説明

結晶化度の高い有機無機複合粉体、その製造法及び前記粉体を含有する組成物

【課題】 結晶性を向上し、紫外線防護効果の高い無機粉体複合体を有機溶媒を用いずに製造し、本無機物複合体を皮膚外用剤に配合することにより紫外線防護効果の高い皮膚外用剤を製造するという課題を解決する。

【解決手段】
一般式(1)に表されるカルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸重合物及びカルボン酸誘導体重合物からなる群から選択される一種または二種以上と、水溶性の金属塩の一種または二種以上とを水に溶解した後、前記金属塩を中和または還元することで結晶性が高く紫外線防護効果の高い無機粉体複合体を製造出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線防御剤として有用な結晶性に優れた無機微粒子を含有する新規な無機粉体複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
波長領域320〜400nmの長波長紫外線(UVA)及び、290〜320nmの中波長紫外線(UVB)はオゾン層により、吸収・散乱されきれずに地上に到着し、皮膚に様々な悪影響を及ぼすことが知られている。例えば、UVBは炎症を誘発し、皮膚の老化を助長することが、また、UVAはメラニンの産生を助長し、シミ・そばかすなど要因となることが知られている。
【0003】
これらの皮膚への悪影響を未然に防ぐ化粧料の開発が進められ、様々な検討が行われている。例えば、ベンゼン環等の芳香族環を有する化合物、いわゆるUV吸収剤を用いることにより皮膚が過度の紫外線に曝されることを防ごうとする試み(例えば特許文献1、2参照)がなされている。しかしながら、これらの文献で用いられているUV吸収剤の多くが油剤であるため、水への溶解性が低く、化粧料としての剤型が限定される。さっぱりとした使用感が得られにくく、夏に多用される紫外線防御用化粧料への使用には限度があるなどの問題点を有していた。
【0004】
一方、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機微粒子を用いて、紫外線に対する皮膚の過度の暴露を防ごうとする試みが報告されているが(例えば特許文献3、4参照)、結晶性の良い酸化物であるため、UV防御効果は高いものの、微粒子の表面活性により化粧料中での均一分散が妨げられ、UV防御効果の低下を引き起こしたり、増粘剤などの化粧料中の他の配合成分に影響を与え、その機能を低下させたりする等の問題点が生じる場合があった。
【0005】
このような問題点を解決するため、無機微粒子の表面に種々の処理を行うことが報告されているが(例えば特許文献5,6参照)、表面処理が不十分なためその効果は不十分である。また、無機微粒子調製時にカルボン酸等の有機物の複合体とする事により、上記無機物の有する分散性や機能低下の問題点は解決出来るものの(例えば特許文献7参照)、精製する無機微粒子の結晶性は通常知られている非焼結酸化亜鉛と変わらず、得られた単一分散性効果が、結晶性の低下と相殺されることにより、最大限にはその効果を発揮していない場合が存した。
【0006】
一般式(1)で表される水溶性のカルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸重合物及びカルボン酸誘導体重合物は通常紫外線防護化粧料に使用されているが、これらの化合物を一種または二種以上含有し、水溶性の金属塩の一種または二種以上とを水に溶解した後、該金属塩を中和または還元することにより、結晶化度の高い無機微粒子を構成要素とする無機粉体複合体を製造する方法は全く知られていなかった。また、このように製造された無機粉体複合体により、分散性のよい化粧料が得られることは全く知られていなかった。

【特許文献1】特開2001−207060号公報
【特許文献2】特開2006−160651号公報
【特許文献3】特開2004―203768号公報
【特許文献4】特開2003―096437号公報
【特許文献5】特開2007―291094号公報
【特許文献6】特開2005―232069号公報
【特許文献7】WO2007/057997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況下なされたものであり、結晶性に優れた紫外線カット効果の高い無機粉体複合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、結晶性に優れた紫外線カット効果の高い無機粉体複合体の有機溶剤を使用しない製造手段を求めて鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)に表されるカルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸重合物及びカルボン酸誘導体重合物が結晶性に優れており、一般式(1)からなる水溶性カルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸重合物及びカルボン酸誘導体重合物の群から選択される一種または二種以上及び水溶性の金属塩の一種または二種以上を水に溶解した後、該金属塩を中和または還元することにより、結晶化度の向上した無機微粒子を構成要素とする無機粉体複合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。

