説明

結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法及び結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体

【課題】機械的特性に優れたポリ乳酸の成形体を与えることができる生産性の高い該成形体の製造方法、機械的特性に優れたポリ乳酸の成形体、及びポリ乳酸の成形体の機械的特性の向上方法を提供する。
【解決手段】特定のアミド化合物の結晶が針状結晶若しくは柱状結晶の形態及び/又は微細な状態で含有する溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を成形する工程、より具体的にはアミド化合物がポリ乳酸系樹脂に完全に溶解させ、次いでその樹脂組成物を結晶化温度以下に冷却し、そのポリ乳酸系樹脂組成物をポリ乳酸系樹脂の融点以上かつ該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲で成形する工程を備える製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法、結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体及びポリ乳酸系樹脂成形体の剛性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に優しい資源循環型プラスチックが注目されている。それらの1つとして、ポリ乳酸がある。ポリ乳酸は、植物から得ることができるため、石油資源を使用しないカーボンニュートラルな素材、持続可能な資源として、循環型社会の構築に貢献し得るものであり、脚光を浴びている。また、ポリ乳酸は、他の樹脂に比べて、生分解性が高く、環境に優しい樹脂として、幅広い分野での普及が期待される樹脂である。
【0003】
しかしながら、ポリ乳酸は、従来公知の結晶性の熱可塑性樹脂と比較して必ずしも十分な基本物性を備えているものではなく、応用分野・利用分野によっては熱的特性、機械的特性、光学的特性、電気的特性などの性能不足、原材料コストが高いという問題などがあり、ポリ乳酸の普及には解消しなければならない諸問題が山積されている。
前記問題の一般的な解決手段としては、例えば非晶性のポリ乳酸成形品を結晶化させて、結晶性のポリ乳酸成形品とする方法が挙げられる。しかし、ポリ乳酸は、その結晶化には長時間を要するために生産性が低くなりコストアップとなることが知られている。
そのために、これまでに特定の添加剤を使用した、ポリ乳酸の結晶化時間の短縮化方法や成形品の耐熱性、機械的特性、透明性の改良方法が提案させている(特許文献1〜4)。しかしながら、現状の細分化された用途によって或いは工業的生産性な観点から、必ずしも満足できるというものではなく、基本物性がより改良されたポリ乳酸成形品を高い生産性で製造できる方法の開発が切望されているのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開平8―3432号公報
【特許文献2】特開平10−87975号公報
【特許文献3】特開2003−138153号公報
【特許文献4】特開2006−328163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、機械的特性に優れたポリ乳酸の成形体を与えることができる高生産性の製造方法、機械的特性に優れたポリ乳酸の成形体、及びポリ乳酸の成形体の機械的特性の向上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究をした結果、下記(1)〜(9)の知見を得た。
(1)射出成形において、ポリ乳酸に結晶化核剤を含有させたポリ乳酸系樹脂組成物の離型時間が、結晶化核剤を含有しないポリ乳酸の離型時間よりも短縮化されるものの、生産性の観点からは離型時間をさらに短縮させる方法が必要であったこと。
(2)特定のアミド化合物の結晶が微細な状態で存在する溶融状態のポリ乳酸系樹脂を成形加工した場合、ポリ乳酸の結晶化時間(ポリ乳酸樹脂組成物の離型時間)がより短縮され、成形性が良好であったこと(成形体の生産性の向上に寄与すること)。
(3)前記アミド化合物が溶融ポリ乳酸中に針状結晶又は柱状結晶の形態で存在する場合、その結晶が存在する温度範囲でそのポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形して得られた成形体は剛性が向上したこと、それに加えて耐衝撃性も向上する傾向が認められたこと。
(4)前記(2)及び(3)の効果をより効果的に発揮させたい場合、特定のアミド化合物の結晶が、実質的に針状結晶若しくは柱状結晶、かつ微細な結晶の状態で存在していることが重要であること。
(5)本発明に係るアミド化合物をポリ乳酸に該アミド化合物の溶解温度以上で溶解させた後(該アミド化合物をポリ乳酸に実質的に完全に溶解させた後)、そのポリ乳酸系樹脂組成物の結晶化温度以下に該樹脂組成物を冷却することにより、ポリ乳酸中で、該アミド化合物の結晶が針状結晶若しくは柱状結晶の形態となり、またその粒子径も微細なものとすることが可能であること。簡便な方法として調製できること。
(6)ポリ乳酸の結晶が当該アミド化合物の針状結晶や柱状結晶を起点に成長するとき、成形時の樹脂の流動方向とほぼ直交する方向にポリ乳酸の結晶が成長し(換言すると、ポリ乳酸の結晶のc軸は樹脂の流動方向とほぼ平行にある。)、一定の配向性を示した。即ち、従来公知のポリ乳酸樹脂の成形体では見られなかった特異的な配向性を示したこと。
(7)前記(6)に記載の成形体の配向性は、アミド化合物の結晶が一定方向に配向していることに相関していること。これは、アミド化合物の結晶が針状結晶や柱状結晶の形態にある場合に、その結晶が樹脂の流動方向に沿って移動しながらその流動方向に列び(参照;図2)、その結果、一定方向(樹脂の流動方向)に配向している状態となること。
(8)前記の配向性を有する当該アミド化合物の針状結晶や柱状結晶が非晶性のポリ乳酸樹脂に存在しそれを成形した場合、機械的特性の改善に加え、結晶性のポリ乳酸の透明性が向上する傾向があること。
(9)比較的少ない使用量のアミド化合物で本発明の効果を奏することが可能であり、ポリ乳酸のリサイクルや環境保護に貢献できること、
本発明は、かかる知見を基づいて完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の項目を提供するものである。
【0008】
(項1)一般式(1)
−(CONHR (1)
[式中、mは2〜6の整数を表す。Rは、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。2〜6個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基を表す。]
で表されるポリカルボン酸系アミド化合物、及び
一般式(2)
−(NHCOR (2)
[式中nは2〜6の整数を表す。Rは、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族ポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族ポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素6〜18の芳香族ポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基を表す。2〜6個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。]
で表されるポリアミン系アミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミド化合物の結晶が針状結晶若しくは柱状結晶の形態及び/又は微細な状態で含有する溶融状態若しくは非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物を成形する工程を含むことを特徴とする結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法。
【0009】
(項2)アミド化合物の結晶が、溶融状態若しくは非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物中で、成形前又は成形中に一定方向の配向状態にある、上記項1に記載の製造方法。
【0010】
(項3)(a)上記項1に記載の少なくとも一種のアミド化合物をポリ乳酸系樹脂に該アミド化合物の溶解温度以上で溶解させて、溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を得る工程、
(b)その溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物をその樹脂組成物の結晶化温度以下に冷却する工程、
(c)その冷却されたポリ乳酸系樹脂組成物を該ポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲で溶融させる工程、及び
(d)その溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を流動させた後又は流動させながら該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度範囲で成形する工程
を備えていることを特徴とする結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法。
【0011】
(項4)(a)上記項1に記載の少なくとも一種のアミド化合物をポリ乳酸系樹脂に該アミド化合物の溶解温度以上で溶解させて、溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を得る工程、
(b)その溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物をその樹脂組成物の結晶化温度以下に冷却する工程、
(c)その冷却されたポリ乳酸系樹脂組成物を該ポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲で溶融させる工程、
(d)その溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を流動させた後又は流動させながらポリ乳酸系樹脂組成物をガラス転移温度未満に急冷する工程、及び
(e)その急冷されたポリ乳酸系樹脂組成物を該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度範囲で成形する工程
を備えていることを特徴とする結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法。
【0012】
(項5)ポリ乳酸系樹脂組成物が、さらに加水分解抑制剤、滑剤、可塑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防かび剤、抗菌剤、光安定剤、耐電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料、充填剤及びカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリ乳酸改質剤を含有する、上記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【0013】
(項6)上記項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法で得られる、配向度が10以上である結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体。
【0014】
(項7)さらに、曲げ弾性率が3500MPa以上、アイゾット衝撃強度が15kJ/m以上である、上記項6に記載の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体。
