説明

組電池のセル組み合わせシステム

【課題】バッテリセルのグレード分けの結果を有効利用すると共に、組電池の性能を最大限に確保可能な、組電池のセル組み合わせシステムを提供する。
【解決手段】自動倉庫の収容棚3に収容されたエージングボックス(荷M)は、その内部のバッテリセルのエージング処理を自動で行い、上位制御部9は、前記エージング処理で得られるバッテリ特性データを記録し、このバッテリ特性データに基づいて前記バッテリセルをグレード分けすると共に、同一グレードのバッテリセルが何処に収容されるかをデータベース化し、電池組み立て装置21は、前記自動倉庫から搬送された一つ又は複数のエージングボックスから同一グレードの複数のバッテリセルを取り出し、これら各バッテリセルを用いて所定グレードの組電池22a〜22dを組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のバッテリセルを組み合わせてなる組電池のセル組み合わせシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二次電池の製造工程では、バッテリセルのエージング処理を行い、不良品があればこれを取り除いている。
特許文献1では、エージング中に得たバッテリセルの特性に基づき、バッテリセルのグレード分けをして出荷している。
また、特許文献2では、複数のバッテリセルの性能差を補正して運用するべく、高度なバランス処理を提案している。これは、電気自動車等に必要な大容量化に対応するために、複数のバッテリセルを組み合わせて組電池として取り扱う際、バッテリセル毎の特性の違いが組電池の性能や劣化速度に影響するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−289729号公報
【特許文献2】特許第3921826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記前者の技術では、バッテリセルのグレード分けを行うものの、そのグレード毎の使い方については開示がない。また、上記後者の技術では、高度な制御をしたとしても、本来特性が違うバッテリセル間の性能差を制御によって埋めているので、結局性能が低いバッテリセルに合わせて運用することとなるため、寿命や特性は低いレベルになってしまう。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、バッテリセルのグレード分けの結果を有効利用すると共に、組電池の性能を最大限に確保可能な、組電池のセル組み合わせシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明は、複数のバッテリセルを組み合わせてなる組電池のセル組み合わせシステムであって、前記バッテリセルをエージング処理可能に収容するエージングボックスと、前記エージングボックスを上下方向及び水平方向に複数並べて収容する収容棚を有して前記エージングボックスを搬出入自在に保管する自動倉庫と、前記自動倉庫から搬送された前記エージングボックスから前記バッテリセルを取り出すと共に複数の前記バッテリセルを組み合わせて前記組電池とする電池組み立て装置と、前記自動倉庫及び電池組み立て装置を作動制御する制御部と、を備え、前記自動倉庫は、前記収容棚に前記エージングボックスを収容した後、このエージングボックスを電気的に接続して、その内部の前記バッテリセルのエージング処理を行うものであり、前記制御部は、前記エージング処理で得られるバッテリ特性データを記録し、このバッテリ特性データに基づいて前記バッテリセルをグレード分けし、前記電池組み立て装置は、前記自動倉庫から搬送された同一グレードの複数の前記バッテリセルを用いて、所定グレードの前記組電池を組み立てることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記エージングボックスは、複数の前記バッテリセルを収容し、前記電池組み立て装置は、前記制御部の指令に基づき、前記自動倉庫から搬送された一つ又は複数の前記エージングボックスから同一グレードの複数の前記バッテリセルを取り出し、これら各バッテリセルを用いて前記組電池を組み立てることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記制御部は、前記エージング処理で得られる前記バッテリ特性データと、前記バッテリセルが個別に有する管理情報と、前記エージングボックスが個別に有する管理情報とを記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組電池の組み合わせシステムによれば、バッテリセルのグレード分けの結果を有効利用して、所定グレードの組電池を組み立てることができる。また、同一グレードの複数のバッテリセルを用いて組電池を組み立てることで、組電池内のバランス制御装置が簡便なものであっても、その特性や寿命を安定させることができる。さらに、スタッカークレーン等でエージングボックスを収容棚に収容するのみで、自動的にエージング処理及びデータ収集を実施することができる。
