説明

給湯システム

【課題】給湯システムにおいて、貯湯タンクの形状と出湯圧力とを任意に設定することができ、また、貯湯タンクの増設を容易にする。
【解決手段】給湯システムは、給水を貯溜する大気開放型の中温タンク1と、水を加熱するヒートポンプ2と、加熱された湯を貯湯する大気開放型の高温タンク3と、高温タンク3の湯を出湯する給湯ポンプ17とを備える。高温タンク3は、1つ又は複数の大気開放型の増設タンク13とそれぞれのタンク下部で連通管12によって直列又は並列に連結することができる。高温タンク3と中温タンク1とで湯温別に貯湯し、高温タンク3と中温タンク1を大気開放型にしたので、タンクの形状を任意に構成することができ、タンクの増設も容易である。また、出湯を市水圧力によらずに給湯ポンプによって行なうので、出湯圧力を任意に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式の給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒートポンプにより水を沸かし、貯湯タンクに溜めた湯をカランや食洗機等の湯使用端末に供給する給湯システムがある。図9に従来の給湯システムの構成を示す。これらの給湯システムは、湯を溜める貯湯タンク103と、貯湯タンク103の上部と下部において循環配管100で連結されたヒートポンプ102とを備えている。また、貯湯タンク103は、下部において給水配管105と接続され、上部において給湯配管115と接続され、給湯配管115の端末は食洗機122等の湯使用端末に繋がっている。給水配管105からは分岐配管が分岐し、給湯配管115からの分岐配管と、混合栓119において接続され、給水と湯とが混合される。
【0003】
この給湯システムでは、市水である温度15℃程度の水が給水配管105を通じて貯湯タンク103の下部より貯湯タンク103内部に供給され、この低温水が貯湯タンク103の下部より循環配管100内に取り出され、ヒートポンプ102で沸かされて温度80℃〜90℃の高温水にされ、貯湯タンク103に上部より入れられる。沸かし上げられた高温水は、湯使用端末に設けられた開閉弁を開けることにより、給湯配管115を通じて取り出され、市水と混合弁119において混合され、適温に調整されてカラン124等の湯使用端末より出湯される。このときに使用される混合弁119には、形状記憶合金により適温に調整するものがある。また、出湯温度を制御部にフィードバックして湯水混合弁を制御するものがある。業務用途の場合には食洗機122や茹麺機等で80℃以上の高温を必要とする端末があり、給湯配管115が直接繋がれる。そして、家庭用途や小規模の業務用途の給湯設備においては、法規上の制約からタンク圧を、通常の市水圧力である0.3〜0.7Mpaから0.2Mpa未満となるように減圧弁を配している。このため、出湯圧力もその範囲に制約され、出湯圧力が低いために、3階以上の高階には出湯できない。
【0004】
また、貯湯タンク103には、常に内圧がかかっているため、変形防止のために貯湯タンク103の形状は、円筒で上下端は半球形状としていることが多い。従って、設置場所の幅と奥行きの寸法が、同一でなければならず、狭い軒下などには設置し難い。設置幅の寸法が狭い貯湯タンクとするため、半径の小さい円筒状のタンクを複数組み合わせた貯湯タンクも用いられているが、これはコストが高くなる。更に、貯湯タンクの外装は、四角形状であることが多いため、平面から見て四隅がデッドスペースとなり容積効率も悪化する。家庭用の貯湯タンクの容積は、370リットルや460リットルのものが一般的であるが、業務用途の場合には使用湯量が格段に多いため、ヒートポンプの台数を増やしたり、貯湯タンク容量を増やしたりする必要がでてくる。図10に、タンクを増設した給湯システムの構成を示す。このときの増設方法としては、貯湯タンク103と複数の増設タンク110の上部と下部を順に繋げ、直列に連結し、端の増設タンク110の下部に給水し、他方の端の貯湯タンク103の上部に加熱された湯を出湯するようにするのが一般的である。そして、連結された複数のタンク内の所定の温度以上の湯量を算出するためには、貯湯タンク103及び増設タンク110に温度センサをそれぞれ配しなければならず、また、ヒートポンプ102との配管も、全体を一体のシステムとして構成しなければならない。外食店舗などでは、店舗の拡張や客数の増加により使用湯量が増加する場合もあり、このようなニーズに対応すると増設タンク110に比して比較的高価なヒートポンプ102を増設するか、またはヒートポンプ102込みでシステムを別途設置しなければならず、コスト高となる。
