説明

経粘膜伝達用組成物材料

本発明は、唾液と接触した際における生理活性物質の口内での迅速な経粘膜伝達を意図された組成物材料に関する。該組成物材料は、少なくとも一種の生理活性物質をイオン結合により有する、少なくとも一種のイオン炭水化物と、少なくとも一種の湿性で不溶性のポリマー炭水化物とを含む。本発明はまた、該組成物材料の製造方法に関し、これは(a)少なくとも一種のイオン炭水化物に対する少なくとも一種の生理活性物質のイオン結合を許容するpHを有する溶剤中の、少なくとも一種の生理活性物質と少なくとも一種のイオン炭水化物との混合物を提供する工程と、(b)イオン結合を生じさせるに十分な間、溶剤中で混合物を混合する工程と、(c)溶剤から混合物を回収する工程とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経粘膜伝達用の組成物材料に関する。さらに特に、本発明は、生理活性物質の口内における高効率な経粘膜伝達用の組成物材料、該組成物材料を含有する袋(pouch)並びに該組成物材料または該袋用の包み(envelope)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生理活性物質に関する経粘膜伝達システムについてますます広範囲に研究が行われている。かかるシステムは、生理活性物質に対し、経口、皮膚または静脈内伝達システムにおいてさえ見出されない利点を有していると考えられている。不十分な経口生理活性ゆえに不便な静脈投与を余儀なくされる活性剤は、経口粘膜組織を介して伝達されるための特別候補である。
【0003】
上部歯茎における口腔の頬領域および頬の内部領域は、皮膚自体より透過性のある伝達障壁を提供して個々の間での変動を小さくする傾向がある。口腔粘膜は薄くかつ透過性である。口内粘膜は鼻粘膜よりも刺激に対する感度が低く、このことは、口内伝達を患者に対しより許容可能なものとする。患者が、伝達される投与量が不確実である鼻経粘膜伝達を実施した後、鼻粘膜の腫れや多量の分泌液がある場合に、しばしばウイルス感染物質を保有することは、とりわけ明らかである。このことは、口内経粘膜伝達を特に魅力的なものとする。
【0004】
この経路を用いる他の利点は、肝臓内における物質の一次パス代謝が避けられることである。さらに、胃のより高い酸性状態や、蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)およびそれらの酵素前駆体(チモーゲン)による影響が避けられる。後者は腸内で作用するものであり、種々の生理活性物質を失活させ、また、分解することが知られている。
【0005】
経粘膜伝達の主要な利点は、しかしながら、生理活性物質が血流内に直接吸収されて、体内への物質の急速な取り込みを許容しうる点である。さらに、血流に対する経粘膜伝達により、一次パス肝臓代謝による活性物質の損失がない。かくして、経粘膜伝達システムによって、より速い吸収のための口腔粘膜を介した迅速な通過がもたらされる。
【0006】
口内粘膜は平滑筋と相対的に固定された頬の広範囲を有する。このことは、経粘膜伝達システムのために望ましい部位を形成する。それゆえ、口内粘膜は、より透過性の低い分子の伝達と同様に、継続した伝達の適用のためにより好適であると考えられる。
【0007】
しかしながら、生理活性物質の急速な放出はしばしば、その投与直後であることがより好ましい。例えば、活性物質の急速な放出は、鎮痛作用の急速な開始を達成する目的で、特に鎮痛薬に対して決定的に重要である。同様に、不規則な睡眠や吐き気に苦しんでいる人々は、生理活性物質が投与された際の迅速な作用の開始を必要とする。他の生理活性物質としてニコチンがあり、人々はむしろ服用してすぐの効果を好む。
【0008】
喫煙に対してしばしば用いられる選択肢は、特にスカンディナヴィア地方および米国においてであるが、タバコから作られたかぎタバコの使用や、二者択一的に特に米国では、噛みタバコの習慣である。噛みタバコは茎を取り除いたタバコの葉からなる。それは、長く撚られた形状のタバコとして製造される。噛みタバコは、頬と歯茎との間に置くことのできる小さな袋の中でも使用できる。かぎタバコは、一方、乾燥され、かつ、粒状化されるかまたは微細に切断された純粋なタバコの葉からなる。これら煙を出さないタバコ製品には、様々な甘味料や調味料が添加される。
【0009】
若干の人々はかぎタバコをかぐことを好むが、多くの消費者は、湿った粉末とともに缶から一つまみのかぎタバコ(2〜3ml)を取って、唇または頬と歯茎との間にそれを置いて、その上を吸う。湿ったかぎタバコもまた、同様に置けるように一人分が詰められた袋として製造される。微細な粒状タバコの舌触りを楽しんでいる間に、ニコチンはタバコから抽出されて使用者の粘膜に伝達される。
【0010】
一人分が詰められた袋は、バラのかぎタバコよりも口内粘膜に対するダメージが少ないと考えられる。しかしながら、大量のかぎタバコを消費する人々は露出した粘膜の炎症や歯周炎(歯根膜炎)の兆候を示すことが報告されている。
【0011】
加えて、湿ったかぎタバコの摂取というスウェーデンの伝統は、多くの人々が強い不快な匂いとして経験し、若干の人々には敏感であるように感じられる結果となる。さらに、一つまみのまたは一人分のかぎタバコは、行儀が悪く見えるかもしれないような膨らんだ顔の外観に帰着する。そのうえ、かぎタバコは、長期の使用の間に口腔から汚れた液体を漏れ出させる傾向がある。その後に取り出してトイレ、洗面台等の中に投げ捨てたときには、魅力のないタバコの現場が取り残されるかもしれない。
【0012】
噛みタバコやかぎタバコが、有害な物質、例えば、揮発性のまたは不揮発性のニトロソアミン、タバコ固有のN−ニトロソアミン、多核芳香族炭化水素、およびポロニウム210を、潜在的に含むことも、よく知られている。よって、かぎ煙草の消費者は、危険な薬物を摂取しているかもしれない。
【0013】
多くのタバコの代用品が、長い間に、医療品、即ち、ニコチン喫煙の抑止剤として開発され市場に売り出されている。これらの製品、例えば、経皮ニコチンパッチまたはチューインガムは、ニコチン代替セラピーにおいて使用される。
【0014】
ニコチンパッチ、即ち、経皮ニコチンシステムは、皮膚を介して、一服のニコチンの、一様な、比較的ゆっくりとした伝達を提供する。ニコチンガムは、ガムを噛んだ時に口腔粘膜を介して作用する、比較的速く作用する代替物の形態である。噛むことは唾液の分泌作用を刺激し、唾液を含むニコチンは喉の炎症を引き起こし、さらに、そのとき飲み込まれたニコチンは、一次パス肝臓代謝により失われる。加えて、長期の咀嚼は顎の不快感に帰着し、チューインガムは常に社会的には許容されず、また、噛むことは本質的に一定の文化の中では無作法であるとみなされる。
【0015】