(1)
次に示す一般式(1)で表されるカルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸重合物及びカルボン酸誘導体重合物から選択される一種または二種以上を含む、結晶化度の高い無機微粒子で構成される無機粉体複合体。
【化1】

一般式(1)
(式中、Rは水素原子、置換基を有しても良い炭素数1から15のアルキル基、炭素数1から15のアルケニル基を表し、該置換基はカルボキシル基、ヒドロキシ基であり、それぞれ独立に1つ以上含有することが出来る。Xは水素原子、アルカリ金属乃至炭素数2から23のポリオキシエチレンを表す)
(2)
無機微粒子の結晶のX線回折おける最大回折強度を有するピークの半値幅が0.35°以下であることを特徴とする、(1)に記載の無機粉体複合体。
(3)
無機微粒子の粒子径が0.1μm以下であって、粒子同士が互いに独立して存在することを特徴とする、(1)または(2)に記載の無機粉体複合体。
(4)
無機複合体中における無機微粒子の割合が60質量%以上であることを特徴とする、(1)〜(3)いずれか1項に記載の無機粉体複合体。
(5)
無機微粒子が金属の単体、金属の酸化物及び金属の水酸化物からなる群から選択される一種又は二種以上であり、前記金属が、亜鉛、鉄、アルミニウム、チタニウム、バリウム、マンガン、セリウム、コバルト、カルシウム、カドミウム、ストロンチウム、銅、クロミウム、ジルコニウム、金、銀からなる群から選択される一種または二種以上であることを特徴とする、(1)〜(4)いずれか1項に記載の無機粉体複合体。
(6)
一般式(1)に表されるカルボン酸誘導体が、炭素数10以下であってモノ、ジ、及びトリカルボン酸のアルカリ塩、及び炭素数10以下であってモノ、ジ、及びトリカルボン酸のポリオキシエチレン付加物からなる群から選択される一種または二種以上であることを特徴とする、(1)〜(5)いずれか1項に記載の無機粉体複合体。
(7)
一般式(1)に表されるカルボン酸誘導体重合物が、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のアルカリ塩、及びポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のポリオキシエチレン付加物からなる群から選択される一種または二種以上であることを特徴とする、(1)〜(6)いずれか1項記載の無機粉体複合体。
(8)
油脂と共存した場合に油脂の酸化劣化による過酸化物価の上昇を抑制することを特徴とする、(1)〜(7)いずれか1項記載の無機粉体複合体。
(9)
一般式(1)で表される水溶性のカルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸重合物及びカルボン酸誘導体重合物からなる群から選択される一種または二種以上と、水溶性の金属塩の一種または二種以上とを水に溶解した後、前記金属塩を中和または還元して調製されることを特徴とする、(1)〜(8)いずれか1項記載の無機粉体複合体の製造方法。
(10)
(1)〜(8)いずれか1項記載の無機粉体複合体を含有してなる組成物。
(11)
(10)に記載の組成物を含有する皮膚外用剤。
(12)
(10)に記載の組成物を含有する化粧料。
(13)
油脂を含有することを特徴とする、(10)に記載の組成物。
(14) 紫外線の照射下で使用されることを特徴とする、(10)に記載の組成物。
(15) 請求項1〜8何れか1項に記載の無機粉体複合体の紫外線吸収剤としての使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
一般式(1)で表せるカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸、カプロン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸等があり、一般式(1)で表されるカルボン酸誘導体としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸のカリウム、ナトリウム、リチウム及びアミン類等のアルカリ塩又はポリオキシエチレン付加物があり、これらのうち、炭素数10以下のカルボン酸が水との混和性に優れ、特に好ましい。例えば、前記アルカリ塩としては、酢酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸トリエチルアミン、カプリン酸ナトリウム、シュウ酸リチウム、マロン酸カリウム、コハク酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酒石酸ナトリウム等が例示できる。前記カルボン酸誘導体のポリオキシエチレン付加物にはポリオキシエチレンアクリレート、ポリオキシエチレンメタクリレート等がある。一般式(1)で表されるカルボン酸誘導体の重合物としては、アルカリ塩として、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸トリエタノールアミン、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸トリエチルアミン等があり、該カルボン酸誘導体の重合物のポリオキシエチレン付加物としては、オキシエチレン鎖23モル以下のポリオキシエチレンアクリルポリマーやポリオキシエチレンメタクリルポリマーがあり、これらの重合物の重合度は1000以下が好ましい。
【0010】
