説明

結合金具

【課題】Oリング等のゴム製シール材は勿論、メタルシールを使用して高圧、真空及びガスの透過とアウトガスの抑制ができる結合金具を提供する。
【解決手段】一対の結合金具本体11,12にそれぞれ設けられ、該結合金具本体11,12の周方向に配列され軸方向に突設した複数の嵌合凸部21と、これら嵌合凸部21の間に形成された嵌合凹部22とを備え、一対の結合金具本体11,12の嵌合凸部21と嵌合凹部22は互いに相手側の結合金具本体11,12の嵌合凹部22と嵌合凸部21に軸方向に嵌合し、これら嵌合凸部21には相手側の結合金具本体11,12の嵌合凹部22に周方向に係止して軸方向の移動を規制し、これら一対の結合金具本体11,12を軸方向に係止する係止鉤部23が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、消防ホース相互の接続、消防ホースと機器との接続、冷媒配管、ガス配管、油送管等の接続に用いられる結合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
消防ホース等のホースを相互に接続または液体輸送配管の配管相互の接続を行う、雌雄の区別のない一対の同一構造の結合金具本体から構成された結合金具は、本出願人が開発し、登録されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この結合金具は、図7に示すように、一対の結合金具本体1,2にそれぞれ設けられ、該結合金具本体1,2の周方向に配列され軸方向に突設した複数の嵌合凸部3と、これら嵌合凸部3の間に形成された嵌合凹部4とを備えている。一対の結合金具本体1,2の嵌合凸部3と嵌合凹部4は互いに相手側の結合金具本体1,2の嵌合凹部4と嵌合凸部3に軸方向に嵌合し、これら嵌合凸部3には相手側の結合金具本体1,2の嵌合凸部3に周方向に係止して軸方向の移動を規制し、これら一対の結合金具本体を軸方向に係止する係止鉤部5が形成されている。
【0004】
一対の結合金具本体1,2の内部には円筒体6,7が設けられ、これら円筒体6,7の互いに対向する端面にはゴムパッキン等のシール材8が取付けられている。そして、一対の結合金具本体1,2を軸方向に結合したとき、シール材8が互いに衝合して一対の結合金具本体1,2が流体密に結合されるようになっている。
【特許文献1】特許第3107507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す消防ホース等のホース相互を雌雄の区別のない一対の同一構造の結合金具本体を用いて接続する結合金具は、ゴムパッキン等のシール材同士を押し付けてシールするものであり、撓み量を大きく確保できるゴム製リップシールタイプのパッキンを使用せざるを得ない。つまり、撓み量が小さいメタルシールを使用できない。この結果、使用圧が3MPaを超えるような高圧では使用に耐えられない。また、ガスの透過とアウトガスの抑制ができないという問題がある。
本発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、Oリング等のゴム製シール材は勿論、メタルシールを使用して高圧、真空及びガスの透過とアウトガスの抑制ができる結合金具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1は、ホース相互または配管相互あるいはホースと配管または他の機器とを流体流通状態に結合する結合金具において、円筒状の一対の結合金具本体と、これら結合金具本体の一方の外周面に設けられた内側シール部と、この内側シール部に嵌合されたシール材と、前記結合金具本体の他方の内周面に設けられ、前記シール材の放射方向と衝合される外側シール部と、この外側シール部を囲繞して前記一対の結合金具本体にそれぞれ設けられ、該結合金具本体の周方向に配列され軸方向に突設した複数の嵌合凸部と、これら嵌合凸部の間に形成された嵌合凹部とを備え、前記一対の結合金具本体の嵌合凸部と嵌合凹部は互いに相手側の結合金具本体の嵌合凹部と嵌合凸部に軸方向に嵌合し、これら嵌合凸部には相手側の結合金具本体の嵌合凹部に周方向に係止して軸方向の移動を規制し、これら一対の結合金具本体を軸方向に係止する係止鉤部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1の前記内側シール部と外側シール部は、前記シール材を挟んで互い違いに嵌合する嵌合部であることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1の前記シール材は、C型ジャケットの内部にコイルスプリングを収納したメタルシールであることを特徴とする。
