結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバ
【課題】信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造可能な結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバの提供。
【解決手段】結合型マルチコアファイバ用母材10Pの製造方法であって、複数のコア11となる複数のコアガラス体11Pがクラッドガラス体12Pにより囲まれると共に、互いに隣り合うコアガラス体11Pの外周面同士が互いに接するように、複数のコアガラス体11Pと、クラッドガラス体12Pとを配置する配置工程P1と、コアガラス体11Pとクラッドガラス体12Pとの間の隙間を潰すコラプス工程P2とを備え、それぞれのコアガラス体11Pの外周面から所定の厚さの外側領域16は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、クラッドガラス体12Pは、コアガラス体11Pの外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成る。
【解決手段】結合型マルチコアファイバ用母材10Pの製造方法であって、複数のコア11となる複数のコアガラス体11Pがクラッドガラス体12Pにより囲まれると共に、互いに隣り合うコアガラス体11Pの外周面同士が互いに接するように、複数のコアガラス体11Pと、クラッドガラス体12Pとを配置する配置工程P1と、コアガラス体11Pとクラッドガラス体12Pとの間の隙間を潰すコラプス工程P2とを備え、それぞれのコアガラス体11Pの外周面から所定の厚さの外側領域16は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、クラッドガラス体12Pは、コアガラス体11Pの外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造可能な結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアの外周がクラッドにより被覆される構造をしており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。そして、近年光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝送される情報量が飛躍的に増大している。このような伝送される情報量の増大に伴い、光ファイバ通信システムにおいては、数十本から数百本といった多数の光ファイバが用いられることで、大容量の長距離光通信が行われている。
【0003】
こうした光ファイバ通信システムにおける光ファイバの数を低減させるため、複数のコアの外周が1つのクラッドにより囲まれたマルチコアファイバを用いて、それぞれのコアを伝搬する光により、複数の信号を伝送させることが知られている。
【0004】
このようなマルチコアファイバとしては、それぞれのコアが互いに独立した伝送路とされ、それぞれのコアの結合が出来るだけ低減された非結合型マルチコアファイバと、それぞれのコアがたがいに結合することで、複数のコアを実質的に一つのマルチモード伝送路とみなすことができる結合型マルチコアファイバとが知られている。この結合型マルチコアファイバによれば、コアを伝播する光のモード毎に異なる信号を伝送するモード多重伝送が可能とされる。
【0005】
下記特許文献1には、このような結合型マルチコアファイバの一例が記載されている。特許文献1によれば、結合型マルチコアファイバのそれぞれのコア間距離が近いほど、コア同士の結合が強くなるとされる。従って、それぞれのコアが接していれば、コア同士の結合は最も強くなると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yasuo Kokubun “Novel multi−core fibers for mode dividion multiplexing: proposal and design principle” IEICE Electronics Express, Vol.6, No.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなそれぞれのコアが接している結合型マルチコアファイバを製造する方法としては、スタックアンドドロー法を挙げることができる。スタックアンドドロー法としては、それぞれのコアとなるロッド状のコアガラス体が、光ファイバのクラッドとなるクラッドガラス体に囲まれた状態で配置され、それぞれのガラス体の隙間を潰しながら線引きする方法、及び、上記のようにコアガラス体とクラッドガラス体とが配置された状態で、コアガラス体とクラッドガラス体との隙間を潰して光ファイバ用母材とし、この光ファイバ用母材を線引きする方法とがある。そして、上記のようにそれぞれのコア同士が互いに接している結合型マルチコアファイバを製造する場合、外周面が露出したコアガラス体同士が、互いに接した状態で配置される必要がある。
【0008】
ところで、光ファイバのコアの屈折率をクラッドよりも高くするために、一般的に、コアは、ゲルマニウムが添加されたシリカガラスから成る。これは、ゲルマニウムが添加されたシリカガラスは、伝播する光の損失を抑制することができ、容易に屈折率を高くすることができるためである。
【0009】
しかし、コアガラス体の外周面上、すなわち、気固界面に存在するゲルマニウムは、隙間が潰されながら、コアガラス体とクラッドガラス体とが線引きされる温度や、隙間が潰されて光ファイバ用母材とされる温度において、揮発する性質がある。従って、上述のように外周面が露出したコアガラス体同士を接する状態で配置して、線引き工程やコラプス工程等を行い、光ファイバを製造すると、コアの周りに気泡が生じる場合がある。
【0010】
このようなコアの周りに気泡が生じると、コアを伝播する信号の損失が大きくなる場合や、光ファイバの強度が低下する場合があり、光ファイバの信頼性が低くなる虞がある。
【0011】
そこで、本発明は、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造可能な結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバを製造するための結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法であって、前記複数のコアとなる複数のコアガラス体がクラッドガラス体により囲まれると共に、互いに隣り合う前記コアガラス体の外周面同士が互いに接するように、前記複数のコアガラス体、及び、前記クラッドガラス体を配置する配置工程と、前記コアガラス体と前記クラッドガラス体との間の隙間を潰すコラプス工程とを備え、それぞれの前記コアガラス体の外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記クラッドガラス体は、前記コアガラス体の前記外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成ることを特徴とするものである。
【0013】
このような結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法によれば、コアガラス体の外側領域にゲルマニウムが添加されないため、コラプス工程においてコアガラス体が加熱されても、コアガラス体からゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができる。従って、製造された結合型マルチコアファイバ用母材のコアガラス体とクラッドガラス体との間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができる。このような製造方法により製造される結合型マルチコアファイバ用母材を線引きすることで、コアとクラッドとの間に生じる気泡が防止された、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造することができる。
【0014】
また、本発明の結合型マルチコアファイバの製造方法は、上記のいずれかの結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法により製造される結合型マルチコアファイバ用母材を線引きする線引工程を備えることを特徴とするものである。
【0015】
このような結合型マルチコアファイバの製造方法によれば、コアガラス体とクラッドガラス体との間に気泡が生じることが防止された結合型マルチコアファイバ用母材を線引きするため、コアとクラッドとの間に生じる気泡が防止された、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造することができる。
【0016】
或いは、本発明は、互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバの製造方法であって、前記複数のコアとなる複数のコアガラス体がクラッドガラス体により囲まれると共に、互いに隣り合う前記コアガラス体の外周面同士が互いに接するように、前記複数のコアガラス体、及び、前記クラッドガラス体を配置する配置工程と、前記コアガラス体と前記クラッドガラス体との間の隙間を潰しながら線引きする線引工程とを備え、それぞれの前記コアガラス体の外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記クラッドガラス体は、前記コアガラス体の前記外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成ることを特徴とするものである。
【0017】
このような結合型マルチコアファイバの製造方法によれば、線引時にコアガラス体が加熱されても、コアガラス体からゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができる。従って、結合型マルチコアファイバのコアとクラッドとの間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができ、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造することができる。
【0018】
さらに、前記コアガラス体の前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成ることとしても良い。
【0019】
また、それぞれの前記コアガラス体は、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有することとしても良い。
【0020】
或いは、それぞれの前記コアガラス体は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成ることとしても良い。
【0021】
このようにそれぞれの前記コアガラス体が、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成る場合においては、それぞれの前記コアガラス体は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成ることとしても良い。
【0022】
また、本発明の結合型マルチコアファイバは、互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバであって、それぞれの前記コアの外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記コアを囲むクラッドは、前記コアの外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成ることを特徴とするものである。
【0023】
このような構造の結合型マルチコアファイバによれば、当該結合型マルチコアファイバの製造段階において、コアとクラッドとの間にゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができるので、コアとクラッドとの間に気泡が生じることを防止することができる。従って、気泡の除去による歩留まり低下を防ぐことができる。そのため、このような結合型マルチコアファイバによれば、信頼性の高く、安価な結合型マルチコアファイバとすることができる。
【0024】
また、前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成ることとしても良い。
【0025】
また、それぞれの前記コアは、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有することとしても良い。
【0026】
また、それぞれの前記コアは、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成ることとしても良い。さらにこの場合には、それぞれの前記コアは、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成ることとしても良い。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造可能な結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る結合型マルチコアファイバの様子を示す図である。
【図2】図1の結合型マルチコアファイバを製造するための結合型マルチコアファイバ用母材の長手方向に垂直な断面図である。
【図3】図1の結合型マルチコアファイバの第1の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【図4】コアガラス体及びクラッドガラス体を配置した様子を示す図である。
【図5】線引工程の様子を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る結合型マルチコアファイバの様子を示す図である。
