説明

結束バンドの装着構造

【課題】電気接続箱やブラケット構造体等といった部材の壁部に結束バンドを作業性良くスムーズ且つ確実に装着する。
【解決手段】壁部15aに一対の孔部24を区画壁25を介して連通して設け、一方の孔部24から他方の孔部24に結束バンド49を挿通させる構造で、他方の孔部24を一方の孔部よりも深く形成し、他方の孔部内に、他方の孔部の開口24aに向かう傾斜面34を形成し、結束バンドの先端を傾斜面に沿って開口に案内させる。一方の孔部の底壁30に、区画壁の内面側に向かう傾斜面33aを形成し、結束バンドの先端を傾斜面に沿って他方の孔部の開口24aに案内させる。他方の孔部内で区画壁25の内面側に、結束バンドの係止用の突起52を係合させて逆戻りを防止する突起36を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁部に設けた一対の孔部に結束バンドを挿通してワイヤハーネス等の線条体を固定する結束バンドの装着構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の結束バンドの装着構造を電気接続箱に適用した一例を示すものである。
【0003】
この電気接続箱(ジャンクションボックスないしジャンクションブロック)41は、合成樹脂製のケース42と、ケース42内に装着される回路基板(図示せず)と、ケース42の開口43側で回路基板から立設した端子(図示せず)を収容する部品接続部44,45及びコネクタ46と、ケース42の外側に一体に設けられた一対のブラケット47とを備えるものである(例えば特許文献1参照)。
【0004】
部品接続部はリレー接続部44やヒューズ接続部45であり、ケース42と一体の接続部本体(符号44,45で代用)と前記回路基板側の端子(図示せず)とで構成される。回路基板はプリント回路やバスバー回路は電線等の回路を適宜備える。
【0005】
コネクタ46は入力用と出力用の二つがあり、電源側のワイヤハーネス(図示せず)のコネクタが入力用のコネクタ46に接続され、回路基板から部品接続部44,45のリレーやヒューズを経て出力用のコネクタ46から負荷側のワイヤハーネス(図示せず)に接続される。すなわち、電源電流が電気接続箱41のリレーやヒューズ等の部品を経て負荷側に分配される。
【0006】
ケース42の開口43はカバー(図示せず)で閉止され、入力用のワイヤハーネス(図示せず)はカバーの孔部から外部に挿通される。ケース42をロアカバーと称することもある。入出力用のコネクタ46の位置はケース42の開口43側に限らず、ケース42の裏面側や背面側に配置されることもある。また、電子制御ユニット(図示せず)がケース42の裏面等に付設されて、ケース42内の回路基板に接続されることもある。
【0007】
各ブラケット47はボルト挿通用の孔部47aを有し、車両ボディやパネル等にボルト(図示せず)で締付固定される。車両ボディ等への電気接続箱41の取付方向は横置きに限らず縦置きや斜め等に取り付けられることもある。
【0008】
電気接続箱41のケース42に、電気接続箱41に関係のない外部のワイヤハーネス(複数本の電線)31を付設(配索固定)する場合は、例えばケース42の外壁57に、ワイヤハーネス結束用の合成樹脂製のバンド49を挿通させる孔部50aを有する枠状部50を設けておき、バンド49でワイヤハーネス31を枠状部50に締付固定する。
【0009】
図7(a)(b)は、結束バンドの一形態を示すものである(例えば特許文献2参照)。
【0010】
この結束バンド49は、合成樹脂を材料として、表面に鋸歯状突起(係止用の突起)52を有する可撓性の帯状のバンド本体51と、バンド本体51の基端に設けられた挿通係止部53とで成るものである。鋸歯状突起52は摺接用の傾斜面と、バンド本体51にほぼ直交する係止面とを有するものである。
【0011】
バンド本体51を先端部51a側から挿通係止部53の枠状部54の内側の孔部55に挿通し、バンド本体51でワイヤハーネス31を締め付けて鋸歯状突起52を孔部55内の可撓性の係止片56で係止させる。締付後にバンド本体51の先端部51aは枠状部54から突出して邪魔なので切断する。
【特許文献1】特開平11−266515号公報(図1)
