説明

経口用皮膚老化予防・改善剤

【課題】 経口的に摂取することにより、肌の老化による皮膚のシミ、しわ、たるみ、くすみ等の予防・改善効果と安全性、経済性とを兼ね備えた経口用皮膚老化予防・改善剤や、それを配合した飲食品又は飲食品素材を提供すること。
【解決手段】 オキシカインなどのSOD作用を示す物質とアスタキサンチンなどのSOD様の活性酸素消去剤とコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸などの皮膚構成素材又はその部分分解物を同時に経口摂取することにより、より強い抗酸化活性を発現させ、色素沈着を防止し、さらにライチ種子エキスなどを追加することでしわ、たるみを予防し、又軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ス−パ−オキシドディスムタ−ゼ(以下、単に「SOD」という場合がある。)作用を示す物質と、SOD様の活性酸素消去剤と、皮膚構成素材又はその部分分解物とを有効成分として含有する経口用皮膚老化予防・改善剤、及び前記経口用皮膚老化予防・改善剤を配合した飲食品又は飲食品素材に関する。
【背景技術】
【0002】
若々しい張りのあるつややかな肌は、多くの人が切望するものであるが、皮膚の老化に伴って起こる変化には、加齢や紫外線の影響、環境によるストレス、精神的ストレスなどが関与することが知られ、そのため、皮膚疾患を生じたり、このような皮膚疾患以外に美容上好ましくない、例えば、皮膚のしわが増える、皮膚がたるむ、皮膚の光沢、つや、なめらかさが低下する、皮膚のはりが低下する、皮膚のきめが粗くなり、皮溝が乱れる、色素沈着班が増加する、皮膚が黄色味がかる等の様々な変化が起こる。皮膚の老化により、表皮細胞、線維芽細胞及び血管が減少すると共に、皮膚構造を保持する機能をもつ細胞外マトリックスである真皮のI型コラーゲン、III型コラーゲン及びエラスチンや基底膜のIV型コラーゲンやラミニンなどの減少や変性などが起こり、表皮、真皮及び基底膜は弾力性を失い扁平化する。
【0003】
このような肌の衰えという問題を解決するために、化粧品や食品などの形態で多くの技術が開発されてきた。皮膚に塗布することにより、肌の老化防止の効果を期待する化粧品の機能成分としては、ヒアルロン酸合成促進作用を有する卵白酵素分解物や海藻アナアオサの抽出物(Ulva perutusa)、コラーゲン促進作用を有するアスコルビン酸、エストロジエン、テストステロン、ゴッコラ(Centela asiatica)、ベツリン酸などが挙げられる。これらの素材を単独、または共存させて調合した化粧品を、皮膚に直接塗布することにより、肌の老化防止を期待するものであり、たとえばベツリン酸とアスコルビン酸を配合した化粧品(例えば、特許文献1参照)、海藻アナアオサの抽出物を配合した化粧品(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
食品としては、機能素材として、アスコルビン酸、杜仲、人参、ハトムギエキス、セラミド、コラーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸,DNAなどを配合したものが開発されており、例えば、コラーゲン蛋白もしくはその加水分解物を必須成分とした新陳代謝促進剤(例えば、特許文献3参照)や、セラミドを有効成分として含有する健康食品(例えば、特許文献4参照)、コラーゲン、ムコ多糖類及び亜鉛を含有する食品組成物(例えば、特許文献5参照)、シリマリン、フラボノール系化合物、スチルベン系化合物及びビタミンP類から選ばれる1種又は2種以上を含む皮膚老化防止用食品組成物(例えば、特許文献6参照号公報)などが挙げられる。
【0005】
また、近年、生体内で生じた活性酸素によって油脂類は過酸化脂質となり、細胞に障害を与えるといわれている。また、各種組織に対して障害を与え、これらの障害は動脈硬化や炎症の原因になることが明らかになっており、さらには老化や発ガンとの関連も示されている。皮膚は、外気と接するだけではなく絶えず紫外線の暴露を受けている組織であり、最も酸化ストレスが受けやすい組織といわれ、その障害も大きいものと考えられている。皮膚上に分泌される皮脂は、紫外線などにより酸化され過酸化脂質となり、皮膚に対する刺激となる。また、細胞を攻撃して障害を与え、その他種々の悪影響の原因となり、老化に関与するといわれている。したがって、過酸化脂質の生成を抑制することは、肌(皮膚)の状態の悪化防止のみならず、生体自体の老化防止に有効であると考えられている。
