説明

経皮水分蒸散抑制効果を有する油性化粧料

【課題】経時的な皮膚表面からの水分蒸散量の増加を抑制し、皮膚の保湿、保護力を増加させることが出来る油性化粧料の提供。
【解決手段】粘着性が35〜70gfである油剤とシリル化処理シリカ、更に海洋性コラーゲン、生体成分類似高分子等の保水性高分子を油性化粧料に配合する。生体成分類似高分子は望ましくはポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸アルキルとのコポリマー、ポリメタクリロイルオキシエチルグルコシド、メタクリロイルオキシエチルグルコシドと(メタ)アクリル酸アルキルとのコポリマー、ポリメタクリロイル−L−リジン及びメタクリロイル−L−リジンと(メタ)アクリル酸アルキルとのコポリマーから選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料に関し、更に詳細には油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の保湿は、皮膚のバリア能を高め、外部からの物理的、化学的刺激から守り、肌の様々なトラブルを防ぐのに有用な手段である。そのため、多くの化粧品メーカーが様々なアプローチにより、皮膚の保湿を高める取り組みを行っている。
【0003】
特に近年ではスキンケア化粧料の他、メークアップ化粧料、リップ等の様々な化粧料においても、皮膚の保湿性を向上あるいは維持の目的で、素材を組み合わせた化粧料が開発されるようになってきた。しかしながら、かかる口唇部においては、水分保持能の低下は、表皮の剥離など、重篤な症状に結びつきやすく、且つ、外観印象形成に大きな影響を与えるものであり、その対策は皮膚以上に重要であると言われている。
【0004】
通常この様な保湿のためには、多価アルコールの増量やヒアルロン酸ナトリウムやコンドイチン硫酸ナトリウムのような保湿性高分子を配合するなどの手段が取られているが、この様な手段に於いては、多価アルコールや保湿性高分子に由来するベタツキなどの使用性において、不快感が生じる等、使用感に問題が存する場合があった(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。この様な使用感を改善する方法としては、シリカのような微細な、摩擦抵抗の低い粉体を利用することが知られているが、この様な成分の摩擦抵抗の低下は化粧料の皮膚からの脱落を誘起したり、油性成分を吸着することによる肌荒れの促進も懸念された。
【0005】
この他、保湿を目的に化粧料に配合される組成物としてはNMF等がある。その他、ダメージを受けたり先天的な原因で角質細胞面積が小さくなっていた場合に角質細胞の面積を増大させ、角層強化によるバリア機能の向上を示す生体成分類似高分子としてはポリN−メタクリロイルリジンが知られている(特許文献3 )。
【0006】
一方、シリカによる皮膚表面からの化粧料の脱落を回避し、化粧料の使用性を向上せしめ、副次的効果により、保湿効果を付与する成分として、シリカの表面にシリル化処理を行ったシリル化処理シリカが用いられている。これは皮膚との親和性、水分の保持能に優れているため、皮膚保護化粧料の成分として有用であることが知られている(特許文献4)。しかしながら、その一方でシリル化シリカ含有油性化粧料に於いては、化粧料の皮膚からの脱落については、未だ改善の余地を残していたと言える、
【0007】
前記のポリN−メタクリロイルリジン以外に、保湿、しわの改善等の目的に配合される化粧料の組成物としては海洋性コラーゲンがある(特許文献5)が、水溶性であるが故に有効に使用できる剤形は、ローション、乳液、クリーム、エッセンスなどに限られていた。
【0008】
しかしながら、通常油性化粧料に於いては、コラーゲンや水溶性高分子は有効に含有させることが困難なことから、シリル化処理シリカとの併用により、著しく保湿性を高めるであろうことは推測だにされていなかった。
【0009】
【特許文献1】特開2004−107242号公報
【特許文献2】特開2004−99564号公報
【特許文献3】特開2007−302699号公報
【特許文献4】特開2006−219412号公報
【特許文献5】特開2006−193463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、皮膚からの経時的な水分の蒸散を防ぎ、表皮の剥離を抑制する、油性化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この様な実状に鑑みて、本発明者らは、化粧料に用いることの出来る組成物を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、1)粘着性が35gf〜70gfである油剤と、2)シリル化処理シリカを含有する油性化粧料がその様な特性を有していることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
