説明

結合装置

【課題】ビスと取付け具とによって構成される結合装置において、長寸のビスが誤用されたとしても、取付け具のねじ孔から突出したビスが配線基板などに接触しない取付け具を提供する。その取付け具を、絞り成形によらずに、加工の容易な曲げや孔穿け、ねじ切りなどを行うだけで安価に製作する。
【解決手段】結束装置が、ビス200と取付け具30とを有する。取付け具30は、ねじ孔35とビス200のねじ込み過ぎを阻止する受部38とを備える。帯板状の板金部材を折り曲げたり、孔穿けしたり、ねじ切りしたすることによって取付け具30を製作する。取付け具30に片部32,33の重なり部34を設け、その重なり部34のビス挿通孔36とねじ孔35とを貫通するビス200が、重なり部34の開き変形を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合装置、詳しくは、薄型テレビジョン受像機を壁掛け式として壁面に固定するための壁掛け用部品や、オーディオビジュアル機器(AV機器)などの筐体にアンテナを固定するためのアンテナ固定用部品などに採用することのできるビスと取付け具との組み合せでなる結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図11に従来例としての結合装置の取付け具20を斜視図で示している。図12には、図11の取付け具20とビス200との組み合せでなる結合装置を備えた壁掛け式テレビジョン受像機の要部を横断平面図で示してある。
【0003】
図11に示した取付け具20は板金部材でなり、深絞り成形によって形成された有底筒状の凹入部22を備える平板部21と、この平板部21に段付状に連設された取付け片部23とを備えていて、取付け片部23に取付けねじ挿通孔24とその両側の位置決め孔25,25とが形成されている。この取付け具20は、図12のようにテレビジョン受像機の背面パネル(リアパネル)110に内向き突出状に形成された取付け座部120に取り付けられる。すなわち、背面パネル110に設けられた取付け座部120には、図示していない位置決め突起とねじ孔130とが備わっていて、取付け具20の取付け片部23に形成されている位置決め孔25(図11参照)が上記位置決め突起に嵌合され、かつ、取付けねじ挿通孔24に挿通された取付けねじ140がねじ孔130にねじ込まれている。この取付け状態では、図12のように平板部21が背面パネル110の内面に形成された座面111に当接し、有底筒状の凹入部22の内部空間が背面パネル110に形成されている貫通孔112に臨んでいる。なお、凹入部22の内面はねじ孔26として形成されている。
【0004】
図12の構成を備えたテレビジョン受像機を壁掛け式として使用するときには、同図のように背面パネル110の貫通孔112に挿通されて凹入部22のねじ孔26にねじ込まれたビス200が、テレビジョン受像機を壁面に固定することに用いられる壁掛け金具を上記背面パネル110に固定するためのビスとして用いられる。言い換えると、テレビジョン受像機を壁面に固定することに用いられるビス200には、具体的には、フック部を備えた壁掛け用金具(不図示)を背面パネル110に締め付けて固定するためのビスが相当している。そして、そのようにビス200によって背面パネル110に固定された壁掛け用金具のフック部を、たとえば室内壁面に固定された相手側係止部材に係合させることによって、テレビジョン受像機が壁面に取り付けられる。
【0005】
一方、先行例には、薄型表示装置の背面に取り付け部材をねじ止めによって固定し、その取り付け部材に、フック部を有する壁掛け用金具をビス止めすることが示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
また、従来より、電気機器の箱形端子金具にリード線を追加接続することを可能にした端子金具についての提案がなされている(たとえば、特許文献2参照)。さらに、端子ねじと圧着端子との組み付けの不具合を防止することのできる端子台についての提案もなされている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−265223号公報
【特許文献2】特開2007−103270号公報
【特許文献3】特開2011−3295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図11又は図12を参照して説明した従来例としての結合装置にあっては、ビス200をねじ込むためのねじ孔26が、絞り成形された有底筒状の凹入部22に形成されている。
【0009】