【0009】
請求項4は、請求項1の前記シール材は、C型ジャケットの内部にゴム製のDリングを収納したメタルシールであることを特徴とする。
【0010】
請求項5は、請求項1において、さらに前記一対の結合金具本体の嵌合凸部に、前記係止鉤部が互いに係止する方向に付勢する付勢機構が設けられていることを特徴とする。
請求項6は、請求項1の前記複数の嵌合凸部と、これら嵌合凸部の間に形成された嵌合凹部は環状結合部材に設けられ、この環状結合部材は、前記結合金具本体とは別部材であり、該結合金具本体に嵌合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Oリング等のゴム製シール材を使用しても25MPa程度までの高圧に使用できる。さらに、メタルシールを使用することにより、80MPa程度までの高圧で使用できると共に、1.33×10−8Pa程度までの真空でも使用でき、さらにガスの透過とアウトガスの抑制ができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の各実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は結合金具の第1の実施形態を示し、円筒状の第1の結合金具本体11と第2の結合金具本体12を備えている。これら第1と第2の結合金具本体11,12は消防ホース相互または配管相互を接続する継手あるいはホースと配管または他の機器とを接続する継手として用いられ、内部に流体流通路11a、12aを形成している。
【0014】
第1の結合金具本体11の接続端部にはフランジ部13が設けられ、このフランジ部13より端部側には外周面に環状凹部14を有する内側シール部15が形成されている。第2の結合金具本体12の接続端部には内側シール部15の外側に嵌合し、端面がフランジ部13に近接する外側シール部16が形成されている。したがって、内側シール部15と外側シール部16とは嵌合するようになっている。そして、環状凹部14にはゴム製のシール材としてのOリング17が嵌着され、Oリング17は内側が内側シール部15でシールされ、外側、つまり放射方向は外側シール部16に衝合して流体密にシールされている。
【0015】
また、第1と第2の結合金具本体11,12の内側シール部15と外側シール部16とからなるシール部の外側にはこれらを囲繞する一対の環状結合部材18が設けられている。これら環状結合部材18は同一構造であり、基端部には内側に突出する環状凸部19が設けられている。一方の環状結合部材18の環状凸部19はフランジ部13に衝合して抜け止めされ、他方の環状凸部19は外側シール部16の段部と衝合して抜け止めされている。
【0016】
前記一対の環状結合部材18の結合構造は、特許第3107507号公報で知られている結合金具と基本的に同一構造であり、環状結合部材18の前端部に筒本体20を備えている。筒本体20は略円筒形をなし、筒本体20の前端部には、それぞれ複数個の嵌合凸部21が一体に突設されている。これらの嵌合凸部21は筒本体20の周方向に等間隔に配列されている。
【0017】
また、これらの嵌合凸部21の間は嵌合凹部22として形成されており、嵌合凸部21の一方の側面21aには段形鉤状の係止鉤部23がそれぞれ形成されている。これらの嵌合凸部21の他方の側面21bの先端角部は円弧状に形成されてガイド部24が形成されている。
【0018】
また、これらの嵌合凸部21の他方の側面21bには、それぞれ付勢機構25が設けられている。これらの付勢機構25は、鋼球と、この鋼球を突出方向に付勢するスプリングとから構成されており、これらの付勢機構25はこれら嵌合凸部21の他方の側面21bに埋め込まれている。従って、これらの嵌合凸部21が相手側の嵌合凹部22内に嵌合されると、鋼球が互いに当接して互いに押圧付勢し、これら嵌合凸部21の他方の側面21bを互いに離反するように付勢する。この結果、これら嵌合凸部21の一方の側面21aは互いに近接するように付勢され、これらの一方の側面21aの係止鉤部23が互いに係合するように付勢されるようになっている。
【0019】