【図7】図6の結合型マルチコアファイバを製造するための結合型マルチコアファイバ用母材の長手方向に垂直な断面図である。
【図8】第2実施形態において、コアガラス体及びクラッドガラス体を配置した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図に記載のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る結合型マルチコアファイバ(以下マルチコアファイバと呼ぶ)の様子を示す図であり、具体的には、図1(A)は、第1実施形態に係る結合型マルチコアファイバの長手方向に垂直な断面図であり、図1(B)は、図1(A)のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
【0031】
図1(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ10は、複数のコア11と、複数のコア11の外周面を隙間なく囲むクラッド12と、クラッド12の外周面を被覆する内側保護層13と、内側保護層13の外周面を被覆する外側保護層14と、を備える。
【0032】
本実施形態においては、それぞれのコア11がクラッド12の径方向に沿って、直線状に配置されると共に、互いに隣り合うコア11の外周面同士が互いに接している。そして、それぞれのコア11の直径が、互いに略等しくされている。
【0033】
また、図1(A)に示すように、マルチコアファイバ10は、それぞれのコア11が二層構造とされており、それぞれのコア11は、コア11の外周面から所定の厚さの外側領域16と、外側領域16で囲まれる内側領域15とを備えている。また、図6(B)に示すように、それぞれのコア11は、互いに同様の屈折率分布を有しており、外側領域16の屈折率は、一定とされると共に、クラッド12の屈折率よりも高くされている。内側領域15の屈折率は、外側領域16の屈折率よりも高くされており、内側領域15の中心側の屈折率が最も高くされ、内側領域15の外周側の屈折利率が、外側領域16の屈折率と略同様とされている。こうして、それぞれのコア11は、全体的にクラッド12よりも高い屈折率とされている。
【0034】
この内側領域15の屈折率分布の形状は特に限定されないが、例えば、α乗分布とされる。このα乗分布は、屈折率n(r)が下記式1であらわされる分布である。
n(r)=n1[1−2Δ(r/a)α]1/2 ・・・(1)
【0035】
ただし、rは、内側領域15の中心からの距離であり、n1は、内側領域15の中心での屈折率であり、Δは、外側領域16に対する比屈折率差であり、aは、α乗分布となる最外半径である。本実施形態のように内側領域15全体の屈折率分布がα乗分布とされる場合、aは、内側領域15の半径に等しい。αの値としては、特に限定されないが、例えば、1.2〜10程度とされ、1.5〜5とされることが、製造中にガラスの破損を防ぐ観点から好ましい。なお、内側領域15がα乗分布とされる場合、ドーパントの偏在等により理想的なα乗分布からずれる場合があるが、全体として実効的にα乗分布となっていればよい。
【0036】
内側領域15の中心におけるクラッド12に対する比屈折率差は、0.85%〜3.5%であることが好ましく、さらに1.0〜1.9であることが、α乗状分布の屈折率分布を有するコアにおいて、本製造方法によって得たマルチコアファイバの接続特性やモード伝搬特性の観点から実用により適しているためより好ましい。また、外側クラッド16のクラッド12に対する比屈折率差は、0.3%〜1.0%であることが好ましい。
【0037】
このような屈折率分布を有する内側領域15は、ゲルマニウムが添加されたシリカガラスから成り、図1(B)に示す屈折率分布となるように、ゲルマニウムの濃度が分布している。外側領域16は、ゲルマニウムが非添加のシリカガラスから成る。例えば、外側領域16は、何らドーパントが添加されないピュアシリカガラス、或いは、コア11の製造段階でシリカからOH基を脱離させるために塩素が僅かに添加されたシリカガラスから成る。このような僅かな塩素の添加は、然程シリカガラスの屈折率を変動させない。外側領域16が、ピュアシリカガラスや僅かに塩素が添加されたシリカガラスから成る場合、クラッド12は、屈折率を低下させるドーパントが添加されたシリカガラスから成る。このような屈折率を低下させるドーパントとしては、例えば、フッ素を挙げることができる。
【0038】
さらに、このマルチコアファイバ10のそれぞれのコア11の直径は、特に限定されるわけではないが、例えば、5μmとされ、外側領域16の厚さは、0.1μm以上とされ、より好ましくは、0.2μm以上とされる。また、内側領域15の直径の、外側領域16の外径に対する比率は、特に制限されないが、0.5〜0.97とされることが好ましく、0.8〜0.95とされることが実用的でありより好ましい。従って、コア11の直径が、上記のように5μmとされる場合、内側領域15の直径は、特に限定されるわけではないが、例えば、4μm〜4.8μmとされる。従って、外側領域16の厚さの上限は、このような内側領域を確保できる厚さとされる。また、クラッド12の直径は、特に限定されるわけではないが、例えば、125μmとされる。
【0039】
さらに、内側保護層13及び外側保護層14の材料としては、互いに異なる種類の紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
【0040】
このようなマルチコアファイバ10によれば、それぞれのコア11の外側領域16は、内側領域15の屈折率とクラッド12の屈折率との間の屈折率を有する。従って、外側領域16がないコアと比べて、コアを光が伝播する場合に、強度の弱い光がコアの中心から離れた位置まで広がる。つまり、コア11の直径方向における光の強度分布が、より裾を引いた形状となる。このため、互いに隣り合うそれぞれのコア11を伝播する光の電解分布の重なりを大きくすることができ、互いに隣り合うコア11同士が強く結合することができる。つまり、マルチコアファイバ10のそれぞれのコア11と同じ中心間距離で外周領域がない複数のコアが互いに離間している場合のように、コア11の中心間距離が大きい場合であっても、モード間の伝搬定数の差を大きくでき、互いに隣り合うコア11同士が強く結合することができる。このように互いに隣り合うコア同士が強く結合しており、それぞれのコア同士が相関し合い、全体として、マルチモード伝送路とみなすことができる。従って、このようなマルチコアファイバ10によれば、コア11を伝播する光のそれぞれのモードに信号を重畳させるモード多重伝送を行うことができる。このようなモード多重伝送を用いる通信としては、例えば、MIMO(Multi-Input Multi-Output)通信を挙げることができる。なお、このようなマルチコアファイバ10は、上記のように各モード間の伝搬定数の差が大きいので、一般的なGI(Graded-Index)型のマルチモードファイバや、SI(Step-Index)型のマルチモードファイバと比較して、各モードの入出力部におけるモード合分波を容易に行うことができ、モード多重伝送により適している。さらに、マルチコアファイバ10によれば、外側領域がないコアの外周面同士が接している場合と比較して、互いに隣り合うそれぞれのコアを伝播する光を個別に容易に取り出すことができる。このようにして上記のようなモード多重伝送を行う場合に、外側領域16がないコアの外周面同士が接している場合と比べて、それぞれのコアを伝播する光を容易に個別に取り出して、モード分離を容易に行うことができる。
【0041】
次に、マルチコアファイバ10の製造方法について説明する。
【0042】
(第1の製造方法)
まず、マルチコアファイバ10の第1の製造方法について、説明する。第1の製造方法は、結合型マルチコアファイバ用母材(以下、プリフォーム)を製造したのち、製造されたプリフォームを線引きすることで、マルチコアファイバを製造するものである。
【0043】
図2は、図1のマルチコアファイバを製造するためのプリフォームの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。図2に示すように、プリフォーム10Pは、略円柱状の形状をしており、それぞれのコア11となる複数のロッド状のコアガラス体11Pと、コアガラス体11Pを囲みクラッド12となるクラッドガラス体12Pとから構成されている。コアガラス体11Pは、内側領域15Pと内側領域15Pを囲む外側領域16Pとから構成される。このプリフォーム10Pの断面の構造は、内側保護層13及び外側保護層14を除くマルチコアファイバ10の断面の構造と略相似の関係とされる。このようなプリフォーム10Pが、後述の様に線引きされ、被覆されることにより、図1に示すマルチコアファイバ10となる。
【0044】
図3は、図2にプリフォーム10Pの製造工程、及び、図1のマルチコアファイバの第1の製造工程を示すフローチャートである。図3に示すように、プリフォーム10Pの製造方法の工程は、コアガラス体及びクラッドガラス体を配置する配置工程P1と、コアガラス体とクラッドガラス体との間の隙間を潰すコラプス工程P2とを備える。そして、マルチコアファイバ10の製造方法は、このようにして製造されたプリフォーム10Pを線引きする線引工程P3を更に備える。
【0045】
<配置工程P1>
図4は、コアガラス体及びクラッドガラス体を配置した様子を示す図である。配置工程P1においては、まず、図4に示すコアガラス体11Rを複数本準備する。コアガラス体11Rは、図2に示すコアガラス体11Pとなるガラス体であり、最終的に図1に示すマルチコアファイバ10のそれぞれのコア11となるガラス体である。従って、コアガラス体11Rは、コア11の数と同じ数だけ準備する。また、それぞれのコアガラス体11Rは、ロッド状とされており、図2に示すコアガラス体11Pと略同様の形状・大きさとされる。さらに、それぞれのコアガラス体11Rは、コア11の内側領域15を構成する材料と同様の材料から成る内側領域15Rと、内側領域15Rを囲み、コア11の外側領域16と同様の材料から成り、所定の厚さの外側領域16Rとから成る。従って、本実施形態においては、内側領域15Pは、屈折率がα乗分布となるようにゲルマニウムが添加されている。この外側領域16Rの所定の厚さは、内側領域15Rが確保でき、さらに、後述のように、加熱時において、内側領域15Rに添加されるゲルマニウムの揮発が防止される限りにおいて、特に制限されないが、0.1mm以上とされ、0.2mm以上とされることがより好ましい。
【0046】
また、コアガラス体11Rの準備と共に、クラッドガラス体を準備する。準備するクラッドガラス体は、複数のロッド状のクラッドガラス体12Rと、1つの管状のクラッドガラス体12Tとされる。これらのクラッドガラス体12R,12Tは、図2に示すクラッドガラス体12Pとなるガラス体であり、最終的に図1に示すマルチコアファイバ10のそれぞれのクラッド12と成るガラス体であるため、クラッドガラス体12R,12Tの材料は、上述のクラッド12と同様の材料とされる。
【0047】
次に、管状のクラッドガラス体12Tの貫通孔内に複数のコアガラス体11R、及び、複数のクラッドガラス体12Rを配置する。具体的には、互いに隣り合うコアガラス体11Rの外周面同士が互いに接するようにして、複数のコアガラス体11Rが横一列になるように、それぞれのコアガラス体11Rを配置すると共に、横一列のコアガラス体11Rが複数のクラッドガラス体12Rにより囲まれるように、それぞれのクラッドガラス体12Rを配置する。なお、特に図示しないが、太さの異なるクラッドガラス体12Rを準備して、配置することが、クラッドガラス体12Tの貫通孔内の隙間を低減することができる観点から好ましい。
【0048】
こうして、図4に示すように、コアガラス体11Rとクラッドガラス体12R,12Tが配置された状態となる。
【0049】
<コラプス工程P2>
次に、配置されたコアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R,12Tを加熱してコラプスする。すなわち、コアガラス体11Rとクラッドガラス体12Rとの間の空間といった、クラッドガラス体12Tの貫通孔内の空間を潰して、コアガラス体11Rとクラッドガラス体12R,12Tとを一体化する。こうして、コアガラス体11Rは、然程変形せずに図2に示すコアガラス体11Pとなり、クラッドガラス体12R,12Tは、図2に示すクラッドガラス体12Pとなる。
【0050】
なお、ガラス体の表面に、ゲルマニウムが分布している場合、このゲルマニウムは揮発する性質を有するが、コアガラス体11Rにおける所定の厚さの外側領域16Rの材料は、上述のようにコア11の材料と同様とされるため、ゲルマニウムが非添加とされ、コアガラス体11Rが加熱される本工程において、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。また、本実施形態においては、内側領域15Pの屈折率がα乗分布とされるため、内側領域15Pにおける外周側に添加されるゲルマニウムは、低い濃度とされる。従って、外周領域16の所定の厚さが小さい場合であっても、ゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。
【0051】
こうして、図2に示すプリフォーム10Pを得る。
【0052】
<線引工程P3>
図5は、線引工程P3の様子を示す図である。
【0053】
まず、線引工程P3を行う準備段階として、配置工程P1、コラプス工程P2により製造されたプリフォーム10Pを紡糸炉110に設置する。そして、紡糸炉110の加熱部111を発熱させて、プリフォーム10Pを加熱する。このときプリフォーム10Pの下端は、例えば2000℃に加熱され溶融状態となる。そして、プリフォーム10Pからガラスが溶融して、ガラスが線引きされる。そして、線引きされた溶融状態のガラスは、紡糸炉110から出ると、すぐに固化して、コアガラス体11Pがコア11となり、クラッドガラス体12Pがクラッド12となることで、複数のコア11とクラッド12とから構成されるマルチコアファイバとなる。その後、このマルチコアファイバは、冷却装置120を通過して、適切な温度まで冷却される。冷却装置120に入る際、マルチコアファイバの温度は、例えば1800℃程度であるが、冷却装置120を出る際には、マルチコアファイバの温度は、例えば40℃〜50℃となる。