また、収容棚に複数のエージングボックスを収容し、かつ各エージングボックスの内部にさらに複数のバッテリセルを収容する場合でも、制御部のデータベースに基づき同一グレードの複数のバッテリセルを電池組み立て装置に的確に搬送できる。すなわち、自動倉庫の収容空間を無駄なく利用して多数のバッテリセルのエージング処理及び保管を可能とした上で、所定グレードの組電池を効率よく組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における自動倉庫の平面図である。
【図2】本発明の実施形態における自動倉庫の正面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるエージングボックスの正面図である。
【図4】本発明の実施形態における電池組み立て装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図2を参照し、この実施形態の組電池のセル組み合わせシステムは、例えばパック型の二次電池であるバッテリセル14を、エージングボックス11内に複数収めた状態で、自動倉庫1の荷収容棚3内にスタッカークレーン5(図1参照)により搬出入自在に保管すると共に、この状態で各バッテリセル14の充電・放電・室温放置エージング及び高温放置エージング等(以下、単にエージングと称する)を行い、このエージングにより得たデータを基に、各バッテリセル14を多段階にグレード分けし、このグレード分けに基づいて、エージング後の各バッテリセル14から同一グレードのものを複数取り出して、相当グレードの組電池22a〜22d(図4参照)を組み立てるものである。
【0012】
図1は、前記自動倉庫1の概略を示す平面図である。
自動倉庫1は、搬入された荷M(後述のエージングボックス11)が載置される荷搬入部2と、荷Mを収容する荷収容棚3と、搬出される荷Mが載置される荷搬出部4と、荷搬入部2,荷収容棚3,荷搬出部4からなる荷載置部との間で荷Mの受け渡しを行うスタッカークレーン5と、自動倉庫1の動作を制御する不図示のホストコンピュータ(以下、上位制御部9と称する)と、上位制御部9にアクセスする操作パネル6とを有している。
【0013】
自動倉庫1には直線的に軌道レール7が敷設され、この軌道レール7に沿ってスタッカークレーン5が走行する。荷収容棚3は、軌道レール7の幅方向両側に対となって設けられており、荷Mを上下方向で多段に、かつ水平方向で複数に収容可能となっている。本実施形態の荷収容棚3は、高さが数十メートル(例えば30メートル)規模の大型のものである。また、軌道レール7の一端部には、軌道レール7を挟んで荷搬入部2と荷搬出部4とが互いに対向するように設けられる。スタッカークレーン5は、この軌道レール7の一端部(以下、ホームポジションと称する)にて、搬入又は搬出する荷Mの受け渡しを行う構成となっている。
【0014】
なお、スタッカークレーン5は、多段の荷収容棚3に沿って敷設される軌道レール7と、この軌道レール7に沿って走行可能な台車と、この台車に一体的に設けられるマストと、このマストに昇降可能かつ所定高さで位置決め可能に設けられる昇降台と、この昇降台に設けられて荷収容棚3に対して荷Mの出し入れを行うフォークやアーム等の移載手段とを備え、荷収容棚3における所定の収容空間と対向する位置に荷Mを移動させ、前記移載装置を用いて荷収納棚3との間で荷Mの受け渡しを行うものである。
【0015】
図2は、前記荷収容棚3の概略を示す正面図である。
荷収容棚3に収容される前記荷Mたるエージングボックス11は、前記スタッカークレーン5により荷収容棚3の任意の空きスペースに収容される。エージングボックス11には個別番号等の管理情報が付与され、各エージングボックス11が荷収容棚3の何処に収容されたかが上位制御部9に管理される。エージングボックス11は、自動倉庫1に収められて荷収容棚3に収容された時点で、自動倉庫1の動力線及び信号線に電気的に接続され、上位制御部9の指示に従ってエージングを開始する。
【0016】
図3は、前記エージングボックス11の概略を示す正面図である。
