組織における無酸素性作業能力を高めるための方法及び組成物
【課題】持続的な激しい運動中、あるいは局所的な低酸素状態の条件下で持続される運動中に生じるヒドロニウムイオンの蓄積を調節し、筋肉の緩衝能力を高め筋疲労を軽減させるための方法を提供する。
【解決手段】β−アラニルヒスチジンペプチド及びβ−アラニンと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを含む組成物、及びこれらのペプチド及びアミノ酸を投与するための方法。本組成物及び方法は、β−アラニン及び/又はクレアチンの血漿濃度の増加をもたらし、組織における無酸素性作業能力を高める。
【解決手段】β−アラニルヒスチジンペプチド及びβ−アラニンと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを含む組成物、及びこれらのペプチド及びアミノ酸を投与するための方法。本組成物及び方法は、β−アラニン及び/又はクレアチンの血漿濃度の増加をもたらし、組織における無酸素性作業能力を高める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医薬品及び生理機能の技術分野に関する。一つの態様においては、本発明は筋肉の緩衝能力を高め筋疲労を軽減させるための方法を提供する。本発明はまた、筋肉及び他の組織の無酸素性作業能力を高めるための方法及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
普通の栄養補助食品は、典型的には、現代のヒト及び動物の食事において低下した栄養素のレベルを補うように設計される。特に、有用な栄養補助食品は、摂取した場合に組織の機能を増進させる。普通の食生活では肉類及び動物性食品からのみ得ることができる栄養素が不足する可能性がある特定の種類の動物(例えば、菜食主義者の人間、及び草食性の食物を摂取する他の動物)の食事を補完することは特に重要となり得る。
【0003】
例えば、スポーツ及び運動競技社会においては、レジャーもしくは労働目的のための身体的能力を進展もしくは強化する栄養補助食品のような、運動能力を具体的に改善する普通の栄養補助食品はますます重要になっている。別の例では、嫌気的(例えば乳酸生成)ストレスは、酸素の可用性が制限され得る(例えば末梢血管障害、フリーダイビングもしくはシンクロナイズドスイミング)ような、激しい運動(例えば、サッカーもしくはアイスホッケーにおける持続的もしくは断続的な短距離走)や、老化によって経験され得る疲労及び苦痛の発現を引き起こし得る。嫌気的ストレスはまた、筋肉内圧の増大によって局所的な血行が部分的もしくは全体的に閉塞されたとき(例えば、ロッククライミングの間)の長時間の最大等尺運動に起因し得る。過剰な乳酸生成は、細胞内環境の酸性化を引き起こし得る。
【0004】
クレアチン(すなわち、N−(アミノイミノメチル)−N−グリシン、N−アミジノサルコシン、N−メチル−N−グアニルグリシン、もしくはメチルグリコシアミン)は、高くまた可変のエネルギー需要に対する能力によって特徴付けられる、骨格筋及び他の「興奮」組織(例えば、平滑筋、心筋、もしくは精子)中に大量に見出される。クレアチンは、細胞内のエネルギー生成の生化学的経路においてホスホリルクレアチンへと変換される。哺乳類の骨格筋において、クレアチン(すなわち、クレアチン及びホスホリルクレアチン)の全てを含めた標準的な含有量は、25未満から約50mmol/キログラム新鮮筋肉(すなわち3.2〜6.5グラム/キログラム新鮮筋肉)まで変化し得る。
【0005】
クレアチンは肝臓で形成され、能動輸送系によって筋肉等の組織へと取り込まれる。体内でのクレアチン合成はまた、肉類に存在するクレアチンの摂取(例えば、平均的な肉食の人で5〜10ミリグラム/キログラム体重・日、及び菜食ではほぼゼロ)によって増加し得る。
【0006】
持続的な激しい運動中、あるいは局所的な低酸素状態の条件下で持続される運動中に、解糖及び乳酸の蓄積(嫌気的代謝)の際に形成されるヒドロニウムイオンの蓄積が、細胞内pHを大幅に低下させ得る。低下したpHは、クレアチン−ホスホリルクレアチン系の機能を危うくし得る。細胞内pHの低下は、筋線維における収縮性タンパク質の機能のような、細胞内の他の機能に影響を及ぼし得る。
【0007】
カルノシン(β−アラニル−L−ヒスチジン)、アンセリン(β−アラニル−L−1−メチルヒスチジン)、もしくはバレニン(β−アラニル−L−3−メチルヒスチジン)を含む、β−アラニンとヒスチジンとのジペプチド(ここではペプチドとも呼ぶ)、及びそれらのメチル化類似体は、ヒト及び他の脊椎動物の筋肉中に存在する。カルノシンは、例えば、ヒト及びウマの筋肉中に相当量見出される。アンセリン及びカルノシンは、例えば、イヌ、ラクダ及び多数の鳥類の筋肉中に見出される。アンセリンは、多くの魚類における主要なβ−アラニルヒスチジンジペプチドである。バレニンは、水生哺乳動物及び爬虫類のいくつかの種における主要なβ−アラニルヒスチジンジペプチドである。ヒト、ウマ、及びラクダでは、激しい運動中に広範に使われる収縮が速い解糖型筋線維(IIA型及びIIB型)中に、最も高い濃度のβ−アラニルヒスチジンジペプチドが見出される。酸化型の収縮が遅い筋線維(I型)ではより低い濃度が見出される。例えば、(非特許文献1)を見ること。カルノシンが、異なる筋線維型、及びウマII型線維における全体の最大50%までにおいてヒドロニウムイオン緩衝能力に寄与することは知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Dunnett, M. & Harris, R.C. Equine Vet. J., Suppl. 18, 214-217 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、組織における無酸素性作業能力を高めるための方法及び組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、組織中における無酸素性作業能力を高める方法であって、以下のステップ、(a)β−アラニルヒスチジンジペプチドと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを準備するステップ、並びに(b)β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量で組織に投与し、それによって組織における無酸素性作業能力を高めるステップ、を含む前記方法を提供する。本発明は、組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節する方法であって、以下のステップ、(a)β−アラニルヒスチジンジペプチドと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを準備するステップ、並びに(b)β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織でのヒドロニウムイオン濃度を増加させるのに効果的な量で組織に投与するステップ、を含む前記方法を提供する。
【0011】
本方法の一つの態様において、β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織へ投与するステップは、経口投与、血液もしくは血漿への投与、又はそれらの組み合わせを含む。β−アラニルヒスチジンジペプチドには、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニン、又はそれらの類似体もしくは模倣体を含み得る。
【0012】
本発明は、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニンもしくはその類似体を含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物を含む組成物を提供する。一つの態様において、β−アラニンは、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニン等のβ−アラニルヒスチジンジペプチド、又はその類似体を含む。本組成物は、少なくともクレアチン又は炭水化物をさらに含むことができる。
【0013】
一つの態様において、インスリン模倣体は、D−ピニトール(3−O−メチル−チロイノシトール)、4−ヒドロキシイソロイシン、デメチル−アステリキノンB−1化合物、αリポ酸、R−αリポ酸、グアニジノプロピオン酸、バナジウム化合物、バナジウム錯体、もしくは合成ホスホイノシトールグリカンペプチドを含む。インスリン作用修飾因子は、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、もしくはビグアニドであることができる。
【0014】
別の態様において、本組成物は医薬組成物、栄養補助食品、もしくはスポーツドリンクである。栄養補助食品もしくはスポーツドリンクは、ヒト用のサプリメントとすることができる。医薬品組成物はヒト用に製剤化することができる。
【0015】
本発明は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5グラムもしくはそれ以上の、β−アラニン又はその類似体もしくは模倣体を有するペプチドもしくはエステルを含む組成物を提供する。本発明は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5グラムもしくはそれ以上の、β−アラニン(又はその類似体もしくは模倣体)を有するペプチドもしくはエステルを含む注射剤型の組成物を提供する。一つの態様において、ペプチドは、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニン等のβ−アラニルヒスチジンジペプチド、又はその類似体もしくは模倣体を含む。
【0016】
本発明は、少なくとも200、225、250、275、300、325、350、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975もしくは1000mgもしくはそれ以上の、β−アラニン又はβ−アラニン類似体もしくは模倣体を含む、ヒト用に製剤化された組成物を提供する。一つの態様において、本組成物は、摂取可能な状態に製剤化されるか、もしくは注射剤型である。摂取可能な剤型は、飲料、ジェル、食品、もしくは錠剤とすることができる。ペプチドには、カルノシン、アンセリンもしくはバレニン等のβ−アラニルヒスチジン、又はその類似体もしくは模倣体を含むことができる。
【0017】
本発明は、対象における組織の無酸素性作業能力を高める方法であって、以下のステップ、(a)(i)グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニン又はその類似体もしくは模倣体を含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物、(ii)注射剤型の、少なくとも0.5gのβ−アラニンを含むペプチドもしくはエステル、又は(iii)少なくとも200mgのβ−アラニン、を含む組成物を準備するステップ、並びに(b)組織の無酸素性作業能力を高めるのに効果的な量で対象に組成物を投与するステップ、を含む前記方法を提供する。一つの態様において、β−アラニンの24時間の合計用量は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5グラムもしくはそれ以上である。β−アラニンの24時間の合計用量は、約0.2gから約6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0グラムもしくはそれ以上の間とすることができる。本組成物は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15日又はそれ以上の期間にわたって与えられ得る。本組成物は、少なくとも約3日から約2、3、4週間もしくはそれ以上までの期間にわたり与えられ得る。β−アラニンには、カルノシン、アンセリンもしくはバレニン等のβ−アラニルヒスチジンジペプチド、又はその類似体もしくは模倣体を含むことができる。β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量は、少なくとも約0.5gであり、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5グラムもしくはそれ以上とすることができる。β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20グラム又はそれ以上より大きくすることができる。β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量は、約5g〜約16gとすることができる。本組成物は、複数回投与で投与され得る。本組成物は、24時間に少なくとも2回から8回投与され得る。一つの態様において、約200mg、225、250、275、300、325、350、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975もしくは1000mgのβ−アラニン(又はその類似体もしくは模倣体)、及び/又は約500mg(又は、約200mg、225、250、275、300、325、350、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、もしくは1000mg)のカルノシン(又はその類似体もしくは模倣体)が、数週間の期間にわたり1日に約2回から8回もしくはそれ以上(例えば、1日に2、3、4、5、6、7、8回もしくはそれ以上)投与される。一つの態様において、少なくとも約2gのβ−アラニン、もしくは少なくとも約5gのカルノシンが、約2、3もしくは4日の期間にわたり1日に約2回から8回投与される。
【0018】
一つの態様において、投与される本発明の組成物の量は日々増加させる。投与される本発明の組成物の量は毎週増加させることができる。本組成物は、少なくとも約4週間継続する治療期間において投与することができる。
【0019】
本発明は特定の作用機構のいずれにも限定されるものではないが、本発明は、対象における組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節する方法であって、以下のステップ、(a)(i)グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニン又はその類似体もしくは模倣体を含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物、(ii)注射剤型の、少なくとも0.5グラムのβ−アラニンを含むペプチドもしくはエステル、又は(iii)少なくとも200mgのβ−アラニン、を含む組成物を準備するステップ、並びに(b)組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節するのに効果的な量で対象に組成物を投与するステップ、を含む前記方法を提供する。
【0020】
一つの態様において、本発明は、筋肉及び他の組織の無酸素性作業能力を高めるための方法及び組成物であることを特徴とする。本発明の方法及び組成物は、体における組織内での、クレアチン、及び/又はβ−アラニルヒスチジンジペプチド、もしくはβ−アラニン及びL−ヒスチジン類似体の同時の蓄積を与える。本方法は、体内へ組成物を摂取すること又は注入することを含む。一つの態様において、本組成物は、クレアチンのアベイラビリティ及び取り込みを増大させる能力がある化合物と、ヒト及び動物組織におけるβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成及び蓄積のための前駆体との混合物である。本発明の組成物は、体内へ導入されたときに、ヒトもしくは動物体におけるβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成及び蓄積を誘起することができる。
【0021】
本組成物は、β−アラニンや、カルノシン、アンセリン、及びバレニン、さらにそれらの類似体等の、β−アラニンのエステル、β−アラニンのペプチドのようなβ−アラニンの化学的誘導体及び類似体を含むことができる。本組成物はまた、L−ヒスチジン及びその混合物を含んでいても良い。β−アラニン及び/又はL−ヒスチジンのそれぞれは、個々のアミノ酸として、又はジペプチド(例えば、カルノシン、アンセリン、及び/又はバレニン)、オリゴペプチド、もしくはポリペプチドの構成成分として製剤化され又は投与することができる。β−アラニン、L−ヒスチジン、カルノシン、アンセリン、及び/又はバレニン、もしくはβ−アラニンのペプチドは活性誘導体であり得る。活性誘導体は、ある物質から誘導されもしくはある物質の前駆体であり、また体内においてその物質と同じかもしくは類似する状態で機能し、あるいは体内に置かれた場合にその物質へと加工されるものである。例としては、例えば、エステル及びアミドが含まれる。組成物はまた、クレアチン、炭水化物、インスリン、インスリン模倣体、インスリン作用修飾因子もしくはグリシンのいずれか一以上を含むことができる。本発明の組成物は、栄養補助食品(例えば、飲料、ジェル、食品を含む)又はヒトもしくは動物のための医薬品組成物の調製に用いることができる。本発明の組成物は、本発明の方法のいずれにおいても用いることができる。
【0022】
一つの態様において、本発明は、組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節するための組成物及び調節する方法であることを特徴とする。本方法は、組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のβ−アラニンを血液もしくは血漿に供与するステップと、血液もしくは血漿に組織を触れさせ、それによって組織でのβ−アラニルヒスチジンの濃度を増加させるステップとを含む。β−アラニルヒスチジンは、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンとすることができる。本方法は、β−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のL−ヒスチジンを血液もしくは血漿に供与するステップを含むことができる。
【0023】