【0054】
冷却装置120から出たマルチコアファイバは、内側保護層13となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置131を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置132を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して内側保護層13が形成される。次にマルチコアファイバは、外側保護層14となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置133を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置134を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して外側保護層14が形成され、図1に示すマルチコアファイバ10となる。
【0055】
そして、マルチコアファイバ10は、ターンプーリー141により方向が変換され、リール142により巻取られる。
【0056】
こうして図1に示すマルチコアファイバ10が製造される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の第1の製造方法によるプリフォーム10Pの製造方法によれば、コアガラス体11Rは、コアガラス体11Rの外側領域16Rにゲルマニウムが添加されないため、コラプス工程P2においてコアガラス体11Rが加熱されても、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができる。従って、製造されたプリフォーム10Pのコアガラス体11Pとクラッドガラス体12Pとの間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができる。
【0058】
そして、このプリフォーム10Pを用いるマルチコアファイバ10の製造法によれば、コアガラス体11Pとクラッドガラス体12Pとの間に気泡が生じることが防止されたプリフォーム10Pを線引きするので、コア11とクラッド12との間に生じる気泡が防止された、信頼性の高いマルチコアファイバ10を製造することができる。
【0059】
(第2の製造方法)
次に、マルチコアファイバ10の第2の製造方法について、説明する。第2の製造方法は、プリフォーム10Pを製造せずに、マルチコアファイバ10を製造する点において、第1の製造方法と異なる。
【0060】
第2の製造方法においては、第1の製造方法と同様にして、配置工程を行う。つまり、第1の製造方法と同様のコアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tを準備し、第1の製造方法と同様にして、コアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tを配置する。こうして、図4に示すように、コアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tが配置された状態となる。
【0061】
そして、第2の製造方法においては、配置されたコアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tの位置が互いにずれないようにして、これらを紡糸炉に設置する。つまり、図5において、プリフォーム10Pの代わりに図4に示すように配置されたコアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tを紡糸炉110に設置する。
【0062】
そして、紡糸炉110の加熱部111を発熱させて、コアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tを加熱する。この熱により、コアガラス体11Rとクラッドガラス体12Rとの間の隙間といったクラッドガラス体12Tの貫通孔内の空間を潰しながら線引きする。このとき、第1の製造方法と同様に、コアガラス体11Rにおける所定の厚さの外側領域16Rには、ゲルマニウムが非添加とされるため、コアガラス体11Rが加熱されて、溶融するときに、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。
【0063】
そして、線引きされた溶融状態のガラスは、第1の製造方法と同様にして、マルチコアファイバ10とされ、リール142により巻取られる。こうして図1に示すマルチコアファイバ10が製造される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の第2の製造方法によるマルチコアファイバ10の製造方法によれば、線引時にコアガラス体11Rが加熱されても、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができる。従って、コア11とクラッド12との間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができ、信頼性の高いマルチコアファイバ10を製造することができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6〜図8を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0066】
図6は、本発明の第2実施形態に係る結合型マルチコアファイバ(以下マルチコアファイバと呼ぶ)の様子を示す図である。具体的には、図6(A)は、本実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面図であり、図6(B)は、図6(A)のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
【0067】
図6(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ20は、複数のコア21と、第1実施形態のマルチコアファイバにおけるクラッド12と同様の形状・材料から成るクラッド22と、第1実施形態の内側保護層13及び外側保護層14と同様の形状・材料から成る内側保護層23及び外側保護層24とを備える。
【0068】
それぞれのコア21は、第1実施形態の複数のコア11と同様にして、クラッド12の径方向に沿って、直線状に配置されると共に、互いに隣り合うコア21同士の外周面が互いに接している。そして、それぞれのコア11の直径が、互いに略等しくされている。
【0069】
それぞれのコア21は、全体の屈折率が均一とされ、二層構造となっていない点において、第1実施形態のコア11と異なる。また、図6(B)に示すように、本実施形態のコア21の屈折率は、クラッド22の屈折率よりも高くされている。このコア21の材料は、第1実施形態のコア11の外側領域16と同様の材料とされる。つまり、本実施形態のコア21は、特に外側領域と内側領域の境界があるわけではないが、外側領域を含んで、コア21全体が、ゲルマニウムが非添加の材料から成る。別言すれば、本実施形態のコア21は、特に外側領域と内側領域の境界があるわけではないが、外側領域と内側領域とが同じ材料から構成されて、同じ屈折率を有すると考えることができる。
【0070】
このようなマルチコアファイバ20は、コア21が互いに接しているため、互いに隣り合うコア21同士が強く結合しており、それぞれのコア21同士が相関し合い、全体として、マルチモード伝送路とみなすことができる。従って、このようなマルチコアファイバ20によれば、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様にして、コア11を伝播する光のそれぞれのモードに信号を重畳させるモード多重伝送を行うことができる。ただし、モード多重伝送を行う際に、第1実施形態のように、コアの外側領域が、内側領域の屈折率とクラッドの屈折率との間の屈折率を有する方が、モード分離を容易に行うことができる。
【0071】
次に、マルチコアファイバ20の製造方法について説明する。
【0072】
(第1の製造方法)
本実施形態においても、第1の製造方法は、結合型マルチコアファイバ用母材(以下、プリフォーム)を製造したのち、製造されたプリフォームを線引きすることで、マルチコアファイバを製造するものである。従って、本実施形態の第1の製造方法は、図3に示す工程と同様の工程を備える。
【0073】
<配置工程P1>
図7は、図6(A)のマルチコアファイバを製造するためのプリフォームの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。図6に示すように、プリフォーム20Pは、それぞれのコア21となる複数のロッド状のコアガラス体21Pと、コアガラス体21Pを囲み、クラッド22となるクラッドガラス体22Pとから構成されている。このクラッドガラス体22Pは、第1実施形態におけるプリフォーム10Pにおけるクラッドガラス体12Pと同様の構成とされる。また、プリフォーム20Pの断面の構造は、内側保護層23及び外側保護層24を除くマルチコアファイバ10の断面の構造と略相似の関係とされる。
【0074】
本実施形態においても、まず、第1実施形態の第1の製造方法における配置工程P1と同様にして、配置工程を行う。図8は、コアガラス体及びクラッドガラス体を配置した様子を示す図である。本実施形態においては、コア21と同様の材料からなコアガラス体21Rをコア21の数と同じ数だけ準備する。つまり、特に外側領域と内側領域の境界があるわけではないが、所定の厚さの外側領域を含んで、全体が、ゲルマニウムが非添加の材料から成るコアガラス体21Rを準備する。また、第1実施形態の第1の製造方法のクラッドガラス体12R、12Tと同様の、クラッドガラス体22R、22Tを準備する。
【0075】
そして、第1の製造方法と同様にして、互いに隣り合うコアガラス体11Rの外周面同士が互いに接するようにして、クラッドガラス体22Tの貫通孔内に、複数のコアガラス体21Rが横一列になるように、それぞれのコアガラス体21Rを配置すると共に、横一列のコアガラス体21Rが複数のクラッドガラス体22Rにより囲まれるように、それぞれのクラッドガラス体22Rを配置する。
【0076】
こうして、図8に示すように、コアガラス体21Rとクラッドガラス体22R,22Tが配置された状態となる。
【0077】
<コラプス工程P2>
次に、第1実施形態の第1の製造方法と同様にして、コラプス工程P2を行う。このコラプス工程P2により、コアガラス体21Rとクラッドガラス体22Rとの間の空間といった、クラッドガラス体22Tの貫通孔内の空間が潰され、コアガラス体21Rとクラッドガラス体22R,22Tとが一体化される。こうして、コアガラス体21Rがコアガラス体21Pとなり、クラッドガラス体22R,22Tが、クラッドガラス体12Pとなり、図7に示すプリフォームを得る。
【0078】
なお、コアガラス体21Rは、外側領域を含んで、全体が、ゲルマニウムが非添加の材料から成る。別言すれば、コアガラス体21Rは、特に外側領域と内側領域の境界があるわけではないが、外側領域と内側領域とが、それぞれ同じゲルマニウムが非添加の材料から成る。従って、コアガラス体21Rが加熱される本工程において、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。
【0079】
<線引工程P3>
次に、第1実施形態の第1の製造方法と同様にして線引工程を行う。
【0080】
こうして図6に示すマルチコアファイバ20が製造される。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の第1の製造方法によるプリフォーム20Pの製造方法によれば、コアガラス体21Rは、特に内周領域と外周領域との境界があるわけではないが、外周領域を含んで、全体にゲルマニウムが添加されない。従って、製造されたプリフォーム20Pのコアガラス体21Pとクラッドガラス体22Pとの間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができる。
【0082】
このため、プリフォーム20Pが線引きすることで、コア21とクラッド22との間に生じる気泡が防止された、信頼性の高いマルチコアファイバ20を製造することができる。
【0083】
(第2の製造方法)
次に、マルチコアファイバ20の第2の製造方法について、説明する。本実施形態の第2の製造方法は、第1実施形態の第2の製造方法と同様にして、プリフォーム20Pを製造せずに、マルチコアファイバ20を製造するものである。
【0084】
本実施形態の第2の製造方法では、本実施形態の第1の製造方法と同様にして、配置工程を行う。つまり、本実施形態の第1の製造方法と同様のコアガラス体21R、及び、クラッドガラス体22R、22Tを準備し、第1の製造方法と同様にして、コアガラス体21R、及び、クラッドガラス体22R、22Tを配置する。こうして、図8に示すように、コアガラス体21R、及び、クラッドガラス体22R、22Tが配置された状態となる。
【0085】
次に、第1実施形態の第2の製造方法と同様にして、配置されたコアガラス体21R、及び、クラッドガラス体22R、22Tを紡糸炉110に設置し、線引工程を行い、図6に示すマルチコアファイバ20が製造される。
【0086】
このとき、本実施形態の第1の製造方法と同様に、コアガラス体21Rは、外側領域を含んで、コアガラス体21R全体が、ゲルマニウムが非添加とされるため、コアガラス体21Rが加熱されて、溶融するときに、コアガラス体21Rからゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。
【0087】
従って、本実施形態の第2の製造方法によるマルチコアファイバ10の製造方法によれば、コア21とクラッド22との間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができ、信頼性の高いマルチコアファイバ20を製造することができる。
