説明

組織増大のための架橋ヒアルロン酸組成物

ヒアルロン酸(HA)組成物は、架橋される水不溶性の水和HAゲル粒子を含有する。前記HAは、以下の構造式:HA'-U-R2-U-HA'によって表される架橋を含有する。変更は本明細書中で規定される。組織増加を必要とする被験体において組織を増加させる方法は、組織増加を必要とする被験体の体内の位置で、HA組成物を充填した注射器に連結した針を被験体に挿入する工程を含み、また、注射器に力を加える工程を含む。HA組成物を調製する方法は、水不溶性の脱水架橋HA粒子を形成し、水不溶性の脱水粒子を平均直径によって分け、平均直径によって粒子のサブセットを選択し、および脱水した粒子のサブセットを生理的に適合性のある水溶液で水和し、それによって水不溶性の脱水された架橋HA組成物を形成することを含む。架橋HA組成物を製造する他の方法は、架橋HAの前駆物質を、pH緩衝液の存在下でビスカルボジイミドと架橋し、および架橋したHAを脱水することを含む。また、組織増加を必要とする被験体において組織を増加させる方法を含む。架橋HAを安定化する方法は、水不溶性の脱水架橋HAを局所麻酔薬を含む生理的に適合性のある水溶液で水和し、それによって安定化されたHA組成物を形成する工程を含み、ここで、安定化組成物についての貯蔵弾性率G'の値は、非安定化組成物について測定されるG'の値の少なくとも約110% である。また、安定化HA組成物も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2003年12月22日出願の米国実用出願(出願番号はまだ与えられていない、代理人整理番号第1767.2011−000号)の優先権を主張し、その全教示を参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の背景)
現在、米国食品医薬品局によって承認された組織増大(tissue augmentation)充填剤は全てコラーゲンに由来する。ヒト被験体のおよそ3〜5%がウシコラーゲンに対して重篤なアレルギー反応を示し、かくして、個々の被験体においてこれらの充填剤を使用する前に慎重な試験が要求される。
【0003】
「HA」とも称されるヒアルロン酸は、細胞外マトリックスの主要成分であり、動物組織に広く分布する、天然の水溶性多糖である。天然HAは一般に、約6×10〜約8×10ダルトンの分子量範囲を有する。被験体に移植する場合、優れた生体適合性を有し、異物またはアレルギー反応を起こさない。
【0004】
市販のヒアルロナンを製造する方法は周知である。HAの水溶解度および拡散性を低下させるため、およびHAの粘度を高めるためにHAをカップリングおよび架橋する様々な方法も知られている。例えば、米国特許第5,356,883号および同第6,013,679号を参照、その教示全体は参照として本明細書に援用される。さらに、多くの形態のHAが、例えば組織の術後癒着を防ぐための外科手術補助用品、関節における滑液の付加物、眼科手術における補液および/または手術補助用品、インビトロでの組織構築またはインビボでの組織再生誘導または組織増大誘導のための骨格などとして、使用されている。
【0005】
しかし、かかるHA製品の使用には、いくつかの難点が生じ、特にインビボ特性と外科的有用性の間に矛盾が生じる。例えば、望ましいインビボでの機械的特性および生体安定性を有するように十分に化学修飾されたまたは架橋されたHAは、極めて粘性が高いため、微細な針による注射が困難もしくは不可能である。逆に、注射可能なHAは、インビボでの低い生体安定性および機械的特性を有し得る。
【0006】
さらに、現在、例えば治療物質または薬剤および生物学的プローブを含む生物活性物質のビヒクル援用持続放出送達のため、化学的修飾HAを使用することに高い関心が寄せられている。主要な課題は、所望臨床結果を達成するために罹患領域で治療薬の適切なレベルの生物学的利用能を提供し、さらにまた、外科的/管理上の有用性とつりあいの取れたインビボでの機械的特性および生体安定性の望ましいバランスを有する送達ビヒクルの開発である。薬剤の生物学的利用能は、薬剤の性質、使用する薬剤送達ビヒクル、および送達の経路、例えば経口、局所、経皮、粘膜、注射による投与、吸入による投与、またはこれらの経路の2またはそれ以上の組合せによる投与に依存する。例えば、代謝過程による薬剤の分解、送達ビヒクルの急速なまたは一様でない分解、送達ビヒクルからの薬剤の急速なまたは一様でない放出等の結果として、バイオアベイラビリティーは低くなり得る。これらは、投与頻度、投与の難しさ、例えば注射の難しさ、生分解等の類似の問題を伴い得る。上記の困難さに加えて、十分に安定でない薬剤送達ビヒクルの頻繁な投与は、薬剤送達の変動を招くことがあり、有害な副作用の発生率上昇、治療効果の低下等をもたらす。
【0007】
したがって、上記で言及した問題を克服するまたは最小限に抑えるHA組成物が求められている。
【0008】
(発明の概要)
本発明は、組織増大および/または薬剤送達のために有効なヒアルロン酸(HA)組成物およびHA組成物を製造し、使用する方法を対象とする。
【0009】
ヒアルロン酸(HA)組成物は、架橋される水不溶性の水和HAゲル粒子を含有する。前記HAは、以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
によって表される架橋を含有する。
【0010】
それぞれのHA'は、同じまたは異なる架橋HA'分子であり、例えば架橋は分子内または分子間であり得る。
【0011】
それぞれのUは、独立して、任意に置換されたO-アシルイソ尿素またはN-アシル尿素である。
【0012】
R2は、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクリルアルキルである。
【0013】
組織増大を必要とする被験体において組織を増大させる方法は、組織増大を必要とする被験体の体内の位置で、HA組成物を充填した注射器に連結した針を被験体に挿入する工程を含む。また、注射器に力を加える工程を含み、それによりHA組成物の少なくとも一部は、被験体の体内に送達される。
【0014】
HA組成物を製造する方法は、水不溶性の脱水架橋HA粒子を形成し、水不溶性の脱水粒子を平均直径によって分け、平均直径によって粒子のサブセットを選択し、および脱水した粒子のサブセットを生理的に適合性のある水溶液で水和し、それによってHA組成物を形成する工程を含む。
【0015】
架橋HA組成物を製造する他の方法は、架橋HAの前駆物質を、pH約4〜約8のpH緩衝液の存在下でビスカルボジイミドと架橋し、および架橋したHAを脱水して脱水架橋HAを生成する工程を含む。
【0016】
架橋HAを安定化する方法は、水不溶性の脱水架橋HAを生理的に適合性のある水溶液で水和し、それによって安定化されたHA組成物を形成する工程を含み、ここで、前記の生理的に適合性のある水溶液は少なくとも約0.1重量%の局所麻酔薬を含有し、4cmの平面幾何学的外形を用いて37℃、1Hz周波数で測定したとき、安定化組成物についての貯蔵弾性率G'の値は、非安定化組成物について測定されるG'の値の少なくとも約110% である。
【0017】
安定化HA組成物も包含される。
【0018】
本明細書で開示する態様は、架橋を有する水不溶性の水和HAゲル粒子を製造および使用するために有効であり、該HA内の架橋は、インビボでの生体安定性および機械的特性の改善された組合せを備え、同時に改善された有用性、(例えば、微細な針による注射の改善された容易さ)を有する、連結基R2を含む。例えば実施例に示すように、HA組成物は、貯蔵弾性率G'および動粘度に関する改善された値を有し、一方、ヒアルロニダーゼ酵素に対する改善されたインビトロおよびインビボ生体安定性を示す。開示する態様は、必要とされる移植の頻度を低減しながら組織増大において架橋HAを使用するために有効である。該態様はまた、有効な薬剤放出特性と有効な管理特性と共に、高い生体安定性の驚くべき予想外の作用を示す薬剤送達ビヒクルとして架橋HAを使用するためにも有効である。
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、架橋HA組成物、それらの製造およびそれらの使用方法を対象とする。
【0020】
非架橋HA(例えば本発明の架橋HAの前駆物質)は、典型的には、交互に連結されて線状高分子を形成する、D-グルクロン酸(GlcUA)およびN-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)の二糖単位を含む。HAは、多くの場合天然ではナトリウム塩、ヒアルロン酸ナトリウムとして存在する。HA、ヒアルロン酸ナトリウムおよびHAまたはヒアルロン酸ナトリウムの製剤は、多くの場合「ヒアルロナン」と称される。本明細書で使用する、「HA」および「ヒアルロナン」という用語はまた、例えばヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カルシウム等を含み、他のヒアルロン酸塩のいずれかをいう。架橋のための前駆物質として使用される非架橋HAは、典型的には約6×10〜約8×10ダルトンの平均分子量範囲、または150〜20,000二糖繰返し単位を有する。動物組織から抽出されるまたは細菌発酵の産物として収集されるHAを含む、様々なソースのいずれかからのHAを出発物質として使用することができる。あるいは、本発明の組成物を作製するために使用する非架橋HAは、例えばその全教示が参照として本明細書に援用される、Nimrodら、PCT国際公開広報第WO 86/04355号に述べられているように、バイオプロセステクノロジーによって商業量で生産し得る。
【0021】
