説明

組成物およびそれからなる組成物シート

【課題】ダイシングなどの工程を行うことができ、接着力が大きく、さらには硬化物をレジスト剥離液であるアセトンに浸漬してもクラックを生じない組成物を得ること。
【解決手段】ポリイミドおよび式(1)で表されるエポキシ化合物を含む組成物。
【化1】


(式中、Rは芳香環を含む炭素数6以上50以下の2価の有機基であり、Rは炭素数2以上5000以下の2価の有機基である。mおよびnはそれぞれ独立に1以上50以下の整数であり、lは0以上20以下の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子工業に用いられる組成物に関する。特に、導電体配線の形成された基板上に形成され、他の導電体配線の形成された基板と貼り合わせるのに用いる接着用の組成物およびそれからなる組成物シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の回路基板の小型化・高密度化の要求に伴い、導電体配線などのパターン加工・形成がなされた基板上に半導体用接着組成物を形成し、それを別途作製した基材上に接着する方法が考案されている。この際に用いる半導体用接着組成物として、有機溶剤可溶性ポリイミド、エポキシ化合物、硬化促進剤からなる組成物が提案されている(特許文献1参照)。このような半導体用接着組成物は、導電体配線などのパターン加工・形成がなされた基板へのラミネート性が良好であり、ダイシング時の汚染や欠損がなく、アライメントが容易であり、さらに別途作製した他の基板に接着した際の接着力が大きい組成物である。
【0003】
また、接着用の組成物として有用なエポキシ化合物が提案されている。柔軟強靭性、耐熱性、密着性、耐湿性を改善した硬化物を得ることができるエポキシ化合物が提案されている(特許文献2および3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2006/132165号(請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−156024号(請求項)
【特許文献3】特開2006−335796号(請求項)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の組成物では、導電体配線の形成された基板上に形成し、ダイシングなどの工程を行うことができることと、組成物の硬化物の耐有機溶剤性とを両立させることが困難であるという課題があった。本発明は、導電体配線が形成された基板に形成し、ダイシングなどの工程を行うことができ、接着力が大きく、さらにはパターン加工を行うために用いるレジストを剥離する液として用いられるアセトンに浸漬してもクラックが生じない耐有機溶剤性が強い組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、ポリイミドおよび式(1)で表されるエポキシ化合物を含む組成物である。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは芳香環を含む炭素数6以上50以下の2価の有機基であり、Rは炭素数2以上5000以下の2価の有機基である。mおよびnはそれぞれ独立に1以上50以下の整数であり、lは0以上20以下の整数である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電体配線が形成された基板に形成し、ダイシングなどの工程を行うことができ、接着力が大きく、さらにはパターン加工を行うために用いるレジストを剥離する液であるアセトンに浸漬してもクラックを生じない組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いられるポリイミドは、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミド酸を、150℃以上の温度に加熱してイミド閉環を行って得ることができる。本発明に用いられるポリイミドは、有機溶剤に可溶なポリイミドであることが好ましい。有機溶剤に可溶なポリイミドとは、以下より選ばれる溶剤の少なくとも一種に23℃で20重量%以上溶解することを意味する。ケトン系溶剤のアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エーテル系溶剤の1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、グリコールエーテル系溶剤のメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エステル系溶剤として、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、その他、トルエン、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドである。
【0011】
本発明に用いられるポリイミドを前述した有機溶剤に可溶とするためには。シロキサン構造を含むポリイミド、脂肪族構造を含むポリイミド、脂環族構造を含むポリイミド、または主鎖にビス(トリフルオロメチル)メチレン基、ジメチルメチレン基、エーテル基、チオエーテル基および/またはスルホン基を有するポリイミドとすることが好ましい。
【0012】
また、ポリイミドの側鎖および/または末端に、エポキシ基と反応可能な官能基を少なくとも一つ有するものを用いても良い。熱処理時にエポキシ化合物の開環、ポリイミドへの付加反応が促進され、密度の高い網目構造を有する組成物を得ることができる。エポキシ基と反応可能な官能基としては、フェノール性水酸基、チオール基、カルボン酸、ジカルボン酸無水物、アミノ基が挙げられる。
【0013】
上記のような構造または官能基を有するポリイミドを得るためには、これらの構造を有するジアミンおよび/またはテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0014】
シロキサン構造を含むジアミンとしては、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどが挙げられる。脂肪族構造を含むジアミン成分としては、1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ジアミノドデカンなどが挙げられる。脂環族構造を含むジアミン成分としては、1,4−ジアミノシクロヘキサンなどが挙げられる。主鎖にビス(トリフルオロメチル)メチレン基、ジメチルメチレン基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基を有するジアミン成分としては、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、あるいはこれら芳香族環にアルキル基やハロゲン原子が置換した化合物などが挙げられる。
【0015】
また、主鎖にビス(トリフルオロメチル)メチレン基、ジメチルメチレン基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基を有し、さらにエポキシ基と反応可能な官能基を有するジアミン成分としては、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどが挙げられる。これらのジアミンは、単独または2種以上の組み合わせで用いられる。
【0016】
これらのジアミンを全ジアミン成分に対して、60モル%以上用いることが有機溶媒への溶解性の観点から好ましい。より好ましくは80モル%以上である。他に用いることができるジアミンとしては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロ)メチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ビス(トリフルオロ)メチルビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニルなどが挙げられる。
【0017】
主鎖にビス(トリフルオロメチル)メチレン基、ジメチルメチレン基、エーテル基、チオエーテル基および/またはスルホン基を有するテトラカルボン酸二無水物成分としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。脂肪族を含むテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートなどが挙げられる。脂環族を含むテトラカルボン酸二無水物としては、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンなどが挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独または2種以上の組み合わせで用いられる。
【0018】
これらのテトラカルボン酸二無水物を全テトラカルボン酸二無水物成分に対して、60モル%以上用いることが有機溶媒への溶解性の観点から好ましい。より好ましくは80モル%以上である。他に用いることができるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0019】
ポリイミドの重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレン換算で4000以上200000以下であることが好ましく、より好ましくは8000以上100000以下である。重量平均分子量を4000以上とすることで粘度が大きくなり厚膜塗布を可能とし、重量平均分子量を200000以下とすることで有機溶剤への溶解性を向上することができる。重量平均分子量を4000以上200000以下とするためには、ポリイミド重合時の全ジアミンと全テトラカルボン酸二無水物とのモル比を調整すればよい。具体的には、全ジアミン成分と全テトラカルボン酸二無水物成分とのモル比は、全ジアミン成分100に対して、全テトラカルボン酸二無水物成分が85以上99以下であること、または、全ジアミン成分100に対して、全テトラカルボン酸二無水物成分が101以上115以下であることが好ましい。ジアミン成分を過剰にすると末端がエポキシと反応可能な官能基であるアミノ基になり、テトラカルボン酸二無水物を過剰にすると末端がエポキシと反応可能な官能基であるカルボン酸無水物になる。
【0020】
全ジアミン成分100に対して、全テトラカルボン酸二無水物成分が85以上99以下、ジカルボン酸無水物が2以上30以下であることも好ましい。ジカルボン酸無水物は、末端封止剤として利用される。具体的には、3−ヒドロキシフタル酸無水物、4−ヒドロキシフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、フタル酸無水物、マレイン酸無水物などが挙げられる。
【0021】
全ジアミン成分100に対して、全テトラカルボン酸二無水物成分が101以上115以下、モノアミン成分が2以上30以下であることも好ましい、モノアミン成分は、末端封止剤として利用される。具体的には、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、アニリンなどが挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる式(1)で表されるエポキシ化合物について説明する。以下、式(1)で表されるエポキシ化合物を「エポキシ化合物A」と呼ぶ。
【0023】
【化2】

