説明

組電池装置

【課題】SOCの変化に対して電圧変動が小さく安定した出力特性領域において充電状態の高精度な検出を可能とする組電池装置を提供する。
【解決手段】組電池装置200は、SOC(充電状態)に対する電圧変化幅が所定の値以下である低変化領域を有する充電特性を備える複数個の二次電池10と、二次電池10への充電の際に、二次電池10について検出された電圧及び電流を用いて、二次電池10のSOCを算出する演算装置42と、を少なくとも備える。演算装置42は、低変化領域において充電を実施する際に、電圧の時間変化率が予め定めた閾値を所定の時間、上回った場合に、二次電池10のSOCを、当該予め定めた閾値に対して予め対応付けられたSOCの規定値に決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOC(state of charge、充電状態)の変化に対して電圧変動が小さく、安定した出力特性領域を有する組電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の従来技術は、フラットな充放電容量範囲を確保できる特性を有するリチウムイオン電池である。このリチウムイオン電池は、理論電気容量全体の50%以上の容量範囲(例えば、理論電気容量の20%〜80%に相当する容量範囲)にわたり、電流値1Cの大きさの電流で充電及び放電したときに、端子間電圧の変動がいずれも0.2V以下である容量範囲を確保できる特性を有している。
【0003】
したがって、このリチウムイオン電池によれば、少なくともフラットな充放電容量範囲内では、電圧変化を小さくして充放電させることができ、出力変動の小さい安定した出力特性(IV特性)を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−129644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、出力変動の小さい電圧変化フラット領域(端子間電圧が3.25〜3.45Vの領域)においては電流積算によるSOC推定を実施し、端子間電圧の電気量変化率が閾値を超えるときには電圧を用いてSOC推定を実施する。つまり、SOCが例えば15%〜95%においては電流積算によりSOC推定を実施するため、この方法では電圧による電気量の算出に比べて一般に誤差が大きくなり、SOC検出の精度が好ましくないという問題がある。
【0006】
したがって、SOC検出の精度を確保するには、SOCが15%〜95%の範囲を除く、完全充電または完全放電に近い状態でSOCの補正を実施する必要がある。しかしながら、実際の充放電時には、完全充電または完全放電とするには時間を要し、また使用条件によっては、完全充電または完全放電以外の領域で電池を使用する可能性があるため、電圧変化フラット領域におけるSOCの高精度検出が課題となる。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、SOCの変化に対して電圧変動が小さく安定した出力特性の領域において充電状態の高精度な検出を可能とする組電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1の組電池装置に係る発明は、充電状態に対する電圧変化幅が所定の値以下である低変化領域を有する充電特性を備える複数個の二次電池と、二次電池への充電の際に、二次電池について検出された電圧、電流を用いて、二次電池に蓄えられた充電状態を算出する演算装置と、を備え、
演算装置は、低変化領域において充電を実施する際に、電圧の時間変化率が所定の時間、予め定めた閾値を上回った場合に、または電圧の電気量変化率が所定の時間、予め定めた閾値を上回った場合に、二次電池の充電状態を、当該予め定めた閾値に対して予め対応付けられた充電状態の規定値に決定することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、電圧の時間変化率または電圧の電気量変化率がそれぞれに対応する所定の条件を満たす場合に、二次電池の充電状態を予め対応付けられた充電状態の規定値に決定することにより、二次電池の充電状態を検出することができる。このため、SOCの変化に対して電圧変動が小さく安定した出力特性の領域において充電状態の高精度な検出を可能とする組電池装置を提供することができる。
【0010】
請求項2の組電池装置に係る発明は、充電状態に対する電圧変化が所定の値以下である低変化領域を含む充電特性を有する複数個の二次電池と、二次電池への充電の際に、二次電池について検出された電圧、電流を用いて、二次電池に蓄えられた充電状態を算出する演算装置と、を備え、
演算装置は、低変化領域において充電を実施する際に、電圧の時間変化率が所定の時間、予め定めた閾値を上回った場合に、二次電池の充電状態を、当該予め定めた閾値に対して予め対応付けられ電圧の時間変化率と充電状態との間に満たされる関係式から算出した充電状態の値に決定することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、電圧の時間変化率が対応する所定の条件を満たす場合に、二次電池の充電状態を予め対応付けられ、電圧の時間変化率と充電状態との間に満たされる関係式から算出した充電状態の値に決定することにより、二次電池の充電状態を検出することができる。このため、SOCの変化に対して電圧変動が小さく安定した出力特性の領域において充電状態の高精度な検出を可能とする組電池装置を提供することができる。
【0012】
請求項3によると、演算装置は、充電中に、二次電池のそれぞれについて求めた充電状態から当該二次電池間の充電状態の差である充電状態のずれ量を検出し、当該充電状態のずれ量を抑制するために選定した二次電池について充電電流を低減することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、充電中に二次電池間の充電状態のずれ量を検出して選定した二次電池について充電電流の低減を行うことにより、当該選定した二次電池の充電量を抑制し、組電池を構成する電池間の充電量差を小さくして、均等な充電状態に近づけることができる。このため、充電終了後、まもなく二次電池の電力を使用する場合には、充電終了後の放電の機会が得られないが、このような場合であっても、選定した二次電池について充電中の充電量抑制を実施することによって、複数個の二次電池の充電状態について均等化を図ることができ、非常に有用な組電池装置を提供できる。