しかしながら、十分なねじ込み代を確保することのできるねじ孔26を有底筒状の凹入部22に形成するためには、ねじ孔26の直径寸法に比べて凹入部22の軸長を比較的長くすることが必須であり、そのような要求に応え得る軸長の凹入部22を絞り成形によって形成することには、絞り深さが深いことから材料面や技術面で多くの困難がある。そのため、従来は、絞り箇所が破れたりして取付け具20の不良率が高くなる結果、材料歩留りが低下したり、絞り成形に適した高価な板金部材を使用する必要に迫られたりするほか、絞り成形箇所に材料を流動させるのに適したサイズの板金部材を用いることが要求されることから、取付け具20自体が大形化する、といった様々な問題点が指摘されていた。
【0010】
そこで、取付け具20の平板部21にバーリング加工などを行って貫通孔を形成し、その貫通孔の内面をねじ付けすることによってねじ孔を具備させることが考えられる。そのようにすると、絞り加工によって形成した有底筒状の凹入部にねじ孔を形成する必要が無くなるので、上記したような材料面や技術面での困難性が低下し、コスト面でも有利になると云える。
【0011】
しかしながら、上記のように、ねじ孔が、ただ単にバーリング加工による貫通孔によって形成されているだけであると、ユーザが、規定された寸法のビスよりも長いビスを誤用した場合に、そのビスがねじ孔から突出してしまうという事態が起こり得る。そして、そのようなビスの誤用が行われると、たとえば図12に仮想線で示したように、ねじ孔を貫通したビス200の先端部201が、取付け具20の取付け箇所の近傍箇所に位置している配線基板300やそれに搭載された電気電子部品などの通電部に接触して、予期し得ない故障や事故を発生するおそれがある。
【0012】
このことを未然に防止するために、図12のようにねじ孔26を形成している凹入部22に底壁部27を絞り成形により一体に具備させて、その凹入部22を有底筒状に形成しているのである。そして、この構成であれば、長寸のビス200が誤用されたとしても、そのビス200の先端部201を底壁部27が受け止めるので、ビス200がねじ孔26から突出して通電部に接触するという事態が防止される。このため、従来は、取付け具20のねじ孔26を、材料面や技術面、コスト面などで不利になるにもかかわらず、絞り成形による凹入部22に形成せざるを得なかったのである。
【0013】
本発明は、以上の問題点や状況に鑑みてなされたものであり、材料面や技術面、コスト面などで不利になる絞り加工を採用することなく、帯板状の板金部材に、加工の容易な曲げや孔穿け、ねじ切りなどを行うだけで安価に製作することが可能であり、しかも、不良率が低下し、小形化を促進しやすいものでありながら、長寸のビスが誤用されたとしても、ねじ孔から突出したビスが配線基板などの通電部に接触して予期し得ない故障や事故を発生する、というおそれをなくすることのできる結合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る結合装置は、ビスと、このビスがねじ込まれるねじ孔とこのねじ孔にねじ込まれた上記ビスの先端部を受け止めてそのビスのねじ込み過ぎを阻止する受部とを備えた取付け具とによって構成される。
【0015】
そして、上記取付け具が、帯板状の板金部材の長手方向複数箇所を折り曲げることにより形成された取付け具本体に、上記板金部材の長手方向の一端側及び他端側の各片部同士の重なり部とその重なり部に対向する板状部とを具備させてなり、上記重なり部の内側に配備されている板金部材の一端側の上記片部にその片部を貫通する上記ねじ孔が形成され、かつ、上記重なり部の外側に配備されている板金部材の他端側の上記片部に、上記ビスが挿通されるビス挿通孔が形成されていると共に、上記受部が上記板状部によって形成されている、というものである。
【0016】
この構成であれば、取付け具本体が、帯板状の板金部材の長手方向複数箇所を折り曲げることにより形成されていて、ねじ孔やビス挿通孔が、重なり部の内側や外側に配備されている板金部材の一端側や他端側の片部に形成されているという構成を有しているので、ねじ孔を形成するために絞り成形を行う必要がない。それにもかかわらず、ねじ孔にねじ込まれたビスの先端部を受け止めてそのビスのねじ込み過ぎを阻止する受部が取付け具本体の板状部によって形成されているので、ビスの誤用によるねじ込み過ぎによって、そのビスの先端部が配線基板などの通電部に接触する余地もない。
【0017】
また、取付け具の製作に絞り成形工程が含まれず、加工の容易な曲げや孔穿け、ねじ切りなどの工程が含まれるだけであるので安価に製作することが可能になり、併せて、不良率の低下が促進され、さらに、絞り成形を行う場合のような材料の流動を考慮する必要もないので小形化を促進しやすくなる。
【0018】