ニコチン鼻スプレーは、鼻腔を通じて吸収されるが、ニコチンをより迅速に血流に伝達する。鼻スプレーは、ドロウアル(drawal)な兆候およびニコチンの渇望を即座に緩和するとされる。かかるセラピーは処方箋によってのみ入手可能である。ニコチンの吸入器は1998年に売り出され、現在では多くの国で処方箋なしで入手できる。
【0016】
特許文献1には、特に鼻の投与が予定された粉末状の薬剤組成物が開示されている。この組成物はニコチンおよび澱粉微小球を含み、鼻から投与したときに増大された薬物の生理利用能を示す。
【0017】
特許文献2中には、喫煙の代用組成物が開示されており、鼻、舌下または口内の投与が意図されている。この組成物にはニコチンが、シクロデキストリン化合物の包接化合物の形態で含まれる。このニコチンのシクロデキストリン包接化合物は、結合しているかまたは封入されるかしていなければ蒸発するというニコチンの性質を反映する。特許文献2の組成物には、食品または薬物的な使用が認められた添加物も含まれている。
【0018】
特許文献3には、薬物と、担体としての、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースおよび/またはナトリウムカルボキシメチルセルロースとを含む圧縮された医薬固形物単位の投薬形態が開示されている。この投薬形態は、この型の従来の製品よりも、より長期の放出様式を有するといわれる。
【0019】
経口ニコチンディスペンサーは、特許文献4に開示されており、これはニコチンおよび細片状の水に不溶なポリマー物質を含む。このポリマー物質は紙またはセルロース、例えば、セルロースアセテート、ポリエチレン、またはポリプロピレンであってよい。このディスペンサーは、噛むかまたは口内に置くことで、吸着されたニコチンを経口環境内にゆっくり放出させることができる。
【0020】
同様に、ゆっくり放出される組成物が、特許文献5中に開示されており、これは、ゴム基剤、緩衝剤、および合成カチオン交換体と結合したニコチンを含む錯体からなる。この錯体は、取り扱いおよび生産の間における特有の危険性の最小限化が容易であり、そのとき、潤滑油としても作用する。
【特許文献1】国際公開第95/12399号パンフレット
【特許文献2】国際公開第91/09599号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4,369,172号明細書
【特許文献4】米国特許第4,907,605号明細書
【特許文献5】米国特許第3,845,217号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、生理活性物質の迅速のみならずに緩徐な放出に対し適合する安全な組成物材料を提供することにある。
【0022】
また、本発明においては、体液に接した際に、生理活性物質の迅速かつ直接的に経粘膜伝達するための組成物材料の製造を提供する。生理活性物質を、例えば、口内の内面により吸収させ、これにより非経口的投与(即ち、注入)の薬物動力学を同様にする(mimicking)ことができる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本方法は、
(a)少なくとも1種のイオン炭水化物に対する生理活性物質のイオン結合を許容するpHを有する溶剤中の、該生理活性物質と該少なくとも1種のイオン性炭水化物との混合物を提供する工程と、
(b)イオン結合を生じさせるに十分な間、溶剤中で混合物を混合する工程と、
(c)溶剤から混合物を回収する工程と、
を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
混合物を得るために、生理活性物質を最初に溶剤中のイオン炭水化物に添加するか、あるいはその逆とすることができる。ついで、混合を、成分のイオン結合を生じるに十分な間、行う。
【0025】
溶剤は、生理活性物質の性質に左右されるのは勿論であるが、揮発親水性溶剤とすることができる。好ましい溶剤は、低温において揮発性のものであり、これにより生理活性物質に対する潜在的損傷作用が低減される。好ましくは、溶剤はエタノール、水またはこれらの混合物である。
【0026】
本発明の組成物材料は、幅広い炭水化物の組み合わせで使用することが意図され、これにより、該組成物中の個々の成分の性質を利用して有効な結合および口内の粘膜への適切な放出、即ち迅速のみならず緩徐な放出が得られる。
【0027】
イオン炭水化物は、イオンポリマー炭水化物またはイオンオリゴマー炭水化物とすることができる。オリゴマー炭水化物は、イオンポリマー炭水化物または合成炭水化物のオリゴマーとすることができる。イオンポリマーと同様にイオンオリゴマーの炭水化物は架橋されていてもよい。好ましくは、イオンポリマー炭水化物は天然由来のもとする。
【0028】
アニオンの場合には、炭水化物を天然有機カチオンの交換体とすることができる。高アニオン天然ポリマー炭水化物の例としては、カラゲーニン、アルギナート、十分に脱メチル化されたペクチン(ポリガラクツロン酸)、ヘパリン、ヒアルロン酸、コンドロイチンスルフェートがあり、これらは本発明に係る生理活性物質のイオン結合に有用である。より弱いカチオン交換体は、寒天、フルセララン(furcellaran)、キサンタン、ガムガッティ(gum ghatti)、ガムカラヤ(gum karaya)、ガムアラビカム(gum arabicum)並びに脱メチル化のより少ないペクチンである。ポリマー炭水化物のアニオン能力は、イオン結合する生理活性物質のカチオン強度に左右されるのは勿論である。ペクチンおよびアルギナートは、幅広いpH範囲、代表的にはpH2〜9の範囲にわたり、遊離COO-基により最も頻繁に現れる負電荷で得られるので、好ましい。
【0029】
アニオン炭水化物は、化学修飾することができ、即ち天然ポリマー炭水化物の誘導体とすることができる。かかる炭水化物の例は当業界では良く知られており、例えば、カルボキシメチルセルロース、セルローススルフェートおよびスルホプロピルセルロースとすることができる。あるいはまた、デキストランおよび澱粉を同様に誘導体化することができる。
【0030】
イオン結合させる生理活性物質の性質にもよるが、イオンポリマー炭水化物もカチオンの天然ポリマー炭水化物、例えば、キトサンとすることができる。
【0031】
同様に、カチオンの天然ポリマー炭水化物は、カチオン誘導天然ポリマー炭水化物、例えは、ジエチルアミノエチルまたはジエチル(2−ヒドロキシ−プロピル)アミノエチル誘導天然ポリマー炭水化物とすることができる。カチオン誘導すべき適当な天然ポリマー炭水化物はセルロースまたは澱粉である。
【0032】