【0015】
(項8)さらに、引張弾性率が3000MPa以上、デュポン衝撃値が0.5J以上である、上記項6に記載の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体。
【0016】
(項9)上記項1に記載の少なくとも一種のアミド化合物の針状結晶若しくは柱状結晶を溶融状態若しくは非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物中で一定方向に配向せしめた後又は配向させながら成形することを特徴とするポリ乳酸系樹脂成形体の剛性の向上方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法によれば、ポリ乳酸系樹脂成形体の成形時間の短縮化が可能となり生産性の向上に寄与でき(上記項1の発明)、またさらに機械的特性の向上に寄与することができる(上記項2〜4の発明)。より詳細には、アミド化合物の結晶が、針状結晶又は柱状結晶の形態でそれが配向している状態にある場合には特に剛性の向上に寄与することができ、微細な状態の場合には成形時間の短縮に寄与することができる。
また、本ポリ乳酸系樹脂成形体の発明によれば、機械的特性に優れた新規なポリ乳酸系樹脂成形体を得ることができる。さらに本発明の剛性の向上方法によれば、ポリ乳酸系樹脂成形体の剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法>
本発明に係る結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法は、i)上記項1に記載の通り、ポリ乳酸系樹脂、上記一般式(1)で表されるポリカルボン酸系アミド化合物及び一般式(2)で表されるポリアミン系アミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミド化合物、必要に応じて下記のポリ乳酸改質剤を含有するポリ乳酸系樹脂組成物を成形して当該成形体を製造するにあたり、該アミド化合物の結晶が針状結晶若しくは柱状結晶の形態及び/又は微細な状態で存在する溶融状態若しくは非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物から成形すること、ii)成形体の機械的特性を向上を目的として、上記項2に記載の通り、該アミド化合物の結晶が溶融状態若しくは非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物中で一定方向に配向している状態にあること、iii)上記項3に記載の通り、前記のアミド化合物をポリ乳酸系樹脂に該アミド化合物の溶解温度以上で加熱溶解させて(実質的には該アミド化合物を完全にポリ乳酸系樹脂に溶解させることを目的とする手段)、次いで溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を結晶化温度以下に冷却し、次いでポリ乳酸系樹脂の溶融温度以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲で溶融させ、その樹脂組成物を流動させた後又は流動させながら該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度範囲で成形すること、iv)上記項4に記載の通り、前記アミド化合物をポリ乳酸系樹脂に該アミド化合物の溶解温度以上で加熱溶解させて、次いで溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物をその樹脂組成物の結晶化温度以下に冷却し、次いで冷却されたポリ乳酸系樹脂組成物を該ポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲で溶融させ、その樹脂組成物を流動させた後又は流動させながらポリ乳酸系樹脂組成物をガラス転移温度未満に急冷し、次いで急冷されたポリ乳酸系樹脂組成物を該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度範囲で成形すること、を特徴とする。
【0019】
[ポリ乳酸系樹脂]
本発明に係るポリ乳酸系樹脂は、種々の光学純度の乳酸単位を有するものであり、例えば、L−乳酸残基からなる構造単位(L−乳酸単位)、D−乳酸残基からなる構造単位(D−乳酸単位)等で構成される。また、本発明に係るポリ乳酸系樹脂は、公知の製造方法で得られたものや市販品を使用することができる。
具体的には、L−乳酸単位を主体とするポリ乳酸系樹脂、D−乳酸単位を主体とするポリ乳酸系樹脂、L−乳酸単位を主体とするポリ乳酸系樹脂とD−乳酸単位を主体とするポリ乳酸系樹脂との混合物(ステレオコンプレックス)、L−乳酸単位とD−乳酸単位とがランダム重合若しくはブロック重合したポリ乳酸系樹脂、などが挙げられ、好ましくはL−乳酸単位を主体とするポリ乳酸系樹脂及び/又はD−乳酸単位を主体とするポリ乳酸系樹脂、より好ましくはL−乳酸単位を主体とするポリ乳酸系樹脂又はD−乳酸単位を主体とするポリ乳酸系樹脂が推奨される。
前記の「主体とする」とは、乳酸単位の何れか一方の比率が、ポリ乳酸系樹脂を構成する全構造単位に対して、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100%、特に95〜100%の推奨範囲を意味する。このような範囲内で、ポリ乳酸系樹脂の融点が高くなり、耐熱性や機械的特性が良好なポリ乳酸系樹脂成形体が得られやすく、またその樹脂成形体の結晶化時間がより短縮化される傾向があることから特に優位性がある。
【0020】
また、市販のポリ乳酸を使用することは入手の容易性の観点から好ましく、具体的には、ネイチャーワークス(株)の商品名Nature works、三井化学(株)製の商品名レイシア、カネボウ合繊(株)製の商品名ラクトロン、大日本インキ化学工業(株)製の商品名プラメート、東洋紡績(株)製の商品名バイロエコール、トヨタ自動車(株)製のエコプラスチックなどが挙げられる。これらの市販品は、通常L−乳酸単位を主体とするポリ乳酸系樹脂であり、そのL−乳酸単位の構成比率はポリ乳酸系樹脂を構成する全構造単位に対して通常80〜99.5モル%である。これらの市販品中でも、結晶化速度及び機械的特性の観点から、好ましくはL−乳酸単位の比率が高い結晶グレードである、三井化学(株)製のLACEA H−400、LACEA H−100、LACEA H−440、より好ましくはL−乳酸単位の比率95%以上のポリ乳酸系樹脂である、三井化学(株)製のLACEA H−400、LACEA H−100が推奨される。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「ポリ乳酸系樹脂を構成する全構造単位」とは、ポリ乳酸系樹脂が乳酸由来の構造単位(乳酸残基)のみから構成されている場合はL−乳酸単位とD−乳酸単位との合算した単位を意味し、下記の乳酸以外のヒドロキシカルボン酸由来の構造単位を含有する場合には乳酸由来の構造単位とヒドロキシカルボン酸由来の構造単位とを合算した単位を意味する。
【0021】
本発明に係るポリ乳酸系樹脂は、公知の製造方法に従って、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、L−ラクチド、D−ラクチド、meso−ラクチド単独又はこれらの混合物から誘導されるものを出発原料として、乳酸の直接脱水縮合法やラクチドの開環法等に用いて得ることができる。
出発原料の入手容易性の観点から、植物由来の出発原料に限定されるものではなく、L−乳酸メチル、D−乳酸メチル、L−乳酸エチル、D−乳酸エチル等の乳酸誘導体や微生物により生成されるものを出発原料(単量体)として使用することができる。
【0022】
また、本発明に係るポリ乳酸系樹脂は、本発明の効果を奏する範囲で、乳酸残基以外の他の構造単位を用いることができる。その比率は、ポリ乳酸系樹脂を構成する全構造単位に対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、特に5モル%以下が推奨される。このような他の構造単位として使用できるヒドロキシカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族グリコールとから誘導されるヒドロキシカルボン酸、グリコール酸、β−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸等のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0023】
本発明に係るポリ乳酸系樹脂の分子量は、特に限定されないが、数平均分子量として好ましくは5,000〜400,000の範囲、より好ましくは10,000〜200,000の範囲が推奨される。この範囲において、ポリ乳酸系樹脂成形体の機械的特性、耐加水分解安定性、成形性の点で優位性が認められる。
本明細書及び特許請求の範囲において、数平均分子量とは、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の値である。
【0024】
[アミド化合物]
本発明に係るアミド系化合物は、上記一般式(1)で表されるポリカルボン酸系アミド化合物及び一般式(2)で表されるポリアミン系アミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である。前記ポリカルボン酸系アミド化合物とポリアミン系アミド化合物は、そのアミド結合が―CONH−と―NHCO−との構造的な差違はあるものの、総炭素数の範囲や組み合わせ等において構造上同等ないし同類のアミド化合物である。原材料の入手や製造の容易性の観点から、好ましくは一般式(1)で表されるポリカルボン酸系アミド化合物が推奨される。
【0025】
一般式(1)で表されるポリカルボン酸系アミド系化合物において、一般式(1)に記載のRは、炭素数3〜18、好ましくは3〜15の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基、炭素数6〜18、好ましくは6〜15の脂環族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18、好ましくは6〜15の芳香族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基である。また、mは、2〜6の整数であり、好ましくは2〜4が推奨される。
また、Rは、炭素数3〜18、好ましくは3〜15の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜15の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜15の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基である。
【0026】
なお、一般式(1)における炭素数とは、Rではポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基の総炭素数、Rではモノアミンからアミノ基を除いて得られる残基の総炭素数をそれぞれ意味する。また、本明細書及び特許請求の範囲において、脂環族ポリカルボン酸及び脂環族モノアミンとは脂環基を有するものを表し、芳香族ポリカルボン酸及び芳香族モノアミンとは芳香族基を有するものを表す。
【0027】
本発明の効果の観点から、一般式(1)におけるRとRの好ましい組み合わせは、Rが脂肪族ポリカルボン酸の場合、Rは脂環族モノアミン又は芳香族モノアミンが推奨され、Rが脂環族ポリカルボン酸の場合、Rは脂肪族モノアミン又は脂環族モノアミンが推奨され、また、Rが芳香族ポリカルボン酸の場合、Rは脂肪族モノアミン又は脂環族モノアミンが推奨される。
【0028】