【0024】
式中、Rは芳香環を含む炭素数6以上50以下の2価の有機基であり、Rは炭素数2以上5000以下の2価の有機基である。mおよびnはそれぞれ独立に1以上50以下の整数であり、lは0以上10以下の整数である。
【0025】
エポキシ化合物Aは硬化物の柔軟性、強靭性、耐熱性、密着性および耐湿性を改善することができる。
【0026】
本発明において、ポリイミドとエポキシ化合物Aを含む組成物を用いることにより、導電体配線などのパターンが加工・形成された基板に形成することができ、基板をダイシング等の手段により切断することができ、別途作製した基板との接着のためのアライメントをとることができ、加熱圧着後、高い接着力で接着することができる。また、本発明の組成物を硬化させたものは絶縁材、絶縁層としても用いることもできる。さらには、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶剤中に浸漬しても、クラックが生じない耐有機溶剤性の硬化物を得ることができる。
【0027】
の好ましい例としては置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、置換基を有していてもよいビスフェノール構造、置換基を有していてもよいビフェニル構造を含む構造などがあげられる。中でも、Rが式(3)または式(4)で表されるビスフェノールA構造またはビスフェノールF構造であることが、硬化物の柔軟性と強靭性のバランスが優れる点で好ましい。
【0028】
【化3】

【0029】
式(1)においてRは、炭素数2以上5000以下の2価の有機基であり、好ましくは炭素数6以上200以下の2価の有機基であり、より好ましくは炭素数6以上60以下である。また、Rは脂肪族基を含む構造であることが好ましく、式(5)または式(6)のいずれかで表される構造であることが硬化物の柔軟性と強靭性のバランスが優れる点で好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
式中、Rは式(7)で表される2価の有機基である。
【0032】
【化5】

