説明

給排気管の抜け止め装置

【技術課題】溶接をなくし、加工及び組み立てが簡単な給排気管の抜け止め装置を提供する。
【解決手段】受け口2に内側からプレス加工によりカバー部5を一体成形し、このカバー部5内にスライド自在にストッパー6を組み付ける。挿入口3を受け口2内に挿入すると、ストッパー6の爪部16がカバー部5内において上方に逃げて挿入口3の進入を許容し、挿入口3を引き抜こうとすると爪部16が挿入口3側に形成した内溝3bに係合して抜け止めを行う。挿入口3を引き抜く場合には、ストッパー6を押し込むとロックが解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端に受け口を形成し、他端に挿入口を形成した定尺の給排気管における抜け止め装置に関する。
【従来の技術】
【0002】
定尺の給排気管を継ぎ足して燃焼器具の排気通路を形成した場合、不用意に継ぎ足した接続部分が抜け落ちたり、弛んだりすると、ここから排気ガスが漏れ出て危険であることから、簡単には抜けないように抜け止め装置が設けられている。
【0003】
この抜け止め装置は、配管を継ぐときにはただ挿し込むだけでロックされ、何等かの理由で引き抜く必要が生じたときは、簡単にロックを外すことができるような構成となっている。
【0004】
例えば特許第3288025号公報には、上記した抜け止め装置が紹介されており、この内容は「一端に受け口を形成し、他端に挿入口を形成した定尺の給排気管において、前記受け口側に切り窓を切設すると共に、この切り窓の外側に、内部に逃げ空間とロック壁を形成し、更にスライドガイド部を受け口の先端側に向けて形成したカバー部を取り付け、前記カバー部のスライドガイド部により保持されていて、管軸方向にスライド自在であって、前記カバー部内の逃げ空間内に先端部分に形成したロック部を位置させると共にカバー部から受け口の先端側に操作部を露出させてロック部材を設け、前記挿入口側には、他管の受け口を所定の位置まで挿入したときに、前記切り窓に対向し、かつ前記ロック部材のロック部が落ち込んで抜け止めを行う円周溝を形成し、管を接続したあとで引き抜き方向の力が作用したときに、前記ロック部材が管と一緒に引き抜き方向にスライドしてロック部材のロック部の先端に形成した係合部がカバー部内のロック壁に当接し、ここでロック部の変位が押えられて引き抜きを止め、一方、一旦挿入口側を少し押し込んでロック部材を一緒に後退させることにより、ロック部の先端の係合部をロック壁から逃げ空間内に逃し、この状態でロック部材に形成した操作部を指先で押えながら挿入口側を引き抜くことにより、管の接続を外すことができるように構成して成る給排気管の抜け止め装置」である。
【特許文献1】特許第3288025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし乍ら、上記特許発明に係る抜け止め装置を含めて、従来の抜け止め装置の場合、給排気管の組立工程において、部品同士の接合はスポット溶接機を用いて組み立てられている。このため、製品を生産する場合、スポット溶接工程での部品滞留が発生して生産性向上の阻害条件となっている。
【0006】
また、部品の位置決めが作業員の手作業になってしまい、部品接合時における取付加工ミスも多く発生している。その他スポット溶接をステンレス板に行った場合、溶接による熱影響が発生して母材が腐食しやすくなる欠点もある。
【0007】
本発明は、叙上の如き欠点の解消を目的として提供されるものであって、抜け止め装置の加工からスポット溶接を一切排除することにより、生産性を高め、接合時における取付加工ミスと熱影響を排除した点に特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するための手段として請求項1に記載の発明では、給排気管の抜け止め装置において、a.一端に受け口を形成し、他端に挿入口を形成した定尺の給排気管において、b.前記受け口より少し入った位置に、管の内側から絞り加工により受け口側が開口し、後方に向けて高まるようなスロープ付の屋根により奥内に逃げ空間部を形成したストッパー組み込み用のカバー部を一体に形成したこと、c.前記ストッパー組み込み用カバー部の天面には、入口部分が大きく、後方に向って前記入口部分よりも小幅にカットされたガイド溝を形成したこと、d.