細胞集団識別のための機器間の方法およびシステム
本発明は、血液分析器の能力をフローサイトメータの能力と組み合わせることによって、いずれかのデバイス単独よりもはるかに強力な分析システムを得るための方法およびシステムを提供する。実施形態の1つにおいて、細胞サンプルを分析する方法は、蛍光測定デバイスを有する第1の粒子分析器におけるサンプルの第1のアリコートの分析によって生成された第1のデータを受取るステップと、第1のデータにおける少なくとも1つの未分離細胞集団を検出するステップと、記憶デバイスに保存された第2のデータにアクセスするステップとを含み、ここで第2のデータは、第2の粒子分析器における細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて、そのサンプルの第2のアリコートを調べることによって予め生成されたものである。次いで、第2のデータを用いて第1のデータにおける未分離細胞集団が分離される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は一般的に、粒子分析器を用いた粒子の分析に関し、より特定的には、細胞体積測定デバイス、光散乱測定デバイス、または細胞導電率測定デバイスを有する粒子分析器を用いて得られた結果を用いて、蛍光測定デバイスを有する粒子分析器によって検出された細胞集団をさらに識別することに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
医学的診断設備においては、血液およびその他の体液の効率的で正確な診断が特に重要である。精度ならびにコストおよび各サンプルの分析に関連する時間に関する効率を増すことが求められている。こうした医学的診断設備は、少なくとも2種類の粒子分析器を用いる。すなわち、血液分析器およびフローサイトメータである。血液分析器およびフローサイトメータは、1つまたはそれ以上のセンサにモニタされる小さな開口部または測定領域を血液細胞が通過するときに生成される信号を収集して分析することによって、血液細胞を測定および区別する。
【0003】
血液分析器は、一般的に電気インピーダンスを用いて、赤血球および白血球をそのサイズおよび/または体積に基づいて分類およびカウントする。電気インピーダンス分析は、粒子分析器のフローセル中の測定領域に電流を送達することを含む。(たとえば2つの端子間でフローセルの測定領域を横切って測定される)電流のインピーダンスは、通過する細胞に関連して変化する。これはCoulter原理としても公知である。血液分析器は、1つまたはそれ以上の光のビームを用いて光散乱および反射率を測定することで、サイズおよび粒度を含む特性に基づいて細胞を分類することもできる。血液分析器の例は、Beckman Coulterにより製造されるCOULTER(登録商標)LH700シリーズ、およびSysmexにより製造されるXE−2100TMを含む。
【0004】
フローサイトメータは、細胞が1つまたはそれ以上の公知の蛍光色素と組み合わされたときに検出される細胞の蛍光特徴を用いて、細胞特徴を測定する。1つの特定の細胞型と高い特異性で結合する蛍光色素によって細胞を標識することで、細胞の含有量を測定することが可能になる。こうした蛍光タグは、測定すべき特定の構成要素に対する高い結合特異性を有する蛍光色素分子であってもよいし、蛍光結合体化抗体であってもよい。細胞の光散乱および反射率によって、細胞のサイズ、形および構造に関する情報が得られる。フローサイトメータは、不均一な細胞集団を細胞ごとの基準で迅速かつ定量的に多パラメータ分析することができる。フローサイトメータの例は、Beckman Coulterにより製造されるFC 500TM、およびBecton Dickinsonにより製造されるFACSCantoTMを含む。
【0005】
実験室の設定において、血液分析器およびフローサイトメータの各々はそれぞれの強みを有する。血液分析器は、時間当り多くのルーチンアッセイを経済的に処理するように設計されているという点において、主力の分析機器であると考えられる。たとえば、血液分析は全血球計算(complete blood count:CBC)、網状赤血球分析、および白血球差動などのテストに広く用いられる。フローサイトメータは、血液分析器によって行なわれるテストよりも一般的に高価で時間のかかる付加的なテストに用いられる。フローサイトメトリは、たとえば白血病、HIV/AIDS、およびリンパ腫などの疾患の診断および処置に特に有用である。なぜなら、フローサイトメトリは血液サンプル中の特定の種類の細胞の割合をモニタすることを可能にするためである。
【0006】
しかしながら、血液分析器およびフローサイトメータはそれ自体によって強力な分析ツールであるにもかかわらず、その各々が実験室環境における制限を有する。血液分析器は、抗体または蛍光色素の使用によって細胞型の割合を検出するテストを行なうことができない。フローサイトメータは血液分析器に比べて遅く、多数の高価な抗体および蛍光色素を必要とする。したがって、両方の機器の能力を利用して医学的診断のためのより堅調な粒子分析器システムを作ることの必要性は軽視できない。
【0007】
現在、血液サンプルが血液分析器でもフローサイトメータでも分析されることもある。医学的診断設備における典型的なシナリオは、1日に数百個のサンプルを血液分析器に通してから、さまざまな理由によってそれらのサンプルのいくつかをフローサイトメータによってさらに分析するというものであり得る。たとえば、血液分析器によって生成されるフラグ(flag)は、高い白血球カウントの検出を表してもよい。フローサイトメータにおける後続分析を行なうための継続命令の例は、白血病の疑いのあるサンプルに対するものであってもよい。代替的に、いくつかの場合においては、血液分析器によってフラグを立てられたサンプルは、高度に訓練された技術者によってさらに分析されてもよい。技術者は典型的にスライドを調製し、それは次いで手作業で調べられる。さらに、多くの場合には、サンプルをフローサイトメータで分析した後でも、特定の細胞集団は未分離のままとなる。こうした場合には、血液分析器およびフローサイトメータによって生成された2組の別個の結果を解決するために、高度に訓練された技術者による手作業の介入が必要である。技術者による手作業の介入も高価であり、かつ人為ミスの可能性による複雑化が導入される。
【0008】
いくつかの分析機器、たとえばAbbott Laboratoriesにより製造されるSAPPHIREなどは、血液分析器の局面をフローサイトメータの局面と組み合わせている。特許文献1、特許文献2および特許文献3も参照されたい。SAPPHIREは、血液分析を用いて、フローサイトメトリ分析において見出される細胞型を含む細胞型の合計細胞カウントなどの特徴を決定することが理解される。さらに、任意の所与の時に、SAPPHIREは血液分析モードまたはフローサイトメトリモードのいずれかでしか動作できないことも理解される。機器を一度に1つのモードでしか動作できないことで、たとえば血液分析器とフローサイトメータとを組み合わせることによる利点のいくつか、たとえば速度および効率などが制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,939,326号明細書
【特許文献2】米国特許第5,656,499号明細書
【特許文献3】米国特許第5,631,165号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、異なる種類の粒子分析器の能力を有効に活用するための改善された方法およびシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の簡単な概要)
手作業の介入の必要性を減らすようなやり方で、血液分析器およびフローサイトメータの全能力の使用を自動化することによって、かなりの利益を得ることができる。本発明は、血液分析器の能力をフローサイトメータの能力と組み合わせることによって、いずれかの機器単独よりもはるかに強力な分析システムを得るための方法およびシステムを提供する。実施形態の1つにおいて、細胞懸濁物サンプルを分析する方法は、蛍光測定デバイスを有する第1の粒子分析器における細胞懸濁物サンプルの第1のアリコートの分析によって生成された第1のデータを受取るステップと、第1のデータにおける少なくとも1つの未分離細胞集団を検出するステップと、記憶デバイスに保存された第2のデータにアクセスするステップと、第2のデータを用いて未分離細胞集団を分離するステップとを含む。第2のデータは、第2の粒子分析器における細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて、同じ細胞懸濁物サンプルの第2のアリコートを調べることによって予め生成されたものである。第1および第2の粒子分析器は、それぞれフローサイトメータおよび血液分析器であってもよい。
【0012】
別の実施形態は、細胞懸濁物サンプルを分析するための方法であって、蛍光測定デバイスを有する粒子分析器における分析のために細胞懸濁物サンプルの第1のアリコートを調製するステップと、蛍光測定デバイスを用いて第1のアリコートを調べて第1のデータを生成するステップと、記憶デバイスに保存された第2のデータにアクセスするステップとを含み、ここで第2のデータは、第2の粒子分析器における細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて細胞懸濁物サンプルの第2のアリコートを調べることによって予め生成されたものである。次いで、第2のデータを用いて第1のデータにおける未分離細胞集団が分離されることで、分離細胞データが生成される。次いで分離細胞データが報告されてもよい。
【0013】
さらに別の実施形態は、細胞懸濁物サンプルの分析のためのシステムであって、サンプルの第1のアリコートを入力として受取り、蛍光測定デバイスを用いて第1のデータを生成するように構成された第1の粒子分析器と、前記サンプルの第2のアリコートを入力として受取り、細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて第2のデータを生成するように構成された第2の粒子分析器と、第2の粒子分析器から第2のデータを受取るように構成された記憶デバイスと、第1のデータおよび第2のデータを受取って分離細胞分布を生成するように構成されたコンピュータとを含み、ここで第1のデータは、第1のデータのみに基づいて分離できない少なくとも1つの細胞集団を含む。さらなる実施形態は、コンピュータから分離細胞分布を受取るように構成された報告デバイスを含む。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点、ならびに本発明のさまざまな実施形態の構造および動作は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。なお、本発明は本明細書に記載される特定の実施形態に制限されないことに注意すべきである。こうした実施形態は本明細書において例示目的のためにのみ提供されるものである。本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術分野の技術者には付加的な実施形態が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点、ならびに本発明のさまざまな実施形態の構造および動作は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。なお、本発明は本明細書に記載される特定の実施形態に制限されないことに注意すべきである。こうした実施形態は本明細書において例示目的のためにのみ提供されるものである。本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術分野の技術者には付加的な実施形態が明らかになる。
【図1】図1は、本発明の実施形態に従うシステムを示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従って図1のシステムをより詳細に示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に従う、血液分析器およびフローサイトメータからの結果を組み合わせるためのプロセスを示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に従う、図3の分離ステップの詳細を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に従う、フローサイトメータで分析された骨髄芽球陽性血液サンプルの散乱プロットである。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従う、フローサイトメータで分析された図5のプラズマ細胞陽性血液サンプルの散乱プロットである。
【図7】図7は、本発明の実施形態に従う、血液分析器で分析された図5の骨髄芽球陽性血液サンプルの散乱プロットである。
【図8】図8は、本発明の実施形態に従う、血液分析器で分析された図6のプラズマ細胞陽性血液サンプルの散乱プロットである。
【図9】図9は、フローサイトメータで分析された未熟顆粒球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図10】図10は、フローサイトメータで分析された未熟顆粒球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図11】図11は、血液分析器で分析された図9および図10の未熟顆粒球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図12】図12は、フローサイトメータで分析された好酸球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図13】図13は、フローサイトメータで分析された好酸球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図14】図14は、血液分析器で分析された図12および図13の好酸球陽性サンプルの散乱プロットである。
【0016】
図面と組み合わされるとき、以下に示される詳細な説明から本発明の特徴および利点がより明白になる。図面中の類似の参照番号は、一般的に同一であるか、機能的に類似であるか、および/または構造的に類似の構成要素を示す。全般的に、ある構成要素が最初に現れた図面は、対応する参照番号の一番左の数字によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、血液分析器の能力をフローサイトメータの能力と組み合わせることによって、いずれかの機器単独よりもはるかに強力な分析システムを得るための方法およびシステムを提供する。本明細書においては、特定の適用についての例示的な実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明はそれに限定されないことが理解されるべきである。本明細書の教示に接する当業者は、本発明の範囲内の付加的な修正、適用および実施形態、ならびに本発明が非常に有益である付加的な技術分野を認識する。
【0018】
(概要)
本発明の実施形態は、血液分析器の分析能力をフローサイトメータの分析能力と組み合わせることによって、一方のタイプの分析から得られた結果を用いて他方のタイプの分析から得られた結果を解釈するための方法およびシステムを得る。たとえば、本発明のある実施形態は、血液分析の結果を用いて、同じ血液サンプルのフローサイトメトリ分析によって発見された細胞集団をさらに解釈および識別する。こうした機器間(cross−instrument)分析は、両方のタイプの分析が行なわれるときのテスト結果の解釈に伴う手作業労働のレベルを低減させるために非常に有益であり得る。達成される相乗作用は、両方のタイプの分析を用いる複合分析に必要とされる時間を激減させ、こうした分析のコストを下げる。本発明のシステムおよび方法に従って血液分析器とフローサイトメータとの間でデータを共有することによって達成される相乗的な結果は、有意なものである。
【0019】
一例として、骨髄芽球陽性の血液サンプルを分析するとき、ほとんどの血液分析器は骨髄芽球の列挙を行なう能力を有さないため、非数値的な推測メッセージしか表示できない。他方で、骨髄芽球を直接マークしない抗体の特定の組み合わせを用いるフローサイトメータは、もしそのサンプルがプラズマ細胞を含んでいれば不正確な骨髄芽球情報を生じるかもしれない。なぜなら、プラズマ細胞は散乱プロットにおいて骨髄芽球と同じ位置に現れるからである。したがって多くの場合に、フローサイトメトリデータにおける骨髄芽球細胞集団は不確定または未分離であると考えられてもよい。しかし、骨髄芽球陽性サンプルに対して血液分析器から生成される結果は、プラズマ細胞陽性サンプルに対するものと1つまたはそれ以上の他の細胞集団において明確に異なる特徴を示す。たとえば、本発明の実施形態は、特定の集団が骨髄芽球かプラズマ細胞かを分離できないようなフローサイトメトリ結果を分析するときに、より完全な決定を行なうために同じ血液サンプルに対して生成された血液分析結果を自動的に調べることができる。この実施形態例のさらなる詳細は、図5〜図8に関連して以下に提供される。他の適用は、血液分析結果を用いて、フローサイトメータ結果におけるT芽球細胞集団と好塩基球集団とを区別するか、または好酸球と未熟顆粒球集団とを区別することを含むが、それに限定されない。
【0020】
細胞集団を分離するための従来の方法を使用すると、典型的に、技術者によってテスト結果データの範囲を手作業で検査するか、または同じサンプルに対してたとえば反射テストなどの追加のテストを行なうことが必要である。結果を解釈するための手作業の介入は高価であり、しばしば間違いが起こりやすい。同じサンプルに対して追加のテストを行なうことは追加の時間を取り、テストのパイプラインを乱し、さらに、たとえば各テストについて各所望の細胞集団を特異的にマークできる追加のモノクローナル抗体および/または蛍光色素などを導入することによって関連コストを実質的に増やし得る。本明細書に記載される適用例から示されるとおり、本発明の実施形態は、結果の解釈における機器間のデータの自動活用を可能にすることによって、コストを増やすことなく重要なテスト能力の拡張を可能にする。
【0021】
本発明は、両方の機器の能力の組み合わせを可能にしながら、血液分析器とフローサイトメータとを別々の独立した粒子分析器として維持する。粒子分析器を別々に独立して維持することで、組み合わされたシステムの使用が可能になり、たとえば血液サンプルのバッチを純粋に高スループットの血液分析器モードで運転したり、純粋にフローサイトメータモードで運転したり、または一方の粒子分析器の結果を用いて他方の粒子分析器から得られた結果を強化および/もしくは解釈できる組み合わせモードで運転したりできる。組み合わせモードにおいても、本発明の実施形態は、2つの分析の流れの各々がそれ自体のペースで動作することを可能にすることによって、特に大規模なバッチテスト環境において、実質的により迅速である血液分析プロセスがフローサイトメトリ分析の要求のために遅延されないことを確実にする。