一つの態様において、本発明は、組織の無酸素性作業能力を高める方法であることを特徴とする。本方法は、組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のβ−アラニンを血液もしくは血漿に供与するステップと、組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のL−ヒスチジンを血液もしくは血漿に供与するステップと、血液もしくは血漿に組織を触れさせるステップとを含む。β−アラニルヒスチジンの濃度は組織中で増加する。
【0024】
別の態様において、本方法は、組織でのクレアチンの濃度を増加させるステップを含むことができる。その増加させるステップは、組織でのクレアチンの濃度を増加させるのに効果的な量のクレアチンを血液もしくは血漿に供与すること(例えば、クレアチンを血液もしくは血漿に供与することによって)を含むことができる。
【0025】
本方法の供与するステップは、摂取によってそれらの構成アミノ酸へと加水分解され、体にとってβ−アラニンの源となるような、β−アラニンや、カルノシン、アンセリン、及びバレニン等のβ−アラニンのペプチドのある量を含む組成物の、摂取、注入(例えば、注射)、もしくは摂取及び注入の組み合わせを含むことができる。本発明の方法はまた、L−ヒスチジン、クレアチン、炭水化物、インスリン、インスリン模倣体、インスリン作用修飾因子及び/又はグリシンを供与することを含む。
【0026】
さらに別の態様において、本方法は、血液又は血漿中のインスリンの濃度を増加させることを含むことができる。インスリンの濃度は、例えばインスリンの注射によって増加させることができる。本発明の方法はまた、注射、摂取、もしくは当業者に知られた、体(対象とも呼ぶ)へのインスリン模倣体の送達の他の形態を含むことができる。インスリン模倣体の例には、限定されるものではないが、D−ピニトール(3−O−メチル−チロイノシトール)、4−ヒドロキシイソロイシン、L783,281(デメチル−アステリキノンB−1化合物)、αリポ酸、R−αリポ酸、グアニジノプロピオン酸、硫酸バナジル等のバナジウム化合物、もしくはペルオキソバナジウム等のバナジウム錯体、及び合成ホスホイノシトールグリカン(PIGペプチド)が含まれる。それに加えもしくは代えて、本発明の方法は、体内におけるインスリンの作用を増進させ又は抑制するための、インスリン作用修飾因子の使用を含むことができる。インスリン作用修飾因子の例には、限定されるものではないが、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、及びビグアニドが含まれ得る。
【0027】
さらに別の態様において、本方法は、体にグリシンを供与することを含む。グリシンは、食事の摂取の後の血液における血糖の遊離を抑えることができると考えられている。グリシンは、より多くのグルコースの取り込みを促進することによってインスリン感受性を高めるのかもしれない。従って本方法は、本発明の組成物及び方法において、グリシンを単独で又はインスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とともに供与することを含む。グリシンは、様々な形態で、例えば、単独もしくは栄養補助食品の中になど他の物質とともに供与することができる。あるいは、グリシンはゼラチン等の他の供給源から得ることができる。
【0028】
本発明でいう組織は、骨格筋であり得る。
【0029】
一つの態様において、本発明は、本発明の方法を実施するための組成物を提供する。従って、本発明の一態様は、本発明の方法を実施するための、β−アラニン、β−アラニルヒスチジンペプチド(又はその類似体もしくは誘導体)、クレアチン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子、グリシン、及び炭水化物を含む一以上の有効成分を有する組成物を意図している。本発明はさらに、本発明の方法を実施することを目的として、体に一以上の有効成分を供与するために製剤化された複合的な組成物の使用を意図している。
【0030】
従って、例となる態様において、本発明は、β−アラニンもしくはβ−アラニンのペプチド源、約39重量%ないし約99重量%の炭水化物、及び最高約60重量%の水から本質的に構成される組成物であることを特徴とする。本組成物は、約0.1重量%ないし約20重量%のβ−アラニンを(遊離形態もしくは結合形態で)含むことができる。本組成物は、約0.1重量%ないし約20重量%のL−ヒスチジンを含むことができる。
【0031】
炭水化物は単炭水化物(例えばグルコース)であることができる。
【0032】
別の態様において、本発明は、β−アラニンもしくはβ−アラニンのペプチド源、約1重量%ないし約98重量%のクレアチン源、及び最高約97重量%の水から本質的に構成される組成物であることを特徴とする。本組成物は、約0.1重量%ないし約98重量%のβ−アラニンを含む。ペプチド源にはL−ヒスチジンを含むことができ、そして本組成物はこの供給源からの約0.1重量%ないし約98重量%のL−ヒスチジンを含むことができる。
【0033】
ペプチド源は、アミノ酸、ジペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、もしくはそれらの活性誘導体の混合物であることができる。
【0034】
本組成物は、栄養補助食品とすることができる。クレアチン源はクレアチンモノハイドレートであることができる。
【0035】
β−アラニンを含む、血液もしくは血漿中の構成要素の濃度は、血漿濃度の増加をもたらすように機能し得る薬剤の注入(すなわち、注射)もしくは摂取によって増加させることができる。本組成物は、1日当たり約100ミリグラムないし約800グラムもしくはそれ以上の用量で摂取することができる。その用量は、毎日1回分もしくは複数回の分にして投与することができる。
【発明の効果】
【0036】
筋肉におけるクレアチン及びβ−アラニルヒスチジンジペプチドの増加は、無酸素作業によるヒドロニウムイオン生成の増加に対して細胞の耐性を高め、また疲労が発現する前の運動中の持久力の増大をもたらすことができる。本組成物及び方法は、β−アラニン、L−ヒスチジン、もしくはクレアチンの、食品の調理もしくは加工中のこれらの構成要素の分解もしくは浸出による損失を補正することに寄与することができる。本組成物及び方法はまた、菜食によるこれらの構成要素の不足を補正することに寄与することができる。
【0037】
本方法及び組成物は、スポーツマン、運動選手、ボディービルダー、シンクロナイズドスイミングの選手、兵士、高齢者、競走馬、作業犬及び競争犬、並びに狩猟鳥におけるβ−アラニルヒスチジンジペプチドを増加させるために用いることができ、筋肉疲労の発現を回避し又は遅らせる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、30日間にわたりβ−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前、及び与えた後2時間おきの、5頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化を表すグラフである。
【図2】図2は、30日間にわたりβ−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前、及び与えた後2時間おきの、5頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化を表すグラフである。
【図3a】図3aは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3b】図3bは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3c】図3cは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3d】図3dは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3e】図3eは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3f】図3fは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4a】図4aは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4b】図4bは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4c】図4cは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4d】図4dは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4e】図4eは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4f】図4fは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図5】図5は、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、ウマ血漿(n=6)中のβ−アラニンの平均濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図6】図6は、30日の食餌補給期間の初日及び最終日での、β−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、ウマ血漿(n=6)中のL−ヒスチジンの平均濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図7】図7は、II型骨格筋線維(IIA型及びIIB型線維の合計の平均)でのカルノシン濃度の6頭のサラブレッド馬における増加と、補給の1日目から30日目の間の、その日の最初の12時間にわたる血漿β−アラニン濃度−時間曲線下面積(AUC(0−12hr))の増加との相関を表すグラフである。
【図8】図8は、被験者へのβ−アラニン、ブロス、もしくはカルノシンの投与の平均結果を表すグラフである。
【図9】図9は、治療の9時間にわたる血漿β−アラニンの平均変化を表すグラフである。
【図10】図10は、10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの経口摂取後9時間にわたる血漿β−アラニンの平均変化を表すグラフである。
【図11】図11は、治療期間の1日目及び30日目の24時間にわたる平均(n=6)血漿β−アラニン濃度を表すグラフである。
【図12】図12は、異なる被験者における治療前及び治療後の筋肉カルノシン濃度の変化を表すグラフである。赤丸は補給する前の筋肉濃度を示す。
【図13】図13は、3つの異なる治療グループにおける補給前及び補給後のカルノシンの筋肉濃度(平均+SD)を表すグラフである。
【図14】図14は、3つの異なる治療グループにおける補給前及び補給後のヒスチジンの筋肉濃度(平均+SD)を表すグラフである。
【図15】図15は、4つの異なる治療グループにおける補給前及び補給後のタウリンの筋肉濃度(平均+SD)を示すデータを説明するグラフである。
【図16】図16は、異なる被験者における補給前及び補給後のタウリンの筋肉濃度(平均+SD)を示すデータを説明するグラフである。
【図17】図17は、以下に表9として詳細に述べられるデータの表を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の一以上の実施態様の詳細を、添付の図面及び以下の記載で説明する。本発明の他の利点及び特徴は、詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から当業者にとって明らかであろう。
【0040】
ここに引用される全ての刊行物、特許、特許出願は、参照することにより本願に明示的に組み込まれる。
【0041】
様々な図面における同種の参照記号は、同種の要素を示している。
【0042】
(詳細な説明)
本発明は、β−アラニン、β−アラニンのペプチド、それらの類似体及び誘導体、β−アラニルヒスチジンジペプチド(例えば、カルノシン、アンセリン、及びバレニン)を含む組成物並びに、組織の無酸素性作業能力を高めるためのこれらの組成物を用いる方法であって、組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のβ−アラニンを、血液もしくは血漿に与えることを含む方法を提供する。β−アラニルヒスチジンジペプチドには、カルノシン、アンセリン、及びバレニン等のβ−アラニンのペプチドを含むことができる。一つの態様において、それらは約6.8から7.1の間のpKa値を有することができる。一つの態様において、それらは筋収縮及び疲労が進行する間、細胞内pHホメオスタシスの調節に関与し得る。タンパク質中のアミノ酸残基、無機及び有機のリン酸塩及び重炭酸塩のような、ヒドロニウムイオン緩衝に関与する他の物質の含有量は、他の細胞機能におけるそれらの関与によって制約され得る。一つの態様において、β−アラニルヒスチジンジペプチドは、細胞中にpH感受性のヒスチジン残基を蓄積する効果的な手段を提供する。筋肉β−アラニルヒスチジンジペプチド濃度の変動は、個々の運動選手の無酸素性作業能力に影響を及ぼす。
【0043】
β−アラニルヒスチジンジペプチドは、体内でβ−アラニン及びL−ヒスチジンから合成される。これらの前駆体は、体内で生成され得るか、もしくは摂取されたβ−アラニルヒスチジンジペプチドの分解によるものを含め、食物を通じて利用可能とされる。体内では、β−アラニンは筋肉等の組織へ輸送される。典型的な食物が与えられる状態では、ヒト及びウマ血漿中でのβ−アラニンの濃度はL−ヒスチジンの濃度と比較して低い。これらの濃度は、ミカエリス−メンテン定数(Km)によって決められるような、その物質に対するカルノシン合成酵素、カルノシンシンセターゼの親和性との関連で考えられるべきである。ヒスチジンについてのKmは約16.8μMである。β−アラニンについてのKmは約1000から2300μMの間である。カルノシンシンセターゼのβ−アラニンに対する低い親和性、及び筋肉中でのβ−アラニンの低い濃度は、筋肉でのβ−アラニンの濃度がβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成に対して律速になっていることを説明している。
【0044】
筋肉内のβ−アラニルヒスチジンジペプチドの量が増加すると、筋肉の性能及び筋肉によってなし得る作業量に良い影響を及ぼす。従って、ヒトもしくは動物体における組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成及び蓄積を増加させることが望ましい。
【0045】
ヒトもしくは動物体におけるβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成及び蓄積は、体内のクレアチンが増加すること、β−アラニンの血液もしくは血漿濃度が増加すること、β−アラニン及びクレアチンの血液もしくは血漿濃度が増加すること、又はβ−アラニン、L−ヒスチジン、及びクレアチンの血液もしくは血漿濃度が増加することによって増加し得る。ジペプチドの増加はβ−アラニン濃度の増加と同時に起こり得る。
【0046】
一つの態様において、本発明の組成物及び方法は、β−アラニン、β−アラニンのペプチド、L−ヒスチジン、クレアチン、カルノシン、アンセリン、及び又はバレニン、及び/又はそれらの活性誘導体もしくは類似体を単独あるいは様々な組み合わせで摂取もしくは注入することにより、β−アラニン、L−ヒスチジン、及び/又はクレアチンの血漿濃度を増加させるために用いることができる。本発明の組成物は、経口的、経腸的、もしくは非経口的に投与することができる。例えば、本発明の組成物は、経口的に摂取し、もしくは塗り薬もしくはパッチにより皮膚を通じて注入することができる。
【0047】
本組成物は、炭水化物(例えば、単炭水化物)、インスリン、もしくはインスリンの生成を促進する物質を含むことができる。組成物はまた、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、及び/又はインスリン作用修飾因子を含むこともできる。
【0048】
本組成物は、摂取され、注射され、もしくは皮膚を通して吸収され得る栄養補助食品とすることができる。好ましくは、本組成物は1日当たり1回分もしくはそれ以上の回分で投与されることができる。β−アラニンの用量は、約1ミリグラムから約200ミリグラム/キログラム体重の間とすることができ、もしくはβ−アラニンのペプチド(例えばカルノシン)の用量は2.5ミリグラムから500ミリグラム/キログラム体重とすることができる。一つの態様において、投与されるβ−アラニン(又は本発明の他の組成物)の合計量は、ヒトについては1日当たり少なくとも200mg、200mgから5g、もしくは5gからもしくはそれ以上とすることができる。有効成分、例えばβ−アラニン、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニン、もしくはそれらの混合物の1回量は、約200、400、800mg、もしくはそれ以上の量になるよう製剤化することができる。クレアチン(例えばクレアチンモノハイドレート)の用量、もしくは本発明の他の組成物の用量は、約5ミリグラムから200ミリグラム/キログラム体重の間とすることができる。L−ヒスチジン用量、もしくは本発明の他の組成物の用量は、約1ミリグラムから100ミリグラム/キログラム体重の間とすることができる。単炭水化物(例えばグルコース)用量、もしくは本発明の組成物の用量は、約0.5から2.0グラム/キログラム体重の間とすることができる。
【0049】
80キログラムの人では、1日当たりの適切な用量は、β−アラニンが0.08グラムから16.0グラム、もしくはβ−アラニンのペプチドが200ミリグラムから40グラム、クレアチンモノハイドレートが0.4グラムから16.0グラム、L−ヒスチジンが0.08グラムから8.0グラム、又はグルコースもしくは他の単炭水化物が40グラムから160グラムとすることができる。本組成物は、体内へ摂取もしくは注入し得るような、固体状、もしくは液体状、又は懸濁液の状態とすることができる。本組成物は、1日当たり0.08グラムから1000グラムの間もしくはそれ以上の量でヒトにより摂取されることができ、1日を通して1回分もしくはそれ以上の回分で服用することができる。動物では、1日摂取量は体重によって調節されるであろう。
【0050】