【特許文献2】特開平10−37917号公報(図7〜図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の図6の結束バンドの装着構造にあっては、バンド49が枠状部50によって外側に突出するために、ワイヤハーネス31の安定性が悪いという問題があった。
【0013】
そこで、ケース42の平坦な外壁57に、結束バンド49を挿通させる一対の孔部(図示せず)を設けて、結束バンド49やワイヤハーネス31を外壁57に直接支持させる場合には、ケース42の上カバーを外して、ケース42を開口させた状態で、結束バンド49を一方の孔部からケース42の内側に挿入し、次いで他方の孔部から外側に突出させるという面倒な作業が必要であり、結束バンド49を装着する場所も限定されてしまうという問題があった。また、結束バンド49のバンド本体51(図7)がある程度の曲げ剛性を有するために、作業者がバンド本体51を一対の孔部にスムーズに挿通(貫通)させ難いという問題があった。
【0014】
電気接続箱41の使用形態によっては、ワイヤハーネス31を付設しない場合もあり、ワイヤハーネス31の付設(配索)作業は製造ラインではなく倉庫等で出荷前に行う場合が多く、不慣れな作業者でも簡単に結束バンド49を挿通させることのできる構造が切望されていた。
【0015】
例えば電気接続箱41を他のブラケット構造体(図示せず)を介して車両ボディやパネル等に固定する場合は、電気接続箱4ではなくブラケット構造体に結束バンド49をスムーズに挿通(装着)させる必要があった。
【0016】
本発明は、上記した点に鑑み、電気接続箱やブラケット構造体等といった部材の壁部に結束バンドを作業性良くスムーズ且つ確実に装着することのできる結束バンドの装着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る結束バンドの装着構造は、壁部に一対の孔部を区画壁を介して連通して設け、一方の孔部から他方の孔部に結束バンドを挿通させる構造において、該他方の孔部が該一方の孔部よりも深く形成され、該他方の孔部内に、該他方の孔部の開口に向かう傾斜面が形成され、該結束バンドの先端が該傾斜面に沿って該開口に案内されることを特徴とする。
【0018】
上記構成により、結束バンドが一方の孔部から他方の孔部内に挿入された時点で、他方の孔部が一方の孔部よりも深いから、結束バンドの先端が確実に他方の孔部内の傾斜壁に当接し、傾斜壁に沿ってスムーズに摺接しつつ他方の孔部の開口に導かれ、結束バンドが区画壁側を中心として湾曲しつつ他方の孔部の外側に突出する。作業者が結束バンドの内側にワイヤハーネス等の線条体をセットして結束バンドを締めることで、線条体が壁部に直接的に固定される。
【0019】
請求項2に係る結束バンドの装着構造は、壁部に一対の孔部を区画壁を介して連通して設け、一方の孔部から他方の孔部に結束バンドを挿通させる構造において、該一方の孔部の底壁に、該区画壁の内面側に向かう傾斜面が形成され、該結束バンドの先端が該傾斜面に沿って該他方の孔部に案内されることを特徴とする。
【0020】
上記構成により、結束バンドが一方の孔部に挿入されると、結束バンドの先端が孔部内の傾斜面(突起の傾斜面であることが好ましい)に摺接しつつ区画壁の内面に向けてバンド先端部が湾曲し、区画壁に続く他方の孔部の開口めがけてバンド先端が進行して、開口から外部に突出する。例えば、請求項2の構成に加えて請求項1に記載された他方の孔部内の傾斜壁を設けておけば、ばらつきによってバンド先端が他方の孔部の開口に突出しなくとも、傾斜壁に沿って開口に導かれる。
【0021】
請求項3に係る結束バンドの装着構造は、壁部に一対の孔部を区画壁を介して連通して設け、一方の孔部から他方の孔部に結束バンドを挿通させる構造において、該他方の孔部内で該区画壁の内面側に、該結束バンドの係止用の突起を係合させて逆戻りを防止する突起が設けられたことを特徴とする。
【0022】
