説明

経口経粘膜剤形を使用する処置時の鎮静および無痛のための組成物および方法

経口経粘膜経路を介した投与のための、スフェンタニル等のオピオイドとトリアゾラム等のベンゾジアゼピンとの組み合わせを含む、処置時の鎮静および無痛のための剤形、ならびにそれを使用する方法が、提供される。一実施形態において、本発明の剤形は、100mg未満の質量を有し、また約5mcg〜約50mcgのスフェンタニルおよび約100mcg〜約500mcgのトリアゾラムを含む。さらに、この固体剤形を対象に経口経粘膜投与すると、全体的な平均変動係数が40%未満であるスフェンタニルのTmaxがもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他の出願への相互参照
この出願は、2007年8月7日に出願された米国仮出願第60/954,501号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、単一の剤形において経口経粘膜経路により送達される、スフェンタニル等の鎮痛薬と、不安を処置するために典型的に用いられる薬物、例えばトリアゾラム等のベンゾジアゼピンクラスの薬物との組み合わせを含む、診断または治療処置の間または全身麻酔の導入前に対象を鎮静し、無痛を提供する(処置時の鎮静および無痛)ために有効な組成物、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、処置時の鎮静および無痛のための標準的なレジメンには、投与の容易性、作用発現、効力および安全性に関して、明らかな制約がある。いくつかある原因の中でも投与経路、処方および投与量などが、これらの制約に寄与している。
【0004】
それぞれの薬物クラスに、利益とリスクがある。例えば、高齢の患者および子供は通常、成人患者に比べて低用量を要し、さらに子供は、薬の投与の間に大きな恐怖および不快を感じうる。一部の薬は経口投与され、多くは静脈内投与される(IV)。一部の薬は発現が遅く、他の薬は薬物相互作用を呈し、さらに他の薬は副作用をもつ。
【0005】
再現可能な、有効な薬物送達技術は、研究が活発な分野であり、経口経粘膜薬物送達システムは、従来の剤形に比較して、より快適で都合のよい投与、より迅速な発現、効力の改善、副作用の減少、および患者による受け入れの改善を含む、数多くの利点を提供する。これは、処置時の鎮静および無痛に特に関係する。
【0006】
オピオイド類は、強力な鎮静剤であるとともに、中度から強度の急性および慢性の痛みを処置するために用いられる無痛剤である。オピオイド類は、不安緩解および無痛の両方を提供するため、処置時の鎮静および無痛にも使用される。しかし、オピオイド類は、適切に使用されない場合には呼吸抑圧効果をもつことがあり、濫用可能性が高い。オピオイド類は、IVまたは経粘膜で投与されると、作用発現が比較的迅速である。
【0007】
ベンゾジアゼピン類は強力な抗不安および健忘効果のある薬剤であるが、経口経路により与えられると、発現が遅延し、不安定となるとともに、処置後の回復も遅れうる(Viitanen等、1999)。ベンゾジアゼピン類またはほとんどの鎮静剤の、直接的な無痛効果はない。その結果、IVカニューレ挿入または他の処置による、痛みの処置が不十分であるために、不安および動揺が生じうる。抗不安薬の使用に伴う一般的な副作用には、口渇、疲労、めまいおよび頭痛が含まれる。記憶喪失、非協調身体運動、混乱、および不整脈等のより深刻な副作用も生じうる。
【0008】
非特許文献1は、26人の健常な若年対象(平均年齢30歳)と21人の健常な高齢対象(平均年齢69歳)が125mcgおよび250mcgのトリアゾラムを受けた研究に基づいて、トリアゾラム等のベンゾジアゼピン類が、健常な高齢者において、同用量を受けた若年者よりも強い鎮静および大きな精神運動機能障害をもたらしたことを示す。その結果にもとづいて、著者らは、高齢者へのトリアゾラムの投与量を、平均50%減じるべきであると提言する。
【0009】
処置時の鎮静は、一般にIV、経口錠剤、経口液体、または経粘膜投与によるベンゾジアゼピン類および/またはオピオイド類の使用を含む多数の介入シナリオを用いて、多くの臨床場面で試みられている。これらの方法の、作用発現、作用継続時間、使いやすさ、安全性および副作用に関する成功の程度は様々である。
【0010】
IVアクセスが利用できないときは、経口または鼻腔内ベンゾジアゼピンのミダゾラム等、または鼻腔内オピオイドのスフェンタニル等が、処置時の鎮静に用いられることが多い(非特許文献2)。処置時の鎮静のために単剤を使用することには、不都合がある。ベンゾジアゼピン類またはほとんどの鎮静剤の直接的な無痛効果はなく、処置時の鎮静および無痛を提供するためのオピオイド類単独での使用は、呼吸の低下症状ならびに処置後の悪心嘔吐をもたらしうる(非特許文献3;非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Greenblatt D.J,等、N Engl J Med.1991 Jun.13;324(24):1691‐8
【非特許文献2】Karl等、Anesthesiology;1992;76:209‐215
【非特許文献3】FriesenおよびLockhart,Anesthesiology,1992;76:46‐51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
処置時の鎮静および無痛のための組成物、方法、システムおよびキットへの、継続した、満たされていないニーズがある。本発明は、このニーズに対応する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、スフェンタニルとトリアゾラムの組み合わせを含む単一の固体剤形において提供される、処置時の鎮静および無痛のための経口経粘膜組成物および方法を提供し、警戒し(alert)、覚醒した(awake)対象に経口経粘膜(oral transmucosal)投与すると、対象が鎮静される。
【0014】
固体剤形は、100mg、90mg、80mg、70mg、60mg、50mg、40mg、30mg、29mg、28mg、27mg、26mg、25mg、24mg、23mg、22mg、21mg、20mg、19mg、18mg、17mg、16mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mgおよび5mg未満からなる群より選択される質量を有する。
【0015】
固体製剤は、約5マイクログラム(mcg)〜約50mcgのスフェンタニル、および約100mcg〜約500mcgのトリアゾラムを含む。
【0016】
対象への剤形の経口経粘膜投与、例えば舌下投与により、以下の一つ以上がもたらされる(1)全体的な平均変動係数が40%未満である、スフェンタニルのTmax;(2)スフェンタニルとトリアゾラムの組み合わせを対象に投与したときのほうが、同用量のスフェンタニルを単独で投与したときと比較して大きい、RASS鎮静曲線下総面積(AUCtotal);(3)スフェンタニルとトリアゾラムの組み合わせを対象に投与したときに、同用量のスフェンタニルを単独で投与したときと比較して実質的に同じである、スフェンタニルの平均Tmax;(4)スフェンタニルおよびトリアゾラムの組み合わせを対象に投与したときに、同用量のスフェンタニルを単独で投与したときと比較して実質的に同じである、スフェンタニルの平均Cmax;(5)投与後一時間未満に明らかである鎮静の発現;(6)4時間以下の鎮静継続;(7)60%、70%または80%より大きい、スフェンタニルの相対的AUC0―last;および(8)変動係数が40%未満の、スフェンタニルの相対的AUC0―last
【0017】
固体剤形には、鎮静を誘発するために有効な量であるが、呼吸の低下を誘発する用量未満である、スフェンタニルが含まれる。
【0018】
本発明は、前述の剤形を含む単回用量アプリケータ(SDA)、および、そのような剤形を、SDA等のハンドヘルド投与デバイス(handheld dispensing device)を用いて、または用いずに、警戒した覚醒した対象に投与するステップを含む、対象の処置時の鎮静のための方法を、さらに提供する。
【0019】
本発明の一つの例示的な方法を実践する際には、剤形が、医院または診療所の処置の間に、または全身麻酔の誘導前に対象に投与され、投与後に対象または患者が鎮静される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1Aおよび図1Bは、例示的な単回用量アプリケータの概略図である。
【図2】図2A〜Cは、一つのタイプの単回用量アプリケータ、および、対象に剤形を送達する際のその使用の図を提供する。
【図3】図3A〜Fは、六つの追加的な単回用量アプリケータの図を提供する。
【図4】図4は、使用前に複数の単回用量アプリケータが格納される、多回投与ディスペンサの図を提供する。
【図5A】図5Aは、追加的な単回用量アプリケータおよび多回投与アプリケータの実施形態の図を提供する。
【図5B】図5Bは、追加的な単回用量アプリケータおよび多回投与アプリケータの実施形態の図を提供する。
【図5C】図5Cは、追加的な単回用量アプリケータおよび多回投与アプリケータの実施形態の図を提供する。
【図6】図6A〜Bは、単回用量アプリケータの一実施形態の、二段階の使用の図を提供する。
【図7】図7A〜Dは、単回用量アプリケータ(SDA)の追加的な実施例の概略図である。
【図8】図8A〜Dは、使用前の複数のSDAの格納を提供する多回投与ディスペンサ、および、薬物剤形の舌下投与のためのSDAの使用の概略図を提供する。
【図9A】図9Aは、錠剤がSDAから射出されうる前に除去されねばならないピンロック167、ならびに、SDAが対象の口内に挿入されたときに錠剤を唾液進入から保護するシュラウド29および弁33を有する、SDAの代替的実施形態の概略図である。
【図9B】図9Bは、錠剤がSDAから射出されうる前に除去されねばならないピンロック167、ならびに、SDAが対象の口内に挿入されたときに錠剤を唾液進入から保護するシュラウド29および弁33を有する、SDAの代替的実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、処置時の鎮静および無痛用の、経口経粘膜送達のために調製された薬物の組み合わせに依存する、組成物、方法、システムおよびキットに基づく。
【0022】
本発明は、スフェンタニルの大部分が口腔粘膜を横断して送達される、新規な製剤を提供する。剤形は、治療効果および予測可能かつ安全な薬物動態学的プロフィールを生じる、デバイスを用いた、または用いない送達のための薬物の組み合わせを含む。
【0023】
これは、処置の場面、特に標準的な麻酔を安全かつ効果的に投与することができない病院以外の場面で重要である。これは、IVアクセスの困難(脆弱な静脈、肥満症、小児患者である等のため)により、IVカニューレ挿入の前の患者の不安/痛みを緩和するため、またはIVカニューレ挿入に代えて、非侵襲的経路が必要とされる場合、入院患者および外来患者の両場面でも重要である。
【0024】
一実施形態においては、本発明は、抗不安薬ベンゾジアゼピン、例えばトリアゾラムまたはミダゾラムと、フェンタニル同類物、例えばスフェンタニルまたはフェンタニルとの両方を含む、複合製剤を提供する。
【0025】
以下の開示は、本発明の実践に有用である、組成物、方法、システムおよびキットを説明する。本発明は、本明細書に記載の特定の製剤、方法論または医療条件に限られず、これらは当然に変動しうる。また、これも当然のことながら、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0026】
本明細書および添付の請求の範囲において使用されるところの、単数形「a」、「and」、および「the」には、文脈により別段の読み方が明らかに要求されない限り、複数への言及も含むことに注意されたい。したがって、例えば「薬物製剤」への言及は、複数のこのような製剤を含み、「薬物送達デバイス」への言及は、薬物製剤ならびにかかる製剤の収納、格納および送達のためのデバイスを含むシステムを含む。
別段の定めがない限り、本明細書において用いられる全ての専門的および科学的用語は、本発明が属する技術の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の任意の方法、デバイスおよび材料が、本発明の実践または試験に用いられうるが、好ましい方法、デバイスおよび材料を以下に記載する。
【0027】
定義
「活性薬剤」または、「活性」という用語は、本明細書において「薬物」という用語と互換可能に使用されることができ、本明細書において任意の治療的に活性な薬剤をさすために使用される。
【0028】
本明細書の使用において、薬物製剤が粘膜等の表面に「付着する」とされるときは、製剤が当該表面と接触しており、外力の適用を伴わずに表面上に保たれることを意味する。付着は、いかなる特定の程度の固着または結合も意味せず、いかなる程度の永続性も意味しない。
【0029】
本明細書で用いられるところの「無痛」という用語は、痛みを和らげる(無痛を達成する)ために用いられる多数の薬物のいずれかを意味する。
【0030】
本明細書で用いられるところの「AUC」という用語は、血漿中薬物濃度対時刻のプロットにおける「曲線下面積」を意味する。AUCは通常、ゼロから無限大の時間間隔について与えられるが、患者の血漿薬物濃度を『無限大まで』測定することは明らかにできないため、数学的アプローチを用いて、限られた数の濃度測定値からAUCが推定される。
【0031】
本明細書で用いられるところの「AUC0‐inf」という用語は、AUC(ゼロから無限大)を意味し、吸収速度に関係なく、体により吸収される薬物の総量を表す。静脈内投与された同じ投与量のものと比較した、経粘膜剤形のAUCは、バイオアベイラビリティの測定の基礎として役立つ。
【0032】
「AUC0‐last」という用語は、本明細書において、AUC(ゼロから最終測定)に関して使用される。