【0006】
活性酸素にはスーパーオキサイドアニオンラジカル(・O)、ヒドロキシラジカル(・OH)、一重項酸素()、過酸化水素(H)などがり、また脂質の過酸化で生じるペルオキシラジカルやアルコキシラジカルが知られている。
【0007】
しかし、生体内で生じた活性酸素種は生体内に備わっている抗酸化物質によって消去されている。かかる抗酸化物質としては、スーパーオキサイド(・O)を消去するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、過酸化水素(H)を消去するカタラーゼ、還元型グルタチオン(GSH)を酸化型グルタチオン(GSSG)にすることにより過酸化物を還元するグルタチオンペルオキシダーゼなどの酵素や、トランスフェリン、セルロプラスミン等の蛋白質、ビタミンE、コエンザイムQ、ビタミンC、グルタチオン、尿酸、ビリルビン、メタロチオネインなどが知られている。
【0008】
これらを製剤化して投与することにより、生じた活性酸素を消去し、それらが原因として起こる炎症、老化やガンなどの予防に役立てようとしている。さらに、本質的にスーパーオキシドディスムターゼと、脂質、タンパク質からなる群から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせと、及び任意に1以上の薬理学的に受容し得る賦形剤からなる医薬組成物(例えば、特許文献7参照)のような製剤化に特徴を有するもの、植物から抽出して得られるものには、シソ科キャットニップのエッセンスからなる活性酸素消去剤(例えば、特許文献8参照)や、蓮、苦丁茶、紅景天、シトラス、黄杞、レモンパーム、甜菜からなる植物より、抽出された各種抽出物群より選択された1種又は2種以上を有効成分として含有するスーパーオキシドディスムターゼ様の作用を示す活性酸素消去剤(例えば、特許文献9参照)や、Ipomoea属に属する植物からの抽出物を有効成分として含有する抗酸化剤、該抗酸化剤を配合した食品(例えば、特許文献10参照)など多数知られている。
【0009】
一方、スーパーオキシドディスムターゼ作用を示す物質と、スーパーオキシドディスムターゼ様の活性酸素消去剤と、皮膚構成成分又はその部分分解物とを有効成分とする組成物を経口摂取することにより、シミ、しわ、たるみ、キメの変化等を予防できる経口用皮膚老化予防・改善剤、又は前記経口用皮膚老化予防・改善剤を含む食品や食品素材は知られていなかった。
【0010】
【特許文献1】特開平8−298424号公報
【特許文献2】特開平6−9422号公報
【特許文献3】特開平7−278012号公報
【特許文献4】特開平11−113530号公報
【特許文献5】特開2001−252048号公報
【特許文献6】特開2004−91397号公報
【特許文献7】特表10−511944号公報
【特許文献8】特開平9−118630号公報
【特許文献9】特開2001−122757号公報
【特許文献10】特開2004−250344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、肌の老化による皮膚のしわ、たるみ、くすみ、キメの変化等の防止を目的とした技術の開発は多く行われているが、皮膚に塗布する化粧品の場合、発汗作用のため有効成分が経時的に落ちてしまうため作用効果が持続できず、肌の老化防止の効果が不十分であったり、皮膚に塗った部分のみ局部的にしか効果が出ないなどの問題がある。また、有効成分の中には、皮膚刺激性があり使用を制限されたり、異臭を有するもの、沈殿凝集を起こし安定性にかけるものがある。また光や熱、汗による皮膚表面のpH変動など外的な刺激により分解、変性されてしまい効果が低下することなどが少なくない。
【0012】
一方、経口で摂取する肌の老化防止を目的とした食品も近年種々の製品が開発され、販売されている。しかしながら、これらの場合、経口摂取するために起こる有効成分によるアレルギー発症の可能性、胃酸、消化酵素による有効成分の分解、改質、腸管からの吸収消化率の低下などから十分な肌への効果は期待できないといった問題など、経口摂取のために起こり得る問題が指摘されている。
【0013】
