説明

給湯システム

【課題】設定された温度の湯水を蛇口又はシャワーからなる湯水口に供給する給湯システムを提供する。
【解決手段】給湯システム10は、頂部に湯の出湯口14を備えた貯湯タンク11と、出湯口14からの湯に水道水を混合する第1の混合弁19及びこれに直列に接続される切換え弁39を備え湯水口30に所定温度の湯水を供給する第1の出湯回路31と、出湯口14からの湯に水道水を混合する第2の混合弁22、給湯器34、及び切換え弁39を直列に有し湯水口30に所定温度の湯水を供給する第2の出湯回路32とを備え、出湯口14から出湯される湯の温度をT1、湯水口30へ供給する湯水の温度として設定された温度をT2とすると、1)T1−α≧T2の場合、第1の出湯回路31を介して、湯水口30に温度T2の湯水を供給し、2)T1−α<T2の場合、第2の出湯回路32を介して、湯水口30に温度T2の湯水を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクから出湯される湯を温度調節して所定温度の湯水とし、蛇口又はシャワーからなる湯水口へ湯水を供給する給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯湯タンクからの湯を温度調整して所定温度の湯水とし、この湯水を蛇口又はシャワーからなる湯水口へ供給する給湯システムが開発されている。
例えば、非特許文献1に記載の給湯システム100は、図3に示すように、供給口108から水道水が給水される貯湯タンク101を有しており、貯湯タンク101内の湯水をソーラシステム102により昇温し、貯湯タンク101の出湯口103から出湯する湯の温度が設定温度より高い場合、途中に切換え弁110を有する出湯回路106を介して、湯水口105に湯を供給し、出湯口103からの湯の温度が設定温度より低い場合、湯に水道水を混合する混合弁109、給湯器104及び切換え弁110を直列に有する出湯回路107を介して、給湯器104で設定温度に昇温した湯を湯水口105に供給している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】株式会社長府製作所 ソーラー機器総合カタログ2004(I)「サンワイタ」SW−04−0001−改 p.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、出湯口103から出湯する湯の温度が設定温度より高い場合、出湯口103からの湯が出湯回路106で温度調整されることなく湯水口105に供給されるので、湯水口105に供給される湯は、設定温度より高い温度となり、湯水口105から設定温度の湯水を出水するには、湯水口105で水道水を混合することが必要となる。
【0005】
通常、湯水口105での水道水の混合は、手作業で行われ、実際に湯水口105から流れ出る湯水に触れながら水道水の混合量を変え温度調整をするので、温度調整をする間に流れる湯水は無駄となり、また、この手操作は温度調整を行う者にとって面倒である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、貯湯タンクからの湯温と設定温度の関係に関わらず湯水口に設定温度の湯水を供給することが可能な給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う給湯システムは、底部に水道水の供給口を、頂部に湯の出湯口をそれぞれ備えた貯湯タンクを有する給湯システムにおいて、前記出湯口からの湯に水道水を混合する第1の混合弁及びこれに直列に接続される切換え弁を備え、蛇口又はシャワーからなる湯水口に所定温度の湯水を供給する第1の出湯回路と、前記出湯口からの湯に水道水を混合する第2の混合弁、給湯器、及び前記切換え弁を直列に有し、前記湯水口に湯水を供給する第2の出湯回路とを備え、前記貯湯タンクの前記出湯口から出湯される湯の温度をT1、前記湯水口へ供給する湯水の温度として設定された温度をT2、0度(℃)以上5度(℃)以下の範囲で予め設定される温度をαとすると、1)T1−α≧T2の場合、前記第1の出湯回路を介して、前記出湯口からの湯と、水道水を前記第1の混合弁で混合し温度T2の湯水として、前記湯水口に湯水を供給し、2)T1−α<T2の場合、前記第2の出湯回路を介して、前記給湯器に供給して温度T2の湯水として、前記湯水口に湯水を供給する。