【0033】
「相対的AUC0‐last」という用語は、本明細書において、意図した経路による送達後のテスト物品のAUC0‐last対同じ薬物の静脈内(スフェンタニル)または経口(トリアゾラム)投与後のAUC0‐lastに関して使用される。
【0034】
鎮静に関して本明細書で用いられるところの「AUCtotal」という用語は、投与後薬物剤形の投与(時間0)から640分後のRASS分析の最終時点までの期間についての、Richmond Agitation Sedation Scale(RASS)の結果対時間のプロットにおける、「曲線下面積」を意味する。
【0035】
本明細書で用いられるところの「抗不安薬」という用語は、不安の症状の治療のために処方される薬物を意味する。
【0036】
本明細書で用いられるところの「生体付着」という用語は、生体表面、例えば粘膜への、剤形の付着のプロセスをさす。
【0037】
本明細書で用いられるところの「バイオアベイラビリティ」または「F」という用語は、「%バイオアベイラビリティ」を意味し、静脈内投与されたときの同じ薬物と比較した、テスト物品から吸収される薬物の画分を表す。これは、静脈内投与後の同じ薬物のAUCに対する、意図した経路による送達後のテスト物品のAUCから計算される。これは、式:バイオアベイラビリティ(%)=AUC(テスト物品)/AUC(静脈内経路/物品)から計算される。
【0038】
本明細書で使用されるところの「同類物」という用語は、共通の化学構造のたくさんの変異体または配置の一つを意味する。
【0039】
「制御薬物送達」は、in vivoで所望の薬物動態学的プロフィールを達成するための、制御された様式での、所与の剤形からの薬物の放出または投与をさす。「制御」薬物送達の態様は、所望の薬物放出キネティクスを確立するために、製剤および/または剤形を操作する能力である。
【0040】
「崩壊」という用語は、本明細書において「浸食」と互換可能に使用され、剤形が分解する物理的プロセスを意味し、剤形の物理的完全性のみに関連する。これは、小さなピース、そして最終的には微細粒子および大きな粒子への分解、あるいは外側から内部への浸食による剤形の消失を含む、多様な方法で生じうる。
【0041】
本明細書で用いられるところの、「製剤」または「薬物製剤」または「剤形」という用語は、対象への送達のための少なくとも一つの治療剤または薬を含む組成物を意味する。剤形には、所与の「製剤」または「薬物製剤」が含まれ、ロゼンジ、ピル、錠剤、カプセル、膜、ストリップ、液体、パッチ、フィルム、ゲル、スプレーの形または他の形で患者に投与されうる。
【0042】
「薬物」、「薬」、「薬理活性薬剤」、「治療剤」などの用語は、本明細書において互換可能に使用され、一般に動物の生理機能を変更する任意の物質をさす。製剤を含む剤形は、経口経粘膜経路により投与しうる任意の薬物を送達するために使用できる。本発明の製剤に関して本明細書で用いられるところの「薬物」は、経口経粘膜経路により効果的に投与できる任意の「薬物」、「活性薬剤」、「活性」、「薬」または「治療上活性の薬剤」を意味する。当然のことながら、本発明の「薬物」製剤は、二つ以上の治療剤を含めばよく、治療剤の組み合わせの例には、不安の治療のために典型的に使用される薬物と組み合わされた、スフェンタニル、フェンタニル、アルフェンタニル、ロフェンタニル、カーフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニル、またはミルフェンタニル等のオピオイド類似体の組み合わせが含まれる。
【0043】
「粘膜付着」という表現は、本明細書において、口腔内のもの等、粘液により覆われた膜への付着をさすために用いられる。「粘膜付着」という用語は、本明細書において「生体付着」という用語と互換可能に使用されうる。
【0044】
「粘膜」という用語は、一般に体内の粘液で覆われた生体膜のいずれかをさす。したがって、経口粘膜吸収、すなわち口腔、舌下、歯肉および、口蓋吸収が特に予定される。
【0045】
「処置時の鎮静および無痛」という用語は、本明細書において、一つ以上の薬物の投与による、対象または患者の診断または治療処置の間、または全身麻酔の誘導前の、弛緩状態または眠気の状態および痛みの減少された状態の生成に関して用いられる。鎮静は、送達される薬物の用量、および患者または対象の年齢および重量によって、意識下でも無意識下でもよい。意識下鎮静は、呼吸、心臓、または反射機能を、これらの生体機能の外的サポートを必要とするレベルにまで変更しない。無意識下鎮静は、独立して呼吸し、指令に応答する能力を含む、保護神経反射の部分的または完全な喪失を特徴とする、麻酔の制御された状態である。
【0046】
「対象」という用語には、障害の治療が求められる任意の対象、一般に成体または子供の哺乳類(例えばヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、有蹄類等)が含まれる。「対象」および「患者」という用語は、本明細書において互換可能に使用されうる。
【0047】
「経口経粘膜剤形」という用語は、本明細書に記載される薬物製剤を含む剤形に関して使用される。経口剤形は、医薬的に活性の物質を口腔粘膜経由で循環に送達するために用いられ、典型的には「舌下剤形」または「口腔剤形」であるが、場合によっては、他の経口経粘膜経路が用いられてもよい。剤形は、医薬的に活性の物質の口腔粘膜を横断した送達を提供し、製剤を制御することにより、医薬的に活性の物質の放出のタイミングを達成できる。剤形は、薬理学上許容可能な賦形剤を含み、剤形を含む薬物製剤は、発泡性でもなければ、担体粒子が薬物の微小粒子よりも実質的に大きい、担体粒子の表面に付着した基本的に水を含まない薬物の微小粒子の規則混合物も含まない。
【0048】
本明細書で用いられるところの、「経口経粘膜薬物送達」という用語は、薬物送達が、嚥下後GI吸収されることによってではなく、実質的に経口経粘膜経路により生じる、剤形を意味する。製剤および薬物剤形は、口腔粘膜による、典型的には舌下腔内への剤形の配置による最大限の送達を可能とする薬物溶解速度および剤形浸食速度を提供するように設計される。
【0049】
一般に医療処置を促進するための鎮静薬物の投与に関して本明細書で用いられるところの「鎮静」という用語。鎮静は、多くのテストを用いて評価され、その一つの例が、Richmond Agitation Sedation Scale(RASS)である。対象のRASSスコアが、所与の時点で0未満である場合には、対象はその時に「鎮静されている」と考えられる。RASSスケールは、例えばSessler,等、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol166.pp.1338‐1344,(2002)等の文献に記載される。
【0050】
「小体積薬物剤形」または「小体積剤形」という用語は、本明細書において、100mcl未満の体積および100mg未満の質量を有する小体積剤形に関して使用される。より詳しくは、剤形は、100mg、90mg、80mg、70mg、60mg、50mg、40mg、30mg、29mg、28mg、27mg、26mg、25mg、24mg、23mg、22mg、21mg、20mg、19mg、18mg、17mg、16mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mgまたは5mg未満の質量、または、100mcl、90mcl、80mcl、70mcl、60mcl、50mcl、40mcl、30mcl、29mcl、28mcl、27mcl、26mcl、25mcl、24mcl、23mcl、22mcl、21mcl、20mcl、19mcl、18mcl、17mcl、16mcl、15mcl、14mcl、13mcl、12mcl、11mcl、10mcl、9mcl、8mcl、7mcl、6mclまたは5mcl未満の体積を有する。「剤形」は、生体付着性を有しても有しなくてもよく、水溶液との接触後にヒドロゲルを形成しうる。「小体積薬物剤形」または「小体積剤形は、「NanoTab(商標)」と呼ばれうる。
【0051】
本明細書で使用されるところの「舌下」とは、文字通り「舌の下」を意味し、物質が消化管を通じてではなく舌の下の血管を通じて速やかに吸収されるようなやり方での、口を経た物質の投与方法をさす。血管が発達した舌下粘膜を通じて吸収が生じ、物質の血液循環へのより直接的なアクセスを可能にし、胃腸の影響を受けない直接的な全身投与を提供する。
【0052】
薬物等の「経粘膜」送達という用語は、粘膜を横断または通過する全ての形の送達を含むものとする。特に、薬物の「経口経粘膜」送達は、口、咽頭、喉頭、気管、または上部消化管の任意の組織、特に舌下、歯肉および口蓋粘膜組織を横断した送達を含む。
【0053】
「治療的に有効な量」という用語は、疼痛緩和等の所望の治療効果を促進するのに有効な、治療剤の量または治療剤の送達速度(例えば時間に対する量)を意味する。正確な所望の治療効果(例えば疼痛緩和の程度および疼痛緩和の元等)は、治療される条件、対象の寛容、投与される薬物および/または薬物製剤(例えば治療剤(薬物)の能力、製剤中の薬物の濃度等)、および当業者に理解される他の様々な要素により異なる。
【0054】
本明細書中で使用されるところの「Tmax」という用語は、最高血漿中濃度の観察時点を意味する。
【0055】
本明細書中で使用されるところの「Cmax」という用語は、薬物投与後に観察される最高血漿中濃度を意味する。
【0056】
本明細書で定義されるところの「消失半減期」または「t1/2[h]」という用語は、ln(2)/λz(時間対対数濃度曲線の直線回帰により推定される一次消失速度定数として定義される)として計算され、また、反復投与研究において最終的投与の後に決定される。
【0057】
鎮静に関する「Tonset」という用語は、本明細書において、観察される「発現時間」に対して使用され、RASSスコアが初めてゼロ未満となるのに必要な時間を表す。
【0058】
例示的実施形態の記載
本発明は、処置時の鎮静および無痛のための組成物、方法、システムおよびキットに関する。
【0059】
本発明は、例えば治療処置の前または全身麻酔の誘導前等の処置時の鎮静および無痛の誘導に有効な製剤を含む、小さな経口経粘膜剤形に依存する。剤形は、単一の剤形において経口経粘膜経路により送達される、不安を処置するために典型的に用いられる薬物、例えばトリアゾラム等のベンゾジアゼピンクラスの薬物と、スフェンタニル等の鎮痛薬との組み合わせを含む。
【0060】
一つの利用例では、本発明は、診療所、医院、および病院の場合のいずれにおいても、処置時の鎮静および無痛をもたらすための経口またはIV薬物に代わる使用に有用である。これは、小児患者、肥満患者、静脈の脆弱な高齢患者、化学療法を受けている癌患者等の人々に特に重要である。
【0061】
ベンゾジアゼピン類
ベンゾジアゼピン類は、原始的情緒反応に関与するとみられる脳内深部のエリア、大脳辺縁系に作用することにより不安を軽減すると考えられる薬物である。ベンゾジアゼピンクラスの薬物の代表例には、トリアゾラム、ミダゾラム、テマゼパム、エスタゾラム、アルプラゾラム、ジアゼパムおよびロラゼパムが含まれるがこれに限定されず、通常は経口服用される。
【0062】
経口ベンゾジアゼピン類は、動揺、不安の悪化、混乱、記憶障害、協調欠如、言語障害等を含みうるわずかの副作用を伴って、相当速やかに(1〜2時間以内に)作用する。
【0063】
一部の患者、特にアルコールまたは薬物依存の問題のある者は、ベンゾジアゼピン類の慢性使用に依存するようになりうるが、例えば処置時の鎮静等のためのベンゾジアゼピン類の非常に短期的な急性の使用が、身体依存および中毒をもたらすことは示されていない。舌下経路を利用したベンゾジアゼピン類の処置前送達は、以下に参照される研究により示されるように、有効な鎮静をもたらしている。
【0064】
トリアゾラム
トリアゾラムまたは8‐クロロ‐6‐(o‐クロロフェニル)‐1‐メチル‐4H‐s‐トリアゾロ‐[4,3‐アルファ][1,4]ベンゾジアゼピンは、343の分子量を有し、Halcion(登録商標)、Novodorm(登録商標)、Songar(登録商標)の商標名で市販される)。トリアゾラムは、不眠症を治療するための鎮静剤としてのみ一般に使用されるベンゾジアゼピン誘導体である。
【0065】
経口投与されたトリアゾラムは、臨床的に使用されるベンゾジアゼピン類で最も短い1.5〜5.5時間の血漿半減期を有する。トリアゾラムの薬物動態を比較した研究は、対若年成人で高齢者につきCmaxの50%の増加を示したが、Tmax(0.9時間)の変化は示さなかった。高齢者におけるトリアゾラムのクリアランスは、若年成人より約40%低かった。トリアゾラムは現在、不眠症の短期治療(一般に7〜10日)に承認されている。トリアゾラムは、二つの投与量強度の経口錠剤として利用可能である:0.125mgおよび0.250mg。0.2mg舌下トリアゾラム錠剤は、デンマークのDumex Ltd.からDumozolam(登録商標)として市販されたが、今はもう市販されていない。経口トリアゾラムは、通常は不眠症患者のための睡眠補助として使用されるが、この薬の処置時の不安への使用の成功を示す研究もある。舌下トリアゾラムの経口投与との薬物動態の比較は、舌下投与経路で28%高いバイオアベイラビリティと20%高いピーク血漿中濃度を示す。フルマゼニルの投与によりトリアゾラムの作用が抑制される。トリアゾラムの代謝における初期段階は、チトクロームP450 3A(CYP 3A)により触媒されるヒドロキシル化である。
【0066】