【0033】
式中、pおよびqはそれぞれ独立に2以上100以下の整数であり、rは0以上50以下の整数である。
【0034】
rが0のときは、Rはアルキレン構造となり、qは2以上50以下であることがより好ましい。より好ましくは2以上10以下である。rが1以上50以下のときは、Rはポリアルキレングリコール構造となり、pおよびqは、2以上5以下であることがより好ましく、より好ましくは2以上3以下である。rは1以上10以下であることがより好ましく、より好ましくは1以上5以下である。
【0035】
また、mおよびnは独立に1以上50以下の整数であり、好ましくは1以上5以下の整数である。mおよびnに関し複数の種類の式(1)で表される化合物が含まれる場合は、mおよびnが1以上5以下の整数である化合物が最も多く含有されることが好ましい。lは、0以上20以下であり、好ましくは0以上5以下の整数であり、最も好ましくは0以上1以下である。lに関し複数の種類の式(1)で表される化合物が含まれる場合は、lが0以上1以下の整数である化合物が最も多く含有されることが好ましい。
【0036】
最も好ましい化合物の例を式(18)〜(29)に示す。
【0037】
【化6】

【0038】
kは、1以上50以下の整数であり、好ましくは1以上5以下の整数である。
【0039】
エポキシ化合物Aは、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどのアルカンジオール類、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール類、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリプロピレングリコール類の水酸基をジビニルエーテル化またはジグリシジル化し、これを芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させて得られるジヒドロキシ化合物をジグリシジル化することによって得られる(特許文献2および特許文献3参照)。また、エピクロンEXA−4850−150、エピクロンEXA−4850−1000、エピクロンEXA−4816、エピクロンEXA−4822(DIC株式会社製)として入手することができる。
【0040】
本発明の組成物は、式(2)で表されるエポキシ化合物を含んでいてもよい。以下、式(2)で表されるエポキシ化合物を「エポキシ化合物B」と呼ぶ。
【0041】
【化7】

【0042】
式中、Rは炭素数6以上1000以下の芳香環を含むo価の有機基であり、好ましくは炭素数6以上200以下である。oは3以上100以下の整数であり、好ましくは3以上20以下である。
【0043】
具体的には、化学式(8)〜(17)で表される3以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物があげられる。
【0044】
【化8】

【0045】
式中Rは水酸基または炭素数1〜10の有機基である。具体的には、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基などが挙げられる。uは0〜4である。各芳香環に含まれるu個のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、tは、2以上99以下であり、好ましくは2以上19以下である。
【0046】
エポキシ化合物Bを含むことにより、硬化物のガラス転移温度が上がり、硬化物の耐熱性に優れる。その結果として、熱をかけた状態での接着力の低下がおこらない。これらは、エピクロンN−665、N−680、N−690、N−695、N−740、N−770、N−775、N−865、N−890、HP−4700、EXA−4701、EXA−4710、HP−7200、430(以上、DIC株式会社製)、エピコートJER604、JER630、JER152、JER154、JER157S70、JER180S65、1032H60、(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、XD−1000、NC−3000、EPPN−500X、NC−7000L、EOCN−1020、FAE−2500(日本化薬株式会社製)、エポトートYDPN−638、YDCN−701、YDCN−702、YDCN−703、YDCN−704、YDCN−500、YH−434、YH−434H(東都化成株式会社製)、ESN−100、GK−3207(新日鐵化学株式会社製)などとして入手することができる。
【0047】
本発明の組成物は、エポキシ化合物Aおよびエポキシ化合物B以外のエポキシ化合物を含んでいてもよい。以下、これらのエポキシ化合物を「エポキシ化合物C」と呼ぶ。例えば、式(30)〜(32)で表されるエポキシ化合物などが挙げられる。
【0048】
【化9】