無機微粒子の最大回折強度を有するピークは、X線分析解析装置により測定することが出来る。複合粉体を構成する無機粉体の結晶をX線回折による分析を行うと、チャート上に結晶面に応じた複数のピークが現れ、各ピークの強度は、無機粉体の結晶面の存在比率を表す。前記のピークのうち最大のものを最大解析強度を有するピークとする。また、半値幅とは、二つの物理的量の関係を表すグラフが山形をなすとき、縦軸の値が山の最大値の半分の横軸の値である。上記の最大解析強度を有するピークの半値幅は、一般的にその結晶の結晶化度を表しており、例えば、(101)面に対応するピークの半値幅が狭い場合(即ち、ピークがシャープな場合)、(101)面での結晶化が進んでいることを示している。一方、(101)面に対応するピークの半値幅が広い場合(即ち、ピークがなだらかな場合)、(101)面での結晶化が発達しておらず、(101)面指数を持つ結晶の結晶性が低く、アモルファス状態に近いことを示している。ピークの半値幅が小さくなると、結晶性が向上し安定な状態といえる。このような結晶性の向上は紫外線の透過を低下させ、紫外線カット用皮膚外用剤等に利用可能である。
【0011】
前記最大回折強度を有するピークの半値幅が0.4°より大きいと、複合粉体を構成する酸化亜鉛等の結晶性が悪く、アモルファスが多い結晶になり、結晶化されていない不安定な部分が多くなり、紫外線の吸収が落ちやすくなる。例えば、無機物複合粉体を構成する酸化亜鉛の結晶のX線回折による分析における最大のピークの半値幅は、0.1から0.4であると結晶性が向上していると言え、さらに0.35°以下であることが好ましい。
【0012】
無機微粒子は粒子同士が互いに独立して存在することが紫外線散乱効果の点から好ましく、その無機微粒子の粒子の最大径は使途によって異なるが、着色を目的とする場合、概ね0.1から0.01μm程度であり、透明性を重視し機能を紫外線吸収、殺菌剤等に用いる場合、概ね0.01から0.001μmである。本発明の無機複合体の粒子径としては、着色目的であれば、0.02から50μmが例示でき、紫外線吸収や殺菌剤である場合では、好ましくは0.002から5μmであることが好ましい。特に0.1μm以下であることが好ましい。無機粉体複合体の粒子形状は走査型電子顕微鏡による観察することが出来、最大径をスケールを設置して比較することで測定は可能である。
【0013】
次に無機複合体中における無機微粒子の割合については、一般式(1)に表されるカルボン酸等との組成割合は、無機物微粒子が質量比で60%以上であることが好ましい。この割合は、無機物微粒子の種類及び粒子径によって、水への分散性が異なってくるため、一概に言えないが、好ましくは60から99%であり、より好ましくは85から99%である。
【0014】
ここに用いられる無機物の種類は特に規定しないが、例えば亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、チタニウム、バリウム、マンガン、セリウム、コバルト、カルシウム、カドミウム、ストロンチウム、銅、クロミニウム、ジルコニウム、金、銀であり、これらは単体、酸化物又は/及び水酸化物の形で用いられ、1種又は2種以上の複合物である。
【0015】
本発明の無機粉体複合体は、皮膚外用剤として化粧料に用いることが出来、例えば、サンケアミルク、サンケアパウダー、サンブロック等の紫外線防護化粧料、アンダーメックアップ、ファンデーション、コントロールカラー、プレストパウダー等のメークアップ化粧料、特に、サマーメークアップ化粧料等が好適に例示できる。剤形としては2層分散ローション剤形、乳化剤形、粉体剤形或いはオイル剤形等何れの剤形にも応用できる。特に好ましい剤形は、水性担体を含有する、二層分散ローション剤形乃至は乳化剤形である。
【0016】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等の前記のシリコーンに分類されないシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、ポリオキシエチレンラウリル燐酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、グルコノラクトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、ポリプロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;燐酸、クエン酸等のpH調整剤;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;ベンジルアルコール、トリアセチン、クロタミトン、炭酸プロレン等炭酸ジエステル、サリチル酸エチレングリコールなどの溶剤などが好ましく例示できる。
【0017】
以下に実施例を掲げて、図面を参照しながら、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
水207gに9gの塩化亜鉛(和光純薬工業株式会社製)及びポリアクリル酸(重合度5000)2g(和光純薬工業株式会社製)を溶解させ、A液とした。室温にてA液に攪拌しながら6N苛性ソーダ(31g)を、徐々に加えた。その後、室温にて4時間撹拌し、これに水を加え、デカンテーション、濾過を3回繰り返し、得られた沈殿物を90℃で乾燥させて、乾燥物A(6.0g)を得た。Cuの管球を使用して、乾燥物AのX線回折分析(JPX−3530、島津製作所製)を用いて行った。その結果が図1の分析チャートである。図1から求めた最大のピークの半値幅は0.3178°であった。上記乾燥物を水に分散させ0.01%水分散物の紫外線吸光度を分光光度計(U-3000、日立製作所製)により測定したところ、λmax363nm 1.241であった。

