結晶化装置用位相シフタ、結晶化装置及び結晶化方法
【課題】2ショット法においても位相シフタの位置合せのためのアライメント作業効率が高く、処理のスループットを向上させることができ、また、材質や厚みの異なる位相シフタを使用する処理においても後工程に使用する位置合せマークの寸法と形状の変化のない結晶化装置用位相シフタ、結晶化装置及び結晶化方法を提供する。
【解決手段】結晶化装置用位相シフタ5は光学部材51,61の固有の光学特性に応じて光学部材の各々を基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマーク8と、結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写マークを用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、ホルダ50Aに設けられた第2のアライメントマーク51x,51yとを有する。
【解決手段】結晶化装置用位相シフタ5は光学部材51,61の固有の光学特性に応じて光学部材の各々を基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマーク8と、結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写マークを用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、ホルダ50Aに設けられた第2のアライメントマーク51x,51yとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温ポリシリコン用アモルファスシリコンにレーザ光を照射してアニールや結晶化をおこなうための結晶化装置用位相シフタ、結晶化装置及び結晶化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)のソース、ドレイン、チャネル領域に用いられるシリコン膜のうち非晶質シリコン(a-Si)膜は、形成温度が低く、気相法で比較的容易に形成することが可能であり、量産性にも富むため、TFTに用いる半導体薄膜として一般的に用いられている。しかし、a-Si膜は導電率等の物性が結晶性の多結晶シリコン(poly-Si)膜に比べて劣る(a-Siの移動度はpoly-Siのそれに比べて2桁以上低い)という欠点があるため、今後TFTの動作速度を高速化するためには、結晶性を有するpoly-Si膜をTFTのソース、ドレイン、チャネル領域とする製造方法を確立する必要がある。現状ではpoly-Si膜を形成する方法として、エキシマレーザアニール(Excimer Laser Annealing;以下、ELA法という)が汎用ガラス基板を使用できる温度範囲(室温から500℃程度まで)で利用されている。
【0003】
ELA法を利用する結晶化装置は、例えば特許文献1〜4に記載されている。これらの結晶化装置の光学系は、レーザ光に所望の光強度分布(ビームプロファイル)を与えるために位相シフタを備えている。位相シフタは、レーザ光の光強度分布に所望形状のピークを形成するために、レーザ光の位相を変調する空間強度変調光学素子である。位相シフタによりレーザ光の光強度分布を逆V字状ピークパターンに変調し、この変調レーザ光を半導体膜に照射し、半導体膜を局部的に溶融・凝固させることにより半導体結晶を横方向(膜厚に直交する方向)にラテラル成長させる。
【特許文献1】特開2003−173628号公報
【特許文献2】特開2003−339363号公報
【特許文献3】特開2004−093197号公報
【特許文献4】特開2002−357254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ELA法では、半導体膜の同じ箇所に異なる光強度分布(または異なる光強度)のレーザ光を重ねて照射する2ショット法を行うことがある。2ショット法を実施する場合は、1回目のショットに用いた位相シフタを別パターンの位相シフタに交換する必要がある。従来装置の位相シフタ交換作業は、手動で第1の位相シフタを装置から取り外し、手動で第2の位相シフタを装置に取り付け、その後に第2の位相シフタを結像光学系と位置合せするアライメント作業をおこなうため作業効率が低く、処理スループットの向上を図るうえでの大きな障害になっている。また、位相シフタの位置は結晶化装置の内奥部にあるため、一時的にレーザ照射を停止するなどの手続きや操作が煩雑である。
【0005】
さらに、光学部材の種類が異なると、基材の材料が異なることがあるため、タイプごとに位相シフタの厚みが相違することがある。例えば、あるパターンを石英基材上に形成し、他のパターンを異なる材料である水晶基材上に形成している場合に、前者から後者に位相シフタを交換してレーザ光照射すると、実効的に光路長が異なることからレンズ効果等により照射した次工程以降用の位置合わせマークの寸法や形状が異なってしまい、次工程以降で使用するアライメントマークを照射した場合に位置ずれが発生する問題がある。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、2ショット法においても位相シフタの位置合せのためのアライメント作業効率が高く、処理のスループットを向上させることができ、また、材質と厚みが異なる位相シフタを使用する処理においても照射したアライメントマークの次工程の読み取りにおいて位置合わせの問題を生じない結晶化装置用位相シフタおよび結晶化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る結晶化装置用位相シフタは、被処理基板上の非単結晶半導体膜に照射されるレーザ光を変調するための結晶化装置用位相シフタであって、レーザ光を所定の光強度と位相に変調するためのパターンが形成された複数の光学部材(51,61)と、前記複数の光学部材を保持するホルダ(50A,50B)と、位置合せ用の平面視野において結晶化装置のレーザ光軸が位置するところを基準位置としたときに、前記光学部材の固有の光学特性に応じて前記光学部材の各々を前記基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、前記光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマーク(8)と、前記結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写マーク(77x,77y)を用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、前記ホルダに設けられた第2のアライメントマーク(51x,51y)と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明において、上記第1のアライメントマークは、光学部材を保持または構成するホルダ(基材)の材質の違いなどに起因して生じる光学部材の固有の光学特性の違い、すなわち光路長の差による光学部材のZ方向の位置ずれ(焦点深度)を光学部材ごとに補正するために用いられるマークであり、複数本の直線を組み合わせてなるものである。この場合に、第1のアライメントマークは、互いに近接して配置された角部を有する4つのL字記号を含むものであることが好ましい。これにより位相シフタの位置合わせにおいて定点測定精度の誤差(基準位置からの光学部材の中心位置のずれ量、または基準位置からの第1アライメントマークの重心位置のずれ量)を従来のそれの25〜35%程度まで低減することができる。さらに、第1のアライメントマークは、前記4つのL字記号とは非接触の状態で、前記4つのL字記号の相互間に配置され、前記4つのL字記号の角部を強調する十字記号をさらに有することが好ましい。これにより位相シフタの光学部材の位置合わせにおいて定点測定精度の誤差を従来のそれの10〜15%程度まで低減することができる。
【0009】
本発明において、上記第2のアライメントマークは、被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために位相シフタから被処理基板上に転写されるマークであり、矩形枠内に直列に配置された複数の円形または擬似円形状の記号を有するものである。ここで擬似円形状とは、長円、楕円、角を円くした三角、角を丸くした四角などを含むものである。矩形枠内に配置される幾何学記号の数は、複数であればよく、2つ、3つ、4つ、さらに5つ以上とすることができる。また、第2のアライメントマークは、横方向成分マークおよび縦方向成分マークを含むことが好ましい。矩形状の被処理基板をXY面内で高精度に位置合せするためである。すなわち、横方向成分マークを用いて被処理基板のX座標を次工程以降の装置光軸のX座標に位置合せするとともに、縦方向成分マークを用いて被処理基板のY座標を該装置光軸のY座標に位置合せする。
【0010】
本発明において、第1及び第2のアライメントマークを、同じホルダ内に設けることができる。ホルダは複数の光学部材を保持するものである。また、ホルダが複数のサブホルダを保持し、各サブホルダが光学部材を1個ずつ有するようにしてもよい。これにより位相シフタの交換と位置合せに掛かる時間が従来よりも大幅に短縮される。
【0011】
第2のアライメントマークの利用方法について説明する。例えば位相シフタが2個の光学部材を有する場合を想定する。すなわち、一方にレーザ照射位置合せ用のパターンが形成された光学部材があり、他方に所望の光強度分布(ビームプロファイル)用のパターンが形成された光学部材がある場合に、前者の光学部材は使用実績があり、後者の光学部材は使用実績がない。すなわち、前者の光学部材は、すでに次工程(例えば露光装置による読み込みと位置合せ)での使用実績がある光路長にてパターン照射するものであり、光路長用にホルダのZ位置(レーザ光軸方向の位置座標)も位置合せ調整済みである。これに対して後者の光学部材は、過去に使用された実績がなく、前者の光学部材とは材質と厚みが異なる。このため、後者の光学部材の実効的な光路長が前者の光学部材の光路長と異なり、両光路長間に差を生じる。この光路長の差に起因して所謂レンズ効果を生じるため、後者を用いて実際に照射されるパターンがすでに実績のある前者を用いて照射されるパターンの寸法と形状にならない(パターンの寸法・形状の不一致)。よって、所望の光強度分布とレーザ照射位置合せ用アライメントマーク用とに切り替えて同じ箇所に2回照射(2ショット)することでこの問題を解決する。また、両者のパターンについてそれぞれ位置合わせが必要なことから第1のアライメントマークを有することとし、これを例えばCCDカメラ等で撮像し、撮像した画像から前記マークの重心位置を求めて位置情報を得て、その位置情報をもとに基準位置へのずれ量を計測し、計測した位置ずれ量が許容値以下となるように光学部材の位置をホルダのXYθ駆動機構により調整する。
【0012】
次に、上記の使用実績のない光学部材をZ位置合せする方法について説明する。
【0013】
光学部材のZ位置合せには、ダミー基板にレーザ光を試し打ちする方法と、ビームプロファイラを用いてレーザ光像を計測する方法とがある。前者の方法では、ステージ上にダミー基板を載せ、ダミー基板または位相シフタのいずれかをZ方向に移動させ、レーザ光路上の光学部材の焦点深度(DOF)を適当に設定した状態で、ダミー基板にレーザ光を試し打ちし、試し打ちされたパターンを観察し、その観察結果に基づいて位相シフタまたはダミー基板のいずれかをZ方向に移動させ、光学部材の焦点深度(DOF)を変える。試し打ちしたパターンが所望の寸法と形状の目標パターンと一致するまで、試し打ち→観察→焦点深度(DOF)の修正→試し打ちという試行錯誤を繰り返す。
【0014】
一方、後者の方法では、例えば蛍光板をレーザ光路上に配置し、これに光学部材を通過したレーザ光を照射し、そのレーザ光像をビームプロファイラにより直接計測する。計測したレーザ光像のパターンが所望の寸法と形状の目標パターンと一致するまで、レーザ光像の計測→焦点深度(DOF)の修正→レーザ光像の計測という試行錯誤を繰り返す。
【0015】
上記のダミー基板の試し打ち方法は、基準位置を設定するときに利用することができる。先ず結晶化装置の照明光学系を所定の位置に固定し、結晶化装置の光軸(レーザ光路)が動かないようにする。ダミー基板をステージ上に載置し、結晶化装置の光軸を固定した状態でダミー基板にレーザ光を試し打ちする。ダミー基板上の試し打ちポイントをハイトセンサのCCDカメラで見ながら、カメラ視野の原点(X軸とY軸との交点座標(0,0))が試し打ちポイントと重なり合うようにCCDカメラの位置を微調整し、試し打ちポイントにカメラ視野の原点が重なり合う位置にCCDカメラを固定する。このカメラ視野内で試し打ちポイントに一致する原点((0,0)座標)を「基準位置」に設定する(図11の参照符号20a参照)。このようにして設定した基準位置を用いて、結晶化装置の光軸に対して位相シフタの光学部材を高精度に位置合せすることができる。
【0016】
本発明に係る結晶化装置は、レーザ光源(2)と、非単結晶半導体膜を有する被処理基板を支持する基板ステージ(10)と、前記レーザ光源からのレーザ光の光強度を均一化する照明光学系(4)と、前記照明光学系を通過したレーザ光を前記基板ステージに支持された被処理基板に結像させる結像光学系(7)と、前記照明光学系を通過したレーザ光を変調する位相シフタ(5,6)と、を具備する結晶化装置(1,1A)であって、
前記位相シフタ(5,6)は、レーザ光を所定の光強度と位相に変調するためのパターンが形成された複数の光学部材(51,61)と、前記複数の光学部材を保持するホルダ(50A,50B)と、位置合せ用の平面視野において結晶化装置のレーザ光軸が位置するところを基準位置(20a)としたときに、前記光学部材の固有の光学特性に応じて前記光学部材の各々を前記基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、前記光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマーク(8)と、前記結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写アライメントマークを用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、前記ホルダに設けられた第2のアライメントマーク(51x,51y)と、を有し、
前記結晶化装置(1,1A)は、前記複数の光学部材のなかから所望の光学部材を選択し、選択した光学部材に切り替える選択切り替え手段(27,30)と、前記第1のアライメントマークを用いて前記結像光学系に対して前記選択した光学部材を位置合せするとともに、前記基板ステージ上の被処理基板を前記結像光学系に対して位置合せし、この位置合せされた被処理基板に対して前記位相シフタを位置合せする位置合せ手段(10,19,20,28,30)と、前記位置合せされた位相シフタの第2のアライメントマークを通って被処理基板にレーザ光が照射され、該被処理基板上に前記第2のアライメントマークが転写された転写マーク(77x,77y)が形成されるように、前記レーザ光源を制御する制御手段(30)と、を具備することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る結晶化方法は、位相シフタで変調したレーザ光を被処理基板上の非単結晶半導体膜に照射して該非単結晶半導体を結晶化する結晶化方法であって、(a)複数の光学部材と第1及び第2のアライメントマークとを有する位相シフタ、および、結晶化領域と位置合せ領域と第3のアライメントマークとを有する被処理基板をそれぞれ準備し、(b)結晶化装置のレーザ光軸に対応する基準位置を設定し、(c)前記第1のアライメントマークを用いて前記基準位置に対して前記位相シフタを位置合せし、位置合せした座標データを記憶しておき、(d)前記第3のアライメントマークを用いて被処理基板を前記基準位置に対して位置合せし、(e)前記複数の光学部材のうちから1つを選択し、(f)前記記憶しておいた位置合せ座標データを呼び出し、前記選択した光学部材が前記呼び出した位置合せ座標に位置するように、前記位相シフタを移動させ、(g)前記結晶化領域にレーザ光を照射して前記非単結晶半導体を結晶化するとともに、前記第2のアライメントマークを通して前記位置合せ領域にレーザ光を照射し、前記第2のアライメントマークを前記位置合せ領域に転写することを特徴とする。
【0018】
本発明において、上記の位相シフタは複数の光学部材を有することができる。これにより、選択切り替え手段が複数の光学部材のなかから1つを選択し、それに切り替えることができる。例えば2つの光学部材の相互間距離を10mmとした場合に、選択切り替え手段はボールネジとパルスモータとコントローラを用いて10mm/秒以上の速度で移動させることができることから1秒以内の時間で迅速に光学部材の切り替えが完了する。ちなみに、手動で位相シフタを交換する(光学部材を切り替える)場合は、どのように作業を急いだとしても位相シフタの交換時間は1秒以上(通常、10〜60秒)を要する。このように本発明によれば位相シフタ交換時間が短縮される。
【0019】
本発明において、位置合せ用の第1のアライメントマークは光学部材ごとに設けるものとする。選択切り替え手段は、第1のアライメントマークをCCDカメラ等で撮像し、その像からマークの重心位置を求め、求めたマーク重心位置と基準位置との差分Δx,Δy,Δθ(位置ずれ量)をそれぞれ求め、基準位置との差分がそれぞれ許容値以下(Δx≦0.1μm、Δy≦0.1μm、Δθ≦0.0001deg)となるようにホルダのXYθ駆動機構を用いて光学部材の位置を調整する。さらに、上記のZ位置合せ方法に従って結晶化装置の光学系の焦点が被処理基板の非単結晶半導体膜に合致するように基板ステージをZ方向に昇降させることにより、位相シフタの光学部材の焦点深度(DOF)を調整し、光学部材を被処理基板に対してZ位置合せする。これらの位置合せを実施した光学系と光学部材との位置合せデータとしてXYZ座標データとθ値データをプリセット位置として保存しておき、保存した位置合せデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて前記位相シフタを切り替えることができる。つまり、いったん予めアライメント調整しておけば、その後は位相シフタを取り外さない限り、このアライメント調整時の位置合わせ情報を用いて光学部材を切り替えることができ、光学部材を切り替えるたびにCCDカメラによる撮像と位置合わせをおこなう従来の一連の作業を省略することができる。
【0020】
本発明において、位相シフタは、ラインとスペース段差とを有するラインアンドスペース型の光学部材(図3)を有するか、又は周期的なドット段差を有するドット型の光学部材(図4)を有することができる。
【0021】
本願明細書中の重要な用語を次に定義する。
【0022】
「位相シフタ」とは、光透過性の基板に所望の光学特性を得るためのパターンが形成され、入射光を位相変調することにより光リソグラフィの解像力を向上させ、像面に所望の光強度分布の像を形成する光学素子のことをいう。
【0023】
「光学部材」とは、所望の光学特性を得るために上記の位相シフタに設けられたパターンを含む要素であり、入射光の位相を変調するための二次元または三次元の構造を有する部材をいう。例えばラインアンドスペース型の光学部材では二次元のパターン構造を主に有し、ドット型の光学部材では三次元のパターン構造を主に有する。
【0024】
「ホルダ」とは、1つ又は複数の光学部材を保持するための基材のことをいう。ホルダ用の基材には石英や水晶などの光透過性の材料を用いる。
【0025】
「サブホルダ」とは、上記のホルダに保持され、1つの光学部材を保持する光透過性の基材のことをいう。サブホルダ用の基材にも石英や水晶などの光透過性の材料を用いる。
【0026】
「基準位置」とは、結晶化装置の光軸に対して位置合せされたカメラおいてそのカメラ視野内の原点をいう。具体的には結晶化装置の光軸に対して位置合せされたハイトセンサのCCDカメラにおいて、結晶化装置の光軸に重なり合うカメラ視野内のXY座標の原点((0,0)座標)を基準位置という。
【0027】
「結晶化領域」とは、被処理基板上の非単結晶半導体膜にレーザ光を照射することにより1つ又は複数の単結晶が形成される被処理基板上の領域をいう。
【0028】