一つの態様において、1日当たり投与することができるβ−アラニンのペプチド、例えば、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンの合計用量は、少なくとも500mg、約500mgから約5gの間、約5gから約16gの間、もしくは16gより多くすることができる。β−アラニンのペプチド、クレアチン、アンセリン、もしくはバレニン、又はそれらの混合物の1回分の用量は、0.5、1、1.5、もしくは2gの量(それぞれについて、もしくは全てについて、もしくは混合物を含む製剤中のペプチドについて)になるよう製剤化することができる。
【0051】
ヒト及び動物に対しては、本組成物は以下のようであり得る。
【0052】
(a)1重量%〜99重量%のβ−アラニンもしくは1重量%〜99重量%のβ−アラニンのペプチド;
1重量%〜99重量%のクレアチンモノハイドレート;及び
0重量%〜98重量%の水;
(b)1重量%〜98重量%のβ−アラニンもしくは1重量%〜98重量%のβ−アラニンのペプチド;
1重量%〜98重量%のL−ヒスチジン;
1重量%〜98重量%のクレアチンモノハイドレート;及び
0重量%〜97重量%の水;
(c)1重量%〜20重量%のβ−アラニンもしくは1重量%〜20重量%のβ−アラニンのペプチド;
39重量%〜99重量%のグルコースもしくは他の単炭水化物;及び
0重量%〜60重量%の水;又は
(d)1重量%〜20重量%のβ−アラニンもしくは1重量%〜20重量%のβ−アラニンのペプチド;
1重量%〜20重量%のL−ヒスチジン;
39重量%〜99重量%のグルコースもしくは他の単炭水化物;及び
0重量%〜60重量%の水。
【0053】
一つの態様において、組成物は、少なくとも3日、3日から2週間、2週間から4週間、もしくはより長い期間、体に対して適用される。ある投薬計画では、1日の用量を徐々に増加もしくは減少させる。このことは毎日、2〜3日毎、もしくは週毎に行うことができる。
【実施例】
【0054】
筋肉及び他の組織の無酸素性作業能力を高めるための方法及び組成物の具体的な例を以下に示す。
【0055】
(実施例1)
サラブレッド馬のI型、IIA型、及びIIB型骨格筋線維中のカルノシン濃度に対する、β−アラニン及びL−ヒスチジンの毎日複数回の投与分を含む通常の飼料の補給効果を評価した。年齢4〜6才の、通常の健康状態の6頭の実験用サラブレッド馬(3頭の雌の仔馬、及び3頭の去勢馬)が補給期間の開始に先立って1ヶ月(30日)の食餌調整(補給前期間)を受けた。食餌調整の期間中、各ウマには、1日当たり3回(それぞれ8時30分、12時30分、及び16時30分に)、1キログラムのペレット飼料(Spillers racehorse cubes)と複合及び単炭水化物源として1キログラムの浸した甜菜パルプとを含む飼料を与えた。浸した乾草(3キログラム乾燥重量)も毎日2回(9時、及び17時に)与えた。水を適宜に与えた。
【0056】
補給期間中、同一の給餌法を実施した。しかしながら、それぞれ硬い飼料穀粉をβ−アラニン及びL−ヒスチジン(遊離塩基)とともに補給した。β−アラニン及びL−ヒスチジンは通常の飼料中に直接混合した。β−アラニン及びL−ヒスチジンの個々の用量は体重に従って計算した。β−アラニンは100ミリグラム/キログラム体重で、及びL−ヒスチジンは12.5ミリグラム/キログラム体重で投与した。飼料補給はプロトコルの1日目に始め、30日目の終わりに中断した。ヘパリン化血液サンプル(5ml)を1、6、18、24、及び30日目に採取した。1日目及び30日目には、それぞれの日で最初の給餌の前及び合計12時間について1時間おきに、血液サンプルを採取した。その間の3日のサンプリング日に、最初の給餌の前及びそれぞれ後に続く給餌の2時間後に血液を採取した。補給を始める前の日(0日目)に、皮膚の局所麻酔を施した後にBergstrom-Stille経皮的生検針を用いて各ウマの右中殿筋(m. gluteus medius)からの筋肉生検を行った。その後の筋肉生検は、補給期間(31日目)が終わった後直ちに、初めのサンプリング箇所にできるだけ近くで採取した。ウマの臨床モニタリングは毎日行った。これは、目視検査及び体重の測定、直腸温の毎日2回の測定、そして臨床生化学及び血液学についての週毎の血液サンプリングを含む。調査の経過中、ウマは公式の調教あるいは運動を受けなかったが、毎日1時間の自由な運動をさせた。
【0057】
凍結乾燥した筋肉生検から切った個々の筋線維の断片を、Kaiser and Brook, Arch. Neurol., 23:369-379 (1970)に述べられている方法の修正によってpH4.5でプレインキュベーションした後、pH9.6でミオシンATPアーゼ活性についての組織化学的染色によって、I型、IIA型、もしくはIIB型のいずれかとして特徴付けた。
【0058】
ヘパリン化血漿サンプルは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって抽出し、β−アラニン及びL−ヒスチジン濃度を分析した。個々の重さを量った筋線維はDunnett and Harris, "High-performance liquid chromatographic determination of imidazole dipeptides, histidine, 1-methylhistidine and 3-methylhistidine in muscle and individual muscle fibers," J. Chromatogr. B. Biomed. Appl., 688:47-55 (1997)に述べられている方法に従ってHPLCにより抽出しカルノシンについて分析した。
【0059】
一元配置分散分析(ANOVA)を用いて、補給前及び補給後の線維型の中のカルノシン濃度の差がウマの中で確認された。差が検出された事例では、有意性を多重比較検定(フィッシャーのPLSD法)を用いて決定した。
【0060】
β−アラニン及びL−ヒスチジンを飼料に加えることによる嗜好の問題はなかった。補給の30日の間、補給された飼料による生理学的もしくは行動的悪影響はウマのいずれにも観察されなかった。体重の有意な変化は記録されず、また直腸温は通常の範囲内を維持していた。臨床生化学的あるいは血液学的な急性もしくは慢性の変化は観察されなかった。補給の開始前にはウマのいずれの血漿中にもβ−アラニンは検出されなかった。血漿中のβ−アラニンについての使用したアッセイによる定量の下限値は3マイクロモル(μM)であった。補給の開始前の6頭のウマにおける血漿L−ヒスチジン濃度は、36.6から54.4μMの間であった。
【0061】
全てのサンプリング日にわたる6頭のウマのうち5頭についての血漿β−アラニン及びL−ヒスチジン濃度の個々の変化をそれぞれ図1及び2に示す。補給期間が増加するにつれて、飼料を与える前の血漿β−アラニン及びL−ヒスチジンの濃度が増加する傾向があった。さらに、30日の補給期間にわたり、補給に対する血漿濃度反応もまた増大した。反応はβ−アラニンについてより大きかった。
【0062】
6頭の個々のウマについて、補給期間の初日から最終日の間の、その日の最初の飼料を与える前及びその後1時間おきの血漿β−アラニン及びL−ヒスチジン濃度の変化の比較を、図3aと3b、及び図4aと4bにそれぞれ示す。図3a、3b、3c、3d、3e、及び3fは、飼料補給の30日の期間の初日及び最終日での、β−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前及び与えた後1時間おきの6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。図4a、4b、4c、4d、4e、及び4fは、飼料補給の30日の期間の初日及び最終日での、β−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前及び与えた後1時間おきの6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジン濃度の変化における対比を表すグラフである。図5は、飼料補給の30日の期間の初日及び最終日での、β−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前及び与えた後1時間おきのウマ血漿(n=6)中のβ−アラニンの平均濃度の変化における対比を表すグラフである。補給期間の初日(1日目)及び最終日(30日目)の24時間にわたる血漿β−アラニン濃度の平均(SD)変化(n=6)を図5で対比する。24時間にわたる平均血漿β−アラニン濃度対時間曲線下面積(AUC(0−24hr))は、補給の30日目で非常に大きかった。
【0063】
補給期間の初日(1日目)及び最終日(30日目)の24時間にわたる血漿L−ヒスチジン濃度の平均(SD)変化(n=6)を図6で対比する。24時間にわたる平均血漿β−アラニン濃度対時間曲線下面積(AUC(0−24hr))は、補給の30日目でより大きかった。補給の初日(1日目)と対比して補給の最終日(30日目)での血漿β−アラニンについてのより大きいAUCは、補給を進めるにつれてウマの消化管からのβ−アラニンの取り込みが増大することを示唆している。補給期間中の血漿L−ヒスチジン濃度の変化について同様の影響が観測された。それぞれの場合において飼料を与えた後約1〜2時間で最高血漿濃度のβ−アラニン及びL−ヒスチジンを生じた。
【0064】
6頭のウマから合計397本の個々の骨格筋線維(補給前の192本、補給後の205本)を切ってカルノシンについて分析した。6頭の個々のウマからの補給前及び補給後のI型、IIA型、及びIIB型骨格筋線維における、ミリモル/キログラム乾燥重量(mmol・kg−1dW)で表した平均(SD)カルノシン濃度は表1で与えられる。表1中のnは分析した個々の筋線維の数である。β−アラニン及びL−ヒスチジンを補給した30日間の結果、平均カルノシン濃度は6頭全てのウマのIIA型及びIIB型線維において増加した。これらの増加は7つの場合で統計的に有意であった。IIB型線維骨格筋線維における平均カルノシン濃度の増加は、6頭のウマのうち5頭において統計的に有意であった。IIA型骨格筋線維における平均カルノシン濃度の増加は、6頭のウマのうち2頭において統計的に有意であった。
【表1】
【0065】
6頭のウマからのIIA型及びIIB型骨格筋線維における平均カルノシン濃度の絶対増加量(例えばmmolkg−1dW)及び増加量を表2に挙げる。
【表2】
【0066】
30日間の補給の後に大きな筋肉カルノシン濃度の増加を示した個々のウマは、補給期間の1日目から30日目の間に血漿β−アラニンAUCの大きな増加も示すことが観測された。図7によれば、6頭のウマの5頭について有意な相関関係(r=0.986、p<0.005)が、IIA型及びIIB型骨格筋線維で平均した平均カルノシン濃度の増加と、補給の1日目から30日目の間の、最初の12時間にわたる血漿β−アラニンAUC(AUC(0−12hr))の増加との間に観測された。5頭のウマのみを回帰線を算出するために使用した。ウマ6(黒丸)は、補給の最終日まで、1日目に観測された増加より大きいような血漿β−アラニン濃度の目立った増加は示さなかった。これは、サンプリング日毎に漸進的に増加する他の5頭のウマとは異なっていた。このため、ウマ6は回帰方程式の算出から除外した。
【0067】
β−アラニン及びL−ヒスチジンの30日の補給の結果である筋肉カルノシン濃度の増加は、総筋肉緩衝能力の直接の増加をもたらすであろう。この増加はヘンダーソン−ハッセルバルヒの式を使って計算することができる。6頭のサラブレッドのウマにおけるIIA型及びIIB型骨格筋線維の筋肉緩衝能力の増加についての計算値を表3に示す。
【表3】
【0068】
(実施例2)
ヒトの血漿のβ−アラニン及びβ−アラニルジペプチド濃度に対する、遊離もしくはペプチド結合状態にあるβ−アラニンの毎日1回及び複数回の投与分を含む通常の食餌の補給効果を評価した。約40ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンを供給するブロスを消費した後の、6人の正常な被験者におけるβ−アラニンの血漿濃度を観測した。用量が10及び20ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンも与えた。
【0069】
ブロスは次のように準備した。新鮮な鶏の胸肉(皮なし、及び骨を取り除いたもの)を細かく刻み、水(鶏肉1.5kg毎に対し1リットル)で15分間ボイルした。残った鶏肉を粗く漉して除いた。漉したものにニンジン、タマネギ、セロリ、塩、コショウ、バジル、パセリ、及びトマトピューレを加えて味付けし、さらに15分再ボイルし、その後細かいモスリンを通して最後に漉す前に4℃に冷やした。1.5キログラムの鶏肉及び1リットルの水からの収量が870mLのブロスであった。だし汁の一部を総β−アラニル−ジペプチド含有量(例えば、カルノシン及びアンセリン)及びβ−アラニンについて測定した。典型的な分析値は以下の通りであった。
【0070】
総β−アラニル−ジペプチド 74.5mM
遊離β−アラニン 5.7mM
6人の男性被験者は正常な健康状態であり、表4に示すように年齢25〜53才であった。一晩の絶食(例えば、最後の肉を含む食事の摂取後、最低12時間)後に調査を開始した。調査の開始に先立って、被験者には少量の温湯を摂取する選択の自由が与えられた。8時30分にカテーテル挿入を始め、調査を9時に開始した。
【0071】
コントロールとして、8ミリリットル/キログラム体重の水を摂取させた(例えば、体重75キログラムの被験者では600mL)。
【0072】
1つのセッションで、約40ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニン(例えば、アンセリン及びカルノシンの形態で)を含む8ミリリットル/キログラム体重のブロスを摂取させた。これは、体重75キログラムの被験者に対して、合計が3グラムのβ−アラニンを含む600ミリリットルのブロスの摂取になった。別のセッションでは、さらに5ミリリットル/キログラム体重の水とともに試験量のβ−アラニンを含む3ミリリットル/キログラム体重の液体を摂取させた。全てのセッションにおいて、被験者は、さらに摂取後1〜2時間の間にさらに8ミリリットル/キログラム体重の水(50mL量で)を摂取した。6時間後ベジタリアンピザを与えた。続いて8時間後に通常の食事とした。
【0073】
2.5ミリリットルの静脈血サンプルを、最初の90分間は10分おきに、その後120、180、240及び360分後に留置カテーテルを通して採取した。血液サンプルを、抗凝血剤としてリチウム−ヘパリンを含むチューブ内へ分注した。カテーテルは、生理食塩水で洗い流すことによって維持管理した。血漿サンプルを、Jones & Gilligan (1983) J. Chromatogr. 266:471-482 (1983)に述べられている方法に従いHPLCにより分析した。
【0074】
β−アラニン吸収の調査中の治療の割り当てを表4にまとめた。β−アラニンの推定される等価用量を表3に示す。
【表4】
【0075】
それぞれの治療の後の血漿濃度曲線を図8のグラフに表す。治療によるβ−アラニン、ブロス、もしくはカルノシンの投与の平均結果を表4にまとめる。血漿β−アラニンは、コントロール治療の全ての被験者において、検出限界以下であった。カルノシンとアンセリンのいずれも、チキンブロスの摂取後もしくは他の治療後の血漿中には検出されなかった。ブロスの摂取は、血漿中427.9(SD161.8)μMの最高濃度をもたらした。1人の被験者における、β−アラニンの20ミリグラム/キログラム体重に相当するカルノシンの投与により、血漿β−アラニン濃度の同等な増加が得られた。
【0076】
コントロール以外の全ての治療を行うことにより、血漿タウリン濃度が増加した。タウリン濃度の変化は、β−アラニンの濃度変化を厳密に反映した。自然食品であるブロスの投与が、血漿タウリンの同等の増加をもたらすが、それはその反応が通常、ほとんどの食事の摂取後に起こることを示している。
【0077】
(実施例3)
β−アラニン及びタウリンの血漿濃度プロファイルに対する、7日間に1日当たり10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分(すなわち、朝、昼、及び夜に投与される)を投与した効果を調べた。10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンを投与した後の血漿濃度プロファイルを、3人の被験者において7日の期間の開始時及び終了時に調査した。その間、被験者には1日当たりβ−アラニンの3回分を与えた。
【0078】
年齢33〜53才の、正常な健康状態である3人の男性被験者を調べた。被験者は、1日当たり10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分の投与を8日間受けた。2人の被験者では、これに続きさらに7日間(9〜15日目)、1日当たり20ミリグラム/キログラム体重の3回分を与えた。被験者は、1日目(あらゆる治療の前)と8日目及び15日目には、一晩の絶食後の午前8時に血液収集ラボに報告を行った。被験者には、調査前の12時間の間は肉の入った食事は何も摂らないように要請した。これらの3日間の各試験日に、被験者にカテーテルを挿入し、午前9時、正午12時、及び午後3時、又はその前後にβ−アラニンが投与された際に初期の血液サンプルを採取した。血液サンプルを30、60、120及び180分後に採取し、β−アラニン及びタウリンの血漿濃度の変化について分析した。24時間の尿サンプルを各調査日にわたって収集し、HPLCで分析し、β−アラニン及びタウリンの排出量を測定した。治療を表5にまとめた。
【表5】
【0079】
血漿β−アラニン濃度を図9にまとめた。各回に摂取後30分もしくは1時間でβ−アラニン濃度のピークを生じ、次回投与の直前である3時間で、0〜10マイクロモルの基礎レベルまで下がった。治療の8日目の反応性は、血漿濃度曲線下面積で示されるように1日目より低い傾向があった。
【0080】
(実施例4)
筋肉のカルノシン含量及び最大随意収縮力の66%での等尺性持久力に対する、2週間に1日当たり40ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分(すなわち、朝、昼、及び夜に投与される)を投与した効果を調べた。
【0081】
代謝性もしくは筋肉疾患の徴候を有していなかった、年齢25から32才の6人の正常な男性被験者を募集して調査した。被験者には最近の食事及びサプリメント習慣について質問した。現在クレアチンを含む栄養補助食品を摂っているか、もしくは最近の試験の補給手順でそのように摂ったことがある被験者はいなかった。被験者の身体的特徴を表6にまとめる。