(1) 1)粘着性が35gf〜70gfである油剤と、2)シリル化処理シリカを含有することを特徴とする、油性化粧料。
(2) 皮膚からの経時的水分蒸散量を防止する為の化粧料であることを特徴とする、(1)に記載の油性化粧料。
(3) 更に、保水性高分子を含有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の油性化粧料。
(4) 前記保水性高分子が、魚類由来のコラーゲンであることを特徴とする、(1)乃至(3)いずれか1項に記載の油性化粧料。
(5) 前記保水性高分子が、生体成分類似高分子であることを特徴とする、(1)乃至(4)のいずれか1項記載の油性化粧料。
(6) 生体成分類似高分子がポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸アルキルとのコポリマー、ポリメタクリロイルオキシエチルグルコシド、メタクリロイルオキシエチルグルコシドと(メタ)アクリル酸アルキルとのコポリマー、ポリメタクリロイル−L−リジン及びメタクリロイル−L−リジンと(メタ)アクリル酸アルキルとのコポリマーから選ばれる1種乃至2種以上であることを特徴とする、(1)乃至(5)のいずれか1項記載の油性化粧料。
(7)口唇用であることを特徴とする、(1)乃至(6)のいずれか1項記載の油性化粧料。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚からの経時的な水分の蒸散を防ぎ、表皮の剥離を抑制する、油性化粧料を提供することを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<1>本発明の油性化粧料の必須成分である油剤
本発明の油性化粧料は粘着性が35gf〜70gfである油剤を必須成分として含有することを特徴とする。粘着性は市販の粘着性試験機、例えば、ハンディー圧縮試験器KES-G5((株)カトーテック製)を用いて、測定部支持台上に試料を一定量の薄膜に調整し、固定することで測定できる。具体的には油剤を0.05〜5g/cm2となるように広げ薄膜として、粘着性試験機で測定することが好ましく、0.05〜0.5/cm2が更に好ましい。更に、人工皮革に油剤を塗布し、薄膜としたものを、SENCE10、STROKE5の条件で測定することが好ましい。人工皮革としては 株式会社ビューラックスより市販されている「バイオスキン」が好ましい。測定に際して作成する薄膜は、0.5milに調整することが好ましく、この様な厚さの薄膜は例えば「ドクターブレード」などを用いて調整することが出来る。かかる薄膜を、前記の機器により測定された粘着性が、35gf〜70gfである油剤としては、ショ糖テトライソステアレートのようなショ糖脂肪酸エステル(クローダジャパン株式会社、クロデスタ4−IS)、イソブチレンのコポリマー(日本石油化学株式会社の「ポリブテンHV−300F」等)等が例示出来、中でも、ショ糖テトライソステアレートが好ましい。粘着性が30gf以下であると化粧料の肌への密着が低下し、経時的な経皮水分蒸散量の増加を抑制する効果が持続しない場合があり好ましくない。また、70gf超では粘着性によるベタツキ感等が発生し、油性化粧料の使用感の低下を生じる場合があり好ましくない。また、本発明の油性化粧料に於ける粘着性油剤の含有量は1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%である。更には、最終的な油性化粧料における前記粘着性が、35〜50gfであることが好ましい。
【0014】
<2>本発明の油性化粧料の必須成分であるシリル化処理シリカ
本発明の油性化粧料は必須成分としてシリル化処理シリカ(以下、単にシリル化シリカと言う)を含有する。該シリル化シリカは、その表面が1乃至2つ以上の炭素数1〜5のアルキルオキシ基を有するシリル基で修飾された構造を有することを特徴とする。炭素数1〜5のアルキルオキシ基としては、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチル基等が例示でき、好ましくはメチルオキシ基である。