【0049】
これらのエポキシ化合物は、エピコートJER828、JER806(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、850S、EXA−850CRP、830S、EXA−830LVP、HP4032、HP4032D(DIC株式会社製)などとして入手することができる。また、後述のようにマイクロカプセル型潜在性硬化剤中に含まれている場合もある。
【0050】
次に本発明の組成物におけるこれらのエポキシ化合物の含有量について説明する。エポキシ化合物Aの含有量は、ポリイミド100重量部に対しエポキシ化合物Aが10重量部以上100重量部以下であることが好ましい。好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以下である。これにより、硬化物の耐溶剤性が向上する。また、好ましくは80重量部以下、より好ましくは60重量部以下である。これにより、熱がかかった状態での接着力が維持され、また基板のダイシングが容易になる。
【0051】
組成物中にエポキシ化合物Bを含む場合、エポキシ化合物Bの含有量は、ポリイミド100重量に対し、1重量部以上50重量部以下が好ましい。好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上である。これにより、硬化物の耐熱性が向上するため、高温における接着力が維持される。また好ましくは、40重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。これにより、耐有機溶剤性が向上する。
【0052】
さらに、組成物中にエポキシ化合物Cを含む場合、エポキシ化合物Cの含有量は、ポリイミド100重量部に対し、100重量部以下であることが好ましい。これにより高い耐溶剤性が確保される。
【0053】
本発明の組成物は、さらにエポキシ化合物の硬化剤および/または硬化触媒を含むことができる。例えば、アミン系化合物、酸無水物系、フェノール系化合物、アミド系化合物、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0054】
本発明においては、硬化剤および/または硬化触媒として潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0055】
本発明に用いられる潜在性硬化剤について説明する。潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド型潜在性硬化剤、アミンアダクト型潜在性硬化剤、有機酸ヒドラジド型潜在性硬化剤、芳香族スルホニウム塩型潜在性硬化剤、マイクロカプセル型潜在性硬化剤、光硬化型潜在性硬化剤が挙げられる。ジシアンジアミド型潜在性硬化剤としては、DICY7、DICY15、DICY50(ジャパンエポキシレジン(株)製)、アミキュアAH−154、アミキュアAH−162(味の素ファインテクノ(株)製)などが挙げられる。アミンアダクト型潜在性硬化剤としては、アミキュアPN−23、アミキュアPN−40、アミキュアMY−24、アミキュアMY−H(味の素ファインテクノ(株)製)、フジキュアFXR−1030(富士化成(株)製)などが挙げられる。有機酸ヒドラジド型潜在性硬化剤としては、アミキュアVDH、アミキュアUDH(味の素ファインテクノ(株)製)などが挙げられる。芳香族スルホニウム塩型潜在性硬化剤としては、芳香族スルホニウム塩としては、サンエイドSI100、サンエイドSI150、サンエイドSI180(三新化学工業(株)製)などが挙げられる。マイクロカプセル型潜在性硬化剤としては、上記の各硬化促進剤をビニル化合物、ウレア化合物、熱可塑性樹脂でカプセル化したものが挙げられる。中でも、アミンアダクト型潜在性硬化剤をイソシアネートで処理したマイクロカプセル型潜在性硬化剤としてはノバキュアHX−3941HP、ノバキュアHXA3922HP、ノバキュアHXA3932HP、ノバキュアHXA3042HP(旭化成イーマテリアルズ(株)製)などが挙げられる。また、光硬化型潜在性硬化剤としては、オプトマーSP、オプトマーCP((株)ADEKA製)などが挙げられる。その中でも、マイクロカプセル型潜在性硬化剤が好ましく用いられ、特にアミンアダクト型潜在性硬化剤をイソシアネートで処理したマイクロカプセル型潜在性硬化剤が最も好ましく用いられる。
【0056】
潜在性硬化剤がアミンアダクト型潜在性硬化剤をイソシアネートで処理したマイクロカプセル型潜在性硬化剤である場合について説明する。マイクロカプセル型潜在性硬化剤は、マイクロカプセルが液状エポキシ樹脂に分散されていることが好ましい。マイクロカプセルと液状エポキシ樹脂との重量比は、マイクロカプセル100重量部に対して、100重量部以上500重量部である。例えば、ノバキュア(商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)を使用した場合は、マイクロカプセル100重量部に対して、式(30)〜(32)から選ばれるエポキシ化合物Cが200重量部である。したがって、潜在性硬化剤として、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いる場合には、マイクロカプセル型潜在性硬化剤中に潜在性硬化剤と式(30)〜(32)から選ばれるエポキシ化合物Cを含むことになる。
【0057】
潜在性硬化剤の含有量は、全エポキシ化合物(エポキシ化合物A、エポキシ化合物Bおよびエポキシ化合物Cの合計)100重量部に対し、10重量部以上40重量部以下であることが好ましい。好ましくは、12重量部以上である。これによりエポキシ樹脂の硬化が十分に進行する。また好ましくは30重量部以下である。これにより、保存安定性に優れた組成物を得ることができる。
【0058】
本発明の組成物は、熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ブチラール樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エチル−アクリル酸ブチル共重合体などを硬化後の膜に対する低応力化剤として含有することができる。また、公知のエポキシ化合物硬化剤を含有することができる。また公知の導電性粒子やシリカ、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、硫酸バリウムなどのフィラーなどの非導電性粒子を含有することができる。
【0059】
また、接着力を改善する目的でシランカップ剤を含有することができる。ビニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメチキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、1,4−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどが挙げられる。
【0060】
本発明の組成物を、導電体配線の形成された基板と別の基材の接着剤として適用する場合、本発明の組成物は、構成成分を溶媒中で混合してワニスとしたものを用いてもよいし、シートに加工した接着シートとして用いてもよい。取り扱いの簡便さを配慮すると、シートに加工された組成物シートを用いる方法が好ましい。
【0061】
本発明の組成物をシートに加工するには、均一に混合した組成物をプラスチックなどで挟みプレス圧延、あるいはロール圧延して作製することができる。また、組成物のワニスをプラスチックフィルム上に塗布、脱溶媒させてシートに加工することもできる。
【0062】
ここで、ワニスを得るために用いる有機溶剤としては前記成分を溶解するものを適宜選択すればよく、ケトン系溶剤のアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エーテル系溶剤の1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、グリコールエーテル系溶剤のメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エステル系溶剤として、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、その他、ベンジルアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。これらの有機溶剤は単独または混合して使用される。マイクロカプセル型潜在性硬化剤の安定性の観点から、酢酸エチル単独、または酢酸エチルとトルエンの混合溶媒が最も好ましく使用される。
【0063】
ワニスをプラスチックフィルム(以下、基材フィルムと呼ぶ)上に塗布して組成物シートとするための塗工機としては、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーターなどを用いることができる。脱溶剤するための乾燥は、60℃以上150℃以下で10秒間以上60分間以下乾燥すればよい。
【0064】
本発明では、基材フィルム上に形成した組成物シートの上にさらに別のプラスチックフィルム(以下、カバーフィルムと呼ぶ)をラミネートして、プラスチックフィルムで上下を挟まれた組成物シートを得ることができる。
【0065】
基材フィルムおよびカバーフィルムとして用いるプラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムは、必要に応じて離型処理をされていてもよく、例えばシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素樹脂系、脂肪族アミド系、ポリ尿素系などで処理されていてもよい。
【0066】
次に、本発明の組成物を用いて導電体配線の形成された基板を別の基材上に接着する方法について説明する。プラスチックフィルムで上下を挟まれた組成物シートを用いる場合は、まず、カバーフィルムを剥離したあと、むき出しになった組成物シートを導電体配線の形成された基板上に40℃〜150℃で加熱ラミネートまたは真空加熱ラミネートを行い、仮接着させる。導電体配線が形成された基板としては、シリコンウェハ、セラミック基板、樹脂基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、銅貼りガラスエポキシ基板などが挙げられる。