前記ストッパー組み込み用カバー部内に入口部分から挿入して組み付けられるストッパーは、先端を下方に折り曲げて傾斜した爪部を形成すると共に、この爪部に近い天面を切り起して前記ガイド溝に形成した入口部分よりは小幅でガイド溝よりは大幅に形成された頭頂部と、この頭頂部に到るまでは前記ガイド溝よりは小幅に形成された起立部から成る係合部を形成し、更に後端には操作部を一体に形成し、前記爪部側が下向きに反った弾性材により形成したこと、e.前記ストッパーをその先端側より開口部を介してカバー部内に挿入すると共にストッパーに形成した係合部をガイド溝内に内側から挿入して係合部の頭頂部をカバー部の外側に露出させ、起立部をガイド溝内に位置させた状態でストッパーをカバー部内にスライド自在に組み付けたこと、f.前記カバー部の開口部の前方にストッパー止め用の突出部を形成したこと、g.他管の挿入口側を前記受け口内に挿入すると、この他管の挿入口の先端に形成された傾斜部にストッパーの爪部がかかり、ストッパーは挿入口と一緒にカバー部内に移動し、やがて前記傾斜部から爪部が外れるときに挿入口の外周面により摺り上げられて上方に反り、カバー部内の奥に形成した逃げ空間部内に逃げ、更に挿入口側が進入して行き、この挿入口側に形成されている内溝が爪部のところに来るとストッパーはその弾性作用で反りが戻り、爪部が内溝内に入り込んで抜け止めとなるように構成したこと、を特徴とするものである。
【0009】
この発明によると、絞り加工によりカバー部を形成しているため、カバー部を単独で成形したり、これをスポット溶接で管側に取り付ける工程が一切いらなくなる。
【0010】
更に、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の給排気管の抜け止め装置において、ガイド溝を2列に形成し、このガイド溝に係合する係合部を2ヶ所に形成したことを特徴とするものである。
【0011】
この発明によると、ストッパーのスライド作用が2ヶ所のガイド溝と係合部でガイドされるため、スライドが安定する効果がある。但し、ガイド溝とストッパーの係合部は中央に1ヶ所だけでも良い。
【発明の効果】
【0012】
上記した本発明の効果は次のとおりである。
【0013】
1.ストッパーの爪部の掛かりを大きくとっても、挿入口側を差し込む時にストッパーが一緒に移動するため挿入抵抗が少ない。
【0014】
2.部品同士の組み立てにおいて、カバー部分を母材で形作り、ストッパーは組み付けで取付作業が完了するため、溶接加工の手間と、溶接熱により母材が腐食しやすくなるのを防ぐことができる。
【0015】
3.挿入口を受け口から取り外す時は、ストッパーの操作部を押し込むことで、バネで出来たストッパーを変形させることができ、この変形で先端の爪部が逃げ空間部内に持ち上がり、爪部が内溝から逃れるため、挿入口側を引くだけで簡単に取り外すことが可能になる。また、操作部を押す指を離した場合は、爪部の作用により、ストッパー(爪部)が定位置まで移動して何度でも繰り返し使用することが可能である。
【0016】
4.爪部をフリーの状態で外れる方向に挿入口を引き抜くと、カバー部の傾斜を利用して爪部が挿入口側の内溝に食い込むため、多少変形したパイプでも確実にストッパーが利く効果がある。
【0017】
5.ストッパーの組付け方法は、カバー部の開口部からストッパーを変形させながら突出部を乗り越えて取付ける構造のため、ストッパーはこの突出部の作用で脱落することはない。
【実施例】
【0018】
請求項1、2に対応する実施例を図1〜12を基にして詳細に説明する。
【0019】
図1は定尺の給排気管における接合部分とここに設けられた抜け止め装置を説明するための斜視図、図2は抜け止め装置の平面図、図3はA−A'線断面図、図4はB−B'線断面図、図5はストッパーの平面図、図6はストッパーの正面図、図7はC−C'線断面図、図8はD−D'線断面図、図9はカバー部内にストッパーを組み込んだ状態の平面図、図10はE−E'線断面図、図11はF−F'線断面図、図12はストッパーの作用の説明図である。
【0020】
上記各図に示された給排気管は、室内に設置された燃焼器具の排気口から排出される排気を屋外に排出するための排気通路に継ぎ足しながら用いられるもので、直管部分は1〜2mの定尺に形成されていて、この定尺の給排気管の一方の端には他管の受け口が形成され、他方の端には他管の受け口内に挿入するための挿入口が形成されている。
【0021】
そして、抜け止め装置は、他管の挿入口を受け口内に挿入して接続したときに妄りに外れないようにロックするためのもので、挿入はワンタッチで行うことができ、引き抜くときはストッパーを意識的に操作しない限り外れないように構成されている。
【0022】