多数の状況において、トリアゾラムの舌下投与が術前の鎮静に有効であると記載されている:(1)歯科外来患者における、口腔外科手術60分前の術前鎮静のための250mcgのトリアゾラムの舌下投与は、経口トリアゾラムおよびプラセボの両者よりも、手術中15分目での不安および痛みが大幅に低くなった。ベンゾジアゼピン類は、直接の無痛効果を持たないことが示されているため、観察された痛みの減少は間接的効果だった可能性がある。舌下トリアゾラムの経口投与との薬物動態の比較は、舌下投与経路で28%高いバイオアベイラビリティと高いピーク血漿中濃度を示した。錠剤は、325mgアセトアミノフェンのサイズであり、90秒以内に溶解した。経口および舌下スフェンタニルの両方のTmaxは、約90分であった。(Berthold CW,等、Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod;1997;84(2):119‐24);(2)トリアゾラムのPKが、歯科治療の前に経口トリアゾラム(Kool‐Aidに懸濁された0.025mg/kg)を受けた、6〜9歳の9人の健常児で評価された。ピーク血漿中濃度は、8.5+/−3.0ng/mL(平均+/−SD)であった。ピーク血漿中濃度到達時間は、74+/−25分であった。鎮静からの回復には、180〜240分かかった(Karl H.W,等、Journal Clinical Psychopharmacology;1997;17(3):169‐172);(3)局所麻酔下での眼科手術を予定する100人の61〜70歳の患者において、200mcg舌下トリアゾラムの臨床効果が、ジアゼパムの10mg錠剤ものと二重盲検試験で比較された。トリアゾラムの投与の少なくとも45分後に手術が開始された。著者らは、200mcgトリアゾラムの舌下投与の60〜90分後に鎮静が開始し、200mcg舌下トリアゾラムが10mg経口ジアゼパムよりも深い鎮静をもたらしたと結論づけた。(Kontinen V,等、Canadian Journal of Anesthesia,Vol 40,829‐834,1993);(4)トリアゾラムの相対的および絶対的バイオアベイラビリティが、経口および舌下経路による投与後に評価された。静脈内と比べた吸収画分は、舌下のほうが経口治療より20%高かった(p=0.0128);0〜2時間の曲線下面積により示されるように、治療間の差は最初の2時間において最大だった(p<0.05)12人の人における、IVコンパレータと市販経口錠剤(250mcg Halcion)および舌下プロトタイプウエファーの投与後に評価される、トリアゾラムの相対的および絶対的バイオアベイラビリティを記述。静脈内と比べた吸収画分は、舌下のほうが経口治療より20%高かった(p=0.0128);0〜2時間の曲線下面積により示されるように、治療間の差は最初の2時間において最大だった(p<0.05)。舌下トリアゾラムのTmaxは、約1.19時間(71.4分)であった(Kroboth PD等、J Clin Psychopharmacol;1995;15(4):259‐62);(5)8人の健常な成人のボランティアが、二回ランダムな順番で舌下および経口経路により、市販錠剤で500mcgのトリアゾラムを受けた。舌下投与後のトリアゾラムのバイオアベイラビリティは、同用量の経口投与よりも平均28%大きいことが示された。舌下投与の平均全曲線下面積は、経口投薬後のものよりも有意に大きかった(28.9対22.6ng‐hr/mL、p<0.025)。舌下投薬後のピーク血漿中濃度も、経口投与後より高かった(4.7対3.9ng/mL、p<0.1)。用量後のトリアゾラムの排出半減期(4.1対3.7時間)およびピーク濃度の時間(1.22対1.25時間)につき、舌下投与と経口投与の間に有意差は見られなかった。(Scavone JM,等、J Clin Pharmacol;1986;26:208‐10);(6)9人の健常児(生後64〜98ヵ月)が歯科治療前に250mcgまたは375mcgの舌下トリアゾラムを受けた、子供における舌下トリアゾラムの薬物動態の研究は、4.0〜8.2ng/mlの範囲で4.9+/−2.0ng/mL(平均+/−SD)のCmax、30〜120分の範囲で75+/−32分のTmax、および51〜140分の範囲で91+/−32分の排出半減期を示した。平均の舌下錠剤溶解は4分であった。(Tweedy等、J Clin Psychopharmacol.2001,21(3):268‐72);(7)歯科文献の検討からは、鎮静を生成するための経口および舌下用量の範囲が、250〜500mcgであり、処置の30〜45分前に投与されると有効であることが示唆される。10人の健常な成人ボランティア(18〜40)が、舌下トリアゾラム(250mcg Halcion)の後、60分後(500mcg)および90分後(250mcg)に追加用量を受けた研究においては、Cmaxは、最終用量の90分後よりも大きく、したがって決定されなかった。錠剤は、投与の2〜3分後に溶解した。(Jackson D,等、Journal Clinical Psychopharmacology;2006;26(1):4‐8)。
【0067】
ミダゾラム
経口ミダゾラムは、手術または医療処置の前または間に、鎮静剤として使用される。ミダゾラムは非常に迅速に作用し、したがって鎮静、健忘、および不安の緩和をもたらすため、麻酔に有用である。これは、診断または治療処置の前、および麻酔の導入前の子供の意識下鎮静のために一般的に用いられる薬剤となっている。
【0068】
ミダゾラムまたは8‐クロロ‐6‐(2‐フルオロフェニル)‐1‐メチル‐4H‐イミダゾ[1,5‐a][1,4]ベンゾジアゼピンは、326の分子量を有する。ミダゾラムは、Dormicum、Flormidal、Versed、HypnovelおよびDormonidの商標名で市販され、ベンゾジアゼピン誘導体である。これは、強力な抗不安、健忘、催眠、抗痙攣、骨格筋弛緩および鎮静特性を有する。短い排出半減期をもつ速効性のベンゾジアゼピンと考えられる。ミダゾラムは、約36%の経口バイオアベイラビリティ(広い範囲を伴う)を有し、経口投与されたミダゾラムは1.5〜5時間の血漿半減期を有する。60歳より上の成人においては、ミダゾラムの血漿半減期は3倍まで延長されうる。ミダゾラムの薬物動態は、7.5〜15mgの経口投与量の範囲において線形である。ミダゾラムは、経口投与の後、迅速かつ完全に吸収される。15mgの用量では、一時間以内に70〜120ng/mlの最大血漿中濃度に達する。食物により、ピーク血漿中濃度到達時間が長くなる。
【0069】
最近まで、静脈内投与型の薬物だけが利用可能であり、医師および歯科医師は、一般的に静脈内投与型を経口投与用に用いて、子供にIVを開始する追加的なトラウマを回避した。しかし、液体は、香味料を加えても苦かった。1998年11月に、Food and Drug Administrationは、人工苦み修正剤(Versed Syrup)と1mlあたり2mgのミダゾラムとを含む、透明な赤紫色のサクランボ風味のミダゾラム含有液体を承認した。報告された子供による受け入れ率は、90%であった。子供への推奨用量は、0.25〜0.5mg/kgの単回用量から20mgの最大用量である。ミダゾラムの最も重篤な副作用は、呼吸の低下または停止であり、これはフルマゼニル(Romazicon)により抑えられる。
【0070】
前投薬としての舌下ミダゾラム(Roche,Dormicum,7.5mg)の鎮静効果が、経口経路と比較された。各群に50人の患者がおり、鎮静の程度が評価され、舌の下の錠剤を20分間5分毎に点検することにより、舌下群において完全な薬物溶解の時間が研究された。薬物投与後30分および60分目に、舌下群における鎮静スコアは、経口群より高かった。舌下群の72%は、10分以内に薬物が完全に溶解し、舌下群の患者の64%が、錠剤が味に関して許容可能であるとした(Lim等、Can J Anaesth;1997;44(7):723‐6)。
【0071】
多数の状況において、ミダゾラムの経粘膜投与が術前鎮静に有効であると記載されている:(1)ミダゾラムが、3つの異なる群に無作為割付けされた47人の子供に経粘膜投与された。群Nは0.2mg/kgの経鼻投与、群Rは0.5mg/kgの直腸投与、群Sは0.2mg/kgの舌下投与を受けた。前投薬の30分後に、舌下群のミダゾラム濃度は、経鼻群よりも統計学的に有意に高かった。(Geldner G,等、Paediatric Anaesthesia;1997(7):103‐109);(2)経鼻ミダゾラムが、急性発作の治療において有効であることが示された(Jeannet P等、Eur J of Paediatric Neurology,1999,3:73‐77);(3)前向き二重盲検プラセボ対照治験において、日帰り手術の予定される子供に、濃いブドウシロップ剤と混合され、3つ(0.25、0.5または0.75mg/kg)の中の一つの用量で舌下に配置される注射可能ミダゾラム、またはプラセボのいずれかを与え、子供は混合物を容易に受け入れた。投与後15分目に、プラセボを受けた子供は一人も鎮静が見られず、ミダゾラムを0.25mg/kg受けた子供の28%(P=0.02)、0.5mg/kg受けた子供の52%(P<0.001)、および0.75mg/kg受けた子供の64%(P<0.001)に良好な鎮静が見られた。(Khalil等、Paediatric Anaesthesia,1998;(8):461‐465);(4)60人の子供が、麻酔導入の約30分前に、経口ミダゾラム0.5mg/kgまたはプラセボを受け、著者らは、ベンゾジアゼピンは、特に経口経路により与えられると、発現が遅延しまたは不規則となり得、これが処置後回復の遅延をもたらすと結論づけた。(Viitanen H,等、Can J Anesth.,1999,46(8):766‐771);(5)2時間以下の外来手術を受ける年齢1/2〜6歳の60人の小児患者で、鼻腔内ミダゾラムを前投薬としてスフェンタニルと比較すると、ミダゾラムの投与時にはスフェンタニルと比較して、以前には泣かなかった子供が泣きやすく(71%対20%、p=0.0031)、31人のミダゾラム患者のうち、20人が鼻の刺激を感じた。(Zedie N,等、Clin Pharmacol Ther;1996;59:341‐8);そして、(6)McCannおよびKainによる総説(Anesthesia & Analgesia,(93):98‐105,2001)は、ミダゾラム等の経粘膜ベンゾジアゼピン類は作用発現が迅速であるが、鼻腔内経路は刺激があり、泣き症状を生じ、舌下経路は薬物の嚥下または吐き出しにつながると報告する。
【0072】
不安
不安は、肺、心臓、および他の身体的感覚を伴うことが多い、懸念、恐怖、および心配の複合感覚である。これは、侵襲要因に対する自己制約された生理的反応でありうる一般的な状態あり、または持続して消耗性の感情をもたらしうる。
【0073】
不安は、医療または歯科処置の前の強い恐怖等、特定の条件または状況をとりまきうる。対象の恐怖があまりにもひどいために、状況に直面した時に、あるいは状況に対処しなければならないことを予想して、不安の身体症状があらわれ、不安発作を有することもありうる。
【0074】
対象は、恐れている医療または歯科処置を受けることを回避し、または苦痛をもって状況に耐えることになる。子供は状況に対する自らの恐怖が過剰または不合理であることがわからないことが多いため、これは特に小児科の場合に問題である。
【0075】
医師および看護師は、痛いまたは恐ろしいと受け取られる処置を、子供および成人に行う必要があることが多い。子供は、針刺しを痛みおよび恐怖の元としてみることが多い。針刺しの痛みを最小限にする努力において、リドカインおよびプリロカインの混合物(EMLA)の使用が、多くの子供病院において標準の処置になっている。残念ながら、EMLAは完全に効果が出るまでに少なくとも60分を要し、報告されるところによれば血管収縮を引き起こし、静脈カニューレ挿入の困難をもたらしうる。
【0076】
処置時の不安と鎮静の成功は、逆相関している。不安が少ない子供は、3.8倍うまく鎮静される見込みのあることが示されている(Schreiber KM等、Am J Emerg Med.2006 July;24(4):397‐401)。
【0077】
医院または診療所での様々な処置を予定する患者は、心配し、おびえていることが多い。不安が大きいと、処置がより困難で痛いものになりうる。処置のいくつかの代表例には、乳腺コア針生検、歯科処置、審美処置、皮膚科処置、足病処置、骨折固定または脊椎注射等が含まれる。
【0078】
ベンゾジアゼピン、ベータ遮断薬、種々の抗不安薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン―ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)および三環系抗うつ薬を含むがこれに限定されない多数のクラスの薬物が、不安を処置するために用いられる。あるクラスの薬物は、特定の不安障害に対して他のものよりも大きな有効性をもつ。
【0079】
急性の不安発作には、ベンゾジアゼピン類による短期治療が、標準的な治療である。より慢性的な不安症状は、SSRI、SNRIまたはブスピロンの投与により典型的に処置される。他の状況では、三環系抗うつ薬、ベータ‐遮断薬、および、稀にモノアミンオキシダーゼ阻害薬が、不安をコントロールするために、単独または他剤と併せて処方される。
【0080】
スフェンタニルおよび他のオピオイド類
オピオイド類は強力な無痛剤であり、中度から強度の急性および慢性の痛みを治療するために利用される。特に子供において、処置時の不安を処置するためにオピオイド類の経粘膜投与が用いられているが、オピオイドの単独使用で必要とされる用量は、無痛目的に必要とされるよりも高く、呼吸の低下および悪心嘔吐の発生の増加をもたらしうるため、安全性の懸念を引き起こし、術後回復室から出るのも遅れうる。(Clin.Pharmacol and Therapeutics 59:341,1996)。
【0081】
心臓手術において安定した全身麻酔をもたらすために、分娩・出産の間の硬膜外投与のために、スフェンタニル(N‐[(4‐(メトキシメチル‐1‐(2‐(2‐チエニル)エチル)‐4‐ピペリジニル)]‐N‐フェニルプロパンアミド)が主要麻酔薬として使用され、鼻腔内および液体経口製剤の両方で実験的に投与されている。IV送達に用いられる市販の形のスフェンタニルは、SUFENTA FORTE(登録商標)製剤である。この液体製剤は、水に0.075mg/mlのスフェンタニルクエン酸塩(0.05mgのスフェンタニル塩基と同等)および9.0mg/mlの塩化ナトリウムを含む。血漿排出半減期は148分であり、投与用量の80%が24時間で排泄される。本明細書で用いられるところのスフェンタニルという用語には、スフェンタニル塩基、スフェンタニルクエン酸塩またはその薬理学上許容可能な塩または誘導体を含む。
