説明

組織工学および骨の再生のための、構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス、および、当該三次元マトリクスの調製方法

本発明は、組織工学および特に骨の再生を含む。本発明は、生体適合性を有するモネタイトの多孔質な三次元マトリクスに関し、当該三次元マトリクスは、構造化された多孔率を備え、予め規定され、かつ再吸収性を有している。また、本発明は、上記材料を製造することができる合成方法およびその利用に関する。これらのマトリクスは、細胞の定着および増殖にとって完璧な支持体であって、生体適合性、再吸収性、骨誘導性および血管再生などの有利な特性を備えているが故に、組織工学および骨再生に利用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、組織工学の中に包含され、特に、骨を再生する技術の中に包含される。本発明は、生体適合性を有するモネタイトの多孔質の三次元マトリクスに関し、当該三次元マトリクスは、構造化された多孔率(structured porosity)を備えているとともに、予め規定されており、かつ、再吸収性である。また、本発明は、上記材料を作製することができる合成方法、および、その利用に関する。これらのマトリクスは、生体適合性、再吸収、骨誘導および血管再生(revascularization)などの有利な特性を有しているので、細胞の定着(colonization)および増殖にとって最高の足場となり得、それ故に、これらのマトリクスを組織工学および骨の再生に用いることが可能である。
【0002】
〔背景技術〕
骨の量および骨の特性の喪失は、高齢の患者にとって、より一般的な深刻な健康問題である。
【0003】
最初にin vitroにて前駆細胞を移植した三次元材料を用いた、損傷した骨の再生の成否は、上記三次元材料の特性および構造に非常に依存している。
【0004】
筋骨格システムの骨断片を修理または置換するために、略一世紀にわたって、生体材料が用いられてきた。
【0005】
自家骨移植(換言すれば、個々の人自身に由来する移植)は、骨の隙間を満たすため、および、再建手術のために広く用いられる方法である。しかしながら、骨の供給には制限があるとともに、患者は、移植を受けるために、更なる外傷を被る必要がある。別の選択肢は、ドナー移植(donor allografts)であるが、当該ドナー移植も欠点(例えば、より遅い新生率(neoformation rate)、より低い骨形成能力、再吸収率、より低い血管再生、免疫原性応答の高いリスク、および、病原体の感染)を有している。
【0006】
骨に似た材料であって、生体適合性があり、不利な生物学的な反応性を示さず、再吸収される、骨に似た材料を得ることが望ましい。当該骨に似た材料は、新しい組織が形成されるにつれて徐々に分解され、その結果、挿入物を徐々に新しい骨へと変換するとともに、インプラントを除去するための二次的な外科的処置を不用とする。分解産物が除去され易く、毒性が無く、骨を誘導し、かつ、骨組織の形成を誘導する材料もまた、望まれている。
【0007】
生体内において、骨の変質および再吸収は、破骨細胞によって行われる。破骨細胞は、骨の表面に固定された単球に由来する。一度固定されれば、外部媒体のpHを下げるために、破骨細胞は、外部環境に対してプロトンの放出を開始する。当該酸性環境によって、骨の金属成分の一部であるハイドロキシアパタイト結晶が可溶化する。骨のハイドロキシアパタイトは、マクロファージによって除去されるアモルファスなリン酸カルシウム粒子中に可溶化されるか、あるいは、細胞外の液体中に蓄積されたCa2+イオンおよびPO43−イオン中に可溶化される。これらのイオンは、毛細血管に向かって拡散して体循環へ入り、腎臓を介して、尿によって除去される。これらの放出されるイオンは、新しい骨を形成するために、骨芽細胞によって再利用されることも可能である。破骨細胞もまた、酵素を用いるプロセスによって、骨の有機相の分解を管理している。
【0008】
骨を修復するための新たな生体材料に関する研究は、できるだけ骨の移植の必要性を低下させることを試みている。そして、上記研究は、時間とともに再吸収され、および/または、隣接する骨と一体化される人工的な置換物を求めており、更に、骨粗鬆症による骨折において固定剤として機能する人工的な置換物を求めている。骨置換物の力学的性質は、海綿骨の力学的性質にできるだけ類似したものであるべきである。更に、上記材料は、骨折の安定化に役立つべきであるとともに、必須である外部のサポートまたは固定時間を減少させるに足るほどの耐久性を有しているべきである。上記材料は、再吸収性、生体適合性および骨誘導性を有するべきである。換言すれば、上記材料は、移植片の近傍に存在する間葉細胞および他のタイプの細胞を引き寄せて、これらの細胞が骨芽細胞へ分化することを助けるものであるべきである。また、上記材料は、骨伝導性(osteoconductive)であるべき、換言すれば、上記材料は、新たな骨の形成において鋳型として機能するものであるべきである。
【0009】
生体内で生じている事象との類似性を求めるために、現在まで用いられた非再吸収性材料は、骨インプラントにおいて、再吸収性材料に置き換わった。これらの生体材料は、徐々に宿主(host)の組織によって置換されるので、新たに形成される骨の分化および成長を阻害しない。更に、再吸収性材料は、より高い生体適合性を有しているとともに、自然に骨の修復に関与する。そして、骨が再生した後で、外科的処置によって、再吸収性材料を除去する必要がない。これらの材料は、患者に悪影響を与えることなく、かつ、骨の正しい発達および成長を妨げることなく、骨の再生を正しく生じさせるとともに徐々に分解するために、十分な時間とどまる必要がある。
【0010】
無機のリン酸カルシウム(mineral calcium phosphate)の成形を決定する(set forming)生体材料は、骨の再生において特に興味深い。その理由は、それらは、準安定な結晶構造を有するが故に、天然の骨の鉱物相と類似しているとともに、骨の再構成および再吸収に影響するからである。
【0011】
骨置換物として使用される再吸収性材料としては、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(B−TCP)、および、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)(Stubbs et al., 2004; Schnettler et al., 2004)を挙げることができる。これらの材料は、骨の金属成分と化学的および結晶構造的に類似しているので、優れた生体適合性を備えているが、in vivoにおける溶解能力および再吸収能力に難がある。
【0012】
ハイドロキシアパタイト(HAP)は、最も興味深いものの一つである。この材料は、それ自体は無機相(inorganic phase)であって、当該無機相から骨が形成される。それ故に、ハイドロキシアパタイトは、骨の再生に広く用いられてきた。ハイドロキシアパタイトの例としては、Interpore 200(登録商標)、Interpore 500(登録商標)、Cerasorb(登録商標)およびCollagraft(登録商標)などの化学製品を挙げることができる。しかしながら、ハイドロキシアパタイトは、最も安定な結晶構造を有しているという事実の故に、当該材料は、再吸収が遅い。
【0013】
HAPは、最も高い生体適合性を備えた材料であって、骨によって形成される結晶に最も類似したものであるが、in vivoでは再吸収されない。当該材料の分解は、pHが低い溶液と接触することによって、および、ファゴサイトーシスによって生じる。分解によって、アモルファスなリン酸カルシウム粒子が放出され、当該粒子は、マクロファージによるファゴサイトーシスによって除去され得るか、または、新たに形成された骨の中に組み込まれ得る。マクロファージは、これらの粒子を分解して、生体のプール(pool)へCaおよびPを戻すことが可能である(Frayssinet et al., 1999; Benahmed et al., 1996)。しかしながら、これらの粒子が破骨細胞の活性化を引き起こすことは観察されていない(Frayssinet et al., 1999)。
【0014】
実施された全ての研究が、生理的なpH条件下におけるHAPの溶解性が低いが故に、ひとたび生体内に移植されたときに当該材料が分解に対して抵抗性を有していることを裏付けている。動物中におけるこの種のインプラントは、B−TCPが6ヶ月間で85%吸収されるのに比較して、6ヶ月間で5.4%吸収される(Eggli et al., 1988)。
【0015】
ヒトでは、Bio−Oss(HAP)によって作製されたインプラントは、再吸収されないと考えられる。その理由は、破骨細胞の活性によって当該インプラントを再吸収するためには3〜6年が必要であることを、実施された研究が示しているからである(Taylor et al., 2002)。当該材料が長期間にわたって生体内に存在することは、骨の修復工程を妨げ得るとともに、骨融合能力を妨げ得る(Affe et al., 2005; De Boever 2005)。
【0016】
結果的に、この材料は、当該材料の再吸収を増加させるために、伝統的に有機材料(例えば、ポリマー)と混合して用いられてきた。これらの適用の例は、US5866155に記載されており、当該文献は、ポリ乳酸(polylactic)のマトリクス中にハイドロキシアパタイトを加えることを記載している。また、これらの適用の例は、US−A5741329に記載されており、当該文献は、US5866155の変形例を記載しており、生体中に結合剤を挿入した後の媒体の局所的な酸性化に由来する幾つかの欠点を修正することを目的としている。
【0017】
リン酸カルシウムの再吸収の能力を向上させるとともに、リン酸カルシウムの骨伝導性を向上させるために、ハイドロキシアパタイト6よりも安定性が低い結晶性のリン酸カルシウム相(例えば、B−TCPおよびDCPD(ブルシャイト(Brushite))であって、in vivoにおけるより良い溶解性および再吸収性を有するリン酸カルシウム相が、近年、用いられてきた。
【0018】
B−TCPは、HAPと比較して、更なる骨伝導性、および、より良い再吸収性を備えている(Franco et al., 2006)。B−TCPは、適度な再吸収性を備えた材料であると考えられており、in vivoの試験において、動物内におけるB−TCPの再吸収には少なくとも1年が必要であり、ヒト内におけるB−TCPの再吸収には6〜8ヶ月が必要であることが報告されている(Wiltfang et al., 2003; Suba et al., 2004)。B−TCPの分解は、カルシウムの沈着(deposits)を増加させ、このことは、骨の形成に関与する酵素であるアルカリフォスファターゼの活性が上昇することと関係がある(Trisi et al., 2003; Sugawara et al., 2004)。
【0019】
DCPDもまた、生体適合性、骨伝導性、および、最も高い再吸収性を備えており、このことは、生理的なpH条件下において最も溶解性が高いことに起因している。このことは、より速く新しい骨を形成することを可能にする。DCPDは、生理的な環境において生物分解されて、付近に存在する細胞によって再吸収される(Tris et al., 2003)。in vivoにおいて、HAPおよびB−TCPよりも、最大3倍速く吸収されることが明らかになっている(Herron et al., 2003; Chow et al., 2003; Tas & Bhaduri 2004; Tamini et al., 2006;)。
【0020】
複数の研究が、移植後にDPDC材料の一部がHAPへ変換され得、これによって、破骨細胞によるインプラントの除去が数週間遅れ得ることを報告している(Constanz et al., 1998)。当該変換は、細胞によって媒体を酸性にし得るとともに、上記材料の再吸収を低下させると同時に生体適合性を低下させ得る。BTCPと共に、Mg塩、Ca塩(炭酸カルシウム)またはこれらの組み合わせを加えれば、この変換を妨げることができる。
【0021】
この材料を用いれば、骨の形成および当該材料の除去が、治療してから4週間後(Fallet et al., 2006)および8週間後(Constanz et al., 1998)に、バランスよく行われていることが観察される。このことは重要なことである。その理由は、分解が合成よりも優勢であれば、不安定な炎症反応が生じるからである。
【0022】
それ故に、これらのリン酸カルシウムの中では、ブルシャイト(DPCD)が、骨の再生における最も興味深い材料の1つである。ブルシャイトの興味深い特性の故に、近年、in situで凝結(setting)するように設計されたブルシャイトのセメント(cements)が存在する。例えば、US6733582およびUS2006213398は、in situにて凝結するブルシャイトのセメントの権利を主張しており、Chronoss Inject(登録商標)は、既に市販されているこのタイプの製品である。しかしながら、この材料は、殺菌されるときに大きな問題点を有している。つまり、加熱されると当該材料は分解するので、適切に殺菌することを困難にしている。
【0023】
近年、上記材料の作製方法およびこれらの殺菌に関する出版物と同様に、骨の置換材料として用いられ得るセメント(cements)の殺菌に関する異なる出版物が注目されているしかしながら、特許出願JP2004018459中に反映されているように、上記セメントを加圧滅菌器(autoclave)によって殺菌すると、当該セメントの特性が変化して、骨を再生するために必要な特性(例えば、再吸収、安定性、定着性および他の必要な特性)を有していない骨の置換材料が得られる。
【0024】
DPCDと同様に、モネタイト(monetite)は、in vivoにおいて、類似の時間および様式にて再吸収される。モネタイトは、インプラントを取り囲む細胞外組織内の生理的なpHにて徐々に分解され、当該インプラントに定着している細胞(内皮細胞、破骨細胞、骨芽細胞、マクロファージなど)は、骨にて生じているように、モネタイトの除去または再利用に関与する。
【0025】
US20060263443等の文献は、モネタイト、ブルシャイトを脱水することによって得られるリン酸二カルシウム無水物(DCPA)、他のリン酸カルシウムの生体材料との組み合わせ、を開示している。組み合わせた結果、殺菌産物を移植および骨の再生に用いることができなかった。更に、これらの材料は、反応中間体であって骨を再生させる技術分野に使用されるための能力を備えた構造物ではなかった。
【0026】
更に、骨の再生を修正するために、生体材料は、細胞の定着および増殖、脈管化、接触表面の増加、および、骨の再生を促進させる宿主組織と相互作用する表面の増加、を可能にする適切な多孔率(porosity)を備えている必要がある。これらの特性は、再生に必要な時間を細胞に与える、正しい再吸収率を伴う必要がある。
【0027】
Gbureck, Uwe et al., 2007は、三次元印刷技術によって作製された、ブルシャイトおよびモネタイトのインプラントに関する。上記インプラントを得るために、モネタイトへ変換される、熱水的に脱水されたブルシャイトのマトリクスが最初に得られる。しかしながら、上記文献の表2は、上記文献中でモネタイトと定義されているリン酸カルシウム材料が63%のモネタイト含有率を有していることを示しているのみであって、その多孔率の大きさまたは分布については示されておらず、破壊された多孔率を有していることを示している。それ故に、上記構造体は、本発明の目的に用いることはできない。
【0028】
US6,605,516は、制御された解剖学的な形態を備えた骨置換物を記載している。当該形態は、損傷の形態に正確に適応している。上記置換物は、化学的に固められたリン酸カルシウムの接合材料によって形成されている。本発明はまた、多孔質な相(porogenic phases)および鋳型に関する。当該鋳型を用いる手段によって、マクロ孔構造および外部形状を有するリン酸カルシウム、を得ることを可能にする。しかしながら特定の実施形態では、本発明は、ブルシャイト材料を提供するが、モネタイト材料、および、当該モネタイト材料の内部に存在する本発明の目的にとって有効ではないマクロ孔構造を提供しない。それ故に、本発明は、モネタイトのマトリクス(モネタイトの準安定性であるリン酸カルシウム相)であって、加圧滅菌器によって殺菌できるほどの高い熱安定性を備えたマトリクスを提供する。これによって、殺菌工程を簡略化できる。更に、孔を特定の構造配置にすることによって(当該構造配置は、材料を特定のデザインにすることによって得られる)、最先端の材料の骨誘導活性を上昇させる。上記マトリクスは、規定に従って構造化されたマクロ気孔特性を備えた多孔質ブロックの形状に合成されるので、骨芽細胞と接触する領域と同様に特定の表面領域を増加させるとともに、細胞に対する栄養の供給を容易にする。骨の形成にとって重大な要素は、適切な期間内に高い再吸収能力を示すこと、隣接する細胞が上記材料に定着すること、および、再吸収材料と生理的な骨マトリクスとを置換し得ることである。
【0029】
本発明のマトリクスのin vitroにおける分解は、細胞の増殖に影響を与えない。そして、更に、本発明のマトリクスは、生物活性を有し、細胞に対して無毒であり、突然変異を誘発せず、しかも、血液適合性(hemocompatible)である。
【0030】
〔発明の開示〕
安定した骨の再生を起こすことが可能な生体材料のためには、移植領域の細胞、隣接する骨に由来する骨芽細胞、骨髄に由来する間葉幹細胞(mesenchymal stem cells)、および、体循環に由来する内皮細胞が、同時かつ均質に上記生体材料へ定着(colonizing)することが可能である必要がある。このことは、生体材料が徐々に再吸収される新たな生理的な骨マトリクスの形成を可能にするとともに、新たな組織の生存に必要な血液を供給するための新たな血管システムの発達を可能にする。
【0031】
当該態様に関して考慮されるべき重要な特性は、孔の構造である。その理由は、孔は、生物分解性(多孔率が高ければ高いほど、再吸収性は良くなる)と細胞定着性とに影響するからである。上記材料は、内皮細胞(新たな血管の形成のため)および骨細胞の両方の定着を可能にする、孔の大きさおよび相互接続を備えている必要がある。更に、上記マイクロ孔および相互接続は、栄養および気体の拡散を可能にするとともに、細胞活動における特定の代謝産物の拡散をも可能にする。骨は、コンパクトな物質ではなく、むしろ、お互いに相互接続された、異なる多孔率を有している。相互接続された孔のシステムは、固形骨(皮質骨)と海綿骨(骨梁)とを連絡している(図16)。これらの多孔率の範囲は、皮質骨では100〜150μmであり、海綿骨では500〜600μmである。
【0032】
本発明は、新たな組織工学システムを提供し、単なる修復するストラテジー(reparative strategy)ではなく、治癒力のあるストラテジー(curative strategy)によって骨の構造を再生することを目的としている。上記再生は、骨粗鬆症へ適用できる。
【0033】
組織工学は、器官および組織において、病状を改善、維持または治療する分野であると考えられている。組織工学に基づいたシステムの創造は、生存細胞、特に生物医学的な利用のために設計された生体材料、および、処置におけるあらゆる時に必要とされる細胞活性を制御するためのシグナル分子、を一体化することを包含する。
【0034】
それ故に、本発明は、ランダムではない幾何学的構造を備えたマトリクスを提供する。換言すれば、モネタイトによって形成された、整理または予め規定された多孔率であって、骨の多孔率を考慮して設計された多孔率であるが故に、血管新生および細胞の定着が生じる。上記材料は、殺菌された状態で提供されるので使用する準備が整っており、特定のデザインを有しているが故に、孔の特定の構造配置を可能にする。換言すれば、予め規定された空間配置および空間形状、並びに、誘導され整えられた多孔率は、他のリン酸カルシウムと比較して、より良い骨誘導活性を有している。これらは、モネタイトを含むリン酸カルシウムの別の組み合わせを含んでいる。
【0035】
上記マトリクスは、規定されたマクロ多孔率、メソ多孔率、およびマイクロ多孔率の特性を備えた多孔質ブロックの形状にて得られる。当該多孔質ブロックは、特定の表面領域と、骨芽細胞と接触する領域とを増加させることによって、細胞へ、栄養または骨の形成にとって重要な要素を供給することを容易にする。
【0036】
本発明のモネタイトのこれらマトリクスの設計は、その多孔率が血管の新生および細胞の定着を可能にする、天然の骨に固有な特徴点を考慮している。
【0037】
本発明の新しいマトリクスは、骨の再生に適している生体材料であるモネタイト、脱水されたDPCD(dehydrated DPCD)(DPC)によって形成されている。上記マトリクスは、少なくとも95%±5%のモネタイト、好ましくは95%のモネタイト、より好ましくは100%のモネタイトによって形成されている。微量の材料は、β−リン酸テトラカルシウムに相当する。この材料のin vitroにおける分解は、細胞の増殖に影響を与えず、しかも、実施例4に示すように、生物活性を有し、細胞傷害性が無く、変異を生じさせること無く、しかも、血液適合性である。