上記構成により、結束バンドが一方の孔部から他方の孔部内に挿入された際に、あるいは、他方の孔部の開口から外部に導出された際に、結束バンドの係止用の突起が区画壁の突起に係合して、結束バンドの逆戻りが防止される。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明によれば、一方の孔部に挿入した結束バンドが他方の孔部の傾斜面に沿って自動的に他方の孔部の開口から外部に導出されるから、孔部への結束バンドの挿通作業が簡単且つ確実に行われ、結束バンドによる壁部へのワイヤハーネス等の線条体の締付固定作業性が向上する。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、一方の孔部に挿入した結束バンドが一方の孔部内の傾斜面に沿って屈曲しつつ他方の孔部の開口側に導かれるから、孔部への結束バンドの挿通作業が簡単且つ確実に行われ、結束バンドによる壁部へのワイヤハーネス等の線条体の締付固定作業性が向上する。
【0025】
請求項3記載の発明によれば、一方の孔部から他方の孔部に挿通した結束バンドが区画壁の突起で逆戻りを防止されるから、一度挿入した結束バンドの不用意な抜け出しが起こらず、結束バンドの挿入作業性と、結束バンドによる線条体の締付作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1〜図5は、本発明に係る結束バンドの装着構造の一実施形態を示すものである。
【0027】
この結束バンドの装着構造は、図1の如く、電気接続箱1(図2)のケース4に別体の一廻り大きなブラケット構造体2(図3)を付設し、ブラケット構造体2に、電気接続箱1とは関係のない外部のワイヤハーネス31を沿わせて合成樹脂製の結束バンド49で固定するものにおいて、図4の如く、ブラケット構造体2に可撓性の結束バンド49を挿通させる一対の孔部24(24,24)を連通して設け、この一対の孔部24に結束バンド49をスムーズ且つ確実に挿通できる工夫を施したことを特徴としている。
【0028】
図1の例において、ワイヤハーネス31は複数本の結束バンド49で締付固定されている。結束バンド49は、ワイヤハーネス31を略L字状に屈曲させた形態に支持するべく、ブラケット構造体2の上下の端部側(ハーネス導出側)と中間の屈曲部31aの上下に配置されている。
【0029】
ブラケット構造体2は電気接続箱1のブラケット6では届かない車両ボディ等の奥側までメインブラケット17を延長したものであり、ブラケット構造体2のサブブラケット9,10に電気接続箱1の上下のブラケット5,6をボルトとナットで締付固定し、ブラケット構造体2の延長されたメインブラケット17や平坦な基板部15に設けた孔部23を車両ボディやパネルにボルトで固定する。
【0030】
結束バンド49は、従来例の図7で示したのと同様の既存のものであり(図7を流用して説明する)、表面に鋸歯状突起(係止用の突起)52を有する帯状のバンド本体51と、バンド本体51の端部に設けられた挿通係止部53とで成り、バンド本体51を挿通係止部53の孔部55に挿通してワイヤハーネス31を締め付けて鋸歯状突起52を孔部55内の可撓性の係止片56で係止させる。
【0031】
図2の如く、電気接続箱1は、矩形ブロック状の合成樹脂製のケース(接続箱本体)4と、ケース4の対角線上に一体に設けられた一対のブラケット5,6と、ケース4の側面に設けられた入出力用の各コネクタ7と、ケース4内に配置された回路基板(図示せず)と、この回路基板に接続されたリレーやヒューズ等の電気部品等(図示せず)を備えるものである。
【0032】
電気部品はカバー8で封止され、カバー8はケース4に係止手段13(図1)で係止されている。カバー8をケース4の一部と見てもよい。ケース4は、ブラケット構造体2に密着する正面側の垂直で幅広な壁面14と、上側のブラケット5を突出させた水平な上壁面18と、下側のブラケット6を突出させた下側の水平な壁面19と、コネクタ7を配置した垂直な側壁面20とを有している。
【0033】
各コネクタ7は、コネクタ嵌合室(符号7で代用)内に複数のピン状の雄端子(図示せず)を有するものであり、レバー(図示せず)の回動操作で相手ワイヤハーネスのコネクタ(図示せず)との嵌合離脱がスムーズ且つ確実に行われるものであることが好ましい。
【0034】
本例の電気接続箱1は、自動車のインストルメントパネルの内部(奥)に縦置き(垂直)に配置され、ブラケット構造体2(図1)でインストルメントパネル(取付側)に固定される。電気接続箱1の上下のブラケット5,6はブラケット構造体2の上下のサブブラケット9,10にボルトとナット12(図3)で締付固定される。ナット12はブラケット構造体2に予め固定されている。