上記脂肪族ポリカルボン酸としては、具体的には、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3−プロペントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸等のトリカルボン酸、エタンテトラカルボン酸、プロパンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ドデカンテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸、ペンタンペンタカルボン酸等のペンタカルボン酸、テトラデカンヘキサカルボン酸等のヘキサカルボン酸が例示される。
【0029】
上記脂環族ポリカルボン酸としては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸等のジカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,3−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸等のトリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、5−(コハク酸)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸等のテトラカルボン酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸等のヘキサカルボン酸が例示される。
【0030】
上記芳香族ポリカルボン酸としては、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等のジカルボン酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等のトリカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルメタンテトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、ベンジジン−3,3−ジカルボキシル−N,N'−四酢酸、ジフェニルプロパンテトラカルボン酸、フタロシアニンテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸等のペンタカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸等のヘキサカルボン酸が例示される。
【0031】
上記ポリカルボン酸の中でも、本発明の効果の観点から、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0032】
上記脂肪族モノアミンとしては、具体的には、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン、ヘネイコシルアミン、ドコシルアミン等が例示される。
【0033】
上記脂環族モノアミンとしては、具体的には、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン、2,4−ジメチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、3−エチルシクロヘキシルアミン、4−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、3−n−プロピルシクロヘキシルアミン、4−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、3−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、4−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、3−n−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、3−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、4−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、3−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、2−n−オクチルシクロヘキシルアミン、3−n−オクチルシクロヘキシルアミン、4−n−オクチルシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、2−メチルシクロヘキシルメチルアミン、3−メチルシクロヘキシルメチルアミン、4−メチルシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルメチルアミン、トリメチルシクロヘキシルメチルアミン、メチルシクロヘキシルプロピルアミン等が例示される。
【0034】
上記芳香族モノアミンとしては、具体的には、アニリン、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、1−アミノアントラセン、o−トルイジン、p−トルイジン、m−トルイジン、2−エチルアニリン、3−エチルアニリン、4−エチルアニリン、2−プロピルアニリン、3−プロピルアニリン、4−プロピルアニリン、クミジン、2−n−ブチルアニリン、3−n−ブチルアニリン、4−n−ブチルアニリン、2−イソブチルアニリン、3−イソブチルアニリン、4−イソブチルアニリン、2−sec−ブチルアニリン、3−sec−ブチルアニリン、4−sec−ブチルアニリン、2−tert−ブチルアニリン、3−tert−ブチルアニリン、4−tert−ブチルアニリン、2−n−ペンチルアニリン、3−n−ペンチルアニリン、4−n−ペンチルアニリン、2−イソペンチルアニリン、3−イソペンチルアニリン、4−イソペンチルアニリン、2−sec−ペンチルアニリン、3−sec−ペンチルアニリン、4−sec−ペンチルアニリン、2−tert−ペンチルアニリン、3−tert−ペンチルアニリン、4−tert−ペンチルアニリン、2−ヘキシルアニリン、3−ヘキシルアニリン、4−ヘキシルアニリン、2−ヘプチルアニリン、3−ヘプチルアニリン、4−ヘプチルアニリン、2−オクチルアニリン、3−オクチルアニリン、4−オクチルアニリン、2−ノニルアニリン、3−ノニルアニリン、4−ノニルアニリン、2−デシルアニリン、3−デシルアニリン、4−デシルアニリン、シクロヘキシルアニリン、ジフェニルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジプロピルアニリン、ジイソプロピルアニリン、ジ−n−ブチルアニリン、ジ−sec−ブチルアニリン、ジ−tert−ブチルアニリン、トリメチルアニリン、トリエチルアニリン、トリプロピルアニリン、トリ−tert−ブチルアニリン、アニシジン、エトキシアニリン、ジメトキシアニリン、ジエトキシアニリン、トリメトキシアニリン、トリ−n−ブトキシアニリン、ベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリメチルベンジルアミン、α−フェニルエチルアミン、β−フェニルエチルアミン、ジメトキシフェニルエチルアミン、α−フェニルプロピルアミン、β−フェニルプロピルアミン、γ−フェニルプロピルアミン、メチルフェニルプロピルアミン等が例示される。
【0035】
上記モノアミンの中でも、本発明の効果の観点から、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、4−エチルシクロヘキシルアミン、4−n−プロピルシクロヘキシルアミン、4−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、4−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン、3,4−ジメチルシクロヘキシルアミン、3,5−ジメチルシクロヘキシルアミン、アニリン、4−n−ブチルアニリン、4−tert−ブチルアニリンが好ましい。
【0036】
一般式(2)で表されるポリアミン系アミド化合物において、一般式(2)に記載のRは、炭素数3〜18、好ましくは3〜15の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪族ポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18、好ましくは6〜15の脂環族ポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18、好ましくは6〜15の芳香族ポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基である。また、nは、2〜6の整数であり、好ましくは2〜4が推奨される。
また、Rは、炭素数3〜18、好ましくは3〜15の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基、炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜15の脂環族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜15の芳香族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基である。
なお、一般式(2)における炭素数とは、Rではポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基の総炭素数、Rではモノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基の総炭素数をそれぞれ意味する。また、本明細書及び特許請求の範囲において、脂環族ポリアミン酸及び脂環族モノカルボン酸とは脂環基を有する化合物を表し、芳香族ポリアミン及び芳香族モノカルボン酸とは芳香族基を有する化合物を表す。
【0037】
本発明の効果の観点から、一般式(2)におけるRとRの好ましい組み合わせは、Rが脂肪族ポリアミンの場合、Rは脂環族モノカルボン酸又は芳香族モノカルボン酸が推奨され、Rが脂環族ポリアミンの場合、Rは脂肪族モノカルボン酸又は脂環族モノカルボン酸が推奨され、また、Rが芳香族ポリアミンの場合、Rは脂肪族モノカルボン酸又は脂環族モノカルボン酸が推奨される。
【0038】
上記脂肪族ポリアミンとしては、具体的には、脂環族ポリアミンとしては、 1,4−ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4−アミノメチルオクタン−1,8−ジアミン、1,2,3−プロパントリアミン、2−エチル−1,2,3−プロパントリアミン、1,2,6−ヘキサントリアミン、1,3,6−ヘキサントリアミン、1,9,10−オクタデカントリアミン、1,4,7−ヘプタントリアミン、1,5,10−デカントリアミン、1,8,17−ヘプタデカントリアミン、1,2,4−ブタントリアミン、1, 3,5−ペンタントリアミン、2,5−ジメチル−1,4,7−ヘプタントリアミン、6−エチル−3,9−ジメチル−3,6,9−ウンデカントリアミン、1,5,11−ウンデカントリアミン、1,6,11−ウンデカントリアミン、1,3,5,7−ヘプタンテトラミン等が例示される。
【0039】
上記脂環族ポリアミンとしては、具体的には、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシル、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソフォロンジアミン、メンセンジアミン、メラミン、2,4,6−トリアミノピリミジン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4,5−テトラアミノシクロヘキサン等が例示される。
