説明

結晶性有機化合物の安定な成形粒子

【課題】同素形有機化合物の、固体結晶化された成形粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】以下の工程:(a)2以上の同素形有機化合物から本質的になる混合物を作る工程であって、前記各化合物が、混合した結晶性の、無定形の、又は結晶性と無定形との組み合わせの形態である工程;(b)前記混合物を複数の球状粒子に加工する工程;(c)前記球状粒子を、前記各同素形有機化合物の1以上の溶剤の蒸気を含む雰囲気に、前記各同素形有機化合物の固体結晶化が行われ、その最も安定な結晶形態になるのに十分な時間、暴露する工程;及び(d)前記粒子を回収する工程を含むことを特徴とする方法。
更に、本発明は、同素形有機化合物の極めて安定な成形粒子を提供するものである。本発明の粒子は、所望の用途によって成形することが出来る。その様な粒子の好ましい形状は、微小球体であり、特に、約1〜約1,000ミクロンの直径を有する微小球体である。本発明の安定な成形粒子は薬理学的製剤、特に持続的放出と均一な生体利用性が望まれる場合の製剤の製造に特に良く適合する。貯蔵安定性粒子は、同素形有機化合物の固体結晶化によって形成される。本発明の固体結晶化方法は、元の粒子寸法の損失或いは劣化無しに前記同素形化合物の貯蔵安定性結晶形態を達成する手段を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
多くの物質が、それらが結晶化する条件によって異なる方法で結晶化する傾向に在ることは公知である。特定の物質の結晶化の結果としての異なる結晶構造は、多形又は擬似多形と言われる。それらが溶融され、それらの融点以下に急速冷却されると、即ち、溶融−凝固(melt-congealing)されると、殆どの物質を形成している原子又は分子は、それらが置かれている環境に対して最も自然な順序でそれらを配列する為に或程度の時間を必要とする。従って、それらは、不安定な無定形又は半無定形状態で残り、或いは準安定多形に組織化する。
準安定多形は、互変的で、それらが一種以上の結晶形態で存在できる或る種の物質の性質である(Giron, Thermal Analysis and Calorimetric Method in the Characterization of Polymorphs and Solvates, Thermochimica Acta, 248 (1995) 1-59; Parker, Dictionary of Scientific and Technical Terms, McGraw Hill, Inc., 1984, 541; Hancock et al., Characterization and Significance of the Amprphous State in Pharmaceutical Systems, J. Pharm. Sci., Vol. 86, No. 1, 1997, 1-12)。互変性物質の様々な結晶形態或いは晶癖の間には、一つの形態が転移点温度以上で安定であり、別の形態はそれ以下で安定である様な関係が存在する。従って、晶癖は動的であり、周囲条件によって可逆的である。
【0002】
準安定多形は時間を掛けてより安定な構造に変換する。この自然の結晶化過程は、所謂「エイジング」と言われるもので、人的介入無しに時間を掛けて起るものである。この自然の「エイジング」過程は、長期にわたり、然も予測不可能であり、従って、費用が掛かり、特に製薬の製造では極めて危険である。予測不可能性は、エイジング工程が主として環境要因に依存する為に生じるものである。(Yu, "Inferring Thermodynamic Stability Relationship of Polymorphs from Mwlting Data", J. Pharm, Sci., Vol. 84, No. 8, 966-974 (1995))。
それにも拘わらず、安定な結晶化物質は、最適で信頼の置ける生体活性及び生体利用性の為に一般に必要とされる。準安定粒子、例えば、微小球体又はペレットが、完全な結晶化が起る前に水性媒体中に置かれると、粒子形状の変形或いは粒子の完全な破壊さえもが、ほんの数時間で起る。
更に、特定の物質の異なる多形は、安定性の欠如と、同じ薬剤の異なるバッチ間の均一性の損失の結果として異なる溶解速度を有するものである。例えば、ハレブリアン等(Haleblian et al.)は、フルオロプレドニソロンの多形間での溶解速度の相違を報告している(Haleblian et al., "Isolation and Characrerization of Some Solid Phases of Fluoroprednisolone", J. Pharm. Sci., Vol. 60, No. 10, 1485-1488 (1971))。
【0003】
薬理学的用途としては、治療化合物の投与が、注射に適する水溶液での懸濁液を必要とするので、安定な結晶化を達成する事が特に重要である。又、治療化合物が水性媒体に初め懸濁されなくても、患者に投与される時には、水をベースにした生体液に曝される。この事は、ペレット及び外科的或いは其の他の手段で体内に置かれたインプラントにとっても同様である。成形粒子の物理的完全性及び活性薬剤の均一放出を確実にする為には、投与前に完全な結晶化を確実にすることが必要である。
幾人かの研究者が、結晶化を誘発させることによって治療化合物の安定性を改善することを試みている。例えば、マツダ等(Matsuda et al.)は、温度調節分散乾燥方法を使用して結晶構造を変更させることを示唆している(Matsuda et al., "Physicochemical Characterization of Sprayed-Dried Phenylbutazone Polymorphs", J. Pharm. Sci.,Vol. 73, No. 2, 73-179 (1984)。
然しながら、固体の溶解は、又表面浸食に関係するので、治療粒子の形状及びサイズは、又、溶解性に加えて考慮されなければならない。(Carstensen, "Pharmaceutical Principles of Solids and Solid Dosage Forms", Wiley Interscience, 63-65, (1977))。この様に、薬理学的化合物が固体又は懸濁液として投与される場合は、粒子の形状及びサイズの保存が、生体利用性及び生体力学の調節と再現性を確実なものとする為の重要な要因となる。