そして、一対の環状結合部材18の結合部が軸方向に衝合された場合には、例えば、一方の環状結合部材18の嵌合凸部21が他方の環状結合部材18の嵌合凹部22内に嵌合し、また他方の環状結合部材18の嵌合凸部21が一方の環状結合部材18の嵌合凹部22内に嵌合し、互いに相補形に嵌合する。同様に、一方の環状結合部材18の嵌合凸部21が他方の環状結合部材18の嵌合凹部22内に嵌合し、また他方の環状結合部材18の嵌合凸部21が一方の環状結合部材18の嵌合凹部22内に嵌合し、互いに相補形に嵌合する。
【0020】
第1の実施形態によれば、シール材としてOリング17を使用しているが、内側シール部15と外側シール部16とが嵌合され、Oリング17は内側が内側シール部15でシールされ、外側は外側シール部16に衝合して流体密にシールされている。したがって、流体流通路11a,12aを流す流体の圧力が高圧(25MPa程度)であっても十分に耐え得ることができる。
【0021】
図2及び図3は第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。図2に示すように、第1の結合金具本体11の接続端部にはフランジ部13が設けられ、このフランジ部13より端部側には端面からフランジ部13方向に向かって外周面を細径に形成した環状切欠部26を有する内側シール部27が形成されている。第2の結合金具本体12の接続端部には環状切欠部26及び内側シール部27の外側に嵌合し、端面がフランジ部13に近接する外側シール部28が形成されている。したがって、内側シール部27と外側シール部28とは嵌合するようになっている。そして、環状切欠部26にはシール材としてのメタルシール29が嵌着されている。メタルシール29は、三菱電線工業(株)製のサンリーメスII(登録商標)であり、図3に示すように、外周方向に開口する断面がC字状のアルミジャケットからなるC型ジャケット30の内側にゴム製のDリング31を収納した構造であり、内側が内側シール部27でシールされ、外側、つまり放射方向は外側シール部28に衝合して流体密にシールされている。このサンリーメスII(登録商標)は、メタルシール並みの高いシール性(×10−11Pa・m/sec.)を有する。また、締付け力は、ゴムシールに近く、メタルシールに比べて小さいという特徴がある。
第2の実施形態によれば、流体流通路11a,12aを流す流体の圧力が高圧(80MPa程度)であっても十分に耐え得ることができると共に、1.33×10−8Pa程度までの真空でも使用でき、さらにガスの透過とアウトガスの抑制ができるという効果がある。
図4は第3の実施形態を示すもので、第1の実施形態と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。本実施形態は、第2の実施形態に示す、第1の結合金具本体11の接続端部に設けられた環状切欠部26にシール材としての嵌着されるメタルシール32であり、外周方向に開口する断面がC字状のC型ジャケット33の内側にコイルスプリング34を収納した構造であり、内側が内側シール部27でシールされ、外側、つまり放射方向は外側シール部28に衝合して流体密にシールされている。このメタルシール32は、三菱電線工業(株)製のサンカップ(登録商標)で、SUS316LからなるC型ジャケット33の内側にニッケルからなるコイルスプリング34が収納されている。
【0022】
第3の実施形態によれば、流体流通路11a,12aを流す流体の圧力が高圧(80MPa程度)であっても十分に耐え得ることができると共に、1.33×10−8Pa程度までの真空でも使用でき、さらにガスの透過とアウトガスの抑制ができるという効果がある。
図5及び図6は第4の実施形態を示し、図5は結合金具の正面図、図6は図5のA−B−C線に沿って断面した一対の結合金具を示す断面図であり、第1の実施形態の第1と第2の結合金具本体11,12に嵌合されるストルツ結合金具35を示す。
【0023】
図5及び図6に示すように、ストルツ結合金具35は、同一の構造の一対の環状結合部材36a,36bから構成されており、これら環状結合部材36a,36bは、それぞれ筒本体37を備えており、これら筒本体37は円筒形をなし、その前端部における軸心Oを中心とする点対称位置には例えば2個の嵌合凸部38が軸方向に突出して設けられている。これら嵌合凸部38には筒本体37の外周方向に突出する略L字状の係止鉤部38aが設けられている。
【0024】
嵌合凸部38の右隣には該嵌合凸部38が嵌合されるように嵌合凸部38より広幅で深い嵌合凹部39が設けられている。この嵌合凹部39のさらに右隣には筒本体37の周方向に係合受け部40が設けられている。係合受け部40は嵌合凹部39から連続する円弧状の凹溝41と、この凹溝41の開口幅を狭めるように凹溝41の長手方向に沿って突出し、前記係止鉤部38aと係合する係合縁部41aとから構成されている。