【0035】
図3(a)(b)((a)は表面視、(b)は裏面視)の如く、ブラケット構造体2は、平坦で幅広な垂直な基板部15と、基板部15の一端(下端)側において基板部15の一側端(前端)から基板部幅方向に突出され、且つ基板部15の壁面(表面)15aから段差状に板厚方向に突出した水平な延長部16と、延長部16の先端(前端)側のメインブラケット17と、基板部15の幅方向中央で表面側に膨出され、延長部16の中央に交差した補強用の垂直な突出壁21と、基板部15の上部前端側と下部後端側とに対角線上に突出したサブブラケット9,10とを一体樹脂成形で形成して成るものである。
【0036】
メインブラケット17やサブブラケット9,10は、ボルト挿通用の孔部と、孔部に連通するナット12,22とをそれぞれ有している。基板部15の上部後端側と延長部16の後端寄りには長円形の孔部23がそれぞれ設けられている。
【0037】
メインブラケット17と各孔部23とでブラケット構造体2が車両ボディのパネル(図示せず)にボルト(図示せず)で締付固定される。基板部15の裏面や延長部16の内側には複数本の補強用のリブ(図示せず)が交差して設けられる。なお、本実施形態で上下前後左右の方向性は説明の便宜上のものであり、必ずしも電気接続箱1の取付方向と一致するとは限らない。
【0038】
基板部15の要所に、結束バンド49(図1)を挿通させる各一対の孔部24が配設されている。本例では、図1の結束バンド49の位置に対応して、ブラケット構造体2の上部側で各一対の孔部49が上下に並んで対称に配置され、ブラケット構造体2の中間部と下部とで各一対の孔部24が前後に並んで対称に配置されている。
【0039】
図4(a)(b)((a)は図3のA部平面図、(b)は(a)のB−B断面図)の如く、一対の孔部24(24,24)は中央の区画壁25を介して各開口24a,24aを隣接させ、区画壁25の内側(孔部24内)で相互に連通している。区画壁25はブラケット構造体2の基板部15の表面側に位置し(表面側の壁部15aの一部であり)、表面側の壁部15aは内面側のリブ26で裏面側の壁部15bに一体に続き、表裏の各壁部15a,15bの間には空間27が構成されている。一対の孔部24とその近傍において裏面側の壁部15bは廃除(開口)されている。
【0040】
一対の孔部24のうちの一方の孔部24は浅く形成され、他方の孔部24は深く形成され、両孔部24,24は段差を経て連通し、両孔部24,24の中間上部に区画壁25が位置し、区画壁25に対向して底部側の開口(樹脂成形時の型抜き孔)28が形成されている。区画壁25の幅は底部側の開口28よりも少し狭く形成されている。結束バンド49(図5)は一方の孔部24から挿入されて他方の孔部24から表面外側へ抜ける。
【0041】
一方の孔部24は、開口24aに続く傾斜壁(傾斜面)29と、傾斜壁29に続き、表面側の壁部15aと平行に区画壁25側に延びる水平な底壁(壁部)30と(水平とはブラケット構造体2を水平に置いた場合の方向であり、孔部24についてはこの方向を基準に説明する)、底壁30に直交して裏面側に向かう垂直な段差壁32とで構成されている。底壁30と段差壁32との交差部において、区画壁25の裏面25aに向かう上向きの小さな傾斜面33aを有する傾斜状の突起33が形成され、傾斜面33aは底壁30の上面に続いている。突起33は開口24aの幅(横断)方向に続く突条である。
【0042】
他方の孔部24は、開口24aに続く傾斜面34aを有する傾斜壁34と、傾斜壁34に続き、表面側の壁部15aと平行に区画壁25側に延びる水平な底壁(壁部)35とで構成されている。傾斜壁34は一方の孔部の傾斜壁29よりも長く、両傾斜壁29,34の傾斜角度は概ね同程度(45゜程度)で、両傾斜壁29,34は各開口24a,24aに向けて略逆ハの字状に傾斜している。底壁35は一方の孔部24の段差壁32に対向して底部側の開口28に続いている。
【0043】