【表6】
【0082】
治療2日前、被験者を座った姿勢にして、膝の伸筋の最大随意(等尺性)収縮力(MVC)の予備測定を行った。MVCは、被験者を力の出力の即時画像表示によってやる気を出させながらMacflexシステムを用いて測定した。各被験者について、2回の試行を行い、声の励ましにもかかわらず目標の力がもはや維持できなくなるまで持続される、66%MVCでの持久力を測定した。この最初の収縮の後に、被験者を等尺状態のイスにつかせたままで60秒の休憩時間をとらせた。休憩時間の後、2回目の収縮を疲労するまで持続させた。2回目の60秒の休憩後、疲労までの3回目の収縮を行った。
【0083】
治療1日前、被験者は午前8時から10時の間に等尺性試験ラボに報告を行った。MVCを測定し、3回の収縮にわたる66%MVCでの持久力は、上述したように60秒の休憩間隔で測定した。被験者の利き足を用いて測定を行った。外側広筋の外側部の生検を再び利き足から採取した。
【0084】
治療調査の1日目に、被験者は、一晩の絶食後でかつ最後の肉が入った食事から最低12時間後の午前8時に血液サンプリングラボに報告を行った。カテーテルを挿入及び基礎血液サンプル後、各被験者は実施例3で述べた補給及び血液サンプリングプロトコルに従った。10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの1回分を、0時間(午前9時)、3時間、及び6時間に投与した。
【0085】
2〜15日目に、被験者は10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分を摂り続けた。
【0086】
14日目の朝、治療後の等尺性運動試験を利き足で行い、MVCと、治療前の日に測定した66%MVCに対する66%MVCでの持久力とを測定した。午後に、外側広筋の、治療前の日に採取した生検の部位の近くから筋肉生検を採取した。
【0087】
15日目に、1日目に従った手順を繰り返して、15日間の補給にわたるβ−アラニン及びタウリンの血漿濃度プロファイルのあらゆる全体的なシフトを測定した。1日当たり3×10ミリグラム/キログラム体重で投与する1日目及び15日目の0、3、及び6時間での、10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンを経口摂取した後9時間にわたる血漿β−アラニンの平均変化を、図10に示す。
【0088】
1人追加の被験者(ナンバー7)は調査に従い、7日間に10ミリグラム/キログラム体重の3回分を摂った後、7日間に20ミリグラム/キログラム体重の3回分を摂った。この被験者からは筋肉生検を採取しなかった。
【0089】
生検を採取した6人の被験者の筋肉中の筋肉カルノシン含有量に明らかな変化はなかった。6人の被験者における血漿タウリン濃度の変化は、実施例2で述べたように、β−アラニンの濃度変化を反映していた。
【0090】
10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分による治療1日前及び治療後14日後のMVC及び66%MVCでの持久力の測定値を表7に挙げる。66%MVCでの平均持久時間は、6人の被験者のうち5人で増加した。増加はより多く投与された被験者7でも見られた。
【表7】
【0091】
(実施例5)
筋肉カルノシン含有量に対する、2つの投与計画を用いた4週間のβ−アラニン補給と4週間にわたり投与された等モルのL−カルノシン(β−アラニルヒスチジン)の効果を調べた。
【0092】
明らかな臨床疾患の徴候がなく、身長及び体重が正常な範囲である、年齢20〜29才の15人の男性被験者を募集し調査した(表8)。全ての被験者は一種類以上のスポーツに参加して、全員が可変量の肉を含む混合食を食べた。調査の過程で各被験者の肉のおおよその取り込み量の記録をとった。
【表8】
【0093】
5人の被験者は、3つの治療グループ(1、2、及び3)の1つに割り振られた。調査の間、彼らの食事には表9(図17)で述べたようにβ−アラニンかカルノシンのいずれかが補給された。補給は400mgβ−アラニンか500mgカルノシンのいずれかを含むソフトゼラチンカプセルで与えた。
【0094】
グループ1では、4週間決まった割合で1日を通して4回に分けた用量(1日4回)のβ−アラニンを投与した。
【0095】
グループ2では、より一様な血漿濃度の増加を維持しようとして、1日を通して4回よりむしろ8回に分けた用量としてβ−アラニンを投与した。加えて、投与量を週毎に1日当たり800mgずつ段階的に増加させた。
【0096】
グループ3では、カルノシンを再び8回に分けてグループ2とおおよそ同じ等モル量で投与した。従って、この治療は、その構成アミノ酸に加水分解した場合、グループ2とおおよそ同一量のβ−アラニンを含んでいた。
【0097】
被験者には表9(図17)に示す時間に補給を行った。Bergstroemの経皮針生検の手順(1962)を用いて、補給前及び補給の終了時に外側広筋の単一の筋肉生検を採取した。要するに、その手順は、約100〜700本の筋線維を含む約20〜40mgの試料を得るために局部麻酔した無菌状態で中空針を挿入することを伴う。皮膚及び皮下組織は1%リグノカインで麻酔する(筋肉への接触は避ける)。手術用メスの刃で皮膚及び深在筋膜まで切開する。セントラルロッドの無い針を筋肉内へ挿入する。筋肉の塊が針の側面の窓の内側へ押し込まれる。サンプルを、内側の鋭いシリンダーを針に沿って押し込むことにより切り取る。針を取り出し、セントラルロッドを試料を排出するために用いる。そしてその傷を閉じる。
【0098】
被験者からの筋肉サンプルを液体窒素中で凍結させ、凍結乾燥して、HPLCにより筋肉カルノシン及びタウリン含有量を分析した。表9(図17)に3つの治療グループのそれぞれに採用した投与計画の内訳を示す。結果、β−アラニンもしくはカルノシンを補給した被験者のいずれにも体格の変化はなかった。
【0099】
(筋肉カルノシンの変化(表10並びに、図12及び13))
グループ1及び3の被験者については筋肉カルノシン含有量の有意な増加は記録されなかった。グループ2では、最も高い初期カルノシン含有量(初期カルノシン含有量:33.3mmol/kg乾燥筋肉)を持つ1人の被験者(ナンバー10)は、筋肉カルノシン含有量に変化はなかった(後の含有量:33.7mmol/kg乾燥筋肉)。この被験者をグループ2から除くと、このグループは、他のグループで見られるのと同じ程度の有意な増加を示した。被験者10は、中高程度に肉を消費する人であるが、それ以外の目立った特徴は無い。
【0100】
同じ用量でβ−アラニンもしくはカルノシンのどちらを補給しても(グループ2及び3)、筋肉カルノシン含有量の増加において同等の効果があるように思われる。
【0101】
この変化のパターンはクレアチンの添加によって観測される変化と良く似ており、これ以上の効果の無いさらなる補給によって速やかに到達する閾値があることを示唆しているかもしれない。被験者10の場合には、この理論にとらわれるわけではないが、補給の開始前でも閾値に到達しているように思われる。しかしながら、上限の概念には例外がある。特に被験者6(補給後のカルノシン:45.9mmol/kg乾燥筋肉)及び被験者15(補給後のカルノシン:68.9mmol/kg乾燥筋肉)である。被験者6及び15は、その食習慣もしくは運動への参加のいずれにおいても目立った特徴はなかった。
【0102】
表10は、治療グループ1〜3についてのカルノシンの筋肉濃度のデータをまとめたものである。イタリック文字の治療グループ2には、筋肉カルノシン濃度の増加を示さなかった被験者10が入っていない。被験者10の初期カルノシン濃度は、全ての被験者の最高値であったが、補給前に既に「上限値」レベルであったのかもしれない。
【表9】
【0103】
(筋肉β−アラニン及びヒスチジンの変化(表11及び図14)
補給前及び補給の終了時に、筋肉β−アラニン濃度は検出限界(<0.2mmol/kg乾燥筋肉)以下であった。何人かの被験者では、最後の筋肉生検から1〜2時間以内にβ−アラニンの最後の投与が行われた。
【0104】
β−アラニンもしくはカルノシンのいずれの補給によっても筋肉ヒスチジン濃度の変化はなく、後者は全身循環へヒスチジンを放出する可能性を有している。増加したカルノシンの合成(各モルがヒスチジンの1モルを必要とする)に対するヒスチジン濃度の低下はなかった。
【0105】
(筋肉タウリンの変化(表12並びに、図15及び図16)
高濃度のβ−アラニンは、組織内へのタウリンの取り込みを妨げる可能性があるが、前述の観測はβ−アラニン及びカルノシンの両方の投与後の、血漿タウリン濃度の増加と尿中のタウリンの減少を示しており、この調査では3つのグループのいずれにおいても筋肉タウリンの減少は確認されていない。いくつかの個体では筋肉タウリン含有量の顕著な変化を生じたが、増加と減少の両方が観測された。図15は、4つの異なる治療グループにおける補給前及び補給後のタウリンの筋肉濃度(平均+SD)を示すデータを説明するグラフである。図16は、異なる被験者における補給前及び補給後のタウリンの筋肉濃度(平均+SD)を示すデータを説明するグラフである。
【0106】
(結論)
これらの調査は、本発明のβ−アラニン及びカルノシンの補給は、筋肉カルノシン含有量を増加させる可能性があることを説明している。試験結果に基づくと、組織中のカルノシンを増加させるのに同様に有効であると思われる。
【0107】
筋肉緩衝能力の変化は、激しい運動中にH+の蓄積に対抗して細胞内微小環境を維持するのを助ける。そのようなものとして、β−アラニンもしくは摂取時にβ−アラニンを送達する化合物の補給は、スポーツ及び乳酸蓄積を引き起こすような一般的な日常活動における運動能力に対して良い効果を及ぼすことができる。カルノシン(抗酸化及び抗糖化剤として)に起因する他の化学的活性の点で、カルノシン濃度の増加は、筋肉緩衝能力の増大から生ずるものとは別の他の有益な効果を及ぼすことができる。
【0108】
4週間の補給では、筋肉中のタウリンの明らかな減少は何ら起きなかった。
【表10】
【表11】
【0109】
本発明の多くの実施態様を説明してきた。いずれにせよ、本発明の精神及び目的を逸脱しない範囲で様々な変更が可能であることは理解されるであろう。従って、他の実施態様は添付の特許請求の範囲の適用範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
この発明は、医薬品及び生理機能の技術分野に関する。一つの態様においては、本発明は筋肉の緩衝能力を高め筋疲労を軽減させるための方法を提供する。本発明はまた、筋肉及び他の組織の無酸素性作業能力を高めるための方法及び組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
普通の栄養補助食品は、典型的には、現代のヒト及び動物の食事において低下した栄養素のレベルを補うように設計される。特に、有用な栄養補助食品は、摂取した場合に組織の機能を増進させる。普通の食生活では肉類及び動物性食品からのみ得ることができる栄養素が不足する可能性がある特定の種類の動物(例えば、菜食主義者の人間、及び草食性の食物を摂取する他の動物)の食事を補完することは特に重要となり得る。
【0003】
例えば、スポーツ及び運動競技社会においては、レジャーもしくは労働目的のための身体的能力を進展もしくは強化する栄養補助食品のような、運動能力を具体的に改善する普通の栄養補助食品はますます重要になっている。別の例では、嫌気的(例えば乳酸生成)ストレスは、酸素の可用性が制限され得る(例えば末梢血管障害、フリーダイビングもしくはシンクロナイズドスイミング)ような、激しい運動(例えば、サッカーもしくはアイスホッケーにおける持続的もしくは断続的な短距離走)や、老化によって経験され得る疲労及び苦痛の発現を引き起こし得る。嫌気的ストレスはまた、筋肉内圧の増大によって局所的な血行が部分的もしくは全体的に閉塞されたとき(例えば、ロッククライミングの間)の長時間の最大等尺運動に起因し得る。過剰な乳酸生成は、細胞内環境の酸性化を引き起こし得る。
【0004】
クレアチン(すなわち、N−(アミノイミノメチル)−N−グリシン、N−アミジノサルコシン、N−メチル−N−グアニルグリシン、もしくはメチルグリコシアミン)は、高くまた可変のエネルギー需要に対する能力によって特徴付けられる、骨格筋及び他の「興奮」組織(例えば、平滑筋、心筋、もしくは精子)中に大量に見出される。クレアチンは、細胞内のエネルギー生成の生化学的経路においてホスホリルクレアチンへと変換される。哺乳類の骨格筋において、クレアチン(すなわち、クレアチン及びホスホリルクレアチン)の全てを含めた標準的な含有量は、25未満から約50mmol/キログラム新鮮筋肉(すなわち3.2〜6.5グラム/キログラム新鮮筋肉)まで変化し得る。
【0005】
クレアチンは肝臓で形成され、能動輸送系によって筋肉等の組織へと取り込まれる。体内でのクレアチン合成はまた、肉類に存在するクレアチンの摂取(例えば、平均的な肉食の人で5〜10ミリグラム/キログラム体重・日、及び菜食ではほぼゼロ)によって増加し得る。
【0006】
持続的な激しい運動中、あるいは局所的な低酸素状態の条件下で持続される運動中に、解糖及び乳酸の蓄積(嫌気的代謝)の際に形成されるヒドロニウムイオンの蓄積が、細胞内pHを大幅に低下させ得る。低下したpHは、クレアチン−ホスホリルクレアチン系の機能を危うくし得る。細胞内pHの低下は、筋線維における収縮性タンパク質の機能のような、細胞内の他の機能に影響を及ぼし得る。
【0007】
カルノシン(β−アラニル−L−ヒスチジン)、アンセリン(β−アラニル−L−1−メチルヒスチジン)、もしくはバレニン(β−アラニル−L−3−メチルヒスチジン)を含む、β−アラニンとヒスチジンとのジペプチド(ここではペプチドとも呼ぶ)、及びそれらのメチル化類似体は、ヒト及び他の脊椎動物の筋肉中に存在する。カルノシンは、例えば、ヒト及びウマの筋肉中に相当量見出される。アンセリン及びカルノシンは、例えば、イヌ、ラクダ及び多数の鳥類の筋肉中に見出される。アンセリンは、多くの魚類における主要なβ−アラニルヒスチジンジペプチドである。バレニンは、水生哺乳動物及び爬虫類のいくつかの種における主要なβ−アラニルヒスチジンジペプチドである。ヒト、ウマ、及びラクダでは、激しい運動中に広範に使われる収縮が速い解糖型筋線維(IIA型及びIIB型)中に、最も高い濃度のβ−アラニルヒスチジンジペプチドが見出される。酸化型の収縮が遅い筋線維(I型)ではより低い濃度が見出される。例えば、(非特許文献1)を見ること。カルノシンが、異なる筋線維型、及びウマII型線維における全体の最大50%までにおいてヒドロニウムイオン緩衝能力に寄与することは知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Dunnett, M. & Harris, R.C. Equine Vet. J., Suppl. 18, 214-217 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、組織における無酸素性作業能力を高めるための方法及び組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、組織中における無酸素性作業能力を高める方法であって、以下のステップ、(a)β−アラニルヒスチジンジペプチドと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを準備するステップ、並びに(b)β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量で組織に投与し、それによって組織における無酸素性作業能力を高めるステップ、を含む前記方法を提供する。本発明は、組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節する方法であって、以下のステップ、(a)β−アラニルヒスチジンジペプチドと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを準備するステップ、並びに(b)β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織でのヒドロニウムイオン濃度を増加させるのに効果的な量で組織に投与するステップ、を含む前記方法を提供する。
【0011】
本方法の一つの態様において、β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織へ投与するステップは、経口投与、血液もしくは血漿への投与、又はそれらの組み合わせを含む。β−アラニルヒスチジンジペプチドには、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニン、又はそれらの類似体もしくは模倣体を含み得る。
【0012】
本発明は、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニンもしくはその類似体を含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物を含む組成物を提供する。一つの態様において、β−アラニンは、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニン等のβ−アラニルヒスチジンジペプチド、又はその類似体を含む。本組成物は、少なくともクレアチン又は炭水化物をさらに含むことができる。
【0013】
一つの態様において、インスリン模倣体は、D−ピニトール(3−O−メチル−チロイノシトール)、4−ヒドロキシイソロイシン、デメチル−アステリキノンB−1化合物、αリポ酸、R−αリポ酸、グアニジノプロピオン酸、バナジウム化合物、バナジウム錯体、もしくは合成ホスホイノシトールグリカンペプチドを含む。インスリン作用修飾因子は、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、もしくはビグアニドであることができる。
【0014】
別の態様において、本組成物は医薬組成物、栄養補助食品、もしくはスポーツドリンクである。栄養補助食品もしくはスポーツドリンクは、ヒト用のサプリメントとすることができる。医薬品組成物はヒト用に製剤化することができる。
【0015】
本発明は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5グラムもしくはそれ以上の、β−アラニン又はその類似体もしくは模倣体を有するペプチドもしくはエステルを含む組成物を提供する。本発明は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5グラムもしくはそれ以上の、β−アラニン(又はその類似体もしくは模倣体)を有するペプチドもしくはエステルを含む注射剤型の組成物を提供する。一つの態様において、ペプチドは、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニン等のβ−アラニルヒスチジンジペプチド、又はその類似体もしくは模倣体を含む。