【0007】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記給湯器への供給が可能な湯水の最高温度をTmとすると、T1−α<T2でかつT1>Tmの場合、前記第2の混合弁で前記出湯口からの湯に水道水を所定割合で混合しTm以下の温度の湯水とし、前記給湯器に供給することが好ましい。
【0008】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記給湯器は、浴槽内へ所定温度の湯水を所定量入れる湯張り機能が設けられ、前記第2の混合弁の出口と前記給湯器との間に比例弁が配置され、前記第1の出湯回路を介して前記湯水口へ湯水を供給すると共に、前記給湯器の湯張り機能が作動しているときには、前記比例弁を作動させて該比例弁を通過する湯水の流量を制限することが好ましい。
【0009】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記比例弁の作動により流量が制限された状態で該比例弁を通過する湯水の流量は、該比例弁を作動しない全開の状態の10〜50%であることが好ましい。
本発明に係る給湯システムにおいて、前記貯湯タンクの内側下部には、ソーラパネルに循環回路を介して接続される熱交換器を有しているのが好ましい。
【0010】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記給湯器には、前記出湯口から出湯する湯の熱量から、前記供給口を通って前記貯湯タンクに入水する水道水の熱量を差し引いて、前記ソーラパネルから供給される熱媒水によって与えられ、前記貯湯タンクから出た湯水の熱量Pを算出する熱量算出手段が信号接続され、前記熱量算出手段は、前記給湯器に設定される前記温度T2と、前記湯水口に供給される湯水の量とから前記湯水口に供給される熱量Qを算出し、該熱量Qに対する前記熱量Pの比率を求めるのが好ましい。
【0011】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記給湯器には、前記出湯口から出湯する湯の熱量から、前記供給口を通って前記貯湯タンクに入水する水道水の熱量を差し引いて、前記ソーラパネルから供給される熱媒水によって与えられ、前記貯湯タンクから出た湯水の熱量Pを算出する熱量算出手段が信号接続され、前記熱量算出手段は、前記湯水口及び前記浴槽に供給される湯水の温度として前記給湯器に設定される前記温度T2と、前記湯水口及び前記浴槽に供給される湯水の量とから前記湯水口及び前記浴槽に供給される熱量Qを算出し、該熱量Qに対する前記熱量Pの比率を求めるのが好ましい。
【0012】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記熱量Qに対する前記熱量Pの比率は、前記熱量算出手段に信号接続されたディスプレイに表示されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜10記載の給湯システムは、T1−α≧T2の場合、出湯口からの湯と水道水を第1の混合弁で混合し温度T2の湯水を湯水口に供給し、T1−α<T2の場合、給湯器で温度T2の湯水として、湯水口に湯水を供給するので、湯水口へ供給する湯水の温度として設定された温度T2と出湯口から出湯される湯の温度の相対的な高低関係に関わらず、湯水口に温度T2の湯水を供給可能である。
【0014】
特に、請求項2記載の給湯システムは、T1−α<T2でかつT1>Tmの場合、第2の混合弁で出湯口からの湯に水道水を混合しTm以下の温度の湯水として、給湯器に供給するので、給湯器へTmより高温の湯水を供給することにより給湯器に温度調整不能の状態又は故障等が発生するのを防止することが可能である。
【0015】
請求項3記載の給湯システムは、給湯器の湯張り機能が作動中に第1の出湯回路を介して湯水口へ湯又は湯水を供給しているときには、比例弁を作動させて比例弁を通過する湯水の流量を制限するので、湯張りの影響により湯水口に供給される湯水の温度がT2を大きく外れるのを回避可能である。