【0067】
この温度範囲において、組成物シートの動的粘度は、10Pa・s以上1000000Pa・sであることが好ましい。より好ましくは、50Pa・s以上100000Pa・s以下である。組成物シートの動的粘度が10Pa・s未満であると取り扱いが困難になり、1000000Pa・sを越えると基板上の導電体配線が組成物シートに埋まらない。また、ラミネート前の状態において室温で放置した後も、3日間ラミネートできることが好ましく、より好ましくは7日以上であり、最も好ましくは30日以上である。ラミネート後に、40℃〜150℃で10秒間〜24時間の加熱処理を行うことが好ましい。
【0068】
ワニスを導電体配線の形成された基板上にコーティングする場合には、スピンコーター、スリットダイコーターなどを用いることができる、脱溶剤するための乾燥は、60℃以上150℃以下で10秒間以上60分間以下乾燥すればよい。
【0069】
次に必要に応じてバックグラインド加工を行ってもよい。すなわち、組成物が仮接着された導電体配線基板の導電体配線基板面(表面)をバックグラインド加工機固定面に設置し、導電体配線が形成されていない面(裏面)を研削、研磨加工を行ってもよい。この際、基材フィルム上に形成された組成物シートを用いる場合には、基材フィルムをバックグラインド加工機固定面に設置してもよい。
【0070】
次に、前記工程で得られた、組成物が仮接着された導電体配線基板とテープフレームとをダイシングテープに貼りつけることができる。この際、導電体配線が形成されていない面(裏面)をダイシングテープに粘着させる。その後、ダイシングを行う。ダイシング工程では、まずカットテーブル上に、前記方法により作製した、組成物が仮接着された導電体配線基板とテープフレームとをダイシングテープに貼りつけたテープフレームをセットする。基材フィルム上に形成された組成物シートを用いた場合は、基材フィルムを剥離する。装置上で基板上のアライメントマークを認識させ、カットサイズ、切削速度、深さ、ブレード回転数、切削水量などのダイシング条件を所定の値に設定し、ダイシングを行う。ダイシング後、25〜100℃で10秒間〜24時間の乾燥処理をして、基板を乾燥することが好ましい。基材シートのダイシングによる割れ、欠け、または基板からの剥がれは、切削端部を基準位置0μmとして最大長さ25μm以内であることが好ましい。ダイシング後、ダイシングテープに紫外線を照射し、個片化された組成物付き基板を得ることができる。
【0071】
得られた組成物付き基板は、別途作成された被接着用の基板に貼り合わされる。被接着用の基板としては、シリコンウェハ、セラミック基板、樹脂基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、銅貼りガラスエポキシ基板などが挙げられる。これらは、常圧または真空で加熱加圧することで貼り合わせることができる。組成物付き基板と被接着用の基板とは対応する導体同士を導通させることを目的としてもよいし、絶縁させることを目的としてもよい。
【0072】
また、前記組成物が仮接着された導電体配線基板に対しダイシングを行うことなく、別途作製した基材上に接着し、貼り合わせが完了したあとに、ダイシングすることもきる。
【0073】
接着力は、ダイシェアテスタを用いた接着力測定値として、30N/mm以上であることが好ましく、40N/mm以上であることがより好ましく、50N/mm以上であることが最も好ましい。また、加熱雰囲気下でも接着していることが重要であり、100℃において10N/mm以上であることが重要であり、より好ましくは20N/mm以上であり、さらに好ましくは30N/mm以上であり、最も好ましくは50N/mm以上である。
【0074】
得られた導電体配線基板と基材との接着物は、さらにレジスト工程を含む工程を通過する。この際に、レジスト剥離液としての有機溶媒に対する耐性があることがあることが重要である。すなわち、アセトン、メチルエチルケトンなどの溶媒に浸漬してもクラックが生じないことが重要である。
【0075】
本発明の組成物及び組成物シートは、半導体素子、半導体装置、回路基板、金属配線材料の接着、固定や封止するための半導体用接着剤として好適に使用することができる。また、本発明でいう半導体装置とは半導体素子を基板に接続したものや、半導体素子同士または基板同士を接続したものだけでなく、半導体素子の特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路基板及びこれらを含む電子部品は全て半導体装置に含まれる。
【実施例】
【0076】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
(a)ポリイミドの合成例を示す。
【0078】
合成例1 ポリイミド1(PI1)の合成
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン24.54g(0.067モル)、1,3−ビス(3−アミノプロプル)テトラメチルジシロキサン4.97g(0.02モル)、末端封止剤として3−アミノフェノール2.18g(0.02モル)をN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPとする)80gに溶解させた。ここにオキシジフタル酸二無水物31.02g(0.1モル)をNMP20gとともに加えて、25℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、180℃で5時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入し、ろ過して沈殿を回収し、水で3回洗浄した後、真空乾燥機を用いて80℃20時間乾燥し、有機溶剤可溶性ポリイミド(PI1)(白色粉体)を得た。得られたポリイミド4gにテトラヒドロフラン(以下、THFとする)6gを加え、撹拌したところ溶解した。
【0079】
合成例2 ポリイミド2(PI2)の合成
乾燥窒素気流下、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン4.82g(0.0165モル)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン3.08g(0.011モル)、SiDA4.97g(0.02モル)、末端封止剤としてアニリン0.47g(0.005モル)をNMP130gに溶解した。ここに2,2−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}プロパン二無水物26.02g(0.05モル)をNMP20gとともに加えて、25℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、180℃で5時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入し、ろ過して沈殿を回収し、水で3回洗浄した後、真空乾燥機を用いて80℃20時間乾燥し、有機溶剤可溶性ポリイミド(PI2)(白色粉体)を得た。得られたポリイミド4gにTHF6gを加え、撹拌したところ溶解した。
【0080】
(b)エポキシ化合物Aの合成例を示す。
【0081】
合成例3 エポキシ化合物A1
温度計、攪拌機を取り付けたフラスコにビスフェノールA228gとトリエチレングリコールジビニルエーテル172gを仕込み120℃まで1時間を要して昇温した後、さらに120℃で6時間反応させて2官能性フェノール樹脂を合成した。得られた2官能性フェノール樹脂400g、エピクロルヒドリン925g、n−ブタノール185gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後に共沸する圧力まで減圧し、49%水酸化ナトリウム水溶液122gを5時間かけて滴下した。ついでこの条件で0.5時間攪拌した。デューンスタークトラップを用いて水層を除去しながら反応させた。未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留で留去した。得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解し、さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させたあと、洗浄液のpHが中性となるまで水洗を繰り返した。ついで溶媒を留去し、エポキシ化合物A1を得た。
【0082】
合成例4 エポキシ化合物A2
温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル744g(エポキシ当量124g/eq)とビスフェノールA1368gを仕込み140℃まで30分を要して昇温した後、4%水酸化ナトリウム水溶液5gを仕込んだ。その後、30分を要して150度まで昇温し、さらに150℃で3時間反応させた。その後、リン酸ソーダで中和し、2官能性フェノール樹脂2090gを得た。得られた2官能性フェノール樹脂261g、エピクロルヒドリン1110g、n−ブタノール222gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後に共沸する圧力まで減圧し、49%水酸化ナトリウム水溶液122gを5時間かけて滴下した。ついでこの条件で0.5時間攪拌した。デューンスタークトラップを用いて水層を除去しながら反応させた。未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留で留去した。得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解し、さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させたあと、洗浄液のpHが中性となるまで水洗を繰り返した。ついで溶媒を留去し、エポキシ化合物A2を得た。
【0083】
その他に実施例、比較例で用いた各材料は以下のとおりである。
【0084】
<エポキシ化合物A>
エピクロンEXA−4850−1000(DIC株式会社製)
エピクロンEXA−4816(DIC株式会社製)
エピクロンEXA−4822(DIC株式会社製)
エポキシ化合物A1およびエポキシ化合物A2の構造をそれぞれ式(33)および(34)に示す。
【0085】
【化10】

