説明

結像レンズ、撮影レンズユニット及び撮像装置

【課題】小型化を実現するとともに、良好な光学性能を有し、フォーカシングの際に生じる収差を良好に補正可能なインナーフォーカス型の広角な結像レンズ、該結像レンズ備えた撮影レンズユニット及び撮像装置を提供する。
【解決手段】 物体側から順に、正の屈折力を有する第1群G1、開口絞りS、正の屈折力を有する第2群G2が配置され、
第2群は、物体側より順に正の屈折力を有するG2A群と、負の屈折力を有するG2B群とで構成され、前記G2A群は、1枚の負レンズ及び1枚の正レンズからなる接合レンズと、正レンズとで構成され、前記G2B群は、2枚の負レンズで構成され、
無限遠物体から近距離物体へフォーカシングを行う際、前記G2A群が光軸方向に沿って物体側に移動し、所定の条件式を満足することを特徴とする結像レンズ、該結像レンズを備えた撮影レンズユニット及び撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結像レンズ、撮影レンズユニット及び撮像装置に関し、詳しくはインナーフォーカス方式の結像レンズ、該結像レンズを備える撮影レンズユニット及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀塩フィルム方式のカメラに代わってデジタルカメラが普及しており、ユーザのデジタルカメラに対する要望が多岐にわたり、個性豊かなデジタルカメラが提案されている。これらのデジタルカメラの中でも、携帯時の利便性の向上は、解決すべき技術的課題として優先順位が高く、これを実現するために小型の撮影光学系(結像レンズ)が求められている。
【0003】
また、撮影レンズの画角が広角であることを求めるユーザも多い。従来、広角レンズとしては、全体で負の屈折力を有するレンズ群と、全体として正の屈折力を有するレンズ群とを配置したレトロフォーカス型のレンズ構成が多く提案されている。
しかしながら、レトロフォーカス型の広角レンズは、バックフォーカスが焦点距離よりも長くなるため、レンズの小型化には不利である。また、一眼レフカメラは、レンズと像面との間にミラーが配置されているため、バックフォーカスを長くしてミラーを配置するスペースを確保する必要があり、小型化には不利である。
【0004】
一方、近年、ミラーを配置するスペースを確保する必要がないミラーレスのレンズ交換式のカメラが知られており、また小型化された広角レンズが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された写真レンズは、小型化された単焦点レンズであるが、全体繰り出しによるフォーカシングのため、高速AF(オートフォーカス)には不利である。
また、特許文献2及び特許文献3に開示されたレンズでは、リアフォーカスによるフォーカス群の小型化、光学系の小型化を図っているが、バックフォーカスが長いため、さらなる小型化の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、小型化を実現するとともに、良好な光学性能を有し、フォーカシングの際に生じる収差を良好に補正可能なインナーフォーカス型の広角な結像レンズを提供することを目的とする。
また、本発明は、前記インナーフォーカス型の広角な結像レンズを撮像光学系として用いる撮影レンズユニット、及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る結像レンズは、
物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1群、開口絞り、正の屈折力を有する第2群が配置され、
前記第1群は、物体側に凹面を向けた負レンズと、正レンズと、負レンズとで構成され、
前記第2群は、物体側より順に正の屈折力を有するG2A群と、負の屈折力を有するG2B群とで構成され、前記G2A群は、1枚の負レンズ及び1枚の正レンズからなる接合レンズと、正レンズとで構成され、前記G2B群は、2枚の負レンズで構成され、
無限遠物体から近距離物体へフォーカシングを行う際、前記G2A群が光軸方向に沿って物体側に移動し、かつ以下の条件式(1)、(2)、及び(3)を満足することを特徴とする結像レンズである。
(1)0.2<f2A/f2<0.4
(2)2.2<|f・m/ΔX2A|<2.8
(3)2.2<TL/Y<3.0
ただし、f2は第2群の焦点距離、f2AはG2A群の焦点距離、fはレンズ全系の焦点距離、mは撮影倍率が−1/20倍における横倍率、ΔX2Aは無限遠合焦時のG2A群の位置から撮影倍率が−1/20倍に合焦する位置までの移動量、Yは最大像高、TLは光学全長をそれぞれ表す。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る撮影レンズユニットは、本発明の結像レンズを備えることを特徴とする撮影レンズユニットである。