【0016】
請求項4記載の給湯システムは、比例弁の作動により流量が制限された状態で比例弁を通過する湯水の流量は、比例弁を作動しない全開の状態の10〜50%であるので、浴槽へ湯水の供給をしつつ、湯水口に供給される湯水の温度がT2を大きく外れるのを回避可能である。
【0017】
請求項5及び8記載の給湯システムは、貯湯タンクの内側下部にソーラパネルに接続される熱交換器を有するので、貯湯タンク内の湯水を加熱するのに太陽熱を利用することができ、エネルギー消費を低減できる。
【0018】
請求項6記載の給湯システムは、熱量算出手段が、給湯器に設定される温度T2と、湯水口に供給される湯水の量とから湯水口に供給される熱量Qを算出するので、湯水口に供給する湯水の温度を実測する温度検出センサ等を設けることなく、熱量算出手段が湯水口に供給される湯水の温度を取得でき、熱量Qを算出するために必要な部品、部材の点数を低減することができる。
【0019】
請求項9記載の給湯システムは、熱量算出手段が、湯水口及び浴槽に供給される湯水の温度として給湯器に設定される温度T2と、湯水口及び浴槽に供給される湯水の量とから湯水口及び浴槽に供給される熱量Qを算出するので、湯水口及び浴槽に供給する湯水の温度を実測する温度検出センサ等を設けることなく、熱量算出手段が湯水口及び浴槽に供給される湯水の温度を取得でき、熱量Qを算出するために必要な部品、部材の点数を低減することができる。
【0020】
請求項7及び10記載の給湯システムは、熱量Qに対する熱量Pの比率が、ディスプレイに表示されるので、給湯システムの利用者は、使用された湯水の熱量に対するソーラパネルから与えられた熱量の寄与率を容易に確認することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る給湯システムの説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る給湯システムの説明図である。
【図3】従来例に係る給湯システムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る給湯システム10は、湯水を貯える貯湯タンク11と、貯湯タンク11内の湯水の温度を上昇させるソーラシステム12とを有する。
貯湯タンク11は、底部に貯湯タンク11内に水道水を取り込む水道水の供給口13を備え、頂部に貯湯タンク11内の湯を出湯する出湯口14を備えている。
【0023】
ソーラシステム12は、太陽熱を吸収し内在する熱媒水を加熱するソーラパネル15を有し、貯湯タンク11の内側下部には、ソーラパネル15に循環回路16を介して接続される熱交換器17が配置されている。循環回路16には、循環ポンプ18、及び図示しないアキュームタンクが取付けられ、ソーラパネル15に内在する熱媒水は、循環ポンプ18の作動により循環回路16内を流動し熱交換器17を通過してソーラパネル15に戻る。熱交換器17は、ソーラパネル15で加熱された熱媒水を熱源にした熱交換により貯湯タンク11内の湯水を加熱する。なお、アキュームタンクは、加熱による熱媒水の膨張を吸収するために設けられている。
【0024】
出湯口14は、出湯口14から出湯された湯に水道水を混合する第1の混合弁19が有する第1の湯入口20に配管接続されると共に、出湯口14から出湯された湯に水道水を混合する第2の混合弁22が有する第2の湯入口23に配管接続されている。
第1の混合弁19は、第1の湯入口20に加え水道管24に接続され水道水が給水される第1の水道水入口25と、出湯口14からの湯に水道水を混合した湯水を送り出す第1の出口26とを有する。
【0025】
また、第2の混合弁22は、第2の湯入口23に加え水道管24に接続され水道水が給水される第2の水道水入口27と、出湯口14からの湯に水道水を混合した湯水を送り出す第2の出口28とを有している。なお、水道管24は、供給口13にも接続され供給口13を介して貯湯タンク11に水道水を給水する。
【0026】