【0088】
以上、本発明について、第1、第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
例えば、第1実施形態のコア11の外側領域16や、第2実施形態のコア21の材料は、ゲルマニウムが非添加のシリカガラスである限りにおいて、他のドーパントが含まれていても良い。例えば、ドーパントとして、アルミニウムやリンが添加されても良い。この場合、第1実施形態の内側領域15は、ゲルマニウムの量が調整され、図1(B)に示す屈折率分布となるようにすればよい。さらに、第1実施形態のコア11の外側領域16や、第2実施形態のコア21にアルミニウムやリンが添加される場合においては、クラッド12、22は、クラッド22の屈折率が、外側領域16や、コア21の屈折率よりも低い限りにおいて、ピュアシリカガラスや微量の塩素が添加されたシリカガラスであっても良い。
【0090】
また、第1実施形態において、内側領域は、屈折率分布がα乗分布とされたが、本発明はこれに限定されず、例えば、内側領域15の屈折率が、外側領域16の屈折率よりも高く、一定の屈折率分布とされても良い。この場合、例えば、内側領域15の材料としては、ゲルマニウムが均一に添加されたシリカガラスを挙げることができる。さらに、第1実施形態において、第2実施形態のように内側領域15の屈折率と外側領域16の屈折率とを同じにしても良い。このようにするには、例えば、外側領域16にアルミニウムやリンを加えて、内側領域15に添加されるゲルマニウムの量を調整すればよい。
【0091】
また、第1、第2実施形態においては、複数のコア11、21が横一列に直線状に配置された。しかし、本発明はこれに限らず、コアが他の配列となっていても良い。例えば、マルチコアファイバの断面において、複数のコアが縦3列、横3行となるようにして、互いに隣り合うマルチコアファイバの外周面同士が接触して、配置されても良い。或いは、クラッドの中心に1つのコアが配置されると共に、この1つのコアに接触して、この1つのコアを囲むように6つのコアが配置されても良い。また、第1、第2実施形態においては、コアの数が5つのマルチコアファイバを例に説明したが、コアの数は、2つから4つ、或いは、5つ以上としても良い。
【0092】
また、クラッド12、22が二層の構造となっていても良い。この場合、例えば、クラッドの内側の領域が、フッ素が添加されたシリカガラスから成り、クラッドの外側の領域が、ピュアシリカガラスや微量の塩素が添加されたシリカガラスから成るものとすることが好ましい。これは、マルチコアファイバの破断強度は、クラッドの外側の表面の強度に依存するため、クラッドの外側の領域に強度の高いピュアシリカガラスや微量の塩素が添加されたシリカガラス使用することにより、全体として、マルチコアファイバの強度を高くすることができるためである。この場合、第1、第2実施形態において、管状のクラッドガラス体12T,22Tをピュアシリカガラスや微量の塩素が添加されたシリカガラスから構成すればよい。
【0093】
また、上記実施形態においては、それぞれのコア11、21の直径・屈折率は、互いに等しいものとしたが、本発明においては、それぞれのコア11、21の直径・屈折率は、互いに異なっていても良い。ただし、それぞれのコア11、21の直径・屈折率は、それぞれのコア11、21同士の結合を強くする観点から、互いに等しい直径であることが好ましい。また、それぞれのコア11、21の直径・屈折率が互いに異なる場合であっても、それぞれのコアの光の導波特性が互いに等しくされることが、それぞれのコア11、21同士の結合を強くする観点から好ましい。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0095】
(実施例1)
第2実施形態の第2の製造方法と同様にして、マルチコアファイバを製造した。準備したコアガラス体は、数を5つとし、直径を6mmとし、材料を、微量の塩素が添加されたシリカガラスとした。また、コアガラス体を囲む複数のクラッドガラス体の材料として、フッ素が添加されたシリカガラスを用いて、外側領域に対する比屈折率差を−0.4%とした。このようなコアガラス体を図8と同様にして配置し、線引きを行って、クラッドの直径が約180μmであり、それぞれのコアの直径が約8μmのマルチコアファイバを製造した。
【0096】
製造されたマルチコアファイバにおいては、コアとクラッドとの間に、特に気泡が確認されなかった。
【0097】
(実施例2)
第1実施形態の第2の製造方法と同様にして、マルチコアファイバを製造した。準備したコアガラス体は、数を4つとし、直径を5mmとした。また、コアガラス体の内側領域の直径を4.85mmとし、外側領域の厚さを0.15mmとして、コアガラス体の直径に対する外側領域の厚さの比率を約0.03とした。さらに、外側領域の材料を微量の塩素が添加されたシリカガラスとして、内側領域の材料をゲルマニウムが添加されたシリカガラスとして、このゲルマニウムに濃度分布を持たせて、屈折率がαが約3のα乗分布となるようにした。内側領域の中心(コアの中心)の外側領域に対する比屈折率差を1.1%とした。また、コアガラス体を囲む複数のクラッドガラス体の材料として、にフッ素が添加されたシリカガラスを用いて、外側領域に対する比屈折率差を−0.4%とした。さらに、管状のクラッドガラス体の材料として、ピュアシリカガラスを用いた。
【0098】
このようなコアガラス体を図4と同様にして配置し、線引きを行って、クラッドのフッ素が添加された領域の直径が約80μmであり、クラッドの最外の直径が125μmであり、それぞれのコアの直径が約5μmのマルチコアファイバを製造した。
【0099】
製造されたマルチコアファイバにおいては、コアとクラッドとの間に、特に気泡が確認されなかった。
【0100】
(実施例3)
実施例2と略同様にしてマルチコアファイバを製造した。ただし、実施例2と次の点を変えた。すなわち、それぞれのコアガラス体の直径を2.8mmとし、コアガラス体の内側領域の直径を2.6mmとし、外側領域の厚さを0.2mmとして、コアの直径に対する外側領域の厚さの比率を約0.07とした。さらに、コアガラス体は、屈折率がαが約2.5のα乗分布となるようにした。また、内側領域の中心(コアの中心)の外側領域に対する比屈折率差を2.6%とした。また、コアを囲む複数のクラッドガラス体の外側領域に対する比屈折率差を−0.7%とした。さらに、管状のクラッドガラス体の材料として、ピュアシリカガラスを用いた。
【0101】
そして、実施例2と同様にして線引を行い、クラッドのフッ素が添加された領域の直径が約80μmであり、クラッドの最外の直径が125μmであり、それぞれのコアの直径が約4μmのマルチコアファイバを製造した。
【0102】
製造されたマルチコアファイバにおいては、コアとクラッドとの間に、特に気泡が確認されなかった。
【0103】
(比較例)
コアガラス体の材料をゲルマニウムが、10mol%含まれたシリカガラスを用い、クラッドガラス体を微量の塩素が添加されたシリカガラスとしたこと以外は、実施例1と同様にしてマルチコアファイバを製造した。
【0104】
製造されたマルチコアファイバにおいては、コアとクラッドとの間に、複数の気泡が確認された。また、製造したファイバの長手方向において気泡のある箇所を除去し気泡の無い箇所のみの抽出を試みたが、連続して50m以上の気泡が無いマルチコアファイバを得ることはできなかった。この気泡は、線引きを行う際、コアガラス体の表面付近のゲルマニウムが揮発することで生じたものと考えられる。
【0105】
以上の結果から、コアとなるコアガラス体における少なくとも外側領域がゲルマニウムが非添加のシリカガラスから成る場合、製造されるマルチコアファイバのコアとクラッドとの間に気泡が生じないことが分かった。これは、コアガラス体が加熱される際、ゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明によれば、コアとクラッドとの間に気泡が生じることが防止された信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造可能な結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバが提供される。
【符号の説明】
【0107】
10,20・・・(結合型)マルチコアファイバ
10P,20P・・・結合型マルチコアファイバ用母材(プリフォーム)
11,21・・・コア
11P,11R,21P,21R・・・コアガラス体
12,22・・・クラッド
12P,12R,12T,22P,22R,22T・・・クラッドガラス体
13,23・・・内側保護層
14,24・・・外側保護層
15・・・内側領域
15P,15R・・・内側領域
16・・・外側領域
16P,16R・・・外側領域
110・・・紡糸炉
111・・・加熱部
120・・・冷却装置
131・・・コーティング装置
132・・・紫外線照射装置
133・・・コーティング装置
134・・・紫外線照射装置
141・・・ターンプーリー
142・・・リール
P1・・・配置工程
P2・・・コラプス工程
P3・・・線引工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造可能な結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している光ファイバ通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアの外周がクラッドにより被覆される構造をしており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。そして、近年光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝送される情報量が飛躍的に増大している。このような伝送される情報量の増大に伴い、光ファイバ通信システムにおいては、数十本から数百本といった多数の光ファイバが用いられることで、大容量の長距離光通信が行われている。
【0003】
こうした光ファイバ通信システムにおける光ファイバの数を低減させるため、複数のコアの外周が1つのクラッドにより囲まれたマルチコアファイバを用いて、それぞれのコアを伝搬する光により、複数の信号を伝送させることが知られている。
【0004】
このようなマルチコアファイバとしては、それぞれのコアが互いに独立した伝送路とされ、それぞれのコアの結合が出来るだけ低減された非結合型マルチコアファイバと、それぞれのコアがたがいに結合することで、複数のコアを実質的に一つのマルチモード伝送路とみなすことができる結合型マルチコアファイバとが知られている。この結合型マルチコアファイバによれば、コアを伝播する光のモード毎に異なる信号を伝送するモード多重伝送が可能とされる。
【0005】
下記特許文献1には、このような結合型マルチコアファイバの一例が記載されている。特許文献1によれば、結合型マルチコアファイバのそれぞれのコア間距離が近いほど、コア同士の結合が強くなるとされる。従って、それぞれのコアが接していれば、コア同士の結合は最も強くなると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yasuo Kokubun “Novel multi−core fibers for mode dividion multiplexing: proposal and design principle” IEICE Electronics Express, Vol.6, No.8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなそれぞれのコアが接している結合型マルチコアファイバを製造する方法としては、スタックアンドドロー法を挙げることができる。スタックアンドドロー法としては、それぞれのコアとなるロッド状のコアガラス体が、光ファイバのクラッドとなるクラッドガラス体に囲まれた状態で配置され、それぞれのガラス体の隙間を潰しながら線引きする方法、及び、上記のようにコアガラス体とクラッドガラス体とが配置された状態で、コアガラス体とクラッドガラス体との隙間を潰して光ファイバ用母材とし、この光ファイバ用母材を線引きする方法とがある。そして、上記のようにそれぞれのコア同士が互いに接している結合型マルチコアファイバを製造する場合、外周面が露出したコアガラス体同士が、互いに接した状態で配置される必要がある。
【0008】
ところで、光ファイバのコアの屈折率をクラッドよりも高くするために、一般的に、コアは、ゲルマニウムが添加されたシリカガラスから成る。これは、ゲルマニウムが添加されたシリカガラスは、伝播する光の損失を抑制することができ、容易に屈折率を高くすることができるためである。
【0009】
しかし、コアガラス体の外周面上、すなわち、気固界面に存在するゲルマニウムは、隙間が潰されながら、コアガラス体とクラッドガラス体とが線引きされる温度や、隙間が潰されて光ファイバ用母材とされる温度において、揮発する性質がある。従って、上述のように外周面が露出したコアガラス体同士を接する状態で配置して、線引き工程やコラプス工程等を行い、光ファイバを製造すると、コアの周りに気泡が生じる場合がある。
【0010】
このようなコアの周りに気泡が生じると、コアを伝播する信号の損失が大きくなる場合や、光ファイバの強度が低下する場合があり、光ファイバの信頼性が低くなる虞がある。
【0011】
そこで、本発明は、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造可能な結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバを製造するための結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法であって、前記複数のコアとなる複数のコアガラス体がクラッドガラス体により囲まれると共に、互いに隣り合う前記コアガラス体の外周面同士が互いに接するように、前記複数のコアガラス体、及び、前記クラッドガラス体を配置する配置工程と、前記コアガラス体と前記クラッドガラス体との間の隙間を潰すコラプス工程とを備え、それぞれの前記コアガラス体の外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記クラッドガラス体は、前記コアガラス体の前記外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成ることを特徴とするものである。