「位置合せ領域」とは、上記の結晶化領域の近傍に設けられ、被処理基板を他の部材に対して位置合せするためのマークが形成される被処理基板上の領域をいう。具体的にはレーザ光の照射により位相シフタのアライメントマークが転写される被処理基板上の転写マーク形成領域をいう。
【0029】
「光学部材の固有の光学特性」とは、光学部材を構成する材料の材質(組成および結晶構造など)や密度や厚みによって決まる光学的な性質をいう。具体的には屈折率、吸収率、反射率及び偏光特性などをいう。
【0030】
「次工程以降の装置」とは、結晶化工程後に続く一連の後続の工程において使用される各種の装置をいう。具体的には液晶表示回路を形成するために必要なフォトリソグラフィプロセス(レジスト塗布、ベーキング、露光、現像、リンス、乾燥、成膜、エッチングなど)に用いられる種々の装置(コーター、ステッパ、CVD成膜装置、エッチャーなど)をいう。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、2ショット法において同じ領域を異なる光強度で2度打ちする際に、あるいはパターンの異なる複数のビームプロファイル間でパターンを切り替えてレーザ照射する際に、位相シフタの交換作業を行なうことなく、自動で位相シフタを切り替えることができ、処理のスループットを向上させることができ、また位相シフタの材質等によらず次工程以降での位置合せ用マークを被処理基板上にパターン照射できる。
【0032】
また、本発明によれば、位置合せ用マークに特徴をもたしたことから位相シフタの位置合わせにおいて定点測定精度の誤差を従来のそれの10%程度まで低減することができる。すなわち、従来の誤差が1μmであったのに対して本発明の誤差は0.1μmである。
【0033】
また、本発明によれば、予め登録しておいたアライメント座標に使用予定の位相シフタを移動させることができる。これは位相シフタを取り外さない限り有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0035】
(プロジェクション方式)
次に、本発明の第1の実施形態としてプロジェクション型レーザ結晶化装置を用いて非晶質半導体膜を結晶化する場合について図1〜図5を参照して説明する。
【0036】
本実施形態の結晶化装置1は、図1と図2に示すように、XeClやKrFなどのエキシマレーザを発振するレーザ光源2を有し、この光源側から順番にアッテネータ3、照明光学系4、位相シフタ5(6)、結像光学系7が配置され、レーザ光80をステージ10上の被処理基板70に照射するようになっている。
【0037】
アッテネータ3は、レーザ光源2の光軸の始端側に設けられ、光源から発振されたレーザ光80の光強度が焼き付きを生じない照射レベルまで減衰するものである。すなわち、アッテネータ3は、誘電体の多層膜コーティングフィルタの角度を調節してレーザ光の光強度(レーザフルエンス)を光学的に変調するものであり、制御部30により動作制御される図示しないセンサ、モータ、制御系を備えている。
【0038】
照明光学系4は、アッテネータ3の直後に設けられ、レーザ光80の断面内における光強度と出射光の角度を均一化するためのホモジナイザを内蔵している。位相シフタ5(6)は、照明光学系4と結像光学系7の間に配置され、照明光学系4からのレーザ光を位相変調するための段差のパターンが形成された光学素子である。結像光学系7は、位相シフタ5で所望のビームプロファイル(光強度分布)に変調されたレーザ光の像(段差のパターン)を所定の倍率に縮小(又は拡大)して被処理基板70の表面に結像するための複数の投影レンズを内蔵している。結像光学系7の透過光路例えば直下には被処理基板70を位置合せして保持するための基板ステージ10が配置されている。
【0039】
次に、結晶化装置1の他の光学素子の実施形態についてさらに説明する。
【0040】
結像光学系7は、位相シフタ5(6)の下方に設けられ、光源1からのレーザ光の光強度分布を被処理基板70に縮小照明させるための光学系である。結像光学系7は、縮小のみに限らず等倍でも拡大でもよい。結晶化処理における最適の実施形態は縮小照明である。
【0041】
基板ステージ10は、ステージ駆動機構19によりX方向、Y方向、Z方向、θ方向(Z軸まわりの回転)にそれぞれ駆動される可動ステージである。この基板ステージ10上には光強度分布を検出するためのビームプロファイラ(図示せず)と被処理基板70が並設されている。図示しないビームプロファイラおよび被処理基板70は、基板ステージ10と共にX方向、Y方向、Z方向の各方向にそれぞれ移動され、レーザ光軸に対して位置合わせされるようになっている。被処理基板70とビームプロファイラとは、例えば結晶化処理時と光強度分布検出時とでレーザ光軸上に置き換えられるようになっている。
【0042】
基板ステージ10は、4つのサブステージを備えている。すなわち、基板ステージ10は、例えば図示しないX方向に移動するリニアガイド上にXステージが可動に支持され、その上にY方向に移動するYステージが可動に支持され、その上にZ方向に移動するZステージが可動に支持され、さらにZ軸まわりにZステージ駆動機構を回転させるθ回転ステージが支持されている。
【0043】
Zステージ(図示せず)の本体上には左右一対のスライダ(図示せず)がリニアガイド(図示せず)に沿って摺動案内されるように設けられている。両スライダ(図示せず)の対向面は上向きに傾斜している。両スライダ間には昇降台(図示せず)が上向き傾斜面に沿って摺動案内されるように設けられている。
【0044】
スライダの側部は対応するボールスクリュウ(図示せず)の一端にそれぞれ回転自由に連結されている。ボールスクリュウの他端はステッピングモータやサーボモータのような高精度電動機からなる昇降駆動機構の回転駆動軸に連結されている。半導体レーザとその反射光量を検出するCCDからなるハイトセンサ20は、昇降台の上面の高さ位置を検出するように設けられている。ハイトセンサ20から高さ位置検出信号が制御部30に送られると、制御部30は昇降駆動機構(図示せず)の動作を制御してボールスクリュウをそれぞれ回転させ、昇降台(図示せず)を上昇または下降させるようになっている。これにより昇降台上の被処理基板70は結像光学系7および位相シフタ5に対して高精度に位置合せされる。
【0045】
結像光学系7は、レーザ光軸に沿って光源側から順次配列されたホモジナイザ、第1のコンデンサレンズ、第2のコンデンサレンズ、マスク、テレセントリック型の縮小レンズを備えている。ホモジナイザは、光源2から発振されるレーザ光80を分割し、分割光を収束することにより、該レーザ光を均一化する機能を有する。第1のコンデンサレンズは、ホモジナイザからの均一化レーザ光を集光し、第2のコンデンサレンズと共役関係に配置される。第2のコンデンサレンズの出射光路にはマスクが設けられている。縮小レンズは1/1〜1/20倍の範囲に像を縮小する機能を有する。この縮小レンズを通過したレーザ光80は、絶縁性キャップ膜74の表面(入射面)から被処理基板70に入射し、像面にて収束する。像面は、入射面と一致させても一致させなくてもよい。通常の場合は、ギャップを調整することにより像面を入射面から所望距離シフトさせ、像面は入射面と不一致である。像面/入射面間のシフト量は、キャップ膜74の膜厚に応じて最適に調整される。
【0046】
本実施形態の結晶化装置1は、位相シフタ5を照明光学系4と結像光学系7との間に設けたプロジェクション型レーザアニール装置であり、エキシマレーザ光80を照明光学系4により均一化し、均一化光を位相シフタ5により光強度変調し、さらに光強度変調光を結像光学系7により所定倍率に縮小して被処理基板70に投影するようにしている。
【0047】
位相シフタ5は、所定の段差5cを有し、段差5cのところで分割光線群にそれぞれ独立にフレネル回折を起こさせる。これらの回折パターンは基板表面で重畳されるから、基板表面の光強度分布には、位相シフタ5のパラメータ(ギャップd1、位相差θ)だけではなく、位相シフタ5に入射する光線群の広がり量(ε)や、光線間の干渉性が複雑に関係する。このような位相シフタ5において光強度が極小となる逆ピークパターンのビームプロファイル81(図3の(d))を形成し、この逆ピークパターンのビームプロファイル81により被処理基板70上において例えば非晶質半導体膜の一番最初に凝固する領域(結晶核)を位置制御し、そこから結晶を横方向に成長(ラテラル成長;膜面に沿った二次元成長)させることにより、大粒径の結晶粒を指定した位置に設ける。このとき、位相シフタの形状、位相シフタの高さ、およびレーザ光の角度分布などにより、所望の光強度分布(ビームプロファイル)を設定する。なお、レーザ光80の平均光強度(平均レーザフルエンス)は、パワーメータなどを用いて検出する。
【0048】
光強度分布は、拡大光学系の対物レンズにより所望の倍率に拡大されてCCDに結像される。CCDは光強度に応じた光強度分布信号を撮像データとして出力し、このデータを受け取った制御部30によってデジタル的(撮像データとして)もしくはアナログ的に(二次元イメージとして)画像信号処理され、この画像処理データが光強度分布波形として表示装置の画面上に拡大表示される。
【0049】
結像光学系7の透過光路には、基板ステージ10の上に被処理基板70とさらに図示しないビームプロファイラとが置換可能に並設されている。ビームプロファイラ(図示せず)は、その光軸が結像光学系7のレーザ光軸と平行となるように位置合せされている。ビームプロファイラと結像光学系7との位置合せは、基板ステージ10と図示しないビームプロファイラアライメント機構とを用いてなされる。
【0050】
レーザ結晶化装置1は制御手段および記録手段としての制御部30を備えている。図5に示すように、制御部30は、入力インターフェース31、システムバス32、CPU33、メモリ(記録装置)34および出力インターフェース35を有する。
【0051】
入力インターフェース31にはハイトセンサ20、ビームプロファイラのCCD28、および入力装置29が接続され、出力インターフェース35にはレーザ光源2、アッテネータ3、ステージ駆動機構19、位相シフタ自動交換機27および表示装置(図示せず)が接続されている。入力インターフェース31および出力インターフェース35は、システムバス32を介してCPU33およびメモリ34にそれぞれ接続されている。
【0052】
メモリ34は、キイボード等の入力装置29から入力される装置パラメータを記憶し、保有するための記録装置である。CPU33は、入力装置29から入力されるレシピに応じて、またビームプロファイラのCCD28およびハイトセンサ20から直接入力される各検出データに応じてメモリ34から装置パラメータを随時読み出し、演算処理し、所定の指令信号を装置各部に出力インターフェース32を介して送る制御手段である。CPU33は、アライメントしたXYZ座標位置とθ値(Z軸まわりの回転角度)のデータをメモリ34に保存しておき、必要に応じてこれらのデータをメモリ34から呼び出し、呼び出したデータに基づいて選択した他の位相シフタへの切り替えと位置合せを行わせるようになっている。これらは別途コントローラ等で形成することも可能である。
【0053】
表示装置81は、制御部30から出力されてくる各種データを表示するための液晶表示画面を有しており、その第1表示部にはテーブル化された装置パラメータが列記して表示され、その第2表示部には被処理基板70上のレーザ照射位置を示す基板マップ図形が表示され、その第3表示部には照射レーザ光80のビームプロファイル波形が表示されるようになっている。なお、表示装置は、レーザ結晶化装置1に異常が発生したときに警報を発するアラーム機構を有することが望ましい。アラーム機構は、例えば表示装置の画面にランプを点灯または点滅させるようにしてもよいし、付属のスピーカやブザーから警報音や音声を発するようにしてもよい。
【0054】
結晶化装置1は、全体がチャンバ(図示せず)で囲われ、その内部が所望の雰囲気に制御されるように図示しないガス供給源、圧力調整機構および真空排気機構が接続されている。チャンバ内には、レーザ光源2例えばエキシマレーザのレーザ光軸の始端側にアッテネータ3を配置し、レーザ光軸の終端側に結像光学系7および位相シフタ5を配置し、結像光学系7の焦点位置に被処理基板70を配置している。この結晶化装置10は所謂プロジェクション型であり、位相シフタ5が照明光学系4と結像光学系7との間に配置され、位相シフタ5で変調された変調レーザ光80が結像光学系7により被処理基板7上に投影されるようになっている。
【0055】
本実施形態の上記装置1には、異なるタイプの光学部材をもつ例えば2つの位相シフタ5,6が用意されている。さらに、上記装置1は、これら2つの位相シフタ5,6を自動で交換する位相シフタ自動交換機27を備えている。位相シフタ自動交換機27は、第1の位相シフタ5と第2の位相シフタ6をそれぞれ把持するハンドリング機構およびこれらをX,Y,Zの各方向に移動させる駆動機構を備えている。この位相シフタ自動交換機27は、図5に示すように制御部30によってその動作が制御されるようになっている。
【0056】
次に、図3と図4を参照して異なるタイプの光学部材を有する2つの位相シフタ5,6をそれぞれ説明する。
【0057】
先ず、第1の位相シフタの例を説明する。
【0058】
第1の位相シフタとして図3の(a)および(b)にラインアンドスペース型の位相シフタ5を示す。このタイプの位相シフタ5は、透明媒質、例えば、石英基材51(光学部材)に厚さの異なる互いに隣り合う領域(段差を有する領域)を設け、これら領域間の段差(位相シフト部)の境界で、入射するレーザ光線を回折並びに干渉させて、入射したレーザ光線の強度に周期的な空間分布を付与するラインアンドスペース型である。このタイプの位相シフタ5は、隣接するパターンが逆位相(例えば、180°のずれ)となるように石英基材51の厚さが選択され、交互に並べられた位相が、例えば、πの第1のストリップ領域(位相領域)5aと、位相が、例えば、0(ゼロ)の第2のストリップ領域(位相領域)5bとを有するように。これらストリップ領域(位相シフト線領域)は、10μmの幅を有する。一般にレーザ光の波長をλ、の透明媒質の屈折率をnとすると、領域間に180°の位相差をつけるのに必要な透明媒質の膜厚tは、t=λ/2(n−1)で与えられる。従って、石英基材の屈折率を1.5とすると、レーザ光としてKrFエキシマレーザ光を使用した場合には、これの波長が248nmであるから、180°の位相差を付けるためには248nmの段差をエッチング等の方法で石英基材51の所定の領域間に形成すればよい。このエッチングにより薄く形成された領域が第1のストリップ領域5aとなり、エッチングされない領域が第2のストリップ領域5bとなっている。
【0059】
このようなタイプの位相シフタ5においては、厚い第2の位相領域5bを通過したレーザ光80は、薄い第1の位相領域5aを通過したレーザ80光に比較して位相が180°遅れる。この結果、厚い第2の位相領域5bおよび薄い第1の位相領域5aを透過したレーザ光間で、干渉と回折とが生じ、図3の(d)に示すように、複数のボトムピーク81aとトップピーク81bを有する、V字形の連続した光強度分布81が得られる。即ち、V字形の連続した光強度分布81は、段差部(位相シフト部)を透過したレーザ光の光強度が最小で、厚い第2の位相領域5bおよび薄い第1の位相領域5aを透過したレーザ光の光強度が増加する光強度分布を像面に形成する。
【0060】
このような光強度分布81をもつレーザ光80で、半導体薄膜73を照射すると、結晶化開始時に、半導体薄膜73上に、ライン状の極小温度領域(ボトム部もしくは谷部)と、この極小温度領域の両側のライン状の極大温度領域(トップ部もしくは山部)とを有する逆ピークパターンの温度分布を形成することができる。
【0061】
次に、第2の位相シフタの例を説明する。
【0062】
図4の(a)並びに(b)に示すドット型の位相シフタ6を示す。第2の位相シフタ6は、透明媒質、例えば、水晶基材61に、大きさ(面積)が段々小さくなる、例えば矩形の、ドット段差(凹所)62を周期的に形成したものである。ドット段差(凹所)62は、例えば位相シフタ6の中央部で面積が大きく、位相シフタ6の端部近傍で面積が小さい。このような位相シフタ6によって、図4の(d)に示すように、レーザ光を光変調して、最大面積列の凹所62に対応して谷部(光強度が最小の透過光)83aが、また、最小面積列の凹所62に対応して山部(光強度が最大の透過光)83bが生じ、中間の各面積列の凹所62に対応した光強度の透過光が生じ像面に、V型の繰り返しの光強度分布83を形成することができる。
【0063】
すなわち、ドット型の位相シフタ6には、所定のV字型光強度分布を得るための凹所62の面積を順次変えた段差パターンが形成される。このドット型の位相シフタ6は、凹所62の面積を順次変えた段差パターンを形成することにより所定のV字型光強度分布を得るために設計製造が容易である。特に、大粒径の結晶化領域(結晶粒)を得るためにV字型光強度分布の開き角度を選択する必要があるが、所望する開き角のV字型光強度分布を得ることができる。
【0064】
第1および第2位相シフタの選択は、例えばCMOS回路、オペアンプ、フリップフロップ回路などのように同一特性の複数の薄膜トランジスタで回路を形成したい場合、第2位相シフタを使用して大粒径の結晶化領域を形成することにより一つの結晶化領域に島切りされた複数個の薄膜トランジスタを形成することができる。この結果、同一特性の結晶化領域に形成された薄膜トランジスタによる回路を形成できる。
【0065】
その他の回路では、第1の位相シフタにより比較的小面積の1個の結晶化領域に1個の薄膜トランジスタを形成することに使用することができる。
【0066】
このように被処理基板70のどこにどのような薄膜トランジスタ回路を形成するかの被処理基板70上の回路配置を設計する。この設計配置に基づき定められた薄膜トランジスタ回路形成位置に適応した位相シフタに交換して結晶化用レーザ光を照射することにより良好な特性の薄膜トランジスタ回路を形成することができる。
【0067】
第1および第2位相シフタでは、光学部材の厚みが異なり結晶化装置の結像光学系のフォーカスを調整する必要がある。第1および第2位相シフタを自動的に交換した場合、
結像光学系のフォーカスも自動的に制御する必要がある。
【0068】
次に、図6および図7を参照して位相シフタを交換した際の位相シフタを位置合せするための各種のアライメントマークについて説明する。
【0069】
位相シフタ5は、図6に示すように、矩形の基材、例えば矩形状石英ガラス基板からなるホルダ50上に2つの光学部材51,52が形成されたものである。2つの光学部材51,52は、ホルダ50上の予め定められた位置において互いに離れてX方向に横並びに配置され、同じ面積の矩形領域にそれぞれ形成された互いに異なるパターン、例えば一方の光学部材51は図3に示すようなラインアンドスペース型のパターンを有し、他方の光学部材52は図4に示すような面積変調型のパターンを有する。
【0070】
ホルダ50A上であって各光学部材51,61をY方向の両側の予め定められた位置には、例えば一対の第1のアライメントマーク8がそれぞれ配置されている。第1のアライメントマーク8は、個々の光学部材51,61そのものの位置合せをおこなうために設けられたものであり、図8の(a)に示すように、互いに近接して配置された角部を有する4つのL字記号8aと、これら4つのL字記号8aの角部を強調する十字記号8bと、を組み合わせてなるものである。十字記号8bは、4つのL字記号8aとは非接触の状態で4つのL字記号8aの相互間に配置されている。このアライメントマーク8において、4つのL字記号8aは必須の構成要素であるが、十字記号8bは任意の構成要素である。4つのL字記号8aのみからなるマークを位相シフタの位置合わせに用いる場合、定点測定精度の誤差が従来のそれの25〜35%程度まで低減する。この4つのL字記号8aに十字記号8bを組み合わせると、照準マークとしての機能がさらに増大する。4つのL字記号8aと十字記号8bとを組み合わせたマークを位相シフタの位置合せに用いる場合、定点測定精度の誤差が従来のそれの10〜15%程度まで低減する。すなわち、従来の装置では位相シフタの位置合せにおいて定点測定精度の誤差が1μmであったのに対して、この装置では位相シフタの位置合せにおいて定点測定精度の誤差が0.1μmまで低減する。
【0071】