また、該シリル化剤は1〜3個のアルキルオキシ基を有する事が可能であり、シリカ表面を1〜3個のアルキルオキシ基を有するシリル基で修飾がする事が可能であるが、3個のアルキルオキシ基を有するシリル基で修飾がする事が好ましく、特にトリアルキルオキシ基修飾シリル基での修飾が好適に例示できる。かかるシリル化剤における、アルキル基としては炭素数6〜30のアルキル基が好ましい。この様なシリル化シリカは、本発明の油性化粧料に於いて、水溶性の高分子成分を安定に均一に保持させる効果、皮膚からの水分蒸散量を抑制する効果及び油性化粧料におけるべたつきの発現を抑制する効果を有する。
【0015】
シリル化シリカの粒径は、3μm〜30μmであればよく、特に13μm〜20μmであることが好ましい。これは小さすぎると、シリル化の効果が充分ではない場合が存し、大きすぎると水分蒸散抑制効果が損なわれる場合が存するためである。
【0016】
シリル化シリカの化粧料における含有量は、本発明の油性化粧料化粧料中に0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%である。配合量が0.01質量%未満では本発明の油性化粧料の効果を十分に発揮するのが困難であり、一方、10質量%超ではべたつき感等の使用感が悪くなる場合が存し好ましくない。
【0017】
シリル化シリカは、シリカ表面を相当するアルキルオキシ基を有するシリル化剤により常法に従って表面処理することによりにより調製可能であるが、市販品も存在するので、そのような市販品を用いることも可能である。市販品としては「DOW CORNING VM-2270 AEROGEL FINE PARTICLES 」(東レ・ダウコーニング社製)、「アエロジルRY300」(日本アエロジル株社製)などが例示出来る。
【0018】
<3>本発明の油性化粧料に好ましく含有される保水性高分子
本発明の油性化粧料は口唇部に適用されるべきことが好ましく、前記の必須成分を含有し、保水性高分子を好ましく含有する。前記保水性高分子としては、大凡、1)コラーゲン乃至は加水分解コラーゲン、及び、2)生体成分類似高分子の2種に大別することが出来、本発明ではこれらのどちらか一方乃至は両方を含有することが好ましく、より好ましいものは両方を含有する形態である。かかる保水性高分子は、通常油性化粧料に於いては、グリセリンなどの多価アルコールの存在下乃至はソルビタン脂肪酸エステルなどの存在下でないと均一に存在するように含有させることが困難であるが、本発明の油性化粧料に於いては、前記必須の構成を採用することにより、ソルビタン脂肪酸エステルや多価アルコールの存在なしにかかる成分を含有させることが出来る。これにより、多価アルコールの配合によって生じやすくなる、発汗やブルーミングなどを抑制させることもできる。
前記コラーゲン乃至はその部分加水分解物としては、基源が海洋性動物である、コラーゲンが好ましく例示でき、具体的には、魚類等の海洋生物の組織から得られるコラーゲンであることが好ましい。該コラーゲン類 としては、例えば魚類(例えば、ヒラメ、サケ、イワシ、マグロ、金目鯛、タラ、サメ等)、クラゲ、軟体動物、甲殻類等の海洋動物から得られるコラーゲンやその加水解物等が挙げられる。これらのコラーゲンの内では、魚類由来のものが特に好ましい。コラーゲン抽出部位は、皮、浮き袋、骨、腱等、コラーゲンを含む部位であれば特に限定されるものでなく、任意の部位を用いることができる。
【0019】
前記コラーゲン の抽出・精製は、常法により行うことができ、具体的には、例えば、皮、浮き袋、骨など、コラーゲンを含有する組織を粉砕した後、水洗、希塩溶液による抽出、酸若しくはアルカリ溶液による抽出、ペプシン,トリプシンやヒアルロニダーゼ等の酵素により抽出して、塩析や透析等の公知の精製手段を施して、コラーゲンを精製して得ることができる。また、「PANCOGEN MARIN」(登録商標;GATTEFOSSE社製)、「マリンジェンSP−03(PF)」(登録商標;新田ゼラチン株式会社製)等、市販品を用いることも可能である。
【0020】
前記コラーゲンの含有量は、本発明の油性化粧料中に0.0001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.0001〜10質量%である。配合量が0.0001質量%未満ではコラーゲン による効果を十分に発揮するのが困難であり、一方、50質量%超では、ベタツキ感等が生じ、油性化粧料の使用性が低下する場合があり好ましくない。
【0021】