【0086】
<エポキシ化合物B>
エピクロンN−695(DIC株式会社製)(式(8)で表される化合物)
エピクロンHP−4700(DIC株式会社製)(式(13)で表される化合物)
<エポキシ化合物C>
エピクロン828US。
【0087】
<硬化剤/硬化触媒>
2PZ(四国化成製)
<マイクロカプセル型潜在性硬化剤>
ノバキュアHX−3941HP(旭化成イーマテリアルズ(株)製)
ノバキュアHX−3941HP(旭化成イーマテリアルズ(株)製)中にエポキシ化合物Cが含まれる。ノバキュアHX−3941HPは、マイクロカプセル/エポキシ化合物Cが1/2(重量比)であり、含まれる液状エポキシ化合物において、ビスフェノールF型エポキシ化合物(Bis−F型)/ビスフェノールA型(Bis−A型)エポキシ化合物が4/1(重量比)である。
【0088】
<その他>
フェノキシ樹脂 フェノトートFX−293(東都化成(株)製)。
【0089】
(1)組成物からなる組成物シート作製方法
組成物ワニスを、コンマコーターを用いてシリコーン系の離型処理を行った厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(基材フィルム)上に塗布し、80℃で4分間乾燥した。乾燥後の組成物シートに厚さ8μmのポリプロピレンフィルム(カバーフィルム)を加熱ロール温度40℃でラミネートし、直径7.6cmのロールに巻き取り、組成物の厚さが30μmである組成物シートを得た。
【0090】
(2)ラミネート方法および評価
貼り合わせ装置ステージ上に固定された平均高さ20μmバンプ電極付き(チップサイズ:1.5mm×15mm、256バンプ/チップ、ピッチ65μm、金めっきバンプ、液晶ドライバ用)シリコンウェハ(直径150mm、厚さ625μm)のバンプ電極側にカバーフィルムを剥離した後のシートの組成物面を貼り合わせ装置(テクノビジョン(株)製、モデル900S)を用いて温度85℃、貼り合わせ速度50cm/分でラミネートした。この時、バンプ電極周辺および組成物とシリコンウェハ界面のボイドの有無を組成物の上部より顕微鏡観察(20倍率)により確認し、1チップ当たり3個以上のボイドがある場合を保存0日でのラミネート性×、1〜2個のボイドがある場合を保存0日でのラミネート性△、ない場合を保存0日でのラミネート性○とした。シリコンウェハ周囲の余分な組成物をカッター刃にて切断し、基材フィルムを具備したバンプ電極が組成物で埋め込まれたシリコンウェハを得た。
【0091】
また、(1)で作製した組成物シートを室温(23℃、40〜60%RH)で3日、7日、または30日保存としたものについて、それぞれ同様の操作でラミネートを行い、保存後のラミネート性を同様に評価した。
【0092】
(3)ダイシング方法および評価
貼り合わせ装置ステージ上に固定されたシリコンウェハ(直径150mm、厚さ625μm)のミラー面にカバーフィルムを剥離した後の組成物シートの組成物面を貼り合わせ装置(テクノビジョン(株)製、モデル900S)を用いて温度85℃、貼り合わせ速度50cm/分でラミネートした。
【0093】
得られた組成物シート付きシリコンウェハを80℃で1時間熱処理をしてからダイシングを行った。半導体ウェハのテープフレーム、およびダイシングテープへの固定は、ウェハマウンター装置(テクノビジョン(株)製、FM−1146−DF)を用い、ミラー面とは反対側のウェハ基板面にダイシングテープ(リンテック(株)製、D−650)を貼り合わせることによって行った。次いで、残りのプラスチックフィルムを除去した。ダイシング装置(DISCO(株)製、DFD−6240)切削ステージ上に、組成物面が上になるようにテープフレームを固定して、以下の切削条件でダイシングを行った。
ダイシング装置:DFD−6240(DISCO(株)製)
半導体チップサイズ:2mm×2mm
ブレード:NBC−ZH 127F−SE 27HCCC
スピンドル回転数:25000rpm
切削速度:50mm/s
切削深さ:ダイシングテープの深さ20μmまで切り込む
カット:ワンパスフルカット
カットモード:ダウンカット
切削水量:3.7L/分
切削水および冷却水:温度23℃、電気伝導度0.5MΩ・cm(超純水に炭酸ガスを注入。
【0094】
組成物表面の切削粉の付着の有無、組成物表面の割れ、欠けの有無、ウェハから組成物の剥がれの有無を顕微鏡により観察した。切削粉の付着については、組成物表面に1辺25μm以上の大きさの切削粉の付着のないものを耐汚染性○、1チップ当たり、1〜2個の付着があるものを耐汚染性△、3個以上の付着のあるものを耐汚染性×とした。また、長さが25μm以上の割れ、欠け、ウェハからの剥がれがないものを耐傷性○、1チップ当たり、合計1〜2個あるものを耐傷性△、3個以上あるものを耐傷性×とした。
【0095】
(4)接着方法および評価
前記(3)で作製した個片化した半導体ウェハ(チップ)をガラス基板上にフリップチップボンダーを用いて接着した。接着は、温度100℃、圧力15N、時間5秒の条件で仮圧着したのち、温度200℃、圧力109N、時間20秒で本圧着を行った。ボンディング終了後、ガラス基板の半導体チップが接着されていない側から透かして、接着した半導体チップの空隙またはボイドの有無を顕微鏡観察(20倍率)して確認した。接着時のボイドが1チップ当たり3個以上ある場合を×、1〜2個ある場合を△、ない場合を○とした。さらに、170℃のオーブンで1時間加熱し、組成物を硬化させた。
【0096】
ダイシェアテスタ(Dageシリーズ4000)を用いて、30℃で接着力を評価した。
サンプルサイズ 2mm×2mm
テストスピード 200μm/s
テスト高さ 300μm
また、100℃のホットプレート上で同様に接着力を評価した。
【0097】
(5)耐溶剤性の評価
貼り合わせ装置ステージ上に固定されたシリコンウェハ(直径150mm、厚さ625μm)のミラー面にカバーフィルムを剥離した後の組成物シートの組成物面を貼り合わせ装置(テクノビジョン(株)製、モデル900S)を用いて温度85℃、貼り合わせ速度50cm/分でラミネートした。これを170℃のオーブンで1時間加熱し、組成物を硬化させた。これをアセトンに24時間浸漬後、光学顕微鏡で観察し、クラックが生じていない場合を「24」、5時間浸漬後クラックの発生がなく24時間浸漬後クラックが発生した場合を「5」、1時間浸漬後クラックの発生がなく5時間浸漬後クラックが発生した場合を「1」、6分浸漬後クラックの発生がなく1時間浸漬後クラックが発生した場合を「0.1」、6分間浸漬後クラックが発生した場合を×とした。
【0098】
実施例1
ポリイミドとしてPI1を100g、エポキシ樹脂Aとしてエポキシ化合物A1を40g、エポキシ樹脂BとしてエピクロンN−695を10g、潜在性硬化剤としてノバキュアHX−3941HPを50g(潜在性硬化剤16.7g、エポキシ樹脂Cとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂6.7g、ビスフェノールF型エポキシ樹脂26.6g)を酢酸エチル100g、トルエン100gの混合溶媒に溶解し、組成物ワニス1を得た(表1)。
【0099】
得られた組成物ワニス1を用いてシートを作製し、ラミネート、ダイシング、接着を行い、上記の各種評価を行った(表2)。
【0100】
実施例2〜32、比較例1〜4
実施例1と同様にして表1に示す混合比で半導体接着組成物のシートを作製し、ラミネート、ダイシング、フリップチップボンディングを行い、上記の各種評価を行った。結果を表2〜5に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
【表5】