また、第1の光学部材51には一対のレーザ照射位置合せ用アライメントマーク51x,51yが形成される。アライメントマーク51x,51yは、光学部材51,52の厚みに応じて光学部材51,52を結像光学系7に対して高精度に位置合せするために、例えば光学部材51に設けられたものであり、光学部材51,52の厚みのばらつきを補償するためにも用いることができるものである。例えば、第1の光学部材51が石英を材料としてつくられたものであり、第2の光学部材52が水晶を材料としてつくられたものである場合に、両パターン51,52間に厚みの差を生じる。このパターン厚みの差に起因して位相シフタのZ方向の位置合せが不正確になり、その結果として被処理基板70の半導体膜73に結像される像の焦点深度(DOF)に狂いを生じる。そこで、パターン厚み補償用アライメントマーク51x,51y,52x,52yを用いることにより、光学部材51,52の各々を結像光学系7に対して高精度に位置合せすることができる。
【0072】
これら第2のアライメントマーク51x,51yは、図8の(b)に示すように、細長い矩形の枠53のなかに複数、例えば2つの円形記号54が等ピッチ間隔で横並びに配置されたものである。本実施形態では円形記号54を採用しているが、本発明はこれのみに限られるものではなく、長円、楕円、角を丸めた三角、角を丸めた四角、六角形、八角形などの擬似円形を用いることもできる。
【0073】
第2のアライメントマークの利用方法について説明する。例えば位相シフタが2個の光学部材を有する場合を想定する。すなわち、一方にレーザ照射位置合せ用のパターンが形成された光学部材があり、他方に所望の光強度分布(ビームプロファイル)用のパターンが形成された光学部材がある場合に、前者の光学部材は使用実績があり、後者の光学部材は使用実績がない。すなわち、前者の光学部材は、すでに次工程以降(例えば露光装置による読み込みと位置合せ)での使用実績がある光路長にてパターン照射するものであり、光路長用にホルダのZ位置(レーザ光軸方向の位置座標)も位置合せ調整済みである。これに対して後者の光学部材は、過去に使用された実績がなく、前者の光学部材とは材質と厚みが異なる。このため、後者の光学部材の実効的な光路長が前者の光学部材の光路長と異なり、両光路長間に差を生じる。この光路長の差に起因して所謂レンズ効果を生じるため、後者を用いて実際に照射されるパターンがすでに実績のある前者を用いて照射されるパターンの寸法と形状にならない(パターンの寸法・形状の不一致)。よって、所望の光強度分布とレーザ照射位置合せ用アライメントマーク用とに切り替えて同じ箇所に2回照射(2ショット)することでこの問題を解決する。
【0074】
次に、上記の使用実績のない光学部材をZ位置合せする方法について説明する。
【0075】
光学部材のZ位置合せには、ダミー基板にレーザ光を試し打ちする方法と、ビームプロファイラを用いてレーザ光像を計測する方法とがある。前者の方法では、ステージ上にダミー基板を載せ、ダミー基板または位相シフタのいずれかをZ方向に移動させ、レーザ光路上の光学部材の焦点深度(DOF)を適当に設定した状態で、ダミー基板にレーザ光を試し打ちし、試し打ちされたパターンを観察し、その観察結果に基づいて位相シフタまたはダミー基板のいずれかをZ方向に移動させ、光学部材の焦点深度(DOF)を変える。試し打ちしたパターンが所望の寸法と形状の目標パターンと一致するまで、試し打ち→観察→焦点深度(DOF)の変更→試し打ちという試行錯誤を繰り返す。
【0076】
一方、後者の方法では、例えば蛍光板をレーザ光路上に配置し、これに光学部材を通過したレーザ光を照射し、そのレーザ光像をビームプロファイラにより直接計測する。計測したレーザ光像のパターンが所望の寸法と形状の目標パターンと一致するまで、レーザ光像の計測→焦点深度(DOF)の変更→レーザ光像の計測という試行錯誤を繰り返す。
【0077】
上記のダミー基板の試し打ち方法は、基準位置を設定するときに利用することができる。先ず結晶化装置の照明光学系を所定の位置に固定し、結晶化装置の光軸(レーザ光路)が動かないようにする。ダミー基板をステージ上に載置し、結晶化装置の光軸を固定した状態でダミー基板にレーザ光を試し打ちする。ダミー基板上の試し打ちポイントをハイトセンサのCCDカメラで見ながら、カメラ視野の原点(X軸とY軸との交点座標(0,0))が試し打ちポイントと重なり合うようにCCDカメラの位置を微調整し、試し打ちポイントにカメラ視野の原点が重なり合う位置にCCDカメラを固定する。このカメラ視野内で試し打ちポイントに一致する原点((0,0)座標)を「基準位置」に設定する(図11の参照符号20a参照)。このようにして設定した基準位置を用いて、結晶化装置の光軸に対して位相シフタの光学部材を高精度に位置合せすることができる。
【0078】
次に、図6の他の実施例として図7を参照して上記とは異なるタイプの位相シフタ5Aについて説明する。
【0079】
このタイプの位相シフタ5Aは、共通のメインホルダ50Aの上に2つのサブホルダ50a,50bを備えている。2つのサブホルダ50a,50bは、互いに異なる光学部材51,52をそれぞれ有し、位相シフタ5Aから取り外して個々に独立した位相シフタとして用いることができるものである。2つのサブホルダ50a,50bを構成する材料は異なるものとしてもよいし、同じものとしてもよい。また、サブホルダ50a,50bとメインホルダ50Aとを異なる材料でつくってもよいし、同じ材料でつくってもよい。
【0080】
2つの光学部材51,52は、ホルダ50Aの上において互いに離れてX方向に横並びに配置され、同じ面積の矩形領域にそれぞれ形成された互いに異なるパターンである。
【0081】
各サブホルダ50a,50bにおいて、各光学部材51,52をY方向の両側からそれぞれ挟み込むように一対の第1のアライメントマーク8がそれぞれ配置されている。これら第1のアライメントマーク8は、光学部材51,52に1対1に対応するようにサブホルダ50a,50bの上にそれぞれ形成されている。この第1のアライメントマーク8は、上記と同様の図8(a)に示した構成のものであり、光学部材51,52を個別に識別するために位相シフタ5Aに設けられたものである。
【0082】
簡単な例として2つのタイプの光学部材がある場合、すなわち一方の光学部材がレーザ照射位置合せパターンを有し、他方の光学部材が所望の光強度分布のパターンを有する場合を説明する。この場合、前者の光学部材はすでに次工程以降(例えば露光装置(ステッパ)による読み込みと位置合せ)で使用するための実績がある光路長でパターンを照射するものであり、シフタホルダのZ位置も調整済みである。
【0083】
これに対して後者の光学部材は、使用実績がなく、前者の光学部材とは基材の材質と厚みが異なるものである。後者と前者との間で基材の材質(すなわち密度)が異なると、実効的な光路長が変わる。また、後者と前者との間で基材の厚みが異なる場合は、勿論、実効的な光路長が変わる。すなわち、レーザ照射位置合せ用パターンを後者に有しても光路長の差からレンズ効果等が発生し、実際に照射されるレーザ照射位置合せパターンの形状がすでに実績がある寸法と形状にならない。よって、既に実績のある前者(レーザ照射位置合せパターン)を用いてレーザ照射位置合せ用アライメントマークを照射し、その後に前者から後者(所望の光強度分布パターン)に切り替えて2回照射することでこの問題(実効的な光路長の変動)を解決する。このとき前者と後者との照射する順序は問わない。また、両光学部材のパターンについてそれぞれ位置合わせが必要なことから位置合せ用の第1のアライメントマークを光学部材ごとにそれぞれ設けることとし、これを例えばCCDカメラ等で撮像し、撮像した画像から前記マークの重心位置を求めて位置情報を得てその位置情報をもとに基準位置からのずれ量を計測し、位置ずれをマスクホルダのXYθ軸駆動機構を用いて調整する。
【0084】
もう一つの例として、位相シフタに水晶板を挿入することによって焦点深度が深くなることが知られている。しかし、水晶板を位相シフタに挿入すると、実効的に光学系の光路長が変動してしまう。この位相シフタ中に次工程以降での位置合せに使用するためにレーザ照射・転写される第2のアライメントマークを有したとしても、照射するとパターンの寸法と形状が水晶板を挿入する前とは異なってしまう。この場合には片方のシフタに水晶板を挿入したシフタを搭載し、もう一方の位相シフタに次工程で使用するアライメントマークを持たし、これらを切り替えて同一箇所に合計2回照射することによりこの問題(実効的な光路長の変動)を解決することができる。
【0085】
次に、図9を参照して本実施形態の結晶化装置1を用いて実際に被処理基板上の非晶質シリコン膜73を結晶化する際に、位相シフタを結晶化装置1の光学系に対して位置合せする場合を説明する。
【0086】
装置1の主スイッチをONすると、自動的に制御部30が装置パラメータのデータ読み出しを行い、種々の装置パラメータが一覧表となって表示装置の画面上に表示される。処理開始の時点において、上述したダミー基板への試し打ち法を用いて予め基準位置が設定されている(工程S1)。図6に示す2つの光学部材51,52をホルダ50に組み込んだ位相シフタ5を結晶化装置1の所定箇所に装着し、第1のアライメントマーク8を用いて一方の光学部材51を基準位置に対して位置合せする(工程S2)。この位置合せ作業は、ハイトセンサ20のCCDカメラで第1のアライメントマーク8を撮像し(工程S3)、撮像した第1のアライメントマーク8の画像データからマークの重心8gの位置座標を求め、求めた位置座標の基準位置20aからの位置ずれ量を算出し、その位置ずれ量が許容値以下となるように調整するものである(工程S4〜S7)。
【0087】
図11は位相シフタの位置合せを説明するためにハイトセンサに設けたCCDカメラのカメラ視野を模式的に示す図である。カメラ視野内にはX軸とY軸の基準線および第1のアライメントマーク8が見えている。X軸基準線とY軸基準線との交点20aは、座標(0,0)の原点であり、ここが結晶化装置1の光軸に位置合せされた基準位置に設定されている。位置合せ前において第1のアライメントマーク8は基準位置20aから外れているが、この画像をハイトセンサ20のCCDカメラで撮像し、撮像した画像データを制御部30に送る(工程S3)。制御部30は、ハイトセンサ20から画像データが入力されると、それに基づいてマーク重心8gの位置座標を求め(工程S4)、求めたマーク重心8gの座標が基準位置20aから外れる位置ずれ量Δx,Δyをそれぞれ求める(工程S5)。制御部30は、マーク8の十字記号8bの上下端の両座標をそれぞれ求め、求めた両座標から十字記号8bの子午線を数式化し、数式化した子午線の傾きから該子午線とy軸との間に生じたθ値の位置ずれ量Δθを求める。さらに制御部30は、求めた位置ずれ量Δx,Δy,Δθがそれぞれ許容値以下(Δx≦0.1μm、Δy≦0.1μm、Δθ≦0.0001deg)となるように、図示しない微調整機構により位相シフタ5を移動させる(工程S6)。位置ずれ量が所定の許容値以下になるまで工程S3〜S6を繰り返す(工程S7)。位置ずれ量Δx,Δy,Δθのすべてが所定の許容値以下になったときに、制御部30は位置合せ完了信号をハイトセンサおよび微調整機構(図示せず)に送って第1の光学部材51の位置合せを完了する(工程S8)。同様にして制御部30は第2の光学部材52の位置合せ作業を行う。
【0088】
制御部30は、各光学部材51,52の位置合せ作業において得た(X,Y,θ)座標データをメモリ34に保存する(工程S9)。保存された座標データは、メモリ34から随時呼び出して利用することができるようになっている。位相シフタ5を装置1から取り外さない限り、この保存データを利用して再現性の高い処理を行なわせることができる。
【0089】
以上のS1〜S9工程までがプリセット工程である。実際に処理を実施するにあたり、オペレータは、制御部30の入力表示部にモード選択画面を呼び出して、一覧表示された複数の処理モードのなかから所望の処理モードを選択する(工程S10)。例えばモード選択画面において2ショットモードを選択すると、1ショット目に使用する位相シフタの光学部材を問い合わせてくるので、例えば第1の光学部材51を1ショット目に使用すると指定し、次いで2ショット目に使用する位相シフタの光学部材を問い合わせてくるので、例えば第2の光学部材52を2ショット目に使用すると指定する。さらに、結晶化処理と転写処理とのいずれを先に行うかを問い合わせてくるので、オペレータは、結晶化処理を先に行う処理モードを選択する。ここで、転写処理とは、次工程(レジスト塗布→露光→現像を含むフォトリソグラフィプロセス)の装置光軸と被処理基板との位置合せに利用される転写マーク77x,77yを被処理基板上に形成する処理をいう(図13参照)。後述するように転写マーク77x,77yは、位相シフタ上の第2アライメントマーク51を被処理基板の位置合せ領域77に転写したものである。
【0090】
オペレータによるプロセス条件の入力が完了すると、制御部30はメモリから記憶しておいた位置合せ座標データを呼び出し、その(x,y,θ)座標に1ショット目に選択した第1の光学部材51を移動させる(工程S11)。ハイトセンサ20のCCDカメラで第1のアライメントマーク8を撮像し、撮像した画像データと前述の呼び出し座標データとを比較して両者の位置ずれ量を求める。求めた位置ずれ量が許容値以下になるまで光学部材の移動→撮像→光学部材の移動を繰り返す(工程S12)。位置ずれ量が許容値以下になったときに、制御部30は位置合せ完了信号を発信して第1の光学部材51の位置合せ動作を完了させる(工程S13)。
【0091】
次に、被処理基板70を結晶化装置1内に搬入し、基板ステージ10の上に被処理基板70を載置し、装置パラメータに含まれる所定のデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて所望の位置に被処理基板70を移動させる。このとき被処理基板70の入射面を結晶化したい位置に移動させ、光源側のレーザ光軸と位置合せした。すなわち、図12に示す第3のアライメントマーク75をハイトセンサ20のCCDカメラで撮像し、撮像した画像データからマーク75の重心位置と基準位置20aとの位置ずれ量を算出し、位置ずれ量が所定の許容値以下になるまで基板移動→撮像→基板移動を繰り返す。さらに、読み出した装置パラメータに含まれる目標ギャップ値に基づいて、制御部30がハイトセンサ20からの検出信号を用いて基板ステージ10のZ方向動作を制御して、実測のギャップを目標ギャップ値に一致させる。このとき使用される装置パラメータは、前回使用したときに最適であった装置パラメータであっても良いし、シミュレーションによって理想的と想定される値であってもよい。すべての位置ずれ量が所定の許容値以下になったところで、制御部30は位置合せ完了信号を発信して被処理基板の位置合せを完了する。
【0092】
被処理基板の位置合せが完了すると、読み出した装置パラメータに基づいてアッテネータ3が自動調整される。すなわち、ビームプロファイラで測定した光強度と予め設定した目標の光強度とを比較してアッテネータ操作量を計算し、アッテネータ3に操作信号を出力して測定した強度が目標の強度になるようにフィードバックしながらアッテネータ3の角度を高精度に調整する。
【0093】
基板ステージ10はX-Y面内で所定間隔ごとにステップ移動して位置を変えることができるようになっているので、被処理基板70の所望の部位を照射位置に位置させることができ、X−Yステップ移動とレーザ光照射とを繰り返すことにより、大面積の非晶質シリコン膜73を結晶化することができる。この様子は表示装置の画面上に表示されるので、オペレータは被処理基板70上のどの部位がレーザ照射されているのかをリアルタイムで知ることができる。また、照射中のレーザ光の光強度分布波形も表示装置の画面上に表示されるので、オペレータはどのような光強度分布波形の変調レーザが照射されているのかをリアルタイムに知ることができる。
【0094】
光源として例えばKrFエキシマレーザ装置2からは波長248nmの長尺ビームのレーザ光80が出射される。レーザ光80は、先ずアッテネータ3において誘電体の多層膜コーティングフィルタの角度を調節してレーザフルエンスが光学的に変調される。次に図示しない偏光素子によって目標のシグマ値に調整され、所定幅に絞られたレーザ光80が照明光学系4のホモジナイザに入射される。次いで、レーザ光80は2組(それぞれx方向とy方向)の小レンズ対からなるホモジナイザによって発散ビームに分割される。なお、1ショットのパルス継続時間は例えば30ナノ秒である。分割されたビームの各中軸光線は、コンデンサレンズ(凸レンズ#1)によってマスクの中心に集まる。また、それぞれのビームは、僅かに発散型になっているために、マスクの開口の全面を照明する。分割された微小出射領域を出た全ての光線群が、それぞれマスク面上の全ての点を照射するので、レーザ出射面上の光強度に面内揺らぎがあっても、マスク面の光強度は均一になる。マスク面の各領域を通過する光線群の中心光線、すなわちホモジナイザの中心部分のレンズ対を通ってきた発散光線群は、マスク面近傍の凸レンズによって平行光線になってから、位相シフタ5の第1の光学部材51を透過し、所定の光強度分布を有する変調光となり、結像光学系7のテレセントリック型縮小レンズを通って、基板ステージ10上に置かれた被処理基板70に入射する。1回目のショットにより被処理基板上の半導体膜73の所定領域が結晶化される(工程S14)。被処理基板70をステップバイステップ移動させながらレーザ光照射し、被処理基板上の結晶化領域76を次々に結晶化していき、制御部30は、その結晶化領域76がその被処理基板70上で最後のものであるか否かを判定する(工程S15)。その結晶化領域76が最後のものであると判定すると、次に制御部30は、処理モードが2ショットモード(又はマルチショットモード)の1ショット目であるか否かを判定する(工程S16)。2ショットモードの1ショット目と判定した場合は、照射位置にある第1の光学部材51を位相シフタ交換機27により第2の光学部材52に入れ替え、工程S11〜S13を繰り返して第2の光学部材52と基準位置との位置合せを行う。
【0095】
2ショット法では、位相シフタ自動交換機27のハンドリング機構により位相シフタ5をX方向に第1及び第2の光学部材51,52の相互間距離(例えば、10mm)だけ移動させ、照射領域のパターンを第1の光学部材51から第2の光学部材52に切り替える。この切り替え機構には例えばボールねじとステッピングモータ等を組み合わせて構築できる。この構成では一般的に10mm/秒以上の速度が実現されていることから切り替え時間は1秒以内でおこなえる。つまり手動でシフタを装着することと比較して明らかに短時間でおこなえる。次いで、制御部30は、メモリ34から装置パラメータのうち所定のデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて位相シフタ上の第2の光学部材52を結像光学系7に対して位置合せする。そして、上記と同様に半導体膜73の同一箇所に異なる光強度分布のレーザ光を照射する(2回目のショット工程S14)。
【0096】
ちなみに、従来の装置では、1回目のショットに用いた位相シフタを別パターンの位相シフタに交換し、交換した位相シフタを用いて2回目のショットを行なっていた。しかし、従来装置における位相シフタの交換には長時間を要するため、処理のスループットが大幅に低下する。これに対して本実施形態の装置1によれば、位相シフタ自動交換機27のハンドリング機構により位相シフタ5を少しの距離だけ移動させることにより、第1の光学部材51から第2の光学部材52に切り替えるため、位相シフタ切り替え時間が大幅に短縮される。また、本実施形態の装置によれば、位相シフタの光学部材を切り替えた後に位置合せ作業に円滑に移行することができるので、従来よりも短時間で入れ替えた光学部材を位置合せすることができる。
【0097】
図14に示すように、結晶化された結晶化領域76には多数の単結晶79a,79bが形成される。例えば2mm×2mmサイズの結晶化領域76に8×8=64個の結晶成長部78が形成されている。また、1つの結晶成長部78には左右対称に2つの単結晶78a,78bが左右対称に成長している。よって、1つの結晶化領域76には合計128個の単結晶78a,78bが存在することになる。
【0098】