本発明において、上記取付け具本体は、上記重なり部を形成している板金部材の長手方向の一端側及び他端側の各片部と、上記受部を形成している上記板状部と、この板状部の長手方向一端部と上記一端側片部とに折曲げ部を介して連設されてそれらの相互間に亘る一方側の側板部と、上記板状部の長手方向他端部と上記他端側片部とに折曲げ部を介して連設されてそれらの相互間に亘る他方側の側板部と、を有して、平面視形状が略矩形環状に形成されている、という構成を採用することが可能である。この構成を採用すると、誤用されたビスの先端部が、板状部によって形成されている受部に当接してその受部を強く押し付ける、という状況が発生して、重なり部の一端側及び他端側の各片部にそれらを開き方向に変形させる負荷が加わったとしても、他端側の片部のビス挿通孔に挿通されたビスが一端側の片部のねじ孔にねじ込まれているために、重なり部の一端側及び他端側の各片部の開き変形がビスによって阻止されるという作用が奏される。
【0019】
本発明では、上記取付け具がテレビジョン受像機の背面パネルの内側に取り付けられて、その取付け具の上記ねじ孔及びビス挿通孔が、上記背面パネルに具備された貫通孔に臨んでいると共に、上記貫通孔と上記ビス挿通孔とに挿通されて上記ねじ孔にねじ込まれた上記ビスが、上記テレビジョン受像機を壁面に固定することに用いられる壁掛け金具を上記背面パネルに固定するためのビスである、という構成を採用することが可能である。この構成であれば、テレビジョン受像機を壁掛け式として使用することができるようになる。また、テレビジョン受像機の表示モジュール(液晶表示モジュールなど)の制御用配線基板が上記取付け具の取付け箇所の近傍に配備されていて、しかも、壁掛け金具を上記背面パネルに固定するためのビスに長尺のビスが誤用されたとしても、そのビスの先端が上記制御用配線基板やその基板に搭載された電気電子部品などの通電部に接触して予期し得ない故障や事故を発生する、というおそれがなくなる。さらに、誤用された長尺のビスが、取付け具の重なり部の一端側及び他端側の各片部の開き変形を阻止する作用を発揮するので、壁面に設置されたテレビジョン受像機が取付け具の変形などによって傾いたりすることもなくなる。
【0020】
本発明に係る結合装置は、上記したテレビジョン受像機を壁掛け式として使用する場合のほか、他の用途にも使用することができる。たとえば、ポータブルタイプのテレビジョン受像機やフォトフレーム、スピーカなどを壁掛け式として使用する場合にも同様に適用することができる。さらに、AV機器などの筐体にアンテナを固定するためのアンテナ固定用部品に採用することも可能である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る結合装置は、ビスと、このビスがねじ込まれるねじ孔とビスのねじ込み過ぎを阻止する受部とを備えた取付け具とによって構成されていて、取付け具を、帯板状の板金部材に対して曲げ、孔穿け、ねじ切りなどの加工を行うだけで製作することができるため、絞り成形加工などを行って製作されるものに比べて製作が容易であり、安価に製作することが可能になるだけでなく、製品不良率を低下や小形化を促進しやすくなるという効果が奏される。また、ビスの誤用によるねじ込み過ぎによって、そのビスの先端部が配線基板などの通電部に接触して故障や事故を発生する余地がなくなる。
【0022】
上記の効果は、本発明に係る結合装置を、テレビジョン受像機を壁掛け式として使用することに採用した場合にもそのまま奏される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る結合装置を適用可能な薄型テレビジョン受像機を背面側から見て示した概略斜視図である。
【図2】同テレビジョン受像機の概略側面図である。
【図3】取付け具の概略斜視図である。
【図4】取付け具の背面図である。
【図5】取付け具の平面図である。
【図6】取付け具とビスとを組み合わせた状態を示した一部破断平面図である。
【図7】背面パネルの内側を示した取付け構造の分解斜視図である。
【図8】キャップ体の内部の構成を示した正面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う部分の断面図である。
【図10】取付け具の取付け構造を示した横断平面図である。
【図11】従来例としての結合装置の取付け具の斜視図である。
【図12】図11の取付け具とビスとの組み合せでなる結合装置を備えた壁掛け式テレビジョン受像機の要部の横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明に係る結合装置を適用可能な薄型テレビジョン受像機を背面側から見て示した概略斜視図、図2は同テレビジョン受像機の概略側面図である。
【0025】