このように、現在までに提案されている経口摂取可能な製品は、老化による皮膚のしわ、たるみ、くすみ、キメの変化等の防止に期待される十分な機能、安全性を持ち合わせていないことが指摘されている。本発明の課題は、経口的に摂取することにより、肌の老化による皮膚のしわ、たるみ、くすみ等の予防・改善効果と安全性とを兼ね備えた経口用皮膚老化予防・改善剤や、それを配合した飲食品又は飲食品素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、生体内での活性酸素種が皮膚に悪影響を与え、老化等に関与することから、これを消去する酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)に注目した。そして、SODとして、グリアジンに被覆されたメロン由来の物質、特にオキシカイン(商標名)が経口摂取されることが知られていることから、オキシカインを効率よく体内に吸収し、相乗的に美容効果を奏することを想定し、この物質と種々の化合物とを組合わせて試験を繰り返すなど、鋭意検討した結果、オキシカインなどのスーパーオキシドディスムターゼ作用を示す物質と、スーパーオキシドディスムターゼ様の活性酸素消去剤と、皮膚構成成分又はその部分分解物を同時に経口摂取すると、シミ、しわ、たるみ、きめの変化を相乗的に低減できること、又それらの発生を相乗的に予防できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、(1)スーパーオキシドディスムターゼ作用を示す物質と、スーパーオキシドディスムターゼ様の活性酸素消去剤と、皮膚構成素材又はその部分分解物とを有効成分として含有することを特徴とする経口用皮膚老化予防・改善剤や、(2)スーパーオキシドジスムターゼ作用を示す物質が、グリアジンに被覆されたメロン由来の物質であることを特徴とする前記(1)記載の経口用皮膚老化予防・改善剤や、(3)グリアジンに被覆されたメロン由来の物質がオキシカイン(商標名)であることを特徴とする前記(2)記載の経口用皮膚老化予防・改善剤や、(4)スーパーオキシドディスムターゼ様の活性酸素消去剤がアスタキサンチン、トコトリエノール、ビタミンC及びポリフェノール類から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の経口用皮膚老化予防・改善剤や、(5)皮膚構成素材が、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、又はデルマタン硫酸から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の経口用皮膚老化予防・改善剤や、(6)前記(1)〜(5)のいずれか記載の経口用皮膚老化予防・改善剤に、さらにライチ種子エキスを添加することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の経口用皮膚老化予防・改善剤に関する。
【0016】
また本発明は、(7)前記(1)〜(6)のいずれか記載の経口用皮膚老化予防・改善剤が配合されていることを特徴とする飲食品又は飲食品素材に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、オキシカインなどのSOD作用を示す物質と、アスタキサンチンなどのSOD様の活性酸素消去剤と、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸などの皮膚構成素材又はその部分分解物とを同時に経口摂取することにより、より強い抗酸化活性を発現させ、色素沈着を防止し、さらにライチ種子エキスなどを追加することでしわ、たるみを予防し、又軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の経口用皮膚老化予防・改善剤として、スーパーオキシドディスムターゼ(以下、「SOD」という場合がある。)作用を示す物質と、SOD様の活性酸素消去剤と、皮膚構成素材又はその部分分解物とを含有する組成物であれば特に制限されるものではなく、また、本発明の飲食品又は飲食品素材としては、上記本発明の経口用皮膚老化予防・改善剤を配合した飲食品又は飲食品素材であれば特に制限されるものではない。
【0019】