さらに、制御部30は、位相シフタ5の第2のアライメントマーク51x,51yを被処理基板の位置合せ領域77に転写させるための制御信号を装置1の各部に送り、第2のアライメントマーク51x,51yのパターンを介して被処理基板の位置合せ領域77にレーザ光を照射して図13に示す転写マーク77x,77yを形成する。基板ステージ10により被処理基板70をステップバイステップで移動させながらレーザ光を照射して、転写マーク77x,77yを結晶化領域76の近傍に次々に転写する。制御部30は、その領域が最後であったか否かを判定し、判定結果がYESの場合は、エンドポイントが検出されたものとして、基板ステージ10をホーム位置に戻し、結晶化処理完了信号を送信する(工程S17)。図示しない基板搬送装置が結晶化処理完了信号を受信すると、被処理基板を結晶化装置1から搬出する(工程S18)。
【0099】
次工程の装置(例えば露光装置)に被処理基板が搬入されると、先ず次工程の装置の光軸に対して被処理基板を位置合せする(工程S19)。この次工程での位置合せには上述の転写マーク77x,77yを利用する。すなわち転写マーク77xを用いて次工程の装置の光軸に対するX方向成分の位置ずれ量Δxを計測し、転写マーク77yを用いて次工程の装置の光軸に対するY方向成分の位置ずれ量Δyを計測し、これらの位置ずれ量Δx,Δyが所定の許容値以下となるように被処理基板の位置を微調整して位置合せする。被処理基板の位置合せが完了すると、次工程の処理を実施する(工程S20)。
【0100】
上記実施例では光強度分布の検出、確認工程を、結晶化工程の前に1回実行した例について説明したが、光強度分布の検出と確認は一連の処理の最初に実施し、1枚の被処理基板70の全面を結晶化してもよいし、結晶化領域数箇所毎に1回、数十、数百、数千箇所毎に1回実施してもよい。なお、光強度分布の検出、確認工程は、多ければ多いほど均一な結晶化を実施することができる。これにより再現性の高いレーザ照射を実現でき、非晶質シリコン膜の結晶化を安定して行うことができる。
【0101】
次に、図10を参照して結晶化方法の一例を説明する。
【0102】
オペレータは、制御器30の入力装置の画面にモード選択画面を呼び出し、登録された複数の処理モードのなかから所望の処理モードを選択する(工程K1)。本実施形態では、結晶化処理後に転写マークを被処理基板上に形成する処理モードを選択した。次いで、ハイトセンサ20のCCDカメラにより図12に示す被処理基板のアライメントマーク75を撮像し、その画像データを用いて被処理基板70を基準位置に対して位置合せする(工程K2)。位置合せ後、結晶化領域76に所定ビームプロファイルのレーザ光を照射して被処理基板上の半導体膜73に単結晶を形成する(工程K3)。基板ステージ10により被処理基板をステップバイステップ移動させるとともにレーザ光を照射して次々に単結晶を形成する。被処理基板上のすべての結晶化領域76を結晶化した後、制御部30は、第2アライメントマーク51x,51yがレーザ光照射域(光軸)に位置するように位相シフタ5の位置を微調整する位置合せを行うとともに、位置合せ領域77がレーザ光照射域(光軸)に位置するように被処理基板の位置を微調整する位置合せを行う。両位置合せ後に、第2アライメントマーク51x,51yを介して位置合せ領域77にレーザ光を照射して被処理基板上に転写マーク77x,77yを形成する(工程K4)。基板ステージ10により被処理基板をステップバイステップ移動させるとともにレーザ光を照射して次々に転写マーク77x,77yを形成する。
【0103】
図13に示すように、位置合せ領域77は結晶化領域76の近傍に位置している。位相シフタの第2のアライメントマーク51x,51yのマークパターンを通して被処理基板の位置合せ領域77にレーザ光を照射し、転写マーク77x,77yを被処理基板上に形成する(工程K4)。これらの転写マーク77x,77yは上記第2のアライメントマーク51x,51yと同一または相似である。一方のマーク77xは横方向成分マークであり、X軸に沿って2個の丸(○)が並んでいる。他方のマーク77yは縦方向成分マークであり、Y軸に沿って2個の丸(○)が並んでいる。横方向成分マーク77xを用いて被処理基板のX座標が位置合せされ、縦方向成分マーク77yを用いて被処理基板のY座標が位置合せされるようになっている。
【0104】
制御器30のCPUはレーザ光照射した領域が最後の結晶化領域であると判断すると、結晶化処理完了の信号をレーザ光源の駆動回路に送り、結晶化処理を終了する(工程K5)。
【0105】
図15を参照して結晶化方法の一例を説明する。
【0106】
オペレータは、制御器30の入力装置の画面にモード選択画面を呼び出し、登録された複数の処理モードのなかから所望の処理モードを選択する(工程K21)。本実施形態では、被処理基板上に転写マークを形成した後に結晶化処理する処理モードを選択した。次いで、ハイトセンサ20のCCDカメラにより被処理基板のアライメントマーク75を撮像し、その画像データを用いて被処理基板70を基準位置に対して位置合せする(工程K22)。位置合せ後、第2アライメントマーク51x,51yを介して位置合せ領域77にレーザ光を照射して被処理基板上に転写マーク77x,77yを形成する(工程K23)。基板ステージ10により被処理基板をステップバイステップ移動させるとともにレーザ光を照射して次々に転写マーク77x,77yを形成する。被処理基板上のすべての位置合せ領域77に転写マーク77x,77yを形成した後、制御部30は、光学部材51がレーザ光照射域(光軸)に位置するように位相シフタ5の位置を微調整する位置合せを行うとともに、結晶化領域76がレーザ光照射域(光軸)に位置するように被処理基板の位置を微調整する位置合せを行う。両位置合せ後に、結晶化領域76に所定ビームプロファイルのレーザ光を照射して被処理基板上の半導体膜73に単結晶を形成する(工程K24)。基板ステージ10により被処理基板をステップバイステップ移動させるとともにレーザ光を照射して次々に単結晶を形成する。制御器30のCPUはレーザ光照射した領域が最後の結晶化領域であると判断すると、結晶化処理完了の信号をレーザ光源の駆動回路に送り、結晶化処理を終了する(工程K25)。
【0107】
図16を参照して結晶化方法の一例を説明する。
【0108】
オペレータは、制御器30の入力装置の画面にモード選択画面を呼び出し、登録された複数の処理モードのなかから所望の処理モードを選択する(工程K31)。本実施形態では、2ショット法で結晶化した後に被処理基板上に転写マークを形成する処理モードを選択した。すでに位相シフタ上の所定の光学部材が基準位置に位置合せされている。ハイトセンサ20のCCDカメラで被処理基板のアライメントマーク75を撮像し、その画像データを制御部30に送る。制御部30は、入力された画像データを数値解析してマーク75の重心の位置座標を求め、求めた位置座標と基準位置との位置ずれ量を求め、求めた位置ずれ量が所定の許容値以下になるようにステージ駆動機構19に制御信号を送って基板ステージ10を移動させ、被処理基板70を基準位置に位置合せする(工程K32)。位置ずれ量が所定の許容値以下になり、被処理基板70が基準位置に対して位置合せされると、制御部30からレーザ光源2に制御信号を送り、被処理基板上の所定の結晶化領域76に1回目のレーザ光を照射する(工程K33)。レーザ光照射→基板ステージの移動→レーザ光照射→基板ステージの移動を繰り返して、ステップバイステップで被処理基板上の結晶化領域76に次々に単結晶を形成していく。被処理基板上のすべての結晶化領域76に対して1回目のレーザ光照射が完了すると、制御部30から交換機27に制御信号を送り、照射位置にある第1の光学部材51を第2の光学部材52に入れ替える(工程K34)。入れ替えた第2の光学部材52を基準位置に対して位置合せする(工程K35)。結晶化領域76に2回目のレーザ光を照射する(工程K36)。位相シフタの第2のアライメントマーク51x,51yにレーザ光軸の照準を合わせてレーザ光を照射し、位置合せ領域77に転写マーク77x,77yを形成する。レーザ光照射→基板ステージの移動→レーザ光照射→基板ステージの移動を繰り返して、ステップバイステップで被処理基板の位置合せ領域77に次々に転写マーク77x,77yを形成する(工程K37)。制御器30のCPUはレーザ光照射した領域が最後の位置合せ領域であると判断すると、結晶化処理完了の信号をレーザ光源の駆動回路に送り、結晶化処理を終了する(工程K38)。
【0109】
(プロキシミティ方式)
図17に示すプロキシミティ型エキシマレーザ結晶化装置(PXELA装置)1Aにも本発明を適用することができる。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0110】
プロキシミティ型の結晶化装置1Aにおいては、位相シフタ5が基板ステージ10上の被処理基板70の入射面に近接配置されている。光学系4で均一化された均一光を位相シフタ5により光強度変調し、この光強度変調光を被処理基板70の入射面に照射するようにしている。
【0111】
図6に示す2つの光学部材51,52を有する位相シフタ5をホルダ50にセットし、結像光学系7に対する各光学部材51,52の位置合せをそれぞれ行う。これらのアライメント作業は、制御部30のメモリ34に保存された過去の実績データを利用して行なうようにしてもよい。
【0112】
制御部30は、各光学部材51,52のアライメント作業において得られたXYZ座標位置とθ値のデータをメモリ34に保存する。保存されたデータは、メモリ34から随時呼び出して利用することができるようになっている。
【0113】
レーザ光80は、光源2から出射され、アッテネータ3で光強度を減衰され、光学系4のホモジナイザ41,43により均一化され、位相シフタ5の第1の光学部材51を透過して所定の光強度分布を有する変調光となり、基板ステージ10上に置かれた被処理基板70に入射する(1回目のショット)。これにより被処理基板上の半導体膜73の所定領域が結晶化される。
【0114】
2ショット法では、位相シフタ自動交換機27のハンドリング機構により位相シフタ5をX方向に第1及び第2の光学部材51,52の相互間距離(例えば10mm)だけ移動させ、照射領域のパターンを第1の光学部材51から第2の光学部材52に切り替える。次いで、制御部30は、メモリ34から装置パラメータのうち所定のデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて位相シフタ上の第2の光学部材52を結像光学系7に対して位置合せする。そして、上記と同様に半導体膜73の同一箇所に異なる光強度分布のレーザ光を照射する(2回目のショット)。
【0115】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、レーザ光の強度を変化させることで、他にもさまざまなプロセスに適応可能である。例えば、レーザ光の強度を下げれば、加熱の作用のみになり、TFTを作る上で必要な不純物活性化工程に用いることができる。また、レーザ光の強度を極端に上げれば、急激な温度上昇を引き起こすため、TFTにおける膜の除去に利用することもできる。なお、これらの現象の利用はTFTに限定されるのみでなく、広く半導体プロセスに適応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施形態に係る結晶化装置を示す構成ブロック図。
【図2】図1の装置の光学系(プロジェクション方式)を示す構成ブロック図。
【図3】(a)は位相シフタの平面図、(b)は位相シフタの側面図、(c)は被処理基板の側断面図、(d)は一次元ビームプロファイル特性線図。
【図4】(a)は他の位相シフタの平面図、(b)は他の位相シフタの側面図、(c)は被処理基板の側断面図、(d)は他の位相シフタによる一次元ビームプロファイル特性線図。
【図5】結晶化装置の制御ブロック図。
【図6】本発明の実施形態の位相シフタを示す平面図。
【図7】他の実施形態の位相シフタを示す平面図。
【図8】(a)は位相シフタ選択用アライメントマークの拡大平面図、(b)はパターン厚み補償用アライメントマークの拡大平面図。
【図9】本発明の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図10】本発明の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図11】アライメントマークを基準位置に位置合せするときのCCDカメラ視野を模式的に示す図。
【図12】被処理基板の平面図。
【図13】図12のAの部分を拡大して被処理基板上に形成された結晶化領域とアライメントマークとを模式的に示す拡大平面図。
【図14】1つの結晶化領域を拡大して示す拡大平面図。
【図15】他の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図16】他の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図17】他の実施形態に係る結晶化装置の光学系(プロキシミティ方式)を示す構成ブロック図。
【符号の説明】
【0118】
2…レーザ光源、3…アッテネータ、4…照明光学系(レーザ光学系)、
5,5A,5B,6…位相シフタ、5a,5b…段差、
50A,50B…ホルダ、
50a,50b…サブホルダ、
51,61…光学部材(石英基材、水晶基材)、
51x,51y,52x,52y…第2のアライメントマーク(光学部材(基材)の厚み補償用マーク、位相シフタと結晶化装置の基準位置との位置合せ用マーク、被処理基板と次工程装置との位置合せに利用するマーク)、
6…位相シフタ、62…ドット段差、
7…結像光学系(レーザ光学系)、
8…第1のアライメントマーク(位相シフタ識別用マーク、位相シフタと被処理基板との位置合せ用マーク)、
8a,8b…照準線、8g…マークの重心、
10…基板ステージ、
19…XYZθ駆動機構、
20…ハイトセンサ(CCDカメラ内蔵)、
20a…基準位置(ハイトセンサのCCDカメラ視野内におけるXY座標の原点、and結晶化装置の固定点に該当)、
27…位相シフタ交換機構、
30…制御部、
70…被処理基板、
71…基材(Si)、
72…絶縁膜(SiO2等)、
73…非単結晶半導体膜(a-Si)、
74…キャップ膜(SiO2等)、
75…第3のアライメントマーク(被処理基板識別用マーク、and被処理基板と結晶化装置の基準位置との位置合せ用マーク)、
76…結晶化領域、
77…位置合せ領域、
77x,77y…転写アライメントマーク(第4のアライメントマーク、被処理基板と次工程装置との位置合せ用マーク)、
78…結晶成長部、
79a,79b…単結晶、
80…レーザ光、
81,83…レーザ光の光強度分布(逆ピークパターン状の光強度分布)、
81a,81b,83a,83b…光強度分布のピーク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温ポリシリコン用アモルファスシリコンにレーザ光を照射してアニールや結晶化をおこなうための結晶化装置用位相シフタ、結晶化装置及び結晶化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)のソース、ドレイン、チャネル領域に用いられるシリコン膜のうち非晶質シリコン(a-Si)膜は、形成温度が低く、気相法で比較的容易に形成することが可能であり、量産性にも富むため、TFTに用いる半導体薄膜として一般的に用いられている。しかし、a-Si膜は導電率等の物性が結晶性の多結晶シリコン(poly-Si)膜に比べて劣る(a-Siの移動度はpoly-Siのそれに比べて2桁以上低い)という欠点があるため、今後TFTの動作速度を高速化するためには、結晶性を有するpoly-Si膜をTFTのソース、ドレイン、チャネル領域とする製造方法を確立する必要がある。現状ではpoly-Si膜を形成する方法として、エキシマレーザアニール(Excimer Laser Annealing;以下、ELA法という)が汎用ガラス基板を使用できる温度範囲(室温から500℃程度まで)で利用されている。
【0003】
ELA法を利用する結晶化装置は、例えば特許文献1〜4に記載されている。これらの結晶化装置の光学系は、レーザ光に所望の光強度分布(ビームプロファイル)を与えるために位相シフタを備えている。位相シフタは、レーザ光の光強度分布に所望形状のピークを形成するために、レーザ光の位相を変調する空間強度変調光学素子である。位相シフタによりレーザ光の光強度分布を逆V字状ピークパターンに変調し、この変調レーザ光を半導体膜に照射し、半導体膜を局部的に溶融・凝固させることにより半導体結晶を横方向(膜厚に直交する方向)にラテラル成長させる。
【特許文献1】特開2003−173628号公報
【特許文献2】特開2003−339363号公報
【特許文献3】特開2004−093197号公報
【特許文献4】特開2002−357254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ELA法では、半導体膜の同じ箇所に異なる光強度分布(または異なる光強度)のレーザ光を重ねて照射する2ショット法を行うことがある。2ショット法を実施する場合は、1回目のショットに用いた位相シフタを別パターンの位相シフタに交換する必要がある。従来装置の位相シフタ交換作業は、手動で第1の位相シフタを装置から取り外し、手動で第2の位相シフタを装置に取り付け、その後に第2の位相シフタを結像光学系と位置合せするアライメント作業をおこなうため作業効率が低く、処理スループットの向上を図るうえでの大きな障害になっている。また、位相シフタの位置は結晶化装置の内奥部にあるため、一時的にレーザ照射を停止するなどの手続きや操作が煩雑である。
【0005】
さらに、光学部材の種類が異なると、基材の材料が異なることがあるため、タイプごとに位相シフタの厚みが相違することがある。例えば、あるパターンを石英基材上に形成し、他のパターンを異なる材料である水晶基材上に形成している場合に、前者から後者に位相シフタを交換してレーザ光照射すると、実効的に光路長が異なることからレンズ効果等により照射した次工程以降用の位置合わせマークの寸法や形状が異なってしまい、次工程以降で使用するアライメントマークを照射した場合に位置ずれが発生する問題がある。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、2ショット法においても位相シフタの位置合せのためのアライメント作業効率が高く、処理のスループットを向上させることができ、また、材質と厚みが異なる位相シフタを使用する処理においても照射したアライメントマークの次工程の読み取りにおいて位置合わせの問題を生じない結晶化装置用位相シフタおよび結晶化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る結晶化装置用位相シフタは、被処理基板上の非単結晶半導体膜に照射されるレーザ光を変調するための結晶化装置用位相シフタであって、レーザ光を所定の光強度と位相に変調するためのパターンが形成された複数の光学部材(51,61)と、前記複数の光学部材を保持するホルダ(50A,50B)と、位置合せ用の平面視野において結晶化装置のレーザ光軸が位置するところを基準位置としたときに、前記光学部材の固有の光学特性に応じて前記光学部材の各々を前記基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、前記光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマーク(8)と、前記結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写マーク(77x,77y)を用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、前記ホルダに設けられた第2のアライメントマーク(51x,51y)と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明において、上記第1のアライメントマークは、光学部材を保持または構成するホルダ(基材)の材質の違いなどに起因して生じる光学部材の固有の光学特性の違い、すなわち光路長の差による光学部材のZ方向の位置ずれ(焦点深度)を光学部材ごとに補正するために用いられるマークであり、複数本の直線を組み合わせてなるものである。この場合に、第1のアライメントマークは、互いに近接して配置された角部を有する4つのL字記号を含むものであることが好ましい。これにより位相シフタの位置合わせにおいて定点測定精度の誤差(基準位置からの光学部材の中心位置のずれ量、または基準位置からの第1アライメントマークの重心位置のずれ量)を従来のそれの25〜35%程度まで低減することができる。さらに、第1のアライメントマークは、前記4つのL字記号とは非接触の状態で、前記4つのL字記号の相互間に配置され、前記4つのL字記号の角部を強調する十字記号をさらに有することが好ましい。これにより位相シフタの光学部材の位置合わせにおいて定点測定精度の誤差を従来のそれの10〜15%程度まで低減することができる。