【0004】
この事を踏まえて、カワシマ等は、二つの相互に不溶解性の溶剤の使用によるトラニラスト(Tranilast)の球状結晶化及び、得られる多形の加熱による転化方法を提案している(Kwashima et al., "Characterization of Polymorphs of Tranilast Anhydrate and Tranilast Monohydrate when Crystallized by Two Solvent Change Spherical Crystallization Techniques" in J. Pharm. Sci., Vol. 80, No. 5, 472-477 (1981))。
又、エイジングの自然過程が、加熱によって促進出来る事も報告されている(Ibrahim et al., "Polymorphism of Phenylbutazone: Properties and Compressional Behavior of Crystals" in J. Pharm. Sci., Vol. 66, No. 5, 669-673 (1977)); Hancock et al., Characteristics and Significance of the Amorphous State in Pharmaceutical Systems, J. Pharm. Sci., Vol. 86, No. 1, 1-12 (1997))。
幾つかのケースでは、然しながら、必要とされる加熱は、物質の完全性又は形状を損なうものである。加熱が使用された幾つかのケースでは、結果の再現性、安定性、従って粒子内での結晶サイズの調節が困難であり、或いは達成が不可能であった。
【0005】
更に、幾つかのケースでは、特定の物質の最も安定な多形は、結果として脱水となる加熱手段による所望の多形を達成することを不可能にする水和物である。
更に、加熱は、混合物の場合には、安定な結晶化にとって例外的に妥当なものである。この様に、安定な多形を得る為の方法としての加熱方法は、エイジング方法にとって優れてはいるが、著しい制約を有している。
その他の研究者は、重合体種の結晶化を誘発する為に、溶剤蒸気の使用を研究した。其の研究には、米国特許第4,897,307号明細書に記載されている様な、重合体化合物の推定の結晶化及び機械的性質の変化が含まれる。又、Muller, A.J. et al., "Melting behavior, mechanical properties and fracture of crystallized polycarbonates" in Latinoamericana de Metalurgia y Materiales, 5(2), 13-141 (1985); and Tang, F. et al., "Effect of Solvent Vapour on Optical Properties of Pr/sub 4VOPe in polymethylmethacrylates", in Journal of Applied Physics, 78(10), 5884-7 (1995)参照。
タング等は、重合体マトリックス、Pr4VOPc染料(4つのプロピル置換体を有するバナジルフタロシアニン)を、ガラス相Iから結晶化相IIへ変換する為に有機溶剤蒸気を使用した。ミュラー及びパレデスは、溶剤又は可塑剤の導入に代えて、ポリカーボネートポリマーの無定形状態への結晶化を述べている。
本発明者の知る限りでは、その様なアプローチは、溶融−凝固した有機化合物及び混合物の安定な結晶を形成する為には使用されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の開示)
本発明は、結晶性有機化合物の再現性のある安定な粒子を提供するものである。本発明の結晶性有機化合物の安定な粒子は、単独の有機化合物の均質な粒子であっても良く、或いは、それらは、二種以上の有機化合物の混合物であっても良い。本発明の安定な粒子は、例えば水性懸濁液として長期貯蔵中、一定の形状とサイズを保持する。その様な安定な粒子は均一なサイズと形状に造り上げることが出来、前記サイズと形状を長期間の貯蔵にもかかわらず維持し、従って、特に、医薬製剤において利益がある。本発明は、更に、その様な再現性のある安定な粒子を得る為の方法を提供する。この方法は、一種以上の有機化合物が、結晶形態、無定形或いは準安定形態で存在する上記の成形粒子を、溶剤蒸気で飽和された雰囲気に暴露することを含む。溶剤は、少なくとも一種以上の有機化合物が可溶な一種以上の液体から成る。
【0007】
本発明方法は、幾つかの利点を与える。水分子を放出せず、従って、形成中に結晶性組織の中に水分子の導入を許すので、最も安定な多形が水和物である物質に適用可能である。高温が避けられるので、熱不安定性物質に適用可能である。そして、共融混合物−組成物を除いて、加熱手段では達成することの出来ない物質の混合物を含めて、安定な構造形成を可能とする。
特に、本発明は、無定形又は準安定結晶性有機化合物又は混合物を結晶化又は再結晶化する為の方法を含む。この方法は、(i)前記化合物又は混合物を、一種以上の液体であって、その内の少なくとも一種が前記化合物又は混合物の溶剤でなければならない液体の蒸気で飽和された雰囲気に、準安定化合物又は混合物を安定な結晶化化合物又は混合物に変換するのに十分な時間暴露する工程、及び(ii)その安定な結晶化化合物又は混合物を貯蔵又は使用の為に回収する工程を含む。
【0008】
容量、温度、及び雰囲気内容及び圧力が操作できる所では、本発明方法は密閉容器を使用して行っても良い。チャンバーは、所望の溶剤蒸気で飽和された雰囲気を含むことが出来る。飽和点は、蒸気がチャンバー或いは粒子の表面上に凝縮すること無しにチャンバーを満たす時に達成される。
粒子は、例えば、微小球体、ペレット又はインプラント形態の様な成形粒子に形成されるのが好ましい。均一で再現性のある表面積を有する為に構成された粒子が特に好ましい。これは、溶融−凝固によって有効ならしめることが出来る。
更に、成形粒子は、均一な粒径又は粒径範囲に構成されるのが好ましい。この目的の為には、米国特許第5,633,014号明細書、第5,643,604号明細書及び第5,360,616号明細書(ここに、参照によって導入される)に記載の方法が使用できる。或いは別途、準安定結晶性集塊が得られる任意の適当な方法が使用できる。混合物の結晶化を含む方法では、混合物は共融又は非共融であっても良い。