【0040】
上記芳香族ポリアミンとしては、具体的には、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、4,5−ジメチル−o−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノメシチレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、9,10−ジアミノフェナンスレン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンジ−o−トルイジン、4,4’−メチレンジ−2,6−キシリジン、4,4’−メチレンジ−2,6−ジエチルアニリン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビベンジル、4,4’−ジアミノスチルベン、3,4’−ジアミノ−2,2−ジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2−ジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、2,7−ジアミノフルオレン、3,7−ジアミノ−2−メトキシフルオレン、ビス−p−アミノフェニルアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェニルプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン−1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,3’−ジアミノベンジジン、トリス(4−アミノフェニル)メタン等が例示される。
【0041】
上記ポリアミンの中でも、本発明の効果の観点から、1,2,3−プロパントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,2,4−ベンゼントリアミン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレンが好ましい。
【0042】
本発明に係るアミド化合物の製造方法は、特に限定はなく、目的のアミド化合物が得られればよい。例えば、一般式(1)や一般式(2)で表されるアミド化合物は、従来公知の方法(例えば、特開平7−242610号)に従って、ポリカルボン酸とモノアミンと、又はポリアミンとモノカルボン酸とをアミド化反応(例えば、直接脱水縮合反応等)を行うことにより得ることができる。また、ポリカルボン酸は、ポリカルボン酸の酸無水物、塩化物、該ポリカルボン酸と炭素数1〜4の低級アルコールとのエステル化合物等の反応性誘導体の形態でアミド化に供することによっても得ることができる。 同様にモノカルボン酸においても同様の形態を採用することができる。これらの種々の形態の酸は、単独で又は2種を混合してアミド化に供することができ、同様にモノアミンやポリアミンも単独で又は2種を適宜使用することができる。
【0043】
本発明に係るポリカルボン酸系アミド化合物として、具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリアニリド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−ブチルアニリド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルアニリド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(シクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸[(シクロヘキシルアミド)ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、1,2,3−プロパントリカルボン酸[ジ(シクロヘキシルアミド)(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラアニリド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−ブチルアニリド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−tert−ブチルアニリド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(シクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸[ジ(シクロヘキシルアミド)ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリアニリド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−ブチルアニリド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルアニリド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリ(シクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3,5−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸[(シクロヘキシルアミド)ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸[ジ(シクロヘキシルアミド)(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−ブチルアニリド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−tert−ブチルアニリド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジ(シクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカル
ボン酸ビス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3−エチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−エチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3,5−オクチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸[(シクロヘキシルアミド)(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、2,6−ナフタレンジカルボン酸[(シクロヘキシルアミド)(2−メチルシクロヘキシルアミド)]等が例示され、これらの中でも、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(シクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリアニリド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−n−ブチルアニリド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルアニリド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(シクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラアニリド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−n−ブチルアニリド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラキス(4−tert−ブチルアニリド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリ(シクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸トリ(tert−ブチルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジ(シクロヘキシルアミド)、 2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−メチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3−メチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−メチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2−エチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−エチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3,4−ジメチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(3,5−ジメチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ビス−tert−ブチルアミド、が推奨される。
【0044】
上記一般式(2)で表されるポリアミン系アミド化合物としては、具体的には、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロピオニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(シクロヘキシルカルボニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロピオニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−メチルベンゾイルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(3,4−ジメチルベンゾイルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(3,5−ジメチルベンゾイルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(シクロペンチルカルボニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(1−アダマンタンカルボニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−メチルプロピオニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(3,3−ジメチルブチリルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−エチルブチリルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルブチリルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−シクロヘキシル−アセチルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−シクロヘキシル−プロピオニルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−シクロヘキシル−ブチリルアミノ)ベンゼン、1,3,5−トリス(5−シクロヘキシル−バレロイルアミノ)ベンゼン、1,3−ビス(2,2−ジメチルブチリルアミノ)−5−(3,3−ジメチルブチリル)−アミノベンゼン、1,3−ビス(3,3−ジメチルブチリルアミノ)−5−(2,2−ジメチル−ブチリルアミノ)ベンゼン、1,6−ビス(4−メチルシクロヘキシルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,6−ビス(4−ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,6,11−トリス(4−メチルシクロヘキシルカルボニルアミノ)ウンデカン、1,6,11−トリス(4−ブチルシクロヘキシルカルボニルアミノ)ウンデカン等が例示される。