【0009】
本発明において、上記第2のアライメントマークは、被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために位相シフタから被処理基板上に転写されるマークであり、矩形枠内に直列に配置された複数の円形または擬似円形状の記号を有するものである。ここで擬似円形状とは、長円、楕円、角を円くした三角、角を丸くした四角などを含むものである。矩形枠内に配置される幾何学記号の数は、複数であればよく、2つ、3つ、4つ、さらに5つ以上とすることができる。また、第2のアライメントマークは、横方向成分マークおよび縦方向成分マークを含むことが好ましい。矩形状の被処理基板をXY面内で高精度に位置合せするためである。すなわち、横方向成分マークを用いて被処理基板のX座標を次工程以降の装置光軸のX座標に位置合せするとともに、縦方向成分マークを用いて被処理基板のY座標を該装置光軸のY座標に位置合せする。
【0010】
本発明において、第1及び第2のアライメントマークを、同じホルダ内に設けることができる。ホルダは複数の光学部材を保持するものである。また、ホルダが複数のサブホルダを保持し、各サブホルダが光学部材を1個ずつ有するようにしてもよい。これにより位相シフタの交換と位置合せに掛かる時間が従来よりも大幅に短縮される。
【0011】
第2のアライメントマークの利用方法について説明する。例えば位相シフタが2個の光学部材を有する場合を想定する。すなわち、一方にレーザ照射位置合せ用のパターンが形成された光学部材があり、他方に所望の光強度分布(ビームプロファイル)用のパターンが形成された光学部材がある場合に、前者の光学部材は使用実績があり、後者の光学部材は使用実績がない。すなわち、前者の光学部材は、すでに次工程(例えば露光装置による読み込みと位置合せ)での使用実績がある光路長にてパターン照射するものであり、光路長用にホルダのZ位置(レーザ光軸方向の位置座標)も位置合せ調整済みである。これに対して後者の光学部材は、過去に使用された実績がなく、前者の光学部材とは材質と厚みが異なる。このため、後者の光学部材の実効的な光路長が前者の光学部材の光路長と異なり、両光路長間に差を生じる。この光路長の差に起因して所謂レンズ効果を生じるため、後者を用いて実際に照射されるパターンがすでに実績のある前者を用いて照射されるパターンの寸法と形状にならない(パターンの寸法・形状の不一致)。よって、所望の光強度分布とレーザ照射位置合せ用アライメントマーク用とに切り替えて同じ箇所に2回照射(2ショット)することでこの問題を解決する。また、両者のパターンについてそれぞれ位置合わせが必要なことから第1のアライメントマークを有することとし、これを例えばCCDカメラ等で撮像し、撮像した画像から前記マークの重心位置を求めて位置情報を得て、その位置情報をもとに基準位置へのずれ量を計測し、計測した位置ずれ量が許容値以下となるように光学部材の位置をホルダのXYθ駆動機構により調整する。
【0012】
次に、上記の使用実績のない光学部材をZ位置合せする方法について説明する。
【0013】
光学部材のZ位置合せには、ダミー基板にレーザ光を試し打ちする方法と、ビームプロファイラを用いてレーザ光像を計測する方法とがある。前者の方法では、ステージ上にダミー基板を載せ、ダミー基板または位相シフタのいずれかをZ方向に移動させ、レーザ光路上の光学部材の焦点深度(DOF)を適当に設定した状態で、ダミー基板にレーザ光を試し打ちし、試し打ちされたパターンを観察し、その観察結果に基づいて位相シフタまたはダミー基板のいずれかをZ方向に移動させ、光学部材の焦点深度(DOF)を変える。試し打ちしたパターンが所望の寸法と形状の目標パターンと一致するまで、試し打ち→観察→焦点深度(DOF)の修正→試し打ちという試行錯誤を繰り返す。
【0014】
一方、後者の方法では、例えば蛍光板をレーザ光路上に配置し、これに光学部材を通過したレーザ光を照射し、そのレーザ光像をビームプロファイラにより直接計測する。計測したレーザ光像のパターンが所望の寸法と形状の目標パターンと一致するまで、レーザ光像の計測→焦点深度(DOF)の修正→レーザ光像の計測という試行錯誤を繰り返す。
【0015】
上記のダミー基板の試し打ち方法は、基準位置を設定するときに利用することができる。先ず結晶化装置の照明光学系を所定の位置に固定し、結晶化装置の光軸(レーザ光路)が動かないようにする。ダミー基板をステージ上に載置し、結晶化装置の光軸を固定した状態でダミー基板にレーザ光を試し打ちする。ダミー基板上の試し打ちポイントをハイトセンサのCCDカメラで見ながら、カメラ視野の原点(X軸とY軸との交点座標(0,0))が試し打ちポイントと重なり合うようにCCDカメラの位置を微調整し、試し打ちポイントにカメラ視野の原点が重なり合う位置にCCDカメラを固定する。このカメラ視野内で試し打ちポイントに一致する原点((0,0)座標)を「基準位置」に設定する(図11の参照符号20a参照)。このようにして設定した基準位置を用いて、結晶化装置の光軸に対して位相シフタの光学部材を高精度に位置合せすることができる。
【0016】
本発明に係る結晶化装置は、レーザ光源(2)と、非単結晶半導体膜を有する被処理基板を支持する基板ステージ(10)と、前記レーザ光源からのレーザ光の光強度を均一化する照明光学系(4)と、前記照明光学系を通過したレーザ光を前記基板ステージに支持された被処理基板に結像させる結像光学系(7)と、前記照明光学系を通過したレーザ光を変調する位相シフタ(5,6)と、を具備する結晶化装置(1,1A)であって、
前記位相シフタ(5,6)は、レーザ光を所定の光強度と位相に変調するためのパターンが形成された複数の光学部材(51,61)と、前記複数の光学部材を保持するホルダ(50A,50B)と、位置合せ用の平面視野において結晶化装置のレーザ光軸が位置するところを基準位置(20a)としたときに、前記光学部材の固有の光学特性に応じて前記光学部材の各々を前記基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、前記光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマーク(8)と、前記結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写アライメントマークを用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、前記ホルダに設けられた第2のアライメントマーク(51x,51y)と、を有し、
前記結晶化装置(1,1A)は、前記複数の光学部材のなかから所望の光学部材を選択し、選択した光学部材に切り替える選択切り替え手段(27,30)と、前記第1のアライメントマークを用いて前記結像光学系に対して前記選択した光学部材を位置合せするとともに、前記基板ステージ上の被処理基板を前記結像光学系に対して位置合せし、この位置合せされた被処理基板に対して前記位相シフタを位置合せする位置合せ手段(10,19,20,28,30)と、前記位置合せされた位相シフタの第2のアライメントマークを通って被処理基板にレーザ光が照射され、該被処理基板上に前記第2のアライメントマークが転写された転写マーク(77x,77y)が形成されるように、前記レーザ光源を制御する制御手段(30)と、を具備することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る結晶化方法は、位相シフタで変調したレーザ光を被処理基板上の非単結晶半導体膜に照射して該非単結晶半導体を結晶化する結晶化方法であって、(a)複数の光学部材と第1及び第2のアライメントマークとを有する位相シフタ、および、結晶化領域と位置合せ領域と第3のアライメントマークとを有する被処理基板をそれぞれ準備し、(b)結晶化装置のレーザ光軸に対応する基準位置を設定し、(c)前記第1のアライメントマークを用いて前記基準位置に対して前記位相シフタを位置合せし、位置合せした座標データを記憶しておき、(d)前記第3のアライメントマークを用いて被処理基板を前記基準位置に対して位置合せし、(e)前記複数の光学部材のうちから1つを選択し、(f)前記記憶しておいた位置合せ座標データを呼び出し、前記選択した光学部材が前記呼び出した位置合せ座標に位置するように、前記位相シフタを移動させ、(g)前記結晶化領域にレーザ光を照射して前記非単結晶半導体を結晶化するとともに、前記第2のアライメントマークを通して前記位置合せ領域にレーザ光を照射し、前記第2のアライメントマークを前記位置合せ領域に転写することを特徴とする。
【0018】
本発明において、上記の位相シフタは複数の光学部材を有することができる。これにより、選択切り替え手段が複数の光学部材のなかから1つを選択し、それに切り替えることができる。例えば2つの光学部材の相互間距離を10mmとした場合に、選択切り替え手段はボールネジとパルスモータとコントローラを用いて10mm/秒以上の速度で移動させることができることから1秒以内の時間で迅速に光学部材の切り替えが完了する。ちなみに、手動で位相シフタを交換する(光学部材を切り替える)場合は、どのように作業を急いだとしても位相シフタの交換時間は1秒以上(通常、10〜60秒)を要する。このように本発明によれば位相シフタ交換時間が短縮される。
【0019】
本発明において、位置合せ用の第1のアライメントマークは光学部材ごとに設けるものとする。選択切り替え手段は、第1のアライメントマークをCCDカメラ等で撮像し、その像からマークの重心位置を求め、求めたマーク重心位置と基準位置との差分Δx,Δy,Δθ(位置ずれ量)をそれぞれ求め、基準位置との差分がそれぞれ許容値以下(Δx≦0.1μm、Δy≦0.1μm、Δθ≦0.0001deg)となるようにホルダのXYθ駆動機構を用いて光学部材の位置を調整する。さらに、上記のZ位置合せ方法に従って結晶化装置の光学系の焦点が被処理基板の非単結晶半導体膜に合致するように基板ステージをZ方向に昇降させることにより、位相シフタの光学部材の焦点深度(DOF)を調整し、光学部材を被処理基板に対してZ位置合せする。これらの位置合せを実施した光学系と光学部材との位置合せデータとしてXYZ座標データとθ値データをプリセット位置として保存しておき、保存した位置合せデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて前記位相シフタを切り替えることができる。つまり、いったん予めアライメント調整しておけば、その後は位相シフタを取り外さない限り、このアライメント調整時の位置合わせ情報を用いて光学部材を切り替えることができ、光学部材を切り替えるたびにCCDカメラによる撮像と位置合わせをおこなう従来の一連の作業を省略することができる。
【0020】
本発明において、位相シフタは、ラインとスペース段差とを有するラインアンドスペース型の光学部材(図3)を有するか、又は周期的なドット段差を有するドット型の光学部材(図4)を有することができる。
【0021】
本願明細書中の重要な用語を次に定義する。
【0022】
「位相シフタ」とは、光透過性の基板に所望の光学特性を得るためのパターンが形成され、入射光を位相変調することにより光リソグラフィの解像力を向上させ、像面に所望の光強度分布の像を形成する光学素子のことをいう。
【0023】
「光学部材」とは、所望の光学特性を得るために上記の位相シフタに設けられたパターンを含む要素であり、入射光の位相を変調するための二次元または三次元の構造を有する部材をいう。例えばラインアンドスペース型の光学部材では二次元のパターン構造を主に有し、ドット型の光学部材では三次元のパターン構造を主に有する。
【0024】
「ホルダ」とは、1つ又は複数の光学部材を保持するための基材のことをいう。ホルダ用の基材には石英や水晶などの光透過性の材料を用いる。
【0025】
「サブホルダ」とは、上記のホルダに保持され、1つの光学部材を保持する光透過性の基材のことをいう。サブホルダ用の基材にも石英や水晶などの光透過性の材料を用いる。
【0026】
「基準位置」とは、結晶化装置の光軸に対して位置合せされたカメラおいてそのカメラ視野内の原点をいう。具体的には結晶化装置の光軸に対して位置合せされたハイトセンサのCCDカメラにおいて、結晶化装置の光軸に重なり合うカメラ視野内のXY座標の原点((0,0)座標)を基準位置という。
【0027】
「結晶化領域」とは、被処理基板上の非単結晶半導体膜にレーザ光を照射することにより1つ又は複数の単結晶が形成される被処理基板上の領域をいう。
【0028】
「位置合せ領域」とは、上記の結晶化領域の近傍に設けられ、被処理基板を他の部材に対して位置合せするためのマークが形成される被処理基板上の領域をいう。具体的にはレーザ光の照射により位相シフタのアライメントマークが転写される被処理基板上の転写マーク形成領域をいう。
【0029】
「光学部材の固有の光学特性」とは、光学部材を構成する材料の材質(組成および結晶構造など)や密度や厚みによって決まる光学的な性質をいう。具体的には屈折率、吸収率、反射率及び偏光特性などをいう。
【0030】
「次工程以降の装置」とは、結晶化工程後に続く一連の後続の工程において使用される各種の装置をいう。具体的には液晶表示回路を形成するために必要なフォトリソグラフィプロセス(レジスト塗布、ベーキング、露光、現像、リンス、乾燥、成膜、エッチングなど)に用いられる種々の装置(コーター、ステッパ、CVD成膜装置、エッチャーなど)をいう。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、2ショット法において同じ領域を異なる光強度で2度打ちする際に、あるいはパターンの異なる複数のビームプロファイル間でパターンを切り替えてレーザ照射する際に、位相シフタの交換作業を行なうことなく、自動で位相シフタを切り替えることができ、処理のスループットを向上させることができ、また位相シフタの材質等によらず次工程以降での位置合せ用マークを被処理基板上にパターン照射できる。
【0032】
また、本発明によれば、位置合せ用マークに特徴をもたしたことから位相シフタの位置合わせにおいて定点測定精度の誤差を従来のそれの10%程度まで低減することができる。すなわち、従来の誤差が1μmであったのに対して本発明の誤差は0.1μmである。
【0033】
また、本発明によれば、予め登録しておいたアライメント座標に使用予定の位相シフタを移動させることができる。これは位相シフタを取り外さない限り有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0035】
(プロジェクション方式)
次に、本発明の第1の実施形態としてプロジェクション型レーザ結晶化装置を用いて非晶質半導体膜を結晶化する場合について図1〜図5を参照して説明する。
【0036】
本実施形態の結晶化装置1は、図1と図2に示すように、XeClやKrFなどのエキシマレーザを発振するレーザ光源2を有し、この光源側から順番にアッテネータ3、照明光学系4、位相シフタ5(6)、結像光学系7が配置され、レーザ光80をステージ10上の被処理基板70に照射するようになっている。
【0037】
アッテネータ3は、レーザ光源2の光軸の始端側に設けられ、光源から発振されたレーザ光80の光強度が焼き付きを生じない照射レベルまで減衰するものである。すなわち、アッテネータ3は、誘電体の多層膜コーティングフィルタの角度を調節してレーザ光の光強度(レーザフルエンス)を光学的に変調するものであり、制御部30により動作制御される図示しないセンサ、モータ、制御系を備えている。
【0038】
照明光学系4は、アッテネータ3の直後に設けられ、レーザ光80の断面内における光強度と出射光の角度を均一化するためのホモジナイザを内蔵している。位相シフタ5(6)は、照明光学系4と結像光学系7の間に配置され、照明光学系4からのレーザ光を位相変調するための段差のパターンが形成された光学素子である。結像光学系7は、位相シフタ5で所望のビームプロファイル(光強度分布)に変調されたレーザ光の像(段差のパターン)を所定の倍率に縮小(又は拡大)して被処理基板70の表面に結像するための複数の投影レンズを内蔵している。結像光学系7の透過光路例えば直下には被処理基板70を位置合せして保持するための基板ステージ10が配置されている。
【0039】
次に、結晶化装置1の他の光学素子の実施形態についてさらに説明する。
【0040】
結像光学系7は、位相シフタ5(6)の下方に設けられ、光源1からのレーザ光の光強度分布を被処理基板70に縮小照明させるための光学系である。結像光学系7は、縮小のみに限らず等倍でも拡大でもよい。結晶化処理における最適の実施形態は縮小照明である。
【0041】
基板ステージ10は、ステージ駆動機構19によりX方向、Y方向、Z方向、θ方向(Z軸まわりの回転)にそれぞれ駆動される可動ステージである。この基板ステージ10上には光強度分布を検出するためのビームプロファイラ(図示せず)と被処理基板70が並設されている。図示しないビームプロファイラおよび被処理基板70は、基板ステージ10と共にX方向、Y方向、Z方向の各方向にそれぞれ移動され、レーザ光軸に対して位置合わせされるようになっている。被処理基板70とビームプロファイラとは、例えば結晶化処理時と光強度分布検出時とでレーザ光軸上に置き換えられるようになっている。
【0042】
基板ステージ10は、4つのサブステージを備えている。すなわち、基板ステージ10は、例えば図示しないX方向に移動するリニアガイド上にXステージが可動に支持され、その上にY方向に移動するYステージが可動に支持され、その上にZ方向に移動するZステージが可動に支持され、さらにZ軸まわりにZステージ駆動機構を回転させるθ回転ステージが支持されている。
【0043】
Zステージ(図示せず)の本体上には左右一対のスライダ(図示せず)がリニアガイド(図示せず)に沿って摺動案内されるように設けられている。両スライダ(図示せず)の対向面は上向きに傾斜している。両スライダ間には昇降台(図示せず)が上向き傾斜面に沿って摺動案内されるように設けられている。
【0044】
スライダの側部は対応するボールスクリュウ(図示せず)の一端にそれぞれ回転自由に連結されている。ボールスクリュウの他端はステッピングモータやサーボモータのような高精度電動機からなる昇降駆動機構の回転駆動軸に連結されている。半導体レーザとその反射光量を検出するCCDからなるハイトセンサ20は、昇降台の上面の高さ位置を検出するように設けられている。ハイトセンサ20から高さ位置検出信号が制御部30に送られると、制御部30は昇降駆動機構(図示せず)の動作を制御してボールスクリュウをそれぞれ回転させ、昇降台(図示せず)を上昇または下降させるようになっている。これにより昇降台上の被処理基板70は結像光学系7および位相シフタ5に対して高精度に位置合せされる。
【0045】
結像光学系7は、レーザ光軸に沿って光源側から順次配列されたホモジナイザ、第1のコンデンサレンズ、第2のコンデンサレンズ、マスク、テレセントリック型の縮小レンズを備えている。ホモジナイザは、光源2から発振されるレーザ光80を分割し、分割光を収束することにより、該レーザ光を均一化する機能を有する。第1のコンデンサレンズは、ホモジナイザからの均一化レーザ光を集光し、第2のコンデンサレンズと共役関係に配置される。第2のコンデンサレンズの出射光路にはマスクが設けられている。縮小レンズは1/1〜1/20倍の範囲に像を縮小する機能を有する。この縮小レンズを通過したレーザ光80は、絶縁性キャップ膜74の表面(入射面)から被処理基板70に入射し、像面にて収束する。像面は、入射面と一致させても一致させなくてもよい。通常の場合は、ギャップを調整することにより像面を入射面から所望距離シフトさせ、像面は入射面と不一致である。像面/入射面間のシフト量は、キャップ膜74の膜厚に応じて最適に調整される。
【0046】
本実施形態の結晶化装置1は、位相シフタ5を照明光学系4と結像光学系7との間に設けたプロジェクション型レーザアニール装置であり、エキシマレーザ光80を照明光学系4により均一化し、均一化光を位相シフタ5により光強度変調し、さらに光強度変調光を結像光学系7により所定倍率に縮小して被処理基板70に投影するようにしている。