【0082】
スフェンタニルの使用は、臨床的には主に手術室または集中治療室におけるIV投与に限られている。処置時の鎮静のための鼻腔内スフェンタニル液体は、成人および小児患者の両方で研究されており、5〜20mcg以上の用量が鎮静効果を提供している(Vercauteren等、1988;Karl等、1992)。薬が誤って嚥下された場合、作用発現の遅延およびバイオアベイラビリティの低下に関する問題がある。例えば、Helmers等,1989は、16人の患者の痛みにつき、術後無痛のための15mcgスフェンタニル(鼻腔内対IV)の効力を、0〜10の数値的評価スケール(NRS)に基づいて比較した、二重盲検試験を記載する。鼻腔内スフェンタニル液体では、Tmaxは10分でバイオアベイラビリティは78%であり、鎮静ピークは40分目であった。Gardner‐Nix J.,J Pain Symptom Management.2001 Aug;22(2):627‐30は、成人への液体舌下スフェンタニルの投与を記載しており、投与後に無痛効果があり、無痛発現が6分以内に生じ、疼痛緩和の継続時間は約30分であった。Vercauteren M等、Anaesthesia;1988;43:270‐273は、処置時の鎮静のための、成人および小児患者の両方における鼻腔内スフェンタニル液体の効果を記載し、10および20mcgまたはそれ以上の用量が鎮静効果を提供している(5mcgは不十分だった)。10分の中央値(5〜30分の範囲)で鎮静発現が達成され、5/40人の患者で60分目になお鎮静がみられた。平均継続時間は、40.8分(10〜55分の範囲)であった。
【0083】
本発明者らの研究の前には、いかなる形の舌下スフェンタニルについても薬物動態学的データは公開されていない。実施例1(下記)および米国特許出願公開第20070207207号;20080166404号;および20080147044号;米国特許出願第11/650,174号および11/985,162号;および国際公開第2007/081949号は、スフェンタニルが経口経粘膜経路により投与されたヒト臨床研究の結果を記載する。
【0084】
フェンタニル(N‐(1‐フェネチル‐4‐ピペリジル)‐N‐フェニル‐プロパンアミド)は、1950年代後期にベルギーで最初に合成され、モルヒネの約80倍の無痛効力を有する。フェンタニルおよびその同類物は、元は麻酔薬剤として開発されたμオピオイドアゴニストであり、無痛の発現が迅速であるため静脈内投与されることが多い。フェンタニルおよび他のオピオイドアゴニストは、呼吸の低下、嘔気、嘔吐および便秘を含む有害な副作用の可能性をもつ。
【0085】
アルフェンタニル、レミフェンタニル、ロフェンタニル、カーフェンタニル、トレフェンタニルおよびミルフェンタニルも、速やかに代謝される強力なフェンタニル同類物であり、トリアゾラム等の抗不安薬と組み合わせての経粘膜製剤での用途に適しうる。
【0086】
ロゼンジを用いたフェンタニル(例えばActiq(登録商標))の経頬投与後のバイオアベイラビリティは50%であるが、フェンタニルの75%が嚥下される(Actiq(登録商標)添付文書)という事実により、不安定なGI吸収から、200mcg投与量のActiq(登録商標)のTmaxは、20〜120分の範囲となる。ActiqのTmaxについてのより最近の刊行物によれば、これらのそもそもの作用発現時間が迅速なほうに偏っていたことが示されている(Fentoraの添付文書は、最長240分に至るActiqのTmaxの範囲を示す)。Fentora(フェンタニル口腔錠)は、65%のバイオアベイラビリティを呈し、薬物の嚥下は50%と報告される。請求される剤形とは対照的に、Actiq(登録商標)およびFentoraはいずれも、ロゼンジにより投与されるフェンタニルの相当量が患者により嚥下されるという不都合がある。フェンタニルはGI経路から30%のバイオアベイラビリティを有するため、この嚥下された薬物が、Cmax血漿濃度に相当程度寄与し、これらの製品に観察される不安定なCmaxおよびTmaxもたらしうる。
【0087】
中心静脈ライン抜去を受ける小児患者において、経口経粘膜フェンタニルロゼンジ‐オン‐スティック(Oralet(登録商標))の処置時の鎮静剤および無痛剤としての使用が研究された(Wheeler等、2002)。作用発現は遅くかつ不安定であり(Tmax=53±40分)、このフェンタニルロゼンジが子供の処置時の鎮静に適切でないと結論づけられた。
【0088】
無痛も提供できる有効な鎮静剤であり、強い唾液反応または鼻水の流出による薬物の不慮の嚥下が生じない、経口経粘膜製剤への必要性が残る。
【0089】
処置時の鎮静および無痛のためのオピオイドおよび他の無痛剤の使用。
オピオイド類は、鎮静剤であると同時に強力な無痛剤であるが、急性の使用中のそう痒症、呼吸の低下および/または悪心嘔吐、長期使用により身体的依存、依存行動の可能性および耐性を生じさせることが分かっている。ベンゾジアゼピン類は、強力な抗不安薬であるが、無痛特性を有しない。
【0090】
IVアクセスが利用できない場合には、経口または鼻腔内ミダゾラム等のベンゾジアゼピン、または鼻腔内スフェンタニル等のオピオイドが、処置時の鎮静に使用されることが多い(Karl等、Anesthesiology,76:209‐15,1992)。処置時の鎮静のために単剤を使用することには、不都合がある。ベンゾジアゼピン類は、特に経口経路により与えられると、作用発現が遅延し不安定となり、これにより処置後回復が遅れうる(Viitanen等、Anesthesia & Analgesia,89:75‐9,1999;Viitanen等,Canadian Journal of Anaesthesia,46:766‐71,1999)。
【0091】
痛みを伴う可能性がある医療または歯科処置の前など、多くの外来患者の場合に、疼痛緩和の必要性と結び付けられた鎮静が必要である。有効な鎮静ならびに不安および痛みの緩和をもたらし、処置の際に安全に都合よく使用できる、迅速に作用する剤形が必要とされることは明らかである。
【0092】
単一の剤形におけるスフェンタニル等のオピオイドとトリアゾラム等のベンゾジアゼピンとの組み合わせにより、小さな経口経粘膜投与量を開発し、処置時の鎮静および無痛への非侵襲性アプローチを提供する機会が提供される。
【0093】
本明細書にさらに記載されるように、ベンゾジアゼピン類またはほとんどの鎮静剤の直接的な無痛効果はなく、これにより、処置が不十分な痛みのために不安および動揺が増加しうる。さらに、複数の研究が、大用量の経口ミダゾラムが前投薬として使われた場合の、術後退院の遅れを示している。他方で、処置時の鎮静および無痛を提供するための、オピオイド類単独による処置は、呼吸の低下および術後の悪心嘔吐症状をもたらしうる(FriesenおよびLockhart,Anesthesiology,76:46‐51,1992;Karl等、Anesthesiology,76:209‐15,1992)。したがって、作用発現および消失が一貫した高いバイオアベイラビリティを生じる剤形において、ベンゾジアゼピン等の鎮静剤をオピオイド等の鎮痛薬と両方を組み合わせることには、処置時の鎮静および無痛にとって大きな利点がある。
【0094】
本明細書に記載の新規な製剤は、剤形の小ささのために比較的検知しにくい、単一の経口経粘膜剤形において提供される。スフェンタニル等のフェンタニル同類物とトリアゾラム等のベンゾジアゼピンとの組み合わせの経口経粘膜投与により、対象を効果的に鎮静すると共に、各薬物の用量を低下させることが可能になる。
【0095】
請求される薬物剤形の一つの使用例は、医療または歯科処置の前および間に、鎮静および無痛をもたらすことである。請求される薬物剤形が処置時の鎮静および無痛に使用される場合には、薬物剤形中のオピオイド薬剤は、スフェンタニルまたはアルフェンタニル、フェンタニル、ロフェンタニル、カーフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニルまたはミルフェンタニル等のスフェンタニル同類物であり、トリアゾラムまたはミダゾラム等のベンゾジアゼピンと組み合わせて提供される。好ましい実施形態においては、スフェンタニルが、活性薬剤である。請求される剤形において、スフェンタニルが、多数の製剤および形のいずれかで、例えばスフェンタニルクエン酸塩として、またはスフェンタニル塩基として、提供されうる。
【0096】
別の好ましい実施形態は、活性薬剤としてスフェンタニル同類物に依存する。さらに別の好ましい実施形態は、スフェンタニルと、無痛の処置に典型的な使用される少なくとも一つの追加的な薬剤との組み合わせ、例えばスフェンタニルおよびアルフェンタニルの組み合わせに依存する。様々なオピオイド薬物は、異なる薬物動態学的プロフィールおよびμオピオイド受容体スプライスバリアントとの異なる相互作用を有し、したがって、治療効果を増強するために組み合わせて使用されうる。
【0097】
処置時の鎮静および無痛に用いられる好ましい剤形は、トリアゾラムまたはミダゾラム等のベンゾジアゼピン薬物と組み合わせて、経口経粘膜送達用剤形あたり約2〜約100mcgのスフェンタニルを含む。一つの例示的な実施形態においては、各剤形が、約50〜約1000mcgのトリアゾラムと組み合わせて、約2〜約100mcgのスフェンタニルを含む。別の例示的な実施形態においては、各剤形が、約0.2〜約10mgのミダゾラムと組み合わせて、約5〜約50mcgのスフェンタニルを含む。
【0098】
本発明の別の態様においては、処置時の鎮静および無痛に用いられる剤形は、トリアゾラムまたはミダゾラム等のベンゾジアゼピン薬物と組み合わせて、経口経粘膜送達用剤形あたり約5〜約1000mcgのフェンタニルを含む。一つの例示的な実施形態においては、各剤形が、約20〜約2000mcgのトリアゾラムと組み合わせて、約5〜約1000mcgのフェンタニルを含む。本発明の別の例示的な実施形態においては、各剤形が、各剤形が、約0.2〜約10mgのミダゾラムと組み合わせて、約5〜約1000mcgのフェンタニルを含む。
【0099】
一つの例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形は、剤形あたり約2〜約100mcgのスフェンタニルを含む。例えば、処置時の鎮静および無痛のための、18〜60歳の成人への投与のための剤形は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100mcgのスフェンタニルを経口経粘膜送達のために含みうる。
【0100】
子供(小児患者)への投与のため、または60歳を超える成人への投与のための例示的な剤形は、剤形あたり約1〜約50mcgのスフェンタニルを含む。例えば子供または60歳を超える成人への投与のための本発明の製剤は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45または50mcgのスフェンタニルを経口経粘膜送達のために含みうる。
【0101】
一つの例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形は、剤形あたり約10〜約1000mcgのフェンタニルを含む。例えば、処置時の鎮静および無痛のための18〜60歳の成人への投与のための投与量は、約10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000mcgのスフェンタニルを経口経粘膜送達のために含みうる。
【0102】
子供(小児患者)への投与のため、または60歳を超える成人への投与のための例示的な剤形は、剤形あたり約5〜約500mcgのフェンタニルを含む。例えば子供または60歳を超える成人への投与のための本発明の製剤は、約5、10、15、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400または500mcgのフェンタニルを経口経粘膜送達のために含みうる。
【0103】
本発明の一態様においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形は、トリアゾラムまたはミダゾラム等のベンゾジアゼピン薬物と組み合わせて、約5〜約50mcgのスフェンタニルを含む。本発明の一つの例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形は、それぞれ、約50〜約1000mcgのトリアゾラム、例えば約50、60、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900、または1000mcgのトリアゾラムと組み合わせて、約5〜約50mcgのスフェンタニルを含む。本発明の別の例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形はそれぞれ、約0.5〜約10mgのミダゾラム、例えば0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mgのミダゾラムと組み合わせて、約5〜約50mcgのスフェンタニルを含む。
【0104】