粒子は、チャンバー又は其の他の適当な密閉容器に、任意の適当な手段を使用して、粒子が溶剤蒸気には暴露されるが、液体溶剤に浸漬されたり或いは液体溶剤に接触しない様にして置かれる。粒子は、チャンバー内では静止しているか或いは流動化される。
【0009】
本発明方法による結晶化を行うのに必要な時間は、確立された原理と一致する様々な物理化学的性質によって変動する。例えば、暴露に最適な時間は、粒子の形状及びサイズ、粒子を造り上げている化学性、粒子の固体状態の形状(即ち、無定形、準安定結晶性)、使用される溶剤のタイプ及び濃度及び処理温度によって変動する。一般に、数秒から48時間の範囲が適用され、より好ましくは1〜36時間が適用される。前以って粒子を部分的に結晶化して置くことがこれらの時間範囲を変更するかは明らかではない。暴露時間の最適化は、使用される溶剤系、結晶化される有機化合物及び其の他の変動要因によって変動し、当業者の技術の範囲内である。以下に示される様に、24時間の暴露時間が一般に有効である。
本発明の利点の一つは、高温が避けられるので熱不安定性物質に適用できることである。この様に、適用可能な温度範囲は、広範囲に決められ、特定の化合物に依存する。一般に、蒸気雰囲気の温度は、溶剤を蒸発させるのに十分な温度であって、粒子の融点以下の温度である。
本発明方法で使用される溶剤は、対象の有機化合物の溶剤として分類される任意の試薬である事が出来る。当業者によって認められている様に、溶剤の選択は、安定化が求められている化合物に依存する。溶剤の例としては、通常の実験室での液体溶剤、例えば、水、アルカン、アルケン、アルコール、ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル、無機酸を含む様々な酸、カルボン酸等、塩基、及びそれらの混合物が挙げられる。幾つかの特定の溶剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、酢酸、塩酸、テトラヒドロフラン、エーテル及び混合エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、及びベンゼンが挙げられる。水は、特に物質の最も安定な多形が水和物である場合には、本発明の溶剤/液体混合物の特に有用な成分である。一般に、対象の化合物の通常の液体再結晶化に適する溶剤は、本発明方法の溶剤として適当である。
【0010】
本発明の安定な粒子の化合物としては、標準温圧で結晶性固体として存在することの出来る有機化合物が挙げられる。本発明の好ましい実施態様は、粒子が、安定な結晶性固体に形成できる一種以上の有機化合物から成るものである。好ましくは、安定な結晶性固体は、不連続の有機分子、即ち重合体ではない有機分子の格子である。
又、幾らかの薬理学的或いは治療活性を有する有機化合物が好ましい。多形の形成にとって敏感な薬理学的化合物は更に好ましい。更に好ましい実施態様としては、ステロイド又はステロール、例えば、エストロゲン、17−β−エストロジオール、テステロン、プロゲステロン、コレステロール又はそれらの混合物が挙げられる。又、これらの混合物とては、オキサトミド/コレステロール、ニフェジピン/コレステロール、アステミゾール/コレステロールの非コレステロール系化合物を挙げることが出来る。又、其の他の有機化合物の安定な成形粒子、例えば、シサプリド、オキサトミドは本発明によって提供される。
本発明方法は、無定形又は準安定結晶性有機化合物の粒子の顕著な安定化をもたらすので、本発明の粒子は、液体懸濁液として、例えば、水性媒体として貯蔵することが出来、或いは、直接患者に投与することも出来る。本発明は、既存薬理学的薬剤の安定形態を提供するので、本発明の粒子が、類似の製剤の従来の方法での使用、例えば、微小球体の非経口投与、インプラントを介しての薬理学的薬剤の投与等の従来法によって使用することが出来ることを当業者は理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここに引用された全ての刊行物及び特許出願は、各個々の刊行物又は特許出願が、参照によって導入されることが特定的に且つ個々に示されている場合は其の同じ範囲で参照によってここに導入される。
別途定義されていない限り、ここに使用される全ての技術的並びに化学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。ここに開示されたものと類似の或いは同じ方法及び材料は、本発明の実施或いはテストで使用することが出来るが、その好ましい方法及び材料を以下に述べる。
本発明は、一種以上の同素形分子有機化合物の安定な成形粒子を提供する。同素形有機化合物は、二種以上の異なる物理的形態を想定することの出来るもの(例えば、異なる結晶形態又は無定形対結晶形態を想定する)である。其の様な同素形種は、又、多形又は多形種とも言われる。
本発明の貯蔵安定性成形粒子は、更に、任意に、薬剤分野の中で一般に知られている薬理学的に受容可能な賦形剤、安定剤、及び緩衝剤を含む。
これらの安定な成形粒子は、物理化学的性質の有利な組合せを有する。第一に、この粒子は、構成成分の有機化合物の最も安定な結晶形態にはならないかも知れない手段によって所望の形状に構成される。次いで、粒子は、最も安定な結晶構造を想定する有機化合物を結果的にもたらし、且つ元の粒子のサイズと形状の保持を促進する固体結晶化方法に掛けられる。得られた生成物は、一種以上の分子有機化合物であって、それぞれが均一な結晶特性を有し、高度の貯蔵安定性を有する有機化合物から成る特定的に配置された粒子である。
【0012】
粒子のサイズと形状の均一性及び構成成分の有機化合物の結晶構造の均一性並びに安定性との組合せは、特定の予測性及び一貫した生体利用性及び関連した生体力学を手助けする。
更に、この粒子は、所望の規格、例えば、微小球体の特定のサイズ及び形状に予備成形される。次いで、粒子は、予備成形されたサイズ及び形状の損失なしに粒子の化合物を安定化させる固体結晶化方法に掛けられる。得られる粒子は、サイズ並びに形状において極めて高い均一性を有し、より均一で且つ予測可能な溶解性並びに様々な形態、例えば、水性媒体の様な液体懸濁液又は其の他の貯蔵液体、凍結乾燥固体として、或いは、粉末又は乾燥固体として単独で、極めて高い貯蔵安定性を有する。貯蔵安定性は、粒子が、粒子それ自体の所望の均一なサイズと形状の損失なしに、改善された棚寿命を有することを意味する。即ち、所望の粒子形状が微小球体である場合は、粒子は、数年以上にわたって一定のサイズの球状形態を保持する。