【0016】
本発明は、少なくとも200、225、250、275、300、325、350、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975もしくは1000mgもしくはそれ以上の、β−アラニン又はβ−アラニン類似体もしくは模倣体を含む、ヒト用に製剤化された組成物を提供する。一つの態様において、本組成物は、摂取可能な状態に製剤化されるか、もしくは注射剤型である。摂取可能な剤型は、飲料、ジェル、食品、もしくは錠剤とすることができる。ペプチドには、カルノシン、アンセリンもしくはバレニン等のβ−アラニルヒスチジン、又はその類似体もしくは模倣体を含むことができる。
【0017】
本発明は、対象における組織の無酸素性作業能力を高める方法であって、以下のステップ、(a)(i)グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニン又はその類似体もしくは模倣体を含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物、(ii)注射剤型の、少なくとも0.5gのβ−アラニンを含むペプチドもしくはエステル、又は(iii)少なくとも200mgのβ−アラニン、を含む組成物を準備するステップ、並びに(b)組織の無酸素性作業能力を高めるのに効果的な量で対象に組成物を投与するステップ、を含む前記方法を提供する。一つの態様において、β−アラニンの24時間の合計用量は、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5グラムもしくはそれ以上である。β−アラニンの24時間の合計用量は、約0.2gから約6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0グラムもしくはそれ以上の間とすることができる。本組成物は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14もしくは15日又はそれ以上の期間にわたって与えられ得る。本組成物は、少なくとも約3日から約2、3、4週間もしくはそれ以上までの期間にわたり与えられ得る。β−アラニンには、カルノシン、アンセリンもしくはバレニン等のβ−アラニルヒスチジンジペプチド、又はその類似体もしくは模倣体を含むことができる。β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量は、少なくとも約0.5gであり、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5グラムもしくはそれ以上とすることができる。β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20グラム又はそれ以上より大きくすることができる。β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量は、約5g〜約16gとすることができる。本組成物は、複数回投与で投与され得る。本組成物は、24時間に少なくとも2回から8回投与され得る。一つの態様において、約200mg、225、250、275、300、325、350、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975もしくは1000mgのβ−アラニン(又はその類似体もしくは模倣体)、及び/又は約500mg(又は、約200mg、225、250、275、300、325、350、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、もしくは1000mg)のカルノシン(又はその類似体もしくは模倣体)が、数週間の期間にわたり1日に約2回から8回もしくはそれ以上(例えば、1日に2、3、4、5、6、7、8回もしくはそれ以上)投与される。一つの態様において、少なくとも約2gのβ−アラニン、もしくは少なくとも約5gのカルノシンが、約2、3もしくは4日の期間にわたり1日に約2回から8回投与される。
【0018】
一つの態様において、投与される本発明の組成物の量は日々増加させる。投与される本発明の組成物の量は毎週増加させることができる。本組成物は、少なくとも約4週間継続する治療期間において投与することができる。
【0019】
本発明は特定の作用機構のいずれにも限定されるものではないが、本発明は、対象における組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節する方法であって、以下のステップ、(a)(i)グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニン又はその類似体もしくは模倣体を含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物、(ii)注射剤型の、少なくとも0.5グラムのβ−アラニンを含むペプチドもしくはエステル、又は(iii)少なくとも200mgのβ−アラニン、を含む組成物を準備するステップ、並びに(b)組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節するのに効果的な量で対象に組成物を投与するステップ、を含む前記方法を提供する。
【0020】
一つの態様において、本発明は、筋肉及び他の組織の無酸素性作業能力を高めるための方法及び組成物であることを特徴とする。本発明の方法及び組成物は、体における組織内での、クレアチン、及び/又はβ−アラニルヒスチジンジペプチド、もしくはβ−アラニン及びL−ヒスチジン類似体の同時の蓄積を与える。本方法は、体内へ組成物を摂取すること又は注入することを含む。一つの態様において、本組成物は、クレアチンのアベイラビリティ及び取り込みを増大させる能力がある化合物と、ヒト及び動物組織におけるβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成及び蓄積のための前駆体との混合物である。本発明の組成物は、体内へ導入されたときに、ヒトもしくは動物体におけるβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成及び蓄積を誘起することができる。
【0021】
本組成物は、β−アラニンや、カルノシン、アンセリン、及びバレニン、さらにそれらの類似体等の、β−アラニンのエステル、β−アラニンのペプチドのようなβ−アラニンの化学的誘導体及び類似体を含むことができる。本組成物はまた、L−ヒスチジン及びその混合物を含んでいても良い。β−アラニン及び/又はL−ヒスチジンのそれぞれは、個々のアミノ酸として、又はジペプチド(例えば、カルノシン、アンセリン、及び/又はバレニン)、オリゴペプチド、もしくはポリペプチドの構成成分として製剤化され又は投与することができる。β−アラニン、L−ヒスチジン、カルノシン、アンセリン、及び/又はバレニン、もしくはβ−アラニンのペプチドは活性誘導体であり得る。活性誘導体は、ある物質から誘導されもしくはある物質の前駆体であり、また体内においてその物質と同じかもしくは類似する状態で機能し、あるいは体内に置かれた場合にその物質へと加工されるものである。例としては、例えば、エステル及びアミドが含まれる。組成物はまた、クレアチン、炭水化物、インスリン、インスリン模倣体、インスリン作用修飾因子もしくはグリシンのいずれか一以上を含むことができる。本発明の組成物は、栄養補助食品(例えば、飲料、ジェル、食品を含む)又はヒトもしくは動物のための医薬品組成物の調製に用いることができる。本発明の組成物は、本発明の方法のいずれにおいても用いることができる。
【0022】
一つの態様において、本発明は、組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節するための組成物及び調節する方法であることを特徴とする。本方法は、組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のβ−アラニンを血液もしくは血漿に供与するステップと、血液もしくは血漿に組織を触れさせ、それによって組織でのβ−アラニルヒスチジンの濃度を増加させるステップとを含む。β−アラニルヒスチジンは、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンとすることができる。本方法は、β−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のL−ヒスチジンを血液もしくは血漿に供与するステップを含むことができる。
【0023】
一つの態様において、本発明は、組織の無酸素性作業能力を高める方法であることを特徴とする。本方法は、組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のβ−アラニンを血液もしくは血漿に供与するステップと、組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のL−ヒスチジンを血液もしくは血漿に供与するステップと、血液もしくは血漿に組織を触れさせるステップとを含む。β−アラニルヒスチジンの濃度は組織中で増加する。
【0024】
別の態様において、本方法は、組織でのクレアチンの濃度を増加させるステップを含むことができる。その増加させるステップは、組織でのクレアチンの濃度を増加させるのに効果的な量のクレアチンを血液もしくは血漿に供与すること(例えば、クレアチンを血液もしくは血漿に供与することによって)を含むことができる。
【0025】
本方法の供与するステップは、摂取によってそれらの構成アミノ酸へと加水分解され、体にとってβ−アラニンの源となるような、β−アラニンや、カルノシン、アンセリン、及びバレニン等のβ−アラニンのペプチドのある量を含む組成物の、摂取、注入(例えば、注射)、もしくは摂取及び注入の組み合わせを含むことができる。本発明の方法はまた、L−ヒスチジン、クレアチン、炭水化物、インスリン、インスリン模倣体、インスリン作用修飾因子及び/又はグリシンを供与することを含む。
【0026】
さらに別の態様において、本方法は、血液又は血漿中のインスリンの濃度を増加させることを含むことができる。インスリンの濃度は、例えばインスリンの注射によって増加させることができる。本発明の方法はまた、注射、摂取、もしくは当業者に知られた、体(対象とも呼ぶ)へのインスリン模倣体の送達の他の形態を含むことができる。インスリン模倣体の例には、限定されるものではないが、D−ピニトール(3−O−メチル−チロイノシトール)、4−ヒドロキシイソロイシン、L783,281(デメチル−アステリキノンB−1化合物)、αリポ酸、R−αリポ酸、グアニジノプロピオン酸、硫酸バナジル等のバナジウム化合物、もしくはペルオキソバナジウム等のバナジウム錯体、及び合成ホスホイノシトールグリカン(PIGペプチド)が含まれる。それに加えもしくは代えて、本発明の方法は、体内におけるインスリンの作用を増進させ又は抑制するための、インスリン作用修飾因子の使用を含むことができる。インスリン作用修飾因子の例には、限定されるものではないが、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、及びビグアニドが含まれ得る。
【0027】
さらに別の態様において、本方法は、体にグリシンを供与することを含む。グリシンは、食事の摂取の後の血液における血糖の遊離を抑えることができると考えられている。グリシンは、より多くのグルコースの取り込みを促進することによってインスリン感受性を高めるのかもしれない。従って本方法は、本発明の組成物及び方法において、グリシンを単独で又はインスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とともに供与することを含む。グリシンは、様々な形態で、例えば、単独もしくは栄養補助食品の中になど他の物質とともに供与することができる。あるいは、グリシンはゼラチン等の他の供給源から得ることができる。
【0028】
本発明でいう組織は、骨格筋であり得る。
【0029】
一つの態様において、本発明は、本発明の方法を実施するための組成物を提供する。従って、本発明の一態様は、本発明の方法を実施するための、β−アラニン、β−アラニルヒスチジンペプチド(又はその類似体もしくは誘導体)、クレアチン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子、グリシン、及び炭水化物を含む一以上の有効成分を有する組成物を意図している。本発明はさらに、本発明の方法を実施することを目的として、体に一以上の有効成分を供与するために製剤化された複合的な組成物の使用を意図している。
【0030】
従って、例となる態様において、本発明は、β−アラニンもしくはβ−アラニンのペプチド源、約39重量%ないし約99重量%の炭水化物、及び最高約60重量%の水から本質的に構成される組成物であることを特徴とする。本組成物は、約0.1重量%ないし約20重量%のβ−アラニンを(遊離形態もしくは結合形態で)含むことができる。本組成物は、約0.1重量%ないし約20重量%のL−ヒスチジンを含むことができる。
【0031】
炭水化物は単炭水化物(例えばグルコース)であることができる。
【0032】
別の態様において、本発明は、β−アラニンもしくはβ−アラニンのペプチド源、約1重量%ないし約98重量%のクレアチン源、及び最高約97重量%の水から本質的に構成される組成物であることを特徴とする。本組成物は、約0.1重量%ないし約98重量%のβ−アラニンを含む。ペプチド源にはL−ヒスチジンを含むことができ、そして本組成物はこの供給源からの約0.1重量%ないし約98重量%のL−ヒスチジンを含むことができる。
【0033】
ペプチド源は、アミノ酸、ジペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、もしくはそれらの活性誘導体の混合物であることができる。
【0034】
本組成物は、栄養補助食品とすることができる。クレアチン源はクレアチンモノハイドレートであることができる。
【0035】
β−アラニンを含む、血液もしくは血漿中の構成要素の濃度は、血漿濃度の増加をもたらすように機能し得る薬剤の注入(すなわち、注射)もしくは摂取によって増加させることができる。本組成物は、1日当たり約100ミリグラムないし約800グラムもしくはそれ以上の用量で摂取することができる。その用量は、毎日1回分もしくは複数回の分にして投与することができる。
【発明の効果】
【0036】
筋肉におけるクレアチン及びβ−アラニルヒスチジンジペプチドの増加は、無酸素作業によるヒドロニウムイオン生成の増加に対して細胞の耐性を高め、また疲労が発現する前の運動中の持久力の増大をもたらすことができる。本組成物及び方法は、β−アラニン、L−ヒスチジン、もしくはクレアチンの、食品の調理もしくは加工中のこれらの構成要素の分解もしくは浸出による損失を補正することに寄与することができる。本組成物及び方法はまた、菜食によるこれらの構成要素の不足を補正することに寄与することができる。
【0037】
本方法及び組成物は、スポーツマン、運動選手、ボディービルダー、シンクロナイズドスイミングの選手、兵士、高齢者、競走馬、作業犬及び競争犬、並びに狩猟鳥におけるβ−アラニルヒスチジンジペプチドを増加させるために用いることができ、筋肉疲労の発現を回避し又は遅らせる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、30日間にわたりβ−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前、及び与えた後2時間おきの、5頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化を表すグラフである。
【図2】図2は、30日間にわたりβ−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前、及び与えた後2時間おきの、5頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化を表すグラフである。
【図3a】図3aは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3b】図3bは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3c】図3cは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3d】図3dは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3e】図3eは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図3f】図3fは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4a】図4aは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4b】図4bは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4c】図4cは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4d】図4dは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4e】図4eは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図4f】図4fは、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジンの濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図5】図5は、以上に詳細に述べたように、β−アラニン及びL−ヒスチジンの飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、ウマ血漿(n=6)中のβ−アラニンの平均濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図6】図6は、30日の食餌補給期間の初日及び最終日での、β−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前、及び与えた後1時間おきの、ウマ血漿(n=6)中のL−ヒスチジンの平均濃度の変化における対比を表すグラフである。