本発明の他の態様では、子供(小児患者)への投与のため、または60歳を超える成人への投与のための剤形は、トリアゾラムまたはミダゾラム等のベンゾジアゼピン薬物と組み合わせて、約1〜約50mcgのスフェンタニルを含む。本発明の一つの例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形はそれぞれ、約20〜約1000mcgのトリアゾラム、例えば約20、40、60、80、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000mcgのトリアゾラムと組み合わせて、約1〜約50mcgのスフェンタニルを含む。本発明の別の例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形はそれぞれ、約0.2〜約5mgのミダゾラム、例えば約0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5mgのミダゾラムと組み合わせて、約1〜約50mcgのスフェンタニルを含む。
【0105】
本発明の一態様においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形は、約50〜約1000mcgのトリアゾラム、例えば約50、60、70、75、80、90、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000mcgのトリアゾラムと組み合わせて、剤形あたり約10〜約1000mcgのフェンタニルを含む。本発明の別の例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形はそれぞれ、約0.5〜約10mcgのミダゾラム、例えば0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mgのミダゾラムと組み合わせて、剤形あたり約10〜約1000mcgのフェンタニルを含む。
【0106】
本発明の他の態様では、子供(小児患者)への投与のため、または60歳を超える成人への投与のための剤形は、トリアゾラムまたはミダゾラム等のベンゾジアゼピン薬物と組み合わせて、約5〜約500mcgのフェンタニルを含む。本発明の一つの例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形はそれぞれ、約20〜約1000mcgのトリアゾラム、例えば約20、40、60、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900、または1000mcgのトリアゾラムと組み合わせて、約5〜約500mcgのスフェンタニルを含む。本発明の別の例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形はそれぞれ、約0.2〜約5mgのミダゾラム、例えば約0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5mgのミダゾラムと組み合わせて、約5〜約500mcgのフェンタニルを含む。
【0107】
当業者には当然のことながら、用量は、子供および60歳を超える成人では範囲の下端であり、18〜60歳の成人では範囲の上端であり、特にオピオイド耐性の成人に長期投与される場合には、体重による。
【0108】
スフェンタニルの同類物も本発明の組成物および方法に有用であり、その例には、フェンタニル、レミフェンタニル、アルフェンタニル、ロフェンタニル、カーフェンタニル、トレフェンタニル、およびミルフェンタニルが含まれる。
【0109】
アルフェンタニルは、速やかに代謝される強力なフェンタニル同類物であり、処置時の鎮静および無痛の製剤において用いられうる。例示的な一実施形態においては、処置時の鎮静および無痛のための剤形は、約10mcg〜約10mgのアルフェンタニルを含む。
【0110】
ロフェンタニル、カーフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニルおよびミルフェンタニルも、速やかに代謝される強力なフェンタニル同類物であり、処置時の鎮静および無痛のための剤形における、トリアゾラム等の抗不安薬と組み合わせた使用に適しうる。
【0111】
特に、処置時の鎮静および無痛のための剤形は、約0.25mcg〜99.9mgのロフェンタニル、約0.25mcg〜99.9mgのカーフェンタニル、約0.25mcg〜99.9mgのレミフェンタニル、約0.25mcg〜99.9mgのトレフェンタニル、約0.25mcg〜99.9mgのミルフェンタニルを含みうる。
【0112】
当業者には当然のことながら、用量は、子供および60歳を超える成人では範囲の下端であり、18〜60歳の成人では範囲の上端であり、特にオピオイド耐性の成人に長期投与される場合には、体重による。
【0113】
処置時の鎮静および無痛のための、18〜60歳の成人への投与のためのこのような例示的な剤形は、約50〜約2000mcgのトリアゾラム、例えば約50、60、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800または2000mcgのトリアゾラムと組み合わせて、レミフェンタニル、アルフェンタニル、ロフェンタニル、カーフェンタニル、トレフェンタニル、またはミルフェンタニルを含む。本発明の別の例示的な実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形はそれぞれ、約0.5〜約10mgのミダゾラム、例えば0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mgのミダゾラムと組み合わせて、レミフェンタニル、アルフェンタニル、ロフェンタニル、カーフェンタニル、トレフェンタニル、またはミルフェンタニルを含む。
【0114】
本発明の別の態様においては、子供(小児患者)への投与のため、または60歳を超える成人への投与のための剤形は、約20〜約1000mcgのトリアゾラム、例えば約20、40、60、80、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000mcgのトリアゾラムと組み合わせて、レミフェンタニル、アルフェンタニル、ロフェンタニル、カーフェンタニル、トレフェンタニル、またはミルフェンタニルを含む。本発明の別の例示的実施形態においては、18〜60歳の成人への投与のための剤形はそれぞれ、約0.2〜約5mgのミダゾラム、例えば0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5mgのミダゾラムと組み合わせて、レミフェンタニル、アルフェンタニル、ロフェンタニル、カーフェンタニル、トレフェンタニル、またはミルフェンタニルを含む。
【0115】
薬物剤形。
本明細書に記載の小体積経口経粘膜薬物剤形は、口腔への投与後に嚥下されることが予定される従来の大きな経口剤形と比較して、少ない唾液反応をもたらす。そのような従来の大きな経口投与形態の結果、相当量の薬物が胃腸内経路により送達されることが多い。
【0116】
請求される剤形は、スフェンタニル等のオピオイドと、トリアゾラム等のベンゾジアゼピンとの混合物を含み、医薬的に活性の物質の口腔粘膜を横断した高い吸収速度と、胃腸管による吸収の減少とを提供し、これによって、より一貫した再現可能な薬物動態学的プロフィールおよび対応する薬力学的プロフィールを提供する。
【0117】
剤形は典型的に「舌下剤形」であるが、場合によっては、頬側経路等の別の経口経粘膜経路が用いられうる。経口経粘膜薬物送達のための好ましい部位は、舌下エリアであるが、ある実施形態では、剤形が頬内側に配置され、あるいは口または歯茎の上に付着することが有益でありうる。
【0118】
典型的に、剤形は、薬物送達期間中、剤形からほとんどまたは全ての薬物が口腔粘膜に送達されるまで、口腔粘膜に付着する(すなわち生体付着性である)ように構成される。
【0119】
請求される剤形は、100mg未満の質量または100mcl未満の体積を有する。より詳しくは、剤形は、100mg、90mg、80mg、70mg、60mg、50mg、40mg、30mg、29mg、28mg、27mg、26mg、25mg、24mg、23mg、22mg、21mg、20mg、19mg、18mg、17mg、16mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mgまたは5mg未満の質量、または100mcl、90mcl、80mcl、70mcl、60mcl、50mcl、40mcl、30mcl、29mg、28mg、27mcl、26mcl、25mcl、24mcl、23mcl、22mcl、21mcl、20mcl、19mcl、18mcl、17mcl、16mcl、15mcl、14mcl、13mcl、12mcl、11mcl、10mcl、9mcl、8mcl、7mcl、6mclまたは5mcl未満の体積を有する。剤形は、典型的に生体付着性であり、水溶液と接触するとヒドロゲルを形成しうる。
【0120】
剤形は、浸食時間が典型的に30秒から5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25および30分からなる群より選択される時間までである。好ましい剤形は、浸食時間が6分未満、およびより好ましくは2分未満である。
【0121】
一般に、対象の口腔粘膜に投与される剤形のスフェンタニルの総量の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%が、経口経粘膜経路により吸収される。
【0122】
剤形は基本的に任意の形を有すればよく、その例には、平坦、凹状、または、凸状面の円盤、楕円形、球状形、三つ以上の辺および平坦、凹状、または、凸状の面を伴う多角形が含まれる。剤形は、対称形でも非対称形でもよく、制御され、都合が良く、簡単な保存、取り扱い、パッケージまたは投与を可能にする特徴または外形を有しうる。
【0123】
経口経粘膜薬物送達は、単純で、非侵襲性であり、介護者または患者により最小限の不快感で達成されうる。経口経粘膜送達のための剤形は、固体でも非固体でもよい。一つの好ましい実施形態では、剤形は、唾液との接触後にヒドロゲルに変わる固体である。別の好ましい実施態様では、剤形は、唾液との接触後にヒドロゲルを形成せずに侵食する固体である。
【0124】
一般に、医薬的に活性の物質の経口経粘膜送達は、ロゼンジまたは錠剤等の固体剤形を用いて達成されるが、液体、スプレー、ゲル、ゴム、粉末、およびフィルム等も使用できる。
【0125】
請求される薬物剤形は、口腔粘膜により対象に相当量の薬物を送達するように、設計および構成される。
【0126】
請求される剤形の調製のための処方およびこれを作る方法が、米国特許出願第11/825,251号および11/650,227号に記載される。例示的な製剤は、生体付着性であり、約0.0004%〜約0.04%のスフェンタニル、例えば0.0005%、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.006%、0.008%、0.01%、0.012%、0.014%または0.016%のスフェンタニルを含む。一般に、製剤は、(a)医薬的に活性の量の薬物の非規則混合物;(b)対象の口腔粘膜への付着を提供する生体付着性材料;および(c)ステアリン酸を含み、製剤を含む剤形の溶解が、例えばpH約4〜8の範囲でpHから独立している。
【0127】
経口投与形態に用いるための多数の適切な無毒性の薬理学上許容可能な担体が、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Edition,1985に見られる。
【0128】
当然のことながら、製剤は、直接圧縮、湿式造粒法等、当業者によりルーチン的に用いられる手順を用いて、対象への経口経粘膜投与のための剤形に転換される。剤形の調製プロセスは、高用量の含量の均一性を達成するために、製剤ごとに最適化される。
【0129】
関連のアプローチにおいては、フェンタニル同類物等のオピオイドとベンゾジアゼピンとの組み合わせが、診断または治療処置の間または全身麻酔の導入前に、対象を鎮静し、無痛を提供するために、吸入または昇華により投与されうる。
【0130】
単回用量アプリケータ
本発明は、処置時の鎮静および無痛のための、対象への薬物剤形の経口経粘膜送達のための投薬デバイス、およびそれを使用する方法をさらに提供する。
【0131】
処置時の鎮静および無痛のための、剤形の経口経粘膜送達のための投薬デバイスまたは単回用量アプリケータ(SDA)の適用は、いかなる特定のタイプのデバイスまたは患者集団にも限られない。そのようなものとして、本発明のSDAは、小児、成人、およびヒト以外の哺乳類の対象への薬物送達に有用である。
【0132】
一実施形態においては、固体錠剤、液体カプセル、ゲルカプセル、液体、ゲル、粉末、フィルム、ストリップ、リボン、スプレー、ミスト、パッチまたは他の適切な薬物剤形を含む様々な薬物剤形を投与するために、SDAが用いられる。
【0133】
SDAは、一対の鉗子、シリンジ、棒またはロッド、ストロー、パッド、カプセル、カップ、スプーン、ストリップ、チューブ、アプリケータ、ドロッパー、パッチ、付着性パッド、付着性フィルム、噴霧器、アトマイザー、または、対象の口腔粘膜、例えば舌下スペース(sublingual space)の口腔粘膜への単一の薬物剤形の適用に適した任意の他の形として提供されうる。当業者には当然のことながら、錠剤等の薬物剤形を投薬プロセスにおいて薬物剤形の完全性を保つ様式で口腔粘膜上の所望の位置、例えば舌下スペース内に配置するために有効である限り、SDAの設計は異なりうる。使用後には、唾液または他の汚染物質で薬物投薬デバイスを汚染するリスクを除去するために、SDAは処分される。
【0134】
SDAは、中に剤形を含み、薬物剤形がこれに付着または固定され、剤形が中に溶解されていればよく、水分、湿度、および光に対する封止を提供すればよい。SDAは、薬物送達のために妥当な位置に剤形を配置するために、患者、医療提供者、または他の利用者により手動で操作されればよい。
【0135】
単回用量アプリケータが、錠剤または他の剤形を、手、口の中、舌の下または特定の薬物送達ニーズに適した他の位置に送達するために用いられる。
【0136】
一実施形態においては、口腔粘膜、例えば舌下スペースに剤形を送達するために、単回用量アプリケータまたは薬物投薬デバイスが用いられる。