負電荷の炭水化物への結合を実現するためには、生理活性物質は正電荷でなければならず、即ち、イオン結合に対し許容pHを得なければならない。潜在的生理活性物質がアニオン炭水化物の低いpH範囲よりも高いpKaを有する場合には、イオン結合に対し適当なpHを設定しなければならない。例えば、8.2のpKa値を有するニコチンが生理活性物質として使用される場合、結合に適した約7.0のpHを実現しなければならない。
【0033】
カチオン炭水化物を使用して反対の電荷の生理活性物質に結合させる場合に、pHにおいて対応するシフトが必要となる場合がある。
【0034】
イオン炭水化物への生理活性物質のイオン結合に対する許容pHを得るために、適当な量のpH調整剤を本発明の方法(工程a’)における混合物に含めることができる。好ましくは、pH調整剤は揮発性の酸、例えば、酢酸、蟻酸などである。他の適当なpH調整剤はクエン酸およびホスフェート緩衝剤である。
【0035】
また、pH調整剤は、上記のようなイオン炭水化物とすることもできる。この場合、pH調整剤として使用するイオン炭水化物は、生理活性物質の結合のために用いられる電荷と反対の電荷を有する必要がある。
【0036】
結合後、混合物を溶剤から回収する。これは、イオン炭水化物の性質およびこれにイオン結合する生理活性物質に依存して行われる。当業者に既知の種々の方法、例えば、遠心分離およびその後の凍結乾燥を適用することができる。しかし、好ましくは、混合物を蒸発し、乾燥する。この点に関し、乾燥なる表現は、水分含量が15%未満、好ましくは10%未満を意味するものとし、残留水分は主に結合水である。
【0037】
この手順では、溶剤および揮発性酸の双方が蒸発し、イオン炭水化物にイオン結合した生理活性物質が残留する。
【0038】
混合物は、少なくとも1種の湿性で不溶性のポリマー炭水化物を含み、その性質が主に非イオン性であることが好ましい。したがって、本発明の方法は、さらに、少なくとも1種の湿性で不溶性のポリマー炭水化物を混合物に添加する工程(a’’)を含む。
【0039】
この点に関し、不溶性なる表現は、ポリマー炭水化物が完全な母材(マトリックス)を有し、少なくとも1時間は溶解しないことを意味する。ポリマー炭水化物を、例えば、エピクロリドにより化学的に架橋させることにより、溶解が遅延されることになる。
【0040】
湿性または湿った、なる表現は、ポリマー炭水化物が、調製中の溶剤または、例えば、唾液との接触下で浸出中の体液のような水分または液体との接触において湿性、液体吸収および/または膨潤性であることを意味する。殆ど繊維状の炭水化物はこれら性質を保有する。
【0041】
湿性で不溶性のポリマー炭水化物を利用することにより、生理活性物質−イオン炭水化物に対しイオン結合する−を組成物材料構造体中に包含させることができる。この組成物材料を調製する場合、この材料は生理活性物質用の溶剤を、ポリマー炭水化物並びにその結合物質を有するイオン炭水化物の混ざり合った繊維により形成される細孔を介して吸い取ると考えられる。
【0042】
イオン炭水化物−化学修飾されているかまたはされていない−を、その溶解性とは無関係の酸形成基の数を変化させて使用することができ、これは、それが湿性で不溶性のポリマー炭水化物と混ぜ合わされていることによる。
【0043】
湿性で不溶性のポリマー炭水化物は天然の炭水化物、例えば、セルロース、ヘミセルロース、デキストラン、アガロース、または澱粉などとすることができる。天然の炭水化物が不溶性食餌繊維、例えば、ポテト、米、トウモロコシ、糖(sugar beat)、大豆から誘導されている場合に、有用である。
【0044】
イオン結合する生理活性物質に対するポリマー炭水化物共担体(co−carrior)として好適である他の繊維状セルロース材料は、木材および綿から得られる。市場で入手し得る材料の例には、セルロース詰綿(例えば、kimberly−Clark製Cellucotton(登録商標))、微結晶セルロース(例えば、FMC製AviCell(商標))、および濾紙材(例えば、Whatman製)がある。改質セルロース繊維、例えば、誘導綿もまたこれに関し使用することができる。
【0045】
湿性で不溶性のポリマー炭水化物は、通常、非イオン材として使用する。しかし、僅かではあるが、それ自身イオン交換作用を有し得る。かかる炭水化物の例として、寒天−寒天(agar−agar)、ポテト澱粉およびショテイ(shoti)澱粉がある。
【0046】
同様に、種々のポリマー炭水化物の吸着能力は、使用する生理活性物質にもよるが、利用することができる。さらに、生理活性物質の放出は、種々の不溶性ポリマー炭水化物の低いイオン交換特性のみならず、生理活性物質を吸着、吸収、または非特異的に結合する能力により、調整することができる。
【0047】
さらに、エタノールおよび/または水を有利に混合物に添加して、最終組成物材料の多孔性構造および組織を調整することができる。
【0048】
本発明において使用される炭水化物の好適な混合物は、ペクチン17−19%、セルロース27−30%およびヘミセルロース20−24%の混合物であり、これはポテト澱粉からの繊維富化残留生成物として入手することができる。
【0049】
この好適材料への生理活性物質の結合および放出はいくつかのパラメータに左右される。イオン/非特異的結合および拡散の制限は、好適材料に/中に吸着された該物質の制御された放出をもたらすと考えられる。制御された放出の一理由は、複合材料中に深く結合した活性物質を放出する生成物の遅延膨潤として説明することができる(図2参照)。
【0050】
例えば、<0.1mm〜2mmの粒度分布を有するか、またはその篩分け分を有するペクチンセルロースおよびヘミセルロース等を組み合わせた食餌繊維の複合形態により、迅速な開始(攻撃)と制御された放出との特異な組み合わせが説明され、これは、pH調整剤の添加および/または物質の種々の架橋度および/または添加複合材料mgあたりの活性物質の相対量により増幅させることができる。これは、口内の処方に対し特有である。
【0051】
さらに、当業界において既知の1または複数の浸透増加剤を混合物に含めることができる。かかる化合物は、生理活性物質の性質、例えば、その脂肪親和性または親水性、サイズおよび分子量にもよるが、経粘膜伝達速度を高める際に一助となる。浸透増加剤の例としては、胆汁酸、ジヒドロフシデート(dihydrofusidates)、イオンおよび非イオン界面活性剤、並びにキレート剤がある。
【0052】
本発明においては、乾燥組成物材料を、湿性で不溶性のポリマー炭水化物とともに、またはなしで本発明方法により回収することができる。
【0053】
特に、pH4および9の間に等電点を有する全ての生理活性物質は、本発明の組成物材料に使用することができる。好適な生理活性物質は、たんぱく質、ペプチド、アルカロイド、偏頭痛薬、催眠薬、鎮静薬、局所麻酔薬、鎮痛薬および精神障害治療薬である。また、刺激薬も使用することができる。他の有用な物質はニトログリセリンである。
【0054】