【0038】
それらの設計および組成の故に、本発明のマトリクスは、隣接する細胞が当該材料に定着するために適した時間にて再吸収され、当該再吸収された材料は、生理的な骨マトリクスによって置換され得る。
【0039】
マトリクスは、骨の再生に利用できるあらゆる三次元構造に関連しており、当該三次元構造は、細胞の増殖を可能にするとともに、増殖している細胞の侵入を可能にする。
【0040】
細胞は、以下のものと理解される。つまり、
−好ましくは脂肪組織に由来する成人の間葉幹細胞(adult mesenchymal stem cells)であるが、それらは、骨髄、または、これらの細胞の供給源であることが明らかになっているあらゆる他の組織に由来するものであってもよい。これらの細胞は、骨芽細胞株または内皮細胞株へ分化させて用いることも可能である。
−骨断片から得られる骨芽細胞。
−内皮細胞。
−骨芽細胞株または内皮細胞株へ分化されたまたは分化されていない成人の間葉幹細胞の組み合わせ、骨芽細胞、破骨細胞、骨由来の骨細胞、および、内皮細胞。
【0041】
マクロ孔:100ミクロン(microns)以上の直径を有する孔。
【0042】
メソ孔:100ミクロンよりも小さく10ミクロン以上の直径を有する孔。
【0043】
マイクロ孔:10ミクロンよりも小さい直径を有する孔。
【0044】
アモルファスマトリクス:ランダムな幾何学、整理されていない多孔率、および、予め定義されていない多孔率を有するマトリクス。これらは、整理され予め定義されている多孔率の空間分布および空間配置に従わず、多孔率が天然のもの(材料に本来備わっている)であるのか、または誘導されたものであるのかには関係ない。
【0045】
構造化されたマトリクス(structured matrix)、または、構造化された多孔率を有するマトリクス(matrix with structured porosity):ランダムではない幾何学、整理された多孔率、および、予め定義されている多孔率を有するマトリクス。当該多孔率は、予め定義されている空間分布および空間配置を有し、誘導され整理された多孔率である。本発明のマトリクスは、予め定義された多孔率によって構造化されたマトリクスである。当該多孔率は、マトリクスに対して、骨の再生に利用するために理想的な、一連の特性を与える。
【0046】
骨誘導(osteoinduction):上記材料を与えることによる、新たな骨の形成。骨芽細胞の活性を利用して細胞増殖のためのフレームワークを形成し、新たな骨を形成する。骨誘導は、骨形成刺激の行為またはプロセスである。
【0047】
骨形成(osteogenesis):間葉細胞から骨芽細胞へ分化することによる、骨組織の形成または発達。
【0048】
骨の再形成(bone regeneration):リモデリングプロセスの後で、前から存在している骨と同じ骨を新たに形成すること。骨の再形成では、応答は、血管、細胞および細胞外マトリクスにて行われる。本発明の生体材料は、組織工学および骨の再形成に用いることが可能であり、それ故に、本発明の生体材料は、以下の骨の疾患の治療に用いられ得る。つまり、
(1)肥大性偽関節および非肥大性偽関節(Hypertrophic and non-hypertrophic pseudarthrosis)。
(2)骨壊死。
(3)骨粗鬆症。
(4)人工器官の除去後、腫瘍の摘出後に、生化学的および代謝性疾患、または、先天性疾患によって生じる骨の疾患。
(5)損傷および外傷の治療。
(6)骨折の治療。
(7)骨組織の修復を必要とする、あらゆる病変。
(8)顎顔面骨疾患の治療
(9)人工歯根を挿入する前の骨の増強。
【0049】
細胞の定着(cell colonization):生体材料上に広がり、マトリクス全体を被うまで増殖して細胞の数を増加させることを可能にする、細胞の能力。マトリクスに定着する能力の測定は、時間とともに、生体材料上の細胞の数を解析することによって行う(増殖グラフのデータ)。
【0050】
細胞接着(cell adhesion):他の細胞またはマトリクスヘ接着する細胞の能力。接着は、特定の相互作用(例えば、静電気力)によって生じ得、接着は、接着分子と呼ばれる特定のタンパク質によって制御される。生体材料へ接着する能力は、生体材料上に配列された細胞を、顕微鏡下にて観察することによって解析され得る。細胞と生体材料との間の接触表面は、生体材料に対する細胞の親和性の測定を示す。
【0051】
第1の態様では、本発明は、構造化された多孔率を有し、多孔質なモネタイトによって形成されている、生体適合性がある三次元マトリクスに関する。本発明のマトリクスは、構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクスを包含し、直径が350〜650μmである円筒形のマクロ孔であって、お互いが0.4〜0.6mmの距離にて均一に分離されているマクロ孔に対応する。上記モネタイトは、材料に本来備わっている多孔率を有しており、その上、上記構造化されたマクロ多孔率が誘導されている。
【0052】
本発明のマトリクスでは、上記構造化された多孔率は、当該マトリクスが自身の機械的安定性を安定に維持できるように、マトリクスの最大限の領域に分布している。特定の実施形態では、上記マトリクスの領域は、マトリクスの外側の領域(outer perimetric area)を除去した後に残る領域であって、幅が0.1〜0.9mmであって、好ましくは幅が0.5mmである。
【0053】
それ故に、骨形成に使用される材料は、宿主組織内での正しい一体化を実現するために、形態、構造および機能において骨に似ている必要がある。
【0054】
多孔率によって決定された構造、および、骨の再生に用いられる材料の孔の直径が、in vitroおよびin vivoの両方における骨の形成に影響を与えることが明らかになっている。上記孔は、骨組織の形成を生じるために必要である。その理由は、孔は、骨芽細胞および間葉細胞の移動および増殖を可能にするとともに、脈管化をも可能にするからである。それ故に、本発明の材料は、このような効果にとって必要な細胞の定着および増殖を可能にする多孔率の特性を有するが故に、正しい骨の再生を実現するために必要な状況(conditions)を提供する。
【0055】
他の材料によるマトリクスを用いて行われたin vitroの結果は、低い気孔は骨形成を刺激することを示している。その理由は、細胞の凝集が生じ、骨形成を刺激することによって、当該凝集が増殖を抑制するからである。これらの同様の実験は、高い多孔率は、細胞の接着には影響しないが、増殖を増加させることを示している。その理由は、接触表面が増加し、そして、酸素および栄養素の輸送が容易になるからである(Takahashi et al., 2004)。これらの結果によれば、骨形成は、孔の大きさには影響されないが、孔の数が少ないほど増加する。
【0056】
加えて、in vivoにおいて、材料中の細胞が一体化(integration)および侵入(penetration)していることは、それらの脈管化と同様に、個人の組織内へ上記材料を組み込むために必要である。本発明のマトリクスによって備えられるこのような高い多孔率および孔の大きさは、このような要求を容易なものにする。
【0057】
まず初めに、第1の試験によれば、骨の形成に必要な最小の直径は、細胞の移動プロセスおよび輸送プロセスを実行するために、略100μmであると考えられた。しかしながら、300μmよりも大きな直径が、近年提案されている。その理由は、マクロ孔はその中に毛細菅を形成することができるので、これらのマクロ孔の存在が、骨の形成を増加させるからである。脈管化は、骨形成の発達に影響を与える。小さな直径を有する孔は、低酸素状態を好み、骨形成を誘導せずに、むしろ軟骨形成を誘導する。
【0058】
それ故に、本発明のマトリクスの、長くて大きなトンネル型(tunnel-shaped)の孔は、その脈管化を可能にするとともに、骨形成を発達させる。
【0059】
更に、大きな直径を有する孔は、接触表面を増加させ、このことは、宿主組織と接触する表面をも増加させて、マクロファージによって行われる分解を促進させる。
【0060】
アモルファスなマトリクスの場合、当該マトリクスは、ランダムな多孔率の幾何学構造を有し、形成され得る血管ネットワークは、生体材料の構造内で不規則であって、骨の血管ネットワークと連結され得ない。そして、その結果、インプラントは、移植者の組織と効果的に一体化され得ない。
【0061】
しかしながら、本発明のマトリクスに採用される気孔構造は、必要とされる細胞種を共存させるため、インプラント全体で骨および血管構造を形成するため、更には、受容領域との連結を可能にするために、適切な大きさを有する孔を用いることを考慮している。その結果、組織の一体化が生じ得る。
【0062】
新たな設計には、隣接する組織の細胞を適切に定着(異なる細胞タイプおよび各タイプの十分な数の観点で)させて、受容組織と一体化するために、円筒形(トンネル型)の350μm〜650μmのマクロ孔であって、上記材料の構造を完全に貫通(traversing)するマクロ孔が含まれる。更に、栄養素、気体、および、細胞代謝における廃棄物を十分に拡散させるために、全構造内に、マイクロ孔のネットワークを含んでいる。
【0063】
図13に示されるように、本発明のマトリクスにおける細胞の定着の点からみた利点は、走査型電子顕微鏡下で細胞を観察する、直接的な試験によって示され得る。しかしながら、図14に示すように、マクロ孔の分布が破壊(destructed)されているとともに予め規定されていないアモルファスな生体材料は、本発明のセメントを得るプロセスによって得られるものであるが、当該アモルファスな生体材料は、内部構造を連結しない孔を有している。換言すれば、マクロ孔の数が不十分であり、かつ、適切な細胞の定着にとってマクロ孔の分布が不適切である場合には、このような細胞の大部分は、材料の表面へ追いやられる(relegated)。
【0064】
全生体材料を被うようにしっかりした血管を形成することに成功するのと同様に、新しい骨を形成するためのプロセスにおける成功は、当該プロセスに含まれる骨形成細胞の量に直接的に関係する。それ故に、図14に示すように、本発明の構造化された多孔率を有する材料によって形成されたマトリクスは、マクロ孔について整列され、誘導され、および予め規定されている空間分布および空間配置を有しており、当該マトリクスは、生体材料の全体を覆うように広域に及んで細胞を定着させることを可能にするとともに、細胞の挙動を決定する栄養素およびシグナル分子のよりよい拡散を可能にする。
【0065】
それ故に、本発明のマトリクスは、高い比率の多孔率を備え(特に、高い比率のマクロ多孔率)、当該マトリクスには、大きな直径の孔(>300μm、特に350〜650μm、好ましくは500±60μm)が存在し、当該孔は、連続したトンネルの形状をしている。本発明のマトリクスは、外科手術後に、インプラントと骨との一体化を増進させる。
【0066】
第2の態様では、本発明は、本発明のマトリクスの合成方法に関し、当該合成方法は、構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスを形成する工程を含み、当該工程は、以下の工程を含む。つまり、
−酸性リン酸カルシウムと塩基性リン酸カルシウとの反応を設定する間に、孔誘導剤、凝結遅延剤(retarder)および機械的な方法を組み合わせることによって、ブルシャイトの多孔質マトリクスに対応する固相を形成する工程。
−上記固相と蒸留水とを混合して液相を形成する工程。
−工程2にて得られたセメント(cement)へ1つ以上の鋳型を適用する工程。
当該鋳型の1つは、円筒形の穴を有し、当該穴の直径は、350〜650μmであり、より好ましくは500μm±60μmである。凝結(setting)している間に、マトリクス内に、直径が350〜650μm、より好ましくは直径が500μm±60μmである垂直な円筒形の孔が形成される。当該孔は、0.4〜0.6mmの距離にて、より好ましくは0.5mm±60μmの距離にて分離されている。
−上記多孔質なブルシャイトを殺菌するとともに、当該ブルシャイトを多孔質なモネタイトへ熱変換する工程。
【0067】
特に、用いられる合成方法では、工程1にて得られる産物は固相を形成し、当該固相は、蒸留水と混合されて液相を形成する。好ましい実施形態として、本発明は、塩基性リン酸カルシウムとしてβ−リン酸三カルシウムを用い、酸性リン酸塩としてリン酸一カルシウムを用いることを提案する。
【0068】
本発明によれば、混合される塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比は、略10分間で1.6〜1.8であり、孔誘導剤の濃度は1〜20重量%であり、凝結遅延剤の濃度は0.4〜0.6重量%である。好ましくは、塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比は1.785であり、孔誘導剤の濃度は3〜10重量%であり、凝結遅延剤の濃度は0.54重量%である。
【0069】
混合される塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比は、略10分間で1.6〜1.8であり、好ましくは1.785である。炭酸カルシウムが、1〜20重量%の濃度にて、好ましくは3〜10重量%の濃度にて加えられる。本発明は、凝結反応(setting reaction)の凝結遅延剤として、0.4〜0.6重量%の濃度のピロリン酸ナトリウム、より好ましくは0.54%のピロリン酸ナトリウムを用いることを提案する。
【0070】
このようにして得られた固相は、(P/L)比が3にて、液相(蒸留水)と混合される。
【0071】
本発明に用いられる酸性リン酸カルシウム、塩基性リン酸カルシウム、孔誘導剤および凝結遅延剤については、当業者であれば、別の化合物や組み合わせを用い得ることを知っている。
【0072】
本発明のマトリクスを得ることができる鋳型は、上述した孔の構造化された分布を有しているものであるが、当該鋳型には、得られたペースト(paste)が充填される。
【0073】
生体材料を作製するために用いられる本発明の鋳型は、円筒形の穴(punch)を有するあらゆる鋳型に関係し、当該穴の底は、350〜650μmの直径を有し、当該穴は、お互いに0.4〜0.6mm離れている。上記鋳型は、シリコン、金属、抵抗性プラスチック(resistant plastic material)、または、使用可能なあらゆるタイプの材料によって形成され得る。
【0074】
上記鋳型は、あらゆる所望の形であり得る。各患者の特定の骨欠陥を修復するために必要な上記形およびサイズに依存して、得られる生体材料は、常に、本発明の生体材料に典型的な多孔率を維持する。換言すれば、生体材料が本来備えている多孔率に加えて、直径が350〜650μm、より好ましくは直径が500μm±60μmである円筒形のマクロ孔であって、お互いが0.4〜0.6mm、より好ましくは0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されているマクロ孔が維持される。
【0075】
上記鋳型は、本発明のマトリクスを得ることを可能にし、当該鋳型において、構造化された多孔率がマトリクスの最大領域(maximum area)内に分配され、上記マトリクスが自身の機械的安定性を安定に維持することを可能にする。
【0076】
特定の実施形態では、上記鋳型は、構造化された多孔率が内部に配置されている最大領域が、マトリクスの外周領域(external perimetric area)が除去された後でも残っているマトリクスを得ることを可能にする。当該最大領域は、幅が0.1〜0.9mmであり、好ましくは幅が0.5mmである。
【0077】
本発明は、1つよりも多くの鋳型を用いることをも意図している。つまり、
−所望の形を有するが、構造化された多孔率を備えていないモネタイトのマトリクスを得ることを可能にする第1の鋳型。
−平面内に円筒形の穴を備える第2の鋳型。上記穴は、350〜650μmの直径、好ましくは500μm±60μmの直径を有し、当該穴は、お互いに0.4〜0.6mm、好ましくは500μm±60μm分離されている。上記第2の鋳型は、第1の鋳型が除去された後で適用される必要があり、第2の鋳型の中へ、第1の鋳型によって得られた部品が導入される。
【0078】
それ故に、本発明の生体材料は、ペレット(pellet)状、シート(sheet)状、円筒形、または、患者の特定の骨欠損の修復に用いることができるあらゆる別の形にて提供され得る。
【0079】
本発明の好ましい態様では、上記鋳型は、直径2〜50mm、好ましくは直径2〜15mmであるとともに、高さ1〜50mm、好ましくは高さ1〜5mmであるペレット状または円筒形の形状をしている。更に好ましくは、
−直径10mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmであって、64個の穴を有している。または、
−直径8mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmであって、39個の穴を有している。または、
−直径7mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmであって、28個の穴を有している。または、
−直径5mmであるとともに、高さ3mmであって、12個の穴を有している。
【0080】
全ての場合において、上記穴は、直径500μm±60μmの円筒形であるとともに、お互いが500μm±60μmの距離にて分離されている。そして、5mm(ペレットの端から)の外周領域(perimetric area)には穴が存在しない。
【0081】
上記セメント(cement)が凝結し始めてから1分後、セメントは略30分間、鋳型の中に配置される。固化が終了する前に、上記セメントが取り除かれ、鋳型によって規定された孔が形成される。一度、完全に凝結(set)すれば、形成されたブルシャイトのマトリクスは、24〜25分間、120〜130℃にて加圧殺菌(autoclaving)されてモネタイトへ変換され、完全に殺菌されて使用に適した状態になる。
【0082】
別の好ましい実施形態では、第1の鋳型は、シリコンにて形成されているとともに、作製されるべき本発明のマトリクスのサイズのペレットまたは円筒形に合った、円筒形の穴(cavities)を備えている。本発明の特定の実施形態では、上記穴は、直径2〜50mm、好ましくは直径2〜15mmであるとともに、高さ1〜50mm、好ましくは高さ1〜5mmである。更に好ましくは、
−直径10mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmである。
−直径8mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmである。
−直径7mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmである。
−直径5mmであるとともに、高さ3mmである。
上記鋳型は、マクロ孔の形成には含まれない。
【0083】
本発明における当該様態では、第2の鋳型は、金属製であって、前述した各寸法を有している。第2の鋳型の底(base)には、均一に分布している500ミクロン±60μmの円筒形の穴が備えられており、当該穴は、お互いに500ミクロン±60μmの距離にて分離されている。これによって、モネタイトマトリクスのマクロ孔を形成する。穴が存在しない0.5mm(ペレットの端から数えて)の最小の外周領域が配置されている。特定の実施形態では、上記金属の鋳型は、直径2〜50mm、好ましくは直径2〜15mmであるとともに、高さ1〜50mm、好ましくは高さ1〜5mmである。更に好ましくは、
−直径10mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmであって、64個の穴を有している。または、
−直径8mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmであって、39個の穴を有している。または、
−直径7mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmであって、28個の穴を有している。または、
−直径5mmであるとともに、高さ3mmであって、12個の穴を有している。
上述した全てにおいて、0.5mm(上記円筒形の端から数えて)の最小の外周領域は、孔を有していない。
【0084】
この場合、プロセスは、先に述べたものと同じであるが、固相と液相とを混合した後直ちに、上記第1のシリコン鋳型が充填される点において異なる。上記生体材料の凝結が終了する前に、シリコン鋳型から部品が除去される。次いで、上記部品は、30分間37℃にて湯浴(water bath)内で凝結が完了するまで、穴(punch)を有する金属鋳型(図1Cに示されているように、金属蓋にて覆われている)内へ導入される。一度、固化すれば、上記部品が金属鋳型から除去されて、規定された多孔率を有する円筒形の部品が得られる。形成された上記マトリクスは、24〜25分間、120〜130℃にて加圧殺菌処理が施されて、モネタイトへ変換される。これによって、完全に殺菌されるとともに使用に適した状態になる。これらの鋳型を使用すれば、構造化された多孔率を有するモネタイトのペレットが形成される。特定の実施形態では、上記ペレットは、直径2〜50mm、好ましくは直径2〜15mmであるとともに、高さ1〜50mm、好ましくは高さ1〜5mmである。更に好ましくは、