【0005】
また、貯湯タンクは、ヒートポンプと共に屋外に設置されることが多く、タンクから湯の使用端末までは、短くとも5m程度、業務用途で距離の長いところでは、30m以上の場合もあり、湯の使用開始時には配管内に残留している湯が置換されるまで待たねばならない(この湯を待つ時間を本明細書では、「湯待ち時間」という)。この問題を解決するために、ホテル等の大規模給湯設備では、配管内の温水を常に循環する方式がとられている。比較的小規模の施設や家庭用途では、即湯ユニットと称する小型の貯湯タンク付ヒータを出湯端の近傍に設置するなどの方法がとられる場合がある。また、業務用途では、食器洗浄用に80〜90℃の高温が必要なため、ブースターと称する電気又はガスを熱源とする給湯加熱装置を備えている。しかし、これらの加熱手段は、ヒートポンプ式給湯に比してエネルギーコストが高くなる。
【0006】
また、貯湯タンク内の湯の温度は、上層部で最も高く、中層部ではそれよりも低くなり、下層部では最も低くなっており、貯湯タンクの湯を上層領域から取り出して給水管からの低温水と混合して所定温度にして湯使用端末へ供給するようにしている。また、貯湯タンクの上層部から出湯が行なわれると、貯湯タンクの下端部からその使用分だけ市水(低温水)が供給される。このような構成のタンクにおいては、例えば貯湯時間が長く、タンク内の湯温が低下してしまった場合や、床暖房等に使用する熱交換器が、タンク内に内蔵されているものにおいては、タンク内の湯が30〜70℃程度の湯となる場合がある。
【0007】
給湯器において沸き上げる際の、(加熱量)/(消費電力)で示される値は、COP(成績係数)といわれ、エネルギー効率を表す指標となり、例えば電気ヒータのCOPは1であるが、ヒートポンプでは3〜4にもなる。しかし、ヒートポンプは、その入り口水温が低いほどCOPが高くなるという特性を有するため、入り口水温が30〜70℃であると、COPが1〜2に低下するという問題点があり、中温水を再加熱することもエネルギー効率の悪いものとなってしまう。そのエネルギー効率の低下を避けるために、入り口水温が上昇したときにヒートポンプの運転を停止すると、高温出湯にて80℃以上の高温水が欲しいにも拘わらず、中温水が出湯されてしまう。
【0008】
また、貯湯タンクを下部で繋がる2槽の大気開放型にし、湯が2槽間を循環できるようにして1槽に給水を行ない、その槽の下部より水を取り出して加熱し、他槽の上部に加熱された湯を入れる構成にすることにより、貯湯タンクの形状を任意にできるようにした給湯システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0009】
ところが、上記特許文献1に示されるような給湯システムにおいては、貯湯タンクの増設は、複数のタンクの互いの上部と下部とを順に直列に繋げ、繋げられた端のタンクに給水され、加熱された湯は、他端のタンクの上部から入れられて貯湯する構成であるので、増設時に配管にコストがかかり、また、タンク間で湯温が異なるので貯湯している湯温の状況を知るためには、各タンクに温度センサを配し、制御部と信号線で接続しなければならずコストがかかる。
【0010】
このように従来の技術においては、貯湯タンクの形状を任意にすることができず、出湯圧力が低く、貯湯タンクの増設のコストも高い。また、希望する温度の湯が出湯されるまで待たなければならない。また、エネルギー効率も悪い。