【0137】
SDAの中の剤形は、投薬の前には乾燥したままであり、その時点で単一の剤形が、デバイスから口内、例えば舌下スペースに投薬され、患者の唾液が錠剤を湿らせ、錠剤の崩壊/浸食ならびに薬物溶出を可能にする。使用後に、SDAは処分される。
【0138】
本発明の一態様においては、本発明による小体積剤形が舌下腔内に、好ましくは舌の下の舌小帯のいずれかの側に、接触後に付着するように配置される。
【0139】
一つのアプローチにおいては、舌下投与で、鉗子を使用して舌の下の小帯の隣に配置することにより、小体積剤形が投与されうる。あるいは、シリンジ、シリンジタイプのSDA、スティックまたはロッド、ストロー、ドロッパー、または、SDAを含むがこれに限定されない単一の薬物剤形の適用に適する任意の他の形を用いて、舌の下の小帯の隣に配置することにより、小体積剤形が投与されうる。
【0140】
複数のSDAが、バッキングにより取り付けられ、または多回投与ディスペンサまたは多回投与格納ユニットに収容される、一連の個々のSDAとして提供されうる。
【0141】
処置時の鎮静および無痛の場合には、投薬デバイスは典型的にSDAである。場合によっては、SDAが、多回投与アプリケータ(MDA)と呼ばれうる多回投与格納ユニットに格納される。
【0142】
剤形は、本明細書において「ブリスターパック」と称される、剤形が中に配置される窪み(「ブリスター」)を有する、成形プラスチックまたは積層からなるパッケージにおいて提供されうる。カバー、典型的には積層物または箔が、成形部分を封止するために用いられる。ブリスターパックは、予備形成または成形部分を有しても有しなくてもよく、任意のタイプのSDAをパッケージするために用いられうる。
【0143】
図1A〜B、2A〜C、図3A〜F、図5A〜C、図6A〜B、図7A〜D、図8Cおよび図9A〜Bは、薬物剤形の経口経粘膜投与に用いられる例示的なSDAの概略図である。
【0144】
図1Aおよび図1Bは、SDA123の一実施形態薬物剤形を送達するための投薬デバイスを示す。図1Aに示される投薬デバイスは、薬物剤形67を投薬する準備ができたSDA123を示す。この実施形態の一態様においては、利用者がSDA123をつまんでアプリケータを開き、図1Bに示されるように薬物剤形67が投薬される。
【0145】
図2A〜Cは、ストッパー封止127、ハンドル131(例えば人間工学的ハンドル)、および単一の剤形67を有する、チューブ129のように形成されたアプリケータを含むSDA123の実施形態を示す。図2Aは、使用前に密封された状態のSDA123を示す。図2Bは、そのストッパー封止127が除去されて開口部133が形成され、使用の準備ができたSDA123を示す。図2Cは、口腔粘膜上、例えば舌下スペース内に剤形67を投薬するために、傾けられたSDA123を示す。
【0146】
図3A〜Fは、SDA123のいくつかの代替的実施形態を示す。これらの全ての図では、アプリケータ封止127が破られ、舌下への剤形の配置のために、薬物剤形67を対象の口内の口腔粘膜の隣、例えば舌の下に落とすためにアプリケータが傾けられる。図3Aは、チューブ129の軸方向下に設置されたハンドル131を伴うチューブ状のアプリケータ129を示す。図3Bは、熱形成またはブリスターパッケージ151として形成されたアプリケータを示し、剤形67を配置する前にアプリケータパッケージ141を開くために、箔封止135が剥がされている。図3Cは、剤形67の配置の前に封止を破るために破られたチューブ129であるアプリケータを示す。図3Dは、封止135を後ろに剥がした後にブリスターパック151を持ち、薬物剤形67を口腔粘膜上に配置するために傾けられるようにハンドル131を伴う、ブリスターパックチューブ151タイプの剤形パッケージ141を示す。図3Eおよび図3Fは、小児科使用のために設計されるSDA123に使用するために、それぞれ花または動物のように形成されたハンドル131を伴うブリスターパック151タイプのパッケージを示す。他のSDAの形には、漫画のキャラクター、動物、スーパーヒーローまたは小児科用途に適切な他の形を含みうる。
【0147】
図5Aは、剤形を伴うアプリケータ端が舌の下に配置されたときに、付着剤が溶解し、剤形67が舌下スペース等の口腔粘膜上に配置され、アプリケータが除去されうるように、剤形67が、例えば速やかに溶解する摂取可能な付着性物質により一端に付着された、平たい硬いアプリケータ123を示す。図5Bは、薬物が含浸され、マトリックスから材料および投与量を形成する、水透過物質で作られたアプリケータ123を示す。このアプリケータ123の含浸された端が、口内の口腔粘膜上の下に配置されると、唾液中の水分が薬物を溶解し、これを経粘膜で送達する。図5Cは、溶解フィルム剤形145と、複数の溶解フィルム剤形143を中に伴う剤形パッケージとを示す。溶解フィルム剤形143が、パッケージ141から取り出され、口腔粘膜上、例えば舌下スペースに配置されて溶解し、薬物を経粘膜で送達する。
【0148】
図6A〜Bは、SDA123の一実施形態の二段階の使用の図を提供する。図6Aは、二つのアプリケータタブ147、二つの穿孔149、および剤形67を含むブリスターパック151を伴う、使用前の状態のアプリケータ123を示す。剤形67を投与するために、二つのアプリケータタブ147が穿孔149で下方へ曲げられ、ハンドル131(図6B)を形成し、封止135が後ろに剥がされてブリスターパック151が露出され、剤形67を口腔粘膜上、例えば舌下スペース内に落とすことができる。
【0149】
図7A〜Dは、ラッチ19が解除されると薬物剤形67がもはやSDAにより保たれず、利用者により口腔粘膜上に配置されうるように薬物剤形67がSDA123の二つのサイド153の間に保たれた、ピンセットまたは逆はさみタイプのSDA(7A)と;利用者が155、スライダまたはプランジャ159を押すと、薬物剤形67がチャネルの端から押し出される、円形チャネルを伴うシリンジタイプのSDA(7B)と;利用者が155、スライダ159を押すと薬物剤形67がチャネルの端から押し出される、長方形のチャネルを伴うプッシャタイプのSDA(7C)と;または、薬物剤形67がポケット161内に保たれ、利用者が157スライダ159を引くと薬物剤形67がアクセス可能になる、スライダタイプのSDA(7D)とを含む、SDAの追加的な実施例の概略図である。
【0150】
別の実施形態においては、本発明の薬物投薬デバイスは、患者、医療提供者または利用者による使用のために、カートリッジ内または個々にパッケージされた複数のSDAを含めばよく、単一の薬物剤形を含む単一のSDAを投薬しうる。薬物投薬デバイスは、本発明に記載の単一の薬物剤形の投薬に有利であるように、同じ方法および同じ特徴で、単一のSDAを投薬しうる。例えば、それぞれSDA123に個々にパッケージされた投薬薬物剤形67を送達するための例示的な多回投与アプリケータ137の概略図である、図4を参照。
【0151】
図8A〜Dは、使用前の多回投与アプリケータ(MDA)137または複数のSDA123の格納のための容器の概略図を提供し(8A);例示の実施形態においては、個々のSDA123が薬物剤形67を含み(8C);SDA123が、舌下スペース内の舌の下への薬物剤形67の配置を促進する(8D)ように、MDA137の上部カバーに個々のSDA123を取り出すためのスロットがある(8B)。
【0152】
図9Aは、対象への経口経粘膜剤形の送達のための、SDAの実施形態の概略図である。SDAは、子供誤飲防止パッケージにおいて個々のSDAとして提供され、または多回投薬パッケージ(すなわち、MDA)に収容される。SDAは、ロックアウト機能として働き、錠剤がSDAから射出されうる前に除去されねばならないピンロック167、ならびに、対象の口内の口腔粘膜上、例えば舌下スペース内の小帯の隣に錠剤を射出するために使用者により押されるプッシャボタン163を有する。SDAは分解でき、底部クラムシェル169および上部クラムシェル171を有する。SDAは、シュラウド29および弁33も有し、これはSDAが対象の口内に挿入されたときに唾液進入から錠剤を保護するのに役に立つ。図9Bは、図9Aに示されるSDAの概略図の分解図であり、底部クラムシェル169および上部クラムシェル171が分離され、プッシャ165および剤形67、ならびに剤形67、弁33、およびシュラウド29の相対的位置が示される。
【0153】
有用性
経口経粘膜薬物送達は、鎮静および無痛を達成するために単一の薬物剤形を投与するための、単純な非侵襲的手段を提供する。経GI管のバイオアベイラビリティが乏しいものなどの一定の薬物や、麻酔前など、患者が経口薬を摂取できない状況では、経口経粘膜送達が、薬物が嚥下される従来の経口投与の方法にまさる大きな利点を提供する。
【0154】
本明細書に記載の経口経粘膜剤形は、処置時の鎮静および無痛のための、オピオイド(スフェンタニル等)とベンゾジアゼピン(例えばトリアゾラム等)との組み合わせの送達に有用である。本明細書に記載の小体積経口経粘膜剤形は、高い相対的AUC0―last、Tmaxの低い可変性、Cmaxの低い可変性およびAUCの低い可変性を提供する。本明細書に記載の複合薬物の鎮静効果は、相加的または共働的薬力学的効果の結果であり得、および/または、複合製剤のオピオイドおよびベンゾジアゼピン成分の異なる発現および消失時間に起因しうる。
【0155】
トリアゾラムおよびミダゾラム等のベンゾジアゼピン類が処置時の鎮静のために使用されているが、研究により、250mcgを上回る経口投与量のベンゾジアゼピン類が投与されると、一次的な健忘症が残りやすいことが示されている。トリアゾラムは、短時間作用性のベンゾジアゼピンであるが、眠気、精神運動および認知機能障害等の「二日酔い」効果を伴って、翌日になっても障害が残り得、いずれも使用者の安全運転能力等を損ないうる(Vermeeren A.,2004,CNS Drugs.18(5):297‐328)。トリアゾラム等のベンゾジアゼピン類が、健常な高齢者においては、同じ用量を受けた若年者よりも強い鎮静およびより大きな精神運動機能の障害を引き起こすことも示されている(Greenblatt等、1991)。したがって、例えばトリアゾラムの鎮静特性を増強しうるスフェンタニル等の別の薬剤を加えることにより、この薬剤の用量を最小限にすることが重要である。
【0156】
本明細書に記載の結果は、スフェンタニルおよびトリアゾラムの組み合わせの経口経粘膜送達が、ヒト臨床試験において、警戒した覚醒した対象を鎮静するのに有効だったことを示す。RASS鎮静スコアの全AUCにより測定される鎮静の量は、スフェンタニルとトリアゾラムの組み合わせで、同用量のスフェンタニル単独よりも大きかった。それ故、スフェンタニルとトリアゾラムの組み合わせは、スフェンタニル単独よりも強い鎮静をもたらしたが、無痛の継続時間は延長されず、両方の処置において約4時間だった。
【0157】
請求される複合薬物は、剤形の楽で安全な性質により、この療法の様式が小さな子供に受け入れられ易くなり、薬物が確実に経粘膜で送達されるため、小児科使用において特に有用である。具体例には、特にIVアクセスが利用不可能または不都合であるとき、子供がNPO(経口摂取禁止)である場合、または薬効の迅速な発現が必要な場合の、医療もしくは歯科処置または緊急時に関係する鎮静および無痛が含まれるがこれに限定されない。
【0158】
本発明の剤形は、獣医の場面でも有用である。具体例には、任意の急性状態の処置、IV投与が容易に利用可能でなくまたは不都合である医療または歯科処置、例えば処置時の鎮静および無痛、不安/応力/疼痛緩和等が含まれるがこれに限定されない。
【0159】
本明細書に記載の全ての刊行物は、本発明と関連して使用されうる刊行物に記載される組成物および方法論を記載および開示するために引用される。本明細書に論議される刊行物は、本出願の出願日よりも前に開示されたために提供されるにすぎない。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明の効力によりそのような開示に先行する権利がないことの承認と解釈されてはならない。
【0160】
以下の実施例は、本発明を示すために提供され、以上または以下の請求項に記載される本発明のいかなる態様を制限することも意図しない。
【実施例】
【0161】
実施例1.舌下スフェンタニルの第一相臨床研究
二つの異なる舌下スフェンタニル製剤が、侵食が遅い形(約15〜25分の浸食時間)と侵食が速い形(約6〜12分の浸食時間)とを含む第1相臨床試験において以前に評価された。患者が、μ―オピオイド受容体アンタゴニストのナルトレキソン(50mg経口一日二回)でブロックされた。米国特許出願第11/985,162号に詳述される研究において、時間に対するスフェンタニル血漿中濃度が分析され、表化された。最大血漿中スフェンタニル濃度(Cmax)、Cmax到達時間(Tmax)、曲線下面積(AUCinf)、Cmax、Tmaxおよびt1/2を含むFおよび消失半減期t1/2が、各用量群について評価された。関連の結果は、下表1Aおよび1Bにまとめられる。
【0162】
実施例1A:全ての対象が、10分間の5mcgスフェンタニルのIV注入を受けた。1日のウォッシュアウト期間の後、各対象が、2.5mcgのスフェンタニルを含む剤形(侵食が遅い製剤を含む)の舌下投与を一回受けた。その後二日間の研究日に、用量が増やされ、各対象が、5および10mcgのスフェンタニルを含む剤形(侵食が遅い製剤を含む)を受けた。
【0163】
実施例1B:全ての対象が、10分間隔で投与される5mcgのスフェンタニルを含む剤形(侵食が遅い製剤を含む)の舌下投与を四回繰り返して受けた。
【0164】
表1Aは、Cmax、Tmax、AUCinf、Fおよびt1/2を含む、薬物動態学的パラメータのまとめを提供する。複数回の舌下投与後のCmaxは、46.36pg/mLであった。一回の舌下投与と比較して、スフェンタニルの複数回の舌下投与により平均AUCinfは増加し、概ね用量と比例していた。
表1A.スフェンタニル薬物動態学的パラメータのまとめ
【表1A】