ここで使用される貯蔵安定とは、粒子の元のサイズ並びに形状の保持及び少なくとも一ヶ月にわたる活性薬剤の薬理学的活性の保持を意味する。本発明は、又、粒子の溶解及び所望の形状の付随的損失無しに、準安定化合物又は混合物の成形粒子を結晶化する方法を含む。この結晶化方法は、前記粒子を、溶剤の蒸気で飽和された調節された雰囲気に暴露することによって行われる。この雰囲気は、其の他の事項、例えば、圧力、温度、不活性ガス等で任意に変更される。好ましくは、調節された雰囲気は、溶剤蒸気で飽和されるが、前記溶剤の凝縮が起る程多くない溶剤蒸気で飽和される。
【0013】
更に、本発明方法は、粒子の寸法(例えば、サイズ及び形状)の変更無しに、成形粒子における無定形又は準安定有機化合物の結晶化を行う方法であって、(i)前記成形粒子を、前記有機化合物の溶剤である液体の蒸気で飽和された雰囲気に暴露し、そして(ii)前記有機化合物が均一な結晶構造となっている前記成形粒子を回収することを含む。
或いは、本発明方法は、一定のサイズ及び形状の粒子中の分子有機化合物の固体結晶化を行う方法であって、(i)前記粒子を前記有機化合物の溶剤で飽和された雰囲気に暴露し、そして(ii)前記粒子を回収する工程を含み、前記回収された粒子中の前記有機化合物が均一な結晶構造であり、前記回収された粒子が前記サイズと形状とを保持している方法である。粒子のサイズ並びに形状の保持とは、粒子の寸法の最小の変更、例えば、約15%未満、好ましくは約10%未満の変更を含むことを意味する。
本発明は、有機化合物の得られる同素形形態に関係なしに所望の寸法の粒子を製造する手段を提供する。粒子が所望のサイズ及び形状に製造された後に、固体結晶化法は、有機化合物を、均一な結晶構造の貯蔵安定性固体状態に結晶化させるのに有効である。更に、本発明の固体結晶化は、二種以上の同素形有機化合物から成る粒子についても有効である。
好ましくは、成形粒子は、微小球体であり、本発明方法の結果として、この微小球体の有機化合物は、微小球体のサイズ又は形状において何らの劣化も無しに単一で均質な結晶形態に並べられる。
【0014】
本発明の目的に対して、「結晶化」と言う用語は、特定の物質の最も安定な多形が達成される方法を意味する。再結晶化とは、粒子の有機化合物が、むしろ無定形であるよりも、当初混合晶癖の部分的結晶性であったもの、或いは、結晶性であるが安定性に欠ける結晶形態であったもの以外は結晶化に類似の方法を意味する。別途指示しない限り、「結晶化」と言う用語は再結晶化を含む。
「固体結晶化」と言う用語は、結晶化している化合物の肉眼での溶解が認められずに行われる結晶化方法を意味する。ここで使用される「固体結晶化」は、成形粒子内の有機化合物が、粒子の形状又はサイズの損失又は変更無しに溶剤蒸気への暴露によって結晶又は再結晶化される結晶化方法を含む。微妙な分子間の変化が其の様な結晶化によって行われる(例えば、結晶格子構造の創造又は再配列)。一方で、粒子の微視的及び/又は巨視的寸法が認め得るほどには変化しないことが当業者には理解されるであろう。
結晶化が行われる雰囲気に関して使用される時の「飽和された」と言う用語は、溶剤蒸気を保つ為に使用されるチャンバー又は密閉容器内の雰囲気が、チャンバー内の表面上で目に見える凝縮を起さずに、気相において前記溶剤の最大量を含む事を意味する。
凝縮は、粒子の形状に影響を及ぼさない粒子表面上での微視的凝縮を含まない。
【0015】
「溶剤」と言う用語は、標準温圧において液体で、特定の固体溶質の適当な量を溶解することのできる液体を意味する。固体溶質は、特定の有機化合物である。固体は、其の溶解度を0〜100%で変化させる。例えば、"Solubility Parameters of Organic Compounds",CRC Handbook of Chemistry and Physics, 62d ed., C-699, CRC Press; N. Irving Sax and Richard J. Lewis, Sr., Hawley's Condensed Chemical Dictionary, 11th ed., 1079 (1987)参照。本発明の目的に対しては、液体は、溶質が前記液体に少なくとも10%溶解する所の特定の固体溶質に関する溶剤が考えられる。
「粒子」と言う用語は、一種以上の有機化合物の複数の分子の個々の集合体を意味する。ここで使用される様に、粒子は、規則正しく配置された集合体(例えば、結晶性)又は不規則な集合体(例えば、無定形)或いは、それらの組合せであっても良い。この用語は、例えば、粉末、微小球体、ペレット、インプラント等の微視的並びに巨視的粒子を包含する。
【0016】
好ましくは、粒子は、微小球体で造られる。本発明の好ましい微小球体は、特に人間に対する使用においては、1μ〜1mm、より好ましくは1〜500μ、そして最も好ましくは1〜100μの範囲である。粒子がペレット形態である時は、粒子は、通常、1000〜5000μの長さで、500〜1000μの直径の円柱状であるが必ずしもそうである必要はない。これらの粒子は、獣医学の使用の為に重要な用途を有することが出来、注射ではなくて皮膚の上に塗られる。
粒子のサイズ及び形状は、目的とする用途及び構成成分の有機化合物に依存する。例えば、微小球体のサイズは、実用的な理由、即ち、皮下注射針を使用する投与又は溶解の所望の速度を保証するのに適したサイズが選ばれる。
「分子有機化合物」と言う用語は、安定な個々の分子として存在する有機化合物(即ち、非重合体)であって、複数の個々の分子が結合した時に、一種以上の規則正しく配置された結晶構造を想定することの出来る有機化合物を意味する。この様に、分子有機化合物は、ポリマー種と区別することを意味する。
【0017】
「準安定」と言う用語は、自由エネルギー量が、平衡状態において含まれる量よりも多い、固体物質の擬似平衡状態を意味する。本発明の特定の目的に対して、「安定」な物質又は粒子は、結晶性構造を有し、其の形状は標準の周囲環境、例えば、水分のレベルが変化している空気中において長期間、変化せずに残る。
然しながら、「安定」とは、無限の安定性を意味するのではなく、粒子が、貯蔵中及びその適用及び使用及び更にはそれらを患者に投与した後、それらの全ての溶解までにその結晶特性の保存の為に十分に安定である様な十分な安定性を意味する。