【特許文献1】特開平8−189704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来例の問題を解消するものであり、貯湯タンクの形状と出湯圧力とを任意に設定することができ、また、貯湯タンクの増設を容易に行なうことができる給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、高温湯の出湯、及び、高温湯と給水とを混合した混合湯の出湯が可能な給湯システムにおいて、給水を貯溜する大気開放型の中温タンクと、前記中温タンクの水を加熱部により加熱した湯を貯湯すると共に、過剰の湯を前記中温タンクに戻し得る大気開放型の高温タンクと、前記高温タンクに設けた湯取り出し口に接続され、高温湯を出湯する第1の出湯配管と、前記出湯配管中に設けられた給湯ポンプと、湯の使用を検出し、前記給湯ポンプを駆動させる検出手段と、前記出湯配管からの高温湯と給水とを混合する混合弁を介して混合湯を出湯する第2の出湯配管と、を備え、前記高温タンクは、タンク増設用の接続口が配設されたものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の給湯システムにおいて、前記第1及び第2の出湯配管のいずれか一方又は両方の湯使用端末付近と前記中温タンクとを繋ぐ出湯戻り管と、前記出湯戻り管中に配された電動弁と、を備え、前記電動弁の開閉と前記給湯ポンプの駆動により前記出湯配管中の湯を前記中温タンクに戻すようにしたものである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載の給湯システムにおいて、前記混合弁は、前記高温タンクの近傍に配されたものである。
【0015】
請求項4の発明は、請求項2に記載の給湯システムにおいて、前記混合弁は、第1の出湯配管と出湯戻り管との結合箇所よりも湯使用端末側に配されたものである。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の給湯システムにおいて、前記中温タンクに湯水取り出し口を設け、前記第1の出湯配管中であって、前記給湯ポンプより上流側に、該ポンプの吸込み経路を前記湯水取り出し口と高温タンクの湯取り出し口のいずれかに切り替える切り替え弁を設け、前記第1の出湯配管は、前記高温タンクからの高温湯と前記中温タンクからの中温水とを切り替えて出湯し得るようにしたものである。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の給湯システムにおいて、前記中温タンクに湯水取り出し口を設け、該湯水取り出し口を、加圧ポンプを介して前記混合弁の低温側に接続し、前記第2の出湯配管は、前記中温タンクからの中温水と前記第1の出湯配管からの高温湯とを混合して出湯し得るようにしたものである。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の給湯システムにおいて、前記中温タンク内の中温水で給水を加熱するための熱交換器を備え、前記熱交換器による熱交換後の給水経路を前記混合弁の低温側に接続し、前記第2の出湯配管は、前記熱交換器による熱交換後の給水と前記第1の出湯配管からの高温湯とを混合して出湯し得るようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、高温タンクと中温タンクとで貯湯し、高温タンクと中温タンクを大気開放型にしたので、タンクの形状を任意に構成することができ、タンクの増設も容易であり、また、出湯を市水圧力によらずに給湯ポンプによって行なうので、出湯圧力を任意に設定することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、湯温が低下した出湯配管中の湯を中温タンクに戻し、出湯配管中の湯温を保つので、湯待ち時間を短くすることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、混合弁が高温タンクの近傍に配され、中温タンクへの給水管から給水が取られて高温湯と混合されるので、湯使用端末付近に混合湯のための給水管を設けなくてもよい。
【0022】
請求項4の発明によれば、混合弁が、湯使用端末付近に配され、混合出湯配管の長さが短いので、混合出湯戻り管を必要とせず、高温湯の出湯戻り管の1本だけにすることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、高温タンクからの高温湯と中温タンクからの中温水とを切り替えて出湯し得るので、中温湯を出湯するときに高温湯と給水とを混合せずに、中温タンクの中温水を有効に利用することができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、中温タンクの中温水を加圧ポンプにより送湯して高温湯と混合するので、高温湯の出湯に拘わらずに中温タンクの中温水を出湯することができ、中温水を有効に利用することができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、中温タンクに熱交換器を備え、給水が熱交換により加熱されるので、中温タンクの中温水の熱を有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る給湯システムについて図1を参照して説明する。