【0047】
位相シフタ5は、所定の段差5cを有し、段差5cのところで分割光線群にそれぞれ独立にフレネル回折を起こさせる。これらの回折パターンは基板表面で重畳されるから、基板表面の光強度分布には、位相シフタ5のパラメータ(ギャップd1、位相差θ)だけではなく、位相シフタ5に入射する光線群の広がり量(ε)や、光線間の干渉性が複雑に関係する。このような位相シフタ5において光強度が極小となる逆ピークパターンのビームプロファイル81(図3の(d))を形成し、この逆ピークパターンのビームプロファイル81により被処理基板70上において例えば非晶質半導体膜の一番最初に凝固する領域(結晶核)を位置制御し、そこから結晶を横方向に成長(ラテラル成長;膜面に沿った二次元成長)させることにより、大粒径の結晶粒を指定した位置に設ける。このとき、位相シフタの形状、位相シフタの高さ、およびレーザ光の角度分布などにより、所望の光強度分布(ビームプロファイル)を設定する。なお、レーザ光80の平均光強度(平均レーザフルエンス)は、パワーメータなどを用いて検出する。
【0048】
光強度分布は、拡大光学系の対物レンズにより所望の倍率に拡大されてCCDに結像される。CCDは光強度に応じた光強度分布信号を撮像データとして出力し、このデータを受け取った制御部30によってデジタル的(撮像データとして)もしくはアナログ的に(二次元イメージとして)画像信号処理され、この画像処理データが光強度分布波形として表示装置の画面上に拡大表示される。
【0049】
結像光学系7の透過光路には、基板ステージ10の上に被処理基板70とさらに図示しないビームプロファイラとが置換可能に並設されている。ビームプロファイラ(図示せず)は、その光軸が結像光学系7のレーザ光軸と平行となるように位置合せされている。ビームプロファイラと結像光学系7との位置合せは、基板ステージ10と図示しないビームプロファイラアライメント機構とを用いてなされる。
【0050】
レーザ結晶化装置1は制御手段および記録手段としての制御部30を備えている。図5に示すように、制御部30は、入力インターフェース31、システムバス32、CPU33、メモリ(記録装置)34および出力インターフェース35を有する。
【0051】
入力インターフェース31にはハイトセンサ20、ビームプロファイラのCCD28、および入力装置29が接続され、出力インターフェース35にはレーザ光源2、アッテネータ3、ステージ駆動機構19、位相シフタ自動交換機27および表示装置(図示せず)が接続されている。入力インターフェース31および出力インターフェース35は、システムバス32を介してCPU33およびメモリ34にそれぞれ接続されている。
【0052】
メモリ34は、キイボード等の入力装置29から入力される装置パラメータを記憶し、保有するための記録装置である。CPU33は、入力装置29から入力されるレシピに応じて、またビームプロファイラのCCD28およびハイトセンサ20から直接入力される各検出データに応じてメモリ34から装置パラメータを随時読み出し、演算処理し、所定の指令信号を装置各部に出力インターフェース32を介して送る制御手段である。CPU33は、アライメントしたXYZ座標位置とθ値(Z軸まわりの回転角度)のデータをメモリ34に保存しておき、必要に応じてこれらのデータをメモリ34から呼び出し、呼び出したデータに基づいて選択した他の位相シフタへの切り替えと位置合せを行わせるようになっている。これらは別途コントローラ等で形成することも可能である。
【0053】
表示装置81は、制御部30から出力されてくる各種データを表示するための液晶表示画面を有しており、その第1表示部にはテーブル化された装置パラメータが列記して表示され、その第2表示部には被処理基板70上のレーザ照射位置を示す基板マップ図形が表示され、その第3表示部には照射レーザ光80のビームプロファイル波形が表示されるようになっている。なお、表示装置は、レーザ結晶化装置1に異常が発生したときに警報を発するアラーム機構を有することが望ましい。アラーム機構は、例えば表示装置の画面にランプを点灯または点滅させるようにしてもよいし、付属のスピーカやブザーから警報音や音声を発するようにしてもよい。
【0054】
結晶化装置1は、全体がチャンバ(図示せず)で囲われ、その内部が所望の雰囲気に制御されるように図示しないガス供給源、圧力調整機構および真空排気機構が接続されている。チャンバ内には、レーザ光源2例えばエキシマレーザのレーザ光軸の始端側にアッテネータ3を配置し、レーザ光軸の終端側に結像光学系7および位相シフタ5を配置し、結像光学系7の焦点位置に被処理基板70を配置している。この結晶化装置10は所謂プロジェクション型であり、位相シフタ5が照明光学系4と結像光学系7との間に配置され、位相シフタ5で変調された変調レーザ光80が結像光学系7により被処理基板7上に投影されるようになっている。
【0055】
本実施形態の上記装置1には、異なるタイプの光学部材をもつ例えば2つの位相シフタ5,6が用意されている。さらに、上記装置1は、これら2つの位相シフタ5,6を自動で交換する位相シフタ自動交換機27を備えている。位相シフタ自動交換機27は、第1の位相シフタ5と第2の位相シフタ6をそれぞれ把持するハンドリング機構およびこれらをX,Y,Zの各方向に移動させる駆動機構を備えている。この位相シフタ自動交換機27は、図5に示すように制御部30によってその動作が制御されるようになっている。
【0056】
次に、図3と図4を参照して異なるタイプの光学部材を有する2つの位相シフタ5,6をそれぞれ説明する。
【0057】
先ず、第1の位相シフタの例を説明する。
【0058】
第1の位相シフタとして図3の(a)および(b)にラインアンドスペース型の位相シフタ5を示す。このタイプの位相シフタ5は、透明媒質、例えば、石英基材51(光学部材)に厚さの異なる互いに隣り合う領域(段差を有する領域)を設け、これら領域間の段差(位相シフト部)の境界で、入射するレーザ光線を回折並びに干渉させて、入射したレーザ光線の強度に周期的な空間分布を付与するラインアンドスペース型である。このタイプの位相シフタ5は、隣接するパターンが逆位相(例えば、180°のずれ)となるように石英基材51の厚さが選択され、交互に並べられた位相が、例えば、πの第1のストリップ領域(位相領域)5aと、位相が、例えば、0(ゼロ)の第2のストリップ領域(位相領域)5bとを有するように。これらストリップ領域(位相シフト線領域)は、10μmの幅を有する。一般にレーザ光の波長をλ、の透明媒質の屈折率をnとすると、領域間に180°の位相差をつけるのに必要な透明媒質の膜厚tは、t=λ/2(n−1)で与えられる。従って、石英基材の屈折率を1.5とすると、レーザ光としてKrFエキシマレーザ光を使用した場合には、これの波長が248nmであるから、180°の位相差を付けるためには248nmの段差をエッチング等の方法で石英基材51の所定の領域間に形成すればよい。このエッチングにより薄く形成された領域が第1のストリップ領域5aとなり、エッチングされない領域が第2のストリップ領域5bとなっている。
【0059】
このようなタイプの位相シフタ5においては、厚い第2の位相領域5bを通過したレーザ光80は、薄い第1の位相領域5aを通過したレーザ80光に比較して位相が180°遅れる。この結果、厚い第2の位相領域5bおよび薄い第1の位相領域5aを透過したレーザ光間で、干渉と回折とが生じ、図3の(d)に示すように、複数のボトムピーク81aとトップピーク81bを有する、V字形の連続した光強度分布81が得られる。即ち、V字形の連続した光強度分布81は、段差部(位相シフト部)を透過したレーザ光の光強度が最小で、厚い第2の位相領域5bおよび薄い第1の位相領域5aを透過したレーザ光の光強度が増加する光強度分布を像面に形成する。
【0060】
このような光強度分布81をもつレーザ光80で、半導体薄膜73を照射すると、結晶化開始時に、半導体薄膜73上に、ライン状の極小温度領域(ボトム部もしくは谷部)と、この極小温度領域の両側のライン状の極大温度領域(トップ部もしくは山部)とを有する逆ピークパターンの温度分布を形成することができる。
【0061】
次に、第2の位相シフタの例を説明する。
【0062】
図4の(a)並びに(b)に示すドット型の位相シフタ6を示す。第2の位相シフタ6は、透明媒質、例えば、水晶基材61に、大きさ(面積)が段々小さくなる、例えば矩形の、ドット段差(凹所)62を周期的に形成したものである。ドット段差(凹所)62は、例えば位相シフタ6の中央部で面積が大きく、位相シフタ6の端部近傍で面積が小さい。このような位相シフタ6によって、図4の(d)に示すように、レーザ光を光変調して、最大面積列の凹所62に対応して谷部(光強度が最小の透過光)83aが、また、最小面積列の凹所62に対応して山部(光強度が最大の透過光)83bが生じ、中間の各面積列の凹所62に対応した光強度の透過光が生じ像面に、V型の繰り返しの光強度分布83を形成することができる。
【0063】
すなわち、ドット型の位相シフタ6には、所定のV字型光強度分布を得るための凹所62の面積を順次変えた段差パターンが形成される。このドット型の位相シフタ6は、凹所62の面積を順次変えた段差パターンを形成することにより所定のV字型光強度分布を得るために設計製造が容易である。特に、大粒径の結晶化領域(結晶粒)を得るためにV字型光強度分布の開き角度を選択する必要があるが、所望する開き角のV字型光強度分布を得ることができる。
【0064】
第1および第2位相シフタの選択は、例えばCMOS回路、オペアンプ、フリップフロップ回路などのように同一特性の複数の薄膜トランジスタで回路を形成したい場合、第2位相シフタを使用して大粒径の結晶化領域を形成することにより一つの結晶化領域に島切りされた複数個の薄膜トランジスタを形成することができる。この結果、同一特性の結晶化領域に形成された薄膜トランジスタによる回路を形成できる。
【0065】
その他の回路では、第1の位相シフタにより比較的小面積の1個の結晶化領域に1個の薄膜トランジスタを形成することに使用することができる。
【0066】
このように被処理基板70のどこにどのような薄膜トランジスタ回路を形成するかの被処理基板70上の回路配置を設計する。この設計配置に基づき定められた薄膜トランジスタ回路形成位置に適応した位相シフタに交換して結晶化用レーザ光を照射することにより良好な特性の薄膜トランジスタ回路を形成することができる。
【0067】
第1および第2位相シフタでは、光学部材の厚みが異なり結晶化装置の結像光学系のフォーカスを調整する必要がある。第1および第2位相シフタを自動的に交換した場合、
結像光学系のフォーカスも自動的に制御する必要がある。
【0068】
次に、図6および図7を参照して位相シフタを交換した際の位相シフタを位置合せするための各種のアライメントマークについて説明する。
【0069】
位相シフタ5は、図6に示すように、矩形の基材、例えば矩形状石英ガラス基板からなるホルダ50上に2つの光学部材51,52が形成されたものである。2つの光学部材51,52は、ホルダ50上の予め定められた位置において互いに離れてX方向に横並びに配置され、同じ面積の矩形領域にそれぞれ形成された互いに異なるパターン、例えば一方の光学部材51は図3に示すようなラインアンドスペース型のパターンを有し、他方の光学部材52は図4に示すような面積変調型のパターンを有する。
【0070】
ホルダ50A上であって各光学部材51,61をY方向の両側の予め定められた位置には、例えば一対の第1のアライメントマーク8がそれぞれ配置されている。第1のアライメントマーク8は、個々の光学部材51,61そのものの位置合せをおこなうために設けられたものであり、図8の(a)に示すように、互いに近接して配置された角部を有する4つのL字記号8aと、これら4つのL字記号8aの角部を強調する十字記号8bと、を組み合わせてなるものである。十字記号8bは、4つのL字記号8aとは非接触の状態で4つのL字記号8aの相互間に配置されている。このアライメントマーク8において、4つのL字記号8aは必須の構成要素であるが、十字記号8bは任意の構成要素である。4つのL字記号8aのみからなるマークを位相シフタの位置合わせに用いる場合、定点測定精度の誤差が従来のそれの25〜35%程度まで低減する。この4つのL字記号8aに十字記号8bを組み合わせると、照準マークとしての機能がさらに増大する。4つのL字記号8aと十字記号8bとを組み合わせたマークを位相シフタの位置合せに用いる場合、定点測定精度の誤差が従来のそれの10〜15%程度まで低減する。すなわち、従来の装置では位相シフタの位置合せにおいて定点測定精度の誤差が1μmであったのに対して、この装置では位相シフタの位置合せにおいて定点測定精度の誤差が0.1μmまで低減する。
【0071】
また、第1の光学部材51には一対のレーザ照射位置合せ用アライメントマーク51x,51yが形成される。アライメントマーク51x,51yは、光学部材51,52の厚みに応じて光学部材51,52を結像光学系7に対して高精度に位置合せするために、例えば光学部材51に設けられたものであり、光学部材51,52の厚みのばらつきを補償するためにも用いることができるものである。例えば、第1の光学部材51が石英を材料としてつくられたものであり、第2の光学部材52が水晶を材料としてつくられたものである場合に、両パターン51,52間に厚みの差を生じる。このパターン厚みの差に起因して位相シフタのZ方向の位置合せが不正確になり、その結果として被処理基板70の半導体膜73に結像される像の焦点深度(DOF)に狂いを生じる。そこで、パターン厚み補償用アライメントマーク51x,51y,52x,52yを用いることにより、光学部材51,52の各々を結像光学系7に対して高精度に位置合せすることができる。
【0072】
これら第2のアライメントマーク51x,51yは、図8の(b)に示すように、細長い矩形の枠53のなかに複数、例えば2つの円形記号54が等ピッチ間隔で横並びに配置されたものである。本実施形態では円形記号54を採用しているが、本発明はこれのみに限られるものではなく、長円、楕円、角を丸めた三角、角を丸めた四角、六角形、八角形などの擬似円形を用いることもできる。
【0073】
第2のアライメントマークの利用方法について説明する。例えば位相シフタが2個の光学部材を有する場合を想定する。すなわち、一方にレーザ照射位置合せ用のパターンが形成された光学部材があり、他方に所望の光強度分布(ビームプロファイル)用のパターンが形成された光学部材がある場合に、前者の光学部材は使用実績があり、後者の光学部材は使用実績がない。すなわち、前者の光学部材は、すでに次工程以降(例えば露光装置による読み込みと位置合せ)での使用実績がある光路長にてパターン照射するものであり、光路長用にホルダのZ位置(レーザ光軸方向の位置座標)も位置合せ調整済みである。これに対して後者の光学部材は、過去に使用された実績がなく、前者の光学部材とは材質と厚みが異なる。このため、後者の光学部材の実効的な光路長が前者の光学部材の光路長と異なり、両光路長間に差を生じる。この光路長の差に起因して所謂レンズ効果を生じるため、後者を用いて実際に照射されるパターンがすでに実績のある前者を用いて照射されるパターンの寸法と形状にならない(パターンの寸法・形状の不一致)。よって、所望の光強度分布とレーザ照射位置合せ用アライメントマーク用とに切り替えて同じ箇所に2回照射(2ショット)することでこの問題を解決する。
【0074】
次に、上記の使用実績のない光学部材をZ位置合せする方法について説明する。
【0075】
光学部材のZ位置合せには、ダミー基板にレーザ光を試し打ちする方法と、ビームプロファイラを用いてレーザ光像を計測する方法とがある。前者の方法では、ステージ上にダミー基板を載せ、ダミー基板または位相シフタのいずれかをZ方向に移動させ、レーザ光路上の光学部材の焦点深度(DOF)を適当に設定した状態で、ダミー基板にレーザ光を試し打ちし、試し打ちされたパターンを観察し、その観察結果に基づいて位相シフタまたはダミー基板のいずれかをZ方向に移動させ、光学部材の焦点深度(DOF)を変える。試し打ちしたパターンが所望の寸法と形状の目標パターンと一致するまで、試し打ち→観察→焦点深度(DOF)の変更→試し打ちという試行錯誤を繰り返す。
【0076】
一方、後者の方法では、例えば蛍光板をレーザ光路上に配置し、これに光学部材を通過したレーザ光を照射し、そのレーザ光像をビームプロファイラにより直接計測する。計測したレーザ光像のパターンが所望の寸法と形状の目標パターンと一致するまで、レーザ光像の計測→焦点深度(DOF)の変更→レーザ光像の計測という試行錯誤を繰り返す。
【0077】
上記のダミー基板の試し打ち方法は、基準位置を設定するときに利用することができる。先ず結晶化装置の照明光学系を所定の位置に固定し、結晶化装置の光軸(レーザ光路)が動かないようにする。ダミー基板をステージ上に載置し、結晶化装置の光軸を固定した状態でダミー基板にレーザ光を試し打ちする。ダミー基板上の試し打ちポイントをハイトセンサのCCDカメラで見ながら、カメラ視野の原点(X軸とY軸との交点座標(0,0))が試し打ちポイントと重なり合うようにCCDカメラの位置を微調整し、試し打ちポイントにカメラ視野の原点が重なり合う位置にCCDカメラを固定する。このカメラ視野内で試し打ちポイントに一致する原点((0,0)座標)を「基準位置」に設定する(図11の参照符号20a参照)。このようにして設定した基準位置を用いて、結晶化装置の光軸に対して位相シフタの光学部材を高精度に位置合せすることができる。
【0078】
次に、図6の他の実施例として図7を参照して上記とは異なるタイプの位相シフタ5Aについて説明する。
【0079】
このタイプの位相シフタ5Aは、共通のメインホルダ50Aの上に2つのサブホルダ50a,50bを備えている。2つのサブホルダ50a,50bは、互いに異なる光学部材51,52をそれぞれ有し、位相シフタ5Aから取り外して個々に独立した位相シフタとして用いることができるものである。2つのサブホルダ50a,50bを構成する材料は異なるものとしてもよいし、同じものとしてもよい。また、サブホルダ50a,50bとメインホルダ50Aとを異なる材料でつくってもよいし、同じ材料でつくってもよい。
【0080】
2つの光学部材51,52は、ホルダ50Aの上において互いに離れてX方向に横並びに配置され、同じ面積の矩形領域にそれぞれ形成された互いに異なるパターンである。
【0081】
各サブホルダ50a,50bにおいて、各光学部材51,52をY方向の両側からそれぞれ挟み込むように一対の第1のアライメントマーク8がそれぞれ配置されている。これら第1のアライメントマーク8は、光学部材51,52に1対1に対応するようにサブホルダ50a,50bの上にそれぞれ形成されている。この第1のアライメントマーク8は、上記と同様の図8(a)に示した構成のものであり、光学部材51,52を個別に識別するために位相シフタ5Aに設けられたものである。
【0082】
簡単な例として2つのタイプの光学部材がある場合、すなわち一方の光学部材がレーザ照射位置合せパターンを有し、他方の光学部材が所望の光強度分布のパターンを有する場合を説明する。この場合、前者の光学部材はすでに次工程以降(例えば露光装置(ステッパ)による読み込みと位置合せ)で使用するための実績がある光路長でパターンを照射するものであり、シフタホルダのZ位置も調整済みである。
【0083】
これに対して後者の光学部材は、使用実績がなく、前者の光学部材とは基材の材質と厚みが異なるものである。後者と前者との間で基材の材質(すなわち密度)が異なると、実効的な光路長が変わる。また、後者と前者との間で基材の厚みが異なる場合は、勿論、実効的な光路長が変わる。すなわち、レーザ照射位置合せ用パターンを後者に有しても光路長の差からレンズ効果等が発生し、実際に照射されるレーザ照射位置合せパターンの形状がすでに実績がある寸法と形状にならない。よって、既に実績のある前者(レーザ照射位置合せパターン)を用いてレーザ照射位置合せ用アライメントマークを照射し、その後に前者から後者(所望の光強度分布パターン)に切り替えて2回照射することでこの問題(実効的な光路長の変動)を解決する。このとき前者と後者との照射する順序は問わない。また、両光学部材のパターンについてそれぞれ位置合わせが必要なことから位置合せ用の第1のアライメントマークを光学部材ごとにそれぞれ設けることとし、これを例えばCCDカメラ等で撮像し、撮像した画像から前記マークの重心位置を求めて位置情報を得てその位置情報をもとに基準位置からのずれ量を計測し、位置ずれをマスクホルダのXYθ軸駆動機構を用いて調整する。