前記生体成分類似高分子は、オキシエチルホスホリルコリン等のホスホリルコリン基を有するモノマーを構成モノマーとするホモポリマー乃至はコポリマー、オキシエチルグルコシル基のような糖残基を有するモノマーを構成モノマーとするホモポリマー乃至はコポリマー、アミノ酸残基を有するモノマーを構成モノマーとするホモポリマー乃至はコポリマー等が例示できる。オキシエチルホスホリルコリン基を有するモノマーとしては具体的には、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが、オキシエチルグルコシル基を有するモノマーとしては具体的にはメタクリロイルオキシエチルグルコシドが、アミノ酸残基の例としては、アラニン、グルタミン、リジン、アルギニンなどのアミノ酸やペプチド類の残基が挙げられるが、L−リジン残基が好ましく、具体的なモノマーとしてはメタクリロイル−L−リジンが例示できる。これらのモノマーと共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルが例示でき、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n―ブチル、(メタ)アクリル酸イソ―ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが例示できる。これらの単量体の内、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと共重合させるモノマーとしては、メタクリル酸n−ブチルが特に好ましい。メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸アルキルの共重合体に於けるモノマーの組成比は95:5〜40:60であることが好ましい。これより、(メタ)アクリル酸アルキル組成比が少なくなると、コポリマーとした場合の親水性が高くなり、油性化粧料に配合困難になる場合があり好ましくない。また、逆に多くなると、親水性が低下し、水への馴染みが少なくなり、油性化粧料の経時的な経皮水分蒸散量の増加を抑制する効果が低下する場合があり好ましくない。
生体成分類似高分子は、前述のモノマーを常法により重合させることにより得られが、市販品も多く存在するので、このよう市販品を入手して使用することも可能である。メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンホモポリマーの市販品としては、「Lipidure−HM」(登録商標;日本油脂社製)が、また、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸n−ブチルのモル比が、およそ80:20であり、平均分子量が100,000〜1,000,000のコポリマーの5%水溶液としては、「Lipidure−PMB」(登録商標;日本油脂社製)が例示できる。平均分子量、10,000〜1,000,000のメタクリロイルオキシエチルグルコシドのホモポリマーの水溶液としては「P−GEMA−S」(日本精化株式会社製)が、メタクリロイル−L−リジンのホモポリマーとしては平均分子量は1,000〜200,000のポリメタクリロイル−L−リジン(岐阜セラック製造所製)が好適に例示できる。これらの生体成分類似高分子 の油性化粧料中での含有量は、0.0001重量%〜5重量%が好ましく、0.001重量%〜1重量%が更に好ましく、0.001重量%〜0.3重量%が特に好ましい。
【0022】
<5>本発明の油性化粧料
また、本発明の油性化粧料は、これら上記の成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。このような任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類などが好ましく例示できる。
【0023】
任意成分の内、好ましいものとしては例えば、ダイマー酸のジエステルが好ましく例示できる。ダイマー酸は、炭素数18の不飽和脂肪酸を2量化して得られる炭素数36の(二重結合を持った)脂肪族2塩基酸である。炭素数18の不飽和脂肪酸は、大豆等の植物から得られるオレイン酸、リノール酸を主体とするものが好ましく、ダイマー酸の構造としては、ダイマージオレイン酸、ダイマージリノール酸である。ダイマー酸は、「ダイマー酸」として市販されており、本発明では市販品を用いることができるが、市販品はかなり多くの化合物の混合物であるが、分子構造中に1個の環状構造を有した炭素数36の脂肪族2塩基酸を主成分としている。かかるダイマー酸は、そのままジエステルへ誘導することも出来るし、不飽和結合を一部乃至は全部の水素添加で飽和結合へ部分的或いは完全に誘導して水素添加物に変えた形で使用することも出来る。ダイマー酸のジエステルを構成するアルコール部分としては、通常化粧料で使用されている高級アルコール、ダイマー酸を還元して得られるダイマーアルコールなどが好適に例示できる。前記高級アルコールにはコレステロールや、フィトステロールなどの脂肪族環状アルコールも包含する。ダイマー酸とアルコールを縮合しジエステルへ誘導する方法としては、ダイマー酸を塩化チオニルなどでハロゲン化し、しかる後にアルカリ存在下縮合することにより製造できる。