本発明のSOD作用を示す物質としては、生体内で生じた活性酸素種の1つであるスーパーオキサイド(O)を消去する作用を有するものであれば特に制限されるものではないが、グリアジンに被覆されたメロン由来のSOD、大麦若葉由来のSOD(例えば、商品名「仁丹緑茶青汁」森下仁丹株式会社製)、チャーガエキス末由来のSOD(例えば、商品名「キングチャーガエックス」、シーエンス有限会社製)等があるが、グリアジンに被覆されたメロン由来のSODを好適に挙げることができる。メロン由来のSODは、アムスメロン、ホームランメロン、プリンスメロン、アンデスメロン、キンショウメロン、パパイヤメロン、マスクメロン等の、メロンの果皮、果肉等の果実、葉、根等に含有されるSODを抽出することにより得ることができる。
【0020】
かかるSODをメロンから抽出する方法には特に制限されないが一般に公知の方法によることができる。例えば、粉砕したメロンに水を加えることによりSODの水溶液として容易に抽出することができる。
【0021】
メロン由来のSODを被覆するグリアジンとしては、特に限定されるものではないが、種々の穀類、小麦、ライ麦、大麦、エンバク、米、キビ及びトウモロコシ等から得ることができ、特に小麦から得たグリアジンや、小麦粉又は上記穀類に含有される新鮮なグルテンからグルテニンを除去して誘導される非変性のものが好ましい。小麦等からグリアジンを得るには、公知の方法により抽出することができる。例えば、小麦から常法により分離されたグルテン(生グルテン)又はその乾燥粉末(バイタルグルテン)を、クエン酸、乳酸、リンゴ酸又は酢酸等の有機酸を含有する1〜20容量%エタノール水溶液を抽出溶媒として用い、撹拌翼を備えた抽出槽で7〜10倍量の抽出溶媒と共に、溶液温度を20〜30℃に保ちながら、1〜3時間攪拌した後、遠心分離操作又は濾過操作等の操作により沈澱物(不溶性物)と上澄液(可溶性物)とに分離し、上澄液に含有されたグリアジンを得ることができる。本発明に使用されるグリアジンとしてはかかる上澄液をそのまま、又は、スプレードライや凍結乾燥後の乾燥物を水溶液としたものを適用することができる。
【0022】
かかるグリアジンによりメロン由来SODを被覆して本発明のSOD剤として調製するには、80%エタノールを0〜50℃の温度、好ましくは40℃前後とし、ソルビトール、グリセリン、メロン由来SODを順次添加し、溶解するまで攪拌し、その後、例えば、37℃、湿度2%下でフィルム状固体となるまで乾燥し、得られたフィルム状固体を粉砕して粉末とする方法等を挙げることができる。また、上記方法においてグリアジン被覆メロン由来SODとしてオキシカイン(商標名:STIMEOS、コンビ(株)社製)等を適用することができる。
【0023】
本発明のSOD様の活性酸素消去剤としては、アスタキサンチン、トコトリエノール、ビタミンC、ポリフェノール類などを挙げることができる。これらは、それぞれ単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0024】
アスタキサンチンは、分子量596.85、融点215〜216℃の物性を示し、カニ、エビなどの甲殻類に最も普通に見出されるカロテノイドの一つであることが知られている。本発明に用いるアスタキサンチンとしては、アスタキサンチンの遊離体、モノエステル、ジエステル誘導体或いはこれらの異性体等の混合物を用いることができる。アスタキサンチンはアスタキサンチンを産生する藻、例えば、ヘマトコッカス藻から、常法に従って抽出し、必要ならばさらに夾雑物を除去し、濃縮することにより効率よく得ることができ、また、単品としても市販されており、このような市販品を利用することもできる。市販品としては、(商品名)「アスタキサンチンAS」(発売元:ローヤルコーポレーション)、富士化学工業株式会社製のものがある。
【0025】
トコトリエノールは、植物油中から見出された脂溶性ビタミンで、ビタミンE誘導体の一群をなしているもので、4種のトコフェロールのビタミンEに比べて、抗酸化作用が高いといわれており、日本では、1999年1月に栄養補助食品素材として許可されている。トコトリエノールは、植物等の天然物の圧搾、抽出、または合成などの方法で得られることが知られており、一般的にはヤシ科植物の果皮および/または種子から抽出される。例えばパ−ムヤシから製造する場合は、抽出物に水を加えて分離し、油層分をカラムクロマトグラフィーで分離精製して、必要ならば、トコフェロール類を全く含まないか、または痕跡程度に含むトコトリエノールを調製することができる。市販のものを用いることもでき、市販品として、(商品名)「トコトリエノール(205001)」(Nutraceutical Sciences Institute 社製)等がある。
【0026】