【0084】
もう一つの例として、位相シフタに水晶板を挿入することによって焦点深度が深くなることが知られている。しかし、水晶板を位相シフタに挿入すると、実効的に光学系の光路長が変動してしまう。この位相シフタ中に次工程以降での位置合せに使用するためにレーザ照射・転写される第2のアライメントマークを有したとしても、照射するとパターンの寸法と形状が水晶板を挿入する前とは異なってしまう。この場合には片方のシフタに水晶板を挿入したシフタを搭載し、もう一方の位相シフタに次工程で使用するアライメントマークを持たし、これらを切り替えて同一箇所に合計2回照射することによりこの問題(実効的な光路長の変動)を解決することができる。
【0085】
次に、図9を参照して本実施形態の結晶化装置1を用いて実際に被処理基板上の非晶質シリコン膜73を結晶化する際に、位相シフタを結晶化装置1の光学系に対して位置合せする場合を説明する。
【0086】
装置1の主スイッチをONすると、自動的に制御部30が装置パラメータのデータ読み出しを行い、種々の装置パラメータが一覧表となって表示装置の画面上に表示される。処理開始の時点において、上述したダミー基板への試し打ち法を用いて予め基準位置が設定されている(工程S1)。図6に示す2つの光学部材51,52をホルダ50に組み込んだ位相シフタ5を結晶化装置1の所定箇所に装着し、第1のアライメントマーク8を用いて一方の光学部材51を基準位置に対して位置合せする(工程S2)。この位置合せ作業は、ハイトセンサ20のCCDカメラで第1のアライメントマーク8を撮像し(工程S3)、撮像した第1のアライメントマーク8の画像データからマークの重心8gの位置座標を求め、求めた位置座標の基準位置20aからの位置ずれ量を算出し、その位置ずれ量が許容値以下となるように調整するものである(工程S4〜S7)。
【0087】
図11は位相シフタの位置合せを説明するためにハイトセンサに設けたCCDカメラのカメラ視野を模式的に示す図である。カメラ視野内にはX軸とY軸の基準線および第1のアライメントマーク8が見えている。X軸基準線とY軸基準線との交点20aは、座標(0,0)の原点であり、ここが結晶化装置1の光軸に位置合せされた基準位置に設定されている。位置合せ前において第1のアライメントマーク8は基準位置20aから外れているが、この画像をハイトセンサ20のCCDカメラで撮像し、撮像した画像データを制御部30に送る(工程S3)。制御部30は、ハイトセンサ20から画像データが入力されると、それに基づいてマーク重心8gの位置座標を求め(工程S4)、求めたマーク重心8gの座標が基準位置20aから外れる位置ずれ量Δx,Δyをそれぞれ求める(工程S5)。制御部30は、マーク8の十字記号8bの上下端の両座標をそれぞれ求め、求めた両座標から十字記号8bの子午線を数式化し、数式化した子午線の傾きから該子午線とy軸との間に生じたθ値の位置ずれ量Δθを求める。さらに制御部30は、求めた位置ずれ量Δx,Δy,Δθがそれぞれ許容値以下(Δx≦0.1μm、Δy≦0.1μm、Δθ≦0.0001deg)となるように、図示しない微調整機構により位相シフタ5を移動させる(工程S6)。位置ずれ量が所定の許容値以下になるまで工程S3〜S6を繰り返す(工程S7)。位置ずれ量Δx,Δy,Δθのすべてが所定の許容値以下になったときに、制御部30は位置合せ完了信号をハイトセンサおよび微調整機構(図示せず)に送って第1の光学部材51の位置合せを完了する(工程S8)。同様にして制御部30は第2の光学部材52の位置合せ作業を行う。
【0088】
制御部30は、各光学部材51,52の位置合せ作業において得た(X,Y,θ)座標データをメモリ34に保存する(工程S9)。保存された座標データは、メモリ34から随時呼び出して利用することができるようになっている。位相シフタ5を装置1から取り外さない限り、この保存データを利用して再現性の高い処理を行なわせることができる。
【0089】
以上のS1〜S9工程までがプリセット工程である。実際に処理を実施するにあたり、オペレータは、制御部30の入力表示部にモード選択画面を呼び出して、一覧表示された複数の処理モードのなかから所望の処理モードを選択する(工程S10)。例えばモード選択画面において2ショットモードを選択すると、1ショット目に使用する位相シフタの光学部材を問い合わせてくるので、例えば第1の光学部材51を1ショット目に使用すると指定し、次いで2ショット目に使用する位相シフタの光学部材を問い合わせてくるので、例えば第2の光学部材52を2ショット目に使用すると指定する。さらに、結晶化処理と転写処理とのいずれを先に行うかを問い合わせてくるので、オペレータは、結晶化処理を先に行う処理モードを選択する。ここで、転写処理とは、次工程(レジスト塗布→露光→現像を含むフォトリソグラフィプロセス)の装置光軸と被処理基板との位置合せに利用される転写マーク77x,77yを被処理基板上に形成する処理をいう(図13参照)。後述するように転写マーク77x,77yは、位相シフタ上の第2アライメントマーク51を被処理基板の位置合せ領域77に転写したものである。
【0090】
オペレータによるプロセス条件の入力が完了すると、制御部30はメモリから記憶しておいた位置合せ座標データを呼び出し、その(x,y,θ)座標に1ショット目に選択した第1の光学部材51を移動させる(工程S11)。ハイトセンサ20のCCDカメラで第1のアライメントマーク8を撮像し、撮像した画像データと前述の呼び出し座標データとを比較して両者の位置ずれ量を求める。求めた位置ずれ量が許容値以下になるまで光学部材の移動→撮像→光学部材の移動を繰り返す(工程S12)。位置ずれ量が許容値以下になったときに、制御部30は位置合せ完了信号を発信して第1の光学部材51の位置合せ動作を完了させる(工程S13)。
【0091】
次に、被処理基板70を結晶化装置1内に搬入し、基板ステージ10の上に被処理基板70を載置し、装置パラメータに含まれる所定のデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて所望の位置に被処理基板70を移動させる。このとき被処理基板70の入射面を結晶化したい位置に移動させ、光源側のレーザ光軸と位置合せした。すなわち、図12に示す第3のアライメントマーク75をハイトセンサ20のCCDカメラで撮像し、撮像した画像データからマーク75の重心位置と基準位置20aとの位置ずれ量を算出し、位置ずれ量が所定の許容値以下になるまで基板移動→撮像→基板移動を繰り返す。さらに、読み出した装置パラメータに含まれる目標ギャップ値に基づいて、制御部30がハイトセンサ20からの検出信号を用いて基板ステージ10のZ方向動作を制御して、実測のギャップを目標ギャップ値に一致させる。このとき使用される装置パラメータは、前回使用したときに最適であった装置パラメータであっても良いし、シミュレーションによって理想的と想定される値であってもよい。すべての位置ずれ量が所定の許容値以下になったところで、制御部30は位置合せ完了信号を発信して被処理基板の位置合せを完了する。
【0092】
被処理基板の位置合せが完了すると、読み出した装置パラメータに基づいてアッテネータ3が自動調整される。すなわち、ビームプロファイラで測定した光強度と予め設定した目標の光強度とを比較してアッテネータ操作量を計算し、アッテネータ3に操作信号を出力して測定した強度が目標の強度になるようにフィードバックしながらアッテネータ3の角度を高精度に調整する。
【0093】
基板ステージ10はX-Y面内で所定間隔ごとにステップ移動して位置を変えることができるようになっているので、被処理基板70の所望の部位を照射位置に位置させることができ、X−Yステップ移動とレーザ光照射とを繰り返すことにより、大面積の非晶質シリコン膜73を結晶化することができる。この様子は表示装置の画面上に表示されるので、オペレータは被処理基板70上のどの部位がレーザ照射されているのかをリアルタイムで知ることができる。また、照射中のレーザ光の光強度分布波形も表示装置の画面上に表示されるので、オペレータはどのような光強度分布波形の変調レーザが照射されているのかをリアルタイムに知ることができる。
【0094】
光源として例えばKrFエキシマレーザ装置2からは波長248nmの長尺ビームのレーザ光80が出射される。レーザ光80は、先ずアッテネータ3において誘電体の多層膜コーティングフィルタの角度を調節してレーザフルエンスが光学的に変調される。次に図示しない偏光素子によって目標のシグマ値に調整され、所定幅に絞られたレーザ光80が照明光学系4のホモジナイザに入射される。次いで、レーザ光80は2組(それぞれx方向とy方向)の小レンズ対からなるホモジナイザによって発散ビームに分割される。なお、1ショットのパルス継続時間は例えば30ナノ秒である。分割されたビームの各中軸光線は、コンデンサレンズ(凸レンズ#1)によってマスクの中心に集まる。また、それぞれのビームは、僅かに発散型になっているために、マスクの開口の全面を照明する。分割された微小出射領域を出た全ての光線群が、それぞれマスク面上の全ての点を照射するので、レーザ出射面上の光強度に面内揺らぎがあっても、マスク面の光強度は均一になる。マスク面の各領域を通過する光線群の中心光線、すなわちホモジナイザの中心部分のレンズ対を通ってきた発散光線群は、マスク面近傍の凸レンズによって平行光線になってから、位相シフタ5の第1の光学部材51を透過し、所定の光強度分布を有する変調光となり、結像光学系7のテレセントリック型縮小レンズを通って、基板ステージ10上に置かれた被処理基板70に入射する。1回目のショットにより被処理基板上の半導体膜73の所定領域が結晶化される(工程S14)。被処理基板70をステップバイステップ移動させながらレーザ光照射し、被処理基板上の結晶化領域76を次々に結晶化していき、制御部30は、その結晶化領域76がその被処理基板70上で最後のものであるか否かを判定する(工程S15)。その結晶化領域76が最後のものであると判定すると、次に制御部30は、処理モードが2ショットモード(又はマルチショットモード)の1ショット目であるか否かを判定する(工程S16)。2ショットモードの1ショット目と判定した場合は、照射位置にある第1の光学部材51を位相シフタ交換機27により第2の光学部材52に入れ替え、工程S11〜S13を繰り返して第2の光学部材52と基準位置との位置合せを行う。
【0095】
2ショット法では、位相シフタ自動交換機27のハンドリング機構により位相シフタ5をX方向に第1及び第2の光学部材51,52の相互間距離(例えば、10mm)だけ移動させ、照射領域のパターンを第1の光学部材51から第2の光学部材52に切り替える。この切り替え機構には例えばボールねじとステッピングモータ等を組み合わせて構築できる。この構成では一般的に10mm/秒以上の速度が実現されていることから切り替え時間は1秒以内でおこなえる。つまり手動でシフタを装着することと比較して明らかに短時間でおこなえる。次いで、制御部30は、メモリ34から装置パラメータのうち所定のデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて位相シフタ上の第2の光学部材52を結像光学系7に対して位置合せする。そして、上記と同様に半導体膜73の同一箇所に異なる光強度分布のレーザ光を照射する(2回目のショット工程S14)。
【0096】
ちなみに、従来の装置では、1回目のショットに用いた位相シフタを別パターンの位相シフタに交換し、交換した位相シフタを用いて2回目のショットを行なっていた。しかし、従来装置における位相シフタの交換には長時間を要するため、処理のスループットが大幅に低下する。これに対して本実施形態の装置1によれば、位相シフタ自動交換機27のハンドリング機構により位相シフタ5を少しの距離だけ移動させることにより、第1の光学部材51から第2の光学部材52に切り替えるため、位相シフタ切り替え時間が大幅に短縮される。また、本実施形態の装置によれば、位相シフタの光学部材を切り替えた後に位置合せ作業に円滑に移行することができるので、従来よりも短時間で入れ替えた光学部材を位置合せすることができる。
【0097】
図14に示すように、結晶化された結晶化領域76には多数の単結晶79a,79bが形成される。例えば2mm×2mmサイズの結晶化領域76に8×8=64個の結晶成長部78が形成されている。また、1つの結晶成長部78には左右対称に2つの単結晶78a,78bが左右対称に成長している。よって、1つの結晶化領域76には合計128個の単結晶78a,78bが存在することになる。
【0098】
さらに、制御部30は、位相シフタ5の第2のアライメントマーク51x,51yを被処理基板の位置合せ領域77に転写させるための制御信号を装置1の各部に送り、第2のアライメントマーク51x,51yのパターンを介して被処理基板の位置合せ領域77にレーザ光を照射して図13に示す転写マーク77x,77yを形成する。基板ステージ10により被処理基板70をステップバイステップで移動させながらレーザ光を照射して、転写マーク77x,77yを結晶化領域76の近傍に次々に転写する。制御部30は、その領域が最後であったか否かを判定し、判定結果がYESの場合は、エンドポイントが検出されたものとして、基板ステージ10をホーム位置に戻し、結晶化処理完了信号を送信する(工程S17)。図示しない基板搬送装置が結晶化処理完了信号を受信すると、被処理基板を結晶化装置1から搬出する(工程S18)。
【0099】
次工程の装置(例えば露光装置)に被処理基板が搬入されると、先ず次工程の装置の光軸に対して被処理基板を位置合せする(工程S19)。この次工程での位置合せには上述の転写マーク77x,77yを利用する。すなわち転写マーク77xを用いて次工程の装置の光軸に対するX方向成分の位置ずれ量Δxを計測し、転写マーク77yを用いて次工程の装置の光軸に対するY方向成分の位置ずれ量Δyを計測し、これらの位置ずれ量Δx,Δyが所定の許容値以下となるように被処理基板の位置を微調整して位置合せする。被処理基板の位置合せが完了すると、次工程の処理を実施する(工程S20)。
【0100】
上記実施例では光強度分布の検出、確認工程を、結晶化工程の前に1回実行した例について説明したが、光強度分布の検出と確認は一連の処理の最初に実施し、1枚の被処理基板70の全面を結晶化してもよいし、結晶化領域数箇所毎に1回、数十、数百、数千箇所毎に1回実施してもよい。なお、光強度分布の検出、確認工程は、多ければ多いほど均一な結晶化を実施することができる。これにより再現性の高いレーザ照射を実現でき、非晶質シリコン膜の結晶化を安定して行うことができる。
【0101】
次に、図10を参照して結晶化方法の一例を説明する。
【0102】
オペレータは、制御器30の入力装置の画面にモード選択画面を呼び出し、登録された複数の処理モードのなかから所望の処理モードを選択する(工程K1)。本実施形態では、結晶化処理後に転写マークを被処理基板上に形成する処理モードを選択した。次いで、ハイトセンサ20のCCDカメラにより図12に示す被処理基板のアライメントマーク75を撮像し、その画像データを用いて被処理基板70を基準位置に対して位置合せする(工程K2)。位置合せ後、結晶化領域76に所定ビームプロファイルのレーザ光を照射して被処理基板上の半導体膜73に単結晶を形成する(工程K3)。基板ステージ10により被処理基板をステップバイステップ移動させるとともにレーザ光を照射して次々に単結晶を形成する。被処理基板上のすべての結晶化領域76を結晶化した後、制御部30は、第2アライメントマーク51x,51yがレーザ光照射域(光軸)に位置するように位相シフタ5の位置を微調整する位置合せを行うとともに、位置合せ領域77がレーザ光照射域(光軸)に位置するように被処理基板の位置を微調整する位置合せを行う。両位置合せ後に、第2アライメントマーク51x,51yを介して位置合せ領域77にレーザ光を照射して被処理基板上に転写マーク77x,77yを形成する(工程K4)。基板ステージ10により被処理基板をステップバイステップ移動させるとともにレーザ光を照射して次々に転写マーク77x,77yを形成する。
【0103】
図13に示すように、位置合せ領域77は結晶化領域76の近傍に位置している。位相シフタの第2のアライメントマーク51x,51yのマークパターンを通して被処理基板の位置合せ領域77にレーザ光を照射し、転写マーク77x,77yを被処理基板上に形成する(工程K4)。これらの転写マーク77x,77yは上記第2のアライメントマーク51x,51yと同一または相似である。一方のマーク77xは横方向成分マークであり、X軸に沿って2個の丸(○)が並んでいる。他方のマーク77yは縦方向成分マークであり、Y軸に沿って2個の丸(○)が並んでいる。横方向成分マーク77xを用いて被処理基板のX座標が位置合せされ、縦方向成分マーク77yを用いて被処理基板のY座標が位置合せされるようになっている。
【0104】
制御器30のCPUはレーザ光照射した領域が最後の結晶化領域であると判断すると、結晶化処理完了の信号をレーザ光源の駆動回路に送り、結晶化処理を終了する(工程K5)。
【0105】
図15を参照して結晶化方法の一例を説明する。
【0106】
オペレータは、制御器30の入力装置の画面にモード選択画面を呼び出し、登録された複数の処理モードのなかから所望の処理モードを選択する(工程K21)。本実施形態では、被処理基板上に転写マークを形成した後に結晶化処理する処理モードを選択した。次いで、ハイトセンサ20のCCDカメラにより被処理基板のアライメントマーク75を撮像し、その画像データを用いて被処理基板70を基準位置に対して位置合せする(工程K22)。位置合せ後、第2アライメントマーク51x,51yを介して位置合せ領域77にレーザ光を照射して被処理基板上に転写マーク77x,77yを形成する(工程K23)。基板ステージ10により被処理基板をステップバイステップ移動させるとともにレーザ光を照射して次々に転写マーク77x,77yを形成する。被処理基板上のすべての位置合せ領域77に転写マーク77x,77yを形成した後、制御部30は、光学部材51がレーザ光照射域(光軸)に位置するように位相シフタ5の位置を微調整する位置合せを行うとともに、結晶化領域76がレーザ光照射域(光軸)に位置するように被処理基板の位置を微調整する位置合せを行う。両位置合せ後に、結晶化領域76に所定ビームプロファイルのレーザ光を照射して被処理基板上の半導体膜73に単結晶を形成する(工程K24)。基板ステージ10により被処理基板をステップバイステップ移動させるとともにレーザ光を照射して次々に単結晶を形成する。制御器30のCPUはレーザ光照射した領域が最後の結晶化領域であると判断すると、結晶化処理完了の信号をレーザ光源の駆動回路に送り、結晶化処理を終了する(工程K25)。
【0107】
図16を参照して結晶化方法の一例を説明する。
【0108】
オペレータは、制御器30の入力装置の画面にモード選択画面を呼び出し、登録された複数の処理モードのなかから所望の処理モードを選択する(工程K31)。本実施形態では、2ショット法で結晶化した後に被処理基板上に転写マークを形成する処理モードを選択した。すでに位相シフタ上の所定の光学部材が基準位置に位置合せされている。ハイトセンサ20のCCDカメラで被処理基板のアライメントマーク75を撮像し、その画像データを制御部30に送る。制御部30は、入力された画像データを数値解析してマーク75の重心の位置座標を求め、求めた位置座標と基準位置との位置ずれ量を求め、求めた位置ずれ量が所定の許容値以下になるようにステージ駆動機構19に制御信号を送って基板ステージ10を移動させ、被処理基板70を基準位置に位置合せする(工程K32)。位置ずれ量が所定の許容値以下になり、被処理基板70が基準位置に対して位置合せされると、制御部30からレーザ光源2に制御信号を送り、被処理基板上の所定の結晶化領域76に1回目のレーザ光を照射する(工程K33)。レーザ光照射→基板ステージの移動→レーザ光照射→基板ステージの移動を繰り返して、ステップバイステップで被処理基板上の結晶化領域76に次々に単結晶を形成していく。被処理基板上のすべての結晶化領域76に対して1回目のレーザ光照射が完了すると、制御部30から交換機27に制御信号を送り、照射位置にある第1の光学部材51を第2の光学部材52に入れ替える(工程K34)。入れ替えた第2の光学部材52を基準位置に対して位置合せする(工程K35)。結晶化領域76に2回目のレーザ光を照射する(工程K36)。位相シフタの第2のアライメントマーク51x,51yにレーザ光軸の照準を合わせてレーザ光を照射し、位置合せ領域77に転写マーク77x,77yを形成する。レーザ光照射→基板ステージの移動→レーザ光照射→基板ステージの移動を繰り返して、ステップバイステップで被処理基板の位置合せ領域77に次々に転写マーク77x,77yを形成する(工程K37)。制御器30のCPUはレーザ光照射した領域が最後の位置合せ領域であると判断すると、結晶化処理完了の信号をレーザ光源の駆動回路に送り、結晶化処理を終了する(工程K38)。
