナルに類似している。
【0075】
本発明の一実施形態では、ECMリガンドが、細胞表面上に存在する細胞表面受容体、例えば、インテグリンまたは接着斑タンパク質に特異的であると、ECMリガンドに対する細胞結合が、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20倍以上(または2〜20倍の任意の範囲で)増大して検出される。本発明の別の実施形態では、細胞が、細胞表面受容体、例えば、インテグリンに特異的なECMリガンドによりバイオセンサー表面に固定化されていると、刺激に対する細胞応答が、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20倍以上(または2〜20倍の任意の範囲で)増大して検出される。
【0076】
細胞を、リガンド、ECM、または他の手段を介してバイオセンサーに結合させたら、1または複数のリガンドを該細胞に添加して、該細胞が該1または複数のリガンドに対して示す反応を決定することができる。
【0077】
液体含有容器
バイオセンサーは、液体含有容器の内部表面、例えば、底面を含みうる。液体含有容器は、例えば、マイクロタイタープレートウェル、試験管、ペトリディッシュ、マイクロアレイスライド、顕微鏡スライド、バイオセンサー表面、またはマイクロ流体チャネルでありうる。本発明の一実施形態は、任意の種類のマイクロタイタープレートへと組み込まれるバイオセンサーである。例えば、各反応「スポット」が、異なる試験試料へと曝露されうるよう、反応容器の壁面が、バイオセンサー表面を覆うように構成することにより、マイクロタイタープレートの底面へとバイオセンサーを組み込むことができる。したがって、個々のマイクロタイタープレートウェルが、個別の反応容器として作用しうる。したがって、隣接するウェルなど、各個の容器内において、反応流体を混じり合わせることなく、個別の化学反応を生じさせることができ、化学的に異なる試験溶液を、個々の容器へと適用することができる。
【0078】
本発明のバイオセンサーまたは回折格子を、ボトムレスのマイクロタイタープレート底面へと接合するには、例えば、接着剤による接合、超音波による溶接、ならびにレーザーによる溶接を含め、複数の方法を用いることができる。
【0079】
薬学的なハイスループットスクリーニングのための検査室、分子生物学的研究のための検査室、ならびに診断アッセイのための検査室に最も一般的なアッセイフォーマットは、マイクロタイタープレートである。これらのプレートは、格子状に配置された約2、6、8、24、48、96、384、1536、3456、9600個以上の個々の反応容器を格納しうる、標準サイズのプラスチック製カートリッジである。これらのプレートは、標準的な機械的構成を有するため、液体の分注、ロボットによるプレートの操作、ならびに検出システムは、この一般的なフォーマットと共に作動するようにデザインする。本発明のバイオセンサーは、標準的なマイクロタイタープレートの底面へと組み込むことができる。バイオセンサー表面は、大表面積で作製することが可能であり、かつ、リードアウトシステムは、バイオセンサー表面と物理的に接触しないため、任意の数の個々のバイオセンサー領域を規定するときは、これらを限定するものが照射光学機器の焦点解像度、ならびにバイオセンサー表面全体にわたり照射/検出プローブを走査させるx−yステージだけであるように規定することができる。
【0080】
バイオセンサーを用いる方法
本発明のバイオセンサーは、1または多数の特異的結合物質/リガンドと結合パートナーとの相互作用を、並行して調べるのに用いることができる。1または複数の特異的結合物質またはリガンドが、それらの各々の結合パートナーに結合することを検出するときは、1または複数の結合パートナー(例えば、受容体を保有する細胞もしくは抗原または特異的結合物質に結合する他の分子)を、個々の異なる地点において1または複数の特異的結合物質をそれ自体に固定化させたバイオセンサー表面へと適用することにより、標識を用いることなしにこれを検出することができる。本発明の一実施形態では、1または複数の特異的結合物質が、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質リガンドであり、かつ、1または複数の結合パートナーが、細胞上における受容体であり、この場合、該受容体(例えば、インテグリン)は、細胞外マトリックスタンパク質リガンドに特異的である。バイオセンサーを光で照射し、バイオセンサーの異なる各地点から、光の反射波長の極大値または透過波長の極小値を検出する。回折格子ベース導波路バイオセンサーからのシグナルも、比色共鳴反射光バイオセンサーの場合と同様の方式で検出し、互いと、または対象と比較する。本明細書で説明されるすべてのアッセイまたは方法は、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折異常バイオセンサー、回折格子バイオセンサー、誘電積層バイオセンサー、および回折格子ベース導波路バイオセンサー上において実施することができる。比色共鳴反射光バイオセンサー上において、1または複数の特異的結合物質が、1または複数の結合パートナーに結合している場合は、1または複数の特異的結合物質がそれらの各々の結合パートナーに結合していない状況と比較して、光の反射波長が、その異なる地点においてシフトする。バイオセンサーが、1または複数の特異的結合物質を含有する、1または複数の異なる地点のアレイでコーティングされている場合は、光の反射波長の極大値または透過波長の極小値が、該バイオセンサーの各々の異なる地点から検出される。1または複数の特異的結合物質が、回折格子ベースのバイオセンサー上において、それらの各々の結合パートナーに結合している場合は、有効屈折率変化が生じる。
【0081】
本発明の一実施形態では、各種の特異的結合物質、例えば、細胞受容体または細胞性抗原に特異的であるか、細胞が1または複数のウイルスに感染した場合に細胞表面上において発現するか、下方制御されるか、もしくは上方制御されるタンパク質(Liangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2005)、102:5838を参照されたい)に特異的であるか、またはアポトーシスを随伴させる細胞が発現させるタンパク質(例えば、p53リガンド、TNF−αリガンド、TNF−βリガンド、Fasリガンドが上方制御され;ニューロン成長因子およびIL−2が下方制御される)に特異的である特異的結合物質を、アレイフォーマットで、本発明のバイオセンサー上に固定化することができる。次いで、バイオセンサーを、ECMリガンド受容体、例えば、インテグリンまたは接着斑タンパク質を保有する細胞などの結合パートナーを含む、対象の試験試料と接触させる。特異的結合物質に特異的に結合する細胞だけが、バイオセンサー表面上に固定化される。本発明の一実施形態では、ECMリガンドを介して結合した細胞は、結合していない細胞と異なり、刺激に対して応答しうる。刺激、試験試薬、またはインキュベーション時間に対する細胞の応答を検出するのに、酵素標識、放射性標識、または蛍光標識などの検出可能な標識の使用は必要とされない。ハイスループット適用の場合は、バイオセンサーをアレイのアレイに配置することができ、この場合、特異的結合物質のアレイを含む複数のバイオセンサーを、アレイに配置することができる。例えば、このようなアレイのアレイをマイクロタイタープレートへと浸漬して、一度に多くのアッセイを実施することができる。別の実施形態では、バイオセンサーをファイバープローブの先端に配置して、生化学物質をin vivoで検出することができる。代替的に、細胞をECMリガンドと混合するか、または細胞およびECMの混合物として誘導し、次いで、バイオセンサー表面へと添加することもできる。
【0082】
バイオセンサーに添加される細胞は、細菌細胞または古細菌細胞などの原核細胞の場合もあり、動物細胞、真菌細胞、植物細胞、および原生生物細胞などの真核細胞の場合もある。細胞は、ヒト細胞などの哺乳動物細胞でありうる。本発明のバイオセンサーには、任意の量の細胞を添加することができる。例えば、約1、2、3、4、5、10、15、50、100、150、200、300、500、1,000、10,000、100,000個以上の細胞(または約1〜100,000個の任意の範囲または値;例えば、約50個〜約100個、約50個〜約200個、約50個〜約500個、約50個〜約1,000個)を、本発明のアッセイで用いることができる。
【0083】
本発明の一実施形態は、リアルタイムで生じる、細胞増殖パターンの変化、細胞による細胞表面受容体などの分析物の上方制御もしくは下方制御または発現の変化(例えば、細胞受容体もしくは分析物の発現が増大もしくは減少すること、またはある刺激に応答する細胞受容体もしくは分析物の発現がある時間にわたり変化すること(例えば、細胞をバイオセンサー表面上に固定化してインキュベートすると細胞受容体の発現が上昇し、その後、該細胞に刺激を加えると細胞受容体の発現が低下すること))、細胞死パターンの変化、細胞分化の変化、細胞移動の変化、細胞サイズまたは細胞容量の変化、あるいは細胞接着の変化などの細胞変化を、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは回折格子ベース導波路バイオセンサーにより、かつ、放射測定標識、比色標識、または蛍光標識を組み込む必要なしに、またはこれらによる干渉なしに、直接検出することを可能とする(但し、望ましい場合、標識を使用することもできる)。細胞の挙動および形態の変化は、該細胞が撹乱されるときに検出することができる。次いで、BIND(登録商標)READER(すなわち、比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)などの高速高解像度の装置、ならびにデータを定量化するための、対応するアルゴリズムを用いて、細胞の変化をリアルタイムで検出することができる。例えば、米国特許第7,422,891号;同第7,327,454号;同第7,301,628号;同第7,292,336号;同第7,170,599号;同第7,158,230号;同第7,142,296号;同第7,118,710号を参照されたい。この方法と、装置と、コンピュータによる解析とを組み合わせることにより、細胞挙動を、標識を伴わない形で、リアルタイムで適切にモニタリングする(すなわち、細胞が刺激または試験試薬に応答しつつある瞬間において、かつ、細胞が刺激または試験試薬に応答しつつあるある時間にわたり、細胞反応を、適切かつ好都合な形で、観察および定量化する)ことができる。標識を伴わない形とは、細胞が、それらと結合または会合し、かつ、それらまたはそれらに対する変化を検出するのに用いられる標識(例えば、蛍光標識、放射性標識、酵素標識、標識のアフィナント、磁気標識、化学発光標識、発光標識、生物発光標識、化学標識など)を有さないことを意味する。検出可能な標識(例えば、蛍光標識、放射性標識、酵素標識、標識のアフィナント、磁気標識、化学発光標識、発光標識、生物発光標識、化学標識など)は、細胞と結合または会合し、かつ、細胞または細胞の変化を検出するのに用いられる。リアルタイムのモニタリングは、アッセイの全経過(アッセイの種類に応じて、例えば、約1、2、3、4、5、10、20、30、45、もしくは60分間、または約1、2、3、4、5、10、12、24、もしくは48時間、または約1、2、3、4、5、10、20もしくは30日間)にわたり、バイオセンサー表面から複数のリーディング(例えば、約0.001、0.01、0.1、1.0、5、10、20、30、40、50、または60秒間ごと、約1、2、3、4、5、10、20、30、45、または60分間ごと、約1、2、6、12、または24時間ごと)を記録するときに行う。
【0084】
SRU Biosystems,Inc.(マサチューセッツ州、ウォーバーン)製のBIND(商標)法などの比色共鳴反射光バイオセンサーは、ナノスケールの生体系に由来する集塊の結合に関して、表面に対する変化を測定する能力を有する。該装置の解像度が改善されるのに応じて、比色共鳴反射光バイオセンサーが既に実装されている適用および方法も変化している。かつては、比色共鳴反射光バイオセンサー表面に結合した細胞の量を測定することが、第1の目標であった。しかし、解像度の低い一部の細胞画像を検討するうちに、占有されるピクセル数、シグナル/ピクセルの強度、各ピクセルのPWVの変化などに関して、細胞が示差的なシグナルをもたらすことが注目された。これらのデータのばらつきを低減しようと努めるうちに、このばらつきは、個々の細胞内にあること、ならびにそれらが刺激に対して示す示差的な形態的応答の中にあることが明らかとなった。これらの細胞イベントをさらに探索するために、BIND(登録商標)READER(すなわち、比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)の高解像度バージョンである、BIND(登録商標)SCANNER(高解像度の比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)が構築された。例えば、米国特許第7,301,628号;同第7,298,477号;同第7,148,964号;同第7,023,544号を参照されたい。
【0085】
BIND(登録商標)SCANNER(すなわち、高解像度の比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)は、高解像度のレンズを有する。このレンズの解像度は、約2、3、3.75、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、50、100、200、500、1,000、または2,000マイクロメートル(または約2〜約2,000マイクロメートルの任意の範囲、例えば、2〜5、2〜3.75、2〜10、2〜15、8〜12、2〜20、2〜50、2〜100、2〜200、または2〜300マイクロメートル)である。加えて、より良好な解像度でリアルタイムの細胞変化を解析するための方法も開発されている。BIND(登録商標)SCANNERが高解像度であることの利点は、単一のウェルまたは容器内の異なるピクセル位置における波長シフトの解析を可能とすることである。このスキャナーにより、バイオセンサーのマイクロタイターウェルの全体を読み取ることもでき、該ウェルまたは表面の小部分だけを読み取ることもできる。
【0086】
本発明の方法を用いて、細胞増殖パターンの変化、または細胞受容体もしくは分析物の発現の変化を含めた細胞変化を検出することができる。略述すると、比色共鳴反射率光学バイオセンサー上に細胞を固定化することができ;PWVを検出し;該細胞を、試験試薬、インキュベーション、または刺激にかけ;PWVを検出し;初期のPWVと後続のPWVとを比較することができるが、この場合、初期のPWVが、後続のPWVと比べて異なることから、細胞増殖パターンの変化、または他の細胞変化が示唆される。また、場合によって、アッセイ経過の複数の時点においてPWVの変化を決定および記録し、かつこれらを比較することもできる。
【0087】
細胞増殖(growth)パターンの変化は、細胞形態、細胞接着、細胞移動、細胞増殖(proliferation)、および細胞死からなる群から選択することができる。1つの細胞型の原核細胞もしくは真核細胞、または2つ以上の細胞型の原核細胞もしくは真核細胞を、バイオセンサー上に固定化することができる。
【0088】
本発明の方法は、例えば、走化性アッセイ、低細胞数アッセイ、分化アッセイ、移動アッセイ、結合アッセイ、細胞浸潤アッセイ、接着アッセイ、細胞の分化状態についての生物学的プロファイリングを含めた、初代細胞および幹細胞などの細胞の変化を検出するための固有の機会を提供する。
【0089】
本発明のバイオセンサーシステムはまた、光の反射波長のシフトを測定することにより、アレイを規定する1または複数の異なる地点に結合させた、試料に由来する結合パートナーの量を検出および定量化することも可能である。例えば、1または複数の異なる地点における波長シフトを、他の異なる地点における陽性対照および陰性対照と比較して、結合した特異的結合物質の量を決定することができる。重要なことは、このように多数の1または複数の異なる地点をバイオセンサー表面上に配置することができ、かつ、該バイオセンサーが、約2、6、8、24、48、96、384、1536、3456、9600個以上のマイクロタイタープレートウェルなどの容器の内部表面を含みうることである。例として述べると、96個のバイオセンサーを保持固定具に接合し、各バイオセンサーが約100個ずつの異なる地点を含む場合は、約9600の生化学的アッセイを同時に実施することができる。
【0090】
細胞を分取、解析、および定量化する方法
本発明の方法は、細胞混合集団から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20以上の細胞型を分取し、該分取された細胞が、刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出する方法であって、該分取および検出を、1つのバイオセンサー表面上において行う方法を提供する。細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面または他のバイオセンサー表面に適用するが、この場合、該バイオセンサーは、その表面に1または複数の特異的結合物質(例えば、抗体またはECMリガンド)を固定化させており、該1または複数の特異的結合物質は、該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に潜在的に結合しうる。場合によって、該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサーの該表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにする。該1または複数の結合した細胞型を、刺激、試験試薬、インキュベーション、またはこれらの組合せへと曝露する。PWVのシフトまたは有効屈折率変化を検出することにより、1または複数の結合した細胞型が刺激に対して示す応答を検出する。PWVおよび有効屈折率は、ある時間にわたり比較することもでき、リアルタイムで比較することもでき、陰性対照または陽性対照と比較することもできる。したがって、1つのバイオセンサー表面を用いて、混合集団内における1または複数の細胞型が、刺激、試験試薬、インキュベーション、またはこれらの組合せに対して示す応答を分取、検出、定量化、および/または解析することができる。
【0091】
細胞の分取は、混合集団試料のうちのすべてに満たない細胞型を、バイオセンサー表面に固定化することでありうるが、この場合、固定化されなかった試料細胞は、場合によって、洗い流す。細胞の分取はまた、1つの細胞型を、バイオセンサー上における1つの異なる地点に固定化することを指しうるが、1または複数の他の細胞型を、該バイオセンサー上における他の異なる地点に固定化することでもある。固定化されなかった細胞は、場合によって、洗い流すこともでき、バイオセンサー表面上に保持することもできる。
【0092】
本発明の方法はまた、細胞混合集団から1、2、またはこれを超える数の細胞型を分取し、かつ、1つのバイオセンサー表面上において該1または複数の細胞型により生成される、該細胞の細胞内分析物または他の分析物を検出する方法も提供する。本発明の一実施形態では、細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、または1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面へと適用する。該1つのバイオセンサー表面は、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させていることが可能であるが、この場合、該2つ以上の特異的結合物質は、(i)該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)該1または複数の細胞型に由来する1または複数の細胞内分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含む。該第1および第2の特異的結合物質は、異なる場合もあり、同じである場合もある。場合によって、該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサー表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにすることもできる。該1または複数の結合した細胞型は、例えば、生物学的界面活性剤、TWEEN(登録商標)、TRITON(登録商標)、NP40、Brij、オクチル−ベータ−チオグルコピラノシド、ジギトニン、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、高濃度の塩、またはこれらの組合せにより、溶解させるかまたは透過処理する。代替的に、細胞をある時間にわたりインキュベートするか、または刺激へと曝露し、次いで、場合によって、インキュベートした後に溶解させることもできる。溶解、透過処理、インキュベーション、刺激への曝露(またはこれらの任意の組合せ)の後、バイオセンサー表面から、結合しなかった任意の細胞内分析物を、場合によって、洗い流すことができる。バイオセンサーの異なる各地点において、PWVシフトまたは有効屈折率変化を検出することにより、該バイオセンサーの該表面に固定化された該細胞内分析物を検出する。PWVおよび有効屈折率は、ある時間にわたり比較することもでき、陰性対照または陽性対照と比較することもできる。したがって、混合集団細胞試料を用いて、該混合集団細胞試料中における1または複数の特定の細胞型の細胞内成分を分取、検出、定量化、および/または解析することができる。細胞内分析物または他の分析物は、例えば、タンパク質、RNA、DNA、炭水化物、脂質、細胞受容体、あるいは細胞上もしくは細胞内に存在するか、または細胞により生成される他の任意の分子でありうる。
【0093】
本発明の別の実施形態では、細胞混合集団から1、2、またはこれを超える数の細胞型を分取し、かつ、ただ1つのバイオセンサー表面を用いて、該1または複数の細胞型から分析物を検出することができる。細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、または1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面へと適用する。該1つのバイオセンサー表面は、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させていることが可能であるが、この場合、該2つ以上の特異的結合物質は、(i)該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、ならびに(ii)該1または複数の細胞型に由来する1または複数の分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含む。該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を、場合によって洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサー表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにする。該細胞を試験試薬と接触させるか、もしくはインキュベートするか、もしくは刺激にかけるか、またはこれらの組合せを行う。該バイオセンサー表面に固定化された分析物を検出する。PWVシフトまたは有効屈折率変化を検出することにより、該バイオセンサー表面に固定化された分析物を検出する。PWVおよび有効屈折率は、ある時間にわたり比較することもでき、陰性対照または陽性対照と比較することもできる。分析物は、例えば、タンパク質、RNA、DNA、炭水化物、脂質、または、インキュベーション、試験試薬、もしくは刺激への曝露に応答して、細胞により生成される他の任意の分子でありうる。
【0094】
1または複数の細胞型に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質と、1もしくは複数の細胞型に由来する1もしくは複数の細胞内分析物または他の分析物に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質とをバイオセンサー表面に固定化する場合は、1または複数の細胞型に特異的に結合する該1または複数の特異的結合物質を、該バイオセンサー表面の1つの異なる地点に置き、1もしくは複数の細胞型に由来する1もしくは複数の細胞内分析物または他の分析物に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質を、第2の異なる地点に置くことができる。1または複数の細胞型に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質、ならびに1もしくは複数の細胞型に由来する1もしくは複数の細胞内分析物または他の分析物に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質の各々を、1つのバイオセンサー表面上におけるその固有の異なる地点に置くことができる。代替的に、異なる種類の特異的結合物質を、1つのバイオセンサー表面上における1つの異なる地点に置くこともでき、これらを併せて混合することもできる。1つのバイオセンサー表面、ならびにバイオセンサー表面上における1つの地点は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30種類以上の特異的結合物質を含みうる。
【0095】
1つのバイオセンサー表面は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、500、1,000カ所以上の異なる地点を含みうる。各異なる地点は、その上に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100以上の特異的結合物質を固定化させうる。例えば、1つのバイオセンサー表面は、2つの異なる地点を有しうる。第1の異なる地点には、1種類の特異的結合物質を固定化することができる。第2の異なる地点には、他の特異的結合物質とは異なる種類の2つの特異的結合物質を固定化することができる。
【0096】
本発明の方法はまた、2つ以上の細胞型(例えば、2、3、4、5、10、15、20以上の細胞型)を、細胞混合集団から、1つのバイオセンサー表面上における2つ以上の異なる地点へと分取するのに用いることもできる。例えば、2種類以上の特異的結合物質(例えば、2、3、4、5、10、15、20種類以上)を2つ以上の異なる地点に固定化させている1つのバイオセンサー表面に、例えば、約2、3、4、5、10、15、20、または30種類を超える細胞を含有する細胞混合集団を添加することができる。2つ以上の特異的結合物質は、細胞混合集団に由来する2つ以上の細胞型に結合し、これらを固定化しうる。したがって、1つのバイオセンサー表面上における2つ以上の異なる地点へと、細胞が分取される。結合しなかった細胞は、細胞混合集団から洗い流すことができる。次いで、細胞を刺激することもでき、試験試薬にかけることもでき、溶解させることもでき、透過処理することもできる。検出、数え上げ、および解析は、アッセイの各ステップで実施することができる。
【0097】
本発明の一実施形態は、1つのバイオセンサー表面上に固定化された、特異的結合物質に特異的に結合した、細胞上における結合パートナー、例えば、細胞受容体または細胞表面抗原の数または量を定量化する方法を提供する。細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、または1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面へと適用する。該1つのバイオセンサー表面は、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させているが、この場合、該1または複数の特異的結合物質は、1または複数の結合パートナー、例えば、細胞表面上、細胞混合集団内の細胞上における細胞受容体もしくは他のタンパク質または分析物に特異的に結合する。該バイオセンサー表面から、結合しなかった細胞を、場合によって洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサー表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにする。該細胞を、場合によって、試験試薬と接触させるか、もしくはインキュベートするか、もしくは刺激にかけるか、またはこれらの組合せを行う。PWVシフトまたは有効屈折率変化を検出することにより、該バイオセンサー表面に結合した細胞または細胞受容体の量を解析する。PWVおよび有効屈折率は、ある時間にわたり比較することもでき、陰性対照または陽性対照と比較することもできる。例えば、対照値と比較することにより、細胞上における結合パートナーの量を決定することができる。対照値は、既知数の細胞受容体または細胞表面抗原を含む細胞から導出することができる。
【0098】
本明細書で説明されるすべてのアッセイについて、PWVおよび有効屈折率のリーディングは、各回の洗浄またはバイオセンサー表面への添加の前に記録することもでき、各回のバイオセンサー表面への添加時において記録することもでき、各回の洗浄またはバイオセンサー表面への添加の後に記録することもでき、各回のインキュベーション時間の前または後に記録することもでき、これらの組合せにおいて記録することもできる。PWVまたは有効屈折率のリーディングはまた、アッセイの経過にわたり、リアルタイムで連続的に記録することもできる。
【0099】
細胞混合集団、または「2つ以上の細胞」は、約2、3、4、5、10、15、20、30以上の異なる細胞型を含む。細胞混合集団(または「2つ以上の細胞」)は、異なる細胞型の任意の混合物、例えば、赤血球、白血球、および血小板の混合物;異なる種類の細菌の混合物;生物学的試料中に存在する異なる細胞型の混合物;幹細胞の混合物;ならびに分化した細胞型の混合物を含みうる。幹細胞集団内の細胞は、異なる分化段階にあることが多いため、幹細胞集団は、細胞混合集団であると考えることができる。細胞混合集団は、例えば、肺吸引物試料、痰試料、唾液試料、血液試料、血漿試料、組織試料、便試料、尿試料、骨髄試料、リンパ節試料、環境試料、食物試料でありうる。細胞混合集団は、部分精製されている場合もあり、精製されていない場合もあり、濃縮されている場合もあり、濃縮されていない場合もあり、希釈されていない場合もある。組織試料または便試料などの試料は、分断させて緩衝液中に懸濁させた後で用いることができる。細胞混合集団は、約2、3、4、5、10、15、20、30以上の細胞型を含むことが予測される、生検物質でありうる。生検には、微細針吸引により捕集された組織、コア針生検、真空支援生検、切開手術生検、皮膚生検(例えば、薄片生検、パンチ生検、切開生検、切除生検、または掻爬生検)が含まれうる。生検では、例えば、骨髄組織、子宮内膜組織、皮膚組織、リンパ節組織、肝組織、肺組織、消化管組織、腎組織、移植内臓組織、または精巣組織を捕集しうる。一般に、細胞混合集団は、バイオセンサー表面に固定化された特異的結合物質に潜在的に結合する2つ以上の細胞型を含有する。すなわち、細胞混合集団のうち、細胞のサブセット(すなわち、1または複数の細胞型)だけを、バイオセンサー表面に固定化された1または複数の特異的結合物質に結合させることによって、バイオセンサー表面に固定化する。特異的結合物質に結合しない、細胞混合集団内の細胞は、場合によって、バイオセンサー表面から洗い流すこともでき、バイオセンサー表面上に残すこともできる。1つの細胞型は、細胞型のクラス、例えば、すべてのリンパ球の場合もあり、1つの具体的な細胞型、例えば、1つの特定の種類のリンパ球、例えば、T細胞の場合もあり、1つの特定の種類のT細胞、例えば、CD8+ T細胞の場合もある。
【0100】
生物から直接採取した外植片(例えば、生検物質)の増殖物は、初代細胞培養物として知られている。初代細胞培養物は、細胞型混合集団からなりうる。これらの細胞混合集団から初代細胞を分取および精製するのに必要とされる時間および過程は、アッセイの結果に否定的な影響を及ぼしうる。加えて、これらの方法により抽出される細胞の数は、通常限定的であり、極めて少数の細胞個数/ウェルで可能とされうるアッセイを、初代培養細胞と共に用いるのに魅力的なものとしている。アッセイの結果を望ましくない形で撹乱する、長時間にわたる単離手順なしに、初代細胞集団の特定のサブセットの状態、活性、および受容可能性を決定するための方法が必要とされている。本発明の方法を用いると、細胞ならびにアッセイの結果に悪影響を及ぼすことなく、初代細胞を分取、検出、定量化、および/または解析することができる。初代細胞培養物には、T細胞、B細胞、幹細胞、NK細胞、単球、樹状細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、白血球、星状細胞、心筋細胞、肝細胞、ニューロンが含まれるがこれらに限定されない。初代細胞を用いて行われることが典型的なアッセイには、GPCRアッセイ、RTKアッセイ、イオンチャネルアッセイ、siRNAアッセイ、ウイルス感染アッセイ、内部標的応答アッセイ、毒性アッセイ、増殖アッセイなどの刺激試験および機能試験が含まれる。他のアッセイでは、特定の細胞型(複数可)の存在、不在、または調節、細胞表面タンパク質(複数可)の存在、不存在、または調節について調べ、さらに、分取された細胞型を刺激に対する応答について調べる。一例として述べるなら、試験は、細胞を意図的に混合する(他の細胞の存在下において、細胞が変化を引き起こすように)ステップと、次いで、該意図的な混合物を、個々の細胞型成分へと再度分取するステップと、他の細胞の存在下において誘導された該変化(複数可)をさらに調べるステップとを伴いうるであろう。例えば、健康な細胞株を健康でない同じ細胞型と混合して、疾患特徴の転移について検討することができる。臨床状況における別の例であれば、医薬に対する応答について患者の細胞を調べた後で、処方するステップが含まれうるであろう。別の臨床状況における試験であれば、癌マーカーについて、患者の細胞を、オンサイトかつリアルタイムで分取し、定量化し、かつ調べるステップを伴いうるであろう。
【0101】
1つのバイオセンサー表面は、細胞混合集団と接触している、1つのバイオセンサーの表面上における1つの部分(例えば、マイクロ流体チャネル、ウェル、表面の1つの異なる部分)でありうる。バイオセンサーをマイクロウェルプレートへと組み込む場合は、各ウェルが、1つのバイオセンサー表面となる。マイクロタイタープレート内における各ウェルは、異なる特異的結合物質または特異的結合物質の異なる組合せをその上に固定化させていることが可能であり、これにより、1または複数の異なる細胞、ならびに1種または複数種の異なる刺激、インキュベーション、または試験試薬によりプローブしうる、特異的結合物質のパネルまたは特異的結合物質の組合せが作製される。
【0102】
細胞を刺激しうる化合物または分析物には、例えば、ホルモン、増殖因子、医薬、試験医薬、分化因子、モルフォゲン、サイトカイン、ケモカイン、インスリン、EGF、ATP、UTP、カルバノイルコリン、アセチルコリン、エピネフリン、ムスカリン、浸透圧変化を誘導する化合物、膜の脱分極を誘導する化合物、低分子の試験化合物、ウイルス、抗体、タンパク質、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)断片、F(ab’)2断片、RNA、DNA、siRNA、Fv断片、有機低分子、細胞、細菌、および生物学的試料、例えば、血液、血漿、血清、消化管分泌液、組織もしくは腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙液、および前立腺液、ならびに細胞に潜在的に影響を及ぼしうる他の任意の分子または化合物が含まれる。他の刺激には、例えば、温度、pH、圧力の変化、ならびに他の環境因子の変化が含まれうる。
【0103】
刺激には、細胞を「活性化」または「プライミング」する刺激が含まれる。刺激は、細胞の生化学的活性および機能的活性を変化させることにより、細胞を活性化またはプライミングする。細胞の活性化には、転写因子、癌遺伝子、サイトカイン、初期応答遺伝子、細胞表面分子、接着分子をコードする遺伝子を含めた、多数の新規の遺伝子、ならびに他の遺伝子の発現を急速に誘導することが随伴する。例えば、刺激によりマクロファージまたは単球が活性化される場合は、それらが、移動性の低下、新規の表面抗原の発現、プラスミノーゲン活性化因子の合成、腫瘍細胞に対する細胞傷害作用の増強、サイトカインの生成および放出の増大、プロスタグラジン/ロイコトリエン合成の増大、反応性酸素中間物質の生成の増大、ならびに他の変化を呈しうる。活性化した細胞は、例えば、タンパク質または他の分析物の生成を発現させる場合もあり、下方制御する場合もあり、上方制御する場合もある。例えば、炎症時において、ヒスタミンまたはトロンビンにより、内皮細胞が活性化されると、例えば、内皮細胞内では、細胞接着分子であるP−セレクチンが、細胞内のある地点から内皮細胞表面へと移動する。活性化細胞の表面上において、新規の抗原を、相特異的に発現させることにより、細胞の異なる活性化状態を同定および分類することができ、これは、本発明の方法を用いて決定することができる。
【0104】
刺激の性質に応じて、選択された機能だけについて細胞をプライミングすることができ、細胞に全スペクトルにわたる機能的能力を達成させないことが可能である。例えば、マクロファージ脱活性化因子など、一部の刺激が、既に活性化した細胞を脱活性化しうるという意味で、活性化過程およびプライミング過程はまた、可逆化することも可能である。
【0105】
本発明の一実施形態では、細胞が活性化またはプライミングされると、発現するか、上方制御されるか、または下方制御される分析物またはタンパク質に結合するかまたは潜在的に結合する特異的結合物質を、バイオセンサー表面に固定化する。細胞混合集団(または精製細胞集団)を、活性化またはプライミングし(すなわち、1または複数の刺激へと曝露し)、バイオセンサー表面へと添加する。代替的に、細胞混合集団をバイオセンサー表面へと添加し、次いで、活性化またはプライミングすることもできる。バイオセンサー表面上における特異的結合物質に結合する細胞は、該細胞表面に固定化される。場合によって、結合しなかった細胞は、該バイオセンサー表面から洗い流すこともできる。こうして、細胞を、分取、検出、定量化、および解析することができる。場合によって、細胞にさらなる刺激を加え、それらの応答を検出することもできる。
【0106】
本発明の別の実施形態では、細胞を活性化またはプライミングし、次いで、アンタゴニスト、抗体、または薬物など、細胞活性を阻害しうる刺激を添加することにより、細胞活性の阻害について調べることができる。例えば、細胞(混合集団または精製集団)を、活性化またはプライミングし、次いで、細胞が活性化またはプライミングされると発現するか、上方制御されるか、または下方制御される分析物またはタンパク質に結合するかまたは潜在的に結合する特異的な結合物質をその表面に固定化させたバイオセンサー表面へと、これらを添加することができる。場合によって、細胞をバイオセンサー表面へと添加し、次いで、これらをプライミングまたは活性化することもできる。細胞の活性化または細胞のプライミングを阻害しうる1または複数の刺激をバイオセンサー表面へと添加し、該刺激に対する細胞の応答を検出することができる。このような形で、バイオセンサー表面上において、細胞を分取、検出、定量化、および解析することができる。
【0107】
本発明の方法は、組織の類別に用いることができるが、この場合は、ドナーおよびレシピエントの組織、血液、または血液生成物を調べた後で、移植または輸血を行う。例えば、胚を含め、任意の組織または血液生成物を、組織の類別にかけることができる。本発明の方法は、例えば、HLA−A遺伝子座、HLA−B遺伝子座、HLA−C遺伝子座、HLA−DP遺伝子座、HLA−DQ遺伝子座、およびHLA−DR遺伝子座における表現型を確立することにより、組織の類別を実施するのに用いることができ、これを用いて、反応性抗体の百分率を決定することができる。本発明の方法はまた、これを交差適合検査において用いて、提供された血液ユニットがその意図されるレシピエントに対して示す適合性を決定することもできる。一例では、白血球に結合する特異的結合物質を固定化させたバイオセンサー表面へと、ドナーの全血液を添加する。全血液試料に由来する非結合細胞は、洗い流される。レシピエントの血清(例えば、刺激)を、該バイオセンサーへと添加し、反応を検出する。ドナーの白血球が損傷されれば、陽性の交差適合が結果として得られ、輸血は適応でないことが示される。
【0108】
特異的結合物質が、細胞上における特異的な抗原または受容体に結合する特異的な抗体またはリガンドである、本発明の方法により細胞を分取し、数え上げ、検出し、かつ解析することは、例えば、移植;血液学;腫瘍の免疫療法および化学療法;男女産別法のための遺伝学および精子の分取;細胞表面に表示される、所望の特性を伴うタンパク質変異体を、酵母ディスプレイライブラリーおよび細菌ディスプレイライブラリーにより同定することへと適用される。
【0109】
本発明の方法はまた、細胞の容量および形態の複雑さを検討すること;細胞周期を解析し、細胞増殖などの細胞動態を検討すること;染色体を解析および分取すること;細胞タンパク質の発現および局在化を検討すること;タンパク質の修飾(例えば、リンタンパク質)を検討すること;in vivoにおけるトランスジェニック生成物(例えば、緑色蛍光タンパク質、またはCDマーカーなどの細胞表面抗原)の発現を検討すること;細胞内抗原(例えば、サイトカイン、二次的メディエーター)の生成を検討すること;核内抗原の生成を検討すること;酵素活性を検討すること;pH、細胞内におけるイオン化カルシウム、マグネシウム、および膜電位をモニタリングすること;膜の流動性を検討すること;アポトーシスを検討すること;細胞の生存を検討すること;細胞の電気透過処理をモニタリングすること;酸化バーストを検討すること;癌細胞における多剤耐性(MDR)を特徴づけること;グルタチオン生成を検討すること、ならびにこれらの組合せを行うことにも用いることができる。一例では、細胞をバイオセンサーに固定化し、Gタンパク質結合受容体を刺激する化合物、例えば、刺激性であるカルバコール、ならびに競合的アンタゴニストであり、ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)に影響を及ぼすアトロピンにより処理する。これらの効果は、本発明を用いて検出可能である。
【0110】
他の例では、本発明の方法を用いて、免疫表現型試験、すなわち、モノクローナル抗体による細胞性抗原の同定および定量化を実施することができる。免疫表現型試験は、急性白血病、慢性リンパ球増殖疾患、および悪性リンパ腫を診断および分類するのに用いられる。これらの疾患に対する治療戦略は、疾患の診断および分類に依存することが多い。急性白血病は、2つのサブクラス:リンパ芽球性の類型(ALL)および骨髄性の類型(AML)へと分類される。ALLは、さらに3つの亜型へと細分され、ALMは、8つの亜型へとさらに区分される。細胞性抗原に特異的に結合する多くの異なる抗体が、血液性悪性腫瘍の免疫表現型試験における解析に用いられる。細胞性抗原には、例えば、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD23、CD25、CD30、CD34、CD41、CD42b、CD43、CD45、CD56、CD57、CD61、CD79a、CD103、CD117、HLA−DR、グリコフォリンA、TdT、およびミエロペルオキシダーゼが含まれうる。細胞性抗原を保有する細胞を分取し、検出し、数え上げ、かつ解析して、急性白血病を診断するか、またはその予後診断を下しうるように、1または複数の細胞性抗原に特異的に結合する抗体を固定化させたバイオセンサー表面へと、細胞試料、例えば、血液試料、脊髄液、または骨髄を添加することができる。
【0111】
一部の実施形態では、例えば、CD19、CD20、およびCD22に特異的に結合する抗体を含む抗体のセットを用いて、B細胞のクローン性を決定しうる一方、CD2、CD3、CD4、および/またはCD7に特異的に結合する抗体は、細胞混合集団試料を用いて、T細胞のクローン性を決定するのに用いることができる。さらなる抗体を用いるならば、特定のリンパ増殖障害が診断されるであろう。CD45に特異的な抗体は、血液性悪性腫瘍を他の新生物から鑑別し、芽球細胞を検出する一助とするのに有用である。別の例では、表面免疫グロブリンとの弱い反応、CD5、CD23、およびCD43による陽性の結果、ならびにCD10、CD11c、CD103、およびサイクリンDによる陰性の結果から、慢性リンパ球性白血病が示唆される。別の例では、CD138を発現する悪性血漿細胞を、結果として調節異常な形で増殖させ、かつ、クローン増殖させるB細胞新生物により、多発性骨髄腫が引き起こされる。骨髄または血液中においてCD138+血漿細胞を検出および測定することを用いて、多発性骨髄腫について診断し、これに対する治療を決定することができる。
【0112】
本発明の方法はまた、悪性細胞が、従来の形態学的技法による検出限界未満のレベルで存在する、寛解後の患者における、悪性細胞の存在を伴う微小残存病変(MRD)を診断するのにも用いることができる。これらの悪性細胞は、疾患の再発を引き起こしうる。本発明の方法により、MRDに対する高感度の(少なくとも、細胞10−3個の検出限界)特異的診断が下される。例えば、脳脊髄液中において、CD10、TdT、またはCD34を発現する細胞が検出されることから、MRDが示唆され;骨髄細胞内におけるTdT、細胞質性CD3、細胞質性CD1a、または細胞質性CD4/CD8の発現からも、MRDが示唆される。
【0113】
本発明の方法は、CD4、CD8、およびCD38、またはこれらの組合せを発現する細胞を分取し、検出し、かつ/または数え上げることにより、HIV感染の診断および予後診断を下すのに用いることができる。本発明の方法はまた、免疫不全疾患、アレルギー性障害、および白血球粘着不全症を診断し、かつこれらについての予後診断情報を提供するのにも用いることができる。
【0114】
本発明の方法は、多剤耐性についての細胞表面マーカーおよび細胞内マーカーの発現を解析および測定することにより、多剤耐性をモニタリングするのに用いることができる。本発明の方法を用いて、癌化学療法の有効性をモニタリングすることができる。さらに、抗体(例えば、CD20、CD33、CD25、CD45、またはCD52に特異的な抗体)を用いて癌を治療する場合は、本発明の方法を用いて、該抗体の結合を検証し、かつ、腫瘍細胞根絶効果をモニタリングすることができる。
【0115】
本発明の方法はまた、網状赤血球の数え上げ、網状赤血球成熟指数の決定、未成熟網状赤血球画分の決定、血小板機能の解析、血小板表面受容体の定量化および分布解析、血小板に会合するIgGの定量化アッセイ、網状血小板アッセイ、フィブリノーゲン受容体の占有に関する研究、活性化血小板表面マーカーの検出、細胞質中におけるカルシウムイオンの測定、血小板微粒子アッセイ、細胞機能の解析、抗ホスホチロシン抗体を用いるチロシンリン酸化アッセイ、Ca2+指標を用いるカルシウムフラックス解析、酸化代謝アッセイ、および細胞増殖アッセイにも用いることができる。
【0116】
本発明の方法はまた、生物学的試料、環境試料、または食物試料中における細菌、真菌、寄生虫、およびウイルスを分取、検出、定量化、および解析するのにも用いることができる。微生物が細胞内微生物である場合は、該細胞を透過処理することもでき、溶解させることもできる。微生物が培養可能である必要がないことが有利である。
【0117】
単一のバイオセンサー表面上において2つ以上の細胞型をスクリーニングする方法
本発明以前において、大半の細胞ベースのアッセイが可能としたのは、単一の細胞株内における単一の標的のスクリーニング、または単一の細胞株内における複数の標的もしくはパラメータのスクリーニング(高含量スクリーニング)であった。個々の細胞株に同時にタグ付けすることにより複数の細胞株をアッセイする技法は、Beskoら(Journal of Biomolecular Screening、9巻、3号、173〜185(2004))により説明されている。しかし、この技法は、個々の細胞株が互いから識別されうるように、各個の細胞株を検出可能な形で標識することを必要とする。
【0118】
ハイスループットのスクリーニング群による、標識を使用しない細胞ベースのアッセイを採用する際の1つの障壁は、費用である。複数の標的を同時にスクリーニングすることができれば、1ウェル当たりのスクリーニング費用は、スクリーニングされる標的数で等分される。例えば、3つの標的を同時にスクリーニングする場合、1ウェル当たりのスクリーニング費用は、一度にただ1つの標的をスクリーニングしたと仮定した場合の3分の1である。加えて、初代培養細胞によるハイスループットスクリーニングは、高度に望ましいが、初代培養調製物を単離または購入する費用が法外でありうる。スクリーニングアッセイにおいて、強いアッセイリードアウトをなおも可能とする、より少数の初代培養細胞数/ウェルを用いうるならば、これらの限定的な細胞型により、1ウェル当たりのスクリーニング費用が削減される。