(比較例1)
上記の実施例1の溶媒を水からエタノール(116g)と水(91g)との混合溶媒に変更した以外は、実施例1と同様に操作して、乾燥物B(5.7g)を得た。これを上記と同様の操作により、最大のピークの半値幅を測定した。結果を最大のピークの半値幅を表1に示し、図2にCuの管球を使用して、乾燥物BのX線回折分析を行った際の分析チャートを示した。図2から求めた最大のピークの半値幅は0.4349°であった。上記乾燥物を水に分散させ0.01%水分散物の紫外線吸光度を測定したところ、λmax347nm 0.490であった。

(実施例2)
実施例1の乾燥物Aを用いて、下記に示す表1の処方に従って、本発明の皮膚外用剤である、紫外線防護化粧料(二層分散ローション剤型)を調製した。即ちイの成分を80℃で加熱しながら、攪拌、可溶化し、これにロの成分を分散させ、紫外線防護化粧料1を得た。

(比較例2)
同様の操作で、紫外線防護化粧料1の乾燥物Aを前記比較例1の乾燥物Bに置換した紫外線防護化粧料2を調製した。紫外線防護化粧料1の乾燥物Aを市販の微粒子酸化亜鉛粉末(このもののX線回折分析を行った際の分析チャートにおける最大のピークの半値幅は0.2676°であった。水に分散させ0.01%水分散物の紫外線吸光度を測定したところ、λmax 368nm 0.230であった)95質量%とポリアクリル酸ナトリウム5質量%との混合粉体に置換した紫外線防護化粧料3も同様に調製した。
【0019】
【表1】