上記課題を解決するために、本発明に係る撮像装置は、本発明の結像レンズを備えることを特徴とする撮像装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の結像レンズによれば、小型化を実現するとともに、良好な光学性能を有し、フォーカシングの際に生じる収差を良好に補正可能なインナーフォーカス型の広角な結像レンズを提供することができる。
また、前記結像レンズを備え、小型化を実現可能な撮影レンズユニット及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の結像レンズの構成の一実施態様を示す断面の模式図である。
【図2】図1に示す結像レンズの無限遠合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図3】図1に示す結像レンズの撮影倍率β=−1/20倍時における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図4】本発明の結像レンズの構成の他の実施態様を示す断面の模式図である。
【図5】図4に示す結像レンズの無限遠合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図6】図4に示す結像レンズの撮影倍率β=−1/20倍時における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図7】本発明の結像レンズの構成のさらに他の実施態様を示す断面の模式図である。
【図8】図7に示す結像レンズの無限遠合焦状態における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図9】図7に示す結像レンズの撮影倍率β=−1/20倍時における球面収差、非点収差、歪曲収差、及びコマ収差を示す収差曲線図である。
【図10】本発明の結像レンズを備えるカメラ(携帯情報端末装置)の一実施形態を示すデジタルカメラの外観図であり、(A)は携帯時(沈胴時)の正面側から見た斜視図、(B)は、使用時(レンズ繰り出し時)の正面側の一部を示す斜視図、(C)は、背面側の斜視図である。
【図11】本発明の結像レンズを備えるカメラのシステム構造の一例の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る結像レンズ、撮影レンズユニット及び撮像装置について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施例の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
本発明の結像レンズは、物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1群、開口絞り、正の屈折力を有する第2群が配置され、
前記第1群は、物体側に凹面を向けた負レンズと、正レンズと、負レンズとで構成され、
前記第2群は、物体側より順に正の屈折力を有するG2A群と、負の屈折力を有するG2B群とで構成され、前記G2A群は、1枚の負レンズ及び1枚の正レンズからなる接合レンズと、正レンズとで構成され、前記G2B群は、2枚の負レンズで構成され、
無限遠物体から近距離物体へフォーカシングを行う際、前記G2A群が光軸方向に沿って物体側に移動し、かつ以下の条件式(1)、(2)、及び(3)を満足する。
(1)0.2<f2A/f2<0.4
(2)2.2<|f・m/ΔX2A|<2.8
(3)2.2<TL/Y<3.0
ただし、f2は第2群の焦点距離、f2AはG2A群の焦点距離、fはレンズ全系の焦点距離、mは撮影倍率が−1/20倍における横倍率、ΔX2Aは無限遠合焦時のG2A群の位置から撮影倍率が−1/20倍に合焦する位置までの移動量、Yは最大像高、TLは光学全長をそれぞれ表す。
【0013】
条件式(1)は、第2群の焦点距離f2に対するG2A群の焦点距離f2Aの比を規定したものである。f2A/f2の値が上限値(0.4)以上となると、フォーカス群の正の屈折力が弱くなり、第2群のパワーを保つためにはG2B群の負の屈折力が弱くなるため、G2B群より物体側の正レンズで発生した球面収差を補正することが難しい。また、フォーカス群の移動量が大きくなるので、フォーカスに時間がかかってしまう。一方、下限値(0.2)以下となってフォーカス群の正の屈折力が強くなると、球面収差がアンダー方向に大きくなり、G2B群で球面収差を補正しきれなくなる。
【0014】
条件式(2)は、全体繰出しによるフォーカシングの繰出し量F・mに対する、G2A群の移動量ΔX2Aを規定したものである。近距離物体にフォーカシングする時、|f・m/ΔX2A|の値が大きい程、G2A群の移動量が少ない。ただし、|f・m/ΔX2A|の値が上限値(2.8)以上となると、移動量は小さくなるが、フォーカシング時の収差変動が大きくなり良好な光学性能が維持できなくなる。一方、下限値(2.2)以下となると、フォーカス群の移動量が大きくなり、レンズ全長が大きくなってしまう。