【0119】
本発明は、マイクロプレートの単一のウェルなど、単一のバイオセンサー表面上において、標識をまったく用いない形で、複数の細胞株を同時にスクリーニングし、アッセイし、かつ定量化する方法を提供する。各細胞株を検出可能な形で標識し、スクリーニング/アッセイ活性に従いこれを同定する必要はない。
【0120】
一部の検出デバイスによる複数の細胞株のスクリーニングは、複数の細胞株を添加することに由来するシグナル弱化がどの程度まで許容可能であるかにより限定される。例えば、ある検出デバイスを用いる同じウェル内において2つの細胞株をアッセイすると、単一の細胞株をアッセイする場合の半分のシグナルが得られる。また、一部の検出デバイスにより複数の細胞株をスクリーニングすると、個々の細胞型に由来する応答を識別するリードアウトではなく、個々の細胞型を混合したすべてに由来するシグナルの平均からなるリードアウトをもたらすアッセイリードアウトにより交絡も生じる。このシグナル弱化の問題は、BIND(登録商標)SCANNERを用いてシグナルを検出することにより回避される(しかし、1つの容器内において複数の細胞株をスクリーニングする場合はまた、BIND(登録商標)READERを用いても検出することができる;図28〜30を参照されたい)。刺激に応答する個々の細胞を同定およびカウントしうるため、シグナル弱化を懸念することなく、より多くの細胞株を同時にアッセイすることができ、個々の細胞部分集団の応答を測定することができる。
【0121】
本発明の1つの機能的利点は、単一のウェル内における同じ試験試薬に対して、複数の細胞をスクリーニングすることにより、試験試薬の特異性についての試験をアッセイに内蔵させることである。同じ試験試薬が、異なる受容体を発現する複数の細胞株の活性化を阻害することが判明する場合、この試験試薬は、無差別的かつ細胞傷害性である可能性が高い。現在のところ、異なる細胞を含有する複数のウェル内において1つの試験試薬をスクリーニングすることにより、これを行うことができる。本発明により、その使用者は、混合細胞集団(心筋細胞および肝細胞など)に対して、1つの試験試薬をスクリーニングすることが可能となる。1ウェル当たりのスクリーニング費用は、同時にスクリーニングされる標的数により効果的に等分される。
【0122】
本発明の方法を用いて、1つの容器内における2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100以上の細胞型が、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して示す応答を検出しうるが、この場合、細胞は検出可能な標識を含まない。該方法は、2つ以上の細胞型を容器へと適用するステップを含むが、この場合、該容器の内部表面は、比色共鳴反射光バイオセンサー表面または回折格子ベース導波路バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面は、1または複数の特異的結合物質またはリガンドをその表面に固定化させており、かつ、該1または複数の特異的結合物質またはリガンドは、2つ以上の細胞型のうちの1または複数に結合しうる。特異的結合物質またはリガンドに結合しない細胞は、場合によって、洗い流すこともできるが、洗浄ステップは必要でない。2つ以上の細胞型は、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップへと曝露することができる。2つ以上の細胞型が刺激または試験試薬に対して示す応答は、BIND(登録商標)SCANNER(高解像度の比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)により検出することができる(例えば、図6および27を参照されたい)。バイオセンサー表面上における各個の細胞に由来するシグナルを検討することにより、各細胞型が試験試薬、刺激、またはインキュベーションに対して示す応答を、個別に検出および解析することができる。
【0123】
2つ以上の細胞型が刺激または試験試薬に対して示す応答はまた、BIND(登録商標)READER(比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)によっても検出することができる。例えば、エンドセリン受容体発現細胞(ETaR)およびM4ムスカリン受容体発現細胞(M4R)を、飢餓培地中における、CA2細胞マトリックスでコーティングした比色共鳴反射光バイオセンサープレート上に播種した。アンタゴニスト(M4を阻害するアトロピンまたはETaRを阻害するBMS)により、30分間にわたり細胞を前処理した。次いで、10uMカルバコールまたは50nM ET−1により、細胞を処理した。BIND(商標)Reader上で検出された終点応答を、図28に示す。図28Aは、単独で播種されたETaR細胞を示す。図28Bは、単独で播種されたM4R細胞を示す。データは、緩衝液対照を基準とする。4連の平均±SDを示す。ETaR細胞は、ET−1には応答するが、カルバコールには応答しないことから、この応答の特異性が示される。用いられたBMS濃度は、ET−1応答を完全に阻害するのに十分な程度に高濃度ではなかった。M4R細胞は、カルバコールには応答するが、ET−1には応答しないことから、この応答の特異性が示される。アトロピンは、カルバコールに対する応答を完全に阻害した。
【0124】
次いで、ETaR細胞およびM4R細胞を、第2のリガンドにより処理した。例えば、既にカルバコールで処理されたETaR細胞を、今回はET−1で処理した。BIND(商標)Reader上で検出された終点応答を、図29に示す。図29Aは、単独で播種されたETaR細胞を示す。図29Bは、単独で播種されたM4R細胞を示す。
【0125】
結果は、カルバコールにより刺激された後であっても、ETaR細胞は、ET−1に応答し、ET−1により刺激された後であっても、M4R細胞はカルバコールに応答することを示す。BMSは、ET−1に対するシグナルを遮断するのにより有効であったが、インキュベーション時間はより長時間であった。第1の添加に由来するカルバコールに対するシグナルの一部が、ET−1により刺激したときのM4細胞においても消えずに現れる。同様に、第1の添加に由来するET−1に対するシグナルの一部が、カルバコールにより刺激した後のET−1細胞においても消えずに現れる。したがって、先行するシグナルを完全に飽和させた後で、第2の添加を行うことが有利である。
【0126】
図30は、図30A〜Bに表示される通り、アトロピン、BMS、カルバコール、およびET−1を様々な形で添加した同じウェル内において培養したETaR細胞およびM4R細胞の両方を示す。図は、2つの細胞型を同じウェル内に播種することができ、各細胞型に対する個々の活性化を個別に検出しうることを示す。したがって、例えば、天然組織に由来する細胞の複雑な混合物を、例えば、リガンドに対する応答または受容体の発現により差別化することができる。したがって、細胞混合物中における特定の細胞型の存在または不存在を決定することができる。
【0127】
リガンド、刺激、またはインキュベーションに対する示差的応答
細胞混合集団内における各細胞型は、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して異なる応答を示す可能性があり、したがって、これに対して異なるPWVリーディングを示す可能性がある。異なる細胞型は、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して細胞が示す応答を規定する、ピクセル全体を平均したPWVシグナルに基づき、互いと異なるPWVシグナルをバイオセンサー上に表示しうる。すなわち、バイオセンサー上における1つの細胞型は、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して強く反応することが可能であり、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して弱く反応し、低値のPWVを表示する、バイオセンサー上における第2の細胞型より高値のPWVを表示しうる。BIND(登録商標)SCANNERまたはBIND(登録商標)READERによる収集を実施して、バイオセンサー表面のPWV画像を得る。初期の細胞結合画像を解析して、個々の細胞を見出し、各細胞について形態学的測定を行い、細胞を2つ以上の部分集団へと分類する。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドの変化を除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される各細胞について、形態計量値を計算する。細胞のサイズに基づき、混合集団内における細胞型を類別しうるアッセイでは、各細胞の表面積を決定する。形状ベースの特徴に基づき細胞型を差別化しうるアッセイでは、円形性などの計量値が得られる。アッセイにとって重要な1または複数の形態計量値を用いて、1つの集団が所望の形態特徴を呈する部分集団へと、細胞を分類する。各ウェルについて、指定された形態部分集団により細胞を標識する二分法の画像(「マスク」)を、データ解析ワークフローへと繰り越す。試験試薬、刺激、またはインキュベーションを混合細胞集団へと添加した/混合細胞集団上で実施したときにその後収集される画像へと、このマスクを適用する;このマスクにより、試験試薬、刺激、またはインキュベーションに対して細胞が示す応答を、形態部分集団内におけるこれらの細胞だけから定量化することが可能となる。
【0128】
第2のリガンドまたは刺激に対する示差的応答
混合集団内における対象の細胞はまた、それらが第2のリガンドに対して示す応答に基づいても差別化することができる。容器内における異なる細胞集団は、試験試薬または刺激に対して示差的な形で応答することが可能であり、これらの部分集団を同定するための特徴として用いうるPWVシフトをもたらす。例えば、初代培養調製物中において、ニューロンが、疼痛刺激であるカプサイシンに対して示す応答を測定することが対象となりうるであろう。細胞調製物中では、それらのすべてがカプサイシンに応答する複数の細胞型(ニューロン、希突起膠細胞、星状細胞)が存在しうるであろうが、神経細胞における応答を測定することを対象とする。容器内の細胞のうち、ニューロンだけが、神経成長因子(NGF)に応答する(PWVシフトを示す)。したがって、容器内におけるすべての細胞について、カプサイシンに対するPWV応答の差分を測定し、その後、NGFを伴う第2の刺激により、容器内におけるどの細胞がニューロンであるかを決定することができる。
【0129】
細胞混合集団が、既知の第2のリガンドまたは試験試薬と組み合わせた第1のリガンドまたは試験試薬に対して示す応答を測定するには、BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して、培養物に由来する細胞が、バイオセンサー表面に結合しているマイクロプレートウェルのPWV画像を得る。これらの細胞結合画像を解析して、すべての個々の細胞をセグメント化する。BIND(登録商標)SCANNERによる収集は、バイオセンサーマイクロプレート内に1ウェル当たり1つずつのリガンドライブラリーを添加した後で実施する。この段階では、対象の細胞部分集団が第1のリガンドに応答したかどうかが不明である。次いで、対象の細胞型を特異的に刺激することが知られている第2のリガンドを投与し、最終的なBIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して解析する。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドのばらつきを除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される細胞規定マスクを用いて、第2のリガンドを添加した後に得られるBIND(登録商標)SCANNER画像内における細胞を処理する。各細胞について、そのPWVが第2のリガンドに対して示す応答を計算する。細胞を部分集団へと分類する。第2のリガンドに対して最大の応答を示す細胞の部分集団を保持する。各ウェルについて、二分法マスクにより、第2のリガンドに基づき差別化された細胞の部分集団を同定し、次いで、これを、第1のリガンドに由来するデータへと適用する。第2のリガンドの添加に由来するマスクにより、第1のリガンドに対して細胞が示す応答を、対象の部分集団内の細胞だけから定量化することが可能となる。
【0130】
結合シグナルに基づく細胞の示差的応答
細胞は、それらの結合シグナルに基づき差別化することができる。バイオセンサー表面に結合する(attachまたはbind to)とき、細胞は、結合シグナル、すなわち、それらが結合するピクセルにおけるPWVの増大を表示する。異なる細胞型は、細胞結合シグナルを規定するピクセル全体で平均したシグナル強度に基づき、互いと異なるPWV結合シグナルをバイオセンサー上に表示しうる。すなわち、バイオセンサー上における1つの細胞型は、該バイオセンサーに強く結合することが可能であり、該バイオセンサーに弱く結合し、低値のPWVを表示し、その結果、より低度の細胞結合シグナルを表示する、バイオセンサー上における第2の細胞型より高値のPWVを表示し、その結果、より高度の細胞結合シグナルを表示しうる。BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して、培養物に由来する細胞が結合しているバイオセンサー表面のPWV画像を得る。以下で説明する通り、これらの細胞結合画像を解析して、個々の細胞を見出し、各細胞の結合シグナルの強度を決定し、細胞を2つ以上の部分集団へと分類する。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドの変化を除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される各細胞について、その平均PWV値を計算する。PWV値は、細胞の結合強度(バイオセンサー表面に結合した細胞に由来する集塊の量)に比例する。1つの集団が所望の形態特徴を呈する部分集団へと、細胞を分類する。各ウェルについて、指定された細胞結合部分集団により細胞を標識する二分法の画像(「マスク」)を、データ解析ワークフローへと繰り越す。試験試薬または刺激をウェル中の混合細胞集団へと添加したときにその後収集される画像へと、このマスクを適用する;このマスクにより、試験試薬または刺激に対して細胞が示す応答を、細胞結合部分集団内におけるウェル中のこれらの細胞だけから定量化することが可能となる。
【0131】
異なる細胞型は、あらかじめ規定されたPWV閾値を超える隣接するピクセルにより規定される細胞結合シグナルの表面積に基づき、互いと異なるPWV結合シグナルをバイオセンサー上に表示しうる。すなわち、バイオセンサー上における1つの細胞型は、各細胞が、該バイオセンサー上における第2の細胞型より著明に大きいかまたは小さい、平均バイオセンサー表面積を覆うように、該バイオセンサーに結合しうる。異なる細胞型はまた、あらかじめ規定されたPWV閾値を超える隣接するピクセルにより規定される細胞結合シグナルの全体的形状に基づき、互いと異なるPWV結合シグナルをバイオセンサー上に表示する場合もある。例えば、光学バイオセンサーに結合し、表面積が同様である結合シグナルをもたらす2つの細胞型であれば、錐形対矩形という細胞形態に基づき、さらに互いから識別することがなおも可能となるであろう。BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して、バイオセンサー表面のPWV画像を得る。これらの細胞結合画像を解析して、個々の細胞を見出し、各細胞について形態学的測定を行い、細胞を2つ以上の部分集団へと分類する。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドの変化を除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される各細胞について、形態計量値を計算する。細胞のサイズに基づき、混合集団内における細胞型を類別しうるアッセイでは、各細胞の表面積を決定する。形状ベースの特徴に基づき細胞型を差別化しうるアッセイでは、円形性などの計量値が得られる。アッセイにとって重要な1または複数の形態計量値を用いて、1つの集団が所望の形態特徴を呈する部分集団へと、細胞を分類する。各ウェルについて、指定された形態部分集団により細胞を標識する二分法の画像(「マスク」)を、データ解析ワークフローへと繰り越す。試験試薬または刺激を混合細胞集団へと添加したときにその後収集される画像へと、このマスクを適用する;このマスクにより、試験試薬または刺激に対して細胞が示す応答を、形態部分集団内におけるこれらの細胞だけから定量化することが可能となる。
【0132】
異なる細胞型は、それらがセンサー表面に結合するときに、それらがある時間にわたって示す反応に基づき、互いと異なるPWV結合シグナルをバイオセンサー上に表示しうる。例えば、異種混合物中における、バイオセンサーに迅速に(例えば、細胞を添加した後の最初の20分間以内に)結合する細胞集団により第1の細胞型を規定しうるのに対し、第2の細胞型は、より緩徐な結合シグナル(例えば、細胞を添加した1時間近く後に飽和する)を表示しうる。したがって、それらがある時間にわたって示す応答に基づき、混合集団内における対象の集団を差別化することができる。BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して、培養物に由来する細胞が結合しているバイオセンサー表面のPWV画像を得る。これらの細胞結合画像を解析して、すべての個々の細胞をセグメント化する。試験試薬または刺激をバイオセンサーへと添加した後で、BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施し、このとき、ある時間にわたり繰り返しマイクロプレートを読み取る。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドの変化を除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される細胞規定マスクを用いて、リガンドを添加した後で得られるBIND(登録商標)SCANNER画像内の細胞を処理する。各細胞型について、BIND(登録商標)SCANNERによる経時画像の各々においてそれが示すPWV応答を測定し、該細胞についての経時プロファイルを生成させる。最大応答までの時間、ならびに応答が変化する範囲(最大値−最小値)など、各時間経過を特徴づける計量値を得る。1つの集団が所望の形態特徴を呈する部分集団へと、細胞を分類する。各ウェルについて、指定された経時プロファイル部分集団により細胞を標識する二分法の画像(「マスク」)を用いて、指定された部分集団内に存在するウェル内の細胞だけから、試験試薬または刺激に対して細胞が示す応答を定量化する。
【0133】
ある時間にわたる示差的な応答動態
容器内における異なる細胞集団は、具体的な刺激に対して、ある時間にわたる応答動態に基づき、他の細胞と識別可能なPWV応答の差分を表示しうる。例えば、ニューロンがカプサイシンに対して示す応答は、急速な正のPWVシフトがプラトー状態を保つことを特徴としうるが、星状細胞および希突起膠細胞が同じ刺激に対して示す応答は、正の一過性PWVシフトが急速にベースラインへと戻ることを特徴としうる。ある時間にわたる応答動態の任意の変化を用いて、バイオセンサー表面上における異なる細胞型を差別化するか、または細胞型が試験試薬、刺激、もしくはインキュベーションに対して示す応答が既知である場合、細胞表面上において細胞型を同定することができる。
【0134】
したがって、本発明は、1つの容器内における2つ以上の細胞型が、刺激または試験試薬に対して示す、示差的応答を検出する方法であって、該2つ以上の細胞型が検出可能な標識を含まない方法を提供する。該方法は、該2つ以上の細胞型を、該1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させており、かつ、該1または複数の特異的結合物質が、該2つ以上の細胞型のうちの1または複数に結合しうる。該2つ以上の細胞型を、該1または複数の特異的結合物質に結合させ、該2つ以上の細胞型の該示差的応答を検出する。該示差的応答は、例えば、該2つ以上の細胞型による該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる時点での結合でありえ;該1もしくは複数の特異的結合物質に対して該2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態でありえ;該2つ以上の細胞型による該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる強度の結合でありうる。該方法は、該2つ以上の細胞型を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するステップと;該2つ以上の細胞型が示す、該示差的応答を検出するステップとをさらに含みうる。該示差的応答は、該2つ以上の細胞型による該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる強度の応答の場合もあり;1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に応答して該2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞形態の場合もあり;該2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる細胞応答の場合もあり;該2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態の場合もある。
【0135】
該方法は、該2つ以上の細胞型を、第1の試験試薬または第1の刺激へと曝露するステップと;該2つ以上の細胞型が該第1の試験試薬または第1の刺激に対して示す応答を検出するステップとをさらに含みうる。次いで、該2つ以上の細胞型を、第2の試験試薬または第2の刺激へと曝露するが、この場合、該2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つが該第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答が知られている。代替的には、該細胞型のうちの1つが該第1の試験試薬に対して示す応答が知られており、該第2の試験試薬に対する応答が知られていない。該2つ以上の細胞型が該第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答を検出する。該第2の試験試薬または第2の刺激に対する応答が知られている該2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つを同定し、該2つ以上の細胞型の該示差的応答を検出する。該バイオセンサー表面上に存在する、該2つ以上の細胞型のうちの1または複数の細胞により、該1または複数の試験試薬または刺激が発現されうる。
【0136】
本発明はまた、細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、該細胞混合集団内における該細胞が検出可能な標識を含まない方法も提供する。該方法は、該細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させている。該細胞混合集団を、該1または複数の特異的結合物質に結合させるが、この場合、該第1の細胞型が、該1または複数の特異的結合物質に結合するときに、該細胞混合集団の他の細胞と示差的な応答を示す。該細胞混合集団の示差的応答を検出するが、この場合、該第1の細胞型が、それらの示差的応答により検出される。該細胞混合集団内における該第1の細胞型の百分率を決定することができる。
【0137】
本発明はまた、細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、該細胞混合集団内における細胞のいずれもが検出可能な標識を含まない方法も提供する。該方法は、該細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させている。該細胞混合集団を、該1または複数の特異的結合物質に結合させる。該細胞混合集団を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するが、この場合、該細胞混合集団内における該第1の細胞型が、他の細胞と比較して、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示差的応答を示す。該第1の細胞型が、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す示差的応答を検出する。該示差的応答が検出される場合、該第1の細胞型が、該細胞混合集団内に存在する。該該細胞混合集団内における第1の細胞型の百分率を決定することができる。該バイオセンサー表面上に存在する、該細胞混合集団のうちの1または複数の細胞により、該1または複数の試験試薬または刺激が発現されうる。
【0138】
これらの方法は、現実世界への多くの適用において有用でありうる。例えば、天然組織に由来する細胞の複雑な混合物、または任意の混合細胞集団をアッセイするとき、本発明の方法によりこれを完遂することができる。混合集団内における個々の細胞型集団は、リガンド、細胞傷害作用物質、または他の任意の刺激に対してそれらが示す応答により差別化することができ、次いで、該混合物中における該細胞型または該標的型の存在または不存在を決定することができる。これらの方法は、例えば、健康組織が応答しない場合に、刺激に対してそれらが示す応答により癌細胞を同定する;非幹細胞が応答しない場合に、刺激に対してそれらが示す応答により、腫瘍中における癌幹細胞を同定する;血液試料および/または血清試料中における特定種類の循環細胞の存在を検出する;特定の細胞バイオマーカーまたは細胞タンパク質の存在または不存在を決定するのに用いることができる。
【0139】
本発明の方法は、細胞混合集団内における各細胞型の量を定量化することを可能とする。これらの方法は、例えば、健康組織が応答しない場合に、刺激に対してそれらが示す応答により、混合集団内における癌細胞の比率を同定する;非幹細胞が応答しない場合に、刺激に対してそれらが示す応答により、腫瘍中における癌幹細胞の比率を同定する;幹細胞集団のうちのどのくらいの比率が、中間的な前駆細胞へと分化したかを同定する;最終分化した細胞のうちのどのくらいの集団が、多能性幹細胞集団などの幹細胞様集団へと再度脱分化したかを同定する;血液試料および/または血清試料中における特定種類の循環細胞の存在を検出する;単離された細胞集団の純度を決定する;ならびに特定の細胞バイオマーカーまたは細胞タンパク質の存在または不在を決定するのに用いることができる。
【0140】
本発明の方法を用いて、細胞間における相互作用を決定することができる。近傍にある細胞型に影響を及ぼす物質を生成させる細胞の混合物を、例えば、生成活性を消滅させる化合物、または生成される物質に対する応答を確実に破壊する化合物に曝露することができる。例えば、in vivo様の細胞系が、被験薬物である化合物の効果を複雑な形で解析するのに必要とされる後期段階の前臨床試験においてならば、これらの方法を用いうるであろう。例えば、シュワン細胞などある細胞型の存在下では、ヒト皮質ニューロンが、ネットワーク構造またはアクソンバンドルを形成するように促進される。この促進は、シュワン細胞が作製し、それらの周囲の環境へと放出する物質に主によるものである。加えて、近傍の細胞が生成させる化学物質により促進される癌の転移も検出することができる。
【0141】
本発明の方法を用いて、混合集団内における所与の細胞型の存在または不存在を決定しうるが、加えて、混合集団において異なる細胞型が知られているか、またはこれらを識別することができれば、該集団内における各細胞型が、外部の刺激に対して示す選択性または感受性を決定することもできるであろう。潜在的な適用には、望ましくない細胞(癌細胞、感染細胞など)、特異的細胞、健康細胞、正常細胞、活性化細胞、形質転換細胞、または不健康細胞を含有する集団内における細胞が含まれるがこれらに限定されない集団の画分を選択的に死滅させるか、または他の形でこれらに影響を及ぼす作用物質を同定することが含まれる。
【0142】
本発明の方法を用いて、試料試薬および試料細胞株を高度に並行的な形で調べることができる、例えば、複数の細胞株に対して複数のアンタゴニスト/アゴニストを同時に調べることができる。アンタゴニストの混合物をバイオセンサーウェルへと添加することにより、複数のアンタゴニストを並行的に調べることができる。陽性のヒットを示す任意のウェルを、第2のステップにおいて、すなわち、個々の細胞株を、混合物に由来する個々の化合物に対して調べることにより、デコンボリュートすることができる。同様に、複数のアゴニストを調べれば、所与の受容体に対して新規のアゴニストを発見することもできるであろうし、オーファン受容体のリガンドを見出すこともできるであろう。
【0143】
幹細胞および他の細胞の解析
幹細胞解析を含めた細胞解析の1つのモードでは、BINDマイクロプレートバイオセンサーと併せ、BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERを用いて、標識を伴わない検出を具体化する。この方法では、マイクロプレートバイオセンサーを、細胞外マトリックス物質または他の特異的結合物質でコーティングし、その後、幹細胞とインキュベートする。幹細胞を、細胞外マトリックスまたは特異的結合物質に付着させ、試験化合物または刺激を添加する。BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERを用いて、形態および付着の変化をモニタリングする。場合によっては、単一細胞の解析が可能な、標識を用いない高解像度の検出装置であるBIND(登録商標)SCANNERを用いることが好ましいことがある。幹細胞集団は、それらの性質により、細胞の同種集団ではない。さらに、幹細胞集団は、均一な形では分化しない可能性がある。したがって、BIND(登録商標)SCANNERにより、これらの細胞混合集団を測定および識別することができる。
【0144】
幹細胞などの細胞は、本発明のバイオセンサーに結合し、増殖することが可能である。バイオセンサーへの細胞の結合は、リアルタイムでモニタリングすることができる。本発明の方法を用いて、単一の細胞または細胞集団の形態変化を検出することができる。例えば、走査電子顕微鏡写真により、ATPが、ラットP2X7受容体を発現するHEK細胞に対して及ぼす効果が裏付けられる。対照細胞が、粗い表面、ならびに微細な糸状仮足およびシート様の葉状仮足の両方を伴うHEK細胞の典型的な形態を示すのに対し、2分間にわたりATPへと曝露された細胞は、滑らかな表面、ならびに多数の大型の(1μm)ブレブおよび小型の(0.5μm)微小胞を示す。本発明の方法により、標識または顕微鏡写真を用いることなく、これらおよび他の形態変化を検出することができる。
【0145】
細胞は各々、それらが結合しているかまたはその上に置かれているバイオセンサー表面へと添加されたリガンドに対して特徴的な応答を示す。図1は、比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレート上における、ムスカリンリガンド、P2Yリガンド、およびベータ−アレスチンリガンドに対するSH−SY5Y細胞の特徴的応答を示す。各細胞型は、各種類のリガンドに対して特徴的な応答を示すので、細胞混合集団を併せてアッセイすることができる。例えば、異なる細胞型または異なる分化段階にある細胞(またはこれらの組合せ)を、本発明のバイオセンサー表面(例えば、マイクロタイターウェル)へと添加することができる。リガンドをバイオセンサー表面へと添加することができ、細胞がリガンドに対して示す反応を検出する。細胞がリガンドに対して示す応答に基づき、ある細胞の存在または不存在を決定することができる。加えて、集団内における反応細胞/非反応細胞の比率も、決定することができる。すなわち、細胞集団が2つ以上の細胞型(例えば、リガンドに反応する癌性細胞、ならびにリガンドに反応しない非癌性細胞)を含有する場合は、ウェル内における各細胞がリガンドに対して示す反応を決定することにより、非癌性細胞に対する癌性細胞の比率を決定することができる。
【0146】
場合によって、幹細胞または初代細胞などの細胞は、バイオセンサー表面上にどのような細胞外マトリックス成分が存在しているかに応じて、リガンドに対する反応を変化させる。この優先性を、各細胞について決定することができる。図2は、細胞が、PBS/オボアルブミン、フィブロネクチン、コラーゲン、またはラミニンを含む比色共鳴反射光バイオセンサー上にある場合の、3つのリガンド:アセチルコリン、カルバコール、およびピロカルピンに対するmP−M5細胞およびmP−M4細胞の反応を示す。mP−M5細胞およびmP−M4細胞は、それらが、フィブロネクチンまたはコラーゲンを含むバイオセンサー上にある場合に、リガンドに対する最良の反応を示す。図7は、オボアルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、またはコラーゲンを含む比色共鳴反射光バイオセンサーに対するラットMSC細胞の結合を示す。MSC細胞は、他の表面より、コラーゲンを含むバイオセンサーに良好に結合する。細胞を調べて、バイオセンサーに結合させるのに最良のリガンド/ECMコーティングを決定することができる。
【0147】
幹細胞の研究では、1,000個未満の細胞集団をアッセイで用いることが多い。本発明の方法を用いると、1,000個未満の細胞集団を容易にアッセイすることができる。本発明の方法は、マイクロ流体チャネルまたはマイクロタイターウェルなど、単一のバイオセンサー表面上において、約1,000、750、500、100、50、10、または5個未満の細胞をアッセイするのに用いることができる。さらに、本発明の方法を用いると、単一の細胞をアッセイすることもできる。
【0148】
図3Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーに結合しているM5細胞が発生させるシグナルを示す。BIND(登録商標)SCANNERは、結合シグナルに基づき細胞の位置を同定し、細胞が位置する地点に限り、刺激に対する応答を測定する。空白の空間は、応答の測定には考慮されず、この結果、感度の上昇が得られる。384ウェルディッシュ内に細胞約100〜150個までの強い用量−応答プロファイルを得ることができる。図3Bは、細胞がバイオセンサーに結合した30分後において走査が完了したことを示す。細胞の結合に由来するシグナルを、ゼロとした。したがって、結合後、細胞は、他の形態変化を示していない。図4Aが、細胞の位相差画像を、細胞の上側(細胞が、比色共鳴反射光バイオセンサーに結合する側と反対側)から示すのに対し、図4Bは、同じ細胞の結合シグナルを、細胞の下側(細胞がバイオセンサーに結合する側)から示す。
【0149】
図5Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーに対するM5細胞の結合応答を示す。図5Bは、カルバコールの添加に対するM5細胞の応答を示す。シグナルは、結合シグナルをベースラインとした。したがって、すべての応答は、カルバコールの添加によるものであり、結合反応によるものではない。カルバコールを添加しなければ、細胞応答は検出されない。図5の右側パネルは、各細胞が発生させるシグナルが均一ではないことを示す。すなわち、カルバコールに応答して細胞が移動するか、または形態を変化させつつある、細胞縁辺の周囲により多くのシグナルが見られる。
【0150】
図6は、比色共鳴反射光バイオセンサーへと添加されたM4細胞およびRBL親細胞混合集団を示す。M4細胞は、カルバコールに対して、RBL細胞より多くの受容体を有する。次いで、10μMのカルバコールを細胞に添加した。中央のパネルは、細胞にカルバコールを添加した30分後において、RBL細胞に対するM4細胞の比が3:1である場合を示す。右側のパネルは、細胞にカルバコールを添加した30分後において、RBL細胞に対するM4細胞の比が1:3である場合を示す。M4細胞がRBL細胞より多く存在し、各M4細胞がカルバコールに対してより多くの受容体を有するため、図6の中央のパネルは、右側のパネルより多くのシグナルを示す。
【0151】
RBL細胞と、M5/RBL細胞とを1:1の比で混合し、比色共鳴反射光バイオセンサーウェルに播種した。細胞をバイオセンサーに結合させ、BIND(登録商標)SCANNER上で結合反応を検出した。結果を、図27Aおよび図27Bに示す。バイオセンサー表面にアセチルコリンを添加した。アセチルコリンに反応したのは、M5/RBL細胞だけであった。アセチルコリンに対する細胞の反応を、図27Cおよび図27Dに示す。RBL細胞+M5/RBL細胞の1:1混合集団のうち、約50%が、アセチルコリンに応答した。応答細胞を、非応答集団とは個別に、定量的応答(例えば、さらなる試験試薬または刺激に対する応答)についてゲーティングおよび解析することができる。したがって、それらがリガンドに対して示す応答が既知である場合は、バイオセンサー上における異なる細胞型の存在を検出することができる。
【0152】
図8は、細胞を比色共鳴反射光バイオセンサーへと添加した直後におけるラットMSC細胞(図8A)、ならびに16時間後の該バイオセンサー上における該細胞(図8B)を示す。16時間後のバイオセンサー上では、細胞が増殖している。図9は、比色共鳴反射光バイオセンサー表面上、30時間にわたるラットMSC細胞の移動を示す。左側の矢印(暗色のスポットを指し示す)が、細胞がバイオセンサー表面に結合した直後に細胞が存在した地点を示すのに対し、右側の矢印(明色のスポットを指し示す)は、バイオセンサー表面に対する結合の30時間後において細胞が存在した地点を示す。
【0153】
SDF−1αは、GPCRであるCXCR4に結合し、これを活性化する。幹細胞は、SDF−1αの放出を増大させる組織へと移動する。損傷した組織が放出するSDF−1αレベルは高く、その結果、傷害部位への間葉幹細胞の遊走が増大する。走化性因子は、受容体が活性化すると、細胞のアクチン細胞骨格の著明な変化を誘導する。これらの変化は、ケモカインが増大する場合の指向性移動として顕在化する。SDF−1αは、間葉幹細胞および骨芽前駆細胞の遊走を誘導する。CXCR4が過剰発現すると、MSCが、血管傷害部位へと遊走およびホーミングすることが結果として促進される。図10は、比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレートおよびBIND(登録商標)READERを用いる、異なる濃度のSDF−1αに対するTHP−1細胞(図10A)およびCEM細胞(図10B)の応答を示す。BIND(登録商標)READERにより測定される通り、SDF−1αは、複数の細胞型における迅速かつ強い応答を誘導する。図11Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレート上における、SDF−1αに対するMSC細胞の応答を示す。図11Bは、SDF−1αおよび阻害剤(CXCR4遮断抗体)に対するMSC細胞(384ウェルのマイクロプレート内に7,000個の細胞)の応答を示す。
【0154】
ラットMSC細胞を、フィブロネクチンでコーティングしたバイオセンサーへと添加した。3時間後および16時間後の比色共鳴反射光バイオセンサー上において、細胞の結合を検出した。図12、左側のパネルを参照されたい。結合シグナルをゼロとし、細胞を、SDF−1αで刺激するか、またはSDF−1αで刺激せずに置いた。図12、右側パネルを参照されたい。図12の右側パネルでは、細胞の移動を見ることができる。暗色のスポットは、検出する前に細胞が存在した地点であり、明色のスポットは、反応を検出したときに細胞が存在した地点である。細胞に刺激を添加しなかった場合も、細胞の移動をある程度は見ることができるが、細胞にSDF−1αを添加した場合は、バイオセンサー上において細胞が増殖するのに伴い細胞が移動することが見られる。図13A〜Bは、図12の右側パネルの拡大図を示す。移動および/または細胞接着が生じる細胞縁辺部では、シグナルの増強を見ることができる。微速度撮影により裏付けられる通り、シグナルの増強は、細胞がバイオセンサー中を移動するときの該細胞の前縁部と相関する。これは、細胞の細胞外マトリックス−インテグリン間係合と符合する。図14は、BIND(登録商標)READERによるリーディング(図14A)、ならびにBIND(登録商標)SCANNERによるリーディング(図14B)を示す。シグナル対ノイズ比が約7〜10倍増大したことが観察される。
【0155】
幹細胞の分化は、細胞接着に依存する(Stem Cells 25:3005(2007);Cardiovascular Res.47:645(2000)を参照されたい)。接着をモニタリングすることにより、分化を検出することができる。標識を用いずに幹細胞を画像化する方法は、細胞の接着、移動、および分化を観察するための固有の機会を提供する。幹細胞の異なる反応(例えば、異なる分化、走化性、または接着)は、本発明の1つのバイオセンサー表面上に生じる、異なるナノ構造領域により誘導されうる。米国仮出願第12/218,096号(PCT/US09/03541)は、バイオセンサー表面上において複数種類の回折格子セクターを伴うバイオセンサーについて説明している。すなわち、1つのバイオセンサー表面上では、異なる共鳴値または共鳴周期(PWV1、PVW2、・・・)を呈する、回折格子の2つ以上の異なる空間領域が生じる。本発明の一実施形態では、異なる空間領域が、光によるバイオセンサーの照射に応答して、検査デバイスを読み取る検出装置により解像されうる十分なスペクトルの分離を示す。2つ以上の異なる空間領域を伴うバイオセンサーを用いて、幹細胞または他の細胞の分化、移動、または接着を誘導することができる。次いで、各セクター内において異なるPWVを検出することにより、この分化、移動、または接着を該バイオセンサー上において検出することができる。例えば、固有の共鳴値を有する1つのセクター上では、そのセクターにおけるPWVの増大により呈示される通り、細胞集団が分化しうるが、別のセクター上では、そのセクターにおけるPWVが変化しないことにより呈示される通り、細胞集団が分化しない。
【0156】
加えて、各々が異なる共鳴値を含む2つ以上のセクターを伴うバイオセンサーを用いて、1つの容器内における2つ以上の細胞集団が、1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答も検出することができる。例えば、1つの細胞型を1つのセクター内に配置し、第2の細胞型を、該第1のセクターとは異なる共鳴値を有する第2のセクター内に配置する。各セクターに対するPWVを検出することができ、各細胞型が試験試薬または刺激に対して示す応答を、1つの容器内において決定することができる。
【0157】
また、1つのセクターから第2のセクターへと細胞が移動するときにこれを決定することもできる。例えば、走化性物質を1つのセクター上に配置し、細胞集団を第2のセクター内に配置することができる。各セクターについてPWVを測定することにより、該第2のセクターから、走化性物質を伴うセクターへと細胞が移動するときにこれを検出することができる。該第2のセクター内においてPWVが低下し、かつ、走化性物質を伴うセクターにおいてPWVが上昇することから、該走化性物質セクターへと細胞が移動することが裏付けられる。
【0158】
細胞分化に対する効果について化合物をスクリーニングする方法
本発明の方法を用いて、例えば、間葉幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、および胚性幹細胞などの幹細胞を含めた細胞の分化に対してそれらが及ぼす効果について、化合物をスクリーニングすることができる。幹細胞とは、より専門分化した内臓特異的細胞へと成熟する子孫細胞を生成させる一方で、無際限に自らを更新しうる細胞である。細胞分化とは、専門分化度の低い細胞が、専門分化度の高い細胞型となる過程である。分化は、細胞のサイズ、形態、膜電位、代謝活性、およびシグナルに対する応答性を変化させうる。例えば、試験化合物は、幹細胞による自己更新を維持することも可能であり、分化を促進または高速化する場合もあり、分化を緩徐化するかまたは停止させる場合もあり、多能性細胞を、通常観察される細胞とは異なる細胞へと分化させる場合もある。試験化合物はまた、細胞が脱分化することも促進しうる。脱分化とは、部分的または最終的に分化した細胞が、初期の発生段階へと復帰する場合である。本発明の方法は、細胞の自己更新、分化、および脱分化を行った細胞における、細胞分化生成物の変化(増大、減少、または阻害)を検出することにより、または変化、例えば、形態変化、バイオセンサーに対する細胞結合の変化、応答動態プロファイルの変化、または本明細書で開示される他の変化を検出することにより、直接的または間接的に、細胞の自己更新、分化、および脱分化に対して試験化合物が及ぼす効果を検出しうる。すなわち、本発明の方法を用いて検出される細胞の変化(例えば、形態変化、バイオセンサーに対する細胞結合の変化、応答動態プロファイルの変化、または本明細書で開示される他の変化)を用いて、細胞の自己更新、分化、および脱分化を判定し、かつ、細胞集団または細胞混合集団内における細胞分化の増大、減少、または阻害を決定することができる。
【0159】
間葉幹細胞(MSC)は、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞を含めた複数の細胞型へと分化しうる、自己更新が可能な多能性細胞として、重要な臨床的可能性を保有する。本発明の方法は、光学共鳴検出法を用いて、MSC(および他の細胞)の遊走および分化についてのハイスループットのスクリーニングを可能とする、標識を用いないアッセイを提供する。MSCは、例えば、細胞外マトリックスでコーティングした光学バイオセンサー上において容易に増殖することが可能であり、かつ、ケモカインの液浴適用に対して応答するとき、強く、用量依存的で、高感度の標識を用いない応答を示すことが可能である。MSC−骨芽細胞分化の検出は、センサー表面上においてコラーゲン沈着物またはミネラル沈着物が形成されるときに固有の、標識を用いないシグナルを特徴とする。リアルタイムでのリードアウトは、単一のウェル内における完全な分化表現型を提示し、従来の染色試薬より高感度であり、ハイスループット法で適用して、分化速度または自己更新速度の上昇または低下をモニタリングするための低分子ライブラリーまたはsiRNAライブラリーを含めた化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0160】
ラットMSCは、例えば、脂肪細胞、軟骨細胞、および骨芽細胞へと分化しうる。コラーゲンによりコーティングされたバイオセンサー上では、ラットMSCが、骨芽細胞へと分化するように誘導された。図17および18は、14日目までに、細胞が石灰化し、骨を生成させたことを示す。アリザリンレッド色素を用いて、該細胞が、実際に骨を生成させることを確認した。図18を参照されたい。図18の画像は、前日の状態をベースラインとしたものである。比色共鳴反射光バイオセンサーをBIND(登録商標)SCANNER上に取り付けて、毎日のリーディングを行った。図19Aは、図18の17日目のパネルの拡大図を示す。白色の領域が、骨芽細胞の石灰化である。図19Bは、同じ細胞部分についての位相差顕微鏡写真を示す。位相差顕微鏡写真は、細胞の分化を示さない。したがって、本発明の方法により、標識または色素を用いずに、細胞分化の段階を検出することができる。
【0161】
ラットMSC(Invitrogen製)を、384ウェル比色共鳴反射光バイオセンサーに、細胞100個/ウェルで播種し、骨芽細胞分化培地で処理した。BIND(登録商標)SCANNER上で毎日の画像を収集し、0日目における細胞結合シグナルをベースラインとした。アリザリンレッドでパラレルウェルを染色することにより示される通り、骨様のミネラルがセンサー表面上に沈着するのに応じて、段階的かつ強いPWVシフト(約25nM)が検出された。図20Aを参照されたい。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3β)阻害剤は、MSC−骨芽細胞分化を促進する。図20Bは、GSK3βにより引き起こされた分化の促進が検出されたことを裏付ける。図20Cは、BIND(登録商標)SCANNERが、石灰化を検出するのにアリザリンレッド染色より高感度であることを裏付ける。図20Aに示されるBIND(商標)画像は、単一のウェルに由来し、複数日において画像化された;アリザリンレッドは、終点染色アッセイとして、1ウェル/日を必要とする。したがって、本発明の方法が、同じウェルの細胞を複数日間にわたりアッセイすることを可能とするのに対し、細胞染色法は、複数日間にわたり複数のウェルを用いることを必要とする。
【0162】