【0014】
請求項4によると、請求項3に記載の発明に加え、演算装置は、さらに充電終了後に、二次電池のそれぞれについて求めた充電状態から当該二次電池間の充電状態の差である充電状態のずれ量を判定し、当該充電状態のずれ量を抑制するために選定した二次電池について放電を実施することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、請求項3の発明で実施する充電中の充電量抑制に加えて、充電終了後に、選定した二次電池について放電を実施することにより、当該充電中の充電量抑制では充電状態の均等化が十分に図れなかった場合に、この状態を解消できる有用な放電ステップを提供できる。
【0016】
請求項5によると、二次電池の正極は、オリビン構造を有するリチウム金属リン酸塩を含むことを特徴とする。この発明によれば、高い充放電容量域において電圧に基づく容量検出が可能な範囲を確保する上で好ましい。また、オリビン構造のリチウム金属リン酸塩は、高温等の過負荷状態において、酸素を発生し難いため、熱的、化学的に安定な組電池を提供することに寄与する。
【0017】
請求項6によると、リチウム金属リン酸塩は、LiMPOで表される化合物であり、MはMn、Fe、Co、Niから選択された少なくとも1種以上の金属元素であることが好ましい。
【0018】
請求項7によると、上記MはMn、Feの金属元素であることが好ましい。この発明によれば、Mn及びFeの金属元素を有するリチウム金属リン酸塩を正極活物質として備えることにより、少なくとも2箇所の低変化領域を有する充電特性の組電池を提供できる。
【0019】
請求項8によると、二次電池の負極は、リチウム金属、炭素系材料、チタン酸化物、合金系材料のいずれかを含むことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する組電池装置の構成を示した概略図である。
【図2】組電池装置に含まれる組電池の二次電池1個あたりの充電特性を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る充電運転の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートにおける「SOC均等化制御」ステップの処理手順を示すサブルーチンである。
【図5】第2実施形態に係る充電運転の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートにおける「SOC均等化制御」ステップの処理手順を示すサブルーチンである。
【図7】第3実施形態に係る組電池の二次電池1個あたりの充電特性を示す図である。
【図8】第3実施形態に係る充電運転の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第4実施形態に係る組電池の二次電池1個あたりの充電特性を示す図である。
【図10】第4実施形態に係る充電運転の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】第5実施形態に係る充電運転の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本発明に係る組電池装置を適用した第1実施形態について説明する。組電池装置200は、SOC(state of charge、充電状態、または充電状態を表す充電率)に対する電圧変化幅が所定の値以下である低変化領域を有する充電特性を備える複数個のリチウムイオン二次電池10(以下、単に「二次電池10」ともいう)と、これらの二次電池10への充電の際に、二次電池10について検出された電圧及び電流を用いて、当該二次電池10に蓄えられた充電状態を算出する演算装置42と、を少なくとも備えて構成される。
【0022】
組電池100は、複数個の二次電池10を直列接続して構成されている。組電池100は、例えば、電動機のみによって走行する電気自動車(EV)、電動機と内燃機関とを併用して走行駆動力とするプラグインハイブリッド自動車(PHV)等に搭載されるバッテリとして用いることができる。
【0023】
図1は、本発明を適用する組電池装置200の構成を示した概略図である。組電池装置200は、例えばハイブリッド自動車に搭載され、走行のための電動機と接続されている。この組電池装置200は、図1に示すように、組電池100と、電流検出装置20と、電圧検出装置30と、電池制御装置40とを備えている。
【0024】
電池制御装置40は、入力部41、演算装置42、記憶部43、出力部44等を備えている。電流検出装置20は、組電池100を構成する複数の二次電池10を流れる電流値を検出する。電圧検出装置30は、各二次電池10の端子間電圧を検出する。電流検出装置20が検出する電流値や、電圧検出装置30が検出する端子間電圧は、入力部41に入力される。SOCは、例えば記憶部43に記憶されたマップ、所定のプログラム等を用いた演算によって演算装置42によって求められる。演算装置42は、電圧検出装置30が検出する端子間電圧と、記憶部43に記憶されている組電池100固有の充電特性を示したマップ(例えば図2参照)とを用いて、所定のプログラムにしたがった演算によって組電池100に蓄えられているSOC(充電状態)を求める。図2は、組電池装置200に含まれる組電池100の二次電池1個あたりの充電特性を示す充電特性図である。
【0025】
出力部44は、当該演算結果に基づいて組電池100の充電を制御する。したがって、電池制御装置40は、組電池100全体または各二次電池10を流れる電流値、各二次電池10における端子間電圧等を用いて、充電状態、すなわち、SOCを検出するとともに、検出したSOCを用いて組電池100の充電を制御する。
【0026】
二次電池10は、充電時のSOCと端子間電圧とに関する充電特性を示す固有の充電特性図において、SOCに対する電圧変化幅が所定の値以下(例えば、0.4V以下)である低変化領域を有する。例えば、図2に示すように、組電池100を構成する二次電池1個あたりの端子間電圧は、SOCに対する電圧変化幅が、3.25V〜3.45Vである低変化領域を有する。このような特徴を有する二次電池10を直列接続してなる組電池100によれば、安定した出力特性(IV特性)とともに、電池の充電状態の正確な検出を確実に実現できる。