図1の薄型テレビジョン受像機は、液晶表示モジュール(不図示)を背方から覆う背面パネル(リアパネル)110を備えていて、その背面パネル110の4箇所に貫通孔112…が形成されている。そして、図2のように、当該結合装置の取付け具30が、背面パネル110の内側の4箇所に取り付けられていて、それぞれの取付け具30が上記貫通孔112…に各別に対向している。この薄型テレビジョン受像機を壁掛け式として使用するときには、背面パネル110の外面に重ね合わされた壁掛け金具(不図示)が、上記貫通孔112に挿通されて取付け具30のねじ孔(不図示)にねじ込まれたビス(図1及び図2では不図示)を用いて背面パネル110に固定される。そして、その壁掛け金具に備わっているフック部を、たとえば室内壁面に固定した相手側係止部材に係合させることによって、その薄型テレビジョン受像機が壁面に取り付けられる。
【0026】
図3は取付け具30の概略斜視図、図4は取付け具30の背面図、図5は取付け具30の平面図である。
【0027】
図3〜図5のように、取付け具30は、厚手帯板状の板金部材の長手方向複数箇所(図例では4箇所)を折り曲げることにより形成された平面視矩形環状の取付け具本体31を有する。取付け具本体31は、上記板金部材の長手方向一端側の片部32と長手方向他端側の片部33とが重なり合った重なり部34を有し、その重なり部34では、一端側の片部32が内側に配備され、他端側の片部33が外側に配備されている。そして、一端側の片部(以下「内側片部」という)32の中央部にその内側片部32を貫通するねじ孔35が形成されているのに対し、他端側の片部(以下「外側片部」という)33の中央部に、上記ねじ孔35と同心で、かつ、そのねじ孔35よりもやゝ径大なビス挿通孔36が貫通状態で形成されている。
【0028】
取付け具本体31には、上記重なり部34に対向する略矩形の板状部37が備わっている。この板状部37は、上記重なり部34のビス挿通孔36に挿通されてそのねじ孔35にねじ込まれたビス(不図示)が、ねじ孔35を挿通して一定長さを越えて突出した場合に、そのビスの先端部を受け止めてビスのねじ込み過ぎを阻止する受部38としての作用を発揮する。なお、図5によって判るように、この実施形態の取付け具30では、内側片部32に形成したねじ孔35の軸長を延長するための対策として、内側片部32にバーリング加工による突出部39を形成し、その突出部39によって形成される孔部をねじ孔35に含ませてある。
【0029】
図5に示したように、取付け具本体31には、上記した内側片部32及び外側片部33と、受部38を形成している板状部37の他に、板状部37の長手方向一端部と内側片部32とに折曲げ部41,42を介して連設されてそれらの相互間に亘る一方側の側板部43と、板状部37の長手方向他端部と外側片部33とに折曲げ部44,45を介して連設されてそれらの相互間に亘る他方側の側板部46とが備わっている。
【0030】
取付け具30に上記の構成を採用しておくと、その取付け具30の製作工程には、帯板状の板金部材に曲げ、孔穿け、ねじ切りなどの工程が含まれるだけになり、図11に示した凹入部22を形成するための絞り成形工程を行う必要がなくなる。そのため、取付け具30を容易に製作することが可能になるだけでなく、材料面や技術面、コスト面などで図11に示した取付け具20よりも有利になる。さらに、不良率も低下し、小形化も促進しやすくなるという利点がある。
【0031】
図6は結合装置を形成している取付け具30とビス200とを組み合わせた状態を示した一部破断平面図である。同図のように、ビス200は、取付け具30の重なり部34に備わっているビス挿通孔36に挿通されてねじ孔35にねじ込まれる。このようにねじ孔35にねじ込まれるビス200が適正な軸長を有している場合には、ねじ込み過ぎによってビス200の先端部201が受部に突き当たるという事態の生じることはない。しかし、同図のように、軸長の長いビス200が誤用されてねじ孔35にねじ込まれると、ビス200のねじ込み過ぎにより、ビス200がねじ孔35から長く突出してしまってその先端部201が受部38に突き当たるという事態を生じる。しかしながら、このような事態が生じた場合でも、受部38がビス200の先端部201を受け止めてそのねじ込み過ぎを阻止するので、ビス200の先端部201が受部38を越えて突出するという事態は起こり得ない。したがって、受部38を越えて突出したビス200の先端部201が、取付け具30の外側で受部38に対峙して配置される何らかの物体、たとえば配線基板や電気電子部品、その他の機械的部品などに接触して故障や事故を引き起こすという懸念はない。
【0032】