【0013】
このような結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法によれば、コアガラス体の外側領域にゲルマニウムが添加されないため、コラプス工程においてコアガラス体が加熱されても、コアガラス体からゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができる。従って、製造された結合型マルチコアファイバ用母材のコアガラス体とクラッドガラス体との間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができる。このような製造方法により製造される結合型マルチコアファイバ用母材を線引きすることで、コアとクラッドとの間に生じる気泡が防止された、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造することができる。
【0014】
また、本発明の結合型マルチコアファイバの製造方法は、上記のいずれかの結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法により製造される結合型マルチコアファイバ用母材を線引きする線引工程を備えることを特徴とするものである。
【0015】
このような結合型マルチコアファイバの製造方法によれば、コアガラス体とクラッドガラス体との間に気泡が生じることが防止された結合型マルチコアファイバ用母材を線引きするため、コアとクラッドとの間に生じる気泡が防止された、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造することができる。
【0016】
或いは、本発明は、互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバの製造方法であって、前記複数のコアとなる複数のコアガラス体がクラッドガラス体により囲まれると共に、互いに隣り合う前記コアガラス体の外周面同士が互いに接するように、前記複数のコアガラス体、及び、前記クラッドガラス体を配置する配置工程と、前記コアガラス体と前記クラッドガラス体との間の隙間を潰しながら線引きする線引工程とを備え、それぞれの前記コアガラス体の外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記クラッドガラス体は、前記コアガラス体の前記外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成ることを特徴とするものである。
【0017】
このような結合型マルチコアファイバの製造方法によれば、線引時にコアガラス体が加熱されても、コアガラス体からゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができる。従って、結合型マルチコアファイバのコアとクラッドとの間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができ、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造することができる。
【0018】
さらに、前記コアガラス体の前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成ることとしても良い。
【0019】
また、それぞれの前記コアガラス体は、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有することとしても良い。
【0020】
或いは、それぞれの前記コアガラス体は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成ることとしても良い。
【0021】
このようにそれぞれの前記コアガラス体が、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成る場合においては、それぞれの前記コアガラス体は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成ることとしても良い。
【0022】
また、本発明の結合型マルチコアファイバは、互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバであって、それぞれの前記コアの外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記コアを囲むクラッドは、前記コアの外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成ることを特徴とするものである。
【0023】
このような構造の結合型マルチコアファイバによれば、当該結合型マルチコアファイバの製造段階において、コアとクラッドとの間にゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができるので、コアとクラッドとの間に気泡が生じることを防止することができる。従って、気泡の除去による歩留まり低下を防ぐことができる。そのため、このような結合型マルチコアファイバによれば、信頼性の高く、安価な結合型マルチコアファイバとすることができる。
【0024】
また、前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成ることとしても良い。
【0025】
また、それぞれの前記コアは、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有することとしても良い。
【0026】
また、それぞれの前記コアは、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成ることとしても良い。さらにこの場合には、それぞれの前記コアは、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成ることとしても良い。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造可能な結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る結合型マルチコアファイバの様子を示す図である。
【図2】図1の結合型マルチコアファイバを製造するための結合型マルチコアファイバ用母材の長手方向に垂直な断面図である。
【図3】図1の結合型マルチコアファイバの第1の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【図4】コアガラス体及びクラッドガラス体を配置した様子を示す図である。
【図5】線引工程の様子を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る結合型マルチコアファイバの様子を示す図である。
【図7】図6の結合型マルチコアファイバを製造するための結合型マルチコアファイバ用母材の長手方向に垂直な断面図である。
【図8】第2実施形態において、コアガラス体及びクラッドガラス体を配置した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図に記載のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る結合型マルチコアファイバ(以下マルチコアファイバと呼ぶ)の様子を示す図であり、具体的には、図1(A)は、第1実施形態に係る結合型マルチコアファイバの長手方向に垂直な断面図であり、図1(B)は、図1(A)のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
【0031】
図1(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ10は、複数のコア11と、複数のコア11の外周面を隙間なく囲むクラッド12と、クラッド12の外周面を被覆する内側保護層13と、内側保護層13の外周面を被覆する外側保護層14と、を備える。
【0032】
本実施形態においては、それぞれのコア11がクラッド12の径方向に沿って、直線状に配置されると共に、互いに隣り合うコア11の外周面同士が互いに接している。そして、それぞれのコア11の直径が、互いに略等しくされている。
【0033】
また、図1(A)に示すように、マルチコアファイバ10は、それぞれのコア11が二層構造とされており、それぞれのコア11は、コア11の外周面から所定の厚さの外側領域16と、外側領域16で囲まれる内側領域15とを備えている。また、図6(B)に示すように、それぞれのコア11は、互いに同様の屈折率分布を有しており、外側領域16の屈折率は、一定とされると共に、クラッド12の屈折率よりも高くされている。内側領域15の屈折率は、外側領域16の屈折率よりも高くされており、内側領域15の中心側の屈折率が最も高くされ、内側領域15の外周側の屈折利率が、外側領域16の屈折率と略同様とされている。こうして、それぞれのコア11は、全体的にクラッド12よりも高い屈折率とされている。
【0034】
この内側領域15の屈折率分布の形状は特に限定されないが、例えば、α乗分布とされる。このα乗分布は、屈折率n(r)が下記式1であらわされる分布である。
n(r)=n1[1−2Δ(r/a)α]1/2 ・・・(1)
【0035】
ただし、rは、内側領域15の中心からの距離であり、n1は、内側領域15の中心での屈折率であり、Δは、外側領域16に対する比屈折率差であり、aは、α乗分布となる最外半径である。本実施形態のように内側領域15全体の屈折率分布がα乗分布とされる場合、aは、内側領域15の半径に等しい。αの値としては、特に限定されないが、例えば、1.2〜10程度とされ、1.5〜5とされることが、製造中にガラスの破損を防ぐ観点から好ましい。なお、内側領域15がα乗分布とされる場合、ドーパントの偏在等により理想的なα乗分布からずれる場合があるが、全体として実効的にα乗分布となっていればよい。
【0036】
内側領域15の中心におけるクラッド12に対する比屈折率差は、0.85%〜3.5%であることが好ましく、さらに1.0〜1.9であることが、α乗状分布の屈折率分布を有するコアにおいて、本製造方法によって得たマルチコアファイバの接続特性やモード伝搬特性の観点から実用により適しているためより好ましい。また、外側クラッド16のクラッド12に対する比屈折率差は、0.3%〜1.0%であることが好ましい。
【0037】
このような屈折率分布を有する内側領域15は、ゲルマニウムが添加されたシリカガラスから成り、図1(B)に示す屈折率分布となるように、ゲルマニウムの濃度が分布している。外側領域16は、ゲルマニウムが非添加のシリカガラスから成る。例えば、外側領域16は、何らドーパントが添加されないピュアシリカガラス、或いは、コア11の製造段階でシリカからOH基を脱離させるために塩素が僅かに添加されたシリカガラスから成る。このような僅かな塩素の添加は、然程シリカガラスの屈折率を変動させない。外側領域16が、ピュアシリカガラスや僅かに塩素が添加されたシリカガラスから成る場合、クラッド12は、屈折率を低下させるドーパントが添加されたシリカガラスから成る。このような屈折率を低下させるドーパントとしては、例えば、フッ素を挙げることができる。
【0038】
さらに、このマルチコアファイバ10のそれぞれのコア11の直径は、特に限定されるわけではないが、例えば、5μmとされ、外側領域16の厚さは、0.1μm以上とされ、より好ましくは、0.2μm以上とされる。また、内側領域15の直径の、外側領域16の外径に対する比率は、特に制限されないが、0.5〜0.97とされることが好ましく、0.8〜0.95とされることが実用的でありより好ましい。従って、コア11の直径が、上記のように5μmとされる場合、内側領域15の直径は、特に限定されるわけではないが、例えば、4μm〜4.8μmとされる。従って、外側領域16の厚さの上限は、このような内側領域を確保できる厚さとされる。また、クラッド12の直径は、特に限定されるわけではないが、例えば、125μmとされる。
【0039】
さらに、内側保護層13及び外側保護層14の材料としては、互いに異なる種類の紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
【0040】
このようなマルチコアファイバ10によれば、それぞれのコア11の外側領域16は、内側領域15の屈折率とクラッド12の屈折率との間の屈折率を有する。従って、外側領域16がないコアと比べて、コアを光が伝播する場合に、強度の弱い光がコアの中心から離れた位置まで広がる。つまり、コア11の直径方向における光の強度分布が、より裾を引いた形状となる。このため、互いに隣り合うそれぞれのコア11を伝播する光の電解分布の重なりを大きくすることができ、互いに隣り合うコア11同士が強く結合することができる。つまり、マルチコアファイバ10のそれぞれのコア11と同じ中心間距離で外周領域がない複数のコアが互いに離間している場合のように、コア11の中心間距離が大きい場合であっても、モード間の伝搬定数の差を大きくでき、互いに隣り合うコア11同士が強く結合することができる。このように互いに隣り合うコア同士が強く結合しており、それぞれのコア同士が相関し合い、全体として、マルチモード伝送路とみなすことができる。従って、このようなマルチコアファイバ10によれば、コア11を伝播する光のそれぞれのモードに信号を重畳させるモード多重伝送を行うことができる。このようなモード多重伝送を用いる通信としては、例えば、MIMO(Multi-Input Multi-Output)通信を挙げることができる。なお、このようなマルチコアファイバ10は、上記のように各モード間の伝搬定数の差が大きいので、一般的なGI(Graded-Index)型のマルチモードファイバや、SI(Step-Index)型のマルチモードファイバと比較して、各モードの入出力部におけるモード合分波を容易に行うことができ、モード多重伝送により適している。さらに、マルチコアファイバ10によれば、外側領域がないコアの外周面同士が接している場合と比較して、互いに隣り合うそれぞれのコアを伝播する光を個別に容易に取り出すことができる。このようにして上記のようなモード多重伝送を行う場合に、外側領域16がないコアの外周面同士が接している場合と比べて、それぞれのコアを伝播する光を容易に個別に取り出して、モード分離を容易に行うことができる。