【0045】
上記アミド化合物は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。また本発明に係るアミド化合物の結晶構造は、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、六方晶、単斜晶、立方晶等の任意の結晶構造のものが使用できる。
【0046】
本発明に係るアミド化合物は、本発明の効果を損なわない限り若干不純物を含むものであっても良いものの、できる限り高純度であることが好ましい。その純度としては、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に97重量%以上が推奨される。不純物としては、反応中間体又は未反応物由来の部分アミド化物、副反応物由来のイミド化合物等が例示される。
【0047】
本発明に係るアミド化合物の含有量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部、より好ましくは0.05〜0.6重量部、特に0.1〜0.6重量部が推奨される。この範囲において、機械的特性(剛性・耐衝撃性)の向上、結晶化時間の短縮化の点で、特に優位性が認められる。
【0048】
本発明に係るアミド化合物の形状・形態・粒径は、特に制限はなく、所望のものが採用できる。例えば、上記項3及び項4の観点からは、ポリ乳酸系樹脂に該アミド化合物が溶解させやすいように適宜選択することが好ましい。
アミド化合物をポリ乳酸系樹脂に溶解させるために要する時間の観点から、粒径が大きい場合には時間を要する傾向があり、できる限り粒径が小さい方が好ましい。この場合、粒度分布としては、レーザ回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて体積基準で測定した場合、好ましくは平均粒子径が40μm以下、より好ましくは25μm以下、d90が100μm以下、好ましくは50μm以下が推奨される。
また、作業環境や粉体特性(流動性、付着性、粉塵爆発、噴流性など)の観点から、寧ろある程度の大きさの粒子径とすることが好ましい場合がある。方法としては、圧縮成形法、湿式造粒法等により直接粒状化したり、バインダー成分を用いて粒状化したりする方法を挙げられる。この場合、粒度分布としては、所望の目的や製造装置の能力などから適宜選択されるものの、粉体特性(流動性、付着性、粉塵爆発、噴流性など)の観点から、好ましくは平均粒子径が0.7μm以上、より好ましくは1μm以上が推奨される。
【0049】
[ポリ乳酸改質剤]
本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物は、本発明の効果を奏する範囲内で必要に応じてポリ乳酸改質剤を含有することができる。
ポリ乳酸改質剤としては、耐加水分解向上剤(末端封止剤)、滑剤、可塑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防かび剤、抗菌剤、光安定剤、耐電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料、ガラス繊維、ポリエステル繊維等の各種繊維、木粉等の充填剤、カップリング剤、などが例示される。
上記の中でも、本発明に係るポリ乳酸樹脂組成物には、耐加水分解向上剤、可塑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、離型剤、発泡剤を配合することが推奨される。
前記ポリ乳酸改質剤を配合する場合の含有量は、その種類や目的によって適宜選択されるが、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部、より好ましくは0.1〜3重量部が推奨される。
【0050】
前記耐加水分解向上剤は、ポリ乳酸系樹脂のカルボキシル基又は水酸基末端の一部若しくは全部と反応して封鎖する働きを有するものであり、例えば、脂肪族アルコールやアミド化合物などの縮合反応型化合物や、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物などの付加反応型の化合物など、公知の耐加水分解向上剤や市販品を使用することができる。
【0051】
カルボジイミド化合物としては、具体的には、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン:1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミド化合物、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等のモノカルボジイミド化合物、などが挙げられ、好ましくはポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)が推奨される。
市販品としては、カルボジライトLA−1(日清紡績株式会社製,ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド))、スタバクゾールP(ラインケミー社製,ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド)、スタバクゾールP−100(ラインケミー社製,ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド)、スタバクゾールI(ラインケミー社製,N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、などが例示される。
上記のカルボジイミド化合物は、1種で若しくは2種以上で適宜組み合わせて使用することができる。
【0052】
前記カルボジイミド化合物は、本発明に係るポリ乳酸系樹脂成形体の耐加水分解性をより向上させる観点から、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミドが好ましい。また、本発明に係るポリ乳酸系樹脂との相溶性の観点から、脂肪族若しくは脂環族カルボジイミド化合物が好ましい。
【0053】
耐加水分解向上剤を使用する場合、その使用量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜4重量部、特に0.1〜3重量部が推奨される。
【0054】
また、前記ポリ乳酸改質剤の他に、本発明の効果を奏する範囲内で必要に応じて、ポリマーアロイ成分を添加することができる。
ポリマーアロイ成分としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル樹脂、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物の共重合体、芳香族ビニル化合物−シアン化ビニル化合物−オレフィン化合物共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン−ブチレン共重合体、スチレン系重合体、オレフィン系重合体、などが例示される。
前記ポリマーアロイ成分を使用する場合の使用量は、その種類や目的によって適宜選択されるが、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、通常0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部が推奨される。
【0055】
[より具体的な結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法]
本発明の製造方法は、上記項1〜5に記載の通りである。なお、以下の説明は、ポリ乳酸系樹脂成形体の剛性の向上方法(上記項9の発明)の説明にも適用される。
【0056】
当該製造方法の具体的な方法としては、(1)上記項3の発明のように、上記アミド化合物をポリ乳酸系樹脂に該アミド化合物の溶解温度以上で加熱溶解させて、溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を得、次いで該組成物をその組成物の結晶化温度以下に冷却(急冷)してポリ乳酸系樹脂組成物(通常はペレットとして得ることが多い)を得、その冷却された樹脂組成物をポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲に加熱して、溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物中にアミド化合物の結晶が針状結晶若しくは柱状結晶の形態で及び/又は微細な状態で存在するようにし、その樹脂組成物を流動させた後又は流動させながら該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満で成形する方法、(2)上記項4の発明のように、前記(1)におけるアミド化合物の結晶が針状結晶若しくは柱状結晶の形態で及び/又は微細な状態で存在する溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を流動させた後又は流動させながら、当該樹脂組成物のガラス転移温度未満に急冷してポリ乳酸系樹脂の相を非晶質とし、その非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物を該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満で成形する方法、(3)針状結晶若しくは柱状結晶及び/又は微細な結晶のアミド化合物とポリ乳酸系樹脂とをポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲で混練して、一旦冷却して、次いでその樹脂組成物をポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲に加熱して、それを成形する方法、或いは、前記の混練りを実施して直ちに同樹脂温度の範囲を保持したまま成形する方法、さらに成形する前又は成形するときに、当該樹脂組成物を流動させて当該アミド化合物の結晶を樹脂の流動方向(一定の方向)に配向させる手段を付加した方法、などが挙げられる。
その中でも、前記(1)及び(2)の方法が、本発明の効果を発揮させる上で有用な形態の結晶のアミド化合物を容易に調製でき、またポリ乳酸系樹脂中に均一に分散させやすいので、本発明の効果が再現性よく得られる。この方法は、本発明の効果(結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の成形時間の短縮化や機械的特性の向上)を効果的にかつ安定的に発揮させる点で有用な方法である。
【0057】
上記のポリ乳酸系樹脂組成物を流動させることについて、従来公知の成形方法(成形装置)を使用する範囲において、本発明に係る成形に際しては必然的に樹脂の流動を伴うので、アミド化合物の針状結晶や柱状結晶は樹脂の流動方向に配向してくる。より高度に配向させたい場合には、樹脂の流動状態を適宜制御する方法を選択する必要がある。例えば、所望する方向により剪断が掛かりやすいように成形装置や金型の形状を工夫するなどが挙げられる。
【0058】
前記(1)の方法を例に挙げて、さらに具体的に説明するが、前記(2)及び(3)の方法においても共通部分に適用される説明であり、上記項1〜5の発明に適用される説明でもある。