【0106】
実施例33
実施例1と同様にして、組成物ワニス1を用いてシートを作製し、平均高さ20μmバンプ電極付き(256バンプ/チップ、ピッチ65μm、金めっきバンプ、液晶ドライバ用)シリコンウェハ(直径150mm、厚さ625μm)にラミネートした。ラミネート時にボイドは観察されなかった。得られたシリコンウェハを平均高さ20μmバンプ電極付き(256バンプ/チップ、ピッチ65μm、金めっきバンプ、液晶ドライバ用)シリコンウェハ(直径150mm、厚さ625μm)に加熱加圧(10Nで加圧して、100℃から200℃に昇温後200℃で5分維持)して接着した。
【0107】
得られた接着物をダイシングした。ダイシング性が良好であり、接着時のボイドは観察されず、良好に接着していた。また、100℃のホットプレートで加熱しても良好に接着していた。アセトンに24時間してもクラックは観察されなかった。
【0108】
実施例34
平均高さ20μmバンプ電極付き(256バンプ/チップ、ピッチ65μm、金めっきバンプ、液晶ドライバ用)シリコンウェハ(直径150mm、厚さ625μm)にスピンコートにより、実施例1で用いたワニスを塗布し、80℃のホットプレートで4分間乾燥した。その後、実施例1と同様にして、ダイシング、接着を行い、上記の各種評価を行った。コーティング後のボイドは観測されず、ダイシング性が良好であり、接着時のボイドは観察されなかった。また、接着力は62N/mm、100℃での接着力が56N/mmであり、アセトンに24時間してもクラックは観察されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の組成物は、回路基板の小型化・高密度化の要求に伴い、導電体配線の形成された基板上に半導体用接着組成物を形成し、それを別途作製した基材上に接着する組成物や絶縁材料として好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドおよび式(1)で表されるエポキシ化合物を含む組成物。
【化1】