この様なダイマー酸のジエステルの内、好ましいものを例示すれば、例えば、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、水添ダイマージリノール酸ジイソステアリル、ダイマージリノール酸ジフィトステリル、水添ダイマージリノール酸ジフィトステリル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、水添ダイマージリノール酸ジベヘニル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、水添ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル等が例示できるし、混合アルコールエステル、例えば、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)の様な形態を取ることも好ましい。この様なダイマー酸のジエステルには市販品も存し、かかる市販品を購入して使用することも出来る。この様な市販品としては、例えば、ダイマージリノール酸ジ(フィトステリル・イソステアリル・セチル・ステアリル・ベヘニル)である、プランドゥール(日本精化社製;Plandool−S、Plandool−H)、水添ダイマージリノール酸イソステアリル/フィトステリルであるラスプランPI−DA(LUSPLAN PI−DA;日本精化株式会社製)、水添ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルであるラスプランDD−DA5(LUSPLAN DD−DA5;日本精化株式会社製)、水添ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルである、ラスプランDD−DA7(LUSPLANDD−DA7;日本精化株式会社製)等が好適に例示できる。かかる成分は、本発明の経表皮水分蒸散抑制効果を高める作用を有する。この様な効果を奏するためには、ダイマー酸のジエステルの含有量は、8〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。

【0024】
本発明の油性化粧料は、これらの成分を常法に従って処理することにより得ることができる。本発明の油性化粧料は毛髪用、口唇用、顔面用、ボディ用等に用いることが出来、特に限定はないが、好ましくは口唇用であり、スキンケア、メークアップ化粧料として使用できる。剤形も特に限定されるものではないが、具体的には、ペースト、油性ジェリー、軟膏、パック、オイルゲルなどが好適に例示でき、油性ジェリー、オイルゲルが好ましい。前記の如くに口唇部に適用される場合が特に著しい効果を発揮する。

【0025】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみに限定されないことは言うまでもない。

<実施例1>
【0026】
以下に示す処方に従って、本発明の油性化粧料を調製した。すなわち、表1のロ成分を攪拌混合した後、ディスパーを用いてイ成分をロ成分の紺物中に分散して、本発明の油性化粧料である、流動性を有する油性ジェリーAを得た。

【0027】
【表1】


<実施例2〜3><比較例1〜2>
【0028】
油性ジェリーAのシリル化処理シリカをダイマージリノール酸(イソステアリル・フィトステリル)に換えて、前記と同様に油性ジェリーBを調製した。また、コラーゲンをダイマージリノール酸(イソステアリル・フィトステリル)に換えたものを油性ジェリーC、ポリ(メタクリロイルホスホリルコリン/メタクリル酸nブチル)5%水溶液をダイマージリノール酸(イソステアリル・フィトステリル)に換えたものを油性ジェリーDとした。さらにシリル化処理シリカ、コラーゲン及びポリ(メタクリロイルホスホリルコリン/メタクリル酸nブチル)5%水溶液をダイマージリノール酸(イソステアリル・フィトステリル)に変えた油性ジェリーEを調製した。油性ジェリーC、Dは本発明の油性化粧料であり、油性ジェリーB、Eは本発明の油性化粧料に含まれない。
<試験例1>
【0029】
油性ジェリーA〜Eを唇に塗布し、塗布直後、塗布後2時間後に於ける経皮水分蒸散量の変化をTEWAメーター(サイクロン水分蒸散モニター AS・CT1/DAQ ASAHI BIOMED製)を用いて測定した。以下の式を用いて塗布2時間後の経皮水分蒸散量の変化率(以下単に「変化率」という)を求めた。
変化率(%)=塗布後2時間後の水分蒸散量/塗布直後の水分蒸散量×100