本実施形態の給湯システムは、給水を貯溜する中温タンク1と、中温タンク1の水を加熱するヒートポンプ2と、ヒートポンプ2で加熱された湯を貯湯する高温タンク3と、給湯システムの稼動を制御する制御部4を備えている。中温タンク1は、給水管5と、給水弁6を介して接続されており、貯水量を検出する水位センサ7aと、水温を検出する温度センサ8aと、大気と通気している通気口9aと、を有している。ヒートポンプ2は、中温タンク1と配管で接続されており、配管の途中には、中温タンク1の水をヒートポンプ2に送る給水ポンプ10が配設されている。ヒートポンプ2は、炭酸ガス等の冷媒を圧縮して昇温させ、冷媒の熱を熱交換器を介して給水と熱交換を行い、給水を加熱する。高温タンク3は、ヒートポンプ2と接続され、貯湯量を検出する水位センサ7bと、湯温を検出する温度センサ8bと、大気と通気している通気口9bと、を有している。高温タンク3は、下部に接続口11を有し、接続口11に接続された連通管12を介して2台の増設タンク13に接続されている。制御部4は、温度センサ8a、8bや水位センサ7a、7b等の各センサが検出したデータを受信して、給水ポンプ10やヒートポンプ2等を稼動させる。増設タンク13は、通気口9cを有している。2台の増設タンク13は、直列に接続されているが、並列に接続しても構わない。
【0027】
高温タンク3は、ヒートポンプ2から送られた湯が所定の水位を超えると中温タンク1にオーバーフローさせるオーバーフロー管14を備えている。また、高温タンク3は、貯湯している湯を湯使用端末へ送る高温出湯配管15を、下部に備えた湯取り出し口16に接続されている。高温出湯配管15には、湯を湯使用端末へ送る給湯ポンプ17と、配管内の圧力により湯の使用を検知する圧力センサ18が配設されている。高温出湯配管15は、2方に分岐し、1方は、食洗機等の高温の湯を使用する端末に接続し、他方は、給水管5から分岐した配管と混合弁19において結合され、混合出湯配管20となって中温水を使用する端末に接続している。
【0028】
中温タンク1、高温タンク3、及び増設タンク13は、通気口9a、9b、9cを有し、内圧が大気圧であるので、高圧タンクのようにタンク形状を円柱状にする必要がなく、角型や三角柱等の任意の形状にすることができる。設置スペースが狭い場合の容積効率や薄型化を考慮すると角柱形状が好ましい。
【0029】
次に、上記のように構成された本実施形態に係る給湯システムの動作を説明する。中温タンク1の水位センサ7aは、水位を検出し、制御部4は、検出された水位に応じて、給水弁6を開き給水を行なう。中温タンク1の水は、給水ポンプ10によってヒートポンプ2に送られ、加熱されて高温タンク3へ出湯されて貯湯される。高温タンク3の貯湯量が、一定量を超えるとオーバーフロー管14を通して中温タンク1へ送られる。高温タンク3に繋がる給湯ポンプ17を、常に低速運転するか、又は、給湯ポンプ17の後段にアキュムレータを配して蓄圧することで、高温出湯配管15中の圧力を一定に保っている。湯使用端末において湯が使用されると、高温出湯配管15中の圧力が下がり、制御部4は、圧力センサ18の検出信号に応じて、給湯ポンプ17に高速運転を行なわせ、高温タンク3中の湯を出湯する。また、混合出湯のときは、制御部4は、使用温度に応じて混合弁19を開き、湯と給水を混合して出湯する。
【0030】
このように、給水は、中温タンク1に貯水され、高温タンク3内へは直接給水が入らず、高温タンク3には、高温湯だけが入れられるので、高温タンク3内は同一湯温であり、温度成層ができない。そして、高温タンク3に繋がる増設タンク13の湯温も同一であるので、増設するときには、高温タンク3と、増設タンク13とをタンクの下部で連通管12を介して接続するだけであり、容易にタンクの増設を行なうことができる。増設タンク13の連結は、直列でも並列でも任意に行なうことができ、工場出荷時点で複数台の増設タンク13を接続することも、設置後の増設タンク13の増設も簡単に対応できる。