(式中、Rは芳香環を含む炭素数6以上50以下の2価の有機基であり、Rは炭素数2以上5000以下の2価の有機基である。mおよびnはそれぞれ独立に1以上50以下の整数であり、lは0以上20以下の整数である。)
【請求項2】
さらに式(2)で表されるエポキシ化合物を含む請求項1記載の組成物。
【化2】

(式中、Rは芳香環を含む炭素数6以上1000以下のo価の有機基である。oは3以上100以下の整数である)
【請求項3】
さらに潜在性硬化剤を含む請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
式(1)で表されるエポキシ化合物が、Rが式(3)または式(4)で表され、Rが式(5)または式(6)で表されるエポキシ化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【化3】

(式中、Rは式(7)表される2価の有機基である)
【化4】

(式中、pおよびqはそれぞれ独立に2以上100以下の整数であり、rは0以上50以下の整数である。)
【請求項5】
式(2)で表されるエポキシ化合物が式(8)〜(17)のいずれかで表されるエポキシ化合物である請求項2〜4のいずれかに記載の組成物。
【化5】

(式中、Rは水酸基または炭素数1以上10以下の有機基である。uは0〜4である。各芳香環に含まれるu個のRはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。tは3以上100以下の整数である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を含む組成物シート。

【公開番号】特開2011−46928(P2011−46928A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162456(P2010−162456)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】