別の実験では、384ウェルバイオセンサー上でラットMSCを骨芽細胞へと分化させ、アリザリンレッドで石灰化を毎日染色するか、またはヴァン−ギーソン(Van Gieson)染色でコラーゲンを毎日染色した。562nmのプレートリーダーで染色を定量化した。BIND(商標)バイオセンサー上では、MSCが分化する際に、コラーゲンの形成が石灰化に先行することが示されるが、これは、正常な骨形成と符合する。図21を参照されたい。
【0163】
未分化MSCを伴うセンサーについて走査電子顕微鏡(SEM)解析を行うと、内在する回折格子構造が明示されるのに対し、分化MSCを伴うセンサーは、回折格子を覆い隠す石灰化結節の沈着物層により覆われており、これは、ウェル全体で測定される、拡散性ではあるが強いPWVシフトと符合する。大規模な沈着物クラスターをエネルギー分散型X線(EDS)解析にかけると、カルシウム(Ca)およびリン(P)の存在が示され、骨の沈着と符合する。バイオセンサーの構成要素からは、チタン(Ti)ピーク、酸素(O)ピーク、およびケイ素(Si)ピークが誘導される。
【0164】
別の実験では、1〜19日間にわたり、GSK3β阻害剤を伴うかまたは伴わない骨芽細胞分化培地中において、ラットMSC(Invitrogen製)を培養した。BIND(商標)画像を毎日捕集し、前日の測定値をベースラインとし、これにより、石灰化の速度についての情報をもたらした。アリザリンレッドなどの標準的な染色法では、石灰化速度のデータを収集することは不可能である。図22Aを参照されたい。図22Bは、BIND(登録商標)SCANNER上で測定されたPWVシフトの定量化を示す(±標準偏差;n=12ウェル)。GSK3β阻害剤による分化の速度が異なることは、MSCが骨芽細胞へと分化するときのタイミングおよび速度をGSK3βが制御することを示唆する。
【0165】
幹細胞は、重要な臨床的可能性を保有し、本発明の方法は、光学共鳴検出法を用いて、幹細胞の遊走および分化をハイスループットでスクリーニングすることを可能とする、標識を伴わないアッセイを提供する。完全な分化プロファイルは、単一の培養ウェルから入手可能であり、分化速度を決定することができる。
【0166】
本発明の一実施形態は、候補化合物を、それが、細胞分化を調節する能力についてスクリーニングする方法を提供する。1または複数の細胞型(同種または異種の細胞集団)を、場合によって、ECMでコーティングしうる比色共鳴反射光バイオセンサー(または回折格子ベース導波路バイオセンサー)の表面へと添加する(ECMを伴うか、または伴わずに)。一実施形態では、異なるECMまたは細胞の結合および分化を支援すると推定される異なる物質を、分化または他の細胞過程(接着、移動など)を強化する物質についてのスクリーンとして、センサー上に添加することができる。該細胞を誘導して分化させることができる。該候補化合物の存在下または不在下における、各細胞集団のピーク波長値(または有効屈折率)を比較することにより、該候補化合物の存在下または不存在下における細胞分化の変化を検出する。該候補化合物の不存在下における細胞分化活性と比べて、該候補化合物の存在下における細胞分化活性が変化することから、該候補化合物が、細胞分化を調節する能力が示唆される。該細胞分化活性の変化は、細胞分化活性の上昇の場合もあり、細胞分化活性の低下の場合もあり、細胞分化活性の阻害の場合もあり、分化した細胞の種類の変化(すなわち、試験化合物が、細胞を、通常は観察されない細胞型へと分化させる)の場合もある。該細胞分化活性の変化は、コラーゲン生成の増大または減少の場合もあり、石灰化結節形成の増大または減少の場合もあり、他の細胞分化生成物の増大または減少の場合もある。該1または複数の細胞型は、間葉幹細胞などの幹細胞でありうる。細胞のサイズ、細胞の形状、細胞接着、細胞の膜電位、細胞の代謝活性、またはシグナルに対する細胞の応答性の変化を検出することにより、細胞分化活性の変化を検出することができる。
【0167】
本発明の別の実施形態は、候補化合物を、それが、細胞分化を調節する能力についてスクリーニングする方法を提供する。1または複数の細胞型を、場合によって、ECMでコーティングしうる比色共鳴反射光バイオセンサー(または回折格子ベース導波路バイオセンサー)の表面へと添加する(ECMを伴うか、または伴わずに)。該1または複数の細胞型を誘導して分化させる。該候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値(または有効屈折率)を比較することにより、該候補化合物の存在下または不存在下における1または複数の細胞分化生成物の生成を検出する。該候補化合物の不存在下における1または複数の細胞分化生成物と比べて、該候補化合物の存在下における1または複数の細胞分化生成物が変化することから、該候補化合物が、細胞分化を調節する能力が示唆される。
【0168】
遺伝子による細胞分化の調節を検出する方法
GSK3βまたはアデノシンキナーゼ(ADK)を阻害すると、MCS−骨芽細胞分化が加速化される。フォルスコリン処理によりcAMPを活性化させると、骨芽細胞分化が緩徐化される。ヒトMSCを、384ウェル比色共鳴反射光バイオセンサープレート上に播種した。骨芽細胞分化カクテルにより、細胞を処理した。PWVを毎日測定した。非処理細胞(Ctrl)および骨芽細胞分化(OS−Diff)細胞による代表的なウェルを、図24に示す。骨芽細胞への分化細胞では、センサー表面上における石灰化沈着物が、9日目に出現し始め、これ以後蓄積を続けた。バイオセンサー表面上における集塊の蓄積は、結果として、極めて大きく、かつ、強い正のPWVシグナルシフトをもたらす。
【0169】
GSK3βまたはADKに特異的なsiRNA分子を、ThermoFisherから購入し、骨芽細胞への分化細胞にトランスフェクトした。GSK3βおよびADKに特異的なsiRNA分子を、分化の直前にヒトMSCにトランスフェクトしたところ、BIND(登録商標)SCANNER上における標識を伴わないアッセイでは、骨芽細胞への分化が加速されることが検出された。図25および26を参照されたい。図25は、12日目における試料ウェルを、複数の処理条件ごとに示す。図26では、図25で示した結果を定量化している。1つの処理条件当たり、6ウェルずつを平均した。ADK siRNA処理の場合、ADK siRNAをトランスフェクトした後、フォルスコリン中において細胞をインキュベートすることによれば、分化表現型の加速化を遮断することができるであろう。ADKは、アデニル酸シクラーゼ−cAMPシグナル伝達経路において、極めて重要な上流酵素である。siRNAトランスフェクションによりADKが下方制御されると、このシグナル伝達経路が阻害され、加速化表現型がもたらされる。しかし、フォルスコリンは、ADKの下流にある同じシグナル伝達経路を活性化し、したがって、フォルスコリン処理は、適正なシグナル伝達を回復し、ADK下方制御効果を遮断する。
【0170】
例えば、阻害性核酸または他の遺伝子調節法により、特定の遺伝子発現調節を検出および評価するのに本発明の方法を用いうることを、これらの実験は裏付ける。阻害性核酸には、例えば、三重鎖形成核酸、piRNA、dsRNA、siRNA、ヘアピンdsRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アプタザイム、およびアンチセンス核酸が含まれる。
【0171】
細胞遊走アッセイ
環境の刺激に応答する細胞遊走は、免疫応答、創傷治癒、および幹細胞ホーミングを含めた、広範にわたる生理学的過程にとって中心的である。場合によっては、過剰な細胞遊走が、炎症性疾患および腫瘍転移を含めた疾患の病態に寄与しうる。細胞遊走の阻害剤のために薬物を発見する努力は、機能的に重要な細胞型における主要なスクリーニングキャンペーンを可能とする、ハイスループットアッセイが欠如することにより妨げられている。本発明は、標識を伴わない光学バイオセンサー法を用いる、走化性についての異なるハイスループットスクリーニングアッセイを提供する。BIND(商標)「タッチダウン」アッセイでは、コラーゲン層を通る細胞の浸潤、ならびにケモカインにより覆われたバイオセンサー表面への細胞浸潤を測定する。BIND(商標)「リフトオフ」アッセイでは、コラーゲンで覆われたセンサー表面から、液浴媒体中に存在するケモカインへの細胞脱離を測定する。いずれのアッセイも、トランスウェルに依存せず、1ウェル当たりに必要とする細胞数が少なく、1536ウェルに適合可能である。
【0172】
「リフトオフ」アッセイは、第1の細胞集団が、1または複数の刺激に対して示す応答を検出する方法を提供する。図15を参照されたい。細胞は、例えば、幹細胞を含め、任意の細胞型でありうる。1または複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは回折格子ベース導波路バイオセンサーの表面に固定化することができる。第1の細胞集団は、1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有する。次いで、第1の細胞集団を、バイオセンサーへと添加することができる。代替的に、第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するが、この場合、該第1の細胞集団は、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有する。第1の細胞集団、ならびに1または複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは回折格子ベース導波路バイオセンサーの表面へと添加する。
【0173】
第1の細胞集団および細胞外マトリックスリガンドが、ゲルまたはゲル様物質により部分的または完全に覆われるように、該ゲルまたはゲル様物質を、バイオセンサーへと添加することができる。
【0174】
ゲルまたはゲル様物質は、例えば、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックス、アルギン酸ゲル、コラーゲンゲル、寒天、アガロースゲル、合成ポリマーハイドロゲル、合成ハイドロゲルマトリックス、ラミニンゲル、ビトロゲン、キトサンゲル、フィブリノーゲンゲル、PuraMatrix(商標)ペプチドハイドロゲル(各種の細胞培養実験用に規定された三次元(3D)のマイクロ環境を創出するのに用いられる合成マトリックス)、またはゼラチンでありうる。ゲルまたはゲル様物質は、場合によって、1または複数のECMリガンド、走化作用物質、増殖因子、特異的結合パートナー、リガンド、またはこれらの組合せを含みうる。
【0175】
代替的には、ゲルまたはゲル様物質の代わりに、第2の細胞集団または人工基底膜を、バイオセンサー表面へと添加することができる。第2の細胞集団、人工基底膜、またはゲルもしくはゲル様物質は、第1の細胞集団がそれを介して遊走する障壁を形成しうる。人工基底膜は、当技術分野においてよく知られている。例えば、Inoueら、J.Biomed.Mater.Res.A.73:158(2005);Guoら、Int.J.Mol.Med.16:395(2005);Sahaら、Ind.J.Exp.Biol.43:1130(2006);Barrosoら、J.Biol.Chem.、283:11714(2008);Okumotoら、J.Hepatol.、43:110(2005)を参照されたい。第2の細胞集団は、例えば、上皮細胞の場合もあり、内皮細胞集団の場合もある。
【0176】
1または複数の刺激を、ゲル、ゲル様物質、第2の細胞集団、または人工基底膜へと添加することができる。1または複数の刺激は、例えば、走化作用物質、リガンド、または刺激を生成させる第3の細胞集団でありうる。
【0177】
第1の細胞集団が、試験試薬または刺激に対して示す応答を検出することができる。第1の細胞集団がバイオセンサー表面から移出すれば、PWVまたは有効屈折率が低下する。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、第1の細胞集団が、1または複数の刺激または試験試薬に対して示す応答を検出することができる。第1の細胞集団が示す応答は、リアルタイムで検出することができる。加えて、第1の細胞集団と比べて、第2の細胞集団が、刺激または試験試薬に対して示す応答も検出することもできる。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、第2の細胞集団が、1または複数の刺激または試験試薬に対して示す応答を検出することができる。第2の細胞集団が示す応答は、リアルタイムで検出することができる。
【0178】
例えば、HT1080細胞が、ウシ胎仔血清(FBS)に応答するのに対し、NIH3T3細胞はこれに応答しない。比色共鳴反射光バイオセンサーを用いるリフトオフアッセイにおいて、ケモカイン中におけるFBSに、HT1080細胞およびNIH3T3細胞を曝露した。バイオセンサーに由来するシグナルが低下することにより裏付けられる通り、HT1080細胞は、バイオセンサーから離脱し、FBSへと移動した。バイオセンサーに由来するシグナルが上昇することにより裏付けられる通り、NIH3T3細胞はFBSに反応しないため、それらはバイオセンサー表面上にとどまり、増殖した。図16は、対照ウェルと比較して、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックスの存在下では、MSC細胞が、バイオセンサーから離脱することを示す。MSC結合シグナルは、MATRIGEL(商標)コーティングにより、容易に同定することができる。MSCは、対照ウェルと比較して、センサーから離脱する傾向を提示する。これは、図16において黒色として表示される負のPWVシフトにより裏付けられる。
【0179】
「タッチダウン」アッセイは、幹細胞または初代細胞など、第1の細胞集団が、1または複数の刺激に対して示す応答を検出する方法を提供する。1または複数の刺激を、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは回折格子ベース導波路バイオセンサーの表面へと添加する。ゲル、ゲル様物質、第2の細胞集団、または人工基底膜を、該バイオセンサー表面へと添加する。第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するが、この場合、該第1の細胞集団は、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有する。第1の細胞集団をバイオセンサーへと添加する。第1の細胞集団が1または複数の刺激に対して示す応答を検出する。第1の細胞集団が、バイオセンサー表面へと移動すれば、PWVまたは有効屈折率が増大する。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、第1の細胞集団が、1または複数の刺激に対して示す応答を検出することができる。第1の細胞集団が示す応答は、リアルタイムで検出することができる。1または複数の刺激は、走化作用物質の場合もあり、刺激を生成させる第3の細胞集団の場合もある。第2の細胞集団は、上皮細胞集団の場合もあり、内皮細胞集団の場合もある。第1の細胞集団は、幹細胞集団でありうる。
【0180】
他のアッセイ
走化作用物質は、「液浴適用」により、細胞へと適用することができる。この方法では、幹細胞または初代細胞などの細胞を、バイオセンサーへと付着させ、その後、走化作用物質で処理する。試験作用物質を添加した後、リアルタイムでBIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERを用いて、細胞応答(無作為的な移動および付着)を検出する。
【0181】
本発明の方法を用いると、幹細胞が、2次元における走化性勾配に対して示す指向性遊走を検出することができる。これらの方法では、幹細胞などの細胞をバイオセンサー、好ましくはマイクロタイターウェルの角部分または側面部分に付着させる。ウェル全体にわたり走化作用物質の濃度勾配を創出するような形で、走化作用物質を、ウェル内の規定領域から添加する。細胞の応答および遊走を、BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNER上において検出する。指向性は、多くの方法で決定することができる;一実施形態では、細胞が1つのセクターから別のセクターへと遊走するのに応じて、変化をモニタリングしうるように、BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERが、マイクロタイターウェル内の個々のセクターを測定することが可能である。別の方法では、バイオセンサーの回折格子が、バイオセンサー上において異なる光周波数と共鳴する、異なる回折格子構造によりパターン化されている。異なる光周波数を用いて異なるセクターをモニタリングすることにより、細胞の移動を、1つのセクターから別のセクターへとモニタリングすることができる。第3の方法では、BIND(登録商標)SCANNERで単一細胞を解析することにより、バイオセンサー上におけるそれらの付着が変化することを介して、個々の細胞の運動を直接的に測定および追跡することができる。
【0182】
幹細胞解析の別の方式は、標識を用いない検出プラットフォームを用いて、幹細胞の分化を検出することに関する。一実施形態では、マイクロプレートバイオセンサーを、細胞外マトリックス物質でコーティングし、その後、幹細胞と共にインキュベートする。幹細胞を細胞外マトリックスに付着させ、幹細胞の分化を促進する培養条件にかける。場合によって、試験作用物質を添加して、それらが幹細胞の分化に対して及ぼす影響を検出することができる。異なる時間間隔でPWVシグナルを検出することにより、BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERを用いて、分化を追跡することができる。逆に、PWVシグナルを用いて、分化を防止することを意図する条件下において、幹細胞の分裂をモニタリングすることができる。別の方式では、分化細胞の結合シグナルが、ECMとの示差的相互作用に基づき、未分化細胞とは定性的/定量的に異なりうる。この差違は、BIND(登録商標)SCANNER上における異なる細胞型の特徴として用いることができる。
【0183】
本発明の別の実施形態では、「生物学的プロファイリング」として説明される過程を介して、分化段階をモニタリングすることが望ましい場合がある。生物学的プロファイリングは、細胞における生物学的応答に基づき、パターン化した応答をモニタリングしうる点で、遺伝子チップを用いる遺伝子プロファイリングと概念的に関連する。しかし、生物学的プロファイリングは、それが、生細胞を用い、リアルタイムでモニタリングしうる点で異なる。この方法では、幹細胞を細胞外マトリックスへと付着させ、幹細胞を結合させる。その後、幹細胞を、分化条件、リガンド、もしくは試験化合物、または環境条件にかける。生物学的プロファイルとは、ある時間(約1、5、10、30、60秒間、約1、2、3、4、5、10、20、40、60分間以上)にわたり記録された、細胞集団の約2、5、10、20、50以上のPWVを捕集することである。生物学的プロファイルは、ある時間にわたるPWVの変化を明らかにし、細胞が、分化条件、試験化合物、または環境条件に対して示す反応の固有の特徴を表わす。例えば、試験化合物が分化を誘導する場合、ある時間にわたり、細胞が分化および増殖するにつれ、PWVは上昇しうる。試験化合物が毒素である場合、ある時間にわたり、細胞が脆弱化して死滅するにつれて、PWVは低下しうる。生物学的プロファイルはまた、2つ以上の異なる濃度の試験化合物またはリガンドについて記録された細胞集団のPWVでもありうる。生物学的プロファイルは、異なる濃度にわたるPWVの変化を明らかにし、試験化合物またはリガンドの固有の特徴を表わす。
【0184】
細胞に周期的にリガンドを添加して、標識を伴わない応答をプローブする;例えば、GPCRリガンドのパネルを添加して、細胞がリガンドに対して示すパターン化した反応をプローブする。細胞が分化し、新規の受容体が上方制御または下方制御されるにつれて、バイオセンサー上では細胞からの異なる応答が現れる。さらに、シグナル伝達経路または細胞接着経路に関与するタンパク質が、分化に応答して変化し、また、リガンドのパネルに応答した変化も引き起こす。したがって、リガンドのパネルは、分化に応答して変化することが知られる特異的受容体の場合もあり、好ましくは、細胞のより無作為的な調節物質の場合もある。したがって、分化した各細胞型は、リガンドに対する、その固有のパターン化した応答、したがって、「生物学的プロファイル」を与える。さらに、光学バイオセンサーは、電気的プローブのアレイを組み込み、電位差に対して応答しうる分化細胞、例えば、筋肉細胞または神経細胞に電気的刺激をもたらすこともできる。光学バイオセンサーは、このような細胞が電気的刺激に対して示す応答を記録する。BIND(登録商標)SCANNERは、応答する細胞と、電気的プローブとの形状的関連性をモニタリングしうる。同様に、バイオセンサーは、流動または圧力を伴う幹細胞アッセイを可能とする流動デバイスの一部を含みうる。
【0185】
感度を上昇させ、バックグラウンドシグナルを低減する方法
本発明を用いて、結合アッセイの感度を上昇させ、結合アッセイのバックグラウンドシグナルを低下させることができる。結合アッセイは、リガンドまたは特異的結合物質を、バイオセンサー表面に固定化するか、または他の形でこれと会合させるステップと、次いで、該表面に結合パートナーを添加するステップとを含みうる。結合パートナーが、リガンドまたは特異的結合物質に対して示す結合を、検出することができる。しかし、場合によっては、結合パートナーが、バイオセンサーに非特異的に結合する可能性がある。すなわち、結合パートナーが、リガンドまたは特異的結合物質に特異的に結合せず、バイオセンサー表面自体に結合してしまう場合である。ブロッキング剤を用いることにより、非特異的結合を低減することができる。しかし、ブロッキング剤は、特異的結合のシグナルも減殺する可能性がある。
【0186】
「特異的に結合する(specifically binds)」、「特異的に結合する(specifically bind)」または「〜に特異的な」とは、結合パートナーが、特定のリガンドまたは特異的結合物質を認識し、これに結合するが、試料中における他の非特異的分子は実質的に認識しないか、またはこれに実質的に結合しないことを意味する。
【0187】
本発明の一実施形態は、バイオセンサー表面に固定化するか、または他の形でこれと会合させた、特異的結合物質またはリガンドを覆う、ゲルまたはゲル様物質の層を付加することにより、結合アッセイの感度を上昇させ、結合アッセイのバックグラウンドを低減する方法を提供する。ゲルまたはゲル様物質は、例えば、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックス、アルギン酸ゲル、コラーゲンゲル、寒天、アガロースゲル、合成ポリマーハイドロゲル、合成ハイドロゲルマトリックス、ラミニンゲル、ビトロゲン、キトサンゲル、フィブリノーゲンゲル、ゼラチン、またはPuraMatrix(商標)ペプチドハイドロゲル(各種の細胞培養実験用に規定された三次元(3D)のマイクロ環境を創出するのに用いられる合成マトリックス)でありうる。ゲルまたはゲル様物質は、場合によって、1または複数のECMリガンド、走化作用物質、増殖因子、特異的結合パートナー、リガンド、またはこれらの組合せを含みうる。
【0188】
「タッチダウン」走化性アッセイでは、ケモカイン(PDGF−BB)を、384ウェルバイオセンサープレートのウェルの中央部だけにスポットした(ウェルの底面全体にわたりスポットする代わりに)。次いで、ウェル表面をMATRIGEL(商標)基底膜マトリックスでコーティングし、間葉幹細胞(MSC)を、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックス表面へと添加した。BIND(登録商標)SCANNERを用いて、ウェルに由来するピーク波長値を検出し、MSCが、ウェル全体に無作為的に遊走する場合と対照的に、PDGF−BBのスポットへと優先的に遊走するかどうかを決定した。細胞結合(正のPWVシフト)シグナルとしての遊走について、細胞をスコア付けした。データからは、実際、MSCがPDGF−BBスポットへと遊走するバイアスが存在することが示唆される。また、パラレルウェルを調製し、PDGF−BBに特異的な中和抗体をウェルに添加して、ケモカインにより誘導される遊走が遮断されうるかどうかも決定した。図23を参照されたい。図23の下列中央のパネルは、抗体がMSCの遊走を遮断することを示すが、また、PDGF−BB抗体が、バイオセンサー上にスポットされたPDGF−BBと相互作用することを表わす、ウェルの中央における正のPWVシフトによる極めて明色の矩形も示す。図23において、「ケモカインX」とはPDGF−BBであり;「ケモカインX nAb」とは、PDGF−BBに特異的な中和抗体である。
【0189】
MATRIGEL(商標)基底膜マトリックスが、バイオセンサー上におけるバックグラウンドシグナルを低減することによりシステムの感度を上昇させ、予測されるより大きな、抗体−抗原間におけるシグナル:バックグラウンド応答を生成させたことは驚くべきことである。したがって、ゲルまたはゲル様物質は、シグナル:バックグラウンドが最適化を要請する生化学的適用に改善をもたらす、他のバイオセンサー界面化学またはデキストラン様のバイオセンサー表面とは異なる、新たな種類のバイオセンサー界面化学をもたらす。
【0190】
したがって、本発明は、バイオセンサー表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質;ならびに該1または複数の特異的結合物質を覆う、ゲルまたはゲル様物質の層を含む、比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面または回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面を提供する。該バイオセンサーの回折格子表面は、液体含有容器の内部表面を形成しうる。該液体含有容器は、マイクロタイタープレートまたはマイクロ流体チャネルでありうる。
【0191】
本発明はまた、比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面上または回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面上において、特異的結合物質と結合パートナーとの反応を検出する改良法も提供する。1または複数の特異的結合物質が、該バイオセンサーの回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合するように、該1または複数の特異的結合物質を、該バイオセンサーの回折格子表面へと適用することができる。1または複数の特異的結合物質は、バイオセンサー表面上における1または複数の異なる地点に沈着させることができる。ゲルまたはゲル様物質を、バイオセンサー表面へと添加する。場合によって、1または複数のECMリガンド、走化作用物質、またはリガンドをバイオセンサー表面へと添加することもできる。該1または複数の特異的結合物質に潜在的に結合する、1または複数の結合パートナーを、該ゲルまたはゲル様表面へと添加することができる。1または複数のピーク波長値または有効屈折率を決定することにより、該1または複数の特異的結合物質と、該1または複数の結合パートナーとの相互作用を検出する。結果は、ゲルまたはゲル様物質を用いずに得られる結果より特異的であり、ゲルまたはゲル様物質を用いずに得られる結果と比較して、非特異的バックグラウンドが低減される。具体的な理論に拘束されることを望まないが、ゲルまたはゲル様物質が、非特異的結合を遮断する機能を果たし、その結果として、より特異的な結果が得られると考えられる。
【0192】
本発明の一実施形態は、1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、ならびにゲルまたはゲル様物質の1または複数の容器を含むキットを提供する。該キットは、場合によって、1または複数の特異的結合物質の容器を含みうる。1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面または1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面は、該バイオセンサーの回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質を含みうる。
【0193】
本明細書の任意の箇所で言及された、すべての特許、特許出願、ならびに他の科学的文献または技術的文献は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。本明細書で例示的に説明される本発明は、本明細書では具体的に開示されていない1または複数の要素、1または複数の限定の不在下においても適切な形で実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各場合において、「〜を含む」、「〜から本質的になる」、および「〜からなる」という用語のうちのいずれかを、それらの通常の意味を保持しながら、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。用いられている用語および表現は、説明を目的として用いられるものであり、限定を目的として用いられるものではなく、このような用語および表現を用いるに際しては、示され、かつ、説明される特色の任意の同等物またはそれらの一部を除外することが意図されるものではなく、主張される本発明の範囲内において、各種の改変が可能であることが認められている。したがって、本発明を、実施形態、任意選択の特色により具体的に開示してきたが、当業者が、本明細書で開示される概念の改変および変更に訴えることは可能であり、かつ、このような改変および変更は、本説明ならびに付属の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
【0194】
加えて、本発明の特色または態様を、代替物についてのマーカッシュ群または他の群分けとの関連で説明する場合、これにより、マーカッシュ群または他の群の個々のメンバーまたはメンバーの亜群との関連でも本発明が説明されることを、当業者は認めるであろう。
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、それらのすべてが参照によりそれらの全体において組み込まれる以下の仮出願:2009年5月15日に出願された米国仮出願第61/178,787号、2009年11月2日に出願された米国仮出願第61/257,345号、2010年1月19日に出願された米国仮出願第61/296,099号、2010年3月18日に出願された米国仮出願第61/315,144号、および2010年4月12日に出願された米国仮出願第61/323,070号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
細胞の解析、特に、幹細胞の解析、初代細胞の解析、および混合細胞集団の解析は、特に細胞数が希少な場合、接着、細胞の遊走および走化性、基底膜内または組織内への浸潤、分化、細胞接着を介する分化、三次元的環境(3−Dの細胞培養物)を介する分化、ならびに異なる細胞型との共培養を介する分化など、リアルタイムの生物学的過程を正確に測定するのに利用可能なツールがないため、現在のところ当該分野において制限されている。
【0003】
本明細書では、幹細胞、初代細胞、および細胞混合集団を含めた生細胞を用い、標識を使用しないリアルタイムの検出を用いて、これらの問題の各々を解決する方法が開示される。
【0004】
加えて、解析のために生物学的試料を調製することは、時間がかかり、複雑でありうる。癌細胞を単離および検出すること、細胞を希釈懸濁液から濃縮すること、特定の特性により細胞を分離すること、ならびに解析のために個々の細胞を単離および配置することを含め、生細胞を分離および操作することは、多くの生物学的解析および医学的解析を行うための最初のステップである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フローサイトメトリーおよび蛍光活性化細胞分取装置(FACS)は、細胞を分取し、かつ、細胞を解析するのに広く用いられている。しかし、これらの方法は、高価であり、検出可能な標識を必要とし、細胞を損傷してこれらをさらなる解析に用いられなくする場合があり、比較的大量の試料容量を必要とする。さらに、これらのデバイスは、滅菌が困難であり、機械的に複雑であり、訓練を受けた人員によらなければ操作および維持できない。したがって、生命科学的研究および医学的診断には、生細胞混合集団および細胞数の少ないアッセイを含め、生細胞を迅速かつ効率的に分取し、数え上げ、検出し、かつ解析しうる廉価なデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、1つの容器内における2つ以上の細胞型が刺激または試験試薬に対して示す示差的応答を検出する方法であって、該2つ以上の細胞型が検出可能な標識を含まない方法を提供する。該方法は、該2つ以上の細胞型を、該1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させており、かつ、該1または複数の特異的結合物質が、該2つ以上の細胞型のうちの1または複数に結合しうる。該2つ以上の細胞型を、該1または複数の特異的結合物質に結合させる。該2つ以上の細胞型の該示差的応答を検出する。該示差的応答は、該2つ以上の細胞型による、該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる時点での結合の場合もあり;該1もしくは複数の特異的結合物質に対して該2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態の場合もあり;かつ/または該2つ以上の細胞型による、該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる強度の結合の場合もある。
【0007】
該方法は、該2つ以上の細胞型を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するステップ、および該2つ以上の細胞型が該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す該示差的応答を検出するステップをさらに含みうる。該示差的応答は、該2つ以上の細胞型による、該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる強度の応答の場合もあり;1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に応答して該2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞形態の場合もあり;該2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる細胞応答の場合もあり;かつ/または該2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態の場合もある。
【0008】
該方法は、該2つ以上の細胞型を、第1の試験試薬または第1の刺激へと曝露するステップ;該2つ以上の細胞型が、該第1の試験試薬または第1の刺激に対して示す応答を検出するステップ;該2つ以上の細胞型を、第2の試験試薬または第2の刺激へと曝露するステップであって、該2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つが該第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答が知られているステップ;該2つ以上の細胞型が該第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答を検出するステップ;該第2の試験試薬または第2の刺激に対する応答が知られている、該2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つを、該バイオセンサー上において同定するステップ;該2つ以上の細胞型が示す該示差的応答を検出するステップをさらに含みうる。該バイオセンサー表面上に存在する、該2つ以上の細胞型の1または複数の細胞により、該1または複数の試験試薬または刺激が発現されうる。
【0009】
本発明の別の実施形態は、細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、該細胞混合集団内の細胞が検出可能な標識を含まない方法を含む。該方法は、該細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させている。該細胞混合集団を、該1または複数の特異的結合物質に結合させるが、この場合、該第1の細胞型が、該1または複数の特異的結合物質への結合に対して、該細胞混合集団の他の細胞と示差的な応答を示す。該細胞混合集団の示差的応答を検出するが、この場合、該第1の細胞型が存在することが、それらの示差的応答により検出される。該示差的応答は、該第1の細胞型による、該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる時点での結合の場合もあり;該1もしくは複数の特異的結合物質に対して該第1の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態の場合もあり;該第1の細胞型による、該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる強度の結合の場合もあり;かつ/または該第1の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答の場合もある。該細胞混合集団内における該第1の細胞型の百分率を決定することができる。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態は、細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、該細胞混合集団内における細胞のいずれもが検出可能な標識を含まない方法を提供する。該方法は、該細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させている。該細胞混合集団を、該1または複数の特異的結合物質に結合させる。該細胞混合集団を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するが、この場合、該第1の細胞型が、該細胞混合集団内における他の細胞と比較して、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示差的応答を示す。該第1の細胞型が該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す示差的応答を検出するが、この場合、該示差的応答が検出される場合に、該第1の細胞型が該細胞混合集団内に存在する。該示差的応答は、該第1の細胞型による、該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激への異なる強度の応答であり;該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に応答して該第1の細胞型によって提示される異なる細胞形態であり;該第1の細胞型による、ある時間にわたる該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる細胞応答であり;かつ/または該第1の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態である。該細胞混合集団内における該第1の細胞型の百分率を決定することができる。該バイオセンサー表面上に存在する、該細胞混合集団のうちの1または複数の細胞により、該1または複数の試験試薬または刺激が発現されうる。
【0011】
本発明のなおも別の実施形態は、第1の細胞集団が、1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する方法を提供する。該方法は、1または複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと固定化するステップであって、該第1の細胞集団が、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および該第1の細胞集団を、該バイオセンサーへと添加するステップを含む。代替的に、該第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合することもできるが、この場合、該第1の細胞集団が、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有し;かつ、これを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加する。ゲルもしくはゲル様物質、または第2の細胞集団を、該バイオセンサー表面へと添加する。該1または複数の試験試薬または刺激を、該ゲルもしくはゲル様物質、または該第2の細胞集団へと添加する。該第1の細胞集団が、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する。該1または複数の試験試薬または刺激は、走化作用物質の場合もあり、試験試薬または刺激をもたらす第3の細胞集団の場合もある。該第2の細胞集団は、上皮細胞集団の場合もあり、内皮細胞集団の場合もある。該第1の細胞集団は、幹細胞集団でありうる。検出標識を用いることはない。該方法は、該第2の細胞集団の応答を検出するステップをさらに含みうる。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、該第1の細胞集団または該第2の細胞集団が該1または複数の刺激に対して示す応答を検出することができる。該第1の細胞集団または該第2の細胞集団の応答を、リアルタイムで検出することができる。
【0012】
本発明のまた別の実施形態は、第1の細胞集団が、1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する方法を提供する。該方法は、1または複数の試験試薬または刺激を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;基底膜マトリックス、アルギン酸ゲル、コラーゲンゲル、アガロースゲル、合成ハイドロゲル、または第2の細胞集団を、該バイオセンサー表面へと添加するステップ;該第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するステップであって、該第1の細胞集団が、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および該第1の細胞集団を、該バイオセンサー表面へと添加するステップ;該第1の細胞集団が、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出するステップを含む。該1または複数の試験試薬または刺激は、走化作用物質の場合もあり、試験試薬または刺激をもたらす第3の細胞集団の場合もある。該第2の細胞集団は、上皮細胞集団の場合もあり、内皮細胞集団の場合もある。該第1の細胞集団は、幹細胞集団でありうる。検出標識を用いることはない。該方法は、該第2の細胞集団の応答を検出するステップをさらに含みうる。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、該第1の細胞集団または該第2の細胞集団が、該1または複数の刺激に対して示す応答を検出することができる。該第1の細胞集団または該第2の細胞集団の応答を、リアルタイムで検出することができる。
【0013】
本発明の別の実施形態は、第1の細胞集団の分化を検出する方法を提供する。該方法は、該第1の細胞集団を、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップであって、該バイオセンサーが、2つ以上の表面セクターを有し、各表面セクターが、他の表面セクターとは共鳴値が異なる回折格子を有するステップ;該2つ以上の表面セクターの各々に由来する、2つ以上のピーク波長値を検出するステップ;および該バイオセンサー表面上において、該第1の細胞集団の分化を検出するステップを含む。該分化は、リアルタイムで検出することができる。該2つ以上の表面セクターの各々に由来する、2つ以上のピーク波長値を検出する前に、該1または複数の試験試薬または刺激を、該バイオセンサーへと適用することができる。該1または複数の試験試薬または刺激を、該バイオセンサーへと適用する前に、1または複数のピーク波長値を検出することもできる。該1または複数の試験試薬または刺激は、走化作用物質の場合もあり、試験試薬または刺激をもたらす第3の細胞集団の場合もある。該第1の細胞集団は、幹細胞集団でありうる。検出標識を用いることはない。
【0014】
本発明のまた別の実施形態は、特定の幹細胞集団に特異的な生物学的応答の特徴を同定する生物学的発現プロファイリング方法を提供する。該方法は、1または複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの2つ以上の表面へと固定化するステップであって、該幹細胞集団が、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および該幹細胞集団を、該バイオセンサーの2つ以上の地点へと添加するステップを含む。代替的に、該幹細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合することもできるが、この場合、該幹細胞は、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有し;かつ、これを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの2つ以上の表面へと添加する。該バイオセンサーの2つ以上の表面を、2つ以上の試験試薬または刺激へと曝露する。該バイオセンサーの2つ以上の表面の各々において、該幹細胞が、該試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する。特定の幹細胞集団が、2つ以上の試験試薬または刺激に対して特異的に示す生物学的応答の特徴を同定する。該幹細胞の応答を検出するステップは、リアルタイムで行うことができる。
【0015】
本発明のなおも別の実施形態は、候補化合物を、細胞分化を調節するその能力についてスクリーニングする方法を提供する。該方法は、1または複数の細胞型を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;該1または複数の細胞型を誘導して分化させるステップ;該候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値または有効屈折率変化を比較することにより、該候補化合物の存在下または不存在下における細胞分化の変化を検出するステップを含む。該候補化合物の不存在下における細胞分化活性と比べた、該候補化合物の存在下における細胞分化活性の変化によって、細胞分化を調節する該候補化合物の能力が示される。該細胞分化活性の変化は、細胞分化活性の上昇の場合もあり、細胞分化活性の低下の場合もあり、細胞分化活性の阻害の場合もあり、幹細胞の自己複製の増大または減少の場合もあり、および/または分化した細胞の細胞型の変化の場合もある。該細胞分化活性の変化は、コラーゲン生成の増大の場合もあり、コラーゲン生成の減少の場合もある。該細胞分化活性の変化は、石灰化結節形成の増大の場合もあり、石灰化結節形成の減少の場合もある。該1または複数の細胞型は、幹細胞でありうる。該1または複数の細胞型は、間葉幹細胞でありうる。細胞サイズ、細胞形状、細胞膜電位、細胞代謝活性、またはシグナルに対する細胞応答性の変化を検出することにより、該細胞分化活性の変化を検出することができる。該候補化合物は、阻害性核酸分子でありうる。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、候補化合物を、細胞分化を調節するその能力についてスクリーニングする方法を提供する。該方法は、1または複数の細胞型を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;該1または複数の細胞型を誘導して分化させるステップ;該候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値または有効屈折率変化を比較することにより、該候補化合物の存在下または不存在下における1または複数の細胞分化生成物の生成を検出するステップを含む。該候補化合物の不存在下における1または複数の細胞分化生成物と比べた、該候補化合物の存在下における1または複数の細胞分化生成物の変化によって、細胞分化を調節する該候補化合物の能力が示される。該細胞分化生成物は、コラーゲンの場合もあり、石灰化結節の場合もある。該1または複数の細胞型は、幹細胞でありうる。該1または複数の細胞型は、間葉幹細胞でありうる。該候補化合物は、阻害性核酸分子でありうる。