架橋HAは、適切な反応条件下で非架橋HAを架橋剤と反応させることによって形成し得る。架橋HAは、pH約4〜約8のpH緩衝液の存在下で非架橋HAをビスカルボジイミドと反応させることによって調製される。緩衝液のpHは、約4〜約7、典型的には約5〜約6.5、またはより典型的には約5〜約6であり得る。好ましい態様では、pHは約5.5である。
【0022】
pH緩衝液は、当業者に公知の何らかの緩衝剤、例えば2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES);2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトロトリエタノール;コハク酸塩/コハク酸;KH2PO4;N−トリス(ヒドロキシメチル−2−アミノエタンスルホン酸;トリエタノールアミン;ジエチルバルビツレート(diethylbarbituate);トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン;N−トリス(ヒドロキシ)メチルグリシン;およびN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンを含有し得る。緩衝剤は、付加的な酸または塩基と共に使用し得、例えばNaOHと共に2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸;HCl と共に2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトロトリエタノール;コハク酸と共にコハク酸塩;ホウ砂と共にKH2PO4;NaOH と共に N−トリス(ヒドロキシメチル−2−アミノエタンスルホン酸;HClと共にトリエタノールアミン;HClと共にジエチルバルビツレート;HClと共にトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン;HCl と共にN−トリス(ヒドロキシ)メチルグリシン;およびHClと共に N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンを使用し得る。好ましくは、緩衝液は2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸およびNaOHを含有する。
【0023】
典型的には、緩衝剤を、水性媒質中、約5mM(ミリモル)〜約250mM、典型的には約10mM〜約150mM、より典型的には約25mM〜約100mM、好ましくは約75mMの濃度で混合する。
【0024】
典型的には、非架橋HAを、水性媒質中、例えばpH緩衝液中、約1mM(ミリモル)〜約100mM、典型的には約10mM〜約50mM、より典型的には約25mM〜約50mM、好ましくは約37mMの濃度で混合する。使用する特定濃度は、非架橋HA前駆物質の分子量に依存して異なり得る。より低濃度では、反応はより緩慢であり得る。より高濃度では、生成物は粘度上昇のために取り扱いが困難であり得る。他の架橋反応のための非架橋HAの許容される濃度の例は、その教示全体が参照として本明細書に援用される、Kuoらへの米国特許第5,356,883号に述べられている。
【0025】
前記反応は、約0℃〜約60℃、典型的には約10℃〜約40℃、より典型的には約15℃〜約30℃の温度範囲で、好ましくは約25℃で実施することができる。例示的な反応条件は実施例1〜9に見出し得る。
【0026】
ビスカルボジイミドは、非架橋HA溶液単独と、またはより典型的には水混和性有機溶媒、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の溶液として組み合わせることができる。より典型的には、溶媒はアセトンであり、ビスカルボジイミドは約0.1mg/mL〜約100mg/mL、典型的には約1mg/mL〜約50mg/mL、より典型的には約5mg/mL〜約25mg/mL、好ましくは約15mg/mLの濃度である。
【0027】
非架橋HAおよびビスカルボジイミドは、いかなるモル当量比でも、例えば約1%〜約200%、典型的には約10%〜約150%、より典型的には約18%〜約125%のモル当量比で、組み合わせ得る。様々な態様において、モル当量比は、約18%、または約38%、または約50%、または約75%、または約100%、または約125%である。
【0028】
ビスカルボジイミドと架橋したHA組成物は、架橋内に含まれるビスカルボジイミド剤の連結基R2、例えば以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
に示すような、各末端のU基を通してHA'分子に結合している連結基、によって特徴づけられる架橋を含み得る。
【0029】
前記式中の各HA'は、同じかまたは異なる架橋HA'分子であり得、例えば架橋は分子内または分子間架橋であり得る。各Uは、同じまたは異なっていてもよく、以下の構造式:
【0030】
【化1】

【0031】
の中の括弧でくくったフラグメントに示すような、任意に置換されたN-アシル尿素またはO-アシルイソ尿素である。
【0032】
これらの架橋は、以下の構造式:
R-N=C=N-R2-N=C=N-R1
(式中、R1で置換された2個のカルボジイミドは、連結基R2を通して結合されている)
に示す、ビスカルボジイミド架橋試薬とHA'の反応において生成することができる。
【0033】
前記構造式において、各R1は、同じまたは異なり得、水素、脂肪族(例えばアルキル、アルケニル、アルキニル)、アルコキシ、シクロ脂肪族(例えばシクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル)、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルアルキル、ヘテロアラルアルキル、ヘテロシクリルアルキル等から選択される、任意に置換された基である。適切な選択的置換基は、生じる架橋HA組成物の性質に実質的に干渉せず、本明細書でそれぞれの各基を説明する項において述べるものである。他の態様では、R1は、場合により置換された脂肪族基である。より好ましくは、R1は、アルキル、例えばC1−C6直鎖または分枝アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−プロピル、tert−ブチル等である。好ましくは、各R1はエチルである。
【0034】
各R2は、脂肪族、シクロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクリルアルキル基等の1つ以上を含む、任意に置換された連結基である。適切な選択的置換基は、生じる架橋HA組成物の性質に実質的に干渉せず、本明細書でそれぞれの基の各々を説明する章において述べるものである。R2は、任意に他の基、例えばカルボニル、アミド、オキシ、スルフィド、ジスルフィド等を含み得るかまたは他の基によって中断され得る。他の態様では、R2は、1,6−ヘキサメチレンオクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレン、PEG、−CH2CH2−S−S−CH2CH2−、パラ−フェニレン−S−S−パラ−フェニレン、メタ−フェニレン−S−S−メタ−フェニレン、メタ−フェニレンまたはパラ−フェニレンである。より好ましくは、R2はフェニレンである。好ましくは、R2はパラ−フェニレンである。
【0035】
1つの態様では、ビスカルボジイミドは、1,6−ヘキサメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,8−オクタメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,10デカメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,12ドデカメチレンビス(エチルカルボジイミド)、PEG−ビス(プロピル(エチルカルボジイミド))、2,2’−ジチオエチルビス(エチルカルボジイミド)、1,1’−ジチオ−p−フェニレンビス(エチルカルボジイミド);パラ−フェニレン−ビス(エチルカルボジイミド)、および1,1’−ジチオ−m−フェニレンビス(エチルカルボジイミド)から選択される。好ましい態様では、ビスカルボジイミドはパラ−フェニレン−ビス(エチルカルボジイミド)である。ビスカルボジイミドを製造する方法は、米国特許第6,013,679号 ;同第2,946,819号; 同第3,231,610号;同第3,502,722号;同第3,644,456号;同第3,972,933号;同第4,014,935号;同第4,066,629号;同第4,085,140号;同第4,096, 334号;同第4,137,386号;同第6,548,081号および同第6,620,927号に述べられていて、その全教示を参照として本明細書に援用する。
【0036】
使用可能なプロトンの存在下における、HAとビスカルボジイミド架橋試薬の反応は、第一段階でプロトン化を含むと考えられる。次いで、酸性陰イオンが、形成される陽イオンの炭素原子に結合して、O−アシルイソ尿素中間体を形成し得る。中間体内のアシル基は、酸素原子から窒素原子に移動して、HAのN−アシルイソ尿素誘導体を生成することができる。OからNへの移動は不完全であり、N−アシル尿素とO−アシルイソ尿素の両方を含み得る生成反応混合物を生じ得ると考えられる。かくして、ビスカルボジイミドと架橋HA前駆物質の反応から生じる架橋は、典型的には、以下の構造式:
【0037】
【化2】

【0038】
に示すような、R2により結合された2個のO−アシルイソ尿素、または以下の構造式:
【0039】
【化3】

【0040】
に示すような、R2により結合されたO−アシルイソ尿素とN−アシル尿素、または以下の構造式:
【0041】
【化4】

【0042】
に示すような、R2により結合された2個のN−アシル尿素を含み得る。