【0027】
SOCと二次電池1個あたりの電圧及び電圧の時間変化率dV/dtとの関係は、例えば、図2の充電特性図に示されている。当該充電特性図は、SOCが0%〜約7%の範囲に電圧変化幅の大きい第1の高変化領域を有し、SOCが約7%〜約95%の範囲に電圧変化幅が所定の値以下(0.2V以下)である低変化領域を有し、SOCが約95%〜100%の範囲に電圧変化幅の大きい第2の高変化領域を有している。当該低変化領域は、電圧変化量が小さく、電圧増加曲線がなだらかな電圧フラット領域でもある。
【0028】
図2の上には、当該電圧フラット領域について、SOCに対する電圧の時間変化率dV/dtの変移が示されている。当該dV/dtの変移は、予め定めた閾値Vthを超える範囲を二つ有する。当該二つの範囲は、例えば、SOCが15%〜35%の範囲と75%〜80%の範囲である。当該二つの範囲のうちSOCの小さい方の範囲は、dV/dtがSOCの増加に伴い所定の閾値Vthを超えようとするP1点と、SOCの増加に伴い所定の閾値Vthを下回ろうとするP2点との間の範囲である。当該二つの範囲のうちSOCの大きい方の範囲は、dV/dtがSOCの増加に伴い所定の閾値Vthを超えようとするP3点と、SOCの増加に伴い所定の閾値Vthを下回ろうとするP4点との間の範囲である。また、これら二つの範囲は、例えば、充電回数の増加に伴う電池劣化によっても変動しない二次電池10固有の範囲である。
【0029】
組電池100のSOCは、所定の条件が満たされた場合に、これら4つのP1点〜P4点のそれぞれに対応付けられたSOCの規定値により求められ、また、電流積算により求めたSOCの演算により求められる。
【0030】
本実施形態では、具体的には、演算装置42は、図2に示すように、上記の低変化領域において充電を実施する際に、電圧の時間変化率dV/dtが所定の時間、予め定めた閾値Vthを上回った場合に、閾値Vthに対して予め対応付けられたSOCの規定値(例えばP1点またはP3点に対応付けられたSOC)に、二次電池10のSOCを決定する。すなわち、演算装置42は、電圧の時間変化率dV/dtが閾値Vthを超えてから所定の時間経過後のSOCを、当該閾値Vthに予め対応付けた所定の規定値に決定することにより、二次電池10のSOCを検出する。
【0031】
リチウムイオン二次電池10は、正極と負極とそれら正負極間に介在する電解質とその他必要な部材とを有する。以下、各要素について説明する。
【0032】
(正極)
リチウムイオン二次電池10に含まれる正極の活物質としては、オリビン構造を有するオリビン型リチウム化合物、例えば、リン酸化合物の一つであるリチウム金属リン酸塩を用いることが望ましい。リチウム金属リン酸塩は、例えば、LiMPOで表される化合物とする。当該Mには、Mn,Fe,Co,Niから選択された少なくとも1種以上の金属元素であることが望ましい。
【0033】
さらに好ましくは、当該Mは、Mn、Feの金属元素とすることである。このような金属元素を採用すれば、充放電特性図において、使用電圧範囲が大きくならず、適度な範囲に設定することが可能であり、SOCの検出にとって有効で扱いやすい二次電池を提供することができる。
【0034】
その他に有することができる要素としては導電材、結着材、集電体などが挙げられる。正極活物質は、導電材、結着材などと混合した状態で集電体の表面に層状に形成された活物質層を形成することができる。例えば、正極活物質と結着材と導電材等とを水、Nメチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶媒中で混合した後、集電体上に塗布して形成することができる。
【0035】
導電材は、活物質から生成される電子の授受を行う材料であり、導電性を有するものであればよい。例えば炭素材料や導電性高分子材料が挙げられる。炭素材料としてはケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、非晶質炭素等を採用できる。また、導電性高分子材料としてはポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンを採用できる。
【0036】
結着材は活物質等の構成要素を結合させて電極を形作る材料である。種々の高分子材料を採用することができ、化学的・物理的安定性が高いものが望ましい。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム等が挙げられる。また、導電材として導電性高分子材料を採用すると、導電材の作用に加え結着材の作用を発現させることができる。集電体はアルミニウム等の金属から形成される金属箔などを採用することができる。
【0037】
(負極)
負極の構成は特に限定されないが、適正な負極活物質を有することができる。負極活物質の種類によっては結着材や集電体などを用いる場合もある。結着材は正極にて説明したものと同様のものが採用できる。集電体は銅等の金属から形成される金属箔などを採用することができる。
【0038】
リチウムイオン二次電池10を構成する場合には、負極の活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる化合物を単独または組み合わせて用いることができる。リチウムイオンを吸蔵及び放出できる化合物の一例としてはリチウム等の金属材料、ケイ素、スズ、銅等を含有する合金系材料、グラファイト、コークス等の炭素系材料、チタン酸化物等がある。また、チタン酸化物は、ブロンズ構造を有するもの、ブロンズ構造を有さないその他のものを採用することができる。したがって、リチウムイオン二次電池10の負極は、リチウム金属、グラファイト等の炭素系材料、チタン酸化物、合金系材料のいずれかを含むものである。また、これらの活物質は単独で用いるだけでなく、これらを複数種類混合して用いることもできる。
【0039】
例えば、負極活物質としてリチウム金属箔を用いる場合、銅等の金属からなる集電体の表面にリチウム箔を圧着することで形成できる。また負極活物質として合金材料、炭素材料を用いる場合は、負極活物質と結着材等とを水、NMP等の溶媒中で混合した後、銅等の金属からなる集電体上に塗布して形成することができる。
【0040】
(電解質)
電解質は正極及び負極の間のイオン等の荷電担体の輸送を行う媒体であり、特に限定しないが、リチウムイオン二次電池10が使用される雰囲気下で物理的、化学的、電気的に安定なものが望ましい。