ビタミンCは、抗壊血病活性を持つ水溶性ビタミンであり、このような一般的に知られた生理活性作用のほかに、コラーゲン合成の際に、コラーゲン前駆体中のプロリンをヒドロキシプロリンに変化させるプロリルヒドロキシラーゼの反応を鉄とともに促進させる。本発明においては、ビタミンCが市販されており、このようなものを利用することができる。市販品として、(商品名)「ビタミンC タケダ 300錠」(武田薬品工業株式会社製)等がある。
【0027】
ポリフェノール類として、カテキン、α−グルコシルカテキン、没食子酸、タンニン酸、グレープシード抽出物由来のポリフェノール、赤ワイン粉末由来のポリフェノール等を挙げることができ、本発明においては、カテキンを用いることが好ましい。カテキンは、分子量290.27である木本植物の木心に多く含まれる水溶性の多価フェノールである。最近では、カテキンは身体の老化や発ガン性物質生成の原因となる活性酸素を抑え、細菌ウイルスなどに対する抵抗力、整腸・解毒作用があるといわれており、本発明においては、高カテキンを含む市販の高カテキン粒を用いることができる。市販品として、(商品名)「緑茶まるごとカテキン粒」(発売元:マルマン)等がある。
【0028】
皮膚構成素材又はその部分分解物は、皮膚を構成している物質群であり、皮膚構成素材としてコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸の中から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
【0029】
コラーゲンは、皮膚の真皮部分の細胞外マトリックスを構成する線維状の蛋白質や多糖類などのうち、該蛋白質の主成分であり(コラーゲンI型とIII型が主で、皮膚には他の数種の型が存在する)、組織の形状を保つ役割を果たしている。
本発明において用いることができるコラーゲンとしては、好ましくは動物の真皮又はその抽出物、又はその部分分解物を挙げることができ、これらコラーゲンと部分分解物を併用することもできるが、単独で用いる場合、コラーゲンの部分分解物(コラーゲンペプチド)を有利に用いることができる。コラーゲンの部分分解物は、例えば、牛の真皮を洗浄し、アルカリ処理後、中和し、コラーゲンを含有する抽出物を得た後、この抽出物を酵素(コラゲナーゼ)分解し、ろ過後殺菌し、噴霧乾燥後、粉末化することにより製造することができるが、別途市販品を用いることもできる。市販品として、(商品名)「アクチオコラーゲンBB60錠」(アサヒフードヘルスケア株式会社製)や(株)ラヴィジェ製のコラーゲンペプチド等を挙げることができる。
【0030】
本発明のエラスチンとしては、その起源については何ら制限されるものではないが、哺乳動物や魚などの皮や結合組織から抽出したものが好ましい。また、抽出したままのエラスチンでも、化学的又は酵素的に処理したエラスチン部分分解物でもよく、さらには、これらの混合物を使用することもできる。これらエラスチンは、例えば、タラの皮を細断し、ホモジネートし、熱水で抽出した後、酵素処理によって部分的に加水分解し、粉末化することによって製造することができる。市販品として、(商品名)「イーラスチンMF」(株式会社アズウェル製)等を挙げることができる。
【0031】
ヒアルロン酸は、β−D−N−アセチルグルコサミンとβ−D−グルクロン酸が交互に結合してできた直鎖状の高分子多糖であり、哺乳動物の結合組織に広く分布している。結合組織内での機能として、細胞間隙に水を保持し、又組織内にジェリー状のマトリックスを形成して細胞を保持したり、皮膚の潤滑性と柔軟性を保ち、外力及び細菌感染を防止していると考えられている。ヒアルロン酸は、動物組織から得ることもできるが、最近では、ヒアルロン酸生産菌を分離してヒアルロン酸高生産株のスクリーニングを行い、安定かつ大量にヒアルロン酸を発酵法により生産することが可能となり、比較的安価に入手できるようになった。一般的には、市販されているヒアルロン酸ナトリウムを有利に用いることができる。市販品として、部分分解物である低分子ヒアルロンの(商品名)「皇潤」(株式会社エバーライフ製)等を挙げることができる。
【0032】
デルマタン硫酸は、ヒアルロン酸の保水力を強め、さらに紫外線から肌を守り、シミや色素沈着などを防ぐ美肌効果を現し組織を活性化するといわれている。ヒアルロン酸に比べ分子量が小さく、吸収されやすいムコ多糖であり、真皮内部と表皮中に存在し、組織間隙を埋めて皮膚密度を高め、紫外線の進入を防ぎ、皮膚細胞の分裂・増殖を促進して、シミや色素沈着の皮膚外排出を促進する作用を有する。デルマタン硫酸は、一般に豚皮のような動物組織より抽出して得られる。磨砕した組織に消化酵素を加えて蛋白質を分解し、これに多量のエタノールを加えてムコ多糖を沈殿させ、これをさらにクロマト法などで精製する方法によって得ることができる。