【0109】
(プロキシミティ方式)
図17に示すプロキシミティ型エキシマレーザ結晶化装置(PXELA装置)1Aにも本発明を適用することができる。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0110】
プロキシミティ型の結晶化装置1Aにおいては、位相シフタ5が基板ステージ10上の被処理基板70の入射面に近接配置されている。光学系4で均一化された均一光を位相シフタ5により光強度変調し、この光強度変調光を被処理基板70の入射面に照射するようにしている。
【0111】
図6に示す2つの光学部材51,52を有する位相シフタ5をホルダ50にセットし、結像光学系7に対する各光学部材51,52の位置合せをそれぞれ行う。これらのアライメント作業は、制御部30のメモリ34に保存された過去の実績データを利用して行なうようにしてもよい。
【0112】
制御部30は、各光学部材51,52のアライメント作業において得られたXYZ座標位置とθ値のデータをメモリ34に保存する。保存されたデータは、メモリ34から随時呼び出して利用することができるようになっている。
【0113】
レーザ光80は、光源2から出射され、アッテネータ3で光強度を減衰され、光学系4のホモジナイザ41,43により均一化され、位相シフタ5の第1の光学部材51を透過して所定の光強度分布を有する変調光となり、基板ステージ10上に置かれた被処理基板70に入射する(1回目のショット)。これにより被処理基板上の半導体膜73の所定領域が結晶化される。
【0114】
2ショット法では、位相シフタ自動交換機27のハンドリング機構により位相シフタ5をX方向に第1及び第2の光学部材51,52の相互間距離(例えば10mm)だけ移動させ、照射領域のパターンを第1の光学部材51から第2の光学部材52に切り替える。次いで、制御部30は、メモリ34から装置パラメータのうち所定のデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて位相シフタ上の第2の光学部材52を結像光学系7に対して位置合せする。そして、上記と同様に半導体膜73の同一箇所に異なる光強度分布のレーザ光を照射する(2回目のショット)。
【0115】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、レーザ光の強度を変化させることで、他にもさまざまなプロセスに適応可能である。例えば、レーザ光の強度を下げれば、加熱の作用のみになり、TFTを作る上で必要な不純物活性化工程に用いることができる。また、レーザ光の強度を極端に上げれば、急激な温度上昇を引き起こすため、TFTにおける膜の除去に利用することもできる。なお、これらの現象の利用はTFTに限定されるのみでなく、広く半導体プロセスに適応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施形態に係る結晶化装置を示す構成ブロック図。
【図2】図1の装置の光学系(プロジェクション方式)を示す構成ブロック図。
【図3】(a)は位相シフタの平面図、(b)は位相シフタの側面図、(c)は被処理基板の側断面図、(d)は一次元ビームプロファイル特性線図。
【図4】(a)は他の位相シフタの平面図、(b)は他の位相シフタの側面図、(c)は被処理基板の側断面図、(d)は他の位相シフタによる一次元ビームプロファイル特性線図。
【図5】結晶化装置の制御ブロック図。
【図6】本発明の実施形態の位相シフタを示す平面図。
【図7】他の実施形態の位相シフタを示す平面図。
【図8】(a)は位相シフタ選択用アライメントマークの拡大平面図、(b)はパターン厚み補償用アライメントマークの拡大平面図。
【図9】本発明の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図10】本発明の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図11】アライメントマークを基準位置に位置合せするときのCCDカメラ視野を模式的に示す図。
【図12】被処理基板の平面図。
【図13】図12のAの部分を拡大して被処理基板上に形成された結晶化領域とアライメントマークとを模式的に示す拡大平面図。
【図14】1つの結晶化領域を拡大して示す拡大平面図。
【図15】他の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図16】他の実施形態を説明するためのフローチャート。
【図17】他の実施形態に係る結晶化装置の光学系(プロキシミティ方式)を示す構成ブロック図。
【符号の説明】
【0118】
2…レーザ光源、3…アッテネータ、4…照明光学系(レーザ光学系)、
5,5A,5B,6…位相シフタ、5a,5b…段差、
50A,50B…ホルダ、
50a,50b…サブホルダ、
51,61…光学部材(石英基材、水晶基材)、
51x,51y,52x,52y…第2のアライメントマーク(光学部材(基材)の厚み補償用マーク、位相シフタと結晶化装置の基準位置との位置合せ用マーク、被処理基板と次工程装置との位置合せに利用するマーク)、
6…位相シフタ、62…ドット段差、
7…結像光学系(レーザ光学系)、
8…第1のアライメントマーク(位相シフタ識別用マーク、位相シフタと被処理基板との位置合せ用マーク)、
8a,8b…照準線、8g…マークの重心、
10…基板ステージ、
19…XYZθ駆動機構、
20…ハイトセンサ(CCDカメラ内蔵)、
20a…基準位置(ハイトセンサのCCDカメラ視野内におけるXY座標の原点、and結晶化装置の固定点に該当)、
27…位相シフタ交換機構、
30…制御部、
70…被処理基板、
71…基材(Si)、
72…絶縁膜(SiO2等)、
73…非単結晶半導体膜(a-Si)、
74…キャップ膜(SiO2等)、
75…第3のアライメントマーク(被処理基板識別用マーク、and被処理基板と結晶化装置の基準位置との位置合せ用マーク)、
76…結晶化領域、
77…位置合せ領域、
77x,77y…転写アライメントマーク(第4のアライメントマーク、被処理基板と次工程装置との位置合せ用マーク)、
78…結晶成長部、
79a,79b…単結晶、
80…レーザ光、
81,83…レーザ光の光強度分布(逆ピークパターン状の光強度分布)、
81a,81b,83a,83b…光強度分布のピーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板上の非単結晶半導体膜に照射されるレーザ光を変調するための結晶化装置用位相シフタであって、
レーザ光を所定の光強度と位相に変調するためのパターンが形成された複数の光学部材と、
前記複数の光学部材を保持するホルダと、
位置合せ用の平面視野において結晶化装置のレーザ光軸が位置するところを基準位置としたときに、前記光学部材の固有の光学特性に応じて前記光学部材の各々を前記基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、前記光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマークと、
前記結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写マークを用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、前記ホルダに設けられた第2のアライメントマークと、
を有することを特徴とする結晶化装置用位相シフタ。
【請求項2】
前記ホルダに着脱可能に保持され、前記光学部材を1つ保持するサブホルダをさらに有することを特徴とする請求項1記載の位相シフタ。
【請求項3】
前記第1のアライメントマークは、前記光学部材の屈折率、吸収率、反射率及び偏光特性に応じて前記基準位置に対して前記光学部材を位置合せすることを特徴とする請求項1記載の位相シフタ。
【請求項4】
前記第2のアライメントマークは、横方向成分マークおよび縦方向成分マークを含むことを特徴とする請求項1記載の位相シフタ。
【請求項5】
レーザ光源と、非単結晶半導体膜を有する被処理基板を支持する基板ステージと、前記レーザ光源からのレーザ光の光強度を均一化する照明光学系と、前記照明光学系を通過したレーザ光を前記基板ステージに支持された被処理基板に結像させる結像光学系と、前記照明光学系を通過したレーザ光を変調する位相シフタと、を具備する結晶化装置であって、
前記位相シフタは、
レーザ光を所定の光強度と位相に変調するためのパターンが形成された複数の光学部材と、
前記複数の光学部材を保持するホルダと、
位置合せ用の平面視野において結晶化装置のレーザ光軸が位置するところを基準位置としたときに、前記光学部材の固有の光学特性に応じて前記光学部材の各々を前記基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、前記光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマークと、
前記結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写アライメントマークを用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、前記ホルダに設けられた第2のアライメントマークと、
を有し、
前記結晶化装置は、
前記複数の光学部材の中から所望の光学部材を選択し、選択した光学部材に切り替える選択切り替え手段と、
前記第1のアライメントマークを用いて前記結像光学系に対して前記選択した光学部材を位置合せするとともに、前記基板ステージ上の被処理基板を前記結像光学系に対して位置合せし、この位置合せされた被処理基板に対して前記位相シフタを位置合せする位置合せ手段と、
前記位置合せされた位相シフタの第2のアライメントマークを通って被処理基板にレーザ光が照射され、該被処理基板上に前記第2のアライメントマークが転写された転写マークが形成されるように、前記レーザ光源を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする結晶化装置。
【請求項6】
前記ホルダが複数のサブホルダを有し、該サブホルダは前記光学部材を1つ保持するものであり、
前記選択切り替え手段が前記複数のサブホルダのなかから1つを選択し、選択したサブホルダごと光学部材を切り替えることを特徴とする請求項5記載の結晶化装置。
【請求項7】
前記選択切り替え手段は、実施した前記結合光学系と前記光学部材との位置合せデータとしてXYZ座標位置とθ値を保存しておき、保存した前記位置合せデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて前記光学部材を切り替えることを特徴とする請求項5記載の結晶化装置。
【請求項8】
前記位相シフタは、周期的なドット段差を有するドット型の光学部材を有するか、又はラインとスペース段差とを有するラインアンドスペース型の光学部材を有することを特徴とする請求項5記載の結晶化装置。
【請求項9】
位相シフタで変調したレーザ光を被処理基板上の非単結晶半導体膜に照射して該非単結晶半導体を結晶化する結晶化方法であって、
(a)複数の光学部材と第1及び第2のアライメントマークとを有する位相シフタ、および、結晶化領域と位置合せ領域と第3のアライメントマークとを有する被処理基板をそれぞれ準備し、
(b)結晶化装置のレーザ光軸に対応する基準位置を設定し、
(c)前記第1のアライメントマークを用いて前記基準位置に対して前記位相シフタを位置合せし、位置合せした座標データを記憶しておき、
(d)前記第3のアライメントマークを用いて被処理基板を前記基準位置に対して位置合せし、
(e)前記複数の光学部材のうちから1つを選択し、
(f)前記記憶しておいた位置合せ座標データを呼び出し、前記選択した光学部材が前記呼び出した位置合せ座標に位置するように、前記位相シフタを移動させ、
(g)前記結晶化領域にレーザ光を照射して前記非単結晶半導体を結晶化するとともに、前記第2のアライメントマークを通して前記位置合せ領域にレーザ光を照射し、前記第2のアライメントマークを前記位置合せ領域に転写する、
ことを特徴とする結晶化方法。
【請求項10】
前記(g)工程では、前記結晶化領域の非単結晶半導体を結晶化した後に、前記第2のアライメントマークを用いて前記被処理基板の位置合せ領域に転写マークを形成することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記(g)工程では、前記第2のアライメントマークを用いて前記位置合せ領域に転写マークを形成した後に、前記結晶化領域の非単結晶半導体を結晶化することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記(g)工程の後に、前記転写マークを用いて被処理基板を結晶化後の次工程の装置の光軸に対して位置合せすることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項1】
被処理基板上の非単結晶半導体膜に照射されるレーザ光を変調するための結晶化装置用位相シフタであって、
レーザ光を所定の光強度と位相に変調するためのパターンが形成された複数の光学部材と、
前記複数の光学部材を保持するホルダと、
位置合せ用の平面視野において結晶化装置のレーザ光軸が位置するところを基準位置としたときに、前記光学部材の固有の光学特性に応じて前記光学部材の各々を前記基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、前記光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマークと、
前記結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写マークを用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、前記ホルダに設けられた第2のアライメントマークと、
を有することを特徴とする結晶化装置用位相シフタ。
【請求項2】
前記ホルダに着脱可能に保持され、前記光学部材を1つ保持するサブホルダをさらに有することを特徴とする請求項1記載の位相シフタ。
【請求項3】
前記第1のアライメントマークは、前記光学部材の屈折率、吸収率、反射率及び偏光特性に応じて前記基準位置に対して前記光学部材を位置合せすることを特徴とする請求項1記載の位相シフタ。
【請求項4】
前記第2のアライメントマークは、横方向成分マークおよび縦方向成分マークを含むことを特徴とする請求項1記載の位相シフタ。
【請求項5】
レーザ光源と、非単結晶半導体膜を有する被処理基板を支持する基板ステージと、前記レーザ光源からのレーザ光の光強度を均一化する照明光学系と、前記照明光学系を通過したレーザ光を前記基板ステージに支持された被処理基板に結像させる結像光学系と、前記照明光学系を通過したレーザ光を変調する位相シフタと、を具備する結晶化装置であって、
前記位相シフタは、
レーザ光を所定の光強度と位相に変調するためのパターンが形成された複数の光学部材と、
前記複数の光学部材を保持するホルダと、
位置合せ用の平面視野において結晶化装置のレーザ光軸が位置するところを基準位置としたときに、前記光学部材の固有の光学特性に応じて前記光学部材の各々を前記基準位置に対してそれぞれ位置合せするために、前記光学部材の各々に1対1に対応して設けられた第1のアライメントマークと、
前記結晶化領域の各々に1対1に対応するようにレーザ光の照射により被処理基板上に転写され、該転写アライメントマークを用いて結晶化後の被処理基板を次工程以降の装置に対して位置合せするために、前記ホルダに設けられた第2のアライメントマークと、
を有し、
前記結晶化装置は、
前記複数の光学部材の中から所望の光学部材を選択し、選択した光学部材に切り替える選択切り替え手段と、
前記第1のアライメントマークを用いて前記結像光学系に対して前記選択した光学部材を位置合せするとともに、前記基板ステージ上の被処理基板を前記結像光学系に対して位置合せし、この位置合せされた被処理基板に対して前記位相シフタを位置合せする位置合せ手段と、
前記位置合せされた位相シフタの第2のアライメントマークを通って被処理基板にレーザ光が照射され、該被処理基板上に前記第2のアライメントマークが転写された転写マークが形成されるように、前記レーザ光源を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする結晶化装置。
【請求項6】
前記ホルダが複数のサブホルダを有し、該サブホルダは前記光学部材を1つ保持するものであり、
前記選択切り替え手段が前記複数のサブホルダのなかから1つを選択し、選択したサブホルダごと光学部材を切り替えることを特徴とする請求項5記載の結晶化装置。
【請求項7】
前記選択切り替え手段は、実施した前記結合光学系と前記光学部材との位置合せデータとしてXYZ座標位置とθ値を保存しておき、保存した前記位置合せデータを呼び出し、呼び出したデータに基づいて前記光学部材を切り替えることを特徴とする請求項5記載の結晶化装置。
【請求項8】
前記位相シフタは、周期的なドット段差を有するドット型の光学部材を有するか、又はラインとスペース段差とを有するラインアンドスペース型の光学部材を有することを特徴とする請求項5記載の結晶化装置。
【請求項9】
位相シフタで変調したレーザ光を被処理基板上の非単結晶半導体膜に照射して該非単結晶半導体を結晶化する結晶化方法であって、
(a)複数の光学部材と第1及び第2のアライメントマークとを有する位相シフタ、および、結晶化領域と位置合せ領域と第3のアライメントマークとを有する被処理基板をそれぞれ準備し、
(b)結晶化装置のレーザ光軸に対応する基準位置を設定し、
(c)前記第1のアライメントマークを用いて前記基準位置に対して前記位相シフタを位置合せし、位置合せした座標データを記憶しておき、
(d)前記第3のアライメントマークを用いて被処理基板を前記基準位置に対して位置合せし、
(e)前記複数の光学部材のうちから1つを選択し、
(f)前記記憶しておいた位置合せ座標データを呼び出し、前記選択した光学部材が前記呼び出した位置合せ座標に位置するように、前記位相シフタを移動させ、
(g)前記結晶化領域にレーザ光を照射して前記非単結晶半導体を結晶化するとともに、前記第2のアライメントマークを通して前記位置合せ領域にレーザ光を照射し、前記第2のアライメントマークを前記位置合せ領域に転写する、
ことを特徴とする結晶化方法。
【請求項10】
前記(g)工程では、前記結晶化領域の非単結晶半導体を結晶化した後に、前記第2のアライメントマークを用いて前記被処理基板の位置合せ領域に転写マークを形成することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記(g)工程では、前記第2のアライメントマークを用いて前記位置合せ領域に転写マークを形成した後に、前記結晶化領域の非単結晶半導体を結晶化することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記(g)工程の後に、前記転写マークを用いて被処理基板を結晶化後の次工程の装置の光軸に対して位置合せすることを特徴とする請求項9記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−141036(P2010−141036A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314649(P2008−314649)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】
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