【0022】
本発明を実施できる例示的な環境は、血液分析器およびフローサイトメータ、たとえばそれぞれBeckman CoulterのGen STMシステムおよびFC 500TMなどを含む。たとえば、Gen STMシステムは、Coulter所有の体積、導電率および散乱(Volume,Conductivity,and Scatter:VCS)技術を用いてフローセル内の水力学的にフォーカスされた細胞を調査する血液分析器である。VCSは、細胞を調査するために互いに協調して働く3つの独立した測定デバイスを用いる。すなわち、低周波数の直流電源を用いて体積を測定する細胞体積測定デバイス、高周波数の電源を用いて導電率を測定する細胞導電率測定デバイス、および光散乱を測定するためのレーザー光源である。体積測定は、電気インピーダンスのCoulter原理を用いて、細胞全体が等張性希釈液中で置換する体積を物理的に測定することで行なわれる。この方法は、光経路内の細胞の配向に関わらず、すべての細胞型を正確にサイズ区分する。無線周波数(radio frequency:RF)範囲の交流は、細胞の膜の双極性脂質層を短絡して、細胞内にエネルギーを入れる。この強力なプローブを用いて、細胞サイズならびに化学的組成および核体積を含む内部構造に関する情報を収集する。レーザーおよび多角度光散乱センサまたは検出器は、細胞の内部構造、粒度、および表面形態に関する情報を提供する。
【0023】
加えて、VCS機器は大変正確な体積のDC測定値を用いて、導電率および散乱から細胞サイズに対して調整された他の測定値を得る。たとえば、導電率信号を補正してもはや細胞サイズに影響されないようにすることで、細胞の内部構造をより正確に表すようにできる。異なる組成に基づいて類似サイズの細胞を分離することによって、正常なリンパからの変異型リンパ球の区別などの細胞集団の区別が可能になる。さらに、光散乱信号を調整してサイズ構成要素を排除する(調整された散乱はしばしばVCSドキュメントにおいて回転(rotated)光散乱と呼ばれる)ことによって、各細胞型に対する最適な散乱角度をモニタできる。これによってVCS技術は、たとえば好中球と好酸球など、通常は混合細胞型となるものを、数学的操作なしに別々のクラスターに正確に分離することが可能となる。これは非顆粒状の細胞型間の分離も向上させる。米国特許第5,616,501号(Rodriguezら)は、粒子分析器の詳細な説明およびVCS技術の使用を含んでいる。しかしながら、本開示における教示はVCS技術を用いたデバイスに限定されないことが注目されるべきである。たとえば、生物学的サンプル分析に加えて多数のアプリケーションを有する粒子分析器であるMultisizerTM3 Coulter Counter(登録商標)にも本明細書の教示を適用できる。FC 500TMは、VCS技術の測定デバイスに加えて、選択された組の蛍光色素の蛍光特徴に基づく光学的分析のための蛍光測定デバイスも含むフローサイトメータである。公知の血液分析器およびフローサイトメータによって行なわれるその他の適用可能な測定は、関連技術分野における当業者に周知である。
【0024】
(細胞集団識別のための機器間パターン分析のためのシステム)
説明を容易にするために、本明細書において、本発明の実施形態に従うフローサイトメータおよび血液分析器を組み合わせたシステムを「Flow−H」と呼ぶ。図1は、Flow−H 100の構成要素を示す。図1は例示の目的のためのみのものであり、本発明の実施形態に従うシステムは、図1に示されるものより多いかもしくはより少ない構成要素、異なる構成要素、および/または異なる設計を含んでもよいことが理解されるべきである。Flow−H 100は、フローサイトメータ101と、血液分析器102と、データ処理システム103と、ユーザインタフェース104と、サンプルディスペンサ105とを含む。フローサイトメータ101は、FC 500TMなどの従来のフローサイトメータであってもよいし、Flow−Hのために特定的に作製された特別注文のフローサイトメータであってもよい。血液分析器102は、Gen STMなどの従来の血液分析器であってもよいし、本発明を実行するために特定的に作製された特別注文の血液分析器であってもよい。
【0025】
データ処理システム103は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、メインフレームコンピュータ、ラップトップコンピュータ、またはフローサイトメータ101および血液分析器102からデータを受取り、本開示の教示に従ってそのデータを処理するためのハードウェアおよびソフトウェア命令を実行できるあらゆるその他のデバイスを含んでいてもよい。データ処理システム103は、1つまたはそれ以上の通信的につながれた処理プラットフォームを含んでもよい。たとえば、フローサイトメトリ処理を排他的に含むデータ処理システム103の局面が、フローサイトメータ101中に存在してもよい。血液分析器処理を排他的に含むデータ処理システム103の局面が、血液分析器102中に存在してもよい。さらに、フローサイトメトリ処理と血液分析器処理とを組み合わせるデータ処理システム103の局面が、フローサイトメータ101および血液分析器102につながれた別の処理プラットフォーム中に存在してもよい。実施形態の1つにおいて、データ処理システム103は、たとえば医学的診断設備において用いられるBeckman CoulterからのDL2000 DATA MANAGERなどの従来の実験室情報システムを含む。データ処理システム103は、図2に関連して以下にさらに説明される。
【0026】
ユーザインタフェース104は、1つまたはそれ以上のディスプレイ、記憶デバイス、出力デバイス、および入力デバイスを含んでもよい。ユーザインタフェース104は、Flow−H 100の1つまたはそれ以上の構成要素、たとえばフローサイトメータ101、血液分析器102、データ処理システム103、およびサンプルディスペンサ105などに通信的につながれてもよい。ユーザインタフェース104に含まれるディスプレイは、たとえばフローサイトメータ101および血液分析器102からの粒子分析結果などのデータを直接、またはデータ処理システム103を通じて受取って表示できる。ユーザインタフェース104の1つまたはそれ以上の入力デバイス、たとえばキーボードまたはマウスなどは、オペレータがFlow−H 100またはその構成要素の1つの動作を構成したり、Flow−H 100の動作を指示するためのコマンドを発行したり、入力を提供したり、Flow−H 100によって生成される出力を提供したりすることを可能にしてもよい。ユーザインタフェース104中の1つまたはそれ以上の記憶デバイスは、たとえばハードディスク、デジタルビデオディスク(digital video disk:DVD)、フラッシュディスクなどの永続記憶デバイスを含んでもよい。さらに、ユーザインタフェース104中の1つまたはそれ以上の記憶デバイスは、たとえば静的ランダムアクセスメモリ(static random access memory:SRAM)、動的ランダムアクセスメモリ(dynamic random access memories:DRAM)などのメモリを含んでもよい。記憶デバイスは、Flow−H 100またはその1つもしくはそれ以上の構成要素の動作のためのコマンド、スクリプト、プロファイル、ルール、およびソフトウェアプログラムなどを保存するために用いられてもよい。加えて、ユーザインタフェース104中の記憶デバイスの1つまたはそれ以上が、フローサイトメータ101、血液分析器102における粒子サンプルの分析から得られた結果、および/またはこうした結果の組み合わせ分析の結果を保存するために用いられてもよい。
【0027】
本発明の実施形態に従って、Flow−H 100にはサンプルディスペンサ105が任意に含まれてもよい。サンプルディスペンサ105は、オペレータが分析のための複数のサンプルを並べることで、Flow−H 100が並べられたサンプルの各々をさらなる手作業の介入なしに自動的に処理できるようにすることを可能にすることによって、Flow−H 100を用いた粒子サンプル分析の自動化を向上させる。サンプルディスペンサ105は、サンプルのローディング、分析のための調製物中のサンプルの混合、ならびにフローサイトメータ101および血液分析器102への構成どおりのサンプルの分配のためのデバイス(図示せず)を含んでもよい。サンプルディスペンサ105は、フローサイトメータ101における分析の前にサンプルの任意の付加的な処理(たとえば蛍光色素または抗体の添加など)および/またはインキュベーションを行なうフローサンプル調製デバイス106を含んでもよい。サンプルディスペンサ105はさらに、バーコード化能力および/またはバーコード読取能力を可能にすることによって、Flow−H 100内でサンプルを正しく処理および照合できるようにするバーコードデバイス107を含んでもよい。たとえば、バーコードを用いて各一意のサンプルおよびその一意のサンプルの各アリコートを識別することによって、血液分析器102からの分析結果をフローサイトメータ101からの対応する結果と照合できるようにしてもよい。サンプルディスペンサは当該技術分野において公知である。
【0028】
サンプルディスペンサ105とユーザインタフェース110との間のインタフェース110は、サンプルディスペンサ105が構成コマンドを受取って、ユーザインタフェース104に対してエラー状態などのフィードバックを表示することを可能にする。ユーザインタフェース104とデータ処理システム103との間のインタフェース120は、データ処理システムがユーザインタフェース104から構成情報、プロファイル、ルールなどを受取って、ユーザインタフェース104に分析結果を含むフィードバックを提供することを可能にする。インタフェース130は、血液分析器102がユーザインタフェース104から構成情報を受取って、分析による結果および/またはエラー状態表示を含むフィードバックをユーザに提供することを可能にする。インタフェース140は、フローサイトメータ101がユーザインタフェース104から構成情報を受取って、分析による結果および/またはエラー状態表示を含むフィードバックをユーザに提供することを可能にする。
【0029】
サンプルディスペンサ105とフローサイトメータ101との間のインタフェース150は、フローサイトメータ101がサンプルディスペンサ105から細胞懸濁物サンプルを受取ることを可能にする機械的インタフェースを表す。インタフェース150は、サンプルの分配を調整するための制御情報の流れのための、サンプルディスペンサ105とフローサイトメータ101との間の単方向または双方向インタフェースも表す。同様に、サンプルディスペンサ105と血液分析器102との間のインタフェース160は、血液分析器102がサンプルディスペンサ105から細胞懸濁物サンプルを受取ることを可能にする機械的インタフェースを表す。インタフェース160は、サンプルの分配を調整するための制御情報の流れのための、サンプルディスペンサ105と血液分析器102との間の単方向または双方向インタフェースも表してもよい。インタフェース110、120、130、140、170、および180は、たとえば周辺構成要素相互接続(peripheral component interconnect:PCI)バス、イーサネット(登録商標)、またはたとえばIEEE802.11などの無線ネットワークなど、1つまたはそれ以上の通信媒体を含んでもよい。同様に、インタフェース150および160も、サンプル分配のために利用される機械的インタフェースに加えて、たとえば周辺構成要素相互接続(PCI)バス、イーサネット(登録商標)、またはたとえばIEEE802.11などの無線ネットワークなど、1つまたはそれ以上の通信媒体を含んでもよい。
【0030】
図2は、本発明の実施形態に従って、データ処理システム103をより詳細に示す。上述のとおり、データ処理システム103はフローサイトメータ101と、血液分析器102と、ユーザインタフェース104とに接続される。ユーザインタフェース104は、1つまたはそれ以上の記憶デバイス211、1つまたはそれ以上の入力デバイス217、および1つまたはそれ以上のディスプレイデバイス210を含むがそれに限定されないデバイスを含んでもよい。ユーザインタフェース104は、インタフェース120を用いてデータ処理システムにつながれてもよい。インタフェース170および180は、それぞれデータ処理システム103をフローサイトメータ101および血液分析器102につなぐ。
【0031】
特定の実施形態において、データ処理システム103は少なくとも1つの制御プロセッサ204と、1つまたはそれ以上のメモリ205と、1つまたはそれ以上の永続記憶デバイス206と、フローインタフェース207と、血液インタフェース208と、フロー分析器処理モジュール201と、血液分析器データ処理モジュール202と、機器間分析モジュール203と、出力モジュール209と、データマネージャ216と、データ処理システム103の構成要素を相互接続する通信媒体212とを含む。1つまたはそれ以上の制御プロセッサ204は、たとえばプログラムされた商業的に入手可能な中央処理デバイス(central processor units:CPU)、またはその他のプロセッサ、たとえばデジタル信号プロセッサ(digital signal processor:DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate arrays:FPGA)などの専用コンピュータを含んでもよい。上述のとおり、1つまたはそれ以上の制御プロセッサ204は、たとえばフローサイトメータ101、血液分析器102、データ処理システム103、ユーザインタフェース104、および/またはサンプルディスペンサ105などを含む1つのプラットフォームに位置してもよいし、複数のプラットフォームに位置してもよい。1つまたはそれ以上の制御プロセッサ204の各々は、Flow−H 100の動作を指示する論理命令を実行するための機能を含み、その論理命令は、たとえばフロー分析器処理モジュール201、血液分析器データ処理モジュール202、機器間分析モジュール203、およびデータマネージャ216の機能を実行する論理命令などを含む。
【0032】
1つまたはそれ以上のメモリ205は、単一のプラットフォームに位置してもよいし、複数のプラットフォームに分散されていてもよい。1つまたはそれ以上のメモリ205は、たとえば動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)などを含む動的メモリ構成要素と、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)とからなる。メモリ205は、実行されるべきソフトウェアプログラムコードおよび/または論理命令をロードするため、ならびに中間処理データを保持するため、ならびに永続記憶デバイス206もしくは211に保存されるかまたは別様に配置される前の粒子分析の結果を保持するために用いられてもよい。メモリ205、たとえばSRAMは、たとえばハードウェアもしくはソフトウェアに実行される論理の構成、ならびに/またはフローサイトメータ101および血液分析器102の動作の制御において有用なものなどの構成パラメータを保持するために用いられてもよい。
【0033】
1つまたはそれ以上の永続記憶デバイス206は、単一のプラットフォームに位置してもよいし、複数のプラットフォームに分散されていてもよい。永続記憶デバイス206は、ハードディスクドライブ、DVD、フラッシュメモリ、またはその他のコンピュータ読取可能なデータ記憶媒体を含んでもよい。永続記憶デバイス206は、Flow−H 100またはその1つもしくはそれ以上の構成要素の動作のために用いられ得るコマンド、スクリプト、ソフトウェアプログラム、テストプロファイルなどを保存するために用いられてもよい。永続記憶デバイス206は、Flow−H 100の1つまたはそれ以上の構成要素の処理中に生じる中間データのために用いられてもよいし、フローサイトメータ101、血液分析器102、および組み合わされたシステムによって生成される結果を保存するために用いられてもよい。加えて永続記憶デバイス206は、フローサイトメータ101および/または血液分析器102など、Flow−H 100の1つまたはそれ以上の構成要素からの結果の処理に用いられるプロファイルおよびルールを保存してもよい。たとえばプロファイルは、テスト、ならびにフローサイトメータ101および血液分析器102において行なわれるべき調査および/または測定のタイプを指定してもよい。たとえばルールは、散乱プロットにおいてどのように細胞集団を同定および列挙できるか、および/または各細胞集団に対してどのパラメータを測定もしくは算出すべきかを指定してもよい。1つまたはそれ以上のメモリ205および1つまたはそれ以上の永続記憶デバイス206が、集合的に永続記憶デバイスと考えられてもよい。通常の当業者は、いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のメモリ205が血液分析器102またはフローサイトメータ101からの結果を保持および/または保存するためにも用いられ得ることを認識する。
【0034】
実施形態の1つにおいて、データマネージャ216は、Flow−H 100内のデータの保存、組織化、管理、およびアクセスのための機能を含む。データマネージャ216に取り扱われるデータは、フローサイトメータ101、血液分析器102、および組み合わされたシステムからの結果データを含んでもよい。データマネージャ216に取り扱われるデータは、構成パラメータ、ならびにシステムの動作のために用いられるプロファイルおよびルールも含んでもよい。たとえば構成データは、フローサイトメータ101、血液分析器102、ユーザインタフェース104、サンプルディスペンサ105、および組み合わされたシステムに対する構成パラメータを含んでもよい。実行されるべきテストの各タイプに対して、そのテストに対する構成、ならびに結果として得られる事象データおよび/または散乱プロットをいかに解釈すべきかを定めるプロファイルおよびルールが保存されてもよい。本発明の実施形態において、プロファイルおよびルールは、たとえばPerl、XML、Java(登録商標)、またはC++、ハードウェア記述言語(hardware description language:HDL)、またはカスタム形式など、1つまたはそれ以上の従来のスクリプト言語またはプログラミング言語で指定されてもよい。実施形態の1つにおいて、データマネージャ216は従来の実験室情報システムのミドルウェア構成要素を含む。データマネージャ216は、たとえばORACLE Corporationより入手可能なORACLE DBMSなどの商業的に入手可能なデータベース管理システム、またはカスタムデータ管理能力を含んでもよい。
【0035】