5mcg IV AUCを用いて計算された%F 。
【0165】
実施例1C:対象に、5mcgスフェンタニルの10分間のIV注入、10mcgのスフェンタニル(侵食が速い製剤)を含む剤形の一回の舌下投与、および、20分の間隔で投与される10mcgのスフェンタニル(侵食が速い製剤)を含む剤形の四回繰り返した舌下用量の投与が行われた。
【0166】
実施例1D:対象に、50mcgスフェンタニルの20分間のIV注入、および、80mcgのスフェンタニル(侵食が速い製剤)を含む剤形の一回の舌下投与が行われた。
【0167】
表1Bは、Cmax、Tmax、AUCinf、Fおよびt1/2を含む、薬物動態学的パラメータのまとめを提供する。
表1B.スフェンタニルの薬物動態学的パラメータのまとめ
【表1B】

5mcg IV AUCを用いて計算された%F 。
【0168】
実施例2:処置時の鎮静および無痛のための舌下スフェンタニルおよびトリアゾラムの第一相臨床研究
3つの異なる強度の錠剤を用いて舌下経路により投与されたスフェンタニルおよび/またはトリアゾラムの薬物動態および薬力学が、第1相臨床試験で評価された。実験デザインは、ランダム化された2コホート、5アームクロスオーバー、オープンラベル1日目および2日目、二重盲検3〜5日目、単回用量、絶食のデザインである。研究は、以下のように2コホートに分割された24人の正常な、健常の禁煙者男女を対象とした:コホート1:年齢範囲18〜60歳の12人の男女対象、およびコホート2:年齢範囲61〜80歳の12人の男女対象。
【0169】
研究は、各対象につき単一の7日間の研究期間に依存し、各コホートが:1日目:経口でHalcion(登録商標)(トリアゾラム)125mcg錠剤;2日目:5mcgスフェンタニルIV(ゆっくり注入)を受けた。コホート1は、3〜5日目にランダム化された盲検のデザインにおいて、10mcgのスフェンタニルおよび200mcgのトリアゾラム、15mcgのスフェンタニルおよび200mcgのトリアゾラム、または10mcgのスフェンタニル単独を含む舌下錠剤も受けた。コホート2は、3〜5日目にランダム化された盲検のデザインにおいて、10mcgのスフェンタニルおよび200mcgのトリアゾラム、10mcgのスフェンタニルおよび100mcgのトリアゾラム、または10mcgのスフェンタニル単独を含む舌下錠剤も受けた。各スフェンタニルおよびトリアゾラム剤形/錠剤の、製剤の画分(%)組成が、表2に示される。
表2:スフェンタニル/トリアゾラムの錠剤あたりの画分組成
【表2】