【0017】
本発明の別の実施形態は、バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質;および該1または複数の特異的結合物質を覆う、ゲルまたはゲル様物質の層を含む、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を提供する。該バイオセンサー回折格子表面は、液体含有容器の内部表面を形成しうる。該液体含有容器は、マイクロタイタープレートまたはマイクロ流体チャネル(microfluidicchannel)でありうる。
【0018】
本発明のまた別の実施形態は、1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面、およびゲルまたはゲル様物質の1または複数の容器を含むキットを提供する。該キットは、1または複数の特異的結合物質の容器をさらに含みうる。1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面は、該バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質を含みうる。
【0019】
本発明のなおも別の実施形態は、比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面上、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面上、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面上において、特異的結合物質と結合パートナーとの反応を検出する改良法を提供する。該方法は、1または複数の特異的結合物質が、該バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合するように、該1または複数の特異的結合物質を、該バイオセンサー回折格子表面へと適用するステップ、およびゲルまたはゲル様物質を、該バイオセンサー表面へと適用するステップを含む。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、細胞混合集団から2つ以上の細胞型を分取し、かつ、該分取された細胞が、刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出する方法であって、該分取および該検出を、1つのバイオセンサー表面上で行う方法を提供する。該方法は、細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、該1つのバイオセンサー表面が、その表面に2種類以上の特異的結合物質を固定化させており、かつ、該2つ以上の特異的結合物質が、該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に潜在的に結合しうるステップ;該バイオセンサーの該1つの表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、1または複数の細胞型が、該バイオセンサーの該表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;該1または複数の結合した細胞型を、刺激、インキュベーション、または試験試薬へと曝露するステップ;該1または複数の結合した細胞型が該刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出するステップを含む。該2つ以上の特異的結合物質は、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質と、1または複数の他の特異的結合物質との組合せを含みうる。該1つのバイオセンサー表面は、マイクロタイターウェルの底面でありうる。該2つ以上の細胞型および試験試薬は、検出可能な標識を含まない。
【0021】
本発明の別の実施形態は、1つのバイオセンサー表面上において、細胞混合集団から1または複数の細胞型を分取し、かつ、該1または複数の細胞型から細胞内分析物を検出する方法を提供する。該方法は、細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、該1つのバイオセンサー表面が、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させており、該2つ以上の特異的結合物質が、(i)該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)該1または複数の細胞型に由来する1または複数の細胞内分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含むステップ;該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサーの該表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;該1または複数の結合した細胞型を、溶解させるかまたは透過処理するステップ;該バイオセンサーの該表面から、結合しなかったいかなる分析物も洗い流すステップ;および該バイオセンサーの該表面に固定化された該細胞内分析物を検出するステップを含む。該第1の特異的結合物質は、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質を含みうる。該1または複数の結合した細胞型を溶解させるかまたは透過処理する前に、細胞をある時間間隔にわたりインキュベートするか、または刺激に曝露するか、または試験試薬に曝露することができる。該1つのバイオセンサー表面は、マイクロタイターウェルの底面でありうる。該細胞混合集団および該2つ以上の特異的結合物質は、検出可能な標識を含まない。
【0022】
本発明のまた別の実施形態は、1つのバイオセンサー表面上において、細胞混合集団から1または複数の細胞型を分取し、かつ、該1または複数の細胞型から分析物を検出する方法を提供する。該方法は、細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、該1つのバイオセンサー表面が、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させており、該2つ以上の特異的結合物質が、(i)該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)該1または複数の細胞型に由来する1または複数の分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含むステップ;該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサー表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;試験試薬を該細胞に適用するか、もしくは該細胞をインキュベートするか、もしくは該細胞を刺激にかけるか、またはこれらの組合せを行うステップ;および該バイオセンサーの該表面に固定化された分析物を検出するステップを含む。該第1の特異的結合物質は、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質でありうる。該1つのバイオセンサー表面は、マイクロタイターウェルの底面でありうる。該細胞混合集団および該2つ以上の特異的結合物質は、検出可能な標識を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレート上における、ムスカリンリガンド、P2Yリガンド、およびベータ−アレスチンリガンドに対するSH−SY5Y細胞の特徴的応答を示す図である。
【図2】細胞が、PBS/オボアルブミン、フィブロネクチン、コラーゲン、またはラミニンを含む比色共鳴反射光バイオセンサー上にある場合の、3つのリガンド:アセチルコリン、カルバコール、およびピロカルピンに対するmP−M5細胞およびmP−M4細胞の反応を示す図である。
【図3】図3Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーに結合しているM5細胞が発生させるシグナルを示す図である。図3Bは、細胞がバイオセンサーに結合した30分後において完了した走査を示す図である。
【図4】図4Aが、細胞の位相差画像を、細胞の上側(細胞が、比色共鳴反射光バイオセンサーに結合する側と反対側)から示す図であるのに対し、図4Bは、同じ細胞の結合シグナルを、細胞の下側(細胞がバイオセンサーに結合する側)から示す図である。
【図5】図5Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーに対するM5細胞の結合応答を示す図である。図5Bは、カルバコールの添加に対するM5細胞の応答を示す図である。
【図6】比色共鳴反射光バイオセンサーへと添加されたM4細胞およびRBL親細胞混合集団を示す図である。M4細胞は、カルバコールに対して、RBL細胞より多くの受容体を有する。次いで、10μMのカルバコールを細胞に添加した。中央のパネルは、細胞にカルバコールを添加した30分後において、RBL細胞に対するM4細胞の比が3:1である場合を示す。右側のパネルは、細胞にカルバコールを添加した30分後において、RBL細胞に対するM4細胞の比が1:3である場合を示す。M4細胞がRBL細胞より多く存在し、各M4細胞がカルバコールに対してより多くの受容体を有するため、図6の中央のパネルは、右側のパネルより多くのシグナルを示す。
【図7】オボアルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、またはコラーゲンを含む比色共鳴反射光バイオセンサーに対するラットMSC細胞の結合を示す図である。
【図8】細胞を比色共鳴反射光バイオセンサーへと添加した直後におけるラットMSC細胞(図8A)、ならびに16時間後の該バイオセンサー上における該細胞(図8B)を示す図である。
【図9】比色共鳴反射光バイオセンサー上、30時間にわたるラットMSC細胞の移動を示す図である。左側の矢印(暗色のスポットを指し示す)が、細胞がバイオセンサー表面に結合した直後に細胞が存在した地点を示すのに対し、右側の矢印(明色のスポットを指し示す)は、バイオセンサー表面に対する結合の30時間後において細胞が存在した地点を示す。
【図10】比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレートおよびBIND(登録商標)READERを用いる、異なる濃度のSDF−1αに対するTHP−1細胞(図10A)およびCEM細胞(図10B)の応答を示す図である。
【図11】図11Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレート上における、SDF−1αに対するMSC細胞の応答を示す図である。図11Bは、SDF−1αおよび阻害剤(CXCR4遮断抗体)に対するMSC細胞(384ウェルのマイクロプレート内に7,000個の細胞)の応答を示す図である。
【図12】フィブロネクチンでコーティングしたバイオセンサー上におけるラットMSC細胞を示す図である。3時間後および16時間後の比色共鳴反射光バイオセンサー上において、細胞の結合を検出した(左側のパネル)。結合シグナルをゼロとし、細胞を、SDF−1αで刺激するか、またはSDF−1αで刺激せずに置いた(右側パネル)。図12の右側パネルでは、細胞の移動を見ることができる。暗色のスポットは、検出する前に細胞が存在した地点であり、明色のスポットは、反応を検出したときに細胞が存在した地点である。細胞に刺激を添加しなかった場合も、細胞の移動をある程度は見ることができるが、細胞にSDF−1αを添加した場合は、バイオセンサー上において細胞が増殖するのに伴い細胞が移動することが見られる。
【図13】図12の右側パネルの拡大図である。移動および/または細胞接着が生じる細胞縁辺部では、シグナルの増強を見ることができる。微速度撮影により裏付けられる通り、シグナルの増強は、細胞がバイオセンサー中を移動するときの該細胞の前縁部と相関する。
【図14】BIND(登録商標)READERによるリーディング(図14A)、ならびにBIND(登録商標)SCANNERによるリーディング(図14B)を示す図である。シグナル対ノイズ比が約7〜10倍増大したことが観察される。
【図15】リフトオフアッセイの概略図である。
【図16】対照ウェルと比較して、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックスの存在下では、MSC細胞が、バイオセンサーから離脱することを示す図である。MSC結合シグナルは、MATRIGEL(商標)コーティングにより、容易に同定することができる。MSCは、対照ウェルと比較して、センサーから離脱する傾向を提示する。これは、図16において黒色として表示される負のPWVシフトにより裏付けられる。
【図17】コラーゲンによりコーティングされたバイオセンサー上において、骨芽細胞へと分化するように誘導されたMSCを示す図である。14日目までに、細胞が石灰化し、骨を生成させた。
【図18】コラーゲンによりコーティングされたバイオセンサー上において、骨芽細胞へと分化するように誘導されたMSCを示す図である。14日目までに、細胞が石灰化し、骨を生成させた。アリザリンレッド色素を用いて、該細胞が、実際に骨を生成させることを確認した。画像は、前日の状態をベースラインとしたものである。
【図19】図19Aは、図18の17日目のパネルの拡大図である。白色の領域が、骨芽細胞の石灰化である。図19Bは、同じ細胞部分についての位相差顕微鏡写真を示す図である。位相差顕微鏡写真は、細胞の分化を示さない。
【図20】384ウェル比色共鳴反射光バイオセンサーに、細胞100個/ウェルで播種し、骨芽細胞分化培地で処理したラットMSC(Invitrogen製)を示す図である。BIND(登録商標)SCANNER上で毎日の画像を収集し、0日目における細胞結合シグナルをベースラインとした。アリザリンレッドでパラレルウェルを染色することにより示される通り、骨様のミネラルがセンサー表面上に沈着するのに応じて、段階的かつ強いPWVシフト(約25nM)が検出された(図20A)。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3β)阻害剤は、MSC−骨芽細胞分化を促進する。図20Bは、GSK3β阻害剤により引き起こされた分化の促進が検出されたことを示す。図20Cは、BIND(登録商標)SCANNERが、石灰化を検出するのにアリザリンレッド染色より高感度であることを示す。
【図21】BIND(商標)バイオセンサー上におけるMSCの分化を示す図である。コラーゲンの形成が石灰化に先行することが示されるが、これは、正常な骨形成と符合する。
【図22】1〜19日間にわたり、GSK3β阻害剤を含むかまたは含まない骨芽細胞分化培地中において培養したラットMSCを示す図である。BIND(商標)画像を毎日収集し、前日の測定値をベースラインとし、これにより、石灰化の速度についての情報をもたらした(図22A)。図22Bは、BIND(登録商標)SCANNER上で測定されたPWVシフトの定量化を示す図である(±標準偏差;n=12ウェル)。
【図23】抗体によるMSC遊走の遮断を示すが、また、PDGF−BB抗体が、バイオセンサー上にスポットされたPDGF−BBと相互作用することを表わす、ウェルの中央における正のPWVシフトによる極めて明色の矩形も示す図である。図23において、「ケモカインX」とはPDGF−BBであり;「ケモカインX nAb」とは、PDGF−BBに特異的な中和抗体である。
【図24】384ウェル比色共鳴反射光バイオセンサープレート上に播種したヒトMSCを示す図である。骨芽細胞分化カクテルにより、細胞を処理した。PWVを毎日測定した。非処理細胞(Ctrl)および骨芽細胞分化(OS−Diff)細胞による代表的なウェルを示す。
【図25】GSK3βおよびADKに特異的なsiRNA分子を、分化の直前にヒトMSCにトランスフェクトしたところ、BIND(登録商標)SCANNER上における標識を用いないアッセイでは、骨芽細胞への分化が加速されることが検出されたことを示す図である。12日目における試料ウェルを、複数の処理条件ごとに示す。
【図26】図25で示した結果を定量化している図である。
【図27】1:1の比で混合し、比色共鳴反射光バイオセンサーウェルに播種したRBL細胞とM5/RBL細胞を示す図である。細胞をバイオセンサーに結合させ、BIND(登録商標)SCANNER上で結合反応を検出した。結果を、図27Aおよび図27Bに示す。アセチルコリンに対する細胞の反応を、図27Cおよび図27Dに示す。
【図28】BIND(商標)Reader上で検出された終点応答を示す。図28Aは、単独で播種されたETaR細胞を示す。図28Bは、単独で播種されたM4R細胞を示す。
【図29】BIND(商標)Reader上で検出された終点応答を示す。図29Aは、単独で播種されたETaR細胞を示す。図29Bは、単独で播種されたM4R細胞を示す。
【図30】図30は、図30A〜Bに表示される通り、アトロピン、BMS、カルバコール、およびET−1を様々な形で添加した同じウェル内において培養したETaR細胞およびM4R細胞の両方を示す。図は、2つの細胞型を同じウェル内に播種することができ、各細胞型に対する個々の活性化を個別に検出しうることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
文脈により別段に明示されない限り、本明細書で用いられる単数形の「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」は、複数の指示対象を包含する。
【0025】
バイオセンサー
本発明のバイオセンサーは、比色共鳴反射光バイオセンサーでありうる。例えば、Cunninghamら、「Colorimetric resonant reflection as a direct biochemical assay technique」、Sensors and Actuators B、81巻、316〜328ページ、2002年1月5日;米国特許公開第2004/0091397号;米国特許第7,094,595号;米国特許第7,264,973号を参照されたい。比色共鳴バイオセンサーは、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサーではない。SPRバイオセンサーは、銀、金、銅、アルミニウム、ナトリウム、およびインジウムなどの金属薄層を有する。これらの金属は、適切な波長の光と共鳴することが可能な導電バンドの電子を有さなければならない。光に曝露されるSPRバイオセンサー表面は、純粋な金属でなければならない。酸化物、硫化物、および他の膜は、SPRに干渉する。比色共鳴バイオセンサーは、金属層を有さず、硫化亜鉛、二酸化チタン、酸化タンタル、および窒化ケイ素など、高屈折率材料による誘電コーティングを有する。
【0026】
本発明のバイオセンサーはまた、誘電積層膜バイオセンサー(例えば、米国特許第6,320,991号を参照されたい)、回折格子バイオセンサー(例えば、米国特許第5,955,378号;同第6,100,991号を参照されたい)、および回折異常バイオセンサー(例えば、米国特許第5,925,878号;同第RE37,473号を参照されたい)でもありうる。誘電積層膜バイオセンサーは、表面に溝が掘ってあるか、または回折格子表面を有する基板上に形成された誘電層の積層を含む(例えば、米国特許第6,320,991号を参照されたい)。このバイオセンサーは、光を受容し、少なくとも1つの入射角については、光の一部が、誘電層内へと伝搬される。光学異常のシフト、すなわち、共鳴ピークまたは共鳴ノッチのシフトを検出することにより、試料媒質のパラメータを決定する。光学異常のシフトは、共鳴角のシフトとして検出される場合もあり、共鳴波長のシフトとして検出される場合もある。
【0027】
本発明の方法と共に用いうる他のバイオセンサーには、例えば、米国特許第5,738,825号において説明されている、回折格子ベース導波路バイオセンサーも含まれる。回折格子ベース導波路バイオセンサーは、導波膜と、入射光場を該導波膜内へとインカップルして回折光場を生成させる回折格子とを含む。導波膜の有効屈折率変化を検出する。回折格子ベース導波路バイオセンサーなど、その内部においてかなりの距離にわたり波が搬送されなければならないデバイスは、比色共鳴反射光バイオセンサーの空間解像度を欠く。
【0028】
比色共鳴反射光バイオセンサーは、蛍光タグ、比色標識、または他の任意の種類の検出タグもしくは検出標識を用いることなく、その表面上において生化学的相互作用を測定することを可能とする。誘電積層膜バイオセンサーも、比色共鳴反射光バイオセンサーと極めて類似した形で作動する。バイオセンサー表面は、コリメート光および/または白色光により照射されると、狭いバンドの波長だけを反射または透過させる(「共鳴回折格子効果」)ようにデザインされた光学構造を含有する。反射の場合、この狭い波長バンドを、波長の「ピーク」という。透過の場合、この狭い波長バンドを、波長の「ディップ」という。生体物質などの物質が、バイオセンサー表面に沈着するか、またはここから除去されると、「ピーク波長値」(PWV)が変化する。波長のディップもまた、検出することができる。リードアウト装置を用いて、バイオセンサー表面上の異なる地点を、コリメート光および/または白色光で照射し、反射光を捕集する。捕集された光を、波長分光光度計へと集め、PWVを決定する。
【0029】
ボトムレスのマイクロタイタープレートカートリッジの底部にその構造(バイオセンサー側を上向きにする)を接合することにより、マイクロタイタープレートなど、ディスポーザブルの標準的な試験用器具にバイオセンサーを組み込むことができる。ミキサー、インキュベーター、および液体分注装置など、既存のマイクロタイタープレート処理装置と適合させるため、バイオセンサーを、一般的な試験用フォーマットのカートリッジへと組み込むことが望ましい。バイオセンサーはまた、例えば、マイクロ流体デバイス、マクロ流体デバイス、またはマイクロアレイデバイス(例えば、米国特許第7,033,819号、米国特許第7,033,821号を参照されたい)にも組み込むことができる。バイオセンサーを、当技術分野でよく知られた方法(例えば、「Methods of Molecular Biology」、Jun−Lin Guan編、294巻、Humana Press、Totowa、New Jerseyを参照されたい)と共に用いて、1または複数の細胞外試薬へと曝露したときの細胞挙動の変化またはこれらの変化の欠如をモニタリングすることができる。
【0030】
比色共鳴反射光バイオセンサーは、波長未満微細構造表面(SWS)、ならびに薄膜コーティング効果を模倣しうる、従来とは異なる種類の回折光学(PengおよびMorris、「Resonant scattering from two−dimensional gratings」、J.Opt.Soc.Am.A、13巻、5号、993ページ、1996年5月;MagnussonおよびWang、「New principle for optical filters」、Appl.Phys.Lett.、61巻、9号、1022ページ、1992年8月;PengおよびMorris、「Experimental demonstration of resonant anomalies in diffraction from two−dimensional gratings」、Optics Letters、21巻、8号、549ページ、1996年4月)を含む。SWS構造は、反射および透過するゼロ次光以外の回折次数光が伝搬することを許容しないように、回折格子の周期が入射光の波長と比較して短い、一次回折格子、二次回折格子、または三次回折格子を含有する。側面方向では、誘導モードの伝搬が支持されない。その代わりに、任意の光子がバイオセンサー構造に侵入する地点から約3ミクロンの極めて局在化された領域では、誘導モードによる共鳴効果が生じる。
【0031】
リガンドもしくは特異的結合物質などの分子、細胞もしくは結合パートナー、またはこれらの両方をバイオセンサーの上部表面へと添加することにより、比色共鳴反射光バイオセンサーの反射光または透過光を変化させることができる。添加された分子は、その構造を介して、入射放射線(incident radiation)の光路長を延長し、これにより、最大の反射または透過が生じる波長を変化させる。
【0032】
一実施形態では、白色光および/またはコリメート光で照射されると、単一の波長または狭いバンド(例えば、約1〜10nm)の波長を反射させる(「共鳴回折格子効果」)ように、比色共鳴反射光バイオセンサーをデザインする。集塊がバイオセンサー表面上に沈着すると、該バイオセンサー上に照射される光の光路が変化するために、反射波長がシフトする。
【0033】
例えば、検出システムは、例えば、光ファイバープローブを介して、バイオセンサーの微小なスポットを垂直入射で照射する光源と、例えば、第2の光ファイバープローブを介して、これもまた垂直入射で反射光を捕集する分光光度計とからなる。励起/検出システムと、バイオセンサー表面との間では物理的な接触が生じないため、特別な結合プリズムは必要でなく、例えば、マイクロタイタープレートを含めた、一般的に用いられる任意のアッセイプラットフォームに、バイオセンサーを容易に適合させることができる。分光光度計による1回のリーディングは、数ミリ秒間で実施することができ、したがって、バイオセンサー表面上で並行して生じる多数の分子間相互作用を迅速に測定し、かつ、反応速度をリアルタイムでモニタリングすることができる。
【0034】
比色共鳴反射光バイオセンサーは、例えば、高屈折率材料と、回折格子を支持する基板層と、場合によって、該基板層の反対側の回折格子表面上に固定化された、1または複数の特異的結合物質またはリンカーとを含む光回折格子を含む。高屈折率材料は、基板層より屈折率が高い。例えば、米国特許第7,094,595号;米国特許第7,070,987号を参照されたい。場合によっては、被覆層が、回折格子表面を覆う。例えば、硫化亜鉛、二酸化チタン、酸化タンタル、窒化ケイ素、および二酸化ケイ素が含まれる材料を含みうる、高屈折率誘電膜で光回折格子をコーティングする。光学特徴を有する回折格子の断面プロファイルは、任意の周期反復関数、例えば、「方形波」関数を含みうる。光回折格子はまた、直線(一次)、四角形、円形、楕円形、三角形、台形、正弦波、卵型、矩形、および六角形からなる群から選択される反復形状パターンも含みうる。本発明の比色共鳴反射光バイオセンサーはまた、高屈折率材料でコーティングされた、例えば、プラスチックまたはエポキシを含む光回折格子も含みうる。
【0035】
線形回折格子(すなわち、一次回折格子)は、照射光の偏光が、回折格子周期に対して垂直に方向づけられた共鳴特徴を有する。比色共鳴反射光バイオセンサーはまた、例えば、二次回折格子、例えば、ホールまたは四角形による六方アレイも含みうる。他の形状も同様に用いることができる。線形回折格子は、六方アレイによる回折格子と同じピッチ(すなわち、高屈折率領域と低屈折率領域との間の距離)、周期、層の厚さ、ならびに材料の特性を有する。しかし、光学的構造へと共鳴結合するには、光を、回折格子線に対して垂直に偏光させなければならない。したがって、その偏光軸が、線形回折格子に対して垂直に方向づけられた偏光フィルターを、照射源と、バイオセンサー表面との間に挿入しなければならない。適正な形で偏光しているのは、照射光源のうちのごく小部分であるため、六角形回折格子と比較して同等量の共鳴反射光を捕集するには、より長い積分時間が必要とされる。
【0036】
光回折格子はまた、例えば、厚さが一定の高屈折率領域が、低屈折率の被覆層内に埋め込まれている、「階段状」プロファイルも含みうる。高屈折率領域と低屈折率領域とが交互に現れることで、バイオセンサー上面に平行な光導波路がもたらされる。
【0037】
本発明の比色共鳴反射光バイオセンサーは、基板層の反対側の光回折格子表面上において、被覆層をさらに含みうる。被覆層が存在する場合、1または複数の特異的結合物質を、回折格子の反対側の被覆層表面上に固定化させる。被覆層は、回折格子を含む材料より屈折率の低い材料を含むことが好ましい。被覆層は、例えば、ガラス(スピンオンガラス(SOG))、エポキシ、またはプラスチックを含みうる。
【0038】
例えば、バイオセンサーの屈折率要件を満たす各種のポリマーを、被覆層に用いることができる。その屈折率が好ましいこと、取扱いが容易であること、豊富なガラス表面活性化法を用いて特異的結合物質により容易に活性化されることのために、SOGを用いることができる。バイオセンサー表面が平坦であることが、具体的なシステム環境にとって問題ではない場合は、SiN/ガラスの回折格子構造を、センシング表面として直接用いることができ、その活性化は、ガラス表面上の場合と同じ手段を用いて行うことができる。
【0039】
また、平坦化被覆層で光回折格子を覆わなくとも、共鳴反射を得ることができる。例えば、バイオセンサーは、高屈折率材料が構造化された薄膜層でコーティングした基板だけを含有しうる。平坦化被覆層を用いなくとも、周囲の媒質(空気または水など)が、回折格子を充填する。したがって、特異的結合物質がバイオセンサーに固定化されるときは、その上部表面上だけではなく、特異的結合物質に対して曝露された光回折格子のすべての表面上において固定化がなされる。
【0040】
一般に、比色共鳴反射光バイオセンサーは、すべての偏光角にわたる光を含有する白色光および/またはコリメート光で照射することができる。バイオセンサー回折格子内の反復特徴に対する偏光角の方向により、共鳴波長が決定される。例えば、一連の反復直線および反復間隔からなる「線形回折格子」(すなわち、一次回折格子)バイオセンサーは、個別の共鳴反射を発生させうる、2つの光学偏光を有する。直線に対して垂直に偏光する光を「s偏光」と称するのに対し、直線に対して平行に偏光する光を「p偏光」と称する。入射光のs成分およびp成分はいずれも、フィルターをかけていない照射ビーム中に同時に存在し、各々が個別の共鳴シグナルを発生させる。バイオセンサーは一般に、1つの偏光(s偏光)の特性だけを最適化するようにデザインすることができ、最適化されない偏光は、偏光フィルターにより容易に除去することができる。
【0041】
すべての偏光角が、同じ共鳴反射スペクトルを発生させるよう、偏光依存性を除去するためには、コンセントリックリングのセットからなる、代替的なバイオセンサー構造を用いることができる。この構造では、各コンセントリックリングの内径と外径との差が、回折格子周期の約半分と等しい。一連の各リングの内径は、その前のリングの内径より回折格子周期で約1周期大きい。コンセントリックリングパターンは、アレイスポットまたはマイクロタイタープレートウェルなど、単一のセンサー地点を覆うように拡張する。各個別のマイクロアレイスポットまたはマイクロタイタープレートウェルは、その内部に中心を置く個別のコンセントリックリングパターンを有する。このような構造のすべての偏光方向は、同じ断面プロファイルを有する。偏光非依存性を保持するように、コンセントリックリング構造は、正確に中心を照射しなければならない。コンセントリックリング構造の回折格子周期は、共鳴反射光の波長より短い。回折格子周期は、約0.01ミクロン〜約1ミクロンである。回折格子の厚さは、約0.01〜約1ミクロンである。
【0042】
別の実施形態では、照射ビームを格子の任意の特定の地点に絞り込む必要なしに、上記で説明したコンセントリックリング構造を緊密に近似するように、ホールまたはポストのアレイを配置する。3つの方向から等角で表面に入射する3つのレーザービームが光干渉することにより、このようなアレイパターンを自動的に発生させる。このパターンでは、最密六方アレイの角部分にホール(またはポスト)の中心を置く。ホールまたはポストはまた、各六角形の中心にも配置される。このようなホールまたはポストの六方格子は、同じ断面プロファイルを「見込む」3つの偏光方向を有する。したがって、六方格子構造は、いずれの偏光角を有する光を用いても、同等の共鳴反射スペクトルをもたらす。したがって、望ましくない反射シグナル成分を除去するための偏光フィルターは必要とされない。ホールまたはポストの周期は、約0.01ミクロン〜約1ミクロンであることが可能であり、深さまたは高さも、約0.01ミクロン〜約1ミクロンでありうる。
【0043】
検出システムは、比色共鳴反射光バイオセンサーと、該比色共鳴反射光バイオセンサーへと光を誘導する光源と、該バイオセンサーから反射された光を検出する検出器とを含みうる。一実施形態では、定められた閾値を超える正の結果だけが検出を誘発するようにフィルターを適用することにより、リードアウト装置を簡略化することができる。
【0044】
本発明の比色共鳴反射光バイオセンサーの異なる各地点において、共鳴波長のシフトを測定することにより、異なるどの地点が、例えば、その上に生体物質を沈着させているかを決定することが可能となる。シフトの程度を用いて、例えば、試験試料中における結合パートナーの量、ならびに1または複数の特異的結合物質と、試験試料の結合パートナーとの化学的アフィニティーを決定することができる。
【0045】
比色共鳴反射光バイオセンサーは、2回にわたり照射することができる。1回目の測定により、例えば、細胞をバイオセンサーに添加する前における、バイオセンサーの1または複巣の異なる地点の反射スペクトルを決定する。2回目の測定により、例えば、1または複数の細胞をバイオセンサーに適用した後における該反射スペクトルを決定する。これら2回の測定の間におけるピーク波長の差違が、バイオセンサー上における細胞の存在、量、または状態の測定値となる。この照射法は、ピーク共鳴波長にわずかなばらつきを伴う領域を結果としてもたらしうる、バイオセンサー表面における微細な欠陥についての対照を可能とする。この方法はまた、バイオセンサー上における細胞物質の濃度または密度の変化についての対照も可能とする。比色共鳴反射光バイオセンサーはまた、2回を超えて照射することもでき、PWVを決定および記録することができる。例えば、バイオセンサーは、1秒間当たり1、2、4、5、もしくは10回にわたり、1分間当たり1、2、3、4、5、10、20、もしくは30回にわたり、または1、5、10、20、もしくは60分間ごとに、または1日間当たり1、2、3、4、5、10回以上にわたり照射することができる。
【0046】
検出システム
検出システムは、バイオセンサーと、該バイオセンサーへと光を誘導する光源と、該バイオセンサーから反射された光を検出する検出器とを含みうる。一実施形態では、定められた閾値を超える正の結果だけが検出を誘発するようにフィルターを適用することにより、リードアウト装置を簡略化することができる。
【0047】
光源は、比色共鳴反射光バイオセンサーを、その上面、すなわち、1または複数の特異的結合物質を固定化させた表面から照射することもでき、その底面から照射することもできる。本発明のバイオセンサーの異なる各地点において、共鳴波長のシフトを測定することにより、どの異なる地点が、結合パートナーをそれらに結合させているかを決定することが可能となる。シフトの程度を用いて、試験試料中における結合パートナーの量、ならびに1または複数の特異的結合物質と、試験試料の結合パートナーとの化学的アフィニティーを決定することができる。
【0048】
バイオセンサー表面を照射し、反射光を捕集する検出システムの1つの種類は、例えば、光源に接続された6つの照射光ファイバーと、分光光度計に接続された単一の捕集光ファイバーとを含有するプローブである。ファイバーの数はさほど重要ではなく、任意の数の照射ファイバーまたは捕集ファイバーが可能である。捕集ファイバーがバンドルの中央にあり、6つの照射ファイバーにより取り囲まれるように、ファイバーをバンドル状に配置する。ファイバーバンドルの先端は、バイオセンサー表面へと照射を絞り込む視準(collimating)レンズへと接続する。
【0049】
このプローブ配置では、照射ファイバーと捕集ファイバーとが隣り合う。したがって、視準レンズを適正に調整して、バイオセンサー表面へと光を絞り込むと、6つの明確に規定された環状の照射領域と、中央の暗部領域とが観察される。バイオセンサーは光を散乱させず、視準ビームを反射させるので、捕集ファイバーに光が入射することはなく、共鳴シグナルが観察されることもない。6つの照射領域が、中央領域へと重複するまで視準レンズの焦点をぼかすだけで、任意の光を捕集ファイバー内へと反射させる。焦点のぼけた、若干の非コリメート光だけがシグナルを発生させうるため、バイオセンサーは、単一の入射角で照射されるのでなく、ある範囲にわたる入射角で照射される。この、ある範囲にわたる入射角は、結果として、共鳴波長の混合をもたらす。したがって、そうでない場合に可能でありうるより広い共鳴ピークが測定される。
【0050】
したがって、照射ファイバープローブと、捕集ファイバープローブとが、同じ光路を空間的に共有することが望ましい。複数の方法を用いて、照射光路と捕集光路とを共配置することができる。例えば、その第1の端部において、バイオセンサーに光を誘導する光源へと接続される単一の照射ファイバー、ならびにその第1の端部において、該バイオセンサーから反射された光を検出する検出器へと接続される単一の捕集ファイバーの各々を、それらの第2の端部において、照射器および捕集器の両方として作用しうる第3のファイバープローブへと接続することができる。第3のファイバープローブを、バイオセンサーに対して垂直の入射角に方向づけ、反対方向に伝搬する照射光シグナルと反射光シグナルとを支持する。
【0051】
別の検出方法は、光源に接続される単一の照射ファイバーを、検出器に接続される捕集ファイバーに対して90度の角度で方向づけることを可能とするビームスプリッターの使用を伴う。照射ファイバープローブを介して、光をビームスプリッター内へと誘導し、これにより、光をバイオセンサーへと誘導する。反射光を、再度ビームスプリッター内へと導き、これにより、光を捕集ファイバープローブ内へと導く。ビームスプリッターは、照射光および反射光が、ビームスプリッターとバイオセンサーとの間で共通の光路を共有することを可能とし、このようにして、焦点をぼかすことなしに、完全なコリメート光を用いることができる。
【0052】
バイオセンサー表面
リガンドまたは特異的結合物質とは、別の分子に結合する分子である。リガンドと特異的結合物質とは、類似の用語である。リガンドまたは特異的結合物質は、例えば、核酸、ペプチド、細胞外マトリックスリガンド(表1を参照されたい)、タンパク質溶液、ペプチド溶液、一本鎖DNA溶液もしくは二本鎖DNA溶液、RNA溶液、RNA−DNAハイブリッド体溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーに由来する化合物を含有する溶液、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)断片、F(ab’)2断片、Fv断片、有機低分子、細胞、ウイルス、細菌、ポリマー、または生物学的試料でありうる。生物学的試料は、例えば、血液、血漿、血清、消化管分泌液、組織もしくは腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙液、または前立腺液でありうる。ポリマーは、ハイドロゲル、デキストラン、ポリアミノ酸、ならびにポリリシン(ポリ−l−リシンおよびポリ−d−リシンを含む)、ポリ−phe−リシン、ポリ−glu−リシンを含めたこれらの誘導体からなる、1分子当たり複数の活性部位を伴う長鎖分子の群から選択される。本発明の一実施形態では、リガンドが、細胞外マトリックスタンパク質リガンドである。
【0053】
例えば、結合パートナーが、特異的結合物質、リガンド、もしくは決定する細胞に結合するか、またはこれらの特異的結合物質、リガンド、もしくは細胞を何らかの形で変化させる(例えば、細胞を分化または脱分化させる)場合、結合パートナーを、これらの特異的結合物質、リガンド、または細胞に、例えば、添加する。結合パートナーは、例えば、核酸、ペプチド、細胞外マトリックスリガンド(表1を参照されたい)、タンパク質溶液、ペプチド溶液、一本鎖DNA溶液もしくは二本鎖DNA溶液、RNA溶液、RNA−DNAハイブリッド体溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーに由来する化合物を含有する溶液、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)断片、F(ab’)2断片、Fv断片、有機低分子、細胞、ウイルス、細菌、ポリマー、または生物学的試料でありうる。生物学的試料は、例えば、血液、血漿、血清、消化管分泌液、組織もしくは腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙液、または前立腺液でありうる。ポリマーは、ハイドロゲル、デキストラン、ポリアミノ酸、ならびにポリリシン(ポリ−l−リシンおよびポリ−d−リシンを含む)、ポリ−phe−リシン、ポリ−glu−リシンを含めたこれらの誘導体からなる、1分子当たり複数の活性部位を伴う長鎖分子の群から選択される。
【0054】
1または複数のリガンドをバイオセンサーに固定化するときは、すすぎの手順によりリガンドが洗い流されないように、かつ、試験試料中の結合パートナーに対するリガンドの結合が、バイオセンサー表面により妨げられないようにこれを実施する。1または複数のリガンドをバイオセンサー表面に結合させるときは、物理的吸着(すなわち、化学リンカーを用いることがない)による場合もあり、化学結合(すなわち、化学リンカーを用いる)による場合もあるほか、電気化学的結合、静電的結合、疎水性結合、および親水性結合による場合もある。化学結合は、バイオセンサー表面上における、より強力なリガンドの結合を生成させ、この表面結合分子に明確な配向性および立体配座をもたらしうる。本発明の一実施形態では、バイオセンサー表面に固定化はされないが、重力またはそれを覆うように添加されるゲルもしくはゲル様物質によりそれがバイオセンサー表面との会合を維持するように、リガンドまたは特異的結合物質を、バイオセンサー表面と会合させることができる。
【0055】
リガンドまたは特異的結合物質はまた、核酸、ペプチド、タンパク質溶液、ペプチド溶液、コンビナトリアルケミカルライブラリーに由来する化合物を含有する溶液、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)断片、F(ab’)2断片、Fv断片、有機低分子、ウイルス、ポリマー、または生物学的試料などの特異的結合物質を介して、バイオセンサー表面に特異的に結合させることもでき、この場合、該特異的結合物質は、該バイオセンサー表面に固定化される。
【0056】
さらに、リガンドまたは特異的結合物質を、バイオセンサー表面上の1または複数の異なる地点のアレイに配置することもでき、この場合、該表面は、マルチウェルプレートの1または複数のウェル内に属することが可能であり、マルチウェルプレートまたはマイクロアレイの1または複数の表面を含みうる。各々が異なるリガンドを伴う、1または複数の異なる地点を表面が含有するように、リガンドのアレイは、マイクロウェルプレート内のバイオセンサー表面上に1または複数のリガンドを含む。例えば、アレイは、1、10、100、1,000、10,000、または100,000カ所以上の異なる地点を含みうる。したがって、マルチウェルプレートまたはマイクロアレイの各ウェルは、その内部に、該マルチウェルプレートの他のウェルとは別個の、1または複数の異なる地点のアレイを有することが可能であり、これにより、1つのマルチウェルプレート上において、複数の異なる試料を処理することが可能となる。任意の1つのウェル内における1または複数のアレイは、同じマイクロタイタープレートの他の任意のマイクロタイターウェル内で見出される1または複数のアレイと同じである場合もあり、これらとは異なる場合もある。加えて、本発明のアレイは、1または複数の特異的結合物質を、規則的または不規則的な任意の種類のパターンで含みうる。例えば、異なる地点は、1または複数の結合物質のスポットのアレイを規定しうる。アレイスポットは、直径が約10、20、30、40、50、100、200、300、400、または500ミクロンでありうる。
【0057】
特異的結合物質は、本発明のバイオセンサー表面に添加される結合パートナー(すなわち、細胞または該細胞上の分子)に、該細胞が該バイオセンサーに固定化されるように、特異的に結合する。特異的結合物質は、その結合パートナーには特異的に結合するが、バイオセンサー表面に添加される他の結合パートナーには実質的に結合しない。例えば、特異的結合物質が抗体である場合、その結合パートナーは具体的な抗原であり、該抗体は、その具体的な抗原には特異的に結合するが、他の抗原には実質的に結合しない。結合パートナーは、例えば、細胞の場合もあり、核酸、組換え核酸、タンパク質、組換えタンパク質、細胞外マトリックスタンパク質受容体、脂質、または炭水化物など、細胞上または細胞内に存在する任意の分子の場合もある。本発明の一実施形態では、結合パートナーが、バイオセンサー上に固定化された特異的結合物質に結合しうる受容体であり、この場合、該受容体は、細胞の表面上にある。
【0058】
マイクロタイタープレートが、生化学的アッセイに用いられる最も一般的なフォーマットであるが、マイクロアレイも、一度に測定しうる生化学的相互作用の数を最大化しながら、貴重な試薬の容量を最小化するための手段として目されることが多くなりつつある。マイクロアレイスポッターを用いて、特異的結合物質を、本発明の1つのバイオセンサー表面に適用することにより、特異的結合物質10,000個/インチ2の特異的結合物質密度を得ることができる。照射ビームを絞り込んで単一のマイクロアレイ地点を探査することにより、標識を用いないマイクロアレイリードアウトシステムとしてバイオセンサーを用いることができる。
【0059】
リガンドをバイオセンサー表面に固定化するときはまた、例えば、以下の官能基リンカー:ニッケル基、アミン基、アルデヒド基、酸性基、アルカン基、アルケン基、アルキン基、芳香族基、アルコール基、エーテル基、ケトン基、エステル基、アミド基、アミノ酸基、ニトロ基、ニトリル基、炭水化物基、チオール基、有機リン酸基、脂質基、リン脂質基、またはステロイド基への結合を介してこれをもたらすことも可能である。さらに、リガンドをバイオセンサー表面に固定化するときは、物理的吸着、化学結合、電気化学的結合、静電的結合、疎水性結合、または親水性結合、および免疫捕捉法を介することも可能である。
【0060】
本発明の一実施形態では、バイオセンサーを、例えば、ニッケル基、アミン基、アルデヒド基、酸性基、アルカン基、アルケン基、アルキン基、芳香族基、アルコール基、エーテル基、ケトン基、エステル基、アミド基、アミノ酸基、ニトロ基、ニトリル基、炭水化物基、チオール基、有機リン酸基、脂質基、リン脂質基、またはステロイド基などのリンカーによりコーティングすることができる。例えば、アミン表面を用いて、複数種類のリンカー分子を結合させうる一方、アルデヒド表面は、さらなるリンカーなしに、タンパク質に直接結合させるのに用いることができる。ニッケル表面は、ヒスチジン(「his」)タグを組み込んだ分子に結合させるのに用いることができる。ニッケル活性化表面を用いて「hisタグ」分子を検出することは、当技術分野でよく知られている(Whitesides、Anal.Chem.68、490(1996))。
【0061】
リンカー、リガンド、および特異的結合物質をバイオセンサー表面上に固定化するときは、各ウェルが、同じリンカー、リガンド、および/または特異的結合物質をその中に固定化させるようにこれを行うことができる。代替的に、各ウェルには、リンカー、リガンド、および/または特異的結合物質の異なる組合せを含有させることもできる。
【0062】
リガンドまたは特異的結合物質は、バイオセンサー表面上に固定化させたリンカーに特異的に結合する場合もあり、これに非特異的に結合する場合もある。代替的に、バイオセンサー表面がリンカーを有さない場合もあり、リガンドまたは特異的結合物質は、バイオセンサー表面に非特異的に結合しうる。
【0063】
1または複数の特異的結合物質またはリガンドをバイオセンサーに固定化するときは、すすぎの手順により特異的結合物質またはリガンドが洗い流されないように、かつ、試験試料中の結合パートナーに対するリガンドの結合が、バイオセンサー表面により妨げられないようにこれを実施する。例えば、各種のマイクロアレイおよびバイオセンサーで用いられるガラスに特異的結合物質を共有結合させるために、複数の異なる種類の界面化学戦略が実装されている。これらの同じ方法を、本発明のバイオセンサーにも容易に適応させることができる。それが、1または複数の特異的結合物質に結合するのに適正な官能基を含有するように、バイオセンサー表面を調製することは、バイオセンサー製造過程に不可欠な部分である。
【0064】
1または複数の特異的リガンドまたは特異的結合物質をバイオセンサー表面に結合させるときは、物理的吸着(すなわち、化学リンカーを用いることがない)による場合もあり、化学結合(すなわち、化学リンカーを用いる)による場合もあるほか、電気化学的結合、静電的結合、疎水性結合、および親水性結合による場合もある。化学結合は、バイオセンサー表面上における、より強力なリガンドの結合を生成させ、この表面結合分子に明確な配向性および立体配座をもたらしうる。