−直径10mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmであって、均一に分布した64個のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μm分離されている。
−直径8mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmであって、39個のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μm分離されている。
−直径7mmであるとともに、高さ3〜5mm、好ましくは高さ3mmまたは5mmであって、28個のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μm分離されている。
−直径05mmであるとともに、高さ0.3mmであって、12個のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μm分離されている。
【0085】
全ての場合において、モネタイトのペレットは、マクロ孔が存在しない0.5mm(ペレットの端から計算して)の最小の外周領域を備えており、当該最小の外周領域は、ペレットが、使用されるために必要な機械的安定性および強度の条件を維持することを可能にする。
【0086】
それ故に、上記ペレット内におけるマクロ孔の最終的な分布は、マクロ孔が存在しない0.5mmの最小の外周領域と、孔のサイズおよび孔間の距離(上述したもの)と、を両立させたものである。
【0087】
本発明の産物は、組織工学および骨再生の分野に適用される。それ故に、先に規定した鋳型によって得られる本発明のモネタイトのマトリクスは、細胞の担持および細胞の成長、ならびに、先に説明した用途に用いることが可能である。
【0088】
特定の実施形態では、本発明のペレットは、幾つかのユニットの形態(複数の部品を組み立てた状態)が骨の欠損している空間を補うように適用される。これによって修復されるべき全領域内へ栄養素、気体および細胞が均一に入り込むことを容易にするとともに、上記形態の結果として修復を用意にし、かつ、壊死する領域が生じることを防ぐ。
【0089】
好ましい態様によれば、本発明は、異なる由来の間葉細胞(脂肪由来、骨芽細胞、内皮細胞、分化していない又は骨芽細胞株若しくは内皮細胞株へ分化している成人の間葉幹細胞の組み合わせ、骨芽細胞、破骨細胞、骨由来の骨細胞、内皮細胞を含む)に対する成長担体(growth support)としての、本発明のマトリクスの使用に関し、当該使用は骨の再生のための使用である。
【0090】
本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスは、in vivoにおいて、長い時間をかけてDCPDと類似した様式によって再吸収され、HAへ変換されるというこれらの欠点を防いでいる(本発明の構造化された多孔率を有するマトリクスと、本発明のマトリクスの構造化された多孔率によって作製されたブルシャイトのマトリクスと、を比較した実施例10参照)。それ故に、上記マトリクスは、インプラントを取り囲んでいる細胞外組織中の生理的なpH条件にて徐々に分解される。上記マトリクスに定着している細胞(内皮細胞、破骨細胞、骨芽細胞、マクロファージなど)は、骨にて生じているように、上記マトリクスの除去または再利用に関与する。更に、それらを得るプロセスにおいて炭酸カルシウムと組み合わせれば、HAPへの変換を防ぐことができる。
【0091】
DPCDにて生じるように、これらの再吸収は第4週〜第8週に開始し、当該期間は、隣接する細胞が材料に定着し、再吸収された材料と生理的な骨マトリクスとを置換することに適している。当該生物分解性は生体内で生じている事象に適応しており、生体内における欠損箇所の骨の成長は、骨のタイプおよび欠損の大きさに依存して、2〜6ヶ月の期間生じ得る(Francone V. 2004)。
【0092】
生物分解性に加えて、他の特性(例えば、本発明の材料の粗さ(roughness)および組織(texture)など)が、マトリクスの研究において考慮されてきた。本発明の構造化されたマクロ多孔率を有する多孔質モネタイトのマトリクスに対して行われた生物試験によれば、材料に対する接着は95%よりも高いことが実証されている。このとき、細胞は、材料と接触しても形態を変化させず、表面全体に定着し、あらゆる機能している組織と同様に、お互いにコミュニケーションをとっている。
【0093】
モネタイトは、骨梁(弾性:50〜100MPa、圧縮:5〜10MPa)と比較して、非常に低い抵抗性および弾性を示し得るということを考慮すべきである。しかしながら、骨の力学的性質と同じにすることは、ほとんど不可能である。細胞が材料に侵入(invade)する時に、当該細胞は、インプラントの有機相を形成して力学的性質を改善するので、材料は、細胞の増殖を助けるに足る力学的性質を有すれば十分であることが示されている。本発明の多孔質モネタイトのマトリクスは、この要求に合っている。
【0094】
上記モネタイトの材料は、再吸収性があるとともに生物活性があり、骨に似た特性を有している。当該材料は、その表面および内部の両方において、細胞の増殖を可能にする。一度、骨の欠損内へ充填すれば、細胞(内皮細胞、骨芽細胞、破骨細胞など)が、健康な骨に連結するために必要な足場を形成することを可能にする。その結果、モネタイトは、ハイドロキシアパタイトへ変換されること無く、破骨細胞の作用によって徐々に除去される。骨芽細胞は、徐々に新たな鉱物相(mineral phase)を合成し、当該鉱物相は、徐々にモネタイトを置換して、最初の欠損を完全に除去する。
【0095】
それ故に、本発明の第1の目的は、構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクスに関する。当該三次元マトリクスは、自身の構造内に、直径350〜650μmである垂直な円筒形のマクロ孔を備えており、当該マクロ孔は、上記マトリクスの一方の端から他方の端まで縦方向へ貫通しており、各マクロ孔の間は、0.4〜0.6mmの間隔にて分離されている。特定の実施形態では、上記マクロ孔の直径は、好ましくは500μm±60μmである。別の特定の実施形態では、マクロ孔の間の分離距離は、好ましくは500μm±60μmである。
【0096】
本発明の別の目的は、構造化された多孔率を備えたモネタイトのマトリクスに関し、当該マトリクスにおけるモネタイトの含有率は、少なくとも90%であり、好ましくは95%であり、更に好ましくは100%である。
【0097】
本発明の以下の目的は、前駆物質を熱変換することによって得られる、構造化されたモネタイトのマトリクスによって作製される。特定の実施形態では、モネタイトへ熱変換される上記前駆物質は、塩基性リン酸カルシウム、酸性リン酸カルシウム、孔誘導剤、および、蒸留水を加えることによって凝結する凝結遅延剤によって形成された固相の混合物からなる。別の特定の実施形態では、塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比は1.6〜1.8であり、孔誘導剤の濃度は1〜20重量%であり、凝結遅延剤の濃度は0.4〜0.6重量%であり、(P/L)比((P/L) proportion)が3である。別の特定の実施形態では、塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比は1.785であり、孔誘導剤の濃度は3〜10重量%であり、凝結遅延剤の濃度は0.54重量%である。別の特定の実施形態では、上記酸性リン酸カルシウムはリン酸一カルシウム(monocalcium phosphate)であり、上記塩基性リン酸カルシウムはβ−リン酸三カルシウム(beta-tricalcium phosphate)であり、上記孔誘導剤は炭酸カルシウムであり、上記凝結遅延剤は、ピロリン酸ナトリウム(sodium pyrophosphate)である。別の特定の実施形態では、上記前駆物質は、ブルシャイト(Brushite)である。
【0098】
本発明の別の目的は、先のクレームに記載の、構造化された多孔率を有するもモネタイトの三次元マトリクスによって作製される。当該三次元マトリクスは、特定の骨の欠損または組織の欠損を修復するために必要なあらゆる形に適用され得る。特定の実施形態では、上記マトリクスは、底の直径が2〜50mmであり、高さが1〜50mmである円筒形からなる。別の特定の実施形態では、上記円筒形は、底の直径が2〜15mmであり、高さが1〜5mmである。別の特定の実施形態によれば、上記円筒形は、マクロ孔が存在しない0.5mmの最小の外周領域を有している。別の特定の実施形態によれば、上記円筒形は、以下のようである。つまり、
−直径10mmであるとともに、高さ5mmであって、64個の円筒形のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μmの距離にて均一に分離されており、マトリクスを縦方向へ貫通している。
−直径10mmであるとともに、高さ3mmであって、64個の円筒形のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μmの距離にて均一に分離されており、マトリクスを縦方向へ貫通している。
−直径8mmであるとともに、高さ5mmであって、39個の円筒形のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μmの距離にて分離されており、マトリクスを縦方向へ貫通している。
−直径8mmであるとともに、高さ3mmであって、39個のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μmの距離にて分離されており、マトリクスを縦方向へ貫通している。
−直径7mmであるとともに、高さ5mmであって、28個のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μmの距離にて分離されており、マトリクスを縦方向へ貫通している。
−直径7mmであるとともに、高さ3mmであって、28個のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μmの距離にて分離されており、マトリクスを縦方向へ貫通している。
−直径5mmであるとともに、高さ3mmであって、12個のマクロ穴を有している。当該マクロ孔は、直径500μm±60μmであって、お互いに500μm±60μmの距離にて分離されており、マトリクスを縦方向へ貫通している。
上述した全てにおいて、上記円筒形の端から中央へ向かう0.5mmの外周領域は、マクロ孔を有していない。
【0099】
本発明の別の目的は、先に記載した本発明の目的である三次元マトリクスを調製するための鋳型に関する。当該鋳型は、直径が350〜650μmである均一に配置された穴であって、お互いに0.4〜0.6mmの距離にて均一に分離されている穴を備えている。上記鋳型は、シリコン、金属、抵抗性プラスチック、または適用可能なあらゆる材料によって形成され得るとともに、あらゆる所望の形であり得る。
【0100】
特定の実施形態によれば、上記鋳型は、底の直径が2〜50mmであるとともに、高さが1〜50mmである円筒形である。別の特定の実施形態によれば、上記円筒形は、底の直径が2〜15mmであるとともに、高さが1〜5mmである。別の特定の実施形態によれば、上記円筒形は、以下のようである。つまり、
−直径10mmであるとともに、高さ5mmであって、64個の円筒形の穴を有している。当該穴は、直径500μm±60μmであって、お互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されている。
−直径10mmであるとともに、高さ3mmであって、64個の円筒形の穴を有している。当該穴は、底の直径が500μm±60μmであって、お互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されている。
−直径8mmであるとともに、高さ5mmであって、39個の円筒形の穴を有している。当該穴は、底の直径が500μm±60μmであって、お互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されている。
−直径8mmであるとともに、高さ3mmであって、39個の円筒形の穴を有している。当該穴は、底の直径が500μm±60μmであって、お互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されている。
−直径7mmであるとともに、高さ5mmであって、28個の円筒形の穴を有している。当該穴は、底の直径が500μm±60μmであって、お互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されている。
−直径7mmであるとともに、高さ3mmであって、28個の円筒形の穴を有している。当該穴は、底の直径が500μm±60μmであって、お互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されている。
−直径5mmであるとともに、高さ3mmであって、12個の円筒形の穴を有している。当該穴は、底の直径が500μm±60μmであって、お互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されている。
上述した全てには、穴を有していない、幅が0.5mm(円筒形の端から内部へ向かって計算して)である外周領域が含まれている。
【0101】
本発明の以下の目的は、構造化された多孔率を備えたモネタイトの三次元マトリクスの合成方法に関する。当該合成方法は、以下の工程を含んでいる。つまり、
1)塩基性リン酸カルシウム、酸性リン酸カルシウム、孔誘導剤、および、蒸留水を加えることによって凝結する凝結遅延剤によって形成されている固相を混合することによって、液相を形成する工程。
2)直径が350〜650μmである、垂直な円筒形のマクロ孔であって、互いに0.4〜0.6mmの距離にて均一に分離されているマクロ孔を形成するために、凝結している間に、少なくとも1つの鋳型へ上記セメントを加える工程。
3)形成された上記前駆物質を滅菌するとともに、当該前駆物質をモネタイトへ熱変換する工程。
【0102】
特定の実施形態では、上記方法の工程1において、塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比が1.6〜1.8であり、上記孔誘導剤の濃度が1〜20重量%であり、上記凝結遅延剤の濃度が0.4〜0.6重量%であり、上記(P/L)比が3である。別の特定の実施形態では、塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比が1.785であり、上記孔誘導剤の濃度が3〜10重量%であり、上記凝結遅延剤の濃度が0.54重量%である。別の特定の実施形態では、上記酸性リン酸カルシウムはリン酸一カルシウムであり、上記塩基性リン酸カルシウムはβ−リン酸三カルシウムであり、上記孔誘導剤は炭酸カルシウムであり、上記凝結遅延剤はピロリン酸ナトリウムである。別の特定の実施形態では、フェーズ1(phase 1)の産物は、ブルシャイトである。
【0103】
別の特定の実施形態では、上記方法の工程3において、上記熱滅菌が、高圧蒸気殺菌法によって行われる。別の特定の実施形態では、上記高圧蒸気殺菌法は、120〜130℃にて、24〜25分間行われる。
【0104】
別の特定の実施形態では、上記方法における工程2において、使用される鋳型は、先に説明した本発明の目的に記載されている鋳型である。別の特定の実施形態では、上記鋳型を使用する前に、底の直径が2〜50mmであるとともに、高さが1〜50mmである円筒形の形状を有する、シリコンの鋳型が用いられる。別の特定の実施形態では、上記シリコンの鋳型は、底の直径が2〜15mmであるとともに、高さが1〜5mmである。
【0105】
本発明の別の目的は、成形された(adopting)リン酸カルシウムを得るために、先の本発明の目的に記載された鋳型を用いることによって作製される。特定の実施形態によれば、上記リン酸カルシウムは、モネタイトからなる。
【0106】
本発明の別の目的は、培養細胞の支持体(support)としての、構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクスの使用に関する。
【0107】
本発明の別の目的は、構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクスに関し、当該三次元マトリクスは、更に細胞を含んでいる。特定の実施形態において、上記細胞は、間葉細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞、内皮細胞またはこれらの組み合わせである。
【0108】
本発明の別の目的は、骨の構造を再生するための治療薬を調製するための、細胞を備えるまたは備えない、構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクスの使用に関する。特定の実施形態において、上記骨の構造の再生は、骨粗鬆症に対抗(counteract)することによって行われる。
【0109】
〔図面の簡単な説明〕
図1:a)合成されるモネタイトシリンダと同じ大きさのガラスプレートに固定された金属パーツ、b)図1a)のパーツから得られるシリコン鋳型であって、製造されるパーツの大きさの空洞を有し、当面はマクロ孔構造を取り入れないシリコン鋳型、c)モネタイトマトリクス内に、制御され、また、均一なマクロ多孔率を生じ得る金属穴(punch)を有する金属鋳型を示す。
【0110】
図2:モネタイトマトリクスを得るために用いられる鋳型の構成の一例であり、該鋳型は、規則正しく、且つ、複製可能に間隔が開けられた、直径500±60mmの均一な竪穴分布を有する。
【0111】
図3:正面視(a)および側面視(b)において示される多孔性モネタイトマトリクスの一形態を示す写真である。この写真は、等しい大きさを有し、マトリクスの構造全体にわたって規則正しく分布される円筒状の穴、また、これらの穴が該構造体をどのように横断するかを示す。
【0112】
図4:本発明のモノマー/ペレットおよびそれら寸法の特定の実施形態である。a)は、直径(φ)5mm、高さ(h)3mmであり、互いに0.5mm(d.m)の間隔で配置される計12個の直径0.5mm(φ.m)のマクロ孔を有するペレットであり、b)は、直径(φ)10mm、高さ(h)3mmまたは5mmであり、互いに0.5mm(d.m)の間隔で配置される計64個の直径0.5mm(φ.m)のマクロ孔を有するペレットであり、c)は、直径(φ)8mm、高さ(h)3mmまたは5mmであり、互いに0.5mm(d.m)の間隔で配置される計39個の直径0.5mm(φ.m)のマクロ孔を有するペレットであり、d)は、直径(φ)7mm、高さ(h)3mmまたは5mmであり、互いに0.5mm(d.m)の間隔で配置される計28個の直径0.5mm(φ.m)のマクロ孔を有するペレットである。これらのすべては、マクロ孔のない幅0.5mmの外周領域を保っている。
【0113】
図5:前躯物質である多孔性ブルシャイト(加熱処理前)のX線回折、および材料を形質転換するためのプロセス、および材料を滅菌するためのプロセスの後に得られる多孔性モネタイト(加熱処理後)のX線回折である。X線回折グラフに見られる3つの高いピークは、上のグラフ(a)の場合にはブルシャイトを規定し、下のグラフ(b)では典型的にモネタイトを規定する。オートクレーブ殺菌後のサンプルの構造分析(リートベルト分析)は、材料が、主として95±5%モネタイトからなり、残りがβ−リン酸三カルシウム(β−TCPとも称する)であることを示す。材料の組成を確立するために、生体材料の回折図をブルシャイトのモデル図(ICSD 016132)およびモネタイトのモデル図(ICSD 38128)と比較した。
【0114】
図6:アモルファスモネタイトマトリクス、すなわち構造化された多孔率のないモネタイトマトリクスの正面画像(a)および側面画像(b)である。観察される多孔率は、モネタイトマトリクスを得るためのプロセスに固有であり、生体材料の多孔率の多くは、細胞定着が起こり得ないミクロ孔で形成されている。(c)は、本発明のモネタイトマトリクスの構造を示す画像であり、孔の大きさは約500μmで規定され、生体材料の構造の中に分布される。
【0115】
図7:制御された多孔率を有さないモネタイト生体材料の異なる倍率における走査電子顕微鏡画像である。これらの画像は、生体材料が基本的にミクロ多孔性であり(c)、また、最低限存在するいくつかのマクロ孔(空洞のように)が不規則に分布されており(b)、ここで、マクロ孔がマトリクスを横断する場合はない(a,b)ことを示す。