フローインタフェース207は、データ処理システム103の構成要素とフローサイトメータ101との間で通信するための機能を含む。たとえば、関連フローサイトメトリデータ処理のすべてまたは実質的にすべてがデータ処理システム103内で起こる実施形態において、フローインタフェース207は、フローサイトメータ101の信号生成構成要素と通信してこうした信号を解釈するための機能を含んでもよい。実質的にすべてのフローサイトメータ関連の処理がフローサイトメータ101内で起こる他の実施形態において、フローインタフェース207は、たとえばフローサイトメータと残りのFlow−H 100との間の通信を可能にして、フローサイトメータ101に必要とされるあらゆる追加のデータを提供するための機能を含んでもよい。さらに他の実施形態において、フローインタフェース207は、1つまたはそれ以上のフローサイトメータに適合しかつそれに接続する一般的なインタフェースを提供してもよい。たとえばデータ処理システム103は、本開示の教示に従って結果を組み合わせる一般的な機能を提供してもよく、それは1つの特定のフローサイトメータに制限されない。
【0036】
血液インタフェース208は、データ処理システム103の構成要素と血液分析器102との間で通信するための機能を含む。たとえば、関連血液分析データ処理のすべてまたは実質的にすべてがデータ処理システム103内で起こる実施形態において、血液インタフェース208は、血液分析器102の信号生成構成要素と通信してこうした信号を解釈するための機能を含んでもよい。実質的にすべての血液分析器関連の処理が血液分析器102内で起こる他の実施形態において、血液インタフェース208は、たとえば血液分析器と残りのFlow−H 100との間の通信を可能にして、血液分析器102にそのデータを処理するために必要とされるあらゆる追加のデータを提供するための機能を含んでもよい。さらに他の実施形態において、血液インタフェース208は、1つまたはそれ以上の血液分析器に適合しかつそれに接続する一般的なインタフェースを提供してもよい。たとえばデータ処理システム103は、本開示の教示に従って結果を組み合わせる一般的な機能を提供してもよく、それは1つの特定の血液分析器に制限されない。
【0037】
実施形態の1つにおいて、出力インタフェース209は、結果データと、データ処理システム103からユーザインタフェース104に流れるあらゆるその他の情報とを受取るための機能を含む。たとえば、出力モジュール209は、ディスプレイ210に対する散乱プロットのフォーマッティングなど、ディスプレイ210に表示される前に結果データに行なわれる処理を含んでもよい。
【0038】
フローサイトメータデータ処理モジュール201は、フローサイトメータの特定的なデータ処理を含む。たとえば実施形態の1つにおいて、フローサイトメータデータ処理モジュール201は、フローチャンバ内で細胞が調べられる際にフローサイトメータ101の粒子測定モジュールによって生成される光学信号および電気信号を解釈し、データを処理してデータを精密化および/または増強し、集団の所定の分析のいくつかまたはすべてを行なうための機能を含む。フローサイトメータデータ処理モジュール201は、たとえばフローサイトメータ101およびデータ処理モジュール103などを含む複数のプラットフォーム間に分散されてもよい。
【0039】
血液分析器データ処理モジュール202は、血液分析器の特定的なデータ処理を含む。たとえば実施形態の1つにおいて、血液分析器データ処理モジュール201は、細胞が調べられる際に血液分析器102の粒子測定モジュールによって生成される光学信号および電気信号を解釈し、データを処理してデータを精密化および/または増強し、集団の所定の分析のいくつかまたはすべてを行なうための機能を含む。血液分析器データ処理モジュール202は、たとえば血液分析器101およびデータ処理モジュール103などを含む複数のプラットフォーム間に分散されてもよい。
【0040】
機器間分析処理モジュール203は、フローサイトメータ101および血液分析器102からの結果を組み合わせて分析するための機能を含む。たとえば、このモジュールにおける処理によって、血液分析器102および血液分析器データ処理モジュール201によって生成された結果を、フローサイトメータ101およびフローサイトメータデータ処理モジュール201からの結果に示される細胞集団の分離に用いることが可能になる。この処理に含まれる方法の詳細は、図3および図4に関連して以下に記載される。
【0041】
通信デバイス212は、データ処理システム103の構成要素を互いに相互接続するものであり、周辺構成要素相互接続(PCI)バスまたは拡張業界標準アーキテクチャ(Extended Industry Standard Architecture:EISA)バスを含むがそれに限定されない1つまたはそれ以上の通信媒体を含んでもよい。
【0042】
機器間分析処理モジュール103およびデータマネージャモジュール216を含むFlow−H 100の構成要素の処理論理は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそのあらゆる組み合わせにおいて実現されてもよい。たとえば、1つまたはそれ以上の構成要素201、202、203および216の機能を実現するコンピュータプログラム製品は、たとえばC、C++、アセンブリ、Java(登録商標)、またはHDLなどの1つまたはそれ以上のプログラミング言語で指定された論理命令を含んでもよい。
【0043】
(細胞集団識別のための機器間パターン分析のための方法)
図3は、本発明の実施形態に従った、フローサイトメータと血液分析器との結果を自動的に組み合わせるためのステップ301〜308を有するプロセス300を示す。プロセス300は、Flow−H 100における1つの血液サンプルに対する分析の方法を示す。しかし、プロセス300を繰り返し行なって、複数のサンプルの分析を自動化してもよいことを当業者は認識する。
【0044】
ステップ301において、Flow−H 100における分析のために血液サンプルが調製される。たとえば、Flow−H 100が自動サンプルディスペンサを含まないような実施形態の1つにおいて、ステップ301は、同じ血液サンプルの2つのアリコート、すなわち血液分析器102における分析のための一方のアリコートおよびフローサイトメータ101における分析のための他方のアリコートを調製するステップを含んでもよい。オペレータが手作業で第1のアリコートを血液分析器102に分配し、第2のアリコートをフローサイトメータ101に分配してもよい。たとえば、Flow−H 100がサンプルディスペンサ105などの自動サンプルディスペンサを含むような別の実施形態においては、サンプル調製デバイス105のサンプル調製能力に依存して、Flow−H 100における処理のために複数のサンプルが並べられてもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、サンプルディスペンサ105は血液サンプルを自動的に2つのアリコートに分ける。予め指定された(または予めプログラムされた)命令に基づいて、サンプルディスペンサ105は、血液分析テストのグループのために血液分析器102で分析されるべき1つのアリコートを調製し、フローサイトメトリテストの第2のグループのためにフローサイトメータ101で分析されるべき第2のアリコートを調製することもできる。本発明の実施形態は、たとえば非常に基本的なサンプル分配のみを行なうものから完全に自動化されたサンプル調製および分配を行なうものまで、さまざまな能力レベルを有するサンプルディスペンサを伴うFlow−H 100デバイスを包含することに注意すべきである。実施形態は、統合されたサンプルディスペンサを有さないFlow−Hデバイスをも含み得る。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態は、各サンプルに関連付けられた識別、たとえば一意のバーコードなどを用いて処理を自動化し、かつ血液分析器102およびフローサイトメータ101における同じサンプルの処理を関連付けることができる。たとえば、サンプル調製段階のステップ301において、バーコードデバイス107は各サンプルに、予めプログラムされた患者情報および/またはテスト要求に関連する一意のバーコードをスタンプできる。たとえば、患者情報、サンプル情報、および各患者に対して行なわれるべきテスト指示などをバーコードなどの一意のコードに関連付けて、永続記憶デバイス206などの永続記憶デバイスに保存し、対応するサンプルの処理中にアクセスさせることができる。当業者に明らかであるとおり、たとえばレーザーエッチング、ナノ粒子タグ付けなど、その他の公知の識別特徴が用いられてもよい。
【0046】
当業者は、血液分析器における分析のための血液サンプルを調製するプロセス、およびフローサイトメータにおける分析のためのサンプルを調製するプロセスに精通している。調製プロセスは、そのサンプルに対して実行されるテストに基づいて変わり得ることも当業者は認識する。
【0047】
ステップ302において、ステップ301で調製されたサンプルの第1のアリコートが、分析のために血液分析器102などの血液分析器に導入される。次いでアリコートは、1つまたはそれ以上の予め指定されたテストの要求に基づいて、血液分析器102において分析される。いくつかの実施形態において、各アリコートは、そのアリコートに関連付けられたバーコードまたはその他の特徴もしくはタグに基づいて血液分析器102に導入されるため、そのアリコートの分析の前にテスト要求を調べることができ、その特定のテストに対して必要とされるあらゆる構成調整を血液分析器102に行なうことができる。他の実施形態において、サンプルのアリコートは、実行されるテストのタイプに従って順序付けられて血液分析器102に導入されてもよく、それによって血液分析器102に対する構成調整が最小化されるか、および/またはあらゆるこうした調整は必要なときにのみ手作業で行なわれてもよい。
【0048】
血液分析器102内で細胞サンプルの特性を測定するプロセスは、当該技術分野において一般的に周知である。実施形態の1つにおいては、細胞サンプルの細胞が測定領域を流れる際に、電気センサおよび/または光学センサを用いて、たとえば関連プロファイルに指定されるとおりに実行されるテストに対して要求される測定のタイプなど、さまざまなテスト要求に基づいてサンプルを調べる。電気インピーダンスおよびVCS技術を用いるような調査技術の例を上述している。その調査に応答して生成される電気信号および/または光学信号は、次いで対応するデータに変換される。たとえば信号の異常および外れた(stray)データ点の影響を排除および/または低減することなどによって、データを予め処理してその精度を高めてもよい。
【0049】
血液分析器102において生成されたデータは、次いでさまざまなテスト要求に従って分析を受ける。たとえば、サンプルに対して実行されるテストに関連するプロファイルは、同定されるべき1つまたはそれ以上の細胞集団に対する散乱プロット上の位置境界などの要求を指定するルールを含んでもよい。データの分析は、血液分析器102の中または外で行なわれてもよい。たとえば、血液分析器102からのデータの分析は、データ処理デバイス103中の血液分析器データ処理モジュール202を用いて行なわれてもよい。血液分析から生成される事象データは、一般的に細胞カウントおよび/または集団を定めるために分析される。特定の測定および分析方法は、行なわれるテストの要求によって異なる。一般的に、細胞を表す事象が散乱プロット上にマップされ、散乱プロット上の細胞クラスター間の最終的な分離がアルゴリズム的に決定される。細胞集団は、別の細胞集団の範囲と実質的に重なり合わない範囲内にあるときには列挙され(すなわち特に同定され)てもよい。2つの細胞集団が重なり合っているか、またはそうでなければ区別不可能であるとき、その結果は歪んでいる(skewed)か、または不確定であり得る。未分離集団とは、明確に区別できない細胞集団である。事象データの分析例を以下に記載する。
【0050】
ステップ303において、血液分析結果、すなわち血液サンプルの血液分析を行なうことによって生成された結果は、たとえば永続記憶デバイス206などに保存される。保存された血液分析結果は、好ましくはサンプル識別、テストのタイプ、および細胞集団のタイプなどの基準に基づいて、アクセス可能であるべきである。データマネージャ216を用いて血液分析結果が保存されてもよい。上述のとおり、データマネージャ216は、データを所定の基準に従って保存および索引付けできるようにするデータベース管理システムを含んでもよく、それによって血液サンプルの全データまたはその部分が効率的に検索されてアクセスされ得る。
【0051】
ステップ304において、血液分析器102で分析された第1のアリコートと同じ血液サンプルからの第2のアリコートがフローサイトメータ101に導入される。サンプルを血液分析器102に導入するステップに関して上述したとおり、サンプルの第2のアリコートは、手作業で、またはたとえばサンプルディスペンサ105などの自動サンプルディスペンサを用いて、フローサイトメータ101に導入されてもよい。さらに、上述のとおり、第2のアリコートをフローサイトメータ101に導入する前に、第2のアリコートはフローサイトメトリ分析のために適切に調製されているべきである。調製要求は、実行されるべきテストのタイプに依存して、サンプルへの1つまたはそれ以上の染料または蛍光色素の導入、溶解プロセス、およびインキュベーションプロセスを含んでもよい。血液分析器102への導入のためのサンプルの調製と同様に、調製プロセスは手作業の処理および自動化された処理を含んでもよい。
【0052】
ステップ304は、フローサイトメータ101内での細胞サンプルの第2のアリコートの測定を含む。いくつかの実施形態において、各アリコートは、そのアリコートに関連付けられたバーコードに基づいてフローサイトメータ101に導入されるため、そのアリコートの測定の前にテスト要求を調べて、その特定のテストに対して必要とされるあらゆる構成調整をフローサイトメータ101に行なうことができる。他の実施形態において、サンプルのアリコートは、実行されるテストのタイプに従って順序付けられてフローサイトメータ101に導入されてもよく、それによってフローサイトメータ101に対する構成調整が最小化されるか、および/またはあらゆるこうした調整は必要なときにのみ手作業で行なわれてもよい。
【0053】
フローサイトメータ101内で細胞サンプルを調べるプロセスは、当該技術分野において一般的に周知である。蛍光色素の組と混合された細胞サンプルが測定領域を流れる際に、電気センサおよび/または光学センサを用いて、たとえば関連プロファイルに指定されるとおりに実行されるテストに対して要求される測定のタイプなど、さまざまなテスト要求に基づいてサンプルを調べる。電気インピーダンス、VCS、さまざまな波長の光の散乱の検出を用いる技術などの調査技術の例を上述している。その調査に応答して生成される電気信号および/または光学信号は、次いで対応するデータに変換される。たとえば信号の異常の影響を排除および/または低減することなどによって、データを予め処理してその精度を高めてもよい。
【0054】
フローサイトメータ101によって生成されたデータは、次いでさまざまなテスト要求に従って分析を受ける。たとえば、サンプルに対して実行されるテストに関連するプロファイルは、同定されるべき1つまたはそれ以上の細胞集団に対する散乱プロット上の位置境界などの要求を指定するルールを含んでもよい。データの分析は、フローサイトメータ101の中または外で行なわれてもよい。たとえば、フローサイトメータ101からのデータの分析は、データ処理デバイス103中のフローサイトメータデータ処理モジュール201を用いて行なわれてもよい。フローサイトメータ分析から生成される事象データは、一般的に細胞カウントおよび/または集団を定めるために分析される。特定の測定および分析方法は、行なわれるテストの要求によって異なる。フローサイトメトリ分析によって生成された事象データの例示的な分析を以下に記載する。
【0055】
ステップ305において、フローサイトメータ101からのデータが分析される際に、所定の基準に基づいて1つまたはそれ以上のフラグが立てられてもよい。フラグは、1つの処理モジュールまたは構成要素から別の処理モジュールまたは構成要素へ情報を通信するために用いられてもよい。フラグは、たとえばソフトウェア生成メッセージ、ハードウェア信号、またはメモリもしくはファイルに書込まれた値などの1つまたはそれ以上の手段において実現されてもよい。たとえば、フローサイトメータからのデータのみを使用して決定的に分離できない細胞集団が、1つまたはそれ以上のこうしたフラグの生成をもたらし得る。実施形態の1つにおいて、フローサイトメトリ結果の分析において、予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールを用いて、フラグを生成する未分離の集団を識別したり、こうした未分離の集団を分離できる手段を識別したりしてもよい。フローサイトメトリ結果のみを使用して細胞集団を決定的に分離できない例を、図5〜6に関連して以下に記載する。
【0056】
ステップ305において1つまたはそれ以上のフラグが立てられていれば、次いでステップ306において、前記1つまたはそれ以上のフラグに応答するために必要なデータを得るために、保存された血液分析結果が自動的にアクセスされる。実施形態の1つにおいて、各未分離細胞集団およびその他の関連血液サンプル基準を、1つまたはそれ以上の予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールに照合して、血液分析結果から必要とされるデータを決定してもよい。次いで、たとえばデータマネージャ216のサービスなどを用いて、同じサンプルに対する血液分析結果を検索して、1つまたはそれ以上の未分離細胞集団を分離するために必要なあらゆる情報を定める。
【0057】
次いでステップ307において、ステップ306でアクセスされた血液分析結果を用いて、ステップ304におけるフローサイトメトリ分析で定められた1つまたはそれ以上の未分離細胞集団を分離する。対応する血液分析結果の調査および分析は、たとえば細胞サンプルの特徴、実行されるテスト、および未分離集団などの1つまたはそれ以上の基準に基づいて検索される、予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールに支援されてもよい。実施形態の1つにおいて、ステップ307に含まれる処理は機器間分析処理モジュール203において行なわれてもよく、ステップ304〜306に含まれる処理はフローサイトメータデータ処理モジュール201、データマネージャ216、および機器間分析処理モジュール203によって行なわれてもよい。
【0058】