又、本発明は、本発明を使用して達成される安定な微小球体を包含する。その様な微小球体は、薬理学的用途を有する化合物を含むことが好ましい。本発明の微小球体及びペレットは、人間、動物、最適投与方式において有用である。
例えば、動物の成長を促進する為に動物の餌に含まれるステロイド成長促進剤の持続的放出を達成する組成物に対する要求が存在する。動物に投与される成長ホルモンの量は、特定の動物種、ホルモン、治療の長さ、動物の年齢、及び所望の成長促進の量に依存する。動物の治療においてホルモン組成物の使用に当って為すべきその他の考慮は、米国特許第5,643,595号明細書で検討されており、ここに参照によって導入される。本発明の粒子は、粒径を変化させることによって、注射による最適な配送に対して特に構成することが出来る。
上述の如く、本発明の微小球体は水性液体中で安定であり、従って、非経口的な注射に向いている。投与形式としては、静脈注射(IV)、動脈内(IA)、筋肉内(IM)、皮内、皮下、関節内、中枢神経、硬膜外、腹腔内等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。更に、本発明の化合物は、水性懸濁液として或いは凍結乾燥生成物として経口投与が出来る。又、その他の投与経路も受入れ可能であり、眼の中への、或いは、吸入を介して液滴又はミストの形態での局所的投与が可能である。
【0018】
本発明の投与量形態は、懸濁液として迅速に調製されるバイアル/アンプル中の微小球体粉末の形態、或いは、注射が出来るアンプル又は直接シリンジの中に充填した、人間又は獣医学の医薬として迅速に投与される即製懸濁液の形態をとっても良い。懸濁液媒体は、懸濁液中で物質の物理的及び化学的完全性を脅かさず、それを受入れる組織にとって適当である注射の出来る物質又はその他の物質又は組合せを調製する為に薬剤師によって通常使用される緩衝剤、界面活性剤、保存剤を含む水、塩水、油であっても良い。受入れる組織の内部媒体において、活性成分のレベルの急激な初期増加を避けることが望ましい場合は、即使用懸濁液の場合は、前記活性成分が実質的に不溶である液体ベクターを使用することが好ましい。活性物質が微温液体ベクターに部分的に可溶で冷たい温度では不溶である場合は、薬理学的観点から、別々の微小球体粉末形態と、注射の時にのみ混合される液体ベクターとの製剤を調製することによって沈殿物(所謂「ケーキング」)の生成を避けることが望ましい。
所望の効果の期間が極めて長い獣医学的用途(例えば、成熟した雌の授乳期間)においては、数百ミクロンの直径が使用されても良い。患者の安心の為に注射シリンジの針の直径を限定することが望ましい場合は、微小球体の直径は300ミクロン、より好ましくは100ミクロンに限定すべきである。反対に、極めて短期間の効果に対しては(例えば、概日性)、微小球体の直径は5ミクロンに減少させても良い。
【0019】
人間の医薬で最大の用途に対しては(概日性サイクル及び月経性サイクルの間の活性成分の作用期間)、活性物質/担体物質の組合せによって、直径が5〜100ミクロンの微小球体を使用することが好ましい。
その直径による微小球体の分離は、公知の方法を使用する製造方法、例えば、サイクロン分離、空気吸引を使用する篩分け、或いは水性媒体での篩分けの間に行っても良い。実際には、微小球体の70%より多くが、特定の直径の70〜130%の直径を有していれば十分である。必要であれば、提案された用途によって決められる理想的溶解曲線は、適当に異なる直径のバッチを混合することによって、アプローチされても良い。更に、仕様に合わない粒子はリサイクルされても良い。
固体状態にある物質が少なくとも一種の溶剤を含む蒸気の存在において結晶するメカニズムは未だ確立されていない。結晶化方法は、溶剤の効果に関しては、飽和溶液及び分子易動度において適用する伝統的原理に良く一致する。使用される溶剤の特定のタイプ及び蒸発温度に依存すると思われる幾つかの分子回転或いは転移移動が生起する可能性がある。(Hancock et al., "Characterisation and Significance of the Amorphous State in Pharmaceutical Systems", J. Pharm. Sci., Vol. 86. No. 1, 1-12 (1997))。然しながら、結晶化が得られる温度が、十分にガラス転移温度以下であり、実際は、溶剤の蒸気圧に対して必要とされる温度によるだけであることは明らかである。
【0020】
理論にとらわれること無く、本発明者は溶剤の気相分子は結晶化されるべき粒子の表面に溶剤の微小凝縮と微細な蓄積を形成し、この様にして、十分なエネルギーを固体粒子の表面分子にもたらして組織化された構造(例えば、結晶性ドメイン)を形成するものと考える。
同様に、蒸気中に存在すると、安定な多形が必要とされる場合には、水分子は水和物の形成の為に利用可能となる。
組織化及び/又は水吸収工程が表面で始まると、結晶化工程が、溶剤内での接触又は溶解の必要無しに徐々に粒子の内部に広がる事が可能である。
これが正しければ、これらの微視的凝縮又は分子凝集は極端に微小であることを示すと思われる二つの事実が存在する。第一は、十分な溶剤凝縮が粒子の表面で起ったとすると、溶剤は少なくと部分的に粒子を溶解し粒子の形状を変更する。部分的溶解を避ける為には、蒸気による沈着の量が極めて微小でなければならない。
第二に、粒子を溶剤蒸気に暴露する間に、それらの小さなサイズ及び量の多さの為に、不可避的に互いに接触する事となる。沈着した蒸気の量の実質的な量が微小なものでない場合には起るであろう粒子の表面溶解が存在する所では、粒子は互いに固着し、塊又は凝集体を形成する傾向にある。ここに開示の条件下では、これは起らない。
【実施例】
【0021】
以下の実施例は、物質又は物質の混合物が、本発明方法によって如何にして準安定から更に安定な結晶性構造に転化されるかを例示するものである。

実施例1.17−β−エストラジオールの微小球体
この化合物及び其の他の化合物は、小滴として溶融/噴霧され、その後、放出遅延注射液用として水中に懸濁する為の微小球体に凝固された。
−50℃で噴霧小適を凝固させて後に得られた17−β−エストラジオールの微小球体は、高い割合の無定形物質であった。