【0031】
また、高温湯の湯量の算出も、高温タンク3にある水位センサ7bによって水位を検出すれば、検出した湯量にタンクの台数を乗じて簡単に貯湯量を算出することができる。従って、従来の技術では、各増設タンク13の湯温が異なるので、各増設タンク13に温度センサを配して湯温を検出していたが、本実施形態の給湯システムでは、各増設タンク13に温度センサを配する必要がない。
【0032】
また、出湯には、給湯ポンプ17を用いるので、出湯場所に応じた能力のポンプを設置することができる。従来の技術では、出湯圧力は、0.2Mpa未満に制限されていたが、給湯ポンプ17を用いることにより、高い場所にも出湯することができる。高温タンク3が、高圧タンクでなく大気開放型であるので、給湯ポンプ17のコストが必要となるが、高圧タンクの製造コストや高圧タンクに必要な耐圧検査のコストが不必要であるので、コスト高とはならない。
【0033】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る給湯システムについて図2を参照して説明する。本実施形態に係る給湯システムは、上記第1の実施形態に係る給湯システムにおいて、高温出湯配管15及び混合出湯配管20中の湯を、中温タンク1に戻すことができるようにしたものである。また、高温タンク3は、増設タンク13と接続されていない。高温出湯配管15は、茹麺機21と食洗機22との接続の下流側において、中温タンク1と高温出湯戻り管23bによって接続されており、高温出湯戻り管23bは、途中に逆止弁25bと即湯弁26bを有している。混合出湯配管20は、カラン24との接続の下流側において、中温タンク1と混合出湯戻り管23aによって接続されており、混合出湯戻り管23aは、途中に逆止弁25aと即湯弁26aを有している。混合出湯配管20が接続されている混合弁19は、高温タンク3の近傍に配されている。
【0034】
本実施形態の給湯システムにおいて、温度センサ8c、8dは、混合出湯配管20及び高温出湯配管15中の湯温を検出している。長い時間出湯されず、混合出湯配管20又は高温出湯配管15中の湯温が下がると、制御部4は、給湯ポンプ17に高速運転を行なわせ、即湯弁26a又は即湯弁26bを開き、混合出湯配管20又は高温出湯配管15中の温度の下がった湯を中温タンク1に出湯する。このことにより、混合出湯配管20及び高温出湯配管15中の湯温は、常に保たれ、茹麺機21や食洗機22やカラン24の湯使用端末で、湯を使用するときに、湯待ち時間が生じない。また、逆止弁25a、25bが配されているので、混合出湯戻り管23a及び高温出湯戻り管23b中の湯が、混合出湯配管20及び高温出湯配管15に戻ることはない。
【0035】
このように、湯温の低下を検出し、出湯配管内の湯使用端末付近までの湯を置換するので、出湯配管内の湯を常に循環させることなく、少ない循環量によって湯待ち時間をなくすことができる。また、給湯ポンプ17の下流側にアキュームレータを設置し、配管内の圧力の急激な変動を吸収するとともに配管内を一定圧に保持してもよい。
【0036】
また、戻り管によって戻された戻り湯が、高温タンク3と分離された中温タンク1に入るため、高温タンク3の湯温に影響を与えることがないので、従来の技術のように高温湯の入った貯湯タンクに戻り湯の配管を取り付けた場合に比べてエネルギーの無駄が少ない。また、従来の技術では、貯湯タンクが常に満水状態のため、混合出湯側に湯戻しの配管を配設すると、温度調整のために混合弁で混合した市水の容量が加算されてタンクに戻るために、余剰の湯を捨てなければならなくなるが、本実施形態の構成においては、中温タンク1の容量の余裕の範囲で混合出湯、高温出湯に拘わらず湯を戻すことができるという特徴がある。また、混合弁19が高温タンク3の近傍に配され、中温タンク1への給水管5からの分岐管の給水によって混合出湯されるので、湯使用端末付近に混合出湯のための給水管を設けなくてもよい。
【0037】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る給湯システムについて図3を参照して説明する。本実施形態に係る給湯システムは、上記第2の実施形態に係る給湯システムの混合弁19の配置位置を変えたものである。混合弁19は、高温出湯配管15と高温出湯戻り管23bとの結合箇所と、湯使用端末側との間に配されており、混合出湯戻り管23aは、配設されていない。