このような構成の給排気管と抜け止め装置全体のイメージを図1に示す。この図1において、1はステンレス製の円筒状の給排気管であって、2は一端に形成された他管の挿入口3を受け入れるための受け口である。なお、図1において、給排気管1の受け口2の反対側の端には、挿入口3と同一形状の挿入口が形成されているが、図1では省略している。
【0023】
4は挿入口2の外側に形成された抜け止め装置であって、この抜け止め装置4は、受け口2内からプレス加工(絞り加工)により押し出し成形した受け口2と一体のカバー部5と、別部品として成形されたストッパー6から成る。
【0024】
更に詳しくカバー部5について説明すると、カバー部5は、受け口2の端側に向けて開口部7を形成し、天面8を後方に向けて緩やかな円弧を描くようにせり上げて奥を高く形成することにより、内部に開口部7側を低く形成して、天面8の内側の中間部分に円弧状の押え部9を形成し、天面8の奥側を高く形成して逃げ空間部10を形成し、更に天面8の中央に、開口部7側に幅広の拡大切欠部12を形成すると共にこの奥方向に続けて前記拡大切欠部12より小幅のスライドガイド溝13を形成したストッパー係合溝11が形成されている。
【0025】
図1において、14は前記開口部7の前方において、これもプレス加工により挿入口2を内側から盛り上げるようにして加工された突出部であって、後述のストッパー6の抜け止めを行うために形成されている。
【0026】
図2〜4はカバー部5の詳細を示すもので、図2はカバー部5の平面図、図3はA−A'線断面図、図4はB−B'線断面図であって、図1で説明した各符号を該当部分に付することにより、前記した各部の形状を解り易くしている。
【0027】
図2、図4において、15はOリング(シールリング)である。
【0028】
図5〜図8に基づいて、図1において説明したストッパー6を詳細に説明する。このストッパー6は、一枚の弾性ステンレス製の板材をプレス加工により形成したもので、前端側を下方に傾斜をつけるように折り曲げて爪部16を形成し、後端を逆U字状に折り曲げて操作部17を形成すると共に爪部16側に近い位置の中央を外側(上側)に切り起して起立部19と、この起立部19の上端左右に係合縁20、20aを形成した係合部18が形成された構成である。
【0029】
次に、上記したカバー部5内にストッパー6を組み付けた状態を図9に示し、図9のE−E'線断面図を図10に示し、図9のF−F'線断面図を図11に示す。
【0030】
この図9〜図11において、カバー部5内にはその開口部7からストッパー6の爪部16側を先にして変形させながら挿入し、係合部18の係合縁20、20aがガイド溝11の拡大切欠部12のところに来たところで少し持ち上げるようにして係合部18をカバー部5の外に露出させ、そのまま前方に挿し込む。
【0031】
このようにすると、係合部18の起立部19がガイド溝13に入り、係合縁20、20aがガイド溝13の両縁の外に係ることで、ストッパー6はカバー部5内の奥方向に案内されて収まる。
【0032】
この状態を示したのが図12におけるストッパー6のAの位置である。この時、ストッパー6の後部が段部14に乗り上げた状態となって、カバー部5内にとどまっている。
【0033】
この状態において、他管の挿入口3を受け口2内に挿入すると、他管の挿入口3の先端3aがストッパー6の爪部16に係りながら受け口2内に入り込んで行くため、ストッパー6はカバー部5内に一緒に入り込んで行き、カバー部5内の奥において逃げ空間部10内に至り、ここで上方に逃げてストッパー6は止り、挿入口3だけが更に進入する。このときのストッパー6の位置を図12においてBで示す。
【0034】
更に挿入口3側が進入し、やがて挿入口3のストッパー内溝3bがストッパー6の爪部16の位置に来ると、ストッパー6の爪部16が弾性で内溝3b内に落ち込む。この時のストッパー6の位置を図12においてCで示す。
【0035】
このストッパー6の爪部16が内溝3bに落ち込んだ状態がロック状態であって、挿入口3に引き抜きの力が矢印a方向に加わって多少挿入口3が移動しても、図12においてDに示すように、内溝3bの係合壁3cが爪部16に引っ掛かることにより挿入口3の移動(引き抜け)を阻止する。また、このとき、ストッパー6の上面はカバー部6の天面8に形成された押え部9により押え付けられた状態となっていて上方に逃げることはできなく、ロック状態を確実に維持する。
【0036】