これらの微小球体を十分に加熱することによって、無定形物質を無水多形に結晶化させた。然しながら、完全に結晶化されているにもかかわらず、安定な多形が半水和物であることから、これらの微小球体は室温では安定であったが水中では不安定であった。(Salole, The Physicochemical Properties of Estradiol, J. Pharm. Biomed. Anal., 1987: 5(7), 635-648; Jeslev et al., Organic Phase Analysis, II. Two unexpected cases of pseudopolymorphism, Arch. Pharm. Chemi. Sci. Ed., 1981, 9, 123-130)。この様に、水溶液中では、この物質は自然にこの更に安定な多形に戻り、そうすることによって、その結晶配列を微小球体とは異なる形状に再構築する。
【0022】
これらの微小球体を凡そ7リットルの受容体に中に入れ、多孔性のセルロース物質中に保たれたエタノールと水の混合物(50−50)の13.5mlの蒸気に20〜25℃で24時間暴露すると、初め無定形の微小球体は、蒸気の存在下で直ちに安定な半水和物多形に結晶化し、その後、水中に入れても安定であった。
結晶化した17−β−エストラジオールの安定性を評価する為に、微小球体を40℃の水溶液に入れ、274日後に光学顕微鏡で観察した。この様に、半水和物形態を含む微小球体の水中での安定性は、光学顕微鏡を使用して検証しても良い。
微小球体の中に存在する残留エタノールは、0.01%未満であった。

実施例2.テストステロン微小球体
テストステロンは幾つかの多形を有し、その内の二つの水和物形態は水中において安定であることを幾人かの著者が報告している(Froklaer et al., Application of Differential Scanning Calorimetry to the Determination of the Solubility of a Metastable Drug, Arch. Pharm. Chemi. Sci. Rd., 2. 1974, 50-59; Frokjaer et al., Dissolution Behavior Involving Simultaneous Phase Changes of Metastable Drugs, Arch. Pharm, Chemi. Sci. Ed. 2, 1974, 79-54; Thakkar et al., Micellar Solubilization of Testosterone III. Dissolution Behavior of Testosterone in Aqueous Solutions of Selected Surfactants, J. Pharm. Sci. Vol. 58, No. 1, 68-71)。
テストステロン微小球体は、17−β−エストラジオールと同じ噴霧/凝結によって製造された後直ちに、等しく高い無定形含有量を示した。117℃で23時間微小球体を加熱して、それらを、市販の原料中に存在するものに類似の無水多形に結晶化した。然しながら、それらの微小球体を水に入れると、無水多形は自然に水和物構造体に転化した。即ち、微小球体の形状を失はさせる転化。
反対に、これらの微小球体を凡そ7リットルの受容体に入れ、20〜25℃で24時間、多孔性セルロース物質中に保持されたアセトンと水の混合物(80−20)の40mlの蒸気に暴露すると、初めに無定形の微小球体は蒸気の存在下で、前述の安定な水和物多形に直ちに結晶化した。これらの結晶性粒子は、水中に入れても貯蔵安定性を示した。
【0023】
テストステロン微小球体の安定性を評価する為に、微小球体を40℃の水溶液に入れ、54日後に光学顕微鏡で可視化した。比較として、非結晶化テストステロン微小球体(溶融−凝固のみ)を水溶液に入れ、40日後に可視化した。水和物多形を含む微小球体対非結晶化微小球体の水中における安定性は、光学顕微鏡写真の比較で明らかであった。
微小球体中に存在する残留エタノールは0.01%未満であった。

実施例3.プロゲステロン微小球体
プロゲステロン微小球体は、先の物質に対するのと同じ噴霧/凝固によって製造後直ちに、多形I及びIIの結晶化を示した。プロゲステロンに対する水和物多形は報告されていない。
然しながら、この微小球体を凡そ7リットルの受容体中に入れて、20〜25℃で4時間、多孔性セルロース物質中に保持されたエタノール及び水の混合物(50−50)の13.5mlの蒸気に暴露すると、初めに無定形の微小球体は蒸気の存在下で安定な多形Iに直ちに結晶化し、その後、水中に入れても安定であった。
【0024】
結晶化したプロゲステロン微小球体の安定性を評価する為に、微小球体を40℃の水溶液に入れ、187日後に光学顕微鏡で観察した。
プロゲステロンの場合には、又、溶剤蒸気の使用が、DSCで観察された様に、噴霧−凝固後に見出される構造の混合物中に存在する多形IIの多形Iへの転化を呼び起こすことに注意すべきである。
更に、プロゲステロンの場合は、又、溶剤蒸気への暴露が易動性系で得られた。微小球体を、5rpmで回転する1.6リットル気密性結晶化室に入れ、24時間、エタノール蒸気と接触させた。
両方の実験で、微小球体中に存在する残留エタノールは0.01%未満であった。

実施例4.アステミゾール微小球体
本発明方法が、ステロイド及びステロール以外の有機化合物の安定な結晶を形成するのに有効であったことを証明する為に、アステミゾール微小球体を溶剤蒸気処理に掛けた。
【0025】
先の物質に対するのと同じ噴霧/凝固によって製造された直後に、アステミゾール微小球体は高い無定形含有量を示した。然しながら、100mgの微小球体を凡そ0.5リットルの受容体中に入れ、30℃で24時間、多孔性セルロース物質中に保持された酢酸エチルの0.5mlの蒸気に暴露すると、初めに無定形の微小球体が、蒸気の存在下で安定な多形に直ちに結晶化した。同様の結果が、アセトンを使用して、他の実験でも得られた。
アステミゾール微小球体の安定性を評価する為に、微小球体を40℃の水溶液に入れ、76日後に光学顕微鏡で観察した。

実施例5.アステミゾールペレット
アステミゾールペレットの場合では、−50℃で溶融原料物質を凝固直後に、高含有量の無定形物質を示した。然しながら、凡そ0.5リットルの受容体中の150mgのアステミゾールペレットを30℃で24時間、多孔性セルロース物質中に含まれる酢酸エチルの蒸気に暴露すると、粒子形状に何ら変更を伴うこと無しにペレットが結晶化した。同様の結果が、他の実験でアセトンを使用して得られた。

実施例6.コレステロール微小球体