【0116】
図8:マトリクス全体にわたって分布された500μmの孔を有する、本発明のモネタイト生体材料を示す走査電子顕微鏡画像である。
【0117】
図9:L929細胞における、本発明のモネタイト生体材料の細胞毒性調査を示すグラフである。MTTアッセイから、モネタイトと接触しているものと、接触していないものとの両者において、L929細胞の増殖における顕著な差はないことが観察される。このことから、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトは細胞毒性がないと結論づけることができる。
【0118】
図10:マウスリンパ腫アッセイから得られた位相差倒立顕微鏡画像である。アッセイの結果として、(a)および(b)のようにポジティブ(変異細胞、コロニー増殖)とみなされるウェルの代表画像、または(c)および(d)のようにネガティブ(非変異細胞、コロニーがない)とみなされるウェルの代表画像が示される。
【0119】
図11:代謝活性のある、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト(モネタイト+S9)、および、代謝活性のない、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト(モネタイト)の変異頻度を示すヒストグラムである。代謝活性のあるとき、および代謝活性のないときに用いられるネガティブコントロールおよびポジティブコントロールと比較される上記頻度は、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトが変異原性のある生体材料ではないと結論づけることができる。
【0120】
図12:本発明のモネタイト生体材料の血液適合性についての測定結果である。骨芽細胞の培地と本発明のモネタイトと24時間接触させたAMSCsの培地とを、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールと比較した溶血率を測定するために用いた。グラフから、本発明のモネタイトが血液適合性のある生体材料であると結論づけることができる。
【0121】
図13:本発明に係る構造化された多孔率を有するモネタイトマトリクスの、異なる倍率における走査電子顕微鏡画像である。マクロ孔は、間葉幹細胞を生体材料の表面に移植させて(a)、該マクロ孔を介して導入させる(b、d)。マクロ孔の縦断面図は(c)において観察される。(c)生理学的水準において組織内に存在するとき、細胞は互いに細胞質を伸張しながら接触し合う。
【0122】
図14:制御されていない多孔率を有するモネタイト生体材料に配置された間葉幹細胞の走査電子顕微鏡画像である。この画像では、細胞が生体材料を特徴づけるミクロ孔よりも極めて大きな寸法であるために、材料内部にコロニーを形成する可能性がなく、細胞がマトリクス表面に配置されることを観察できる。
【0123】
図15:制御されていない多孔率を有するモネタイト生体材料上に配置された間葉幹細胞の増殖(灰色)を、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト生体材料上に配置された間葉幹細胞の増殖(黒色)と比較したものである。
【0124】
図16:骨組織の形態図であり:1.皮質骨、2.海綿骨、3.ハーバス系、4.血管、5.ハーバス管、6.フォルクマン管、7.骨膜、8.骨上皮、9.骨膜管、10.破骨細胞、11.骨芽細胞、12.骨細胞である。
【0125】
図17および図18:予め骨に分化させた異なる濃度のAMSCsが、骨に、および本発明の生体材料の同様の表面にどのように配置されるかを、倍率×40および倍率×80にて示すSEM画像である。図17aおよび図17bは、細胞を有していない生体材料に関するものであり、図17c〜図17hは、0.5×10セルから2×10セルまで用いられる、異なる細胞濃度に関するものである。図18a〜hは、3×10セルから6×10セルまで用いられる、異なる細胞濃度に関するものである。
【0126】
図19:(a)本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト生体材料の表面上における細胞の共焦点顕微鏡画像と、(b)数日間培養した後の上記生体材料のマクロ孔チャネル内部における細胞の共焦点顕微鏡画像とである。(b)の画像は、生体材料の穴内部の、予め分化させたAMSCsの核を示す(その全体における孔の復元は、いくつかのモンタージュ画像によって行なわれる)。これらの画像から、生体材料の表面においてどのように細胞が増加し、また、培養時間を延長した場合にマクロ孔の内壁にどのように細胞が増加するかが観察される。
【0127】
図20および図21:様々な接触時間(生体材料の表面に1日、4日、7日、10日および15日(図20a〜eのそれぞれ))において生体材料内で予め分化させたAMSCの異なる倍率における頂点SEM画像、および生体材料のマクロボアチャネル内部で予め分化させたAMSCの異なる倍率における頂点SEM画像(図21a〜eのそれぞれ)である。
【0128】
図22および図23:オステオネクチン(osteonectin:OTN)、オステオカルシン(osteocalcin:OCA)、オステオポンチン(osteopontin:OPN)、1型コラーゲン(type-1 collagen:COL−1)、TGF−β1およびアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase:AP)などのAMSCsにおける骨形成に関連のある遺伝子発現の分析結果である。この分析結果は、RT−PCRを用いて、未分化AMSC細胞(図22)および予め分化させたAMSC細胞(図23)を単独で、また、生体材料と4日間、7日間、10日間および15日間接触させたものにおいて行なった。ゲルの状態を考えると、未分化細胞および予め分化させた細胞はともに、骨形成に関連のある遺伝子の発現が改変されていない。よって、遺伝子は、骨細胞(骨欠損を再生させるために徐々に変質される生体材料に置き換わる細胞外マトリクスの合成能力がある)の形成に向かう機能状態を維持すると結論づけることができる。
【0129】
図24:免疫標識の共焦点顕微鏡画像である。図24は、下記の図25〜31をそれぞれ導くものから得られる観察結果を示す。そのため、観察されるように、図24は4つの区画に分割される:左上区画(i)は細胞の核染色に関するものであり、右上区画図(ii)は、タンパク質のみの標識に関するものであり、左下区画(iii)は細胞核+タンパク質の2重染色に関するものであり、右下区画(iv)は細胞核+タンパク質+生体材料における3重染色が観察されるものに関する。また、図25〜31では、図a〜fのそれぞれが上述した区画に分割され、表される情報はそれぞれの図において説明する。
【0130】
図25および図26:様々な培養時間における、生体材料の表面(上面図、図25)および生体材料のチャネル内部(側面図、図26)において予め分化させたAMSCsのCOL−1免疫標識を示す共焦点顕微鏡画像である。
【0131】
図27および図28:様々な培養時間における、生体材料の表面(上面図、図27)および生体材料のチャネル内部(側面図、図28)において予め分化させたAMSCsのオステオカルシン免疫標識を示す共焦点顕微鏡画像である。
【0132】
図29および図30:様々な培養時間における、生体材料の表面(上面図、図29)および生体材料のチャネル内部(側面図、図30)において予め分化させたAMSCsのオステオポンチン免疫標識を示す共焦点顕微鏡画像である。
【0133】
図31:予め分化させたAMSCsを生体材料表面において(上面視、図31a〜c)、およびチャネル内部において(側面視、図31d〜f)4日間生育したときの、該AMSCs内の1型コラーゲン、オステオカルシン、およびオステオポンチンの免疫染色の共焦点顕微鏡画像である。これらの結果は、生体材料中に存在する予め分化させたMSCsが骨合成に関連のあるタンパク質を合成し、分泌する能力があることを示す。
【0134】
図32および図33:本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトと4日間および7日間接触させた、生体材料およびAMSCsのSEM−EDXによる必須元素分析結果(図32)、ならびに本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトと10日間および15日間接触させた、生体材料およびAMSCsのSEM−EDXによる必須元素分析結果(図33)である。左列の画像は、実施された細胞内に存在する元素分析(右列の画像)に基づく、チャネルの中心において隔離された領域について示す。グラフは、生体材料に見られるものとは異なる元素分布を示す。このように、本発明の構造化された多孔率を有するバイオマテリアルと上記時間にわたって接触する細胞によって、粒子(カルシウム、リンおよびケイ素)合成は増加する。それゆえ、形成される骨のミネラル層に必要なカルシウム塩の形成に適した環境が備わっていると結論づけられる。
【0135】
図34:SEM−EDX画像は、AMSCsのみが存在する領域内の塩基性元素の分布を示す。カルシウムおよびリンの画像において、2つの元素によって形成される電子密度の高い粒子が観察できる(それらは該領域の同じ位置にある)。
【0136】
図35:培養液中で7日間、モネタイトなしで生育して予め分化させた、異なる濃度の細胞から得られたTGF−β1(pg/mg)の分泌を示す。TGF−β1のネガティブフィードバックメカニズムのために、低濃度の細胞に関してはTGF−β1(pg/mg)濃度の段階的な増加が観察され、高濃度の細胞に関しては僅かな減少または不安定化が観察される。
【0137】
図36:培養期間にわたって予め分化させた細胞から得られたTGF−β1(pg/ml)の分泌を示す。2×10個の細胞を6cmの面上に播種し、合成の増加を含むフィードバックメカニズム、および当該メカニズムの分泌の後に続く分泌の減少という典型的な反応を新たに分泌の増加が開始するまで観察して、異なる培養時間において分泌を分析する。
【0138】
図37:培養液中で7日間、生体材料において生育した、異なる濃度の予め分化された細胞から得られたTGF−β1(pg/ml)の分泌を示す。このグラフから、培地中のファクターの存在が、生体材料における細胞数の増加とどのように関係あるかを観察することができる。
【0139】
図38:培養液において、上記時間の間生体材料において成長した、予め分化された細胞から得られるTGF−β1(pg/ml)の分泌を示す。2×10のセルを生体材料に播種させて、分泌を培養中様々な時間で分析する。グラフから、培養1日目から10日目まで分泌が増加し、その後安定化され、徐々に減少していく時間があると推測される。
【0140】
〔実施例〕
以下の実施例を説明のために用いるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0141】
<実施例1:本発明のマトリクスの合成方法>
本発明のマトリクスを合成するため、固相を2倍の蒸留水(液相)と混合した。
【0142】
固相は、酸性リン酸カルシウム、塩基性リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの孔誘導剤、およびピロリン酸ナトリウムなどの凝結遅延剤を含むが、これらに限定されない。
【0143】
(1.1 固相の調製)
カルシウムセメントの固相を、塩基性リン酸カルシウムおよび酸性リン酸カルシウムから作製する。塩基性リン酸カルシウムはベータ−リン酸三カルシウム(beta-tricalcium phosphate:β−TCP)であり、酸性リン酸カルシウムはリン酸一カルシウムである。この2つの成分をモル比1.785で、乳鉢中において手動により10分間混合する。炭酸カルシウムを、濃度1〜20%(重量/重量)の範囲内、好ましくは3〜10%の範囲内において添加する。凝結反応の遅延剤として、0.54%(重量/重量)のピロリン酸ナトリウムを使用する。
【0144】
具体的には、ベータ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を調製するために、34.42gのDCPDおよび10.01gのCCをガラスのすり鉢において混合し(モル比2:1にて)、手動により15分間ホモジナイズする。混合物を炉(ベックスター)内で900℃において14時間加熱する。β−TCPの合成は以下の反応式に従って生じる:
2CaHPO・2HO+CaCO→Ca〔PO+5HO+CO
次に、粉体をふるいにかけ、粒径322μm未満の粉体を使用する。
【0145】
(1.2 液相の調製およびモネタイト海綿体の合成)
液相は、蒸留水または2倍の蒸留水によって形成する。
【0146】
測量された0.8gの無水リン酸一カルシウム、1.4gのベータ−リン酸三カルシウム、12mgのピロリン酸ナトリウムおよび110mgの炭酸塩によって形成した固相と、0.77mlの液相とを粉体/液体(P/L)比が3でガラスプレートにおいて30秒間混合する。
【0147】
(1.3 凝結プロセス)
セメントを37℃の水浴中に30分間配置する。凝結反応は、以下の反応式に従って生じる:
Ca(PO)2+Ca(HPO+8HO→4CaHPO.2H
凝結反応の間、重炭酸塩は溶剤の水素イオンと反応し、二酸化炭素に分解し、空洞を形成した後に海面状のブルシャイトマトリクスを生成する。
【0148】
(1.4 洗浄プロセス)
次に、生体材料を蒸留水中で数回洗浄し、次のステップにおいて行なわれる細胞増殖にとって最適なpH7付近に達するまで溶剤中の酸残留物を除去する。
【0149】
(1.5 ブルシャイトをモネタイトに変換するためのプロセス)
上述のプロセスによって凝結材料が得られると、該凝結材料を殺菌する。この殺菌処理のプロセスとしては、120〜130℃の温度範囲で24〜25分間、凝結材料をオートクレーブする処理が挙げられる。このプロセスの間に、ブルシャイトはモネタイトに変換される。
【0150】
ブルシャイトをモネタイトに変換するためのプロセス:
CaHPO・2HO→120℃→CaHPO+2HO(気体)
(1.6 アモルファス多孔性モネタイトマトリクスの合成方法)
上述したように成分を混合すると(実施例1.1〜1.2)、結果として生じるセメント(ブルシャイト)は、凝結およびそれに続く殺菌処理に関連のある形状を有する表面に配置される。これにより、図6aおよび図6bに観察されるように、マクロ孔がわずかに存在し、該マクロ孔が不規則に分布するアモルファスマトリクスが得られる。
【0151】
(1.7 構造化された多孔率を有するモネタイトマトリクスの合成方法)
実施例1.1〜1.2において説明したプロセスによってセメントを得た後、凝結を開始させてから1分後、図2に示されるシリコン鋳型を30秒間セメントに嵌めた。材料をセットすると、上述したように殺菌する(実施例1.5)。
【0152】
様々な鋳型を使用することにより、平均径500±600μmを有する円筒状の孔を有する材料を得ることが可能であり、また、孔誘導剤によって生成されたミクロ孔とマクロ孔とを結合することが可能である。
【0153】
図3は、本発明において説明されるプロセスによって製造される、構造化された多孔率を有するモネタイトマトリクスの一例を示す。凝結反応における二酸化炭素の生成、および上述した鋳型を取り付けた結果、得られた材料は、所定分布の孔を有する海面状の外観を示す。よって、さらなる処理を施すことなく、細胞増殖のためのマトリクスとして使用可能な、構造化された多孔率を有する滅菌モネタイト生体材料が得られる。
【0154】
図5は、オートクレーブにおける加熱処理前後のサンプルの回折図を示す。図4において観察されるように、加熱処理は、材料を殺菌することに加え、ブルシャイトからモネタイトへの構造の結晶性形質転換をもたらす。
【0155】
<実施例2:構造化された多孔率を有する特異的モネタイトペレットの具体的な製造>
一例として、また、最適な特性を有するセメントを得る目的のため、0.8gの無水リン酸一カルシウム、1.4gのベータ−リン酸三カルシウム、12mgのピロリン酸カルシウム、および110mgの炭酸カルシウムによって形成される粉体成分を、0.77mlの水を用いて30秒間混合した。凝結開始から1分後、以下に示される鋳型を30秒間セメントに取り付けた。
【0156】
(2.1 構造化された多孔率を有する、円筒状モネタイトマトリクスを得るためのプロセスにおける、1つの鋳型の使用)
本実施例の特異的な性能のため、以下の穴の寸法および数を有するシリコン鋳型を用いた:
a)直径1cm、高さ5mmまたは3mm、および64穴
b)直径0.8cm、高さ5mmまたは3mm、および39穴
c)直径0.7cm、高さ5mmまたは3mm、および28穴
d)直径0.5cm、高さ3mm、および12穴
すべての鋳型において、複数の穴は円筒状であり、500μm±60μmの範囲内の直径を有し、互いに500μm±60μmで離れており、(端部から鋳型の内側に向かって)0.5mmの穴のない周囲を保って分布されている。上記穴の構造は図2に示される構造である。
【0157】
実施例1.7に説明されるように、凝結反応の間に、重炭酸塩が溶剤の水素イオンと反応し、二酸化炭素に分解されて空洞を形成することによって、海面状のブルシャイトマトリクスが生成される。
【0158】
そして、生体材料を蒸留水中で数回洗浄し、細胞増殖にとって最適なpHであるpH7付近に達するまで溶剤中の酸残留物を除去する。
【0159】
続いて、材料を殺菌する。1℃で24分間のオートクレーブ殺菌プロセス中に、ブルシャイトはモネタイトに形質転換し、それにより、さらなる処理を施すことなく、細胞増殖のためのマトリクスとして利用可能な滅菌モネタイト生体材料が得られる。
【0160】
このように、得られた材料は、本発明の構造化された多孔率を有する生体材料によって形成され、いずれの場合にも示された上記寸法を有し、上記ペレットにおいて均一に分布されたマクロ孔を有する、特定の海面円筒状ペレットからなる。
【0161】
示された鋳型をそれぞれ利用することによって、均一に分布された円筒状の孔を有する下記のマトリクスを得ることができる。なお、当該孔は500μm±60μmの平均孔径を有し、孔誘導剤によって生成されるミクロ孔とマクロ孔とを結合可能な500μm±60μmの間隔で互いに離れている:
a)直径1cm、高さ0.5cmまたは0.3cm、および64のマクロ孔を有する、円筒状ペレット(図4b)
b)直径0.8cm、高さ0.5cmまたは0.3cm、および39のマクロ孔を有する、円筒状ペレット(図4c)
c)直径0.7cm、高さ0.5cmまたは0.3cm、および28のマクロ孔を有する、円筒状ペレット(図4d)
b)直径0.5cm、高さ0.3cm、および12のマクロ孔を有する、円筒状ペレット(図4a)
図4に示されるように、得られたこれら本発明のモネタイトペレットは、(ペレットの端部から内側に向かって)0.5mmの穴のない周囲を有しているため、機械的に安定な環境およびそれらの用途において用いられるために必須の強度を維持することができる。
【0162】
(2.2 構造化された多孔率を有する、円筒状モネタイトマトリクスを得るためのプロセスにおける、2つの鋳型の使用)
本実施例の特異的な性能のため、2種類の鋳型、すなわち、シリコンの鋳型(図1b)および他の材料の鋳型(図1c)を用いた。
【0163】
シリコン鋳型は、適切な大きさのモネタイトシリンダを得るために使用する(この段階において、マクロ孔の構造に干渉することはない)。
【0164】
シリコン鋳型を合成するために、まず、取得され得るモネタイトパーツ(図1a)と同じ大きさを有する円筒状のパーツをガラスプレートに固定した。
【0165】
その後、金属パーツを有するガラスプレート上に液状シリコンを添加し、重合を待機する状態にした。重合されると、ガラスプレートからシリコンを除去した。得られたシリコン鋳型は、製造されるモネタイトユニットの大きさの円筒空洞を有する(図1b)。製造されるパーツの大きさの空洞を有する上記シリコン鋳型は穴を有しておらず、従って、マクロ孔構造をまだ意図していない。
【0166】
7つの異なるシリコン鋳型を得た。これらは、以下の寸法の円筒空洞を有している:
−直径10mmおよび高さ5mmまたは3mm
−直径8mmおよび高さ5mmまたは3mm
−直径7mmおよび高さ3mmまたは5mm
−直径5mmおよび高さ3mm
また、示される各シリコン鋳型によって得られる各モネタイトパーツの寸法を有する金属鋳型を製造した。上記金属鋳型は2つのパーツから作られる。すなわち、複製可能なマクロポーラス部品を生み出す穴を有する第一パーツ、およびフタである(図1c)。具体的には、製造される金属鋳型の寸法は以下の通りである:
a)直径1cm、高さ0.5cmまたは0.3cm、および64穴
b)直径0.8cm、高さ0.5cmまたは0.3cm、および39穴
c)直径0.7cm、高さ0.5cmまたは0.3cm、および28穴
d)直径0.5cm、高さ0.3cm、および12穴
すべての鋳型において、穴は円筒状であり、500μm±60μmの範囲内の直径を有し、互いに500μm±60μmの間隔で離れており、(端部から鋳型の内側に向かって)0.5mmの穴のない周囲を保って分布されている。