第1の混合弁19は、第1の湯入口20及び第1の水道水入口25それぞれの流路の断面積の大きさを変更、あるいは、流路を完全に塞ぐことができるので、第1の湯入口20から入湯する出湯口14からの湯量と第1の水道水入口25から入水する水道水量を調整して所定温度の湯水とし、第1の出口26から出水することができる。
また、第2の混合弁22も、第2の湯入口23及び第2の水道水入口27それぞれの流路の断面積の大きさを変更、あるいは、流路を完全に塞ぐことができるので、第2の湯入口23から入湯する出湯口14からの湯量と第2の水道水入口27から入水する水道水量を調整して所定温度の湯水とし、第2の出口28から出水することができる。
【0027】
よって、第1、第2の混合弁19、22が第1、第2の出口26、28からそれぞれ出水する湯水の温度は、水道水の温度以上で出湯口14から出湯される湯の温度以下の範囲となる。
第1の混合弁19には、切換え弁39が直列に接続されており、第1の混合弁19及び切換え弁39を備え、貯湯タンク11の出湯口14から蛇口又はシャワーからなる湯水口30に所定温度の湯水を供給する第1の出湯回路31が形成されている。
【0028】
また、第2の混合弁22には、通過する湯水の流量を制限する比例弁33、湯水を加熱する給湯器34、及び切換え弁39が順に直列に接続され、第2の混合弁22、比例弁33、給湯器34、及び切換え弁39を有し、貯湯タンク11の出湯口14から湯水口30に所定温度の湯水を供給する第2の出湯回路32が形成されている。
給湯器34は、燃焼等により発生させた熱で第2の出湯回路32を通過する湯水を加熱する加熱部35を備えている。
【0029】
また、比例弁33は、例えばモータバルブからなり、流路の断面積の大きさを変更可能であり、流路の断面積を小さくすることで比例弁33を通過する湯水の流量を制限(減量)する。
切換え弁39は、第1の出口26に配管接続された第1の切換え基口36、加熱部35の湯水の出側に配管接続された第2の切換え基口37、及び湯水口30に配管接続された出湯先口38を有し、第1、第2の切換え基口36、37のうち一方を湯水が通過可能な状態にしているとき、他方を湯水が通過できない状態にするので、湯水口30への湯水の供給経路を第1の出湯回路31にするか、第2の出湯回路32にするかが切換え可能である。
【0030】
貯湯タンク11の上部で出湯口14の近傍には、出湯口14から出湯される湯の温度を計測可能な温度センサの一例であるサーミスタ40が設けられ、水道管24には、水道水の温度を計測するサーミスタ41が取付けられている。
給湯システム10には、第1の混合弁19、第2の混合弁22、比例弁33、給湯器34、切換え弁39、及びサーミスタ40、41に接続された図示しない制御部が備えられている。
【0031】
制御部には、湯水口30へ供給する湯水の温度T2(以下「設定温度T2」ともいう)及び0度以上5度以下の範囲の温度αが予め設定されている。制御部は、サーミスタ40で計測された湯の温度T1を検知し、T1からαを減じた温度とT2とを比較し、この比較結果によって第1の出湯回路31を介して湯水口30へ湯水を供給するか、あるいは第2の出湯回路32を介して湯水口30へ湯水を供給するかを決定する。なお、温度T1は天気によっても異なるが40℃〜80℃、温度T2は30℃〜75℃の範囲である。第1、第2の混合弁19、22は、その構造上、それぞれ第1、第2の水道水入口25、27からの水道水の流入を完全に止めることができないものがあることから、T1からαを減じた温度をT2と比較しており、例えば、αとして2℃が設定される。
【0032】
また、制御部は、内部に設定温度T2等を記憶するメモリと、湯水口30への湯水の供給回路の決定、第1、第2の混合弁19、22での出湯口14からの湯に混合する水道水の割合の算出や下記の制御を実行するプログラムを搭載したROMと、ROMと外部(第1の混合弁19、第2の混合弁22、比例弁33、給湯器34、切換え弁39、及びサーミスタ40、41)との間の信号変換、信号伝達を行うインターフェースを有する。
【0033】
T1−α≧T2の場合、制御部は、切換え弁39を作動し第1の切換え基口36を湯水が通過可能な状態にする。