【0038】
本実施形態の給湯システムにおいて、高温湯は、混合弁19によって給水と混合され、混合湯となる。そして、混合出湯配管20中の湯は、中温タンク1へは、戻らない。本実施形態の構成により、高温出湯、混合出湯のどちらかの湯が使用されていれば、高温出湯配管15内は高温湯に置換される。高温出湯戻り管23bのみを設置すれば、混合出湯戻り管23aがなくても、混合出湯のときにも湯待ち時間が短くなる。
【0039】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る給湯システムについて図4を参照して説明する。本実施形態に係る給湯システムは、上記第2の実施形態に係る給湯システムに、中温タンク1と、高温出湯配管15とを繋ぐ配管41を備えたものである。高温出湯配管15の給湯ポンプ17と、高温タンク3との間に切り替え弁33を配設し、中温タンク1に設けられた湯水取り出し口27と、切り替え弁33とを配管41によって接続する。切り替え弁33は、給湯ポンプ17の吸込み経路を中温タンク1の湯水取り出し口27と、高温タンク3の湯取り出し口16のいずれかに切り替えることができる。
【0040】
本実施形態の給湯システムにおいて、中温タンク1の中温水を混合湯に利用する。制御部4は、高温出湯流量センサ28の検出した流量によって高温出湯がされておらず、かつ、温度センサ8aが検出した湯温によって、中温タンク1の中温水の温度が、混合出湯の設定温度よりも高く、かつ、混合出湯流量センサ29が検出した流量によって、混合出湯がなされたと判断したときに、切り替え弁33を湯水取り出し口27に切り替え、給湯ポンプ17を高速回転にする。中温タンク1の中温水が、混合弁19へ送られ、混合弁19において給水と混合され、混合出湯配管20より出湯される。中温水を出湯するときに、高温湯と給水とを混合せずに、中温タンク1の中温水を有効に利用することができる。この切り替え弁33は、中温水と高温水の比率を変えられるような混合弁でもよいし、また、中温水側のみにバブルを設ける構成でもよい。
【0041】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る給湯システムについて図5を参照して説明する。本実施形態に係る給湯システムは、上記第2の実施形態に係る給湯システムにおいて、混合弁19に給水管5からの分岐配管を接続せずに、中温タンク1からの配管42を接続したものである。本実施形態に係る給湯システムは、中温タンク1に湯水取り出し口27を有し、湯水取り出し口27と混合弁19とを繋ぐ配管42と、配管42の途中に加圧ポンプ30を備える。
【0042】
本実施形態の給湯システムにおいて、制御部4は、温度センサ8aが検出した湯温により、中温タンク1の中温水の温度が混合出湯の設定温度よりも低く、混合出湯流量センサ29が検出した流量により、混合湯の出湯がされたと判断したときに加圧ポンプ30を駆動させ、給湯ポンプ17を高速回転にし、高温タンク3の高温湯と中温タンク1の中温水とを混合して出湯する。中温タンク1の中温水の温度が、混合出湯の設定温度よりも低くても、中温タンク1の中温水を利用することができる。また、中温タンク1の中温水を加圧ポンプ30により送湯するので、高温湯の出湯に拘わらずに中温タンク1の中温水を出湯することができる。
【0043】
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態に係る給湯システムについて図6を参照して説明する。本実施形態に係る給湯システムは、上記第2の実施形態に係る給湯システムにおいて、中温タンク1に熱交換器31を設け、混合弁19において、熱交換器31によって加熱された湯を高温湯と混合するものである。本実施形態に係る給湯システムは、中温タンク1に熱交換器31を備えており、熱交換器31の給水口が給水管5に繋がれ、吐出口が混合弁19に繋がれている。
【0044】
本実施形態の給湯システムにおいて、制御部4は、混合出湯流量センサ29の検出した流量により、混合湯の使用を感知すると、給湯ポンプ17を高速回転にする。給水は、熱交換器31によって中温タンク1の中温水と熱交換されて加熱され、給水の圧力によって混合弁19へ送られ、高温タンク3の高温湯と混合されて出湯される。