【0059】
まず、上記アミド化合物をポリ乳酸系樹脂に該アミド化合物の溶解温度以上に加熱して溶解させる。このとき肝要なことは、アミド化合物をポリ乳酸系樹脂に(実質的にほぼ完全に)溶解させることであり、溶解温度以上とすることにより達成できるが、好ましくは該溶解温度〜(溶解温度+30℃)の範囲、特に(溶解温度+5℃)〜(溶解温度+15℃)の範囲が推奨される。
より具体的には、アミド化合物の種類及びその含有量、ポリ乳酸系樹脂の種類、ポリ乳酸改質剤の種類及びその添加量などによっても異なるが、通常、190〜255℃の範囲、より好ましくはポリ乳酸系樹脂の熱分解抑制の観点から200〜245℃が推奨される。
処理時間は、加熱混合装置の種類・能力などにもよるが、アミド化合物を溶解させることを前提として短時間であることが好ましい。加熱混練装置としては、例えば、単軸若しくは多軸(二軸、四軸等)の混練押出機、混練ニーダ、混練ロール機、ミキシングロール機、加圧ニーダ混練機、バンバリーミキサー等が例示される。
【0060】
次に、アミド化合物がポリ乳酸系樹脂に溶解した溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物をその組成物の結晶化温度以下に冷却する。冷却方法としては、特に限定されるものではないが、具体的には、低温にあるチルロールや金型などに接触させたり、水などの冷媒中に浸漬したり、或いは強制空冷装置を用いて空冷させたりする方法が挙げられる。冷却機器の設定温度や冷却媒体の温度としては、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、特に40℃以下が推奨される。冷却速度は、所謂急冷であることが推奨される。急冷することにより、より微細な結晶の形成が可能となる。このような冷却過程において、アミド化合物がポリ乳酸系樹脂組成物中で結晶化する。このような工程を経ることにより、ポリ乳酸系樹脂組成物中に実質的に均一に存在させやすくなる。
なお、水冷などを行った場合には、加熱によるエステル結合の加水分解を抑制するために十分に乾燥させるおく必要がある。
【0061】
次に、冷却されたポリ乳酸系樹脂組成物をポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲に加熱する。加熱方法としては、所定の範囲内に温度制御ができれば特に限定されるものではない。加熱温度の範囲は、ポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲であり、好ましくは(融点+10℃)〜(溶解温度−10℃)の範囲、特に(融点+20℃)〜(溶解温度−20℃)の範囲が推奨される。より具体的には、アミド化合物の種類及びその含有量、ポリ乳酸系樹脂の種類、ポリ乳酸改質剤の種類及びその添加量などに依存するが、好ましくは165〜230℃の範囲、より好ましくは170〜215℃、特に175〜205℃が推奨される。
【0062】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物を成形するときの成形方法としては、本技術分野で従来から使用されている成形方法が広く採用できる。より具体的には、射出成形、押出成形、ブロー成形(射出ブロー成形、射出押出ブロー成形等)、圧空成形、真空成形、圧縮成形(射出圧縮成形等)、押出サーモフォーム成形、溶融紡糸などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果の効果的な発現の観点から、本発明に係る成形中にポリ乳酸系樹脂組成物の樹脂の流れが顕著となる操作(例えば、射出操作、押出操作等)を伴う成形方法が好適である。
また、成形温度は、当該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度範囲であり、好ましくは該樹脂組成物のガラス転移温度以上該樹脂組成物の結晶化温度以下の温度範囲、特に(ガラス転移温度+15℃)〜(結晶化温度−10℃)の温度範囲が推奨される。
より具体的には、成形方法、アミド化合物の種類及びその含有量、ポリ乳酸系樹脂の種類、ポリ乳酸改質剤の種類及びその添加量などによっても異なるが、好ましくは80〜140℃の範囲、より好ましくは90〜130℃の範囲、特に95〜125℃の範囲が推奨される。この範囲において、結晶化速度、成形性(離型性)に優位性が認められる。
【0063】
上記(2)の方法において、急冷して得られた非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物の成形温度は、該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満の樹脂温度の範囲、好ましくは該樹脂組成物のガラス転移温度以上該樹脂組成物の結晶化温度以下の温度範囲、特に(ガラス転移温度+15℃)〜(結晶化温度−10℃)の温度範囲が推奨される。
より具体的には、成形方法、アミド化合物の種類、その含有量、ポリ乳酸系樹脂の種類、ポリ乳酸改質剤の種類、その添加量などによっても異なるが、例えば、好ましくは80〜140℃の範囲、より好ましくは90〜130℃の範囲、特に95〜125℃の範囲が推奨される。
【0064】
上記項3及び項4の発明における工程の操作は、必ずしも連続して行う必要はなく、適宜分割して実施することもできる。具体的には、例えば、項3の発明においては、(a)工程及び(b)工程を実施した後に樹脂組成物(通常、結晶性或いは非晶性のペレットの形態として生産される)として取り出して自由に取り扱うことができる。その後に(c)工程及び(d)工程を操作することにより本発明を実施することもできる。また、項4においては、(a)工程〜(d)工程を実施した後に非晶性の樹脂組成物(シート状(原反シート)、フィルム状の形態が多い)として取り出して自由に取り扱うことができる。その後に(e)工程を操作することにより本発明を実施することもできる。当該樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂の結晶化時間の短縮に寄与することができる。これは、アミド化合物が微細な結晶となるためにその表面積が顕著に増大するので結晶核としての作用が増大し、それと共に当該樹脂組成物中に実質的に該結晶が均一に存在することが相乗的に当該効果を高めているものと考えられる。
【0065】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、溶解温度とは後述の実施例の項目にある[溶解温度]に記載の測定方法により得られた温度、結晶化温度とは後述の実施例の項目にある[結晶化温度]に記載の測定方法により得られた温度、ポリ乳酸系樹脂の融点とは後述の実施例の項目にある[ポリ乳酸系樹脂の融点]に記載の測定方法により得られた温度、ガラス転移温度とは後述の実施例の項目にある[ガラス転移温度]に記載の測定方法により得られた温度をそれぞれ意味する。
【0066】
本発明に係るアミド化合物が針状結晶又は柱状結晶であり、配向性を伴う場合、機械的特性の中でも特に剛性が向上させることができ、加えて耐衝撃性も同時に向上する傾向が認められる。これは、針状結晶又は柱状結晶の形態(混在していても良い)を採用することにより、アミド化合物の結晶が溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物中で、ポリ乳酸系樹脂組成物の樹脂の流れ方向に沿って配向することが可能となり、その一定方向に配向性を示すアミド化合物の結晶を核とし、その結晶核からポリ乳酸系樹脂の結晶化が進行しポリ乳酸の結晶自体も高度な配向性を示すからと考えらる。また、より配向性を高める観点から、針状結晶及び柱状結晶は、アスペクト比が高いものが好ましく、さらには微細なものであることがより好ましい。
【0067】
上記アミド化合物がポリ乳酸系樹脂中で結晶化して得られる結晶形態が針状結晶又は柱状結晶であることは、公知の光学的な解析手法により確認できる。簡便な確認方法としては、通常の光学倍率の光学顕微鏡を用いて、ホットプレート上でポリ乳酸系樹脂組成物を溶解温度以上とした後、ポリ乳酸樹脂の融点から溶解温度未満の温度範囲となるまで冷却し、その温度範囲(より具体的には175〜205℃の範囲)で保持し、アミド化合物の結晶化の挙動を観察することにより確認できる。
【0068】
<結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体>
本発明の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体は、上記項1〜5に記載の製造方法で得られる、配向度が10以上の成形体であり、さらに曲げ弾性率が3500MPa以上、アイゾット衝撃強度が15kJ/m以上のもの、或いは引張弾性率が3000MPa以上、デュポン衝撃値が0.5J以上のものを含むものである。そして重要なことは、当該成形体には、本発明に係るアミド化合物が含有し、そのアミド化合物の結晶が針状結晶又は柱状結晶(混在してもよい)であり、それが一定方向(通常、樹脂の流動方向)に配向しているという特徴を有している。その特徴は、上記項1〜5のプロセスを以て規定することができる。
上記項1〜5の発明にあるように、成形にする前又は成形するときに、アミド化合物の針状結晶若しくは柱状結晶が樹脂の流動方向(一定の方向)に配向した状態とし、それを起点にポリ乳酸の結晶が成長するので高度な配向性が実現でき、さらに機構は不明であるが、相反する性質である剛性と耐衝撃性を有する成形体を得ることができる。
結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の相対結晶化度としては、好ましくは55%以上、より好ましくは70%以上、特に80%以上、さらに90%以上が推奨される。この相対結晶化度は、機械的特性や耐熱性に影響することから、より高い機械的特性や耐熱性を所望する場合、例えばポリ乳酸系樹脂のガラス転移以上120℃程度の温度範囲でエージング処理することにより相対結晶化度を高めることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂成形体の配向度としては、10以上であり、好ましくは10〜30、より好ましくは12〜30が推奨される。
また、曲げ弾性率としては、好ましくは3500MPa以上、より好ましくは4000〜6000MPa、特に4000〜5500MPaが推奨され、アイゾット衝撃強度としては、好ましくは15kJ/m以上、より好ましくは15〜50kJ/m、特に20〜40kJ/mが推奨される。具体的な成形体としては、射出成形体、押出成形体などが挙げられる。
また、引張弾性率としては、好ましくは3000MPa以上、より好ましくは3000〜6000MPa、特に3200〜5500MPaが推奨され、デュポン衝撃値としては、好ましくは0.5J以上、より好ましくは0.5〜3Jが推奨される。具体的な成形体としては、フィルム成形体、シート成形体、圧空成形体などが挙げられる。
前記配向度が10以上の場合、より高い剛性が得られやすいことを示している。また、このように優れた機械的特性を有するポリ乳酸系樹脂成形体は、従来の成形品の肉厚を薄くして軽量化にも寄与することができる。
本発明の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体は、上記の<結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法>に記載の方法により得ることができる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、相対結晶化度とは後述の実施例の項目にある[相対結晶化度]に記載の測定方法により得られた値、配向度とは後述の実施例の項目にある[配向度]に記載の測定方法により得られた値、曲げ弾性率とは後述の実施例の項目にある[曲げ弾性率]に記載の測定方法により得られた値、アイゾット衝撃強度とは後述の実施例の項目にある[アイゾット衝撃強度]に記載の測定方法により得られた値、引張弾性率とは後述の実施例の項目にある[引張弾性率]に記載の測定方法により得られた値、デュポン衝撃値とは後述の実施例の項目にある[デュポン衝撃値]に記載の測定方法により得られた値をそれぞれ意味する。