適当なペプチドの例としては、デスモプレシン、リプレシン、オキシトシン、ナファレリン(nafarelin)、ブセレリン(buserelin)、および成長ホルモンがある。
【0055】
好適なアルカロイドの例としては、ニコチン、コチニン(cotinine)およびロベリン(lobeline)、またはこれらの誘導体または塩並びにカフェインがある。麦角アルカロイドおよび5HT1−レセプター作用物質を偏頭痛薬、例えば、ゾルミトリプタンとして使用することができる。
【0056】
本発明における組成物材料は、口腔内面を介して効果的な吸収を促進する投与形態を提供する。生理活性物質の直接的吸収および迅速な攻撃が達成される。例えば、これを船酔いや睡眠障害に際して、また至急解毒薬が必要な場合に使用することができる。
【0057】
生理活性物質は全身に吸収させるか、あるいは近接組織構造に局部的に作用させることができる。例えば、麻酔薬を注射の代わりに本発明の組成物材料により歯科用に局部的に投与することができる。局部麻酔薬はリドカインまたはメピバカインとすることができる。
【0058】
遊離生理活性物質はそれ自身で、緩衝容量を添加することにより、また、例えば、唾液中のpHを安定化させることにより、pH調整作用を有する。しかし、本発明の方法は、さらにpH調整剤を回収された混合物に添加する工程(c’)を含むことが好ましい。混合物を乾燥させる際、pH調整剤もまた乾燥させる必要があることは勿論である。乾燥組成物材料を水と接触させる場合、pH調整剤を、蒸発させた混合物に含めるか、またはスラリーに含めて、長時間、即ち、1時間以上、高いpHを達成する。
【0059】
特に、アニオン炭水化物を使用する場合には、pH調整剤は、唾液のpHのような体液のpHよりも高いpKaを有する、生理的に相溶性のある緩衝剤が好ましい。イオン炭水化物から脱着するための安定なpH、即ち、生理活性物質のpKaと同等かそれ以上のpHは、例えば、カーボネートまたはホスフェート緩衝剤の添加により達成することができる。アンモニアも使用することができる。もし、より低いpHを適用可能であれば、酢酸またはクエン酸の二者択一とすることができる。
【0060】
有利なpH変化は、本発明の組成物材料で得られる。例えば、アニオンポリマー炭水化物を反対の電荷の生理活性物質と結合させるために使用する場合、最初に生理活性物質のpKa以下の低いpHを与える。この点では、イオン化形態が支配的であるため、弱塩基が溶解し、アニオンポリマー炭水化物に結合する。その後、pHが上昇して、生理活性物質のpKa以上で、かつ体液のpHよりも充分に高いpHとなった場合、イオン化されていた物質はその非イオン化形態に転化し、材料から脱着する。生体組織に対してより浸透性があるこの形態は膜の反発力を支配し、高い正味の負電荷はなくなる。したがって、生理活性物質の放出、およびその粘膜を介しての取り込みは、pH調整剤の割合を選択することにより制御することができる。
【0061】
さらに、本発明は、生理活性物質の経粘膜迅速伝達に関する組成物材料を提供する。本発明の組成物材料は、生理活性物質をイオン結合させる、少なくとも1種のイオン炭水化物と、少なくとも1種の湿性で不溶性のポリマー炭水化物と、を含む。この組成物材料が唾液と接触する場合、4〜9のpH、好ましくは5.4〜8.2のpHを有する必要がある。
【0062】
この組成物材料は、口腔において生理活性物質が経粘膜で迅速に伝達される投与形態が好適である。この組成物材料を、唇の下または頬と歯茎との間に置き、即ち、唇と歯茎の口腔粘膜への浸出により伝達させることができる。
【0063】
本発明は、生理活性物質の口腔における経粘膜伝達、即ち、その迅速な投与に関する主な根拠を利用するものである。本発明の組成物材料は、迅速瞬時、即ち即時の放出並びに持続された放出、即ち遅延放出の意味において、制御された放出に使用が意図されている。組成物材料は、短時間、好ましくは数秒または数分の内に効果的な投与を提供するに十分な量の生理活性物質を保持する必要がある。
【0064】
この組成物材料は、口内の唇粘膜と歯肉粘膜との間において、ある寸法にされ、保持されて、生理活性物質を、通常、対向する唇粘膜と歯肉粘膜の両方向の、少なくとも2方向に放出する。この組成物材料は、唇または頬との間の歯茎上に置くか、または口腔のいずれの側にも置くことができる。一旦、口腔内に置くと、生理活性物質は、局部的適用または血流中への流入のために粘膜に迅速に放出される。このことは、組成物材料中に含まれる生理活性物質が1以上の側または同じ側の面から、即ち、通常は両方向に浸出することにより伝達されることを意味する。対向する粘膜への2方向伝達により伝達速度が上昇する。
【0065】
組成物材料は、初期の乾燥時と、口腔内の粘膜との直接接触において口腔内の組織への適合のために湿り、かつ/または膨潤したときの双方において、充分に柔軟である。組成物材料を有意な圧力なしに適用することができる。これは、唇粘膜と対向する歯肉粘膜との間に、唯一その寸法および配置により残留する。この方法においては、組成物材料を、唇粘膜および歯肉粘膜との間に接着させることなしに、また実質的な移動および偶発的膨潤の危険を伴うことなしに、長時間にわたり好適に残留させることができ、同時に、粘膜との接触および口腔内のいたるところに存在する多量の唾液との接触から護られることになる。
【0066】
生理活性物質の浸出による唇下での迅速な経粘膜伝達用の組成物材料は、シート、ディスク(円盤)、楕円(長円)、腎臓形状、シリンダー(円柱)、ストリップ(細片)、分離断片、または粒状物のような形態とすることができる。最後の3つの形態は、好ましくは、柔軟な液体透過性材料からなる袋の中に詰められる。他の形態は、生理活性物質用の伝達システムとしてのチューインガムで用いることができる。錠剤、丸薬、カプセル、および薬用ドロップも、口内での伝達用に使用可能である。
【0067】
袋/錠剤等を口内の歯茎のくぼみに置くことの一般的な利益は、生理活性物質の頬領域の他の部分への非常に限られた拡散しか生じないことである。それらを、例えばニコチンチューインガムや薬用ドロップと比較した場合、大量の活性物質が唾液内に拡散し、飲み込まれ、口内粘膜には有効でないことはとりわけ明らかである。このことは、噛んでいる間の口内の、例えば、ニコチンの強い味により、疑いなく明らかである。
【0068】
例えば、シート形態においては、好ましい形状はストリップを含み、他の形状も使用できるが、これは口内での形状と一致する。長さは5〜40mm、好ましくは15〜30mmとすることができる。好適寸法は1×2mm〜10×20mmである。厚みは、5mm未満、例えば0.5〜3mmの間、好ましくは1〜2mmの間である。もちろん、長さおよび厚みは、急速に放出される物質に合わせて変えることができる。あるいはまた、組成物材料は、微細な網目状ガーゼの断片に切断され、これは詰められたとき拡散に好適な微細な弾力のある網状組織を形成する。