【0041】
例えば、電解質としては、LiBF,LiPF,LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO)の中から選ばれた1種以上を支持電解質とし、これを有機溶媒に溶解させた電解液が好ましい。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等及びこれらの混合物が例示できる。中でもカーボネート系溶媒を含む電解液は、高温での安定性が高いことから好ましい。また、ポリエチレンオキサイドなどの固体高分子に上記の電解質を含んだ固体高分子電解質やリチウムイオン伝導性を有する高分子材料、セラミック、ガラス等の固体電解質も使用可能である。
【0042】
(その他必要な部材)
その他必要な部材としては、セパレータ、ケース、電極端子等が二次電池の構成や使用形態に応じて選択される。
【0043】
正極と負極との間には電気的な絶縁作用とイオン伝導作用とを両立する部材であるセパレータを介装することが望ましい。電解質が液状である場合にはセパレータは、液状の電解質を保持する役割をも果たす。セパレータとしては、多孔質合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)やガラス繊維からなる多孔質膜、不織布を採用できる。さらに、セパレータは、正極及び負極の間の絶縁を担保する目的で、正極及び負極よりもさらに大型の形態を採用することが好ましい。
【0044】
正極、負極、電解質、セパレータ等は何らかのケース内に収納することが一般的である。ケースは、特に限定されるものではなく、種々の材料、形態で作成することができる。ケースにはケースの内外で電力の授受を行う電極端子が設けられる。
【0045】
次に、組電池装置200における組電池100の充電を制御する充電制御方法について、図3のフローチャートにしたがって説明する。
【0046】
まずステップ10において、電池制御装置40の制御により、組電池100を構成する複数の二次電池10の充電を開始すると、ステップ20に進み、電流検出装置20によって検出された電流値を積算して、二次電池10のSOCを算出する。次にステップ30で、算出したSOCが50%未満で、かつ電圧検出装置30で検出した電圧Vに基づく電圧の時間変化率dV/dtが閾値Vthを所定時間、上回っているか否かを判定する。
【0047】
ステップ30の条件をYESと判定すると、ステップ40でSOCをP1点の値にセットする。これにより、dV/dtが閾値Vthを所定時間、上回っていることを確認してからSOCをP1点に対応する値に規定するのである。換言すれば、SOCのセット処理は、dV/dtが閾値Vthを上回る状態を所定時間(例えば1秒間)経ることにより、dV/dtを複数回(例えば10回)チェックしてから、SOCをP1点に対応する15%に規定するのである。
【0048】
そして、ステップ50において、電流検出装置20によって検出された電流値の積算によって、二次電池10のSOCを算出する。次にステップ60で、算出したSOCが50%以上で、かつ電圧検出装置30で検出した電圧Vに基づく電圧の時間変化率dV/dtが閾値Vthを所定時間、上回っているか否かを判定する。
【0049】
ステップ60の条件をNOと判定すると、ステップ50に戻り、SOCを電流積算により算出する。ステップ60でYESと判定すると、ステップ70でSOCをP3点の値にセットする。これにより、dV/dtが閾値Vthを所定時間、上回っていることを確認してからSOCをP3点に対応する値に規定するのである。換言すれば、SOCのセット処理は、dV/dtが閾値Vthを上回る状態を所定時間(例えば1秒間)経ることにより、dV/dtを複数回(例えば10回)チェックしてから、SOCをP3点に対応する75%に規定するのである。
【0050】
そして、ステップ80において、電流検出装置20によって検出された電流値の積算によって、二次電池10のSOCを算出する。次にステップ90で、電池制御装置40は、算出した二次電池10のSOCが充電上限電圧(例えば、充電設定値)に達したか否かを判定する。この判定は、SOCが充電上限電圧に達するまで繰り返される。電池制御装置40は、ステップ90でYESと判定すると、充電を停止し、SOCを100%にセットする処理を実行する。
【0051】
充電終了後には、ステップE1で組電池100を構成するすべての二次電池10について、SOCを均等にするSOC均等化制御を実行し、図3のフローチャートを終了する。
【0052】
上記のステップ30でNOと判定すると、次にステップ32で、算出したSOCが50%以上で、かつ電圧検出装置30で検出した電圧Vに基づく電圧の時間変化率dV/dtが閾値Vthを所定時間、上回っているか否かを判定する。
【0053】
ステップ32の条件をNOと判定すると、ステップ34に進み、電池制御装置40は、算出した二次電池10のSOCが充電上限電圧(例えば、充電設定値)に達したか否かを判定する。電池制御装置40は、ステップ34でYESと判定するとステップ100に進み、充電停止等、SOC均等化制御を実行し、図3のフローチャートを終了する。ステップ34でNOと判定すると、ステップ20に戻る。一方、ステップ32の条件をYESと判定すると、ステップ70に進み、以降のステップを順に実行していき、図3のフローチャートを終了する。
【0054】
次に、図3のステップE1の「SOC均等化制御」ステップを、図4のサブルーチンにしたがって説明する。
【0055】
まずステップE10において、SOCをP3点に対応する値(75%)にセットする。次にステップE11で、組電池100を構成するすべての二次電池10についてSOCの算出を開始し、ステップE12で充電を一時停止する。次に、ステップE13で、すべての電池についてSOCがP3点に対応する75%以上であるか否かを判定する。
【0056】
ステップE13でNOと判定すると、SOCが75%以上であると判定された電池についてバイパス放電を実施する(ステップE14)。当該バイパス放電は、ステップE15で、均等化対象電池のSOCがP3点相当の75%になるまで行われる。ステップE15で、YESと判定すると、本サブルーチンを終了する。
【0057】