【0043】
前記混合生成物は、本発明の態様に従った組成物を製造するために別々にまたは一緒に使用し得る。
【0044】
架橋HAは、水混和性有機溶媒、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等、好ましくはアルコール、例えばエタノールに注ぎ入れることによって沈殿させ得る。沈殿物を収集し、例えば減圧下で、乾燥し得る。
【0045】
乾燥架橋HAは、当業者に周知の何らかの手段、例えば研磨、粉砕、破壊等によって、好ましくは低温ミルにおける粉砕によって粒子に成形し得る。あるいは、非乾燥架橋HAを寒冷沈降させて小さな粒子を形成し、次にそれを乾燥する、または非乾燥架橋HAを低温ミルで粉砕し、次いで生じた粒子を乾燥し得る。
【0046】
本明細書で使用する、「水不溶性」および同様の用語は、室温で十分量の水に懸濁したとき不均質である組成物、(例えば水不溶性脱水粒子または水不溶性水和粒子)を指す。1つの態様では、「水不溶性」は、25℃で中性pHの水に少なくとも約2週間HA組成物の粒子を入れる場合、粒子中のHAが基本的に溶解しない、例えば本質的に粒子からHAが水中に遊離して、溶解しないことを意味する。他の態様では、「水不溶性」は、粒子中のHAが、一般に前記条件下で少なくとも4週間後、典型的には少なくとも約6週間後、より典型的には少なくとも約8週間後、または好ましくは少なくとも約12週間後に、基本的に溶解しないことを意味する。1つの態様では、「水不溶性」は、粒子中のHAが前記条件下で少なくとも26週間後に本質的に溶解しないことを意味する。本明細書で使用する、「遊離して溶解する」は、HA分子が水和した水膨潤粒子から分離して水に溶媒和することを意味する。
【0047】
さらに、架橋HA誘導体はヒドロゲルであり得る。この用語を本明細書で使用する場合、「ヒドロゲル」は、水または生物学的液体中で膨潤することができ、溶解することなく、その構造内に有意の割合の水を保持することができる架橋高分子ネットワークである。本明細書で使用する、「膨潤」という用語は、典型的には熱および圧の付加による容積の増大を伴ったゲルによる液体、例えば水の吸収を指す。ヒドロゲルは、一般に従来の方法によって測定することができない大きな分子量を有し、ポリマー骨格と架橋から成る。
【0048】
架橋HA粒子は、粒子の平均直径分布によって特徴付けることができる。平均直径は、水和粒子の平均直径および/または脱水粒子の平均直径として測定できる。典型的には、粒子の平均直径は、約20μm(マイクロメートル)〜約1000μmの水和粒子平均直径および約10μm〜約500μmの脱水粒子平均直径から成る群より選択される。他の態様では、水和粒子平均直径は約40μm〜約600μmおよび脱水粒子平均直径は約20μm〜約300μmであるか、またはより好ましくは、水和粒子平均直径は約50μm〜約500μmおよび脱水粒子平均直径は約25μm〜約250μmである。
【0049】
特定態様では、組成物中のHAは、本質的に架橋を有する水不溶性の水和HAゲル粒子から成る。例えばこの態様におけるHA組成物は、単一水和粒子相、例えば組成物中の液体は本質的に水和粒子内に閉じ込められている、例えば基本的に遊離液体相は存在しない、とみなし得る。組成物中のHAが本質的に架橋を有する水不溶性の水和HAゲル粒子から成る他の態様では、ある種の形態のHAは組成物から排除され、例えば典型的には約1μm未満の平均直径を有するHA粒子または分子は排除され、より典型的には約10μm未満の平均直径を有するHA粒子または分子は排除され、好ましくは約20μm未満の平均直径を有するHA粒子または分子は排除される。
【0050】
本明細書で使用する、平均直径による粒子の「サブセット」は、粒子の収集物が平均直径によって特徴付けられることを意味し、粒子の少なくとも一部の分画は拒絶される、例えばサブセット中に含まれない。
【0051】
さらなる他の態様では、粒子平均直径は、例えばふるいまたは当技術分野で周知の他の方法によって、例えば実施例に示すように、粒子平均直径分布を最終組成物において特定の性質を生じさせるように選択することができるように選択される。そこで、例えば5つの平均直径分画:0〜25μm、25〜75μm、75〜125μm、125〜180μmおよび180〜250μmの粒子を収集した、実施例16におけるように、脱水粒子をふるいにかけ、平均直径分画によって分けることができる。
【0052】
特定結合特性を生じさせる様々な比率の平均直径分画の組合せを判定するために、特定組成物の様々な平均直径分画を使用し得る。かくして、1つの態様では、水不溶性脱水粒子を少なくとも2つの平均直径分画に分けることができ、前記分画を、組合せの性質を調整するための比率で組み合わせることができ、例えば実施例17におけるように、125〜250μmおよび0〜125μmを含む2つの分画を1:1の比率で組み合わせる。生じる組成物は、サイズ分け前の粉砕粒子とは異なる平均直径分布を有し、例えば、平均直径分布は多モード平均直径分布、例えば2つの平均直径分画を組成物のために選択する場合はニ峰性平均直径分布であり得る。多モード組成物の性質は、組成物中の個々の平均直径分画の性質およびそれらの量から確立される。もう1つの態様では、水不溶性脱水粒子を、少なくとも2つの平均直径分画が選択され、少なくとも1つの平均直径分画は拒絶される、少なくとも3つの平均直径分画に分け得る。
【0053】
脱水粒子は、典型的には、少なくとも約100℃の温度、少なくとも約120kPa(キロパスカル)の圧を含む条件下で、少なくとも約15分間、生理的に許容される溶液(例えば食塩水、または実施例で提供するようなリン酸緩衝液)の存在下で水和する。そのような条件はオートクレーブにおいて達成することができ、例えば、粒子を滅菌するためにも使用できる。他の条件は、約100℃〜約150℃、典型的には約110℃〜約140℃、または好ましくは約120℃〜約140℃の温度;約120kPa〜約200kPa、典型的には約120kPa〜約160kPa、または好ましくは約130kPa〜約140kPaの圧;および約15〜75分間、より典型的には約20〜約60分間の期間を含む。
【0054】
付加的に考慮される滅菌/水和手法は以下を含む。1つの態様では、生成物を、118〜133℃(典型的には約121℃)の温度の清浄蒸気供給および対応する飽和の蒸気圧(約103kPa〜約186kPa)に接触させ得る。真空または「自然」冷却、例えば蒸気圧の緩やかな排出の間に蒸発冷却を生じさせ得る。他の態様では、空気および蒸気の混合物を用いて、好ましくは例えば送風機によって循環させて、生成物を118〜133℃(典型的には121℃)の温度で滅菌することができる。典型的な圧は、飽和蒸気圧より69kPa〜約103kPa上(典型的には310kPa未満)である。冷却は、例えば低温空気の添加および送風機による循環、によって達成できる。他の態様では、水を液相に保持するための十分な逆圧下に(典型的には310kPa未満)滅菌温度の液体水を生成物に噴霧することができる。およそ80℃への冷却は、冷却システムを備えた熱交換器における直接接触水噴霧によって達成し得る。約80℃から約20℃への冷却は一般的に蒸発によってであり、同時に生成物から過剰の液体を除去するのにも役立つ。前記水和/滅菌手法の多くの変法が可能である。
【0055】
架橋HA組成物は、好ましくは細胞、遺伝子、タンパク質、抗体、ペプチドおよび薬剤から成る群より選択される少なくとも1つの生物活性物質の生理的有効量を含有する。
【0056】
薬剤は、この用語を本明細書で使用する場合、例えば公定米国薬局方、公定米国ホメオパシー薬局方、または公定国民医薬品集、またはその補遺において認められている化合物および組成物;ヒトまたは他の動物における疾患の診断、治癒、緩和、治療または予防における使用を意図する化合物および組成物;ならびにヒトまたは他の動物の身体の構造または何らかの機能に影響を及ぼすことを意図する化合物および組成物(食品以外)を包含する。薬剤は、医薬化合物およびその溶媒和物、塩、結晶多形および立体異性体を包含する。薬剤のクラス(class)の例は、成長因子(例えばインターロイキン、プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンおよびサイトカイン)、ステロイド系および非ステロイド系避妊薬、抗生物質(例えばペニシリン、ストレプトマイシンおよびリノコマイシン)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、バルビツレート、アミノアルキルベンゼン、カテコールアミン、麻薬、麻薬拮抗剤、抗腫瘍薬および抗凝固薬(例えばヘパリンおよび硫酸ヘパリン)、ステロイド系および非ステロイド系抗炎症薬、麻酔薬、抗生物質、抗真菌薬、ホルモンおよびその何らかの合成類似体および医薬活性フラグメント等を含む。本発明の態様の送達システムにおける使用に適する薬剤は、それらが態様のヒアルロン酸誘導体上の基と相互作用して共有結合もしくはイオン結合を形成することができる限り、または疎水性もしくは親水性相互作用、例えば疎水性部分を有する薬剤と態様に従ったHA誘導体の間での疎水性相互作用が起こり得る限り、脂溶性、水溶性、陰イオン性または陽イオン性であり得る。
【0057】