【0069】
シートとしての組成物材料または該組成物材料を含む袋は、消費者の歯茎の外郭表面および隣接する柔軟な組織に順応させることができるような厚みおよび曲げスティフネスを有するよう作製される。本発明による組成物材料は、粘膜組織の高い水分含量を利用して、同材料への固体考案物の粘着作用という困難を避ける。この発明材料は、体液と接触した際に生理活性物質の急速な放出を引き起こすのに適している。この物質は全身に吸収させるか、または、隣接する組織に局所的に効果を及ぼすことができる。
【0070】
シートは、ペクチン、セルロース、ヘミセルロース、および、結合された生理活性物質を含む組成物材料から製造することができ、澱粉が結合剤として用いられる。同様に、アルギナートの薄いフィルムを製造して、例えば、セルロースシートに積層化することができる。この場合、結合された生理活性物質を伴うアルギナートフィルムは、水と接触して溶解する間、セルロース材料によりその場所に保持され、より急速な放出が得られる。
【0071】
本発明による組成物材料を含む袋は、口内の歯茎のくぼみにぴったり合うよう意図されている。不織布は、かかる袋のパッケージ材料として好ましく用いられる。ゆえに、それらは小さなティーバッグと同様であり、その中にイオン結合した生理活性物質を有する組成物材料0.05〜2g(乾燥重量)、好ましくは0.05〜1.0gが詰め込まれる。パッケージ材料は、被覆されていない25g/m3のポリカーボネートの「不織フリース」であって、食品への利用が推奨されるものであることが好ましい。不織布は封止用の結合剤として用いることができる。他の好適な柔軟な液体透過性材料としては、ビスコースレーヨン(セルロースキサンテート)から作られるものがあり、この材料はヒートシールすることもできる。熱溶融結合剤を含む長繊維セルロース不織材料、アクリルポリマー、およびナイロン(登録商標)も使用可能である。
【0072】
イオン炭水化物の形態のマトリックスに結合し、かつ湿性のポリマー炭水化物と接触している生理活性物質を提供することにより、該物質の、水分との接触が、周囲の酸素および光と同様に制限され、これにより、その劣化が防止されるとともに、その貯蔵寿命が長くなる。
【0073】
本発明による組成物材料を貯蔵する際には、組成物材料と酸素、水分または水との接触を防止するためのみに、蒸気の障壁(バリア)が必要である。しかしながら、その中の若干のアロマ化合物の揮発も阻害されるかもしれない。最終製品中で包まれているかかる成分は、材料内では均一に分配されている。好ましくは、好適なバリア材料から作られた袋が用いられる。好適なバリア材料は当業者には公知であり、それらは、例えば、アルミニウム箔、ポリアミドまたはエチレンビニルアルコールフィルム、またはアクリロニトリルコポリマーのフィルム、例えば、BPケミカル社製のBarex(登録商標)の、単独または組合せから作られる。封止前に、不活性ガス、例えば、窒素を、内容物の貯蔵寿命を増大させるために添加することができる。その後、包みは、例えば、Barex(登録商標)で被覆された包みを用いた場合には、アルミニウムに対する、アクリロニトリルコポリマーの熱溶着により、封止される。
【0074】
本発明によれば、低コストの市販用組成物材料が提供され、これは使用が快適であるとともに、最適な伝達のための良好な接触を伴って、十分な量の生理活性物質を急速に伝達することができる。かさばらない生理活性物質は、使用者に、社交的な会話の間に、使用者の言葉や外観への干渉なしで、それを使用することを許容する。
【0075】
本発明の組成物材料の適用のための実用的な試験物質は、ニコチンである。ニコチンを使用するとき、好適量は、一人分(一服)のニコチン含量で、一服あたり0.05〜15mgの間、好ましくは0.05〜6mgの間に対応し、少ない投与量は刺激となり、かつ、多い投与量は緊張を解く。
【0076】
かかる煙を出さないタバコ代用材料をアロマ化合物とともに供給することも可能である。好適な化合物は、ミント、カンゾウ、バニラ、ストロベリー、クランベリー、ラズベリー、コーヒー、モカ、チョコレート、ユーカリノキ、シトラス、タール、およびタバコの香りを示すものである。他の添加物として、蜂蜜、ラム、メントール、ペパーミントオイル、樟脳(カンファー)、バラ油、およびクローヴオイルと同様に、酒類アロマ等(例えば、ウィスキー)が含まれてもよい。アロマ化合物は、好ましくは乾燥粉体として添加する。それらは湿性で不溶性のポリマー炭水化物上で乾燥させることもできる。
【0077】
生理活性物質がニコチンである場合、二者択一的に煙を出さないタバコ代用材料が提供され、これは、
−ニコチン常用癖の治療に関して使用することができ、
−喫煙または鼻投与と同様の迅速な開始(攻撃)、および長期の効果を有し、
−タバコ中に見出される多くの問題ある物質を避けることによりタバコに晒される危険性を減少し、
−強い不快な臭いを出さず、だが大人によるのではなく子供による飲食を防止するためには十分に苦く、
−喫煙が無作法であるか、可能でないか、または許されない場所でも使用することができ、
−シガレットを吸う時よりもより一層使い勝手がよく、灰や煙霧が得られることもなく、
−より社会的に受け入れられる選択肢であり、かつ、使用者の顔面における視覚的な影響を減少するために非常に薄く製造することができ、
−使用時に液体の漏出がなく、その後の掃除なしで非常に容易に処理することができ、
−本物のかぎタバコと同様の触感を示し、
−伝統的なかぎタバコと比較すれば使用が複雑でなく、また、
−かぎタバコよりも代用材料としてよりニコチン含有量の少ない形態であり、かつ、消費者を満足させるためにより少ない投与量のニコチンを伝達する。
【実施例】
【0078】
実施例1
pH7.0に緩衝剤調整したニコチン2mgを含有する袋。
12mm(直径)×24mmで、細孔の大きさ約250μmの不織布ポリカーボネート繊維管の一端を加熱溶着した。17〜19%のペクチン、27〜30%のセルロース、20〜24%のヘミセルロースを含む好適材料を吸着剤に用いた。この材料100mgを加え、もう一方の端を加熱溶着した。次いで、mlあたり100mgのニコチンを含有するニコチン溶液(pH7、20μl)を、ウェブ(織布)を通して加え、2分間分散させて、袋一服2mgとした。
【0079】
このように準備した袋を、アルミニウムBarex(登録商標)で被覆した包みに包装し、ニコチン損失を防ぐため、包みを順次加熱溶着した。
【0080】
包みを、開封に便利なように、溶着の外側に小さい切り込みをつけた。
ニコチン含量を測定するため、袋を水酸化ナトリウムでアルカリ性とし、メチルtert−ブチルエーテルで抽出し、ガスクロマトグラフィ/フレームイオン化検出によって、ニコチンを分析した。
【0081】
実施例2