【0045】
このように、熱交換器31の中温水は、給水圧により送湯されるので、送湯のためのポンプが不要であり、第4の実施形態と異なり、高温出湯の使用不使用に拘わらずに中温水を利用することができる。また、中温タンク1の中温水と、給水との熱交換を熱交換器31を介して行ない、中温水タンク1の中温水の温度を下げることによってヒートポンプ2の入り口温度を低下させ、COPを向上させることができる。本実施形態における熱交換は、中温タンク1内の自然対流により、中温タンク1内の中温水と、熱交換器31の管内の低温水との熱交換を行なう構成となっているが、中温タンク1内の中温水をポンプ等により循環させ、強制対流によって熱交換を促し、熱交換器31の小型化を図ってもよい。
【0046】
(第7の実施形態)
本発明の第7の実施形態に係る給湯システムについて図7を参照して説明する。本実施形態に係る給湯システムの構成は、上記第6の実施形態に係る給湯システムにおいて、ヒートポンプ2によって沸き上げた湯を中温タンク1と高温タンク3に切り替えて送湯するものである。本実施形態に係る給湯システムは、ヒートポンプ2の出湯側に送湯先を中温タンク1と高温タンク3に切り替える出湯切り替え弁32を備えており、ヒートポンプ2は、加熱した湯温を検出する温度センサ8eを有している。
【0047】
本実施形態の給湯システムにおいて、制御部4は、水位センサ7a及び7bの検出した水位に応じて、中温タンク1と高温タンク3の湯量を、設定湯量になるように、給水をヒートポンプ2において沸き上げ、中温タンク1及び高温タンク3に送湯する。制御部4は、ヒートポンプ2によって給水を加熱し、温度センサ8eによって湯温を検出し、湯温に応じて出湯切り替え弁32を切り替え、中温タンク1と高温タンク3とに分けて送湯する。
【0048】
一般にヒートポンプは、沸上温度が高くなるほど効率が低下するという特性を持つ。図8にヒートポンプの沸上温度とCOPの関係を示す。環境条件は、外気温16℃、水温16℃である。沸上温度が70℃のときは、COPが3.72であるが、沸上温度が90℃のときは、COPは2.91になる。従来の技術の給湯システムでは、中温湯にも高温で沸き上げられた湯を水で希釈して出湯しているため、総合的なエネルギー効率が低い。それに対して、本実施形態の給湯システムにおいては、ヒートポンプ2によって中温湯と高温湯とを別に沸き上げ、中温タンク1と高温タンク3とに分けて送湯できるようにし、高温湯を水で希釈する無駄をなくした。
【0049】
このように、高温湯と中温湯とを分けて沸き上げることにより、省エネルギーを図ることができる。混合出湯量が90℃換算で3,000l/日、高温出湯湯量が同じく90度換算で、1,500l/日の店舗において、中温タンクへ65℃での沸かし上げを行なった。給水温は16℃であった。このときのCOPは、混合出湯が3.9で高温出湯が2.9であった。このときの消費電力は混合出湯分として66.4kWh/日、高温出湯分として44.7kWh/日で、合計111.1kWh/日であった。これを全て高温の90℃で沸上げたとして計算すると混合出湯分が89.3kWh/日となって合計134.0kWh/日となる。従って、沸上温度を切り替えることにより17%の省エネルギーを達成したこととなる。
【0050】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。熱交換器31は、管式に限らず、例えばプレート式や2重管式等の方式を用いてもよい。また、ヒートポンプ2への給水を中温タンク1を介さずに水道管と直接繋いで行なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る給湯システムの構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る給湯システムの構成図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る給湯システムの構成図。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る給湯システムの構成図。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る給湯システムの構成図。