生物活性物質はいかなる段階でも導入できるが、典型的には、脱水粒子を水和するために使用する生理的に適合性のある溶液、例えば実施例におけるリン酸緩衝液を含めることによって、組成物の調製の間に添加される。1つの態様では、架橋HA組成物、例えば水和HA粒子は、麻酔薬、例えば局所麻酔薬、を生物活性物質として含有する。局所麻酔薬は、アンブカイン、アモラノン、アミロカイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタンベン、ブタニリカイン、ブテサミン、ブトキシカイン、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジシクロニン、エクゴニジン、エクゴニン、塩化エチル、エチドカイン、ベータ−ユーカイン、ユープロシン、フェナルコミン、フォルモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、イソブチルp−アミノベンゾエート、ロイシノカインメシレート、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリカイン、メタブトキシカイン、塩化メチル、ミルテカイン、ネパイン(naepaine)、オクタカイン、オルトカイン、オキセタザイン、パレトキシカイン、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピオカイン、プロポキシカイン、プソイドコカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、およびその塩から選択される群の少なくとも1つの成員(member)を含み得る。典型的には、生物活性物質は、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ブピバカイン、コカイン、プロカイン、クロロカインおよびテトラカイン、またはその塩もしくは溶媒和物から選択される局所麻酔薬である。好ましくは、生物活性物質は、局所麻酔薬リドカイン、またはその溶媒和物もしくは塩、例えばリドカイン・HCl塩である。
【0058】
架橋HAは、生物活性物質の制御または持続放出を提供するビヒクルとして機能し得ることができる。1つの態様では、制御放出HAをあらかじめ選択した組織と接触させて設置し、所望臨床結果が達成されるまでそのままにしておく。1つの態様に従った制御放出HAは、送達を所望する位置で注射もしくは移植し得るか、または経口的にもしくはこれらの投与経路の2以上の組合せの経路によって投与し得る。
【0059】
拡散は、薬剤が架橋HAと非共有結合的に相互作用する送達システムによる生物活性物質の送達を提供する。かかる非共有結合相互作用は、生物活性物質が担体内に分散するイオン性、疎水性および親水性相互作用を含む。本明細書で使用する、「分散」という用語は、薬剤とHAの間のイオン性、疎水性および親水性相互作用を意味する。
【0060】
生物活性物質の送達の速度は、その分散の速度だけでなく、薬剤または他の生物活性物質がその中に分散しているHAの分解速度にも関係する。HAの分解速度は架橋度に関連し、またインビボで起こる数多くの代謝工程にも依存する。分解工程は通常、拡散よりも緩やかである。HA内に分散する薬剤の濃度および架橋度を選択することにより、分解および拡散の速度、かくして、薬剤送達の速度を制御し得る。
【0061】
本明細書で使用する、「生理的有効量」は、意図する作用を及ぼすために十分な生物活性物質の量、例えば局所麻酔薬を含有する組成物を注射した被験体において麻酔作用を及ぼすために十分な局所麻酔薬の量である。当業者は、使用する組成物の量、被験体の病歴等に基づいて生理的有効量を決定し得る。薬剤濃度は非常に広範囲にわたって変動可能であり、好ましくはHAの架橋度、薬剤の溶解度、その医薬活性および所望効果に応じて選択すべきである。
【0062】
本明細書で使用する、「生理的に許容される溶液」は、生理学的系における担体として有用な当技術分野で公知の何らかの溶液、例えば典型的には無菌、非アレルギー性、非毒性である水性溶液等、例えば食塩水、緩衝液、糖溶液等である。
【0063】
組成物の粘弾性(viscolastic properties)は、実施例で示すように決定し得る。1つの態様では、組成物は、4cm(センチメートル)の平面幾何学的外形を用いて1Hz(ヘルツ)周波数で測定する場合少なくとも約50Pa(パスカル)の貯蔵弾性率G';および1s−1のせん断速度で測定する場合少なくとも約20,000cPs(センチポアズ)の動粘度から選択される、37℃で測定した少なくとも1つのパラメータを有する。
【0064】
他の態様では、動粘度は少なくとも約40,000cPs、より典型的には少なくとも約60,000cPs、好ましくは少なくとも約70,000cPsである。他の態様では、動粘度は約20,000cPs〜約250,000cPsである。他の態様では、動粘度は約40,000cPs〜約220,000cPs、より典型的には約60,000cPs〜約200,000cPs、好ましくは約70,000cPs〜約170,000cPsである。
【0065】
他の態様では、貯蔵弾性率G'は少なくとも約100Pa、典型的には少なくとも約100Pa、より典型的には少なくとも約200Pa、好ましくは少なくとも約400Paである。他の態様では、貯蔵弾性率G'は、約50Pa〜約1,600Pa、典型的には約100Pa〜約1,200Pa、より典型的には約200Pa〜約1,000Pa、および好ましくは約400Pa〜約700Paである。
【0066】
架橋HA組成物は、その生体安定性、例えば実施例で示すようにヒアルロニダーゼ酵素によるインビトロでの分解に対するその抵抗性、によって特徴付け得る。例えば、ヒアルロニダーゼとの反応に適する条件下で、組成物を約0.3重量%の量のヒアルロニダーゼ酵素と37℃で組み合わせたとき、約16時間の反応後に測定される組成物についてのG'値は、反応の約15分目に測定されるG'値の少なくとも約5%である。他の態様では、約16時間の反応後に測定される組成物についてのG'値は、反応の約15分目に測定されるG'値の、一般に少なくとも約10%、または少なくとも約25%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、典型的には少なくとも約60%、より典型的には少なくとも約75%、または好ましくは少なくとも約80%の割合である。1つの態様では、約16時間の反応後に測定される組成物についてのG'値は、反応の約15分目に測定されるG'値とほぼ同じである。
【0067】
他の態様では、貯蔵弾性率G'は、局所麻酔薬、例えばリドカイン、を含めることによって上昇する(例えば組成物は、非安定化組成物、例えば局所麻酔薬を含まないこと以外は同一の組成物、と比較して安定化される)。これらの態様に関して、同じ条件下でG'地を測定することによって安定化組成物と非安定化組成物を比較することができる。本明細書で開示する水和条件下に、0.1重量%の局所麻酔薬(例えばリドカイン)を有する溶液で脱水粒子を水和することによって調製される安定化組成物は、一般に少なくとも約110%、典型的には少なくとも約120%、より典型的には少なくとも約150%、好ましくは少なくとも約175%の、非安定化組成物に関するG'よりも高いG'を有する。
【0068】
特定の態様では、HA組成物は架橋される水不溶性の水和HAゲル粒子を含有する。該粒子は塩酸リドカインを含む。また、前記粒子は、約20μm〜約1000μmの水和粒子平均直径および約10〜約500μmの脱水粒子平均直径から成る群より選択される平均直径を有する。さらに、粒子は、以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
(式中、変数は上述した値を有する)
によって表わされる架橋を含む。組成物は、4cmの平面幾何学的外形を用いて1Hz周波数で測定したとき少なくとも約50Paの貯蔵弾性率G'、および1s−1のせん断速度で測定したとき少なくとも約20,000cPsの動粘度から選択される、37℃で測定した少なくとも1つのパラメータを有する。また組成物は、ヒアルロニダーゼとの反応に適する条件下で、組成物を約0.3重量%のヒアルロニダーゼ酵素と37℃で組み合わせたとき、16時間の反応後に測定される組成物についてのG'値は、反応の約15分未満で測定されるG'値の少なくとも約5%である。他の態様では、16時間の反応後に測定される組成物についてのG'値は、反応の約15分未満で測定されるG'値の少なくとも約50%である。
【0069】
本明細書で使用する場合、「組織増大を必要とする」は、被験体が本発明のHA組成物の適用から利益を得ることができる医学的状態を有すること、例えば被験体が、状態、例えば皮膚における、典型的には額及び眼の周囲、鼻及び唇における、しわ、深いしわ及びひだ及び他のしわの治療及び/又は矯正、軟組織欠損及び陥没瘢痕の矯正ならびに改善を必要とすること、を意味する。これらの状態は、遺伝性又は年齢、疾病、損傷、外科合併症等を通しての後天性であり得る。
【0070】
「被験体」は、哺乳動物、例えばヒト、ペット動物(例えばイヌ、ネコ、トリ等)、家畜(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、家禽等)及び実験動物(例えばラット、マウス、モルモット、トリ等)を包含する。最も好ましくは、被験体はヒトである。
【0071】
本明細書で使用する場合、アルキル基は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル(nonodecyl)、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、及びその異性体を含む。アルコキシ基は、酸素原子を通して結合されたアルキル基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ等である。
【0072】
本明細書で使用する場合、アルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ペンタコセニル、及びその異性体などの、二重結合を含む2〜25個の炭素原子のアルキル基である。
【0073】
本明細書で使用する場合、アルキニル基は、ビニル、アリル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニル、ノナデシニル、エイコシニル、ヘンエイコシニル、ドコシニル、トリコシニル、テトラコシニル、ペンタコシニル、及びその異性体などの、三重結合を含む2〜25個の炭素原子のアルキル基である。