ステップ308において、結果データが報告されてもよい。たとえば、報告はディスプレイまたはその他の出力デバイス、たとえばユーザインタフェース104などに対するものであってもよい。報告される1つまたは複数の結果データは、血液分析結果、フローサイトメトリ結果、および/またはあらゆる組み合わされた結果を含んでもよい。ステップ308は、フローサイトメトリ結果および/または組み合わされた結果をたとえば永続記憶デバイス206などの永続記憶デバイスにセーブすることも含んでもよい。実施形態の1つにおいて、ステップ308に含まれる処理は、出力モジュール209およびデータマネージャ216によって行なわれてもよい。
【0059】
ステップ305において、フローサイトメトリ分析が、対応する血液分析結果の検索を必要とするフラグを生成しなかったと判断されるとき、処理は直接ステップ308に進む。
【0060】
図4は、本発明の実施形態の1つに従う、ステップ307における処理のより細かい図を提供するものである。ステップ401において、たとえばフローサイトメトリ結果を実行されるテストの予めプログラムされたプロファイルに照合することなどによって、あらゆる未分離集団の特徴が定められてもよい。プロファイルおよび/またはプロファイルに関連するルールは、未分離細胞集団および/または血液分析結果を用いたさらなる分離を必要とするあらゆるその他の細胞集団を検出できる。たとえば、テストの各タイプは、データマネージャ216を用いてアクセス可能な永続記憶デバイス206に保存された1つまたはそれ以上の予めプログラムされたプロファイルを有してもよい。プロファイルおよび/またはプロファイルに関連するルールは、たとえば散乱グラフ上の細胞事象データの位置に基づいて、予想される細胞集団の特徴を指定できる。たとえば、テストAに対する予めプログラムされたプロファイルは、散乱プロットの範囲1に現れるあらゆる細胞事象がタイプAの細胞であり、範囲2のあらゆる細胞がタイプBの細胞であるなどと指定できる。プロファイルに関連するルールは、範囲3に現れる細胞事象の10%より多くと、特定の他の基準とが適合されるときに、範囲3の細胞集団は未分離であって、対応する血液サンプルに対する血液分析結果を用いたさらなる分析が必要であると指定できる。
【0061】
ステップ402において、未分離集団を分離するための1つまたはそれ以上の予めプログラムされたルールが決定される。たとえば、実行されるテストのタイプに関連するプロファイルは関連するルールを有してもよく、たとえば分散グラフ上の対応する事象位置など、未分離細胞集団の特徴に基づいて、適用可能なルールが決定されてもよい。こうしたルールの1つは、対応する血液分析結果から特定のテストに対応するデータを検索するべきであることを指定してもよい。
【0062】
ステップ403において、テストのタイプおよび/またはより細かい特徴、たとえば調べられる特定のテスト結果などに基づいて、対応する血液分析結果が得られる。必要な血液分析結果が見つからないとき、ステップ401で定められた未分離集団は未分離のままとなる(その後未分離であると報告されてもよい)。
【0063】
細胞集団を分離するために必要な血液分析結果が捜し出されれば、次いでステップ404においてそれらの血液分析結果を分析して、フローサイトメトリデータにおける特定の未分離集団をどのように分離すべきかを定める。たとえば、予めプログラムされたルールは、対応する血液分析結果が指定された特徴を有するプロファイルに適合すれば、その未分離集団は特定の態様で分離されるべきであるということを指定してもよい。したがってステップ404においては、フローサイトメトリ結果における未分離集団が、対応する血液分析結果を用いて分離される。
【0064】
当業者には明らかであるはずだが、プロセス300は、Flow−H 100における血液サンプルまたはその他の身体的サンプルのバッチモード処理に用いられるように適合され得る。プロセス300は、(記載のとおり)フローサイトメトリデータをリアルタイムで分離するか、またはこうした未分離細胞集団をフローサイトメトリ分析の完了後の処理後ステップにおいて分離するように適合されてもよい。第1の場合には、フローサイトメトリ分析が実行されているときに血液分析結果が必要とされる。第2の場合には、血液分析結果およびフローサイトメトリ結果の生成の順序は確定的ではないだろう。他の実施形態においては、特定の細胞集団を分離するために付加的な結果が必要とされるということをデータ処理モジュール103が決定するときに、付加的なテストが自動的に始動されるようにプロセス300が適合されてもよい。たとえば、実施形態の1つにおいては、対応するサンプルのフローサイトメトリ分析が決定的に判断できない細胞集団を含むときにのみ、サンプルの血液分析が始動されてもよい。
【実施例】
【0065】
(実施形態の例)
骨髄芽球は血中の最も未熟な顆粒球細胞であって、典型的に骨髄に見出される。急性白血病などのいくつかの疾患の診断および処置において、芽球細胞の列挙、特に骨髄芽球の列挙は重要である。自動血液分析器、たとえばBeckman Coulterにより製造されるCOULTER(登録商標)LH700シリーズ、またはSysmexにより製造されるXE−2100などは、骨髄芽球列挙の能力を有さない。分析中のサンプルに骨髄芽球が存在する可能性があることが見出されるとき、たとえばCOULTER(登録商標)LH700およびXE−2100などの従来の血液分析器は、骨髄芽球が存在する可能性があることをユーザに示すメッセージを表示するだけである。その後、サンプル中の骨髄芽球の存在を確認または否定するために、実験室の技術者が、骨髄芽球の存在の可能性を示す表示メッセージをもたらしたサンプルの各々を手作業で分析してもよい。
【0066】
Beckman Coulterにより製造されるFC 500TM、またはBecton Dickinsonにより製造されるFACSCantoTMなどのフローサイトメトリ機器は、CD45などの抗体および側方散乱を用いて骨髄芽球を列挙できる。骨髄芽球は通常、リンパ球または単球と類似の側方散乱値を有し、好中球と類似の、またはそれより低いCD45発現を有する。図5は、フローサイトメータで分析された骨髄芽球陽性サンプルの散乱プロットを示し、骨髄芽球502、好中球504、単球506、およびリンパ球508の集団が示されている。
【0067】
しかし、サンプルがプラズマ細胞を含んでいれば、側方散乱およびCD45を用いた骨髄芽球列挙のフローサイトメトリ法は誤って上昇する可能性がある。なぜならプラズマ細胞は散乱プロットにおいて芽球細胞と同じ位置に現れるからである。プラズマ細胞は抗体を生成する白血球であり、骨髄芽球とは異なる生物学的意義を有する。図6は、フローサイトメータで分析されたプラズマ細胞陽性サンプルの散乱プロットを示し、プラズマ細胞602、好中球604、単球606、およびリンパ球608の集団が示されている。骨髄芽球502の位置はプラズマ細胞602の位置と実質的に重なり合うことが分かる。
【0068】
自動血液分析器は骨髄芽球を列挙することはできないが、分析したサンプル中の骨髄芽球および/またはプラズマ細胞の存在を示すパターンを生成する。骨髄芽球および/またはプラズマ細胞を示すこうしたパターンの例を、図7〜図8に示す。図7は血液分析データからの骨髄芽球陽性サンプルの散乱プロットを示し、図8は血液分析データからのプラズマ細胞陽性サンプルの散乱プロットを示す。図7の骨髄芽球陽性サンプルにおいて、好中球集団分布704は体積(V)方向に実質的に伸びているのに対し、リンパ球集団702は実質的に伸びていない。図8のプラズマ細胞陽性サンプルにおいて、リンパ球集団分布802は体積(V)方向に実質的に伸びているのに対し、好中球集団804は実質的に伸びていない。
【0069】
したがって実施形態の1つにおいて、本発明は、フローサイトメトリデータにおいて骨髄芽球またはプラズマ細胞のいずれかであり得る(図5〜図6に示されるような)集団を検出したときに、対応する血液分析データを自動的に検索して、好中球集団とリンパ球集団との特徴を定める。好中球集団分布が体積方向に実質的に伸びておりかつリンパ球集団が実質的に伸びていなければ、フローサイトメトリデータの未分離集団は骨髄芽球と定められる。リンパ球集団が実質的に伸びておりかつ好中球集団が体積方向に実質的に伸びていなければ、フローサイトメトリデータの未分離集団はプラズマ細胞と定められる。
【0070】
たとえば、血液サンプルを分析するときに、ステップ302および303においてFlow−H 100は分析を行ない、図7または図8に示されるものなどの血液分析結果を保存してもよい。ステップ304〜305において対応するサンプルを分析するとき、Flow−H 100は、図5および図6に示されるとおり、骨髄芽球またはプラズマ細胞が現れる位置に集団を検出して、未分離集団を示すためのフラグを生成し得る。ステップ306〜307において、Flow−H 100は前に保存した血液分析データにアクセスして、リンパ球集団分布および/または好中球集団分布の1つまたはそれ以上の特徴を定める。たとえば、集団分布の標準偏差などの特徴を閾値と比較することで、その分布が体積方向に伸びているかどうかを示すことができる。Flow−H 100は、この例における骨髄芽球などの未分離集団を有する散乱プロットへのフローサイトメトリデータのアルゴリズム的照合を可能にする予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールを有してもよい。予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールは、未分離集団を分離するために必要なデータのタイプも指定してもよく、たとえばこの例においては、血液分析データのリンパ球および/または好中球の特徴が必要であることを指定してもよい。
【0071】
図9〜図14に関連して、別の実施形態の例を示す。いくつかの適用においては、白血球中の未熟顆粒球、好酸球および好中球の集団を区別することが重要である。血中の未熟顆粒球の存在は、一般的に骨髄活性の異常を検出するために有用である。未熟顆粒球は、白血病の特定の段階の検出にも有用である。好酸球および/または好中球集団の上昇または減少は、その他の疾患を示し得る。たとえば、好酸球は一般的にアレルギー反応を示し、好中球は細菌感染を示し得る。図9および図10はそれぞれ、フローサイトメータを用いて生成された、未熟顆粒球を有するWBCサンプルの散乱プロット900および1000を示す。散乱プロット900はサンプルとともに抗体CD45を用いたときの側方散乱を示し、散乱プロット1000は同じサンプルとともに抗体CD16を用いたときの側方散乱を示す。散乱プロット900および1000に示されるとおり、フローサイトメータによって生成された結果は、未熟顆粒球と好酸球とを区別するために十分ではない。たとえば、集団901は好中球、好酸球および未熟顆粒球の1つまたはそれ以上の集団を含み得る。集団1001は好酸球または未熟顆粒球のいずれかの集団を含み得る。しかし、同じサンプルを血液分析にかけると、結果として得られる散乱プロットのサインパターンに基づいて明確な未熟顆粒球集団を同定できる。たとえば、図11の散乱プロット1100は、未熟顆粒球を有する同じサンプルに対する血液分析器からの体積測定値と光散乱(回転光散乱)とをプロットしている。集団1101は未熟顆粒球を明確に同定する。
【0072】
図12〜図13は、フローサイトメータを用いて好酸球陽性血液サンプル(上昇した好酸球レベルを有する血液サンプル)を分析したときの散乱プロット1200および1300を示す。散乱プロット1200はサンプルとともに抗体CD45を用いたときの側方散乱を示し、散乱プロット1300は同じサンプルとともに抗体CD16を用いたときの側方散乱を示す。散乱プロット1200および1300に示されるとおり、フローサイトメータによって生成された結果は、未熟顆粒球と好酸球とを区別するために十分ではない。たとえば、集団1201は(上記の集団901の場合と同様に)好中球、好酸球および未熟顆粒球の1つまたはそれ以上の集団を含み得る。集団1301は(上記の集団1101の場合と同様に)好酸球または未熟顆粒球のいずれかの集団を含み得る。しかし、同じサンプルを血液分析にかけると、結果として得られる散乱プロットのサインパターンに基づいて明確な好酸球集団を同定できる。たとえば、図14の散乱プロット1400は、同じ好酸球陽性血液サンプルに対する血液分析器からの体積測定値と光散乱(特に、回転光散乱)とをプロットしている。集団1401は好酸球集団を明確に同定する。骨髄芽球の例に関して上述したとおり、Flow−H 100は、フローサイトメトリ分析が901、1001、1201または1301などの集団を得たときに、血液分析結果を自動的に用いて(たとえば散乱プロット1100および1400に示されるとおりに)集団を分離するように構成されてもよい。
【0073】
本開示においては、血液分析器およびフローサイトメータなどの異なる粒子分析器の能力および機能を組み合わせることによって、血液サンプル分析を含む粒子分析の効率および精度を改善できる方法およびシステムが開示される。開示される方法およびシステムは、現行の方法およびシステムを超えるかなりの改善をもたらす。本明細書に開示される技術は、いくつかの生物学的または産業的粒子に適用でき、さらに電気的、光学的または音響的媒体を用いたいくつかの検出方法にも適用できることを当業者は理解する。
【0074】
本発明の前述の記載は例示および説明の目的のために提供されたものである。前述の記載は網羅的であることも、本発明を開示された正確な形に限定することも意図されておらず、上記の教示に照らしてその他の修正および変更が可能であってもよい。実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用を最もよく説明することによって、他の当業者が、予期される特定の使用に好適であるようなさまざまな実施形態およびさまざまな修正形において本発明を最もよく利用することを可能にするために選択され記載されたものである。添付の請求項は、先行技術によって限定されない限り、本発明のその他の代替的な実施形態を含むように解釈されることが意図される。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は一般的に、粒子分析器を用いた粒子の分析に関し、より特定的には、細胞体積測定デバイス、光散乱測定デバイス、または細胞導電率測定デバイスを有する粒子分析器を用いて得られた結果を用いて、蛍光測定デバイスを有する粒子分析器によって検出された細胞集団をさらに識別することに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
医学的診断設備においては、血液およびその他の体液の効率的で正確な診断が特に重要である。精度ならびにコストおよび各サンプルの分析に関連する時間に関する効率を増すことが求められている。こうした医学的診断設備は、少なくとも2種類の粒子分析器を用いる。すなわち、血液分析器およびフローサイトメータである。血液分析器およびフローサイトメータは、1つまたはそれ以上のセンサにモニタされる小さな開口部または測定領域を血液細胞が通過するときに生成される信号を収集して分析することによって、血液細胞を測定および区別する。
【0003】
血液分析器は、一般的に電気インピーダンスを用いて、赤血球および白血球をそのサイズおよび/または体積に基づいて分類およびカウントする。電気インピーダンス分析は、粒子分析器のフローセル中の測定領域に電流を送達することを含む。(たとえば2つの端子間でフローセルの測定領域を横切って測定される)電流のインピーダンスは、通過する細胞に関連して変化する。これはCoulter原理としても公知である。血液分析器は、1つまたはそれ以上の光のビームを用いて光散乱および反射率を測定することで、サイズおよび粒度を含む特性に基づいて細胞を分類することもできる。血液分析器の例は、Beckman Coulterにより製造されるCOULTER(登録商標)LH700シリーズ、およびSysmexにより製造されるXE−2100TMを含む。
【0004】
フローサイトメータは、細胞が1つまたはそれ以上の公知の蛍光色素と組み合わされたときに検出される細胞の蛍光特徴を用いて、細胞特徴を測定する。1つの特定の細胞型と高い特異性で結合する蛍光色素によって細胞を標識することで、細胞の含有量を測定することが可能になる。こうした蛍光タグは、測定すべき特定の構成要素に対する高い結合特異性を有する蛍光色素分子であってもよいし、蛍光結合体化抗体であってもよい。細胞の光散乱および反射率によって、細胞のサイズ、形および構造に関する情報が得られる。フローサイトメータは、不均一な細胞集団を細胞ごとの基準で迅速かつ定量的に多パラメータ分析することができる。フローサイトメータの例は、Beckman Coulterにより製造されるFC 500TM、およびBecton Dickinsonにより製造されるFACSCantoTMを含む。
【0005】
実験室の設定において、血液分析器およびフローサイトメータの各々はそれぞれの強みを有する。血液分析器は、時間当り多くのルーチンアッセイを経済的に処理するように設計されているという点において、主力の分析機器であると考えられる。たとえば、血液分析は全血球計算(complete blood count:CBC)、網状赤血球分析、および白血球差動などのテストに広く用いられる。フローサイトメータは、血液分析器によって行なわれるテストよりも一般的に高価で時間のかかる付加的なテストに用いられる。フローサイトメトリは、たとえば白血病、HIV/AIDS、およびリンパ腫などの疾患の診断および処置に特に有用である。なぜなら、フローサイトメトリは血液サンプル中の特定の種類の細胞の割合をモニタすることを可能にするためである。
【0006】
しかしながら、血液分析器およびフローサイトメータはそれ自体によって強力な分析ツールであるにもかかわらず、その各々が実験室環境における制限を有する。血液分析器は、抗体または蛍光色素の使用によって細胞型の割合を検出するテストを行なうことができない。フローサイトメータは血液分析器に比べて遅く、多数の高価な抗体および蛍光色素を必要とする。したがって、両方の機器の能力を利用して医学的診断のためのより堅調な粒子分析器システムを作ることの必要性は軽視できない。
【0007】
現在、血液サンプルが血液分析器でもフローサイトメータでも分析されることもある。医学的診断設備における典型的なシナリオは、1日に数百個のサンプルを血液分析器に通してから、さまざまな理由によってそれらのサンプルのいくつかをフローサイトメータによってさらに分析するというものであり得る。たとえば、血液分析器によって生成されるフラグ(flag)は、高い白血球カウントの検出を表してもよい。フローサイトメータにおける後続分析を行なうための継続命令の例は、白血病の疑いのあるサンプルに対するものであってもよい。代替的に、いくつかの場合においては、血液分析器によってフラグを立てられたサンプルは、高度に訓練された技術者によってさらに分析されてもよい。技術者は典型的にスライドを調製し、それは次いで手作業で調べられる。さらに、多くの場合には、サンプルをフローサイトメータで分析した後でも、特定の細胞集団は未分離のままとなる。こうした場合には、血液分析器およびフローサイトメータによって生成された2組の別個の結果を解決するために、高度に訓練された技術者による手作業の介入が必要である。技術者による手作業の介入も高価であり、かつ人為ミスの可能性による複雑化が導入される。