【0167】
鋳型が製造されると、モネタイトパーツは下記のプロセスに従って作製した:
−第1に、シリコン鋳型を固相と液相との混合によって直ちに生じる生成物によって満たした。
【0168】
−第2に、生体材料が凝結し終える前に、そのパーツをシリコン鋳型から取り除いた。鋳型が非常に可塑性のあるゴムに似ているため、このプロセスは容易である。
【0169】
−第3に、穴を有し、フタ付きの金属鋳型において当該パーツを製造した。上記鋳型と凝結が終了するまで37℃の水浴中に30分間入れた。
【0170】
−完全に固化させると、所望の多孔率を有する円筒状のパーツを得るために、これらを金属鋳型から取り除いた。
【0171】
形成したマトリクスを120℃から130℃の範囲内で24〜25分間オートクレーブにかけて、当該マトリクスを発生するモネタイト(完全に殺菌されて、使用に適した)に変換する。
【0172】
得られた部分は、実施例1aにおいて得られた部分(図4)のように、同じ多孔率と寸法とを有する。
【0173】
<実施例3:構造化された多孔率を有するモネタイトマトリクスと、アモルファスモネタイトとの比較検討>
(3.1 顕微鏡調査)
次に、アモルファスマトリクスの微細構造と、本発明の構造化された多孔率を有するマトリクスの微細構造との比較アッセイを行なった。上記アッセイを行なうため、当業者に公知のプロセスによって走査電子顕微鏡技術を用いた。
【0174】
(アモルファス多孔性モネタイトマトリクスの微細構造)
アモルファスマトリクスの形状に配列された生体材料(図6a,b)は、制御されていない多孔率を得た。言い換えると、生体材料は、セメントを得るためのプロセスにおいて製造された(実施例1.1〜1−6において説明した)、不規則なマクロ孔分布を示す。アモルファスマトリクスのマクロ孔は生体材料における空洞であり、内部構造を結合しない(図7)。
【0175】
マクロ孔の数および分布に関して、マクロ孔の希少性が観察される。マクロ孔の存在は最小限であり、マクロ孔は不規則に配列される(図7)。
【0176】
このように、これらの構造体は、的確な細胞定着および細胞増殖にとって必要な環境を提供しないため、正確な骨再生に好ましくない。
【0177】
(構造化された多孔性モネタイトマトリクスの微細構造)
対照的に、図6cおよび図8は、構造化されたマクロ孔を有するモネタイトマトリクスを示す。走査顕微鏡画像(図8)は、マクロ孔の均一な分布を示す。
【0178】
上述した構造体とは異なり、構造化された多孔率を有するモネタイトマトリクスは、的確な細胞定着および細胞増殖に適切な環境を提供するため、正確な骨再生に好ましい。
【0179】
(3.2 インビボにおける比較検討)
骨再生を促進するための生体材料を設計するとき、最も関連のある態様の一つは、細胞の定着、ならびにガスおよび栄養物の拡散に関して適切な多孔率を有する構造を開発することである。特に、マクロ孔(100〜500mMの)は、マトリクスに補填される細胞の内部定着のため、同様に、提供される構造体全体における新たな骨の移植領域、また、同質の構造の、骨芽細胞および破骨細胞の血管新生ならびに転位のために、最適な媒体と考えられる。
【0180】
本発明において開発された、構造化された多孔率を有する生体材料は、マトリクスに供給される骨形成細胞、さらには移植者組織の細胞入口の完全かつ均一な分布を可能にする特徴的なマクロポーラス構造を有する。この構造は、新たな構造の吸収プロセスを開始させるために、また、元の組織と非常に類似した機械的および生理学的特徴を有する新たな骨が生じるように移植組織に徐々に沈殿し得る新たな骨マトリクスを形成するために、新たな構造を移植して一体化させ得る。
【0181】
マクロ孔における構造化されていない多孔率に対する、本研究において開発された構成によってなされる利点を決定するため、マクロ孔構造のないモネタイト生体材料と、マクロ多孔率構造のあるモネタイト生体材料との骨再生能力の比較検討を実施した。
【0182】
そのため、脛骨に致命的な欠陥のあるヒツジを用いて、骨接合技術による安定化を行なった。形成された欠陥において、構造化されていないモネタイト生体材料をそれらの3に使用し、構造化されているモネタイトを別の3に使用した。なお、それらのすべてにおいて、隣の脚をコントロール(生体材料を注入しないが、致命的な欠陥の形成およびこの骨折の安定化を含む)としている。生体材料の移植前に、特定番号のヒツジから得られた脂肪細胞からの間葉幹細胞を後者に接種した。
【0183】
新たな骨の構造を決定するため、移植後3ヶ月目および6ヶ月目に、連続X線写真コントロール調査および組織学的調査を行なった。その結果、マクロ多孔率を有さない生体材料に対して、マクロ多孔率を有する生体材料は明らかに利点を示す。移植から3ヶ月後、マクロポーラス生体材料の全体構造における骨の骨芽細胞および破骨細胞の大きなコロニー形成、ならびに新たな骨の均一な構造を観察することができる。6ヶ月目に、本発明の構造を有するマクロポーラス材料の完全な一体化が新たな血管新生の形成(安定な骨再生を可能にし得る)ととともに観察される。ここで、その完全体における栄養および酸素の拡散はあるが、壊死部分の形成はない。しかしながら、生体材料がマクロ孔構造を有していない場合、予め接種された細胞か、または移植者組織の細胞のいずれかによって、細胞定着のない残りのマトリクスを除いて、新たな骨組織の形成は移植組織の周辺領域に限定されることが観察される。またさらに、新たな血管新生の形成は誘発されない。
【0184】
これらの結果は、移植領域の細胞によるマトリクスの全体構造のコロニー形成によって、同じ方法において、吸収、骨マトリクス形成および新たな血管新生の誘導を生じるため、マクロポーラスモネタイトが新たな骨の形成に対して明らかに有利であると結論づけることができる。
【0185】
<実施例4:インビトロにおける生体適合性の検討>
本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト材料と細胞とを組み合わせる前に、上記材料が生体適合性を有することを実証する必要がある。
【0186】
実施されるインビトロにおけるアッセイは、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト生体材料が、骨と永続的に接触(接触の持続期間は30日を超える)することになる移植可能な生成物と考えられ得る点を考慮し、細胞毒性、遺伝毒性(変異原性)、および血液適合性に関係するものであった。
【0187】
(4.1 細胞毒性)
細胞培養技術を用いて、これらのアッセイでは細胞溶解(細胞死)、細胞増殖の阻害、ならびにヘルスケア産物、その材料および/または抽出物によってもたらされる細胞における他の影響を測定する。
【0188】
このアッセイによって、調査中の材料(構造化された多孔率を有するモネタイト)が細胞にとって毒性である場合、細胞の増殖および能力に影響を及ぼすと決定する。
【0189】
分析した材料は、実施例1において得た、構造化された多孔率を有するモネタイトマトリクス、すなわち、直径1cm、高さ5mm、および64個のマクロ孔の寸法であるモネタイトマトリクスであった。なお、ポジティブコントロールとしてはPVCを用い、ネガティブコントロールとしては高密度ポリエチレンを用いた。
【0190】
抽出条件に関しては、該材料の厚みが0.5mmより厚いため、3cmの材料を、抽出剤として機能する1mmの培地と接触させた。
【0191】
材料の細胞毒性を試験するために用いる細胞株は、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地において培養したL929マウス繊維芽細胞株であった。
【0192】
構造化された多孔率を有するモネタイトの細胞毒性および増殖は、MTTアッセイによって測定した。このアッセイは、着色化合物(ホルマザン)中のミトコンドリア酵素であるコハク酸デヒドロゲナーゼによる、MTTの代謝低下に基づいており、設立したポジティブコントロールおよびネガティブコントロールによって、本発明のモネタイトと接触している細胞のミトコンドリア機能的能力を測定する。このように、培地中の生存細胞の量は、生産されたホルマザンの量に比例するため、該生存細胞の量は、分光光度計を用いて記録された吸収量に比例する。
【0193】
市販の細胞毒性標準生体材料をポジティブコントロールとして使用し、高密度ポリエチレンおよびビクリル(vicryl)(同様に市販の)をネガティブコントロールとして使用した。それぞれの事例において、L929に関して得られた増殖曲線をグラフで表したものを図9に示す。
【0194】
得られた結果は、本発明の構造化されたモネタイトにおけるL929細胞の増殖と、ネガティブコントロールにおけるL929細胞の増殖とには顕著な差を示さない。これは、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトマトリクスが細胞毒性のある生体材料でないことを証明する。
【0195】
(4.2 変異原性)
遺伝毒性アッセイにおいて、哺乳類細胞培養もしくは非哺乳類細胞培養、または他の技術が、遺伝子突然変異、すなわち、ヘルスケア製品、その材料および/または抽出物の毒性によってもたらされる染色体変性および別のDNA変性もしくは遺伝子変性の構造における変化、または数における変化を測定するために用いられる。
【0196】
本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトの、インビトロにおける変異原性潜在能力は、“マウスリンパ腫アッセイ”と称されるアッセイによって測定した。上記アッセイは、L5178TK+/−マウスリンパ腫細胞中のチミジンキナーゼ遺伝子において定量化した突然変異、すなわち、これら細胞の処理後、構造化された多孔率を有するモネタイト生体材料によって誘導されるか否かに基づく。TK−/−突然変異に起因するチミジンキナーゼ(Thymidine Kinase:TK)遺伝子における細胞欠損は、トリフルオロチミジン(trifluorothymidine:TFT)の細胞毒性作用に対して耐性がある。TKを製造する細胞能力はTFTに感受性があり、代謝を阻害し、細胞分裂を停止させる。よって、突然変異細胞はTFTの存在下において増殖能があるが、一方、TK遺伝子の対立遺伝子を少なくとも1つ含んでいる正常な細胞は増殖能がない。アッセイは、96ウェルプレートにおいて実施し、ポジティブウェル(図10aおよび図10b、細胞のコロニー増殖が観察される)およびネガティブウェル(図10cおよび図10d、細胞のコロニー増殖が観察されない)を視覚的に計数した後、最終産物が得られる。各96ウェルプレートのポジティブウェルおよびネガティブウェルを計数すると、アッセイのために確立された一連の公式を適用し、結果を変異頻度において表す。
【0197】
試験される生成物が変異原性ではないが、当該生成物からインビトロにおいて生成される代謝産物が変異原性であるということが生じ得ることを考えると、アッセイを行なうために、細胞を適切な代謝活性システムの存在下、および非存在下において試験される生成物に晒した。
【0198】
インビトロにおける肝代謝を刺激するために最も一般的に用いられるシステムは、S9と称されるポストミトコンドリア分画であり、該分画は、補因子が加えられ、酵素誘発物質(アロクロール1254など)によって処理されたラットの肝臓から得られる。このように、細胞処理前に、試験される生成物をS9と称される混合物によって2時間処理し、その後、細胞を、遠心分離にかけた後の混合物から得られた上澄みによって処理する。
【0199】
細胞の処理のために、以下の製品を使用した:
−ポジティブコントロールとして:
・代謝活性がない場合は、メチルメタンスルホン酸(Methyl methanesulfonate:MMS)
・代謝活性がある場合は、3−メチルコラントレン(3-methylcholanthrene:3−MCA)
−ネガティブコントロールとして:
・24時間インキュベートしたL5178YTK+/−細胞の培地
・24時間インキュベートした、代謝活性があるときのL5178YTK+/−細胞の培地
−試験される生成物として:
・24時間インキュベートした、モネタイト生体材料を有するL5178YTK+/−細胞の培地
・24時間インキュベートした、モネタイト生体材料を有する、代謝活性があるときのL5178YTK+/−細胞の培地
得られた結果(図11に示される)は、代謝活性の有無いずれにおいても、実験に用いられるネガティブコントロールは、構造化された多孔率を有するモネタイトの存在下において培養されている細胞と同様に、低い変異頻度を誘発することを示す。培地で培養された変異細胞の存在がこれらの細胞の高度な自然発生的な変異率によるため、この変異頻度をバックグラウンドとして確立する。ポジティブコントロールに関しては、L5178YTK+/−細胞において誘導される変異頻度が、モネタイトまたは培地によって誘導される変異頻度よりも明らかに高い(両事象において約7倍高い)。これらの結果は、モネタイトが変異原性のある生体材料ではないことを証明する。
【0200】
(4.3 血液適合性)
これらのアッセイは、適切なモデルもしくはシステムを用いて、血液と接触するヘルスケア製品またはヘルスケア材料により血液またはその成分にもたらされる影響を評価する。溶血アッセイは、インビトロにおいて、ヘルスケア製品、その材料および/または抽出物によって引き起こされる赤血球の分解量およびヘモグロビンの放散を測定する。
【0201】
本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトの血液適合性は、血液がモネタイトに晒されるときの、血液ヘモグロビンの総量と血漿中に放散されるヘモグロビンとを測定するための比色分析アッセイによって測定した。生体材料が固相であるという条件において、モネタイトと24時間接触させた細胞培地(骨芽細胞およびAMSCs)を試験した。結果は、検定の変動係数、すなわちサンプルラインと高品質のコントロールライン(%CV)とが、すべての事象において20%以下(カリブレーター6の場合を除く)であり、質の良いコントロールラインの値の2/3が理論値(%PVDF)に対して20%以下の差分の割合であることを示す。よって、アッセイの結果は確立した合否基準の範囲内である。
【0202】
使用した化合物の溶血率は、以下の通りである。なお、10.19mg/mlの血液のヘモグロビン濃度の値は、100%溶血として用いられる:
【0203】
【表1】

【0204】
これらの結果(図12に示される)から、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトが血液適合性のあるバイオマテリアルであると結論づけることができる。
【0205】
<実施例5:アモルファス多孔質モネタイトのマトリクスと、構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスとの間の生物活性の比較研究>
材料の生物活性は、物理化学組成とその構造との両方に依存する。
【0206】
それゆえ、本実施例では、示されたアモルファスマトリクスまたは構造化された多孔率を有するマトリクスを用いて、間葉幹細胞の増殖能への効果を決定するための研究を行う。この細胞株の一つは、受容組織の骨芽細胞とともに、骨の再生プロセスに関与している。
【0207】
多孔質バイオマトリクスが得られると、上記のようにして、pH7.4の培地で1ないし2時間洗浄して水和させ、pHを中和させた(培地は2ないし3回交換した)。成人の脂肪組織由来の間葉幹細胞(ATMCs)を上記材料に直接播種した。細胞の濃度は0.5×10〜6×10個/cmとした。播種した2時間後に、材料全体を覆うまで培地を追加し、2、3日ごとに培地を取り替えた。
【0208】
細胞は7日間バイオ材料で培養された。その後、表面に細胞が接着したバイオマトリクスを、走査型電子顕微鏡(SEM)によって分析し、多孔質モネタイトバイオ材料に対するこの細胞の接着能およびコロニー形成能を観察した。
【0209】
SEMにより得られた画像(図13のaおよびb参照)は、間葉幹細胞が、適切な形態学を採用して、バイオ材料に対して完全な接着能を有すること、および、間葉幹細胞がさらに生理学レベルで組織に起こるような細胞間の接触を確立していることを示している(図13のcおよびd)。図13のcおよびdからわかるように、細胞は、バイオ材料とともに完全に膨張し、バイオ材料と最大限に相互作用し、細胞伸張(糸状偽足)を出している。これにより、接触表面が増加するとともに、細胞間の接触のレベルが増加する。
【0210】
構造化された多孔率を有するバイオ材料は、この細胞が接着できる、より大きな表面を提供する。この表面にて細胞は増殖でき、この細胞が持つ骨の再生プロセスの機能の実行を開始することができる。言い換えれば、この細胞は、バイオ材料を置き換える新しい骨マトリクスの生成を開始することができ、骨の改造と新血管形成とを高めて導くシグナル分子を発現することができる。
【0211】
一方、細胞の成長を支えるものとしてアモルファスマトリクスを使うと、孔のランダムな分布により、効率的な細胞コロニー形成が起きるのには適切でないことがわかる(図14のaおよびb)。このような細胞は、マトリクスの表面に退けられた大部分に対するものである。なぜなら、このような細胞は、バイオ材料を特徴付けるミクロ多孔率より著しく大きいサイズを有しているからである。
【0212】
図15に示すように、この結果から、多くの細胞が、構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスにおいて計られていることがわかる。24時間培養し、構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスにおける細胞は、アモルファスモネタイトのマトリクスにおける細胞と比べて1.5倍増殖する。この増殖は、48時間の培養で、1.8倍大きい。
【0213】
アモルファスモネタイトのマトリクスでは、細胞は、時間がたつと、0時間において配置された細胞の数より低い増殖の値を示す。これらの細胞は、分布される余地がなく、表面の連続性のないマクロ孔に詰め込まれ、自身の増殖を抑制し、また、それの内部をコロニー化する可能性を持つことなく材料の表面にのみ位置する。これらの細胞は、ランダムに配置された少数のマクロ孔に導入されることができるのみであった。これらのマクロ孔は、どんな場合にも構造全体を貫通しない凹みの形をとり、in vivoでは、周囲の組織との相互作用を妨げ、全細胞に栄養物と酸素とが到達することを妨げる。これらの細胞は、バイオ材料の表面上にのみ分布することができる。これらの細胞は、隙間なく詰め込まれ、自身の増殖を抑制し、材料の表面にのみ位置する。
【0214】
しかしながら、構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスに配置された細胞は、すべての孔上、その内部、および材料の表面上に分布し、0時間のときよりも大きな成長の値を示す。これらの細胞は、材料と接触する表面がより大きいので、詰め込まれない。それゆえ、これらの細胞は、細胞自身の成長を抑制しない。
【0215】
<実施例6:マトリクスの表面ごとに移植される細胞の数の決定>
このタイプの材料における細胞の最適な数を基準化または明らかにする研究はない。それゆえ、特に、最大の臨床結果を達成するために、この細胞の適応を、様々な研究者が行っている。
【0216】
骨の再生を成功させるために、インプラントは、生物の骨の構造に一体化されなければならない。このため、患者の細胞(内皮細胞、骨芽細胞、破骨細胞、マクロファージなど)が、供給された細胞と共に、プロダクトと相互作用してそれに定着しなければならない。さらに、エリアを活性化して再生プロセスを引き起こす強力な栄養効果を生成するのに十分なプロダクト内の細胞の量が必要である。
【0217】
患者の細胞とプロダクトの細胞との共存と、プロダクトと栄養物の均質な細胞内分布・拡散との強力な栄養効果と、代謝によるガスと老廃物とが発生するようにするために、バイオ材料は、大量の細胞を供給しなければならないが、この細胞がバイオ材料の多孔質構造を塞がないようにしなければならない。
【0218】
さらに、細胞の供給は大量に必要である。なぜなら、バイオ材料は徐々に退化するからである。バイオ材料は、細胞自身によって合成されるマトリクスによって置き換えられなければならない。
【0219】
結論として、細胞の適切な量は、以下の理由により、バイオ材料の表面のほぼ全体をしめるが多孔質構造を塞がないような量である。
【0220】
骨の再生プロセスを活性化する十分な栄養効果を奏する。
【0221】
バイオ材料を置き換えるのに十分な細胞外マトリクスを合成する。
【0222】
新血管形成を担当する内皮細胞を含めて、骨の再生に関与する患者の細胞の到達と定着とを可能にする。
【0223】
バイオ材料の表面ごとに移植される細胞の数を決定するために、濃度を増加させながら細胞をバイオ材料に播種した。そして構造のコロニー化の程度をSEMで観察した。この研究により、用いられる播種形式が、均質な細胞分布に適するかどうかを決定することも可能になる。
【0224】