【0069】
かくして得られた本発明のポリ乳酸系樹脂成形体は、従来の結晶核剤を配合してなるポリ乳酸樹脂が用いられてきたと同様の分野において適用することができる。具体的には、玩具類、放射線等により滅菌される食品・植物等の包装物、衣料ケースや衣料保存用コンテナ等の各種ケース類、食品を熱充填するためのカップ、レトルト食品等の包装容器・蓋、電子レンジ用容器・蓋、ジュース、茶等の飲料用容器・キャップ、化粧品用容器・キャップ、シャンプー用容器・キャップ、味噌、醤油等の調味料用容器・キャップ、水、米、パン、漬物等の食品用容器、冷蔵庫用ケース、一般雑貨、文具、電気・機械部品、自動車用部品等の素材、などが挙げられる。
なかでも、高い剛性が要求される自動車バンパー、ハンドルなどの自動車部品、電化製品の構造部用材料、ビール瓶などの輸送用の箱、機械部品、化学装置の部品、ライニングなどの分野が好適である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、ポリ乳酸系樹脂、ポリ乳酸系樹脂組成物、ポリ乳酸系樹脂成形体等の特性は、以下の方法により測定し、評価した。
【0071】
[ポリ乳酸系樹脂の融点]
示差走査熱量分析装置(パーキンエルマー社製、ダイヤモンドDSC)を用い、JISK 7121(1987)に従って測定した。ポリ乳酸系樹脂約10mgを装置にセットし、30℃で3分間保持した後、10℃/分の加熱速度で加熱し、吸熱ピークの頂点を融点(℃)とした。
【0072】
[溶解温度]
ポリ乳酸系樹脂へのアミド化合物の溶解温度は、ホットステージを具備した光学顕微鏡(光学倍率;100倍)を用いて、目視で観察して判定した。所定のポリ乳酸系樹脂とアミド化合物をヘンシェルミキサーでドライブレンドし、それをプレス成形機にて175℃でプレスシートを作成した。それを光学顕微鏡のホットステージにセットして150℃まで加熱し、その後2℃/分の加熱速度でアミド化合物が溶融ポリ乳酸系樹脂に溶解する挙動を目視で観察し、アミド化合物の固体が観察されなくなった時点を溶解温度(℃)とした。
なお、アミド化合物がポリ乳酸系樹脂に溶解が不十分である場合は溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物は白濁し、完全に溶解している場合には透明となるので、ポリ乳酸系樹脂組成物の製造過程において目視で判定も可能である。
【0073】
[結晶化温度]
示差走査熱量分析装置(同社製)を用い、JIS K 7121(1987)に準じて測定した。評価試料には、ポリ乳酸系樹脂組成物約10mgを使用した。その試料を装置にセットし、245℃で3分間保持した後、10℃/分の冷却速度で冷却し、吸熱ピークの頂点を結晶化温度(℃)とした。
【0074】
[ガラス転移温度]
示差走査熱量分析装置(同社製)を用い、JIS K 7121(1987)に従って測定した。評価用試料には、各実施例・比較例のペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物約10mgを使用した。その試料を装置にセットし、10℃で3分間保持した後、20℃/分の加熱速度で加熱し、中間点ガラス転移温度を本発明に係るガラス転移温度(℃)とした。
【0075】
[相対結晶化度]
示差走査熱量分析装置(同社製)を用いて、評価した。ポリ乳酸系樹脂成形体(試験片は、0.5mm厚のプレート状、各実施例・比較例で測定された離型時間で成形されたものである。)から約10mgを採取して評価用試料とし、その試料を10℃/分の加熱速度で、20℃から200℃まで昇温し、そのときに観測されるピーク面積から結晶化熱量ΔHc(J/g)及び融解熱量ΔHm(J/g)を測定し、相対結晶化度(%)を次式(1)より算出した。
相対結晶化度(%)=(ΔHm−ΔHc)/ΔHm × 100 (1)
【0076】
[成形性]
本発明又は本発明外のポリ乳酸系樹脂成形体を射出成形により製造したとき、付着物がなく容易に金型から該成形体が離型される時間(離型時間)を測定し、結晶化時間の評価をした。離型時間が短いほど結晶化時間が短いと評価され、成形性が良好であることを示す。なお、離型時間は、0.5mm厚のプレート状の成形体を成形したときの時間である。
【0077】
[曲げ弾性率]
万能材料試験機(インストロン社製)を用いて、JIS K 7203(1982)に準じて曲げ弾性率(MPa)を測定した。試験片は、4mmX10mmX90mmの直方体の形状で、離型時間を60秒として成形されたものである。
なお、試験温度は25℃、試験速度は10mm/分とした。曲げ弾性率の値が大きいほど剛性に優れている。
【0078】
[引張弾性率]
万能材料試験機(同社製)を用い、JIS K 7113(1995)に準じて引張弾性率(MPa)を測定した。試験片は、0.2mm×10mm×50mmの形状のものを使用し、成形体の樹脂の流動方向にチャックを設置し、試験速度50mm/分、試験温度23℃の条件下で7回実施し、それらの測定値の最大値と最小値を除いた5測定値の平均値を引張弾性率とした。引張弾性率が高い程、固いことを示す。
【0079】
[アイゾット衝撃強度]
JIS K7110に準拠して、本発明又は本発明外のポリ乳酸系樹脂成形体のアイゾット衝撃強度(kJ/m)を測定した。試験片は、4mmX10mmX90mmの直方体の形状で、離型時間を60秒として成形されたものである。
なお、評価はノッチなしの条件で測定を行った。アイゾット衝撃強度が高いほど耐衝撃性が高いことを示す。
【0080】
[デュポン衝撃値]
デュポン式衝撃試験機(安田精機社製)を用い、JIS K5400(1990)に準じてデュポン衝撃値(J)を測定した。試験片は、0.2mm×50mm×50mmの形状のものを使用し、落下重錘直300g、撃芯先端寸法1/4インチの条件で20回実施し、それらの平均値をデュポン衝撃値(J)とした。その数値が大きいほど耐衝撃性に優れる。
【0081】
[配向度]
配向度とは、成形時における樹脂の流動方向に対するポリ乳酸の結晶(c軸)の配向の度合いを示す指標を意味する。該配向度は、広角X線回折(理学電機社製)を用いて、ポリ乳酸系樹脂成形体の樹脂流れに沿った方向の断面(MD方向の断面;X線は図1のTHROUGHから入射。)と樹脂流れと直交した方向の断面(ND方向の断面;X線は図1のENDから入射。)の回折パターンを測定し、得られたX線回折強度曲線を非晶質ハローと各結晶質ピークにピーク分離を行ない、(200)面反射(2θ=約16.4°)のピーク強度の値を用いて、配向度を次式(2)により算出した。算出された数値が大きいほど、配向の度合いが大きいことを示す。
配向度=I(200),MD / I(200,),ND (2)
(式中、I(200),MDはMD方向の断面の(200)面反射のピーク強度(counts)、I(200),NDはND方向の断面の(200)面反射のピーク強度(counts)をそれぞれ示す。)
なお、試験片は、4mmX10mmX90mmの直方体の形状で、離型時間を60秒として成形されたものである。
【0082】
[ポリ乳酸系樹脂成形体中のアミド化合物の結晶形態の確認]
ホットステージを具備した偏光顕微鏡(光学倍率;500)にポリ乳酸系樹脂成形体をセットし、200℃まで加熱し30分経過後に観察し、目視で結晶形状の確認を行った。
なお、試験片は、4mmX10mmX90mmの直方体の形状で、離型時間を60秒として成形されたものである。
【0083】
<実施例1>
ポリ乳酸系樹脂としてポリ乳酸(商品名;レイシア H-100,三井化学株式会社製,融点163℃)100重量部と、アミド化合物としてトリメシン酸トリ(シクロヘキシルアミド)(商品名;エヌジェスター TF−1,新日本理化株式会社製)0.3重量部とをヘンシェルミキサーでドライブレンドした。そのドライブレンド物を二軸押出機(ノズルダイ内径;φ3mm)にて樹脂温度240℃で溶融混練し、ストランド状に水中(25℃)に押し出して冷却し、ペレタイザーで切断し、ポリ乳酸系樹脂組成物(ペレット状)を得た。このとき、混練機から吐出した直後のストランドの外観を目視で観察した。
そのペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を70℃、10時間真空乾燥機にて乾燥した後、そのペレットを樹脂温度200℃で溶融させ、成形温度(金形温度)100℃で射出成形して、本発明の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体を得た。ポリ乳酸系樹脂組成物及び結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の特性評価の結果を表2に示した。
【0084】
<実施例2〜5>
ポリ乳酸系樹脂の種類及び含有量、並びにアミド化合物の含有量を表1に記載の条件に変えた他は、実施例1と同様に行って、ポリ乳酸系樹脂組成物及び結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体を得た。それぞれの特性評価を実施例1と同様に行い、その結果を表2に示した。
【0085】
<比較例1〜5>
実施例1〜5で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用いて、そのポリ乳酸系樹脂成形体の成形条件を表1に記載の条件とした他は、実施例1と同様に行って、本発明外のポリ乳酸系樹脂成形体を得た。それぞれの特性評価を実施例1と同様に行い、その結果を表2に示した。
【0086】
<比較例6〜8>
表1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の組成となるように配合したドライブレンドを用いて、表1に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法及びポリ乳酸系樹脂成形体の成形条件とした他は、実施例1と同様に行って、本発明外のポリ乳酸系樹脂成形体を得た。それぞれの特性評価を実施例1と同様に行い、その結果を表2に示した。
【0087】
<比較例9〜10>
アミド化合物を使用しない他は、実施例1と同様に行って、ポリ乳酸の成形体の製造を試みた。しかし、金型から離型できず、成形体を得ることができなかった。即ち、特定のアミド化合物を含有していない場合、有効な離型時間内では結晶化されないことを示唆している。
【0088】
<実施例6>
ポリ乳酸系樹脂としてポリ乳酸(商品名;レイシア H-100)100重量部と、アミド化合物としてトリメシン酸トリ(シクロヘキシルアミド)(商品名;エヌジェスター TF−1)0.3重量部とをヘンシェルミキサーでドライブレンドした。そのドライブレンド物を二軸押出機(ノズルダイ内径;φ3mm)にて樹脂温度245℃で溶融混練し、ストランド状に水中(25℃)に押し出して冷却し、ペレタイザーで切断し、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(ペレット状)を得た。このとき、混練機から吐出した直後のストランドの外観を目視で観察した。
そのペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を70℃、10時間真空乾燥機にて乾燥した後、そのペレットを樹脂温度200℃で溶融させ、次いで射出して(樹脂の流動を与えて)、金形温度40℃で急冷して、非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。その樹脂組成物をギヤーオーブン(東洋精機社製)にて100℃にてエージングして(結晶化させて)、本発明の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体を得た。ポリ乳酸系樹脂組成物及びポリ乳酸系樹脂成形体の特性評価の結果を表4に示した。
【0089】
<比較例11>