【0074】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ビフェニリル、トリフェニリル等を指す。「ヘテロアリール」という用語は、複素環式芳香族基、例えばピロリル、チエニル、フラニル、ピリジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、キノリニル等を指す。アラルキル基は、アルキル基を通して結合されたアリール基、例えばベンジル、エチルナフチル等である。
【0075】
本明細書で使用する場合、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等のような、3〜8個(両端を含む)の炭素原子の飽和環を含む。シクロアルキルアルキル基は、アルキル基を通して結合されたシクロアルキル基、例えばメチルシクロプロピル等である。
【0076】
ヘテロシクリルという用語は、1又はそれ以上の環炭素原子がヘテロ原子で置換されているシクロアルキル基、例えばアジリジル、アゼチジル(azetidyl)、ピロリジル、ピペリジル、チイラニル(thiiranyl)、チエタニル(thietanyl)、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、オキシラニル、オキセタニル(oxetanyl)、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル等を指す。
【0077】
「シクロアルケニル」という用語は、二重結合を有するシクロアルキル基、例えばシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル等を指す。
【0078】
「シクロアルキニル」という用語は、三重結合を有するシクロアルキル基、例えばシクロプロピニル、シクロブチニル、シクロペンチニル、シクロヘキシニル、シクロヘプチニル、シクロオクチニル等を指す。
【0079】
本明細書で使用する「置換された」という用語は、1又はそれ以上の水素原子が、生成物誘導体の所望製剤に有害な作用を及ぼさない化学基で置き換えられた基を意味する。そのような基を代表するのは、ハロゲン(例えば−F、−Cl、−Br、−I)、アミノ、ニトロ、シアノ、−OH、アルコキシ、アルキル、アリール、アミド、スルファミド、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、カルボキシレート、カルボキサミド等である。
【実施例】
【0080】
ビスカルボジイミドと非架橋ヒアルロン酸を記載した比率で反応させることにより、以下の実施例において架橋HAを製造する。これらの実施例において使用した非架橋HAの分子量は、概ね、約5×10ダルトン〜約2×10ダルトンであったが、より高い又はより低い分子量のHAも使用できる。使用したヒアルロン酸は、雄鶏のトサカ又は細菌源から得た。全ての化合物は、異なる記載がない限り、Sigma, St. Louis, MO より入手した。
【0081】
MES緩衝液の調製(pH範囲5.2〜7.1)
各MES緩衝液について、2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES水和物)(14.6g)を滅菌水980mLに溶解した。3つの溶液の各々に関して、0.1N NaOHの添加によってpHを所望値(5.5、6.0又は6.5)に調整した。1Lの容量になるように滅菌水を添加した。
【0082】
リン酸緩衝液1〜5
各個別リン酸緩衝液について、表1に示す量のリン酸ナトリウム12水和物(Na3PO4・12H2O)、塩酸リドカイン(リドカイン・HCl)、リン酸水素ナトリウム(Na2HPO4)及びリン酸二水素ナトリウム1水和物(NaH2PO4・H2O)を溶解するために滅菌水1Lを使用した。
【0083】
【表1】

【0084】
実施例1〜9の手順
以下の実施例の各々において、試薬は表2に示す量で使用した。非架橋HAを、明示したpHのMES緩衝液133.4mLに溶解し、p−フェニレン−ビス(エチルカルボジイミド)(PBCDI)の15mg/mLアセトン溶液と合わせ、PBCDI:HAの明示したモル当量比(MER%)及びモル%を生じた。反応混合物を十分に混合し(例えば約1分間の、ガラス棒又はオーバーヘッド(overhead)機械式攪拌器のいずれかによる混合は透明な反応混合物から白色ペーストを生じさせる)、混合物を室温で約72時間放置した。塩化ナトリウム(6.5g、混合物を塩化ナトリウム5重量%にするために)を生じたゲルに混合し、それを1時間放置した。強く攪拌したエタノール約1.2Lに添加することによって架橋HAゲルを沈殿させた。沈殿物を収集し、減圧下で乾燥して、架橋ヒアルロン酸を生成した。
【0085】
【表2】

【0086】
実施例10:架橋度は架橋剤のモル比の上昇と共に上昇する。
p−フェニレン−ビス(エチルカルボジイミド)とヒアルロン酸の架橋は、フェニレンUV発色団を架橋生成物に組み込む。架橋生成物のUV吸光度を測定することにより、UV発色団の量及びビスカルボジイミド由来のリンカーを組み込んだ架橋度を定量することができる。
【0087】
0.1mg/mL溶液を作製するために、実施例5、8及び9の架橋生成物の各計量した量(1〜10mg)を、別々に、密封容器において70〜75℃で4時間加熱することによって十分量の5%硫酸に溶解した。各溶液を5%硫酸で希釈して、各生成物の0.1mg/mL溶液を作製した。249nmで測定したこれらの溶液のUV吸光度(UV Max)を、ビスカルボジイミド:HAモル当量比(%)の関数として図1に示す。かくして、ビスカルボジイミド由来のリンカーを組み込んだ架橋度(UV Maxによって立証される)とビスカルボジイミド:HAモル当量比(%)の間に相関を認めることができる。
【0088】
実施例11:架橋度はpHによって制御することができる。
0.1mg/mL溶液を作製するために、実施例5、6及び7の架橋生成物の各計量した量(1〜10mg)を、別々に、密封容器において70〜75℃で4時間加熱することによって十分量の5%硫酸溶液に溶解し、室温で16時間放置した。これらの溶液を各々5%硫酸で希釈して、各生成物の0.1mg/mL溶液を作製した。249nmで測定したこれらの溶液のUV吸光度を図2に示す。
【0089】
ビスカルボジイミド由来のリンカーを組み込んだ架橋度はpH5.5(実施例5の組成物)で最大であり、これはpH6.0(実施例6の組成物)での架橋度より大きく、前記2つのいずれもpH6.5(実施例7の組成物)の架橋度より大きいことが理解され得る。
【0090】
実施例12:脱水架橋HAからのゲルの製造
実施例5の乾燥した架橋HA沈殿物の一部を低温ミルで粉砕した。粉末をジメチルスルホキシド(DMSO)に懸濁し、懸濁液を4〜10時間攪拌した。懸濁液を遠心分離し、DMSOを除去した。水不溶性架橋HAをエタノールに再懸濁し、数時間攪拌して、エタノールを除去した(所望する場合はエタノール洗浄を反復することができる)。エタノールの除去後、固体を収集し、真空下で乾燥した。架橋HAの乾燥粉末をリン酸緩衝液4に懸濁して、スラリー又はペーストの形態の30mg/mL懸濁液を作製した。NaClを添加することによって懸濁液の浸透圧モル濃度を280〜340mOsm(ミリオスモル)に調整し、注射器に充填した。注射器を、120℃、約138kPa(キロパスカル)(20 lb/in2)の圧で25分間加圧滅菌し、滅菌後冷水で冷却した。
【0091】
実施例13:水和HAゲルの貯蔵弾性率G'の特性決定
実施例12のゲルのレオロジー挙動(貯蔵弾性率G'を含む)をRheometer AR-1000 (TA Instruments, New Castle, DE)で評価した。測定条件は、温度=37℃、測定幾何学的外形=平面プレート、200μm(マイクロメーター)の間隙(gap)、及び1Hzの周波数を含んだ。これらの条件下で、実施例12で製造したゲルの貯蔵弾性率G'は1076Pa(パスカル)と測定された。
【0092】
実施例14:水和HAゲルの押出力の特性決定
ゲルを押出すために必要な力は、ゲルを1mLガラス製注射器[30ゲージ(内径約150μm、断面積0.0177mm2)の針を備え、0.635cmの内径を有するに充填することによって特性決定することができる。4mL/hの速度で針を通してゲルを押出すために必要な力を、力センサーシステム(Load Cell SLB-50, Transducer Techniques, Temecula, CA)を取り付けた注射器ポンプ上に注射器を置くことによって測定した。約25℃及び4mL/hの押出速度で、測定された押出力は10.7N(ニュートン)(2.4ポンド)であった。
【0093】
実施例15:酵素加水分解に対する水和HAゲルの安定性の特定決定
酵素加水分解に対する架橋ヒアルロン酸の耐久性は、測定した量のヒアルロニダーゼ酵素とゲルを一緒にし、貯蔵弾性率を時間の関数として記録することによるインビトロ試験によって測定することができる。
【0094】
バイアルに入れた実施例12のゲル(0.75g)に、ウシ精巣からのヒアルロニダーゼ酵素の溶液(食塩水で調製した1.9mM リン酸緩衝液中のヒアルロニダーゼの0.15mg/mL溶液15μL、約2.5単位)を添加し、両方を1分間十分に混合した。混合物を注射器に満たし、気泡を除去するために1500rpmで1分間遠心分離した。この混合物0.35gをレオメータープレートに負荷した。酵素の添加から15分後にデータの蓄積を開始した。ゲルの貯蔵弾性率G'を、温度=37℃、平面プレートの測定幾何学的外形、200μmの間隔、及び1Hzの周波数で、10分間隔で16時間記録した。
【0095】