【0015】
条件式(3)は、最大像高Yに対する光学全長TLの比を規定したものである。
TL/Yの値が上限値(3.0)以上となると、光学系が大きくなることを意味する。一方、下限値(2.2)以下となると、光学系の小型化には有利であるが、球面収差、コマ収差及び像面湾曲の補正が難しくなる。
【0016】
また、本発明の結像レンズは、第1群の焦点距離をf1とするとき、以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
(4)1.0<f1/f<2.0
条件式(4)は、レンズ全系の焦点距離fに対する第1群の焦点距離f1の比を規定したもので、f1/fの値が上限値(2.0)以上となると、第1群の焦点距離が長くなり過ぎ、全長も大きくなる。全長を変えないようにするためには、第2群の焦点距離を小さくせざるを得ず、球面収差が大きくなってしまい、さらに像面湾曲や非点収差が悪化する。一方、下限値(1.0)以下となると、第1群の焦点距離が短くなりすぎ、第1群で発生する球面収差を補正することが難しくなる。よって、条件式(4)を満足することで、より小型な広角レンズを提供することができる。
【0017】
さらに、本発明の結像レンズは、無限遠合焦時の前記第1群の最も像側の面から、第2群の最も物体側の面までの距離をD12とするとき、以下の条件式(5)を満足することが好ましい。
(5)0.2<D12/f<0.3
条件式(5)は、レンズ全系の焦点距離fに対するD12の比を規定したもので、D12/fの値が上限値(0.3)以上となると、第1群と第2群との間隔が大きくなり、レンズ全長の小型化に不利となる。一方、下限値(0.2)以下となると、第1群と第2群との間隔が狭くなりすぎ、第G2A群によるフォーカシングのスペースが無くなってしまう。条件式(5)を満足することにより、さらに小型な広角レンズを提供することができる。
【0018】
なお、図1に例示するように、本発明の実施態様において、第2群の像面側に配設される平行平板FTは、光学ローパスフィルタ・赤外カットフィルタ等の各種フィルタやCCDセンサ等の受光素子のカバーガラス(シールガラス)を想定し、これらに等価な透明平行平板を示したものである。
【0019】
以下、本発明の実施態様に係る結像レンズの諸収差及び具体的な数値データを示す。各実施態様(実施例)における記号の意味は下記の通りである。
f :全系の焦点距離
F :Fナンバ
ω :半画角(度)
R :レンズ面の曲率半径(非球面にあっては近軸曲率半径)
D :面間隔
Nd :レンズ材料の屈折率
νd :レンズ材料のアッベ数
K :非球面の円錐定数
A4 :4次の非球面定数
A6 :6次の非球面定数
A8 :8次の非球面定数
A10:10次の非球面定数
【0020】
また、非球面形状は、近軸曲率半径の逆数(近軸曲率):C、光軸からの高さ:H、円錐定数:K、上記各次数の非球面係数を用い、Xを光軸方向における非球面量として、周知の下記数式で表わされるものであり、近軸曲率半径と円錐定数、非球面係数を与えて形状を特定する。
【数1】

【0021】
〔第1の実施態様(実施例1)〕
図1は、本発明の第1の実施態様に係る結像レンズの構成例を示したものである。
光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1群G1と、正の屈折力を有する後第2群G2を有し、さらに第2群G2は物体側より順に正の屈折力を持つG2A群、負の屈折力を持つG2B群で構成され、第1群と第2群との間に開口絞りSを有し、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングはG2A群が光軸方向に沿って矢印で示す方向(物体側)に移動する。
第1群は、物体側から順に両凹レンズL1と、両凸レンズL2と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL3とからなる。
G2A群は、物体側により強い凹面を向けた両凹レンズL4と両凸レンズL5との接合レンズと、両凸レンズL6とからなり、G2B群は両凹レンズL7と、物体側により強い凹面を向けた負メニスカスレンズL8とからなる。
G2B群のさらに像側には、平行平板FT1、FT2が設置されている。また、Iは像面を示す。
【0022】
本実施態様における光学特性(R、D、Nd、νd)は、下記の表1に示す通りである。なお、表1において面番号にアスタリスク「*」がついた面は、非球面を表す。
【0023】
【表1】

【0024】
非球面の円錐定数K及び非球面係数Ai(i=4,6,8,10)を以下に示す。なお、E−nは、10のべき乗を表す
第3面
K=0
A4=-2.04311E-005
A6=1.33162E-007
A8=-4.03667E-009
A10=2.37536E-010
第12面
K=0