【0025】
係合縁部41aには筒本体37の軸方向の肉厚が嵌合凹部39から時計方向に向うに従って漸次大きくなるように傾斜面42及びストッパ43が設けられている。そして、一方の環状結合部材36aの嵌合凸部38を、他方の環状結合部材36bの嵌合凹部39に嵌合し、環状結合部材36aと36bを相対的に時計回りに回すと、係止鉤部38aが係合縁部41aに係合し、係止鉤部38aが傾斜面42の上り勾配に差し掛かると、環状結合部材36aと36bが互いに軸方向に引き寄せられて互いに前端面が接合するようになっている。
従って、環状結合部材36aと36bを第1の実施形態の第1と第2の結合金具本体11,12に嵌合し、内側シール部15と外側シール部16とを嵌合すると、内側シール部15と外側シール部16との間がシール材によってシールされることになり、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
本発明の結合金具は、消防ホースの接続、エアコンの冷媒配管やホースの接続あるいは水素やガソリン用の供給用配管、航空・宇宙機器用の配管や高圧ホースの接続等、広範囲に適用できる。
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、結合金具の一部を断面した側面図。
【図2】本発明の第2の実施形態を示し、結合金具の一部を断面した側面図。
【図3】同実施形態を示し、メタルシールの断面図。
【図4】本発明の第3の実施形態を示し、メタルシールの断面図。
【図5】本発明の第4の実施形態を示し、環状結合部材の正面図、
【図6】同実施形態を示し、図5のA−B−C線に沿って断面した一対の環状結合部材を示す断面図。
【図7】従来の結合金具の一部を断面した側面図。
【符号の説明】
【0027】
11,12…結合金具本体、15…内側シール部、16…外側シール部、17…Oリング(シール材)、21,38…嵌合凸部、22,39…嵌合凹部、23,38a…係止鉤部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース相互または配管相互あるいはホースと配管または他の機器とを流体流通状態に結合する結合金具において、
円筒状の一対の結合金具本体と、これら結合金具本体の一方の外周面に設けられた内側シール部と、この内側シール部に嵌合されたシール材と、前記結合金具本体の他方の内周面に設けられ、前記シール材の放射方向と衝合される外側シール部と、この外側シール部を囲繞して前記一対の結合金具本体にそれぞれ設けられ、該結合金具本体の周方向に配列され軸方向に突設した複数の嵌合凸部と、これら嵌合凸部の間に形成された嵌合凹部とを備え、前記一対の結合金具本体の嵌合凸部と嵌合凹部は互いに相手側の結合金具本体の嵌合凹部と嵌合凸部に軸方向に嵌合し、これら嵌合凸部には相手側の結合金具本体の嵌合凹部に周方向に係止して軸方向の移動を規制し、これら一対の結合金具本体を軸方向に係止する係止鉤部が形成されていることを特徴とする結合金具。
【請求項2】
前記内側シール部と外側シール部は、前記シール材を挟んで互い違いに嵌合する嵌合部であることを特徴とする請求項1記載の結合金具。
【請求項3】
前記シール材は、C型ジャケットの内部にコイルスプリングを収納したメタルシールであることを特徴とする請求項1記載の結合金具。
【請求項4】
前記シール材は、C型ジャケットの内部にゴム製のDリングを収納したメタルシールであることを特徴とする請求項1記載の結合金具。
【請求項5】
請求項1において、さらに前記一対の結合金具本体の嵌合凸部に、前記係止鉤部が互いに係止する方向に付勢する付勢機構が設けられていることを特徴とする結合金具。
【請求項6】
前記複数の嵌合凸部と、これら嵌合凸部の間に形成された嵌合凹部は環状結合部材に設けられ、この環状結合部材は、前記結合金具本体とは別部材であり、該結合金具本体に嵌合されていることを特徴とする請求項1記載の結合金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−333107(P2007−333107A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166279(P2006−166279)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(391001169)櫻護謨株式会社 (40)
【Fターム(参考)】