【0008】
いくつかの分析機器、たとえばAbbott Laboratoriesにより製造されるSAPPHIREなどは、血液分析器の局面をフローサイトメータの局面と組み合わせている。特許文献1、特許文献2および特許文献3も参照されたい。SAPPHIREは、血液分析を用いて、フローサイトメトリ分析において見出される細胞型を含む細胞型の合計細胞カウントなどの特徴を決定することが理解される。さらに、任意の所与の時に、SAPPHIREは血液分析モードまたはフローサイトメトリモードのいずれかでしか動作できないことも理解される。機器を一度に1つのモードでしか動作できないことで、たとえば血液分析器とフローサイトメータとを組み合わせることによる利点のいくつか、たとえば速度および効率などが制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,939,326号明細書
【特許文献2】米国特許第5,656,499号明細書
【特許文献3】米国特許第5,631,165号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、異なる種類の粒子分析器の能力を有効に活用するための改善された方法およびシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の簡単な概要)
手作業の介入の必要性を減らすようなやり方で、血液分析器およびフローサイトメータの全能力の使用を自動化することによって、かなりの利益を得ることができる。本発明は、血液分析器の能力をフローサイトメータの能力と組み合わせることによって、いずれかの機器単独よりもはるかに強力な分析システムを得るための方法およびシステムを提供する。実施形態の1つにおいて、細胞懸濁物サンプルを分析する方法は、蛍光測定デバイスを有する第1の粒子分析器における細胞懸濁物サンプルの第1のアリコートの分析によって生成された第1のデータを受取るステップと、第1のデータにおける少なくとも1つの未分離細胞集団を検出するステップと、記憶デバイスに保存された第2のデータにアクセスするステップと、第2のデータを用いて未分離細胞集団を分離するステップとを含む。第2のデータは、第2の粒子分析器における細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて、同じ細胞懸濁物サンプルの第2のアリコートを調べることによって予め生成されたものである。第1および第2の粒子分析器は、それぞれフローサイトメータおよび血液分析器であってもよい。
【0012】
別の実施形態は、細胞懸濁物サンプルを分析するための方法であって、蛍光測定デバイスを有する粒子分析器における分析のために細胞懸濁物サンプルの第1のアリコートを調製するステップと、蛍光測定デバイスを用いて第1のアリコートを調べて第1のデータを生成するステップと、記憶デバイスに保存された第2のデータにアクセスするステップとを含み、ここで第2のデータは、第2の粒子分析器における細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて細胞懸濁物サンプルの第2のアリコートを調べることによって予め生成されたものである。次いで、第2のデータを用いて第1のデータにおける未分離細胞集団が分離されることで、分離細胞データが生成される。次いで分離細胞データが報告されてもよい。
【0013】
さらに別の実施形態は、細胞懸濁物サンプルの分析のためのシステムであって、サンプルの第1のアリコートを入力として受取り、蛍光測定デバイスを用いて第1のデータを生成するように構成された第1の粒子分析器と、前記サンプルの第2のアリコートを入力として受取り、細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて第2のデータを生成するように構成された第2の粒子分析器と、第2の粒子分析器から第2のデータを受取るように構成された記憶デバイスと、第1のデータおよび第2のデータを受取って分離細胞分布を生成するように構成されたコンピュータとを含み、ここで第1のデータは、第1のデータのみに基づいて分離できない少なくとも1つの細胞集団を含む。さらなる実施形態は、コンピュータから分離細胞分布を受取るように構成された報告デバイスを含む。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点、ならびに本発明のさまざまな実施形態の構造および動作は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。なお、本発明は本明細書に記載される特定の実施形態に制限されないことに注意すべきである。こうした実施形態は本明細書において例示目的のためにのみ提供されるものである。本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術分野の技術者には付加的な実施形態が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点、ならびに本発明のさまざまな実施形態の構造および動作は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。なお、本発明は本明細書に記載される特定の実施形態に制限されないことに注意すべきである。こうした実施形態は本明細書において例示目的のためにのみ提供されるものである。本明細書に含まれる教示に基づいて、関連技術分野の技術者には付加的な実施形態が明らかになる。
【図1】図1は、本発明の実施形態に従うシステムを示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に従って図1のシステムをより詳細に示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に従う、血液分析器およびフローサイトメータからの結果を組み合わせるためのプロセスを示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に従う、図3の分離ステップの詳細を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に従う、フローサイトメータで分析された骨髄芽球陽性血液サンプルの散乱プロットである。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従う、フローサイトメータで分析された図5のプラズマ細胞陽性血液サンプルの散乱プロットである。
【図7】図7は、本発明の実施形態に従う、血液分析器で分析された図5の骨髄芽球陽性血液サンプルの散乱プロットである。
【図8】図8は、本発明の実施形態に従う、血液分析器で分析された図6のプラズマ細胞陽性血液サンプルの散乱プロットである。
【図9】図9は、フローサイトメータで分析された未熟顆粒球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図10】図10は、フローサイトメータで分析された未熟顆粒球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図11】図11は、血液分析器で分析された図9および図10の未熟顆粒球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図12】図12は、フローサイトメータで分析された好酸球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図13】図13は、フローサイトメータで分析された好酸球陽性サンプルの散乱プロットである。
【図14】図14は、血液分析器で分析された図12および図13の好酸球陽性サンプルの散乱プロットである。
【0016】
図面と組み合わされるとき、以下に示される詳細な説明から本発明の特徴および利点がより明白になる。図面中の類似の参照番号は、一般的に同一であるか、機能的に類似であるか、および/または構造的に類似の構成要素を示す。全般的に、ある構成要素が最初に現れた図面は、対応する参照番号の一番左の数字によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、血液分析器の能力をフローサイトメータの能力と組み合わせることによって、いずれかの機器単独よりもはるかに強力な分析システムを得るための方法およびシステムを提供する。本明細書においては、特定の適用についての例示的な実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明はそれに限定されないことが理解されるべきである。本明細書の教示に接する当業者は、本発明の範囲内の付加的な修正、適用および実施形態、ならびに本発明が非常に有益である付加的な技術分野を認識する。
【0018】
(概要)
本発明の実施形態は、血液分析器の分析能力をフローサイトメータの分析能力と組み合わせることによって、一方のタイプの分析から得られた結果を用いて他方のタイプの分析から得られた結果を解釈するための方法およびシステムを得る。たとえば、本発明のある実施形態は、血液分析の結果を用いて、同じ血液サンプルのフローサイトメトリ分析によって発見された細胞集団をさらに解釈および識別する。こうした機器間(cross−instrument)分析は、両方のタイプの分析が行なわれるときのテスト結果の解釈に伴う手作業労働のレベルを低減させるために非常に有益であり得る。達成される相乗作用は、両方のタイプの分析を用いる複合分析に必要とされる時間を激減させ、こうした分析のコストを下げる。本発明のシステムおよび方法に従って血液分析器とフローサイトメータとの間でデータを共有することによって達成される相乗的な結果は、有意なものである。
【0019】
一例として、骨髄芽球陽性の血液サンプルを分析するとき、ほとんどの血液分析器は骨髄芽球の列挙を行なう能力を有さないため、非数値的な推測メッセージしか表示できない。他方で、骨髄芽球を直接マークしない抗体の特定の組み合わせを用いるフローサイトメータは、もしそのサンプルがプラズマ細胞を含んでいれば不正確な骨髄芽球情報を生じるかもしれない。なぜなら、プラズマ細胞は散乱プロットにおいて骨髄芽球と同じ位置に現れるからである。したがって多くの場合に、フローサイトメトリデータにおける骨髄芽球細胞集団は不確定または未分離であると考えられてもよい。しかし、骨髄芽球陽性サンプルに対して血液分析器から生成される結果は、プラズマ細胞陽性サンプルに対するものと1つまたはそれ以上の他の細胞集団において明確に異なる特徴を示す。たとえば、本発明の実施形態は、特定の集団が骨髄芽球かプラズマ細胞かを分離できないようなフローサイトメトリ結果を分析するときに、より完全な決定を行なうために同じ血液サンプルに対して生成された血液分析結果を自動的に調べることができる。この実施形態例のさらなる詳細は、図5〜図8に関連して以下に提供される。他の適用は、血液分析結果を用いて、フローサイトメータ結果におけるT芽球細胞集団と好塩基球集団とを区別するか、または好酸球と未熟顆粒球集団とを区別することを含むが、それに限定されない。
【0020】
細胞集団を分離するための従来の方法を使用すると、典型的に、技術者によってテスト結果データの範囲を手作業で検査するか、または同じサンプルに対してたとえば反射テストなどの追加のテストを行なうことが必要である。結果を解釈するための手作業の介入は高価であり、しばしば間違いが起こりやすい。同じサンプルに対して追加のテストを行なうことは追加の時間を取り、テストのパイプラインを乱し、さらに、たとえば各テストについて各所望の細胞集団を特異的にマークできる追加のモノクローナル抗体および/または蛍光色素などを導入することによって関連コストを実質的に増やし得る。本明細書に記載される適用例から示されるとおり、本発明の実施形態は、結果の解釈における機器間のデータの自動活用を可能にすることによって、コストを増やすことなく重要なテスト能力の拡張を可能にする。
【0021】
本発明は、両方の機器の能力の組み合わせを可能にしながら、血液分析器とフローサイトメータとを別々の独立した粒子分析器として維持する。粒子分析器を別々に独立して維持することで、組み合わされたシステムの使用が可能になり、たとえば血液サンプルのバッチを純粋に高スループットの血液分析器モードで運転したり、純粋にフローサイトメータモードで運転したり、または一方の粒子分析器の結果を用いて他方の粒子分析器から得られた結果を強化および/もしくは解釈できる組み合わせモードで運転したりできる。組み合わせモードにおいても、本発明の実施形態は、2つの分析の流れの各々がそれ自体のペースで動作することを可能にすることによって、特に大規模なバッチテスト環境において、実質的により迅速である血液分析プロセスがフローサイトメトリ分析の要求のために遅延されないことを確実にする。
【0022】
本発明を実施できる例示的な環境は、血液分析器およびフローサイトメータ、たとえばそれぞれBeckman CoulterのGen STMシステムおよびFC 500TMなどを含む。たとえば、Gen STMシステムは、Coulter所有の体積、導電率および散乱(Volume,Conductivity,and Scatter:VCS)技術を用いてフローセル内の水力学的にフォーカスされた細胞を調査する血液分析器である。VCSは、細胞を調査するために互いに協調して働く3つの独立した測定デバイスを用いる。すなわち、低周波数の直流電源を用いて体積を測定する細胞体積測定デバイス、高周波数の電源を用いて導電率を測定する細胞導電率測定デバイス、および光散乱を測定するためのレーザー光源である。体積測定は、電気インピーダンスのCoulter原理を用いて、細胞全体が等張性希釈液中で置換する体積を物理的に測定することで行なわれる。この方法は、光経路内の細胞の配向に関わらず、すべての細胞型を正確にサイズ区分する。無線周波数(radio frequency:RF)範囲の交流は、細胞の膜の双極性脂質層を短絡して、細胞内にエネルギーを入れる。この強力なプローブを用いて、細胞サイズならびに化学的組成および核体積を含む内部構造に関する情報を収集する。レーザーおよび多角度光散乱センサまたは検出器は、細胞の内部構造、粒度、および表面形態に関する情報を提供する。
【0023】
加えて、VCS機器は大変正確な体積のDC測定値を用いて、導電率および散乱から細胞サイズに対して調整された他の測定値を得る。たとえば、導電率信号を補正してもはや細胞サイズに影響されないようにすることで、細胞の内部構造をより正確に表すようにできる。異なる組成に基づいて類似サイズの細胞を分離することによって、正常なリンパからの変異型リンパ球の区別などの細胞集団の区別が可能になる。さらに、光散乱信号を調整してサイズ構成要素を排除する(調整された散乱はしばしばVCSドキュメントにおいて回転(rotated)光散乱と呼ばれる)ことによって、各細胞型に対する最適な散乱角度をモニタできる。これによってVCS技術は、たとえば好中球と好酸球など、通常は混合細胞型となるものを、数学的操作なしに別々のクラスターに正確に分離することが可能となる。これは非顆粒状の細胞型間の分離も向上させる。米国特許第5,616,501号(Rodriguezら)は、粒子分析器の詳細な説明およびVCS技術の使用を含んでいる。しかしながら、本開示における教示はVCS技術を用いたデバイスに限定されないことが注目されるべきである。たとえば、生物学的サンプル分析に加えて多数のアプリケーションを有する粒子分析器であるMultisizerTM3 Coulter Counter(登録商標)にも本明細書の教示を適用できる。FC 500TMは、VCS技術の測定デバイスに加えて、選択された組の蛍光色素の蛍光特徴に基づく光学的分析のための蛍光測定デバイスも含むフローサイトメータである。公知の血液分析器およびフローサイトメータによって行なわれるその他の適用可能な測定は、関連技術分野における当業者に周知である。
【0024】
(細胞集団識別のための機器間パターン分析のためのシステム)
説明を容易にするために、本明細書において、本発明の実施形態に従うフローサイトメータおよび血液分析器を組み合わせたシステムを「Flow−H」と呼ぶ。図1は、Flow−H 100の構成要素を示す。図1は例示の目的のためのみのものであり、本発明の実施形態に従うシステムは、図1に示されるものより多いかもしくはより少ない構成要素、異なる構成要素、および/または異なる設計を含んでもよいことが理解されるべきである。Flow−H 100は、フローサイトメータ101と、血液分析器102と、データ処理システム103と、ユーザインタフェース104と、サンプルディスペンサ105とを含む。フローサイトメータ101は、FC 500TMなどの従来のフローサイトメータであってもよいし、Flow−Hのために特定的に作製された特別注文のフローサイトメータであってもよい。血液分析器102は、Gen STMなどの従来の血液分析器であってもよいし、本発明を実行するために特定的に作製された特別注文の血液分析器であってもよい。
【0025】
データ処理システム103は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、メインフレームコンピュータ、ラップトップコンピュータ、またはフローサイトメータ101および血液分析器102からデータを受取り、本開示の教示に従ってそのデータを処理するためのハードウェアおよびソフトウェア命令を実行できるあらゆるその他のデバイスを含んでいてもよい。データ処理システム103は、1つまたはそれ以上の通信的につながれた処理プラットフォームを含んでもよい。たとえば、フローサイトメトリ処理を排他的に含むデータ処理システム103の局面が、フローサイトメータ101中に存在してもよい。血液分析器処理を排他的に含むデータ処理システム103の局面が、血液分析器102中に存在してもよい。さらに、フローサイトメトリ処理と血液分析器処理とを組み合わせるデータ処理システム103の局面が、フローサイトメータ101および血液分析器102につながれた別の処理プラットフォーム中に存在してもよい。実施形態の1つにおいて、データ処理システム103は、たとえば医学的診断設備において用いられるBeckman CoulterからのDL2000 DATA MANAGERなどの従来の実験室情報システムを含む。データ処理システム103は、図2に関連して以下にさらに説明される。
【0026】