貯蔵弾性率△G'/△tの低下の速度、例えばG'対時間の勾配は、△G'の値を時間間隔で除することによって算定できる。この速度は、酵素加水分解に対する生成物の感受性を表わし得る。2つの組成物の安定性を比較すると、より大きい安定性を有する組成物は、より低い安定性を有する組成物よりも良好にG'を維持する。この実施例において、ゲルについてのG'の喪失の平均速度は約-5Pa/時間であった。したがって、この実施例における組成物は、試験の条件下で安定であるとみなすことができる。当業者は、これらの条件下で安定な組成物が同様にインビボでも良好な安定性を有すると期待できることを認識し得る。
【0096】
実施例16:ゲルのレオロジー的性質に対する粒径の影響
実施例5からの乾燥した沈殿した架橋HAを低温ミルで粉砕し、実施例12で述べたようにDMSOとエタノールで洗浄した。エタノールを除去した後、固体を収集し、真空下で乾燥した。架橋HAの乾燥粉末を、互いの上に置いた5つのふるい:25μm、75μm、125μm、180μm及び250μm、に従って平均直径によって分画した。粒子の5つの平均直径画分:0〜25μm、25〜75μm、75〜125μm、125〜180μm及び180〜250μm、を収集した。各画分をリン酸緩衝液5に懸濁して32mg/mL懸濁液を作製した。懸濁液の浸透圧モル濃度を280〜340mOsm(ミリオスモル)に調整し、各懸濁液を注射器に充填した。注射器を、120℃、約138kPa(キロパスカル)(20 lb/in2)の圧で約45分間加圧滅菌し、その後冷水で冷却した。
【0097】
図3は、実施例12で述べた条件下で測定した、各ゲルについての貯蔵弾性率(G')を示す。図3からわかるように、これらの粘弾性ゲルのレオロジー的性質は、粒子の平均直径分布及びゲルの組成に依存した。
【0098】
図4は、実施例12で述べた手順に従って30ゲージの針を通してこれらのゲルを押出すために必要な力を示す。図4からわかるように、これらの粘弾性ゲルの押出力は、粒子の平均直径分布及びゲルの組成に依存した。
【0099】
実施例17:特定のレオロジー的性質を達成するために粒径画分を合わせること
実施例5からの乾燥した沈殿した架橋HAを粉砕し、実施例12で述べたように洗浄した。架橋HAの乾燥粉末の一部を、次に、250μmふるいでふるい分けた。平均直径250μm未満の全ての粒子を収集し、リン酸緩衝液4に懸濁して32mg/mL懸濁液を作製した。
【0100】
250〜125μmと125μm未満の粒子平均直径を有する2つの部分を収集した。これらの画分を1:1の重量比で混合し、リン酸緩衝液4に懸濁して32mg/mL懸濁液を作製した。各懸濁液の浸透圧モル濃度を280〜340mOsm(ミリオスモル)に調整し、注射器に充填した。注射器を、120℃、約138kPa(キロパスカル)(20 lb/in2)の圧で約45分間加圧滅菌し、その後冷水で冷却した。
【0101】
これらのゲルについての貯蔵弾性率(G')を、実施例12で述べた測定条件を用いて測定した。250μm未満の粒子平均直径から調製したゲル試料は600Paの初期G'を有していた;250〜125μm及び125〜0μm粒子平均直径の1:1比から調製したゲル試料は450Paの初期G'を有していた。
【0102】
実施例18:貯蔵弾性率対架橋度
実施例5及び6の各々からの乾燥した沈殿した架橋HAの一部を粉砕し、実施例12で述べたように洗浄した。各部分を250μmふるいでふるい分けた。平均直径約250μm未満の粒子を収集し、リン酸緩衝液4に懸濁して32mg/mL懸濁液を作製した。
【0103】
各懸濁液の浸透圧モル濃度を280〜340mOsm(ミリオスモル)に調整し、注射器に充填した。注射器を、120℃、約138kPa(キロパスカル)(20-lb/in2)の圧で約20分間加圧滅菌し、その後冷水で冷却した。
【0104】
これらのゲルについての貯蔵弾性率(G')を、実施例12で述べた測定条件を用いて測定した。実施例5の組成物から調製したゲル試料は700Paの初期G'を有していた;実施例6の架橋組成物から調製したゲル試料は450Paの初期G'を有していた。UV架橋測定に従ってより高い架橋度を有する組成物、すなわち実施例5の組成物はまた、より高い貯蔵弾性率を示すことが理解され得る。
【0105】
実施例19:本発明についてのΔG'/Δtは競合製品を上回る。
実施例5に従って得、実施例12に従って処理した架橋HAを、450Paの初期G'を有するゲルにした。ヒアルロニダーゼによる消化に対するこの生成物及び3つの競合組織増大製品RESTYLANE(登録商標)、PERLANE(登録商標)(どちらもQ-Med, Uppsala, Sweden)及びHYLAFORM(登録商標)(Genzyme, Cambridge, MA)の抵抗性を評価した。ヒアルロニダーゼ溶液(食塩水で調製した1.9mM リン酸緩衝液中のヒアルロニダーゼの0.15mg/mL溶液15μL、約2.5単位)を添加し、各製品0.75g と十分に混合した。各混合物を注射器に充填し、気泡を除去するために1500rpmで1分間遠心分離した。次いで、各混合物0.35gをレオメータープレートに負荷した。酵素の添加時点から15分後にデータの蓄積を開始した。ゲルの貯蔵弾性率G'を、温度=37℃、平面プレートの測定幾何学的外形、200μmの間隙、及び1Hzの周波数で、10分間隔で16時間記録した。
【0106】
図5は、時間に対する各製品についてのG'を示す。理解されるように、本発明についての酵素加水分解に対する生成物の感受性を表わす喪失速度は、3つの競合組成物の速度よりもはるかに低い。
【0107】
実施例20:ヒアルロニダーゼに対する組成物のΔG'/ΔtはG'とは無関係である。
図6は、約200〜約1200Paの初期貯蔵弾性率値を有する一連の架橋HA組成物の16時間にわたるΔG'/Δtを示す。上記実施例に従って組成物を調製し、測定を実施する。理解されるように、架橋HA組成物の分解は、基本的にこの16時間の期間にわたって初期貯蔵弾性率G'とは無関係である。
【0108】
実施例21:ゲルのレオロジー的性質へのリドカインの相乗作用
リドカインは相乗作用を有し得、リドカインを含まない緩衝液で製造した、他の点では同一の組成物と比較して、ゲルの初期貯蔵弾性率G'を上昇させることができる。実施例5の架橋HAを、3つの別々のリン酸緩衝液1(リドカインなし)、2(0.2%リドカイン)、及び3(0.3%リドカイン)を用いて実施例12におけるように処理した。ゲルを32mg/mL濃度にし、実施例12で述べた方法に従って各貯蔵弾性率G'及び分解プロフィールΔG'/Δtを測定した。図7は、リドカインを含む組成物が試験の期間を通じて有意に高い率G'を有することを示す。したがって、リドカインを含む架橋HAは良好な生体安定性を有し得、一部の場合は、G'を上昇させる相乗作用を有し得る。
【0109】
実施例22:本発明は組織増大のために有効である。
本研究において使用する架橋HA生成物を、実施例14で述べた手順に従って製造した。モルモットモデルでの皮内(interdermal)注射研究において、架橋HA生成物及び対照製品(ZYDERMTMII, Collagen, Palo Alto, CA)を皮内注射した。各注射部位(各試料につき各時間間隔で6箇所)は、2、4、8及び12週目に高さ及び直径を測定した。標本を各時間間隔で組織学的評価のために外植した。
【0110】
12匹のモルモットをこの研究に含め、2、4、8、12、18及び24週目に各2匹の動物を時間間隔の終わりに割り当てた。
【0111】
各動物の右及び左側腹部を、投与の少なくとも1時間前に毛刈りし、毛をなくした。各動物に、各々の側に3箇所ずつ、6箇所の皮内注射を実施した。試験製品及び対照製品を各動物に無作為に割り当てた。両方の製品を各部位につき0.2cc投与した。各部位を非毒性マーカーで明示し、注射部位は約2cm離した。加えて、各時間間隔で各部位の高さと直径を測定した。注射直後の測定値に「0」のスコアを割り当てた。高さ及び直径の上昇は水腫を示した。
【0112】
各時間間隔の終わりに、3匹の動物を安楽死させ、毛刈りして、注射部位を測定し、部位を切除して、10%中性緩衝ホルマリンに固定した。切除した組織を包埋し、切断して、ヘマトキシリンとエオシン(H & E)で染色し、資格を有する病理学者が検査した。標本を、注射した製品の存在及び組織応答に関して検査した。
【0113】
研究の第1週の間、紅斑スコアは極小(わずか)であり、試験製品とZyderm II注射部位の間で等しく分布した。水腫スコアは一貫せず、2つの物質の間で等しく分布した。第2週の間、紅斑スコアは第1週と同様であった。水腫スコアは低下し、ほとんどがゼロまで低下した。4週目の注射部位測定値は、注射直後に得た測定値と同等であった。
【0114】
CTAの容積は2週目から4週目まで変化しなかった。8週目の観察時点で、ほぼ全ての試験製品部位が高さと直径の測定値を維持し続けた。逆に、ほぼ全ての対照部位が測定不能であった。12週目の観察時点で、試験製品は全ての部位で平らになり、横に広がった。しかし、真皮のより組織の密な領域では、試験製品は、密でない領域ほどには広がらなかった。線維芽細胞及び脂肪組織は、注射部位に隣接する組織とほぼ同じ密度で試験製品全体にわたって位置した。対照製品はいずれの注射部位においても認められなかった。
【0115】
顕微鏡検査は、試験製品に対する細胞応答を示さず、2週目と4週目に対照製品において小さなマクロファージ浸潤物だけを示した。8週目と12週目には、いずれの物質に対しても観察可能な細胞応答は存在しなかった。
【0116】
2、4、8及び12週目の試験製品は、顕微鏡的組織応答を全く示さず、この製剤の生体適合性を確証した。注射の直後、試験製品は真皮の基質成分に組み込まれると思われた。高さ及び直径の測定値は2週目から4週目まで不変であった。8週目に、CTAは真皮層において横に広がるように思われたが、まだその容積を維持していた。逆に、対照製品は、下にある真皮を圧迫する物質の均質な塊のように見えた。4週目に対照製品において小さなマクロファージ浸潤物が認められ、8週目には注射剤の大部分が注射部位から再吸収されていた。