ステップE13でYESと判定すると、ステップE16で、最低のSOCである二次電池10を決定し、他の二次電池10それぞれについて、最低SOCの二次電池10との差であるSOCずれ量(充電状態のずれ量)を算出する。そして、各二次電池10のSOCずれ量のいずれかが所定値DSOC以上であるか否かを判定する。
【0058】
ステップE16でNOと判定すると、SOC均等化をする必要のある電池セルは存在しないため、本サブルーチンを終了する。ステップE16でYESと判定すると、先のステップE16でYESと判定されて均等化処理の対象と選定された二次電池10のみについて、バイパス放電を実施する(ステップE17)。当該バイパス放電は、ステップE18で、均等化対象電池のSOCが上記の最低SOCと同等になったと判定するまで行われる。ステップE18で、YESと判定すると、本サブルーチンを終了する。
【0059】
以上のように、SOC均等化制御ステップでは、充電終了後に、各二次電池10について、充電容量差分をバイパス放電して、複数個の二次電池10のSOCを最低のSOCの二次電池に合わせて均等化を図るのである。
【0060】
本実施形態の組電池装置200がもたらす作用効果について説明する。組電池装置200は、SOC(充電状態)に対する電圧変化幅が所定の値以下である低変化領域を有する充電特性を備える複数個の二次電池10と、二次電池10への充電の際に、二次電池10について検出された電圧等を用いて、二次電池10のSOCを算出する演算装置42と、を少なくとも備える。演算装置42は、低変化領域において充電を実施する際に、電圧の時間変化率dV/dtが予め定めた閾値Vthを所定の時間、上回った場合に、二次電池10のSOCを、当該予め定めた閾値Vthに対して予め対応付けられたSOCの規定値に決定する(ステップ40,70)。
【0061】
これによれば、電圧の時間変化率または電圧の電気量変化率がそれぞれに対応する所定の条件を満たす場合に、二次電池の充電状態を予め対応付けられた充電状態の規定値に決定することにより、二次電池の充電状態を高精度に検出する。このため、SOCの変化に対して電圧変動が小さく安定した出力特性の領域において充電状態の高精度な検出を可能とする組電池装置200を提供することができる。また、このように充電中の高精度のSOC検出を可能にするため、SOC検出のために充電を停止する必要がなく、充電完了までの時間を短縮でき、有効に使用することができる。
【0062】
また、低変化領域において高精度のSOC(充電状態)検出を可能にするため、満充電付近だけではなく、幅広い充電容量範囲で電池間のSOCのばらつきを検出することも可能になる。
【0063】
演算装置42は、さらに充電終了後に、二次電池10のそれぞれについて求めたSOCから二次電池間のSOCの差であるSOCのずれ量(充電状態のずれ量)を判定し、SOCのずれ量を抑制するために選定した二次電池10について放電を実施する(ステップE14,E17)。
【0064】
この制御によれば、充電終了後に、選定した二次電池10について放電を実施することにより、個々の電池の劣化進行度合い等のために、均等に充電されなかった状態を改善することができ、電池の劣化進行を抑制することにも寄与する。また、SOCのばらつきを判定することが満充電付近以外の幅広い充電容量範囲で実施可能であるため、二次電池10の劣化促進を抑制できるという効果を奏する。
【0065】
また、リチウムイオン二次電池10の正極は、オリビン構造を有するリチウム金属リン酸塩を含む。これによれば、高い充電容量域において電圧に基づく容量検出が可能な範囲を確保する上で好ましい。また、オリビン構造のリチウム金属リン酸塩は、高温等の過負荷状態において、酸素を発生し難いため、熱的、化学的に安定な組電池100を得ることができる。
【0066】
さらにMは、Mn、Feの金属元素であることが好ましい。これによれば、Mn及びFeの金属元素を有するリチウム金属リン酸塩を正極活物質として備えることにより、充放電特性曲線において少なくとも2箇所の電圧変化の高変化領域によって形成される電圧変動範囲を抑制することができる。電圧変動幅が大きいと、組電池としての出力特性の安定性が下がり、また電解液の分解性が高くなり、分解した場合には電池が機能しなくなることがある。そこで、電圧変動範囲の抑制効果により、組電池100における出力特性の安定性と充放電容量の検出性との両立の観点から有効な組電池100が得られる。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態で説明した充電制御の他の形態として、第2実施形態に記載する特徴的な充電制御を図5及び図6を参照して説明する。図5は、第2実施形態に係る充電運転の処理手順を示すフローチャートである。図6は、図5のフローチャートにおける「SOC均等化制御」ステップの処理手順を示すサブルーチンである。本実施形態で特に説明しない構成、制御等は、第1実施形態と同様であるとし、その作用効果も同様である。
【0068】
本実施形態に記載する特徴的な充電制御は、第1実施形態の充電制御に対して、ステップE2の「SOC均等化制御」が、充電終了ではなく、充電中に実行される点が異なる。さらにこの差異に伴い、「SOC均等化制御」のサブルーチンが図6にしたがって行われる。
【0069】
以下、第1実施形態の充電制御と異なる点について説明する。第2実施形態のフローチャートでは、ステップ70の後であって、ステップ90でSOCが充電上限電圧に到達したか否かを判定する前に、すなわち充電開始後、充電終了前にステップE2で組電池100を構成するすべての二次電池10について、SOCを均等にするSOC均等化制御を実行する。
【0070】
ステップE2の「SOC均等化制御」ステップを、図6のサブルーチンにしたがって説明する。まず、ステップE20において、SOCをP3点に対応する値(75%)にセットする。次にステップE21で、組電池100を構成するすべての二次電池10についてSOCの算出を開始する。ステップE22で、最低のSOCである二次電池10を決定し、他の二次電池10それぞれについて、最低SOCの二次電池10との差であるSOCずれ量(充電状態のずれ量)を算出する。そして、各二次電池10のSOCずれ量のいずれかが所定値DSOC以上であるか否かを判定する。
【0071】
ステップE22でNOと判定すると、SOCの均等化をする必要のある電池セルは存在しないため、本サブルーチンを終了する。ステップE22でYESと判定すると、先のステップE22でYESと判定されて均等化処理の対象と選定された二次電池10のみについて、バイパス充電を実施する(ステップE23)。