ニコチン自体以外に緩衝剤能力のない、pH約8.0のニコチン4mgを含有する袋。
好適材料1,840gに、25mlエタノールに溶解した160mgの純粋ニコチンを添加し、減圧E−フラスコ中で充分に混合した。フラスコを減圧下で40℃に加熱し、エタノールを留去した。エタノールの全体損失を重量で調整した。
【0082】
12mm(直径)×24mmで、約250μmの大きさの細孔の不織布アクリル繊維管一端を加熱溶着した。乾燥した吸着剤50mgを、結合したニコチンとともに添加し、袋の残りの解放口の一端を加熱溶着した。最終的には、袋を実施例1と同様に包装した。
【0083】
実施例3
4mgのニコチンを含有し、pH約8.3に緩衝剤調整した袋。
好適材料1,640gに、25mlエタノールに溶解した160mgの純粋ニコチンを添加し、減圧E−フラスコ中で充分に混合した。フラスコを減圧下で40℃に加熱し、エタノールを留去した。エタノールの全体損失を重量で調整した。
【0084】
NaHCO3の200mgを、結合したニコチンとともに、乾燥した吸着剤に添加した。混合物50mgを、12mm(直径)×24mmで約250μmの細孔の不織布ポリカーボネート繊維管に注入し、その一端を加熱溶着し、袋の残り解放口も、次に加熱溶着した。袋を、実施例1,2と同様に包装した。
【0085】
実施例4
2mgのニコチンを含有し、pH約8.3に緩衝剤調整した袋。
本実施例は、80mgのニコチンを、好適材料で置き替えた以外は、実施例3と同様である。
【0086】
実施例5
2mgのニコチンを含有し、pH約8.6に緩衝剤調整した袋。
本実施例は、NaHCO3を同量のNa2CO3に置き替えた以外は、実施例3と同様である。
【0087】
実施例6
実施例1に従ってニコチン袋を調製した。1の袋を2人の被験者に投与した。
被験者には、30分間、吸うことも噛むこともしないで、口内の歯茎のくぼみに袋を保持するよう指示した。30分後、袋を取り出し、実施例1に記載の方法によって、残留しているニコチンと抽出されたニコチンを分析した。
【0088】
【表1】

【0089】
最初の量と、更に11時間後の量とした。
次いで、全袋を分析し、その結果を下記に要約した。
【0090】
【表2】

【0091】
血液のサンプルをその日中に採り、血漿をニコチンについて分析した。全ての血漿ニコチンの量の水準は、2ng/ml未満であった。
【0092】
実施例7
2および4mgのニコチンを含有する袋を、実施例1に従って調製した。
1の袋を2人の被験者に投与し、歯茎のくぼみに、さまざまな時間で保持させた。袋を取り出し、ニコチンを分析した。
【0093】
【表3】

【0094】
実施例8
4mgのニコチンを含有する袋を、実施例2に従って調製した。
1の袋を1人の被験者に投与し、歯茎のくぼみにさまざまな時間で保持させた。袋を取り出し、ニコチンを分析した。
【0095】
【表4】

【0096】
実施例9
4mgのニコチンを含有する袋を、実施例3に従って調製した。
1の袋を1人の被験者に投与し、歯茎のくぼみにさまざまな時間で保持させた。袋を取り出し、ニコチンを分析した。
【0097】
【表5】

【0098】
実施例10
2mgのニコチンを含有する袋を、実施例4に従って調製した。
1の袋を1人の被験者に投与し、歯茎のくぼみにさまざまな時間で保持させた。袋を取り出し、ニコチンを分析した。
【0099】
【表6】

【0100】
実施例11
2mgのニコチンを含有する袋を、実施例5に従って調製した。
1の袋を1人の被験者に投与し、歯茎のくぼみにさまざまな時間で保持させた。袋を取り出し、ニコチンを分析した。
【0101】
【表7】

【0102】
実施例12
全量50mgで、各4mgのニコチンを含有する100服の小袋を、下記の方法で調製した。
ニコチン(400mg)を、20mlのエタノールに添加し、溶液のpHを、酢酸の添加によって、pH7.0になるよう調節した。次いで、好適材料2.5gを、攪拌しながらエタノール−ニコチン溶液に添加した。確定後、エタノールと酢酸を真空下、適度加温、30℃で、蒸発させた。
【0103】
別個の容器に、同量(2.5g)の好適材料を、攪拌しながら、2.5mlの0.1Mカーボネート緩衝剤を含む、pH8.5の水中に添加した。次いで、この混合物を、50℃で一晩空気乾燥した。
混合物を完全に混合し、不織布の小袋に包装した。使用まで、袋を気密容器に保存した。
【0104】
実施例13
ニコチンを受けたことがない男性(55才)に、異なるニコチン調製物を投与した場合の経時的心拍数を比較した。
実施例12のようにして調製された袋内の本発明の組成物材料を、志願者の唇の下に置くことにより投与し、心拍数を心拍計で追跡した。心拍数が通常水準に戻り、一定に保たれたとき、鼻用スプレー(Nicorette(登録商標))を、0.5mgニコチンの、2回のその後の投与として投与した。同様に、ニコチンを、チューインガム(Nicorette(登録商標)4mgニコチン)として投与した。結果を図1に示す。
【0105】
図1に示すように、本発明の組成物材料は、ニコチンの鼻用スプレーのものと同等の即効性を示す。更に、本発明の材料は、ニコチン・チューインガムに匹敵する刺激時間の延長効果をもたらす。
【0106】
実施例14
本発明の組成物材料の別の用途は、チューインガムにおいて生理活性物質の担体としてそれを包含することである。
1服当り4mgのニコチンの100服分を、95gの通常の粉末ペパーミントチューインガムと、400mgのニコチンを含有する2.5gの好適な本発明材料と、2.5gの微細粉末炭酸ナトリウムから調製した。混合物を5℃で完全に混合し、室温に昇温した後、チューインガム塊を押出しにより圧縮し、1gの細片に切断した。より楽しい舌ざわりを持った、別の処方は、細片を被覆することによって実現される。
数秒咬んだ後、消費者は、口腔内での強いニコチンの味により、ニコチンの放出を容易に認識する。
【0107】
実施例15
4mgのニコチンを含有する200mgの錠剤を、実施例2におけるようにして、好適材料にニコチンを先ず結合させることによって調製した。次いで、バルク成分(ラクトース)および慣用の賦形剤(結合剤、崩壊剤、潤滑剤等)を加え、好適材料20mgを有する錠剤を錠剤成形機で調製した。
【0108】
このようにして成形され、歯茎のくぼみに入れられたニコチン錠剤は、数分以内に粉末に崩壊した。
この錠剤の効果は、ニコチンをうけたことがない男性の心拍数を追跡することによって評価した。通常の心拍数60が3分後に72に増加し、これは、ニコチンが錠剤から放出されたことを示している。
【0109】
実施例16