【図7】図7は、II型骨格筋線維(IIA型及びIIB型線維の合計の平均)でのカルノシン濃度の6頭のサラブレッド馬における増加と、補給の1日目から30日目の間の、その日の最初の12時間にわたる血漿β−アラニン濃度−時間曲線下面積(AUC(0−12hr))の増加との相関を表すグラフである。
【図8】図8は、被験者へのβ−アラニン、ブロス、もしくはカルノシンの投与の平均結果を表すグラフである。
【図9】図9は、治療の9時間にわたる血漿β−アラニンの平均変化を表すグラフである。
【図10】図10は、10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの経口摂取後9時間にわたる血漿β−アラニンの平均変化を表すグラフである。
【図11】図11は、治療期間の1日目及び30日目の24時間にわたる平均(n=6)血漿β−アラニン濃度を表すグラフである。
【図12】図12は、異なる被験者における治療前及び治療後の筋肉カルノシン濃度の変化を表すグラフである。赤丸は補給する前の筋肉濃度を示す。
【図13】図13は、3つの異なる治療グループにおける補給前及び補給後のカルノシンの筋肉濃度(平均+SD)を表すグラフである。
【図14】図14は、3つの異なる治療グループにおける補給前及び補給後のヒスチジンの筋肉濃度(平均+SD)を表すグラフである。
【図15】図15は、4つの異なる治療グループにおける補給前及び補給後のタウリンの筋肉濃度(平均+SD)を示すデータを説明するグラフである。
【図16】図16は、異なる被験者における補給前及び補給後のタウリンの筋肉濃度(平均+SD)を示すデータを説明するグラフである。
【図17】図17は、以下に表9として詳細に述べられるデータの表を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の一以上の実施態様の詳細を、添付の図面及び以下の記載で説明する。本発明の他の利点及び特徴は、詳細な説明、図面、及び特許請求の範囲から当業者にとって明らかであろう。
【0040】
ここに引用される全ての刊行物、特許、特許出願は、参照することにより本願に明示的に組み込まれる。
【0041】
様々な図面における同種の参照記号は、同種の要素を示している。
【0042】
(詳細な説明)
本発明は、β−アラニン、β−アラニンのペプチド、それらの類似体及び誘導体、β−アラニルヒスチジンジペプチド(例えば、カルノシン、アンセリン、及びバレニン)を含む組成物並びに、組織の無酸素性作業能力を高めるためのこれらの組成物を用いる方法であって、組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量のβ−アラニンを、血液もしくは血漿に与えることを含む方法を提供する。β−アラニルヒスチジンジペプチドには、カルノシン、アンセリン、及びバレニン等のβ−アラニンのペプチドを含むことができる。一つの態様において、それらは約6.8から7.1の間のpKa値を有することができる。一つの態様において、それらは筋収縮及び疲労が進行する間、細胞内pHホメオスタシスの調節に関与し得る。タンパク質中のアミノ酸残基、無機及び有機のリン酸塩及び重炭酸塩のような、ヒドロニウムイオン緩衝に関与する他の物質の含有量は、他の細胞機能におけるそれらの関与によって制約され得る。一つの態様において、β−アラニルヒスチジンジペプチドは、細胞中にpH感受性のヒスチジン残基を蓄積する効果的な手段を提供する。筋肉β−アラニルヒスチジンジペプチド濃度の変動は、個々の運動選手の無酸素性作業能力に影響を及ぼす。
【0043】
β−アラニルヒスチジンジペプチドは、体内でβ−アラニン及びL−ヒスチジンから合成される。これらの前駆体は、体内で生成され得るか、もしくは摂取されたβ−アラニルヒスチジンジペプチドの分解によるものを含め、食物を通じて利用可能とされる。体内では、β−アラニンは筋肉等の組織へ輸送される。典型的な食物が与えられる状態では、ヒト及びウマ血漿中でのβ−アラニンの濃度はL−ヒスチジンの濃度と比較して低い。これらの濃度は、ミカエリス−メンテン定数(Km)によって決められるような、その物質に対するカルノシン合成酵素、カルノシンシンセターゼの親和性との関連で考えられるべきである。ヒスチジンについてのKmは約16.8μMである。β−アラニンについてのKmは約1000から2300μMの間である。カルノシンシンセターゼのβ−アラニンに対する低い親和性、及び筋肉中でのβ−アラニンの低い濃度は、筋肉でのβ−アラニンの濃度がβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成に対して律速になっていることを説明している。
【0044】
筋肉内のβ−アラニルヒスチジンジペプチドの量が増加すると、筋肉の性能及び筋肉によってなし得る作業量に良い影響を及ぼす。従って、ヒトもしくは動物体における組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成及び蓄積を増加させることが望ましい。
【0045】
ヒトもしくは動物体におけるβ−アラニルヒスチジンジペプチドの合成及び蓄積は、体内のクレアチンが増加すること、β−アラニンの血液もしくは血漿濃度が増加すること、β−アラニン及びクレアチンの血液もしくは血漿濃度が増加すること、又はβ−アラニン、L−ヒスチジン、及びクレアチンの血液もしくは血漿濃度が増加することによって増加し得る。ジペプチドの増加はβ−アラニン濃度の増加と同時に起こり得る。
【0046】
一つの態様において、本発明の組成物及び方法は、β−アラニン、β−アラニンのペプチド、L−ヒスチジン、クレアチン、カルノシン、アンセリン、及び又はバレニン、及び/又はそれらの活性誘導体もしくは類似体を単独あるいは様々な組み合わせで摂取もしくは注入することにより、β−アラニン、L−ヒスチジン、及び/又はクレアチンの血漿濃度を増加させるために用いることができる。本発明の組成物は、経口的、経腸的、もしくは非経口的に投与することができる。例えば、本発明の組成物は、経口的に摂取し、もしくは塗り薬もしくはパッチにより皮膚を通じて注入することができる。
【0047】
本組成物は、炭水化物(例えば、単炭水化物)、インスリン、もしくはインスリンの生成を促進する物質を含むことができる。組成物はまた、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、及び/又はインスリン作用修飾因子を含むこともできる。
【0048】
本組成物は、摂取され、注射され、もしくは皮膚を通して吸収され得る栄養補助食品とすることができる。好ましくは、本組成物は1日当たり1回分もしくはそれ以上の回分で投与されることができる。β−アラニンの用量は、約1ミリグラムから約200ミリグラム/キログラム体重の間とすることができ、もしくはβ−アラニンのペプチド(例えばカルノシン)の用量は2.5ミリグラムから500ミリグラム/キログラム体重とすることができる。一つの態様において、投与されるβ−アラニン(又は本発明の他の組成物)の合計量は、ヒトについては1日当たり少なくとも200mg、200mgから5g、もしくは5gからもしくはそれ以上とすることができる。有効成分、例えばβ−アラニン、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニン、もしくはそれらの混合物の1回量は、約200、400、800mg、もしくはそれ以上の量になるよう製剤化することができる。クレアチン(例えばクレアチンモノハイドレート)の用量、もしくは本発明の他の組成物の用量は、約5ミリグラムから200ミリグラム/キログラム体重の間とすることができる。L−ヒスチジン用量、もしくは本発明の他の組成物の用量は、約1ミリグラムから100ミリグラム/キログラム体重の間とすることができる。単炭水化物(例えばグルコース)用量、もしくは本発明の組成物の用量は、約0.5から2.0グラム/キログラム体重の間とすることができる。
【0049】
80キログラムの人では、1日当たりの適切な用量は、β−アラニンが0.08グラムから16.0グラム、もしくはβ−アラニンのペプチドが200ミリグラムから40グラム、クレアチンモノハイドレートが0.4グラムから16.0グラム、L−ヒスチジンが0.08グラムから8.0グラム、又はグルコースもしくは他の単炭水化物が40グラムから160グラムとすることができる。本組成物は、体内へ摂取もしくは注入し得るような、固体状、もしくは液体状、又は懸濁液の状態とすることができる。本組成物は、1日当たり0.08グラムから1000グラムの間もしくはそれ以上の量でヒトにより摂取されることができ、1日を通して1回分もしくはそれ以上の回分で服用することができる。動物では、1日摂取量は体重によって調節されるであろう。
【0050】
一つの態様において、1日当たり投与することができるβ−アラニンのペプチド、例えば、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンの合計用量は、少なくとも500mg、約500mgから約5gの間、約5gから約16gの間、もしくは16gより多くすることができる。β−アラニンのペプチド、クレアチン、アンセリン、もしくはバレニン、又はそれらの混合物の1回分の用量は、0.5、1、1.5、もしくは2gの量(それぞれについて、もしくは全てについて、もしくは混合物を含む製剤中のペプチドについて)になるよう製剤化することができる。
【0051】
ヒト及び動物に対しては、本組成物は以下のようであり得る。
【0052】
(a)1重量%〜99重量%のβ−アラニンもしくは1重量%〜99重量%のβ−アラニンのペプチド;
1重量%〜99重量%のクレアチンモノハイドレート;及び
0重量%〜98重量%の水;
(b)1重量%〜98重量%のβ−アラニンもしくは1重量%〜98重量%のβ−アラニンのペプチド;
1重量%〜98重量%のL−ヒスチジン;
1重量%〜98重量%のクレアチンモノハイドレート;及び
0重量%〜97重量%の水;
(c)1重量%〜20重量%のβ−アラニンもしくは1重量%〜20重量%のβ−アラニンのペプチド;
39重量%〜99重量%のグルコースもしくは他の単炭水化物;及び
0重量%〜60重量%の水;又は
(d)1重量%〜20重量%のβ−アラニンもしくは1重量%〜20重量%のβ−アラニンのペプチド;
1重量%〜20重量%のL−ヒスチジン;
39重量%〜99重量%のグルコースもしくは他の単炭水化物;及び
0重量%〜60重量%の水。
【0053】
一つの態様において、組成物は、少なくとも3日、3日から2週間、2週間から4週間、もしくはより長い期間、体に対して適用される。ある投薬計画では、1日の用量を徐々に増加もしくは減少させる。このことは毎日、2〜3日毎、もしくは週毎に行うことができる。
【実施例】
【0054】
筋肉及び他の組織の無酸素性作業能力を高めるための方法及び組成物の具体的な例を以下に示す。
【0055】
(実施例1)
サラブレッド馬のI型、IIA型、及びIIB型骨格筋線維中のカルノシン濃度に対する、β−アラニン及びL−ヒスチジンの毎日複数回の投与分を含む通常の飼料の補給効果を評価した。年齢4〜6才の、通常の健康状態の6頭の実験用サラブレッド馬(3頭の雌の仔馬、及び3頭の去勢馬)が補給期間の開始に先立って1ヶ月(30日)の食餌調整(補給前期間)を受けた。食餌調整の期間中、各ウマには、1日当たり3回(それぞれ8時30分、12時30分、及び16時30分に)、1キログラムのペレット飼料(Spillers racehorse cubes)と複合及び単炭水化物源として1キログラムの浸した甜菜パルプとを含む飼料を与えた。浸した乾草(3キログラム乾燥重量)も毎日2回(9時、及び17時に)与えた。水を適宜に与えた。
【0056】
補給期間中、同一の給餌法を実施した。しかしながら、それぞれ硬い飼料穀粉をβ−アラニン及びL−ヒスチジン(遊離塩基)とともに補給した。β−アラニン及びL−ヒスチジンは通常の飼料中に直接混合した。β−アラニン及びL−ヒスチジンの個々の用量は体重に従って計算した。β−アラニンは100ミリグラム/キログラム体重で、及びL−ヒスチジンは12.5ミリグラム/キログラム体重で投与した。飼料補給はプロトコルの1日目に始め、30日目の終わりに中断した。ヘパリン化血液サンプル(5ml)を1、6、18、24、及び30日目に採取した。1日目及び30日目には、それぞれの日で最初の給餌の前及び合計12時間について1時間おきに、血液サンプルを採取した。その間の3日のサンプリング日に、最初の給餌の前及びそれぞれ後に続く給餌の2時間後に血液を採取した。補給を始める前の日(0日目)に、皮膚の局所麻酔を施した後にBergstrom-Stille経皮的生検針を用いて各ウマの右中殿筋(m. gluteus medius)からの筋肉生検を行った。その後の筋肉生検は、補給期間(31日目)が終わった後直ちに、初めのサンプリング箇所にできるだけ近くで採取した。ウマの臨床モニタリングは毎日行った。これは、目視検査及び体重の測定、直腸温の毎日2回の測定、そして臨床生化学及び血液学についての週毎の血液サンプリングを含む。調査の経過中、ウマは公式の調教あるいは運動を受けなかったが、毎日1時間の自由な運動をさせた。
【0057】
凍結乾燥した筋肉生検から切った個々の筋線維の断片を、Kaiser and Brook, Arch. Neurol., 23:369-379 (1970)に述べられている方法の修正によってpH4.5でプレインキュベーションした後、pH9.6でミオシンATPアーゼ活性についての組織化学的染色によって、I型、IIA型、もしくはIIB型のいずれかとして特徴付けた。
【0058】
ヘパリン化血漿サンプルは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって抽出し、β−アラニン及びL−ヒスチジン濃度を分析した。個々の重さを量った筋線維はDunnett and Harris, "High-performance liquid chromatographic determination of imidazole dipeptides, histidine, 1-methylhistidine and 3-methylhistidine in muscle and individual muscle fibers," J. Chromatogr. B. Biomed. Appl., 688:47-55 (1997)に述べられている方法に従ってHPLCにより抽出しカルノシンについて分析した。
【0059】
一元配置分散分析(ANOVA)を用いて、補給前及び補給後の線維型の中のカルノシン濃度の差がウマの中で確認された。差が検出された事例では、有意性を多重比較検定(フィッシャーのPLSD法)を用いて決定した。
【0060】
β−アラニン及びL−ヒスチジンを飼料に加えることによる嗜好の問題はなかった。補給の30日の間、補給された飼料による生理学的もしくは行動的悪影響はウマのいずれにも観察されなかった。体重の有意な変化は記録されず、また直腸温は通常の範囲内を維持していた。臨床生化学的あるいは血液学的な急性もしくは慢性の変化は観察されなかった。補給の開始前にはウマのいずれの血漿中にもβ−アラニンは検出されなかった。血漿中のβ−アラニンについての使用したアッセイによる定量の下限値は3マイクロモル(μM)であった。補給の開始前の6頭のウマにおける血漿L−ヒスチジン濃度は、36.6から54.4μMの間であった。
【0061】
全てのサンプリング日にわたる6頭のウマのうち5頭についての血漿β−アラニン及びL−ヒスチジン濃度の個々の変化をそれぞれ図1及び2に示す。補給期間が増加するにつれて、飼料を与える前の血漿β−アラニン及びL−ヒスチジンの濃度が増加する傾向があった。さらに、30日の補給期間にわたり、補給に対する血漿濃度反応もまた増大した。反応はβ−アラニンについてより大きかった。
【0062】
6頭の個々のウマについて、補給期間の初日から最終日の間の、その日の最初の飼料を与える前及びその後1時間おきの血漿β−アラニン及びL−ヒスチジン濃度の変化の比較を、図3aと3b、及び図4aと4bにそれぞれ示す。図3a、3b、3c、3d、3e、及び3fは、飼料補給の30日の期間の初日及び最終日での、β−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前及び与えた後1時間おきの6頭のウマの血漿中のβ−アラニンの濃度の変化における対比を表すグラフである。図4a、4b、4c、4d、4e、及び4fは、飼料補給の30日の期間の初日及び最終日での、β−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前及び与えた後1時間おきの6頭のウマの血漿中のL−ヒスチジン濃度の変化における対比を表すグラフである。図5は、飼料補給の30日の期間の初日及び最終日での、β−アラニン及びL−ヒスチジン(それぞれ100ミリグラム/キログラム体重及び12.5ミリグラム/キログラム体重、1日当たり3回)の飼料を与える前及び与えた後1時間おきのウマ血漿(n=6)中のβ−アラニンの平均濃度の変化における対比を表すグラフである。補給期間の初日(1日目)及び最終日(30日目)の24時間にわたる血漿β−アラニン濃度の平均(SD)変化(n=6)を図5で対比する。24時間にわたる平均血漿β−アラニン濃度対時間曲線下面積(AUC(0−24hr))は、補給の30日目で非常に大きかった。
【0063】
補給期間の初日(1日目)及び最終日(30日目)の24時間にわたる血漿L−ヒスチジン濃度の平均(SD)変化(n=6)を図6で対比する。24時間にわたる平均血漿β−アラニン濃度対時間曲線下面積(AUC(0−24hr))は、補給の30日目でより大きかった。補給の初日(1日目)と対比して補給の最終日(30日目)での血漿β−アラニンについてのより大きいAUCは、補給を進めるにつれてウマの消化管からのβ−アラニンの取り込みが増大することを示唆している。補給期間中の血漿L−ヒスチジン濃度の変化について同様の影響が観測された。それぞれの場合において飼料を与えた後約1〜2時間で最高血漿濃度のβ−アラニン及びL−ヒスチジンを生じた。
【0064】