【0072】
バイパス充電は、二次電池に対して電気抵抗を通して電流を流すことにより、充電電流を低下させることによって、当該二次電池への充電量を低減させるものである。このバイパス充電によって、二次電池のSOCからみれば、SOCの抑制という前述のバイパス放電と同様の効果が得られるのである。当該バイパス充電は、ステップE24で、均等化対象電池のSOCが上記の所定値DSOC未満になったと判定するまで行われる。ステップE24で、YESと判定すると、本サブルーチンを終了する。
【0073】
以上のように、SOC均等化制御ステップでは、充電中に、充電容量が他の電池よりも所定量以上大きい二次電池10について充電量を抑制する。これにより、複数個の二次電池10のSOCを最低のSOCの二次電池に合わせ、組電池100を構成する二次電池10についてSOCの均等化を図るのである。
【0074】
本実施形態の組電池装置200がもたらす作用効果について説明する。演算装置42は、充電中に、二次電池10のそれぞれについて求めたSOCから当該二次電池間のSOCのずれ量を検出し、当該SOCのずれ量に基づいて選定した二次電池10について充電電流を低減する(ステップE22,E23)。
【0075】
この制御によれば、充電中に二次電池間のSOCのずれ量を検出して選定した二次電池10について充電電流の低減を行うことにより、当該選定した二次電池10の充電量を抑制し、組電池100を構成する電池間の充電量差を小さくして、均等な充電状態に近づけることができる。このため、充電終了後、まもなく二次電池10の電力を使用する場合には、充電終了後の放電の機会が得られないが、このような場合であっても、選定した二次電池10について充電中の充電量抑制を行うことによって、複数個の二次電池10のSOCについて均等化を図ることができる。
【0076】
また、充電中または充電終了後に検出する二次電池間のSOCのずれ量は、SOCが最低の二次電池10を検出し、他の二次電池10それぞれのSOCと当該最低SOCとの差に基づいて、充電電流を低減する対象となる二次電池10を選定する。この処理によれば、当該選定した二次電池10の充電量を最低のSOCに合わせることになるため、組電池100を構成する電池間の充電量差をほぼなくし、均等な充電状態にできる。したがって、組電池100を構成する複数個の二次電池10間の電池劣化度合いに大きな差を生じにくくする充電制御を提供できる。
【0077】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態で説明した充電制御の他の形態として、第3実施形態に記載する特徴的な充電制御を図7及び図8を参照して説明する。図7は、第3実施形態に係る組電池100の二次電池1個あたりの充電特性を示す図である。図8は、第3実施形態に係る充電運転の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態で特に説明しない構成、制御等は、第1実施形態と同様であるとし、その作用効果も同様である。
【0078】
本実施形態に記載する特徴的な充電制御は、図7及び図8に示すように、第1実施形態の充電制御に対して、ステップ40A及びステップ70Aの「SOCの算出方法」が異なる。
【0079】
以下、第1実施形態の充電制御と異なる点について説明する。本実施形態においても演算装置42は、電圧検出装置30が検出する端子間電圧と、記憶部43に記憶されている組電池100固有の充電特性を示したマップ(例えば図7参照)とを用いて、所定のプログラムにしたがった演算によって組電池100に蓄えられているSOC(充電状態)を求める。
【0080】
図7に示す充電特性図と電圧の時間変化率dV/dtの変移は、第1実施形態で説明した図2に示すものと同様である。図7に図示するように、dV/dtの変移は、予め定めた閾値Vthを超える範囲を二つ有し、当該二つの範囲のうち、SOCの小さい方の範囲においてdV/dtがSOCの増加に伴い所定の閾値Vthを超えようとする点(図2のP1点に相当)には、所定の関係式が対応付けられている。当該所定の関係式は、予め定めた閾値Vthに対して予め対応付けられ、電圧の時間変化率dV/dtと充電状態SOCの間に満たされる関係式F1であり、予め記憶部43に記憶されている。
【0081】
さらに、当該二つの範囲のうち、SOCの大きい方の範囲においてdV/dtがSOCの増加に伴い所定の閾値Vthを超えようとする点(図2のP3点に相当)には、所定の関係式が対応付けられている。当該所定の関係式は、予め定めた閾値Vthに対して予め対応付けられ、電圧の時間変化率dV/dtと充電状態SOCの間に満たされる関係式F3であり、予め記憶部43に記憶されている。これらの所定の関係式は、閾値Vthを上回った点から変曲点までを直線または多項式曲線によって表した近似式である。
【0082】
本実施形態では、所定の関係式F1,F3は、それぞれ以下の式で表される。
【0083】
(F1) dV/dt=(5.96×10−6)×SOC(%)−7.33×10−5
(F3) dV/dt=(2.84×10−6)×SOC(%)−1.93×10−4
具体的には、演算装置42は、図7に示すように、上記の低変化領域において充電を実施する際に、電圧の時間変化率dV/dtが所定の時間、予め定めた閾値Vthを上回った場合に、閾値Vthに対して予め対応付けられた所定の関係式、すなわち、F1式、F3式を用いて算出したSOCに、二次電池10のSOCを決定する。すなわち、演算装置42は、電圧の時間変化率dV/dtが閾値Vthを超えてから所定の時間経過後のSOCを、当該所定の関係式から算出したSOCの値に決定することにより、二次電池10のSOCを検出する。
【0084】
図8に示すように、第3実施形態のフローチャートでは、ステップ30でYESと判定した後に、ステップ40Aで、上記のF1式を用いてSOCを算出し、ステップ30の条件を満たす状態のSOCをF1式によって算出された値にセットする。さらに、第3実施形態のフローチャートでは、ステップ60でYESと判定した後に、ステップ70Aで、上記のF3式を用いてSOCを算出し、ステップ60の条件を満たす状態のSOCをF3式によって算出された値にセットする。
【0085】