他方の孔部24側において区画壁25の端部に小さな傾斜面36aを有する傾斜状の突起36が形成され、傾斜面36aは区画壁25の裏面(内面)25aに続き、且つ区画壁25の開口端面25bに鋭角的に交差して続いている。突起36は開口24aの幅(横断)方向に続く突条である。
【0044】
図5(a)に示す如く、結束バンド49を一方の孔部24に挿入した際に、結束バンド49の先端が一方の孔部24内の突起33の傾斜面33aに沿って摺接して傾斜面33aに沿う方向(上向き)に案内されて、区画壁25の裏面25aに摺接する、ないしは区画壁25の裏面25aとの間に隙間を存して、他方の孔部24の開口24aに向けて案内される。これにより、結束バンド49の先端部51aが一方の孔部24の開口24aから他方の孔部24の開口24aにスムーズ且つ確実に挿通される。
【0045】
結束バンド49を一方の孔部24に挿入する際に、傾斜壁29は結束バンド49の先端を水平な壁部30に沿ってスムーズに案内する。そして、図5(b)に示す如く、結束バンド49の先端が他方の孔部24の傾斜壁(傾斜面)34に沿って摺接して開口24aに向けて上向きに案内される。
【0046】
他方の孔部24は一方の孔部24よりも深く形成され、長い傾斜面34を有しているから、傾斜面34で確実に結束バンド49の先端をとらえて開口24aに向けて上向きに案内することができる。
【0047】
一方の孔部24側の傾斜状の突起33の作用で結束バンド49の先端が他方の孔部24の傾斜面34に摺接せずに直接孔部24の開口24aから外部に突出する場合もある。
【0048】
傾斜状の突起33によって結束バンド49が上向きに案内されて、結束バンド49の表面が区画壁25の内面25a側に押し付けられることで、結束バンド49の表面の鋸歯状突起52が確実に区画壁25の突起36に係合する。
【0049】
結束バンド49が区画壁25の裏面25a側を通過した時点で、結束バンド49の鋸歯状の突起52が区画壁25の傾斜状の突起36に係合(歯合)し、結束バンド49の後戻りが防止される。これは、鋸歯状でない突起を有する結束バンドに対しても有効である。これにより、作業者が一度挿入した結束バンド49が後戻りして抜け出すことがなくなり、これによっても結束バンド49の挿入作業性が向上する。
【0050】
図1において、結束バンド49でワイヤハーネス31をブラケット構造体2に固定する作業は、ブラケット構造体2が電気接続箱1に組み付けられた状態で行うことが好ましい。ブラケット構造体2に結束バンド49でワイヤハーネス31を固定した後、ブラケット構造体2を電気接続箱1に組み付けることも可能であるが、ワイヤハーネス31が邪魔して両者1,2の組付作業を行い難い。
【0051】
ブラケット構造体2の裏面15bは電気接続箱1に密着しているから、バンド挿通用の孔部24は裏面15bに貫通しておらず、結束バンド49は孔部24に対して斜め方向から挿入されるが、図4〜図5で説明した孔部構造によって簡単且つスムーズで確実なバンド挿通作業が可能となる。
【0052】
電気接続箱1とブラケット構造体2とワイヤハーネス31と結束バンド49とで電気接続箱組立体37が構成される。電気接続箱組立体37は例えば車両のインストルメントパネルの内側の壁部(取付側)にブラケット構造体2の延長部16のメインブラケット17で固定される。
【0053】
なお、上記実施形態においては、両孔部24,24に傾斜面29,34を逆ハの字状に形成したが、例えば一方の孔部24の傾斜面29を垂直面とし、他方の孔部24の傾斜面34のみを形成して、傾斜面34に沿って結束バンド49の先端を開口24aに案内させることも可能である。この場合、例えば一方の孔部側の傾斜状の突起33や区画壁25の突起36を廃除することも可能である。また、傾斜状の突起33を設けて、突起36は廃除したり、その逆に突起36を設けて傾斜状の突起33は廃除したりすることも可能である。これらの部位29,33,33,36は単独で効果を奏すると共に相乗的にも一層の効果を奏するものである。
【0054】
また、上記実施形態においては、外部のワイヤハーネス31を結束バンド49でブラケット構造体2に固定したが、外部のワイヤハーネス31に代えて電気接続箱1から導出されたワイヤハーネス(図示せず)を同様に結束バンド49でブラケット構造体2に固定することも可能である。
【0055】