ユーザインタフェース104は、1つまたはそれ以上のディスプレイ、記憶デバイス、出力デバイス、および入力デバイスを含んでもよい。ユーザインタフェース104は、Flow−H 100の1つまたはそれ以上の構成要素、たとえばフローサイトメータ101、血液分析器102、データ処理システム103、およびサンプルディスペンサ105などに通信的につながれてもよい。ユーザインタフェース104に含まれるディスプレイは、たとえばフローサイトメータ101および血液分析器102からの粒子分析結果などのデータを直接、またはデータ処理システム103を通じて受取って表示できる。ユーザインタフェース104の1つまたはそれ以上の入力デバイス、たとえばキーボードまたはマウスなどは、オペレータがFlow−H 100またはその構成要素の1つの動作を構成したり、Flow−H 100の動作を指示するためのコマンドを発行したり、入力を提供したり、Flow−H 100によって生成される出力を提供したりすることを可能にしてもよい。ユーザインタフェース104中の1つまたはそれ以上の記憶デバイスは、たとえばハードディスク、デジタルビデオディスク(digital video disk:DVD)、フラッシュディスクなどの永続記憶デバイスを含んでもよい。さらに、ユーザインタフェース104中の1つまたはそれ以上の記憶デバイスは、たとえば静的ランダムアクセスメモリ(static random access memory:SRAM)、動的ランダムアクセスメモリ(dynamic random access memories:DRAM)などのメモリを含んでもよい。記憶デバイスは、Flow−H 100またはその1つもしくはそれ以上の構成要素の動作のためのコマンド、スクリプト、プロファイル、ルール、およびソフトウェアプログラムなどを保存するために用いられてもよい。加えて、ユーザインタフェース104中の記憶デバイスの1つまたはそれ以上が、フローサイトメータ101、血液分析器102における粒子サンプルの分析から得られた結果、および/またはこうした結果の組み合わせ分析の結果を保存するために用いられてもよい。
【0027】
本発明の実施形態に従って、Flow−H 100にはサンプルディスペンサ105が任意に含まれてもよい。サンプルディスペンサ105は、オペレータが分析のための複数のサンプルを並べることで、Flow−H 100が並べられたサンプルの各々をさらなる手作業の介入なしに自動的に処理できるようにすることを可能にすることによって、Flow−H 100を用いた粒子サンプル分析の自動化を向上させる。サンプルディスペンサ105は、サンプルのローディング、分析のための調製物中のサンプルの混合、ならびにフローサイトメータ101および血液分析器102への構成どおりのサンプルの分配のためのデバイス(図示せず)を含んでもよい。サンプルディスペンサ105は、フローサイトメータ101における分析の前にサンプルの任意の付加的な処理(たとえば蛍光色素または抗体の添加など)および/またはインキュベーションを行なうフローサンプル調製デバイス106を含んでもよい。サンプルディスペンサ105はさらに、バーコード化能力および/またはバーコード読取能力を可能にすることによって、Flow−H 100内でサンプルを正しく処理および照合できるようにするバーコードデバイス107を含んでもよい。たとえば、バーコードを用いて各一意のサンプルおよびその一意のサンプルの各アリコートを識別することによって、血液分析器102からの分析結果をフローサイトメータ101からの対応する結果と照合できるようにしてもよい。サンプルディスペンサは当該技術分野において公知である。
【0028】
サンプルディスペンサ105とユーザインタフェース110との間のインタフェース110は、サンプルディスペンサ105が構成コマンドを受取って、ユーザインタフェース104に対してエラー状態などのフィードバックを表示することを可能にする。ユーザインタフェース104とデータ処理システム103との間のインタフェース120は、データ処理システムがユーザインタフェース104から構成情報、プロファイル、ルールなどを受取って、ユーザインタフェース104に分析結果を含むフィードバックを提供することを可能にする。インタフェース130は、血液分析器102がユーザインタフェース104から構成情報を受取って、分析による結果および/またはエラー状態表示を含むフィードバックをユーザに提供することを可能にする。インタフェース140は、フローサイトメータ101がユーザインタフェース104から構成情報を受取って、分析による結果および/またはエラー状態表示を含むフィードバックをユーザに提供することを可能にする。
【0029】
サンプルディスペンサ105とフローサイトメータ101との間のインタフェース150は、フローサイトメータ101がサンプルディスペンサ105から細胞懸濁物サンプルを受取ることを可能にする機械的インタフェースを表す。インタフェース150は、サンプルの分配を調整するための制御情報の流れのための、サンプルディスペンサ105とフローサイトメータ101との間の単方向または双方向インタフェースも表す。同様に、サンプルディスペンサ105と血液分析器102との間のインタフェース160は、血液分析器102がサンプルディスペンサ105から細胞懸濁物サンプルを受取ることを可能にする機械的インタフェースを表す。インタフェース160は、サンプルの分配を調整するための制御情報の流れのための、サンプルディスペンサ105と血液分析器102との間の単方向または双方向インタフェースも表してもよい。インタフェース110、120、130、140、170、および180は、たとえば周辺構成要素相互接続(peripheral component interconnect:PCI)バス、イーサネット(登録商標)、またはたとえばIEEE802.11などの無線ネットワークなど、1つまたはそれ以上の通信媒体を含んでもよい。同様に、インタフェース150および160も、サンプル分配のために利用される機械的インタフェースに加えて、たとえば周辺構成要素相互接続(PCI)バス、イーサネット(登録商標)、またはたとえばIEEE802.11などの無線ネットワークなど、1つまたはそれ以上の通信媒体を含んでもよい。
【0030】
図2は、本発明の実施形態に従って、データ処理システム103をより詳細に示す。上述のとおり、データ処理システム103はフローサイトメータ101と、血液分析器102と、ユーザインタフェース104とに接続される。ユーザインタフェース104は、1つまたはそれ以上の記憶デバイス211、1つまたはそれ以上の入力デバイス217、および1つまたはそれ以上のディスプレイデバイス210を含むがそれに限定されないデバイスを含んでもよい。ユーザインタフェース104は、インタフェース120を用いてデータ処理システムにつながれてもよい。インタフェース170および180は、それぞれデータ処理システム103をフローサイトメータ101および血液分析器102につなぐ。
【0031】
特定の実施形態において、データ処理システム103は少なくとも1つの制御プロセッサ204と、1つまたはそれ以上のメモリ205と、1つまたはそれ以上の永続記憶デバイス206と、フローインタフェース207と、血液インタフェース208と、フロー分析器処理モジュール201と、血液分析器データ処理モジュール202と、機器間分析モジュール203と、出力モジュール209と、データマネージャ216と、データ処理システム103の構成要素を相互接続する通信媒体212とを含む。1つまたはそれ以上の制御プロセッサ204は、たとえばプログラムされた商業的に入手可能な中央処理デバイス(central processor units:CPU)、またはその他のプロセッサ、たとえばデジタル信号プロセッサ(digital signal processor:DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate arrays:FPGA)などの専用コンピュータを含んでもよい。上述のとおり、1つまたはそれ以上の制御プロセッサ204は、たとえばフローサイトメータ101、血液分析器102、データ処理システム103、ユーザインタフェース104、および/またはサンプルディスペンサ105などを含む1つのプラットフォームに位置してもよいし、複数のプラットフォームに位置してもよい。1つまたはそれ以上の制御プロセッサ204の各々は、Flow−H 100の動作を指示する論理命令を実行するための機能を含み、その論理命令は、たとえばフロー分析器処理モジュール201、血液分析器データ処理モジュール202、機器間分析モジュール203、およびデータマネージャ216の機能を実行する論理命令などを含む。
【0032】
1つまたはそれ以上のメモリ205は、単一のプラットフォームに位置してもよいし、複数のプラットフォームに分散されていてもよい。1つまたはそれ以上のメモリ205は、たとえば動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)などを含む動的メモリ構成要素と、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)とからなる。メモリ205は、実行されるべきソフトウェアプログラムコードおよび/または論理命令をロードするため、ならびに中間処理データを保持するため、ならびに永続記憶デバイス206もしくは211に保存されるかまたは別様に配置される前の粒子分析の結果を保持するために用いられてもよい。メモリ205、たとえばSRAMは、たとえばハードウェアもしくはソフトウェアに実行される論理の構成、ならびに/またはフローサイトメータ101および血液分析器102の動作の制御において有用なものなどの構成パラメータを保持するために用いられてもよい。
【0033】
1つまたはそれ以上の永続記憶デバイス206は、単一のプラットフォームに位置してもよいし、複数のプラットフォームに分散されていてもよい。永続記憶デバイス206は、ハードディスクドライブ、DVD、フラッシュメモリ、またはその他のコンピュータ読取可能なデータ記憶媒体を含んでもよい。永続記憶デバイス206は、Flow−H 100またはその1つもしくはそれ以上の構成要素の動作のために用いられ得るコマンド、スクリプト、ソフトウェアプログラム、テストプロファイルなどを保存するために用いられてもよい。永続記憶デバイス206は、Flow−H 100の1つまたはそれ以上の構成要素の処理中に生じる中間データのために用いられてもよいし、フローサイトメータ101、血液分析器102、および組み合わされたシステムによって生成される結果を保存するために用いられてもよい。加えて永続記憶デバイス206は、フローサイトメータ101および/または血液分析器102など、Flow−H 100の1つまたはそれ以上の構成要素からの結果の処理に用いられるプロファイルおよびルールを保存してもよい。たとえばプロファイルは、テスト、ならびにフローサイトメータ101および血液分析器102において行なわれるべき調査および/または測定のタイプを指定してもよい。たとえばルールは、散乱プロットにおいてどのように細胞集団を同定および列挙できるか、および/または各細胞集団に対してどのパラメータを測定もしくは算出すべきかを指定してもよい。1つまたはそれ以上のメモリ205および1つまたはそれ以上の永続記憶デバイス206が、集合的に永続記憶デバイスと考えられてもよい。通常の当業者は、いくつかの実施形態において、1つまたはそれ以上のメモリ205が血液分析器102またはフローサイトメータ101からの結果を保持および/または保存するためにも用いられ得ることを認識する。
【0034】
実施形態の1つにおいて、データマネージャ216は、Flow−H 100内のデータの保存、組織化、管理、およびアクセスのための機能を含む。データマネージャ216に取り扱われるデータは、フローサイトメータ101、血液分析器102、および組み合わされたシステムからの結果データを含んでもよい。データマネージャ216に取り扱われるデータは、構成パラメータ、ならびにシステムの動作のために用いられるプロファイルおよびルールも含んでもよい。たとえば構成データは、フローサイトメータ101、血液分析器102、ユーザインタフェース104、サンプルディスペンサ105、および組み合わされたシステムに対する構成パラメータを含んでもよい。実行されるべきテストの各タイプに対して、そのテストに対する構成、ならびに結果として得られる事象データおよび/または散乱プロットをいかに解釈すべきかを定めるプロファイルおよびルールが保存されてもよい。本発明の実施形態において、プロファイルおよびルールは、たとえばPerl、XML、Java(登録商標)、またはC++、ハードウェア記述言語(hardware description language:HDL)、またはカスタム形式など、1つまたはそれ以上の従来のスクリプト言語またはプログラミング言語で指定されてもよい。実施形態の1つにおいて、データマネージャ216は従来の実験室情報システムのミドルウェア構成要素を含む。データマネージャ216は、たとえばORACLE Corporationより入手可能なORACLE DBMSなどの商業的に入手可能なデータベース管理システム、またはカスタムデータ管理能力を含んでもよい。
【0035】
フローインタフェース207は、データ処理システム103の構成要素とフローサイトメータ101との間で通信するための機能を含む。たとえば、関連フローサイトメトリデータ処理のすべてまたは実質的にすべてがデータ処理システム103内で起こる実施形態において、フローインタフェース207は、フローサイトメータ101の信号生成構成要素と通信してこうした信号を解釈するための機能を含んでもよい。実質的にすべてのフローサイトメータ関連の処理がフローサイトメータ101内で起こる他の実施形態において、フローインタフェース207は、たとえばフローサイトメータと残りのFlow−H 100との間の通信を可能にして、フローサイトメータ101に必要とされるあらゆる追加のデータを提供するための機能を含んでもよい。さらに他の実施形態において、フローインタフェース207は、1つまたはそれ以上のフローサイトメータに適合しかつそれに接続する一般的なインタフェースを提供してもよい。たとえばデータ処理システム103は、本開示の教示に従って結果を組み合わせる一般的な機能を提供してもよく、それは1つの特定のフローサイトメータに制限されない。
【0036】
血液インタフェース208は、データ処理システム103の構成要素と血液分析器102との間で通信するための機能を含む。たとえば、関連血液分析データ処理のすべてまたは実質的にすべてがデータ処理システム103内で起こる実施形態において、血液インタフェース208は、血液分析器102の信号生成構成要素と通信してこうした信号を解釈するための機能を含んでもよい。実質的にすべての血液分析器関連の処理が血液分析器102内で起こる他の実施形態において、血液インタフェース208は、たとえば血液分析器と残りのFlow−H 100との間の通信を可能にして、血液分析器102にそのデータを処理するために必要とされるあらゆる追加のデータを提供するための機能を含んでもよい。さらに他の実施形態において、血液インタフェース208は、1つまたはそれ以上の血液分析器に適合しかつそれに接続する一般的なインタフェースを提供してもよい。たとえばデータ処理システム103は、本開示の教示に従って結果を組み合わせる一般的な機能を提供してもよく、それは1つの特定の血液分析器に制限されない。
【0037】
実施形態の1つにおいて、出力インタフェース209は、結果データと、データ処理システム103からユーザインタフェース104に流れるあらゆるその他の情報とを受取るための機能を含む。たとえば、出力モジュール209は、ディスプレイ210に対する散乱プロットのフォーマッティングなど、ディスプレイ210に表示される前に結果データに行なわれる処理を含んでもよい。
【0038】
フローサイトメータデータ処理モジュール201は、フローサイトメータの特定的なデータ処理を含む。たとえば実施形態の1つにおいて、フローサイトメータデータ処理モジュール201は、フローチャンバ内で細胞が調べられる際にフローサイトメータ101の粒子測定モジュールによって生成される光学信号および電気信号を解釈し、データを処理してデータを精密化および/または増強し、集団の所定の分析のいくつかまたはすべてを行なうための機能を含む。フローサイトメータデータ処理モジュール201は、たとえばフローサイトメータ101およびデータ処理モジュール103などを含む複数のプラットフォーム間に分散されてもよい。
【0039】
血液分析器データ処理モジュール202は、血液分析器の特定的なデータ処理を含む。たとえば実施形態の1つにおいて、血液分析器データ処理モジュール201は、細胞が調べられる際に血液分析器102の粒子測定モジュールによって生成される光学信号および電気信号を解釈し、データを処理してデータを精密化および/または増強し、集団の所定の分析のいくつかまたはすべてを行なうための機能を含む。血液分析器データ処理モジュール202は、たとえば血液分析器101およびデータ処理モジュール103などを含む複数のプラットフォーム間に分散されてもよい。
【0040】
機器間分析処理モジュール203は、フローサイトメータ101および血液分析器102からの結果を組み合わせて分析するための機能を含む。たとえば、このモジュールにおける処理によって、血液分析器102および血液分析器データ処理モジュール201によって生成された結果を、フローサイトメータ101およびフローサイトメータデータ処理モジュール201からの結果に示される細胞集団の分離に用いることが可能になる。この処理に含まれる方法の詳細は、図3および図4に関連して以下に記載される。
【0041】
通信デバイス212は、データ処理システム103の構成要素を互いに相互接続するものであり、周辺構成要素相互接続(PCI)バスまたは拡張業界標準アーキテクチャ(Extended Industry Standard Architecture:EISA)バスを含むがそれに限定されない1つまたはそれ以上の通信媒体を含んでもよい。
【0042】
機器間分析処理モジュール103およびデータマネージャモジュール216を含むFlow−H 100の構成要素の処理論理は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそのあらゆる組み合わせにおいて実現されてもよい。たとえば、1つまたはそれ以上の構成要素201、202、203および216の機能を実現するコンピュータプログラム製品は、たとえばC、C++、アセンブリ、Java(登録商標)、またはHDLなどの1つまたはそれ以上のプログラミング言語で指定された論理命令を含んでもよい。
【0043】
(細胞集団識別のための機器間パターン分析のための方法)
図3は、本発明の実施形態に従った、フローサイトメータと血液分析器との結果を自動的に組み合わせるためのステップ301〜308を有するプロセス300を示す。プロセス300は、Flow−H 100における1つの血液サンプルに対する分析の方法を示す。しかし、プロセス300を繰り返し行なって、複数のサンプルの分析を自動化してもよいことを当業者は認識する。
【0044】