実施例2におけるように、ニコチン(4mg)を、好適材料20mgに添加し、結合させた。アガロース、澱粉およびアラビアゴム並びに既存の賦形剤の混合物から作った、乾いていて柔軟な複合ポリマー「ストリップホイル」(Strip−foil)上に、平らに調製した粒状の材料を先ず置くことによって、サンドイッチ構造を得た。次に、一方の側面を蒸留水でわずかに湿らせた同様の「ストリップホイル」を、粒状の材料上に配置し、上記のものを融合させるために、サンドイッチ構造に圧力をかけた。5×10mmの長円形ストリップをサンドイッチ構造から切り取り、残留水分を真空下、30°で飛ばした。次いで、実施例1のようにして、アルミニウムBarex(登録商標)で被覆した包みで包装した。
【0110】
このように処方したニコチンストリップを、ニコチンをうけたことがない男性の歯茎のくぼみに置き、彼の心拍数を追跡することにより効果を評価した。通常の心拍数60が2分後に72に増加しており、このことは、ニコチンがストリップから放出されたことを示している。
【0111】
実施例17
ホイル(foil)をゼラチンから作り、通常の賦形剤を添加したこと以外は、実施例16の手順を繰返した。
ニコチンの放出について、同様の試験結果が得られた。
【0112】
実施例18
4mgのニコチンと、96mgの好適材料とを含有する袋を、実施例3に従って調製した。袋を試験管に入れ、5mlの0.5M HCl/カーボネート/NaOH緩衝剤に、30分間、pH2、4、6、7、8、9にて室温で保温した。試験管は、5分毎に攪拌した。
袋を試験管から出し、各試験管に5mlのトルエンを加えた。試験管を再び5分毎に攪拌しながら、室温で30分間温置した。
相分離をした後、各試験管から水相を除去し、3mlの0.5M HClを添加した。試験管を再び、上記のように30分間、攪拌しながら温置した。
水相を除去し、分光測定を行ない、得られた吸光度を抽出緩衝剤のpHに対してプロットした。
【0113】
2M NaOH中の種々の量の純ニコチンを、上記袋に関する抽出方法と同様にて処理した。得られた吸光度の値は、ニコチンを含まない袋から得られたバックグラウンド吸収度に対して補正されたものである。吸収度と9mgのニコチンまでのニコチン量との間で標準曲線に対して直線関係が得られた。
【0114】
従って、標準曲線を、ニコチン抽出による結果を評価するのに用いた(図2)。pH9では、殆ど全てのニコチンが1時間以内に放出されたが、pH6以下ではニコチンは放出されなかった。
かかる結果は、実施例6と7との結果を確認するものであり、pH7では、限られた量のニコチンが放出され、同様に、実施例8〜11の結果も確認され、迅速かつ完全なニコチンの放出が見られた。
【0115】
実施例19
小球状のアルギナート粒子を、塩化カルシウムにおいてゲル化し、蒸溜水とエタノールとで完全に洗浄、乾燥した。次いで、ニコチンを添加し、実施例2のようにして、アルギナート粒子に結合させて、20mgの粒子一服当たり4mgのニコチンを得た。
【0116】
pH5.0と9.0のホスフェート緩衝剤(0.01M)5mlを、個々の試験体に加え、各々の抽出物を5分間の温置後に得た。抽出物中のニコチンの相対的濃度を、254nmでの吸光度として分光測光器で測定した。結果を下記に示す。
pH A254
5.0 0.040
9.0 0.570
【0117】
実験結果は、ニコチンがpH5でアルギナートと有効に結合し、より高いpHで放出されることを示している。
【0118】
実施例20
ゾルミトリプタン(200μl、1mg/ml;Zomig(登録商標)、アストラ ゼネカ(Astra Zeneca)社製ナザルスプレー(Nasal Spray))を、好適材料100mgの試供体に加え、次に10分間温置した。残留水分を、真空下で飛ばした。
蒸留水(5ml)を、1つの試供体に添加し、5分間温置の後、pH5を有する抽出物を得た。ホスフェート緩衝剤5ml、pH6と7との0.05Mを、夫々、他の試供体に添加し、対応する抽出物を5分間の温置の後に得た。
【0119】
抽出物中のゾルミトリプタンの相対的濃度を、280nmでの吸光度として分光測光器で測定した。結果を下記に示す。
pH A280
5.0 0.08
6.0 0.67
7.0 0.72
【0120】
実験結果は、ゾルミトリプタンがpH5では有効に結合し、より高いpHで放出されることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】実施例13における投与効果を示す時間(分)と心拍数(毎分)との関係を示すグラフである。
【図2】実施例18におけるpHと抽出ニコチンとの関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の生理活性物質をイオン結合により有する、少なくとも1種のイオン炭水化物と、少なくとも1種の湿性で不溶性のポリマー炭水化物とを含み、前記少なくとも1種の生理活性物質の口腔内における迅速な経粘膜伝達のための組成物材料。
【請求項2】
前記少なくとも1種のイオン炭水化物がイオンポリマー炭水化物またはイオンオリゴマー炭水化物である請求項1記載の組成物材料。
【請求項3】
前記イオンポリマー炭水化物がアニオン天然ポリマー炭水化物である請求項2記載の組成物材料。
【請求項4】
前記アニオン天然ポリマー炭水化物がアルギナート、ペクチン、キサンタン、またはヒアルロン酸である請求項3記載の組成物材料。
【請求項5】
前記アニオン天然ポリマー炭水化物がアニオン誘導天然ポリマー炭水化物である請求項3記載の組成物材料。
【請求項6】
前記アニオン誘導天然ポリマー炭水化物がスルホプロピルまたはカルボキシメチル誘導天然ポリマー炭水化物である請求項5記載の組成物材料。
【請求項7】
前記アニオン誘導天然ポリマー炭水化物がセルロースまたは澱粉誘導体である請求項5記載の組成物材料。
【請求項8】
前記イオンポリマー炭水化物がカチオン天然ポリマー炭水化物である請求項2記載の組成物材料。
【請求項9】
前記カチオン天然ポリマー炭水化物がキトサンである請求項8記載の組成物材料。
【請求項10】
前記カチオン天然ポリマー炭水化物がカチオン誘導天然ポリマー炭水化物である請求項8記載の組成物材料。
【請求項11】
前記カチオン誘導天然ポリマー炭水化物がジエチルアミノエチルまたはジエチル(2−ヒドロキシプロピル)アミノエチル誘導天然ポリマー炭水化物である請求項10記載の組成物材料。
【請求項12】
前記カチオン誘導天然ポリマー炭水化物がセルロースまたは澱粉のカチオン誘導体である請求項10記載の組成物材料。
【請求項13】
前記イオンポリマーまたは前記イオンオリゴマー炭水化物が架橋されている請求項2記載の組成物材料。
【請求項14】
前記イオンオリゴマー炭水化物が合成炭水化物である請求項2記載の組成物材料。
【請求項15】
前記少なくとも1種の湿性で不溶性のポリマー炭水化物が天然炭水化物である請求項1記載の組成物材料。
【請求項16】
前記天然炭水化物がセルロースまたはヘミセルロースである請求項15記載の組成物材料。
【請求項17】