【図6】本発明の第6の実施形態に係る給湯システムの構成図。
【図7】本発明の第7の実施形態に係る給湯システムの構成図。
【図8】本実施形態に係るヒートポンプの沸上温度とCOPの関係を示す図。
【図9】従来の給湯システムの構成図。
【図10】従来の増設タンクを備えた給湯システムの構成図。
【符号の説明】
【0052】
1 中温タンク
2 ヒートポンプ(加熱部)
3 高温タンク
11 接続口
12 連通管
13 増設タンク
15 高温出湯配管(第1の出湯配管)
16 湯取り出し口
17 給湯ポンプ
18 圧力センサ(検出手段)
19 混合弁
20 混合出湯配管(第2の出湯配管)
23a 混合出湯戻り管(出湯戻り管)
23b 高温出湯戻り管(出湯戻り管)
26a、26b 即湯弁(電動弁)
27 湯水取り出し口
30 加圧ポンプ
31 熱交換器
33 切り替え弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温湯の出湯、及び、高温湯と給水とを混合した混合湯の出湯が可能な給湯システムにおいて、
給水を貯溜する大気開放型の中温タンクと、
前記中温タンクの水を加熱部により加熱した湯を貯湯すると共に、過剰の湯を前記中温タンクに戻し得る大気開放型の高温タンクと、
前記高温タンクに設けた湯取り出し口に接続され、高温湯を出湯する第1の出湯配管と、
前記出湯配管中に設けられた給湯ポンプと、
湯の使用を検出し、前記給湯ポンプを駆動させる検出手段と、
前記出湯配管からの高温湯と給水とを混合する混合弁を介して混合湯を出湯する第2の出湯配管と、を備え、
前記高温タンクは、タンク増設用の接続口が配設されたことを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
前記第1及び第2の出湯配管のいずれか一方又は両方の湯使用端末付近と前記中温タンクとを繋ぐ出湯戻り管と、
前記出湯戻り管中に配された電動弁と、を備え、
前記電動弁の開閉と前記給湯ポンプの駆動により前記出湯配管中の湯を前記中温タンクに戻すようにしたことを特徴とする請求項1に記載の給湯システム。
【請求項3】
前記混合弁は、前記高温タンクの近傍に配されたことを特徴とする請求項2に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記混合弁は、第1の出湯配管と出湯戻り管との結合箇所よりも湯使用端末側に配されたことを特徴とする請求項2に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記中温タンクに湯水取り出し口を設け、
前記第1の出湯配管中であって、前記給湯ポンプより上流側に、該ポンプの吸込み経路を前記湯水取り出し口と高温タンクの湯取り出し口のいずれかに切り替える切り替え弁を設け、
前記第1の出湯配管は、前記高温タンクからの高温湯と前記中温タンクからの中温水とを切り替えて出湯し得るようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の給湯システム。
【請求項6】
前記中温タンクに湯水取り出し口を設け、
該湯水取り出し口を、加圧ポンプを介して前記混合弁の低温側に接続し、
前記第2の出湯配管は、前記中温タンクからの中温水と前記第1の出湯配管からの高温湯とを混合して出湯し得るようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の給湯システム。
【請求項7】
前記中温タンク内の中温水で給水を加熱するための熱交換器を備え、
前記熱交換器による熱交換後の給水経路を前記混合弁の低温側に接続し、
前記第2の出湯配管は、前記熱交換器による熱交換後の給水と前記第1の出湯配管からの高温湯とを混合して出湯し得るようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−96056(P2008−96056A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280233(P2006−280233)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】