先の物質に対するのと同じ噴霧/凝固によって製造された直後に、コレステロール微小球体は、無定形含有量を示した。コレステロールに対する多形は報告されていない。
100mgの微小球体を凡そ0.5リットルの受容体中に入れ、多孔性セルロース物質中に保持された酢酸の1mlの蒸気に暴露すると、初めに無定形の微小球体は、完全に結晶化した。
【0026】
物質の混合物の結晶化
成分の溶融凝固成形粒子において異なる物質を混合することは、重要な利点を用意することが出来る。中でも、溶解速度の変調、融点の低下、活性成分の希釈、主成分の化学的安定性の改善である。この様に、物質の混合物から成る粒子を結晶化させる為の能力は、健康並びに其の他の領域において、溶融−凝固固体の適用範囲を著しく増加させる。
物質の多くの混合物が溶融でき、凝固できる。然しながら、各成分の異なる物性の為に、その様な混合物は、共融混合物を除いて、凝固に当って複雑な準安定構造を形成し易く、転移点温度に達する前に物質の一つが溶融してしまうので、それらを結晶化させることが重要である。
上述の如く、複数の同素形有機化合物から成る粒子は、同様に、本発明の固体結晶化に適するものである。結晶化が完結し、得られる粒子は、水及び、貯蔵並びに使用の通常の温度での環境の両方において安定である。
【0027】
実施例7.40%の17−β−エストラジオールと60%のコレスレロールとの混合物の微小球体
この混合物の微小球体はその成分と一緒に溶融することによって得られ、純粋物質に関して、小滴に噴霧して微小球体に凝固させた。これらは、初めに、高い無定形含有量を示した。
この微小球体を凡そ7リットルの受容体中に入れ、30℃で24時間、多孔性セルロース物質中に保持されたエタノールの8mlの蒸気に暴露すると、初め無定形の微小球体が、蒸気の存在下で完全に結晶化した。
60℃で真空中で24時間乾燥した微小球体中に存在する残留エタノールは0.01%未満であった。
微小球体の安定性を評価する為に、非結晶化微小球体(溶融−凝固のみ)と、本発明の微小球体とを別々に40℃の水溶液に入れ、82日後に光学顕微鏡で観察した。光学顕微鏡による観察の結果、本発明により結晶化された微小球体は水に入れても時間が経過しても安定であったが、非結晶化微小球体は安定では無かった。
【0028】
生体内での安定性
注射された、或いはインプラントされた緩慢放出の医薬の場合は、患者へのそれらの投与後の粒子の物理的完全性が、配送の所望の速度並びに効果の再現性を確実なものとする為には必須のものである。この様に、先の実施例において記載した微小球体の生体内における安定性が、ニュージーランド産の雄ウサギで調べられた。
筋肉内注射後、1、4、7及び14日で撮られた光学顕微鏡写真は、微小球体が、最後に溶解するまで完全に残ることを示した。比較の為に、結晶化されていない微小球体を注射した。それらの光学顕微鏡写真は、それらの微小球体が非球体形態に変化したことを示した。

実施例8.10%の17−β−エストラジオールと90%のコレスレロールとの混合物の微小球体
先の実施例同様に、この混合物の微小球体は、その成分と一緒に溶融し、小滴に噴霧し、微小球体に凝固させることによって得られた。初め、これらは高い無定形含有量を示した。
この微小球体を凡そ7リットルの受容体中に入れ、5℃で24時間、多孔性セルロース物質中に保持されたエタノールの8mlの蒸気に暴露すると、初め無定形の微小球体が、蒸気の存在下で完全に結晶化した。
その後、60℃で真空中で24時間乾燥した微小球体中に存在する残留エタノールは0.01%未満であった。
【0029】
結晶化微小球体の安定性を評価する為に、これらを40℃の水溶液に入れ、141日後に光学顕微鏡で観察した。

実施例9.95.2%のプレゴステロンと4.8%のエストラジオールとの混合 物の微小球体
先の実施例同様に、この混合物の微小球体は、その成分と一緒に溶融し、小滴に噴霧し、微小球体に凝固させることによって得られた。初め、これらは高い無定形含有量を示した。
この微小球体を凡そ7リットルの受容体中に入れ、20〜25℃で24時間、多孔性セルロース物質中に保持されたエタノールの2mlの蒸気に暴露すると、初め無定形の微小球体が、蒸気の存在下で完全に結晶化した。
その後、60℃で真空中で24時間乾燥した微小球体中に存在する残留エタノールは0.01%未満であった。
【0030】
実施例10.60%のプレゴステロンと40%のコレステロールとの混合物の微小球体
先の実施例同様に、この混合物の微小球体は、その成分と一緒に溶融し、小滴に噴霧し、微小球体に凝固させることによって得られた。初め、これらは高い無定形含有量を示した。
この微小球体を凡そ7リットルの受容体中に入れ、30℃で24時間、多孔性セルロース物質中に保持されたエタノールの2mlの蒸気に暴露すると、初め無定形の微小球体が、蒸気の存在下で完全に結晶化した。
その後、60℃で真空中で24時間乾燥した微小球体中に存在する残留エタノールは0.01%未満であった。
この様に、本発明方法は、水溶液中においてその形状を維持する様々な有機化合物及び混合物の安定な結晶化粒子、微小球体及びペレットの形成に広く適用できる事が明らかである。従って、本発明方法は、薬剤並びに薬理学的組成物の製造において顕著な有用性があり、特に、緩慢放出製剤での薬剤投与を必要とする治療において有用である。
本発明の幾つかの実施態様は、ここに示され或いは記述されたが、本発明の精神と範囲を逸脱すること無く、この結晶化方法に対して様々な変更が為されても良いことは、当業者にとって明らかであろう。
【0031】
本発明は以下に関するものである。
1.一定のサイズと形状の粒子における同素形分子有機化合物の固体結晶化を行う方法であって、(i)前記粒子を前記有機化合物の溶剤で飽和された雰囲気に暴露する工程、及び(ii)前記粒子を回収する工程を含み、前記回収された粒子中の前記有機化合物が、均一な結晶構造であり、前記回収された粒子が前記サイズと形状を保持している事を特徴とする方法。
2.前記粒子が凍結乾燥固体、ペレット及びインプラントから成る群から選ばれる、前記1に記載の方法。
3.前記粒子が微小球体である、前記1に記載の方法。
4.前記粒子が、約1〜約1,000ミクロンの直径の微小球体である、前記1に記載の方法。
5.前記粒子が、約10〜約300ミクロンの直径の微小球体である、前記1に記載の方法。
6.該粒子が、最初に、前記有機化合物を溶融−凝固することによって微小球体に形成されている、前記1に記載の方法。