【0020】
<試験例1>
パネラーの背部を用い、日本化粧品工業会法に則り、紫外線防護化粧料1〜3のSPF(紫外線防護指数)及びPA(紫外線A防護ランク)を測定した。結果は紫外線防護化粧料1がSPF25.1、PA+++であり、紫外線防護化粧料2がSPF20.1,PA++であり、紫外線防護化粧料3がSPF12.4、PA+であった。紫外線防護化粧料1のSPF及びPAは紫外線防護化粧料2及び3のSPF及びPAに比べて高く、本発明の複合体である乾燥物Aを化粧料として用いることにより、高い紫外線防護効果が得られることが確認された。
【0021】
(実施例3)
水207gに12gの四塩化チタン(和光純薬工業株式会社製)及びポリアクリル酸(重合度5000)2g(和光純薬工業株式会社製)を溶解させた。これを室温にて攪拌しながら6N苛性ソーダ(51g)を徐々に加え、その後、室温にて4時間撹拌させた。これに水を加え、デカンテーション、濾過を3回繰り返し、得られた沈殿物を90℃で乾燥させて、乾燥物C(5.2g)を得た。乾燥物CのX線回折分析を行ったところ、同様に結晶化度が高いことを確認した。

(実施例4)
水207gに9gの塩化亜鉛(和光純薬工業株式会社製)及びポリメチルメタアクリル酸(重合度100000)2g(和光純薬工業株式会社製)を溶解させた。これを室温にて攪拌しながら6N苛性ソーダ(31g)を徐々に加え、その後、室温にて4時間撹拌させた。これに水を加え、デカンテーション、濾過を3回繰り返し、得られた沈殿物を90℃で乾燥させて、乾燥物D(6.2g)を得た。乾燥物DのX線回折分析を行ったところ、同様に結晶化度が高いことを確認した。

(実施例5)
水207gに12gの四塩化チタン(和光純薬工業株式会社製)及びポリ(アクリル酸/マレイン酸)(重合度10000)2g(株式会社日本触媒製)を溶解させた。これを室温にてE液に攪拌しながら6N苛性ソーダ(51g)を徐々に加え、その後、室温にて4時間撹拌させた。これに水を加え、デカンテーション、濾過を3回繰り返し、得られた沈殿物を90℃で乾燥させて、乾燥物E(4.9g)を得た。乾燥物EのX線回折分析を行ったところ、同様に結晶化度が高いことを確認した。

(実施例6)
水207gに9gの塩化亜鉛(和光純薬工業株式会社製)及びポリ(アクリル酸/マレイン酸)(重合度5000)2g(株式会社日本触媒製)を溶解させた。これを室温にて攪拌しながら6N苛性ソーダ(31g)を徐々に加え、その後、室温にて4時間撹拌させた。これに水を加え、デカンテーション、濾過を3回繰り返し、得られた沈殿物を90℃で乾燥させて、乾燥物F(6.0g)を得た。乾燥物FのX線回折分析を行ったところ、同様に結晶化度が高いことを確認した。

(実施例7)
実施例Dの乾燥物を用いて、表2に示す処方に従い、乾燥物Dを用いて皮膚外用剤である、紫外線防護化粧料(油中水剤型)を調製した。即ち、イ、ロの成分を秤量し、しかる後にロを80℃に加温し、これを予め80℃に温度調整しておいたイに、攪拌下徐々に加えて乳化した後、攪拌冷却して紫外線防護化粧料Dを得た。
【0022】
【表2】

【0023】
(実施例F)
紫外線防護化粧料Dの乾燥物Dを前記の乾燥物Eに置き換え、紫外線防護化粧料Dと同様の操作を行い、紫外線防護化粧料Eを調製した。また、紫外線防護化粧料Cの乾燥物Cを市販の乾燥物Fに置換した紫外線防護化粧料F、紫外線防護化粧料Cの乾燥物Cを市販の微粒子酸化亜鉛粉末(このもののX線回折分析を行った際の分析チャートにおける最大のピークの半値幅は0.2676°であった。水に分散させ0.01%水分散物の紫外線吸光度を測定したところ、λmax 368nm 0.230であった)95質量%とポリアクリル酸ナトリウム5質量%との混合粉体に置換した紫外線防護化粧料Xも同様に製造した。