本実施形態の組電池装置200がもたらす作用効果について説明する。組電池装置200は、SOC(充電状態)に対する電圧変化幅が所定の値以下である低変化領域を含む充電特性を有する複数個の二次電池10と、二次電池10への充電の際に、二次電池10について検出された電圧及び電流を用いて、二次電池10に蓄えられたSOCを算出する演算装置42と、を備える。演算装置42は、低変化領域において充電を実施する際に、電圧の時間変化率dV/dtが所定の時間、予め定めた閾値Vthを上回った場合に、二次電池10のSOCを、予め定めた閾値Vthに対して予め対応付けられ電圧の時間変化率dV/dtとSOCの間に満たされる関係式(例えば上記F1,F3)から算出したSOCの値に決定する(ステップ40A,70A)。
【0086】
これによれば、電圧の時間変化率dV/dtが対応する所定の条件を満たす場合に、二次電池10のSOCを、予め対応付けられ電圧の時間変化率dV/dtとSOCとの間に満たされる関係式(例えば上記F1,F3)から算出したSOCの値に決定することにより、二次電池10の充電状態を高精度に検出することができる。このため、SOCの変化に対して電圧変動が小さく安定した出力特性の領域において充電状態の高精度な検出を可能とする組電池装置200を提供できる。
【0087】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1実施形態で説明した充電制御の他の形態として、第4実施形態に記載する特徴的な充電制御を図9及び図10を参照して説明する。図9は、第4実施形態に係る組電池100の二次電池1個あたりの充電特性を示す図である。図10は、第4実施形態に係る充電運転の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態で特に説明しない構成、制御等は、第1実施形態と同様であるとし、その作用効果も同様である。
【0088】
本実施形態に記載する特徴的な充電制御は、図9及び図10に示すように、第1実施形態の充電制御に対して、ステップ30A、ステップ32A、及びステップ60Aが異なる。
【0089】
以下、第1実施形態の充電制御と異なる点について説明する。本実施形態においても演算装置42は、電圧検出装置30が検出する端子間電圧と、記憶部43に記憶されている組電池100固有の充電特性を示したマップ(例えば図9参照)とを用いて、所定のプログラムにしたがった演算によって組電池100に蓄えられているSOC(充電状態)を求める。
【0090】
二次電池10は、充電時のSOCと端子間電圧とに関する充電特性を示す固有の充電特性図において、SOCに対する電圧変化幅が所定の値以下(例えば、0.4V以下)である低変化領域を有する。当該充電特性図は、第1実施形態の図2と同様に、SOCが0%〜約7%の範囲に電圧変化幅の大きい第1の高変化領域を有し、SOCが約7%〜約95%の範囲に電圧変化幅が所定の値以下(0.2V以下)である低変化領域を有し、SOCが約95%〜100%の範囲に電圧変化幅の大きい第2の高変化領域を有している。
【0091】
図9の上には、電圧フラット領域について、SOCに対する電圧の電気量変化率dV/dAhの変移が示されている。当該dV/dAhの変移は、予め定めた閾値VAhを超える範囲を二つ有し、第1実施形態のdV/dtの変移と同様である。当該二つの範囲は、例えば、SOCが15%〜35%の範囲と75%〜80%の範囲である。当該二つの範囲のうちSOCの小さい方の範囲は、dV/dAhがSOCの増加に伴い所定の閾値VAhを超えようとするP1点と、SOCの増加に伴い所定の閾値VAhを下回ろうとするP2点との間の範囲である。当該二つの範囲のうちSOCの大きい方の範囲は、dV/dAhがSOCの増加に伴い所定の閾値VAhを超えようとするP3点と、SOCの増加に伴い所定の閾値VAhを下回ろうとするP4点との間の範囲である。また、これら二つの範囲は、例えば、充電回数の増加に伴う電池劣化によっても変動しない二次電池10固有の範囲である。
【0092】
組電池100のSOCは、所定の条件が満たされた場合に、これら4つのP1点〜P4点のそれぞれに対応付けられたSOCの規定値により求められ、また、電流積算により求めたSOCの演算により求められる。
【0093】
本実施形態では、具体的には、演算装置42は、図9に示すように、上記の低変化領域において充電を実施する際に、電圧の電気量変化率dV/dAhが所定の時間、予め定めた閾値VAhを上回った場合に、閾値VAhに対して予め対応付けられたSOCの規定値(例えばP1点またはP3点に対応付けられたSOC)に、二次電池10のSOCを決定する。すなわち、演算装置42は、電圧の電気量変化率dV/dAhが閾値VAhを超えてから所定の時間経過後のSOCを、当該閾値VAhに予め対応付けた所定の規定値に決定することにより、二次電池10のSOCを検出する。なお、充電が一定の電流で行われる場合には、電圧の電気量変化率dV/dAhは、第1実施形態の電圧の時間変化率dV/dtと同じ変移を呈するようになり、両者は技術的には同様の意義を持つものである。
【0094】
図10に示すように、第4実施形態のフローチャートでは、ステップ20の後に、ステップ30Aで、算出したSOCが50%未満で、かつ電圧検出装置30で検出した電圧Vに基づく電圧の電気量変化率dV/dAhが閾値VAhを所定時間、上回っているか否かを判定する。ステップ30Aの条件をYESと判定すると、ステップ40に進み、NOと判定すると、ステップ32Aに進む。
【0095】
ステップ32Aでは、算出したSOCが50%以上で、かつ電圧検出装置30で検出した電圧Vに基づく電圧の電気量変化率dV/dAhが閾値VAhを所定時間、上回っているか否かを判定する。同様に、ステップ60Aでは、算出したSOCが50%以上で、かつ電圧検出装置30で検出した電圧Vに基づく電圧の電気量変化率dV/dAhが閾値VAhを所定時間、上回っているか否かを判定する。
【0096】
本実施形態の組電池装置200がもたらす作用効果について説明する。組電池装置200は、SOC(充電状態)に対する電圧変化幅が所定の値以下である低変化領域を有する充電特性を備える複数個の二次電池10と、二次電池10への充電の際に、二次電池10について検出された電圧等を用いて、二次電池10のSOCを算出する演算装置42と、を少なくとも備える。演算装置42は、低変化領域において充電を実施する際に、電圧の電気量変化率dV/dAhが予め定めた閾値VAhを所定の時間、上回った場合に、二次電池10のSOCを、当該予め定めた閾値VAhに対して予め対応付けられたSOCの規定値に決定する(ステップ40,70)。