【0117】
対照製品と比較して、8週目及び12週目の試験製品のインビボ安定性は、この製品が臨床適用において長期的な存続を示し得ることを示す。これらの結果は、ヒアルロニダーゼによる分解に対するインビボ抵抗性を示す上記インビトロデータを裏付ける。
【0118】
本発明をその好ましい実施形態を参照しながら特定して示し、説明したが、付属の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく形態及び詳細の様々な変更を行い得ることは当業者に了解される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、HAおよびp−フェニレン−ビス(エチルカルボジイミド)を75%、100%および125%のモル当量比で反応させることによって得られる架橋生成物のUV吸光度である。
【図2】図2は、pH 5.5、6.0および6.5のMES緩衝液中でHAおよびp−フェニレン−ビス(エチルカルボジイミド)を反応させることによって得られる架橋生成物のUV吸光度である。
【図3】図3は、ゲルの貯蔵弾性率(G')への粒子平均直径分布の影響である。
【図4】図4は、ゲルを30ゲージの針から押し出すために必要な力に対するゲル中の粒子平均直径分布の影響である。
【図5】図5は、他の組織増大製品RESTYLANE(登録商標)、PERLANE(登録商標)およびHYLAFORM(登録商標)と比較した、酵素ヒアルロニダーゼの存在下での架橋HA生成物の分解である。
【図6】図6は、本発明の架橋HAから調製した、異なる初期G'のゲルの分解プロフィールである。
【図7】図7は、リドカインなし、0.2%リドカインおよび0.3%リドカインを含有するリン酸緩衝液中で製造したゲルの貯蔵弾性率G'及び分解プロフィールである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HAが、以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
(式中:
それぞれのHA'が、同じまたは異なる架橋HA'分子である;
それぞれのUが、独立して任意に置換されたO-アシルイソ尿素またはN-アシル尿素である;ならびに
R2が、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、またはヘテロシクリルアルキルである)
によって表わされる架橋を含む、架橋された水不溶性の水和HAゲル粒子を含有する、ヒアルロン酸(HA)組成物。
【請求項2】
粒子が、細胞、遺伝子、タンパク質、抗体、ペプチドおよび薬剤から成る群より選択される少なくとも1つの生物活性剤を含む、請求項1記載のHA組成物。
【請求項3】
生物活性剤が麻酔薬を含む、請求項2記載のHA組成物。
【請求項4】
生物活性剤が、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ブピバカイン、コカイン、プロカイン、クロロカインもしくはテトラカイン、またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項3記載のHA組成物。
【請求項5】
生物活性剤がリドカイン・HClである、請求項4記載のHA組成物。
【請求項6】
粒子が、
約20μm〜約1000μmの水和粒子平均直径;および
約10μm〜約500μmの脱水粒子平均直径
から成る群より選択される粒子平均直径分布を有する、請求項1記載のHA組成物。
【請求項7】
分布が多モード分布である、請求項6記載のHA組成物。
【請求項8】
組成物中のHAが、本質的に架橋された水不溶性の水和HAゲル粒子から成る、請求項6記載のHA組成物。
【請求項9】
組成物が、4cmの平面幾何学的外形を用いて1Hz周波数で測定する場合、少なくとも約50Paの貯蔵弾性率G';および1s-1のせん断速度で測定する場合、少なくとも約20,000cPsの動粘度から選択される、37℃で測定した少なくとも1つのパラメータを有する、請求項1記載のHA組成物。
【請求項10】
組成物を、ヒアルロニダーゼとの反応に適した条件下で約0.3重量%の量のヒアルロニダーゼ酵素と37℃で組み合わせる場合、16時間の反応後に測定される組成物についての貯蔵弾性率G'値が、反応の約15分未満に測定されるG'値の少なくとも約5%である、請求項9記載のHA組成物。
【請求項11】
組織増大を必要とする被験体において組織を増大させる方法であって、
a) 針を、架橋された水不溶性の水和HAゲル粒子を含む架橋されたHA組成物を充填した注射器に連結し、ここで、HAが、以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
(式中、
それぞれのHA'は、同じかまたは異なる架橋HA'分子である;
それぞれのUは、独立して、任意に置換されたO-アシルイソ尿素又はN-アシル尿素である;および
R2は、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクリルアルキルである)
により表わされる架橋を含む、組織増大を必要とする被験者の位置で針を被験者に挿入する工程、ならびに
b) HA組成物の少なくとも一部が被験体の体内に送達される、注射器に力を加える工程
を含む、方法。
【請求項12】
被験体がヒトである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
粒子が、細胞、遺伝子、タンパク質、抗体、ペプチドおよび薬剤から成る群より選択される少なくとも1つの生物活性剤を含有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
生物活性剤が局所的麻酔薬を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
生物活性剤が、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ブピバカイン、コカイン、プロカイン、クロロカインもしくはテトラカイン、またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
生物活性剤がリドカイン・HClである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
粒子が、約20μm〜約1000μmの水和粒子平均直径;および約10μm〜約500μmの脱水粒子平均直径から成る群より選択される平均粒子直径分布を有する、請求項12記載の方法。
【請求項18】
分布が多モード分布である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
組成物中のHAが、本質的に架橋された水不溶性の水和HAゲル粒子から成る、請求項18記載の方法。
【請求項20】
組成物が、4cmの平面幾何学的外形を用いて1Hz周波数で測定する場合、少なくとも約50Paの貯蔵弾性率G';および1s−1のせん断速度で測定する場合、少なくとも約20,000cPsの動粘度から選択される、37℃で測定した少なくとも1つのパラメータを有する、請求項12記載の方法。
【請求項21】
組成物が、少なくとも約100Paの貯蔵弾性率G'を有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
組成物が、少なくとも約400Paの貯蔵弾性率G'を有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
a) 水不溶性脱水架橋HA粒子を形成する工程;
b) 平均直径によって水不溶性脱水粒子を分ける、および平均直径によって粒子のサブセットを選択する工程;
c) 脱水粒子のサブセットを生理的に適合性のある水溶液で水和し、それによってHA組成物を形成する工程、
を含む、ヒアルロン酸(HA)組成物を調製する方法。
【請求項24】
約10μm〜約1000μmの平均直径を有する脱水粒子の部分を水和することを更に含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
d) 平均直径によって水不溶性脱水粒子を、少なくとも3つの分画に分ける工程;ならびに
e) 少なくとも2つの平均直径画分を選択する、および少なくとも1つの平均直径分画を拒絶する工程、
を更に含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
脱水粒子を、少なくとも約100℃の温度、少なくとも約120kPaの圧力、および少なくとも約15分の時間を含む条件下で、生理的に許容され得る溶液の存在下で水和する、請求項23記載の方法。
【請求項27】
生理的に適合性のある水溶液が生物活性剤を含む、請求項23記載の方法。
【請求項28】
生物活性剤が、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ブピバカイン、コカイン、プロカイン、クロロカインもしくはテトラカイン、またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
生物活性剤がリドカイン・HClである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
a) 生じる架橋HAが、以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
(式中、
それぞれのHA'が、同じかまたは異なる架橋HA'分子である;