そして、T1−α≧T2の場合、第1の混合弁19で貯湯タンク11からの湯に水道水が所定割合で混合されて温度T2の湯水とされ、第1の出湯回路31を介して、湯水口30に温度T2の湯水が供給される。
【0034】
T1−α<T2の場合、制御部は、切換え弁39を作動し第2の切換え基口37を湯水が通過可能な状態にし、第2の出湯回路32を介して、第2の混合弁22から給湯器34に湯水を供給する。そして、給湯器34は、第2の混合弁22から供給された湯水を温度T2の湯水とし、湯水口30に温度T2の湯水を供給する。
したがって、給湯システム10は、温度T1と温度T2の相対的な高低関係に関わらず湯水口30に温度T2の湯水を供給でき、湯水口30で水道水の混合等をすることなく、湯水口30から安定して設定温度T2の湯水を出水できる。なお、湯水口30には、水道水を供給する水道管43が連結されているので、湯水口30で水道水を混合することで、湯水口30から温度T2より低温の湯水を出水することもできる。
【0035】
ここで、給湯器34を構成する部品、部材等には個々の耐熱性能があることや、また、給湯器34には湯水が流入した際に必ず燃焼し湯水を昇温する仕様のものがあり、湯水口30へ使用者に危険が生じ得る高温(例えば80℃)の湯を供給すること、及び流入した温度T2の湯水を温度T2を超えた温度にして湯水口30へ供給することを回避するため、給湯器34に供給可能な湯水の最高温度(給湯器34の最低燃焼熱量から算出される温度で、例えば35℃)が定められている。
この給湯器34へ供給可能な湯水の最高温度をTmとすると、T1−α<T2かつT1>Tmの場合、制御部は、第2の混合弁22を作動し第2の湯入口23から入湯する湯量と第2の水道水入口27から入水する水道水の水量とを調整して、第2の混合弁22で出湯口14からの湯に水道水を所定割合で混合しTm以下の温度の湯水とし、給湯器34に供給する。給湯器34は、第2の混合弁22から供給されたTm以下の温度の湯水を加熱部35で加熱して温度T2の湯水とし、湯水口30に温度T2の湯水を供給する。
【0036】
比例弁33と給湯器34の間には、第2の混合弁22の第2の出口28から出水される湯水の温度を計測するサーミスタ44が設けられ、また、第1の混合弁19と切換え弁39の間には、第1の混合弁19の第1の出口26から出水される湯水の温度を計測するサーミスタ49が設けられている。サーミスタ44、49は制御部に接続されており、制御部は、サーミスタ44による計測値から、実際に第2の出口28から出水されている湯水の温度がTm以下の温度であることを検知でき、また、サーミスタ49による計測値から実際に第1の出口26から出水されている湯水の温度がT2であることを検知可能である。
給湯器34の加熱部35には、浴槽45まで達する浴槽配管46が接続され、浴槽配管46の給湯器34内に位置する部分には、加熱部35から浴槽45に向かって順に開閉弁47及び逆止弁48が配置されている。なお、開閉弁47には、制御部が接続されており、制御部は、開閉弁47を作動して湯水が通過可能な状態及び湯水が通過できない状態にすることができる。
【0037】
給湯器34には、浴槽45内へ所定温度の湯水を所定量入れる湯張り機能が設けられ、制御部は、給湯器34から湯張り機能の作動、及び停止の信号を受信することができる。
制御部は、湯張り機能が作動すると、その作動信号を受信し開閉弁47を湯水が通過可能な状態とし、加熱部35から出た湯水が浴槽配管46を介して浴槽45内に入水する。開閉弁47は浴槽45への湯張りが行われていないとき湯水が通過できない状態にされる。また、逆止弁48は、加熱部35側から浴槽45方向へ湯水を通すが、その逆方向、すなわち浴槽45側から加熱部35へは湯水(湯)を通さず、断水時でも浴槽45の湯が水道管24側へ流入しないように設けられている。
【0038】
第1の出湯回路31を介して湯水口30へ湯水を供給している最中に浴槽45への湯張りが開始されたとき、制御部は、開閉弁47を湯水が通過可能な状態にし、出湯口14から出湯された湯を第1の湯入口20に供給するのに加えて、第2の湯入口23にも湯を供給し始める。この際、湯張り開始前に出湯口14からの湯が全て第1の湯入口20に流れていた状態から、湯の一部が第2の湯入口23にも流れ出すので、第1の湯入口20に供給される湯量が減少し、また、第1の水道水入口25へ流入する水量も減少するので第1の出口26から出水される湯水の温度は一時的に温度T2と異なる場合が生じる。