A4=1.49820E-004
A6=-1.71118E-007
A8=2.92811E-009
A10=-3.21389E-012
第16面
K=0
A4=-5.89759E-005
A6=5.70307E-007
A8=-2.52482E-009
A10=2.26612E-012
【0025】
物体距離が無限遠合焦時、及び撮影倍率β=−1/20時の撮像時における可変面間隔D7およびD16の値は、下記表2の通りである。
【表2】

【0026】
本実施形態における条件式(1)〜(5)の係数は以下のとおりである。
(1)f2A/f2=0.22
(2)|f・m/ΔX2A|=2.27
(3)TL/Y=2.43
(4)f1/f=1.24
(5)D12/f=0.27
【0027】
図2及び図3は、図1に示したレンズ構成における収差図を示したものであり、図2は無限遠合焦状態における収差図、図3は撮影倍率β=−1/20倍時における収差図である。
なお、球面収差の図中の破線は正弦条件、非点収差の図中の実線はサジタル、破線はメリディオナルをそれぞれ表す。また、「g」、「d」はそれぞれ、g線およびd線を表す。
【0028】
〔第2の実施態様(実施例2)〕
図4は、本発明の第2の実施態様に係る結像レンズの構成例を示したものである。
光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1群G1と、正の屈折力を有する第2群G2を有し、さらに第2群G2は物体側より順に正の屈折力を持つG2A群、負の屈折力を持つG2B群で構成され、第1群と第2群との間に開口絞りSを有し、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングはG2A群が光軸方向に沿って矢印に示す方向(物体側)に移動する。
第1群は、物体側から順に両凹レンズL1と、両凸レンズL2と、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL3とからなる。
G2A群は、物体側により強い凹面を向けた両凹レンズL4と両凸レンズL5の接合レンズと、両凸レンズL6とからなり、G2B群は、両凹レンズL7と、物体側により強い凹面を向けた負メニスカスレンズL8とからなる。
G2B群のさらに像側には、平行平板FT1、FT2が設置されている。また、Iは像面を示す。
【0029】
本実施態様における光学特性(R、D、Nd、νd)は、下記の表3に示す通りである。なお、表3において面番号にアスタリスク「*」がついた面は、非球面を表す。
【0030】
【表3】

【0031】
非球面の円錐定数K及び非球面係数Ai(i=4,6,8,10)を以下に示す。なお、E−nは、10のべき乗を表す
第3面
K=0
A4=1.40850E-05
A6=-2.54437E-07
A8=2.23994E-08
A10=-3.10276E-10
第12面
K=0
A4=1.08130E-04
A6=-3.97940E-08
A8=-2.85470E-10
A10=1.74853E-11
第16面
K=0
A4=-2.40125E-05
A6=1.81550E-07
A8=-3.33462E-10
A10=-5.75529E-12
【0032】
物体距離が無限遠合焦時、及び撮影倍率β=−1/20時の撮像時における可変面間隔D7およびD16の値は、下記表4の通りである。
【表4】

【0033】
第2の実施形態における条件式(1)〜(5)の係数は以下のとおりである。
(1)f2A/f2=0.21
(2)|f・m/ΔX2A|=2.61
(3)TL/Y=2.43
(4)f1/f=1.26
(5)D12/f=0.24
【0034】
図5及び図6は、図4に示したレンズ構成における収差図を示したものであり、図5は無限遠合焦状態における収差図、図6は撮影倍率β=−1/20倍時における収差図である。
なお、球面収差の図中の破線は正弦条件、非点収差の図中の実線はサジタル、破線はメリディオナルをそれぞれ表す。また、「g」、「d」はそれぞれ、g線およびd線を表す。
【0035】
〔第3の実施態様(実施例3)〕
図7は、本発明の第3の実施態様に係る結像レンズの構成例を示したものである。
光軸に沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1群G1と、正の屈折力を有する第2群G2を有し、さらに第2群G2は物体側より順に正の屈折力を持つG2A群、負の屈折力を持つG2B群で構成され、第1群と第2群との間に開口絞りSを有し、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングはG2A群が光軸方向に沿って矢印に示す方向(物体側)に移動する。
第1群は、物体側から順に両凹レンズL1と、両凸レンズL2と、両凹レンズL3とからなる。