6頭のウマから合計397本の個々の骨格筋線維(補給前の192本、補給後の205本)を切ってカルノシンについて分析した。6頭の個々のウマからの補給前及び補給後のI型、IIA型、及びIIB型骨格筋線維における、ミリモル/キログラム乾燥重量(mmol・kg−1dW)で表した平均(SD)カルノシン濃度は表1で与えられる。表1中のnは分析した個々の筋線維の数である。β−アラニン及びL−ヒスチジンを補給した30日間の結果、平均カルノシン濃度は6頭全てのウマのIIA型及びIIB型線維において増加した。これらの増加は7つの場合で統計的に有意であった。IIB型線維骨格筋線維における平均カルノシン濃度の増加は、6頭のウマのうち5頭において統計的に有意であった。IIA型骨格筋線維における平均カルノシン濃度の増加は、6頭のウマのうち2頭において統計的に有意であった。
【表1】
【0065】
6頭のウマからのIIA型及びIIB型骨格筋線維における平均カルノシン濃度の絶対増加量(例えばmmolkg−1dW)及び増加量を表2に挙げる。
【表2】
【0066】
30日間の補給の後に大きな筋肉カルノシン濃度の増加を示した個々のウマは、補給期間の1日目から30日目の間に血漿β−アラニンAUCの大きな増加も示すことが観測された。図7によれば、6頭のウマの5頭について有意な相関関係(r=0.986、p<0.005)が、IIA型及びIIB型骨格筋線維で平均した平均カルノシン濃度の増加と、補給の1日目から30日目の間の、最初の12時間にわたる血漿β−アラニンAUC(AUC(0−12hr))の増加との間に観測された。5頭のウマのみを回帰線を算出するために使用した。ウマ6(黒丸)は、補給の最終日まで、1日目に観測された増加より大きいような血漿β−アラニン濃度の目立った増加は示さなかった。これは、サンプリング日毎に漸進的に増加する他の5頭のウマとは異なっていた。このため、ウマ6は回帰方程式の算出から除外した。
【0067】
β−アラニン及びL−ヒスチジンの30日の補給の結果である筋肉カルノシン濃度の増加は、総筋肉緩衝能力の直接の増加をもたらすであろう。この増加はヘンダーソン−ハッセルバルヒの式を使って計算することができる。6頭のサラブレッドのウマにおけるIIA型及びIIB型骨格筋線維の筋肉緩衝能力の増加についての計算値を表3に示す。
【表3】
【0068】
(実施例2)
ヒトの血漿のβ−アラニン及びβ−アラニルジペプチド濃度に対する、遊離もしくはペプチド結合状態にあるβ−アラニンの毎日1回及び複数回の投与分を含む通常の食餌の補給効果を評価した。約40ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンを供給するブロスを消費した後の、6人の正常な被験者におけるβ−アラニンの血漿濃度を観測した。用量が10及び20ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンも与えた。
【0069】
ブロスは次のように準備した。新鮮な鶏の胸肉(皮なし、及び骨を取り除いたもの)を細かく刻み、水(鶏肉1.5kg毎に対し1リットル)で15分間ボイルした。残った鶏肉を粗く漉して除いた。漉したものにニンジン、タマネギ、セロリ、塩、コショウ、バジル、パセリ、及びトマトピューレを加えて味付けし、さらに15分再ボイルし、その後細かいモスリンを通して最後に漉す前に4℃に冷やした。1.5キログラムの鶏肉及び1リットルの水からの収量が870mLのブロスであった。だし汁の一部を総β−アラニル−ジペプチド含有量(例えば、カルノシン及びアンセリン)及びβ−アラニンについて測定した。典型的な分析値は以下の通りであった。
【0070】
総β−アラニル−ジペプチド 74.5mM
遊離β−アラニン 5.7mM
6人の男性被験者は正常な健康状態であり、表4に示すように年齢25〜53才であった。一晩の絶食(例えば、最後の肉を含む食事の摂取後、最低12時間)後に調査を開始した。調査の開始に先立って、被験者には少量の温湯を摂取する選択の自由が与えられた。8時30分にカテーテル挿入を始め、調査を9時に開始した。
【0071】
コントロールとして、8ミリリットル/キログラム体重の水を摂取させた(例えば、体重75キログラムの被験者では600mL)。
【0072】
1つのセッションで、約40ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニン(例えば、アンセリン及びカルノシンの形態で)を含む8ミリリットル/キログラム体重のブロスを摂取させた。これは、体重75キログラムの被験者に対して、合計が3グラムのβ−アラニンを含む600ミリリットルのブロスの摂取になった。別のセッションでは、さらに5ミリリットル/キログラム体重の水とともに試験量のβ−アラニンを含む3ミリリットル/キログラム体重の液体を摂取させた。全てのセッションにおいて、被験者は、さらに摂取後1〜2時間の間にさらに8ミリリットル/キログラム体重の水(50mL量で)を摂取した。6時間後ベジタリアンピザを与えた。続いて8時間後に通常の食事とした。
【0073】
2.5ミリリットルの静脈血サンプルを、最初の90分間は10分おきに、その後120、180、240及び360分後に留置カテーテルを通して採取した。血液サンプルを、抗凝血剤としてリチウム−ヘパリンを含むチューブ内へ分注した。カテーテルは、生理食塩水で洗い流すことによって維持管理した。血漿サンプルを、Jones & Gilligan (1983) J. Chromatogr. 266:471-482 (1983)に述べられている方法に従いHPLCにより分析した。
【0074】
β−アラニン吸収の調査中の治療の割り当てを表4にまとめた。β−アラニンの推定される等価用量を表3に示す。
【表4】
【0075】
それぞれの治療の後の血漿濃度曲線を図8のグラフに表す。治療によるβ−アラニン、ブロス、もしくはカルノシンの投与の平均結果を表4にまとめる。血漿β−アラニンは、コントロール治療の全ての被験者において、検出限界以下であった。カルノシンとアンセリンのいずれも、チキンブロスの摂取後もしくは他の治療後の血漿中には検出されなかった。ブロスの摂取は、血漿中427.9(SD161.8)μMの最高濃度をもたらした。1人の被験者における、β−アラニンの20ミリグラム/キログラム体重に相当するカルノシンの投与により、血漿β−アラニン濃度の同等な増加が得られた。
【0076】
コントロール以外の全ての治療を行うことにより、血漿タウリン濃度が増加した。タウリン濃度の変化は、β−アラニンの濃度変化を厳密に反映した。自然食品であるブロスの投与が、血漿タウリンの同等の増加をもたらすが、それはその反応が通常、ほとんどの食事の摂取後に起こることを示している。
【0077】
(実施例3)
β−アラニン及びタウリンの血漿濃度プロファイルに対する、7日間に1日当たり10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分(すなわち、朝、昼、及び夜に投与される)を投与した効果を調べた。10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンを投与した後の血漿濃度プロファイルを、3人の被験者において7日の期間の開始時及び終了時に調査した。その間、被験者には1日当たりβ−アラニンの3回分を与えた。
【0078】
年齢33〜53才の、正常な健康状態である3人の男性被験者を調べた。被験者は、1日当たり10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分の投与を8日間受けた。2人の被験者では、これに続きさらに7日間(9〜15日目)、1日当たり20ミリグラム/キログラム体重の3回分を与えた。被験者は、1日目(あらゆる治療の前)と8日目及び15日目には、一晩の絶食後の午前8時に血液収集ラボに報告を行った。被験者には、調査前の12時間の間は肉の入った食事は何も摂らないように要請した。これらの3日間の各試験日に、被験者にカテーテルを挿入し、午前9時、正午12時、及び午後3時、又はその前後にβ−アラニンが投与された際に初期の血液サンプルを採取した。血液サンプルを30、60、120及び180分後に採取し、β−アラニン及びタウリンの血漿濃度の変化について分析した。24時間の尿サンプルを各調査日にわたって収集し、HPLCで分析し、β−アラニン及びタウリンの排出量を測定した。治療を表5にまとめた。
【表5】
【0079】
血漿β−アラニン濃度を図9にまとめた。各回に摂取後30分もしくは1時間でβ−アラニン濃度のピークを生じ、次回投与の直前である3時間で、0〜10マイクロモルの基礎レベルまで下がった。治療の8日目の反応性は、血漿濃度曲線下面積で示されるように1日目より低い傾向があった。
【0080】
(実施例4)
筋肉のカルノシン含量及び最大随意収縮力の66%での等尺性持久力に対する、2週間に1日当たり40ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分(すなわち、朝、昼、及び夜に投与される)を投与した効果を調べた。
【0081】
代謝性もしくは筋肉疾患の徴候を有していなかった、年齢25から32才の6人の正常な男性被験者を募集して調査した。被験者には最近の食事及びサプリメント習慣について質問した。現在クレアチンを含む栄養補助食品を摂っているか、もしくは最近の試験の補給手順でそのように摂ったことがある被験者はいなかった。被験者の身体的特徴を表6にまとめる。
【表6】
【0082】
治療2日前、被験者を座った姿勢にして、膝の伸筋の最大随意(等尺性)収縮力(MVC)の予備測定を行った。MVCは、被験者を力の出力の即時画像表示によってやる気を出させながらMacflexシステムを用いて測定した。各被験者について、2回の試行を行い、声の励ましにもかかわらず目標の力がもはや維持できなくなるまで持続される、66%MVCでの持久力を測定した。この最初の収縮の後に、被験者を等尺状態のイスにつかせたままで60秒の休憩時間をとらせた。休憩時間の後、2回目の収縮を疲労するまで持続させた。2回目の60秒の休憩後、疲労までの3回目の収縮を行った。
【0083】
治療1日前、被験者は午前8時から10時の間に等尺性試験ラボに報告を行った。MVCを測定し、3回の収縮にわたる66%MVCでの持久力は、上述したように60秒の休憩間隔で測定した。被験者の利き足を用いて測定を行った。外側広筋の外側部の生検を再び利き足から採取した。
【0084】
治療調査の1日目に、被験者は、一晩の絶食後でかつ最後の肉が入った食事から最低12時間後の午前8時に血液サンプリングラボに報告を行った。カテーテルを挿入及び基礎血液サンプル後、各被験者は実施例3で述べた補給及び血液サンプリングプロトコルに従った。10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの1回分を、0時間(午前9時)、3時間、及び6時間に投与した。
【0085】
2〜15日目に、被験者は10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分を摂り続けた。
【0086】
14日目の朝、治療後の等尺性運動試験を利き足で行い、MVCと、治療前の日に測定した66%MVCに対する66%MVCでの持久力とを測定した。午後に、外側広筋の、治療前の日に採取した生検の部位の近くから筋肉生検を採取した。
【0087】
15日目に、1日目に従った手順を繰り返して、15日間の補給にわたるβ−アラニン及びタウリンの血漿濃度プロファイルのあらゆる全体的なシフトを測定した。1日当たり3×10ミリグラム/キログラム体重で投与する1日目及び15日目の0、3、及び6時間での、10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンを経口摂取した後9時間にわたる血漿β−アラニンの平均変化を、図10に示す。
【0088】
1人追加の被験者(ナンバー7)は調査に従い、7日間に10ミリグラム/キログラム体重の3回分を摂った後、7日間に20ミリグラム/キログラム体重の3回分を摂った。この被験者からは筋肉生検を採取しなかった。
【0089】
生検を採取した6人の被験者の筋肉中の筋肉カルノシン含有量に明らかな変化はなかった。6人の被験者における血漿タウリン濃度の変化は、実施例2で述べたように、β−アラニンの濃度変化を反映していた。
【0090】
10ミリグラム/キログラム体重のβ−アラニンの3回分による治療1日前及び治療後14日後のMVC及び66%MVCでの持久力の測定値を表7に挙げる。66%MVCでの平均持久時間は、6人の被験者のうち5人で増加した。増加はより多く投与された被験者7でも見られた。
【表7】
【0091】
(実施例5)
筋肉カルノシン含有量に対する、2つの投与計画を用いた4週間のβ−アラニン補給と4週間にわたり投与された等モルのL−カルノシン(β−アラニルヒスチジン)の効果を調べた。
【0092】
明らかな臨床疾患の徴候がなく、身長及び体重が正常な範囲である、年齢20〜29才の15人の男性被験者を募集し調査した(表8)。全ての被験者は一種類以上のスポーツに参加して、全員が可変量の肉を含む混合食を食べた。調査の過程で各被験者の肉のおおよその取り込み量の記録をとった。
【表8】
【0093】
5人の被験者は、3つの治療グループ(1、2、及び3)の1つに割り振られた。調査の間、彼らの食事には表9(図17)で述べたようにβ−アラニンかカルノシンのいずれかが補給された。補給は400mgβ−アラニンか500mgカルノシンのいずれかを含むソフトゼラチンカプセルで与えた。
【0094】
グループ1では、4週間決まった割合で1日を通して4回に分けた用量(1日4回)のβ−アラニンを投与した。
【0095】
グループ2では、より一様な血漿濃度の増加を維持しようとして、1日を通して4回よりむしろ8回に分けた用量としてβ−アラニンを投与した。加えて、投与量を週毎に1日当たり800mgずつ段階的に増加させた。
【0096】
グループ3では、カルノシンを再び8回に分けてグループ2とおおよそ同じ等モル量で投与した。従って、この治療は、その構成アミノ酸に加水分解した場合、グループ2とおおよそ同一量のβ−アラニンを含んでいた。
【0097】
被験者には表9(図17)に示す時間に補給を行った。Bergstroemの経皮針生検の手順(1962)を用いて、補給前及び補給の終了時に外側広筋の単一の筋肉生検を採取した。要するに、その手順は、約100〜700本の筋線維を含む約20〜40mgの試料を得るために局部麻酔した無菌状態で中空針を挿入することを伴う。皮膚及び皮下組織は1%リグノカインで麻酔する(筋肉への接触は避ける)。手術用メスの刃で皮膚及び深在筋膜まで切開する。セントラルロッドの無い針を筋肉内へ挿入する。筋肉の塊が針の側面の窓の内側へ押し込まれる。サンプルを、内側の鋭いシリンダーを針に沿って押し込むことにより切り取る。針を取り出し、セントラルロッドを試料を排出するために用いる。そしてその傷を閉じる。
【0098】
被験者からの筋肉サンプルを液体窒素中で凍結させ、凍結乾燥して、HPLCにより筋肉カルノシン及びタウリン含有量を分析した。表9(図17)に3つの治療グループのそれぞれに採用した投与計画の内訳を示す。結果、β−アラニンもしくはカルノシンを補給した被験者のいずれにも体格の変化はなかった。
【0099】
(筋肉カルノシンの変化(表10並びに、図12及び13))
グループ1及び3の被験者については筋肉カルノシン含有量の有意な増加は記録されなかった。グループ2では、最も高い初期カルノシン含有量(初期カルノシン含有量:33.3mmol/kg乾燥筋肉)を持つ1人の被験者(ナンバー10)は、筋肉カルノシン含有量に変化はなかった(後の含有量:33.7mmol/kg乾燥筋肉)。この被験者をグループ2から除くと、このグループは、他のグループで見られるのと同じ程度の有意な増加を示した。被験者10は、中高程度に肉を消費する人であるが、それ以外の目立った特徴は無い。
【0100】
同じ用量でβ−アラニンもしくはカルノシンのどちらを補給しても(グループ2及び3)、筋肉カルノシン含有量の増加において同等の効果があるように思われる。
【0101】
この変化のパターンはクレアチンの添加によって観測される変化と良く似ており、これ以上の効果の無いさらなる補給によって速やかに到達する閾値があることを示唆しているかもしれない。被験者10の場合には、この理論にとらわれるわけではないが、補給の開始前でも閾値に到達しているように思われる。しかしながら、上限の概念には例外がある。特に被験者6(補給後のカルノシン:45.9mmol/kg乾燥筋肉)及び被験者15(補給後のカルノシン:68.9mmol/kg乾燥筋肉)である。被験者6及び15は、その食習慣もしくは運動への参加のいずれにおいても目立った特徴はなかった。
【0102】
表10は、治療グループ1〜3についてのカルノシンの筋肉濃度のデータをまとめたものである。イタリック文字の治療グループ2には、筋肉カルノシン濃度の増加を示さなかった被験者10が入っていない。被験者10の初期カルノシン濃度は、全ての被験者の最高値であったが、補給前に既に「上限値」レベルであったのかもしれない。
【表9】
【0103】
(筋肉β−アラニン及びヒスチジンの変化(表11及び図14)
補給前及び補給の終了時に、筋肉β−アラニン濃度は検出限界(<0.2mmol/kg乾燥筋肉)以下であった。何人かの被験者では、最後の筋肉生検から1〜2時間以内にβ−アラニンの最後の投与が行われた。
【0104】
β−アラニンもしくはカルノシンのいずれの補給によっても筋肉ヒスチジン濃度の変化はなく、後者は全身循環へヒスチジンを放出する可能性を有している。増加したカルノシンの合成(各モルがヒスチジンの1モルを必要とする)に対するヒスチジン濃度の低下はなかった。
【0105】
(筋肉タウリンの変化(表12並びに、図15及び図16)
高濃度のβ−アラニンは、組織内へのタウリンの取り込みを妨げる可能性があるが、前述の観測はβ−アラニン及びカルノシンの両方の投与後の、血漿タウリン濃度の増加と尿中のタウリンの減少を示しており、この調査では3つのグループのいずれにおいても筋肉タウリンの減少は確認されていない。いくつかの個体では筋肉タウリン含有量の顕著な変化を生じたが、増加と減少の両方が観測された。図15は、4つの異なる治療グループにおける補給前及び補給後のタウリンの筋肉濃度(平均+SD)を示すデータを説明するグラフである。図16は、異なる被験者における補給前及び補給後のタウリンの筋肉濃度(平均+SD)を示すデータを説明するグラフである。
【0106】
(結論)
これらの調査は、本発明のβ−アラニン及びカルノシンの補給は、筋肉カルノシン含有量を増加させる可能性があることを説明している。試験結果に基づくと、組織中のカルノシンを増加させるのに同様に有効であると思われる。
【0107】
筋肉緩衝能力の変化は、激しい運動中にH+の蓄積に対抗して細胞内微小環境を維持するのを助ける。そのようなものとして、β−アラニンもしくは摂取時にβ−アラニンを送達する化合物の補給は、スポーツ及び乳酸蓄積を引き起こすような一般的な日常活動における運動能力に対して良い効果を及ぼすことができる。カルノシン(抗酸化及び抗糖化剤として)に起因する他の化学的活性の点で、カルノシン濃度の増加は、筋肉緩衝能力の増大から生ずるものとは別の他の有益な効果を及ぼすことができる。