【0097】
これによれば、電圧の電気量変化率dV/dAhが対応する所定の条件を満たす場合に、二次電池10のSOCを予め対応付けられたSOCの規定値に決定することにより、二次電池10の充電状態を検出する。このため、SOCの変化に対して電圧変動が小さく安定した出力特性の低変化領域において充電状態の高精度な検出を可能とする組電池装置200が得られる。また、低変化領域において高精度のSOC検出を可能にするため、満充電付近だけではなく、幅広い充電容量範囲で電池間のSOCのばらつきを検出することも可能になる。
【0098】
(第5実施形態)
第5実施形態では、第1実施形態で説明した充電制御の他の形態として、第5実施形態に記載する特徴的な充電制御を図11を参照して説明する。図11は、第5実施形態に係る充電運転の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態で特に説明しない構成、制御等は、第1実施形態と同様であるとし、その作用効果も同様である。
【0099】
本実施形態に記載する特徴的な充電制御は、第1実施形態の充電制御に対して、ステップE2の充電中に実行される「SOC均等化制御」が、さらに加わる点が異なる。このステップE2は、第2実施形態で説明した図6のサブルーチンにしたがって行われる。
【0100】
本実施形態がもたらす作用効果について説明する。演算装置42は、充電中に実施するステップE2による「SOC均等化制御」に加え、さらに充電終了後に、二次電池10それぞれについて求めたSOC(充電状態)から二次電池間のSOCのずれ量(充電状態のずれ量)を判定し、当該SOCのずれ量に基づいて選定した二次電池10について放電を実施する(ステップE1)。
【0101】
この制御によれば、充電中の充電量抑制に係るステップ(ステップE2)に加えて、充電終了後に、選定した二次電池10について放電を実施することにより、当該ステップE2ではSOCの均等化が十分に図れなかった場合に、この状態を解消できる有用な放電ステップを提供できる。
【0102】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0103】
上記実施形態において、組電池100における二次電池1個あたりの充電特性は、図2に示す形態に限定するものではない。図2に示した充電特性は、SOC(充電状態)に対する電圧変化幅が所定の値以下である低変化領域を一つ有するものである。しかしながら、本発明に係る組電池100は、このような低変化領域を2個以上有する充電特性を持つものであってもよい。このような充電特性を持つ組電池であれば、SOCの高精度検出のポイントをさらに多く設定できるため、SOCが高精度に検出できる範囲を広くすることができる。
【符号の説明】
【0104】
10…リチウムイオン二次電池(二次電池)
42・・・演算装置
100…組電池
200…組電池装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電状態に対する電圧変化幅が所定の値以下である低変化領域を有する充電特性を備える複数個の二次電池と、
前記二次電池への充電の際に、前記二次電池について検出された電圧、電流を用いて、前記二次電池に蓄えられた充電状態を算出する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、前記低変化領域において充電を実施する際に、電圧の時間変化率が所定の時間、予め定めた閾値を上回った場合に、または電圧の電気量変化率が所定の時間、予め定めた閾値を上回った場合に、前記二次電池の充電状態を、当該予め定めた閾値に対して予め対応付けられた充電状態の規定値に決定することを特徴とする組電池装置。
【請求項2】
充電状態に対する電圧変化が所定の値以下である低変化領域を含む充電特性を有する複数個の二次電池と、
前記二次電池への充電の際に、前記二次電池について検出された電圧、電流を用いて、前記二次電池に蓄えられた充電状態を算出する演算装置と、を備え、
前記演算装置は、前記低変化領域において充電を実施する際に、電圧の時間変化率が所定の時間、予め定めた閾値を上回った場合に、前記二次電池の充電状態を、当該予め定めた閾値に対して予め対応付けられ前記電圧の時間変化率と充電状態との間に満たされる関係式から算出した充電状態の値に決定することを特徴とする組電池装置。
【請求項3】
前記演算装置は、充電中に、前記二次電池それぞれについて求めた充電状態から当該二次電池間の充電状態の差である充電状態のずれ量を検出し、当該充電状態のずれ量を抑制するために選定した二次電池について充電電流を低減することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組電池装置。
【請求項4】
前記演算装置は、さらに充電終了後に、前記二次電池それぞれについて求めた充電状態から当該二次電池間の充電状態の差である充電状態のずれ量を判定し、当該充電状態のずれ量を抑制するために選定した二次電池について放電を実施することを特徴とする請求項3に記載の組電池装置。
【請求項5】
前記二次電池の正極は、オリビン構造を有するリチウム金属リン酸塩を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の組電池装置。
【請求項6】
前記リチウム金属リン酸塩は、LiMPOで表される化合物であり、MはMn、Fe、Co、Niから選択された少なくとも1種以上の金属元素であることを特徴とする請求項5に記載の組電池装置。
【請求項7】
前記MはMn、Feの金属元素であることを特徴とする請求項6に記載の組電池装置。
【請求項8】
前記二次電池の負極は、リチウム金属、炭素系材料、チタン酸化物、合金系材料のいずれかを含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の組電池装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−173048(P2012−173048A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33464(P2011−33464)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】