【0041】
次に、マルチコアファイバ10の製造方法について説明する。
【0042】
(第1の製造方法)
まず、マルチコアファイバ10の第1の製造方法について、説明する。第1の製造方法は、結合型マルチコアファイバ用母材(以下、プリフォーム)を製造したのち、製造されたプリフォームを線引きすることで、マルチコアファイバを製造するものである。
【0043】
図2は、図1のマルチコアファイバを製造するためのプリフォームの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。図2に示すように、プリフォーム10Pは、略円柱状の形状をしており、それぞれのコア11となる複数のロッド状のコアガラス体11Pと、コアガラス体11Pを囲みクラッド12となるクラッドガラス体12Pとから構成されている。コアガラス体11Pは、内側領域15Pと内側領域15Pを囲む外側領域16Pとから構成される。このプリフォーム10Pの断面の構造は、内側保護層13及び外側保護層14を除くマルチコアファイバ10の断面の構造と略相似の関係とされる。このようなプリフォーム10Pが、後述の様に線引きされ、被覆されることにより、図1に示すマルチコアファイバ10となる。
【0044】
図3は、図2にプリフォーム10Pの製造工程、及び、図1のマルチコアファイバの第1の製造工程を示すフローチャートである。図3に示すように、プリフォーム10Pの製造方法の工程は、コアガラス体及びクラッドガラス体を配置する配置工程P1と、コアガラス体とクラッドガラス体との間の隙間を潰すコラプス工程P2とを備える。そして、マルチコアファイバ10の製造方法は、このようにして製造されたプリフォーム10Pを線引きする線引工程P3を更に備える。
【0045】
<配置工程P1>
図4は、コアガラス体及びクラッドガラス体を配置した様子を示す図である。配置工程P1においては、まず、図4に示すコアガラス体11Rを複数本準備する。コアガラス体11Rは、図2に示すコアガラス体11Pとなるガラス体であり、最終的に図1に示すマルチコアファイバ10のそれぞれのコア11となるガラス体である。従って、コアガラス体11Rは、コア11の数と同じ数だけ準備する。また、それぞれのコアガラス体11Rは、ロッド状とされており、図2に示すコアガラス体11Pと略同様の形状・大きさとされる。さらに、それぞれのコアガラス体11Rは、コア11の内側領域15を構成する材料と同様の材料から成る内側領域15Rと、内側領域15Rを囲み、コア11の外側領域16と同様の材料から成り、所定の厚さの外側領域16Rとから成る。従って、本実施形態においては、内側領域15Pは、屈折率がα乗分布となるようにゲルマニウムが添加されている。この外側領域16Rの所定の厚さは、内側領域15Rが確保でき、さらに、後述のように、加熱時において、内側領域15Rに添加されるゲルマニウムの揮発が防止される限りにおいて、特に制限されないが、0.1mm以上とされ、0.2mm以上とされることがより好ましい。
【0046】
また、コアガラス体11Rの準備と共に、クラッドガラス体を準備する。準備するクラッドガラス体は、複数のロッド状のクラッドガラス体12Rと、1つの管状のクラッドガラス体12Tとされる。これらのクラッドガラス体12R,12Tは、図2に示すクラッドガラス体12Pとなるガラス体であり、最終的に図1に示すマルチコアファイバ10のそれぞれのクラッド12と成るガラス体であるため、クラッドガラス体12R,12Tの材料は、上述のクラッド12と同様の材料とされる。
【0047】
次に、管状のクラッドガラス体12Tの貫通孔内に複数のコアガラス体11R、及び、複数のクラッドガラス体12Rを配置する。具体的には、互いに隣り合うコアガラス体11Rの外周面同士が互いに接するようにして、複数のコアガラス体11Rが横一列になるように、それぞれのコアガラス体11Rを配置すると共に、横一列のコアガラス体11Rが複数のクラッドガラス体12Rにより囲まれるように、それぞれのクラッドガラス体12Rを配置する。なお、特に図示しないが、太さの異なるクラッドガラス体12Rを準備して、配置することが、クラッドガラス体12Tの貫通孔内の隙間を低減することができる観点から好ましい。
【0048】
こうして、図4に示すように、コアガラス体11Rとクラッドガラス体12R,12Tが配置された状態となる。
【0049】
<コラプス工程P2>
次に、配置されたコアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R,12Tを加熱してコラプスする。すなわち、コアガラス体11Rとクラッドガラス体12Rとの間の空間といった、クラッドガラス体12Tの貫通孔内の空間を潰して、コアガラス体11Rとクラッドガラス体12R,12Tとを一体化する。こうして、コアガラス体11Rは、然程変形せずに図2に示すコアガラス体11Pとなり、クラッドガラス体12R,12Tは、図2に示すクラッドガラス体12Pとなる。
【0050】
なお、ガラス体の表面に、ゲルマニウムが分布している場合、このゲルマニウムは揮発する性質を有するが、コアガラス体11Rにおける所定の厚さの外側領域16Rの材料は、上述のようにコア11の材料と同様とされるため、ゲルマニウムが非添加とされ、コアガラス体11Rが加熱される本工程において、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。また、本実施形態においては、内側領域15Pの屈折率がα乗分布とされるため、内側領域15Pにおける外周側に添加されるゲルマニウムは、低い濃度とされる。従って、外周領域16の所定の厚さが小さい場合であっても、ゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。
【0051】
こうして、図2に示すプリフォーム10Pを得る。
【0052】
<線引工程P3>
図5は、線引工程P3の様子を示す図である。
【0053】
まず、線引工程P3を行う準備段階として、配置工程P1、コラプス工程P2により製造されたプリフォーム10Pを紡糸炉110に設置する。そして、紡糸炉110の加熱部111を発熱させて、プリフォーム10Pを加熱する。このときプリフォーム10Pの下端は、例えば2000℃に加熱され溶融状態となる。そして、プリフォーム10Pからガラスが溶融して、ガラスが線引きされる。そして、線引きされた溶融状態のガラスは、紡糸炉110から出ると、すぐに固化して、コアガラス体11Pがコア11となり、クラッドガラス体12Pがクラッド12となることで、複数のコア11とクラッド12とから構成されるマルチコアファイバとなる。その後、このマルチコアファイバは、冷却装置120を通過して、適切な温度まで冷却される。冷却装置120に入る際、マルチコアファイバの温度は、例えば1800℃程度であるが、冷却装置120を出る際には、マルチコアファイバの温度は、例えば40℃〜50℃となる。
【0054】
冷却装置120から出たマルチコアファイバは、内側保護層13となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置131を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置132を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して内側保護層13が形成される。次にマルチコアファイバは、外側保護層14となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置133を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置134を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して外側保護層14が形成され、図1に示すマルチコアファイバ10となる。
【0055】
そして、マルチコアファイバ10は、ターンプーリー141により方向が変換され、リール142により巻取られる。
【0056】
こうして図1に示すマルチコアファイバ10が製造される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の第1の製造方法によるプリフォーム10Pの製造方法によれば、コアガラス体11Rは、コアガラス体11Rの外側領域16Rにゲルマニウムが添加されないため、コラプス工程P2においてコアガラス体11Rが加熱されても、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができる。従って、製造されたプリフォーム10Pのコアガラス体11Pとクラッドガラス体12Pとの間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができる。
【0058】
そして、このプリフォーム10Pを用いるマルチコアファイバ10の製造法によれば、コアガラス体11Pとクラッドガラス体12Pとの間に気泡が生じることが防止されたプリフォーム10Pを線引きするので、コア11とクラッド12との間に生じる気泡が防止された、信頼性の高いマルチコアファイバ10を製造することができる。
【0059】
(第2の製造方法)
次に、マルチコアファイバ10の第2の製造方法について、説明する。第2の製造方法は、プリフォーム10Pを製造せずに、マルチコアファイバ10を製造する点において、第1の製造方法と異なる。
【0060】
第2の製造方法においては、第1の製造方法と同様にして、配置工程を行う。つまり、第1の製造方法と同様のコアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tを準備し、第1の製造方法と同様にして、コアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tを配置する。こうして、図4に示すように、コアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tが配置された状態となる。
【0061】
そして、第2の製造方法においては、配置されたコアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tの位置が互いにずれないようにして、これらを紡糸炉に設置する。つまり、図5において、プリフォーム10Pの代わりに図4に示すように配置されたコアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tを紡糸炉110に設置する。
【0062】
そして、紡糸炉110の加熱部111を発熱させて、コアガラス体11R、及び、クラッドガラス体12R、12Tを加熱する。この熱により、コアガラス体11Rとクラッドガラス体12Rとの間の隙間といったクラッドガラス体12Tの貫通孔内の空間を潰しながら線引きする。このとき、第1の製造方法と同様に、コアガラス体11Rにおける所定の厚さの外側領域16Rには、ゲルマニウムが非添加とされるため、コアガラス体11Rが加熱されて、溶融するときに、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。
【0063】
そして、線引きされた溶融状態のガラスは、第1の製造方法と同様にして、マルチコアファイバ10とされ、リール142により巻取られる。こうして図1に示すマルチコアファイバ10が製造される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の第2の製造方法によるマルチコアファイバ10の製造方法によれば、線引時にコアガラス体11Rが加熱されても、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発によるガスが生じることを防止することができる。従って、コア11とクラッド12との間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができ、信頼性の高いマルチコアファイバ10を製造することができる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6〜図8を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0066】
図6は、本発明の第2実施形態に係る結合型マルチコアファイバ(以下マルチコアファイバと呼ぶ)の様子を示す図である。具体的には、図6(A)は、本実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面図であり、図6(B)は、図6(A)のB−B線における屈折率分布の様子を示す図である。
【0067】
図6(A)に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ20は、複数のコア21と、第1実施形態のマルチコアファイバにおけるクラッド12と同様の形状・材料から成るクラッド22と、第1実施形態の内側保護層13及び外側保護層14と同様の形状・材料から成る内側保護層23及び外側保護層24とを備える。
【0068】
それぞれのコア21は、第1実施形態の複数のコア11と同様にして、クラッド12の径方向に沿って、直線状に配置されると共に、互いに隣り合うコア21同士の外周面が互いに接している。そして、それぞれのコア11の直径が、互いに略等しくされている。
【0069】