ステップ301において、Flow−H 100における分析のために血液サンプルが調製される。たとえば、Flow−H 100が自動サンプルディスペンサを含まないような実施形態の1つにおいて、ステップ301は、同じ血液サンプルの2つのアリコート、すなわち血液分析器102における分析のための一方のアリコートおよびフローサイトメータ101における分析のための他方のアリコートを調製するステップを含んでもよい。オペレータが手作業で第1のアリコートを血液分析器102に分配し、第2のアリコートをフローサイトメータ101に分配してもよい。たとえば、Flow−H 100がサンプルディスペンサ105などの自動サンプルディスペンサを含むような別の実施形態においては、サンプル調製デバイス105のサンプル調製能力に依存して、Flow−H 100における処理のために複数のサンプルが並べられてもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、サンプルディスペンサ105は血液サンプルを自動的に2つのアリコートに分ける。予め指定された(または予めプログラムされた)命令に基づいて、サンプルディスペンサ105は、血液分析テストのグループのために血液分析器102で分析されるべき1つのアリコートを調製し、フローサイトメトリテストの第2のグループのためにフローサイトメータ101で分析されるべき第2のアリコートを調製することもできる。本発明の実施形態は、たとえば非常に基本的なサンプル分配のみを行なうものから完全に自動化されたサンプル調製および分配を行なうものまで、さまざまな能力レベルを有するサンプルディスペンサを伴うFlow−H 100デバイスを包含することに注意すべきである。実施形態は、統合されたサンプルディスペンサを有さないFlow−Hデバイスをも含み得る。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態は、各サンプルに関連付けられた識別、たとえば一意のバーコードなどを用いて処理を自動化し、かつ血液分析器102およびフローサイトメータ101における同じサンプルの処理を関連付けることができる。たとえば、サンプル調製段階のステップ301において、バーコードデバイス107は各サンプルに、予めプログラムされた患者情報および/またはテスト要求に関連する一意のバーコードをスタンプできる。たとえば、患者情報、サンプル情報、および各患者に対して行なわれるべきテスト指示などをバーコードなどの一意のコードに関連付けて、永続記憶デバイス206などの永続記憶デバイスに保存し、対応するサンプルの処理中にアクセスさせることができる。当業者に明らかであるとおり、たとえばレーザーエッチング、ナノ粒子タグ付けなど、その他の公知の識別特徴が用いられてもよい。
【0046】
当業者は、血液分析器における分析のための血液サンプルを調製するプロセス、およびフローサイトメータにおける分析のためのサンプルを調製するプロセスに精通している。調製プロセスは、そのサンプルに対して実行されるテストに基づいて変わり得ることも当業者は認識する。
【0047】
ステップ302において、ステップ301で調製されたサンプルの第1のアリコートが、分析のために血液分析器102などの血液分析器に導入される。次いでアリコートは、1つまたはそれ以上の予め指定されたテストの要求に基づいて、血液分析器102において分析される。いくつかの実施形態において、各アリコートは、そのアリコートに関連付けられたバーコードまたはその他の特徴もしくはタグに基づいて血液分析器102に導入されるため、そのアリコートの分析の前にテスト要求を調べることができ、その特定のテストに対して必要とされるあらゆる構成調整を血液分析器102に行なうことができる。他の実施形態において、サンプルのアリコートは、実行されるテストのタイプに従って順序付けられて血液分析器102に導入されてもよく、それによって血液分析器102に対する構成調整が最小化されるか、および/またはあらゆるこうした調整は必要なときにのみ手作業で行なわれてもよい。
【0048】
血液分析器102内で細胞サンプルの特性を測定するプロセスは、当該技術分野において一般的に周知である。実施形態の1つにおいては、細胞サンプルの細胞が測定領域を流れる際に、電気センサおよび/または光学センサを用いて、たとえば関連プロファイルに指定されるとおりに実行されるテストに対して要求される測定のタイプなど、さまざまなテスト要求に基づいてサンプルを調べる。電気インピーダンスおよびVCS技術を用いるような調査技術の例を上述している。その調査に応答して生成される電気信号および/または光学信号は、次いで対応するデータに変換される。たとえば信号の異常および外れた(stray)データ点の影響を排除および/または低減することなどによって、データを予め処理してその精度を高めてもよい。
【0049】
血液分析器102において生成されたデータは、次いでさまざまなテスト要求に従って分析を受ける。たとえば、サンプルに対して実行されるテストに関連するプロファイルは、同定されるべき1つまたはそれ以上の細胞集団に対する散乱プロット上の位置境界などの要求を指定するルールを含んでもよい。データの分析は、血液分析器102の中または外で行なわれてもよい。たとえば、血液分析器102からのデータの分析は、データ処理デバイス103中の血液分析器データ処理モジュール202を用いて行なわれてもよい。血液分析から生成される事象データは、一般的に細胞カウントおよび/または集団を定めるために分析される。特定の測定および分析方法は、行なわれるテストの要求によって異なる。一般的に、細胞を表す事象が散乱プロット上にマップされ、散乱プロット上の細胞クラスター間の最終的な分離がアルゴリズム的に決定される。細胞集団は、別の細胞集団の範囲と実質的に重なり合わない範囲内にあるときには列挙され(すなわち特に同定され)てもよい。2つの細胞集団が重なり合っているか、またはそうでなければ区別不可能であるとき、その結果は歪んでいる(skewed)か、または不確定であり得る。未分離集団とは、明確に区別できない細胞集団である。事象データの分析例を以下に記載する。
【0050】
ステップ303において、血液分析結果、すなわち血液サンプルの血液分析を行なうことによって生成された結果は、たとえば永続記憶デバイス206などに保存される。保存された血液分析結果は、好ましくはサンプル識別、テストのタイプ、および細胞集団のタイプなどの基準に基づいて、アクセス可能であるべきである。データマネージャ216を用いて血液分析結果が保存されてもよい。上述のとおり、データマネージャ216は、データを所定の基準に従って保存および索引付けできるようにするデータベース管理システムを含んでもよく、それによって血液サンプルの全データまたはその部分が効率的に検索されてアクセスされ得る。
【0051】
ステップ304において、血液分析器102で分析された第1のアリコートと同じ血液サンプルからの第2のアリコートがフローサイトメータ101に導入される。サンプルを血液分析器102に導入するステップに関して上述したとおり、サンプルの第2のアリコートは、手作業で、またはたとえばサンプルディスペンサ105などの自動サンプルディスペンサを用いて、フローサイトメータ101に導入されてもよい。さらに、上述のとおり、第2のアリコートをフローサイトメータ101に導入する前に、第2のアリコートはフローサイトメトリ分析のために適切に調製されているべきである。調製要求は、実行されるべきテストのタイプに依存して、サンプルへの1つまたはそれ以上の染料または蛍光色素の導入、溶解プロセス、およびインキュベーションプロセスを含んでもよい。血液分析器102への導入のためのサンプルの調製と同様に、調製プロセスは手作業の処理および自動化された処理を含んでもよい。
【0052】
ステップ304は、フローサイトメータ101内での細胞サンプルの第2のアリコートの測定を含む。いくつかの実施形態において、各アリコートは、そのアリコートに関連付けられたバーコードに基づいてフローサイトメータ101に導入されるため、そのアリコートの測定の前にテスト要求を調べて、その特定のテストに対して必要とされるあらゆる構成調整をフローサイトメータ101に行なうことができる。他の実施形態において、サンプルのアリコートは、実行されるテストのタイプに従って順序付けられてフローサイトメータ101に導入されてもよく、それによってフローサイトメータ101に対する構成調整が最小化されるか、および/またはあらゆるこうした調整は必要なときにのみ手作業で行なわれてもよい。
【0053】
フローサイトメータ101内で細胞サンプルを調べるプロセスは、当該技術分野において一般的に周知である。蛍光色素の組と混合された細胞サンプルが測定領域を流れる際に、電気センサおよび/または光学センサを用いて、たとえば関連プロファイルに指定されるとおりに実行されるテストに対して要求される測定のタイプなど、さまざまなテスト要求に基づいてサンプルを調べる。電気インピーダンス、VCS、さまざまな波長の光の散乱の検出を用いる技術などの調査技術の例を上述している。その調査に応答して生成される電気信号および/または光学信号は、次いで対応するデータに変換される。たとえば信号の異常の影響を排除および/または低減することなどによって、データを予め処理してその精度を高めてもよい。
【0054】
フローサイトメータ101によって生成されたデータは、次いでさまざまなテスト要求に従って分析を受ける。たとえば、サンプルに対して実行されるテストに関連するプロファイルは、同定されるべき1つまたはそれ以上の細胞集団に対する散乱プロット上の位置境界などの要求を指定するルールを含んでもよい。データの分析は、フローサイトメータ101の中または外で行なわれてもよい。たとえば、フローサイトメータ101からのデータの分析は、データ処理デバイス103中のフローサイトメータデータ処理モジュール201を用いて行なわれてもよい。フローサイトメータ分析から生成される事象データは、一般的に細胞カウントおよび/または集団を定めるために分析される。特定の測定および分析方法は、行なわれるテストの要求によって異なる。フローサイトメトリ分析によって生成された事象データの例示的な分析を以下に記載する。
【0055】
ステップ305において、フローサイトメータ101からのデータが分析される際に、所定の基準に基づいて1つまたはそれ以上のフラグが立てられてもよい。フラグは、1つの処理モジュールまたは構成要素から別の処理モジュールまたは構成要素へ情報を通信するために用いられてもよい。フラグは、たとえばソフトウェア生成メッセージ、ハードウェア信号、またはメモリもしくはファイルに書込まれた値などの1つまたはそれ以上の手段において実現されてもよい。たとえば、フローサイトメータからのデータのみを使用して決定的に分離できない細胞集団が、1つまたはそれ以上のこうしたフラグの生成をもたらし得る。実施形態の1つにおいて、フローサイトメトリ結果の分析において、予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールを用いて、フラグを生成する未分離の集団を識別したり、こうした未分離の集団を分離できる手段を識別したりしてもよい。フローサイトメトリ結果のみを使用して細胞集団を決定的に分離できない例を、図5〜6に関連して以下に記載する。
【0056】
ステップ305において1つまたはそれ以上のフラグが立てられていれば、次いでステップ306において、前記1つまたはそれ以上のフラグに応答するために必要なデータを得るために、保存された血液分析結果が自動的にアクセスされる。実施形態の1つにおいて、各未分離細胞集団およびその他の関連血液サンプル基準を、1つまたはそれ以上の予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールに照合して、血液分析結果から必要とされるデータを決定してもよい。次いで、たとえばデータマネージャ216のサービスなどを用いて、同じサンプルに対する血液分析結果を検索して、1つまたはそれ以上の未分離細胞集団を分離するために必要なあらゆる情報を定める。
【0057】
次いでステップ307において、ステップ306でアクセスされた血液分析結果を用いて、ステップ304におけるフローサイトメトリ分析で定められた1つまたはそれ以上の未分離細胞集団を分離する。対応する血液分析結果の調査および分析は、たとえば細胞サンプルの特徴、実行されるテスト、および未分離集団などの1つまたはそれ以上の基準に基づいて検索される、予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールに支援されてもよい。実施形態の1つにおいて、ステップ307に含まれる処理は機器間分析処理モジュール203において行なわれてもよく、ステップ304〜306に含まれる処理はフローサイトメータデータ処理モジュール201、データマネージャ216、および機器間分析処理モジュール203によって行なわれてもよい。
【0058】
ステップ308において、結果データが報告されてもよい。たとえば、報告はディスプレイまたはその他の出力デバイス、たとえばユーザインタフェース104などに対するものであってもよい。報告される1つまたは複数の結果データは、血液分析結果、フローサイトメトリ結果、および/またはあらゆる組み合わされた結果を含んでもよい。ステップ308は、フローサイトメトリ結果および/または組み合わされた結果をたとえば永続記憶デバイス206などの永続記憶デバイスにセーブすることも含んでもよい。実施形態の1つにおいて、ステップ308に含まれる処理は、出力モジュール209およびデータマネージャ216によって行なわれてもよい。
【0059】
ステップ305において、フローサイトメトリ分析が、対応する血液分析結果の検索を必要とするフラグを生成しなかったと判断されるとき、処理は直接ステップ308に進む。
【0060】
図4は、本発明の実施形態の1つに従う、ステップ307における処理のより細かい図を提供するものである。ステップ401において、たとえばフローサイトメトリ結果を実行されるテストの予めプログラムされたプロファイルに照合することなどによって、あらゆる未分離集団の特徴が定められてもよい。プロファイルおよび/またはプロファイルに関連するルールは、未分離細胞集団および/または血液分析結果を用いたさらなる分離を必要とするあらゆるその他の細胞集団を検出できる。たとえば、テストの各タイプは、データマネージャ216を用いてアクセス可能な永続記憶デバイス206に保存された1つまたはそれ以上の予めプログラムされたプロファイルを有してもよい。プロファイルおよび/またはプロファイルに関連するルールは、たとえば散乱グラフ上の細胞事象データの位置に基づいて、予想される細胞集団の特徴を指定できる。たとえば、テストAに対する予めプログラムされたプロファイルは、散乱プロットの範囲1に現れるあらゆる細胞事象がタイプAの細胞であり、範囲2のあらゆる細胞がタイプBの細胞であるなどと指定できる。プロファイルに関連するルールは、範囲3に現れる細胞事象の10%より多くと、特定の他の基準とが適合されるときに、範囲3の細胞集団は未分離であって、対応する血液サンプルに対する血液分析結果を用いたさらなる分析が必要であると指定できる。
【0061】
ステップ402において、未分離集団を分離するための1つまたはそれ以上の予めプログラムされたルールが決定される。たとえば、実行されるテストのタイプに関連するプロファイルは関連するルールを有してもよく、たとえば分散グラフ上の対応する事象位置など、未分離細胞集団の特徴に基づいて、適用可能なルールが決定されてもよい。こうしたルールの1つは、対応する血液分析結果から特定のテストに対応するデータを検索するべきであることを指定してもよい。
【0062】
ステップ403において、テストのタイプおよび/またはより細かい特徴、たとえば調べられる特定のテスト結果などに基づいて、対応する血液分析結果が得られる。必要な血液分析結果が見つからないとき、ステップ401で定められた未分離集団は未分離のままとなる(その後未分離であると報告されてもよい)。
【0063】
細胞集団を分離するために必要な血液分析結果が捜し出されれば、次いでステップ404においてそれらの血液分析結果を分析して、フローサイトメトリデータにおける特定の未分離集団をどのように分離すべきかを定める。たとえば、予めプログラムされたルールは、対応する血液分析結果が指定された特徴を有するプロファイルに適合すれば、その未分離集団は特定の態様で分離されるべきであるということを指定してもよい。したがってステップ404においては、フローサイトメトリ結果における未分離集団が、対応する血液分析結果を用いて分離される。
【0064】
当業者には明らかであるはずだが、プロセス300は、Flow−H 100における血液サンプルまたはその他の身体的サンプルのバッチモード処理に用いられるように適合され得る。プロセス300は、(記載のとおり)フローサイトメトリデータをリアルタイムで分離するか、またはこうした未分離細胞集団をフローサイトメトリ分析の完了後の処理後ステップにおいて分離するように適合されてもよい。第1の場合には、フローサイトメトリ分析が実行されているときに血液分析結果が必要とされる。第2の場合には、血液分析結果およびフローサイトメトリ結果の生成の順序は確定的ではないだろう。他の実施形態においては、特定の細胞集団を分離するために付加的な結果が必要とされるということをデータ処理モジュール103が決定するときに、付加的なテストが自動的に始動されるようにプロセス300が適合されてもよい。たとえば、実施形態の1つにおいては、対応するサンプルのフローサイトメトリ分析が決定的に判断できない細胞集団を含むときにのみ、サンプルの血液分析が始動されてもよい。
【実施例】
【0065】
(実施形態の例)
骨髄芽球は血中の最も未熟な顆粒球細胞であって、典型的に骨髄に見出される。急性白血病などのいくつかの疾患の診断および処置において、芽球細胞の列挙、特に骨髄芽球の列挙は重要である。自動血液分析器、たとえばBeckman Coulterにより製造されるCOULTER(登録商標)LH700シリーズ、またはSysmexにより製造されるXE−2100などは、骨髄芽球列挙の能力を有さない。分析中のサンプルに骨髄芽球が存在する可能性があることが見出されるとき、たとえばCOULTER(登録商標)LH700およびXE−2100などの従来の血液分析器は、骨髄芽球が存在する可能性があることをユーザに示すメッセージを表示するだけである。その後、サンプル中の骨髄芽球の存在を確認または否定するために、実験室の技術者が、骨髄芽球の存在の可能性を示す表示メッセージをもたらしたサンプルの各々を手作業で分析してもよい。
【0066】
Beckman Coulterにより製造されるFC 500TM、またはBecton Dickinsonにより製造されるFACSCantoTMなどのフローサイトメトリ機器は、CD45などの抗体および側方散乱を用いて骨髄芽球を列挙できる。骨髄芽球は通常、リンパ球または単球と類似の側方散乱値を有し、好中球と類似の、またはそれより低いCD45発現を有する。図5は、フローサイトメータで分析された骨髄芽球陽性サンプルの散乱プロットを示し、骨髄芽球502、好中球504、単球506、およびリンパ球508の集団が示されている。
【0067】
しかし、サンプルがプラズマ細胞を含んでいれば、側方散乱およびCD45を用いた骨髄芽球列挙のフローサイトメトリ法は誤って上昇する可能性がある。なぜならプラズマ細胞は散乱プロットにおいて芽球細胞と同じ位置に現れるからである。プラズマ細胞は抗体を生成する白血球であり、骨髄芽球とは異なる生物学的意義を有する。図6は、フローサイトメータで分析されたプラズマ細胞陽性サンプルの散乱プロットを示し、プラズマ細胞602、好中球604、単球606、およびリンパ球608の集団が示されている。骨髄芽球502の位置はプラズマ細胞602の位置と実質的に重なり合うことが分かる。