【0065】
リガンドを、プラスチック、エポキシ、または高屈折率材料へと固定化するときは、本質的に、ガラスへの固定化について説明されている通りに実施することができる。しかし、酸による洗浄ステップを行うなら、特異的結合物質を固定化させる材料を損傷するような場合には、このような処理を取りやめることができる。
【0066】
1または複数のリガンドにより、初代細胞または幹細胞などの細胞を、バイオセンサーに固定化することができる。本発明の一実施形態では、細胞外マトリックスリガンドとの反応を介して、細胞をバイオセンサーに固定化する。インテグリンは、細胞外マトリックス(ECM)と相互作用する細胞表面受容体であり、細胞内シグナルを媒介する。インテグリンは、細胞骨格の構成、細胞の移動性、細胞周期の制御、細胞アフィニティーの制御、ウイルスに対する細胞の付着、他の細胞またはECMに対する細胞の結合の一因となる。インテグリンはまた、細胞が、1つの種類のシグナルまたは刺激を、細胞内および細胞間において、別のシグナルまたは刺激へと転換する過程の一因ともなる。インテグリンは、ECMから細胞へと情報を変換する場合もあり、細胞から他の細胞へ(例えば、他の細胞上におけるインテグリンを介して)またはECMへと情報を変換する場合もある。インテグリンおよびそれらのECMリガンドのリストは、表1に示す通り、Takadaら、Genome Biology 8:215(2007)において見出すことができる。
【0067】
【表1】
【表2】
【0068】
ECMと相互作用する他の細胞表面受容体には、接着斑タンパク質が含まれる。接着斑タンパク質は、細胞の細胞骨格をECMへと連結する大型の複合体を形成する。接着斑タンパク質には、例えば、タリン、α−アクチニン、フィラミン、ビンクリン、接着斑キナーゼ、パキシリン、パービン、アクトパキシン、ネキシリン、フィムブリン、G−アクチン、ビメンチン、シンテニン、ならびに他の多くの接着斑タンパク質が含まれる。
【0069】
ECMと相互作用しうるさらに他の細胞表面受容体には、CD(表面抗原分類)分子が含まれうるがこれらに限定されない。CD分子は、各種の方式で作用し、細胞に対する受容体またはリガンドとして作用することが多い。ECMと相互作用する他の細胞表面受容体には、カドヘリン、アドへリン、およびセレクチンが含まれる。
【0070】
ECMは、細胞に支持体および足場を与えること、組織を互いに分別すること、ならびに細胞内連絡を制御することを含め、多くの機能を有する。ECMは、線維性タンパク質およびグリコサミノグリカンからなる。グリコサミノグリカンは、通常ECMタンパク質に結合して、プロテオグリカン(例えば、硫酸ヘパリンプロテオグリカン、硫酸コンドロイチンプロテオグリカン、硫酸カラチンプロテオグリカンを含めた)を形成する炭水化物ポリマーである。プロテオグリカンとして見出されないグリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸である。ECMタンパク質には、例えば、コラーゲン(線維状コラーゲン、FACITコラーゲン、短鎖コラーゲン、基底膜、ならびに他のコラーゲン形態を含めた)、フィブロネクチン、エラスチン、およびラミニン(ECMタンパク質のさらなる例については、表1を参照されたい)が含まれる。本発明で有用なECMリガンドには、ECMタンパク質、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、およびヒアルロン酸が含まれる。
【0071】
「特異的に結合する(specifically binds)」、「特異的に結合する(specifically bind)」、または「〜に特異的な」とは、細胞表面受容体、例えば、インテグリンまたは接着斑タンパク質などが、他の非特異的分子に対する場合より大きなアフィニティーで、同族の細胞外マトリックスリガンドに結合することを意味する。非特異的分子は、該細胞受容体には実質的に結合しない。例えば、インテグリンα4/β1は、ECMリガンドであるフィブロネクチンには特異的に結合するが、非特異的なECMリガンドであるコラーゲンまたはラミニンには特異的に結合しない。本発明の一実施形態では、細胞表面受容体を細胞外マトリックスリガンドに特異的に結合させると、細胞外マトリックスリガンドは、表面、例えば、バイオセンサー表面に固定化されるので、細胞を該細胞外マトリックスリガンドに固定化することになり、したがって、通常の細胞アッセイにおける洗浄手順によりそれが該表面から洗い流されないように、細胞を該表面に固定化することになる。
【0072】
インテグリンなどの細胞表面受容体を、バイオセンサーに固定化されたECMリガンド、抗体、同族の結合タンパク質、またはペプチド模倣体に結合させることを介して、細胞を、バイオセンサー表面に特異的に固定化することにより、バイオセンサー表面に非特異的に固定化された(すなわち、特異的な結合反応、例えば、それに特異的に結合する抗体に細胞表面受容体を結合させることを介してある細胞を固定化するのではなく、すべての細胞一般を固定化すること)細胞と比較して、バイオセンサー表面に対する細胞の結合、ならびに刺激に対する細胞の応答が劇的に変化する。すなわち、ECMリガンドの結合を介して細胞をバイオセンサーに固定化すると、刺激に対する細胞の応答が、大幅に増強されるかまたは増大して検出される。本発明の一実施形態では、細胞をバイオセンサー表面へと添加するとき、それらを無血清培地内に入れることができる。無血清培地は、約10、5、4、3、2、1、0.5%以下の血清を含有する。無血清培地は約0%の血清を含む場合もあり、約0%〜約1%の血清を含む場合もある。本発明の一実施形態では、1種または複数種のECMリガンドがバイオセンサー表面に固定化されている場合に、細胞を該バイオセンサー表面へと添加する。本発明の別の実施形態では、細胞を、1種または複数種のECMリガンドと組み合わせ、次いで、バイオセンサー表面へと添加する。
【0073】
本発明の一実施形態では、ECMリガンドを精製する。精製ECMリガンドとは、細胞物質、他の種類のECMリガンド、該ECMリガンドを調製するのに用いられる化学的前駆体、化学物質、またはこれらの組合せを実質的に含まないECMリガンド調製物である。他の種類のECMリガンド、細胞物質、培地、該ECMリガンドを調製するのに用いられる化学的前駆体、化学物質などを実質的に含まないECMリガンド調製物が有する他のECMリガンド、培地、調製物で用いられる化学的前駆体、および/または他の化学物質は、約30%、20%、10%、5%、1%未満である。したがって、精製ECMリガンドは、約70%、80%、90%、95%、99%以上純粋である。精製ECMリガンドは、純度70%未満であるECMリガンドの非精製または半精製の調製物または混合物、例えば、ウシ胎仔血清を包含しない。本発明の一実施形態では、ECMリガンドが精製されておらず、ECMタンパク質と、非ECMタンパク質との混合物を含む。非精製ECMリガンド調製物の例には、ウシ胎仔血清、ウシ血清アルブミン、およびオボアルブミンが含まれる。
【0074】
例えば、フィブロネクチンリガンドには結合するが、コラーゲンリガンドまたはラミニンリガンドには結合しないことが知られている、α4/β1インテグリン受容体を発現する細胞は、フィブロネクチンでコーティングしたウェル上において、コラーゲン表面またはラミニン表面上において観察されるPWVシフトの約8〜10倍のPWVシフトを生成させる。それらにコラーゲンまたはラミニンを固定化させたバイオセンサー表面上における、α4/β1インテグリン受容体を発現する細胞についてのPWVシフトは、BSAでコーティングした対照ウェル上において観察される、バックグラウンドの細胞結合シグナルに類似している。
【0075】
本発明の一実施形態では、ECMリガンドが、細胞表面上に存在する細胞表面受容体、例えば、インテグリンまたは接着斑タンパク質に特異的であると、ECMリガンドに対する細胞結合が、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20倍以上(または2〜20倍の任意の範囲で)増大して検出される。本発明の別の実施形態では、細胞が、細胞表面受容体、例えば、インテグリンに特異的なECMリガンドによりバイオセンサー表面に固定化されていると、刺激に対する細胞応答が、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20倍以上(または2〜20倍の任意の範囲で)増大して検出される。
【0076】
細胞を、リガンド、ECM、または他の手段を介してバイオセンサーに結合させたら、1または複数のリガンドを該細胞に添加して、該細胞が該1または複数のリガンドに対して示す反応を決定することができる。
【0077】
液体含有容器
バイオセンサーは、液体含有容器の内部表面、例えば、底面を含みうる。液体含有容器は、例えば、マイクロタイタープレートウェル、試験管、ペトリディッシュ、マイクロアレイスライド、顕微鏡スライド、バイオセンサー表面、またはマイクロ流体チャネルでありうる。本発明の一実施形態は、任意の種類のマイクロタイタープレートへと組み込まれるバイオセンサーである。例えば、各反応「スポット」が、異なる試験試料へと曝露されうるよう、反応容器の壁面が、バイオセンサー表面を覆うように構成することにより、マイクロタイタープレートの底面へとバイオセンサーを組み込むことができる。したがって、個々のマイクロタイタープレートウェルが、個別の反応容器として作用しうる。したがって、隣接するウェルなど、各個の容器内において、反応流体を混じり合わせることなく、個別の化学反応を生じさせることができ、化学的に異なる試験溶液を、個々の容器へと適用することができる。
【0078】
本発明のバイオセンサーまたは回折格子を、ボトムレスのマイクロタイタープレート底面へと接合するには、例えば、接着剤による接合、超音波による溶接、ならびにレーザーによる溶接を含め、複数の方法を用いることができる。
【0079】
薬学的なハイスループットスクリーニングのための検査室、分子生物学的研究のための検査室、ならびに診断アッセイのための検査室に最も一般的なアッセイフォーマットは、マイクロタイタープレートである。これらのプレートは、格子状に配置された約2、6、8、24、48、96、384、1536、3456、9600個以上の個々の反応容器を格納しうる、標準サイズのプラスチック製カートリッジである。これらのプレートは、標準的な機械的構成を有するため、液体の分注、ロボットによるプレートの操作、ならびに検出システムは、この一般的なフォーマットと共に作動するようにデザインする。本発明のバイオセンサーは、標準的なマイクロタイタープレートの底面へと組み込むことができる。バイオセンサー表面は、大表面積で作製することが可能であり、かつ、リードアウトシステムは、バイオセンサー表面と物理的に接触しないため、任意の数の個々のバイオセンサー領域を規定するときは、これらを限定するものが照射光学機器の焦点解像度、ならびにバイオセンサー表面全体にわたり照射/検出プローブを走査させるx−yステージだけであるように規定することができる。
【0080】
バイオセンサーを用いる方法
本発明のバイオセンサーは、1または多数の特異的結合物質/リガンドと結合パートナーとの相互作用を、並行して調べるのに用いることができる。1または複数の特異的結合物質またはリガンドが、それらの各々の結合パートナーに結合することを検出するときは、1または複数の結合パートナー(例えば、受容体を保有する細胞もしくは抗原または特異的結合物質に結合する他の分子)を、個々の異なる地点において1または複数の特異的結合物質をそれ自体に固定化させたバイオセンサー表面へと適用することにより、標識を用いることなしにこれを検出することができる。本発明の一実施形態では、1または複数の特異的結合物質が、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質リガンドであり、かつ、1または複数の結合パートナーが、細胞上における受容体であり、この場合、該受容体(例えば、インテグリン)は、細胞外マトリックスタンパク質リガンドに特異的である。バイオセンサーを光で照射し、バイオセンサーの異なる各地点から、光の反射波長の極大値または透過波長の極小値を検出する。回折格子ベース導波路バイオセンサーからのシグナルも、比色共鳴反射光バイオセンサーの場合と同様の方式で検出し、互いと、または対象と比較する。本明細書で説明されるすべてのアッセイまたは方法は、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折異常バイオセンサー、回折格子バイオセンサー、誘電積層バイオセンサー、および回折格子ベース導波路バイオセンサー上において実施することができる。比色共鳴反射光バイオセンサー上において、1または複数の特異的結合物質が、1または複数の結合パートナーに結合している場合は、1または複数の特異的結合物質がそれらの各々の結合パートナーに結合していない状況と比較して、光の反射波長が、その異なる地点においてシフトする。バイオセンサーが、1または複数の特異的結合物質を含有する、1または複数の異なる地点のアレイでコーティングされている場合は、光の反射波長の極大値または透過波長の極小値が、該バイオセンサーの各々の異なる地点から検出される。1または複数の特異的結合物質が、回折格子ベースのバイオセンサー上において、それらの各々の結合パートナーに結合している場合は、有効屈折率変化が生じる。
【0081】
本発明の一実施形態では、各種の特異的結合物質、例えば、細胞受容体または細胞性抗原に特異的であるか、細胞が1または複数のウイルスに感染した場合に細胞表面上において発現するか、下方制御されるか、もしくは上方制御されるタンパク質(Liangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2005)、102:5838を参照されたい)に特異的であるか、またはアポトーシスを随伴させる細胞が発現させるタンパク質(例えば、p53リガンド、TNF−αリガンド、TNF−βリガンド、Fasリガンドが上方制御され;ニューロン成長因子およびIL−2が下方制御される)に特異的である特異的結合物質を、アレイフォーマットで、本発明のバイオセンサー上に固定化することができる。次いで、バイオセンサーを、ECMリガンド受容体、例えば、インテグリンまたは接着斑タンパク質を保有する細胞などの結合パートナーを含む、対象の試験試料と接触させる。特異的結合物質に特異的に結合する細胞だけが、バイオセンサー表面上に固定化される。本発明の一実施形態では、ECMリガンドを介して結合した細胞は、結合していない細胞と異なり、刺激に対して応答しうる。刺激、試験試薬、またはインキュベーション時間に対する細胞の応答を検出するのに、酵素標識、放射性標識、または蛍光標識などの検出可能な標識の使用は必要とされない。ハイスループット適用の場合は、バイオセンサーをアレイのアレイに配置することができ、この場合、特異的結合物質のアレイを含む複数のバイオセンサーを、アレイに配置することができる。例えば、このようなアレイのアレイをマイクロタイタープレートへと浸漬して、一度に多くのアッセイを実施することができる。別の実施形態では、バイオセンサーをファイバープローブの先端に配置して、生化学物質をin vivoで検出することができる。代替的に、細胞をECMリガンドと混合するか、または細胞およびECMの混合物として誘導し、次いで、バイオセンサー表面へと添加することもできる。
【0082】
バイオセンサーに添加される細胞は、細菌細胞または古細菌細胞などの原核細胞の場合もあり、動物細胞、真菌細胞、植物細胞、および原生生物細胞などの真核細胞の場合もある。細胞は、ヒト細胞などの哺乳動物細胞でありうる。本発明のバイオセンサーには、任意の量の細胞を添加することができる。例えば、約1、2、3、4、5、10、15、50、100、150、200、300、500、1,000、10,000、100,000個以上の細胞(または約1〜100,000個の任意の範囲または値;例えば、約50個〜約100個、約50個〜約200個、約50個〜約500個、約50個〜約1,000個)を、本発明のアッセイで用いることができる。
【0083】
本発明の一実施形態は、リアルタイムで生じる、細胞増殖パターンの変化、細胞による細胞表面受容体などの分析物の上方制御もしくは下方制御または発現の変化(例えば、細胞受容体もしくは分析物の発現が増大もしくは減少すること、またはある刺激に応答する細胞受容体もしくは分析物の発現がある時間にわたり変化すること(例えば、細胞をバイオセンサー表面上に固定化してインキュベートすると細胞受容体の発現が上昇し、その後、該細胞に刺激を加えると細胞受容体の発現が低下すること))、細胞死パターンの変化、細胞分化の変化、細胞移動の変化、細胞サイズまたは細胞容量の変化、あるいは細胞接着の変化などの細胞変化を、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは回折格子ベース導波路バイオセンサーにより、かつ、放射測定標識、比色標識、または蛍光標識を組み込む必要なしに、またはこれらによる干渉なしに、直接検出することを可能とする(但し、望ましい場合、標識を使用することもできる)。細胞の挙動および形態の変化は、該細胞が撹乱されるときに検出することができる。次いで、BIND(登録商標)READER(すなわち、比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)などの高速高解像度の装置、ならびにデータを定量化するための、対応するアルゴリズムを用いて、細胞の変化をリアルタイムで検出することができる。例えば、米国特許第7,422,891号;同第7,327,454号;同第7,301,628号;同第7,292,336号;同第7,170,599号;同第7,158,230号;同第7,142,296号;同第7,118,710号を参照されたい。この方法と、装置と、コンピュータによる解析とを組み合わせることにより、細胞挙動を、標識を伴わない形で、リアルタイムで適切にモニタリングする(すなわち、細胞が刺激または試験試薬に応答しつつある瞬間において、かつ、細胞が刺激または試験試薬に応答しつつあるある時間にわたり、細胞反応を、適切かつ好都合な形で、観察および定量化する)ことができる。標識を伴わない形とは、細胞が、それらと結合または会合し、かつ、それらまたはそれらに対する変化を検出するのに用いられる標識(例えば、蛍光標識、放射性標識、酵素標識、標識のアフィナント、磁気標識、化学発光標識、発光標識、生物発光標識、化学標識など)を有さないことを意味する。検出可能な標識(例えば、蛍光標識、放射性標識、酵素標識、標識のアフィナント、磁気標識、化学発光標識、発光標識、生物発光標識、化学標識など)は、細胞と結合または会合し、かつ、細胞または細胞の変化を検出するのに用いられる。リアルタイムのモニタリングは、アッセイの全経過(アッセイの種類に応じて、例えば、約1、2、3、4、5、10、20、30、45、もしくは60分間、または約1、2、3、4、5、10、12、24、もしくは48時間、または約1、2、3、4、5、10、20もしくは30日間)にわたり、バイオセンサー表面から複数のリーディング(例えば、約0.001、0.01、0.1、1.0、5、10、20、30、40、50、または60秒間ごと、約1、2、3、4、5、10、20、30、45、または60分間ごと、約1、2、6、12、または24時間ごと)を記録するときに行う。
【0084】
SRU Biosystems,Inc.(マサチューセッツ州、ウォーバーン)製のBIND(商標)法などの比色共鳴反射光バイオセンサーは、ナノスケールの生体系に由来する集塊の結合に関して、表面に対する変化を測定する能力を有する。該装置の解像度が改善されるのに応じて、比色共鳴反射光バイオセンサーが既に実装されている適用および方法も変化している。かつては、比色共鳴反射光バイオセンサー表面に結合した細胞の量を測定することが、第1の目標であった。しかし、解像度の低い一部の細胞画像を検討するうちに、占有されるピクセル数、シグナル/ピクセルの強度、各ピクセルのPWVの変化などに関して、細胞が示差的なシグナルをもたらすことが注目された。これらのデータのばらつきを低減しようと努めるうちに、このばらつきは、個々の細胞内にあること、ならびにそれらが刺激に対して示す示差的な形態的応答の中にあることが明らかとなった。これらの細胞イベントをさらに探索するために、BIND(登録商標)READER(すなわち、比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)の高解像度バージョンである、BIND(登録商標)SCANNER(高解像度の比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)が構築された。例えば、米国特許第7,301,628号;同第7,298,477号;同第7,148,964号;同第7,023,544号を参照されたい。
【0085】
BIND(登録商標)SCANNER(すなわち、高解像度の比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)は、高解像度のレンズを有する。このレンズの解像度は、約2、3、3.75、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、50、100、200、500、1,000、または2,000マイクロメートル(または約2〜約2,000マイクロメートルの任意の範囲、例えば、2〜5、2〜3.75、2〜10、2〜15、8〜12、2〜20、2〜50、2〜100、2〜200、または2〜300マイクロメートル)である。加えて、より良好な解像度でリアルタイムの細胞変化を解析するための方法も開発されている。BIND(登録商標)SCANNERが高解像度であることの利点は、単一のウェルまたは容器内の異なるピクセル位置における波長シフトの解析を可能とすることである。このスキャナーにより、バイオセンサーのマイクロタイターウェルの全体を読み取ることもでき、該ウェルまたは表面の小部分だけを読み取ることもできる。
【0086】
本発明の方法を用いて、細胞増殖パターンの変化、または細胞受容体もしくは分析物の発現の変化を含めた細胞変化を検出することができる。略述すると、比色共鳴反射率光学バイオセンサー上に細胞を固定化することができ;PWVを検出し;該細胞を、試験試薬、インキュベーション、または刺激にかけ;PWVを検出し;初期のPWVと後続のPWVとを比較することができるが、この場合、初期のPWVが、後続のPWVと比べて異なることから、細胞増殖パターンの変化、または他の細胞変化が示唆される。また、場合によって、アッセイ経過の複数の時点においてPWVの変化を決定および記録し、かつこれらを比較することもできる。
【0087】
細胞増殖(growth)パターンの変化は、細胞形態、細胞接着、細胞移動、細胞増殖(proliferation)、および細胞死からなる群から選択することができる。1つの細胞型の原核細胞もしくは真核細胞、または2つ以上の細胞型の原核細胞もしくは真核細胞を、バイオセンサー上に固定化することができる。
【0088】
本発明の方法は、例えば、走化性アッセイ、低細胞数アッセイ、分化アッセイ、移動アッセイ、結合アッセイ、細胞浸潤アッセイ、接着アッセイ、細胞の分化状態についての生物学的プロファイリングを含めた、初代細胞および幹細胞などの細胞の変化を検出するための固有の機会を提供する。
【0089】
本発明のバイオセンサーシステムはまた、光の反射波長のシフトを測定することにより、アレイを規定する1または複数の異なる地点に結合させた、試料に由来する結合パートナーの量を検出および定量化することも可能である。例えば、1または複数の異なる地点における波長シフトを、他の異なる地点における陽性対照および陰性対照と比較して、結合した特異的結合物質の量を決定することができる。重要なことは、このように多数の1または複数の異なる地点をバイオセンサー表面上に配置することができ、かつ、該バイオセンサーが、約2、6、8、24、48、96、384、1536、3456、9600個以上のマイクロタイタープレートウェルなどの容器の内部表面を含みうることである。例として述べると、96個のバイオセンサーを保持固定具に接合し、各バイオセンサーが約100個ずつの異なる地点を含む場合は、約9600の生化学的アッセイを同時に実施することができる。
【0090】
細胞を分取、解析、および定量化する方法
本発明の方法は、細胞混合集団から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20以上の細胞型を分取し、該分取された細胞が、刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出する方法であって、該分取および検出を、1つのバイオセンサー表面上において行う方法を提供する。細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面または他のバイオセンサー表面に適用するが、この場合、該バイオセンサーは、その表面に1または複数の特異的結合物質(例えば、抗体またはECMリガンド)を固定化させており、該1または複数の特異的結合物質は、該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に潜在的に結合しうる。場合によって、該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサーの該表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにする。該1または複数の結合した細胞型を、刺激、試験試薬、インキュベーション、またはこれらの組合せへと曝露する。PWVのシフトまたは有効屈折率変化を検出することにより、1または複数の結合した細胞型が刺激に対して示す応答を検出する。PWVおよび有効屈折率は、ある時間にわたり比較することもでき、リアルタイムで比較することもでき、陰性対照または陽性対照と比較することもできる。したがって、1つのバイオセンサー表面を用いて、混合集団内における1または複数の細胞型が、刺激、試験試薬、インキュベーション、またはこれらの組合せに対して示す応答を分取、検出、定量化、および/または解析することができる。
【0091】
細胞の分取は、混合集団試料のうちのすべてに満たない細胞型を、バイオセンサー表面に固定化することでありうるが、この場合、固定化されなかった試料細胞は、場合によって、洗い流す。細胞の分取はまた、1つの細胞型を、バイオセンサー上における1つの異なる地点に固定化することを指しうるが、1または複数の他の細胞型を、該バイオセンサー上における他の異なる地点に固定化することでもある。固定化されなかった細胞は、場合によって、洗い流すこともでき、バイオセンサー表面上に保持することもできる。
【0092】
本発明の方法はまた、細胞混合集団から1、2、またはこれを超える数の細胞型を分取し、かつ、1つのバイオセンサー表面上において該1または複数の細胞型により生成される、該細胞の細胞内分析物または他の分析物を検出する方法も提供する。本発明の一実施形態では、細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、または1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面へと適用する。該1つのバイオセンサー表面は、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させていることが可能であるが、この場合、該2つ以上の特異的結合物質は、(i)該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)該1または複数の細胞型に由来する1または複数の細胞内分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含む。該第1および第2の特異的結合物質は、異なる場合もあり、同じである場合もある。場合によって、該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサー表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにすることもできる。該1または複数の結合した細胞型は、例えば、生物学的界面活性剤、TWEEN(登録商標)、TRITON(登録商標)、NP40、Brij、オクチル−ベータ−チオグルコピラノシド、ジギトニン、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、高濃度の塩、またはこれらの組合せにより、溶解させるかまたは透過処理する。代替的に、細胞をある時間にわたりインキュベートするか、または刺激へと曝露し、次いで、場合によって、インキュベートした後に溶解させることもできる。溶解、透過処理、インキュベーション、刺激への曝露(またはこれらの任意の組合せ)の後、バイオセンサー表面から、結合しなかった任意の細胞内分析物を、場合によって、洗い流すことができる。バイオセンサーの異なる各地点において、PWVシフトまたは有効屈折率変化を検出することにより、該バイオセンサーの該表面に固定化された該細胞内分析物を検出する。PWVおよび有効屈折率は、ある時間にわたり比較することもでき、陰性対照または陽性対照と比較することもできる。したがって、混合集団細胞試料を用いて、該混合集団細胞試料中における1または複数の特定の細胞型の細胞内成分を分取、検出、定量化、および/または解析することができる。細胞内分析物または他の分析物は、例えば、タンパク質、RNA、DNA、炭水化物、脂質、細胞受容体、あるいは細胞上もしくは細胞内に存在するか、または細胞により生成される他の任意の分子でありうる。
【0093】
本発明の別の実施形態では、細胞混合集団から1、2、またはこれを超える数の細胞型を分取し、かつ、ただ1つのバイオセンサー表面を用いて、該1または複数の細胞型から分析物を検出することができる。細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、または1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面へと適用する。該1つのバイオセンサー表面は、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させていることが可能であるが、この場合、該2つ以上の特異的結合物質は、(i)該細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、ならびに(ii)該1または複数の細胞型に由来する1または複数の分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含む。該バイオセンサーの該表面から、結合しなかった細胞を、場合によって洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサー表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにする。該細胞を試験試薬と接触させるか、もしくはインキュベートするか、もしくは刺激にかけるか、またはこれらの組合せを行う。該バイオセンサー表面に固定化された分析物を検出する。PWVシフトまたは有効屈折率変化を検出することにより、該バイオセンサー表面に固定化された分析物を検出する。PWVおよび有効屈折率は、ある時間にわたり比較することもでき、陰性対照または陽性対照と比較することもできる。分析物は、例えば、タンパク質、RNA、DNA、炭水化物、脂質、または、インキュベーション、試験試薬、もしくは刺激への曝露に応答して、細胞により生成される他の任意の分子でありうる。
【0094】
1または複数の細胞型に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質と、1もしくは複数の細胞型に由来する1もしくは複数の細胞内分析物または他の分析物に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質とをバイオセンサー表面に固定化する場合は、1または複数の細胞型に特異的に結合する該1または複数の特異的結合物質を、該バイオセンサー表面の1つの異なる地点に置き、1もしくは複数の細胞型に由来する1もしくは複数の細胞内分析物または他の分析物に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質を、第2の異なる地点に置くことができる。1または複数の細胞型に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質、ならびに1もしくは複数の細胞型に由来する1もしくは複数の細胞内分析物または他の分析物に特異的に結合する1または複数の特異的結合物質の各々を、1つのバイオセンサー表面上におけるその固有の異なる地点に置くことができる。代替的に、異なる種類の特異的結合物質を、1つのバイオセンサー表面上における1つの異なる地点に置くこともでき、これらを併せて混合することもできる。1つのバイオセンサー表面、ならびにバイオセンサー表面上における1つの地点は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30種類以上の特異的結合物質を含みうる。
【0095】
1つのバイオセンサー表面は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、500、1,000カ所以上の異なる地点を含みうる。各異なる地点は、その上に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100以上の特異的結合物質を固定化させうる。例えば、1つのバイオセンサー表面は、2つの異なる地点を有しうる。第1の異なる地点には、1種類の特異的結合物質を固定化することができる。第2の異なる地点には、他の特異的結合物質とは異なる種類の2つの特異的結合物質を固定化することができる。
【0096】
本発明の方法はまた、2つ以上の細胞型(例えば、2、3、4、5、10、15、20以上の細胞型)を、細胞混合集団から、1つのバイオセンサー表面上における2つ以上の異なる地点へと分取するのに用いることもできる。例えば、2種類以上の特異的結合物質(例えば、2、3、4、5、10、15、20種類以上)を2つ以上の異なる地点に固定化させている1つのバイオセンサー表面に、例えば、約2、3、4、5、10、15、20、または30種類を超える細胞を含有する細胞混合集団を添加することができる。2つ以上の特異的結合物質は、細胞混合集団に由来する2つ以上の細胞型に結合し、これらを固定化しうる。したがって、1つのバイオセンサー表面上における2つ以上の異なる地点へと、細胞が分取される。結合しなかった細胞は、細胞混合集団から洗い流すことができる。次いで、細胞を刺激することもでき、試験試薬にかけることもでき、溶解させることもでき、透過処理することもできる。検出、数え上げ、および解析は、アッセイの各ステップで実施することができる。
【0097】
本発明の一実施形態は、1つのバイオセンサー表面上に固定化された、特異的結合物質に特異的に結合した、細胞上における結合パートナー、例えば、細胞受容体または細胞表面抗原の数または量を定量化する方法を提供する。細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、または1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面へと適用する。該1つのバイオセンサー表面は、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させているが、この場合、該1または複数の特異的結合物質は、1または複数の結合パートナー、例えば、細胞表面上、細胞混合集団内の細胞上における細胞受容体もしくは他のタンパク質または分析物に特異的に結合する。該バイオセンサー表面から、結合しなかった細胞を、場合によって洗い流して、該1または複数の細胞型が、該バイオセンサー表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにする。該細胞を、場合によって、試験試薬と接触させるか、もしくはインキュベートするか、もしくは刺激にかけるか、またはこれらの組合せを行う。PWVシフトまたは有効屈折率変化を検出することにより、該バイオセンサー表面に結合した細胞または細胞受容体の量を解析する。PWVおよび有効屈折率は、ある時間にわたり比較することもでき、陰性対照または陽性対照と比較することもできる。例えば、対照値と比較することにより、細胞上における結合パートナーの量を決定することができる。対照値は、既知数の細胞受容体または細胞表面抗原を含む細胞から導出することができる。
【0098】
本明細書で説明されるすべてのアッセイについて、PWVおよび有効屈折率のリーディングは、各回の洗浄またはバイオセンサー表面への添加の前に記録することもでき、各回のバイオセンサー表面への添加時において記録することもでき、各回の洗浄またはバイオセンサー表面への添加の後に記録することもでき、各回のインキュベーション時間の前または後に記録することもでき、これらの組合せにおいて記録することもできる。PWVまたは有効屈折率のリーディングはまた、アッセイの経過にわたり、リアルタイムで連続的に記録することもできる。
【0099】
細胞混合集団、または「2つ以上の細胞」は、約2、3、4、5、10、15、20、30以上の異なる細胞型を含む。細胞混合集団(または「2つ以上の細胞」)は、異なる細胞型の任意の混合物、例えば、赤血球、白血球、および血小板の混合物;異なる種類の細菌の混合物;生物学的試料中に存在する異なる細胞型の混合物;幹細胞の混合物;ならびに分化した細胞型の混合物を含みうる。幹細胞集団内の細胞は、異なる分化段階にあることが多いため、幹細胞集団は、細胞混合集団であると考えることができる。細胞混合集団は、例えば、肺吸引物試料、痰試料、唾液試料、血液試料、血漿試料、組織試料、便試料、尿試料、骨髄試料、リンパ節試料、環境試料、食物試料でありうる。細胞混合集団は、部分精製されている場合もあり、精製されていない場合もあり、濃縮されている場合もあり、濃縮されていない場合もあり、希釈されていない場合もある。組織試料または便試料などの試料は、分断させて緩衝液中に懸濁させた後で用いることができる。細胞混合集団は、約2、3、4、5、10、15、20、30以上の細胞型を含むことが予測される、生検物質でありうる。生検には、微細針吸引により捕集された組織、コア針生検、真空支援生検、切開手術生検、皮膚生検(例えば、薄片生検、パンチ生検、切開生検、切除生検、または掻爬生検)が含まれうる。生検では、例えば、骨髄組織、子宮内膜組織、皮膚組織、リンパ節組織、肝組織、肺組織、消化管組織、腎組織、移植内臓組織、または精巣組織を捕集しうる。一般に、細胞混合集団は、バイオセンサー表面に固定化された特異的結合物質に潜在的に結合する2つ以上の細胞型を含有する。すなわち、細胞混合集団のうち、細胞のサブセット(すなわち、1または複数の細胞型)だけを、バイオセンサー表面に固定化された1または複数の特異的結合物質に結合させることによって、バイオセンサー表面に固定化する。特異的結合物質に結合しない、細胞混合集団内の細胞は、場合によって、バイオセンサー表面から洗い流すこともでき、バイオセンサー表面上に残すこともできる。1つの細胞型は、細胞型のクラス、例えば、すべてのリンパ球の場合もあり、1つの具体的な細胞型、例えば、1つの特定の種類のリンパ球、例えば、T細胞の場合もあり、1つの特定の種類のT細胞、例えば、CD8+ T細胞の場合もある。
【0100】
生物から直接採取した外植片(例えば、生検物質)の増殖物は、初代細胞培養物として知られている。初代細胞培養物は、細胞型混合集団からなりうる。これらの細胞混合集団から初代細胞を分取および精製するのに必要とされる時間および過程は、アッセイの結果に否定的な影響を及ぼしうる。加えて、これらの方法により抽出される細胞の数は、通常限定的であり、極めて少数の細胞個数/ウェルで可能とされうるアッセイを、初代培養細胞と共に用いるのに魅力的なものとしている。アッセイの結果を望ましくない形で撹乱する、長時間にわたる単離手順なしに、初代細胞集団の特定のサブセットの状態、活性、および受容可能性を決定するための方法が必要とされている。本発明の方法を用いると、細胞ならびにアッセイの結果に悪影響を及ぼすことなく、初代細胞を分取、検出、定量化、および/または解析することができる。初代細胞培養物には、T細胞、B細胞、幹細胞、NK細胞、単球、樹状細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、白血球、星状細胞、心筋細胞、肝細胞、ニューロンが含まれるがこれらに限定されない。初代細胞を用いて行われることが典型的なアッセイには、GPCRアッセイ、RTKアッセイ、イオンチャネルアッセイ、siRNAアッセイ、ウイルス感染アッセイ、内部標的応答アッセイ、毒性アッセイ、増殖アッセイなどの刺激試験および機能試験が含まれる。他のアッセイでは、特定の細胞型(複数可)の存在、不在、または調節、細胞表面タンパク質(複数可)の存在、不存在、または調節について調べ、さらに、分取された細胞型を刺激に対する応答について調べる。一例として述べるなら、試験は、細胞を意図的に混合する(他の細胞の存在下において、細胞が変化を引き起こすように)ステップと、次いで、該意図的な混合物を、個々の細胞型成分へと再度分取するステップと、他の細胞の存在下において誘導された該変化(複数可)をさらに調べるステップとを伴いうるであろう。例えば、健康な細胞株を健康でない同じ細胞型と混合して、疾患特徴の転移について検討することができる。臨床状況における別の例であれば、医薬に対する応答について患者の細胞を調べた後で、処方するステップが含まれうるであろう。別の臨床状況における試験であれば、癌マーカーについて、患者の細胞を、オンサイトかつリアルタイムで分取し、定量化し、かつ調べるステップを伴いうるであろう。
【0101】
1つのバイオセンサー表面は、細胞混合集団と接触している、1つのバイオセンサーの表面上における1つの部分(例えば、マイクロ流体チャネル、ウェル、表面の1つの異なる部分)でありうる。バイオセンサーをマイクロウェルプレートへと組み込む場合は、各ウェルが、1つのバイオセンサー表面となる。マイクロタイタープレート内における各ウェルは、異なる特異的結合物質または特異的結合物質の異なる組合せをその上に固定化させていることが可能であり、これにより、1または複数の異なる細胞、ならびに1種または複数種の異なる刺激、インキュベーション、または試験試薬によりプローブしうる、特異的結合物質のパネルまたは特異的結合物質の組合せが作製される。
【0102】
細胞を刺激しうる化合物または分析物には、例えば、ホルモン、増殖因子、医薬、試験医薬、分化因子、モルフォゲン、サイトカイン、ケモカイン、インスリン、EGF、ATP、UTP、カルバノイルコリン、アセチルコリン、エピネフリン、ムスカリン、浸透圧変化を誘導する化合物、膜の脱分極を誘導する化合物、低分子の試験化合物、ウイルス、抗体、タンパク質、ポリペプチド、抗原、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体(scFv)、F(ab)断片、F(ab’)2断片、RNA、DNA、siRNA、Fv断片、有機低分子、細胞、細菌、および生物学的試料、例えば、血液、血漿、血清、消化管分泌液、組織もしくは腫瘍のホモジネート、滑液、便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙液、および前立腺液、ならびに細胞に潜在的に影響を及ぼしうる他の任意の分子または化合物が含まれる。他の刺激には、例えば、温度、pH、圧力の変化、ならびに他の環境因子の変化が含まれうる。
【0103】
刺激には、細胞を「活性化」または「プライミング」する刺激が含まれる。刺激は、細胞の生化学的活性および機能的活性を変化させることにより、細胞を活性化またはプライミングする。細胞の活性化には、転写因子、癌遺伝子、サイトカイン、初期応答遺伝子、細胞表面分子、接着分子をコードする遺伝子を含めた、多数の新規の遺伝子、ならびに他の遺伝子の発現を急速に誘導することが随伴する。例えば、刺激によりマクロファージまたは単球が活性化される場合は、それらが、移動性の低下、新規の表面抗原の発現、プラスミノーゲン活性化因子の合成、腫瘍細胞に対する細胞傷害作用の増強、サイトカインの生成および放出の増大、プロスタグラジン/ロイコトリエン合成の増大、反応性酸素中間物質の生成の増大、ならびに他の変化を呈しうる。活性化した細胞は、例えば、タンパク質または他の分析物の生成を発現させる場合もあり、下方制御する場合もあり、上方制御する場合もある。例えば、炎症時において、ヒスタミンまたはトロンビンにより、内皮細胞が活性化されると、例えば、内皮細胞内では、細胞接着分子であるP−セレクチンが、細胞内のある地点から内皮細胞表面へと移動する。活性化細胞の表面上において、新規の抗原を、相特異的に発現させることにより、細胞の異なる活性化状態を同定および分類することができ、これは、本発明の方法を用いて決定することができる。
【0104】
刺激の性質に応じて、選択された機能だけについて細胞をプライミングすることができ、細胞に全スペクトルにわたる機能的能力を達成させないことが可能である。例えば、マクロファージ脱活性化因子など、一部の刺激が、既に活性化した細胞を脱活性化しうるという意味で、活性化過程およびプライミング過程はまた、可逆化することも可能である。
【0105】
本発明の一実施形態では、細胞が活性化またはプライミングされると、発現するか、上方制御されるか、または下方制御される分析物またはタンパク質に結合するかまたは潜在的に結合する特異的結合物質を、バイオセンサー表面に固定化する。細胞混合集団(または精製細胞集団)を、活性化またはプライミングし(すなわち、1または複数の刺激へと曝露し)、バイオセンサー表面へと添加する。代替的に、細胞混合集団をバイオセンサー表面へと添加し、次いで、活性化またはプライミングすることもできる。バイオセンサー表面上における特異的結合物質に結合する細胞は、該細胞表面に固定化される。場合によって、結合しなかった細胞は、該バイオセンサー表面から洗い流すこともできる。こうして、細胞を、分取、検出、定量化、および解析することができる。場合によって、細胞にさらなる刺激を加え、それらの応答を検出することもできる。
【0106】
本発明の別の実施形態では、細胞を活性化またはプライミングし、次いで、アンタゴニスト、抗体、または薬物など、細胞活性を阻害しうる刺激を添加することにより、細胞活性の阻害について調べることができる。例えば、細胞(混合集団または精製集団)を、活性化またはプライミングし、次いで、細胞が活性化またはプライミングされると発現するか、上方制御されるか、または下方制御される分析物またはタンパク質に結合するかまたは潜在的に結合する特異的な結合物質をその表面に固定化させたバイオセンサー表面へと、これらを添加することができる。場合によって、細胞をバイオセンサー表面へと添加し、次いで、これらをプライミングまたは活性化することもできる。細胞の活性化または細胞のプライミングを阻害しうる1または複数の刺激をバイオセンサー表面へと添加し、該刺激に対する細胞の応答を検出することができる。このような形で、バイオセンサー表面上において、細胞を分取、検出、定量化、および解析することができる。
【0107】
本発明の方法は、組織の類別に用いることができるが、この場合は、ドナーおよびレシピエントの組織、血液、または血液生成物を調べた後で、移植または輸血を行う。例えば、胚を含め、任意の組織または血液生成物を、組織の類別にかけることができる。本発明の方法は、例えば、HLA−A遺伝子座、HLA−B遺伝子座、HLA−C遺伝子座、HLA−DP遺伝子座、HLA−DQ遺伝子座、およびHLA−DR遺伝子座における表現型を確立することにより、組織の類別を実施するのに用いることができ、これを用いて、反応性抗体の百分率を決定することができる。本発明の方法はまた、これを交差適合検査において用いて、提供された血液ユニットがその意図されるレシピエントに対して示す適合性を決定することもできる。一例では、白血球に結合する特異的結合物質を固定化させたバイオセンサー表面へと、ドナーの全血液を添加する。全血液試料に由来する非結合細胞は、洗い流される。レシピエントの血清(例えば、刺激)を、該バイオセンサーへと添加し、反応を検出する。ドナーの白血球が損傷されれば、陽性の交差適合が結果として得られ、輸血は適応でないことが示される。
【0108】
特異的結合物質が、細胞上における特異的な抗原または受容体に結合する特異的な抗体またはリガンドである、本発明の方法により細胞を分取し、数え上げ、検出し、かつ解析することは、例えば、移植;血液学;腫瘍の免疫療法および化学療法;男女産別法のための遺伝学および精子の分取;細胞表面に表示される、所望の特性を伴うタンパク質変異体を、酵母ディスプレイライブラリーおよび細菌ディスプレイライブラリーにより同定することへと適用される。
【0109】