用いられるプロセスは、直径1cm、高さ0.5cmの播種用モネタイトディスクで、直径500μmの64個のマクロ孔とし、バイオ材料あたり0.5百万ないし6百万(0.5×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10)をカバーするように細胞濃度を増加させる。細胞は、バイオ材料と接触させて8日間維持し、細胞自身が適応および定着するようにする。結果をSEMで分析する。
【0225】
画像(図17、図18)は、細胞濃度が増加すると、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料のコロニー形成の程度が増加することを示している。これは、バイオ材料への接着の能力が100%に近いからである。最低用量が用いられるときには、バイオ材料の表面は、完全な侵入を示さず、むしろ、この現象は、細胞の用量が2×10と3×10の後に見られ始める。しかしながら、500μmの孔は、4×10の細胞の播種の後に塞がれ始め、5×10と6×10の用量のときには孔は完全に塞がれる。さらに、1×10の細胞用量の後に、バイオ材料の孔の内部の占領がすでに観察される。この占領は、細胞の用量とともに増加する。
【0226】
得られた結果から、約6cmの全接触表面を有する、用いられたバイオ材料に対し、2百万ないし3百万個、すなわち、30万ないし50万個/cmの大量の細胞が含まれているといえる。
【0227】
<実施例7:マトリクスの細胞の進化の分析および種々の時間でのマトリクスの細胞の状態の分析>
バイオ材料での置換に適した細胞用量範囲を一旦選択し、構造化された多孔率を有するバイオ材料における細胞の進化が経時的に研究された。このために、種々の時間で、インビトロでの細胞のふるまいの分析が行われた。
【0228】
(7.1 構造化多孔率を有するマトリクスにおいて、未分化細胞の経時的観察)
構造化された多孔率を有するバイオ材料における細胞を適切に観察するために、走査型電子顕微鏡(SEM)による直接観察を行い、細胞はさらに、共焦点顕微鏡によるヘキスト核染色法で観察された。SEMによる観察は、接触表面の観察を通じて、細胞とバイオ材料との類似性および相互作用能力についてのデータを提供する。しかしながら、SEMのサンプルを処理することによって、バイオ材料から細胞を除去することができ、蛍光技術を用いて観察が可能である。
【0229】
以下の処理が行われた。
【0230】
バイオ材料1cmあたり30万の未分化AMSCを播種した。
【0231】
SEMの処理またはヘキスト核染色法処理を行い、共焦点顕微鏡によって観察した。
【0232】
結合(association)の1、4、7、10、15日目以後、バイオ材料における細胞の分布と相互作用の程度とを分析した。
【0233】
共焦点顕微鏡による観察結果の画像は、非常に特異な方法で、バックグランドノイズを最小にして、ヘキスト染色された細胞核を示している。バイオ材料の制御された割れ目の後ろに、バイオ材料の表面における細胞の画像(平面図)と、マクロ孔のチャネル内部(側面図)が得られた。
【0234】
上面画像(図19のa)は、培養時間経過とともにバイオ材料の表面に細胞の数が増加したことを示している。細胞は、徐々にマクロ孔の壁を覆い、培養10日目以後にはその全表面を塞いでいる。
【0235】
側面画像(図19のb)は、マクロ孔の全長において細胞を観察できるようにいくつかの連続画像をモンタージュ合成したものである。細胞は、結合の1日目から、チャネル内部にてコロニー化している。時間経過とともに、培養の10および15日目に、大きな細胞コーティングと大きな集合体が観察される。
【0236】
SEMによる観察結果の画像は、バイオ材料の表面の画像(上面図)と、孔の内部全体の画像(側面図)とを示している。
【0237】
上面画像(図20)は、培養時間経過とともにコロニー形成の程度が増加したことを示している。培養の7日目以後、孔の閉塞が観察される。15日目には、ほぼすべての孔が塞がれている。
【0238】
側面画像(図21)は、長期にわたっていても、サンプルの処理におけるロスの発生により、細胞の数が少なくなることを示している。しかしながら、形態学的な基準を用いて細胞とバイオ材料との相互作用の性質の明確な分析が提供できる。細胞は、バイオ材料との大きな接触表面を示している。多数の細胞伸張を観察し、細胞はさらに、その内部構造に導入されることさえできる。
【0239】
ヘキストとSEMとの画像が分析され、その結果、4日目頃に、AMSCが本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料と適切かつ均質に相互作用していると結論することができる。その表面のほとんどは、孔が塞がれることなく侵入される。これにより、AMSCの栄養要求に応答する栄養物の通過とホスト細胞の通過とが可能になる。
【0240】
(7.2 構造化された多孔率を有するモネタイト材料の骨誘導効果の決定、構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスの構造を、アモルファスモネタイトと比較することによる、非分化の成人の脂肪組織由来の間葉幹細胞(ATMCs)の遺伝子発現の分析)
構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料は、マトリクス全体を覆う細胞の均質な分布を好むマクロ孔分布を有する。さらに、この多孔質配置は、細胞自身により作られる栄養物、ガス、信号分子の到達を改善できる。このことのすべてによって、細胞が、より良い状態となり、骨形成の表現型をより効果的に表現するために相互に連絡できることが決定される。この結果、バイオ材料の新しい構造が、マトリクスの性質(骨のように、リン酸カルシウム誘導体)の骨導入効果を高め、骨形成の分化に関連する遺伝子の発現を誘導することができる。
【0241】
新しいマクロ孔構造によるこの骨形成誘導効果を決定するために、RT−PCR法を用いて、アモルファスモネタイトのマトリクスの構造を構造化された多孔率のものと比較することによって、骨の分化に関連する遺伝子の発現の分析を行う。
【0242】
このために、以下の実験を行う。
【0243】
1.脂肪組織とヒト骨芽細胞とから由来する成人の間葉幹細胞を、アモルファスモネタイトの多孔質マトリクスと、構造化された多孔率を有するモネタイトの多孔質マトリクスとの上に配置する。細胞濃度は10/cmとする。
【0244】
2.バイオ材料上で7日間培養を維持する。バイオ材料の構造が、細胞のふるまいに対して活動できるようにする。
【0245】
3.バイオ材料上の細胞のRNAを抽出し、以下の遺伝子発現をRT−PCR法で分析する:アルカリホスホターゼ、オステオポンチン、オステオネクチン、オステオカルシン。これらの遺伝子は、骨の分化プロセスに直接関連しており、間葉幹細胞として活性化され、また、骨芽細胞は、骨への自身の分化プロセスを行う。
【0246】
結果は、アモルファスのものに対して、構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料にある細胞の骨導入遺伝子の発現の誘導を示している。
【0247】
間葉幹細胞では、アモルファスモネタイトに配置された細胞に対して、オステオポンチンとオステオネクチンの遺伝子の早い時期での分化が誘導され、また、それほど早くはないが、アルカリホスホターゼとオステオカルシンの遺伝子の遅い時期での分化も誘導されている。
【0248】
骨芽細胞に関しては、アルカリホスホターゼとオステオカルシンのような遺伝子の遅い時期での分化の発現誘導が観察される。
【0249】
これらの結果は、バイオ材料の構造が、細胞のふるまいに対して直接的な影響を持っていることを示している。孔を有する均質なマクロ孔分布は、その構造全体を貫通することができ、より大きな多孔質相互接続が発生し、栄養物とガスへのアクセスにより、より大きな細胞間伝達と、より良い細胞状態とが実現する。この状況により、細胞の表現型をより効果的に発現でき、バイオ材料の組成により起こる骨導入効果を高めることができる。
【0250】
この効果は、バイオ材料を骨障害部位にin vivoで組み込んだときには増加するであろう。その場合、骨障害の環境で骨形成信号が増幅され、組織の修復が可能になるであろう。これらの信号は、骨の骨芽細胞と骨髄の間葉幹細胞とを募り、これらの細胞は、バイオ材料に均質に侵入することができる。そして、これらの細胞は、徐々に吸収されるバイオ材料を徐々に置き換える新しい骨マトリクスを生成し、安定な修復を行うであろう。
【0251】
構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料に配置された細胞の分化状態の維持を経時的に研究。(未分化および非分化のATMCのふるまいの比較)
上述のように、その配置と分布とに加えて、構造化された多孔率を有するバイオ材料における細胞の機能的状態を径時的に見つけることが、骨形成の分化状態の維持を決定するうえで重要である。すなわち、骨の障害を再生するために、徐々に退化するバイオ材料を置き換える細胞外マトリクスを合成することができる骨細胞の形成に向かう方向性が維持されているかどうかの決定である。
【0252】
この研究では、バイオ材料に配置された未分化のAMSCにおける骨形成に関与する遺伝子の発現の維持を分析した。この目的のため、骨形成プロセスに関与する遺伝子の発現が、RT−PCR法を用いて分析された。すなわち、オステオポンチン(OPN)、オステオカルシン(OCA)、オステオネクチン(OTN)、TGF−β1、アルカリホスホターゼ(AP)、タイプIコラーゲン(COL−1)である(図22)。以下の処理が行われた。
【0253】
バイオ材料1cmあたり30万個の非分化および未分化AMSC細胞の配置。
【0254】
バイオ材料に結合して培養した1、4、7、10、15日目に、アルカリホスホターゼ、オステオカルシン、オステオポンチン、タイプIコラーゲン、TGF−β1の発現の分析。
【0255】
非分化のAMSCについての結果に関連して、図22に示すように、AMSC細胞は研究されたすべての遺伝子、オステオネクチン、オステオカルシン、オステオポンチン、タイプIコラーゲン、TGF−β1、酵素アルカリホスホターゼを発現した。
【0256】
この発現は、分析した時間において、構造化された多孔率を有するバイオ材料にて培養されたとき、修正されていない。すなわち、オステオネクチン、オステオカルシン、タイプIコラーゲン、TGF−β1は、バイオ材料での培養の4、7、10、15日目にその発現を維持する。オステオポンチンの発現は、4、7日目に減少するが、バイオ材料における培養の10、15日目に回復して維持した。しかしながら、酵素アルカリホスホターゼの発現は、AMSCにおいて非常にわずかであり、バイオ材料での培養の間に失われ、培養の15日目以後に発現を開始する。
【0257】
タイプIコラーゲン、オステオポンチン、オステオネクチンは、骨前駆細胞において早く発現される。オステオカルシンは、鉱化が開始すると発現する。この場合、AMSCは、骨芽細胞の分化の開始とこの分化の最終段階に関与する両方のタンパク質を発現する。さらに、このタンパク質は、骨マトリクスの有機成分の一部を形成するコラーゲンを合成することができる。一旦合成されると、これらのタンパク質は、形成された新しいマトリクスに吸収され、捕捉される。
【0258】
アルカリホスホターゼは、リン酸エステルから、鉱化に必要な有機リンを放出する酵素である。すなわち、骨鉱化と類骨マトリクスの成熟とに関与し、それゆえ、細胞分化プロセスではその発現は非常に遅い。
【0259】
TGF−β1は、強力な骨形成促進因子であり、骨芽細胞の分化と骨マトリクス合成とを促進し、マトリクスを分解するプロテアーゼの合成を抑制する。事実、TGF−β1は、偽関節進行プロセスにおける連結能力の予後の血清マーカーとして用いられている。
【0260】
未分化のAMSCの結果に関連して、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトでの培養において8日間に細胞が骨に対して未分化で配置されたとき(図23)、遺伝子発現プロフィールには変化はない。
【0261】
未分化細胞は、依然として、非分化AMSCとして、骨再生に関与する遺伝子の同じ発現パターンを示している。未分化AMSCがバイオ材料に配置されると、これらの遺伝子の発現が維持され、骨再生に関与する遺伝子の発現を減少させる相互作用の兆候は見られない(図23)。
【0262】
酵素アルカリホスホターゼの低い発現は、類骨マトリクスの形成の初期段階にはこの酵素が関与しないことが好ましいという事実によるものである可能性がある。骨形成の開始時には、タンパク質の合成とマトリクスへの排出がまず起こる。これらのタンパク質は、カルシウム塩が沈殿する、指令された構造を形成する。アルカリホスホターゼは、鉱化が起きるプロセスの終わりのときに関与する。この酵素は、(この場合にはバイオ材料によってすでに供給されている)リンイオンを生成し、マトリクスにおけるこれらのイオンの濃度の増加により、無機塩の沈殿のための核生成中心を生成する。
【0263】
このように、最終的な結論として、本発明の構造化されたモネタイトバイオ材料は、アモルファスモネタイトバイオ材料と異なり、細胞によって外部構造および内部構造の両方のコロニー形成を完成させ、栄養物とガスとを構造全体に到達させて高い生存プロフィールを維持し、また、骨合成と新しい骨マトリクスの生成とに関与する遺伝子をより高く発現することだけでなく増殖を誘導することができることが示されているといえよう。
【0264】
<実施例8:細胞による、構造化多孔率を有するバイオ材料における細胞外マトリクスの分泌の経時的分析、効力>
(8.1 細胞外マトリクスの形成に関与するタンパク質(OPN、OCA、タイプIコラーゲン)の発現の経時的研究)
骨は、特定の細胞と、タンパク質により形成される有機マトリクスと、カルシウム塩により形成される無機相とを有する、非常に血管が新生して鉱化した、接続組織である。タンパク質マトリクスによって、骨は、柔軟性を有してストレスを許容できるようになる。一方、カルシウム塩は、骨に、強固さと、圧力への抵抗性とを与える。骨形成プロセスでは、タンパク質マトリクスの成分がまず合成され、次に、カルシウム塩が沈殿するような指令された構造を形成する。
【0265】
タンパク質マトリクスは、骨重量の3分の1に相当する。タンパク質マトリクスは、タイプIコラーゲン(>95%)と、オステオカルシン(OCA−15%)やオステオポンチン(OPN)のような、カルシウムの固定に関与するその他のものと、のようなタンパク質によって形成される。タイプIコラーゲンとOPNとは、骨前駆細胞において早く発現される。OCAは、鉱化が開始すると発現する、骨芽細胞の分化の最終段階の有益なマーカーである。未分化細胞は、骨細胞で起きるように、タイプIコラーゲン、オステオポンチン、オステオカルシンをその細胞質内にて合成する。未分化細胞は、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスに配置されると、OPN、OCA、タイプIコラーゲンの遺伝子を発現することも示されている。それゆえ、これらの細胞が、その遺伝子を発現することに加えて、これらのタンパク質を合成、排出して、指令された構造をマトリクスに形成する能力を有するかどうかを決定することが重要である。この能力は、新しい骨の形成においてカルシウム塩の沈殿に不可欠である。
【0266】
以下の処理が行われた。
【0267】
バイオ材料1cmあたり30万の未分化AMSCを配置した。
【0268】
バイオ材料において細胞外骨マトリクスタンパク質OPN、OCA、COL−1を免疫検出した。
【0269】
バイオ材料との結合の1、4、7、10、15日目に、共焦点顕微鏡を用いて分析した。
【0270】
前述同様、バイオ材料の表面の上面画像(図25、27、29、31のa)と、孔の内部の縦断面の復元に対応する側面画像(図26、28、30、31のb)とを示す。
【0271】
免疫ラベルされた画像(図25、図26)の説明として、これらの図は、結合の1日目からタイプIコラーゲンの形成と分泌とを示しており、これは時間とともに増加している。1日目から15日目までのバイオ材料における細胞の数の増加も観察される。これは、以前の実験で決定されたように、構造化された多孔率を有するバイオ材料をコロニー化する、AMSCの能力の確証となる。
【0272】
側面画像(図26)では、結合の7日目以後にはコラーゲンのラベルは観察されていない。これは、SEM画像(図17−18、20−21)で観察されたように、孔において起きる閉塞によるものであり、この閉塞により、バイオ材料に抗体が拡散するのが防がれる。この現象は、結合の7日目以後には、実施された免疫ラベルのすべてにおいて発生する。
【0273】
オステオカルシンに関して、未分化AMSCは、結合時間が進むにつれて増加するように、バイオ材料中でOCAを生成、分泌する。孔の内部エリアの画像は、7日目までのラベルのみを示しているが、これもまた、孔の閉塞と、抗体の拡散の困難さとによるものである。しかしながら、これらの画像から、バイオ材料での培養時間が進むにつれ、孔の全長にわたって、核の高いコロニー形成が観察される(図27、図28)。
【0274】
オステオポンチン(OPN)の場合(図29、図30)、バイオ材料でのタンパク質の合成と排出とは結合の1日目から15日目までにおいても観察される。先と同様、孔の内部画像(図30)は、抗体の拡散の困難さゆえ、質が、より悪い。
【0275】
長期間孔の縦の内部に信号がないのが抗体の拡散の困難さによるものであることを確認するために、バイオ材料を分割した後にタンパク質の免疫ラベルを行い、内部の孔の壁を完全に露出させた。そのようにして、孔の内部表面全体に直接アクセスした(図26、図28、図30、図31のb)。
【0276】
図31に示すように、患者の移植を行う前に本発明のバイオ材料の、可能な結合時間の4日目に、本発明のバイオ材料の表面と、孔の内部表面の全長との両方において、分析されたすべてのタンパク質に、目立つラベルが観察される。この結果から、構造化された多孔率を有するバイオ材料における未分化MSCが、タイプIコラーゲン、オステオポンチン、オステオカルシンのような骨合成に関与するタンパク質の合成と分泌とを行うことができることがわかる。
【0277】
(8.2 バイオ材料上の細胞により合成されるカルシウムを、EDXを用いて計時的に観察)
バイオ材料における未分化AMSCが、新しい骨の形成のためのタンパク質の合成を開始することができることが証明されている。しかし、生成される安定した骨マトリクスについては、鉱化プロセスが起きることがさらに必要である。
【0278】
この事実を決定するため、AMSCが、カルシウム沈殿物を合成して骨の無機相を形成する能力があるか否かを分析する。
【0279】
生物では、骨芽細胞が、有機マトリクスの鉱化に参加し、膜に囲まれた100nmのマトリクスの気孔を生成する。そこでは、PO2−イオンを生成することができる酵素であるアルカリホスホターゼとピロホスホターゼとに豊富にあるCa2+とPO2−が蓄積する。これらのイオンの増加は、無機塩の沈殿に必要な核中心の形成を誘導する。
【0280】
カルシウム結合タンパク質の一つは、得られた結果によれば、バイオ材料上の未分化細胞により合成された有機マトリクスの一部を形成するオステオカルシンである。このタンパク質の高い発現は、細胞がカルシウム沈殿物を分泌して新しい骨の無機物を形成することを示唆している。それゆえ、これらの細胞がカルシウム沈殿物を細胞外媒体へ放出できるかどうかを研究することは興味深いことである。このカルシウムは、新しいマトリクスの一部を形成することができ、ハイドロキシアパタイト結晶を形成、または、タンパク質に結合し、また、生物で起きるようなマトリクスに吸収される。
【0281】
以下の処理が行われた。
【0282】
以前の実験同様、同じ濃度でバイオ材料上で未分化AMSCを配置した。
【0283】
4、7、10、15日間結合を維持させた。
【0284】
EDX(X線を用いたエネルギー散乱)に結合したSEMを用いてカルシウムを分析した。この技術は、サンプルに存在する化学成分を分析・区別することができる。
【0285】
得られた結果の画像は、基本的な化学成分の分布がSEM−EDXで分析された、分離されたエリアを示している(図32、図33)。この技術は、高い鮮明度を用いて、サンプル中の成分とその成分の比率とを決定することができる。この場合、この技術は、細胞が、骨マトリクスの鉱化に関与する成分を生成するかどうかを決定することができる。
【0286】
バイオ材料だけに現れる成分がまず分析され、この成分を、細胞により生成される骨マトリクスから区別する方法が探された。これは、この関連する成分が同じ(Ca、P)であるからである。
【0287】
AMSCを用いない本発明の構造化多孔率を有するバイオ材料の分析では、以下の成分が区別される。
【0288】
3つの線α、β、λにおいてエネルギーを放出する3つのカルシウムピーク。これは、どのくらいのエネルギーレベルにまで入社電子が貫通するかに依存している。λ線は炭素の線と重なっており、区別は、より困難である。
【0289】
酸素
リン
炭素
本発明の構造化多孔率を有するバイオ材料におけるAMSCの分析