また、図6のように、軸長の長いビス200が誤用されてねじ孔35にねじ込まれ、その先端部201が受部38に突き当たることによって、その受部38が矢印Yのように押し付けられるような状況が生じたときには、取付け具30の重なり部34で、内側片部32と外側片部33とが矢印X1,X2のように外側に開き変形する負荷を受けることがある。しかしながら、ビス200が重なり部34において、内側片部32のねじ孔32と外側片部33のビス挿通孔36とを貫通していることにより、上記負荷による内側片部32と外側片部33との開き変形がビス200によって阻止される。したがって、取付け具30が変形してしまうという事態も起こり得ない。
【0033】
次に、図1又は図2に示した薄型テレビジョン受像機に対する上記した取付け具30の取付け構造を説明する。
【0034】
図7は背面パネル110の内側を示した取付け構造の分解斜視図である。背面パネル110の内側に取付け具30を取り付けるために、次に説明する固定手段50が採用されている。この固定手段50には、図7に示されている取付け具収容枠部60と、電気絶縁性の樹脂成形体でなるキャップ体70と、係合手段80と、弾発付勢手段(不図示)と、が備わっている。
【0035】
図7のように、取付け具収容枠部60は、背面パネル110の貫通孔112を取り囲む位置で、その背面パネル110から背方に向けて突設された矩形環状の枠体でなり、背面パネル110と共に樹脂で一体成形されている。
【0036】
図8はキャップ体70の内部の構成を示した正面図、図9は図8のIX−IX線に沿う部分の断面図、図10は取付け具30の取付け構造を示した横断平面図である。
【0037】
図10のように、取付け具30は取付け具収容枠部60に差し込まれて収容されていて、その収容状態では、取付け具30が、取付け具収容枠部60により互いに直交する2軸方向で挟まれて、背面パネル110の平坦な内面に沿う方向で位置決めされている。この実施形態では、取付け具収容枠部60による取付け具30の位置決めをより確実に行わせるために、取付け具収容枠部60の相対向する一対の平坦な内面にそれぞれリブ61,61を具備させ、それらのリブ61,61が、取付け具30の一方側の側板部43と他方側の側板部46とに当接するようにしてある。
【0038】
図8又は図9のように、キャップ体70は、矩形環状の周壁71とその周壁の一端部に設けられた頂壁72とを備えている。図10のように、キャップ体70は、取付け具収容枠部60の外側に、それほど大きながたつきを生じない状態で嵌合される。こうしてキャップ体70を取付け具収容枠部60の外側に嵌合させると、取付け具収容枠部60に収容されている取付け具30がキャップ体70によって覆われる。
【0039】
係合手段80は、キャップ体70を背面パネル112に結合することに用いられる。図7、図8又は図9に示したように、図例の係合手段80は、キャップ体70の周壁71の側面に、互いに反対向きに設けられた一対の係合爪81,81と、取付け具収容枠部60を挟む両側で、背面パネル110から一体に突出された一対のフック体82,82とを備えていて、フック体82のそれぞれに、上記係合爪81を係止する爪部83が備わっている。そして、上記したように取付け具収容枠部60にキャップ体60を嵌合させると、その嵌合動作に伴って、係合爪81が、フック体82を弾性変形させながら爪部83を乗り越えた後、図10のようにその爪部83に係合する。したがって、キャップ体60は、この係合手段80の作用により図10のように背面パネル110に固定される。
【0040】
次に、上記弾発付勢手段を説明する。この弾発付勢手段は、キャップ体60と取付け具30との相互間に介在されて、取付け具30を弾発付勢して背面パネル110に具備された受面113(図10参照)に弾圧させる作用を担っている。
【0041】
図10には弾発付勢手段を符号90で示してある。図例の実施形態において、弾発付勢手段90は、取付け具30に設けられて、背面パネル110に近付くほど相互間隔が拡がるように傾斜した一対の傾斜面91,91と、キャップ体60に一体に成形されて一対の上記傾斜面91,91に各別に弾接する一対の突片状の樹脂ばね部92,92とによって形成されている。この実施形態では、取付け具30の板状部37の長手方向両端部の折曲げ部41,44の外面を形成している円弧状の一対の湾曲面(図5参照)を、上記傾斜面91,91として利用している。また、図8又は図9に示したように、キャップ体60には一対の樹脂ばね部92,92が2組に亘って設けられている。このように、取付け具30側の一対の傾斜面91,91に、キャップ体60側の2組の一対の樹脂ばね部92,92が弾接して、樹脂ばね部92が傾斜面91に押し付けられて外向きに変形すると、その樹脂ばね部92の復帰力によって傾斜面91が図10の矢印aのように内向きに押圧されるようになり、その結果、取付け具30を同図矢印bのように背面パネル110の受面113に近付く方向に押圧する力が発生する。その結果、取付け具30が背面パネル110の受面113に常時弾圧された状態になる。
【0042】