それぞれのコア21は、全体の屈折率が均一とされ、二層構造となっていない点において、第1実施形態のコア11と異なる。また、図6(B)に示すように、本実施形態のコア21の屈折率は、クラッド22の屈折率よりも高くされている。このコア21の材料は、第1実施形態のコア11の外側領域16と同様の材料とされる。つまり、本実施形態のコア21は、特に外側領域と内側領域の境界があるわけではないが、外側領域を含んで、コア21全体が、ゲルマニウムが非添加の材料から成る。別言すれば、本実施形態のコア21は、特に外側領域と内側領域の境界があるわけではないが、外側領域と内側領域とが同じ材料から構成されて、同じ屈折率を有すると考えることができる。
【0070】
このようなマルチコアファイバ20は、コア21が互いに接しているため、互いに隣り合うコア21同士が強く結合しており、それぞれのコア21同士が相関し合い、全体として、マルチモード伝送路とみなすことができる。従って、このようなマルチコアファイバ20によれば、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様にして、コア11を伝播する光のそれぞれのモードに信号を重畳させるモード多重伝送を行うことができる。ただし、モード多重伝送を行う際に、第1実施形態のように、コアの外側領域が、内側領域の屈折率とクラッドの屈折率との間の屈折率を有する方が、モード分離を容易に行うことができる。
【0071】
次に、マルチコアファイバ20の製造方法について説明する。
【0072】
(第1の製造方法)
本実施形態においても、第1の製造方法は、結合型マルチコアファイバ用母材(以下、プリフォーム)を製造したのち、製造されたプリフォームを線引きすることで、マルチコアファイバを製造するものである。従って、本実施形態の第1の製造方法は、図3に示す工程と同様の工程を備える。
【0073】
<配置工程P1>
図7は、図6(A)のマルチコアファイバを製造するためのプリフォームの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。図6に示すように、プリフォーム20Pは、それぞれのコア21となる複数のロッド状のコアガラス体21Pと、コアガラス体21Pを囲み、クラッド22となるクラッドガラス体22Pとから構成されている。このクラッドガラス体22Pは、第1実施形態におけるプリフォーム10Pにおけるクラッドガラス体12Pと同様の構成とされる。また、プリフォーム20Pの断面の構造は、内側保護層23及び外側保護層24を除くマルチコアファイバ10の断面の構造と略相似の関係とされる。
【0074】
本実施形態においても、まず、第1実施形態の第1の製造方法における配置工程P1と同様にして、配置工程を行う。図8は、コアガラス体及びクラッドガラス体を配置した様子を示す図である。本実施形態においては、コア21と同様の材料からなコアガラス体21Rをコア21の数と同じ数だけ準備する。つまり、特に外側領域と内側領域の境界があるわけではないが、所定の厚さの外側領域を含んで、全体が、ゲルマニウムが非添加の材料から成るコアガラス体21Rを準備する。また、第1実施形態の第1の製造方法のクラッドガラス体12R、12Tと同様の、クラッドガラス体22R、22Tを準備する。
【0075】
そして、第1の製造方法と同様にして、互いに隣り合うコアガラス体11Rの外周面同士が互いに接するようにして、クラッドガラス体22Tの貫通孔内に、複数のコアガラス体21Rが横一列になるように、それぞれのコアガラス体21Rを配置すると共に、横一列のコアガラス体21Rが複数のクラッドガラス体22Rにより囲まれるように、それぞれのクラッドガラス体22Rを配置する。
【0076】
こうして、図8に示すように、コアガラス体21Rとクラッドガラス体22R,22Tが配置された状態となる。
【0077】
<コラプス工程P2>
次に、第1実施形態の第1の製造方法と同様にして、コラプス工程P2を行う。このコラプス工程P2により、コアガラス体21Rとクラッドガラス体22Rとの間の空間といった、クラッドガラス体22Tの貫通孔内の空間が潰され、コアガラス体21Rとクラッドガラス体22R,22Tとが一体化される。こうして、コアガラス体21Rがコアガラス体21Pとなり、クラッドガラス体22R,22Tが、クラッドガラス体12Pとなり、図7に示すプリフォームを得る。
【0078】
なお、コアガラス体21Rは、外側領域を含んで、全体が、ゲルマニウムが非添加の材料から成る。別言すれば、コアガラス体21Rは、特に外側領域と内側領域の境界があるわけではないが、外側領域と内側領域とが、それぞれ同じゲルマニウムが非添加の材料から成る。従って、コアガラス体21Rが加熱される本工程において、コアガラス体11Rからゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。
【0079】
<線引工程P3>
次に、第1実施形態の第1の製造方法と同様にして線引工程を行う。
【0080】
こうして図6に示すマルチコアファイバ20が製造される。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の第1の製造方法によるプリフォーム20Pの製造方法によれば、コアガラス体21Rは、特に内周領域と外周領域との境界があるわけではないが、外周領域を含んで、全体にゲルマニウムが添加されない。従って、製造されたプリフォーム20Pのコアガラス体21Pとクラッドガラス体22Pとの間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができる。
【0082】
このため、プリフォーム20Pが線引きすることで、コア21とクラッド22との間に生じる気泡が防止された、信頼性の高いマルチコアファイバ20を製造することができる。
【0083】
(第2の製造方法)
次に、マルチコアファイバ20の第2の製造方法について、説明する。本実施形態の第2の製造方法は、第1実施形態の第2の製造方法と同様にして、プリフォーム20Pを製造せずに、マルチコアファイバ20を製造するものである。
【0084】
本実施形態の第2の製造方法では、本実施形態の第1の製造方法と同様にして、配置工程を行う。つまり、本実施形態の第1の製造方法と同様のコアガラス体21R、及び、クラッドガラス体22R、22Tを準備し、第1の製造方法と同様にして、コアガラス体21R、及び、クラッドガラス体22R、22Tを配置する。こうして、図8に示すように、コアガラス体21R、及び、クラッドガラス体22R、22Tが配置された状態となる。
【0085】
次に、第1実施形態の第2の製造方法と同様にして、配置されたコアガラス体21R、及び、クラッドガラス体22R、22Tを紡糸炉110に設置し、線引工程を行い、図6に示すマルチコアファイバ20が製造される。
【0086】
このとき、本実施形態の第1の製造方法と同様に、コアガラス体21Rは、外側領域を含んで、コアガラス体21R全体が、ゲルマニウムが非添加とされるため、コアガラス体21Rが加熱されて、溶融するときに、コアガラス体21Rからゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されている。
【0087】
従って、本実施形態の第2の製造方法によるマルチコアファイバ10の製造方法によれば、コア21とクラッド22との間に、ゲルマニウムの揮発ガスに起因する気泡が生じることを防止することができ、信頼性の高いマルチコアファイバ20を製造することができる。
【0088】
以上、本発明について、第1、第2実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
例えば、第1実施形態のコア11の外側領域16や、第2実施形態のコア21の材料は、ゲルマニウムが非添加のシリカガラスである限りにおいて、他のドーパントが含まれていても良い。例えば、ドーパントとして、アルミニウムやリンが添加されても良い。この場合、第1実施形態の内側領域15は、ゲルマニウムの量が調整され、図1(B)に示す屈折率分布となるようにすればよい。さらに、第1実施形態のコア11の外側領域16や、第2実施形態のコア21にアルミニウムやリンが添加される場合においては、クラッド12、22は、クラッド22の屈折率が、外側領域16や、コア21の屈折率よりも低い限りにおいて、ピュアシリカガラスや微量の塩素が添加されたシリカガラスであっても良い。
【0090】
また、第1実施形態において、内側領域は、屈折率分布がα乗分布とされたが、本発明はこれに限定されず、例えば、内側領域15の屈折率が、外側領域16の屈折率よりも高く、一定の屈折率分布とされても良い。この場合、例えば、内側領域15の材料としては、ゲルマニウムが均一に添加されたシリカガラスを挙げることができる。さらに、第1実施形態において、第2実施形態のように内側領域15の屈折率と外側領域16の屈折率とを同じにしても良い。このようにするには、例えば、外側領域16にアルミニウムやリンを加えて、内側領域15に添加されるゲルマニウムの量を調整すればよい。
【0091】
また、第1、第2実施形態においては、複数のコア11、21が横一列に直線状に配置された。しかし、本発明はこれに限らず、コアが他の配列となっていても良い。例えば、マルチコアファイバの断面において、複数のコアが縦3列、横3行となるようにして、互いに隣り合うマルチコアファイバの外周面同士が接触して、配置されても良い。或いは、クラッドの中心に1つのコアが配置されると共に、この1つのコアに接触して、この1つのコアを囲むように6つのコアが配置されても良い。また、第1、第2実施形態においては、コアの数が5つのマルチコアファイバを例に説明したが、コアの数は、2つから4つ、或いは、5つ以上としても良い。
【0092】
また、クラッド12、22が二層の構造となっていても良い。この場合、例えば、クラッドの内側の領域が、フッ素が添加されたシリカガラスから成り、クラッドの外側の領域が、ピュアシリカガラスや微量の塩素が添加されたシリカガラスから成るものとすることが好ましい。これは、マルチコアファイバの破断強度は、クラッドの外側の表面の強度に依存するため、クラッドの外側の領域に強度の高いピュアシリカガラスや微量の塩素が添加されたシリカガラス使用することにより、全体として、マルチコアファイバの強度を高くすることができるためである。この場合、第1、第2実施形態において、管状のクラッドガラス体12T,22Tをピュアシリカガラスや微量の塩素が添加されたシリカガラスから構成すればよい。
【0093】
また、上記実施形態においては、それぞれのコア11、21の直径・屈折率は、互いに等しいものとしたが、本発明においては、それぞれのコア11、21の直径・屈折率は、互いに異なっていても良い。ただし、それぞれのコア11、21の直径・屈折率は、それぞれのコア11、21同士の結合を強くする観点から、互いに等しい直径であることが好ましい。また、それぞれのコア11、21の直径・屈折率が互いに異なる場合であっても、それぞれのコアの光の導波特性が互いに等しくされることが、それぞれのコア11、21同士の結合を強くする観点から好ましい。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0095】
(実施例1)
第2実施形態の第2の製造方法と同様にして、マルチコアファイバを製造した。準備したコアガラス体は、数を5つとし、直径を6mmとし、材料を、微量の塩素が添加されたシリカガラスとした。また、コアガラス体を囲む複数のクラッドガラス体の材料として、フッ素が添加されたシリカガラスを用いて、外側領域に対する比屈折率差を−0.4%とした。このようなコアガラス体を図8と同様にして配置し、線引きを行って、クラッドの直径が約180μmであり、それぞれのコアの直径が約8μmのマルチコアファイバを製造した。
【0096】
製造されたマルチコアファイバにおいては、コアとクラッドとの間に、特に気泡が確認されなかった。
【0097】
(実施例2)
第1実施形態の第2の製造方法と同様にして、マルチコアファイバを製造した。準備したコアガラス体は、数を4つとし、直径を5mmとした。また、コアガラス体の内側領域の直径を4.85mmとし、外側領域の厚さを0.15mmとして、コアガラス体の直径に対する外側領域の厚さの比率を約0.03とした。さらに、外側領域の材料を微量の塩素が添加されたシリカガラスとして、内側領域の材料をゲルマニウムが添加されたシリカガラスとして、このゲルマニウムに濃度分布を持たせて、屈折率がαが約3のα乗分布となるようにした。内側領域の中心(コアの中心)の外側領域に対する比屈折率差を1.1%とした。また、コアガラス体を囲む複数のクラッドガラス体の材料として、にフッ素が添加されたシリカガラスを用いて、外側領域に対する比屈折率差を−0.4%とした。さらに、管状のクラッドガラス体の材料として、ピュアシリカガラスを用いた。
【0098】
このようなコアガラス体を図4と同様にして配置し、線引きを行って、クラッドのフッ素が添加された領域の直径が約80μmであり、クラッドの最外の直径が125μmであり、それぞれのコアの直径が約5μmのマルチコアファイバを製造した。
【0099】
製造されたマルチコアファイバにおいては、コアとクラッドとの間に、特に気泡が確認されなかった。
【0100】
(実施例3)
実施例2と略同様にしてマルチコアファイバを製造した。ただし、実施例2と次の点を変えた。すなわち、それぞれのコアガラス体の直径を2.8mmとし、コアガラス体の内側領域の直径を2.6mmとし、外側領域の厚さを0.2mmとして、コアの直径に対する外側領域の厚さの比率を約0.07とした。さらに、コアガラス体は、屈折率がαが約2.5のα乗分布となるようにした。また、内側領域の中心(コアの中心)の外側領域に対する比屈折率差を2.6%とした。また、コアを囲む複数のクラッドガラス体の外側領域に対する比屈折率差を−0.7%とした。さらに、管状のクラッドガラス体の材料として、ピュアシリカガラスを用いた。
【0101】
そして、実施例2と同様にして線引を行い、クラッドのフッ素が添加された領域の直径が約80μmであり、クラッドの最外の直径が125μmであり、それぞれのコアの直径が約4μmのマルチコアファイバを製造した。
【0102】
製造されたマルチコアファイバにおいては、コアとクラッドとの間に、特に気泡が確認されなかった。
【0103】
(比較例)