その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2の通り、本発明の油性化粧料である油性ジェリーA,C,Dは本発明の油性化粧料に含まれない油性ジェリーB,Eと比較して、塗布2時間後に於けるTWLの上昇率が少なく、経時的経皮水分蒸散量抑制効果が認められた。また、油性ジェリーAの効果が著しく高く、シリル化処理シリカに加え、コラーゲン、粘着性油剤、生体成分類似高分子の全てを含有することにより、顕著な経時的経皮水分蒸散量抑制効果が得られることも確認された。この様な変化は、シリル化シリカの経表皮水分蒸散抑制効果に加えて、かかる成分による保水性高分子の分散均一性の改善効果も存するものと推察する。
<実施例4>
【0032】
以下に示す処方に従って、本発明の油性化粧料を調製した。すなわち、表3のハ成分をボールミル中にて粉砕分散させた。イ成分を90℃以上に加熱し溶解させた後、良く混合した。温度を保ちながら、ロ及びハを添加し、攪拌混合した。さらにハを添加し良く混合した後、混合物を金型に充填し、5℃に冷却して本発明のリップスティックFを得た。
【0033】
【表3】

<実施例5〜7><比較例3>
【0034】
リップステイックFのシリル化処理シリカを2−エチルヘキサン酸セチルに換えて、前記と同様にリップステイックGを調製した。また、海洋性コラーゲンを2−エチルヘキサン酸セチルに換えたものをリップスティックH、ポリメタクリロイル−L−リジン20%水溶液を2−エチルヘキサン酸セチルに換えたものをリップスティックIとした。リップスティックF,H,Iは本発明の油性化粧料であり、リップスティックGは本発明の油性化粧料に含まれない。
<試験例2>
【0035】
リップスティックF〜Iを唇に塗布し、試験例1と同様に塗布2時間後に於ける変化率を求めた。結果を表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
表4より明らかなように、本発明の油性化粧料であるリップスティックF,H,Iは本発明の油性化粧料に含まれないリップステイックGと比較して、塗布2時間後に於けるTWLの上昇率が少なく、また、油性リップスティックFの効果が著しく高い。このことから、油性ジェリーからリップスティックのようなオイルゲルへと剤型としても、本発明の油性化粧料が経時的経皮水分蒸散量抑制効果に優れ、シリル化処理シリカに加え、海洋性コラーゲン、シリル化処理シリカ、粘着性油剤、生体成分類似高分子の全てを含有することにより、顕著な経時的経皮水分蒸散量抑制効果が得られることが確認された。

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、油性化粧料として応用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)粘着性が35gf〜70gfである油剤と、2)シリル化処理シリカを含有することを特徴とする、油性化粧料。
【請求項2】
皮膚からの経時的水分蒸散量を防止する為の化粧料であることを特徴とする、請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
更に、保水性高分子を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の油性化粧料。
【請求項4】
前記保水性高分子が、魚類由来のコラーゲンであることを特徴とする、請求項1乃至3いずれか1項に記載の油性化粧料。
【請求項5】
前記保水性高分子が、生体成分類似高分子であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の油性化粧料。
【請求項6】
生体成分類似高分子がポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと(メタ)アクリル酸アルキルとのコポリマー、ポリメタクリロイルオキシエチルグルコシド、メタクリロイルオキシエチルグルコシドと(メタ)アクリル酸アルキルとのコポリマー、ポリメタクリロイル−L−リジン及びメタクリロイル−L−リジンと(メタ)アクリル酸アルキルとのコポリマーから選ばれる1種乃至2種以上であることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の油性化粧料。
【請求項7】
口唇用であることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の油性化粧料。


【公開番号】特開2010−1234(P2010−1234A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160285(P2008−160285)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】