実施例6で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用いて、そのポリ乳酸系樹脂成形体の成形条件を表3に記載の条件とした他は、実施例6と同様に行って、本発明外のポリ乳酸系樹脂成形体を得た。それぞれの特性評価を実施例6と同様に行い、その結果を表4に示した。
【0090】
<比較例12〜13>
表3に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の組成となるように配合したドライブレンドを用いて、表3に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法及びポリ乳酸系樹脂成形体の成形条件及びポリ乳酸系樹脂成形体の結晶化条件とした他は、実施例6と同様に行って、本発明外のポリ乳酸系樹脂成形体を得た。それぞれの特性評価を実施例6と同様に行い、その結果を表4に示した。
【0091】
<実施例7>
ポリ乳酸系樹脂としてポリ乳酸(品番;テラマック TP−4000,ユニチカ株式会社製,融点170℃)100重量部と、アミド化合物としてトリメシン酸トリ(シクロヘキシルアミド)(商品名;エヌジェスターRTF−1,新日本理化株式会社製)0.3重量部とをヘンシェルミキサーでドライブレンドした。そのドライブレンド物を二軸押出機(ノズルダイ内径;φ3mm)にて樹脂温度245℃で溶融混練し、ストランド状に水中(25℃)に押し出して冷却し、ペレタイザーで切断し、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物(ペレット状)を得た。このとき、混練機から吐出した直後のストランドの外観を目視で観察した。
そのペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を70℃、10時間真空乾燥機にて乾燥した後、そのペレットを樹脂温度200℃で溶融させ、次いでTダイからシート状に押し出し(樹脂の流動を与えて)、40℃のチルロールで急冷させ、厚さ0.2mmのシート状の非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。その樹脂組成物をギヤーオーブン(東洋精機社製)にて100℃にてエージングして(結晶化させて)、本発明の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体を得た。ポリ乳酸系樹脂組成物及びポリ乳酸系樹脂成形体の特性評価の結果を表6に示した。
【0092】
<比較例14>
実施例7で得られたポリ乳酸系樹脂組成物を用いて、そのポリ乳酸系樹脂成形体の成形条件を表5に記載の条件とした他は、実施例7と同様に行って、本発明外のポリ乳酸系樹脂成形体を得た。それぞれの特性評価を実施例7と同様に行い、その結果を表6に示した。
【0093】
<比較例15〜17>
表5に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の組成となるように配合したドライブレンドを用いて、表5に記載のポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法、ポリ乳酸系樹脂成形体の成形条件及びポリ乳酸系樹脂成形体の結晶化条件とした他は、実施例7と同様に行って、本発明外のポリ乳酸系樹脂成形体を得た。それぞれの特性評価を実施例7と同様に行い、その結果を表6に示した。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法によれば、結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の成形時間の短縮化が可能となり生産性の向上に寄与でき、また機械的特性の向上にも寄与することができる。また、本発明の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体は、かかる優れた物性を有するので 車両パーツ、家電製品のボディー等の筐体、歯車、一般雑貨、衣料品、バッグ、ファスナーやボタン等の掛止部材、農業資材、建築資材、土木資材、食器類、玩具類等の成形品として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、ポリ乳酸系樹脂成形体の投影図である。
【図2】図2は、アミド化合物の結晶が存在下に成形しその結晶が配向し、その配向した結晶を起点にポリ乳酸系樹脂の結晶が成長して配向性を示すことを模式的に表した概念図である。
【符号の説明】
【0102】
11 アミド化合物の無定形の結晶
12 無配向状態のアミド化合物の針状結晶
13 配向状態のアミド化合物の針状結晶
21 溶融状態のポリ乳酸
22 アミド化合物が溶解した溶融状態のポリ乳酸
23 非晶・結晶が混在した固体のポリ乳酸
24 非晶状態の固体のポリ乳酸
25 非晶・結晶が混在した固体・液体のポリ乳酸
26 アミド化合物を起点として成長した(成長している)配向状態のポリ乳酸の結晶
A 加熱溶解過程
B アミド化合物の溶解した状態
C ペレット(樹脂組成物)
D 加熱溶融過程
E 樹脂が流動した(流動している)ときの状態
F 急冷によって得られた非晶状態の樹脂組成物
G 成形過程(ポリ乳酸の配向・成長の状態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
−(CONHR (1)
[式中、mは2〜6の整数を表す。Rは、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸からすべてのカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。2〜6個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノアミンからアミノ基を除いて得られる残基を表す。]
で表されるポリカルボン酸系アミド化合物、及び
一般式(2)
−(NHCOR (2)
[式中nは2〜6の整数を表す。Rは、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族ポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族ポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基、又は炭素6〜18の芳香族ポリアミンからすべてのアミノ基を除いて得られる残基を表す。2〜6個のRは、同一又は異なって、それぞれ、炭素数3〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基、炭素数6〜18の脂環族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基、又は炭素数6〜18の芳香族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。]
で表されるポリアミン系アミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミド化合物の結晶が針状結晶若しくは柱状結晶の形態及び/又は微細な状態で含有する溶融状態若しくは非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物を成形する工程を含むことを特徴とする結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
アミド化合物の結晶が、溶融状態若しくは非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物中で、成形前又は成形中に一定方向の配向状態にある、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
(a)上記請求項1に記載の少なくとも一種のアミド化合物をポリ乳酸系樹脂に該アミド化合物の溶解温度以上で溶解させて、溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を得る工程、
(b)その溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物をその樹脂組成物の結晶化温度以下に冷却する工程、
(c)その冷却されたポリ乳酸系樹脂組成物を該ポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲で溶融させる工程、及び
(d)その溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を流動させた後又は流動させながら該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度範囲で成形する工程
を備えていることを特徴とする結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
(a)上記請求項1に記載の少なくとも一種のアミド化合物をポリ乳酸系樹脂に該アミド化合物の溶解温度以上で溶解させて、溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を得る工程、
(b)その溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物をその樹脂組成物の結晶化温度以下に冷却する工程、
(c)その冷却されたポリ乳酸系樹脂組成物を該ポリ乳酸系樹脂の融点以上該アミド化合物の溶解温度未満の樹脂温度の範囲で溶融させる工程、
(d)その溶融状態のポリ乳酸系樹脂組成物を流動させた後又は流動させながらポリ乳酸系樹脂組成物をガラス転移温度未満に急冷する工程、及び
(e)その急冷されたポリ乳酸系樹脂組成物を該樹脂組成物のガラス転移温度以上ポリ乳酸系樹脂の融点未満の温度範囲で成形する工程
を備えていることを特徴とする結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
ポリ乳酸系樹脂組成物が、さらに加水分解抑制剤、滑剤、可塑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防かび剤、抗菌剤、光安定剤、耐電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料、充填剤及びカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリ乳酸改質剤を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体の製造方法で得られる、配向度が10以上である結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体。
【請求項7】
さらに、曲げ弾性率が3500MPa以上、アイゾット衝撃強度が15kJ/m以上である、請求項6に記載の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体。
【請求項8】
さらに、引張弾性率が3000MPa以上、デュポン衝撃値が0.5J以上である、請求項6に記載の結晶性ポリ乳酸系樹脂成形体。
【請求項9】
上記請求項1に記載の少なくとも一種のアミド化合物の針状結晶若しくは柱状結晶を溶融状態若しくは非晶性のポリ乳酸系樹脂組成物中で一定方向に配向せしめた後又は配向させながら成形することを特徴とするポリ乳酸系樹脂成形体の剛性の向上方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−6654(P2011−6654A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252368(P2009−252368)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000191250)新日本理化株式会社 (90)
【Fターム(参考)】