ペクチン、セルロースおよびヘミセルロースの混合物を含む請求項4又は16記載の組成物材料。
【請求項18】
前記少なくとも1種の湿性で不溶性のポリマー炭水化物が前記少なくとも1種の生理活性物質を吸着、吸収、または非特異的結合し得る請求項1記載の組成物材料。
【請求項19】
水分含量が15%未満である請求項1記載の組成物材料。
【請求項20】
さらにpH調整剤を含む請求項1記載の組成物材料。
【請求項21】
前記pH調整剤がイオン炭水化物である請求項20記載の組成物材料。
【請求項22】
前記イオン炭水化物が前記少なくとも1種のイオン炭水化物の電荷と反対の電荷を有する請求項21記載の組成物材料。
【請求項23】
前記pH調整剤がアンモニアまたはカーボネートもしくはホスフェート緩衝剤である請求項20記載の組成物材料。
【請求項24】
唾液との接触において、前記少なくとも1種の生理活性物質のpKaと同等かそれよりも高いpHを有する請求項1記載の組成物材料。
【請求項25】
前記少なくとも1種の生理活性物質がたんぱく質、ペプチド、アルカロイド、偏頭痛薬、催眠薬、鎮静薬、局所麻酔薬、鎮痛薬または精神障害治療薬である請求項1記載の組成物材料。
【請求項26】
前記ペプチドがデスモプレシン、リプレシン、オキシトシン、ナファレリン、ブセレリン、または成長ホルモンである請求項25記載の組成物材料。
【請求項27】
前記アルカロイドがニコチン、コチニンおよびロベリン、またはこれらの誘導体または塩並びにカフェインである請求項25記載の組成物材料。
【請求項28】
前記偏頭痛薬が麦角アルカロイドまたは5HT1−レセプター作用物質である請求項25記載の組成物材料。
【請求項29】
前記局所麻酔薬がリドカインまたはメピバカインである請求項25記載の組成物材料。
【請求項30】
前記ニコチン含量が一服あたり0.05〜6mgである請求項23記載の組成物材料。
【請求項31】
シート、分離断片、粒剤、錠剤、丸薬、カプセル、薬用ドロップまたはチューインガムの形態である請求項1記載の組成物材料。
【請求項32】
前記シートが5mm未満の厚さを有する請求項31記載の組成物材料。
【請求項33】
前記分離断片が微細な網目状ガーゼの形態である請求項31記載の組成物材料。
【請求項34】
請求項1記載の組成物材料を含有する袋であって、柔軟な液体透過性材から作られていることを特徴とする袋。
【請求項35】
前記柔軟な液体透過性材が織物である請求項34記載の袋。
【請求項36】
前記織物がポリカーボネート製である請求項34記載の袋。
【請求項37】
前記組成物材料を0.05〜1.0g含有する請求項34記載の袋。
【請求項38】
請求項1〜33のいずれか一項記載の組成物材料または請求項34〜37のいずれか一項記載の袋を包む包みであって、バリア材から作られることを特徴とする包み。
【請求項39】
前記バリア材がアルミニウム箔である請求項38記載の包み。
【請求項40】
前記バリア材がBarex(登録商標)で被覆されている請求項38記載の包み。
【請求項41】
体液と接触した際に少なくとも1種の生理活性物質を迅速に経粘膜伝達するための組成物材料を製造する方法において、
(a)少なくとも1種のイオン炭水化物に対する少なくとも1種の生理活性物質のイオン結合を許容するpHを有する溶剤中の、該少なくとも1種の生理活性物質と該少なくとも1種のイオン炭水化物との混合物を提供する工程と、
(b)前記イオン結合を生じさせるに十分な間、前記溶剤中で前記混合物を混合する工程と、
(c)前記溶剤から混合物を回収する工程と、
を包含することを特徴とする組成物材料の製造方法。
【請求項42】
前記少なくとも1種のイオン炭水化物がイオンポリマー炭水化物またはイオンオリゴマー炭水化物である請求項41記載の製造方法。
【請求項43】
前記イオンポリマー炭水化物がアニオン天然ポリマー炭水化物である請求項42記載の製造方法。
【請求項44】
前記アニオン天然ポリマー炭水化物がアルギナート、ペクチン、キサンタン、またはヒアルロン酸である請求項43記載の製造方法。
【請求項45】
前記アニオン天然ポリマー炭水化物がアニオン誘導天然ポリマー炭水化物である請求項43記載の製造方法。
【請求項46】
前記イオンポリマー炭水化物がカチオン天然ポリマー炭水化物である請求項42記載の製造方法。
【請求項47】
前記カチオン天然ポリマー炭水化物がキトサンである請求項46記載の製造方法。
【請求項48】
前記カチオン天然ポリマー炭水化物がカチオン誘導天然ポリマー炭水化物である請求項46記載の製造方法。
【請求項49】
前記少なくとも1種の生理活性物質がたんぱく質、ペプチド、アルカロイド、偏頭痛薬、催眠薬、鎮静薬、局所麻酔薬、鎮痛薬または精神障害治療薬である請求項41記載の製造方法。
【請求項50】
前記溶剤が揮発性の親水性溶剤である請求項41記載の製造方法。
【請求項51】
前記溶剤がエタノール、水またはこれらの混合物である請求項50記載の製造方法。
【請求項52】
前記許容pHを得るために、さらに、pH調整剤を前記混合物に添加する工程(a’)を含む請求項41記載の製造方法。
【請求項53】
前記pH調整剤が揮発性の酸である請求項52記載の製造方法。
【請求項54】
前記揮発性の酸が酢酸または蟻酸である請求項53記載の製造方法。
【請求項55】
前記pH調整剤がアンモニアである請求項52記載の製造方法。
【請求項56】
さらに、少なくとも1種の湿性で不溶性の天然ポリマー炭水化物を前記混合物に添加する工程(a’’)を含む請求項41記載の製造方法。
【請求項57】
前記少なくとも1種の湿性で不溶性のポリマー炭水化物が天然炭水化物である請求項56記載の製造方法。
【請求項58】
前記少なくとも1種の湿性で不溶性のポリマー炭水化物がセルロースまたはヘミセルロースである請求項56記載の製造方法。
【請求項59】
前記混合物を蒸発乾燥により回収する請求項41記載の製造方法。
【請求項60】
さらに、前記pH調整剤を前記回収された混合物に添加する工程(c’)を含む請求項41記載の製造方法。
【請求項61】
前記pH調整剤がアンモニアまたはカーボネートもしくはホスフェート緩衝剤である請求項60記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−516567(P2006−516567A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500759(P2006−500759)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000091
【国際公開番号】WO2004/064811
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505275701)マグル ホールディング エービー (1)
【Fターム(参考)】