次に、何等かの理由により継ぎ足した給排気管1を引き抜く必要が生じたときは、前記Dで示したロック状態において、挿入口3を内溝3bの幅範囲で少し押し込むと、内溝3bとカバー部5内の逃げ空間部10が対向し、大きな空間が出来るので、ここでストッパー6の操作部17に指を当てて押し込むとストッパー6の爪部16が逃げ空間10内において上方に反って逃げ空間部10内に逃げ込む。
【0037】
この状態は図12においてストッパー6はBの位置となり、挿入口3のロックは外れ、簡単に引き抜くことができる。
【0038】
なお、ストッパー6の係合部18とガイド溝13の係合関係により、ストッパー6はスムーズにスライドすることができるが、更にこのスライドを安定させるために、ガイド溝13を2列に形成し、これに係合する係合部18を2箇所に形成するようにしても良い。
【産業上の利用分野】
【0039】
1.各種燃焼器具の給気管又は排気管の抜け止め装置
2.給気又は換気管の抜け止め装置
3.各種気体の搬送管の抜け止め装置
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る抜け止め装置の説明図
【図2】カバー部の説明図
【図3】A−A'線断面図
【図4】B−B'線断面図
【図5】ストッパーの説明図
【図6】ストッパーを操作部側から見た正面図
【図7】C−C'線断面図
【図8】D−D'線断面図
【図9】ストッパーをカバー部内に組み付けた状態の説明図
【図10】E−E'線断面図
【図11】F−F'線断面図
【図12】ストッパーの作用の説明図
【符号の説明】
【0041】
1 給排気管
2 受け口
3 挿入口
4 抜け止め装置
5 カバー部
7 開口部
8 天面
9 押え部
10 逃げ空間部
11 内溝
12 拡大切欠部
13 ガイド溝
14 盛り上り突出部
15 Oリング
16 爪部
17 操作部
18 係合部
19 起立部
20、20a 係合縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.一端に受け口を形成し、他端に挿入口を形成した定尺の給排気管において、
b.前記受け口より少し入った位置に、管の内側から絞り加工により受け口側が開口し、後方に向けて高まるようなスロープ付の屋根により奥内に逃げ空間部を形成したストッパー組み込み用のカバー部を一体に形成したこと、
c.前記ストッパー組み込み用カバー部の天面には、入口部分が大きく、後方に向って前記入口部分よりも小幅にカットされたガイド溝を形成したこと、
d.前記ストッパー組み込み用カバー部内に入口部分から挿入して組み付けられるストッパーは、先端を下方に折り曲げて傾斜した爪部を形成すると共に、この爪部に近い天面を切り起して前記ガイド溝に形成した入口部分よりは小幅でガイド溝よりは大幅に形成された頭頂部と、この頭頂部に到るまでは前記ガイド溝よりは小幅に形成された起立部から成る係合部を形成し、更に後端には操作部を一体に形成し、前記爪部側が下向きに反った弾性材により形成したこと、
e.前記ストッパーをその先端側より開口部を介してカバー部内に挿入すると共にストッパーに形成した係合部をガイド溝内に内側から挿入して係合部の頭頂部をカバー部の外側に露出させ、起立部をガイド溝内に位置させた状態でストッパーをカバー部内にスライド自在に組み付けたこと、
f.前記カバー部の開口部の前方にストッパー止め用の突出部を形成したこと、
g.他管の挿入口側を前記受け口内に挿入すると、この他管の挿入口の先端に形成された傾斜部にストッパーの爪部がかかり、ストッパーは挿入口と一緒にカバー部内に移動し、やがて前記傾斜部から爪部が外れるときに挿入口の外周面により摺り上げられて上方に反り、カバー部内の奥に形成した逃げ空間部内に逃げ、更に挿入口側が進入して行き、この挿入口側に形成されている内溝が爪部のところに来るとストッパーはその弾性作用で反りが戻り、爪部が内溝内に入り込んで抜け止めとなるように構成したこと、
h.を特徴とする給排気管の抜け止め装置。
【請求項2】
前記ガイド溝を2列に形成し、このガイド溝に係合するストッパーの係合部を2ヶ所に形成して成る請求項1に記載の給排気管の抜け止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−169110(P2010−169110A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9779(P2009−9779)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(390024877)トーセツ株式会社 (28)
【Fターム(参考)】