エージングボックス11は、その外壁の一部又は全部を構成する断熱壁12と、断熱壁12に囲まれた収容空間内に多段に収容される複数のバッテリセル14と、各バッテリセル14に接続されてこれらの充放電を行う充放電制御装置15と、各バッテリセル14の電圧、電流及び温度等を計測する電池特性計測装置16と、収容空間内の温度を管理するヒータ17及びファン18と、荷収容棚3に収容された際に前記動力線及び信号線を接続可能とする動力コネクタ及び信号コネクタ(何れも不図示)とを有する。なお、充放電制御装置15及び電池特性計測装置16を一体のユニットとして構成される。
【0017】
エージングボックス11は、その内部空間に各バッテリセル14を収めると同時にこれらを加圧クランプし、この状態で荷収容棚3に収容されて、電極接続、温度計測及びセル加圧を同時に行う。エージングボックス11の内部にはヒータ17及びファン18が仕込まれ、雰囲気温度を50℃超程度まで上げての充放電エージングを行うことができる。
【0018】
このエージングでの記録指標は、電圧及び電流の計測値の積として求められる蓄電(充電)容量と、エージング前後の満充電時の開放電圧の低下度合いとが主であり、これらを電池特性計測装置16内で算出してメモリに記録した後、これを上位制御部9に転送する。各バッテリセル14は例えばICチップ等の情報記録媒体を有し、エージングボックス11と同様に個別番号等の管理情報が付与される。この管理情報も併せて上位制御部9に転送することで、上位制御部9内に各バッテリセル14の電池特性のデータベースが構築される。なお、前記エージングでは、微少短絡電圧等の計測により不良品の検出も行われる。
【0019】
そして、上位制御部9は、エージング中及びその前後に記録したデータを基に、特に蓄電容量とエージング前後の満充電開放電圧の低下度合い(劣化予測)とを用いて、容量及び耐久性の二元特性で各バッテリセル14をグレード分けする。
これら各バッテリセル14を同グレード毎に複数まとめることで、図4に示すように、バッテリセル14と同様にグレード分けされた組電池22a〜22dを組み立てることが可能である。
【0020】
すなわち、所定グレードの組電池22a〜22dを組み立てるべく外部からの操作がなされると、上位制御部9は、相当グレードのバッテリセル14を収めたエージングボックス11をスタッカークレーン5により荷収容棚3から搬出する。このエージングボックス11は、不図示の搬送装置により電池組み立て装置21のストックヤードに搬送される。
【0021】
電池組み立て装置21は、同グレードのバッテリセル14が所定数揃うと、それをエージングボックス11から取り出して一体的に組み立てる。自動倉庫1から電池組み立て装置21までのエージングボックス11の搬送及び電池組み立て装置21での組電池22a〜22dの組み立ては、上位制御部9の制御により自動で行うことが望ましい。
【0022】
図4は、容量で2段階、耐久性で2段階の計4グレードに組電池22a〜22dを仕分ける例を示す。この組電池22a〜22dを電気自動車のエネルギーストレージとして用いる場合、例えば大容量で高耐久性のグレードAのもの(組電池22a)は高級車や緊急車両に、大容量で低耐久性のグレードBのもの(組電池22b)はスポーツカーに、低容量で高耐久性のグレードCのもの(組電池22c)は汎用車両や運輸車両に、低容量で低耐久性のグレードDのもの(組電池22d)は廉価車両やレンタカーにそれぞれ用いる等、各グレードに適した用途が選択される。
【0023】
なお、組電池の商品企画等に合わせて、2×3の6グレードや3×3の9グレード等に組電池を仕分けるようにしてもよい。また、前記エージング時の記録指標として、さらに内部抵抗やセル温度の変化の計測を行い、これを用いてさらなるバッテリセル14のグレード分けを行ってもよい。
さらに、前記エージングにおいて、雰囲気温度を変動させたり、セル加圧圧力を変動させたり、振動を加えたり、前記振動の周波数や振幅を変化させる等、出荷後に使用される状況を再現しつつエージングを行うようにしてもよい。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の組電池のセル組み合わせシステムは、複数のバッテリセル14をエージング処理可能に収容するエージングボックス11と、前記エージングボックス11を上下方向及び水平方向に複数並べて収容する荷収容棚3を有して前記エージングボックス11を搬出入自在に保管する自動倉庫1と、前記自動倉庫1から搬送された前記エージングボックス11から前記バッテリセル14を取り出すと共に複数の前記バッテリセル14を組み合わせて組電池22a〜22dとする電池組み立て装置21と、前記自動倉庫1及び電池組み立て装置21を作動制御する上位制御部9と、を備え、前記自動倉庫1は、前記荷