【0039】
よって、制御部は、第1の出口26から出水される湯水を温度T2にすべく、温度T2を下回る場合は第1の混合弁19を作動して、第1の水道水入口25から入水する水道水の水量を少なくし、温度T2を上回る場合は第1の湯入口20に入湯する貯湯タンク11の出湯口14からの湯量を少なくするが、第1の出口26から出水される湯水が温度T2になるまで、設定温度T2と異なる温度の湯水が湯水口30に供給されることになる。
【0040】
制御部は、第1の出湯回路31を介して湯水口30へ湯水を供給している最中に開閉弁47を湯水が通過可能な状態にする際、第2の出口28と給湯器34との間に配置された比例弁33を作動し比例弁33を通過する湯水の流量を制限(減量)して、第2の湯入口23に入湯する湯を減量するので、出湯口14からの湯を第1の湯入口20に優先的に供給し湯水口30に供給する湯水の温度が温度T2を大きく外れるのを回避し、更に湯水口30に供給する湯水の温度を設定温度T2にするまでの時間を短縮する。なお、制御部は、切換え弁39に接続されているので、第1の出湯回路31を介して出湯口14からの湯が湯水口30へ供給されている状態であることを検知できる。
【0041】
また、給湯器34の湯張り機能が作動中に第1の出湯回路31を介して湯水口30へ湯水を供給し始めた場合も、制御部は、比例弁33を作動して比例弁33を通過する湯水の流量を制限し、湯水口30に供給する湯水の温度が設定温度T2を大きく下回るのを回避し、更に湯水口30に供給する湯水の温度を設定温度T2にするまでの時間を短縮する。
なお、比例弁33が通過する湯水の流量を制限するのは、第1の出湯回路31を介して湯水口30へ湯水を供給し、かつ湯張り機能を作動しているときとなる。
【0042】
ここで、比例弁33の作動により通過する湯水の流量が制限された状態で比例弁33を通過する湯水の流量を、比例弁33を作動しない全開の状態の10〜50%、好ましくは20〜40%とすることで浴槽45へ湯水の供給をしつつ、湯水口30から湯水を出水するのに大きな不都合を生じさせない範囲の温度の湯水を湯水口30に供給することができる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る給湯システム10aについて説明する。
なお、給湯システム10と同一の構成要素については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図2に示すように、給湯システム10aは、湯温設定手段42を備える給湯器34aを有し、湯温設定手段42には、湯水口30及び浴槽45に供給される湯水の温度として温度T2が設定される。給湯器34aには、湯温設定手段42に設定された温度T2の値を表示するディスプレイ50が設けられ、給湯システム10aの利用者は、このディスプレイ50の表示から設定温度T2を確認することができる。なお、湯温設定手段42は、例えば給湯器34aに内蔵されたマイクロコンピュータが搭載するプログラム等からなる。
【0044】
第1、第2の出湯回路31、32には、第1の混合弁19の第1の出口26及び第2の混合弁22の第2の出口28から出水された湯水の量を計測する流量センサ51、52がそれぞれ設けられている。
流量センサ51、52には、熱量算出手段53が信号接続され、熱量算出手段53は、湯水口30及び浴槽45に供給される合計の熱量を算出する。給湯システム10aには、混合弁等の制御を行う図示しない制御部が設けられ、熱量算出手段53は、例えば、制御部が有するROMに搭載されたプログラムからなり、インターフェースを介して、流量センサ51、52、サーミスタ41、44、49及び湯温設定手段42とデータ通信を行うことができる。
【0045】
第1の混合弁19を通った(最終的に湯水口30に供給される)湯水の熱量をP1、第2の混合弁22を通った(最終的に湯水口30及び浴槽45に供給される)湯水の熱量をP2として、熱量算出手段53は、サーミスタ49と流量センサ51から取得した情報、及びサーミスタ44と流量センサ52から取得した情報を基に、熱量P1及び熱量P2をそれぞれ算出する。また、熱量算出手段53は、サーミスタ41から水道水の温度を取得し、この水道水の温度に流量センサ51、52を通過した湯水の量を乗算して熱量P3を算出する。