<試験例2>
パネラーの背部を用い、日本化粧品工業会法に則り、紫外線防護化粧料B,D,E,F,及びXのSPF(紫外線防護指数)及びPA(紫外線A防護ランク)を測定した。結果は紫外線防護化粧料BがSPF21.1、PA+であり、紫外線防護化粧料DがSPF26.2,PA++であり、紫外線防護化粧料EがSPF30.2,PA++であり、紫外線防護化粧料FがSPF27.2,PA+++であり、紫外線防護化粧料XがSPF14.4、PA+であった。本発明の複合体である乾燥物D,E,Fを化粧料として用いることにより、高い紫外線防護効果が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明により結晶性が向上し、紫外線防護効果の高い一般式(1)に表されるカルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸重合物及びカルボン酸誘導体重合物を製造することにより、紫外線防護効果の高い皮膚外用剤を製造するという重要な課題を解決することが出来る。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】乾燥物AのX線結晶回折分析の分析チャート
【図2】乾燥物BのX線結晶回折分析の分析チャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次に示す一般式(1)で表されるカルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸重合物及びカルボン酸誘導体重合物から選択される一種または二種以上を含む、結晶化度の高い無機微粒子で構成される無機粉体複合体。
【化1】

一般式(1)
(式中、Rは水素原子、置換基を有しても良い炭素数1から15のアルキル基、炭素数1から15のアルケニル基を表し、該置換基はカルボキシル基、ヒドロキシ基であり、それぞれ独立に1つ以上含有することが出来る。Xは水素原子、アルカリ金属乃至炭素数2から23のポリオキシエチレンを表す)
【請求項2】
無機微粒子の結晶のX線回折おける最大回折強度を有するピークの半値幅が0.35°以下であることを特徴とする、請求項1に記載の無機粉体複合体。
【請求項3】
無機微粒子の粒子径が0.1μm以下であって、粒子同士が互いに独立して存在することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の無機粉体複合体。
【請求項4】
無機複合体中における無機微粒子の割合が60質量%以上であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の無機粉体複合体。
【請求項5】
無機微粒子が金属の単体、金属の酸化物及び金属の水酸化物からなる群から選択される一種又は二種以上であり、前記金属が、亜鉛、鉄、アルミニウム、チタニウム、バリウム、マンガン、セリウム、コバルト、カルシウム、カドミウム、ストロンチウム、銅、クロミウム、ジルコニウム、金、銀からなる群から選択される一種または二種以上であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の無機粉体複合体。
【請求項6】
一般式(1)に表されるカルボン酸誘導体が、炭素数10以下であってモノ、ジ、及びトリカルボン酸のアルカリ塩、及び炭素数10以下であってモノ、ジ、及びトリカルボン酸のポリオキシエチレン付加物からなる群から選択される一種または二種以上であることを特徴とする、請求項1〜5いずれか1項に記載の無機粉体複合体。
【請求項7】
一般式(1)に表されるカルボン酸誘導体重合物が、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のアルカリ塩、及びポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のポリオキシエチレン付加物からなる群から選択される一種または二種以上であることを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項記載の無機粉体複合体。
【請求項8】
油脂と共存した場合に油脂の酸化劣化による過酸化物価の上昇を抑制することを特徴とする、請求項1〜7いずれか1項記載の無機粉体複合体。
【請求項9】
一般式(1)で表される水溶性のカルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸重合物及びカルボン酸誘導体重合物からなる群から選択される一種または二種以上と、水溶性の金属塩の一種または二種以上とを水に溶解した後、前記金属塩を中和または還元して調製されることを特徴とする、請求項1〜8いずれか1項記載の無機粉体複合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか1項記載の無機粉体複合体を含有してなる組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物を含有する皮膚外用剤。
【請求項12】
請求項10に記載の組成物を含有する化粧料。
【請求項13】
油脂を含有することを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
紫外線の照射下で使用されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜8何れか1項に記載の無機粉体複合体の紫外線吸収剤としての使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−149561(P2009−149561A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328859(P2007−328859)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】