本発明の方法はまた、細胞の容量および形態の複雑さを検討すること;細胞周期を解析し、細胞増殖などの細胞動態を検討すること;染色体を解析および分取すること;細胞タンパク質の発現および局在化を検討すること;タンパク質の修飾(例えば、リンタンパク質)を検討すること;in vivoにおけるトランスジェニック生成物(例えば、緑色蛍光タンパク質、またはCDマーカーなどの細胞表面抗原)の発現を検討すること;細胞内抗原(例えば、サイトカイン、二次的メディエーター)の生成を検討すること;核内抗原の生成を検討すること;酵素活性を検討すること;pH、細胞内におけるイオン化カルシウム、マグネシウム、および膜電位をモニタリングすること;膜の流動性を検討すること;アポトーシスを検討すること;細胞の生存を検討すること;細胞の電気透過処理をモニタリングすること;酸化バーストを検討すること;癌細胞における多剤耐性(MDR)を特徴づけること;グルタチオン生成を検討すること、ならびにこれらの組合せを行うことにも用いることができる。一例では、細胞をバイオセンサーに固定化し、Gタンパク質結合受容体を刺激する化合物、例えば、刺激性であるカルバコール、ならびに競合的アンタゴニストであり、ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)に影響を及ぼすアトロピンにより処理する。これらの効果は、本発明を用いて検出可能である。
【0110】
他の例では、本発明の方法を用いて、免疫表現型試験、すなわち、モノクローナル抗体による細胞性抗原の同定および定量化を実施することができる。免疫表現型試験は、急性白血病、慢性リンパ球増殖疾患、および悪性リンパ腫を診断および分類するのに用いられる。これらの疾患に対する治療戦略は、疾患の診断および分類に依存することが多い。急性白血病は、2つのサブクラス:リンパ芽球性の類型(ALL)および骨髄性の類型(AML)へと分類される。ALLは、さらに3つの亜型へと細分され、ALMは、8つの亜型へとさらに区分される。細胞性抗原に特異的に結合する多くの異なる抗体が、血液性悪性腫瘍の免疫表現型試験における解析に用いられる。細胞性抗原には、例えば、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD23、CD25、CD30、CD34、CD41、CD42b、CD43、CD45、CD56、CD57、CD61、CD79a、CD103、CD117、HLA−DR、グリコフォリンA、TdT、およびミエロペルオキシダーゼが含まれうる。細胞性抗原を保有する細胞を分取し、検出し、数え上げ、かつ解析して、急性白血病を診断するか、またはその予後診断を下しうるように、1または複数の細胞性抗原に特異的に結合する抗体を固定化させたバイオセンサー表面へと、細胞試料、例えば、血液試料、脊髄液、または骨髄を添加することができる。
【0111】
一部の実施形態では、例えば、CD19、CD20、およびCD22に特異的に結合する抗体を含む抗体のセットを用いて、B細胞のクローン性を決定しうる一方、CD2、CD3、CD4、および/またはCD7に特異的に結合する抗体は、細胞混合集団試料を用いて、T細胞のクローン性を決定するのに用いることができる。さらなる抗体を用いるならば、特定のリンパ増殖障害が診断されるであろう。CD45に特異的な抗体は、血液性悪性腫瘍を他の新生物から鑑別し、芽球細胞を検出する一助とするのに有用である。別の例では、表面免疫グロブリンとの弱い反応、CD5、CD23、およびCD43による陽性の結果、ならびにCD10、CD11c、CD103、およびサイクリンDによる陰性の結果から、慢性リンパ球性白血病が示唆される。別の例では、CD138を発現する悪性血漿細胞を、結果として調節異常な形で増殖させ、かつ、クローン増殖させるB細胞新生物により、多発性骨髄腫が引き起こされる。骨髄または血液中においてCD138+血漿細胞を検出および測定することを用いて、多発性骨髄腫について診断し、これに対する治療を決定することができる。
【0112】
本発明の方法はまた、悪性細胞が、従来の形態学的技法による検出限界未満のレベルで存在する、寛解後の患者における、悪性細胞の存在を伴う微小残存病変(MRD)を診断するのにも用いることができる。これらの悪性細胞は、疾患の再発を引き起こしうる。本発明の方法により、MRDに対する高感度の(少なくとも、細胞10−3個の検出限界)特異的診断が下される。例えば、脳脊髄液中において、CD10、TdT、またはCD34を発現する細胞が検出されることから、MRDが示唆され;骨髄細胞内におけるTdT、細胞質性CD3、細胞質性CD1a、または細胞質性CD4/CD8の発現からも、MRDが示唆される。
【0113】
本発明の方法は、CD4、CD8、およびCD38、またはこれらの組合せを発現する細胞を分取し、検出し、かつ/または数え上げることにより、HIV感染の診断および予後診断を下すのに用いることができる。本発明の方法はまた、免疫不全疾患、アレルギー性障害、および白血球粘着不全症を診断し、かつこれらについての予後診断情報を提供するのにも用いることができる。
【0114】
本発明の方法は、多剤耐性についての細胞表面マーカーおよび細胞内マーカーの発現を解析および測定することにより、多剤耐性をモニタリングするのに用いることができる。本発明の方法を用いて、癌化学療法の有効性をモニタリングすることができる。さらに、抗体(例えば、CD20、CD33、CD25、CD45、またはCD52に特異的な抗体)を用いて癌を治療する場合は、本発明の方法を用いて、該抗体の結合を検証し、かつ、腫瘍細胞根絶効果をモニタリングすることができる。
【0115】
本発明の方法はまた、網状赤血球の数え上げ、網状赤血球成熟指数の決定、未成熟網状赤血球画分の決定、血小板機能の解析、血小板表面受容体の定量化および分布解析、血小板に会合するIgGの定量化アッセイ、網状血小板アッセイ、フィブリノーゲン受容体の占有に関する研究、活性化血小板表面マーカーの検出、細胞質中におけるカルシウムイオンの測定、血小板微粒子アッセイ、細胞機能の解析、抗ホスホチロシン抗体を用いるチロシンリン酸化アッセイ、Ca2+指標を用いるカルシウムフラックス解析、酸化代謝アッセイ、および細胞増殖アッセイにも用いることができる。
【0116】
本発明の方法はまた、生物学的試料、環境試料、または食物試料中における細菌、真菌、寄生虫、およびウイルスを分取、検出、定量化、および解析するのにも用いることができる。微生物が細胞内微生物である場合は、該細胞を透過処理することもでき、溶解させることもできる。微生物が培養可能である必要がないことが有利である。
【0117】
単一のバイオセンサー表面上において2つ以上の細胞型をスクリーニングする方法
本発明以前において、大半の細胞ベースのアッセイが可能としたのは、単一の細胞株内における単一の標的のスクリーニング、または単一の細胞株内における複数の標的もしくはパラメータのスクリーニング(高含量スクリーニング)であった。個々の細胞株に同時にタグ付けすることにより複数の細胞株をアッセイする技法は、Beskoら(Journal of Biomolecular Screening、9巻、3号、173〜185(2004))により説明されている。しかし、この技法は、個々の細胞株が互いから識別されうるように、各個の細胞株を検出可能な形で標識することを必要とする。
【0118】
ハイスループットのスクリーニング群による、標識を使用しない細胞ベースのアッセイを採用する際の1つの障壁は、費用である。複数の標的を同時にスクリーニングすることができれば、1ウェル当たりのスクリーニング費用は、スクリーニングされる標的数で等分される。例えば、3つの標的を同時にスクリーニングする場合、1ウェル当たりのスクリーニング費用は、一度にただ1つの標的をスクリーニングしたと仮定した場合の3分の1である。加えて、初代培養細胞によるハイスループットスクリーニングは、高度に望ましいが、初代培養調製物を単離または購入する費用が法外でありうる。スクリーニングアッセイにおいて、強いアッセイリードアウトをなおも可能とする、より少数の初代培養細胞数/ウェルを用いうるならば、これらの限定的な細胞型により、1ウェル当たりのスクリーニング費用が削減される。
【0119】
本発明は、マイクロプレートの単一のウェルなど、単一のバイオセンサー表面上において、標識をまったく用いない形で、複数の細胞株を同時にスクリーニングし、アッセイし、かつ定量化する方法を提供する。各細胞株を検出可能な形で標識し、スクリーニング/アッセイ活性に従いこれを同定する必要はない。
【0120】
一部の検出デバイスによる複数の細胞株のスクリーニングは、複数の細胞株を添加することに由来するシグナル弱化がどの程度まで許容可能であるかにより限定される。例えば、ある検出デバイスを用いる同じウェル内において2つの細胞株をアッセイすると、単一の細胞株をアッセイする場合の半分のシグナルが得られる。また、一部の検出デバイスにより複数の細胞株をスクリーニングすると、個々の細胞型に由来する応答を識別するリードアウトではなく、個々の細胞型を混合したすべてに由来するシグナルの平均からなるリードアウトをもたらすアッセイリードアウトにより交絡も生じる。このシグナル弱化の問題は、BIND(登録商標)SCANNERを用いてシグナルを検出することにより回避される(しかし、1つの容器内において複数の細胞株をスクリーニングする場合はまた、BIND(登録商標)READERを用いても検出することができる;図28〜30を参照されたい)。刺激に応答する個々の細胞を同定およびカウントしうるため、シグナル弱化を懸念することなく、より多くの細胞株を同時にアッセイすることができ、個々の細胞部分集団の応答を測定することができる。
【0121】
本発明の1つの機能的利点は、単一のウェル内における同じ試験試薬に対して、複数の細胞をスクリーニングすることにより、試験試薬の特異性についての試験をアッセイに内蔵させることである。同じ試験試薬が、異なる受容体を発現する複数の細胞株の活性化を阻害することが判明する場合、この試験試薬は、無差別的かつ細胞傷害性である可能性が高い。現在のところ、異なる細胞を含有する複数のウェル内において1つの試験試薬をスクリーニングすることにより、これを行うことができる。本発明により、その使用者は、混合細胞集団(心筋細胞および肝細胞など)に対して、1つの試験試薬をスクリーニングすることが可能となる。1ウェル当たりのスクリーニング費用は、同時にスクリーニングされる標的数により効果的に等分される。
【0122】
本発明の方法を用いて、1つの容器内における2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100以上の細胞型が、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して示す応答を検出しうるが、この場合、細胞は検出可能な標識を含まない。該方法は、2つ以上の細胞型を容器へと適用するステップを含むが、この場合、該容器の内部表面は、比色共鳴反射光バイオセンサー表面または回折格子ベース導波路バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面は、1または複数の特異的結合物質またはリガンドをその表面に固定化させており、かつ、該1または複数の特異的結合物質またはリガンドは、2つ以上の細胞型のうちの1または複数に結合しうる。特異的結合物質またはリガンドに結合しない細胞は、場合によって、洗い流すこともできるが、洗浄ステップは必要でない。2つ以上の細胞型は、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップへと曝露することができる。2つ以上の細胞型が刺激または試験試薬に対して示す応答は、BIND(登録商標)SCANNER(高解像度の比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)により検出することができる(例えば、図6および27を参照されたい)。バイオセンサー表面上における各個の細胞に由来するシグナルを検討することにより、各細胞型が試験試薬、刺激、またはインキュベーションに対して示す応答を、個別に検出および解析することができる。
【0123】
2つ以上の細胞型が刺激または試験試薬に対して示す応答はまた、BIND(登録商標)READER(比色共鳴反射光バイオセンサーシステム)によっても検出することができる。例えば、エンドセリン受容体発現細胞(ETaR)およびM4ムスカリン受容体発現細胞(M4R)を、飢餓培地中における、CA2細胞マトリックスでコーティングした比色共鳴反射光バイオセンサープレート上に播種した。アンタゴニスト(M4を阻害するアトロピンまたはETaRを阻害するBMS)により、30分間にわたり細胞を前処理した。次いで、10uMカルバコールまたは50nM ET−1により、細胞を処理した。BIND(商標)Reader上で検出された終点応答を、図28に示す。図28Aは、単独で播種されたETaR細胞を示す。図28Bは、単独で播種されたM4R細胞を示す。データは、緩衝液対照を基準とする。4連の平均±SDを示す。ETaR細胞は、ET−1には応答するが、カルバコールには応答しないことから、この応答の特異性が示される。用いられたBMS濃度は、ET−1応答を完全に阻害するのに十分な程度に高濃度ではなかった。M4R細胞は、カルバコールには応答するが、ET−1には応答しないことから、この応答の特異性が示される。アトロピンは、カルバコールに対する応答を完全に阻害した。
【0124】
次いで、ETaR細胞およびM4R細胞を、第2のリガンドにより処理した。例えば、既にカルバコールで処理されたETaR細胞を、今回はET−1で処理した。BIND(商標)Reader上で検出された終点応答を、図29に示す。図29Aは、単独で播種されたETaR細胞を示す。図29Bは、単独で播種されたM4R細胞を示す。
【0125】
結果は、カルバコールにより刺激された後であっても、ETaR細胞は、ET−1に応答し、ET−1により刺激された後であっても、M4R細胞はカルバコールに応答することを示す。BMSは、ET−1に対するシグナルを遮断するのにより有効であったが、インキュベーション時間はより長時間であった。第1の添加に由来するカルバコールに対するシグナルの一部が、ET−1により刺激したときのM4細胞においても消えずに現れる。同様に、第1の添加に由来するET−1に対するシグナルの一部が、カルバコールにより刺激した後のET−1細胞においても消えずに現れる。したがって、先行するシグナルを完全に飽和させた後で、第2の添加を行うことが有利である。
【0126】
図30は、図30A〜Bに表示される通り、アトロピン、BMS、カルバコール、およびET−1を様々な形で添加した同じウェル内において培養したETaR細胞およびM4R細胞の両方を示す。図は、2つの細胞型を同じウェル内に播種することができ、各細胞型に対する個々の活性化を個別に検出しうることを示す。したがって、例えば、天然組織に由来する細胞の複雑な混合物を、例えば、リガンドに対する応答または受容体の発現により差別化することができる。したがって、細胞混合物中における特定の細胞型の存在または不存在を決定することができる。
【0127】
リガンド、刺激、またはインキュベーションに対する示差的応答
細胞混合集団内における各細胞型は、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して異なる応答を示す可能性があり、したがって、これに対して異なるPWVリーディングを示す可能性がある。異なる細胞型は、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して細胞が示す応答を規定する、ピクセル全体を平均したPWVシグナルに基づき、互いと異なるPWVシグナルをバイオセンサー上に表示しうる。すなわち、バイオセンサー上における1つの細胞型は、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して強く反応することが可能であり、刺激、試験試薬、またはインキュベーションステップに対して弱く反応し、低値のPWVを表示する、バイオセンサー上における第2の細胞型より高値のPWVを表示しうる。BIND(登録商標)SCANNERまたはBIND(登録商標)READERによる収集を実施して、バイオセンサー表面のPWV画像を得る。初期の細胞結合画像を解析して、個々の細胞を見出し、各細胞について形態学的測定を行い、細胞を2つ以上の部分集団へと分類する。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドの変化を除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される各細胞について、形態計量値を計算する。細胞のサイズに基づき、混合集団内における細胞型を類別しうるアッセイでは、各細胞の表面積を決定する。形状ベースの特徴に基づき細胞型を差別化しうるアッセイでは、円形性などの計量値が得られる。アッセイにとって重要な1または複数の形態計量値を用いて、1つの集団が所望の形態特徴を呈する部分集団へと、細胞を分類する。各ウェルについて、指定された形態部分集団により細胞を標識する二分法の画像(「マスク」)を、データ解析ワークフローへと繰り越す。試験試薬、刺激、またはインキュベーションを混合細胞集団へと添加した/混合細胞集団上で実施したときにその後収集される画像へと、このマスクを適用する;このマスクにより、試験試薬、刺激、またはインキュベーションに対して細胞が示す応答を、形態部分集団内におけるこれらの細胞だけから定量化することが可能となる。
【0128】
第2のリガンドまたは刺激に対する示差的応答
混合集団内における対象の細胞はまた、それらが第2のリガンドに対して示す応答に基づいても差別化することができる。容器内における異なる細胞集団は、試験試薬または刺激に対して示差的な形で応答することが可能であり、これらの部分集団を同定するための特徴として用いうるPWVシフトをもたらす。例えば、初代培養調製物中において、ニューロンが、疼痛刺激であるカプサイシンに対して示す応答を測定することが対象となりうるであろう。細胞調製物中では、それらのすべてがカプサイシンに応答する複数の細胞型(ニューロン、希突起膠細胞、星状細胞)が存在しうるであろうが、神経細胞における応答を測定することを対象とする。容器内の細胞のうち、ニューロンだけが、神経成長因子(NGF)に応答する(PWVシフトを示す)。したがって、容器内におけるすべての細胞について、カプサイシンに対するPWV応答の差分を測定し、その後、NGFを伴う第2の刺激により、容器内におけるどの細胞がニューロンであるかを決定することができる。
【0129】
細胞混合集団が、既知の第2のリガンドまたは試験試薬と組み合わせた第1のリガンドまたは試験試薬に対して示す応答を測定するには、BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して、培養物に由来する細胞が、バイオセンサー表面に結合しているマイクロプレートウェルのPWV画像を得る。これらの細胞結合画像を解析して、すべての個々の細胞をセグメント化する。BIND(登録商標)SCANNERによる収集は、バイオセンサーマイクロプレート内に1ウェル当たり1つずつのリガンドライブラリーを添加した後で実施する。この段階では、対象の細胞部分集団が第1のリガンドに応答したかどうかが不明である。次いで、対象の細胞型を特異的に刺激することが知られている第2のリガンドを投与し、最終的なBIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して解析する。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドのばらつきを除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される細胞規定マスクを用いて、第2のリガンドを添加した後に得られるBIND(登録商標)SCANNER画像内における細胞を処理する。各細胞について、そのPWVが第2のリガンドに対して示す応答を計算する。細胞を部分集団へと分類する。第2のリガンドに対して最大の応答を示す細胞の部分集団を保持する。各ウェルについて、二分法マスクにより、第2のリガンドに基づき差別化された細胞の部分集団を同定し、次いで、これを、第1のリガンドに由来するデータへと適用する。第2のリガンドの添加に由来するマスクにより、第1のリガンドに対して細胞が示す応答を、対象の部分集団内の細胞だけから定量化することが可能となる。
【0130】
結合シグナルに基づく細胞の示差的応答
細胞は、それらの結合シグナルに基づき差別化することができる。バイオセンサー表面に結合する(attachまたはbind to)とき、細胞は、結合シグナル、すなわち、それらが結合するピクセルにおけるPWVの増大を表示する。異なる細胞型は、細胞結合シグナルを規定するピクセル全体で平均したシグナル強度に基づき、互いと異なるPWV結合シグナルをバイオセンサー上に表示しうる。すなわち、バイオセンサー上における1つの細胞型は、該バイオセンサーに強く結合することが可能であり、該バイオセンサーに弱く結合し、低値のPWVを表示し、その結果、より低度の細胞結合シグナルを表示する、バイオセンサー上における第2の細胞型より高値のPWVを表示し、その結果、より高度の細胞結合シグナルを表示しうる。BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して、培養物に由来する細胞が結合しているバイオセンサー表面のPWV画像を得る。以下で説明する通り、これらの細胞結合画像を解析して、個々の細胞を見出し、各細胞の結合シグナルの強度を決定し、細胞を2つ以上の部分集団へと分類する。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドの変化を除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される各細胞について、その平均PWV値を計算する。PWV値は、細胞の結合強度(バイオセンサー表面に結合した細胞に由来する集塊の量)に比例する。1つの集団が所望の形態特徴を呈する部分集団へと、細胞を分類する。各ウェルについて、指定された細胞結合部分集団により細胞を標識する二分法の画像(「マスク」)を、データ解析ワークフローへと繰り越す。試験試薬または刺激をウェル中の混合細胞集団へと添加したときにその後収集される画像へと、このマスクを適用する;このマスクにより、試験試薬または刺激に対して細胞が示す応答を、細胞結合部分集団内におけるウェル中のこれらの細胞だけから定量化することが可能となる。
【0131】
異なる細胞型は、あらかじめ規定されたPWV閾値を超える隣接するピクセルにより規定される細胞結合シグナルの表面積に基づき、互いと異なるPWV結合シグナルをバイオセンサー上に表示しうる。すなわち、バイオセンサー上における1つの細胞型は、各細胞が、該バイオセンサー上における第2の細胞型より著明に大きいかまたは小さい、平均バイオセンサー表面積を覆うように、該バイオセンサーに結合しうる。異なる細胞型はまた、あらかじめ規定されたPWV閾値を超える隣接するピクセルにより規定される細胞結合シグナルの全体的形状に基づき、互いと異なるPWV結合シグナルをバイオセンサー上に表示する場合もある。例えば、光学バイオセンサーに結合し、表面積が同様である結合シグナルをもたらす2つの細胞型であれば、錐形対矩形という細胞形態に基づき、さらに互いから識別することがなおも可能となるであろう。BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して、バイオセンサー表面のPWV画像を得る。これらの細胞結合画像を解析して、個々の細胞を見出し、各細胞について形態学的測定を行い、細胞を2つ以上の部分集団へと分類する。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドの変化を除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される各細胞について、形態計量値を計算する。細胞のサイズに基づき、混合集団内における細胞型を類別しうるアッセイでは、各細胞の表面積を決定する。形状ベースの特徴に基づき細胞型を差別化しうるアッセイでは、円形性などの計量値が得られる。アッセイにとって重要な1または複数の形態計量値を用いて、1つの集団が所望の形態特徴を呈する部分集団へと、細胞を分類する。各ウェルについて、指定された形態部分集団により細胞を標識する二分法の画像(「マスク」)を、データ解析ワークフローへと繰り越す。試験試薬または刺激を混合細胞集団へと添加したときにその後収集される画像へと、このマスクを適用する;このマスクにより、試験試薬または刺激に対して細胞が示す応答を、形態部分集団内におけるこれらの細胞だけから定量化することが可能となる。
【0132】
異なる細胞型は、それらがセンサー表面に結合するときに、それらがある時間にわたって示す反応に基づき、互いと異なるPWV結合シグナルをバイオセンサー上に表示しうる。例えば、異種混合物中における、バイオセンサーに迅速に(例えば、細胞を添加した後の最初の20分間以内に)結合する細胞集団により第1の細胞型を規定しうるのに対し、第2の細胞型は、より緩徐な結合シグナル(例えば、細胞を添加した1時間近く後に飽和する)を表示しうる。したがって、それらがある時間にわたって示す応答に基づき、混合集団内における対象の集団を差別化することができる。BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施して、培養物に由来する細胞が結合しているバイオセンサー表面のPWV画像を得る。これらの細胞結合画像を解析して、すべての個々の細胞をセグメント化する。試験試薬または刺激をバイオセンサーへと添加した後で、BIND(登録商標)SCANNERによる収集を実施し、このとき、ある時間にわたり繰り返しマイクロプレートを読み取る。細胞結合画像を処理して、局所的なバックグラウンドの変化を除去し、輪郭を鮮明にする。画像を「閾値処理」して、バックグラウンドを十分に上回るPWV値を同定する。閾値を超えるピクセルの隣接集合部分を、個々の細胞として標識する。細胞結合画像からセグメント化される細胞規定マスクを用いて、リガンドを添加した後で得られるBIND(登録商標)SCANNER画像内の細胞を処理する。各細胞型について、BIND(登録商標)SCANNERによる経時画像の各々においてそれが示すPWV応答を測定し、該細胞についての経時プロファイルを生成させる。最大応答までの時間、ならびに応答が変化する範囲(最大値−最小値)など、各時間経過を特徴づける計量値を得る。1つの集団が所望の形態特徴を呈する部分集団へと、細胞を分類する。各ウェルについて、指定された経時プロファイル部分集団により細胞を標識する二分法の画像(「マスク」)を用いて、指定された部分集団内に存在するウェル内の細胞だけから、試験試薬または刺激に対して細胞が示す応答を定量化する。
【0133】
ある時間にわたる示差的な応答動態
容器内における異なる細胞集団は、具体的な刺激に対して、ある時間にわたる応答動態に基づき、他の細胞と識別可能なPWV応答の差分を表示しうる。例えば、ニューロンがカプサイシンに対して示す応答は、急速な正のPWVシフトがプラトー状態を保つことを特徴としうるが、星状細胞および希突起膠細胞が同じ刺激に対して示す応答は、正の一過性PWVシフトが急速にベースラインへと戻ることを特徴としうる。ある時間にわたる応答動態の任意の変化を用いて、バイオセンサー表面上における異なる細胞型を差別化するか、または細胞型が試験試薬、刺激、もしくはインキュベーションに対して示す応答が既知である場合、細胞表面上において細胞型を同定することができる。
【0134】
したがって、本発明は、1つの容器内における2つ以上の細胞型が、刺激または試験試薬に対して示す、示差的応答を検出する方法であって、該2つ以上の細胞型が検出可能な標識を含まない方法を提供する。該方法は、該2つ以上の細胞型を、該1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させており、かつ、該1または複数の特異的結合物質が、該2つ以上の細胞型のうちの1または複数に結合しうる。該2つ以上の細胞型を、該1または複数の特異的結合物質に結合させ、該2つ以上の細胞型の該示差的応答を検出する。該示差的応答は、例えば、該2つ以上の細胞型による該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる時点での結合でありえ;該1もしくは複数の特異的結合物質に対して該2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態でありえ;該2つ以上の細胞型による該1もしくは複数の特異的結合物質への異なる強度の結合でありうる。該方法は、該2つ以上の細胞型を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するステップと;該2つ以上の細胞型が示す、該示差的応答を検出するステップとをさらに含みうる。該示差的応答は、該2つ以上の細胞型による該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる強度の応答の場合もあり;1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に応答して該2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞形態の場合もあり;該2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる該1もしくは複数の試験試薬もしくは刺激に対する異なる細胞応答の場合もあり;該2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態の場合もある。
【0135】
該方法は、該2つ以上の細胞型を、第1の試験試薬または第1の刺激へと曝露するステップと;該2つ以上の細胞型が該第1の試験試薬または第1の刺激に対して示す応答を検出するステップとをさらに含みうる。次いで、該2つ以上の細胞型を、第2の試験試薬または第2の刺激へと曝露するが、この場合、該2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つが該第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答が知られている。代替的には、該細胞型のうちの1つが該第1の試験試薬に対して示す応答が知られており、該第2の試験試薬に対する応答が知られていない。該2つ以上の細胞型が該第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答を検出する。該第2の試験試薬または第2の刺激に対する応答が知られている該2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つを同定し、該2つ以上の細胞型の該示差的応答を検出する。該バイオセンサー表面上に存在する、該2つ以上の細胞型のうちの1または複数の細胞により、該1または複数の試験試薬または刺激が発現されうる。
【0136】
本発明はまた、細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、該細胞混合集団内における該細胞が検出可能な標識を含まない方法も提供する。該方法は、該細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させている。該細胞混合集団を、該1または複数の特異的結合物質に結合させるが、この場合、該第1の細胞型が、該1または複数の特異的結合物質に結合するときに、該細胞混合集団の他の細胞と示差的な応答を示す。該細胞混合集団の示差的応答を検出するが、この場合、該第1の細胞型が、それらの示差的応答により検出される。該細胞混合集団内における該第1の細胞型の百分率を決定することができる。
【0137】
本発明はまた、細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、該細胞混合集団内における細胞のいずれもが検出可能な標識を含まない方法も提供する。該方法は、該細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップを含み、この場合、該容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、該バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させている。該細胞混合集団を、該1または複数の特異的結合物質に結合させる。該細胞混合集団を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するが、この場合、該細胞混合集団内における該第1の細胞型が、他の細胞と比較して、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示差的応答を示す。該第1の細胞型が、該1または複数の試験試薬または刺激に対して示す示差的応答を検出する。該示差的応答が検出される場合、該第1の細胞型が、該細胞混合集団内に存在する。該該細胞混合集団内における第1の細胞型の百分率を決定することができる。該バイオセンサー表面上に存在する、該細胞混合集団のうちの1または複数の細胞により、該1または複数の試験試薬または刺激が発現されうる。
【0138】
これらの方法は、現実世界への多くの適用において有用でありうる。例えば、天然組織に由来する細胞の複雑な混合物、または任意の混合細胞集団をアッセイするとき、本発明の方法によりこれを完遂することができる。混合集団内における個々の細胞型集団は、リガンド、細胞傷害作用物質、または他の任意の刺激に対してそれらが示す応答により差別化することができ、次いで、該混合物中における該細胞型または該標的型の存在または不存在を決定することができる。これらの方法は、例えば、健康組織が応答しない場合に、刺激に対してそれらが示す応答により癌細胞を同定する;非幹細胞が応答しない場合に、刺激に対してそれらが示す応答により、腫瘍中における癌幹細胞を同定する;血液試料および/または血清試料中における特定種類の循環細胞の存在を検出する;特定の細胞バイオマーカーまたは細胞タンパク質の存在または不存在を決定するのに用いることができる。
【0139】
本発明の方法は、細胞混合集団内における各細胞型の量を定量化することを可能とする。これらの方法は、例えば、健康組織が応答しない場合に、刺激に対してそれらが示す応答により、混合集団内における癌細胞の比率を同定する;非幹細胞が応答しない場合に、刺激に対してそれらが示す応答により、腫瘍中における癌幹細胞の比率を同定する;幹細胞集団のうちのどのくらいの比率が、中間的な前駆細胞へと分化したかを同定する;最終分化した細胞のうちのどのくらいの集団が、多能性幹細胞集団などの幹細胞様集団へと再度脱分化したかを同定する;血液試料および/または血清試料中における特定種類の循環細胞の存在を検出する;単離された細胞集団の純度を決定する;ならびに特定の細胞バイオマーカーまたは細胞タンパク質の存在または不在を決定するのに用いることができる。
【0140】
本発明の方法を用いて、細胞間における相互作用を決定することができる。近傍にある細胞型に影響を及ぼす物質を生成させる細胞の混合物を、例えば、生成活性を消滅させる化合物、または生成される物質に対する応答を確実に破壊する化合物に曝露することができる。例えば、in vivo様の細胞系が、被験薬物である化合物の効果を複雑な形で解析するのに必要とされる後期段階の前臨床試験においてならば、これらの方法を用いうるであろう。例えば、シュワン細胞などある細胞型の存在下では、ヒト皮質ニューロンが、ネットワーク構造またはアクソンバンドルを形成するように促進される。この促進は、シュワン細胞が作製し、それらの周囲の環境へと放出する物質に主によるものである。加えて、近傍の細胞が生成させる化学物質により促進される癌の転移も検出することができる。
【0141】
本発明の方法を用いて、混合集団内における所与の細胞型の存在または不存在を決定しうるが、加えて、混合集団において異なる細胞型が知られているか、またはこれらを識別することができれば、該集団内における各細胞型が、外部の刺激に対して示す選択性または感受性を決定することもできるであろう。潜在的な適用には、望ましくない細胞(癌細胞、感染細胞など)、特異的細胞、健康細胞、正常細胞、活性化細胞、形質転換細胞、または不健康細胞を含有する集団内における細胞が含まれるがこれらに限定されない集団の画分を選択的に死滅させるか、または他の形でこれらに影響を及ぼす作用物質を同定することが含まれる。
【0142】
本発明の方法を用いて、試料試薬および試料細胞株を高度に並行的な形で調べることができる、例えば、複数の細胞株に対して複数のアンタゴニスト/アゴニストを同時に調べることができる。アンタゴニストの混合物をバイオセンサーウェルへと添加することにより、複数のアンタゴニストを並行的に調べることができる。陽性のヒットを示す任意のウェルを、第2のステップにおいて、すなわち、個々の細胞株を、混合物に由来する個々の化合物に対して調べることにより、デコンボリュートすることができる。同様に、複数のアゴニストを調べれば、所与の受容体に対して新規のアゴニストを発見することもできるであろうし、オーファン受容体のリガンドを見出すこともできるであろう。
【0143】
幹細胞および他の細胞の解析
幹細胞解析を含めた細胞解析の1つのモードでは、BINDマイクロプレートバイオセンサーと併せ、BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERを用いて、標識を伴わない検出を具体化する。この方法では、マイクロプレートバイオセンサーを、細胞外マトリックス物質または他の特異的結合物質でコーティングし、その後、幹細胞とインキュベートする。幹細胞を、細胞外マトリックスまたは特異的結合物質に付着させ、試験化合物または刺激を添加する。BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERを用いて、形態および付着の変化をモニタリングする。場合によっては、単一細胞の解析が可能な、標識を用いない高解像度の検出装置であるBIND(登録商標)SCANNERを用いることが好ましいことがある。幹細胞集団は、それらの性質により、細胞の同種集団ではない。さらに、幹細胞集団は、均一な形では分化しない可能性がある。したがって、BIND(登録商標)SCANNERにより、これらの細胞混合集団を測定および識別することができる。
【0144】
幹細胞などの細胞は、本発明のバイオセンサーに結合し、増殖することが可能である。バイオセンサーへの細胞の結合は、リアルタイムでモニタリングすることができる。本発明の方法を用いて、単一の細胞または細胞集団の形態変化を検出することができる。例えば、走査電子顕微鏡写真により、ATPが、ラットP2X7受容体を発現するHEK細胞に対して及ぼす効果が裏付けられる。対照細胞が、粗い表面、ならびに微細な糸状仮足およびシート様の葉状仮足の両方を伴うHEK細胞の典型的な形態を示すのに対し、2分間にわたりATPへと曝露された細胞は、滑らかな表面、ならびに多数の大型の(1μm)ブレブおよび小型の(0.5μm)微小胞を示す。本発明の方法により、標識または顕微鏡写真を用いることなく、これらおよび他の形態変化を検出することができる。
【0145】
細胞は各々、それらが結合しているかまたはその上に置かれているバイオセンサー表面へと添加されたリガンドに対して特徴的な応答を示す。図1は、比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレート上における、ムスカリンリガンド、P2Yリガンド、およびベータ−アレスチンリガンドに対するSH−SY5Y細胞の特徴的応答を示す。各細胞型は、各種類のリガンドに対して特徴的な応答を示すので、細胞混合集団を併せてアッセイすることができる。例えば、異なる細胞型または異なる分化段階にある細胞(またはこれらの組合せ)を、本発明のバイオセンサー表面(例えば、マイクロタイターウェル)へと添加することができる。リガンドをバイオセンサー表面へと添加することができ、細胞がリガンドに対して示す反応を検出する。細胞がリガンドに対して示す応答に基づき、ある細胞の存在または不存在を決定することができる。加えて、集団内における反応細胞/非反応細胞の比率も、決定することができる。すなわち、細胞集団が2つ以上の細胞型(例えば、リガンドに反応する癌性細胞、ならびにリガンドに反応しない非癌性細胞)を含有する場合は、ウェル内における各細胞がリガンドに対して示す反応を決定することにより、非癌性細胞に対する癌性細胞の比率を決定することができる。
【0146】
場合によって、幹細胞または初代細胞などの細胞は、バイオセンサー表面上にどのような細胞外マトリックス成分が存在しているかに応じて、リガンドに対する反応を変化させる。この優先性を、各細胞について決定することができる。図2は、細胞が、PBS/オボアルブミン、フィブロネクチン、コラーゲン、またはラミニンを含む比色共鳴反射光バイオセンサー上にある場合の、3つのリガンド:アセチルコリン、カルバコール、およびピロカルピンに対するmP−M5細胞およびmP−M4細胞の反応を示す。mP−M5細胞およびmP−M4細胞は、それらが、フィブロネクチンまたはコラーゲンを含むバイオセンサー上にある場合に、リガンドに対する最良の反応を示す。図7は、オボアルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、またはコラーゲンを含む比色共鳴反射光バイオセンサーに対するラットMSC細胞の結合を示す。MSC細胞は、他の表面より、コラーゲンを含むバイオセンサーに良好に結合する。細胞を調べて、バイオセンサーに結合させるのに最良のリガンド/ECMコーティングを決定することができる。
【0147】
幹細胞の研究では、1,000個未満の細胞集団をアッセイで用いることが多い。本発明の方法を用いると、1,000個未満の細胞集団を容易にアッセイすることができる。本発明の方法は、マイクロ流体チャネルまたはマイクロタイターウェルなど、単一のバイオセンサー表面上において、約1,000、750、500、100、50、10、または5個未満の細胞をアッセイするのに用いることができる。さらに、本発明の方法を用いると、単一の細胞をアッセイすることもできる。
【0148】
図3Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーに結合しているM5細胞が発生させるシグナルを示す。BIND(登録商標)SCANNERは、結合シグナルに基づき細胞の位置を同定し、細胞が位置する地点に限り、刺激に対する応答を測定する。空白の空間は、応答の測定には考慮されず、この結果、感度の上昇が得られる。384ウェルディッシュ内に細胞約100〜150個までの強い用量−応答プロファイルを得ることができる。図3Bは、細胞がバイオセンサーに結合した30分後において走査が完了したことを示す。細胞の結合に由来するシグナルを、ゼロとした。したがって、結合後、細胞は、他の形態変化を示していない。図4Aが、細胞の位相差画像を、細胞の上側(細胞が、比色共鳴反射光バイオセンサーに結合する側と反対側)から示すのに対し、図4Bは、同じ細胞の結合シグナルを、細胞の下側(細胞がバイオセンサーに結合する側)から示す。
【0149】
図5Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーに対するM5細胞の結合応答を示す。図5Bは、カルバコールの添加に対するM5細胞の応答を示す。シグナルは、結合シグナルをベースラインとした。したがって、すべての応答は、カルバコールの添加によるものであり、結合反応によるものではない。カルバコールを添加しなければ、細胞応答は検出されない。図5の右側パネルは、各細胞が発生させるシグナルが均一ではないことを示す。すなわち、カルバコールに応答して細胞が移動するか、または形態を変化させつつある、細胞縁辺の周囲により多くのシグナルが見られる。
【0150】
図6は、比色共鳴反射光バイオセンサーへと添加されたM4細胞およびRBL親細胞混合集団を示す。M4細胞は、カルバコールに対して、RBL細胞より多くの受容体を有する。次いで、10μMのカルバコールを細胞に添加した。中央のパネルは、細胞にカルバコールを添加した30分後において、RBL細胞に対するM4細胞の比が3:1である場合を示す。右側のパネルは、細胞にカルバコールを添加した30分後において、RBL細胞に対するM4細胞の比が1:3である場合を示す。M4細胞がRBL細胞より多く存在し、各M4細胞がカルバコールに対してより多くの受容体を有するため、図6の中央のパネルは、右側のパネルより多くのシグナルを示す。
【0151】
RBL細胞と、M5/RBL細胞とを1:1の比で混合し、比色共鳴反射光バイオセンサーウェルに播種した。細胞をバイオセンサーに結合させ、BIND(登録商標)SCANNER上で結合反応を検出した。結果を、図27Aおよび図27Bに示す。バイオセンサー表面にアセチルコリンを添加した。アセチルコリンに反応したのは、M5/RBL細胞だけであった。アセチルコリンに対する細胞の反応を、図27Cおよび図27Dに示す。RBL細胞+M5/RBL細胞の1:1混合集団のうち、約50%が、アセチルコリンに応答した。応答細胞を、非応答集団とは個別に、定量的応答(例えば、さらなる試験試薬または刺激に対する応答)についてゲーティングおよび解析することができる。したがって、それらがリガンドに対して示す応答が既知である場合は、バイオセンサー上における異なる細胞型の存在を検出することができる。
【0152】
図8は、細胞を比色共鳴反射光バイオセンサーへと添加した直後におけるラットMSC細胞(図8A)、ならびに16時間後の該バイオセンサー上における該細胞(図8B)を示す。16時間後のバイオセンサー上では、細胞が増殖している。図9は、比色共鳴反射光バイオセンサー表面上、30時間にわたるラットMSC細胞の移動を示す。左側の矢印(暗色のスポットを指し示す)が、細胞がバイオセンサー表面に結合した直後に細胞が存在した地点を示すのに対し、右側の矢印(明色のスポットを指し示す)は、バイオセンサー表面に対する結合の30時間後において細胞が存在した地点を示す。
【0153】
SDF−1αは、GPCRであるCXCR4に結合し、これを活性化する。幹細胞は、SDF−1αの放出を増大させる組織へと移動する。損傷した組織が放出するSDF−1αレベルは高く、その結果、傷害部位への間葉幹細胞の遊走が増大する。走化性因子は、受容体が活性化すると、細胞のアクチン細胞骨格の著明な変化を誘導する。これらの変化は、ケモカインが増大する場合の指向性移動として顕在化する。SDF−1αは、間葉幹細胞および骨芽前駆細胞の遊走を誘導する。CXCR4が過剰発現すると、MSCが、血管傷害部位へと遊走およびホーミングすることが結果として促進される。図10は、比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレートおよびBIND(登録商標)READERを用いる、異なる濃度のSDF−1αに対するTHP−1細胞(図10A)およびCEM細胞(図10B)の応答を示す。BIND(登録商標)READERにより測定される通り、SDF−1αは、複数の細胞型における迅速かつ強い応答を誘導する。図11Aは、比色共鳴反射光バイオセンサーマイクロウェルプレート上における、SDF−1αに対するMSC細胞の応答を示す。図11Bは、SDF−1αおよび阻害剤(CXCR4遮断抗体)に対するMSC細胞(384ウェルのマイクロプレート内に7,000個の細胞)の応答を示す。
【0154】
ラットMSC細胞を、フィブロネクチンでコーティングしたバイオセンサーへと添加した。3時間後および16時間後の比色共鳴反射光バイオセンサー上において、細胞の結合を検出した。図12、左側のパネルを参照されたい。結合シグナルをゼロとし、細胞を、SDF−1αで刺激するか、またはSDF−1αで刺激せずに置いた。図12、右側パネルを参照されたい。図12の右側パネルでは、細胞の移動を見ることができる。暗色のスポットは、検出する前に細胞が存在した地点であり、明色のスポットは、反応を検出したときに細胞が存在した地点である。細胞に刺激を添加しなかった場合も、細胞の移動をある程度は見ることができるが、細胞にSDF−1αを添加した場合は、バイオセンサー上において細胞が増殖するのに伴い細胞が移動することが見られる。図13A〜Bは、図12の右側パネルの拡大図を示す。移動および/または細胞接着が生じる細胞縁辺部では、シグナルの増強を見ることができる。微速度撮影により裏付けられる通り、シグナルの増強は、細胞がバイオセンサー中を移動するときの該細胞の前縁部と相関する。これは、細胞の細胞外マトリックス−インテグリン間係合と符合する。図14は、BIND(登録商標)READERによるリーディング(図14A)、ならびにBIND(登録商標)SCANNERによるリーディング(図14B)を示す。シグナル対ノイズ比が約7〜10倍増大したことが観察される。
【0155】