そして、熱量算出手段53は、熱量P1に熱量P2を加えた値から熱量P3を差し引いて、熱量Pを算出する。熱量Pは、ソーラパネル15から供給される熱媒水によって貯湯タンク11に与えられた熱量のうち、出湯口14を通って貯湯タンク11から出た熱量(すなわち、出湯口14から出湯する湯の熱量から、供給口13を通って貯湯タンク11に入水する水道水の熱量を差し引いた熱量)である。
【0046】
熱量算出手段53は、流量センサ51、52から取得した情報を基に、流量センサ51、52を通過して湯水口30及び浴槽45に供給された湯水の量を検知し、湯温設定手段42から取得する温度T2と、湯水口30及び浴槽45に供給される湯水の量とを乗算して得た熱量を時間軸で積分して熱量Qを算出する。そして、熱量算出手段53は、熱量Pを熱量Qで除算して、熱量Qに対する熱量Pの比率(P/Q)を求め、湯水口30及び浴槽45に供給された湯水全体の熱量に対する、ソーラパネル12が熱媒水を介して貯湯タンク11に与えた熱量の寄与率を算出する。このP/Qの値は、熱量算出手段53にインターフェースを介して信号接続されたディスプレイ54に表示される。
なお、給湯器に湯張り機能が設けられていない場合は、熱量算出手段53によって、流量センサ51、52を通過して湯水口30に供給された湯水の量を検知し、湯温設定手段42から取得する温度T2(湯水口30に供給される湯水の温度として設定されたもの)と、湯水口30に供給される湯水の量とを乗算して得た熱量を時間軸で積分して、熱量Qを算出する。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、貯湯タンク11内の湯水を上昇させるのは、ソーラシステム12に限ることなく、ヒートポンプ式熱源機やその他の加熱源を採用することができる。また、比例弁33の作動により流量を制限した状態での比例弁33を通過する湯水の流量を、全開の状態の10〜50%、好ましくは20〜40%としているが、給湯システムを構成する部材や、水圧等によって、この数値は変更可能である。更に、給湯器は、湯温設定手段に設定された温度を表示するディスプレイ及び湯温設定手段を備えるリモコン装置を有することができる。P/Qの値を表示するディスプレイは、熱量算出手段とデータ通信が可能なリモコン装置に設けることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10、10a:給湯システム、11:貯湯タンク、12:ソーラシステム、13:供給口、14:出湯口、15:ソーラパネル、16:循環回路、17:熱交換器、18:循環ポンプ、19:第1の混合弁、20:第1の湯入口、22:第2の混合弁、23:第2の湯入口、24:水道管、25:第1の水道水入口、26:第1の出口、27:第2の水道水入口、28:第2の出口、30:湯水口、31:第1の出湯回路、32:第2の出湯回路、33:比例弁、34、34a:給湯器、35:加熱部、36:第1の切換え基口、37:第2の切換え基口、38:出湯先口、39:切換え弁、40、41:サーミスタ、42:湯温設定手段、43:水道管、44:サーミスタ、45:浴槽、46:浴槽配管、47:開閉弁、48:逆止弁、49:サーミスタ、50:ディスプレイ、51、52:流量センサ、53:熱量算出手段、54:ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に水道水の供給口を、頂部に湯の出湯口をそれぞれ備えた貯湯タンクを有する給湯システムにおいて、
前記出湯口からの湯に水道水を混合する第1の混合弁及びこれに直列に接続される切換え弁を備え、蛇口又はシャワーからなる湯水口に所定温度の湯水を供給する第1の出湯回路と、
前記出湯口からの湯に水道水を混合する第2の混合弁、給湯器、及び前記切換え弁を直列に有し、前記湯水口に湯水を供給する第2の出湯回路とを備え、