【0033】
ライチ種子エキスは、果実ライチの種子エキスであり、アントシアン、フラボノイド、ポリフェノールが含まれており、コラーゲンやヒアルロン酸の働きをサポートし、メラニン色素形成を抑制する作用があるといわれている。該エキスは、ライチの種子を水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、二酸化炭素などをそのまま単一溶媒で用いるか、2種類以上を任意に混合して用いて、エキスを製造することができる。
【0034】
本発明に係る老化予防・改善剤の正確な作用メカニズムは不明であるが、オキシカインなどのSOD作用を示す物質により生体内の活性酸素を除去する作用を促進し、アスタキサンチン、トコトリエノール、ビタミンC、ポリフェノール類などの1種又は2種以上のSOD様の活性酸素消去剤により、活性酸素を消去し、生体内の種々の局所において抗酸化作用を行い、血液の流れをよくし、ストレス等による活性酸素の増加に対処するとともに、コラーゲンなどの皮膚構成素材により、肌の真皮成分を補給すると考えられる。そして、これら3種類の成分を同時に摂取することにより、所期の目的を達成するものである。したがって、これら3種類の成分を含有したものは、オキシカイン単独のものや、オキシカインを除いたSOD様の活性酸素消去剤と皮膚構成素材よりなる組成物に比して、肌の弾力性の向上、メラニン沈着の減少等において顕著な効果を奏するものである。
【0035】
老化予防・改善の相乗効果をより発揮させるための特に好ましい組成として、オキシカイン(商標名)とアスタキサンチン、トコトリエノール、ビタミンC又はカテキンの1種又は2種以上とコラーゲン(コラーゲンペプチド)、ヒアルロン酸又はデルマタン硫酸の1種又は2種以上を含む組成物、さらには、ライチ種子エキスを配合した組成物を挙げることができる。例えば、コラーゲン(コラーゲンペプチド)1質量部相当に対して、オキシカイン0.005〜200質量部、アスタキサンチン0.00005〜10質量部、トコトリエノール0.00005〜10質量部、ビタミンC0.005〜200質量部、カテキン0.0005〜3質量部、ヒアルロン酸0.005〜100質量部、デルマタン硫酸0.005〜50質量部、ライチ種子エキス0.0005〜50質量部を調合した組成物、好ましくは、コラーゲン(コラーゲンペプチド)1質量部相当に対して、オキシカイン0.1〜10質量部、アスタキサンチン0.002〜0.2質量部、トコトリエノール0.01〜1質量部、ビタミンC0.1〜20質量部、カテキン0.01〜0.4質量部、ヒアルロン酸0.04〜100質量部、デルマタン硫酸0.6〜6質量部、ライチ種子エキス0.02〜4質量部を調合した組成物を経口用皮膚老化予防・改善剤とすることができる。
【0036】
本発明の経口用皮膚老化予防・改善剤は、SOD作用を示す物質と、SOD様の活性酸素消去剤と、皮膚構成素材又はその部分分解物とを有効成分として含有するが、さらに公知の水溶性ビタミン、脂溶性ビタミン、各種ミネラル、植物又は動物由来の添加物などを任意の割合で配合することができ、経口摂取形態は、例えば粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型を具体的に例示することができる。
【0037】
また、本発明の経口用皮膚老化予防・改善剤は、一般的な食品加工原料と組合わせて任意の飲食品へ配合し、皮膚老化予防・改善作用を有する機能性飲食品とすることができる。飲食品の種類としては特に制限されず、例えば、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、ゼリー、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜や、蜂蜜、ローヤルゼリーなどを挙げることができる。
【0038】