幹細胞の分化は、細胞接着に依存する(Stem Cells 25:3005(2007);Cardiovascular Res.47:645(2000)を参照されたい)。接着をモニタリングすることにより、分化を検出することができる。標識を用いずに幹細胞を画像化する方法は、細胞の接着、移動、および分化を観察するための固有の機会を提供する。幹細胞の異なる反応(例えば、異なる分化、走化性、または接着)は、本発明の1つのバイオセンサー表面上に生じる、異なるナノ構造領域により誘導されうる。米国仮出願第12/218,096号(PCT/US09/03541)は、バイオセンサー表面上において複数種類の回折格子セクターを伴うバイオセンサーについて説明している。すなわち、1つのバイオセンサー表面上では、異なる共鳴値または共鳴周期(PWV1、PVW2、・・・)を呈する、回折格子の2つ以上の異なる空間領域が生じる。本発明の一実施形態では、異なる空間領域が、光によるバイオセンサーの照射に応答して、検査デバイスを読み取る検出装置により解像されうる十分なスペクトルの分離を示す。2つ以上の異なる空間領域を伴うバイオセンサーを用いて、幹細胞または他の細胞の分化、移動、または接着を誘導することができる。次いで、各セクター内において異なるPWVを検出することにより、この分化、移動、または接着を該バイオセンサー上において検出することができる。例えば、固有の共鳴値を有する1つのセクター上では、そのセクターにおけるPWVの増大により呈示される通り、細胞集団が分化しうるが、別のセクター上では、そのセクターにおけるPWVが変化しないことにより呈示される通り、細胞集団が分化しない。
【0156】
加えて、各々が異なる共鳴値を含む2つ以上のセクターを伴うバイオセンサーを用いて、1つの容器内における2つ以上の細胞集団が、1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答も検出することができる。例えば、1つの細胞型を1つのセクター内に配置し、第2の細胞型を、該第1のセクターとは異なる共鳴値を有する第2のセクター内に配置する。各セクターに対するPWVを検出することができ、各細胞型が試験試薬または刺激に対して示す応答を、1つの容器内において決定することができる。
【0157】
また、1つのセクターから第2のセクターへと細胞が移動するときにこれを決定することもできる。例えば、走化性物質を1つのセクター上に配置し、細胞集団を第2のセクター内に配置することができる。各セクターについてPWVを測定することにより、該第2のセクターから、走化性物質を伴うセクターへと細胞が移動するときにこれを検出することができる。該第2のセクター内においてPWVが低下し、かつ、走化性物質を伴うセクターにおいてPWVが上昇することから、該走化性物質セクターへと細胞が移動することが裏付けられる。
【0158】
細胞分化に対する効果について化合物をスクリーニングする方法
本発明の方法を用いて、例えば、間葉幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、および胚性幹細胞などの幹細胞を含めた細胞の分化に対してそれらが及ぼす効果について、化合物をスクリーニングすることができる。幹細胞とは、より専門分化した内臓特異的細胞へと成熟する子孫細胞を生成させる一方で、無際限に自らを更新しうる細胞である。細胞分化とは、専門分化度の低い細胞が、専門分化度の高い細胞型となる過程である。分化は、細胞のサイズ、形態、膜電位、代謝活性、およびシグナルに対する応答性を変化させうる。例えば、試験化合物は、幹細胞による自己更新を維持することも可能であり、分化を促進または高速化する場合もあり、分化を緩徐化するかまたは停止させる場合もあり、多能性細胞を、通常観察される細胞とは異なる細胞へと分化させる場合もある。試験化合物はまた、細胞が脱分化することも促進しうる。脱分化とは、部分的または最終的に分化した細胞が、初期の発生段階へと復帰する場合である。本発明の方法は、細胞の自己更新、分化、および脱分化を行った細胞における、細胞分化生成物の変化(増大、減少、または阻害)を検出することにより、または変化、例えば、形態変化、バイオセンサーに対する細胞結合の変化、応答動態プロファイルの変化、または本明細書で開示される他の変化を検出することにより、直接的または間接的に、細胞の自己更新、分化、および脱分化に対して試験化合物が及ぼす効果を検出しうる。すなわち、本発明の方法を用いて検出される細胞の変化(例えば、形態変化、バイオセンサーに対する細胞結合の変化、応答動態プロファイルの変化、または本明細書で開示される他の変化)を用いて、細胞の自己更新、分化、および脱分化を判定し、かつ、細胞集団または細胞混合集団内における細胞分化の増大、減少、または阻害を決定することができる。
【0159】
間葉幹細胞(MSC)は、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞を含めた複数の細胞型へと分化しうる、自己更新が可能な多能性細胞として、重要な臨床的可能性を保有する。本発明の方法は、光学共鳴検出法を用いて、MSC(および他の細胞)の遊走および分化についてのハイスループットのスクリーニングを可能とする、標識を用いないアッセイを提供する。MSCは、例えば、細胞外マトリックスでコーティングした光学バイオセンサー上において容易に増殖することが可能であり、かつ、ケモカインの液浴適用に対して応答するとき、強く、用量依存的で、高感度の標識を用いない応答を示すことが可能である。MSC−骨芽細胞分化の検出は、センサー表面上においてコラーゲン沈着物またはミネラル沈着物が形成されるときに固有の、標識を用いないシグナルを特徴とする。リアルタイムでのリードアウトは、単一のウェル内における完全な分化表現型を提示し、従来の染色試薬より高感度であり、ハイスループット法で適用して、分化速度または自己更新速度の上昇または低下をモニタリングするための低分子ライブラリーまたはsiRNAライブラリーを含めた化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0160】
ラットMSCは、例えば、脂肪細胞、軟骨細胞、および骨芽細胞へと分化しうる。コラーゲンによりコーティングされたバイオセンサー上では、ラットMSCが、骨芽細胞へと分化するように誘導された。図17および18は、14日目までに、細胞が石灰化し、骨を生成させたことを示す。アリザリンレッド色素を用いて、該細胞が、実際に骨を生成させることを確認した。図18を参照されたい。図18の画像は、前日の状態をベースラインとしたものである。比色共鳴反射光バイオセンサーをBIND(登録商標)SCANNER上に取り付けて、毎日のリーディングを行った。図19Aは、図18の17日目のパネルの拡大図を示す。白色の領域が、骨芽細胞の石灰化である。図19Bは、同じ細胞部分についての位相差顕微鏡写真を示す。位相差顕微鏡写真は、細胞の分化を示さない。したがって、本発明の方法により、標識または色素を用いずに、細胞分化の段階を検出することができる。
【0161】
ラットMSC(Invitrogen製)を、384ウェル比色共鳴反射光バイオセンサーに、細胞100個/ウェルで播種し、骨芽細胞分化培地で処理した。BIND(登録商標)SCANNER上で毎日の画像を収集し、0日目における細胞結合シグナルをベースラインとした。アリザリンレッドでパラレルウェルを染色することにより示される通り、骨様のミネラルがセンサー表面上に沈着するのに応じて、段階的かつ強いPWVシフト(約25nM)が検出された。図20Aを参照されたい。グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3β)阻害剤は、MSC−骨芽細胞分化を促進する。図20Bは、GSK3βにより引き起こされた分化の促進が検出されたことを裏付ける。図20Cは、BIND(登録商標)SCANNERが、石灰化を検出するのにアリザリンレッド染色より高感度であることを裏付ける。図20Aに示されるBIND(商標)画像は、単一のウェルに由来し、複数日において画像化された;アリザリンレッドは、終点染色アッセイとして、1ウェル/日を必要とする。したがって、本発明の方法が、同じウェルの細胞を複数日間にわたりアッセイすることを可能とするのに対し、細胞染色法は、複数日間にわたり複数のウェルを用いることを必要とする。
【0162】
別の実験では、384ウェルバイオセンサー上でラットMSCを骨芽細胞へと分化させ、アリザリンレッドで石灰化を毎日染色するか、またはヴァン−ギーソン(Van Gieson)染色でコラーゲンを毎日染色した。562nmのプレートリーダーで染色を定量化した。BIND(商標)バイオセンサー上では、MSCが分化する際に、コラーゲンの形成が石灰化に先行することが示されるが、これは、正常な骨形成と符合する。図21を参照されたい。
【0163】
未分化MSCを伴うセンサーについて走査電子顕微鏡(SEM)解析を行うと、内在する回折格子構造が明示されるのに対し、分化MSCを伴うセンサーは、回折格子を覆い隠す石灰化結節の沈着物層により覆われており、これは、ウェル全体で測定される、拡散性ではあるが強いPWVシフトと符合する。大規模な沈着物クラスターをエネルギー分散型X線(EDS)解析にかけると、カルシウム(Ca)およびリン(P)の存在が示され、骨の沈着と符合する。バイオセンサーの構成要素からは、チタン(Ti)ピーク、酸素(O)ピーク、およびケイ素(Si)ピークが誘導される。
【0164】
別の実験では、1〜19日間にわたり、GSK3β阻害剤を伴うかまたは伴わない骨芽細胞分化培地中において、ラットMSC(Invitrogen製)を培養した。BIND(商標)画像を毎日捕集し、前日の測定値をベースラインとし、これにより、石灰化の速度についての情報をもたらした。アリザリンレッドなどの標準的な染色法では、石灰化速度のデータを収集することは不可能である。図22Aを参照されたい。図22Bは、BIND(登録商標)SCANNER上で測定されたPWVシフトの定量化を示す(±標準偏差;n=12ウェル)。GSK3β阻害剤による分化の速度が異なることは、MSCが骨芽細胞へと分化するときのタイミングおよび速度をGSK3βが制御することを示唆する。
【0165】
幹細胞は、重要な臨床的可能性を保有し、本発明の方法は、光学共鳴検出法を用いて、幹細胞の遊走および分化をハイスループットでスクリーニングすることを可能とする、標識を伴わないアッセイを提供する。完全な分化プロファイルは、単一の培養ウェルから入手可能であり、分化速度を決定することができる。
【0166】
本発明の一実施形態は、候補化合物を、それが、細胞分化を調節する能力についてスクリーニングする方法を提供する。1または複数の細胞型(同種または異種の細胞集団)を、場合によって、ECMでコーティングしうる比色共鳴反射光バイオセンサー(または回折格子ベース導波路バイオセンサー)の表面へと添加する(ECMを伴うか、または伴わずに)。一実施形態では、異なるECMまたは細胞の結合および分化を支援すると推定される異なる物質を、分化または他の細胞過程(接着、移動など)を強化する物質についてのスクリーンとして、センサー上に添加することができる。該細胞を誘導して分化させることができる。該候補化合物の存在下または不在下における、各細胞集団のピーク波長値(または有効屈折率)を比較することにより、該候補化合物の存在下または不存在下における細胞分化の変化を検出する。該候補化合物の不存在下における細胞分化活性と比べて、該候補化合物の存在下における細胞分化活性が変化することから、該候補化合物が、細胞分化を調節する能力が示唆される。該細胞分化活性の変化は、細胞分化活性の上昇の場合もあり、細胞分化活性の低下の場合もあり、細胞分化活性の阻害の場合もあり、分化した細胞の種類の変化(すなわち、試験化合物が、細胞を、通常は観察されない細胞型へと分化させる)の場合もある。該細胞分化活性の変化は、コラーゲン生成の増大または減少の場合もあり、石灰化結節形成の増大または減少の場合もあり、他の細胞分化生成物の増大または減少の場合もある。該1または複数の細胞型は、間葉幹細胞などの幹細胞でありうる。細胞のサイズ、細胞の形状、細胞接着、細胞の膜電位、細胞の代謝活性、またはシグナルに対する細胞の応答性の変化を検出することにより、細胞分化活性の変化を検出することができる。
【0167】
本発明の別の実施形態は、候補化合物を、それが、細胞分化を調節する能力についてスクリーニングする方法を提供する。1または複数の細胞型を、場合によって、ECMでコーティングしうる比色共鳴反射光バイオセンサー(または回折格子ベース導波路バイオセンサー)の表面へと添加する(ECMを伴うか、または伴わずに)。該1または複数の細胞型を誘導して分化させる。該候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値(または有効屈折率)を比較することにより、該候補化合物の存在下または不存在下における1または複数の細胞分化生成物の生成を検出する。該候補化合物の不存在下における1または複数の細胞分化生成物と比べて、該候補化合物の存在下における1または複数の細胞分化生成物が変化することから、該候補化合物が、細胞分化を調節する能力が示唆される。
【0168】
遺伝子による細胞分化の調節を検出する方法
GSK3βまたはアデノシンキナーゼ(ADK)を阻害すると、MCS−骨芽細胞分化が加速化される。フォルスコリン処理によりcAMPを活性化させると、骨芽細胞分化が緩徐化される。ヒトMSCを、384ウェル比色共鳴反射光バイオセンサープレート上に播種した。骨芽細胞分化カクテルにより、細胞を処理した。PWVを毎日測定した。非処理細胞(Ctrl)および骨芽細胞分化(OS−Diff)細胞による代表的なウェルを、図24に示す。骨芽細胞への分化細胞では、センサー表面上における石灰化沈着物が、9日目に出現し始め、これ以後蓄積を続けた。バイオセンサー表面上における集塊の蓄積は、結果として、極めて大きく、かつ、強い正のPWVシグナルシフトをもたらす。
【0169】
GSK3βまたはADKに特異的なsiRNA分子を、ThermoFisherから購入し、骨芽細胞への分化細胞にトランスフェクトした。GSK3βおよびADKに特異的なsiRNA分子を、分化の直前にヒトMSCにトランスフェクトしたところ、BIND(登録商標)SCANNER上における標識を伴わないアッセイでは、骨芽細胞への分化が加速されることが検出された。図25および26を参照されたい。図25は、12日目における試料ウェルを、複数の処理条件ごとに示す。図26では、図25で示した結果を定量化している。1つの処理条件当たり、6ウェルずつを平均した。ADK siRNA処理の場合、ADK siRNAをトランスフェクトした後、フォルスコリン中において細胞をインキュベートすることによれば、分化表現型の加速化を遮断することができるであろう。ADKは、アデニル酸シクラーゼ−cAMPシグナル伝達経路において、極めて重要な上流酵素である。siRNAトランスフェクションによりADKが下方制御されると、このシグナル伝達経路が阻害され、加速化表現型がもたらされる。しかし、フォルスコリンは、ADKの下流にある同じシグナル伝達経路を活性化し、したがって、フォルスコリン処理は、適正なシグナル伝達を回復し、ADK下方制御効果を遮断する。
【0170】
例えば、阻害性核酸または他の遺伝子調節法により、特定の遺伝子発現調節を検出および評価するのに本発明の方法を用いうることを、これらの実験は裏付ける。阻害性核酸には、例えば、三重鎖形成核酸、piRNA、dsRNA、siRNA、ヘアピンdsRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、アプタザイム、およびアンチセンス核酸が含まれる。
【0171】
細胞遊走アッセイ
環境の刺激に応答する細胞遊走は、免疫応答、創傷治癒、および幹細胞ホーミングを含めた、広範にわたる生理学的過程にとって中心的である。場合によっては、過剰な細胞遊走が、炎症性疾患および腫瘍転移を含めた疾患の病態に寄与しうる。細胞遊走の阻害剤のために薬物を発見する努力は、機能的に重要な細胞型における主要なスクリーニングキャンペーンを可能とする、ハイスループットアッセイが欠如することにより妨げられている。本発明は、標識を伴わない光学バイオセンサー法を用いる、走化性についての異なるハイスループットスクリーニングアッセイを提供する。BIND(商標)「タッチダウン」アッセイでは、コラーゲン層を通る細胞の浸潤、ならびにケモカインにより覆われたバイオセンサー表面への細胞浸潤を測定する。BIND(商標)「リフトオフ」アッセイでは、コラーゲンで覆われたセンサー表面から、液浴媒体中に存在するケモカインへの細胞脱離を測定する。いずれのアッセイも、トランスウェルに依存せず、1ウェル当たりに必要とする細胞数が少なく、1536ウェルに適合可能である。
【0172】
「リフトオフ」アッセイは、第1の細胞集団が、1または複数の刺激に対して示す応答を検出する方法を提供する。図15を参照されたい。細胞は、例えば、幹細胞を含め、任意の細胞型でありうる。1または複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは回折格子ベース導波路バイオセンサーの表面に固定化することができる。第1の細胞集団は、1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有する。次いで、第1の細胞集団を、バイオセンサーへと添加することができる。代替的に、第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するが、この場合、該第1の細胞集団は、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有する。第1の細胞集団、ならびに1または複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは回折格子ベース導波路バイオセンサーの表面へと添加する。
【0173】
第1の細胞集団および細胞外マトリックスリガンドが、ゲルまたはゲル様物質により部分的または完全に覆われるように、該ゲルまたはゲル様物質を、バイオセンサーへと添加することができる。
【0174】
ゲルまたはゲル様物質は、例えば、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックス、アルギン酸ゲル、コラーゲンゲル、寒天、アガロースゲル、合成ポリマーハイドロゲル、合成ハイドロゲルマトリックス、ラミニンゲル、ビトロゲン、キトサンゲル、フィブリノーゲンゲル、PuraMatrix(商標)ペプチドハイドロゲル(各種の細胞培養実験用に規定された三次元(3D)のマイクロ環境を創出するのに用いられる合成マトリックス)、またはゼラチンでありうる。ゲルまたはゲル様物質は、場合によって、1または複数のECMリガンド、走化作用物質、増殖因子、特異的結合パートナー、リガンド、またはこれらの組合せを含みうる。
【0175】
代替的には、ゲルまたはゲル様物質の代わりに、第2の細胞集団または人工基底膜を、バイオセンサー表面へと添加することができる。第2の細胞集団、人工基底膜、またはゲルもしくはゲル様物質は、第1の細胞集団がそれを介して遊走する障壁を形成しうる。人工基底膜は、当技術分野においてよく知られている。例えば、Inoueら、J.Biomed.Mater.Res.A.73:158(2005);Guoら、Int.J.Mol.Med.16:395(2005);Sahaら、Ind.J.Exp.Biol.43:1130(2006);Barrosoら、J.Biol.Chem.、283:11714(2008);Okumotoら、J.Hepatol.、43:110(2005)を参照されたい。第2の細胞集団は、例えば、上皮細胞の場合もあり、内皮細胞集団の場合もある。
【0176】
1または複数の刺激を、ゲル、ゲル様物質、第2の細胞集団、または人工基底膜へと添加することができる。1または複数の刺激は、例えば、走化作用物質、リガンド、または刺激を生成させる第3の細胞集団でありうる。
【0177】
第1の細胞集団が、試験試薬または刺激に対して示す応答を検出することができる。第1の細胞集団がバイオセンサー表面から移出すれば、PWVまたは有効屈折率が低下する。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、第1の細胞集団が、1または複数の刺激または試験試薬に対して示す応答を検出することができる。第1の細胞集団が示す応答は、リアルタイムで検出することができる。加えて、第1の細胞集団と比べて、第2の細胞集団が、刺激または試験試薬に対して示す応答も検出することもできる。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、第2の細胞集団が、1または複数の刺激または試験試薬に対して示す応答を検出することができる。第2の細胞集団が示す応答は、リアルタイムで検出することができる。
【0178】
例えば、HT1080細胞が、ウシ胎仔血清(FBS)に応答するのに対し、NIH3T3細胞はこれに応答しない。比色共鳴反射光バイオセンサーを用いるリフトオフアッセイにおいて、ケモカイン中におけるFBSに、HT1080細胞およびNIH3T3細胞を曝露した。バイオセンサーに由来するシグナルが低下することにより裏付けられる通り、HT1080細胞は、バイオセンサーから離脱し、FBSへと移動した。バイオセンサーに由来するシグナルが上昇することにより裏付けられる通り、NIH3T3細胞はFBSに反応しないため、それらはバイオセンサー表面上にとどまり、増殖した。図16は、対照ウェルと比較して、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックスの存在下では、MSC細胞が、バイオセンサーから離脱することを示す。MSC結合シグナルは、MATRIGEL(商標)コーティングにより、容易に同定することができる。MSCは、対照ウェルと比較して、センサーから離脱する傾向を提示する。これは、図16において黒色として表示される負のPWVシフトにより裏付けられる。
【0179】
「タッチダウン」アッセイは、幹細胞または初代細胞など、第1の細胞集団が、1または複数の刺激に対して示す応答を検出する方法を提供する。1または複数の刺激を、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは回折格子ベース導波路バイオセンサーの表面へと添加する。ゲル、ゲル様物質、第2の細胞集団、または人工基底膜を、該バイオセンサー表面へと添加する。第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するが、この場合、該第1の細胞集団は、該1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有する。第1の細胞集団をバイオセンサーへと添加する。第1の細胞集団が1または複数の刺激に対して示す応答を検出する。第1の細胞集団が、バイオセンサー表面へと移動すれば、PWVまたは有効屈折率が増大する。1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、第1の細胞集団が、1または複数の刺激に対して示す応答を検出することができる。第1の細胞集団が示す応答は、リアルタイムで検出することができる。1または複数の刺激は、走化作用物質の場合もあり、刺激を生成させる第3の細胞集団の場合もある。第2の細胞集団は、上皮細胞集団の場合もあり、内皮細胞集団の場合もある。第1の細胞集団は、幹細胞集団でありうる。
【0180】
他のアッセイ
走化作用物質は、「液浴適用」により、細胞へと適用することができる。この方法では、幹細胞または初代細胞などの細胞を、バイオセンサーへと付着させ、その後、走化作用物質で処理する。試験作用物質を添加した後、リアルタイムでBIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERを用いて、細胞応答(無作為的な移動および付着)を検出する。
【0181】
本発明の方法を用いると、幹細胞が、2次元における走化性勾配に対して示す指向性遊走を検出することができる。これらの方法では、幹細胞などの細胞をバイオセンサー、好ましくはマイクロタイターウェルの角部分または側面部分に付着させる。ウェル全体にわたり走化作用物質の濃度勾配を創出するような形で、走化作用物質を、ウェル内の規定領域から添加する。細胞の応答および遊走を、BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNER上において検出する。指向性は、多くの方法で決定することができる;一実施形態では、細胞が1つのセクターから別のセクターへと遊走するのに応じて、変化をモニタリングしうるように、BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERが、マイクロタイターウェル内の個々のセクターを測定することが可能である。別の方法では、バイオセンサーの回折格子が、バイオセンサー上において異なる光周波数と共鳴する、異なる回折格子構造によりパターン化されている。異なる光周波数を用いて異なるセクターをモニタリングすることにより、細胞の移動を、1つのセクターから別のセクターへとモニタリングすることができる。第3の方法では、BIND(登録商標)SCANNERで単一細胞を解析することにより、バイオセンサー上におけるそれらの付着が変化することを介して、個々の細胞の運動を直接的に測定および追跡することができる。
【0182】
幹細胞解析の別の方式は、標識を用いない検出プラットフォームを用いて、幹細胞の分化を検出することに関する。一実施形態では、マイクロプレートバイオセンサーを、細胞外マトリックス物質でコーティングし、その後、幹細胞と共にインキュベートする。幹細胞を細胞外マトリックスに付着させ、幹細胞の分化を促進する培養条件にかける。場合によって、試験作用物質を添加して、それらが幹細胞の分化に対して及ぼす影響を検出することができる。異なる時間間隔でPWVシグナルを検出することにより、BIND(登録商標)READERまたはBIND(登録商標)SCANNERを用いて、分化を追跡することができる。逆に、PWVシグナルを用いて、分化を防止することを意図する条件下において、幹細胞の分裂をモニタリングすることができる。別の方式では、分化細胞の結合シグナルが、ECMとの示差的相互作用に基づき、未分化細胞とは定性的/定量的に異なりうる。この差違は、BIND(登録商標)SCANNER上における異なる細胞型の特徴として用いることができる。
【0183】
本発明の別の実施形態では、「生物学的プロファイリング」として説明される過程を介して、分化段階をモニタリングすることが望ましい場合がある。生物学的プロファイリングは、細胞における生物学的応答に基づき、パターン化した応答をモニタリングしうる点で、遺伝子チップを用いる遺伝子プロファイリングと概念的に関連する。しかし、生物学的プロファイリングは、それが、生細胞を用い、リアルタイムでモニタリングしうる点で異なる。この方法では、幹細胞を細胞外マトリックスへと付着させ、幹細胞を結合させる。その後、幹細胞を、分化条件、リガンド、もしくは試験化合物、または環境条件にかける。生物学的プロファイルとは、ある時間(約1、5、10、30、60秒間、約1、2、3、4、5、10、20、40、60分間以上)にわたり記録された、細胞集団の約2、5、10、20、50以上のPWVを捕集することである。生物学的プロファイルは、ある時間にわたるPWVの変化を明らかにし、細胞が、分化条件、試験化合物、または環境条件に対して示す反応の固有の特徴を表わす。例えば、試験化合物が分化を誘導する場合、ある時間にわたり、細胞が分化および増殖するにつれ、PWVは上昇しうる。試験化合物が毒素である場合、ある時間にわたり、細胞が脆弱化して死滅するにつれて、PWVは低下しうる。生物学的プロファイルはまた、2つ以上の異なる濃度の試験化合物またはリガンドについて記録された細胞集団のPWVでもありうる。生物学的プロファイルは、異なる濃度にわたるPWVの変化を明らかにし、試験化合物またはリガンドの固有の特徴を表わす。
【0184】
細胞に周期的にリガンドを添加して、標識を伴わない応答をプローブする;例えば、GPCRリガンドのパネルを添加して、細胞がリガンドに対して示すパターン化した反応をプローブする。細胞が分化し、新規の受容体が上方制御または下方制御されるにつれて、バイオセンサー上では細胞からの異なる応答が現れる。さらに、シグナル伝達経路または細胞接着経路に関与するタンパク質が、分化に応答して変化し、また、リガンドのパネルに応答した変化も引き起こす。したがって、リガンドのパネルは、分化に応答して変化することが知られる特異的受容体の場合もあり、好ましくは、細胞のより無作為的な調節物質の場合もある。したがって、分化した各細胞型は、リガンドに対する、その固有のパターン化した応答、したがって、「生物学的プロファイル」を与える。さらに、光学バイオセンサーは、電気的プローブのアレイを組み込み、電位差に対して応答しうる分化細胞、例えば、筋肉細胞または神経細胞に電気的刺激をもたらすこともできる。光学バイオセンサーは、このような細胞が電気的刺激に対して示す応答を記録する。BIND(登録商標)SCANNERは、応答する細胞と、電気的プローブとの形状的関連性をモニタリングしうる。同様に、バイオセンサーは、流動または圧力を伴う幹細胞アッセイを可能とする流動デバイスの一部を含みうる。
【0185】
感度を上昇させ、バックグラウンドシグナルを低減する方法
本発明を用いて、結合アッセイの感度を上昇させ、結合アッセイのバックグラウンドシグナルを低下させることができる。結合アッセイは、リガンドまたは特異的結合物質を、バイオセンサー表面に固定化するか、または他の形でこれと会合させるステップと、次いで、該表面に結合パートナーを添加するステップとを含みうる。結合パートナーが、リガンドまたは特異的結合物質に対して示す結合を、検出することができる。しかし、場合によっては、結合パートナーが、バイオセンサーに非特異的に結合する可能性がある。すなわち、結合パートナーが、リガンドまたは特異的結合物質に特異的に結合せず、バイオセンサー表面自体に結合してしまう場合である。ブロッキング剤を用いることにより、非特異的結合を低減することができる。しかし、ブロッキング剤は、特異的結合のシグナルも減殺する可能性がある。
【0186】
「特異的に結合する(specifically binds)」、「特異的に結合する(specifically bind)」または「〜に特異的な」とは、結合パートナーが、特定のリガンドまたは特異的結合物質を認識し、これに結合するが、試料中における他の非特異的分子は実質的に認識しないか、またはこれに実質的に結合しないことを意味する。
【0187】
本発明の一実施形態は、バイオセンサー表面に固定化するか、または他の形でこれと会合させた、特異的結合物質またはリガンドを覆う、ゲルまたはゲル様物質の層を付加することにより、結合アッセイの感度を上昇させ、結合アッセイのバックグラウンドを低減する方法を提供する。ゲルまたはゲル様物質は、例えば、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックス、アルギン酸ゲル、コラーゲンゲル、寒天、アガロースゲル、合成ポリマーハイドロゲル、合成ハイドロゲルマトリックス、ラミニンゲル、ビトロゲン、キトサンゲル、フィブリノーゲンゲル、ゼラチン、またはPuraMatrix(商標)ペプチドハイドロゲル(各種の細胞培養実験用に規定された三次元(3D)のマイクロ環境を創出するのに用いられる合成マトリックス)でありうる。ゲルまたはゲル様物質は、場合によって、1または複数のECMリガンド、走化作用物質、増殖因子、特異的結合パートナー、リガンド、またはこれらの組合せを含みうる。
【0188】
「タッチダウン」走化性アッセイでは、ケモカイン(PDGF−BB)を、384ウェルバイオセンサープレートのウェルの中央部だけにスポットした(ウェルの底面全体にわたりスポットする代わりに)。次いで、ウェル表面をMATRIGEL(商標)基底膜マトリックスでコーティングし、間葉幹細胞(MSC)を、MATRIGEL(商標)基底膜マトリックス表面へと添加した。BIND(登録商標)SCANNERを用いて、ウェルに由来するピーク波長値を検出し、MSCが、ウェル全体に無作為的に遊走する場合と対照的に、PDGF−BBのスポットへと優先的に遊走するかどうかを決定した。細胞結合(正のPWVシフト)シグナルとしての遊走について、細胞をスコア付けした。データからは、実際、MSCがPDGF−BBスポットへと遊走するバイアスが存在することが示唆される。また、パラレルウェルを調製し、PDGF−BBに特異的な中和抗体をウェルに添加して、ケモカインにより誘導される遊走が遮断されうるかどうかも決定した。図23を参照されたい。図23の下列中央のパネルは、抗体がMSCの遊走を遮断することを示すが、また、PDGF−BB抗体が、バイオセンサー上にスポットされたPDGF−BBと相互作用することを表わす、ウェルの中央における正のPWVシフトによる極めて明色の矩形も示す。図23において、「ケモカインX」とはPDGF−BBであり;「ケモカインX nAb」とは、PDGF−BBに特異的な中和抗体である。
【0189】
MATRIGEL(商標)基底膜マトリックスが、バイオセンサー上におけるバックグラウンドシグナルを低減することによりシステムの感度を上昇させ、予測されるより大きな、抗体−抗原間におけるシグナル:バックグラウンド応答を生成させたことは驚くべきことである。したがって、ゲルまたはゲル様物質は、シグナル:バックグラウンドが最適化を要請する生化学的適用に改善をもたらす、他のバイオセンサー界面化学またはデキストラン様のバイオセンサー表面とは異なる、新たな種類のバイオセンサー界面化学をもたらす。
【0190】
したがって、本発明は、バイオセンサー表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質;ならびに該1または複数の特異的結合物質を覆う、ゲルまたはゲル様物質の層を含む、比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面または回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面を提供する。該バイオセンサーの回折格子表面は、液体含有容器の内部表面を形成しうる。該液体含有容器は、マイクロタイタープレートまたはマイクロ流体チャネルでありうる。
【0191】
本発明はまた、比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面上または回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面上において、特異的結合物質と結合パートナーとの反応を検出する改良法も提供する。1または複数の特異的結合物質が、該バイオセンサーの回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合するように、該1または複数の特異的結合物質を、該バイオセンサーの回折格子表面へと適用することができる。1または複数の特異的結合物質は、バイオセンサー表面上における1または複数の異なる地点に沈着させることができる。ゲルまたはゲル様物質を、バイオセンサー表面へと添加する。場合によって、1または複数のECMリガンド、走化作用物質、またはリガンドをバイオセンサー表面へと添加することもできる。該1または複数の特異的結合物質に潜在的に結合する、1または複数の結合パートナーを、該ゲルまたはゲル様表面へと添加することができる。1または複数のピーク波長値または有効屈折率を決定することにより、該1または複数の特異的結合物質と、該1または複数の結合パートナーとの相互作用を検出する。結果は、ゲルまたはゲル様物質を用いずに得られる結果より特異的であり、ゲルまたはゲル様物質を用いずに得られる結果と比較して、非特異的バックグラウンドが低減される。具体的な理論に拘束されることを望まないが、ゲルまたはゲル様物質が、非特異的結合を遮断する機能を果たし、その結果として、より特異的な結果が得られると考えられる。
【0192】
本発明の一実施形態は、1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、ならびにゲルまたはゲル様物質の1または複数の容器を含むキットを提供する。該キットは、場合によって、1または複数の特異的結合物質の容器を含みうる。1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面または1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面は、該バイオセンサーの回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質を含みうる。
【0193】
本明細書の任意の箇所で言及された、すべての特許、特許出願、ならびに他の科学的文献または技術的文献は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。本明細書で例示的に説明される本発明は、本明細書では具体的に開示されていない1または複数の要素、1または複数の限定の不在下においても適切な形で実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各場合において、「〜を含む」、「〜から本質的になる」、および「〜からなる」という用語のうちのいずれかを、それらの通常の意味を保持しながら、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。用いられている用語および表現は、説明を目的として用いられるものであり、限定を目的として用いられるものではなく、このような用語および表現を用いるに際しては、示され、かつ、説明される特色の任意の同等物またはそれらの一部を除外することが意図されるものではなく、主張される本発明の範囲内において、各種の改変が可能であることが認められている。したがって、本発明を、実施形態、任意選択の特色により具体的に開示してきたが、当業者が、本明細書で開示される概念の改変および変更に訴えることは可能であり、かつ、このような改変および変更は、本説明ならびに付属の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
【0194】
加えて、本発明の特色または態様を、代替物についてのマーカッシュ群または他の群分けとの関連で説明する場合、これにより、マーカッシュ群または他の群の個々のメンバーまたはメンバーの亜群との関連でも本発明が説明されることを、当業者は認めるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの容器内における2つ以上の細胞型が刺激または試験試薬に対して示す示差的応答を検出する方法であって、前記2つ以上の細胞型が検出可能な標識を含まず、
(a)前記2つ以上の細胞型を、前記1つの容器へと適用するステップであって、前記容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、前記バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させており、かつ、前記1または複数の特異的結合物質が、前記2つ以上の細胞型のうちの1または複数に結合しうるステップ;
(b)前記2つ以上の細胞型を、前記1または複数の特異的結合物質に結合させるステップ;および
(c)前記2つ以上の細胞型が示す前記示差的応答を検出するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、前記1または複数の特異的結合物質への異なる時点での結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記示差的応答が、前記1または複数の特異的結合物質に対して前記2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、前記1または複数の特異的結合物質への異なる強度の結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(d)前記2つ以上の細胞型を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するステップ;および
(e)前記2つ以上の細胞型が示す前記示差的応答を検出するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、前記1または複数の試験試薬または刺激に対する異なる強度の応答である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記示差的応答が、1または複数の試験試薬または刺激に応答して前記2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる前記1または複数の試験試薬または刺激に対する異なる細胞応答である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
(d)前記2つ以上の細胞型を、第1の試験試薬または第1の刺激へと曝露するステップ;
(e)前記2つ以上の細胞型が前記第1の試験試薬または第1の刺激に対して示す応答を検出するステップ;
(f)前記2つ以上の細胞型を、第2の試験試薬または第2の刺激へと曝露するステップであって、前記2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つが前記第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答が知られているステップ;
(g)前記2つ以上の細胞型が前記第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答を検出するステップ;
(h)前記第2の試験試薬または第2の刺激に対する応答が知られている、前記2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つを、前記バイオセンサー上において同定するステップ;
(i)前記2つ以上の細胞型が示す前記示差的応答を検出するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオセンサー表面上に存在する、前記2つ以上の細胞型の1または複数の細胞により、前記1または複数の試験試薬または刺激が発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、前記細胞混合集団内の細胞が検出可能な標識を含まず、
(a)前記細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップであって、前記容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、前記バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させているステップ;
(b)前記細胞混合集団を、前記1または複数の特異的結合物質に結合させるステップであって、前記第1の細胞型が、前記1または複数の特異的結合物質への結合に対して、前記細胞混合集団の他の細胞と示差的な応答を示すステップ;および
(c)前記細胞混合集団の示差的応答を検出するステップであって、前記第1の細胞型が存在することが、それらの示差的応答により検出されるステップ
を含む方法。
【請求項13】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、前記1または複数の特異的結合物質への異なる時点での結合である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記示差的応答が、前記1または複数の特異的結合物質に対して前記第1の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、前記1または複数の特異的結合物質への異なる強度の結合である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞混合集団内における前記第1の細胞型の百分率を決定する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、前記細胞混合集団内における細胞のいずれもが検出可能な標識を含まず、
(a)前記細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップであって、前記容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、前記バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させているステップ;
(b)前記細胞混合集団を、前記1または複数の特異的結合物質に結合させるステップ;
(c)前記細胞混合集団を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するステップであって、前記第1の細胞型が、前記細胞混合集団内における他の細胞と比較して、前記1または複数の試験試薬または刺激に対して示差的応答を示すステップ;
(d)前記第1の細胞型が前記1または複数の試験試薬または刺激に対して示す示差的応答を検出するステップであって、前記示差的応答が検出される場合に、前記第1の細胞型が前記細胞混合集団内に存在するステップ
を含む方法。
【請求項19】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、前記1または複数の試験試薬または刺激に対する異なる強度の応答である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記示差的応答が、前記1または複数の試験試薬または刺激に応答して前記第1の細胞型によって提示される異なる細胞形態である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、ある時間にわたる前記1または複数の試験試薬または刺激に対する異なる細胞応答である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞混合集団内における前記第1の細胞型の百分率を決定する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記バイオセンサー表面上に存在する、前記細胞混合集団のうちの1または複数の細胞により、前記1または複数の試験試薬または刺激が発現される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
第1の細胞集団が1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する方法であって、
(a)(i)1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、もしくは誘電積層膜バイオセンサーの表面へと固定化するステップであって、前記第1の細胞集団が、前記1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および前記第1の細胞集団を、前記バイオセンサーへと添加するステップ;または
(ii)前記第1の細胞集団を、1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するステップであって、前記第1の細胞集団が、前記1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドを伴う前記第1の細胞集団を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、もしくは誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;
(b)ゲルもしくはゲル様物質、または第2の細胞集団を、前記バイオセンサー表面へと添加するステップ;
(c)前記1または複数の試験試薬または刺激を、前記ゲルもしくはゲル様物質、または前記第2の細胞集団へと添加するステップ;ならびに
(d)前記第1の細胞集団が前記1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出するステップ
を含む方法。
【請求項26】
前記1または複数の試験試薬または刺激が、走化作用物質であるか、または試験試薬もしくは刺激をもたらす第3の細胞集団である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の細胞集団が、上皮細胞集団または内皮細胞集団である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の細胞集団が、幹細胞集団である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
検出標識を用いない、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の細胞集団の応答を検出するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、前記第1の細胞集団または前記第2の細胞集団が前記1または複数の刺激に対して示す応答を検出する、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の細胞集団または前記第2の細胞集団の応答を、リアルタイムで検出する、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
第1の細胞集団が1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する方法であって、
(a)1または複数の試験試薬または刺激を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;
(b)基底膜マトリックス、アルギン酸ゲル、コラーゲンゲル、アガロースゲル、合成ハイドロゲル、または第2の細胞集団を、前記バイオセンサー表面へと添加するステップ;