また、上記実施形態においては、ワイヤハーネス31をブラケット構造体2に略L字状に屈曲させた形態に配索固定したが、例えばワイヤハーネス31を略への字状(鈍角的)や略V字状(鋭角的)に屈曲させた形態、あるいは屈曲させずに真直な形態で配索固定することも可能である。使用する結束バンド49の本数や配置は、ワイヤハーネス31の屈曲形態等に応じて適宜設定される。ワイヤハーネス31を直線的に配索する場合は結束バンド49は一本でよい場合もある。
【0056】
また、上記実施形態においては、杆状の長形な延長部16を有するブラケット構造体2を用いたが、ブラケット構造体として、電気接続箱1よりも一廻り大きなもの、あるいは電気接続箱1の一部において外側に突出した部分を有するものを用い、これら電気接続箱1から突出した部分を延長部として用い、その延長部に孔部等を設けて、孔部等を取付側にボルトで固定することも可能である。
【0057】
また、上記実施形態においては、ブラケット構造体2にバンド挿通用の孔部24を設けたが、ブラケット構造体2に代えて、例えば電気接続箱1の合成樹脂製のケース4等といった、内側に手を入れることのできない部分の外壁にバンド挿通用の孔部24を設けることも有効である。
【0058】
また、上記実施形態においては、ワイヤハーネス(複数本の電線)31を結束バンド49で固定する例で説明したが、線条体としてワイヤハーネス31に代えて自動車用のエアホースや給水ホースや光ファイバ等を結束バンド49で固定することも可能である。
【0059】
また、上記実施形態は、結束バンドの装着構造として説明したが、それ以外に、結束バンドを用いた線条体の固定構造やハーネス配索構造等としても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る結束バンドの装着構造の一適用例を示す斜視図である。
【図2】同じく適用例における電気接続箱の一形態を示す斜視図である。
【図3】同じく適用例のブラケット構造体の一形態を示す、(a)は正面視斜視図、(b)は背面視斜視図である。
【図4】(a)はバンド挿通用の孔部を示す、図3のA部拡大平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図5】同じく孔部に結束バンドを挿通させる状態(作用)を示す断面図である。
【図6】従来の結束バンドの装着構造の一形態を示す斜視図である。
【図7】従来の結束バンドの一形態を示す、(a)は斜視図、(b)はワイヤハーネスを結束した状態の断面図である。
【符号の説明】
【0061】
15a 壁部
24 一方の孔部
24 他方の孔部
25 区画壁
30 底壁
33a 傾斜面
34a 傾斜面
36 突起
49 結束バンド
52 係止用の突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部に一対の孔部を区画壁を介して連通して設け、一方の孔部から他方の孔部に結束バンドを挿通させる構造において、該他方の孔部が該一方の孔部よりも深く形成され、該他方の孔部内に、該他方の孔部の開口に向かう傾斜面が形成され、該結束バンドの先端が該傾斜面に沿って該開口に案内されることを特徴とする結束バンドの装着構造。
【請求項2】
壁部に一対の孔部を区画壁を介して連通して設け、一方の孔部から他方の孔部に結束バンドを挿通させる構造において、該一方の孔部の底壁に、該区画壁の内面側に向かう傾斜面が形成され、該結束バンドの先端が該傾斜面に沿って該他方の孔部の開口に案内されることを特徴とする結束バンドの装着構造。
【請求項3】
壁部に一対の孔部を区画壁を介して連通して設け、一方の孔部から他方の孔部に結束バンドを挿通させる構造において、該他方の孔部内で該区画壁の内面側に、該結束バンドの係止用の突起を係合させて逆戻りを防止する突起が設けられたことを特徴とする結束バンドの装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−232222(P2008−232222A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70844(P2007−70844)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】