本発明で用いられるこれらの物質の摂取量は、疲労等による皮膚の荒れ、紫外線による皮膚のダメージ、年齢等により、適宜、調節することができるが、推奨摂取量は次の通りである。SOD作用を示す物質として、例えばオキシカインを用いる場合には10−2000mg/日、好ましくは50−500mg/日が適当である。SOD様物質として、アスタキサンチン、トコトリエノール、ビタミンC、カテキン類などをそれぞれ単独もしくは組み合わせて0.1−100mg/日、1−100mg/日、10−2000mg/日、1−30mg/日、好ましくは1−10mg/日、5−50mg/日、50−1000mg/日、5−20mg/日摂取することが適当である。皮膚構成成分又はその部分分解物としてコラーゲン、コラーゲンペプチド、ヒアルロン酸、デルマタン硫酸などをそれぞれ単独もしくは組み合わせて10−2000mg/日、10−1000mg/日、10−500mg/日、好ましくは50−500mg/日、20−500mg/日、30−300mg/日摂取することが適当である。さらに、皮膚構成成分の働きをより強力にするためにライチ種子エキスを1−500mg/日、好ましくは10−200mg/日摂取することが適当である。
【0039】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[実施例1]
【0040】
治験者(40代〜50代の女性7人)にオキシカイン(商標名:STIMEOS、コンビ(株)社製)100mg/日、コラーゲンペプチド(株式会社ラヴィジェ製)350mg/日、アスタキサンチン(富士化学工業株式会社製)10mg/日を含む組成物を2ヶ月投与し、肌(頬)のメラニン量と弾力度をSK−INFO PLUS(インテグラル社製)で測定し肌年齢を求めた。又、対照としてオキシカインを単独投与した場合(比較例1)、及びコラーゲンペプチドとアスタキサンチンとを併用投与した場合(比較例2)についても同様に肌年齢を求めた。その結果、表1に示したように実施例では1ヶ月で平均10歳、2ヶ月で14.3歳低下するのに対して、オキシカインだけの比較例1では実施例の約半分、オキシカインなしの比較例2ではさらに約半分の効果しかみられなかった。
【0041】
表1
(実施例)

【0042】
比較例1
(オキシカインだけの例)
表2

【0043】
比較例2
(オキシカイン以外の成分摂取)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーオキシドディスムターゼ作用を示す物質と、スーパーオキシドディスムターゼ様の活性酸素消去剤と、皮膚構成素材又はその部分分解物とを有効成分として含有することを特徴とする経口用皮膚老化予防・改善剤。
【請求項2】
スーパーオキシドジスムターゼ作用を示す物質が、グリアジンに被覆されたメロン由来の物質であることを特徴とする請求項1記載の経口用皮膚老化予防・改善剤。
【請求項3】
グリアジンに被覆されたメロン由来の物質がオキシカイン(商標名)であることを特徴とする請求項2記載の経口用皮膚老化予防・改善剤。
【請求項4】
スーパーオキシドディスムターゼ様の活性酸素消去剤がアスタキサンチン、トコトリエノール、ビタミンC及びポリフェノール類から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の経口用皮膚老化予防・改善剤。
【請求項5】
皮膚構成素材が、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、又はデルマタン硫酸から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の経口用皮膚老化予防・改善剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の経口用皮膚老化予防・改善剤に、さらにライチ種子エキスを添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の経口用皮膚老化予防・改善剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の経口用皮膚老化予防・改善剤が配合されていることを特徴とする飲食品又は飲食品素材。

【公開番号】特開2006−160685(P2006−160685A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356388(P2004−356388)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(598143918)株式会社ジェーシーコミュニティ (4)
【Fターム(参考)】