コアガラス体の材料をゲルマニウムが、10mol%含まれたシリカガラスを用い、クラッドガラス体を微量の塩素が添加されたシリカガラスとしたこと以外は、実施例1と同様にしてマルチコアファイバを製造した。
【0104】
製造されたマルチコアファイバにおいては、コアとクラッドとの間に、複数の気泡が確認された。また、製造したファイバの長手方向において気泡のある箇所を除去し気泡の無い箇所のみの抽出を試みたが、連続して50m以上の気泡が無いマルチコアファイバを得ることはできなかった。この気泡は、線引きを行う際、コアガラス体の表面付近のゲルマニウムが揮発することで生じたものと考えられる。
【0105】
以上の結果から、コアとなるコアガラス体における少なくとも外側領域がゲルマニウムが非添加のシリカガラスから成る場合、製造されるマルチコアファイバのコアとクラッドとの間に気泡が生じないことが分かった。これは、コアガラス体が加熱される際、ゲルマニウムの揮発に起因するガスの発生が防止されたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明によれば、コアとクラッドとの間に気泡が生じることが防止された信頼性の高い結合型マルチコアファイバを製造可能な結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法、結合型マルチコアファイバの製造方法、及び、結合型マルチコアファイバが提供される。
【符号の説明】
【0107】
10,20・・・(結合型)マルチコアファイバ
10P,20P・・・結合型マルチコアファイバ用母材(プリフォーム)
11,21・・・コア
11P,11R,21P,21R・・・コアガラス体
12,22・・・クラッド
12P,12R,12T,22P,22R,22T・・・クラッドガラス体
13,23・・・内側保護層
14,24・・・外側保護層
15・・・内側領域
15P,15R・・・内側領域
16・・・外側領域
16P,16R・・・外側領域
110・・・紡糸炉
111・・・加熱部
120・・・冷却装置
131・・・コーティング装置
132・・・紫外線照射装置
133・・・コーティング装置
134・・・紫外線照射装置
141・・・ターンプーリー
142・・・リール
P1・・・配置工程
P2・・・コラプス工程
P3・・・線引工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバを製造するための結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法であって、
前記複数のコアとなる複数のコアガラス体がクラッドガラス体により囲まれると共に、互いに隣り合う前記コアガラス体の外周面同士が互いに接するように、前記複数のコアガラス体、及び、前記クラッドガラス体を配置する配置工程と、
前記コアガラス体と前記クラッドガラス体との間の隙間を潰すコラプス工程とを備え、
それぞれの前記コアガラス体の外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記クラッドガラス体は、前記コアガラス体の前記外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成る
ことを特徴とする結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項2】
前記コアガラス体の前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成る
ことを特徴とする請求項1に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項3】
それぞれの前記コアガラス体は、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項4】
それぞれの前記コアガラス体は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項1に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項5】
それぞれの前記コアガラス体は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項4に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法により製造される結合型マルチコアファイバ用母材を線引きする線引工程を備えることを特徴とする結合型マルチコアファイバの製造方法。
【請求項7】
互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバの製造方法であって、
前記複数のコアとなる複数のコアガラス体がクラッドガラス体により囲まれると共に、互いに隣り合う前記コアガラス体の外周面同士が互いに接するように、前記複数のコアガラス体、及び、前記クラッドガラス体を配置する配置工程と、
前記コアガラス体と前記クラッドガラス体との間の隙間を潰しながら線引きする線引工程とを備え、
それぞれの前記コアガラス体の外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記クラッドガラス体は、前記コアガラス体の前記外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成る
ことを特徴とする結合型マルチコアファイバの製造方法。
【請求項8】
前記コアガラス体の前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成る
ことを特徴とする請求項7に記載の結合型マルチコアファイバの製造方法。
【請求項9】
それぞれの前記コアガラス体は、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有する
ことを特徴とする請求項7または8に記載の結合型マルチコアファイバの製造方法。
【請求項10】
それぞれの前記コアガラス体は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項7に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項11】
それぞれの前記コアガラス体は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項10に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項12】
互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバであって、
それぞれの前記コアの外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、
前記コアを囲むクラッドは、前記コアの外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成る
ことを特徴とする結合型マルチコアファイバ。
【請求項13】
前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成る
ことを特徴とする請求項12に記載の結合型マルチコアファイバ。
【請求項14】
それぞれの前記コアは、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有する
ことを特徴とする請求項12または13に記載の結合型マルチコアファイバ。
【請求項15】
それぞれの前記コアは、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項12に記載の結合型マルチコアファイバ。
【請求項16】
それぞれの前記コアは、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項15に記載の結合型マルチコアファイバ。
【請求項1】
互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバを製造するための結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法であって、
前記複数のコアとなる複数のコアガラス体がクラッドガラス体により囲まれると共に、互いに隣り合う前記コアガラス体の外周面同士が互いに接するように、前記複数のコアガラス体、及び、前記クラッドガラス体を配置する配置工程と、
前記コアガラス体と前記クラッドガラス体との間の隙間を潰すコラプス工程とを備え、
それぞれの前記コアガラス体の外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記クラッドガラス体は、前記コアガラス体の前記外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成る
ことを特徴とする結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項2】
前記コアガラス体の前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成る
ことを特徴とする請求項1に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項3】
それぞれの前記コアガラス体は、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項4】
それぞれの前記コアガラス体は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項1に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項5】
それぞれの前記コアガラス体は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項4に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法により製造される結合型マルチコアファイバ用母材を線引きする線引工程を備えることを特徴とする結合型マルチコアファイバの製造方法。
【請求項7】
互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバの製造方法であって、
前記複数のコアとなる複数のコアガラス体がクラッドガラス体により囲まれると共に、互いに隣り合う前記コアガラス体の外周面同士が互いに接するように、前記複数のコアガラス体、及び、前記クラッドガラス体を配置する配置工程と、
前記コアガラス体と前記クラッドガラス体との間の隙間を潰しながら線引きする線引工程とを備え、
それぞれの前記コアガラス体の外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、前記クラッドガラス体は、前記コアガラス体の前記外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成る
ことを特徴とする結合型マルチコアファイバの製造方法。
【請求項8】
前記コアガラス体の前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成る
ことを特徴とする請求項7に記載の結合型マルチコアファイバの製造方法。
【請求項9】
それぞれの前記コアガラス体は、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有する
ことを特徴とする請求項7または8に記載の結合型マルチコアファイバの製造方法。
【請求項10】
それぞれの前記コアガラス体は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項7に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項11】
それぞれの前記コアガラス体は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項10に記載の結合型マルチコアファイバ用母材の製造方法。
【請求項12】
互いに隣り合うコアの外周面同士が互いに接する複数のコアを備える結合型マルチコアファイバであって、
それぞれの前記コアの外周面から所定の厚さの外側領域は、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスから成り、
前記コアを囲むクラッドは、前記コアの外側領域よりも屈折率が低いシリカガラスから成る
ことを特徴とする結合型マルチコアファイバ。
【請求項13】
前記外側領域は、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスから成る
ことを特徴とする請求項12に記載の結合型マルチコアファイバ。
【請求項14】
それぞれの前記コアは、前記外側領域で囲まれる領域に、ゲルマニウムが添加されるシリカガラスから成る内側領域を有する
ことを特徴とする請求項12または13に記載の結合型マルチコアファイバ。
【請求項15】
それぞれの前記コアは、ゲルマニウムが非添加とされるシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項12に記載の結合型マルチコアファイバ。
【請求項16】
それぞれの前記コアは、ピュアシリカガラス、或いは、塩素が添加されたシリカガラスのみから成る
ことを特徴とする請求項15に記載の結合型マルチコアファイバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−40078(P2013−40078A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178403(P2011−178403)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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