バイオ材料の成分に妨害されることなく、細胞に存在する成分を決定することができるようにするために、バイオ材料の壁から遠いチャネルの中心の点が基準として採用される。それゆえ、測定と検出される成分とは、細胞にだけ対応する。測定は、結合の4、7、10、15日目に行われた。
【0290】
図32および図33のグラフは、バイオ材料にて見つけられるものとは異なる成分の分布を示している。成分の分布は、完全に異なっており、新しいものとしてのシリコンと、バイオ材料に採用されたいずれのサンプルにも現れない細胞由来の独特な成分と、炭素の非常に著しい増加とを含んでいる。言い換えると、細胞では以下のものを区別することができる。
【0291】
3つのエネルギー線におけるカルシウム
酸素
リン
シリコン
炭素
結合の4日目には、細胞由来の電子密度の高い粒子はまだ観察されない。成分の分布は、モネタイトの分布とは異なるパターンを示し、カルシウムピークは非常に低く、シリコンのピークや細胞の一部を形成する他の成分のピークなどの、他のピークがある(図32のbとc)。
【0292】
7日目に、電子密度がもっと高い粒子が細胞で観察され、特にカルシウムピークに関係していうと、これらの成分の分布はわずかに異なっており、カルシウムピークは、この粒子ではもっと鋭い(図32のdとe)。
【0293】
培養の10、15日目には、細胞が孔の中心を完全に占有し、そこに明らかに電子密度の高い粒子があり、非常に鋭いカルシウムピークとリンピークとを持つことが観察される。細胞の化学組成が分析され、該組成は、培養に10、15日目とも、電子密度の高い粒子が分析されたときよりもむしろ低いカルシウム線のパターンを示す(図33のa−b、c−d)。
【0294】
結合時間にわたって得られた結果から、電子密度の高い粒子は出現が増加し、その主な化学成分はリンとカルシウムである(図34)。
【0295】
これらの電子密度の高いカルシウムとリンの粒子は、細胞によって合成、排出される。これは、これらがシリコンと結合して現れ(細胞を除く)、測定点は、バイオ材料以外のエリアで選んでいるからである。これらの粒子は、生物に存在するマトリクスの気泡になりうる。そこでは、Ca2+とPO2−とが蓄積する。これらの成分は、新しい鉱化された骨マトリクスの形成を開始する成分である。
【0296】
細胞により形成されるシリコンが現れるという事実は、新しいマトリクスの形成と骨再生能力とを示すものとして非常に関係が深い。生物において、シリコンは骨芽細胞に集中し、マトリクスの生成と無機塩の沈殿とに関係している。
【0297】
SchwarzとCarlisteとによって行われた研究は、骨形成におけるシリコンの重要な役割を実証している。これらの著者によれば、シリコンは、石灰化部位に高レベルで存在している。彼らは、骨折の場合のように、強い石灰化プロセスが起きる場所では、高濃度のシリコンがあることを実証している。
【0298】
シリコンは、タンパク質と多糖との間または多糖同士の間の長手方向の結合を可能にする成分として働く。シリコンは、マトリクスにおいて指令されたタンパク質の形成に関与し、それゆえ、正しい骨鉱化が行われる。
【0299】
結論として、構造化された多孔率を有するモネタイトのバイオ材料との結合において、カルシウム、リン、シリコンによって形成される粒子の合成の経時的な増加は、形成される骨の無機相に必要なカルシウム塩の形成に適切な条件が満たされていることを示している。
【0300】
<実験例9 細胞が、構造化多孔率を有するモネタイトのバイオ材料において配置されたときの、細胞による骨再生に関与する成長因子の自己分泌能力の分析、効力>
成長因子は、細胞機能変調器として作用する骨細胞により生成されるタンパク質である。文献には、TGF−β1が、骨芽細胞によって合成されて、骨芽細胞の分化を促進し、類骨マトリクスの合成を助けるので、骨の改造にとって重要な因子であると記されている(Riancho et al.、2003年)。TGF−β1は、骨芽細胞の前駆体に対して化学走化性効果を有し、その増殖とコラーゲンの合成とを刺激する(Fernandez-Tresguerres et al.、2006年)。
【0301】
TGF−β1は骨再生に関与しているので、個人が複雑骨折を治療しなければならない可能性があるという能力を決定するための予知的な血清マーカーとして用いられる(Zimmermann、2005年)。
【0302】
構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料を有するあるいは有さない未分化AMSCがこの成長因子を分泌する能力を決定するために、培地内の可溶因子の量を計る。これらの培地は、培養している未分化細胞単独、あるいはバイオ材料と接触している未分化細胞に由来する。以下の処理が行われた。
【0303】
種々の細胞濃度を配置した。6cmの表面で、体積1.5mlの培地に、0.5、1、2、3、4、5百万個の未分化細胞である。7日間培養した。
【0304】
体積1.5mlの培地の6cmの表面に、2×10個の未分化細胞を配置して、1、4、7、10、15日間培養した。
【0305】
可溶性のTGF−β1の量をELISA分析した。
【0306】
結果は、すべての場合において培地内に該当因子の存在が観察されることを示している(図35ないし図38)。検出された濃度は、細胞代謝の量に依存して、および、細胞内の因子の使用に依存して、変化する。
【0307】
構造化された多孔率を有するバイオ材料なしで細胞が成長するときには、より低い細胞濃度で、表面ごとの細胞の数に比例して、TGF−β1濃度が徐々に増加するのが観察される(図35)。より高い濃度では、わずかな減少または安定化が観察されるが、これは、この因子が、受容体に結合してその機能を発揮するという事実や、この因子がすでにその機能を果たしたという事実や、フィードバック機構により高濃度がそれ自身の合成を抑制しているという事実に起因するものと考えることができる。
【0308】
図36は、培養中の未分化細胞の成長因子の経時的な分泌を示す。合成と培地への分泌とのピークは、培養4日目に観察される。次いで、10日目まで減少が見られ、その後、分泌の新しい増加が開始される。
【0309】
このふるまいは、フィードバック機構に沿って作用する成長因子の特色を示している。
1.合成と培地への分泌がある。
2.成長因子は、受容体細胞の表面の特定の受容体に結合し、その機能を発揮し、そのときには培地ではその成長因子の存在の減少が観察されうる。
3.もし成長因子がまだある細胞のプロセスの活性化に必要であれば、その細胞がその成長因子の合成の抑制を決定するまで、成長因子は、その効果を維持するために、再び合成と培地への分泌とを開始する。
【0310】
細胞がバイオ材料に配置されると、結果は、細胞もまた、因子TGF−β1を合成して培地中へ分泌する能力を有するということを示している(図37)。
【0311】
培地中の因子の存在は、分泌が再び安定化するまでバイオ材料内の細胞の数が増加することと関係している。これは、その作用のレベルを増加させる必要がないという事実に起因する可能性がある。
【0312】
同様に、培地に構造化された多孔率を有するモネタイトに経時的に配置されたものおよび同じ細胞濃度は、因子の分泌を増加させる。これは、経時的な細胞の増加に関係があるといえる(図38)。すなわち、結果は、培養1日目から10日目まで分泌が増加し、その後安定化と穏やかな減少とを開始することを示している。
【0313】
この増加は、細胞の数の増加と関係があるというよりも、むしろ、細胞外マトリクスの合成を促進する誘導に起因している可能性もある。結合の10日目以後、その合成が減少するか、因子はほとんど受容体に結合して機能を発揮しており、培地内には遊離形態では観察されない。
【0314】
この場合、因子のフィードバック機構は、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスで細胞が成長しないときに観察される様態とは少し異なる様態で調整され、分泌の増加は10日目まで維持され、この日以後減少する。
【0315】
結論として、構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料で成長する未分化細胞は、因子TGF−β1を合成して外部の培地へ分泌する能力を有している。この因子の遺伝子発現の研究に示されたように、バイオ材料中で成長する未分化細胞では、因子は、7日目を除いて培地で径時的に一定のままであり、7日目にはわずかに低い発現が観察された。さらに、バイオ材料を用いた場合と用いない場合とで、成長する未分化細胞の発現は同様である。それゆえ、両方の場合で因子の量が異なるのは、受容体に結合する速度の差異と、内部への信号伝達の速度の差異とに起因すると考えることができる。あるいは、バイオ材料で成長する細胞は、より多くの受容体を有し、因子がほとんどその受容体に結合しており、骨再生プロセスの促進を伴っており、それゆえこれらの場合には可溶性の因子の検出がより低いということもありうる。
【0316】
つまり、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトのバイオ材料で成長する未分化細胞は、TGF−β1を合成して培地へ分泌する。この因子は、類骨マトリクスの合成を助けることができる。
【0317】
<実施例10 本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトのマトリクスと、構造化された多孔率を有するブルシャイトのマトリクスとのin vivoでの比較>
本発明の構造化モネタイトバイオ材料は、ブルシャイトに対して有利な点を有する。それは、本発明のものが、より安定で、また、骨改造に対し、より適切で、適合した吸収速度を有しているからである。
【0318】
ウサギの頭蓋冠の骨における重大な障害のモデルを用いて、構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料の吸収速度と、本発明のものと同様にして、同じ多孔率構造を有するブルシャイトのバイオ材料の吸収速度とを、決定するための研究を行った。ニュージーランド亜種の6羽のウサギがこの研究に含まれた。各バイオ材料の再吸収の能力を分析するために、3匹の動物を用いた。この目的のために、頭皮のサジタル切開を用いて、ウサギの頭蓋への曝露を行った。それから、骨膜が慎重に切り裂かれ、直径1cmの双皮質障害が用意された。各動物において、バイオ材料は、この障害の一つに配置され、対側性のものをコントロールとしてそのままにした。外科的なエリアには豊富に水を引き、骨膜、皮下組織、頭皮は、適切な外科的技術を用いて縫合された。
【0319】
移植から4、8、12週間後、動物は犠牲になり、移植部分が、組織形態計測分析のために集められた。ヒトの骨再生を誘導するのに用いられるバイオ材料の全吸収のために最も適切な時間は、6ないし18ヶ月の間と見積もられる。もしバイオ材料が非常に溶けやすく、分解があまりにも速いと、骨芽細胞が、自身がそこに維持されて新しい骨マトリクスを生成および設置することを可能にする足場を失ってしまうので、この吸収速度は重要である。しかしながら、もし用いられるバイオ材料があまりにも安定であると、破骨細胞が、骨芽細胞による新しい骨形成と同期した分解を行うことができなくなる。したがって、分解して骨改造を可能にするようなバイオ材料を用いることが必要である。さらに、イオンと分解産物とが、環境のpHや骨形成細胞において著しい変化を起こさないことが必要である。この場合、結果は、移植エリアが、用いられるバイオ材料のいずれに対しても炎症の兆候を示さなかったことを示している。両バイオ材料において、組織学的研究はすでに、吸収の第1の兆候(バイオ材料のミシン目、破骨細胞集積性エリア)と同様、4週目から新しい骨の形成を示した。しかしながら、ブルシャイトは、移植の12週目にほとんど吸収されたことが観察されたが、モネタイト材料はまだ観察することができ、骨再生プロセスに対し、より安定で、骨改造相に対し、より大きく結合する。本発明のモネタイトバイオ材料の吸収時間の増加によって、より多くの骨塊の形成が起きる。これは、骨芽細胞が、新しい鉱化された骨マトリクスの形成と沈殿とを行う時間をより多く持つことになるからである。
【0320】
このように、モネタイトの吸収速度は、骨改造に対し、より良い状態に調整され、骨芽細胞のコロニー形成のためおよび新しい骨マトリクスの合成のための適切な足場を、より長い時間維持すると結論することができる。ブルシャイトの場合に起こる可能性のある、高すぎる吸収速度ゆえにハイドロキシアパタイトの中へ形成してしまう危険がない。
【0321】
<実施例11 本発明の構造化多孔率を有するモネタイトのマトリクスの特定の実施形態と、異なる多孔率構造を有するモネタイトのマトリクスとを比較>
本発明で開発されたバイオ材料は、効果的な骨再生を達成するのに本質的に関連のある特徴を有し、均質に分布されたミクロ多孔率とマクロ多孔率とを有し、また、骨障害に対し、より良い適応を可能にする、部品を組み立てたものの形での適用を有し、これは、修復すべきエリア全体に対する栄養物、ガス、細胞の均質な入り口となり、したがって、壊死エリアが生成されない。
【0322】
本発明のバイオ材料の利点とその適用形態とを研究するために、直径5mm、高さ3mmであって、また、互いに0.5mmだけ離された直径0.5mm、12個のマクロ孔を有する、本発明のペレットについて、その再生能力が、特許公報US6,605,516号の実施例1の多孔率構造を有するモネタイトバイオ材料と比較された。このマトリクスは、直径10mm、高さ10mmのシリンダーに相当し、また、直径2mmの中央チャネルと、直径0.5mmの60個の円筒形の孔の六角形のネットワークとを有し、2mmの中央のマクロ孔に平行で、互いに1mmの距離だけ隔てられている。このように、上記マトリクスは、均質な孔直径制御を行わず、また、骨障害に対して完全な大きさが調整されるように、単一部分で適用されなければならない。
【0323】
2つのタイプのバイオ材料の移植エリアでの新しい骨の形成と血管新生とを分析した。in vivo実験では、6頭の羊が用いられ、脛骨の重大な障害と、骨合成技術により安定化とが実施された。生成された障害では、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料の部品の組み立て品が、その羊のうち3頭に適用され、障害の大きさに合わせたバイオ材料の単一部分が他の3頭に適用され、すべての羊の、隣の脚はコントロール(重大な障害と骨折の安定化は行うが、バイオ材料の注入は行わない)としてそのままにした。バイオ材料の移植の前に、後者には、羊から得た脂肪組織からの同一個数の間葉幹細胞を蒔いた。
【0324】
形成された新しい骨組織と、両タイプのバイオ材料の吸収とが、連続X線写真制御と、移植の3、6ヶ月目の組織学的研究とによって分析された。連続X線により、バイオ材料の能動的吸収と同様、インプラントエリアにおける本発明の構造化された多孔率を有するバイオ材料の分析の完全な組み込みが観察でき、6ヶ月続けた。これは、その分解速度が、この設計での骨改造に調整されているからである。X線写真レベルでは、移植エリアでの単一ブロックとして配列されたバイオ材料においては変化は観察されない。組織形態計測分析により、移植の3ヶ月目で、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトバイオ材料の構造全体において骨の骨芽細胞と破骨細胞とのコロニー形成と、新しい骨の均質な形成とを確認できた。壊死エリアの形成なしで形成された新しい組織の存続を可能にする、初期血管網を持った6ヶ月目のその完全な集積が行われた。しかしながら、単一ブロックの内部では、形成されたほとんどすべての新しい組織が、インプラントに対する周辺エリアに限定されており、その内部エリアは、比較した場合に隣接組織の細胞は著しく低いコロニー形成のままであり、新しい血管形成の兆候がない。直径500μmの孔の均質な分布と、バイオ材料での同じく500μm同士間の分離とにより、本発明のバイオ材料の表面エリアと内部との両方で大きな接触表面を生じる。それにより、所望のエリアの組織との相互作用の能力が向上し、新しい骨の生成という点での活性エリアがバイオ材料の全エリアで同時に生成する。
【0325】
これらの結果により、移植の受容組織は、本発明のバイオ材料と、より大いに適切なやり方で相互作用し、血管新生した新しい骨組織の均質な形成を起こすと結論することができる。しかしながら、特許公報US6,605,516号の実施例1のモネタイトの単一ブロックの使用は、骨障害のエリアでの相互関係と集積化とを妨害する。そこでの新しい骨と細胞コロニー形成は、移植の6ヶ月目でさえ、比較した場合に著しく低い。
【0326】
さらに、ほとんどの場合、患者の骨障害は完全な形を形成しない。これは、これらの障害が、実験的な研究の一部として羊に誘導されるときに起こる。骨の障害は非常に様々で、骨折の端は多くの場合に非常に不揃いである。あるケースでは、骨の障害によって形成される空間は非常に限られている。これは例えば肥大性偽関節で起きる。それゆえ、エリアに結合する、あらかじめ形成された単一ブロックを導入することは非常に複雑であり、変形したエリアに対して成型することができない。本発明の設計の使用は、マクロ孔の均質な構造を有するモネタイトバイオ材料の、小さなサイズの部品を組み立てたものであり、様々な形や寸法の複雑な骨の障害に適応させることができる。それゆえ、影響を受けたエリアは、バイオ材料および供給された細胞に対し完全に曝露され、治療プロセスを活性化する。
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【図面の簡単な説明】
【0348】
【図1】a)合成されるモネタイトシリンダと同じ大きさのガラスプレートに固定された金属パーツ、b)図1a)のパーツから得られるシリコン鋳型であって、製造されるパーツの大きさの空洞を有し、当面はマクロ孔構造を取り入れないシリコン鋳型、c)モネタイトマトリクス内に、制御され、また、均一なマクロ多孔率を生じ得る金属穴を有する金属鋳型を示す。
【図2】モネタイトマトリクスを得るために用いられる鋳型の構成の一例を示す。
【図3】正面視(a)および側面視(b)において示される多孔性モネタイトマトリクスの一形態を示す写真を示す。
【図4】本発明のモノマー/ペレットおよびそれら寸法の特定の実施形態を示す。
【図5】前躯物質である多孔性ブルシャイト(加熱処理前)のX線回折、および材料を形質転換するためのプロセス、および材料を滅菌するためのプロセスの後に得られる多孔性モネタイト(加熱処理後)のX線回折を示す。
【図6】アモルファスモネタイトマトリクス、すなわち構造化された多孔率のないモネタイトマトリクスの正面画像(a)および側面画像(b)を示す。
【図7】制御された多孔率を有さないモネタイト生体材料の異なる倍率における走査電子顕微鏡画像を示す。
【図8】マトリクス全体にわたって分布された500μmの穴を有する、本発明のモネタイト生体材料を示す走査電子顕微鏡画像を示す。
【図9】L929細胞における、本発明のモネタイト生体材料の細胞毒性調査を示すグラフを示す。
【図10】マウスリンパ腫アッセイから得られた位相差倒立顕微鏡画像を示す。
【図11】代謝活性のある、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト(モネタイト+S9)、および、代謝活性のない、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト(モネタイト)の変異頻度を示すヒストグラムを示す。
【図12】本発明のモネタイト生体材料の血液適合性についての測定結果を示す。
【図13】本発明に係る構造化された多孔率を有するモネタイトマトリクスの、異なる倍率における走査電子顕微鏡画像を示す。
【図14】制御されていない多孔率を有するモネタイト生体材料に配置された間葉幹細胞の走査電子顕微鏡画像を示す。
【図15】制御されていない多孔率を有するモネタイト生体材料上に配置された間葉幹細胞の増殖(灰色)を、本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト生体材料上に配置された間葉幹細胞の増殖(黒色)と比較したものを示す。
【図16】骨組織の形態図を示す。
【図17】予め骨に分化させた、異なる濃度のAMSCsが、骨に、および本発明の生体材料の同様の表面にどのように配置されるかを示すSEM画像である。
【図18】予め骨に分化させた、異なる濃度のAMSCsが、骨に、および本発明の生体材料の同様の表面にどのように配置されるかを示すSEM画像である。
【図19】(a)本発明の構造化された多孔率を有するモネタイト生体材料の表面上における細胞の共焦点顕微鏡画像と、(b)数日間培養した後の上記生体材料のマクロ孔チャネル内部における細胞の共焦点顕微鏡画像とを示す。
【図20】様々な接触時間において生体材料内で予め分化させたAMSCの異なる倍率における頂点SEM画像を示す。
【図21】生体材料のマクロボアチャネル内部で予め分化させたAMSCの異なる倍率における頂点SEM画像を示す。
【図22】AMSCsにおける骨形成に関連のある遺伝子発現の分析結果を示す。
【図23】AMSCsにおける骨形成に関連のある遺伝子発現の分析結果を示す。
【図24】免疫標識の共焦点顕微鏡画像を示す。