(c)前記第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するステップであって、前記第1の細胞集団が、前記1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および前記第1の細胞集団を、前記バイオセンサー表面へと添加するステップ;
(d)前記第1の細胞集団が前記1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出するステップ
を含む方法。
【請求項34】
前記1または複数の試験試薬または刺激が、走化作用物質であるか、または試験試薬もしくは刺激をもたらす第3の細胞集団である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の細胞集団が、上皮細胞集団または内皮細胞集団である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の細胞集団が、幹細胞集団である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
検出標識を用いない、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の細胞集団の応答を検出するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、前記第1の細胞集団または前記第2の細胞集団が前記1または複数の刺激に対して示す応答を検出する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の細胞集団または前記第2の細胞集団の応答を、リアルタイムで検出する、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
第1の細胞集団の分化を検出する方法であって、
(a)前記第1の細胞集団を、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップであって、前記バイオセンサーが、2つ以上の表面セクターを有し、各表面セクターが、他の表面セクターとは共鳴値が異なる回折格子を有するステップ;
(b)前記2つ以上の表面セクターの各々に由来する2つ以上のピーク波長値を検出するステップ;および
(c)前記バイオセンサー表面上において、前記第1の細胞集団の分化を検出するステップ
を含む方法。
【請求項42】
前記分化を、リアルタイムで検出する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記2つ以上の表面セクターの各々に由来する2つ以上のピーク波長値を検出する前に、前記1または複数の試験試薬または刺激を、前記バイオセンサーへと適用する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記1または複数の試験試薬または刺激を、前記バイオセンサーへと適用する前に、1または複数のピーク波長値を検出する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記1または複数の試験試薬または刺激が、走化作用物質であるか、または試験試薬もしくは刺激をもたらす第3の細胞集団である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の細胞集団が、幹細胞集団である、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
検出標識を用いない、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
特定の幹細胞集団に特異的な生物学的応答の特徴を同定する生物学的発現プロファイリングの方法であって、
(a)(i)1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、もしくは誘電積層膜バイオセンサーの2つ以上の表面へと固定化するステップであって、前記幹細胞集団が、前記1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および前記幹細胞集団を、前記バイオセンサーの2つ以上の地点へと添加するステップ;または
(ii)前記幹細胞集団を、1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するステップであって、前記幹細胞が、前記1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドを伴う前記幹細胞集団を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、もしくは誘電積層膜バイオセンサーの2つ以上の表面へと添加するステップ;
(b)前記バイオセンサーの2つ以上の表面を、2つ以上の試験試薬または刺激へと曝露するステップ;
(c)前記バイオセンサーの2つ以上の表面の各々において、前記幹細胞が前記試験試薬または刺激に対して示す応答を検出するステップ;
(d)特定の幹細胞集団が2つ以上の試験試薬または刺激に対して特異的に示す生物学的応答の特徴を同定するステップ
を含む方法。
【請求項49】
前記幹細胞の応答を検出するステップを、リアルタイムで行う、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
候補化合物を、細胞分化を調節するその能力についてスクリーニングする方法であって、(a)1または複数の細胞型を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;(b)前記1または複数の細胞型を誘導して分化させるステップ;(c)前記候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値または有効屈折率変化を比較することにより、前記候補化合物の存在下または不存在下における細胞分化の変化を検出するステップであって、前記候補化合物の不在下における細胞分化活性と比べた、前記候補化合物の存在下における細胞分化活性の変化によって、細胞分化を調節する前記候補化合物の能力が示されるステップを含む方法。
【請求項51】
前記細胞分化活性の変化が、細胞分化活性の上昇、細胞分化活性の低下、細胞分化活性の阻害、幹細胞の自己複製の増大もしくは減少、または分化した細胞の細胞型の変化である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞分化活性の変化が、コラーゲン生成の増大または減少である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞分化活性の変化が、石灰化結節形成の増大または減少である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記1または複数の細胞型が、幹細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記1または複数の細胞型が、間葉幹細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
細胞サイズ、細胞形状、細胞膜電位、細胞代謝活性、またはシグナルに対する細胞応答性の変化を検出することにより、前記細胞分化活性の変化を検出する、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記候補化合物が、阻害性核酸分子である、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
候補化合物を、細胞分化を調節するその能力についてスクリーニングする方法であって、(a)1または複数の細胞型を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;(b)前記1または複数の細胞型を誘導して分化させるステップ;(c)前記候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値または有効屈折率変化を比較することにより、前記候補化合物の存在下または不存在下における1または複数の細胞分化生成物の生成を検出するステップであって、前記候補化合物の不存在下における1または複数の細胞分化生成物と比べた、前記候補化合物の存在下における1または複数の細胞分化生成物の変化によって、細胞分化を調節する前記候補化合物の能力が示されるステップを含む方法。
【請求項59】
前記細胞分化生成物が、コラーゲンまたは石灰化結節である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記1または複数の細胞型が、幹細胞である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記1または複数の細胞型が、間葉幹細胞である、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記候補化合物が、阻害性核酸分子である、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した1または複数の特異的結合物質;および前記1または複数の特異的結合物質を覆うゲルまたはゲル様物質の層を含む、比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面。
【請求項64】
1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面、およびゲルまたはゲル様物質の1または複数の容器を含むキット。
【請求項65】
1または複数の特異的結合物質の容器をさらに含む、請求項64に記載のキット。
【請求項66】
前記1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面が、前記バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質を含む、請求項64に記載のキット。
【請求項67】
前記バイオセンサー回折格子表面が液体含有容器の内部表面を形成する、請求項63に記載の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面。
【請求項68】
前記液体含有容器が、マイクロタイタープレートまたはマイクロ流路である、請求項67に記載の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面。
【請求項69】
比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面上、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面上、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面上において、特異的結合物質と結合パートナーとの反応を検出する改良法であって、
1または複数の特異的結合物質が前記バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合するように、前記1または複数の特異的結合物質を、前記バイオセンサー回折格子表面へと適用するステップ;
ゲルまたはゲル様物質を、前記バイオセンサー表面へと適用するステップを含む方法。
【請求項70】
細胞混合集団から2つ以上の細胞型を分取し、かつ、前記分取された細胞が刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出する方法であって、前記分取および前記検出を、1つのバイオセンサー表面上で行い、
(a)細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、前記1つのバイオセンサー表面が、その1つの表面に2種類以上の特異的結合物質を固定化させており、かつ、前記2つ以上の特異的結合物質が、前記細胞混合集団内における1または複数の細胞型に潜在的に結合しうるステップ;
(b)前記バイオセンサーの前記1つの表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、前記1または複数の細胞型が、前記バイオセンサーの前記表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;
(c)前記1または複数の結合した細胞型を、刺激、インキュベーション、または試験試薬へと曝露するステップ;および
(d)前記1または複数の結合した細胞型が前記刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出するステップ
を含む方法。
【請求項71】
前記2つ以上の特異的結合物質が、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質と、1または複数の他の特異的結合物質との組合せを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記1つのバイオセンサー表面が、マイクロタイターウェルの底面である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記2つ以上の細胞型および試験試薬が、検出可能な標識を含まない、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
1つのバイオセンサー表面上において、細胞混合集団から1または複数の細胞型を分取し、かつ、前記1または複数の細胞型から細胞内分析物を検出する方法であって、
(a)細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、前記1つのバイオセンサー表面が、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させており、前記2つ以上の特異的結合物質が、(i)前記細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)前記1または複数の細胞型に由来する1または複数の細胞内分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含むステップ;
(b)前記バイオセンサーの前記表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、前記1または複数の細胞型が、前記バイオセンサーの前記表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;
(c)前記1または複数の結合した細胞型を、溶解させるかまたは透過処理するステップ;
(d)前記バイオセンサーの前記表面から、結合しなかったいかなる分析物も洗い流すステップ;ならびに
(d)前記バイオセンサーの前記表面に固定化された前記細胞内分析物を検出するステップ
を含む方法。
【請求項75】
前記第1の特異的結合物質が、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記1または複数の結合した細胞型を溶解させるかまたは透過処理する前に、細胞をある時間間隔にわたりインキュベートするか、または刺激に曝露するか、または試験試薬に曝露する、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記1つのバイオセンサー表面が、マイクロタイターウェルの底面である、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記細胞混合集団および前記2つ以上の特異的結合物質が、検出可能な標識を含まない、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
1つのバイオセンサー表面上において、細胞混合集団から1または複数の細胞型を分取し、かつ、前記1または複数の細胞型から分析物を検出する方法であって、
(a)細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、前記1つのバイオセンサー表面が、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させており、前記2つ以上の特異的結合物質が、(i)前記細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)前記1または複数の細胞型に由来する1または複数の分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含むステップ;
(b)前記バイオセンサーの前記表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、前記1または複数の細胞型が、前記バイオセンサーの前記表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;
(c)試験試薬を前記細胞に適用するか、もしくは前記細胞をインキュベートするか、もしくは前記細胞を刺激下に置くか、またはこれらの組合せを行うステップ;ならびに
(d)前記バイオセンサーの前記表面に固定化された分析物を検出するステップ
を含む方法。
【請求項80】
前記第1の特異的結合物質が、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記1つのバイオセンサー表面が、マイクロタイターウェルの底面である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記細胞混合集団および前記2つ以上の特異的結合物質が、検出可能な標識を含まない、請求項79に記載の方法。
【請求項1】
1つの容器内における2つ以上の細胞型が刺激または試験試薬に対して示す示差的応答を検出する方法であって、前記2つ以上の細胞型が検出可能な標識を含まず、
(a)前記2つ以上の細胞型を、前記1つの容器へと適用するステップであって、前記容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、前記バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させており、かつ、前記1または複数の特異的結合物質が、前記2つ以上の細胞型のうちの1または複数に結合しうるステップ;
(b)前記2つ以上の細胞型を、前記1または複数の特異的結合物質に結合させるステップ;および
(c)前記2つ以上の細胞型が示す前記示差的応答を検出するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、前記1または複数の特異的結合物質への異なる時点での結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記示差的応答が、前記1または複数の特異的結合物質に対して前記2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、前記1または複数の特異的結合物質への異なる強度の結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(d)前記2つ以上の細胞型を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するステップ;および
(e)前記2つ以上の細胞型が示す前記示差的応答を検出するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、前記1または複数の試験試薬または刺激に対する異なる強度の応答である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記示差的応答が、1または複数の試験試薬または刺激に応答して前記2つ以上の細胞型によって提示される異なる細胞形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる前記1または複数の試験試薬または刺激に対する異なる細胞応答である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記示差的応答が、前記2つ以上の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
(d)前記2つ以上の細胞型を、第1の試験試薬または第1の刺激へと曝露するステップ;
(e)前記2つ以上の細胞型が前記第1の試験試薬または第1の刺激に対して示す応答を検出するステップ;
(f)前記2つ以上の細胞型を、第2の試験試薬または第2の刺激へと曝露するステップであって、前記2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つが前記第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答が知られているステップ;
(g)前記2つ以上の細胞型が前記第2の試験試薬または第2の刺激に対して示す応答を検出するステップ;
(h)前記第2の試験試薬または第2の刺激に対する応答が知られている、前記2つ以上の細胞型における細胞型のうちの1つを、前記バイオセンサー上において同定するステップ;
(i)前記2つ以上の細胞型が示す前記示差的応答を検出するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオセンサー表面上に存在する、前記2つ以上の細胞型の1または複数の細胞により、前記1または複数の試験試薬または刺激が発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、前記細胞混合集団内の細胞が検出可能な標識を含まず、
(a)前記細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップであって、前記容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、前記バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させているステップ;
(b)前記細胞混合集団を、前記1または複数の特異的結合物質に結合させるステップであって、前記第1の細胞型が、前記1または複数の特異的結合物質への結合に対して、前記細胞混合集団の他の細胞と示差的な応答を示すステップ;および
(c)前記細胞混合集団の示差的応答を検出するステップであって、前記第1の細胞型が存在することが、それらの示差的応答により検出されるステップ
を含む方法。
【請求項13】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、前記1または複数の特異的結合物質への異なる時点での結合である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記示差的応答が、前記1または複数の特異的結合物質に対して前記第1の細胞型によって提示される異なる細胞結合形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、前記1または複数の特異的結合物質への異なる強度の結合である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞混合集団内における前記第1の細胞型の百分率を決定する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
細胞混合集団内に第1の細胞型が存在することを検出する方法であって、前記細胞混合集団内における細胞のいずれもが検出可能な標識を含まず、
(a)前記細胞混合集団を、1つの容器へと適用するステップであって、前記容器が、比色共鳴反射光バイオセンサー表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または誘電積層膜バイオセンサー表面を含み、前記バイオセンサー表面が、その表面に1または複数の特異的結合物質を固定化させているステップ;
(b)前記細胞混合集団を、前記1または複数の特異的結合物質に結合させるステップ;
(c)前記細胞混合集団を、1または複数の試験試薬または刺激へと曝露するステップであって、前記第1の細胞型が、前記細胞混合集団内における他の細胞と比較して、前記1または複数の試験試薬または刺激に対して示差的応答を示すステップ;
(d)前記第1の細胞型が前記1または複数の試験試薬または刺激に対して示す示差的応答を検出するステップであって、前記示差的応答が検出される場合に、前記第1の細胞型が前記細胞混合集団内に存在するステップ
を含む方法。
【請求項19】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、前記1または複数の試験試薬または刺激に対する異なる強度の応答である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記示差的応答が、前記1または複数の試験試薬または刺激に応答して前記第1の細胞型によって提示される異なる細胞形態である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、ある時間にわたる前記1または複数の試験試薬または刺激に対する異なる細胞応答である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記示差的応答が、前記第1の細胞型による、ある時間にわたる異なる応答動態である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞混合集団内における前記第1の細胞型の百分率を決定する、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記バイオセンサー表面上に存在する、前記細胞混合集団のうちの1または複数の細胞により、前記1または複数の試験試薬または刺激が発現される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
第1の細胞集団が1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する方法であって、
(a)(i)1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、もしくは誘電積層膜バイオセンサーの表面へと固定化するステップであって、前記第1の細胞集団が、前記1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および前記第1の細胞集団を、前記バイオセンサーへと添加するステップ;または
(ii)前記第1の細胞集団を、1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するステップであって、前記第1の細胞集団が、前記1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドを伴う前記第1の細胞集団を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、もしくは誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;
(b)ゲルもしくはゲル様物質、または第2の細胞集団を、前記バイオセンサー表面へと添加するステップ;
(c)前記1または複数の試験試薬または刺激を、前記ゲルもしくはゲル様物質、または前記第2の細胞集団へと添加するステップ;ならびに
(d)前記第1の細胞集団が前記1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出するステップ
を含む方法。
【請求項26】
前記1または複数の試験試薬または刺激が、走化作用物質であるか、または試験試薬もしくは刺激をもたらす第3の細胞集団である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の細胞集団が、上皮細胞集団または内皮細胞集団である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の細胞集団が、幹細胞集団である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
検出標識を用いない、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の細胞集団の応答を検出するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、前記第1の細胞集団または前記第2の細胞集団が前記1または複数の刺激に対して示す応答を検出する、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の細胞集団または前記第2の細胞集団の応答を、リアルタイムで検出する、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
第1の細胞集団が1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出する方法であって、
(a)1または複数の試験試薬または刺激を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;
(b)基底膜マトリックス、アルギン酸ゲル、コラーゲンゲル、アガロースゲル、合成ハイドロゲル、または第2の細胞集団を、前記バイオセンサー表面へと添加するステップ;
(c)前記第1の細胞集団を、1または複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するステップであって、前記第1の細胞集団が、前記1または複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および前記第1の細胞集団を、前記バイオセンサー表面へと添加するステップ;
(d)前記第1の細胞集団が前記1または複数の試験試薬または刺激に対して示す応答を検出するステップ
を含む方法。
【請求項34】
前記1または複数の試験試薬または刺激が、走化作用物質であるか、または試験試薬もしくは刺激をもたらす第3の細胞集団である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の細胞集団が、上皮細胞集団または内皮細胞集団である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の細胞集団が、幹細胞集団である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
検出標識を用いない、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の細胞集団の応答を検出するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
1もしくは複数の時間間隔にわたりピーク波長値をモニタリングすることにより、または1もしくは複数の時間間隔にわたり有効屈折率変化をモニタリングすることにより、前記第1の細胞集団または前記第2の細胞集団が前記1または複数の刺激に対して示す応答を検出する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の細胞集団または前記第2の細胞集団の応答を、リアルタイムで検出する、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
第1の細胞集団の分化を検出する方法であって、
(a)前記第1の細胞集団を、比色共鳴反射光バイオセンサーまたは誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップであって、前記バイオセンサーが、2つ以上の表面セクターを有し、各表面セクターが、他の表面セクターとは共鳴値が異なる回折格子を有するステップ;
(b)前記2つ以上の表面セクターの各々に由来する2つ以上のピーク波長値を検出するステップ;および
(c)前記バイオセンサー表面上において、前記第1の細胞集団の分化を検出するステップ
を含む方法。
【請求項42】
前記分化を、リアルタイムで検出する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記2つ以上の表面セクターの各々に由来する2つ以上のピーク波長値を検出する前に、前記1または複数の試験試薬または刺激を、前記バイオセンサーへと適用する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記1または複数の試験試薬または刺激を、前記バイオセンサーへと適用する前に、1または複数のピーク波長値を検出する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記1または複数の試験試薬または刺激が、走化作用物質であるか、または試験試薬もしくは刺激をもたらす第3の細胞集団である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の細胞集団が、幹細胞集団である、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
検出標識を用いない、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
特定の幹細胞集団に特異的な生物学的応答の特徴を同定する生物学的発現プロファイリングの方法であって、
(a)(i)1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドを、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、もしくは誘電積層膜バイオセンサーの2つ以上の表面へと固定化するステップであって、前記幹細胞集団が、前記1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および前記幹細胞集団を、前記バイオセンサーの2つ以上の地点へと添加するステップ;または
(ii)前記幹細胞集団を、1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドと混合するステップであって、前記幹細胞が、前記1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドに特異的な細胞表面受容体を有するステップ;および1もしくは複数の細胞外マトリックスリガンドを伴う前記幹細胞集団を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、もしくは誘電積層膜バイオセンサーの2つ以上の表面へと添加するステップ;
(b)前記バイオセンサーの2つ以上の表面を、2つ以上の試験試薬または刺激へと曝露するステップ;
(c)前記バイオセンサーの2つ以上の表面の各々において、前記幹細胞が前記試験試薬または刺激に対して示す応答を検出するステップ;
(d)特定の幹細胞集団が2つ以上の試験試薬または刺激に対して特異的に示す生物学的応答の特徴を同定するステップ
を含む方法。
【請求項49】
前記幹細胞の応答を検出するステップを、リアルタイムで行う、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
候補化合物を、細胞分化を調節するその能力についてスクリーニングする方法であって、(a)1または複数の細胞型を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;(b)前記1または複数の細胞型を誘導して分化させるステップ;(c)前記候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値または有効屈折率変化を比較することにより、前記候補化合物の存在下または不存在下における細胞分化の変化を検出するステップであって、前記候補化合物の不在下における細胞分化活性と比べた、前記候補化合物の存在下における細胞分化活性の変化によって、細胞分化を調節する前記候補化合物の能力が示されるステップを含む方法。
【請求項51】
前記細胞分化活性の変化が、細胞分化活性の上昇、細胞分化活性の低下、細胞分化活性の阻害、幹細胞の自己複製の増大もしくは減少、または分化した細胞の細胞型の変化である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞分化活性の変化が、コラーゲン生成の増大または減少である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞分化活性の変化が、石灰化結節形成の増大または減少である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記1または複数の細胞型が、幹細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記1または複数の細胞型が、間葉幹細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
細胞サイズ、細胞形状、細胞膜電位、細胞代謝活性、またはシグナルに対する細胞応答性の変化を検出することにより、前記細胞分化活性の変化を検出する、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記候補化合物が、阻害性核酸分子である、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
候補化合物を、細胞分化を調節するその能力についてスクリーニングする方法であって、(a)1または複数の細胞型を、比色共鳴反射光バイオセンサー、回折格子ベース導波路バイオセンサー、または誘電積層膜バイオセンサーの表面へと添加するステップ;(b)前記1または複数の細胞型を誘導して分化させるステップ;(c)前記候補化合物の存在下または不存在下におけるピーク波長値または有効屈折率変化を比較することにより、前記候補化合物の存在下または不存在下における1または複数の細胞分化生成物の生成を検出するステップであって、前記候補化合物の不存在下における1または複数の細胞分化生成物と比べた、前記候補化合物の存在下における1または複数の細胞分化生成物の変化によって、細胞分化を調節する前記候補化合物の能力が示されるステップを含む方法。
【請求項59】
前記細胞分化生成物が、コラーゲンまたは石灰化結節である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記1または複数の細胞型が、幹細胞である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記1または複数の細胞型が、間葉幹細胞である、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記候補化合物が、阻害性核酸分子である、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した1または複数の特異的結合物質;および前記1または複数の特異的結合物質を覆うゲルまたはゲル様物質の層を含む、比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面。
【請求項64】
1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面、およびゲルまたはゲル様物質の1または複数の容器を含むキット。
【請求項65】
1または複数の特異的結合物質の容器をさらに含む、請求項64に記載のキット。
【請求項66】
前記1もしくは複数の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、1もしくは複数の回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または1もしくは複数の誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面が、前記バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合した、1または複数の特異的結合物質を含む、請求項64に記載のキット。
【請求項67】
前記バイオセンサー回折格子表面が液体含有容器の内部表面を形成する、請求項63に記載の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面。
【請求項68】
前記液体含有容器が、マイクロタイタープレートまたはマイクロ流路である、請求項67に記載の比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面。
【請求項69】
比色共鳴反射光バイオセンサー回折格子表面上、回折格子ベース導波路バイオセンサー回折格子表面上、または誘電積層膜バイオセンサー回折格子表面上において、特異的結合物質と結合パートナーとの反応を検出する改良法であって、
1または複数の特異的結合物質が前記バイオセンサー回折格子表面に固定化されるかまたはこれと会合するように、前記1または複数の特異的結合物質を、前記バイオセンサー回折格子表面へと適用するステップ;
ゲルまたはゲル様物質を、前記バイオセンサー表面へと適用するステップを含む方法。
【請求項70】
細胞混合集団から2つ以上の細胞型を分取し、かつ、前記分取された細胞が刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出する方法であって、前記分取および前記検出を、1つのバイオセンサー表面上で行い、
(a)細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、前記1つのバイオセンサー表面が、その1つの表面に2種類以上の特異的結合物質を固定化させており、かつ、前記2つ以上の特異的結合物質が、前記細胞混合集団内における1または複数の細胞型に潜在的に結合しうるステップ;
(b)前記バイオセンサーの前記1つの表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、前記1または複数の細胞型が、前記バイオセンサーの前記表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;
(c)前記1または複数の結合した細胞型を、刺激、インキュベーション、または試験試薬へと曝露するステップ;および
(d)前記1または複数の結合した細胞型が前記刺激、インキュベーション、または試験試薬に対して示す応答を検出するステップ
を含む方法。
【請求項71】
前記2つ以上の特異的結合物質が、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質と、1または複数の他の特異的結合物質との組合せを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記1つのバイオセンサー表面が、マイクロタイターウェルの底面である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記2つ以上の細胞型および試験試薬が、検出可能な標識を含まない、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
1つのバイオセンサー表面上において、細胞混合集団から1または複数の細胞型を分取し、かつ、前記1または複数の細胞型から細胞内分析物を検出する方法であって、
(a)細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、前記1つのバイオセンサー表面が、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させており、前記2つ以上の特異的結合物質が、(i)前記細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)前記1または複数の細胞型に由来する1または複数の細胞内分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含むステップ;
(b)前記バイオセンサーの前記表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、前記1または複数の細胞型が、前記バイオセンサーの前記表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;
(c)前記1または複数の結合した細胞型を、溶解させるかまたは透過処理するステップ;
(d)前記バイオセンサーの前記表面から、結合しなかったいかなる分析物も洗い流すステップ;ならびに
(d)前記バイオセンサーの前記表面に固定化された前記細胞内分析物を検出するステップ
を含む方法。
【請求項75】
前記第1の特異的結合物質が、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記1または複数の結合した細胞型を溶解させるかまたは透過処理する前に、細胞をある時間間隔にわたりインキュベートするか、または刺激に曝露するか、または試験試薬に曝露する、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記1つのバイオセンサー表面が、マイクロタイターウェルの底面である、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記細胞混合集団および前記2つ以上の特異的結合物質が、検出可能な標識を含まない、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
1つのバイオセンサー表面上において、細胞混合集団から1または複数の細胞型を分取し、かつ、前記1または複数の細胞型から分析物を検出する方法であって、
(a)細胞混合集団を、1つの比色共鳴反射光バイオセンサー表面、1つの回折格子ベース導波路バイオセンサー表面、または1つの誘電積層膜バイオセンサー表面へと適用するステップであって、前記1つのバイオセンサー表面が、その表面に2つ以上の特異的結合物質を固定化させており、前記2つ以上の特異的結合物質が、(i)前記細胞混合集団内における1または複数の細胞型に特異的に結合する第1の特異的結合物質、および(ii)前記1または複数の細胞型に由来する1または複数の分析物に特異的に結合する第2の特異的結合物質を含むステップ;
(b)前記バイオセンサーの前記表面から、結合しなかった細胞を洗い流して、前記1または複数の細胞型が、前記バイオセンサーの前記表面に結合し、かつ、この上で分取されるようにするステップ;
(c)試験試薬を前記細胞に適用するか、もしくは前記細胞をインキュベートするか、もしくは前記細胞を刺激下に置くか、またはこれらの組合せを行うステップ;ならびに
(d)前記バイオセンサーの前記表面に固定化された分析物を検出するステップ
を含む方法。
【請求項80】
前記第1の特異的結合物質が、1または複数の細胞外マトリックスタンパク質である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記1つのバイオセンサー表面が、マイクロタイターウェルの底面である、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記細胞混合集団および前記2つ以上の特異的結合物質が、検出可能な標識を含まない、請求項79に記載の方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図30】
【図2】
【図13】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図30】
【図2】
【図13】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2012−526998(P2012−526998A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511070(P2012−511070)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/035152
【国際公開番号】WO2010/132890
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(503159210)エス アール ユー バイオシステムズ,インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/035152
【国際公開番号】WO2010/132890
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(503159210)エス アール ユー バイオシステムズ,インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】
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