図10に示した取付け構造では、取付け具30の取付箇所の近傍箇所に、同図のように液晶表示モジュールの制御用配線基板300が配備されていることになる。しかしながら、背面パネル110の貫通孔112及び取付け具30の重なり部34に備わっているビス挿通孔36に挿通されてねじ孔35にねじ込まれたビス200(図6参照)のねじ込み代は、ビス200の先端部201が受部38に突き当たることによって規制されるので、たとえ長寸のビス200が誤用されてねじ込まれたとしても、そのビス200の先端部201が配線基板300やそれに搭載されている電気電子部品に接触するという事態が起こり得ない。なお、ビス200が適正な軸長を有している場合には、ねじ込み過ぎによってビス200の先端部が受部38に突き当たることはない。
【0043】
また、図6を参照して説明したように、誤用されたビス200の先端部が受部38に突き当たっても、取付け具30が変形してしまうという事態が起こり得ない。
【0044】
さらに、図10に示した取付け具30の取付け構造によると、取付け具30が、取付け具収容枠部60により互いに直交する2軸方向で挟まれて、背面パネル110の平坦な内面に沿う方向で位置決めされ、しかも、弾発付勢手段90の作用によって、背面パネル110の受面113に常時弾圧された状態になる。そのため、取付け具30が、テレビジョン受像機のスピーカの音圧などに起因する振動の影響を受けてびびり音を発生するといった事態が起こりにくくなる。また、金属製の取付け具30が電気絶縁性の樹脂成形体でなるキャップ体60によって覆われているので、背面パネル110の貫通孔112から飛び込んだ静電気が取付け具30に帯電したとしても、その静電気がキャップ体60によって遮蔽されているために、配線基板300の制御回路がその静電気の影響を受けて誤作動を起こすという懸念もなくなる。
【0045】
上記では取付け具30の取付け構造として図10に示したものを説明したけれども、取付け具30は他の構造、たとえばビス止めなどの手段を用いて背面パネル110に取り付ける構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
30 取付け具
31 取付け具本体
32 一端側の片部(内側片部)
33 他端側の片部(外側片部)
34 重なり部
35 ねじ孔
36 ビス挿通孔
37 板状部
38 受部
41,42,44,45 折曲げ部
43,46 側板部
110 背面パネル
112 貫通孔
200 ビス
201 ビスの先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスと、このビスがねじ込まれるねじ孔とこのねじ孔にねじ込まれた上記ビスの先端部を受け止めてそのビスのねじ込み過ぎを阻止する受部とを備えた取付け具とによって構成される結合装置において、
上記取付け具が、帯板状の板金部材の長手方向複数箇所を折り曲げることにより形成された取付け具本体に、上記板金部材の長手方向の一端側及び他端側の各片部同士の重なり部とその重なり部に対向する板状部とを具備させてなり、
上記重なり部の内側に配備されている板金部材の一端側の上記片部にその片部を貫通する上記ねじ孔が形成され、かつ、上記重なり部の外側に配備されている板金部材の他端側の上記片部に、上記ビスが挿通されるビス挿通孔が形成されていると共に、上記受部が上記板状部によって形成されていることを特徴とする結合装置。
【請求項2】
上記取付け具本体は、上記重なり部を形成している板金部材の長手方向の一端側及び他端側の各片部と、上記受部を形成している上記板状部と、この板状部の長手方向一端部と上記一端側片部とに折曲げ部を介して連設されてそれらの相互間に亘る一方側の側板部と、上記板状部の長手方向他端部と上記他端側片部とに折曲げ部を介して連設されてそれらの相互間に亘る他方側の側板部と、を有して、平面視形状が略矩形環状に形成されている請求項1に記載した結合装置。
【請求項3】
上記取付け具がテレビジョン受像機の背面パネルの内側に取り付けられて、その取付け具の上記ねじ孔及びビス挿通孔が、上記背面パネルに具備された貫通孔に臨んでいると共に、上記貫通孔と上記ビス挿通孔とに挿通されて上記ねじ孔にねじ込まれた上記ビスが、上記テレビジョン受像機を壁面に固定することに用いられる壁掛け金具を上記背面パネルに固定するためのビスである請求項1又は請求項2に記載した結合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−24328(P2013−24328A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159739(P2011−159739)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】