それぞれのUが、独立して、任意に置換されたO-アシルイソ尿素またはN-アシル尿素である;および
R2が、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクリルアルキルである)
により表わされる架橋を含む、約4〜約8のpHのpH緩衝液の存在下で、架橋HAの前駆体をビスカルボジイミドで架橋すること、ならびに
b) 架橋HAを脱水して脱水架橋HAを産生すること、
によって、脱水架橋HAを調製することを更に含む、請求項23記載の方法。
【請求項31】
pHが約5.5である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
a) 生じる架橋HAが、以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
(式中、
それぞれのHA'が、同じかまたは異なる架橋HA'分子である;
それぞれのUが、独立して、任意に置換されたO-アシルイソ尿素またはN-アシル尿素である;および
R2が、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクリルアルキルである)
により表わされる架橋を含む、約4〜約8のpHのpH緩衝液の存在下で、架橋HAの前駆体をビスカルボジイミドで架橋する工程、ならびに
b) 架橋HAを脱水して脱水架橋HAを産生する工程、
を含む、架橋ヒアルロン酸(HA)組成物を調製する方法。
【請求項33】
緩衝液が、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸;2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトロトリエタノール;コハク酸塩/コハク酸;KH2PO4;N−トリス(ヒドロキシメチル−2−アミノエタンスルホン酸;トリエタノールアミン;ジエチルバルビツレート(diethylbarbituate);トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン;N−トリス(ヒドロキシ)メチルグリシン;およびN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンからなる群より選択される少なくとも1つの緩衝剤を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
ビスカルボジイミドが、1,6−ヘキサメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,8−オクタメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,10−デカメチレンビス(エチルカルボジイミド)、1,12ドデカメチレンビス(エチルカルボジイミド)、PEG−ビス(プロピル(エチルカルボジイミド))、2,2’−ジチオエチルビス(エチルカルボジイミド)、1,1’−ジチオ−p−フェニレンビス(エチルカルボジイミド);パラ−フェニレン−ビス(エチルカルボジイミド)、および1,1’−ジチオ−m−フェニレンビス(エチルカルボジイミド)からなる群より選択される、少なくとも1つの成員である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
c) 架橋HAを脱水して、脱水HAを形成する工程;
d) 脱水HAを粉砕して、水不溶性脱水HA粒子を形成する工程;
e) 平均直径によって水不溶性脱水粒子を分ける、および平均直径によって粒子のサブセットを選択する工程;ならびに
f) 脱水粒子のサブセットを生理的に適合性のある水溶液で水和し、それによってHA組成物を形成する工程、
を更に含む、請求項32記載の方法。
【請求項36】
脱水粒子を、少なくとも約100℃の温度、少なくとも約120kPaの圧力、および少なくとも約15分の時間を含む条件下で、生理的に許容され得る溶液の存在中で水和する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
pHが約5.5である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
4cmの平面幾何学的外形を用いて37℃および1Hz周波数で測定する場合、安定化組成物についての貯蔵弾性率G'の値が、非安定化組成物について測定されるG'の値の少なくとも約110%である、架橋HAおよび少なくとも約0.1重量%の局所麻酔薬を含む、安定化ヒアルロン酸(HA)組成物。
【請求項39】
安定化組成物についてのG'の値が、非安定化組成物についてのG'の値の少なくとも約150%である、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
局所麻酔薬がリドカイン・HClである、請求項39記載の組成物。
【請求項41】
HA組成物が、架橋された水不溶性の水和HAゲル粒子を含み、ここで、該粒子が、以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
(式中、
それぞれのHA'が、同じかまたは異なる架橋HA'分子である;
それぞれのUが、独立して、任意に置換されたO-アシルイソ尿素またはN-アシル尿素である;および
R2が、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクリルアルキルである)
により表わされる架橋を含む、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
架橋ヒアルロン酸(HA)を安定化する方法であって、生理的に適合性のある水溶液によって水不溶性脱水架橋HAを水和し、それによって安定HA組成物を形成することを含み、ここで生理学的に適合性のある水溶液が、少なくとも約0.1重量%の局所麻酔薬を含み、ここで4cmの平面幾何学的外形を用いて37℃および1Hz周波数で測定する場合、安定化組成物についての貯蔵弾性率G'の値が、非安定化組成物について測定されるG'の値の少なくとも約110%である、方法。
【請求項43】
脱水架橋HAを、少なくとも約100℃の温度、少なくとも約120kPaの圧力、および少なくとも約15分の時間を含む条件下で、生理的に許容され得る溶液の存在中で水和する、請求項42記載の方法。
【請求項44】
安定化組成物についてのG'の値が、非安定化組成物についてのG'の値の少なくとも約150%である、請求項43記載の組成物。
【請求項45】
局所麻酔薬がリドカイン・HClである、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
HA組成物が、架橋された水不溶性の水和HAゲル粒子を含み、ここで、該粒子が、以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
(式中、
それぞれのHA'が、同じかまたは異なる架橋HA'分子である;
それぞれのUが、独立して、任意に置換されたO-アシルイソ尿素またはN-アシル尿素である;および
R2が、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクリルアルキルである)
により表わされる架橋を含む、請求項45記載の組成物。
【請求項47】
a) 粒子が、リドカイン・HClを含む;
b) 粒子が、約20μm〜約1000μmの水和粒子平均直径、および約10〜約500μmの脱水粒子平均直径から成る群より選択される平均直径を有する;
c) 粒子が、以下の構造式:
HA'-U-R2-U-HA'
(式中、
それぞれのHA'が、同じかまたは異なる架橋HA'分子である;
それぞれのUが、独立して、任意に置換されたO-アシルイソ尿素またはN-アシル尿素である;および
R2が、任意に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロ脂肪族アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルまたはヘテロシクリルアルキルである)
により表わされる架橋を含む、および
d) 組成物が、4cmの平面幾何学的外形を用いて1Hz周波数で測定する場合、少なくとも約50Paの貯蔵弾性率G'、および1s−1のせん断速度で測定する場合、少なくとも約20,000cPsの動粘度から選択される、37℃で測定した少なくとも1つのパラメータを有する;ならびに
e) 酵素分解に対して組成物が十分に安定であり、ヒアルロニダーゼとの反応に適する条件下で、組成物を約0.3重量%の量のヒアルロニダーゼ酵素と37℃で組み合わせる場合、16時間の反応後に測定される組成物についてのG'値が、反応の約15分未満で測定されるG'値の少なくとも約5%である、
架橋水不溶性水和HAゲル粒子を含む、ヒアルロン酸(HA)組成物。
【請求項48】
16時間の反応後に測定される組成物についてのG'値が、反応の約15分未満で測定されるG'値の少なくとも約50%である、請求項47記載のHA組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−525541(P2007−525541A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513785(P2005−513785)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/041354
【国際公開番号】WO2005/067994
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506211573)アニカ セラピューティクス,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】