【図25】様々な培養時間における、生体材料の表面において予め分化させたAMSCsのCOL−1免疫標識を示す共焦点顕微鏡画像である。
【図26】様々な培養時間における、生体材料のチャネル内部において予め分化させたAMSCsのCOL−1免疫標識を示す共焦点顕微鏡画像である。
【図27】様々な培養時間における、生体材料の表面において予め分化させたAMSCsのオステオカルシン免疫標識を示す共焦点顕微鏡画像である。
【図28】様々な培養時間における、生体材料のチャネル内部において予め分化させたAMSCsのオステオカルシン免疫標識を示す共焦点顕微鏡画像である。
【図29】様々な培養時間における、生体材料の表面において予め分化させたAMSCsのオステオポンチン免疫標識を示す共焦点顕微鏡画像である。
【図30】様々な培養時間における、生体材料のチャネル内部において予め分化させたAMSCsのオステオポンチン免疫標識を示す共焦点顕微鏡画像である。
【図31】予め分化させたAMSCsを生体材料表面において、およびチャネル内部において4日間生育したときの、該AMSCs内の1型コラーゲン、オステオカルシン、およびオステオポンチンの免疫染色の共焦点顕微鏡画像である。
【図32】本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトと4日間および7日間接触させた、生体材料およびAMSCsのSEM−EDXによる必須元素分析結果を示す。
【図33】本発明の構造化された多孔率を有するモネタイトと10日間および15日間接触させた、生体材料およびAMSCsのSEM−EDXによる必須元素分析結果を示す。
【図34】AMSCsのみが存在する領域内の塩基性元素の分布を示すSEM−EDX画像である。
【図35】培養液中で7日間、モネタイトなしで生育して予め分化させた、異なる濃度の細胞から得られたTGF−β1(pg/mg)の分泌を示すグラフである。
【図36】培養期間にわたって予め分化させた細胞から得られたTGF−β1(pg/ml)の分泌を示すグラフである。
【図37】培養液中で7日間、生体材料において生育した、異なる濃度の予め分化された細胞から得られたTGF−β1(pg/ml)の分泌を示すグラフである。
【図38】培養液において、上記時間の間生体材料において成長した、予め分化された細胞から得られるTGF−β1(pg/ml)の分泌を示すグラフである。
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクスであって、
上記三次元マトリクスの構造内に、直径が350〜650μmである、垂直な円筒形のマクロ孔を有し、
上記マクロ孔は、一端から他端へ向かって、上記マトリクスを縦方向へ貫通し、
上記マクロ孔の各々は、0.4〜0.6mmの距離にて離れていることを特徴とする三次元マトリクス。
【請求項2】
上記マクロ孔は、好ましくは500μm±60μmの直径を有していることを特徴とする請求項1に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項3】
上記マクロ孔の間の距離は、好ましくは0.5mm±60μmであることを特徴とする請求項2に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項4】
上記マトリクス中の上記モネタイトの含有量は、少なくとも90%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項5】
上記マトリクス中の上記モネタイトの含有量は、好ましくは95%であることを特徴とする請求項4に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項6】
上記マトリクス中の上記モネタイトの含有量は、より好ましくは100%であることを特徴とする請求項4または5に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項7】
前駆物質を熱変換することによって得られることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項8】
上記モネタイトへ熱変換される上記前駆物質は、塩基性リン酸カルシウム、酸性リン酸カルシウム、孔誘導剤、および、蒸留水を加えることによって凝結する凝結遅延剤によって形成された固相の混合物からなることを特徴とする請求項7に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項9】
上記塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比が、1.6〜1.8であり、
上記孔誘導剤の濃度が、1〜20重量%であり、
上記凝結遅延剤の濃度が、0.4〜0.6重量%であり、
上記(P/L)比が、3である、ことを特徴とする請求項8に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項10】
上記塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比が、1.785であり、
上記孔誘導剤の濃度が、3〜10重量%であり、
上記凝結遅延剤の濃度が、0.54重量%である、ことを特徴とする請求項9に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項11】
上記酸性リン酸カルシウムは、リン酸一カルシウムであり、
上記塩基性リン酸カルシウムは、β−リン酸三カルシウムであり、
上記孔誘導剤は、炭酸カルシウムであり、
上記凝結遅延剤は、ピロリン酸ナトリウムである、ことを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項12】
上記前駆物質は、ブルシャイトであることを特徴とする請求項7〜11の何れか1項に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項13】
特定の骨欠損または組織欠損の修復に必要なあらゆる形が適用され得ることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項14】
底の直径が2〜50mmであり、高さが1〜50mmである円筒形からなることを特徴とする請求項13に記載のマトリクス。
【請求項15】
上記円筒形は、底の直径が2〜15mmであり、高さが1〜5mmであることを特徴とする請求項14に記載のマトリクス。
【請求項16】
上記マクロ孔が存在しない、0.5mmの最小の外周領域を有することを特徴とする請求項14または15に記載のマトリクス。
【請求項17】
上記円筒形は、底の直径が10mmであるとともに、高さが5mmであり、
500μm±60μmの直径を有する64個の円筒形のマクロ孔が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されているとともに、上記マトリクスを縦方向へ貫通し、
上記円筒形の端から当該円筒形の中央へ向かう0.5mmの外周領域には、マクロ孔が存在しないことを特徴とする請求項16に記載のマトリクス。
【請求項18】
上記円筒形状は、ベース直径が10mmであるとともに、高さが3mmであり、
500μm±60μmの直径を有する64個の円筒形のマクロ孔が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されているとともに、上記マトリクスを縦方向へ貫通し、
上記円筒形の端から当該円筒形の中央へ向かう0.5mmの外周領域には、マクロ孔が存在しないことを特徴とする請求項16に記載のマトリクス。
【請求項19】
上記円筒形状は、ベース直径が8mmであるとともに、高さが5mmであり、
500μm±60μmの直径を有する39個の円筒形のマクロ孔が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されているとともに、上記マトリクスを縦方向へ貫通し、
上記円筒形の端から当該円筒形の中央へ向かう0.5mmの外周領域には、マクロ孔が存在しないことを特徴とする請求項16に記載のマトリクス。
【請求項20】
上記円筒形状は、ベース直径が8mmであるとともに、高さが3mmであり、
500μm±60μmの直径を有する39個の円筒形のマクロ孔が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されているとともに、上記マトリクスを縦方向へ貫通し、
上記円筒形の端から当該円筒形の中央へ向かう0.5mmの外周領域には、マクロ孔が存在しないことを特徴とする請求項16に記載のマトリクス。
【請求項21】
上記円筒形状は、ベース直径が7mmであるとともに、高さが5mmであり、
500μm±60μmの直径を有する28個の円筒形のマクロ孔が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されているとともに、上記マトリクスを縦方向へ貫通し、
上記円筒形の端から当該円筒形の中央へ向かう0.5mmの外周領域には、マクロ孔が存在しないことを特徴とする請求項16に記載のマトリクス。
【請求項22】
上記円筒形状は、ベース直径が7mmであるとともに、高さが3mmであり、
500μm±60μmの直径を有する28個の円筒形のマクロ孔が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されているとともに、上記マトリクスを縦方向へ貫通し、
上記円筒形の端から当該円筒形の中央へ向かう0.5mmの外周領域には、マクロ孔が存在しないことを特徴とする請求項16に記載のマトリクス。
【請求項23】
上記円筒形状は、ベース直径が5mmであるとともに、高さが3mmであり、
500μm±60μmの直径を有する12個の円筒形のマクロ孔が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されているとともに、上記マトリクスを縦方向へ貫通し、
上記円筒形の端から当該円筒形の中央へ向かう0.5mmの外周領域には、マクロ孔が存在しないことを特徴とする請求項16に記載のマトリクス。
【請求項24】
請求項1〜23の何れか1項に記載の三次元マトリクスを作製するための鋳型であって、
均一に分布している、直径が350〜650μmである穴であって、互いに0.4〜0.6mmの距離にて均一に分離されている穴を有していることを特徴とする鋳型。
【請求項25】
シリコン、金属、抵抗性プラスチック、または、別の材料によって形成されていることを特徴とする請求項24に記載の鋳型。
【請求項26】
特定の骨欠損または組織欠損の修復に必要なあらゆる形が適用され得ることを特徴とする請求項24または25に記載の鋳型。
【請求項27】
底の直径が2〜50mmであり、高さが1〜50mmである円筒形の形状をしていることを特徴とする請求項26に記載の鋳型。
【請求項28】
底の直径が2〜15mmであり、高さが1〜5mmである円筒形の形状をしていることを特徴とする請求項27に記載の鋳型。
【請求項29】
上記円筒形は、直径が10mmであるとともに、高さが5mmであり、
500μm±60μmの底の直径を有する64個の円筒形の穴が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されており、
上記円筒形の端から当該円筒形の内部へ向かう幅が0.5mmである外周領域であって、穴が存在しない外周領域が備えられていることを特徴とする請求項28に記載の鋳型。
【請求項30】
上記円筒形は、直径が10mmであるとともに、高さが3mmであり、
500μm±60μmの底の直径を有する64個の円筒形の穴が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されており、
上記円筒形の端から当該円筒形の内部へ向かう幅が0.5mmである外周領域であって、穴が存在しない外周領域が備えられていることを特徴とする請求項28に記載の鋳型。
【請求項31】
上記円筒形は、直径が8mmであるとともに、高さが5mmであり、
500μm±60μmの底の直径を有する39個の円筒形の穴が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されており、
上記円筒形の端から当該円筒形の内部へ向かう幅が0.5mmである外周領域であって、穴が存在しない外周領域が備えられていることを特徴とする請求項28に記載の鋳型。
【請求項32】
上記円筒形は、直径が8mmであるとともに、高さが3mmであり、
500μm±60μmの底の直径を有する39個の円筒形の穴が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されており、
上記円筒形の端から当該円筒形の内部へ向かう幅が0.5mmである外周領域であって、穴が存在しない外周領域が備えられていることを特徴とする請求項28に記載の鋳型。
【請求項33】
上記円筒形は、直径が7mmであるとともに、高さが5mmであり、
500μm±60μmの底の直径を有する28個の円筒形の穴が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されており、
上記円筒形の端から当該円筒形の内部へ向かう幅が0.5mmである外周領域であって、穴が存在しない外周領域が備えられていることを特徴とする請求項28に記載の鋳型。
【請求項34】
上記円筒形は、直径が7mmであるとともに、高さが3mmであり、
500μm±60μmの直径を有する28個の円筒形のマクロ孔が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されており、
上記円筒形の端から当該円筒形の内部へ向かう幅が0.5mmである外周領域であって、穴が存在しない外周領域が備えられていることを特徴とする請求項28に記載の鋳型。
【請求項35】
上記円筒形は、直径が5mmであるとともに、高さが3mmであり、
500μm±60μmの底の直径を有する12個の円筒形の穴が、互いに0.5mm±60μmの距離にて均一に分離されており、
上記円筒形の端から当該円筒形の内部へ向かう幅が0.5mmである外周領域であって、穴が存在しない外周領域が備えられていることを特徴とする請求項28に記載の鋳型。
【請求項36】
構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクスの合成方法であって、
1)塩基性リン酸カルシウム、酸性リン酸カルシウム、孔誘導剤、および、蒸留水を加えることによって凝結する凝結遅延剤によって形成されている固相を混合することによって、液相を形成する工程と、
2)直径が350〜650μmである、垂直な円筒形のマクロ孔であって、互いに0.4〜0.6mmの距離にて均一に分離されているマクロ孔を形成するために、凝結している間に、少なくとも1つの鋳型へ上記セメントを加える工程と、
3)形成された上記前駆物質を滅菌するとともに、当該前駆物質をモネタイトへ熱変換する工程と、を含むことを特徴とする合成方法。
【請求項37】
上記工程1)では、
上記塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比が、1.6〜1.8であり、
上記孔誘導剤の濃度が、1〜20重量%であり、
上記凝結遅延剤の濃度が、0.4〜0.6重量%であり、
上記(P/L)比が、3である、ことを特徴とする請求項36に記載の合成方法。
【請求項38】
上記工程1)では、
上記塩基性リン酸塩/酸性リン酸塩のモル比が、1.785であり、
上記孔誘導剤の濃度が、3〜10重量%であり、
上記凝結遅延剤の濃度が、0.54重量%である、ことを特徴とする請求項37に記載の合成方法。
【請求項39】
上記工程1)では、
上記酸性リン酸カルシウムは、リン酸一カルシウムであり、
上記塩基性リン酸カルシウムは、β−リン酸三カルシウムであり、
上記孔誘導剤は、炭酸カルシウムであり、
上記凝結遅延剤は、ピロリン酸ナトリウムである、ことを特徴とする請求項36〜38の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項40】
工程1)の産物は、ブルシャイトであることを特徴とする請求項36〜39の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項41】
上記工程3)では、上記熱滅菌が、高圧蒸気殺菌法によって行われることを特徴とする請求項36〜40の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項42】
上記高圧蒸気殺菌法は、120〜130℃にて、24〜25分間行われることを特徴とする請求項41に記載の合成方法。
【請求項43】
上記工程2)で使用される上記鋳型は、請求項24〜35の何れか1項に記載の鋳型からなることを特徴とする請求項36〜42の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項44】
請求項24〜35の何れか1項に記載の鋳型を使用する前に、底の直径が2〜50mmであって、高さが1〜50mmである円筒形の形状を有するシリコン鋳型が用いられることを特徴とする請求項43に記載の合成方法。
【請求項45】
上記シリコン鋳型は、底の直径が2〜15mmであり、高さが1〜5mmである円筒形の形状を有していることを特徴とする請求項44に記載の合成方法。
【請求項46】
上記鋳型は、請求項29に記載の鋳型からなることを特徴とする請求項43〜45の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項47】
上記鋳型は、請求項30に記載の鋳型からなることを特徴とする請求項43〜45の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項48】
上記鋳型は、請求項31に記載の鋳型からなることを特徴とする請求項43〜45の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項49】
上記鋳型は、請求項32に記載の鋳型からなることを特徴とする請求項43〜45の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項50】
上記鋳型は、請求項33に記載の鋳型からなることを特徴とする請求項43〜45の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項51】
上記鋳型は、請求項34に記載の鋳型からなることを特徴とする請求項43〜45の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項52】
上記鋳型は、請求項35に記載の鋳型からなることを特徴とする請求項43〜45の何れか1項に記載の合成方法。
【請求項53】
形が成形されているリン酸カルシウムを得るための、請求項24〜35の何れか1項に記載の鋳型の使用。
【請求項54】
上記リン酸カルシウムがモネタイトからなることを特徴とする、請求項53に記載の鋳型の使用。
【請求項55】
更に細胞を含むことを特徴とする請求項1〜23の何れか1項に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項56】
上記細胞は、間葉細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞、内皮細胞またはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項55に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクス。
【請求項57】
骨の構造を再生するための治療薬を調製するための、請求項1〜23、55または56の何れか1項に記載の構造化された多孔率を有するモネタイトの三次元マトリクスの使用。
【請求項58】
上記骨の構造の再生は、骨粗鬆症に対抗することによって行われることを特徴とする請求項57に記載の三次元マトリクスの使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図14a】
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【図14b】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公表番号】特表2011−529429(P2011−529429A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517180(P2011−517180)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国際出願番号】PCT/ES2009/000358
【国際公開番号】WO2010/004066
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511008182)
【氏名又は名称原語表記】HISTOCELL,S.L.
【住所又は居所原語表記】ParqueTecnologico 800,2,E−48160 Derio(Bizkaia),Spain
【Fターム(参考)】