G2A群は、物体側により強い凹面を向けた両凹レンズL4と両凸レンズL5の接合レンズと、両凸レンズL6とからなり、G2B群は、両凹レンズL7と、物体側により強い凹面を向けた負メニスカスレンズL8とからなる。
G2B群のさらに像側には、平行平板FT1、FT2が設置されている。また、Iは像面を示す。
【0036】
本実施態様における光学特性(R、D、Nd、νd)は、下記の表5に示す通りである。なお、表5において面番号にアスタリスク「*」がついた面は、非球面を表す。
【0037】
【表5】

【0038】
非球面の円錐定数K及び非球面係数Ai(i=4,6,8,10)を以下に示す。なお、E−nは、10のべき乗を表す
第3面
K=0
A4=8.54199E-06
A6=-2.40319E-07
A8=2.57028E-08
A10=-5.39845E-10
第12面
K=0
A4=1.09494E-04
A6=-2.37444E-07
A8=1.52876E-09
A10=4.25111E-12
第16面
K=0
A4=-4.66795E-05
A6=3.82413E-07
A8=-5.34259E-10
A10=-5.51254E-12
【0039】
物体距離が無限遠合焦時、及び撮影倍率β=−1/20時の撮像時における可変面間隔D7およびD16の値は、下記表6の通りである。
【表6】

【0040】
第3の実施形態における条件式(1)〜(5)の係数は以下のとおりである。
(1)f2A/f2=0.30
(2)|f・m/ΔX2A|=2.56
(3)TL/Y=2.43
(4)f1/f=1.51
(5)D12/f=0.24
【0041】
図8及び図9は、図7に示したレンズ構成における収差図を示したものであり、図8は無限遠合焦状態における収差図、図9は撮影倍率β=−1/20倍時における収差図である。
なお、球面収差の図中の破線は正弦条件、非点収差の図中の実線はサジタル、破線はメリディオナルをそれぞれ表す。また、「g」、「d」はそれぞれ、g線およびd線を表す。
【0042】
本発明のインナーフォーカス型の広角な結像レンズは、良好な光学性能を有し、フォーカシングの際に生じる収差を良好に補正可能である。
【0043】
〔撮影レンズユニット、撮像装置〕
本発明の撮影レンズユニットは、本発明の結像レンズを備える。また、本発明の撮像装置は、本発明の結像レンズを備え、本発明の撮影レンズユニットをズームレンズとして備える。
本発明の撮影レンズユニットをズームレンズとして採用した撮像装置について、図10及び図11により説明する。
【0044】
本発明の撮像装置の実施形態の一例としてのカメラ(携帯情報端末装置を含む)を図10および図11に示す。
図10(A)は、物体、すなわち被写体側である前面側から見たカメラの沈胴状態の外観を模式的に示す斜視図、図11(B)は、前面側から見たカメラの使用状態の外観構成を部分的に示す斜視図、図11(C)は、撮影者側である背面側から見たカメラの外観を模式的に示す斜視図であり、図12は、カメラの機能構成を示すブロック図である。
なお、実施形態の例としてカメラについて説明しているが、カメラに限定されず、いわゆるPDA(personal data assistant)や携帯電話機等の携帯情報端末装置にカメラ機能を組み込んだものであってもよい。このような携帯情報端末装置も外観は、若干異にするものの、カメラと実質的に全く同様の機能・構成を含んでおり、このような携帯情報端末装置に本発明の撮影レンズユニットを採用することができる。
【0045】
図10(A)、(B)、(C)に示すように、カメラ10は、撮影レンズ12、シャッタボタン13、ズームレバー14、ファインダ15、ストロボ16、液晶モニタ17、操作ボタン18、電源スイッチ19、メモリ/通信カードスロット20等を備えている。
さらに、図11に示すように、カメラ10は、受光素子201、信号処理装置202、画像処理装置203、中央演算装置(CPU)204、半導体メモリ205、及び通信カード等206も備えている。
【0046】
カメラ10は、撮影光学系である撮影レンズ12とCCD(電荷結合素子)撮像素子等のエリアセンサとしての受光素子201を有しており、結像レンズである撮影レンズ12によって形成される被写体の像を受光素子201によって読み取るように構成されている。この撮影レンズ12としては、本発明の結像レンズを用いる。具体的には、本発明の結像レンズを構成する光学要素であるレンズ等を用いて撮影レンズユニットを構成する。この撮影レンズユニットは、各レンズ等を、少なくともレンズ群毎に移動操作し得るように保持する機構を有する。カメラに組み込まれる撮影レンズ12は、通常の場合、この撮影レンズユニットの形で組み込まれる。
【0047】
受光素子201の出力は、中央演算装置204によって制御される信号処理装置202によって処理され、デジタル画像情報に変換される。信号処理装置202によってデジタル化された画像情報は、やはり中央演算装置204によって制御される画像処理装置203において所定の画像処理が施された後、不揮発性メモリ等の半導体メモリ205に記録される。この場合、半導体メモリ205は、メモリ/通信カードスロット20に装填されたメモリカードでもよく、カメラ本体に内蔵された半導体メモリでもよい。