収容棚3に前記エージングボックス11を収容した後、このエージングボックス11を電気的に接続して、その内部の前記バッテリセル14のエージング処理を行うものであり、前記上位制御部9は、前記エージング処理で得られるバッテリ特性データを記録し、このバッテリ特性データに基づいて前記バッテリセル14をグレード分けすると共に、前記バッテリセル14が個別に有する管理情報と、前記エージングボックス11が個別に有する管理情報とに基づき、同一グレードの前記バッテリセル14が何処に収容されるかをデータベース化し、前記電池組み立て装置21は、前記上位制御部9の指令に基づき、前記自動倉庫1から搬送された一つ又は複数の前記エージングボックス11から同一グレードの複数の前記バッテリセル14を取り出し、これら各バッテリセル14を用いて、所定グレードの前記組電池22a〜22dを組み立てるものである。
【0025】
この構成によれば、バッテリセル14のグレード分けの結果を有効利用して、所定グレードの組電池22a〜22dを組み立てることができる。また、同一グレードの複数のバッテリセル14を用いて組電池22a〜22dを組み立てることで、組電池22a〜22d内のバランス制御装置が簡便なものであっても、その特性や寿命を安定させることができる。さらに、スタッカークレーン5等でエージングボックス11を荷収容棚3に収容するのみで、自動的にエージング処理及びデータ収集を実施することができる。
また、荷収容棚3に複数のエージングボックス11を収容し、かつ各エージングボックス11の内部にさらに複数のバッテリセル14を収容する場合でも、上位制御部9のデータベースに基づき同一グレードの複数のバッテリセル14を電池組み立て装置21に的確に搬送できる。すなわち、自動倉庫1の収容空間を無駄なく利用して多数のバッテリセル14のエージング処理及び保管を可能とした上で、所定グレードの組電池22a〜22dを効率よく組み立てることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 自動倉庫
3 荷収容棚(収容棚)
9 上位制御部(制御部)
11 エージングボックス
14 バッテリセル
21 電池組み立て装置
22a〜22d 組電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセルを組み合わせてなる組電池のセル組み合わせシステムであって、
前記バッテリセルをエージング処理可能に収容するエージングボックスと、前記エージングボックスを上下方向及び水平方向に複数並べて収容する収容棚を有して前記エージングボックスを搬出入自在に保管する自動倉庫と、前記自動倉庫から搬送された前記エージングボックスから前記バッテリセルを取り出すと共に複数の前記バッテリセルを組み合わせて前記組電池とする電池組み立て装置と、前記自動倉庫及び電池組み立て装置を作動制御する制御部と、を備え、
前記自動倉庫は、前記収容棚に前記エージングボックスを収容した後、このエージングボックスを電気的に接続して、その内部の前記バッテリセルのエージング処理を行うものであり、
前記制御部は、前記エージング処理で得られるバッテリ特性データを記録し、このバッテリ特性データに基づいて前記バッテリセルをグレード分けし、
前記電池組み立て装置は、前記自動倉庫から搬送された同一グレードの複数の前記バッテリセルを用いて、所定グレードの前記組電池を組み立てることを特徴とする組電池のセル組み合わせシステム。
【請求項2】
前記エージングボックスは、複数の前記バッテリセルを収容し、
前記電池組み立て装置は、前記制御部の指令に基づき、前記自動倉庫から搬送された一つ又は複数の前記エージングボックスから同一グレードの複数の前記バッテリセルを取り出し、これら各バッテリセルを用いて前記組電池を組み立てることを特徴とする請求項1に記載の組電池のセル組み合わせシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記エージング処理で得られる前記バッテリセルのバッテリ特性データと、前記バッテリセルが個別に有する管理情報と、前記エージングボックスが個別に有する管理情報とを記録することを特徴とする請求項2に記載の組電池のセル組み合わせシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−252926(P2012−252926A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125719(P2011−125719)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】