前記貯湯タンクの前記出湯口から出湯される湯の温度をT1、前記湯水口へ供給する湯水の温度として設定された温度をT2、0度以上5度以下の範囲で予め設定される温度をαとすると、
1)T1−α≧T2の場合、前記第1の出湯回路を介して、前記出湯口からの湯と、水道水を前記第1の混合弁で混合し温度T2の湯水として、前記湯水口に湯水を供給し、
2)T1−α<T2の場合、前記第2の出湯回路を介して、前記給湯器に供給して温度T2の湯水として、前記湯水口に湯水を供給することを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
請求項1記載の給湯システムにおいて、前記給湯器への供給が可能な湯水の最高温度をTmとすると、
T1−α<T2でかつT1>Tmの場合、前記第2の混合弁で前記出湯口からの湯に水道水を所定割合で混合しTm以下の温度の湯水とし、前記給湯器に供給することを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の給湯システムにおいて、前記給湯器は、浴槽内へ所定温度の湯水を所定量入れる湯張り機能が設けられ、前記第2の混合弁の出口と前記給湯器との間に比例弁が配置され、前記第1の出湯回路を介して前記湯水口へ湯水を供給すると共に、前記給湯器の湯張り機能が作動しているときには、前記比例弁を作動させて該比例弁を通過する湯水の流量を制限することを特徴とする給湯システム。
【請求項4】
請求項3記載の給湯システムにおいて、前記比例弁の作動により流量が制限された状態で該比例弁を通過する湯水の流量は、該比例弁を作動しない全開の状態の10〜50%であることを特徴とする給湯システム。
【請求項5】
請求項1又は2記載の給湯システムにおいて、前記貯湯タンクの内側下部には、ソーラパネルに循環回路を介して接続される熱交換器を有していることを特徴とする給湯システム。
【請求項6】
請求項5記載の給湯システムにおいて、前記給湯器には、前記出湯口から出湯する湯の熱量から、前記供給口を通って前記貯湯タンクに入水する水道水の熱量を差し引いて、前記ソーラパネルから供給される熱媒水によって与えられ、前記貯湯タンクから出た湯水の熱量Pを算出する熱量算出手段が信号接続され、
前記熱量算出手段は、前記給湯器に設定される前記温度T2と、前記湯水口に供給される湯水の量とから前記湯水口に供給される熱量Qを算出し、該熱量Qに対する前記熱量Pの比率を求めることを特徴とする給湯システム。
【請求項7】
請求項6記載の給湯システムにおいて、前記熱量Qに対する前記熱量Pの比率は、前記熱量算出手段に信号接続されたディスプレイに表示されることを特徴とする給湯システム。
【請求項8】
請求項3又は4記載の給湯システムにおいて、前記貯湯タンクの内側下部には、ソーラパネルに循環回路を介して接続される熱交換器を有していることを特徴とする給湯システム。
【請求項9】
請求項8記載の給湯システムにおいて、前記給湯器には、前記出湯口から出湯する湯の熱量から、前記供給口を通って前記貯湯タンクに入水する水道水の熱量を差し引いて、前記ソーラパネルから供給される熱媒水によって与えられ、前記貯湯タンクから出た湯水の熱量Pを算出する熱量算出手段が信号接続され、
前記熱量算出手段は、前記湯水口及び前記浴槽に供給される湯水の温度として前記給湯器に設定される前記温度T2と、前記湯水口及び前記浴槽に供給される湯水の量とから前記湯水口及び前記浴槽に供給される熱量Qを算出し、該熱量Qに対する前記熱量Pの比率を求めることを特徴とする給湯システム。
【請求項10】
請求項9記載の給湯システムにおいて、前記熱量Qに対する前記熱量Pの比率は、前記熱量算出手段に信号接続されたディスプレイに表示されることを特徴とする給湯システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−286231(P2010−286231A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109514(P2010−109514)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(390002886)株式会社長府製作所 (197)
【Fターム(参考)】