液晶モニタ17には、撮影中の画像を表示することもできるし、半導体メモリ205に記録されている画像を表示することもできる。また、半導体メモリ205に記録した画像は、メモリ/通信カードスロット20に装填した通信カード等206を介して外部へ送信することも可能である。
【0048】
撮影レンズ12は、カメラ10の携帯時には図11(A)に示すように沈胴状態にあってカメラ10のボディ内に埋没しており、ユーザが電源スイッチ19を操作して電源を投入すると、図11(B)のように、鏡胴が繰り出され、カメラ10のボディから突出する構成とする。ズームレバー14を操作したとき、画像の切り出し範囲を変えて擬似的に変位する、いわゆるデジタルズームによる変倍が行われる。なお、このとき、ファインダ15の光学系も撮影レンズ12の画角の変化に連動して変倍するようにすることが望ましい。多くの場合、シャッタボタン13の半押しによりフォーカシングがなされる。シャッタボタン13をさらに押し込むと撮影がなされ、その後は既述の処理がなされる。
【0049】
半導体メモリ205に記録した画像を液晶モニタ17に表示したり、通信カード206等を使用して外部へ送信する際は、操作ボタン18を使用して行う。半導体メモリ205および通信カード206等は、それぞれ専用または汎用のスロット20に挿入して使用される。
【0050】
このように、本発明のインナーフォーカス型の広角な結像レンズを用いて撮影レンズユニットを構成することにより、該撮影レンズユニットの小型化を図ることができ、該撮影レンズユニットを備えた撮像装置の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0051】
G1 第1群
G2 第2群
S 絞り
L レンズ
R レンズ面の曲率半径
FT 平行平板
I 像面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開平09−258098号公報
【特許文献2】特開2009−258158号公報
【特許文献3】特許2009−237542号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ向かって順に、正の屈折力を有する第1群、開口絞り、正の屈折力を有する第2群が配置され、
前記第1群は、物体側に凹面を向けた負レンズと、正レンズと、負レンズとで構成され、
前記第2群は、物体側より順に正の屈折力を有するG2A群と、負の屈折力を有するG2B群とで構成され、前記G2A群は、1枚の負レンズ及び1枚の正レンズからなる接合レンズと、正レンズとで構成され、前記G2B群は、2枚の負レンズで構成され、
無限遠物体から近距離物体へフォーカシングを行う際、前記G2A群が光軸方向に沿って物体側に移動し、かつ以下の条件式(1)、(2)、及び(3)を満足することを特徴とする結像レンズ。
(1)0.2<f2A/f2<0.4
(2)2.2<|f・m/ΔX2A|<2.8
(3)2.2<TL/Y<3.0
ただし、f2は第2群の焦点距離、f2AはG2A群の焦点距離、fはレンズ全系の焦点距離、mは撮影倍率が−1/20倍における横倍率、ΔX2Aは無限遠合焦時のG2A群の位置から撮影倍率が−1/20倍に合焦する位置までの移動量、Yは最大像高、TLは光学全長をそれぞれ表す。
【請求項2】
前記第1群の焦点距離をf1とするとき、以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1に記載の結像レンズ。
(4)1.0<f1/f<2.0
【請求項3】
無限遠合焦時の前記第1群の最も像側の面から、前記第2群の最も物体側の面までの距離をD12とするとき、以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の結像レンズ。
(5)0.2<D12/f<0.3
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の結像レンズを備えることを特徴とする撮影レンズユニット。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の結像レンズを備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図4】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−61547(P2013−61547A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200769(P2011−200769)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】