【0108】
4週間の補給では、筋肉中のタウリンの明らかな減少は何ら起きなかった。
【表10】
【表11】
【0109】
本発明の多くの実施態様を説明してきた。いずれにせよ、本発明の精神及び目的を逸脱しない範囲で様々な変更が可能であることは理解されるであろう。従って、他の実施態様は添付の特許請求の範囲の適用範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織における無酸素性作業能力を高める方法であって、以下のステップ、
(a)β−アラニルヒスチジンジペプチドと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを準備するステップ、並びに、
(b)β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量で組織に投与し、それによって組織における無酸素性作業能力を高めるステップ、
を含む前記方法。
【請求項2】
組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節する方法であって、以下のステップ、
(a)β−アラニルヒスチジンジペプチドと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを準備するステップ、並びに、
(b)β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織でのヒドロニウムイオン濃度を増加させるのに効果的な量で組織に投与するステップ、
を含む前記方法。
【請求項3】
β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織に投与するステップが、経口投与、血液もしくは血漿への投与、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニンを含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物と、の混合物を含む組成物。
【請求項6】
β−アラニンが、β−アラニルヒスチジンジペプチドを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
少なくともクレアチン又は炭水化物をさらに含む、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
インスリン模倣体が、D−ピニトール(3−O−メチル−チロイノシトール)、4−ヒドロキシイソロイシン、デメチル−アステリキノンB−1化合物、αリポ酸、R−αリポ酸、グアニジノプロピオン酸、バナジウム化合物、バナジウム錯体、もしくは合成ホスホイノシトールグリカンペプチドを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項10】
インスリン作用修飾因子が、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、もしくはビグアニドである、請求項5記載の組成物。
【請求項11】
組成物が医薬品組成物である、請求項5記載の組成物。
【請求項12】
組成物が栄養補助食品、又はスポーツドリンクである、請求項5記載の組成物。
【請求項13】
栄養補助食品又はスポーツドリンクが、ヒト用のサプリメントである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、もしくは5グラムの、β−アラニンを有するペプチドもしくはエステルを含む、組成物。
【請求項15】
少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0グラムの、β−アラニンを有するペプチドもしくはエステルを含む、注射剤型の組成物。
【請求項16】
ペプチドが、β−アラニルヒスチジンジペプチドを含む、請求項14又は15記載の組成物。
【請求項17】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも200、250、300、450、500、550、600、650、700、750、もしくは800mgのβ−アラニンを含む、ヒト用の組成物。
【請求項19】
組成物が、摂取可能な状態に製剤化されるか、もしくは注射剤型である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
摂取可能な製剤が、飲料、ジェル、食品、もしくは錠剤である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
ペプチドが、β−アラニルヒスチジンジペプチドを含む、請求項18記載の組成物。
【請求項22】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
対象における組織の無酸素性作業能力を高める方法であって、以下のステップ、
(a)(i)グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニンを含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物、(ii)注射剤型の、少なくとも0.5グラムのβ−アラニンを含むペプチドもしくはエステル、又は(iii)少なくとも200mgのβ−アラニン、を含む組成物を準備するステップ、並びに、
(b)組織の無酸素性作業能力を高めるのに効果的な量で対象に組成物を投与するステップ、
とを含む前記方法。
【請求項24】
β−アラニンの24時間の合計用量が、少なくとも0.2グラムである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
β−アラニンの24時間の合計用量が、約0.2グラム〜約6.4グラムである、請求項23記載の方法。
【請求項26】
組成物が、少なくとも3日の期間にわたって与えられる、請求項23記載の方法。
【請求項27】
組成物が、少なくとも約3日から約2週間の期間にわたって与えられる、請求項23記載の方法。
【請求項28】
β−アラニンが、β−アラニルヒスチジンジペプチドを含む、請求項23記載の方法。
【請求項29】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量が、少なくとも約0.5グラムである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量が、約5グラムより大きい、請求項30記載の方法。
【請求項32】
β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量が、約5グラム〜約16グラムである、請求項28記載の方法。
【請求項33】
β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量が、少なくとも16グラムである、請求項28記載の方法。
【請求項34】
組成物が、複数回投与で投与される、請求項23記載の方法。
【請求項35】
組成物が、24時間に少なくとも2回から8回投与される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
約200mgのβ−アラニン、もしくは約500mgのカルノシンが、数週間の期間にわたり1日に約2回から8回投与される、請求項23記載の方法。
【請求項37】
少なくとも約2gのβ−アラニン、もしくは少なくとも約5gのカルノシンが、約2、3、もしくは4日の期間にわたり1日に約2回から8回投与される、請求項23記載の方法。
【請求項38】
投与される組成物の量が日々増加する、請求項23記載の方法。
【請求項39】
投与される組成物の量が毎週増加する、請求項23記載の方法。
【請求項40】
組成物が、少なくとも約4週間継続する治療期間において投与される、請求項23記載の方法。
【請求項41】
対象における組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節する方法であって、以下のステップ、
(a)(i)グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニンを含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物、(ii)注射剤型の、少なくとも0.5グラムのβ−アラニンを含むペプチドもしくはエステル、又は(iii)少なくとも200mgのβ−アラニン、を含む組成物を準備するステップ、並びに、
(b)組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節するのに効果的な量で対象に組成物を投与するステップ、
を含む前記方法。
【請求項1】
組織における無酸素性作業能力を高める方法であって、以下のステップ、
(a)β−アラニルヒスチジンジペプチドと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを準備するステップ、並びに、
(b)β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織でのβ−アラニルヒスチジンジペプチド合成を増加させるのに効果的な量で組織に投与し、それによって組織における無酸素性作業能力を高めるステップ、
を含む前記方法。
【請求項2】
組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節する方法であって、以下のステップ、
(a)β−アラニルヒスチジンジペプチドと、グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子とを準備するステップ、並びに、
(b)β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織でのヒドロニウムイオン濃度を増加させるのに効果的な量で組織に投与するステップ、
を含む前記方法。
【請求項3】
β−アラニンと、グリシン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子の少なくとも1つとを組織に投与するステップが、経口投与、血液もしくは血漿への投与、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニンを含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物と、の混合物を含む組成物。
【請求項6】
β−アラニンが、β−アラニルヒスチジンジペプチドを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
少なくともクレアチン又は炭水化物をさらに含む、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
インスリン模倣体が、D−ピニトール(3−O−メチル−チロイノシトール)、4−ヒドロキシイソロイシン、デメチル−アステリキノンB−1化合物、αリポ酸、R−αリポ酸、グアニジノプロピオン酸、バナジウム化合物、バナジウム錯体、もしくは合成ホスホイノシトールグリカンペプチドを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項10】
インスリン作用修飾因子が、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、もしくはビグアニドである、請求項5記載の組成物。
【請求項11】
組成物が医薬品組成物である、請求項5記載の組成物。
【請求項12】
組成物が栄養補助食品、又はスポーツドリンクである、請求項5記載の組成物。
【請求項13】
栄養補助食品又はスポーツドリンクが、ヒト用のサプリメントである、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、もしくは5グラムの、β−アラニンを有するペプチドもしくはエステルを含む、組成物。
【請求項15】
少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0グラムの、β−アラニンを有するペプチドもしくはエステルを含む、注射剤型の組成物。
【請求項16】
ペプチドが、β−アラニルヒスチジンジペプチドを含む、請求項14又は15記載の組成物。
【請求項17】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも200、250、300、450、500、550、600、650、700、750、もしくは800mgのβ−アラニンを含む、ヒト用の組成物。
【請求項19】
組成物が、摂取可能な状態に製剤化されるか、もしくは注射剤型である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
摂取可能な製剤が、飲料、ジェル、食品、もしくは錠剤である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
ペプチドが、β−アラニルヒスチジンジペプチドを含む、請求項18記載の組成物。
【請求項22】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
対象における組織の無酸素性作業能力を高める方法であって、以下のステップ、
(a)(i)グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニンを含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物、(ii)注射剤型の、少なくとも0.5グラムのβ−アラニンを含むペプチドもしくはエステル、又は(iii)少なくとも200mgのβ−アラニン、を含む組成物を準備するステップ、並びに、
(b)組織の無酸素性作業能力を高めるのに効果的な量で対象に組成物を投与するステップ、
とを含む前記方法。
【請求項24】
β−アラニンの24時間の合計用量が、少なくとも0.2グラムである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
β−アラニンの24時間の合計用量が、約0.2グラム〜約6.4グラムである、請求項23記載の方法。
【請求項26】
組成物が、少なくとも3日の期間にわたって与えられる、請求項23記載の方法。
【請求項27】
組成物が、少なくとも約3日から約2週間の期間にわたって与えられる、請求項23記載の方法。
【請求項28】
β−アラニンが、β−アラニルヒスチジンジペプチドを含む、請求項23記載の方法。
【請求項29】
β−アラニルヒスチジンジペプチドが、カルノシン、アンセリン、もしくはバレニンを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量が、少なくとも約0.5グラムである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量が、約5グラムより大きい、請求項30記載の方法。
【請求項32】
β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量が、約5グラム〜約16グラムである、請求項28記載の方法。
【請求項33】
β−アラニルヒスチジンジペプチドの24時間にわたる合計用量が、少なくとも16グラムである、請求項28記載の方法。
【請求項34】
組成物が、複数回投与で投与される、請求項23記載の方法。
【請求項35】
組成物が、24時間に少なくとも2回から8回投与される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
約200mgのβ−アラニン、もしくは約500mgのカルノシンが、数週間の期間にわたり1日に約2回から8回投与される、請求項23記載の方法。
【請求項37】
少なくとも約2gのβ−アラニン、もしくは少なくとも約5gのカルノシンが、約2、3、もしくは4日の期間にわたり1日に約2回から8回投与される、請求項23記載の方法。
【請求項38】
投与される組成物の量が日々増加する、請求項23記載の方法。
【請求項39】
投与される組成物の量が毎週増加する、請求項23記載の方法。
【請求項40】
組成物が、少なくとも約4週間継続する治療期間において投与される、請求項23記載の方法。
【請求項41】
対象における組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節する方法であって、以下のステップ、
(a)(i)グリシン、インスリン、インスリン模倣体、もしくはインスリン作用修飾因子と、β−アラニン、β−アラニンの化学的誘導体、及びβ−アラニンを含むペプチドからなる群から選択されるアミノ酸もしくはその活性誘導体を有する組成物との混合物、(ii)注射剤型の、少なくとも0.5グラムのβ−アラニンを含むペプチドもしくはエステル、又は(iii)少なくとも200mgのβ−アラニン、を含む組成物を準備するステップ、並びに、
(b)組織でのヒドロニウムイオン濃度を調節するのに効果的な量で対象に組成物を投与するステップ、
を含む前記方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−150263(P2010−150263A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6014(P2010−6014)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【分割の表示】特願2006−509880(P2006−509880)の分割
【原出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505379652)ナチュラル オータナティブス インターナショナル (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【分割の表示】特願2006−509880(P2006−509880)の分割
【原出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505379652)ナチュラル オータナティブス インターナショナル (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]