7.前記溶剤が、水、エタノール、アセトン、酢酸、トルエン及びベンゼンから成る群から選ばれる、前記1に記載の方法。
8.前記有機化合物が、多形性を示す薬物療法学的試薬である、前記1に記載の方法。
9.前記有機化合物がステロール又はステロイドである、前記1に記載の方法。
10.前記ステロール又はステロイドが、17−β−エストラジオール、エストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、コレステロール及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、前記9に記載の方法。
11.前記雰囲気が、前記溶剤を蒸発させるのに十分な温度であって前記有機化合物の融点以下の温度に維持される、前記1に記載の方法。
12.前記回収された粒子が、引き続き乾燥形態或いは水性媒体中で貯蔵される、前記1に記載の方法。
13.均一な結晶構造の同素形有機化合物を含む一定のサイズと形状の貯蔵安定性粒子であって、前記有機化合物が前記結晶構造を保持し、前記粒子が少なくとも約1ヶ月間、水性媒体中での貯蔵において前記サイズと形状を保持することを特徴とする粒子。
14.複数の同素形有機化合物を含む、前記13に記載の粒子。
15.薬理学的賦形剤、緩衝剤、安定剤及びそれらの組合せから選ばれた添加剤を更に含む、前記13に記載の粒子。
16.該粒子が微小球体である、前記13に記載の粒子。
17.該粒子が約1〜約1,000ミクロンの直径の微小球体である、前記13に記載の粒子。
18.該粒子が、約10〜約300ミクロンの直径の微小球体である、前記13に記載の粒子。
19.該同素形有機化合物の望ましい結晶形態が水和物である、前記13に記載の粒子。
20.該同素形有機化合物がステロイド又はステロールである、前記13に記載の粒子。
21.前記ステロイド又はステロールが、17−β−エストラジオール、エストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、コレステロール及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、前記20に記載の粒子。
22.前記同素形有機化合物が、アステミゾール、シサプリド又はオキサトミドである、前記13に記載の粒子。
23.少なくと一種の同素形分子有機化合物を含む混合物であって、前記混合物が一定のサイズと形状の粒子に凝固されている混合物の固体結晶化を行う方法であって、(i)前記粒子を前記有機化合物の溶剤で飽和された雰囲気に暴露する工程、及び(ii)前記粒子を回収する工程を含み、前記回収された粒子中の前記有機化合物が均一の結晶構造であり、前記回収された粒子が前記サイズと形状を保持している事を特徴とする方法。
24.少なくとも一種の同素形有機化合物を含む前記混合物がステロイド性成分を含む、前記23に記載の方法。
25.前記混合物が、オキサトミド/コレステロール、ニフェジピン/コレステロール、及びアステミゾール/コレステロールから成る群から選ばれる、前記24に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同素形有機化合物の、固体結晶化されかつ成形された粒子を製造する方法であって、前記方法が、
(a)2以上の同素形有機化合物から本質的になる混合物を作る工程であって、前記各化合物が、混合した結晶性の、無定形の、又は結晶性と無定形との組み合わせの形態である工程;
(b)前記混合物を複数の球状粒子に加工する工程;
(c)前記球状粒子を、前記各同素形有機化合物の1以上の溶剤の蒸気を含む雰囲気に、前記各同素形有機化合物の固体結晶化が行われ、その最も安定な結晶形態になるのに十分な時間、暴露する工程;及び
(d)前記粒子を回収する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記混合物を均一な形状の複数の粒子に加工する工程が、前記混合物を複数の微小球体に溶融−凝固することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶剤が、水、エタノール、アセトン、酢酸、トルエン、ベンゼン及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記同素形有機化合物の少なくとも1つがステロール又はステロイドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステロール又はステロイドが、17−β−エストラジオール、エストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、コレステロール及びそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記製剤がコレステロールを含み、更に、アステミゾール、ニフェジピン及びオキサトミドからなる群より選ばれる同素形有機化合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸気を含む雰囲気が、前記溶剤を蒸発させるのに十分な温度及び圧力であって前記有機化合物の融点以下の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記同素形有機化合物の均一な結晶形態が水和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記球形粒子が、1〜500ミクロンの均一な直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記球形粒子が、1〜500ミクロンの範囲で変化する直径を有する、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2011−241220(P2011−241220A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161017(P2011−161017)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2000−533103(P2000−533103)の分割
【原出願日】平成11年2月10日(1999.2.10)
【出願人】(508207789)スケンディ ファイナンス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】