【0068】
自動血液分析器は骨髄芽球を列挙することはできないが、分析したサンプル中の骨髄芽球および/またはプラズマ細胞の存在を示すパターンを生成する。骨髄芽球および/またはプラズマ細胞を示すこうしたパターンの例を、図7〜図8に示す。図7は血液分析データからの骨髄芽球陽性サンプルの散乱プロットを示し、図8は血液分析データからのプラズマ細胞陽性サンプルの散乱プロットを示す。図7の骨髄芽球陽性サンプルにおいて、好中球集団分布704は体積(V)方向に実質的に伸びているのに対し、リンパ球集団702は実質的に伸びていない。図8のプラズマ細胞陽性サンプルにおいて、リンパ球集団分布802は体積(V)方向に実質的に伸びているのに対し、好中球集団804は実質的に伸びていない。
【0069】
したがって実施形態の1つにおいて、本発明は、フローサイトメトリデータにおいて骨髄芽球またはプラズマ細胞のいずれかであり得る(図5〜図6に示されるような)集団を検出したときに、対応する血液分析データを自動的に検索して、好中球集団とリンパ球集団との特徴を定める。好中球集団分布が体積方向に実質的に伸びておりかつリンパ球集団が実質的に伸びていなければ、フローサイトメトリデータの未分離集団は骨髄芽球と定められる。リンパ球集団が実質的に伸びておりかつ好中球集団が体積方向に実質的に伸びていなければ、フローサイトメトリデータの未分離集団はプラズマ細胞と定められる。
【0070】
たとえば、血液サンプルを分析するときに、ステップ302および303においてFlow−H 100は分析を行ない、図7または図8に示されるものなどの血液分析結果を保存してもよい。ステップ304〜305において対応するサンプルを分析するとき、Flow−H 100は、図5および図6に示されるとおり、骨髄芽球またはプラズマ細胞が現れる位置に集団を検出して、未分離集団を示すためのフラグを生成し得る。ステップ306〜307において、Flow−H 100は前に保存した血液分析データにアクセスして、リンパ球集団分布および/または好中球集団分布の1つまたはそれ以上の特徴を定める。たとえば、集団分布の標準偏差などの特徴を閾値と比較することで、その分布が体積方向に伸びているかどうかを示すことができる。Flow−H 100は、この例における骨髄芽球などの未分離集団を有する散乱プロットへのフローサイトメトリデータのアルゴリズム的照合を可能にする予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールを有してもよい。予めプログラムされたプロファイルおよび/またはルールは、未分離集団を分離するために必要なデータのタイプも指定してもよく、たとえばこの例においては、血液分析データのリンパ球および/または好中球の特徴が必要であることを指定してもよい。
【0071】
図9〜図14に関連して、別の実施形態の例を示す。いくつかの適用においては、白血球中の未熟顆粒球、好酸球および好中球の集団を区別することが重要である。血中の未熟顆粒球の存在は、一般的に骨髄活性の異常を検出するために有用である。未熟顆粒球は、白血病の特定の段階の検出にも有用である。好酸球および/または好中球集団の上昇または減少は、その他の疾患を示し得る。たとえば、好酸球は一般的にアレルギー反応を示し、好中球は細菌感染を示し得る。図9および図10はそれぞれ、フローサイトメータを用いて生成された、未熟顆粒球を有するWBCサンプルの散乱プロット900および1000を示す。散乱プロット900はサンプルとともに抗体CD45を用いたときの側方散乱を示し、散乱プロット1000は同じサンプルとともに抗体CD16を用いたときの側方散乱を示す。散乱プロット900および1000に示されるとおり、フローサイトメータによって生成された結果は、未熟顆粒球と好酸球とを区別するために十分ではない。たとえば、集団901は好中球、好酸球および未熟顆粒球の1つまたはそれ以上の集団を含み得る。集団1001は好酸球または未熟顆粒球のいずれかの集団を含み得る。しかし、同じサンプルを血液分析にかけると、結果として得られる散乱プロットのサインパターンに基づいて明確な未熟顆粒球集団を同定できる。たとえば、図11の散乱プロット1100は、未熟顆粒球を有する同じサンプルに対する血液分析器からの体積測定値と光散乱(回転光散乱)とをプロットしている。集団1101は未熟顆粒球を明確に同定する。
【0072】
図12〜図13は、フローサイトメータを用いて好酸球陽性血液サンプル(上昇した好酸球レベルを有する血液サンプル)を分析したときの散乱プロット1200および1300を示す。散乱プロット1200はサンプルとともに抗体CD45を用いたときの側方散乱を示し、散乱プロット1300は同じサンプルとともに抗体CD16を用いたときの側方散乱を示す。散乱プロット1200および1300に示されるとおり、フローサイトメータによって生成された結果は、未熟顆粒球と好酸球とを区別するために十分ではない。たとえば、集団1201は(上記の集団901の場合と同様に)好中球、好酸球および未熟顆粒球の1つまたはそれ以上の集団を含み得る。集団1301は(上記の集団1101の場合と同様に)好酸球または未熟顆粒球のいずれかの集団を含み得る。しかし、同じサンプルを血液分析にかけると、結果として得られる散乱プロットのサインパターンに基づいて明確な好酸球集団を同定できる。たとえば、図14の散乱プロット1400は、同じ好酸球陽性血液サンプルに対する血液分析器からの体積測定値と光散乱(特に、回転光散乱)とをプロットしている。集団1401は好酸球集団を明確に同定する。骨髄芽球の例に関して上述したとおり、Flow−H 100は、フローサイトメトリ分析が901、1001、1201または1301などの集団を得たときに、血液分析結果を自動的に用いて(たとえば散乱プロット1100および1400に示されるとおりに)集団を分離するように構成されてもよい。
【0073】
本開示においては、血液分析器およびフローサイトメータなどの異なる粒子分析器の能力および機能を組み合わせることによって、血液サンプル分析を含む粒子分析の効率および精度を改善できる方法およびシステムが開示される。開示される方法およびシステムは、現行の方法およびシステムを超えるかなりの改善をもたらす。本明細書に開示される技術は、いくつかの生物学的または産業的粒子に適用でき、さらに電気的、光学的または音響的媒体を用いたいくつかの検出方法にも適用できることを当業者は理解する。
【0074】
本発明の前述の記載は例示および説明の目的のために提供されたものである。前述の記載は網羅的であることも、本発明を開示された正確な形に限定することも意図されておらず、上記の教示に照らしてその他の修正および変更が可能であってもよい。実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用を最もよく説明することによって、他の当業者が、予期される特定の使用に好適であるようなさまざまな実施形態およびさまざまな修正形において本発明を最もよく利用することを可能にするために選択され記載されたものである。添付の請求項は、先行技術によって限定されない限り、本発明のその他の代替的な実施形態を含むように解釈されることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞懸濁物サンプルを分析する方法であって、
(a)第1のデータを受取るステップであって、前記第1のデータは、蛍光測定デバイスを有する第1の粒子分析器における前記サンプルの第1のアリコートの分析によって生成される、ステップと、
(b)前記第1のデータにおける少なくとも1つの未分離細胞集団を検出するステップと、
(c)記憶デバイスに保存された第2のデータにアクセスするステップであって、前記第2のデータは、第2の粒子分析器における細胞体積測定デバイス、光散乱測定デバイス、および細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて、前記サンプルの第2のアリコートを調べることによって予め生成されている、ステップと、
(d)前記第2のデータを用いて、前記第1のデータにおける前記少なくとも1つの未分離細胞集団を分離するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
細胞懸濁物サンプルを分析する方法であって、
(a)蛍光測定デバイスを有する第1の粒子分析器における第1の分析のために前記サンプルの第1のアリコートを調製するステップと、
(b)前記蛍光測定デバイスを用いて前記第1のアリコートを調べて第1のデータを生成するステップと、
(c)記憶デバイスに保存された第2のデータにアクセスするステップであって、前記第2のデータは、第2の粒子分析器における細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて前記サンプルの第2のアリコートを調べることによって予め生成されている、ステップと、
(d)前記第2のデータを用いて前記第1のデータにおける未分離細胞集団を分離して、分離細胞データを生成するステップと、
(e)前記分離細胞データを報告するステップ
を含む、方法。
【請求項3】
ステップ(d)は、
前記第2のデータを解析して少なくとも1つの所定の条件の存在を検出するステップと、
前記第2のデータにおける前記少なくとも1つの所定の条件の前記存在に基づいて、前記未分離細胞集団を定めるステップ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の条件は設定可能である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)、(d)および(e)はフローサイトメトリ分析中に起こる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
(f)コンピュータを用いて前記第1の分析中に前記未分離細胞集団を検出するステップをさらに含み、前記第2のデータに前記アクセスするステップはリアルタイムである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の粒子分析器はフローサイトメータである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の粒子分析器は血液分析器である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞懸濁物サンプルは血液サンプルである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記未分離細胞集団は、骨髄芽球細胞集団またはプラズマ細胞集団である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記未分離細胞集団は、T芽球細胞集団または好塩基球細胞集団である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記未分離細胞集団は、好酸球細胞集団または未熟顆粒球細胞集団である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
細胞懸濁物サンプルの分析のためのシステムであって、
前記サンプルの第1のアリコートを入力として受取り、蛍光測定デバイスを用いて第1のデータを生成するように構成された第1の粒子分析器と、
前記サンプルの第2のアリコートを入力として受取り、細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて第2のデータを生成するように構成された第2の粒子分析器と、
前記第2の粒子分析器から前記第2のデータを受取るように構成された記憶デバイスと、
前記第1のデータおよび前記第2のデータを受取って分離細胞分布を生成するように構成されたコンピュータであって、前記第1のデータは、前記第1のデータのみに基づいて分離できない少なくとも1つの細胞集団を含み、前記コンピュータは前記第1の粒子分析器および前記記憶デバイスにつながれている、コンピュータ、
を含む、システム。
【請求項14】
前記コンピュータから前記分離細胞分布を受取るように構成された報告デバイスをさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の粒子分析器および前記第2の粒子分析器は互いに独立しており、前記第1の粒子分析器および前記第2の粒子分析器は細胞懸濁物サンプルを同時に分析できる、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の粒子分析器はフローサイトメータであり、前記第2の粒子分析器は血液分析器である、請求項13に記載のシステム。
【請求項1】
細胞懸濁物サンプルを分析する方法であって、
(a)第1のデータを受取るステップであって、前記第1のデータは、蛍光測定デバイスを有する第1の粒子分析器における前記サンプルの第1のアリコートの分析によって生成される、ステップと、
(b)前記第1のデータにおける少なくとも1つの未分離細胞集団を検出するステップと、
(c)記憶デバイスに保存された第2のデータにアクセスするステップであって、前記第2のデータは、第2の粒子分析器における細胞体積測定デバイス、光散乱測定デバイス、および細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて、前記サンプルの第2のアリコートを調べることによって予め生成されている、ステップと、
(d)前記第2のデータを用いて、前記第1のデータにおける前記少なくとも1つの未分離細胞集団を分離するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
細胞懸濁物サンプルを分析する方法であって、
(a)蛍光測定デバイスを有する第1の粒子分析器における第1の分析のために前記サンプルの第1のアリコートを調製するステップと、
(b)前記蛍光測定デバイスを用いて前記第1のアリコートを調べて第1のデータを生成するステップと、
(c)記憶デバイスに保存された第2のデータにアクセスするステップであって、前記第2のデータは、第2の粒子分析器における細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて前記サンプルの第2のアリコートを調べることによって予め生成されている、ステップと、
(d)前記第2のデータを用いて前記第1のデータにおける未分離細胞集団を分離して、分離細胞データを生成するステップと、
(e)前記分離細胞データを報告するステップ
を含む、方法。
【請求項3】
ステップ(d)は、
前記第2のデータを解析して少なくとも1つの所定の条件の存在を検出するステップと、
前記第2のデータにおける前記少なくとも1つの所定の条件の前記存在に基づいて、前記未分離細胞集団を定めるステップ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の条件は設定可能である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)、(d)および(e)はフローサイトメトリ分析中に起こる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
(f)コンピュータを用いて前記第1の分析中に前記未分離細胞集団を検出するステップをさらに含み、前記第2のデータに前記アクセスするステップはリアルタイムである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の粒子分析器はフローサイトメータである、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の粒子分析器は血液分析器である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞懸濁物サンプルは血液サンプルである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記未分離細胞集団は、骨髄芽球細胞集団またはプラズマ細胞集団である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記未分離細胞集団は、T芽球細胞集団または好塩基球細胞集団である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記未分離細胞集団は、好酸球細胞集団または未熟顆粒球細胞集団である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
細胞懸濁物サンプルの分析のためのシステムであって、
前記サンプルの第1のアリコートを入力として受取り、蛍光測定デバイスを用いて第1のデータを生成するように構成された第1の粒子分析器と、
前記サンプルの第2のアリコートを入力として受取り、細胞体積測定デバイスおよび細胞導電率測定デバイスの少なくとも1つを用いて第2のデータを生成するように構成された第2の粒子分析器と、
前記第2の粒子分析器から前記第2のデータを受取るように構成された記憶デバイスと、
前記第1のデータおよび前記第2のデータを受取って分離細胞分布を生成するように構成されたコンピュータであって、前記第1のデータは、前記第1のデータのみに基づいて分離できない少なくとも1つの細胞集団を含み、前記コンピュータは前記第1の粒子分析器および前記記憶デバイスにつながれている、コンピュータ、
を含む、システム。
【請求項14】
前記コンピュータから前記分離細胞分布を受取るように構成された報告デバイスをさらに含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の粒子分析器および前記第2の粒子分析器は互いに独立しており、前記第1の粒子分析器および前記第2の粒子分析器は細胞懸濁物サンプルを同時に分析できる、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の粒子分析器はフローサイトメータであり、前記第2の粒子分析器は血液分析器である、請求項13に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−519848(P2012−519848A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552985(P2011−552985)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025247
【国際公開番号】WO2010/101751
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025247
【国際公開番号】WO2010/101751
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】
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