各強度のスフェンタニルおよびトリアゾラムの錠剤の、錠剤あたりの質量(mg)組成が、表3に示される。
表3:各強度のスフェンタニル/トリアゾラム錠剤の錠剤あたりの質量(mg)組成
【表3】

【0170】
10mcg強度のスフェンタニル錠剤の画分(%)および質量(mg)組成が、表4に示される。
表4:10mcgのスフェンタニル錠剤の画分および質量組成
【表4】

【0171】
以下のスケジュールにより例示されるように、一連の血液サンプルが研究の間にとられた:1〜5日目:投与前、および投与の約5、10、15、20、40、60、90、120、160、240、320、480、および640分後に一つのサンプルがとられた。
【0172】
以下を含む薬物動態学的(PK)パラメータが、スフェンタニルおよびトリアゾラムにつき計算された:AUC0‐last、Cmax、Tmax、t1/2および相対的AUC0‐last
【0173】
スフェンタニルおよびトリアゾラムの分析が、以下の方法に従って行われた。スフェンタニル、トリアゾラムおよび内部標準のフェンタニルおよびトリアゾラム‐D4が、有機溶媒への固相抽出により0.2mlのヒト血漿から抽出され、200mclの再構築溶液において再構築された。アリコートがHigh Performance Liquid Chromatographyシステムに導入され、TSQ Quantumタンデム型質量分析計を用いて検出され、ピーク比法を用いて定量された。スフェンタニルおよびトリアゾラムの分析は、Biovail Contract Researchで行われた。
【0174】
薬力学的(PD)パラメータが、鎮静スコア[RASS+4〜−5、および数値的評価スケール(NRS)0〜10を用いて評価された。RASSスコアおよびNRSスコアが決定され、各患者につき各投薬後のいくつかの時点で記録された。RASSは、鎮静の実質的に客観的な評価として用いられ、−5(目覚め不能)から+4(闘争的)のスケールを含み、患者を評価し、鎮静スコアを割り当てる手順を含む。数値的評価スケール(NRS)は、11ポイントNRSを用いた対象自身の鎮静の評価を提供し、患者に0〜10のスケールでその鎮静のレベルが尋ねられ、ここで0=覚醒し、警戒していると感じている、および10=眠っている、である。
【0175】
嘔気/嘔吐または呼吸鎮静に関連した有害事象は、この研究の間には、いずれの対象にも、研究薬のいずれの用量でも生じなかった。
【0176】
61歳未満だった対象におけるRASS鎮静(時間)の発現の分析結果が、表5に示される。
表5:RASS鎮静の発現(時間)の分析
61歳未満だった対象
【表5】

【0177】
61歳未満だった対象におけるRASS鎮静の全AUCの分析結果が、表6に示される。
表6:RASS鎮静のAUCtotalの分析:61歳未満だった対象。
【表6】

61歳未満であった対象における、RASS鎮静の全継続時間の分析結果が、表7に示される。
表7:RASS鎮静の全継続時間のAUCの分析:61歳未満であった対象
【表7】

【0178】
少なくとも61歳であった対象におけるRASS鎮静の発現(時間)の分析結果が、表8に示される。
表8:RASS鎮静の発現(時間)の分析
少なくとも61歳であった対象
【表8】

少なくとも61歳であった対象におけるRASS鎮静の全AUCの分析結果が、表9に示される。
表9:RASS鎮静評価のAUCtotalの分析:少なくとも61歳であった対象
【表9】

【0179】
少なくとも61歳であった対象におけるRASS鎮静の全継続時間の分析の結果が、表10に示される。
表10:RASS鎮静の全継続時間のAUCの分析:少なくとも61歳であった対象
【表10】

【0180】
61歳未満だった対象における、スフェンタニルの薬物動態学的分析の結果が、表11に示される。
表11:スフェンタニル薬物動態学的パラメータのまとめ:61歳未満だった対象
【表11】

データは、平均+/−SDとして記録される。
用量を5mcg IVスフェンタニルコンパレータに対して正規化することにより相対的AUC0‐lastの値が得られた。
【0181】
61歳未満であった対象における、トリアゾラムの薬物動態学的分析の結果が、表12に示される。
表12:トリアゾラム薬物動態学的パラメータのまとめ
61歳未満であった対象
【表12】

データは、平均+/−SDとして記録される。
用量を125mcgの経口トリアゾラムコンパレータに対して正規化することにより相対的AUC0‐lastの値が得られた。
【0182】
少なくとも61歳であった対象における、スフェンタニルの薬物動態学的分析の結果が、表13に示される。
表13:スフェンタニル薬物動態学的パラメータのまとめ
少なくとも61歳であった対象
【表13】

データは、平均+/−SDとして記録される。
用量を5mcgのIVスフェンタニルコンパレータに対して正規化することにより相対的AUC0‐lastの値が得られた。
【0183】
少なくとも61歳であった対象における、トリアゾラムの薬物動態学的分析の結果が、表14に示される。
表14:トリアゾラム薬物動態学的パラメータのまとめ
最低61歳であった対象
【表14】

データは、平均+/−SDとして記録される。
用量を125mcgの経口トリアゾラムコンパレータに対して正規化することにより相対的AUC0‐lastの値が得られた。
【0184】
以上は、明確および理解のために図と実施例により詳述されているが、当業者には当然のことながら、一定の変更および修正が行われうる。本発明の様々な態様が、一連の実験により達成されており、その幾つかは後述の非限定的な実施例として記載される。したがって、これらの記載および実施例は、添付の例示的実施形態の記載により詳述される本発明の範囲を制限するものと解釈されてはならない。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図3E】

【図3F】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
警戒し、覚醒した対象への経口経粘膜投与のための、固体剤形であり;
スフェンタニルとトリアゾラムとの組み合わせを含み、経口経粘膜投与の後に、該対象が鎮静される、固体剤形。
【請求項2】
前記剤形が、100mg、90mg、80mg、70mg、60mg、50mg、40mg、30mg、29mg、28mg、27mg、26mg、25mg、24mg、23mg、22mg、21mg、20mg、19mg、18mg、17mg、16mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mgおよび5mg未満からなる群より選択される質量を有する、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項3】
前記剤形が、約5マイクログラム(mcg)〜約50mcgのスフェンタニルを含む、請求項2に記載の固体剤形。
【請求項4】
前記剤形が、約100mcg〜約500mcgのトリアゾラムを含む、請求項2に記載の固体剤形。
【請求項5】
前記剤形が、約100mcg〜約500mcgのトリアゾラムを含む、請求項3に記載の固体剤形。
【請求項6】
前記固体剤形の対象に対する経口経粘膜投与の結果、全体的な平均変動係数が40%未満であるスフェンタニルのTmaxがもたらされる、請求項5に記載の薬物剤形。
【請求項7】
前記経口経粘膜投与が、舌下投与である、請求項1に記載の薬物剤形。
【請求項8】
前記経口経粘膜投与が、舌下投与である、請求項5に記載の薬物剤形。
【請求項9】
前記スフェンタニルとトリアゾラムとの組み合わせが前記対象に投与されたときに、同用量のスフェンタニルの単独投与と比較して、該対象への投与の後にRASS鎮静曲線下総面積(AUCtotal)が大きい、請求項1に記載の固体剤形。
【請求項10】
前記スフェンタニルとトリアゾラムとの組み合わせが前記対象に投与されたときに、同用量のスフェンタニルの単独投与と比較して、該対象への投与の後に曲線下総面積(AUCtotal)が大きい、請求項5に記載の固体剤形。
【請求項11】
前記スフェンタニルとトリアゾラムとの組み合わせが前記対象に投与されたときに、同用量のスフェンタニルの単独投与と比較して、該対象への投与の後にスフェンタニルの平均Tmaxが実質的に同じである、請求項5に記載の固体剤形。
【請求項12】
前記スフェンタニルとトリアゾラムとの組み合わせが前記対象に投与されたときに、同用量のスフェンタニルの単独投与と比較して、該対象への投与の後にスフェンタニルの平均Cmaxが実質的に同じである、請求項5に記載の固体剤形。
【請求項13】
前記対象への投与の後に、一時間未満で鎮静の発現が明らかである、請求項5に記載の固体剤形。
【請求項14】
投与の後に、前記鎮静の継続時間が4時間以下である、請求項5に記載の固体剤形。
【請求項15】
前記剤形の対象への経口経粘膜投与の結果、60%より大きいスフェンタニルの相対的AUC0‐lastがもたらされる、請求項5に記載の薬物剤形。
【請求項16】
前記剤形の対象への経口経粘膜投与の結果、70%より大きいスフェンタニルの相対的AUC0‐lastがもたらされる、請求項5に記載の薬物剤形。
【請求項17】
前記剤形の対象への経口経粘膜投与の結果、80%より大きいスフェンタニルの相対的AUC0‐lastがもたらされる、請求項5に記載の薬物剤形。
【請求項18】
前記剤形の対象への経口経粘膜投与の結果、変動係数が40%未満である、スフェンタニルの相対的AUC0‐lastがもたらされる、請求項5に記載の薬物剤形。
【請求項19】
鎮静を誘導するために有効な量であるが、呼吸の低下を誘導する用量未満であるスフェンタニルを含む、請求項5に記載の固体剤形。
【請求項20】
請求項5に記載の剤形を含む、単回用量アプリケータ(SDA)。
【請求項21】
請求項8に記載の剤形を含む、単回用量アプリケータ(SDA)。
【請求項22】
請求項12に記載の剤形を含む、単回用量アプリケータ(SDA)。
【請求項23】
対象の処置時の鎮静のための方法であり、請求項1に記載の剤形を対象に投与するステップを含み、該剤形の対象への投与の後に、該対象が鎮静される、方法。
【請求項24】
対象の処置時の鎮静のための方法であり、請求項5に記載の剤形を、警戒し、覚醒した対象に投与するステップを含み、投与の後に、該対象が鎮静される、方法。
【請求項25】
前記剤形が、100mg、90mg、80mg、70mg、60mg、50mg、40mg、30mg、29mg、28mg、27mg、26mg、25mg、24mg、23mg、22mg、21mg、20mg、19mg、18mg、17mg、16mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mgおよび5mg未満からなる群より選択される質量を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記剤形が、約5マイクログラム(mcg)〜約50mcgのスフェンタニルを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記剤形が、約100mcg〜約500mcgのトリアゾラムを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記剤形が、約100mcg〜約500mcgのトリアゾラムを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
対象の処置時の鎮静のための方法であり、
請求項5に記載の剤形を対象に投与するステップを含み、該剤形の対象への投与の結果、60%より大きい、スフェンタニルの相対的AUC0‐lastがもたらされる、方法。
【請求項30】
対象の処置時の鎮静のための方法であり、
請求項5に記載の剤形を対象に投与するステップを含み、該剤形の対象への投与の結果、70%より大きい、スフェンタニルの相対的AUC0‐lastがもたらされる、方法。
【請求項31】
対象の処置時の鎮静のための方法であり、
請求項5に記載の剤形を対象に投与するステップを含み、該剤形の対象への投与の結果、80%より大きい、スフェンタニルの相対的AUC0‐lastがもたらされる、方法。
【請求項32】
前記剤形の対象への経口経粘膜投与の結果、全体的な平均変動係数が40%未満である、スフェンタニルのTmaxがもたらされる、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記対象への投与の後に、スフェンタニルの平均Tmaxが、同用量のスフェンタニルがトリアゾラムの非存在下で投与されたときと実質的に同じである、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記対象への投与の後に、スフェンタニルの平均Cmaxが、同用量のスフェンタニルがトリアゾラムの非存在下で投与されたときと実質的に同じである、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記経口経粘膜投与は、舌下投与である、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記スフェンタニルとトリアゾラムとの組み合わせが前記対象に投与されたときに、同用量のスフェンタニルの単独投与と比較して、該対象の鎮静への投与の後に曲線下総面積(AUCtotal)が大きい、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記対象への投与の後に、最初の鎮静の発現が一時間未満で明らかである、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
投与の後に、前記鎮静の継続時間が4時間以下である、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
対象の処置時の鎮静のための方法であり、請求項5に記載の剤形を、該剤形の舌下スペースへの配置のためのハンドヘルド投与デバイスを用いて対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項40】
前記ハンドヘルド投与デバイスが、単回用量アプリケータ(SDA)である、請求項39に記載の方法。

【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2010−535805(P2010−535805A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520303(P2010−520303)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/072445
【国際公開番号】WO2009/021106
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(508202267)エーセルアールエックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】